(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(54)【発明の名称】修飾核酸コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
C12N 15/87 20060101AFI20240105BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240105BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240105BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20240105BHJP
A61K 31/7115 20060101ALI20240105BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240105BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240105BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240105BHJP
【FI】
C12N15/87 Z
A61P35/00
A61K31/713
A61K31/712
A61K31/7115
A61K47/26
A61K47/54
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538868
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2021087859
(87)【国際公開番号】W WO2022144422
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523232665
【氏名又は名称】プラモモレキュラー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】フックス メルレ
(72)【発明者】
【氏名】シャエフ イーダ
(72)【発明者】
【氏名】ヒラー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】クレック イエンス
(72)【発明者】
【氏名】フェチェラー ビッテティ モナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB21
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD34
4C076EE59
4C076FF31
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA10
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1の2′,3′-Oケタール部分を含む、核酸コンジュゲートに関連する。このコンジュゲートは、ヒト細胞を含む哺乳類細胞などの細胞内へ、核酸分子を標的特異的にまたは標的選択的に送達するために、高い有効性で適している。従って、アンチセンス分子、siRNA分子、miRNA分子、アンタゴミル(antagomir)、またはそのような分子の前駆物質を含む、治療用核酸分子のための新たな送達媒体(vehicle)が、提供される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1の2′,3′-O-ケタール部分を含む、式(I)の核酸コンジュゲートであって:
ここで
Xは核酸分子であり、
Bは核酸塩基であり、
および
R1およびR2は、互いに独立して、C
5-21炭化水素基、具体的にはC
5-11炭化水素基、より具体的にはC
9炭化水素基であり;
前記炭化水素基は、N、O、P、S、またはハロなどの1または複数のヘテロ原子を含んでもよい;
核酸コンジュゲート。
【請求項2】
請求項1に記載されたコンジュゲートであって、
R1およびR2は、直鎖または分岐C
9アルキル基である
コンジュゲート。
【請求項3】
請求項1~2のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
前記核酸塩基Bは、複素環塩基、例えば、プリンまたはピリミジン塩基であって、具体的にはウラシル、チミン、またはそれらのアナログから選択され、
および/または
前記核酸塩基Bは、修飾塩基、例えば、疎水性部分で置換された塩基、炭水化物部分で置換された塩基、または官能基部分で置換された塩基であり;
前記疎水性部分は、具体的にはテルペン部分、具体的にはC
5-C
30テルペン部分、より具体的にはC
5-C
20テルペン部分、さらに具体的にはC
15テルペン部分である、またはステロール部分、例えば、コレステロール部分である;
コンジュゲート。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
Bは、式(IIa)の核酸塩基であり:
ここでZはCHまたはNであり、R3はHであり;
または
Bは、式(IIb)の核酸塩基であり:
ここでZはCHまたはNであり、R3はテルペン部分、具体的にはC
5-C
30テルペン部分、より具体的にはC
5-C
20テルペン部分、さらに具体的にはC
15テルペン部分、例えば、式(III)のテルペン部分である:
コンジュゲート。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
前記核酸分子Xは、少なくとも約5のヌクレオチドブロックから1000以上までのヌクレオチド構成ブロック、5~100の間のヌクレオチド構成ブロック、10~50の間のヌクレオチド構成ブロック、12~40の間のヌクレオチド構成ブロック、具体的には15~30の間のヌクレオチド構成ブロックの鎖長を有する
コンジュゲート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
前記核酸分子Xは、少なくとも1の修飾ヌクレオチド構成ブロックを含み、前記修飾ヌクレオチド構成ブロックは、具体的には以下から選択される:
(a)核酸塩基修飾ヌクレオチド構成ブロック;
(b)糖修飾ヌクレオチド構成ブロック;
(c)骨格修飾ヌクレオチド構成ブロック
および
(d)それらの任意の組み合わせ;
コンジュゲート。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
前記核酸分子Xは、
(i)少なくとも1のデオキシリボヌクレオチド構成ブロックおよび/または少なくとも1の修飾ヌクレオチド構成ブロックを含んでもよい、RNA分子、
または
(ii)少なくとも1のリボヌクレオチド構成ブロックおよび/または少なくとも1の修飾ヌクレオチド構成ブロックを含んでもよい、DNA分子、
または
(iii)核酸アナログ分子である
コンジュゲート。
【請求項8】
請求項7に記載されたコンジュゲートであって、
前記核酸分子Xは、(i)少なくとも1のデオキシリボヌクレオチド構成ブロックおよび/または少なくとも1の修飾構成ブロックを含んでもよく、および少なくとも1の3′-オーバーハング、具体的にはsiRNA分子を有してもよい、二本鎖RNA分子である、
または
前記核酸分子Xは、(ii)少なくとも1のリボヌクレオチド構成ブロックおよび/または少なくとも1の修飾構成ブロック、具体的にはアンチセンス分子を含んでもよい、一本鎖DNA分子である、
コンジュゲート。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
2′,3′-O-ケタール構成ブロックは、前記核酸分子Xの鎖の5′末端に、および/または3′末端に結合され、
および/または
前記2′,3′-O-ケタール構成ブロックは、前記核酸分子Xの鎖内の塩基に結合され、
および
前記2′,3′-O-ケタール構成ブロックは、具体的には二本鎖siRNA分子のセンス鎖の5′末端に、またはアンチセンス分子の5′末端に結合される
コンジュゲート。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
医薬における使用のための、例えばヒト医薬または獣医薬における使用のための、具体的にはヒト医薬における使用のための
コンジュゲート。
【請求項11】
請求項10に記載の使用のための請求項1~9のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
前記コンジュゲートは、それを必要とする対象に、具体的にはヒトの対象に投与され、
または
前記コンジュゲートは、エクスビボで標的細胞または標的器官に投与され、および前記標的細胞または標的器官は、その後それを必要とする対象内に、具体的にはヒトの対象内に導入され、
または
前記コンジュゲートは、卵母細胞または胚に投与され;
ここで産業商業目的でのヒト幹細胞またはヒト胚の使用は、除外される;
コンジュゲート。
【請求項12】
請求項10~11のいずれか一項に記載の使用のための請求項1~9のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
前記投与は、標的細胞および/または標的器官特異的な送達を含み;
前記標的細胞は、具体的には肺細胞、心臓細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、膵臓細胞、結腸細胞、筋肉細胞、神経細胞、胃細胞、小腸細胞、大腸細胞、直腸細胞、膀胱細胞、骨細胞、副腎細胞、眼の細胞、皮膚細胞、または脳細胞である;
コンジュゲート。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載されたコンジュゲートの、核酸分子を標的細胞内へ送達するための、インビトロでの使用。
【請求項14】
請求項13に記載された使用であって、
前記使用は、標的細胞特異的な送達を含み;
前記標的細胞は、具体的には肺細胞、心臓細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、膵臓細胞、結腸細胞、筋肉細胞、神経細胞、胃細胞、小腸細胞、大腸細胞、直腸細胞、膀胱細胞、骨細胞、副腎細胞、眼の細胞、皮膚細胞、または脳細胞である;
使用。
【請求項15】
2′,3′-O-ケタール部分(IV)の使用であって:
ここで
Yは反応性官能基部分、例えばホスホロアミダート基であり、
Bは核酸塩基であり、
および
R1およびR2は、互いに独立して、炭化水素基であり;
前記炭化水素基は、N、O、P、S、またはハロなどの1または複数のヘテロ原子を含んでもよく;
核酸分子に結合させるための
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1の2′,3′-Oケタール部分を含む、核酸コンジュゲートに関連する。このコンジュゲートは、ヒト細胞を含む哺乳類細胞などの細胞内へ、核酸分子を標的特異的にまたは標的選択的に送達するために、高い有効性で適している。従って、アンチセンス分子、およびsiRNA分子、またはそのような分子の前駆物質または修飾を含む、治療用核酸分子のための新たな送達媒体(vehicle)が、提供される。
【背景技術】
【0002】
WO 2014/048969は、核脂質および核脂質の調製のための工程を記載する。特に、脂質2′,3′-Oケタール部分を含むヌクレオチドが、記載される。これらのヌクレオチドは、ある癌細胞において医薬活性を有することが見出された。しかしながら、2′,3′-O-ケタール部分を含む核酸分子の標的細胞内への送達は、開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、標的細胞内へ高い有効性で送達されうる核酸分子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、2′,3′-Oケタール部分を核酸分子に、具体的には核酸鎖の3′末端におよび/または5′末端に結合させることにより、標的細胞内への送達、具体的には標的細胞または標的生物体(organism)内へのインビボ送達を増加させうることを見出した。従って、改善された特性を有する治療用または診断用の核酸コンジュゲートが、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】A.ホスホロアミダイトとしての2′,3′-O-ケタール部分PRAMO01およびPRAMO02の、構造およびモル質量。B.裸のRNA分子としての、またはPRAMO01またはPRAMO02とのコンジュゲートとしての、オリゴヌクレオチドGAPDHアンチセンスおよびGAPDHセンス(合わせて標的二本鎖siRNA分子、siGAPDHを形成する)、および、ScrアンチセンスおよびScrセンス(合わせて非標的二本鎖siRNA分子、スクランブルsiRNAを形成する)の、配列および分子量。*は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を意味する。dTは、2′-デオキシリボヌクレオチドT構成ブロックを意味する。
【
図2】裸のsiRNA(siGAPDH)、PRAMO01コンジュゲートsiRNA、PRAMO02コンジュゲートsiRNAまたはPBS/グルコースを、3.75、10、または25mg/Kg静脈内注射したBalb/cマウス(6~8週)の、肺(A)、肝臓(B)、心臓(C)、膵臓(D)および腎臓(E)におけるGAPDH mRNAレベルの測定(各群n=3)。注射後72時間後に、組織が採取された。GAPDH mRNAレベルは、ハウスキーピング遺伝子(アクチンB)で正規化されたΔΔC
Tを使用して測定され、リン酸緩衝液(PBS)/グルコースに対するパーセントで示された(平均±標準偏差)。
【
図3】裸のsiRNA(siGAPDH)、PRAMO01コンジュゲートsiRNA、PRAMO02コンジュゲートsiRNA、非標的対照siRNA(スクランブルsiRNA)を、3.75、10、または25mg/Kg静脈内注射したBalb/cマウス(6~8週)の、肺(A)、肝臓(B)、心臓(C)、膵臓(D)および腎臓(E)におけるGAPDH mRNAレベルの測定(各群n=3)。注射後72時間後に、組織が採取された。GAPDH mRNAレベルは、ハウスキーピング遺伝子(アクチンB)で正規化されたΔΔC
Tを使用して測定され、非標的siRNAに対するパーセントで示された(平均±標準偏差)。
【
図4】PBSで48時間処理し、KRAS G12Cに対してPRAMO01コンジュゲートsiRNAでトランスフェクトされ、トランスフェクション試薬RNAiMAX(10μM siRNA)を使用した後の、KRAS G12C肺がん細胞を有する肺3D臓器モデルにおける、KRAS mRNAレベルの測定。KRAS mRNAレベルは、ハウスキーピング遺伝子(アクチンB)で正規化されたΔΔC
Tを使用して測定され、陰性対照PBSに対するパーセントで示された(n=2)、(平均±標準偏差)。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の第1の態様は、少なくとも1の2′,3′-O-ケタール部分を含む、式(I)の核酸コンジュゲートであって:
ここで
Xは核酸分子であり、
Bは核酸塩基であり、および
R1およびR2は、互いに独立して、炭化水素基であり、前記炭化水素基は、N、O、P、S、またはハロなどの1または複数のヘテロ原子を含んでもよい。
【0007】
本発明はまた、式(I)および本明細書の任意の他の式で描かれる化合物の、任意の立体異性体、塩および溶媒和物をも含むことが理解される。
【0008】
式(I)の核酸コンジュゲートは、少なくとも1の2′,3′-O-ケタール部分が結合された核酸分子Xを含む。
【0009】
「核酸分子(nucleic acid molecule)」という用語は、少なくとも2つのヌクレオチド構成ブロックを含む、任意のタイプのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドに関連する。核酸分子は、リボヌクレオチド構成ブロック、2′-デオキシリボヌクレオチド構成ブロック、修飾ヌクレオチド構成ブロックまたはそれらの任意の組み合わせを含みうる。ある実施形態において、核酸分子は、少なくとも1の修飾ヌクレオチド構成ブロックおよび/または少なくとも1の2′-デオキシリボヌクレオチド構成ブロックを含んでもよいRNA分子、少なくとも1の修飾ヌクレオチド構成ブロックおよび/または少なくとも1のリボヌクレオチド構成ブロックを含んでもよいDNA分子、または修飾ヌクレオチド構成ブロックからなる核酸アナログ分子である。
【0010】
本明細書で使用される「核酸アナログ分子(nucleic acid analogue molecule)」という用語、具体的にはDNAまたはRNA分子アナログは、天然起源のRNAまたはDNA分子に類似する、すなわち構造的に同様である分子を指す。一般に、天然起源の核酸は、ヌクレオチドの鎖であり、それらは3つの要素:骨格部分(具体的にはリン酸骨格)、五炭糖(リボースまたはデオキシリボースのいずれか)、および4つの核酸塩基のうちの1つ、からなる。アナログは、修飾核酸塩基またはロック核酸(LNA)のように、これらの要素のいずれかが変更されていてもよい。対応するアナログは、当業者に知られている。アナログはとりわけ、異なる塩基対形成特性および塩基スタッキング特性を与えうる。
【0011】
2′,3′-Oケタール部分は、核酸塩基Bを含む。「核酸塩基(nucleobase)」という用語は、少なくとも1のN原子を含む、例えば単環または二環の環状、飽和、不飽和、芳香族または複素芳香族塩基に典型的には関連し、ここで核酸塩基は、相補核酸塩基と、具体的には天然起源の核酸塩基と、水素結合を介して塩基対を形成可能である。核酸塩基は、任意の天然起源または非天然起源の核酸塩基であってもよく、例えば任意の天然起源または非天然起源のプリンまたはピリミジン塩基、例えばアデニン、シトシン、グアニン、チミン、またはウラシルなど、または修飾核酸塩基、例えば修飾アデニン、シトシン、グアニン、チミン、またはウラシル塩基であってもよい。
【0012】
2′,3′-Oケタール部分の核酸塩基は、「修飾核酸塩基(modified nucleobase)」でありうる。この用語は、任意のタイプの修飾核酸塩基、例えば疎水性部分で置換された核酸塩基、炭水化物部分で置換された核酸塩基、および/または官能基部分で置換された核酸塩基を含む。
【0013】
疎水性部分は、少なくとも5個のC原子、具体的には少なくとも10個のC原子を有する部分から選択されうる。
【0014】
ある実施形態において、疎水性部分は、置換または非置換の非環状または環状テルペン部分から選択される。例えば、疎水性部分は、C5-C30テルペン部分、具体的にはC5-C20テルペン部分、さらに具体的にはC15テルペン部分であってもよく、それらは環状または非環状であってもよく、飽和または不飽和であってもよく、および/またはヘテロ原子(複数可)または官能基(複数可)で置換または中断されてもよく、またはステロール部分、例えばコレステロール部分であってもよい。
【0015】
さらに疎水性部分は、置換または非置換、環状または非環状、飽和、不飽和、または多価不飽和カルボン酸部分から選択されてもよく、エステルまたはアミドなどそれらの塩または誘導体を含む。例えば疎水性部分は、C5-C30カルボン酸部分であってもよく、例えばドコサヘキサエン酸部分、エイコサペンタエン酸部分、ドコサン酸部分、リトコール酸部分、またはレチノイン酸またはレチノイン酸エステル部分であってもよい。
【0016】
さらに疎水性部分は、置換または非置換、環状または非環状、飽和、不飽和、または多価不飽和アルコール、ケトン、アルデヒド、またはアミンから選択されてもよい。例えば疎水性部分は、C5-C30アルコール、ケトン、またはアミド部分であってもよく、例えばトコフェロール部分、コハク酸トコフェロール部分、レチノール部分、レチナール部分、スペルミン部分、またはスペルミジン部分であってもよい。
【0017】
ある実施形態において、疎水性部分は、以下から選択され、
および/または
ここで
RおよびR′は、独立して、C
1-C
30アルキル、好ましくはC
5-C
25アルキルから選択され、nは1~6の範囲の整数、好ましくはnは1または2であり、およびaは1~20、好ましくは2~18、より好ましくは6~16の範囲の整数である。
【0018】
炭水化物部分は、単糖、オリゴ糖または多糖部分であってもよく、修飾炭水化物、例えばアセチル化炭水化物部分を含む。例えば炭水化物部分は、GalNAc部分であってもよい。
【0019】
官能基部分は、アルキン基またはアジド基などのクリック官能基部分であってもよく、またはエーテル基、エステル基、アミド基、カルボン酸基、チオエステル基、チオアミド基、またはチオエーテル基であってもよい。
【0020】
式(I)のコンジュゲートは、2′,3′-O-ケタール部分を含み、リボース部分の2′-OH基および3′-OH基が、置換基R1およびR2を含むケタール基に変換されている。
【0021】
R1およびR2は、互いに独立して、炭化水素基であり、前記炭化水素基は、N、O、P、S、またはハロなどの1または複数のヘテロ原子を含んでもよい。
【0022】
R1およびR2は、飽和、一価または多価不飽和の非環式直鎖または分岐炭化水素基、または飽和、一価または多価不飽和、芳香族または複素芳香族環式炭化水素基であってもよく、それらは1または複数のヘテロ原子によって中断または置換されてもよい。
【0023】
ある実施形態において、R1および/またはR2は、互いに独立して、C5-21炭化水素基、具体的にはC5-11炭化水素基、より具体的にはC9炭化水素基であり、前記炭化水素基は、N、O、P、S、またはハロ(例えばF、Cl、Br、またはI)などの1または複数のヘテロ原子を含んでもよい。
【0024】
さらなる実施形態において、R1および/またはR2は、互いに独立して、直鎖または分岐アルキル基、直鎖または分岐アルケニル基、および直鎖または分岐アルキニル基であり、前記アルキル、アルケニルまたはアルキニル基は、N、O、P、Sまたはハロなどの1または複数のヘテロ原子を含んでもよい。
【0025】
なおさらなる実施形態において、R1および/またはR2は、互いに独立して、環状部分、すなわち、少なくとも1の環状構造、例えば単環、二環または三環構造を含む部分である。環状部分は、炭素環式または複素環式部分、例えば5~18の環原子であってもよく、少なくとも1のC原子が、N、OおよびSから選択される少なくとも1のヘテロ原子によって置換されてもよい。
【0026】
なおさらなる実施形態において、R1および/またはR2は、互いに独立して、官能基、例えばエーテル基、エステル基、アミド基、カルボン酸基、チオエステル基、チオアミド基、またはチオエーテル基から選択される官能基を含む。
【0027】
なおさらなる実施形態において、R1および/またはR2は、互いに独立して、マーカー基、例えば蛍光、ルミネセンス、または放射性マーカー基を含む。
【0028】
なおさらなる実施形態において、R1および/またはR2は、互いに独立して、本明細書で定義される核酸分子、例えば50までの、具体的には5~25のヌクレオチド構成ブロックを有する核酸分子を含む。
【0029】
具体的な実施形態において、R1およびR2は、直鎖または分岐C9アルキル基であり、より具体的には直鎖C9アルキル基である。
【0030】
具体的な実施形態において、コンジュゲートは、式(IIa)のウラシル塩基である核酸塩基Bを含み:
ここでZはCHまたはNであり、R3はHである。
【0031】
この実施形態において、R1およびR2は、好ましくは直鎖C9アルキル基である。
【0032】
さらなる具体的な実施形態において、コンジュゲートは、式(IIb)のウラシル塩基である核酸塩基Bを含み:
ここでZはCHまたはNであり、R3は疎水性部分、例えばテルペン部分、具体的にはC
5-C
30テルペン部分、より具体的にはC
5-C
20テルペン部分、さらに具体的にはC
15テルペン部分、例えば式(III)のテルペン部分である:
【0033】
この実施形態において、R1およびR2は、好ましくは直鎖C9アルキル基である。
【0034】
ある実施形態において、核酸分子Xは、少なくとも約5のヌクレオチド構成ブロックから1000以上までのヌクレオチド構成ブロックの鎖長を有する。さらなる実施形態において、核酸分子Xは、約5~約100の間のヌクレオチド構成ブロック、約10~約50の間のヌクレオチド構成ブロック、約12~約40の間のヌクレオチド構成ブロック、具体的には約15~約30の間のヌクレオチド構成ブロックの鎖長を有する。
【0035】
「核酸分子(nucleic acid molecule)」という用語は、一本鎖、二本鎖、三本鎖、および四本鎖核酸分子、例えばDNA分子またはRNA分子およびそれらのアナログを包含する。さらに核酸分子は、後述の少なくとも1の修飾ヌクレオチド構成ブロックを含みうる。
【0036】
一実施形態において、核酸分子はDNA分子であり、少なくとも1の修飾ヌクレオチド構成ブロックを含みうる。「DNA分子(DNA molecule)」という用語は、一本鎖、および多鎖、例えば二本鎖、三本鎖、または四本鎖DNA分子、具体的には一本鎖または二本鎖DNA分子を包含する。多鎖、例えば二本鎖DNA分子は、同じ長さを有する鎖または異なる長さを有する鎖を含みうる。多鎖、例えば二本鎖DNA分子において、個々の鎖は、別々の分子として存在してもよく、または一本鎖ループを介してまたは異種リンカーを介して共有結合的に結合されてもよい。
【0037】
「DNA分子」という用語は、天然DNA構成ブロック、すなわち2′-デオキシリボヌクレオチド構成ブロックからなる分子、および、少なくとも1の2′-デオキシリボヌクレオチド構成ブロック、および少なくとも1の修飾ヌクレオチド構成ブロック、および/または少なくとも1のリボヌクレオチド構成ブロックを含む分子を包含する。
【0038】
さらなる実施形態において、核酸分子はRNA分子であり、少なくとも1の修飾構成ブロックおよび/または少なくとも1の2′-デオキシリボヌクレオシド構成ブロックを含みうる。「RNA分子(RNA molecule)」という用語は、一本鎖、または多鎖、例えば二本鎖、三本鎖、および四本鎖RNA分子、具体的には一本鎖または二本鎖RNA分子を包含する。多鎖RNA分子は、同じ長さを有する鎖または異なる長さを有する鎖を含みうる。例えば、二本鎖RNA分子は、平滑末端であってもよく、または少なくとも1のオーバーハング、例えば少なくとも1の3′-オーバーハングを有してもよい。多鎖、例えば二本鎖RNA分子において、個々の鎖は、別々の分子として存在してもよく、または一本鎖ループを介してまたは異種リンカーを介して共有結合的に結合されてもよい。
【0039】
「RNA分子」という用語は、天然RNA構成ブロック、すなわちリボヌクレオチド構成ブロックからなる分子、および、天然RNA構成ブロック、および少なくとも1の修飾ヌクレオチド構成ブロック、および/または少なくとも1の2′-デオキシリボヌクレオシド構成ブロックを含む分子を包含する。
【0040】
「ヌクレオチド構成ブロック(nucleotide building block)」という用語は、本明細書に記載される核酸分子内に組み込まれ、前記核酸分子の一部を形成することができる、部分に関連する。典型的には、ヌクレオチド構成ブロックは、核酸塩基部分、糖部分および骨格部分を含む。「核酸塩基(nucleobase)」という用語は、式(I)の核酸塩基Bについて本明細書で上述したような任意のタイプの核酸塩基を包含しうる。糖部分は、リボース部分または2′-デオキシリボース部分を包含してもよく、それらの任意の修飾を含む。骨格部分は、2つのヌクレオチド構成ブロック間のヌクレオシド間結合を形成するホスホエステル基を包含してもよく、それらの任意の修飾を含む。核酸分子Xは、核酸塩基修飾、糖修飾および/または骨格修飾を含む、修飾ヌクレオチドアナログブロックを含みうる。
【0041】
ある実施形態において、核酸分子Xは、少なくとも1の修飾ヌクレオチド構成ブロックを含み、具体的には以下から選択される:
(a)核酸塩基修飾構成ブロック;
(b)糖修飾構成ブロック;
(c)骨格修飾構成ブロック;および
(d)それらの任意の組み合わせ。
【0042】
「核酸塩基修飾構成ブロック(nucleobase-modified building block)」という用語は、修飾核酸塩基を含むヌクレオチド構成に関連する。「修飾核酸塩基(modified nucleobase)」という用語は、式(I)の核酸塩基Bについて本明細書で上述したような任意のタイプの修飾核酸塩基を包含しうる。
【0043】
「糖修飾構成ブロック(sugar-modified building block)」という用語は、修飾糖を含むヌクレオチド構成に関連する。「糖(sugar)」という用語は、典型的にはリボースまたは2′-デオキシリボース部分に関連し、任意のタイプの修飾糖部分を含む。ある実施形態において、糖修飾ヌクレオチド構成ブロックは、リボース部分の環および/または環上の置換基が修飾されている、ヌクレオチド構成ブロックから選択される。
【0044】
ある実施形態において、修飾ヌクレオチド構成ブロックは、2′-修飾ヌクレオチド構成ブロックであり、リボース部分の2′-OH置換基が2′-R4で置換されており、ここでR4は、ハロ(例えば、フルオロ)、C1-C5アルキル、O-C1-C5アルキル、S-C1-C5アルキル、C2-C5アルケニル、O-C2-C5アルケニル、S-C2-C5アルケニル、C2-C5アルキニル、O-C2-C5アルキニル、S-C2-C5アルキニル、一置換または二置換アミノを含むアミノ(例えば、C1-C5アルキル、C2-C5アルケニルまたはC2-C5アルキニル置換アミノ)であり、ここで各アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基は、OH、ハロ、シクロアルキル、シクロアルケニル、(ヘテロ)アリール(例えばフェニル)、O-アルキル、S-アルキル、および/またはアミノで置換されてもよい。
【0045】
ある実施形態において、修飾ヌクレオチド構成ブロックは、架橋された、例えば2′-4′架橋された修飾ヌクレオチド構成ブロックであり、ここで架橋は、典型的には2~5原子、具体的には2~3原子の長さを有し、C原子を含み、O、NまたはSなどのヘテロ原子を含んでもよい。具体的な実施形態において、修飾構成ブロックは、2′-O-CH2-4′架橋を有するロック核酸構成ブロックである。
【0046】
ある実施形態において、修飾ヌクレオチド構成ブロックは、リボース部分の環が修飾された構成ブロックであり、例えばモルフォリノ構成ブロック、チオリボース構成ブロック、6員ピラノース構成ブロック、またはペプチド核酸(PNA)構成ブロックである。
【0047】
「骨格修飾構成ブロック(backbone-modified building block)」という用語は、修飾ヌクレオシド間結合を含むヌクレオチド構成に関連する。骨格修飾ヌクレオチド構成ブロックにおいて、隣接する構成ブロックを結合するホスホエステル基が、修飾ヌクレオシド間結合、例えばホスホロチオエート結合、アルキルホスホネート結合(例えば、メチルホスホネート結合)、およびボラノホスフェート(borano phosphate)結合によって置換される。
【0048】
核酸分子は、医薬用途に適した核酸分子から好ましくは選択される。好ましい核酸分子には、以下のものが含まれる:コード配列を含むmRNA分子、具体的にはタンパク質コード配列を含むmRNA分子;RNA干渉が可能なRNA分子、例えば16~27-merのsiRNA、具体的には21-merのsiRNA、blunt siRNA、sisiRNA、shRNA、asiRNA、aiRNA、Fork siRNA、27-merのsiRNA、Dumbbell siRNA、16-merのsiRNA、ss-siRNAなど;マイクロRNA分子およびそのアンタゴミル(antagomir)、例えばpre-miRNA mimic;遺伝子編集が可能なRNA分子、例えばtracrRNA、crRNA、sgRNAなどのCRISPR/Cas複合体の構成要素;アンチセンスDNAまたはRNA;三重鎖または四重鎖を形成する核酸分子;CpG-オリゴヌクレオチド、TTAGGG-オリゴヌクレオチド、アプタマー、リボザイム、またはDNA酵素(DNAzyme)、または、これらの分子の前駆物質または修飾。
【0049】
ある実施形態において、核酸分子Xは、少なくとも1の修飾構成ブロックおよび/または少なくとも1のDNA構成ブロックを含んでもよいRNA分子、少なくとも1の修飾構成ブロックおよび/または少なくとも1のRNA構成ブロックを含んでもよいDNA分子、または、修飾構成ブロックからなる核酸アナログ分子である。
【0050】
さらなる実施形態において、核酸分子Xは、少なくとも1の修飾構成ブロックを含んでもよく、および少なくとも1のオーバーハング、例えば5′-オーバーハングおよび/または3′-オーバーハング、例えば1、2または3つのヌクレオチド構成ブロックのオーバーハングを有してもよい、二本鎖RNA分子である。具体的な実施形態において、RNA分子は、siRNA分子である。
【0051】
さらなる実施形態において、核酸分子Xは、少なくとも1の修飾構成ブロックおよび/または少なくとも1のリボース構成ブロック、具体的にはアンチセンス分子を含んでもよい、一本鎖DNA分子である。
【0052】
式(I)の核酸コンジュゲートは、2′-3′-O-ケタール部分(IV)を核酸分子Xに結合させることにより調製されてもよく、2′-3′-O-ケタール部分は、式(IV)であり:
ここで
Yは反応性官能基部分、例えばホスホロアミダート基、または核酸分子の、具体的には核酸分子骨格の化学合成に適する他の基であり、
Bは核酸塩基であり、および
R1およびR2は、互いに独立して、炭化水素基であり、
前記炭化水素基は、N、O、P、S、またはハロなどの1または複数のヘテロ原子を含んでもよい。
【0053】
本明細書で使用される「ホスホロアミダート(phosphoramidate)」という用語はまた、核酸分子合成のために当業者に使用され知られている「ホスホロアミダート変種(phosphoramidate variants)」をも含みうる。
【0054】
2′,3′-O-ケタール部分(IV)の合成は、WO2014/048969に記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。核酸分子Xへの2′,3′-O-ケタール部分(IV)の結合は、核酸分子Xの合成中または合成後に、例えば固相核酸合成における標準的な方法に従って、行われうる。
【0055】
ある実施形態において、2′,3′-O-ケタール構成ブロックは、核酸分子Xの少なくとも1の鎖の5′末端に、および/または3′末端に結合される。
【0056】
具体的な実施形態において、2′,3′-O-ケタール構成ブロックは、二本鎖siRNA分子のセンス鎖の5′末端に、またはアンチセンス分子の5′末端に結合される。
【0057】
さらなる実施形態において、2′,3′-O-ケタール構成ブロックは、核酸分子Xの鎖内の核酸塩基に結合される。
【0058】
さらなる実施形態において、核酸分子Xに結合される2′,3′-O-ケタール構成ブロックは、複数、例えば2つである。
【0059】
本発明のさらなる態様は、医薬における、例えばヒト医薬または獣医薬における使用のための、具体的にはヒト医薬およびインビボ動物研究における使用のための、式(I)のコンジュゲートの使用に関連する。ある実施形態において、医薬使用は、コンジュゲートを、それを必要とする対象に、具体的にはヒトの対象に、投与することを含む。さらなる実施形態において、コンジュゲートは、標的細胞または標的器官にエクスビボで投与され、標的細胞または標的器官は、その後それを必要とする対象内に、具体的にはヒトの対象内に導入される。なおさらなる実施形態において、コンジュゲートは、卵母細胞または胚に投与され、ここで産業商業目的でのヒト幹細胞またはヒト胚の使用は、除外される。本発明のコンジュゲートが卵母細胞または胚に投与される場合、卵母細胞のまたは胚の生殖細胞系列は遺伝的に修飾されず、遺伝病などの疾患のみが治療されることが好ましい。好ましい実施形態によれば、本発明のコンジュゲートは、非ヒト卵母細胞または非ヒト胚に投与される。
【0060】
本発明は、細胞、組織、器官、または生物体における標的特異的な核酸修飾を媒介する効率的な方法を提供し、以下の各ステップを含む:
(a)細胞、組織、器官、または生物体に、本発明のコンジュゲートを接触させるステップ、および
(b)コンジュゲートのヌクレオシド成分によって生じる、標的核酸に対する標的特異的な核酸修飾を、媒介するステップ。
接触させるステップ(a)は、細胞培養物、単細胞微生物、または標的細胞内に存在しうる標的細胞、例えば単離された標的細胞に、または、標的組織および/または標的器官などの多細胞生物内の複数の標的細胞に、コンジュゲートを導入するステップを含みうる。標的細胞、標的組織および/または標的器官は、好ましくはヒトを含む哺乳類である。標的生物体は、好ましくは哺乳類生物体、例えばヒト生物体である。標的細胞は、好ましくはヒト細胞を含む哺乳類細胞である。標的組織は、好ましくはヒト組織を含む哺乳類組織である。標的器官は、好ましくはヒト器官を含む哺乳類器官である。
【0061】
生物体内への導入は、全身投与または局所投与を含む任意のタイプの投与、例えば注射または注入による投与を含みうる。例示的なタイプの投与には、耳、頬、気管支内、経腸、硬膜外、吸入、膀胱への注入、動脈内、関節内、胃内、殿筋内、心臓内、皮内、腰椎内、リンパ内、乳腺内、筋肉内、鼻内、神経内、眼内、骨内、腹腔内、胸膜内、肺内、ルーメン内、髄腔内、気管内、尿道内、子宮内、静脈内、脳室内、硝子体内、口腔、経口、非経口、硬膜外、神経周囲、経皮(percutaneous)、直腸、球後、結膜下、皮下、舌下、局所、経皮(transdermal)、経粘膜、および/または膣内投与を含む。
【0062】
媒介するステップ(b)は、好ましくは標的核酸の修飾を含み、例えばsiRNAコンジュゲートを使用する場合はRNA干渉により、またはアンチセンス分子コンジュゲートを使用する場合はmRNA転写の阻害による。
【0063】
本発明はまた、上述のコンジュゲートを活性薬剤として適切な担体と共に含む医薬組成物を提供する。診断または治療用外用薬のために、医薬組成物は、溶液(例えば注入または注射のための溶液)、クリーム、軟膏、錠剤、懸濁液、粉末などの形態でありうる。組成物は、任意の適切な方法で、例えば非経口投与(例えば注射または注入)によって、経粘膜外用薬によって、または経皮外用薬によって、または経口、局所、鼻腔、直腸外用薬などによって投与されうる。例えば手術中の腹腔内または腹膜内へなど、局所外用薬が具体的には好ましい。さらに好ましくは、腫瘍の近傍または眼球内への外用薬、具体的には本発明に従ったsiRNAコンジュゲートについてである。
【0064】
医薬組成物は、生物体内への、具体的にはヒト生物体内への送達に適した任意の形態の活性薬剤またはプロドラッグとして、コンジュゲートを含みうる。例えば組成物は、カプセル化された形態または非カプセル化された形態の活性薬剤を、リポソームなどの送達媒体と共に、および/またはトランスフェクション試薬と共に、または、送達媒体無しで、および/またはトランスフェクション試薬無しで、含みうる。
【0065】
ある実施形態において、本発明のコンジュゲートは、調節において、例えば標的細胞、標的組織、標的器官または標的生物体における関心遺伝子のダウンレギュレーションまたはアップレギュレーションにおいて、使用されうる。関心遺伝子は、内因性遺伝子または外因性病原体からの遺伝子であってもよく、具体的にはウイルスまたは細菌遺伝子、または、癌遺伝子または自己免疫疾患またはアレルギー疾患関連遺伝子などの内因性疾患関連遺伝子であってもよい。
【0066】
さらなる実施形態において、本発明のコンジュゲートは、例えば標的細胞または標的生物体におけるmRNA分子のようなタンパク質コード核酸分子などの、コードの導入および任意の発現において、使用されうる。
【0067】
本発明の具体的な態様は、核酸分子の、具体的には本明細書に記載された治療用核酸分子の、標的細胞、標的組織および/または標的器官特異的な送達のための、コンジュゲートの使用に関連する。本発明の特に好ましい実施形態は、標的細胞、標的組織および/または標的器官特異的な送達のために、具体的にはインビボ送達のために、二本鎖siRNA分子のセンス鎖の5′末端に、またはアンチセンス分子の5′末端に結合されている、本明細書に記載された2′,3′-O-ケタール構成ブロックの使用に関連する。従って、siRNA分子の、具体的には治療用siRNA分子の、標的細胞、標的組織および/または標的器官特異的な送達のための、siRNAコンジュゲートの使用は、特に好ましい。
【0068】
例えば、標的細胞は、肺細胞、心臓細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、膵臓細胞、結腸細胞、筋肉細胞、神経細胞、胃細胞、小腸細胞、大腸細胞、直腸細胞、膀胱細胞、骨細胞、副腎細胞、眼の細胞、皮膚細胞、または脳細胞でありうる。本明細書で使用される「組織(tissue)」は、共通の機能または構造を有する標的細胞などの、同種または異種に分化した細胞群からなる有機物を指す。
【0069】
本発明のなおさらなる態様は、標的細胞、標的組織または標的器官内への核酸分子の送達のための、コンジュゲートのインビトロ使用に関連する。標的細胞は、核酸分子が送達されうる任意のタイプの細胞から、例えば哺乳類細胞、鳥類細胞または昆虫細胞などの動物細胞、植物細胞、真菌細胞、原生生物細胞、細菌細胞および古細菌細胞から、選択されうる。具体的な実施形態において、標的細胞はヒト細胞である。
【0070】
この態様の具体的な実施形態は、標的細胞、標的組織および/または標的器官における遺伝子のダウンレギュレーションにおける、コンジュゲートの使用に関連する。
【0071】
具体的には、本発明は、インビトロでの核酸分子の標的細胞特異的な送達、標的組織特異的な送達、および/または標的器官特異的な送達を提供する。例えば、標的細胞は、肺細胞、心臓細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、膵臓細胞、結腸細胞、筋肉細胞、神経細胞、胃細胞、小腸細胞、大腸細胞、直腸細胞、膀胱細胞、骨細胞、副腎細胞、眼の細胞、皮膚細胞、または脳細胞でありうる。
【0072】
本発明のなおさらなる態様は、核酸分子に結合させるための、本明細書に記載された2′,3′-O-ケタール部分(IV)の使用に関連する。
【0073】
本発明のさらなる態様は、本明細書の以下の項目に記載されている通りである。
【0074】
[項目]
1. 少なくとも1の2′,3′-O-ケタール部分を含む、式(I)の核酸コンジュゲートであって:
ここで
Xは核酸分子であり、
Bは核酸塩基であり、
および
R1およびR2は、互いに独立して、炭化水素基であり;
前記炭化水素基は、N、O、P、S、またはハロなどの1または複数のヘテロ原子を含んでもよい;
核酸コンジュゲート。
【0075】
2. 項目1に記載されたコンジュゲートであって、
R1およびR2は、互いに独立して、C5-21炭化水素基、具体的にはC5-11炭化水素基、より具体的にはC9炭化水素基であり;
前記炭化水素基は、N、O、P、S、またはハロなどの1または複数のヘテロ原子を含んでもよい;
核酸コンジュゲート。
【0076】
3. 項目1または2に記載されたコンジュゲートであって、
R1およびR2は、互いに独立して、直鎖または分岐アルキル基、直鎖または分岐アルケニル基、および直鎖または分岐アルキニル基であり;
前記アルキル、アルケニルまたはアルキニル基は、N、O、P、Sまたはハロなどの1または複数のヘテロ原子を含んでもよい;
コンジュゲート。
【0077】
4. 項目1~3のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
R1およびR2は、直鎖または分岐C9アルキル基である
コンジュゲート。
【0078】
5. 項目1~4のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
前記核酸塩基Bは、少なくとも1のN原子を含む単環または二環の芳香族または複素芳香族塩基である
コンジュゲート。
【0079】
6. 項目1~5のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
前記核酸塩基Bは、複素環塩基、例えば、プリンまたはピリミジン塩基であって、具体的にはウラシル、チミン、またはそれらのアナログから選択される
コンジュゲート。
【0080】
7. 項目1~6のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
前記核酸塩基Bは、修飾塩基、例えば、疎水性部分で置換された塩基、炭水化物部分で置換された塩基、または官能基部分で置換された塩基である
コンジュゲート。
【0081】
8. 項目7に記載されたコンジュゲートであって、
前記疎水性部分は、テルペン部分、具体的にはC5-C30テルペン部分、より具体的にはC5-C20テルペン部分、さらに具体的にはC15テルペン部分である、またはステロール部分、例えば、コレステロール部分である
コンジュゲート。
【0082】
9. 項目7に記載されたコンジュゲートであって、
前記炭水化物部分は、GalNAc基である
コンジュゲート。
【0083】
10. 項目7に記載されたコンジュゲートであって、
前記官能基部分は、アルキン基またはアジド基などのクリック官能基部分である、またはアルキン基またはアジド基などである、またはエーテル基、エステル基、アミド基、カルボン酸基、チオエステル基、チオアミド基、またはチオエーテル基である
コンジュゲート。
【0084】
11. 項目1~6のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
Bは、式(IIa)の核酸塩基であり:
ここでZはCHまたはNであり、R3はHである;
コンジュゲート。
【0085】
12. 項目1~8のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
Bは、式(IIb)の核酸塩基であり:
ここでZはCHまたはNであり、R3はテルペン部分、具体的にはC
5-C
30テルペン部分、より具体的にはC
5-C
20テルペン部分、さらに具体的にはC
15テルペン部分、例えば、式(III)のテルペン部分である:
コンジュゲート。
【0086】
13. 項目1~12のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
前記核酸分子Xは、少なくとも5のヌクレオチド構成ブロックから1000以上までのヌクレオチド構成ブロック、5~100の間のヌクレオチド構成ブロック、10~50の間のヌクレオチド構成ブロック、12~40の間のヌクレオチド構成ブロック、具体的には15~30の間のヌクレオチド構成ブロックの鎖長を有する
コンジュゲート。
【0087】
14. 項目1~13のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
前記核酸分子Xは、少なくとも1の修飾ヌクレオチド構成ブロックを含み、前記修飾ヌクレオチド構成ブロックは、具体的には以下から選択される:
(a)塩基修飾ヌクレオチド構成ブロック;
(b)糖修飾ヌクレオチド構成ブロック;
(c)骨格修飾ヌクレオチド構成ブロック
および
(d)それらの任意の組み合わせ;
コンジュゲート。
【0088】
15. 項目14に記載されたコンジュゲートであって、
前記塩基修飾ヌクレオチド構成ブロックは、疎水性部分で置換された塩基を含む構成ブロック、炭水化物部分で置換された塩基を含むヌクレオチド構成ブロック、および官能基部分で置換された塩基を含むヌクレオチド構成ブロックから選択される
コンジュゲート。
【0089】
16. 項目14に記載されたコンジュゲートであって、
前記糖修飾ヌクレオチド構成ブロックは、2′-修飾リボース構成ブロック、2′-4′架橋修飾リボース構成ブロック、例えばロックヌクレオチド(LNA)構成ブロック、モルフォリノ構成ブロック、およびペプチド核酸(PNA)構成ブロックから選択される
コンジュゲート。
【0090】
17. 項目14に記載されたコンジュゲートであって、
前記骨格修飾ヌクレオチド構成ブロックは、修飾ヌクレオシド間結合、例えばホスホロチオエート結合、アルキルホスホネート結合(例えば、メチルホスホネート結合)、およびボラノホスフェート結合を含む
コンジュゲート。
【0091】
18. 項目1~17のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
前記核酸分子Xは、一本鎖核酸分子または二本鎖核酸分子である
コンジュゲート。
【0092】
19. 項目1~18のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
前記核酸分子Xは、
(i)少なくとも1の修飾ヌクレオチド構成ブロックおよび/または少なくとも1のDNA構成ブロックを含んでもよい、RNA分子、
または
(ii)少なくとも1の修飾ヌクレオチド構成ブロックおよび/または少なくとも1のRNA構成ブロックを含んでもよい、DNA分子、
または
(iii)核酸アナログ分子である
コンジュゲート。
【0093】
20. 項目19に記載されたコンジュゲートであって、
前記核酸分子Xは、一本鎖、二本鎖、三本鎖、または四本鎖RNA分子、具体的には一本鎖または二本鎖RNA分子であり;
前記RNA分子は、少なくとも1のデオキシリボヌクレオチド構成ブロック、少なくとも1の修飾構成ブロック含んでもよく、および少なくとも1の3′-オーバーハング、具体的にはsiRNA分子を有してもよい;
コンジュゲート。
【0094】
21. 項目19に記載されたコンジュゲートであって、
前記核酸分子Xは、一本鎖、二本鎖、三本鎖、または四本鎖RNA分子、具体的には一本鎖または二本鎖DNA分子であり;
前記DNA分子は、少なくとも1のリボヌクレオチド構成ブロック、少なくとも1の修飾構成ブロック、具体的にはアンチセンス分子を含んでもよい;
コンジュゲート。
【0095】
22. 項目1~21のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
2′,3′-O-ケタール構成ブロックは、前記核酸分子Xの鎖の5′末端に、および/または3′末端に結合される
コンジュゲート。
【0096】
23. 項目22に記載されたコンジュゲートであって、
前記2′,3′-O-ケタール構成ブロックは、二本鎖siRNA分子のセンス鎖の5′末端に、またはアンチセンス分子の5′末端に結合される
コンジュゲート。
【0097】
24. 項目1~23のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
前記2′,3′-O-ケタール構成ブロックは、前記核酸分子Xの鎖内の塩基に結合される
コンジュゲート。
【0098】
25. 項目1~24のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
医薬における使用のための、例えばヒト医薬または獣医薬における使用のための、具体的にはヒト医薬における使用のための
コンジュゲート。
【0099】
26. 項目25に記載の使用のための項目1~24のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
前記コンジュゲートは、それを必要とする対象に、具体的にはヒトの対象に投与される
コンジュゲート。
【0100】
27. 項目25に記載の使用のための項目1~24のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
前記コンジュゲートは、エクスビボで標的細胞または標的器官に投与され、および前記標的細胞または標的器官は、その後それを必要とする対象内に、具体的にはヒトの対象内に導入される
コンジュゲート。
【0101】
28. 項目25に記載の使用のための項目1~24のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
前記コンジュゲートは、卵母細胞または胚に投与され;
ここで産業商業目的でのヒト幹細胞またはヒト胚の使用は、除外される;
コンジュゲート。
【0102】
29. 項目25~28のいずれか一項に記載の使用のための項目1~24のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
前記投与は、標的細胞および/または標的器官特異的な送達を含む
コンジュゲート。
【0103】
30. 項目25~29のいずれか一項に記載の使用のための項目1~24のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
標的細胞または標的生物体における遺伝子の、例えば内因性遺伝子または外因性病原体からの遺伝子、具体的にはウイルスまたは細菌遺伝子、または、癌遺伝子または自己免疫疾患またはアレルギー疾患関連遺伝子などの内因性疾患関連遺伝子の、アップレギュレーションまたはダウンレギュレーションにおける使用のための
コンジュゲート。
【0104】
31. 項目25~29のいずれか一項に記載の使用のための項目1~24のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
標的細胞または標的生物体におけるコード核酸分子遺伝子の導入および任意の発現における使用のための
コンジュゲート。
【0105】
32. 項目25~31のいずれか一項に記載の使用のための項目1~24のいずれか一項に記載されたコンジュゲートであって、
前記標的細胞は、肺細胞、心臓細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、膵臓細胞、結腸細胞、筋肉細胞、神経細胞、胃細胞、小腸細胞、大腸細胞、直腸細胞、膀胱細胞、骨細胞、副腎細胞、眼の細胞、皮膚細胞、または脳細胞である
コンジュゲート。
【0106】
33. 項目1~24のいずれか一項に記載されたコンジュゲートの、核酸分子を標的細胞内へ送達するための、インビトロでの使用。
【0107】
34. 項目33に記載された使用であって、
前記標的細胞は、哺乳類細胞、鳥類細胞または昆虫細胞などの動物細胞、植物細胞、真菌細胞、原生動物細胞、細菌細胞、および古細菌細胞から選択される
使用。
【0108】
35. 項目33または34に記載された使用であって、
前記標的細胞はヒト細胞である
使用。
【0109】
36. 項目33~35のいずれか一項に記載された使用であって、
前記標的細胞における遺伝子のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションのための
使用。
【0110】
37. 項目33~35のいずれか一項に記載された使用であって、
標的細胞または標的生物体におけるコード核酸分子遺伝子の導入および任意の発現のための
使用。
【0111】
38. 項目33~37のいずれか一項に記載された使用であって、
標的細胞特異的な送達を含む
使用。
【0112】
39. 項目33~38のいずれか一項に記載された使用であって、
前記標的細胞は、肺細胞、心臓細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、膵臓細胞、結腸細胞、筋肉細胞、神経細胞、胃細胞、小腸細胞、大腸細胞、直腸細胞、膀胱細胞、骨細胞、副腎細胞、眼の細胞、皮膚細胞、または脳細胞である
使用。
【0113】
40. 2′,3′-O-ケタール部分(IV)の使用であって:
ここで
Yは反応性官能基部分であり、
Bは核酸塩基であり、
および
R1およびR2は、互いに独立して、炭化水素基であり;
前記炭化水素基は、N、O、P、S、またはハロなどの1または複数のヘテロ原子を含んでもよく;
核酸分子に結合させるための
使用。
【0114】
41. 項目40に記載された使用であって、
前記2′,3′-O-ケタール部分(IV)は、項目2~12のいずれか一項に記載された少なくとも1の特徴を備える
使用。
【0115】
42. 項目40または41に記載された使用であって、
前記核酸分子は、項目13~21のいずれか一項に記載された少なくとも1の特徴を備える
使用。
【0116】
43. 項目40~42のいずれか一項に記載された使用であって、
前記2′,3′-O-ケタール部分(IV)の前記核酸分子への結合は、項目22~24のいずれか一項に記載された少なくとも1の特徴を備える
使用。
【0117】
44. 項目40~43のいずれか一項に記載された使用であって、
前記反応性官能基部分Yは、ホスホロアミダート基である
使用。
【0118】
以下の図および実施例により、本発明をより具体的に概説する。
【実施例】
【0119】
[結果]
2つの異なる脂質ベースの担体分子PRAMO01およびPRAMO02(
図1)が、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)遺伝子に対する二本鎖siRNA分子、siGAPDHのセンス鎖に結合された。修飾siRNA分子は、様々な器官内にインビボで移植され、GAPDH遺伝子のダウンレギュレーションが分析された。
【0120】
PRAMO01およびPRAMO02は、修飾ホスホロアミダイトとして合成され、センスRNA鎖の5′末端に共有結合的に結合された。
【0121】
図2~3は、脂質修飾オリゴヌクレオチドをBalb/Cマウスの尾静脈内に静脈注射した結果を示す。実験動物の標的器官におけるGAPDH遺伝子発現が、明確に変化した。動物は注射の72時間後に犠牲にされ、5つの異なる組織が調べられた。肺においてPRAM01修飾siRNAを使用した場合、GAPDH遺伝子の58%までのダウンレギュレーション(遺伝子抑制)が検出された(n=3)。肝臓、心臓、および膵臓においてPRAM02修飾siRNAを使用した場合もまた、ダウンレギュレーションが検出された(n=3)。
【0122】
PRAMO01の送達効率は、3D肺臓器チップ(organ chip)(変異KRAS G12Cを有するヒト肺癌細胞を有する)において、さらに試験された。この実験において、2つの追加のチップが、それぞれ陰性および陽性対照として、PBSで、および変異KRAS G12Cに対してRNAiMAXトランスフェクション試薬とともにPRAMO01コンジュゲートsiRNAで、処理された。各チップは2つの別々の区画を含むため、2つの生理学的に独立した複製が作成された。3Dモデルは、10μMのsiRNAでトランスフェクトされ、トランスフェクトの48時間後に分析された。PRAMO01コンジュゲートsiRNAで処理された3Dモデルにおいて、トランスフェクション試薬を使用した場合および使用しない場合で、KRAS遺伝子のダウンレギュレーションが見られた(それぞれ70%および78%まで減少)。
【0123】
使用されたsiRNA配列:
5′ GUGGUAGUUGGAGCUUGUG dtdt 3′ センス
5′ CACAAGCUCCAACUACCAC dtdt 3′ アンチセンス
【0124】
[材料および方法]
[脂質およびオリゴヌクレオチドの合成]
脂質の合成は、標準的な方法に従って行われた。オリゴヌクレオチドの合成およびオリゴヌクレオチドの脂質へのコンジュゲートは、標準的な方法に従って行われた。
【0125】
[裸のsiRNAおよび脂質コンジュゲートsiRNAのマウスへの注射]
6週齢のメスのBalb/cマウスが、グルコース、または、3.75、10、または25mg/Kgの(注射用水に溶解された裸のまたは脂質コンジュゲート)siRNAを、静脈注射された。一般に、1物質あたり3匹のマウスが注射された(n=33、対照を含む)。動物は、注射の3日後に犠牲にされた。
【0126】
[インビボでのmRNA抑制の測定]
組織は、採取され、急速凍結され、-80℃で保存された。RNA抽出は、TRIzol RNA Isolation Reagent(ThermoFisher Scientific、ドイツ)において、Qiagen TissueLyserおよびRNeasy Kit(Qiagen)を使用して行われた。RevertAid H Minus First Strand cDNA Synthesis Kitおよびrandom Hexamer primers(MBI Ferments、ザンクト・レオン=ロート(St.Leon-Rot)、ドイツ)を使用して、cDNAが転写された。qPCRのために、TaqMan GAPDH Assay、TaqMan ACTINB Assay、およびTaqMan Mastermix(ThermoFischer Scientific、ドイツ)が、製造者の説明書に従って、使用された。相対的なGAPDH発現は、アクチンBで正規化され、ΔΔCt法により決定された。
【0127】
[3D臓器モデルにおけるmRNA抑制の測定]
KRAS G12C変異を有するヒト肺癌細胞株を含む3D臓器モデルが、トランスフェクトの48時間後に採取され、RNeasy Kit(Qiagen)を使用して、RNAが単離された。RevertAid H Minus First Strand cDNA Synthesis Kitおよびrandom Hexamer primers(MBI Ferments、ザンクト・レオン=ロート、ドイツ)を使用して、cDNAが転写された。qPCRのために、TaqMan KRAS Assay、TaqMan ACTINB Assay、およびTaqMan Mastermix(ThermoFischer Scientific、ドイツ)が、製造者の説明書に従って、使用された。相対的なKRAS発現は、アクチンBで正規化され、ΔΔCt法により決定された。
【0128】
[ステムループPCR]
siRNAを増幅するために、単離されたRNAは、RevertAid H Minus First Strand cDNA Synthesis Kit(ThermoFisher Scientific、ドイツ)を使用して、cDNAに転写された。siRNAの定量化のために、CybergreenベースのqPCRアッセイ(Biorad)が使用された。すべての手順は、製造者の説明書に従って行われた。
【0129】
[統計分析]
データは、GraphPad Prism 8ソフトウェア(GraphPad Software, Inc.、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)を使用して、分析された。3つの独立したインビボ実験の各々において、抑制のレベルは、非標的対照(対応するスクランブルsiRNA)の平均値で正規化された。データは、t検定および複数比較のための分散分析(ANOVA)を使用して、分析された。
【配列表】
【国際調査報告】