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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(54)【発明の名称】薬剤溶出ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/89 20130101AFI20240105BHJP
【FI】
A61F2/89
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563348
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 IB2021062445
(87)【国際公開番号】W WO2022144810
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/131,702
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/133,908
(32)【優先日】2021-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】523243708
【氏名又は名称】シノ メディカル サイエンシズ テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SINO MEDICAL SCIENCES TECHNOLOGY INC.
【住所又は居所原語表記】2nd Floor,TEDA Biopharm Res. Building B,#5 4th Street TEDA,Tianjin,Hebei 330457 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サン,ジャンファ
(72)【発明者】
【氏名】ビューロー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】カイ,ウェンビン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ティアンジュ
(72)【発明者】
【氏名】カン,シャオラン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA44
4C267AA45
4C267AA47
4C267AA50
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB06
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB15
4C267BB18
4C267BB19
4C267BB20
4C267BB26
4C267BB31
4C267BB39
4C267BB40
4C267BB63
4C267CC08
4C267CC19
4C267GG02
4C267GG22
4C267GG23
4C267GG43
4C267HH08
(57)【要約】
本開示は、薬物溶出ステント(DES)、DESの作製方法、使用方法、及び長期安定性の検証方法、並びにDESの留置後の長期にわたるステント有効性及び患者安全性を予測するための方法に関する。一実施形態において、DESは、ステントフレームワーク、薬物含有層、薬物含有層に包埋された薬物、及びステントフレームワークの上に設けられ、かつ薬物含有層を支持する、生体適合性ベース層を含み得る。薬物含有層は、不均一なコーティング厚さを有し得る。加えて、又は代替として、薬物含有層は、平滑筋細胞がその最大増殖を有するべき時点で最大である瞬間的な薬物放出を可能にし、留置後約30日後に本質的にゼロとなり、ステント留置後45日~90日の間に有意に溶解/消散/消失するように構成され得る。本開示のステントは、平滑筋細胞の正常な成長を妨げることなく、過剰増殖を抑制することに焦点を当てており、例えば、再狭窄、血栓症、及び/又はMACEを含む、ステントの留置に関連する患者リスクを低下、最小化、又は排除し得る。
【選択図】図16B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物溶出ステントであって、以下の少なくとも4つの部分:
ステントフレームワーク;
薬物含有層;
前記薬物含有層に包埋された薬物;
前記ステントフレームワークの上に設けられ、かつ前記薬物含有層を支持する、生体適合性ベース層、を備え、
前記ステントの1つ以上の部分が、以下から選択される予め設計された薬物放出薬物動態プロファイル:
(1)前記薬物薬物動態プロファイルが、Tmax及びCmax(留置後の動脈組織1g当たりの薬物ngで表される)を有し、その結果、
(a)Tmaxが、400~600時間、好ましくは500時間であり、
(b)Cmaxが、5~15ng/g、好ましくは10ng/gであり、かつ/又は
(c)前記薬物薬物動態プロファイルが、図16Bに図示されるように、ステント留置後の平滑筋細胞増殖についての動態プロファイルと重複し、好ましくは、ステント留置部位における動脈組織濃度が、15日~25日、好ましくは20日でピークに達し、その後血管回復を可能にするために減少し、かつ
(2)前記薬物が、おおよそ図16A又は図16Bに図示されるように、前記ステント留置部位の前記動脈組織における薬物動態プロファイルを有し、任意選択的に、前記薬物が、シロリムスである、を達成するように設計されている、薬物溶出ステント。
【請求項2】
前記薬物が、前記ステントの反管腔側の前記薬物含有層に本質的に包埋されている、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
【請求項3】
前記ステントフレームワークが、金属、ワイヤ、又はチューブの単一片から製造されている、実施形態1又は2に記載の薬物溶出ステント。
【請求項4】
前記金属が、ステンレス鋼、ニチノール、タンタル、コバルトクロムMP35N又はMP20N合金、白金、及びチタンのうちの少なくとも1種を含む、実施形態3に記載の薬物溶出ステント。
【請求項5】
前記ステントフレームワークが、マグネシウム、亜鉛、又は鉄から作られる金属合金などの生分解性材料から製造されている、実施形態1~3のいずれか一項に記載の薬物溶出ステント。
【請求項6】
前記薬物が、抗血栓剤、抗凝固剤、抗血小板剤、抗腫瘍剤、抗増殖剤、抗生物質、抗炎症剤、遺伝子治療剤、組換えDNA産物、組換えRNA産物、コラーゲン、コラーゲン誘導体、タンパク質類似物、糖類、糖類誘導体、平滑筋細胞増殖阻害剤、内皮細胞移動、増殖、及び/又は生存の促進剤、並びにこれらの組み合わせのうちの少なくとも1種を含む、実施形態1~5のいずれか一項に記載の薬物溶出ステント。
【請求項7】
前記薬物が、シロリムス及び/又はシロリムスの誘導体若しくは類似体を含む、実施形態6に記載の薬物溶出ステント。
【請求項8】
前記薬物含有層が、管腔側、反管腔側、又は両側において、5~12μm又は2~20μm、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16。17、18、19、又は20μmの厚さを有する、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
【請求項9】
前記薬物含有層が、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(PHA)、ポリ(エステルアミド)(PEA)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート-co-エステルアミド)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(プロピレンフマレート)(PPF)、ポリ(D-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリ(メソ-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド-co-メソ-ラクチド)、ポリ(D-ラクチド-co-メソ-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-co-メソ-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-co-PEG)、ポリ(D,L-ラクチド-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(グリコール酸-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、PHA-PEG、PBT-PEG(PolyActive(登録商標))、PEG-PPO-PEG(Pluronic(登録商標))、及びPPF-co-PEG、ポリカプロラクトン、ポリグリセロールセバケート、ポリカルボネート、バイオポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、ポリジオキサノン、ハイブリッド、複合体、増殖調節因子を含むコラーゲンマトリックス、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、真空成形された小腸粘膜下層、繊維、キチン、デキスラン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
【請求項10】
前記薬物含有層が、チロシン由来ポリカルボネートから選択される、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
【請求項11】
前記薬物含有層が、ポリ(β-ヒドロキシアルカノエート)及びその誘導体から選択される、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
【請求項12】
前記薬物含有層が、ポリラクチド-co-グリコリド50/50(PLGA)又はポリブチルメタクリレートを含む、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
【請求項13】
前記生体適合性ベース層が、ポリポリブチルメタクリレート、ポリ-N-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチル]-アクリルアミド(ポリ-NTMA)、ポリ-ドーパミン、PEDOT、PTFE、PVDF-HFP、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)、パリレンC、PVP、PEVA、SBS、PC、又はTiO2のうちの少なくとも1種を含む、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
【請求項14】
前記生体適合性ベース層が、電気グラフト層と、任意選択的に電気グラフトポリマー層と、を備え、任意選択的に前記薬物含有層と交差する、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
【請求項15】
前記生体適合性ベース層が、フェニルジアゾニウム又はアジドの化学的グラフトによって得られる有機層を備える、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
【請求項16】
前記グラフト層が、10nm~1000nm、好ましくは100nm~200nmの厚さを有する、実施形態14及び15に記載の薬物溶出ステント。
【請求項17】
前記電気グラフトポリマー層が、ビニル基、エポキシド、及び開環重合を受ける環状モノマー、及びアリールジアゾニウム塩からなる群から選択されるモノマーを含む、実施形態14に記載の薬物溶出ステント。
【請求項18】
前記モノマーが、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、イプシロンカプロラクトン、N-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチル]-アクリルアミド(NTMA)及び4-ニトロフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレートからなる群から更に選択される、実施形態17に記載の薬物溶出ステント。
【請求項19】
(i)薬物溶出ステントの生成物パラメータを選択する、及び/又は(ii)ステント留置後1年以上におけるステント留置の結果(例えば、血栓症)を予測する方法であって、前記ステントを調製することと、ステント留置後30日においてステントが留置された動脈組織内における前記ステントの上の新生内膜被覆率を測定することと、を含み、30日における前記ステントの上の新生内膜被覆率が高いほど、ステント有効性及び/又は安全性の点で前記ステントが優れている、方法。
【請求項20】
前記約30日/1ヶ月における前記留置されたステントの上の新生内膜被覆率が、ステント留置後1年以上におけるステント留置による副作用を予測し、約30日/1ヶ月における80~90%の新生内膜被覆が、ステント留置後1年における低い副作用を表すか、又は予測する、実施形態19に記載の方法。
【請求項21】
前記新生内膜被覆率が、好ましくは約30日/1ヶ月における、ストラット被覆を測定することによって評価され得る、実施形態20に記載の方法。
【請求項22】
新生内膜被覆の存在が、好ましくは約30日/1ヶ月における、OCTによって評価され得る、実施形態20に記載の方法。
【請求項23】
被覆されたストラットが、前記ストラットの表面よりも0マイクロメートルを超える、好ましくは20マイクロメートルを超える新生内膜厚を有するストラットである、実施形態21に記載の方法。
【請求項24】
薬物溶出ステントを調製する方法であって、前記薬物溶出ステントが、動物モデル、好ましくはウサギ腸骨動脈モデルにおいて、ステント留置後28日~90日の間に、80%~100%の新生内膜ストラット被覆を達成し、実施形態1に記載のステントの特性を有するステントを調製することを含む、方法。
【請求項25】
ステント留置後20日~60日の間に、80%~100%の新生内膜ストラット被覆が達成される、実施形態24に記載の方法。
【請求項26】
ステント留置後約30日に、80%~100%の新生内膜ストラット被覆が達成される、実施形態25に記載の方法。
【請求項27】
薬物溶出ステントであって、以下の少なくとも4つの部分:
ステントフレームワーク;
薬物含有層;
前記薬物含有層に包埋された薬物;
前記ステントフレームワークの上に設けられ、かつ前記薬物含有層を支持する、生体適合性ベース層、を備え、前記ステントが、ウサギ試験において、腸骨動脈における留置後、以下の特徴:
(a)ステント留置領域における動脈によるエバンスブルー染料の取り込みが、45日時点で40%未満、90日時点で25%未満である;
(b)比Rが、ステント留置された動脈の前記ステント留置領域の長手方向断面における共焦点顕微鏡によって測定され、P120タンパク質の量に対するVE-カドヘリン(R=[P120]/[VE-cad])の比であり、足場領域における前記タンパク質の共局在化の程度を特徴とし、45日時点で70%より大きく、90日時点で80%より大きい;かつ
(c)細胞形状指数Iが、共焦点顕微鏡法によって観察された内皮細胞の最大長さ[a]を前記最長長さに垂直な方向にあるサイズ[b]で割った(I=[a]/[b])比率として定義され、留置後45日で2より大きく、留置後90日で3.5より大きい、を有する、薬物溶出ステント。
【請求項28】
前記ステントの1つ以上の部分が、以下から選択される予め設計された薬物放出薬物動態プロファイル:
(1)前記薬物薬物動態プロファイルが、Tmax及びCmax(留置後の動脈組織1g当たりの薬物ngで表される)を有し、その結果、
(a)Tmaxが、400~600時間、好ましくは500時間であり、
(b)Cmaxが、5~15ng/g、好ましくは10ng/gであり、かつ/又は
(c)前記薬物薬物動態プロファイルが、図16Bに図示されるように、ステント留置後の平滑筋細胞増殖についての動態プロファイルと重複し、好ましくは、ステント留置部位における動脈組織濃度が、15日~25日、好ましくは20日でピークに達し、その後血管回復を可能にするために減少し、かつ
(2)前記薬物が、おおよそ図16A又は図16Bに図示されるように、前記ステント留置部位の前記動脈組織における薬物動態プロファイルを有し、任意選択的に、前記薬物が、シロリムスである、を達成するように設計されている、実施形態27に記載の薬物溶出ステント。
【請求項29】
薬物溶出ステントを調製する方法であって、前記薬物溶出ステントが、ステント留置後20日~60日の間に、80%~100%の新生内膜ストラット被覆を達成し、実施形態27に記載のステントの特性を有するステントを調製することを含む、方法。
【請求項30】
ステント留置後20日~60日の間に、80%~100%の新生内膜ストラット被覆が達成される、実施形態29に記載の方法。
【請求項31】
ステント留置後約30日に、80%~100%の新生内膜ストラット被覆が達成される、実施形態29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬物溶出ステント、薬物溶出ステントの作製及び使用方法、並びに薬物溶出ステントの留置後の長期にわたる有効性及び患者安全性を予測する方法に関する。より具体的には、限定されないが、本開示は、薬物溶出性ステントの設計に関し、この薬物溶出ステントは、ステントフレームワーク(例えば、金属ベース、又は生分解性材料)と、当該ステントの表面の全て又は一部を覆う層とを含み、当該薬物溶出ステントの留置と関連する患者のリスクが最小となるか又は除去される方法で、この層は薬物を収容し、持続的にそれを放出することができる。本明細書に開示されるステントは、留置後の内皮細胞層の機能的修復を可能にすることができる。
【背景技術】
【0002】
長年にわたり、医療機器用のコーティング及び薬物送達の使用は、特に医療機器及びインプラントの能力を増強するために、必要となってきた。薬剤溶出性医療機器は、心血管疾患の治療のための先導的生物医学デバイスとして浮上している。
【0003】
心臓病及び心不全は、米国及び世界で最も一般的な健康状態の2つである。冠動脈疾患では、心臓の血管が狭くなる。これが起こると、心筋への酸素供給が低下する。冠動脈疾患の主な治療は、最初、手術、例えば、心臓外科医によって行われる正常かつ効率的な処置である、CABG(冠動脈バイパスグラフト)によって行われた。しかしながら、死亡率及び罹患率は、かなり高かった。
【0004】
1960年代において、幾人かの医師は医療機器を使用して侵襲性の低い治療法を開発した。これらのデバイスは、大腿動脈の小さな切り口を介して挿入された。例えば、バルーン血管形成術(膨張して動脈を開くバルーンカテーテルを使用して狭くなった動脈を広げるために使用され得、PTCA(経皮経管冠状動脈形成術)とも呼ばれる)は、冠動脈疾患を患う患者に使用される。バルーン血管形成術後に、一般的には、血栓症(血管内に血餅が生じ、血管を詰まらせて血液の流れを止めること)又は異常な組織の増殖のため、通常3~6ヶ月以内に、冠動脈の約40~50%が再狭窄(通常バルーン血管形成術によって血管を広げた後、血管が再び狭くなること)に冒される。結果として、再狭窄は、PTCAの有効性に対する主要な制限の1つになっている。
【0005】
1980年代後半のベアメタルステント(BMS)の導入は、冠動脈の拡張を維持するために使用されたとき、この問題、及びPTCA手技におけるバルーン膨張時の動脈の解離の問題を部分的に緩和した。
【0006】
ステントのいくつかは、バルーンカテーテルに取り付けられたメッシュチューブ(例えば、体内に挿入することができる長い細い可撓性チューブ)である。いくつかの例において、ステントは心臓を通る。しかしながら、BMSは当初、ステント挿入後6ヶ月後に罹患した患者の約25%の一般的な再狭窄率と関連していた。通常、ステントストラットは、増殖中に動脈組織によって最終的に包埋される。この組織は、通常、平滑筋細胞(SMC)から作られ、その増殖は、ステント留置時の動脈の初期損傷によって誘発され得る。
【0007】
図1に示されるように、血管(100)の内面全体は、機能的EC(101)の「活性」、すなわち、自発的に窒素酸化物(NO)を産生する内皮細胞によって覆われ、NOは、直下のSMC(103)の増殖を停止するシグナルとして機能する小分子である。EC(101)によるNOのこの自然放出は、EC(101)が互いに直接接触しているとき、例えば、連続的かつ密接に詰まったフィルムによって動脈の内面を覆う場合に、一般的に起こる。
【0008】
ステント(又はバルーン)が血管(150)内で膨張されると、血管壁と接触するステントストラットは、EC層を部分的に破壊し、例えば、接点(105a)及び(105b)で動脈を傷つける。図2。したがって、NOの自然放出は、少なくとも接点(105a)及び(105b)において局所的に、かなり混乱させられる。この損傷は、例えば、SMC(107a)及び(107b)のような、修復メカニズムとしてのSMCの増殖を引き起こし得る。SMCの制御されていない増殖は、血管の再閉鎖、又は「再狭窄」を引き起こす可能性がある。SMC(107a)及び(107b)が増殖している間に、EC(101)も増殖し、最終的に連続フィルムを介してステントストラット及びSMC(107a)及び(107b)を再び覆うことができる場合、NO放出が回復され、SMCの増殖が停止され得る。その結果、再狭窄のリスクが軽減され(排除されない場合)、状況が安定し得る。
【0009】
1990年代以来、介入心臓学業界の最大の課題の1つは、EC被覆を完了してEC層機能を復元するために、最初にこの「レース」を理解して次に保護することであった。内皮は、全ての血液及びリンパ管系の内側にライニングされた細胞の単層である。内皮の重要な機能の1つは、血管系と間質組織との間の液体、巨大分子、及び白血球の動きを調節することである。これは、部分的には、VE-カドヘリン及びp120-カテニンを含むいくつかの膜貫通接合タンパク質を使用することによって、内皮細胞が強い細胞-細胞接触を形成する能力によって媒介される。2種類のタンパク質の共局在化は、良好に機能する内皮細胞層の指標である。
【0010】
2つの戦略が、ステント留置後に動脈を回復させるために、歴史的に考慮されてきた。いくつかの薬物溶出性ステント(DES)設計の1つの目的は、活性な内皮細胞(EC)の増殖を促進して、それらの移動及びステントの表面の最終的な被覆を加速することである。これらの新しいECが活性である場合、例えば、連続的かつ密接に詰まったフィルムを形成する場合、それらは通常、自発的にNOを放出し、それによってSMCの増殖を妨げる。
【0011】
いくつかのDES設計の別の目標は、平滑筋細胞(SMC)の増殖を阻害することである。一般に、これは、ステントの表面からの抗増殖剤(通常は抗がん剤に類似する抗血管新生剤)の局所放出を介して標的化されている。
【0012】
市販されている多くのDESは、薬物が溶出されるポリマー放出マトリックスに基づいて作られている。第1及び第2世代のステントは、しばしば生体安定性ポリマーでコーティングされた。そのようなステントにおいて、ポリマーはステント上に永久に留まり、一般には、炎症応答及びECの増殖の両方にほとんど影響を及ぼさないと推定される。しかしながら、いくつかの場合において、これらのステントは、それらのコーティングが収容する薬物の100%を放出しない。具体的には、時々、薬物の大部分は、長期間にわたってポリマーコーティングに残存する。更に、これまでに使用されているほとんどの薬剤は選択的ではなく、SMCよりもECの増殖を阻害する傾向がある。市販されているほとんどのDESは、ステント留置後約3ヶ月又はそれ以上で薬物放出が完了するようなものである。薬物の相対的な長期存在は、細胞の増殖速度を低下させ、新たに形成された内皮の機能的修復の質の低下をもたらす。
【0013】
この欠点は、患者、したがって、DES業界に劇的かつ潜在的に致命的な結果をもたらす可能性がある。事実、最初の年において、再狭窄が、ベアメタルステント(BMS)を用いる約20%から薬物溶出ステント(DES)を用いる約5%に低下する可能性があるにもかかわらず、DESの大規模な導入は2つの新しい課題をもたらした:(1)晩期血栓症の現象、すなわち、ステント留置後1年以上で血栓症が生じること、及び(2)再狭窄に再び至る新生内膜層の進行性増殖。したがって、DESが一般的に達成したものは、再狭窄の発生を遅延させることであるが、DES留置後の数年間で血栓症、新生アテローム動脈硬化症などの他の合併症を引き起こす。
【0014】
ベアメタルステントの留置は、再狭窄に加えて、血栓症の原因であると理解されるが、前者は、一般には、2つの抗血栓剤、例えば、アスピリン及びクロピドグレルを伴う全身性抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)によって扱われる。例えば、ステントを留置された患者は、しばしば、そのようなDAPTを1~2ヶ月間処方された。薬物溶出ステントでは、DAPTの中断後の凝固(血栓症)による動脈の再凝固について多数の症例が報告されている。したがって、多くの心臓専門医は、DAPTを3、6、9、そして現在は12ヶ月以上維持している。2005年~2006年に、全ステント血栓症を伴う心筋梗塞は、18ヶ月のDAPTの中断から数週間後にのみ起こり得るといういくつかの症例が報告された。
【0015】
晩期血栓症は突然の合併症であり、患者が医学的フォローアップを受けていない場合、又は、患者がフォローアップを受けていても、患者がカテーテル処置室から、又は十分に設備の整った医療センターから離れている間に起こると致命的になり得る。更に、DAPTは管理が困難なボトルネックを表し得るが、これは、幾人かの患者が、使用期間後にそれを停止することを自分で決定したり、薬を補充したり、薬を服用したりすることを忘れたり、予期せぬ臨床介入を受けなければならず、したがって抗血栓治療を停止しなければならない立場にいるからである。
【0016】
晩期血栓症の正確な原因はまだ完全には解明されていない。病理学者は、晩期血栓症がECによるステントの不完全な被覆を明らかにし、血小板接着が起こりやすい金属又はポリマー材料を長期間にわたって血液と接触させ、これが血栓の破滅的な沈殿につながる可能性があると推定している。別の解釈は、ECによる不完全な被覆は、放出層からの薬物の不完全な放出の結果であり得、これは、当該ポリマー+薬物+SMC層の表面を移動させて覆おうとする試みにおけるECの増殖を阻害し得ることを提案する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ステントストラットの厚さは、ECの増殖の障害源を更に提示し得る。ECが表面上で増殖しなければならない場合は、常に、それらの増殖の速度は、しばしばそれらが完全な被覆に向けてこの表面上で克服しなければならない障害の高さにて負に(かつ大いに)影響される。したがって、全てのステント設計及び薬物放出プロフィールが同などであるのではない。例えば、DESが動脈中に並置された場合、傷つけられたEC層は、ステントストラットの厚さ+薬物放出ポリマー層の厚さ+形成することを開始したSMC層の厚さとほぼ同などな高さを有する障害を克服しなければならない。前者の2つの厚さはDESの設計に関連し、他方、後者の厚さは薬物の効力、放出層中へのその充填、及びその放出速度に関連する。したがって、ステントの留置に関連する患者の危険性(例えば、再狭窄、血栓症、MACE)を減少できる、新しいステント及びステントの作製方法の開発に対する需要は依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本開示は、薬物溶出ステント、並びに薬物溶出ステントの作製及び使用方法、並びにステント有効性及び患者安全性を予測する方法に関する。一実施形態において、薬物溶出ステント(1)は、ステントフレームワーク(2)、薬物含有層(3)、薬物(4)、及び薬物含有層を支持する生体適合性ベース層(5)の4つの部分を組み合わせる。一実施形態において、ステント及びステントを作製する方法は、例えば、薬物含有層の厚さ及びその厚さの分布、及び/又はステントを取り囲む動脈壁への薬物送達の薬物動態を操作することによって、ステント表面/血管壁の十分な新生内膜被覆を達成するとともに、内皮機能の回復を改善する時間を操作するように設計される。留置されたステントストラット上に形成された新生内膜は、通常、平滑筋細胞、マトリックス、及び内皮細胞の単層を含む。ステント留置後約30日までにステントストラットの80%~90%が新生内膜被覆されることが、新生内膜被覆率が低いステントと比較して、ステント留置後1年以降にステント留置後の副作用が低いことと相関し、予測することが発見された。この発見により、ステント設計の最終的なパラメータ及び指針が得られ、これによりステントの1種又は複数種の物理的特徴を設計して、ステント留置後1年目のステント性能の早期予測因子である、約30日後までのステントストラットの新生内膜被覆率が80%~90%になるように、ステントを設計することができる。この発見に先立ち、このような初期のパラメータをステント留置後に使用して、ステントの性能を予測し、ステント設計の目標として役立てることができるかどうかについては知られていなかった。一実施形態において、この被覆は、管腔側の薬物含有層の厚さがステントの反管腔側の厚さと異なるようにステントを設計することによって達成される。他の実施形態において、この被覆率は、ステントの動脈領域に特定の薬物送達プロファイルを有するステントを設計することによって達成される。別の実施形態において、優れたステントは、ウサギステント留置モデルにおいて、ステント留置後45日及び90日で、特定のレベルのエバンス-ブルー染色及び/又はVE-カドヘリン/p120共局在化を有するステントを設計することによって達成されることが発見された。別の実施形態において、優れたステントは、ステント留置後の特定の時点(例えば、ウサギステント留置モデルでは45日及び90日)で特定の細胞形状インデックスを有するステントを設計することによって達成されることが発見された。一実施形態において、本開示のステントは、晩期血栓症、すなわちステント留置から1年以上経過した後の動脈の再凝固、及び再び再狭窄に至る新生内膜層の厚さの進行を最小限に抑える。一実施形態において、ステント及びステントを作製する方法は、それらが主要な有害事象(MACE)の数又は頻度を低下させるようなものである。一実施形態において、ステントは、30日以内にステントストラットの表面に高い割合(例えば、80~90%)の新膜被覆を促進するように設計され、これは予想外に強度有効性及び患者安全性を有意に改善する。
【0019】
一実施形態において、ステントフレームワーク(2)は、単一(又はそれ以上)の金属片又はワイヤ又はチューブから製造され得る。例えば、ステントフレームワークは、コバルトクロム(例えば、MP35N又はMP20N合金)、ステンレス鋼(例えば、316L)、ニチノール、タンタル、白金、チタン、好適な生体適合性合金、他の好適な生体適合性材料、及び/又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、ステントフレームワーク(2)は生分解性であり得る。例えば、ステントフレームワーク(2)は、マグネシウム合金、亜鉛合金、鉄合金、ポリ乳酸、ポリカーボネートポリマー、サリチル酸ポリマー、及び/又はそれらの組み合わせから製造され得る。言い換えると、ステントの厚さが120um以下でありながら、根治力が、留置可能で、病変を安定させ、血管を後退させることを支持するために十分な強度を持つような方法で製造でき、生体適合性でありながら生分解性もある材料がその一例である。
【0021】
他の実施形態において、ステントフレームワーク(2)は、1種以上のプラスチック、例えば、ポリウレタン、テフロン、ポリエチレンなどから製造され得る。
【0022】
薬物含有層(3)は、ポリマーから作製され得、ステント表面の全部又は一部を覆う層を備え得る。更に、薬物含有層(3)は、薬物(4)を収容し、薬物(4)を持続的に放出することができる。
【0023】
一実施形態において、薬物含有層は、不均一なコーティング厚さを有し得る。例えば、ステントの管腔側の薬物含有層の厚さ、及び/ステントの側面側の薬物含有層の厚さは、ステントの反管腔側の薬物含有層の厚さよりも小さい。別の例では、ステントの反管腔側の薬物含有層の厚さ及びステントの側面側の薬物含有層の厚さは、ステントの管腔側の薬物含有層の厚さよりも小さい。
【0024】
一実施形態において、例えば、不均一なコーティング厚さのために、薬物含有層は、血管内に留置されてから30日以内に薬物を放出し得る。放出時間は、例えば、標準的な動物PK(薬物動態)試験を使用して検証されてもよい。したがって、薬物溶出ステント(1)が人体の血管に留置されるとき、薬物(4)は、30日以内にコーティング(3)から放出され得る。他の実施形態において、薬物は、異なる速度、例えば、45日以下、60日以下、又はその間の任意の間隔、例えば、30日~45日、45日~60日、及び間隔の任意の他の組み合わせで放出される。
【0025】
いくつかの実施形態において、薬物は、ステントの反管腔側にのみ含まれ得る。いくつかの実施形態において、薬物は、ステントの側面側にのみ含まれてもよい。
【0026】
薬物含有層(3)が生分解性又は生吸収性ポリマーから作製される実施形態において、ポリマーは、ステントの留置の15日~30日、30日~45日、及び45日~60日に生分解又は生吸収され得る。他の実施形態において、ポリマー/ポリマーの組み合わせは、30日以下、45日以下、60日以下、及びその間の任意の間隔、例えば、15日~30日、30日~45日、45日~60日、及び任意の間隔の他の組み合わせで、生分解又は生体吸収される。
【0027】
いくつかの実施形態において、ステントの管腔側及び/又は側面側のポリマーは、反管腔側のポリマーとは異なる場合がある。例えば、ステントの管腔側に薬物含有層を形成する1種以上のポリマーと、ステントの側面側に薬物含有層を形成する1種以上のポリマーは、ステントの反管腔側に薬物含有層を形成する1種以上のポリマーよりも速く分解する。生体適合性ベース層(5)は、ステントフレームワーク(2)上に形成され得、ステントフレームワーク(2)よりも生体適合性の高い表面を有し得る。例えば、生体適合性ベース層(5)は、ポリn-ブチルメタクリレート、ポリ-メチルメタクリレート、ポリ-アクリル酸、ポリ-N-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチル]-アクリルアミド(ポリ-NTMA)、PEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))PTFE、PVDF-HFP、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)、パリレンC、ポリ-ドーパミン(PDA)、PVP、PEVA、SBS、PC、TiO2、又は良好な生体適合性を有する任意の材料(又はこれらの組み合わせ)から作製され得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、生体適合性ベース層は、スプレー又は浸漬によって堆積される予め作られたポリマーから得られる。
【0029】
更に他の実施形態において、生体適合性ベース層は、PEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))などの導電性ポリマーの電気重合、又はビニルモノマー若しくはアリールジアゾニウム化合物の電気的グラフト(electro-grafting)などの前駆体分子、具体的には、前駆体モノマーからの電気化学的プロセスによって得られる。
【0030】
いくつかの実施形態において、生体適合性ベース層は、ステント留置中に傷つけられた動脈領域の治癒を加速するように、具体的には、その表面上の内皮細胞の移動を加速するように選択され得る。そのようなベース層の例としては、電気的にグラフトされたポリ-ブチルメタクリレート(参照文献:link.springer.com/article/10.1007/s13239-021-00542-x)又は電気的にグラフトされたポリ-N-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチル]-アクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
更に別の実施形態において、生体適合性ベース層は、ステント表面からの炎症マーカー、具体的には炎症性サイトカイン(IL-6、IL-8)又は白血球の接着と局所的な動員を可能にする糖タンパク質(E-セレクチン)の産生を阻害するように選択し得、その一方で、組織因子経路阻害剤(TFPI)若しくはポリ-ドーパミン(PDA)などの血栓症阻害剤の産生を維持又は増強することもできる(参照文献:doi.org/10.1093/eurheartj/ehab027)。
【0032】
以下は、本開示のいくつかの更なる例示的な実施形態である。
1.薬物溶出ステントであって、以下の少なくとも4つの部分:
ステントフレームワーク;
薬物含有層;
薬物含有層に包埋された薬物;
ステントフレームワークの上に設けられ、かつ薬物含有層を支持する、生体適合性ベース層、を備え、
ステントの1つ以上の部分が、以下から選択される予め設計された薬物放出薬物動態プロファイル:
(1)薬物薬物動態プロファイルが、Tmax及びCmax(留置後の動脈組織1g当たりの薬物のngで表される)を有し、その結果、
(a)Tmaxは400~600時間、好ましくは500時間であり、
(b)Cmaxが、5~15ng/g、好ましくは10ng/gであり、かつ/又は
(c)薬物薬物動態プロファイルが、図16Bに図示されるように、ステント留置後の平滑筋細胞増殖についての動態プロファイルと重複し、好ましくは、ステント留置部位における動脈組織濃度が15日~25日、好ましくは20日でピークに達し、その後血管回復を可能にするために減少し、かつ
(2)薬物が、おおよそ図16A又は図16Bに図示されるように、ステント留置部位の動脈組織において薬物動態プロファイルを有し、任意選択的に、薬物が、シロリムスである、を達成するように設計されている、薬物溶出ステント。
2.薬物が、ステントの反管腔側の薬物含有層に本質的に包埋されている、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
3.ステントフレームワークが、金属、ワイヤ、又はチューブの単一片から製造されている、実施形態1又は2に記載の薬物溶出性ステント。
4.金属が、ステンレス鋼、ニチノール、タンタル、コバルトクロムMP35N又はMP20N合金、白金、及びチタンのうちの少なくとも1種を含む、実施形態3に記載の薬物溶出ステント。
5.ステントフレームワークが、マグネシウム、亜鉛、又は鉄から作られる金属合金などの生分解性材料から製造される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の薬物溶出ステント。
6.薬物が、抗血栓剤、抗凝固剤、抗血小板剤、抗腫瘍剤、抗増殖剤、抗生物質、抗炎症剤、遺伝子治療剤、組換えDNA産物、組換えRNA産物、コラーゲン、コラーゲン誘導体、タンパク質類似物、糖類、糖類誘導体、平滑筋細胞増殖阻害剤、内皮細胞移動、増殖、及び/又は生存の促進剤、並びにこれらの組み合わせのうちの少なくとも1種を含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の薬物溶出ステント。
7.薬物が、シロリムス及び/又はシロリムスの誘導体若しくは類似体を含む、実施形態6に記載の薬物溶出ステント。
8.薬物含有層の厚さが、管腔側側面、反管腔側側面、又は両側において、5~12μm又は2~20μm、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16。17、18、19、又は20μmである、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
9.薬物含有層が、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(PHA)、ポリ(エステルアミド)(PEA)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート-co-エステルアミド)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(プロピレンフマレート)(PPF)、ポリ(D-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリ(メソ-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド-co-メソ-ラクチド)、ポリ(D-ラクチド-co-メソ-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-co-メソ-ラクチド)、ポリ(D.L-ラクチド-co-PEG)、ポリ(D,L-ラクチド-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(グリコール酸-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、PHA-PEG、PBT-PEG(PolyActive(登録商標))、PEG-PPO-PEG(Pluronic(登録商標))、及びPPF-co-PEG、ポリカプロラクトン、ポリグリセロールセバケート、ポリカルボネート、バイオポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、ポリジオキサノン、ハイブリッド、複合体、増殖調節因子を含むコラーゲンマトリックス、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、真空成形された小腸粘膜下層、繊維、キチン、デキスラン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
10.薬物含有層が、チロシン由来ポリカルボネートから選択される、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
11.薬物含有層が、ポリ(β-ヒドロキシアルカノエート)及びその誘導体から選択される、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
12.薬物含有層が、ポリラクチド-co-グリコリド50/50(PLGA)又はポリブチルメタクリレートを含む、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
13.生体適合性ベース層が、ポリポリブチルメタクリレート、ポリ-N-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチル]-アクリルアミド(ポリ-NTMA)、ポリ-ドーパミン、PEDOT、PTFE、PVDF-HFP、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)、パリレンC、PVP、PEVA、SBS、PC、又はTiO2のうちの少なくとも1種を含む、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
14.生体適合性ベース層が、電気グラフト層と、任意選択的に電気グラフトポリマー層と、を備え、任意選択的に薬物含有層と互いに交差する、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
15.生体適合性ベース層が、フェニルジアゾニウム又はアジドの化学的グラフトによって得られる有機層を備える、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
16.グラフト層が、10nm~1000nm、好ましくは100nm~200nmの厚さを有する、実施形態14及び15に記載の薬物溶出ステント。
17.電気グラフトポリマー層は、ビニル基、エポキシド、及び開環重合及びアリールジアゾニウム塩を受ける環状モノマーからなる群から選択されるモノマーを含む、実施形態14に記載の薬物溶出ステント。
18.モノマーが、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、イプシロンカプロラクトン、N-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチル]-アクリルアミド(NTMA)及び4-ニトロフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレートからなる群から更に選択される、実施形態17に記載の薬物溶出ステント。
19.(i)薬物溶出ステントの生成物パラメータを選択する、及び/又は(ii)ステント留置後1年以上におけるステント留置の結果(例えば、血栓症)を予測する方法であって、ステントを調製することと、留置後30日においてステントが留置された動脈組織内におけるステント上の新生内膜被覆率を測定することを含み、30日におけるステント上の新生内膜被覆率が高いほど、ステント有効性及び/又は安全性の点でステントが優れている、方法。
20.約30日/1ヶ月における留置されたステント上の新生内膜被覆率が、ステント留置後1年以上におけるステント留置による副作用を予測し、約30日/1ヶ月における80~90%の新生内膜被覆は、ステント留置後1年における低い副作用を表すか、又は予測する、実施形態19に記載の方法。
21.新生内膜被覆率が、好ましくは約30日/1ヶ月における、ストラットの被覆を測定することによって評価され得る、実施形態20に記載の方法。
22.新生内膜被覆の存在が、好ましくは約30日/1ヶ月における、OCTによって評価され得る、実施形態20に記載の方法。
23.被覆されたストラットが、ストラットの表面よりも0マイクロメートルを超える、好ましくは20マイクロメートルを超える新生内膜厚を有するストラットである、実施形態21に記載の方法。
24.薬物溶出ステントを調製する方法であって、薬物溶出ステントが、動物モデル、好ましくはウサギ腸骨動脈モデルにおいて、ステント留置後28日~90日の間に、80%~100%の新生内膜ストラット被覆を達成し、実施形態1に記載のステントの特性を有するステントを調製することを含む、方法。
25.ステント留置後20日~60日の間に、80%~100%の新生内膜ストラット被覆が達成される、実施形態24に記載の方法。
26.ステント留置後約30日に、80%~100%の新生内膜ストラット被覆が達成される、実施形態25に記載の方法。
27.薬物溶出ステントであって、以下の少なくとも4つの部分:
ステントフレームワーク;
薬物含有層;
薬物含有層に包埋された薬物;
ステントフレームワークの上に設けられ、かつ薬物含有層を支持する、生体適合性ベース層、を備え、ステントは、ウサギ試験において、腸骨動脈における留置後、以下の特徴:
(a)ステント留置領域における動脈によるエバンスブルー染料の取り込みが、45日時点で40%未満、90日時点で25%未満である;
(b)比Rは、ステント留置された動脈のステント留置領域の長手方向断面における共焦点顕微鏡によって測定され、P120タンパク質の量に対するVE-カドヘリン(R=[P120]/[VE-cad])の比であり、足場領域における当該タンパク質の共局在化の程度を特徴とし、45日時点で70%より大きく、90日時点で80%より大きい;かつ
(c)細胞形状指数Iは、共焦点顕微鏡法によって観察された内皮細胞の最大長さ[a]を当該最長長さに垂直な方向にあるサイズ[b]で割った(I=[a]/[b])比率として定義され、留置後45日で2より大きく、留置後90日で3.5より大きい、を有する、薬物溶出ステント。
28.ステントの1つ以上の部分が、以下から選択される予め設計された薬物放出薬物動態プロファイル:
(1)Tmax及びCmax(留置後の動脈組織1g当たりの薬物のngで表される)を有する薬物薬物動態プロファイルを有し、その結果、
(a)Tmaxが、400~600時間、好ましくは500時間であり、
(b)Cmaxが、5~15ng/g、好ましくは10ng/gであり、かつ/又は
(c)薬物薬物動態プロファイルは、図16Bに図示されるように、ステント留置後の平滑筋細胞増殖についての動態プロファイルと重複し、好ましくは、ステント留置部位における動脈組織濃度が、15日~25日、好ましくは20日でピークに達し、その後血管回復を可能にするために減少し、かつ
(2)薬物が、おおよそ図16A又は図16Bに図示されるように、ステント留置部位の動脈組織における薬物動態プロファイルを有し、任意選択的に、薬物はシロリムスである、を達成するように設計されている、実施形態27に記載のステント。
29.薬物溶出ステントを調製する方法であって、薬物溶出ステントが、ステント留置後20日~60日の間に、80%~100%の新生内膜ストラット被覆を達成し、実施形態27に記載のステントの特性を有するステントを調製することを含む、方法。
30.ステント留置後20日~60日の間に、80%~100%の新生内膜ストラット被覆が達成される、実施形態29に記載の方法。
31.ステント留置後約30日に、80%~100%の新生内膜ストラット被覆が達成される、実施形態29に記載の方法。
【0033】
本開示の更なる例示的な実施形態は以下に示され、参照目的のみのために番号付けされる。
1.薬物溶出ステントであって、
ステントフレームワーク;
薬物含有層;
薬物含有層に包埋された薬物;
ステントフレームワークの上に設けられ、かつ薬物含有層を支持する、生体適合性ベース層、を備え、
ステントの1つ以上の部分が、以下から選択される予め設計された薬物放出薬物動態プロファイル:
(1)薬物薬物動態プロファイルが、Tmax及びCmax(留置後の動脈組織1g当たりの薬物のngで表される)を有し、その結果、
(a)Tmaxが、400~600時間、好ましくは500時間であり、
(b)Cmaxが、5~15ng/g、好ましくは10ng/gであり、かつ/又は
(c)薬物薬物動態プロファイルが、図16Bに図示されるように、ステント留置後の平滑筋細胞増殖についての動態プロファイルと重複し、好ましくは、ステント留置部位における動脈組織濃度が、15日~25日、好ましくは20日でピークに達し、その後血管回復を可能にするために減少し、かつ
(2)薬物が、おおよそ図16A又は図16Bに図示されるように、ステント留置部位の動脈組織において薬物動態プロファイルを有する、を達成するように設計されている、薬物溶出ステント。
2.薬物含有層が、血管内に留置されてから30日以内に薬物を放出するように構成される、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
3.ステントの管腔側の薬物含有層の厚さと、ステントの側面側の薬物含有層の厚さとが、ステントの反管腔側の薬物含有層の厚さよりも小さい、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
4.管腔側の薬物含有層の厚さと、反管腔側の薬物含有層の厚さとの間の比率が、2:3~1:7である、実施形態3に記載の薬物溶出ステント。
5.側面側の薬物含有層の厚さと、反管腔側の薬物含有層の厚さとの間の比率が、2:3~1:7である、実施形態3又は4に記載の薬物溶出ステント。
6.薬物が、ステントの反管腔側の薬物含有層にのみ埋め込まれる、実施形態1~5のいずれか1つに記載の薬物溶出ステント。
7.ステントフレームワークが、金属、ワイヤ、又はチューブの単一片から製造される、実施形態1~6のいずれか1つに記載の薬物溶出性ステント。
8.金属が、ステンレス鋼、ニチノール、タンタル、コバルトクロムMP35N又はMP20N合金、白金、及びチタンのうちの少なくとも1種を含む、実施形態7に記載の薬物溶出ステント。
9.ステントフレームワークが、マグネシウム、亜鉛、又は鉄から作られる金属合金などの生分解性材料から製造される、実施形態1~7のいずれか1つに記載の薬物溶出ステント。
10.薬物が、抗血栓剤、抗凝固剤、抗血小板剤、抗腫瘍剤、抗増殖剤、抗生物質、抗炎症剤、遺伝子治療剤、組換えDNA産物、組換えRNA産物、コラーゲン、コラーゲン誘導体、タンパク質類似物、糖類、糖類誘導体、平滑筋細胞増殖阻害剤、内皮細胞移動、増殖、及び/又は生存の促進剤、並びにこれらの組み合わせのうちの少なくとも1種を含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の薬物溶出ステント。
11.薬物が、シロリムス及び/又はシロリムスの誘導体若しくは類似体を含む、実施形態10に記載の薬物溶出ステント。
12.薬物含有層が、5~12μmの厚さを有する、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
13.薬物含有層が、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(PHA)、ポリ(エステルアミド)(PEA)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート-co-エステルアミド)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(プロピレンフマレート)(PPF)、ポリ(D-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリ(メソ-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド-co-メソ-ラクチド)、ポリ(D-ラクチド-co-メソ-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-co-メソ-ラクチド)、ポリ(D.L-ラクチド-co-PEG)、ポリ(D,L-ラクチド-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(グリコール酸-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、PHA-PEG、PBT-PEG(PolyActive(登録商標))、PEG-PPO-PEG(Pluronic(登録商標))、及びPPF-co-PEG、ポリカプロラクトン、ポリグリセロールセバケート、ポリカルボネート、バイオポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、ポリジオキサノン、ハイブリッド、複合体、増殖調節因子を含むコラーゲンマトリックス、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、真空成形された小腸粘膜下層、繊維、キチン、デキスラン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
14.薬物含有層が、チロシン由来ポリカルボネートから選択される、実施形態13に記載の薬物溶出ステント。
15.薬物含有層が、ポリ(β-ヒドロキシアルカノエート)及びその誘導体から選択される、実施形態13に記載の薬物溶出ステント。
16.薬物含有層が、ポリラクチド-co-グリコリド50/50(PLGA)、実施形態13に記載の薬物溶出ステント。
17.生体適合性ベース層が、ポリn-ブチルメタクリレート、ポリ-メチルメタクリレート、ポリ-アクリル酸、ポリ-N-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチル]-アクリルアミド(ポリ-NTMA)、PEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))PTFE、PVDF-HFP、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)、パリレンC、ポリ-ドーパミン(PDA)、PVP、PEVA、SBS、PC、TiO2、又は生体適合性が良好な任意の材料(又はこれらの組み合わせ)のうちの少なくとも1種を含む、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
18.生体適合性ベース層が、電気グラフト層を備える、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
19.生体適合性ベース層が、電気グラフトポリマー層を備える、実施形態1に記載の薬物溶出ステント。
20.電気グラフト層が、薬物含有層と交差するポリマー層である、実施形態18に記載の薬物溶出ステント。
21.電気グラフトポリマー層が、10nm~1000nmの厚さを有する、実施形態18に記載の薬物溶出ステント。
22.電気グラフトポリマー層が、ビニル基、エポキシド、及び開環重合を受ける環状モノマー、及びアリールジアゾニウム塩からなる群から選択されるモノマーを含む、実施形態18に記載の薬物溶出ステント。
23.モノマーが、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、イプシロンカプロラクトン及び4-ニトロフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレートからなる群から更に選択される、実施形態22に記載の薬物溶出ステント。
24.薬物溶出ステントであって、
ステントフレームワーク;
生分解性薬物含有層;
薬物含有層に包埋された薬物;
ステントフレームワークの上に設けられ、かつ薬物含有層を支持する、生体適合性ベース層、を備え、
薬物含有層が、薬物溶出ステントの留置後45日~90日に有意に溶解するように構成される、薬物溶出ステント。
25.薬物含有層が、複数のポリマーから形成される、実施形態24に記載の薬物溶出ステント。
26.ステントの管腔側に薬物含有層を形成する1種以上のポリマーと、ステントの側面側に薬物含有層を形成する1種以上のポリマーとが、ステントの反管腔側に薬物含有層を形成する1種以上のポリマーよりも速く分解する、実施形態24に記載の薬物溶出ステント。
27.ステントフレームワークが、金属、ワイヤ、又はチューブの単一片から製造されている、実施形態24に記載の薬物溶出ステント。
28.金属が、ステンレス鋼、ニチノール、タンタル、コバルトクロムMP35N又はMP20N合金、白金、及びチタンのうちの少なくとも1種を含む、実施形態27に記載の薬物溶出ステント。
29.ステントフレームワークが、例えば、マグネシウム、亜鉛、又は鉄から作られる金属合金のような生分解性材料から製造されている、実施形態27に記載の薬物溶出ステント。
30.薬物が、抗血栓剤、抗凝固剤、抗血小板剤、抗腫瘍剤、抗増殖剤、抗生物質、抗炎症剤、遺伝子治療剤、組換えDNA産物、組換えRNA産物、コラーゲン、コラーゲン誘導体、タンパク質類似物、糖類、糖類誘導体、平滑筋細胞増殖阻害剤、内皮細胞移動、増殖、及び/又は生存の促進剤、並びにこれらの組み合わせのうちの少なくとも1種を含む、実施形態24に記載薬物溶出ステント。
31.薬物が、シロリムス及び/又は誘導体若しくは類似体を含む、実施形態24に記載の薬物溶出ステント。
32.薬物含有層が、5~12μmの厚さを有する、実施形態24に記載の薬物溶出ステント。
33.薬物含有層が、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(PHA)、ポリ(エステルアミド)(PEA)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート-co-エステルアミド)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(プロピレンフマレート)(PPF)、ポリ(D-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリ(メソ-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド-co-メソ-ラクチド)、ポリ(D-ラクチド-co-メソ-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-co-メソ-ラクチド)、ポリ(D.L-ラクチド-co-PEG)、ポリ(D,L-ラクチド-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(グリコール酸-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、PHA-PEG、PBT-PEG(PolyActive(登録商標))、PEG-PPO-PEG(Pluronic(登録商標))、及びPPF-co-PEG、ポリカプロラクトン、ポリグリセロールセバケート、ポリカルボネート、バイオポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、ポリジオキサノン、ハイブリッド、複合体、増殖調節因子を含むコラーゲンマトリックス、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、真空成形された小腸粘膜下層、繊維、キチン、デキスラン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施形態24に記載の薬物溶出ステント。
34.薬物含有層が、チロシン由来ポリカルボネートから選択される、実施形態24に記載の薬物溶出ステント。
35.薬物含有層が、ポリ(β-ヒドロキシアルカノエート)及びその誘導体から選択される、実施形態24に記載の薬物溶出ステント。
36.薬物含有層が、ポリラクチド-co-グリコリド50/50(PLGA)を含む、実施形態24に記載の薬物溶出ステント。
37.生体適合性ベース層が、ポリn-ブチルメタクリレート、ポリ-メチルメタクリレート、ポリ-アクリル酸、ポリ-N-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチル]-アクリルアミド(ポリ-NTMA)、PEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))PTFE、PVDF-HFP、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)、パリレンC、ポリ-ドーパミン(PDA)、PVP、PEVA、SBS、PC、TiO2、又は生体適合性が良好な任意の材料(又はこれらの組み合わせ)のうちの少なくとも1種を含む、実施形態24に記載の薬物溶出ステント。
38.生体適合性ベース層が、電気グラフト層を備え、実施形態24に記載の薬物溶出ステント。
39.生体適合性ベース層が、電解重合層を含む、実施形態24に記載の薬物溶出ステント。
40.電気グラフト層が、薬物含有層と交差するポリマー層である、実施形態38に記載の薬物溶出ステント。
41.電気グラフト層が、10nm~1000nmの厚さを有する、実施形態38に記載の薬物溶出ステント。
42.電気グラフトポリマー層が、ビニル基、エポキシド、及び開環重合を受ける環状モノマー、及びアリールジアゾニウム塩からなる群から選択されるモノマーを含む、実施形態38に記載の薬物溶出ステント。
43.モノマーが、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、イプシロンカプロラクトン、N-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチル]-アクリルアミド及び4-ニトロフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレートからなる群から更に選択される、実施形態42に記載の薬物溶出ステント。
44.狭窄の治療のために、又は再狭窄、血栓症、腫瘍増殖、血管腫、若しくは涙腺の閉塞を予防するために、ステントを対象に留置することを含む、実施形態1~43のいずれか1つに記載のステントの使用方法。
45.ステントが血管に留置される、実施形態44に記載の方法。
46.血管が、左主冠動脈、回旋動脈、左前下行動脈、腸骨血管、頸動脈、又は神経血管である、実施形態45に記載の方法。
47.実施形態1~43のいずれか1つに記載のステントを管腔に送達するステップと、管腔内でステントを半径方向に拡張するステップと、ステントの表面の薬物コーティング層から薬物を溶出させ、薬物が管腔及び/又は反管腔側表面に作用することを可能にするステップと、を含む、治療方法。
48.実施形態1~43のいずれか1つに記載のステントのいずれか1種を使用することによって、ステントの留置に関連する患者のリスクを低下、最小化、又は排除する方法。
49.薬物溶出ステントの留置後の長期的なステント有効性及び患者安の全性を予測する方法であって、動物モデルにおけるステント留置後のステント及び/又は血管の内皮被覆の機能的回復の割合を評価することを含み、ステント留置後約30日における約80%~100%の新生内膜被覆は、ステント留置後の長期的なステント有効性及び患者安全性を予測する、方法。例えば、評価は、動物モデルを使用して、被覆率、内皮層の厚さ及び透過性、並びに内皮層の構造を評価することを含み得る。構造は、組織の種類、例えば、平滑筋細胞、マトリックス、及び内皮細胞の組織構成を含み得る。
50.長期的なステント有効性が、ステント留置領域での血管の有意な再狭窄が存在しないことを含む、実施形態49に記載の方法。
51.患者安全性が、ステント留置後1年以内及び1年後に血管の血栓症が存在しないことを含み、好ましくは、ステント留置後5年で血栓症が存在し得ない、実施形態49に記載の方法。
52.患者安全性が、ステント留置後1年以内及び1年後にMACEが有意に存在しないことを含み、好ましくは、ステント留置後5年でMACEが存在し得ないない、実施形態49に記載の方法。
53.血管疾患、好ましくは血管狭窄を治療若しくは予防するための、又は再狭窄、血栓症、腫瘍増殖、涙腺の閉塞若しくは神経血管系疾患を予防するための医薬品又はデバイスの製造における、実施形態1~43のいずれか1つに記載のステントの使用。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図面は、本開示の例示的な実施形態のみを示しており、したがって、その範囲を限定するものではない。これらは、実施形態の一部に特異性及び詳細を付加する役割を果たす。
【0035】
本特許又は出願書類には、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれている。カラーの図面を含む本特許又は特許出願公開の複写は、請求及び必要な料金の支払いに応じて、特許庁によって提供されるであろう。
【0036】
図1A】ステントを植え込む前の血管(100)を示す。101は、機能性内皮細胞(EC)の「活性」を表す。103は、平滑筋細胞(SMC)を表す。
図1B】ステント留置後の血管(150)を示す。EC層(101)。接点(105a、105b)。SMC(103、107a及び107b)。
図2】SEMを使用して画像化された、ウサギ腸骨動脈における留置60日後のXience Xpeditionステントを図示する。SEM像では、ストラットが部分的に被覆されており、被覆されていない部分はステントの中間部と遠位部に限られている。ステントストラット上の内皮被覆率は約50%である。
図3】SEMを使用して画像化された、ウサギ腸骨動脈における留置60日後の本開示のいくつかの実施形態に従った薬物溶出性ステントを図示する。SEM像では、ステントはよく被覆されており、被覆されていないストラットはステントの中央部にほとんどない。ステントストラット上の内皮被覆率は約80%である。
図4A】エバンスブルーの取り込みを伴う肉眼による画像を使用して画像化された、ウサギの腸骨動脈に留置してから60日後のXience Xpeditionステントを図示しており、陽性染色面積は41.8%であった。(染色の存在は、所望の内皮細胞層機能の陰性マーカーである)、
図4B】移植60日後の図4AのXience Xpeditionのステントの共焦点顕微鏡像を図示しており、10倍の対物レンズでタイル表示され、VE-カドヘリン(赤色チャネル)とP120(内皮p120-カテニン)(緑色チャネル)で二重免疫蛍光染色されている。スケールバーは1mmである。染色における良好な重複(すなわち黄色)の存在は、所望の内皮細胞層機能の陽性マーカーである。
図4C】留置60日後の図4BのXience Xpeditionステントの領域を20倍の対物レンズを用いた、共焦点顕微鏡画像を図示しており、この領域ではVE-カドヘリンが内皮境界部にほとんど発現しておらず、一般に障壁機能が低いことを示している。VE-カドヘリンは赤色チャネル(555nm)、P120は緑色チャネル(488nm)、青色チャネル(405nm)はDAPI(核)の対比染色であった。スケールバーは50μmである。染色における良好な重複(すなわち黄色)の存在は、所望の内皮細胞層機能の陽性マーカーである。
図4D図4BのXience Xpeditionステントの別の領域を20倍の対物レンズを用いた、焦点顕微鏡画像を図示しており、この領域ではVE-カドヘリンの発現が内皮の境界で乏しく、一般に障壁機能が乏しいことを示す。VE-カドヘリンは赤色チャネル(555nm)、P120は緑色チャネル(488nm)、青色チャネル(405nm)はDAPIの対比染色であった。スケールバーは50μmである。図4A~4Dに図示するように、両マーカーによる内皮被覆は、ストラットの上方で21.2%、ストラットの間で21.2%であり、すなわち21.2%であった。染色における良好な重複(すなわち黄色)の存在は、所望の内皮細胞層機能の陽性マーカーである。
図5A】エバンスブルーの取り込みを伴う肉眼による画像を使用して画像化された、移植60日後の本開示のいくつかの実施形態による薬剤溶出ステントを示しており、陽性染色面積は35.7%であった。染色の存在は、所望の内皮細胞層の機能のための陰性マーカーである。
図5B】移植60日後の図5Aの薬物溶出ステントの共焦点顕微鏡像を図示しており、10倍の対物レンズでタイル表示され、VE-カドヘリン(赤色チャネル)とP120緑色チャネル)で二重免疫蛍光染色されている。スケールバーは1mmである。染色における良好な重複(すなわち黄色)の存在は、所望の内皮細胞層機能の陽性マーカーである。
図5C】留置45日後の図5Bの薬物溶出ステントの領域を20倍の対物レンズを用いた、焦点顕微鏡画像を図示しており、この領域が部分的に内皮バリア機能領域を有していた。VE-カドヘリンは赤色チャネル(555nm)、P120は緑色チャネル(488nm)、青色チャネル(405nm)はDAPIの対比染色であった。スケールバーは50μmである。染色における良好な重複(すなわち黄色)の存在は、所望の内皮細胞層機能の陽性マーカーである。
図5D】留置60日後の図5Bの薬物溶出ステントの別の領域を20倍の対物レンズを用いた、共焦点顕微鏡画像を図示しており、この領域ではVE-カドヘリンの発現が内皮の境界で乏しく、一般に障壁機能が乏しいことを示す。VE-カドヘリンは赤色チャネル(555nm)、P120は緑色チャネル(488nm)、青色チャネル(405nm)はDAPIの対比染色であった。スケールバーは50μmである。図5A~5Dに示すように、両方のマーカーによる内皮被覆は、ストラットの上方で36.8%、ストラットの間で38.8%であった。染色における良好な重複(すなわち黄色)の存在は、所望の内皮細胞層機能の陽性マーカーである。
図6】SEMを使用して画像化された、留置後90日のXience Xpeditionステントを図示する。SEM画像は、ステントが部分的に覆われておらず、覆われていない領域が主に中央部にあることが示されている。ステントストラットの上方の内皮被覆率は約70%である。
図7】SEMを使用して画像化された、留置90日後の本開示のいくつかの実施形態に従った薬物溶出性ステントを図示する。SEM画像は、完全なステント被覆を示している。ステントストラットの上方の内皮被覆率は約99%である。
図8A】エバンスブルーの取り込みを伴う肉眼による画像を使用した、留置90日後のXience Xpeditionステントを図示しており、陽性染色面積は31.8%であった(染色の存在は、所望の内皮細胞層が機能するための陰性マーカーである)。
図8B】留置90日後の図8AのXience Xpeditionのステントの共焦点顕微鏡像を図示しており、10倍の対物レンズでタイル表示され、VE-カドヘリン(赤色チャネル)とP120(緑色チャネル)で二重免疫蛍光染色されている。スケールバーは1mmである。染色における良好な重複(すなわち黄色)の存在は、所望の内皮細胞層機能の陽性マーカーである。
図8C】留置90日後の図8BのXience Xpeditionステントの領域を20倍の対物レンズを用いた、共焦点顕微鏡画像を図示しており、この領域は、有能な内皮バリア機能(すなわち、共局在化p120/VE-カドヘリン)の証拠を有していた。VE-カドヘリンは赤色チャネル(555nm)、P120は緑色チャネル(488nm)、青色チャネル(405nm)はDAPIの対比染色であった。スケールバーは50μmである。染色における良好な重複(すなわち黄色)の存在は、所望の内皮細胞層機能の陽性マーカーである。
図8D】留置90日後の図8BのXience Xpeditionステントの別の領域を20倍の対物レンズを用いた、共焦点顕微鏡画像を図示しており、この領域ではVE-カドヘリンの発現が内皮の境界で乏しく、一般に障壁機能が乏しいことを示す。VE-カドヘリンは赤色チャネル(555nm)、P120は緑色チャネル(488nm)、青色チャネル(405nm)はDAPIの対比染色であった。スケールバーは50μmである。図8A~8Dに示すように、両方のマーカーによる内皮被覆は、ストラットの上方で46.8%、ストラットの間で46.1であった。染色における良好な重複(すなわち黄色)の存在は、所望の内皮細胞層機能の陽性マーカーである。
図9A】エバンスブルーの取り込みを伴う肉眼による画像を使用して画像化された、移植90日後の本開示のいくつかの実施形態による薬剤溶出ステントを図示しており、陽性染色面積は6.4%であった。染色の存在は、所望の内皮細胞層の機能のための陰性マーカーである。
図9B】移植90日後の図9Aの薬物溶出ステントの共焦点顕微鏡像を図示しており、10倍の対物レンズでタイル表示され、VE-カドヘリン(赤色チャネル)とP120緑色チャネル)で二重免疫蛍光染色されている。スケールバーは1mmである。染色における良好な重複(すなわち黄色)の存在は、所望の内皮細胞層機能の陽性マーカーである。
図9C】留置90日後の、図9Bの薬物溶出性ステントの領域を20倍の対物レンズを用いた、共焦点顕微鏡画像を図示しており、この領域は、有能な内皮バリア機能(すなわち、共局在化p120/VE-カドヘリン)の証拠を有していた。VE-カドヘリンは赤色チャネル(555nm)、P120は緑色チャネル(488nm)、青色チャネル(405nm)はDAPIの対比染色であった。スケールバーは50μmである。染色における良好な重複(すなわち黄色)の存在は、所望の内皮細胞層機能の陽性マーカーである。
図10】XIENCE Vステント及びXIENCE PRIMEの薬物放出期間は約120日である。ENDEAVOR RESOLUTE(すなわち、本開示のいくつかの実施形態によるステント)の薬物放出時間は約180日である。
図11】本開示のいくつかの実施形態によるステントの層の相対位置を示す。管腔側(6)は血流に面しており、反管腔側(8)は血管壁に面している、又は血管壁に接触している。
図12A】エバンスブルーの取り込みを使用して画像化された、移植45日後の本開示のいくつかの実施形態による薬剤溶出ステントを図示しており、陽性染色面積は28.57%であった。(染色の存在は、所望の内皮細胞層の機能のための陰性マーカーである)
図12B】エバンスブルーの取り込みを使用して、移植45日後の薬剤溶出ステントを図示しており、陽性染色面積は55.0%であった。(染色の存在は、所望の内皮細胞層の機能のための陰性マーカーである)
図12C】エバンスブルーの取り込みを使用して画像化された、留置45日後の薬剤溶出ステントを図示しており、陽性染色面積は56.79%であった。(染色の存在は、所望の内皮細胞層の機能のための陰性マーカーである)
図12D】本開示(Xience及びSynergy)によらず、本開示の実施形態(BuMA Supreme)によるステントを用いて行われた実験から45日のエバンスブルー更新データの結果を要約した表である。
図13A】留置の45日後の、本開示のいくつかの実施形態に従う、薬物溶出ステントを図示し、20倍の対物レンズを用いた、薬物溶出ステントの領域の共焦点顕微鏡画像を示し、この領域は、有能な内皮バリア機能(すなわち、共局在化p120/VE-カドヘリン)の証拠を有していた。VEカドヘリンは赤色チャネル(555nm)、P120は緑色チャネル(488nm)、青色チャネル(405nm)はDAPIの対比染色であった。(エバンスブルー染色の存在は、所望の内皮細胞層機能の陰性マーカーである);染色における良好な重複(すなわち、黄色)の存在は、所望の内皮細胞層機能の陽性マーカーである。
図13B】留置45日後の薬物溶出ステントを図示する図であり、20倍の対物レンズを用いた、薬物溶出ステントの領域の共焦点顕微鏡画像を示し、この領域は、有能な内皮バリア機能の証拠を有していた(すなわち、共局在化p120/VE-カドヘリン)。VEカドヘリンは赤色チャネル(555nm)、P120は緑色チャネル(488nm)、青色チャネル(405nm)はDAPIの対比染色であった。エバンスブルー染色の存在は、所望の内皮細胞層機能の陰性マーカーである);染色における良好な重複(すなわち、黄色)の存在は、所望の内皮細胞層機能の陽性マーカーである。
図13C】留置45日後の薬物溶出性ステントを図示し、20倍の対物レンズを用いた、薬物溶出性ステントの領域の共焦点顕微鏡画像を示し、この領域は、有能な内皮バリア機能の証拠を有していた(すなわち、共局在化p120/VE-カドヘリン)。VEカドヘリンは赤色チャネル(555nm)、P120は緑色チャネル(488nm)、青色チャネル(405nm)はDAPI(青色/紫色の円/核)の対比染色であった。(エバンスブルー色の存在は、所望の内皮細胞層機能の陰性マーカーである);染色における良好な重複(すなわち、黄色)の存在は、所望の内皮細胞層機能の陽性マーカーである。
図13D】本開示(Xience及びSynergy)によらず、本開示の実施形態(BuMA Supreme)によるステントを用いて行われた実験から45日のVE-カドヘリン/P120共局在化データの結果を要約した表である。
図14A】エバンスブルーの取り込みを使用して画像化された、留置後90日の、本開示のいくつかの実施形態に従う、薬物溶出ステントを図示し、陽性染色面積は23.21%であった。(青色染色の存在は、所望の内皮細胞層の機能のための陰性マーカーである)
図14B】エバンスブルーの取り込みを使用した、留置90日後の、薬物溶出ステントを図示し、陽性染色面積は42.95%であった。(青色染色の存在は、所望の内皮細胞層の機能のための陰性マーカーである)
図14C】エバンスブルーの取り込みを使用した、留置90日後の薬物溶出ステントを図示し、陽性染色面積は41.79%であった。(青色染色の存在は、所望の内皮細胞層の機能のための陰性マーカーである)
図14D】本開示(Xience及びSynergy)によらず、本開示の実施形態(BuMA Supreme)によるステントを用いて行われた実験から90日のエバンスブルー更新データの結果を要約した表である。
図15A】留置90日後の、本開示のいくつかの実施形態による、薬物溶出ステントを図示し、20倍の対物レンズを用いた、薬物溶出ステントの領域の共焦点顕微鏡画像を示し、この領域は、有能な内皮バリア機能(すなわち、共局在化p120/VE-カドヘリン)の証拠を有していた。VEカドヘリンは赤色チャネル(555nm)、P120は緑色チャネル(488nm)、青色チャネル(405nm)はDAPI対比染色であった(エバンスブルー染色の存在は、所望の内皮細胞層機能の陰性マーカーである);染色における良好な重複(すなわち、黄色)の存在は、所望の内皮細胞層機能の陽性マーカーである)。
図15B】留置90日後の薬物溶出ステントを図示する図であり、20倍の対物レンズを用いた、薬物溶出ステントの領域の共焦点顕微鏡画像を示しており、この領域は有能な内皮バリア機能(すなわち、共局在化p120/VE-カドヘリン)の証拠を有していた。VEカドヘリンは赤色チャネル(555nm)、P120は緑色チャネル(488nm)、青色チャネル(405nm)はDAPI対比染色であった(エバンスブルー染色の存在は、所望の内皮細胞層機能の陰性マーカーである)。染色における良好な重複(すなわち黄色)の存在は、所望の内皮細胞層機能の陽性マーカーである)。
図15C】注入90日後の薬物溶出ステントを図示し、20倍の対物レンズを用いた、薬物溶出ステントの領域の共焦点顕微鏡画像を示し、この領域は、が有能な内皮バリア機能(すなわち、共局在化p120/VE-カドヘリン)の証拠を有していた。VEカドヘリンは赤色チャネル(555nm)、P120は緑色チャネル(488nm)、青色チャネル(405nm)はDAPI対比染色であった(エバンスブルー染色の存在は、所望の内皮細胞層機能の陰性マーカーである);染色における良好な重複(すなわち、黄色)の存在は、所望の内皮細胞層機能の陽性マーカーである)。
図15D】本開示(Xience及びSynergy)によらず、本開示の実施形態(BuMA Supreme)によるステントを用いて行われた実験から90日のVE-カドヘリン/P120共局在化データの結果を要約した表である。
図16A】BuMAは、20日のシロリムスの動脈ピーク及び高速ポリマー分解のために最適化された放出動態を有する。
図16B】機能的治癒を制限することなく、SMCを抑制するように設計された薬物動態。
図16C】BuMAは、20日の動脈濃度のピークのために最適化された薬物動態を有する。
図17】研究用デバイスの特性
図18A-F】エバンスブルー染料染色による内皮透過性の評価。図18A~D:45日(上)及び90日(下)におけるBP-SES(A)、DP-EES(B)、BP-EES(C)及びBMS(D)の代表的なEBD染色例。各ステントを縦方向に切断した。図18E~F:%EBD染色の45日(E)及び90日(F)データを要約した。値は、25~75パーセンタイルの中央値を表す。P<0.05対BP-SES、P<0.05対DP-EES、P<0.05対BP-EES(一般化推定方程式)。略語:BMS=ベアメタルステント(Multi-Link Vision(登録商標))、BP-EES=生分解性ポリマーエベロリムス溶出ステント(Synergy(登録商標))、BP-SES=生分解性ポリマーシロリムス溶出ステント(BuMA Supreme(登録商標))、CoCr=コバルト-クロム、DP-EES=耐久性ポリマーエベロリムス溶出ステント(Xience Xpedition(登録商標))。
図19A-N】共焦点顕微鏡法による内皮バリアタンパク質の発現及び細胞形態の評価。図19A~D:45日(上)及び90日(下)におけるBP-SES(A)、DP-EES(B)、BPEES(C)及びBMS(D)の代表的な共焦点顕微鏡の結果。各ステントを縦方向に切断した。VE-カドヘリン(赤色)及びp120(緑色)の2種類の内皮細胞タンパク質を染色した。図19E~F:p120/VE-カドヘリンの共局在による領域の代表的な高倍率画像であって、紡錘(E)及び丸石(F)の内皮細胞形状を示す。図19G:p120/VE-カドヘリンの共局在なしの領域の代表的なハイパワー画像。VE-カドヘリンは、細胞質内に現れるが、細胞境界内には現れない。図19H:(C)の白い正方形の領域におけるp120/VE-カドヘリンの完全な共局在と不完全な共局在との間の代表的な境界区域の低倍率画像。境界線は赤い点線で囲まれている。図19I:(H)白い正方形の領域におけるp120/VE-カドヘリンの完全な共局在と不完全な共局在と間の境界区域の中間倍率画像。図19J:内皮細胞形状指数の概略漫画(高さ[a]を幅[b]で割ったもの)。図19K~N:各ステント(BP-SES、DP-EES、BPEES及びBMS)における、ステント留置された区域(45日[K]及び90日[L])における%p120/VE-カドヘリン共局在化、並びに平均細胞形状指数(a/b比)(45日[M]及び90日[N])の要約データ。値は、25~75パーセンタイルの中央値を表す。P<0.05対BP-SES、P<0.05対DP-EES、P<0.05対BP-EES(一般化推定方程式。
図20A-F】エバンスブルー染色及びp120/VE-カドヘリン共局在領域の空間分布。図20A:EBD及びp120/VE-カドヘリン共焦点像の共同登録の例EBD画像(Aの上部)及びp120/VE-カドヘリン共焦点画像(Aの下部)を、透過光検出器チャネル(T-PMT)モードの共焦点画像(Aの中間)を指標として、ステントストラットを介して共同登録した。6つの隣り合う関心領域(ROI)フィールド(各ROIで400μm×400μm)を、EBD画像の近位、中間、及び遠位のステント部分にランダムに配置した。各フィールドは、ステントストラットの位置とともに登録された。EBD画像の各ROIにおいて、陽性又は陰性染色は、以下の基準に従って決定された(陽性;ROIフィールドの50%超がEBDによって染色された、陰性;ROIフィールドの50%未満が染色された)。同じ方法をp120/VE-カドヘリン共焦点画像に適用した(陽性;ROIフィールドの50%超がp120/VE-カドヘリンの共局在を示し、陰性;ROIフィールドの50未満%がp120/VE-カドヘリン共局在を示した)。図20B:AにおけるROI7-12に対する高倍率フィールド。上記基準により、これらの領域を以下のように決定した(7;EBD[+]-p120/VE-カドヘリン[-]、8及び10~12;EBD[-]-p120/VE-カドヘリン[+]、9;EBD[+]-p120/VE-カドヘリン[+])。EBD及びp120/VE-カドヘリン共焦点画像が異なる方法を使用して撮影されたため、ROI9(現在の評価の限界の1つ)に示すように完全に正確な一致を達成できなかった。図20Cから図20F:EBD(+)-p120/VE-カドヘリン(+)(C及びD)及びEBD(-)-p120/VE-カドヘリン(+)(E及びF)フィールドの代表例。EBD(+)-p120/VE-カドヘリン(+)領域は、EBD(-)-p120/VE-カドヘリン(+)領域(F;Eのボックス領域)と比較して、細胞膜(D;Cのボックス領域)でのVE-カドヘリン(赤色)の発現が低かった。略語:ROI=関心領域
図21】内皮透過性の検出のためのエバンスブルー染料及びp120/VE-カドヘリンの比較。
図22A-N】SEMによるステント内内皮化の評価、並びにエバンスブルー染料染色及び共焦点顕微鏡検査との共同登録。図22A図22D:45日(上)及び90日(下)におけるBP-SES(A)、DPEES(B)、BP-EES(C)及びBMS(D)の代表的なSEMの結果。各ステントを縦方向に切断した。図22E図22G:(B)の白い正方形に囲まれた領域において、p120(緑色)とVE-カドヘリン(赤色)(E)と、EBD染色(F)及びSEM(G)を伴う共登録領域との間の代表的な完全な共局在化と不完全な局在化との境界区域の低倍率画像。境界線は赤い点線で囲まれている。図22H図22I:(E)及び(G)の白い四角に囲まれたそれぞれの領域において、SEM(I)との共登録領域であるp120/VE-カドヘリン(H)の完全な共局在と不完全な共局在との境界区域の中間倍率画像。図22J図22K:共焦点像(上)において、p120/VE-カドヘリン共局在領域と共同登録された、紡錘(J)及び丸石(K)の内皮細胞形状を示す領域の代表的な高倍率SEM画像(下)。L:共焦点画像(上)におけるp120/VE-カドヘリン共局在が欠如している領域の代表的な高倍率SEM画像(下)。細胞間突起部位に付着した血小板及び白血球凝集体(黒い矢印)。図22M~N:各ステント留置された区域(BP-SES、DP-EES、BP-EES及びBMS)における、SEMで評価された%内皮組織被覆の45日(M)及び90日(N)の要約データ。値は、中央値を25~75パーセンタイルで表す。P<0.05対BP-SES、P<0.05対DP-EES、P<0.05対BP-EES(一般化推定方程式)。略語:SEM=走査型電子顕微鏡観察。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示は、薬物溶出ステント、薬物溶出ステントの作製方法及び使用方法、並びに薬物溶出ステントの留置後の、長期のステント有効性及び患者安全性を予測する方法に関する。本開示のいくつかの実施形態によれば、薬物溶出ステント(1)は、以下の4つの部分:ステントフレームワーク(2)、薬物含有層(3)、薬物(4)、及び生体適合性ベース層(5)を含む。一実施形態において、ステントはステンレス鋼で作製され得る。別の実施形態において、ステントはCoCr合金で作製され得る。一実施形態において、ステントは80~120umの厚さを有する。薬物含有層は、PLGAから形成され得、生体適合性ベース層は、PBMAから形成され得る。生体適合性ベース層は、電気グラフトプロセスを使用して形成され得る。
【0038】
ステント(1)留置後の血管の修復を改善し、副作用を予防する新生内膜ステント被覆のための時間の窓の発見
一実施形態において、本開示は、再狭窄及び血栓症を含む、ステント留置後(例えば、1年以上)の副作用を防ぐように、予期しない期間(好ましくは、30日)でステントストラットにわたる80%~100%の新生内膜被覆が達成されるステント(1)を提供する。この目的のためには、まず、ステント留置による後期(例えば1年以上)の副作用を予防又は低下するために、どの時点でステントストラットにわたる新生内膜被覆に達するべきかを決定する必要があった。一実施形態において、本開示は、患者安全性及びステント有効性の観点から、DESステントを血管に留置した後に、ステントストラットにわたって新生内膜被覆するための機会の窓があることを示す。一実施形態において、ステント留置後の早期時点(30日)での80~90%の新生内膜被覆は、ステント留置の副作用(例えば、MACE)を最小限に抑える、後の時点(例えば、1年)での内皮/血管の回復の改善をもたらす。一実施形態において、内皮/血管修復は、内皮細胞間の適切な接続が再確立され、内皮の生物学的機能がステントの表面にわたって又は血管壁/新生内膜被覆に沿って回復することを意味する。一実施形態において、内皮は、機能的内皮層を指す。一実施形態において、本明細書に開示される窓の期間(好ましくは、30日)内に、ステントストラットの80%~100%の新膜被覆が得られ、再狭窄及び/又は血栓症が有意に予防又は低下され、及び/又は抗血小板療法の期間が短縮され得る。一実施形態において、ステントストラットの80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆は、血管内皮機能の回復が12ヶ月以内に達成され得るように、最初の2~3ヶ月以内、好ましくは最初の30日以内に得られる。一実施形態において、80%~100%の新生内膜被覆は、20~30日の間に生じ、薬物放出の80%~95%は、同じ期間にわたって生じる。一実施形態において、ステントストラットの80%~100%新生内膜被覆は、最初の20日以内、又は最も好ましくは、ステント留置後の最初の30日以内、及びその間の任意の時間間隔、例えば、ステント留置の20日~30日に得られる。一実施形態において、ステントストラットの80%~100%の新生内膜被覆が、ステント留置後30日~45日の間に得られる。一実施形態において、ステントストラットの80%~100%の新生内膜被覆が、最初の30日、45日、60日、90日、又は任意の日、及びその間の任意の間隔で得られる。一実施形態において、ステントは、ステント留置後30日において80%の新生内膜被覆を示し、ここで新生内膜は20um厚である。一実施形態において、ステントは、ステント留置後3ヶ月において90%の新生内膜被覆を示し、ここで新生内膜は、80umを超える厚さである。一実施形態において、ステントは、ステント留置後12ヶ月において99%の新生内膜被覆を示し、ここで新生内膜は、150umを超える厚さである。一実施形態において、ステントは、ステント留置後30日において80%の新生内膜被覆を示し、ここで新生内膜は、20umの厚さであり、ステント留置後3ヶ月における90%の新生内膜被覆を示し、ここで新生内膜は、80umを超える厚さであり、ステント留置後12ヶ月において新生内膜の被覆の99%を示し、ここで新生内膜は、150umを超える厚さである。一実施形態において、ステントは、12ヶ月で機能的修復を達成する。ステントストラットの新生内膜被覆率は、当業者に公知の方法で評価できる。一実施形態において、新生内膜被覆率はOCTによって評価される。
【0039】
内皮の修復が十分であるかどうかは、当業界で知られているあらゆる手段で判断できる。動物モデルにおいて、これは、SEM顕微鏡、エバンスブルー染色(染色の存在は、所望の内皮細胞層の機能のための陰性マーカーである;例えば、30、60、及び90日における;内皮層を染色してはならない)、VE-カドヘリン/p120染色(染色における良好な重複の存在は、所望の内皮細胞層の機能の陽性マーカーである)、細胞形状指数、及び他のものを含む方法によって測定することができる。いくつかの例については図を参照、動物データを使用して、これらの要件を満たすようにステントを設計することができ、これは、ヒト用のステントに適切に変換することができる。インビボにおいて、ステントストラット表面の新生内膜被覆率及び新生内膜の厚さは、異なる時点における、光学コヒーレンストモグラフィー(OCT)及び当該技術分野で知られている他の方法によって、測定され得る。一実施形態において、新生内膜の厚さは、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、及び/又は12ヶ月において測定される。一実施形態において、第1の閾値を下回る厚さは、十分な基礎構造が形成されていないことを示し、その結果、内皮層の機能があまり十分に回復していないことを示し、一方、第2の、高い閾値を上回る厚さは、内皮細胞に対する平滑筋細胞の比率が高すぎることを示し、時には平滑筋細胞が過剰に増殖していることを示すことがある。
【0040】
一実施形態において、覆われたストラットは、20マイクロメートル(um)を超える新生内膜を有すると定義される。いくつかの実施形態において、新生内膜は、20~120.0umを超える、例えば120.1~160.0umである。好ましい実施形態において、新生内膜は、ウサギ腸骨動脈モデルにおいて、2ヶ月で20~160、好ましくは20~150umである。いくつかの実施形態において、ヒトにおける好ましい新生内膜の厚さ(OCTによって測定される)は、3ヶ月時点で20~80umであり、好ましくは、ステント留置後12ヶ月時点で140~160umである。ステント被覆率又は新生内膜被覆率は、ステント全体の全体的な被覆を指し、全ステントの全体的な表面積の%で表される。
【0041】
好ましい実施形態において、本開示は、実施形態[087]に記載のステントを提供し、このステントにおいては、ヒトにおいて、覆われたストラットの割合が1ヶ月で80%を超え、覆われていないストラットの割合が20%未満である。及び、1ヶ月で20~80um、好ましくは12ヶ月で140~160umの厚さを有する新生内膜、
【0042】
時宜にかなった血管修復を達成するためのステントの設計
血管修復(又は血管治癒)は、内皮細胞間の正しい接続を再確立し、その結果、内皮の生物学的機能が留置されたステントの表面にわたって又は血管壁/新生内膜に沿って回復することと定義される。この機能的修復は、動物モデル及びヒトにおけるいくつかの方法で実証又は測定することができる。これらの測定には、異なる時点でのステントストラットにわたる新生内膜被覆率、異なる時点での新生内膜の厚さ、エバンスブルー染色、及び免疫学的方法を適用して、内皮の機能を特徴付けることもできる。初期段階、好ましくはステント留置の30日後の新膜被覆率のレベルは、後の時点(例えば、1年)における完全な血管修復のレベルのための良好な指標である。ステント留置後の最初の30日間の新生内膜被覆率のレベルが高ければ、30日間後のより少ないMACEが保証されるだろう。一実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、ステント留置後25、26、27、28、29、又は30日で達成される。一実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、ステント留置後20~25日、26~30日、31~35日、36~40日、41~45日、46~50日、51~60日/2ヶ月までに(又はその間の期間内に)達成され得る。一実施形態では、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日、40日、41日、42日、43日、44日、45日、46日、47日、48日、49日、50日、51日、52日、53日、54日、55日、56日、57日、58日、59日、60日/2ヶ月目に得られる。一実施形態において、好ましくは、完全な血管修復を確実にするための鍵である、ステントの最大被覆は、ステント留置後30日/1ヶ月で達成される。これら全ての値は、「約」という用語によって修飾され得る。
【0043】
これらの任意の日によるステントストラット上の新生内膜被覆率の割合は、少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、99%である。一実施形態においては、ステントストラット上の80~100%の新生内膜被覆率が、好ましくは30日/1ヶ月までに達成される。これら全ての値は、「約」という用語によって修飾され得る。
【0044】
好ましい実施形態において、ステントストラット上の80~100%の新生内膜被覆率は、ステント留置後2ヶ月までに、又はステント留置後30~2ヶ月の間の任意の期間で達成される。これら全ての値は、「約」という用語によって修飾され得る。
【0045】
このタイミング(80~90%、好ましくは80~100%、新生内膜被覆率、好ましくは30日/1ヶ月までに)を達成するために、ステントの多くの態様は、ステントフレームワーク(2)、薬物含有層(3)、薬物(4)、及び/又は生体適合性ベース層を含み、個別に又は組み合わせて操作又は設計されてもよい。一実施形態において、好ましくは、30日/1ヶ月(又は30日~60日、又は2ヶ月までに)におけるステントストラット上の80~100%の新生内膜被覆率は、薬物の完全放出及び薬物含有層の完全溶解によって達成され、これは、それぞれ単独で又は組み合わせて、以下の時点で達成されるように設計され得る:
(a)25日以内、30日/1ヶ月以内(又は30日~60日、又は2ヶ月);
(b)25日~30日/1ヶ月、ステント留置後(又は30日~60日の間、又は2ヶ月まで)、及びその間のいずれかの日又は間隔で、ステント留置後;
(c)15日後~25日未満;15日後~26日未満;15日後~27日未満;15日後~28日未満;15日後~29日未満;又は15日後~30日後/1ヶ月以下(又は30日~60日、又は2ヶ月まで)で、ステント留置後;
(d)25日、26日、27日、28日、29日、若しくは30日、又は1ヶ月目(又は30日~60日、又は2ヶ月);
(e)又は、SMC増殖のピークの7~30日後、好ましくはSMC増殖のピークの7~14日後に、ステントの動脈組織領域内の薬物濃度がゼロ、又は約ゼロに低下する。
(f)これら全ての値は、「約」という用語によって修飾され得る。
【0046】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、30日までに(又は30日~60日の間に、又は2ヶ月までに)、薬物の少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、99%の放出及び/又は薬物含有層の完全な溶解を通して、達成される。
【0047】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、81~85~86~90~91~95~96~99%の薬物放出及び/又は薬物含有層の完全溶解を通して、30日(又は30日~60日、又は2ヶ月までに)までに達成される。
【0048】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%、新生内膜被覆率は、81~90、91~99%の薬物放出及び/又は薬物含有層の完全溶解を通して、30日(又は30日~60日、又は2ヶ月までに)までに達成される。
【0049】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、35日までに(又は30日~60日、又は2ヶ月までに)、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、99%の薬物放出及び/又は薬物含有層の完全な溶解を通して、達成される。
【0050】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、81~85~86~90~91~95~96~99%の薬物放出及び/又は薬物含有層の完全溶解を通して、35日(又は30日~60日、又は2ヶ月目まで)までに達成される。
【0051】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、81~90、91~99%の薬物放出及び/又は薬物含有層の完全溶解の間を通して、35日(又は30日~60日、又は2ヶ月まで)までに達成される。
【0052】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、40日(又は30日~60日、又は2ヶ月まで)までに、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、99%の薬物放出及び/又は薬物含有層の完全な溶解を通して、達成される。
【0053】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、81~85~86~90~91~95~96~99%の薬物放出及び/又は薬物含有層の完全溶解を通して、40日(又は30日~60日、又は2ヶ月目までに)までに達成される。
【0054】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、81~90、91~99%の薬物放出及び/又は薬物含有層の完全な溶解を通して、40日(又は30日~60日、又は2ヶ月間までに)までに達成される。
【0055】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、45日までに(又は30日~60日、又は2ヶ月までに)、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、99%の薬物放出及び/又は薬物含有層の完全な溶解を通して、達成される。
【0056】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、81~85~86~90~91~95~96~99%の薬物放出及び/又は薬物含有層の完全溶解を通して、45日間(又は30日~60日、又は2ヶ月まで)までに達成される。
【0057】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、81~90、91~99%の薬物放出及び/又は薬物含有層の完全な溶解を通して、45日(又は30日~60日、又は2ヶ月までに)までに達成される。
【0058】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、50日(又は30日~60日、又は2ヶ月までに)までに、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、99%の薬物放出及び/又は薬物含有層の完全な溶解を通して、達成される。
【0059】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、81~85、86~90、91~95、96~99%の薬物放出及び/又は薬物含有層の完全溶解を通して、50日(又は30日~60日、又は2ヶ月までに)までに達成される。
【0060】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、81~90、91~99%の薬物放出及び/又は薬物含有層の完全溶解を通して、50日間(又は30日~60日、又は2ヶ月間までに)までに達成される。
【0061】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、99%の薬物放出及び/又は薬物含有層の完全な溶解を通して、55日(又は30日~60日、又は2ヶ月までに)までに達成される。
【0062】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、81~85~86~90~91~95~96~99%の薬物放出及び/又は薬物含有層の完全溶解を通して、55日(又は30日~60日、又は2ヶ月までに)までに達成される。
【0063】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、81~90、91~99%の薬物放出及び/又は薬物含有層の完全溶解を通して、55日(又は30日~60日、又は2ヶ月までに)までに達成される。
【0064】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、60日/2(又は30日~60日、又は2ヶ月までに)までに、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、99%の薬物放出及び/又は薬物含有層の完全溶解を通して、達成される。
【0065】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆率は、81~85、86~90、91~95、96~99%の薬物放出及び/又は薬物含有層の完全溶解を通して、60日/2ヶ月(又は30日~60日、又は2ヶ月までに)までに達成される。
【0066】
他の実施形態において、ステントストラット上の80~90%、好ましくは80~100%の新生内膜被覆は、81~90、91~99%の薬物放出及び/又は薬物含有層の完全溶解を通して、60日/2ヶ月(又は30日~60日、又は2ヶ月)までに達成される。
【0067】
上記の日数及び割合の全ては、「約」という用語によって修飾され得る。
【0068】
以下は、これらのタイミング、薬物放出のレベル、及び薬物含有層溶解のレベルを達成するためのいくつかの手段を表す。これらは、本開示の実施形態を限定するものではない。
【0069】
(2).ステントフレームワーク
ステント(1)は、通常、ワイヤ、チューブ、又は円筒状に巻かれた材料のシートから形成された、相互接続する構造要素又はストラットのパターン又はネットワークを含む足場又は足場から構成される。この足場は、患者の通過路の壁の物理的な開放を保持し、必要であれば拡張することから、その名が付いた。通常、ステントはカテーテルに圧縮又は圧着でき、治療部位に送達して展開できる。送達には、カテーテルを使用してステントを小さな内腔に挿入し、治療部位に輸送することが含まれる。展開は、ステントが所望の位置に到達したら、より大きな直径にステントを拡張することを含む。
【0070】
ステントフレームワーク(2)は、金属又はワイヤ又はチューブの単一(又はそれ以上の)部分から製造され得、3Dプリント及びレーザー切断(例えば、ワイヤから始まる)を含む。例えば、ステントフレームワークは、非ステンレス鋼であり得、又はステンレス鋼、ニチノール、タンタル、コバルト-クロム(例えば、MP35N又はMP20N合金)、白金、チタン、好適な生体適合性合金、他の好適な生体適合性材料、及び/又はそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、このステントは非ステンレス鋼ステントである。他の実施形態において、ステントフレームワークは、コバルトクロム合金(ELGILOY)、ステンレス鋼(316L)、高窒素ステンレス鋼、例えば、BIODUR108、コバルトクロム合金L-605、ニチノール(ニッケル-チタン合金)、タンタル、白金-イリジウム合金、金、マグネシウム、亜鉛、鉄、又はそれらの組み合わせなどの金属材料又は合金から製造され得るが、これらに限定されない。「MP35N」及び「MP20N」は、Standard Press Steel Co.,Jenkintown,Paから入手可能なコバルト、ニッケル、クロム、及びモリブデンの合金の商品名である。「MP35N」は、コバルト35%、ニッケル35%、クロム20%、モリブデン10%で構成されている。「MP20N」は、コバルト50%、ニッケル20%、クロム20%、モリブデン10%で構成されている。他の実施形態において、ステントフレームワーク(2)は、1つ以上のプラスチック、例えば、ポリウレタン、テフロン、ポリエチレンなどから製造され得る。そのような実施形態において、ステントフレームワーク(2)は、例えば、3D印刷を使用して、製造され得る。
【0071】
ステントフレームワーク(2)は、メッシュを形成し得る。したがって、ステントフレームワーク(2)は、バルーンカテーテルなどの外力及び/又は血管内の温度の上昇によって引き起こされるメッシュの膨張などの内力のいずれかから、留置時に膨張し得る。拡張時に、ステントフレームワーク(2)は、血管を開いたままにすることができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、ステントフレームワーク(2)は生分解性であってもよい。病的な血管の治癒をもたらすため、ステントの存在は限られた期間のみ必要であって、動脈は展開後に経時的に生理学的改造を受けるからである。生体吸収性ステント又は足場の開発は、血管内の永久的な金属インプラントを排除し、後期の拡張性の管腔及び血管の改造を可能にし、足場の完全な吸収後に治癒された天然血管組織のみを残すことができる。生体再吸収性、生体分解性、生体吸収性、及び/又は生侵食性材料、例えば生体吸収性ポリマーから作製されるステントは、それらの臨床的必要性が終了した後又はしばらくした後にのみ完全に吸収されるように設計され得る。したがって、完全に生体吸収可能なステントは、潜在的な長期合併症及び晩期血栓症のリスクを低下又は排除し、非侵襲的診断MRI/CT画像診断を容易にし、正常な血管運動の回復を可能にし、プラーク退縮の可能性を提供することができる。例えば、ステントフレームワーク(2)は、キトサン、マグネシウム合金、ポリ乳酸、ポリカーボネートポリマー、サリチル酸ポリマー、及び/又はそれらの組み合わせから製造され得る。有利に、生分解性ステントフレームワーク(2)は、ステント(1)によって、閉塞が除去され、流れが回復した後、血管が正常に戻ることを可能にし得る。本明細書で使用される「生分解性」という用語は、「生吸収性」又は「生侵食性」という用語と交換可能であり、一般に、血液などの体液に曝露されたときに、完全に分解及び/又は侵食することができ、体によって徐々に再吸収、吸収、及び/又は排除され得る、ポリマー又はある特定の合金、例えばマグネシウム合金を指す。ステント内のポリマーの分解及び吸収のプロセスは、例えば、加水分解及び代謝プロセスによって引き起こされ得る。
【0073】
「生分解性ステント」は、生分解性ポリマーから作製されるステントを意味するために本明細書で使用される。生分解性ステントを作製するために使用され得るポリマーの更なる代表的な例としては、ポリ(N-アセチルグルコサミン)(キチン)、キトサン、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ラクチド-コグリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレートコバレレート)、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、ポリ(L-乳酸)、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(D,L-乳酸)、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリエステルアミド、ポリ(グリコール酸-co-トリメチレンカーボネート)、co-ポリ(エーテルエステル)(例えば、PEO/PLAなど)、ポリホスファゼン、生体分子(フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、ヒアルロン酸など)などが挙げられるが、これらに限定されない。使用可能なポリ(乳酸)に基づく別のタイプのポリマーとしては、グラフトコポリマー、及びABブロックコポリマー(「ジブロックコポリマー」)又はABAブロックコポリマー(「トリブロックコポリマー」)などのブロックコポリマー、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0074】
生分解性ステントの製造に使用するのに好適であり得るポリマーの更なる代表的な例としては、エチレンビニルアルコールコポリマー(一般名EVOI-I又は商標名EVALで一般に知られている が挙げられる。これらの生分解性ポリマーの特性及び用途は、例えば、米国特許第8,017,144号及び米国出願公開第2011/0,098,803号に開示されるように、この技術分野で既知である。
【0075】
いくつかの態様において、本明細書に記載の生分解性ステントは、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)、ポリカプロラクトン、又はそのコポリマーから作製され得る。いくつかの態様において、本明細書に記載の生分解性ステントは、ポリヒドロキシ酸、ポリアルカノエート、ポリアンヒドリド、ポリホスファゼン、ポリエーテルエステル、ポリエステルアミド、ポリエステル、及びポリオルトエステルから作製され得る。いくつかの好ましい態様では、本明細書に記載の生分解性ステントは、キトサン、コラーゲン、エラスチン、ゼラチン、フィブリン糊、又はこれらの組み合わせから作製され得る。
【0076】
本明細書に記載の「キトサンベースのステント」、「キトサンステント」は、ステントの主要成分がキトサン由来であることを意味する。例えば、本明細書に記載のキトサンベースのステントは、全ステント重量の少なくとも50%超、又は60%超、又は70%超、又は80%超の量のキトサンを含有し得る。更により具体的には、本明細書に記載のキトサンベースのステントは、総キトサンステントの約70重量%~約85重量%の量でキトサン含有量を有し得る。
【0077】
本明細書に記載のキトサンベースのステントは、分解時間を調整するために、ポリマー層でコーティングされてもよい。例えば、本明細書に記載されるキトサンベースのステントは、アセトン中のポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)の溶液で浸漬コーティングされてもよい。キトサンベースのステントは、ステントを硫酸バリウムの水性懸濁液に浸漬することによって、硫酸バリウムの層でコーティングされてもよい。いくつかの態様において、コーティングされた硫酸バリウムの重量は、ステントの総重量の約15重量%~約30重量%の量であってもよい。追加的に、キトサンステントは穿孔され得る。
【0078】
本開示の基準に従って設計されたステントは、冠動脈ステント、血管ステント、又は血管系のための任意の他の薬物含有植込み型デバイス、及び長期的に患者の安全を確保するために持続可能な方法で再狭窄及び血栓症率を低下させるのに有効な任意の医療デバイスであり得る。
【0079】
一実施形態において、より細いステントが使用される。しかしながら、ステントストラットは、時間の経過とともに破損するリスクなしに、ステント構造の安定性を確保するのに十分な厚さを有するべきである。例として、316Lステンレス鋼ステントのステントの厚さは約100~110umであり、CoCrステントの厚さは約80umである。一実施形態において、ステント厚さは100~120um未満である。一実施形態において、染色厚さは80um~120umである。一実施形態では、ステントの厚さは5~10、11~15、16~20、21~25、26~30、31~35、36~40、41~45、46~50、51~55、56~60、61~65、66~70、71~75、75~80、81~85、86~90、91~95~96~99、100~105、106~110、111~15、116~120、又は60~120um、及びその間の任意の厚さ及び厚さ間隔である。これら全ての値は、「約」という用語によって修飾され得る。
【0080】
(3).薬物含有層
一実施形態において、薬物溶出ステントは、30日以内に完全な薬物放出を達成し、3ヶ月で実質的な新生内膜被覆を達成することができるように設計される。実質的な新生内膜被覆とそれを測定する方法は上記に説明されている。一実施形態において、薬物溶出ステントは、薬物含有層が30日以内に完全な薬物放出を達成し、30日、40日、50日など、100日未満、好ましくは21日を超えて30日以下で実質的な新生内膜被覆を達成できるように設計される。一実施形態において、薬物溶出ステントは、薬物含有層がステント留置後特定の間隔(ステント留置後20~30日、31~40日、41~50日など、及び/又は100日未満)内に完全に溶解するように設計される。本開示のいくつかの実施形態による薬物含有層の作製方法の例は、以下の実施例セクションで更に示される。
【0081】
本開示の目的上、ステント(薬物含有層)からの「完全な薬物放出」とは、薬物の約80%~約100%、好ましくは約95%~約96%、約96%~約97%、約97%~約98%、約98%~約99%、約99%~約100%の放出を意味する。薬物放出は、本開示のステントが留置される対象における薬物放出が予測可能であると当業者に理解される動物モデル(例えば、ウサギモデル)又はインビトロモデルにおいて評価される。一実施形態において、「完全に放出される」とは、薬物残留物が検出可能レベルを下回る、及び/又は治療レベルを下回るレベルを指す。
【0082】
本開示の目的上、薬物含有層の約95%~約100%、好ましくは約95%~約96%、約96%~約97%、約97%~約98%、約98%~約99%、及び約99%~約100%がステントから溶解した(生体内分解したともいう)とき、薬物含有層は「完全に溶解した」(生体内分解したともいう)という。ステントからの薬物含有層溶解(生物分解ともいう)は、本開示のステントが留置される対象におけるステントからの薬物含有層の溶解(生物分解とも称される)が予測可能であると当業者に理解される動物モデル(例えば、ウサギモデル)又はインビトロモデルで評価される。一実施形態において、「完全に溶解した」とは、残留材料が検出可能なレベルを下回るレベルを指す。
【0083】
薬物含有層(3)は、ポリマーから作製され得、ステント表面の全部又は一部を覆う層を含んでもよい。更に、薬物含有層(3)は、薬物(4)を収容し、薬物(4)を持続的に放出することができる。薬物含有層(3)で使用するポリマーの例としては、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)(PHA)、ポリ(エステルアミド)(PEA)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート-co-エステルアミド)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(プロピレンフマレート)(PPF)、ポリ(D-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリ(メソ-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド-co-メソ-ラクチド)、ポリ(D-ラクチド-co-メソ-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-co-メソ-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-co-PEG)、ポリ(D,L-ラクチド-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(グリコール酸-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、PHA-PEG、PBT-PEG(PolyActive(登録商標))、PEG-PPO-PEG(Pluronic(登録商標))、及びPPF-co-PEG、ポリカプロラクトン、ポリグリセロールセバケート、ポリカルボネート、バイオポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、ポリジオキサノン、ハイブリッド、複合体、増殖調節因子を含むコラーゲンマトリックス、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、真空成形された小腸粘膜下層、繊維、キチン、デキスラン、及び/又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
薬物含有ポリマー層の分解速度は、一般に、その組成によって決定される。当業者であれば、標準的なPK動物試験を使用して1つ以上のポリマーを選択し得、ポリマーが留置後45日~60日に分解することを確認し得る。加えて、ポリマー又はポリマーマトリックスの製造業者は、薬物含有ポリマーの分解性能、例えば、分解曲線を示し得る。当業者であれば、分解性能から薬物含有ポリマーの分解速度を導き出し、分解速度に基づいてポリマーを選択してもよい。
【0085】
一実施形態において、薬物含有層(3)は、1~200μm、例えば、5~12μmの厚さを有してもよい。一実施形態において、薬物含有層は、3.5~10μmの厚さを有する。一実施形態において、反管腔側の厚さは1.5~200μmであり、管腔側の厚さは1~66μmである。
【0086】
ある特定の態様において、薬物含有層(3)は、不均一なコーティング厚さを有し得る。例えば、管腔側(6)及び側面(7)のコーティング厚さは、ステントの反管腔(8)よりも薄くてもよい。一実施形態において、管腔側(6)と反管腔側(8)との間のコーティング厚さ比は、2:3~1:7の範囲であり得る。同様に、側面(7)と反管腔側(8)との間のコーティング厚さの比は、2:3~1:7の範囲であり得る。したがって、管腔側(6)及び側面(7)上の薬物放出は、反管腔側(8)よりも速くてもよい。反管腔側(8)と比較して、管腔側(6)及び側面(7)上の薬物がより速く放出するので、管腔側(6)及び側面(7)上の内皮層のより速い回復が可能になり得る。別の実施形態において、管腔側面(6)と反管腔側面(8)との間のコーティング厚さ比は1:1であり得る。本明細書で示される範囲は、その範囲内の全ての値の略記であると理解される。例えば、1~10の範囲は、1、1.5、2.0、2.8、3.90、4、5、6、7、8、9、10などの任意の数、数の組み合わせ、又は小範囲を含むと理解される。
【0087】
いくつかの実施形態において、薬物含有層(3)は、ステントの反管腔側(8)のみにコーティングされてもよい。そのような実施形態において、管腔側(6)及び側方(7)からの薬物放出の欠如によって、管腔側(6)及び側面(7)上の内皮層の早期回復を可能になり得る。他の実施形態において、管腔側(6)及び側方(7)からの薬物放出は、15日未満、又は10~20日であってもよく、これにより、管腔側(6)及び側方(7)の内皮層の早期回復が可能になり得る。
【0088】
更に、そのような実施形態において、管腔側(6)及び側面(7)上のポリマーの分解は、反管腔側(8)上のポリマーの分解よりも速くてもよい。例えば、管腔側(6)及び側面(7)のポリマーは、PLGAを含んでもよく、反管腔側(8)のポリマーは、PLAを含んでもよい。一般的に、PLGAの分解はPLAよりも速く、この情報はポリマー製造業者から簡単にアクセスできる。
【0089】
いくつかの実施形態において、時に有利に、30日間の薬物(4)放出時間枠及び45~60日間の薬物含有コーティング(3)生分解性/溶解時間枠によって、内皮層の機能的回復が可能になり得る。上記の時間枠内で、機能的EC層の復元は、ウサギ動物モデルで測定されるように、30日、45日、60日、又は90日(及びその間の任意の間隔又はデータポイント)で十分に完了され得る。その結果、ヒトにおける薬物溶出ステントの長期的な安全性を可能にすることができる。一実施形態において、ステントは、薬物含有層によって不均一にコーティングされ、ステントの管腔又は管腔側上により薄い薬物コーティングを生成し、これにより、薬物がステントから10~20日、30日(又は30日を超える)、40日、45日、60日以上、及び100日未満の間に消失することを可能にする。
【0090】
薬物含有コーティングは、ステントから軟化、溶解、又は侵食して、少なくとも1つの生物活性剤を溶出し得る。この溶出メカニズムは、薬物-ポリマーコーティングの外側表面が溶解、分解、又は体内に吸収される表面侵食、又は薬物-ポリマーコーティングの大部分が生物分解して生理活性物質を放出するバルク侵食と称され得る。薬物-ポリマーコーティングの侵食部分は、体によって吸収され得、代謝され得、又はそうでなければ排出され得る。バルク侵食の場合、薬物含有ポリマー層はステント表面上で不均一に消失する傾向があり、その結果、いくつかの領域は生分解性ポリマーがなくなり、生体培地と生体適合性ベース層との間の局所接触を可能にするが、他のいくつかの領域は依然として分解性薬物含有層によって覆われる。
【0091】
薬物含有コーティングは、ポリマーマトリックスも含み得る。例えば、ポリマーマトリックスは、カプロラクトンベースのポリマー若しくはコポリマー、又は様々な環状ポリマーを含み得る。ポリマーマトリックスは、様々な合成及び非合成又は天然に存在する巨大分子及びそれらの誘導体を含み得る。ポリマーは、ポリマー、コポリマー、及びブロックポリマーなどの様々な組み合わせの1つ以上の生分解性ポリマーからなる群において有利に選択される。そのような生分解性(また、生体再吸収性又は生体吸収性)ポリマーのいくつかの例としては、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリグリセロールセバケート、ポリカーボネート(例えばチロシン由来)、ポリ(β-ヒドロキシアルカノエート)(PHA)及びその誘導体化合物などのバイオポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、ポリジオキサノン、ハイブリッド、複合体、成長因子を含むコラーゲンマトリックス、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、真空成形されたSIS(小腸粘膜下層)、繊維、キチン、デキストランが挙げられる。これらの生分解性ポリマーのいずれかを単独で、又はこれら若しくは他の生分解性ポリマーと組み合わせて、様々な組成で使用することができる。ポリマーマトリックスは、好ましくは、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)ポリマー、ポリ(e-カプロラクトン)(PCL)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、又は他のコポリマーなどの生分解性ポリマーを含む。医薬品は、ポリマーマトリックス全体に分散され得る。医薬品又は生物活性剤は、ポリマーマトリックスから拡散して、生物活性剤を溶出し得る。医薬品は、ポリマーマトリックスからステントを取り囲む生体材料に拡散し得る。生体活性剤は、薬物ポリマー内から分離し、ポリマーマトリックスから周囲の生体材料に拡散し得る。更なる実施形態において、薬物コーティング組成物は、Abbott Laboratories,Abbott Park,IIl.に譲渡された米国特許第6,329,386号に記載されている、薬物42-エピ(テトラゾリル)-シロリムスを使用し、米国特許第5,648,442号に記載されているBiocompatibles International P.L.C.のホスホリルコリンコーティング内に分散させることによって作り出される。
【0092】
薬物含有層のポリマーマトリックスは、薬物/生物活性剤の所望の溶出速度を提供するように選択され得る。医薬品は、特定の生物活性剤が2つの異なる溶出速度を有し得るように合成され得る。2つの異なる溶出速度を有する生物活性剤は、例えば、手術から24時間以内に薬理学的に活性な薬物の迅速な送達を可能にし、例えば、次の2~6ヶ月にわたって、薬物のより遅く、安定した送達を可能にする。電気グラフトされたプライマーコーティングは、ポリマーマトリックスをステントフレームワークにしっかりと固定するように選択することができ、ポリマーマトリックスは、急速に展開された生理活性剤及びゆっくり溶出する医薬品を含有する。
【0093】
(4)薬剤又は生物活性剤
いくつかの実施形態において、薬物(4)は、プライマーコートステント上に適用する前に、アルブミン、リポソーム、フェリチン又は他の生分解性タンパク質及びリン脂質を用いたマイクロビーズ、マイクロ粒子又はナノカプセル化技術を使って、薬物含有層(3)中にカプセル化/溶解することができる。例として、薬物(4)は、例えば、抗血栓剤、抗凝固剤、抗血小板剤、抗腫瘍剤、抗増殖剤、抗生物質、抗炎症剤、遺伝子治療剤、組換えDNA産物、組換えRNA産物、コラーゲン、コラーゲン誘導体、タンパク質類似物、糖類、糖類誘導体、平滑筋細胞増殖阻害剤、内皮細胞移動、増殖、及び/又は生存の促進剤、並びにこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得る。一実施形態において、薬剤は抗血管形成薬である。別の実施形態において、薬物は血管新生薬である。いくつかの実施形態において、薬剤/生物活性剤は細胞増殖を制御し得る。細胞増殖の制御は、標的細胞又は細胞型の増殖を増強又は阻害することを含み得る。いくつかの実施形態において、細胞は血管平滑筋細胞、内皮細胞、又はその両方である。いくつかの実施形態において、薬物は、平滑筋細胞の増殖を抑制し、及び/又は内皮細胞の増殖を促進する。
【0094】
より広義には、薬物(4)は、本開示のステントの使用が適切である疾患又は障害の予防及び治療のための治療特性をもたらす任意の治療物質であり得る。例えば、抗腫瘍剤は、ステントの近傍におけるがん細胞の増殖及び拡散を予防、殺傷、又は遮断し得る。別の例では、抗増殖剤は、細胞の増殖を防止又は停止し得る。更に別の例では、アンチセンス剤は、遺伝子レベルで働いて、疾患を引き起こすタンパク質が産生されるプロセスを中断し得る。第4の実施例では、抗血小板剤は、血小板に作用し、血液凝固における血小板の機能を阻害し得る。第5の実施例では、抗血栓剤は、血餅形成を能動的に遅らせ得る。第6の実施例によれば、抗凝固剤は、ヘパリン及びクマリンなどの化合物を使用して、抗凝固療法を用いて血液凝固を遅らせるか、又は予防することができる。第7の実施例においては、抗生物質は、微生物の増殖を殺すか又は阻害し得、疾患及び感染と闘うために使用され得る。第8の実施例においては、抗炎症剤を使用して、ステントの近傍における炎症を抑制又は低下し得る。第9の実施例によれば、遺伝子治療剤は、疾患を治療、治癒又は最終的に予防するために、ヒトの遺伝子の発現を変化させることが可能であり得る。加えて、有機薬物は、任意の小分子治療材料であり得、同様に、医薬化合物は、治療効果を提供する任意の化合物であり得る。組換えDNA産物又は組換えRNA産物は、改変されたDNA又はRNA遺伝物質を含み得る。別の例においては、医薬的価値のある生物活性剤としては、コラーゲン及び他のタンパク質、糖類、及びそれらの誘導体も挙げられ得る。例えば、生体活性剤は、ステントが設けられる体腔の直径の狭窄又は収縮に対応する状態である、血管再狭窄を阻害するように、選択され得る。
【0095】
代替的に又は同時に、生理活性剤は、冠動脈再狭窄、心血管再狭窄、血管造影再狭窄、動脈硬化、過形成、及び他の疾患及び状態を含むがこれらに限定されない、1つ以上の状態に対する薬剤であり得る。例えば、生体活性剤は、ステントが設けられる体腔の直径の狭窄又は収縮に対応する状態である、血管再狭窄を阻害又は予防するために、選択され得る。生体活性剤は、代替的に又は同時に、細胞増殖を制御し得る。細胞増殖の制御は、標的細胞又は細胞型の増殖を増強又は阻害することを含み得る。
【0096】
抗血小板薬、抗凝固薬、抗フィブリン薬、及び抗トロンビン薬の例としては、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D-phe-pro-arg-クロロメチルケトン(合成アンチトロンビン)、ジピリダモール、糖蛋白IIb/IIIa血小板膜受容体拮抗抗体、組換えヒルジン、トロンビン阻害剤、例えばAngiomax(商標)(bivalirudin,Biogen,Inc.,Cambridge,Mass)、カルシウム拮抗薬(ニフェジピンなど)、コルヒチン、線維芽細胞増殖因子(FGF)拮抗薬、魚油(オメガ3脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬、コレステロール低下薬、Mevacor(登録商標)、Merck&Co.,Inc.,Whitehouse Station,N.Jから発売)、モノクローナル抗体(血小板由来成長因子(PDGF)受容体に特異的なものなど)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害薬、プロスタグランジン阻害薬、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害薬、トリアゾロピリミジン(PDGFアンタゴニスト)、一酸化窒素、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4-アミノ-TEMPO)、エストラジオール、各種ビタミンなどの栄養補助食品、及びそれらの組み合わせを含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、生理活性剤は、ポドフィロトキシン、エトポシド、カンプトテシン、カンプトテシン類似体、ミトキサントロン、シロリムス(ラパマイシン)、エベロリムス、ゾタロリムス、ビオリムスA9、ミオリムス、デフォロリムス、AP23572、タクロリムス、テムシロリムス、ピメクロリムス、ノボリムス、ゾタロリムス(ABT-578)、40-O-(2-ヒドロキシ)エチル-ラパマイシン(エベロリムス)、40-O-(3-ヒドロキシプロピル)ラパマイシン、40-O-[2-(2-ヒドロキシ)エトキシ]エチル-ラパマイシン、40-O-テトラゾリルラパマイシン、40-エピ-(N1-テトラゾリル)-ラパマイシン、及びこれらの誘導体又は類似体を含み得る。ポドフィロトキシンは、一般的に有機的で高毒性の薬物であり、抗腫瘍特性を有し、DNA合成を阻害し得る。エトポシドは、一般的な抗悪性腫瘍剤であり、ポドフィロトキシンの半合成体から誘導され得、単球性白血病、リンパ腫、小細胞肺がん、精巣がんを治療する。カンプトテシンは、一般的な抗がん剤であり、トポイソメラーゼ阻害剤として機能し得る。カンプトテシンの構造に関連して、アミノカンプトテシンなどのカンプトテシン類似体も、抗がん薬として使用され得る。ミトキサントロンは、一般的に白血病、リンパ腫、及び乳がんを治療するために使用される抗がん剤である。シロリムスは、一般的に正常な細胞成長サイクルを妨げる薬であり、再狭窄を低下するために使用され得る。生理活性剤は、代替的又は同時に、これらの薬剤の類似体及び誘導体を含み得る。抗酸化剤は、その抗再狭窄及び治療効果のために、上記の例と組み合わせて、又は個別に使用することができる。
【0098】
抗炎症剤は、ステロイド性抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症剤、又はこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、抗炎症薬としては、アルクロフェナク、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アルゲストンアセトニド、アルファアミラーゼ、アムシナファール、アムシナフィド、アンフェナクナトリウム、塩酸アミプリロース、アナキンラ、アニロラック、アニトラザフェン、アパゾン、バルサラジド二ナトリウム、ベンダザック、ベノキサプロフェン、塩酸ベンジダミン、ブロメライン、ブロペラモール、ブデソニド、カルプロフェン、シクロプロフェン、シンタゾン、クリプロフェン、プロピオン酸クロベタゾール、酪酸クロベタゾン、クロピラック、プロピオン酸クロチカゾン、酢酸コルメタゾン、コルトドキソン、デフラザコート、デソニド、デソキシメタゾン、二プロピオン酸デキサメタゾン、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、二酢酸ジフロラゾン、ジフルミドンナトリウム、ジフルニサル、ジフルプレドナート、ジフタロン、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド、エンドリソン、エンリマブ、エノリカムナトリウム、エピリゾール、エトドラク、エトフェナマート、フェルビナク、フェナモール、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フェンクロラック、フェンドサール、フェンピパロン、フェンチアザック、フラザロン、フルアザコート、フルフェナム酸、フルミゾール、酢酸フルニソリド、フルニキシン、フルニキシンメグルミン、フルオコルチンブチル、フルオロメトロン酢酸塩、フルクアゾン、フルルビプロフェン、フルレットフェン、プロピオン酸フルチカゾン、フラプロフェン、フロブフェン、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、酢酸ハロプレドン、イブフェナク、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール、イロニダプ、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、酢酸イソフルプレドン、イソキセパック、イソキシカム、ケトプロフェン、塩酸ロフェミゾール、ロモキシカム、エタボン酸ロテプレドノール、メクロフェナム酸ナトリウム、メクロフェナム酸、二酪酸メクロリゾン、メフェナム酸、メサラミン、メセクラゾン、スレプタン酸メチルプレドニゾロン、モミフルメート、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキソール、ニマゾーン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、塩酸パラニリン、ポリ硫酸ペントサンナトリウム、グリセリン酸フェンブタゾンナトリウム、ピルフェニドン、ピロキシカム、桂皮酸ピロキシカム、ピロキシカムオラミン、ピルプロフェン、プレドナゼート、プリフェロン、プロドリック酸、プロクアゾン、プロキサゾール、クエン酸プロキサゾール、リメックスオローン、ロマザリット、サルコレックス、サルナセジン、サルサラ酸、塩化サンギナリウム、セクラゾン、セルメタシン、スドキシカム、スリンダク、スプロフェン、タルメタシン、タルニフルメート、タロサラ酸、テブフェロン、テニダプ、テニダプナトリウム、テノキシカム、テシカム、テシミド、テトリダミン、チオピナク、ピバル酸チキソコルトール、トルメットトルメチンナトリウム、トリクロニド、トリフルミデート、ジドメタシン、ゾメピラックナトリウム、アスピリン(アセチルサリチル酸)、サリチル酸、コルチコステロイド、グルココルチコイド、タクロリムス、ピメコルリムス、これらのプロドラック、これらの共薬、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
血餅及び血栓の除去のために、治療剤の例としては、(i)組織プラスミノーゲンアクチベーター、tPA、BB-10153、rTPA、ウロキネナーゼ、ストレプトキナーゼ、アルテプラーゼ及びデスモテプラーゼ、(ii)アスピリン、クロピドグレル、チカグレロール及びチクロピジンなどの抗血小板剤、並びに(iii)アブシキシマブ、チロフィバン及びエプチフィバチドなどのGIIb/IIIa阻害剤が挙げられ得る。
【0100】
好ましい治療効果を生み出すために必要な薬物の用量又は濃度は、薬物が毒性効果を生じるレベルよりも低く、治療的結果が何ら得られないレベルよりも高くなければならない。これは、抗増殖剤、前治療剤、又は本発明の様々な実施形態のいずれかに含まれる任意の他の活性剤に適用される。治療上の有効投与量は、例えば限定されないが、第II相又は第III相試験などの適切な臨床試験からも決定できる。有効投与量は、適切な薬物動態薬力学モデルをヒト、又は他の動物に適用することによっても決定できる。投与量を決定するための標準的な薬理学的試験手順は、当業者によって理解される。いくつかの実施形態において、ステントは、約5μg~約500μgの薬物含有量を有する。いくつかの実施形態において、ステントは、約100μg~約160μgの薬物含有量を有する。一実施形態において、薬物含有層中の薬物の含有量は、0.5~50重量%である。他の実施形態において、薬物含有層は、0.5~10ug/mm2の薬物(例えば、1.4ug/mm2)を含む。
【0101】
薬物溶出ステント(1)が人体の血管に留置されると、薬物(4)は、30日以内に薬物含有コーティング(3)から完全に放出され得る。代替的に、例えば、薬物は、45日以内、60日以内、又は120日以内に完全に放出されてもよい。別の実施形態において、薬物は、10~20日、30日(又は30日を超える)、40日、45日、60日など、又はそれ以上、及び100日未満の間にステントから完全に放出され得る。薬物放出の速度は、標準的なPK動物研究を介して測定され得、この研究においては、選択された時点で、流体試料及び組織及びステントが動物から採取され、並びにステントの特性を最適に設計するために測定される薬物の濃度を測定する。実施例を参照。これらの動物研究は、ヒトで何が起こるかを合理的に予測するものであり、当業者によっても理解される。更に、薬物含有コーティング(3)が生分解性又は生吸収性ポリマーから作製される実施形態において、ポリマーは、45日~90日に生分解又は生吸収され得る。例えば、50:50PLGA(以下の実施例1に記載されるように)は、約60日のインビボ分解時間を示し得る。
【0102】
(5)生体適合性ベース層
ステントフレームワーク(1/2)の上で、薬物含有層(3)の下に、生体適合性ベース層(5)が形成され得、これは、ステントフレームワーク(2)よりも良好な生体適合性表面を有し得る。例えば、フレームワークの裸金属表面と比較して、生体適合性ベース層(5)の生体適合性表面は、ステントの管腔側(6)及び側面(7)上の内皮層の早期機能的回復を可能にし得、これは、裸金属表面と比較してECのより速い移動及び複製速度をもたらし得る。図11を参照。
【0103】
生体適合性ベース層(5)は、ポリn-ブチルメタクリレート(PBMA)、ポリメチルメタクリレート、ポリ-アクリル酸、ポリ-N-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチル]-アクリルアミド(poly-NTMA)、PEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))PTFE、PVDF-HFP、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)、パリレンC、ポリ-ドーパミン(PDA)、PVP、PEVA、SBS、PC、TiO2又は良好な生体適合性を有する任意の材料(又はこれらの組み合わせ)から作製されてよい。一実施形態において、ベース層は、ポリブチルメタクリレート(PBMA)を含むか、又は本質的にそれからなる。
【0104】
いくつかの実施形態において、生体適合性ベース層は、電気グラフトのプロセスを通して、ステントフレームワークに適用される。電気グラフト層は、薬物含有層(3)の接着プライマーとして機能し得る(例えば、製造、圧着及び/又はステント留置中)。電着プライマーコーティングは、均一であり得る。この層は、10nm~1.0ミクロン、例えば、10nm~0.5ミクロン、又は100nm~300nmの厚さを有し得る。このような厚さは、コーティングが割れないことを保証し得る。電解グラフト層は、生分解性ポリマー層の割れ及び剥離をしばしば防ぐことができ、多くの場合、ステンレス鋼BMSと同等(それ以上に早くはないとしても)な機能的再内皮化(テントストラット上の内皮の機能回復)を示す(参考文献:link.springer.com/article/10.1007/s13239-021-00542-x)。更に、少なくとも約数十ナノメートル又は100ナノメートルの厚さを有する電気グラフト層の使用は、2つのポリマー層の間の交差を考慮して、薬物含有層(3)の接着の良好な強化を確保し得る。したがって、電気グラフトポリマーの性質の選択は、放出マトリックスポリマーの性質に基づき得、放出マトリックスポリマー自体は、所望の薬物放出の搭載量及び動態に基づいて選択され得る。いくつかの実施形態において、電気グラフトポリマー及び放出マトリックスポリマーは、良好な界面を構成するために、少なくとも部分的に混和性であり得る。これは、例えば2つのポリマーの溶解度やヒルデブランドパラメータが近い場合や、一方のポリマーの溶媒が他方のポリマーに対して少なくとも良好な膨潤剤である場合などである。
【0105】
一般に、電気グラフトポリマーは、生体適合性であることが知られているポリマーから選択され得る。例えば、ポリマーは、連鎖伝播反応によって得られるもの、例えば、ビニル基、エポキシド、開環重合を受ける環状モノマーなどから選択され得る。したがって、ポリ-ブチルメタクリレート(PBMA)、ポリ-メチルメタクリレート(PMMA)、又はポリ-イプシロンカプロラクトン(PCL)を使用してもよい。代替的に又は同時に、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)を使用することもできる。
【0106】
電気グラフト層(例えば、eG(商標)PBMA層)は、更に不動態を有し得、ステントフレームワークからの重金属イオンの放出(例えば、血流中又は動脈壁中)を遮断し得る。当該重金属イオンは、血液中の金属ステントの導入によって引き起こされる最初の炎症に寄与し、ネルンスト平衡に達するまで任意の金属の部分的酸化を引き起こし得る。具体的には、電気グラフト層の動脈壁の厚さ及び生分解性(薬物なし)分岐は、通常、ベアメタルステント分岐の厚さよりも小さく、より少ない肉芽腫、すなわち、より少ない炎症を証明する。
【0107】
一実施形態において、電気グラフト層は、生分解性であり得、したがって、薬物含有層もまた消失した後、ステントの表面から消失し得る。
【0108】
電気グラフト層は、非血栓性(又は血栓抵抗性)効果及び治癒促進効果(例えば、新生内膜又は内皮の機能的回復に不可欠なSMC及びECなどの細胞の増殖及び移動を促進する)を有し得る。細胞が薬物含有層の上部で増殖し始める場合(例えば、それが完全に消失する前に)、生分解性ポリマーの加水分解は、それにもかかわらず、下部で継続し得、細胞は最終的に電気グラフト層に接触し得る。このような治癒促進効果は、電解グラフト層自体が生分解性であれば、ステントフレームワークの治癒促進効果と同様であり得る。長期的には、SMC及びECによる適切な再コロニー形成を確保する生体安定性電気グラフト層により、治癒促進効果が大きくなる可能性がある(参照:link.springer.com/article/10.1007/s13239-021-00542-x)。新生内膜又は内皮は3つの部分を含んでいる:最下の層としてSMC、中間の層として細胞外マトリックス、及びマトリックス上のEC細胞の単一層。3つの部分全ての適切な成長は、EC層が完全に機能するために不可欠であり、例えば、内皮の細胞機能のためのバリア及び調節因子として機能する。一方、SMCの過剰増殖は内皮の機能回復を妨げる。
【0109】
いくつかの実施形態において、電気グラフト層は、防汚材料、具体的には親水性ポリマーから追加的に作製され得る。
【0110】
電気グラフトコーティングとして使用され得るポリマーとしては、ビニルポリマー、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、シアノアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、トリメチルシリル-プロピルメタクリレート、スチレン及びその誘導体、N-ビニルピロリドン、ハロゲン化ビニル、N-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチル]-アクリルアミド、エチレンオキシド、ラクトン、具体的にはε-カプロラクトン、ラクチド、グリコール酸、エチレングリコールなどの開裂可能な環を含む分子のポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(オルトエステル)、ポリアスパラギン酸塩などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
いくつかの実施形態において、電気グラフトコーティングは、ビニルポリマー又はコポリマー、例えば、ポリブチルメタクリレート(ポリ-BUMA)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(ポリ-HEMA)、ポリ2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン/ブチルメタクリレート(ポリ-MPC/BUMA)、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン/ドデシルメタクリレート/トリメチルシリルプロピルメタクリレート(ポリ-MPC/DMA/TMSPMA)などであり得る。ある特定の態様において、電気グラフトコーティングは、生分解性ポリマー、例えば、ポリカプロラクトン、ポリラクチド(PLA)、又はポリグリコラクチド(PLGA)であり得る。
【0112】
電気グラフトコーティングと生分解性層(薬物含有層又はトップコート層)との間の接着
薬物含有層は、予め形成された生分解性ポリマーが、予め形成された電解グラフト「ブラシ状」層の内側に相互浸透することによって、電解グラフト層上に付着し得る。このメカニズムは、電気グラフト層の鎖及び薬物含有層の鎖の両方を含有する相間の形成をもたらす。この相間の形成メカニズムは「交差」と呼ばれる(参照:iopscience.iop.org/article/10.1209/epl/i2004-10239-9)。交差は、一般に、生分解性ポリマーのポリマー鎖が、電気グラフト層の内側に「絡み付く」又は「リプテート(reptate)」し得、電気グラフト層の内側に少なくとも1つの「ループ」を形成し得るという事実に関する。ポリマーの場合、1つの「ループ」は、ランダムな構成にあるときの鎖の通常のサイズを指し得、ポリマーの回転半径を使用して評価され得る。一般的に、ポリマーの回転半径は100nm未満であり、これは、接着を改善するために、電気グラフト層が、薬物含有層のポリマーの少なくとも1つのループを収容できるように、この閾値よりも厚くてもよいことを示唆する。
【0113】
交差を使用する実施形態において、電気グラフト層は、約100nmよりも厚くてもよく、薬物含有層のポリマーのそれと同一の濡れ性(例えば、疎水性/親水性)を有してもよく、薬物含有層のポリマーのそれよりも小さいガラス転移温度を有してもよく、及び/又は薬物含有層のポリマーの溶媒によって、又は薬物含有層のポリマーの分散体を含有する溶媒によって、少なくとも部分的に膨潤してもよい。
【0114】
いくつかの実施形態において、交差は、薬物含有層(及び任意選択的に薬物)を含む溶液を、電気グラフト層でコーティングされたステントフレームワーク上に適用することによって、引き起こされ得る。例えば、薬物含有層は、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムなどに溶解されたPLGAを含み得、任意選択的に、シロリムス、パクリタキセル、ABT-578などの疎水性薬物とともに含み得る。そのような実施例において、電気グラフト層は、p-BuMAを含み得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、この適用は、浸漬又は噴霧によって行われ得る。スプレーが使用される実施形態において、上記の溶液をスプレーするノズルは、ステントフレームワークに直面し得、ステントフレームワークは、スプレーに全ての外面を提示するために回転し得る。ある特定の態様において、噴霧される溶液は、低粘度(例えば、1cP未満、純粋なクロロホルムの粘度は約0.58cPである)を有し得、ノズルは、回転しているステントから短い距離にあり得、ノズル内の不活性ベクターガス(例えば、窒素、アルゴン、圧縮空気など)の圧力は、1bar未満であり得る。これらの条件により、液体が噴霧されて小さな液滴となって、噴霧チャンバー雰囲気中を移動し、ステントの電気グラフト層の表面に当たり得る。電気グラフトポリマー層及び噴霧溶液が同じ濡れ性を有する実施形態において、液滴は非常に低い接触角を示し得、したがって表面上の液滴の収集はフィルムモジェニック(filmogenic)であり得る。そのようなスプレーシステムは、ストラットの間のウェビングが非常に少ないコーティングされたステントの製造を可能にし得る。
【0116】
ステントに対するノズルの相対的な動きは、単一ショットにおける均一及び/又は相対的に薄い(例えば、1μm未満)層の堆積を可能にし得る。回転及び/又は空気再生は、ポリマー層(任意選択で薬物を含む)を表面上に残して、溶媒の蒸発を可能にし得る。次に、所望の厚さに到達するために、第2の層を第1の層などに噴霧してもよい。いくつかのスプレーが所望の厚さに到達するために使用される実施形態において、「低圧」スプレーシステムはバッチで実装され得、このシステムにおいて、いくつかのステントは、各々及び全てのステントに順次スプレーする1つのノズルと平行に回転し、したがって、別のステントがスプレーされている間に、他のステントが蒸発することを可能にする。
【0117】
これらの実施形態に加えて、製造プロセスは、US2007/0288088A1に開示される製造方法のうちのいずれをも含むことができ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0118】
他の材料
全ての実施形態は、滑沢剤、充填剤、可塑剤、界面活性剤、希釈剤、離型剤、活性剤担体若しくは結合剤として作用する薬剤、抗粘着剤、抗発泡剤、粘度調節剤、潜在的な残留レベルの溶媒、並びに材料の加工を補助する、若しくは材料の加工に所望である、及び/又は最終生成物の成分として、若しくは最終生成物に含まれる場合、有用であるか、又は望ましい潜在的に任意の他の薬剤などの追加の成分も含み得るが、これらに限定されない。
【0119】
薬物放出の薬物動態
【0120】
本開示のステントの薬物放出プロファイルは、血液への放出及び/又はステントに隣接する動脈組織への放出の観点から説明され得る。実施例3は、本開示によるステントの薬物動態研究を示す。図16及び表3は、本開示の好ましい実施形態による、望ましい性能を有するステントに関連する薬物動態値の好ましい実施形態を示す。一実施形態において、薬物の動脈濃度は、図16Bの放出プロファイルに従い、ステント留置後20日頃にピークに達する。この放出プロファイルは、SMCの増殖がステント内の薬物なしで最大に達するのと同じ期間であるため、SMCの増殖を低下させる薬物である場合には、理想的なプロファイルである。SMC増殖阻害剤のこの放出プロファイルは、内皮血管回復を低下させない。
【0121】
一実施形態において、約28日以内にインビトロでステントから、薬物の約85~95%以上が放出される。一実施形態において、この薬物動態は、ステント内の約1~2ug/mmの薬物で達成される。一実施形態において、同じステントは、PLGAを含む薬物含有層を有し、約2ヶ月で分解する。一実施形態において、同じステントは、図16Cの薬物放出プロファイルを有し、動脈薬物濃度は、約20日でピークに達し、徐々に減少する。一実施形態において、薬剤はシロリムスである。
【0122】
表4は、本開示のステントによって示されるいくつかの好ましい薬物動態を示す。1つの好ましい実施形態において、ステント(例えば、薬物含有層)は、治療された左前降下動脈(LAD)組織において、以下の薬物放出プロファイルを示すように設計される:観察された最大濃度時間(Tmax)=500時間;達成された最大濃度(Cmax)は11.0ng/gであり、AUClast6580hrマイクログラム/グラムである。一実施形態において、ステント(主に薬物含有層)は、右冠動脈(RCA)組織において以下の薬物放出プロファイルを提供するように設計される:Tmax=670時間;Cmaxは9.23ng/gであり、AUClastは8240hrマイクログラム/グラムである。実施例を参照。いくつかの実施形態において、これらの薬物動態プロファイルは、薬物含有層の量/厚さ及び/又は組成を操作することによって達成される。いくつかの実施形態において、これらの薬物動態プロファイルは、薬物の量及び/又は同一性を操作することによって達成される。
【0123】
一実施形態において、LAD及び/又はRCA組織におけるTmaxは、200~300時間、300~400時間、400~500時間、500~600時間、600~700時間、700~800時間、800~900時間、900~1000時間である。一実施形態において、LAD及び/又はRCA組織内のTmaxは、100時間以下、200時間以下、300時間以下、400時間以下、500時間以下、600時間以下、700時間以下、800時間以下、900時間以下、又は1000時間以下である。一実施形態において、LAD及び/又はRCA組織におけるCmaxは、1~5、6~10、9~15、11~15、16~20、21~25、26~30、31~40、41~50、51~55、55~60などであり、95~100ng/gまで続く。一実施形態において、LAD及び/又はRCA組織におけるCmaxは、5ng/g以下、10ng/g以下、15ng/g以下、20ng/g以下、25ng/g以下、30ng/g以下、35ng/g以下、40ng/g以下、45ng/g以下、50ng/g以下、55ng/g以下、60ng/g以下などであり、100ng/g以下まで続く。一実施形態において、LAD組織におけるAUClastは、100~1000、1000~2000、2000~3000、3000~4000、4000~5000、5000~6000、6000~7000、7000~8000、8000~9000hrマイクログラム/グラムの間である。一実施形態において、LAD組織内のAUClastは、1000以下、2000以下、3000以下、4000以下、5000以下、6000以下、7000以下、8000以下、9000以下、1000以下、1000以下のhrマイクログラム/グラムである。いくつかの実施形態において、これらの薬物動態プロファイルは、薬物含有層の量/厚さ及び/又は組成を操作することによって達成される。いくつかの実施形態において、これらの薬物動態プロファイルは、薬物の量及び/又は同一性を操作することによって達成される。いくつかの実施形態において、ステントのこれらの態様の両方は、調整された様式で操作される。
【0124】
ウサギの腸骨動脈における留置後の例示的なステント特性
一実施形態において、以下の特性を有するステントは、ウサギの腸骨動脈ステントモデルで評価されるように、以下のパラメータについて異なる値を有するステントと比較して、優れた有効性及び/又は安全性を有すると予想されることも発見された。
【0125】
ステント留置領域内の動脈によるエバンスブルー染料の取り込みは、ステント留置後45日時点で40%未満、90日時点で25%未満である。
【0126】
比Rが、ステント留置された動脈のステント留置領域の長手方向断面における共焦点顕微鏡によって測定され、P120タンパク質の量に対するVE-カドヘリン(R=[P120]/[VE-cad])の比であり、足場領域における当該タンパク質の共局在化の程度を特徴とし、留置後45日時点で70%より大きく、90日時点で80%より大きい;及び
【0127】
細胞形状指数Iが、共焦点顕微鏡法によって観察された内皮細胞の最大長さ[a]を当該最長長さに垂直な方向にあるサイズ[b]で割った(I=[a]/[b])比率として定義され、留置後45日で2より大きく、留置後90日で3.5より大きい。全ての値は、用語「約」によって修飾され得る。
【0128】
実施例を参照。したがって、本開示は、例えば、ステントフレームワーク、薬物含有層、薬物、及び/又は生体適合性ベース層の観点から、ステントがこれらのパラメータの1つ以上を呈するような構造設計を有するステントを提供する。繰り返すが、これらの新たに発見されたパラメータは、ステント設計及び改善の新たな指針となる。
【0129】
ステントを使用する方法:
一実施形態において、ステントは、血管、胆管(多くの場合、プラスチックステント)、気管、食道、気道、尿道などのような生物の管腔内の狭窄領域又は閉塞領域を改善するために使用される医療デバイスである。ステントは、これらの中空臓器及び他の中空臓器に挿入され、これらの中空臓器が十分なクリアランスを維持することを保証する。
【0130】
医療用ステントの用途の1つは、例えばアテロームと呼ばれる病変又はがん腫瘍の発生などの影響で直径が収縮した血管などの体腔を拡張することである。アテロームとは、血管を通る血流を阻害することができるプラーク蓄積を含む動脈内の病変を指す。時間が経つにつれて、プラークはサイズ及び厚さが増加し、最終的には動脈の臨床的に有意な狭窄、又は完全な閉塞につながる可能性がある。直径が収縮した体腔を拡張すると、医療用ステントは体腔内にチューブ状の支持構造を提供する。ステントは、動脈瘤の血管内修復、体腔の壁の弱さに関連し得る体腔の一部の異常な拡大又は膨張に使用することもできる。ステントは、神経血管系を含む神経疾患を治療するためにも使用することができる。
【0131】
ステントは、機械的介入だけでなく、生物学的療法を提供するためのビヒクルとしても使用される。生物学的療法は、治療物質を局所的に投与するために薬用ステントを使用する。治療物質は、ステントの存在に対する有害な生物学的応答を緩和することもできる。薬用ステント(すなわち、薬物を含むステント)は、活性剤又は生体活性剤又は薬物を含むポリマー担体を含むように、本明細書に開示される方法によって、製造され得る。
【0132】
一実施形態において、ステントは対象の疾患又は障害を治療する方法に使用される。ステントを使用することができる疾患又は障害の例としては、血管系の疾患(心臓病、血栓症)、腫瘍、血管腫、涙腺の閉塞及び管腔の他の疾患が挙げられる。ステントは、経皮的冠動脈介入(PCI)、及び大腿浅動脈(SFA)などの末梢用途に使用することができる。いくつかの実施形態において、ステントは、薬物として、細胞増殖抑制剤(例えば、パクリタキセル)又は免疫抑制剤などの細胞増殖抑制剤を利用することによって、血管狭窄の治療又は再狭窄の予防に使用され得る。いくつかの実施形態において、本開示の尿管ステントは、対象の腎臓及び/又は膀胱に導入される。
【0133】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒト及び非ヒト動物を指し、獣医対象を含む。「非ヒト動物」という用語は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物及び非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、マウス、ウサギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、及び爬虫類などの非哺乳動物を含む。好ましい実施形態において、対象はヒトであり、患者と称され得る。
【0134】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」又は「治療」という用語は、好ましくは、検出可能であろうと検出不可能であろうと、疾患又は状態の1つ以上の徴候又は症状の軽減又は改善、疾患程度の減少、疾患の状態の安定性(すなわち、悪化しない)、病態の改善又は緩和、進行速度又は進行時間の減少、及び寛解(部分的にであっても全体であっても)を含むが、これらに限定されない、有益な又は所望の臨床結果を得るための行為を指す。「治療」は、治療を行わない場合に予想される生存と比較して、生存を延長することも意味し得る。治療は治癒的である必要はない。
【0135】
対象にステントを導入する方法
一実施形態において、ステントは、カテーテルを介して、又は留置によって対象の体内に導入される。他の実施形態において、ステントは、バルーンカテーテルによって導入される。
【0136】
「ステントを挿入する」、「ステントを送達する」、「ステントを配置する」、「ステントを使用する」という用語、及び本明細書に記載の同様の表現は、全て、ガイドワイヤ、バルーンカテーテル、又は自己拡張ステントのための他の送達システムなどのメカニズムによって、体腔を通して治療を必要とする領域に、ステントを導入及び輸送することを意味する。一般的に、ガイドワイヤの一端にステントを配置し、対象の体腔を通ってガイドワイヤの端部を挿入し、体腔内のガイドワイヤを治療部位に前進させ、ガイドワイヤを内腔から取り外すことによって行われる。挿入は、送達シース、プッシュロッド、カテーテル、プッシャー、ガイドカテーテル、内視鏡、膀胱鏡、又は蛍光透視などの他の付属品によっても、円滑に進められ得る。ステントを送達する他の方法は、この技術分野で周知である。
【0137】
製造プロセス
本開示のステントは、この技術分野に記載される製造工程の適用及び操作によって、製造され得る。
金属ステントフレームを得る、例えば:
1)ステントの製造
ステントフレームは、金属チューブからレーザー切断できる。レーザー切断後、ステントフレームは電気研磨プロセスを経て、ステントフレームの端を滑らかにする。
2)ベース層の製造
ステントフレームをブチルメタクリレート(モノマー)で一杯のリザーバに配置する。電気グラフトプロセス中、ブチルメタクリレートの重合はいくつかの開始剤によって開始され、ベース層(ポリブチルメタクリレート)はステントフレーム上に結合され(共有結合)、より良い生体適合性を表面に付与する。
3)薬剤含有層の製造
50/50のPLGA(生分解性ポリマー)とシロリムス(薬物)を一定の重量比で混合して、クロロホルム中に溶解し、スプレー溶液を作製する。ベース層を有するステントフレームは、回転子上に固定され、スプレー溶液でスプレーコーティングされている。
【0138】
ステントフレームワークの作成例(2):
いくつかの実施形態において、ステントフレームワークは、予め製造されたマグネシウム合金の網から構成されることがある。合金は、留置後6~9ヶ月に完全に生分解性し得る。追加的に又は代替的に、ステントフレームワークは、少なくとも3ヶ月間機械的な本来の強度を維持し得る。同様に、ステントフレームワークは、予め作製されたポリ-L-乳酸(PLLA)又は他の生体適合性完全生分解性ポリマーを含んでもよい。このようなポリマーは、少なくとも3ヶ月間機械的な本来の強度を維持し得る。
【0139】
いくつかの実施形態において、ステントフレームワークは、例えば、レーザーを使用して、金属チューブから切断され得る。電気研磨プロセスは、切断後にステントフレームワークを滑らかにすることができる。
【0140】
生体適合性ベース層(5)を作製する例:
電気化学的反応
一実施形態において、n-ブチルメタクリレートモノマーは、N,Nジメチルホルムアミド溶媒(DMF)に溶解され得る。ある特定の態様において、硝酸ナトリウムは、溶液の導電性を増加させるために、電解質として添加され得る。この溶液を120分間、回転させながら混合し得る。一実施例では、メタクリル酸塩の濃度は20%であり得、硝酸ナトリウムの濃度は5.0×10-2Mであり得、DMFの濃度は80%であり得る。
【0141】
上記プライマー層コーティング溶液を含有する反応器は、電気化学反応を使用して、ステント足場を溶液でコーティングし得る。例えば、ステントは、ポテンショスタットの作動電極プラグに接続され、ステントの表面積と比較して大きな(x10超)表面積を有するグラファイトの2つの箔で作られた対電極は、ステントが箔の間に設けられるように、互いに数センチメートル離れ、互いに対向している。次に、ステントが陰極として機能するように、3~4ボルトで構成される電圧を印加する。この電圧は通常、走査電圧測定法で印加され、0~3~5ボルトを約50mV/秒の直線走査速度で往復する。アルゴンや窒素などの不活性ガスが、約120分間持続する、電圧測定プロセスに沿ってDMF溶液中で泡立っている。
【0142】
次いで、生体適合性ベース層を真空中で(例えば、10mbar以下で)焼成し得る。一実施例において、焼成は約40℃で180分間起こり得る。このプロセスで形成された生体適合性ベース層は、約200nmの厚さを有し得る。
【0143】
他の実施形態において、生体適合性ベース層は、ステントの金属合金と自発的に反応し得るいくつかの特定の反応性種を含有する浴槽内にステントを浸漬するだけで製造され得る。これは、例えば、マグネシウムベースの合金の場合であり、マグネシウムベースの合金は、4-ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートと5.10-3mol/lで自発的に反応し、約100~150ナノメートルのグラフト層を形成する。
薬物含有層(3)の作製例:
一実施形態において、薬物含有層は、スプレーコーティングプロセスを介してステントに適用される。他の実施形態において、薬物含有層をステントに(直接的に又は生体適合性ベース層の表面上で)適用するプロセスは、例えば、浸漬、蒸着、及び/又は刷毛塗りを含む。
【0144】
スプレーコーティングプロセス:
A.プロセス
いくつかの実施形態において、薬物含有層(3)は、ステントフレームワーク上(又はポリマーコーティングされたステント上、例えば、以下に記載される電気グラフトコーティングされたステント上)にポリマーコーティングを配置するためのスプレーコーティングプロセスを使用して、形成され得る。一実施例において、20ミリメートル長の電気グラフトステントに、シロリムスを含有する生分解性ポリエステル(ポリラクチド-co-グリコリド50/50、PLGA)をスプレーコーティングした。コポリマー(0.25%w/v)をクロロホルム中に溶解した。次いで、シロリムスをクロロホルム/ポリマー混合物中に溶解し、(1/5)の最終比率のシロリムス/ポリマーを得た。別の例において、混合物は、50/50PLGA(例えば、5g)と、クロロホルム(例えば、600mL)中に溶解したラパマイシン(例えば、0.5g)と、を含んでもよい。次に、混合物を、以下のパラメータを有する細かいノズルで噴霧することによって、回転マンドレルに取り付けたステントに適用した。

【表1】
【0145】
代替的に、そのようなパラメータは、本開示の条件を満たすために当業者によって調整されてもよく、ステント表面上の薬物層の不均一な分布(管腔面上より薄い)を生成する。いくつかの実施形態において、パラメータは、米国特許出願第13/850,679号(2014/0296967A1として公開)、米国特許出願第11/808,926号(2007/0288088A1として公開)、及び米国仮特許出願第60/812,990号(これらの全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で使用されるものから調整できる。
【0146】
薬物スプレーの条件は、薬物含有コーティング(3)をステントの管腔側(6)、側面(7)、及び反管腔側(8)に適用することができるように調整できる。図11を参照。高速回転スプレー及び遠心効果により、薬物含有コーティング(3)は、管腔側(血流に面する)(6)及び側面(7)を基準として、反管腔側(血管壁に面する)(8)においてより高い(及び調整可能な)厚さを有し得る。本開示の一実施形態は、そのような不均一なコーティングを有するステントである。一実施形態において、薬物含有溶液でステントをコーティングする際の相対的な高速回転、及び低圧プロセスが、この結果をもたらすことが見出された。次いで、40℃での乾燥を真空オーブン内で行った。上記のパラメータを使用して、この例のステントのコーティングは800+/-80μgであり、約5-7μmの厚さを有する。この実施例のステントにおける薬物搭載量は、164+/-16μgであった。
【0147】
BUMA-Supremeの製造
BuMA Supremeは、80umの厚さを有する、特定の設計をされたベアメタルステントとして最初に作製され、次に約200nmの厚さのPBMAでeGコーティングされ、薬物及びPLGA製剤のスプレーコーティングプロセスにより、eGコーティングされたステントの上面をコーティングした。
【実施例
【0148】
(実施例1)
ウサギにおけるインビボ試験
直前の例示的方法に記載の方法によって調製されたステントをインビボで使用した。以下のステントフレームワーク構造を有するこの例示的な方法に従って、第1のステントを調製した。この実施例において、ステントフレームワークは、10頂点デザインを有するステンレス鋼を含む。このデザインは、頂点の数が少ないデザインに比べて、ステント拡張後の半径方向の強度が向上し、均一性が高くなり得る。このステント(コバルトクロム)は次のような付加的特徴を有していた:1.4ug/mmのシロリムスを含む生分解性ポリマー(PLGA、3.5~10um)の薬剤含有層によるコンフォーマルコーティング;80umのストラットの厚さ;100nm~200nmの厚さのPBMAから作られた電気グラフトされた耐久性/生体適合性のあるベース層(薬剤含有層を支持する)。
【0149】
これらの特性を有する多くのステントをウサギに留置した。全ての手術は無菌技術を使用して行った。ウサギを仰臥位に配置して、後肢を外転し、膝を伸ばして腰を外側に回転させた。動物の生理学的恒常性を安定させるため手術中、動物は、0.9%塩化ナトリウム、USP、10~20ml/kg/時の速度で静脈内点滴、及び温水毛布で維持された。動物の心拍数、血圧、体温、呼吸数、O飽和度、COレベル、及びイソフルラン濃度を15分ごとに監視及び記録した。左右の腸骨動脈はバルーン内皮剥離により損傷した。3.0mm×8mmの標準的な血管形成用バルーンカテーテルを、蛍光透視鏡ガイドを使用してガイドワイヤ越しに、大腿動脈遠位部に配置し、50:50の造影剤/生理食塩水で8ATMまで膨らませた。次いで、カテーテルを、腸骨動脈分岐部のレベルに近い膨張状態で近位側において抜去した。バルーンを収縮させ、腸骨遠位部に再配置し、10ATMでの血管脱落を、最初に脱落させた血管と同じ区間で繰り返した。バルーン剥離後直後、予定された割り付けに従って、腸骨大腿動脈の剥離区域に、BuMA BMS(3.0mm×15.0mm)の冠動脈ステント(BuMA Supreme、Xience[Xience Xpedition])を留置した。予め装着されたステント/カテーテルを、蛍光透視鏡ガイドを使用して、ガイドワイヤ越しに、大腿動脈遠位部に送達した。ステントは、推奨された公称膨張圧(10ATM)、目標とするバルーン対動脈比(約1.3対1.0)で、30秒かけて送達された。ステントの配置及び開存性を評価するために、繰り返し血管造影を行った。留置後の血管造影に続いて、全てのカテーテル/シースを抜去し、外科的創傷を閉じ、動物を回復させた。例えば、図3に示すように、本開示によるステント(Buma Supreme)をウサギに数日間留置した場合、走査電子顕微鏡(SEM)によって評価されるように、本開示によるステントは、図2に図示するXience Xpedition(50%)と比較して、より良好な内皮被覆(80%)を示した。
【0150】
更に、図5A~5Dに示すように、ウサギにおける留置の60日後、本開示によるステントは、図4A~4D(21%)に図示するXience Xpeditionステントと比較して、より良好な機能的内皮被覆率(38%)を示した。
【0151】
図7に更に示されるように、ウサギにおける留置の90日後、本開示によるステントは、図6に図示するXience Xpeditionステント(70%)と比較して、より良好な内皮被覆率(99%)を示した。
【0152】
最後に、図9A~9Cに示すように、ウサギにおける留置の90日後、本開示によるステントは、図8A~8D(46%)に図示するXience Xpeditionステントと比較して、より良好な機能的内皮被覆(100%)を示した。
【0153】
細胞形状指数は、細胞の形態を表す(細胞の高さを細胞の幅で割ったもの)と定義される。45日時点で、本開示に係るステントの細胞形状指標は2.69であり、Xience Xpeditionは1.73であり、90日時点でそれぞれ3.34及び2.20であり、有意差を示した。
【0154】
以下のステントフレームワーク構造を有するこの例示的な方法による、第2の実験セットを調製した。
【0155】
ステント(BuMA Supreme)を、上記の同じスプレーコーティングプロセスによって、生分解性ポリマー(PLGA)のコンフォーマルコーティングでコーティングした。ストラットの厚さは80umであり、ステントはコバルト-クロム合金で作製した。eG層は、PBMA(100nm~200nm)及び1.4ug/mm2のシロリムスを含有するPLGA(3.5~10um)の薬物含有層から作製した。
【0156】
以前の実験と同様に、ステントをウサギに留置し、エバンスブルー及びVE-カドヘリン/P120共局在化を使用して、その内皮化を経時的に(例えば、45日及び90日)研究した。結果は、45日時点のエバンスブルーについては図12A~12D、45日時点のVE-カドヘリン/P120共局在化については図13A~13D、90日時点のエバンスブルーについては図14A~14D、及び90日時点のVE-カドヘリン/P120共局在化については図5A~15Dに例示される。これらの図に示されるように、本開示によるステント(BuMA Supremeステント)は、本開示に従わずに試験された他の薬物溶出ステントよりも、VE-カドヘリン/P120の内皮細胞共局在化の割合が大きい(すなわち、内皮がより良く、より機能的である)。加えて、エバンのブルー染色によって評価されるように、本開示のステント(BuMA Supremeステント)を覆う内皮細胞層の許容性は、本開示に従わずに試験された他の薬溶出ステントの許容性よりも低く、これは、内皮がBuMA Supremeステントにおいてより機能的であることを示す。
【0157】
また、ステントフレームワークは、軸方向に螺旋状に設けられた2-3-2-3リンクポールの交互パターンを伴う波形設計を含み得ることも想定される。この設計は、ステントの屈曲性を改善し、ステント拡張後の血管へのより良い取り付けをもたらす可能性がある。いくつかの実施形態において、ステントの両端は、2-3-2-3パターンに従って、2つのリンクポール又は3つのリンクポールを有し得る。他の実施形態において、ステントの両端は、4つのリンクポールを有し得、これは、ステントの軸方向強度を増加させ得る。この例示的な設計の寸法は、例えば、90μmのポール幅、及び100μmのクラウン幅を含み得る。ポール幅よりも大きなクラウン幅を有する場合、ステントは、より大きな半径方向強度を有し得、ステント拡張後に血管との交差プロファイルが低下し得る。加えて、この例示的な設計の寸法は、80μm又は90μmの壁厚を含み得る。
【0158】
実施例2
ヒト臨床試験:
ヒト臨床試験は、ステンレス鋼(316L)で作製されたステント(BUMAステント)を用いて行った。ステントは、以下のODのいずれかを有するように設計した:1.6及び6つの頂点(第1の設計)又は1.8及び9つの頂点(第2のデザイン)のOD。第1の設計のポール幅は110μm、第2の設計のポール幅は90μmであった。第1の設計の壁厚は100μm、第2の設計の壁厚は110μmであった。これらのステントを、上記のスプレーコーティング方法によって、コーティングした。
【0159】
「A prospective randomized controlled 3 and 12 months OCT study to evaluate the endothelial healing between a novel sirolimus eluting stent BUMA and an everolimus eluting stent XIENCE V」と題する臨床試験を行った。BUMAステントを、30日間の薬物放出時間枠及び60日間のコーティング/薬物含有層生分解性時間枠で設計し、上記の実施例1に従って製造した。一方、Xience Vステントは120日間の薬物放出時間枠で設計し、コーティングは生物学的に安定している。20人の患者を本研究に登録した。BUMA及びXIENCE Vステントを、同じ患者の同じ血管内の同じ病変部に重複して留置した。この研究では、両方のステントのストラットが3ヶ月及び12ヶ月のOCTフォローアップ時に十分に覆われていたことを示した。しかしながら、BUMAステントのストラットは、12ヶ月時点で、XIENCE Vステントのストラットと比較して、有意な被覆率を有した(99.2% BUMA対98.2% XIENCE V、P<0.001)。更に、BUMAステントのストラットは、XIENCE Vステントのストラットよりも、厚い新生内膜過形成厚さ及び大きい新生内膜面積を有していた(0.15±0.10mm BUMA対0.12±0.56mm XIENCE V、P<0.001)。上述したように、第1の閾値(例えば、0.1mm)を下回る厚さは、内皮細胞の数が不十分であることを示し得、その一方で、第2のより高い閾値(例えば、0.20mm)を上回る厚さは、平滑細胞の過剰増殖を示し得、内皮細胞層は完全に機能しない。加えて、BUMAステントは、XIENCE Vステントと比較して、より均一なストラット被覆を有していた。この研究は、BUMAステントがXIENCE Vステントよりも長期的な安全性が高い可能性があることを示している。
【0160】
「Biodegradable Polymer-Based Sirolimus-Eluting Stents With Differing Elution and Absorption Kinetics」と名付けられた別の臨床試験を行った。BUMAステントを、30日間の薬物放出時間枠及び60日間のコーティング生分解性(薬物含有層の消失/溶解/消散)時間枠で設計し、上記の実施例1に従って製造した。EXCELステントは、180日間の薬物放出時間枠と180~270日間のコーティング生分解性時間枠で設計した。2348人の患者を本研究に登録した。BUMAステントは、EXCELステントよりも、ステント血栓症の発生率が低かった。具体的には1年間のステント血栓症発生率はBUMAステントの方がEXCELステントより低く、この差はステント留置後1ヶ月以内に証明された。
【0161】
「PIONEER-II Study」と名付けられた別の臨床試験では、BUMA SupremeステントとXience Vステントとの1ヶ月間の光学コヒーレンス断層撮影(OCT)の結果を比較した。BUMA Supremeステントを、30日間の薬物放出時間枠及び薬物含有層の60日間の生分解性時間枠で設計し、上記の実施例1に従って製造した。Xience Vステントは、120日間の薬物放出時間枠で設計されており、コーティングは、生物学的に安定していた。15人の患者を本研究に登録した。この研究では、BUMA Supremeステントの1ヶ月後のOCT追跡調査によるストラット新生内膜被覆率は、Xience Vステントと比較して良好であった(BUMA 83.8%対Xience V 73.0%、P<0.001)。
【0162】
実施例3
分注コーティングプロセス
A.プロセス
いくつかの実施形態において、薬物含有層(3)は、ステントフレームワーク上にポリマーコーティング(又はポリマーコーティングされたステント、例えば、以下に記載される電気グラフトコーティングされたステント)を配置するため、分注コーティングプロセスを使用して、形成され得る。一実施例において、乾燥後、シロリムスを含有する生分解性ポリエステル(ポリラクチド-co-グリコリド、p-PLGA)で、20ミリメートルのステントを分注コーティングした。コポリマー(5%w/v)をクロロホルム中に溶解した。次いで、シロリムスをクロロホルム/ポリマー混合物に溶解して、(1/5)の最終比率1:5のシロリムス/ポリマーを得た。マイクロディスペンサーをステントストラット及びリンクに沿って動かし、以下のパラメータを使用して、マイクロディスペンサーによって、混合物をステントの反管腔側(8)に分注した:
【表2】
【0163】
コーティングは、ステントの反管腔側(8)にのみ適用した。40℃での乾燥を真空オーブンで行った。この実施例では、ステント上のコーティングは500±50μgであり、コーティング厚さは約9~12μmであった。更に、この実施例では、薬物負荷は125±12μgであった。
【0164】
実施例4
BUMA Supreme生分解性薬剤被覆冠動脈ステントシステムのための薬剤放出プロファイル
BuMA Supreme(商標)生分解性薬剤被覆冠動脈ステントシステム(BuMA DES)は、薬剤が被覆されバルーン拡張可能なステント及び迅速交換送達システムからなる。コバルトクロム(CoCr)ステントは、金属表面に共有結合された非常に薄い非侵食性ポリn-ブチルメタクリレート(PBMA)でコーティングされる。次に、生分解性ポリマー、ポリラクチドコグリコール酸(PLGA)に包埋された活性成分であるシロリムスを含有するトップコートを適用する。
【0165】
ステントからの薬物の放出、並びにシロリムス/ラパマイシンの局所、局部、及び全身送達を、ステント留置された冠動脈区域における薬物含有量を測定することによって、定量化した。ステントに残留し、組織内で発見された薬物を、1、3、7、14、21、28、0、90、及び150日の時点で測定した。ステントをユカタンミニチュアブタに留置した。ブタ及びヒトの動脈は、相関的に類似した解剖学的構造を有しており、ブタモデルはFDA、EMEA、及びSchwartzらによる前臨床試験での使用が推奨されている。可能であれば、31匹のユカタンミニブタにおいて、各動物の左回旋枝[LCx]、左前下行枝[LAD]、及び右冠状動脈[RCA]の3つの冠動脈のうちの2つに留置した。
【0166】
動脈(ステント領域)における薬物の最大濃度は、留置後21日に発生し、平均9.85±4.72μg/gmであった。表1.60日までに、このレベルは0.92±0.20μg/gmに低下し、154日及び202日において、12試料のうち5試料のみが測定可能な薬物レベルを有していた。ステント留置された区域の近位及び遠位の動脈区域における薬物濃度は、ステント留置された区域と比較してはるかに低かった(ステントセグメント値の約3~11%)。
【表3】
【0167】
動脈組織におけるラパマイシンの分布についての薬物動態プロファイルを図16A、16B、及び16Cに示す。
【0168】
Phoenix WinNonlin(バージョン8.1)非コンパートメント解析関数(AUC計算のための線形台形規則)を使用して、全血、標的組織、及び非標的組織濃度対時間データを使用して、ウサギ-PK(2014-002)及びブタ-PK(1792-318G)研究の両方について、薬物動態解析を行った。名目上の用量値と試料採取時間を計算に使用した。BLQとして報告された任意の濃度(LLOQ<0.100ng/mL)をゼロに設定した。半減期(t1/2)に基づく、除去速度定数である、ラムダz(R>0.75)の決定のために、時点を手動で評価した。半減期は、留置後24時間(ウサギ)又は72時間(ブタ)までの全血データを使用して計算した。この期間中にクリアランスの大部分が発生するように見えたためである。
【0169】
ウサギ及びブタ研究では、薬物動態分析には、Cmax、Tmax、Tlast、AUC0-24、AUClast、t1/2、及びMRTlastが含まれ、これらは表2に提示される。以下。
【0170】
【表4】

【表5】
【0171】
実施例5
BP-DES、BuMA Supreme(登録商標)(SINOMED、Tianjin、China)シロリムス溶出ステント(BP-SES)は、コバルトクロムからなる金属ステントをポリブチルメタクリレートの極薄層で周方向に覆い、その上にシロリムスリザーバーとして機能するポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)のトップコート生分解性層を取り付けたことを特徴とする。このステント設計は、現在利用可能なBP-DESの中で最も短いポリマー分解/薬物放出プロファイルを有し、6週間以内に分解が起こる。このBP-DES中の組織薬物レベルは、治療薬レベルが90日をはるかに超えて持続するDP-DESと比較して、より短い期間存在したままである。
【0172】
この一連の研究では、BP-SES、DPエベロリムス溶出ステント(DP-EES、Xience Xpedition(登録商標)、Abbott Vascular、California、USA)、BPエベロリムス溶出ステント(BP-EES、Synergy(登録商標)、Boston Scientific、Massachusetts、USA)、及びBMS(Multi-Link Vision (登録商標)、Abbott Vascular、California、USA)を含むDESの性能を評価した。これらのステント設計の相対的な違いを図17に列挙した。BP-SESは、他のステントよりも優れている(例えば、安全性が向上している)。
【0173】
ウサギの腸骨大腿骨動脈における内皮機能的治癒
バルーン剥離後、薬物溶出ステントを左右の腸骨大腿骨動脈に留置した。ウサギに、全身麻酔下で、45日又は90日に静脈内投与によりエバンスブルー染料(EBD)を注射した。EBDを1時間再循環させ、血管透過性を評価した。EBDを静脈内投与すると、血清アルブミンと自発的に結合し、動脈壁が70kDの複合体にさらされる。動脈壁の青色染色は、内皮管腔バリアの破壊を示す。安楽死後、ステントが留置された腸骨動脈を剥離して除去した。EBD陽性領域をストラットカラムごとに推定し、ステント全体に対して平均化した。内皮バリアの完全性を比較するために、各ステント半分を抗VE-cad及びp120抗体で染色し、共焦点顕微鏡下で蛍光画像を得た。内皮バリア形成が可能な領域は、以前に報告されたように、細胞境界でp120/VE-cadが共局在する領域と定義され、各ステントについて解析された。p120/VE-cadの共局在を示した内皮細胞の細胞高さ及び幅も評価して、内皮細胞形態を表す細胞形状指数(細胞高さを細胞幅で割ったもの)を得た。EBD及びp120/VE-cad共局在の診断能力を比較するために、これら2つの異なる方法によって評価された内皮機能障害を有する領域の空間分布を更に分析した。共焦点顕微鏡分析の後、ステント付き動脈の半分は走査電子顕微鏡(SEM)分析を受けた。ステント留置部位の内皮組織被覆を、近位端から遠位端までの半定量化、視覚的推定によって評価した。SEMによる検査で内皮層の損傷の証拠があった場合、ステントは試験から除外された。
【0174】
ニュージーランド白ウサギは、腸骨動脈にBP-SES、DPEES、BP-EES、又はBMSを受け入れるようにランダム化された。全てのウサギ(n=24)は、試験の生存部分を生き残り、終了時の全てのステントは、血管造影によって評価されたステント破砕なく特許された。定量的血管血管造影分析では、ステント留置部位のフォローアップ直径が有意に低く、45日及び90日コホートの両方で3つのDES全てと比較して、BMSにおける後期管腔損失の割合が有意に高かったことが明らかになった。BP-SESは、45日及び90日の両方で、DP-EES及びBP-EESと比較して、フォローアップ直径及び後期管腔損失の観点から同等な結果を示した。
45日及び90日におけるエバンスブルー染料染色による内皮透過性の評価
【0175】
図18は、各群(BP-SES、DP-EES、BP-EES、及びBMS)における45日及び90日のEBDの代表的な全ステント画像を示す。45日留置後のEBD取り込みは、BMS(5.8%)で最も少なかったが、BPSES(38.4%)、BP-EES(40.2%)、及びDP-EES(55.1%)が続いた(図18E)。BMSは、全DESと比較して、EBD取り込みについては統計的に優れていた(すなわち、取り込みが最小であった)。3つのDESのうち、45日時点でのEBD取り込みの事後解析では、BP-SES対DP-EES(P=0.01)の間に統計学的有意性が示され、BPSESとBP-EESとの間に差は認められなかった。全体として、内腔内皮の成熟及びバリア機能は、予想通り、45日と比較して、90日での動物の全ステントにおいて比較的大きかった。90日間の時点で、EBD取り込みはBMS(4.4%)で最も少なく、BP-SES(25.2%)、BP-EES(22.9%)、DP-EES(41.1%)(図18F)よりも少なかったBMSは全てのDESと比較して統計的に有意であり、BP-SESはDP-EES(P=0.03)よりもEBD取り込みが低かったが、BP-EESとは異なっていなかった。
内皮バリアタンパク質の発現及び細胞形態の評価
【0176】
図19A~Dは、45日及び90日における各タイプのステントのp120/VE-cad二重染色の代表的な画像を示す。ステント留置された区域から、全ステント面積に対する共局在化p120/VE-cad面積の平均割合を得た。細胞境界でp120/VE-cadの共局在を示す内皮細胞(図19E~F)は、適切なバリア機能と一致するこれら2つの分子の連携なアライメントを示す。一方、p120/VE-cad共局在化なしの細胞(図19G)は、不十分なバリア機能と一致するこれら2つの分子の不適切な連携を示す。これら2つのタイプの細胞領域間の境界は、低(図19H)及び中出力(図19I)の共焦点画像上で明らかであった。45日において、EBDデータを支持して、共局在化p120/VE-cadの発現は、全てのDESにおいて比較的弱く、p120/VE-cadの発現は、BMSにおいて、3つのDES全てと比較して統計的に大きかった。全体として、p120/VE-cadの面積カバー率がBMSで最も高かった(99.5%)。逆に、DESは、p120/VE-cadのより低いパーセント面積を示し(BP-SES=79.1%、DP-EES=45.5%、及びBP-EES=36.3%)、3つの間に統計学的差異はなかった(図19K)。45日のデータと一致して、90日のデータは、全てのDES(BP-SES=84.0%、DP-EES=79.1%、及びBP-EES=84.9%)と比較して、BMSがストラット(100.0%)上のp120/VE-cad共局在化の有意に高い面積割合を維持し、一方、DES間で統計的差は認められなかったことを明らかにした(図19L)。
【0177】
膜境界付近でp120/VE-cad複合体を発現した細胞について、4種類のステントで細胞形状が異なって見えた。図19E~Fは、それぞれ紡錘及び丸石のような内皮細胞を表す。ステントタイプ間のこれらの違いを明らかにするために、我々は、前述の内皮細胞形状指数(細胞の高さを幅で割ったもの)(図19J)[Mori H,Cheng Q,Lutter C,Smith S, Guo L,KutynaM,et al.Endothelial barrier protein expression in biodegradable polymer sirolimus-eluting versus durable polymer Everolimus-eluting metallic stents.JACC Cardiovasc Interv.2017;10:2375-87.]を適用した。45日時において、BMS(3.57)の細胞形状指数が高く、BP-SES(2.69)、BP-EES(2.14)、DP-EES(1.73)が続いた(図19M)。BMSと全てのDESとの間だけでなく、BP-SES対DP-EES(P<0.01)及びBP-EES(P=0.02)においても、顕著な差異が観察された。45日と比較して90日において全ステントの指標は比較的高かったが、90日時点ではこれらのステント間の差は依然として明らかであった(BMS=5.83、BP-SES=3.34、BP-EES=2.65、DP-EES=2.20)(図19N)BMSと3つのDESとの間で統計学的有意差が観察された(全てのP<0.01)。追加的に、BP-SES対BP-EES(P=0.02)及びDP-EES(P<0.01)、及びBP-EES対DP-EES(P<0.01)において有意差があった。紡錘形状自体は、正常な接着接合部に由来する内皮細胞の健全な機能状態を示し得る。共焦点顕微鏡の結果は、45日及び90日の時点の両方において、p120/VE-cad共局在化領域において、BMS>BP-SES>BP-EES>DP-EESの順序で有意に大きい細胞形状指標を明らかにした。この知見は、BP-DES中の薬物/ポリマーPKプロファイルが内皮機能回復の経過を決定する上で重要であるという概念を支持する可能性もある。
エバンスブルー染色とp120/VE-カドヘリン共局在領域の空間分布
【0178】
内皮透過性を評価するための2つの異なる方法、EBD
【0179】
及びp120/VE-cad共局在化を空間分布の観点から比較した。画像の共同登録のための方法論を図20A~Bに記載した。18の関心領域(ROI)フィールドを各ステントの半分に適用し、各ステントから合計36のROI情報を得た。最後に、合計1656のROIを分析した(45日コホート及び90日コホートからそれぞれ648及び1008である)。フィッシャーの正確確率検定は、陽性EBD[EBD(+)]とp120/VE-cad[p120/VE-cad(-)]の陰性共局在化との有意な相関を示した(P<0.0001)。EBD(+)を内皮透過性の絶対的標準とした場合、内皮透過性診断におけるp120/VE-cad(-)の感度と特異度は、それぞれ71.7%及び96.1%であった(図21)。
【0180】
我々の分析においてEBD(+)-p120/VE-cad(+)フィールドの数が少なくなかったため(11.4%)、EBD(+)-p120/VE-cad(+)とEBD(-)-p120/VE-cad(+)フィールドの違いは慎重に調べた。図20C-Fは、EBD(+)-p120/VE-cad(+)フィールドとEBD(-)-p120/VE-cad(+)フィールドの違いの代表例を示す。EBD(+)-p120/VE-cad(+)領域(図20C~D)は、EBD(-)-p120/VE-cad(+)領域(図20E~F)と比較して、細胞膜におけるVE-cadの発現が比較的低かった。
【0181】
SEMによる内皮ステント被覆の評価
【0182】
図22A~Dは、45日及び90日における各タイプのステントのSEM画像を示す。完全なp120/VE-cad共局在化と不完全なp120/VE-cad共局在化との境界領域は、SEM及びEBDによっても確認することができる(図22E~I)。更に、p120/VE-cad共局在化を伴う紡錘及び丸石内皮細胞は、高倍率SEM画像において、滑らかな細胞表面を示す(図22J~K)。それとは反対に、p120/VE-cad共局在化を欠いた領域は、SEMによる細胞間突起部位における血小板及び白血球の凝集を明らかにした(図22L)。最後に、SEMを使用して内皮組織被覆を評価した。45日におけるステント留置された区域の全体的な内皮組織被覆の割合は、BMS(100.0%)<BP-SES(94.1%)<BP-EES(90.5%)<DP-EES(85.1%)で最大であった(図22M)。BMS対DP-EESのみが統計学的有意性を示した。ステント留置された部分の内皮組織被覆率は、45日と比較して、90日においては全てのステントでより高かった(BMS=100.0%、BP-SES=98.8%、BPEES=99.5%、DP-EES=96.8%)。BMS対DESは依然として統計的差異を示したが、DES間で統計的差異は認められなかった(図22N)。
【0183】
定義:
【0184】
単位、接頭辞、記号は、国際単位系(SI)で認められている形式で表記する。数値範囲は、範囲を定義する数値を含む。本明細書に示される開示は、本出願の様々な態様の限定ではなく、本明細書全体を参照し得る。
【0185】
冠詞「a」又は「an」は、引用又は列挙された構成要素の「1つ以上」を指す。
【0186】
「約」又は「から本質的になる」という用語は、当業者によって決定される、特定の値又は組成物について許容可能な誤差範囲内にある値又は組成物を指し、これは、値又は組成物がどのように測定又は確定されるか、すなわち測定システムの限界に部分的に依存する。例えば、「約」又は「本質的に含む」は、その技術分野における慣例に従って、1又は1を超える標準偏差内を意味し得る。代替的に、「約」又は「本質的に含む」は、最大10%(すなわち、±10%)の範囲を意味し得る。例えば、約3mgは、2.7mgと3.3mgとの間の任意の数を含み得る(10%について)。生物学的システム又はプロセスに関して、この用語は、最大1桁又は最大5倍の値を意味する場合がある。本出願及び特許請求の範囲に特定の値又は組成物が記載されている場合、別段の記載がない限り、「約」又は「本質的に含む」の意味には、その値又は組成物の許容される誤差範囲が含まれる。本明細書に記載されるように、任意の濃度範囲、日付範囲、割合範囲、比率範囲、又は整数範囲は、別段の指示がない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値及び、適切な場合、その分数(例えば、整数の10分の1及び100分の1)を含む。
【0187】
「及び/又は」という用語は、指定された2つの特徴又は構成要素のそれぞれを、もう一方の特徴又は構成要素とともに、あるいはもう一方の特徴又は構成要素なしに指す。したがって、本明細書の「A及び/又はB」などの語句で使用される「及び/又は」という用語は、A及びB、A又はB、A(単独)、及びB(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/又はC」などの語句で使用される「及び/又は」という用語は、以下の態様の各々を包含することが意図される:A、B、及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)。
【0188】
本明細書で使用される「例えば(e.g.)」及び「すなわち(i.e.)」という用語は、単に例として使用され、限定を意図するものではなく、本明細書で明示的に列挙されている項目のみを指すと解釈されるべきではない。
【0189】
「又はそれより大きい」、「少なくとも」、「それを超える」などの用語、例えば、「少なくとも1つ」という用語は、少なくとも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19 20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149若しくは150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、又は記載された値超を含むが、これらに限定されない。また、それらの間の大きな数又は分数も含まれる。「以下」という用語は、記載の値及び記載の値よりも小さい各値を含む。例えば、「100マイクロメータ以下」は、100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、84、83、82、81、80、79、78、77、76、75、74、73、72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、61、60、59、58、57、56、55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、マイクロメータ/日/%を含む。また、それらの間の任意のより小さい数又は分数も含まれる。
【0190】
本明細書全体を通して、単語「含む(comprising)」、又はその変形形態(例えば、「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」は、記載された要素、整数、若しくはステップ、又は要素、整数、若しくはステップの群の包含を意味すると理解されるが、任意の他の要素、整数、若しくはステップ、又は要素、整数、若しくはステップの群の除外を意味しないと理解されるであろう。態様が「含む(comprising)」という言葉で本明細書に記載されるときはいつも、それ以外の「からなる(consisting of)」及び/又は「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語で記載されている他の類似の態様もまた示されることが理解される。
【0191】
「治療有効量」、「治療有効投与量」などは、本発明の方法によって産生され、単独で又は別の治療剤と組み合わせて使用される場合、疾患の発症から対象を保護若しくは治療する、又は疾患症状の重症度の減少、疾患無症状期の頻度及び期間の増加、及び/又は疾患の苦しみによる障害や不具合の防止よって証明される疾患の退行を促進する、細胞(例えば、免疫細胞又は改変されたT細胞)の量を指す。治療剤が疾患の退行を促進する能力は、当業者に既知の様々な方法を使用して、例えば、臨床試験中のヒト対象において、ヒトにおける有効性を予測する動物モデルシステムにおいて、又は薬剤の活性をインビトロアッセイでアッセイすることによって、評価することができる。
【0192】
本明細書で使用される「患者」は、心疾患又は障害(例えば、動脈閉塞)を含む、疾患又は障害に罹患している任意のヒトを含む。本明細書では、対象及び患者という用語は、互換的に使用される。
【0193】
「低下する(reducing)」及び「減少する(decreasing)」という用語は、本明細書において互換的に使用され、元のものよりも少ない任意の変化を示す。「低下する(reducing)」及び「減少する(decreasing)」は、相対的な用語であり、測定前の値と測定後の値の比較が必要である。
【0194】
「動脈(artery)」又は「動脈の(arterial)」という用語の使用は、心血管動脈に限定されない。本開示のステントは、血管狭窄を含む、又は再狭窄、血栓、腫瘍成長、又は血管腫を予防するために、任意の臓器(心臓、脳、肺、腎臓など)の任意の血管疾患を治療又は予防するためのデバイスの製造に使用することができる。それらはまた、涙腺の閉塞の治療にも使用できる。
【0195】
覆われたストラットは、20マイクロメートル(um)を超える新生内膜の厚さを有するストラットとして定義される。いくつかの実施形態において、新生内膜の厚さは20~120.0um超、例えば120.1~160.0umである。好ましい実施形態において、新生内膜の厚さは、ウサギ腸骨動脈モデルにおいて、2ヶ月で、20~160、好ましくは20~150umである。いくつかの実施形態において、ヒトにおける好ましい新生内膜の厚さ(OCTによって測定される)は、3ヶ月で20~80umであり、好ましくは、ステント留置後12ヶ月時点で140~160umである。
【0196】
「ステントストラット上の80~90%新生内膜被覆」という用語は、ステント全体の全表面積の80~90%が、0マイクロメートル、好ましくは20マイクロメートル以上の厚さを有する新生内膜によって覆われることを意味する。
【0197】
「新生内膜の厚さ」という用語は、Takano M,Inami S,Jang IK,Yamamoto M,Murakami D,Seimiya K,Ohba T,Mizuno K.Evaluation by optical coherence tomography of neointimal coverage of sirolimus-eluting stent three months after implantation.Am J Cardiol.2007;99:1033-8に記載のように定義され得る。
【0198】
記載される実施形態は、全ての観点において、単に例示的であり、限定的ではないことが考慮される。したがって、本発明の範囲は、前述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の均などの意味及び範囲内にある全ての変更が、特許請求の範囲内に包含されるものとする。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図15C
図15D
図16A
図16B
図16C
図17
図18A-F】
図19A-N】
図20A-F】
図21
図22A-N】
【国際調査報告】