(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(54)【発明の名称】ペプチドの組み合わせを含むスキンケア組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/64 20060101AFI20240105BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240105BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240105BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20240105BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240105BHJP
C07K 5/068 20060101ALI20240105BHJP
C07K 5/117 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
A61K8/64 ZNA
A61Q19/00
A61Q17/04
A61Q19/02
A61Q19/08
C07K5/068
C07K5/117
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540862
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 US2022070278
(87)【国際公開番号】W WO2022159968
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レオ ティモシー ラフリン ザ セカンド
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジョセフ フラグラー
(72)【発明者】
【氏名】リサ アン マリンズ
(72)【発明者】
【氏名】田村 牧生
【テーマコード(参考)】
4C083
4H045
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AB191
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4C083BB44
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4C083EE17
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA11
4H045BA12
4H045BA56
4H045EA15
4H045FA10
(57)【要約】
パルミトイルジペプチド-7、アセチルテトラペプチド-11の組み合わせ、他の任意選択の皮膚成分、及び皮膚科学的に許容される担体を含むスキンケア組成物。このペプチドの組み合わせは、細胞ATPレベルを相乗的に改善し、かつ/又はペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アルファ及び/若しくはメチルステロールモノオキシゲナーゼ1の発現を上方制御して、改善された皮膚の健康及び外観を提供するのを補助する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)パルミトイルジペプチド-7(pal-KT)とアセチルテトラペプチド-11(ac-PPYL)[配列番号1]との組み合わせと、
b)皮膚科学的に許容される担体と、
を含む、化粧品スキンケア組成物。
【請求項2】
前記pal-KTが、0.00005%~5%で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ac-PPYL[配列番号1]が、0.00005%~5%で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記pal-KT及びac-PPYL[配列番号1]が、10:1~1:10の比で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ビタミン、ミネラル、ペプチド、糖アミン、日焼け止め剤、オイルコントロール剤、フラボノイド化合物、抗酸化剤、プロテアーゼ阻害剤、チロシナーゼ阻害剤、抗炎症剤、保湿剤、角質除去剤、皮膚美白剤、抗ニキビ剤、抗しわ剤、フィトステロール、N-アシルアミノ酸化合物、抗菌剤、抗真菌剤、pH調整剤、増粘剤、防腐剤、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの追加成分を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記追加成分が、ビタミンB3化合物、ビタミンA化合物、ビタミンE化合物、糖類、又は植物抽出物を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
0.1%~5%のレオロジー変性剤を更に含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
組成物が、水対油の重量比が12:1~1:1である水中油型であり、前記レオロジー変性剤が、超吸収性ポリマー増粘剤を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
皮膚を処置する非治療的方法であって、
a)処置が望まれる皮膚の標的部分を特定することと、
b)処置期間の過程にわたって、前記皮膚の標的部分に請求項1~8のいずれか一項に記載のスキンケア組成物を塗布することと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記処置期間が、少なくとも2週間、好ましくは4週間である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、皮膚老化の目に見える徴候を改善する、請求項7又は8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広義には、細胞エネルギーレベルを改善し、細胞外マトリックスを再生するための、スキンケア組成物及び方法に関する。より具体的には、本発明は、細胞エネルギー産生及び細胞外マトリックス修復に関与する特定の遺伝子を相乗的に調節するペプチドの組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、環境における傷害に対する防御の第一線であり、それがなければ傷付きやすい下層組織及び器官が損なわれ、また皮膚は、人の身体的外観において重要な役割を果たす。皮膚上のしわ及び加齢斑などの皮膚老化の明白な徴候は、若々しさの消失の望ましくない兆しである。結果として、若さを意識する社会において、皮膚の老化の徴候を処置することは、急成長事業となっている。
【0003】
皮膚は、皮膚の健康を維持するために動的で複雑な関係で一緒に機能する種々の細胞から構成されることが知られている。しかしながら、皮膚細胞が老化するか又は損傷を受けると、若くて健康に見える皮膚を維持するのに必要なレベルで機能する能力を失う可能性がある。皮膚細胞は、様々な内因性及び外因性のストレス要因(例えば、紫外線、汚染、喫煙)によって損傷され得る。いくつかの例において、これらのストレス要因は、正常な細胞プロセスを妨害する活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)の産生を引き起こし得る。これに応答して、細胞は、ROSと戦うための防御を進化させてきたが、細胞の防御は、ストレス要因誘導性ROSのスパイクに圧倒され、細胞ホメオスタシスにおける急性の変化だけでなく慢性の変化にもつながる場合がある。ROSが経時的に蓄積するにつれて、それらは細胞レベルで酸化ストレスを引き起こし、これは最終的に老化の目に見える徴候(例えば、小じわ、しわ、色素沈着過剰スポット、菲薄化皮膚)として現れ得る。
【0004】
スキンケア組成物におけるペプチドの使用は、一般的に知られている。商業的に入手可能なペプチドの多様性及びこれらのペプチドが提供し得るスキンケアの広範囲な利益により、これらはスキンケア組成物のための魅力的な成分である。例えば、米国特許第9,597,274号は、皮膚の健康及び/又は外観を改善するために、成長分化因子11などの成長因子に由来するペプチドを使用することを記載している。別の例において、米国特許第10,668,000号は、ECMタンパク質の合成において活性であり、一般的に皮膚の外観を改善する様々な異なるペプチドを含有することができるスキンケア組成物を記載している。しかしながら、ペプチド、特にスキンケア利益を提供することが知られているものは、高価であり得る。結果として、ペプチドは、典型的には、比較的少量でスキンケア組成物に添加され、したがって、低濃度で良好な有効性を提供するペプチドを選択することが重要であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第9,597,274号
【特許文献2】米国特許第10,668,000号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、ヒトの皮膚、特に老化の目に見える徴候を示す皮膚の健康及び外観を改善することができるペプチド含有スキンケア組成物を提供することが望ましい。特に、これらの生化学的経路に関与する特定の遺伝子を標的化することによって、皮膚細胞における細胞エネルギー産生並びに/又はECM修復及び再生プロセスを改善する、ペプチド含有スキンケア組成物を提供することが望ましい。低濃度で所望の有効性を提供するペプチドの組み合わせを提供することが更に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示されるものは、パルミトイルジペプチド-7(pal-KT)とアセチルテトラペプチド-11(ac-PPYL)[配列番号1]との組み合わせと、皮膚科学的に許容される担体と、を含むスキンケア組成物である。また、本明細書の新規組成物を、処置が望まれる皮膚の標的部分に塗布することを含む、皮膚状態を処置する方法も開示される。ペプチドの組み合わせは、細胞ATPレベルを改善し、かつ/又はECM修復及び再生プロセスに関与するある特定の遺伝子を、場合によっては相乗的に、上方制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
皮膚の健康及び外観を改善するためのペプチドの使用は、一般に知られている。しかしながら、本発明において、驚くべきことに、パルミトイルジペプチド-7(「pal-KT」)とアセチルテトラペプチド-11(ac-PPYL)[配列番号1]との組み合わせが、細胞エネルギー産生並びにECMの修復及び再生プロセスを増強し得ることを見出した。特に、pal-KT及びac-PPYL[配列番号1]の選択された組み合わせは、細胞バイオエナジェティックス並びにECM修復及び再生に関与することが知られている重要な遺伝子の発現を相乗的に調節することができる。細胞エネルギー産生及び/又はECM修復及び再生を改善することは、皮膚、特に老化の目に見える徴候を示す皮膚の健康及び/又は外観を改善するために重要である。
【0009】
本明細書中での「実施形態」などへの言及は、その実施形態と関連付けて記載される、特定の材料、特徴、構造、及び/又は特性が、少なくとも1つの実施形態、任意選択的に多数の実施形態に含まれていることを意味するが、全ての実施形態に、記載された材料、特徴、構造、及び/又は特性が組み込まれることを意味するものではない。更に、材料、特徴、構造、及び/又は特性は、異なる実施形態にわたって、任意の好適な方法で組み合わされてもよく、材料、特徴、構造、及び/又は特性は、説明されるものから除外されてもよいし、代用されてもよい。したがって、本明細書に記載されている実施形態及び態様は、別段明記しない限り又は不適合性が明示されていない限り、組み合わせて明示的に例示されていなくても、他の実施態様及び/又は態様の要素又は構成成分を含むか又はこれらと組み合わされることが可能である。
【0010】
全ての実施形態において、別途記載のない限り、成分の百分率は全て化粧品組成物の重量を基準としている。特に記載のない限り、全ての比率は重量比である。有効桁数は、表示された量に対する限定を表すものでも、測定値の精度に対する限定を表すものでもない。特に別途記載のない限り、全ての数量は、単語「約」によって修飾されるものと理解される。別途記載のない限り、全ての測定は、およそ25℃の周囲条件でなされたと理解され、「周囲条件」は、約1気圧及び約50%の相対湿度の条件を意味する。全ての数値範囲は包括的であり、明示的に開示されていない狭い範囲を形成するために組み合わせることが可能である。例えば、区切られた上下の範囲制限は、更なる範囲を作る上で互換性がある。
【0011】
本発明の組成物は、本明細書に記載の必須構成成分及び任意選択の成分を含む、それらから本質的になる、又はそれらからなることができる。本明細書で使用する場合、「~から本質的になる」とは、組成物又は構成成分が、特許請求される組成物又は方法の基本的かつ新規な特性を実質的に変えない追加成分のみを含み得ることを意味する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他の意味を示さない限り、複数形も含むことが意図される。
【0012】
配列表
配列番号1のアミノ酸又はヌクレオチド配列、並びに配列番号2及び3のヌクレオチド配列(これらは、一次配列であり、その保存的に改変された改変体を含む)、を記載する配列表は、「15965_seq_list_ST25」と題されたASCIIテキストファイルとして本出願と同時に提出されている。このASCIIテキストファイルは、2021年1月19日に作成したもので、サイズは138KBである。MPEP §605.08及び米国特許規則§1.52(e)に従い、このASCIIテキストファイルの主題は本明細書に参照により組み込まれる。
【0013】
定義
「約」とは、言及された値のプラスマイナス20パーセント(±20%)又はそれよりも低い値(例えば、15%、10%未満、若しくは更には5%未満)に等しい範囲を指すことで、特定の値を修飾する。
【0014】
組成物に関連して使用される「塗布する」又は「塗布」は、本発明の組成物を表皮などのヒトの皮膚表面上に塗布又は拡げることを意味する。
【0015】
「化粧品組成物」とは、化粧剤を含有し、非治療的(すなわち、医学的)使用が意図された組成物を意味する。化粧品組成物の例としては、カラー化粧品(例えば、ファンデーション、リップスティック、コンシーラー、及びマスカラ)、スキンケア組成物(例えば、保湿剤及び日焼け止め剤)、パーソナルケア組成物(例えば、洗い流す及び洗い流さないボディソープ及び石鹸)、ヘアケア組成物(例えば、シャンプー及びコンディショナー)が挙げられる。
【0016】
本明細書において、「誘導体」とは、所定の化合物のアミド、エーテル、エステル、アミノ、カルボキシル、アセチル、及び/又はアルコールの誘導体を意味する。
【0017】
「有効量」は、処置期間の過程にわたってケラチン性組織に対して正の効果を有意に誘導するのに十分な化合物及び組成物の量を意味する。正の効果は、本明細書に開示される効果を独立して又は組み合わせて含む、健康、外観、及び/又は感触の効果であり得る。特定の例において、スクロースエステル及び脂肪族アルコールの有効量は、酸化ストレスの結果として低減された細胞ATPレベルを増加させるのに十分な量である。
【0018】
「スキンケア」は、皮膚状態(例えば、皮膚の健康、外観、又は質感/感触)を調節及び/又は改善することを意味する。皮膚状態を改善するいくつかの非限定的な例としては、滑らかでより均一な外観及び/又は感触を提供することによって、皮膚の外観及び/又は感触を改善すること、皮膚の1つ以上の層の厚さを増加させること、皮膚の弾性又は弾力性を改善すること、皮膚のハリを改善すること、並びに皮膚の脂っぽい、てかてかした、及び/若しくはくすんだ外観を低減し、皮膚の水分量の状態若しくは保湿を改善し、小じわ及び/若しくはしわの外観を改善し、角質除去若しくは落屑を改善し、皮膚を膨化させ、皮膚バリア特性を改善し、皮膚の色合いを改善し、発赤若しくは皮膚のしみの外観を低減させ、かつ/又は皮膚の明るさ、つや、若しくは透明感を改善すること、が挙げられる。
【0019】
「スキンケア活性物質」は、皮膚に塗布すると、皮膚又は皮膚の中に通常見られる細胞の一種に急性効果及び/又は慢性効果をもたらす、化合物又は化合物の組み合わせを意味する。スキンケア活性物質は、皮膚又はそれに関連する細胞を調節及び/又は改善する(例えば、皮膚の弾性、皮膚水分量、肌のバリア機能、及び/又は細胞代謝を改善する)ことができる。
【0020】
「スキンケア組成物」は、スキンケア活性物質を含み、皮膚の状態を調節及び/又は改善する組成物を意味する。
【0021】
「相乗作用」及びその変形は、パルミトイルジペプチド-7(pal-KT)及びアセチルテトラペプチド-11[配列番号1]の組み合わせによって提供される細胞エネルギー産生及び/又はECM修復効果が、これらの成分単独の予測される相加効果よりも大きいことを意味する。例えば、PPARA[配列番号2]及び/又はMSMO1[配列番号3]の上方制御が、pal-KTとアセチルテトラペプチド-11[配列番号2]との組み合わせによって、これらの成分の個々の計算された相加効果よりも大きく増加する場合、相乗作用が実証される。
【0022】
本明細書で使用される「処置期間」は、材料又は組成物が標的皮膚表面に塗布される時間の長さ及び/又は頻度を意味する。
【0023】
「上方制御」及びその変形は、遺伝子発現の増加を意味する。逆に、「下方制御」は、遺伝子発現の減少を意味する。特定の遺伝子に関する上方制御及び下方制御は、以下により詳細に記載される遺伝子調節アッセイに従って決定することができる。
【0024】
スキンケア組成物
本明細書における新規なスキンケア組成物は、細胞のエネルギー産生及び/又はECMの健康を改善するためにヒト皮膚に局所塗布することを目的とする。本発明のスキンケア組成物は、安全かつ有効な量のパルミトイルジペプチド-7(pal-KT)及びアセチルテトラペプチド-11(ac-PPYL)[配列番号1]を含有する。有効量のこれら2つの成分の組み合わせは、細胞エネルギー産生に関与すると考えられるPPARA[配列番号2]及びMSMO1[配列番号3]を上方制御することが示されている。Lopez-Leon,S et al.”Sports genetics:the PPARA gene and athletes’ high ability in endurance sports.A systematic review and meta-analysis.”Biology of sport vol.33,1(2016):3-6を参照。有効量のpal-KT及びac-PPYL[配列番号1]はまた、皮膚バリアの修復及び再生に関与するコレステロール合成に関与すると考えられているMSMO1(配列番号3)を相乗的に上方制御することができる。He M.et al,”The role of sterol-C4-methyl oxidase in epidermal biology.”Biochim Biophys Acta.2014Mar;1841(3):331-5を参照。
【0025】
PPARA及びMSMO1は、皮膚における真皮老化(すなわち、真皮の経時的老化及び/又は光老化)の結果として下方制御されることが示されている。しかしながら、いくつかの例では、pal-KT及びac-PPYL[配列番号1]の組み合わせが、これらの遺伝子を相乗的に上方制御しており、1.2倍以上(例えば、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、又は1.9以上)の相乗作用を示し得る。本明細書の組成物は、10:1~1:10(例えば、5:1~1:10、5:1~1:5、1:1~1:5、又は1:1~1:10)の、pal-KT対ac-PPYL[配列番号1]の重量比を含有し得る。
【0026】
本明細書のスキンケア組成物は、化粧品組成物、医薬組成物、又は薬用化粧品組成物であってもよく、溶液、懸濁液、ローション、クリーム、ゲル、トナー、スティック、スプレー、エアロゾル、軟膏、クレンジングリキッド洗浄液及び固形バー、ペースト、フォーム、ムース、シェービングクリーム、拭き取り用品、ストリップ、パッチ、電動式パッチ、ヒドロゲル、フィルム形成製品、フェイシャル及びスキンマスク(不溶性シートを有するもの、及び有さないもの);ファンデーション、アイライナー及びアイシャドウなどのメークアップなどを含むがこれらに限定されない様々な製品形態で提供することができる。いくつかの場合には、組成物の形態は、選択された皮膚科学的に許容される特定の担体に従い得る。例えば、組成物(及び担体)は、エマルション(例えば、油中水型、水中油型、若しくは水中油中水型)又は水性分散液の形態で提供されてもよい。
【0027】
本明細書の組成物は、そのような組成物を作製する従来の方法を使用して調製され得る。このような方法は、典型的には、加熱、冷却、真空の適用などを用いて又は用いずに、成分を1つ以上の工程で比較的均一な状態になるまで混合することを含む。組成物は、好ましくは安定性(物理的安定性、化学的安定性、光安定性)及び/又は活性物質の送達を最適化するように調製される。この最適化には、適切なpH(例えば7未満)、活性剤と複合体を形成して、安定性又は送達に有害な影響を与え得る材料の排除(例えば混入鉄の排除)、複合体形成を防止する手法(例えば、適切な分散剤又は二重区画包装)の使用、適切な光安定性の手法(例えば、日焼け止め剤/日焼け防止剤の配合、不透明包装の使用)の使用等を挙げることができる。
【0028】
ビタミンB3化合物
本発明の組成物は、安全かつ有効量のビタミンB3化合物を任意的に含み得る。本明細書における組成物は、組成物の重量又は体積に基づいて、0.01重量%~10重量%(例えば、0.1%~10%、0.5%~5%、又は1%~%)のビタミンB3化合物を含有し得る。
【0029】
本明細書で使用するとき、「ビタミンB3化合物」とは、以下の式:
【0030】
【化1】
[式中、RがCONH
2(すなわち、ナイアシンアミド)、COOH(すなわち、ニコチン酸)、又はCH
2OH(すなわち、ニコチニルアルコール)である]を有する化合物、それらの誘導体、及び上記のいずれかの塩を意味する。
【0031】
ビタミンB3化合物の例示的な誘導体としては、ニコチン酸の非血管拡張性エステル(例えば、トコフェリルニコチネート、ミリスチルニコチネート)、ニコチンアミドリボシド、ニコチニルアミノ酸、カルボン酸のニコチニルアルコールエステル、ニコチン酸N-オキシド、及びナイアシンアミドN-オキシドを含む、ニコチン酸エステルが挙げられる。
【0032】
ジペプチド
本明細書の組成物は、安全かつ有効な量のパルミトイル化ジペプチド、pal-KT(INCI:パルミトイルジペプチド-7)を含む。いくつかの場合、pal-KTは、組成物中に0.0001%~3%(例えば、0.001%~2%、0.01%~1%、又は0.1%~0.5%)存在し得る。Pal-KTは、Sederma(France)からPalestrina(登録商標)として入手可能である。
【0033】
テトラペプチド
本明細書の組成物は、安全かつ有効な量のアセチル化テトラペプチド、ac-PPYL[配列番号2](INCI:アセチルテトラペプチド-11)を含む。いくつかの場合、pal-PPYLは、組成物中に0.0001%~3%(例えば、0.001%~2%、0.01%~1%、又は0.1%~0.5%)存在し得る。Ac-PPYLは、BASF Care Creations(New Jersey)からSYNIORAGEとして入手可能である。
【0034】
皮膚科学的に許容される担体
本明細書における組成物は、皮膚科学的に許容される担体(「担体」と呼ばれる場合もある)を含んでよい。「皮膚科学的に許容される担体」なる語句は、担体がケラチン性組織への局所塗布に好適であり、良好な審美特性を有し、組成物中の活性物質と相溶性を有し、安全性又は毒性について不当な懸念をいっさい生じさせないことを意味する。一実施形態において、担体は、組成物の約50重量%~約99重量%、約60重量%~約98重量%、約70重量%~約98重量%、又は代替的に約80重量%~約95重量%の濃度で存在する。
【0035】
担体は、多種多様な形態であってよい。いくつかの場合には、構成成分(例えば、抽出物、日焼け止め活性物質、追加の構成成分)の溶解性又は分散性によって担体の形態及び特徴が決定され得る。非限定的な例としては、単純な溶液(例えば、水性又は無水)、分散液、エマルション、及び固体形態(例えば、ゲル、スティック、流動性固体、又は非晶質材料)が挙げられる。いくつかの場合には、エマルションの形態の皮膚科学的に許容される担体は、連続水相(例えば、水中油型若しくは水中油中水型エマルション)又は連続油相(例えば、油中水型若しくは油中水中油型エマルション)を有し得る。エマルションの油相は、シリコーン油、非シリコーン油(炭化水素油、エステル、エーテルなど)、及びそれらの混合物を含んでもよい。水相は、水及び水溶性成分(例えば、水溶性保湿剤、コンディショニング剤、抗菌剤、湿潤剤、及び/又は他のスキンケア活性物質)を含んでもよい。いくつかの場合には、水相は、水溶性保湿剤、コンディショニング剤、抗菌剤、湿潤剤、及び/又は他の水溶性スキンケア活性物質が挙げられるが、これらに限定されない水以外の構成成分を含んでもよい。いくつかの場合には、組成物の非水構成成分は、グリセリン及び/又は他のポリオールなどの湿潤剤を含む。
【0036】
いくつかの場合には、本明細書における組成物は、軽くてべたつかない感覚的感触を提供する水中油型(oil-in-water、「O/W」)エマルションの形態である。本明細書における好適なO/Wエマルションは、組成物の50重量%超の連続水相を含み得、残部は分散油相であり得る。水相は、任意の水溶性及び/又は水混和性成分とともに水相の重量に基づいて、1%~99%の水を含み得る。これらの場合では、分散油相は、油性組成物の望ましくない感触効果をいくらか回避するのを補助するために、典型的には、組成物の30重量%未満(例えば、1%~20%、2%~15%、3%~12%、4%~10%、又は更には5%~8%)で存在する。油相は、1つ以上の揮発性及び/又は非揮発性油(例えば、植物油、シリコーン油、及び/又は炭化水素油)を含み得る。本組成物に使用するのに好適であり得る油のいくつかの非限定的な油の例は、米国特許第9,446,265号及び米国特許出願公開第2015/0196464号に開示されている。
【0037】
担体は、1つ以上の皮膚科学的に許容される希釈剤を含有してもよい。本発明で使用する場合、「希釈剤」とは、本発明のスキンケア有効成分を、分散する、溶解する、又は組み込むことができる物質を指す。親水性希釈剤の非限定的な例としては、水、低級一価アルコール(例えば、C1~C4)、並びに低分子量グリコール及びポリオールなどの有機親水性希釈剤が挙げられ、これらには、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、分子量200~600g/モル)、ポリプロピレングリコール(例えば、分子量425~2025g/モル)、グリセロール、ブチレングリコール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトールエステル、1,2,6-ヘキサントリオール、エタノール、イソプロパノール、ソルビトールエステル、ブタンジオール、エーテルプロパノール、エトキシル化エーテル、プロポキシル化エーテル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
コンディショニング剤
本明細書の組成物は、0.1重量%~50重量%のコンディショニング剤(例えば、0.5%~30%、1%~20%、又は更には2%~15%)を含んでもよい。コンディショニング剤を添加することは、望ましい感触特性(例えば、塗布時の絹のような滑らかな感触)を有する組成物を提供するのを補助し得る。コンディショニング剤のいくつかの非限定的な例としては、炭化水素油及びワックス、シリコーン、脂肪酸誘導体、コレステロール、コレステロール誘導体、ジグリセリド、トリグリセリド、植物油、植物油誘導体、アセトグリセリドエステル、アルキルエステル、アルケニルエステル、ラノリン、ワックスエステル、蜜蝋誘導体、ステロール及びリン脂質、これらの塩、異性体、及び誘導体、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。コンディショニング剤の特に好適な例としては、ジメチコンコポリオール、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、混合C1~30アルキルポリシロキサン、フェニルジメチコン、ジメチコノール、ジメチコン、ジメチコノール、シリコーンクロスポリマー、及びこれらの組み合わせなどの揮発性又は非揮発性シリコーン流体が挙げられる。ジメチコンは特に好適であり得るが、これは、一部の消費者は、特定のジメチコン流体によって提供される感触特性を良好な保湿と関連付けるためである。コンディショニング剤として使用するのに好適であり得るシリコーン流体の他の例は、米国特許第5,011,681号に記載されている。
【0039】
レオロジー変性剤
本明細書の組成物は、好適なレオロジー及び皮膚感触特性を有する組成物を提供するために、0.1%~5%のレオロジー変性剤(例えば、増粘剤)を含んでもよい。増粘剤のいくつかの非限定的な例としては、架橋ポリアクリレートポリマー、ポリアクリルアミドポリマー、多糖類、ガム、及びこれらの混合物が挙げられる。特に好適な例では、組成物は、ポリアクリル酸ナトリウム、デンプングラフト化ポリアクリル酸ナトリウム、又はこれらの組み合わせなどの超吸収性ポリマー増粘剤を含んでもよい。超吸収性ポリマー増粘剤のいくつかの非限定的な例は、例えば、米国特許第9,795,552号に記載されている。
【0040】
一部の消費者は、コンディショニング剤としてシリコーン流体を使用した組成物が、望ましくない脂っぽい又は重い感触であることを見出す。したがって、シリコーン流体を含まないか又は実質的に含まない組成物を提供することが望ましい場合がある。例えば、組成物中の水の量、水:油の比(例えば、12:1~1:1)、及び/又は増粘剤に対する水の比、又は増粘剤に対する油の比を調節することによって、軽い空気のような感触を有する組成物を提供するように、超吸収性ポリマー増粘剤を調整することが望ましい場合もある。
【0041】
乳化剤
皮膚科学的に許容される担体がエマルションの形態である場合、安定な組成物(例えば、相分離しない)を提供する乳化剤を含むことが望ましい場合がある。含まれる場合、乳化剤は、0.1%~10%(例えば、1%~5%、又は2%~4%)の量で存在し得る。乳化剤は、非イオン性であってもよく、アニオン性であってもよく、又はカチオン性であってもよい。本明細書での使用に好適であり得る乳化剤のいくつかの非限定的な例は、米国特許第3,755,560号、同第4,421,769号、及びMcCutcheon’s Detergents and Emulsifiers,North American Edition,pages 317-324(1986)に開示されている。
【0042】
他の任意選択の成分
本組成物は、任意選択的に、化粧品組成物(例えば、着色剤、スキンケア活性物質、抗炎症剤、日焼け止め剤、乳化剤、緩衝液、レオロジー変性剤、これらの組み合わせなど)に一般的に使用される1つ以上の追加成分を含んでもよく、ただし追加成分が不所望に本組成物によって提供される皮膚健康上又は外観上の効果を変えるものではない。組成物中に組み入れられる場合、追加成分は、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応などを示すことなく、ヒトの皮膚組織に接触させて用いるのに好適でなければならない。追加活性物質のいくつかの非限定的な例としては、ビタミン、ミネラル、ペプチド及びペプチド誘導体、糖アミン、日焼け止め剤、オイルコントロール剤、微粒子、フラボノイド化合物、育毛制御剤、抗酸化剤及び/又は抗酸化剤前駆体、防腐剤、プロテアーゼ阻害剤、チロシナーゼ阻害剤、抗炎症剤、保湿剤、角質除去剤、皮膚美白剤、サンレスタンニング剤、潤滑剤、抗ニキビ活性物質、抗セルライト活性物質、キレート剤、抗しわ活性物質、抗萎縮活性物質、フィトステロール及び/又は植物ホルモン、N-アシルアミノ酸化合物、抗菌剤、並びに抗真菌剤が挙げられる。本明細書での使用に好適であり得る追加成分及び/又はスキンケア活性物質の他の非限定的な例は、米国特許出願公開第2002/0022040号、同第2003/0049212号、同第2004/0175347号、同第2006/0275237号、同第2007/0196344号、同第2008/0181956号、同第2008/0206373号、同第2010/00092408号、同第2008/0206373号、同第2010/0239510号、同第2010/0189669号、同第2010/0272667号、同第2011/0262025号、同第2011/0097286号、同第2012/0197016号、同第2012/0128683号、同第2012/0148515号、同第2012/0156146号、及び同第2013/0022557号、並びに米国特許第5,939,082号、同第5,872,112号、同第6,492,326号、同第6,696,049号、同第6,524,598号、同第5,972,359号、及び同第6,174,533号に開示されている。
【0043】
本明細書における組成物中に任意選択の成分を含む場合、組成物中の他の成分、特に、ナイアシンアミド、サリチレート、及びペプチドのようなpH感受性成分と複合体を形成しないか、そうでなくても、望ましくない相互作用をしない成分を選択することが望ましい場合がある。存在する場合、任意選択の成分は、組成物の0.0001重量%~50重量%、0.001重量%~20重量%、又は更には、0.01重量%~10重量%(例えば、50重量%、40重量%、30重量%、20重量%、10重量%、5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、1重量%、0.5重量%、又は0.1重量%)の量で含まれ得る。
【0044】
使用方法
本方法は、処置が望まれる皮膚の標的部分を特定することと、有効量のビタミンB3化合物、pal-KT、ac-PPYL[配列番号1]、及び任意選択的に1つ以上の追加のスキンケア活性物質を含む組成物を皮膚の標的部分に塗布することとを含む。皮膚の標的部分は、額、口周囲、顎、眼窩周囲、鼻、及び/若しくは頬)などの顔の皮膚表面上、又は身体の別の部分(例えば、手、腕、脚部、背部、胸)にあってもよい。処置を必要とするヒト又は皮膚の標的部分は、老化皮膚の明白な徴候(例えば、小じわ、しわ、色素沈着過剰スポット)を示すものであり得る。場合によっては、皮膚の標的部分は、皮膚老化の徴候を示さない場合があるが、ユーザは、それでも、皮膚のその部分が老化の目に見える徴候を示すことが知られている部分(例えば、日光にさらされている皮膚)である場合、皮膚のその部分を処置することを望む場合がある。このようにして、本発明の方法及び組成物は、皮膚老化の目に見える徴候を遅らせるのを補助するために予防的に使用することができる。
【0045】
組成物は、処置期間中、皮膚の標的部分に、かつ所望される場合には周囲の皮膚に、少なくとも1日1回、1日2回、又はそれ以上の頻度で毎日塗布することができる。1日2回塗布する場合、1回目と2回目の塗布の間は、少なくとも1~12時間の間隔を空ける。組成物は典型的に、朝及び/又は夜就寝前に塗布される。本明細書における処置期間は、理想的には、pal-KT及びac-PPYL[配列番号1]が皮膚の外観を改善するのに十分な時間である。処置期間は、少なくとも1週間(例えば、約2週間、4週間、8週間、又は更には12週間)にわたって持続し得る。いくつかの場合には、処置期間は、数ヶ月(即ち、3~12ヶ月)に及ぶであろう。いくつかの場合には、少なくとも2週間、4週間、8週間、又は12週間の処置期間中に、週の大半の日数(例えば、少なくとも週に4日、5日又は6日)にわたって、少なくとも1日に1回、又は更には1日に2回組成物を塗布し得る。
【0046】
組成物を塗布する工程は、局所的塗布により行うことができる。組成物の塗布に関して、「局所的な」、「局所的」、又は「局所的に」という用語は、処置が所望されていない皮膚表面への送達を最小限にしつつ、組成物が標的領域(例えば、しわ又はその一部)に送達されることを意味する。組成物は、ある皮膚領域に塗布し、軽く揉み込むことができる。組成物又は皮膚科学的に許容される担体の形態は、局所的塗布が容易となるように選択されるべきである。本明細書における特定の実施形態は、組成物をある領域に局所的に塗布することを想到しているが、本明細書における組成物は、1つ以上の皮膚表面に更に全身的に又は広範に塗布され得ることが理解されよう。特定の実施形態において、本明細書における組成物は、多段階式美容法の一部として使用してもよく、この多段階式美容法では、本組成物を1つ以上の他の組成物の前及び/又は後に塗布してよい。
【0047】
遺伝子調節アッセイ
本方法は、PPARA[配列番号2]又はMSMO1[配列番号3]などの標的遺伝子の発現を調節する化合物又は材料の能力を測定する方法を提供する。
【0048】
細胞:tertケラチノサイト(tKC)
BJ線維芽細胞
プレーティング:細胞を処理の前日にプレーティングする。
tertケラチノサイトの場合:12ウェルプレート(例えば、コラーゲンIコーティングプレート、Corningカタログ番号356500)の場合、2ml体積の培地/ウェル中100,000細胞/ウェル、又は24ウェルプレートの場合、1ml体積の培地/ウェル中50,000細胞/ウェル。
BJ線維芽細胞の場合:12ウェルプレート(例えば、Corningカタログ番号3512)の場合、2ml体積の培地/ウェル中88,000細胞/ウェル、又は24ウェルプレートの場合、1ml体積の培地/ウェル中44,000細胞/ウェル。
培地:tertケラチノサイトの場合:EpiLife(例えば、Thermo Fisher Scientificカタログ番号MEPI500CA+HKGS(例えば、Thermo Fisher Scientificカタログ番号S-001-5)。
BJ線維芽細胞の場合:EMEM(例えば、ATCCカタログ番号30-2003)+10%FBS(例えば、HyCloneカタログ番号SH30071.02)。
【0049】
処理を培地中で行い、用量プレートに等分する。細胞を処理するときに、細胞の全てのプレートをインキュベータから同時に取り出す。一度に1枚のプレートを用いて、培地を除去し、以下のように処理を加える。
--培地を細胞のプレートからデカントする。
--逆さにしたプレートをペーパータオルで簡単に吸い取る。
--蓋をプレート上に戻し、プレートをバイオセーフティキャビネット内に移動させる。
--マルチチャネルピペットを用いて、一度に1カラムずつ、処理物を用量プレートから細胞のプレートに移す。
【0050】
全てのプレートを処理した後、それらを37℃、5%CO2及び90%湿度のインキュベータに移す。処理期間の終了の約15~30分前に、各処理の代表的なウェルからの細胞を顕微鏡で観察し、次いでプレートをインキュベータに戻す。処理時間が完了したら、全てのプレートをインキュベータから取り出す。培地を各プレートからデカントし、プレートをペーパータオル上にブロットする。350ulのQiagen Buffer RLTを各ウェルに添加して細胞を溶解させ、溶解物を2mlのエッペンドルフチューブに移し、ゲノミクスの準備ができるまで-20℃で保存する。
【0051】
Wafergenプロセス:全RNA精製及びqPCR
細胞溶解物を4℃で解凍し、次いでBiomek FxP及びRNAdvance Tissue Isolationキット(Beckman Coulter、p/n A32646)を使用して単離する。得られたRNAを、Nandrop 8000(Nanodrop、ND-8000)を使用して定量する。500 ngの全RNA及びApplied Biosystems High Capacity cDNAを逆転写キット(Applied Biosystems p/n 4368814)と共に用いてcDNAを作製する。cDNA、アッセイ、及びPrimeTime GeneExpression MasterMix (IDT、p/n 1055771)の希釈物を、Wafergen Nanodispenserを使用してWafergen MyDesign SmartChip(TakaraBio、p/n 640036)上にプレーティングする。次いで、チップをSmartChipサイクラーに装填し、以下のPCR条件を使用してqPCRを行う。
保持段階:50℃で2分間(ウォームアップ)、次いで95℃で10分間。
PCR段階(40サイクル):95℃で15秒間、次いで60℃で1分間。
分析のために、.txtファイルフォーマットでデータをエクスポートする。
【0052】
過酸化水素ストレスATPアッセイ
皮膚細胞(例えば、ケラチノサイト及び線維芽細胞)は、エネルギーを使用して酵素及び還元等価物(例えば、GSH)を生成することによって活性酸素種と戦い、これが細胞ATPレベルの枯渇を引き起こす。より低いエネルギーレベルは、正常に適応及び機能する細胞の能力を低下させやすくする。したがって、細胞ATPレベルを増加させることは、細胞がストレスを撃退し、正常な恒常性のために十分なエネルギーを維持するのを補助することができる。
【0053】
過酸化水素は、ROSの周知の代替物である。皮膚細胞が高レベル(例えば、200~500μM)の過酸化水素で処理されると、細胞ATPレベルの約10%の減少が、1時間で非ストレス細胞において観察される。細胞ATPレベルは、発光シグナルが存在するATPの量に比例するPromega製のCELL TITER GLOブランドのアッセイキット又は同等物を用いて、定量化することができる。
【0054】
方法の概要:
貯蔵ストックから増殖させたtKCを使用してアッセイを行う。細胞を培養フラスコ中で5日間にわたって増殖させ、トリプシン処理し、播種し、次いで96ウェルプレート中で増殖させる。96ウェルプレート中で1日増殖させた後、カラム1細胞は処理もストレス負荷もせず、細胞のカラム2~12過酸化水素(培地中300μM)で処理し、カラム2は試験材料で処理せず、カラム3~12は試験材料の連続希釈で1時間(37℃、5%CO2のインキュベータ)処理する。
【0055】
細胞の調製:
1.細胞を、好適な96ウェルプレート(例えば、CORNINGブランドの白色透明底プレート、3903番又は同等物)に、100μL総容積/ウェル中、10,000細胞/ウェルで播種する。
2.37℃、5%CO2、95%湿度で24時間、処理日まで細胞をインキュベートする。例えば、細胞を月曜日に播種し、火曜日にアッセイすることができる。
【0056】
処理:
1.細胞プレートから培地を吸引する。
2.100uLの培地をカラム1のウェルA1~H1に添加する。
3.300uMの過酸化水素を含有する100ulLの培地をカラム2~12の全てのウェルに添加する。
4.ビヒクル対照をカラム2(A2~H2)に添加し、処理の連続希釈物1uLをカラム3~11に添加する。
5.1ulの40.9mMナイアシンアミドをカラム12の全てのウェルに添加して、ナイアシンアミドの最終レベルを409uM(陽性対照)にする。
6.37℃、5%CO2のインキュベータに1時間置く。
7.全てのウェルから培地を吸引する。
8.100uLのCELL TITER GLOブランドの試薬を製造業者の指示に従って各ウェルに添加する。
9.室温で5~10分間インキュベートする。
10.適切なプレートリーダーで発光を読み取る。
【0057】
発光の検出:
BioTek製のSYNERGY NEOブランドのプレートリーダー又は同等物を使用する。
【実施例】
【0058】
実施例1:配合物。
以下の表1は、本スキンケア組成物の例を提供する。この例示的な組成物は、A相構成成分を好適なミキサー(例えば、Tekmar RW20DZM又は同等物)でブレンドし、70~80℃の温度に加熱し、攪拌しながらその温度を維持することによって製造される。別個に、B相構成成分を好適なミキサーでブレンドし、70~75℃に加熱しながら、混合している間温度を維持する。相Bを相Aに添加し、同時に十分に混合して水中油型(O/W)エマルションを形成する。次いで、エマルションを、好適なミル(例えば、Tekmar T-25又は同等物)を使用して5分間粉砕する。エマルションが60℃であるとき、混合を継続しながら相Cを添加する。40℃において、相D及びEの成分をエマルションに添加する。次いで、エマルションを5分間粉砕して、均一な組成物を得る。
【0059】
【0060】
【0061】
実施例2:pal-KT及びAc-PPYL[配列番号1]は、PPARA[配列番号2]及びMSMO1[配列番号3]を相乗的に上方制御する。
本実施例は、pal-KT及びac-PPYL[配列番号1]の組み合わせが、PPARA[配列番号2]を相乗的に上方制御する能力を示す。試験組成物及び対照組成物を、上記の遺伝子調節アッセイに記載されているように調製し、試験した。本実施例で使用されるpal-KTは、Sederma(France)のPALESTRINAブランドのpal-KTであり、ac-PPYLは、BASF Care Creations(New Jersey)のSYNIORAGEブランドのテトラペプチドである。試験の結果を以下の表2にまとめる。P+Aは、pal-KT(P)及びac-PPYL(A)[配列番号1]の組み合わせを指す。
【0062】
相乗係数は、以下のように計算する。
【0063】
【0064】
p値≦0.05を有する1.00を超える相乗係数は、統計的に有意な相乗効果を示す。好ましい相乗係数は1.3以上である。
【0065】
【0066】
表2に見られるように、pal-KT及びac-PPYL[配列番号1]の全ての組み合わせが、望ましい相乗効果を示すわけではない。1ppmのpal-KTを、pal-KT対テトラペプチドの比1:13.5~100:1.35で含有する試験試料の組み合わせは、MSMO1[配列番号3]の上方制御に関して1.3以上の相乗係数を示さなかった。7.5ppmのpal-KTを含有する試験サンプル組み合わせのみが、約1:2の比でPPARA[配列番号2]を上方制御する所望の相乗作用を示したが、他の組み合わせはPPARA[配列番号2]を相乗的に上方制御する能力が低かった。1ppmを含有する試験サンプルの1つのみが、PPARA[配列番号2]を相乗的に上方制御することができ、試験サンプルはいずれも1.3以上の相乗因子を示さなかった。したがって、このデータは、ペプチドの濃度及びペプチドの比の両方が、PPARA[配列番号2]及びMSMO1[配列番号3]を上方制御するために重要であり得ることを示唆する。
【0067】
実施例3:pal-KT及びac-PPYL[配列番号3]は、細胞バイオエナジェティックスを改善する。
本実施例は、pal-KT及びac-PPYL[配列番号3]がROS誘導性のATP枯渇に対抗する能力を示す。周知の活性酸素種である過酸化水素に曝露された試験細胞は、一般に、ATPレベルの低下を示す。ROSへの曝露によって枯渇したATPレベルを回復することができる試験薬剤が望ましい。ATPレベルを相乗的に回復させることができ、1.3以上の相乗因子を示す試験薬剤が好ましい。上記の過酸化水素ストレスATPアッセイに従ってペプチドを試験した。試験の結果を以下の表3にまとめる。p値≦0.05を有する1.00を超える相乗係数は、統計的に有意な相乗効果を示す。好ましい相乗係数は1.3以上である。
【0068】
【0069】
表3に見られるように、pal-KT及びac-PPYL[配列番号1]の全ての組み合わせが、細胞におけるROS枯渇ATPレベルを相乗的に回復させることができるわけではない。実際、pal-KT及びac-PPYLを約10:1~1:10の比で含有する組み合わせのみが、ATP産生を相乗的に増加させることができた。この実施例において、pal-KT対ac-PPYL[配列番号1]の比が約1:1である試験サンプルは、最も高い相乗係数を示すようである。
【0070】
実施例4:ジペプチド特異性。
本実施例は、PPARA[配列番号2]及び/又はMSMO1[配列番号3]の所望の相乗的上方制御を提供するために特定のジペプチドを選択することの重要性を実証する。この試験では、pal-KTからのアミノ酸を再配列して、新しいジペプチドpal-TKを形成した。試験組成物及び対照組成物を、上記の遺伝子調節アッセイに記載されているように調製し、試験した。試験結果を以下の表4にまとめる。倍率変化係数を以下のように計算する。
【0071】
【数2】
1より大きい倍率変化係数が望ましく、1.3以上の倍率変化係数が好ましい。
【0072】
驚くべきことに、pal-KTは、pal-TKよりも有意に良好にPPARA[配列番号2]及びMSMO1[配列番号3]を上方制御することができ、PPARA[配列番号2]及びMSMO1[配列番号3]の両方の上方制御について1.3を超える倍数変化係数を示した。
【0073】
【0074】
驚くべきことに、表4に見られるように、pal-KTと同じアミノ酸を有するが、異なる順序で配置されたジペプチドは、所望の相乗効果を提供しない。これらのデータは、特定のペプチド配列が所望の相乗作用を提供するために重要であることを示唆する。
【0075】
例示的な組み合わせ
A.
a)パルミトイルジペプチド-7(pal-KT)とアセチルテトラペプチド-11(ac-PPYL)[配列番号1]との組み合わせであって、pal-KTとac-PPYL[配列番号1]との組み合わせが、PPARA(配列番号2)及びMSMO1(配列番号3)のうちの少なくとも1つを上方制御する、組み合わせと、
b)皮膚科学的に許容される担体と、
を含む、スキンケア組成物。
B.pal-KTとac-PPYL[配列番号1]との組み合わせが、PPARA(配列番号2)及びMSMO1(配列番号3)のうちの少なくとも1つを相乗的に上方制御する、段落Aに記載の組成物。
C.pal-KTとac-PPYL[配列番号1]との組み合わせが、少なくとも1.3の相乗係数を示す、段落A又はBに記載の組成物。
D.pal-KTが、0.00005%~5%で存在する、段落A又はBに記載の組成物。
E.ac-PPYL[配列番号1]が、0.00005%~5%で存在する、段落A~Dのいずれかに記載の組成物。
F.pal-KT及びac-PPYL[配列番号1]が、10:1~1:10の比で存在する、段落A~Eのいずれかに記載の組成物。
G.ビタミン、ミネラル、ペプチド、糖アミン、日焼け止め剤、オイルコントロール剤、フラボノイド化合物、抗酸化剤、プロテアーゼ阻害剤、チロシナーゼ阻害剤、抗炎症剤、保湿剤、角質除去剤、皮膚美白剤、抗ニキビ剤、抗しわ剤、フィトステロール、N-アシルアミノ酸化合物、抗菌剤、抗真菌剤、pH調整剤、増粘剤、防腐剤、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの追加成分を更に含む、段落A~Fのいずれかに記載の組成物。
H.追加成分が、ビタミンB3化合物、ビタミンA化合物、ビタミンE化合物、糖類、又は植物抽出物を含む、段落Gに記載の組成物。
I.皮膚を美容的に処置する方法であって、
a)処置が望まれる皮膚の標的部分を特定することと、
b)パルミトイルジペプチド-7(pal-KT)とアセチルテトラペプチド-11(ac-PPYL)[配列番号1]との組み合わせと、皮膚科学的に許容される担体とを含む、段落A~Hのいずれかに記載のスキンケア組成物を、処置期間の過程にわたって皮膚の標的部分に塗布することと、
を含む、方法。
J.pal-KTとac-PPYL[配列番号1]との組み合わせが、PPARA[配列番号2]及びMSMO1[配列番号3]のうちの少なくとも1つを上方制御し、好ましくはpal-KTとac-PPYL[配列番号1]との組み合わせが、PPARA[配列番号2]及びMSMO1[配列番号3]のうちの少なくとも1つを相乗的に上方制御する、段落Iに記載の方法。
K.過酸化水素ストレスATPアッセイに従って、pal-KTとac-PPYL[配列番号1]との組み合わせが、細胞ATPレベルを改善し、好ましくは相乗的に細胞ATPレベルを改善する、段落Iに記載の方法。
L.処置期間が、少なくとも2週間である、段落Iに記載の方法。
M.皮膚老化の目に見える徴候を改善する、段落に記載の方法。
N.皮膚細胞においてPPARA[配列番号2]及びMSMO1[配列番号3]の少なくとも1つを相乗的に上方制御する方法であって、皮膚細胞を有効量のpal-KT及びac-PPYL[配列番号1]と組み合わせて接触させることを含み、有効量のpal-KT及びac-PPYL[配列番号1]が、PPARA[配列番号2]及びMSMO1[配列番号3]の少なくとも1つを上方制御する、方法。
【0076】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0077】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求されるいかなる発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないかなる発明も教示、示唆又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれる文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が優先されるものとする。
【0078】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】