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特表2024-501661過活動膀胱を治療するためのビベグロンの使用と併用したジゴキシンのモニタリング方法
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  • 特表-過活動膀胱を治療するためのビベグロンの使用と併用したジゴキシンのモニタリング方法 図1
  • 特表-過活動膀胱を治療するためのビベグロンの使用と併用したジゴキシンのモニタリング方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(54)【発明の名称】過活動膀胱を治療するためのビベグロンの使用と併用したジゴキシンのモニタリング方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20240105BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20240105BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P13/10
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538002
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 IB2021062208
(87)【国際公開番号】W WO2022137178
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/129,474
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520454833
【氏名又は名称】ウロバント サイエンシズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】UROVANT SCIENCES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】ポール エヌ ムッド ジュニア
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA12
4C086ZA81
4C086ZC41
(57)【要約】
本開示は、治療上有効な量のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することを含む過活動膀胱を治療する方法に関し、患者はジゴキシンを同時に投与され、患者の血清ジゴキシン濃度は、所望のジゴキシン臨床効果をもたらす量に維持される。これは、ビベグロン治療前、治療中、および/または治療後に患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングし、所望の臨床効果を達成するために、その濃度に基づいてジゴキシン用量を維持するまたは設定することによって達成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過活動膀胱を治療する方法であって、
治療上有効な量のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することであって、患者はジゴキシンを同時に投与されている、投与することを含み、
(a)患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングすること、および
(b)前記モニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、患者におけるジゴキシンの用量を維持するまたは設定すること、
をさらに含む、方法。
【請求項2】
過活動膀胱を治療する方法であって、
治療上有効な量のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することであって、患者はジゴキシンを同時に投与されている、投与することを含み、
(a)患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングすること、
(b)前記モニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、患者におけるジゴキシンの用量を維持するまたは設定すること、
(c)ビベグロンの投与を中断すること、
(d)中断後の患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングすること、および
(e)(d)のモニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、患者におけるジゴキシンの用量を維持するまたは設定すること、
をさらに含む、方法。
【請求項3】
過活動膀胱を治療する方法であって、
治療上有効な量のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することであって、患者はジゴキシンを同時に投与されている、投与することを含み、
患者のジゴキシン用量を患者の血清ジゴキシン濃度に基づいて設定する、方法。
【請求項4】
過活動膀胱を治療する方法であって、
治療上有効な量のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することであって、患者はジゴキシンによる治療を同時に受けている、投与することを含み、
患者の血清ジゴキシン濃度は所望のジゴキシン臨床効果をもたらすものである、方法。
【請求項5】
ビベグロンの治療上有効な量が約50mg/日~約150mg/日である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
治療上有効な量のビベグロンが約50mg/日、約75mg/日、約100mg/日、または約150mg/日である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ビベグロンの治療上有効な量が75mg/日である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
患者は、切迫性尿失禁、尿意切迫感、頻尿およびそれらの組み合わせの群から選択される症状を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
患者が、切迫性尿失禁、尿意切迫感、および頻尿の症状を有する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記患者はヒトである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒトは女性である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒトは男性である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ヒトは65歳を超えている、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ビベグロンが1日1回投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ビベグロンが食事とともに投与される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
ビベグロンが食事なしで投与される、請求項14記載の方法。
【請求項17】
ビベグロンが遊離塩基として投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ビベグロンがその薬学的に許容される塩として投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ビベグロンが約4週間、約3週間、または約2週間の作用発現を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
過活動膀胱を治療する方法であって、
75mg/日のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することであって、患者はジゴキシンを同時に投与されている、投与することを含み、
(a)患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングすること、および
(b)前記モニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、患者におけるジゴキシンの用量を維持するまたは設定すること、
をさらに含む、方法。
【請求項21】
過活動膀胱を治療する方法であって、
75mg/日のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することであって、患者はジゴキシンを同時に投与されている、投与することを含み、
(a)患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングすること、
(b)(a)のモニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、患者におけるジゴキシンの用量を維持するまたは設定すること、
(c)ビベグロンの投与を中断すること、
(d)前記中断後の患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングすること、および
(e)(d)のモニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、患者におけるジゴキシンの用量を維持するまたは設定すること、
をさらに含む、方法。
【請求項22】
過活動膀胱を治療する方法であって、
75mg/日のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することであって、患者はジゴキシンを同時に投与されている、投与することを含み、
患者のジゴキシン用量を患者の血清ジゴキシン濃度に基づいて設定する、方法。
【請求項23】
過活動膀胱を治療する方法であって、
75mg/日のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することであって、患者はジゴキシンを同時に投与されている、投与することを含み、
患者の血清ジゴキシン濃度は所望のジゴキシン臨床効果をもたらすものである、方法。
【請求項24】
患者の過活動膀胱を治療する方法であって、
(a)患者の血清ジゴキシン濃度を測定すること、
(b)患者に75mg/日のビベグロンを経口投与することであって、患者はジゴキシンを同時に投与されている、投与すること、
(c)患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングすること、および
(d)(c)のモニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、患者においてジゴキシン用量を維持するまたは設定すること、
を含む、方法。
【請求項25】
患者の過活動膀胱を治療する方法であって、
(a)患者の血清ジゴキシン濃度を測定すること、
(b)患者に75mg/日のビベグロンを経口投与することであって、患者はジゴキシンを同時に投与されている、投与すること、
(c)患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングすること、
(d)(c)のモニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、患者におけるジゴキシンの用量を維持するまたは設定すること、
(e)ビベグロンの投与を中断すること、
(f)中断後の患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングすること、および
(g)(f)のモニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、患者におけるジゴキシンの用量を維持するまたは設定すること、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月22日に出願された米国仮出願第63/129,474号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
過活動膀胱(OAB)は、下部尿路の慢性で時に衰弱症状である。下部尿路の機能は、蓄えて定期的に尿を放出することである。これには、様々な求心性および遠心性神経経路が関与する貯留および排尿反射の調整(オーケストレーション)が必要であり、その結果、中枢および末梢の神経エフェクター機構の調整(modulation)、ならびに体性運動経路と同様に自律神経系の交感神経および副交感神経成分の協調的調節が引き起こされる。これらは、ブラダー(排尿筋)と尿道平滑筋、および尿道括約筋の横紋筋の収縮状態を近位で調節する。
【0003】
ビベグロン、(6S)‐N‐[4‐[(2S、5R)‐5‐[(R)‐ヒドロキシ(フェニル)メチル]ピロリジン‐2‐イル]メチル]フェニル]フェニル]‐4‐オキソ‐7、8‐ジヒドロ‐6H‐ピロロロ[1、2‐a]ピリミジン‐6‐カルボキサミドは、β3‐ARのβ2‐ARおよびβ1‐ARに対する活性化に対して、インビトロアッセイで9000倍以上の選択性を示す強力で高度に選択的なβ‐3アドレナリン受容体アゴニストである。Edmondson et al., J. Med. Chem. 59:609-623 (2016)を参照。
【0004】
【化1】
【0005】
ビベグロンは、β3‐ARアゴニストとして、米国特許第8,399,480号、第8,653,260号、および第8,247,415号で開示されている。ビベグロンを調製するための合成方法は、米国特許出願公開第2017/0145014号、第2015/0087832号、第2016/0176884号、第2014/0242645号に記載されている。引用された全ての刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0006】
ビベグロンはチトクロームP450遺伝子から産生される主要な酵素の阻害剤ではないため、これらの酵素によって代謝される薬物との併用は、臨床的に重要な薬物-薬物相互作用をもたらさなかった(例えば、Rechberger, T. et al. (2020): Evaluating vibegron for the treatment of overactive bladder, Expert Opinion on Pharmacotherapy, DOI: 10. 1080/14656566.2020. 1809652を参照。)WO2018/224989は、p‐gp基質であるジゴキシンとビベグロンの反復投与の評価を開示しており、ビベグロンがジゴキシンの薬物動態に臨床的に重要な程度まで影響しないことを示唆している。WO2018/224989は、患者の血清ジゴキシン濃度のモニタリングおよび/またはジゴキシン用量の用量設定(漸増、titration)が必要であるか、望ましいかもしれないことを開示しておらず、示唆していない。
【0007】
しかしながら、ビベグロンはこれらのタイプの相互作用を引き起こさないと考えられているにもかかわらず、感受性の高い薬物動態プロファイルを有する薬物を服用している患者にビベグロンを使用すると、それらの薬物の治療効果が変化する可能性が懸念される。したがって、ビベグロンと特定の薬物との同時投与が、それらの薬物の臨床効果に影響を及ぼさないことを保証する必要がある。この必要性は、ビベグロンと同時に投与される薬物の血清濃度(血清レベル)が、望ましい臨床効果をもたらすものであることを保証することによって達成することができる。これは、ビベグロンとの同時投与の前、間(途中)、および/または後に、特定の同時投与薬物の血清濃度をモニタリングし、それらの血清濃度に基づいて、所望の臨床効果を得るために、同時投与薬物の用量を維持するまたは設定する(titrate)(用量設定する、漸増させる)ことによって達成することができる。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、過活動膀胱を治療する方法を提供し、この方法は、治療上有効な量のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することを含み、ここで、患者はジゴキシンを同時に投与され、ここで、患者の血清ジゴキシン濃度(ジゴキシン血清レベル)は、所望の臨床効果を達成することができるレベルに維持される。これは、ビベグロン治療前、治療中、および/または治療後に患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングし、その血清濃度に基づいて、所望の臨床効果を達成するために患者のジゴキシン用量を維持するまたは設定することによって達成することができる。
【0009】
いくつかの態様において、本開示は、過活動膀胱を治療する方法を提供し、該方法は、治療上有効な量のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することであって、患者はジゴキシンを同時に投与されている、投与することを含み、
(a)患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングすること、
(b)(a)のモニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、患者におけるジゴキシンの用量を維持するまたは設定すること、
(c)ビベグロンの投与を中断すること、
(d)中断後の患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングすること、および
(e)(d)のモニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、患者におけるジゴキシンの用量を維持するまたは設定すること、
をさらに含む。
【0010】
いくつかの態様において、本開示は、過活動膀胱を治療する方法を提供し、該方法は、治療上有効な量のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することであって、患者はジゴキシンを同時に投与されている、投与することを含み、患者のジゴキシン用量を患者の血清ジゴキシン濃度に基づいて設定する。
【0011】
いくつかの態様において、本開示は、過活動膀胱を治療する方法を提供し、該方法は、治療上有効な量のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することであって、患者はジゴキシンによる治療を同時に受けている、投与することを含み、患者の血清ジゴキシン濃度は所望のジゴキシン臨床効果をもたらすものである。
【0012】
いくつかの態様において、ビベグロンの治療上有効な量は約50mg/日~約150mg/日である。
【0013】
いくつかの態様において、ビベグロンの治療上有効な量は、約50mg/日、約75mg/日、約100mg/日、または約150mg/日である。いくつかの態様において、ビベグロンの治療上有効な量は75mg/日である。
【0014】
いくつかの態様において、患者は、切迫性尿失禁、尿意切迫感、頻尿、およびそれらの組合せの群から選択される症状を有する。いくつかの態様において、患者は切迫性尿失禁、尿意切迫感、および頻尿の症状を有する。
【0015】
いくつかの態様において、患者はヒトである。いくつかの態様において、ヒトは女性である。いくつかの態様において、ヒトは男性である。いくつかの態様において、ヒトは65歳以上である。
【0016】
いくつかの態様において、ビベグロンは1日1回投与される。いくつかの態様において、ビベグロンは食事とともに投与される。いくつかの態様において、ビベグロンは食事なしで投与される。
【0017】
いくつかの態様において、ビベグロンは遊離塩基として投与される。いくつかの態様において、ビベグロンは、その薬学的に許容される塩として投与される。
【0018】
いくつかの態様において、ビベグロンの作用発現時期は、4週間程度、3週間程度、2週間程度である。
【0019】
いくつかの態様において、本開示は、過活動膀胱を治療する方法を提供し、該方法は、75mg/日のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することであって、患者はジゴキシンを同時に投与されている、投与することを含み、
(a)患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングすること、および
(b)前記モニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、患者におけるジゴキシンの用量を維持するまたは設定すること、
をさらに含む。
【0020】
いくつかの態様において、本開示は、過活動膀胱を治療する方法を提供し、該方法は、75mg/日のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することであって、患者はジゴキシンを同時に投与されている、投与することを含み、
(a)患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングすること、
(b)(a)のモニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、患者におけるジゴキシンの用量を維持するまたは設定すること、
(c)ビベグロンの投与を中断すること、
(d)前記中断後の患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングすること、および
(e)(d)のモニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、患者におけるジゴキシンの用量を維持するまたは設定すること、
をさらに含む。
【0021】
いくつかの態様において、本開示は、過活動膀胱を治療する方法を提供し、該方法は、75mg/日のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することであって、患者はジゴキシンを同時に投与されている、投与することを含み、
患者のジゴキシン用量を患者の血清ジゴキシン濃度に基づいて設定することを含む。
【0022】
いくつかの態様において、本開示は、過活動膀胱を治療する方法を提供し、該方法は、75mg/日のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することであって、患者はジゴキシンを同時に投与されている、投与することを含み、
患者の血清ジゴキシン濃度は所望のジゴキシン臨床効果をもたらすものである。
【0023】
いくつかの態様において、本開示は、患者において過活動膀胱を治療する方法を提供し、該方法は、
(a)患者の血清ジゴキシン濃度を測定すること、
(b)患者に75mg/日のビベグロンを経口投与することであって、患者はジゴキシンを同時に投与されている、投与すること、
(c)患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングすること、および
(d)(c)のモニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、患者においてジゴキシン用量を維持するまたは設定すること、
を含む。
【0024】
いくつかの態様において、本開示は、患者において過活動膀胱を治療する方法を提供し、該方法は、
(a)患者の血清ジゴキシン濃度を測定すること、
(b)患者に75mg/日のビベグロンを経口投与することであって、患者はジゴキシンを同時に投与されている、投与すること、
(c)患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングすること、
(d)(c)のモニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、患者におけるジゴキシンの用量を維持するまたは設定すること、
(e)ビベグロンの投与を中断すること、
(f)中断後の患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングすること、および
(g)(f)のモニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、患者におけるジゴキシンの用量を維持するまたは設定すること、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、処理Aの患者血清ジゴキシン濃度対採取時点を示している。
図2図2は、処理Bの患者血清ジゴキシン濃度対採取時点を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示をより容易に理解することができるように、まず、特定の用語を定義する。本出願において使用される場合、本明細書に別段の明示の規定がある場合を除き、以下の用語の各々は、以下に記載される意味を有する。追加の定義は、出願全体を通じて記載されている。
【0027】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」および「前記(the)」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の参照を含む。用語「1つ(a)」(または「an」)、ならびに用語「1つ以上」、および「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用することができる。特定の態様において、用語「1つ(a)」または「1つ(an)」は、「単一」を意味する。他の態様において、用語「1つ(a)」または「1つ(an)」は、「2以上」または「複数」を含む。
【0028】
さらに、本明細書中で使用される場合、「および/または」は、他のものを伴うまたは伴わない、2つの特定の特徴または構成要素の各々の特定の開示とみなされる。従って、本明細書中の「Aおよび/またはB」のような語句において使用される用語「および/または」は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むことを意図される。同様に、「A、B、および/またはC」のような語句において使用される用語「および/または」は、以下の側面の各々を包含することを意図している:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)。
【0029】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が関連する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0030】
明細書およびクレーム全体にわたる数値に関連して使用される「約」という用語は、当業者にとって、精密であり、かつ、受容可能な精度の間隔を意味する。ある態様では、このような精度の間隔は±10%である。他の態様では、このような精度の間隔は±5%である。
【0031】
「過活動膀胱」という用語は、一般に、尿路感染症または他の明らかな病態がない場合に、切迫性尿失禁を伴うまたは伴わない、頻尿および夜間頻尿を伴う尿意切迫感を意味する。「過活動膀胱」という用語は、国際排尿制御学会(ICS)によって以下のように定義されている:過活動膀胱(OAB)は、過活動膀胱(OAB)は、局所的な病理学的またはホルモン的要因がない場合に、切迫性尿失禁の有無にかかわらず、通常は頻尿と夜間頻尿を伴う尿意切迫感からなる複合症状である。(Abrams P et al., Urology 2003, 61(1): 37-49; Abrams P et al., Urology 2003, 62(Supplement 5B): 28-37 and 40-42)。過活動膀胱(OAB)の同義語には「尿意切迫感症候群(urge syndrome)」と「尿意切迫感頻尿症候群(urge frequency syndrome)」がある。
【0032】
「切迫性尿失禁」とは、不随意性の尿喪失の訴えをいう。
【0033】
「切迫性尿失禁(urgency urinary incontinence)」(UUI)という用語は、尿意切迫に伴う不随意性の尿喪失の訴えを意味し、「尿意切迫性尿失禁(urge urinary incontinence)」または「切迫尿失禁(urge incontinence)」と置き換えて使用することができる。UUIは、労作または運動(スポーツ活動など)またはくしゃみもしくは咳による不随意の尿喪失である腹圧性尿失禁とは区別される。
【0034】
本明細書において使用される場合、用語「尿意切迫感」は、遅延することが困難である突然の強制的な尿意を意味する。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「頻尿」は、膀胱を頻繁に空にする必要性を意味する。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「遊離塩基」は、塩の形成ではなく、塩基性化合物自体を指す。例えば、ビベグロン遊離塩基は、(6S)-N-[4-[[(2S,5R)-5-[(R)-ヒドロキシ(フェニル)メチル]ピロリジン-2-イル]メチル]フェニル]-4-オキソ-7,8-ジヒドロ-6H-ピロロ[1,2-a]ピリミジン-6-カルボキサミドを意味する。
【0037】
用語「薬学的に許容可能な塩」とは、患者において使用するために安全かつ有効であり、かつ所望の生物学的活性を有する化合物の塩を意味する。
【0038】
薬学的に許容可能な塩は、有機または無機酸の塩であり得る。いくつかの態様において、有機酸および無機酸は、限定されるものではないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、クエン酸、マレイン酸、マンデル酸、コハク酸およびメタンスルホン酸を含む。一般的には、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Journal of Pharmaceutical Science, 66, 2 (1977)を参照されたい。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「Cmax」は、投与後の薬物の最高血漿中濃度(最大血漿中濃度)を意味する。
【0040】
本明細書において使用される場合、用語「Tmax」は、最高血漿中濃度に達したときの薬物投与後の時間を意味する。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「AUC」は、薬物投与後の血漿濃度対時間のプロットの曲線下面積を指す。
【0042】
「所望の臨床効果」という用語は、治療薬の投与後の反応を意味し、その結果は、臨床効果に有用または好ましいものである。特定の態様において、用語「所望の臨床効果」は、ジゴキシンの投与後の反応を指す。いくつかの態様において、ジゴキシンで治療された患者において得られる所望の臨床効果は、限定されるものではないが、不規則な心拍(心房細動を含む)を減少または除去すること、および/または心不全の症状を減少または改善することを含む。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「測定する」または「測定」は、治療薬剤の血清濃度(血清レベル)を決定するプロセスを指す。特定の態様において、用語は、血清ジゴキシン濃度を決定するプロセスを意味する。
【0044】
本明細書中で使用される場合、用語「モニタリングする」または「モニタリング」は、特定の時間間隔で治療薬剤の血清濃度(血清レベル)を測定するプロセスを指す。いくつかの態様では、プロセスは毎日行われる。いくつかの態様では、プロセスは毎週行われる。いくつかの態様では、プロセスは隔週で行われる。いくつかの態様では、プロセスは毎月行われる。特定の態様では、用語は、血清ジゴキシン濃度を決定するプロセスを意味する。
【0045】
本明細書中で使用される場合、用語「治療された」、「治療」、または「治療する」または「セラピー」は、部分的または完全に緩和する、寛解させる、改善する、やわらげる、発症を遅延させる、進行を抑制する、重症度を低下させる、疾患の1つ以上の症状または特徴の発生率を低下させる、またはそれらの任意の組合せを意味する。
【0046】
本明細書中で使用される場合、用語「患者(単数)」および「患者(複数)」は、「対象(単数)」および「対象(複数)」と同義であり、互換的に使用することができる。
【0047】
本明細書中で使用される場合、用語「併用(concomitantly)」は、「同時に」と同義であり、かつ、「同時(simultaneously)」と同じ意味で使用することができる。
【0048】
本明細書中で使用される場合、用語「血清ジゴキシン濃度」、「血清ジゴキシンレベル」、および「ジゴキシン血清濃度(レベル)」は同義語であり、互換的に使用することができる。
【0049】
一般に、「治療」という用語は、(i)疾患もしくは病理学的状態の進行を抑制すること、すなわち、疾患もしくは病理学的状態の発症もしくは進行を遅延または停止すること、または、そのような障害もしくは状態の1つ以上の症状を遅延もしくは停止すること、(ii)疾患もしくは病理学的状態を軽減すること、すなわち、そのような疾患もしくは病理学的状態またはその症状を消失させること、(iii)疾患もしくは病理学的状態またはそのような障害もしくは状態の1つ以上の症状を安定させること、(iv)疾患もしくは病理学的状態またはそのような障害もしくは状態の1つ以上の症状を正常な状態に戻すこと、(v)疾患もしくは病理学的状態またはそのような障害もしくは状態の1つ以上の症状を予防すること、および(vi)それらの組み合わせを含む、患者に関心のある疾患または病理学的条件の結果として引き起こされる効果に対抗することを意味する。
【0050】
治療方法
ある態様において、本開示は、過活動膀胱を治療する方法を提供し、この方法は、治療上有効な量のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することであって、患者はジゴキシンを同時に投与されている、投与することを含み、この方法は、患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングすることと、該モニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、患者におけるジゴキシンの用量を維持するまたは設定することと、をさらに含む。
【0051】
いくつかの態様において、本開示は、過活動膀胱を治療する方法を提供し、この方法は、治療上有効な量のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することを含み、ここで、患者はジゴキシンも投与されており、この方法はさらに、患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングすることと、所望の臨床効果を得るために患者のジゴキシン用量を設定することと、を含む。
【0052】
いくつかの態様において、本開示は、過活動膀胱を治療する方法を提供し、この方法は、治療上有効な量のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することを含み、ここで、患者は、ジゴキシンで同時に治療され、患者の血清ジゴキシン濃度は、所望のジゴキシン臨床効果をもたらすものである。
【0053】
いくつかの態様において、ジゴキシンは、ビベグロンの前に患者に投与される。いくつかの態様において、ジゴキシンはビベグロンの後に患者に投与される。いくつかの態様において、ジゴキシンはビベグロンと同時に患者に投与される。
【0054】
いくつかの態様において、ビベグロンがジゴキシンと同時投与される前に、患者の血清ジゴキシン濃度がモニタリングされる。いくつかの態様において、ビベグロンがジゴキシンと同時投与される期間中、患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングする。いくつかの態様において、患者がビベグロンの服用をやめた後に、患者の血清ジゴキシン濃度をモニタリングする。いくつかの態様において、患者の血清ジゴキシン濃度は、ビベグロンがジゴキシンと同時投与される前、間、および/または後にモニタリングされる。
【0055】
いくつかの態様において、患者の血清ジゴキシン濃度は、ビベグロンのジゴキシンとの同時投与を開始する前に測定され、ビベグロンがジゴキシンと同時投与されてジゴキシン用量を所望の臨床効果まで設定する期間中にモニタリングされる。
【0056】
いくつかの態様において、患者の血清ジゴキシン濃度は、ビベグロンによる治療開始前および治療中にモニタリングされ、望ましい臨床効果を得るためにジゴキシン用量の漸増に使用される。いくつかの態様において、ジゴキシン濃度モニタリングは、ビベグロンの投与中断後も継続し、必要に応じてジゴキシン用量を調節する。
【0057】
いくつかの態様において、1日当たり投与されるビベグロンの量は、約50mg~約150mgである。いくつかの態様において、1日当たり投与されるビベグロンの量は、約70mg~約80mgである。いくつかの態様において、1日当たり投与されるビベグロンの量は、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、または約150mg、またはいずれかの前述の2つの値の間の範囲である。いくつかの態様において、1日当たり投与されるビベグロンの量は、約70mg~約80mgである。いくつかの態様において、1日当たり投与されるビベグロンの量は、約70mg、約71mg、約72mg、約73mg、約74mg、約75mg、約76mg、約77mg、約78mg、約79mg、または約80mg、またはいずれかの前述の2つの値の間の範囲である。
【0058】
いくつかの態様において、ビベグロンを1日1回、1日2回、または1日3回投与する。いくつかの態様において、ビベグロンは1日1回投与される。
【0059】
本開示は、過活動膀胱を治療する方法を提供し、この方法は、治療上有効な量のビベグロンをそれを必要とする患者に経口投与することを含み、ここで、患者はジギタリスグリコシド(ジギタリス配糖体)を受けており、この方法はさらに、患者中の血清ジギタリスグリコシド濃度をモニタリングすることと、所望の臨床効果を得るために患者中のジギタリスグリコシド用量を用量設定する(漸増させる)こととを含む。いくつかの態様において、患者はビベグロンを投与され、同時にジギタリスグリコシドを投与され、服用し、または他の方法で曝露されている。いくつかの態様において、ジギタリスグリコシドはジゴキシンである。
【0060】
いくつかの態様において、患者は、1日当たり約75mgのビベグロンを投与され、同時にジギタリスグリコシドを投与、服用または他の方法で曝露されている。いくつかの態様において、ジギタリスグリコシドはジゴキシンである。特定の態様において、患者はジゴキシンのCmaxの増大を経験する。特定の態様において、患者はジゴキシンのAUCの増加を経験する。いくつかの態様において、患者はジゴキシンのCmaxおよびAUCの両方の上昇を経験する。
【0061】
ジゴキシンは、治療濃度と毒性濃度との間に非常に狭いウインドウ(範囲)があり、複雑な薬物動態プロファイルを有することがあるため、使用が困難な場合がある。特定の患者では、ジゴキシンは容易に吸収されるが、血中から組織への分布に時間がかかるため、投与後最初の数時間は血中濃度(レベル)が高くなる。いくつかの態様において、ジゴキシンは就寝時に投与される。特定の態様では、ジゴキシンは就寝時に投与され、血中濃度は朝に測定される。いくつかの態様において、血中濃度は午前中に測定し、血清中およびジゴキシン組織中濃度と関連づける。いくつかの態様において、ジゴキシンの投与開始または用量変更の少なくとも5日後の朝に血清ジゴキシン濃度を測定する。いくつかの態様において、ジゴキシンの投与開始または用量変更の少なくとも6日後の朝に血清ジゴキシン濃度を測定する。いくつかの態様において、ジゴキシンの投与開始または用量変更の少なくとも1週間後の朝に血清ジゴキシン濃度を測定する。いくつかの態様において、患者がジゴキシンの用量を定常的に服用してから約2週間後に血清ジゴキシン濃度を測定する。いくつかの態様において、患者がジゴキシンの用量を定常的に服用してから約3週間後に血清ジゴキシン濃度を測定する。いくつかの態様において、患者がジゴキシンの用量を定常的に服用してから約4週間後に血清ジゴキシン濃度を測定する。
【0062】
いくつかの態様において、血清ジゴキシン濃度(ジゴキシン血清レベル)は1.2ng/mL未満である。いくつかの態様において、血清ジゴキシン濃度は約0.3ng/mLから約1.2ng/mLである。いくつかの態様において、血清ジゴキシン濃度は約0.4ng/mLから約1.1ng/mLである。いくつかの態様において、血清ジゴキシン濃度は約0.5ng/mLから約1.0ng/mLである。いくつかの態様において、血清ジゴキシン濃度は約0.5ng/mLから約0.9ng/mLである。
【0063】
特定の態様において、ジゴキシンの投与量(用量)を血清ジゴキシン濃度(ジゴキシン血清レベル)に基づいて設定する。いくつかの態様において、ジゴキシンの投与量は、血清ジゴキシン濃度に基づいて減少される。いくつかの態様において、ジゴキシンの投与量は、血清ジゴキシン濃度に基づいて増加される。いくつかの態様において、ジゴキシンの投与量は、血清ジゴキシン濃度に基づいて維持される。
【0064】
いくつかの態様において、ビベグロンを中断し、血清ジゴキシン濃度を中断後さらに期間モニタリングする。いくつかの態様において、血清ジゴキシン濃度を中断からさらに1週間モニタリングする。いくつかの態様において、血清ジゴキシン濃度を中断からさらに2週間モニタリングする。いくつかの態様において、血清ジゴキシン濃度を中断からさらに3週間モニタリングする。
【0065】
いくつかの態様において、患者は切迫性尿失禁、尿意切迫感、および頻尿の症状を有する。
【0066】
いくつかの態様において、患者は、切迫性尿失禁(または切迫尿失禁)、尿意切迫感、頻尿および夜間頻尿の1つ以上の症状を有する。
【0067】
いくつかの態様において、患者は哺乳動物である。いくつかの態様において、患者はヒトまたは動物である。いくつかの態様において、患者はヒトである。
【0068】
いくつかの態様において、本方法は、患者に投与する前に、ビベグロンを含む医薬単位投与組成物を粉砕することを含む。いくつかの態様において、患者は、ビベグロンを含む粉砕された医薬の単位投与量を経口投与される。
【0069】
いくつかの態様において、患者は以前にOAB治療を受けている。いくつかの態様において、患者は過去にOAB治療を受けていない。
【0070】
また、本開示は、以下を提供する:
(1)過活動膀胱の治療に使用されるビベグロンであって、
治療上有効量のビベグロンが、それを必要とする対象に経口投与され、対象はジゴキシンを同時に投与され、さらに、
(a)対象の血清ジゴキシン濃度をモニタリングし、
(b)前記モニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、対象におけるジゴキシンの用量を維持するまたは設定する、ビベグロン。
(2)過活動膀胱の治療に使用されるビベグロンであって、
治療上有効量のビベグロンが、それを必要とする対象に経口投与され、対象はジゴキシンを同時に投与され、さらに、
(a)対象の血清ジゴキシン濃度をモニタリングし、
(b)前記モニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、対象におけるジゴキシンの用量を維持するまたは設定し、
(c)ビベグロンの投与を中断し、
(d)中断後の対象の血清ジゴキシン濃度をモニタリングし、
(e)前記モニタリングに応じて、所望の臨床効果を得るために、対象におけるジゴキシンの用量を維持するまたは設定する、ビベグロン。
(3)過活動膀胱の治療に使用するビベグロンであって、
治療上有効な量のビベグロンが、それを必要とする対象に経口投与され、対象はジゴキシンを同時に投与され、対象のジゴキシン用量を、対象の血清ジゴキシン濃度に基づいて設定する、ビベグロン。
(4)過活動膀胱の治療に使用するためのビベグロンであって、
治療上有効な量のビベグロンが、それを必要とする対象に経口投与され、対象はジゴキシンを同時に投与され、対象の血清ジゴキシン濃度が、所望のジゴキシン臨床効果をもたらすものである、ビベグロン。
(5)ビベグロンの治療上有効な量が約50mg/日~約150mg/日である、(1)~(4)のいずれかに記載の使用のためのビベグロン。
(6)ビベグロンの治療上有効な量が約50mg/日、約75mg/日、約100mg/日、または約150mg/日である、(1)~(5)のいずれかに記載の使用のためのビベグロン。
(7)ビベグロンの治療上有効な量が75mg/日である、(1)~(6)のいずれかに記載の使用のためのビベグロン。
(8)前記対象は、切迫性尿失禁、尿意切迫感、頻尿およびそれらの組み合わせの群から選択される症状を有する、(1)~(7)のいずれかに記載の使用のためのビベグロン。
(9)対象が切迫性尿失禁、尿意切迫感、頻尿の症状を有する(8)に記載の使用のためのビベグロン。
(10)対象がヒトである、(1)~(9)のいずれかに記載の使用のためのビベグロン。
(11)前記ヒトが女性である、(10)に記載の使用のためのビベグロン。
(12)前記ヒトが男性である、(10)に記載の使用のためのビベグロン。
(13)前記ヒトが65歳以上である(10)~(12)のいずれかに記載の使用のためのビベグロン。
(14)ビベグロンが1日1回投与される、(1)~(13)のいずれかに記載の使用のためのビベグロン。
(15)ビベグロンを食事とともに投与する、(14)に記載の使用のためのビベグロン。
(16)ビベグロンを食事なしで投与する、(14)に記載の使用のためのビベグロン。
(17)ビベグロンが遊離塩基として投与される、(1)~(16)のいずれかに記載の使用のためのビベグロン。
(18)ビベグロンがその薬学的に許容される塩として投与される、(1)~(16)のいずれかに記載の使用のためのビベグロン。
(19)ビベグロンが約4週間、約3週間、または約2週間の作用発現を有する、(1)~(18)のいずれかに記載の使用のためのビベグロン。
(20)過活動膀胱の治療に使用されるビベグロンであって、
75mg/日のビベグロンが、それを必要とする対象に経口投与され、対象はジゴキシンを同時に投与され、さらに、
(a)対象の血清ジゴキシン濃度をモニタリングし、
(b)前記モニタリングに応じて、対象のジゴキシン用量を、所望の臨床効果を得るために維持するまたは設定する、ビベグロン。
(21)過活動膀胱の治療に使用されるビベグロンであって、
75mg/日のビベグロンが、それを必要とする対象に経口投与され、ここで、対象はジゴキシンを同時に投与され、さらに、
(a)対象の血清ジゴキシン濃度をモニタリングし、
(b)前記モニタリングに応じて、対象におけるジゴキシンの用量を、所望の臨床効果を得るために維持するまたは設定し、
(c)ビベグロンの投与を中断し、
(d)対象の血清ジゴキシン濃度をモニタリングし、
(e)前記モニタリングに応じて、対象のジゴキシン用量を、所望の臨床効果を得るために維持するまたは設定する、ビベグロン。
(22)過活動膀胱の治療に使用されるビベグロンであって、
75mg/日のビベグロンが、それを必要とする対象に経口投与され、対象はジゴキシンを同時に投与され、対象のジゴキシン用量を、対象の血清ジゴキシン濃度に基づいて設定する、ビベグロン。
(23)過活動膀胱の治療に使用されるビベグロンであって、
75mg/日のビベグロンが、それを必要とする対象に経口投与され、対象はジゴキシンを同時に投与され、対象の血清ジゴキシン濃度が、所望のジゴキシン臨床効果をもたらすものである、ビベグロン。
(24)過活動膀胱の治療に使用されるビベグロンであって、
75mg/日のビベグロンが、それを必要とする対象に経口投与され、対象はジゴキシンを同時に投与され、さらに、
(a)ビベグロン投与前に、対象の血清ジゴキシン濃度をモニタリングし、
(b)ビベグロンの併用投与中に、対象の血清ジゴキシン濃度をモニタリングし、
(c)前記モニタリングに応じて、対象のジゴキシン用量を、所望の臨床効果を得るために維持するまたは設定する、ビベグロン。
(25)過活動膀胱の治療に使用されるビベグロンであって、
75mg/日のビベグロンが、それを必要とする対象に経口投与され、対象はジゴキシンを同時に投与され、さらに、
(a)ビベグロン投与前に、対象の血清ジゴキシン濃度をモニタリングし、
(b)ビベグロンの併用投与中に、対象の血清ジゴキシン濃度をモニタリングし、
(c)前記モニタリングに応じて、対象におけるジゴキシンの用量を、所望の臨床効果を得るために維持するまたは設定し、
(d)ビベグロンの投与を中断し、
(e)対象の血清ジゴキシン濃度をモニタリングし、
(f)前記モニタリングに応じて、対象中のジゴキシン用量を、所望の臨床効果を得るために維持するまたは設定する、ビベグロン。
【0071】
実施例
実施例1:健康対象におけるジゴキシンの単回投与時の薬物動態に及ぼすビベグロンの影響を検討する試験
非盲検、単回投与および反復投与、2期、2治療単回投与、連続投与、薬物相互作用試験が実施された。全対象に第1期にはトリートメントAを、第2期にはトリートメントBを投与した。
【0072】
トリートメントA(第1期):
1日目:8時間以上の一晩絶食後に、経口、0.25mgのトロキシン(登録商標)(ジゴキシン)を単回投与。
【0073】
トリートメントB(第2期):
1日目:8時間以上の一晩絶食後に、経口、150mgのビベグロンを単回投与。
2日目:8時間以上の一晩絶食後に、経口、0.25mgのトロキシン(登録商標)(ジゴキシン)と100mgのビベグロンとを単回投与。
3~6日目:8時間以上の一晩絶食後に、経口、100mgのビベグロンを1日1回、単回投与。
【0074】
実施例2:LC‐MS/MS法による薬物間相互作用試験で評価したジゴキシンレベルの分析
この方法は、ジゴキシンの公称範囲0.0100~10.0ng/mLの定量に適用でき、EDTA二カリウム(dipotassium EDTA)を含有する150μLのヒト血漿アリコートを必要とする。
【0075】
試料はポリプロピレンチューブに保存し、解析前に約‐20oCで凍結保存した。150μLのマトリックスアリコートを、40.0ng/mLの内部標準ワーキングソリューション20μLを加えて強化した。分析物を、Isolute SLE+(200mg)担持液体抽出96ウェルプレートを用いて単離し、塩化メチレン800μLで溶離した。溶出液を約45℃の窒素流下で蒸発させ、残留物を250μLの90:10:40:0.7水/メタノール/アセトニトリル/1.0M酢酸アンモニウム、v/v/v/vで再構成した。最終抽出物は、カラムスイッチングを用いたHPLCおよび陽イオンエレクトロスプレーを用いたMS/MS検出により分析した。陽イオンエレクトロスプレーを用いたHPLC MS/MSにより抽出物を分析した。追加パラメータ表1および表2に示す。
【0076】
PPDのAssist LIMSデータベースを用いて、各治療の対象血清ジゴキシン濃度対採取時点の結果を作成した。血清ジゴキシン濃度データを図1および図2に示す。
【0077】
【表1-1】
【表1-2】
【0078】
aジゴキシン:ジゴキシンの1回の実行(run)の確度および精度は、許容できない品質管理のため、分析間の確度および精度の評価から除外されたことに留意する。当該実行が許容できないのは、実行のための検量線の作成に関する未確認の問題が原因であると考えられた。
bジゴキシン:アッセイバリデーション用の事前に定められた仕様に従い、反復(replicate)LLQ QC測定のアッセイ内%CVは20%を超えてはならず、平均精度(accuracy)は理論濃度の20%以内である必要がある。ジゴキシンのアッセイ内確度および精度の評価のために実施された9回の実行(測定、走行、run)のうち、1回の実行のLLQ QC試料では理論値との差が>20%であり、別の実行のLLQ QC試料では%CVの割合が>20%であった。LLQ QC実行の%CVおよび%バイアスは9回のうち7回の実行で許容され、低濃度QC試料の値も許容されたので、実行のデータを受け入れた。
【0079】
【表2】
【0080】
実施例3:健常人を対象としたジゴキシンの単回投与時の薬物動態に及ぼすビベグロンの影響を検討した臨床結果
試験の薬物動態の結果を表3および表4に示した。各表に示されるように、ビベグロンとの併用時のジゴキシンのAUC0-infおよびCmax幾何平均比および算術平均比は、それぞれ111%および121%であった。これらの数値は80~125%の生物学的同等性(bioequivalence)の範囲内に含まれているため、ビベグロンはジゴキシンの薬物動態に臨床的に有意な程度に影響しないことを示唆している。しかしながら、ジゴキシンの治療域(therapeutic window)が狭く、ジゴキシン+ビベグロン投与群では、ジゴキシン単独投与群(表4参照)と比較してジゴキシンの半減期(T1/2)が延長されていることから、ジゴキシンの血清濃度をモニタリングし、望ましい臨床効果を得るために、必要に応じて、ジゴキシンの用量を設定(調節)する必要がある。
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
本発明を十分に説明したが、当業者には、本発明の範囲またはそのいかなる態様にも影響を与えることなく、広範で同等の範囲の条件、配合、および他のパラメータの中で同じことを行うことができることが理解されるであろう。
【0084】
本発明の他の態様は、本明細書に開示された本発明の明細書および実施の検討から当業者には明らかであろう。明細書および実例例は、単に例示的なものとして考えられ、発明の真の範囲および精神は以下の請求の範囲によって示されることが意図される。
【0085】
本明細書に引用されるすべての特許、特許出願、およびその他の刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
【国際調査報告】