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特表2024-501796膜貫通タンパク質に結合する抗体、および抗体を産生する細胞を取得する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-16
(54)【発明の名称】膜貫通タンパク質に結合する抗体、および抗体を産生する細胞を取得する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240109BHJP
   C12N 5/0781 20100101ALI20240109BHJP
   A01K 67/027 20240101ALI20240109BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240109BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20240109BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240109BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240109BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
C12N15/13
C12N5/0781 ZNA
A01K67/027
C12N15/62 Z
C12Q1/04
C12P21/08
C07K16/28
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536468
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 US2021064769
(87)【国際公開番号】W WO2022140494
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/130,044
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 ガン
(72)【発明者】
【氏名】シ、 エルガン
(72)【発明者】
【氏名】リー、 ウェン-イ
(72)【発明者】
【氏名】スー、 デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ファール、 グレン
(72)【発明者】
【氏名】バブ、 ロバート
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QR48
4B063QS33
4B063QX01
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4H045AA11
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現する細胞を取得する方法、かかる細胞から抗体を生成する方法、膜貫通タンパク質およびその断片に対する抗体、ならびに抗体をコードする核酸が開示される。より詳細には、本開示は、脂質二重層膜足場タンパク質複合体の使用に基づいて膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現する抗体産生細胞を取得して、膜貫通タンパク質抗原を細胞に提示する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的の膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現する抗体産生細胞を取得する方法であって、
(a)抗体産生細胞の集団を、前記目的の膜貫通タンパク質を含む脂質二重層膜足場タンパク質複合体と接触させて、前記細胞表面上で前記目的の膜貫通タンパク質が抗体に結合することを可能にすることと、
(b)前記目的の膜貫通タンパク質に結合された細胞を収集することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記複合体が、少なくとも一つの膜足場タンパク質によって囲まれた円板状のリン脂質二重層を形成する複数の脂質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗体産生細胞の集団が、脾臓、リンパ節、末梢血、骨髄、またはそれらの組み合わせから取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体産生細胞の集団が、末梢血細胞、B細胞、形質細胞、形質細胞性骨髄腫、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体産生細胞の集団が、B細胞を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体産生細胞が、前記目的の膜貫通タンパク質に以前に免疫化された哺乳動物から取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記哺乳動物が、前記目的の膜貫通タンパク質の少なくとも一部をコードする核酸、または前記目的の膜貫通タンパク質の少なくとも一部で免疫化されている、非ヒト哺乳動物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記非ヒト哺乳動物が遺伝子操作される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記遺伝子操作された非ヒト哺乳動物が、内因性遺伝子から前記目的の膜貫通タンパク質を発現しない、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記遺伝子操作された非ヒト哺乳動物が、ヒト重鎖可変領域をコードする核酸配列、およびヒト軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記遺伝子操作された非ヒト哺乳動物がマウスである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記目的の膜貫通タンパク質がヒト膜貫通タンパク質である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記遺伝子操作された非ヒト哺乳動物が、前記膜貫通タンパク質の非ヒトホモログ、または前記膜貫通タンパク質の前記非ヒトホモログをコードする核酸で免疫化されている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(b)で収集される前記細胞は、前記ヒト膜貫通タンパク質、および前記膜貫通タンパク質の前記非ヒトホモログに結合する抗体を発現する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記遺伝子操作された非ヒト哺乳動物が、目的のキメラ膜貫通タンパク質または前記目的のキメラ膜貫通タンパク質をコードする核酸で免疫化されており、前記キメラ膜貫通タンパク質が、前記目的の膜貫通タンパク質の非ヒトホモログの一部分および前記ヒト膜貫通タンパク質の一部分を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(b)で収集される前記細胞は、前記ヒト膜貫通タンパク質上に位置するエピトープに結合する抗体を発現する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記目的の膜貫通タンパク質がキメラ膜貫通タンパク質であり、前記キメラタンパク質が、非ヒト膜貫通タンパク質の一部に操作可能に結合されたヒト膜貫通タンパク質の一部を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記遺伝子操作された非ヒト哺乳動物が、前記ヒト膜貫通タンパク質、または前記ヒト膜貫通タンパク質をコードする核酸で免疫化されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(b)で収集される前記細胞は、前記キメラ膜貫通タンパク質の前記ヒト部分に結合する抗体を発現する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記遺伝子操作された非ヒト哺乳動物が、前記膜貫通タンパク質の切断形態で免疫化されている、請求項8に記載の方法。
【請求項21】
前記遺伝子操作された非ヒト哺乳動物が、前記膜貫通タンパク質または前記膜貫通タンパク質をコードする核酸の完全長形態で免疫化されている、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記膜貫通タンパク質の前記切断形態が、前記膜貫通タンパク質の前記完全長形態のN末端ドメインまたはC末端ドメインを含有しない、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記膜貫通タンパク質の前記切断形態が細胞外ループを含み、ステップ(b)で収集される前記細胞が、前記膜貫通タンパク質の前記切断形態の前記細胞外ループ上に位置するエピトープに結合する抗体を発現する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(a)が、前記抗体産生細胞の集団を少なくとも一つのブロッキング剤と接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも一つのブロッキング剤が、前記目的の膜貫通タンパク質の一部に結合するポリペプチドである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリペプチドが、前記目的の膜貫通タンパク質のN末端ドメインまたは前記目的の膜貫通タンパク質のC末端ドメインに結合する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記膜貫通タンパク質が細胞外ループを含み、ステップ(b)で収集される前記細胞が、前記目的の膜貫通タンパク質の前記細胞外ループ上に位置するエピトープに結合する抗体を発現する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体産生細胞の集団が、前記目的の膜貫通タンパク質を含む前記脂質二重層膜足場タンパク質複合体で免疫化された哺乳動物から取得され、前記複合体が、第一の検出可能な標識をさらに含み、前記目的の膜貫通タンパク質が、第二の検出可能な標識を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも一つのブロッキング剤が、(i)前記第一の検出可能な標識に結合する第一のブロッキング剤、および(ii)前記第二の検出可能な標識に結合する第二のブロッキング剤を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも一つのブロッキング剤が、前記膜足場タンパク質に結合する第三のブロッキング剤を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記目的の膜貫通タンパク質が、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)タンパク質、テトラスパニンタンパク質、およびイオンチャネルタンパク質からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記目的の膜貫通タンパク質がGPCRタンパク質である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記目的の膜貫通タンパク質がイオンチャネルタンパク質である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記目的の膜貫通タンパク質がテトラスパニンタンパク質である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記複合体が、検出可能な標識にコンジュゲートされる少なくとも一つの膜足場タンパク質をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記目的の膜貫通タンパク質に結合された前記細胞を収集することが、
前記目的の膜貫通タンパク質への前記細胞の結合を検出することと、
前記目的の膜貫通タンパク質に結合された前記細胞を、前記目的の膜貫通タンパク質に結合されていない細胞から分離することと、および
前記結合された細胞を収集することと、を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記検出可能な標識がビオチンである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記検出が、
ステップ(b)の前記細胞をストレプトアビジン-フィコエリスリン(PE-ストレプトアビジン)とインキュベートすることと、
蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を使用して前記結合細胞を識別することと、を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記検出可能な標識が蛍光分子である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記検出が、FACSを使用して前記結合細胞を識別することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
(i)ステップ(b)で収集された細胞から、前記細胞によって発現される前記抗体の前記重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む核酸、および前記細胞によって発現される前記抗体の前記軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を、単離することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記方法が、ステップ(i)の後、
(ii)ステップ(i)において単離された、前記重鎖可変領域をコードする前記ヌクレオチド配列を含む前記核酸、および前記軽鎖可変領域をコードする前記ヌクレオチド配列を含む前記核酸を導入するように、宿主細胞をトランスフェクトすることと、ならびに
(iii)前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域を含む抗体を発現する条件下で、ステップ(ii)からの前記宿主細胞を培養することと、を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ステップ(ii)の前記宿主細胞が、前記重鎖可変領域をコードする前記ヌクレオチド配列を含む第一の発現ベクター、および前記軽鎖可変領域をコードする前記ヌクレオチド配列を含む第二の発現ベクターでトランスフェクトされる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記宿主細胞が哺乳類細胞である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記哺乳類細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項41~45のいずれか一項に記載の方法によって得られる抗体。
【請求項47】
前記抗体が、Gタンパク質共役型受容体タンパク質(GPCR)、テトラスパニンタンパク質およびイオンチャネルタンパク質からなる群から選択される目的の膜貫通タンパク質に結合する、請求項46に記載の抗体。
【請求項48】
前記目的の膜貫通タンパク質がGPCRタンパク質である、請求項47に記載の抗体。
【請求項49】
前記目的の膜貫通タンパク質がイオンチャネルタンパク質である、請求項47に記載の抗体。
【請求項50】
前記目的の膜貫通タンパク質がテトラスパニンタンパク質である、請求項47に記載の抗体。
【請求項51】
前記抗体が、細胞中の前記目的の膜貫通タンパク質の機能を調節する、請求項46に記載の抗体。
【請求項52】
請求項1~45のいずれか一項に記載の方法によって作製された哺乳類宿主細胞であって、前記宿主細胞が、前記目的の膜貫通タンパク質に結合する抗体またはその断片を発現する、哺乳類宿主細胞。
【請求項53】
前記細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項52に記載の哺乳類宿主細胞。
【請求項54】
前記目的の膜貫通タンパク質を含む前記脂質二重層膜足場タンパク質複合体が、一つ以上の洗剤の存在下で提供される脂質、膜足場タンパク質、および前記目的の膜貫通タンパク質を混合し、前記一つ以上の洗剤を除去して、前記目的の膜貫通タンパク質を含む前記複合体の形成を誘発することによって形成される、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月23日出願の米国仮特許出願第63/130,044号の優先権の利益を主張するものであり、当該仮特許出願の内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
配列表の参照による組み込み
【0002】
2021年12月7日に作製され、EFS-Webを介して米国特許商標庁に提出された36526_10465WO01_SequenceListing.txtという名称の30KBのASCIIテキストファイルの形態をとる配列表が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は概して、膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現する細胞、それを生成するための方法、膜貫通タンパク質およびその断片に対する抗体、および抗体をコードする核酸に関する。より詳細には、本開示は、脂質二重層膜足場タンパク質複合体の使用に基づいて膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現する抗体産生細胞を取得して、膜貫通タンパク質抗原を細胞に提示する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)およびイオンチャネルなどの膜貫通タンパク質は、FDAが承認したすべての低分子医薬品のほぼ半数の標的であるが、これまでのところ、治療に承認されている抗体は非常に少ない。Santoら、Nat.Rev.Drug Disc.16:19(2017)を参照されたい。典型的には、抗体または抗体産生細胞のスクリーニングに利用される方法は、非効率であるか、または膜貫通タンパク質に結合する抗体を取得することができない。例えば、エクソソーム、ウイルス様粒子、およびプロテオリポソームなどの担体へのマルチスパン(multispan)膜貫通タンパク質の単離およびパッケージングは、十分な量の生物学的に活性なタンパク質または立体構造的に正確な膜貫通タンパク質が存在するかどうかに関する不確実性を残す。さらに、GPCR発現細胞は、試薬のスクリーニングとしてあまり成功しておらず、膜貫通の膜貫通タンパク質に由来する小さなペプチドは、立体構造のコンテキストがないため、関連する抗体を得ることにほとんど成功していない。そのため、膜貫通タンパク質に対する抗体を取得および生成するための新しい方法が必要である。
【発明の概要】
【0005】
本明細書において、脂質二重層膜足場タンパク質複合体を利用して、膜貫通タンパク質抗原を抗体に提示する膜貫通タンパク質に対する抗体を取得する方法が開示される。本方法は、目的の膜貫通タンパク質、ならびに天然細胞の膜に共通して存在する脂質および膜足場タンパク質を含む複合体を利用して、その膜貫通タンパク質を抗体への天然の立体構造に提示する。このように、脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、例えば、細胞外ドメインまたはその一部など、自然界でアクセス可能な膜貫通タンパク質上のエピトープに結合する抗体(または抗体を発現する細胞)の特定のサブセットを識別し、抗体(または抗体を発現する細胞)集団から収集するために、本開示の方法に使用される。したがって、本方法は、特定の抗体が目的の膜貫通タンパク質の所望の部分を認識するかどうかを確認するために、部位特異的変異誘発およびその他の周知の技術によるエピトープ特異的抗体の時間のかかるスクリーニング、識別および選択の必要性を迂回する。
【0006】
一態様では、目的の膜貫通タンパク質またはその一部を提示する脂質二重層膜足場タンパク質複合体に、抗体産生細胞の集団を接触させることを含む、目的の膜貫通タンパク質に対する抗体または抗体を発現する細胞集団を取得する方法が提供される。
【0007】
いくつかの実施形態では、方法は、抗体産生細胞の集団を、目的の膜貫通タンパク質またはその一部を包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体に接触させて、複合体によって提示される膜貫通タンパク質抗原と、細胞の表面上の抗体との間の結合を可能にし、結合抗体産生細胞を収集することを含む。
【0008】
一部の実施形態では、抗体産生細胞集団は、一つの特定のタイプの組織、臓器、または細胞から構成された細胞の均質集団である。他の実施形態では、抗体産生細胞集団は、二つ以上のタイプの組織、臓器、または細胞から構成された細胞の不均一な集団である。特定の実施形態では、抗体産生細胞の集団は、脾臓、リンパ節、骨髄、または他の臓器の一つ以上に由来する組織由来細胞を含む。いくつかの実施形態では、抗体産生細胞の集団は、リンパ球を含む。特定の実施形態では、抗体産生細胞の集団は、血液細胞を含む。特定の実施形態では、抗体産生細胞の集団は、末梢血細胞、B細胞、形質細胞、形質細胞性骨髄腫、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、抗体産生細胞の集団は、B細胞集団である。一実施形態では、抗体産生細胞の集団は、メモリーB細胞からなる。一実施形態では、抗体産生細胞の集団は、例えば、ハイブリドーマなどの組み換え細胞を含む。
【0009】
一部の実施形態では、方法は、動物から抗体産生細胞の集団を得ることを含む。特定の実施形態では、抗体産生細胞の集団は、目的の膜貫通タンパク質またはそれをコードする核酸免疫原を用いた免疫化後に、目的の膜貫通タンパク質に対する抗体を産生する動物から取得される。特定の実施形態では、動物または免疫化動物は、哺乳動物である。一部の実施形態では、哺乳動物は、マウス、ラット、ヤギ、ヒト、ハムスター、ブタ、サル、またはモルモットである。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトではない。特定の実施形態では、非ヒト哺乳動物は、マウス、ラット、またはヤギである。特定の実施形態では、哺乳動物は、マウスである。方法の別の実施形態では、哺乳動物は、例えば、免疫原に曝露されたヒトなどのヒトである。
【0010】
一部の例では、動物は免疫化される。特定の実施形態では、免疫された動物は、遺伝子操作される。例えば、動物が内因性遺伝子座位から目的の膜貫通タンパク質を発現しないように、動物を遺伝子操作することができる。特定の実施形態では、遺伝子操作された動物は、例えば、マウス、ヤギ、またはラットなどの非ヒト哺乳動物であり、当該動物は、ヒトイムノグロブリン重鎖(IgH)およびヒトイムノグロブリン軽鎖(IgL)可変領域をコードする核酸配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子操作された動物は、ヒトイムノグロブリン重鎖およびヒトイムノグロブリン軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含み、目的の膜貫通タンパク質をコードする内因性遺伝子も欠いている。特定の実施形態では、免疫化された遺伝子操作された動物は、例えば、ヒト化IgH座位および/またはヒト化Igκ軽鎖座位を含むVELOCIMMUNE(登録商標)マウスなどのマウスまたはラットである。一部の実施形態では、免疫化された遺伝子操作された動物は、ヒト化IgH座位とヒト化Igκ軽鎖座位とを含むマウスであり、このマウスは対象の膜貫通タンパク質をコードする内因性マウス遺伝子を欠いている。一実施形態では、ヒトイムノグロブリン重鎖およびイムノグロブリンラムダ軽鎖(Igλ)可変領域をコードするDNAを含む遺伝子操作されたマウスである。特定の実施形態では、遺伝子操作されたマウスは、ヒトイムノグロブリン重鎖およびイムノグロブリンラムダ軽鎖(Igλ)可変領域をコードするDNAを含み、また目的の膜貫通タンパク質をコードする内因性マウス遺伝子を欠いている。
【0011】
一部の実施形態では、抗体産生細胞は、目的の免疫原の膜貫通タンパク質で免疫化された動物から取得される。特定の実施形態では、動物は、目的の膜貫通タンパク質の少なくとも一部をコードする核酸、または目的の膜貫通タンパク質の少なくとも一部で免疫化されている。一部の実施形態では、動物は、目的の完全長膜貫通タンパク質をコードする核酸で免疫化されている。他の実施形態では、動物は、目的の膜貫通タンパク質をコードする核酸で免疫化されている。特定の実施形態では、核酸は、目的の完全長膜貫通タンパク質のアミノ末端部分および/またはカルボキシ末端部分をコードするものではない。他の実施形態では、動物は、例えばプラスミド、発現ベクター、ウイルス様粒子(VLP)、細胞、エクソソーム、およびリポソームなどの核酸を発現することができる担体に包含される目的の膜貫通タンパク質またはその一部をコードする核酸で免疫化されている。一部の実施形態では、動物は、目的の膜貫通タンパク質またはその一部で免疫化されている。特定の実施形態では、動物は、目的の完全長膜貫通タンパク質で免疫化されている。特定の実施形態では、目的の免疫原の膜貫通タンパク質は切断され、目的の完全長膜貫通タンパク質のアミノ末端部分および/またはカルボキシ末端部分を含まない。特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質または核酸免疫原は、標識、マーカーまたは特徴などの一つ以上の検出可能な要素を含むように改変される。一部の実施形態では、免疫原は検出可能な標識を含む。特定の実施形態では、検出可能な標識は、FLAG-タグ、ヒスチジンタグ(His-タグ)、Avi-タグ、BirA-タグ、またはそれらの組み合わせである。一部の実施形態では、目的の免疫原の膜貫通タンパク質は、FLAGタグおよびHisタグを有する。特定の実施形態では、検出可能な標識は、免疫原のアミノ末端またはカルボキシ末端に位置する。特定の実施形態では、動物は、脂質二重層膜足場タンパク質複合体に包含される目的の膜貫通タンパク質またはその一部で免疫化されている。
【0012】
特定の実施形態では、動物は、目的の膜貫通タンパク質の非ヒトホモログの一部に操作可能に連結された目的のヒト膜貫通タンパク質の一部分を含む、目的のキメラ膜貫通タンパク質をコードするヌクレオチド配列で免疫化される。非ヒトホモログは、例えば、ヒト、チンパンジー、アカゲザル、ウサギ、ウマ、ヒツジ、ラット、マウス、イヌ、ニワトリ、またはヤギ由来のものであってもよい。特定の実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、例えば、Hisタグ、FLAGタグ、Aviタグ、またはBir-Aタグなどの検出可能な要素をコードするヌクレオチド配列も含む。他の実施形態では、動物は、目的のキメラ膜貫通タンパク質またはその一部で免疫化され、目的の膜貫通タンパク質の非ヒトホモログの一部に操作可能に連結された目的のヒト膜貫通タンパク質の一部分を含む。一実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、例えば、Hisタグ、FLAGタグ、Aviタグ、またはBir-Aタグなどの検出可能な要素を含む。
【0013】
一部の例では、動物は、例えば、タンパク質またはペプチド、DNAまたはRNAなどの核酸配列、修飾タンパク質またはコードDNA、VLPおよび目的の膜貫通タンパク質またはその一部を包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体などの二つ以上の免疫原で免疫化される。
【0014】
方法は、目的の膜貫通タンパク質またはその一部を包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体に、抗体産生細胞の集団を接触させて、目的の膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現する抗体産生細胞集団を取得することを含む。
【0015】
脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、少なくとも一つの膜足場タンパク質(MSP)および脂質を含む。一部の実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、少なくとも一つのMSPおよび複数の脂質を含む。特定の実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、少なくとも二つまたは厳密には二つのMSPを含む。他の実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、三つ以上のMSPを含む。一部の例では、脂質二重層膜足場タンパク質は、例えばMSP1E3D1、MSP1D1、MSP2N3、およびMSP2N2などの少なくとも一つの膜足場タンパク質を含む。一実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、二つのMSP1E3D1タンパク質を含む。一部の実施形態では、MSPは同じである。他の実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中のMSPは、異なる。
【0016】
一部の実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、標識、マーカーまたは特徴などの検出可能な要素を含む少なくとも一つの標識されたMSPを含有する。特定の実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、二つの標識されたMSPおよび脂質二重層を含有する。一部の実施形態では、MSPタンパク質は、フルオロフォアなどの検出可能な標識を含む。特定の実施形態では、検出可能な要素は、複合体の一つ以上のMSP上に位置するBirAタグまたはAviタグである。例示的な実施形態では、一つ以上のMSPは、MSPを化学的にビオチン化することによって、またはAvi-タグをMSPコード配列に遺伝子導入することによって、ビオチン化される。
【0017】
脂質二重層膜足場タンパク質複合体はまた、スフィンゴ脂質および/またはリン脂質などの複数の脂質を含む。複合体の脂質二重層は、単一のタイプの脂質または複数のタイプの脂質から構成され得る。いくつかの実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、膜足場タンパク質の周りの円板の形状の「円板状」リン脂質二重層を形成する脂質を含む。特定の実施形態では、脂質二重層は、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、およびそれらの誘導体のうちの一つ以上からなる。特定の実施形態では、脂質二重層は、1-ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、1-パルミトイル2-オレオイルホスファチジルコリン(POPC)、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルコリン(SOPC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびホスファチジルセリン(PS)、ならびにホスファチジルリノシトール(PI)またはその組み合わせからなる。例示的な実施形態では、脂質二重層は、複数のPOPCリン脂質を含む。
【0018】
本方法で使用する脂質二重層膜足場タンパク質複合体はまた、抗体産生細胞によって生成された抗体に結合することができる抗原として、複合体によって細胞集団に提示される、少なくとも一つの目的の膜貫通タンパク質またはその一部を含む。複合体によって提示される目的の膜貫通タンパク質は、少なくとも一つの細胞外ドメインおよび少なくとも一つの膜貫通ドメインを有する天然型タンパク質であり得る。一部の実施形態では、複合体によって提示される目的の膜貫通タンパク質は、ヒトタンパク質である。他の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、マウス、ラット、霊長類、ハムスター、細菌、ウイルスタンパク質などの非ヒトタンパク質である。特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、その天然型から改変される。例示的な改変された目的の膜貫通タンパク質は、その天然アミノ酸配列に対して、アミノ酸置換、アミノ酸欠失、アミノ酸挿入の一つ以上の変化を含み得る。一実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、例えば、完全長タンパク質のN末端ドメインおよび/またはC末端ドメインなど、膜貫通タンパク質の一部分を欠失させる、すなわち「切断する」ように改変される。一部の実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体に組み込まれる目的の膜貫通タンパク質は、アミノ末端、一つ以上の細胞外ループドメイン、一つ以上の膜貫通ドメイン、一つ以上の細胞内ドメイン、C末端、またはそれらの組み合わせに安定化変異を含む。一実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、リガンド活性化タンパク質であり、それにより、目的の膜貫通タンパク質は、リガンドの存在下または非存在下(すなわち、活性状態および不活性状態を有する)で立体構造を変化させる。別の実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体に組み込まれた目的の膜貫通タンパク質は、キメラタンパク質であり、目的の膜貫通タンパク質の非ヒトホモログの一部に操作可能に連結された目的のヒト膜貫通タンパク質の一部を含む。一実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、例えば、Hisタグ、FLAGタグ、Aviタグ、Bir-Aタグまたはその組み合わせなどの検出可能な要素を含む。特定の実施形態では、複合体によって提示される対象の膜貫通タンパク質は、HisタグおよびFLAGタグを含む。
【0019】
特定の例では、目的の膜貫通タンパク質は、GPCRタンパク質、テトラスパニンタンパク質、またはイオンチャネルタンパク質である。一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、例えば、CCR5、ADORA2A、ADRB3、C3AR1、ADRA2A、GLP1R、CCR4、CCR8およびCXCR4などのGPCRタンパク質である。一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、CCR5またはその一部分である。一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、ADRA2Aまたはその一部分である。特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、ADORA2Aまたはその一部分である。一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、C3AR1またはその一部分である。
【0020】
一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、例えば、TSPAN 1からTSPAN19、TSPAN21、TSPAN23、TSPAN 31、TSPAN 32、TSPAN 33、UPK1B、PRPH2、CD151、CD53、CD37、CD82、CD63、CD81、CD9、CD82、CD63、CLND6およびCLND9などのテトラスパニンである。一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、CD63またはその一部分である。他の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、例えば、電位依存性イオンチャネルタンパク質などのイオンチャネルタンパク質である。特定の実施形態では、電位依存性イオンチャネルタンパク質は、電位依存性カルシウムチャネルまたは電位依存性カリウムチャネルタンパク質である。一部の実施形態では、イオンチャネルタンパク質は、カルシウム活性化カリウムチャネルタンパク質、ナトリウムチャネルタンパク質、カルシウムチャネルタンパク質、または塩化物チャネルである。本方法の特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、例えば、BKCa、MaxiK、Sk、NaV1、CACNG1、CAV、CIC、または一過性受容器電位チャネル(TRP)などのイオンチャネルタンパク質である。一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、NaV1またはその一部分である。一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、NaV1.7またはその一部分である。一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、CACNG1またはその一部分である。
【0021】
本方法の特定の実施形態では、複合体によって提示される目的の膜貫通タンパク質は、抗体産生細胞の細胞表面上の抗体に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、エピトープ(目的の膜貫通タンパク質上に存在する結合ドメイン)に結合し、目的の膜貫通タンパク質の細胞外ドメインなど、目的の膜貫通タンパク質の特定のドメインに位置する。特定の実施形態では、抗体は、目的の膜貫通タンパク質のN末端ドメインの細胞外部分に位置するエピトープに結合する。特定の実施形態では、抗体は、目的の膜貫通タンパク質の細胞外ループまたは目的の膜貫通タンパク質のC末端ドメインの細胞外部分に位置するエピトープに結合する。特定の実施形態では、抗体は、目的の膜貫通タンパク質のC末端ドメインに位置するエピトープに結合する。一部の実施形態では、抗体は、目的の膜貫通タンパク質の細胞外ループに位置するエピトープに結合する。一部の実施形態では、抗体は、目的の膜貫通タンパク質の細胞内ドメインに位置するエピトープに結合する。
【0022】
方法はまた、抗体産生細胞の集団を、目的の細胞表面タンパク質またはバイオマーカーに結合する検出可能な要素に接触させることを含み得る。例えば、免疫された動物から得られた抗体産生細胞の異種集団は、例えば、IgGなどのB細胞表面タンパク質に結合する蛍光標識された抗体と接触してもよい。次いで、抗体とB細胞との間の結合を検出し、結合された細胞を集団から単離することによって、抗体産生細胞B細胞のサブセットを集団から取得することができる。特定の実施形態では、抗体産生細胞の集団は、B細胞表面タンパク質に結合する蛍光標識された抗体と、細胞が目的の膜貫通タンパク質を含有する脂質二重層膜足場タンパク質複合体と接触するのと同時に接触することができ、または細胞を異なる時間に接触させることができる。
【0023】
特定の実施形態では、方法はまた、抗体産生細胞の集団をブロッキング剤と接触させることを含み得る。例えば、抗体産生細胞の集団は、対象の膜貫通タンパク質の一部、MSPタンパク質の一部、またはHisタグもしくはFLAGタグなどの検出可能なマーカーを認識または結合するペプチドまたは化合物などの分子と接触させることができる。こうした実施形態では、抗体産生細胞は、ブロッキング剤と、抗体産生細胞によって産生された抗体との間の結合を可能にするために、一つ以上のブロッキング剤とインキュベートされ、抗体産生細胞は、ブロッキング剤上に位置するエピトープに結合する。
【0024】
方法はまた、非結合材料または細胞を結合細胞から除去する期間、抗体産生細胞などの細胞集団を洗浄することを含み得る。
【0025】
抗体産生細胞によって生成された抗体と、脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示される目的の膜貫通タンパク質上に存在する結合ドメイン(エピトープ)との間の結合を検出することができ、膜貫通タンパク質に結合された抗体産生細胞を収集することができる。例えば、一部の実施形態では、結合は、目的の膜貫通タンパク質の立体構造の変化、細胞中の目的の膜貫通タンパク質の活性化または非活性化、または一つ以上の検出可能なマーカーの使用によって検出される。特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質抗原に結合された抗体を提示する抗体産生細胞は、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)などの単一細胞単離のためのハイスループット技術を使用して、集団中の他の抗体産生細胞から検出および単離され得る。一実施形態では、FACSは、脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示される目的の脂質の膜貫通タンパク質に結合した単一抗体産生細胞を識別および単離するために、そこに含まれた目的の複合体または膜貫通タンパク質に貼り付けられた検出可能な標識によって放射されるシグナルを検出することによって使用される。特定の実施形態では、シグナルは、ビオチン/ストレプトアビジン-PE複合体または蛍光分子のうちの、一つ以上の検出可能な標識によって放射される。
【0026】
方法はまた、抗体産生細胞から抗体または抗体をコードする核酸を取得または単離することを含み得る。
【0027】
特定の実施形態では、抗体(例えば、遺伝子)またはその一部をコードする核酸は、抗体産生細胞から単離される。一部の実施形態では、核酸は、抗体の可変ドメインをコードする。特定の実施形態では、核酸は、抗体重鎖またはその断片をコードする。他の実施形態では、核酸は、抗体軽鎖またはその断片をコードする。特定の例では、抗体産生細胞から単離された核酸は、完全長抗体をコードする。一部の実施形態では、本方法は、抗体産生細胞、細胞によって発現される抗体の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む核酸、および細胞によって発現される抗体の軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む核酸から単離することを含む。
【0028】
本方法の特定の実施形態では、抗体をコードする核酸は、宿主細胞に発現される。いくつかの実施形態では、核酸を含む宿主細胞は、完全長抗体を発現する条件下で培養され、抗体はその後、さらなる使用のために産生および単離され得る。特定の実施形態では、宿主細胞は、抗体の可変ドメインをコードする核酸を含み、細胞は、可変ドメインを発現する条件下で培養される。一部の実施形態では、宿主細胞は、抗体の可変重鎖(V)ドメインをコードする核酸を含み、細胞は、Vドメインを発現する条件下で培養される。一部の実施形態では、宿主細胞は、抗体の可変軽鎖(V)ドメインをコードする核酸を含み、細胞は、Vドメインを発現する条件下で培養される。特定の実施形態では、宿主細胞は、抗体のVドメインをコードする核酸と、抗体のVドメインをコードする核酸とを含み、細胞は、VドメインおよびVドメインを発現する条件下で培養される。
【0029】
したがって、本開示の一態様では、本開示の方法を使用して単離された目的の膜貫通タンパク質に特異的な抗体をコードする核酸分子を含む細胞が提供される。一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質に特異的な抗体の可変重鎖(V)ドメインをコードする核酸を含む細胞が提供される。一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質に特異的な抗体の可変軽鎖(V)ドメインをコードする核酸を含む細胞が提供される。一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質に特異的な抗体の可変重鎖(V)ドメインをコードする核酸および抗体の可変軽鎖(V)ドメインをコードする核酸を含む細胞が提供される。いくつかの実施形態では、細胞は、真核細胞である。特定の実施形態では、細胞は哺乳類細胞である。一実施形態では、細胞は、以下の細胞タイプのうちのいずれか一つ以上であってもよい:チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えば、CHO K1、DXB-11 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、腎臓(例えば、HEK293、293 EBNA、MSR 293、MDCK、HaK、BHK21)、HeLa、HepG2、WI38、MRC 5、Colo25、HB 8065、HL-60、Jurkat、Daudi、A431(上皮性)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0およびMMT細胞および腫瘍細胞。特定の実施形態では、細胞は、CHO細胞である。
【0030】
本開示の方法のこれらおよび他の目的、特徴および利点は、添付図面と併せて取り込まれた方法の様々な態様の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
図面の簡単な説明および表
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1A~1Bは、脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示される目的の膜貫通タンパク質が、目的の膜貫通タンパク質を認識する抗体に特異的に結合し、開示された方法を使用してインビトロで検出可能であることを実証する。少なくとも二つの膜足場タンパク質を有する脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、それぞれ検出可能なBir-A標識を含有し、目的の第一の例示的な膜貫通タンパク質(GPCR1との複合体)を含有し、GPCR1(陽性対照AB)と、GPCRタンパク質と結合しないアイソタイプ対照mab(陰性対照AB)に結合することが知られている例示的な抗体に結合する能力について、目的の膜貫通タンパク質(空の複合体)を含まない脂質二重層膜足場タンパク質複合体の制御と比較した。(A)ヒストグラムは、脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示される目的の膜貫通タンパク質が、陽性対照抗体(0.6nm)と特異的に結合するが、抗GPCR1抗体と空の複合体(-0.05nm)、陰性対照抗体とGPCR1膜貫通タンパク質を含む脂質二重層膜足場タンパク質複合体(-0.06nm)、または陰性対照抗体と空の複合体(-0.03nm)とでは特異的に結合しないことを示す。(B)目的の膜貫通タンパク質(GPCR1との複合体)を提示するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体を検出し、目的の膜貫通タンパク質を含有しないビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体(空の複合体)と分離する能力は、膜貫通タンパク質のある場合とない場合のビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体をそれに繋ぎ止められたストレプトアビジンを有するプレートに提供し、その後GPCR1に結合することが知られている抗体(陽性対照AB)または陰性対照抗体とインキュベートすることによって、分析された。ヒストグラムは、脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示される目的の膜貫通タンパク質が、陽性対照抗体に特異的に結合するが、陰性対照抗体には結合しないことを示す。
【0032】
図2-1】図2A~2Fは、フローサイトメトリーによる目的の例示的な膜貫通タンパク質に特異的な抗体を発現する抗体産生B細胞の検出および分離を示す。脾細胞を採取し、目的の第一の膜貫通タンパク質(GPCR1、B)、目的の第二の膜貫通タンパク質(GPCR2、D)、または目的の第三の膜貫通タンパク質(GPCR3、F)をコードするDNAの注射により免疫化されなかった対照マウス(A、C、E)および遺伝子操作されたマウスから単離した。目的の例示的な膜貫通タンパク質(抗原結合細胞)の各々に特異的な抗体を発現するB細胞(表面IgG陽性細胞)の集団を検出し、脾細胞をB細胞マーカーに対する蛍光標識で染色し(すなわち、抗IgG)、細胞集団を、目的の例示的な膜貫通タンパク質の一つを提示するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体と接触させることにより、FACSを使用して収集した。(A)100万個の脾細胞中の2個のB細胞のみが、示す(長方形)ビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示された目的の第一の膜貫通タンパク質に非特異的に結合した。(B)目的の第一の例示的なGPCR膜貫通タンパク質(GPCR1)に特異的な抗体を発現する100万個のB細胞中の11個は、本方法を使用して検出された(長方形)。(C)対象マウスから取得した100万個の脾細胞中の2個のB細胞のみが、示す(長方形)ビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示された目的の第二の膜貫通タンパク質に非特異的に結合した。(D)目的の第二の例示的なGPCR膜貫通タンパク質(GPCR2)に特異的な抗体を発現する100万個のB細胞中の78個は、本方法を使用して検出された(長方形)。(E)示す(長方形)ビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示された目的の第三の膜貫通タンパク質に非特異的に結合された11個のB細胞のみが、対照マウスからの100万個の脾細胞から取得された。(F)目的の第三の例示的なGPCR膜貫通タンパク質(GPCR3)に特異的な抗体を発現する100万個のB細胞中の65個は、本方法を使用して検出された(長方形)。
図2-2】図2A~2Fは、フローサイトメトリーによる目的の例示的な膜貫通タンパク質に特異的な抗体を発現する抗体産生B細胞の検出および分離を示す。脾細胞を採取し、目的の第一の膜貫通タンパク質(GPCR1、B)、目的の第二の膜貫通タンパク質(GPCR2、D)、または目的の第三の膜貫通タンパク質(GPCR3、F)をコードするDNAの注射により免疫化されなかった対照マウス(A、C、E)および遺伝子操作されたマウスから単離した。目的の例示的な膜貫通タンパク質(抗原結合細胞)の各々に特異的な抗体を発現するB細胞(表面IgG陽性細胞)の集団を検出し、脾細胞をB細胞マーカーに対する蛍光標識で染色し(すなわち、抗IgG)、細胞集団を、目的の例示的な膜貫通タンパク質の一つを提示するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体と接触させることにより、FACSを使用して収集した。(A)100万個の脾細胞中の2個のB細胞のみが、示す(長方形)ビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示された目的の第一の膜貫通タンパク質に非特異的に結合した。(B)目的の第一の例示的なGPCR膜貫通タンパク質(GPCR1)に特異的な抗体を発現する100万個のB細胞中の11個は、本方法を使用して検出された(長方形)。(C)対象マウスから取得した100万個の脾細胞中の2個のB細胞のみが、示す(長方形)ビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示された目的の第二の膜貫通タンパク質に非特異的に結合した。(D)目的の第二の例示的なGPCR膜貫通タンパク質(GPCR2)に特異的な抗体を発現する100万個のB細胞中の78個は、本方法を使用して検出された(長方形)。(E)示す(長方形)ビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示された目的の第三の膜貫通タンパク質に非特異的に結合された11個のB細胞のみが、対照マウスからの100万個の脾細胞から取得された。(F)目的の第三の例示的なGPCR膜貫通タンパク質(GPCR3)に特異的な抗体を発現する100万個のB細胞中の65個は、本方法を使用して検出された(長方形)。
図2-3】図2A~2Fは、フローサイトメトリーによる目的の例示的な膜貫通タンパク質に特異的な抗体を発現する抗体産生B細胞の検出および分離を示す。脾細胞を採取し、目的の第一の膜貫通タンパク質(GPCR1、B)、目的の第二の膜貫通タンパク質(GPCR2、D)、または目的の第三の膜貫通タンパク質(GPCR3、F)をコードするDNAの注射により免疫化されなかった対照マウス(A、C、E)および遺伝子操作されたマウスから単離した。目的の例示的な膜貫通タンパク質(抗原結合細胞)の各々に特異的な抗体を発現するB細胞(表面IgG陽性細胞)の集団を検出し、脾細胞をB細胞マーカーに対する蛍光標識で染色し(すなわち、抗IgG)、細胞集団を、目的の例示的な膜貫通タンパク質の一つを提示するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体と接触させることにより、FACSを使用して収集した。(A)100万個の脾細胞中の2個のB細胞のみが、示す(長方形)ビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示された目的の第一の膜貫通タンパク質に非特異的に結合した。(B)目的の第一の例示的なGPCR膜貫通タンパク質(GPCR1)に特異的な抗体を発現する100万個のB細胞中の11個は、本方法を使用して検出された(長方形)。(C)対象マウスから取得した100万個の脾細胞中の2個のB細胞のみが、示す(長方形)ビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示された目的の第二の膜貫通タンパク質に非特異的に結合した。(D)目的の第二の例示的なGPCR膜貫通タンパク質(GPCR2)に特異的な抗体を発現する100万個のB細胞中の78個は、本方法を使用して検出された(長方形)。(E)示す(長方形)ビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示された目的の第三の膜貫通タンパク質に非特異的に結合された11個のB細胞のみが、対照マウスからの100万個の脾細胞から取得された。(F)目的の第三の例示的なGPCR膜貫通タンパク質(GPCR3)に特異的な抗体を発現する100万個のB細胞中の65個は、本方法を使用して検出された(長方形)。
【0033】
図3図3は、ビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体を使用して抗体産生細胞から単離されて、膜貫通タンパク質抗原を提示する抗体が、使用される免疫原の種類に依存せずに、目的の第二の例示的なGPCR膜貫通タンパク質に特異的に結合することを示す。抗体産生細胞は、目的の膜貫通タンパク質および抗体を提示するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体を使用して、膜貫通タンパク質(DNA)をコードするDNA(DNA)または精製された目的の膜貫通タンパク質をコードするDNAのいずれかで免疫化された遺伝子操作されたマウスから取得され、スクリーニングのために生成された。目的の抗原の完全長膜貫通タンパク質は細胞(TMB過剰発現)に発現し、抗原発現細胞を、TMB(親細胞)のいずれかをコードするDNAでトランスフェクトされなかった対照細胞と比較した。次いで、細胞を抗体とインキュベートして、目的の例示的な膜貫通タンパク質に特異的に結合する抗体を識別した。破線上の抗体は、目的の膜貫通タンパク質に結合することができた。対照的に、破線下の抗体は、陽性(正方形)および陰性(三角形)対照抗体との比較によって示されるように、弱い結合物質であるか、または目的の膜貫通タンパク質に結合することができなかった。
【0034】
図4図4は、本開示の方法を使用して抗体産生細胞から単離された抗体を示し、この抗体は、スクリーニングのために発現され、細胞表面上に発現された目的の抗原の膜貫通タンパク質に結合した。抗体産生細胞は、目的の抗原の膜貫通タンパク質のn末端を切断した形態を示すビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体を使用して、免疫化され、遺伝子操作されたマウスから取得され、抗体がスクリーニングのために生成された。目的の抗原の膜貫通タンパク質の切断された形態が細胞に発現し(過剰発現した切断されたTMB)、または目的の抗原の膜貫通タンパク質の完全長形態が細胞に発現し(過剰発現した完全長TMB)、細胞が抗体とインキュベートされて、目的の例示的な膜貫通タンパク質の細胞外ループドメイン(箱形)に配置されたエピトープに特異的に結合する抗体を識別した場合、抗原発現細胞を、切断されたTMB抗原または完全長TMB(親細胞)のいずれかをコードするDNAでトランスフェクトされた対象細胞と比較した。
【発明を実施するための形態】
【0035】
表1:免疫されたマウスからの様々な膜貫通タンパク質に対して細胞表面抗体を発現する細胞からの抗体の単離。内因性遺伝子から目的の膜貫通タンパク質の発現を防ぐように遺伝子操作されたマウス(抗原を含まない遺伝子改変マウス)または内因性遺伝子から目的の膜貫通タンパク質を発現する遺伝子操作されたマウス(遺伝子改変マウス)を、目的の膜貫通タンパク質をコードするDNA(DNA)、膜貫通タンパク質の改変形態をコードするDNA(改変DNA)、精製された膜貫通タンパク質(タンパク質)、目的の膜貫通タンパク質を包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体(抗原を含む複合体)またはその組み合わせで免疫化した。本明細書に開示される選別方法(抗原を有する細胞選別および複合体)を使用して収集された抗体産生細胞および抗体を、細胞から単離し、標準的なハイブリドーマ技術(ハイブリドーマ)を使用して得られた細胞から単離された抗体と比較した。分析された膜貫通タンパク質それぞれについて、目的の膜貫通タンパク質を提示する脂質二重層膜足場タンパク質複合体で細胞を選別することによって抗体産生から得られ、標準的なハイブリドーマ技術よりも、目的の膜貫通タンパク質に結合する抗体の割合が高かった。
【0036】
表2:目的の膜貫通タンパク質に特異的に結合する抗体を発現する抗体産生細胞を取得する能力について細胞選別戦略の比較。目的の例示的な膜貫通タンパク質をコードする内因性マウス遺伝子を有する(VI)、または有しない(VI-KO)遺伝子操作されたマウス、すなわちGPCR1またはイオンチャネル2を、以下の免疫原の一つ以上の注射により免疫化した:目的の膜貫通タンパク質をコードするDNA(DNA)、精製された膜貫通タンパク質(タンパク質)、目的の膜貫通タンパク質を発現することができるウイルス様粒子(VLP)、またはそれらの組み合わせ(VLPおよびDNA)。次いで、免疫化されたマウスから得られたB細胞を、膜貫通タンパク質を提示するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体(TMBを含む複合体)、VLPまたは精製された膜貫通タンパク質(タンパク質)のソーティング剤の一つを使用して選別した。次いで、ソーティング剤に結合した抗体を産生した細胞を収集し、比較のために各細胞から抗体を生成した。
【0037】
表3:各マウスから取得した細胞を、目的の膜貫通タンパク質を提示したビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体(TMBを含む複合体)を使用して選別した場合の、目的のヒト膜貫通タンパク質をコードするDNA(DNA)または精製されたヒト膜貫通タンパク質(タンパク質)のいずれかで免疫化した遺伝子操作されたマウスから取得した抗体産生細胞から生成された抗体の比較。このデータは、5つの代表的な免疫キャンペーンの結果を提示した。
【0038】
表4:抗体産生細胞の単離、および目的の二つの異なる例示的な膜貫通タンパク質(VI-KO)のマウスホモログを発現しない遺伝子改変マウスからの抗体の生成、目的の膜貫通タンパク質のマウスホモログ(マウスTMB)および目的の膜貫通タンパク質のヒトホモログに結合する交差反応性抗体を得るためにビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体を使用することができることを示す異なる免疫化戦略の比較。提供されたデータは、TMB1に対する四つの代表的な免疫キャンペーンと、TMB2に対する四つの代表的な免疫キャンペーンとの組み合わせである。
【0039】
表5:抗体産生細胞の単離および目的の例示的な膜貫通タンパク質のマウスホモログを発現しない遺伝子改変マウス(VI-KO)からの抗体の生成、AヒトTMB2タンパク質(ヒトTMB2)を包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体による遺伝子改変マウスの免疫化、ヒトTMB2タンパク質を提示する脂質二重層膜足場タンパク質複合体(ヒトTMB2を含む複合体)を有する抗体産生B細胞および/またはマウスTMB2を提示する脂質二重層膜足場タンパク質複合体(マウスTMB2を含む複合体)を有する抗体産生B細胞の選別、マウスTMB2とヒトTMB2タンパク質ホモログに結合することができる交差反応性抗体ならびにヒトTMB2タンパク質に特異的な抗体を発現する抗体産生B細胞の識別。提供されたデータは、二つの代表的な免疫キャンペーンの組み合わせである。
【0040】
本明細書において、脂質二重層膜足場タンパク質複合体を利用して、細胞により産生された抗体に膜貫通タンパク質抗原を提示する方法が開示される。脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、目的の膜貫通タンパク質またはその部分を含み、一般に脂質および膜足場タンパク質は天然の細胞の膜に見られ、その天然の立体構造において抗体に対して膜貫通タンパク質抗原を提示する。このように、脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、例えば、細胞外ドメインなどの自然界でアクセス可能な膜貫通タンパク質上のエピトープに結合する集団において、抗体(または抗体を発現する細胞)の特定のサブセットを識別し、収集するために本発明の方法に使用される。
【0041】
任意の一つの理論に限定されるものではないが、本明細書に開示される方法は、動物を免疫化し、目的の抗原の膜貫通タンパク質を提示する脂質二重層膜足場タンパク質複合体を使用して、免疫された動物から抗体産生細胞を単離することにより、立体構造的に正確な膜貫通タンパク質上でエピトープに特異的な抗体を産生する細胞を識別することができることを明らかにする。
【0042】
さらに、抗体および抗体をコードする核酸は、例えば、FACSなどの単一細胞単離および収集技術によって、抗体産生細胞から直接単離することができる。したがって、本開示はまた、抗体産生細胞の集団から直接膜貫通タンパク質に対する親和性を有する抗体を得るための効果的かつ効率的な方法を提供する。本方法は、特定の抗体が目的の膜貫通タンパク質の所望の部分を認識するかどうかを確認するために、部位特異的変異誘発およびその他の周知の技術によるエピトープ特異的抗体の時間のかかるスクリーニング、識別および選択の必要性を迂回する。
【0043】
本開示の一態様では、目的の膜貫通タンパク質またはその一部を提示する脂質二重層膜足場タンパク質複合体に、抗体産生細胞の集団を接触させることを含む、目的の膜貫通タンパク質に対する抗体または抗体を発現する細胞集団を取得する方法が提供される。一実施形態では、方法は、動物から得られる抗体産生細胞の集団を、目的の膜貫通タンパク質またはその一部を包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体に接触させて、膜貫通タンパク質(すなわち、抗原)と、細胞の表面上の抗体との間の結合を可能にし、細胞集団中の結合抗体産生細胞を収集することを含む。
【0044】
以下の説明では、用語の使用に関して特定の慣例に従う。概して、本明細書で使用される用語は、当業者に公知である用語の意味と一貫して解釈されることが意図される。本開示の実践において、当業者であれば、分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学における多くの従来的技術が使用される。これらの技術は、例えば、Molecular Cloning:a Laboratory Manual第4版、J.F.Sambrook and D.W.Russell編 Cold Spring Harbor Laboratory Press 2012;Recombinant Antibodies for Immunotherapy、Melvyn Little、編 Cambridge University Press 2009;“Oligonucleotide Synthesis”(M.J.Gait、編1984);“Animal Cell Culture”(R.I.Freshney、編1987);“Methods in Enzymology”(Academic Press,Inc.);“Current Protocols in Molecular Biology”(F.M.Ausubelら、編1987、定期的に更新);“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullisら、編、1994);“A Practical Guide to Molecular Cloning”(Perbal Bernard V.、1988);“Phage Display:A Laboratory Manual」(Barbasら、2001)により詳細に記載されている。これらの参考文献、および製造業者の指示を含む当業者によって広く知られ、かつ信頼されている標準プロトコルを含む他の参考文献の内容は、本開示の一部として参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
抗体産生細胞を生成するための免疫化
動物の免疫化は、当技術分野で公知の任意の方法によって達成することができる。例えば、E.Harlow and D.Lane “Antibodies A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor”(1988);Malik and Lillehoj、Antibody techniques:Academic Press、1994年、CAを参照されたい。例えば、免疫原は、限定されないが、アジュバント有無に関わらず、静脈内または腹腔内注射を含む様々な経路を介して、哺乳動物などの動物に直接投与されてもよく、アジュバントは免疫応答の刺激を助けることができる。当技術分野で公知のアジュバントとしては、限定されるものではないが、完全かつ不完全Freundのアジュバント、MPL+TDMアジュバント系(Sigma社)、またはRIBI(ムラミルジペプチド)が挙げられる。O’Hagan、Vaccine Adjuvant、by Human Press,(2000)NJ.を参照されたい。用語「免疫原」は、抗原(例えば、目的の膜貫通タンパク質またはそれをコードする核酸など)を含む組成物を指し、それに対して抗原特異的抗体は、宿主の免疫反応によって生成される。用語「抗原」は、抗体またはその断片などの結合剤によって結合することができる分子または分子の一部分を指す。抗原はまた、各抗原のエピトープに結合することができる抗体を産生するために使用することができる。
【0046】
免疫原は、タンパク質、タンパク質もしくはその断片をコードする核酸配列、ペプチド断片、タンパク質融合体として、または目的の免疫原コード遺伝子もしくはタンパク質免疫原もしくはそのペプチド断片を含有する担体によって、宿主動物に投与することができる。免疫化プロセスは、宿主から免疫反応を誘導し、インビボで宿主の細胞発現機構を使用して抗原(例えば、対象の膜貫通タンパク質)を発現することができる。
【0047】
様々な免疫化技術が当該技術分野で公知であり、当該方法を実施する際に使用することができる。例えば、動物は、目的の膜貫通タンパク質の少なくとも一部をコードする核酸、目的の膜貫通タンパク質の少なくとも一部、そのような核酸、目的の膜貫通タンパク質またはその一部を含む担体など、免疫原を注射することによって免疫化することができる。
【0048】
一部の例では、動物は、目的の膜貫通タンパク質またはその一部をコードする核酸で免疫化される。特定の実施形態では、動物は、目的の完全長膜貫通タンパク質をコードする核酸で免疫化される。特定の実施形態では、動物は、目的の完全長ヒト膜貫通タンパク質をコードする核酸で免疫化される。他の実施形態では、動物は、目的の完全長非ヒト膜貫通タンパク質をコードする核酸で免疫化される。特定の実施形態では、動物は、目的の完全長マウス膜貫通タンパク質をコードする核酸で免疫化される。
【0049】
用語「核酸」または「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」は、一本鎖または二本鎖形態のいずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはそのリボヌクレオチドならびにそのポリマーを指す。この用語は、公知のヌクレオチド類似体または改変された骨格残基または結合を含有する核酸を包含し、それらは合成、天然、および非天然であり、参照核酸と類似の結合特性を有し、参照ヌクレオチドと類似の様式で代謝される。用語「核酸コード」または「コードする核酸」は、ペプチド、タンパク質、検出可能な要素もしくは標識、および/または調節要素などのアミノ酸の配列をコードするDNAまたはRNA配列を指す。「遺伝子」とは、一つ以上のポリペプチド、タンパク質、または酵素のすべてまたは一部を含むアミノ酸の配列をコードするDNA核酸配列を指し、イントロン、ならびに例えば、遺伝子または遺伝子産物が発現される条件に影響を与えるプロモーターまたはエンハンサー配列、5’非翻訳領域、または3’非翻訳領域などの調節DNA配列を含んでも、含まなくてもよい。
【0050】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書では、ペプチド結合を介して連結されたアミノ酸残基のポリマーを指すために使用される。この用語は、一つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然のアミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然のアミノ酸ポリマーおよび非天然のアミノ酸ポリマーを含む。用語「タンパク質」は、大きなポリペプチドを指す。例えば、本開示では、タンパク質は完全長タンパク質または内因性タンパク質であり得る。用語「ペプチド」は、一般的には、例えば、タンパク質またはポリペプチドの断片または部分などの短いポリペプチドを指す。本明細書で使用される場合、ポリペプチドまたはタンパク質の「断片」または「部分」は、完全長ポリペプチドまたはタンパク質発現産物よりも小さいポリペプチドの任意の部分を指す。断片または部分は、完全長タンパク質から一つ以上のアミノ酸残基が除去された完全長タンパク質の「切断された」または欠失類似体であってもよい。例えば、本開示では、ペプチドは、「切断されたタンパク質」または「タンパク質の一部分」または「タンパク質の断片」として記載され得る。特定の例では、目的の膜貫通タンパク質の「一部分」は、目的の膜貫通タンパク質の少なくとも全体の膜部分を含む。「切断されたタンパク質」は、完全長タンパク質のアミノ末端部分および/またはカルボキシ末端部分を含まない目的の膜貫通タンパク質の一部分であってもよい。合成ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質は、例えば、自動ポリペプチド合成装置を使用して、または当業者に公知の組み換え技術によって合成することができる。
【0051】
用語「膜貫通タンパク質」および「目的の膜貫通タンパク質」は、本明細書では同義に使用され、細胞またはオルガネラの膜に付着し、膜に埋め込まれるタンパク質またはそのポリペプチド部分を意味する。したがって、膜貫通タンパク質は、膜を横断するタンパク質であり、それゆえ、ドメインにわたる少なくとも一つの膜から構成される。一部の例では、膜貫通タンパク質はまた、少なくとも一つの細胞質ドメインおよび/または少なくとも一つの細胞外ドメインを含む。細胞質ドメインは、アミノ末端ドメイン、カルボキシ末端ドメイン、および細胞内ループドメインの一つ以上であってもよい。細胞外ドメインは、アミノ末端ドメイン、カルボキシ末端ドメイン、および細胞外ループドメインの一つ以上であってもよい。一部の例では、目的の膜貫通タンパク質の細胞外ドメインは、目的の膜貫通タンパク質のドメインにかかる一つ以上の膜の間のN末端細胞外ドメイン、C末端細胞外ドメイン、および/または細胞外ループドメインを含む。膜貫通タンパク質は、原核生物、真核生物、およびウイルスを含むがこれに限定されない、任意の生物に由来する天然由来のタンパク質であってもよい。特定の実施形態では、膜貫通タンパク質は、ヒト、チンパンジー、アカゲザル、ウサギ、ウマ、ヒツジ、ラット、マウス、イヌ、ニワトリ、またはヤギタンパク質であり得る。一部の例では、膜貫通タンパク質は、ヒト、マウス、ラット、または霊長類の膜貫通タンパク質などの哺乳動物のタンパク質である。特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、ヒトタンパク質である。特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、非ヒトタンパク質である。一実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、マウスタンパク質である。
【0052】
一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、本明細書に記載されるように改変される。例示的な改変された目的の膜貫通タンパク質は、その天然アミノ酸配列に対して、アミノ酸置換、アミノ酸欠失、アミノ酸挿入の一つ以上の変化を含み得る。いくつかの実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、例えば、完全長タンパク質のN末端ドメインおよび/またはC末端ドメインなど、膜貫通タンパク質の一部分を欠失させる、すなわち「切断する」ように改変される。一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、アミノ末端、一つ以上の細胞外ループドメイン、一つ以上の膜貫通ドメイン、一つ以上の細胞内ドメイン、C末端、またはそれらの組み合わせに安定化変異を含む。特定の実施形態では、膜貫通タンパク質は、キメラ膜貫通タンパク質である。特定の実施形態では、目的の改変された膜貫通タンパク質は、例えば、Hisタグ、FLAGタグ、Aviタグ、またはBir-Aタグなどの一つ以上の検出可能な要素を含む。一部の実施形態では、目的の免疫原の膜貫通タンパク質は、HisタグおよびFLAGタグを含む。
【0053】
一実施形態では、膜貫通タンパク質は、リガンド活性化タンパク質であり、それにより、膜貫通タンパク質は、リガンドの存在下または非存在下(すなわち、活性状態および不活性状態を有する)で立体構造を変化させる。例えば、細胞内または細胞外ドメイン上にリガンドと結合することができるリガンド活性化膜貫通タンパク質であって、それによって結合は、細胞内のシグナル伝達を調節する膜貫通タンパク質の一つ以上のドメインにおける立体構造変化を誘発する。一部の例では、目的の膜貫通タンパク質は、溶質輸送体トランスポーター(SLC)、受容体、キナーゼ活性を有する受容体、クラスI成長因子受容体、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)、イオンチャネルタンパク質またはテトラスパニンである。特定の例では、目的の膜貫通タンパク質は、GPCRタンパク質、テトラスパニンタンパク質、またはイオンチャネルタンパク質である。一実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、SLCタンパク質である。
【0054】
一実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、GPCRタンパク質である。本方法で使用するためのGPCRは、当該技術分野で周知である。例えば、Foordら、Pharmacol.Rev.(2005)57:279-288を参照されたい、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。したがって、GPCRは、アデノシン受容体、β-アドレナリン受容体、ニューロテンシン受容体、ムスカリン酸受容体、5-ヒドロキシトリプタミン受容体、アドレナリン受容体、アナフィラトキシン受容体、アンジオテンシン受容体、アペリン受容体、ボンベシン受容体、ブラジキニン受容体、カンナビノイド受容体、ケモカイン受容体、コレシストキニン受容体、ドパミン受容体、エンドセリン受容体、遊離脂肪酸受容体、胆汁酸受容体、ガラニン受容体、モチリン受容体、グレリン受容体、糖タンパク質ホルモン受容体、GnRH受容体、ヒスタミン受容体、KiSS1由来ペプチド受容体、ロイコトリエンおよびリポキシン受容体、リゾリン脂質受容体、メラニン凝集ホルモン受容体、メラノコルチン受容体、メラトニン受容体、ニューロメジンU受容体、神経ペプチド受容体、N-ホルミルペプチドファミリー受容体、ニコチン酸受容体、ピオド受容体、、オプシン様受容体、オレキシン受容体、P2Y受容体、ペプチドP518受容体、血小板活性化因子受容体、プロキネチシン受容体、プロラクチン放出ペプチド受容体、プロスタノイド受容体、プロテアーゼ活性化受容体、レラキシン受容体、ソマトスタチン受容体、SPC/LPC受容体、タキキニン受容体、トレースアミノ受容体、サイロトロピン放出ホルモン受容体、ウロテンシン受容体、バソプレシン/オキシトシン受容体、オーファンGPCR、カルシトニン受容体、副腎皮質刺激ホルモン放出因子受容体、グルカゴン受容体、副甲状腺受容体、VIP/PACAP受容体、LNB7TM受容体、GABA受容体、代謝型グルタミン酸受容体およびカルシウムセンサー受容体のいずれかであってよい。
【0055】
特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、例えば、CCR5、ADORA2A、ADRB3、C3AR1、ADRA2A、GLP1R、CCR4、CCR8およびCXCR4などのGPCRタンパク質である。特定の実施形態では、膜貫通タンパク質は、以下のGPCRタンパク質から選択されるGPCRタンパク質である:CCR5、ADORA2A、ADRB3、C3AR1、ADRA2A、GLP1R、CCR4、CCR8またはCXCR4。一実施形態では、膜貫通タンパク質はCCR5である。別の実施形態では、膜貫通タンパク質はADORA2Aである。他の実施形態では、膜貫通タンパク質はC3AR1である。さらに別の実施形態では、膜貫通タンパク質はADRA2Aである。他の実施形態では、膜貫通タンパク質はGLP1Rである。
【0056】
一部の例では、膜貫通タンパク質はテトラスパニンである。特定の例では、目的の膜貫通タンパク質は、例えば、TSPAN 1からTSPAN19、TSPAN21、TSPAN23、TSPAN 31、TSPAN 32、TSPAN 33、UPK1B、PRPH2、CD151、CD53、CD37、CD82、CD81、CD9、CD63、TCD63、CLND6およびCLND9などのテトラスパニンである。一部の実施形態では、膜貫通タンパク質はCD63である。別の実施形態では、CLDN6である。他の実施形態では、膜貫通タンパク質はCLDN9である。
【0057】
他の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、イオンチャネルタンパク質である。一実施形態では、イオンチャネルタンパク質は、電位依存性イオンチャネルタンパク質である。特定の実施形態では、電位依存性イオンチャネルタンパク質は、電位依存性カルシウムチャネルガンマ-1サブユニット(CACNG1)、または例えば、KVSもしくはKIRSなどの電位依存性カリウムチャネルタンパク質である。他の実施形態では、イオンチャネルタンパク質は、カルシウム活性化カリウムチャネルタンパク質(例えば、BKCa、MaxiK、またはSk)、例えば、NaV1タンパク質(例えば、電位依存性チャネルアルファサブユニット9(NaV1.7)、電位依存性チャネルアルファサブユニット2(NaV1.2))、カルシウムチャネルタンパク質(例えば、CAV)またはクロリドチャネルタンパク質などの電位依存性ナトリウムチャネルタンパク質である。いくつかの実施形態では、イオンチャネルタンパク質は、一過性受容器電位チャネル(TRP)タンパク質である。特定の実施形態では、TRPは、カノニカル膜貫通タンパク質(TRPC)、バニロイド受容体(TRPV)、メラスタチン(TRPM)、ポリシスチン(TRPP)、ムコリピン(TRPML)、またはanankyrin膜貫通タンパク質1(TRPA1)、例えば、カノニカルTRP(TRPC)、バニロイド受容体(TRPV)、メラスタチン(TRPM)、ポリシスチン(TRPP)、ムコリピン(TRPML)、アンキリン膜貫通タンパク質1(TRPA1)である。特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、BKCa、MaxiK、Sk、NAV1.7、CACNG1、CAV、CIC、またはTRPである。
【0058】
特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、電位依存性ナトリウムチャネルタンパク質である。電位依存性ナトリウムチャネルのファミリーは九つの公知のメンバーを有し、膜貫通セグメントおよび細胞外ループ領域において50%超のアミノ酸同一性を有する。これらのチャネルのタンパク質は、NaV1.1~NaV1.9と命名され、概して「NaV1タンパク質」と呼称され、NaV1.1~NaV1.9をコードする遺伝子名はScn1a~Scn11aと呼称される。NaV1タンパク質の各々は、四つのリピートドメインを有し、各々が六つの膜貫通セグメントを含有する。第四のセグメントは、高度に保存されており、チャネルの電圧センサとして機能する。このチャネルの電圧感度は、第四セグメントの三番目毎に位置する正のアミノ酸に起因する(Nichollsら、(2012)「From Neuron to Brain」、第5版、pg.86、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。膜貫通電圧の変化によって刺激されると、このセグメントは細胞膜の細胞外側に向かって移動し、チャネルがイオンを透過するようになる。イオンは、細孔を通して伝導され、これは二つの領域に分割され得る。細孔のより外側(すなわち、より細胞外側)部分は、四つのドメインのそれぞれの第五の膜貫通セグメントと第六の膜貫通セグメント(「Pループ」としても知られる)との間の領域によって形成される。この領域は細孔のより狭い部分であり、そのイオン選択性に関与する。細孔の内側部分(すなわち、より細胞質側)は、四つのドメインの第五の膜貫通セグメントと第六の膜貫通セグメントとの組み合わせによって形成される。より詳細には、ヒトNaV1.1タンパク質は寄託番号P35498.2に記載されるアミノ酸配列に対応し;ヒトNaV1.2タンパク質は寄託番号Q99250.3に記載されるアミノ酸配列に対応し;ヒトNaV1.3タンパク質は寄託番号Q9NY46.2に記載されるアミノ酸配列に対応し;ヒトNaV1.4タンパク質は寄託番号P35499.4に記載されるアミノ酸配列に対応し;ヒトNaV1.5タンパク質は寄託番号Q14524.2に記載されるアミノ酸配列に対応し;ヒトNaV1.6タンパク質は寄託番号Q9UQD0.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;ヒトNaV1.7タンパク質は寄託番号Q15858.3に記載されるアミノ酸配列に対応し;ヒトNaV1.8タンパク質は寄託番号Q9Y5Y9.2に記載されるアミノ酸配列に対応し;ヒトNaV1.9タンパク質は寄託番号Q9UI33.2に記載されるアミノ酸配列に対応する。
【0059】
このような一実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、NaV1タンパク質である。特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、NAV1.7である。NaV1.7は、後根神経節、交感神経細胞、シュワン細胞、および神経内分泌細胞において侵害受容性(疼痛)ニューロンで発現される。NaV1.7は、膜の興奮性の重要な要素であり、痛みの感覚に重要である。ヒトSCN9A遺伝子における機能獲得変異は、疼痛症候群と関連し、機能喪失変異は、疼痛に対する重度の無感覚と関連している。NaV1.7は、以下の14の動物種由来のNaV1.7タンパク質の例示的な配列のアライメントから明らかなように、種を超えて高度に保存されている。ヒトNaV1.7タンパク質は寄託番号Q15858.3に記載されるアミノ酸配列に対応し;チンパンジーNaV1.7ホモログは寄託番号XP_016804947.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;アカゲザルNaV1.7タンパク質は寄託番号XP_014965766.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;マレーヒヨケザルNaV1.7タンパク質は寄託番号XP_008588371.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;ウシNaV1.7タンパク質は寄託番号NP_001104257.2に記載されるアミノ酸配列に対応し;ヒツジNaV1.7タンパク質は寄託番号XP_004004679.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;ヒトコブラクダNaV1.7タンパク質は寄託番号XP_010980767.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;シャチNaV1.7タンパク質は寄託番号XP_004267302.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;ウマNaV1.7タンパク質は寄託番号XP_001496473.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;イヌNaV1.7タンパク質は寄託番号XP_022270547.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;マウスNaV1.7タンパク質は寄託番号Q62205.2に記載されるアミノ酸配列に対応し;ラットNaV1.7タンパク質は寄託番号O08562.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;ウサギNaV1.7タンパク質は寄託番号Q28644.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;ニワトリNaV1.7タンパク質は寄託番号NP_001280211.1に記載されるアミノ酸配列に対応する。
【0060】
特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、ヒトNaV1.7である。別の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質はマウスNaV1.7である。
【0061】
特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、NAV1.2である。NaV1.2は、中枢ニューロンおよび末梢ニューロンで発現する。ヒトSCN2A遺伝子(NaV1.2をコードする)の変異は、いくつかの発作障害および自閉症スペクトラム障害と関連している。NaV1.2は、14の動物種由来のNaV1.2タンパク質の例示的な配列のアライメントから明らかなように、種を超えて高度に保存されている。アライメントに含まれる例示的な配列の寄託番号は:ヒトNaV1.2ホモログは寄託番号Q99250.3に記載されるアミノ酸配列に対応し;チンパンジーNaV1.2ホモログは寄託番号XP_003820970.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;アカゲザルNaV1.2タンパク質は寄託番号XP_001100368.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;マレーヒヨケザルNaV1.2タンパク質は寄託番号XP_008582720.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;ウシNaV1.2タンパク質は寄託番号NP_001137581.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;ヒツジNaV1.2タンパク質は寄託番号XP_014948870.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;ヒトコブラクダNaV1.2タンパク質は寄託番号XP_010980763.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;シャチNaV1.2タンパク質は寄託番号XP_004283641.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;ウマNaV1.2タンパク質は寄託番号XP_014588001.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;マウスNaV1.2タンパク質は寄託番号NP_001092768.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;ラットNaV1.2タンパク質は寄託番号P04775.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;ウサギNaV1.2タンパク質は寄託番号XP_008256915.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;ニワトリNaV1.2タンパク質は寄託番号NP_001280210.1に記載されるアミノ酸配列に対応し;アオウミガメNaV1.2タンパク質は寄託番号XP_007056690.1に記載されるアミノ酸配列に対応する。
【0062】
特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、ヒトNaV1.2ホモログである。別の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は,マウスNaV1.2ホモログである。
【0063】
一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、CACNG1タンパク質である。一実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、ヒトCACNG1タンパク質である。別の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、非ヒトCACNG1タンパク質である。
【0064】
特定の例では、目的の膜貫通タンパク質は、SLCタンパク質である。SLCタンパク質は特徴付けられ、当業者に周知である。例えば、数百のヒト膜貫通SLCタンパク質が識別されており、例えばLin、Lら Nat.Rev.Drug Disc.(2015)14:8 pp.543-560、その内容全体は、参照により本明細書に明示的に援用される、に記載されるように、SLCタンパク質の多くのファミリーに組織化される。したがって、特定の実施形態において、目的の膜貫通タンパク質は、SLCタンパク質であり、例えば、SLCO1A2、SLCO1B1、SLCO1B3、SLCO1B7、SLCO1C1、SLCO2A1、SLCO2B1、SLCO3A1、SLCO4A1、SLCO4C1、SLCO5A1、SLCO6A1、SLC1A1、SLC1A2、SLC1A3、SLC1A4、SLC1A5、SLC1A6、SLC1A7、SLC2A1、SLC2A2、SLC2A3、SLC2A4、SLC2A5、SLC2A6、SLC2A7、SLC2A8、SLC2A9、SLC2A10、SLC2A11、SLC2A12、SLC2A13、SLC2A14、SLC3A1、SLC3A2、SLC4A1、SLC4A2、SLC4A3、SLC4A4、SLC4A5、SLC4A7、SLC4A8、SLC4A9、SLC4A10、SLC4A11、SLC5A1、SLC5A2、SLC5A3、SLC5A4、SLC5A5、SLC5A6、SLC5A7、SLC5A8、SLC5A9、SLC5A10、SLC5A11、SLC5A12、SLC6A1、SLC6A2、SLC6A3、SLC6A4、SLC6A5、SLC6A6、SLC6A7、SLC6A8、SLC6A9、SLC6A10P、SLC6A11、SLC6A12、SLC6A13、SLC6A14、SLC6A15、SLC6A16、SLC6A17、SLC6A18、SLC6A19、SLC6A20、SLC6A21P、SLC7A1、SLC7A2、SLC7A3、SLC7A4、SLC7A5、SLC7A6、SLC7A7、SLC7A8、SLC7A9、SLC7A10、SLC7A11、SLC7A13、SLC7A14、SLC7A15P、SLC8A1、SLC8A2、SLC8A3、SLC8B1、SLC9A1、SLC9A2、SLC9A3、SLC9A4、SLC9A5、SLC9A6、SLC9A7、SLC9A8、SLC9A9、SLC9B1、SLC9B2、SLC9C1、SLC9C2、SLC10A1、SLC10A2、SLC10A3、SLC10A4、SLC10A5、SLC10A6、SLC10A7、SLC11A1、SLC11A2、SLC12A1、SLC12A2、SLC12A3、SLC12A4、SLC12A5、SLC12A6、SLC12A7、SLC12A8、SLC12A9、SLC13A1、SLC13A2、SLC13A3、SLC13A4、SLC13A5、SLC14A1、SLC14A2、SLC15A1、SLC15A2、SLC15A3、SLC15A4、SLC15A5、SLC16A1、SLC16A2、SLC16A3、SLC16A4、SLC16A5、SLC16A6、SLC16A7、SLC16A8、SLC16A9、SLC16A10、SLC16A11、SLC16A12、SLC16A13、SLC16A14、SLC17A1、SLC17A2、SLC17A3、SLC17A4、SLC17A5、SLC17A6、SLC17A7、SLC17A8、SLC17A9、SLC18A1、SLC18A2、SLC18A3、SLC18B1、SLC19A1、SLC19A2、SLC19A3、SLC20A1、SLC20A2、SLC22A1、SLC22A2、SLC22A3、SLC22A4、SLC22A5、SLC22A6、SLC22A7、SLC22A8、SLC22A9、SLC22A10、SLC22A11、SLC22A12、SLC22A13、SLC22A14、SLC22A15、SLC22A16、SLC22A17、SLC22A18、SLC22A20P、SLC22A23、SLC22A24、SLC22A25、SLC22A31、SLC23A1、SLC23A2、SLC23A3、SLC23A4P、SLC24A1、SLC24A2、SLC24A3、SLC24A4、SLC24A5、SLC25A1、SLC25A2、SLC25A3、SLC25A4、SLC25A5、SLC25A6、UCP1、UCP2、UCP3、SLC25A10、SLC25A11、SLC25A12、SLC25A13、SLC25A14、SLC25A15、SLC25A16、SLC25A17、SLC25A18、SLC25A19、SLC25A20、SLC25A21、SLC25A22、SLC25A23、SLC25A24、SLC25A25、SLC25A26、SLC25A27、SLC25A28、SLC25A29、SLC25A30、SLC25A31、SLC25A32、SLC25A33、SLC25A34、SLC25A35、SLC25A36、SLC25A37、SLC25A38、SLC25A39、SLC25A40、SLC25A41、SLC25A42、SLC25A43、SLC25A44、SLC25A45、SLC25A46、SLC25A47、SLC25A48、MTCH1、MTCH2、SLC25A51、SLC25A52、SLC25A53、SLC26A1、SLC26A2、SLC26A3、SLC26A4、SLC26A5、SLC26A6、SLC26A7、SLC26A8、SLC26A9、SLC26A10、SLC26A11、SLC27A1、SLC27A2、SLC27A3、SLC27A4、SLC27A5、SLC27A6、SLC28A1、SLC28A2、SLC28A3、SLC29A1、SLC29A2、SLC29A3、SLC29A4、SLC30A1、SLC30A2、SLC30A3、SLC30A4、SLC30A5、SLC30A6、SLC30A7、SLC30A8、SLC30A9、SLC30A10、SLC31A1、SLC31A2、SLC32A1、SLC33A1、SLC34A1、SLC34A2、SLC34A3、SLC35A1、SLC35A2、SLC35A3、SLC35A4、SLC35A5、SLC35B1、SLC35B2、SLC35B3、SLC35B4、SLC35C1、SLC35C2、SLC35D1、SLC35D2、SLC35D3、SLC35E1、SLC35E2A、SLC35E2B、SLC35E3、SLC35E4、SLC35F1、SLC35F2、SLC35F3、SLC35F4、SLC35F5、SLC35F6、SLC35G1、SLC35G2、SLC35G3、SLC35G4、SLC35G5、SLC35G6、SLC36A1、SLC36A2、SLC36A3、SLC36A4、SLC37A1、SLC37A2、SLC37A3、SLC37A4、SLC38A1、SLC38A2、SLC38A3、SLC38A4、SLC38A5、SLC38A6、SLC38A7、SLC38A8、SLC38A9、SLC38A10、SLC38A11、SLC39A1、SLC39A2、SLC39A3、SLC39A4、SLC39A5、SLC39A6、SLC39A7、SLC39A8、SLC39A9、SLC39A10、SLC39A11、SLC39A12、SLC39A13、SLC39A14、SLC40A1、SLC41A1、SLC41A2、SLC41A3、RHAG、RHBG、RHCG、SLC43A1、SLC43A2、SLC43A3、SLC44A1、SLC44A2、SLC44A3、SLC44A4、SLC44A5、SLC45A1、SLC45A2、SLC45A3、SLC45A4、SLC46A1、SLC46A2、SLC46A3、SLC47A1、SLC47A2、SLC48A1、FLVCR1、FLVCR2、SLC49A3、SLC49A4、SLC50A1、SLC51A、SLC51B、SLC52A1、SLC52A2、SLC52A3、XPR1、MPC1、MPC2、MPC1L、LETM1、LETM2、LETMD1、SFXN1、SFXN2、SFXN3、SFXN4、SFXN5、NIPA1、NIPA2、NIPAL1、NIPAL2、NIPAL3、NIPAL4、MAGT1、TUSC3、MFSD2A、MFSD2B、MFSD4A、MFSD4B、MFSD5、ANKH、SPNS1、SPNS2、SPNS3、TMEM165、NPC1、NPC1L1、SLC66A1、SLC66A2、SLC66A3、CTNSおよびMPDU1である。
【0065】
用語「内因性」は、宿主生物に自然に発現されるか、または細胞、組織もしくは生物に起源をもつポリペプチド、ポリヌクレオチド、もしくは他の組成物を指す。「外因性」とは、細胞、組織もしくは生物の外部に起源をもつ、または特定の宿主生物に外来性のポリペプチド、ポリヌクレオチド、もしくは他の組成物を指す。
【0066】
方法の一部の実施形態では、動物は、目的の膜貫通タンパク質またはその一部をコードする核酸で免疫化される。特定の実施形態では、核酸は、目的の完全長膜貫通タンパク質の短縮型をコードする。一部の実施形態では、目的の切断された膜貫通タンパク質は、一つ以上の細胞外ループドメイン、目的の完全長膜貫通タンパク質のアミノ末端部分および/またはカルボキシ末端部分を含まない。特定の実施形態では、切断された膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質のアミノ末端部分を含まない。その他の実施形態では、切断された膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質のカルボキシ末端部分を含まない。一部の実施形態では、切断された膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質の細胞外ループドメインを含まない。
【0067】
一部の実施形態では、動物は、核酸を発現することができる担体に包含されている目的の膜貫通タンパク質またはその一部をコードする核酸で免疫化される。免疫で使用するための担体の非限定的な例として、プラスミド、発現ベクターなどのベクター、ならびにウイルス様粒子(VLP)、照射細胞、エクソソーム、およびリポソームなどの細胞が挙げられる。用語「ベクター」は、コード情報を宿主細胞に伝達するために使用される任意の分子(例えば、核酸、プラスミドまたはウイルス)を指すために使用される。ベクターの一例は、「発現ベクター」であり、宿主細胞中の特定の核酸の転写を可能にする一連の特定の核酸要素を有する、組み換え的にまたは合成的に作製された核酸構築物である。発現ベクターは、プラスミド、ウイルス、または核酸断片の一部であってもよい。特定の例では、発現ベクターは、プロモーターに操作可能に連結された転写される核酸を含む。例えば、「操作可能に連結される」は、核酸発現制御配列(例えば、プロモーター転写因子結合部位のアレイ)と第二の核酸配列との機能的結合を指し、発現制御配列は、第二の配列に対応する核酸の転写を指示する。
【0068】
一部の実施形態では、動物は、目的の膜貫通タンパク質またはその一部をコードする核酸を含むベクターで免疫化される。特定の実施形態では、動物は、目的の膜貫通タンパク質またはその一部をコードする核酸を含む発現ベクターで免疫化される。一実施形態では、動物は、目的の膜貫通タンパク質またはその一部をコードする核酸を含むプラスミドで免疫化される。
【0069】
一部の例では、免疫原は、静脈注射または腹腔内注射など、経時的な1回以上の注射によって宿主動物に投与される。特定の実施形態では、免疫原は、1回、2回、3回、4回以上の注射により、宿主哺乳動物に投与される。特に、免疫原は、3回の別個の注射によって投与される。
【0070】
動物に投与される免疫原の量は、公知の方法を使用して当業者によって容易に決定することができる。
【0071】
一部の例では、核酸免疫原は、少なくとも0.1mg/mL、少なくとも0.5mg/mL、少なくとも1.0mg/mL、少なくとも1.5mg/mL、少なくとも2.0mg/mL、少なくとも3.0mg/mL、少なくとも4.0mg/mL、少なくとも5.0mg/mL、少なくとも6.0mg/mL、少なくとも7.0mg/mL、少なくとも8.0mg/mL、少なくとも9.0mg/mL、少なくとも9.5mg/mL、少なくとも10.0mg/mL、少なくとも10.5mg/mLの濃度で動物に注射される。特定の実施形態において、核酸免疫原は、0.5mg/mL~20mg/mL、0.5mg/mL~15mg/mL、0.5mg/mL~12mg/mL、0.5mg/mL~11mg/mL、1.0mg/mL~15mg/mL、1.0mg/mL~5mg/mL、1.0mg/mL~4mg/mL、1.0mg/mL~3mg/mL、1.0mg/mL~2mg/mL、2.0mg/mL~12mg/mL、5.0mg/mL~12mg/mL、7.0mg/mL~12mg/mL、8.0mg/mL~12mg/mL、8.0mg/mL~11mg/mL、9.0mg/mL~11mg/mLまたは9.5mg/mL~10.5mg/mLの濃度で動物に注射される。特定の実施形態では、核酸免疫原は、0.5mg/mL、0.7mg/mL、0.9mg/mL、1.0mg/mL、1.5mg/mL、1.6mg/mL、1.8mg/mL、2.0mg/mL、2.5mg/mL、3.0mg/mL、3.5mg/mL、4.0mg/mL、4.5mg/mL、5.0mg/mL、5.5mg/mL、6.0mg/mL、6.5mg/mL、7.0mg/mL、7.5mg/mL、8.0mg/mL、8.5mg/mL、9.0mg/mL、9.5mg/mL、10.0mg/mL、10.5mg/mL、11.0mg/mL、11.5mg/mL、12.0mg/mL、12.5mg/mL、13.0mg/mL、13.5mg/mL、14.0mg/mL、14.5mg/mL、15.0mg/mL、15.5mg/mL以上の濃度で動物に注射される。特定の実施形態では、核酸免疫原は、1.6mg/mLの濃度で動物に注射される。一実施形態では、核酸免疫原は、10mg/mLの濃度で動物に注射される。
【0072】
一部の実施形態では、動物は、目的の膜貫通タンパク質またはその一部で免疫化される。特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質またはその一部は、ヒト起源である。他の実施形態では、動物は、目的の非ヒト膜貫通タンパク質で免疫化される。一部の実施形態では、動物は、目的の完全長マウス膜貫通タンパク質をコードする核酸で免疫化される。一部の実施形態では、動物は、目的の完全長膜貫通タンパク質で免疫化される。特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、切断される。一部の実施形態では、目的の切断された膜貫通タンパク質は、一つ以上の細胞外ループドメイン、目的の完全長膜貫通タンパク質のアミノ末端部分および/またはカルボキシ末端部分を含まない。特定の実施形態では、切断された膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質のアミノ末端部分を含まない。その他の実施形態では、切断された膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質のカルボキシ末端部分を含まない。一実施形態では、切断された膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質の細胞外ループドメインを含まない。
【0073】
特定の例では、タンパク質またはペプチド免疫原は、少なくとも0.1mg/mL、少なくとも0.2mg/mL、少なくとも0.3mg/mL、少なくとも0.4mg/mL、少なくとも0.5mg/mL、少なくとも0.6mg/mL、少なくとも0.7mg/mL、少なくとも0.8mg/mL、少なくとも0.9mg/mL、少なくとも1.0mg/mL、少なくとも2.0mg/mL、少なくとも3.0mg/mL、少なくとも4.0mg/mL、少なくとも5.0mg/mL、少なくとも10.0mg/mL以上の濃度で動物に投与される。特定の実施形態では、タンパク質またはペプチド免疫原は、0.1mg/mL~20mg/mL、0.1mg/mL~15mg/mL、0.1mg/mL~10mg/mL、0.1mg/mL~8.0mg/mL、0.1mg/mL~7.0mg/mL、0.1mg/mL~6.0mg/mL、0.1mg/mL~5.0mg/mL、0.1mg/mL~3.0mg/mL、0.1mg/mL~2.0mg/mL、0.1mg/mL~1.0mg/mL、0.2mg/mL~10.0mg/mL、0.2mg/mL~7.0mg/mL、0.2mg/mL~6.0mg/mL、0.2mg/mL~5.0mg/mL、0.2mg/mL~3mg/mL、0.2mg/mL~2mg/mL、0.2mg/mL~1mg/mL、0.5mg/mL~10.0mg/mL、0.5mg/mL~7.0mg/mL、0.5mg/mL~5.0mg/mL、0.5mg/mL~3.0mg/mL、0.5mg/mL~2.0mg/mL、0.5mg/mL~1.0mg/mL、1.0mg/mL~5.0mg/mL、1.0mg/mL~3.0mg/mL、1.0mg/mL~2.0mg/mL、2.0mg/mL~10.0mg/mL、5.0mg/mL~10.0mg/mL、両端を含む、の濃度で動物に注射される。特定の実施形態では、ペプチドまたはペプチド免疫原は、0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.25mg/mL、0.3mg/mL、0.35mg/mL、0.4mg/mL、0.45mg/mL、0.5mg/mL、0.55mg/mL、0.6mg/mL、0.65mg/mL、0.7mg/mL、0.75mg/mL、0.8mg/mL、0.85mg/mL、0.9mg/mL、0.95mg/mL、1.0mg/mL、1.5mg/mL、1.6mg/mL、1.8mg/mL、2.0mg/mL、2.5mg/mL、3.0mg/mL、3.5mg/mL、4.0mg/mL、4.5mg/mL、5.0mg/mL、5.5mg/mL、6.0mg/mL、6.5mg/mL、7.0mg/mL、7.5mg/mL、8.0mg/mL、8.5mg/mL、9.0mg/mL、9.5mg/mL、10.0mg/mL、12.0mg/mL、15.0mg/mL、20.0mg/mL以上の濃度で動物に注射される。特定の実施形態では、タンパク質またはペプチド免疫原は、0.9mg/mLの濃度で動物に注射される。一実施形態では、タンパク質またはペプチド免疫原は、0.5mg/mLの濃度で動物に注射される。別の実施形態では、タンパク質またはペプチド免疫原は、1.9mg/mLの濃度で動物に注射される。特定の実施形態では、タンパク質またはペプチド免疫原は、2.5mg/mLの濃度で動物に注射される。
【0074】
特定の実施形態では、動物は、目的のキメラ膜貫通タンパク質または目的のキメラ膜貫通タンパク質をコードするヌクレオチド配列で免疫化される。本明細書で使用される場合、用語「キメラ」は、異なる種に由来する部分を有するタンパク質、またはタンパク質をコードする核酸を指す。例えば、キメラタンパク質は、一つ以上のヒトドメインおよび少なくとも一つの非ヒトドメインを有してもよく、またはその逆であってもよい。キメラタンパク質をコードする核酸は、例えば、タンパク質の少なくとも一つのドメインをコードする非ヒト遺伝子に操作可能に連結されたタンパク質の一つ以上のドメインをコードするヒト遺伝子を有し得る。
【0075】
一つの非限定的な例では、キメラ核酸は、膜貫通タンパク質の異なる部分をコードするマウス遺伝子の一部に操作可能に連結された膜貫通タンパク質の第一の部分をコードするヒト遺伝子の一部を含む。一部の実施形態では、動物は、目的のキメラ膜貫通タンパク質をコードするDNAで免疫化され、このDNAはヒト膜貫通タンパク質の一つ以上の細胞外ループドメインをコードするヒト遺伝子配列、および膜貫通タンパク質のマウスホモログ由来のアミノ末端ドメインおよび/またはカルボキシ末端ドメインをコードするマウス遺伝子配列を含む。他の実施形態では、動物は、目的のキメラ膜貫通タンパク質をコードするDNAで免疫化され、このDNAはヒト膜貫通タンパク質由来のアミノ末端ドメインおよび/またはカルボキシ末端ドメインをコードするDNA、および膜貫通タンパク質のマウスホモログの一つ以上の細胞外ループドメインをコードするDNAを含む。一実施形態では、動物は、目的のキメラ膜貫通タンパク質をコードするDNAで免疫化され、このDNAはヒト膜貫通タンパク質由来の一つ以上の細胞外ループドメインをコードする遺伝子配列、および膜貫通タンパク質のマウスホモログ由来のアミノ末端ドメインをコードする配列を含む。特定の実施形態では、動物は、目的のキメラ膜貫通タンパク質をコードするDNAで免疫化され、このDNAはヒト膜貫通タンパク質由来のアミノ末端ドメインをコードする遺伝子配列、および膜貫通タンパク質のマウスホモログ由来の一つ以上の細胞外ループドメインをコードする遺伝子配列を含む。特定の実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、例えば、Hisタグ、FLAGタグ、Aviタグ、またはBir-Aタグなどの検出可能な要素をコードするヌクレオチド配列も含むようにも改変される。
【0076】
一部実施形態では、動物は、目的のキメラ膜貫通タンパク質で免疫化され、目的の膜貫通タンパク質の非ヒトホモログの一部に操作可能に連結された目的のヒト膜貫通タンパク質の一部分を含む。一部の実施形態では、動物は、目的のキメラ膜貫通タンパク質で免疫化され、この目的のキメラ膜貫通タンパク質は、目的のヒト膜貫通タンパク質由来の一つ以上の細胞外ループドメイン、ならびに膜貫通タンパク質のマウスホモログ由来のアミノ末端ドメインおよび/またはカルボキシ末端ドメインを含む。一部の実施形態では、動物は、目的のキメラ膜貫通タンパク質で免疫化され、この目的のキメラ膜貫通タンパク質は、ヒト膜貫通タンパク質由来の一つ以上の細胞外ループドメイン、および膜貫通タンパク質のマウスホモログ由来のアミノ末端ドメインを含む。一部の実施形態では、動物は、目的のキメラ膜貫通タンパク質で免疫化され、この目的のキメラ膜貫通タンパク質は、ヒト膜貫通タンパク質由来のアミノ末端ドメインおよび/またはカルボキシ末端ドメイン、ならびに膜貫通タンパク質のマウスホモログ由来の一つ以上の細胞外ループドメインを含む。一部の実施形態では、動物は、目的のキメラ膜貫通タンパク質で免疫化され、この目的のキメラ膜貫通タンパク質は、ヒト膜貫通タンパク質由来のアミノ末端ドメインおよび膜貫通タンパク質のマウスホモログ由来の一つ以上の細胞外ループドメインを含む。特定の実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、例えば、Hisタグ、FLAGタグ、Aviタグ、またはBir-Aタグなどの検出可能な要素も含む。一実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、HisタグおよびFLAGタグを含む。
【0077】
特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質または核酸免疫原が改変される。一部の実施形態では、免疫原は、目的の改変された膜貫通タンパク質、または一つ以上の安定化アミノ酸置換を含む、それをコードするDNAである。一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質または核酸免疫原は、標識、マーカーまたは特徴などの一つ以上の検出可能な要素を含むように改変される。一実施形態では、改変された免疫原は、検出可能な標識を含む目的の膜貫通タンパク質である。特定の実施形態では、検出可能な標識は、FLAG-タグ、Avi-タグ、ヒスチジンタグ(His-タグ)、Bir-A-タグ、またはそれらの組み合わせである。特定の実施形態では、検出可能な標識は、膜貫通タンパク質免疫原のアミノ末端またはカルボキシ末端に位置する。一実施形態では、膜貫通タンパク質免疫原は、カルボキシ末端に貼り付けられたFLAG-タグおよびHis-タグを有する。
【0078】
本方法で使用するためのタンパク質は、当該技術分野で公知の方法によって作製することができる。例えば、目的の膜貫通タンパク質またはその一部は、適切な核酸によってコードされ、細胞内に発現され得る。目的の膜貫通タンパク質をコードする適切な核酸分子は、当技術分野で周知のように、標準的なクローニング技術、部位特異的変異誘発、およびPCRを使用して作製され得る。適切な発現系として、例えば、細菌または酵母における構成的もしくは誘導性の発現系、バキュロウイルス、セムリキ森林ウイルスおよびレンチウイルスなどのウイルス発現系、または昆虫もしくは哺乳類細胞における一過性トランスフェクションが挙げられる。適切な宿主細胞としては、大腸菌、ラクトコッカス乳酸、サッカロマイセス・セレビシエ、シゾサッカロミセス・ポンベ、ピキア・パストリス、スポドプテラ・フルギペルダ、およびイラクサギンウワバ細胞が挙げられる。適切な哺乳類宿主細胞としては、HEK 293、COS、CHO、NSO、DT40が挙げられる。適切な昆虫宿主細胞は、Sf9細胞およびS2細胞を含む。
【0079】
特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質またはその一部を含むタンパク質免疫原は、細胞中で発現され、免疫原タンパク質は、細胞によって産生され、免疫化のための精製タンパク質免疫原を提供するために精製される。
【0080】
特定の実施形態では、動物は、例えば、脂質二重層膜足場タンパク質複合体、VLP、細胞、エクソソームおよびリポソームなどの担体に包含される目的の膜貫通タンパク質またはその一部で免疫化することができる。
【0081】
「脂質二重層膜足場タンパク質複合体」は、少なくとも一つの膜足場タンパク質(MSP)との複合体中、すなわち少なくとも一つのMSPによって結合された脂質二重層を含む組成物を意味する。脂質二重層膜足場タンパク質複合体が記述されている。例えば、Inagaki、S.ら、Biophysical Characterization of Membrane Proteins in Nanodiscs.Methods(2013)59(3):287-300を参照されたい、その内容全体は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、例えば、二つの膜足場タンパク質によって囲まれ、安定化した円板状のリン脂質二重層として形成され得る。任意の一つの理論に拘束されるものではないが、複合体の形成および機能は、MSPの脂質比およびMSPの長さによって調節される。例えば、MSPに対する脂質の比を調整して、脂質二重層膜足場タンパク質複合体の均一な集団または均一でない集団を生成することができる。さらに、天然のような環境を提供するために、MSPタンパク質は、膜貫通タンパク質または目的のタンパク質、脂質二重層形成の両方のための空間およびを提供する複合体を形成するのに十分な大きさであるべきである。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「膜足場タンパク質」または「MSP」は、例えば、Schuler、M.ら、Methods Mol Biol.2013;974:415-433、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、に記載されるような、両親媒性アポリポタンパク質A-I(Apo-AI)に由来する両親媒性らせん状のタンパク質のクラスを指す。膜足場タンパク質には、脂質疎水性テイルに接触するらせん体の内側上に疎水性残基を含む両親媒性らせん体、および外向き(脂質から離れて)の親水性残基が含まれる。膜足場タンパク質は、MSPアミノ酸配列の一部分における一つ以上のらせん体ドメインの欠失または挿入によって異なるサイズであってもよく、それにより、異なるサイズの脂質二重層-MSP複合体の形成が可能となる。MSPの構造および機能は、脂質結合タンパク質のサポシンファミリーと異なることが理解される。
【0083】
一部の例では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、以下の例示的なMSPから選択される少なくとも一つの膜足場タンパク質を含む:MSP1、MSP2、MSP1E1、MSP1E2、MSP1E3、MSP1E3D1、MSP1D1、MSP1D2、MSP2N1、MSP2N3、およびMSP2N2。
【0084】
いくつかの実施形態では、膜足場タンパク質は、構造FX-H1-H2-H3-H4-H5-H6-H7-H8-H9-H10[配列番号12]を含むMSP1であり、式中、FXは、アミノ酸配列MGHHHHHHIEGR[配列番号1]を有する膜足場タンパク質のN末端ドメインであり、H1は、アミノ酸配列LKLLDNWDSVTSTFSKLREQLG[配列番号2]を有するHelix 1であり、H2は、アミノ酸配列PVTQEFWDNLEKETEGLRQEMS[配列番号3]を有するHelix 2であり、H3は、アミノ酸配列KDLEEVKAKVQ[配列番号4]を有するHelix 3であり、H4は、アミノ酸配列PYLDDFQKKWQEEMELYRQKVE[配列番号5]を有するHelix 4であり、H5は、アミノ酸配列PLRAELQEGARQKLHELQEKLS[配列番号6]を有するHelix 5であり、H6は、アミノ酸配列PLGEEMRDRARAHVDALRTHLA[配列番号7]を有するHelix 6であり、H7は、アミノ酸配列PYSDELRQRLAARLEALKENGG[配列番号8]を有するHelix 7であり、H8は、アミノ酸配列ARLAEYHAKATEHLSTLSEKAK[配列番号9]を有するHelix 8であり、H9はアミノ酸配列PALEDLRQGLL[配列番号10]を有するHelix 9であり、H10はアミノ酸配列PVLESFKVSFLSALEEYTKKLNTQ[配列番号11]を有するHelix 10である。いくつかの実施形態では、膜足場タンパク質は、構造FX-H1-H2-H3-H4-H5-H6-H7-H8-H9-H10-GT-H1-H2-H3-H4-H5-H6-H7-H8-H9-H10[配列番号13]を含むMSP2である。いくつかの実施形態では、膜足場タンパク質は、MSP1アミノ酸配列に挿入された一つ以上の22アミノ酸両親媒性らせん体を含む伸長した膜足場タンパク質である。こうした一実施形態では、伸長膜足場タンパク質は、構造H1-H2-H3-H4-H4-H5-H6-H7-H8-H9-H10[配列番号14]を含むMSP1E1であり、それによって、MSP1のアミノ酸配列は、重複した「H4」を有することによって伸長される。別の実施形態では、伸長膜足場タンパク質は、構造FX-H1-H2-H3-H4-H5-H4-H5-H6-H7-H8-H9-H10[配列番号15]を含むMSP1E2であり、それによって、MSP1のアミノ酸配列は、重複した「H4-H5」を有することによって伸長される。さらに別の実施形態では、伸長膜足場タンパク質は、構造FFX-H1-H2-H3-H4-H5-H6-H4-H5-H6-H7-H8-H9-H10[配列番号16]を含むMSP1E3であり、それによって、MSP1のアミノ酸配列は、重複した「H4-H5-H6」を有することによって伸長される。
【0085】
特定の実施形態では、膜足場タンパク質は、構造TEV-H1Δ(1-11)-H2-H3-H4-H5-H6-H7-H8-H9-H10[配列番号17]を含むMSP1D1であり、それによって、TEVは、アミノ酸配列MGHHHHHHH DYDIPTTENLYFQG[配列番号18]を有する改変されたN末端ドメインであり、H1Δ(1-11)は、アミノ酸配列STFSKLREQLG[配列番号19]を有する切断されたH1らせん体ドメインである。いくつかの実施形態では、膜足場タンパク質は、構造TEV-H2-H3-H4-H5-H6-H7-H8-H9-H10[配列番号20]を含むMSP1D2である。いくつかの実施形態では、膜足場タンパク質は、構造TEV-H1Δ(1-11)-H2-H3-H4-H5-H6-H7-H8-H9-H10-GT-H1Δ(1-11)-H2-H3-H4-H5-H6-H7-H8-H9-H10[配列番号21]を有するMSP2N1である。別の実施形態では、膜足場タンパク質は、構造TEV-H1Δ(1-11)-H2-H3-H4-H5-H6-H7-H8-H9-H10-GT-H1Δ(1-11)-H2-H3-H4-H5-H6-H7-H8-H9-H10[配列番号22]を有するMSP2N2である。さらに別の実施形態では、膜足場タンパク質は、構造TEV-H1Δ(1-11)-H2-H3-H4-H5-H6-H7-H8-H9-H10-GT-H1Δ(1-17)-H2-H3-H4-H5-H6-H7-H8-H9-H10[配列番号24]を有するMSP2N3であり、それによって、H1Δ(1-17)は、アミノ酸配列REQLG[配列番号23]を有する切断されたH1らせん体ドメインである。
【0086】
特定の実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、二つのMSPを含む。一実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、ベルトのように、二つのMSP(例えば、MSPの二つの分子)によって囲まれた円板状のリン脂質二重層である。一実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、MSP1E3D1の二つの分子によって囲まれた円板状のリン脂質二重層である。
【0087】
一部の実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、検出可能な標識を含む。特定の実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、少なくとも二つの標識された膜足場タンパク質と、複数の脂質を含有する。特定の実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、二つの標識された膜足場タンパク質および脂質二重層を含有する。いくつかの実施形態では、標識された膜足場タンパク質は、同一であるか、または異なっている。検出可能な標識は、当該技術分野で公知の任意の検出可能な標識とすることができる。例えば、検出可能な標識は、蛍光分子、His-タグおよびFLAG-タグを含む。例示的な実施形態では、一つ以上の膜足場タンパク質は、ビオチン化のためのBir-AタグまたはAvi-タグなどの検出可能なマーカーで標識される。特定の実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中の全てのMSPは、ビオチン化される。ビオチン化は、例えば、膜足場タンパク質を化学的にビオチン化することによって、またはAvi-タグもしくはBir-AタグをMSP核酸コード配列内に遺伝子導入し、公知の技術を使用して改変タンパク質を産生することによって実施することができる。
【0088】
脂質二重層膜足場タンパク質複合体の脂質二重層部分が再構成される。脂質は、例えばスフィンゴ脂質および/またはリン脂質などの脂質の二層を形成することができる。複合体の脂質組成物は、例えば、複合体に含まれる特定の目的の膜貫通タンパク質の天然の細胞型に基づいて変化し得る。例えば、大腸菌膜は、70~80%のホスファチジルエタノールアミン、15~20%のホスファチジルグリセロール、および5%のカルジオリピンを含有する一方、ラット肝細胞膜は、14~20%のホスファチジルエタノールアミン、32~47%のホスファチジルコリン、8%のホスファチジルイノシトール、4~8%のホスファチジルセリン、および13~14%のスフィンゴミエリンを含有する。Inagaki、S.ら、Methods(2013)59(3):287-300を参照されたい。したがって、脂質二重層膜足場タンパク質複合体の脂質組成物は、単一のタイプの脂質、または単一のタイプの脂質よりも多い脂質を含み得る。特定の実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体を形成する脂質は、合成脂質または組換え産生脂質である。
【0089】
一部の実施形態では、脂質二重層は、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、およびそれらの誘導体の一つ以上からなる。特定の実施形態では、脂質二重層は、1-ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、1-パルミトイル2-オレオイルホスファチジルコリン(POPC)、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルコリン(SOPC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびホスファチジルセリン(PS)、パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1′-rac-グリセロール)(POPG)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(POPS)、およびホスファチジルイノシトール(PI)またはその組み合わせからなる。特定の実施形態では、脂質二重層は、複数のPOPCリン脂質を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、POPC、POPG、およびPOPSの一つ以上の複数の脂質を含む膜足場タンパク質の周りに円板状のリン脂質二重層を形成する脂質を含む。特定の実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、二つの膜足場タンパク質の周りに円板状のリン脂質二重層を形成する複数のPOPC脂質を含む。こうした一実施形態では、脂質に対するMSPの比は、1:100~1:150、1:110~1:140、1:120~1:140、1:120~1:140、1:120~1:130、および1:125~1:135、両端を含む、である。他の実施形態では、脂質に対するMSPの比は、1:100、1:110、1:111、1:112、1:113、1:114、1:115、1:116、1:117、1:118、1:119、1:120、1:121、1:122、1:123、1:124、1:125、1:126、1:127、1:128、1:129、1:130、1:131、1:132、1:133、1:134、1:135、1:136、1:137、1:138、1:139、1:140、1:141、1:142、1:143、1:144、1:145、1:146、1:147、1:148、1:149または1:150、両端を含む、である。
【0091】
特定の例では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体はまた、少なくとも一つの抗原を含む。特定の実施形態では、抗原は、目的の膜貫通タンパク質またはその一部である。一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質、目的の切断膜貫通タンパク質、目的のキメラ膜貫通タンパク質である。一部の実施形態では、目的の切断された膜貫通タンパク質は、一つ以上の細胞外ループドメイン、目的の完全長膜貫通タンパク質のアミノ末端部分および/またはカルボキシ末端部分を含まない。特定の実施形態では、切断された膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質のアミノ末端部分を含まない。特定の実施形態では、目的の切断された膜貫通タンパク質は、目的の膜貫通タンパク質の少なくとも膜貫通部分全体を含む。その他の実施形態では、切断された膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質のカルボキシ末端部分を含まない。一実施形態では、切断された膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質の細胞外ループドメインを含まない。一部の実施形態では、切断されたタンパク質は、目的の膜貫通タンパク質の細胞外ドメイン、例えば、目的の膜貫通タンパク質のドメインにかかる一つ以上の膜の間のN末端細胞外ドメイン、C末端細胞外ドメイン、および/または細胞外ループドメインを含む。その他の実施形態では、抗原は、本明細書に記載の目的のキメラ膜貫通タンパク質またはその一部である。
【0092】
一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質またはその部分などの抗原を含む脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、抗原の単一分子を含む(例えば、脂質二重層MSP複合体につき、またはナノディスクにつき、膜貫通タンパク質またはその部分の一つのコピー)。一部の実施形態では、抗原を含む脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、抗原の複数の分子を含む(例えば、脂質二重層MSP複合体につき、またはナノディスクにつき、膜貫通タンパク質またはその部分の複数のコピー)。
【0093】
目的の膜貫通タンパク質またはその一部を包含するものを含む脂質二重層膜足場タンパク質複合体の形成は、当技術分野に公知の方法を使用して実施することができる。例えば、Bayburt THら、Arch Biochem Biophys.(2006)450:215-222、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる、を参照されたい。一般的に、脂質二重層膜足場タンパク質複合体の形成は、脂質、MSP、および該当する場合には膜貫通タンパク質を混合することによって複合体の自己組織化を含む。典型的には、膜貫通タンパク質は、一つ以上の洗剤を使用して精製される。一部の実施形態では、精製された膜貫通タンパク質は、脂質およびMSPと混合されて、膜貫通タンパク質を含む脂質二重層膜足場タンパク質複合体を形成する。一部の実施形態では、精製された膜貫通タンパク質は、一つ以上の洗剤(例えば、洗剤可溶化画分)の存在下で提供され、脂質およびMSPと混合され、次いで一つ以上の洗剤が除去されて、複合体構造の形成を誘導する。
【0094】
一部の例では、精製工程を使用して、目的のタンパク質を含む複合体を、含まない複合体(すなわち、空の複合体)から分離することができる。精製は、親和性タグなどの複合体に含まれる目的の膜貫通タンパク質上に一つ以上の検出可能な標識を組み込み、一つ以上の標識を選択することによって達成することができる。親和性タグとして使用するための検出可能な標識の例には、限定されるものではないが、固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によって認識され得るHisタグ、FLAG M1抗FLAG免疫親和性クロマトグラフィー用のFLAGタグ、および1D4樹脂を使用した1D4タグが含まれる。分子ふるいクロマトグラフィーは、例えば、SDSページおよびウェスタンブロット分析を実施して、目的の膜貫通タンパク質またはその一部を含む脂質二重層膜足場タンパク質複合体の存在を識別および/または確認することによっても利用することができる。目的の膜貫通タンパク質およびMSPの両方が検出可能な標識を含む実施形態では、MSP上の少なくとも一つの標識と、目的の膜貫通タンパク質上の一つの標識とが異なる場合がある。
【0095】
特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質またはその一部を含有する脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、最初に、目的の膜貫通タンパク質を洗剤(例えば、N-ドデシル-β-D-マルトシド(DDM)など)中で可溶化し、次いで、コール酸可溶化リン脂質および膜足場タンパク質と混合し、その後、洗剤を除去することによって形成され得る。一部の例では、洗剤は、バイオビーズを使用して混合物から抽出されてもよく、目的の精製された膜貫通タンパク質を統合する円板状の脂質二重層膜足場タンパク質複合体のアセンブリを可能にする。次いで、目的の膜貫通タンパク質を組み込む、円板状の脂質二重層膜足場タンパク質複合体を、親和性精製ビーズを使用して、膜貫通タンパク質を含まない円板状の脂質二重層膜足場タンパク質複合体から単離することができる。例えば、目的の膜貫通タンパク質が、そのc末端またはn末端に、対応する「タグ」配列を含有する場合、抗「タグ」抗体(例えば、FLAG-タグ、His-タグ、HA-タグなど、そのようなタグは当該技術分野で周知である)を有するビーズである。さらなる精製は、分子ふるいクロマトグラフィーによって達成され得る。
【0096】
特定の例では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体に組み込まれる免疫原は、少なくとも0.1mg/mL、少なくとも0.2mg/mL、少なくとも0.3mg/mL、少なくとも0.4mg/mL、少なくとも0.5mg/mL、少なくとも0.6mg/mL、少なくとも0.7mg/mL、少なくとも0.8mg/mL、少なくとも0.9mg/mL、少なくとも1.0mg/mL、少なくとも2.0mg/mL、少なくとも3.0mg/mL、少なくとも4.0mg/mL、少なくとも5.0mg/mL、少なくとも10.0mg/mL以上の濃度で、動物に投与される。特定の実施形態において、免疫原は、0.2mg/mL~20mg/mL、0.5mg/mL~15mg/mL、0.5mg/mL~10mg/mL、0.5mg/mL~7.0mg/mL、0.5mg/mL~5.0mg/mL、1.0mg/mL~10mg/mL、1.0mg/mL~5.0mg/mL、1.0mg/mL~4.0mg/mL、1.0mg/mL~3.0mg/mL、1.0mg/mL~2.0mg/mLまたは2.0mg/mL~5.0mg/mL、両端を含む、の濃度で動物に注射される。特定の実施形態では、免疫原は、0.5mg/mL、0.55mg/mL、0.6mg/mL、0.65mg/mL、0.7mg/mL、0.75mg/mL、0.8mg/mL、0.85mg/mL、0.9mg/mL、0.95mg/mL、1.0mg/mL、1.5mg/mL、1.6mg/mL、1.8mg/mL、2.0mg/mL、2.5mg/mL、3.0mg/mL、3.5mg/mL、4.0mg/mL、4.5mg/mL、5.0mg/mL、5.5mg/mL、6.0mg/mL、6.5mg/mL、7.0mg/mL、7.5mg/mL、8.0mg/mL、8.5mg/mL、9.0mg/mL、9.5mg/mL、10.0mg/mL、12.0mg/mL、15.0mg/mL、20.0mg/mL以上の濃度で動物に注射される。一実施形態では、脂質二重層膜足場タンパク質複合体に組み込まれた目的の免疫原の膜貫通タンパク質は、0.5mg/mLの濃度で動物に注射される。
【0097】
特定の実施形態では、動物は、照射細胞などの免疫原を発現する細胞で免疫化することができる。一つの特定の実施形態では、動物は、本明細書に記載される目的の免疫原の膜貫通タンパク質、その改変型、またはその一部を発現する細胞で免疫化することができる。
【0098】
一部の実施形態では、動物は、動物において目的の膜貫通タンパク質を発現するVLPまたはエクソソームで免疫化することができる。特定の実施形態では、動物は、目的の膜貫通タンパク質、その改変型、またはその一部をコードする核酸を含むVLPで免疫化することができる。
【0099】
一部の例では、動物は、例えば、タンパク質もしくはペプチド、改変されたタンパク質もしくはペプチド、核酸、改変された核酸、VLPおよび本明細書に記載の目的の膜貫通タンパク質もしくはその部分を包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体で免疫化される。
【0100】
免疫化される動物は、任意の動物であってもよい。特定の実施形態では、動物は哺乳動物である。一部の実施形態では、哺乳動物は、マウス、ラット、ヤギ、ヒト、ハムスター、ブタ、サル、またはモルモットである。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトではない。特定の実施形態では、非ヒト哺乳動物は、マウス、ラット、またはヤギである。特定の実施形態では、哺乳動物は、マウスである。別の実施形態では、哺乳動物は、例えば、免疫原に曝露されたヒトなどのヒトである。
【0101】
一部の例では、免疫された動物は遺伝子操作される。遺伝子改変は、タンパク質をコードする遺伝子を削除または遮断するために使用されるものなど、公知の方法によって実施することができる。例えば、動物が内因性遺伝子座位から目的の膜貫通タンパク質(すなわち、抗原)を発現しないように(例えばノックアウト)、動物を遺伝子操作することができる。一例として、遺伝子操作された非ヒト哺乳動物は、例えば、内因性マウス膜貫通タンパク質の遺伝子座または内因性遺伝子の不活性化(例えば、完全または部分的に欠失)に対する遺伝子改変の結果として、目的の内因性マウス膜貫通タンパク質を発現することができないマウスである。
【0102】
特定の実施形態において、遺伝子操作された動物は、例えば、マウス、ヤギまたはラットなどの非ヒト哺乳動物であり、この非ヒト哺乳動物は、ゲノムに、(i)一つ以上のヒト可変重鎖遺伝子セグメントを含む一つ以上のヒト化免疫グロブリン重鎖座位、(ii)一つ以上のヒト可変軽鎖遺伝子セグメントを含むヒト化免疫グロブリン重鎖座位、および/または(iii)一つ以上のヒト可変軽鎖遺伝子セグメントを含むヒト化免疫グロブリン軽鎖座位(例えば、κおよび/またはλ)を(例えば、交配または複数遺伝子標的化戦略を介して)含む。本明細書で使用される場合、用語「ヒト化」は、ヒト配列を含むように改変されたものを含む。例えば、ヒト化座位は、ヒト配列(例えば、遺伝子セグメントまたは遺伝子)を含むように改変された座位(例えば、内因性座位)である。
【0103】
一部の実施形態では、遺伝子操作された動物は、例えば、マウス、ヤギ、またはラットなどの非ヒト哺乳動物であり、そのゲノム中に、一つ以上のヒト可変重鎖遺伝子セグメントを含むヒト化免疫グロブリン重鎖座位を含む。
【0104】
一部の実施形態では、遺伝子操作された動物は、例えば、マウス、ヤギ、またはラットなどの非ヒト哺乳動物であり、そのゲノム中に、一つ以上のヒト可変軽鎖遺伝子セグメントを含むヒト化免疫グロブリン軽鎖座位を含む。
【0105】
一部の実施形態では、遺伝子操作された動物は、例えば、マウス、ヤギ、またはラットなどの非ヒト哺乳動物であり、そのゲノム中に、一つ以上のヒト可変軽鎖遺伝子セグメントを含むヒト化免疫グロブリン軽鎖座位(例えば、κおよび/またはλ)を含む。一実施形態では、遺伝子操作された動物は、一つ以上のヒトカッパ可変(Vκ)遺伝子セグメントを含むヒト化免疫グロブリン軽鎖座位を含む。別の実施形態では、遺伝子操作された動物は、一つ以上のヒトラムダ可変(Vλ)遺伝子セグメントを含むヒト化免疫グロブリン軽鎖座位を含む。
【0106】
一部の実施形態では、ヒトイムノグロブリン重鎖可変領域(V)をコードする核酸配列および/またはヒトイムノグロブリン軽鎖可変領域(V)をコードする核酸配列を含む遺伝子操作された動物は、目的の膜貫通タンパク質をコードする内因性遺伝子も欠く場合もある。
【0107】
他の例では、動物は、目的の膜貫通タンパク質の内因性ホモログを発現する、「野生型」動物である。
【0108】
一部の実施形態では、遺伝子操作された動物(例えば、ラットまたはマウス)は、とりわけ重鎖を含む抗体を産生し、各重鎖は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)の重鎖定常ドメインに操作可能に連結されたヒト重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、遺伝子操作された動物(例えば、ラットまたはマウス)は、とりわけ免疫グロブリン鎖を含む抗体を産生し、各免疫グロブリン鎖は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)の重鎖定常ドメインに操作可能に連結されたヒト軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、遺伝子操作された動物(例えば、ラットまたはマウス)は、とりわけκ軽鎖を含む抗体を産生し、各κ軽鎖は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)のκ軽鎖定常ドメインに操作可能に連結されたヒトκ軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、遺伝子操作された動物(例えば、ラットまたはマウス)は、とりわけλ軽鎖を含む抗体を産生し、各λ軽鎖は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)のλ軽鎖定常ドメインに操作可能に連結されたヒトλ軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、遺伝子操作された動物(例えば、ラットまたはマウス)は、とりわけ軽鎖を含む抗体を産生し、各軽鎖は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)のκ軽鎖定常ドメインに操作可能に連結されたヒトλ軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、遺伝子操作された動物(例えば、ラットまたはマウス)は、とりわけλ軽鎖を含む抗体を産生し、各λ軽鎖は、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)のλ軽鎖定常ドメインに操作可能に連結されたヒトλ軽鎖可変ドメインを含む。
【0109】
一部の実施形態では、本明細書に記載の非ヒト哺乳動物(例えば、ラットまたはマウス)は、例えば、米国特許第8,502,018号、第8,642,835号、第8,697,940号、第8,791,323号、第9,226,484号、およびWO2019/113065に記述されるとおりであり、それらすべてが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。繁殖(または「交配」または「交雑」)は、当技術分野で容易に入手可能なプロトコルに従って行うことができる。例えば、JoVE Science Education Database.Lab Animal Research,Fundamentals of Breeding and Weaning,JoVE、Cambridge、MA,(2018)(video article);Breeding Strategies for Maintaining Colonies of Laboratory Mice、A Jackson Laboratory Resource Manual,(コピーライト)2007 The Jackson Laboratory(すべては参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。あるいは、操作されたIgλ軽鎖座位を、ヒト化IgH座位および/またはヒト化Igκ座位を含むES細胞に操作することができ、得られたES細胞を使用して、遺伝子操作された動物を生成するか、またはヒト化Igλ軽鎖座位を含む遺伝子操作された動物を、ヒト化IgH座位および/またはヒト化Igκ座位を含む別の遺伝子操作された動物と交雑させてもよい。ヒト化IgH座位および/またはヒト化Igκ座位を含む様々な遺伝子操作された動物が公知であり、例えばVELOCIMMUNE(登録商標)系統(例えば、米国特許第8,502,018号および/または第8,642,835号を参照、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、XENOMOUSE(商標)系統(例えば、Mendez、M.J.et al.、1997、Nat.Genetics 15(2):146-56 and Jakobovits、A.et al.、1995、Ann.NY Acad.Sci.764:525-35を参照、参照によりその全体が組み込まれる)、がある。
【0110】
一部の実施形態では、本明細書に記載の遺伝子操作された動物は、米国特許第9,796,788号;第9,969,814号;米国特許公開第2011/0195454A1号、第2012/0021409A1号、第2012/0192300A1号、第2013/0045492A1号、第2013/0185821A1号、第2013/0302836A1号;国際特許出願公開第2011/097603号、第2012/148873号、第2013/134263号、第2013/184761号、第2014/160179号、第2014/160202号(それら全てが、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される限定された免疫グロブリン軽鎖座位を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の齧歯類動物は、WO2019/113065、WO2017214089、US20180125043、ならびに米国特許第9,035,128号、第9,066,502号、第9,163,092号、第9,150,662号、第9,334,333号、第9,006,511号、第9,029,628号、第9,206,261号、第9,012,717号、第9,394,373号、第9,206,262号、第9,206,263号、第9,226,484号、第9,540,452号、および第9,399,683号、それら全てが、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、に記載の免疫グロブリン軽鎖座位を含む。
【0111】
動物が免疫化されると、抗原特異的イムノアッセイを使用して、免疫原に対する動物の免疫反応がモニターされる。動物における体液性免疫反応は、目的の膜貫通タンパク質(抗原)に特異的な血清中の抗体の力価に基づいて決定され得る。ELISAおよびフローサイトメトリーベースのアッセイを含む、抗体力価を決定するために様々なアッセイを用いることができる(例えば、David H.Margulies、Induction of Immune Responses、Current Protocols in Immunology、89、1(2.0.1~2.0.3)(2010)を参照);Henri V.van der Heydeら、「Analysis of antigen-specific antibodies and their isotypes in experimental malaria」、Cytometry,Voltry,Vol.Vol.71A(4):242~250(2007);両方とも参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、アッセイは、細胞表面上に目的の膜貫通タンパク質を発現するか、または発現するように操作された細胞を利用し、抗体力価は、細胞への抗体結合を測定することによって決定することができる。
【0112】
適切な免疫応答が達成されると、免疫された動物から細胞集団が収集される。細胞は、免疫された動物の脾臓、リンパ節、骨髄、および末梢血を含むがこれに限定されない、多数の供給源から収集され得る。一実施形態では、細胞は、免疫された動物の脾臓、すなわち脾細胞の集団から得られた細胞の集団である。一部の実施形態では、細胞集団は、免疫された動物の異なる組織、臓器または領域由来の細胞を含有する、細胞の不均一な集団である。特定の実施形態では、細胞集団は、免疫された動物の脾臓などの一つの臓器から取得される、細胞の均一な集団である。一実施形態では、細胞の集団は、脾臓、リンパ節および骨髄の一つ以上に由来する組織由来細胞を含む。他の実施形態では、細胞集団は、免疫された動物の血液から取得される。
【0113】
免疫された動物から収集された細胞は、(B細胞活性化の結果として)天然に、または組み換え技術および遺伝子工学(ハイブリドーマ細胞など)の結果として)、抗体を発現する細胞を指す、「抗体産生細胞」を含む。したがって、用語「抗体産生細胞」は、リンパ球などの免疫細胞を包含する。特定の非限定的な例では、リンパ球は、抗体を発現するメモリーB細胞、形質芽細胞、および最終分化形質細胞、ならびに抗体を発現するように操作されたハイブリドーマおよび非リンパ様細胞などの組み換え細胞を含む、抗原依存性B細胞系統でありうる。さらに、「抗体産生細胞」は、発現された抗体が細胞膜、すなわち細胞表面抗体、および抗体を分泌する細胞に結合または固定される細胞を包含する。
【0114】
特定の実施形態では、抗体産生細胞の集団は、免疫された動物の脾臓、リンパ節、骨髄、または末梢血由来である。特定の実施形態では、抗体産生細胞の集団は、末梢血細胞、B細胞、形質細胞、形質細胞性骨髄腫、またはそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、抗体産生細胞の集団は、例えば、ハイブリドーマなどの組み換え細胞を含む。特定の実施形態では、抗体産生細胞の集団は、例えば、B細胞などのリンパ球集団である。一実施形態では、抗体産生細胞の集団は、メモリーB細胞から構成される。
【0115】
また、一部の例では、さらなる抗体産生細胞は、本開示の方法によって取得される抗体産生細胞の開始集団から誘導されてもよい。そのため、細胞株、形質細胞、メモリーB細胞、ハイブリドーマ、形質細胞性骨髄腫、および組み換え抗体発現細胞は、抗体産生細胞から誘導または取得され得る。例えば、抗体産生細胞は、ハイブリドーマを作製するために骨髄腫細胞に融合されてもよく、またはウイルス(例えば、EBV)に感染するなど、そうでなければ不死化されてもよく、または特定のB細胞型によって発現されるタンパク質マーカーに基づいて細胞選別技術によって分化されてもよい。
【0116】
特定の実施形態では、用語「抗体産生細胞」は、目的の膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現する細胞を意味する。一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質に結合する抗体は、細胞表面に位置する。特定の例では、抗体産生細胞の集団は、抗体産生細胞の不均一な集団であり、この集団は、複数の抗原に対する抗体を発現する抗体産生細胞を含有する。特定の一実施形態では、抗体産生細胞の集団は、目的の膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現する抗体産生細胞と、少なくとも一つの他の抗原を含有する、抗体産生細胞の不均一な集団である。他の実施形態では、抗体産生細胞の集団は、たった一つの抗原に結合する抗体を発現する抗体産生細胞を含有する、抗体産生細胞の均一な集団であってもよい。特定の実施形態では、抗体産生細胞の集団は、目的の膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現する抗体産生細胞を含む、抗体産生細胞の均一な集団である。
【0117】
表1~5に示すように、様々な異なる免疫原を有する動物および免疫原の組み合わせの免疫化は、目的の膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現する抗体産生細胞の集団を含む、抗体産生細胞の生成をもたらした。表1~5はまた、目的の膜貫通タンパク質をコードする内因性遺伝子を発現しない遺伝子操作された動物の免疫が、目的の膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現する抗体産生細胞を生成したことも示す。
【0118】
目的の膜貫通タンパク質に抗体を発現する抗体産生細胞の採取。
本明細書に記載されるように、膜貫通タンパク質に対する抗体の生成に対する障害には、目的の膜貫通タンパク質に対する抗体を産生する抗体または細胞に対して、十分な量の立体構造的に正確な膜貫通タンパク質抗原を提供することができないことを含む。例えば、精製された内因性膜貫通タンパク質は、その天然膜環境から単離されると立体構造的に損なわれ、現在の脂質ベースおよび細胞ベースの膜調製物は、高レベルの非特異的結合をもたらし、製剤化することが困難であり、展開されたまたは不適切に折り畳まれた膜貫通タンパク質抗原のサブセットを供給することが多い。
【0119】
本開示は、脂質二重層膜足場タンパク質複合体を利用して、抗体産生細胞によって産生された抗体に膜貫通タンパク質抗原を提示することによって、かかる障害を克服する。より詳細には、目的の膜貫通タンパク質、ならびに天然細胞の膜に共通して存在する脂質および膜足場タンパク質を含む複合体を利用して、その膜貫通タンパク質を抗体への天然の立体構造に提示する。このように、脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、自然界で入手しやすい膜貫通タンパク質上のエピトープに結合する集団において、抗体(または抗体を発現する細胞)の特定のサブセットを識別し、回収するために、本発明の方法に使用される。
【0120】
目的の膜貫通タンパク質を含む脂質二重層膜足場タンパク質複合体が形成されると、その複合体は、目的の膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現する抗体産生細胞の集団を検出および単離するためのソーティング剤として使用され得る。例えば、抗体産生細胞の異種集団は、本明細書に記載されるように免疫化された哺乳動物から取得することができ、次いで、抗体産生細胞の集団は、細胞によって産生される抗体に目的の抗原の膜貫通タンパク質を提示する脂質二重層膜足場タンパク質複合体と接触することができる。次いで、抗体産生細胞の複合体および集団をインキュベートして、複合体によって提示された目的の膜貫通タンパク質と細胞によって産生された抗体との間の結合を許容することができる。次いで、抗体と目的の膜貫通タンパク質との間の結合を検出し、さらに使用するために結合した細胞を収集することができる。
【0121】
一部の例では、免疫された動物から得られた抗体産生細胞の集団は、抗体産生細胞の不均一な集団であってもよく、この集団は、一つ以上の抗原に対する抗体を発現する抗体産生細胞を含有する。特定の実施形態では、抗体産生細胞の集団は、目的の膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現する特定の抗体産生細胞と、少なくとも一つの他の抗原に結合する抗体を発現する特定の抗体産生細胞を含む、抗体産生細胞の不均一な集団である。特定の実施形態では、抗体産生細胞の不均一な集団は、少なくとも0.01%、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1.0%、少なくとも1.5%、少なくとも2.0%、少なくとも3.0%、少なくとも4.0%、少なくとも5.0%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80、少なくとも90%、またはそれ以上の目的の膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現する抗体産生細胞からなる。
【0122】
他の実施形態では、抗体産生細胞の集団は、たった一つの抗原に結合する抗体を発現する抗体産生細胞を含有する、抗体産生細胞の均一な集団であってもよい。特定の実施形態では、抗体産生細胞の集団は、目的の膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現する抗体産生細胞を含む、抗体産生細胞の均一な集団である。特定の実施形態では、抗体産生細胞の均一な集団は、対象の膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現する、少なくとも70%、少なくとも80、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはそれ以上の抗体産生細胞からなる。
【0123】
特定の実施形態では、抗体産生細胞が得られたのと同時に、免疫された動物から得られた異種の細胞集団からB細胞を検出および収集して、抗体産生B細胞集団を提供することができる。一部の実施形態では、B細胞は、免疫された動物から得られた異種の細胞集団から取得され、その後、異種の細胞集団から抗体産生細胞を取得することができる。さらに別の実施形態では、B細胞は、免疫された動物から得られた抗体産生細胞集団において検出されて、抗体産生B細胞集団を得ることができる。
【0124】
特定の一実施形態では、目的の膜貫通タンパク質に対する抗体を発現する抗体産生B細胞は、免疫された動物から得られ、細胞表面B細胞マーカーに基づいてFACSによって単離された不均一な細胞集団において検出され得る。
【0125】
B細胞マーカーは当該技術分野で公知である。例えば、FACSの使用を通して検出され得る適用可能なB細胞マーカーには、限定されないが、IgG、IgM、IgE、IgA、IgD、CD1、CD5、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD27、CD30、CD38、CD40、CD78、CD80、CD138、CD319、TLR4、IL-6、PDL-2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、IL-10およびTGFβが挙げられる。特定の実施形態では、B細胞は、IgG、IgM、またはそれらの組み合わせに特異的な標識を使用して検出することができる。一実施形態では、抗体産生B細胞は、IgGに特異的な抗体を使用して検出される。
【0126】
特定の実施形態では、免疫化後、脾細胞は、免疫化された動物から採取される。赤血球の除去後、本明細書に記載される方法を使用して、免疫された動物からのIgG抗原陽性B細胞の集団を、不均一な細胞集団から単離する。例えば、脾細胞は、抗IgG抗体と接触し、洗浄して、過剰な非結合細胞および抗体を除去する。次いで、細胞を、標識されたB細胞マーカー(例えば、抗IgG抗体)に結合する蛍光抗体(すなわち、二次抗体)で染色する。次いで、本明細書に記載されるように、染色された細胞をフローサイトメトリーにより分析し、さらなる使用のために単離することができる。
【0127】
本方法の一部の実施形態では、末梢血単核細胞(PBMC)は、目的の抗原に対する体液性性免疫を有することが知られている哺乳動物から採取される。次いで、本開示の方法に従って、目的の抗原を認識する抗体を発現するIgG、抗原陽性B細胞を、さらなる処理のために単離することができる。
【0128】
方法の一部の実施形態では、抗体産生細胞の集団は、抗体産生B細胞を含む。こうした一実施形態では、抗体産生集団は、目的の膜貫通タンパク質に対して抗体を発現する抗体産生B細胞を含み、免疫された動物から得られた不均一な細胞集団において検出され、不均一な細胞集団を目的の膜貫通タンパク質を、提示する脂質二重層膜足場タンパク質複合体、および例えば、B細胞表面マーカーに結合する抗体などのB細胞マーカーに結合する分子と接触させることによって単離することができる。例えば、免疫化後、脾細胞は、免疫化された動物から採取される。赤血球の除去後、複数の細胞集団は、不均一な細胞集団において、抗IgG抗体とIgG陽性B細胞との間の結合を可能にするために、標識された抗IgG抗体とインキュベートされる。標識された抗IgG抗体とのインキュベーションと同時に、または後または前に、不均一な細胞集団は、膜足場タンパク質を細胞によって産生された抗体に結合することが可能になるように、目的の膜貫通タンパク質を提示する標識された脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされる。次いで、目的の膜貫通タンパク質に対して抗体を発現する抗体産生B細胞の集団は、例えば、フローサイトメトリーによって、標識抗IgG抗体(B細胞)および標識脂質二重層膜足場タンパク質複合体の両方に結合された細胞を検出および単離(採取)することによって取得され得る。
【0129】
一部の例では、方法は、本明細書に記載の動物を免疫化することを含む。
【0130】
例えば、抗体産生細胞の集団などの細胞の集団を脂質二重層膜足場タンパク質複合体と接触させるまたはインキュベートすることを含む例において、脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、少なくとも0.1mg/mL、少なくとも0.2mg/mL、少なくとも0.3mg/mL、少なくとも0.4mg/mL、少なくとも0.5mg/mL、少なくとも0.6mg/mL、少なくとも0.7mg/mL、少なくとも0.8mg/mL、少なくとも0.9mg/mL、少なくとも1.0mg/mL、少なくとも2.0mg/mL、少なくとも3.0mg/mL、少なくとも4.0mg/mL、少なくとも5.0mg/mL、少なくとも10.0mg/mLまたはそれ以上の濃度で、細胞培地に供給される。特定の実施形態において、複合体は、0.2mg/mL~20.0mg/mL、0.2mg/mL~15.0mg/mL、0.2mg/mL~10mg/mL、0.2mg/mL~7.0mg/mL、0.2mg/mL~5.0mg/mL、0.5mg/mL~10.0mg/mL、0.5mg/mL~7.0mg/mL、0.5mg/mL~5.0mg/mL、1.0mg/mL~10.0mg/mL、1.0mg/mL~7.0mg/mLまたは1.0mg/mL~5.0mg/mL、両端を含む、の濃度で細胞に供給される。特定の実施形態では、複合体は、0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.55mg/mL、0.6mg/mL、0.65mg/mL、0.7mg/mL、0.75mg/mL、0.8mg/mL、0.85mg/mL、0.9mg/mL、0.95mg/mL、1.0mg/mL、1.5mg/mL、1.6mg/mL、1.8mg/mL、2.0mg/mL、2.5mg/mL、3.0mg/mL、3.5mg/mL、4.0mg/mL、4.5mg/mL、5.0mg/mL、5.5mg/mL、6.0mg/mL、6.5mg/mL、7.0mg/mL、7.5mg/mL、8.0mg/mL、8.5mg/mL、9.0mg/mL、9.5mg/mL、10.0mg/mL、12.0mg/mL、15.0mg/mL、20.0mg/mLまたはそれ以上の濃度で細胞に供給される。
【0131】
方法の一態様では、免疫された動物は、非ヒト動物または例えばマウスまたはラットなどの遺伝子操作された非ヒト動物であり、目的のヒト膜貫通タンパク質またはその一部、それらまたはそれらの組み合わせをコードする核酸配列で免疫化される。
【0132】
本方法の特定の実施形態では、非ヒト動物または遺伝子操作された非ヒト動物、例えば、マウスまたはラットは、目的の完全長ヒト膜貫通タンパク質、それらまたはそれらの組み合わせをコードする核酸配列で免疫化され、脾細胞は免疫された非ヒト動物(例えば、ラットまたはマウス)から単離され、B細胞マーカーに対する標識された抗体(例えば、蛍光色素標識された抗IgG抗体)とインキュベートされて、B細胞の集団を識別する。細胞はまた、完全長ヒト膜貫通タンパク質を包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされ、複合体によって提示された目的のヒト膜貫通タンパク質(抗原)と細胞によって産生された抗体とで結合を可能にする。その後、細胞は、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中のビオチン標識(例えば、Bir-A)膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となる。次いで、細胞を洗浄することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識された抗IgGシグナル)は、FACSによって検出されて、目的の完全長ヒト膜貫通タンパク質上のエピトープに結合する抗体を発現する抗体産生B細胞の均一な集団を識別し、収集することができる。
【0133】
本方法の一部の実施形態では、非ヒト動物または遺伝子操作された非ヒト動物、例えば、マウスまたはラットは、目的の完全長ヒト膜貫通タンパク質、それらまたはそれらの組み合わせをコードする核酸配列で免疫化され、脾細胞は免疫された非ヒト動物(例えば、ラットまたはマウス)から単離され、B細胞マーカーに対する標識された抗体(例えば、蛍光色素標識された抗IgG抗体)とインキュベートされて、B細胞の集団を識別する。細胞はまた、切断されたヒト膜貫通タンパク質などのヒト膜貫通タンパク質の部分を包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされ、複合体によって提示された目的のヒト膜貫通タンパク質(抗原)の部分上のエピトープと、細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。その後、細胞は、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中のビオチン標識(例えば、Bir-A)膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となる。細胞はその後洗浄することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識抗IgGシグナル)は、FACSによって検出されて、複合体によって提示された抗原上でエピトープと結合する抗体を発現する抗体産生B細胞の均一な集団を識別し、回収することができる。
【0134】
目的の膜貫通タンパク質の一部分を含む脂質二重層膜足場タンパク質複合体を含む方法の実施形態では、複合体によって提示された膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質を含まない。一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、本明細書に記載されるように切断された膜貫通タンパク質である。特定の実施形態では、目的の切断された膜貫通タンパク質は、目的の膜貫通タンパク質の少なくとも膜貫通部分全体を含む。特定の実施形態では、切断された膜貫通タンパク質は、一つ以上の細胞外ループドメイン、目的の完全長膜貫通タンパク質のアミノ末端部分および/またはカルボキシ末端部分を含まない。一部の実施形態では、切断されたタンパク質は、目的の膜貫通タンパク質の細胞外ドメイン、例えば、目的の膜貫通タンパク質のドメインにかかる一つ以上の膜の間のN末端細胞外ドメイン、C末端細胞外ドメイン、および/または細胞外ループドメインを含む。特定の実施形態では、切断された膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質のアミノ末端部分を含まない。特定の実施形態では、切断された膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質のカルボキシ末端部分を含まない。一部の実施形態では、切断された膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質の細胞外ループドメインを含まない。
【0135】
方法の別の実施形態では、非ヒト動物または遺伝子操作された非ヒト動物、例えばマウスまたはラットは、目的の完全長ヒト膜貫通タンパク質、それらまたはそれらの組み合わせをコードする核酸配列で免疫化される。脾細胞は、免疫された非ヒト動物(例えば、ラットまたはマウス)から単離され、B細胞マーカー(例えば、蛍光色素標識抗IgG抗体)に対して標識された抗体とインキュベートされて、B細胞集団を識別する。細胞はまた、目的のヒト膜貫通タンパク質の部分および目的の膜貫通タンパク質の非ヒトホモログの部分を含むキメラ膜貫通タンパク質を包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされて、複合体によって提示された目的のキメラ膜貫通タンパク質(抗原)と細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。次いで、細胞を洗浄することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識された抗IgGシグナル)は、FACSによって検出されて、目的のキメラ膜貫通タンパク質のヒト部分上のエピトープに結合する抗体を発現する抗体産生B細胞の均一な集団を識別し、収集することができる。
【0136】
目的のキメラ膜貫通タンパク質の使用を含む方法の実施形態では、キメラタンパク質は、本明細書に記載される二つの異なる種からの目的の膜貫通タンパク質の部分を含み得る。例えば、キメラ膜貫通タンパク質は、目的の膜貫通タンパク質の非ヒトホモログの一つ以上の部分に操作可能に結合されたヒト膜貫通タンパク質の一つ以上の部分を含み得る。一部の例では、キメラ膜貫通タンパク質は、目的の膜貫通タンパク質の細胞外ドメイン、例えば、目的の膜貫通タンパク質のドメインにかかる一つ以上の膜の間に、N末端細胞外ドメイン、C末端細胞外ドメイン、および/または細胞外ループドメインを含む。非ヒトホモログは、例えば、マウス、ラット、ヤギ、ハムスター、ブタ、チンパンジー、ウマ、ヒツジ、サル、およびモルモットなどの任意の非ヒト動物であってもよい。特定の実施形態では、非ヒト哺乳動物は、マウス、ラット、またはヤギである。特定の実施形態では、非ヒト哺乳動物は、マウスである。
【0137】
本発明の方法の例示的な実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、目的のヒト膜貫通タンパク質由来の一つ以上の細胞外ループドメインならびに膜貫通タンパク質の非ヒトホモログ由来のアミノ末端ドメインおよび/またはカルボキシ末端ドメインを含む。一実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、ヒト膜貫通タンパク質由来の一つ以上の細胞外ループドメインならびにカルボキシ末端ドメインおよび膜貫通タンパク質の非ヒトホモログ由来のアミノ末端ドメインを含む。別の実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、一つ以上の細胞外ループドメインおよびヒト膜貫通タンパク質由来のアミノ末端ドメインおよび膜貫通タンパク質の非ヒトホモログ由来のカルボキシ末端ドメインを含む。別の実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、ヒト膜貫通タンパク質由来のアミノ末端ドメインおよびカルボキシ末端ドメインならびに膜貫通タンパク質の非ヒトホモログ由来の一つ以上の細胞外ループドメインを含む。一実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、ヒト膜貫通タンパク質由来のアミノ末端ドメインおよび一つ以上の細胞外ループドメインおよび膜貫通タンパク質由来の非ヒトホモログ由来のカルボキシ末端ドメインを含む。さらに別の実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、非ヒトホモログ由来の一つ以上の細胞外ループドメインおよび膜貫通タンパク質の非ヒトホモログ由来のアミノ末端ドメインを含む。
【0138】
方法の別の実施形態では、非ヒト動物または遺伝子操作された非ヒト動物、例えばマウスまたはラットは、目的の完全長ヒト膜貫通タンパク質、それらまたはそれらの組み合わせをコードする核酸配列で免疫化される。脾細胞は、免疫された非ヒト動物から単離され、B細胞マーカー(例えば、蛍光色素標識抗IgG抗体)に対して標識された抗体とインキュベートされて、B細胞集団を識別する。細胞はまた、膜貫通タンパク質の非ヒトホモログを包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされて、複合体によって提示された非ヒト膜貫通タンパク質(抗原)と細胞によって産生された交差反応性抗体との結合を可能にする。次いで、細胞を洗浄することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識された抗IgGシグナル)は、FACSによって検出されて、目的の非ヒト膜貫通タンパク質および目的のヒト膜貫通タンパク質に提示されたエピトープに結合する交差反応性抗体を発現する均一な抗体産生B細胞の集団を識別し、回収することができる。
【0139】
目的の膜貫通タンパク質またはその一部の非ヒトホモログの使用を含む本発明の方法の実施形態では、非ヒトホモログは、任意の非ヒト生物であってもよい。非ヒト生物の特定の例には、限定されないが、非ヒト哺乳動物、爬虫類、魚、細菌、昆虫、およびウイルスが含まれる。一部の実施形態では、非ヒトタンパク質は、マウス、ラット、ヤギ、ハムスター、ブタ、チンパンジー、ウマ、ヒツジ、サル、およびモルモット由来であってもよい。特定の実施形態では、非ヒトタンパク質ホモログは、マウス、ラット、またはヤギ由来である。特定の実施形態では、非ヒトホモログは、目的の膜貫通タンパク質のマウスホモログである。
【0140】
方法の一部の実施形態では、非ヒト動物または遺伝子操作された非ヒト動物、例えばマウスまたはラットは、目的の完全長ヒト膜貫通タンパク質、同タンパク質をコードする核酸配列またはそれらの組み合わせで免疫化され、脾細胞は、免疫された非ヒト動物(例えば、ラットまたはマウス)から単離され、目的の完全長ヒト膜貫通の部分(ペプチドブロッキング剤)とインキュベートされて、ペプチドブロッキング剤と、ブロッキング剤に位置するエピトープに特異的に結合する細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。細胞はまた、B細胞マーカー(例えば、蛍光色素標識された抗IgG抗体)に対する標識抗体とインキュベートされて、B細胞集団を識別し、完全長膜貫通タンパク質を包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされて、複合体によって提示された目的の完全長膜貫通タンパク質(抗体)と、集団内の残りの結合していない細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。その後、細胞は、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中のビオチン(例えば、Bir-A)標識膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となる。次いで、細胞を洗浄して、ペプチドブロッキング剤に結合されたすべての細胞、結合していないおよび余剰なPE-ストレプトアビジンを除去し、B細胞マーカーに対する標識抗体を選別から除去することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識抗IgGシグナル)は、FACSによって検出されて、ペプチドブロッキング剤に対応する部分に存在しない目的の完全長ヒト膜貫通タンパク質上のエピトープに結合する抗体を発現する抗体産生B細胞の均一な集団を識別し、収集することができる。
【0141】
ブロッキング剤の使用を含む方法の実施形態では、ブロッキング剤は、例えば、ペプチド、ポリペプチド、化学化合物などの任意の分子であってもよい。こうした実施形態では、ブロッキング剤は、目的の膜貫通タンパク質の一部に対応するポリペプチドもしくはペプチド、MSPタンパク質の一部に対応するポリペプチドもしくはポリペプチド、またはHisタグもしくはFlagタグなどの検出可能なマーカーであり得る。いくつかの実施形態では、ブロッキング剤は、検出可能な標識を含む。他の実施形態では、ブロッキング剤は、検出可能な標識を含まない。一実施形態では、ブロッキング剤は、目的の膜貫通タンパク質のペプチドまたはポリペプチド部分であり、抗体産生細胞の集団とインキュベートして、ブロッキング剤と、ブロッキング剤に位置するエピトープに特異的に結合する抗体産生細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。一実施形態では、ブロッキング剤は、目的の切断された膜貫通タンパク質である。特定の実施形態では、ブロッキング剤は、一つ以上の細胞外ループドメイン、目的の完全長膜貫通タンパク質のアミノ末端部分およびカルボキシ末端部分に対応するポリペプチドである。特定の実施形態では、ブロッキング剤は、目的の完全長膜貫通タンパク質のアミノ末端部分を含むポリペプチドであってもよい。別の実施形態では、ブロッキング剤は、目的の完全長膜貫通タンパク質のカルボキシ末端部分を含むポリペプチドであってもよい。一実施形態では、ブロッキング剤は、目的の完全長膜貫通タンパク質の細胞外ループドメインを含むポリペプチドであってもよい。一部の実施形態では、ブロッキング剤は、目的の膜貫通タンパク質の細胞外ドメイン、例えば、目的の完全長膜貫通タンパク質のドメインにかかる一つ以上の膜の間のN末端細胞外ドメイン、C末端細胞外ドメイン、および/または細胞外ループドメインを含む。別の実施形態では、ブロッキング剤は、MSPタンパク質のペプチドまたはポリペプチド部分であり、抗体産生細胞の集団とインキュベートして、ブロッキング剤と、ブロッキング剤に位置するエピトープに特異的に結合する抗体産生細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。さらに別の実施形態では、ブロッキング剤は、MSPまたは目的の膜貫通タンパク質に位置するペプチドまたはポリペプチド検出可能マーカーであり、抗体産生細胞の集団とインキュベートして、ブロッキング剤と、ブロッキング剤に位置するエピトープに特異的に結合する抗体産生細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。
【0142】
方法の他の実施形態では、非ヒト動物または遺伝子操作された非ヒト動物、例えばマウスまたはラットは、目的の完全長ヒト膜貫通タンパク質、それらまたはそれらの組み合わせをコードする核酸配列(免疫原)で免疫化される。
【0143】
一部の実施形態では、脾細胞は、免疫された非ヒト動物(例えば、ラットまたはマウス)から単離され、B細胞マーカー(例えば、蛍光色素標識抗IgG抗体)に対して標識された抗体とインキュベートされて、B細胞集団を識別する。細胞はまた、完全長ヒト膜貫通タンパク質を包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされて、複合体によって提示された目的の完全長膜貫通タンパク質(抗原)と細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。次いで、細胞を洗浄することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識抗IgGシグナル)は、FACSによって検出されて、アミノ酸配列または免疫原に存在するまたは免疫原によってコードされたドメインにも対応する、目的の抗原の完全長ヒト膜貫通タンパク質の部分に位置するエピトープに結合する抗体を発現する抗体産生B細胞の均一な集団を識別し、回収することができる。
【0144】
方法の他の実施形態では、非ヒト動物または遺伝子操作された非ヒト動物、例えば、マウスまたはラットは、目的の完全長ヒト膜貫通タンパク質、それらまたはそれらの組み合わせをコードする核酸配列で免疫化され、脾細胞は免疫された非ヒト動物(例えば、ラットまたはマウス)から単離され、B細胞マーカーに対する標識された抗体(例えば、蛍光色素標識された抗IgG抗体)とインキュベートされて、B細胞の集団を識別する。細胞はまた、免疫原として使用されるヒト膜貫通タンパク質の部分を包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされて、複合体によって提示された目的のヒト膜貫通タンパク質の部分のエピトープ(抗原)と細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。その後、細胞は、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中のビオチン標識(例えば、Bir-A)膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となる。細胞はその後洗浄することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識抗IgGシグナル)は、FACSによって検出されて、複合体によって提示された抗原上でエピトープと結合する抗体を発現する抗体産生B細胞の均一な集団を識別し、回収することができる。
【0145】
目的の膜貫通タンパク質の一部分の使用を含む本発明の方法の実施形態では、膜貫通タンパク質の部分は、ペプチドまたはポリペプチドであって、目的の完全長膜貫通タンパク質を含まない。一実施形態では、目的の切断された膜貫通タンパク質は、一つ以上の細胞外ループドメイン、目的の完全長膜貫通タンパク質のアミノ末端部分および/またはカルボキシ末端部分を含まない改変された膜貫通タンパク質であってもよい。特定の実施形態では、目的の改変膜貫通タンパク質は、切断された膜貫通タンパク質であってもよい。一部の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質の部分は、検出可能な標識を含む。他の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質の部分は、検出可能な標識を含まない。特定の実施形態では、目的の切断された膜貫通タンパク質は、目的の膜貫通タンパク質の少なくとも膜貫通部分全体を含む。特定の実施形態では、切断された膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質のアミノ末端部分を含まない。特定の実施形態では、切断された膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質のカルボキシ末端部分を含まない。一部の実施形態では、切断されたタンパク質は、目的の膜貫通タンパク質の細胞外ドメイン、例えば、目的の膜貫通タンパク質のドメインにかかる一つ以上の膜の間のN末端細胞外ドメイン、C末端細胞外ドメイン、および/または細胞外ループドメインを含む。一実施形態では、切断された膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質の細胞外ループドメインを含まない。
【0146】
方法の別の態様では、遺伝子操作された動物は、内因性遺伝子から目的の膜貫通タンパク質を発現せず、目的の非ヒト膜貫通タンパク質またはその一部、それらまたはそれらの組み合わせをコードする核酸配列で免疫化される。
【0147】
目的の非ヒト膜貫通タンパク質および遺伝子操作された動物は、同じ動物または異なる動物由来であってもよい。目的の非ヒト膜貫通タンパク質は、任意の非ヒト生物由来であってもよい。非ヒト生物の非限定的な例には、非ヒト哺乳動物、爬虫類、魚、細菌、昆虫、およびウイルスが含まれる。一部の実施形態では、非ヒト膜貫通タンパク質は、例えば、マウス、ラット、ヤギ、ハムスター、ブタ、チンパンジー、ウマ、ヒツジ、サル、およびモルモットなどの動物由来である。特定の実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物である。他の実施形態では、非ヒト膜貫通タンパク質は、マウス、ラット、またはヤギ由来である。特定の実施形態では、非ヒト哺乳動物は、マウスである。
【0148】
方法の特定の実施形態では、遺伝子操作された動物は、マウスまたはラットなどの非ヒト動物であり、目的の完全長非ヒト膜貫通タンパク質、それらまたはそれらの組み合わせをコードする核酸配列(免疫原)で免疫化される。脾細胞は、免疫された遺伝子操作された動物(例えば、ラットまたはマウス)から単離され、B細胞マーカー(例えば、蛍光色素標識抗IgG抗体)に対して標識された抗体とインキュベートされて、B細胞集団を識別する。細胞はまた、完全長非ヒト膜貫通タンパク質を包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされて、複合体によって提示された目的の膜貫通タンパク質(抗原)と細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。その後、細胞は、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中のビオチン標識(例えば、Bir-A)膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となる。次いで、細胞を洗浄することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識抗IgGシグナル)は、FACSによって検出され、目的の完全長非ヒト膜貫通タンパク質上のエピトープに結合する抗体を発現する抗体産生B細胞の均一な集団を識別し、収集することができる。
【0149】
方法の他の実施形態では、遺伝子操作された非ヒト動物、例えば、マウスまたはラットは、目的の完全長ヒト膜貫通タンパク質、それらまたはそれらの組み合わせをコードする核酸配列で免疫化され、脾細胞は免疫された非ヒト動物(例えば、ラットまたはマウス)から単離され、B細胞マーカーに対する標識された抗体(例えば、蛍光色素標識された抗IgG抗体)とインキュベートされて、B細胞の集団を識別する。細胞はまた、目的の完全長ヒト膜貫通タンパク質を包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされ、複合体によって提示された目的のヒト膜貫通タンパク質(抗原)と細胞によって産生された抗体とで結合を可能にする。その後、細胞は、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中のビオチン標識(例えば、Bir-A)膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となる。次いで、細胞を洗浄することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識抗IgGシグナル)は、FACSによって検出され、目的の完全長非ヒト膜貫通タンパク質および目的の非ヒト膜貫通タンパク質上のエピトープに結合する交差反応性抗体を発現する抗体産生B細胞の均一な集団を識別し、収集することができる。
【0150】
方法の一部の実施形態では、遺伝子操作された非ヒト動物、例えば、マウスまたはラットは、目的の完全長ヒト膜貫通タンパク質、それらまたはそれらの組み合わせをコードする核酸配列で免疫化され、脾細胞は免疫された非ヒト動物(例えば、ラットまたはマウス)から単離され、B細胞マーカーに対する標識された抗体(例えば、蛍光色素標識された抗IgG抗体)とインキュベートされて、B細胞の集団を識別する。細胞はまた、切断された膜貫通タンパク質などの完全長非ヒト膜貫通タンパク質の部分を包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされ、複合体によって提示された目的の膜貫通タンパク質(抗原)の部分上のエピトープと、細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。その後、細胞は、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中のビオチン標識(例えば、Bir-A)膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となる。細胞はその後洗浄することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識抗IgGシグナル)は、FACSによって検出されて、複合体によって提示された抗原上でエピトープと結合する抗体を発現する抗体産生B細胞の均一な集団を識別し、回収することができる。
【0151】
目的の膜貫通タンパク質の一部分を含む脂質二重層膜足場タンパク質複合体を含む方法の実施形態では、複合体によって提示された膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質を含まない。一実施形態では、目的の膜貫通タンパク質は、一つ以上の細胞外ループドメイン、目的の完全長膜貫通タンパク質のアミノ末端部分および/またはカルボキシ末端部分を含まない切断された膜貫通タンパク質である。特定の実施形態では、目的の切断された膜貫通タンパク質は、目的の膜貫通タンパク質の少なくとも膜貫通部分全体を含む。一部の実施形態では、切断されたタンパク質は、目的の膜貫通タンパク質の細胞外ドメイン、例えば、目的の膜貫通タンパク質のドメインにかかる一つ以上の膜の間のN末端細胞外ドメイン、C末端細胞外ドメイン、および/または細胞外ループドメインを含む。特定の実施形態では、切断された膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質のアミノ末端部分を含まない。特定の実施形態では、切断された膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質のカルボキシ末端部分を含まない。一実施形態では、切断された膜貫通タンパク質は、目的の完全長膜貫通タンパク質の細胞外ループドメインを含まない。
【0152】
方法の特定の実施形態では、例えばマウスまたはラットなどの遺伝子操作された非ヒト動物は、目的の完全長非ヒト膜貫通タンパク質、それまたはそれらの組み合わせをコードする核酸配列で免疫化され、脾細胞は、免疫された動物から単離され、B細胞マーカー(例えば、蛍光色素標識抗IgG抗体の集団)に対する標識抗体とインキュベートされて、B細胞の集団を識別する。細胞はまた、目的の膜貫通タンパク質の非ヒトホモログの部分および目的のヒト膜貫通タンパク質の部分を含むキメラ膜貫通タンパク質を包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされて、複合体によって提示された目的のキメラ膜貫通タンパク質の非ヒト部分(抗原)と、細胞によって産生された複合体および抗体によって提示された目的のキメラ膜貫通タンパク質の非ヒト部分(抗原)との結合を可能にする。次いで、細胞を洗浄することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識抗IgGシグナル)は、FACSによって検出されて、目的のキメラ膜貫通タンパク質の非ヒト部分上のエピトープに結合する抗体を発現する抗体産生B細胞の均一な集団を識別し、収集することができる。
【0153】
目的のキメラ膜貫通タンパク質の使用を含む方法の実施形態では、キメラタンパク質は、本明細書に記載される二つの異なる種からの目的の膜貫通タンパク質の部分を含み得る。例えば、キメラ膜貫通タンパク質は、膜貫通タンパク質の非ヒトホモログの一つ以上の部分に操作可能に結合されたヒト膜貫通タンパク質の一つ以上の部分を含み得る。一部の例では、キメラ膜貫通タンパク質は、目的の膜貫通タンパク質の細胞外ドメイン、例えば、目的の膜貫通タンパク質のドメインにかかる一つ以上の膜の間に、N末端細胞外ドメイン、C末端細胞外ドメイン、および/または細胞外ループドメインを含む。非ヒトホモログは、例えば、マウス、ラット、ヤギ、ハムスター、ブタ、チンパンジー、ウマ、ヒツジ、サル、およびモルモットなどの任意の非ヒト動物であってもよい。特定の実施形態では、非ヒト哺乳動物は、マウス、ラット、またはヤギである。特定の実施形態では、非ヒト哺乳動物は、マウスである。
【0154】
本方法の例示的な実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、ヒト膜貫通タンパク質由来の一つ以上の細胞外ループドメイン、ならびに膜貫通タンパク質の非ヒトホモログ由来のアミノ末端ドメインおよび/またはカルボキシ末端ドメインを含む。一実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、一つ以上の細胞外ループドメインならびに膜貫通タンパク質由来の非ヒトホモログ由来のアミノ末端ドメインおよび/またはカルボキシ末端ドメインを含む。別の実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、一つ以上の細胞外ループドメインおよびヒト膜貫通タンパク質由来のアミノ末端ドメインおよび膜貫通タンパク質の非ヒトホモログ由来のカルボキシ末端ドメインを含む。別の実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、ヒト膜貫通タンパク質由来のアミノ末端ドメインおよびカルボキシ末端ドメインならびに膜貫通タンパク質の非ヒトホモログ由来の一つ以上の細胞外ループドメインを含む。一実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、ヒト膜貫通タンパク質由来のアミノ末端ドメインおよび一つ以上の細胞外ループドメインおよび膜貫通タンパク質由来の非ヒトホモログ由来のカルボキシ末端ドメインを含む。さらに別の実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、非ヒトホモログ由来の一つ以上の細胞外ループドメインおよび膜貫通タンパク質の非ヒトホモログ由来のアミノ末端ドメインを含む。
【0155】
方法の他の実施形態では、例えばマウスまたはラットなどの遺伝子操作された非ヒト動物は、目的の完全長非ヒト膜貫通タンパク質の一部、それらをコードする核酸配列、またはそれらの組み合わせ(免疫原)で免疫化される。
【0156】
このような例示的な一実施形態では、脾細胞は、免疫された遺伝子操作された動物から単離され、B細胞マーカー(例えば、蛍光色素標識抗IgG抗体)に対して標識された抗体とインキュベートされて、B細胞集団を識別する。細胞はまた、完全長非ヒト膜貫通タンパク質を包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされて、複合体によって提示された目的の完全長膜貫通タンパク質(抗原)と細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。次いで、細胞を洗浄することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識抗IgGシグナル)は、FACSによって検出されて、アミノ酸配列または免疫原に存在するまたは免疫原によってコードされたドメインにも対応する、目的の抗原の完全長非ヒト膜貫通タンパク質の部分に位置するエピトープに結合する抗体を発現する抗体産生B細胞の均一な集団を識別し、回収することができる。
【0157】
方法の他の実施形態では、遺伝子操作された非ヒト動物、例えば、マウスまたはラットは、目的の完全長非ヒト膜貫通タンパク質、それらまたはそれらの組み合わせをコードする核酸配列で免疫化され、脾細胞は免疫された非ヒト動物(例えば、ラットまたはマウス)から単離され、B細胞マーカーに対する標識された抗体(例えば、蛍光色素標識された抗IgG抗体)とインキュベートされて、B細胞の集団を識別する。細胞はまた、免疫原として使用される非ヒト膜貫通タンパク質の部分を包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされて、複合体によって提示された目的のヒト膜貫通タンパク質の部分のエピトープ(抗原)と細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。その後、細胞は、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中のビオチン(例えば、Bir-A)標識膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となる。次いで、細胞を洗浄することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識抗IgGシグナル)は、FACSによって検出されて、複合体によって提示された抗原上でエピトープと結合する抗体を発現する抗体産生B細胞の均一な集団を識別し、回収することができる。
【0158】
方法の別の態様では、内因性遺伝子から目的の膜貫通タンパク質を発現しない遺伝子操作された動物は、目的のキメラ膜貫通タンパク質、またはそれをコードする核酸で免疫化される。
【0159】
目的のキメラ膜貫通タンパク質の使用を含む例では、キメラタンパク質は、本明細書に記載される二つの異なる種からの目的の膜貫通タンパク質の部分を含み得る。例えば、キメラ膜貫通タンパク質は、膜貫通タンパク質の非ヒトホモログの一つ以上の部分に操作可能に結合されたヒト膜貫通タンパク質の一つ以上の部分を含み得る。一部の例では、キメラ膜貫通タンパク質は、目的のヒト膜貫通タンパク質の細胞外ドメイン、例えば、目的の膜貫通タンパク質のドメインにかかる一つ以上の膜に操作可能に結合されたN末端細胞外ドメイン、C末端細胞外ドメイン、および/または細胞外ループドメインを含む。非ヒトホモログは、例えば、マウス、ラット、ヤギ、ハムスター、ブタ、チンパンジー、ウマ、ヒツジ、サル、およびモルモットなどの任意の非ヒト動物であってもよい。特定の実施形態では、非ヒト哺乳動物は、マウス、ラット、またはヤギである。特定の実施形態では、非ヒト哺乳動物は、マウスである。
【0160】
本発明の方法の例示的な実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、目的のヒト膜貫通タンパク質由来の一つ以上の細胞外ループドメインならびに膜貫通タンパク質の非ヒトホモログ由来のアミノ末端ドメインおよび/またはカルボキシ末端ドメインを含む。一実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、ヒト膜貫通タンパク質由来の一つ以上の細胞外ループドメインならびにカルボキシ末端ドメインおよび膜貫通タンパク質の非ヒトホモログ由来のアミノ末端ドメインを含む。別の実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、一つ以上の細胞外ループドメインおよびヒト膜貫通タンパク質由来のアミノ末端ドメインおよび膜貫通タンパク質の非ヒトホモログ由来のカルボキシ末端ドメインを含む。別の実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、ヒト膜貫通タンパク質由来のアミノ末端ドメインおよびカルボキシ末端ドメインならびに膜貫通タンパク質の非ヒトホモログ由来の一つ以上の細胞外ループドメインを含む。一実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、ヒト膜貫通タンパク質由来のアミノ末端ドメインおよび一つ以上の細胞外ループドメインおよび膜貫通タンパク質由来の非ヒトホモログ由来のカルボキシ末端ドメインを含む。さらに別の実施形態では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、膜貫通ドメインに操作可能に結合された非ヒトホモログ由来の一つ以上の細胞外ループドメイン、および膜貫通タンパク質の非ヒトホモログ由来のアミノ末端ドメインを含む。
【0161】
方法の特定の一実施形態では、遺伝子操作された非ヒト動物、例えば、マウスまたはラットは、ヒト膜貫通タンパク質の部分および膜貫通タンパク質の非ヒトホモログの部分を含むキメラ膜貫通タンパク質、それらまたはそれらの組み合わせをコードする核酸配列で免疫化され、脾細胞は免疫された非ヒト動物(例えば、ラットまたはマウス)から単離され、B細胞マーカーに対する標識された抗体(例えば、蛍光色素標識された抗IgG抗体)とインキュベートされて、B細胞の集団を識別する。細胞はまた、目的の完全長ヒト膜貫通タンパク質(抗原)を包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされ、複合体によって提示されたヒト抗原と、目的のキメラ膜貫通タンパク質のヒト部分に特異的な細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。次いで、細胞を洗浄することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識された抗IgGシグナル)は、FACSによって検出されて、目的のキメラ膜貫通タンパク質のヒト部分上のエピトープに結合する抗体を発現する抗体産生B細胞の均一な集団を識別し、収集することができる。
【0162】
方法の別の実施形態では、遺伝子操作された非ヒト動物、例えば、マウスまたはラットは、目的のヒト膜貫通タンパク質の部分および目的の膜貫通タンパク質の非ヒトホモログの部分を含むキメラ膜貫通タンパク質、それらまたはそれらの組み合わせをコードする核酸配列で免疫化され、脾細胞は免疫された非ヒト動物(例えば、ラットまたはマウス)から単離され、B細胞マーカーに対する標識された抗体(例えば、蛍光色素標識された抗IgG抗体)とインキュベートされて、B細胞の集団を識別する。細胞はまた、目的の完全長ヒト膜貫通タンパク質の部分を包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体(抗原)とインキュベートされ、複合体によって提示されたヒト抗原と、目的のキメラ膜貫通タンパク質のヒト部分に特異的な細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。次いで、細胞を洗浄することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識された抗IgGシグナル)は、FACSによって検出されて、目的のキメラ膜貫通タンパク質のヒト部分上のエピトープに結合する抗体を発現する抗体産生B細胞の均一な集団を識別し、収集することができる。
【0163】
さらに別の実施形態では、遺伝子操作された非ヒト動物、例えば、マウスまたはラットは、目的のヒト膜貫通タンパク質の部分および目的の膜貫通タンパク質の非ヒトホモログの部分を含むキメラ膜貫通タンパク質、それらまたはそれらの組み合わせをコードする核酸配列で免疫化され、脾細胞は免疫された非ヒト動物(例えば、ラットまたはマウス)から単離され、B細胞マーカーに対する標識された抗体(例えば、蛍光色素標識された抗IgG抗体)とインキュベートされて、B細胞の集団を識別する。細胞はまた、目的の完全長非ヒト膜貫通タンパク質を包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体(抗原)とインキュベートされ、複合体によって提示された非ヒト抗原と、目的のキメラ膜貫通タンパク質の非ヒト部分に特異的な細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。次いで、細胞を洗浄することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識抗IgGシグナル)は、FACSによって検出されて、目的のキメラ膜貫通タンパク質の非ヒト部分上のエピトープに結合する抗体を発現する抗体産生B細胞の均一な集団を識別し、収集することができる。
【0164】
方法の別の実施形態では、遺伝子操作された非ヒト動物、例えば、マウスまたはラットは、目的のヒト膜貫通タンパク質の部分および目的の膜貫通タンパク質の非ヒトホモログの部分を含むキメラ膜貫通タンパク質、それらまたはそれらの組み合わせをコードする核酸配列で免疫化され、脾細胞は免疫された非ヒト動物(例えば、ラットまたはマウス)から単離され、B細胞マーカーに対する標識された抗体(例えば、蛍光色素標識された抗IgG抗体)とインキュベートされて、B細胞の集団を識別する。細胞はまた、目的の完全長非ヒト膜貫通タンパク質の部分を包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体(抗原)とインキュベートされ、複合体によって提示された非ヒト抗原と、目的のキメラ膜貫通タンパク質の非ヒト部分に特異的な細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。次いで、細胞を洗浄することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識抗IgGシグナル)は、FACSによって検出されて、目的のキメラ膜貫通タンパク質の非ヒト部分上のエピトープに結合する抗体を発現する抗体産生B細胞の均一な集団を識別し、収集することができる。
【0165】
方法の別の態様では、例えば、マウスまたはラットなどの非ヒト動物または遺伝子操作された非ヒト動物は、目的の完全長膜貫通タンパク質またはその部分を包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体で免疫化される。
【0166】
方法の一部の実施形態では、例えば、マウスまたはラットなどの非ヒト動物または遺伝子操作された非ヒト動物は、目的の完全長ヒト膜貫通タンパク質を包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体で免疫化される。脾細胞は、免疫された非ヒト動物(例えば、ラットまたはマウス)から単離され、一種類のまたは複数のブロッキング剤とインキュベートされて、このブロッキング剤は、複合体に含まれる各MSPタンパク質および複合体に含まれる各検出可能なマーカーに対応する、またはHisタグまたはFlagタグなどの目的の膜貫通タンパク質に貼り付けられ、ブロッキング剤と、ブロッキング剤に位置するエピトープに特異的に結合する細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。細胞はまた、B細胞マーカー(例えば、蛍光色素標識抗IgG抗体)に対する標識抗体とインキュベートされて、B細胞集団を識別する。細胞は、その後、完全長ヒト膜貫通タンパク質を包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされて、複合体によって提示された目的の完全長膜貫通タンパク質(抗原)と集団に残っている結合していない細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。その後、細胞は、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中のビオチン(例えば、Bir-A)標識膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となる。次いで、細胞を洗浄して、ブロッキング剤に結合されたすべての細胞、ならびに結合していないおよび余剰なPE-ストレプトアビジンを除去し、B細胞マーカーに対する標識抗体を選別から除去することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識された抗IgGシグナル)は、FACSによって検出されて、目的の完全長ヒト膜貫通タンパク質上のエピトープに結合する抗体を発現する抗体産生B細胞の均一な集団を識別し、収集することができる。
【0167】
方法の一実施形態では、例えば、マウスまたはラットなどの非ヒト動物または遺伝子操作された非ヒト動物は、目的の完全長ヒト膜貫通タンパク質を包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体で免疫化される。脾細胞は、免疫された非ヒト動物(例えば、ラットまたはマウス)から単離され、一種類のまたは複数のブロッキング剤とインキュベートされて、このブロッキング剤は、複合体に含まれる各MSPタンパク質および複合体に含まれる各検出可能なマーカーに対応する、またはHisタグまたはFlagタグなどの目的の膜貫通タンパク質に貼り付けられ、ブロッキング剤と、ブロッキング剤に位置するエピトープに特異的に結合する細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。細胞はまた、B細胞マーカー(例えば、蛍光色素標識抗IgG抗体)に対する標識抗体とインキュベートされて、B細胞集団を識別する。細胞は、その後、ヒト膜貫通タンパク質の部分を包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされて、複合体によって提示された目的の膜貫通タンパク質の部分(抗原)と、集団に残っている結合していない細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。その後、細胞は、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中のビオチン(例えば、Bir-A)標識膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となる。次いで、細胞を洗浄して、ブロッキング剤に結合されたすべての細胞、ならびに結合していないおよび余剰なPE-ストレプトアビジンを除去し、B細胞マーカーに対する標識抗体を選別から除去することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識された抗IgGシグナル)は、FACSによって検出され、複合体によって提示された目的の完全長ヒト膜貫通タンパク質の部分のエピトープに結合する抗体を発現する抗体産生B細胞の均一な集団を識別し、収集することができる。
【0168】
方法の他の実施形態では、例えば、マウスまたはラットなどの遺伝子操作された非ヒト動物は、内因性遺伝子から目的の膜貫通タンパクを発現しなく、目的の完全長非ヒト膜貫通タンパク質を包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体で免疫化される。脾細胞は、免疫された非ヒト動物(例えば、ラットまたはマウス)から単離され、一種類のまたは複数のブロッキング剤とインキュベートされ、このブロッキング剤は、複合体に含まれる各MSPタンパク質および複合体に含まれる各検出可能なマーカーに対応し、またはHisタグまたはFLAGタグなどの目的の膜貫通タンパク質に貼り付けられ、ブロッキング剤と、ブロッキング剤に位置するエピトープに特異的に結合する細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。細胞はまた、B細胞マーカー(例えば、蛍光色素標識抗IgG抗体)に対する標識抗体とインキュベートされて、B細胞集団を識別する。細胞は、その後、完全長非ヒト膜貫通タンパク質を包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされて、複合体によって提示された目的の完全長膜貫通タンパク質(抗原)と集団において残っている結合していない細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。その後、細胞は、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中のビオチン(例えば、Bir-A)標識膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となる。次いで、細胞を洗浄して、ブロッキング剤に結合されたすべての細胞、ならびに結合していないおよび余剰なPE-ストレプトアビジンを除去し、B細胞マーカーに対する標識抗体を選別から除去することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識抗IgGシグナル)は、FACSによって検出され、目的の完全長非ヒト膜貫通タンパク質上のエピトープに結合する抗体を発現する抗体産生B細胞の均一な集団を識別し、収集することができる。
【0169】
方法の一部の実施形態では、例えばマウスまたはラットなどの遺伝子操作された非ヒト動物は、内因性遺伝子から目的の膜貫通タンパク質を発現しなく、目的の完全長非ヒト膜貫通タンパク質の一部分を包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体で免疫化される。脾細胞は、免疫された動物から単離され、一種類のまたは複数のブロッキング剤とインキュベートされ、このブロッキング剤は、複合体に含まれる各MSPタンパク質および複合体に含まれる各検出可能なマーカーに対応し、またはHisタグまたはFLAGタグなどの目的の非ヒト膜貫通タンパク質の部分に貼り付けられ、ブロッキング剤と、ブロッキング剤に位置するエピトープに特異的に結合する細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。細胞はまた、B細胞マーカー(例えば、蛍光色素標識抗IgG抗体)に対する標識抗体とインキュベートされて、B細胞集団を識別する。細胞は、その後、完全長非ヒト膜貫通タンパク質の部分または目的の完全長非ヒト膜貫通タンパク質(抗原)を包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされて、複合体によって提示された目的の膜貫通タンパク質と集団に残っている結合していない細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。その後、細胞は、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中のビオチン(例えば、Bir-A)標識膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となる。次いで、細胞を洗浄して、ブロッキング剤に結合されたすべての細胞、ならびに結合していないおよび余剰なPE-ストレプトアビジンを除去し、B細胞マーカーに対する標識抗体を選別から除去することができる。結合したB細胞からのPE蛍光およびシグナル(例えば、蛍光色素標識抗IgGシグナル)は、FACSによって検出され、目的の完全長非ヒト膜貫通タンパク質の部分上のエピトープに結合する抗体を発現する抗体産生B細胞の均一な集団を識別し、収集することができる。
【0170】
ブロッキング剤の使用を含む方法の実施形態では、ブロッキング剤は、例えば、ペプチド、ポリペプチド、化学化合物などの任意の分子を含み得る。こうした実施形態では、ブロッキング剤は、目的の膜貫通タンパク質の一部に対応するポリペプチドもしくはペプチド、MSPタンパク質の一部に対応するポリペプチドもしくはポリペプチド、またはHisタグもしくはFLAGタグなどの検出可能なマーカーであり得る。いくつかの実施形態では、ブロッキング剤は、検出可能な標識を含む。他の実施形態では、ブロッキング剤は、検出可能な標識を含む。一実施形態では、ブロッキング剤は、目的の膜貫通タンパク質のペプチドまたはポリペプチド部分であり、抗体産生細胞の集団とインキュベートして、ブロッキング剤と、ブロッキング剤に位置するエピトープに特異的に結合する抗体産生細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。一実施形態では、ブロッキング剤は、目的の切断された膜貫通タンパク質である。特定の実施形態では、ブロッキング剤は、一つ以上の細胞外ループドメイン、目的の完全長膜貫通タンパク質のアミノ末端部分およびカルボキシ末端部分に対応するポリペプチドである。特定の実施形態では、ブロッキング剤は、目的の完全長膜貫通タンパク質のアミノ末端部分を含むポリペプチドであってもよい。別の実施形態では、ブロッキング剤は、目的の完全長膜貫通タンパク質のカルボキシ末端部分を含むポリペプチドであってもよい。一実施形態では、ブロッキング剤は、目的の完全長膜貫通タンパク質の細胞外ループドメインを含むポリペプチドであってもよい。一部の実施形態では、ブロッキング剤は、目的の膜貫通タンパク質の細胞外ドメイン、例えば、目的の膜貫通タンパク質のドメインにかかる一つ以上の膜の間のN末端細胞外ドメイン、C末端細胞外ドメイン、および/または細胞外ループドメインを含む切断されたタンパク質である。別の実施形態では、ブロッキング剤は、MSPタンパク質のペプチドまたはポリペプチド部分であり、抗体産生細胞の集団とインキュベートして、ブロッキング剤と、ブロッキング剤に位置するエピトープに特異的に結合する抗体産生細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。さらに別の実施形態では、ブロッキング剤は、MSPまたは目的の膜貫通タンパク質に位置するペプチドまたはポリペプチド検出可能マーカーであり、抗体産生細胞の集団とインキュベートして、ブロッキング剤と、ブロッキング剤に位置するエピトープに特異的に結合する抗体産生細胞によって産生された抗体との結合を可能にする。
【0171】
本開示の方法は、目的の膜貫通タンパク質を包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示される抗原に結合される抗体産生細胞を検出、選別、および収集することを含む。検出、選別、および収集は、組み合わせられてもよく、または別個のステップとして実施されてもよい。検出、選別、および/または収集は、複合体上の一つ以上の検出可能な標識の検出によって、複合体によって提示された目的の膜貫通タンパク質によって結合された細胞を識別することを含んでもよい。次いで、結合した細胞を結合していない細胞から分離し(すなわち、選別し)、さらに使用するために選択することができる。
【0172】
一部の実施形態では、抗体産生細胞と、目的の膜貫通タンパク質を提示する脂質二重層膜足場タンパク質複合体との相互作用は、目的の膜貫通タンパク質の立体構造の変化、細胞における目的の膜貫通タンパク質の活性化もしくは不活性化、または検出可能な標識(例えば、蛍光分子、FLAGタグ、His-タグ)を使用して、目的の膜貫通タンパク質を含有する脂質二重層膜足場タンパク質複合体に結合した細胞を識別および捕捉することによって検出される。検出は、標識に特異的な抗体による免疫染色、または標識に結合する試薬による直接的な染色によって実施することができる。多数の検出キットおよび技術は、当技術分野で周知である。
【0173】
方法の特定の実施形態では、細胞は、約5分~約60分間、緩衝液で洗浄して、結合していない抗原を除去し、合計10~120分、例えば、10分を3回、または30分を1回、それぞれ10~15分を2~4回、緩衝液で洗浄する。一実施形態では、約10分、または約15分もしくは約20分、または約25分、または約30分、または約35分、または約40分、または約45分、または約50分、または約55分、または合計約60分を1回洗浄することを含む時間の間、細胞を洗浄することができる。一部の実施形態では、約5分、または約10分、または約15分、または約20分、または約25分、または1回の洗浄あたり約30分ごとに2回洗浄することを含む時間で、細胞を洗浄することができる。追加の洗浄間隔が企図され、本明細書に記述したものと本質的に同等である。
【0174】
一部の実施形態では、検出、選別、および収集を、蛍光標識細胞分取(FACS)を使用して実施して、膜貫通タンパク質特異的抗体を発現する単一抗体産生細胞を検出、選別、および選択することができる。フローサイトメトリーによる単一細胞の単離のプロトコルは周知である(Huang,J.ら、2013、上記)。例えば、標識された(例えば、蛍光標識)脂質二重層膜足場タンパク質複合体(または蛍光標識されたストレプトアビジン/ビオチン化抗原)によって提示された抗原に結合する細胞は、抗原(すなわち、目的の膜貫通タンパク質)に特異的に結合する抗体を発現する細胞として検出され、識別され、その後、96ウェルプレートまたは384ウェルプレート上の個々のウェルに収集され得る。
【0175】
一旦収集されると、単一抗体産生細胞は、その後のDNA調製のための共通細胞培養技術によって増殖され得る。あるいは、抗体遺伝子は、単一抗体産生細胞から直接増幅され、その後DNAベクターにクローニングされてもよい。
【0176】
単抗体産生細胞は、当該技術分野で公知の代替的方法によって選別および収集されてもよく、限定されないが、手動の単細胞ピッキング、限定希釈、および吸着抗原のB細胞パンニングが含まれ、これらはすべて当該技術分野で周知である。例えば、Rolinkら、J Exp Med(1996)183:187-194;Lightwood,D.ら、J.Immunol.Methods(2006)316(1-2):133-43を参照されたい。
【0177】
目的の膜貫通タンパク質に対する抗体を発現する抗体産生細胞から得られた核酸からの抗体の生成。
抗体またはその断片をコードする核酸は、本明細書に記載される方法を使用して生成され、取得された抗体産生細胞から単離することができる。
【0178】
一部の実施形態では、核酸は、可変ドメイン、定常ドメイン、またはそれらの組み合わせなどの抗体の断片をコードする。特定の実施形態では、抗体産生細胞から単離された核酸は、抗体の可変ドメインをコードする。一部の実施形態では、核酸は、抗体重鎖またはその断片をコードする。他の実施形態では、核酸は、抗体軽鎖またはその断片をコードする。
【0179】
特定の例では、抗体産生細胞から単離された核酸は、宿主細胞中で発現される。例えば、抗体産生細胞から単離された核酸は、哺乳動物細胞、細菌細胞、または昆虫細胞などの宿主細胞に発現され得る(例えば、クローン化され、組換え的に複製される)。一部の実施形態では、宿主細胞は、核酸を発現する条件下で培養され、抗体またはその一部がその後、さらなる使用のために産生および単離され得る。単離された核酸から抗体を作製する方法は、当技術分野で周知であり、任意のかかる方法を本開示と併せて使用することができる。
【0180】
一部の実施形態では、上記核酸の一つ以上を含む宿主細胞は、完全長抗体を発現する条件下で培養され、次いで抗体は、さらなる使用のために産生および単離され得る。特定の実施形態では、宿主細胞は、抗体の可変ドメインをコードする核酸を含み、細胞は、可変ドメインを発現する条件下で培養される。他の実施形態では、宿主細胞は、抗体の可変重鎖(V)ドメインをコードする核酸を含み、細胞は、Vドメインを発現する条件下で培養される。別の実施形態では、宿主細胞は、抗体の可変軽鎖(V)ドメインをコードする核酸を含み、細胞は、Vドメインを発現する条件下で培養される。特定の実施形態では、宿主細胞は、抗体のVドメインをコードする核酸と、抗体のVドメインをコードする核酸とを含み、細胞は、VドメインおよびVドメインを発現する条件下で培養される。
【0181】
一部の実施形態では、DNAは、抗体を組換え的に産生するために、宿主から単離されてもよい。概して、免疫グロブリン可変重鎖および可変軽鎖(すなわち、V、V、VκおよびVλ)をコードする遺伝子または核酸は、抗体産生細胞から単離された核酸を有するRT-PCRプロトコルを使用して回収することができる。これらのRT-PCRプロトコルは、例えば、Wangら、J.Immunol.Methods(2000)244:217~225に記載され、本明細書に記載されるように、周知であり、通常の技術である。
【0182】
回収されると、抗体をコードする遺伝子または核酸は、IgG重鎖および軽鎖発現ベクターにクローニングされ、宿主細胞のトランスフェクションを介して発現することができる。例えば、抗体をコードする遺伝子または核酸は、さらなるクローニング(DNAの増幅)のため、または細胞における発現(安定的または一過性)のために複製可能なベクターに挿入されてもよい。多くのベクター、特に発現ベクターは利用可能であるか、または遺伝子または核酸をコードする抗体の発現を調節するために必要な適切な調節エレメントを含むように操作することができる。
【0183】
本開示の状況での発現ベクターは、染色体核酸ベクター、非染色体核酸ベクター、および合成核酸ベクター(発現制御要素の適切な組を含む核酸配列)を含む任意の好適なベクターであってもよい。かかるベクターの例としては、SV40の誘導体、細菌性プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAとの組み合せに由来するベクター、およびウイルス性核酸(RNAまたはDNA)ベクターが挙げられる。
【0184】
一部の実施形態では、核酸分子は、例えば、線形発現要素(例えば、Sykes and Johnston、Nat Biotech(1997)12:355-59に記述されるように)、圧縮した核酸ベクター(例えば、米国特許第6,077,835号に記述されるように)、またはpBR322もしくはpUC 19/18のようなプラスミドベクターを含む、裸のDNAまたはRNAベクターに含まれる。かかる核酸ベクターおよびその使用法は当該技術分野で周知である。例えば、米国特許第5,589,466号および米国特許5,973,972号を参照されたい。
【0185】
特定の実施形態では、発現ベクターは、酵母系における発現に適したベクターであってもよい。酵母系内での発現のために好適な任意のベクターが採用されてもよい。適切なベクターとして、例えば、酵母アルファ因子、アルコールオキシダーゼ、およびPGHなどの恒常性または誘導性プロモーターを含むベクターが挙げられる。F.Ausubelら、編 Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing and Wiley InterScience New York(1987);およびGrantら、Methods in Enzymol 153,516-544(1987)を参照されたい。
【0186】
特定の実施形態では、ベクターは、抗体の重鎖をコードする核酸分子(または遺伝子)と、抗体の軽鎖をコードする核酸分子(または遺伝子)を含み、抗体は、本開示の方法によって取得された抗体産生細胞によって産生される。一般に、使用されるベクターは、記載の核酸分子(または遺伝子)を含む発現ベクターを含み、核酸分子(または遺伝子)は、宿主細胞における発現に適した発現制御配列に操作可能に結合する。
【0187】
ベクターの選択は、使用される宿主細胞に部分的に依存する。宿主細胞には、限定されないが、原核または真核(概して哺乳類)起源の細胞が含まれる。
【0188】
完全長抗体核酸配列または遺伝子は、その後、適切なベクターにクローニングされてもよいことが理解される。あるいは、単離された抗体のFab領域は、任意のアイソタイプの定常領域に沿ってベクターにクローニングされてもよい。したがって、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA、IgDおよびIgE重鎖定常領域、またはキメラ重鎖定常領域を含む、単離された抗体の構築に任意の定常領域を利用してもよい。かかる定常領域は、抗体の使用目的に応じて、任意のヒトまたは動物種から取得することができる。また、抗体可変領域またはFab領域は、ScFv、ダイアボディなどの他のフォーマットでのタンパク質の発現のための適切なベクターにクローニングされてもよい。
【0189】
このように、本開示は、目的の膜貫通タンパク質に特異的な完全長抗体を含む核酸分子をコードする哺乳動物の宿主細胞も提供し、抗体をコードする核酸または遺伝子は、本発明の方法に従って取得された抗体産生細胞から単離された。一実施形態では、一次抗体産生細胞は、免疫化された哺乳動物から得られた細胞の異種集団から単離されたB細胞であった。
【0190】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、細菌細胞または酵母細胞である。一部の実施形態では、宿主細胞は哺乳動物細胞である。他の実施形態では、宿主細胞は、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、例えば、CHO K1、DXB-11 CHO、Veggie-CHO細胞;COS(例えば、COS-7);幹細胞;網膜細胞;Vero細胞;CV1細胞;腎臓細胞、例えばHEK293、293 EBNA、MSR 293、MDCK、aHaK、BHK21細胞;HeLa細胞;HepG2細胞;WI38、MRC 5;Colo25;HB 8065;HL-60;Jurkat細胞またはDaudi細胞;A431(表皮)細胞;CV-1、U937、3T3またはL細胞;C127細胞、SP2/0、NS-0またはMMT細胞、腫瘍細胞、および前述の細胞のいずれかに由来する細胞株であってもよい。特定の実施形態では、宿主細胞はCHO細胞である。特定の実施形態では、宿主細胞はCHO K1細胞である。
【0191】
この用語としての抗体は、当技術分野で既知であり、免疫系の抗原結合タンパク質を指す。本明細書で言及される用語「抗体」は、抗原結合領域を有する完全長抗体、およびその任意の断片を含み、そこで「抗原結合部分」または「抗原結合領域」が保持され、または単鎖、例えば、その単鎖可変断片(scFv)を含む。「完全長抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも二つの重鎖(H)鎖と二つの軽鎖(L)とを含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(V)と重鎖定常(CH)領域から構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2、およびCH3という三つのドメインから構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(V)および軽鎖定常CL領域からなる。軽鎖定常領域は、一つのドメインCLから構成される。VおよびV領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が点在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域へとさらに細分化することができる。各V及びVは、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された三つのCDRと四つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。
【0192】
本明細書に示されるように、本開示は、目的の膜貫通タンパク質に結合する抗体を得るために使用することができる。本明細書に記載される抗体産生細胞から得られた抗体は、当技術分野で公知の方法を使用して特徴付けることができる。例えば、本明細書に生成された抗体のいずれかの結合親和性、特異的エピトープ認識能力または機能的能力を決定することができる。
【0193】
「結合親和性」は概して、分子(例えば、抗体)の単一結合部位と、その結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合性相互作用の総和の強度を指す。別段の示唆が無い限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体および抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。その結合パートナーに対する分子の親和性は、一般に、解離平衡定数(KDまたはK)によって表され得る。K(モル、M)値と結合親和性との間に逆の関係があり、K値(M)が小さいほど、分子のその結合エピトープに対する結合親和性が高い。
【0194】
用語「より高い親和性」または「高い親和性」は、概して、より強く、および/またはより速く抗原に結合し、および/またはより長く結合されたままである抗体を指す。一般的に、高親和性抗体は、強力な結合相互作用のために、所望の効果を達成するために、より低い濃度(M)の抗原を必要とする。逆に、用語「低親和性」および「より低い親和性」は、他の結合分子(例えば、抗体)と比較して、分子とその結合パートナーの間に相互作用を形成する能力の減少など、より弱い結合を反映するために使用される用語である。したがって、低親和性結合分子は、他の結合分子と比較してより大きなK値を有し、および/または抗原をゆっくりと結合し、容易に解離する傾向がある。
【0195】
「kd」(sec-1又は1/s)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数、または抗体、Ig、抗体結合断片または分子相互作用の解離速度定数を指す。この値は、k-off値とも呼ばれている。
【0196】
「ka」(M-1 x sec -1または1/M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度定数、または抗体、Ig、抗体結合断片もしくは分子相互作用の会合速度定数を指す。
【0197】
「KD」または「K」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の平衡解離定数、または抗体、Ig、抗体結合断片もしくは分子相互作用の平衡解離定数を指す。平衡解離定数は、kaをkdで割ることによって得られる。
【0198】
結合親和性を測定する様々な方法は、当技術分野で公知であり、そのいずれかが本開示の目的のために使用され得る。例えば、抗原に対する抗体の結合親和性は、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)または溶液親和性ELISAによって測定することができる。
【0199】
いくつかの実施形態では、目的の膜貫通タンパク質への抗体の結合は、膜貫通タンパク質が発現される細胞内(インビトロ、エクスビボ、またはインビボ)の機能的活性を付与するか、または目的の膜貫通タンパク質との抗体の結合は、目的の膜貫通タンパク質の正常な機能的活性を、目的の膜貫通タンパク質の内因性リガンドの存在下または不在下で調節する。
【0200】
特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質に対する抗体は、膜貫通タンパク質機能のアンタゴニストである。アンタゴニスト抗体は、抗原の活性部位(すなわち、目的の膜貫通タンパク質)に対して向けられ、膜貫通タンパク質または膜貫通タンパク質自体に対する天然リガンドの活性を阻害することができる抗体を意味する。例えば、抗体の抗原への結合は、目的の膜貫通タンパク質の内因性機能を低減または禁止する。非限定的な一つの例では、アンタゴニスト抗体は、目的の膜貫通タンパク質に結合し、膜貫通タンパク質へのリガンド結合、受容体活性化、または類似のものへの干渉によって膜貫通タンパク質機能を調節することができる。
【0201】
さらに特定の実施形態では、目的の膜貫通タンパク質に対する抗体は、膜貫通タンパク質アンタゴニストである。アゴニスト抗体は、天然リガンド自体の非存在下で、目的の膜貫通タンパク質(すなわち抗原)を活性化することができる抗体を意味し、アゴニスト抗体は、目的の膜貫通タンパク質の機能的活性を誘導することができる。例えば、抗体の抗原への結合は、目的の膜貫通タンパク質の内因性機能を誘導または増加させる。非限定的な一つの例では、アゴニスト抗体は、目的の膜貫通タンパク質に結合することができ、タンパク質または受容体を活性化することによって、例えば、タンパク質の構造を変更することによって膜貫通タンパク質機能を調節することができる。
【0202】
抗体結合および膜貫通タンパク質機能を測定するためのアッセイは、当業者に周知である。例えば、膜貫通タンパク質の内部移行、構造変化、リン酸化、リガンド結合などを測定するためのアッセイは、当該技術分野で周知である。
【0203】
本明細書は、限定するものとして解釈すべきではない以下の実施例により、さらに例示される。全ての引用参考文献(本出願全体で引用される文献参照、発行特許、および公表された特許出願を含む)は、それらの全体が参照により本明細書に明確に援用される。
【実施例
【0204】
実施例1.抗体産生細胞の生成および収集。
表1に示すように、比較のために、いくつかの免疫化キャンペーンが開始して、マウスにおいて免疫反応を生成し、目的の抗原(抗体産生細胞)に対する抗体を産生した細胞を生成した。次いで、抗体産生細胞を、本明細書に記載される方法に従って収集した。
【0205】
一般的に、免疫原、例えば、目的の膜貫通タンパク質をコードするDNAもしくはその部分、目的の精製された膜貫通タンパク質もしくはその部分、目的の膜貫通タンパク質もしくはその部分を含有する脂質二重層膜足場タンパク質複合体もしくはその部分、目的の膜貫通タンパク質を含有する、もしくは目的の膜貫通タンパク質をコードするDNAを発現することができるウイルス様粒子(VLP)またはその組み合わせを注射することによって、マウスを免疫化した。一部の例では、免疫原は、ヒト膜貫通タンパク質またはそれをコードするDNAであった。他の例では、マウスを、目的のキメラ膜貫通タンパク質、膜貫通タンパク質の切断形態、目的の改変された膜貫通タンパク質、またはそれをコードするDNAで免疫化した。
【0206】
本明細書に記載の方法で使用する膜貫通タンパク質を、以下のように生成した。一般に、膜貫通タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、膜貫通タンパク質のカルボキシ末端に貼り付けられたFLAGタグおよびヒスチジンタグ(10x-Hisタグ)を含むように改変された。改変されたヌクレオチド配列は、Sf9細胞またはExpi293細胞(Thermo Fisher Scientific社)に発現した。次いで、細胞を、N-ドデシル-β-D-マルトシド(DDM)界面活性剤を使用して可溶化し、遠心分離して、改変膜貫通タンパク質を含有する界面活性剤可溶性画分を得た。次いで、改変タンパク質を、抗FLAG親和性ビーズを用いた親和性精製により、界面活性剤可溶性画分から単離し、これが改変膜貫通タンパク質に結合した。次いで、親和性ビーズおよびタンパク質を洗浄し、結合した膜貫通タンパク質をそれから溶出し、回収した。精製した膜貫通タンパク質の単離を、SDS-PAGEゲル電気泳動およびウェスタンブロットにより検証した。
【0207】
精製された膜貫通タンパク質を組み込む脂質二重層膜足場タンパク質複合体が形成された。精製した膜貫通タンパク質は、DDMおよびコレステリルヘミスクシネートトリス塩(CHS)からなる洗剤混合物に含まれた。この膜貫通タンパク質および洗剤混合物を、改変MSP1E3D1膜足場タンパク質を含有する脂質混合物に対して1~130の膜足場タンパク質と合わせ、それはビオチニル化のためのBir-Aタグをカルボキシ末端、およびコール酸ナトリウム洗剤緩衝液に溶解されたホスファチジルコリン(1-パルミトイル-2-オレオイル-グリセロ-3-ホスホコリン)脂質を含み、膜貫通タンパク質、洗剤、膜足場タンパク質脂質および20の膜足場タンパク質に対して1の膜貫通タンパク質の比で含有する緩衝液からなる最終混合物を作製した。洗剤は、その後、ビーズを使用して最終混合物から抽出され、目的の単一の膜貫通タンパク質を統合した円板状の脂質二重層膜足場タンパク質複合体の構築を容易にした。目的の膜貫通タンパク質を組み込んだ円板状の脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、10x-hisタグ親和性精製および/または分子ふるいクロマトグラフィーを使用して、目的の膜貫通タンパク質を含まない円板状の脂質二重層膜足場タンパク質複合体から分離されて、さらなる使用のために目的の膜貫通タンパク質を組み込んだ円板状の脂質二重層膜足場タンパク質複合体を得た。
【0208】
免疫化されるマウスは変えた。特定のコホートでは、目的の膜貫通タンパク質が内因性遺伝子から発現されないように、マウスを遺伝子操作した。他のコホートでは、マウスは野生型マウスであり、目的の膜貫通タンパク質のマウスホモログを発現いた。一部のコホートでは、マウスは、米国特許第8,502,018号、第8,642,835号、第8,697,940号、第8,791,323号、第9,226,484号、およびWO2019/113065、それらすべてが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、に記載されるように遺伝子操作された。一部のコホートでは、免疫化された遺伝子操作マウスは、例えば、米国特許第8,502,018号および/または第8,642,835号、それらそれぞれの全内容が参照により本明細書に組み込まれる、に記載されるようにVELOCIMMUNE(登録商標)マウス(Regeneron Pharmaceuticals,Inc.社、Tarrytown、NY)であった。一般的に、免疫化に使用されるVELOCIMMUNE(登録商標)マウスは、ヒト免疫グロブリン重鎖(IgH)およびヒト免疫グロブリン軽鎖可変領域をコードするDNAを含み、目的の膜貫通タンパク質をコードする内因性マウス遺伝子を欠く場合もある。特定のコホートでは、ヒト化IgH座位および/またはヒト化Igκ座位を含むVELOCIMMUNE(登録商標)マウスを免疫した。一部のコホートでは、目的の膜貫通タンパク質をコードする内因性マウス遺伝子を欠くヒトイムノグロブリン重鎖およびイムノグロブリンラムダ軽鎖(Igλ)可変領域をコードするDNAを含む遺伝子操作マウスに、免疫原を注射した。
【0209】
抗体免疫応答は、目的の膜貫通タンパク質またはその一部分を発現するように操作された細胞を使用した細胞結合アッセイによってモニターされた。免疫化されたマウスにおいて所望の免疫応答が識別されると、それらの脾臓が採取された。脾細胞を取得し、赤血球細胞を溶解により除去した。
【0210】
ハイブリドーマが形成されて使用された例では、脾細胞を採取し、マウス骨髄腫細胞と融合して、それらの生存率を維持し、ハイブリドーマ細胞株を形成した。その後、ハイブリドーマ細胞株をスクリーニングし、選択して、目的の膜貫通タンパク質に対する抗体を産生する細胞株を識別した。
【0211】
抗体産生細胞も、抗原陽性B細胞で単離した。マウスを免疫化すると、脾臓を採取した。脾細胞を取得し、赤血球細胞を溶解により除去した。次いで、脾細胞を、IgGなどのB細胞表面マーカーに特異的な蛍光色素標識抗体で染色して、B細胞を識別した。
【0212】
一般に、抗体産生B細胞の集団は、B細胞を、周知のソーティング剤、例えば、生成された膜貫通タンパク質もしくはその部分、目的のキメラ膜貫通タンパク質、目的の節ファンされた膜貫通タンパク質、VLPもしくはエクソソームの目的の膜貫通タンパク質、または目的の膜貫通タンパク質もしくはその部分を組み込んだ脂質二重層膜足場タンパク質複合体のいずれかと接触させることによって識別されて、目的の膜貫通タンパク質をB細胞の表面に存在する抗体に結合することを可能にする。次いで、FACSを使用して結合したB細胞を収集して、目的の膜貫通タンパク質に対する抗体を発現する抗体産生B細胞の集団を得た。複合体(対照)を含まない試料では、FACSを介してペプチドまたはウイルス様粒子(VLP)を用いて選別を行い、異種のB細胞集団から抗体産生B細胞を得た。複合体を有する試料では、FACSを介して蛍光標識された複合体を用いて選別を行い、抗体産生B細胞を得た。ここで、B細胞を、目的の膜貫通タンパク質を含有するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートした。次いで、細胞を洗浄して、結合していない複合体を除去した。その後、細胞は、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体のビオチン標識(例えば、Bir-A)膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となった。次いで、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄して、余剰なPE-ストレプトアビジンを除去した。B細胞試料のPE蛍光をFACSにより分析し、目的の膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現する細胞集団を識別した。
【0213】
実施例2.抗体産生細胞の集団からの抗体の生成。
比較のために、抗体を、脂質二重層膜足場タンパク質複合体を有する場合、または有しない場合で、従来のハイブリドーマ技術または細胞ソーティングのいずれかによってスクリーニングのために単離した。抗体産生B細胞集団からの単一細胞を、384ウェルプレート上の個々のウェルで単離した。これらの単離された抗体産生B細胞からの抗体遺伝子のRT-PCRを、Wang and Stollar Journal of Immunological Methods(2000)244:217~225、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、に記載される方法に従って実施した。端的に、各々の単一抗体産生B細胞のcDNAは、逆転写酵素(RT)反応(Superscript(商標)III、Invitrogen社)を介して合成された。次いで、得られた各々のRT産物を分け、二つの384ウェルプレート上の二つの対応するウェルに移した。得られたRT産物の1セットを、まず、ヒトIgG重鎖可変領域リーダー配列に特異的な5’縮重プライマー、およびマウス重鎖定常領域に特異的な3’プライマーを使用してPCRにより増幅し、アンプリコンを形成した。次いで、ヒトIgG重鎖可変領域配列のフレームワーク1に特異的な5’縮重プライマーセット、およびヒトIgG重鎖可変領域配列のフレームワーク4に特異的な3’縮重プライマーセットを使用して、アンプリコンをPCRにより再び増幅した。得られたRT産物の他のセットを、まずヒトカッパまたはラムダ軽鎖可変領域リーダー配列に特異的な5’縮重プライマー、およびマウスカッパまたはラムダ軽鎖定常領域に特異的な3’プライマーを使用してPCRにより増幅して、アンプリコンを形成した。次いで、アンプリコンを、ヒトカッパまたはラムダ軽鎖可変領域配列のフレームワーク1に特異的な5’縮重プライマーセット、およびヒトカッパまたはラムダ軽鎖可変領域配列のフレームワーク4に特異的な3縮重プライマーセットを使用して、PCRにより再び増幅した。重鎖と軽鎖のPCR産物をそれぞれ、IgG1重鎖定常領域とカッパ軽鎖定常領域を含有する抗体ベクターにクローニングした。組換えヒトIgG1抗体は、CHO細胞の一過性トランスフェクションによって産生された。
【0214】
抗体産生細胞から得られた抗体の一次スクリーニングを、細胞結合について試験した。目的の膜貫通タンパク質と各抗体との間の結合の解離定数を、Biacore(商標)T200(GE Healthcare社)上で決定した。様々な条件下でのいくつかのキャンペーンの結果は、目的の膜貫通タンパク質を提示する脂質二重層膜足場タンパク質複合体を使用した細胞ソーティングが、目的の膜貫通タンパク質に結合する抗体の識別に最も成功したことを示した。表1を参照されたい。
【表1】
【0215】
実施例3.脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって包含される目的の膜貫通タンパク質と抗体との間の結合の検出。
この例では、GPCR1タンパク質配列のカルボキシ末端にFLAG-タグおよびHis-タグ(10x-Hisタグ)を貼り付けるように例示的なヒト膜貫通タンパク質(GPCR1)をコードするヌクレオチド配列を改変し、改変ヌクレオチド配列を細胞内で発現し、実施例1に記載されるように精製した。次いで、目的の例示的なGPCR1膜貫通タンパク質を脂質二重層膜足場タンパク質複合体に組み込み、目的のGPCR1膜貫通タンパク質を包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体を、実施例1に記載されるように精製した。
【0216】
周知の抗GPCR1抗体の、目的のGPCR1膜貫通タンパク質を包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体への結合能力は、図1Aおよび1Bに示されるオクテットアッセイによって確認した。詳細には、GPCR1膜貫通タンパク質を含む、38μg/mLの円板状の脂質二重層膜足場タンパク質複合体、またはGPCR1を含まない(空の複合体)10μg/mLの対照の円板状の脂質二重層膜足場タンパク質複合体が、固定された抗GPCR1抗体(陽性対照AB)またはアイソタイプ対照抗体(陰性対照AB)を有するプレートに供給された。
【0217】
陽性対照(抗GPCR1)抗体と、GPCR1膜貫通タンパク質を含む円板状の脂質二重層膜足場タンパク質複合体(0.6nm)との間で結合が検出され、抗GPCR1抗体と空の複合体(-0.05nm)との間、陰性対照抗体とGPCR1膜貫通タンパク質を含む円板状の脂質二重層膜足場タンパク質複合体(-0.06nm)との間、または陰性対照抗体と空の複合体(-0.03nm)との間では、結合は検出されなかった。図1Aを参照。複合体によって提示されるが複合体自体によっては提示されない目的の膜貫通タンパク質が、目的の膜貫通タンパク質に向けられた抗体に結合することを確認する。
【0218】
目的の膜貫通タンパク質を提示するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体を検出し、対照の脂質二重層膜足場タンパク質複合体から単離することができることを確認するために、ビオチン化対照の脂質二重層膜足場タンパク質複合体(空の複合体)、GPCR1膜貫通タンパク質(GPCR1との複合体)を提示するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体または対照の脂質二重層膜足場タンパク質複合体、ビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体(空の複合体)を、ストレプトアビジンを連結したプレートに供給し、ストレプトアビジンを複合体の膜足場タンパク質に貼り付けられたBir-Aタグに結合させることを可能にする。次いで、プレートを、50μg/mLの抗GPCR1抗体(陽性対照AB)または50μg/mLのアイソタイプ対照抗体(陰性対照AB)のいずれかとインキュベートした。図1Bを参照。
【0219】
最初に、図1Bは、目的のGPCR1膜貫通タンパク質を提示するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体およびビオチン化対照の脂質二重層膜足場タンパク質複合体が、複合体の膜足場タンパク質のそれぞれに貼り付けられたBir-Aタグに結合しているストレプトアビジンによって検出され、単離されたことを示す。これは、連結したストレプトアビジンと、GPCR1膜貫通タンパク質(3.0nm)およびビオチン化空の複合体(0.69nm)を含む、ビオチン化円板状の脂質二重層膜足場タンパク質複合体の両方との間の結合を検出することによって示される。
【0220】
陽性対照(抗GPCR1)抗体と、ストレプトアビジンプレートに連結されたGPCR1膜貫通タンパク質を含むビオチン化円板状の脂質二重層膜足場タンパク質複合体(0.69nm)との間で結合が検出されたが、抗GPCR1抗体とビオチン化空の複合体(-0.04nm)、陰性対照抗体と膜貫通タンパク質を含むビオチン化円板状の脂質二重層膜足場タンパク質複合体(-0.05nm)、または陰性対照抗体と空のビオチン化複合体(-0.06nm)との間で結合は検出されなかった。図1Bを参照すると、ストレプトアビジンプレートに連結したビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、目的の膜貫通タンパク質を提示し、抗GPCR1抗体に特異的に結合するが、対照抗体には結合しないことを示している。
【0221】
実施例4.目的の例示的な膜貫通タンパク質に特異的に結合する抗体を発現する抗体産生細胞の取得。
第一、第二および第三の例示的なヒト膜貫通タンパク質をコードするヌクレオチド配列を、FLAGタグおよびHis tag(10x-Hisタグ)を膜貫通タンパク質のカルボキシ末端に貼り付くように改変し、改変されたヌクレオチド配列は細胞に発現し、実施例1に記載されるように精製された。目的の第一、第二または第三の例示的な膜貫通タンパク質のいずれかを包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体を、Bir-A標識膜足場タンパク質を使用して生成し、実施例1および3に記載されるように精製した。
【0222】
脾細胞は、目的の膜貫通タンパク質をコードする内因性マウス遺伝子を欠くヒト化IgH座位および/またはヒト化IIgκ座位を含む遺伝子改変されたVELOCIMMUNE(登録商標)マウスから採取された。免疫化されていない対照マウス、または以下の注射によって免疫化された遺伝子改変マウスから、細胞を単離した:目的の第一の膜貫通タンパク質(GPCR1)、目標の第二の膜貫通タンパク質(GPCR2)、または目的の第三の膜貫通タンパク質(GPCR3)をコードするDNA。ここで、各マウスを遺伝子改変した。各マウスから収集された脾細胞を、蛍光標識でB細胞マーカー(すなわち、抗IgG抗体)に染色し、同時に、そこに組み込まれた膜貫通タンパク質を含有する0.2mg/mL~5.0mg/mLのビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートした。次いで、細胞を洗浄して、結合していない複合体を除去した。その後、細胞は、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体のビオチン標識(例えば、Bir-A)膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となった。次いで、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄して、余剰なPE-ストレプトアビジンを除去した。対照マウスおよび免疫化マウスからの細胞集団のPE蛍光をFACSによって検出し、ビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示される目的の膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現するB細胞集団を識別した。図2A図2Fを参照されたい。
【0223】
100万の対照細胞のたった二つのB細胞のみがビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示されたGPCR1膜貫通タンパク質に非特異的に結合し(図2A、長方形)、目的の膜貫通タンパク質を含有する脂質二重層膜足場タンパク質複合体が膜貫通タンパク質抗原に向けて抗体を産生する細胞を検出し、単離するための非常に特異的なソーティング剤であることを示している。比較すると、ビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示される目的の第一の膜貫通タンパク質に結合する抗体産生B細胞の100万個中11個が、本発明の方法を使用して検出された(図2B、長方形)。
【0224】
図2Cに示されるように、対照マウスから得られた100万個の脾細胞の二つのB細胞は、目的の第二の膜貫通タンパク質を提示するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体に対する非特異的な結合剤として検出された。目的の第二の例示的なGPCR膜貫通タンパク質に特異的な抗体(GPCR2)を発現する100万個のB細胞のうち78個は、図2Dに示されるように、本発明の方法を使用して検出された(長方形)。
【0225】
さらに別の例では、目的の第三の膜貫通タンパク質を提示するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体に非特異的に結合された11個のB細胞のみが対照マウスから収集された100万個の脾細胞から得られた。図2Eを参照されたい。一方で、目的の第三の例示的なGPCR膜貫通タンパク質(GPCR3)に特異的な一次抗体を発現する100万個のB細胞のうち65個/が免疫化された遺伝子改変マウスから採取された脾細胞から検出され、得られた。
【0226】
実施例5.既知の細胞ソーティング戦略と、脂質二重層膜足場タンパク質複合体の使用を含むソーティング方法との比較。
技術分野で公知の抗体産生細胞を取得するための方法の有用性を本明細書に開示される発明の方法と比較するために、目的のヒト膜貫通タンパク質の例をコードするDNAを実施例1に従って精製した。目的の膜貫通タンパク質をコードするDNAを用いたマウスコホートの免疫化のために、精製されたヒトDNAを、目的の膜貫通タンパク質をコードする内因性マウス遺伝子を発現する、または発現しない遺伝子操作されたVELOCIMMUNE(登録商標)マウスに注射した。目的の膜貫通タンパク質で免疫化されたコホートについては、第一の例示的なヒト膜貫通タンパク質をコードするヌクレオチド配列を細胞中で発現し、実施例1に記載されるように精製し、注射により目的の膜貫通タンパク質をコードする内因性マウス遺伝子を発現するまたは発現しない遺伝子操作されたVELOCIMMUNE(登録商標)マウスに直接投与した。
【0227】
特定のコホートでは、マウスをVLPで免疫した。目的のヒト膜貫通タンパク質をコードするDNAを含有するプラスミドを作製し、ウイルス細胞内で発現させた。リポ粒子は、ウイルス細胞内で自己組織化され、ペグ化(PEG)沈殿によって出芽が発生すると、ウイルス細胞から単離および精製され、その後、等密度遠心法およびウイルス細胞媒体の分画が行われた。精製されたVLPを、公知の技術を使用して免疫化のためにマウスに注射した。
【0228】
比較のために、ヒト免疫グロブリン重鎖(IgH)およびヒト免疫グロブリン軽鎖可変領域をコードするDNAを含む遺伝子操作されたVELOCIMMUNE(登録商標)マウスは、目的の膜貫通タンパク質をコードする内因性マウス遺伝子(VI-KO)を含む(VI)、または含まない(VI-KO)場合で、表2に記載されるように注射により免疫化した。
【0229】
次に、表2に記載されるソーティング戦略を使用して、抗体産生B細胞の集団を単離した。詳細には、脾細胞を、免疫された遺伝子改変マウスから収集した。収集した脾細胞を、B細胞マーカー(すなわち、抗IgG抗体)への蛍光標識で染色し、0.2mg/mL~5.0mg/mLの目的のソーティング剤ビオチン化膜貫通タンパク質(タンパク質)、または目的の膜貫通タンパク質を包含する0.2mg/mL~5.0mg/mLのビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体(TMBとの複合体)、または表2に記載される2.0mg/mL~20mg/mLのビオチン標識されたVLPソーティング剤(VLP)で同時にインキュベートした。次いで、細胞を洗浄して、結合していないソーティング剤を除去した。続いて、細胞をPE-ストレプトアビジンとインキュベートし、ビオチン(Bir-A)標識ソーティング剤の各々へのストレプトアビジンの結合を可能にした。細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄して、余剰なPE-ストレプトアビジンを除去し、B細胞の試料のPE蛍光をFACSによって分析して、ソーティング剤によって提示される目的の膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現する不均一な細胞集団中のB細胞を識別した。
【0230】
次いで、目的の膜貫通タンパク質に結合するB細胞を産生する単一抗体を、実施例2に記載される384ウェルプレート上の個々のウェルに単離した。これらのB細胞由来の抗体遺伝子のRT-PCRを、Wang and Stollar Journal of Immunological Methods(2000)244:217~225に記載される方法に従って実施した。端的に、各々の単一B細胞のcDNAは、逆転写酵素(RT)反応(Superscript(商標)III、Invitrogen社)を介して合成された。次いで、得られた各々のRT産物を分け、二つの384ウェルプレート上の二つの対応するウェルに移した。得られたRT産物の1セットを、まず、ヒトIgG重鎖可変領域リーダー配列に特異的な5’縮重プライマー、およびマウス重鎖定常領域に特異的な3’プライマーを使用してPCRにより増幅し、アンプリコンを形成した。次いで、ヒトIgG重鎖可変領域配列のフレームワーク1に特異的な5’縮重プライマーセット、およびヒトIgG重鎖可変領域配列のフレームワーク4に特異的な3’縮重プライマーセットを使用して、アンプリコンをPCRにより再び増幅した。得られたRT産物の他のセットを、まずヒトカッパまたはラムダ軽鎖可変領域リーダー配列に特異的な5’縮重プライマー、およびマウスカッパまたはラムダ軽鎖定常領域に特異的な3’プライマーを使用してPCRにより増幅して、アンプリコンを形成した。次いで、アンプリコンを、ヒトカッパまたはラムダ軽鎖可変領域配列のフレームワーク1に特異的な5’縮重プライマーセット、およびヒトカッパまたはラムダ軽鎖可変領域配列のフレームワーク4に特異的な3縮重プライマーセットを使用して、PCRにより再び増幅した。重鎖と軽鎖のPCR産物をそれぞれ、IgG1重鎖定常領域とカッパ軽鎖定常領域を含有する抗体ベクターにクローニングした。組換えヒトIgG1抗体は、CHO K1細胞の一過性トランスフェクションによって産生され、目的の膜貫通タンパク質に結合する能力について分析された。
【表2】
【0231】
表2は、脂質二重層膜足場タンパク質複合体を利用して膜貫通タンパク質を提示する抗体産生細胞を取得する方法が、使用される免疫原とは独立して、他のソーティング剤と比較した場合、目的の膜貫通に特異的に結合する抗体を発現する抗体産生細胞をより多く検出することを示す。
【0232】
目的の膜貫通タンパク質(VI)をコードする内因性マウス遺伝子を発現する遺伝子改変マウスから得られた精製された膜貫通タンパク質ソーティング剤で選別された細胞は、目的の膜貫通タンパク質(VI-KO)をコードする内因性マウス遺伝子を発現せず、膜貫通タンパク質を提示した脂質二重層膜足場タンパク質複合体で選別した遺伝子改変マウスから得られたものと比較した場合、目的の膜貫通タンパク質に結合する抗体をより多く生成した。しかしながら、分析すると、VIマウスから生成された抗体は機能的結合物質ではなかった。脂質二重層膜足場タンパク質複合体を使用して膜貫通タンパク質を提示する抗体産生細胞を取得する方法は、膜貫通タンパク質の機能的に関連のあるエピトープに結合する抗体を取得することを示す。
【0233】
実施例6.目的の第二の例示的GPCR膜貫通タンパク質に結合する抗体の生成および単離。
目的のGPCR膜貫通タンパク質(GPCR2)の第二の例をコードするヌクレオチド配列を、FLAGタグおよびGPCR2タンパク質のカルボキシ末端に貼り付けられた10x-Hisタグを含むように実施例1に記載されるように改変した。さらに、以下の安定化変異を膜貫通タンパク質に導入した:アミノ酸置換:A2a-T4L-デルタ、Veli-Pekka Jaakolaら、Science.2008年11月21日、322(5905)pp.1211-1217に記載されており、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。改変GPCR2ヌクレオチド配列を発現ベクターにクローニングし、Sf9細胞に発現した。次いで、細胞を可溶化し、改変GPCR2膜貫通タンパク質を取得して、実施例1のように精製した。
【0234】
次に、改変ヒトGPCR2膜貫通タンパク質を含有する円板状の脂質二重層膜足場タンパク質複合体を、実施例1および本明細書に記載されるように生成した。
【0235】
遺伝子改変されたGPCR2ノックアウトマウス、すなわち、ヒト化IgH座位と、目的の膜貫通タンパク質をコードする内因性マウス遺伝子も欠いているヒト化Igκ座位とを含むVELOCIMMUNE(登録商標)マウスは、表3に示されるように、安定化変異(DNA免疫原)を含む改変ヒトGPCR2タンパク質をコードする外因性DNAの注射、または安定化変異を含む改変ヒトGPCR2タンパク質の注射(タンパク質免疫化)により免疫化された。
【0236】
脾細胞が各マウスから収集され、蛍光標識でB細胞マーカー(すなわち、抗IgG抗体)に染色し、同時に、そこに組み込まれた膜貫通タンパク質を含有する0.2mg/mL~5.0mg/mLのビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートした。次いで、細胞を洗浄して、結合していない複合体を除去した。その後、細胞は、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体のビオチン標識(例えば、Bir-A)膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となった。次いで、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄して、余剰なPE-ストレプトアビジンを除去した。対照マウスおよび免疫化マウスからの細胞集団のPE蛍光をFACSによって検出して、ビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示される、目的の第二の例示的なGPCR膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現するB細胞集団を識別した。
【0237】
次いで、目的の膜貫通タンパク質に結合したB細胞を産生する単一抗体を、384ウェルプレート上の個々のウェルに単離し、DNAをコードする抗体を各細胞から単離し、さらなる分析のために実施例2に記載されるように抗体を生成した。
【0238】
図3は、抗体産生細胞を取得するための発明の方法が、使用される免疫原のタイプとは無関係に、目的の膜貫通に特異的に結合する抗体を発現する抗体産生細胞を検出することを示す。詳細には、抗体産生細胞は、開示される方法に従って、目的の膜貫通タンパク質を提示するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体を使用して、膜貫通タンパク質(DNA)をコードするDNA(DNA)または精製された目的の膜貫通タンパク質(タンパク質)をコードするDNAのいずれかで免疫化された遺伝子操作されたマウスから取得した。抗体は、実施例2に記載されるようにスクリーニングのために作製された。目的の抗原の完全長膜貫通タンパク質は、標準的なトランスフェクション技術を使用して、293細胞(TMB過剰発現)に発現し、抗原発現293細胞を、目的の例示的な膜貫通タンパク質をコードするDNAでトランスフェクトされなかった対照の293細胞(親細胞)と比較した。次いで、細胞を抗体とインキュベートして、細胞の表面上の抗原と、目的の例示的な膜貫通タンパク質に特異的に結合する抗体との結合を可能にした。MSD(メソスケール診断法)イムノアッセイを製造業者に従って実施し、5つの異なる免疫化マウスから得られた抗体産生細胞から生成された細胞結合抗体を識別した。マウス1、3、4および5は、精製ヒトGPCR2膜貫通タンパク質で免疫し、マウス2は、ヒトGPCR2膜貫通タンパク質をコードするDNAで免疫した。破線上の抗体は、目的の膜貫通タンパク質に結合することができた。対照的に、破線下の抗体は、陽性(正方形)および陰性(三角形)対照抗体との比較によって示されるように、弱い結合物質であるか、または目的の膜貫通タンパク質に結合することができなかった。
【0239】
結果は、本発明の方法を使用して得られた抗体産生細胞は、マウスが目的の膜貫通タンパク質をコードするDNAまたは目的の精製された膜貫通タンパク質で免疫されたかどうかに関わらず、目的の膜貫通タンパク質に結合することができる十分な量の抗体を産生することができることを示した。
【0240】
表3に示されるように、B細胞は、膜貫通タンパク質(TMBを含む複合体)を提示するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体を使用して、各免疫化マウスから取得され、抗体は、収集されたB細胞のサブセットから生成され、抗体は、目的の抗原に結合する能力をイムノアッセイにより試験された。目的の膜貫通タンパク質(抗原)に特異的に結合する抗体を発現する抗体産生細胞は、マウスが膜貫通タンパク質をコードするDNAまたは精製された膜貫通タンパク質で免疫されたかどうかに関わらず、本発明の方法を使用して豊富に取得された。
【表3】
【0241】
実施例7.目的の例示的な膜貫通タンパク質の特定のドメインに結合する抗体を発現する抗体産生細胞の取得。
本発明の方法を使用して、目的の膜貫通タンパク質の特定のドメインに位置するエピトープに特異的に結合する抗体も生成した。
【0242】
第一の例では、完全長ヒト膜貫通タンパク質(完全長TMB)をコードするヌクレオチド配列を改変して、FLAGタグおよびHisタグ(10x-Hisタグ)を膜貫通タンパク質のカルボキシ末端に貼り付け、実施例1に記載されるように精製および単離した。さらに、N末端の細胞外部分を喪失している切断されたヒト膜貫通タンパク質をコードするヌクレオチド配列をさらに改変して、FLAGタグおよびHisタグ(10x-Hisタグ)を膜貫通タンパク質のカルボキシ末端に貼り付け、改変ヌクレオチド配列は細胞に発現し、実施例1に記載されるように精製した。切断TMBを包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、Bir-A標識膜足場タンパク質を使用して生成され、実施例1および3に記載されるように精製された。ここで、切断TMBタンパク質は、細胞外ループドメイン、膜貫通ドメイン、および野生型ヒト膜貫通タンパク質の細胞内C末端ドメインの各々を含むが、細胞外N末端ドメインを含まない。したがって、切断TMBを包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、野生型ヒト膜貫通タンパク質の細胞外ループドメインのみを細胞に提示する。
【0243】
ヒト免疫グロブリン重鎖(IgH)およびヒト免疫グロブリン軽鎖可変領域をコードするDNAを含む遺伝子操作されたVELOCIMMUNE(登録商標)マウスを、完全長TMBをコードするDNAで免疫化した。免疫応答をモニターし、脾細胞を免疫化されたマウスから採取した。各マウスから収集された脾細胞を、蛍光標識でB細胞マーカー(すなわち、抗IgG抗体)に染色し、同時に、そこに組み込まれた切断TMBを提示する0.2mg/ml~5.0mg/mLのビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートして、切断TMBの細胞外ドメイン上のエピトープと、B細胞の表面上の抗体との結合を可能にした。次いで、細胞を洗浄して、結合していない複合体を除去した。その後、細胞は、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体のビオチン標識(例えば、Bir-A)膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となった。次いで、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄して、余剰なPE-ストレプトアビジンを除去した。マウスから収集された細胞集団のPE蛍光をFACSによって検出し、目的の膜貫通タンパク質の細胞外ループドメインに特異的な抗体を発現するB細胞集団を識別した。
【0244】
次いで、目的の膜貫通タンパク質に結合した単一の抗体産生B細胞を、384ウェルプレート上の個々のウェルに単離し、DNAをコードする抗体を各細胞から単離し、さらなる分析のために実施例2に記載されるように抗体を生成した。
【0245】
図4に示すように、目的の例示的な膜貫通タンパク質の細胞外ループドメインに位置するエピトープに結合する抗体を、本発明の方法(箱形)を使用して得た。
【0246】
別の例では、完全長ヒト膜貫通タンパク質(完全長TMB)をコードするヌクレオチド配列を改変して、FLAGタグおよびHisタグ(10x-Hisタグ)を膜貫通タンパク質のカルボキシ末端に貼り付け、実施例1に記載されるように精製および単離する。さらに、ヒト膜貫通タンパク質(TMB断片)の一部分をコードするヌクレオチド配列が生成され、TMB断片ヌクレオチド配列が細胞に発現し、実施例1に記載されるように精製する。ここで、TMB断片ポリペプチドTMBは、目的の完全長膜貫通タンパク質のN末端部分に相当する。
【0247】
完全長TMBを包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、Bir-A標識膜足場タンパク質を使用して生成され、実施例1および3に記載されるように精製された。
【0248】
一般に、ヒト免疫グロブリン重鎖(IgH)およびヒト免疫グロブリン軽鎖可変領域をコードするDNAを含む遺伝子操作されたVELOCIMMUNE(登録商標)マウスを、完全長TMBをコードするDNAで免疫化し、または完全長TMBで精製した。免疫応答をモニターし、脾細胞を免疫化されたマウスから採取する。各マウスから採取された脾細胞は、TMB断片とインキュベートされ、TMB断片と、完全長TMBのN末端に位置するエピトープに特異的な細胞表面上の抗体との間の結合を可能にする。このステップは、完全長TMBのN末端ドメインのエピトープに特異的な抗体を発現するすべての抗体産生細胞を、埋め込まれた完全長TMBを含有するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示される完全長TMBへの結合から効果的に遮断する。次いで、細胞を蛍光標識でB細胞マーカー(すなわち、抗IgG抗体)に対して染色して、脾細胞集団中の抗体産生B細胞を識別し、また完全長TMBを包含する0.2mg/mL~5.0mg/mLのビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートして、完全長TMBの細胞外ループドメイン上のエピトープと、抗体産生B細胞の表面上の抗体との結合を可能にする。次いで、細胞を洗浄して、結合していない複合体を除去する。細胞は、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中のビオチン標識(例えば、Bir-A)膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となる。次いで、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄して、余剰なPE-ストレプトアビジンおよびTMB断片に結合した細胞を選別から除去する。マウスから収集された細胞集団のPE蛍光をFACSによって検出し、目的の膜貫通タンパク質の細胞外ループドメインに特異的な抗体を発現する抗体産生B細胞の集団を識別する。
【0249】
次いで、目的の膜貫通タンパク質に結合する単一の抗体産生B細胞を、384ウェルプレート上の個々のウェルに単離し、DNAをコードする抗体を各細胞から単離し、さらなる分析のために実施例2に記載されるように抗体を生成する。
【0250】
別の例では、目的のヒト膜貫通タンパク質の一部分と、目的の膜貫通タンパク質のマウスホモログの一部分から構成される目的のキメラ膜貫通タンパク質を使用して、目的の膜貫通タンパク質の特定のドメインに位置するエピトープに特異的に結合する抗体を生成する。
【0251】
ここで、キメラ膜貫通タンパク質は、目的の膜貫通タンパク質のマウスホモログの一部に操作可能に結合された対象のヒト膜貫通タンパク質の一部分をコードするヌクレオチド配列を生成し、さらにヌクレオチド配列を改変して、FLAGタグおよびHisタグ(10x-Hisタグ)をキメラ膜貫通タンパク質のカルボキシ末端に貼り付けることによって作製される。次いで、ヌクレオチド配列を精製し、実施例1に記載されるように単離する。さらに、キメラ膜貫通タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、細胞内に発現され、実施例1に記載されるように精製されて、目的の標識されたキメラ膜貫通タンパク質(キメラTMB)を生成する。この例では、目的のキメラ膜貫通タンパク質は、膜貫通タンパク質および細胞外ループドメイン、膜貫通ドメイン、および目的のヒト膜貫通タンパク質の細胞内C末端ドメインのマウスホモログに対応するN末端を有する。
【0252】
さらに、野生型ヒト膜貫通タンパク質(ヒトTMB)をコードするヌクレオチド配列は、FLAGタグおよびHisタグ(10x-Hisタグ)を膜貫通タンパク質のカルボキシ末端に貼り付け、精製および単離されるように改変され、次いでヒト膜貫通タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、細胞に発現し、実施例1に記載されるように精製される。
【0253】
ヒトTMBまたはキメラTMBを包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、Bir-A標識膜足場タンパク質を使用して生成され、実施例1および3に記載されるように精製される。
【0254】
ヒト免疫グロブリン重鎖(IgH)およびヒト免疫グロブリン軽鎖可変領域をコードするDNAを含む遺伝子改変VELOCIMMUNE(登録商標)マウスは、ヒトTMBまたは精製ヒトTMBタンパク質をコードするDNAで免疫化される。免疫応答をモニターし、脾細胞を免疫化されたマウスから採取する。各マウスから収集された脾細胞は、蛍光標識でB細胞マーカー(すなわち、抗IgG抗体)に対して染色され、同時に、キメラTMBを包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされ、複合体によって提示されるキメラ-TMBのヒト部分上のエピトープと、B細胞の表面上の抗体との間の結合を可能にする。次いで、細胞を洗浄して、結合していない複合体を除去する。
【0255】
細胞は、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中のビオチン標識(例えば、Bir-A)膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となる。次いで、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄して、余剰なPE-ストレプトアビジンおよびTMB断片に結合した細胞を選別から除去する。マウスから収集された細胞集団のPE蛍光をFACSによって検出し、目的の膜貫通タンパク質の細胞外ループドメインに特異的な抗体を発現する抗体産生B細胞の集団を識別する。
【0256】
この免疫およびソーティング戦略は、キメラTMBのマウス部分に位置するヒト-TMBのエピトープに特異的な抗体を発現する、すべての抗体産生B細胞を効果的に除去する。
【0257】
別の免疫およびソーティング戦略では、ヒト免疫グロブリン重鎖(IgH)およびヒト免疫グロブリン軽鎖可変領域をコードするDNAを含む遺伝子改変されたVELOCIMMUNE(登録商標)マウスを、キメラTMBまたは精製キメラTMBタンパク質をコードするDNAで免疫化する。免疫応答をモニターし、脾細胞を免疫化されたマウスから採取する。各マウスから収集された脾細胞は、B細胞マーカー(すなわち、抗IgG抗体)に対して蛍光標識で染色され、同時に、ヒトTMBを包含するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされ、複合体によって提示されるヒト-TMBの細胞外部分に位置するエピトープと、B細胞の表面上の抗体との間の結合を可能にする。次いで、細胞を洗浄して、結合していない複合体を除去する。
【0258】
細胞は、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中のビオチン標識(例えば、Bir-A)膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となる。次いで、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄して、余剰なPE-ストレプトアビジンを選別から除去する。マウスから収集された細胞集団のPE蛍光をFACSによって検出して、目的のヒト膜貫通タンパク質の細胞外ループドメインに特異的な抗体を発現する抗体産生B細胞の集団を識別する。
【0259】
この特定の免疫化およびソーティング戦略はまた、キメラ-TMBのマウス部に位置するエピトープに特異的な抗体を発現する、すべての抗体産生B細胞を効果的に除去する。
【0260】
その後、複合体によって提示された目的の膜貫通タンパク質に結合する単一の抗体産生B細胞を384ウェルプレートの個別のウェルに単離することができ、実施例2のように抗体の生成および分析のために、DNAをコードする抗体を各細胞から単離する。
【0261】
実施例8.目的の膜貫通タンパク質の特異的な交差反応性抗体を発現する抗体産生細胞の取得。
本発明の方法を使用して、目的の例示的な膜貫通タンパク質のマウス形態とヒト形態の両方を認識する抗体も作製した。
【0262】
二つの異なる例示的なヒト膜貫通タンパク質をコードする核酸、ヒトTMB1、およびヒトTMB2を改変して、FLAGタグおよびHisタグ(10x-Hisタグ)を、各ヒト膜貫通タンパク質アミノ酸配列のカルボキシ末端に貼り付け、実施例1に記載されるように精製した。さらに、二つのヒト膜貫通タンパク質のそれぞれのマウスホモログをコードする核酸、マウスTMB1およびマウスTMB2を改変して、各マウス膜貫通タンパク質アミノ酸のカルボキシ末端にFLAGタグおよびHisタグ(10x-Hisタグ)を貼り付け、改変されたヌクレオチド配列を実施例1に記載されるように精製した。次に、ヒトTMB1、ヒトTMB2、マウスTMB1、およびマウスTMB2をそれぞれコードする核酸が各々、細胞に発現し、各タンパク質を、実施例1に記載されるように単離および精製した。ヒトTMB1タンパク質、ヒトTMB2タンパク質、マウスTMB1タンパク質、およびマウスTMB2タンパク質の一つを包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体を、Bir-A標識膜足場タンパク質を使用して生成し、実施例1に記載されるように精製した。
【0263】
目的の膜貫通タンパク質(すなわち、マウスTMB1またはマウスTMB2)に対して内因性マウスホモログを発現しないヒト免疫グロブリン重鎖(IgH)およびヒト免疫グロブリン軽鎖可変領域をコードするDNAを含む遺伝子操作されたVELOCIMMUNE(登録商標)マウスを、マウスもしくはヒト膜貫通タンパク質をコードする外因性DNA、または表4に記載されるように、ヒトTMB1およびマウスTMB2タンパク質をコードする外因性DNAの組み合わせを注射することによって、免疫化した。
【0264】
免疫応答をモニターし、脾細胞を免疫化されたマウスから採取した。各マウスから採取した脾細胞を、蛍光標識でB細胞マーカー(すなわち、抗IgG抗体)に対して染色すると同時に、特定のヒトTMBタンパク質(ヒトTMBを含む複合体)または特定のマウスTMBタンパク質(マウスTMBを含む複合体)のいずれかを含むビオチン化脂質-二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートし、ビオチン化脂質-二重層膜足場タンパク質複合体によって提示される目的膜貫通タンパク質とB細胞の表面上の抗体との間の結合を可能にする。細胞は、次いで、洗浄されて、結合していない複合体を除去し、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中のビオチン標識(例えば、Bir-A)膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となる。次いで、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄して、余剰なPE-ストレプトアビジンを選別から除去した。マウスから収集された細胞集団のPE蛍光をFACSによって検出して、目的の膜貫通タンパク質に特異的な抗体を発現する抗体産生B細胞の集団を識別した。
【0265】
次いで、目的の膜貫通タンパク質に結合した単一の抗体産生B細胞を、384ウェルプレート上の個々のウェルに単離し、DNAをコードする抗体を各細胞から単離し、さらなる分析のために実施例2に記載されるように抗体を生成した。
【0266】
表4に示されるように、マウスTMB1のみをコードするDNAで遺伝子改変されたマウスの免疫化、およびヒトTMB1タンパク質を提示する脂質二重層膜足場タンパク質複合体を有する抗体産生B細胞のソーティングにより、マウスTMB1およびヒトTMB1タンパク質を結合することができる交差反応性抗体を発現する抗体産生B細胞が識別される。
【0267】
さらに、マウスTMB1タンパク質をコードするDNAと、ヒトTMB1タンパク質をコードするDNAとを一緒にコードするDNAで遺伝子改変されたマウスの免疫化、およびヒトTMB1タンパク質を提示する脂質二重層膜足場タンパク質複合体、またはマウスTMB1タンパク質を提示する脂質二重層膜足場タンパク質複合体のいずれかによる抗体産生B細胞のソーティングによって、マウスTMB1およびヒトTMB1タンパク質を結合することができる交差反応性抗体を発現する抗体産生B細胞が識別された。
【0268】
表4はまた、マウスTMB2のみをコードするDNAで遺伝子改変されたマウスの免疫化、およびヒトTMB2タンパク質を提示する脂質二重層膜足場タンパク質複合体を有する抗体産生B細胞のソーティングまたはマウスTMB2タンパク質を提示する脂質二重層膜足場タンパク質複合体を有する抗体産生B細胞のソーティングにより、マウスTMB2およびヒトTMB2タンパク質を結合することができる交差反応性抗体を発現する抗体産生B細胞が識別されることを示す。マウスTMB2のみをコードするDNAで遺伝子改変されたマウスの免疫化、およびヒトTMB2タンパク質を提示する脂質二重層膜足場タンパク質複合体を有する抗体産生B細胞のソーティングまたはマウスTMB2タンパク質を提示する脂質二重層膜足場タンパク質複合体を有する抗体産生B細胞のソーティングにより、マウスTMB1およびヒトTMB1タンパク質を結合することができる交差反応性抗体を発現する抗体産生B細胞も識別される。
【表4】
【0269】
実施例9.膜貫通タンパク質を含有する脂質二重層膜足場タンパク質複合体で免疫されたマウスからの、目的の膜貫通タンパク質に特異的な抗体を発現する抗体産生細胞の取得。
目的の膜貫通タンパク質を包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体が、目的の膜貫通タンパク質に特異的な抗体を発現する抗体産生細胞を取得するための免疫原として使用され得るかどうかを決定するために、例示的なヒト膜貫通タンパク質をコードするヌクレオチド配列と、そのカルボキシ末端に貼り付けられたFLAGタグおよびHisタグ(10x-Hisタグ)を含むヒトTMB2を生成し、実施例8に記載されるように精製した。改変されたヒトTMB2タンパク質をコードするヌクレオチド配列は細胞に発現し、改変TMB2タンパク質は、実施例8に記載されるように単離および精製した。ヒトTMB2タンパク質を包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体は、Bir-A標識膜足場タンパク質を使用して生成され、実施例8に記載されるように精製された。
【0270】
さらに、Hisタグをコードするヌクレオチド配列、および改変ヒトTMB2タンパク質に貼り付けられたFLAGタグをコードするヌクレオチド配列を生成し、細胞内で別々に発現し、実施例1に記載されるように精製して、それぞれFLAG-ペプチドおよびHIS-ペプチドを得た。次に、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中に含まれる膜足場タンパク質をコードするヌクレオチド配列を生成し、細胞内で別々に発現し、実施例1に記載されるように精製して、MSP-ペプチドを得た。
【0271】
表5に示されているように、目的の膜貫通タンパク質(すなわち、マウスTMB2)に対して内因性マウスホモログを発現しないヒト免疫グロブリン重鎖(IgH)およびヒト免疫グロブリン軽鎖可変領域をコードするDNAを含む遺伝子操作されたVELOCIMMUNE(登録商標)マウスに、ヒトTMB2タンパク質を包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体(ヒトTMB2を含む複合体)を0.54mg/mL注射することによって、そのマウスを免疫化した。免疫応答をモニターし、脾細胞を免疫化されたマウスから採取した。免疫化された各マウスから収集された脾細胞は、B細胞マーカー(すなわち、抗IgG抗体)に対して蛍光標識で染色され、同時に、MSP-ペプチド、FLAG-ペプチド、およびHIS-ペプチドとインキュベートされて、MSP-ペプチド、FLAG-ペプチド、およびHIS-ペプチドと、MSP-ペプチド、FLAG-ペプチド、およびHIS-ペプチドにそれぞれ位置するエピトープに特異的なB細胞の表面上の抗体との結合を可能にした。このステップは、複合体によって提示されるヒトTMB2タンパク質以外の複合体の要素に特異的な抗体を発現する、すべての抗体産生B細胞を効果的に遮断する。
【0272】
続いて、残っているB細胞を、ヒトTMB2タンパク質(ヒトTMB2を含む複合体)またはマウスTMB2タンパク質(マウスTMB2を含む複合体)のいずれかを含むビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートして、ビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示される目的の膜貫通タンパク質と、B細胞の表面上の抗体との結合を可能にした。細胞は、その後洗浄して、結合していない複合体を除去し、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中のビオチン標識(Bir-A)膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となる。次いで、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄して、余剰なPE-ストレプトアビジンを選別から除去した。マウスから収集された細胞集団のPE蛍光をFACSによって検出して、目的の膜貫通タンパク質に特異的な抗体を発現する抗体産生B細胞の集団を識別した。
【0273】
次いで、目的の膜貫通タンパク質に結合した単一の抗体産生B細胞を、384ウェルプレート上の個々のウェルに単離し、DNAをコードする抗体を各細胞から単離し、さらなる分析のために実施例2に記載されるように抗体を生成した。
【0274】
表5に示されるように、ヒトTMB2タンパク質を包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体による遺伝子改変マウスの免疫化およびヒトTMB2タンパク質を提示する脂質二重層膜足場タンパク質複合体を有する抗体産生B細胞のソーティングにより、マウスTMB2およびヒトTMB2タンパク質ホモログならびにヒトTMB2タンパク質に特異的な抗体の結合を可能にする交差反応性抗体を発現する抗体産生B細胞を識別した。さらに、マウスTMB2タンパク質を包含する脂質二重層膜足場タンパク質複合体による遺伝子改変マウスの免疫化およびマウスTMB2タンパク質を提示する脂質二重層膜足場タンパク質複合体を有する抗体産生B細胞のソーティングにより、マウスTMB2タンパク質およびヒトTMB2タンパク質に結合することができる交差反応性抗体のみを発現する抗体産生B細胞を識別した。
【表5】
【0275】
実施例10.目的の例示的なSLC膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現する抗体産生細胞の生成および細胞からSLCタンパク質特異的抗体の取得。
目的のSLC膜貫通タンパク質の第一の例をコードするヌクレオチド配列を、例示的なSLCタンパク質のN末端に貼り付けられたFLAGタグおよび10x-Hisタグを含むように、実施例1に記載されるように、改変する。改変SLC膜貫通タンパク質を包含するヌクレオチド配列は、発現ベクターにクローニングされ、Sf9細胞に発現される。次いで、細胞を可溶化し、改変SLC膜貫通タンパク質を取得して、実施例1のように精製する。
【0276】
次に、改変ヒトSLC膜貫通タンパク質を含有する円板状の脂質二重層膜足場タンパク質複合体を、実施例1および本明細書に記載されるように生成する。
【0277】
遺伝子改変されたSLCノックアウトマウス、すなわち、ヒト化IgH座位と、目的のSLC膜貫通タンパク質をコードする内因性マウス遺伝子も欠いているヒト化Igκ座位とを含むVELOCIMMUNE(登録商標)マウスは、実施例1に記載されるように、改変ヒトSLCタンパク質をコードする外因性DNAの注射および改変ヒトSLCタンパク質の注射によって免疫化される。
【0278】
脾細胞は、免疫された各マウスから収集され、蛍光標識でB細胞マーカー(すなわち、抗IgG抗体)に対して染色され、同時に、0.2mg/mL~5.0mg/mLのそこに埋め込まれたSLC膜貫通タンパク質を含有するビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体とインキュベートされる。次いで、細胞を洗浄して、結合していない複合体を除去する。続いて、細胞は、PE-ストレプトアビジンとインキュベートされ、脂質二重層膜足場タンパク質複合体中のビオチン標識(例えば、Bir-A)膜足場タンパク質の各々へのストレプトアビジンの結合が可能となる。次いで、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄して、余剰なPE-ストレプトアビジンを除去する。対照マウスおよび免疫化マウスからの細胞集団のPE蛍光をFACSによって検出して、ビオチン化脂質二重層膜足場タンパク質複合体によって提示される、目的の例示的なSLC膜貫通タンパク質に結合する抗体を発現するB細胞集団を識別した。
【0279】
目的のSLC膜貫通タンパク質に結合した単一の抗体産生B細胞を、384ウェルプレート上の個々のウェルに単離し、DNAをコードする抗体を各細胞から単離し、さらなる分析のために実施例2に記載されるように抗体を生成した。
【0280】
本開示のいくつかの態様が本明細書に説明および図示されているが、代替的な態様は、同じ目的を達成するために当業者によって影響されうる。したがって、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の精神および範囲内にあるような代替的な態様のすべてを網羅することを意図するものである。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3
図4
【配列表】
2024501796000001.app
【国際調査報告】