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特表2024-501750NK細胞を含む免疫細胞活性を大幅に増進させる免疫強化鹿茸酵素分解抽出物
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  • 特表-NK細胞を含む免疫細胞活性を大幅に増進させる免疫強化鹿茸酵素分解抽出物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(54)【発明の名称】NK細胞を含む免疫細胞活性を大幅に増進させる免疫強化鹿茸酵素分解抽出物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20240105BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240105BHJP
   A61K 35/32 20150101ALI20240105BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
A23L33/10
A61P37/04
A61K35/32
A23L2/00 F
A23L2/52
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540829
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 KR2021020127
(87)【国際公開番号】W WO2022146016
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0187513
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0189206
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523250740
【氏名又は名称】ユハン ケア カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YUHAN CARE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】34F, 108, Yeoui-daero Yeongdeungpo-gu Seoul, 07335, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン ジョンス
(72)【発明者】
【氏名】チョン キョン イン
(72)【発明者】
【氏名】パク イル ボム
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒュン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】ソン エイリ
(72)【発明者】
【氏名】オム セミ
(72)【発明者】
【氏名】チョン ヒェ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ベク シン ファ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB03
4B018LB04
4B018LB05
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018MD73
4B018MD90
4B018ME14
4B018MF01
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4B018MF12
4B117LC04
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4B117LK17
4B117LP01
4B117LP06
4B117LP14
4B117LP17
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB46
4C087NA14
4C087ZB09
(57)【要約】
本発明は、免疫増強用組成物に関し、より詳細には、NK細胞活性に富む鹿茸酵素分解抽出物を有効成分として含むことによって免疫細胞を増殖させ、特に、NK細胞活性を増進させて免疫増強効果を示すので、免疫増強用食品組成物、ひいては健康機能食品又は薬学組成物として活用可能である。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鹿茸をIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.11.1の酵素又はIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.24.28の酵素で分解させた鹿茸酵素分解抽出物を有効成分として含む免疫増強用食品組成物。
【請求項2】
前記酵素は、IUBMB酵素命名クラスEC 3.4.11.1の酵素であることを特徴とする、請求項1に記載の免疫増強用食品組成物。
【請求項3】
前記IUBMB酵素命名クラスEC 3.4.11.1の酵素は、カビ由来のプロテアーゼ及びペプチダーゼの複合物であることを特徴とする、請求項2に記載の免疫増強用食品組成物。
【請求項4】
前記カビ由来のプロテアーゼ及びペプチダーゼの複合物は、アスペルギルスオリーゼ(Aspergillus oryzae)由来のエンドプロテアーゼ及びエキソペプチダーゼの複合物であることを特徴とする、請求項3に記載の免疫増強用食品組成物。
【請求項5】
前記エンドプロテアーゼ及びエキソペプチダーゼの複合物は、フラボザイム(Flavourzyme)であることを特徴とする、請求項4に記載の免疫増強用食品組成物。
【請求項6】
前記IUBMB酵素命名クラスEC 3.4.24.28の酵素は、バチルス由来の中性のプロテアーゼであることを特徴とする、請求項1に記載の免疫増強用食品組成物。
【請求項7】
前記バチルス由来の中性のプロテアーゼは、バチルスアミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)の水中発酵(submerged fermentation)によって生産される中性のメタロ(Zn)エンドプロテアーゼであることを特徴とする、請求項6に記載の免疫増強用食品組成物。
【請求項8】
前記中性のメタロ(Zn)エンドプロテアーゼは、ニュートラーゼ(Neutrase)であることを特徴とする、請求項7に記載の免疫増強用食品組成物。
【請求項9】
前記鹿茸酵素分解抽出物は、生鹿茸又は冷凍鹿茸を凍結乾燥させた乾燥鹿茸を酵素処理によって加水分解させた鹿茸酵素分解抽出物であることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の免疫増強用食品組成物。
【請求項10】
生鹿茸又は冷凍鹿茸を凍結乾燥させる凍結乾燥鹿茸準備段階;及び
前記凍結乾燥鹿茸10重量部に水50~500重量部及び酵素0.01~1重量部を入れ、30~60℃で1~48時間反応させる酵素処理段階;を含み、
前記酵素は、IUBMB酵素命名クラスEC 3.4.11.1の酵素又はIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.24.28の酵素であることを特徴とする、免疫増強活性を有する鹿茸酵素分解抽出物の製造方法。
【請求項11】
前記酵素は、IUBMB酵素命名クラスEC 3.4.11.1の酵素であることを特徴とする、請求項10に記載の免疫増強活性を有する鹿茸酵素分解抽出物の製造方法。
【請求項12】
鹿茸をIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.11.1の酵素又はIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.24.28の酵素で分解させた鹿茸酵素分解抽出物を有効成分として含む免疫増強用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫増強用組成物に関し、より詳細には、NK細胞活性に富む鹿茸酵素分解抽出物を有効成分として含む免疫増強用食品組成物、特に、免疫増強用健康機能食品、免疫増強用薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生活水準の向上及び食生活の西欧化に伴って、栄養過剰、運動不足などによる肥満、糖尿、高血圧及び心臓病などのような生活習慣病(成人病)の発病が増えている。また、平均寿命の伸びによる老齢化社会への進入が加速化するにつれて健康増進に対する関心も高まっている。
【0003】
健康増進(health promotion)とは、疾病、特に慢性退行性疾患や感染症、続くストレスに対する抵抗力の増大、及び日常の活動力の増大を図ることであり、その方策としては、栄養の改善、免疫機能強化、適切な運動と休息、精神的活動の持続など、生活様式全般にわたる管理が必要である。
【0004】
特に、免疫力が高いと、普段疾病にかかりにくく、例え疾病にかかっても回復が早い。このような健康な状態を維持し続けながら年を取ると寿命が伸びることは明らかである。したがって、免疫力は人間の健康と寿命に直結しており、健康を維持し、寿命を伸ばすためには、免疫力を管理することが必須であるといえよう。
【0005】
免疫(Immune)とは、人間及び動物の体内で外因性及び内因性の異物を生理的に認識して排除し、恒常性を維持させるための機序のことを指す。ここで、異物を抗原(antigen)といい、これを除去する過程に多種の白血球細胞とタンパク質が関与する。免疫は、大きく、生まれながら持っている先天免疫と、後天的に生活などに適応して得られる獲得免疫とに区別される。
【0006】
先天免疫(innate immunity)は、自然免疫、自然抵抗ともいう。抗原に対して非特異的に反応し、特別な記憶作用はない。先天的な兔疫体系には、抗原の侵入を遮断する皮膚・粘液組織、強い酸性の胃酸、血液に存在する補体(complement)などがある。細胞には、食菌作用を担当する大食細胞(macrophage)と多形核白血球(polymorphonuclear leukocyte)、感染細胞を殺し得るNK細胞などがある。また、大食細胞によって生産されるサイトカイン(cytokine)がある。実際に、大部分の感染は、上記の先天免疫によって防御される。
【0007】
外部感染に対する最初の認識は主に大食細胞(macrophage)が行う。大食細胞が抗原を貪食する過程で免疫反応を媒介するサイトカイン(cytokine)が生産される。
【0008】
また、サイトカインは、身体の防御体系を制御し刺激する信号物質として用いられる糖タンパク質であり、免疫、感染病、造血機能、組織回復、細胞の発展及び成長に重要な機能を持つ。サイトカインは、局所部位に炎症を誘発することによって免疫細胞を感染部位に集める機能を有することから、炎症性サイトカイン(inflammatory cytokine)とも呼ばれる。最も重要な免疫機能は、インターロイキン、インターフェロンガンマ、腫瘍壊死因子として知られたサイトカインの集団によって行われる。これらのうち、インターロイキン(Interleukin)は、免疫反応が起きる諸段階に作用して免疫反応を調節することによって人体の防御作用に重要な役割を担う物質であり、その種類はIL-1、IL-6、IL-12などがある。
【0009】
また、NK細胞(Natural killer cell;自然殺害細胞)は、抗原による事前感作なしにも腫瘍細胞、バクテリア、細胞内寄生生物又はウイルスに感染された宿主細胞を除去する機能を担い、不適切な骨髄移植を拒否し、T細胞の免疫反応を調節するなど、生体内免疫系防御機序の第一線で働く行動細胞であり、NK細胞の活性が高いと、標的細胞を攻撃及び除去する能力も増加することが知られている。
【0010】
一方、鹿茸(Cervi Parvum Cornu,Antler)は、梅花鹿、大鹿又は馬鹿の雄鹿の毛が密生し、まだ骨質化していないか、多少骨質化した幼い角を切断して乾燥させたものであり、育ち始めて2カ月以内の、角質化が進んでいなく、組織が軟らかく、毛が均一に覆われている雄鹿の角を意味する。角質化が進んでいない鹿の角はややぶよぶよしているが、時期的に秋には硬く角質化して鹿茸の効能が低下する。これを鹿角と呼ぶ。
【0011】
東医宝鑑などの古文献によれば、鹿茸は、強壮、生長発育促進、補血、造血、五臓六腑の亢進、心不全症治療、身体機能亢進、身体活力増強及び腎臓の利尿機能強化など、多くの薬理的効能を有するものと知られている。動物を利用した効能に関する研究としては、白ネズミの成長促進、造血、血清コレステロール低下、タンパク質合成促進、老化防止、白ネズミの脊椎神経酵素活性増大、鎮痛及び抗疲労、免疫活性増大及び鎮静作用などがあることが報告された。
【0012】
鹿茸の生理活性成分には、アミノ酸、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、コラーゲン、リン脂質、コンドロイチン(chondroitin)、グルコサミン(glucosamine)、パントクリン(pantocrin)、ガングリオシド(ganglioside)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)などが知られている。
【0013】
従来、漢方で使用する鹿茸の服用方法には、乾燥鹿茸を多種の生薬剤と混合、粉砕した後、水を溶媒にして加熱抽出してその濾液を服用する方法と、乾燥鹿茸と生薬剤を粉砕して粉にした後、丸にして服用する方法が主に用いられている。抽出して服用する方法は、鹿茸の有効成分の吸収がしやすいが、抽出粕に含まれている有効成分を活用できない限界があり、丸剤形は、鹿茸自体を摂取するという利点があるが、体内で有効成分の完全な吸収が難しいという問題点があった。
【0014】
韓国公開特許第2005-0090041号では、鹿茸を粉砕した後に抽出し、タンパク分解酵素処理及び塩酸分解処理をする鹿茸抽出方法を記述しているが、抽出、タンパク分解酵素処理及び塩酸分解処理を順次に行っているため、工程が複雑であり、人体に有用な生理活性物質が分解される問題があった。
【0015】
また、韓国公開特許第2013-0078724号では、鹿茸を酸性条件でペプシン及び脂肪分解酵素で処理した後、中性条件でタンパク質分解酵素でさらに処理する方法を記述しているが、単純に遊離アミノ酸の含有量及びリン脂質の含有量が増加したとの記載があるだけで、実際の生理活性や具体的機能性については記述していない限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】韓国公開特許第2005-0090041号
【特許文献2】韓国公開特許第2013-0078724号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明が解決しようとする課題は、鹿茸をIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.11.1の酵素又はIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.24.28の酵素で分解させたNK細胞活性に富む鹿茸酵素分解抽出物を有効成分として含む免疫増強用食品組成物を提供することである。
【0018】
本発明が解決しようとする他の課題は、生鹿茸又は冷凍鹿茸を凍結乾燥させる凍結乾燥鹿茸準備段階;及び、前記凍結乾燥鹿茸10重量部に水50~500重量部及び酵素0.01~1重量部を入れ、30~60℃で1~48時間反応させる酵素処理段階;を含み、前記酵素は、IUBMB酵素命名クラスEC 3.4.11.1の酵素又はIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.24.28の酵素であることを特徴とする、免疫増強活性を有する鹿茸酵素分解抽出物の製造方法を提供することである。
【0019】
本発明が解決しようとする他の課題は、鹿茸をIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.11.1の酵素又はIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.24.28の酵素で分解させたNK細胞活性に富む鹿茸酵素分解抽出物を有効成分として含む免疫増強用薬学組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、前記課題を達成するために、鹿茸をIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.11.1の酵素又はIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.24.28の酵素で分解させた鹿茸酵素分解抽出物を有効成分として含む免疫増強用食品組成物を提供する。
【0021】
本発明の一実施例によれば、前記鹿茸酵素分解抽出物は、鹿茸をIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.11.1の酵素又はIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.24.28の酵素で分解させた鹿茸酵素分解抽出物であってよい。
【0022】
本発明の一実施例によれば、前記IUBMB酵素命名クラスEC 3.4.11.1の酵素は、カビ由来のプロテアーゼ及びペプチダーゼの複合物であってよい。
【0023】
本発明の一実施例によれば、前記カビ由来のプロテアーゼ及びペプチダーゼの複合物はアスペルギルスオリーゼ(Aspergillus oryzae)由来のエンドプロテアーゼ及びエキソペプチダーゼの複合物であってよい。
【0024】
本発明の一実施例によれば、前記エンドプロテアーゼ及びエキソペプチダーゼの複合物は、フラボザイム(Flavourzyme)(登録商標)であってよい。
【0025】
本発明の一実施例によれば、前記IUBMB酵素命名クラスEC 3.4.24.28の酵素は、バチルス由来の中性のプロテアーゼであってよい。
【0026】
本発明の一実施例によれば、前記バチルス由来の中性のプロテアーゼは、バチルスアミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)の水中発酵(submerged fermentation)によって生産される中性のメタロ(Zn)エンドプロテアーゼであってよい。
【0027】
本発明の一実施例によれば、前記中性のメタロ(Zn)エンドプロテアーゼは、ニュートラーゼ(Neutrase)であってよい。
【0028】
本発明の一実施例によれば、前記鹿茸酵素分解抽出物は、生鹿茸又は冷凍鹿茸を凍結乾燥させた乾燥鹿茸を酵素処理によって加水分解させた鹿茸酵素分解抽出物であってよい。
【0029】
また、本発明は、生鹿茸又は冷凍鹿茸を凍結乾燥させる凍結乾燥鹿茸準備段階;及び、前記凍結乾燥鹿茸10重量部に水50~500重量部及び酵素0.01~1重量部を入れ、30~60℃で1~48時間反応させる酵素処理段階;を含み、前記酵素は、IUBMB酵素命名クラスEC 3.4.11.1の酵素又はIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.24.28の酵素であることを特徴とする、免疫増強活性を有する鹿茸酵素分解抽出物の製造方法を提供する。
【0030】
また、本発明は、IUBMB酵素命名クラスEC 3.4.11.1の酵素又はIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.24.28の酵素で分解させた鹿茸酵素分解抽出物を有効成分として含む免疫増強用薬学組成物を提供する。
【0031】
本発明の一実施例によれば、前記鹿茸酵素分解抽出物は、鹿茸をIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.11.1の酵素又はIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.24.28の酵素で分解させた鹿茸酵素分解抽出物であってよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明のNK細胞活性に富む鹿茸酵素分解抽出物を有効成分として含む組成物は、免疫細胞を増殖させたり免疫細胞の機能を活性化させるので、免疫増強用食品組成物、ひいては健康機能食品又は薬学組成物として活用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実験例2において鹿茸酵素分解抽出物の抗原刺激白血球免疫活性増進効果を確認するために、NanoStringを用いて免疫関連サイトカイン発現を分析法を用いて示す図であり、アップレギュレーション(up-regulation)されるほど赤色、ダウンレギュレーション(down-regulation)されるほど青色で表示している。
図2】実験例3において鹿茸酵素分解抽出物の種類及び濃度による大食細胞での酸化窒素生成効果を比較したグラフである。
図3】実験例4において鹿茸酵素分解抽出物の種類及び濃度による大食細胞でのiNOS遺伝子発現量を比較したグラフである。
図4】実験例4において鹿茸酵素分解抽出物の種類及び濃度による大食細胞でのCOX2遺伝子発現量を比較したグラフである。
図5】実験例5において鹿茸酵素分解抽出物の種類及び濃度によるTNF-αの相対発現量を比較したグラフである。
図6】実験例5において鹿茸酵素分解抽出物の種類及び濃度によるIFN-γの相対発現量を比較したグラフである。
図7】実験例5において鹿茸酵素分解抽出物の種類及び濃度によるIL-6の相対発現量を比較したグラフである。
図8】実験例5において鹿茸酵素分解抽出物の種類及び濃度によるIL-1βの相対発現量を比較したグラフである。
図9】実験例6において鹿茸酵素分解抽出物の種類及び濃度による培養時間の変化による大食細胞増殖能を比較したグラフである。
図10】実験例7において免疫抑制動物モデルで鹿茸酵素分解抽出物の種類及び投与濃度によるNK細胞活性を比較したグラフである。
図11】実験例7において免疫抑制動物モデルで鹿茸酵素分解抽出物の種類及び投与濃度によるTNF-α濃度を比較したグラフである。
図12】実験例7において免疫抑制動物モデルで鹿茸酵素分解抽出物の種類及び投与濃度によるインターフェロンガンマ(IFN-γ)濃度を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0035】
本発明の発明者らは、鹿茸酵素分解抽出物、特に、鹿茸をIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.11.1の酵素又はIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.24.28の酵素で分解させた鹿茸酵素分解抽出物、好ましくは、IUBMB酵素命名クラスEC 3.4.11.1の酵素で分解させた鹿茸酵素分解抽出物が、NK細胞活性に優れ、免疫関連サイトカイン発現を増進させて免疫増強活性を示すことを確認した。
【0036】
前記鹿茸は、生後2カ月以内の骨質化されていない鹿の角を指す。
【0037】
前記鹿茸は、低湿度環境で数週にわたって自然乾燥させた乾燥鹿茸を使用してもよいが、好ましくは、本発明では生鹿茸又は冷凍鹿茸を凍結乾燥させた乾燥鹿茸を使用することができる。
【0038】
生鹿茸又は冷凍鹿茸を自然乾燥させたり又は凍結乾燥前に殺菌するために熱湯処理する場合に、鹿茸深部の温度が酵素失活温度まで上昇する前に、内因性酵素の作用によって非特異的且つ不均一な酵素分解が発生する問題がある。このため、生鹿茸又は冷凍鹿茸を自然乾燥させたり又は凍結乾燥前に熱湯処理しないで直に凍結乾燥すると、品質が均一であり且つ免疫増強活性に富む鹿茸酵素分解抽出物の製造が可能である。一応凍結乾燥させた乾燥鹿茸は、通常の方法で殺菌後に使用してよく、例えば、120~130℃で30秒~20分熱処理後に使用することができる。
【0039】
前記IUBMB酵素命名クラスEC 3.4.23.1の酵素、例えば、ペプシン(pepsin)、アスパラギン酸プロテアーゼ(Aspartic proteinnase)のような酵素も、鹿茸酵素分解抽出物を製造しても免疫増強効果を示さない。ペプシンはアスパラギン酸エンドペプチダーゼであり、選択的に疎水性、特に、芳香族アミノ酸残基を切断する。
【0040】
前記IUBMB酵素命名クラスEC 3.4.11.1の酵素、例えば、A-LAP、acidic M17 leucine aminopeptidase、AcLAP、adipocyte-derived leucine aminopeptidase、Aminopeptidase、「フラボザイム(Flavourzyme)」(Novozyme社製)などは、酵素処理によって鹿茸酵素分解抽出物を製造する場合に、従来の鹿茸熱水抽出物又は超臨界鹿茸抽出物に比べてはるかに優れた免疫増強効果を示す。前記フラボザイムは、アスペルギルスオリーゼ(Aspergillus oryzae)の水中発酵(submerged fermentation)によって生産されるエンドプロテアーゼ及びエキソペプチダーゼの複合物である。
【0041】
また、前記IUBMB酵素命名クラスEC 3.4.24.28の酵素は、バチルス由来の中性のプロテアーゼであり、例えば、バチロリシン、バチルスメタロエンドペプチダーゼ、アニロザイムP10;バチルスメタロプロテイナーゼ、メガテリオペプチダーゼ、「ニュートラーゼ(Neutrase)」(Novozyme社製)などは、酵素処理によって鹿茸酵素分解抽出物を製造する場合に、従来の鹿茸熱水抽出物又は超臨界鹿茸抽出物に比べて遥かに優れた免疫増強効果を示す。前記ニュートラーゼは、バチルスアミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)の水中発酵(submerged fermentation)によって生産される中性のメタロ(Zn)エンドプロテアーゼである。ニュートラーゼの他に、前記酵素クラスに属するバクテリア起源の中性メタロプロテイナーゼである「Protease N ‘Amano’」(Amano Enzyme社製)及び「Corolase N」(AB Enzymes社製)などによって酵素処理された鹿茸酵素分解抽出物なども、従来の鹿茸熱水抽出物又は超臨界鹿茸抽出物に比べて遥かに優れた免疫増強効果を示す。
【0042】
しかし、UBMB酵素命名クラスEC 3.4.21.62の酵素、例えば、アルカラーゼ(Alcalase)、サブチリシン、コロラーゼN(colorase N)、ALK-酵素;バチロペプチダーゼA;バチロペプチダーゼB;バチルスサブチリスアルカリラインプロテイナーゼバイオプラーゼ(bioprase);バイオプラーゼAL15;バイオプラーゼAPL30;コリスチナーゼ(colistinase);サブチリシンJ;サブチリシンS41;サブチリシンセンダイ(Subtilisin Sendai);サブチリシンGX;サブチリシンE;サブチリシンBL;サブチリシンA(Type VIII);ジェネナーゼ(genenase)I;エスペラーゼ(esperase);マキサターゼ(maxatase);サーモアーゼ(thermoase)PC10;プロテアーゼXXVII;サーモアーゼ;スーパーアーゼ(superase);サブチリシンDY;スブチロペプチダーゼ;SP266;サビナーゼ(savinase)8.0L;サビナーゼ4.0T;カズサーゼ(kazusase);プロテアーゼVIII;オプチマーゼ;オプチクリーン(opticlean);バチルスサブチリスアルカラインプロテイナーゼ;protin A3L;サビナーゼ;サビナーゼ16.0L;サビナーゼ32.0L EX;オリエンターゼ(orientase)10B;プロテアーゼS及び類似のセリンエンドペプチダーゼは、酵素処理によって鹿茸酵素分解抽出物を製造しても免疫増強効果を示さない。
【0043】
また、IUBMB酵素命名クラスEC 3.4.24.28の酵素及びIUBMB酵素命名クラスEC 3.4.21.62の酵素の複合物である「プロタメックス(Protamex)」(Novozyme社製)の場合にも、酵素処理によって鹿茸酵素分解抽出物を製造しても免疫増強効果を示さない。
【0044】
前記鹿茸酵素分解抽出物の製造は、水に適切な量の鹿茸と酵素を投入して酵素処理する。例えば、凍結乾燥させた鹿茸のような乾燥鹿茸10重量部に対して50~500重量部、好ましくは100~400重量部の水を投入し、酵素は0.01~1重量部、好ましくは0.02~0.8重量部、より好ましくは0.05~0.5重量部を投入できるが、その投入量は必要によって任意に変更して使用してもよい。
【0045】
前記酵素処理温度は、選択された酵素の最適温度によって適切な範囲を選択でき、好ましくは30~60℃、より好ましくは40~55℃で反応させることができる。
【0046】
前記酵素処理時間は、酵素処理によって生成されるペプチドの量、ペプチドの分子量及びそのプロファイルによって適切な時間を選択でき、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上、さらに好ましくは3時間以上であり、一定時間以上で酵素処理しても生産収率に及ぼす影響はわずかで、工程費用だけが上昇することがあるため、好ましくは48時間以下、より好ましくは24時間以下、さらに好ましくは12時間以下で反応させる。
【0047】
前記酵素処理段階後には、酵素を不活性化させる段階をさらに含んでよい。酵素不活性化は、通常の技術者に公知であるいかなる方法を適用してもよく、例えば、85℃以上の温度で20分以上処理して不活性化させることができる。
【0048】
前記「鹿茸酵素分解抽出物」は、鹿茸に酵素処理によって得られた反応生成物、それらから分画した分画物、それらの分解物又は分画物をさらに濃縮した濃縮物、それを精製又は分離した精製物も含み、前記反応生成物、分画物、濃縮物又は精製物を乾燥させた乾燥物又はそれを粉砕した粉末を含む意味で使われる。
【0049】
前記濃縮物又は精製物の製造のために遠心分離したり、分子量カット-オフ値を有する限外濾過膜を通過させたり、又は様々なクロマトグラフィー(大きさ、電荷、疎水性又は親和性による分離のために製作されたもの)による分離など、さらに実施された様々な精製方法を付加できる。
【0050】
本発明は、鹿茸酵素分解抽出物を有効成分として含む免疫増強用食品組成物に関する。
【0051】
前記「食品組成物」は、有効成分として鹿茸酵素分解抽出物の他に、食品製造に通常使用される食品の基準及び規格(「食品公典」)に記載された食品に使用可能な食品原料、食品添加物公典に記載された食品添加物も含む。
【0052】
特に限定する必要はないが、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味剤及び香味剤を含む。前記炭水化物は、単糖類、例えばブドウ糖、果糖など;二糖類、例えばマルトース、砂糖、乳糖など;オリゴ糖又はポリサッカライド、例えばデキストリン、水飴、シクロデキストリンなど;糖アルコール、例えばキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどを使用することができる。前記香味剤は、天然香味剤[タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど])及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を使用することができる。
【0053】
前記鹿茸酵素分解抽出物を有効成分として食品組成物を製造する場合に、鹿茸酵素分解抽出物は、免疫増強効能を示す含有量であれば特に限定する必要はないが、例えば、0.1~99重量%、0.5~95重量%、1~90重量%、2~80重量%、3~70重量%、4~60重量%、5~50重量%で含まれてよい。
【0054】
前記食品組成物において有効成分である鹿茸酵素分解抽出物は、摂取者の状態、体重、疾病の有無や程度及び期間によって異なるが、通常の技術者によって適切に選択されてよい。例えば、1日投与量を基準に1~5,000mg、好ましくは5~2,000mg、さらに好ましくは10~1,000mg、特に好ましくは20~800mg、最も好ましくは50~500mgであってよく、投与回数は、特に限定する必要はないが、1日に3回~1週に1回の範囲内で通常の技術者が調節できる。健康及び衛生を目的としたり又は健康調節を目的とする長期間の摂取では前記範囲以下であってよい。
【0055】
前記食品組成物は、特に限定する必要はないが、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、エキス剤、ジェリー剤、ティーバッグ剤又は飲料剤であってよい。
【0056】
また、一般食品に免疫増強機能性を付与するために前記鹿茸酵素分解抽出物を添加してもよく、添加が可能な食品は、特に限定する必要はないが、例えば、食品衛生法第7条による食品の基準及び規格(「食品公典」)に例示された菓子類、パン又は餅類、ココア加工品類又はチョコレート類、食肉又は卵加工品、魚肉加工品、豆腐類又は寒天類、麺類、茶類、コーヒー、飲料類、特殊用途食品、醤油類、調味食品、ドレッシング類、キムチ類、塩辛類、塩漬け食品、煮物食品、酒類、干し物類、その他食品類などに添加されてよい。また、畜産物衛生管理法第4条による畜産物の加工基準及び成分規格(「畜産物公典」)に例示された乳加工品、食肉加工品及び包装肉、卵加工品に添加されてよい。
【0057】
一方、前記鹿茸酵素分解抽出物は、NK細胞活性に富み、免疫関連サイトカイン発現を増進させるので、前記鹿茸酵素分解抽出物を有効成分とする食品組成物は単独で「免疫増強を助ける健康機能食品」として利用可能である。
【0058】
前記「健康機能食品」は、人体に有用な機能性を有する原料や成分を使用して法的基準によって製造(加工を含む)した食品(健康機能食品に関する法律第3条第1号)のことを指す。前記「健康機能食品」は、国別に用語や範囲が異なり得るが、米国の「食餌補充剤(Dietary Supplement)」、ヨーロッパの「食品補充剤(Food Supplemnet)」、日本の「保健機能食品」又は「特定保健用食品(Food for Special Health Use,FoSHU)」、中国の「保健食品」などに該当し得る。
【0059】
前記食品組成物又は健康機能食品は、食品添加物をさらに含んでよく、食品添加物としての適否は、他の規定がない限り、「食品添加物公典」の総則及び一般試験法などによって当該品目に関する規格及び基準にしたがう。
【0060】
また、前記健康機能食品には、前記鹿茸酵素分解抽出物と共に「免疫増強を助ける健康機能食品」に使用される「機能性原料」として告示された原料又は個別認定された原料としてL-グルタミン、ゲルマニウム酵母、クムサメシマコブ、Enterococcus faecalis加熱処理乾燥粉末、トウキ混合抽出物、冬虫夏草酒精抽出物、スピルリナ、クロレラ、清麹醤菌培養生成物(ポリガンマグルタミン酸カリウム)、椎茸菌糸体、酵母ベータグルカン、人参多糖体抽出物などの免疫増強に関連した健康機能食品素材を複合して使用することができる。
【0061】
本発明は、鹿茸酵素分解抽出物を有効成分として含む免疫増強用薬学組成物に関する。
【0062】
前記「薬学組成物」は、有効成分として、NK細胞活性に富み、免疫関連サイトカイン発現を増進させる鹿茸酵素分解抽出物の他に、薬学組成物などの製造に通常使用する適切な担体、賦形剤及び希釈剤もさらに含んでよい。
【0063】
前記「免疫増強用薬学組成物」は、免疫抗癌剤又は抗癌補助剤であってよい。前記免疫抗癌剤は、免疫因子の発現を誘導して免疫細胞の活性を増加させ、癌細胞を死滅させるものであり、前記癌細胞は固形癌の癌細胞であってよく、より詳細には、前記固形癌は、大腸癌、乳癌、肺癌、胃癌、上皮性卵巣癌、脳癌、皮膚癌及び肝癌からなる群から選ばれてよいが、これに限定されない。前記抗癌補助剤は、抗癌剤投与による副作用を緩和させることができ、前記抗癌剤投与による副作用は、体重又は免疫因子の減少及び悪液質(cachexia)からなる群から選ばれてよい。
【0064】
前記「免疫増強用薬学組成物」は、抗ウイルス用ワクチンの効能を増幅させる免疫増強剤であってよい。前記免疫増強剤は、抗ウイルス用ワクチンと併用して又は順次に投与されてよい。
【0065】
前記抗ウイルス用ワクチンは、インフルエンザー、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、ヘルペス単純ウイルス(2型)、小児痲痺、ジフテリア、百日咳、ヘモフィルスB型インフルエンザー(Hib)、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、腸チフス熱、水疱瘡(チキンポックス)、デング熱、エプスタイン-パールウイルス感染、人乳頭腫ウイルス感染、肺炎球菌感染、髄膜球菌感染、肺炎レンサ球菌感染、ウイルス髄膜炎、ロタウイルス感染、ダニ媒介脳炎、旅行中下痢、コレラ、黄熱病又は結核の予防のためのヒト用ワクチンであってよい。
【0066】
前記「担体」は、細胞又は組織内への化合物の付加を容易にする化合物である。前記「希釈剤」は、対象化合物の生物学的活性形態を安定化させるだけでなく、化合物を溶解させる水に希釈される化合物である。
【0067】
前記担体、賦形剤及び希釈剤には、特に限定する必要はないが、例えば、乳糖、ブドウ糖、砂糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油などを挙げることができる。
【0068】
前記薬学組成物の使用量は、患者の年齢、性別、体重によって変わってよく、特に、治療対象個体の状態、治療対象疾患の特定のカテゴリー又は種類、投与経路、使用される治療剤の属性に依存するであろう。
【0069】
前記薬学組成物は、体内で活性成分の吸収度、排泄速度、患者又は治療対象動物の年齢及び体重、性別及び状態、治療する疾病の重症程度などによって適切に選択されるが、一般に、1日に0.1~1,000mg/kg、好ましくは1~500mg/kg、より好ましくは5~250mg/kg、最も好ましくは10~100mg/kgで投与されてよい。このように剤形化された単位投与型製剤は、必要によって一定の時間間隔で数回投与されてよい。
【0070】
前記薬学組成物は、個別的に予防剤又は治療剤として投与してもよく、他の治療剤と併用して投与されてもよく、従来の治療剤とは順次に又は同時に投与されてよい。
【0071】
前記薬学組成物はそれぞれ、通常の方法によって、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾールなどの経口剤形、そして滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などの非経口剤形に剤形化して使用されてよい。
【0072】
剤形化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を用いて調製されてよい。
【0073】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記鹿茸酵素分解抽出物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、砂糖又は乳糖、ゼラチンなどを混ぜて調製できる。また、単純な賦形剤の他に、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使用されてよい。経口のための液状製剤には、懸濁剤、耐溶液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、しばしば使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他に、様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてよい。
【0074】
非経口投与のための製剤には非水性溶剤、懸濁溶剤にはプロピレングリコール(Propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用されてよい。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用されてよい。
【0075】
以下、好ましい実施例を挙げて発明をより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、これによって本発明の範囲が限定されないということは、当業界における通常の知識を有する者に明らかであろう。
【0076】
製造例1:鹿茸粉末の製造
血液を含む冷凍鹿茸(ニュージーランド産)を洗浄した後、適切な大きさに粉砕して凍結乾燥させた後、それを再び粉砕して123℃で7分熱処理し、凍結乾燥鹿茸粉末を製造した。
【0077】
製造例2:鹿茸酵素分解抽出物の製造
製造例1の鹿茸粉末10gを取って水199mLを混合した。その混合物を、各酵素による必要温度、例えば、それぞれ、アルカラーゼは60℃、フラボザイム、ニュートラーゼ及びプロタメックスは50℃水浴で100rpmで撹拌した。それぞれの酵素溶液(100mg/mL)1mLを、1:100の酵素:基質の比率にして添加し、23時間まで温度を保ちながら撹拌して酵素処理した。95℃水浴上で85℃以上保ちながら20分保持して酵素を不活性化させた後、冷却した酵素分解物を25℃で遠心分離した。上澄液を水で200mL定容し、真空下でCelite545を用いて濾過後に殺菌及び乾燥させて粉末化した。粉末は、生理活性分析のために-20℃に保管し、それらの試料をそれぞれ1F、2F、3F及び5Fとした。
【0078】
ペプシンの場合、製造例1の鹿茸粉末10gを取ってpH2の薄い塩酸199mLを混合した。その混合物を50℃水浴で100rpmで撹拌した。ペプシン酵素溶液(100mg/mL)1mLを、1:100の酵素:基質の比率にして添加し、23時間まで温度を保ちながら撹拌して酵素処理した。6M水酸化ナトリウム8mLを入れ、pH5.5~6に調整して分解を中断させ、95℃水浴上で85℃以上保ちながら20分保持して酵素を不活性化させた後、冷却した酵素分解物を25℃で遠心分離した。上澄液を水で200mL定容し、真空下でCelite545を用いて濾過後に殺菌及び乾燥させて粉末化した。粉末は、生理活性分析のために-20℃に保管し、この試料を4Fとした。
【0079】
製造例3:対照群の製造
鹿茸酵素分解抽出物の対照群として、鹿茸超臨界抽出物、鹿茸熱水抽出物及びVARNZ RepaiRxをそれぞれ、C1、C2及びC3とした。
【0080】
鹿茸超臨界抽出物(C1)は、製造例1の鹿茸粉末を、溶媒として二酸化炭素及びエタノール、抽出圧力300bar、抽出温度40℃、分離圧力54bar、分離温度40℃、供給重量49.7g、平均二酸化炭素流速7.9g/min、平均エタノール流速2.0g/min、二酸化炭素供給比率22:1及びエタノール供給比率3:1の条件で抽出しながら毎15分ごとに回収して真空減圧乾燥させて製造した。
【0081】
鹿茸熱水抽出物(C2)は、製造例1の鹿茸粉末10gを水200mLと混ぜて丸底フラスコに入れ、熱水で3時間熱水抽出した後、氷で冷却して25℃で30分間25,000gで遠心分離した。上澄液を水で200mL定容し、真空下でCelite545を用いて濾過した後に乾燥させた粉末を、活性分析のために-20℃に保管した。
【0082】
VARNZ RepaiRxは、米国特許第07547761号によって製造されたものであり、1/25に希釈したものをC3試料として用いた。
【0083】
実験例1:鹿茸酵素分解抽出物の収率
製造例2で製造された1F~5Fの鹿茸酵素分解抽出物及び対照群C2の濃度を測定し、それらから計算した収率を表1に示した。
【0084】
【表1】


1Fから5Fまでの酵素処理した全ての鹿茸酵素分解抽出物は、鹿茸熱水抽出物(C2)に比べて高い収率を示した。鹿茸酵素分解抽出物の中でもフラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)、ニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(3F)及びプロタメックスを用いた鹿茸酵素分解抽出物(5F)は、鹿茸熱水抽出物(C2)はもとより、他の酵素アルカラーゼ(1F)及びペプシン(4F)で処理した鹿茸酵素分解抽出物に比べても約2~3倍高い収率を示した。
【0085】
実験例2:鹿茸酵素分解抽出物の抗原刺激白血球免疫活性増進効果
白血球は、12人の支援者(NZ Blood,Wellington,New Zealand)から供給された血液サンプルを用いて分離した。赤血球溶解試薬(TACバッファー:85mM Tris、78mM NHCl、Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)は、37℃に予熱して使用した。各全血5mLにTACバッファー45mLを添加し、37℃水浴(water bath)に10分間静置する。500xgで10分間遠心分離後に上澄液を除去し、PBS(0.1M EDTA)25mLで均一に浮遊させた。同一の方法で遠心分離した後に上澄液を除去し、RPMI1640(Sigma-Aldrich,5%のFCS添加)5mLで浮遊させた。当該実験に使用された白血球細胞の数は、1×10cells/mLである。
【0086】
96ウェルプレートに、50μlの分離した白血球を分注した後、それぞれ、25μlのRPMI/FCS(control)又は製造例2の鹿茸酵素分解抽出物及び対照群をそれぞれ1/100に希釈して添加し、37℃/5%COインキュベーターに3時間静置した。25μlのスティミュレーター(stimulator)を添加し、37℃/5%COインキュベーターに2時間静置した。スティミュレーターはそれぞれ、SEB(200ng/mLブドウ球菌エンテロトキシンB(Staphylococcus enterotoxin B);Sigma-Aldrich)、PWM(2μg/mLヤマゴボウマイトジェン(pokeweed mitogen);Sigma-Aldrich)、リポポリサッカライド(lipopolysaccharide,LPS)(4ng/mL LPS;Sigma-Aldrich)である。細胞溶解液(Cell lysate)は、プレートを350xgで遠心分離した後に上澄液を除去し、10μl/wellのBuffer RLTで浮遊させて使用した。
【0087】
抗原刺激白血球免疫活性増進効果は、NanoStringを用いて免疫関連サイトカイン発現を分析法を用いて図1に示した。図1で、アップレギュレーション(up-regulation)されるほど赤色、ダウンレギュレーション(down-regulation)されるほど青色で表示した。図1で、赤色及び青色はP<0.05であり、橙色及び空色はP<0.1を表す。
【0088】
酵素種類による鹿茸酵素分解抽出物の免疫関連遺伝子増進効果について説明すると、アルカラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(1F)は、鹿茸粉末の製造方法に関係なく遺伝子増進効果を示さなかった。
【0089】
フラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物のうち、凍結乾燥鹿茸酵素分解抽出物(2F)は、1FNB1、1L12B、IL17A、IL2、IL4及びIL9の総6種の遺伝子の発現を増加させた。
【0090】
ニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物のうち、凍結乾燥鹿茸酵素分解抽出物(3F)は、IFNB1、IL10、IL12B、IL17A、IL2及びIL9の総6種の遺伝子発現を増加させた。
【0091】
ペプシンを用いた鹿茸酵素分解抽出物のうち、凍結乾燥鹿茸酵素分解抽出物(4F)は、いかなる遺伝子発現も増加させなかった。
【0092】
プロタメックスを用いた鹿茸酵素分解抽出物のうち、凍結乾燥鹿茸酵素分解抽出物(5F)は、いかなる遺伝子発現も増加させなかった。
【0093】
対照群C1、C2及びC3は、免疫関連のいかなる遺伝子発現も増進させなく、C3は、PTGS2遺伝子発現のみを増進させた。
【0094】
鹿茸酵素分解抽出物の免疫関連サイトカイン発現増進活性は、フラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)及びニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(3F)において高い活性を示し、他の酵素で処理したり或いは酵素処理しなかった場合は、免疫関連サイトカイン発現増進活性が非常に低かった。
【0095】
以降の実験には、フラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)、ニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(3F)、ペプシンを用いた鹿茸酵素分解抽出物(4F)、プロタメックスを用いた鹿茸酵素分解抽出物(5F)及び鹿茸熱水抽出物(C2)を用いて実施した。
【0096】
実験例3:鹿茸酵素分解抽出物の大食細胞の酸化窒素生成効果
マウス由来大食細胞であるRAW264.7細胞株を、DMEM(Cat No.11995-065,Gibco BRL,U.S.A)、FBS(Lot No.AE29155306,Hyclone,U.S.A.)及びAntibiotic-antimycotic 100x(Batch No.ADD670076,Biopredic International,France)をそれぞれ、445mL、50mL及び5mL混合した培地で37℃、5%CO条件のCOインキュベーター(MCO-20AIC,Sanyo,Japan)で培養し、使用前まで2~3日の間隔で継代培養して使用した。
【0097】
鹿茸酵素分解抽出物の大食細胞酸化窒素(NO)生成効果を確認する前に、試料の細胞毒性を確認するためにMTT分析を行った。活性化されたRAW 264.7細胞株を3×10cells/wellで96ウェルプレートにそれぞれ分注し、24時間37℃、5%COインキュベーターで培養した。鹿茸酵素分解抽出物試料を、0.001~100mg/mLで濃度別に調製した培地に交換し、24時間培養後にcck-8(Cat No.CK04-13,Dojindo,Japan)10μlを添加して37℃、COインキュベーターで1時間追加培養し、マイクロプレートリーダーを用いて450nm波長で吸光度を測定し、正常対照群の細胞生存率に対する各試料の濃度別細胞生存率を求めた。
【0098】
鹿茸酵素分解抽出物試料2F、3F、5F及びC2はそれぞれ、0.5、2.5、6及び50mg/mL以下では細胞毒性を示さなかった。
【0099】
酸化窒素生成効果は、RAW 264.7細胞株を6ウェルプレートに5×10cells/wellで分注し、24時間培養した。培養培地を除去し、陽性対照群及び濃度別に製造した試料含有培地に交換した後、24時間追加培養した。細胞培養液を回収して1000rpmで5分間遠心分離し、新しいチューブに上澄液を移した後、NO production kit(Cat No.ADI-917-020,Enzo,U.S.A)のプロトコールによって試験を実施し、NO生成量は、540nm波長で測定された吸光度の値を標準曲線の4-Parameter logic regressionを用いて定量して図2に示した。
【0100】
試験物質を処理していない正常対照群(N)は、14.89μmole/Lの酸化窒素を生成した。陽性対照群(LPS1μg/mL)は、47.74μmole/Lの酸化窒素を生成し、正常対照群と比較して有意に増加した(p<0.01)。
【0101】
フラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)処理群(100、500μg/mL)の酸化窒素生成量はそれぞれ25.73、39.65μmole/Lの値と濃度によって増加し、正常対照群と比較して有意に増加した(p<0.05及びp<0.01)。
【0102】
ニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(3F)処理群(500、1000μg/mL)の酸化窒素生成量はそれぞれ30.42、29.39μmole/Lの値であり、正常対照群と比較して有意に増加したが(p<0.01及びp<0.01)、500μg/mLの同一濃度で処理したフラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)処理群に比べて増加幅は約23.3%低い値を示した。
【0103】
プロタメックスを用いた鹿茸酵素分解抽出物(5F)及び鹿茸熱水抽出物(C2)処理群では、正常対照群と比較して大きな差を示さなかった。
【0104】
大食細胞での酸化窒素生成量は、哺乳類免疫系において外部物質に対して防御作用をする大食細胞の活性化の有無が分かる指標であり、フラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)が酸化窒素生成量において最も優れており、その次は、ニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(3F)であることが確認できた。
【0105】
実験例4:鹿茸酵素分解抽出物のiNOS及びCOX2遺伝子発現増大効果
iNOS及びCOX-2遺伝子発現量を測定するために、RAW 264.7細胞株を6ウェルプレートに5×10cells/wellで分注し、24時間培養した。培養培地を除去し、陽性対照群及び濃度別に製造した試料含有培地に交換した後、24時間追加培養した。細胞を回収してRNA extract kit(Cat No.74106,Quigen,Germany)のプロトコールによって全RNAを抽出した。抽出された全RNAは、Infinite 200Pro(TECAN,Switzerland)を用いて260nm及び280nm波長で吸光度を測定して定量後に、濃度に合わせて希釈した。TOPreal One-step kit(Cat No.RT432M,enzynomics,Korea)を用いてiNOS及びCOX2の遺伝子発現量測定を行い、全ての反応はβ-actinで補正し、正常対照群を基準に2-ΔΔCT方法で正規化し、iNOSの相対発現量は図3に、COX2の相対発現量は図4にそれぞれ示した。
【0106】
図3で、陽性対照群(LPS,1μg/mL)のiNOS発現量は67.37倍に増加し、正常対照群と比較して統計学的に有意に増加した(p<0.05)。
【0107】
フラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)処理群(100、500μg/mL)のiNOS発現量は、正常対照群と比較してそれぞれ21.55、30.45倍と濃度によって有意に増加した(p<0.05及びp<0.01)。
【0108】
ニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(3F)処理群(500μg/mL)のiNOS発現量は、正常対照群と比較して21.74倍に増加したが(p<0.01)、500μg/mLの同一濃度で処理したフラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)処理群に比べて増加幅は約28.4%低い値を示した。
【0109】
鹿茸熱水抽出物(C2)処理群(500μg/mL)のiNOS発現量は、正常対照群と比較して1.93倍に増加したが、フラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)及びニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(3F)に比べては顕著に低い値を示した。
【0110】
一方、図4で、陽性対照群(LPS,1μg/mL)のCOX2発現量は、264.54倍に増加し、正常対照群と比較して統計学的に有意に増加した(p<0.05)。
【0111】
フラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)処理群(100,500μg/mL)のCOX2発現量は、正常対照群と比較してそれぞれ7.82、17.49倍と、濃度によって有意に増加した(p<0.01及びp<0.01)。
【0112】
ニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(3F)処理群(500μg/mL)のCOX2発現量は、正常対照群と比較して8.86倍に増加したが(p<0.01)、500μg/mLの同一濃度で処理したフラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)処理群に比べて増加幅は約49.3%低い値を示した。
【0113】
鹿茸熱水抽出物(C2)処理群(500μg/mL)のCOX2発現量は、正常対照群と比較して0.98倍であり、差がなかった。
【0114】
iNOSは、活性化された大食細胞においてL-アルギニンによってNOを生成する作用に関与する遺伝子で、COX2は、NO生成及び他のサイトカインによって増加する遺伝子であって、両遺伝子ともフラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)において発現量が最も顕著に増加し、その次は、ニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(3F)において増加したことが確認できた。
【0115】
実験例5:鹿茸酵素分解抽出物の免疫関連サイトカイン増大効果
実験例4と同じ方法でTOPreal One-step kitを用いて免疫関連サイトカインTNF-α、IFN-γ、IL-6及びIL-1β相対発現量を測定し、それぞれ、図5図6図7及び図8に示した。
【0116】
図5で、陽性対照群(LPS1μg/mL)のTNF-α発現量は、正常対照群(N)と比較して統計学的に有意に増加した(p<0.01)。
【0117】
フラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)処理群(100,500μg/mL)のTNF-α発現量は、正常対照群(N)と比較してそれぞれ3.17及び3.58倍と、濃度によって有意に増加した(p<0.01及びp<0.01)。
【0118】
ニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(3F)処理群(500,1000μg/mL)のTNF-α発現量は、正常対照群(N)と比較してそれぞれ3.2及び3.38倍と、濃度によって有意に増加した(p<0.01及びp<0.01)。
【0119】
ペプシンを用いた鹿茸酵素分解抽出物(4F)処理群(100、500、2000μg/mL)、プロタメックスを用いた鹿茸酵素分解抽出物(5F)処理群(100、500、2000μg/mL)及び鹿茸熱水抽出物(C2)処理群(100,500μg/mL)は、全ての処理濃度においてTNF-α発現量が正常対照群と比較して差がなかった。
【0120】
また、図6で、陽性対照群(LPS1μg/mL)のIFN-γ発現量は、正常対照群(N)と比較して統計学的に有意に減少した(p<0.05)。
【0121】
フラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)処理群(100,500μg/mL)のIFN-γ発現量は、正常対照群(N)と比較してそれぞれ0.44及び0.59倍と、統計的に有意に減少した(p<0.05及びp<0.05)。
【0122】
ニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(3F)処理群(500μg/mL)のIFN-γ発現量も、正常対照群(N)と比較して0.54倍と有意に減少した(p<0.05)。
【0123】
しかし、鹿茸熱水抽出物(C2)処理群(500μg/mL)は、IFN-γ発現量が正常対照群(N)と比較して差がなかった。
【0124】
また、図7で、陽性対照群(LPS1μg/mL)のIL-6発現量は、正常対照群(N)と比較して統計学的に有意に増加した(p<0.05)。
【0125】
フラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)処理群(100、500μg/mL)のIL-6発現量は、正常対照群(N)と比較してそれぞれ2.0及び2.97倍と濃度によって増加したし、500μg/mL処理濃度において統計的に有意に増加した(p<0.01)。
【0126】
ニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(3F)処理群(500,1000μg/mL)のIL-6発現量は、正常対照群(N)と比較してそれぞれ1.85及び1.83倍と濃度によって有意に増加した(p<0.05及びp<0.05)。
【0127】
ペプシンを用いた鹿茸酵素分解抽出物(4F)処理群(100、500、2000μg/mL)、プロタメックスを用いた鹿茸酵素分解抽出物(5F)処理群(100、500、2000μg/mL)及び鹿茸熱水抽出物(C2)処理群(100、500μg/mL)は、全ての処理濃度においてIL-6発現量が正常対照群(N)と比較して差がなかった。
【0128】
また、図8で、陽性対照群(LPS1μg/mL)のIL-1β発現量は、正常対照群(N)と比較して統計学的に有意に増加した(p<0.05)。
【0129】
フラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)処理群(100,500μg/mL)のIL-1β発現量は、正常対照群(N)と比較してそれぞれ3.18及び6.9倍と濃度によって増加したし、500μg/mL処理濃度において統計的に有意に増加した(p<0.01)。
【0130】
ニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(3F)処理群(500μg/mL)のIL-1β発現量は、正常対照群(N)と比較して2.82倍と有意に増加したが(p<0.05)、500μg/mLの同一濃度で処理したフラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)処理群に比べて増加幅は約59.1%低い値を示した。
【0131】
鹿茸熱水抽出物(C2)処理群(500μg/mL)は、全ての処理濃度においてIL-1β発現量が正常対照群(N)と比較して差がなかった。
【0132】
実験例6:鹿茸酵素分解抽出物の大食細胞増殖能
活性化されたRAW264.7細胞株を5×10cells/wellで96ウェルプレートにそれぞれ分注し、24時間37℃、5% COインキュベーターで培養した。陽性対照群及び濃度別に調製した鹿茸酵素分解抽出物を含む培地に交換し、24時間培養後にcck-8(Cat No.CK04-13,Dojindo,Japan)10μlを添加して37℃、COインキュベーターで1時間追加培養し、Infinite 200Pro(TECAN,Switzerland)を用いて450nm波長で吸光度を測定し、正常対照群の細胞増殖率対比の各濃度別細胞増殖率を求めて図9に示した。
【0133】
細胞増殖能は、試験物質投与前(0h)を基準に試験物質処理後の時間帯別に細胞増殖率を計算し、統計処理は、それぞれの時点別の正常対照群を基準に算出した。
【0134】
正常対照群は、24、48及び72時間においてそれぞれ2.35、6.09及び14.52倍に細胞が増殖し、陽性対照群(LPS,1μg/mL)は、24、48及び72時間においてそれぞれ2.8、11.3及び17.7倍に細胞増殖が増加し、特に、24時間と48時間の時点において正常対照群と比較して統計学的に有意な差を示した(p<0.05及びp<0.01)。
【0135】
フラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)処理群(100、500μg/mL)は、試験物質処理48時間においてそれぞれ10.6、11.0倍と、正常対照群の48時間の細胞増殖率と比較して増加したし、統計学的に有意な差を示した(p<0.01、p<0.01)。72時間ではそれぞれ21.68、20.71倍であり、正常対照群の72時間に比べて細胞増殖が増加した。
【0136】
ニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(3F)処理群(500μg/mL)は、48、72時間においてそれぞれ11.2及び22.4倍であり、正常対照群と比較して統計学的に有意に増加した(p<0.01)。
【0137】
鹿茸熱水抽出物(C2)処理群(500μg/mL)は、全ての測定時点で2.18、6.34及び15.90倍であり、正常対照群と差がなかった。
【0138】
実験例7:免疫抑制動物モデルにおいて鹿茸酵素分解抽出物投与による免疫力改善効果
免疫力低下動物モデルにおいてNK細胞活性、インターフェロンガンマ(IFN-γ)濃度及びTNF-α濃度を測定し、鹿茸酵素分解抽出物が免疫力改善に及ぼす影響を評価した。
【0139】
Balb/cマウスを6匹ずつ9グループ、すなわち、正常対照群(G1)、陰性対照群(G2)及び試験物質投与群(G3~G9)に分け、フラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)を50mg/kg、100mg/kg及び200mg/kg投与群(それぞれ、G3、G4及びG5)、ニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(3F)100mg/kg及び200mg/kg投与群(それぞれ、G6及びG7)、鹿茸熱水抽出物(C2)100mg/kg及び200mg/kg投与群(それぞれ、G8及びG9)に設定して試験物質を投与した。正常対照群を除く陰性対照群(G2)及び試験物質投与群(G3~G9)は、免疫抑制を誘導するために、シクロホスファミド(cyclophosphamide,CP)を70mg/kgの容量で試験物質投与前3日間、そして試験物質投与13日目に腹腔投与した。試験物質は14日間に1日1回経口投与し、正常対照群(G1)及び陰性対照群(G2)は、試験物質の代わりに賦形剤を経口投与した。全ての試験群は、一般症状を毎日観察し且つ週に2回体重を測定した。
【0140】
体重は、正常対照群(G1)に比べて陰性対照群(G2)において減少したが、試験物質投与群(G3~G9)の体重変化は陰性対照群(G2)と統計的に差がなかった。
【0141】
1.NK細胞活性増進効果
試験物質投与14日後に、剖検を実施して脾臓を摘出した後、脾臓細胞を分離してNK細胞活性を測定した。
【0142】
NK細胞活性は、商用化されたLDH assay kit(Cat.No.:04744926001,Roche Diagnostics GmbH)を用いて行った。効果器細胞(Effector cell)としては分離された脾臓細胞を使用し、標的細胞(target cell)は、マウスリンフォーマ(mouse lymphoma)細胞株であるYAC-1細胞を使用した。効果器細胞(1×10cells/well)と標的細胞(1×10cells/well)を50:1の割合で混ぜて4時間培養した。効果器細胞によって標的細胞が攻撃されて放出するLDHの量を測定し、図10に示した。
【0143】
NK細胞は、先天性免疫において重要な役割を担うものと知られており、微生物によって感染された細胞や癌細胞を直接殺害し、サイトカインを分泌することで、単核球及び樹状細胞を活性化させる役割を担う。
【0144】
図10によれば、NK細胞活性が正常対照群(G1)では16.5%だったが、陰性対照群(G2)では2.3%であり、正常対照群と比較して統計的に有意に減少した(p<0.01)。
【0145】
フラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)を50、100及び200mg/kgで投与したG3、G4及びG5群は、NK細胞活性がそれぞれ23.1、26.4及び23.7%の値であり、陰性対照群(G2)と比較して統計的に有意に増加した(p<0.01、p<0.01及びp<0.01)。また、同一濃度の鹿茸熱水抽出物(G8、G9)と比較しても統計的に有意に増加した(p<0.01及びp<0.01)。
【0146】
ニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(3F)を100及び200mg/kgで投与したG6及びG7は、NK細胞活性がそれぞれ19.3及び17.9%の値であり、陰性対照群(G1)と比較して統計的に有意に増加した(p<0.01及びp<0.01)。しかし、同一濃度のフラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)と比較してはNK細胞活性が低かったし、また、同一濃度の鹿茸熱水抽出物(G8及びG9)と比較しても統計的に有意な差を示さなかった。
【0147】
鹿茸熱水抽出物(C2)を100及び200mg/kgで投与したG8及びG9は、NK細胞活性がそれぞれ13.8及び11.6%の値であり、陰性対照群と比較して統計的に有意に増加したが、同一濃度のフラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)及びニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(3F)に比べては低い値を示した。
【0148】
2.血液内免疫サイトカイン分析
Th1細胞によって分泌される代表的なサイトカインはTNF-α及びIFN-γであり、大食細胞の活性を増加させて貪食作用を刺激するサイトカインとして知られている。前記剖検時に採取した血液は、常温で15~30分間放置後に遠心分離して血清を分離した後、TNF-α(Cat.No.:MTA00B,R&D systems)及びIFN-γ(Cat.No.:MIF00,R&D systems)ELISAキットを用いてメーカーのマニュアルにしたがってIFN-γ濃度を測定し、それぞれ図11及び図12に示した。
【0149】
図11で、正常対照群(G1)の血液内TNF-α濃度は9.7pg/mLで、陰性対照群(G2)の値は12.2pg/mLであり、免疫抑制が誘導された陰性対照群(G2)において正常対照群(G1)と比較して統計的に有意に増加した(p<0.01)。
【0150】
フラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)を50、100及び200mg/kgで投与したG3、G4及びG5は、TNF-α濃度がそれぞれ10.1、10.3及び10.0pg/mLの値であり、低濃度、中濃度及び高濃度の投与群において投与濃度に関係なく陰性対照群(G1)と比較して有意に減少した(p<0.05、p<0.05及びp<0.05)。
【0151】
ニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(3F)を100及び200mg/kgで投与したG6及びG7は、TNF-α濃度がそれぞれ10.6及び10.3pg/mLの値であり、中濃度では陰性対照群(G2)と有意な差がなく、高濃度でのみ陰性対照群(G2)に比べて有意に減少した(p<0.05)。
【0152】
したがって、フラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)は、50mg/kg低濃度投与群においてTNF-α濃度が陰性対照群(G2)に比べて有意に減少したのに対し、ニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(3F)は、200mg/kg高濃度投与群においてTNF-α濃度が陰性対照群(G2)に比べて有意に減少することが確認できた。
【0153】
また、鹿茸熱水抽出物(C2)を100及び200mg/kgで投与したG8及びG9は、陰性対照群(G1)と比較してTNF-α濃度に有意な差がなかった。
【0154】
図12で、正常対照群(G1)の血液内IFN-γ濃度は12.7pg/mLで、陰性対照群(G2)の値は10.2pg/mLであり、免疫抑制が誘導された陰性対照群(G2)において正常対照群(G1)と比較して統計的に有意に減少した(p<0.01)。
【0155】
フラボザイムを用いた鹿茸酵素分解抽出物(2F)を50、100及び200mg/kgで投与したG3、G4及びG5は、IFN-γ濃度がそれぞれ10.8、11.4及び11.7pg/mLの値であり、陰性対照群(G2)と比較して濃度によって増加し、特に、100及び200mg/kg投与したG4及びG5において統計的に有意に増加した(p<0.05及びp<0.01)。また、同一濃度の鹿茸熱水抽出物(G8及びG9)と比較しても統計的に有意に増加した(p<0.05及びp<0.01)。
【0156】
ニュートラーゼを用いた鹿茸酵素分解抽出物(3F)を100及び200mg/kgで投与したG6及びG7、そして鹿茸熱水抽出物(C2)を100及び200mg/kgで投与したG8及びG9は、陰性対照群(G2)と差がなかった。
【0157】
以下に、本発明の鹿茸酵素分解抽出物を含む組成物の製剤例を説明するが、これは本発明を限定するためのものではなく、単に具体的に説明するためのものである。
【0158】
製剤例1:散剤の製造
製造例2の鹿茸酵素分解抽出物粉末 20mg
乳糖 100mg
タルク 10mg
上記の成分を混合して気密布に充填して散剤を製造する。
【0159】
製剤例2:錠剤の製造
製造例2の鹿茸酵素分解抽出物粉末 10mg
とうもろこし澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
上記の成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法によって打錠して錠剤を製造する。
【0160】
製剤例3:カプセル剤の製造
製造例2の鹿茸酵素分解抽出物粉末 10mg
結晶性セルロ-ス 3mg
ラクトース 14.8mg
ステアリン酸マグネシウム 0.2mg
通常のカプセル剤の製造方法によって上記の成分を混合し、ゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造する。
【0161】
製剤例4:顆粒剤の製造
製造例2の鹿茸酵素分解抽出物粉末 1,000mg
ビタミン混合物 適量
ビタミンAアセテート 70μg
ビタミンE 1.0mg
ビタミンB1 0.13mg
ビタミンB2 0.15mg
ビタミンB6 0.5mg
ビタミンB12 0.2μg
ビタミンC 10mg
ビオチン 10μg
ニコチン酸アミド 1.7mg
葉酸 50μg
パントテン酸カルシウム 0.5mg
無機質混合物 適量
硫酸第1鉄 1.75mg
酸化亜鉛 0.82mg
炭酸マグネシウム 25.3mg
第1リン酸カリウム 15mg
第2リン酸カルシウム 55mg
クエン酸カリウム 90mg
炭酸カルシウム 100mg
塩化マグネシウム 24.8mg
上記のビタミン及びミネラル混合物の組成比は、健康機能食品に適合する成分を好ましい実施例として混合組成したが、その配合比を任意に変形実施しても構わなく、通常の健康機能食品製造方法によって上記の成分を混合した後、顆粒を製造し、通常の方法によって健康機能食品組成物の製造に使用することができる。
【0162】
製剤例5:飲料剤形の製造
製造例2の鹿茸酵素分解抽出物粉末 1,000mg
クエン酸 1,000mg
オリゴ糖 100g
梅エキス 2g
タウリン 1g
精製水を加えて全体900mL
通常の飲料製造方法によって上記の成分を混合した後、85℃で約1時間撹拌加熱し、その後、作られた溶液を濾過して2L滅菌容器に取得して密封滅菌後に冷蔵保管し、本発明の機能性飲料組成物の製造に使用する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】