(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-16
(54)【発明の名称】多孔質ケイ素複合体、それを含む多孔質ケイ素炭素複合体、およびアノード活物質
(51)【国際特許分類】
C01B 33/22 20060101AFI20240109BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240109BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240109BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240109BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20240109BHJP
【FI】
C01B33/22
H01M4/48
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M4/36 E
H01M4/13
H01M4/133
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538777
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 KR2021018269
(87)【国際公開番号】W WO2022139244
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0182263
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517108310
【氏名又は名称】デジュ・エレクトロニック・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DAEJOO ELECTRONIC MATERIALS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【氏名又は名称】西下 正石
(74)【代理人】
【識別番号】100227916
【氏名又は名称】酒井 麻理奈
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ヨンミン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジョンギュ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヒョンソク
(72)【発明者】
【氏名】イム,ソンウ
(72)【発明者】
【氏名】ナム,サンジン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ジョンチャン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョンヒョン
【テーマコード(参考)】
4G073
5H050
【Fターム(参考)】
4G073BA10
4G073BA62
4G073BA63
4G073BA80
4G073BD15
4G073BD21
4G073CC01
4G073FB05
4G073FB11
4G073FB50
4G073FD01
4G073FD02
4G073FD21
4G073FE01
4G073GA01
4G073GA11
4G073GA12
4G073GA14
4G073GA16
4G073UB13
5H050AA02
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA17
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB29
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
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5H050HA01
5H050HA02
5H050HA03
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
(57)【要約】
本発明の一実施形態は、多孔質ケイ素複合体、それを含む多孔質ケイ素炭素複合体、およびアノード活物質に関し、ここで、多孔質ケイ素複合体および多孔質ケイ素炭素複合体は、それぞれ、ケイ素粒子およびマグネシウム化合物を共に含有し、酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)が特定範囲を満足するものであり、多孔質ケイ素複合体および多孔質ケイ素炭素複合体をアノード活物質に適用することにより、優れた容量維持率を実現するとともに、放電容量および初期効率を大幅に向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素粒子およびマグネシウム化合物を含む多孔質ケイ素複合体であり、多孔質ケイ素複合体中の酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)は0.01~0.35である、多孔質ケイ素複合体。
【請求項2】
多孔質ケイ素複合体は、前記ケイ素粒子が相互に連結されたケイ素凝集体を含むことを特徴とする、請求項1に記載の多孔質ケイ素複合体。
【請求項3】
マグネシウム化合物は、フッ素含有マグネシウム化合物を含み、前記フッ素含有マグネシウム化合物は、フッ化マグネシウム(MgF
2)、フッ化ケイ酸マグネシウム(MgSiF
6)、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の多孔質ケイ素複合体。
【請求項4】
マグネシウム化合物は、MgSiO
3、Mg
2SiO
4、またはそれらの混合物を含む、請求項3に記載の多孔質ケイ素複合体。
【請求項5】
多孔質ケイ素複合体中のマグネシウム(Mg)の含有量は、多孔質ケイ素複合体の総重量に基づいて、0.2重量%~20重量%である、請求項4に記載の多孔質ケイ素複合体。
【請求項6】
ケイ素粒子は、X線回折分析における結晶子サイズが1nm~20nmである、請求項1に記載の多孔質ケイ素複合体。
【請求項7】
前記ケイ素粒子の表面に形成されたケイ素酸化物(SiO
x、0.1<x≦2)をさらに含む、請求項1に記載の多孔質ケイ素複合体。
【請求項8】
多孔質ケイ素複合体中の酸素(O)の含有量が、多孔質ケイ素複合体の総重量に基づいて、0.1重量%~15重量%である、請求項7に記載の多孔質ケイ素複合体。
【請求項9】
多孔質ケイ素複合体は、平均粒径(D
50)が1μm~15μmであり、比重が1.5g/cm
3~2.3g/cm
3である、請求項1に記載の多孔質ケイ素複合体。
【請求項10】
多孔質ケイ素複合体が内部に細孔を含み、多孔質ケイ素複合体の表面をガス吸着法(BETプロット法)により測定したときに、細孔容積0.01cm
3/g~0.5cm
3/gの2nm以下のミクロ細孔と、細孔容積0.2cm
3/g~0.7cm
3/gの2nm超~50nmのメソ細孔とを含み、多孔質ケイ素構造の比表面積(ブルナウアー・エメット・テラー法;BET)が100m
2/g~1,600m
2/gである、請求項1に記載の多孔質ケイ素複合体。
【請求項11】
請求項1に記載の多孔質ケイ素複合体および炭素を含む、多孔質ケイ素炭素複合体。
【請求項12】
多孔質ケイ素炭素複合体中の酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)は0.01~0.35である、請求項11に記載の多孔質ケイ素炭素複合体。
【請求項13】
多孔質ケイ素炭素複合体は内部に細孔を有し、多孔質ケイ素炭素複合体の気孔率は、多孔質ケイ素炭素複合体の体積に基づいて、0.5体積%~40体積%である、請求項11に記載の多孔質ケイ素炭素複合体。
【請求項14】
ケイ素(Si)の含有量が、多孔質ケイ素炭素複合体の総重量に基づいて、30重量%~90重量%である、請求項11に記載の多孔質ケイ素炭素複合体。
【請求項15】
炭素がケイ素粒子およびマグネシウム化合物からなる群から選択される少なくとも1つの表面に存在する、炭素がマトリックスとして機能し、前記炭素マトリックス中にケイ素粒子、マグネシウム化合物および細孔が分散されている、または炭素が両方の方法で存在する、請求項11に記載の多孔質ケイ素炭素複合体。
【請求項16】
多孔質ケイ素複合体の表面に炭素層がさらに形成されており、前記炭素層は、グラフェン、還元型酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよびグラファイトからなる群から選択される少なくとも1つを含み、前記炭素層の厚さは1nm~300nmである、請求項15に記載の多孔質ケイ素炭素複合体。
【請求項17】
炭素(C)の含有量は、多孔質ケイ素炭素複合体の総重量に基づいて、10重量%~90重量%である、請求項11に記載の多孔質ケイ素炭素複合体。
【請求項18】
多孔質ケイ素炭素複合体は、平均粒径(D
50)が2μm~15μmであり、多孔質ケイ素炭素複合体は、比重が1.8g/cm
3~2.5g/cm
3であり、比表面積(ブルナウアー・エメット・テラー法;BET)が3m
2/g~50m
2/gである、請求項11に記載の多孔質ケイ素炭素複合体。
【請求項19】
ケイ素系原料およびマグネシウム系原料を用いてケイ素複合酸化物粉末を得る第1工程;
フッ素(F)原子含有化合物を含むエッチング液を用いてケイ素複合酸化物粉末をエッチングする第2工程;および
エッチングにより得られた複合体をろ過および乾燥して多孔質ケイ素複合体を得る第3工程
を含む、請求項1に記載の多孔質ケイ素複合体の調製方法。
【請求項20】
ケイ素系原料およびマグネシウム系原料を用いてケイ素複合酸化物粉末を得る第1工程;
フッ素(F)原子含有化合物を含むエッチング液を用いてケイ素複合酸化物粉末をエッチングする第2工程;
エッチングにより得られた複合体をろ過および乾燥して多孔質ケイ素複合体を得る第3工程;および
化学的熱分解堆積法を用いて多孔質ケイ素複合体の表面に炭素層を形成して多孔質ケイ素炭素複合体を調製する第4工程
を含む、請求項11に記載の多孔質ケイ素炭素複合体の調製方法。
【請求項21】
第2工程において、エッチング液が、有機酸、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸およびクロム酸からなる群から選択される1つ以上の酸をさらに含む、請求項20に記載のケイ素炭素複合体の調製方法。
【請求項22】
第4工程の後に、多孔質ケイ素炭素複合体の平均粒径が2μm~15μmとなるように多孔質ケイ素炭素複合体を粉砕または圧砕および分級する工程をさらに含む、請求項20に記載の多孔質ケイ素炭素複合体の調製方法。
【請求項23】
第4工程における炭素層の形成は、下記式1~3:
[式1]
C
NH
(2N+2-A)[OH]
A
(式1中、Nは1~20の整数であり、Aは0または1である)
[式2]
C
NH
(2N-B)
(式2中、Nは2~6の整数であり、Bは0~2の整数である)
[式3]
C
xH
yO
z
(式3中、xは1~20の整数であり、yは0~25の整数であり、zは0~5の整数である)
で表される化合物から選択される少なくとも1つを注入し、400℃~1200℃の気体状態で反応させることにより行われる、請求項20に記載のケイ素炭素複合体の調製方法。
【請求項24】
請求項11に記載の多孔質ケイ素炭素複合体を含む、リチウム二次電池用負極活物質。
【請求項25】
炭素系負極材料をさらに含む、請求項24に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項26】
炭素系負極材料の含有量は、負極活物質の総重量に基づいて、5重量%~95重量%である、請求項25に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項27】
請求項24に記載のリチウム二次電池用負極活物質を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質ケイ素複合体、多孔質ケイ素炭素複合体、およびそれらを含む負極活物質に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信産業の発展に伴う電子機器の小型化、軽量化、薄型化、可搬性の向上に伴い、これら電子機器の電源となる電池の高エネルギー密度の要求が高まっている。この需要に最も応える電池がリチウム二次電池であり、これを用いた小型電池や自動車などの大型電子機器や蓄電システムへの応用研究が盛んに行われている。
【0003】
このようなリチウム二次電池の負極活物質として炭素材料が広く使用されている。ケイ素系の負極活物質は、電池の容量をさらに高めるために研究されている。ケイ素の理論容量(4,199mAh/g)はグラファイト(372mAh/g)の10倍以上であるため、電池容量の大幅な向上が期待される。
【0004】
ケイ素にリチウムをインターカレートした場合の反応スキームは、例えば以下のようになる。
【化1】
【0005】
上記の反応スキームによるケイ素系負極活物質では、ケイ素原子当たり最大4.4個のリチウム原子を含有する高容量の合金が形成される。しかし、ほとんどのケイ素系負極活物質では、リチウムのインターカレーションにより最大300%の体積膨張が誘発され、負極が破壊され、高いサイクル特性を示すことが困難となる。
【0006】
また、この体積変化により負極活物質の表面に亀裂が生じ、負極活物質内にイオン性物質が形成され、それによって負極活物質と集電体が電気的に分離される場合がある。この電気的分離現象により、電池の容量維持率が著しく低下する場合がある。
【0007】
この問題を解決するために、日本国特許第4393610号には、ケイ素および炭素を機械的に加工して複合体を形成し、化学蒸着(CVD)法を用いてケイ素粒子の表面が炭素層でコーティングされた負極活物質が開示されている。
【0008】
また、日本国特開2016-502253号公報には、多孔質ケイ素系粒子および炭素粒子を含む負極活物質が開示されており、前記炭素粒子は、平均粒径の異なる微粒子炭素粒子と粗粒炭素粒子とを含む。
【0009】
しかしながら、これらの先行技術文献はケイ素及び炭素を含む負極活物質に関するものであるが、充放電時の体積膨張や収縮を抑制するには限界がある。したがって、これらの問題を解決するための研究が依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】日本国特許第4393610号
【特許文献2】日本国特開2016-502253号公報
【特許文献3】韓国公開特許第2018-0106485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来技術の問題点を解決するために考案された。本発明の目的は、多孔質ケイ素複合体がケイ素粒子およびマグネシウム化合物を含み、特定の範囲に制御された多孔質ケイ素複合体中の酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)を有することにより、負極活物質に適用した場合に、二次電池の性能が向上する多孔質ケイ素複合体を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、多孔質ケイ素複合体および炭素を含むことにより、負極活物質に適用した場合に、優れた容量維持率と同様に、大幅に改善された放電容量および初期効率を有する多孔質ケイ素炭素複合体に提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、多孔質ケイ素複合体および多孔質ケイ素炭素複合体の調製方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、多孔質ケイ素炭素複合体を含む負極活物質、および多孔質ケイ素炭素複合体を含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ケイ素粒子およびマグネシウム化合物を含む多孔質ケイ素複合体を提供し、前記多孔質ケイ素構複合体の酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)は0.01~0.35である。
【0016】
さらに、本発明は、多孔質ケイ素複合体および炭素を含む多孔質ケイ素炭素複合体を提供する。
【0017】
さらに本発明は、多孔質ケイ素複合体の調製方法を提供し、この方法は、ケイ素系原料およびマグネシウム系原料を用いてケイ素複合酸化物粉末を得る第1工程;フッ素(F)原子含有化合物を含むエッチング液を使用してケイ素複合酸化物粉末をエッチングする第2工程;およびエッチングにより得られた複合体をろ過および乾燥して多孔質ケイ素複合体を得る第3工程を含む。
【0018】
さらに本発明は、多孔質ケイ素炭素複合体の調製方法を提供し、この方法は、ケイ素系原料およびマグネシウム系原料を用いてケイ素複合酸化物粉末を得る第1工程;フッ素(F)原子含有化合物を含むエッチング液を用いてケイ素複合酸化物粉末をエッチングする第2工程;エッチングにより得られた複合体をろ過および乾燥して多孔質ケイ素複合体を得る第3工程;および化学的熱分解堆積法を用いて多孔質ケイ素複合体の表面に炭素層を形成して多孔質ケイ素炭素複合体を得る第4工程を含む。
【0019】
さらに、本発明は、多孔質ケイ素炭素複合体を含むリチウム二次電池用負極活物質を提供する。
【0020】
さらに、本発明はリチウム二次電池用負極活物質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本実施形態によれば、多孔質ケイ素複合体は、ケイ素粒子およびマグネシウム化合物を含み、多孔質ケイ素複合体中の酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)が特定の範囲に制御されているため、二次電池の負極活物質としてバインダーおよび導電性材料とともに使用して負極活物質組成物を調製する場合、分散安定性が向上し、強度などの機械的特性に優れ、負極活物質に適用した場合に二次電池の性能を高めることができる。
【0022】
別の実施形態によれば、多孔質ケイ素複合体および炭素を含む多孔質ケイ素炭素複合体は、負極活物質に適用した場合、大幅に向上した放電容量および初期効率、ならびに優れた容量維持率を有する。
【0023】
また、本実施形態の方法は、工程数が最小限の連続プロセスにより大量生産が可能であるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本明細書に添付の以下の図面は、本発明の好適な実施形態を示すものであり、本発明の説明と併せて本発明の技術的思想をさらに理解するのに役立つものである。したがって、本発明は図面に示されたもののみに限定されるものと解釈されるべきではない。
【
図1】
図1は、実施例6で作製された多孔質ケイ素複合体(B4)の電界放射形走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。
【
図2】
図2は、実施例6で作製された多孔質ケイ素複合体(B4)のイオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)写真である。
【
図3】
図3は、実施例6で作製された多孔質ケイ素炭素複合体(C6)の表面の電界放射形走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真を示す。倍率に従ってそれぞれ
図3a~
図3dに示す。
【
図4】
図4は、実施例6で作製された多孔質ケイ素炭素複合体(C6)のイオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)写真である。
【
図5】
図5は、実施例6で作製された多孔質ケイ素炭素複合体(C6)のFIB-SEM EDAX写真(a)および複合体中の成分分析の表(b)である。
【
図6】
図6は、実施例6のケイ素複合酸化物(A3)(a)、多孔質ケイ素複合体(B4)(b)および多孔質ケイ素炭素複合体(C6)(c)のX線回折分析の測定結果を示す。
【
図7】
図7は、実施例3の多孔質ケイ素炭素複合体(C3)のX線回折分析の測定結果を示す。
【
図8】
図8aおよび8bは、実施例1で作製された多孔質ケイ素複合体(B1)の走査型電子顕微鏡(SEM)によって分析された、異なる倍率での写真を示す。
【
図9】
図9は、実施例1の多孔質ケイ素炭素複合体(C1)のラマン分析の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、以下に開示する内容に限定されるものではない。その他、本発明の要旨を変更しない範囲で種々変形して実施してよい。
【0026】
本明細書において、ある部分(part)がある要素(element)を「含む」と表現される場合、別段の指示がない限り、その部分は他の要素も同様に含み得ると理解されるべきである。
【0027】
さらに、本明細書で使用される成分の量、反応条件などに関連するすべての数値および表現は、別段の指示がない限り、用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。
【0028】
[多孔質ケイ素複合体]
本発明の一実施形態に係る多孔質ケイ素複合体は、ケイ素粒子およびマグネシウム化合物を含み、多孔質ケイ素複合体における酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)が0.01~0.35である。
【0029】
多孔質ケイ素複合体は、ケイ素粒子とマグネシウム化合物とを共に含むため、二次電池の性能をさらに向上させることができる。具体的には、ケイ素粒子がリチウムを充電するため、二次電池の容量を高めることができる。マグネシウム化合物は、リチウムイオンと反応しにくいため、電極の膨張および収縮の度合いが小さくなり、リチウムイオンを吸蔵した際のケイ素粒子の体積膨張が抑制され、サイクル特性(容量維持率)を向上させる効果がある。
【0030】
また、ケイ素粒子を取り囲む連続相であるマトリックスがマグネシウム化合物により強度が高められ、ケイ素粒子の体積膨張が抑制されるため、リチウムイオンの吸蔵および放出時の体積変化が小さく、充放電を繰り返しても電極活物質のクラックの発生を最小限に抑えることができる。さらに、マグネシウム化合物がケイ素粒子に隣接して配置されているため、ケイ素粒子と電解質溶媒との接触が最小限に抑えられ、ケイ素粒子と電解質溶媒との間の反応が最小限に抑えられ、これにより、初期充放電効率の低下を防止し、ケイ素粒子の膨張を抑制することができ、容量維持率を向上させることができる。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、多孔質ケイ素複合体は、ケイ素粒子が相互に連結されたケイ素凝集体を含んでよい。
【0032】
具体的には、多孔質ケイ素複合体は、2以上のケイ素粒子が相互連結された三次元(3D)構造を有するケイ素凝集体を含んでよい。ケイ素粒子はリチウムを充電するため、ケイ素粒子を使用しないと二次電池の容量が低下する可能性がある。特に、ケイ素粒子が相互に連結したケイ素凝集体を含む場合には、強度等の優れた機械的特性が得られる。また、多孔質ケイ素複合体は、バインダーおよび導電性材料を用いて負極活物質組成物を調製する際に、容易に分散し得る。負極活物質組成物を集電体上に適用する場合、その作業性が優れる。
【0033】
また、ケイ素凝集体は多孔質ケイ素複合体の内部に均一に分布していてもよく、互いに連結していないケイ素粒子が含まれていてもよい。ケイ素粒子および/またはケイ素凝集体は、多孔質ケイ素複合体の内部に均一に分布していてよい。このような場合、充放電などの優れた電気化学的特性が達成される。
【0034】
ケイ素粒子は、結晶粒子を含んでもよく、X線回折分析における結晶子サイズ(X線回折分析結果から換算)が1nm~20nmであってもよい。
【0035】
具体的には、本発明の一実施形態による多孔質ケイ素複合体をカソードターゲットとして銅を用いたX線回折(Cu-Kα)分析を行い、2θ=47.5゜付近のSi(220)の回折ピークの半値全幅(FWHM)に基づいてシェラー方程式により計算した場合に、ケイ素粒子は、好ましくは1nm~15nm、より好ましくは1nm~10nmの結晶子サイズを有してよい。
【0036】
ケイ素粒子の結晶子サイズが1nm未満であると、多孔質ケイ素複合体内部にミクロ細孔を形成することが困難となり、充電容量と放電容量の比を表すクーロン効率の低下を抑制できず、また、比表面積が大きすぎるため、大気中で取り扱う場合には酸化の問題を防ぐことができない。また、結晶子サイズが20nmを超えると、ミクロ細孔は充放電時に起こるケイ素粒子の体積膨張を十分に抑制できず、充放電を繰り返すことによる充電容量と放電容量の比を表すクーロン効率の低下を抑制できない。
【0037】
ケイ素粒子の結晶子サイズを上記範囲内で小さくするほど、より密度の高い複合体が得られ、マトリックスの強度を高めることができる。したがって、このような場合には、放電容量、初期効率、サイクル寿命特性などの二次電池の性能をさらに向上させることができる。
【0038】
さらに、多孔質ケイ素複合体は、非晶質ケイ素またはこれと類似の相のケイ素をさらに含んでもよい。ケイ素粒子は、多孔質ケイ素複合体の内部に均一に分布していてもよい。このような場合、充放電などの優れた電気化学的特性が達成できる。
【0039】
一方、多孔質ケイ素複合体はマグネシウム化合物を含む。
【0040】
マグネシウム化合物は二次電池の充放電時にリチウムイオンと反応しにくいため、電極内にリチウムイオンが吸蔵される際の電極の膨張および収縮を低減することができ、二次電池のサイクル特性を向上させることができる。さらに、ケイ素を取り囲む連続相であるマトリックスの強度は、マグネシウム化合物によって強化される。
【0041】
マグネシウム化合物は、フッ素含有マグネシウム化合物を含んでもよい。
【0042】
以下、本発明の一実施形態によるフッ素含有マグネシウム化合物を含む多孔質ケイ素複合体の好ましい特性について説明する。
【0043】
一般に、ケイ素粒子は、二次電池の充電中にリチウムイオンを吸蔵して合金を形成し、格子定数が増加して体積が膨張する場合がある。また、二次電池の放電時にはリチウムイオンが放出されて元の金属ナノ粒子に戻り、格子定数が低下する。
【0044】
フッ素含有マグネシウム化合物は、リチウムイオンの吸蔵および放出中に結晶格子定数の変化を伴わないゼロ歪み材料といえる。ケイ素粒子は、フッ素含有マグネシウム化合物粒子間に存在していてもよいし、フッ素含有マグネシウム化合物粒子に囲まれていてもよい。
【0045】
また、フッ素含有マグネシウム化合物は、リチウム二次電池の充電時にリチウムイオンを放出しない。例えば、リチウム二次電池の充電時にリチウムイオンを吸蔵および放出しない不活性物質でもある。
【0046】
ケイ素粒子からはリチウムイオンが放出されるが、フッ素含有マグネシウム化合物からは充電時に急激に増加したリチウムイオンが放出されない。このように、フッ素含有マグネシウム化合物を含む多孔質マトリックスは、電池の化学反応には関与しないが、二次電池の充電時におけるケイ素粒子の体積膨張を抑制する体として機能することが期待される。
【0047】
フッ素含有マグネシウム化合物は、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化ケイ酸マグネシウム(MgSiF6)、またはそれらの混合物を含んでよい。また、フッ素含有マグネシウム化合物をカソードターゲットとして銅を用いたX線回折(Cu-Kα)分析を行い、2θ=40°付近のMgF2(111)の回折ピークの半値全幅(FWHM)に基づいてシェラー式により計算した場合に、MgF2は、2nm~35nm、5nm~25nm、または5nm~15nmの結晶子サイズを有してよい。MgF2の結晶子サイズが上記範囲にあると、リチウム二次電池の充放電時におけるケイ素粒子の体積膨張の抑制体として機能する場合がある。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、ケイ素粒子のSi(220)結晶面に相当する銅をカソードターゲットとして用いたX線回折(Cu-Kα)分析において、2θ=40.4°付近のMgF2(111)結晶面に対応する回折ピーク強度(IB)と2θ=47.3°付近のSi(220)の回折ピーク強度(IA)との比であるIB/IAは、0より大きく1以下であってよい。IB/IAが1を超えると、二次電池の容量が低下するなどの問題が生じる場合がある。
【0049】
マグネシウム化合物は、ケイ酸マグネシウムをさらに含んでもよく、それを多孔質ケイ素複合粉末の中心により多く含んでもよい。
【0050】
ケイ酸マグネシウムは、MgSiO3、Mg2SiO4、またはそれらの混合物を含んでもよい。
【0051】
特に、多孔質ケイ素複合体がMgSiO3を含むことにより、クーロン効率または容量維持率が向上する場合がある。
【0052】
ケイ酸マグネシウムの含有量は、多孔質ケイ素複合体の総重量に基づいて、0重量%~30重量%、0.5重量%~25重量%、または0.5重量%~20重量%であってもよい。
【0053】
本発明の一実施形態による多孔質ケイ素複合体において、エッチングによりケイ酸マグネシウムをフッ素含有マグネシウム化合物に変換してよい。
【0054】
例えば、エッチング方法またはエッチングの程度に応じて、ケイ酸マグネシウムの一部、大部分、または全部がフッ素含有マグネシウム化合物に変換されてよい。より具体的には、ケイ酸マグネシウムの大部分がフッ素含有マグネシウム化合物に変換されてよい。
【0055】
一方、多孔質ケイ素複合体中のマグネシウム(Mg)の含有量は、多孔質ケイ素複合体の総重量に基づいて、0.2重量%~20重量%であってよく、好ましくは0.2重量%~15重量%、より好ましくは0.2重量%~10重量%であってもよい。多孔質ケイ素複合体中のマグネシウム(Mg)の含有量が0.2重量%以上であると、二次電池の初期効率が向上する場合がある。20重量%以下であると、充放電容量、サイクル特性および操作安定性が良好となる場合がある。
【0056】
一方、本発明の一実施形態によれば、多孔質ケイ素複合体の表面に存在する酸素原子の数を減少させることができる。すなわち、本発明の重要な特徴は、酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)を大幅に低減できることにある。
【0057】
多孔質ケイ素複合体中の酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)は、0.01~0.35であってもよい。多孔質ケイ素複合体中の酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)は、好ましくは0.01~0.25、より好ましくは0.01~0.10、さらに好ましくは0.01~0.08であってよい。
【0058】
本発明の一実施形態によれば、酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)が大幅に低減されるため、表面抵抗を低減することができる。その結果、多孔質ケイ素複合体を負極活物質に適用した場合、二次電池の電気化学特性を著しく向上させることができるため好ましい。
【0059】
具体的には、本発明の一実施形態によれば、多孔質ケイ素複合体に含有される二酸化ケイ素の大部分をエッチングにより除去することができる。このような場合、ケイ素粒子の表面には、酸素(O)原子に比べてケイ素(Si)原子が非常に多く含まれる場合がある。すなわち、モル比O/Siが大幅に減少する場合がある。この多孔質ケイ素複合体を負極活物質として用いることにより、優れた放電容量を有する二次電池を好ましくは得ることができ、二次電池の初期効率を向上させることができる。
【0060】
一般に、ケイ素を含む負極活物質は、酸素の割合が少なくなるほど、高い放電容量が得られる一方、充電による体積膨張率が大きくなる。一方、酸素の割合が増加すると、体積膨張率が抑制されが、放電容量が低下する場合がある。
【0061】
酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)が上記範囲を満たすと、ケイ素に起因する活性相が増加し、二次電池の初期放電容量および初期効率が向上する。
【0062】
具体的には、本発明の一実施形態によれば、多孔質ケイ素複合体の酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)が0.01以上であると、充放電による膨張および収縮を抑制できる。したがって、多孔質ケイ素複合体を負極活物質として用いた場合に、負極集電体からの負極活物質の剥離を抑制することができる。また、酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)が0.35以下であると、十分な充放電容量を確保することができ、高い充放電特性を維持することができる。
【0063】
多孔質ケイ素複合体は、複数の細孔を含んでもよい。
【0064】
前記多孔質ケイ素複合体は多孔質構造であるため、二次電池の充放電時に生じるケイ素粒子の体積膨張を収容でき、体積膨張による問題を効果的に緩和および抑制できる。
【0065】
多孔質ケイ素複合体は、その内部、その表面、またはその両方に複数の細孔を含んでもよい。ケイ素複合体内で細孔は互いにつながって開放気孔を形成していてもよい。
【0066】
多孔質ケイ素複合体の表面をガス吸着法(BETプロット法)により測定した場合に、2nm以下のミクロ細孔と、2nmを超え50nm以下のメソ細孔とを含んでもよい。
【0067】
2nm以下のミクロ細孔の細孔容積は、0.01cm3/g~0.5cm3/gであってよく、好ましくは0.05cm3/g~0.45cm3/g、より好ましくは0.1cm3/g~0.4cm3/gである。
【0068】
2nm超~50nmのメソ細孔の細孔容積は、0.2cm3/g~0.7cm3/gであってよく、好ましくは0.2cm3/g~0.6cm3/g、より好ましくは0.2cm3/g~0.5cm3/gであってよい。
【0069】
細孔が前記細孔容積を満たす2nm以下のミクロ細孔と、2nm超~50nmのメソ細孔とを含む場合には、ケイ素複合体中の細孔は均一かつ大量に含まれていてもよい。
【0070】
さらに、細孔は、50nm超~250nmのマクロ細孔をさらに含んでもよい。50nm超~250nmのマクロ細孔の細孔容積は、0.01cm3/g~0.3cm3/gであってよく、好ましくは0.01cm3/g~0.2cm3/g、より好ましくは0.01cm3/g~0.15cm3/gであってよい。
【0071】
また、多孔質ケイ素複合体においては、ケイ素粒子および/またはケイ素粒子同士が連結したケイ素凝集体が多孔質ケイ素複合体の内部に均一に分布していることが好ましい。その結果、多孔質ケイ素複合体は強度などの優れた機械的特性を有する。また、多孔質構造を有するため、二次電池の充放電時に生じるケイ素粒子の体積膨張を収容(吸収)でき、体積膨張による問題を効果的に緩和および抑制できる。
【0072】
本発明の一実施形態によれば、多孔質ケイ素複合体は酸化ケイ素化合物をさらに含んでもよい。
【0073】
酸化ケイ素化合物は、式SiOx(0.5≦x≦2)で表されるケイ素系酸化物であってもよい。酸化ケイ素化合物は、具体的にはSiOx(0.8<x≦1.2)であってもよく、より具体的にはSiOx(0.9<x≦1.1)であってもよい。SiOx式において、xの値が0.5未満であると、二次電池の充放電時の膨張および収縮が大きくなり、寿命特性が低下する場合がある。また、xが2を超えると、不活性酸化物の量が多くなり、二次電池の初期効率が低下するという問題が生じる場合がある。
【0074】
酸化ケイ素化合物は、多孔質ケイ素複合体の総重量に基づいて0.1モル%~5モル%の量で使用してよい。
【0075】
酸化ケイ素化合物の含有量が0.1重量%未満であると、二次電池の体積が膨張し、これらの寿命特性が低下する場合がある。一方、酸化ケイ素化合物の含有量が5重量%を超えると、二次電池の初期不可逆反応が増加して初期効率が低下する場合がある。
【0076】
本明細書において、ケイ素粒子の性質およびそれらの表面の特徴は、本発明の効果を損なわない範囲で、ケイ素凝集体およびケイ素凝集体の表面の性質を包含してもよい。
【0077】
本発明の一実施形態による多孔質ケイ素複合体は、ケイ素粒子の表面に形成されたケイ素酸化物(SiOx、0.1<x≦2)をさらに含んでよい。ケイ素酸化物(SiOx、0.1<x≦2)は、ケイ素の酸化によって形成されてよい。
【0078】
多孔質ケイ素複合体における酸素(O)の含有量は、多孔質ケイ素複合体の総重量に基づいて、0.1重量%~15重量%であってよく、好ましくは0.5重量%~10重量%、より好ましくは0.5重量%~8重量%であってよい。多孔質ケイ素複合体の酸素(O)含有量が0.1重量%未満であると、二次電池の充電時の膨張度が大きくなり、サイクル特性が低下するため好ましくない。多孔質ケイ素複合体の酸素(O)含有量が15重量%を超えると、多孔質ケイ素複合体を負極活物質として使用する場合、リチウムとの不可逆反応が増加して初期充放電効率が低下したり、負極集電体から剥離しやすくなったり、充放電サイクルが低下したりする懸念が生じる場合がある。
【0079】
多孔質ケイ素複合体の平均粒径(D50)は1μm~15μmであってもよく、好ましくは2μm~10μm、より好ましくは3μm~8μmであってもよい。多孔質ケイ素複合体の平均粒径(D50)が15μmを超えると、リチウムイオンの充電による多孔質ケイ素複合体の膨張が激しくなり、充放電を繰り返すうちに複合体中の粒子間の結合力および粒子と集電体との結合力が低下し、寿命特性が著しく低下する場合がある。また、比表面積の低下による活性の低下が懸念される。多孔質ケイ素複合体の平均粒径(D50)が1μm未満の場合、多孔質ケイ素複合体を用いた負極スラリー(負極活物質組成物)の調製時に、多孔質ケイ素複合体の凝集により分散性が低下することが懸念される。
【0080】
多孔質ケイ素複合体の比重は1.5g/cm3~2.3g/cm3であってよく、好ましくは1.6g/cm3~2.3g/cm3、より好ましくは1.6g/cm3~2.2g/cm3であってもよい。
【0081】
ここで、比重は粒子密度、密度、または真密度を指す場合がある。本発明の一実施形態によれば、比重の測定、例えば乾燥密度計による比重の測定には、乾燥密度計として島津製作所製Acupick II1340を使用してよい。使用するパージガスはヘリウムガスであってよく、温度23℃に設定したサンプルホルダー内で200回パージした後に測定を行ってよい。
【0082】
多孔質ケイ素複合体の比重が1.5g/cm3以上の場合、二次電池のサイクル特性の低下を抑えることができる。比重が2.3g/cm3以下の場合、電解液の含浸性が高くなり、負極活物質の利用率が高まり、初期充放電容量を向上させることができる。
【0083】
多孔質ケイ素複合体は、100m2/g~1,600m2/g、好ましくは200m2/g~1,400m2/g、より好ましくは300m2/g~1,200m2/gの比表面積(ブルナウアー・エメット・テラー法;BET)を有してよい。多孔質ケイ素複合体の比表面積が100m2/g未満であると、二次電池のレート特性が低下する場合がある。1,600m2/gを超えると、二次電池の負極集電体に適用するのに適した負極スラリーを調製することが困難な場合があり、電解液との接触面積が増加し、電解液の分解反応が促進されたり、二次電池の副反応が引き起こされる場合がある。
【0084】
多孔質ケイ素複合体の比表面積は、多孔質ケイ素複合体の粒子表面の表面積と、多孔質ケイ素複合体の表面および内部に存在する細孔(ミクロ細孔、マクロ細孔、メソ細孔)の表面積との和から求めることができる。
【0085】
[多孔質ケイ素炭素複合体]
本発明の実施形態によれば、多孔質ケイ素複合体および炭素を含む多孔質ケイ素炭素複合体が提供される。
【0086】
具体的には、多孔質ケイ素炭素複合体は、ケイ素粒子およびマグネシウム化合物を含み、多孔質ケイ素複合体中の酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)が0.01~0.35である多孔質ケイ素複合体と炭素とを含んでよい。
【0087】
多孔質ケイ素炭素複合体中の酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)は、ケイ素複合体の酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)と同じであっても、わずかに異なっていてもよい。すなわち、多孔質ケイ素炭素複合体中の酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)は0.01~0.35であってもよい。酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)が上記範囲を満たす多孔質ケイ素炭素複合体を負極活物質に適用すると、優れた容量維持率を維持しながら、放電容量および初期効率を著しく向上できる。
【0088】
多孔質ケイ素炭素複合体における酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)は、好ましくは0.01~0.25、より好ましくは0.01~0.10、さらに好ましくは0.01~0.08であってよい。
【0089】
本発明の一実施形態によれば、多孔質ケイ素炭素複合体中の酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)が0.01以上であると、充放電による膨張および収縮を抑制し得る。したがって、多孔質ケイ素炭素複合体を負極活物質として用いた場合に、負極集電体からの負極活物質の剥離を抑制できる。また、酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)が0.35以下であると、放電容量を確保でき、高い充放電特性を維持できる。
【0090】
また、多孔質ケイ素炭素複合体とは、複数のケイ素粒子が相互に連結したケイ素凝集体が、構造が単一の塊状、例えば、多面体、球体、または類似の形状を有する複合体中に均一に分布している複合体である。炭素、より具体的には、炭素を含む炭素層が、1以上のケイ素粒子の表面、または2以上のケイ素粒子が凝集して形成される二次ケイ素粒子(ケイ素凝集体)の表面の一部または全部を取り囲む単一複合体であってもよい。
【0091】
多孔質ケイ素炭素複合体では、二次電池の充放電時に生じる体積膨張は、負極活物質の外側部分よりも細孔部分に集中し、これにより、体積膨張を効果的に制御し、リチウム二次電池の寿命特性を向上させる。また、電解液が多孔質構造に浸透しやすくなり、出力特性が向上し、リチウム二次電池の性能をさらに向上させることができる。
【0092】
本明細書において、細孔はボイドと互換的に使用される場合がある。さらに、細孔は閉気孔を含んでもよい。閉気孔とは、気孔(細孔)の壁がすべて閉鎖構造となっており、他の気孔とつながっていない独立した気孔をいう。さらに、細孔は開気孔をさらに含んでもよい。開気孔は、気孔の壁の少なくとも一部が開いた開放構造で形成されており、他の気孔とつながっていてもよく、つながっていなくてもよい。また、ケイ素複合体の表面に配置されて外部に露出した細孔を指す場合もある。
【0093】
多孔質ケイ素炭素複合体は、多孔質ケイ素炭素複合体の体積に基づいて0.5体積%~40体積%の気孔率を有してもよい。気孔率は、多孔質ケイ素炭素複合体の閉気孔の気孔率であってもよい。具体的には、多孔質ケイ素炭素複合体の気孔率は、多孔質ケイ素炭素複合体の体積に対して、好ましくは0.5体積%~30体積%、より好ましくは1体積%~15体積%であってよい。
【0094】
ここで、気孔率とは「(単位質量当たりの細孔容積)/{(比容積+単位質量当たりの細孔容積)}」を指す。それは、水銀圧入法またはブルナウアー・エメット・テラー(BET)測定法によって測定され得る。
【0095】
本明細書において、比容積は、サンプルの1/(粒子密度)として計算される。BET法により単位質量当たりの細孔容積を測定し、上式から気孔率(%)を算出する。
【0096】
多孔質ケイ素炭素複合体の気孔率が上記範囲を満たすと、二次電池の負極活物質に適用した場合に、十分な機械的強度を維持しつつ、体積膨張の緩衝効果を得ることができる。これにより、ケイ素粒子の利用による体積膨張の問題を最小限に抑え、大容量化を実現し、寿命特性を高めることができる。多孔質ケイ素炭素複合体の気孔率が0.5体積%未満であると、充放電時における負極活物質の体積膨張を制御することが困難となる場合がある。40体積%を超えると、負極活物質に多数の細孔が存在することにより機械的強度が低下し、二次電池の製造過程、例えば、負極活物質スラリーの混合時や塗工後の圧延工程などにおいて負極活物質が崩壊する懸念がある。
【0097】
多孔質ケイ素炭素複合体は、複数の細孔を含んでいてもよく、各細孔の直径は互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0098】
多孔質ケイ素炭素複合体において、炭素は、多孔質ケイ素複合体に含まれるケイ素粒子およびマグネシウム化合物からなる群から選択される少なくとも1つの表面に存在していてもよい。また、炭素は、多孔質ケイ素炭素複合体に含有されるケイ素凝集体の表面に存在していてもよい。
【0099】
また、炭素がマトリックスとなり、炭素マトリックス中にケイ素粒子、マグネシウム化合物および細孔が分散していてもよい。
【0100】
具体的には、多孔質ケイ素炭素複合体は、ケイ素粒子または閉気孔(v)が島を形成し、炭素が海を形成する海島構造を有していてもよい。細孔には、開気孔と閉気孔とが含まれる。閉気孔は、気孔の内部が炭素で覆われていないものであってもよい。
【0101】
また、炭素は、多孔質ケイ素複合体に含有されるケイ素粒子およびマグネシウム化合物からなる群から選択される少なくとも1つの表面に存在する。炭素はマトリックスとして機能し、ケイ素粒子、マグネシウム化合物および細孔は炭素マトリックス中に分散していてもよい。
【0102】
多孔質ケイ素炭素複合体において、炭素は、多孔質ケイ素複合体の表面に存在していてもよいし、開気孔の内部に存在していてもよい。
【0103】
ケイ素粒子や炭素が均一に分散している状態は、透過型電子顕微鏡(TEM)による暗視野像や明視野像の画像観察により確認される。また、多孔質ケイ素炭素複合体の内部に細孔が均一に分散している状態は、上述した画像観察によっても確認される。
【0104】
また、ケイ素粒子の表面に形成されるケイ素酸化物(SiOx、0.1<x≦2)がさらに含有される場合には、炭素はケイ素酸化物(SiOx、0.1<x≦2)の表面に存在していてもよい。
【0105】
炭素はさらに、多孔質ケイ素複合体の表面に炭素層を形成してもよい。
【0106】
多孔質ケイ素炭素複合体は炭素層を含むため、これにより、細孔の存在による粒子間の電気的接触の困難が解消され、充放電時に電極が膨張した後でも優れた導電性が得られるため、二次電池の性能をさらに向上させることができる。
【0107】
さらに、本発明の一実施形態によれば、炭素層の厚さや炭素量を制御することにより、適切な導電性を得るとともに寿命特性の低下を防止し、高容量の負極活物質を得ることができる。
【0108】
一方、多孔質ケイ素複合体粒子の表面またはその内部およびその中の細孔は炭素コーティングで覆われているため、多孔質ケイ素炭素複合体の比表面積が大きく変化する場合がある。
【0109】
多孔質ケイ素炭素複合体は、3m2/g~50m2/g、好ましくは3m2/g~40m2/gの比表面積(ブルナウアー・エメット・テラー法;BET)を有してよい。多孔質ケイ素炭素複合体の比表面積が3m2/g未満であると、二次電池のレート特性が低下する場合がある。50m2/gを超えると、二次電池の負極集電体に適用するのに適した負極スラリーを調製することが困難な場合があり、電解液との接触面積が増加し、電解液の分解反応が促進されたり、二次電池の副反応が引き起こされる場合がある。
【0110】
多孔質ケイ素炭素複合体の比重は、1.8g/cm3~2.5g/cm3であってよく、好ましくは2.0g/cm3~2.5g/cm3、より好ましくは2.0g/cm3~2.4g/cm3であってもよい。比重は炭素層のコーティング量により変化する場合がある。炭素の量は一定であるが、上記範囲内で比重が大きいほど、複合体の細孔は少なくなる。したがって、負極活物質として使用すると、導電性が向上し、マトリックスの強度が強化され、初期効率やサイクル寿命特性が向上する。このような場合、比重は粒子密度、密度、または真密度を指す場合がある。測定方法は前述の通りである。
【0111】
多孔質ケイ素炭素複合体の比重が1.8g/cm3以上であると、充電時における負極活物質粉末の体積膨張による負極活物質粉末間の解離を防止し、サイクル低下を抑制することができる。比重が2.5g/cm3以下であると、電解液の含浸性が高くなり、負極活物質の利用率が高くなり、初期充放電容量を高めることができる。
【0112】
本発明の一実施形態による多孔質ケイ素炭素複合体は、多孔質構造を有するため、電解質が多孔質構造内に浸透しやすく、出力特性が向上する。したがって、多孔質ケイ素炭素複合体は、リチウム二次電池用負極活物質およびそれを含むリチウム二次電池の製造に有利に使用できる。
【0113】
一方、多孔質ケイ素炭素複合体において、ケイ素(Si)の含有量は、多孔質ケイ素炭素複合体の総重量に基づいて、30重量%~90重量%、30重量%~80重量%、または30重量%~70重量%であってよい。
【0114】
ケイ素(Si)の含有量が30重量%未満であると、リチウムを吸蔵および放出する活物質の量が少なくなり、リチウム二次電池の充放電容量が低下する場合がある。一方、90重量%を超えると、リチウム二次電池の充放電容量は増大するが、充放電時の電極の膨張および収縮が過度に大きくなり、負極活物質粉末の微粒子化がさらに進み、サイクル特性が低下する場合がある。
【0115】
多孔質ケイ素炭素複合体中のマグネシウム(Mg)の含有量は、多孔質ケイ素炭素複合体の総重量に基づいて、0.2重量%~20重量%、0.2重量%~15重量%、または0.2重量%~6重量%であってもよい。多孔質ケイ素炭素複合体中のマグネシウム(Mg)の含有量が0.2重量%未満であると、二次電池の初期効率が低下する場合がある。20重量%を超えると、二次電池の容量が低下するという問題がある場合がある。多孔質ケイ素炭素複合体中のマグネシウム(Mg)の含有量が上記範囲を満たすと、二次電池の性能をより向上させることができる。
【0116】
一方、本発明の一実施形態によれば、多孔質ケイ素炭素複合体は、マグネシウム以外の金属を含有するフッ化物および/またはケイ酸塩を含んでもよい。他の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族~第16族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。これらの具体例としては、Li、Ca、Sr、Ba、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Cr、Mo、W、Fe、Pb、Ru、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ge、P、As、Sb、Bi、SおよびSeが挙げられる。
【0117】
炭素(C)の含有量は、多孔質ケイ素炭素複合体の総重量に基づいて、10重量%~90重量%であってよい。具体的には、炭素(C)の含有量は、多孔質ケイ素炭素複合体の総重量に基づいて、10重量%~70重量%、15重量%~60重量%、または20重量%~50重量%であってもよい。
【0118】
炭素(C)の含有量が10重量%未満であると、導電性を高める効果が十分に期待できず、リチウム二次電池の電極寿命が低下するおそれがある。また、90重量%を超えると、二次電池の放電容量が低下し、嵩密度が低下して、単位体積当たりの充放電容量が低下する場合がある。
【0119】
炭素層の厚さは1nm~300nmであってもよい。炭素層の厚さは、1nm~40nmであることが好ましく、1nm~30nmであることがより好ましい。炭素層の厚さが1nm以上であると、導電性の向上が達成される場合がある。300nm以下であると、二次電池の容量の低下を抑制できる場合がある。
【0120】
炭素層の平均厚さは、例えば以下の手順で測定してよい。
【0121】
まず、負極活物質を透過型電子顕微鏡(TEM)により任意の倍率で観察する。倍率は、例えば肉眼で確認できる程度であることが好ましい。続いて、炭素層の厚さを任意の15点で測定する。このような場合には、測定位置を特定の領域に集中させず、できるだけ広範囲にランダムに選択することが好ましい。最後に、15点の炭素層の厚さの平均値を算出する。
【0122】
前記炭素層は、グラフェン、還元型酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよびグラファイトからなる群から選択される少なくとも1つを含んでよい。具体的には、グラフェンを含んでもよい。グラフェン、還元型酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、及びグラファイトからなる群より選択される少なくとも1つは、多孔質ケイ素複合体の表面に存在する炭素層だけでなく、ケイ素粒子の表面および炭素マトリックス中にも含有されていてよい。
【0123】
多孔質ケイ素炭素複合体は、2μm~15μmの平均粒径(D50)を有してよい。また、平均粒径(D50)は、レーザー光回折法による粒度分布測定において、累積体積50%のときの直径平均値(D50)(すなわち、粒子径またはメジアン径)として測定される値である。具体的には、平均粒径(D50)は3μm~10μmであることが好ましく、3μm~8μmであることがより好ましい。平均粒径(D50)が2μm未満であると、多孔質ケイ素炭素複合体を用いて負極スラリー(すなわち、負極活物質組成物)を調製する際、多孔質ケイ素炭素複合体粒子の凝集により分散性が低下することが懸念される。一方、D50が15μmを超えると、リチウムイオンの充電による複合粒子の膨張が激しくなり、充放電を繰り返すうちに複合体の粒子間の結合力および粒子と集電体との結合力が低下し、寿命特性が著しく低下する場合がある。また、比表面積の低下により活性が低下するおそれがある。より具体的には、多孔質ケイ素炭素複合体の平均粒径(D50)の最適化による顕著な改善効果を考慮すると、多孔質ケイ素炭素複合体粒子の平均粒径(D50)は3μm~6μmであることが好ましい。
【0124】
前記多孔質ケイ素炭素複合体を負極として使用する二次電池は、その放電容量、初期効率および容量維持率をさらに向上させることができる。
【0125】
[多孔質ケイ素複合体の調製方法]
前記多孔質ケイ素複合体の調製方法は、ケイ素系原料およびマグネシウム系原料を用いてケイ素複合酸化物粉末を得る第1工程;フッ素(F)原子含有化合物を含むエッチング液を用いてケイ素複合酸化物粉末をエッチングする第2工程;およびエッチングにより得られた複合体をろ過および乾燥して多孔質ケイ素複合体を得る第3工程を含む。
【0126】
一実施形態に係る方法は、最小限の工程の連続プロセスにより大量生産が可能であるという利点を有する。
【0127】
具体的には、多孔質ケイ素複合体の調製方法において、第1工程は、ケイ素系原料およびマグネシウム系原料を用いてケイ素複合酸化物粉末を得る工程を含んでよい。第1工程は、例えば、韓国公開特許公報第2018-0106485号に記載された方法を用いて行ってよい。
【0128】
本発明の一実施形態によれば、ケイ素複合酸化物粉末はケイ酸マグネシウムを含んでよい。
【0129】
前記ケイ素複合酸化物粉末中のマグネシウム(Mg)の含有量は、ケイ素複合酸化物の総重量に基づいて、0.2重量%~20重量%、0.2重量%~15重量%、または0.2重量%~10重量%であってよい。ケイ素複合酸化物中のマグネシウム(Mg)の含有量が上記範囲を満たすと、多孔質ケイ素複合体中の酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)は、本発明の一実施形態によって達成されるべき範囲を満たし得る。この場合、二次電池の放電容量、初期充放電効率および容量維持率などの二次電池の性能をより向上させることができる。
【0130】
本発明の一実施形態によれば、前記方法は、化学的熱分解堆積法を用いてケイ素複合酸化物の表面に炭素層を形成する工程をさらに含んでよい。
【0131】
具体的には、ケイ素粒子を含むケイ素複合酸化物粉末の表面に炭素層を形成した後、第2工程のエッチング処理を行ってもよい。この場合、均一なエッチングが可能となり、高い収率が得られるという利点がある。
【0132】
炭素層を形成する工程は、後述する多孔質ケイ素炭素複合体の調製方法の第4工程における炭素層を形成する工程と同様または同一の工程により行ってよい。
【0133】
多孔質ケイ素複合体の調製方法において、第2工程は、フッ素(F)原子含有化合物を含むエッチング液を用いてケイ素複合酸化物粉末をエッチングする工程を含んでよい。
【0134】
エッチング工程は、ドライエッチングおよびウェットエッチングを含んでもよい。
【0135】
ドライエッチングを用いると、選択的なエッチングが可能となる場合がある。
【0136】
エッチング工程により、ケイ素複合酸化物粉末の二酸化ケイ素が溶解および溶出して細孔が形成される。すなわち、エッチング工程では、フッ素(F)原子含有化合物を含むエッチング液を用いてケイ素複合酸化物粉末をエッチングして細孔を形成する。
【0137】
また、エッチング工程によりケイ酸マグネシウムがフッ素含有マグネシウム化合物に変換され、ケイ素粒子およびフッ素含有マグネシウム化合物を含む多孔質ケイ素複合体を調製することができる。
【0138】
ケイ素複合酸化物粉末を、フッ素(F)原子含有化合物(例えばHF)を用いてエッチングすると、ケイ酸マグネシウムの一部がフッ素含有マグネシウム化合物に変換され、同時に二酸化ケイ素が溶出除去された部分に細孔が形成される。その結果、ケイ素粒子、ケイ酸マグネシウムおよびフッ素含有マグネシウム化合物を含む多孔質ケイ素複合体が調製される。
【0139】
例えば、HFを用いたエッチング工程では、ドライエッチングを行う場合には、下記の反応式G1およびG2で表され、ウェットエッチングを行う場合には、以下の反応式L1a~L2で表される場合がある。
【0140】
【0141】
また、細孔は、以下の反応スキーム(2)および(3)によって形成されるとも考えられる。
【0142】
【0143】
上記反応スキームのような反応機構により、二酸化ケイ素がSiF4およびH2SiF6の形で溶解除去されることにより細孔(ボイド)が形成され得る。
【0144】
また、エッチングの程度によっては、多孔質ケイ素複合体に含有される二酸化ケイ素が除去され、細孔がその内部に形成される場合がある。
【0145】
エッチングの程度により細孔の形成の程度が変化する場合がある。
【0146】
さらに、エッチング前後の多孔質ケイ素複合体のO/Si比および比表面積は、それぞれ大きく変化する場合がある。
【0147】
また、炭素コーティング前後に、細孔が形成された多孔質ケイ素複合体の比表面積および比重が大きく変化する場合がある。
【0148】
エッチングにより、多孔質ケイ素複合体粒子の表面、あるいはその表面および内部に複数の細孔が形成された多孔質ケイ素複合体粉末を得ることができる。
【0149】
ここで、エッチングとは、ケイ素複合酸化物粉末を酸を含む酸性水溶液、例えば酸性水溶液としてフッ素(F)原子含有化合物を溶液中に含むエッチング液で処理する工程をいう。
【0150】
フッ素(F)原子含有化合物を含有するエッチング液としては、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に使用されているフッ素原子含有エッチング液を制限なく使用できる。
【0151】
具体的には、フッ素(F)原子含有化合物は、HF、NH4FおよびHF2からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。フッ素(F)原子含有化合物を使用することにより、多孔質ケイ素複合体がフッ素含有マグネシウム化合物を含み、エッチング工程をより迅速に行うことができる。
【0152】
エッチング液は、有機酸、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、およびクロム酸からなる群から選択される1つ以上の酸をさらに含んでもよい。
【0153】
エッチング条件としては、撹拌温度(処理温度)は、例えば10℃~90℃であってよく、好ましくは10℃~80℃、さらに好ましくは20℃~70℃であってよい。
【0154】
エッチングにより得られる多孔質ケイ素複合体は、多孔質のケイ素粒子を含んでよい。
【0155】
エッチングにより、多孔質ケイ素複合体の表面、内部、またはその両方に複数の細孔が形成された多孔質ケイ素複合体を得ることができる。ここで、多孔質ケイ素複合体は、2つ以上のケイ素粒子が相互に連結された3次元(3D)構造を有してよい。また、多孔質ケイ素複合体の平均粒径はエッチングによってほとんど変化しないという特徴がある。
【0156】
すなわち、エッチング前のケイ素複合酸化物粉末の平均粒径と、エッチングにより得られる多孔質ケイ素複合体の平均粒径は、ほぼ同じである。ケイ素複合酸化物粉末の平均粒径と多孔質ケイ素複合体の平均粒径との差(変化)は5%程度以内であってよい。
【0157】
さらに、多孔質ケイ素複合体の表面に存在する酸素の数は、エッチングによって減少する場合がある。すなわち、エッチングにより多孔質ケイ素複合体の表面の酸素分率を大幅に低減し、表面抵抗を低減できる。その結果、多孔質ケイ素複合体を負極活物質に適用すると、リチウム二次電池の電気化学特性、特に寿命特性を著しく向上させることができる。
【0158】
また、選択エッチングにより二酸化ケイ素が大量に除去されるため、ケイ素粒子またはケイ素凝集体の表面には酸素(O)に比べてケイ素(Si)が非常に多く含まれ得る。すなわち、多孔質ケイ素複合体中に存在する酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)が大幅に減少し得る。この場合、優れた容量維持率、ならびに高い放電容量および初期効率を有する二次電池を得ることができる。
【0159】
多孔質ケイ素複合体の調製方法において、第3工程は、エッチングにより得られた生成物をろ過しおよび乾燥して多孔質ケイ素複合体を得る工程を含んでもよい。ろ過および乾燥工程は常法により行ってよい。
【0160】
本発明の一実施形態に係る方法は、工程数が最小限の連続プロセスにより大量生産が可能であるという利点を有する。
【0161】
[多孔質ケイ素炭素複合体の調製方法]
本発明の一実施形態によれば、多孔質ケイ素複合体を用いる多孔質ケイ素炭素複合体の調製方法が提供される。
【0162】
本発明の一実施形態による多孔質ケイ素炭素複合体の調製方法は、ケイ素系原料およびマグネシウム系原料を用いてケイ素複合酸化物粉末を得る第1工程;フッ素(F)原子含有化合物を含むエッチング液を用いてケイ素複合酸化物粉末をエッチングする第2工程;エッチングにより得られた複合体をろ過および乾燥して多孔質ケイ素複合体を得る第3工程;および化学的熱分解堆積法を用いて多孔質ケイ素複合体の表面に炭素層を形成して多孔質ケイ素炭素複合体を得る第4工程を含む。
【0163】
多孔質ケイ素炭素複合体の粒子間の電気的接触が炭素層の形成工程によって高まる場合がある。また、充放電を行うことにより、電極が膨張した後でも優れた導電性を付与でき、二次電池の性能をさらに向上させることができる。具体的には、炭素層は、負極活物質の導電性を高めて電池の出力特性やサイクル特性を向上させたり、活物質の体積変化時の応力緩和効果を高めたりできる。以下、多孔質ケイ素炭素複合体の調製方法について詳細に説明する。
【0164】
第1~第3工程は、多孔質ケイ素複合体の調製方法で説明したものと同じである。多孔質ケイ素炭素複合体の調製方法において、第4工程は、化学的熱分解堆積法を用いて多孔質ケイ素複合体の表面に炭素層を形成する工程を含んでもよい。
【0165】
前記炭素層は、グラフェン、還元型酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、およびグラファイトからなる群から選択される少なくとも1つを含んでよい。
【0166】
炭素層の形成工程は、下記化学式1~化学式3で表される化合物から選択される少なくとも1つの炭素源ガスを注入し、第3工程で得られた多孔質ケイ素複合体を気体状態、400℃~1,200℃で反応させることによって行ってよい。
[式1]
CNH(2N+2-A)[OH]A
(式1中、Nは1~20の整数であり、Aは0または1である)
[式2]
CNH(2N-B)
(式2中、Nは2~6の整数であり、Bは0~2の整数である)
[式3]
CxHyOz
(式3中、xは1~20の整数であり、yは0~25の整数であり、zは0~5の整数である)
【0167】
前記化学式1で示される化合物は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、メタノール、エタノール、プロパノール、プロパンジオール、およびブタンジオールからなる群から選択される少なくとも1つであってよい。前記化学式2で表される化合物は、エチレン、アセチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、およびシクロペンテンからなる群から選択される少なくとも1つであってよい。前記化学式3で表される化合物は、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ナフタレン、アントラセン、およびジブチルヒドロキシトルエン(BHT)からなる群から選択される少なくとも1つであってよい。
【0168】
また、炭素コーティングは、多孔質ケイ素炭素複合体の内部の細孔の表面に均一に形成されていてもよい。これにより、サイクル寿命がさらに向上するため好ましい。
【0169】
前記炭素源ガスは、水素、窒素、ヘリウム、アルゴンから選択される少なくとも1つの不活性ガスをさらに含んでよい。反応は、例えば400℃~1200℃、具体的には500℃~1100℃、より具体的には600℃~1000℃で行ってよい。
【0170】
反応時間(または熱処理時間)は、所望の炭素コーティング量などに応じて適宜調整すればよい。例えば、反応時間は、10分~100時間、具体的には30分~90時間、さらに具体的には50分~40時間であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0171】
本発明の一実施形態による多孔質ケイ素炭素複合体の調製方法において、炭素源ガスの気相反応により、比較的低温でもケイ素複合体の表面に、グラフェン、還元型酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよびグラファイトから選択される少なくとも1つを主成分として含む薄く均一な炭素層を形成できる。また、炭素層における脱離反応は実質的に起こらない。
【0172】
また、気相反応により多孔質ケイ素複合体の表面全体に均一に炭素層が形成されるため、結晶性の高い炭素膜(炭素層)を形成できる。したがって、多孔質ケイ素炭素複合体を負極活物質として用いた場合、その構造を変えることなく、負極活物質の導電性を高めることができる。
【0173】
本発明の一実施形態によれば、炭素源ガスと不活性ガスとを含む反応性ガスがケイ素複合体の表面に供給されると、反応性ガスがケイ素複合体の開気孔に浸透し、グラフェン、還元型酸化グラフェンおよび酸化グラフェンから選択される1以上のグラフェン含有材料、および、カーボンナノチューブやカーボンナノファイバーなどの導電性炭素材料が多孔質ケイ素複合体の表面に成長する。例えば、多孔質ケイ素複合体中のケイ素表面に堆積した導電性炭素材料は、反応時間が経過するにつれて徐々に成長し、多孔質ケイ素炭素複合体が得られる。
【0174】
多孔質ケイ素炭素複合体の比表面積は、炭素コーティングの量に応じて減少する場合がある。
【0175】
グラフェン含有材料の構造は、層状、ナノシート状、または複数のフレークが混在した構造であってもよい。
【0176】
グラフェン含有材料を含む炭素層がケイ素複合体の表面全体に均一に形成されると、ケイ素凝集体、ケイ素粒子および/またはフッ素含有マグネシウム化合物の表面に、導電性が高く体積膨張に柔軟なグラフェン含有材料を直接成長させるため、体積膨張を抑えることができる。さらに、炭素層のコーティングはケイ素が電解質と直接接触する機会を減らし、それによって固体電解質界面(SEI)層の形成を減らす場合がある。
【0177】
また、本発明の一実施形態によれば、前記方法は、第4工程後(第4工程における炭素層の形成後)、多孔質ケイ素炭素複合体の平均粒径が2μm~15μmとなるように、多孔質ケイ素炭素複合体を粉砕または圧砕し、分級する工程をさらに含んでもよい。分級は、多孔質ケイ素炭素複合体の粒度分布を調整するために行われ、乾式分級、湿式分級、篩による分級などが挙げられる。乾式分級では、気流を利用して分散、分離、回収(固体と気体の分離)、排出の各工程を順次または同時に行うが、この際、粒子間の干渉、粒子形状、気流の乱れ、流速分布、静電気の影響等によって分級効率が低下しないように、分級前に前処理(水分、分散性、湿度等の調整)を行い、使用する気流中の水分または酸素濃度を調整してよい。また、多孔質ケイ素炭素複合体の粉砕または圧砕および分級を一度に行うことにより、所望の粒度分布を得ることができる。粉砕または圧砕後、分級機や篩などを用いて粗粉部分と粒状部分とに分けることが効果的である。
【0178】
本発明の方法は、工程数が最小限の連続プロセスにより大量生産が可能であるという利点を有する。
【0179】
この多孔質ケイ素炭素複合体を負極として使用する二次電池は、その容量、容量維持率および初期効率を向上させることができる。
【0180】
負極活物質
本発明の一実施形態による負極活物質は、多孔質ケイ素複合体を含んでよい。
【0181】
また、本発明の一実施形態による負極活物質は、多孔質ケイ素炭素複合体を含んでよい。
【0182】
また、負極活物質は、炭素系負極材料、具体的には、グラファイト系負極材料をさらに含んでもよい。
【0183】
負極活物質は、多孔質ケイ素複合体または多孔質ケイ素炭素複合体と炭素系負極材料、例えばグラファイト系負極材料との混合物として使用してよい。この場合、負極活物質の電気抵抗を低減できると同時に、充電時の膨張応力を緩和できる。炭素系負極材料は、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソカーボン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、熱分解炭素、コークス、ガラス炭素繊維、有機高分子化合物焼結体、カーボンブラックからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0184】
炭素系負極材料の含有量は、負極活物質の総重量に基づいて、5重量%~95重量%であってよく、好ましくは10重量%~70重量%、より好ましくは10重量%~60重量%であってもよい。
【0185】
また、一般に体積膨張が小さいグラファイト系材料に、結晶子サイズが20nm以下のケイ素粒子を混合して使用した場合、ケイ素粒子のみが大きな体積膨張を引き起こすことはない。グラファイト系材料とケイ素粒子との分離(separation)が少ないため、サイクル特性に優れた二次電池が得られる。
【0186】
二次電池
本発明の一実施形態によれば、本発明は、前記負極活物質を含む負極およびそれを含む二次電池を提供し得る。
【0187】
二次電池は、正極、負極、正極と負極との間に挟まれたセパレータ、およびリチウム塩が溶解された非水性液体電解質を含んでよい。負極は、多孔質ケイ素炭素複合体を含む負極活物質を含んでもよい。
【0188】
負極は、負極混合物のみで構成されていてもよいし、負極集電体とその上に担持された負極混合物層(負極活物質層)とで構成されていてもよい。同様に、正極は正極混合物のみで構成されていてもよいし、正極集電体とその上に担持された正極混合物層(正極活物質層)とで構成されていてもよい。さらに、負極混合物および正極混合物は、導電剤およびバインダーをさらに含んでもよい。
【0189】
負極集電体を構成する材料および正極集電体を構成する材料としては、当該分野で公知の材料を用いてよい。負極および正極に添加されるバインダーおよび導電性材料としては、当該分野で公知の材料を使用してよい。
【0190】
負極が集電体およびその上に担持された活物質層から構成される場合、負極は、多孔質ケイ素炭素複合体を含む負極活物質組成物を集電体の表面にコーティングし、乾燥させることによって製造してよい。
【0191】
さらに、二次電池は非水性液体電解質を含み、非水性液体電解質は、非水性溶媒および非水性溶媒に溶解されたリチウム塩を含んでよい。非水性溶媒としては、この分野で常用される溶媒を使用してよい。具体的には、非プロトン性有機溶媒を使用してよい。非プロトン性有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類、フラノン等の環状カルボン酸エステル類、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類、1,2-メトキシエタン、1,2-エトキシエタン、エトキシメトキシエタン等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0192】
二次電池は、非水二次電池を含んでもよい。
【0193】
多孔質ケイ素複合体または多孔質ケイ素炭素複合体を用いた負極活物質および二次電池は、容量、初期充放電効率および容量維持率を向上させることができる。
【0194】
発明を実施するための形態
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例は本発明を例示するものであり、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0195】
<実施例1>
多孔質ケイ素複合体および多孔質ケイ素炭素複合体の調製
(1)工程1:ケイ素粉末、二酸化ケイ素粉末、及び金属マグネシウムを用いて、韓国公開特許公報第2018-0106485号の実施例1に記載の方法により、下記表1に示す元素含有量及び物性値を有するケイ素複合酸化物粉末を調製した。
【0196】
(2)工程2:ケイ素複合酸化物粉末50gを水に分散させ、300rpmの速度で撹拌し、次いで、エッチング液として30重量%のHF水溶液650mlを加え、室温で1時間ケイ素複合酸化物粉末をエッチングした。
【0197】
(3)工程3:上記エッチングにより得られた生成物をろ過し、150℃で2時間乾燥させた。次に、多孔質複合体の粒子サイズを制御するために、乳鉢を用いて平均粒径5.8μmとなるように粉砕し、多孔質ケイ素複合体(B1)を作製した。
【0198】
(4)工程4:多孔質ケイ素複合体10gを管状電気炉内に設置し、アルゴン(Ar)ガスとメタンガスをそれぞれ1リットル/分の流量で流した。900℃で1時間保持した後、室温まで冷却することにより、多孔質ケイ素複合体の表面に炭素が被覆され、下記表3に示す各成分の含有量および物性を有する多孔質ケイ素炭素複合体が作製された。
【0199】
(5)工程5:多孔質ケイ素炭素複合体の粒子サイズを制御するために、機械的方法により平均粒径6.1μmとなるように粉砕、分級し、多孔質ケイ素炭素複合体(C1)を作製した。
【0200】
二次電池の製造
負極と、多孔質ケイ素炭素複合体を負極活物質として含む電池(コインセル)を用意した。
負極活物質、導電性材料としてのSuper-Pおよびポリアクリル酸を、重量比80:10:10の割合で水と混合し、固形分45%の負極活物質組成物を調製した。
負極活物質組成物を厚さ18μmの銅箔上に塗布し、乾燥して厚さ70μmの電極を作製した。電極を塗布した銅箔を直径14mmの円形に打ち抜き、コインセル用の負極プレートを作製した。
一方、正極プレートには厚さ0.3mmの金属リチウム箔を使用した。
厚さ25μmの多孔質ポリエチレンシートをセパレーターとして使用した。電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチレンカーボネート(DEC)の体積比1:1の混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解させた液体電解質を用いた。上記の構成要素を使用して、厚さ3.2mm、直径20mmのコインセル(電池)を製造した。
【0201】
<実施例2~8>
下記表1に示す元素含有量および物性を有するケイ素複合酸化物粉末を使用し、エッチング条件および炭素源ガスの種類および量を変更して各成分の含有量および複合体の物性を下記表1~3に示すように調整したこと以外は、実施例1と同様にして多孔質ケイ素炭素複合体を作製し、これを用いた二次電池を作製した。
【0202】
<比較例1>
実施例6のケイ素複合酸化物を用いたこと、工程(2)のエッチング液を用いたエッチング工程を行わなかったこと、各成分の含有量および複合体の物性を下記の表1~表3に示すように調整したこと以外は、実施例1と同様にして負極活物質およびそれを用いた二次電池を作製した。
【0203】
<比較例2>
実施例6のケイ素複合酸化物を用いたこと、エッチング液としてHFの代わりに硝塩酸を使用し、70℃で12時間エッチングを行ったこと、炭素源ガスの量を変化させて、各成分の含有量および複合体の物性を下記の表1~表3に示すように調整したこと以外は、実施例1と同様にして負極活物質およびそれを用いた二次電池を作製した。
【0204】
<比較例3>
エッチング液として30重量%のHF水溶液410mlを用い、各成分の含有量および複合体の物性を下記表1~3に示すように調整した以外は、実施例1と同様にして、多孔質ケイ素炭素複合体を調製し、これを用いた二次電池を製造した。
【0205】
試験例
<試験例1>電子顕微鏡分析
実施例6で作製した多孔質ケイ素複合体および多孔質ケイ素炭素複合体の表面を、それぞれ走査型電子顕微鏡(FE-SEM)写真(S-4700、日立)を用いて観察した。結果をそれぞれ
図1および
図3に示す。
【0206】
図1を参照すると、実施例6で作製された多孔質ケイ素複合体の表面には細孔が存在していた。
【0207】
さらに、
図3を参照すると、多孔質ケイ素複合体の表面に炭素層を含む多孔質ケイ素炭素複合体の表面の電界放射形走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真が倍率に応じてそれぞれ
図3(a)~
図3(d)に示されている。
図3(a)~(d)からわかるように、
図1と
図2を比較すると、複合体の表面には差異があり、ケイ素粒子が凝集して形成されたケイ素二次粒子(ケイ素凝集体)の表面に炭素層が形成されていることが確認された。
【0208】
一方、実施例6で作製した多孔質ケイ素複合体および多孔質ケイ素炭素複合体の内部を、それぞれイオンビーム走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)写真(S-4700、日立;QUANTA 3D FEG、FEI)を用いて観察した。結果をそれぞれ
図2および
図4に示す。
【0209】
図2を参照すると、実施例6で作製した多孔質ケイ素複合体の内部に細孔が存在していた。
図2から、多孔質ケイ素複合体の内部に浸透したエッチング液によって細孔が形成されたことが推察される。
【0210】
また、
図4を参照すると、多孔質ケイ素複合体の表面に炭素層を含む多孔質ケイ素炭素複合体の内部を観察した結果、多孔質ケイ素複合体の表面に炭素被覆層が形成された後でも、多孔質ケイ素複合体の内部に細孔が観察された。
【0211】
一方、
図5は、実施例6で作製した多孔質ケイ素炭素複合体のFIB-SEM EDAX(S-4700、日立;QUANTA 3D FEG、FEI;EDS System、EDAX)写真(a)と、複合体中の成分分析表(b)である。
【0212】
図5(b)を参照すると、多孔質ケイ素炭素複合体の内部には約15%の炭素含有量が確認され、炭素が細孔内部に被覆されていることが示唆された。
【0213】
また、
図5(b)の成分分析表に示すように、実施例6の多孔質ケイ素炭素複合体には、Mg、F、C、OおよびSi成分が観察された。
【0214】
図8aおよび
図8bは、実施例1で作製した多孔質ケイ素複合体(B1)の走査型電子顕微鏡(SEM)によって分析された、異なる倍率での写真を示す。
【0215】
図8aおよび
図8bからわかるように、本発明の実施形態による結晶子サイズを有するケイ素粒子が互いに連結したケイ素凝集体が存在し、その間にボイドが形成されていた。
【0216】
<試験例2>X線回折分析
実施例で作製したケイ素複合酸化物(A)、多孔質ケイ素複合体(B)および多孔質ケイ素炭素複合体(C)の結晶構造をX線回折装置により分析した(Malvern Panalytical, X'Pert3)。
【0217】
具体的には、印加電圧は40kV、印加電流は40mAとした。2θの範囲は10°~90°であり、0.05°間隔で走査して測定した。
【0218】
図6は、実施例6のケイ素複合酸化物(a)、多孔質ケイ素複合体(b)、多孔質ケイ素炭素複合体(c)のX線回折分析の測定結果を示す。
【0219】
図6(a)を参照すると、X線回折パターンから分かるように、実施例6のケイ素複合酸化物は、回折角(2θ)21.7°付近にSiO
2に相当するピーク;回折角(2θ)28.1°、47.0°、55.8°、68.6°、76.1°付近にSi結晶に対応するピーク;また、回折角(2θ)30.4°および35.0°付近にMgSiO
3に相当するピークを有しており、ケイ素複合酸化物が非晶質SiO
2、結晶質SiおよびMgSiO
3を含んでいることが確認された。
【0220】
図6(b)を参照すると、X線回折パターンから分かるように、実施例6の多孔質ケイ素複合体は、回折角(2θ)27.1°、35.2°、40.4°、43.5°、53.3°、60.9°、および67.9°付近にMgF
2結晶に対応するピーク;回折角(2θ)28.1°、47.0°、55.8°、68.6°、76.1°付近にSi結晶に対応するピークを有していた。また、MgSiO
3に対応するピークが消失し、MgF
2に対応するピークが現れていることから、エッチングによりMgSiO
3がMgF
2に変換されたことがわかる。
【0221】
図6(c)を参照すると、X線回折パターンから分かるように、実施例6の多孔質ケイ素炭素複合体は、回折角(2θ)27.1°、35.2°、40.4°、43.5°、53.3°、60.9°、67.9°、および76.4°付近にMgF
2結晶に対応するピーク;および、回折角(2θ)28.1°、47.0°、55.8°、68.6°、76.1°付近にSi結晶に対応するピークを有していた。炭素被覆前後で強度の変化以外に大きな変化はなかった。炭素の回折角(2θ)はSi(111)ピークと重なったため確認できなかった。
【0222】
図7は、実施例3の多孔質ケイ素炭素複合体のX線回折分析の測定結果を示す。
【0223】
図7を参照すると、X線回折パターンから分かるように、実施例3の多孔質ケイ素炭素複合体は、回折角(2θ)28.0°、34.9°、40.1°、43.4°、53.0°、60.2°付近にMgF
2結晶に対応するピーク;および回折角(2θ)28.1°、47.1°、55.8°、68.9°、76.4°付近にSi結晶に対応するピークを有していた。また、炭素の回折角(2θ)はSi(111)ピークと重なったため確認できなかった。
【0224】
なお、得られた多孔質ケイ素炭素複合体中のSiの結晶サイズは、X線回折分析におけるSi(220)に対応するピークの半値全幅(FWHM)に基づいて、下記式1のシェラーの式により求めた。
【0225】
[式1]
結晶サイズ(nm)=Kλ/Bcosθ
〔式1中、Kは0.9、λは0.154nm、Bは半値全幅(FWHM)、θはピーク位置(角度)である。〕
【0226】
<試験例3>複合体の構成元素の含有量および比重の分析
実施例および比較例で作製した複合体中のマグネシウム(Mg)、酸素(O)および炭素(C)の各構成元素の含有量を分析した。
【0227】
マグネシウム(Mg)の含有量は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法によって分析した。酸素(O)および炭素(C)の含有量は、それぞれ元素分析装置により測定した。ケイ素(Si)の含有量は、酸素(O)およびマグネシウム(Mg)の含有量に基づいて算出した値である。
【0228】
<試験例4>複合体粒子の平均粒径の測定
実施例および比較例で作製した複合体粒子の平均粒径(D50)は、レーザー光回折法による粒度分布測定における累積体積50%時の粒子サイズまたはメジアン径である粒径平均値D50として測定した。
【0229】
<試験例5>ラマン分析
実施例1で作製した多孔質ケイ素炭素複合体をラマン分光分析に供した。ラマン分析は、マイクロラマン分析装置(Renishaw、RM1000-In Via)を使用して2.41eV(514nm)で実行された。
結果としては、ラマン分光法で得られたラマンスペクトルには、2,600cm-1~2,760cm-1の範囲に2Dバンドのピーク、1,500cm-1~1,660cm-1の範囲にGバンドのピーク、1,300cm-1~1,460cm-1の範囲にDバンドのピークがあった。2Dバンドのピークの強度をI2D、Dバンドのピークの強度をID、Gバンドのピークの強度をIGとすると、ID、I2D、IGはそれぞれ1.0、0.1、0.82であり、(I2D+IG)/IDは0.92であった。
ラマン分光分析の結果から、炭素層はID、I2D、IGが上記の値を有しており、導電性が良好であり、二次電池の特性を向上させることができることが分かった。特に、(I2D+IG)/IDが0.92であるため、充放電時の副反応を抑制し、初期効率の低下を抑制することができた。
したがって、実施例1で作製された多孔質ケイ素炭素複合体は導電性に優れ、リチウム二次電池の性能を著しく向上させることができた。
【0230】
<試験例6>二次電池の容量、初期効率、容量維持率の測定
実施例および比較例で作製したコインセル(二次電池)を、0.1Cの定電流で電圧が0.005Vに達するまで充電し、0.1Cの定電流で電圧が2.0Vに達するまで放電して充電容量(mAh/g)、放電容量(mAh/g)、初期効率(%)を測定した。結果を以下の表4に示す。
【0231】
[式2]
初期効率(%)=放電容量/充電容量×100
【0232】
また、実施例および比較例で作製したコインセルについて上記と同様に充放電を1回行い、2サイクル目からは、0.5Cの定電流で電圧が0.005Vに達するまで充電し、0.5Cの定電流で電圧が2.0Vに達するまで放電し、サイクル特性(50サイクルの容量維持率、%)を測定した。結果を以下の表4に示す。
【0233】
[式3] 50サイクル後の容量維持率(%)=51回目の放電容量/2回目の放電容量×100
【0234】
実施例および比較例で作製された複合体の各元素の含有量および物性を下記表1~3にまとめた。これを用いた二次電池の特性を下記表4にまとめた。
【0235】
【0236】
【0237】
【0238】
【0239】
表4から分かるように、本発明の実施例1~8の多孔質ケイ素複合体および多孔質ケイ素炭素複合体は、ケイ素粒子およびマグネシウム化合物を含み、酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)が特定の範囲を満たしていた。その結果、これを用いて作製した二次電池は、比較例1~3の二次電池と比較して、放電容量、初期効率および容量維持率の点で性能が大幅に向上した。
【0240】
具体的には、酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)が0.03~0.11である多孔質ケイ素複合体を用いた実施例1~8の二次電池の放電容量は1,445mAh/g~2,074mAh/g、初期効率は86.1%~94.1%、容量維持率は84.1%~89.5%であり、二次電池の性能が全体的に優れていることを示した。
【0241】
一方、実施例6の二次電池と、実施例6の工程でエッチングを行わなかった比較例1の二次電池と、実施例6の工程でHFの代わりに硝塩酸を用いてエッチングを行った比較例2の二次電池とを比較した場合、実施例6の二次電池の放電容量は1,702mAh/g、初期効率は90%であった一方、比較例1および2の二次電池は、それぞれ、放電容量が1,453mAh/g、1,410mAh/g、初期効率が79.6%、77.5%であり、比較例1および2の二次電池は、実施例6の二次電池に比べて、放電容量および初期効率が大幅に低下していることが示された。
【0242】
また、実施例1の二次電池と、酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)が0.37であった比較例3の二次電池とを比較すると、比較例3の二次電池は、放電容量が1,505mAh/g、初期効率が84.2%であり、放電容量が1,922mAh/g、初期効率が91.4%であった実施例1の二次電池と比較して、性能が大幅に低下していることが分かった。
【0243】
したがって、複合体中の酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)を調整することにより、二次電池の性能を向上させることができることが確認された。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素粒子およびマグネシウム化合物を含む多孔質ケイ素複合体であり、多孔質ケイ素複合体中の酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)は0.01~0.35である、多孔質ケイ素複合体。
【請求項2】
多孔質ケイ素複合体は、前記ケイ素粒子が相互に連結されたケイ素凝集体を含むことを特徴とする、請求項1に記載の多孔質ケイ素複合体。
【請求項3】
マグネシウム化合物は、フッ素含有マグネシウム化合物を含み、前記フッ素含有マグネシウム化合物は、フッ化マグネシウム(MgF
2)、フッ化ケイ酸マグネシウム(MgSiF
6)、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の多孔質ケイ素複合体。
【請求項4】
マグネシウム化合物は、MgSiO
3、Mg
2SiO
4、またはそれらの混合物を含
み、多孔質ケイ素複合体中のマグネシウム(Mg)の含有量は、多孔質ケイ素複合体の総重量に基づいて、0.2重量%~20重量%である、請求項
3に記載の多孔質ケイ素複合体。
【請求項5】
前記ケイ素粒子の表面に形成されたケイ素酸化物(SiO
x、0.1<x≦2)をさらに含む、請求項1に記載の多孔質ケイ素複合体。
【請求項6】
多孔質ケイ素複合体中の酸素(O)の含有量が、多孔質ケイ素複合体の総重量に基づいて、0.1重量%~15重量%である、請求項
5に記載の多孔質ケイ素複合体。
【請求項7】
請求項1に記載の多孔質ケイ素複合体および炭素を含む、多孔質ケイ素炭素複合体。
【請求項8】
多孔質ケイ素炭素複合体中の酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)は0.01~0.35である、請求項
7に記載の多孔質ケイ素炭素複合体。
【請求項9】
多孔質ケイ素炭素複合体は内部に細孔を有し、多孔質ケイ素炭素複合体の気孔率は、多孔質ケイ素炭素複合体の体積に基づいて、0.5体積%~40体積%である、請求項
7に記載の多孔質ケイ素炭素複合体。
【請求項10】
炭素がケイ素粒子およびマグネシウム化合物からなる群から選択される少なくとも1つの表面に存在する、炭素がマトリックスとして機能し、前記炭素マトリックス中にケイ素粒子、マグネシウム化合物および細孔が分散されている、または炭素が両方の方法で存在する、請求項
7に記載の多孔質ケイ素炭素複合体。
【請求項11】
多孔質ケイ素炭素複合体は、平均粒径(D
50)が2μm~15μmであり、多孔質ケイ素炭素複合体は、比重が1.8g/cm
3~2.5g/cm
3であり、比表面積(ブルナウアー・エメット・テラー法;BET)が3m
2/g~50m
2/gである、請求項
7に記載の多孔質ケイ素炭素複合体。
【請求項12】
ケイ素系原料およびマグネシウム系原料を用いてケイ素複合酸化物粉末を得る第1工程;
フッ素(F)原子含有化合物を含むエッチング液を用いてケイ素複合酸化物粉末をエッチングする第2工程;および
エッチングにより得られた複合体をろ過および乾燥して多孔質ケイ素複合体を得る第3工程
を含む、請求項1に記載の多孔質ケイ素複合体の調製方法。
【請求項13】
ケイ素系原料およびマグネシウム系原料を用いてケイ素複合酸化物粉末を得る第1工程;
フッ素(F)原子含有化合物を含むエッチング液を用いてケイ素複合酸化物粉末をエッチングする第2工程;
エッチングにより得られた複合体をろ過および乾燥して多孔質ケイ素複合体を得る第3工程;および
化学的熱分解堆積法を用いて多孔質ケイ素複合体の表面に炭素層を形成して多孔質ケイ素炭素複合体を調製する第4工程
を含む、請求項
7に記載の多孔質ケイ素炭素複合体の調製方法。
【請求項14】
請求項
7に記載の多孔質ケイ素炭素複合体を含む、リチウム二次電池用負極活物質。
【請求項15】
請求項
14に記載のリチウム二次電池用負極活物質を含むリチウム二次電池。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0243
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0243】
したがって、複合体中の酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)を調整することにより、二次電池の性能を向上させることができることが確認された。
本発明の好ましい態様は、以下を包含する。
〔1〕
ケイ素粒子およびマグネシウム化合物を含む多孔質ケイ素複合体であり、多孔質ケイ素複合体中の酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)は0.01~0.35である、多孔質ケイ素複合体。
〔2〕
多孔質ケイ素複合体は、前記ケイ素粒子が相互に連結されたケイ素凝集体を含むことを特徴とする、〔1〕に記載の多孔質ケイ素複合体。
〔3〕
マグネシウム化合物は、フッ素含有マグネシウム化合物を含み、前記フッ素含有マグネシウム化合物は、フッ化マグネシウム(MgF
2
)、フッ化ケイ酸マグネシウム(MgSiF
6
)、またはそれらの混合物を含む、〔1〕に記載の多孔質ケイ素複合体。
〔4〕
マグネシウム化合物は、MgSiO
3
、Mg
2
SiO
4
、またはそれらの混合物を含む、〔3〕に記載の多孔質ケイ素複合体。
〔5〕
多孔質ケイ素複合体中のマグネシウム(Mg)の含有量は、多孔質ケイ素複合体の総重量に基づいて、0.2重量%~20重量%である、〔4〕に記載の多孔質ケイ素複合体。
〔6〕
ケイ素粒子は、X線回折分析における結晶子サイズが1nm~20nmである、〔1〕に記載の多孔質ケイ素複合体。
〔7〕
前記ケイ素粒子の表面に形成されたケイ素酸化物(SiO
x
、0.1<x≦2)をさらに含む、〔1〕に記載の多孔質ケイ素複合体。
〔8〕
多孔質ケイ素複合体中の酸素(O)の含有量が、多孔質ケイ素複合体の総重量に基づいて、0.1重量%~15重量%である、〔7〕に記載の多孔質ケイ素複合体。
〔9〕
多孔質ケイ素複合体は、平均粒径(D
50
)が1μm~15μmであり、比重が1.5g/cm
3
~2.3g/cm
3
である、〔1〕に記載の多孔質ケイ素複合体。
〔10〕
多孔質ケイ素複合体が内部に細孔を含み、多孔質ケイ素複合体の表面をガス吸着法(BETプロット法)により測定したときに、細孔容積0.01cm
3
/g~0.5cm
3
/gの2nm以下のミクロ細孔と、細孔容積0.2cm
3
/g~0.7cm
3
/gの2nm超~50nmのメソ細孔とを含み、多孔質ケイ素構造の比表面積(ブルナウアー・エメット・テラー法;BET)が100m
2
/g~1,600m
2
/gである、〔1〕に記載の多孔質ケイ素複合体。
〔11〕
〔1〕に記載の多孔質ケイ素複合体および炭素を含む、多孔質ケイ素炭素複合体。
〔12〕
多孔質ケイ素炭素複合体中の酸素(O)原子とケイ素(Si)原子とのモル比(O/Si)は0.01~0.35である、〔11〕に記載の多孔質ケイ素炭素複合体。
〔13〕
多孔質ケイ素炭素複合体は内部に細孔を有し、多孔質ケイ素炭素複合体の気孔率は、多孔質ケイ素炭素複合体の体積に基づいて、0.5体積%~40体積%である、〔11〕に記載の多孔質ケイ素炭素複合体。
〔14〕
ケイ素(Si)の含有量が、多孔質ケイ素炭素複合体の総重量に基づいて、30重量%~90重量%である、〔11〕に記載の多孔質ケイ素炭素複合体。
〔15〕
炭素がケイ素粒子およびマグネシウム化合物からなる群から選択される少なくとも1つの表面に存在する、炭素がマトリックスとして機能し、前記炭素マトリックス中にケイ素粒子、マグネシウム化合物および細孔が分散されている、または炭素は両方の方法で存在する、〔11〕に記載の多孔質ケイ素炭素複合体。
〔16〕
多孔質ケイ素複合体の表面に炭素層がさらに形成されており、前記炭素層は、グラフェン、還元型酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよびグラファイトからなる群から選択される少なくとも1つを含み、前記炭素層の厚さは1nm~300nmである、〔15〕に記載の多孔質ケイ素炭素複合体。
〔17〕
炭素(C)の含有量は、多孔質ケイ素炭素複合体の総重量に基づいて、10重量%~90重量%である、〔11〕に記載の多孔質ケイ素炭素複合体。
〔18〕
多孔質ケイ素炭素複合体は、平均粒径(D
50
)が2μm~15μmであり、多孔質ケイ素炭素複合体は、比重が1.8g/cm
3
~2.5g/cm
3
であり、比表面積(ブルナウアー・エメット・テラー法;BET)が3m
2
/g~50m
2
/gである、〔11〕に記載の多孔質ケイ素炭素複合体。
〔19〕
ケイ素系原料およびマグネシウム系原料を用いてケイ素複合酸化物粉末を得る第1工程;
フッ素(F)原子含有化合物を含むエッチング液を用いてケイ素複合酸化物粉末をエッチングする第2工程;および
エッチングにより得られた複合体をろ過および乾燥して多孔質ケイ素複合体を得る第3工程
を含む、〔1〕に記載の多孔質ケイ素複合体の調製方法。
〔20〕
ケイ素系原料およびマグネシウム系原料を用いてケイ素複合酸化物粉末を得る第1工程;
フッ素(F)原子含有化合物を含むエッチング液を用いてケイ素複合酸化物粉末をエッチングする第2工程;
エッチングにより得られた複合体をろ過および乾燥して多孔質ケイ素複合体を得る第3工程;および
化学的熱分解堆積法を用いて多孔質ケイ素複合体の表面に炭素層を形成して多孔質ケイ素炭素複合体を調製する第4工程
を含む、〔11〕に記載の多孔質ケイ素炭素複合体の調製方法。
〔21〕
第2工程において、エッチング液が、有機酸、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸およびクロム酸からなる群から選択される1つ以上の酸をさらに含む、〔20〕に記載のケイ素炭素複合体の調製方法。
〔22〕
第4工程の後に、多孔質ケイ素炭素複合体の平均粒径が2μm~15μmとなるように多孔質ケイ素炭素複合体を粉砕または圧砕および分級する工程をさらに含む、〔20〕に記載の多孔質ケイ素炭素複合体の調製方法。
〔23〕
第4工程における炭素層の形成は、下記式1~3:
[式1]
C
N
H
(2N+2-A)
[OH]
A
(式1中、Nは1~20の整数、Aは0または1である)
[式2]
C
N
H
(2N-B)
(式2中、Nは2~6の整数であり、Bは0~2の整数である)
[式3]
C
x
H
y
O
z
(式3中、xは1~20の整数であり、yは0~25の整数であり、zは0~5の整数である)
で表される化合物から選択される少なくとも1つを注入し、400℃~1200℃の気体状態で反応させることにより行われる、〔20〕に記載のケイ素炭素複合体の調製方法。
〔24〕
〔11〕に記載の多孔質ケイ素炭素複合体を含む、リチウム二次電池用負極活物質。
〔25〕
炭素系負極材料をさらに含む、〔24〕に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
〔26〕
炭素系負極材料の含有量は、負極活物質の総重量に基づいて、5重量%~95重量%である、〔25〕に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
〔27〕
〔24〕に記載のリチウム二次電池用負極活物質を含むリチウム二次電池。
【国際調査報告】