(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(54)【発明の名称】併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20240105BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20240105BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240105BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20240105BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240105BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
A61K31/496
A61K31/495
A61P43/00 121
A61P9/04
A61P9/10
A61P9/00
A61P9/10 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540910
(86)(22)【出願日】2022-01-05
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 US2022011336
(87)【国際公開番号】W WO2022150403
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519453777
【氏名又は名称】インブリア ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チェンバリン, ポール
(72)【発明者】
【氏名】パテル, ジャイクリシュナ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA12
4C086ZA36
4C086ZA37
4C086ZA40
4C086ZA42
4C086ZA45
4C086ZA81
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、CV-8972およびCV-8814を含む併用療法を提供する。上記併用療法は、心臓効率を改善し、従って、被験体における心血管状態を処置するために有用である。本発明はまた、CV-8972およびCV-8814の両方を使用して状態を処置する方法、ならびにCV-8972およびCV-8814の両方を含む薬学的組成物を提供する。本発明は、別個の化合物としてのCV-8972およびCV-8814の投与を含む併用療法の使用を通じてこの問題を解決する。上記併用療法は、CV-8972の分解から生じる代謝生成物が、異なる機能を発揮し、それらの機能の脱共役が、より大きな精度で心血管状態の治療(remediation)を可能にするという認識に基づく。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(X):
【化9】
によって表される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、および
式(IX):
【化10】
によって表される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、
を含む併用療法。
【請求項2】
前記併用療法は、規定の質量比において前記式(X)の化合物またはその塩および前記式(IX)の化合物またはその塩を含む、請求項1に記載の併用療法。
【請求項3】
前記式(X)の化合物またはその塩 対 前記式(IX)の化合物またはその塩の質量比は、約10:1~約1:100である、請求項2に記載の併用療法。
【請求項4】
前記質量比は、約1:1~約1:10である、請求項3に記載の併用療法。
【請求項5】
前記併用療法は、
約50mg~約1000mgの前記式(X)の化合物またはその塩の1日投与量、
約50mg~約1000mgの前記式(IX)の化合物またはその塩の1日投与量、
を含む、請求項1に記載の併用療法。
【請求項6】
前記式(X)の化合物またはその塩の1日投与量は、約100mg~約500mgである、請求項5に記載の併用療法。
【請求項7】
前記式(IX)の化合物またはその塩の1日投与量は、約100mg~約500mgである、請求項5に記載の併用療法。
【請求項8】
前記併用療法は、別個の製剤中に前記式(X)の化合物またはその塩および前記式(IX)の化合物またはその塩を含む、請求項1に記載の併用療法。
【請求項9】
前記併用療法は、単一の製剤中に前記式(X)の化合物またはその塩および前記式(IX)の化合物またはその塩を含む、請求項1に記載の併用療法。
【請求項10】
前記併用療法は、急性冠症候群、急性心不全、進行型心不全、動脈瘤、狭心症、アントラサイクリン誘導性心毒性、アテローム性動脈硬化症、心臓同種移植片血管障害、心臓脂肪症、心臓移植片血管障害、心筋症、脳血管疾患、慢性冠症候群、慢性心不全、うっ血性心不全、造影剤腎症、冠動脈疾患(CAD)、冠動脈性心疾患、糖尿病性心筋症、拡張型心筋症(DCM、特発性を含む)、心臓発作、心疾患、駆出率が軽度に低下した心不全(HFmrEF)、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、駆出率が低下した心不全(HFrEF)、心不全、冬眠心筋、高血圧(高血圧症)、肥大型心筋症(HCM、非閉塞性または閉塞性を含む)、間欠性跛行、非閉塞性冠動脈を伴う虚血(INOCA)、虚血再灌流傷害、虚血性心筋症、虚血性心疾患、微小血管狭心症、抗がん薬によって引き起こされる心筋機能障害、非閉塞性冠動脈を伴う心筋梗塞(MINOCA)、心筋炎(非家族性および家族性/遺伝性)、非虚血性心筋症、心膜疾患、周産期心筋症、末梢動脈疾患、末梢血管疾患、肺動脈高血圧症、肺高血圧症、難治性狭心症、拘束型心筋症、リウマチ性心疾患、右心不全、右室不全、安定狭心症、脳卒中、気絶心筋、頻脈誘発性心筋症、たこつぼ型心筋症、一過性脳虚血発作、不安定狭心症、または心臓弁膜症、からなる群より選択される疾患、障害、または状態の処置に適している、請求項1に記載の併用療法。
【請求項11】
被験体において疾患、障害、状態を処置する方法であって、前記方法は、疾患、障害、状態を有する被験体に:
式(X):
【化11】
によって表される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、および
式(IX):
【化12】
によって表される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、
を提供する工程を包含する、方法。
【請求項12】
前記式(X)の化合物またはその塩および前記式(IX)の化合物またはその塩は、規定の質量比において提供される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記式(X)の化合物またはその塩 対 前記式(IX)の化合物またはその塩の質量比は、約10:1~約1:100である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記質量比は、約1:1~約1:10である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記式(X)の化合物またはその塩は、約50mg~約1000mgの1日投与量において提供され、
前記式(IX)の化合物またはその塩は、約50mg~約1000mgの1日投与量において提供される、
請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記式(X)の化合物またはその塩は、約100mg~約500mgの1日投与量において提供される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記式(IX)の化合物またはその塩は、約100mg~約500mgの1日投与量において提供される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記式(X)の化合物またはその塩および前記式(IX)の化合物またはその塩は、別個の製剤中に提供される、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記式(X)の化合物またはその塩および前記式(IX)の化合物またはその塩は、単一の製剤中に提供される、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記疾患、障害、または状態は、急性冠症候群、急性心不全、進行型心不全、動脈瘤、狭心症、アントラサイクリン誘導性心毒性、アテローム性動脈硬化症、心臓同種移植片血管障害、心臓脂肪症、心臓移植片血管障害、心筋症、脳血管疾患、慢性冠症候群、慢性心不全、うっ血性心不全、造影剤腎症、冠動脈疾患(CAD)、冠動脈性心疾患、糖尿病性心筋症、拡張型心筋症(DCM、特発性を含む)、心臓発作、心疾患、駆出率が軽度に低下した心不全(HFmrEF)、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、駆出率が低下した心不全(HFrEF)、心不全、冬眠心筋、高血圧(高血圧症)、肥大型心筋症(HCM、非閉塞性または閉塞性を含む)、間欠性跛行、非閉塞性冠動脈を伴う虚血(INOCA)、虚血再灌流傷害、虚血性心筋症、虚血性心疾患、微小血管狭心症、抗がん薬によって引き起こされる心筋機能障害、非閉塞性冠動脈を伴う心筋梗塞(MINOCA)、心筋炎(非家族性および家族性/遺伝性)、非虚血性心筋症、心膜疾患、周産期心筋症、末梢動脈疾患、末梢血管疾患、肺動脈高血圧症、肺高血圧症、難治性狭心症、拘束型心筋症、リウマチ性心疾患、右心不全、右室不全、安定狭心症、脳卒中、気絶心筋、頻脈誘発性心筋症、たこつぼ型心筋症、一過性脳虚血発作、不安定狭心症、または心臓弁膜症からなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
式(X):
【化13】
によって表される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、および
式(IX):
【化14】
によって表される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、
を含む薬学的製剤。
【請求項22】
前記組成物は、前記式(X)の化合物またはその塩および前記式(IX)の化合物またはその塩を、規定の質量比において含む、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
前記式(X)の化合物またはその塩 対 前記式(IX)の化合物またはその塩の質量比は、約10:1~約1:100である、請求項22に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
前記質量比は、約1:1~約1:10である、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
前記組成物は、
約10mg~約500mgの前記式(X)の化合物またはその塩、および
約10mg~約500mgの前記式(IX)の化合物またはその塩、
を含む、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
前記組成物は、約25mg~約200mgの前記式(X)の化合物またはその塩を含む、請求項25に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
前記組成物は、約25mg~約200mgの前記式(IX)の化合物またはその塩を含む、請求項25に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記組成物は、経口投与のために製剤化される、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記組成物は、改変型放出製剤を構成する、請求項28に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
前記薬学的組成物は、急性冠症候群、急性心不全、進行型心不全、動脈瘤、狭心症、アントラサイクリン誘導性心毒性、アテローム性動脈硬化症、心臓同種移植片血管障害、心臓脂肪症、心臓移植片血管障害、心筋症、脳血管疾患、慢性冠症候群、慢性心不全、うっ血性心不全、造影剤腎症、冠動脈疾患(CAD)、冠動脈性心疾患、糖尿病性心筋症、拡張型心筋症(DCM、特発性を含む)、心臓発作、心疾患、駆出率が軽度に低下した心不全(HFmrEF)、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、駆出率が低下した心不全(HFrEF)、心不全、冬眠心筋、高血圧(高血圧症)、肥大型心筋症(HCM、非閉塞性または閉塞性を含む)、間欠性跛行、非閉塞性冠動脈を伴う虚血(INOCA)、虚血再灌流傷害、虚血性心筋症、虚血性心疾患、微小血管狭心症、抗がん薬によって引き起こされる心筋機能障害、非閉塞性冠動脈を伴う心筋梗塞(MINOCA)、心筋炎(非家族性および家族性/遺伝性)、非虚血性心筋症、心膜疾患、周産期心筋症、末梢動脈疾患、末梢血管疾患、肺動脈高血圧症、肺高血圧症、難治性狭心症、拘束型心筋症、リウマチ性心疾患、右心不全、右室不全、安定狭心症、脳卒中、気絶心筋、頻脈誘発性心筋症、たこつぼ型心筋症、一過性脳虚血発作、不安定狭心症、または心臓弁膜症からなる群より選択される疾患、障害、または状態の処置の処置に適している、請求項21に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、併用療法、状態を処置する方法、および薬学的組成物(これらは全て、CV-8972およびCV-8814の両方を含む)に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
心血管疾患は、全世界で主要な死亡原因であり、2019年に全世界で、概算で1790万人の死亡を占める(WHO)。心疾患の多くの形態において、減少した心臓効率は、ミトコンドリアのエネルギー代謝の変化から生じる。ミトコンドリアは、グルコースおよび脂肪酸に由来する代謝産物を酸化して、高エネルギー分子を生成する細胞内コンパートメントである。心臓における脂肪酸酸化の増大は、グルコース酸化を減少させ、その逆もまた同様である。グルコース酸化は、より酸素効率的なエネルギー源であるが、心疾患のある特定のタイプ(例えば、心不全、虚血性心疾患、および糖尿病性心筋症)では、心臓ミトコンドリアにおいて優位を占める脂肪酸酸化の過剰な依拠および/またはグルコース酸化からの解糖の脱共役が存在する。結果として、エネルギー生成およびATPの生成の効率は低減され、結論としては、心臓のポンプ輸送能力が低減される。
【0003】
化合物、2-[4-[(2,3,4-トリメトキシフェニル)メチル]ピペラジン-1-イル]エチル ピリジン-3-カルボキシレート(本明細書においてCV-8972といわれる)は、種々の心血管状態を有する患者において心臓効率を改善するための治療候補として近年特定された。CV-8972は、心臓ミトコンドリアによるエネルギー生成を促進するために別個の相乗効果を発揮する多数の代謝生成物へと身体において分解されるプロドラッグである。CV-8972の代謝生成物としては、ナイアシン、2-[4-[(2,3,4-トリメトキシフェニル)メチル]ピペラジン-1-イル]エタノール(本明細書においてCV-8814といわれる)、およびトリメタジジンが挙げられる。後者の2つの生成物は、順次、CV-8972異化から生成される。CV-8972は、最初に加水分解されて、CV-8814およびナイアシンを生じ、CV-8814のエチレングリコール部分がその後除去されて、トリメタジジンを生じる。CV-8814およびトリメタジジンはともに、脂肪酸の酸化を阻害し、従って、心臓は、代わりにグルコースの酸化からエネルギーを得ることを余儀なくさせる。ナイアシンは、身体においてニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)へと変換され、これは、ミトコンドリアにおいて電子の移動を促進して、細胞が分子酸素からエネルギーを得ることを可能にする。結論として、心臓にナイアシンを提供すると、心臓がその酸素供給からエネルギーを生成する能力を最大化する。従って、CV-8972の代謝は、グルコース酸化を刺激する分子およびNAD+前駆体として働く分子を生成するために分岐され、CV-8972代謝生成物の2つのクラスが、心臓効率を刺激するために補完的な様式で作用する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
本発明は、CV-8972代謝生成物の2つのクラスの送達を最適化された比において可能にする、CV-8972およびCV-8814の治療的組み合わせを提供する。本発明は、患者に投与されたCV-8972の各分子が、CV-8814およびナイアシンを等モル量において生じ、最適な治療介入がしばしばCV-8814:ナイアシン比が1より大きいことを要求することを認識する。第1に、CV-8814は、その薬理学的特性に起因して、身体によって比較的十分に耐容性を示す。第2に、インビボでのトリメタジジンへのCV-8814の変換は段階的であるので、CV-8814の用量後のトリメタジジンの全身ピークレベルは、純粋なトリメタジジンの匹敵する用量後のピークより低くかつ遅い。しかし、CV-8814と比較して、ナイアシンは、モル当量ベースでは、十分に耐容性を示すわけではない。高用量のナイアシンの投与は、潮紅および他の副作用を生じ、それは、CV-8972が投与され得る投与量を制限するナイアシン媒介性効果である。
【0005】
本発明は、別個の化合物としてのCV-8972およびCV-8814の投与を含む併用療法の使用を通じてこの問題を解決する。上記併用療法は、CV-8972の分解から生じる代謝生成物が、異なる機能を発揮し、それらの機能の脱共役が、より大きな精度で心血管状態の治療(remediation)を可能にするという認識に基づく。CV-8972の代謝は、ナイアシンおよびグルコース酸化を促進する他の分子、すなわち、CV-8814およびトリメタジジンの両方を生じるのに対して、CV-8814の代謝は、トリメタジジンのみを生じる。CV-8972およびCV-8814を別個の治療剤として提供することによって、NAD+前駆体であるナイアシンの投与およびグルコース酸化を促進する生成物の投与は、独立して調節され得る。結論として、上記併用療法は、これらの薬物の活性代謝生成物の各々が最適な治療レベルにおいて送達されることを可能にする。本発明の治療および方法は、広範囲の心血管状態を処置するために有用である。
【0006】
1つの局面において、本発明は、式(X):
【化1】
によって表される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、および
式(IX):
【化2】
によって表される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、
を含む併用療法を提供する。
【0007】
上記併用療法は、式(X)および(IX)の化合物を規定の質量比において含み得る。上記式(X)の化合物 対 上記式(IX)の化合物の質量比は、約10:1、約5:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:5、約1:10、約1:20、約1:50、または約1:100であり得る。上記式(X)の化合物 対 上記式(IX)の化合物の質量比は、約10:1~約5:1、約10:1~約2:1、約10:1~約1:1、約10:1~約1:2、約10:1~約1:5、約10:1~約1:10、約10:1~約1:20、約10:1~約1:50、約10:1~約1:100、約5:1~約2:1、約5:1~約1:1、約5:1~約1:2、約5:1~約1:5、約5:1~約1:10、約5:1~約1:20、約5:1~約1:50、約5:1~約1:100、約2:1~約1:1、約2:1~約1:2、約2:1~約1:5、約2:1~約1:10、約2:1~約1:20、約2:1~約1:50、約2:1~約1:100、約1:1~約1:2、約1:1~約1:5、約1:1~約1:10、約1:1~約1:20、約1:1~約1:50、約1:1~約1:100、約1:2~約1:5、約1:2~約1:10、約1:2~約1:20、約1:2~約1:50、約1:2~約1:100、約1:5~約1:10、約1:5~約1:20、約1:5~約1:50、約1:5~約1:100、約1:10~約1:20、約1:10~約1:50、約1:10~約1:100、約1:20~約1:50、約1:20~約1:100、または約1:50~約1:100であり得る。
【0008】
上記併用療法は、式(X)および(IX)の化合物のうちの一方または両方を、規定の1日投与量において含み得る。式(X)および(IX)の化合物の1日投与量は、各々独立して、約10mg、約20mg、約50mg、約100mg、約200mg、約500mg、約1000mg、約2000mg、または約5000mgであり得る。式(X)および(IX)の化合物の1日投与量は、各々独立して、約10mg~約20mg、約10mg~約50mg、約10mg~約100mg、約10mg~約200mg、約10mg~約500mg、約10mg~約1000mg、約10mg~約2000mg、約10mg~約5000mg、約20mg~約50mg、約20mg~約100mg、約20mg~約200mg、約20mg~約500mg、約20mg~約1000mg、約20mg~約2000mg、約20mg~約5000mg、約50mg~約100mg、約50mg~約200mg、約50mg~約500mg、約50mg~約1000mg、約50mg~約2000mg、約50mg~約5000mg、約100mg~約200mg、約100mg~約500mg、約100mg~約1000mg、約100mg~約2000mg、約100mg~約5000mg、約200mg~約500mg、約200mg~約1000mg、約200mg~約2000mg、約200mg~約5000mg、約500mg~約1000mg、約500mg~約2000mg、約500mg~約5000mg、約1000mg~約2000mg、約1000mg~約5000mg、または約2000mg~約5000mgであり得る。
【0009】
式(X)および(IX)の化合物は、別個の製剤中に含まれ得る。式(X)および(IX)の化合物は、単一の製剤中に含まれ得る。
【0010】
上記併用療法は、増大した心臓効率が治療利益を提供する任意の疾患、障害、または状態を処置するために有効であり得る。上記疾患、障害、または状態は、心血管状態であり得る。上記疾患、障害、または状態は、以下であり得る:
急性冠症候群、急性心不全、進行型心不全、動脈瘤、狭心症、アントラサイクリン誘導性心毒性、アテローム性動脈硬化症、心臓同種移植片血管障害(cardiac allograft vasculopathy)、心臓脂肪症(cardiac steatosis)、心臓移植片血管障害(cardiac transplant vasculopathy)、心筋症、脳血管疾患、慢性冠症候群、慢性心不全、うっ血性心不全、造影剤腎症(contrast nephropathy)、冠動脈疾患(CAD)、冠動脈性心疾患、糖尿病性心筋症、拡張型心筋症(DCM、特発性を含む)、心臓発作、心疾患、駆出率が軽度に低下した心不全(HFmrEF)、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、駆出率が低下した心不全(HFrEF)、心不全、冬眠心筋、高血圧(高血圧症)、肥大型心筋症(HCM、非閉塞性または閉塞性を含む)、間欠性跛行、非閉塞性冠動脈を伴う虚血(INOCA)、虚血再灌流傷害、虚血性心筋症、虚血性心疾患、微小血管狭心症、抗がん薬によって引き起こされる心筋機能障害、非閉塞性冠動脈を伴う心筋梗塞(MINOCA)、心筋炎(非家族性および家族性/遺伝性)、非虚血性心筋症、心膜疾患、周産期心筋症、末梢動脈疾患、末梢血管疾患、肺動脈高血圧症、肺高血圧症、難治性狭心症、拘束型心筋症、リウマチ性心疾患、右心不全、右室不全、安定狭心症、脳卒中、気絶心筋、頻脈誘発性心筋症(tachycardiomyopathy)、たこつぼ型心筋症(Takotsubo cardiomyopathy)、一過性脳虚血発作、不安定狭心症、または心臓弁膜症。
【0011】
別の局面において、本発明は、被験体において疾患、障害、または状態を処置する方法であって、式(X):
【化3】
によって表される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、および
式(IX):
【化4】
によって表される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を、上記疾患、障害、または状態を有する被験体に提供することによる方法を提供する。
【0012】
式(X)および(IX)の化合物は、規定の質量比(例えば、上記のもののうちのいずれか)において提供され得る。
【0013】
式(X)および(IX)の化合物の各々は、独立して、規定の1日投与量(例えば、上記のもののうちのいずれか)において提供され得る。
【0014】
式(X)および(IX)の化合物は、別個の製剤中に提供され得る。式(X)および(IX)の化合物は、単一の製剤中に提供され得る。
【0015】
上記疾患、障害、または状態は、増大した心臓効率が治療利益を提供する任意の疾患、障害、または状態(例えば、上記のもののうちのいずれか)であり得る。
【0016】
別の局面において、本発明は、式(X):
【化5】
によって表される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、および
式(IX):
【化6】
によって表される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、
を含む薬学的組成物を提供する。
【0017】
上記薬学的組成物は、式(X)および(IX)の化合物を規定の質量比(例えば、上記のもののうちのいずれか)において含み得る。
【0018】
上記薬学的組成物は、式(X)および(IX)の化合物のうちの一方または両方を規定の1日投与量(例えば、上記のもののうちのいずれか)において含み得る。
【0019】
上記薬学的組成物は、特定の送達経路または送達様式のために製剤化され得る。上記薬学的組成物は、口内に、注射によって、皮膚に、経腸的に、動脈内に、静脈内に、鼻に、経口的に、非経口的に、肺に、直腸に、皮下に、局所的に、経皮的に、または移植用医療デバイス(例えば、ステントもしくは薬物溶離ステントまたはバルーン等価物)とともにもしくはその上で投与するために製剤化され得る。
【0020】
上記薬学的組成物は、改変型放出製剤であり得る。
【0021】
上記薬学的組成物は、特定の疾患、障害、または状態(例えば、上記のもののうちのいずれか)を処置するために適切であり得る。
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、CV-8972での処置に応じて、ラットの心臓組織への
18F-フルオロデオキシグルコース(
18F-FDG)および
18F-14(R,S)-(18)F-フルオロ-6-チア-ヘプタデカン酸(
18F-FTHA)の取り込みをモニターするために使用される陽電子放出断層撮影(PET)画像化試験デザインの模式図である。
【0023】
【
図2】
図2は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の種々の時点での心臓におけるFDGの平均標準化取り込み値(SUV)を示すグラフである。
【0024】
【
図3】
図3は、生理食塩水またはCV-8972をラットに投与した後の種々の時点での骨格筋におけるFDGの平均SUVを示すグラフである。
【0025】
【
図4】
図4は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の種々の時点での血液におけるFDGの平均SUVを示すグラフである。
【0026】
【
図5】
図5は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の種々の時点での心臓におけるFTHAの平均SUVを示すグラフである。
【0027】
【
図6】
図6は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の種々の時点での骨格筋におけるFTHAの平均SUVを示すグラフである。
【0028】
【
図7】
図7は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の種々の時点での血液におけるFTHAの平均SUVを示すグラフである。
【0029】
【
図8】
図8は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後のFDGおよびFTHAのPET/CT画像を示す。
【0030】
【
図9】
図9は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の動的獲得の最後の30分間での、心臓、骨格筋、および血液におけるFDGの平均SUVを示すグラフである。
【0031】
【
図10】
図10は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の動的獲得の最後の30分間での、心臓、骨格筋、および血液におけるFTHAの平均SUVを示すグラフである。
【0032】
【
図11】
図11は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の心筋におけるFDG取り込みのグラフである。
【0033】
【
図12】
図12は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の心筋におけるFDGの活性のフロー(flow)のグラフである。
【0034】
【
図13】
図13は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の骨格筋におけるFDG取り込みのグラフである。
【0035】
【
図14】
図14は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の骨格筋におけるFDGの活性のフローのグラフである。
【0036】
【
図15】
図15は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の心筋におけるFTHA取り込みのグラフである。
【0037】
【
図16】
図16は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の心筋におけるFTHA取り込みの薬物動態パラメーターV
1のグラフである。
【0038】
【
図17】
図17は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の心筋におけるFTHA取り込みの薬物動態パラメーターV
2のグラフである。
【0039】
【
図18】
図18は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の心筋におけるFTHAの活性のフローのグラフである。
【0040】
【
図19】
図19は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の骨格筋におけるFTHA取り込みのグラフである。
【0041】
【
図20】
図20は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の骨格筋におけるFTHA取り込みの薬物動態パラメーターV
1のグラフである。
【0042】
【
図21】
図21は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の骨格筋におけるFTHA取り込みの薬物動態パラメーターV
2のグラフである。
【0043】
【
図22】
図22は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の骨格筋におけるFTHAの活性のフローのグラフである。
【0044】
【
図23】
図23は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の心臓、骨格筋、および血液におけるFDGからのγ放射能のグラフである。
【0045】
【
図24】
図24は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかをラットに投与した後の心臓、骨格筋、および血液におけるFTHAからのγ放射能のグラフである。
【0046】
【
図25】
図25は、種々の化合物が心臓を虚血傷害から保護する能力を試験するために使用されるLangendorff虚血-再灌流プロトコールの模式図である。
【0047】
【
図26】
図26は、生理食塩水または20μM CV-8814のいずれかで処置した、外植されたマウス心臓における虚血再灌流傷害の間の冠動脈流(coronary flow)のグラフである。
【0048】
【
図27】
図27は、生理食塩水または20μM CV-8814のいずれかで処置した、外植されたマウス心臓における虚血再灌流傷害後の梗塞サイズのグラフである。
【0049】
【
図28】
図28は、生理食塩水または20μM トリメタジジンのいずれかで処置した、外植されたマウス心臓における虚血再灌流傷害後の梗塞サイズのグラフである。
【0050】
【
図29】
図29は、生理食塩水、20μM トリメタジジン、トリメタジジン+ニコチンアミド+スクシネートの各々20μM、またはトリメタジジン+ニコチン酸+スクシネートの各々20μMで処置した、外植されたマウス心臓における虚血再灌流傷害後の梗塞サイズのグラフである。
【0051】
【
図30】
図30は、種々の化合物が心臓を心不全から保護する能力を試験するために使用される大動脈縮窄術(transverse aortic constriction)(TAC)プロトコールの模式図である。
【0052】
【
図31】
図31は、TAC誘導性心不全後のマウスの心臓の画像を示す。
【0053】
【
図32】
図32は、生理食塩水、トリメタジジン、ニコチン酸、CV-8814、またはCV-8972で処置したマウスにおけるTAC誘導性心不全後の体重に対する心臓重量のグラフである。
【0054】
【
図33】
図33は、生理食塩水またはCV-8972のいずれかで処置したマウスにおけるTAC誘導性心不全後の種々の時点での心臓駆出率のグラフである。
【0055】
【
図34】
図34は、生理食塩水またはCV-8814のいずれかで処置したマウスにおけるTAC誘導性心不全後の種々の時点での心臓駆出率のグラフである。
【0056】
【
図35】
図35は、生理食塩水またはトリメタジジンのいずれかで処置したマウスにおけるTAC誘導性心不全後の種々の時点での心臓駆出率のグラフである。
【0057】
【
図36】
図36は、TAC誘導性心不全後のマウスに由来する心臓組織の顕微鏡画像を示す。
【0058】
【
図37】
図37は、生理食塩水、トリメタジジン、ニコチン酸、CV-8814、またはCV-8972で処置したマウスにおけるTAC誘導性心不全後の心臓線維症(cardiac fibrosis)のグラフである。
【0059】
【
図38】
図38は、2コンパートメントモデルの模式図である。
【0060】
【
図39】
図39は、3コンパートメントモデルの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
詳細な説明
心疾患の多くの形態において、ミトコンドリアエンルギー代謝における変化は、心臓効率の減少を生じる。心臓ミトコンドリアは酸素を使用して、グルコースまたは脂肪酸の酸化から得られる代謝産物から、多くの細胞プロセスを駆動する高エネルギー分子であるアデノシン三リン酸(ATP)を生成する。心臓における脂肪酸酸化の増大は、グルコース酸化を減少させ、逆もまた同様である。グルコース酸化は、より酸素効率的なエネルギー源であるが、心疾患のある特定のタイプ(例えば、心不全、虚血性心疾患、および糖尿病性心筋症)に罹患した患者の心臓ミトコンドリアにおいて、脂肪酸酸化の過剰な依拠および/またはグルコース酸化からの解糖の脱共役が存在する。結果として、エネルギー生成およびATPの生成の効率は低減され、結論としては、心臓のポンプ輸送能力が低減される。
【0062】
化合物、2-[4-[(2,3,4-トリメトキシフェニル)メチル]ピペラジン-1-イル]エチル ピリジン-3-カルボキシレート(本明細書でCV-8972といわれる)は、種々の心血管状態を有する患者において心臓効率を改善する治療候補として近年特定された。CV-8972は、身体において、2つの異なる機能的クラスに入る代謝生成物へと分解される二重プロドラッグ(dual prodrug)である。第1のクラスの代謝産物は、脂肪酸の酸化を阻害することによってグルコース酸化を促進し、トリメタジジンおよびそのエチレングリコール誘導体である2-[4-[(2,3,4-トリメトキシフェニル)メチル]ピペラジン-1-イル]エタノール(本明細書でCV-8814といわれる)を含む。これらの生成物は、順次、CV-8972異化から生成される: CV-8972は、最初に加水分解されて、CV-8814およびナイアシンを生じ、CV-8814のエチレングリコール部分がその後除去されて、トリメタジジンを生じる。ナイアシンは、CV-8972代謝産物の第2の機能的クラスの代表である。なぜならそれは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の前駆体として働くからである。NAD+は、ミトコンドリアにおいて電子伝達(それによって、ミトコンドリアがクエン酸回路からエネルギーを得ることを可能にする)および酸化的リン酸化を媒介する。従って、ナイアシンは、クエン酸回路が、グルコースまたは脂肪酸の酸化によって生成される生成物によって駆動されるか否かとは無関係に、心臓ミトコンドリアによるエネルギー生成の効率を増大させる。
【0063】
本発明の洞察は、最適な治療発明がしばしば、異なる量においてCV-8972代謝産物の異なる機能的クラスのメンバーを提供することを要求することである。しかし、CV-8972が患者に投与される場合、グルコース酸化の促進因子(promoter) 対 NAD+前駆体であるナイアシンの比は、固定される。さらに、CV-8972の治療ウインドウの最高限度は、患者が受容するナイアシンの有効用量から生じる副作用によって決定される。対照的に、CV-8814およびトリメタジジンの有効用量に原因があるとされ得る副作用は、CV-8972が、耐容性を示した用量の上限において投与される場合に比較的軽微であり、患者は、CV-8972のこのような用量で与えられるものより高いレベルのCV-8814およびトリメタジジンから利益を得る場合がある。本発明は、別個の化合物としてのCV-8972およびCV-8814の投与を含む併用療法の使用を通じてこの問題を解決する。CV-8972の代謝が、グルコース酸化およびナイアシンの両方の促進因子を生じるのに対して、CV-8814の代謝は、グルコース酸化のみを生じる。CV-8972およびCV-8814を別個の治療剤として提供することによって、グルコース酸化を促進する生成物の投与およびNAD+前駆体であるナイアシンの投与が、独立して調節され得る。結論として、上記併用療法は、これらの薬物の活性代謝生成物の各々が、最適な治療レベルで送達されることを可能にする。本発明の治療および方法は、広い範囲の心血管状態を処置するために有用である。
【0064】
CV-8972および8814を含む併用療法
本発明は、CV-8972およびCV-8814を含む併用療法を提供する。CV-8972は、式(X):
【化7】
の構造を有する。
CV-8972が被験体に投与される場合、ナイアシン(ニコチン酸ともいわれる)およびCV-8814へと最初に分解され、CV-8814は、式(IX):
【化8】
の構造を有する。
CV-8814は、トリメタジジンのヒドロキシエチル誘導体であり、上記ヒドロキシエチル基は、その後、身体中で除去されて、トリメタジジンを提供する。CV-8814は、米国特許第4,100,285号に記載され、CV-8972およびその代謝生成物は、米国特許第10,556,013号に記載される(これらの各々の内容は、本明細書に参考として援用される)。
【0065】
CV-8972の治療特性は、その種々の代謝生成物の効果に起因する。上記のように、ナイアシンは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)(ミトコンドリア電子伝達反応において必須の補酵素の酸化形態)の合成の前駆体として働く。NAD+前駆体の供給は、グルコースまたは脂肪酸の酸化がクエン酸回路に供給するために使用されるか否かにかかわらず、ミトコンドリアのレドックス反応が強く起こって、ATP合成を駆動することを確実にする。
【0066】
CV-8972の他の重要な代謝生成物は、CV-8814およびトリメタジジンである。CV-8814およびトリメタジジンはともに、脂肪酸酸化に必要とされる3-ケトアシル-CoAチオラーゼを阻害する。結論として、細胞は、クエン酸回路を駆動し、酸化的リン酸化を支援して、ATPを生成することができる代謝産物を生成するためにグルコース酸化に依拠することを余儀なくされる。従って、8814およびトリメタジジンはともに、CV-8972の代謝によって生成される活性な薬学的成分(API)である。しかし、CV-8814は、トリメタジジンと同じ所望されない副作用を生じない。さらに、CV-8972の逐次的な代謝に起因して、CV-8972の用量後の循環するトリメタジジンのレベルは、トリメタジジン自体の匹敵する用量後のレベルより遙かにひくい。従って、純粋なトリメタジジンと比較して、CV-8972は、循環するAPIのより持続したレベルおよびより少ない副作用を提供する。
【0067】
本発明の併用療法は、CV-8972およびCV-8814を別個の化合物として含むことから、上記治療は、NAD+前駆体であるナイアシンおよびグルコース酸化の促進因子の相対的な量が、最適な治療発明のために調節されることを可能にする。例えば、患者が、ナイアシン 対 グルコース酸化促進因子のモル比が1に近い(すなわち、1:1よりごくわずかに小さい)ことから利益を受けることが決定される場合、CV-8972:CV-8814の高い比を有する併用療法が使用される。しかし、多くの患者に関して、遙かにひくい、例えば、≦1:2であるナイアシン 対 グルコース酸化促進因子のモル比を送達することは有利であり、CV-8972:CV-8814の低い比を有する併用療法は、それらの患者にとって適している。CV-8972:CV-8814の比は、質量比、モル比、またはその2つの化合物の相対的量の任意の他の適切なインジケーターとして表され得る。
【0068】
例であって限定ではなく、式(X)の化合物 対 式(IX)の化合物の質量比は、約10:1、約5:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:5、約1:10、約1:20、約1:50、または約1:100であり得る。式(X)の化合物 対 式(IX)の化合物の質量比は、約10:1~約5:1、約10:1~約2:1、約10:1~約1:1、約10:1~約1:2、約10:1~約1:5、約10:1~約1:10、約10:1~約1:20、約10:1~約1:50、約10:1~約1:100、約5:1~約2:1、約5:1~約1:1、約5:1~約1:2、約5:1~約1:5、約5:1~約1:10、約5:1~約1:20、約5:1~約1:50、約5:1~約1:100、約2:1~約1:1、約2:1~約1:2、約2:1~約1:5、約2:1~約1:10、約2:1~約1:20、約2:1~約1:50、約2:1~約1:100、約1:1~約1:2、約1:1~約1:5、約1:1~約1:10、約1:1~約1:20、約1:1~約1:50、約1:1~約1:100、約1:2~約1:5、約1:2~約1:10、約1:2~約1:20、約1:2~約1:50、約1:2~約1:100、約1:5~約1:10、約1:5~約1:20、約1:5~約1:50、約1:5~約1:100、約1:10~約1:20、約1:10~約1:50、約1:10~約1:100、約1:20~約1:50、約1:20~約1:100、または約1:50~約1:100であり得る。
【0069】
本発明の併用療法は、CV-8972、CV8814、または両方の規定の1日投与量を含み得る。化合物の1日投与量は、24時間の期間にわたって被験体に提供されるべきその化合物の量を示す。1日投与量は、単一用量において提供されてもよいし、それは、24時間の期間にわたって種々の時間で複数用量において提供されてもよい。例えば、1日投与量は、2用量、3用量、4用量、5用量、6用量、7用量、8用量、またはより多くの用量において提供されてもよい。 例であって限定ではなく、式(X)および(IX)の化合物の1日投与量は、各々独立して、約10mg、約20mg、約50mg、約100mg、約200mg、約500mg、約1000mg、約2000mg、または約5000mgであり得る。式(X)および(IX)の化合物の1日投与量は、各々独立して、約10mg~約20mg、約10mg~約50mg、約10mg~約100mg、約10mg~約200mg、約10mg~約500mg、約10mg~約1000mg、約10mg~約2000mg、約10mg~約5000mg、約20mg~約50mg、約20mg~約100mg、約20mg~約200mg、約20mg~約500mg、約20mg~約1000mg、約20mg~約2000mg、約20mg~約5000mg、約50mg~約100mg、約50mg~約200mg、約50mg~約500mg、約50mg~約1000mg、約50mg~約2000mg、約50mg~約5000mg、約100mg~約200mg、約100mg~約500mg、約100mg~約1000mg、約100mg~約2000mg、約100mg~約5000mg、約200mg~約500mg、約200mg~約1000mg、約200mg~約2000mg、約200mg~約5000mg、約500mg~約1000mg、約500mg~約2000mg、約500mg~約5000mg、約1000mg~約2000mg、約1000mg~約5000mg、または約2000mg~約5000mgであり得る。
【0070】
併用療法は、別個の製剤中に含まれ得るかまたはその中に提供されるCV-8972およびCV-8814を含み得る。併用療法は、単一製剤中に含まれ得るかまたはその中に提供されるCV-8972およびCV-8814を含み得る。
【0071】
本発明の併用療法において、CV-8972およびCV-8814の各々は、独立して、薬学的に受容可能な塩として存在し得る。
【0072】
本発明の併用療法において、CV-8972およびCV-8814の各々は、独立して、同位体に関して富化された1またはこれより多くの原子を含み得る。例えば、上記化合物は、1またはこれより多くの水素原子が重水素またはトリチウムで置き換えられ得る。同位体置換または富化は、炭素、硫黄、もしくはリン、または他の原子において起こり得る。上記化合物は、上記化合物内の1またはこれより多くの位置において所定の原子で同位体置換または富化されていてもよいし、上記化合物は、上記化合物内の所定の原子の全ての場合において同位体置換または富化されていてもよい。
【0073】
薬学的組成物
本発明は、CV-8972、CV-8814、または両方を含む薬学的組成物を提供する。上記組成物は、任意の投与経路もしくは投与様式のために製剤化され得る。例であって限定ではなく、上記組成物は、口内、皮膚、経腸的、動脈内、筋肉内、眼内、静脈内、鼻、経口、非経口、肺、直腸、皮下、局所、または経皮的投与のために製剤化され得る。上記組成物は、注射によるか、または移植用医療デバイス(例えば、ステントもしくは薬物溶離ステントまたはバルーン等価物)とともにもしくはその上での投与のために製剤化され得る。
【0074】
上記化合物のうちの1またはこれより多くのものを含む薬学的組成物は、経口使用に適した形態において(例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、迅速溶解物(fast-melt)、水性もしくは油性の懸濁物、分散性の散剤もしくは顆粒剤、エマルジョン、硬質もしくは軟質のカプセル剤、シロップ剤もしくはエリキシル剤として)存在し得る。経口使用が意図された組成物は、薬学的組成物の製造に関して当該分野で公知の任意の方法に従って調製され得、このような組成物は、薬学的に優れたかつ口当たりの良い調製物を提供するために、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤および保存剤から選択される1またはこれより多くの薬剤を含み得る。錠剤は、錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に受容可能な賦形剤と混合した状態で上記化合物を含む。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム);造粒剤および崩壊剤(例えば、コーンスターチ、またはアルギン酸);結合剤(例えば、デンプン、ゼラチンまたはアカシアガム)、および滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルク)であり得る。上記錠剤はコーティングされていなくてもよいし、それらは、胃における崩壊および消化管下部における吸収を遅らせ、それによって、長期間にわたって持続した作用を提供するために公知の技術によってコーティングされてもよい。例えば、時間遅延物質(time delay material)(例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリル)が使用され得る。それらはまた、制御放出のための浸透圧治療錠剤(osmotic therapeutic tablet)を形成するために、米国特許第4,256,108号、同第4,166,452号および同第4,265,874号に記載される技術によってコーティングされ得る。化合物の調製および投与は、米国特許第6,214,841号および米国特許公開番号2003/0232877(それらの全体において本明細書に参考として援用される)において議論される。
【0075】
経口使用のための製剤はまた、上記化合物が不活性固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリン)と混合される硬質ゼラチンカプセル剤として、または上記化合物が水もしくは油性媒体(例えば、ラッカセイ油、流動パラフィンまたはオリーブ油)と混合される軟質ゼラチンカプセル剤として提示され得る。代替の経口製剤は、上記化合物の消化管加水分解の制御が求められる場合、制御放出製剤を使用して達成され得、ここで化合物は、腸溶性コーティングの中に被包される。
【0076】
水性懸濁物は、水性懸濁物の製造に適した賦形剤と混合した状態で上記化合物を含み得る。このような賦形剤は、懸濁化剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガム);分散剤もしくは湿潤剤(例えば、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルを含むポリオキシエチレン(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート))である。上記水性懸濁物はまた、1またはこれより多くの保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸エチルまたはp-ヒドロキシ安息香酸n-プロピル)、1またはこれより多くの着色剤、1またはこれより多くの矯味矯臭剤、1またはこれより多くの甘味剤(例えば、スクロースまたはサッカリン)を含み得る。
【0077】
油性懸濁物は、植物油(例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油またはヤシ油)中に、または鉱油(例えば、流動パラフィン)中に上記化合物を懸濁することによって製剤化され得る。上記油性懸濁物は、濃化剤(例えば、蜜蝋、固形パラフィン、またはセチルアルコール)を含み得る。甘味剤(例えば、上記に示されるもの)および矯味矯臭剤は、口当たりの良い経口調製物を提供するために添加され得る。これらの組成物は、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)の添加によって保存され得る。
【0078】
水の添加による水性懸濁物の調製に適した分散性の散剤および顆粒剤は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤および1またはこれより多くの保存剤と混合した状態で上記化合物を提供する。適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤が例示され、例えば、甘味剤、矯味矯臭剤および着色剤がまた、存在し得る。
【0079】
薬学的組成物はまた、水中油型エマルジョンの形態にあり得る。その油相は、植物油(例えば、オリーブ油またはラッカセイ油)または鉱油(例えば、流動パラフィン)またはこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤は、天然に存在するガム(例えば、アカシアガムまたはトラガカントガム)、天然に存在するホスファチド(例えば、ダイズ、レシチン)、ならびに脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来するエステルもしくは部分エステル(例えば、ソルビタンモノオレエート)ならびに上記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)であり得る。上記エマルジョンはまた、甘味剤および矯味矯臭剤を含み得る。
【0080】
シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味剤(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロース)とともに製剤化され得る。このような製剤はまた、粘滑剤、保存剤、ならびに矯味矯臭剤および/または着色剤を含み得る。上記薬学的組成物は、滅菌された注射用の水性または油性懸濁物の形態にあり得る。この懸濁物は、上記で言及された適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して公知の技術に従って製剤化され得る。滅菌された注射用調製物はまた、非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒中の滅菌された注射用液剤または懸濁物に(例えば、1,3-ブタンジオール中の液剤として)ある。使用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌された不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として従来どおり使用される。この目的のために、任意の穏和な不揮発性油が使用され得る(合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む)。さらに、脂肪酸(例えば、オレイン酸)は、注射物の調製における使用が見出される。
【0081】
薬学的組成物の改変型放出製剤は、水性環境において混合物の膨潤を促進する腐食性ポリマー(erodible polymer)を含む混合物を含み得る。CV-8972および1またはこれより多くの腐食性ポリマーを含む薬学的組成物は、同時係属中の共有に係る出願番号63/046,115号および同63/046,117号に記載される。腐食性ポリマーは、生理学的に関連する時間枠内において身体内部で分解する任意のポリマーである。上記腐食性ポリマーは、上記混合物からトリメタジジンの改変された形態の段階的放出を促進する他の特性を有し得る。例であって限定ではなく、上記ポリマーは、以下のうちの1またはこれより多くのものであり得る: 生体適合性、すなわち、生きている組織に対して有害でない;親水性;吸湿性;ヒドロゲルを形成する傾向にある。
【0082】
理論によって拘束されることを望まないが、上記ポリマー含有混合物は、1またはこれより多くの機序によって段階的放出を促進し得る。例えば、水の吸収による上記混合物の膨潤は、上記混合物からのトリメタジジンの改変された形態の拡散を容易にし得る。上記ポリマーの分解はまた、トリメタジジンの改変された形態が上記混合物から放出されることを可能にし得る。上記混合物の内部と外部との間の化合物の高濃度勾配に起因する浸透圧はまた、上記混合物からのトリメタジジンの改変された形態の拡散に寄与し得る。
【0083】
例であって限定ではなく、上記ポリマーは、セルロース誘導体、ゼラチン誘導体、例えば、架橋されたゼラチン誘導体、またはポリエステル誘導体であり得る。
【0084】
β(1→4)結合D-グルコース単位の直鎖であるセルロースの誘導体は、各グルコース単位のヒドロキシル基の1またはこれより多くの上に置換を含むポリマーを含む。置換基は、有機的であっても無機的であってもよく、代表的には、エステル結合またはエーテル結合を介して結合される。セルロースエステル誘導体としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、およびメチルセルロースが挙げられる。セルロースエーテル誘導体としては、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、プロピオン酸セルロース、硫酸セルロース、トリ酢酸セルロース、およびニトロセルロースが挙げられる。生分解性ヒドロゲルを形成するためのセルロースベースのポリマーの使用は、当該分野で公知であり、例えば、Sanninoら, Biodegradable Cellulose-based Hydrogels: Design and Applications, Materials 2009, 2, 353-373; doi:10.3390/ma2020353(その内容は、本明細書に参考として援用される)に記載される。
【0085】
上記混合物は、同じポリマーの多数のポリマーまたは多数のポリマー形態を含み得る。例えば、HPMCポリマー形態は、粘性、メトキシル置換の程度、ヒドロキシプロポキシル置換の程度、または平均分子量を含む種々の物理的特性において異なり得る。
【0086】
HPMCポリマー形態の粘性は、溶液中のHPMCの濃度およびその溶液の温度を含む標準的条件下で試験することによって決定され得る。例であって限定ではなく、上記HPMC濃度は、1%、1.5%、2%、2.5%、または3%であり得る。例であって限定ではなく、上記溶液の温度は、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、または25℃であり得る。
【0087】
セルロース誘導体(例えば、HPMC)のポリマー形態は、規定の粘性を有し得る。例であって限定ではなく、HPMCのポリマー形態は、20℃において上記ポリマー形態の2%水性溶液について約2cP~約4cP、約4cP~約6cP、約5cP~約8cP、約12cP~約18cP、約40cP~約60cP、約80cP~約120cP、約300cP~約500cP、約1200cP~約2400cP、約2500cP~約5000cP、約9000cP~約18,000cP、約12,000cP~約24,000cP、約12,000cP~約24,000cP、約75,000cP~約150,000cP、少なくとも約2cP、少なくとも約4cP、少なくとも約5cP、少なくとも約12cP、少なくとも約40cP、少なくとも約80cP、少なくとも約300cP、少なくとも約1200cP、少なくとも約2500cP、少なくとも約9000cP、少なくとも約12,000cP、少なくとも約12,000cP、少なくとも約75,000cP、約4cP未満、約6cP未満、約8cP未満、約18cP未満、約60cP未満、約120cP未満、約500cP未満、約2400cP未満、約5000cP未満、約18,000cP未満、約24,000cP未満、約24,000cP未満、または約150,000cP未満の粘性を有し得る。
【0088】
セルロース誘導体(例えば、HPMC)のポリマー形態は、グルコース単位のそれらの置換の程度において変動し得る。置換の程度は、上記置換基の重量パーセンテージとしてまたは置換基 対 グルコース単位のモル比として表され得る。2つの異なる置換基を有するセルロース誘導体(例えば、HPMC)に関しては、上記ポリマー形態は、各置換基に関する置換の程度によって記載され得る。
【0089】
HPMCの各ポリマー形態は、独立して、メトキシル置換の規定の程度を有し得る。例であって限定ではなく、メトキシル置換の程度は、約19%~約24%、約22%~約24%、約27%~約30%、約27%~約30%、または約28%~約32%であり得る。
【0090】
HPMCの各ポリマー形態は、独立して、ヒドロキシプロポキシル置換の規定の程度を有し得る。例であって限定ではなく、ヒドロキシプロポキシル置換の程度は、約4%~約8%、約7%~約10%、約7%~約12%、約8%~約10%、約8%~約11%、または約9%~約12%であり得る。
【0091】
HPMCの各ポリマー形態は、独立して、規定の平均分子量を有し得る。上記平均分子量は、約10kDa、約13kDa、約20kDa、約26kDa、約41kDa、約63kDa、約86kDa、約110kDa、約120kDa、約140kDa、約180kDa、または約220kDaであり得る。
【0092】
ポリマー(例えば、HPMC)の多数の形態が存在する場合、1またはこれより多くのポリマー形態は、規定の量において存在し得る。例であって限定ではなく、ポリマー(例えば、HPMC)は、約50重量%、約60重量%、約70重量%、約80重量%、約90重量%、約95重量%、約96重量%、約97重量%、約98重量%、約99重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、または少なくとも99重量%の1つのポリマー形態を含み得る。
【0093】
薬学的組成物は、CV-8972またはCV-8814の結晶形態を含み得る。同時係属中の共有に係る米国特許出願第63/046,120号に記載されるように、CV-8972は、少なくとも5つの多形: 形態A、形態B、形態C、形態D、および形態Eで存在し得る。薬学的組成物は、CV-8972の1つの多形を含んでいてもよく、1またはより多くの他の多形を実質的に含まなくてもよい。例えば、上記組成物は、形態Aという多形を含んでいてもよく、形態B、形態C、形態D、および形態Eの多形を実質的に含まなくてもよい。
【0094】
CV-8972の多形を含む組成物は、上記組成物が規定のレベルの純度において主な多形を含む場合、CV-8972の1またはこれより多くの他の多形を実質的に含まなくてもよい。純度は、主な多形の量の、CV-8972の2またはこれより多くの多形の総重量のパーセンテージとして表し得る。
【0095】
ある特定の実施形態において、上記総重量は、上記組成物中のCV-8972の全ての多形の重量である。例えば、形態Aの多形を含み、かつ他の多形を実質的に含まない組成物は、上記組成物中のCV-8972の全ての多形の規定の重量パーセンテージにおいて形態Aを含み得る。例えば、上記組成物は、上記組成物中のCV-8972の全ての多形の少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.6重量%、少なくとも99.7重量%、少なくとも99.8重量%、または少なくとも99.9重量%において形態Aを含み得る。
【0096】
ある特定の実施形態において、上記総重量は、上記組成物中のCV-8972の選択された多形の重量である。例えば、上記形態Aの多形を含みかつ上記形態Bの多形を実質的に含まない組成物は、形態AおよびBの規定の重量パーセンテージにおいて形態Aを含み得る。例えば、上記組成物は、上記組成物中のCV-8972の形態AおよびBの少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.6重量%、少なくとも99.7重量%、少なくとも99.8重量%、または少なくとも99.9重量%において形態Aを含み得る。同様に、上記形態Aの多形を含みかつ上記形態BおよびCの多形を実質的に含まない組成物は、形態A、B、およびCの規定の重量パーセンテージにおいて形態Aを含み得る。例えば、上記組成物は、上記組成物中のCV-8972の形態A、B、およびCの少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.6重量%、少なくとも99.7重量%、少なくとも99.8重量%、または少なくとも99.9重量%において形態Aを含み得る。
【0097】
代わりにまたはさらに、CV-8972の多形を含む組成物は、上記組成物が規定のレベル未満のレベルで第2の多形を含む場合、CV-8972の1またはこれより多くの他の多形を実質的に含まなくてもよい。第2の多形の存在は、1またはこれより多くの第2の多形の量を、CV-8972の2またはこれより多くの多形の総重量のパーセンテージとして規定し得る。
【0098】
ある特定の実施形態において、上記総重量は、上記組成物中のCV-8972の全ての多形の重量である。例えば、形態Aの多形を含みかつ他の多形を実質的に含まない組成物は、上記組成物中のCV-8972の全ての多形の規定の重量パーセンテージにおいて形態A以外の全ての多形を含み得る。例えば、上記組成物は、上記組成物中のCV-8972の全ての多形の5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.4重量%未満、0.3重量%未満、0.2重量%未満、または0.1重量%未満において形態A以外の全ての多形を含み得る。
【0099】
ある特定の実施形態において、上記総重量は、上記組成物中のCV-8972の選択された多形の重量である。例えば、形態Aの多形を含みかつ形態Bの多形を実質的に含まない組成物は、形態AおよびBの規定の重量パーセンテージにおいて形態Bを含み得る。例えば、上記組成物は、上記組成物中のCV-8972の形態AおよびBの5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.4重量%未満、0.3重量%未満、0.2重量%未満、または0.1重量%未満において形態Bを含み得る。同様に、形態Aの多形を含みかつ形態Bおよび形態Cの多形を実質的に含まない組成物は、形態A、B、およびCの規定の重量パーセンテージにおいて形態BおよびCを含み得る。例えば、上記組成物は、上記組成物中のCV-8972の形態A、B、およびCの5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.4重量%未満、0.3重量%未満、0.2重量%未満、または0.1重量%未満において形態BおよびCを含み得る。
【0100】
結晶は、CV-8972の塩形態を含み得る。例えば、上記形態Aの多形のCV-8972は、トリヒドロクロリド塩である。従って、上記組成物は、CV-8972および規定の化学量論的比の塩化物イオンを含み得る。上記組成物は、1:3の化学量論的比のCV-8972および塩化物イオンを含み得る。
【0101】
結晶は、CV-8972の水和形態を含み得る。例えば、上記形態Aの多形のCV-8972は、一水和物である。従って、上記組成物は、CV-8972の一水和物形態(例えば、上記形態Aの多形)を含み得る。上記組成物は、CV-8972の無水物形態(例えば、形態B、形態D、または形態Eの多形)を含み得る。
【0102】
上記薬学的組成物は、単一の単位投与量として製剤化され得る。上記薬学的組成物は、分割投与量として製剤化され得る。
【0103】
上記組成物は、規定の量のCV-8972またはCV-8814を含み得る。上記用量は、約10mg~約2000mg、約10mg~約1000mg、約10mg~約800mg、約10mg~約600mg、約10mg~約400mg、約10mg~約300mg、約10mg~約200mg、約25mg~約2000mg、約25mg~約1000mg、約25mg~約800mg、約25mg~約600mg、約25mg~約400mg、約25mg~約300mg、約25mg~約200mg、約50mg~約2000mg、約50mg~約1000mg、約50mg~約800mg、約50mg~約600mg、約50mg~約400mg、約50mg~約300mg, 約50mg~約200mg、約100mg~約2000mg、約100mg~約1000mg、約100mg~約800mg、約100mg~約600mg、約100mg~約400mg、約100mg~約300mg, 約100mg~約200mg、約200mg~約2000mg、約200mg~約1000mg、約200mg~約800mg、約200mg~約600mg、約200mg~約400mg、約200mg~約300mg、約300mg~約2000mg、約300mg~約1000mg、約300mg~約800mg、約300mg~約600mg、または約300mg~約400mgのCV-8972またはCV-8814を含み得る。上記用量は、約10mg、約25mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、または約400mgのCV-8972またはCV-8814を含み得る。
【0104】
被験体への化合物の提供
本発明は、疾患、障害、または状態を有する被験体にCV-8972およびCV-8814の両方を提供することによって、上記疾患、障害、および状態を処置する方法を提供する。CV-8972およびCV-8814の各々は、独立して、任意の適切な投与経路または投与様式によって提供され得る。例であって限定ではなく、各化合物は、口内に、皮膚に、経腸的に、動脈内に、筋肉内に、眼内に、静脈内に、鼻に、経口的に、非経口的に、肺に、直腸に、皮下に、局所的に、経皮的に、注射によって、または移植用医療デバイス(例えば、ステントもしくは薬物溶離ステントまたはバルーン等価物)とともにもしくはその上で、提供され得る。
【0105】
CV-8972およびCV-8814の各々は、独立して、投与レジメンに従って提供され得る。投与レジメンは、投与量、投与頻度、または両方を含み得る。
【0106】
用量は、任意の適切な間隔で提供され得る。例であって限定ではなく、用量は、1日に1回、1日に2回、1日に3回、1日に4回、1日に5回、1日に6回、1日に8回、48時間ごとに1回、36時間ごとに1回、24時間ごとに1回、12時間ごとに1回、8時間ごとに1回、6時間ごとに1回、4時間ごとに1回、3時間ごとに1回、2日ごとに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、1週間ごとに1回、1週間に2回、1週間に3回、1週間に4回、または1週間に5回提供され得る。
【0107】
上記用量または投与量は、心臓ミトコンドリア機能を改善するCV-8972またはCV-8814の規定の量(例えば、CV-8972またはCV-8814を含む薬学的組成物に関連して上記で記載される用量のうちのいずれか)を含み得る。
【0108】
上記用量または投与量は、単一単位において提供され得る。すなわち、上記用量は、単一の錠剤、カプセル剤、丸剤などとして提供され得る。あるいは、上記用量または投与量は、複数単位において提供され得る。すなわち、上記用量または投与量は、複数の錠剤、カプセル剤、丸剤などとして提供され得る。
【0109】
上記投与は、規定の期間にわたって継続されてもよいし、無期限に継続されてもよい。例であって限定ではなく、用量は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間またはより長く提供され得る。予防の文脈において、上記投与は、計画された介入の前に行われ得る。
【0110】
疾患、障害、および状態
本発明の併用療法、処置方法、および薬学的組成物は、被験体において疾患、障害、または状態を処置するために使用され得る。上記疾患、障害、または状態は、心臓ミトコンドリア機能を改善することによって好転され得る任意の状態であり得る。上記疾患、障害、または状態は、心血管状態であり得る。上記疾患、障害、または状態は、以下であり得る:
急性冠症候群、急性心不全、進行型心不全、動脈瘤、狭心症、アントラサイクリン誘導性心毒性、アテローム性動脈硬化症、心臓同種移植片血管障害、心臓脂肪症、心臓移植片血管障害、心筋症、脳血管疾患、慢性冠症候群、慢性心不全、うっ血性心不全、造影剤腎症、冠動脈疾患(CAD)、冠動脈性心疾患、糖尿病性心筋症、拡張型心筋症(DCM、特発性を含む)、心臓発作、心疾患、駆出率が軽度に低下した心不全(HFmrEF)、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、駆出率が低下した心不全(HFrEF)、心不全、冬眠心筋、高血圧(高血圧症)、肥大型心筋症(HCM、非閉塞性または閉塞性を含む)、間欠性跛行、非閉塞性冠動脈を伴う虚血(INOCA)、虚血再灌流傷害、虚血性心筋症、虚血性心疾患、微小血管狭心症、抗がん薬によって引き起こされる心筋機能障害、非閉塞性冠動脈を伴う心筋梗塞(MINOCA)、心筋炎(非家族性および家族性/遺伝性)、非虚血性心筋症、心膜疾患、周産期心筋症、末梢動脈疾患、末梢血管疾患、肺動脈高血圧症、肺高血圧症、難治性狭心症、拘束型心筋症、リウマチ性心疾患、右心不全、右室不全、安定狭心症、脳卒中、気絶心筋、頻脈誘発性心筋症、たこつぼ型心筋症、一過性脳虚血発作、不安定狭心症、または心臓弁膜症。
【0111】
狭心症(angina pectoris)(狭心症(angina))は、代表的には心筋への不十分な血流に起因する胸部の疼痛または圧迫である。上記疼痛または不快感は、胸骨後方または左側であり、左腕、頸部、顎、または背部に放散し得る。狭心症のいくつかの分類が公知である。安定狭心症(労作性狭心症ともいわれる)は、心筋虚血に関連する。安定狭心症では、胸部不快感および関連症状は通常、走るまたは歩く、のようなある種の身体活動によって誘発されるが、その患者が安静時または舌下ニトログリセリンを摂取している時は、症状は最小限または存在しない。症状は、代表的には、活動の数分後には和らぎ、活動を再開すると再発する。症状は、寒冷な気候、消化に時間がかかる食事、および情動ストレスによっても誘導され得る。不安定狭心症は、変化するかまたは増悪する狭心症である。不安定狭心症は、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する:(1)それは、安静時または最小限の労作で起こり、通常は、10分より長く持続する、(2)それは、重篤かつ新たな発症、すなわち、過去4~6週間以内に発症する、および(3)それは、次第に強くなるパターンで発生する、すなわち、以前より明らかに重篤、長期間または頻繁に起こる。心臓シンドロームX(微小血管狭心症ともいわれる)は、血管造影法で正常な心外膜冠動脈の状況にある狭心症様の胸痛である。その主な原因は不明であるが、明らかに関与している因子は、内皮機能障害および心臓の非常に小さな抵抗血管における血流の低減である。微小血管狭心症は、虚血性心疾患の病態生理の一部であり得る。難治性狭心症は、慢性的な状態であり(持続期間は≧3ヶ月)、ここで狭心症は、(1)冠動脈疾患(CAD)の状況において起こる、(2)最適な医学的治療、血管形成術、またはバイパス手術の組み合わせによって制御できない、および(3)可逆的な心筋虚血が症状の原因であることが臨床的に確立されている。
【0112】
上記疾患、障害、または状態を有する被験体は、被験体の特定のクラスに入り得る。例であって限定ではなく、上記被験体は、小児、新生児(newborn)、新生児(neonate)、乳児、子供、青年、9~12歳の子供、13~19歳の子供、成人、または高齢の被験体であり得る。上記被験体は、救急救命治療、集中治療、新生児集中治療、小児集中治療、冠疾患集中治療(coronary care)、心臓胸部治療(cardiothoracic care)、外科集中治療、内科集中治療(medical intensive care)、長期集中治療、手術室、救急車、病院、野戦病院、病院外の現場環境、標準的な診療室環境、地域のクリニック(community clinic)、または地域のヘルスケア環境の状態にあり得る。
【実施例】
【0113】
実施例
本発明は、以下の実施例に鑑みてよりよく理解され得る。実施例は、例証目的で提供されるに過ぎず、本発明の範囲を限定しない。実施例および添付の図面全体を通じて、本発明の化合物に関する以下の同義語が使用され得る: CV-8972は、代わりにIMB-101またはIMB-1018972ともいわれ得る;CV-8814は、代わりにIMB-102またはIMB-1028814ともいわれ得る。
【0114】
実施例1
試験概要
グルコースおよび脂肪酸代謝に対するCV-8972(部分的脂肪酸酸化インヒビタ-)の効果を、非侵襲的陽電子放出断層撮影(PET)画像化を使用して調査した。放射性標識されたグルコースアナログであるPET放射性トレーサー18F フルオロデオキシグルコース(FDG)を使用して、心臓グルコース代謝を評価し、放射性標識された長鎖脂肪酸(LCFA)アナログであるPET放射性トレーサー18F フルオロ-6-チア-ヘプタデカン酸(FTHA)を使用して、脂肪酸β酸化を評価した。両方の放射性トレーサーは、グルコースまたは脂肪酸いずれかの代謝に比例する様式で、細胞中に「捕捉」される。例えば、高い18F-FDGまたは18F-FTHAシグナルは、それぞれ、高いグルコースまたは脂肪酸代謝を示す一方で、逆に、取り込みの減少は、低い代謝を示す。
【0115】
18F-FDGおよび18F-FTHAでのPET画像化を、健常ラットにおいて行った。PET画像を、トレーサー注射後120分間にわたって動的に獲得して、心臓グルコースおよび脂肪酸代謝の動的変化を捕捉した。各トレーサーに関しては、動物を2回画像化した(1回はビヒクル(リン酸緩衝化生理食塩水、PBS)またはCV-8972(80mg/3mL/kg)の注射後、PET画像化する15分前に動物の背部に皮下注射)。
【0116】
図1は、CV-8972での処置に応答してラットの心臓組織への
18F-フルオロデオキシグルコース(
18F-FDG)および
18F-14(R,S)-(18)F-フルオロ-6-チア-ヘプタデカン酸(
18F-FTHA)の取り込みをモニターするために使用される陽電子放出断層撮影(PET)画像化試験デザインの模式図である。
18F-FDGの取り込みをモニターするために、ラットに1日目の前の16時間にわたって絶食させた。1日目に、ラットにリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を時間0で与え、15分後、
18F-FDGを投与し、投与後2時間にわたって、PETによってインビボで追跡した。ラットに、3日目の前に16時間にわたって再び絶食させた。3日目に、時間0でラットにCV-8972を与え、15分後に
18F-FDGを投与し、投与後2時間にわたってインビボでPETによって追跡した。2回目のPETスキャン直後に、その動物を屠殺し、血液、心臓、および骨格筋におけるγ放射能のレベルを測定した。
18F-FTHAの取り込みをモニターするために、ラットに1日目の前に食べさせた。1日目に、ラットに時間0でPBSを与え、15分後に
18F-FTHAを投与し、投与後2時間にわたってインビボでPETによって追跡した。ラットに3日目の前に食べさせた。3日目に、ラットに時間0でCV-8972を与え、15分後に
18F-FTHAを投与し、投与後2時間にわたってインビボでPETによって追跡した。2回目のPETスキャン直後に、その動物を屠殺し、血液、心臓、および骨格筋におけるγ放射能のレベルを測定した。
【0117】
材料および方法
動物
23匹の雌性Crl:CD(SD)ラット(平均体重は1回目のスキャン時に408±46.5g)をCharles River Laboratories(MA, USA)から購入した。ラットを、12時間(07:00から19:00まで)明および12時間暗サイクルの温度管理した動物部屋の中で飼育した。全ての動物を、現在の試験に関して使用する前に少なくとも3日間順応させた。全ての動物実験は、Icahn School of Medicine at Mount Sinaiの動物実験委員会(IACUC)によって承認された。
【0118】
動的PET/CT獲得
動的陽電子放出断層撮影/コンピューター断層撮影(PET/CT)画像化を、Mediso nanoScan 122S PET/CTシステムで得た。心臓グルコースおよび脂肪酸代謝を、それぞれ、18F-FDG(NCM-USA LLC, NY, USA)および18F-FTHA(Department of Radiology, New York University School of Medicine, NY, USA)を追跡することによって可視化した。18F-FDGスキャンの前に、ラットを、一晩、少なくとも16時間にわたって絶食させて、心筋細胞への放射性トレーサーの生理学的取り込みを最小限にした。ビヒクル(リン酸緩衝化生理食塩水)またはCV-8972(80mg/3mL/kg)のいずれかを、PET画像化の15分前に、動物の背部に皮下注射した。次いで、動物をスキャナーの上に配置し、高解像度CT画像を得た。続いて、動的PETを、18F-FDG(37MBq、1mCi/0.5mL/身体)の尾静脈を介する注射と同時に開始し、120分間記録した。各動物は、2日間以上間隔を空けて(平均2.9日、2~6日間)、2回のスキャンセッションを受けた(1回はビヒクル注射後、もう1回はCV-8972注射後)。その2回の画像化セッションの順序は、ラット間で無作為化した。18F-FTHA(37MBq、1mCi/0.5mL/身体)に関しては、動物は2回のスキャンセッションを、摂食条件を除いて18F-FDGに関するものと同じ条件下で受けた。18F-FDGスキャンを受けた動物間では、6匹の動物が同様に、3日間より長い間隔を空けて(平均6.0日間、2~14日間)18F-FTHAスキャンを受けた。他のラットは、18F-FDGスキャンまたは18F-FTHAスキャンのみのいずれかを受けた。
【0119】
動的PET/CT再構成および分析
PET画像を、3D順序部分集合期待値最大化/最大事後確率(3D ordered-subset expectation maximization/maximum a posteriori)(3D-OSEM/MAP)を使用して再構成した。再構成した画像におけるボクセル計数率を減衰補正し、円柱ファントムからのシステム較正係数によって標準化取り込み値(SUV)に変換した。心臓(左室)、筋肉(右上腕)、および血液(腹大動脈)に関する目的の3D領域(ROI)を、同時登録された解剖学的CT画像によるガイドに基づいてAMIDEx) ソフトウェアを使用して描いて、体重(g)によって正規化した器官活性およびスキャン時の残存活性を得た。全獲得から、動的フレームを、両方の放射性トレーサーに関して、以下のフレームレートで計算した: 15秒/フレームにおいて8フレーム、30秒/フレームに対して6フレーム、300秒/フレームに対して3フレーム、および600秒/フレームに対して10フレーム。動的曲線を、18F-FDGに関しては2コンパートメントモデルを、および18F-FTHAに関しては3コンパートメントモデルを使用して、PMODソフトウェアを使用して分析した。
【0120】
図38は、FDG取り込みを評価するために使用した2コンパートメントモデルを示す。K
i、K
1、K
2、K
3、およびK
4を、以下のように計算した:
【数1】
【0121】
図39は、FTHA取り込みを評価するために使用される3コンパートメントモデルを示す。K
i、K
1、K
2、K
3、K
4、K
5、K
6、V
1、およびV
2を、以下のように計算した:
【数2】
【0122】
γ計数でのインビボPETシグナルのエキソビボ検証
最後のPET/CTスキャン直後に、イソフルラン(3~5%)の麻酔下で腹部静脈から採血し、次いで、動物を、瀉血することによって安楽死させた。PBSで徹底的に灌流した後に、心臓および骨格筋(右上腕)を採取した。心臓、筋肉、および血液における放射能を、Wizard2 2480自動γカウンター(Perkin Elmer, Waltham, MA)で決定し、%ID/gを各器官に関して計算した。
【0123】
統計分析
結果を、平均±標準偏差(SD)として表す。コントロール群とCV-8972群との間の差異を、両側の対応のあるt検定(スキャンデータ)またはスチューデントt検定(エキソビボデータ)によって評価した。これらの分析を、GraphPad Prism(GraphPad Software Inc., CA, USA)またはMicrosoft(登録商標) Office Excel 2010(Microsoft Corporation, WA, USA)を使用して行った。p値<0.05を、統計的に有意な変化として分類した。
【0124】
結果
心臓グルコースおよび脂肪酸代謝に対するCV-8972の影響: 18F-FDGおよび18F-FTHAインビボPET取り込み
心臓グルコースおよび脂肪酸代謝に対するCV-8972の効果を評価するために、18F-FDGおよび18F-FTHA取り込み(SUVとして測定)の時間推移を、心筋においてモニターした。骨格筋および血液における放射性トレーサー取り込みを、同様にモニターした。
【0125】
最初の分析において、単一の相当する動的フレームを、処置動物とPBS注射動物との間で比較した。
【0126】
図2は、生理食塩水(コントロール、黒丸)またはCV-8972(薬物、赤色の四角)のいずれかをラットに投与した後の種々の時点での心臓におけるFDGの平均SUVを示すグラフである。対応のあるt検定によって*p<0.05、**p<0.01。
【0127】
図3は、生理食塩水(コントロール、黒丸)またはCV-8972(薬物、赤色の四角)をラットに投与した後の種々の時点での骨格筋におけるFDGの平均SUVを示すグラフである。対応のあるt検定によって*p<0.05、**p<0.01。
【0128】
図4は、生理食塩水(コントロール、黒丸)またはCV-8972(薬物、赤色の四角)のいずれかをラットに投与した後の種々の時点での血液におけるFDGの平均SUVを示すグラフである。
【0129】
図5は、生理食塩水(コントロール、黒丸)またはCV-8972(薬物、赤色の四角)のいずれかをラットに投与した後の種々の時点での心臓におけるFTHAの平均SUVを示すグラフである。対応のあるt検定によって*p<0.05。
【0130】
図6は、生理食塩水(コントロール、黒丸)またはCV-8972(薬物、赤色の四角)のいずれかをラットに投与した後の種々の時点での骨格筋におけるFTHAの平均SUVを示すグラフである。対応のあるt検定によって*p<0.05。
【0131】
図7は、生理食塩水(コントロール、黒丸)またはCV-8972(薬物、赤色の四角)のいずれかをラットに投与した後の種々の時点での血液におけるFTHAの平均SUVを示すグラフである。
【0132】
図8は、生理食塩水(コントロール)またはCV-8972(薬物)のいずれかをラットに投与した後のFDGおよびFTHAのPET/CT画像を示す。画像を、0~120分まで得たPET画像の和をCT画像に重ねることによって作成した。各パネルは、心臓の短軸を表す左の画像および心臓の長軸を表す右の画像を含む。
【0133】
この分析全体は、CV-8972の1回の注射が、PBS注射と比較して心臓の18F-FDG取り込みを有意に増大させたことを示す。このことは、CV-8972注射後の増大したグルコース取り込みおよび代謝を示す。コントロール動物とCV-8972注射動物との間の心臓におけるSUVの差異は、120分間の動的PET獲得の最後に向かって、経時的にさらに大きく顕著になった。120分でのCV-8972注射動物の心臓における平均SUVは、12.56±7.82であった。これは、コントロール群のもの(0.89±0.62, p<0.01)よりおよそ14倍高い。他方で、18F-FTHAを注射した場合に心臓において統計的に有意な変化は検出されなかったが、わずかにより高い取り込みが、スキャン獲得期間全体を通じて、CV-8972注射動物において一貫して認められた。同様に、18F-FTHAのわずかにより高い取り込みが、骨格筋においても観察された一方で、18F-FDGはわずかに低かった。単一動的フレームを調べると、CV-8972注射は、血液における18F-FDGおよび18F-FTHAシグナルに明確な影響を及ぼさなかった。
【0134】
第2の分析において、SUV値を、PET獲得の最後の30分間(90~120分)を表す単一フレームから計算した。
【0135】
図9は、生理食塩水(コントロール、黒色の棒)またはCV-8972(薬物、赤色の棒)のいずれかをラットに投与した後の動的獲得の最後の30分間での、心臓、骨格筋、および血液におけるFDGの平均SUVを示すグラフである。対応のあるt検定によって**p<0.01。
【0136】
図10は、生理食塩水(コントロール、黒色の棒)またはCV-8972(薬物、赤色の棒)のいずれかをラットに投与した後の動的獲得の最後の30分間での、心臓、骨格筋、および血液におけるFTHAの平均SUVを示すグラフである。対応のあるt検定によって*p<0.05。
【0137】
この分析から、単一動的フレームでの本発明者らの以前の分析が確認された。簡潔には、18F-FDG取り込みは、心筋において有意により高かったが、CV-8972注射動物の骨格筋および血液においてわずかに低いシグナルを示した(しかし統計的有意には達している)。18F-FTHAに関しては、CV-8972動物における心筋シグナルは、統計的有意に達することなくわずかにより高かった一方で、骨格筋におけるわずかにより高いシグナルは、統計的有意に達した。18F-FTHA血液シグナルは、CV-8972注射によって影響を及ぼされなかった。
【0138】
第3の分析において、放射性トレーサー取り込み曲線を、動力学モデル化を使用して分析した。
【0139】
図11は、生理食塩水(コントロール)またはCV-8972(薬物)のいずれかをラットに投与した後の心筋におけるFDG取り込みのグラフである。K
i値を、2コンパートメントモデルを使用して決定した。対応のあるt検定によって*p<0.05。
【0140】
図12は、生理食塩水(コントロール、黒色の棒)またはCV-8972(薬物、赤色の棒)のいずれかをラットに投与した後の心筋におけるFDGの活性のフローのグラフである。K
1、K
2、K
3、およびK
4値を、2コンパートメントモデルを使用して決定した。
【0141】
図13は、生理食塩水(コントロール)またはCV-8972(薬物)のいずれかをラットに投与した後の骨格筋におけるFDG取り込みのグラフである。K
i値を、2コンパートメントモデルを使用して決定した。対応のあるt検定によって**p<0.01。
【0142】
図14は、生理食塩水(コントロール、黒色の棒)またはCV-8972(薬物、赤色の棒)のいずれかをラットに投与した後の骨格筋におけるFDGの活性のフローのグラフである。K
1、K
2、K
3、およびK
4値を、2コンパートメントモデルを使用して決定した。対応のあるt検定によって**p<0.01。
【0143】
図15は、生理食塩水(コントロール)またはCV-8972(薬物)のいずれかをラットに投与した後の心筋におけるFTHA取り込みのグラフである。K
i値を、3コンパートメントモデルを使用して決定した。
【0144】
図16は、生理食塩水(コントロール)またはCV-8972(薬物)のいずれかをラットに投与した後の心筋におけるFTHA取り込みの薬物動態パラメーターV
1のグラフである。V
1値を、3コンパートメントモデルを使用して決定した。
【0145】
図17は、生理食塩水(コントロール)またはCV-8972(薬物)のいずれかをラットに投与した後の心筋におけるFTHA取り込みの薬物動態パラメーターV
2のグラフである。V
2値を、3コンパートメントモデルを使用して決定した。対応のあるt検定によって**p<0.01。
【0146】
図18は、生理食塩水(コントロール、黒色の棒)またはCV-8972(薬物、赤色の棒)のいずれかをラットに投与した後の心筋におけるFTHAの活性のフローのグラフである。K
1、K
2、K
3、K
4、K
5、およびK
6値を、3コンパートメントモデルを使用して決定した。
【0147】
図19は、生理食塩水(コントロール)またはCV-8972(薬物)のいずれかをラットに投与した後の骨格筋におけるFTHA取り込みのグラフである。K
i値を、3コンパートメントモデルを使用して決定した。
【0148】
図20は、生理食塩水(コントロール)またはCV-8972(薬物)のいずれかをラットに投与した後の骨格筋におけるFTHA取り込みの薬物動態パラメーターV
1のグラフである。V
1値を、3コンパートメントモデルを使用して決定した。対応のあるt検定によって*p<0.05。
【0149】
図21は、生理食塩水(コントロール)またはCV-8972(薬物)のいずれかをラットに投与した後の骨格筋におけるFTHA取り込みの薬物動態パラメーターV
2のグラフである。V
2値を、3コンパートメントモデルを使用して決定した。
【0150】
図22は、生理食塩水(コントロール、黒色の棒)またはCV-8972(薬物、赤色の棒)のいずれかをラットに投与した後の骨格筋におけるFTHAの活性のフローのグラフである。K
1、K
2、K
3、K
4、K
5、およびK
6値を、3コンパートメントモデルを使用して決定した。対応のあるt検定によって**p<0.01。
【0151】
18F-FDGの動力学的モデル化から、CV-8972注射動物においてこのトレーサーの全体的に有意により高い心筋取り込み、および骨格筋において低い取り込みが確認された。18F-FTHAの動力学的モデル化から、CV-8972注射動物において心筋および骨格筋へのこのトレーサーの全体的に有意により高い取り込みが確認された。
【0152】
γ計数による放射性トレーサー取り込みのエキソビボ定量化
心臓、骨格筋、および血液における放射能を、さらなるエキソビボ検証のためにPET/CT画像化の直後にγカウンターでも決定した。
【0153】
図23は、生理食塩水(コントロール、黒色の棒)またはCV-8972(薬物、赤色の棒)のいずれかをラットに投与した後の心臓、骨格筋、および血液におけるFDGからのγ放射能(% 注射線量/g、%ID/gとして表される)のグラフである。データは、生理食塩水を受容した4匹の動物およびCV-8972を受容した7匹の動物に由来する。スチューデントt検定によって*p<0.05、**p<0.01。
【0154】
図24は、生理食塩水(コントロール、黒色の棒)またはCV-8972(薬物、赤色の棒)のいずれかをラットに投与した後の心臓、骨格筋、および血液におけるFTHAからのγ放射能のグラフである。データは、生理食塩水を受容した3匹の動物およびCV-8972を受容した9匹の動物に由来する。スチューデントt検定によって*p<0.05。
【0155】
CV-8972注射後の心臓の平均放射能は、18F-FDGに関しては4.25±1.03 %ID/g、および18F-FTHAに関しては1.98±0.53 %ID/gであり、これらは、それぞれ、コントロール放射能より5.6倍および3.6倍高かった。骨格筋および血液の放射能は、心臓のものより遙かに低く、コントロールとCV-8972注射動物との間で明らかな差異を示さなかった。
【0156】
結論
実施例1に記載される試験において、マイクロPET/CTでの非侵襲性インビボ画像化をラットにおいて行って、CV-8972の1回の注射後の心臓に対するグルコースおよび脂肪酸代謝における変化を定量した。その結果は、CV-8972注射後のより高い18F-FDG取り込みによって実証されるように、心筋におけるグルコース代謝の有意な増大を実証する。18F-FTHA(脂肪酸アナログ)は、健常動物の心筋においてわずかにより高い取り込みを示した。これらの結果は、インビボでのPETデータ、およびエキソビボでのγ計数の3つの異なる分析によって実証された。特に、18F-FDG取り込みの差異は、放射性トレーサー注射後90分~120分との間でPET画像の静的分析によって検出できた。これは、検証された静的なインビボでのPET画像化を使用して、ヒトにおける薬物効果を評価するためのこのアプローチの実行可能性を示す。
【0157】
結果は、CV-8972投与が、生理食塩水を投与したラットと比較して、ラット心臓18F-FDG標準化取り込み値(SUV)を増大させたことを示す。これは、心筋組織における増大したグルコース保持および利用を示す。18F-FTHA PETトレーサーでの画像化は、CV-8972投与後に(血液コンパートメントにおいて循環している18F-FTHAから)最初の約2倍の増大を示し、続いて、急速な組織吸収および120分間の画像獲得にわたるラット心臓組織からの18F-FTHAの流出を示す。さらに、30分での静的分析は、骨格筋における18F-FDG SUVの最小限の変化と比較して、ラット心臓組織における18F-FDG SUVの12倍の増大を示す。これらのデータは、CV-8972が、心筋細胞において脂肪酸酸化に基づくエネルギー生成からグルコース依存性代謝への切り替えを誘発することを示唆する。
【0158】
雄性ラットへの60mg/kgでのCV-8972の皮下注射での毒物動態試験において、CV-8814およびTMZの曝露(AUC 0~8時間)は、それぞれ、72.5および2.7nmol.時間/mlであった。従って、CV-8814血漿AUCは、CV-8814およびTMZに関する組み合わせた曝露の96.4%を示し、その薬理学的効果は、CV-8814のものを主に反映した。
【0159】
実施例2
心臓組織を虚血/再灌流(I/R)傷害から保護することに対するCV-8814(pFOXインヒビター)の効果を評価するために試験を行った。代表的なpFOX参照化合物としてのトリメタジジン(TMZ)でも同様の試験を行った。単一薬剤および組み合わせ薬剤の薬理学的効力の比較のために、TMZ単独、および代謝増強因子(例えば、ニコチン酸)との組み合わせでのTMZで試験を行った。
【0160】
図25は、種々の化合物が心臓を虚血傷害から保護する能力を試験するために使用されるLangendorff虚血-再灌流プロトコールの模式図である。試験化合物をKrebs-Henseleit緩衝液中、20μMで溶解し、時間0から開始して、一定の圧力でマウス心臓組織を経て灌流させた。各処置群に関して、10~18個の心臓を試験した。Mikro-tipカテーテルを左室に挿入して、20分での基底灌流の終了時に、心拍数、冠動脈流、左室収縮圧および左室拡張終末期圧を含む心機能を測定した。心臓を50分で再灌流させ、170分で再び心機能を測定した。灌流の終了時に、心臓を5つのスライスへと横断し、トリフェニルテトラゾリウム染色した心臓組織切片のコンピューター平面測定法(computerized planimetry)によって梗塞サイズを測定した。
【0161】
最初の試験において、CV-8814の単一薬剤活性を試験した。
【0162】
図26は、生理食塩水(コントロール、青色の棒)または20μM CV-8814(IMB-102、橙色の棒)のいずれかで処置した、外植されたマウス心臓における虚血再灌流傷害の間の冠動脈流のグラフである。コントロールに対して*p<0.05。
【0163】
CV-8814灌流は、再灌流期間の終了時に測定される冠動脈流を有意に増大させた(CV-8814: 90±14μl/mL 対 コントロール: 54±6μl/mL、p<0.05)。これは、CV-8814が虚血傷害から冠血管を保護したことを示唆する。
【0164】
図27は、生理食塩水(コントロール、青色の棒)または20μM CV-8814(IMB-102、橙色の棒)のいずれかで処置した、外植されたマウス心臓における虚血再灌流傷害後の梗塞サイズのグラフである。コントロールに対して*p<0.001。
【0165】
CV-8814灌流は、コントロール心臓において観察された最大左心室圧(LVDP; 20分において33±3mmHg 対 170分において56±3mmHg、p< 0.001)における有意な減少と比較して、LVDP(20分において48±8mmHg 対 170分において63±5mmHg、p<0.05)によって測定されるように心機能を保存した。CV-8814灌流はまた、梗塞サイズにおける低減によって測定されるように虚血関連細胞死から心筋組織を保護した(CV-8814: 52±4% 対 コントロール: 68±3%、p<0.001)。
【0166】
これらの結果は、CV-8814灌流が、Langendorff I/Rモデルにおいて測定されるように、冠動脈流および心機能を維持しながら虚血傷害のリスクにある心筋組織面積を有意に低減したことを示す。
【0167】
参照化合物TMZ単独との比較データを、別個の試験において生成した。
【0168】
図28は、生理食塩水(コントロール、青色の棒)または20μM トリメタジジン(TMZ、水色の棒)のいずれかで処置した、外植されたマウス心臓における虚血再灌流傷害後の梗塞サイズのグラフである。コントロールに対して*p<0.01。
【0169】
その結果は、TMZ単独で、冠動脈流(TMZ 対 コントロール: 90±1.0mL/分 対 60±1.0mL/分、p<0.05)およびLVDP(TMZ 対 コントロール: 49±5 対 56±6 mm Hg, p > 0.05)を保存するにあたって匹敵する効果を有したことを示す。TMZはまた、心筋梗塞サイズを低減したが、CV-8814の約16%と比較して、わずか約9%程度であった。
【0170】
pFOXインヒビターと代謝増強因子(例えば、ニコチンアミド、ニコチン酸、およびスクシネート)とを組み合わせるという概念を、組み合わせにおいて、Langendorff I/R試験において評価した。上記組み合わせは、TMZ/ニコチンアミド/スクシネート(全て濃度は20μM;TNSと記号化)およびTMZ/ニコチン酸/スクシネート(全て濃度は20μM;TNCと記号化)を含んだ。
【0171】
図29は、生理食塩水(コントロール、青色の棒)、20μM トリメタジジン(TMZ、水色の棒)、トリメタジジン+ニコチンアミド+スクシネートの各々20μM(TNS、白抜き棒)、またはトリメタジジン+ニコチン酸+スクシネートの各々20μM(TNC、白抜き棒)で処置した、外植されたマウス心臓における虚血再灌流傷害後の梗塞サイズのグラフである。コントロールに対して*P=0.01、コントロール/TMZに対して#p<0.05。
【0172】
20μM TMZ/ニコチンアミド/スクシネート(TNS)での灌流は、冠動脈流において最も有意な増大を提供した(TNS 対 コントロール: 62±9μL/mL 対 36±3μl/mL、p<0.05)一方で、TMZ/ニコチン酸/スクシネート(TNC: 54+9μL/mL)は、TMZ単独(40+6μL/mL)より有効であった。上記TNS三重組み合わせおよびTMZ単独はともに、LVDPによって測定される心機能を持続させた(TNS: T170 対 T20=48±8 対 66±5mmHg、p>0.05; TMZ: T170 対 T20=49±5 対 56±6mmHg、p>0.05)。上記TNSおよびTNCの三重組み合わせでの灌流はともに、梗塞サイズの低減によって測定されるように、心筋組織を虚血関連細胞死から保護した(TNS 対 コントロール: 44±4% 対 68±2%、p<0.001; TNC 対 コントロール: 47±2% 対 68±2%、p<0.001)。上記TNSおよびTNCの組み合わせはともに、TMZ単独より有効であった(56±3% 梗塞組織面積)。
【0173】
実施例3
血管リモデリング、心機能の保存およびマウスでの心不全の大動脈縮窄術(TAC)モデルにおける線維症の防止に対する参照化合物TMZの有効性と、CV-8814およびCV-1018972の有効性とを評価および比較するために試験を行った。
【0174】
図30は、種々の化合物が心臓を心不全から保護する能力を試験するために使用される大動脈縮窄術(TAC)プロトコールの模式図である。大動脈弓を、麻酔したマウスの胸腔において正中切開を介して露出させた。27ゲージ針で横行大動脈(transverse aorta)に結びつけ、次いで、直ぐに除去して結紮狭窄を作製した。処置を、図中に示した濃度において皮下浸透圧ポンプを介して投与した。インビボでの心機能を、TAC後24時間、3週間、および6週間の時点で行った経胸壁心エコー法によって評価した。心室リモデリングを、心臓重量(HW)および心臓重量 対 体重比(HW/BW)の評価によって決定した。試験終了時に、心臓を切除し、固定し、6μmにおいて切片化し、マッソントリクロームで染色した。心筋組織における線維症の面積を、心臓1つあたり5つの無作為視野でのコンピューター平面測定法によって測定した。1処置群あたり合計65~75の視野を分析し、スチューデントのt検定によって差異を分析した。
【0175】
3回の別個の試験を行って、心不全のTACモデルにおいて単一薬剤および代謝増強因子との組み合わせの有効性を評価した。第1の試験では、マウスを、トリメタジジン単独またはトリメタジジン+ニコチンアミド+スクシネートのいずれかで処置した。第2の試験では、マウスを、CV-8814単独またはトリメタジジン+ニコチン酸+スクシネートで処置した。第3の試験では、マウスを、ニコチン酸、CV-8814、またはCV-8972で処置した。全体的に、大部分の試験エンドポイントでのトリメタジジン、CV-8814、およびCV-8972の活性は、その3回の試験にわたって良好に一致した。第3の試験では、3種の化合物を、製剤重量ベースで等しいmg/kg/日の用量で分析した: トリメタジジンに関しては6mg/kg/日、CV-8814に関しては7.5mg/kg/日;およびCV-8972に関しては10mg/kg/日。従って、第3の試験からの結果は、ここでまとめられる。
【0176】
図31は、TAC誘導性心不全後のマウスの心臓の画像を示す。左パネルは、TACが行われなかった偽手順を与えたマウスの心臓を示す。残りのパネルは、生理食塩水(生理食塩水)、トリメタジジン(TMZ)、ニコチン酸(ニコチン酸)、CV-8814(8814)、またはCV-8972(8972)で処置したマウスの心臓を示す。
【0177】
図32は、生理食塩水(生理食塩水、青色の棒)、トリメタジジン(TMZ、水色の棒)、ニコチン酸(NA、淡緑色の棒)、CV-8814(IMB-102、薄い橙色の棒)、またはCV-8972(IMB-101、濃い橙色の棒)で処置したマウスにおけるTAC誘導性心不全後の体重に対する心臓重量のグラフである。心臓重量 対 体重の値は、mg/gとして表される。生理食塩水処置に対して*p<0.05。
【0178】
CV-8972の投与は、心不全のTACモデルにおいて心室リモデリングおよび心機能に対して有意な効果を有した。コントロール群と比較して、CV-8972は、心臓重量の低減(CV-8972 対 コントロール: 225±11mg 対 270±14mg;p<0.05)、心臓重量 対 体重比の低減(CV-8972 対 コントロール: 7.4±0.3mg/g 対 9.1±0.5mg/g;p<0.05)、および左室質量の低減(CV-8972 対 コントロール: 156±10mg 対 195±12mg; p<0.05)によって測定されるように、心肥大を防止した。TMZまたはCV-8814処置の効果は、CV-8972に類似であった。
【0179】
図33は、生理食塩水(生理食塩水、青色の丸)またはCV-8972(CV-8972、橙色の丸)のいずれかで処置したマウスにおけるTAC誘導性心不全後の種々の時点での心臓駆出率のグラフである。*p=0.011、#p=0.013。
【0180】
図34は、生理食塩水(生理食塩水、青色の丸)またはCV-8814(CV-8814、橙色の丸)のいずれかで処置したマウスにおけるTAC誘導性心不全後の種々の時点での心臓駆出率のグラフである。*p=0.021、#p=0.035。
【0181】
図35は、生理食塩水(生理食塩水、青色の丸)またはトリメタジジン(TMZ、水色の丸)のいずれかで処置したマウスにおけるTAC誘導性心不全後の種々の時点での心臓駆出率のグラフである。#p=0.052。
【0182】
CV-8972投与はまた、3週間目で測定された、増大した左室内径短縮率(FS)によって測定されるように、6週間の試験期間にわたって、マウスにおいて心機能を保存した(CV-8972 対 コントロール: 47%±3% 対 37%±3%;p<0.05)。FSは、コントロールTAC動物において6週間目まで減少し続けた(34%±3%)が、FSに対するCV-8972(46%±3%;p<0.05)およびCV-8814(44%±3%;p<0.05)の両方の効果が持続した。対照的に、TMZは、FSに対して有意な効果を有しなかった。CV-8972およびCV-8814の両方での処置はまた、6週間の試験を通して、左室駆出率(EF)を保存したが、TMZもニコチン酸も、有益な効果を有しなかった。
【0183】
TAC誘導性心不全の間の拡張機能に対するCV-8972およびCV-8814の処置効果を、等容性弛緩時間(IVRT)を測定することによって評価した。CV-8972およびCV-8814はともに、3週間の評価においてIVRTの延長を防止した(CV-8972 対 コントロール: 32±1 ms 対 36±1 ms; p<0.05; CV-8814 対 コントロール: 33±1 ms 対 36±1 ms; p<0.05)。CV-8814の効果は、6週間目まで持続した(CV-8814 対 コントロール: 28±2 ms 対 35±1 ms, p<0.0)が、CV-8972は、わずかに有効でなかった(CV-8972 対 コントロール: 31±2 ms 対 35±1 ms, p=0.06)。対照的に、TMZ処置は、TAC誘導性心不全の間に拡張機能を保存しなかった。
【0184】
図36は、TAC誘導性心不全後のマウスに由来する心臓組織の顕微鏡画像を示す。左パネルは、TACが行われなかった偽手順を与えたマウスの心臓組織を示す。残りのパネルは、生理食塩水(生理食塩水)、トリメタジジン(TMZ)、ニコチン酸(ニコチン酸)、CV-8814(8814)、またはCV-8972(8972)で処置したマウスの心臓を示す。
【0185】
図37は、生理食塩水(生理食塩水、青色の棒)、トリメタジジン(TMZ、水色の棒)、ニコチン酸(NA、淡緑色の棒)、CV-8814 (IMB-102、薄い橙色の棒)、またはCV-8972(IMB-101、濃い橙色の棒)で処置したマウスにおけるTAC誘導性心不全後の心臓線維症のグラフである。値は、線維症の心臓組織のパーセンテージを表す。生理食塩水処置に対して*p<0.05。
【0186】
最後に、CV-8972投与は、TAC誘導性心不全の6週間後の心筋組織の線維症を有意に低減した(CV-8972 対 コントロール: 6.6±0.6 対 10.7±1%; p<0.01)。CV-8814の効果は類似であり(6.6±0.6 %; p<0.01)、CV-8972およびCV-8814の両方は、心臓線維症を防止するにあたって、TMZより有効であった(7.6±1% 対 11±1%; p=0.08)。ニコチン酸単独は、線維症に対して中程度の効果を有した(8.2±1%)。
【0187】
CV-8972の10mg/kg 静脈内投与での薬物動態試験に基づくと、CV-8972は、CV-8814へと急速に転換され、TMZは低いが測定可能なレベルであった。血漿曝露(AUC 0~8時間)に基づくと、CV-8814は、CV-8814およびTMZに関する合わせたAUCの93.9%を示した。従って、CV-8972の非経口的投与でのマウスにおけるインビボでの薬理学的効果は、この種においてCV-8814の活性を主に反映する。
【0188】
援用の表示
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【0189】
均等物
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【国際調査報告】