(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(54)【発明の名称】BL-8040の組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/10 20060101AFI20240105BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240105BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240105BHJP
A61P 15/14 20060101ALI20240105BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240105BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20240105BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20240105BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20240105BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240105BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20240105BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240105BHJP
C07K 1/04 20060101ALN20240105BHJP
C07K 7/64 20060101ALN20240105BHJP
【FI】
A61K38/10
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P15/14
A61P1/18
A61P7/04
A61P31/18
A61K38/12
A61K9/08
A61K47/46
A61K47/42
C07K1/04 ZNA
C07K7/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540581
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 IL2021051548
(87)【国際公開番号】W WO2022144885
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515264805
【氏名又は名称】バイオラインアールエックス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BioLineRx Ltd.
【住所又は居所原語表記】2 HaMaayan Street, 7177871 ModiIn, Israel
(71)【出願人】
【識別番号】511304383
【氏名又は名称】バイオカイン セラピューティックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハールブフィンガー、エフラット
(72)【発明者】
【氏名】ペレド、アムノン
(72)【発明者】
【氏名】ソラーニ、エラ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB01
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4H045AA10
4H045AA20
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4H045BA30
4H045CA50
4H045EA20
4H045FA33
4H045GA25
(57)【要約】
BL-8040(配列番号1)を含む組成物が本明細書に開示され、これは、BL-8040によって治療可能な状態の治療に使用するためのものであり得る。本組成物は、本明細書に記載の条件下において、0.86~0.88の相対保持時間、及び/又は0.71~0.73の相対保持時間を特徴とする(BL-8040の相対保持時間は1である)、少なくとも1つの化合物を更に含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BL-8040(配列番号1)と、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物とを含む組成物(composition-of-matter)であって、
前記相対保持時間は、約3.0~約3.3の範囲内のpHの0.017Mの過塩素酸塩の水溶液である第1の移動相、アセトニトリルである第2の移動相、前記第2の移動相の濃度が約20%の初期濃度から約50分で約10%増加する勾配、C18逆相カラム、約5μL~約20μLの範囲内の注入体積、及び約1mL/分の流速を用いて、約40℃の温度で決定され、前記BL-8040(配列番号1)の相対保持時間が、1と定義される、
組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの化合物が、約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、前記組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも20%に相当する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの化合物が、約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、前記組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも50%に相当する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの化合物が、BL-8040(配列番号1)と同じ分子量を有する化合物、及び/又はBL-8040(配列番号1)の分子量よりも約80Da大きい分子量を有する化合物を含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記BL-8040(配列番号1)に対する前記少なくとも1つの化合物の総濃度比が、少なくとも約0.01%である、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記BL-8040(配列番号1)に対する前記少なくとも1つの化合物の総濃度比が、少なくとも約1%以下である、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記BL-8040(配列番号1)に対する前記少なくとも1つの化合物の総濃度比が、約0.075%~約0.225%の範囲内である、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物を更に含む、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物が、約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、前記組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも10%に相当する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記BL-8040(配列番号1)に対する0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物の総濃度比が、少なくとも約0.01%である、請求項8又は請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記BL-8040(配列番号1)に対する0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物の前記総濃度比が、約0.03%~約0.15%の範囲内である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物及び0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物の総濃度が、約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、前記組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも50%に相当する、請求項8~請求項11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物中の環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度が、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物の総濃度の50%以下である、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物中の環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度が、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物の総濃度の50%以下である、請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物中の環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度が、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物の総濃度の80%以下である、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記逆相カラムが、長さ約250mm、内径約4.6mm、及び粒径約5μmのうち少なくとも1つを特徴とする、請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
BL-8040(配列番号1)と、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物とを含む組成物であって、前記BL-8040(配列番号1)に対する前記少なくとも1つの化合物の総濃度比が、約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、0.075%~0.225%の範囲内であり、
前記相対保持時間が、約3.0~約3.3の範囲内のpHの0.017Mの過塩素酸塩の水溶液である第1の移動相、アセトニトリルである第2の移動相、前記第2の移動相の濃度が約20%の初期濃度から約50分で約10%増加する勾配、C18逆相カラム、約5μL~約20μLの範囲内の注入体積、及び約1mL/分の流速を用いて、約40℃の温度で決定され、前記BL-8040(配列番号1)の相対保持時間が、1と定義される、
組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つの化合物が、約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、前記組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも20%に相当する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物が、BL-8040(配列番号1)と同じ分子量を有する化合物、及び/又はBL-8040(配列番号1)の分子量よりも約80Da大きい分子量を有する化合物を含む、請求項17又は請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記BL-8040(配列番号1)に対する前記少なくとも1つの化合物の総濃度比が、約0.1%~約0.2%の範囲内である、請求項17~請求項19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物を更に含む、請求項17~請求項20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物が、約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、前記組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも10%に相当する、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記BL-8040(配列番号1)に対する0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物の総濃度比が、少なくとも約0.01%である、請求項21又は請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記BL-8040(配列番号1)に対する0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物の前記総濃度比が、約0.03%~約0.15%の範囲内である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物及び0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物の総濃度が、約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、前記組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも50%に相当する、請求項21~請求項24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物中の環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度が、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物の総濃度の50%以下である、請求項17~請求項25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物中の環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度が、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物の総濃度の50%以下である、請求項17~請求項26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物中の環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度が、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物の総濃度の80%以下である、請求項17~請求項27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記逆相カラムが、長さ約250mm、内径約4.6mm、及び粒径約5μmのうち少なくとも1つを特徴とする、請求項17~請求項28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
BL-8040(配列番号1)と、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物とを含む組成物であって、前記少なくとも1つの化合物が、約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも10%に相当し、
前記相対保持時間が、約3.0~約3.3の範囲内のpHの0.017Mの過塩素酸塩の水溶液である第1の移動相、アセトニトリルである第2の移動相、前記第2の移動相の濃度が約20%の初期濃度から約50分で約10%増加する勾配、C18逆相カラム、約5μL~約20μLの範囲内の注入体積、及び約1mL/分の流速を用いて、約40℃の温度で決定され、前記BL-8040(配列番号1)の相対保持時間が、1と定義される、
組成物。
【請求項31】
前記BL-8040(配列番号1)に対する前記少なくとも1つの化合物の総濃度比が、少なくとも約0.01%である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記BL-8040(配列番号1)に対する前記少なくとも1つの化合物の総濃度比が、約0.5%以下である、請求項30又は請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記BL-8040(配列番号1)に対する前記少なくとも1つの化合物の総濃度比が、約0.03%~約0.15%の範囲内である、請求項30~請求項32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物を更に含む、請求項30~請求項33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物が、約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、前記組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも20%に相当する、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物が、BL-8040(配列番号1)と同じ分子量を有する化合物、及び/又はBL-8040(配列番号1)の分子量よりも約80Da大きい分子量を有する化合物を含む、請求項34又は請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記BL-8040(配列番号1)に対する0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物の総濃度比が、少なくとも約0.01%である、請求項34~請求項36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記BL-8040(配列番号1)に対する0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物の前記総濃度比が、約0.075%~約0.225%の範囲内である、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物及び0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物の総濃度が、約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、前記組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも50%に相当する、請求項35~請求項38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
前記組成物中の環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度が、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物の総濃度以下である、請求項30~請求項39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
前記組成物中の環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度が、0.71~0.73の範囲の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物の総濃度以下である、請求項30~請求項40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
前記組成物中の環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度が、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前記少なくとも1つの化合物の総濃度の150%以下である、請求項30~請求項41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
前記逆相カラムが、長さ約250mm、内径約4.6mm、及び粒径約5μmのうち少なくとも1つを特徴とする、請求項30~請求項42のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
(a)アミノ酸及び4-フルオロ安息香酸を固相ペプチド合成によって樹脂に順次カップリングさせ、それによって、前記樹脂にカップリングされた直鎖ペプチドを得ることと、
(b)前記直鎖ペプチドを前記樹脂から切断し、それによって、遊離直鎖ペプチドを得ることと、
(c)前記直鎖ペプチドのシステイン残基を酸化させて分子内ジスルフィド結合を形成し、それによって、溶液中の配列番号1を有する環状ペプチドを得ることと、
(d)配列番号1を有する前記環状ペプチド又はその薬学的に許容される塩を単離することと、
を含むプロセスによって得ることができ、
ここで:
(i)前記カップリングが、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)をシアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/若しくはN-ヒドロキシベンゾトリアゾールと組み合わせて用いることで引き起こされ;
(ii)前記切断が、前記樹脂にカップリングされた前記直鎖ペプチドを、トリフルオロ酢酸(TFA)と、ジチオエリトリトール(DTE)及びジチオトレイトール(DTT)からなる群より選択されるスカベンジャと、を含む溶液と接触させることによって引き起こされ;
(iii)前記プロセスが、沈殿の前に蒸発によって前記遊離直鎖ペプチドを濃縮することなく、前記切断後に前記遊離直鎖ペプチドを沈殿させることを更に含み;
(iv)前記接触が、前記直鎖ペプチドを少なくとも5mg/mLの濃度で含む水溶液を過酸化水素と接触させることによって引き起こされ;
(v)前記単離することが、前記環状ペプチドを逆相クロマトグラフィカラムに前記カラム1kg当たり40グラム以下の環状ペプチドの濃度でロードし、前記環状ペプチドを前記カラムから溶出させることを含み;
(vi)配列番号1を有する前記環状ペプチドの前記単離が、凍結乾燥を含み、かつ前記プロセスが、前記凍結乾燥後に前記環状ペプチドを粉砕することを更に含み;並びに/又は
(vii)前記樹脂の置換度が、少なくとも0.3ミリ当量/グラムであり、及び/若しくは前記樹脂がRinkアミノメチルスチレン樹脂である、
請求項1~請求項43のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項45】
0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする化合物及び0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする化合物を欠く対応する組成物と比較して、末梢血液へのインビボ好中球遊走の促進が増強されていることを特徴とする、請求項1~請求項44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする化合物及び0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする化合物を欠く対応する組成物と比較して、
(i)末梢血液へのインビボ好中球遊走の促進の増強;
(ii)乳がん細胞のインビトロCXCL12誘発遊走の阻害の増強;
(iii)T細胞由来白血病細胞のインビトロCXCL12誘発遊走の阻害の増強;
(iv)動物モデルにおける肺への転移性乳がん細胞遊走の阻害の増強;
(v)動物モデルにおける遅延型過敏症の阻害の増強;
(vi)動物モデルにおけるコラーゲン誘発関節炎の阻害の増強;及び
(vii)インビトロでの細胞におけるCXCL12とCXCR4との結合の阻害の増強、
のうち少なくとも2つを特徴とする、請求項1~請求項45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
請求項1~請求項46のいずれか一項に記載の組成物と、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項48】
BL-8040(配列番号1)によって治療可能な状態の治療に使用するための、請求項1~請求項46のいずれか一項に記載の組成物又は請求項47に記載の医薬組成物。
【請求項49】
CXCR4の阻害が有利である状態の治療に使用するための、請求項1~請求項46のいずれか一項に記載の組成物又は請求項47に記載の医薬組成物。
【請求項50】
網膜芽細胞腫、神経外胚葉由来腫瘍、大細胞肺がん、多発性骨髄腫、ミクログリオーマ、グリオーマ、乳がん、膵臓がん、血小板減少症、骨髄抑制のリスク、及びHIV感染症からなる群より選択される状態の治療に使用するための、請求項1~請求項46のいずれか一項に記載の組成物又は請求項47に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年12月30日に出願された米国仮特許出願第63/131,871号の優先権の利益を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の記載
本出願の出願と同時に提出された、2,115バイトである、2021年12月27日に作成された90159SequenceListing.txtという名称のASCIIファイルが、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
本発明は、そのいくつかの実施形態において医薬製品に関し、より具体的には、例えばがん及び/又は関節炎などの状態の治療において使用可能であるBL-8040などのペプチドを含む新規な組成物、並びにその調製方法に関するが、これらに限定されない。
【0004】
BL-8040は、4F-ベンゾイル-TN14003(4-フルオロ-ベンゾイル-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2、配列番号1)としてもまた知られるペプチドであり、その2つのCys残基間にジスルフィド結合が形成されると環状になる。
【0005】
米国特許第7,423,007号には、4F-ベンゾイル-TN14003を含む、CXC4拮抗作用を有するペプチドが記載されている。米国特許第7,423,007号の教示によれば、4F-ベンゾイル-TN14003は、カップリング剤としてDIPCDI-HOBtを用いて、DMF(2.5当量でアミノ酸を添加)中において固相合成し、続いて、m-クレゾール及びエタンジチオールと共に1M TMSBr-チオアニソール/TFAを用いて脱保護及び切断し、空気酸化により環化することによって製造される。
【0006】
更なる背景技術としては、米国特許第7,138,488号及び同第8,435,939、並びに国際特許出願公開第WO2008/075369号、同第WO2008/075370号、同第WO2010/146578号、同第WO2012/095849号、及び同第WO2013/160895号、並びに米国仮特許出願第62/938,962号が挙げられる。
【発明の概要】
【0007】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、BL-8040(配列番号1)と、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物とを含む組成物(composition-of-matter)が提供され、ここで、相対保持時間は、約2.9~約3.3の範囲内のpHの0.017Mの過塩素酸塩の水溶液である第1の移動相、アセトニトリルである第2の移動相、第2の移動相の濃度が約20%の初期濃度から約50分で約10%増加する勾配、C18逆相カラム、約5μL~約20μLの範囲内の注入体積、及び約1mL/分の流速を用いて、約40℃の温度で決定され、BL-8040(配列番号1)の相対保持時間は、1と定義される。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、BL-8040(配列番号1)と、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物とを含む組成物が提供され、ここで、BL-8040(配列番号1)に対する前記少なくとも1つの化合物の総濃度比は、約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、0.075%~0.225%の範囲内であり、ここで、相対保持時間は、約2.9~約3.3の範囲内のpHの0.017Mの過塩素酸塩の水溶液である第1の移動相、アセトニトリルである第2の移動相、第2の移動相の濃度が約20%の初期濃度から約50分で約10%増加する勾配、C18逆相カラム、約5μL~約20μLの範囲内の注入体積、及び約1mL/分の流速を用いて、約40℃の温度で決定され、BL-8040(配列番号1)の相対保持時間は、1と定義される。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、BL-8040(配列番号1)と、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物とを含む組成物が提供され、前記少なくとも1つの化合物は、約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも10%に相当し、ここで、相対保持時間は、約2.9~約3.3の範囲内のpHにて0.017Mの過塩素酸塩の水溶液である第1の移動相、アセトニトリルである第2の移動相、第2の移動相の濃度が約20%の初期濃度から約50分で約10%増加する勾配、C18逆相カラム、約5μL~約20μLの範囲内の注入体積、及び約1mL/分の流速を用いて、約40℃の温度で決定され、BL-8040(配列番号1)の相対保持時間は、1と定義される。
【0010】
本秘密のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書中に記載されるそれぞれの実施形態のいずれか及びそれらの任意の組合せによるBL-8040(配列番号1)を含む組成物と、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物が提供される。
【0011】
0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物に関する任意の実施形態のいくつかによれば、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも20%に相当する。
【0012】
0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物に関する任意の実施形態のいくつかによれば、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも50%に相当する。
【0013】
0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物に関する任意の実施形態のいくつかによれば、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、BL-8040(配列番号1)と同じ分子量を有する化合物及び/又はBL-8040(配列番号1)の分子量よりも約80Da大きい分子量を有する化合物を含む。
【0014】
0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物に関する任意の実施形態のいくつかによれば、BL-8040(配列番号1)に対する0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度比は、少なくとも約0.01%、所望により少なくとも約0.05%である。
【0015】
0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物に関する任意の実施形態のいくつかによれば、BL-8040(配列番号1)に対する0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度比は、約1%以下である。
【0016】
0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物に関する任意の実施形態のいくつかによれば、BL-8040(配列番号1)に対する0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度比は、約0.075%~約0.225%の範囲内である。
【0017】
0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物に関する任意の実施形態のいくつかによれば、BL-8040(配列番号1)に対する0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度比は、約0.1%~約0.2%の範囲内である。
【0018】
0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物に関する任意の実施形態のいくつかによれば、組成物中の環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度の50%以下である。
【0019】
0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物に関する任意の実施形態のいくつかによれば、組成物中の環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度の50%以下である。
【0020】
0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物に関する任意の実施形態のいくつかによれば、組成物中の環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度の80%以下である。
【0021】
0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、組成物は、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかによる、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物を更に含む。
【0022】
0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも10%に相当する。
【0023】
0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、BL-8040(配列番号1)に対する0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度比は、少なくとも約0.01%である。
【0024】
0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、BL-8040(配列番号1)に対する0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度比は、約0.5%以下である。
【0025】
0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、BL-8040(配列番号1)に対する0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度比は、約0.03%~約0.15%の範囲内である。
【0026】
0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、組成物中の環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度以下である。
【0027】
0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、組成物中の環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度以下である。
【0028】
0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、組成物中の環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度の150%以下である。
【0029】
0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、組成物は、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかによる、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物を更に含む。
【0030】
0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物、及び/又は0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物、並びにそれらの任意の組合せに関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物及び0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度は、約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも50%に相当する。
【0031】
任意の実施形態のいくつかによれば、逆相カラムは、長さ約250mm、内径約4.6mm、及び粒径約5μmのうち少なくとも1つを特徴とする。
【0032】
任意の実施形態のいくつかによれば、組成物は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物及び0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物を欠く対応する組成物と比較して、
(i)末梢血液へのインビボ好中球遊走の促進の増強;
(ii)乳がん細胞のインビトロCXCL12誘発遊走の阻害の増強;
(iii)T細胞由来白血病細胞のインビトロCXCL12誘発遊走の阻害の増強;
(iv)動物モデルにおける肺への転移性乳がん細胞遊走の阻害の増強;
(v)動物モデルにおける遅延型過敏症の阻害の増強;
(vi)動物モデルにおけるコラーゲン誘発関節炎の阻害の増強;及び
(vii)インビトロでの細胞におけるCXCL12とCXCR4との結合の阻害の増強、
のうち少なくとも2つ、所望により少なくとも3つを特徴とする。
【0033】
任意の実施形態のいくつかによれば、組成物は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物及び0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物を欠く対応する組成物と比較して、末梢血液へのインビボ好中球遊走の促進の増強を特徴とする。
【0034】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、組成物は、
(a)アミノ酸及び4-フルオロ安息香酸を固相ペプチド合成によって樹脂に順次カップリングさせ、それによって、樹脂にカップリングされた直鎖ペプチドを得ることと、
(b)直鎖ペプチドを樹脂から切断し、それによって、遊離直鎖ペプチドを得ることと、
(c)直鎖ペプチドのシステイン残基を酸化させて分子内ジスルフィド結合を形成し、それによって、溶液中の配列番号1を有する環状ペプチドを得ることと、
(d)配列番号1を有する環状ペプチド又はその薬学的に許容される塩を単離することと、
を含むプロセスによって得ることができ、
ここで:
(i)カップリングは、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)をシアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/若しくはN-ヒドロキシベンゾトリアゾールと組み合わせて用いることで引き起こされ;
(ii)切断は、樹脂にカップリングされた直鎖ペプチドを、トリフルオロ酢酸(TFA)と、ジチオエリトリトール(DTE)及びジチオトレイトール(DTT)からなる群より選択されるスカベンジャと、を含む溶液と接触させることによって引き起こされ;
(iii)プロセスは、沈殿の前に蒸発によって遊離直鎖ペプチドを濃縮することなく、切断後に遊離直鎖ペプチドを沈殿させることを更に含み;
(iv)接触は、直鎖ペプチドを少なくとも5mg/mLの濃度で含む水溶液を過酸化水素と接触させることによって引き起こされ;
(v)単離することは、環状ペプチドを逆相クロマトグラフィカラムにカラム1kg当たり40グラム以下の環状ペプチドの濃度でロードし、環状ペプチドをカラムから溶出させることを含み;
(vi)配列番号1を有する環状ペプチドの単離は、凍結乾燥を含み、かつ前記プロセスは、凍結乾燥後に環状ペプチドを粉砕することを更に含み;並びに/又は
(vii)樹脂の置換度は、少なくとも0.3ミリ当量/グラムであり、及び/若しくは樹脂がRinkアミノメチルスチレン(AMS)樹脂である。
【0035】
組成物に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、組成物は、BL-8040(配列番号1)によって治療可能な状態の治療に使用するためのものである。
【0036】
組成物に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、組成物は、CXCR4を阻害することが有利である状態の治療に使用するためのものである。
【0037】
組成物に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、本組成物は、網膜芽細胞腫、神経外胚葉由来腫瘍、大細胞肺がん、多発性骨髄腫、ミクログリオーマ、グリオーマ、乳がん、膵臓がん、血小板減少症、骨髄抑制のリスク、及びHIV感染症からなる群より選択される状態の治療に使用するためのものである。
【0038】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法及び材料と類似するもの又は同等のものを、本発明の実施形態の実施又は試験で使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料は以下に記載する。矛盾が生じる場合、定義を含む本特許明細書が優先される。加えて、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、必ずしも限定することを意図するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、医薬製品に関し、より具体的には、例えばがん及び/又は関節炎などの状態の治療において使用可能であるBL-8040(配列番号1)などのペプチドを含む新規な組成物、並びにその調製方法に関するが、これらに限定されない。
【0040】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載される詳細又は実施例によって例示される詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実施若しくは実行することができる。
【0041】
困難な実験の後、本発明者らは、有利な生物活性を有するBL-8040(配列番号1)ペプチドを含む新規な組成物を発見した。この組成物は、ペプチドの大規模合成で有利に調製され得るが、一方で医薬投与のための調製製剤にもまた好適である。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、相対保持時間に関して本明細書に記載される実施形態のいずれかに従って決定される場合、BL-8040(配列番号1)と、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物及び/又は0.71~0.73内の範囲の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物と、を含む組成物が提供される。
【0043】
本明細書の全体を通して、「BL-8040」という用語は、配列番号1を有する環状ペプチドを指す。
【0044】
本明細書では、「環状」ペプチドとは、ジスルフィド結合によって連結された一対のシステイン残基を含むペプチドを指す。例えば、「配列番号1を有する環状ペプチド」とは、その2つのシステイン残基がジスルフィド結合によって連結されている配列番号1を指す。
【0045】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、組成物は、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従って(例えば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかによる量で)、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物を含む。いくつかのこのような実施形態では、前記少なくとも1つの化合物の相対保持時間は、0.865~0.88の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記相対保持時間は、0.868~0.878の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記相対保持時間は、0.870~0.876の範囲内である。
【0046】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、組成物は、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従って(例えば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかによる量で)、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物を含む。いくつかのこのような実施形態では、前記少なくとも1つの化合物の相対保持時間は、0.715~0.73の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記相対保持時間は、0.718~0.728の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記相対保持時間は、0.719~0.726の範囲内である。
【0047】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、組成物は、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従う(例えば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかによる量の)0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物と、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従う(例えば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかによる量の)0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物と、の両方を含む。
【0048】
本明細書全体を通して、0.86~0.88の範囲又は0.71~0.73の範囲が示される場合はいつでも、当該範囲は、それぞれ0.860~0.880の範囲又は0.710~0.730の範囲、並びに任意の中間値(上限又は下限として機能し得る)及びそれらの間の部分的範囲を包含する。
【0049】
本明細書では、「相対保持時間」という用語は、参照化合物の保持時間(同一条件下における)に対する高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を行った場合の化合物(例えば、本明細書に記載の組成物の成分)の保持時間を指し、前記参照化合物は、本明細書ではBL-8040(配列番号1)である。したがって、BL-8040(配列番号1)の相対保持時間は、定義により1に等しい。
【0050】
加えて、「相対保持時間」という用語は、化合物の最大濃度が保持される時間(例えば、モード)に従って決定される。したがって、例えば、0.87の保持時間を有すると定義される化合物は、(例えば、ベルカーブ分布における)0.84~0.90の範囲内の保持時間でクロマトグラフィカラムを出る個々の分子を含み得る。しかしながら、そのような化合物の全ての分子の保持時間は、0.87と考えられ、したがって「0.86~0.88の範囲内」であるものと考えられる。
【0051】
相対保持時間は、好ましくは、C18逆相カラム、所望によりシリカ系C18カラム(例えば、Hypersil Gold(商標)C18カラム)を用いて決定される。本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、逆相カラムは、次の特徴:長さ約250mm長、内径約4.6mm、及び粒径約5μmのうち、少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は全てを特徴とする。
【0052】
本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかによる相対保持時間は、好ましくは、第1の移動相として約3.0~約3.3の範囲内のpHの0.017Mの過塩素酸塩の水溶液(第2の移動相として、アセトニトリル)、及び第2の移動相の濃度が約20%(例えば、19.3%~29.3%増加又は20%~30%増加)の初期濃度から約50分で約10%(例えば、10.0%)増加する勾配を用いて決定される。
【0053】
相対保持時間は、好ましくは、約40℃の温度、約5~約20μLの範囲内の注入体積、及び約1mL/分の流速で決定される。化合物の検出は、所望により、約226nmの波長での吸収を決定することによって行われてもよい。例示的な実施形態では、Agilent(商標)1200又はAgilent(商標)1100 HPLCシステムが使用される。
【0054】
(本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかによる)示された相対保持時間を特徴とする組成物中の化合物は、約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、BL-8040(配列番号1)の濃度の少なくとも約0.01%の濃度で所望により存在していてもよい。
【0055】
本明細書では、「吸収に従って決定される」という語句は、(例えば、本明細書に記載のパーセンテージの計算における)化合物の相対濃度が、所与の波長(例えば、226nm)での吸収(例えば、光学濃度)の定量化によって決定されることを意味する。したがって、例えば、2つの画分(例えば、組成物中の2つの異なる化合物を表す)は、それらが同じ濃度の化合物(又は化合物群)の分子を含有するかどうかにかかわらず、それらが同じ程度まで吸収する場合、同じ濃度の化合物を有するものと見なされる。示された波長では全く吸収しない化合物は、0の濃度を有するものと考えられる。
【0056】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、組成物は、BL-8040(配列番号1)以外の化合物の比較的少量と、(本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかによる)0.71~0.73の相対保持時間及び/又は0.86~0.88の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物とによって特徴付けられ、例えば、0.71~0.73の相対保持時間及び/又は0.86~0.88の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、BL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の比較的大きな割合(例えば、本明細書で定義されるように、約226nmの波長での吸収によって決定される場合)に相当する。
【0057】
本明細書では、「BL-8040以外の全ての化合物」という用語は、BL-8040(配列番号1)、その対イオン、又は溶媒(例えば、緩衝水溶液)ではない、本明細書に記載の組成物中の化合物の合計を指す。BL-8040(配列番号1)以外の化合物としては、例えば、化学組成及び/又は分子構成が異なる化合物(例えば、BL-8040(配列番号1)の立体異性体)を挙げることができる。BL-8040(配列番号1)ではないいくつかの化合物は、示された波長で吸収できない場合があり、したがって、(本明細書に定義されるような)吸収に従って決定される場合、「BL-8040以外の全ての化合物」に実質的に寄与しない場合があることを理解されたい。
【0058】
本明細書に記載される任意のそれぞれの実施形態のいくつかでは、「BL-8040以外の全ての化合物」という用語は、本明細書に記載される条件下において決定される場合、少なくとも0.1の相対保持時間、所望により0.1~2の相対保持時間を有する化合物のみを含む。すなわち、示された範囲外の相対保持時間を有する化合物は、そのような実施形態では、それらが対イオン又は溶媒でない場合であっても、(本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかによる)「BL-8040以外の全ての化合物」の定義から(例えば、測定の便宜上のために)除外される。いくつかの実施形態では、「BL-8040以外の全ての化合物」という用語は、少なくとも0.5の相対保持時間、所望により0.5~1.5の相対保持時間を有する化合物のみを含む。
【0059】
本明細書に記載される任意のそれぞれの実施形態のいくつかでは、「BL-8040以外の全ての化合物」という用語は、BL-8040(配列番号1)以外のペプチド化合物の合計を指す。すなわち、ペプチドではない化合物(すなわち、アミド結合によって連結された少なくとも2つのアミノ酸残基を含まない化合物)は、そのような実施形態では、示された相対保持時間を有する場合であっても、(本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかによる)「BL-8040以外の化合物」の定義から除外される。
【0060】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、BL-8040(配列番号1)にいくぶん類似しているペプチドは、その性質上、多種多様な変異体となることがあり(例えば、ペプチド中の1又は複数のアミノ酸残基(又は残基群)は、独立して、例えばその立体異性体などの別の残基によって、置換、分解及び/又は置換され得る)、その一部は有利な活性を提供し得るが、非ペプチド化合物は有利な活性を提供する可能性が低く、したがってあまり関心対象ではないものと考えられる。
【0061】
任意の実施形態のいくつかによれば、(本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかによる)0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、BL-8040(配列番号1)と同じ分子量を有する化合物、及び/又はBL-8040(配列番号1)の分子量よりも100Da以下、例えば、約80Da高い分子量を有する化合物を含む。本明細書で例示されるように、化合物の分子量は、当技術分野で公知の技術に従って、質量分析によって、所望により液体クロマトグラフィ質量分析を用いて決定され得る。
【0062】
任意の実施形態のいくつかによれば、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物(本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかによる)は、BL-8040(配列番号1)と同じ分子量を有する1又は複数の化合物、及び/又はBL-8040(配列番号1)の分子量よりも約80Da大きい分子量を有する1又は複数の化合物からなる。すなわち、前述の分子量を有しない化合物は、そのような実施形態では、示された相対保持時間を有している場合であっても、(本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかによる)「0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物」の定義から除外される。いくつかのこのような実施形態では、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの少なくとも1つの化合物は、BL-8040(配列番号1)と同じ分子量を有する1又は複数の化合物からなる。
【0063】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、BL-8040(配列番号1)に対する(本明細書に記載される実施形態のいずれかによる)0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度比は、少なくとも約0.01%である。いくつかのこのような実施形態では、前記総濃度比は、少なくとも約0.02%である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、少なくとも約0.03%である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、少なくとも約0.05%である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、少なくとも約0.075%である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、少なくとも約0.1%である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、少なくとも約0.2%である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、少なくとも約0.3%である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、少なくとも約0.4%である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、少なくとも約0.5%である。
【0064】
本明細書では、「総濃度比」という用語は、(1又は複数の)化合物の総濃度(例えば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかによる、示された範囲内の相対保持率を有する化合物)の、別の濃度(例えば、BL-8040(配列番号1)の濃度)に対する比率を指し、前記別の濃度は、1(unity)を表す(又は比率をパーセンテージとして定義する場合は100%)。ここで、濃度は、本明細書で定義される吸収によって決定される。
【0065】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、BL-8040(配列番号1)に対する(本明細書に記載される実施形態のいずれかによる)0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度比は、約1%以下である。いくつかのこのような実施形態では、前記総濃度比は、0.01%~1%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.02%~1%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.03%~1%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.05%~1%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.075%~1%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.1%~1%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.2%~1%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.3%~1%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.4%~1%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.5%~1%の範囲内である。
【0066】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、BL-8040(配列番号1)に対する(本明細書に記載される実施形態のいずれかによる)0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度比は、約0.5%以下である。いくつかのこのような実施形態では、前記総濃度比は、0.01%~0.5%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.02%~0.5%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.03%~0.5%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.05%~0.5%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.075%~0.5%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.1%~0.5%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.2%~0.5%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.3%~0.5%の範囲内である。
【0067】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、BL-8040(配列番号1)に対する(本明細書に記載される実施形態のいずれかによる)0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度比は、約0.3%以下である。いくつかのこのような実施形態では、前記総濃度比は、0.01%~0.3%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.02%~0.3%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.03%~0.3%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.05%~0.3%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.075%~0.3%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.1%~0.3%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.2%~0.3%の範囲内である。
【0068】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、BL-8040(配列番号1)に対する(本明細書に記載される実施形態のいずれかによる)0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度比は、約0.25%以下である。いくつかのこのような実施形態では、前記総濃度比は、0.01%~0.25%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.02%~0.25%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.03%~0.25%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.05%~0.25%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.075%~0.25%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.1%~0.25%の範囲内である。
【0069】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、BL-8040(配列番号1)に対する(本明細書に記載される実施形態のいずれかによる)0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度比は、約0.2%以下である。いくつかのこのような実施形態では、前記総濃度比は、0.01%~0.2%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.02%~0.2%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.03%~0.2%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.05%~0.2%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.075%~0.2%の範囲内である。
【0070】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、BL-8040(配列番号1)に対する(本明細書に記載される実施形態のいずれかによる)0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度比は、約0.075%~約0.225%の範囲内にある。いくつかのこのような実施形態では、前記総濃度比は、0.1%~0.2%の範囲内である。
【0071】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、(本明細書に記載される実施形態のいずれかによる)0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、(本明細書に定義されるような)約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも20%に相当し、すなわち、(本明細書に記載のように決定した)BL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも20%は、示された範囲内(例えば、0.86~0.88)の相対保持時間を特徴とする。いくつかのこのような実施形態では、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも30%に相当する。いくつかの実施形態では、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも40%に相当する。いくつかの実施形態では、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも50%に相当する。いくつかの実施形態では、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも60%に相当する。いくつかの実施形態では、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも70%に相当する。いくつかの実施形態では、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも80%に相当する。いくつかの実施形態では、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも90%に相当する。
【0072】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、BL-8040(配列番号1)に対する(本明細書に記載される実施形態のいずれかによる)0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の(本明細書に定義されるような)総濃度比は、少なくとも約0.01%である。いくつかのこのような実施形態では、総濃度比は、少なくとも約0.02%である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、少なくとも約0.03%である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、少なくとも約0.05%である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、少なくとも約0.075%である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、少なくとも約0.1%である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、少なくとも約0.2%である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、少なくとも約0.3%である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、少なくとも約0.4%である。
【0073】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、BL-8040(配列番号1)に対する(本明細書に記載される実施形態のいずれかによる)0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度比は、約0.5%以下である。いくつかのこのような実施形態では、前記総濃度比は、0.01%~0.5%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.02%~0.5%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.03%~0.5%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.05%~0.5%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.075%~0.5%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.1%~0.5%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.2%~0.5%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.3%~0.5%の範囲内である。
【0074】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、BL-8040(配列番号1)に対する(本明細書に記載される実施形態のいずれかによる)0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度比は、約0.3%以下である。いくつかのこのような実施形態では、前記総濃度比は、0.01%~0.3%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.02%~0.3%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.03%~0.3%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.05%~0.3%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.075%~0.3%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.1%~0.3%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.2%~0.3%の範囲内である。
【0075】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、BL-8040(配列番号1)に対する(本明細書に記載される実施形態のいずれかによる)0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度比は、約0.15%以下である。いくつかのこのような実施形態では、前記総濃度比は、0.01%~0.15%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.02%~0.15%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.03%~0.15%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.05%~0.15%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.075%~0.15%の範囲内である。いくつかの実施形態では、前記総濃度比は、0.1%~0.15%の範囲内である。
【0076】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、(本明細書に記載される実施形態のいずれかによる)0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、(本明細書に定義されるような)約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも10%に相当する。いくつかのこのような実施形態では、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも20%に相当する。いくつかの実施形態では、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも30%に相当する。いくつかの実施形態では、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも40%に相当する。いくつかの実施形態では、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも50%に相当する。いくつかの実施形態では、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも60%に相当する。いくつかの実施形態では、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも70%に相当する。いくつかの実施形態では、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも80%に相当する。
【0077】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、(本明細書に記載される実施形態のいずれかによる)0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物、及び(本明細書に記載される実施形態のいずれかによる)0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度は、(本明細書に定義されるような)約226nmの波長での吸収に従って決定される場合、組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも50%に相当する。いくつかのこのような実施形態では、前記総濃度は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも60%に相当する。いくつかの実施形態では、前記総濃度は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも70%に相当する。いくつかの実施形態では、前記総濃度は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも80%に相当する。いくつかの実施形態では、前記総濃度は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも90%に相当する。いくつかの実施形態では、前記総濃度は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも95%に相当する。いくつかの実施形態では、前記総濃度は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも98%に相当する。いくつかの実施形態では、前記総濃度は、(本明細書に記載のように決定した)組成物中のBL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の少なくとも99%に相当する。
【0078】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、組成物は、比較的少量の、脱アミド化BL-8040(配列番号2)(ここで、C末端はアミドではなくカルボン酸である)、及び/又はD-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)(ここで、D-Lys残基はアセチル化されている)を特徴とする。
【0079】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、組成物中の環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度は、本明細書に記載されるいずれかの実施形態による0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度の50%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の30%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の20%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の10%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の5%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の3%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の2%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の1%以下である。
【0080】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、組成物中の環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度は、本明細書に記載されるいずれかの実施形態による0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の60%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の40%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の20%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の10%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の5%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の2%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の1%以下である。
【0081】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、組成物中の環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度は、本明細書に記載されるいずれかの実施形態による0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度の50%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の30%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の20%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の10%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の5%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の3%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の2%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の1%以下である。
【0082】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、組成物中の環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度は、本明細書に記載されるいずれかの実施形態による0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の60%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の40%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の20%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の10%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の5%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の2%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の1%以下である。
【0083】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、組成物中の環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度は、本明細書に記載されるいずれかの実施形態による0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度の80%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の60%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の50%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の40%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の30%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の20%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の10%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の5%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度は、0.86~0.88の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の2%以下である。
【0084】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、組成物中の環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度は、本明細書に記載されるいずれかの実施形態による0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする少なくとも1つの化合物の総濃度の150%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の120%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の80%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の60%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の40%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の20%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の10%以下である。いくつかのこのような実施形態では、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の総濃度は、0.71~0.73の範囲内の相対保持時間を特徴とする前述した少なくとも1つの化合物の総濃度の5%以下である。
【0085】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、配列番号2及び/又は配列番号3の環状形態は、対応する非環状形態よりも必ずしも有害ではなく、むしろ非環状形態は、典型的には(例えば、配列番号1を有するペプチドが主に環状形態である条件下において)かなり希少であり、したがって、所望により便宜的に無視してもよいものと考えられる。
【0086】
上述のペプチド(環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)及び/又は環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3))は、本明細書に記載の条件下における保持時間を決定することによって、例えば、ペプチドの参照試料を用いて(本明細書で定義されるBL-8040(配列番号1)の保持時間に対する)相対保持時間を正確に同定することによって、所望により定量化されてもよい。例えば、本明細書に記載のHPLC条件下において、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)の相対保持時間は典型的には約0.91であり、環状D-Lys(Ac)BL-8040(配列番号3)の相対保持時間は約1.10である。
【0087】
プロセス:
本明細書に例示されるように、本明細書に記載されたものなどの組成物は、ペプチド(保護された形態)が樹脂に付着して形成され、次いで(保護基を除去しながら)樹脂から切断される固相合成を用いて、所望により調製され得る。次いで、環状ペプチドを形成するための分子内ジスルフィド結合を、Cys残基の酸化によって形成してもよい。
【0088】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、プロセスは、大規模プロセスである。
【0089】
本明細書では、「大規模プロセス」という用語は、(1回のプロセスにおいて)少なくとも100グラムの最終生成物(BL-8040(配列番号1))を調製するためのプロセスを指す。
【0090】
大規模プロセスに関連する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、少なくとも250グラムのBL-8040(配列番号1)ペプチドがプロセスによって調製され、又は少なくとも500グラムの環状ペプチド、若しくは少なくとも1kgの環状ペプチド、若しくは少なくとも3kgの環状ペプチド、若しくは更に少なくとも10kgの環状ペプチドがプロセスによって調製される。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載のプロセスによって得ることができる。
【0092】
プロセスに関連する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、記載されたそれぞれの実施形態のいずれかに従って得られた組成物は、例えばプロセスの「シグナチュリオン(signaturion)」を表す、BL-8040(配列番号1)以外の微量成分の特徴的なセットに関連付けられる。
【0093】
本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従って定義される場合、BL-8040(配列番号1)以外の全ての化合物の合計は、本明細書ではまた、本明細書に記載のプロセスを特徴付ける「シグナトリー組成物(signatory composition)」と互換的に称される。
【0094】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、シグナトリー組成物は、(例えば、生物活性に関するセクションにおいて)本明細書に記載の生物活性の増強に関連するものと考えられる。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書中に記載されるようなプロセスは、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書中に記載されるような、BL-8040(配列番号1)、及びBL-8040(配列番号1)以外の化合物の有利なシグナトリー組成物を含む、シグナトリー組成物(本明細書中に記載されるようなシグナチュリオン)を提供する。
【0096】
本明細書に詳述されているように、前記プロセスは、好ましくは、(当技術分野で公知の一般的な手順に従った)固相ペプチド合成によってアミノ酸及び4-フルオロ-安息香酸を樹脂(例えば、Rink AMS樹脂)に順次カップリングさせて、樹脂にカップリングされた直鎖ペプチドを得ることを含む。順次のカップリングの順序は、Arg、Cys、Cit(シトルリン)、Arg、Tyr、Pro、DLys(D-リジン)、Lys、Cit、Tyr、Cys、Nal(ナフチルアラニン)、Arg、Arg、4-フルオロ-安息香酸である。
【0097】
前記プロセスは、カップリングによって形成されたペプチドを樹脂から切断し、それによって非環状形態の配列番号1を有する遊離ペプチドを得ることと、その中のシステイン残基を酸化して分子内ジスルフィド結合を形成し、それによって環状形態(溶液中)を得ることと、を更に含む。
【0098】
カップリングは、(例えば、アミノ酸又はN末端カルボン酸の)カルボキシレート基と(例えば、第1の工程における樹脂又は後続の工程におけるN末端の)アミン基との間にアミド結合を形成することを含み、好ましくは、アミド結合形成に好適であることが当技術分野で公知の1又は複数のカップリング試薬、例えば、カルボジイミド(例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド及び/又はジイソプロピルカルボジイミド)、アミニウム/ウロニウム(例えば、HATU、HBTU、TBTU及び/又はHCTU)又はホスホニウム塩(例えば、PyBOP及び/又はPyAOP)、及び/又はプロパンホスホン酸無水物を用いて行われる。
【0099】
前記1又は複数のカップリング試薬は、所望により、カルボジイミド(例えば、ジイソプロピルカルボジイミド)、並びに追加の薬剤(例えば、カルボジイミドとほぼ同じモル濃度)、例えばヒドロキシトリアゾール(例えば、1-ヒドロキシ-ベンゾトリアゾール(HOBt)若しくは1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)及び/又はシアノヒドロキシイミノ酢酸エステル(例えばシアノヒドロキシイミノ酢酸エチル)などを含む。
【0100】
カップリングは、所望により、カルボジイミド及びシアノヒドロキシイミノ酢酸エステルを用いて行ってもよく、例えば、カルボジイミド及び/又はシアノヒドロキシイミノ酢酸エステルは、(カップリングされるアミノ酸又は他のカルボン酸と比較して)約2倍のモル過剰で使用される。
【0101】
カップリングは、所望により、カルボジイミドをシアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾールと共に用いて行ってもよく、例えば、カルボジイミド及び/又はシアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾールは、(カップリングされるアミノ酸又は他のカルボン酸と比較して)約2倍のモル過剰で使用される。
【0102】
カップリングは、所望により、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)をシアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾールと共に用いて行ってもよく、例えば、DIC並びにシアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾールは、(カップリングされるアミノ酸又は他のカルボン酸と比較して)約2倍のモル過剰で使用される。
【0103】
各アミノ酸カップリング工程において、アミノ酸のN末端は、容易に除去可能な基、好ましくはフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)によって保護され、これは、所望によりピペリジン(例えば、DMF中20~50%ピペリジン)などの弱い塩基によって切断され得る。DMF中のピペリジンの例示的な濃度は約20%である。
【0104】
例えば、Fmoc基は、所望により、(本明細書に記載される実施形態のいずれかによる)ピペリジン溶液中で2回、所望により5~10分間で1回、次いで所望により25~30分間で1回洗浄し、その後、(例えば、ピペリジンを含まないDMF中で)樹脂を洗浄して塩基を除去することによって(これは、所望によりpHを決定することによって確認してもよい)、除去されてもよい。
【0105】
加えて、特定のアミノ酸の側鎖は、t-ブトキシなどの容易に除去可能な基(前述の弱い塩基によって切断されない)によって保護されてもよい。したがって、Tyr中の側鎖ヒドロキシ基は、好ましくは、(t-ブトキシ基を形成するために)t-ブチル(t-Bu)によって保護されてもよく、(L又はD)Lys中の側鎖アミン基は、(t-ブトキシ基を含む)t-ブトキシカルボニル(Boc)によって保護されてもよい。両方の場合において、切断(例えば、酸性環境における)は、保護されていないヒドロキシ基又はアミン基を再生してもよい。同様に、Cysの側鎖チオヒドロキシ基は、好ましくはトリチル(Trt)で保護されてもよく、及び/又はArgの側鎖グアニジニウム基は、好ましくは、2,2,4,6,7-ペンタメチル-2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf)で保護されてもよい。これらの各々は、所望により、酸性環境中で切断され得る。前述の側鎖保護基は、Fmocの使用に特に適合することが知られている。当業者は、アミノ酸側鎖中の特定の基に好適な追加の保護基、並びにそれらの相互のN末端保護基及び様々なN末端保護基との適合性を認識しているであろう。
【0106】
アミノ酸が順次カップリングされる樹脂は、所望により、Rinkアミノメチルスチレン(AMS)樹脂(Rinkリンカーで置換されたアミノメチルスチレン樹脂)である。Rink AMS樹脂は、所望によりFmoc基によって保護されており、このFmoc基は、(1つ目のアミノ酸がカップリングする)アミン基を露出させるようにカップリングの前に除去され得る。
【0107】
アミノ酸が順次カップリングされる樹脂(所望により、Rink AMS樹脂)の置換度は、所望により樹脂1グラム当たり少なくとも0.3ミリ当量(例えば、樹脂1グラム当たり0.3~0.11ミリ当量)、所望により樹脂1グラム当たり少なくとも0.6ミリ当量、所望により樹脂1グラム当たり0.6~1.1ミリ当量、及び所望により樹脂1グラム当たり0.6~0.9ミリ当量である。
【0108】
各カップリング工程の前に、例えば樹脂の膨張を容易にするために、樹脂をジメチルホルムアミド(DMF)などの溶媒で所望により洗浄してもよい(例えば、1回又は2回)。いくつかの例示的実施形態では、樹脂は、樹脂の脱保護(例えば、本明細書中に記載されるそれぞれの実施形態のいずれかによるFmoc基の除去)及び第1のアミノ酸のカップリングの前に20~30分間洗浄され、その後の各カップリング工程の前に約2分間洗浄(例えば、2回)される。
【0109】
樹脂からの(順次のカップリングによって形成された)ペプチドの切断、及びアミノ酸側鎖からの保護基の切断は、好ましくは、(樹脂にカップリングされた)ペプチドを、トリフルオロ酢酸(TFA)などの酸を含む液体と接触させることによって行われる。液体中のTFAの濃度は、所望により、少なくとも約80重量%、又は少なくとも約90重量%、又は少なくとも約95重量%である(例えば、残部は主に水である)。
【0110】
切断のために使用される液体(例えば、酸性液体)は、所望により、チオール(例えば、エタンジチオール、ジチオエリトリトール、ジチオトレイトール)、トリアルキルシラン(例えば、トリイソプロピルシラン)、フェノール(例えば、m-クレゾール)及び/又は水などのスカベンジャ(例えば、切断中に形成し得る反応性カチオン種のスカベンジャ)を更に含む。
【0111】
ジチオトレイトール(DTT)及び/又はジチオエリトリトール(DTE)は、好適なスカベンジャの例であり、所望により、液体は、好ましくは水と組み合わせた、TFA(例えば、本明細書中に記載される濃度)とDTT及び/又はDTEとを含む溶液である。切断に使用される溶液中のDTT及び/又はDTEの(総)濃度は、所望により少なくとも10mg/mL(例えば、10~500mg/mL、又は10~200mg/mL、又は10~100mg/mL、又は10~50mg/mL)、所望により少なくとも25mg/mL(例えば、25~500mg/mL、又は25~200mg/mL、又は25~100mg/mL、又は25~50mg/mL)、所望により少なくとも50mg/mL(例えば、50~500mg/mL、又は50~200mg/mL、又は50~100mg/mL)、及び所望により約50mg/mLである。
【0112】
樹脂からペプチドが切断される際、遊離ペプチドは、好ましくは、例えばペプチドが不溶性である液体の添加によって沈殿させる。沈殿の前に、所望により、溶液の溶媒の一部を蒸発させることによって遊離ペプチドを濃縮して溶液の体積を減少(例えば、約65%~約70%減少)させてもよい。あるいは、沈殿前には遊離ペプチドの濃縮を行わない。
【0113】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、遊離ペプチドの沈殿は、沈殿前に遊離ペプチドを濃縮することなく行われる。
【0114】
ペプチドの沈殿は、所望により、tert-ブチルメチルエーテル(MTBE)などのジアルキルエーテルの添加によって行われる。
【0115】
MTBEは所望によりヘキサンと混合される。いくつかの実施形態では、MTBEとヘキサンとの混合物(所望により、例えば約5℃~約15℃の範囲内の温度まで冷却される)は、樹脂1グラム当たり少なくとも40mLの混合物の体積、及び所望により樹脂1グラム当たり約45mLの混合物の体積でペプチドに添加される。MTBEとヘキサンとの例示的な混合物は、60:40(MTBE:ヘキサン)の体積比のMTBE及びヘキサンから構成される。
【0116】
沈殿したペプチドは、所望により、例えば凍結乾燥又は真空によって乾燥される。
【0117】
本明細書で論じるように、得られたペプチドのシステイン残基を酸化することによって、分子内ジスルフィド結合が形成され得る(これによりペプチドの環化が得られる)。当技術分野で公知の任意の好適な技術を、所望により使用してもよい。
【0118】
このような酸化は、所望により、ペプチドを過酸化水素と接触させることによって、例えば、過酸化水素溶液(例えば、水中約1.5重量%の過酸化水素)を徐々に(例えば、滴下)添加することによって行われる。Cys残基対に対する(例えば、配列番号1などの、正確に2個のCys残基を含む、ペプチドに対する)過酸化水素のモル比は、好ましくは少なくとも1:1(すなわち、Cys残基対当たり少なくとも1つの過酸化水素分子が存在する)、所望により少なくとも2:1、所望により少なくとも3:1、及び所望により少なくとも4:1である。Cys残基対に対する(例えば、ペプチドに対する)過酸化水素の例示的なモル比は、約5:1である。代替的又は追加的に、過酸化水素は(例えば、エルマン試験などの好適なアッセイによって決定されるように)チオヒドロキシ基が残存しなくなるまで所望により添加してもよい。
【0119】
酸化は、所望により、少なくとも5mg/mL(例えば、5~20mg/mL、又は5~15mg/mL、又は5~10mg/mL、又は約10mg/mL)の濃度のペプチドを含む水溶液を、(例えば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従う)過酸化水素と接触させることによって行われる。所望により、ペプチド濃度は少なくとも10mg/mL(例えば、10~20mg/mL又は10~15mg/mL)である。水溶液は、所望により弱アルカリ性であり、例えば重炭酸アンモニウム(NH4HCO3)の水溶液である。重炭酸アンモニウムの例示的な濃度は約0.1Mである。
【0120】
本プロセスは、好ましくは、得られたBL-8040(配列番号1)を単離することを更に含む。単離手順は100%完全ではないので、いくつかの追加的な化合物(本明細書に記載)が残る。当技術分野で公知の任意の好適な技術を、所望により使用してもよい。
【0121】
ペプチドの単離は、所望により、クロマトグラフィ、例えば、例としてC18カラムを用いる分取高速液体クロマトグラフィ(HPLC)の少なくとも1つの工程(例えば、所望により1つ又は2つの工程)を含む。単離は、所望により、得られたペプチド(例えば、本明細書に記載のHPLCの少なくとも1つの工程における)を逆相クロマトグラフィカラム(例えば、C18カラム)上に、カラム1kg当たり(カラムの樹脂の重量基準)40グラム以下のペプチドの濃度で、及び/又は所望によりカラム1kg当たり少なくとも4グラム(例えば、4~40グラム、又は4~30グラム、又は4~25グラム)のペプチドの濃度(カラムの樹脂の重量基準)で、所望によりカラム1kg当たり少なくとも10グラム(例えば、10~40グラム、又は10~30グラム、又は10~25グラム)のペプチドで、及び所望によりカラム1kg当たり少なくとも20グラム(例えば、20~40グラム、又は20~30グラム、又は20~25グラム)のペプチドでロードすることを含む。
【0122】
カラムにロードされたペプチド(本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかによる)は、例えば、緩衝溶液を用いて(例えば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかによる、アセトニトリル勾配と組み合わせて)溶出される。緩衝溶液のpHは、所望により1.5~3の範囲内、所望により2.0~2.5の範囲内、所望により約2.25である。トリエチルアンモニウムリン酸塩緩衝液を使用して、所望により、例えば、少なくとも約0.01Mの濃度、又は少なくとも約0.03Mの濃度、又は少なくとも約0.1Mの濃度で使用して、カラムからペプチドを溶出してもよい。例示的な実施形態では、トリエチルアンモニウムリン酸塩の濃度は、約0.1Mである。
【0123】
HPLCカラムからの溶出は、所望により、アセトニトリル勾配を用いて行われる。勾配は、所望により、アセトニトリルの濃度を、0.1%アセトニトリル/分~2%アセトニトリル/分、例えば約1%/5~6分及び/又は約1%/分の範囲内の速度(所望により、経時的に変化する)で増加させることを含む。代替的又は追加的に、勾配は、所望により、アセトニトリルの濃度を、(例えば、0%から)10%~40%の範囲内、又は20%~30%の範囲内、又は約25%の濃度まで増加させることを含む。
【0124】
例示的な勾配(例えば、本明細書中に記載されるそれぞれの実施形態のいずれかによる、トリエチルアンモニウムリン酸塩緩衝液を用いる)は、0%のアセトニトリルを約8分間、0%から約5%のアセトニトリルを約5分間(例えば、約1%/分の速度)、及び約5%から約25%のアセトニトリルを約120分間含む(例えば、約0.17%/分の速度)。
【0125】
所望により、溶出したペプチドを、(本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従う)カラムへ2回目にロードし、例えば、(例えば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかによる、アセトニトリル勾配と組み合わせた)緩衝溶液を用いて溶出する。所望により酢酸緩衝液(例えば、酢酸/酢酸アンモニウム)を使用して、例えば、少なくとも約5mMの濃度、又は少なくとも約20mMの濃度、又は少なくとも約35mMの濃度で、(例えば、ペプチドを酢酸塩として得るために)カラムからペプチドを溶出させてもよい。例示的な実施形態では、酢酸塩の濃度は、約35mMである。
【0126】
2回目の溶出のための例示的な勾配(例えば、本明細書に記載されるそれぞれの実施形態のいずれかによる、酢酸緩衝液を用いる)は、0%のアセトニトリルを8分間、及び0%から22%のアセトニトリルを110分間含む(0.2%/分の速度)。
【0127】
前記プロセスは、所望により、(例えば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかによる)クロマトグラフィによって得られた生成物を凍結乾燥することを更に含む。
【0128】
所望により、本プロセスは、以下の特徴(i)~特徴(vii)のうち、少なくとも1つ、又は少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又は少なくとも5つ、又は少なくとも6つを特徴とする:
(i)カップリングは、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を、シアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾールと組み合わせて用いて行われる(例えば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかよる);
(ii)樹脂からのペプチドの切断は、樹脂にカップリングされた直鎖ペプチドを、トリフルオロ酢酸(TFA)と、ジチオトレイトール(DTT)及び/又はジチオエリトリトール(DTE)であるスカベンジャと、を含む溶液と接触させることによって行われる(例えば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかよる);
(iii)前記プロセスは、ペプチドの沈殿前の蒸発によって遊離直鎖ペプチドを濃縮することなく、切断後に遊離直鎖ペプチドを沈殿させることを更に含む(例えば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかよる);
(iv)酸化は、少なくとも5mg/mLの濃度の直鎖ペプチドを含む水溶液を過酸化水素と接触させることを含む(例えば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかよる);
(v)ペプチドを単離することは、環状ペプチドを逆相クロマトグラフィカラムに、カラム1kg当たり40グラム以下の環状ペプチドの濃度でロードし、かつ環状ペプチドをカラムから溶出させることを含む(例えば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかよる);
(vi)環状ペプチドを単離することは、凍結乾燥を含み、前記プロセスは、凍結乾燥後に環状ペプチドを粉砕することを更に含む(例えば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかよる);並びに/又は
(vii)ペプチド合成に使用される樹脂の置換度は、少なくとも0.3ミリ当量/グラムであり、及び/若しくは樹脂は、Rink AMS樹脂である(例えば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかよる)。
【0129】
生物活性:
任意のそれぞれの実施形態のいくつかでは、本明細書中に記載されるそれぞれの実施形態のいずれかによるBL-8040(配列番号1)含有組成物は、(本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかによる)0.71~0.73及び/又は0.86~0.88の相対保持率を有する化合物を有しない、対応するBL-8040(配列番号1)含有組成物(例えば、同じBL-8040(配列番号1)濃度、対イオン及び溶媒)と比較して、増強された生物活性を呈する。
【0130】
任意のそれぞれの実施形態のいくつかでは、組成物の生物活性は、例えばマウスにおいて、末梢血へのインビボ好中球遊走の促進(これはまた、骨髄への遊走の阻害と見なされうる)を特徴とする。
【0131】
本明細書で例示するように、本発明の実施形態による組成物(例えば、約0.72及び約0.87の相対保持時間を有する化合物を含むシグナルトリー組成物を有する)は、前述の追加的な化合物を有しない同量のBL-8040(配列番号1)を含む対照組成物と比較して、末梢血中の好中球の増加のほぼ2倍の増強に関連していた。
【0132】
任意のそれぞれの実施形態のいくつかでは、末梢血へのインビボ好中球遊走の促進は、200μLのPBSにおいて再構成した5mg/kgのBL-8040(配列番号1)をマウスに皮下注射し、その後、注射の2時間後にマウスから採血し(例えば、ヘパリンを用いたチューブへの心臓穿刺による)、対照(非処置)マウスと比較して末梢血における成熟好中球の数を定量化することによって(例えば、フローサイトメトリによって)決定される。
【0133】
任意のそれぞれの実施形態のいくつかでは、組成物の生物活性は、以下のうち1又は複数によって特徴付けられる:
(i)例えばマウスにおける、末梢血へのインビボ好中球遊走の促進(これはまた、骨髄への遊走の阻害とも見なされ得る);
(ii)乳がん細胞のインビトロCXCL12誘発遊走の阻害;
(iii)T細胞由来白血病細胞のインビトロCXCL12誘発遊走の阻害;
(iv)動物(例えば、マウス)モデルにおける肺への転移性乳がん細胞遊走の阻害;
(v)動物(例えば、マウス)モデルにおける遅延型過敏症の阻害;
(vi)動物(例えば、マウス)モデルにおけるコラーゲン誘発関節炎の阻害;及び
(vii)インビトロでの細胞(例えば、Jurkat細胞)におけるCXCL12とCXCR4との結合の阻害(例えば、CXCL12のIC50を増加させること)。
【0134】
それぞれの実施形態のいくつかでは、組成物の生物活性は、活性(i)~活性(vii)のうち少なくとも2つによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、組成物の生物活性は、活性(i)~活性(vii)のうち少なくとも3つによって特徴付けられる。
【0135】
本明細書に記載されるそれぞれの実施形態のいずれかによる増強された生物活性は、(例えば、本明細書に記載の手順に従って決定される場合)少なくとも10%、所望により少なくとも20%、所望により少なくとも30%、及び所望により少なくとも50%の関連する定量的パラメータの増加又は減少(例えば、対照に対するパラメータの倍率変化)を所望により特徴とする。例えば、本明細書に記載されるそれぞれの実施形態のいずれかによる末梢血へのインビボ好中球遊走の増強された促進は、(例えば、本明細書に記載の手順に従って決定される場合)少なくとも10%、所望により少なくとも20%、所望により少なくとも30%、及び所望により少なくとも50%の末梢血中の好中球レベルの増加を所望により特徴とする。
【0136】
活性(i)~活性(vii)は、所望により、米国特許第7,423,007号に記載されたものなどの手順、及び/又は本明細書の実施例のセクションに記載されたものなど手順を用いて評価することができる。
【0137】
任意のそれぞれの実施形態のいくつかでは、活性(ii)及び活性(iii)(インビトロCXCL12誘発遊走の阻害)は、2つの区画を分離する好適な微孔膜及び/又はインサート(例えば、Transwell(登録商標)プレート)を通る細胞の遊走を評価することによって決定される。CXCL12(乳がん細胞については100nM及び白血病細胞については30nM)及び細胞増殖培地(所望により、0.1%ウシ血清アルブミンを含む600μLのDMEM)を、BL-8040(配列番号1)組成物とともに、第1の(例えば、上部)区画に添加し、試験されるBL-8040(配列番号1)組成物及びMDA-MB-231乳がん細胞又はSUP-T1白血病細胞(例えば、2×106細胞/mL)及び細胞増殖培地(所望により、0.1%ウシ血清アルブミンを含む100μLのDMEM)を、第2の(例えば、下部)区画に添加する。細胞増殖及び活性に適した条件下(例えば、37℃で)におけるインキュベーション(例えば、乳がん細胞については15時間、白血病細胞については4時間)の際に膜及び/又はインサートを通って遊走した細胞の量を、所望により、フローサイトメトリによって、並びに/又は固定及び染色(例えば、25%メタノール及び0.5%クリスタルバイオレット)によって定量化し、BL-8040(配列番号1)を有しない対照試料と比較する。
【0138】
任意のそれぞれの実施形態のいくつかでは、活性(iv)(肺への転移性乳がん細胞遊走の阻害)は、106個のMDA-MB-231ヒト乳がん細胞を、マウス(所望により、5週齢の雌CB-17SCIDマウス)の尾部へと静脈内移植することによって決定される。80mg/mLのBL-8040(配列番号1)の濃度に調整した生理食塩水を含むBL-8040(配列番号1)組成物を、マウスへ4週間にわたって徐々に投与する(所望により、徐放性浸透圧ポンプを用いて)、約18.2mg/kg/日を投与)。次いで、マウスの肺におけるがん細胞の量を、所望により気管を通じて注射したエバンズブルー溶液(例えば、0.2%、2mL)を用いて、続いて肺をブアン液に浸し、染色し、固定して、評価する。
【0139】
任意のそれぞれの実施形態のいくつかでは、活性(v)(遅延型過敏症の阻害)は、感作マウスの足首へのヒツジ赤血球の注射によって生じる炎症の程度(足首の厚さの変化によって表される)に従って決定される。マウスの感作のために、生理食塩水溶液に懸濁したヒツジ赤血球(50μL当たり2×107細胞)を、マウス(所望により、6週齢の雄BALB/cマウス)の左後肢の足首へと皮下投与し、5日後に、50μL当たり108細胞のヒツジ赤血球を右後肢の足首へと皮下投与する。抗原の誘導の直前及び約24時間後に、足首の厚さを決定する。PBSを含むBL-8040(配列番号1)組成物を、感作前日から開始して、約4μg/日、約8μg/日、約24μg/日及び/又は約120μg/日のBL-8040(配列番号1)を投与するように、マウスへ(所望により、徐放性浸透圧ポンプを用いて)徐々に投与する。
【0140】
任意のそれぞれの実施形態のいくつかでは、活性(vi)(コラーゲン誘発関節炎の阻害)は、1mg/mLのウシII型コラーゲン、0.025Mの酢酸、及び50%(体積基準)のフロイント完全アジュバントを含むエマルジョンの(例えば、尾部の付け根への)皮内注射によって、マウス(所望により、6週齢の雄DBA/1JNマウス)にコラーゲン誘発関節炎を引き起こし、続いて、注射の21日後に同様の免疫化を行うことによって決定される。第2の免疫化の2週間後、体重及び/又は後肢の厚さを所望により測定し、関節炎スコアリングを所望により行う。関節炎は、所望により、各肢0~3点でスコアリングされ、それらの合計によって評価される(12点満点;0=正常;1=軽度の腫脹又は1桁の膨張;2=中程度の膨張又は複数桁の膨張;3=重度の膨張)。II型コラーゲン特異的IgG2a抗体は、所望により、任意の好適な技術を用いて、所望により本明細書の実施例セクションに記載の手順によって(2週間の期間の終わりに)定量化される。コラーゲン誘発関節炎の阻害は、所望により、体重減少の阻害、関節炎スコアの減少及び/又はII型コラーゲン特異的抗体の減少として顕在化し得る。
【0141】
任意のそれぞれの実施形態のいくつかでは、活性(vii)(細胞中のCXCL12のCXCR4への結合の阻害)は、所望により、JurkatヒトT細胞白血病細胞において放射性標識されたCXCL12を用いて(例えば、CXCL12のIC50の増加により)、決定される。200pMの125I-CXCL12を、約7のpHの緩衝液に懸濁したJurkat細胞(所望により、6×106細胞/mL)と共に、(例えば、0.5%ウシ血清アルブミン及び20mM HEPESを含有するダルベッコPBS溶液、pH7.0)でインキュベートし、試験されるBL-8040(配列番号1)の物質組成物を、緩衝液によって1:2:1(例えば、緩衝液中の、25μLの放射性標識125I-CXCL12、50μLのJurkat細胞溶液、及び25μLのBL-8040(配列番号1)組成物)の体積比で希釈する。試料を室温で1時間固定反応に供し、続いて、各試料の放射能を決定する。
【0142】
製剤化及び使用:
本明細書に記載されるそれぞれの実施形態のいずれかによるBL-8040(配列番号1)(及び、BL-8040(配列番号1)以外の化合物)を含む組成物は、所望により、BL-8040(配列番号1)によって治療可能な状態の治療に使用するためのものであってもよい。
【0143】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、BL-8040(配列番号1)によって治療可能な状態を治療するための医薬品の製造における、本明細書中に記載されるそれぞれの実施形態のいずれかによる組成物の使用が提供される。
【0144】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、BL-8040(配列番号1)によって治療可能な状態を治療する方法であって、本明細書中に記載されるそれぞれの実施形態のいずれかによる組成物を、それを必要とする対象へ投与することを含む方法が提供される。
【0145】
治療に関する本明細書に記載される任意の実施形態のいくつかでは、治療は、CXCR4を阻害することが有利である任意の治療であり得る。
【0146】
本出願から出来る特許の存続期間中に、多くの関連する治療が開発されることが予想され、「状態」、「BL-8040によって治療可能」及び「CXCR4を阻害することが有利である治療」という用語の範囲は、全てのそのような新規技術を推測的に含むことが意図されている。
【0147】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、BL-8040(配列番号1)によって治療可能な状態は、例えば、米国特許第7,423,007号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる、特に前述のペプチドによる状態の治療に関する内容)に記載されるような、がん又は関節炎(例えば、慢性関節リウマチ)である。
【0148】
BL-8040(配列番号1)によって治療可能な(本明細書に記載される態様のいずれかによる)状態の例としては、例えば、国際特許出願公開WO2012/095849(その内容は参照により本明細書に組み込まれる、特に前述のペプチドによる状態の治療に関する内容)に記載されているような、網膜芽細胞腫及び/又は神経外胚葉由来腫瘍;例えば、国際公開第WO2013/160895号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる、特に前述のペプチドによる状態の治療に関する内容)に記載されているような、大細胞肺がん;例えば、国際特許出願公開第WO2008/075370号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる、特に前述のペプチドによる状態の治療に関する内容)に記載されているような、多発性骨髄腫、ミクログリオーマ及び/又はグリオーマ;例えば、米国特許第7,423,007号に記載されているような、乳がん及び/又は膵臓がん;例えば、国際特許出願公開第WO2010/146578号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる、特に前述のペプチドによる状態の治療に関する内容)に記載されているような、血小板減少症;例えば、国際特許出願公開第WO2008/075369号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる、特に前述のペプチドによる状態の治療に関する内容)に記載されているような、骨髄抑制のリスク;例えば、米国特許第8,435,939号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる、特に前述のペプチドによる状態の治療に関する内容)に記載されているような、HIV感染症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
BL-8040(配列番号1)の好適な類似体及び誘導体は、米国特許第7,423,007号及び同第8,435,939号、並びに国際特許出願公開第WO2008/075369号、同第WO2008/075370号、同第WO2010/146578号、同第WO2012/095849号及び同第WO2013/160895号(これら各々の内容が参照により本明細書に組み込まれる、特に、配列番号1の類似体及び誘導体に関する内容)に記載されている。
【0150】
本明細書に記載の実施形態のいずれかによるBL-8040(配列番号1)及びBL-8040(配列番号1)以外の化合物を含む組成物は、それ自体で、又は好適な担体若しくは賦形剤と混合された医薬組成物中で、生物に投与することができる。
【0151】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」とは、生理学的に好適な担体及び賦形剤などの他の化学成分を含む、本明細書に記載の活性成分の1又は複数の調製物を指す。医薬組成物の目的は生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0152】
本明細書では、「活性成分」という用語は、BL-8040(配列番号1)を指し、かつ所望によりBL-8040(配列番号1)と共に製剤化される任意の追加的な治療活性剤物質を更に含み得る。
【0153】
以下、互換的に使用され得る「生理学的に許容される担体」及び「薬学的に許容される担体」という語句は、生物に対して有意な刺激を引き起こさず、かつ投与された化合物の生物活性及び特性を無効にしない、担体又は希釈剤を指す。アジュバントはこれらの語句の下に含まれる。
【0154】
本明細書では、「賦形剤」という用語は、活性成分の投与を更に容易にするために医薬組成物へと添加される不活性物質を指す。賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な種類の糖及びデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油及びポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0155】
薬物の製剤化及び投与のための技術は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版に見出すことができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0156】
好適な投与経路としては、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、特に経鼻送達、腸送達又は非経口送達(筋肉内注射、皮下注射及び髄内注射、並びに髄腔内注射、脳室内への直接の注射、心臓内注射(例えば右心室腔内注射又は左心室腔内注射)、一般的な冠動脈内注射(into the common coronary artery)、静脈内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、又は眼内注射)が挙げられ得る。
【0157】
あるいは、例えば、医薬組成物を患者の組織領域に直接注射することによって、全身的ではなく局所的に医薬組成物を投与してもよい。
【0158】
本発明のいくつかの実施形態の医薬組成物は、当技術分野で公知のプロセス、例えば、従来の混合プロセス、溶解プロセス、造粒プロセス、糖衣錠作製プロセス、湿式粉砕プロセス、乳化プロセス、カプセル化プロセス、封入プロセス又は凍結乾燥プロセスによって製造してもよい。
【0159】
したがって、本発明のいくつかの実施形態に従って使用するための医薬組成物は、賦形剤及び補助剤を含む1又は複数の生理学的に許容される担体を用いて従来の様式で製剤化されてもよく、これは、薬学的に使用することができる調製物への活性成分(又は活性成分群)の加工を容易にする。適切な製剤は選択される投与経路に依存する。
【0160】
注射のために、医薬組成物の活性成分(又は活性成分群)は、水溶液中、好ましくは生理学的に適合性の緩衝液、例えばハンクス溶液、リンゲル溶液又は生理食塩緩衝液などにおいて製剤化され得る。経粘膜投与の場合、浸透されるバリアに適切な浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は当技術分野で一般的に知られている。
【0161】
経口投与の場合、医薬組成物は、活性成分(又は活性成分群)を当技術分野で公知の薬学的に許容される担体と組み合わせることによって、容易に製剤化することができる。そのような担体は、患者による経口摂取のために、医薬組成物を、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などとして製剤化することが可能である。経口使用のための薬理学的調製物は、必要であれば好適な補助剤を添加した後に、固体賦形剤を用いて、所望により得られた混合物を粉砕し、顆粒の混合物を加工して、錠剤又は糖衣錠コアを得ることにより作製することができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む糖などの充填剤;トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース調製物;及び/又は生理学的に許容されるポリマー、例えばポリビニルピロリドン(PVP)である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはその塩(例えばアルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を添加してもよい。
【0162】
糖衣錠コアには好適なコーティングが施される。この目的のために、所望によりアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、及び好適な有機溶媒又は溶媒混合物を含有し得る、濃縮糖溶液を使用してもよい。識別のために、又は活性化合物用量の異なる組合せを特徴付けるために、染料又は顔料を錠剤又は糖衣錠コーティングに添加してもよい。
【0163】
経口的に使用することができる医薬組成物には、ゼラチンで作られた押込み式カプセル(push-fit capsule)、並びにゼラチン及び可塑剤、例えばグリセロール又はソルビトールなどで作られた密封ソフトカプセルが含まれる。押込み式カプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及び所望により安定剤と混合して、活性成分(又は活性成分群)を含有してもよい。ソフトカプセルでは、活性成分(又は活性成分群)は、脂肪油、流動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体に溶解又は懸濁されてもよい。加えて、安定剤を添加してもよい。経口投与のための全ての製剤は、選択された投与経路に適した投与量であるべきである。
【0164】
頬側投与の場合、組成物は、従来の様式で製剤化された錠剤又はトローチ剤の形態をとることができる。
【0165】
経鼻吸入による投与の場合、本発明のいくつかの実施形態による使用のための活性成分(又は活性成分群)を含む組成物は、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタン又は二酸化炭素を使用して、加圧パック又はネブライザからエアロゾルスプレーの形態で都合よく送達される。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量を送達するための弁を用意することによって決定され得る。ディスペンサで使用するための、例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物と、ラクトース又はデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物を含有して製剤化され得る。
【0166】
本明細書に記載の医薬組成物は、例えばボーラス注射又は連続注入による非経口投与のために製剤化され得る。注射用製剤は、単位用量剤形、例えばアンプルで、又は所望により保存剤を添加した複数回用量の容器で提供され得る。組成物は、油性ビヒクル又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルジョンであってもよく、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤などの配合剤を含有してもよい。
【0167】
非経口投与のための医薬組成物は、水溶性形態の活性調製物の水溶液を含む。さらに、活性成分(又は活性成分群)の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液又は水性注射懸濁液として調製してもよい。好適な親油性溶媒又はビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、又はオレイン酸エチル、トリグリセリド若しくはリポソームなどの合成脂肪酸エステルが挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランなどの懸濁液の粘度を増加させる物質を含有し得る。所望により、懸濁液はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために活性成分(又は活性成分群)の溶解度を増加させる、好適な安定剤又は薬剤を含有してもよい。
【0168】
あるいは、活性成分は、使用前に好適なビヒクル、例えば滅菌パイロジェンフリーの水性溶液で構成するための粉末形態であってもよい。
【0169】
本発明のいくつかの実施形態の医薬組成物はまた、例えば、カカオバター又は他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を用いて、坐剤又は滞留浣腸などの直腸組成物に製剤化され得る。
【0170】
本発明のいくつかの実施形態の状況での使用に適した医薬組成物は、意図された目的を達成するのに有効な量で活性成分が含有される、組成物を含む。より具体的には、BL-8040(配列番号1)ペプチドの治療有効量は、障害(例えば、本明細書中で論じられるようながん又は関節炎)の症状を予防、緩和若しくは改善するため、又は治療されている対象の生存を延長するために有効なペプチドの量を意味する。
【0171】
治療有効量の決定は、特に本明細書で提供される詳細な開示に照らして、充分に当業者の能力の範囲内である。正確な製剤、投与経路及び投与量は、患者の状態を考慮して、個々の医師が選択することができる。(例えば、Fingl,ら(1975年)「The Pharmacological Basis of Therapeutics」第1章第1頁を参照されたい)。
【0172】
治療される状態の重症度及び応答性に応じて、投薬は、単回又は複数回の投与であってもよく、一連の治療は、数日~数週間、又は治癒がもたらされるまで、又は疾患状態の減少が達成されるまで続く。
【0173】
投与される組成物の量は、当然のことながら、治療される対象、苦痛の重症度、投与様式、処方医師の判断などに依存するであろう。
【0174】
本発明のいくつかの実施形態の組成物は、必要に応じて、活性成分を含有する1又は複数の単位用量剤形を含有し得る、例えばFDA承認キットなどのパック又はディスペンサ装置で提供され得る。パックは、例えばブリスターパックなどの金属箔又はプラスチック箔を含み得る。パック又はディスペンサ装置は、投与のための説明書を伴ってもよい。パック又はディスペンサにはまた、医薬品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形態の容器に関連した通知が提供されてもよく、この通知は、組成物の形態又はヒト投与若しくは獣医学的投与の機関による承認を反映している。そのような通知は、例えば、処方薬について米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)によって承認されたラベル、又は承認された製品添付文書のものであってもよい。適合する医薬担体中に製剤化された本発明の調製物を含む組成物もまた、上記で更に詳述されるように、調製され、適切な容器に入れられ、適応する状態の治療のためにラベリングされ得る。
【0175】
更なる定義:
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%を指す。本明細書に記載される任意のそれぞれの実施形態のいくつかでは、「約」という用語は、±5%を指す。
【0176】
「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「含む(includes)」、「含むこと(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの活用形は、「含むが、限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0177】
「からなる(consisting of)」という用語は、「含み、限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0178】
「から実質的になる(consisting essentially of)」という用語は、組成物、方法又は構造が追加的な成分、工程及び/又は部分を含み得るが、前記追加的な成分、工程及び/又は部分が、特許請求される組成物、方法又は構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合に限ることを意味する。
【0179】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「前記(the)」という単数形は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「1つの化合物(a compound)」又は「少なくとも1つの化合物(at least one compound)」という用語は、それらの混合物を含む、複数の化合物を含み得る。
【0180】
本出願を通して、本発明の様々な実施形態は範囲形式で提示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜及び簡潔さのためのものであって、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、全ての可能な部分範囲、及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているものと見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示しているものと見なされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0181】
本明細書において数値範囲が示される場合はいつでも、示された範囲内の任意の引用された数字(分数又は整数)を含むことを意味する。第1の提示数と第2の提示数との「間の範囲内(ranging/ranges between)」及び第1の提示数から第2の提示数までの「範囲内(ranging/ranges from)」という語句は、本明細書では互換的に使用され、かつ第1の提示数及び第2の提示数並びにそれらの間の全ての分数及び整数を含むよう意図される。
【0182】
「治療すること(treating)」という用語は、病態(疾患、障害又は状態)の進行(development)を阻害、予防若しくは阻止すること、及び/又は病態の軽減、寛解若しくは退行を引き起こすことを指す。当業者は、様々な方法論及びアッセイを使用して病態の進行を評価することができ、同様に、様々な方法論及びアッセイを使用して病態の減少、寛解又は退行を評価することができることを理解するであろう。
【0183】
本明細書で使用される場合、「予防する」という用語は、疾患、障害又は状態が、疾患のリスクがあり得るが、疾患を有するとまだ診断されていない対象において発生するのを防ぐことを指す。
【0184】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物、好ましくは病態に罹患している任意の年齢の人間を含む。好ましくは、この用語は、病態を発症するリスクがある個体を包含する。
【0185】
本明細書で使用される場合、「方法」という用語は、所与のタスクを達成するための様式、手段、技術及び手順を指し、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の分野の専門職に知られているか、又は化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の分野の専門職によって既知の様式、手段、技術及び手順から容易に開発されるかのいずれかである様式、手段、技術及び手順を含むが、これらに限定されない。
【0186】
特定の配列表を参照する場合、そのような参照は、例えば、シークエンシングエラー、クローニングエラー、又は塩基置換、塩基欠失若しくは塩基付加をもたらす他の変化から生じるマイナーな配列変化を含むものとして、その相補配列に実質的に対応する配列もまた包含すると理解されるべきであるが、ただし、そのような変化の頻度は、50ヌクレオチド中1個未満、あるいは100ヌクレオチド中1個未満、あるいは200ヌクレオチド中1個未満、あるいは500ヌクレオチド中1個未満、あるいは1000ヌクレオチド中1個未満、あるいは5,000ヌクレオチド中1個未満、あるいは10,000ヌクレオチド中1個未満である。
【0187】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴はまた、別個に、又は任意の好適な部分的組合せで、又は本発明の任意の他の記載された実施形態で好適であるように提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは動作不能でない限り、それらの実施形態の必須の特徴と見なされるべきではない。
【0188】
上記で描写され、かつ以下の特許請求の範囲のセクションで請求される本発明の様々な実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的裏付けを見出す。
【実施例】
【0189】
ここで、上記の説明と共に本発明のいくつかの実施形態を非限定的に示す、以下の実施例を参照する。
【0190】
実施例1
いくつかの実施形態によるBL-8040の大規模相合成
環状ペプチドBL-8040(配列番号1)を、大規模(825mmol)固相合成によって調製し、ここで、固相合成反応工程を、C末端アミノ酸で開始し、N末端アミノ酸で終了するまで、ペプチド全体の構築のために14回繰り返した。各アミノ酸付加は2つの工程で実施した:第1の工程は、ペプチド配列に付加された最後のアミノ酸のN末端から(又は、第1のアミノ酸を添加する場合、樹脂から)Fmoc保護基を除去し、続いて、樹脂上のペプチドの伸長に一連のアミノ酸を結合させることを含む。樹脂上のペプチドに付加される最後の残基は、Fmoc基を含有しない4-フルオロベンゾイル基であった。
最終収量は468グラム(25%)であった。
【0191】
樹脂:
樹脂は、0.3~0.6ミリ当量/グラムの範囲内の置換を有するFmoc-Rink AMS樹脂であった。
【0192】
Fmoc保護基の除去:
ジメチルホルムアミド(DMF)中の20%ピペリジン溶液(初期樹脂1グラム当たり10mL)を用いて、(ペプチド配列に付加された最後のアミノ酸の)N末端又は樹脂からFmoc保護基を除去した。DMFによる洗浄により、次のアミノ酸反応の前にピペリジン溶液を除去して、洗浄物のpHを試験することによって確認した。
【0193】
アミノ酸の結合:
活性化剤としてHOBt(N-ヒドロキシベンゾトリアゾール)と組み合わせたジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を用いて、適切なアミノ酸誘導体の形態でアミノ酸をカップリングした。Cys、Arg、Tyr及びLys(D-Lys又はL-Lys)を、それぞれ、Cys(Trt)、Arg(Pbf)、Tyr(t-Bu)及びLys(Boc)(D-又はL-)として保護した。最終工程では、アミノ酸の代わりに4-フルオロ安息香酸をカップリングさせた。アミノ酸(又は4-フルオロ安息香酸)分量、DIC分量及びHOBt分量の計算は、2倍過剰の置換及びバッチサイズに基づいた。
【0194】
カップリング工程の評価のために、各サイクルの最後に、ニンヒドリン試験及びクロラニル試験を用いたインプロセスモニタリングを行った。陰性の試験結果は、遊離アミノ基の非存在(完全なカップリング)を示す。試験が陽性であり、未反応のアミノ基(不完全なカップリング)を示す場合、カップリング反応を延長してもよく、又は保護アミノ酸誘導体の再カップリングを行ってもよい。
【0195】
合成サイクルが完了した後、樹脂-ペプチドをDMF/イソプロパノール(1:1)の溶液で洗浄し、窒素で乾燥させた。
【0196】
切断及び脱保護:
切断を行って、ペプチド分子をその支持樹脂から分離し、保護基を除去した。酸分解反応を、5%の水及びスカベンジャとしての50mg/mLのジチオエリトリトール(DTE)を含む95%トリフルオロ酢酸(TFA)(樹脂1グラム当たり10mLのTFA系切断溶液)を用いて、例えば、周囲温度で3.25~3.5時間行った。
次いで、樹脂を濾過し、ペプチドの抽出を完了するためにTFAで2回すすいだ。
ペプチド溶液の体積を、ロータリエバポレータ(約35℃)中で真空下において、元の体積の約30~35%の体積まで減少させた。
次いで、tert-ブチルメチルエーテル(MTBE)/ヘキサン(60:40v/v)の冷却混合物(-10±5℃)を用いて、樹脂1グラム当たり32mLの体積で、ペプチドを沈殿させた。
粗生成物を濾過によって単離し、MTBEで洗浄し、フィルタ上で窒素流下において乾燥させて、溶媒の大部分を除去した。
次いで、得られた粗(直鎖)ペプチドを90%酢酸に可溶化し、得られた溶液を凍結乾燥フラスコに分配し、シェル凍結し、マニホールド凍結乾燥機で凍結乾燥乾固した。
このペプチドを、純度についてRP-HPLCによって分析し、同一性の確認について質量スペクトル分析によって分析した。
【0197】
酸化的環化:
粗直鎖ペプチドを、以下の通り、0.1M重炭酸アンモニウム(NH4HCO3)溶液中、過酸化水素による酸化によって環化した:
粗直鎖ペプチドを0.1M NH4HCO3中に10mg/mLの濃度で溶解し、等体積の0.1M NH4HCO3を加えてペプチドを5mg/mLの濃度に希釈した。
次いで、1.5%過酸化水素の水溶液(5倍過剰)を、ペプチド溶液へと25~30分間かけて滴加した。反応を、遊離スルフヒドリル基の非存在を確認するためにエルマン試験を用いてモニタリングした。
反応の完了後、反応混合物をTFA原液(neat TFA)の添加によってpH2~3まで酸性化し、得られた溶液を、TEAP(トリエチルアンモニウムリン酸塩)精製工程で「そのまま」使用した。
【0198】
第1の分取HPLCカラム(TEAP精製):
環化工程の完了時に得られた溶液を、樹脂1kg当たり約11.7グラムの粗ペプチドを含有する、約2.4Lの溶液を充填した分取RP-HPLC C18カラム、10μm、120Å Daisogel(商標)での分離によって精製した。
ペプチドを0.1Mトリエチルアンモニウムリン酸塩(TEAP)緩衝液(pH2.25)及びアセトニトリル(ACN)勾配で溶出させた。勾配は以下の通りであった:0%アセトニトリルを8分間、0%から5%のアセトニトリルを5分間(1%/分の速度)、及び5%から25%のアセトニトリルを120分間(0.17%/分の速度)。
溶出画分を収集し、サンプリングし、HPLCによって試験して、どの画分が第2のクロマトグラフィ精製工程のためにプールされるのに充分純粋(≧95%)であるかを決定した。純度許容基準を満たさない第1のRP-HPLC精製の親水性画分及び疎水性画分は保持され、全体的な収率を最大にするために再処理されてもよい。
【0199】
第2の分取HPLCカラム(酢酸精製):
TEAP注入から得られた精製画分をプールし、水で1:1に希釈し、ペプチドを10μm、120Å Daisogel(商標)C18カラムで分離し、樹脂1kg当たり約2.7Lの体積でロードし、35mM酢酸系緩衝液及びアセトニトリル勾配で溶出させた。勾配は以下の通りであった:0%アセトニトリルを8分間、及び0%から22%のアセトニトリルを110分間(0.2%/分の速度)。ペプチドをロードした後、溶出勾配の開始前に、カラムを4カラム体積の0.1M酢酸アンモニウムで洗浄して、酢酸塩としてペプチドを得た。画分収集を230nmでのUV吸収によってモニタリングした。
得られた組成物は、BL-8040(配列番号1)を99.58%の純度(すなわち、全てのピーク面積の合計と比較したピーク面積)で含有していた。3つの追加的なピークが検出された:相対保持時間0.72及び濃度0.105%でのピーク;相対保持時間0.87、濃度0.108%の別のピーク;及び相対保持時間0.91、環状C末端脱アミド化BL-8040(配列番号2)として同定された、濃度0.055%の第三のピーク。少なくとも0.05%の他のピークは観察されなかった。
【0200】
実施例2
いくつかの実施形態によるBL-8040の大規模相合成
環状ペプチドBL-8040(配列番号1)を、実施例1に記載される手順に従って調製した。ペプチド純度を、Agilent(商標)1200 HPLCシステム及びHypersil Gold(商標)C18逆相カラム(長さ250mm、内径4.6mm、粒径5μm)を用いて、逆相高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によって評価した。移動相Aは0.017M過塩素酸(HClO4)(pH3)、移動相Bはアセトニトリル(100%)であり、移動相Bの勾配は50分で19.4%から29.4%であった。温度は40℃であり、注入体積は20μLであり、流速は1mL/分であり、検出は波長226nmでの吸収によるものであった。
【0201】
生成物であるBL-8040(配列番号1)は21.165分の保持時間(相対保持時間=1.00として定義)に検出された。18.481分の保持時間、すなわち、0.873の相対保持時間、及び0.148%の濃度(すなわち、全てのピーク面積の合計と比較したピーク面積)で追加のピークが検出された。他の有意な(すなわち、≧0.05%)ピークは観察されなかった。
【0202】
BL-8040(配列番号1)の同一性は、BL-8040(配列番号1)の参照試料と実質的に同じHPLC保持時間を有することによって、並びにフーリエ変換型赤外(FTIR)分光法及びアミノ酸分析によって確認した。
【0203】
質量分析による分析により、1080.3のm/z値を有する主要なイオンピークの存在が明らかになり、これは、[M+2H]2+に対応するものと同定された。ここで、Mは2158.6Daであり、これはBL-8040(配列番号1)の予測分子量と一致する。
【0204】
実施例3
いくつかの実施形態によるBL-8040の大規模相合成
環状ペプチドBL-8040(配列番号1)を、実施例1に記載の手順に従って調製した。移動相AのpHを3.3とし、移動相Bの勾配を50分で19.8%から29.8%としたこと以外は、実施例2に記載したように逆相HPLCによってペプチド純度を評価した。
【0205】
生成物であるBL-8040(配列番号1)は20.866分の保持時間(相対保持時間=1.00として定義)に検出された。2つの追加的なピークが観察された:保持時間18.168分、すなわち、相対保持時間0.871、及び濃度0.156%のピーク;並びに、保持時間15.008分、すなわち、相対保持時間0.719、及び濃度0.062%の小さいピーク。他の有意な(すなわち、≧0.05%)ピークは観察されなかった。
【0206】
BL-8040(配列番号1)の同一性は、参照試料と実質的に同じHPLC保持時間を有することによって、並びにフーリエ変換型赤外(FTIR)分光法及びアミノ酸分析によって確認した。
【0207】
質量分析による分析により、1080.4及び720.8のm/z値を有する2つの主要なイオンピークの存在が明らかになり、これらは、[M+2H]2+及び[M+3H]3+に対応するものと同定された。ここで、Mは2159Daであり、これはBL-8040(配列番号1)の予測分子量と一致する。
【0208】
ペプチドを(賦形剤としてのマンニトールと共に)緩衝水溶液(pH7)中に溶解した。ペプチド純度を、本明細書に記載されるような手順(注入体積20μL)に従って逆相HPLCによって評価し、5±3℃で溶液を1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月及び36ヶ月保存した後に再評価した。前述の追加的な化合物は、相対保持時間0.88(濃度0.15%)及び相対保持時間0.72(濃度0.06%)で観察された。他の有意な(すなわち、≧0.05%)ピークは観察されなかった。
【0209】
前述の化合物の各々の濃度は、36ヶ月間にわたって本質的に変化しないままであった。36ヶ月後、0.72でのピーク濃度は0.14%までごくわずかに減少し、相対保持時間0.97で濃度0.05%の追加的なピークが現れた。
【0210】
保存中に本質的な変化がないことは、約0.72及び約0.87の相対保持時間を特徴とする追加的な化合物が、溶液中での分解ではなく、BL-8040(配列番号1)化合物を調製するプロセスに関連することを示す。
【0211】
実施例4
いくつかの実施形態によるBL-8040の大規模相合成
環状ペプチドBL-8040(配列番号1)を、実施例1に記載の手順に従って調製した。移動相Bの勾配を50分で19.3%から29.3%としたこと以外は、実施例2に記載したように逆相HPLCによってペプチド純度を評価した。
【0212】
生成物であるBL-8040(配列番号1)は20.675分の保持時間(相対保持時間=1.00として定義)に検出された。3つの追加的なピークが観察された:保持時間が17.911分及び17.999分、すなわち、それぞれ相対保持時間が0.866及び0.871であり、それぞれ濃度が0.10及び0.13である2つの重複するピーク;並びに、保持時間22.223分、すなわち、相対保持時間1.075、及び濃度0.05%の第3のピーク。他の有意な(すなわち、≧0.05%)ピークは観察されなかった。
【0213】
質量分析による分析により、1080.3及び720.8のm/z値を有する2つの主要なイオンピークの存在が明らかになり、これらは、[M+2H]2+及び[M+3H]3+に対応するものと同定された。ここで、Mは2159Daであり、これはBL-8040(配列番号1)の予測分子量と一致する。
【0214】
ペプチドを(賦形剤としてのマンニトールと共に)緩衝水溶液(pH7)中に溶解した。ペプチド純度を、本明細書に記載されるような手順(注入体積20μL)に従って逆相HPLCによって評価し、5±3℃で溶液を1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月及び24ヶ月保存した後に再評価した。前述の追加的な化合物は、前述の重複ピークに対応する相対保持時間0.87(濃度0.23%)及び相対保持時間1.09(濃度0.05%)として、相対保持時間0.72及び濃度0.05%、及び相対保持時間1.96及び濃度0.06%の2つの追加的なピークと共に観察された。他の有意な(すなわち、≧0.05%)ピークは観察されなかった。
【0215】
相対保持時間0.72及び0.87を特徴とする追加的な化合物の濃度は、24ヶ月の経過にわたって変化しないままであったが、一方で、相対保持時間1.09及び1.96を特徴とする追加的な化合物の濃度は、0.05%未満にまで減少した。
【0216】
保存中に本質的な変化がないことは、約0.72及び約0.87の相対保持時間を特徴とする追加的な化合物が、溶液中での分解ではなく、BL-8040(配列番号1)化合物を調製するプロセスに関連することを示す。
【0217】
実施例5
いくつかの実施形態によるBL-8040の大規模相合成
環状ペプチドBL-8040(配列番号1)を、実施例1に記載の手順に従って調製した。移動相Bの勾配を50分で19.3%から29.3%としたこと以外は、実施例2に記載したように逆相HPLCによってペプチド純度を評価した。
【0218】
生成物であるBL-8040(配列番号1)は21.000分の保持時間(相対保持時間=1.00として定義)に検出された。2つの追加的なピークが観察された:保持時間18.268分、すなわち、相対保持時間0.870、及び濃度0.22%のピーク;並びに、保持時間15.252分、すなわち、相対保持時間0.726、及び濃度0.05%の小さいピーク。他の有意な(すなわち、≧0.05%)ピークは観察されなかった。
【0219】
BL-8040(配列番号1)の同一性は、参照試料と実質的に同じHPLC保持時間を有することによって、並びにフーリエ変換型赤外(FTIR)分光法及びアミノ酸分析によって確認した。
【0220】
質量分析による分析により、1080.4及び720.8のm/z値を有する2つの主要なイオンピークの存在が明らかになり、これらは、[M+2H]2+及び[M+3H]3+に対応するものと同定された。ここで、Mは2159Daであり、これはBL-8040(配列番号1)の予測分子量と一致する。
【0221】
追加のピークの更なる液体クロマトグラフィ質量分析(LC/MS)分析により、2つの重複するピークの存在が示され、一方の化合物は2159Daの分子量を特徴とし(BL-8040(配列番号1)の異性体の可能性)、もう一方の化合物は2239Daの分子量を特徴とした(BL-8040(配列番号1)の分子量より約80Da大きい)。
【0222】
以上より、相対保持時間0.870のピークは、保持時間18.26分及び濃度0.10%のピークと、保持時間18.27分及び濃度0.12%のもう一方のピークとの2つの重複するピークを含むものと決定された。
【0223】
ペプチドを(賦形剤としてのマンニトールと共に)緩衝水溶液(pH7)中に溶解した。溶液のペプチド純度を、本明細書に記載される手順(注入体積20μL)に従って逆相HPLCによって評価し、5±3℃で溶液を6ヶ月、12ヶ月及び24ヶ月保存した後に再評価した。前述の追加的な化合物は、前述の重複ピークに対応する相対保持時間0.87(濃度0.21%)及び相対保持時間0.72(濃度0.05%)で観察された。他の有意な(すなわち、≧0.05%)ピークは観察されなかった。前記追加的な化合物の濃度は、24ヶ月間にわたって変化しないままであった。
【0224】
保存中に本質的な変化がないことは、約0.72及び約0.87の相対保持時間を特徴とする化合物が、溶液中での分解ではなく、BL-8040(配列番号1)化合物を調製するプロセスに関連することを示す。
【0225】
実施例6
いくつかの実施形態によるBL-8040の大規模相合成
環状ペプチドBL-8040(配列番号1)を、実施例1に記載の手順に従って調製した。移動相Bの勾配を50分で20%から30%とし、注入体積を5μLとし、Agilent(商標)1100 HPLCシステムを使用したこと以外は、実施例2に記載した逆相HPLCによってペプチド純度を評価した。
【0226】
生成物であるBL-8040(配列番号1)は22.421分の保持時間(相対保持時間=1.00として定義)に検出された。保持時間19.635分、すなわち、相対保持時間0.876、及び濃度0.10%で追加的なピークが観察された。他の有意な(すなわち、≧0.05%)ピークは観察されなかった。
【0227】
ペプチドを(賦形剤としてのマンニトールと共に)緩衝水溶液(pH7)中に2バッチで溶解した。溶液のペプチド純度は、本明細書に記載される手順(注入体積20μL)に従って逆相HPLCによって評価した。1つのバッチでは、前述の追加的な化合物が、相対保持時間0.87、濃度0.10%にて観察された。もう一つのバッチでは、前述の化合物が、相対保持時間0.87、濃度0.11%にて;相対保持時間0.92及び濃度0.05%の追加のピークと共に観察された。これは、環状脱アミド化BL-8040(配列番号2)に帰属された。他の有意な(すなわち、≧0.05%)ピークは観察されなかった。
【0228】
実施例7
いくつかの実施形態によるBL-8040の大規模相合成
環状ペプチドBL-8040(配列番号1)を、実施例1に記載の手順に従って調製した。ペプチド純度を実施例6に記載の逆相HPLCによって評価した。
【0229】
生成物であるBL-8040(配列番号1)は22.035分の保持時間(相対保持時間=1.00として定義)で検出された。2つの追加的なピークが観察された:保持時間19.259分、すなわち、相対保持時間0.874、及び濃度0.08%でのピーク;並びに、保持時間15.845分、すなわち、相対保持時間0.719、及び濃度0.11%でのもう一つの小さいピーク。他の有意な(すなわち、≧0.05%)ピークは観察されなかった。
【0230】
ペプチドを(賦形剤としてのマンニトールと共に)緩衝水溶液(pH7)中に2バッチで溶解した。溶液のペプチド純度は、本明細書に記載される手順(注入体積20μL)に従って逆相HPLCによって評価した。前述の追加的な化合物は、相対保持時間0.87(濃度0.08%)及び相対保持時間0.72(濃度0.11%)で観察された。他の有意な(すなわち、≧0.05%)ピークは観察されなかった。
【0231】
バッチのうち1つのペプチド純度を、5±3℃での3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月及び12ヶ月の保存後に再評価した。前述の追加的な化合物の各々の濃度は、12ヶ月間にわたって本質的に変化しないままであった。
【0232】
保存中に本質的な変化がないことは、約0.72及び約0.87の相対保持時間を特徴とする化合物が、溶液中での分解ではなく、BL-8040(配列番号1)化合物を調製するプロセスに関連することを示す。
【0233】
参考例
BL-8040の固相合成
BL-8040(配列番号1)を、Rinkアミド樹脂上での固相ペプチド合成によって、5つの異なるロットで調製した。DMF中の有機塩基(DIPEA又はコリジン)を含むHOBt/TBTU(ヒドロキシベンゾトリアゾールのテトラフルオロボラートベンゾトリアゾールウロニウム誘導体)をカップリング試薬として使用し、アセチル化によるキャッピングには無水酢酸を使用した。合成したペプチドを、トリフルオロ酢酸(TFA)、ドデシルメルカプタン(DDM)、水及びトリイソプロピルシラン(TIS)を用いて樹脂から切断し、MTBE(メチルtert-ブチルエーテル)中に沈殿させた。次いで、得られた直鎖ペプチドを、0.1%トリフルオロ酢酸及びアセトニトリルの勾配を用いた逆相HPLCによって精製した。収集した画分を濃縮し、次いで、酢酸中でヨウ素を用いた酸化によってペプチドの環化を行った。
【0234】
ペプチド純度(5ロットの各々について)を、0.1%トリフルオロ酢酸及びアセトニトリルの勾配を用いた逆相HPLC、続いて酢酸緩衝液を用いた逆相HPLCによって評価した。
【0235】
各ロットのBL-8040(配列番号1)の純度は96.70%~99.28%の範囲内であった。顕著な追加的な化合物としては、環状C末端脱アミド化BL-8040(配列番号2)(相対保持時間0.91を特徴とし、5つのロットのうち4つにおいて0.259%~0.373%の範囲内の濃度で存在した);及びアセチル化D-Lysを有する環状BL-8040(配列番号3)(相対保持時間1.10を特徴とし、5ロットのうち4ロットにおいて0.054%~0.223%の範囲内の濃度で存在した)が挙げられた。
【0236】
相対保持時間0.86~0.88を特徴とする追加的な化合物は、5つのロットのうち3つにおいて、BL-8040(配列番号1)以外の全化合物の4%~15%に相当する濃度で検出された。相対保持時間0.71~0.73を特徴とする追加的な化合物は、5つのロットのうちの1つのみにおいて、BL-8040(配列番号1)以外の全化合物のわずか2%に相当する濃度で検出された。
【0237】
実施例8
BL-8040を含む組成物のインビボ好中球遊走に対する効果
BL-8040(配列番号1)は、CXCR4ケモカイン受容体のアンタゴニストである。CXCR4によって媒介される細胞活性の誘導は、白血球細胞の骨髄間質細胞への付着に関与する。したがって、(例えば、BL-8040(配列番号1)による)CXCR4活性の阻害は、骨髄間質からの白血球細胞(好中球を含むが、これに限定されない)の脱離、及びその後の末梢血への細胞の遊走を誘導するものと予想される。
【0238】
実施例1及び参考例1に記載したように調製したBL-8040(配列番号1)を含む組成物の生物活性を、注射後の末梢血への好中球の遊走を評価することによって比較した。
【0239】
マウスへ、200μLのPBS中で再構成した、5mg/kgのBL-8040(配列番号1)の単回用量を皮下注射した。マウスは、BL-8040(配列番号1)注射の2時間後に、心臓穿刺によってヘパリンを含むチューブへ採血した。フローサイトメトリを使用して、末梢血中の成熟好中球の数を評価し、対照マウスと比較した増加分を計算した。
【0240】
表1に示すように、約0.87及び約0.72の保持時間を有する化合物の存在(BL-8040(配列番号1)と並ぶ)は、好中球遊走を評価することによって決定されるように、より強い生物活性と相関していた。
【0241】
【0242】
実施例9
BL-8040を含む組成物によるCXCL12誘発乳がん細胞遊走の阻害
CXCL12がCXCR4の天然リガンドであるので、CXCL12誘発乳がん細胞遊走に対するBL-8040(配列番号1)組成物の阻害活性を評価する(所望により、米国特許第7,423,007号に記載されているような手順を用いる)。約0.87及び0.72の保持時間の化合物を含むBL-8040(配列番号1)組成物(所望により、実施例1~実施例7のいずれかに記載のように調製されていてもよい)の阻害活性を、約0.87及び0.72の保持時間のこのような化合物を欠くBL-8040(配列番号1)組成物(所望により、参考例1に記載のように調製されていてもよい)の阻害活性と比較する。
【0243】
Transwell(登録商標)インサートを、フィブロネクチン溶液(所望により、約10μg/mL)で処理(所望により、37℃で6時間)し、乾燥させ、次いで、CXCL12(所望により、100nM)及び細胞増殖培地(場合により、0.1%ウシ血清アルブミンを含む600μLのDMEM)を、BL-8040(配列番号1)組成物とともに、Transwell(登録商標)プレートの下部チャンバに添加する。試験されるBL-8040(配列番号1)組成物、及び乳がん細胞(所望により、2×106細胞/mLのMDA-MB-231細胞)、及び細胞増殖培地(所望により、0.1%ウシ血清アルブミンを含む100μLのDMEM)を、上部チャンバに添加する。インキュベーション(所望により、5%CO2の存在下において37℃で約15時間)後、ウェルの下面上の細胞を、所望により固定及び染色によって(例えば、25%メタノール及び0.5%クリスタルバイオレットによって)定量化し、BL-8040(配列番号1)を有しない対照試料と比較する。
【0244】
実施例10
BL-8040を含む組成物によるCXCL12誘発白血病細胞遊走の阻害
CXCL12誘発T細胞由来白血病細胞遊走に対するBL-8040(配列番号1)組成物の阻害活性を評価する(所望により、米国特許第7,423,007号に記載されているような手順を用いる)。約0.87及び0.72の保持時間の化合物を含むBL-8040(配列番号1)組成物(所望により、実施例1~実施例7のいずれかに記載のように調製されていてもよい)の阻害活性を、約0.87及び0.72の保持時間のこのような化合物を欠くBL-8040(配列番号1)組成物(所望により、参考例1に記載のように調製されていてもよい)の阻害活性と比較する。
【0245】
CXCL12(所望により、30nM)及び細胞増殖培地(所望により、0.1%ウシ血清アルブミンを含む600μLのDMEM)を、BL-8040(配列番号1)組成物とともに、Transwell(登録商標)プレートの下部チャンバに添加する。試験されるBL-8040(配列番号1)組成物、及び白血病細胞(所望により、2×106細胞/mLのSUP-T1細胞)、及び細胞増殖培地(所望により、0.1%ウシ血清アルブミンを含む100μLのDMEM)を、上部チャンバに添加する。インキュベーション(所望により、5%CO2の存在下において37℃で約4時間)後、所望によりコールターカウンタを用いて、下部チャンバに移動した細胞の量を定量化し、BL-8040(配列番号1)を有しない対照試料と比較する。
【0246】
実施例11
動物モデルにおけるBL-8040を含む組成物の抗転移活性
転移性乳がん細胞遊走を阻害するBL-8040(配列番号1)組成物の能力を、動物モデルにおいて(所望により、米国特許第7,423,007号に記載されているような手順を用いて)評価する。約0.87及び0.72の保持時間の化合物を含むBL-8040(配列番号1)組成物(所望により、実施例1~実施例7のいずれかに記載のように調製されていてもよい)の阻害活性を、約0.87及び0.72の保持時間のこのような化合物を欠くBL-8040(配列番号1)組成物(所望により、参考例1に記載のように調製されていてもよい)の阻害活性と比較する。
【0247】
乳がん細胞(所望により、106個のMDA-MB-231ヒト乳がん細胞)をマウス(所望により、5週齢の雌CB-17SCIDマウス)の尾部に静脈内移植する。生理食塩水を含むBL-8040(配列番号1)組成物(所望により、80mg/mLのBL-8040(配列番号1)の濃度に調整)を、マウスへ徐々に(所望により、4週間にわたって)投与する(所望により、徐放性浸透圧ポンプを用いて、約18.2mg/kg/日を投与)。
【0248】
次いで、マウスの肺におけるがん細胞の量を、所望により気管を通じて注射したエバンズブルー溶液(例えば、0.2%、2mL)を用いて、続いて肺をブアン液に浸し、染色し、固定し、転移巣(黄色染色部分)を観察して評価し、BL-8040(配列番号1)を有しない対照試料と比較する。
【0249】
実施例12
動物モデルにおける遅延型過敏(DTH)反応に対するBL-8040を含む組成物の効果
遅延型過敏(DTH)反応を阻害するBL-8040(配列番号1)組成物の能力を、動物モデルにおいて(所望により、米国特許第7,423,007号に記載されているような手順を用いて)評価する。約0.87及び0.72の保持時間の化合物を含むBL-8040(配列番号1)組成物(所望により、実施例1~実施例7のいずれかに記載のように調製されていてもよい)の阻害活性を、約0.87及び0.72の保持時間のこのような化合物を欠くBL-8040(配列番号1)組成物(所望により、参考例1に記載のように調製されていてもよい)の阻害活性と比較する。
【0250】
生理食塩水溶液に懸濁したヒツジ赤血球(所望により、50μL当たり2×107個細胞)を、マウス(所望により、6週齢の雄BALB/cマウス)の皮下(所望により、左後肢の足首に)に投与する。5日後、より大量のヒツジ赤血球(所望により、50μL当たり108個の細胞)を、マウスの第2部位(所望により、右後肢の足首に)に皮下投与し、DTH反応を誘導する。抗原の誘導の直前及び約24時間後に、第2部位の炎症を定量化し(例えば、足首の厚さを決定することによる)、DTHの定量的指標として使用する。
【0251】
PBSを含むBL-8040(配列番号1)組成物を、感作前日から開始して、マウスへ(所望により、徐放性浸透圧ポンプを用いて、約4μg/日、約8μg/日、約24μg/日及び/又は約120μg/日のBL-8040(配列番号1)を投与するように)徐々に投与する。次いで、BL-8040(配列番号1)組成物とのDTH反応を、BL-8040(配列番号1)が投与されていない対照マウスのDTH反応と比較する。
【0252】
実施例13
動物モデルにおけるコラーゲン誘発関節炎に対するBL-8040を含む組成物の効果
コラーゲン誘発関節炎の発症を阻害するBL-8040(配列番号1)組成物の能力を、動物モデルにおいて(所望により、米国特許第7,423,007号に記載されているような手順を用いて)評価する。約0.87及び0.72の保持時間の化合物を含むBL-8040(配列番号1)組成物(所望により、実施例1~実施例7のいずれかに記載のように調製されていてもよい)の阻害活性を、約0.87及び0.72の保持時間のこのような化合物を欠くBL-8040(配列番号1)組成物(所望により、参考例1に記載のように調製されていてもよい)の阻害活性と比較する。
【0253】
ウシII型コラーゲンを酢酸(所望により、0.05M)溶液中に(所望により、2mg/mLで)溶解し、等体積のFCA(フロイント完全アジュバント;Freund's complete adjuvant)によりエマルジョンを調製する。エマルジョン(所望により、50μL)をマウス(所望により、6週齢の雄DBA/1JNマウス)の皮内に(皮内尾の付け根に)注射し、その後(所望により、注射の約21日後に)、同様の免疫化によって感作する。第2の免疫化(所望により、約2週間)の後、体重及び/又は後肢の厚さを測定し、関節炎スコアリングを行う。関節炎は、所望により、各肢0~3点でスコアリングされ、それらの合計によって評価される(12点満点;0=正常;1=軽度の腫脹又は1桁の膨張;2=中程度の膨張又は複数桁の膨張;3=重度の膨張)。この期間(所望により、2週間)の終わりに、四肢及び血清を採取する。
【0254】
次いで、任意の好適な技術を用いて、所望により以下の手順によって、II型コラーゲン特異的抗体(例えば、IgG2a抗体)を定量化する:イムノプレート上でウシII型コラーゲン(例えば、PBS溶液中10μg/mL)をコートブロッキングした後、1000倍希釈マウス血清(例えば、100μL)を添加し、室温に保つ(例えば、約2時間);洗浄後、抗マウスIgG2a抗体(1000倍希釈)を添加する;洗浄後、TMBを添加し、室温に保ち(例えば、約30分間)、等量のH2SO4を添加し、約450nmで吸収を決定する。
【0255】
PBSを含むBL-8040(配列番号1)組成物を、2回目の免疫化の前日から開始して、マウスへ徐々に(所望により、2週間にわたって)投与する(所望により、徐放性浸透圧ポンプを用いて、約0.5μL/時を投与)。
【0256】
次いで、BL-8040(配列番号1)組成物の投与時の関節炎スコア、体重減少及び/又はコラーゲン特異的抗体レベルを、BL-8040(配列番号1)が投与されていない対照マウスのものと比較する。
【0257】
実施例14
CXCL12のCXCR4への結合に対するBL-8040を含む組成物の効果
CXCL12のCXCR4への結合を阻害するBL-8040(配列番号1)組成物の能力を、インビトロの細胞において(所望により、米国特許第7,423,007号に記載されているような手順を用いて)評価する。約0.87及び0.72の保持時間の化合物を含むBL-8040(配列番号1)組成物(所望により、実施例1~実施例7のいずれかに記載のように調製されていてもよい)の阻害活性を、約0.87及び0.72の保持時間のこのような化合物を欠くBL-8040(配列番号1)組成物(所望により、参考例1に記載のように調製されていてもよい)の阻害活性と比較する。
【0258】
放射性標識されたCXCL12(所望により、200pMの125I-CXCL120)を、CXCR4を発現する細胞(所望により、JurkatヒトT細胞白血病細胞)におけるCXC12のCXCR4への結合を定量化するために使用する。所望により、50μLのJurkat細胞(6×106細胞/mL)を緩衝液(0.5%ウシ血清アルブミン及び20mM HEPESを含有する、ダルベッコPBS溶液、pH7.0)に懸濁し、緩衝液で希釈した25μLの試験BL-8040組成物及び25μLの放射性標識CXCL12の溶液を、それぞれプレートの様々なウェルに分注し、室温で1時間固定反応に供し、続いて各ウェルの放射能を決定する。
【0259】
BL-8040(配列番号1)を有しない対照試料は、結合阻害を示さないように機能し得、非放射性標識CXCL12を含む対照試料(所望により、100nM)は、完全な結合阻害を表すように機能し得る。
【0260】
本発明をその特定の実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替形態、修正形態及び変形形態が当業者には明らかだということは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲に含まれる全てのそのような代替形態、修正形態及び変形形態を包含することが意図されている。
【0261】
本明細書中で言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許又は特許出願が、参照により本明細書中に組み込まれることが言及される場合、具体的かつ個別に言及されたかのように、その全体が参照により本明細書中に組み込まれることが本出願人らの意図である。加えて、本出願における任意の参考文献の引用又は特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることの承認として解釈されるべきではない。セクションの見出しが使用される限り、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。加えて、本出願の任意の優先権書類(又は複数の優先権書類)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】