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特表2024-501748貴金属が単独原子状態で担持された三元触媒、その調製方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(54)【発明の名称】貴金属が単独原子状態で担持された三元触媒、その調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20240105BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20240105BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20240105BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240105BHJP
   B01J 23/66 20060101ALI20240105BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240105BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240105BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B01J37/02 101E
B01J23/44 A ZAB
B01J23/63 A
B01J37/08
B01J23/66 A
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540827
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 CN2021139730
(87)【国際公開番号】W WO2022143265
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202011637233.4
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523250681
【氏名又は名称】ベイジン シングル アトム サイト カタリシス テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BEIJING SINGLE ATOM SITE CATALYSIS TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 310, Tower B, Incubator Building, No.7, Fengxianzhong Road, Haidian District, Beijing, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】リャン チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ホンチェン
(72)【発明者】
【氏名】デン ミンリャン
(72)【発明者】
【氏名】ワン メンユン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ミンドゥオ
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA17
3G091AB03
3G091BA01
3G091GA06
3G091GB05
3G091GB06
3G091GB07
3G091GB10
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4G169BD01C
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4G169BE01C
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4G169BE11C
4G169BE14C
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4G169BE16C
4G169BE46C
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4G169EA18
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB20
4G169FB30
4G169FC04
4G169FC07
4G169FC08
(57)【要約】
本発明は、貴金属が単独原子状態である三元触媒の調製方法、この方法により得られる触媒及びこの触媒の自動車排気ガスの浄化のための使用に関する。本発明においては、含窒素化合物を使用して貴金属が単独原子状態である触媒の前駆体を処理することにより、単独原子状態の貴金属原子がナノ結晶粒子に凝集することを回避する。本発明の調製方法により得られる触媒は高温に耐性があり、凝集し難く、被毒に耐性がある。貴金属の使用量が低減される一方、触媒の自動車排気ガスの浄化効率は効果的に改善される。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属が単独原子状態で担持された三元触媒の調製方法であって、
所定の担持量の貴金属前駆体を酸化物支持体に担持して、貴金属が単独原子状態の触媒前駆体を生成するステップAと、
前記貴金属が単独原子状態の触媒前駆体を含窒素化合物を用いて処理するステップBと、
ステップBで得られた、含窒素化合物で処理された触媒前駆体を焼成して、貴金属が単独原子状態の三元触媒を得るステップCとを含み、
前記貴金属前駆体は、溶解性の貴金属無機塩、貴金属有機塩又は貴金属錯体であり、好ましくは硝酸塩、塩化物、硫酸塩、酢酸塩、アセチルアセトナト錯体又はクロロ錯体であり、溶解性とは水又はアルコールに溶解することを意味し、アルコールはメタノール又はエタノールであり、
前記貴金属が単独原子状態で担持された三元触媒において、前記貴金属は単独原子状態のサイトで前記酸化物支持体上に分散しており、前記貴金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、金及び銀からなる群から選択される一種又は二種以上の組み合わせであり、
前記酸化物支持体は、アルミナ、シリカ-アルミナ、セリア-ジルコニア複合酸化物、モレキュラーシーヴ又はこれらのいずれか二種以上の混合物であり、必要であればBaO、La及び/又はYでドープされるか、或いは前記酸化物支持体は、Alと酸化物Zr-Ce-M-Oとの複合酸化物(式中、MはBa、Sr、La、Y、Pr及びNdからなる群から選択される一種以上である)であり、
前記含窒素化合物は、NH、ジメチルホルムアミド、尿素、C1-20アルカンアミン、C2-20アルケンアミン、C1-20アルカンジアミン、C1-20アルカントリアミン又はC6-20芳香族アミンであり、好ましくはNH、ジメチルホルムアミド、尿素、C1-6アルカンアミン、C1-6アルカンジアミン又は芳香族アミンであり、より好ましくはNH、エチレンジアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン又はジメチルホルムアミドであり、必要に応じて、前記含窒素化合物の水溶液又はアルコール溶液を用いることができ、アルコール溶液はメタノール溶液又はエタノール溶液である、
調製方法。
【請求項2】
ステップAでは、支持体を貴金属塩溶液と混合し、得られた混合物を分離して貴金属担持触媒前駆体を得て、
ステップBでは、この触媒前駆体を含窒素化合物に浸漬するか、含窒素化合物で洗浄した後、固液分離して固体触媒前駆体を得て、
ステップCの前に、必要に応じて前記固体触媒前駆体を乾燥させ、
ステップCでは、200~600℃、好ましくは300~500℃で焼成を行う、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記貴金属塩は、貴金属の硝酸塩、塩化物、酢酸塩、アセチルアセトナト錯体又はクロロ錯体であり、
前記貴金属は、白金、ロジウム、パラジウム、イリジウム又はこれらの二種以上の組み合わせであり、
前記貴金属の含有量は、触媒重量に対して0.01wt%~5wt%、好ましくは0.05~2wt%である、
請求項1又は2に記載の調製方法。
【請求項4】
前記酸化物支持体は、Alと酸化物Zr-Ce-M-Oとの複合酸化物であり、前記複合酸化物において、Al含有量は15~80wt%で、Zr-Ce-M-O含有量は20~85wt%であり、
前記含窒素化合物は、濃度0.5~15wt%のアンモニア水又は濃度0.5~15wt%のエチレンジアミン水溶液であり、好ましくは濃度0.5~5wt%のアンモニア水又はエチレンジアミン水溶液である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項5】
貴金属が単独原子状態の三元触媒の調製方法であって、
貴金属が単独原子状態の触媒前駆体を含窒素化合物を用いて処理するステップ1と、
前記含窒素化合物で処理された触媒前駆体を焼成することにより、貴金属が単独原子状態の三元触媒を得るステップ2とを含み、
前記触媒前駆体において、前記貴金属は単独原子状態のサイトで支持体上に分散しており、前記貴金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、金及び銀からなる群から選択され、貴金属はこのうちの一種単独、二種又はそれ以上の組み合わせであり、
前記酸化物支持体は、アルミナ、シリカ-アルミナ、セリア-ジルコニア複合酸化物、モレキュラーシーヴ又はこれらのいずれか二種以上の混合物であり、必要であればBaO、La、Yでドープされるか、或いは前記酸化物支持体は、Alと酸化物Zr-Ce-M-Oとの複合酸化物(式中、Mは、Ba、Sr、La、Y、Pr及びNdからなる群から選択される一種以上である)であり、前記複合酸化物において、Al含有量は15~80wt%で、Zr-Ce-M-O含有量は20~85wt%であり、
前記含窒素化合物は、NH、ジメチルホルムアミド、尿素、C1-20アルカンアミン、C2-20アルケンアミン、C1-20アルカンジアミン、C1-20アルカントリアミン又はC6-20芳香族アミンであり、好ましくはNH、ジメチルホルムアミド、尿素、C1-6アルカンアミン、C1-6アルカンジアミン又はC6-20芳香族アミン、より好ましくはNH、エチレンジアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン又はジメチルホルムアミドであり、必要に応じて、前記含窒素化合物の水溶液又はアルコール溶液を用いることができ、アルコール溶液はメタノール溶液又はエタノール溶液である、
調製方法。
【請求項6】
ステップ1では、前記触媒前駆体を含窒素化合物に浸漬するか又は含窒素化合物で洗浄した後、固液分離して、含窒素化合物で処理された触媒前駆体を得て、
ステップ2の前に、必要に応じて含窒素化合物で処理された触媒前駆体を乾燥させ、
ステップ2では、200~600℃、好ましくは300~500℃で焼成を行う、
請求項5に記載の調製方法。
【請求項7】
前記貴金属の含有量は、触媒重量に対して0.01%~5%、好ましくは0.05~2%であり、
前記支持体成分は、Alと酸化物Zr-Ce-M-Oとの複合酸化物(式中、MはBa、Sr、La、Y、Pr及びNdからなる群から選択される一種以上である)であり、
前記複合酸化物において、Al含有量は15~80wt%で、Zr-Ce-M-O含有量は20~85wt%である、
請求項5又は6に記載の調製方法。
【請求項8】
前記含窒素化合物は、濃度0.5~15wt%のアンモニア水又は濃度0.5~15wt%のエチレンジアミン水溶液であり、好ましくは濃度0.5~5wt%のアンモニア水又は濃度0.5~5wt%のエチレンジアミン水溶液である、
請求項5~7のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法に従って調製された、貴金属が単独原子状態の三元触媒の自動車排気ガスの浄化における使用であって、
前記触媒は、単独で使用されるか、或いは自動車排気ガス浄化用のハニカムキャリアにコーティングされて使用され、
前記ハニカムキャリアは、合金製ハニカムキャリア及び/又はセラミックハニカムキャリアである、
使用。
【請求項10】
貴金属が単独原子状態の三元触媒であって、
前記触媒は、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法に従って調製され、
前記貴金属は、白金、ロジウム、パラジウム、イリジウム又はこれらの二種以上の組み合わせであり、
前記貴金属の含有量は、触媒重量に対して0.01%~5%、好ましくは0.05~2%であり、
前記酸化物支持体成分は、Alと酸化物Zr-Ce-M-Oとの複合酸化物(式中、Mは、Ba、Sr、La、Y、Pr及びNdからなる群から選択される一種以上である)であり、前記複合酸化物において、Al含有量は15~80wt%で、Zr-Ce-M-O含有量は20~85wt%であり、
前記貴金属は、単独原子状態のサイトで前記酸化物支持体上に分散している、
触媒。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は環境触媒の分野に属し、特に自動車排気ガス浄化のための三元触媒、その調製方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車台数の継続的な増加に伴って、一酸化炭素(CO)、未燃焼炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)等の自動車由来の排ガス汚染物質の排出も増加しつつある。これら汚染物質はスモッグ構成粒子の表面に吸着し、人体に吸入されることによって、人体の健康に重大な影響を及ぼす。また、窒素酸化物は酸性雨の直接の原因となり、生態的環境の安全を直に脅かしている。
【0003】
現在、ガソリン車が排出する汚染物質の触媒による接触的な変換は、汚染物質の排出制御のために最も有効な方法の一つである。三元触媒(TWC)を用いれば、自動車から排出される汚染物質(HC、CO及びNO)は、環境に放出可能な二酸化炭素や窒素、水等の無害ガスに接触的に転換され、環境中に放出可能となる。自動車排ガスによる汚染を制御する目的で、自動車排ガス規制への要求が年々厳しくなっており、各種汚染物質の最低基準は益々厳しくなっている。また、三元触媒の耐劣化特性への要求も常に向上を求められつつある。これまでの触媒は、貴金属の使用量を増やすことによって、これらの厳しい排出規制に対応してきた。しかしながら、触媒の使用時間が長くなるにつれ、排ガス清浄機の触媒性能は低下し続け、排出基準に適合することが困難になっている。従って、三元触媒の研究や開発においては、貴金属の利用効率の改善及び触媒耐用期間の延長が最重要課題となってきた。
【0004】
触媒活性を有する貴金属ナノ粒子の活性サイトを形成するために、これまでの三元触媒は貴金属塩を用い、特定の比表面積を有する熱的に安定な支持体に貴金属塩が担持された触媒を用いることが普通であった。しかしながら、このような貴金属ナノ粒子からなる自動車排気ガス用三元触媒は次のような克服し難い問題を抱えていた。即ち、1)触媒表面に露出した触媒活性成分のわずか一部しか触媒作用に関与できないため、排出基準を満たすために貴金属の量を増やさざるを得ないことから、コスト削減が難しくなっていた。2)触媒の活性成分としての貴金属ナノ粒子の高温耐性は、要求される使用条件に答えがたかった。即ち、貴金属ナノ粒子は容易に凝集して大きくなるばかりか、高温条件下では支持体から溶出してしまい、触媒活性の低下や触媒の不活化に至る。この場合、三元触媒の耐用期間に直接悪影響を及ぼす。3)触媒の活性成分としての貴金属ナノ粒子は容易に被毒され、特に高硫黄含有量の油分を用いると、触媒活性が低下し、更にひどい場合には不活化に至る。この場合、触媒耐用期間の短縮に繋がる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の保護対象は、貴金属が単独原子状態の三元触媒(a noble metal single-atomic three-way catalyst)の調製方法であって、
貴金属が単独原子状態の触媒前駆体(a noble metal single-atomic catalyst precursor)を含窒素化合物を用いて処理するステップ1と、
この含窒素化合物で処理された触媒前駆体を焼成することにより、貴金属が単独原子状態の三元触媒を得るステップ2とを含む。
【0006】
含窒素化合物は、NH、ジメチルホルムアミド、尿素、C1-20アルカンアミン、C2-20アルケンアミン、C1-20アルカンジアミン、C1-20アルカントリアミン、C4-20シクロアルカンアミン、C4-20シクロアルカンジアミン、C4-20含窒素複素環又はC6-20芳香族アミン;好ましくはNH、ジメチルホルムアミド、尿素、C1-6アルカンアミン、C1-6アルカンジアミン又はC6-20芳香族アミン;より好ましくはNH、エチレンジアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン又はジメチルホルムアミドである。必要に応じて、含窒素化合物の溶液を用いることができ、溶液は水溶液、アルコール溶液(メタノール又はエタノール溶液)等である。本発明の実施にあたり、濃度0.5~15wt%のアンモニア水又は濃度0.5~15wt%のエチレンジアミン水溶液を用いる。濃度0.5~5wt%のアンモニア水又は濃度0.5~5wt%のエチレンジアミン水溶液を用いることが特に好ましい。この含窒素化合物により、目的とする貴金属カチオンの加水分解の防止及び単独状態の貴金属原子の安定化が達成される。
【0007】
この触媒前駆体において、貴金属は単独原子状態のサイトで酸化物支持体上に分散している。この貴金属は白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、金及び銀からなる群から選択され、このうちの一種単独、二種又はそれ以上の組み合わせである。貴金属としては、白金、ロジウム、パラジウム、イリジウム又はルテニウム、又はこれらの組み合わせが好ましい。貴金属の含有量は、触媒重量に対して0.01%~5%、好ましくは0.1~2%である。酸化物支持体は、自動車排ガス浄化の分野で一般に使用される触媒支持体であり、通常は金属酸化物支持体である。金属酸化物支持体には、アルミナ、シリカ-アルミナ、セリア-ジルコニア複合酸化物(ceria-zirconia mixed oxide)、モレキュラーシーヴ又はこれらの二種以上の混合物のいずれかが含まれる。金属酸化物支持体は、BaO、La、Y及び他の成分でドープすることができる。より好ましくは、支持体成分は、Alと酸化物Zr-Ce-M-Oとの複合酸化物(a mixed oxide of Al2O3 and Zr-Ce-M-Oxoxide)(式中、MはBa、Sr、La、Y、Pr及びNdからなる群から選択される一種以上である)であり、この複合酸化物において、Al含有量は15~80wt%で、Zr-Ce-M-O含有量は20~85wt%である。
【0008】
ステップ1において、「処理」は、触媒前駆体を含窒素化合物に浸漬するか、含窒素化合物で洗浄した後、固液分離を行って、含窒素化合物で処理された触媒前駆体を得ることを含む。
【0009】
ステップ2の前に、必要に応じてこの含窒素化合物で処理された触媒前駆体を乾燥させることができる。この乾燥は、通常の乾燥方法であるオーブン加熱や熱風加熱で実施することができる。
【0010】
ステップ2において、焼成は、200~600℃、好ましくは300~500℃で行う。
【0011】
本発明者らは次のことを見出した。即ち、貴金属が単独原子状態の触媒前駆体の調製において、貴金属塩に含まれるアニオンは触媒に不純物アニオンをもたらし、これにより酸化物支持体に担持された貴金属原子が容易に凝集して焼成プロセスの間にナノ粒子となり、その結果、貴金属が単独原子状態で分散した触媒を生成(維持)することが困難となる。高温の焼成の前に、含窒素化合物で処理することにより、不純物アニオンの含有量が顕著に減少し、最終的に貴金属の単独原子状態が維持され、単独原子がナノ粒子に凝集する傾向が抑制される。
【0012】
本発明の保護対象は、貴金属が単独原子状態で担持された三元触媒(a noble metal single-atomic supported three-way catalyst)の調製方法であって、
所定の担持量の貴金属前駆体を酸化物支持体に担持して、貴金属が単独原子状態の触媒前駆体を生成するステップAと、
貴金属が単独原子状態の触媒前駆体を、含窒素化合物を用いて処理するステップBと、
ステップBで得られた、含窒素化合物で処理された触媒前駆体を焼成して、貴金属が単独原子状態で担持された三元触媒を得るステップCと、を含む。
【0013】
この貴金属前駆体は、溶解性の貴金属無機塩、貴金属有機塩又は貴金属錯体であり、硝酸塩、塩化物、硫酸塩、酢酸塩、アセチルアセトナト錯体又はクロロ錯体であることが好ましい。「溶解性」とは、水又はアルコール(メタノール又はエタノール)に溶解することを意味する。
【0014】
貴金属が単独原子状態の三元触媒は、単独原子状態のサイトで酸化物支持体上に分散している。この場合、貴金属は白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、金及び銀の一種又は二種以上の組み合わせ、好ましくは白金、ロジウム、パラジウム又はイリジウムの一種又は二種以上の組み合わせである。貴金属の含有量は、触媒重量に対して0.01%~5%、好ましくは0.1~2%である。酸化物支持体は、自動車排ガス浄化の分野で一般に使用される触媒支持体であり、通常は金属酸化物支持体である。これには、アルミナ、シリカ-アルミナ、安定化されていても良いジルコニア、セリア、チタニア、安定化されていてもよいセリア-ジルコニア複合酸化物、モレキュラーシーヴ又はこれらのいずれか二種以上の混合物が含まれる。金属酸化物支持体は、BaO、La、Y等の成分でドープすることができる。より好ましくは、支持体成分はAlと酸化物Zr-Ce-M-Oとの複合酸化物(式中、MはBa、Sr、La、Y、Pr及びNdからなる群から選択される一種以上である)であり、この複合酸化物において、Al含有量は15~80wt%で、Zr-Ce-M-O含有量は20~85wt%である。
【0015】
ステップAにおいて、担持には当業界で知られるいずれの手段も利用することができる。これには、含侵や吸着、イオン交換、溶液滴下含侵(incipient wetness impregnation)、沈殿、スプレードライ等の手段が含まれる。本発明では含侵法が好ましく利用される。これにおいて、適切な質量(体積)の貴金属塩溶液は、溶液の質量が支持体の吸着能の1~50倍、好ましくは2~30倍、より好ましくは4~25倍に確実に調整されるように支持体の吸着能に従って調製することができる。支持体は、貴金属塩溶液と混合し、十分に撹拌(好ましくは2~400時間)し、続いて貴金属担持触媒前駆体を分離することにより得る。
【0016】
ステップBにおいて、「処理」は、触媒前駆体を含窒素化合物に浸漬するか、含窒素化合物で洗浄した後、固液分離して、含窒素化合物で処理された触媒前駆体を得ることを含む。
【0017】
含窒素化合物は、NH、ジメチルホルムアミド、尿素、C1-20アルカンアミン、C2-20アルケンアミン、C1-20アルカンジアミン、C1-20アルカントリアミン、C4-20シクロアルカンアミン、C4-20シクロアルカンジアミン、C4-20含窒素複素環又はC6-20芳香族アミン;好ましくはNH、ジメチルホルムアミド、尿素、C1-6アルカンアミン、C1-6アルカンジアミン又はC6-20芳香族アミン;より好ましくはNH、エチレンジアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン又はジメチルホルムアミドである。含窒素化合物の溶液(水溶液、アルコール溶液等)を用いることができ、アルコール溶液はメタノール又はエタノール溶液である。濃度0.5~15wt%のアンモニア水又は濃度0.5~15wt%のエチレンジアミン水溶液を用いることが好ましく、濃度0.5~5wt%のアンモニア溶液又は濃度0.5~5wt%のエチレンジアミン水溶液を用いることが特に好ましい。
【0018】
ステップCの前に、必要に応じてこの含窒素化合物で処理された触媒前駆体を乾燥させることができる。乾燥は、通常の乾燥方法であるオーブン加熱、熱風加熱、真空乾燥、凍結乾燥等で実施することができる。
【0019】
ステップCにおいて、焼成は200~600℃、好ましくは300~500℃で行う。
【0020】
貴金属塩溶液の性質が支持体が吸着能と等価な場合、即ち、等体積含侵法を利用して貴金属塩を担持する場合に、生成する触媒も本発明の目的を達成し得る。しかし、貴金属溶液の性質は支持体の吸着能の2~30倍、好ましくは4~25倍、最も好ましくは5~10倍となるよう更に設定する。支持体上の貴金属の分散状態は、貴金属溶液の濃度を下げることで改善可能かもしれない。一方、濃度を低下させたときには、単位体積当たりの貴金属イオンの密度は低下できる。また一方、互いにはじき合うという貴金属カチオンの性質を利用すれば、反復する吸着脱着プロセスにおいて貴金属をより効果的に分散させることが可能である。このことは、貴金属が単独原子状態で分布した三元触媒前駆体の生成に更に寄与する。
【0021】
この前駆体においては、貴金属原子を効果的に分散することができるが、多くの不純物アニオンが周囲に存在し得る。このため、後続の乾燥や焼成の各段階において貴金属の凝塊や凝集が容易に誘発されるので、含窒素化合物は、不純物アニオンを除去するために必要である。
【0022】
本発明の更なる保護対象は、貴金属が単独原子状態で担持された触媒の、自動車排気ガスの浄化における使用であって、上述の方法を利用して貴金属が単独原子状態の三元触媒を調製することと、自動車排気ガスの浄化にこの触媒を使用することとを含み、貴金属は酸化物支持体に単独原子状態のサイトで分散され、触媒は単独で使用されるか又はハニカムキャリアにコーティングされて使用され、ハニカムキャリアは合金製ハニカムキャリア及び/又はセラミックハニカムキャリアである。「貴金属」及び貴金属を担持するために使用される「酸化物支持体」の定義は、上述の通りである。コーティングは、噴霧、ディップ、ブラッシング等の知られているいずれかの方法を利用して行うことができる。本発明において、触媒は、まず、バインダーの添加又は無添加でスラリーとして作られ、続いてこのスラリーをハニカムキャリアにコーティングする。
【0023】
本発明の更なる保護対象は、上述の方法により調製される、貴金属が単独原子状態の三元触媒であって、この貴金属は、パラジウム、ロジウム及び白金からなる群から選択される一種又は複数の組み合わせであり、支持体成分はAlと酸化物Zr-Ce-M-Oとの複合酸化物であり、式中のMはBa、Sr、La、Y、Pr及びNdからなる群から選択される一種以上であり、及びこの複合酸化物において、Al含有率が15~80wt%及びZr-Ce-M-O含有率が20~85wt%であり、貴金属は酸化物支持体に単独原子状態のサイトで分散されている。
【0024】
定義と説明:
本発明において、「単独原子状態のサイトでの分散」、「単独の原子状態」、「単独原子の分布」、「単独原子の形態」又は「単独原子レベルにおける分離状態」(dispersion in state of single-atomic site, single-atomic state, single-atomic distribution, single-atom form or separation state at single-atomic level)とは、金属原子(イオン)が互いに隔離されていて、活性金属原子が直接の金属-金属結合又は金属-O-金属結合を形成しておらず、原子レベルで分散しているか、或いは単独原子状態のサイトが分散している活性金属元素の状態を意味する。単独原子状態のサイトが分散している金属は、原子状態で又はイオンの状態で存在してもよく、更には原子状態とイオン状態の間(即ち、結合距離が、二種の結合距離を伴って)にある可能性が高い。金属ナノ結晶では、同一のナノ結晶において金属原子が互いに結合し合い、本発明で定義される単独原子の状態にも単独原子分離状態にも属さない。金属原子と酸素原子からなる酸化物ナノ結晶の場合、金属原子は酸素原子によって離間されているものの、内在する金属原子には互いに結合する可能性が残される。更に、上述の金属状態の金属ナノ結晶は還元反応の後で生成し得るので、本発明で定義される単独原子状態のサイトにも、単独原子分離状態にも属さない。本発明により保護される単独原子状態のサイトの金属の場合、原子(イオン)は理論的に完全に互いに独立している。しかしながら、異なるバッチにおける調製や操作の条件に関するランダムな差異があるため、得られた生成物に幾つかの原子やイオンを含むクラスター等の凝集金属種が少量存在することは排除されないし、一部の金属がナノ結晶状態にあることも排除されない。言い換えれば、本発明の触媒において、活性金属は単独原子状態のサイトで分散することができると同時に、金属原子の一部がクラスター状態にあるか、及び/又は金属の一部がナノ結晶状態にあってもよい。更に、外的環境の変化があれば、単独原子の状態はクラスター状態及び/又はナノ結晶状態に変化し得る。本出願で保護される単独原子の状態には、触媒中の存在する各種貴金属形態(貴金属単原子、貴金属クラスター、貴金属ナノ結晶等)における貴金属単原子の一定の比が必要である。貴金属単原子の比は10%超、好ましくは20%超、特に好ましく50%超である。しかしながら、現在の技術的手段の限界から、比較的粗い統計手段しか利用できない。例えば、触媒試験サンプルにおいてランダムに選択された多数のローカルエリアを分析することができ、収差補正走査透過電子マイクロスコピー(AC-STEM)で特性化でき、貴金属の種々の形態を統計的に分析するのためのランダムな選択することができる。或いは、触媒試料は、試料全体の情報を特徴付けることが可能なX線吸収微細構造(EXAFS)で分析して、金属-金属結合シグナルに対する金属-他原子結合シグナルの比を得たり、単独原子の状態のおよその比を決定することができる。実際に、本発明の技術が、依然として部分的な単独原子状態を有する触媒製品の製造に利用される場合でも、この製品も改善された性能を示すであろうことを付記する。従って、触媒製品が本発明の方法に従って調製される限り、得られる単独原子状態の特性を有する三元触媒は本願の保護(権利請求)の範囲にある。
【0025】
本発明において、酸化物Zr-Ce-M-Oは、ドープされた酸化セリウム-ジルコニウムであって、セリウム成分及びジルコニウム成分以外に、必要であれば他の成分(好ましくは希土類成分)がドープされた酸化物と理解されたい。本発明において、酸化物Zr-Ce-M-Oの主成分は、ZrO20~70wt%、CeO20~60wt%、La0.2~8wt%、BaO0~20%、Y0~7wt%、Nd0~7wt%及びPr110~6wt%を含む。Oは配位酸素を表し、Xは実際の金属の量と原子価から決定される。
【0026】
本発明において、貴金属塩は酸化物支持体に担持される。溶液の質量が支持体の吸着能の等倍で、支持体をその溶液に浸漬する場合、等体積の溶液が支持体に吸着される。溶液の質量が支持体の吸着能を超え、支持体を過剰溶液に浸漬する場合、過剰体積含侵と称される。実際の操作においては、支持体の吸着能は事前に測定することが多く、支持体重量に対する吸着能の比を計算する。続いて、支持体に対する溶液の重量比に従って添加した溶液の量を計算する。例えば、1gの支持体が0.5gの溶液を吸収すると、吸着比は0.5である。従って、支持体に対する溶液の重量比が1:2であれば、等体積含侵となる。支持体に対する溶液の重量比が10:1で、溶液の質量が支持体の吸着能の20倍である場合、過剰体積吸着となる。支持体の吸着能の差により、本発明の実施例で使用する含侵溶液の量は、単純に支持体質量の倍数と捉えられる。
【0027】
アルカンアミンとは、1個のアミン官能基を有するアルカンを意味し、アルカンジアミンとは、2個のアミン官能基を有するアルカンを意味し、アルカントリアミンとは、3個のアミン官能基を有するアルカンを意味する。上述のアルカンは1以上のC1-6アルキル、C4-20シクロアルキル又はC6-20芳香族基で置換することができる。上のアルカンのC-C結合は不飽和のアルケン又はアルキンで置換することができ、不飽和炭素鎖を形成する。上述のC6-20芳香族環状アミンとは、6~20の炭素原子を有する芳香族環状アミン化合物を意味し、芳香族基には、芳香族基と、複素芳香族基とが含まれる。複素芳香族基とは、芳香族2n+4の性質を有すると同時に、環炭素原子の一部が複素原子(O原子、N原子)で置換されている基を意味する。C4-20含窒素複素環とは、4~20の環炭素原子を有する含窒素複素環を意味する。C4-20シクロアルカンアミン又はシクロアルカンジアミンとは、4~20の環炭素原子と1個又は2個のアミン官能基を含む基を意味する。上述のシクロアルカン、含窒素複素環及び芳香環は、単環又は複数の環の縮合環であり、各環はC1-6アルカンが置換しても良い。
【0028】
不活性ガスとは、反応段階において反応物及び生成物に不活性であり、窒素(N2)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等を含む保護ガスとして通常使用されるガスと解釈されたい。
【0029】
錯体とは、錯化合物とも称され、貴金属又は遷移金属と配位子とから生成する錯体を含む。通常の配位子としては、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素及びヨウ素)や、ニトロ、ニトロソ、シアノ、アミノ、水分子、有機基が挙げられる。通常の錯体は、クロロ錯体、アンモニア錯体、シアニド錯体、等であり、塩化白金酸、クロロプラチネート及び塩化白金酸水和物が含まれる。“Handbook of Noble Metal Compounds and Complexes Synthesis(Refined)”(Yu Jianmin, 2009, Chemical Industry Press)参照。
【発明の効果】
【0030】
1.本発明により生成する、貴金属が単独原子状態の三元触媒においては、貴金属担持量を減少(30%以上)させることができるものの、ナノメーター以上の粒子と通常の担持能力を有する貴金属担持三元触媒の効果を達成するか、更に超えるため、自動車排気ガス浄化触媒の使用コストを効果的に低減できる。
2.貴金属が単独原子状態の本三元触媒は、高温に対する耐性があり、容易には凝集しない。従って、自動車排気ガス触媒の耐用期間を改善し、自動車の耐用期間に亘って交換不要な排ガス用三元触媒の目的を達成するための解決策を提供する。
3.貴金属が単独原子状態の本三元触媒は、高い抗被毒活性を有し、触媒耐用期間を効果的に延長できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、実施例11で得られた触媒の電子顕微鏡写真である。(a)透過電子顕微鏡(TEM)イメージ、(b)は高分解能透過電子顕微鏡(HR-TEM)イメージ、(c)は収差補正走査透過電子マイクロスコピー(AC-STEM)イメージである。各写真において、明点は単独原子状態レベルで分散した活性金属を表す。
図2図2は、比較例2の高分解能透過電子顕微鏡(HR-TEM)イメージであり、明点は凝集した活性金属を表す。
図3図3は、実施例11と比較例1の触媒の排気ガス浄化の触媒性能を表す。(a)はCOに対する触媒活性曲線を示し、(b)はHCに対する触媒活性曲線を示し、(c)はNOに対する触媒活性曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実施例で用いる用語とその説明:
貴金属前駆体の濃度:金属元素の質量から計算。例えば、「水溶液中のPd濃度:0.02g/g」は、Pd元素の含有量が溶液1g中0.02gであることを示す。
マイクロリアクター装置:マイクロリアクター又はミニチュア反応装置
マイクロリアクター排気ガス:マイクロリアクター又はミニチュア反応装置における反応後に発生する排気ガス
HC:アルカン、揮発性アルカン
min:分
wt%:質量パーセント
TEM:透過電子顕微鏡
HR-TEM:高分解能透過電子顕微鏡
AC-STEM:収差補正走査透過電子マイクロスコピー
【0033】
調製例1:複合酸化物支持体の調製
Alと酸化物Zr-Ce-M-Oとの複合酸化物を調製した。ここで、MはBa、Sr、La、Y、Pr及びNdからなる群から選択される一種以上であった。酸化物Zr-Ce-M-Oの成分は、ZrO20~70wt%、CeO15~60wt%、La0.2~8wt%、BaO0~20%、Y0~7wt%、Nd0~7wt%及びPr110~6wt%を含んでいた。
【0034】
La-Al(Alであっても選択可能)、セリウム-ジルコニウム固溶体及び添加物をそれぞれの重量比に従い計量した。これら原料を水と混合し、pH調整剤を加えた。これを更に混合(撹拌又はボールミル処理)し、固液分離に付し、複合酸化物支持体を得た。ここで、添加剤は、バリウム塩及びストロンチウム塩(例えば、酢酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、硝酸バリウム、硝酸ストロンチウム、炭酸ストロンチウム及び酢酸ストロンチウムの一種又は複数種の混合物)からなる群から選択した。La-Alは、ランタンドープのアルミナであり、ランタン含有量は1%~10%であった。セリウム-ジルコニウム固溶体は、主にCeOとZrOを含む希土類酸化物であった。このセリウム-ジルコニウム固溶体は次の成分:ZrO20~70wt%、CeO15~60wt%、La0.2~8wt%、Y0~7wt%、Nd0~7wt%及びPr110~6wt%を含んでいた。
【0035】
本発明では、次の3種の複合酸化物支持体を調製した。
セリウム-ジルコニウムアルミナ支持体A(以下、支持体Aと称する)。主成分と組成は、Al31wt%、ZrO29wt%、CeO16wt%、BaO15wt%、La3.57wt%及びY1.27wt%であった。
セリウム-ジルコニウムアルミナ支持体B(以下、支持体Bと称する)。主成分と組成は、Al42wt%、ZrO36wt%、CeO9wt%、Y8wt%及びLa5wt%であった。
セリウム-ジルコニウムアルミナ支持体C(以下、支持体Cと称する)。主成分と組成は、Al64wt%、ZrO22wt%、CeO8wt%、Y2.4wt%及びLa0.8wt%であった。
【0036】
調製例2:排気ガス浄化の試験方法
反応装置:マイクロリアクター(Beijing Shiao Technologyにてカスタマイズと製造)
分析装置:排気ガスアナライザー(HORIBA、形式MEXA-584L)
検出方法:純粋な各ガスを混合して自動車排ガスの模擬ガスとした。この模擬自動車排ガスは次の成分:1.6wt%CO、7.67wt%CO、0.23wt%H、500ppmHC(C/C=2/1)、1000ppmNO、1.0wt%O及び10wt%HO(水分量は必要に応じて調整した)であり、Nガスをバランスガスとして用いた。この装置を稼働する前に、水の注入速度を調節し、CO、NO、HC、CO、O及びHのための6個のガスチャンネルをそれぞれ較正した。較正の後、流量計を使ってNフローを測定し、Nフローが総流量1000mL/minになるよう調整した。40~60メッシュ篩の触媒200mgを1gの珪砂と均一に混合し、反応菅に装荷した。この反応菅をマイクロリアクターの加熱炉にセットした。検出プロセスは、次を含んでいた。1.マイクロリアクターの排出ガスを温度プログラム付きの排気ガスアナライザーに導入し、温度プログラム下で性能検出を行った。マイクロリアクター装置を自動加熱に設定し、コンピュータープログラム付きの排気ガスアナライザーを自動サンプリングに設定した。温度範囲は100~400℃で、昇温速度は10℃/分であった。温度は20℃毎に20分間安定化した。リアルタイムで連続的にオンラインサンプリング(サンプリング間隔1分)を行った。2.検出の最後に、加熱ステージにおける各サンプリング時点に対応するガステータ(排ガスアナライザーにより提供された)と温度(マイクロリアクターにより提供された)を得て、これらを性能分析における温度-転換率データとして利用した。
【0037】
[実施例1]
アルミナ上に担持されたパラジウム(0.66wt%)触媒(201008f)
先ず、硝酸パラジウム溶液を用いて濃度0.02g/gのPd水溶液を調製した。この水溶液3.96gを取り、水で120gに希釈した。ここに、11.9gのAl支持体を加えて一夜撹拌し、パラジウムを支持体の表面に完全に吸着させた。遠心分離を行うことで固液分離し、得られた固形物を120℃で一夜乾燥させた。乾燥物を取り出して冷却し、2wt%の希釈アンモニア水に一夜浸漬し、再度遠心分離を行った。固形物を120℃で一夜乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、Al上に担持されたパラジウムの排気ガス浄化触媒を得た。
【0038】
[実施例2]
支持体A上に担持されたパラジウム(1.32wt%)触媒(201124a)
先ず、硝酸パラジウム溶液を用いて濃度0.02g/gのPd水溶液を調製した。この水溶液13.2gを取り、水で200gに希釈した。ここに、19.7gの支持体Aを加えて一夜撹拌し、パラジウムを支持体の表面に完全に吸着させた。遠心分離を行うことで固液分離し、得られた固形物を120℃で一夜乾燥させた。乾燥物を取り出して冷却し、2wt%の希釈アンモニア水に一夜浸漬し、再度遠心分離を行った。固形物を120℃で一夜乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、複合酸化物支持体に担持されたパラジウムの排気ガス浄化触媒を得た。
【0039】
[実施例3]
支持体A上に担持されたパラジウム(0.924wt%)触媒(201105a)
先ず、硝酸パラジウム溶液を用いて濃度0.02g/gのPd水溶液を調製した。この水溶液9.24gを取り、水で200gに希釈した。ここに、19.8gの支持体Aを加えて一夜撹拌し、パラジウムを支持体の表面に完全に吸着させた。遠心分離を行うことで固液分離し、得られた固形物を120℃で一夜乾燥させた。乾燥物を取り出して冷却し、2wt%の希釈アンモニア水に一夜浸漬し、再度遠心分離を行った。固形物を120℃で一夜乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、支持体Aに担持されたパラジウムの排気ガス浄化触媒を得た。
【0040】
[実施例4]
支持体A上に担持されたパラジウム(0.66wt%)触媒(200729c)
先ず、硝酸パラジウム溶液を用いて濃度0.02g/gのPd水溶液を調製した。この水溶液33.0gを取り、水で1000gに希釈した。ここに、99.3gの支持体Aを加えて一夜撹拌し、パラジウムを支持体の表面に完全に吸着させた。遠心分離を行うことで固液分離し、得られた固形物を120℃で一夜乾燥させた。乾燥物を取り出して冷却し、2wt%の希釈アンモニア水に一夜浸漬し、吸引ろ過を行った。固形物を120℃で一夜乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、支持体Aに担持されたパラジウムの排気ガス浄化触媒を得た。
【0041】
[実施例4’]
支持体A上に担持されたパラジウム(0.66wt%)触媒(201212b)
先ず、硝酸パラジウム溶液を用いて濃度0.02g/gのPd水溶液を調製した。この水溶液6.60gを取り、水で50gに希釈した。ここに、19.9gの支持体Aを加えて一夜撹拌し、パラジウムを支持体の表面に完全に吸着させた。遠心分離を行うことで固液分離し、得られた固形物を120℃で一夜乾燥させた。乾燥物を取り出して冷却し、2wt%の希釈アンモニア水に一夜浸漬し、吸引ろ過を行った。固形物を120℃で一夜乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、支持体Aに担持されたパラジウムの排気ガス浄化触媒を得た。
【0042】
[実施例4'']
支持体A上に担持されたパラジウム(0.66wt%)触媒(201217b)
先ず、硝酸パラジウム溶液を用いて濃度0.02g/gのPd水溶液を調製した。この水溶液3.30gを取り、水で5.5gに希釈した。ここに、等体積含侵のために9.93gの支持体Aを加えて一夜静置した。120℃で一夜乾燥を行い、乾燥物を取り出して冷却し、2wt%の希釈アンモニア水に一夜浸漬し、遠心分離を行った。固形物を120℃で8時間乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、支持体Aに担持されたパラジウムの排気ガス浄化触媒を得た。
【0043】
[実施例5]
支持体A上に担持されたパラジウム(0.396wt%)触媒(201124d)
先ず、硝酸パラジウム溶液を用いて濃度0.02g/gのPd水溶液を調製した。この水溶液3.96gを取り、水で200gに希釈した。ここに、19.9gの支持体Aを加えて一夜撹拌し、パラジウムを支持体の表面に完全に吸着させた。遠心分離を行うことで固液分離し、得られた固形物を120℃で一夜乾燥させた。乾燥物を取り出して冷却し、2wt%の希釈アンモニア水に一夜浸漬し、再度遠心分離を行った。固形物を120℃で一夜乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、支持体Aに担持されたパラジウムの排気ガス浄化触媒を得た。
【0044】
[実施例6]
支持体C上に担持されたパラジウム(0.397wt%)触媒(200820a)
先ず、硝酸パラジウム溶液を用いて濃度0.01g/gのPd水溶液を調製した。この水溶液0.795gを取り、水で20gに希釈した。ここに、2.0gの支持体Cを加えて一夜撹拌し、パラジウムを支持体の表面に完全に吸着させた。遠心分離を行うことで固液分離し、得られた固形物を120℃で一夜乾燥させた。乾燥物を取り出して冷却し、2wt%の希釈アンモニア水に一夜浸漬し、再度遠心分離を行った。固形物を120℃で一夜乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、支持体Cに担持されたパラジウムの排気ガス浄化触媒を得た。
【0045】
[実施例7]
支持体C上に担持された銀(0.147wt%)触媒(200831d)
先ず、硝酸銀を用いて濃度0.01g/gのAg水溶液を調製した。この水溶液1.59gを取り、水で20.0gに希釈した。ここに、1.98gの支持体Cを加えて一夜撹拌し、銀を支持体の表面に完全に吸着させた。遠心分離を行うことで固液分離し、得られた固形物を120℃で一夜乾燥させた。乾燥物を取り出して冷却し、2wt%の希釈アンモニア水に一夜浸漬し、再度遠心分離を行った。固形物を120℃で一夜乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、支持体に担持された銀の排気ガス浄化触媒を得た。
【0046】
[実施例8]
支持体B上に担持されたロジウム(0.147wt%)触媒(200729e)
先ず、硝酸ロジウム溶液を用いて濃度0.02g/gのRh水溶液を調製した。この水溶液7.35gを取り、水で1000gに希釈した。ここに、99.8gの支持体Bを加えて一夜撹拌し、ロジウムを支持体の表面に完全に吸着させた。遠心分離を行うことで固液分離し、得られた固形物を120℃で一夜乾燥させた。乾燥物を取り出して冷却し、2wt%の希釈アンモニア水に一夜浸漬し、吸引ろ過を行った。固形物を120℃で一夜乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、複合酸化物支持体に担持されたロジウムの排気ガス浄化触媒を得た。
【0047】
[実施例8']
支持体B上に担持されたロジウム(0.147wt%)触媒(201212c)
先ず、硝酸ロジウム溶液を用いて濃度0.02g/gのRh水溶液を調製した。この水溶液1.47gを取り、水で50.0gに希釈した。ここに、20.0gの支持体Bを加えて一夜撹拌し、ロジウムを支持体の表面に完全に吸着させた。遠心分離を行うことで固液分離し、得られた固形物を120℃で一夜乾燥させた。乾燥物を取り出して冷却し、2wt%の希釈アンモニア水に一夜浸漬し、吸引ろ過を行った。固形物を120℃で一夜乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、複合酸化物支持体に担持されたロジウムの排気ガス浄化触媒を得た。
【0048】
[実施例8'']
支持体B上に担持されたロジウム(0.147wt%)触媒(201217c)
先ず、硝酸ロジウム溶液を用いて濃度0.02g/gのRh水溶液を調製した。この水溶液0.74gを取り、水で50gに希釈した。ここに、等体積含侵のために9.98gの支持体Bを加えて一夜静置した。120℃で一夜乾燥を行い、乾燥物を取り出して冷却し、2wt%の希釈アンモニア水に一夜浸漬し、遠心分離を行った。固形物を120℃で8時間乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、支持体Bに担持されたロジウムの排気ガス浄化触媒を得た。
【0049】
[実施例9]
支持体B上に担持されたロジウム(0.103wt%)触媒(201124i)
先ず、硝酸ロジウム溶液を用いて濃度0.02g/gのRh水溶液を調製した。この水溶液1.03gを取り、水で200gに希釈した。ここに、20gの支持体Bを加えて一夜撹拌し、ロジウムを支持体の表面に完全に吸着させた。遠心分離を行うことで固液分離し、得られた固形物を120℃で一夜乾燥させた。乾燥物を取り出して冷却し、2wt%の希釈アンモニア水に一夜浸漬し、再度遠心分離を行った。固形物を120℃で一夜乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、支持体Bに担持されたロジウムの排気ガス浄化触媒を得た。
【0050】
[実施例10]
支持体B上に担持されたロジウム(0.074wt%)触媒(201124j)
先ず、硝酸ロジウム溶液を用いて濃度0.02g/gのRh水溶液を調製した。この水溶液0.735gを取り、水で200gに希釈した。ここに、20gの支持体Bを加えて一夜撹拌し、ロジウムを支持体の表面に完全に吸着させた。遠心分離を行うことで固液分離し、得られた固形物を120℃で一夜乾燥させた。乾燥物を取り出して冷却し、2wt%の希釈アンモニア水に一夜浸漬し、再度遠心分離を行った。固形物を120℃で一夜乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、支持体Bに担持されたロジウムの排気ガス浄化触媒を得た。
【0051】
[実施例11]
支持体C上に担持されたパラジウム(0.795wt%)+ロジウム(0.132wt%)触媒(200729a)
先ず、硝酸パラジウム溶液と硝酸ロジウム溶液をそれぞれ用いて各濃度0.02g/gのPd水溶液及びRh水溶液を調製した。Pd水溶液39.7g及びRh水溶液6.62gをそれぞれ取り、水で1000gに希釈した。ここに、99.1gの支持体Cを加えて一夜撹拌し、パラジウムとロジウムを支持体の表面に完全に吸着させた。遠心分離を行うことで固液分離し、得られた固形物を120℃で一夜乾燥させた。乾燥物を取り出して冷却し、2wt%の希釈アンモニア水に一夜浸漬し、吸引ろ過を行った。固形物を120℃で一夜乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、支持体Cに担持されたパラジウム-ロジウムの排気ガス浄化触媒を得た。
【0052】
[実施例11']
支持体C上に担持されたパラジウム(0.795wt%)+ロジウム(0.132wt%)触媒(201212a)
先ず、硝酸パラジウム溶液と硝酸ロジウム溶液をそれぞれ用いて各濃度0.02g/gのPd水溶液及びRh水溶液を調製した。Pd水溶液7.95g及びRh水溶液1.32gをそれぞれ取り、水で50gに希釈した。ここに、19.8gの支持体Cを加えて一夜撹拌し、パラジウムとロジウムを支持体の表面に完全に吸着させた。吸引ろ過を行うことで固液分離し、得られた固形物を120℃で一夜乾燥させた。乾燥物を取り出して冷却し、2wt%の希釈アンモニア水に一夜浸漬し、再度吸引ろ過を行った。固形物を120℃で一夜乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、支持体Cに担持されたパラジウム-ロジウムの排気ガス浄化触媒を得た。
【0053】
[実施例11'']
支持体C上に担持されたパラジウム(0.795wt%)+ロジウム(0.132wt%)触媒(201217a)
先ず、硝酸パラジウム溶液と硝酸ロジウム溶液をそれぞれ用いて各濃度0.02g/gのPd水溶液及びRh水溶液を調製した。Pd水溶液3.97g及びRh水溶液0.66gをそれぞれ取り、水で50gに希釈した。ここに、等体積含侵のために9.91gの支持体Cを加えて一夜静置した。120℃で8時間乾燥を行った。乾燥物を取り出して冷却し、2wt%の希釈アンモニア水に一夜浸漬し、遠心分離を行った。固形物を120℃で一夜乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、支持体Cに担持されたパラジウム-ロジウムの排気ガス浄化触媒を得た。
【0054】
[実施例12]
支持体C上に担持されたパラジウム(0.795wt%)+ロジウム(0.132wt%)触媒(201202b)
先ず、硝酸パラジウム溶液と硝酸ロジウム溶液をそれぞれ用いて各濃度0.02g/gのPd水溶液及びRh水溶液を調製した。Pd水溶液39.7g及びRh水溶液6.62gをそれぞれ取り、水で1000gに希釈した。ここに、99.1gの支持体Cを加えて一夜撹拌し、パラジウムとロジウムを支持体の表面に完全に吸着させた。遠心分離を行うことで固液分離し、得られた固形物を120℃で一夜乾燥させた。乾燥物を取り出して冷却し、2wt%の希釈エチレンジアミン水溶液に一夜浸漬し、再度遠心分離を行った。固形物を120℃で一夜乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、支持体Cに担持されたパラジウム-ロジウムの排気ガス浄化触媒を得た。
【0055】
[実施例13]
支持体C上に担持されたパラジウム(0.397wt%)+銀(0.795wt%)触媒(200820d)
先ず、硝酸パラジウム溶液と硝酸銀溶液をそれぞれ用いて各濃度0.01g/gのPd水溶液及びAg水溶液を調製した。Pd水溶液0.795g及びAg水溶液1.59gをそれぞれ取り、水で20gに希釈した。ここに、2.0gの支持体Cを加えて一夜撹拌し、パラジウムと銀を支持体の表面に完全に吸着させた。遠心分離を行うことで固液分離し、得られた固形物を120℃で一夜乾燥させた。乾燥物を取り出して冷却し、2wt%の希釈アンモニア水に一夜浸漬し、再度遠心分離を行った。固形物を120℃で一夜乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、支持体Cに担持されたパラジウム-銀の排気ガス浄化触媒を得た。
【0056】
[実施例14]
支持体A上に担持されたパラジウム(0.33wt%)+白金(0.33wt%)触媒(200729d)
先ず、硝酸パラジウム溶液と塩化白金酸をそれぞれ用いて各濃度0.02g/gのPd水溶液及びPt水溶液を調製した。Pd水溶液16.5g及びPt水溶液16.5gをそれぞれ取り、水で1000gに希釈した。ここに、99.3gの支持体Aを加えて一夜撹拌し、パラジウムと白金を支持体の表面に完全に吸着させた。遠心分離を行うことで固液分離し、得られた固形物を120℃で一夜乾燥させた。乾燥物を取り出して冷却し、2wt%の希釈アンモニア水に一夜浸漬し、吸引ろ過を行った。固形物を120℃で一夜乾燥させた後、400℃で1時間焼成して、支持体Cに担持されたパラジウム-白金の排気ガス浄化触媒を得た。
【0057】
[比較例1]
アルミナ上に担持されたパラジウム(0.66wt%)未浸漬触媒(201204a)
先ず、硝酸パラジウム溶液を用いて濃度0.02g/gのPd水溶液を調製した。この水溶液3.96gを取り、水で120gに希釈した。ここに、11.9gのAl支持体を加えて一夜撹拌し、パラジウムを支持体の表面に完全に吸着させた。遠心分離を行うことで固液分離し、得られた固形物を120℃で一夜乾燥させた。乾燥物を取り出して冷却した後、400℃で1時間焼成して、Al支持体上に担持されたパラジウムの排気ガス浄化触媒を得た。
【0058】
[比較例2]
支持体上に担持されたパラジウム(0.795wt%)+ロジウム(0.132wt%)未浸漬触媒(201204a)
先ず、硝酸パラジウム溶液と硝酸ロジウム溶液をそれぞれ用いて各濃度0.02g/gのPd水溶液及びRh水溶液を調製した。Pd水溶液39.7g及びRh水溶液6.62gをそれぞれ取り、水で1000gに希釈した。ここに、99.1gの支持体Cを加えて一夜撹拌し、パラジウムとロジウムを支持体の表面に完全に吸着させた。遠心分離を行うことで固液分離し、得られた固形物を120℃で一夜乾燥させた。乾燥物を取り出して冷却した後、400℃で1時間焼成して、支持体Cに担持されたパラジウム-ロジウムの排気ガス浄化触媒を得た。
【0059】
応用試験(実験)
(1)比較試験
実施例11及び比較例2で得た触媒それぞれの微細構造を分析し、次のことが分かった。アンモニア水に浸漬した実施例11の触媒のTEM及びHR-TEM写真においては、検出レンジにおいて明確な金属ナノ粒子を確認できなかった。また、AC-STEMイメージでは、活性金属が単独原子レベルの状態で分散していることが視認された(図1参照)。これに対して、比較例2のHR-TEMの暗視野イメージにおいては、凝集した貴金属に由来する明点が多数確認された。これは、この触媒が還元を受けていないため、貴金属がアモルファス酸化物粒子として存在し、金属状態における格子縞を有さないことによる(図2参照)。
【0060】
調製例2の方法により調製した触媒サンプルと比較例1、2のサンプルを試験した。表1に試験結果を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
試験結果から見ると、アンモニア水又はエチレンジアミン水溶液で浸漬又は洗浄した場合は、使用した金属酸化物支持体の種類によらず、得られた触媒はより良い試験結果を示している。洗浄を行わなかった触媒と比較すると、触媒のT50燃焼開始温度は顕著に低下している。これに対応する結果は図Xからも得られた。
【0063】
図3の排気ガス試験の分析ダイアグラムから、実施例11の触媒の排ガス浄化効果は比較例2の触媒と比べて明らかに改善されると結論づけられよう。
【0064】
(2)応用活性試験-新規調製触媒の性能試験
調製例2の方法に従って調製された触媒サンプルを試験した。表2に結果を示す。
【0065】
【表2】
【0066】
(3)応用活性試験-触媒劣化試験
各実施例の触媒をそれぞれセラミック製のボートに載せて、マッフル炉の空気中で1000℃10時間エイジングし、各触媒の排ガス浄化性能を試験した。この実験は、長期間使用後の触媒活性を模すために行い、各触媒の高温耐性と劣化性能を把握した。本実験は、実際の稼働条件下での触媒の触媒性能を良く反映していた。
【0067】
【表3】
【0068】
本試験の結果は、良好な耐高温活性を示すものである。本発明の実施例の劣化試験の結果、パラジウムとロジウムを担持した三元触媒(実施例11)を10時間エイジング後に3種の排気ガスの浄化に供した場合、燃焼開始温度(T50)は全て250℃以下に低下することが示される。同量の貴金属を担持した市販の長期使用品に比べ、単一金属種を担持した単独原子状態の三元触媒は10時間の劣化試験後、低い燃焼開始温度(T50)を示している。例えば、NO浄化に対する燃焼開始温度は、少なくとも20℃低下し、COに対する燃焼開始温度(T50)は50℃超低下している。30%量を低減した貴金属を担持した触媒は、100%量を担持した市販の長期使用品に比べ、やや低いか同等の燃焼開始温度を示す。
【0069】
上述の本発明の実施例は、本発明をより明確に説明するためのみの実施例であり、本発明の実施形態を制限するものではない。当業界の通常の知識を有する者が、これら記載に基づいて、異なる形態の変形例や改変例を行うことは可能である。全ての実施形態が網羅的にリストされているわけではなく、本発明の技術的解決手段に基づく全ての明確な変更や改変も本発明の保護対象範囲に存する。

図1
図2
図3
【国際調査報告】