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特表2024-501819複数の金属補強要素を備える補強織物
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  • 特表-複数の金属補強要素を備える補強織物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-16
(54)【発明の名称】複数の金属補強要素を備える補強織物
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/18 20060101AFI20240109BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240109BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20240109BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240109BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240109BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240109BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B60C9/18 B
B60C1/00 C
B60C9/00 K
B60C9/00 J
C08L101/00
C08K3/08
C08K3/013
C08K7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538008
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 FR2021052117
(87)【国際公開番号】W WO2022136749
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】2013934
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ドパリス グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】クレルジャット ジャン-マチュー
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA13
3D131AA40
3D131AA45
3D131AA51
3D131BA02
3D131BA07
3D131BC02
3D131DA66
4J002AA001
4J002DA066
4J002FA036
4J002FD016
4J002GN01
(57)【要約】
本発明は、横断方向に配置され、互いに実質的に平行であり、かつ横断方向に対して垂直な主方向に延びる複数の金属補強要素を備える補強織物に関するものであり、金属補強要素は、少なくとも1つのエラストマー、補強充填剤、及び架橋システムに基づくエラストマー組成物に埋め込まれ、各金属補強要素は、主方向に対して垂直な平面内で長さW及び高さTの矩形の内側に適合する断面を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強織物であって、
主方向に延び、mmで表される敷設ピッチpで該主方向に対して垂直な横断方向に配置され、少なくとも1つのエラストマー、補強充填剤、及び架橋システムに基づくエラストマー組成物に埋め込まれた複数の実質的に平行な金属補強要素、
を備え、
各金属補強要素が、前記主方向に対して垂直な平面内で、長さW及び高さTの矩形に内接する断面を有し、かつMPaで表されてISO 6892:1984に従って測定された破壊強度RFを有し、織物が、Rnに等しいN/mmで表される破断力を有し、
前記金属補強要素の前記敷設ピッチは、p≧0.8.RF/Rn.(a-1+π/4).T2であり、ここでa=W/Tであり、1/aは、0.35から0.75の範囲である、
ことを特徴とする補強織物。
【請求項2】
前記比1/aは、0.35から0.65、好ましくは、0.45から0.65の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の補強織物。
【請求項3】
前記高さTは、0.15mmから0.70mm、好ましくは、0.15から0.40mm、より好ましくは、0.20から0.30mmの範囲であることを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載の補強織物。
【請求項4】
前記敷設ピッチpは、p≦1.2.RF/Rn.(a-1+π/4).T2であるようなものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の補強織物。
【請求項5】
各金属補強要素が、少なくとも高張力等級であり、すなわち、3,650-2,000.Dよりも高いか又はそれに等しい破断強度RFを有し、この場合にmmで表されるDは、(T+W)/2に等しいことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の補強織物。
【請求項6】
各金属補強要素が、少なくとも超高張力等級であり、すなわち、4,000-2,000.Dよりも高いか又はそれに等しい破断強度RFを有し、この場合にmmで表されるDは、(T+W)/2に等しいことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の補強織物。
【請求項7】
各金属補強要素が、少なくともウルトラ高張力等級であり、すなわち、4,350-2,000.Dよりも高いか又はそれに等しい破断強度RFを有し、この場合にmmで表されるDは、(T+W)/2に等しいことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の補強織物。
【請求項8】
前記金属補強要素の両側で、前記横断方向及び主方向によって形成される前記平面に対して垂直な半径方向に測定されたそれぞれ「edos_1」及び「edos_2」で示される該金属補強要素の背面上のゴム厚をedos_1及びedos_2が互いに独立に0.10から0.40mm、好ましくは、0.10から0.25mm、より好ましくは、0.15から0.22mmの範囲にあるように有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の補強織物。
【請求項9】
各補強要素が、スチール以外の金属から作られる金属コーティング層で覆われたスチールコアを備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の補強織物。
【請求項10】
各補強要素が、金属補強体の6m当たり6巻回よりも少ないか又はそれに等しい、好ましくは、金属補強体の6m当たり3巻回よりも少ないか又はそれに等しい絶対値として表される捩れ弾性変形Cを有することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の補強織物。
【請求項11】
nが、220N/mmよりも大きいか又はそれに等しく、好ましくは、300N/mmよりも大きいか又はそれに等しく、より好ましくは、330と470N/mmの間であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の補強織物。
【請求項12】
前記エラストマー組成物の前記エラストマーは、ジエンエラストマー、好ましくは、イソプレンエラストマーであることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の補強織物。
【請求項13】
空気式タイヤであって、
トレッドと、2つの側壁と、2つのビードとを備えるクラウンであって、各側壁が各ビードを該クラウンに接続する前記クラウン、
を備え、
カーカス補強体が、前記ビードの各々に締結され、かつ前記側壁内及び前記クラウン内を延び、
クラウン補強体が、周方向に前記クラウン内を延び、かつ前記カーカス補強体と前記トレッドの間で半径方向に位置し、該クラウン補強体は、少なくとも第1の及び第2の作動プライを備える作動補強体を備え、
少なくとも1つの作動プライが、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の補強織物である、
ことを特徴とする空気式タイヤ。
【請求項14】
各第1及び第2の作動プライが、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の補強織物から構成されることを特徴とする請求項13に記載の空気式タイヤ。
【請求項15】
フーピングプライに互いに実質的に平行に配置された布地補強要素を備える少なくとも1つの該フーピングプライを備えるフープ補強体を備えることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の空気式タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強織物、特に空気式タイヤに使用される補強織物の分野及び空気式タイヤの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車又はバンのための半径方向カーカス補強体を有する空気式タイヤは、公知のように、トレッドと、2つの非伸張性ビードと、ビードをトレッドに接続する2つの可撓性側壁と、カーカス補強体とトレッド間に周方向に配置された剛性クラウン補強体又は「ベルト」とを備える。
【0003】
クラウン補強体は、プライとして公知の複数の補強織物を備え、かつ通常は互いに実質的に平行に位置決めされて空気式タイヤの周方向中間平面に対して傾斜した金属ケーブルで補強された「作動プライ」、「三角プライ」、又は「作動補強体」として公知の少なくとも2つの重畳交差ゴムプライと、一般的に「周方向」として公知の補強スレッドで補強されてその主な機能が高速でのクラウの遠心作用に耐えることである「フーププライ」又は「フープ補強体」として公知の作動プライの上方(トレッドの側)に位置するゴムプライとで一般的に構成される。これらのプライは、任意的に、他のゴムプライ及び/又は織物に関連付けることができる。作動プライの主な機能は、公知のように自動車に対する良好なハンドリングを達成するのに必要である高いドリフト推力又はコーナリング剛性をタイヤに与えることである。
【0004】
通常は布地である少なくとも1つのフーププライと通常は金属である2つの作動プライとを備える多層複合積層体で最終的には構成されるそのようなベルト構造体は、当業者に公知であり、ここでより詳細に説明する必要はない。そのようなベルト構造体は、例えば、米国特許第4371025号及び仏国特許第2504067号に例示されている。
【0005】
益々強くて耐久性のあるスチールの利用可能性の意味することは、今日のタイヤ製造業者が、可能な限り、製造を簡略化してコストを低減し、補強プライの厚み、すなわち、タイヤのヒステリシスを低減し、かつ最終的にそのようなタイヤを装着した車両のエネルギ消費を低減するために特に僅かに2つのスレッドを有する又は更に個々のフィラメントの非常に単純な構造を有するケーブルのタイヤベルトを使用する傾向があることである。
【0006】
しかし、タイヤの質量を低減することを特にそれらのベルトの厚み及びそれがそこから作られるゴムの層の厚みを低減することによって目標とする労力は、ごく自然に、いくつかの困難を生じる可能性がある物理的限界と対峙することになる。特に、フープ補強体によって提供されるフーピング機能及び作動補強体によって提供される硬化機能は、もはや互いに十分に区別されず、かつ互いに干渉する可能性があることが時々起こる。これは、タイヤのクラウンの正しい作動に対して及びタイヤの性能及び全体的耐久性に対して有害である。
【0007】
国際出願公開第2013/117476号及び国際出願公開第2013/117477号は、すなわち、上述の欠点を克服しながらタイヤのベルトの重量を有意に低減し、従って、それらの転がり抵抗を低減することを可能にする布地フーピングプライと金属モノフィラメントを備える2つの作動プライとで構成された特定の構造を有する多層複合積層体を提案している。国際出願公開第2019/020888号は、金属モノフィラメントの直径、当該モノフィラメントの密度、及びプライの厚みをリンクすることにより、座屈に対する耐性を改善しながらプライの質量を更に低減することを目標にしている。
【0008】
特開第2001/328407号に開示されているもののような他の業績は、特に、プライをより薄くし、すなわち、それらをより軽くし、かつ空気式タイヤの転がり抵抗の低減をもたらすために、その断面がもはや円形ではなく、むしろ矩形に内接する金属補強要素の実施に関するものである。特開第2017/048351号は、転がり抵抗を低減し、加熱問題を制限し、かつプライ分離問題を回避するために特定のエラストマー組成物に関連付けられた0.15と0.54mmの間のケーブル間距離、すなわち、2つの連続補強要素間の距離を有する高さ対幅の比が好ましくは0.4と0.5の間である平坦補強体の使用を開示している。
【0009】
しかし、車両の重量増加及び性能改善は、取りわけ、プライの破断力の増大を必要とする。この力は、例えば、スチールの利用可能性に固有の限界はあるが金属補強体の機械的強度を高めることにより、又はプライの厚み及び/又は質量及び従って空気式タイヤの重量の増加及び/又はプライ内の2つの連続金属補強要素を隔てる空間の減少をもたらす可能性があるこれらの補強体の直径及び/又は密度を高めることによって増大することができる。補強要素間に位置するゴムブリッジを充填することが、次に困難になり、これは、特に、作動プライ間に伝播する亀裂の出現に対応する裂け目のリスクに起因して1又は複数のプライの及び従って空気式タイヤの耐久性に対して有害である可能性がある。ケーブル間距離の短縮も、プライを製造することをそれが多数の金属スレッドを小さい距離で離間させて互いに平行に置くことを必要とするので困難にする可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4371025号
【特許文献2】仏国特許第2504067号
【特許文献3】国際出願公開第2013/117476号
【特許文献4】国際出願公開2013/117477号
【特許文献5】国際出願公開2019/020888号
【特許文献6】特開第2001/328407号
【特許文献7】特開第2017/048351号
【特許文献8】国際出願公開第2017/203119号
【特許文献9】独国特許出願公開第102015209343号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
研究を続けて、本出願人は、従来技術の補強織物と比較して非常に良好な破断強度、より低い転がり抵抗、及びいずれの裂け目問題も回避するのに十分なケーブル間距離を有する金属補強要素で補強された織物の特定構成を発見した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
定義
主方向は、補強要素の軸線と一致する金属補強要素の最大寸法が延びる方向を意味するように与えられる。
【0013】
横断方向は、主方向と垂直な方向を意味するように与えられる。
【0014】
実質的にとは、機械公差又は測定方法の限界内であることを意味する。
【0015】
本明細書に言及する炭素を備える化合物は、化石起源又はバイオ起源のものとすることができる。後者の場合に、それらは、バイオマスから部分的に又は完全にもたらされるか、又はバイオマスからもたらされる再生可能な原材料から得ることができる。これは、特に、ポリマー、可塑剤、充填剤などに関連する。
【0016】
補強織物
本発明は、mmで表される敷設ピッチpで主方向に対して垂直な横断方向に配置され、少なくとも1つのエラストマー、補強充填剤、及び架橋システムに基づくエラストマー組成物に埋め込まれた主方向に延びる複数の実質的に平行な金属補強要素を備える補強織物に関連し、各金属補強要素は、主方向に対して垂直な平面内に、長さW及び高さTの矩形に内接する断面を有し、かつMPaで表されてISO 6892:1984に従って測定された破壊強度RFを有し、この織物は、Rnに等しいN/mmで表される破断力を有し、金属補強要素の敷設ピッチは、p≧0.8.RF/Rn.(a-1+π/4).T2であり、ここで、a=W/Tであり、1/aは、0.35から0.75の範囲である。
【0017】
そのような特徴は、従来技術の補強織物と比較して補強織物の重量を低減しながら2つの連続補強要素間のゴムブリッジを満足に充填することを可能にし、一方で特に有利な「エッジワイズ」及び「面外」破断強度及び剛度特性を保持することが明らかになった。
【0018】
当業者に公知であるように、敷設ピッチは、横断方向に測定された2つのすぐ隣接する金属補強要素の幾何学中心間の距離として定められる。
【0019】
好ましくは、敷設ピッチpは、p≦1.2.RF/Rn.(a-1+π/4).T2であるようなものである。ピッチが過度に大きくなる時に、並置された金属補強要素間の協働性は、織物が空気式タイヤでの作動プライとして使用される時に悪化する。
【0020】
非常に好ましくは、敷設ピッチpは、0.9.RF/Rn.(a-1+π/4).T2≦p≦1.1.RF/Rn.(a-1+π/4).T2であるようなものである。
【0021】
補強要素
各補強要素は金属である。好ましくは、補強要素は、例えば、補強要素の加工性を改善するために、又は接着性、耐食性、又は耐老化性の特質のような補強要素及び/又はタイヤの使用特質を改善するために、スチール以外の金属から作られる金属コーティング層で覆われたスチールコアを備える。例えば、金属コーティング層の金属は、亜鉛、銅、錫、及びこれらの金属の合金から選択される。これらの金属の合金の例は、真鍮及び青銅を含む。
【0022】
スチールは、パーライト系、フェライト系、オーステナイト系、ベイナイト系、又はマルテンサイト系微細構造体、又はこれらの微細構造体の混合物からもたらされる微細構造体を有することができる。
【0023】
1つの好ましい実施形態により、炭素スチールが使用される時に、その炭素含有量(スチールの重量%)は、0.2%から1.2%の範囲にあり、別の好ましい実施形態により、スチールの炭素含有量は、0.6%から0.8%の範囲にある。
【0024】
本発明は、特に、高張力(HT)スチールコード、好ましくは超高張力(SHT)、又は更にウルトラ高張力(UHT)に関連し、その場合に、補強要素は、mmで表されるDが(T+W)/2に等しい時に、好ましくは、3,650-2,000.Dよりも大きいか又はそれに等しい、より好ましくは、4,000-2,000.Dよりも大きいか又はそれに等しい、最も好ましくは、4,350-2,000.Dよりも大きいか又はそれに等しい引張強度(RF)を有する。弾性伸長と塑性伸長の合計であるこれらの補強体の全破断時伸長(At)は、好ましくは、2,0%よりも大きい。
【0025】
好ましくは、各補強要素は、金属補強体の6m当たり6巻回よりも少ないか又はそれに等しい、好ましくは、金属補強体の6m当たり3巻回よりも少ないか又はそれに等しい絶対値で表される捩れ弾性変形Cを有する。
【0026】
この低い弾性変形は、ゴム物品、特に、空気式タイヤに容易に組み込まれるのに十分に平坦である織物を得ることを可能にする。好ましい配置では、補強要素は、WO2017/203119に開示されるように、それらの弾性変形を交替させるように織物に位置決めすることができる。
【0027】
各金属補強要素は、主方向に対して垂直な平面内で、長さW及び高さTの矩形に内接する断面を有する。
【0028】
そのような補強要素は、従来技術でそれ自体公知であり、かつ例えば特開第2001/328407号及び独国特許出願公開第102015209343号に説明されている。この補強要素は、例えば、コーナを丸めることができる実質的に矩形のダイスを用いた絞り加工により、又は円形断面を有する金属補強要素をローラーにそれを通すことによって粉砕することにより得ることができる。
【0029】
好ましくは、本発明による織物の各金属補強要素は、0.35から0.65の範囲、好ましくは、0.45から0.65の範囲のその高さ又は厚みT対その幅Wの比を表す比1/aを有する。そのような好ましい比は、「面外」剛性、すなわち、そのような織物を作動プライとして備える空気式タイヤの半径方向での剛性を実質的に修正することなく、「エッジワイズ」剛性、すなわち、そのような織物を作動プライとして備える空気式タイヤの軸線方向での剛性を有意に増大することを可能にし、より低い面外剛性は、水平地面上の空気式タイヤの改善された平坦化を可能にする。
【0030】
好ましくは、各金属補強要素は、0.15から0.70mm、好ましくは、0.15から0.40mm、より好ましくは、0.20から0.30mmの範囲の高さ又は厚みTを有する。金属補強要素の他の特徴に関連付けられたそのような厚みは、作動プライの全厚とその破断力の間の良好な妥協を得ることを可能にする。
【0031】
補強織物は、好ましくは、220N/mmよりも大きいか又はそれに等しい、好ましくは、300N/mmよりも大きいか又はそれに等しい、より好ましくは、330と470N/mmの間の破断力Rnを有する。そのような破断力は、本発明による織物が、最新の乗用車、特にスポーツ多目的車両又はバンのような比較的重い負荷に耐えることを意図した空気式タイヤに実施される時に特に有利である。
【0032】
補強織物の全厚は、金属補強要素の厚みに等しく、それに追加されるのは、横断方向及び主方向によって形成される平面に対して垂直な半径方向に測定される「背面厚み」として公知の補強要素の両側に位置するゴムの厚みである。補強体の両側のこれらの2つの背面厚みは、同一か又は異なることができ、かつ「edos_1」及び「edos_2」と表記される。半径方向に測定される補強織物の全厚は、すなわち、edos_1+T+edos_2として表される。edos_1=edos_2である特定の配置では、補強体の背面上のゴム厚は、単に「edos」と示され、半径方向に測定された補強織物の全厚は、T+2.edosに等しい。
【0033】
織物の厚みが小さいほど、ヒステリシスが増大し、従って、そのような織物を備える空気式タイヤの転がり抵抗は減少する。補強要素間のゴムブリッジは、その又は各プライに及ぼされる力を正しく受け止めることを可能にする。しかし、不十分な織物厚みは、ゴムブリッジが不完全に形成されることになり、従って、織物が、それが空気式タイヤ内の1又は複数の作動プライとして使用される時に力を確実に受け止めないことになるという有意なリスクをもたらす。これに加えて、空気式タイヤでは、不十分な織物厚みは、フープ補強体の半径方向外側に位置する織物の金属補強要素が互いにより接近することになるリスクをもたらす。
【0034】
本発明による補強織物は、すなわち、好ましくは、金属補強要素の両側に横断方向及び主方向によって形成される平面に対して垂直な半径方向で測定される「edos_1」及び「edos_2」でそれぞれ示され、edos_1及びedos_2が互いに独立に0.10から0.40mm、好ましくは、0.10から0.25mm、より好ましくは、0.15から0.22mmに及ぶような金属補強要素の背面のゴム厚を有する。
【0035】
エラストマー組成物
補強要素は、エラストマー組成物に埋め込まれ、ここで、埋め込まれるは、織物の断面平面の可能な例外を除いて「完全に被覆される」を意味するように与えられる。
【0036】
エラストマー組成物は、エラストマー挙動を示す組成物を意味するように与えられる。そのような組成物は、少なくとも1つのエラストマーと1つの他の成分とに有利に基づいている。
【0037】
好ましくは、エラストマーは、ジエンエラストマー、すなわち、想起されるように、ジエンモノマー、すなわち、2つの共役又は非共役炭素-炭素二重結合を担持するモノマーから少なくとも部分的に誘導された(すなわち、ホモポリマー又はコポリマー)いずれかのエラストマー(単一エラストマー又はエラストマーの混合物)である。
【0038】
このジエンエラストマーは、より好ましくは、ポリブタジエン(BR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物から構成される群から選択され、そのようなコポリマーは、特に、スチレン-ブタジエンコポリマー(SBR)、ブタジエン-イソプレンコポリマー(BIR)、スチレン-イソプレンコポリマー(SIR)、及びスチレン-ブタジエン-イソプレンコポリマー(SBIR)から構成される群から選択される。
【0039】
1つの特に好ましい実施形態は、「イソプレン」エラストマー、すなわち、イソプレンホモポリマー又はコポリマー、言い換えれば、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、異なるイソプレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物から構成される群から選択されたジエンエラストマーを用いることから構成される。
【0040】
エラストマー組成物は、1又は2以上のジエンエラストマー及び同じくタイヤの製造を意図した組成物に通常使用される添加剤の全部又は一部、例えば、カーボンブラック又はシリカのような補強充填剤、カプリング剤、老化防止剤、酸化防止剤、可塑剤、又はエクステンションオイル、後者が本質的に芳香族又は非芳香族であるかにも関わらず(特に非常に僅かに芳香族又は非芳香族であるオイル、例えば、ナフテン又はパラフィンタイプであり、高粘性又は好ましく低粘性のMES又はTDAEオイルのものであるオイル)、高いガラス転移温度(30℃よりも高い)を有する可塑化樹脂、グリーン状態の組成物の加工性を改善する薬剤、粘着付与樹脂、逆転防止剤、メチレン受容体及びドナー、例えば、HMT(ヘキサメチレンテトラミン)又はHMMM(ヘキサメトキシメチルメラミン)、補強樹脂(レゾルシノール又はビスマレイミドのような)、金属塩タイプの公知の接着促進剤システム、例えば、特にコバルト、ニッケル、又はランタニドの塩、及び架橋又は加硫システムを備えることができる。
【0041】
好ましくは、エラストマー組成物を架橋するためのシステムは、加硫システムと呼ばれるシステム、すなわち、硫黄(又は硫黄ドナー剤)及び1次加硫促進剤に基づくシステムである。様々な公知の2次加硫促進剤又は加硫活性剤をこの基本的な加硫システムに追加することができる。硫黄は、0.5と10phrの間の好ましい含有量で使用され、1次加硫促進剤、例えば、スルフェンアミドは、0.5と10phrの間の好ましい含有量で使用される。補強充填剤、例えば、カーボンブラック及び/又はシリカの含有量は、好ましくは、30phrよりも高く、特に、30と100phrの間である。用語「phr」は、エラストマー100部当たりの重量部を意味するように与えられる。
【0042】
特にタイヤに従来から使用されるHAF、ISAF、又はSAFタイプの全てのカーボンブラック(「タイヤ等級」カーボンブラック)は好適である。これらは、より具体的には、300、600、又は700(ASTM)等級のカーボンブラック(例えば、N326、N330、N347、N375、N683、又はN772)を含む。450m2/g未満、好ましくは、30から400m2/gのBET表面積を有する析出又はヒュームドシリカは、シリカとして特に適している。
【0043】
当業者は、本明細書に照らして、望ましいレベルの特質(特に弾性率)を達成するためにゴム組成物の配合を調節する方法、及び想定される特定用途に適するように配合を適応させる方法を知ることになる。
【0044】
好ましくは、エラストマー組成物は、架橋状態で、10%伸長での4と25MPaの間、より好ましくは、4と20MPaの間の伸張の2次弾性率を有し、特に5と15MPaの間の値は、特に適することが証明されている。弾性率測定は、特に断りのない限り、ASTM D412-98(試験試料「C」)に従って引張下で実施され、「真の」割線弾性率(すなわち、試験試料の実際の断面に関する)は、ここではMsによって示す10%伸長での第2の伸長(すなわち、受け入れサイクルの後)で測定され、かつMPaで表される(ASTM D1349-99に従って標準温度及び相対湿度条件下で)。
【0045】
空気式タイヤ
本発明はまた、トレッドを備えるクラウンと、2つの側壁と、2つのビードとを備え、各側壁が、各ビードをクラウンに接続し、カーカス補強体が、ビードの各々内に固着されて側壁内で及びクラウン内で延び、クラウン補強体が、周方向にクラウン内で延びてカーカス補強体とトレッドの間で半径方向に位置し、クラウン補強体が、少なくとも第1の及び第2の作動プライを備える作動補強体を備え、少なくとも1つの作動プライが本発明による補強織物である空気式タイヤに関する。
【0046】
軸線方向は、タイヤの回転軸線に対して実質的に平行な方向を意味するように与えられる。
【0047】
周方向は、軸線方向とタイヤの半径との両方に対して実質的に垂直な方向(言い換えれば、タイヤの回転軸線を中心とする円に対する接線)を意味するように与えられる。
【0048】
半径方向は、タイヤの半径に沿った方向、すなわち、タイヤの回転軸線に交差してその軸線に対して実質的に垂直であるあらゆる方向を意味するように与えられる。
【0049】
周方向中間平面(Mと表記)は、2つのビード間の中間に位置してクラウン補強体の中間を通過するタイヤの回転軸線に対して垂直な面を意味するように与えられる。
【0050】
1つの好ましい実施形態では、第1の作動プライの補強要素は、周方向と10から45度の範囲の角度を形成する。
【0051】
1つの好ましい実施形態では、第2の作動プライの補強要素は、周方向と10度から45度の範囲の角度を形成する。
【0052】
有利なことに、第1及び第2の作動プライの補強要素は、第1の作動プライと第2の作動プライの間で互いに交差する。すなわち、第1の作動プライの補強要素が周方向と形成する角度が正である場合に、第2の作動プライの補強要素によってこの同じ周方向と形成される角度は負である。逆に、第1の作動プライの補強要素が周方向と形成する角度が負である場合に、第2の作動プライの補強要素によってこの同じ周方向と形成される角度は正である。
【0053】
1つの好ましい実施形態では、第1の作動プライの補強要素が周方向と形成する角度は、絶対値として、第2の作動プライの補強要素によってこの同じ周方向と形成される角度と実質的に等しい。
【0054】
好ましくは、2つの作動プライの各々は、本発明による補強織物から構成される。
【0055】
好ましくは、タイヤは、フーピングプライ内で互いに実質的に平行に配置された布地補強要素を備える少なくとも1つのフーピングプライを備えるフープ補強体を更に備える。好ましくは、これらの布地補強要素は、エラストマー組成物に埋め込まれる。フーピングプライは、好ましくは、半径方向最外側作動プライとトレッドの間に位置する。
【0056】
布地補強要素は、あらゆる公知の形態を有することができ、それらは、モノフィラメントとすることができるが、それらは、通常は、布地コードの形態で互いに撚られたマルチフィラメント繊維から構成される。
【0057】
好ましくは、布地補強要素は、周方向と最大で10°に等しい角度、好ましくは、5°から10°の範囲の角度を形成する。
【0058】
好ましくは、布地補強要素は熱収縮性である。これは、温度の上昇と共に、布地補強要素を形成する材料が収縮することを意味する。185℃で2分後に測定される布地補強要素の熱収縮率CTは、以下に列挙する試験条件の下で有利なことに7.5%未満、好ましくは、3.5%未満、より好ましくは、3%未満であり、これらの値は、タイヤの製造及び寸法安定性に関して、特にその硬化及び冷却のフェーズ中に最適であることが証明されている。パラメータCTは、特に指定がない限り、ASTM D1204-08に従って例えば「TESTRITE」装置上で0.5cN/texのいわゆる標準予備張力(従って、試験したサンプルの滴定濃度又は線密度に関して表される)で測定される。一定長さでは、最大収縮力(FCと表記)も、上述の試験を用いて、今度は3%伸長で180℃の温度で測定される。この収縮力FCは、好ましくは、20N(ニュートン)よりも大きい。高い収縮力は、高い走行速度で加熱された時にタイヤのクラウン補強体に対する熱収縮性布地補強要素のフーピング機能に特に有益であることが証明されている。
【0059】
上述のパラメータCT及びFCは、プライ及びタイヤに組み込まれる前の初期接着剤被覆布地補強要素に対して又はそれらが加硫タイヤの中心ゾーンから抽出されて好ましくは「脱ゴムされた」(すなわち、それらが埋め込まれているエラストマー組成物が剥ぎ取られた)状態で補強要素に対して区別なく測定することができる。
【0060】
上述の収縮特性CTを満足するいずれの熱収縮性布地材料も好適である。好ましくは、この熱収縮性布地材料は、ポリアミド、ポリエステル、及びポリケトンから構成される群から選択される。ポリアミドは、特にポリアミド4、6、6、6、6.11、又は12を含む。ポリエステルは、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PPT(ポリプロピレンテレフタレート)、及びPPN(ポリプロピレンナフタレート)を含む。例えば、アラミド/ナイロン、アラミド/ポリエステル、アラミド/ポリケトンハイブリッドコードのような2つの(少なくとも2つの)異なる材料で構成されるハイブリッド補強体も、それらが推奨特性CTを満足することを条件に使用することができる。
【0061】
本発明による補強織物では、厚みedos_1及びedos_2、敷設ピッチp、長さW、及び高さTのような異なる幾何学的特性は、存在する補強要素の全ての平均を計算することにより、4cmの全軸線方向幅にわたってグリーン、すなわち、非加硫状態での織物の中心部分で測定される。
【0062】
本発明による空気式タイヤでは、厚みedos_1、edos_2、敷設ピッチp、長さW、及び高さTのような異なる幾何学的特性は、中間平面Mに対して-2cmと+2cmの間を延びる軸線方向間隔で、作動補強体の中心部分に存在する補強要素の全ての平均を計算することにより、4cmの全軸線方向幅にわたって中間平面Mの両側で加硫状態でのタイヤのクラウン補強体の中心部分で測定される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】金属補強要素の主方向に対して垂直な断面平面で幅W及び高さ又は厚みTの3つの補強要素を示し、これらの要素が、織物が半径方向に各補強要素の両側でそれぞれ「edos_1」及び「edos_2」と示されるゴム厚を有するように、敷設ピッチpで並置されてエラストマー組成物に埋め込まれることを示す本発明による補強織物の一部分の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
測定方法
Nで表されるプライの絶対破断力は、横断方向のプライの10cmの長さにわたって存在する補強要素の数に各補強要素の個々の破断力を乗じることによって測定される。破断力、RFで示される破断強度(単位MPa)、及びAtで示される破断時伸長(%としての全伸長)の測定は、ISO 6892:1984に準拠して引張下で行われる。プライの破断力は、上述のように決定されたプライの絶対破断力を100で割り算して得られ、単位N/mmで表される。
【0065】
捩れ弾性変形は、金属補強要素の所与の長さ、例えば、5から10cmの範囲の長さにわたって測定され、見出された値は、値Cを得るために6mに対して表される。この目的のために、非常に長いテーブルが提供され、テーブルの長さは、その捩れ弾性変形が測定されている金属補強体の長さに少なくとも等しく、金属補強体の一端は、テーブルの一端に締結される。金属補強体は、金属補強体をそれがその主軸線の周りにそれ自体の上で回転しないように保持するように細心の注意を払いながら巻き出される。他端では、金属補強体は、テーブルの縁部上で吊り下げられ、ロッドが、その端部に金属補強体の主軸線に対して垂直に締結される。金属補強体の吊り下げられた端部は、次に、自由に回転することが可能にされる。ロッドが行う巻回の数か、次に測定される。ロッドが不完全な巻回を行う場合に、その巻回上で進行した角度は、巻回の非整数値として表現される。すなわち、180°の角度は、0.5の巻回で表されることになる。
【0066】
曲げ剛性は、円形断面を有する補強要素に対して、方程式Y.d4/64によって推定され、ここで、dは、円形断面を有する補強要素の直径、Yは、要素のヤング率である。構成により、円形断面を有する補強要素は、同じエッジワイズ及び面外曲げ剛性を有する。
【0067】
曲げ剛性は、長さW及び高さTの補強要素に対して、エッジワイズ曲げ剛性に対して方程式Y.T.W3/12及び面外曲げ剛性に対してY.W.T3/12によって推定され、ここでYは、要素のヤング率である。
【0068】
実施例
以下の試験は、本発明による補強織物の利点を示している。
【0069】
織物T1及びT3は、T1に対して0.32mmの直径及びT2に対して0.35mmの直径を有する補強要素として個々の金属モノフィラメントを実施する従来技術の織物である。織物T2は、本発明による織物C1と同じ厚みを有する織物である。
【0070】
織物C1及びT1、及びC3及びT3は、同じケーブル間距離を有する。織物T2は、織物C1と同じ厚みである。織物C2は、織物T2と同じ織物1m2当たりの質量を有する。織物C4は、織物C3と同じ金属補強要素を備え、かつ織物T3と同じプライ強度を有する。
【0071】
質量に関して、結果は、織物C1、T2、及びC2に関して織物T1に対する及び織物C3及びC4に関して織物T3に対するベース100で与えている。100を超える値は、織物が基準織物の質量よりも大きい質量を有することを意味し、100未満の値は、織物が基準織物の質量よりも小さい質量を有することを意味する。織物質量が大きいほど、そのような織物を備える空気式タイヤのより大きい転がり抵抗をもたらす。
【0072】
(表1)
【符号の説明】
【0073】
edos_1、edos_2 ゴム厚
p 敷設ピッチ
T 補強要素の高さ又は厚み
W 補強要素の幅
図1
【国際調査報告】