(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(54)【発明の名称】伸縮可能な連結器
(51)【国際特許分類】
B61G 3/10 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
B61G3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023549142
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 GB2021052792
(87)【国際公開番号】W WO2022090715
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523157689
【氏名又は名称】キングホーン,ジョン リッチ
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】キングホーン,ジョン リッチ
(57)【要約】
鉄道車両を互いに連結するための連結器であって、伸縮可能な連結器本体と、伸縮機構と、鉄道車両に連結器を取り付けるための支持ハウジングと、を備え、連結器本体及び伸縮機構は支持ハウジング内に取り付けられ、伸縮機構は、収縮位置と伸長位置との間で支持ハウジングに対して連結器本体を移動させるように配置され、連結器本体は、第2連結器の連結インターフェースと連結すると共に鉄道車両の接続部を受け入れるように配置された連結インターフェースを有し、連結インターフェースと支持ハウジングとの間の距離は、連結器本体が収縮位置から伸長位置に向かって移動するにつれて増加し、連結インターフェースは、連結インターフェース間の接触時に第2連結器の連結インターフェースに係合するように配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両を互いに連結するための連結器(2)であって、
伸縮可能な連結器本体(10)と、
伸縮機構(6)と、
該伸縮機構(6)を作動させるように配置されたコントローラ(100)と、
鉄道車両に前記連結器(2)を取り付けるための支持ハウジング(20)と、を備え、
前記連結器本体(10)及び伸縮機構(6)は、前記支持ハウジング(20)内に取り付けられ、
前記連結器本体(10)は、第2連結器の連結インターフェースとの連結のために鉄道車両の接続部を受け入れるように配置された連結インターフェース(84)を有し、
前記連結インターフェース(84)と前記第2連結器の連結インターフェースとが鉄道車両の移動に関係なく互いに連結し得るように、前記伸縮機構(6)は、前記支持ハウジング(20)に対して前記連結器本体(10)を収縮位置と伸長位置との間で任意の距離移動させるように作動され、前記収縮位置と伸長位置との間の距離は、前記連結器(2)の連結範囲を規定し、
前記連結インターフェース(84)と前記支持ハウジング(20)との間の距離は、前記連結器本体(10)が前記収縮位置から前記伸長位置に向かって移動するにつれて増加し、
前記連結インターフェース(84)は、該連結インターフェース(84)がいかなる鉄道車両の移動を必要とすることなく前記連結範囲内の任意の距離で前記第2連結器の連結インターフェースと係合可能となるように、前記連結インターフェース間の接触時に前記第2連結器の連結インターフェースに係合するように配置されていることを特徴とする連結器。
【請求項2】
前記伸縮機構は、実質的に円筒形であり、前記支持ハウジングに対して軸方向には拘束されるが自由に回転できるようにベアリング配置(16a、16b)を介して前記支持ハウジングに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の連結器。
【請求項3】
前記連結器本体は、前記連結インターフェースを有する第1端部(11)と、その反対側の第2端部と、を有し、
前記第1端部と第2端部との間の前記連結器本体の少なくとも一部は、実質的に円筒形部分を有し、前記伸縮機構は、実質的に前記円筒形部分を包囲して該円筒形部分とねじ係合し、前記連結器本体の回転は拘束されていることを特徴とする請求項2に記載の連結器。
【請求項4】
コントローラにより作動されたときに前記伸縮機構を回転させるように配置された駆動手段を更に備えたことを特徴とする請求項3に記載の連結器。
【請求項5】
前記駆動手段は、該駆動手段が作動していないときに前記伸縮機構の回転を防止するように配置されたロック機構を有することを特徴とする請求項4に記載の連結器。
【請求項6】
前記駆動手段は、ベルトを介して前記伸縮機構に回転可能に連結されたプーリを有するモータであることを特徴とする請求項5に記載の連結器。
【請求項7】
前記連結インターフェースは、
前記第2端部と実質的に面して鉄道車両の前記接続部を受け入れるように配置された内方終端部(45a)と、
その反対側の外側連結器ヘッド(80)と、を有し、
前記連結器ヘッドは、
該連結器ヘッド間の接触時に前記第2連結器の連結器ヘッドと可逆的に係合するように配置された係合手段(81、82)と、
前記内方終端部から鉄道車両の前記接続部に連結して前記連結器ヘッド間の係合時に前記第2連結器の連結接触部に可逆的に連結するよう配置された連結接触部と、を有することを特徴とする請求項3乃至請求項6のいずれか一項に記載の連結器。
【請求項8】
前記連結接触部は、雄型接触部及び雌型接触部を含むことを特徴とする請求項7に記載の連結器。
【請求項9】
前記係合手段は、前記連結器ヘッド間の接触中に前記第2連結器の係合手段と整列するように形成されていることを特徴とする請求項8に記載の連結器。
【請求項10】
前記係合手段は、シャルフェンベルグカップ及びコーンであることを特徴とする請求項9に記載の連結器。
【請求項11】
前記支持ハウジングは、ジンバルフレーム(30)を介して鉄道車両に取り付けられ、前記支持ハウジングは、ベアリング配置(31a、31b)を介して前記ジンバルフレームに回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか一項に記載の連結器。
【請求項12】
前記ジンバルフレームは、ベアリング配置を介して鉄道車両に回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項11に記載の連結器。
【請求項13】
前記ジンバルフレームは、連結器ハウジング(90)を介して鉄道車両に取り付けられ、該連結器ハウジングは、前記連結器本体が前記収縮位置にあるときに前記連結器ヘッドが前記連結器ハウジング内にあるように前記連結器本体を実質的に包囲することを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の連結器。
【請求項14】
前記連結器ヘッドは、前記連結器ヘッドを保護及び/又は封止するために該連結器本体が収縮位置にあるときに前記連結器ヘッドを覆い、且つ前記連結器本体が伸長位置にあるときに前記連結器ヘッドを露出させるように配置されたカバー配置(85a、85b)を更に有し、
前記カバー配置は、開位置と閉位置との間で移動できるように前記連結器ヘッドに旋回可能に取り付けられた第1カバー(85a)及び第2カバー(85b)を有し、
前記開位置では、前記第1及び第2カバーの外縁(95a、95b)は、前記連結接触部が露出されるように前記連結器ヘッドの連結接触部と実質的に面一となり、前記閉位置では、前記第1及び第2カバーの外縁は、前記連結接触部が前記第1及び第2カバーと前記連結器ヘッドとの間に位置するように互いに接触し、
前記第1及び第2カバーは、前記開位置と閉位置との間の中間位置に保持され、前記連結器ハウジングは、前記カバーが互いにバイアスされて前記閉位置に移動するように、前記連結器本体が収縮位置に移動したときに前記カバーに係合するように配置されたハウジング突起(91a、91b)を有し、
前記第1及び第2カバーは、前記第2連結器の第1及び第2カバーとの接触時に前記中間位置から前記開位置に移動するように配置されていることを特徴とする請求項13に記載の連結器。
【請求項15】
前記第1及び第2カバーは、前記連結器本体が前記収縮位置にあるときに、前記連結器ハウジングに対してフランジを形成するように配置される長尺な突出部(88a、88b、88c)を有することを特徴とする請求項14に記載の連結器。
【請求項16】
前記第1及び第2カバーは、前記第2連結器の近接を示すために前記中間位置からの前記カバーの移動を検知するように配置されたセンサ(98a、98b)を有することを特徴とする請求項15に記載の連結器。
【請求項17】
鉄道車両の前記接続部は、第1接続セット及び第2接続セットを有し、
前記第2端部は、前記連結器本体への開口を有し、前記内方終端部は、前記開口を介して前記第1接続セットを受け入れるように配置されていることを特徴とする請求項8乃至請求項16のいずれか一項に記載の連結器。
【請求項18】
前記支持ハウジングは、前記連結器本体を受け入れて該連結器本体と実質的に平行となった長尺な梁(33a、33b)を有し、
前記連結器本体は、前記梁に面する長尺な溝を有し、前記梁は、前記連結器本体の軸方向への移動は許容するが回転移動を制限するために前記溝と係合するように配置された長尺な突起を有することを特徴とする請求項17に記載の連結器。
【請求項19】
前記梁は、プレート(34)を介して前記支持ハウジングから遠位の端部で一緒に取り付けられ、前記開口は、前記プレートを介して前記第1接続セットを受け入れるように配置されていることを特徴とする請求項18に記載の連結器。
【請求項20】
前記内方終端部とプレートとの間に連結された前記第1接続セットは、該第1接続セットの伸長及び収縮を可能とするために螺旋状に配置されていることを特徴とする請求項19に記載の連結器。
【請求項21】
前記内方終端部及び第2端部は、前記連結器本体の長手方向に対して径方向に突出した突出部分を有し、前記内方終端部の突出部分は、前記第2端部の突出部分を介して前記第2接続セットを受け入れるように配置されていることを特徴とする請求項17乃至請求項20のいずれか一項に記載の連結器。
【請求項22】
前記第1接続セットは、低電力電気接続、空気圧接続及び光学接続のうちの少なくとも1つ又は複数を有し、
前記第2接続セットは、高電力電気接続であることを特徴とする請求項21に記載の連結器。
【請求項23】
前記電気接続の送出可能な電流は、前記雄型及び雌型接触部の間で分割されるように配置されることを特徴とする請求項22に記載の連結器。
【請求項24】
前記第2接続セットは、前記内方終端部の突出部分と前記第2端部との間に取り付けられ、且つ前記第2端部において鉄道車両のホテルバスに連結された導電ロッド(40a、40、40c)を有することを特徴とする請求項22又は請求項23に記載の連結器。
【請求項25】
前記ロッドは、該ロッドへの係合及び係合解除をスイッチするように配置されたロッド接触部(51a、51b、51c)を介してホテルバスに連結されることを特徴とする請求項24に記載の連結器。
【請求項26】
前記ロッド接触部は、絶縁フレーム(50)を介して前記支持ハウジングに取り付けられることを特徴とする請求項25に記載の連結器。
【請求項27】
前記絶縁フレームは、前記ロッドに接触するブラシ(66)を有し、該ブラシに対する前記ロッドの移動は、該ロッドから酸化を除去することを特徴とする請求項26に記載の連結器。
【請求項28】
前記第2端部は、絶縁プレートであることを特徴とする請求項3乃至請求項27のいずれか一項に記載の連結器。
【請求項29】
前記コントローラは、前記連結インターフェースを操作して前記第2連結器のコントローラと通信し、前記連結インターフェースと前記第2連結器の連結インターフェースとの連結及び連結解除を同期させるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項28のいずれか一項に記載の連結器。
【請求項30】
請求項1乃至請求項29のいずれか一項に記載の連結器を制御する方法であって、
前記第2連結器(2b)から連結要求コマンドを受信するステップと、
前記第2連結器に連結合意コマンドを送信するステップと、
前記収縮位置から前記伸長位置に向かって前記連結器本体を伸長するステップと、
前記連結インターフェース間の接触時に該連結インターフェースを前記第2連結器の連結インターフェースに係合させるステップと、
前記第2連結器の連結インターフェースに鉄道車両の前記接続部の少なくとも一部を接続するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
前記第2連結器から連結解除要求コマンドを受信するステップと、
前記第2連結器に連結解除合意コマンドを送信するステップと、
前記第2連結器の連結インターフェースから鉄道車両の前記接続部を接続解除するステップと、
前記第2連結器の連結インターフェースから前記連結インターフェースを係合解除するステップと、
前記収縮位置に向かって前記連結器本体を収縮させるステップと、を更に含むことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記連結器本体の伸長速度は、前記連結インターフェースと前記第2連結器の連結インターフェースとの間の接触時に減少され、
前記連結器本体の収縮速度は、前記連結インターフェースが前記第2連結器の連結インターフェースともはや接触しなくなると増加されることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記連結器本体の伸長は、前記連結インターフェースと前記第2連結器の連結インターフェースとの間の係合時に停止され、
前記連結器本体の収縮は、前記連結インターフェースと前記第2連結器の連結インターフェースとの間の係合解除時に開始することを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記連結器は、ロック状態とロック解除状態との間で切り替え可能で、
前記ロック状態では、前記第2連結器から受信したコマンドは無視され、
前記ロック解除状態では、前記第2連結器から受信したコマンドは無視されないことを特徴とする請求項30乃至請求項33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記連結インターフェース及び伸縮機構の少なくとも1つの操作は、前記連結器の操作者に警告するためのイベントを生成することを特徴とする請求項30乃至請求項34のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮可能な連結器に関する。特に、本発明は、鉄道車両に取り付けられ、該鉄道車両の接続部に連結される伸縮可能な連結器に関する。この連結器は、両方の鉄道車両の接続部を連結するために伸長され、別の連結器と係合及び連結するように配置される。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の自動連結器と呼ばれるものは、1世紀以上前に初めて導入されて以来いくつかの異なるデザインが存在するが、それらはすべて同じ基本原理に依存している。連結が必要な車両は互いに物理的に接続され、連結器ヘッド間の接触は、連結器ヘッド同士を繋ぐ又は確実に車両を連結するために何らかの方法でコンポーネントの移動を作動させる。連結解除は、手動又は自動で制御された機能によって行われ、分離が成功したことを確認するために車両は物理的に引き離される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
車両を互いに物理的に接続するこれらのアプローチは、以前の手動で操作される連結技術からは改善されたものの、依然として重要な課題がある。車両を互いに連結する場合、接続連結器及び/又は連結器が取り付けられる鉄道車両の間で誘発される応力及び/又は構造的損傷を軽減するために、接続作業は低速で行う必要がある。しかしながら、多くのタイプの鉄道車両における牽引制御システムは、接続過程に理想的な低速度を制御するのに十分に適していない。その代わり、鉄道車両のかなりの慣性に応じて、鉄道車両が他の鉄道車両の近くで停止するようにまずやって来て、その後、物理的な接続過程を開始するために互いの方向に再び移動する。このように、鉄道車両で達成可能な速度は、接続過程では幾分制限される。これは、接続過程のために互いに近接して停車した後、鉄道車両がかなりの開始慣性に打ち勝つための時間とエネルギが浪費されるので、非効率的な過程である。
【0004】
複数ユニットの旅客鉄道車両を他の鉄道車両と連結する際の典型的な操作手順は、複雑で時間のかかる一連のイベントを要する。まず、接近する鉄道車両の運転手は、相手の鉄道車両から2メートルほど離れたところで鉄道車両を停止させる必要がある。その後、鉄道車両は前進し、相手の鉄道車両から約0.5メートル離れたところで再び停止する。最後に、鉄道車両は、前進して連結動作を完了する。この過程は、正確に適切なタイミングで(鉄道車両を動かすための)動力を課したり切ったりする相当な技術を運転手に必要とし、運転手はこのタイミングを見誤りがちである。前方への最後の駆動が勢いよく行われ過ぎると、結果として起こる連結器間の激しい揺れは、鉄道車両に立って乗っている乗車の足元を揺らす、飲み物をこぼす又は壊れやすい物品を壊す等の危険を引き起こす。一方、最後の駆動に十分な勢いがないと連結器が適切に連結せず、鉄道車両は、完全に連結解除されて後ろに戻って停止し、もう一度丸々過程を繰り返す必要があって好ましくない。
【0005】
上記動作が進行中、鉄道車両のドアはロックされたままであり、乗客は正しいホームに止まっているように見えても、降りるまでにもどかしく待つ必要がある。例えば、鉄道車両間の連結が完了するまで着席しておくように乗客に呼びかけられる等、アナウンスが鉄道車両で通常成されるが、そのような指示はしばしば無視される。同様の問題は、輸送中の貨物の損傷を防ぐために貨物車両を連結する際にも発生する。操車場において接続機関車は、連結の様子を観察しやすい位置に居る地上スタッフメンバによりしばしば遠隔操作される。しかしながら、貨物車両を連結させる安全で適時の操作のための正しい制御には、かなりの熟練が必要である。
【0006】
また、鉄道車両の連結を解除する現在の方法にも課題がある。鉄道車両を切り離す際に切り離しが成功したことを確認するために、鉄道車両を十分な距離隔てて移動する必要がある。鉄道車両の積み込み及び荷降ろしは、連結解除過程の間は行うことができない。この過程は、鉄道車両のドアがロックされており、鉄道車両の後部が連結解除されて前部から短い距離だけ離れて停止するとドアが再びロック解除されることに気づかないので、操作に不慣れな乗客に列車に乗り遅れたと思わせる懸念がある。駅では何が起こっているのか説明するアナウンスがしばしば成されるが、特にこのような技術は一般的ではないので、鉄道の運行方法に不慣れな人には理解が容易ではない。
【0007】
同様の課題は、自動連結器を備えた貨物車両の連結を解除する場合にも生じる。特定の列車の出発に際して、連結されたいくつかの貨車が不要と判断された場合、接続機関車が車両を引き離すために配置される必要があり、その際には積み込み及び荷降ろし操作が中断されるので、時間が浪費されて顧客サービスの全体効率が低下する。
【0008】
連結に関する現在のアプローチの更なる課題は、異なる連結器設計及びインターフェース規格の普及により、多くの鉄道網において異なるタイプ又は同じタイプであっても車両の相互運用性が著しく低下していることである。これにより、異常な移動が必要な場合に鉄道車両を1つの列車に連結するため、一端にあるタイプの連結器を備え、他端に異なるタイプの連結器を備えた「バリア車両」を使用しなければいけないことがある。
【0009】
いくつかの場合には、現在の連結方法における上述したような困難により、特に信頼性の欠如及び時間の浪費の面から、鉄道事業者が貨物輸送において車両の連結及び連結解除を完全に避けている。その結果、需要が少ないときであっても大容量の全長列車が常に運行され、このような状況ではより適切な短い列車編成を使用した場合と比較して、エネルギが浪費され、鉄道車両及び線路の両方において不必要な摩耗及び損傷が引き起こされる。
【0010】
従って、従来の連結器を介して鉄道車両を互いに連結するための現在の設計及び方法は、満足できるものではない。現在の連結システムの限界により、列車は、その容量を容易に変更することができず、必要に応じて鉄道車両を再配置することができない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1態様では、鉄道車両を互いに連結するための連結器であって、伸縮可能な連結器本体と、伸縮機構と、該伸縮機構を作動させるように配置されたコントローラと、鉄道車両に前記連結器を取り付けるための支持ハウジングと、を備え、
前記連結器本体及び伸縮機構は、前記支持ハウジング内に取り付けられ、前記伸縮機構は、前記支持ハウジングに対して前記連結器本体を収縮位置と伸長位置との間で任意の距離移動させるように作動され、前記収縮位置と伸長位置との間の距離は、前記連結器の連結範囲を規定し、前記連結器本体は、第2連結器の連結インターフェースとの連結のために鉄道車両の接続部を受け入れるように配置された連結インターフェースを有し、前記連結インターフェースと前記支持ハウジングとの間の距離は、前記連結器本体が前記収縮位置から前記伸長位置に向かって移動するにつれて増加し、前記連結インターフェースは、該連結インターフェースが前記連結範囲内の任意の距離で前記第2連結器の連結インターフェースと係合可能となるように、前記連結インターフェース間の接触時に前記第2連結器の連結インターフェースに係合するように配置されている。
【0012】
このようにして、本発明に係る連結器を備えた一対の鉄道車両は、鉄道車両の移動に依存せず連結(及び連結解除)することができ、一旦鉄道車両が連結器の連結範囲内に入ると、鉄道車両の更なる接続は必要とされない。
【0013】
好ましくは、前記伸縮機構は、実質的に円筒形であり、前記支持ハウジングに対して軸方向には拘束されるが自由に回転できるようにベアリング配置を介して前記支持ハウジングに取り付けられている。このようにして、伸縮機構は、支持ハウジングに対して回転することが可能である。
【0014】
好ましくは、前記連結器本体は、前記連結インターフェースを有する第1端部と、その反対側の第2端部と、を有し、前記第1端部と第2端部との間の前記連結器本体の少なくとも一部は、実質的に円筒形部分を有し、前記伸縮機構は、実質的に前記円筒形部分を包囲して該円筒形部分とねじ係合し、前記連結器本体の回転は拘束される。このようにして、伸縮機構の回転は、伸縮機構がどちらの方向に回転するかに依存して、連結器本体の伸長又は収縮を引き起こす。
【0015】
好ましくは、前記連結器は、コントローラにより作動されたときに前記伸縮機構を回転させるように配置された駆動手段を更に備える。このようにして、伸縮機構は回転駆動可能となり、連結器本体の直線移動を引き起こす。
【0016】
好ましくは、前記駆動手段は、該駆動手段が作動していないときに前記伸縮機構の回転を防止するように配置されたロック機構を有する。このようにして、連結器の軸方向移動が防止され、これは、連結器が本発明に係る別の連結器に連結されたときに望ましい。
【0017】
好ましくは、前記駆動手段は、ベルトを介して前記伸縮機構に回転可能に連結されたプーリを有するモータである。
【0018】
好ましくは、前記連結インターフェースは、前記第2端部と実質的に面して鉄道車両の前記接続部を受け入れるように配置された内方終端部と、その反対側の外側連結器ヘッドと、を有し、前記連結器ヘッドは、該連結器ヘッド間の接触時に前記第2連結器の連結器ヘッドと可逆的に係合するように配置された係合手段と、前記内方終端部から鉄道車両の前記接続部に連結して前記連結器ヘッド間の係合時に前記第2連結器の連結接触部に可逆的に連結するよう配置された連結接触部と、を有する。このようにして、連結器ヘッドは、鉄道車両の終端接続部が連結接続部を介して他の鉄道車両の接続部に連結される前に、他の連結器の連結器ヘッドと機械的に連結することができる。
【0019】
好ましくは、前記連結接触部は、雄型接触部及び雌型接触部を含む。このようにして、単一の電気インターフェース接触部により供給可能な総電流は制限され、総電流は雄型電気接触部と雌型電気接触部との間で分割される。
【0020】
好ましくは、前記係合手段は、前記連結器ヘッド間の接触中に前記第2連結器の係合手段と整列するように形成されている。このようにして、連結器ヘッドは、両者の間で機械的係合が起こるように整列され、連結器ヘッドにおける連結接触部も、両者の間で連結が許可されるように整列される。
【0021】
好ましくは、前記係合手段は、シャルフェンベルグカップ及びコーンである。
【0022】
好ましくは、前記支持ハウジングは、ジンバルフレームを介して鉄道車両に取り付けられ、前記支持ハウジングは、ベアリング配置を介して前記ジンバルフレームに回転可能に取り付けられる。このようにして、支持ハウジング及び連結器本体は、2つの連結された鉄道車両の高さでの動的変動を許容するために垂直面内で十分に旋回可能となる。
【0023】
好ましくは、前記ジンバルフレームは、ベアリング配置を介して鉄道車両に回転可能に取り付けられている。このようにして、ジンバルフレーム及び連結器本体は、連結された鉄道車両が線路のカーブを通る際の連結器本体の横方向の動きを収容するために旋回することができる。
【0024】
好ましくは、前記連結器ヘッドは、前記連結器ヘッドを保護及び/又は封止するために該連結器本体が収縮位置にあるときに前記連結器ヘッドを覆い、且つ前記連結器本体が伸長位置にあるときに前記連結器ヘッドを露出させるように配置されたカバー配置を更に有する。このようにして、連結器本体が収縮位置にあるとき、すなわち、連結器本体が使用されていないときに、連結器ヘッドの連結接触部及び係合手段が保護及び/又は封止され得る。
【0025】
好ましくは、前記ジンバルフレームは、連結器ハウジングを介して鉄道車両に取り付けられ、該連結器ハウジングは、前記連結器本体が前記収縮位置にあるときに前記連結器ヘッドが前記連結器ハウジング内にあるように前記連結器本体を実質的に包囲する。このようにして、連結器は、使用されていないとき、すなわち、収縮位置にあるときに収納され得る。
【0026】
好ましくは、前記カバー配置は、開位置と閉位置との間で移動できるように前記連結器ヘッドに旋回可能に取り付けられた第1カバー及び第2カバーを有し、前記開位置では、前記第1及び第2カバーの外縁は、前記連結接触部が露出されるように前記連結器ヘッドの連結接触部と実質的に面一となり、前記閉位置では、前記第1及び第2カバーの外縁は、前記連結器ヘッドが覆われるように互いに接触している。
【0027】
好ましくは、前記第1及び第2カバーは、前記連結器本体が前記収縮位置にあるときに、前記連結器ハウジングに対してフランジを形成するように配置される長尺な突出部を有する。このようにして、連結器本体が連結器ハウジング内に収縮されると、フランジは、連結器本体とハウジングとの間の上下のクリアランスを覆う。従って、連結器本体は、従来の連結器設計では連結機構を突き抜ける傾向があり連結器の信頼性を低下させる雪等の危険に対して十分に封止される。
【0028】
好ましくは、前記第1及び第2カバーは、前記開位置と閉位置との間の中間位置に保持され、前記連結器ハウジングは、前記カバーが互いにバイアスされて前記閉位置に移動するように、前記連結器本体が収縮位置に移動したときに前記カバーに係合するように配置されたハウジング突起を有する。
【0029】
好ましくは、前記第1及び第2カバーは、前記第2連結器の第1及び第2カバーとの接触時に前記中間位置から前記開位置に移動するように配置されている。
【0030】
好ましくは、前記第1及び第2カバーは、前記第2連結器の近接を示すために前記中間位置からの前記カバーの移動を検知するように配置されたセンサを有する。
【0031】
好ましくは、鉄道車両の前記接続部は、第1接続セット及び第2接続セットを有し、前記第2端部は、前記連結器本体への開口を有し、前記内方終端部は、前記開口を介して前記第1接続セットを受け入れるように配置されている。このようにして、第1接続セットは、連結器本体内に殆ど収容され(連結器本体が収縮位置にあるときにはより一層)、デブリや雨等の悪環境暴露から保護される。
【0032】
好ましくは、前記支持ハウジングは、前記連結器本体を受け入れて該連結器本体と実質的に平行となった長尺な梁を有し、前記連結器本体は、前記梁に面する長尺な溝を有し、前記梁は、前記連結器本体の軸方向への移動は許容するが回転移動を制限するために前記溝と係合するように配置された長尺な突起を有する。このようにして、連結器本体は、伸縮機構からの回転を介して伸長又は収縮され得る。
【0033】
好ましくは、前記梁は、プレートを介して前記支持ハウジングから遠位の端部で一緒に取り付けられ、前記開口は、前記プレートを介して前記第1接続セットを受け入れるように配置されている。
【0034】
好ましくは、前記内方終端部とプレートとの間に連結された前記第1接続セットは、該第1接続セットの伸長及び収縮を可能とするために螺旋状に配置されている。このようにして、第1接続セットは、連結器本体と連動して伸長及び収縮することができる。
【0035】
好ましくは、前記内方終端部及び第2端部は、前記連結器本体の長手方向に対して径方向に突出した突出部分を有し、前記内方終端部の突出部分は、前記第2端部の突出部分を介して前記第2接続セットを受け入れるように配置されている。このようにして、第2接続セットは、連結器本体が伸長又は収縮するときに、連結器本体と連動して移動することができる。
【0036】
好ましくは、前記第1接続セットは、低電力電気接続、空気圧接続及び光学接続のうちの少なくとも1つ又は複数を有し、前記第2接続セットは、高電力電気接続である。
【0037】
好ましくは、前記電気接続の送出可能な電流は、前記雄型及び雌型接触部の間で分割されるように配置される。このようにして、単一の電気インターフェース接点により送出可能な総電流は限定され、雄型及び雌型接触部の間の総電流は分割される。
【0038】
好ましくは、前記第2接続セットは、前記内方終端部の突出部分と前記第2端部との間に取り付けられ、且つ前記第2端部において鉄道車両のホテルバスに連結された導電ロッドを有する。
【0039】
好ましくは、前記ロッドは、該ロッドへの係合及び係合解除をスイッチするように配置されたロッド接触部を介してホテルバスに連結される。このようにして、ロッドは、ロッドを係合又は係合解除するためのロッド接触部の切り替えを介して、ホテルバスと電気的に接続又は接続解除され得る。
【0040】
好ましくは、前記ロッド接触部は、絶縁フレームを介して前記支持ハウジングに取り付けられる。
【0041】
好ましくは、前記絶縁フレームは、前記ロッドに接触するブラシを有し、該ブラシに対する前記ロッドの移動は、該ロッドから酸化を除去する。
【0042】
好ましくは、前記第2端部は、絶縁プレートである。
【0043】
前記収縮位置と伸長位置との間の距離は、前記連結器の連結範囲を規定し、前記連結インターフェースは、前記連結範囲内の任意の距離で前記第2連結器の連結インターフェースに係合するように配置されている。このようにして、連結器は、車両間の間隔の実質範囲を許可する。鉄道車両が意図したよりも離れて停車した場合、連結器は、この余分な距離に対応するために更に伸長する。逆に、ブレーキが意図したよりも少し遅れて、停止した鉄道車両が互いに接近している場合には、連結器は、より短い距離で伸長する。このように、連結器は、可変連結距離を有するので、鉄道車両の様々な操作状態に対応することができる。連結器は、本発明の別の連結器に係合及び連結するために伸長位置に達する(すなわち、完全に伸長される)必要はない。
【0044】
好ましくは、前記コントローラは、前記連結インターフェースを操作して前記第2連結器のコントローラと通信し、前記連結インターフェースと前記第2連結器の連結インターフェースとの連結及び連結解除を同期させるように配置されている。このようにして、一対の連結器間の連結は同期される。
【0045】
本発明の第2態様では、連結器を制御する方法であって、前記第2連結器から連結要求コマンドを受信するステップと、前記第2連結器に連結合意コマンドを送信するステップと、前記収縮位置から前記伸長位置に向かって前記連結器本体を伸長するステップと、前記連結インターフェース間の接触時に該連結インターフェースを前記第2連結器の連結インターフェースに係合させるステップと、前記第2連結器の連結インターフェースに鉄道車両の前記接続部の少なくとも一部を接続するステップと、を含む方法が与えられる。
【0046】
このようにして、連結器の連結及び連結解除過程が制御され得る。
【0047】
好ましくは、本方法は、前記第2連結器から連結解除要求コマンドを受信するステップと、前記第2連結器に連結解除合意コマンドを送信するステップと、前記第2連結器の連結インターフェースから鉄道車両の前記接続部を接続解除するステップと、前記第2連結器の連結インターフェースから前記連結インターフェースを係合解除するステップと、前記収縮位置に向かって前記連結器本体を収縮させるステップと、を更に含む。
【0048】
好ましくは、前記連結器本体の伸長速度は、前記連結インターフェースと前記第2連結器の連結インターフェースとの間の接触時に減少され、前記連結器本体の収縮速度は、前記連結インターフェースが前記第2連結器の連結インターフェースともはや接触しなくなると増加される。このようにして、連結器ヘッドの整列により多くの時間が与えられ、連結が起こる際の鉄道車両の一時的な移動に対応し得る。更に、連結器ヘッドが別の連結器ヘッドと連結又は連結解除していないときの連結器本体の伸長及び収縮速度が増加するので、連結及び連結解除過程の全体時間を最適化することができ、これは望ましいことである。
【0049】
好ましくは、前記連結器本体の伸長は、前記連結インターフェースと前記第2連結器の連結インターフェースとの間の係合時に停止され、前記連結器本体の収縮は、前記連結インターフェースと前記第2連結器の連結インターフェースとの間の係合解除時に開始する。このようにして、連結器が一旦連結すると、連結器の軸方向移動が防止され得る。
【0050】
好ましくは、前記連結器は、ロック状態とロック解除状態との間で切り替え可能で、前記ロック状態では、前記第2連結器から受信したコマンドは無視され、前記ロック解除状態では、前記第2連結器から受信したコマンドは無視されない。このようにして、列車編成が完了したときに連結器はロックされ得、スタッフによる誤った動作、ソフトウェアエラー又は近隣列車からの迷通信等による誤ったコマンドの拾い上げに対する更なる安全性が与えられる。
【0051】
好ましくは、前記連結インターフェース及び伸縮機構の少なくとも1つの操作は、前記連結器の操作者に警告するためのイベントを生成する。このようにして、連結器の連結及び連結解除が起こっているときに連結器のユーザは警告され、この警告に応じて連結器の有用な補助機能が実施され得る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
本発明の実施形態は、図面を参照して例示的に説明される。
【0053】
【
図2】連結器の伸縮機構で、(a)は斜視図、(b)は横断面図、(c)は縦断面図。
【
図3】鉄道車両のインターフェース接続を与える機構の斜視図で、(a)は螺旋状の高電力接続の取り付け配置を示す図、(b)は高電力導電ロッドのためのロッド接触部を示す図。
【
図4】
図3bのロッド接触部の拡大斜視図で、(a)は係合された接点を示す図、(b)は係合解除された接点を示す図。
【
図5】接点を係合及び係合解除するための機構で、(a)は絶縁体を作動させるための配置の斜視図、(b)は絶縁体の1つに対する同機構の断面図。
【
図6】(a)(b)は、連結器ヘッドの開位置及び閉位置を示す連結器ヘッドの斜視図。
【
図7】導電ロッドの終端配置で、(a)は各ロッドの雄型及び雌型電気ペアの斜視図、(b)は同配置及びロッドの過負荷保護配置の概略図。
【
図8】連結器ヘッドのシールドの平面図で、(a)(b)はそれぞれ閉位置及び開位置におけるシールドを示す図、(c)-(e)は閉位置から開位置へのシールドの移行及びシールドのバイアス配置を示す図。
【
図10】本発明に係る一対の連結器を用いて第1及び第2鉄道車両を互いに連結する過程を示す側面図で、(a)は静止した鉄道車両への別の鉄道車両の接近を示す図、(b)は静止した鉄道車両に近接して別の鉄道車両の停止を示す図、(c)(d)は鉄道車両間での連結信号のやり取りを示す図、(e)は互いに向かって伸長した各々の鉄道車両の連結器を示す図、(f)は互いに係合した連結器を示す図、(g)(h)はそれぞれ(f)の鉄道車両よりも鉄道車両が短い距離及び長い距離にある場合に互いに係合した連結器を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、本発明に係る連結器2の一実施形態を示す。連結器2は、可変距離で鉄道車両及びそれらの様々なインターフェース接続の係合及び連結のためのインターフェースを与えるために、鉄道車両への取り付けに適している。
【0055】
この実施形態では、連結器2は、ハウジング90内に取り付けられた伸縮可能なチューブ10及びその他関連する構成要素を含む。ハウジング90は、鉄道車両(不図示)に連結器2を取り付けるために、鉄道車両の好ましくは平坦な下面に取り付けられるように配置される。
【0056】
チューブ10の外端11は、別の鉄道車両に取り付けられる別の(本発明に係る)連結器への後の連結のために、連結器2が取り付けられる鉄道車両の種々のインターフェース接続を終端するように構成された連結器ヘッド80を含む。連結器ヘッド80は、両者間の接触時(又は接触後)に、別の連結器の連結器ヘッドと係合するように配置される。このようにして、一対の鉄道車両及びそれらの様々なインターフェース接続は、本発明に係る一対の連結器を介して互いに連結(又は接続)され得る。連結器ヘッド80の構成並びに係合及び連結過程については、後に詳しく説明する。
【0057】
以後、本文書において「別の連結器」及び「他の連結器」という用語は、別の鉄道車両に取り付けられる本発明に係る別の連結器を意味する。
【0058】
チューブ10は、ハウジング90の開口部4を通過し、チューブ10の(チューブ10の長手方向の長さに沿った)直線運動を引き起こすように配置された伸縮機構を含む。このようにして、チューブ10及び連結器ヘッド80は、別の連結器との係合/連結のためにハウジング90内から伸長され、別の連結器からの係合解除/連結解除の後にハウジング90内に収縮され得る。
【0059】
伸縮機構6の構造及び機能について
図2a、2b、2cを参照して説明する。これらの図は、ハウジング90又は連結器ヘッド80無しで連結器2を示している。伸縮機構6は、チューブ10を実質的に包囲し、チューブ10の外面上のねじ山13を介してチューブ10とねじ係合する回転可能なシリンダ15を含み、ねじ山13は、シリンダ15の内面上の相補形ねじ山により受容され、シリンダ15は、チューブ10と実質的に同心である。この実施形態では、ねじ山13は螺旋状の四角断面であり、チューブ10の外面の大部分はねじ山13を含む。他の実施形態では、チューブ10の中央周部分だけが、ねじ山13を含む。
【0060】
シリンダ15は、シリンダ15を受け入れるのに十分なクリアランスを持つ中心孔を有する支持ブロック20を通過する。シリンダ15の外端21は、第1スラストベアリング16aの非静止側を支持するフランジ28aを含む。シリンダ15の内端17は、第2スラストベアリング16bの非静止側を支持するカラー(環)19を含む。スラストベアリング16a、16bの静止側は、弾性的なエラストマリング18a、18bにより支持され、リング18a、18bは、支持ブロック20の各端部において広い凹部に収容される(
図2cで最もよく見られる)。このようにして、シリンダ15は、軸方向には拘束されるが、支持ブロック20に対して(シリンダ15の長手方向に沿って)自由に回転できるように、スラストベアリング16a、16bを介して支持ブロック20に取り付けられている。
【0061】
支持ブロック20には、ジンバルフレーム30内において支持ブロック20の旋回を可能とするための(水平軸Aに沿った)ベアリングを形成する堅牢な円筒伸長部23が設けられている。これは、支持ブロック20及びチューブ10が垂直面内で十分に旋回するのを許容し、2つの連結された鉄道車両での高さの動的変動を可能にする。
【0062】
支持ブロック20の内側は、ブラケット32を含む。ブラケット32は、チューブ10を受け、且つ互いに実質的に平行となった長手方向の梁33a、33bを含む。この実施形態では、梁33a、33bは、ブラケット32により支持及びブラケット32に取り付けられた外端を有する別個の構成要素である。他の実施形態では、梁33a、33bは、ブラケット32と一体であってもよい。
【0063】
各々の梁は、梁の長さ方向に亘って設けられ、チューブ10に面する長手方向リブを含む。チューブ10は、梁33a、33bのリブを受けるチューブ10の両側に長手方向の溝14を有する。このようにして、チューブ10は、回転的に拘束されるが、軸方向(チューブ10の長手方向の長さに沿って)には移動可能となる。言い換えれば、チューブ10の回転は、支持ブロック20、より具体的にはブラケット32の梁33a、33bにより拘束される。
【0064】
リブと溝14との間の配置は、ある程度のクリアランスを与えるが、伸縮可能なチューブ10が大きく回転するのを防ぐのに十分で、これにより、後述するように鉄道車両のインターフェース接続の適切な接続のためにチューブ10の正しい向きを維持する。
【0065】
梁33a、33bの(支持ブロック20から最も遠い)内端は、後述するように、伸縮可能なチューブ10内で行われる様々なサービスの受容点であるエンドプレート34を介して接合される。この配置は、梁33a、33bが伸縮可能なチューブ10に対して正しい長手方向整列を保つことを保証する。
【0066】
ブラケット32の形状は、支持ブロック20の内部へのシリンダ15の組み付け、且つシリンダ15上へのカラー19のねじ込みを介して達成される、シリンダ15上へのカラー19の組み付けのためのクリアランスを与える。
【0067】
エラストマリング18a、18bは、スラストベアリング16a、16bと支持ブロック20との間で圧縮される。リング18a、18bが圧縮される程度は、カラー19が移動シリンダ15にどの程度ねじ込まれているかにより決定される。そのため、この配置における復元性の程度は、カラー19を所望位置にロックする前に、連結器2を通る特定の牽引力又は遅延力の影響下で、連結器2の所定の小さな動きを与えるように調整され得る。
【0068】
シリンダ15の外端21に近接するシリンダ15の周部は、一体型歯付きプーリ22を形成する歯を含む。他の実施形態では、歯付きプーリ22は、シリンダ15と一体である代わりに、シリンダ15の周部に取り付けられる別個の部品である。
【0069】
伸長モータ24は、ブラケット配置を介して支持ブロック20に取り付けられる。電気的又は空気圧的に操作され得るモータ24は、小径の歯付きプーリ25を備えている。モータプーリ25は、歯付きベルト26を介してシリンダ15の一体型歯付きプーリ22に回転可能に連結されている。従って、モータ24の回転はシリンダ15の回転を引き起こし、モータ24は作動するとシリンダ15を駆動する手段として機能する。このようにして、モータ24は、シリンダ15に回転駆動を与え、その結果、チューブ10の直線運動を引き起こすことができる。
【0070】
シリンダ15が軸方向に拘束されているが支持ブロック20に対して自由に回転することができ、チューブ10が梁33a、33bを介して回転拘束され、チューブ10がシリンダ15とねじ係合しているので、チューブ10の直線運動はシリンダ15の回転に伴って起こる。
【0071】
チューブ10の直線運動の方向は、モータ24及びシリンダ15が回転している方向に依存する。従って、伸長モータ24を操作すると支持ブロック20に対する伸縮可能チューブ10の移動が引き起こされ、モータ24の回転方向に応じて、外端11が支持ブロック20から離れるように伸長するか、外端11が支持ブロック20に向かって収縮する。
【0072】
チューブ10は、その伸縮範囲よりもやや長い(すなわち、収縮位置と伸長位置との間の範囲よりも長い)。チューブ10の外端11は、チューブ10に連結器ヘッド80(
図2aでは不図示)を取り付けるためのフランジ28bを有する。チューブ10の内端12は、後述する絶縁プレートを取り付けるための取付孔を表面に有する。
【0073】
伸長モータ24は、動力がモータ24に課されていない、すなわち、モータ24が作動されていないときには、心棒が所定位置にロックされて回転できないように配置されている。これは、チューブ10が所定位置に到達して伸長モータ24が停止したときに、伸縮可能なチューブ10が支持ブロック20に対してその位置に固定され、使用中にチューブ10に課され得る振動及び力の影響で動かないことを保証する。当業者は、モータ24に動力が課されていないときに、その心棒が所定位置にロックされるようにするには、どのように伸長モータ24を構成すればよいか理解するであろう。例えば、モータに動力が課されていないときに、電磁石によって操作される歯がモータ24のシャフト上のギアホイールに係合し、その結果、シャフトが回転するのを防止する。
【0074】
チューブ10の限界位置は、チューブ10が限界位置に達するとモータ24を停止させるように検知可能となっている。このようにして、チューブ10の伸縮可能な範囲は、決定及び制御され得る。これは、チューブ10が完全に伸長した限界位置及び完全に収縮した限界位置に達したことを検知することができる感知配置を介して達成される。この実施形態では、感知配置は、チューブ10の溝14の一方の底部に接触するローラを有する一対のマイクロスイッチである。ローラは圧縮され、適切な限界位置で小さな穴又は窪みに遭遇すると解放される。ローラの解放は、モータ24の停止を引き起こす。言い換えれば、連結器2が使用されていないときに、1つのスイッチが完全に収縮した位置を感知するように配置され、別のスイッチがチューブ10の完全に伸長した位置を感知するように配置される。このようにして、チューブ10の伸縮可能範囲は、連結器2の製造中に決定され得る。他の実施形態では、感知配置は、一対のマイクロスイッチではなく、その代わりにモータ24を停止させるためにチューブ10の限界位置を検知することができる何らかの他の適切なセンサである。
【0075】
本発明に係る一対の連結器は、完全に伸長した位置に達する前に伸長モータ24を停止させるので、チューブ10の完全に伸長した位置は、操作中には通常達することはない。
【0076】
しかしながら、この位置は、整備のための試験条件下や、連結されるべき2つの鉄道車両が誤って遠く離れて停止した場合に達し得る。
【0077】
ジンバルフレーム30は、実質的に矩形であり、連結された鉄道車両が線路のカーブを通る際にチューブ10の横方向への移動を収納するためにジンバルフレーム30及びチューブ10の(垂直軸Bに沿った)旋回を可能とするベアリング配置31a、31bを上面及び下面に含む。実際には、ジンバルフレーム30は、支持ブロック20と共に、連結器2が中心点(すなわち、軸Aと軸Bの交点)を中心に任意の方向に旋回できるようにする。
【0078】
本実施形態では、ベアリング31a、31bは、ハウジング90を介して鉄道車両構造に堅牢に取り付けられている。ハウジング90は、ベアリング31a、31bを支持する。従って、堅牢なハウジング90は、連結器2と連結器2が取り付けられた鉄道車両との間の牽引力及び遅延力を担持する。他の取り付け配置も、鉄道車両の構造に応じて可能である。いくつかの実施形態では、ハウジング90が無く、ジンバルフレーム30が鉄道車両に直接取り付けられ得る。取り付け配置は、鉄道車両の設計に依存するが、連結器2が対応できる最大の牽引力及び制動力に十分耐えるものとされる。
【0079】
圧縮バネ36は、連結器ヘッド80が2つの限界位置の間の中ほどまでの距離に伸長したときに、チューブ10が垂直旋回限界に留まるよう、連結器ヘッド80の構成要素重量が釣り合い、外端11で下方に傾くのではなくチューブ10がその長手軸と実質的に平行となるように、支持ブロック20とブラケット32との間に挿入される。更に、この配置は、連結器2が伸長位置から収縮位置へと収縮したときに、チューブ10の重心移動により連結器ヘッド80が上がって伸長機構6の内方側が落ちることで、鉄道車両ボディの下側と伸長機構6との間に大きなクリアランスを与えることも保証する。使用中に起こり得るバネ36の振動を制限するために、ダンパ(不図示)がバネ36内に嵌め込まれる。
【0080】
チューブ10、シリンダ15及び支持ブロック20は、金属のような構造的に堅牢な材料から構成される。
【0081】
連結器2と鉄道車両のインターフェース接続との連結について説明する。本実施形態では、別の連結器への連結のために連結器ヘッド80で終端するように配置された3タイプのインターフェース接続が存在する。これらのタイプのインターフェース接続は、電気接続、空気圧接続及び光学接続である。
【0082】
より具体的には、本実施形態のこれらインターフェース接続は、圧縮空気(ブレーキ、サスペンション、ドア等)、ECPブレーキ用の電源及び制御線、目標速度及び加減速制御、列車情報バス(列車管理コンピュータとのインターフェース)、車内スタッフ間のベル信号、ドア開閉制御(列車の各側面)、デジタルデータバス(ビデオカメラ、オーディオリンク、警報メッセージ、WiFiルータへのフィード、将来の設備等)、連結イベント信号、そして、ホテルバス(空調、照明、列車内設備等)を含む。他の実施形態は、連結器2が取り付けられるように設計された鉄道車両のタイプに応じて、追加又はより少ないインターフェース接続を含み得る。
【0083】
当業者は、上述のインターフェース接続が、一対の鉄道車両を連結する際に連結される必要のある主要タイプのインターフェース接続であることを理解するであろう。当業者は、上述のインターフェース接続が網羅的なリストではなく、鉄道車両のタイプ又は車両内に設けられた設備に応じて、連結される必要のある多くの更なる補助的なインターフェース接続があることを理解するであろう。本発明の連結器2は、これらの様々な補助接続を収容することが可能であるが、これらのインターフェース接続タイプの網羅的リストを与えることは本書の範囲を超えることから、インターフェース接続の主要タイプのみ説明する。
【0084】
以降、「接続」という用語は、鉄道車両のインターフェース接続を意味する。
【0085】
図3aに示すように、接続は、第1接続セット及び第2接続セットに分けられる。第1接続セットは、低電力電気接続、空気圧接続及び光学接続(すなわち、ホテルバスを除く上でリストアップした接続の全て)を含む。第2接続セットは、ホテルバスのような高電力電気接続を含む。
【0086】
第1接続セットが連結器ヘッド80との間で移動する必要の有る大きな可変距離は、これら接続をここでは参照として組み込まれる出願EP3590785A1に記載されているような柔軟な螺旋構造で配置することにより対応される。特に、柔軟な螺旋コネクタ46は、外側シース内に収容される対応する螺旋チューブから成る。
【0087】
螺旋チューブは、圧縮空気を含み、空気圧接続として機能する。このようにして螺旋チューブ及び螺旋コネクタ46は、伸縮可能で伸長及び収縮することができる。
【0088】
圧縮空気を含む螺旋チューブは、螺旋チューブに取り付けられる電線のような低電力電気接続や光ファイバのような光学接続のための支持構造を与える。低電力電気接続及び光学接続は、螺旋チューブの外表面に取り付けられる。この取り付けは、電線や光ファイバを螺旋チューブの周りに巻き付ける及び/又は螺旋チューブ周囲の柔軟材料に埋め込むことによって達成され得る。螺旋チューブ内の空気圧は、低電力電気接続及び光学接続の移動がある程度は制約されるが(すなわち、過度に弛まない)、引っ掛かったり捻れたりすることなく螺旋チューブと連動して伸長及び収縮可能なように、螺旋チューブの構造を安定させるのに役立つ。螺旋コネクタ46の外側シースは、第1接続セット(すなわち、螺旋チューブ、低電力電気接続及び光学接続)を包んで保護する。
【0089】
第1接続セットに加えて、連結器ヘッド80と鉄道車両との間を通過して連結器2の操作に関連する電気接続も、螺旋コネクタ46内に含まれる。
【0090】
伸縮可能チューブ10の外端11及び内端12の両方に固定されるのは、絶縁プレート43a、43bである(伸縮可能チューブ10は、
図3aでは示されていない)。プレート43a、43bは、チューブ10の端部11 、12 に固定されているので、実質的に互いに対向している。
【0091】
この実施形態では、プレート43aは、連結器ヘッド80の一部である。いくつかの実施形態では、プレート43a、43bは、チューブ10の端部11、12と一体で、端部に取り付けられる別の構成要素ではない。
【0092】
絶縁プレート43a及びエンドプレート34は、それぞれ終端ボックス45a、45bを支持する。第1接続セットは、鉄道車両内の様々な接点から終端ボックス45bによって受け取られ、そこで終端される。接続は、柔軟な被覆シース48を介して鉄道車両から終端ボックス45bに渡される。
【0093】
シース48は、ジンバルフレーム30に近接する梁33a、33bの一方に固定される。ジンバルフレーム30に近接してシース48を固定することにより、連結器ヘッド80が曲がった線路での鉄道車両の動きに対応しようと旋回するときに、接続の柔軟性が鉄道車両本体と伸縮機構6との間の小さな相対移動に追従することが可能となる。
【0094】
螺旋コネクタ46は、絶縁プレート43bの開口を通過し、絶縁プレート43aとエンドプレート34との間に取り付けられる。より具体的には、螺旋コネクタ46の一端が、絶縁プレート43aの開口を通過して終端ボックス45aで終端され、螺旋コネクタ46の反対側の他端は、終端ボックス45bで終端される。
【0095】
図3aでは見ることができないが、プレート43a、43bの間を通過する螺旋コネクタ46の部分は、伸縮可能なチューブ10内に含まれる。
【0096】
終端ボックス45bで終端された第1接続セット(すなわち、鉄道車両から受け取ったもの)は、螺旋コネクタ46内で個々の接続に連結され、この接続は、次いで連結器ヘッド80(
図3aに示されていない)との連結/接続のために終端ボックス45aで終端及び分離される。言い換えれば、終端ボックス45aは、エンドプレート34及び絶縁プレート43bの開口を介して第1接続セットを受けて終端するように配置されている。
【0097】
その結果、絶縁プレート43aに取り付けられた螺旋コネクタ46の端部は、伸長及び収縮を含むあらゆる方向の連結器ヘッド80の動きに追従するが、エンドプレート34に取り付けられた螺旋コネクタ46の端部は、ジンバルフレーム30の中央の旋回点から一定の距離にあり、横及び垂直方向には移動できるが軸方向には制限される。従って、螺旋コネクタ46は、伸長度合いによって決定されるように大部分が伸縮チューブ10の内側に位置して一部が外側に飛び出した状態で伸長及び収縮移動のみを収容し、鉄道車両の高度な振動や一時的な動きに対応可能な固定配置となる。
【0098】
螺旋コネクタ46内の電気接続の螺旋配置は、比較的細い電線を必要とする低レベル信号及び控えめな量の電力には十分である。しかしながら、この配置は、大量の電力を伝達するためには比較的太いワイヤ/ケーブルが通常必要とされ、これらの太いワイヤは他の細い接続の螺旋形成と統合するのが困難であるので、高電力の電気接続を統合するのには適していない。
【0099】
上述したように、第2接続セットは、暖房、照明、空調及び他の列車内サービスに電力を供給するための高電力電気接続を含む。より具体的には、第2接続セットは、絶縁プレート43a、43bの間に取り付けられた3つの導電ロッド40a、40b、40cを含む。
【0100】
ロッド40a、40b、40cがチューブ10、伸縮機構6及び支持ブロック20の外側でプレート43a、43bの間に取り付けられるように、絶縁プレート43a、43bは、チューブ10の端部11、12から径方向に拡がっている。ロッド40a、40b、40cは、支持ブロック20とジンバルフレーム30との間を通る。
【0101】
絶縁プレート43aの角部は、チューブ10が伸長位置と収縮位置との間で移動しているときにモータ24を収容するために切り欠かれている。絶縁プレート43bも、接触子モータ65(後に説明する)を避けるために切り欠かれた角部と、チューブ10の移動時に梁33a、33bを収容するための更なるカットアウェイ部と、を有する。いくつかの実施形態では、絶縁プレート43a、43bは切り欠かれた角部を有さず、モータ24、65は、絶縁プレート43a、43bと干渉しないように連結器2に取り付けられてもよい。
【0102】
ロッド40a、40b、40cは、
図3bに別途図示している絶縁接触フレーム50を通過する。接触フレーム50は、弾性的な取り付け配置52を介してブラケット32に取り付けられている。接触フレーム50は、ロッド40a、40b、40cをそれぞれ受ける3セットの電気ロッド接触部51a、51b、51cを含み、各ロッド40a、40b、40cは、個々の電気ロッド接触部51a、51b、51cを通る。いくつかの実施形態では、あまり好ましくないが、接触フレーム50は、代わりに各々のロッド毎に3つの別個のフレームであり得る。
【0103】
ロッド接触部51a、51b、51cは、鉄道車両のホテルバスからロッド40a、40b、40cに電力を供給するように配置され、物理的に係合している個々のロッド40a、40b、40c又は係合解除している個々のロッド40a、40b、40c間で切り替えるように配置されている。このようにして、ロッド接触部51a、51b、51cは、ホテルバスからロッド40a、40b、40cへの電力を接続又は接続解除することができる。
【0104】
接触フレーム50は、支持ブロック20に間接的に取り付けられているので、伸縮機構6の全ての角度移動に追従し、ロッド40a、40b、40cとの正しい整列を維持する。使用時における鉄道車両の牽引力又は制動力の一時的変化は、(リング18の圧縮又は膨張による)支持ブロック20に対する伸縮可能チューブ10の移動を引き起こし、また、比較的コンプライアントな弾性的取り付け配置52により、接触フレーム50の同様の移動も引き起こす。言い換えれば、ロッド接触部51a、51b、51cがそれぞれのロッド40a、40b、40cに係合していると、ロッド接触部51a、51b、51cは、ロッド40a、40b、40cにしっかりとクランプしたままで使用時に軸方向に変位しないので、ロッド40a、40b、40cに対するあらゆるスライド移動から生じるロッド接触部51a、51b、51cの摩耗及び破損が避けられる。
【0105】
図4a、4bは、これらロッド接触部51の1つを示し、ロッド接触部51a、51b、51cは、構造及び機能において実質的に同一である。ロッド接触部51は、ロッド40を越えて径方向に配置された4つのスプリング接触部53a、53b、53c、53dを含む。
【0106】
スプリング接触部53a、53b、53c、53dは、ロッド40に向かって変位して係合するようにバイアスされている(所望の圧力のために適切な位置で4つすべての接点を囲むサークリップ型構成)。スプリング接触部53a、53b、53c、53dの外端は、スプリング接触部53a、53b、53c、53dが比較的大きな接触面積でロッド40をしっかりと把持できるように、大きな表面積を持つ凹状の対合面を有する。スプリング接触部53a、53b、53c、53dは、スプリング接触部がロッド40に係合しているときにスプリング接触部53a、53b、53cからロッド40に電流をより均等に分配するため、接触領域がロッド40のすべての側面上に形成され得るように等距離に配置され、各々のスプリング接触部は、鉄道車両のホテルバスによって与えられる総電流の1/4を供給する。いくつかの実施形態では、スプリング接触部53a、53b、53c、53dは、等距離に配置されていなくてもよい。
【0107】
フレキシブルケーブルは、スプリング接触部53a、53b、53c、53dの各々及び鉄道車両に取り付けられた接続ブロックに連結され、この接続ブロックは、鉄道車両を通過する対応ホテルバスラインへのその後の接続のために、各スプリング接触部の4つの電流フローを再結合する。このようにして、鉄道車両のホテルバスは、スプリング接触部53a、53b、53c、53dに連結され、次いで、ホテルバスをロッド40に連結する。接触フレーム50はジンバルフレーム30の旋回点近傍にあるので、フレキシブルケーブルによって吸収される必要の有る相対移動は比較的小さい。いくつかの実施形態では、スプリング接触部は4つより多くても少なくてもよい。
【0108】
従って、ロッド40a、40b、40cは、単相3線交流電圧供給を与えるために、好ましくはセンタータップされた3線高電力電気分配システムを与えるように配置される。
【0109】
この実施形態では、ホテルバスは、200Aの電流容量を有する50又は60Hz、2000VのAC電圧供給を与える。ロッドの1つは典型的には接地されたセンタータップを形成し、他のロッドの各々は1000V供給を与える。いくつかの実施形態では、従来の単一電圧を供給するために2つのロッドだけがある。
【0110】
図4aは、ロッド40を把持しているスプリング接触部53a、53b、53c、53dを示す。
図4bに示すように、スプリング接触部53a、53b、53c、53dとロッド40との間の接触は、ロッド40とスプリング接触部53a、53b、53c、53dの対合面との間に絶縁体54を介在させることにより遮断/防止され得る。この場合、絶縁体54は、バイアスに抗してスプリング接触部53a、53b、53c、53dを変位させ、絶縁体がロッド40とスプリング接触部53a、53b、53c、53dとの間に介在して該接触部からロッド40を電気的に絶縁するように該接触部をロッド40から離す。
【0111】
本実施形態では、絶縁体54は、セラミック材料により構成される。他の実施形態では、絶縁体54は、代替の好適な絶縁材料により構成され得る。
【0112】
絶縁体54は、ロッド40を包囲してロッド40に取り付けられている。絶縁体54の形状は、絶縁体54を介在させたときに両者の間で「ラッチ」動作を与えるように構成されている。
【0113】
接触フレーム50は、ロッド40a、40b、40cへのホテルバスの電気的接続(及び電気的接続解除)を制御するホテルバス制御機構を含む。ホテルバス制御機構は、絶縁体54を、ロッド40とスプリング接触部53a、53b、53c、53dとの係合を許容する退避位置と、ロッド40とスプリング接触部53a、53b、53c、53dとの係合を阻止する介在位置との間で絶縁体54を可逆変位させるように配置されている。このようにして、絶縁体54は、
図4a及び
図4bにそれぞれ例示されるように、「接続」位置及び「接続解除」位置という2つの安定した位置を占め得る。
【0114】
言い換えれば、
図4aは、ホテルバスからロッド40への電力供給を許容する係合又は接続状態にあるロッド接触部51を示し、
図4bは、ホテルバスからロッド40への電力供給を防止した係合解除又は接続解除状態にあるロッド接触部51を示している。
【0115】
ホテルバス制御機構は、
図5a、5bに示されている。絶縁平板60は、平板60が接触フレーム50に面して平行となるように、支持柱67を介して接触フレーム50に取り付けられている。平板60は、接続位置と接続解除位置(それぞれ
図4a、4bに図示)との間でロッド接触部51a、51b、51cの絶縁体を可逆的に変位させるための配置を含み、絶縁体が同時に変位される。実際には、この配置は、伸縮可能チューブ10の伸長及び収縮の間にロッド接触部51a、51b、51cを個々のロッド40a、40b、40cから係合解除し、例えば、連結器ヘッド80が別の連結器の連結器ヘッドに連結したときのように伸縮可能チューブ10が移動を停止したときに、ロッド接触部51a、51b、51cが個々のロッド40a、40b、40cに係合するように、制御システムを介して配置された3極接触子として機能する。
【0116】
(特に)伸縮機構6の制御及びロッド接触部51a、51b、51cの切り替えを担当する制御システムについては、後に詳細に説明する。
【0117】
図5aに示すように、平板60は、歯付き駆動プーリ64を有する接触子モータ65を含む。接触子モータ65は、電気的又は空気圧的に操作され得、伸長モータ24と同様のロック配置を含み、接触子モータ65の心棒は、電力が接触子モータ65に供給されていないとき、すなわち、接触子モータ65が作動していないときには所定位置にロックされて回転することができない。
【0118】
駆動プーリ64は、接触子ベルト63を介して3つの従動プーリ61a、61b、61cに回転可能に連結され、従動プーリは、ベアリングを介して平板60に取り付けられている。このようにして、接触子モータ65の回転は、従動プーリ61a、61b、61cの回転を引き起こす。
【0119】
図5bは、従動プーリ61の断面を示し、ロッド接触部51は示していない。従動プーリ61a、61b、61cは、構造及び機能において実質的に同一である。従動プーリ61は、従動プーリ61内において径方向に取り付けられたねじ付きカラー62を含む。ねじ付きカラー62は、従動プーリ61とねじ付きカラー62とがねじ係合するように、従動プーリ61内面のねじ切りと係合する。
【0120】
ねじ付きカラー62は、カラー62がロッド40に接触しないように、十分なクリアランスを持ってロッド40を包囲する。ねじ付きカラー62は、従動プーリ61を避けるように軸方向に(接触フレーム50に向かって)突出し、伸長部59を含み、伸長部59のスロットを介して支持柱67に取り付けられている。その結果、ねじ付きカラー62は、接触子モータ65及び従動プーリ61の回転が、接触子モータ65の回転方向に応じて接触フレーム50又は平板60に向かうねじ付きカラー62の軸移動を引き起こすようにして回転的に拘束される。
【0121】
伸縮可能なチューブ10の限界位置を感知するための配置と同様に、ねじ付きカラー62aは、ねじ付きカラー62aの限界位置を検知し、これら限界位置を検知したときに接触子モータ65の作動を停止するように配置された一対のマイクロスイッチのようなセンサ配置68を含む。
【0122】
絶縁体54は、バネのようなバイアス手段55を介してねじ付きカラー62に取り付けられ、このバイアス手段は、絶縁体54の形状に沿って、絶縁プレート54の2つの安定位置、すなわち、ロッド接触部51がロッド40に接続できる「接続」位置とロッド接触部51をロッド40から接続解除された「接続解除」位置に対してラッチ機能を提供する。言い換えれば、絶縁体54のラッチ配置は、ロッド接触部51とロッド40との間で接続の2つの安定した状態を与える。
図5bは、接続位置にある絶縁体を示す。絶縁体54は、接触フレーム50に対してバイアスされ、所定の位置にラッチされる。ねじ付きカラー62が接触フレーム50に向かって軸方向に移動すると、絶縁体54は、バイアス手段55の圧縮圧力により接触フレーム50から離れるようにますますバイアスされ、この圧力がロッド40に対してロッド接触部51のスプリング接触部をバイアスさせるサークリップ配置の力に打ち勝つ。その結果、スプリング接触部が離れ、絶縁体54が接触フレーム50から離れるように移動して絶縁体54の表面がスプリング接触部に係合し、すなわち、
図4bに示す「接続解除」位置が達成される。
【0123】
スプリング接触部と導電ロッド40の間に絶縁体54が介在することで、スプリング接触部は、導電ロッド40から離れるように移動されて接続解除となる。これは、特定の条件下で発生し得るアーク放電を抑制する。逆の操作では、ねじ付きカラー62が
図5bの元位置に向かって(すなわち、平板60に向かって)戻されると、バイアス手段55は、バネと絶縁体54の対合面の間の対合力に打ち勝つまで、接触フレーム50に向かって絶縁体54を更にバイアスする。スプリング接触部は、短時間更に外方に移動し、絶縁体を
図4aに示した「接続」位置へと接触フレームに対してスプリングバックさせるために開放する。これにより、スプリング接触部は導電ロッド40に対してスプリングバックし、ロッド接触部51の「接続」状態が再開される。
【0124】
このように、接触子モータ65は、ねじ付きカラー62a、62b、62cの移動及び個々の絶縁体の移動を同時に制御するように配置され、ロッド接触部51a、51b、51cの個々のロッド40a、40b、40cに対する係合及び係合解除の切り替えを可能とする。
【0125】
鉄道車両は数週間又は数ヶ月間に亘って同一の隣接鉄道車両との列車編成の一部で、連結器2は稀にしか収縮及び伸長され得ないので、ロッド接触部51a、51b、51cがロッド40a、40b、40cの異なる軸方向位置に係合するように連結器2が収縮及び伸長したときに、導電ロッド40a、40b、40cは、酸化を受けて電気接触不良となり得る。同様に、鉄道車両が、別の鉄道車両と連結される前に長期間他の車両に連結されない場合も、導電ロッド表面の酸化又は他の汚染物質により電気的接触不良を与え得る。この効果は、平板60に取り付けられたグラスファイバ製スクラッチブラシ配置66の設置により打ち消される。ロッド40は、ブラシ配置66を通過する。その結果、伸長位置と収縮位置との間のチューブ10の軸方向移動により、ロッド40a、40b、40c、42がブラシ配置によってこすられ、ロッド上の酸化を除去するのに役立つ。連結器2は、収縮位置(すなわち、使用されていない状態)ではロッド接触部51a、51b、51cとブラシ配置との間の距離よりも長くかなりの距離を収縮しているので、連結器2が再び伸長したときに、ロッド接触部51a、51b、51cが個々のロッド40a、40b、40cに係合する直前に、ロッド接触部51a、51b、51cにより係合されるであろうロッドの部分は、常に綺麗にこすられる。絶縁体54は、絶縁体54の内側において径方向に設けられポリエステルフィルムのような軟質のライニング69を含む。ライニング69は、絶縁体54がロッド40に対して滑らかにスライドすることを可能にするだけでなく、絶縁体54が接続位置にスプリングバックしてロッド接触部51がロッド40に係合する直前に、(ロッド40をこすった際に)ブラシ配置66が生み出したデブリをロッド40から最後に拭き取る材料により構成されている。このようにして、チューブ10の軸方向移動による接触摩耗が緩和され、連結及び連結解除操作の頻度が少ない条件下でもより信頼性の高い電気接触が達成される。
【0126】
連結器ヘッド80と別の連結器の連結器ヘッドとの間の連結又は連結解除過程の間に、高電力の電気ロッド接触部51a、51b、51cは、例えば、連結器ヘッド間の電気アークを避けるために、安全上の理由から個々のロッド40a、40b、40cから接続解除されるべきである。
【0127】
本発明の連結器を用いてホテルパワーを与えることが可能な全ての鉄道車両は、連結器2への高電力電気供給のオンオフを切り替えるための接触子及び/又は他の配置を備え、その切り替え機能の制御は、(特に)連結イベント信号により影響されることが想定される。連結イベント信号は、本発明に係る一対の連結器における第2接続セットが連結されようとしているときに、(第2接続セットを介して)連結器2の高電力電気供給が急速にスイッチオフされるように配置される。また、連結イベント信号は、全ての連結又は連結解除活動が完了したときにだけ、鉄道車両のホテルバスにロッド40a、40b、40cを再接続するための手順を開始するように配置される。この機能は、鉄道車両上の他の方法によっても賄うことができるが、連結器2に対する局所的な追加保護は、鉄道車両の故障時や連結器2が使用されていないときの更なる安全性のために有利である。
【0128】
従って、連結器ヘッド80の伸長又は収縮の間のロッド40a、40b、40cからのロッド接触部51a、51b、51cの接続解除に加えて、制御システムは、連結器ヘッド80の接触が別の連結器への接続又は接続解除の過程にある場合に、この接続解除が連結の後又は連結解除の前の期間にも維持されるように手配する。連結過程が完全に完了したことが確認された場合にのみ、ロッド接触部51a、51b、51cは、再びロッド40a、40b、40cに係合することが許可される。連結器2のステータスが「収縮、使用されていない」の場合には、制御システムは、ロッド接触部51a、51b、51cが接続解除された状態のままであることを保証する。
【0129】
連結器ヘッド80における接触の構成については後述する。
【0130】
ホテルバス制御機構は、ホテルバス配線を保護するために過負荷保護回路に組み込むことができる便利なローカル接触子を与える。これは、その機能を他の場所で与える必要性を回避する。ホテル電源は、独自の過負荷保護配置を含み得るが、同じ列車編成に複数の電源が存在する可能性があるため、これらの装置は、それらが接続されるすべてのホテルバス配線の能力と必ずしも一致しなくてもよい。また、ホテル電源の設置は、あるタイプの車両には有用であるが、高電力電気配線の最大許容電流は、鉄道車両が必要とするよりもずっと多く(長い豪華観光旅客列車にもおそらく十分)、ホテルバス接続に低電流配線を用いることで費用が節約され得る。従って、連結器2に特有の局所的な過負荷保護配置を用いることで、許可される電流供給は、鉄道車両に局所的に設置されるホテルバス配線の能力に一致させ得る。
【0131】
いくつかの実施形態において特定車両の電流要件が大きすぎない場合には、ロッド40a、40b、40cが、代わりに比較的太い導電ワイヤ/ケーブルで置換され得る。この場合、ワイヤ/ケーブルは、例えば、螺旋状又は折り畳み構造のケーブルを使用したり、バネ付きリール上にケーブルを巻き付けたりして、必要な距離を伸長又は収縮するように配置される。更に、ロッド及びロッド接触部の接触子機能は、連結又は連結解除操作の間及び過負荷条件下では、高電力線の接続解除を与えるための代替の適切な配置に置換され得る。
【0132】
図6a、6bは、連結器ヘッド80を示す。先に説明したように、連結器ヘッド80は、絶縁プレート43a(
図3aに見られる)を介してチューブ10のフランジ28bに取り付けられる。連結器ヘッド80は、絶縁プレート43aに取り付ける内側面と、シャルフェンベルグ概念を用いて連結インターフェース84として構成された反対側の外側面とを有する実質的に矩形の本体86を備える。
【0133】
この実施形態では、絶縁プレート43aは、連結器ヘッド80が取り付けられる別個の部材であり、連結インターフェース84のインターフェース接触部に連結されるプレート43aの終端接続のために連結器ヘッド80内にチャンバを与える。他の実施形態では、絶縁プレート43aは、連結器ヘッド80と一体であってもよい。
【0134】
連結インターフェース84は、機械的連結配置と、第1及び第2接続セットが連結するためのインターフェース接触部と、を含む。機械的連結配置は、一対の連結器ヘッド間の接触時(又は接触後)に、別の連結器の連結器ヘッドに連結器ヘッド80を機械的に連結するように配置される。第1及び第2接続セットのためのインターフェース接触部は、連結器間で機械的連結が起こった後に、他の連結器にこれら接続セットを連結するように配置されている。
【0135】
機械的連結配置は、連結インターフェース84の中央部分に取り付けられ、シャルフェンベルグカップ81及びコーン82を含み、コーン82内に含まれるリンクが他の連結器ヘッドのカップ内のシャルフェンベルグディスクと係合する前に、連結器ヘッド80を別の連結器ヘッドのカップ及びコーンに整合させるように配置され、一対の連結器ヘッドを互いに機械的に連結する。
【0136】
シャルフェンベルグ連結器の典型として、連結器2が別の連結器に完全且つ正しく連結されていない場合には、空気圧インターフェース接続を遮断するように配置された連結インターフェース84のオリフィス77を介して、空気圧インターフェース接続を制御する配置が含まれている。また、連結器ヘッド80は、連結器2の連結解除過程中に別の連結器からの機械的連結解除を開始するための空気圧シリンダ(不図示)を含む。この空気圧シリンダは、後に説明するように、連結器制御システムからの電気信号によって指示されると、シリンダに圧縮空気を入れる連結器ヘッド80内のソレノイドバルブにより制御される。
【0137】
当業者は、機械的連結配置及び第1及び第2接続セットのためのインターフェース接触部が、どのようにしてシャルフェンベルグ連結器(すなわち、シャルフェンベルグカップ及びコーンを介して)により別の連結器に連結されるか理解するであろう。
【0138】
いくつかの実施形態では、連結インターフェース84は、別の連結器に連結器ヘッド及びインターフェース接触部に連結される鉄道車両の接続部を適切に連結するために代替的な連結概念を用いて構成され得る。
【0139】
電気(低電力及び高電力の両方)及び光学インターフェース接続のためのインターフェース接触部は、雄型セットの接触部83及び雌型セットの接触部84という2セットのインターフェース接触部として機械的連結配置の両側に配置されている。インターフェース接触部の空間配置は、連結インターフェース84の広いが制限された高さ構成を与える。この配置は、利用可能な垂直高さが制限された鉄道線路に近い鉄道車両下方の連結器2の取り付け位置に適している。
【0140】
雌型接触部84は連結器ヘッド80の一側に固定され、雄型接触部83は連結器ヘッド80の他側に位置するが、これらは連結器ヘッド80に対して相対移動可能となっている。一対の連結器ヘッド間の機械的連結の後、雄型接触部83は、他の連結器ヘッドの雌型接触部に向かって移動して接続するように配置され、この技術はよく知られており、当業者はこの特徴をどのように実行するか理解するであろう。すべての雄型接触部、電気及び光学インターフェース接続は、後述するような接続制御過程の制御下で一緒に移動する。連結器ヘッド80の一側に雄型接触部83を配置し、他側に雌型接触部84を配置することにより、反対方向に相対する別の連結器ヘッドとの接続に必要な対称性が与えられる。連結器ヘッドの接触部に接続する各車両からのインターフェース信号は重複しており、各々の信号は、雄型接触部及びそれに等価な雌型接触部の両方に平行に行く。
【0141】
この配置は、接触部83、84の両グループが個々の鉄道車両間の連結を成功させるために他の連結器の個々の接触部に正常に連結する必要がないので有利である。言い換えれば、例えば、1つの連結器ヘッドにおける雄型接触部の移動機構の故障又はトラップされたデブリが特定対の接触部間で接触不良を引き起こすことで、接触部対の1つで接続の一部又はすべてが失敗した場合、接触部グループにおいて他の正しく接触された対が、一対の鉄道車両の接続部の連結を維持するのに十分である。このようにして、連結インターフェース84のインターフェース接触部は、1セットの接触部のみを与える配置と比較して信頼性が高い。
【0142】
いくつかの実施形態では、あまり好ましくはないが、2セットよりも多い又は少ないインターフェース接触部であってもよい。
【0143】
連結器80の電気インターフェースを2セットのインターフェース接触部(すなわち、雄型接触部及び雌型接触部)に分けることは、単一の電気インターフェース接触部により供給可能な総電流を制限するので、本実施形態では電気接触部あたり100Aとなるように雄型電気接触部と雌型電気接触部との間で総電流を分けるので有利である。このようにして、一対の高電力電気インターフェース接触部のうちの1つが適切に接続されない場合(例えば、雄型接触部83の移動機構の故障により)、ホテルバス電流容量が半分になる。制御システムはこの状況を検知することができ、使用時には設置された配線に対して許容可能な電流だけが許可され(雄型及び雌型電気接触部の両方について)、ホテルバス制御機構は、過電流が検知された場合にはホテルバス接続をスイッチオフするように構成される。多くの場合、ホテルバスにより供給可能な総最大電流の半分、つまり、一対の電気接触部の1つにより供給されるもので十分な電流容量が得られ、鉄道車両の通常操作は継続可能となる。制御システムは、改善策が後に取られるようにこの故障にフラグを立てる。これらの構成は、連結器2の局所的な過負荷保護能力を補い、更にはホテルバス配線を保護する。
【0144】
雄型及び雌型接触部83、84における個々の電気インターフェース接触部間でホテルバス電流容量を分けるための第2接続セットの終端配置は、
図7aに示されている。
【0145】
ロッド40a、40b、40cの外端は、(連結インターフェース84と相対する)絶縁体板43aの外面を越えて突出し、終端ボックス45aと共に連結器ヘッド80内に収容される。各ロッド40a、40b、40cの端部は、高電力導電ケーブルを介して連結インターフェース84の電気インターフェース接触部に連結される。
【0146】
より具体的には、本実施形態では、各ロッド40a、40b、40cの端部は、2対の高電力導電ケーブル(例えば、ケーブルあたり50A)により構成され、一方は、雄型接触部83の一部である雄型電気接触部70に連結し、他方は、雌型接触部84の一部である雌型電気接触部71に連結する。このようにして、電気接触部70、71の各々は、ホテルバスの総電流容量の半分、すなわち、100Aを与える。いくつかの実施形態では、一対の高電力導電ケーブルは、2本よりも多い又は少ない導電ケーブルに置換され得る。
【0147】
一対の高電力導電ケーブルの各々は、個々のロッド端部又はその近傍に取り付けられた電流トランス72の中心孔に通されている。そして、高電力導電ケーブルは、トランス72の1次巻線を構成し、2次巻線は、電流トランス72のラミネートコアに巻かれたワイヤターンを介して形成されている。各々のロッド40a、40b、40cは、各対の導電ケーブルごとに1つずつ一対の電流トランスに接続している。
【0148】
この実施形態では、上側のロッド40bは、ホテルバス電源の接地されたセンタータップを形成し、他のロッド40a、40cは、それぞれ「ライブの」1000V電源電圧を供給する。ライブ電圧供給を行う各ロッドにおける電気接触部70、71の接点は逆になっており、各導電ロッドは、その一側で中間接点そして反対側で下部接点に接合される。これは、2つの鉄道車両が連結されるときに、各ライブ接続のための導電ロッドが、これら接続のテストを容易にするために列車の反対側ではなく同じ側に来ることを保証する。
【0149】
本発明に係る一対の連結インターフェースにおける高電力電気雄雌型接触部70、71間の相互接続のための回路概略は
図7bに示されており、連結器2の回路概略は点線Dの右側にあり、他の連結器の回路概略は点線Dの左側にある。連結器2の過負荷保護配置も示されており、明確性のため、他の連結器の電流トランス配置のみ示されている。これら回路配置は機能的に同一であり、各々の連結器は、実質的に同じ回路構成を備えている。
【0150】
ロッド接触部を介してロッドに連結された鉄道車両からのホテルバスは、各々のロッドに対して1つずつのホテルバスライン76a、76b、76cを含み、これらは
図7bに概略的に示されている。電流は、列車編成における電流源及び負荷の位置に応じて、いずれかの方向でライン76a、76b、76cを流れ得る。電流トランスを通過する電流は、トランスの2次巻線に電圧を誘導する。この電圧は、トランスの負荷抵抗を通って降下した後、電流感知配置73により測定される。
【0151】
導電ロッドとその雄型電気接触部との間の配線の長さは、その雌型電気接点までの長さと必ずしも同じではない。しかしながら、一対の連結器が連結されると、2つの相互接続された導電ロッド間の組み合わせ長さは、直列の長いケーブルと短いケーブルとの間で並行に常に分割される。その結果、電気接触部対の両方が障害なく接続されていると、電流は両方の導電路の間で等しく分割されることになる。
【0152】
電流感知配置73は、整流器及び閾値検知配置を用いて電流トランスからの電圧を測定し、電圧がいずれかの導電路を通る最大電流容量等価を超える又はホテルバスラインの2つの導電路からの合計が特定の鉄道車両に設置された配線容量を超える場合には、ホテルバスライン76a、76b、76cがロッドから切り離されることを要求する感知配置出力信号74が生成される。この信号74は、ORゲート機能を介して接触子制御回路75に渡され、この回路は、前述したように接触子モータ65を操作することによりホテルバスの接続解除を引き起こすように配置されている。
【0153】
連結器2の制御システムから来る第2信号79もORゲート機能に接続され、これは、ホテルバスがロッドから再び接続解除されるのを保証するために、何らかの連結又は連結解除活動が進行中であるか又は現在の状態が「連結解除」であるかを示す。ORゲート機能は、ソフトウェアを介して又はハードウェア構成要素として制御システムにより与えられる。このようにして、ホテルバスは、電流過負荷状況及び/若しくは連結又は連結解除過程の間、ロッド40a、40b、40cから接続解除され得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、出力信号74は、過負荷が発生したことを制御システムに示すようにも配置されており、障害が解決されるとリセットされ得る。
【0155】
連結器2における過負荷保護配置は、一端から他端へと鉄道車両を通過するホテルバスライン自体の高電流だけを受け入れる。ホテルバスから供給される鉄道車両内の全ての低電流回路は、適宜に回路ブレーカやヒューズ等の独自の専用過負荷保護機能を有する。
【0156】
いくつかの実施形態では、電流感知配置73及び/又は電流トランスが存在せず、従って、過負荷保護機能が存在しない場合がある。
【0157】
他の実施形態では、連結器2は、第2接続セット、すなわち、鉄道車両のホテルバスのための高電力電気連結配置を含まない。これは、一部の鉄道車両(例えば、鉱物を運ぶ単純な貨物ワゴン)は、ホテルバスの高電力電気供給を必要とせず、(機関車のような)電源とその電力を必要とする他の鉄道車両との間でホテル電力を分配することが必要とされる列車編成で決して使用されないからである。この場合、これら鉄道車両はホテルバス配線を必要としないので、連結器2は、上述したような第2接続セットの連結に関連する全ての構成要素を含まない(すなわち、導電ロッド及び絶縁体、接触フレーム及びロッド接触、電流トランス及び高電力ケーブル、接触子モータ及び機構を備えた平板等を有していない)。これは、ホテルバス配線を有さない鉄道車両に適した安価な連結器を与える。連結器2の全ての他の構成要素は、上述と同じである(すなわち、伸縮機構、連結器ヘッド、第1接続セット配置等)。これにより、ほとんどの鉄道車両に適した普遍的な基本設計を有する費用対効果の高い連結器2を与えることができる。
【0158】
最後に、終端ボックス45aからの終端された低電力電気及び光学接続は、雄型及び雌型接触部83、84(不図示)間の個々のインターフェース接触部に連結される。終端された空気圧接続は、一対の連結器が正しく連結したときにのみ開く分離弁を含むオリフィス77において空気圧リンク配置に連結される。この圧縮空気接続からの分岐は、分離弁の前に電磁弁にも繋がり、この電磁弁は、通常は閉じているが、連結解除過程が実施されると連結解除シリンダに空気を入れる。
【0159】
次に、連結器ヘッド80の保護カバー配置について説明する。
図6a、6bに戻り、カバー配置は、円弧形状の第1シールド85a及び第2シールド85bを含む。シールド85a、85bは、連結器ヘッド80の頂面及び底面(不図示)の両方においてピボット87a、87bを介して連結器ヘッド80の本体86に対して旋回可能に取り付けられている。このようにして、シールド85a、85bは、開位置(
図6aに図示)と閉位置(
図6bに図示)との間で実質的に90度回転することができる。
【0160】
閉位置では、シールド85a、85bの外縁95a、95bが互いに接触し、シールド85a、85bが連結インターフェース84を覆って収容する実質的に半円形のハウジングを形成する。このようにして、連結インターフェース84は周囲環境から保護され、連結器2を堅牢にすると共に、吹雪や砂嵐に突入する列車の前端で遭遇するような厳しい環境条件にも耐えることができるようにする。シールド85a、85bは、後述するように、伸縮可能なチューブ10が収縮位置にあるときには閉位置にある。
【0161】
開位置では、シールド85a、85bは互いに実質的に平行であり、外縁95a、95bは連結インターフェース84と実質的に面一で、連結インターフェース84を露出させる。このようにして、シールド85a、85bが連結インターフェース84を物理的に妨害しないので、連結インターフェース84は、連結過程の間に別の連結器の連結インターフェースに連結可能となる。シールド85a、85bは、連結インターフェース84が別の連結器に連結すると開放位置にある。この連結位置では、外縁95a、95bは、他の連結器の対応する縁に当たっている。
【0162】
シールド85a、85bは、シールドの頂面及び底面の両方においてシールドの長さに沿って走る長尺な突出部88a、88b、88c(4番目の突出部は不図示)を含む。閉位置においてこれら突出部は、連結インターフェース84と実質的に平行な長尺フランジを形成する。連結器ヘッド80がハウジング90内に収縮されると、フランジは、連結器ヘッド80とハウジング90との間の上下クリアランス、すなわち、使用時に伸長機構6を垂直に旋回可能とするのに必要なクリアランスを覆うように配置される。
【0163】
連結器ヘッド80は伸長機構6よりもかなり広いので、連結器ヘッド80側方の対応するフランジは必要ない。連結器ヘッド80は、収縮した状態ではハウジング90に受け入れられ、振動を受けてもがたつかないように連結器ヘッド80をしっかりと保持するくさび型配置(以下で更に説明する)により確実に保持される。収縮状態では、このようにして連結器ヘッド80は、従来の連結器設計では連結機構を突き抜けて連結器の信頼性を低下させ得る雪等の危険に対して十分に密封される。
【0164】
図8a、8bは連結器ヘッド80の平面視を示し、
図8c乃至8eは連結器80の底面視を示す。
図8dに示すように、シールド85a、85bは、シールド85a、85bの閉位置から約70度離れ(すなわち、外縁95a、95bが閉位置におけるそれらの位置に対して70度離れている)、閉位置(
図8cに示す)と開位置(
図8eに示す)との間の中間位置に保持されるように配置される。
【0165】
この実施形態では、シールド85a、85bの保持配置は、シールド85a、85bと連結器ヘッド80の本体86の底面との間を接続する個々のスプリング94a、94bを介して達成される。他の実施形態では、保持配置は、バネ以外の適切な配置を用いて達成されてもよい。
【0166】
外縁95a、95bは、連結インターフェース84を越えて(すなわち、他の連結器に向かって)軸方向に突出する。これにより、外縁95a、95bは、一対の連結器が互いに近接されたときに別の連結器の外縁と接触する。シールド85a、85bの形状は、それら個々のバネ配置及び投射と共に、連結過程で連結器ヘッド間に存在し得る最初の非整列に対応するために、シールド85a、85bが別の連結器のシールドに対して任意の方向に自由にスライドすることを可能とする。
【0167】
シールド85a、85bと連結器ヘッド80の本体86との間をつなぐダンパ93a、93bは、ショックアブソーバとして作用する。非整列により一対の対向するシールドが他対のシールドよりも先に接触すると、スプリング94a、94b及びダンパ93a、93bは、一対の連結器ヘッドが互いに向かい合うように旋回することを促す。言い換えれば、シールドのバネ配置は、連結器ヘッドのカップとコーンが互いに接触して整列過程を完了する前に、連結器ヘッドが徐々に互いに引き寄せられるにつれて(すなわち、伸長機構を介して)、連結器ヘッドが互いに対して適切に配向するように促す。
【0168】
各々の外縁95a、95bは、一対の連結器が最初に互いに接触したときに、外縁95a、95bが他の連結器の縁の内側に不注意にラッチすることを防止する一対の対向した突起89a、89b、89c、89dを含む。これは、シールド85a、85bが約70度で開位置と閉位置との間に保持されているので、水平及び垂直面の両方で連結器ヘッド間に大きな初期非整列がある場合には、連結過程中に起こり得る。
【0169】
連結器ヘッドが互いに引き寄せられると(すなわち、個々の伸縮機構を介して)、シールド85a、85bの外縁95a、95bは、
図8eに示されるように、連結インターフェース84と実質的に平行となるまで連結インターフェース84に向かって軸方向に徐々に変位し、外縁95a、95bは、他の連結器のシールド外縁に対してバイアスされる。言い換えれば、シールド85a、85bは、中間位置から開位置へと移動する。この移行の間、シャルフェンベルグカップ81及びコーン82は、シールド85a、85bの外縁95a、95bが他の連結器の対応するシールドの縁とシールを形成するように、連結器ヘッドを正しい整列へと導く。その結果、連結器ヘッドは、過酷な周囲環境から十分に保護される。
【0170】
閉位置にあるときにシールド85a、85b上に雪が積もった場合、雪は、シールド85a、85bが回転するときには殆ど乱されないか、一対のシールドが連結過程中に互いに最初に接触するときに振り落とされる。連結機構の重要な部分は、シールド85a、85bの完全に閉じた状態から完全に開いた状態に至るまでの数秒間といった短い期間しか外部環境からアクセスできないので、これは、連結機構の重要な部分に侵入した雪による連結器2の低信頼性操作リスクを低減する。
【0171】
連結器ヘッドが接触して正しく整列すると、連結器ヘッドのカップとコーンは、互いに機械的に係合するように配置され、連結器ヘッドを機械的に連結させる。
【0172】
シールド85a、85bは、連結器ヘッド80がハウジング90内に収縮されると、
図8dの中間位置から閉位置まで移動するように配置されている。これは、
図8aに示すように、ハウジング90の部品とシールドの外縁95a、95bを互いにバイアスする連結器ヘッド80との間の相互作用を介して達成される。
【0173】
ハウジング90は、シールド85a、85bを閉位置にバイアスするのを補助するように配置された2つのペグ91a、91bを含む。ペグ91a、91bは、シールド85a、85bの内縁にある個々の斜面96a、96bを受けるようにハウジング90に配置され、連結器ヘッド80がハウジング90内に収縮されるとシールド85a、85bを閉位置に回転させる。シールドが閉位置になると、斜面96a、96bは、ハウジング90の対応する斜面に受けられ、フランジの突出部に係合することでシールド85a、85bを閉位置に維持するのを助ける。このくさび作用は、外縁95a、95bにナイロンのような僅かに復元性の有る材料を使用することにより促進され、シールド85a、85bが閉じたときに環境に対して良好なシールを与え、連結時に別の連結器のシールドと係合するときに容易にスライドできるようにし、寒冷条件における霜によってシールド85a、85b同士がくっつくリスクを制限する低接着性を有する。このようにして、連結器2が収縮位置で使用されていないときに、連結インターフェース84はカバーされて保護される。
【0174】
この実施形態では、連結器ヘッド80の後部ケーシングは非対称であり、連結器ヘッド80が収縮位置にあるときに伸長モータ24のための空間を与えるために、一側の上半分の部分は切り取られている。一側は移動せず移動機構を必要としない据え付けの雌型接触部84を収容するので、この領域では連結器ヘッド80の内部であまりスペースを必要としない。連結器ヘッド80の雄型接触部83側は、雄型接触部83を移動させる機構のためのスペースを与えるために上半分の深さが大きくなっている。
図8a、8bの点線は、シールド85a、85bの内面がいかに円弧状で、従来のシャルフェンベルグカップ81及びコーン82に十分なクリアランスを与えるかを示している。
【0175】
ハウジング90内において、連結器ヘッド80がハウジング90をクリアするように収縮位置から伸長されると、シールドがペグ91a、91b及びハウジング90の斜面により互いに対してもはやバイアスされないので、スプリング94a、94bは、シールド85a、85bを中間位置(
図8dに示す)に開くように引っ張る。ダンパ93a、93bは、シールド85a、85bが閉位置から中間位置までバネにより開いていくときに振動を制限する。
【0176】
図8bは、連結器ヘッド80がハウジング90内で収縮位置から連結器2の最小連結距離まで伸長されているのを示す。連結器ヘッド80は別の連結器に連結されているが、この図では明確性のために示されていない。この最小連結距離は、鉄道車両が鉄道線路の非常に急なカーブを通っているときに、連結器2の横方向への旋回を可能とするのに必要である。
図8bに示したものよりもずっと長い伸長が典型的である。
【0177】
連結器ヘッド80が収縮した「使用されていない」位置から伸長されると、シールド85a、85bは、ハウジング90から離れる動きが許すとすぐにバネで開く。しかしながら、ある場合には、シールド85a、85bは、ナイロン製のエッジにもかかわらず、氷結した条件下で一緒に凍って開かないことがある。これに対処するために、シールド85a、85bは、シールド85a、85bが収縮位置から伸長されたときにペグ91a、91bに接触するように構成され、ピボット87a、87bに近接した傾斜リム97a、97bを含む。リム97a、97bの傾斜は、シールド85a、85bを引き離すための伸縮機構によって及ぼされる力と組み合わされて作用し、いったん引き離されるとバネ94a、94bが引き継ぎ、シールド85a、85bは通常通りに開かれる。
【0178】
シールド85a、85bは、連結器ヘッド80の環境保護を与えるだけでなく、別の連結器がすぐ近くにあるか否かを検知する機能も与える。2つのマイクロスイッチ98a、98bは、連結器ヘッド80の下面に取り付けられている(
図8dに示す)。スイッチ98a、98bは、シールド85a、85bが中間位置を超えて開位置に向かって回転するときに、シールド85a、85bの伸長エッジ99a、99bにより押し下げられるローラを含む。この回転は、別の連結器の連結器ヘッドが連結器ヘッド80に近接して接触しているときのみ起こる。マイクロスイッチ98a、98bは、伸長エッジ99a、99bとの接触による個々のローラの押し下げを介して、このシナリオを検知することができる。マイクロスイッチ98a、98b、スプリング94a、94b及びダンパ93a、93bは、マイクロスイッチ98a、98b、スプリング94a、94b及びダンパ93a、93bを収容するように連結器ヘッド80の本体86の底側に取り付けられたカバー(
図8c乃至8eには示されていない)を介して環境から保護されている。このカバーは、ハウジング90の内外において連結器80の移動を妨げない。いくつかの実施形態では、マイクロスイッチ98a、98bは、他の同等センサにより置換され得る。
【0179】
マイクロスイッチ98a、98bからの出力信号は、いつ別の連結器が連結器ヘッド80に近接/接触しているかを示す。これらの出力信号は、一対の連結器ヘッドが互いに接触しているときに、連結器ヘッド80の伸長(又は収縮)速度を制御するために連結器2の制御システムにより利用され得る。いくつかの実施形態では、スイッチ98a、98bは、いずれか一方(又は両方)がアクティブになると、別の連結器が近くにあることを示す出力信号が生成されるようにOR関数を介して接続されている。
【0180】
連結器2の移動にはある程度の減衰が与えられているので、連結器の非整列は、減衰効果に打ち勝つために即座に修正されず、バネ94a、94bや他の力のために時間を要する。従って、連結過程の最終段階は、連結が起こるときに鉄道車両の過渡な移動を最小限に抑えるために比較的ゆっくりと実行されることが望ましい。一対の連結器ヘッドが離れているとき、連結に必要な総時間を最小化して迅速な列車の再構成を与えるために、収縮位置からの連結器2の最初の伸長は迅速に行われる。連結器ヘッドが互いに接触すると、制御システムは、マイクロスイッチ98a、98bからの出力信号を介してこれを検知し、連結の最終段階が穏やかに行われるように伸長モータ24をかなり減速させるように構成されている。最後に、連結が完了して連結器ヘッド80のシャルフェンベルグ機構(すなわち、カップ81及びコーン82)が一対の連結器ヘッド及び2つの鉄道車両を正常にロックすると、その機構のセンサは、伸長モータ24を停止するために制御システムに信号を生成する。連結過程により、ある程度の避けられない揺れを引き起こす現在の方法とは対照的に、車両はほとんど気づかないうちに連結される。
【0181】
同じ速度制御技術は、逆ではあるが連結解除の際にも使用される。最初に、シャルフェンベルグディスクが連結解除のために回転して、係合した連結器ヘッドが係合解除され始める直後に、連結器2がゆっくりと収縮する。制御システムは、マイクロスイッチ98a、98bを介して連結器ヘッドが離れ、シールド85a、85bが中間位置まで跳ね返ったことを一旦検知する。これが起こると制御システムは、伸長モータ24をスピードアップし、ハウジング90内で収縮された「使用されていない」位置に連結器2の急速な収縮を引き起こすように構成されている。この構成は、低騒音でありながら迅速な連結解除過程をもたらし、顧客に対する安全でタイムリー且つ効率的なサービスに寄与する。
【0182】
従って、マイクロスイッチ98a、98bのいずれかからの出力信号がないことは、連結された連結器が連結器ヘッド80から物理的に係合解除され、マイクロスイッチ98a、98bが伸長エッジ99a、99bとの接触からもはやトリガーされなくなったことを示す。これは、いくつかの操作状況で予想されたときには起こらないかもしれない。
【0183】
両車両が停止し、すべてのブレーキが完全にかかったときに連結解除が起こる場合、連結器ヘッドの分離は、両連結器の伸縮機構における収縮過程にのみ依存し、これは、十分に制御されて既知の時間を要する過程である。しかしながら、車両が移動しているときにも連結解除は可能で、一般的な例は「ハンプ」分列で、鉄道車両は傾斜を登るように推進されている間に連結解除され、頂上に達した後に推進鉄道車両から係合解除され、下り勾配により推進鉄道車両から離れるように加速される。この状況では、連結解除動作と2つの鉄道車両の実際の分離との間には、かなりの遅れが生じ得る。
【0184】
この場合、連結器2は、その継続的な伸長(少なくともある程度は)が推進力を引き起こすのに必要とされるので、通常の比較的短い時間では「使用されていない」位置まで収縮され得ない。ここで、連結器2の収縮は、連結器2を別の鉄道車両に接続するのに使用するまでにある程度の時間がかかるため、比較的迅速である必要はない。このような操作は、連結器2の制御システムにおける簡単なタイマ配置を用いて検知される。タイマは、シャルフェンベルグディスクの連結解除動作が行われた時点からの遅延の後、出力を与えるように設定される。この遅延は、すべての鉄道車両が停止したときにシールド85a、85bが中間位置に戻るのにかかる一般的な時間よりも僅かに長い。マイクロスイッチ98a、98bからの出力信号が予期された通りに消失すると(又は用いた論理配置に応じて低くなる等)、収縮過程は通常通りに継続する。その時までにマイクロスイッチ98a、98bからの出力信号が消えていない(又は依然として高い等)場合、連結器ヘッドは依然としてある程度接触しているはずで、収縮過程は直ちに停止される。このようなイベントが起こると、制御システムは、このイベントを登録するように構成され、マイクロスイッチ98a、98bの両方からの出力信号が第2タイマにより決定されるより長い時間に亘って一貫して消失するまで収縮過程を再開しない。この第2時間遅延は、推進されている鉄道車両が推進している鉄道車両から一時的に分離したが、勾配の変化や何らかの理由による加速又は減速等により再び連結する小さな可能性に対する保護を与える。このように、連結器の収縮は、推進されている鉄道車両が推進している鉄道車両ともはや一時的に接触しなくなったときにのみ起こり、推進されている車両と推進している車両とが後に再び接触することが極めて稀になるのに必要な十分長い期間には起こらない。
【0185】
同様の状況は、鉄道車両(又は鉄道車両のグループ)が主要な鉄道ライン上で移動する主列車編成の前部から切り離され、鉄道車両が、重力ではなく自身の牽引能力を用いて主列車から離れるように加速する際にも起こり得る。タイマ遅延配置は、切り離された鉄道車両の実際の離脱の少し前に連結解除が起こり得る状況にも対応する。更に、タイマ遅延配置は、高速で列車編成の後部から鉄道車両又はグループを連結解除するのにも適しており、これは、中間駅へのサービスを与えるために急行旅客列車の後部から切り離された「スリップコーチ」にかつて用いられていたのと同じ技術である。現代の切り離された車両は、勢いに頼るのではなく独自の牽引能力を持ち得るので、連結解除されてもすぐに主列車から必ずしも分離されず、タイマ遅延配置はこの事態に対応する。
【0186】
ある場合には、鉄道車両の移動しているグループが、連結が行われる前に停止されることなく連結され得る。連結器2の伸長過程は、鉄道車両が最適連結距離に達するために速度差少なくゆっくりと近づいてきて、その後、最小の揺れで穏やかに連結されることを可能とする。このような操作方法は、特に混合貨物列車の操作において、将来、鉄道により与えられるサービスの柔軟性及びレベルを変革することが想定され、これらの車両のエネルギ効率にも利点をもたらすであろう。
【0187】
従って、シールド85a、85bは、別の連結器が近接したとき、そして、連結された連結器が連結器ヘッド80から連結解除されるときの両方を示すように構成されている。
【0188】
次に、連結器2の制御システムについて説明する。制御システム100の概要を
図9に示す。制御システム100は、連結器2の様々な構成要素及び機能を制御及び操作するように配置されている。これは、当業者であれば理解できるように、例えば、制御及び/又は感知している構成要素に近接して連結器2の全体に分布された近傍電子モジュールと電気通信したコントローラを介して達成され得る。
【0189】
特に、制御システム100は、伸長モータ24及び伸長機構6の作動を制御するように配置される。このようにして、制御システム100は、伸長位置と収縮位置との間で伸縮チューブ10の伸長及び収縮を制御することができる。
【0190】
また、制御システム100は、ホテルバス電源、雄型及び雌型接触部83、84の別の連結器への連結過程、シャルフェンベルグカップ81及びコーン82配置の別の連結器への機械的連結過程を制御するために、ロッド接触部51a、51b、51cの切り替えを(特に)制御及び監視するように配置されている。
【0191】
更に、制御システム100は、以下で更に説明するように、一対の連結器間の連結又は連結解除過程が同期され得るように制御するため、別の連結器の制御システムと通信するようにも配置される。
【0192】
連結器2の機能のいくつかを外部制御するために、制御システム100は、連結器2が取り付けられている鉄道車両にローカルに、又は好ましくは、連結された列車編成内の任意場所の列車管理コンピュータが鉄道車両及びそれに取り付けられた連結器の特性、機能及び制御にアクセスできるようにする列車情報バスを介して操作する包括的車両識別及び通信システムにより、列車管理システムから多くの入力を受けるようにも構成される。いくつかの実施形態では、制御システム100は、代わりに又は更に、連結器2及び一対の鉄道車両間の連結及び連結解除過程が、車両自体又はそれに連結された他の車両からではなく、例えば、操作場の制御センタから遠隔で制御されるように別の車両コントローラを介して直接又は間接的に無線入力を受信する。
【0193】
この実施形態では、制御システム100に3つの入力があり、これらは連結要求(RTC)、連結解除要求(RTU)及びセットされると連結器2(又は鉄道車両)が別の連結器(又は鉄道車両)と連結又は連結解除する要求に応答するのを防ぐロックコマンドである。他の実施形態では、製造中に連結器2に望まれる機能に応じて、これらのコマンドよりも少ない又は多いコマンドがあり、これらの機能は、連結器2の制御システムに対するソフトウェア/ファームウェア変更を介して製造後に追加又は削除され得る。
【0194】
制御システム100からの出力は、上述したような様々な機能を活性化することに加えて、連結又は連結解除が正常に完了したことを確認するためのステータスフラグ、何らかの問題が発生していることを示す障害フラグ、そして、列車編成全体に連結されて列車編成における切迫した潜在的変化に関する何らかの活動がある際に活性化される前述の連結イベント信号を含む。
【0195】
先に述べたように、連結器2は、鉄道車両が連結される前に、鉄道車両の制御システム間でコマンドを転送するように構成された無線通信システムを含む。これは、例えば、無線、超音波、赤外線又は他の無線通信方法を用いて達成され得る。言い換えれば、通信システムの送信機「Tx」と受信機「Rx」並びに通信システムの周波数、変調方式及び符号化方式は、連結器2が別の連結器と無線通信できるように構成されている。
【0196】
無線通信システムは短距離通信方式を利用し、この実施形態では少数、好ましくは5つの異なるコマンドを送信及び/又は受信するように構成される。他の実施形態では、無線通信システムは、5つよりも多い又は少ないコマンドを送信及び/又は受信するように構成され得る。
【0197】
通信システムの受信部は、電源が連結器2及び/又は対応する鉄道車両に供給されない場合を含め、別の鉄道車両の別の連結器からコマンドを受信するために常にアクティブであるように配置される。この場合、制御システム100は、制御システム100の全体電力消費が比較的非常に低く、小さなバックアップ電池がこの電力を十分に与えるようにスタンバイモードに入るように構成される。
【0198】
この実施形態では、連結器2を操作及びバックアップ電池を充電するための電力は、ECP(Electronically Controlled Pneumatic、電子制御圧縮空気)ブレーキシステムに電力を供給するのに用いられる230VのDC電源から供給され、これは、ホテルバス電力接続を有するか否かに関わらず、すべての鉄道車両を介してリンクされている。他の実施形態では、鉄道車両の他の接続部から連結器2及びバックアップ電池に電力を供給するための他の構成があり得る。
【0199】
いくつかの実施形態では、連結器2を含む鉄道車両が無期限に待避線で使用されずに放置されたとしても、連結器2が長期間の後に本発明の別の連結器を使用して回収しに来た列車編成に依然として応答するように、鉄道車両上の小型ソーラパネル又は他のエネルギ回収装置が、バックアップ電池に電力を供給するために配置される。
【0200】
例えば、反射された送信信号が受信機に向かうことによる同じ通信システムの送信機と受信機との間の干渉を避けるために、送信機は、送信機がアクティブである限り受信機が応答しないように受信機に「阻害」信号を与えるように構成される。このようにして、受信機は、自身の連結器2における送信機ではなく、他車両の他の連結器における送信機にのみ応答する。
【0201】
本実施形態において、別の連結器に対して連結器2の通信システムにより送信及び受信されるコマンドは、連結要求(RTC)、連結解除要求(RTU)、連結合意(ATC)、連結解除合意(ATU)及び要求拒否(RD)を含む。これらのコマンドは、本発明に係る一対の連結器間の連結及び連結解除過程を制御するために使用される。
【0202】
例えば、
図9に示すように、連結器2を含む第1鉄道車両の列車管理システムが制御システム100にRTCコマンドを送信すると、送信機102は、第2鉄道車両の別の連結器にRTCを送信するように構成されている。受信されたRTCは他の連結器の受信機104により解読され、「ロック」機能が起動されていない場合には(すなわち、ロックコマンドを介して)、受信機104は、第2鉄道車両において「連結状態要求」ラッチ106を「連結お願い」状態に設定する連結合意(ATC)コマンドを生成するように構成されている。この過程が起こると、第2鉄道車両の送信機102は、第1鉄道車両にATCを返送するように構成されている。ATCが第1車両の受信機104で解読された後、受信機104は、第1鉄道車両においても「連結状態要求」ラッチ106を「連結お願い」状態に設定するように構成されている。
【0203】
「ロック」機能が第2鉄道車両で起動している場合には、受信機104でのRTCの受信は、「連結状態要求」ラッチ106の変化を引き起こさない。その代わり、送信機102は、第1鉄道車両にRDを送り返すように構成されている。また、第2鉄道車両で「拒否」ラッチ108が設定され、これは、連結状態を変更する要求が別の鉄道車両によって為されたが拒否されたことを示すために、その列車編成の列車管理システムにより読み取られ得る。第1鉄道車両でRDメッセージを受信し直した結果、第1鉄道車両での「連結状態要求」ラッチ106はその状態を変えないが、その代わりに要求が為されたが作用されなかったことを示すために「拒否」ラッチ108が設定される。
【0204】
RTU受信後の同様のイベントシーケンスでは、「ロック」機能がアクティブでない場合、両方の鉄道車両の「連結状態要求」ラッチ106が「連結解除お願い」状態にリセットされ、両方の「連結状態要求」ラッチは変化せず、「ロック」機能がアクティブになると「拒否」ラッチが設定される。
【0205】
メンテナンス目的のための特別なテストモードは別として、鉄道車両の連結状態は、その鉄道車両から独立して変更され得ない。相互接続されたシステムは、連結又は連結解除が進行し得る前に、まず、第2鉄道車両の連結器が同じ動作を取ることに同意しているかをチェックし、連結器の両方の制御システムは、ほぼ同じタイミングで同じ動作を取る。
【0206】
「ロック」機能は、いくつかの目的で有用である。列車編成が完了すると、スタッフによる操作ミス、ソフトウェアエラー、近隣列車からの迷通信等による誤ったコマンドを拾わないようにする更なるセキュリティのために、すべての連結器を現在の状態にロックすることが望ましい。更に、スタッフへの指示に矛盾があると、正しい行動指針が分からなくなる虞もある。例えば、別の列車と連結する予定の駅に到着した列車の運転士は、その列車が故障していることや何らかの理由で間違った列車が配置されていることを知らないかもしれない。ロック機能は、現地スタッフが到着した列車を連結するのを阻止し、その列車の運転手は制御システムにより連結試みの拒否を知らされ、次に何をすべきかを現地スタッフと協議するように促される。隣接する連結器のロックは、必要に応じて同じ又は異なる状態に設定され得る。第1鉄道車両のロックが作動せずに第2鉄道車両のロックが作動した場合には、第1鉄道車両は第2鉄道車両への連結を開始できないが、第2鉄道車両は第1鉄道車両への連結を開始することができる。
【0207】
「ロック」機能は列車編成のどこか、例えば、機関車の列車管理システムにより典型的には制御されるので、本発明の連結器を含む鉄道車両が孤立し、もはやどの列車管理システムにも連結されていない場合には誤った動作をする危険がある。例えば、貨物列車が待避線に到着し、機関車が列車編成の前部から連結解除するとする。機関車の列車管理システムは、先頭貨物列車の前部にある連結器のロックを最初に解除し、そうでなければ機関車は連結解除することができない。仮に機関車の列車管理システムが、連結解除前に列車編成の後部で連結器をロック解除しなかったら、接続エンジンは、貨物列車を入れ替えるために列車の後部に連結することができないであろう。これに対処するために、制御システム100は、電源(列車管理コンピュータを有する機関車又は他の車両から供給される)が取り除かれると、すべての車両で「ロック」機能をロック解除状態にリセットするように構成され、この電源は、本実施形態ではECPブレーキシステムの電源として用いられる230VのDC電源である。このようにして、各々の連結器の現在の連結状態は変化しないが、ロック機能のリセットは、回収に来た他の鉄道車両(本発明の連結器を有する)との連結を孤立した無電源鉄道車両が常に許可することを保証する。
【0208】
制御システム100が、任意のコマンド信号を介して連結器の適切な状態、すなわち、連結又は連結解除を開始することを決定すると、既に説明した過程が所望の結果を達成、すなわち、連結器2を別の連結器と連結又は連結解除するように起こる。
図9に示すように、各々の連結過程が正常に完了したことが確認されると、「終了」信号(E)が、連続して次の連結過程を開始(S)するために渡される。連結/連結解除過程は、伸長モータ24を介して連結器2を伸長又は収縮する伸長/収縮過程、連結器ヘッド80内で機械的連結リンク81、82及びインターフェース接触部83、84を接続又は接続解除する接続/接続解除過程、導電ロッド40a、40b、40cとの間で高電力ホテルバスラインを接続又は接続解除する接触子過程を含む。
【0209】
例えば、上述のようなコマンドのやり取りを介して「連結状態要求」ラッチ106の状態が「連結お願い」状態に設定されると、伸長モータ24が作動して伸縮機構6の回転を引き起こし、ハウジング90において伸縮チューブ10及び連結器ヘッド80が伸長される(上述のように連結器ヘッド80が他の連結器と接触するので最初は迅速に、その後よりゆっくりと)。連結器ヘッド80が徐々に伸長されて他の連結器ヘッドと整列されると、連結器ヘッドが互いに近づくにつれてシャルフェンベルグカップ81及びコーン82内のリンクは対抗する連結器のディスクと接触してそれらを回転させ、リンクがディスク内のノッチに係合し、ディスクがスプリングバックして連結器ヘッドが機械的に連結され、鉄道車両を互いに機械的に連結する。このイベントにより、伸長モータ24がスイッチオフされ、伸長過程が停止する。その後、雄型及び雌型接触部83、84が互いに接触して連結し、鉄道車両間の第1接続セットを連結させる。最後に、ロッド接触部51a、51b、51cが、ロッド40a、40b、40cに高電力ホテルバスラインを接続するためにスイッチされ、鉄道車両間で第2接続セットを連結させる。
【0210】
上述のようなコマンドのやり取りを介して「連結状態要求」ラッチ106の状態が「連結解除お願い」状態に設定されると、これらの過程が逆の順序で起こり、ロッド接触部がロッドからホテルバスラインを連結解除するためにスイッチされ、連結インターフェース84の雄型及び雌型接触部が連結解除され、連結解除シリンダ116がバネに抗してシャーフェンバーグディスクを回転させると共にコーン82内のリンクを他の連結器のディスクから係合解除するために作動し、互いの連結器ヘッドを機械的に連結解除する。その後、連結器2は、ハウジング90において伸長位置から収縮位置に収縮される(上述のように連結器ヘッド80がもはや他の連結器に接触しないので最初はゆっくりと、その後より迅速に)。
【0211】
この実施形態では、制御システム100は、意図したように連結又は連結解除過程が起こっていることを確認するために、別個のモニタ論理ユニット118を介してこれらの過程からの種々の信号をチェックするように構成されている。連結(又は連結解除)過程が完了すると、論理ユニット118は、鉄道車両の列車管理システムへと与えられる「連結完了」又は「連結解除完了」信号を生成する。これらの過程で障害が起こった場合には、障害の原因が調査され得るように「障害」信号が生成される。これらの障害信号は、意図した動作が実行されたか否かを確認するために、列車管理システムによりチェックされ得る。
【0212】
先に述べたように、連結イベント信号は、制御システム100により生成され、連結器ヘッド80内の専用接点を介して列車編成全体に分配されるように構成されている。この信号は、連結イベント信号受信時の連結又は連結解除操作の間にホテル電源が一時的にスイッチオフされ得るように、あらゆるホテル電源の制御システムに与えられる。また、連結イベント信号は、全ての列車管理システムに与えられるように構成されている。この場合、連結イベント信号の受信により列車管理システムは、鉄道車両の新しい編成を決定し、その新しい編成にどのような操作制約が適用されるかを計算するように構成されている。ある実施形態では、連結イベント信号は、列車編成の変更についての更新を必要とする他のシステムに与えられ、例えば、座席予約コンピュータは、列車情報バスを介して新しく追加された車両のディスプレイに自動的に情報を送信する。
【0213】
連結イベント信号は、参照として本明細書に組み込まれている出願GB2487224の「連結器スイッチ」信号と同等である。更に、この信号は、RD機能からの一時パルスを含むとともに、前述のように進行中の連結又は連結解除動作を示す。この機能により、列車管理システムを中断し、RD「要求拒否」フラグの存在を検知し、その後、スタッフが調査できるように連結又は連結解除の試みが失敗したことをスタッフに警告することができる。エネルギ管理機能と相互作用することで、連結イベント信号のパルスは、ホテル電源の一時的な中断を生じさせ、この稀な事態は、エラーが発生して調査が必要であることをすべてのスタッフに警告するのに役立ち得る。
【0214】
図9の左下に示す連結イベント信号線は、正電圧電源+Vからプルアップ抵抗Rを介して正電圧レベルにあり、スイッチがアクティブになるとスイッチによりロー/アース(すなわち接地)となる。列車編成における本発明に係る連結器の制御システムは、同じ連結イベント信号線に並列に連結される。この配置は、一対の連結器がわずかに異なる速度で動作する場合、連結又は連結解除過程中により速く動作する連結器が最初に「連結イベント」ラインを接地し、より遅い連結器が終了したときのみ正電圧電源+Vに連結イベント信号ラインを戻すことを保証する。その結果、速い連結器のホテルバス接触子が操作するのに十分なほど遠くに移動する前に、連結イベント信号線が接地されるとホテル電源が迅速にスイッチオフされ、再びハイになった連結イベント信号線が、すべての連結又は連結解除動作が終了して新しい列車編成に関する調査が開始し得ることを列車管理システムに示す。
【0215】
プルアップ抵抗Rと直列のダイオードDは、異なる鉄道車両の電源電圧+Vが異なる場合に(例えば、バッテリ充電レベルの違いにより)、アクティブではない連結イベント信号線が列車編成で接続されている最高電圧まで上昇することを保証する。アクティブではない状態においては連結イベント信号線回路に電流は流れないので、この構成では電力消費が最小化される。
【0216】
図10a乃至10hは、本発明に係る連結器を含む一対の鉄道車両間の連結過程の原理の概要を示している。
図10aに示すように、第1鉄道車両1a及び第2鉄道車両1bは、それぞれ第1連結器2a及び第2連結器2bを含む。
【0217】
連結器2a、2bは、鉄道車両1a、1bの下側(すなわち、鉄道線路に面する鉄道車両の側)で、鉄道車両1a、1bの端部近傍(すなわち、別の近傍鉄道車両と面する鉄道車両の端部の近く)に取り付けられる。この配置は、鉄道車両が接近又は連結器がハウジング90内に使用されずに収縮されているときにチューブ10の伸長を可能とするクリアランスを提供し、鉄道車両の主要構造の下に配置することが最も簡単である。連結器の低い位置は、鉄道車両の床を低くすることができ、例えば、フラットな貨物列車は高さ制限されたトンネルを通ってコンテナを運ぶことができ、一様に低い床と廊下接続を持つ客車は高いプラットフォームから段差の無いアクセスを与える。
【0218】
更に、この配置により、鉄道車両の端部が本発明に係る連結器とその上に配置された従来の連結器との両方を備えることが可能となり、本発明の連結システム又は従来の連結システムのいずれかを利用するオプションを与える。これは、(本発明に係る)連結器と従来の連結器との両方を有する「デュアル装備」鉄道車両が(本発明に係る)連結器を有しない他の鉄道車両に連結することができ、従来方法の利用から本発明の方法の利用へと鉄道車両の移行を容易にする手助けとなるので有用である。
【0219】
このようなデュアル装備の鉄道車両が、従来の連結器しか有さない別の鉄道車両に連結する必要がある場合、連結器2は、使用されないように完全に収縮され、他の鉄道車両と接触しない。一方、デュアル装備の鉄道車両が、本発明に係る連結器を有する他の鉄道車両に連結する必要がある場合、両方の連結器は、従来の連結器が他の鉄道車両と接触しないことを保証するために十分に伸長することができる。
【0220】
第1鉄道車両1aは静止していて、第2鉄道車両1bが接近してくる。第2鉄道車両1bは、(
図10bに示すように)少し離れたところで停止し、ブレーキが完全にかけられる。
【0221】
図10cに示すように、RTC信号が連結器2bから送信され、連結器2aへの連結の許可を求める。RTC信号は、典型的には到着した鉄道車両(
図10cでは鉄道車両1b)により開始されるが、鉄道車両1a又は1bのいずれからであってもよい。
【0222】
鉄道車両1aはRTC信号を受信し、上述のようにして連結することに同意した場合には
図10dに示すように鉄道車両1bにATC信号を返し、連結許可が与えられたことを確認する。
【0223】
鉄道車両1bでATC信号の受信が成功すると連結器2bの連結過程が開始され、連結器2bは、(ハウジング90内において)収縮した「使用されていない」位置から外方に伸長し始める。また、鉄道車両1aによるRTC信号の受信は、ATC信号の送信と組み合わされて、その車両における連結処理も同様に開始する。信号のやり取りは、連結器の物理的な動きに比べて迅速に起こるので、実質的に連結器2a、2bの両方は同時に伸長し始める。しばらくして両方の連結器が部分的に伸長した状態は、
図10eに示されている。
【0224】
連結器2a、2bは互いに接触するまで伸長し、
図10fに示すように、そこで連結器ヘッド(及び個々の接続部)が連結して伸長過程は自動的に停止する。両方の連結器2a、2bは同時に伸長し始めてほぼ同じ速度で伸長するので、それらの間の連結部は、2つの鉄道車両端部間の約中心位置になる。伸長速度に変動があると(例えば、摩擦効果や異なる電力レベルにより)中心から外れた連結部となり、すなわち、伸長の少なかった一方の連結器が、伸長の多くなった他方の連結器とマッチする。
【0225】
その結果、連結器2は、車両間の間隔についてかなりの幅を許容する。鉄道車両が意図したよりもかなり離れて停まった場合には、
図10gに示すように、連結器2a、2bはこの余分な距離に対応するために更に伸長する。逆に、ブレーキが意図したよりも少し遅れて停止した鉄道車両1a、1bが接近している場合には、
図10hに示すように、連結器2a 2bは短い距離だけ伸長する。このように、連結器2は、鉄道車両1a、1bの多様な操作状態に対応することができる。
【0226】
言い換えれば、収縮位置と伸長位置との間の距離は、連結器2の可変連結範囲を規定し、連結器2が少なくともその最小連結距離まで伸長される場合、すなわち、連結器2が収縮位置からハウジング1の外側に伸長される場合、連結器2は、その連結範囲に沿って任意の距離で別の連結器と係合及び連結することができる。
【0227】
上述のように、連結器ヘッドが一旦互いに確実に取り付けられると、すべてのシステムが正しい状態にあることを確認するために様々なチェックが自動的に行われ、列車管理システムは、どのような操作モードが可能になったのかを決定でき、新しい列車編成においてこれらの管理システムのうちどれを行使制御するのか合意できるように列車編成が変更されたことを警告される。
【0228】
連結が一旦完了すると、両方の連結器2a、2bの伸縮機構は所定の位置にロックされ、鉄道車両1a、1bは、連結されている限り同じ距離だけ離れたままになる。
【0229】
また、鉄道車両の連結解除は、すべての鉄道車両が静止してブレーキが完全にかけられた状態でも起こる。連結された列車編成の列車管理システムは、(様々な安全チェックの後に)列車編成のどこで(本発明に係る一対の連結器の連結解除を介した)分離が成されるのかに同意する。その後、連結解除コマンドが、列車編成における意図された分離点の両側にある連結器の1つの制御システムに送信される。上述のように、問題となっている連結器間でRTU及びATU信号が交換されることを条件として、連結器ヘッド(及び個々の接続)は連結を解除し、連結器が車両端部において収縮した「使用されていない」位置に達するまで収縮位置に向かって後退/収縮される。
【0230】
先に述べたように、
図10に示すような全ての車両が停止してそれらのブレーキが完全にかけられている場合と同様に、必要であればいくつかの状況下で移動中に車両を連結又は連結解除することも可能である。本発明に係る連結器及びその制御システムは、それ自体、連結又は連結解除コマンドが発行され得る条件においていかなる制限も課さない。連結器とその制御システムは、単に連結又は連結解除するために与えられる指示に基づいて行動し、必要な行動が競合したときには新しい連結状態が記録される。どのような条件下でどのような動作が許可されるかを制約するための定義は、列車管理コンピュータ及び他の制御システムに決定する責任がある。これにより、本発明の連結器又は制御システムに変更を加えることなく、列車管理コンピュータ及び/若しくは他のローカル又はリモート管理システムのソフトウェアに変更を加えることで、新しい作業方法や操作ルールの変更が時間経過と共に進化して許容される。操作ルールは、車両のタイプに従って変化し、例えば、ハンプ接続は貨車には許されるが客車には許されず、この違いは、ルール及び扱う車両の種類を把握している列車管理コンピュータ又は他の構成により対応される。
【0231】
図1に戻って、本実施形態では、連結器2は、
図1に示された点線を占めるように配置されたカバーハウジング3を含む。このようにして、連結器2は環境から保護され、後述する作動中の電気部品は隠される。カバーハウジング3は、連結器2のすべての動きを収容するのに十分に大きい。連結器が「使用されていない」収縮位置に達すると、中心から外れて収縮した連結器2は、まず、ハウジング90に接触したシールド85a、85bによりバランスのとれた中心位置に戻るように促され、これは、上述のくさび作用とともに連結器2が中心位置に向かうのを助ける。そのため、絶縁体43bの角度変位は、伸長機構6の内端に向かうにつれて小さくなり、絶縁体43bに必要とされる角度クリアランスは、中央旋回点からの距離が大きくなるにつれて減少する。その結果、カバーハウジング3は、ハウジング90に近接した外端よりも連結器2の内端においてほんの僅かだけ広くなっている。
【0232】
典型的な鉄道車両の端部付近において、主構造の下で連結器並びにそのハウジング及びカバーにより占められる領域は、通常、主要部品(車輪は車両端部から離れている)を含んでいない。従って、連結器2は、この領域を占めるのに適した大きさにされている。
【0233】
いくつかの実施形態では、連結器2は、連結及び連結解除過程を実行するために伸長及び収縮することができ、鉄道線路上の鉄道車両間の移動により適宜旋回するように、鉄道車両と一体化され得る。
【0234】
いくつかの実施形態では、矩形断面を有する軽量の伸長ベローズ型カバー(
図1には示していない)が、使用中の伸長の程度に応じて伸縮チューブ10及び導電ロッド40a、40b、40cを保護するために連結器ヘッド80の後部とジンバルフレーム30との間で用いられ得る。
【0235】
いくつかの実施形態では、ダンパ(
図1には示していない)が、より良い安定性のために連結された鉄道車両間の横振動を阻止するために、ハウジング90とジンバルフレーム30との間に装着され得る。
【0236】
要約すると、連結器2は、かなりの距離に亘って様々な貨物を運び、様々な異なるタイプの鉄道車両を使用する幹線鉄道を対象としている。(都市地下鉄のような)1種類の列車に限定された小規模な鉄道網は、相互運用性が要求されないため、通常、独自のシンプルな連結配置を選択する。
【0237】
連結器2は、様々な異なる列車構造を使用するあらゆる種類の鉄道車両間での連結及び連結解除を可能とする普遍的な機構であることが意図されている。これらは、無動力の客車又は貨車を牽引する従来の機関車、牽引能力と旅客又は貨物収容性とを組み合わせた車両グループを有するマルチユニット列車、動力車と無動力車とを組み合わせた動力車及びトレーラ形式の列車、列車編成に沿って様々な方法で分散された複数の機関車を有する長い貨物列車、列車の照明・暖房・空調に電力を供給せず代わりに列車編成のどこかの発電車から電力を得る機関車が牽引する旅客列車、動力車又は無動力車の運転室、運転室を持つ又は持たない動力車、通常の摩擦ブレーキを補う回生ブレーキ又は発電ブレーキを持つ車両、牽引力又は電力を補うのに適した大きなエネルギ貯蔵設備を持つ車両を含む。
【0238】
いくつかの型の列車(特にディーゼル又は電気の旅客輸送マルチユニット)は、車両グループに分散された機能を有する。この場合、車両は、別個に操作され得ず、正しく操作するために固定された編成でグループとして一緒に機能する必要がある。通常、このような車両は、バー連結器を使って半永久的に連結され、メンテナンス及び交換目的で駅でだけ分離される。グループ内では、例えば、ある車両のトランスから別の車両のトラクションモータへ、車両間の牽引用電力を分配する設備が設けられている場合がある。特定の列車設計に特有の多種多様な異なる要件が存在し得るので、このような車両間の連結器及びインターフェースは、そのアプリケーションのために特別に設計される必要がある。しかしながら、本発明の連結器2は、グループの外端に連結することができ、列車編成の目的のために実質的にマルチユニットを単一の車両として扱うことができる。これは、いくつかのマルチユニット列車の通常連結を可能とするだけでなく、本発明の連結器を介した更なる収容能力が必要な場合には、1つ又は複数のマルチユニットグループへの単純な無動力客車の取り付けも可能とする。
【0239】
連結器2の伸長及び収縮機構は、連結器ヘッド80及び連結インターフェース84の連結配置と共に、連結される連結器のために別の連結器に対して物理的に接触する必要のない(本発明による)連結器をもたらす。このようにして、連結器2は、先に概説したように、従来の連結器の接続過程に関連する全ての不利な点を受けない。その代わりに、本発明に係る連結器を持つ鉄道車両は、連結が様々な距離及び操作条件で達成されるために、ある許容範囲内で触れることなく適度に接近して停止される必要があるだけである。
【0240】
本発明に係る連結過程は、従来の方法と比較して多くの利点を持つ。鉄道車両は互いに接触することなく停止し、2つの鉄道車両間の衝突から生じる揺れを回避することができる。更に、伸長/収縮過程は、定義された速度及び力で制御される。連結器ヘッドが連結すると伸長過程は自動的に停止し、その動作は、正しく操作するためにスタッフのスキル又は列車の動態に依存しない。その結果、連結動作は、既に停止している車両へのかく乱を最小限に抑え、物品への損傷又は乗客への傷害のリスクがない。
【0241】
能力を大幅に変更すると共に必要であれば編成の一部を他の列車に再配置する列車の独特な能力は、道路、航空又は海上輸送競合他社では利用できない巨大な潜在的利点である。多くの場合、この重要な利点は、現在の連結システムの限界により現時点では有効に活用されていない。
【0242】
本発明の連結器を使用する場合、すべての鉄道車両は静止され得、ブレーキは完全にかけられるので、連結及び連結解除過程は鉄道車両の動きに依存せず、一旦鉄道車両が連結器2の連結範囲に入れば、それ以上の接続は必要ない。貨物ヤードにおいて列車のために貨車を組み合わせている接続機関車は、実際の連結が起こるのを待つ必要がなく、一旦貨車が所定の位置に来ると機関車は連結解除して、すぐに次の貨車を取りに行くことができる。列車用のすべての鉄道車両が所定の位置に来ると、連結過程は、列車管理システムを備えた接続機関車や列車の機関車の到着又は他の鉄道車両のいずれかにより開始され得る。
【0243】
乗客又は貨物の積み下ろしは、鉄道車両が停止するとすぐに行うことができ、連結又は連結解除動作が完了するのを待つ必要はない。それどころか、連結又は連結解除と積み下ろしとは並行に為され得るので、現在の方法と比較して全体的に時間を短縮することができる。
【0244】
鉄道車両の移動から連結/連結解除動作を分離したことは、どのような列車編成にすべきかについての直前の決断を容易にする。鉄道車両は、列車編成に連結される特定の貨物輸送要件を見越して並べられるが、交通量が少なかったり別の列車で処理した方が良い場合には、積み下ろし過程を中断することなく一部の鉄道車両を外すことも容易である。
【0245】
本発明の連結器2は、従来の自動連結器の多くの困難を取り除くことにより、鉄道サービスの時間節約、コスト節約、エネルギ節約及び信頼性向上の重要な機会を提供する。列車編成の変更が容易になり、他の輸送手段との関係で鉄道の競争力を向上させるため、より魅力的なサービスが可能となる。更に、連結器2は、列車運行の自動化に関する将来の革新的なアイデアを促進する。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両を互いに連結するための連結器(2)であって、
伸縮可能な連結器本体(10)と、
伸縮機構(6)と、
該伸縮機構(6)を作動させるように配置されたコントローラ(100)と、
鉄道車両に前記連結器(2)を取り付けるための支持ハウジング(20)と、を備え、
前記連結器本体(10)及び伸縮機構(6)は、前記支持ハウジング(20)内に取り付けられ、
前記連結器本体(10)は、第2連結器の連結インターフェースとの連結のために鉄道車両の接続部を受け入れるように配置された連結インターフェース(84)を有し、
前記連結インターフェース(84)と前記第2連結器の連結インターフェースとが鉄道車両の移動に関係なく互いに連結し得るように、前記伸縮機構(6)は、前記支持ハウジング(20)に対して前記連結器本体(10)を収縮位置と伸長位置との間で任意の距離移動させるように作動され、前記収縮位置と伸長位置との間の距離は、前記連結器(2)の連結範囲を規定し、
前記連結インターフェース(84)と前記支持ハウジング(20)との間の距離は、前記連結器本体(10)が前記収縮位置から前記伸長位置に向かって移動するにつれて増加し、
前記連結インターフェース(84)は、該連結インターフェース(84)がいかなる鉄道車両の移動を必要とすることなく前記連結範囲内の任意の距離で前記第2連結器の連結インターフェースと係合可能となるように、前記連結インターフェース間の接触時に前記第2連結器の連結インターフェースに係合するように配置されていることを特徴とする連結器。
【請求項2】
前記伸縮機構は、実質的に円筒形であり、前記支持ハウジングに対して軸方向には拘束されるが自由に回転できるようにベアリング配置(16a、16b)を介して前記支持ハウジングに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の連結器。
【請求項3】
前記連結器本体は、前記連結インターフェースを有する第1端部(11)と、その反対側の第2端部と、を有し、
前記第1端部と第2端部との間の前記連結器本体の少なくとも一部は、実質的に円筒形部分を有し、前記伸縮機構は、実質的に前記円筒形部分を包囲して該円筒形部分とねじ係合し、前記連結器本体の回転は拘束され
、
コントローラにより作動されたときに前記伸縮機構を回転させるように配置された駆動手段を更に備え
、
前記駆動手段は、該駆動手段が作動していないときに前記伸縮機構の回転を防止するように配置されたロック機構を有することを特徴とする請求項
2に記載の連結器。
【請求項4】
前記連結インターフェースは、
前記第2端部と実質的に面して鉄道車両の前記接続部を受け入れるように配置された内方終端部(45a)と、
その反対側の外側連結器ヘッド(80)と、を有し、
前記連結器ヘッドは、
該連結器ヘッド間の接触時に前記第2連結器の連結器ヘッドと可逆的に係合するように配置された係合手段(81、82)と、
前記内方終端部から鉄道車両の前記接続部に連結して前記連結器ヘッド間の係合時に前記第2連結器の連結接触部に可逆的に連結するよう配置された連結接触部と、を有することを特徴とする請求項3に記載の連結器。
【請求項5】
前記支持ハウジングは、ジンバルフレーム(30)を介して鉄道車両に取り付けられ、前記支持ハウジングは、ベアリング配置(31a、31b)を介して前記ジンバルフレームに回転可能に取り付けられ
、
前記ジンバルフレームは、ベアリング配置を介して鉄道車両に回転可能に取り付けられ
、
前記ジンバルフレームは、連結器ハウジング(90)を介して鉄道車両に取り付けられ、該連結器ハウジングは、前記連結器本体が前記収縮位置にあるときに前記連結器ヘッドが前記連結器ハウジング内にあるように前記連結器本体を実質的に包囲することを特徴とする請求項
4に記載の連結器。
【請求項6】
前記連結器ヘッドは、前記連結器ヘッドを保護及び/又は封止するために該連結器本体が収縮位置にあるときに前記連結器ヘッドを覆い、且つ前記連結器本体が伸長位置にあるときに前記連結器ヘッドを露出させるように配置されたカバー配置(85a、85b)を更に有し、
前記カバー配置は、開位置と閉位置との間で移動できるように前記連結器ヘッドに旋回可能に取り付けられた第1カバー(85a)及び第2カバー(85b)を有し、
前記開位置では、前記第1及び第2カバーの外縁(95a、95b)は、前記連結接触部が露出されるように前記連結器ヘッドの連結接触部と実質的に面一となり、前記閉位置では、前記第1及び第2カバーの外縁は、前記連結接触部が前記第1及び第2カバーと前記連結器ヘッドとの間に位置するように互いに接触し、
前記第1及び第2カバーは、前記開位置と閉位置との間の中間位置に保持され、前記連結器ハウジングは、前記カバーが互いにバイアスされて前記閉位置に移動するように、前記連結器本体が収縮位置に移動したときに前記カバーに係合するように配置されたハウジング突起(91a、91b)を有し、
前記第1及び第2カバーは、前記第2連結器の第1及び第2カバーとの接触時に前記中間位置から前記開位置に移動するように配置されていることを特徴とする請求項
5に記載の連結器。
【請求項7】
前記第1及び第2カバーは、前記連結器本体が前記収縮位置にあるときに、前記連結器ハウジングに対してフランジを形成するように配置される長尺な突出部(88a、88b、88c)を有
し、
前記第1及び第2カバーは、前記第2連結器の近接を示すために前記中間位置からの前記カバーの移動を検知するように配置されたセンサ(98a、98b)を有することを特徴とする請求項
6に記載の連結器。
【請求項8】
鉄道車両の前記接続部は、第1接続セット及び第2接続セットを有し、
前記第2端部は、前記連結器本体への開口を有し、前記内方終端部は、前記開口を介して前記第1接続セットを受け入れるように配置されていることを特徴とする請求項
5乃至請求項
7のいずれか一項に記載の連結器。
【請求項9】
前記支持ハウジングは、前記連結器本体を受け入れて該連結器本体と実質的に平行となった長尺な梁(33a、33b)を有し、
前記連結器本体は、前記梁に面する長尺な溝を有し、前記梁は、前記連結器本体の軸方向への移動は許容するが回転移動を制限するために前記溝と係合するように配置された長尺な突起を有することを特徴とする請求項
8に記載の連結器。
【請求項10】
前記梁は、プレート(34)を介して前記支持ハウジングから遠位の端部で一緒に取り付けられ、前記開口は、前記プレートを介して前記第1接続セットを受け入れるように配置されていることを特徴とする請求項
9に記載の連結器。
【請求項11】
前記内方終端部とプレートとの間に連結された前記第1接続セットは、該第1接続セットの伸長及び収縮を可能とするために螺旋状に配置されていることを特徴とする請求項
10に記載の連結器。
【請求項12】
前記内方終端部及び第2端部は、前記連結器本体の長手方向に対して径方向に突出した突出部分を有し、前記内方終端部の突出部分は、前記第2端部の突出部分を介して前記第2接続セットを受け入れるように配置されていることを特徴とする請求項
8乃至請求項
11のいずれか一項に記載の連結器。
【請求項13】
前記第1接続セットは、低電力電気接続、空気圧接続及び光学接続のうちの少なくとも1つ又は複数を有し、
前記第2接続セットは、高電力電気接続であることを特徴とする請求項
12に記載の連結器。
【請求項14】
前記第2接続セットは、前記内方終端部の突出部分と前記第2端部との間に取り付けられ、且つ前記第2端部において鉄道車両のホテルバスに連結された導電ロッド(40a、40、40c)を有することを特徴とする請求項
12又は請求項
13に記載の連結器。
【請求項15】
前記ロッドは、該ロッドへの係合及び係合解除をスイッチするように配置されたロッド接触部(51a、51b、51c)を介してホテルバスに連結されることを特徴とする請求項
14に記載の連結器。
【請求項16】
前記ロッド接触部は、絶縁フレーム(50)を介して前記支持ハウジングに取り付けられ
、
前記絶縁フレームは、前記ロッドに接触するブラシ(66)を有し、該ブラシに対する前記ロッドの移動は、該ロッドから酸化を除去することを特徴とする請求項
15に記載の連結器。
【請求項17】
前記コントローラは、前記連結インターフェースを操作して前記第2連結器のコントローラと通信し、前記連結インターフェースと前記第2連結器の連結インターフェースとの連結及び連結解除を同期させるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項
16のいずれか一項に記載の連結器。
【請求項18】
請求項1乃至請求項
17のいずれか一項に記載の連結器を制御する方法であって、
前記第2連結器(2b)から連結要求コマンドを受信するステップと、
前記第2連結器に連結合意コマンドを送信するステップと、
前記収縮位置から前記伸長位置に向かって前記連結器本体を伸長するステップと、
前記連結インターフェース間の接触時に該連結インターフェースを前記第2連結器の連結インターフェースに係合させるステップと、
前記第2連結器の連結インターフェースに鉄道車両の前記接続部の少なくとも一部を接続するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記連結器本体の伸長速度は、前記連結インターフェースと前記第2連結器の連結インターフェースとの間の接触時に減少され、
前記連結器本体の収縮速度は、前記連結インターフェースが前記第2連結器の連結インターフェースともはや接触しなくなると増加されることを特徴とする請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記連結器本体の伸長は、前記連結インターフェースと前記第2連結器の連結インターフェースとの間の係合時に停止され、
前記連結器本体の収縮は、前記連結インターフェースと前記第2連結器の連結インターフェースとの間の係合解除時に開始することを特徴とする請求項
19に記載の方法。
【国際調査報告】