(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(54)【発明の名称】フォトダイオード構造の製造方法およびフォトダイオード構造
(51)【国際特許分類】
H01L 31/10 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
H01L31/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540104
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2021087850
(87)【国際公開番号】W WO2022144419
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520342828
【氏名又は名称】リンレッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス、ペール-ラペルヌ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル、ケルラン
(72)【発明者】
【氏名】バンサン、デステファニス
(72)【発明者】
【氏名】ポール、フジェール
【テーマコード(参考)】
5F149
【Fターム(参考)】
5F149AA04
5F149AB09
5F149AB17
5F149CB02
5F149CB09
5F149CB10
5F149DA36
5F149EA02
5F149GA03
5F149HA12
5F149HA13
5F149LA01
5F149XB17
5F149XB37
(57)【要約】
フォトダイオード構造を製造するために、カドミウムがドープされた半導体材料から形成された上層(2)を有した基板(1)が提供される。HgCdTeベースの第1層(3)が、この第1層(3)を電気的にドープするためにn型電気活性ドーパントを含有した浴を使用して、上層(2)から液相エピタキシーによって、形成される。カドミウムは、上層(2)から第1層(3)へと拡散し、これにより、上層(2)に対する界面を起点として、界面から離れる向きに、減少するカドミウム濃度勾配が形成される。カドミウム濃度勾配は、界面を起点として第1層(3)内に、減少するバンドギャップ幅勾配を引き起こすとともに、界面を起点として第1層(2)内に、n型ドーパント濃度勾配を引き起こす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外電磁放射を電子-正孔対へと変換するように設計された接合を含むフォトダイオード構造であるとともに、前記接合は、HgCdTeから形成されたまたはその少なくとも四元誘導体の1つから形成された第1導電型の第1層(3)と、HgCdTeから形成されたまたはその少なくとも四元誘導体の1つから形成された、前記第1導電型とは逆の第2導電型の第2層(4)と、を含むことで、p-n接合またはp-i-n接合を形成している、フォトダイオード構造であって、
前記第1層(3)は、
- 第1端部および第2端部であり、前記第1端部は、前記第2端部によって前記第2層(4)から分離されている、第1端部および第2端部と、
- 前記第1層(3)の前記第1端部から前記第2層(4)へと向かう向きに減少している第1カドミウム濃度勾配であり、前記第1カドミウム濃度勾配内における原子カドミウム濃度の最小値は、10原子%~25原子%であり、前記第1カドミウム濃度勾配は、第1部分(3a)と第2部分(3b)とを規定しており、前記第2部分(3b)は、前記第1部分(3a)よりも小さなバンドギャップ幅を有している、第1カドミウム濃度勾配と、
- 少なくとも1つの電気的ドーパントの第2濃度勾配であり、前記第2濃度勾配は、前記第1端部から前記第2層(4)へと向かう向きに減少している、第2濃度勾配と、
を含み、
前記第1層(3)と前記接合層(4)との合計厚さは、6ミクロン未満であり、
- 前記第1カドミウム濃度勾配は、拡散プロファイルの形態で連続的に減少しており、
- 少なくとも1つの電気的ドーパントの前記第2濃度勾配は、拡散プロファイルの形態で連続的に減少しており、
- 前記第2濃度勾配は、前記第1層(3)内において、前記第1端部から500nm~1.5ミクロンの距離にわたって、延びており、
- 前記第2濃度勾配は、5×10
18at/cm
3超の濃度から、2×10
15at/cm
3未満の濃度へと、減少しており、
- 前記第1カドミウム濃度勾配は、前記第1電気的ドーパント濃度が2×10
15at/cm
3未満となるまで、延びており、
前記第1層(3)は、前記第2層(4)よりも大きな厚さを呈していることを特徴とする、フォトダイオード構造。
【請求項2】
導電性コンタクト(6)が、前記第2層(4)に対して電気的に接続されており、前記導電性コンタクト(6)は、純金属材料からまたは金属材料合金から、形成されている、請求項1に記載のフォトダイオード構造。
【請求項3】
前記第1層(3)は、少なくとも500nmにわたって、一定のカドミウム濃度を有している、請求項1または2に記載のフォトダイオード構造。
【請求項4】
前記第1層(3)は、少なくとも1マイクロメートルにわたって、一定のカドミウム濃度を有している、請求項3に記載のフォトダイオード構造。
【請求項5】
前記第1層(3)は、一定のカドミウム濃度を有しておりかつ意図せずにドープされていない部分を呈している、請求項1~3のいずれか一項に記載のフォトダイオード構造。
【請求項6】
前記第1層(3)の厚さは、3ミクロン以上であり、好ましくは5ミクロン以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のフォトダイオード構造。
【請求項7】
前記第1カドミウム濃度勾配内におけるカドミウム濃度の差は、少なくとも25原子%に等しい、請求項1~6のいずれか一項に記載のフォトダイオード構造。
【請求項8】
前記第1層(3)と前記接合層(4)との合計厚さは、5ミクロン未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載のフォトダイオード構造。
【請求項9】
少なくとも1つの電気的ドーパントの前記第2濃度勾配は、ヨウ素濃度勾配と塩素濃度勾配とを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のフォトダイオード構造。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のフォトダイオード構造を製造するための方法であって、
- CdZnTeまたはCdTeから形成された上層(2)を少なくとも有した基板(1)を提供する工程であり、前記上層(2)は、第1導電型の第1電気的ドーパントの第1濃度と、第1カドミウム濃度と、を有しており、前記上層(2)は、前記第1導電型である、工程と、
- カドミウムと可能であれば少なくとも1つの電気的ドーパントとを含めて第1層(3)の前駆体を含有した単一の浴を使用して、液相エピタキシーにより、前記上層(2)から、HgCdTeからなるまたはその少なくとも四元誘導体の1つからなる前記第1層(3)を成長させる工程であり、前記浴は、前記第1カドミウム濃度よりも小さな第2カドミウム濃度と、可能であれば、電気的ドーパントに関しての、前記第1電気的ドーパントの前記第1濃度よりも小さな第2濃度と、を有しており、前記少なくとも1つの電気的ドーパントは、前記第1電気的ドーパントおよび/または第2電気的ドーパントから選択され、前記液相エピタキシーは、カドミウム原子の一部に関しておよび前記第1電気的ドーパントに関して前記上層(2)から前記第1層(3)への拡散が得られる温度で行われ、これにより、前記上層(2)と前記第1層(3)との間の界面から離れるにつれて、前記界面から連続的に減少する第1カドミウム濃度勾配が形成され、前記第1濃度勾配内における最小の原子カドミウム濃度値は、10原子%~25原子%であり、前記第1濃度勾配は、第1部分(3a)と第2部分(3b)とを規定しており、前記第2部分(3b)は、前記第1部分(3a)よりも小さなバンドギャップ幅を有しており、これにより、前記第1層(3)内において、前記少なくとも1つの電気的ドーパントの第2濃度勾配が形成されており、前記少なくとも1つの電気的ドーパントの前記第2濃度勾配は、5×10
18at/cm
3超の濃度から、2×10
15at/cm
3未満の濃度へと、連続的に減少しており、前記第2濃度勾配は、前記第1層(3)内において、前記上層(2)に対する前記界面から、500nm~1.5ミクロンの距離にわたって、延びており、前記第1層(3)は、前記第1導電型であり、前記第1濃度勾配は、前記第1電気的ドーパント濃度が2×10
15at/cm
3未満となるまで、延びている、工程と、
- HgCdTeから形成されたまたはその少なくとも四元誘導体の1つから形成された、前記第1導電型とは逆の第2導電型の接合層(4)を少なくとも形成することで、前記第1層(3)と共にp-n接合またはp-i-n接合を形成する工程であり、前記第1カドミウム濃度勾配と、前記第1電気的ドーパントの前記第2濃度勾配とは、前記接合層(4)の形成後でも、前記第1層(3)内において保存され、前記第2濃度勾配は、前記上層(2)と前記第1層(3)との間の界面から前記第2層(4)へと向かう向きにおいて、減少しており、前記第1層(3)は、前記第2層(4)よりも大きな厚さを呈しており、前記第1層(3)と前記接合層(4)との合計厚さは、6ミクロン未満である、工程と、
を順次的に含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトダイオード構造の製造方法に関し、より一般的には、光電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの技術分野において、観察されたシーンを代理した電気信号を提供する光検出器が公知である。特に、赤外信号に特化して取り込むように構成された光検出器が存在し、このような光検出器は、暗視デバイスにおいて、また、調査対象をなす信号の大部分が赤外領域にある多くの他の活動分野において、使用することができる。
【0003】
例えば、HgCdTeの合金である半導体材料から、または水銀カドミウムテルル化物を表すMCTの合金である半導体材料から、赤外検出器を製造することが公知である。このような材料は、カドミウム組成に応じて調整可能な大きなバンドギャップエネルギ値に関連した直接ギャップを有していることのために、特に魅力的である。このような材料は、支持体として機能する基板でありかつ調査対象波長範囲では全体的に透明とされた基板から、エピタキシーによって製造される。
【0004】
フォトダイオードの形態で、より詳細にはp-n接合またはp-i-n接合の形態で、光検出器を使用することが、特に有利である。バンドギャップ値よりも大きなエネルギでフォトダイオードを通過する電磁放射は、吸収されて、電子-正孔対へと変換される。電荷は、収集されることで、観察されたシーンを代理した信号として処理されることとなる。
【0005】
赤外放射を取り込むために異なるフォトダイオードアーキテクチャが使用され、これらのアーキテクチャどうしの間に存在する複数の相違点は、例えば信号対雑音比などの動作を向上させようとするものである。
【0006】
フォトダイオードの構成は、米国特許出願公開第2014/0217540号明細書という文献に提示されており、この文献は、基板から出発して、第1導電型の不動態化バッファ層と、第1導電型のまたは非ドープの活性層と、被覆層と、第2不動態化層と、活性層と共におよび第2不動態化層と共にpn接合を形成するための、第2導電型の接合層と、を順次的に含む積層体を記載している。
【0007】
米国特許第4,376,663号明細書という文献は、CdTe基板上に液相エピタキシーによってHgCdTe層を形成することを記載している。基板を、非ドープのものとすることで、p型ドープされたHgCdTe層を形成することができる、あるいは、基板をインジウムによってドープすることで、エピタキシャル成長時にインジウム原子を拡散させることにより、n型ドープされたHgCdTe層を形成することができる。また、ガス雰囲気を拡散させることによって、n型ドープされたHgCdTe層を形成することもできる。HgCdTe層は、20マイクロメートル~30マイクロメートルといった、さらには40マイクロメートルといった、厚さを含む。CdTe層は、HgCdTe層上にエピタキシーによって成膜され、5マイクロメートル~10マイクロメートルといった厚さを含む。
【0008】
Martyniukらによる刊行物(「Utmost response time of long-wave HgCdTe photodetectors operating under zero voltage condition」)は、npn型の構造を規定するために、HgCdTeからなる複数の層によって形成された赤外検出器を開示しており、その中央に位置した吸収層は、1017cm-3に等しい電気アクセプタ濃度でp+型ドープされている。この構造は、入射放射を受領する層(XCd=0.25)と吸収層(XCd=0.19)との間におけるカドミウム濃度が減少しており、吸収層の他端から、コンタクト層へと向かう向きにおいて、カドミウム組成勾配が減少している。コンタクト層は、吸収層とは逆の導電性を有しているとともに、吸収層のカドミウム濃度へと戻るように濃度勾配を増加させて形成されている。この光検出器は、高周波で動作し得るよう、高濃度でドープされた吸収層を有している。
【発明の概要】
【0009】
本発明の1つの目的は、実装が容易であるのと同時に、光生成されたキャリアがより良好にチャネリングすることを確保するような、フォトダイオード構造を製造するための方法を提供することである。
【0010】
この目的は、フォトダイオード構造を製造するための方法であって、
- CdZnTeまたはCdTeから形成された上層を少なくとも有した基板を提供する工程であり、上層は、第1導電型の第1電気的ドーパントの第1濃度と、第1カドミウム濃度と、を有しており、上層は、第1導電型である、工程と、
- カドミウムと可能であれば少なくとも1つの電気的ドーパントとを含めて第1層の前駆体を含有した単一の浴を使用して、液相エピタキシーにより、上層から、HgCdTeからなるまたはその少なくとも四元誘導体の1つからなる第1層を成長させる工程であり、浴は、第1カドミウム濃度よりも小さな第2カドミウム濃度と、可能であれば、第1電気的ドーパントの第1濃度よりも小さな第2電気的ドーパント濃度と、を有しており、少なくとも1つの電気的ドーパントは、第1電気的ドーパントおよび/または第2電気的ドーパントから選択され、液相エピタキシーは、カドミウム原子の一部に関しておよび第1電気的ドーパントに関して上層から第1層への拡散が得られる温度で行われ、これにより、上層と第1層との間の界面から離れるにつれて、界面から連続的に減少する第1カドミウム濃度勾配が形成され、第1濃度勾配内における最小の原子カドミウム濃度値は、10原子%~25原子%であり、これにより、第1層内において、少なくとも1つの電気的ドーパントの第2濃度勾配が形成されており、第2濃度勾配は、減少しており、第1層は、第1導電型であり、第1層の厚さは、6ミクロン未満である、工程と、
- 第2導電型でドープされた第2半導体材料から形成された少なくとも1つの接合層を形成することで、第1層と共にp-n接合またはp-i-n接合を形成する工程であり、第1カドミウム濃度勾配と、第1電気的ドーパントの第2濃度勾配とは、接合層の形成後でも、第1層内において保存される、工程と、
を順次的に含む、方法によって達成されやすい。
【0011】
1つの展開では、第1層の厚さは、第2層の形成後には、3ミクロン以上であり、好ましくは5ミクロン以下である。
【0012】
特定の実施形態では、第1濃度勾配は、界面から500nm~1.5ミクロンの距離にわたってカドミウム濃度が一定となるまで、第1層内において延びている。
【0013】
有利な態様では、第1濃度勾配内におけるカドミウム濃度差は、少なくとも10原子%に等しく、好ましくは少なくとも25原子%に等しい。
【0014】
第2濃度勾配が、第1層内において、界面から500nm~1.5ミクロンの距離にわたって、第1電気的ドーパント濃度が2×1015at/cm3未満となるまで、延びていることが、有利である。
【0015】
上層内における第1ドーパント濃度を、液相エピタキシー成膜工程の前の時点で、5×1015at/cm3~1×1019at/cm3とすることが、さらに有利である。
【0016】
好ましい実施形態では、第1層における第1電気的ドーパント濃度勾配は、5×1018at/cm3超の濃度から、2×1015at/cm3未満の濃度へと、減少している。
【0017】
有利には、第1層と接合層との合計厚さは、6ミクロン未満であり、好ましくは5ミクロン未満である。
【0018】
特定の構成では、基板は、第2層上に導電性コンタクトを形成した後に、少なくとも部分的にまたは全体的に、除去される。
【0019】
好ましくは、第1電気的ドーパントは、ヨウ素であり、ヨウ素の第2濃度勾配は、上層と第1層との間の界面を起点として、界面から離れる向きに、連続的に減少する。
【0020】
本発明の更なる目的は、光生成された電荷キャリアのチャネリングに関するより良好な制御を達成しつつ、従来技術の構成よりも優れた性能を呈するフォトダイオード構造を提供することである。
【0021】
フォトダイオード構造は、
- HgCdTeからなるまたはその少なくとも四元誘導体の1つからなる第1層であり、上層と第1層との間の界面を起点として界面から離れる向きに連続的に減少している第1カドミウム濃度勾配を含み、第1カドミウム濃度勾配内における原子カドミウム濃度の最小値は、10原子%~25原子%であり、第1層内に、少なくとも1つの電気的ドーパントの第2濃度勾配を含み、第2濃度勾配は、減少しており、第1層は、第1導電型であり、第1層の厚さは、6ミクロン未満である、第1層と、
- HgCdTeからなるまたはその少なくとも四元誘導体の1つからなる第2層であり、第1導電型とは逆の第2導電型の層とされ、第1層と第2層とにより、電磁信号を電子-正孔対へと変換する接合を形成するものとされ、第1層と第2層との間の界面に、少なくとも、第1層と同じ、HgとCdとTeとの組成を有している、第2層と、
を順次的に含む。
【0022】
他の利点および特徴は、非制限的な例示の目的のためだけに与えられているとともに添付図面に図示した、本発明の特定の実施形態および本発明の実装モードに関する以下の説明により、より明確に明瞭となることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明によるフォトダイオード構造を製造するための方法に関する第1工程を、断面図によって概略的に図示している。
【
図2】
図2は、本発明によるフォトダイオード構造を製造するための方法に関する第2工程を、断面図によって概略的に図示している。
【
図3】
図3は、本発明によるフォトダイオード構造を製造するための方法に関する第3工程を、断面図によって概略的に図示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
赤外領域における電磁放射を検出するには、収集した電磁信号を電気信号へと変換するようなpnダイオードまたはpinダイオードとされたフォトダイオードを使用することが好ましい。フォトダイオードは、n型導電性の層と、p型導電性の層と、によって形成された接合を有している。
【0025】
pnダイオードは、n型ドープされた半導体材料からなる第1層と、p型ドープされた半導体材料からなる第2層と、によって形成されている。半導体材料からなる2つの層は、直接的に接触しており、界面を規定している。
【0026】
pinダイオードは、n型ドープされた半導体材料からなる第1層と、p型ドープされた半導体材料からなる第2層と、意図せずにドープされた半導体材料からなる、または意図せずにドープされた半導体材料層のドーピング値に近い外部ドーピングを有した半導体材料からなる、第3層と、によって形成されている。第3層は、n型ドープされた半導体材料からなる第1層と、p型ドープされた半導体材料からなる第2層と、を分離しているとともに、第1層と第2層とに対する界面を有している。
【0027】
1つもしくは複数のドープされたまたは非ドープされた不動態化層を有しているような他のより複雑な構造を使用することができ、n型ドープされた半導体材料からなる第1層とp型ドープされた半導体材料からなる第2層とが接合を形成する限りにおいては、これら2つの層の間に介装される。接合の形成により、フォトダイオード内に空乏領域が形成されることが、確保される。空乏領域は、p型ドープされた層内へと部分的に延びているとともに、n型ドープされた層内へと部分的に延びている。Martyniukが開示した構造とは異なり、光検出器は、単一のpn接合を、または単一のpin接合を、有しているのみである。言い換えれば、光検出器は、npn構造でもpnp構造でもない。光検出器は、構造的に異なるものであって、電荷キャリアの収集モードが相違しており、これは、光検出器の動作モードが相違することを、意味している。
【0028】
赤外放射を取り込むために、赤外領域で小さなバンドギャップ値を有した半導体材料から形成された、例えば一般的な組成が化学式HgCdTeによって表される材料から形成された、フォトダイオードを使用することができる。バンドギャップ値が合金の組成に応じて変化するため、ダイオードが収集する波長範囲を調整することが可能とされる。HgCdTeベースの合金の場合には、バンドギャップ値は、カドミウム濃度によって、および水銀濃度によって、変化する。HgCdTe材料から形成された層は、Hg、Cd、Teを主成分とする層である。各成分に関する厳密な組成は、特段に指定がない限り、規定されない。
【0029】
良好な性能を示すフォトダイオードを製造するためには、好ましくは良好な性能を示す多数のフォトダイオードを製造するためには、基板上にフォトダイオードを形成することが有利であり、より詳細には、液相エピタキシー工程によってフォトダイオードの少なくとも1つの活性層を形成することが有利である。
【0030】
特定の構成では、n型ドープされた半導体材料からなる第1層が、基板上に形成され、その後、p型ドープされた第2層が、形成される。別の構成では、p型ドープされた第1層が、基板上に形成され、その後、n型ドープされた第2層が、形成される。
【0031】
光生成された電荷キャリアの良好なチャネリングを得るためには、n型ドープされた半導体材料からなる第1層の内部に、および/またはp型ドープされた半導体材料からなる第1層の内部に、電気的ドーピング勾配が存在するフォトダイオードを形成することが有利である。同じことは、半導体材料からなる第2層においても、有利である。しかしながら、電気的ドーピングレベルは、光検出に関して、および電気光学性能(特に、暗電流)に関して、影響を及ぼすため、電気的ドーピング勾配をバンド幅勾配に対して関連付けることで、最も電気的にドープされた領域が電気光学的により活性でないものとすることが有利である。
【0032】
n型ドープされた半導体材料からなる層が基板上に形成された後に、p型ドープされた半導体材料からなる層が形成される場合には、電気的に活性なn型ドーパントの濃度が、基板から、p型ドープされた半導体材料からなる層に向けて、減少していることが有利である。n型ドープされた半導体材料からなる層内におけるバンドギャップ幅も、また、基板に対する界面から、p型ドープされた半導体材料からなる層に向けて、減少している。
【0033】
p型ドープされた半導体材料からなる層が基板上に形成された後に、n型ドープされた半導体材料からなる層が形成される場合には、電気的に活性なp型ドーパントの濃度が、基板から、n型ドープされた半導体材料からなる層に向けて、減少していることが有利である。p型ドープされた半導体材料からなる層内におけるバンドギャップ幅も、また、基板に対する界面から、減少している。
【0034】
n型ドーパントまたはp型ドーパントの濃度が連続的に減少していることが特に有利である、あるいは、n型ドーパントまたはp型ドーパントの濃度に、可能であれば1つもしくは複数のプラトーが存在することが特に有利である。有利な実施形態では、n型またはp型の電気的ドーパントの濃度は、pn接合またはpin接合を形成するために、p型ドープされた層またはn型ドープされた層に対する隣接部分内で一定となったり実質的に一定となったりする前に、基板に対する界面から厳密に減少している。
【0035】
液相エピタキシー操作によってそのような濃度勾配を達成することは、異なるドーパント濃度を有したおよび異なる主成分濃度を有した複数の成長浴を提供する必要があることのために、特に複雑である。勾配を形成するように異なる組成を有した連続した複数の層を形成するよう、複数の浴は、互いに順次的なものとされる。さらに、良好な結晶学的品質を有した界面の形成を容易とするよう、基板の上層の一部を融解させることが通常的な手法である。連続した複数の層を高温で形成した場合には、先に形成された層が、全体的にまたは部分的に溶解するため、最終的な濃度プロファイルは、初期的に要求されたプロファイルから、著しく逸脱してしまう。この欠点は、連続した複数の浴を使用して液相で順次的にエピタキシーを行うことの利点を、制限することとなる。この問題点は、勾配が薄い厚みにわたって形成されることのために、より深刻なものとなり得る。
【0036】
液相エピタキシーによってCdTe基板上にHgCdTe層を成長させることが、公知である。米国特許第4376663号明細書という上記文献における教示を引用することができ、この文献は、CdTe基板上に、HgCdTe層を液相エピタキシャル成長させ、その後、HgCdTe層上に、CdTe層を成長させることを提示している。
【0037】
n型またはp型の電気ドーピング勾配を容易に達成するよう、液相エピタキシー工程において基板原子の拡散現象を使用することが提案されている。原子は、液相エピタキシー工程時に同じ熱履歴を受けることにより、HgCdTe合金内の成分に関するドーピングプロファイルと、基板に対する界面からのn型またはp型の電気的ドーパントのプロファイルとを、より良好に相関させることが可能とされる。好ましい態様では、液相エピタキシーは、テルルに富んだ層を形成する目的で、テルルの過飽和によって実行される。
【0038】
図1に示すように、基板1は、第1半導体材料から形成された少なくとも上層2を有して、提供される。第1半導体材料からなる上層2は、CdTeとCdZnTeとから選択される。上層2の厚さは、基板とは異なる時には、有利には500nmより大きく、より好ましくは2ミクロンより小さい。第1半導体材料は、第1カドミウム濃度を有している。有利な構成では、カドミウムは、CdZnTeタイプの材料において、上層2の少なくとも30原子%を占め、より有利には少なくとも40原子%を占め、さらに有利には少なくとも45原子%を占める。好ましくは、CdZnTeタイプの材料は、50原子%に等しいテルル含有量と、45%以上のカドミウム含有量と、5%以下の亜鉛含有量と、を有している。
【0039】
上層2は、第1電気的ドーパントを有している。第1電気的ドーパントは、例えば、塩素、ヨウ素、およびインジウムなどの、n型ドーパントとすることができる、あるいは、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、銅、銀、および金などの、p型ドーパントとすることができる。上層2は、単一の、n型またはp型の電気的ドーパントを有することができる、あるいは、異なる拡散速度を利用する目的で、複数の異なる電気的ドーパントを有することができる。上層2が、完成後のダイオード内で、電流の流れに寄与する時には、第1電気的ドーパントは、上層2の電気活性ドーパントであり、第1電気的ドーパントの少なくとも一部は、置換位置に配置される。
【0040】
液相エピタキシー工程の前に、上層2内への第1電気的ドーパントの導入を、その後に良質な単結晶第1層3を成長させるための良質の結晶学的シードの形成を促進するために基板1の表面に関する再結晶化アニールが有利には引き続いて行われる注入工程によって、行うことができる。再結晶化アニールは、有利には、400℃以上の温度で実行される。また、第1電気的ドーパントの前駆体を含有した雰囲気で基板1をアニールすることにより、第1層2のドーピングを行うこともできる。さらに、例えば結晶成長によって形成が行われる時に、より詳細には、その後に基板1を形成するためにスライスされるインゴットを引き上げる時に、上層2をドープすることもできる。
【0041】
液相エピタキシーによる第1層3の形成工程時には、カドミウム含有量の一部は、および第1電気的ドーパント含有量の一部は、上層2から、第1層3へと、移動することとなる。第1層3は、カドミウムが主成分の1つであるような三元のまたは少なくとも三元の例えば四元の合金であるような半導体材料から、形成される。
【0042】
一実施形態では、上層2は、基板1の最上部領域に対応している、すなわち、上層2は、基板1と同じ半導体材料から形成されているとともに、同じカドミウム濃度を有している。代替可能な実施形態では、上層2は、エピタキシー時における第1層3内のカドミウムプロファイルをより良好に制御するよう、基板1のカドミウム濃度よりも大きな、あるいは可能であれば基板1のカドミウム濃度よりも小さな、カドミウム濃度を有している。また、第1電気的ドーパントの濃度を、基板と上層2との間で同一とすることもできる。
【0043】
図2に示すように、第2半導体材料からなる第1層3が、第1半導体材料からなる上層2から、液相エピタキシーによって成長される。第1層3は、上層2に対する界面を有している。第1層3の厚さは、好ましくは500nm超であり、有利には6ミクロン未満である。さらに好ましくは、厚さは、1ミクロン超であり、有利には6ミクロン以下であり、さらには5ミクロン以下である。第1層3の厚さは、好ましくは3ミクロン超であり、このため、最終構造は、少なくとも2ミクロンにわたって延びる吸収性領域を有することとなる。
【0044】
第2半導体材料は、少なくともHgとCdとTeとを含有した合金である。形成された半導体材料は、単結晶であり、化学式Hg1-xCdxTeによって、またはより一般的には化学式HgCdTeによって、表すことができる。第2半導体材料は、HgCdTeの少なくとも四元誘導体とすることができ、例えば、Hg1-x-yCdxZnyTe、Hg1-x-yCdxMnyTe、またはHg1-xCdxTe1-zSez、とすることができる。一般的な態様では、第2半導体材料は、少なくともカドミウム濃度によって変化するバンドギャップエネルギ値を有した材料である。第1半導体材料は、第2半導体材料とは相違しているものの、上層2の表面から第1層3の単結晶成長を行うために、格子定数の調整を可能としている。
【0045】
液相エピタキシー工程は、HgとCdとTeとを有した、可能であればZn、Mn、Se、または他の必要な材料を有した、第2半導体材料の形成に関与するすべての元素を含有した単一の浴を使用する。浴は、また、第2半導体材料からなる第1層3を電気的にドープするよう、少なくとも1つの電気的ドーパントを含有することができる。少なくとも1つの電気的ドーパントは、第1電気的ドーパントとすることができる、および/または、同じ導電型の第2電気的ドーパントとすることができる。浴は、成長時には変更されることがなく、例えば、浴に対して成分が追加されることがない。
【0046】
第1層3を形成する材料は、液相エピタキシーによって、第2半導体材料からなる単結晶第1層3を形成し得るように選択される。浴は、上層2のカドミウム濃度よりも小さなカドミウム濃度を有している。浴が電気的ドーパントを含有する場合には、その濃度は、上層2の第1電気的ドーパントの濃度よりも小さい。
【0047】
液相エピタキシャル成長が行われる時には、少なくとも1つの電気的ドーパントおよびカドミウムは、上層2から、第2半導体材料からなる第1層3へと、拡散する。
【0048】
上層2からの成長により、上層2に対する界面からカドミウム濃度勾配が生成され、これにより、第1層3内において、上層2に対する界面を起点として界面から離間するにつれて減少するバンドギャップ幅勾配が生成される。第1層3内、すなわち、勾配の底部および/または一定部分における最小カドミウム濃度は、目標をなす赤外放射の良好な吸収が得られるよう、10原子%~25原子%とされる。また、電気光学的挙動を適切に分離させるよう、カドミウム勾配が、少なくとも10原子%に等しいまたは少なくとも25原子%に等しい濃度差を表すことが好ましい。
【0049】
成長が進むにつれて、上層2内に存在するカドミウムは、より大きな距離にわたって拡散しなければならないことから、およびそれ自体が消費されることから、移動することがますます困難となる。浴内に存在するカドミウムと、上層2に由来するカドミウムと、の間において、平衡が生成される。第1層3の成長フロント上におけるカドミウム濃度は、浴によって規定される値へとカドミウム濃度が最終的に到達するまでは、減少することとなり、カドミウム濃度は、例えば勾配が1%未満であるといったように、一定またはほぼ一定となる。一定のカドミウム濃度が意味することは、濃度が、50nmにわたって1原子%未満の変動しか有していないことである。
【0050】
第1層3の成長条件は、好ましくは、少なくとも100nmにわたって、有利には少なくとも500nmまたは1ミクロンまたは2ミクロンにわたって、一定のカドミウム濃度を有した第1層3を形成するように、選択される。また、一定のカドミウム濃度が、界面から500nm~1.5ミクロンの距離のところに配置されていることが、有利である。
【0051】
同時に、電気的ドーパント濃度勾配が、第1層3内に形成される。電気的ドーパントは、主に、またはほぼ独占的に、置換位置に配置される。この電気的ドーパント濃度勾配は、成長浴内における成分の変更に関連するものではなく、上層2からの、可能であれば浴からの、結晶格子内への第1電気的ドーパントの取込/拡散の進行に関連するものであり、また、第2電気的ドーパントの可能な取込に関連するものである。好ましくは、電気的ドーパント濃度勾配は、少なくとも500nmにわたって延びており、さらに好ましくは500nm~1.5ミクロンにわたって延びている。また、第1電気的ドーパント濃度が2×1015at/cm3未満となるまでは、勾配が延びていることが好ましい。
【0052】
特定の事例では、電気的ドーパントは、インジウムであり、電気的ドーパントの濃度は、上層2と第1層3との間の界面を起点として減少する。別の特定の事例では、電気的ドーパントはヨウ素であり、界面のところで、または界面に対して非常に近いところで、第1電気的ドーパントのピークが存在し、これにより、濃度は、わずかに増大した後に、第1層3の残部にわたって減少することができる。
【0053】
好ましい実施形態では、浴内の電気的ドーパント濃度は、ゼロである。有利な態様では、成長条件は、浴内における第1電気的ドーパントの濃度が、例えば2×1015cm-3以下といったような濃度、第1層3内での必要最小濃度を規定するように、選択される。第1層3の成長が行われる時には、電気的ドーパント濃度は、減少し、その後、浴によって規定される値で、一定であることができる。一定の電気的ドーパント濃度が意味することは、濃度が、50nmにわたって、10%未満の相対変動しか有していないことである。
【0054】
有利には、第1層3の成長は、第1層3が、少なくとも500nmにわたって一定のカドミウム濃度を呈するまで、および少なくとも50nmにわたって10%未満しか変化しない電気的ドーパント濃度を呈するまで、実行される。浴が、第1電気的ドーパントを全く含有していない場合には、成長は、好ましくは、第1層3が意図せずにドープされるまで、およびカドミウム濃度が一定となるまで、実行される。好ましくは、第1層3は、少なくとも2ミクロンにわたって少なくとも一定のカドミウム濃度を呈するまで、形成される。
【0055】
液相エピタキシー工程の温度は、カドミウムおよび第1電気的ドーパントの拡散を確実に行う閾値温度と比較して、より大きなものとされる。液相エピタキシー工程の熱履歴(時間と温度との積算)は、第1層3の厚さにわたってカドミウムおよび/または第1電気的ドーパントの均一化を実行する閾値熱履歴と比較して、より小さい。温度が低すぎた場合には、カドミウムおよび第1ドーパントが拡散することができず、必要な減少プロファイルを形成することができない。逆に、熱履歴が大きすぎた場合には、カドミウムおよび/または第1電気的ドーパントが拡散しすぎることとなり、濃度が、成膜した第1層3の厚さにわたって、均一となってしまう。液相エピタキシー温度は、400℃~500℃とすることができる。
【0056】
別の技術分野では、米国特許第5861321号明細書という文献により、液相エピタキシーによって、CdTe基板上に、またはCdZnTe基板上に、HgCdTe層を成長させることが公知である。HgCdTe層の厚さは、少なくとも30ミクロンである。基板は、n型またはp型にドープされ、HgCdTe層は、非ドープで形成される。その後、アニールが実行されることで、HgCdTe層内に、均一なドーピングが形成される。別の実施形態では、基板は、基板内に存在するドーパントによってドープされる。均一化アニールは、成長時に実行される。
【0057】
液相エピタキシーによる第1層3の成長工程は、第1層3の厚さが、有利には5ミクロン未満であるように、好ましくは4ミクロン未満であるように、構成される。液相エピタキシーによる第1層3の成長工程は、第1層3の厚さが、有利には1ミクロン超であるように、好ましくは2ミクロン超であるように、構成される。厚さが低減された第1層3を形成することにより、成長が行われる時の熱履歴が低減され、これにより、濃度の均一化に向かう傾向のある拡散現象が制限される。
【0058】
カドミウム勾配の程度が、2ミクロン未満であるようにして、さらには1.5ミクロン未満であるようにして、第1層3を形成することが特に有利であり、ここで、第1層3内における勾配の程度は、上層に対する界面から、第1元素の濃度が一定となる部分までにわたって、測定される。
【0059】
有利な態様では、カドミウム勾配の範囲は、1.5ミクロン未満であり、より好ましくは1ミクロン未満である。カドミウム勾配の範囲が、100nm超であるようにして、好ましくは500nm超であるようにして、第1層3を形成することが特に有利である。
【0060】
有利な実施形態では、第1層3は、少なくとも10原子%に等しいものとされた、好ましくは30原子%以下または20原子%以下とされた、最小カドミウム濃度を、すなわち第1勾配におけるカドミウムに富まない部分を、有している。
【0061】
第1電気的ドーパントおよびカドミウムは、拡散によって第1層3内へと浸透することにより、カドミウムおよび第1電気的ドーパントは、同様のかつ良好に制御されたドーピングプロファイルを有することができる。同様が意味することは、プロファイルの形状が互いに似通っているのと同時に、それらの濃度プロファイルが半対数スケールで観察される時に、非常に異なる濃度レベルに対応していることである。第1濃度勾配の範囲と、第2濃度勾配の範囲とは、好ましくは同一である、あるいは、厚さにわたって、1ミクロン未満の差を呈する、さらには500nm未満の差を呈する。
【0062】
有利な態様では、液相エピタキシー工程の前の時点で、上層2は、5×1016at/cm3以上であるような、有利には5×1017at/cm3以上であるような、さらには5×1018at/cm3または1×1019at/cm3以上であるような、第1電気的ドーパントの濃度を有している。濃度は、好ましくは5×1015at/cm3~1×1019at/cm3である。
【0063】
例えばインジウムまたはヨウ素から形成された、上層2内における第1電気的ドーパントの濃度を、活性電気的ドーパントが第1層3内へと少なくとも5×1018at/cm3で好ましくは少なくとも1×1019at/cm3で取り込まれることを確保するように選択することが、特に有利である。
【0064】
好ましい態様では、第2電気的ドーパント濃度勾配は、その最高濃度と最低濃度との間に、少なくとも10に等しい、または少なくとも50に等しい、または少なくとも100に等しい、またはさらには1000に等しい、濃度比を呈する。このようなプロファイルは、単一の浴を使用した単一液相エピタキシー操作において得られる。
【0065】
上層2内の第1電気的ドーパントの濃度と、液体浴内のドーパントの濃度と、液相エピタキシー工程における操作条件とが、第1層3内におけるドーピングプロファイルを規定する。
【0066】
第1層3が一定の電気的ドーパント濃度へと到達する前に一定のカドミウム濃度へと到達するような成長操作条件を選択することが、有利である。第1電気的ドーパントの最小濃度は、第1層3におけるカドミウム含有量が一定の部分またはほぼ一定の部分にのみ存在するとともに、好ましくは5×1013at/cm3~2×1015at/cm3とされる。
【0067】
成長浴では、n型またはp型の電気的活性ドーパントの取込を確保する濃度を、第1層3の一定またはほぼ一定の部分において、5×1015at/cm3未満に、好ましくは2×1015at/cm3未満に、さらに好ましくは5×1014at/cm3未満に、選択することが、特に有利である。
【0068】
好ましい態様では、第1層3は、少なくとも1×1018at/cm3または5×1018at/cm3に等しい第1ドーパント濃度から2×1015at/cm3未満へと、好ましくは少なくとも4×1018at/cm3に等しい値から8×1014at/cm3未満の値へと、厳密に減少する濃度勾配を有した電気的活性ドーパントの濃度とされる。吸収領域で弱いドーピングを達成するドーピング勾配を使用することにより、あるいは、層内における空乏に対応したレベルとなる傾向を有したドーピング勾配を使用することにより、電荷キャリアを、より効率的に案内することができる。そのような構成は、クロストークを低減するとともに、変調伝達関数(MTF)を向上させる。
【0069】
液相エピタキシー工程時には、カドミウム濃度が変更され、これにより、蒸着材料のバンドギャップ幅が変化する。同時に、第1電気的ドーパントの濃度が変化し、減少する傾向にある。この2つの濃度勾配の特徴は、複数の成長浴によって規定されるのではなく、液相エピタキシー工程における熱履歴に関連して上層内のおよび浴内のカドミウム濃度ならびに第1電気的ドーパント濃度によって規定される。2つの濃度勾配は、1つまたは複数の事前シミュレーションを実行することにより、規定することができる。そのシミュレーションでは、カドミウム拡散係数と、第1電気的ドーパント拡散係数と、浴内でのおよび上層2内での各濃度と、成長の進行に伴うそれら2つの成分の枯渇と、が考慮される。
【0070】
バンドギャップ幅の変調と電気的ドーパントの変調とを呈するカドミウム濃度の変調により、第1層3におけるいくつかの個別部分を、単一ステップで、電磁信号を電気信号へと変換するようにさらにこの電気信号の伝導を促進するように機能化することを可能とする。
【0071】
第1層3は、電気信号の通過を容易とするように設計された第1部分3aと、少なくともその厚さの一部にわたって、電磁信号のみをまたは主に電磁信号を取り込むように設計された第2部分3bと、を有している。
【0072】
第2半導体材料からなる第1部分3aを、第1電気的ドーパントに富むようにさらに全体的にカドミウムに富むように形成することにより、広いバンドギャップを有した低抵抗層を形成することができ、これにより、電気信号の良好な伝達が確保される。第1部分3aは、電気光学的に活性が小さいことにより、フォトダイオードが提供する信号品質に対する結晶欠陥の影響を低減することができる。第2部分3bは、フォトダイオード構造の吸収部分を形成する、すなわち、電磁放射を取り込むように設計された部分を形成する。第2部分3bは、必要な電磁放射を収集するために、閾値よりも小さなバンドギャップ幅を呈する。第2部分3bは、より小さなバンドギャップ幅を呈するものであって、光検出器に対して良好な光電子性能を提供するよう、弱くドープされる、あるいは、ドープされない。弱いドーピングの使用により、光検出器の性能を損なうパラメータである暗電流の値を低減することができ、これにより、より厚い吸収層の使用を容易とする。
【0073】
第2部分3bは、好ましくは、25原子%に等しい閾値よりも小さなカドミウム濃度を呈し、さらに好ましくは、一定のカドミウム濃度を呈する。第2部分3bは、好ましくは1ミクロン~4.5ミクロンの厚さを含み、より好ましくは1.5ミクロン~4ミクロンの厚さを含み、さらには2ミクロン~4ミクロンの厚さを含む。第2部分の厚さは、接合を完成するように設計された第2層4の形成モードに応じて、選択することができる。1ミクロン以上超の、好ましくは1.5ミクロン超の、吸収層の使用は、より良好な量子効率を達成することを可能とし、これにより、撮像分野での使用を容易とする。有利には、第2部分3bは、2×1015at/cm3未満の第1電気的ドーパント濃度を有している。例えば、第2半導体材料から形成された第1層3がなす第2部分3bは、一定もしくはほぼ一定のカドミウム濃度を有した部分を含有しており、またはそのような部分だけによって形成されており、最も光学的に活性な、n型またはp型にドープされた層を形成している。
【0074】
第1部分3aは、好ましくは、カドミウム濃度に関して、第2部分3bの最大値に対応した最小値を呈する。第1部分3aは、好ましくは、最大値が、少なくとも30原子%であるような、有利には少なくとも40原子%または50原子%であるような、カドミウム濃度を呈する。有利には、第2部分3bは、2×1015at/cm3超の第1電気的ドーパント濃度を有している。第1部分3aは、カドミウム濃度が一定とされた領域を有することができる。第1部分3aは、好ましくは1ミクロン~4ミクロンの厚さを含み、さらに好ましくは2ミクロン~4ミクロンの厚さを含む。
【0075】
第1電気的ドーパント濃度勾配が存在することにより、第1層3内における電界または擬似電界の形成が確保され、これにより、光生成された電荷キャリアを、第1部分3aから、低抵抗で信号の効率的な伝達を実行し得る第2部分3bへと、伝達することを可能とする。第2部分3bと第1部分3aとの間には、成長界面が存在していないため、信号の良好な伝達が確保される。
【0076】
有利な態様では、上層2は、可能であれば浴は、第1電気的ドーパントだけを含む、あるいは、第1電気的ドーパントがその大部分を占めている。液相エピタキシー工程の条件および第1電気的ドーパントの濃度が、第1電気的ドーパント濃度プロファイルをカドミウム濃度プロファイルに一致させることを可能としない場合には、上層2を、第1電気的ドーパントと同じ導電型の第2電気的ドーパントによってドープすることが、有利である。第2電気的ドーパントは、第1層3の形成時に第1電気的ドーパントとは異なる拡散速度を呈するように、選択される。例えば、n型ドーピングの場合、電気ドーピングプロファイルを、カドミウムによって規定されるバンドギャップ幅プロファイルに対して一致させる目的で、インジウムと関連してヨウ素を使用することができる。
【0077】
第1ドーパントの含有量の変更は、第1層3の厚さにわたって連続的に実行され、これにより、n型またはp型の電気活性ドーパントの濃度を連続的に変更することを容易に達成することができ、したがって、電界の出現により、光生成された電荷キャリアを効率的にチャネリングさせることを可能とする。
【0078】
図3に示すように、第1半導体材料からなる第1層3が形成された後には、フォトダイオードの残部を形成することができ、特に、pn接合またはpin接合を規定するための逆導電性の第2層4を形成することができる。第1層3が、n型にドープされている時には、第2層4は、p型にドープされる。逆に、第1層3が、p型にドープされている時には、第2層4は、n型にドープされる。上述したように、pin接合を形成するために、第2層4よりも先に、1つまたは複数の他の層を成膜することができる。また、接合を規定するp型ドープ層とn型ドープ層とを分離するような、意図せずにドープされた第3層5を形成することもできる。層5は、1つまたは複数の異なる材料によって形成することができる。
【0079】
第2層4は、閾値よりも小さなバンドギャップ幅を有した第3半導体材料から形成される。フォトダイオードの活性光学部分または最も活性な光学部分は、バンドギャップ幅が閾値よりも小さな材料によって形成されることにより、フォトダイオードは、第1部分3aとは異なる特定範囲の電磁放射に対して感応する。この電磁放射は、より大きなバンドギャップ幅を有した第1層2の第1部分3aによっては、収集されない。第3半導体材料は、有利には、好ましくはHgCdTeのもしくはHgCdTeベースの、三元合金または少なくとも三元合金である。有利な態様では、第1層3と第2層4との合計厚さは、6ミクロン以下であり、さらには5ミクロン以下である。
【0080】
例えば、第3半導体材料から形成された第2層4は、エピタキシーによって、有利には液相エピタキシーによって、分子線エピタキシー(MBE)によって、または有機金属化学気相蒸着(MOCVD)によって、成膜される。
【0081】
代替可能な実施形態では、pn接合を形成するように設計された第2層4は、逆の電気伝導性を有したドーパントの注入によって、またはドーパントの前駆体を含有した雰囲気を使用した拡散によって、得られる。第3半導体材料は、第2半導体材料と同一とすることができる。第2層4は、外部ドーピングによって第1層3内に形成される。層3および4によって形成された接合の厚さは、液相エピタキシーによって形成された第1層3の初期厚さに対応する。
【0082】
第1層3と第2層4との合計厚さは、有利には5ミクロン未満である。第1層3の厚さは、第2層が第1層3上に成膜されるかまたは第1層3内に形成されるかに応じて、調整される。特定の実施形態では、第1層3の厚さは、第2層4の形成後に、3ミクロン以上であり、有利には5ミクロン以下である。
【0083】
第1カドミウム濃度勾配と、第1電気的ドーパントの第2勾配とは、第2層4の形成が行われる時には、第1層3内において保存される。
【0084】
好ましい態様では、フォトダイオードの内部における電磁放射の吸収は、主に、第1層3の第2部分3b内で行われる。第1層3の第2部分3bの厚さは、良好な電気光学特性を有した領域が保存されるよう、第2層が第1層内に形成される時には、第3半導体材料からなる第2層4の厚さよりも大きい。
【0085】
第2層4上に、または少なくとも第2層4に対して電気的に接触するようにして、導電性コンタクト6を形成することが、特に有利である。導電性コンタクト6は、有利には純金属材料からなるまたは金属合金からなるコンタクト層によって形成することができる。コンタクト層は、コンタクト6を形成するために、成膜後にエッチングすることができる。同じ基板1上に複数のフォトダイオードが形成される時には、各フォトダイオード上に、特定のコンタクトが形成される。第1カドミウム濃度勾配と、第1電気的ドーパントの第2勾配とは、1つまたは複数のコンタクト6の形成が行われる時には、第1層3内において保存される。
【0086】
フォトダイオードは、有利には、例えば窒化ケイ素Si3N4からまたは酸化ケイ素SiOxからまたはZnS層から形成された被覆層7によって、部分的に覆われ、これにより、外部環境から、例えば湿気から、フォトダイオードが保護される。第1カドミウム濃度勾配と、第1電気的ドーパントの第2勾配とは、被覆層7の形成が行われる時には、第1層3内において保存される。
【0087】
第1層3と、第2層4と、存在する場合には第3層5と、の成長は、有利には、複数のフォトダイオードが形成されるようにして、実行される。一つより多くのフォトダイオードを、フォトダイオードアレイの形態で形成することが、有利である。
【0088】
導電性コンタクト6は、フォトダイオードにバイアスを印加することで、観察されたシーンを代理した電気信号を受信することとなる読出回路に対して、接続されるように設計される。各フォトダイオードを読出回路に対して関連付けることが、有利である。複数の読出回路は、また、読出回路アレイとして接続されることで、複数の読出回路を、複数のフォトダイオードに対してハイブリッド接続して、フォーカルプレーンアレイ(FPA)を形成する。
【0089】
フォトダイオードを、低温で好ましくは0℃未満でより好ましくは130K~250Kの範囲で、動作させることが、特に有利である。
【0090】
フォトダイオードが形成された後には、例えば導電性コンタクト6が形成された後には、または被覆層7が成膜された後には、または読出回路とのハイブリッド化が行われた後には、基板1を除去することが考えられる。代替的な方法として、基板1を薄肉化することができる、あるいは、基板1を初期の厚さのままで維持することができる。電磁放射は、基板1を介して、フォトダイオード構造内へと入射する。
【0091】
n型導電性でドープされた第1層3とp型導電性でドープされた第2層4とから形成された接合を含むフォトダイオード構造が、提案されている。第1層は、第1半導体材料から形成されているとともに、高濃度でドープされた第1部分3aと、弱くドープされた第2部分3bと、を規定している。
【0092】
フォトダイオード構造は、第1半導体材料から形成された第1層の第1部分と、第1半導体材料から形成された第1層の第2部分と、第2半導体材料から形成された第2層と、を順次的に含む。第1層3と第2層4とは、電磁信号を電子-正孔対へと変換する接合を形成する。
【0093】
第2層4が、接合を形成するために、第1層3内へと第2導電型のドーパントを注入することによって形成されている時には、接合の両側には、ドーピングの型を除いて、同じ半導体材料が存在する。
【0094】
HgCdTeから形成されたまたはその少なくとも四元誘導体の1つから形成された第1層3を有したフォトダイオードが、得られる。第1層3は、第1カドミウム濃度勾配と、第1電気的ドーパントの第2濃度勾配と、を含む。第1濃度勾配と第2濃度勾配とは、両方とも、第1層3の一端部を起点として、減少している。この端部は、基板1および上層2が除去された時には、被覆されていないものとすることができる、あるいは、事前規定された光学特性を有した材料によってコーティングされていないものとすることができる。構成によっては、基板1は、第2層4上に導電性コンタクト6を形成した後に少なくとも部分的に除去される、あるいは、基板1は、第2層4上に導電性コンタクト6を形成した後に完全に除去される。
【0095】
第1層3は、第1導電型のものであり、6ミクロン未満の厚さを呈する。第2層4も、また、HgCdTeから、またはその少なくとも四元誘導体の1つから、形成される。第2層4は、第1導電型とは逆の第2導電型の層であり、第1層と第2層とは、電磁信号を電子-正孔対へと変換する接合を形成している。第2層4は、第1層3と第2層4との間の界面に、少なくとも、第1層3と同じ、HgとCdとTeとの組成を有している。
【0096】
第1層3は、第1部分3aと第2部分3bとの間で、減少するカドミウム濃度と、減少する電気活性ドーパント濃度と、を呈し、これにより、より良好な品質の信号を提供することを可能とする。濃度の減少は、不連続性を有していない。
【0097】
濃度勾配を形成するために液相エピタキシー工程で行われる予防措置は、ダイオードを形成するための方法の最後まで、維持される。ダイオードを製造するための方法は、第1層の厚さの全体にわたってカドミウム濃度および/または第1電気的ドーパント濃度を均一化するアニールを、含んでいない。
【0098】
従来技術による方法では、電気活性ドーパント濃度プロファイルは、連続した複数の浴の個数に対応した多数のクレネルによって得られる。複数のクレネルによって形成されたプロファイルは、その後に、クレネルを消失させるように設計されたアニールに供される。カドミウムの拡散速度は、n型電気活性ドーパントの拡散速度とは異なるため、上述した方法によって得られるプロファイルと同一のプロファイルを得ることが、特に困難である。ドーピングが、液相エピタキシーによる成長が行われる時に得られるため、このドーピング方法は、特に電気光学的に活性となる弱ドープ領域において、注入工程と比較して、欠陥の発生がかなり少ない。
【0099】
フォトダイオードの構造は、光生成された電荷キャリアを、より良好に制御することを可能とし、例えば、複数のフォトダイオードを接続することでアレイを形成する時には、得られる画像のぼやけが低減されることを可能とする。
【国際調査報告】