(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-16
(54)【発明の名称】工具ヘッド、工具ヘッドの動作方法及びそのような工具ヘッドを有する工作機械
(51)【国際特許分類】
B23F 23/12 20060101AFI20240109BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20240109BHJP
B23Q 17/12 20060101ALI20240109BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240109BHJP
B24B 41/04 20060101ALI20240109BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20240109BHJP
B24B 49/14 20060101ALI20240109BHJP
B24B 49/16 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B23F23/12
B23Q17/09 H
B23Q17/09 A
B23Q17/09 Z
B23Q17/12
B23Q11/00 B
B24B41/04
B24B49/10
B24B49/14
B24B49/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537020
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2021084604
(87)【国際公開番号】W WO2022128634
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599172531
【氏名又は名称】ライシャウァー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホールター,エードリアン マルセル
(72)【発明者】
【氏名】ハグ,テオフィル
(72)【発明者】
【氏名】ムラー,ミヒェル
【テーマコード(参考)】
3C025
3C029
3C034
【Fターム(参考)】
3C025HH09
3C029CC00
3C034AA13
3C034DD20
(57)【要約】
工作機械、特に歯切り盤用の工具ヘッド(300)であって、第1のスピンドルユニット(320)及び第2のスピンドルユニット(330)を有しており、これらのユニットはそれぞれ、少なくとも1つのスピンドルベアリング(323,333)と、各スピンドルベアリングに工具スピンドル軸(B)を中心として回転可能に取り付けられたスピンドルシャフト(322,332)とを有している。各スピンドルベアリングは、径方向力及び軸方向力の両方を支持することができる。スピンドルユニットは互いに同軸に配置されていて、工具(340)が、軸方向で両スピンドルシャフトの間に受容されている。制御されるクランプ装置(600)が、スピンドルベアリングを共に接続している。制御装置(730)が、加工動作中にクランプ装置(600)を作動させ、加工休止中にクランプ装置を停止させる。代替的に又は付加的に、工具ヘッドは、両スピンドルベアリングの間に軸方向の予荷重力を発生させる軸方向力エレメントを有している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械、特に歯切り盤用の工具ヘッド(300)であって、
少なくとも1つの第1のスピンドルベアリング(323)と第1のスピンドルシャフト(322)とを備えた第1のスピンドルユニット(320)と、
少なくとも1つの第2のスピンドルベアリング(333)と第2のスピンドルシャフト(332)とを備えた第2のスピンドルユニット(330)と
を有し、
前記第1のスピンドルシャフトは、工具スピンドル軸(B)を中心として回転可能に、前記第1のスピンドルベアリング(323)に取り付けられており、前記第1のスピンドルベアリング(323)は、径方向力及び軸方向力の両方を吸収するように構成され、
前記第2のスピンドルシャフトは、前記工具スピンドル軸(B)を中心として回転可能に、前記第2のスピンドルベアリング(333)に取り付けられており、前記第2のスピンドルベアリング(333)は、径方向力及び軸方向力の両方を吸収するように構成され、
前記第1のスピンドルユニット(320)と前記第2のスピンドルユニット(330)とは、工具(340)が、軸方向で前記第1のスピンドルシャフト(322)と前記第2のスピンドルシャフト(332)との間に受容可能であるように、互いに同軸に配置されており、
前記工具ヘッド(300)は、前記第1のスピンドルベアリング(323)と前記第2のスピンドルベアリング(333)とを互いに制御可能に接続するための制御されたクランプ装置(600)を有しており、
前記工具ヘッド(300)には制御装置(730)が割り当てられており、前記制御装置は、加工動作中に前記クランプ装置(600)を作動させ、加工休止中に前記クランプ装置を停止させるように構成されている
ことを特徴とする、工具ヘッド(300)。
【請求項2】
前記工具ヘッド(300)の動作状態を監視するための少なくとも1つのセンサ(731)、特に温度センサ、振動センサ、ひずみセンサ、力センサ又は圧力センサを有しており、前記制御装置(730)は、前記センサ(731)を読み取り、前記センサ(731)によって測定された測定パラメータを考慮して、前記クランプ装置(600)を停止させるように構成されている、請求項1記載の工具ヘッド(300)。
【請求項3】
前記クランプ装置(600)は、拡張クランプエレメント(610)を有している、請求項1又は2記載の工具ヘッド(300)。
【請求項4】
前記クランプ装置は、前記クランプ装置(600)が作動状態にあるとき、前記第1のスピンドルユニット(320)と前記第2のスピンドルユニット(330)との間の振動を減衰するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項記載の工具ヘッド(300)。
【請求項5】
前記第1のスピンドルユニット(310)と前記第2のスピンドルユニット(320)との両方が収容されている共通のスピンドルハウジング(380)と、
前記共通のスピンドルハウジング(380)に対して相対的に軸方向に変位可能であるとともに、少なくとも1つの前記第2のスピンドルベアリング(333)が内部に保持されるベアリングレセプタクル(391)と
を有しており、
前記クランプ装置(600)は、前記第1のスピンドルベアリング(323)と前記第2のスピンドルベアリング(333)とを互いに接続するために前記ベアリングレセプタクル(391)を制御可能に固定するように構成されている、
請求項1~4のいずれか1項記載の工具ヘッド(300)。
【請求項6】
前記第1のスピンドルユニット(320)は、少なくとも1つの前記第1のスピンドルベアリング(323)が内部に保持される第1のスピンドルハウジング(321)を有しており、
前記第2のスピンドルユニット(330)は、少なくとも1つの前記第2のスピンドルベアリング(333)が内部に保持される第2のスピンドルハウジング(331)を有しており、
前記クランプ装置(600)は、前記第1のスピンドルベアリング(323)と前記第2のスピンドルベアリング(333)とを互いに接続するために、前記第1のスピンドルハウジング(321)と前記第2のスピンドルハウジング(331)とを制御可能に互いに連結するように構成されている、
請求項1~4のいずれか1項記載の工具ヘッド(300)。
【請求項7】
工作機械、特に歯切り盤用の工具ヘッド(300)であって、
少なくとも1つの第1のスピンドルベアリング(323)と第1のスピンドルシャフト(322)とを備えた第1のスピンドルユニット(320)と、
第2のスピンドルベアリング(333)と第2のスピンドルシャフト(332)とを備えた第2のスピンドルユニット(330)と
を有し、
前記第1のスピンドルシャフトは、工具スピンドル軸(B)を中心として回転可能に、前記第1のスピンドルベアリング(323)に取り付けられており、少なくとも1つの前記第1のスピンドルベアリング(323)は、径方向力及び軸方向力の両方を吸収するように構成されており、
前記第2のスピンドルシャフトは、前記工具スピンドル軸(B)を中心として回転可能に、前記第2のスピンドルベアリング(333)に取り付けられており、少なくとも1つの前記第2のスピンドルベアリング(333)は、径方向力及び軸方向力の両方を吸収するように構成されており、
前記第1のスピンドルユニット(320)と前記第2のスピンドルユニット(330)とは、工具(340)が、軸方向で前記第1のスピンドルシャフト(322)と前記第2のスピンドルシャフト(332)との間に受容可能であるように、互いに同軸に配置されており、
特に、請求項1~6のいずれか1項記載の前記工具ヘッド(300)は、
前記第1のスピンドルベアリング(323)と前記第2のスピンドルベアリング(333)との間に軸方向の予荷重力を発生させるように構成された軸方向力エレメント(390;630)を有している
ことを特徴とする、工具ヘッド(300)。
【請求項8】
前記軸方向力エレメント(390;630)は、前記軸方向の予荷重力を制御可能に変化、特に意図的に解放するために、アクチュエータ、特に空気圧式又は油圧式のアクチュエータを有している、請求項7記載の工具ヘッド。
【請求項9】
前記工具ヘッド(300)には、制御された状態で前記軸方向の予荷重力を調整及び/又は制御可能に変化させるため、特に加工動作中に前記軸方向力エレメント(390;630)を作動させるとともに加工休止中に前記軸方向力エレメントを停止させるために、前記アクチュエータを作動させるように構成されている制御装置(730)が割り当てられている、請求項8記載の工具ヘッド(300)。
【請求項10】
前記工具ヘッド(300)の動作状態を監視するための少なくとも1つのセンサ(731)、特に温度センサ、振動センサ、ひずみセンサ、力センサ又は圧力センサを有しており、
前記制御装置(730)は、前記センサ(731)を読み取り、前記センサ(731)によって測定された測定パラメータを考慮して、前記軸方向の予荷重力を変化させるように構成されている、請求項9記載の工具ヘッド(300)。
【請求項11】
前記第1のスピンドルユニット(310)及び前記第2のスピンドルユニット(320)の両方が収容されているスピンドルハウジング(380)と、
前記スピンドルハウジング(380)に対して軸方向に変位可能であるとともに少なくとも1つの前記第2のスピンドルベアリング(333)が内部に保持される、ベアリングレセプタクル(391)と
を有しており、
前記軸方向力エレメント(390)は、前記軸方向の予荷重力を発生させるために、前記ベアリングレセプタクル(391)に軸方向力を加えるように構成されている、
請求項7~10のいずれか1項記載の工具ヘッド(300)。
【請求項12】
前記軸方向力エレメント(390)は環状であって、前記工具(340)を前記第1のスピンドルシャフト(322)及び前記第2のスピンドルシャフト(332)に軸方向でクランプするためのクランプエレメント(372)を取り囲んでいる、請求項11記載の工具ヘッド(300)。
【請求項13】
前記第1のスピンドルユニット(310)は、第1のスピンドルハウジング(311)を有しており、
前記第2のスピンドルユニット(310)は、第2のスピンドルハウジング(311)を有しており、
前記軸方向力エレメント(630)は、前記第1のスピンドルハウジング(311)と前記第2のスピンドルハウジング(312)とを互いに接続しており、前記軸方向の予荷重力を発生させるために、前記第1のスピンドルハウジング(311)と前記第2のスピンドルハウジング(312)との間に軸方向力を加えるように構成されている、
請求項7~10のいずれか1項記載の工具ヘッド(300)。
【請求項14】
前記工具(340)は、軸方向の圧縮力が前記第1のスピンドルシャフト(322)と前記第2のスピンドルシャフト(332)との間の前記工具(340)に作用するように、軸方向で前記第1のスピンドルシャフト(322)と前記第2のスピンドルシャフト(332)との間にクランプ可能である、請求項1~13のいずれか1項記載の工具ヘッド(300)。
【請求項15】
前記第2のスピンドルシャフト(332)は、少なくとも1つの軸方向孔を有しており、
前記工具ヘッド(300)は、前記第2のスピンドルシャフト(332)の前記軸方向孔を貫通して延在する少なくとも1つのプルロッド(370)を有していて、前記プルロッド(370)は、一方の端部で、張力をかけるように前記第1のスピンドルシャフト(322)に接続可能であり、
前記プルロッド(370)は、第2の端部で、前記第2のスピンドルシャフト(332)に、前記第1のスピンドルシャフト(322)と前記第2のスピンドルシャフト(332)との間で前記工具(340)に軸方向の圧縮力を生じさせることができるように、接続可能である、
請求項14記載の工具ヘッド(300)。
【請求項16】
前記工具ヘッド(300)は、前記プルロッド(370)の第2の端部に接続可能なクランプエレメント(372)を有しており、前記クランプエレメントは、前記第2のスピンドルシャフト(332)を前記第1のスピンドルシャフト(322)に向かって軸方向に押すように構成されている、請求項15記載の工具ヘッド。
【請求項17】
前記クランプエレメントは、
前記プルロッド(370)に堅固に接続可能なハウジングと、
前記ハウジングに対して、前記第2のスピンドルシャフト(332)の方向に軸方向に変位可能で、前記第2のスピンドルシャフト(332)を前記第1のスピンドルシャフト(322)に向かって軸方向に押す、軸方向押圧エレメントと、
前記ハウジングに対して可動で、前記ハウジングに対して前記軸方向押圧部材に軸方向の圧縮力を発生させる、少なくとも1つの作動部材と
を有している、請求項16記載の工具ヘッド。
【請求項18】
第1のスピンドル突起(325)が、前記第1のスピンドルシャフト(322)の工具側端部に、軸方向の圧縮力によって前記工具(340)との非形状接続及び/又は形状接続、特に円錐状接続、好ましくは面接触を伴う円錐状接続が、前記第1のスピンドル突起(325)で生じることができるように、形成され、
第2のスピンドル突起(335)が、前記第2のスピンドルシャフト(332)の工具側端部に、軸方向の圧縮力によって前記工具(340)との非形状接続及び/又は形状接続、特に円錐状接続、好ましくは面接触を伴う円錐状接続が、前記第2のスピンドル突起(335)で生じることができるように、形成された、
請求項1~17のいずれか1項記載の工具ヘッド(300)。
【請求項19】
前記第1のスピンドルユニット(320)は、前記第1のスピンドルシャフト(322)を、前記工具スピンドル軸(B)を中心として回転駆動するように構成された第1の駆動モータ(324)を有している、及び/又は、
前記第2のスピンドルユニット(330)は、前記第2のスピンドルシャフト(332)を、前記工具スピンドル軸(B)を中心として回転駆動するように構成された第2の駆動モータ(334)を有している、
請求項1~18のいずれか1項記載の工具ヘッド(300)。
【請求項20】
前記第1のスピンドルユニット(320)に割り当てられた第1のバランシング装置(350)と、前記第2のスピンドルユニット(330)に割り当てられた第2のバランシング装置(360)とを有している、請求項1~19のいずれか1項記載の工具ヘッド(300)。
【請求項21】
前記第1のバランシング装置(350)は、前記第1のスピンドルシャフト(322)を径方向で取り囲んでいるとともに、軸方向で前記第1のスピンドルユニット(320)の工具側のスピンドルベアリング(323)と前記第1のスピンドルシャフト(322)の工具側端部との間に配置されている、及び/又は、
前記第2のバランシング装置(350)は、前記第2のスピンドルシャフト(332)を径方向で取り囲んでいるとともに、軸方向で前記第2のスピンドルユニット(330)の工具側のスピンドルベアリング(333)と、前記第2のスピンドルシャフト(332)の工具側端部との間に配置されている、
請求項20記載の工具ヘッド(300)。
【請求項22】
前記第1のバランシング装置(350)及び/又は前記第2のバランシング装置(360)は、リングバランシングシステムとして構成されている、請求項21記載の工具ヘッド(300)。
【請求項23】
工具(340)、特に研削工具、好ましくは歯車研削用の研削工具を、さらに有しており、前記工具(340)は、軸方向で前記第1のスピンドルシャフト(322)と前記第2のスピンドルシャフト(332)との間に受容されているとともに、特に、軸方向の圧縮力が前記第1のスピンドルシャフト(322)と前記第2のスピンドルシャフト(332)との間の前記工具(340)に作用するように、軸方向でクランプされている、請求項1~22のいずれか1項記載の工具ヘッド(300)。
【請求項24】
工作機械であって、
請求項1~23のいずれか1項記載の工具ヘッド(300)と、
ワークピース軸(C1)を中心として回転するようにワークピース(510)を駆動するための少なくとも1つのワークピーススピンドル(500)と
を有しており、
前記工作機械は、好ましくは歯切り盤、特に歯車研削機械である、
工作機械。
【請求項25】
請求項1~23のいずれか1項記載の工具ヘッド(300)の動作方法であって、
加工動作中は、前記第1のスピンドルベアリング(323)と前記第2のスピンドルベアリング(333)とを接続し、加工休止中は前記接続を解放すること、及び/又は、
前記第1のスピンドルベアリング(323)と前記第2のスピンドルベアリング(333)との間に軸方向の予荷重力を発生させること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具ヘッドに関する。本発明はさらに、このような工具ヘッドを有する工作機械、及びこのような工具ヘッドの動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車製造においては、小さな直径を有する工具の使用がますます増加している。所望の切削速度を達成するために、このような工具は、通常、比較的高い回転速度で運転される。このような工具は、その直径に対して比較的長い場合がある。これにより、工具は特に、曲げ振動及びねじれ振動を受けやすい。したがって、このような工具を、スピンドルに両端部で受容することが有利である。2つのスピンドルを有し、これらのスピンドルの間に工具が受容されている、歯切り盤用の工具ヘッドが、従来技術により長年知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、成形研削機用の工具ヘッドが開示されている。駆動モータを備えた工具スピンドルが、2つの別個の工具スライドのそれぞれに配置されている。別個の位置決め駆動装置によって、各工具スライドを、軸方向に動かすことができる。2つの工具スピンドルのスピンドルシャフトは、互いに同軸に配置されていて、ねじれや曲げに強いように、工具ホルダによって互いに接続されている。このために、スピンドルシャフトは、径方向の拡張クランプ接続を介して工具ホルダに接続されている位置決めピンを有する。2つの工具スライドの位置決め駆動装置は、協調して動かすことができる。このような構造は、振動を受けやすいおそれがある。さらに、加工中に工具が熱膨張する場合、又は2つの工具スライドが、軸方向に沿って移動するとき完全に同調して加速されない場合、工具スピンドルにおいてベアリング損傷のリスクがある。
【0004】
特許文献2も、2つの工具スピンドルを有し、これらのスピンドルの間に工具が受容されている工具ヘッドを開示している。工具スピンドルは、ベースに対して相対的に、直線的に変位可能である。単一の位置決め駆動装置によって、ベースに対して相対的に2つの工具スピンドルを一緒に動かすために、これらの工具スピンドルを、動作伝達ユニットによって連結することができる。
【0005】
特許文献3は、モータスピンドルとカウンタスピンドルとを有していて、これらのスピンドルの間に工具が受容されている工具ヘッドを開示している。モータスピンドル及びカウンタスピンドルのシャフトには、バランシング装置が組み込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第4431374号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102009039752号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第3153277号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明の課題は、間に工具が受容可能な2つのスピンドルを有し、工具ヘッドであって、改善された振動特性を有し、熱膨張によるベアリング損傷のリスクが減じられている工具ヘッドを提供することである。
【0008】
この課題は、請求項1又は7に記載の工具ヘッドによって解決される。さらなる実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0009】
工作機械、特に歯切り盤用の工具ヘッドであって、
少なくとも1つの第1のスピンドルベアリングと第1のスピンドルシャフトとを備えた第1のスピンドルユニットと、
少なくとも1つの第2のスピンドルベアリングと第2のスピンドルシャフトとを備えた第2のスピンドルユニットと
を有し、
第1のスピンドルシャフトは、工具スピンドル軸を中心として回転可能に第1のスピンドルベアリングに取り付けられており、第1のスピンドルベアリングは、径方向力及び軸方向力の両方を吸収するように構成され、
第2のスピンドルシャフトは、工具スピンドル軸を中心として回転可能に第2のスピンドルベアリングに取り付けられており、第2のスピンドルベアリングは、径方向力及び軸方向力の両方を吸収するように構成され、
第1のスピンドルユニットと第2のスピンドルユニットとは、工具が、軸方向で第1のスピンドルシャフトと第2のスピンドルシャフトとの間に受容可能であるように、互いに同軸に配置されている、
工具ヘッドが開示されている。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、上記課題は、工具ヘッドであって、第1のスピンドルベアリングと第2のスピンドルベアリングとを制御可能に互いに接続するための、好ましくは実質的に堅固に互いに接続するための、制御可能なクランプ装置を有しており、工具ヘッドには制御装置が割り当てられており、制御装置は、加工動作中にクランプ装置を作動させ、加工休止中にクランプ装置を停止させるように構成されている、工具ヘッドによって解決される。
【0011】
加工動作中に2つのスピンドルベアリングを意図的に接続することにより、工具ヘッドの振動傾向が著しく減じられる。この接続により、工具ヘッドの移動中、例えばドレッシング中又はシフト中、スピンドルユニットの加速によって生じる、スピンドルベアリングにかかる軸方向力も、著しく低減させることができ、及び/又は、これらの力を、特により予荷重がかけられているスピンドルベアリングを含むスピンドルユニットへとシフトすることができる。加工の休止中にこの接続を意図的に解放することにより、加工中に生じる可能性のある熱応力も除去される。これにより、熱応力により生じるベアリングの損傷が阻止される。加工動作は、工具によるワークピースの加工であり得、又は、ドレッシング装置による工具のドレッシング動作であり得る。
【0012】
工具ヘッドは、工具ヘッドの作動状態を監視するための少なくとも1つのセンサ、特に温度センサ、振動センサ、ひずみセンサ、力センサ又は圧力センサを有していてよい。この場合、制御装置は、センサを読み取り、センサによって測定された測定パラメータを考慮して、クランプ装置を停止させるように構成されていてよい。このようにして、スピンドルベアリング間の接続を、必要に応じて、極めて意図的に解放することができる。
【0013】
クランプ装置は、特に、拡張クランプエレメントを有していてよい。拡張クランプエレメントは、第1又は第2のスピンドルベアリングに堅固に接続されていてよい。拡張クランプエレメントは、他方のスピンドルベアリングに堅固に接続されている対応部分と協働して、第1のスピンドルベアリングと第2のスピンドルベアリングとを互いに接続する。しかしながら、拡張クランプエレメントの代わりに、別の形式のクランプ装置、例えば機械的、磁気的、又は電気的なクランプ装置が、使用されてもよい。
【0014】
クランプ装置は、クランプ装置が作動状態にあるとき、スピンドルユニット間の振動を減衰するように構成されていてよい。このために、クランプ装置は、軸方向の減衰エレメントを有することができ、又は、クランプ装置は、例えば油圧シリンダ又は空気圧シリンダによるクランプの場合に、その設計により軸方向の減衰を生じさせることができる。これに関して、クランプ装置は、切替可能な軸方向振動ダンパとして機能することもできる。
【0015】
いくつかの実施形態では、第1のスピンドルユニットと第2のスピンドルユニットとが、共通のスピンドルハウジング内に収容されている。この場合、第2のスピンドルベアリングは、共通のスピンドルハウジングに対して軸方向に変位可能なベアリングレセプタクルに保持することができる。この場合、クランプ装置は、好ましくは、第1のスピンドルベアリングと第2のスピンドルベアリングとを互いに接続するためにベアリングレセプタクルを制御可能に固定するように構成されている。クランプ装置が拡張クランプエレメントを有している場合、拡張クランプエレメントは、拡張スリーブとして構成されていてよく、ベアリングレセプタクルを径方向で取り囲んでいてよい。
【0016】
別の実施形態では、2つのスピンドルユニットは、別個のスピンドルハウジングに収容されている。したがってこの場合、第1のスピンドルユニットは、少なくとも1つの第1のスピンドルベアリングが内部に保持される第1のスピンドルハウジングを有しており、第2のスピンドルユニットは、少なくとも1つの第2のスピンドルベアリングが内部に保持される第2のスピンドルハウジングを有している。この場合、クランプ装置は、好ましくは、第1のスピンドルベアリングと第2のスピンドルベアリングとを互いに接続するために、第1のスピンドルハウジングと第2のスピンドルハウジングとを制御可能に互いに連結するように構成されている。このために、クランプ装置は、好ましくは、2つのスピンドルハウジングを互いに直接、接続する。例えば、2つのスピンドルハウジングが変位可能にベースに保持されているならば、この場合、接続は、好ましくはベースに対する個々のスピンドルハウジングのクランプによって行われるのではなく、又は、少なくともこのようなクランプのみによって行われるのではなく、スピンドルハウジング間で直接行われる。
【0017】
クランプ装置は、2つのエレメントを有していてよく、この場合、クランプ装置の非作動状態では、これらのエレメントのうちの第1のエレメントは、第2のエレメント(第1のエレメントを取り囲んでいてよく、例えば拡張スリーブを有し得る)内で軸方向に変位可能であり、クランプ装置の作動状態では、2つのエレメントは、軸方向で互いに固定されている。有利には、この場合、クランプ装置は、2つのエレメントが一緒に押されたときに互いにブロックし合うことを防止するために、例えば工具交換中でさえも第1のエレメントが第2のエレメントから完全には伸長させられ得ないように構成されている。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、上記課題は、工具ヘッドであって、第1のスピンドルベアリングと第2のスピンドルベアリングとの間に軸方向の予荷重力を発生させるように構成された軸方向力エレメントを有している工具ヘッドによって解決される。
【0019】
したがって、この態様によれば、2つのスピンドルユニットは、互いに対してベアリング側で軸方向にクランプされている。したがって、スピンドルベアリングは、軸方向に互いに対して自由に移動できるのではなく、互いに完全に堅固に接続されているわけでもない。その結果、スピンドルベアリングは、少なくともある程度は熱応力を軸方向で回避することができる。これにより、また、工具ヘッドの振動傾向は、熱応力によるベアリング損傷のリスクなしに、著しく減じることができる。
【0020】
2つの態様が組み合わせられてもよい。特に、軸方向力エレメントによってスピンドルベアリングを互いにクランプすることが可能であり、加工動作中、クランプ装置によってクランプ状態でこれらのスピンドルベアリングを互いに接続し、加工休止中はこの接続を再び解除することができる。
【0021】
軸方向力エレメントは、軸方向の予荷重力を制御可能に変化させるために、特に意図的に解放するために、制御可能なアクチュエータを、特に空気圧式又は油圧式のアクチュエータを有していてよい。アクチュエータは、第1のスピンドルベアリングに対して第2のスピンドルベアリングの軸方向の位置とは実質的に独立した軸方向の予荷重力を発生させるように構成されていてよい。このことは、例えば空気圧式又は油圧式のアクチュエータによって簡単に達成することができ、これはこのようなアクチュエータでは、軸方向力は、加えられる圧力のみに依存することが多く、アクチュエータの位置には依存しないからである。
【0022】
本発明の第2の態様による実施形態でも、工具ヘッドには制御装置が割り当てられていてよい。この場合、軸方向の予荷重力を調整するために、例えば加工動作中は一定に維持するために、及び/又は、加工休止中は制御可能に変化させる、特に停止させるために、制御装置はアクチュエータを制御するように構成されていてよい。
【0023】
工具ヘッドはさらに、工具ヘッドの作動状態を監視するための少なくとも1つのセンサ、特に温度センサ、振動センサ、ひずみセンサ、力センサ又は圧力センサを有していてよい。この場合、制御装置は、センサを読み取り、センサによって測定された測定パラメータを考慮して、軸方向の予荷重力を変化させるように構成されていてよい。
【0024】
また、いくつかの実施形態では、第1のスピンドルユニットと第2のスピンドルユニットとの両方が、共通のスピンドルハウジング内に収容されていてよく、このスピンドルハウジングに対して軸方向に変位可能であって、少なくとも1つの第2のスピンドルベアリングが内部に保持されているベアリングレセプタクルが設けられていてよい。この場合、軸方向力エレメントは、軸方向の予荷重力を発生させるために、ベアリングレセプタクルに軸方向力を加えるように構成されていてよい。このために、軸方向力エレメントは、特に環状であってよく、工具を第1のスピンドルシャフト及び第2のスピンドルシャフトに軸方向でクランプするためのクランプエレメントを取り囲んでいてよい。特に、軸方向力エレメントは、環状のアクチュエータを有していてよい。
【0025】
別の実施形態では、スピンドルユニットはまた、別個のスピンドルハウジングに収容されていてよい。この場合、軸方向力エレメントは、第1のスピンドルハウジングと第2のスピンドルハウジングとを互いに接続していてよく、軸方向の予荷重力を発生させるために、第1のスピンドルハウジングと第2のスピンドルハウジングとの間に軸方向力を加えるように構成されていてよい。
【0026】
2つのスピンドルシャフトが、工具の両側に軸方向の圧縮力が作用するように、工具に軸方向にクランプされていると、特別な利点が得られる。このために、以下のような設計が特に有利である。すなわち、第2のスピンドルシャフトが、少なくとも1つの軸方向孔を有している。これに相応して、工具ヘッドは、第2のスピンドルシャフトの対応する軸方向孔を貫通して延在する少なくとも1つのプルロッド(牽引棒)を有していて、このプルロッドは、第1の端部で第1のスピンドルシャフトに接続可能である。プルロッドは、第1のスピンドルシャフトと第2のスピンドルシャフトとの間で工具に軸方向の圧縮力を生じさせることができるように、その第2の端部で第2のスピンドルシャフトに接続可能である。このために、工具も同様に、各プルロッドが工具の対応する孔を貫通し得るような、少なくとも1つの軸方向孔を有している。
【0027】
このタイプの軸方向の押さえは、特にねじれ及び曲げに対して耐性がある、2つのスピンドルシャフトと工具とから成るユニットを形成する。プルロッドとクランプエレメントとの組み合わせにより、工具と2つのスピンドルシャフトとの間に高い軸方向の圧縮力が得られる。その結果、上述したユニットは、単一の軸として働く。同時に、このような構造は、極めてコンパクトであり得る。これにより、このような構造は、小さな直径を有する工具のために特に適している。
【0028】
しかしながら、結果として2つのスピンドルシャフトと工具とから成るしっかりとクランプされた堅固ユニットが得られる限り、第1のスピンドルシャフトと第2のスピンドルシャフトとの間に、連続的なプルロッドを用いる以外の方法で、工具がクランプされてもよい。堅固なユニットを形成するための、2つのスピンドルシャフト間の工具のクランプは、任意の軸方向の押さえ、又は関連するスピンドルベアリングのクランプとは独立したものである。
【0029】
上記の構造は、上述したタイプのクランプ装置又は軸方向力エレメントが設けられていなくても有利である。これに関して、本発明はさらに、工作機械、特に歯切り盤用の工具ヘッドであって、
第1のスピンドルシャフトを有した第1のスピンドルユニットであって、第1のスピンドルシャフトは、この第1のスピンドルユニットに工具スピンドル軸を中心として回転可能に取り付けられている、第1のスピンドルユニット、及び
第2のスピンドルシャフトを備えた第2のスピンドルユニットであって、第2のスピンドルシャフトは、この第2のスピンドルユニットに工具スピンドル軸を中心として回転可能に取り付けられている、第2のスピンドルユニット
を有しており、
第1のスピンドルユニットと第2のスピンドルユニットとは、工具が第1のスピンドルシャフトと第2のスピンドルシャフトとの間に軸方向に受容可能であり、工具が工具スピンドル軸を中心として回転駆動されるように、配置されていて、
第2のスピンドルシャフトが、少なくとも1つの軸方向孔を有していて、
工具ヘッドは、第2のスピンドルシャフトの軸方向孔を貫通して延在する少なくとも1つのプルロッドを有していて、
このプルロッドは第1の端部で、張力をかけるように、第1のスピンドルシャフトに接続可能であり、
プルロッドは、他方の別の端部で第2のスピンドルシャフトに、第1のスピンドルシャフトと第2のスピンドルシャフトとの間で工具に軸方向の圧縮力を生じさせることができるように、接続可能である、
工具ヘッドに関する。
【0030】
この場合、第1のスピンドルユニットが、少なくとも1つの第1のスピンドルベアリングと、第1のスピンドルシャフトとを有していて、第1のスピンドルシャフトが、第1のスピンドルベアリングに、工具スピンドル軸を中心として回転可能に取り付けられており、第1のスピンドルベアリングは、径方向力及び軸方向力の両方を吸収するように構成されており、そして、第2のスピンドルユニットが、対応して、第2のスピンドルベアリングを有しており、第2のスピンドルベアリングには、第2のスピンドルシャフトが工具スピンドル軸を中心として回転可能に取り付けられており、第2のスピンドルベアリングは、径方向力及び軸方向力の両方を吸収するように構成されていると、有利である。
【0031】
好ましくは、第2のスピンドルシャフトの軸方向中心孔を貫通して延在するちょうど1つのプルロッドが存在する。したがって、工具も、プルロッドを通過させることができる軸方向中心孔を有することが好ましい。
【0032】
特にシンプルな実施形態では、プルロッドは、第1のスピンドルシャフト内に軸方向でねじ込むことにより第1のスピンドルシャフトに接続可能である。このために、プルロッド及び第1のスピンドルシャフトの対応する端部に、相補的なねじ山を形成することができる。しかしながら、別のタイプの接続、例えばバヨネット式の接続も考えられる。
【0033】
プルロッドの他方の自由端部には、環状の接触面を形成するクランプエレメントを設けることができ、この環状の接触面は、第1のスピンドルシャフトの方向に第2のスピンドルシャフトを押し付けるために、プルロッドが第1のスピンドルシャフトに接続されて、第2のスピンドルシャフトに軸方向の圧縮力を発生させた後に、第2のスピンドルシャフトに支持されるのが有利である。最もシンプルな場合には、プルロッドは、このために、例えばねじ頭を有するねじとして形成されていてよい。この場合、ねじは、第1のスピンドルシャフト内にねじ込み可能であってよく、ねじ頭は、クランプエレメントを形成することができる。軸方向のクランプ力は、この場合、単にねじを締めることにより生じる。
【0034】
別の、同じく極めてシンプルな実施形態では、プルロッドの自由端部に、ナットをねじ留めすることができる雄ねじ山が設けられている。この場合、ナットがクランプエレメントを成し、ナットを締めるだけで軸方向の圧縮力が生じる。
【0035】
しかしながら、好ましくは、工具ヘッドは、プルロッドに取り外し可能に接続可能なクランプエレメントを有しており、このクランプエレメントは、好ましくは、工具スピンドル軸を中心としたトルク成分を発生させるクランプエレメントの締め付けなしに、純粋に軸方向に作用する圧縮力を発生させる。このために、クランプエレメントは、例えば、ねじ接続、バヨネット又はクランプブッシュを介して、プルロッドに堅固に接続可能なベースエレメントを有している。ベースエレメントは、プルロッドを受容するための中央の受容開口、又は(十分なスペースがあるならば)プルロッドの軸方向孔に固定可能なピンを有していてよい。クランプエレメントは、第2のスピンドルシャフトを第1のスピンドルシャフトの方向へ軸方向に押すために、第2のスピンドルシャフトの方向にベースエレメントに対して軸方向に可動な、特に軸方向に変位可能な、軸方向押圧エレメントをさらに備える。軸方向押圧エレメントは、特に環状であってよく、ベースエレメントの中央の受容開口又はピンを取り囲むことができ、この場合、軸方向押圧エレメントは、「押圧リング」と呼ばれてもよい。軸方向押圧エレメントは、既に説明した環状の接触面を形成する。クランプエレメントは、ベースエレメントに対して軸方向押圧エレメントを軸方向に動かすために、ベースエレメントに対して可動な少なくとも1つの作動エレメントをさらに有している。作動エレメントは、例えば、長手方向又は横方向に沿ってベースエレメント内にねじ込むことができる加圧ねじであってよい。このようなクランプエレメントは、それ自体従来技術から知られており、多くの態様で市販されている。
【0036】
いくつかの実施形態では、作動エレメントから軸方向押圧エレメントへの力の伝達は、純粋に機械式である。例えば、作動エレメントは、ベースエレメントに軸方向で保持された複数のキャップねじであってよく、ベースエレメントに対して相対的に軸方向押圧エレメントを軸方向で変位させるために、軸方向押圧エレメント内にねじ込み可能である。別の実施形態では、ねじ山接続を介して軸方向押圧エレメントの方向にベースエレメントにおいて調節可能な1つ以上の止めねじが、作動エレメントとして働く。さらに別の実施形態では、作動エレメントは、例えば、軸方向押圧エレメントを前進させる歯車に作用する。このようなクランプエレメントは、例えば、ドイツ、KleinwallstadtのEnemac GmbH社製の名称ESB、ESG又はESDとして入手可能である。
【0037】
別の実施形態では、作動エレメントから軸方向押圧エレメントへの力の伝達は、油圧式である。このために、作動エレメントは、例えば、ねじ込まれるときに油圧システムにおいて圧力を発生させ、この圧力が軸方向押圧エレメントに作用する加圧ねじとして構成されていてよい。このようなクランプエレメントは、例えば、ドイツ、HerbrechtingenのAlbert Schrem Werkzeugfabrik GmbH社から入手可能である。
【0038】
スピンドルシャフトの間に工具を受容し、工具にトルクを伝達できるようにするために、スピンドル突起が、第1及び/又は第2のスピンドルシャフトに、工具とスピンドル突起との間に作用する軸方向の圧縮力により各スピンドル突起で工具に対する非形状接続及び/又は形状接続を生じることができるように形成されていると有利である。好ましくは、工具への接続は、円錐状接続によって、より好ましくは、面接触を伴う円錐状接続によって、形成される。例えば、接続は、DIN ISO 666:2013-12に記載されている形態A、BF、BM、CF又はCMのうちの1つを介して形成することができる。
【0039】
2つのスピンドル突起は、工具がスピンドル突起間の予め規定された位置でのみ収容され得るように、互いに異なるように形成されていると有利である。例えば、2つのスピンドル突起の直径は異なっていてよい。
【0040】
工具の交換を容易にするために、第2のスピンドルユニットが、第1のスピンドルユニットに対して相対的に軸方向に変位可能であると有利である。両スピンドルユニットが共通のスピンドルハウジング内に収容される場合、このことは、このスピンドルハウジングに対して相対的に軸方向に変位可能な第2のスピンドルシャフトのためのスピンドルベアリングを有することにより達成することができる。
【0041】
第1及び/又は第2のスピンドルユニットは、対応するスピンドルシャフトを、工具スピンドル軸を中心として回転駆動させ、これにより工具を駆動するように構成された駆動モータを含んでいてよい。いくつかの実施形態では、第1のスピンドルユニットのみが駆動モータを有していて、第2のスピンドルユニットは、固有の駆動モータを有しない、第1のスピンドルユニットのための受動的なカウンタスピンドルを形成している。別の実施形態では、第2のスピンドルユニットも、固有の駆動モータを有している。各駆動モータは、特に、ダイレクトドライブであってよい。
【0042】
工具と2つのスピンドルシャフトとを有した回転ユニットを釣り合わせるために、工具ヘッドは、第1のスピンドルユニットに割り当てられた第1のバランシング装置と、第2のスピンドルユニットに割り当てられた第2のバランシング装置とを有していてよい。
【0043】
好ましくは、第1のバランシング装置は、第1のスピンドルシャフトを径方向で取り囲むとともに、第1のスピンドルユニットの工具側のスピンドルベアリングと第1のスピンドルシャフトの工具側端部との間に軸方向に配置されている、及び/又は、第2のバランシング装置は、第2のスピンドルシャフトを径方向で取り囲むとともに、第2のスピンドルユニットの工具側のスピンドルベアリングと、第2のスピンドルシャフトの工具側端部との間に軸方向に配置されている。
【0044】
したがって、工具が第1のスピンドルシャフトと第2のスピンドルシャフトとの間に受容されている場合、第1及び/又は第2のバランシング装置は、各スピンドルシャフトの外側で、割り当てられたスピンドルユニットの工具側のスピンドルベアリングと工具との間に軸方向に配置されている。提案されたこの配置により、小さな直径を有する工具も効果的に釣り合わせることができるようになる。少なくとも1つのバランシング装置を、好ましくは2つのバランシング装置を、スピンドルシャフトを取り囲むように配置することにより、工具の内側又はスピンドルシャフトの内部に両バランシング装置が配置されている場合よりも著しく大きなスペースが、バランシングエレメントのために利用可能である。その結果として、比較的大きなアンバランスも修正することができる。軸方向で工具側のスピンドルベアリングと工具との間に対応するバランシング装置を配置することにより、バランシング装置によるバランシングが、工具の近傍及び対応するベアリング位置の近傍の両方で行われる。これにより極めて正確なバランシングが可能である。
【0045】
各スピンドルユニットは、1つの単一のスピンドルベアリングよりも多数のベアリングを有している場合が多い。「工具側のスピンドルベアリング」という用語は、この場合、工具スピンドル軸に沿って、各スピンドルユニット内で工具の最も近くに配置されているスピンドルベアリングに関連するものとして理解されたい。
【0046】
特に、2つのスピンドルユニットの軸受面に対してバランシング面の配置は、以下の通りであってよい。すなわち、工具側の第1のスピンドルベアリングが、工具スピンドル軸に対して垂直な第1の軸受面を規定し、工具側の第2のスピンドルベアリングが、工具スピンドル軸に対して垂直な第2の軸受面を規定する。第1のバランシング装置が、工具スピンドル軸に対して垂直な第1のバランシング面を規定し、第2のバランシング装置が、工具スピンドル軸に対して垂直な第2のバランシング面を規定する。この場合、第1のバランシング面が、第1の軸受面と第2のバランシング面との間に(特に、第2のバランシング面よりも第1の軸受面の近くに)配置されている、及び/又は、第2のバランシング面が、第2の軸受面と第1のバランシング面との間に(特に、第1のバランシング面よりも第2の軸受面の近くに)配置されていると、好ましい。
【0047】
工具が2つのスピンドルシャフトの間に受容されている場合、工具は、工具の重心を含む工具スピンドル軸に対して垂直な重心面を規定する。この場合、第1のバランシング面は、好ましくは、第1の軸受面と重心面との間に位置している、及び/又は、第2のバランシング面は好ましくは、第2の軸受面と重心面との間に位置している。各バランシング面が、重心面よりも、対応する軸受面の近くにあると好ましい。
【0048】
このようなバランシング面の配置により、効果的な2面バランシングが可能である。
【0049】
好ましい実施形態では、第1のバランシング装置及び/又は第2のバランシング装置は、リングバランシングシステムとして構成されている。リングバランシングシステムは、従来技術において長い間にわたって知られており(例えば、独国特許出願公開第4337001号明細書、米国特許第5757662号明細書を参照)、スピンドルの回転を停止させる必要なく、極めて正確な自動バランシングを可能にしている。このようなリングバランシングシステムは、様々な実施形態で市販されている。しかしながら、代替的に、別のタイプのバランシングシステムを、例えば、電気モータによって動かすことができるバランシングウェイトを備えたバランシングシステム又は油圧式のバランシングシステムを使用することもできる。
【0050】
バランシング装置は、数値制御(NC)方式で動作するように構成されてもよい。このために、第1及び/又は第2のバランシング装置は、当該バランシング装置の補正アンバランスを数値制御で調節するための少なくとも1つのアクチュエータを有していてよい。
【0051】
アンバランスにより生じる振動を検出するために、少なくとも1つの振動センサが、工具ヘッドに設けられていてよい。このセンサは、バランシング装置のうちの1つに組み込まれていてよく、又は別個に構成されていてよい。工具ヘッドは、工具ヘッドに割り当てられた制御装置をさらに有していてよく、この制御装置は、少なくとも1つの振動センサからの信号を検出し、第1及び/又は第2のバランシング装置における補正アンバランスを、検出された信号に応じて調節するように、第1及び/又は第2のバランシング装置におけるアクチュエータを制御するように構成されている。このような調節は、アンバランスが減じられるように自動化されていてよい。好ましくは、制御装置は、自動2面バランシングを実施するように構成されている。対応するアルゴリズムは、従来技術により周知である。制御装置は、機械制御システムの一部であってよく、又は別個のユニットであってよい。
【0052】
好ましくは、第1及び/又は第2のバランシング装置は、各スピンドルユニットのハウジングの外側に配置されている。特に、第1のスピンドルユニットは第1のハウジングを有していてよく、第2のスピンドルユニットは第2のハウジングを有していてよい。この場合、第1及び/又は第2のバランシング装置は、好ましくは、第1及び第2のハウジングの外側に配置されている。代替的に、第1及び第2のスピンドルユニットは、共通のスピンドルハウジングを有していてよく、この場合、第1及び/又は第2のバランシング装置は、好ましくは、共通のスピンドルハウジングの外側に配置されている。
【0053】
特に、工具が、第1のスピンドルシャフトと第2のスピンドルシャフトとの間に受容されている場合、第1のバランシング装置は、好ましくは、軸方向で、第1のスピンドルユニットを取り囲む(第1の又は共通の)スピンドルハウジングと工具との間に配置され、第2のバランシング装置は、軸方向で、第2のスピンドルユニットを取り囲む(第2の又は共通の)スピンドルハウジングと工具との間に配置されている。
【0054】
好ましくは、バランシング装置の外輪郭は、機械のワークピーススピンドルにおいてワークピースを加工するときに、干渉輪郭が最小化されるように最適化されている。特に、第1及び/又は第2のバランシング装置が、工具の方向でテーパする外輪郭を有していると有利である。
【0055】
工具ヘッドは、前述した工具をさらに有していてよく、工具は、第1のスピンドルシャフトと第2のスピンドルシャフトとの間に軸方向に受容されていて、好ましくは軸方向にクランプされている。工具は、研削工具、特に歯車研削用の工具であってよい。より具体的には、工具は、研削ウォーム又は成形砥石であってよく、又は少なくとも1つの研削ウォーム及び/又は少なくとも1つの成形砥石を有していてよい。工具は、(例えば、スピンドルシャフト間に直接受容された、硬質コーティングが施された基体を備えたドレッシング不可能な研削ウォームの形態の)一体型のものであってよく、又は、工具は、(例えば、ドレッシング可能な研削ウォーム又は2つ以上の研削体を備えた組み合わせ工具の形態であって、この場合、研削体は、別個の工具ホルダに保持されていて、工具ホルダは、スピンドルシャフト間に受容されている形態の)2つ以上の部材から成るものであってよい。
【0056】
本発明はさらに、上述したタイプの工具ヘッドと、ワークピース軸を中心としてワークピースを回転駆動するための少なくとも1つのワークピーススピンドルとを備えた工作機械を提供する。この工作機械は、歯切り盤として、特に歯車研削機械として形成されていてよい。このために、この工作機械は、(特に適切にプログラムされた)機械制御システムを含んでいてよく、この機械制御システムは、この機械に、少なくとも1つのワークピーススピンドルに受容されたワークピースの歯車の歯を工具によって加工させるように構成されている。特に、機械制御システムは、成形研削又は創成歯車研削によって、この機械に、ワークピースの歯車の歯を加工させるように構成されていてよい。このために、機械制御システムは、ワークピーススピンドルと工具スピンドルとの間の適切な回転連結を確立するように形成されていてよい。
【0057】
本発明はさらに、上述したタイプの工具ヘッドを動作させる方法を提供する。この方法は、
加工動作中は、第1のスピンドルベアリングと第2のスピンドルベアリングとを接続し、加工休止中はこの接続を解放すること、及び/又は
第1のスピンドルベアリングと第2のスピンドルベアリングとの間に軸方向の予荷重力を発生させること
を含む。
【0058】
この方法に関して、工具ヘッドに関して上述したさらなる考察が適切に適用される。
【0059】
本発明の好ましい実施形態が、図面を参照して以下に説明され、この実施形態は、説明の目的のためだけのものであり、限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】創成歯車研削による歯車の硬化仕上げ用の、第1の実施形態による工具ヘッドを備えた工作機械の一例を示す概略的な斜視図である。
【
図2】第1の実施形態の工具ヘッドを示す概略的な斜視図である。
【
図3】第1の実施形態の工具ヘッドを示す斜視断面図である。
【
図4】工具取外し後の第1の実施形態の工具ヘッドを示す斜視断面図である。
【
図5】第2の実施形態による工具ヘッドを示す概略的な斜視図である。
【
図6】第2の実施形態の工具ヘッドを示す斜視断面図である。
【
図7】工具取外し後の第2の実施形態の工具ヘッドを示す斜視断面図である。
【
図8】第2の実施形態の工具ヘッドのクランプ装置を示す中央縦断面図である。
【
図9】第3の実施形態による工具ヘッドを示す斜視断面図である。
【
図10】工具取外し後の第3の実施形態の工具ヘッドを示す斜視断面図である。
【
図11】第4の実施形態による工具ヘッドを示す概略的な斜視図である。
【
図12】第4の実施形態の工具ヘッドを示す斜視断面図である。
【
図13】クランプナットを示す中央縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
[定義]
歯切り盤:ワークピースにおける歯車の歯、特に歯車の内歯又は外歯を製作又は加工するように構成された機械。例えば、歯切り盤は、プレ歯付きワークピースを加工する微細加工用の機械であってよく、特に、プレ歯付きワークピースを、硬化後に加工する硬化仕上げ機械であってよい。歯切り盤は、歯車の歯の自動加工を制御するようにプログラムされた機械制御システムを備える。
【0062】
歯車の創成加工:工具が、ワークピース上を転動し、切削動作を行う歯車加工。様々な歯車創成加工プロセスが知られており、この場合、例えば歯車研削又は歯車ホーニング等の幾何学的に不定の切削刃によるプロセスと、例えばギアホビング、ギアスカイビング、ギアシェービング又はギアシェーピング等の幾何学的に規定された切削刃によるプロセスとが区別される。
【0063】
創成歯車研削:創成歯車研削プロセスは、幾何学的に不定の切削刃を使用して、軸対称の周期的構造が製造されるとともに、連続的なチップ除去プロセスであり、ウォーム形状に成形された外輪郭を有する砥石(「研削ウォーム」)を工具として使用する。工具とワークピースとは、回転スピンドル上に取り付けられる。回転軸を中心とした工具とワークピースの回転運動を合わせることにより、プロセスに典型的な回転運動が実現される。この回転運動と、ワークピース軸に沿った工具又はワークピースの軸方向の送り運動とにより、切削動作が生じる。
【0064】
工具ヘッド:本明細書では、「工具ヘッド」という用語は、加工工具を受容し、回転駆動するように構成されたアセンブリを意味する。特に、工具ヘッドは、ワークピースに対して工具を位置合わせさせて位置決めするために、旋回体及び/又は1つ以上のスライドに取り付けることができる。
【0065】
スピンドルユニット:工作機械構造において、工具又はワークピースをクランプすることができる回転可能なシャフトは、通常、「スピンドル」と呼ばれる。しかしながら、回転可能なシャフトに加えて、シャフトを回転可能に支持するための関連するスピンドルベアリング及び関連するハウジングを含むアセンブリも、「スピンドル」と呼ばれることが多い。本明細書では、「スピンドル」という用語は、この意味で用いられる。シャフト単独は、「スピンドルシャフト」と呼ばれる。スピンドルシャフトに加えて、少なくとも関連するスピンドルベアリングを有するアセンブリは、「スピンドルユニット」と呼ばれる。「スピンドルユニット」は、それ自体のハウジングを有してもよいが、別のスピンドルユニットと共に共通のハウジングに収容されていてもよい。
【0066】
リングバランシングシステム:リングバランシングシステムは、シャフトを取り囲みかつシャフトにより駆動される、隣接して配置された2つのバランシングリングを有している。各バランシングリングは、同じサイズの予め規定された付加的なアンバランスを有している。シャフトの回転軸を中心としたバランシングリングの向きは調節可能である。2つのバランシングリングの付加的なアンバランスが直径方向で対向しているならば、それらの効果は互いに相殺される。両方の付加的なアンバランスが同じ角度位置を有しているならば、最大のバランシング能力が達成される。他の角度に設定することで、結果として生じる補正アンバランスを、これらの制限内の規模及び方向によって自由に調節することができる。
【0067】
[例示的な工作機械の構造]
図1は、創成歯車研削による歯車の硬化仕上げ用の工作機械の例を示している。この機械は、機械ベッド100を有しており、この機械ベッドには、水平方向の送り方向Xに沿って変位可能であるように、工具支持体200が配置されている。工具支持体200には、鉛直方向Zに沿って変位可能であるように、Zスライド210が配置されている。Zスライド210は、水平方向の旋回軸Aを中心としてZスライド210に対して相対的に旋回可能な旋回体220を支持している。旋回軸Aは、送り方向Xに対して平行である。旋回体220には、概略的にのみ図示された工具ヘッド300が配置されており、工具ヘッドについてはより詳しく後述する。
【0068】
さらに、回転タレット400の形態の旋回可能なワークピース支持体が、機械ベッド100に配置されている。回転タレット400は、鉛直方向の旋回軸C3を中心として、複数の回転位置の間で旋回可能である。回転タレットは、2つのワークピーススピンドル500を支持しており、これらのスピンドルのそれぞれに、ワークピース510をクランプさせることができる。ワークピーススピンドル500のそれぞれは、ワークピース軸を中心として回転するように駆動可能である。
図1では、見えているワークピーススピンドル500のワークピース軸が、符号C2で示されている。
図1では見えていないワークピーススピンドルのワークピース軸は、C1軸と称される。2つのワークピーススピンドルは、直径方向で反対側の位置で(すなわち、旋回軸C3に関して180°ずらされて)回転タレット400に配置されている。このようにして、2つのワークピーススピンドルのうち一方を、他方のワークピーススピンドルでワークピースが加工されている間に、ロード及びアンロードすることができる。これにより、望ましくない非生産的な時間が大幅に回避される。このような機械のコンセプトは、例えば国際公開第00/035621号により知られている。
【0069】
この機械は、概略的にのみ図示された機械制御システム700を有しており、この機械制御システムは、複数の制御モジュール710と制御パネル720とを含む。各制御モジュール710は、機械軸を制御し、及び/又は、センサからの信号を受信する。
【0070】
[第1の実施形態による工具ヘッド]
図2~
図4は、第1の実施形態による工具ヘッドを示している。工具ヘッドは、旋回体220に堅固に接続されたベース310を含む。ベース310には、リニアガイド311が形成されている。リニアガイド311では、スピンドルハウジング380が、シフト方向Yに沿って変位可能にガイドされている。このために、スピンドルハウジング380は、対応するガイドシュー386を有している。シフト方向Yは、X軸に対して垂直であり、Z軸に対しては、A軸を中心として調節可能な角度を成す。シフト方向Yに沿ったスピンドルハウジング380の位置の制御された調整のために、図示されていないシフト駆動装置と相互作用するボールねじ駆動装置312が用いられる。
【0071】
スピンドルハウジング380には、2つのスピンドルユニット320,330が収容されている。スピンドルユニット320,330の間には、工具340が保持されている。この例では、工具340は、研削ウォームである。
【0072】
・スピンドルユニットの構造
図3及び
図4は、スピンドルユニット320,330の構造をより詳細に示している。
【0073】
この例では、スピンドルユニット320は、モータ駆動式のスピンドルであり、第1のスピンドルシャフト322を、工具スピンドル軸Bを中心に回転するように直接駆動する駆動モータ324を有している。工具スピンドル軸Bは、シフト方向Yに対して平行である。
【0074】
第1のスピンドルシャフト322は、スピンドルベアリング323において3つのベアリング位置で支持されている。これらのベアリング位置は、第1のスピンドルシャフト322に沿って、互いに異なる軸方向位置に配置されている。3つのベアリング位置のうちの2つは、駆動モータ324と、第1のスピンドルユニット320の工具側端部との間に位置している。対応するスピンドルベアリングは、固定側ベアリング‐自由側ベアリング又は支持ベアリングを形成し、すなわち、これらのベアリング位置のうちの少なくとも1つで、スピンドルベアリングが、径方向の荷重及び軸方向の荷重の両方を吸収することができる。駆動モータ324の、工具とは反対側に、さらなるベアリング位置が配置されている。このベアリング位置に配置されているスピンドルベアリングは、自由側ベアリングとして形成されていて、すなわち、径方向の荷重は吸収するが、軸方向の動きは許容する。3つのスピンドルベアリング323は全て、スピンドルハウジング380内に定置に配置されている。特に、これらのベアリングは、スピンドルハウジング380に対して相対的に軸方向に変位可能ではない。
【0075】
この例では、第2のスピンドルユニット330は、非駆動のカウンタスピンドルである。第2のスピンドルユニット330は、スピンドルシャフトに沿った2つのベアリング位置でスピンドルベアリング333においてスピンドルハウジング380内で支持された第2のスピンドルシャフト332を有する。この場合、これらのスピンドルベアリングが、固定側ベアリング‐自由側ベアリング又は支持ベアリングを形成し、すなわち、これらのベアリング位置のうちの少なくとも1つで、スピンドルベアリング333が、径方向の荷重力及び軸方向の荷重の両方を吸収することができる。
【0076】
第2のスピンドルユニット330は、
図3に示された作動位置と、
図4に示された工具交換位置との間で、スピンドルハウジング380に対して相対的に軸方向に変位可能である。このために、第2のスピンドルユニットのスピンドルベアリング333は、ベアリングレセプタクル391内に受容されている。この例では、ベアリングレセプタクル391は、ベアリングブッシュであり、これは例えば、滑りベアリングブッシュ又はボールベアリングブッシュであってよい。ベアリングレセプタクル391は、軸方向に変位可能であるようにスピンドルハウジング380内にガイドされている。
図3の作動位置では、第2のスピンドルユニット330は、工具340が第1のスピンドルシャフト322と第2のスピンドルシャフト332との間で保持されるように、第1のスピンドルユニット320の方向に前進させられる。これに対し、
図4の工具交換位置では、第2のスピンドルユニット330は、工具340を取り外すことができるように十分に軸方向に後退させられている。
【0077】
・工具の軸方向のクランプ
この例では、工具340は、工具ホルダ341を有していて、この工具ホルダが、ウォーム形状に成形されたドレッシング可能な研削体342を有している。この例では、工具ホルダ341は、DIN ISO 666:2013-12に準拠する、研削体のための保持フランジとして形成されている。スピンドルシャフト322,332に接続するために、工具ホルダ341は、各端部における面接触を伴う(テーパソケット又は円錐座部として知られる)テーパレセプタクル、例えば、DIN ISO 702-1:2010-04に準拠する短いテーパレセプタクル1:4を有している。
【0078】
スピンドルシャフト322,332の工具側端部には、対向するスピンドル突起325,335が形成されている。スピンドル突起324,325の形状は、工具ホルダ341のテーパレセプタクルの形状に対して相補的である。スピンドル突起はそれぞれ、工具340に向かって円錐状にテーパする形状を有しており、その各端面に平面接触面を有している。例えば、各スピンドル突起は、DIN ISO 702-1:2010-04に準拠する、テーパ状シャンク1:4として形成されてもよい。
【0079】
したがって、
図3の作動位置では、各工具340と、スピンドルシャフト322,332との間に、面接触を伴う円錐状接続が存在する。円錐状接続は、工具340がスピンドルシャフト322,332の間に正しい向きでのみ収容され得ることを保証するために工具の2つの端部において互いに異なる直径を有していてもよい。
【0080】
工具340は、スピンドルシャフト332,332の間に、プルロッド370及びクランプナット372によって軸方向で圧縮されながらクランプされる。このために、工具340と第2のスピンドルシャフト332はそれぞれ、これらを貫通して延在する軸方向中心孔を有している。第1のスピンドルシャフト322も、その工具側端部に軸方向中心孔を有している。この孔は、この例では連続的ではない。この孔は、工具側で開かれており、孔内には雌ねじ山が形成されている。プルロッド370は、スピンドルシャフト332の中心孔と工具340の中心孔とを貫通して挿入される。プルロッド370は、第1のスピンドルユニット320に面した端部に、第1のスピンドルシャフト322の雌ねじ山にねじ込まれる雄ねじ山を有している。プルロッドは、他方の端部にも雄ねじ山を有している。この雄ねじ山にはクランプナット372がねじ留めされる。クランプナット372を締め付けることにより、クランプナット372は、工具340の方向に第2のスピンドルシャフト332に軸方向の圧力を加える。これにより、工具340は、スピンドルシャフト332,332の間で軸方向にクランプされる。これにより、剛性が高い単一の連続シャフトが得られる。
【0081】
・ベアリングレセプタクルの軸方向押さえ
第2のスピンドルユニット330のスピンドルベアリング333が内部に収容されたベアリングレセプタクル391を、スピンドルハウジング380に対して軸方向でクランプすることができる。このようにして、全体として、第2のスピンドルユニット330は、工具340を介してスピンドルシャフト322,323だけではなく、ベアリング側でも、第1のスピンドルユニット320に対して軸方向にクランプされている。このようにして、第1のスピンドルユニット320のスピンドルベアリング323と第2のスピンドルユニットの前側スピンドルベアリング333との間に、軸方向の圧縮力又は張力を発生させることができ、これらに予荷重をかけることができる。軸方向の圧縮力又は張力を発生させるために、この例では、空気圧式のアクチュエータである環状のアクチュエータ390が使用される。アクチュエータ390は、スピンドルハウジング380に堅固に接続された環状のアクチュエータハウジング393を有している。アクチュエータハウジング393内には、同様に環状のピストンエレメント392が変位可能にガイドされている。ピストンエレメント392は、ベアリングレセプタクル391に堅固に接続されている。アクチュエータハウジング393とピストンエレメント392は共に、環状のスペースを規定しており、このスペースの容積は、アクチュエータハウジング393内におけるピストンエレメント392の軸方向の位置に依存している。環状のスペースに圧縮空気を導入することにより、ピストンエレメント392は、第1のスピンドルユニット320に向かって、又は第1のスピンドルユニット320から離れるように押され、これにより、工具340がクランプされると、第2のスピンドルユニット330のベアリングレセプタクル391内に保持されたスピンドルベアリング333と、第1のスピンドルユニット320のスピンドルベアリング323との間に、軸方向の圧縮力又は張力が発生する。
【0082】
制御装置730は、それ自体既知の方法でアクチュエータ390を制御する。例えば、制御装置730は、アクチュエータ390内の圧力を変化させるために、アクチュエータ390への圧力ラインにおいて、図示されていない空気圧弁と相互作用する。
【0083】
環状に形成されたアクチュエータ390を有することにより、第2のスピンドルシャフト332の後端部は、アクチュエータ390を介して依然として外側から操作可能であり、これにより、工具340を、軸方向で第1のスピンドルシャフト322と第2のスピンドルシャフト332との間にクランプすることができる。クランプナット372は、環状のアクチュエータ390によって取り囲まれる領域に配置することができる。
【0084】
・工具スピンドルの動作
スピンドルユニット320,330の間に工具340をクランプするためには、まず、第2のスピンドルユニット330を、
図4の工具交換位置へと動かし、次いで、クランプナット372をプルロッド370から取り外す。工具340を挿入し、工具を介してプルロッド370を、第1のスピンドルシャフト322の孔内に挿入し、この場合、プルロッドは、ねじ込むことにより所定の位置で固定される。ここで、第2のスピンドルユニット330が、
図3の作動位置へと動かされる。この位置で、クランプナット372が、プルロッド370に装着されて、工具340は、クランプナット372によって、第1のスピンドルシャフト321及び第2のスピンドルシャフト332に対して軸方向にクランプされる。アクチュエータ390は、第2のスピンドルユニット330の軸方向の変位可能性を妨げないように、この時点まで、作動させられていないままである。工具340がクランプされた後、アクチュエータ390が作動して、第2のスピンドルユニット330のスピンドルベアリング333をスピンドルハウジング380に対して軸方向にクランプする。
【0085】
ここで、工具340は、駆動モータ324によって回転させられて、ワークピースを加工するために使用される。加工中、スピンドルハウジング380と、2つのスピンドルシャフト322,332及びこれらのスピンドルシャフトの間で軸方向にクランプされた工具340を有するユニットとは、両方とも加熱される。その結果、スピンドルハウジング380及び上記のユニットは熱膨張する。これらの部材の熱膨張は、概して互いに異なる。加工中、アクチュエータに作用する空気圧は、一定に維持される。これにより、第2のスピンドルユニット330のスピンドルベアリング333は、スピンドルシャフト322,332及びロータ340の熱膨張に追従することができ、互いに異なる熱膨張を伴いながら、スピンドルベアリングの軸方向のクランプ力は一定に維持される。
【0086】
任意選択的に、制御装置730は、1つ以上の測定パラメータの関数として、アクチュエータ390内の圧力を変化させるように構成されていてよい。このために、例えば、単に概略的に示されているセンサ731をスピンドルハウジング380に配置することができ、このセンサは制御装置370によって読み取られる。センサ731は、例えば、温度センサ、振動センサ、軸方向のクランプ力を測定するためのひずみゲージ又は力センサであってよい。この場合、制御装置730は、上昇温度又は熱膨張によって示されるように、スピンドル負荷が増大した場合に、センサ731からの測定パラメータの関数としてアクチュエータ内の圧力を変化させ、例えば振動を低減する又は選択的に軸方向クランプ力を増大させることができる。
【0087】
・空気圧式クランプの代替手段
空気圧式のアクチュエータの代わりに、別のタイプのアクチュエータを使用して、スピンドルベアリング間に軸方向の圧縮力又は張力を発生させることができ、例えば、油圧式のアクチュエータが使用されてもよい。空気圧式のアクチュエータに関する上記の考察は、油圧式のアクチュエータにも同様に適用される。しかしながら、アクチュエータは、機械式のアクチュエータであってもよい。機械式のアクチュエータは、例えば、スピンドルハウジング380とベアリングレセプタクル391との間に軸方向の張力又は圧縮力を発生させるコイルばねを有することができる。コイルばねの圧縮の程度は、したがってコイルばねによって発生させられる軸方向力は、適切なアクチュエータによって変化させることができる。代替的に、圧電素子によって軸方向力を発生させてもよい。様々なさらなる実施形態が考えられる。
【0088】
アクチュエータによるベアリングレセプタクル391の軸方向での押さえに対して付加的に又は代替的に、スピンドルハウジング380に対して相対的に、軸方向で制御された方法でベアリングレセプタクル391を固定(「クランプ」)することが考えられる。このために、図示されていないクランプ装置、例えば、スピンドルハウジング380に取り付けられて、ベアリングレセプタクル391を取り囲む拡張スリーブが、設けられていてよい。クランプ装置によって、ベアリングレセプタクル391は、ワークピースの加工中、振動を最小限にするために、スピンドルハウジング380に意図的に固定されてよく、この固定は、加工の休止中、例えば、各工具ストロークの後又は各ワークピースの加工後に、過剰な軸方向の支持力を減じるために、一時的に解除されてよい。制御装置730は、このために使用されてよい。解除は、測定パラメータに基づき制御されてよい。例えば、制御装置730は、このためにセンサ731を使用して、温度、振動、熱膨張及び/又はスピンドルベアリング間の軸方向力を検出し、測定された測定パラメータの関数としてクランプ装置を時々解放することができる。軸方向力を発生させるためのアクチュエータとクランプ装置との両方が存在する場合、スピンドルベアリング323,333がアクチュエータにより予荷重をかけられた後に、クランプを実施することができる。
【0089】
アクチュエータ390を、軸方向の予荷重力を発生させることなく、解放可能なクランプを提供するように動作させてもよい。アクチュエータが空気圧式又は油圧式のアクチュエータであるならば、流体は同時に、減衰と組み合わされた復元動作を行わせ、すなわち、クランプは有限の硬度を有する。これは、付加的にスピンドルベアリングの過負荷を阻止する助けとなり得る。有利には、アクチュエータ390は、工具交換中にベアリングレセプタクル391を後退させるために使用することもできる。
【0090】
[第2の実施形態]
図5~
図8は、第2の実施形態による工具ヘッドを示している。第1の実施形態と同じ又は類似の作動部材には、同じ参照符号が付されている。
【0091】
第1の実施形態とは異なり、第1のスピンドルユニット320は、固有の第1のハウジング321を有していて、第2のスピンドルユニット330は、固有の第2のハウジング331を有している。ハウジング321,331は互いに独立して、ベース310のリニアガイド311で、シフト方向Yに沿ってガイドされている。このために、各ハウジングは、ガイドシュー326,336を有している。第1のハウジング321の位置は、図面に示されていないシフトアクチュエータとボールねじ駆動装置312とによって、シフト方向Yに沿って調節可能である。第2のハウジング331を、以下により詳しく説明する方法で、第1のハウジング321に連結することができ、これにより、第1のハウジング321がシフト方向Yに沿って動かされるとき、第2のハウジングは、第1のハウジング321によって連行される。スピンドルベアリングは、各ハウジング321,323内で、軸方向に変位不能に保持されている。第1の実施形態とは異なり、第2のスピンドルユニット330のスピンドルベアリングのための軸方向に変位可能なベアリングレセプタクルは省かれている。変位可能なベアリングレセプタクルを軸方向で調節するためのアクチュエータも省かれている。その他の点では、2つのスピンドルユニット320,330は、第1の実施形態と同様に形成されている。
【0092】
ハウジング321,331を制御可能に連結又は解除するために、この例の工具ヘッドは2つのクランプ装置600を有する。これらのクランプ装置のうちの一方は、工具ヘッドの中央の中間平面の上方に配置されていて、もう一方のクランプ装置は、この中間平面の下方に配置されている。この場合、中央の中間平面は、ワークピーススピンドル軸Bを含むX-Y方向における面である。上方のクランプ装置のみが、
図6及び
図7では見えている。
図8には、クランプ装置600が単独で示されている。
【0093】
クランプ装置600は、取付けフランジ621を介して第2のスピンドルハウジング331に接続される、軸方向に延在するロッド620を含む。取付けフランジ621と第2のスピンドルハウジング331との間には減衰リング622が配置されている。別の減衰リング622’が、別の軸方向側で、取付けフランジ621とプッシュリング623との間に配置されている。減衰リング622,622’は、ロッド620が取り付けられるときにねじ624によって軸方向で圧縮され、ロッド620と第2のスピンドルハウジング331との間の振動を減衰させる。これらは省かれてもよい。
【0094】
クランプ装置600は、ねじ614を介して第1のスピンドルハウジング621に接続される拡張スリーブ610をさらに有する。拡張スリーブ610は、油圧的に作動して、拡張スリーブ610内でのロッド620のクランプ又はこのようなクランプの解放を選択的に生じさせることができる。
【0095】
クランプ装置600は、制御装置730によって制御される。この場合、任意選択的に、このために、制御装置370によって読み取られるセンサ731を、第1及び/又は第2のスピンドルハウジング321,331に配置することができる。センサ731は、例えば、第1の実施形態と同様に、温度センサ、振動センサ、歪みセンサ又は力センサであってよい。この場合、制御装置730は、センサからの1つ以上の測定パラメータの関数として、クランプ装置600を作動させるように構成されていてよい。2つのクランプ装置600は、共に又は互いに独立して作動させられてよい。例えば、所定のタイプの振動のためには、2つのクランプ装置600のうちの1つのみを作動させることが適当である場合もある。
【0096】
両クランプ装置600のクランプが解放されると、第2のスピンドルユニット320を、Y方向に沿って、
図5及び
図6の作動位置と、
図7の工具交換位置との間で手動で動かすことができる。
【0097】
・工具スピンドルの動作
ワークピースの加工を開始する前に、第2のスピンドルハウジング331を第1のスピンドルハウジング321に固定するために、クランプ装置600を作動される。ここで工具340は、駆動モータ324によって回転させられて、ワークピースを加工するために使用される。加工中は、振動を防止するために、第2のスピンドルハウジング331を第1のスピンドルハウジング321に固定したままにする。しかしながら、スピンドルハウジング321,331と、2つのスピンドルシャフト322,332及びこれらの間に軸方向でクランプされた工具340を有するユニットとは、両方とも加熱する。互いに異なる熱膨張による過剰な軸方向の支持力を回避するために、制御装置730は、加工の休止中、例えば各工具ストロークの後又は各ワークピースの加工後に、クランプ装置600を時々解放する。これは、任意選択的に、測定パラメータに基づいて行われてもよい。例えば、制御装置730は、このために、温度、直線的な膨張又は軸方向の支持力を検出し、測定された測定パラメータの関数としてクランプ装置600を時々解放することができる。
【0098】
・バランシング機器
第1のスピンドルシャフト322には、第1のスピンドルユニット320のハウジング321と工具340との間の軸方向の領域に、第1のバランシングユニット350が配置されている。第2のスピンドルシャフト332には、第2のスピンドルユニット330のハウジング331と工具340との間の軸方向において、第2のバランシングユニット360が配置されている。バランシングユニット350,360は、各スピンドルユニット320,330のハウジングの外側で各スピンドルシャフト322,332を取り囲んでいる。バランシングユニットはそれぞれ、割り当てられたスピンドルユニットから工具340に向かってテーパするハウジングを有している。バランシングユニット350,360の外輪郭がテーパしていることにより、バランシングユニットとワークピース510との間の衝突のリスクが減じられる。
【0099】
バランシングユニット350,360のそれぞれは、リングバランシングシステムとして形成されている。このために、各バランシングユニット350,360は、各スピンドルシャフトを取り囲み、スピンドルシャフトによって駆動される2つのバランシングリングを備えたロータを有している。各バランシングユニット350,360は、ステータも有している。ステータは、各スピンドルハウジング321,331に接続されている。一方では、ステータは、各スピンドルハウジングの振動、各スピンドルシャフトの回転速度、及び各バランシングリングの角度位置を検出するためのセンサを有している。他方では、ステータは、各スピンドルシャフトにおけるバランシングリングの角度位置を非接触で変更するためのコイル装置を備えたアクチュエータを含む。
【0100】
バランシングユニットは、工具340と、工具にクランプされたスピンドルシャフト322,332とを有するシステムの静的及び動的アンバランスを補償し、このシステムを2つのバランシング面で釣り合わせるために用いられてよい。
【0101】
自動化された2面バランシングのためのリングバランシングシステムは、それ自体既知であり、様々な供給元から市販されている。一例は、ドイツ、PfungstadtのHofmann Mess- und Auswuchttechnik GmbH & Co KG社製のAB 9000電磁リングバランシングシステムである。
【0102】
このようなバランシングユニットは、第1の実施形態でも設けられていてよい。工具交換のために第2のスピンドルユニット330を後退させることができるように、第2のバランシングユニット360のロータは、このバランシングユニットのステータに対して軸方向に変位可能であってよい。ロータの外径は、スピンドルハウジング380の、ベアリングレセプタクル391がガイドされている部分の内径よりも小さくなるように選択することができる。第2のスピンドルユニット330が、スピンドルハウジング380から軸方向に後退させられると、第2のバランシングユニット360のロータが第2のスピンドルユニットと共に軸方向で連行され、これにより第2のバランシングユニットのロータは、第2のスピンドルユニット330と共にスピンドルハウジング380内に引き込まれる。これに対し、第2のバランシングユニット360のステータは、スピンドルハウジング380に固定されており、第2のスピンドルユニット330の後退中、不動に留まる。
【0103】
代替的に、第2のバランシングユニット360全体を、すなわち、ロータ及びステータの両方を、工具交換のために、第2のスピンドルユニット330と共に後退させることができるように、第2のバランシングユニット360を配置することも考えられる。
【0104】
ここで説明した形式のバランシングユニットは、後述する別の実施形態にも存在している。
【0105】
[第3の実施形態]
図9及び
図10には、第3の実施形態が示されている。第3の実施形態は、第2のスピンドルハウジング320が、制御された解放可能なクランプにより第1のスピンドルハウジング310に固定されているのではなく、第1のスピンドルハウジング310に対して軸方向でクランプされている点で、第2の実施形態とは異なっている。2つのスピンドルハウジング310,320の間に配置されている2つの空気圧式のアクチュエータ630が、クランプ装置600の代わりに、対応する軸方向の圧縮力又は張力を発生させるために働く。
図9及び
図10では、これらの2つのアクチュエータのうちの1つだけが見えている。
【0106】
動作のさらなる考察、スピンドルベアリングの軸方向のクランプの作用、及び軸方向力を発生させるための空気圧式のアクチュエータに対する代替手段については、第1の実施形態における説明が参照される。
【0107】
クランプ及び軸方向の押さえは組み合わされてもよい。このために、工具ヘッドは、第2の実施形態の場合と同様に、制御されて解放可能なクランプ装置と、軸方向力を発生させるためのアクチュエータとの両方を有していてよい。この場合、スピンドルベアリング323,333が、アクチュエータの使用により予荷重をかけられた後、クランプが行われてもよい。
【0108】
必要に応じて、アクチュエータ630は、軸方向の付勢力を発生させることなく、解放可能なクランプを提供するように動作可能であってもよい。アクチュエータが空気圧式又は油圧式のアクチュエータであるならば、流体は、クランプの際に、減衰と組み合わされた何らかのばね作用を生成する。アクチュエータが空気圧式又は油圧式のアクチュエータであるならば、流体は、クランプの際に、減衰と組み合わされた所定の復元動作を行わせ、これは、クランプが有限の硬度を有していることを意味する。このことは、付加的にスピンドルベアリングの過負荷を阻止する助けとなり得る。有利には、工具交換中に第2のスピンドルユニット330を押し戻すために、アクチュエータ630を使用することもできる。
【0109】
[第4の実施形態]
図11~
図13は、第4の実施形態による工具ヘッドを示している。
【0110】
第1及び第2のスピンドルユニット320,330はこの場合、それぞれ固有のスピンドルハウジング321,331を有しており、これらのスピンドルハウジングは、ガイドシュー326,336によってリニアガイド311に沿って互いに独立してガイドされる。各スピンドルユニットは、他方のスピンドルユニットとは独立して各スピンドルユニットをY方向に沿って動かすための固有の位置決め駆動装置328,338を有している。このために、各位置決め駆動装置328,338は、予荷重をかけられたボールねじナットをバックラッシュなしに回転軸B’を中心として回転駆動するトルクモータを有している。ボールねじナットは、回転軸B’に沿って配置された固定のボールねじスピンドル313に沿って移動する。回転軸B’は、Y方向に対して平行かつ工具スピンドル軸Bに対して平行である。
【0111】
2つのスピンドルハウジング321,322のそれぞれは、任意選択的に、クランプ装置327,337を介し、クランプ様式でベース310に接続されていてよい。いくつかの実施形態では、クランプ装置327,337は、完全には剛性ではなく、軸方向で弾性的に減衰される、各スピンドルハウジングとベースとの間の接続を確立する。このために、2つのスピンドルハウジングのそれぞれは、ベース310にクランプによって解放可能に固定することができ、解放状態においてベース310に対して各スピンドルハウジング321,331と共に移動可能な補助体と、補助体と可動体との間に配置された少なくとも1つの振動ダンパとを有する。このような実施形態の詳細については、国際公開第2020038751号が参照される。
【0112】
ワークピースの加工のために、第2又は第3の実施形態と同様に、第2のスピンドルハウジング331は、クランプにより第1のスピンドルハウジング321に制御可能に解放可能に固定されている、及び/又は、第1のスピンドルハウジング321に対して軸方向でクランプされている。スピンドルハウジング間の接続の可能な実施形態については、及び動作に関する考察については、第2及び第3の実施形態のための上記説明が参照される。
【0113】
ワークピースの加工中、ベース310に2つのスピンドルハウジング321,331を固定するために、クランプ装置327,337を任意選択的に作動させることができる。ワークピースに対して工具340の位置をY軸に沿って変更させるために、クランプ装置327,337は解放され、2つの位置決め駆動装置328,338は、同期的に制御され、ベース310に対して両スピンドルハウジング321,331を同期的に動かす。
【0114】
第2のスピンドルシャフト332は、第2の駆動モータ334によって別個に駆動される。好ましくは、第2の駆動モータ334は、第1の駆動モータ324よりも小さく設計され、第2の駆動モータは、工具340における総トルクの半分未満、例えば総トルクの30%~45%を発生させる。2つの駆動モータ324,334間のこのような非対称なトルク発生分布は、スプリアス共振を回避する。しかしながら、第2の駆動モータは省かれてもよい。
【0115】
[クランプナット]
図13及び
図14は、上述した実施形態において使用することができるような例示的なクランプナット372を示している。
【0116】
クランプナット372は、中心孔を規定するベースエレメント373を含み、中心孔は対応する雄ねじ山を備えたプルロッド上にベースエレメント373をねじ留めするための雌ねじ山を有している。ベースエレメント373は、一方の端部で、外側が六角ナットの形式で形成されている。ベースエレメント373には支持リング374が取り付けられている。支持リングは、一方向(
図9における左方向)への軸方向の移動が阻止されるように、ベースエレメント373のカラーに当接している。さらに、環状の軸方向押圧エレメント375が、ベースエレメント373に軸方向に変位可能にガイドされている。加圧ねじの形態の複数の作動エレメント376が、軸方向押圧エレメント375内へねじ込まれ、これらの作動エレメントが、一方向(
図9における左方向)に向かって軸方向に移動することが阻止されるように、支持リング374に軸方向に支持されている。軸方向押圧エレメント375から加圧ねじを緩めることにより、軸方向押圧エレメント375は、支持方向とは反対の方向(
図9の右方向)に向かってベースエレメント373に対して相対的に前進させられる。
【0117】
2つのスピンドルシャフト322,332の間に工具340をクランプするために、軸方向押圧エレメント375は、最初に、加圧ねじを軸方向押圧エレメント375内に可能な限りねじ込むことにより、ベースエレメント373に対して相対的に完全に後方に動かされる。次いで、クランプナット372がプルロッド370にねじ留めされ、ベースエレメント373の六角形の外部形状によって、第2のスピンドルシャフト332に対して調節される。これは、比較的低いトルクで行われる。次いで、加圧ねじによって、環状の軸方向押圧エレメント375が、所望のクランプ力が工具340に作用するまで、第2のスピンドルシャフト332の方向に、制御されながら前進させられる。これにより、軸方向押圧エレメント375は、環状の接触面で、第2のスピンドルシャフト332に支持される。
【0118】
勿論、従来技術からそれ自体知られているような別の構造のクランプナットを使用することもできる。例えば、力の伝達が、図示とは異なる方法で行われてもよい。特に、油圧式のクランプナットが使用されてもよい。
【0119】
雌ねじ山を備えたクランプナットの代わりに、ねじ接続とは異なる方法で、例えば、バヨネットやクランプブッシュを介して、プルロッドに接続可能なクランプエレメントが使用されてもよい。
【0120】
[その他の変化態様]
スピンドルシャフト322,332と工具340との間のインターフェースは、上述した実施形態とは異なるように構成されていてもよい。特に、異なるタイプの円錐状接続及び/又は面接触が使用されてよい。特に、既知の任意の円錐状接続が、例えば、DIN ISO 666:2013-12に記載されている形態A、BF、BM、CF又はCMが使用されてよい。詳細については、DIN ISO 666:2013-12及びDIN EN ISO 1119:2012-04、DIN ISO 702-1:2010-04、ISO 12164-1:2001-12及びISO 12164-2:2001-12に記載されている他の規格を参照されたい。
【0121】
任意の実施形態において、テンションロッド370は、第2のスピンドルシャフト332を貫通するのではなく、第1のスピンドルシャフト322を貫通して延在していてもよく、その端部で、第2のスピンドルシャフト332に接続されていてもよい。したがって、この場合、クランプエレメントは、第2のスピンドルシャフトの方向で、第1のスピンドルシャフトに軸方向力を加える。
【0122】
第1のスピンドルシャフト322と第2のスピンドルシャフト332との間に工具340を軸方向にクランプするために、1つの中央のプルロッドの代わりに又は1つの中央のプルロッドに加えて、互いに平行に、かつ工具スピンドル軸Bから径方向に間隔を置いて延在するとともに、工具スピンドル軸Bに対して互いに異なる角度位置に配置されている2つ以上のプルロッドを使用することもできる。
【0123】
第1のスピンドルシャフトと第2のスピンドルシャフトとの間における工具の固定は、連続的なプルロッドを用いる以外の方法で、例えば、それぞれのスピンドルシャフトの内側に配置されたクランプシステムを用いて行われてもよい。このために、工具とスピンドルシャフトとの間の接続は、例えば、ISO 12164-1:2001-12及びISO 12164-2:2001-12に準拠する中空シャンクテーパ接続によって行われてもよい。
【0124】
工具の両側におけるスピンドルベアリング間のクランプは、油圧式の拡張クランプエレメントを用いる以外の方法で、例えば、ラック及びピニオンの組み合わせ手段、偏心回転レバー、爪等によって機械的に、又は電磁的に行われてもよい。
【0125】
上述した実施形態では、工具340は、工具ホルダ341に交換可能に取り付けられた、ウォーム形状に成形されたドレッシング可能な研削体342を有している。しかしながら、工具は、異なる構造を、特に一体型の構造を有していてもよい。例えば、工具は、工具基体に直接塗布されたCBNコーティングを有するドレッシング不可能なCBN研削ウォームであってよい。スピンドル突起325,335に対するインターフェースは、この場合、工具基体に形成されている。工具は、必ずしも研削ウォームである必要はない。工具は、例えば、成形砥石、2つ以上の成形砥石の組み合わせ、又は1つ以上の研削ウォームと1つ以上の成形砥石との組み合わせであってもよい。
【0126】
上述した実施形態では、スピンドルベアリング323は、転がりベアリングである。転がりベアリングの代わりに、従来技術においてそれ自体知られているように、流体静力学的、流体力学的又は空力学的なベアリングなどのその他の形式のスピンドルベアリングが使用されてよい。
【0127】
上述した実施形態では、駆動モータとして、ダイレクトドライブが使用されている。ダイレクトドライブの代わりに、ギアドモータを使用することも考えられる。
【0128】
第4の実施形態におけるような第2の駆動モータは、第1~第3の実施形態で設けられていてもよい。
【0129】
バランシング装置として、好ましくはリングバランシングシステムが使用されるが、別の形式のバランシング装置も考えられ、例えば従来技術からそれ自体既知のハイドロバランシングシステムも考えられる。このようなバランシングシステムでは、周方向に分配されたバランシングチャンバ内へ流体を注入することにより、バランシングが実施される。
【符号の説明】
【0130】
100 機械ベッド
200 工具支持体
210 Zスライド
220 旋回体
300 工具ヘッド
310 ベース
311 リニアガイド
312 ボールねじ駆動装置
313 ボールねじスピンドル
320 第1のスピンドルユニット
321 第1のスピンドルハウジング
322 第1のスピンドルシャフト
323 第1のスピンドルベアリング
324 第1の駆動モータ
325 第1のスピンドル突起
326 ガイドシュー
327 クランプ装置
328 位置決め駆動装置
330 第2のスピンドルユニット
321 第2のスピンドルハウジング
332 第2のスピンドルシャフト
333 第2のスピンドルベアリング
334 第2の駆動モータ
335 第2のスピンドル突起
336 ガイドシュー
337 クランプ装置
338 調節駆動装置
340 工具
341 工具ホルダ
342 研削体
350 第1のバランシング装置
351 振動センサ
352 アクチュエータ
360 第2のバランシング装置
361 振動センサ
362 アクチュエータ
370 プルロッド(牽引棒)
372 クランプナット
373 ベースエレメント
374 支持リング
375 軸方向押圧エレメント
376 作動エレメント
380 共通のスピンドルハウジング
386 ガイドシュー
390 ベアリングクランプ装置
391 ベアリングガイド
392 ベアリングレセプタクル
400 回転タレット
500 ワークピーススピンドル
510 ワークピース
600 クランプ装置
610 拡張スリーブ
620 ロッド
621 取付けフランジ
622 減衰リング
623 プッシュリング
630 アクチュエータ
700 機械制御システム
710 制御モジュール
720 制御パネル
730 制御装置
X,Y,Z 直線軸
A 旋回軸
B 工具軸
C1,C2 ワークピース軸
C3 タワー旋回軸
【国際調査報告】