(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-16
(54)【発明の名称】条件付き細胞コネクタ
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20240109BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240109BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240109BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240109BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20240109BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240109BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240109BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240109BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240109BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20240109BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20240109BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K39/395 U
A61K39/395 D
A61P35/00
A61P37/06
A61P31/18
A61P31/00
A61P3/10
A61P3/00
A61K39/395 Q
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K39/395 S
A61K39/395 R
A61K31/7088
C07K16/00 ZNA
C12N15/115 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537983
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2021087349
(87)【国際公開番号】W WO2022136573
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510334686
【氏名又は名称】テクニッシュ ウニヴェルジテート ミュンヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ディーツ, ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】フンケ, ヨナス イェルク
(72)【発明者】
【氏名】キック, ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーゲンバウアー, クラウス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC21
4C076CC27
4C076CC31
4C076CC35
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF68
4C085AA13
4C085AA25
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
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4C086NA13
4C086ZB08
4C086ZB26
4C086ZB32
4C086ZB33
4C086ZC21
4C086ZC35
4C086ZC55
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045DA76
(57)【要約】
本発明は、第1の表面および第2の表面を含む核酸ナノ構造体に関し、前記第1の表面および前記第2の表面は、前記ナノ構造体の対向する側に位置し、前記第1の表面は、少なくとも第1の標的化剤を含み、前記第2の表面は、少なくとも第2の標的化剤および少なくとも第3の標的化剤を含む。本発明はさらに、核酸ナノ構造体を含む組成物に関する。本発明はまた、医薬品に使用するためのナノ構造体および組成物、ならびに疾患を予防または処置する方法に使用するためのナノ構造体および組成物に関する。さらに、本発明は、ナノ構造体を調製する方法、および第1の標的と第2の標的とを結合させるためのナノ構造体の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面および第2の表面を含む核酸ナノ構造体であって、前記第1の表面および前記第2の表面が、前記ナノ構造体の対向する側に位置し、前記第1の表面が、少なくとも第1の標的化剤を含み、前記第2の表面が、少なくとも第2の標的化剤および少なくとも第3の標的化剤を含む、核酸ナノ構造体。
【請求項2】
前記ナノ構造体が縦軸および横軸を有し、前記第1の表面および前記第2の表面が前記縦軸に沿って対向する側に位置する、請求項1に記載の核酸ナノ構造体。
【請求項3】
前記ナノ構造体が、前記横軸に沿った最大横方向延伸よりも大きい、好ましくはシナプス距離よりも大きい、より好ましくは少なくとも10nmよりも大きい、例えば少なくとも25nmである、前記縦軸に沿った最大縦方向延伸を有し、かつ/または
前記ナノ構造体が、前記縦軸に沿った最大縦方向延伸よりも小さい、好ましくはシナプス距離よりも小さい、より好ましくは25nmよりも小さい、例えば10nm以下の前記横軸に沿った最大横方向延伸を有する、請求項1または2に記載の核酸ナノ構造体。
【請求項4】
前記第1の標的化剤が、第1の標的、好ましくは第1の標的細胞、より好ましくは免疫細胞上の第1の標的分子に結合するように構成され、前記第2の標的化剤が、第2の標的、好ましくは第2の標的細胞、より好ましくは疾患細胞上の第2の標的分子に結合するように構成され、前記第3の標的化剤が、前記第2の標的、好ましくは第2の標的細胞、より好ましくは疾患細胞上の第3の標的分子に結合するように構成される、先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸ナノ構造体。
【請求項5】
前記第1の標的化剤、前記第2の標的化剤および前記第3の標的化剤が、抗体またはその抗原結合フラグメント、抗原結合ペプチド、Fabフラグメント、F(ab’)
2フラグメント、Fvフラグメント、ダイアボディ、一本鎖Fvフラグメント、(scFv)
2、テトラボディ、トリアボディ、ジスルフィド結合安定化Fv(dsFv)、Fcドメイン、操作されたFcドメイン、DNAアプタマー、RNAアプタマー、ペプチド核酸(PNA)、ポリペプチド、ペプチド、糖タンパク質、ペプチドミメティック、アンチカリン、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、ナノボディ、DARPin、受容体リガンド、受容体またはそのフラグメント、および受容体ドメインから独立して選択され、
好ましくは、抗体またはその抗原結合フラグメント、抗原結合ペプチド、Fabフラグメント、F(ab’)
2フラグメント、Fvフラグメント、ダイアボディ、一本鎖Fvフラグメント、(scFv)
2、テトラボディ、トリアボディ、ジスルフィド結合安定化Fv(dsFv)、Fcドメイン、操作されたFcドメイン、ポリペプチド、ペプチド、糖タンパク質、ペプチドミメティック、アンチカリン、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、ナノボディ、DARPin、受容体リガンド、受容体またはそのフラグメント、および受容体ドメインから独立して選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸ナノ構造体。
【請求項6】
前記第2の標的化剤および前記第3の標的化剤が、互いに距離を置いて、好ましくはシナプス距離よりも大きい前記縦軸に沿った距離で、例えば少なくとも15nm、好ましくは少なくとも20nm、より好ましくは少なくとも40nmの距離で離間しており、かつ/または
前記ナノ構造体が、剛性ナノ構造体であり、かつ/またはヒンジ領域のないナノ構造体であり、かつ/またはただ1つの構成を有するナノ構造体であり、かつ/またはDNAオリガミを含むもしくはDNAオリガミであるナノ構造体であり、前記DNAオリガミがただ1つの構成を有し、かつ/または
前記ナノ構造体が、最大長を含み、前記最大長が、1000nmよりも短く、好ましくは500nmよりも短く、例えば100nmであり、好ましくは、前記最大長が、最大縦方向延伸の長さである、先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸ナノ構造体。
【請求項7】
前記第1の標的細胞が免疫細胞であり、好ましくはリンパ球、例えばT細胞、細胞傷害性T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞、CAR-T細胞、単球、マクロファージおよび好中球からなる群から選択され、より好ましくはリンパ球、例えばT細胞、細胞傷害性T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞およびCAR-T細胞からなる群から選択され、かつ/または
前記第2の標的細胞が疾患細胞であり、好ましくはがん細胞、腫瘍細胞、自己免疫応答に関与する細胞、および感染細胞、例えばウイルス、マイコプラズマ、細菌または寄生虫に感染した細胞から選択される、
先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸ナノ構造体。
【請求項8】
前記第1の標的分子が、好ましくはCD3、CD3δ/ε、CD3γ/ε、TCR、TCRα、TCRβ、CD2、CD5、CD28、OX40、4-1BB、CD16、Ly49、NKp30(CD337)、NKp44(CD336)、NKp46(NCR1)、CD3ζ(CD247)、CD27、CD40、CD137、CD64、CD89、toll様受容体(TLR)、サイトカイン受容体、Fcドメイン、操作されたFcドメイン、GITRおよびICOSから選択される、免疫細胞の表面分子であり、かつ/または
前記第2の標的分子および前記第3の標的分子が、CD2、CD7、CD10、CD13、CD15、CD19、CD24、CD28、CD29、CD33、CD34、CD38、CD44、CD45、CD49f、CD56、CD57、CD60a、CD66/CEA、CD79a、CD117、CD123、CD138、CD140b、CD227/MUC1、CD243/MDR、CD244、CD326/EpCAM、CD340/HER2、VEGF-R、EGFR、CSPG4/MCSP、MAG、CA125、PSMA、HLA-DR、炭酸脱水酵素9、アクアポリン、PSMA、TIM3、CLL1/CLEC12A、EGFR v3およびHLA-A2から独立して選択され、好ましくは、前記第2の標的分子および前記第3の標的分子が同一ではなく、かつ/または
前記第2の標的分子および前記第3の標的分子が、標的分子の組み合わせであり、前記組み合わせが、CD33およびCD123、CD326/EpCAMおよびCD10、CD326/EpCAMおよびCD340/HER2、CD326/EpCAMおよびVEGF-R、CD326/EpCAMおよびEGFR、CD326/EpCAMおよびCD243/MDR、CSPG4/MCSPおよびCD326/EpCAM、CSPG4/MCSPおよびMAG、CA125およびCD227/MUC1、CA125およびCD227/MUC1、CD56およびCD140b、CD56およびCD60a、EGFRおよびCD340/HER2、PSMAおよびCD340/HER2、CD15およびEGFR、CD44およびCD117、CD44およびCD326/EpCAM、CD34およびCD19、CD34およびCD79a、CD34およびCD2、CD34およびCD7、CD34およびHLA-DR、CD34およびCD13、CD34およびCD117、CD34およびCD33、CD34およびCD15、CD33およびCD19、CD33およびCD79a、CD33およびCD2、CD33およびCD7、CD33およびHLA-DR、CD33およびCD13、CD33およびCD117、CD33およびCD15、CD227/MUC1およびCD10、CD227/MUC1およびCD66/CEA、CD227/MUC1およびCD57、CD38およびCD138、CD24およびCD29、CD24およびCD49f、炭酸脱水酵素9およびアクアポリン、CD19およびCD33、CD19およびCD22、CD28およびPSMA、CD227/MUC1およびEGFR、CD33およびTIM3、CD123およびTIM3、CLL1/CLEC12AおよびTIM3、CD244およびTIM3、CD33およびEGFR v3、CLL1/CLEC12AおよびEGFR v3、CD123およびEGFR v3、ならびにCD45およびHLA-A2から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸ナノ構造体。
【請求項9】
前記核酸がDNAを含むか、またはDNAからなり、かつ/または
前記ナノ構造体がDNAオリガミ構造体を含むか、またはDNAオリガミ構造体であり、
前記DNAオリガミ構造体が、少なくとも1つの骨格鎖を含み、
前記DNAオリガミ構造体が、複数の一本鎖オリゴヌクレオチドステープル鎖をさらに含み、
各ステープル鎖が、少なくとも1つ骨格鎖に対して少なくとも部分的に相補的であり、
前記ステープル鎖の各々が、少なくとも1つの場所、好ましくは2またはそれを超える別個の場所で前記少なくとも1つの骨格鎖の少なくとも1つに結合するように構成され、前記少なくとも1つの骨格鎖が、前記所望のナノ構造体が形成されるように折り畳まれ、かつ/または配置される、先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸ナノ構造体。
【請求項10】
前記ナノ構造体が、凹部、好ましくは前記最大縦方向延伸に対して垂直に配向された凹部を含み、
好ましくは、前記第1の標的化剤が前記凹部を介して前記ナノ構造体に結合しており、かつ/または前記第1の標的化剤の少なくとも一部が前記凹部内に位置している、先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸ナノ構造体。
【請求項11】
前記ナノ構造体が、活性薬剤、好ましくは薬物、および/またはマーカー、例えばイメージングマーカーをさらに含み、前記活性薬剤および/またはマーカーが、必要に応じてリンカーを介して前記ナノ構造体に結合している、先行する請求項のいずれか一項に記載の核酸ナノ構造体。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の核酸ナノ構造体を含み、必要に応じて薬学的に許容され得る賦形剤をさらに含む組成物、好ましくは医薬組成物。
【請求項13】
医薬品に使用するための、請求項1から11のいずれか一項に記載のナノ構造体または請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
増殖性疾患、例えばがん、免疫障害、例えば自己免疫疾患、感染性障害、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染などのウイルス性疾患、代謝障害、および/または糖尿病から選択される疾患を予防または処置する方法であって、
前記方法が、好ましくは、前記ナノ構造体を使用して第1の標的細胞と第2の標的細胞とを結合させることを含み、
好ましくは前記第1、第2および第3の標的化剤がそれぞれの標的分子に結合した場合にのみ、より好ましくは、シナプスの形成を誘導すること、促進すること、安定化することおよび/または阻害することを含み、
さらにより好ましくは、前記結合の結果として、前記第1の標的細胞と前記第2の標的細胞とが25nm以下、好ましくは15nm以下の距離を有するように、前記ナノ構造体を使用して前記第1の標的細胞と前記第2の標的細胞とを結合することを含む、方法に使用するための、請求項1から11のいずれか一項に記載のナノ構造体または請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1から11のいずれか一項に記載のナノ構造体を調製する方法であって、
i)核酸ナノ構造体、好ましくは剛性核酸ナノ構造体を提供するステップと、
ii)第1の標的化剤、第2の標的化剤、および第3の標的化剤を提供するステップであって、前記標的化剤の各々が、前記ナノ構造体の核酸鎖、例えば骨格鎖またはDNAハンドル鎖に相補的な核酸鎖にコンジュゲートされる、ステップと、
iii)好ましくは前記ナノ構造体の自己組織化によって、前記第1の標的化剤、前記第2の標的化剤、および前記第3の標的化剤を含む核酸ナノ構造体を得るステップと、を含む、方法。
【請求項16】
第1の標的および第2の標的を結合させるための、請求項1から11のいずれか一項に記載のナノ構造体または請求項12に記載の組成物の使用であって、
好ましくは前記第1、第2および第3の標的化剤がそれぞれの標的分子に結合した場合にのみ、好ましくは、第1の標的細胞と第2の標的細胞との間のシナプスの形成を誘導すること、促進すること、安定化することおよび/または阻害することのために、
より好ましくは、前記結合の結果として、前記第1の標的および前記第2の標的が25nm以下、好ましくは15nm以下の距離を有するように、前記ナノ構造体を使用して前記第1の標的、例えば第1の標的細胞と前記第2の標的、例えば第2の標的細胞とを結合することを含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、第1の表面および第2の表面を含む核酸ナノ構造体に関し、前記第1の表面および前記第2の表面は、前記ナノ構造体の対向する側に位置し、前記第1の表面は、少なくとも第1の標的化剤を含み、前記第2の表面は、少なくとも第2の標的化剤および少なくとも第3の標的化剤を含む。本発明はさらに、核酸ナノ構造体を含む組成物に関する。本発明はまた、医薬品に使用するためのナノ構造体および組成物、ならびに疾患を予防または処置する方法に使用するためのナノ構造体および組成物に関する。さらに、本発明は、ナノ構造体を調製する方法、および第1の標的と第2の標的とを結合させるためのナノ構造体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
免疫細胞エンゲージング療法は、がんの処置に大きな潜在性を有する。標的化アプローチは、二重特異性T細胞誘導抗体(bispecific T-cell engaging antibody)を考慮する。これらの化合物は、一方ではがん細胞を標的とし、他方ではT細胞を標的とする。例えば、二重特異性抗体ブリナツモマブ(抗CD3×抗CD19 BiTE)は、難治性急性リンパ性白血病(ALL)の処置に対するその有効性に基づいて欧州医薬品庁によって承認された。この抗体は、CD3陽性細胞傷害性T細胞(免疫細胞)をCD19陽性B細胞(標的細胞)に動員し、T細胞と標的細胞との間の細胞溶解性免疫シナプスの形成を誘導する[1]。免疫シナプスの形成は、細孔形成タンパク質パーフォリンおよびアポトーシス誘導グランザイムBの放出を介して細胞傷害性T細胞による効果的な標的細胞殺傷を促進する。重要なことに、免疫シナプスは、両方の細胞が近接して保持されている場合にのみ誘導することができる[2、3]。
【0003】
したがって、T細胞誘導抗体は、パラトープ間の距離が小さくなるように設計される。特に、ブリナツモマブの7ナノメートルのパラトープ間は、その高い標的細胞殺傷効力に寄与する。しかしながら、二重特異性抗体療法が直面する1つの主要な課題は、所望の腫瘍に対する(on-tumor)T細胞媒介性標的細胞殺傷と、所望でない腫瘍以外に対する(off-tumor)活性とのバランスをとることである。標的抗原は、多くの場合、腫瘍細胞に排他的に存在するのではなく、健康な組織にも存在するので、「標的に対するが腫瘍以外のものに対する(on-target off-tumor)」活性は、健康な組織の殺傷および毒性であり得る免疫過剰刺激をもたらす。腫瘍特異的抗原(CD19)が存在するALL適応症の場合、ブリナツモマブおよび同様のアプローチは、副作用が限られており、非常に有効である。対照的に、単一の腫瘍特異的抗原を同定することができない適応症の場合、これらのアプローチは通常、強いon-target off-tumor副作用のために失敗する[4]。
【0004】
近年、例えば、米国特許第7,842,793号に開示されている「DNAオリガミ」などの核酸ナノ構造体の製造など、ナノ構造体を製造するための新しい方法が開発されている。DNAオリガミは、所定の構造を有するように設計することができる核酸ナノ構造体である。DNAオリガミは、ナノメートルスケールの三次元構造の生成にDNA分子を使用する。国際公開第2014/170898号および国際公開第2012061719号は、標的の細胞表面にカーゴ(例えば抗体)を条件付きで提示するためのDNAアプタマー-ラッチ機構を備えた動的二部構成DNAオリガミデバイスに関する。そのような動的二部構成DNAオリガミデバイスは、可撓性部分を有するマルチドメイン物体に依拠し、立体構造状態はローカル環境(例えば、イオン強度)に依存する。堅牢であり、ローカル環境に対してより不活性であるナノ構造体は非常に有利である。さらに、ナノ構造体は、例えば、[「Oligolysine-based coating protects DNA nanostructures from low-salt denaturation and nuclease degradation」Ponnuswamyら、Nat Commun 2017;国際公開第2015070080号]に記載されているようなPEG-オリゴリジンコーティングを使用して、ヌクレアーゼからの消化または低イオン強度環境による分解から保護することができる。これらのコーティングおよび安定化方法は、可撓性マルチドメイン物体の立体構造状態および構成を妨害し得る。逆に、1つの構成を有する剛性単一ドメインナノ構造体(rigid single-domain nanostructure)は、その条件付き細胞動員機能を損なうことなく前記安定化方法を使用して安定化することができるので、非常に有利である。さらに、2つ以上の細胞型または抗原を標的化することを可能にするナノ構造体は非常に有利である。さらに、特定の抗原パターンが認識された場合にのみ細胞相互作用を促進するナノ構造体は非常に有利である。
したがって、2つ以上の細胞型を標的化することができ、および/または2つ以上の細胞表面分子を標的化することができ、および/または細胞表面分子の組み合わせを標的化することができるナノ構造体などの増強された標的化手段を提供する必要がある。さらに、免疫細胞および/または腫瘍細胞などの細胞標的を特異的に標的とするための手段を提供する必要がある。特に、細胞標的を近接させることを可能にする手段が必要とされている。さらに、好ましくは少なくとも1つのさらなる細胞標的を、活性化された細胞標的に同時に近接させることによって、細胞傷害性T細胞などの細胞標的を活性化することを可能にする手段が必要とされている。免疫シナプスの形成を可能にする手段も必要とされている。さらに、1またはそれを超える標的を選択的および/または特異的に標的とすることを可能にする手段が必要とされている。さらに、細胞表面分子(例えば抗原)の組み合わせまたはパターンを提示する細胞を選択的および/または特異的に標的とすることを可能にする手段が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Oligolysine-based coating protects DNA nanostructures from low-salt denaturation and nuclease degradation」Ponnuswamyら、Nat Commun 2017
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
以下で、本発明の要素を説明する。これらの要素は特定の実施形態と共に列挙されているが、追加の実施形態を作成するために任意の方法および任意の数で組み合わせることができることを理解されたい。様々に記載された実施例および好ましい実施形態は、本発明を明示的に記載された実施形態のみに限定すると解釈されるべきではない。この説明は、明示的に記載された実施形態のうちの2またはそれを超える実施形態を組み合わせる実施形態、または明示的に記載された実施形態のうちの1またはそれを超える実施形態を任意の数の開示されたおよび/または好ましい要素と組み合わせる実施形態を支持し、包含すると理解されるべきである。さらに、本出願に記載されているすべての要素の任意の置換および組み合わせは、文脈上別段の指示がない限り、本出願の説明によって開示されていると見なされるべきである。
【0007】
第1の態様では、本発明は、第1の表面および第2の表面を含む核酸ナノ構造体に関し、前記第1の表面および前記第2の表面は、前記ナノ構造体の対向する側に位置し、前記第1の表面は、少なくとも第1の標的化剤を含み、前記第2の表面は、少なくとも第2の標的化剤および少なくとも第3の標的化剤を含む。
【0008】
一実施形態では、前記ナノ構造体は、縦軸および横軸を有し、前記第1の表面および前記第2の表面は、前記縦軸に沿って対向する側に位置する。
【0009】
一実施形態では、ナノ構造体は、前記横軸に沿った最大横方向延伸よりも大きい、好ましくはシナプス距離よりも大きい、より好ましくは少なくとも10nmよりも大きい、例えば少なくとも25nmの、前記縦軸に沿った最大縦方向延伸を有し、かつ/または
【0010】
ナノ構造体は、前記縦軸に沿った最大縦方向延伸よりも小さい、好ましくはシナプス距離よりも小さい、より好ましくは25nmよりも小さい、例えば10nm以下の、前記横軸に沿った最大横方向延伸を有する。
【0011】
一実施形態では、ナノ構造体は、前記横軸に沿った最大横方向延伸よりも大きい、好ましくはシナプス距離よりも大きい、より好ましくは少なくとも10nmよりも大きい、例えば少なくとも25nmの、前記縦軸に沿った最大縦方向延伸を有する。
【0012】
一実施形態では、ナノ構造体は、前記縦軸に沿った最大縦方向延伸よりも小さい、好ましくはシナプス距離よりも小さい、より好ましくは25nmよりも小さい、例えば10nm以下の、前記横軸に沿った最大横方向延伸を有する。
【0013】
一実施形態では、第1の標的化剤は、第1の標的、好ましくは第1の標的細胞、より好ましくは免疫細胞上の第1の標的分子に結合するように構成され、第2の標的化剤は、第2の標的、好ましくは第2の標的細胞、より好ましくは疾患細胞上の第2の標的分子に結合するように構成され、第3の標的化剤は、前記第2の標的、好ましくは第2の標的細胞、より好ましくは疾患細胞上の第3の標的分子に結合するように構成される。
【0014】
一実施形態では、第1の標的化剤、第2の標的化剤および第3の標的化剤は、抗体またはその抗原結合フラグメント、抗原結合ペプチド、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、ダイアボディ、一本鎖Fvフラグメント、(scFv)2、テトラボディ、トリアボディ、ジスルフィド結合安定化Fv(dsFv)、Fcドメイン、操作されたFcドメイン、DNAアプタマー、RNAアプタマー、ペプチド核酸(PNA)、ポリペプチド、ペプチド、糖タンパク質、ペプチドミメティック、アンチカリン、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、ナノボディ、DARPin、受容体リガンド、受容体またはそのフラグメント、ならびに受容体ドメインから独立して選択され、
好ましくは、抗体またはその抗原結合フラグメント、抗原結合ペプチド、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、ダイアボディ、一本鎖Fvフラグメント、(scFv)2、テトラボディ、トリアボディ、ジスルフィド結合安定化Fv(dsFv)、Fcドメイン、操作されたFcドメイン、ポリペプチド、ペプチド、糖タンパク質、ペプチドミメティック、アンチカリン、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、ナノボディ、DARPin、受容体リガンド、受容体またはそのフラグメント、および受容体ドメインから独立して選択される。
【0015】
一実施形態では、第2の標的化剤および第3の標的化剤は、互いに距離を置いて、好ましくはシナプス距離よりも大きい縦軸に沿った距離で、例えば少なくとも15nm、好ましくは少なくとも20nm、より好ましくは少なくとも40nmの距離で離間しており、かつ/または
前記ナノ構造体は、剛性ナノ構造体であり、かつ/またはヒンジ領域のないナノ構造体であり、かつ/またはただ1つの構成を有するナノ構造体であり、かつ/またはDNAオリガミを含むもしくはDNAオリガミであるナノ構造体であり、前記DNAオリガミは、ただ1つの構成を有し、かつ/または
【0016】
ナノ構造体は、最大長を含み、最大長は、1000nmよりも短く、好ましくは500nmよりも短く、例えば100nmであり、好ましくは、前記最大長は、最大縦方向延伸の長さである。
【0017】
一実施形態では、第2の標的化剤および第3の標的化剤は、互いに距離を置いて、好ましくはシナプス距離よりも大きい縦軸に沿った距離で、例えば少なくとも15nm、好ましくは少なくとも20nm、より好ましくは少なくとも40nmの距離で離間している。
【0018】
一実施形態では、前記ナノ構造体は剛性ナノ構造体であり、かつ/またはヒンジ領域のないナノ構造体であり、かつ/またはただ1つの構成を有するナノ構造体であり、かつ/またはDNAオリガミを含むもしくはDNAオリガミであるナノ構造体であり、前記DNAオリガミはただ1つの構成を有する。
【0019】
一実施形態では、ナノ構造体は、最大長を含み、最大長は、1000nmよりも短く、好ましくは500nmよりも短く、例えば100nmであり、好ましくは、前記最大長は、最大縦方向延伸の長さである。
【0020】
一実施形態では、前記第1の標的細胞は免疫細胞であり、好ましくはリンパ球、例えばT細胞、細胞傷害性T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞、CAR-T細胞、単球、マクロファージおよび好中球からなる群から選択され、より好ましくはリンパ球、例えばT細胞、細胞傷害性T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞およびCAR-T細胞からなる群から選択され、かつ/または
前記第2の標的細胞は疾患細胞であり、好ましくはがん細胞、腫瘍細胞、自己免疫応答に関与する細胞、および感染細胞、例えばウイルス、マイコプラズマ、細菌または寄生虫に感染した細胞から選択される。
【0021】
一実施形態では、前記第1の標的細胞は免疫細胞であり、好ましくはリンパ球、例えばT細胞、細胞傷害性T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞、CAR-T細胞、単球、マクロファージおよび好中球からなる群から選択され、より好ましくはリンパ球、例えばT細胞、細胞傷害性T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞およびCAR-T細胞からなる群から選択される。
【0022】
一実施形態では、前記第2の標的細胞は疾患細胞であり、好ましくはがん細胞、腫瘍細胞、自己免疫応答に関与する細胞、および感染細胞、例えばウイルス、マイコプラズマ、細菌または寄生虫に感染した細胞から選択される。
【0023】
一実施形態では、前記第1の標的分子は免疫細胞の表面分子であり、好ましくはCD3、CD3δ/ε、CD3γ/ε、TCR、TCRα、TCRβ、CD2、CD5、CD28、OX40、4-1BB、CD16、Ly49、NKp30(CD337)、NKp44(CD336)、NKp46(NCR1)、CD3ζ(CD247)、CD27、CD40、CD137、CD64、CD89、toll様受容体(TLR)、サイトカイン受容体、Fcドメイン、操作されたFcドメイン、GITRおよびICOSから選択され、かつ/または
【0024】
前記第2の標的分子および前記第3の標的分子は、CD2、CD7、CD10、CD13、CD15、CD19、CD24、CD28、CD29、CD33、CD34、CD38、CD44、CD45、CD49f、CD56、CD57、CD60a、CD66/CEA、CD79a、CD117、CD123、CD138、CD140b、CD227/MUC1、CD243/MDR、CD244、CD326/EpCAM、CD340/HER2、VEGF-R、EGFR、CSPG4/MCSP、MAG、CA125、PSMA、HLA-DR、炭酸脱水酵素9、アクアポリン、PSMA、TIM3、CLL1/CLEC12A、EGFR v3およびHLA-A2から独立して選択され、好ましくは、前記第2の標的分子および前記第3の標的分子は同一ではなく、かつ/または
【0025】
前記第2の標的分子および前記第3の標的分子は、標的分子の組み合わせであり、前記組み合わせは、CD33およびCD123、CD326/EpCAMおよびCD10、CD326/EpCAMおよびCD340/HER2、CD326/EpCAMおよびVEGF-R、CD326/EpCAMおよびEGFR、CD326/EpCAMおよびCD243/MDR、CSPG4/MCSPおよびCD326/EpCAM、CSPG4/MCSPおよびMAG、CA125およびCD227/MUC1、CA125およびCD227/MUC1、CD56およびCD140b、CD56およびCD60a、EGFRおよびCD340/HER2、PSMAおよびCD340/HER2、CD15およびEGFR、CD44およびCD117、CD44およびCD326/EpCAM、CD34およびCD19、CD34およびCD79a、CD34およびCD2、CD34およびCD7、CD34およびHLA-DR、CD34およびCD13、CD34およびCD117、CD34およびCD33、CD34およびCD15、CD33およびCD19、CD33およびCD79a、CD33およびCD2、CD33およびCD7、CD33およびHLA-DR、CD33およびCD13、CD33およびCD117、CD33およびCD15、CD227/MUC1およびCD10、CD227/MUC1およびCD66/CEA、CD227/MUC1およびCD57、CD38およびCD138、CD24およびCD29、CD24およびCD49f、炭酸脱水酵素9およびアクアポリン、CD19およびCD33、CD19およびCD22、CD28およびPSMA、CD227/MUC1およびEGFR、CD33およびTIM3、CD123およびTIM3、CLL1/CLEC12AおよびTIM3、CD244およびTIM3、CD33およびEGFR v3、CLL1/CLEC12AおよびEGFR v3、CD123およびEGFR v3、ならびにCD45およびHLA-A2から選択される。
【0026】
一実施形態では、前記第1の標的分子は免疫細胞の表面分子であり、好ましくはCD3、CD3δ/ε、CD3γ/ε、TCR、TCRα、TCRβ、CD2、CD5、CD28、OX40、4-1BB、CD16、Ly49、NKp30(CD337)、NKp44(CD336)、NKp46(NCR1)、CD3ζ(CD247)、CD27、CD40、CD137、CD64、CD89、toll様受容体(TLR)、サイトカイン受容体、Fcドメイン、操作されたFcドメイン、GITRおよびICOSから選択される。
【0027】
一実施形態では、前記第2の標的分子および前記第3の標的分子は、CD2、CD7、CD10、CD13、CD15、CD19、CD24、CD28、CD29、CD33、CD34、CD38、CD44、CD45、CD49f、CD56、CD57、CD60a、CD66/CEA、CD79a、CD117、CD123、CD138、CD140b、CD227/MUC1、CD243/MDR、CD244、CD326/EpCAM、CD340/HER2、VEGF-R、EGFR、CSPG4/MCSP、MAG、CA125、PSMA、HLA-DR、炭酸脱水酵素9、アクアポリン、PSMA、TIM3、CLL1/CLEC12A、EGFR v3およびHLA-A2から独立して選択され、好ましくは、前記第2の標的分子および前記第3の標的分子は同一ではない。
【0028】
一実施形態では、前記第2の標的分子および前記第3の標的分子は、標的分子の組み合わせであり、前記組み合わせは、CD33およびCD123、CD326/EpCAMおよびCD10、CD326/EpCAMおよびCD340/HER2、CD326/EpCAMおよびVEGF-R、CD326/EpCAMおよびEGFR、CD326/EpCAMおよびCD243/MDR、CSPG4/MCSPおよびCD326/EpCAM、CSPG4/MCSPおよびMAG、CA125およびCD227/MUC1、CA125およびCD227/MUC1、CD56およびCD140b、CD56およびCD60a、EGFRおよびCD340/HER2、PSMAおよびCD340/HER2、CD15およびEGFR、CD44およびCD117、CD44およびCD326/EpCAM、CD34およびCD19、CD34およびCD79a、CD34およびCD2、CD34およびCD7、CD34およびHLA-DR、CD34およびCD13、CD34およびCD117、CD34およびCD33、CD34およびCD15、CD33およびCD19、CD33およびCD79a、CD33およびCD2、CD33およびCD7、CD33およびHLA-DR、CD33およびCD13、CD33およびCD117、CD33およびCD15、CD227/MUC1およびCD10、CD227/MUC1およびCD66/CEA、CD227/MUC1およびCD57、CD38およびCD138、CD24およびCD29、CD24およびCD49f、炭酸脱水酵素9およびアクアポリン、CD19およびCD33、CD19およびCD22、CD28およびPSMA、CD227/MUC1およびEGFR、CD33およびTIM3、CD123およびTIM3、CLL1/CLEC12AおよびTIM3、CD244およびTIM3、CD33およびEGFR v3、CLL1/CLEC12AおよびEGFR v3、CD123およびEGFR v3、ならびにCD45およびHLA-A2から選択される。
【0029】
一実施形態では、前記核酸はDNAを含むか、またはDNAからなり、かつ/または
ナノ構造体はDNAオリガミ構造体を含むか、またはDNAオリガミ構造体であり、
DNAオリガミ構造体は、少なくとも1つの骨格鎖を含み、
DNAオリガミ構造体は、複数の一本鎖オリゴヌクレオチドステープル鎖をさらに含み、
各ステープル鎖は、少なくとも1つの骨格鎖に対して少なくとも部分的に相補的であり、
ステープル鎖の各々は、少なくとも1つの場所、好ましくは2またはそれを超える別個の場所で少なくとも1つの骨格鎖の少なくとも1つに結合するように構成され、少なくとも1つの骨格鎖は、所望のナノ構造体が形成されるように折り畳まれ、かつ/または配置される。
【0030】
一実施形態では、前記ナノ構造体は、凹部、好ましくは前記最大縦方向延伸に対して垂直に配向された凹部を含み、
好ましくは、前記第1の標的化剤は前記凹部を介して前記ナノ構造体に結合しており、かつ/または前記第1の標的化剤の少なくとも一部は前記凹部内に位置している。
【0031】
一実施形態では、前記ナノ構造体は、活性薬剤、好ましくは薬物、および/またはマーカー、例えばイメージングマーカーをさらに含み、前記活性薬剤および/またはマーカーは、必要に応じてリンカーを介して前記ナノ構造体に結合している。
【0032】
さらなる態様では、本発明は、上記で定義される核酸ナノ構造体を含み、必要に応じて薬学的に許容され得る賦形剤をさらに含む組成物、好ましくは医薬組成物に関する。
【0033】
さらなる態様では、本発明は、医薬品に使用するための上記で定義されるナノ構造体または上記で定義される組成物に関する。
【0034】
さらなる態様では、本発明は、増殖性疾患、例えばがん、免疫障害、例えば自己免疫疾患、感染性障害、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染などのウイルス性疾患、代謝障害、および/または糖尿病から選択される疾患を予防または処置する方法であって、
前記方法が、好ましくは、ナノ構造体を使用して第1の標的細胞と第2の標的細胞とを結合させることを含み、
好ましくは第1、第2および第3の標的化剤がそれぞれの標的分子に結合した場合にのみ、より好ましくは、シナプスの形成を誘導すること、促進すること、安定化することおよび/または阻害することを含み、
さらにより好ましくは、前記結合の結果として、前記第1の標的細胞と前記第2の標的細胞とが25nm以下、好ましくは15nm以下の距離を有するように、前記ナノ構造体を使用して前記第1の標的細胞と前記第2の標的細胞とを結合することを含む、方法に使用するための、上記で定義されるナノ構造体、または上記で定義される組成物に関する。
【0035】
さらなる態様では、本発明は、上記で定義されるナノ構造体を調製する方法であって、
i)核酸ナノ構造体、好ましくは剛性核酸ナノ構造体を提供するステップと、
ii)第1の標的化剤、第2の標的化剤、および第3の標的化剤を提供するステップであって、前記標的化剤の各々が、前記ナノ構造体の核酸鎖、例えば骨格鎖またはDNAハンドル鎖に相補的な核酸鎖にコンジュゲートされる、ステップと、
iii)好ましくは前記ナノ構造体の自己組織化によって、前記第1の標的化剤、前記第2の標的化剤、および前記第3の標的化剤を含む核酸ナノ構造体を得るステップとを含む、方法に関する。
【0036】
前記核酸ナノ構造体、前記剛性核酸ナノ構造体、前記第1の標的化剤、前記第2の標的化剤、および前記第3の標的化剤は、上記で定義される通りである。
【0037】
さらなる態様では、本発明は、第1の標的および第2の標的を結合させるための、上記で定義されるナノ構造体または上記で定義される組成物の使用であって、
好ましくは第1、第2および第3の標的化剤がそれぞれの標的分子に結合した場合にのみ、好ましくは、第1の標的細胞と第2の標的細胞との間のシナプスの形成を誘導すること、促進すること、安定化することおよび/または阻害することのために、
より好ましくは、前記結合の結果として、前記第1の標的および前記第2の標的が25nm以下、好ましくは15nm以下の距離を有するように、前記ナノ構造体を使用して前記第1の標的、例えば第1の標的細胞と前記第2の標的、例えば第2の標的細胞とを結合することを含む、使用に関する。
【0038】
前記核酸ナノ構造体、前記第1の標的、前記第2の標的、前記第1の標的細胞、および前記第2の標的細胞は、上記で定義される通りである。
【0039】
さらなる態様では、本発明は、例えば、増殖性疾患、例えばがん、免疫障害、例えば自己免疫疾患、感染性障害、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染などのウイルス性疾患、代謝障害、および/または糖尿病から選択される疾患を予防することまたは処置することのための医薬品である医薬品を製造するための、上記で定義されるナノ構造体または上記で定義される組成物の使用に関する。
【0040】
さらなる態様では、本発明は、疾患、好ましくは、増殖性疾患、例えばがん、免疫障害、例えば自己免疫疾患、感染性障害、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染などのウイルス性疾患、代謝障害、および/または糖尿病から選択される疾患を予防および/または処置する方法であって、上記で定義されるナノ構造体および/または上記で定義される組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む方法に関する。
【0041】
一実施形態では、前記投与することは、有効量の上記で定義されるナノ構造体および/または上記で定義される組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0042】
詳細な説明
本発明は、抗体などの標的化剤が配置される剛性DNAオリガミプラットフォームに依拠する。そのような剛性核酸ナノ構造体は、例えば、そのような剛性核酸ナノ構造体がインビボ使用により適しており、かつ/またはそれらの製造がよりコスト効率および/または時間効率が高いので、複雑なヒンジ機構またはアプタマー-ラッチシステムまたは複雑なタンパク質操作と比較して非常に有利である。本発明のナノ構造体は、特に、ローカル環境が組織に応じて変化し得るインビボ条件において非常に堅牢である。有利には、ヒンジ領域を含むナノ構造体と比較して、本発明のナノ構造体は、微調整立体構造状態に依拠しない。代わりに、ナノ構造体は、DNAオリガミのサイズおよび形状を微調整することによって効率的に使用および/または製造することができる。本発明のナノ構造体はまた、少なくとも2つの標的細胞を標的とすることができ、例えば3つの異なる抗原を標的とすることによって、さらなる細胞および/またはさらなる標的を標的とするように拡張することさえできるという点で有利である。本発明のナノ構造体は、前記ナノ構造体の少なくとも第1、第2および第3の標的化剤がそれぞれの標的に結合する場合にのみ、細胞が接触、認識および/または排除されるという点でさらに有利である。さらなる利点は、少なくとも第2の標的分子および第3の標的分子を含む第2の標的、好ましくは第2の標的細胞のみが接触、認識、および/または排除されることである。したがって、それぞれの標的分子を含む標的細胞のみが認識および/または排除される。それにより、オフ結合(off-binding)および/または非特異的結合が低減される。本発明のナノ構造体は、少なくとも第1の標的因子、第2の標的因子、および第3の標的因子がそれぞれの標的分子に結合している場合にのみ、第1の標的と第2の標的が互いに結合し、かつ/または接触し、好ましくはシナプスが形成されるので、それが高度に選択的かつ特異的であるという点で非常に有利である。
【0043】
DNAオリガミ技術、特に本発明のナノ構造体のモジュール性により、さまざまな適応症および環境に対して迅速かつ効率的な調整ができる。
【0044】
細胞傷害性T細胞を標的細胞に向けさせる非常に効果的な方法を、単一の腫瘍特異的抗原を一つも同定することができない適応症に利用可能にするために、本発明者らは、DNAオリガミ法を使用して多重特異的T細胞誘導プラットフォーム、例えば抗体プラットフォームを開発した。単一特異的標的細胞およびT細胞標的化剤、例えば抗体は、このプラットフォーム上で組み合わされて、免疫細胞、例えばT細胞などの第1の標的細胞をがん細胞などの第2の標的細胞に動員することができる機能的な二重特異性または多重特異性物体を形成する。しかしながら、すべての第2の標的の標的化剤、好ましくは少なくとも第2の標的化剤および第3の標的化剤が、それらのそれぞれの標的分子、例えば標的細胞の表面上の抗原に結合している場合にのみ、免疫細胞、例えばT細胞媒介性殺傷が開始される。したがって、腫瘍細胞などの疾患細胞は、単一の抗原に基づくのではなく、複合抗原パターン(すなわち、抗原の組み合わせ)に基づいて標的化することができる。例えば、急性骨髄性白血病(AML)細胞は、CD33抗原およびCD123抗原などのAMLマーカーの組み合わせに基づいて同定することができる。
【0045】
本発明者らは、標的分子、例えば標的細胞抗原に対する複数の標的化剤、例えば抗体、および少なくとも1つの免疫細胞結合標的化剤、好ましくは第1の標的化剤、例えば抗体をプラットフォーム上に取り付けることによって、標的細胞、好ましくは第2の標的細胞のこの条件付き殺傷を達成する(
図1)。一実施形態では、プラットフォームという用語はナノ構造体に関する。ナノ構造体、例えばDNAオリガミプラットフォームの形状は、少なくとも1つの小さい寸法(例えば、10nm未満;この寸法は、所望の免疫シナプスまたは細胞間相互作用を形成するように選択される必要がある)を有するように設計されている。一実施形態では、そのような小さい寸法は、最大横方向延伸長および/または最大横方向長と呼ばれる。第2および第3の標的化剤は、第2および第3の標的化剤の両方が同じ細胞上のそれぞれの標的分子、例えば標的細胞抗原に結合している場合にのみ、プラットフォームが標的細胞表面、好ましくは第2の標的細胞の表面に平行であり、短い寸法が細胞表面に垂直であるように取り付けられる(
図1a対1bおよび1c)。この配向により、第1の標的化剤、例えば免疫細胞結合抗体の接近可能性を改善することができ、第1の標的、例えば細胞傷害性T細胞が第2の標的に近接することができるようになる。したがって、細胞溶解性免疫シナプスを形成することができるように、小さな寸法の長さ、標的化剤およびそれらの付着を選択しなければならない。第2および第3の標的化剤の両方が結合していない、例えばすべての標的細胞抗体が結合しているわけではない場合、第1の標的化剤、例えば免疫細胞結合抗体は、接近できないか、もしくは接近が制限されている(
図1b)か、または第1の標的、例えばT細胞と第2の標的、例えば疾患標的細胞との間の距離が大きすぎて免疫シナプスを開始することができない(
図1c)。
【0046】
一実施形態では、そのようなデバイス、好ましくはナノ構造体は、棒状の形状を有し(
図2)、必要に応じて、第2の標的、例えば疾患標的細胞に対する第2の標的化剤A1および第3の標的化剤A2、例えば抗体A1およびA2が、前記デバイスの端部に付着している。一方の末端には、第1の標的化剤B1、例えば免疫細胞結合抗体B1が付着している。両方の標的化剤A1およびA2がそれらのそれぞれの標的分子、例えば標的細胞上の抗原標的に結合している場合にのみ、ロッドは細胞表面に平行になり、免疫細胞は近接して細胞溶解性シナプスを形成することができる。
【0047】
さらに、標的化剤、例えば免疫細胞結合抗体などの第1の標的化剤が配置されるDNAオリガミ物体に凹部を形成することによって、標的化剤、例えば免疫細胞結合抗体の接近可能性を、したがってデバイス、例えばナノ構造体の条件付き特性を調整することができる(
図3)。さらに、このデバイスは、同じ標的細胞抗原が取り付けられている場合、その抗原密度に基づいて標的細胞を同定するために使用することもでき、両方の標的細胞抗体は、第1の抗体が表面から剥離する前に第2の標的細胞抗体が結合することができるほど抗原密度が十分に高い場合にのみ結合することができる。
【0048】
さらに、棒状プラットフォームのどの端に第1の標的化剤、例えば免疫細胞結合抗体が配置されるかは、標的細胞および非標的細胞上の標的抗原の分布に従って選択され得る。例えば、抗原RA1が非標的細胞にも共通である場合、免疫細胞動員抗体をA1の近くに配置することが有利であり得る。これは、RA1への結合がB1を接近不能にし、その結果、免疫細胞が結合することができず、抗体-DNAプラットフォームが2つの細胞を架橋せず、細胞表面から離れて次の潜在的標的細胞を見出すことができるからである。一実施形態では、プラットフォーム、物体、またはデバイスに言及する場合、ナノ構造体を意味する。本明細書に提示されるアプローチは、例えば三角形の物体を使用して、第2の標的細胞上の3つ以上の標的分子、例えば標的抗原を認識するように拡張することができる(
図4)。さらに、2つ以上の免疫細胞結合部分がプラットフォーム上に配置され得る。これは、免疫細胞活性化が阻害される腫瘍微小環境において有利であり得る。2つ以上の免疫刺激分子を配置することにより、免疫阻害環境であっても局所免疫応答が誘発され得る。一実施形態では、第1の標的化剤、および必要に応じて第4の標的化剤またはさらなる標的化剤は、免疫刺激剤である。
【0049】
本発明者らは以前に、複数の部分からなり、可撓性ヒンジを介して連結されて細胞を条件付きで動員する動的DNAオリガミデバイスを構築した。これらのナノデバイスは、それらの条件付き機能を果たすために、操作された平衡状態に依拠する。特に、立体構造状態の占有率は、ローカル環境(例えば、イオン強度、pH、タンパク質コロナ)に依存する。本明細書に提示されるアプローチは、可撓性マルチドメイン物体よりも不活性で堅牢である剛性ナノ構造体、例えば単一体抗体-担体DNAプラットフォームに依拠するという点で非常に有利である。したがって、本発明のナノ構造体は、ローカル環境の変化(例えば、pH、イオン強度、タンパク質コロナ、ヌクレアーゼ濃度などの変化)に対して非常に堅牢である。これらの安定性および堅牢性の増加は、インビボ環境において、または健康な組織とは異なる腫瘍微小環境を作り出す固形腫瘍を標的とする場合に特に重要であり得る。
【0050】
一実施形態では、DNAオリガミプラットフォームの形状は、ある寸法が免疫シナプス形成に必要な距離よりも小さく、例えば20nmよりも小さくなるように設計される。一実施形態では、抗体は、多価結合、例えば各標的化剤のそれぞれの標的への結合のみが、プラットフォームの平行な配向、例えば標的細胞の表面に平行な配向をもたらすように配置される。さらに、距離依存性シナプス形成が認識される。一実施形態では、本明細書で使用される「平行な配向」および「垂直な配向」という用語は、標的細胞表面に対する細胞コネクタの配向に関する。平行な配向では、縦軸は、ほとんどの場合、細胞表面にほぼ平行であり、垂直な配向では、縦軸は、標的細胞表面にほぼ垂直である。当業者は、本明細書に記載のシステム、特にナノ構造体が熱揺らぎを受け、結合および非結合事象が起こり得ることを理解する。したがって、平行な配向は実質的に平行な配向であり、垂直な配向は実質的に垂直な配向である。一実施形態では、細胞表面に対して実質的に平行な配向または実質的に垂直な配向である多数の配向が存在する。
【0051】
一実施形態では、「標的化剤」という用語は、細胞表面上の標的に結合する、好ましくは前記標的に特異的に結合することができる部分、例えば抗原結合ペプチドに関する。一実施形態では、標的化剤は、抗体またはその抗原結合ペプチドのいずれか、例えばIgG、Fabフラグメント、一本鎖Fabフラグメント、または単一ドメイン抗体、DNAおよび/またはRNAアプタマー、ペプチド、結合タンパク質、細胞表面受容体(例えばPD-L1)のリガンド、または脂質のいずれか、例えば抗体またはその抗原結合フラグメント、抗原結合ペプチド、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、ダイアボディ、一本鎖Fvフラグメント、(scFv)2、テトラボディ、トリアボディ、ジスルフィド結合安定化Fv(dsFv)、DNAアプタマー、RNAアプタマー、ペプチド核酸(PNA)、ポリペプチド、ペプチド、糖タンパク質、ペプチドミメティック、アンチカリン、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、ナノボディ、DARPin、受容体リガンド、その受容体またはフラグメント、および受容体ドメインのいずれかである。一実施形態では、標的化剤は、抗原結合ペプチド、例えば抗体、抗体様分子、抗体ミメティック、抗原結合誘導体またはその抗原結合フラグメントである。一実施形態では、標的化剤とその標的との間の相互作用は、抗体-抗原相互作用の特異的結合を特徴とする。当業者は、本発明の範囲内にある同様の特定の相互作用を特定することができる。一例として、分子へのアプタマーの特異的結合、またはその受容体への受容体リガンドの特異的結合、またはその逆も使用され得る。しかし、そのようなナノ構造体では多種多様な相互作用が利用され得、これは、特異的かつ限定的な相互作用、例えば受容体とリガンドとの相互作用に依拠する最新技術と比較して有利であり得る。したがって、利用可能な広範囲の相互作用に起因して、従来技術に開示されたナノ構造体と比較して、より汎用的で調整可能なDNAナノ構造体プラットフォームが提供される。例えば、標的化剤は、IgG抗体、IgG抗体フラグメント、IgG抗体ミメティック、IgM抗体、IgM抗体フラグメント、IgM抗体ミメティック、IgD抗体、IgD抗体フラグメント、IgD抗体ミメティック、IgA抗体、IgA抗体フラグメント、IgA抗体ミメティック、IgE抗体、IgE抗体フラグメント、またはIgE抗体ミメティックであってもよい。
【0052】
一実施形態では、標的化剤は、その標的に可逆的または不可逆的に結合する。例えば、可逆的に結合する分子は、抗体、抗体フラグメント、DNA鎖、ビオチン分子、ストレプトアビジン分子であってもよく、不可逆的に結合する分子は、マレイミド-チオール化学分子またはクリックケミストリー分子であってもよい。一実施形態では、第1の標的化剤、第2の標的化剤、および第3の標的化剤は、同じであるかまたは異なり、好ましくは互いに異なる。一実施形態では、第2の標的化剤および第3の標的化剤は、同じであるかまたは異なり、好ましくは互いに異なる。一実施形態では、第2の標的化剤および第3の標的化剤は、同じ標的分子および/または異なる標的分子を標的とし、好ましくは異なる標的分子を標的とする。一実施形態では、第2の標的分子および第3の標的分子は同じであるかまたは異なる。一実施形態では、例示的な第1の標的化剤は、抗CD3ε(例えばFab)、抗CD28(例えばFab)、およびIL2、またはそれらの組み合わせのいずれかである。一実施形態では、例示的な第2の標的化剤は、抗CD19(例えばFab)、抗CD123(例えばFab)、および抗CD33(例えばFab)、またはそれらの組み合わせのいずれかである。一実施形態では、例示的な第3の標的化剤は、抗CD19(例えばFab)、抗CD123(例えばFab)、および抗CD33(例えばFab)、またはそれらの組み合わせのいずれかである。
【0053】
一実施形態では、免疫細胞標的化剤は、任意の免疫細胞結合分子、タンパク質、部分、および/または複合体、例えば免疫細胞刺激または阻害分子、タンパク質、部分、および/または複合体である。一実施形態では、免疫細胞標的化剤、例えば免疫細胞結合抗体は、T細胞またはナチュラルキラー細胞に結合し、活性化し、および/または共刺激することができる薬剤であり、例えば抗CD3抗体、抗CD28抗体、抗CD137抗体、抗CTLA-4抗体、TLRアゴニスト(例えば、TLR-7/8、TLR-3、TLR-4、TLR-9)、サイトカイン(例えばIL-2)、チェックポイントリガンドもしくは阻害剤(例えば、抗PD-1またはPD-L1)、またはそれらの組み合わせである。
【0054】
本明細書で使用される「抗原結合ペプチド」という用語は、抗原に特異的に結合するペプチドに関する。一実施形態では、抗原結合分子は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体などの免疫グロブリンに基づくか、または抗原結合能を有するタンパク質骨格構造、例えばアンチカリンタンパク質、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、ナノボディ、もしくはDARPinに基づく。一実施形態では、抗原結合ペプチドは、抗体または抗体フラグメントに関する。一実施形態では、「抗体」、「抗体フラグメント」、および「抗原結合ペプチド」という用語は互換的に使用される。いくつかのクラスの抗体、特にヒト抗体、例えばIgA、IgG、IgM、IgDおよびIgE、ならびにサブクラス、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgDおよびIgEが存在する。天然のヒトIgGアイソタイプのハイブリッド組成物であるIgGも本発明に有用であり得る。一実施形態では、抗原結合ペプチドおよび/または抗体は、任意の抗体クラス、サブクラスおよび/または鎖のドメインを含み得る。一実施形態では、抗原結合ペプチドのアミノ酸配列は、タンパク質操作によって、例えば、改善された結合特性、例えばエフェクター機能特性、例えば免疫細胞刺激または免疫細胞阻害機能を媒介する他の免疫グロブリンクラス由来の定常領域を含むように改変され得る。
【0055】
本発明によれば、抗原結合ペプチドは、例えば、ヒト抗体、ヒトキメラ抗体、ヒト化抗体および抗体フラグメントに関連し得る。抗体は、パラトープを含むFabフラグメント可変領域を介して抗原を認識する。前記パラトープは抗原上のエピトープを特異的に標的とする。本発明によれば、抗原結合ペプチドは、抗体のフラグメント、例えば実質的にインタクトな抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、ダイアボディ、一本鎖Fvフラグメント、テトラボディ、トリアボディ、ジスルフィド結合安定化Fv(dsFv)、またはラクダ由来の重鎖VHHフラグメントにさらに関連し得る。しかしながら、抗原結合ペプチドの他の形態も本発明によって想定される。例えば、抗原結合ペプチドは、例えばコンビナトリアルタンパク質設計の方法を使用することによって、結合機能を備えたものなどの、小型で堅牢な非免疫グロブリン骨格に由来する別の(非抗体)受容体タンパク質であってもよい。そのような非抗体抗原結合ペプチドは、例えば、アフィボディ分子、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アンチカリン、ナノボディ、またはDARPinであってもよい。抗原結合ペプチドはまた、二重親和性再標的化抗体(DART)などの他の抗体ミメティック分子に関連し得る。一実施形態では、抗原結合ペプチドは、好ましくは抗体または抗体フラグメントに関する。一実施形態では、抗原結合ペプチドは、抗原に対する抗体の結合特性を模倣するが、天然に存在する抗体とは構造的に異なる任意の抗体ミメティック分子に関連し得る。
【0056】
本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、ヒト配列またはそのフラグメントのみを含む抗体に関する。一実施形態では、ヒト抗体は、ファージディスプレイまたはリボソームディスプレイなどのディスプレイ技術によって産生される。本明細書で使用される「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト免疫グロブリンからの配列を含む、抗体のFabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、または別の抗原結合フラグメントなどの免疫グロブリン鎖またはそのフラグメントに関する。一実施形態では、ヒト化抗体は、特定のCDR残基が、所望の特異性および親和性特性を有する非ヒト由来のCDR残基で置き換えられたヒト抗体である。本明細書で使用される「キメラヒト抗体」という用語は、マウスおよびヒトなどの異なる種の配列を組み合わせることによって遺伝子操作またはタンパク質操作によって設計された人工抗体に関する。一実施形態では、ヒトキメラ抗体は、マウス抗体由来の抗原結合ドメインとヒト抗体の定常ドメインとのハイブリッドタンパク質である。本明細書で使用される「実質的にインタクトな抗体」という用語は、フラグメント化、切り詰め、または他の方法で短縮されておらず、抗原などの標的に特異的に結合する能力を保持している抗体に関する。
【0057】
本明細書で使用される「標的化」という用語は、抗体、抗原結合ペプチド、または細胞傷害性T細胞の表面分子などの分子構造が、特異的相互作用によって抗原、特にエピトープなどの特定の構造に結合する能力に関する。一実施形態では、免疫細胞の表面上の分子は、第1の標的化剤、例えば抗原結合ペプチドによって標的化され、標的細胞、例えばがん細胞の表面上のさらなる分子、例えば少なくとも2つの分子は、第2および第3の標的化剤によって標的化される。免疫細胞上の第1の分子への第1の標的化剤のそのような結合、および標的細胞、例えばがん細胞上の第2の分子への第2の標的化剤のそのような結合、および前記標的細胞上の第3の分子への第3の標的化剤のそのような結合により、免疫細胞および標的細胞が近接し、それによって免疫シナプスの形成が可能になる。一実施形態では、免疫細胞と標的細胞とのそのような近接は、エフェクターシステムの活性化をもたらし、次いで、例えばカスパーゼカスケードを介して、前記標的細胞、例えばがん細胞の排除をもたらす。一実施形態では、免疫シナプスの形成は、前記がん細胞の細胞死をもたらす。一実施形態では、「標的化」および「認識」という用語は互換的に使用される。本明細書で使用される「交差反応する」という用語は、標的ではない構造および/または分子へのオフターゲット結合に関する。一実施形態では、前記標的細胞上の少なくとも2つの標的分子が結合した場合にのみ免疫細胞が動員され、そのため特異性が増加し、オフターゲット結合および副作用が減少するので、本発明の多機能ナノ構造体は交差反応を減少させる。
【0058】
本明細書で使用される「第1の標的化剤」という用語は、第1の標的、例えば第1の標的細胞に結合するおよび/または結合するように構成された分子に関する。一実施形態では、第1の標的細胞は、免疫細胞または他のエフェクター細胞である。一実施形態では、前記第1の標的化剤は、リンパ球、例えばT細胞もしくはナチュラルキラー細胞、またはマクロファージもしくは好中球などの免疫細胞上の標的分子に結合する、好ましくは特異的に結合する。一実施形態では、前記第1の標的化剤は、免疫細胞を活性化することができ、かつ/または免疫細胞の免疫応答を刺激することができ、免疫応答は、好ましくは細胞傷害性免疫応答、例えば第2の標的細胞に対する細胞傷害性免疫応答である。一実施形態では、前記第1の標的分子は、好ましくはCD3、CD3δ/ε、CD3γ/ε、TCR、TCRα、TCRβ、CD2、CD5、CD28、OX40、4-1BB、CD16、Ly49、NKp30(CD337)、NKp44(CD336)、NKp46(NCR1)、CD3ζ(CD247)、CD27、CD40、CD137、CD64、CD89、toll様受容体(TLR)、サイトカイン受容体、Fcドメイン、操作されたFcドメイン、GITRおよびICOSなどの分子である。一実施形態では、標的化剤、例えば第1の標的化剤の文脈における「少なくとも1つの」という用語は、前記標的化剤の1つのタイプの1またはそれを超える分子が存在することを意味し、さらに、第4、第5または第6の標的化剤などのさらなる標的化剤が存在してもよく、前記第4、第5または第6の標的化剤の各々は、1つのタイプの1またはそれを超える分子である。
【0059】
本明細書で使用される「第2の標的化剤」および「第3の標的化剤」という用語は、それぞれ第2の標的分子および第3の標的分子に結合するおよび/または結合するように構成された標的化剤に関する。一実施形態では、第2の標的分子および第3の標的分子は、同じ標的、例えば同じ標的細胞の標的分子である。一実施形態では、第2の標的化剤および第3の標的化剤を使用すると、1つの標的化剤のみを使用する構造よりも、第2および第3の標的化剤などを含むナノ構造体の特異性が増加する。一実施形態では、本発明のナノ構造体の特異性および選択性は、第2の標的細胞などの標的細胞上の1つの標的分子のみを標的とするナノ構造体と比較して増加している。一実施形態では、第2の標的分子および第3の標的分子の両方が前記第2の標的細胞上に存在する場合、疾患細胞、例えばがん細胞などの第2の標的細胞のみが標的化され、必要に応じて細胞溶解性溶解によって破壊される。したがって、本発明のナノ構造体は、細胞標的化の特異性および/または選択性を増加させることによって、オフ結合を減少させるという点で有利である。さらに、本発明のナノ構造体は、疾患細胞を特異的および/または選択的に標的化および/または排除することを可能にするという点で有利である。本発明の利点は、ナノ構造体が、がん細胞および/または自己免疫応答に関与する細胞などの疾患細胞の溶解を特異的および/または選択的に誘発することができることである。
【0060】
一実施形態では、ナノ構造体は、前記第1、第2、および第3の標的化剤に加えて、さらなる標的化剤を含む。一実施形態では、構造体は、第1の標的化剤、第2の標的化剤、および第3の標的化剤に加えて、さらなる標的化剤、例えば、第4の標的化剤、および/または第4および第5の標的化剤、および/またはなおさらなる標的化剤を含む。一実施形態では、ナノ構造体は、少なくとも第1の標的化剤、第2の標的化剤、および第3の標的化剤を含み、さらなる標的化剤をさらに含む。
【0061】
一実施形態では、「免疫シナプス」という用語は、好ましくは本発明のナノ構造体を介して媒介される、第1の細胞と第2の細胞との間の認識の際、例えば免疫細胞と抗原提示細胞および/またはがん細胞との間の受容体媒介および/またはナノ構造体媒介認識の際に形成される界面に関する。一実施形態では、免疫シナプスは、少なくとも1つの細胞が免疫シナプスの形成の際に溶解されることを意味する細胞溶解性シナプスである。一実施形態では、本発明のナノ構造体は、シナプス形成、例えば、[11]または[12]に記載される細胞溶解性シナプスであるかまたはそれに類似するシナプスの形成を誘導する。一実施形態では、免疫シナプスは、細胞溶解性T細胞シナプス、および/または第1の標的としてのナイーブT細胞と第2の標的細胞、例えば抗原提示細胞との間に形成される刺激性シナプス、および/または第1の標的としての細胞傷害性エフェクターT細胞と第2の標的細胞との間に形成される溶解性シナプスである。
【0062】
一実施形態では、「シナプス形成」という用語は、第1の標的と第2の標的との間、例えば第1の標的細胞と第2の標的細胞との間にシナプスおよび/またはシナプス距離を形成することに関する。一実施形態では、そのようなシナプス形成は免疫シナプスの形成である。一実施形態では、そのようなシナプス形成、好ましくは免疫シナプス形成は、第2の標的の溶解および/または結合をもたらす。一実施形態では、本発明のナノ構造体を使用して、2つの細胞、例えば第1の標的細胞と第2の標的細胞との間、例えば免疫細胞とがん細胞との間のシナプス形成を誘導および/または促進する。一実施形態では、本発明のナノ構造体を使用して、センサなどの第1の標的に細胞を結合させる。一実施形態では、本発明のナノ構造体は、好ましくは第1、第2、および第3の標的化剤がそれぞれの標的分子に結合している場合にのみ、シナプス形成を誘導すること、促進すること、安定化すること、および/または阻害することに使用するためのものである。好ましい実施形態では、本発明のナノ構造体は、シナプス形成を誘導および/または促進するのに使用するためのものである。一実施形態では、本発明のナノ構造体は、2つの細胞間および/または細胞と表面、例えばセンサ表面などの標的との間の特定の距離を促進するのに使用するためのものである。一実施形態では、シナプスは免疫シナプスである。一実施形態では、ナノ構造体は、シナプス、好ましくは免疫シナプスの形成を誘導および/または促進するのに使用するためのものである。一実施形態では、ナノ構造体は、条件付きシナプス形成のために使用され、すなわち、第1の標的化剤が第1の標的分子に結合する、第2の標的化剤が第2の標的分子に結合する、および第3の標的化剤が第3の標的分子に結合するという条件の場合にのみ、そのようなシナプスが形成される。代替の実施形態では、本発明のナノ構造体は、シナプス形成の阻害において使用するためのもの、例えば自己免疫応答を阻害するためのものである。一実施形態では、シナプス形成のそのような阻害は、シナプス形成を誘導および/または安定化し、そのようなシナプス形成が第1または第2の標的に及ぼす生物学的効果を阻害すること、例えば、第1の標的細胞が第2の標的細胞を攻撃することを阻害すること、例えば、自己免疫応答において、免疫細胞が細胞、例えば健康な細胞または疾患細胞を攻撃することを阻害することを含む。一実施形態では、生物学的効果のそのような阻害は、前記第1の標的化剤、そのような場合には例えば免疫細胞阻害剤によって、および/または前記第1の表面に結合したさらなる薬剤、好ましくは前記第1の表面に結合した免疫細胞阻害剤によって実施することができる。一実施形態では、シナプス形成のそのような阻害はシナプス形成の特異的阻害である。なぜなら、前記第1の標的化剤が前記第1の標的分子に結合し、前記第2の標的化剤が前記第2の標的分子に結合し、前記第3の標的化剤が前記第3の標的分子に結合した場合にのみ前記第1または第2の標的が阻害されるからである。
【0063】
代替の実施形態では、本発明のナノ構造体は、1)第2の標的が第2の標的分子も第3の標的分子も含まない場合、2)第2の標的が第2の標的分子のみを含むが第3の標的分子を含まない場合、または3)第2の標的が第3の標的分子のみを含むが第2の標的分子を含まない場合、例えば立体障害および/または結合特異性の欠如によって、シナプス形成を阻害、例えば非特異的にシナプス形成を阻害する。一実施形態では、本発明のナノ構造体は、好ましくは立体障害および/または結合特異性によって、第1の標的分子を含む第1の標的以外の標的と、第2の標的分子および第3の標的分子を含む第2の標的との間のシナプス形成を阻害する。
【0064】
一実施形態では、本明細書で使用される「シナプス距離」という用語は、シナプスの距離、例えば、シナプス間隙の距離および/またはシナプスギャップの距離に関する。一実施形態では、シナプス距離は、シナプスが形成されるときの第1の標的と第2の標的との間の距離である。一実施形態では、シナプス距離は、2つの細胞間の距離であり、そのような距離は、第1の細胞が第2の細胞に影響を及ぼすことを可能にし、および/または第1の細胞と第2の細胞との間の生化学的および/または電気化学的通信を可能にするのに十分小さい。一実施形態では、シナプス距離は、25nm未満、例えば20nm以下、15nm以下、または10nm以下である。一実施形態では、シナプス距離は、25nm以下、好ましくは15nm以下、より好ましくは10nm以下である。一実施形態では、シナプス距離は、1nm~25nm、好ましくは5nm~15nm、例えば約13nm~15nmまたは5nm~13nmの範囲内である。一実施形態では、T細胞と抗原提示細胞との間の天然シナプスは、13~15nmの範囲のシナプス距離を有する。一実施形態では、IgG、BiTe、またはナノ構造体によって誘導されるシナプスなどの人工シナプスは、天然のシナプスと同様の範囲内のシナプス距離、または天然のシナプス距離よりも小さいもしくは大きい、好ましくは同様もしくは小さい、より好ましくは小さいシナプス距離を有する。一実施形態では、シナプス距離が小さいほど、効果、例えば、疾患細胞に対する免疫細胞の細胞溶解性効果が良好である。一実施形態では、前記結合の結果として、前記第1の標的および前記第2の標的が25nm以下、好ましくは15nm以下、より好ましくは10nm以下の距離を有するように、前記第1の標的、例えば第1の標的細胞と前記第2の標的、例えば第2の標的細胞とが前記ナノ構造体を使用して結合される。
【0065】
本発明は、標的細胞上の抗原パターン認識の際に標的細胞と免疫細胞との間の免疫シナプスなどのシナプスの形成を引き起こすことができるナノ構造体に関する。例えば、免疫シナプスを形成することができる免疫細胞は、T細胞、B細胞およびナチュラルキラー細胞である。一実施形態では、細胞傷害性T細胞またはナチュラルキラー細胞と、がん細胞などの目的の標的細胞との間にシナプスが形成される。一実施形態では、そのようなシナプスは、細胞溶解性分子、例えば細胞傷害性T細胞またはナチュラルキラー細胞によって放出される細胞溶解性分子が標的細胞に対して標的化されることを可能にし、それによって標的細胞死を引き起こす。一実施形態では、がんを予防または処置する方法において、そのような細胞溶解性シナプスを形成するためにナノ構造体が使用される。一実施形態では、本発明のナノ構造体は、免疫細胞と腫瘍細胞との間の免疫シナプスの形成を誘導することによって腫瘍細胞を死滅させることを可能にする。一実施形態では、ナノ構造体はまた、免疫系を局所的にモジュレートする必要がある用途、例えば自己免疫疾患にも有用である。本発明のナノ構造体は、細胞を互いに接触および/または近接させなければならない任意の用途、および/または細胞をセンサ表面などの標的に接触および/または近接させなければならない用途に使用することができる。一実施形態では、ナノ構造体は、ニューロンおよび/または中枢神経系の細胞間に電気的または電気化学的シナプスを形成するために使用される。一実施形態では、ナノ構造体は、ニューロンおよび/または中枢神経系の細胞と、電気的および/または電気化学的刺激デバイスなどの電気的および/または電気化学的刺激手段との間に、電気的または電気化学的シナプスを形成するために使用される。
【0066】
一実施形態では、ナノ構造体は、好ましくは第1、第2、および第3の標的化剤がそれぞれの標的分子に結合している場合にのみ、シナプスの形成を誘導すること、促進すること、安定化すること、および/または阻害することに使用するためのものである。一実施形態では、第1、第2、および第3の標的化剤がそれぞれの標的分子に結合している場合にのみシナプスが形成される。一実施形態では、第1の標的細胞および第2の標的細胞は、第1、第2および第3の標的化剤がそれぞれの標的分子に結合している場合にのみ、前記ナノ構造体を使用して結合される。一実施形態では、疾患を予防または処置する方法は、第1、第2および第3の標的化剤がそれぞれの標的分子に結合している場合にのみ、前記ナノ構造体を使用して第1の標的細胞および第2の標的細胞を結合することを含む。一実施形態では、疾患を予防または処置する方法は、第1、第2および第3の標的化剤がそれぞれの標的分子に結合している場合にのみ、シナプスの形成を誘導すること、促進すること、安定化すること、および/または阻害することを含む。一実施形態では、ナノ構造体の使用は、第1、第2、および第3の標的化剤がそれぞれの標的分子に結合している場合にのみ、第1の標的細胞と第2の標的細胞との間のシナプスの形成を誘導すること、促進すること、安定化すること、および/または阻害することを含む。一実施形態では、ナノ構造体の使用は、前記結合の結果として、好ましくは第1、第2、および第3の標的化剤がそれぞれの標的分子に結合している場合にのみ、前記第1の標的および前記第2の標的が25nm以下、好ましくは15nm以下の距離を有するように、前記第1の標的、例えば第1の標的細胞と前記第2の標的、例えば第2の標的細胞とを前記ナノ構造体を使用して結合することを含む。一実施形態では、第1の標的化剤の「それぞれの標的分子」は第1の標的分子であり、第2の標的化剤の「それぞれの標的分子」は第2の標的分子であり、第3の標的化剤の「それぞれの標的分子」は第3の標的分子である。一実施形態では、第2の標的、好ましくは第2の標的細胞が少なくとも1つの第2の標的分子および少なくとも1つの第3の標的分子を提示する場合にのみ、シナプスの形成が誘導、促進、安定化、および/または阻害される。一実施形態では、ナノ構造体の使用は、好ましくは第2の標的、好ましくは第2の標的細胞が少なくとも第2の標的分子および少なくとも第3の標的分子を提示する場合にのみ、第1の標的細胞と第2の標的細胞との間のシナプスの形成を誘導すること、促進すること、安定化することおよび/または阻害することを含む。一実施形態では、疾患を予防または処置する方法は、第2の標的、好ましくは第2の標的細胞が少なくとも1つの第2の標的分子および少なくとも1つの第3の標的分子を提示する場合にのみ、シナプスの形成を誘導すること、促進すること、安定化すること、および/または阻害することを含む。一実施形態では、ナノ構造体は、第1、第2、および第3の標的化剤がそれぞれの標的分子に結合している場合にのみ、それがシナプスの形成を誘導、促進、安定化、および/または阻害するので、条件付き細胞コネクタ、すなわち条件付きナノ構造体である。一実施形態では、第1の標的と第2の標的との結合のための「条件」は、第1、第2、および第3の標的化剤がそれぞれの標的分子に結合していることである。一実施形態では、第1の標的の結合のための「条件」は、第2および第3の標的化剤がそれぞれの標的分子に結合していることである。
【0067】
本明細書で使用される「ナノ構造体」という用語は、核酸ナノ構造体、好ましくは1つまたは複数のDNAオリガミサブユニット(実体)から構成されるDNAオリガミ構造体に関する。実施形態では、ナノ構造体はDNAオリガミナノ構造体である。容易に入手可能な核酸ナノ構造体技術、例えば、DNAオリガミ技術は、標準的なナノ製造技術よりも比較的複雑でない組み立て手順を含み、それを使用して、ナノ構造体を製造することができる。一実施形態では、ナノ構造体は、DNAオリガミ技術を使用して少なくとも部分的に製造される。DNAオリガミ構造体の自己組織化、ならびに対応する骨格鎖およびステープル鎖を設計するための容易に利用可能なソフトウェアに起因して、これは、標準的なナノ製造技術と比較して比較的複雑でない製造プロセスであり得る。一実施形態では、ナノ構造体はDNAオリガミ構造体である。一実施形態では、標的化剤を含むナノ構造体は、前記標的化剤が付着したナノ構造体である。例えば、前記標的化剤は、前記ナノ構造体の任意の表面を介して、および/または前記ナノ構造体のコア構造を介して、例えば前記コア構造および/またはナノ構造体の内側部分を介して、前記ナノ構造体に付着することができる。一実施形態では、標的化剤を含むナノ構造体は、前記標的化剤が付着したDNAオリガミである。一実施形態では、標的化剤を含むナノ構造体のコア構造はDNAオリガミであり、DNAオリガミであるそのようなコア構造に、前記標的化剤が付着している。一実施形態では、標的化剤はコア構造の一部ではないが、必要に応じて標的化剤にコンジュゲートされた核酸鎖を介して、コア構造、例えばDNAオリガミに付着している。一実施形態では、ナノ構造体は、1000nm未満、例えば約25~約70nm、好ましくは約30nm~約50nmの範囲の最大長を有する。一実施形態では、最大長は縦軸に沿っている。一実施形態では、最大長はシナプス距離よりも大きく、例えば25nm以上である。
【0068】
一実施形態では、DNAオリガミ構造体は、少なくとも1つの骨格鎖と、複数の一本鎖オリゴヌクレオチドステープル鎖とを含む。一実施形態では、骨格鎖は、DNAオリガミ構造体および/またはDNAオリガミサブユニット(「実体」)の主要部分を構成および/または横断する。一実施形態では、実体はDNAオリガミサブユニットである。本発明で使用される「ステープル鎖」という用語は、骨格鎖に少なくとも部分的に相補的な一本鎖オリゴヌクレオチド分子を指すものとする。一般に、ステープル鎖を使用して、例えば、カップリング部位をDNAオリガミ構造体および/またはDNAオリガミサブユニット(「実体」)に導入することができる。
【0069】
本発明は、一般に、ナノ構造体に関する。本発明の例では、ナノ構造体は、米国特許第7,842,793号に例示的に開示されているように、DNAオリガミ構造体、すなわちDNAオリガミデバイスであってもよい。しかしながら、本技術はこれに限定されないことを理解すべきであり、これは単なる例示であり、また、本発明を実施するために他のナノ構造体も利用され得ることを理解すべきである。しかしながら、本明細書で使用される場合、「ナノ構造体」という用語は、好ましくは、1またはそれを超えるDNAオリガミサブユニット(実体)から構成されるDNAオリガミ構造体を指すものとする。一実施形態では、本明細書で使用される「細胞コネクタ」および「DNAオリガミ細胞コネクタ」という用語は、核酸ナノ構造体、例えばDNAオリガミナノ構造体、好ましくは本発明のナノ構造体に関する。
【0070】
ナノ構造体、例えばDNAオリガミナノ構造体は、少なくとも1つの骨格鎖、すなわち既知の配列を有する一本鎖ポリヌクレオチド骨格DNAを含み得る。DNAオリガミ構造体は、複数の一本鎖オリゴヌクレオチドステープル鎖をさらに含み得、各ステープル鎖は、少なくとも1つの骨格鎖に少なくとも部分的に相補的であってもよい。さらに、ステープル鎖の各々は、少なくとも1つの骨格鎖に結合するように構成されてもよく、少なくとも1つの骨格鎖は、所望のナノ構造体が形成され得るように折り畳まれ、かつ/または配置されてもよい。本明細書で使用される「鎖」という用語は、核酸鎖、例えばDNAおよび/またはRNA鎖に関する。そのような三次元ナノ構造体は、DNAオリガミを使用して、すなわち骨格鎖とステープル鎖(staple stand)とを組み合わせて必要な部分およびデバイス全体を形成することによって実現され得る。そのような設計は、例えば、caDNAnoなどのソフトウェアを使用して実行され得る。すなわち、いくつかの実施形態では、複数の部分を含むナノ構造体は、1つの骨格鎖から作製され得るが、他の実施形態では、ナノ構造体の部分は、複数の骨格鎖を利用して構築され得る。
【0071】
ナノ構造体がDNAオリガミ構造体によって少なくとも部分的に形成され、DNAオリガミ構造体が少なくとも1つの骨格鎖および複数のステープル鎖を含む実施形態では、分子は、リンカー分子によって少なくとも1つの骨格鎖またはステープル鎖の一方に結合されてもよく、リンカー分子は、少なくとも1つの骨格鎖の一部またはステープル鎖の一部に相補的なDNA鎖部分に連結されてもよい。一実施形態では、第1の標的化剤は、リンカー分子を介してナノ構造体に結合され、かつ/または第2の標的化剤は、リンカー分子を介してナノ構造体に結合され、かつ/または第3の標的化剤は、リンカー分子を介してナノ構造体に結合される。一実施形態では、リンカー分子は、1またはそれを超える核酸塩基、例えば単一の核酸塩基または核酸配列である。一実施形態では、標的化剤のリンカー分子は、前記ナノ構造体のDNA鎖に連結される。
【0072】
一実施形態では、ナノ構造体の形状は、任意の形状、例えば、ロッド、三角形、円形、立方形、すなわち長方形、星形、または任意の他の形状であってもよい。一実施形態では、ナノ構造体は球状構造ではない。本発明のナノ構造体は、任意の長さとすることができる。好ましい実施形態では、ナノ構造体は最大長を含み、特に好ましい実施形態では、最大長は1000nm未満、好ましくは500nm未満、例えば約100nm、またはそれ未満である。
【0073】
一実施形態では、ナノ構造体は、少なくとも1つの核酸を含み、前記核酸は、少なくとも1つの修飾、例えば修飾ヌクレオシド間結合、修飾核酸塩基、または修飾糖部分、例えば2’-O-アルキル修飾、例えば2’-O-メトキシ-エチル(MOE)もしくは2’-O-メチル(OMe)修飾、エチレン架橋核酸(ENA)、2’-フルオロ(2’-F)核酸、例えば2’-フルオロN3-P5’-ホスホラミダイト、1’,5’-アンヒドロヘキシトール核酸(HNA)、またはロックド核酸(LNA)から選択される化学修飾を含み得る。一実施形態では、第2の標的化剤および第3の標的化剤は、互いに距離を置いて、好ましくは縦軸に沿った距離で、例えば少なくとも15nm、好ましくは少なくとも20nm、より好ましくは少なくとも40nmの距離で離間している。一実施形態では、ナノ構造体は、1000nmより短く、好ましくは500nmより短く、例えば100nmの最大長を含み、好ましくは、前記最大長は最大縦方向延伸の長さである。一実施形態では、ナノ構造体は、剛性ナノ構造体、ヒンジ領域のないナノ構造体、ただ1つの構成を有するナノ構造体、および/またはDNAオリガミを含むもしくはDNAオリガミであるナノ構造体であり、前記DNAオリガミはただ1つの構成を有する。
【0074】
本明細書で使用される「剛性」という用語は、剛体、例えば剛性ナノ構造体またはナノ構造体の剛性部分の特徴に関し、これは、そのような本体、例えばナノ構造体またはナノ構造体の一部が、変形がないか、または無視できるほど小さい固体(solid body)であることを意味する。剛体、例えばナノ構造体上の任意の2つの所与の点間の距離は、剛体に及ぼされる外力にかかわらず時間的に一定のままである。剛体は、通常、塊の連続的な分布と見なされる。一実施形態では、「剛性」である核酸に言及する場合、そのような「剛性」という用語は、ただ1つの構成を有する、すなわち2つ以上の構成を有する可撓性ナノ構造体、例えばヒンジ領域を介して可撓性ではないナノ構造体に関する。一実施形態では、そのような「剛性」および/または「可撓性」および/または「ただ1つの構成」は、ナノ構造体のコア構造、例えばDNAオリガミ、すなわちナノ構造体自体に関するが、含まれる、付着された、および/または結合された標的化剤に関するものではない。例えば、DNAオリガミなどのナノ構造体と標的化剤との間の結合は可撓性であってもよく、かつ/またはヒンジ領域を含んでもよいが、ナノ構造体自体、例えばDNAオリガミは剛性であり、すなわち可撓性がない。一実施形態では、ナノ構造体は剛性部分を含み、第2および第3の標的化剤は、前記ナノ構造体の前記剛性部分に付着している。一実施形態では、ナノ構造体は剛性部分および非剛性部分を含み、第2および第3の標的化剤は前記剛性部分に付着され、第1の標的化剤は前記剛性部分または前記非剛性部分に付着される。一実施形態では、第2および第3の標的化剤は、ナノ構造体の剛性部分および/または剛性ナノ構造体に付着される。一実施形態では、第1の標的化剤は、ナノ構造体の剛性部分または非剛性部分に付着される。一実施形態では、ナノ構造体の前記剛性部分は、ナノ構造体の最大縦方向延伸に沿って延伸する。一実施形態では、ナノ構造体は、少なくとも10nmの、例えば少なくとも15nm、20nm、25nm、または40nmのナノ構造体の縦軸に沿った最大縦方向延伸を有する剛性部分を含む。一実施形態では、第2の標的化剤および第3の標的化剤は、ナノ構造体の剛性部分の縦軸に沿って互いに距離を置いて離間され、前記距離は、少なくとも15nm、好ましくは少なくとも20nm、より好ましくは少なくとも40nmの距離である。一実施形態では、ナノ構造体は、第2および第3の標的化剤または第1、第2および第3の標的化剤が付着している剛性部分を含み、ナノ構造体は、剛性部分に可撓的に接続されている1またはそれを超える部分を必要に応じてさらに含む。一実施形態では、剛性部分の縦方向延伸は、ナノ構造体の最大延伸、好ましくは縦方向延伸である。一実施形態では、ただ1つの構成を有するナノ構造体を指す場合、そのような構成はただ1つの構成であり、ナノ構造体自体、例えばDNAオリガミなどのナノ構造体のコア構造に関するが、標的化剤および/または標的化剤とナノ構造体との間の結合に関するものではない。例えば、標的化剤とナノ構造体および/または標的化剤との間の結合は、2つ以上の構成を有し得る。一実施形態では、標的化剤とナノ構造体との間のそのような結合は、リンカーを介して、および/または前記標的化剤に付着した核酸を介してである。一実施形態では、本発明の核酸ナノ構造体は、開および閉構成を有さない。一実施形態では、本発明の核酸ナノ構造体は、ただ1つの構成を有する。一実施形態では、前記ナノ構造体はヒンジ領域を有さない。一実施形態では、前記ナノ構造体は2つ以上の立体構造状態を有さない。一実施形態では、「ナノ構造体」および「核酸ナノ構造体」という用語は互換的に使用される。一実施形態では、ナノ構造体の「コア構造」に言及する場合、標的化剤を含まない核酸ナノ構造体、例えば本発明の核酸ナノ構造体に含まれるDNAオリガミを意味する。一実施形態では、「ヒンジ領域のない」ナノ構造体に言及する場合、ナノ構造体のコア構造内にヒンジ領域を有さないナノ構造体を意味し、すなわち、核酸ナノ構造体は、核酸コア構造中にヒンジ領域を含まないが、標的化剤とコア構造との間にヒンジ領域を有し得る。一実施形態では、ただ1つの構成を有するナノ構造体に言及する場合、これは、そのようなナノ構造体、好ましくはそのようなナノ構造体のコア構造、例えばナノ構造体に含まれるDNAオリガミが状態間を切り替えることができないことを意味する。一実施形態では、ナノ構造体は、第1および/または第2の標的に結合している場合、ならびに第1および/または第2の標的に結合していない場合、同じ構成および/または同じ状態を有する。一実施形態では、ナノ構造体は「開」および「閉」構成を有さない。一実施形態では、標的化剤の接近可能性は、ナノ構造体の構成に依存しないが、第1の標的および第2の標的に関するナノ構造体の位置、整列、および/または配向に依存する。
【0075】
一実施形態では、ステープル鎖の各々は、少なくとも1つ、好ましくは2つまたはそれを超える異なる場所で少なくとも1つの骨格鎖の少なくとも1つに結合するように構成される。一実施形態では、核酸ナノ構造体および/または核酸ナノ構造体に含まれるDNAオリガミは、骨格鎖および1またはそれを超えるステープル鎖を有する。一実施形態では、核酸ナノ構造体および/または核酸ナノ構造体に含まれるDNAオリガミは、100本以下のステープル鎖を含む。一実施形態では、ステープル鎖は、50~150核酸塩基の長さを有する。一実施形態では、骨格鎖は、100~20000核酸塩基、好ましくは120~10000核酸塩基、より好ましくは150~8064核酸塩基の長さを有する。一実施形態では、標的化剤は、前記標的化剤にコンジュゲートされた核酸配列、好ましくは核酸ナノ構造体の核酸配列に相補的である、例えば前記核酸ナノ構造体の骨格鎖に相補的である、かつ/または核酸ハンドル、好ましくはDNAハンドルに相補的である核酸配列を介して核酸ナノ構造体に付着および/または結合され、前記核酸ナノ構造体に付着および/または組み込まれる。
【0076】
少なくとも3つの相互作用部位、すなわち少なくとも3つの標的化剤、具体的には第1の標的化剤、第2の標的化剤、および第3の標的化剤がナノ構造体に付着している。標的化剤は、標的化剤のサブセットA、好ましくは第2および第3の標的化剤のうちの少なくとも1つの標的化剤がそれらのそれぞれの標的に結合していない場合、ナノ構造体は、標的化剤のサブセットB、好ましくは第1の標的化剤が、立体障害のためにそれらのそれぞれの標的に結合することができない配向にあるように付着するように設計される。相互作用分子のサブセットA、好ましくは第2の標的化剤および第3の標的化剤がそれらのそれぞれの標的に結合すると、ナノ構造体は、標的化剤のサブセットB、好ましくは第1の標的化剤がそれらのそれぞれの標的に結合することができる接近可能な配向に配向するようになる。したがって、ナノ構造体上の標的化剤のサブセットBの結合速度は、標的化剤のサブセットAの結合状態によって条件付きで修飾される。したがって、条件付き配向は、標的化剤の結合によって媒介される。
【0077】
本明細書で使用される「第1の表面」および「第2の表面」という用語は、ナノ構造体の対向する表面、特にナノ構造体の縦軸に沿った対向する表面に関する。一実施形態では、「表面」、例えば第1の表面および/または第2の表面は、例えば、領域、線、縁、角、DNAらせん平滑末端、DNAおよび/または点の形態であってもよい表面に関する。一実施形態では、表面は任意のトポロジーを有する。一実施形態では、表面は、二次元または三次元表面である。一実施形態では、表面、例えば第1の表面または第2の表面は、中断された表面または中断されていない表面である。一実施形態では、中断された表面は、前記表面内に穴、出っ張り、凹部、および/またはくぼみ、例えば、凹部によって形成された穴および/またはくぼみを有する。一実施形態では、表面、例えば第1の表面または第2の表面は、少なくとも1つの凹部を含む領域であり、好ましくは、前記1またはそれを超える標的化剤は、そのような凹部内に含まれ、好ましくは、前記1またはそれを超える標的化剤の少なくとも一部は、前記表面上に提示される。
【0078】
一実施形態では、前記ナノ構造体は、第3の表面および第4の表面を含み、前記第3および第4の表面は、ナノ構造体の横軸に沿って対向する表面であり、かつ/または前記第3および第4の表面は、前記第1および/または第2の表面に当接する表面(abutting surface)であり、かつ/または前記第3および第4の表面は、前記第1および第2の表面の少なくとも一方に垂直である。一実施形態では、前記第3の表面は、縁部を介して前記第1および第2の表面のうちの少なくとも一方から分離される。一実施形態では、前記第4の表面は、縁部を介して前記第1および第2の表面のうちの少なくとも一方から分離される。一実施形態では、第1の標的化剤は、第3の表面もしくは第4の表面および/または縁部に付着し、前記縁部は、第3の表面を第1の表面もしくは第2の表面から分離し、または第4の表面を第1の表面もしくは第2の表面から分離する。一実施形態では、第2および/または第3の標的化剤は、第3の表面もしくは第4の表面および/または縁部に付着し、前記縁部は、第3の表面を第1の表面もしくは第2の表面から分離し、または第4の表面を第1の表面もしくは第2の表面から分離する。一実施形態では、第2または第3の標的化剤が前記第3の表面もしくは第4の表面および/または前記縁部に付着している場合、前記第2または第3の標的化剤の少なくとも一部は、前記第2の表面上に提示される。一実施形態では、第1の標的化剤が前記第3の表面もしくは第4の表面および/または前記縁部に付着している場合、前記第1の標的化剤の少なくとも一部は、前記第1の表面上に提示される。
【0079】
「表面が含む」および「表面が標的化剤を含む」という用語は、標的化剤、例えば第1の標的化剤、ならびに第2および第3の標的化剤をそれぞれ含む第1または第2の表面などの表面の文脈において、前記表面が前記標的化剤の少なくとも一部を提示し、好ましくは前記標的化剤の少なくとも一部をその表面上に提示し、かつ/または前記標的化剤の少なくとも一部が前記表面から接近可能であることを意味する。一実施形態では、本明細書で使用される「接近可能」という用語は、標的分子に結合することができる、および/または標的分子によって結合されることができることを意味する。一実施形態では、表面の文脈において「から接近可能」である標的化剤という用語は、そのような表面がそのような標的化剤の接近可能性を立体的に妨げないことを意味する。
【0080】
一実施形態では、「第1の表面が少なくとも第1の標的化剤を含む」という用語は、前記少なくとも第1の標的化剤の少なくとも一部が前記第1の表面上に提示されること、および/または前記第1の標的化剤の少なくとも一部が前記第1の表面から接近可能であることを意味する。一実施形態では、前記第1の標的化剤は、表面上、例えば前記第1の表面上、および/または表面下、例えば前記第1の表面下、例えば前記ナノ構造体のコア構造内に付着される。一実施形態では、前記第1の標的化剤は、第1の表面などの表面上または表面下、例えば凹部内または前記凹部の表面下で前記ナノ構造体に付着される。一実施形態では、第1の標的化剤を、ナノ構造体の任意の部分に付着させることができ、例えば、前記ナノ構造体のコア内に付着させることができ、かつ/または第1もしくは第2の表面に垂直な平面および/もしくは表面に付着させることができ、例えば、第3もしくは第4の表面に付着させることができ、付着平面に付着させることができ、または付着部位に付着させることができる。一実施形態では、第1の標的化剤は、前記第1の標的化剤の少なくとも一部が第1の表面上に提示されるという条件で、ナノ構造体の任意の部分に付着することができる。
【0081】
一実施形態では、「第2の表面が少なくとも第2の標的化剤および少なくとも第3の標的化剤を含む」という用語は、前記少なくとも第2の標的化剤の少なくとも一部および前記少なくとも第3の標的化剤の少なくとも一部が前記第2の表面上に提示されること、および/または前記第2および第3の標的化剤の各々の少なくとも一部が前記第2の表面から接近可能であることを意味する。一実施形態では、前記第2の標的化剤および/または第3の標的化剤は、表面上、例えば第2の表面上、および/または表面下、例えば前記第2の表面下、例えば前記ナノ構造体のコア構造内に、例えば前記ナノ構造体の内側部分に付着される。一実施形態では、前記第2の標的化剤および/または第3の標的化剤は、前記第2の表面などの表面上または表面下、例えば凹部内または前記凹部の表面下で前記ナノ構造体に付着される。一実施形態では、第2の標的化剤および/または第3の標的化剤を、ナノ構造体の任意の部分に付着させることができ、例えば、前記ナノ構造体のコア内に付着させることができ、かつ/または第1もしくは第2の表面に垂直な平面および/または表面に付着させることができる。一実施形態では、第2の標的化剤および/または第3の標的化剤は、前記第2の標的化剤の少なくとも一部および前記第3の標的化剤の少なくとも一部が第2の表面上に提示されるという条件で、ナノ構造体の任意の部分に付着することができる。
【0082】
一実施形態では、「提示される」という用語は、「露出される」ことを指し、例えば、標的化剤の少なくとも一部は、表面に提示されるかつ/または前記表面に露出される。一実施形態では、表面上に提示されるおよび/または表面上に露出される標的化剤の一部は、そのそれぞれの標的分子に結合することができる。一実施形態では、表面上に提示されるおよび/または表面上に露出される標的化剤の一部は、それぞれの標的分子にとって接近可能である。一実施形態では、本発明のナノ構造体は、第1の表面および第2の表面を含む核酸ナノ構造体であり、前記第1の表面および前記第2の表面は、前記ナノ構造体の対向する側に位置し、前記第1の表面は、少なくとも第1の標的化剤を含み、すなわち、前記第1の表面は、少なくとも第1の標的化剤の少なくとも一部を提示し、前記第2の表面は、少なくとも第2の標的化剤および少なくとも第3の標的化剤を含み、すなわち、前記第2の表面は、少なくとも第2の標的化剤の少なくとも一部および少なくとも第3の標的化剤の少なくとも一部を提示する。
【0083】
一実施形態では、第1の標的化剤は、ナノ構造体の第1の表面に平行および/または近接する(例えば0~5nm)平面内でナノ構造体に付着している。一実施形態では、第1の標的化剤は、ナノ構造体の第1の表面に平行および/または近接する(例えば0~5nm)付着部位および/または付着平面でナノ構造体に付着している。一実施形態では、そのような付着部位および/または付着平面は、第3または第4の表面と交差し、必要に応じて、前記第1の標的化剤は、そのような交差部でナノ構造体に付着している。
【0084】
一実施形態では、第2および/または第3の標的化剤は、ナノ構造体の第2の表面に平行および/または近接する(例えば0~5nm)平面内でナノ構造体に付着している。一実施形態では、第2および/または第3の標的化剤は、ナノ構造体の第2の表面に平行および/または近接する(例えば0~5nm)付着部位および/または付着平面でナノ構造体に付着している。一実施形態では、そのような付着部位および/または付着平面は、第3または第4の表面と交差し、必要に応じて、前記第2および/または第3の標的化剤は、そのような交差部でナノ構造体に付着している。
【0085】
一実施形態では、第1の標的化剤は、最表面ではない、例えば最表面の第1の表面ではない平面および/または部位および/または表面に付着している。一実施形態では、第2および/または第3の標的化剤は、最表面ではない、例えば最表面の第2の表面ではない平面および/または部位および/または表面に付着している。一実施形態では、第1および/または第2の表面は、縦軸に沿ったナノ構造体の最表面ではなく、例えば凹部の表面であってもよい。代替的な実施形態では、第1および/または第2の表面は、縦軸に沿ったナノ構造体の最表面である。好ましい実施形態では、第1の標的化剤の少なくとも一部は、前記ナノ構造体の最表面、例えば第1の表面上に提示され、かつ/または前記ナノ構造体の最表面、例えば第1の表面上に接近可能である。好ましい実施形態では、第2および/または第3の標的化剤(複数可)の少なくとも一部は、前記ナノ構造体の最表面、例えば第2の表面上に提示され、かつ/または前記ナノ構造体の最表面、例えば第2の表面上に接近可能である。
【0086】
一実施形態では、第1の標的化剤は、第1の表面上に直接、ナノ構造体、例えばDNAオリガミ物体に付着し、かつ/または前記第1の表面の縁部、例えば前記第1の表面を第3または第4の表面から分離する縁部でナノ構造体に付着し、かつ/または前記第1の表面および隣接する表面の、例えば第4の表面の第3の角部でナノ構造体に付着している。一実施形態では、第2および/または第3の標的化剤は、第2の表面上に直接、ナノ構造体、例えばDNAオリガミ物体に付着し、かつ/または前記第2の表面の縁部、例えば前記第2の表面を第3または第4の表面から分離する縁部でナノ構造体に付着し、かつ/または前記第2の表面および隣接する表面の、例えば第4の表面の第3の角部でナノ構造体に付着している。一実施形態では、「隣接する表面」および「当接する表面」という用語は互換的に使用される。一実施形態では、前記第1の標的化剤は、前記第1の表面からおよび/または第1の最表面から約0~5nmの距離、好ましくは横軸に沿った距離を有する位置で前記ナノ構造体に付着している。一実施形態では、前記第2または第3の標的化剤は、前記第2の表面および/または第2の最表面から約0~5nmの距離、好ましくは横軸に沿った距離を有する位置で前記ナノ構造体に付着している。第1、第2および/または第3の標的化剤はまた、より小さい細胞距離を得るために、第1または第2の表面に平行な付着平面に配置および/または付着し得る。第1または第2の表面からの付着平面の最適な距離は、標的化剤のサイズおよび細胞表面からの標的分子のエピトープ間の距離に依存し得る。その対応する表面に対する平行な付着平面の距離は、0~10nm、好ましくは5nm未満、例えば2nmから選択され得る。
【0087】
本明細書で使用される「縦軸」という用語は、横断面の重心を通る線に関し、かつ/またはナノ構造体の最大延伸および/または最大長、例えばナノ構造体のコア構造の最大延伸および/または最大長、および/または慣性主軸を通る線である。一実施形態では、前記第1の表面および前記第2の表面が「前記縦軸に沿って対向する側」に位置することに言及する場合、そのような用語は、前記縦軸に沿って平行な対向する側に関する。一実施形態では、第1の表面および第2の表面は、縦軸に平行な平面内にある。
【0088】
本明細書で使用される「横軸」という用語は、例えば縦軸に垂直な、縦軸を横切る軸、および/または縦軸を横切る軸に関する。一実施形態では、横軸および縦軸は、
図1~
図4に示すように互いに向けられている。
【0089】
本明細書で使用される「最大縦方向延伸」という用語は、好ましくは縦軸に沿ったナノ構造体の最大長に関する。本明細書で使用される「最大横方向延伸」という用語は、横断方向および/または横方向のナノ構造体の長さ、好ましくは横断方向および/または横方向のナノ構造体の最大長に関する。一実施形態では、横軸に沿ったナノ構造体の最大長は、縦軸に沿った最大長であるナノ構造体の最大長よりも小さい。一実施形態では、最大横方向延伸は、最大縦方向延伸よりも小さい。一実施形態では、横方向延伸に沿った最大長は、縦方向延伸に沿った最大長よりも小さい。
【0090】
本明細書で使用される「標的分子」という用語は、化合物、ペプチド、抗原、脂質などの標的の任意の分子、および/または標的化剤によって結合される任意の他の分子に関する。一実施形態では、標的分子は、標的の表面上に提示されるおよび/または標的の表面上で接近可能な分子である。一実施形態では、抗原などの標的分子は、細胞表面結合分子またはセンサ表面結合分子、例えばタンパク質、分化抗原群分子、受容体、脂質、イオンチャネル、糖、または任意の他の細胞表面結合分子もしくは構造のいずれかである。一実施形態では、標的分子は抗原である。
【0091】
本明細書で使用される「第1の標的分子」という用語は、免疫細胞、エフェクター細胞、センサ表面、または固定表面などの第1の標的の表面に提示される標的分子などの、第1の標的上の標的分子に関する。
【0092】
本明細書で使用される「第1の標的」という用語は、第1の標的化剤によって結合される任意の分子、構造、材料、細胞、抗原、および/または表面に関する。一実施形態では、前記第1の標的は、細胞、および/または分子、材料もしくは表面、例えば、センサ表面、固定表面もしくはアッセイに使用される他の表面である。例えば、第1の標的は、センサ、固定表面、ビーズ、クロマトグラフィーカラムのカラム材料、マイクロタイタープレート表面、ビオチン化もしくはストレプトアビジン被覆表面、および/または細胞などの分析物を固定するアッセイに使用される任意の他の表面、材料もしくは分子であってもよい。例えば、ナノ構造体を固定するためにナノ構造体を第1の標的に標的化することができ、第2の標的はナノ構造体に結合する。そのような固定は、アッセイ、細胞の選択および/もしくは選別、または当業者に公知の任意の他の方法もしくはアッセイを行うために使用することができる。好ましい実施形態では、第1の標的は細胞であり、好ましくは免疫細胞である。代替的な実施形態では、第1の標的は、センサ表面、または例えばオン/オフ結合速度を測定するためのアッセイに使用される任意の他の材料である。
【0093】
本明細書で使用される「第1の標的細胞」という用語は、細胞、例えば第2の標的細胞に近接させる細胞に関する。一実施形態では、第1の標的細胞は、免疫細胞、例えばリンパ球、例えばT細胞、細胞傷害性T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞、CAR-T細胞、単球、マクロファージもしくは好中球、または他のエフェクター細胞である。本明細書で使用される「エフェクター細胞」という用語は、標的細胞の破壊および/または排除をもたらすエフェクター系および/またはエフェクター機構に関与する細胞、好ましくは免疫細胞を指す。本明細書で使用される「細胞傷害性T細胞」という用語は、がん細胞、感染細胞、または他の方法で損傷および/または病理学的である細胞などの標的細胞を死滅させることができるTリンパ球に関する。T細胞は、典型的には、抗原を特異的に認識するT細胞受容体(TCR)を発現する。そのような抗原は、典型的には、MHC-I分子によって細胞の表面に提示される。一実施形態では、そのような抗原は、ナノ構造体の第1の標的化剤である。細胞傷害性T細胞のT細胞受容体が抗原に特異的である場合、抗原とMHC-I分子との複合体に結合し、細胞を破壊する。T細胞と、標的細胞の抗原とMHC-I分子との複合体との相互作用はまた、補助受容体、すなわちCD8を含み得る。一実施形態では、ナノ構造体は、好ましくは前記第1の表面上に、CD8であるかまたはそれに結合する、好ましくはCD8に結合する、より好ましくは前記第1の標的細胞上のCD8に結合する、第4の標的化剤を含む。一実施形態では、第4の標的化剤は、CD8である第4の標的分子に結合するように構成される。一実施形態では、T細胞が標的細胞上のそのような複合体に結合する場合、または本発明のナノ構造体を使用して免疫シナプスが形成される場合、T細胞は、細胞毒素パーフォリン、グランザイム、およびグラニュライシンのいずれかを放出する。一実施形態では、パーフォリンの作用を介して、グランザイムは第2の標的細胞、例えば疾患細胞の細胞質に入り、それらのセリンプロテアーゼ機能は、前記第2の標的細胞のアポトーシスをもたらすカスパーゼカスケードを引き起こす。一実施形態では、前記第2の標的細胞のアポトーシスはまた、Fas-Fasリガンド相互作用などによる第1の標的細胞、例えば細胞傷害性T細胞と第2の標的細胞との間の細胞表面相互作用によって、および/または免疫シナプスの形成によって誘導され得る。
【0094】
本明細書で使用される「第2の標的分子」という用語は、疾患細胞、例えばがん細胞または自己免疫応答に関与する細胞などの第2の標的の表面に提示される標的分子などの第2の標的上の標的分子に関する。
【0095】
本明細書で使用される「第2の標的」という用語は、第2および/または第3の標的化剤によって結合される任意の分子、構造、材料、細胞、抗原、および/または表面、例えば疾患細胞などの標的細胞に関する。一実施形態では、第2および第3の標的化剤は、前記第2の標的および前記第1の標的を標的化することによって、好ましくは前記第2の標的上の前記第2の標的分子および第3の標的分子を標的化することによって、細胞選別に使用することができる。一実施形態では、固定された第1の標的を有することによって、標的細胞、具体的には表面に第2の標的分子および第3の標的分子を有する標的細胞を、前記ナノ構造体を介して選択的および/または特異的に固定することができる。さらに、疾患細胞などのそのような第2の標的は、ナノ構造体を介して前記第2の標的に対して免疫細胞および/またはエフェクター細胞を標的化することによって排除および/または破壊することができる。
【0096】
本明細書で使用される「第2の標的細胞」という用語は、疾患細胞または固定される細胞などの標的細胞に関する。本明細書で使用される「疾患細胞」という用語は、異常な分裂または異常な機能などの少なくとも1つの病理学的特徴を有する細胞に関し、例えば、そのような細胞は、がんもしくは自己免疫疾患などの疾患に関与し、かつ/または疾患を引き起こす。例えば、疾患細胞ががん細胞である場合、そのようながん細胞は、絶え間なく分裂し、それによって腫瘍を形成する細胞である。例えば、疾患細胞が自己免疫応答に関与する細胞である場合、そのような細胞は、自己免疫応答を誘発するかつ/または自己免疫応答によって標的化される細胞であってもよい。一実施形態では、疾患細胞は、疾患および/または疾患の発症に関与する任意の細胞であり、好ましくはそのような疾患および/または疾患の発症を引き起こす細胞である。
【0097】
本明細書で使用される「第3の標的分子」という用語は、疾患細胞、例えばがん細胞または自己免疫応答に関与する細胞などの第2の標的の表面に提示される標的分子などの第2の標的上の標的分子に関する。一実施形態では、第2の標的分子および第3の標的分子は、同じまたは異なる標的分子であり、好ましくは異なる標的分子である。一実施形態では、第2の標的上の少なくとも2つの標的分子、すなわち第2の標的分子および第3の標的分子を標的化することによって、前記第2の標的を標的化する特異性および/または選択性が増加する。
【0098】
本明細書で使用される「互いに距離を置いて離間した」という用語は、少なくとも2つの分子間の間隔および/または互いに距離を置いて位置する少なくとも2つの分子、例えば縦軸に沿った第2の標的化剤および第3の標的化剤の間隔に関する。
【0099】
本明細書で使用される「表面分子」という用語は、表面に提示される、かつ/または少なくとも一部が表面に提示される分子に関する。「同一ではない」という用語は、分子、標的および/または薬剤の文脈で本明細書で使用される場合、同じではない分子または実体、例えば、同じ分子および/または同じタイプの分子ではない第2の標的分子および第3の標的分子に関する。本明細書で使用される「標的分子の組み合わせ」という用語は、第2の標的分子と第3の標的分子の組み合わせに関し、好ましくは標的細胞の表面分子、標的分子、および/またはバイオマーカーの対である。例えば、そのような組み合わせは、特定のがん細胞などの特定の疾患細胞上に典型的に発現される2つのバイオマーカーの組み合わせであってもよい。
【0100】
本明細書で使用される「DNAオリガミ構造体」という用語は、ナノスケール形状を作成するための構築材料としてDNAを含むナノ構造体に関する。DNAオリガミを調製することは、複数の合理的に設計された「ステープル」DNA鎖を使用して、例えば自己組織化によって、1またはそれを超える「骨格」DNA鎖を特定の形状に折り畳むことを含む。骨格鎖は、典型的にはステープル鎖よりも長い。ステープル鎖の核酸配列は、ステープル鎖が骨格鎖の特定の部分にハイブリダイズし、ハイブリダイゼーションにより、ナノ構造体の特定の形状が得られるように設計される。一実施形態では、核酸「ハンドル」という用語は、部分に結合することができる核酸配列伸長、例えば標的化剤に付着した核酸配列などの部分に結合することができる伸長を有するステープル鎖に関する。
【0101】
本明細書で使用される「最大縦方向延伸に対して垂直に配向される」という用語は、縦方向延伸および/または縦軸に対して横断面および/または垂直面に配向されることに関する。一実施形態では、凹部は、規則的な形状または不規則な形状などの任意の形状および/または形態を有することができる。
【0102】
本明細書で使用される「マーカー」という用語は、インビトロアッセイのためのまたはインビボ医療イメージングのためのマーカーおよび/または色素、例えば蛍光マーカー、X線撮影マーカー、MRIマーカー、核医学マーカー、断層撮影マーカーなどの当業者に公知の任意のマーカーに関する。
【0103】
本明細書で使用される「特異的」または「特異的に結合する」という用語は、本発明によれば、標的化剤、例えば抗体または抗原結合ペプチドが、特異的標的または一連の特異的標的と特異的に相互作用および/または結合することができるが、抗原などの他の分子には本質的に結合しないことを意味する。そのような結合は、鍵と鍵穴原理の特異性によって例示され得る。一実施形態では、「結合」という用語に言及する場合、そのような用語は「特異的結合」という用語を含むと解釈されるべきである。一実施形態では、「標的化」に言及する場合、そのような用語は「特異的標的化」という用語を含むと解釈されるべきである。
【0104】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、リボ核酸またはデオキシリボ核酸などのヌクレオチド配列に関する。本明細書で使用される「患者」という用語は、ヒトまたは動物に関連し得る。
【0105】
一実施形態では、本明細書で使用される「凹部」という用語は、ナノ構造体の凹部に関する。一実施形態では、凹部は、0.25nm~9nm、好ましくは2nm~7nm、より好ましくは約5nmの深さを有する。一実施形態では、そのような凹部の深さは、ナノ構造体の横軸に沿って配向される。一実施形態では、前記第1の標的化剤は凹部を介して前記ナノ構造体に結合し、かつ/または前記第1の標的化剤の少なくとも一部は凹部内に位置し、かつ/または前記第2の標的化剤は凹部を介して前記ナノ構造体に結合し、かつ/または前記第2の標的化剤の少なくとも一部は凹部内に位置し、かつ/または前記第3の標的化剤は凹部を介して前記ナノ構造体に結合し、かつ/または前記第3の標的化剤の少なくとも一部は凹部内に位置している。一実施形態では、第1の標的化剤、第2の標的化剤、および第3の標的化剤は、凹部を介してナノ構造体に結合し、かつ/または第1の標的化剤、第2の標的化剤、および第3の標的化剤の各々の少なくとも一部は、凹部内に位置している。一実施形態では、ナノ構造体は1またはそれを超える凹部を有する。一実施形態では、ナノ構造体に凹部を組み込むことは、ナノ構造体の特異性をさらに高める。一実施形態では、第2の標的化剤および第3の標的化剤はそれぞれ凹部に組み込まれる。一実施形態では、第2の標的化剤および第3の標的化剤がそれぞれ凹部に組み込まれる場合、第1の標的化剤のより良好な接近可能性のために、第1の標的化剤が最初にその標的分子に結合し、その後、第2および第3の標的化剤がそれらの標的分子に結合する。一実施形態では、凹部に「組み込まれる」標的化剤に言及する場合、そのような「組み込み」は、前記凹部を介してナノ構造体に結合すること、および/または前記標的化剤の少なくとも一部が前記凹部内に位置することを含む。一実施形態では、ナノ構造体は、前記第1の標的化剤、前記第2の標的化剤、または前記第3の標的化剤を含む凹部を含む。一実施形態では、凹部は、縦軸に対して垂直に配向され、これは、凹部が横軸に沿って配向されることを意味する。
【0106】
一実施形態では、方法に言及する場合、方法は、インビボ、エクスビボ、インビトロ、またはインサイチュでの方法、例えばインビトロでの方法である。一実施形態では、使用に言及する場合、使用は、インビボ、エクスビボ、インビトロ、またはインサイチュでの使用、例えばインビトロでの使用である。一実施形態では、本発明は、第1の標的と第2の標的とを結合させるための、好ましくは前記第1の標的と前記第2の標的との間のシナプスの形成を誘導すること、促進すること、安定化すること、および/または阻害することのための、より好ましくは前記第1の標的と前記第2の標的との間のシナプスの形成を誘導および/または促進するためのナノ構造体の使用に関し、前記使用は、インビボ、エクスビボ、インビトロ、またはインサイチュでの使用、例えばインビトロでの使用である。一実施形態では、本発明のナノ構造体は、インビボまたはインビトロ、好ましくはインビボで使用するためのものである。
【0107】
本発明の他の好ましい実施形態および/または態様のいずれかと組み合わせることができる本発明の別の態様は、上記で定義されるナノ構造体をコードする配列、骨格鎖および/またはステープル鎖の配列を含み、かつ/またはナノ構造体の配列を含むベクター、特に発現ベクターに関する。
【0108】
本発明の組成物、好ましくは医薬組成物は、その意図された投与経路と適合するように製剤化されなければならない。特に好ましい実施形態では、本発明の医薬および/または化合物の投与経路の例としては、静脈内、経口、鼻腔内、髄腔内、動脈内、皮内、皮下、経皮(局所)、脳室内、実質内、腫瘍内、経粘膜、直腸、膣、気管支、非経口投与、ならびに医薬および/または化合物を投与するための任意の他の臨床的/医学的に許容される方法が挙げられる。
【0109】
本発明の他の態様または特定の実施形態のいずれかと組み合わせることができる本発明のさらに別の態様は、疾患、好ましくは例えばがんなどの増殖性疾患、免疫障害、例えば自己免疫疾患、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症などのウイルス性疾患、代謝障害、感染性障害および/または糖尿病など疾患を予防および/または処置する方法であって、治療有効量の本発明によるナノ構造体および/または組成物を対象に投与するステップを含む方法に関する。
【0110】
本明細書で使用される「がん」という用語は、調節不全の細胞増殖および/または成長を特徴とする疾患を指す。この用語は、腫瘍などの良性および悪性のがん性疾患を含み、浸潤性または非浸潤性のがんを指し得る。この用語は、癌、肉腫、リンパ腫、生殖細胞腫瘍および芽細胞腫を含むすべての種類のがんを含む。本明細書で使用される「がん細胞」という用語は、異常な増殖を示し、絶え間なく分裂し、それによって固形腫瘍または非固形腫瘍を形成する細胞を指す。
【0111】
自己免疫疾患の例としては、セリアック病、感染後IBS、1型糖尿病、ヘノッホ・シェーライン(Henloch Scholein)紫斑病(HSP)、サルコイドーシス、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、橋本甲状腺炎、グレーブス病、特発性血小板減少性紫斑病、アジソン病、関節リウマチ(RA)、強直性脊椎炎、多発性筋炎(PM)、皮膚筋炎(DM)および多発性硬化症(MS)が挙げられる。
【0112】
一実施形態では、本発明のナノ構造体が自己免疫疾患の予防または処置に使用するためのものである場合、前記第1の標的細胞は、好ましくは免疫細胞、例えばマクロファージおよび/または好中球である。一実施形態では、ナノ構造体は、疾患を予防または処置する方法に使用するためのものであり、好ましくは、第1の標的細胞、例えば免疫細胞を第2の標的細胞、例えば疾患細胞に特異的に結合させる方法に使用するためのものである。一実施形態では、本発明のナノ構造体は、少なくとも2つの細胞型を互いに特異的かつ選択的に結合することを可能にする。一実施形態では、疾患を予防または処置する方法は、第1の標的細胞と第2の標的細胞との間にシナプスを形成する方法を含む。一実施形態では、疾患を予防または処置する方法は、例えば免疫シナプスなどのシナプスを形成するために、第1の標的細胞と第2の標的細胞とを接触させることを含む。一実施形態では、疾患を予防または処置する方法は、第1の標的と第2の標的との間に特定の距離を提供することを含む。一実施形態では、ナノ構造体は、第1の標的と第2の標的との間、例えば第1の標的細胞と第2の細胞との間、またはセンサと標的細胞との間に特定の距離を提供するのに使用するためのものである。一実施形態では、ナノ構造体は、インビボまたはインビトロでシナプスの形成を誘導すること、促進すること、安定化することおよび/または阻害すること、好ましくは誘導することおよび/または促進することにおいて使用するためのものである。
【0113】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、治療効果および/または第1の標的と第2の標的との結合および/またはシナプスの形成などの所望の効果を惹起するのに十分な量に関する。治療有効量などの「有効量」であるために必要な量を計算するために、当業者および/または医師は、細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータを使用して、ヒトで使用するための投与量の範囲を策定することができる。そのようなナノ構造体および/または組成物の投与量は、好ましくは、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、使用される剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。使用される任意の化合物について、治療有効用量は、細胞培養アッセイから最初に推定することができる。用量は、細胞培養で決定されるIC50(すなわち、症状の最大半量の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために動物モデルで策定され得る。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。医薬組成物は、投与のための指示と共に、容器、パック、またはディスペンサーに含めることができる。
【0114】
本明細書で使用される「薬物」という用語は、化学療法剤、免疫抑制剤、および/またはチェックポイント阻害剤などの任意の医薬品に関する。一実施形態では、化学療法剤は、がんの化学療法において典型的に使用される細胞傷害性剤、またはがん免疫療法において典型的に使用されるチェックポイント阻害剤である。
【0115】
一実施形態では、本発明の方法の文脈において、「核酸ナノ構造体を提供する」という用語は、組織化した核酸ナノ構造体を提供すること、および/または骨格鎖および1またはそれを超えるステープル鎖などの核酸ナノ構造体の構築材料を提供することを含む。一実施形態では、本発明のナノ構造体を調製する方法は、ナノ構造体の自己組織化を可能にするステップ、および前記自己組織化したナノ構造体を精製するステップを含み、例えば前記方法のステップi)、すなわち核酸ナノ構造体を提供するステップは、自己組織化およびその後の精製を可能にするステップを含む。一実施形態では、自己組織化を可能にすることは、少なくとも1つの骨格鎖および1またはそれを超えるステープル鎖を混合することを含み、必要に応じて、例えばMgCl2を20mMになるまで添加することによってイオン強度を調整することをさらに含み、かつ/または一連の温度を実行する温度プロトコルを使用することをさらに含む。一実施形態では、前記精製は、例えばPEG沈殿などの沈殿、濾過、および/または液体クロマトグラフィーによって、残りの過剰のステープル鎖を除去することを含む。一実施形態では、自己組織化および/または自己組織化を可能にするステップは、変性ステップおよび冷却ステップを含む。一実施形態では、変性のステップは、50℃~80℃、好ましくは60℃~70℃、例えば約65℃の温度で、1分~45分間、好ましくは10~20分間、例えば約15分間の期間行われる。一実施形態では、冷却のステップは、0℃~70℃、好ましくは20℃~60℃、例えば約50℃~58℃の温度で行われる。好ましい実施形態では、冷却のステップは、好ましくは約58℃~約50℃の温度で、1時間当たり1℃低下させて、徐冷として実施される。当業者は、自己組織化のためのプロトコルがナノ構造体の設計および/または核酸配列に依存し、ナノ構造体を調製するための公知のプロトコルに従ってプロトコルを調整することができることを理解する。一実施形態では、ナノ構造体は、二次構造体を形成する配列を含まない骨格配列を有するように構成される。一実施形態では、標的化剤にコンジュゲートされた核酸配列、好ましくはナノ構造体の配列に相補的な標的化剤にコンジュゲートされた核酸配列は、二次構造を形成しない配列からなるように構成される。一実施形態では、ナノ構造体の核酸配列、例えば骨格鎖およびステープル鎖の核酸配列、核酸ハンドル、例えばDNAハンドルの核酸配列、および/または標的化剤にコンジュゲートされた核酸は、二次構造を形成しないように構成される。一実施形態では、自己組織化したナノ構造体は、1またはそれを超える空孔、すなわち、標的化剤にコンジュゲートされた相補的核酸配列によって結合することができる一本鎖核酸配列を有する。
【0116】
一実施形態では、ナノ構造体を調製する方法は、標的化剤、好ましくは第1の標的化剤、第2の標的化剤、および/または第3の標的化剤をナノ構造体にカップリングするステップを含む。一実施形態では、「カップリングする」、「に結合する」、「に付着する」、および「コンジュゲートする」という用語は互換的に使用される。一実施形態では、「カップリングされた」、「結合された」、「付着された」、および「コンジュゲートされた」という用語は互換的に使用される。一実施形態では、標的化剤をナノ構造体にカップリングするステップは、第1の標的化剤、第2の標的化剤、および第3の標的化剤を提供することを含み、各標的化剤は、ナノ構造体の核酸鎖、例えばナノ構造体の骨格鎖またはナノ構造体に付着したDNAハンドル鎖に相補的である、標的化剤に結合した固有の核酸配列を有する。一実施形態では、標的化剤に付着した核酸配列とナノ構造体の核酸配列との相補性のために、そのような標的化剤は、相補的核酸鎖を介してナノ構造体に結合し、好ましくは相補的核酸鎖を介してナノ構造体に自動的に結合する。一実施形態では、「固有の」核酸配列に言及する場合、そのような用語は、第1の標的化剤、第2の標的化剤、および第3の標的化剤が、標的化剤に付着した異なる核酸配列を有することを意味する。そのような「固有の」核酸配列は、特定の配列に相補的であるように、および/またはナノ構造体の特定の位置に結合するように構成される。一実施形態では、第1の標的化剤にコンジュゲートされた核酸配列は、第3の標的化剤にコンジュゲートされた核酸配列とは異なる第2の標的化剤にコンジュゲートされた核酸配列とは異なる。一実施形態では、「標的化剤」に言及する場合、第1の標的化剤、第2の標的化剤、および/または第3の標的化剤を意味する。
【0117】
一実施形態では、ナノ構造体を調製する方法は、核酸ナノ構造体を第1の標的化剤、第2の標的化剤、および/または第3の標的化剤、好ましくは第1の標的化剤、第2の標的化剤、および第3の標的化剤と、例えば等モル比で、または標的化剤が過剰で混合するステップを含み、必要に応じて、前記混合した核酸ナノ構造体および標的化剤をインキュベートするステップをさらに含む。一実施形態では、本発明の方法は、核酸ナノ構造体を標的化剤と混合するステップの後に、例えばPEG沈殿などの沈殿、濾過および/または液体クロマトグラフィーによって、過剰の標的化剤および/または未結合の標的化剤を除去するステップを含む。一実施形態では、ナノ構造体および標的化剤をインキュベートするステップは、20℃~50℃、好ましくは30℃~40℃、例えば約37℃の温度で、1分~3時間、好ましくは30分~1.5時間、例えば約1時間の期間実施される。
【0118】
一実施形態では、本発明の方法は、前記第1の標的化剤、前記第2の標的化剤、および前記第3の標的化剤を含む核酸ナノ構造体を得るステップを含み、前記得るステップは、
a)ナノ構造体のための1またはそれを超える構築材料を混合し、組織化したナノ構造体を得て、続いて、前記組織化したナノ構造体を1またはそれを超える標的化剤と接触させ、それにより、標的化剤を含むナノ構造体を得るステップ、および/または
b)ナノ構造体のための1またはそれを超える構築材料を1またはそれを超える標的化剤と混合し、標的化剤を含むナノ構造体を得るステップ、および/または
c)組織化したナノ構造体を1またはそれを超える標的化剤と混合し、それにより、標的化剤を含むナノ構造体を得るステップを含む。
【0119】
一実施形態では、ナノ構造体を調製する方法は、
iv)好ましくは、ナノ構造体の自己組織化を可能にすることによって、例えば、少なくとも1つの骨格鎖および1またはそれを超えるステープル鎖を混合し、前記自己組織化したナノ構造体を精製することによって、
核酸ナノ構造体、好ましくは剛性核酸ナノ構造体を提供するステップであって、
必要に応じて、前記自己組織化は、変性のステップと、冷却、好ましくは徐冷のステップとを含む、ステップと、
v)第1の標的化剤、第2の標的化剤、および第3の標的化剤を提供するステップであって、前記標的化剤の各々が、前記ナノ構造体の核酸鎖、例えば骨格鎖またはDNAハンドル鎖に相補的な核酸鎖にコンジュゲートされるステップと、
vi)好ましくは、核酸ナノ構造体を第1の標的化剤、第2の標的化剤、および/または第3の標的化剤と混合し、必要に応じてインキュベーションするステップと、
vii)必要に応じて、未結合の第1の標的化剤、第2の標的化剤、および/または第3の標的化剤を除去するステップと、
viii)前記第1の標的化剤、前記第2の標的化剤、および前記第3の標的化剤を含む核酸ナノ構造体を得るステップとを含む。
【0120】
一実施形態では、標的化剤を含むナノ構造体を調製する方法は、標的化剤-核酸コンジュゲートをナノ構造体に付着させるステップを含み、前記方法は、
1.ナノ構造体を自己組織化させ、好ましくは1またはそれを超える骨格鎖、好ましくは1つの骨格鎖を1またはそれを超えるステープル鎖と混合することによって、前記組織化したナノ構造体、例えばDNAオリガミ物体の精製を可能にするステップと、
必要に応じて、イオン強度を(例えば、MgCl2を20mMになるまで添加することによって)調整し、混合物を一連の特定の温度に供するステップと、
必要に応じて、過剰な未結合ステープル鎖を(例えば、PEG沈殿、濾過、液体クロマトグラフィーを用いて)除去するステップと、
2.核酸鎖を標的化剤にカップリングさせるステップであって、第1の標的化剤、第2の標的化剤、および第3の標的化剤の各々が、異なる核酸配列にカップリングされ、前記核酸配列が、好ましくは、ナノ構造体、例えばDNAオリガミ物体、例えば核酸ハンドルから突出するDNA配列、または骨格DNA鎖の配列に相補的である、ステップと、
3.好ましくは、等モル比で、または標的化剤-核酸コンジュゲート、例えばDNA-抗体-コンジュゲートが過剰で、
ナノ構造体、例えばDNAオリガミ物体と標的化剤-核酸コンジュゲート、例えばDNA-抗体コンジュゲートとを混合するステップと、
好ましくは、ナノ構造体および標的化剤を約37℃で約1時間インキュベートするステップと、
4.例えばPEG沈殿、濾過、液体クロマトグラフィーを使用して、過剰な標的化剤-核酸コンジュゲート、例えばDNA-抗体-コンジュゲートを除去するステップと、を含む。
【0121】
一実施形態では、ナノ構造体は、ヌクレアーゼ分解に対して、低イオン強度環境による分解に対して、および/または[「Oligolysine-based coating protects DNA nanostructures from low-salt denaturation and nuclease degradation」、Ponnuswamyら、Nat Commun 2017;国際公開第2015070080号]に記載のコーティングを使用するインビボ条件および/または[「Sequence-programmable covalent bonding of designed DNA assemblies」、T.Gerlin、Science Advances、2018;国際公開第2019234122号]に記載の安定化方法に対して安定化され得る。
【0122】
一実施形態では、本発明のナノ構造体、例えば1つの構成を有する剛性単一ドメインナノ構造体は、その条件付き細胞動員機能を損なうことなく、前記安定化方法を使用して安定化することができるので非常に有利である。
【0123】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、「含有する(including)」および「からなる(consisting of)」の両方を包含すると解釈されるべきであり、両方の意味は具体的に意図されており、したがって本発明による個々に開示された実施形態である。本明細書で使用される場合、「および/または」は、他のものの有無にかかわらず、2つの指定された特徴または構成要素のそれぞれの具体的な開示として解釈されるべきである。例えば、「Aおよび/またはB」は、(i)A、(ii)Bならびに(iii)AおよびBの各々の具体的な開示として、あたかも各々が本明細書に個別に記載されているかのように解釈されるべきである。本発明の文脈において、「約(about)」および「およそ(approximately)」という用語は、問題の特徴の技術的効果を依然として保証するために当業者が理解する精度の区間を示す。この用語は、典型的には、示された数値から±20%、±15%、±10%、および例えば±5%の偏りを示す。当業者には理解されるように、所与の技術的効果の数値に対するそのような具体的な偏りは、技術的効果の性質に依存する。例えば、天然または生物学的な技術的効果は、一般に、人工または工学的な技術的効果よりも大きなそのような偏りを有し得る。本文書内の単数形の冠詞「1つの(a)」または「その(the)」の使用は、具体的に述べられている場合を除いて、本発明の範囲を限定することを意味しないことが理解されよう。すなわち、一般に、「1つの(a)」は2つ以上を指す場合もある。換言すれば、「1つの(a)」は一般に「少なくとも1つの」と読むことができる。例えば、「1つの標的化剤」には、複数の標的化剤も含まれる。一実施形態では、「上記で定義される」という用語は、「上記の実施形態のいずれかで定義される」に関する。
【0124】
本明細書で使用される「[本]発明の(of the [present] invention)」、「本発明によれば(in accordance with the invention)」、「本発明によれば(according to the invention)」などの用語は、本明細書に記載および/または特許請求される本発明のすべての態様および実施形態を指すことを意図している。
【0125】
方法ステップが本明細書におよび添付の特許請求の範囲に列挙されている場合は常に、本文書でステップが列挙されている順序は付随的であり得ることに留意されたい。すなわち、別段の指定がない限り、または当業者に明らかでない限り、ステップが列挙される順序も異なり得る。例えば、本明細書が、例えば、方法がステップ(A)および(B)を含むと述べている場合、これは、必ずしもステップ(A)がステップ(B)に先行することを意味するわけではなく、ステップ(A)がステップ(B)と(少なくとも部分的に)同時に行われること、またはステップ(B)がステップ(A)に先行することも可能である。さらに、ステップ(X)が別のステップ(Z)に先行すると言われる場合、これは、ステップ(X)と(Z)との間にステップが存在しないことを意味しない。すなわち、ステップ(Z)に先行するステップ(X)は、ステップ(X)がステップ(Z)の直前に実施される状況だけでなく、ステップ(X)が1またはそれを超えるステップ、例えば、(Y1)、(Y2)、(Y3)の前に実施され、続いてステップ(Z)が実施される状況も包含することができる。「後」または「前」などの用語が使用される場合、対応する考慮事項が適用される。
図面の簡単な説明
【0126】
以下の図を参照して、本発明をここでさらに説明する。
【0127】
以下の図面の説明で言及されるすべての方法は、実施例に詳細に記載されるように実施された。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【
図1】
図1は、DNAオリガミ抗体プラットフォームによる標的細胞の条件付きT細胞媒介性殺傷の機序の例示的スキームを示す。
【0129】
本発明の例示的なナノ構造体、特に、標的細胞に対する2つの標的化剤A1(例示的な第2の標的化剤)およびA2(例示的な第3の標的化剤)(例えば、標的細胞抗原に対する抗体)ならびに免疫細胞に対する1つの標的化剤B1(例示的な第1の標的化剤)(例えば、免疫細胞抗原に対する抗体)を有する例示的なDNAオリガミ担体プラットフォームが示されている。縦軸は文字lで示され、横軸は文字tで示される。A.抗体プラットフォームは、両方の抗原RA1およびRA2(例示的な第2の標的分子および第3の標的分子)を有する細胞に対して、両方の標的細胞抗体で結合することができる。両方の抗体A1およびA2をそれらのそれぞれの標的RA1およびRA2に結合させるために、プラットフォームは、縦軸が標的細胞の細胞表面に平行である配向をとる必要がある。これにより、免疫細胞の抗原(例えば、細胞傷害性T細胞上のCD3)などの第1の標的分子に結合することができる免疫細胞抗体B1が提示される。プラットフォームの寸法、標的化剤、例えば抗体、および抗体付着は、細胞表面間の距離dが免疫シナプス形成に必要な最小距離dmin(例えば10nm)よりも小さくなるように選択される。B.細胞が抗原RA1のみを担持する場合、抗体プラットフォームは抗体A1で結合し得るが、細胞表面に対して安定な平行な配向をとらない場合がある。プラットフォームは揺らぎ、抗体B1は免疫細胞に接近できなくなる。さらに、抗体プラットフォームは解離し得る。迅速な解離を促進するために、低親和性抗体をA1位に使用することができる。C.細胞が抗原RA2のみを担持する場合、抗体プラットフォームは抗体A2で結合し得るが、細胞表面に対して安定な平行な配向をとらない場合がある。抗体B2は、免疫細胞を動員するために接近可能である。しかしながら、細胞表面間の距離dは、免疫シナプス形成に許容される距離dminよりも大きい。したがって、RA2のみを担持する細胞は、動員された免疫細胞によって殺傷されない。
【0130】
【
図2-1】
図2は、本発明の例示的なナノ構造体のスキームを示す。 A.標的細胞(A1、A2)および免疫細胞(B1)に対する、標的化剤が付着した棒状DNAオリガミ担体プラットフォーム(上部の2Dスキーム、中央にも3Dスキーム)のスキーム。lは縦軸の方向を示し、t1およびt2は横軸の方向を示す。B.Aと同様であるが、円柱は、二本鎖相互接続されたDNAらせんおよび標的化剤としてFabフラグメントを表す。C.棒状抗体-DNAオリガミ担体プラットフォームのcaDNAno設計図。例示的な標的化剤の付着位置は黒丸で示されている。
【0131】
【0132】
【
図3】
図3は、凹部を有する本発明の例示的なナノ構造体のスキームを示す。
【0133】
A.B.C.標的細胞(A1、A2)および免疫細胞(B1)に対する、凹部を有し標的化剤が付着した棒状抗体-DNAオリガミプラットフォームのスキーム。lは縦軸の方向を示し、t1およびt2は横軸の方向を示す。A.2D概略図。B.C.円柱は、二本鎖DNAらせんおよび標的化剤としてFabフラグメントを表す。D.陥凹した標的化剤B1は、ただ1つの抗原RA1またはRA2が存在する両方の場合において、抗体B1の接近可能性を低下させるであろう。
【0134】
【
図4】
図4は、標的化剤としてFabフラグメント(シアン、青、紫、オレンジ)が付着した例示的なDNAオリガミ抗体プラットフォーム(灰色の円柱はDNA二重らせんを表す)の概略図を示す。条件付きシナプス形成のための棒状(A、B、C、D)、プレート状(E)、およびL字形状(F)プラットフォーム。DNAオリガミプラットフォームは、第1の細胞(例えば免疫細胞)に対して異なる数および価数の第1の標的化剤(B1およびB2)を担持し得る。DNAオリガミプラットフォームは、異なる位置で第2の細胞(例えばがん細胞)に対して異なる数および価数の第2の標的化剤(A1、A2、およびA3)を担持し得る。lは縦軸の方向を示し、t1およびt2は横軸の方向を示す。第2の標的化剤(A1、A2、およびA3)は、すべての第2の標的化剤がそれらの標的分子に結合している場合、第2の細胞の細胞表面に対する縦軸の平行な配向を促進するためにDNAオリガミプラットフォーム上に配置される。
【0135】
【
図5】
図5は、例示的なナノ構造体、例えばDNA-抗体コンジュゲートの例示的な付着戦略を示す。A.突出した一本鎖DNA付着ハンドルを有するDNAオリガミ物体のcaDNAno図の一部(左)。DNA-抗体コンジュゲートのDNA配列(xは抗体の位置である)は、付着ハンドルの配列に相補的である。DNAオリガミ物体をDNA-抗体コンジュゲートと混合することにより(等モル比、37℃で1時間のインキュベーション)、抗体上のDNAハンドルは、DNAオリガミの付着ハンドルにハイブリダイズする(右)。配列は、抗体の空間角度の範囲を改善または制限するために、0~5個の塩基(例えばチミン)が対になっていないままであるように選択され得る(caDNAno図の点線)。B.一本鎖DNAオリゴヌクレオチドに対する結合部位(すなわち空孔)を有するDNAオリガミ物体のcaDNAno図の一部(左)。DNA-抗体コンジュゲートのDNA配列(xは抗体の位置である)は、結合部位における骨格の配列に相補的である。DNAオリガミ物体をDNA-抗体コンジュゲートと混合することにより(等モル比、37℃で1時間のインキュベーション)、抗体上のDNAハンドルは、DNAオリガミの空孔にハイブリダイズする(右)。配列は、抗体の空間角度の範囲を改善または制限するために、0~5個の塩基(例えばチミン)が対になっていないままであるように選択され得る(caDNAno図の点線)。
【0136】
【
図6】
図6は、標的化剤(TA1、TA2、およびTA3)の2つの例示的な付着位置を示す。A.第1の標的化剤(TA1)は、ナノ構造体、例えばDNAオリガミプラットフォームの第1の表面に直接付着され、第2および第3の標的化剤(TA2およびTA3)は、第2の表面に直接付着される。lは縦軸の方向を示し、tは横軸の方向を示す。B.第1の標的化剤(TA1)は、第1の表面の隣接する表面、例えば、第3の表面または第4の表面において、DNAオリガミプラットフォームに付着される。例えば、付着位置は、第1の表面およびその隣接する表面、例えば第3の表面または第4の表面が接する縁部に近くてもよい。この付着戦略は、第1の標的化剤が、第1の標的、例えば免疫細胞に結合することを可能にし、その表面、例えば細胞表面は、より小さい標的-標的距離、例えばより小さい細胞-細胞距離を提供しながら、第1の表面に平行である。第2および第3の標的化剤(TA2およびTA3)は、第2の表面に隣接する表面、例えば第3または第4の表面で、縁部に近い位置に付着される。Bに示される付着位置は、標的化剤の結合部位間の距離を小さくし、細胞表面へのDNAオリガミの密接な付着を提供し得る。したがって、標的化剤を第1または第2の表面の平面内にそれぞれ維持しながら、第1の標的と第2の標的、例えば第1および第2の細胞との間に小さな距離を提供する。lは縦軸の方向を示し、tは横軸の方向を示す。
【0137】
【
図7】
図7は、本発明の例示的なナノ構造体、例えば、第1の標的、例えば第1の標的細胞(頂部、免疫細胞)および第2の標的、例えば第2の標的細胞(底部、標的細胞)の標的分子のエピトープに結合した標的化剤(TA1、TA2、TA3)が付着したDNAオリガミプラットフォームを示す。標的化剤は、DNAオリガミプラットフォームの第1および第2の表面に平行で近接する平面内に付着されるが、外面には直接付着されない。この付着戦略は、標的化剤が標的分子のエピトープに結合している場合、標的化剤の配向の改善を可能にする。したがって、この付着戦略は、小さな標的間距離、例えば小さな細胞間距離を可能にし、距離はDNAオリガミプラットフォームの最大横方向延伸によってのみ制限される。lは縦軸の方向を示し、tは横軸の方向を示す。
【0138】
【
図8-1】
図8は、3つのDNAオリガミ細胞コネクタのスキームおよびそれらの実験的検証を示す。A.免疫細胞(TA1)に対するおよび標的細胞(TA2およびTA3)に対する標的化剤(Fabフラグメント)が付着した3つの棒状DNAオリガミ細胞コネクタバリアントモデル(DNAらせんは白色、oxDNAを使用した平均予測構造[13])の側面図および上面図。lは縦軸の方向を示し、t1およびt2は横軸の方向を示す。3つの細胞コネクタバリアント(短、中、長)は、縦軸に沿って異なるTA2からTA3までの距離を実現する。免疫細胞結合抗体(TA1)は、縦軸に沿って中央に配置されるように示されている。バーは、縦軸に沿ったFab付着部位間の距離を与える。B.バリアントの側面図の平均ネガティブ染色電子顕微鏡写真(スケールバーは20nmを表す、左:短、中央:中、右:長)。C.異なる標的細胞抗体構成(抗ヒトCD19 Fabフラグメント)を有し、免疫細胞抗体を有さないcy5修飾細胞コネクタバリアント(左:短い、中央:中間、右:長い)を電気泳動した3.5%アガロースゲルの画像。1-1:左側に1個のaCD19 Fabおよび右側に1個のaCD19 Fab;2-0:左側に2個のaCD19 Fab;1-0:左側に1個のaCD19 Fab;0-0:aCD19 Fabなし。D.異なる標的細胞抗体構成を有し、免疫細胞抗体を含むまたは含まない細胞コネクタバリアント(左:短い、中央:中間、右:長い)を電気泳動した3.5%アガロースゲルの画像。+は組織化反応における抗CD3 FabフラグメントDNAコンジュゲートの存在を示し、-は組織化反応における抗CD3 FabフラグメントDNAコンジュゲートの非存在を示す。
【0139】
【
図9-1】
図9は、細胞傷害性T細胞アッセイにおいて、標的細胞結合構成および細胞コネクタの長さが標的細胞の結合親和性および溶解効率にどのように影響するかを示す。A.細胞結合アッセイの概略図(左が細胞コネクタバリアント、および右がNALM6標的細胞)。細胞コネクタは、中央に付着した1つの蛍光Cy5色素(黒星印)および様々な構成の抗ヒトCD19 Fabフラグメントを担持していた。上(円):左側に1個のaCD19 Fabおよび右側に1個のaCD19 Fab(バリアント1-1);中央(三角形):左側に2個のaCD19 Fab(変異体2-0);下(灰色の四角):左側に1個のaCD19 Fab(バリアント1-0)。B.異なる濃度の完全細胞培養培地中、Cy5修飾細胞コネクタバリアント(短い-26nm、中間-55nm、長い-69nm、aCD19 Fabフラグメントを有しない対照)と共に37℃で1時間インキュベートしたNALM6細胞の正規化Cy5蛍光の中央値。黒丸は細胞コネクタバリアント1-1を示し、灰色の三角は細胞コネクタバリアント2-0を示し、薄灰色の四角は細胞コネクタバリアント1-0を示す。エラーバーは、3回の生物学的反復実験からの標準偏差を表す。C.2500pMの細胞コネクタを用いたインキュベーションのフローサイトメータ実験から得られた蛍光シグナルの正規化中央値を、細胞コネクタの長さに対してプロットした。D.Aの場合とは異なるaCD19抗体構成を有するが、抗ヒトCD3 Fabが中央に付着している細胞コネクタバリアント(左)。細胞傷害性T細胞(末梢血単核細胞、PBMC)およびCD19+標的NALM6細胞を用いた細胞傷害性T細胞アッセイ(右)の概略図。E.異なる濃度の細胞コネクタバリアントを含む細胞傷害性T細胞アッセイからの死滅NALM6標的細胞の割合。NALM6標的細胞(1×10
5細胞/ml)をPBMC(5×10
5細胞/ml)と共に完全細胞培養培地中で、異なる細胞コネクタ濃度およびバリアントを用いて37℃で24時間インキュベートした。細胞コネクタは、抗ヒトCD19 Fabフラグメント(複数可)および1つの抗ヒトCD3 Fabフラグメントを担持していた。マーカーはDと同様、細胞コネクタバリアントを示す。灰色の線は、細胞コネクタを有しないNALM6およびPBMCの対照を表す。実線は、データに対するヒル方程式モデルの当てはめである。対照(右)は、2つのaCD19 Fabフラグメントを有する細胞コネクタバリアント(黒色の菱形)、または1つのaCD3 Fabフラグメントを有する細胞コネクタバリアント(灰色の下向き三角形)、または抗体を有しない細胞コネクタバリアント(薄灰色の星形)である。F.2500pMの細胞コネクタを用いたインキュベーションからの死滅NALM6標的細胞の割合を、細胞コネクタの長さに対してプロットした。G.H.I.はD、E、Fと同様であるが、抗ヒトEpCAM Fabフラグメントを用いかつEpCAM+MCF7標的細胞を用いた。生存しているMCF7標的細胞の割合を、Bio-Glo Cell Titer System(Promega)により、48時間後のATPの量を定量することによって決定した。MCF7標的細胞を培養してコンフルエントな単層を形成した。次いで、MCF7標的細胞を、完全細胞培養培地中、5:1のエフェクター対標的比で、抗EpCAM Fabフラグメント(複数可)および1つの抗ヒトCD3 Fabフラグメントを担持する異なる量の細胞コネクタと共に、37℃で48時間、非刺激PBMCと共培養した。灰色の線は、細胞コネクタなしのMCF7およびPBMCの対照を表す。示されるように、本発明の核酸ナノ構造体は、標的細胞の効率的な溶解を促進する。
【0140】
【
図10-1】
図10は、三重特異的DNAオリガミ細胞コネクタと三重特異的抗体対照構築物との間の標的細胞およびバイスタンダー細胞溶解の比較を示す。A.三重特異的抗体(中央)および三重特異的細胞コネクタ(右)による二重陽性標的細胞(RA2-第1の標的抗原、RA3-第2の標的抗原)のT細胞媒介性溶解の概略図。B.三重特異的抗体(中央)および三重特異的細胞コネクタ(右)による単一陽性バイスタンダー細胞のT細胞媒介性溶解の概略図。細胞コネクタは垂直な配向をとるため、バイスタンダー溶解を阻害する(×印の矢印で示す)。C.Fabフラグメントを有するoxDNAを使用した、低分子三重特異的対照抗体および平均予測構造の概略図。
図12に従って、PBS中で等モル比の2つのssDNA鎖および3つのFabフラグメントコンジュゲート(抗EpCAM、抗PSMA、抗CD3)から対照抗体構築物を組織化した。D.Fabフラグメントを有するoxDNAを使用した三重特異的細胞コネクタおよび平均予測構造の概略図。aCD3 Fabフラグメントは左側に位置していた。三重特異的細胞コネクタは、中間の長さ(55nmのバリアント)を有し、左側に抗PSMA Fabフラグメントおよび抗CD3 Fabフラグメントを担持し、右側に抗EpCAM Fabフラグメントを担持していた。標的細胞抗体TA2およびTA3を第1-1構成で付着させた。E.三重特異的対照抗体(灰色の三角および線)または三重特異的細胞コネクタ(黒丸および線)または二重特異性aCD3-aEpCAM細胞コネクタ(明るい灰色の菱形および破線)または単一特異的aCD3細胞コネクタ(明るい灰色の四角および点線)または抗体を含まない細胞コネクタ(明るい灰色の星および点線)を用いた細胞傷害性T細胞アッセイからの死んだ標的(左)またはバイスタンダー(中央および右)細胞の割合。挿入図は、標的細胞モデルおよびバイスタンダー細胞モデルを示す。標的細胞:LNCaP(EpCAM+、PSMA+);バイスタンダー細胞1:MCF7(EpCAM+、PSMA-);バイスタンダー細胞2:BT549(EpCAM+、PSMA-);水平の破線:PBMCのみを有する標的細胞またはバイスタンダー細胞。F.Eに示すデータ(実線)に対するヒル方程式モデルの当てはめから得られたEC50フィットパラメータ。実証されるように、本発明の核酸ナノ構造体は、対照と比較してオフターゲット効果が低下している。特に、核酸ナノ構造体は、標的細胞の効率的な溶解を促進し、標的細胞が第2および第3の標的分子の両方を提示する場合にのみ免疫シナプスの形成を促進することによって非標的細胞に対するオフターゲット効果を回避する。
【0141】
【
図11-1】
図11は、3つの細胞コネクタバリアント(A、短いバリアント;B、中間のバリアント;C、長いバリアント)および三重特異的抗体対照構築物(D)の設計図および抗体付着部位を示す。設計図および断面は、cadnanoからエクスポートされる。抗体付着部位を、実線の円(TA2)、点線の円(TA1)および実線の四角(TA3)で示す。細胞コネクタバリアントは、1033塩基長の骨格で組み立てられる。対照抗体は、86塩基長の骨格鎖、3つの抗体-DNAコンジュゲートおよび1つの26塩基長のssDNA鎖から組み立てられる。対照抗体の3Dモデルは、oxDNAからの平均予測構造である。本発明のナノ構造体を提供するために使用される例示的な配列は、配列番号1~5に定義されている。
【0142】
以下では、本発明を限定するためではなく、例示するために与えられる実施例を参照する。
【実施例】
【0143】
実施例
実施例1:多価および多重特異的DNAオリガミ抗体物体の設計および構築。
DNA物体は、DNAオリガミ法[5-7]に従って設計および組み立てた。抗体にDNA鎖(例えば25塩基)をコンジュゲートすることによって、抗体をDNA物体に付着させた。イオン交換クロマトグラフィー精製抗体-DNAコンジュゲートを、等モル比で、または抗体-DNA-コンジュゲート過剰で、PEG精製[8]DNAオリガミ物体と混合した。一本鎖DNAハンドルを、DNAオリガミ物体の表面の異なる位置に配置した。これらの突出したDNAハンドルは、抗体付着部位として機能し、設計者が折り畳み反応に含めることができる。あるいは、骨格に相補的であり、したがってDNAオリガミ物体に直接結合する配列で抗体を修飾した。最後に、DNAオリガミ抗体構築物は、相補的抗体コンジュゲート鎖との突出した鎖または骨格鎖のDNA-DNAハイブリダイゼーションに依拠することによって自己組織化する。DNAオリガミ抗体物体は、確立された方法[9、10]に従って、ヌクレアーゼおよび低イオン強度条件に対してさらに精製または安定化され得る。
【0144】
実施例2:抗体-DNAコンジュゲートのDNAオリガミ物体への付着のためのプロトコル
1.DNAオリガミ物体の自己組織化および精製:骨格とステープル鎖(骨格鎖ごとに少なくとも1つのステープル鎖)を混合し、イオン強度(例えば、MgCl2を20mMになるまで添加することによって)を調整し、混合物を一連の特定の温度にさらす。最後に、(例えば、PEG沈殿、濾過、液体クロマトグラフィーを用いて)残りの余分なステープル鎖を除去する。
2.標的化剤、例えば抗体へDNA鎖をカップリングする。各標的化剤、例えば抗体タイプは、固有の配列を有するDNA鎖を担持する。DNA配列は、DNAオリガミ物体から突出するDNA配列または骨格DNA鎖の配列に相補的である。
3.DNAオリガミ物体をDNA-抗体コンジュゲート(等モル比またはDNA-抗体-コンジュゲート過剰)と混合し、37℃で1時間インキュベートする。
4.例えばPEG沈殿、濾過、液体クロマトグラフィーを用いて過剰なDNA-抗体-コンジュゲートを除去する。
【0145】
実施例3:細胞コネクタの長さおよび腫瘍特異的抗体の構成が溶解効率を決定する
上記のように(例えば
図1を参照)、DNAオリガミ細胞コネクタは、両方の標的細胞結合抗体が標的細胞上の対応する抗原に結合している場合、標的細胞の表面に対して平行な配向をとる。この平行な配向は、免疫細胞誘導パラトープ(immune-cell engaging paratope)(例えば抗CD3パラトープ)と標的細胞の表面との間の距離を短くし、その結果、免疫細胞と標的細胞との間に機能的細胞溶解性シナプスが形成され得る。逆に、標的細胞結合抗体のうちの1つだけがそれらの対応する抗原に結合している場合、DNAオリガミ細胞コネクタは、標的細胞の表面に対して垂直な配向をとる。免疫細胞結合抗体の接近可能性は、平行な配向と比較して垂直な配向で減少する。さらに、免疫細胞の表面と標的細胞の表面との間の距離は、平行な配向よりも垂直な配向の方が長い。これらの2つの理由により、別々にまたは組み合わせて、垂直な配向は、免疫細胞と標的細胞との間の機能的細胞溶解性シナプスの開始および/または形成を妨げる。
【0146】
いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、この文脈において、アスペクト比、すなわち縦軸および横軸に沿ったDNAオリガミ細胞コネクタの延伸の長さ比が、その平行な配向または垂直な配向における溶解効率を決定すると考えている。例えば、低アスペクト比の細胞コネクタバリアント、すなわち短いバリアントは、平行な配向または垂直な配向で同様の溶解効率を有する。対照的に、高アスペクト比を有する細胞コネクタバリアント、すなわち長いバリアントは、平行な配向と垂直な配向との間に高い溶解効率差を有する。
【0147】
この関係を研究するために、本発明者らは、標的細胞結合抗体間に短い距離、中間の距離および長い距離を有する3つの細胞コネクタバリアントを作製した。すべてのバリアントは、類似の質量を有するが、異なるアスペクト比を有する(
図8A)。短いバリアントは、26nmの長さ(Fab付着部位間の距離)を有するコンパクトな18ヘリックスバンドルである。中間のバリアントは、55nmの長さを有する8ヘリックスバンドルである。長いバリアントは、69nmの長さを有する6ヘリックスバンドルである。本発明者らは、ネガティブ染色電子顕微鏡法を使用して、これらのバリアントを設計し、組み立て、および画像化した(
図8B)。バリアントは、設計された形状、サイズ、およびアスペクト比を有する。各細胞コネクタバリアントの左側には、標的細胞結合抗体が全く付着していなくてもよく、1つまたは2つの標的細胞結合抗体が付着し得る。右側には、標的細胞結合抗体が全く付着していなくてもよく、または1つ付着し得る。最後に、免疫細胞動員抗CD3抗体を中央に配置する。
【0148】
細胞コネクタの長さが平行な配向または垂直な配向における溶解効率に影響を及ぼすかどうかを試験するために、本発明者らは、3つの標的細胞-抗体構成を有するバリアントを構築した。これらの3つの標的細胞-抗体構成のすべてにおいて、免疫細胞結合抗体(抗CD3 Fabフラグメント、クローンUCHT1)は、第1の表面に平行であり、第1の表面に近い平面の中央に付着した(
図8A)。第1の標的細胞-抗体構成では、1つの標的細胞結合抗体は、第2の表面に平行であり、第2の表面に近い平面の各側(1つは左側、1つは右側)に付着する。この「1-1」バリアントは、細胞コネクタが二重陽性標的細胞に結合している場合を模倣する。この1-1構成では、両方の抗体がそれぞれの細胞表面抗原に結合する場合、細胞コネクタは平行な配向をとることができる。第2の標的細胞抗体の構成は、第2の表面に平行であり、第2の表面に近い平面において、左側に1つの標的細胞抗体を有し、右側には抗体を有さない。この「1-0」バリアントは、細胞コネクタが単一陽性バイスタンダー細胞(すなわち、標的細胞ではない細胞)に結合している場合を模倣する。この1-0構成では、細胞コネクタは垂直な配向のみをとることができる。第3の標的細胞抗体の構成は、第2の表面に平行であり、第2の表面に近い平面において、左側に2つの標的細胞抗体を有し、右側には抗体を有さない。この「2-0」バリアントは、垂直な配向のみで存在し得るが、1-1バリアントと同様の結合親和性を有する人工的な対照として機能する。2-0および1-1は、同じ数の標的細胞結合抗体を担持するので、同様の標的細胞結合親和性を有する。
【0149】
本発明者らは、これらのバリアント(CD19陽性NALM6細胞およびEpCAM陽性MCF7細胞)を調査するために2つの異なる細胞培養モデルを使用した。最初に、本発明者らは、抗ヒトCD19 Fabフラグメント(クローンHIB19)を各構成に取り付けることによって各バリアントの標的細胞結合親和性を定量し(
図8C)、CD19陽性NALM6細胞を用いて細胞結合アッセイを行った(
図9A~C)。NALM6細胞を、1つの蛍光Cy5色素を担持する異なる細胞コネクタバリアントと共に、異なる細胞コネクタ濃度および10
5個のNALM6細胞/mlで完全細胞培養培地中、37℃で1時間インキュベートした(
図9A)。次いで、NALM6細胞を洗浄し、固定し、フローサイトメトリーを用いてそれらの蛍光を分析した。すべての細胞コネクタバリアントについて、2-0構成が最も強い蛍光シグナルを有し、続いて1-1構成であった(
図9B~C)。したがって、バリアント1-1および2-0の両方が同様の細胞結合親和性を有する。
【0150】
細胞コネクタの長さが各配向における溶解効力にどのように影響するかを調べるために、本研究者らは、抗CD3 Fabフラグメントおよび抗CD19 Fabフラグメントを有する細胞コネクタバリアントを用いてT細胞媒介性細胞傷害性溶解アッセイを行った(
図9D)。簡単に記載すると、NALM6標的細胞を、完全細胞培養培地中、5:1のエフェクター対標的比で、抗CD19 Fabフラグメントおよび1つの抗CD3 Fabフラグメントを担持する異なる量の細胞コネクタと共に、37℃で24時間、非刺激PBMCと共培養した(
図9E)。すべての細胞コネクタ長について、1-1バリアントは2-0または1-0バリアントよりも高い溶解効率を有していた。1-1バリアントは平行な配向を採用し得、2-0バリアントは垂直な配向のみを採用し得るので、本発明者らは、平行な配向が2-0構成と比較して標的細胞溶解の改善をもたらすと推測する。実際、2-0バリアントは1-1バリアントよりも高い細胞結合親和性を有するにもかかわらず、2-0バリアントはより低い細胞溶解効率を有する。さらに、1-1構成と2-0構成との間の標的細胞溶解効率の差は、DNAオリガミ細胞コネクタの長さと共に増加し(
図9F)、したがって、溶解効率が細胞表面上の細胞コネクタの配向に依存するという提案された機構をさらに裏付けた。
【0151】
2-0構成は、1-1バリアントと同様の親和性を有するため、細胞溶解効率に対する配向効果のみを調べる対照として機能した。一方、1-0バリアントは、単一陽性バイスタンダー細胞上のオフターゲット反応をより厳密に模倣する。ここで、溶解効率は、親和性がより小さく、配向が細胞表面に対して垂直であるため、1-1バリアントと比較して大幅に低下する。したがって、単一陽性バイスタンダー細胞は、はるかに低い効率で溶解され、治療域を開く。
【0152】
細胞コネクタの機構をさらに確認するために、本研究者らは、異なる構成の抗ヒトEpCAM Fabフラグメント(クローンVU-1D9)を用いて細胞コネクタバリアントを構築し、EpCAM陽性MCF7細胞を用いて細胞傷害性T細胞アッセイを行った。簡単に記載すると、MCF7標的細胞を培養してコンフルエントな単層を形成した。次いで、MCF7標的細胞を、完全細胞培養培地中、5:1のエフェクター対標的比で、抗EpCAM Fabフラグメントを担持する異なる量の細胞コネクタ(
図9G)と共に、37℃で48時間、非刺激PBMCと共培養した。この場合も、すべての細胞コネクタ長について、1-1バリアントは、2-0または1-0バリアントと同様またはより高い溶解効率を有していた(
図9H)。溶解効率は、垂直な配向のみをとることができる細胞コネクタ2-0および1-0について、長さ依存的に低下した(
図9I)。対照的に、平行な配向をとることができる1-1バリアントの溶解効力は、すべての長さのバリアントで同様であった。これらの結果は、NALM6データと一致しており、溶解効力が細胞表面上の細胞コネクタの配向に依存するという提案された機構をさらに裏付けている。さらに、この効果の強さは、抗原、細胞型、および/または抗体に依存し得る。
【0153】
実証されるように、本発明の核酸ナノ構造体は、標的細胞の効率的な溶解を可能にする。さらに、ナノ構造体の標的化剤構成、すなわち、第1の表面に存在する第1の標的化剤、および第1の表面の反対側に位置するナノ構造体の第2の表面に存在する第2の標的化剤および第3の標的化剤は、標的細胞の特異的かつ選択的な標的化を可能にする。
【0154】
実施例4:三重特異的DNAオリガミ細胞コネクタと三重特異的抗体の比較
実証されているように(
図9)、DNAオリガミ細胞コネクタは、細胞表面に対して平行な配向をとることができる場合にのみ、高効率でT細胞媒介性標的細胞溶解を引き起こす。したがって、少なくとも第1の標的化剤を有する第1の表面と、少なくとも第2の標的化剤および少なくとも第3の標的化剤を有する第2の表面とを含む本発明の核酸ナノ構造体は、標的細胞の非常に効率的な溶解を促進し、オフターゲット溶解を防止するという点で非常に有利である。各側に異なる標的細胞結合抗体を取り付けることにより、両方の抗原が標的細胞上に存在する場合にのみ平行な配向をとるように細胞コネクタをプログラムすることができる(
図10A)。したがって、両方の対応する抗原を発現する細胞、すなわち二重陽性標的細胞のみが高効率で溶解される。抗原の1つのみを発現する細胞、すなわち単一陽性バイスタンダー細胞は、溶解されないか、または細胞コネクタが安定した平行な配向をとることができないため、効率が低下して溶解される(
図10B)。それにより、本発明の核酸ナノ構造体は、標的細胞の溶解を促進する際に高度に選択的かつ特異的である。この抗原パターン依存性溶解機構を実証するために、本発明者らは、抗ヒトPSMA Fabフラグメント(クローンGCP-05)および抗ヒトEpCAM Fabフラグメントの両方を1-1構成で担持する細胞コネクタを構築した(
図10D)。細胞コネクタは、第2の表面に平行であり、第2の表面に近い平面の両方において、左側に抗ヒトPSMAを、右側に抗ヒトEpCAM Fabフラグメントを担持していた。さらに、細胞コネクタは、左側に抗ヒトCD3 Fabフラグメントを担持していた。さらに、本発明者らは、抗EpCAM、抗PSMA、および抗CD3 Fab-DNAコンジュゲートから三重特異的対照抗体を組み立てた(
図10Cおよび
図12)。この対照抗体は、堅いDNAオリガミ担体物体なしで従来の三重特異的抗体の機能を模倣する。3つのFabフラグメントは、単一のDNAらせんおよび3-チミンリンカーを介して、DNAオリガミ細胞コネクタよりも柔軟に接続され、また互いにより短い距離を有する(EpCAM-PSMA距離は、対照抗体では約9nmであるのに対して、DNAオリガミ細胞コネクタでは55nm)。EpCAM陽性LNCaP細胞およびPSMA陽性LNCaP細胞は二重陽性標的細胞として働き、EpCAM陽性MCF7細胞およびPSMA陰性MCF7細胞またはEpCAM陽性BT549細胞およびPSMA陰性BT549細胞は単一陽性バイスタンダー細胞として働く。三重特異的対照構築物とDNAオリガミ細胞コネクタの両方が、二重陽性標的細胞に対して同様のEC50値を有する効率的なT細胞媒介性細胞溶解を引き起こす(
図10E)。さらに、三重特異的対照構築物はまた、高バイスタンダー細胞溶解も引き起こす(MCF7についてEC50は235pM、BT549についてEC50は800pM)。対照的に、三重特異的DNAオリガミ細胞コネクタは、有意に高い濃度(MCF7についてEC50は2325pM、BT549についてEC50は13nM)でのみバイスタンダー細胞溶解を引き起こす。したがって、DNAオリガミ細胞コネクタ上の標的細胞結合Fabフラグメントの配置は、高い標的上溶解効率を維持しながらバイスタンダー溶解を減少させる。したがって、本発明の核酸ナノ構造体は、高い特異性および高い選択性で標的細胞の溶解を促進する。
【0155】
実施例5:方法
細胞コネクタの組み立て:反応混合物は、1033塩基長の骨格DNAを50nMの濃度で含有し、オリゴヌクレオチド鎖をそれぞれ200nMで含有した。反応緩衝液は、5mM TRIS、1mM EDTA、5mM NaCl(pH8)および20mM MgCl2を含んでいた。反応混合物を、TETRAD(MJ Research、現在はBiorad)サーマルサイクリングデバイスを使用して熱アニーリングランプに供した。すべてのバリアントを最初に65℃に15分間供した。短いバリアントを54℃から51℃まで2時間/℃の速度でアニールした。中間および長いバリアントを58℃から55℃まで1時間/℃の速度でアニールした。細胞コネクタを、50kアミコンフィルターによるサイズ排除濾過を使用して精製した([7]参照)。精製した細胞コネクタを、等モルまたは結合部位-コンジュゲート比のFabフラグメント-DNAコンジュゲートと、PBS中15mM MgCl2、37℃で1時間インキュベートした。最後に、[9]に記載の5k-PEG-リジン10を用いて、細胞コネクタ-Fabフラグメントアセンブリを安定化した。
【0156】
三重特異的対照抗体の組み立て:三重特異的対照抗体を、PBS中100nMでの86塩基長の骨格と、150nMでのステープルおよびFab-DNAコンジュゲートとから、37℃で1時間、組み立てた。次いで、構築物を[9]に従って5k-PEG-リジン10を用いて安定化した。
【0157】
NALM6標的細胞を用いた細胞傷害性T細胞アッセイ:CellTrace CSFE Cell Proliferation Kit(Thermo Fisher、C34554)を製造業者のプロトコルに従って使用して、標的細胞(NALM6)を蛍光染色した。細胞傷害性T細胞殺傷アッセイのために、凍結ヒト末梢血単核細胞(PBMC、Stemcell、70025.1)を使用した。PBMC細胞を供給者の指示に従って取り扱った。1ml当たり2×105個のCSFE染色された標的細胞を、37℃(5%CO2)の細胞培養培地中の1×106個のPBMC/mlおよび様々な濃度の細胞コネクタと共に、または追加の細胞コネクタなしでインキュベートした。24時間後、細胞混合物を抗CD8-APCおよび抗CD69-PerCP-eFluor710を用いて4℃で20分間染色した。次いで、Cytkick Maxオートサンプラーを備えたAttune Nxtフローサイトメトリー(ThermoFisher)を使用して、細胞の蛍光および散乱強度を決定した。NALM6標的細胞をCSFEシグナルについてゲーティングした。FSC-SSC散布図におけるそれらの異なる集団に基づいて、死んだNALM6細胞および生存NALM6細胞を同定した。死んだ標的細胞の割合を、死んだNALM6細胞/(死んだNALM6細胞+生存NALM6細胞)として計算した。
【0158】
MCF7、BT549またはLNCaP標的細胞を用いた細胞傷害性T細胞アッセイ:
MCF7、BT549またはLNCaP標的細胞を培養してコンフルエントな単層を形成した。次いで、細胞を、完全細胞培養培地中、5:1のエフェクター対標的比で、異なる量の細胞コネクタと共に、37℃(5%CO2)で48時間、非刺激PBMCと共培養した。48時間後、細胞培養上清を除去し、接着細胞をカルシウムおよびマグネシウム含有PBSで洗浄した。ルシフェラーゼアッセイは、製造業者のプロトコルに従って、溶解緩衝液中にルシフェラーゼおよびルシフェリンを含有するBio-Glo Cell Titer System(Promega)を用いて残りの細胞に対して行った。これにより、残存ATPの量、したがって生存細胞の数を定量することができた。発光シグナルを、Clariostarプレートリーダを使用して測定した。緩衝液のみのシグナルを各試料から差し引いた。標的細胞およびPBMCのみを含む試料の発光強度に対して発光強度を正規化することによって、生存細胞の割合を計算した。
【0159】
【0160】
本明細書、特許請求の範囲、および/または添付の図面に開示された本発明の特徴は、別々におよびそれらの任意の組み合わせの両方で、本発明をその様々な形態で実現するための材料となり得る。
【配列表】
【国際調査報告】