IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インテグレイテツド・デイー・エヌ・エイ・テクノロジーズ・インコーポレイテツドの特許一覧

特表2024-501832高忠実度DNAポリメラーゼによるrhPCRベース増幅産物シーケンシングにおいて、プライマー二量体及びオフターゲット増幅を低減するRNアーゼH2突然変異体
<>
  • 特表-高忠実度DNAポリメラーゼによるrhPCRベース増幅産物シーケンシングにおいて、プライマー二量体及びオフターゲット増幅を低減するRNアーゼH2突然変異体 図1A
  • 特表-高忠実度DNAポリメラーゼによるrhPCRベース増幅産物シーケンシングにおいて、プライマー二量体及びオフターゲット増幅を低減するRNアーゼH2突然変異体 図1B
  • 特表-高忠実度DNAポリメラーゼによるrhPCRベース増幅産物シーケンシングにおいて、プライマー二量体及びオフターゲット増幅を低減するRNアーゼH2突然変異体 図1C
  • 特表-高忠実度DNAポリメラーゼによるrhPCRベース増幅産物シーケンシングにおいて、プライマー二量体及びオフターゲット増幅を低減するRNアーゼH2突然変異体 図2
  • 特表-高忠実度DNAポリメラーゼによるrhPCRベース増幅産物シーケンシングにおいて、プライマー二量体及びオフターゲット増幅を低減するRNアーゼH2突然変異体 図3A
  • 特表-高忠実度DNAポリメラーゼによるrhPCRベース増幅産物シーケンシングにおいて、プライマー二量体及びオフターゲット増幅を低減するRNアーゼH2突然変異体 図3B
  • 特表-高忠実度DNAポリメラーゼによるrhPCRベース増幅産物シーケンシングにおいて、プライマー二量体及びオフターゲット増幅を低減するRNアーゼH2突然変異体 図3C
  • 特表-高忠実度DNAポリメラーゼによるrhPCRベース増幅産物シーケンシングにおいて、プライマー二量体及びオフターゲット増幅を低減するRNアーゼH2突然変異体 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-16
(54)【発明の名称】高忠実度DNAポリメラーゼによるrhPCRベース増幅産物シーケンシングにおいて、プライマー二量体及びオフターゲット増幅を低減するRNアーゼH2突然変異体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/55 20060101AFI20240109BHJP
   C12N 9/22 20060101ALI20240109BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240109BHJP
   C12Q 1/48 20060101ALI20240109BHJP
   C40B 40/06 20060101ALI20240109BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240109BHJP
   C12Q 1/6827 20180101ALI20240109BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20240109BHJP
   C12Q 1/6848 20180101ALI20240109BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20240109BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALN20240109BHJP
【FI】
C12N15/55
C12N9/22 ZNA
C12Q1/686 Z
C12Q1/48
C40B40/06
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6827 Z
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6848 Z
C12N9/10
C12Q1/6876 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538971
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 US2021064879
(87)【国際公開番号】W WO2022140553
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/277,273
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/130,548
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】510288529
【氏名又は名称】インテグレイテツド・デイー・エヌ・エイ・テクノロジーズ・インコーポレイテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドボシー,ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】フローリグ,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パーシュバチャー,キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】ベルツ,クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】ローズ,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ベールケ,マーク・アーロン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA17
4B063QR08
4B063QR14
4B063QR42
4B063QR62
4B063QR66
4B063QS24
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、生物であるピロコックス・アビッシ(P.a.)、テルモコックス・コダカレンシス(T.kod)及びピロコックス・フリオーススに由来するアミノ酸配列の断片を含むハイブリッドRNアーゼH2タンパク質のほか、これを使用して、ミスマッチ識別及び高忠実度DNAポリメラーゼ緩衝液中の活性を改善する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物であるピロコックス・アビッシ(Pyrococcus abyssi)(P.a.)、テルモコックス・コダカレンシス(Thermococcus kodakarensis)(T.kod)及びピロコックス・フリオースス(Pyrococcus furiosus)に由来するアミノ酸配列の断片を含むハイブリッドRNアーゼH2タンパク質。
【請求項2】
T.kod RNアーゼH2のアミノ酸残基26~40及び残基100~120を含む、請求項1に記載のハイブリッドRNアーゼH2タンパク質。
【請求項3】
配列番号2及び3から選択される、請求項1に記載のハイブリッドRNアーゼH2タンパク質。
【請求項4】
配列番号14~20から選択される、請求項1に記載のハイブリッドRNアーゼH2タンパク質。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のハイブリッドRNアーゼH2タンパク質をコードする、組換え核酸。
【請求項6】
プライマー伸長を実行するための方法であって、プライマー伸長法に適する条件下において、請求項1~4のいずれか一項に記載のハイブリッドRNアーゼH2タンパク質を、プライマー、ポリヌクレオチド鋳型、ヌクレオシド三リン酸及びDNAポリメラーゼと接触させ、これにより、伸長プライマーを作製するステップを含む方法。
【請求項7】
DNAポリメラーゼが、高忠実度古細菌DNAポリメラーゼを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
プライマーが、ブロックされた切断可能プライマーを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
プライマー伸長法が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実行するための方法を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
PCRを実行するための方法が、プライマーと、ポリヌクレオチド鋳型との間において形成されたプライマー:ポリヌクレオチドハイブリッド体における、ミスマッチ識別を改善する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ミスマッチ識別の改善が、3’側におけるミスマッチ識別の改善を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~4に記載のハイブリッドRNアーゼH2タンパク質、少なくとも1つのプライマー、ポリヌクレオチド鋳型、ヌクレオシド三リン酸及びDNAポリメラーゼを含む反応混合物。
【請求項13】
DNAポリメラーゼが、高忠実度古細菌DNAポリメラーゼを含む、請求項12に記載の反応混合物。
【請求項14】
少なくとも1つのプライマーが、ブロックされた切断可能プライマーを含む、請求項12又は13に記載の反応混合物。
【請求項15】
rhPCRを実施するための方法であって、請求項1~4の一項に記載のハイブリッドRNアーゼH2及びプライマーにより、プライマー伸長を実施するステップを含む方法。
【請求項16】
請求項15に記載の、rhPCRを実施するための方法であって、高忠実度古細菌DNAポリメラーゼにより、プライマー伸長を実施するステップを含む方法。
【請求項17】
ハイブリッドRNアーゼH2酵素が、化学修飾、アプタマー又は遮断抗体により可逆的に不活化されている、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
ブロッキング基が、プライマーの3’末端ヌクレオチドへと結合されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ブロッキング基が、3’末端残基の5’側へ結合され、プライマーが、DNA合成のための鋳型として用いられることを阻害する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ブロッキング基が、1つ以上の脱塩基残基を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
1つ以上の脱塩基残基が、C3スペーサーである、請求項24に記載の方法。
【請求項22】
ブロッキング基が、RDDDDx、RDDDDMx、RDxxD、RDxxDM、RDDDDxxD、RDDDDxxDM及びDxxDからなる群から選択される、1つのメンバー[配列中、Rは、RNA残基であり、Dは、DNA残基であり、Mは、ミスマッチ残基であり、xは、C3スペーサー又はDNAポリメラーゼによる伸長を阻止する他の方法である]を含む、請求項18~21の一項に記載の方法。
【請求項23】
ブロッキング基が、伸長増幅反応の検出を可能とする標識を含む、請求項18~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
増幅反応の検出を可能とする標識が、切断部位から3’側において、オリゴヌクレオチドプライマーへ結合されている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
標識が、フルオロフォアである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
標識が、質量分析による増幅反応の検出のための質量タグである、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
ブロックされた切断可能プライマーの切断ドメインが、以下の部分:DNA残基、脱塩基残基、修飾ヌクレオシド又はヌクレオチド間修飾リン酸連結のうちの1つ以上を含む、請求項14~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
切断ドメインが、単一のRNA残基を含む、請求項14~26のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
切断ドメインが、2つの隣接するRNA残基を含む、請求項14~26のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
切断ドメインが、3つ以上のRNA残基による連続配列を含む、請求項14~26のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
切断ドメインが、RNA残基を欠く、請求項14~26のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
切断ドメインが、1つ以上の2’修飾ヌクレオシドを含む、請求項14~26のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
1つ以上の2’修飾ヌクレオシドが、2’-O-アルキルRNAヌクレオシド、2’-フルオロヌクレオシド、ロックド核酸、2’-エチレン核酸残基、2’-アルキルヌクレオシド、2’-アミノヌクレオシド及び2’-チオヌクレオシドからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
1つ以上の2’修飾ヌクレオシドが、2’-O-メチルRNAヌクレオシドである、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
1つ以上の2’修飾ヌクレオシドが、2’-フルオロヌクレオシドである、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
標的DNA配列を増幅する方法であって、
(a)(i)オリゴヌクレオチドプライマーの3’末端において、又はこの近傍において連結されたブロッキング基の5’側に配置された、RNアーゼH2酵素により切断可能である切断ドメインを有するオリゴヌクレオチドプライマーであって、ブロッキング基が、プライマー伸長を阻止し、及び/又はオリゴヌクレオチドプライマーが、DNA合成のための鋳型として機能することを阻害する、オリゴヌクレオチドプライマー;
(ii)標的配列の場合もあり、標的配列でない場合もある試料核酸;
(iii)DNAポリメラーゼ;及び
(iv)請求項1~4に記載のハイブリッドRNアーゼH2タンパク質
を含む反応混合物を用意するステップ;
(b)オリゴヌクレオチドプライマーを、標的DNA配列とハイブリダイズさせて、二本鎖基質を形成するステップ;
(c)ハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドプライマーを、ハイブリッドRNアーゼH2酵素により、切断ドメイン内の切断部位又は切断ドメインと隣接する切断部位において切断して、ブロッキング基を、オリゴヌクレオチドプライマーから除去するステップ
を含む方法。
【請求項37】
DNAポリメラーゼが、高忠実度古細菌DNAポリメラーゼである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
RNアーゼH2タンパク質が、化学修飾アプタマー又は遮断抗体により可逆的に不活化されている、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
ブロッキング基が、オリゴヌクレオチドプライマーの3’末端ヌクレオチドへと結合されている、請求項36~38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
ブロッキング基が、3’末端残基の5’側へと結合され、オリゴヌクレオチドプライマーが、DNA合成のための鋳型として機能することを阻害する請求項36~38のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
ブロッキング基が、1つ以上の脱塩基残基を含む、請求項36~40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
1つ以上の脱塩基残基が、C3スペーサーである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ブロッキング基が、RDDDDx、RDDDDMx、RDxxD、RDxxDM、RDDDDxxD、RDDDDxxDM及びDxxDからなる群から選択される、1つのメンバー[配列中、Rは、RNA残基であり、Dは、DNA残基であり、Mは、ミスマッチ残基であり、xは、C3スペーサー又はDNAポリメラーゼによる伸長を遮断する他の方法である]を含む、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項44】
ブロッキング基が、伸長増幅反応の検出を可能とする標識を含む、請求項36~43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
増幅反応の検出を可能とする標識をさらに含み、標識が、切断部位から3’側において、オリゴヌクレオチドプライマーへ結合されている、請求項36~44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
標識が、フルオロフォアである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
標識が、質量分析による増幅反応の検出のための質量タグである、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
切断ドメインが、以下の部分:DNA残基、脱塩基残基、修飾ヌクレオシド又はヌクレオチド間修飾リン酸連結のうちの1つ以上を含む、請求項36~47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
切断ドメインが、単一のRNA残基を含む、請求項36~48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
切断ドメインが、2つの隣接するRNA残基を含む、請求項36~48のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
切断ドメインが、3つ以上のRNA残基による連続配列を含む、請求項36~48のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
切断ドメインが、1つ以上の2’修飾ヌクレオシドを含む、請求項36~48のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
1つ以上の2’修飾ヌクレオシドが、2’-O-アルキルRNAヌクレオシド、2’-フルオロヌクレオシド、ロックド核酸、2’-エチレン核酸残基、2’-アルキルヌクレオシド、2’-アミノヌクレオシド及び2’-チオヌクレオシドからなる群から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
1つ以上の2’修飾ヌクレオシドが、2’-O-メチルRNAヌクレオシドである、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
1つ以上の2’修飾ヌクレオシドが、2’-フルオロヌクレオシドである、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
切断部位に隣接する配列が、ヌクレアーゼによる切断に対して耐性である、1つ以上のヌクレオチド間連結を含有する、請求項36~55のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
ヌクレアーゼ耐性連結が、ホスホロチオエートである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
伸長プライマーを作製するためのキットであって、請求項1~4に記載のハイブリッドRNアーゼH2タンパク質を提供する、少なくとも1つの容器を含むキット。
【請求項59】
(a)プライマー伸長条件下において、所定のポリヌクレオチド鋳型とハイブリダイズ可能であるプライマーを提供する容器;(b)ヌクレオシド三リン酸を提供する容器;(c)プライマー伸長に適する緩衝液を提供する容器及び(d)DNAポリメラーゼからなる群から選択される、1つ以上のさらなる容器をさらに含む、請求項58に記載のキット。
【請求項60】
DNAポリメラーゼが、高忠実度古細菌DNAポリメラーゼを含む、請求項59に記載のキット。
【請求項61】
ブロックされた切断可能プライマーを含有する容器からなる群から選択される、1つ以上のさらなる容器をさらに含む、請求項58~60のいずれかに記載のキット。
【請求項62】
標的DNA配列の増幅を実施するためのキットであって、請求項1~4に記載のRNアーゼH2と、高忠実度古細菌DNAポリメラーゼとを含む反応緩衝液を含むキット。
【請求項63】
1つ以上のオリゴヌクレオチドプライマーをさらに含み、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーが、オリゴヌクレオチドプライマーの3’末端において、又はこの近傍において連結されたブロッキング基の5’側に配置された、RNアーゼH2酵素により切断可能である切断ドメインであって、ブロッキング基が、プライマー伸長を阻止し、及び/又はオリゴヌクレオチドプライマーが、DNA合成のための鋳型として機能することを阻害する、切断ドメインを有する、請求項62に記載のキット。
【請求項64】
ブロッキング基が、RDDDDx、RDDDDMx、RDxxD、RDxxDM、RDDDDxxD、RDDDDxxDM及びDxxDからなる群から選択される、1つのメンバー[配列中、Rは、RNA残基であり、Dは、DNA残基であり、Mは、ミスマッチ残基であり、xは、C3スペーサー又はDNAポリメラーゼによる伸長を遮断する他の部分である]を含む、請求項63に記載のキット。
【請求項65】
鋳型核酸の増幅産物ライブラリーを調製する方法であって、
混合物を形成するステップであって、混合物が、
核酸集団;
少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマー;
ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質;
dNTP;
DNAポリメラーゼ;及び
緩衝液
を含み、
ハイブリッド二重鎖が、混合物中の、少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマーと、核酸集団との間において形成する、ステップ;
少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマーを、ハイブリッド突然変異体RNアーゼH2タンパク質により切断して、DNAポリメラーゼによるプライマー伸長が可能である、少なくとも1つの活性プライマーを作出するステップ;並びに
緩衝液中、1つ以上の鋳型核酸の、核酸集団からの増幅を可能とする条件下において、DNAポリメラーゼにより、少なくとも1つの活性プライマーを伸長させ、これにより、鋳型核酸の増幅産物を作出するステップ
を含む方法。
【請求項66】
ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質が、Q48R SEL29(配列番号18)又は他のハイブリッドRNアーゼH2タンパク質から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
DNAポリメラーゼが、KOD DNAポリメラーゼ又は他の高忠実度古細菌DNAポリメラーゼである、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
緩衝液が、KOD DNAポリメラーゼ緩衝液又は別の高忠実度古細菌DNAポリメラーゼ緩衝液である、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
大量並列シークエンシング(massively parallel sequencing)を実施する方法であって、
核酸集団;
ハイブリッドRNアーゼH2の突然変異体タンパク質;
少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマー;
DNAポリメラーゼ;
dNTP;及び
緩衝液
を含む混合物によるPCRを実施するステップを含む、鋳型核酸のライブラリー集団を調製するステップ、
;並びに
鋳型核酸のライブラリー集団に由来する、複数の所望の鋳型核酸をシーケンシングするステップ
を含む方法。
【請求項70】
ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質が、Q48R SEL29(配列番号18)又は他のハイブリッドRNアーゼH2タンパク質から選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
SNP含有核酸鋳型を、核酸鋳型の増幅産物ライブラリーから検出する方法であって、
混合物を形成するステップであって、混合物が、
核酸鋳型の増幅産物ライブラリー;
少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマー;
ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質;
dNTP;
DNAポリメラーゼ;及び
緩衝液
を含み、
混合物中の、少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマーと、核酸鋳型の増幅産物ライブラリー内のSNP含有核酸鋳型との間において、ハイブリッド二重鎖が形成する、ステップ;
ハイブリッド二重鎖の、少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマーを、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質により切断して、DNAポリメラーゼによる、ハイブリッド二重鎖のプライマー伸長が可能な、少なくとも1つの活性プライマーを作出するステップ;並びに
緩衝液中、1つ以上の鋳型核酸の、核酸鋳型の増幅産物ライブラリーからの増幅を可能とする条件下において、DNAポリメラーゼにより、ハイブリッド二重鎖内の、少なくとも1つの活性プライマーを伸長させ、これにより、SNP含有核酸鋳型を検出するステップ
を含む方法。
【請求項72】
ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質が、Q48R SEL29(配列番号18)又は他のハイブリッドRNアーゼH2タンパク質から選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
ループ媒介増幅反応を実施する方法であって、
混合物を形成するステップであって、混合物が、
核酸鋳型;
RNアーゼH2タンパク質に対する基質である核酸鋳型と共に、二重鎖を形成する、4つのブロックされた切断可能プライマー;
Q48R SEL29(配列番号18)又は他のRNアーゼH2タンパク質から選択されるRNアーゼH2タンパク質;
DNAポリメラーゼタンパク質;
dNTP;及び
緩衝液
を含む、ステップ;並びに
混合物により、等温増幅サイクルを実施するステップ
を含む方法。
【請求項74】
請求項6、15、36、69、71及び73のいずれか一項に記載の方法を、Q48R SEL29 RNアーゼH2(配列番号18)を用いて使用して作製された混合産物であって、Q48R SEL29 RNアーゼH2(配列番号18)から作製された混合産物が、野生型P.a.RNアーゼH2(配列番号1)により作製された混合産物と比べて、プライマー二量体分子種が低減された集団を含む、混合産物。
【請求項75】
プライマー二量体の形成が低減されたrhPCRアッセイを実施する方法であって、Q48R SEL29 RNアーゼH2(配列番号18)により、プライマー伸長を実施するステップを含み、プライマー二量体形成の低減が、Q48R SEL29 RNアーゼH2(配列番号18)によるrhPCRアッセイ時に形成されたプライマー二量体の量の、野生型P.a.RNアーゼH2(配列番号1)により行われたrhPCRアッセイと比較した低減に対応する、方法。
【請求項76】
所望の産物について、マッピング率及びオンターゲット率が改善されたrhPCRアッセイを実施する方法であって、Q48R SEL29 RNアーゼH2(配列番号18)により、プライマー伸長を実施するステップを含み、マッピング率及びオンターゲット率の改善が、Q48R SEL29 RNアーゼH2(配列番号18)によるrhPCRアッセイ時に形成された、所望の産物のマッピング及びオンターゲット増幅の、野生型P.a.RNアーゼH2(配列番号1)により行われたrhPCRアッセイと比較した増大に対応する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、35 U.S.C.§119の下において、それらの内容が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれた、2020年12月24日に出願され、「RNASE H2 MUTANTS THAT ENHANCE MISMATCH DISCRIMINATION AND ACTIVITY IN HIGH-FIDELITY POLYMERASE BUFFER」と題された、米国特許仮出願第63/130,548号及び2021年11月9日に出願され、「RNASE H2 MUTANTS THAT REDUCE PRIMER DIMERS AND OFF-TARGET AMPLIFICATION IN RHPCR-BASED AMPLICON SEQUENCING WITH HIGH-FIDELITY DNA POLYMERASES」と題された、米国特許仮出願第63/277,273号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明の分野
本発明は、II型RNアーゼH(本明細書の後出において、RNアーゼH2と称される)ハイブリッド酵素変異体、及び核酸鎖を切断して生物学的アッセイを開始する、支援する、モニタリングする、又は実施する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
RNアーゼH2酵素のファミリーは、広範に特徴付けられている。これらの酵素は、DNA配列(二重鎖形態にある)内に埋め込まれている単一のリボヌクレオチド(Eder、ら、(1993)、Biochimie、75、123~126)を切断するための基質特異性を有する。興味深いことに、切断は、RNA残基の5’側において生じる(スキームIを参照されたい)。これらの酵素、それらの特性及び生物学的アッセイについての適用についての概要は、Walderらによる、米国特許第8,911,948B2号にまとめられている。
【0004】
【化1】
【0005】
超好熱菌である、ピロコックス・アビッシ(Pyrococcus abyssi)(P.a.)から単離されたRNアーゼH2酵素は、それ以外は、全て、DNAから作られた核酸鎖内に埋め込まれているリボヌクレオチドの5’側において切断する。RNアーゼH2依存型PCR(rhPCR)は、3’末端上のブロッキング基を除去し、3’末端の近傍において、単一のリボヌクレオチドを含有するプライマーを切断するように熱安定性RNアーゼH2酵素を使用してPCRの特異性を改善する(Dobosyら、2011;米国特許第8,911,948B2号)。このプライマーは、当初、DNAポリメラーゼによる伸長が不可能であるが、RNアーゼH2により、3’末端から、ブロッキング基が除去されると、伸長が可能である。P.a.RNアーゼH2は、DNA-RNAヘテロ二重鎖内、リボヌクレオチドの近傍における、一塩基ミスマッチに感受性であり、ミスマッチ含有鋳型をはるかな低率において切断する。これにより、完全なマッチ二重鎖の優先的な切断及び伸長が可能となる。これは、rhPCR反応における特異性の増大を結果としてもたらし、プライマー二量体形成及び他のオフターゲット増幅を低下させる。
【0006】
rhPCRは、PCRの特異性にもたらす増強にもかかわらず、現状では限界を有する。rhPCRによる、見かけのミスマッチ識別は、理論的に達成可能であるべき識別より低度である。WT P.a.RNアーゼH2は、RNA塩基の直接の向かい側における、一塩基ミスマッチを、高度に認識するが、効率は、ミスマッチの性質に応じて変化する。加えて、天然の酵素は、RNA塩基の、すぐの5’側又は3’側の位置におけるミスマッチ識別も、比較的限定的である。この限界にもかかわらず、これらの位置における突然変異の配置は、有利でありうる。例として述べると、RNAの、すぐの5’側におけるミスマッチは、プライマー切断後のPCR増幅における、識別性DNAポリメラーゼ(H784Qテルムス・アクアティクスDNAポリメラーゼなど)の使用を伴う二次選択ステップとして使用されうる(米国特許出願第15/361280号を参照されたい)。ミスマッチ認識は、鋳型転換中に1回ではなく、サイクルごとに生じるので、RNAの3’側における、ミスマッチの配置は、鋳型転換の可能性を低減する。
【0007】
rhPCRの有用性にもかかわらず、野生型P.a.RNアーゼH2によるミスマッチ識別は、「遺漏」がありうる結果として、プライマー二量体の、ある程度の増幅をもたらす。シーケンシングライブラリーの増幅時にもたらされるプライマー二量体は、Illuminaフローセルに結合し、シーケンシングを受けるが、有意味なデータをもたらさないため、問題である。高レベルのプライマー二量体は、目的の標的へとマッピングされるリード画分を減少させ、最終的に、アッセイ感度を低減する、又は低頻度変異体の検出のために必要な数のオンターゲットリードを作出するように、シーケンシング費用の著明な増大を要求する。低頻度変異体の検出もまた、PCR時における増幅エラーの導入により影響を受ける場合がある。高忠実度DNAポリメラーゼ及び最適化緩衝液条件の使用により、エラー率は、低下しうる。しかし、これらの緩衝液条件は、rhPCRにおける、野生型P.a.RNアーゼH2の酵素活性及びミスマッチ感度を低減する。
【0008】
他の類縁の分子種に由来する配列による、野生型P.a.RNアーゼH2のアミノ酸配列の部分的組換えを介して作出されたRNアーゼH2突然変異体の使用は、高忠実度DNAポリメラーゼ緩衝液中の、RNアーゼH2酵素活性の改善を結果としてもたらすことが、既に示されている。これらの突然変異体のうちの2つである、Q48R SEL29 RNアーゼH2及びAl07V SEL29 RNアーゼH2は、テルモコックス・コダカレンシス(Thermococcus kodakarensis)(KOD)DNAポリメラーゼ反応緩衝液を使用する場合に酵素活性が改善していることが示された。加えて、いずれの突然変異体も、RNA塩基の向かい側におけるミスマッチのほか、RNA塩基の3’及び5’におけるミスマッチ識別の、野生型P.a.RNアーゼH2と比較した増強を示す。その内容が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれた、2020年12月24日に出願され、「RNASE H2 MUTANTS THAT ENHANCE MISMATCH DISCRIMINATION AND ACTIVITY IN HIGH-FIDELITY POLYMERASE BUFFER」と題された、米国特許仮出願第63/130,548号(代理人整理番号:IDT01-018-PRO)を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第8911948B2号明細書
【特許文献2】米国特許第8911948B2号明細書
【特許文献3】米国特許出願第15/361280号
【特許文献4】米国特許仮出願第63/130548号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Eder、ら、(1993)、Biochimie、75、123~126
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示は、高忠実度DNAポリメラーゼ及び緩衝液を含有するマルチプレックスrhAmpSeqワークフローにおける、これらの新規のハイブリッドRNアーゼH2酵素変異体のうちの1つであるQ48R SEL29 RNアーゼH2に関する。野生型P.a.RNアーゼH2と比較して、Q48R SEL29 RNアーゼH2は、PCR増幅時に作製されるプライマー二量体を低減し、これにより、マッピング率及びオンターゲット率を改善する。これらのメトリックを改善しながら、Q48R SEL29 RNアーゼH2は、増幅産物の均一性、増幅産物のドロップアウト率及び増幅産物の均一性分布を含む、他の極めて重要なシーケンシングメトリックに対して、影響を及ぼさなかった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
第1の態様において、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質が提供される。ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質は、生物であるピロコックス・アビッシ(P.a.)、テルモコックス・コダカレンシス(T.kod)及びピロコックス・フリオースス(Pyrococcus furiosus)に由来するアミノ酸配列の断片を含む。
【0013】
第2の態様において、本明細書において開示された、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質のうちのいずれかをコードする組換え核酸が提供される。
【0014】
第3の態様において、プライマー伸長を実行するための方法が提供される。方法は、プライマー伸長法に適する条件下において、本明細書において開示された、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質を、プライマー、ポリヌクレオチド鋳型、ヌクレオシド三リン酸及びDNAポリメラーゼと接触させ、これにより、伸長プライマーを作製するステップを含む。
【0015】
第4の態様において、反応混合物が提供される。反応混合物は、本明細書において記載された、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質、少なくとも1つのプライマー、ポリヌクレオチド鋳型、ヌクレオシド三リン酸及びDNAポリメラーゼを含む。
【0016】
第5の態様において、rhPCRを実施するための方法が提供される。方法は、本明細書において記載された、ハイブリッドRNアーゼH2、DNAポリメラーゼ及びプライマーにより、プライマー伸長を実施するステップを含む。
【0017】
第6の態様において、標的DNA配列を増幅する方法が提供される。方法は、いくつかのステップを含む。第1のステップは、以下:(i)オリゴヌクレオチドプライマーの3’末端において、又はこの近傍において連結されたブロッキング基の5’側に配置された、RNアーゼH2酵素により切断可能である切断ドメインを有するオリゴヌクレオチドプライマーであって、ブロッキング基が、プライマー伸長を阻止し、かつ/又はオリゴヌクレオチドプライマーが、DNA合成のための鋳型として用いられることを阻害する、オリゴヌクレオチドプライマー;(ii)標的配列の場合もあり、標的配列でない場合もある試料核酸;(iii)DNAポリメラーゼ;及び(iv)本明細書において開示された、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質を含む反応混合物を用意するステップである。第2のステップは、オリゴヌクレオチドプライマーを、標的DNA配列とハイブリダイズさせて、二本鎖基質を形成するステップを含む。第3のステップは、ハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドプライマーを、ハイブリッドRNアーゼH2酵素により、切断ドメイン内の切断部位又は切断ドメインと隣接する切断部位において切断して、ブロッキング基を、オリゴヌクレオチドプライマーから除去するステップである。
【0018】
第7の態様において、伸長プライマーを作製するためのキットが提供される。キットは、本明細書において開示された、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質を提供する、少なくとも1つの容器を含む。
【0019】
第8の態様において、標的DNA配列の増幅を実施するためのキットが提供される。キットは、本明細書において記載されたRNアーゼH2と、高忠実度古細菌DNAポリメラーゼとを含む反応緩衝液を含む。
【0020】
第9の態様において、鋳型核酸の増幅産物ライブラリーを調製する方法が提供される。方法は、いくつかのステップを含む。第1のステップは、ハイブリッド二重鎖が、混合物中の、少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマーと、核酸集団との間において形成するように、核酸集団、少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマー、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質、dNTP、DNAポリメラーゼ及び緩衝液を含む混合物を形成するステップである。第2のステップは、少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマーを、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質により切断して、DNAポリメラーゼによるプライマー伸長が可能である、少なくとも1つの活性プライマーを作出するステップである。第3のステップは、緩衝液中、1つ以上の鋳型核酸の、核酸集団からの増幅を可能とする条件下において、DNAポリメラーゼにより、少なくとも1つの活性プライマーを伸長させ、これにより、鋳型核酸の増幅産物を作出するステップである。第1の関連事項において、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質は、Q48R SEL29(配列番号18)又は他のハイブリッドRNアーゼH2タンパク質から選択される。第2の関連事項において、DNAポリメラーゼは、KOD DNAポリメラーゼ又は他の高忠実度古細菌DNAポリメラーゼである。第3の関連事項において、緩衝液は、高忠実度古細菌DNAポリメラーゼ緩衝液である。
【0021】
第10の態様において、大量並列シークエンシング(massively parallel sequencing)を実施する方法が提供される。方法は、いくつかのステップを含む。第1のステップは、PCR法において、核酸集団、ハイブリッドRNアーゼH2突然変異体タンパク質、少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマー、DNAポリメラーゼ、dNTP及び緩衝液を使用して、鋳型核酸のライブラリー集団を調製するステップである。第2のステップは、鋳型核酸のライブラリー集団に由来する、複数の所望の鋳型核酸をシーケンシングするステップである。第1の関連事項において、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質は、Q48R SEL29(配列番号18)又は他のハイブリッドRNアーゼH2タンパク質から選択される。
【0022】
第11の態様において、SNP含有核酸鋳型を、核酸鋳型の増幅産物ライブラリーから検出する方法が提供される。方法は、いくつかのステップを含む。第1のステップは、核酸鋳型の増幅産物ライブラリー;少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマー;ハイブリッド突然変異体RNアーゼH2タンパク質;dNTP;DNAポリメラーゼ;及び緩衝液を含む混合物を形成するステップを含む。ハイブリッド二重鎖は、混合物中の、少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマーと、核酸鋳型の増幅産物ライブラリー内のSNP含有核酸鋳型との間において形成する。第2のステップは、ハイブリッド二重鎖の、少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマーを、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質により切断して、DNAポリメラーゼによる、ハイブリッド二重鎖のプライマー伸長が可能な、少なくとも1つの活性プライマーを作出するステップを含む。第3のステップは、緩衝液中、1つ以上の鋳型核酸の、核酸鋳型の増幅産物ライブラリーからの増幅を可能とする条件下において、DNAポリメラーゼにより、二重鎖内の、少なくとも1つの活性プライマーを伸長させ、これにより、SNP含有核酸鋳型を検出するステップを含む。第1の関連事項において、方法は、Q48R SEL29(配列番号18)又は他のハイブリッド突然変異体RNアーゼH2タンパク質から選択されるハイブリッド突然変異体RNアーゼH2タンパク質を含む。第2の関連事項において、方法は、高忠実度古細菌DNAポリメラーゼ緩衝液である緩衝液を含む。
【0023】
第12の態様において、ループ媒介増幅反応を実施する方法が提供される。方法は、2つのステップを含む。第1のステップは、核酸鋳型;RNアーゼH2タンパク質に対する基質である核酸鋳型と共に、二重鎖を形成する、4つのブロックされた切断可能プライマー;Q48R SEL29(配列番号18)又は他のRNアーゼH2タンパク質から選択されるRNアーゼH2タンパク質;DNAポリメラーゼタンパク質;dNTP;及び緩衝液を含む混合物を形成するステップを含む。第2のステップは、混合物により、等温増幅サイクルを実施するステップを含む。
【0024】
第13の態様において、プライマー二量体の形成が低減されたrhPCRアッセイを実施する方法が提供される。方法は、Q48R SEL29 RNアーゼH2(配列番号18)により、プライマー伸長を実施するステップを含む。プライマー二量体形成の低減は、Q48R SEL29 RNアーゼH2(配列番号18)によるrhPCRアッセイ時に形成されたプライマー二量体の量の、野生型P.a.RNアーゼH2(配列番号1)により行われたrhPCRアッセイと比較した低減に対応する。
【0025】
第14の態様において、所望の産物について、マッピング率及びオンターゲット率が改善されたrhPCRアッセイを実施する方法が提供される。方法は、Q48R SEL29 RNアーゼH2(配列番号18)により、プライマー伸長を実施するステップを含む。マッピング率及びオンターゲット率の改善は、Q48R SEL29 RNアーゼH2(配列番号18)によるrhPCRアッセイ時に形成された、所望の産物のマッピング及びオンターゲット増幅の、野生型P.a.RNアーゼH2(配列番号1)により行われたrhPCRアッセイと比較した増大に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A】突然変異体である、Q48R SEL29 RNアーゼH2酵素を使用する場合の二量体率が、全ての酵素濃度において、野生型P.a.RNアーゼH2酵素と比較して低下したことを示す例示的プロットを描示する図である。
図1B】突然変異体である、Q48R SEL29 RNアーゼH2酵素によるマッピング率が、全てのRNアーゼH2酵素濃度において、野生型P.a.RNアーゼH2酵素と比較して高度であることについての例示的データを描示する図である。
図1C】突然変異体である、Q48R SEL29 RNアーゼH2酵素によるオンターゲット率が、全ての酵素濃度において、野生型P.a.RNアーゼH2酵素と比較して高度であることを示す、例示的データを描示する図である。
図2】同定された各プライマー対1つ当たりの平均値正規化二量体カウントの例を描示する図であり、この場合、突然変異体である、Q48R SEL29 RNアーゼH2酵素は、同定された最多のプライマー二量体を、野生型P.a.RNアーゼH2酵素と比較して、半数に低減する。
図3A】≧0.2倍の増幅産物均一性及び≦0.05倍の増幅産物均一性(ドロップアウト率)についての例示的データを描示する図であり、ライブラリーの収量は、全ての濃度について、突然変異体である、Q48R SEL29 RNアーゼH2酵素と、野生型P.a.RNアーゼH2酵素との間において同等である。
図3B】突然変異体である、Q48R SEL29 RNアーゼH2酵素についての、≧0.2倍の全増幅産物均一性が、多様な被験濃度において、野生型P.a.RNアーゼH2酵素と同等であることを描示する図である。
図3C】増幅産物のドロップアウト率が、全ての被験滴定濃度について、突然変異体である、Q48R SEL29 RNアーゼH2酵素と、野生型P.a.RNアーゼH2酵素との間において、同様であることを描示する図である。
図4】均一性分布(増幅産物の平均値カバレッジと比較して、0~0.1倍、0.1~0.2倍、0.2倍~0.5倍、0.5倍~1.5倍、1.5倍~2.5倍及び2.5~5倍の範囲内のカバレッジを有する、増幅産物のパーセント)が、突然変異体である、Q48R SEL29 RNアーゼH2酵素と、野生型P.a.RNアーゼH2酵素との間において、同等であることを示す例示的データを描示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、二重鎖鋳型内のミスマッチ識別を保持又は増強する、それらの能力を保持しながら、ある特定のDNAポリメラーゼ緩衝液を使用するrhPCR時の酵素活性を増強する、新規のハイブリッドRNアーゼH2酵素変異体を提供する。RNアーゼH2酵素ハイブリッドは、生物であるピロコックス・アビッシ(P.a.)、テルモコックス・コダカレンシス(T.kod)及びピロコックス・フリオーススに由来するアミノ酸配列の断片を組み合わせる。結果として得られるハイブリッドRNアーゼH2酵素のほか、これらの酵素に基づく、選り抜きの突然変異体は、ミスマッチ識別を、著明に増強する。特に、Q48R SEL29 RNアーゼH2(配列番号18)は、とりわけ、プライマー伸長を実行する方法、rhPCRを実施する方法、標的DNA配列を増幅する方法、大量並列シークエンシング(massively parallel sequencing)を実施する方法、SNP含有核酸鋳型を、核酸鋳型の増幅産物ライブラリーから検出する方法、及びループ媒介増幅反応を実施する方法において、野生型P.a.RNアーゼH2(配列番号1)により作製された混合産物と比べて、プライマー二量体分子種が低減された集団を有する混合産物をもたらすことが示される。
【0028】
定義
本発明の理解の一助とするため、いくつかの用語について、下記に規定する。
【0029】
本発明について記載する文脈において(とりわけ、以下の特許請求の範囲の文脈において)使用された、「ある(a)」、「ある(an)」、「その」及び同様の指示対象は、本明細書においてそうでないことが指し示されない限り、又は、文脈により、逆の記載がない限り、単数形及び複数形の両方を対象とすると理解されるものとする。「~を含むこと(comprising)」、「~を有すること」、「~を含むこと(including)」及び「~を含有すること」という用語は、そうでないことが注記されない限りにおいて、オープンエンドの用語である(すなわち、「~を含むがこれらに限定されないこと」を意味する)と解釈されるものとする。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において、そうでないことが指し示されない限りにおいて、範囲内に収まる、各個別の値に、個別に言及する簡便法として用いられることだけを意図するものであり、各個別の値は、本明細書において、個別に列挙された場合と同様に、本明細書へと組み込まれる。本明細書において記載された全ての方法は、本明細書においてそうでないことが指し示されない限り、又は、文脈により、逆の記載がない限り、任意の適切な順序において実施されうる。本明細書において提示された、任意の例又は例示的な表現及び全ての例又は例示的な表現(例えば、「など」)の使用は、本発明を、よりよく例示することだけを意図するものであり、別の形において特許請求されている、本発明の範囲に対して、限定を付与するものではない。本明細書における、いかなる表現も、任意の特許請求されていない要素を、本発明の実施に不可欠であると指し示すものとして理解されないものとする。
【0030】
本明細書において使用された、「核酸」及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含有する)、ポリリボヌクレオチド(D-リボースを含有する)及びプリン塩基又はピリミジン塩基のNグリコシドである、他の任意の種類のポリヌクレオチドを指す。「核酸」、「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」という用語の間において、長さの区別は意図されず、これらの用語は、互換的に使用される。これらの用語は、分子の一次構造だけを指す。したがって、これらの用語は、二本鎖DNA及び一本鎖DNAのほか、二本鎖RNA及び一本鎖RNAを含む。本発明における使用のために、オリゴヌクレオチドはまた、塩基、糖又はリン酸骨格が修飾されたヌクレオチド類似体のほか、非プリンヌクレオチド類似体又は非ピリミジンヌクレオチド類似体も含みうる。
【0031】
オリゴヌクレオチドは、各々が、参照により本明細書に組み込まれた、;Narangら、1979、Meth.Enzymol.、68:90~99によるホスホジエステル法;Brownら、1979、Meth.Enzymol.、68:109~151によるホスホジエステル法;Beaucageら、1981、Tetrahedron Lett.、22:1859~1862によるジエチルホスホルアミダイト法;及び米国特許第4,458,066号による固体支持法などの方法による直接的な化学合成を含む、任意の適切な方法により調製されうる。オリゴヌクレオチドコンジュゲート及び修飾ヌクレオチドの合成法の総説については、参照により本明細書に組み込まれた、Goodchild、1990、Bioconjugate Chemistry、1(3):165~187において提示されている。
【0032】
本明細書において使用された、「プライマー」という用語は、適切な条件下においてDNA合成の開始点として作用することが可能なオリゴヌクレオチドを指す。このような条件は、適切な緩衝液中及び適切な温度、4つの異なるヌクレオシド三リン酸及び伸長のための薬剤(例えば、DNAポリメラーゼ又は逆転写酵素)の存在下において、核酸鎖と相補性である、プライマー伸長産物の合成が誘導される条件を含む。プライマー伸長はまた、ヌクレオチド三リン酸のうちの1つ以上の非存在下においても実行される場合があり、この場合、限定的な長さの伸長産物が産生される。本明細書において使用された、「プライマー」という用語は、1つのオリゴヌクレオチドが、隣接する位置においてハイブリダイズする、第2のオリゴヌクレオチドとのライゲーションにより「伸長」させられる、ライゲーション媒介反応において使用されたオリゴヌクレオチドを包含することが意図される。したがって、本明細書において使用された、「プライマー伸長」という用語は、プライマーを、DNA合成の開始点として使用する、個別のヌクレオシド三リン酸の重合及び伸長産物を形成する、2つのオリゴヌクレオチドのライゲーションの両方を指す。
【0033】
プライマーは、好ましくは、一本鎖DNAである。プライマーの適切な長さは、意図されたプライマーの使用に依存するが、典型的に、6~50ヌクレオチド、好ましくは、15~35ヌクレオチドの範囲である。短いプライマー分子は、一般に、鋳型と、十分に安定的なハイブリッド複合体を形成するのに、低温を要求する。プライマーは、鋳型核酸の正確な配列を反映する必要がないが、ハイブリダイズするのに、鋳型と、十分に相補性でなければならない。当技術分野において、増幅に適するプライマーのデザインは周知であり、本明細書に引用された文献に記載されている。
【0034】
プライマーは、プライマーの検出又は固定化を可能とするが、プライマーの基本的特性である、DNA合成の開始点として作用する特性を変更しない、さらなる特徴を組み込みうる。例えば、プライマーは、標的核酸とハイブリダイズしないが、増幅産物のクローニング又は検出を容易とする、5’末端における、さらなる核酸配列を含有しうる。本明細書において、鋳型と、ハイブリダイズする程度に十分に相補性である、プライマーの領域は、ハイブリダイジング領域と称される。
【0035】
本明細書において使用された、「標的」、「標的配列」、「標的領域」及び「標的核酸」という用語は、同義語であり、増幅、シーケンシング又は検出される、核酸の領域又は配列を指す。
【0036】
本明細書において使用された、「ハイブリダイゼーション」という用語は、相補的塩基対合に起因する、2つの一本鎖核酸による、二重鎖構造の形成を指す。ハイブリダイゼーションは、完全に相補性である核酸鎖の間において生じる場合もあり、小さなミスマッチ領域を含有する、「実質的に相補性」である核酸鎖の間において生じる場合もある。完全に相補性である核酸鎖のハイブリダイゼーションが、強く好ましい条件は、「厳密なハイブリダイゼーション条件」又は「配列特異的ハイブリダイゼーション条件」と称される。実質的に相補性である配列による、安定的な二重鎖は、それほど厳密でないハイブリダイゼーション条件下において達成されうるが;許容されるミスマッチの程度は、ハイブリダイゼーション条件の適切な調整により制御される。核酸技術の当業者は、当技術分野により提示される指針(参照により本明細書に組み込まれた、例えば、Sambrookら、1989、「Molecular Cloning-A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York;Wetmur、1991、Critical Review in Biochem.and Mol.Biol.、26(3/4):227~259;及びOwczarzyら、2008、Biochemistry、47:5336~5353を参照されたい)に従い、例えば、オリゴヌクレオチドの長さ及び塩基対組成、イオン強度並びにミスマッチ塩基対の発生を含む、多数の変数を、経験的に考慮して、二重鎖の安定性を決定しうる。
【0037】
「増幅反応」という用語は、鋳型核酸配列のコピーの増大を結果としてもたらす、又は鋳型核酸の転写を結果としてもたらす、酵素反応を含む、任意の化学反応を指す。増幅反応は、リバース転写、リアルタイムPCR(米国特許第4,683,195号及び同第4,683,202号;「PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innisら編、1990)を参照されたい)を含む、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及びリガーゼ連鎖反応(LCR)(Baranyら、米国特許第5,494,810号を参照されたい)を含む。例示的「増幅反応条件」又は「増幅条件」は、典型的に、2ステップサイクル又は3ステップサイクルを含む。2ステップサイクルは、高温度変性ステップに続く、ハイブリダイゼーション/伸長(又はライゲーション)ステップを有する。3ステップサイクルは、変性ステップに続く、ハイブリダイゼーションステップに続く、別個の伸長又はライゲーションステップを含む。
【0038】
本明細書において使用された、「ポリメラーゼ」は、ヌクレオチドの重合を触媒する酵素を指す。一般に、酵素は、核酸鋳型配列へとアニーリングされたプライマーの3’末端における合成を開始する。「DNAポリメラーゼ」は、デオキシリボヌクレオチドの重合を触媒する。公知のDNAポリメラーゼは、例えば、ピロコックス・フリオースス(Pfu)DNAポリメラーゼ(Lundbergら、1991、Gene、108:1)、E.コリー(E.coli)DNAポリメラーゼI(Lecomte及びDoubleday、1983、Nucleic Acids Res.、11:7505)、T7 DNAポリメラーゼ(Nordstromら、1981、J.Biol.Chem.、256:3112)、テルムス・テルモフィルス(Thermus thermophilus)(Tth)DNAポリメラーゼ(Myers及びGelfand、1991、Biochemistry、30:7661)、バシルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)DNAポリメラーゼ(Stenesh及びMcGowan、1977、Biochim Biophys Acta、475:32)、テルモコックス・リトラリス(Thermococcus litoralis)(Tli)DNAポリメラーゼ(また、Vent DNAポリメラーゼとも称された;Carielloら、1991、Nucleic Acids Res.、19:4193)、テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)(Tma)DNAポリメラーゼ(Diaz及びSabino、1998、Braz J.Med.Res、31:1239)、テルムス・アクアティクス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼ(Chienら、1976、J.Bacteoriol、127:1550)、テルモコックス・コダカレンシス/ピロコックス・コダカレンシス(Pyrococcus kodakaraensis)KOD DNAポリメラーゼ(Takagiら、1997、Appl.Environ.Microbiol.63:4504)、JDF-3DNAポリメラーゼ(特許出願第WO0132887号)、及びピロコックス属(Pyrococcus)GB-D(PGB-D)DNAポリメラーゼ(Juncosa-Ginestaら、1994、Biotechniques、16:820)を含む。上記の酵素のうちのいずれかのポリメラーゼ活性は、当技術分野で周知の手段により決定されうる。
【0039】
本明細書において使用された、プライマーは、十分に厳密な条件下にある増幅反応において使用される場合に、標的核酸に主にハイブリダイズするならば、標的配列に対して「特異的」である。典型的に、プライマーは、プライマー-標的二重鎖の安定性が、プライマーと、試料中に見出される、他の任意の配列との間において形成する二重鎖の安定性より大きいならば、標的配列に対して特異的である。当業者は、塩条件のほか、プライマーの塩基組成及びミスマッチの位置など、多様な因子が、プライマーの特異性に影響を及ぼし、多くの場合に、常套的な実験による、プライマー特異性の確認が必要とされることを認識する。プライマーが、標的配列だけと、安定的な二重鎖を形成しうるハイブリダイゼーション条件が選び出されうる。したがって、適切に厳密な増幅条件下における、標的特異的プライマーの使用は、標的のプライマー結合性部位を含有する標的配列の選択的増幅を可能とする。
【0040】
本明細書において使用された、「非特異的増幅」という用語は、標的配列以外の配列とハイブリダイズし、次いで、プライマー伸長のための基質として用いられるプライマーから生じる、標的配列以外の核酸配列の増幅を指す。プライマーの、非標的配列とのハイブリダイゼーションは、「非特異的ハイブリダイゼーション」と称され、とりわけ、低温時、低厳密性時、増幅前状態において、又は一塩基多型(SNP)の場合における通り、試料中に、真の標的と極めて近縁の配列を有する変異体対立遺伝子が存在する状況下においてに生じる傾向がある。
【0041】
「3’側におけるミスマッチ識別」という用語は、完全相補性配列を、伸長される核酸(例えば、プライマー又は他のオリゴヌクレオチド)が、核酸がハイブリダイズする鋳型と比較して、核酸の3’末端において、ミスマッチを有する、ミスマッチ含有(ほぼ相補性である)配列から区別する、DNAポリメラーゼの特性を指す。一部の実施形態において、伸長される核酸は、完全な相補性配列と比べて、3’末端において、ミスマッチを含む。
【0042】
「3’側ミスマッチ識別アッセイ」という用語は、標的DNA配列が、それらのそれぞれの3’末端において、又は3’末端の近傍において異なる塩基組成を有する、1つ以上のヌクレオチド残基の発生を除き、実質的に同一な配列を有する、2つのプライマーにより精査される場合に、標的DNA配列の増幅の特異性の改善の存在を見分けるアッセイを指す。例えば、標的DNA配列と完全に相補的である、3’末端配列を有する、第1のプライマーは、3’側マッチプライマーであると考えられ、標的DNA配列と非相補的である、少なくとも1つのヌクレオチド塩基を有する、3’末端配列を有する、第2のプライマーは、3’側ミスマッチプライマーであると考えられる。3’側ミスマッチ識別アッセイの例は、とりわけ、実施例4の表10及び11など、実施例のうちの多くにおいて提示されている。
【0043】
本明細書において使用された、「プライマー二量体」という用語は、プライマー伸長から生じると考えられる、鋳型非依存性の非特異的増幅産物を指し、この場合、別のプライマーは、鋳型として用いられる。プライマー二量体は、しばしば、2つのプライマーのコンカタマー、すなわち、二量体であるが、2つを超えるプライマーのコンカタマーもまた生じる。本明細書において、「プライマー二量体」という用語は、一般に、鋳型非依存性の非特異的増幅産物を包含するように使用される。
【0044】
本明細書において使用された、「反応混合物」という用語は、所与の反応を実行するのに必要な試薬を含有する溶液を指す。増幅反応を実行するのに必要な試薬を含有する溶液を指す、「増幅反応混合物」は、典型的に、適切な緩衝液中に、オリゴヌクレオチドプライマー及びDNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼを含有する。「PCR反応混合物」は、典型的に、適切な緩衝液中に、オリゴヌクレオチドプライマー、DNAポリメラーゼ(最も典型的に、熱安定性DNAポリメラーゼ)、dNTP及び二価金属カチオンを含有する。反応混合物は、反応を可能とするのに必要な、全ての試薬を含有する場合に、完全であると称され、必要な試薬のサブセットだけを含有する場合に、不完全であると称される。当業者により、反応成分は、規定により、簡便さ、保管安定性の理由のために、又は適用に依存する成分濃度の調整を可能とするように、各々が、全成分のサブセットを含有する、個別の溶液として保管され、反応成分は、完全反応混合物を創出するように、反応の前に組み合わされることが理解される。さらに、当業者により、反応成分は、個別にパッケージングされ、有用な市販キットは、本発明の保護化プライマーを含む、反応成分の任意のサブセットを含有しうることが理解される。
【0045】
本発明の目的のために、本明細書において使用された、「非活性化」又は「不活化」という用語は、DNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼが、それらの意図された目的のために、オリゴヌクレオチドと相互作用できないため、プライマー伸長反応又はライゲーション反応に関与することが不可能であるプライマー又は他のオリゴヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチドが、プライマーである、一部の実施形態において、非活性化状態は、プライマーが、プライマー伸長を防止するように、3’末端において、又はこの近傍において保護化されているために生じる。特異的基が、プライマーの3’末端において、又はこの近傍において結合された場合、DNAポリメラーゼは、プライマーに結合することができず、伸長は生じえない。しかし、非活性化プライマーは、実質的に相補性のヌクレオチド配列とハイブリダイズすることが可能である。
【0046】
本発明の目的のために、本明細書において使用された、「活性化」という用語は、DNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼとの反応に関与することが可能であるプライマー又は他のオリゴヌクレオチドを指す。プライマー又は他のオリゴヌクレオチドは、実質的に相補性である核酸配列とハイブリダイズした後に活性化され、DNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼと相互作用しうるよう、機能的な3’末端又は5’末端をもたらすように切断される。例えば、オリゴヌクレオチドが、プライマーであり、プライマーが、鋳型とハイブリダイズされる場合、DNAポリメラーゼが、プライマーの3’末端に結合し、プライマー伸長を促進するように、3’ブロッキング基は、例えば、切断性酵素により、プライマーから除去される。
【0047】
本明細書において使用された、「切断ドメイン」又は「切断性ドメイン」という用語は、同義語であり、プライマー又は他のオリゴヌクレオチドを切断する、切断化合物、例えば、切断酵素により認識された、プライマー又は他のオリゴヌクレオチドの5’末端と、3’末端との間に配置された領域を指す。本発明の目的のために、切断ドメインは、プライマー又は他のオリゴヌクレオチドが、相補性核酸配列とハイブリダイズされた場合に限り切断され、一本鎖である場合に切断されないようにデザインされる。切断ドメイン又はこれに隣接する配列は、a)ポリメラーゼ若しくはリガーゼによる、プライマー若しくは他のオリゴヌクレオチドの伸長若しくはライゲーションを、阻止若しくは阻害する部分、b)変異体対立遺伝子を検出する識別を増強する部分又はc)所望されない切断反応を抑制する部分を含みうる。1つ以上のこのような部分は、切断ドメイン内に含まれる場合もあり、これに隣接する配列内に含まれる場合もある。
【0048】
本明細書において使用された、「RNアーゼH切断ドメイン」という用語は、RNアーゼHに対する基質をもたらす、1つ以上のリボ核酸残基又は代替的類似体を含有する、切断ドメインの種類である。RNアーゼH切断ドメインは、プライマー又はオリゴヌクレオチド内の任意の箇所への配置が可能であり、好ましくは、分子の3’末端に、若しくはこの近傍に、又は5’末端に配置される。
【0049】
「RNアーゼH2切断ドメイン」は、1つのRNA残基を含有する場合もあり、隣接して連結されたRNA残基の配列を含有する場合もあり、DNA残基又は他の化学基により隔てられたRNA残基を含有する場合もある。一実施形態において、RNアーゼH2切断ドメインは、2’-フルオロヌクレオシド残基である。より好ましい実施形態において、RNアーゼH2切断可能ドメインは、2つの隣接する2’-フルオロ残基を含む。
【0050】
本明細書において使用された、「保護化プライマー」という用語は、最小限において、標的配列と、十分にハイブリダイズするために適する切断性ドメイン、切断可能ドメイン、及び切断が生じるまで、プライマーの3’末端からの伸長を防止するブロッキング基を保有するプライマーを指す。好ましい実施形態において、切断可能ドメインは、RNアーゼH切断ドメインであり、ブロッキング基は、プロパンジオール(C3)スペーサーである。
【0051】
本明細書において使用された、「切断化合物」又は「切断剤」という用語は、プライマー内又は他のオリゴヌクレオチド内の切断ドメインを認識し、切断ドメインの存在に基づき、オリゴヌクレオチドを選択的に切断しうる、任意の化合物を指す。本発明において利用された切断化合物は、実質的に相補性の核酸配列とハイブリダイズされた場合に限り、切断ドメインを含むプライマー又は他のオリゴヌクレオチドを選択的に切断し、一本鎖である場合に、プライマー又は他のオリゴヌクレオチドを切断しない。切断化合物は、切断ドメイン内である、又はこれに隣接する、プライマー又は他のオリゴヌクレオチドを切断する。本明細書において使用された、「隣接する」という用語は、切断化合物が、切断ドメインの5’末端又は3’末端において、プライマー又は他のオリゴヌクレオチドを切断することを意味する。本発明において好ましい切断反応は、5’-リン酸基及び3’-OH基をもたらす。
【0052】
好ましい実施形態において、切断化合物は、「切断酵素」である。切断酵素は、プライマー又は他のヌクレオチドが、実質的に相補性の核酸配列とハイブリダイズされた場合に、切断性ドメインを認識することが可能であるが、相補性核酸配列を切断しない(すなわち、二重鎖内の一本鎖切断をもたらす)、タンパク質又はリボザイムである。切断酵素はまた、それが、一本鎖である場合、切断ドメインを含むプライマー又は他のオリゴヌクレオチドも切断しない。切断酵素の例は、である。RNアーゼH酵素及び他のニッキング酵素である。
【0053】
本明細書において使用された、「ニッキング」という用語は、完全二本鎖核酸又は部分的二本鎖核酸の二本鎖部分の1つの鎖だけの切断を指す。核酸がニッキングされる位置は、「ニッキング部位」(NS)と称される。「ニッキング剤」(NA)は、二本鎖核酸を、部分的に、又は完全にニッキングする薬剤である。NAは、酵素の場合もあり、他の任意の化合物又は組成物の場合もある。ある特定の実施形態において、ニッキング剤は、完全二本鎖核酸又は部分的二本鎖核酸の、特定のヌクレオチド配列を認識し、認識配列の位置と比べて、特異的位置(すなわち、NS)において、完全二本鎖核酸又は部分的二本鎖核酸の1つの鎖だけを切断しうる。このようなニッキング剤(「配列特異的ニッキング剤」と称される)は、ニッキングエンドヌクレアーゼ(例えば、N.BstNB)を含むがこれらに限定しない。
【0054】
したがって、本明細書において使用された、「ニッキングエンドヌクレアーゼ」(NE)とは、完全に二本鎖である核酸分子又は部分的に二本鎖である核酸分子のヌクレオチド配列を認識し、認識配列と比べて特異的位置において、核酸分子の一方の鎖だけを切断するエンドヌクレアーゼを指す。このような場合において、認識部位から、切断点までの全配列が、「切断ドメイン」を構成する。
【0055】
本明細書において使用された、「ブロッキング基」という用語は、増幅反応が生じないように、プライマー又は他のオリゴヌクレオチドに結合された化学的部分を指す。例えば、プライマー伸長及び/又はDNAライゲーションは生じない。ブロッキング基が、プライマー又は他のオリゴヌクレオチドから除去されると、オリゴヌクレオチドは、それがデザインされたアッセイ(PCR、ライゲーション、シーケンシングなど)に関与することが可能である。したがって、「ブロッキング基」は、ポリメラーゼ又はDNAリガーゼによる認識を阻害する、任意の化学的部分でありうる。ブロッキング基は、一般に、切断ドメインの5’型又は3’側に配置された切断ドメインへと組み込まれうる。ブロッキング基は、1つを超える化学的部分で構成されうる。本発明において、「ブロッキング基」は、典型的に、オリゴヌクレオチドの、その標的配列とのハイブリダイゼーションの後に除去される。
【0056】
「蛍光発生プローブ」という用語は、a)フルオロフォア及び消光剤を接合させたオリゴヌクレオチド及び、任意選択的に、副溝結合剤又はb)SYBR(登録商標)Green染料などのDNA結合性試薬を指す。
【0057】
「蛍光標識」又は「フルオロフォア」という用語は、蛍光発光の最大値が、約350~900nmの間である化合物を指す。5-FAM(また、5-カルボキシフルオレセインとも呼ばれ;また、Spiro(イソベンゾフラン-1(3H)、9’-(9H)キサンテン)-5-カルボン酸,3’,6’-ジヒドロキシ-3-オキソ-6-カルボキシフルオレセインとも呼ばれる);5-ヘキサクロロ-フルオレセイン;([4,7,2’,4’,5’,7’-ヘキサクロロ-(3’,6’-ジピバロイル-フルオレセイニル)-6-カルボン酸]);6-ヘキサクロロ-フルオレセイン;([4,7,2’,4’,5’,7’-ヘキサクロロ-(3’,6’-ジピバロイルフルオレセイニル)-5-カルボン酸]);5-テトラクロロ-フルオレセイン;([4,7,2’,7’-テトラ-クロロ-(3’,6’-ジピバロイルフルオレセイニル)-5-カルボン酸]);6-テトラクロロ-フルオレセイン;([4,7,2’,7’-テトラクロロ-(3’,6’-ジピバロイルフルオレセイニル)-6-カルボン酸]);5-TAMRA(5-カルボキシテトラメチルローダミン);9-(2,4-ジカルボキシフェニル)-3,6-bis(ジメチル-アミノ)である、Xanthylium;6-TAMRA(6-カルボキシテトラメチルローダミン);9-(2,5-ジカルボキシフェニル)-3,6-ビス(ジメチルアミノ);EDANS(5-((2-アミノエチル)アミノ)ナフタレン-1-スルホン酸);1,5-IAEDANS(5-((((2-ヨードアセチル)アミノ)エチル)アミノ)ナフタレン-1-スルホン酸);Cy5(インドジカルボシアニン-5);Cy3(インド-ジカルボシアニン-3);及びBODIPYFL(2,6-ジブロモ-4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸);Quasar(登録商標)-670染料(Biosearch Technologies);Cal Fluor(登録商標)Orange染料(Biosearch Technologies);Rox染料;Max染料(Integrated DNA Technologies)のほか、これらの適切な誘導体を含むがこれらに限定されない、多種多様なフルオロフォアが使用されうる。
【0058】
本明細書において使用された、「消光剤」という用語は、ドナーと結合させた場合又はドナーと近接する場合に、蛍光ドナーからの発光を低減することが可能な分子又は化合物の部分を指す。消光は、蛍光共鳴エネルギー移動、光誘起電子移動、常磁性項間交差増強、デクスター交換カップリング及び暗色複合体の形成などの励起カップリングを含む、いくつかの機構のうちのいずれかにより生じうる。蛍光は、フルオロフォアにより発光させた蛍光が、消光剤の非存在下における蛍光と比較して、少なくとも10%、例えば、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.9%以上低減された場合に、「消光」されている。当技術分野において、多数の市販消光剤が公知であり、DABCYL、BlackHole(商標)Quenchers(BHQ-1、BHQ-2及びBHQ-3)、Iowa Black(登録商標)FQ及びIowa Black(登録商標)RQを含むがこれらに限定されない。これらは、いわゆる暗色消光剤である。これらは、天然の蛍光を有さず、内因的に蛍光性であるTAMRAなど、他の消光剤に伴うバックグラウンド問題を、事実上消失させる。
【0059】
本明細書において使用された、「ライゲーション」という用語は、2つのポリヌクレオチド末端の共有結合的接続を指す。多様な実施形態において、ライゲーションは、第1のポリヌクレオチド(アクセプター)の3’末端の、第2のポリヌクレオチド(ドナー)の5’末端への、共有結合的接続を伴う。ライゲーションは、ポリヌクレオチド末端の間において形成するホスホジエステル結合を結果としてもたらす。多様な実施形態において、ライゲーションは、ポリヌクレオチド末端の共有結合的接続を結果としてもたらす、任意の酵素、化学反応又は過程により媒介されうる。ある特定の実施形態において、ライゲーションは、リガーゼ酵素により媒介される。
【0060】
本明細書において使用された、「リガーゼ」は、1つのポリヌクレオチドの3’ヒドロキシル基を、第2のポリヌクレオチドの5’リン酸基へと、共有結合的に連結することが可能な酵素を指す。リガーゼの例は、E.コリーDNAリガーゼ、T4 DNAリガーゼなどを含む。
【0061】
ライゲーション反応は、また、「リガーゼ増幅反応」(LAR)とも称された、「リガーゼ連鎖反応」(LCR)などのDNA増幅法において利用されうる(参照により本明細書に組み込まれた、Barany、Proc.Natl.Acad.Sci.、88:189(1991);及びWu及びWallace、Genomics、4:560(1989)も参照されたい)。LCRにおいて、標的DNAのうちの一方の鎖に固有にハイブリダイズする2つの隣接するオリゴヌクレオチド、及び向かい側の鎖とハイブリダイズする隣接するオリゴヌクレオチドの相補性セットである、4つのオリゴヌクレオチドが混合され、DNAリガーゼが、混合物へと添加される。標的配列の存在下において、DNAリガーゼは、ハイブリダイズされた分子の各セットを、共有結合的に連結する。重要なことは、LCRにおいて、2つのオリゴヌクレオチドは、配列と、ギャップを伴わずに塩基対合する場合に限り、一体にライゲーションされることである。変性、ハイブリダイゼーション及びライゲーションのサイクルの反復は、DNAの短いセグメントを増幅する。隣接するオリゴヌクレオチド間の接続部におけるミスマッチは、ライゲーションを阻害する。他のオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイにおいて、この特性は、LCRが、SNPなどの変異体対立遺伝子を区別するのに使用されることを可能とする。LCRはまた、一塩基変化の検出の増強を達成するように、PCRと組み合わせても使用されている(Segev、PCT公開第WO9001069号(1990)を参照されたい)。
【0062】
「コドン最適化」という用語は、ポリペプチドをコードする、特定の核酸を修飾するので、所与の微生物細胞(例えば、とりわけ、E.コリー、S.セレビシエ(S.cerevisae))又は哺乳動物細胞(例えば、とりわけ、HeLa細胞、COS細胞などのヒト細胞)など、所与の宿主細胞内における効率的発現に好ましいコドンの組入れを指す。当技術分野において、このような好ましいコドンは、様々な生物について開発された、コドンバイアス表に基づき、周知である。本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、コドンバイアス表が開発されている、又はこのような表が、経験的決定から、たやすく見分けられうる、任意の公知の生物のための、コドン最適化オープンリーディングフレームを有するポリヌクレオチドを含む。
【0063】
「BaseXによるPCR増幅法」という語句は、各増幅サイクルについて、増幅産物の、2倍を超える増大を可能とし、これにより、従来のPCRを上回る、感度及び速度の増大を可能とする、高度に効率的な核酸増幅を指す。この方法は、その内容が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれた、2019年4月30日に公開された、R.Higuchi(出願者:Cepheid)による、「Exponential base-greater-than-2 nucleic acid amplification」と題された、米国特許公開第US10273534(B2)号において開示されている。
【0064】
「融合タンパク質」又は「融合ポリペプチド」という語句は、追加のアミノ酸情報が、共有結合的に接合された、タンパク質に天然ではない、追加のアミノ酸情報の組入れを指す。このような追加のアミノ酸情報は、融合タンパク質の精製又は同定を可能とするタグを含みうる。このような追加のアミノ酸情報は、融合タンパク質が、細胞へと輸送され、かつ/又は細胞内の特異的位置へと輸送されることを可能とするペプチドを含みうる。これらの目的のためのタグの例は、以下:酵素であるBirAによるビオチニル化を可能とするので、タンパク質は、ストレプトアビジンにより単離されうるペプチドである、AviTag;タンパク質であるカルモジュリンにより結合されるペプチドである、カルモジュリンタグ;Mono-Qなどのアニオン交換樹脂に、効率的に結合するペプチドである、ポリグルタミン酸タグ;抗体により認識されたペプチドである、Eタグ;抗体により認識されたペプチドである、FLAGタグ;抗体により認識されたヘマグルチニンに由来するペプチドである、HAタグ;典型的に、ニッケルキレート剤又はコバルトキレート剤により結合させた、5つ~10のヒスチジンである、Hisタグ;抗体により認識されたc-mycに由来するペプチドである、Mycタグ;モノクローナルIgG1抗体により認識され、ウェスタンブロット法、ELISA、フローサイトメトリー、免疫組織化学、免疫沈降及び組換えタンパク質のアフィニティー精製を含む、広範にわたる適用において有用である、新規の18アミノ酸の合成ペプチドである、NEタグ;リボヌクレアーゼAに由来するペプチドである、Sタグ;ストレプトアビジンに結合するペプチドである、SBPタグ;哺乳動物における発現が意図された、Softag 1;原核生物における発現が意図された、Softag 3;ストレプトアビジン又はストレプトアクチンと呼ばれた改変ストレプトアビジンに結合するペプチド(StrepタグII)である、Strepタグ;FlAsH二ヒ素化合物及びReAsH二ヒ素化合物により認識された二ヒ素テトラシステインタグである、TCタグ;抗体により認識されたペプチドである、V5タグ;抗体により認識されたペプチドである、VSVタグ;Xpressタグ;ピリンCタンパク質に共有結合的に結合するペプチドである、Isopeptag;SpyCatcherタンパク質に共有結合的に結合するペプチドである、SpyTag;SnoopCatcherタンパク質に共有結合的に結合するペプチドである、SnoopTag;ストレプトアビジンによる認識を可能とするように、BirAによりビオチニル化されたタンパク質ドメインである、BCCP(biotin carboxyl carrier protein);固定化されたグルタチオンに結合するタンパク質である、グルタチオン-S-トランスフェラーゼタグ;自発的蛍光発光性であり、抗体により結合されうるタンパク質である、緑色蛍光タンパク質タグ;反応性のハロアルカン基質に共有結合的に接合して、多種多様な基質への接合を可能とする、突然変異細菌ハロアルカンデハロゲナーゼである、HaloTag;アミロースアガロースに結合するタンパク質である、マルトース結合性タンパク質タグ;Nusタグ;チオレドキシンタグ;並びに二量体化及び可溶化を可能とし、プロテインAセファロース上における精製のために使用されうる、免疫グロブリンFcドメインに由来するFcタグを含む。SV40から得られたNLSなどの核局在シグナル(NLS)は、タンパク質が、細胞に侵入した直後に、核へと輸送されることを可能とする。天然のCas9タンパク質が、細菌由来であるため、天然において、NLSモチーフを含まないことを踏まえると、1つ以上のNLSモチーフの、組換えCas9タンパク質への付加は、標的ゲノムのDNA基質が、核内に常在する、真核細胞内において使用された場合に、ゲノム編集活性の改善を示すことが期待される。当業者は、これらの多様な融合タグ技術、関与する特定のアミノ酸配列のほか、これらを含む融合タンパク質を、どのように作製し、どのように使用するのかを理解する。一実施形態において、高度に好ましい融合タンパク質又は融合ポリペプチドは、Hisタグモチーフを含むが、当業者は、上記において言及された通り、他のタグも含まれうることを理解する。本発明は、融合タンパク質又は融合ポリペプチドのほか、さらなるアミノ酸配列情報を欠く、対応するタンパク質又はポリペプチドの、元の突然変異形を含む。
【0065】
公知のRNアーゼH2酵素に由来するアミノ酸配列の組換えリシャッフリングにより作出された、新規のハイブリッドRNアーゼH2酵素変異体
新規かつ有用な特性を伴う、2つのハイブリッドRNアーゼH2酵素は、ピロコックス・アビッシ、テルモコックス・コダカレンシス及びピロコックス・フリオーススを含む、3つのRNアーゼH2酵素に由来するアミノ酸配列の部分的組換え(「シャッフリング」)を介して作出され、ハイブリッドRNアーゼH2酵素を結果としてもたらすことができる。特に、生物であるピロコックス・アビッシ、テルモコックス・コダカレンシス及びピロコックス・フリオーススに由来するアミノ酸配列の断片を組み合わせる、2つの突然変異体RNアーゼH2酵素である、SEL28 RNアーゼH2(配列番号89)及びSEL29 RNアーゼH2(配列番号90)は、ミスマッチ識別を、著明に増強することが発見された。突然変異体は、RNアーゼH2配列のランダムシャッフリングにより創出されたライブラリーから選択された。他の変化もまた存在するが、いずれの突然変異体酵素も、T.kod RNアーゼH2のアミノ酸残基26~40及び残基100~120の断片を含有する。公知の結晶構造(Muroyaら、2001;Rychlikら、2010)との相同性に基づき、これらの残基は、結合されたDNA二重鎖と接触する可能性が高い。いかなる特定の理論にも束縛されずに述べると、T.kod RNアーゼH2の残基26~40及び残基100~120は、基質二重鎖に対する酵素結合ポケットを変化させる結果として、結合アフィニティー及び核酸切断の触媒作用の変化をもたらすことが仮定されうる。野生型P.ab.RNアーゼH2タンパク質(配列番号88)、ハイブリッドSEL28 RNアーゼH2タンパク質(配列番号89)及びハイブリッドSEL29 RNアーゼH2タンパク質(配列番号90)のアミノ酸配列を、表1に描示する。野生型P.ab.RNアーゼH2タンパク質(配列番号1)、ハイブリッドSEL28 RNアーゼH2タンパク質(配列番号2)及びハイブリッドSEL29 RNアーゼH2タンパク質(配列番号3)の、対応する(His)タグ付けアミノ酸配列もまた調製され、さらなる突然変異体RNアーゼH2タンパク質を作出するためのベースとして用いられた(表3を参照されたい)。
【0066】
【表1】
【0067】
配列番号89及び90によりコードされた、結果として得られるハイブリッドSEL28 RNアーゼH2酵素及びSEL29 RNアーゼH2酵素は、ミスマッチが、RNAヌクレオチドに配置された場合、ミスマッチ識別を改善するが、多様な程度において、異なる特異性を伴う(データは示さない)。同様に、配列番号89及び90によりコードされた、SEL28突然変異体RNアーゼH2酵素及びSEL29突然変異体RNアーゼH2酵素は、RNAヌクレオチドの5’側におけるミスマッチ識別を改善する(データは示さない)。
【0068】
テルムス・アクアティクス(Taq)に由来するDNAポリメラーゼではなく、高忠実度DNAポリメラーゼ(ピロコックス・フリオースス及びテルモコックス・コダカレンシス(KOD)に由来するDNAポリメラーゼなど)を使用するrhPCRcouldもまた実施されうる。しかし、WT P.a.RNアーゼH2、SEL28 RNアーゼH2及びSEL29 RNアーゼH2は、高忠実度ポリメラーゼ及び関連する反応緩衝液を使用するrhPCRにおける活性が限定的である。Taq DNAポリメラーゼに最適の反応緩衝液は、KOD DNAポリメラーゼに最適の緩衝液と実質的に異なる。KOD DNAポリメラーゼのための反応緩衝液中の成分に対して、より大きな許容性を有する、RNアーゼH2内の突然変異が見出されうる。本発明者らは、Q48R、A107V及びP13S/A107Vが、ハイブリッド突然変異体である、SEL28 RNアーゼH2又はSEL29 RNアーゼH2へと付加された場合に、KOD DNAポリメラーゼ反応緩衝液を使用する酵素活性を増強することを示す。
【0069】
本発明は、KOD DNAポリメラーゼ及びその最適の反応緩衝液を使用するrhPCR時に、酵素活性を増強する、突然変異体RNアーゼH2酵素に関する。SEL29 RNアーゼH2の第48アミノ酸及び第107アミノ酸における突然変異は、この活性を改善することが示されている。SEL28 RNアーゼH2又はSEL29 RNアーゼH2のバックグラウンドを伴う、7つの点突然変異体のスクリーンを実施したところ、Q48R SEL29 RNアーゼH2及びA107V SEL29 RNアーゼH2が、KOD DNAポリメラーゼ反応緩衝液を使用する酵素活性を増強することが示された。これらはまた、SEL29 RNアーゼH2のミスマッチ識別能を保持又は増強することも示された。
【0070】
RNアーゼH2媒介PCR
本明細書において開示されたハイブリッドRNアーゼH2突然変異体タンパク質は、様々なPCR適用において使用されうる。RNアーゼH2に依存するPCRは、ピロコックス・アビッシ又は類縁の生物に由来するRNアーゼH2並びに単一のリボヌクレオチド残基及び3’保護部分を含有するDNAプライマー(「ブロックされた切断可能プライマー」)を使用することにより、PCRの特異性を増大させ、プライマー二量体を消失させる方法である。ブロックされた切断可能プライマーは、RNアーゼH2酵素により切断された場合に活性化される。切断は、プライマーの、標的DNAとのハイブリダイゼーション後、RNA塩基の5’側において生じる。プライマーは、完全にマッチされた標的配列とハイブリダイズした後に限り切断されうるため、プライマー二量体は低減される。高標的相補性に対する要求は、近縁配列の増幅を低減する。
【0071】
この点において、ハイブリッドRNアーゼH2突然変異体タンパク質は、特に、次世代シーケンシング適用(NGS)など、ハイスループットマルチプレックスシーケンシング適用のための、高品質ゲノムの増幅産物ライブラリーの作出における性能の増強に適する。特に、Q48R SEL29は、RNアーゼH2媒介PCR適用及び本出願者らのrhAmpSeq(商標)システムなどのシステムに有用なRNアーゼH2酵素である。
RNアーゼH2媒介SNP検出及びRNアーゼH2媒介稀少対立遺伝子検出
3’側におけるミスマッチ識別属性の増強のために、本明細書において開示されたハイブリッドRNアーゼH2突然変異体タンパク質は、一塩基多型検出及び稀少対立遺伝子検出を検出するのに使用されうる。所望のSNP含有核酸鋳型とに限り、完全な二重鎖を形成する、ブロックされた切断可能プライマーの使用は、ハイブリッドRNアーゼH2突然変異体タンパク質により認識及び切断され、これにより、適切な条件下における、DNAポリメラーゼによるプライマー伸長のための、プライマー:所望の核酸鋳型二重鎖を活性化させる。
【0072】
ループ媒介等温増幅(LAMP)におけるRNアーゼH2
本明細書において、ループ媒介等温増幅(LAMP)におけるRNアーゼH2の使用もまた想定される。LAMP増幅法は、サイクリング中の反応温度の変化を伴わない、等温条件下において実施される。LAMPは、所望の単位複製配列の、6つの異なる領域を認識するようにデザインされた、最小限4つの異なるプライマーを要求する(Notomiら、Nucleic Acids Research、28(12)(2000))。増幅反応は、通例、バシルス・ステアロテルモフィルス(Bst)に由来する、DNAポリメラーゼの鎖置換活性に依存する。産物は、標的配列の長鎖逆方向反復からなる構造を有する。
【0073】
LAMP反応は、多数のプライマー及び方法における中温性DNAポリメラーゼの使用のために、プライマー二量体産物を形成しやすい。LAMPはまた、この活性が、不可欠の鎖置換活性と競合することにより、増幅を破壊するという事実のために、BSTポリメラーゼの増幅において、5’→3’エクソヌクレアーゼ活性も欠く。ブロックされた切断可能プライマー及びRNアーゼH2の使用は、LAMP反応における、プライマー二量体シグナルの検出を低減する、又はこれを消失させるのに利用されうる。この点において、ハイブリッドRNアーゼH2突然変異体タンパク質は、特に、プライマー二量体の付随的生成を伴わずに、LAMP反応において形成された、所望の産物の性能の増強に適する。
【0074】
適用
第1の態様において、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質が提供される。ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質は、生物であるピロコックス・アビッシ(P.a.)、テルモコックス・コダカレンシス(T.kod)及びピロコックス・フリオーススに由来するアミノ酸配列の断片を含む。第1の関連事項において、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質は、T.kod RNアーゼH2のアミノ酸残基26~40及び残基100~120を含む。第2の関連事項において、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質は、配列番号2及び3から選択される。第3の関連事項において、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質は、配列番号14~20から選択される。
【0075】
第2の態様において、本明細書において開示された、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質のうちのいずれかをコードする組換え核酸が提供される。第1の関連事項において、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質のうちのいずれかをコードする例示的組換え核酸は、表14の配列番号79~87を含む。
【0076】
第3の態様において、プライマー伸長を実行するための方法が提供される。方法は、プライマー伸長法に適する条件下において、本明細書において開示された、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質を、プライマー、ポリヌクレオチド鋳型、ヌクレオシド三リン酸及びDNAポリメラーゼと接触させ、これにより、伸長プライマーを作製するステップを含む。第1の関連事項において、DNAポリメラーゼは、高忠実度古細菌DNAポリメラーゼを含む。第2の関連事項において、プライマーは、ブロックされた切断可能プライマーを含む。第3の関連事項において、プライマー伸長法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実行するための方法を含む。第4の関連事項において、PCRを実行するための方法は、プライマーと、ポリヌクレオチド鋳型との間において形成されたプライマー:ポリヌクレオチドハイブリッド体における、ミスマッチ識別を改善する。第5の関連事項において、ミスマッチ識別の改善は、3’側におけるミスマッチ識別の改善を含む。
【0077】
第4の態様において、反応混合物が提供される。反応混合物は、本明細書において記載された、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質、少なくとも1つのプライマー、ポリヌクレオチド鋳型、ヌクレオシド三リン酸及びDNAポリメラーゼを含む。第1の関連事項において、反応混合物は、高忠実度古細菌DNAポリメラーゼであるDNAポリメラーゼを含む。第2の関連事項において、反応混合物は、ブロックされた切断可能プライマーである少なくとも1つのプライマーを含む。
【0078】
第5の態様において、rhPCRを実施するための方法が提供される。方法は、本明細書において記載された、ハイブリッドRNアーゼH2、DNAポリメラーゼ及びプライマーにより、プライマー伸長を実施するステップを含む。第1の関連事項において、rhPCRを実施する方法は、高忠実度古細菌DNAポリメラーゼにより、プライマー伸長を実施するステップを含む。第2の関連事項において、ハイブリッドRNアーゼH2酵素は、化学修飾、アプタマー又は遮断抗体により可逆的に不活化される。第3の関連事項において、ブロッキング基は、プライマーの3’末端ヌクレオチドへと結合される。第4の関連事項において、ブロッキング基は、3’末端残基の5’側へと結合され、プライマーが、DNA合成のための鋳型として用いられることを阻害する。第5の関連事項において、ブロッキング基は、1つ以上の脱塩基残基を含む。第6の関連事項において、1つ以上の脱塩基残基は、C3スペーサーである。第7の関連事項において、ブロッキング基は、RDDDDx、RDDDDMx、RDxxD、RDxxDM、RDDDDxxD、RDDDDxxDM及びDxxDからなる群から選択される、1つのメンバー[配列中、Rは、RNA残基であり、Dは、DNA残基であり、Mは、ミスマッチ残基であり、xは、C3スペーサー又は分解に対して耐性である、特許権のある他の基である]を含む。この点において、ブロッキング基は、伸長増幅反応の検出を可能とする標識を含む。この点において、増幅反応の検出を可能とする標識は、切断部位から3’側において、オリゴヌクレオチドプライマーへと結合される。この点において、標識は、フルオロフォア又は質量分析による増幅反応の検出のための質量タグである。さらなる態様において、ブロックされた切断可能プライマーの切断ドメインは、以下の部分:DNA残基、脱塩基残基、修飾ヌクレオシド又はヌクレオチド間修飾リン酸連結のうちの1つ以上を含む。さらなる関連事項において、切断ドメインは、単一のRNA残基、2つの隣接するRNA残基、3つ以上のRNA残基による連続配列を含み、RNA残基又は1つ以上の2’修飾ヌクレオシドを欠く。切断ドメインが、1つ以上の2’修飾ヌクレオシドを含む関連事項において、1つ以上の2’修飾ヌクレオシドは、2’-O-アルキルRNAヌクレオシド、2’-フルオロヌクレオシド、ロックド核酸、2’-エチレン核酸残基、2’-アルキルヌクレオシド、2’-アミノヌクレオシド及び2’-チオヌクレオシドからなる群から選択される。例示的2’修飾ヌクレオシドは、2’-O-メチルRNAヌクレオシド及び2’-フルオロヌクレオシドを含む。
【0079】
第6の態様において、標的DNA配列を増幅する方法が提供される。方法は、いくつかのステップを含む。第1のステップは、以下:(i)オリゴヌクレオチドプライマーの3’末端において、又はこの近傍において連結されたブロッキング基の5’側に配置された、RNアーゼH2酵素により切断可能である切断ドメインを有するオリゴヌクレオチドプライマーであって、ブロッキング基が、プライマー伸長を阻止し、かつ/又はオリゴヌクレオチドプライマーが、DNA合成のための鋳型として用いられることを阻害する、オリゴヌクレオチドプライマー;(ii)標的配列の場合もあり、標的配列でない場合もある試料核酸;(iii)DNAポリメラーゼ;及び(iv)本明細書において開示された、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質を含む反応混合物を用意するステップである。第2のステップは、オリゴヌクレオチドプライマーを、標的DNA配列とハイブリダイズさせて、二本鎖基質を形成するステップである。第3のステップは、ハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドプライマーを、ハイブリッドRNアーゼH2酵素により、切断ドメイン内の切断部位又は切断ドメインと隣接する切断部位において切断して、ブロッキング基を、オリゴヌクレオチドプライマーから除去するステップである。方法についての第1の関連事項において、DNAポリメラーゼは、古細菌高忠実度DNAポリメラーゼである。第2の関連事項において、RNアーゼH2タンパク質は、化学修飾又は遮断抗体により可逆的に不活化される。方法についてのさらなる関連事項において、ブロッキング基は、オリゴヌクレオチドプライマーの3’末端ヌクレオチドへと結合される。方法についてのさらなる関連事項において、ブロッキング基は、3’末端残基の5’側へと結合され、オリゴヌクレオチドプライマーが、DNA合成のための鋳型として用いられることを阻害する。方法についてのさらなる関連事項において、ブロッキング基は、1つ以上の脱塩基残基を含む。方法についてのさらなる関連事項において、1つ以上の脱塩基残基は、C3スペーサー又は分解に対して耐性である、特許権のある他の基である。方法についてのさらなる関連事項において、ブロッキング基は、RDDDDx、RDDDDMx、RDxxD、RDxxDM、RDDDDxxD、RDDDDxxDM及びDxxDからなる群から選択される、1つのメンバー[配列中、Rは、RNA残基であり、Dは、DNA残基であり、Mは、ミスマッチ残基であり、xは、C3スペーサー又は分解に対して耐性である、特許権のある他の基である]を含む。方法についてのさらなる関連事項において、ブロッキング基は、伸長増幅反応の検出を可能とする標識を含む。方法についてのさらなる関連事項において、方法は、増幅反応の検出を可能とする標識をさらに含み、この場合、標識は、切断部位から3’側において、オリゴヌクレオチドプライマーへと結合される。これらの関連事項において、標識は、フルオロフォア又は質量分析による増幅反応の検出のための質量タグである。方法についてのさらなる関連事項において、切断ドメインは、以下の部分:DNA残基、脱塩基残基、修飾ヌクレオシド又はヌクレオチド間修飾リン酸連結のうちの1つ以上を含む。方法についてのさらなる関連事項において、切断ドメインは、単一のRNA残基、2つの隣接するRNA残基、3つ以上のRNA残基による連続配列又は1つ以上の2’修飾ヌクレオシドを含む。切断ドメインが、1つ以上の2’修飾ヌクレオシドを含む関連事項において、これらの2’修飾ヌクレオシドは、2’-O-アルキルRNAヌクレオシド、2’-フルオロヌクレオシド、ロックド核酸、2’-エチレン核酸残基、2’-アルキルヌクレオシド、2’-アミノヌクレオシド及び2’-チオヌクレオシドからなる群から選択される。例示的2’修飾ヌクレオシドは、2’-O-メチルRNAヌクレオシド及び2’-フルオロヌクレオシドを含む。
【0080】
第7の態様において、伸長プライマーを作製するためのキットが提供される。キットは、本明細書において開示された、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質を提供する、少なくとも1つの容器を含む。第1の関連事項において、キットは、(a)伸長条件下において、所定のポリヌクレオチド鋳型とハイブリダイズ可能であるプライマーを提供する容器;(b)ヌクレオシド三リン酸を提供する容器;(c)プライマー伸長に適する緩衝液を提供する容器及び(d)DNAポリメラーゼからなる群から選択される、1つ以上のさらなる容器をさらに含む。第2の関連事項において、DNAポリメラーゼは、高忠実度古細菌DNAポリメラーゼを含む。第3の関連事項において、前述のキットは、ブロックされた切断可能プライマーを含有する、1つ以上のさらなる容器を含む。
【0081】
第8の態様において、標的DNA配列の増幅を実施するためのキットが提供される。キットは、本明細書において記載されたRNアーゼH2と、高忠実度古細菌DNAポリメラーゼとを含む反応緩衝液を含む。第1の関連事項において、キットは、1つ以上のオリゴヌクレオチドプライマーをさらに含み、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーは、オリゴヌクレオチドプライマーの3’末端において、又はこの近傍において連結されたブロッキング基の5’側に配置された、RNアーゼH2酵素により切断可能である切断ドメイン、ブロッキング基が、プライマー伸長を阻止し、かつ/又はオリゴヌクレオチドプライマーが、DNA合成のための鋳型として用いられることを阻害する、切断ドメインを有する。第2の関連事項において、キットは、RDDDDx、RDDDDMx、RDxxD、RDxxDM、RDDDDxxD、RDDDDxxDM及びDxxDからなる群から選択される、1つのメンバー[配列中、Rは、RNA残基であり、Dは、DNA残基であり、Mは、ミスマッチ残基であり、xは、C3スペーサー又は分解に対して耐性である、特許権のある他の基である]であるブロッキング基を含む。
【0082】
第9の態様において、鋳型核酸の増幅産物ライブラリーを調製する方法が提供される。方法は、いくつかのステップを含む。第1のステップは、ハイブリッド二重鎖が、混合物中の、少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマーと、核酸集団との間において形成するように、核酸集団、少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマー、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質、dNTP、DNAポリメラーゼ及び緩衝液を含む混合物を形成するステップである。第2のステップは、少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマーを、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質により切断して、DNAポリメラーゼによるプライマー伸長が可能である、少なくとも1つの活性プライマーを作出するステップである。第3のステップは、緩衝液中、1つ以上の鋳型核酸の、核酸集団からの増幅を可能とする条件下において、DNAポリメラーゼにより、少なくとも1つの活性プライマーを伸長させ、これにより、鋳型核酸の単位複製配列を作出するステップである。第1の関連事項において、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質は、Q48R SEL29(配列番号18)又は他のハイブリッドRNアーゼH2タンパク質から選択される。第2の関連事項において、DNAポリメラーゼは、高忠実度古細菌DNAポリメラーゼ又は他のDNAポリメラーゼである。第3の関連事項において、緩衝液は、高忠実度古細菌DNAポリメラーゼ緩衝液である。
【0083】
第10の態様において、大量並列シークエンシング(massively parallel sequencing)を実施する方法が提供される。方法は、いくつかのステップを含む。第1のステップは、PCR法において、核酸集団、ハイブリッドRNアーゼH2突然変異体タンパク質、少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマー、DNAポリメラーゼ、dNTP及び緩衝液を使用して、鋳型核酸のライブラリー集団を調製するステップである。第2のステップは、鋳型核酸のライブラリー集団に由来する、複数の所望の鋳型核酸をシーケンシングするステップである。第1の関連事項において、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質は、Q48R SEL29(配列番号18)又は他のハイブリッドRNアーゼH2タンパク質から選択される。
【0084】
第11の態様において、SNP含有核酸鋳型を、核酸鋳型の増幅産物ライブラリーから検出する方法が提供される。方法は、いくつかのステップを含む。第1のステップは、核酸鋳型の増幅産物ライブラリー;少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマー;ハイブリッド突然変異体RNアーゼH2タンパク質;dNTP;DNAポリメラーゼ;及び緩衝液を含む混合物を形成するステップを含む。ハイブリッド二重鎖は、混合物中の、少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマーと、核酸鋳型の増幅産物ライブラリー内のSNP含有核酸鋳型との間において形成する。第2のステップは、ハイブリッド二重鎖の、少なくとも1つのブロックされた切断可能プライマーを、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質により切断して、DNAポリメラーゼによる、ハイブリッド二重鎖のプライマー伸長が可能な、少なくとも1つの活性プライマーを作出するステップを含む。第3のステップは、緩衝液中、1つ以上の鋳型核酸の、核酸鋳型の増幅産物ライブラリーからの増幅を可能とする条件下において、DNAポリメラーゼにより、二重鎖内の、少なくとも1つの活性プライマーを伸長させ、これにより、SNP含有核酸鋳型を検出するステップを含む。第1の関連事項において、方法は、Q48R SEL29(配列番号18)又は他のハイブリッドRNアーゼH2タンパク質から選択されるハイブリッド突然変異体RNアーゼH2タンパク質を含む。第2の関連事項において、方法は、高忠実度古細菌DNAポリメラーゼ緩衝液である緩衝液を含む。
【0085】
第12の態様において、ループ媒介増幅反応を実施する方法が提供される。方法は、2つのステップを含む。第1のステップは、核酸鋳型;RNアーゼH2タンパク質に対する基質である核酸鋳型と共に、二重鎖を形成する、4つのブロックされた切断可能プライマー;Q48R SEL29(配列番号18)又は他のハイブリッドRNアーゼH2タンパク質から選択されるRNアーゼH2タンパク質;DNAポリメラーゼタンパク質;dNTP;及び緩衝液を含む混合物を形成するステップを含む。第2のステップは、混合物により、等温増幅サイクルを実施するステップを含む。
【0086】
第13の態様において、プライマー二量体の形成が低減されたrhPCRアッセイを実施する方法が提供される。方法は、Q48R SEL29 RNアーゼH2(配列番号18)により、プライマー伸長を実施するステップを含む。プライマー二量体形成の低減は、Q48R SEL29 RNアーゼH2(配列番号18)によるrhPCRアッセイ時に形成されたプライマー二量体の量の、野生型P.a.RNアーゼH2(配列番号1)により行われたrhPCRアッセイと比較した低減に対応する。
【0087】
第14の態様において、所望の産物について、マッピング率及びオンターゲット率が改善されたrhPCRアッセイを実施する方法が提供される。方法は、Q48R SEL29 RNアーゼH2(配列番号18)により、プライマー伸長を実施するステップを含む。マッピング率及びオンターゲット率の改善は、Q48R SEL29 RNアーゼH2(配列番号18)によるrhPCRアッセイ時に形成された、所望の産物のマッピング及びオンターゲット増幅の、野生型P.a.RNアーゼH2(配列番号1)により行われたrhPCRアッセイと比較した増大に対応する。
【0088】
最後に、本発明のRNアーゼH2ポリペプチドは、その内容が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許公開第US10273534(B2)号において開示された、高度に効率的な増幅法である、BaseXによるPCR増幅法における使用に適する。
【実施例
【0089】
本発明は、以下の実施例の参照により、さらに例示される。しかし、これらの例は、上記において記載された実施形態と同様に、例示的なものであり、真のいかなる形でも、本発明の許容範囲を制限するものとしては理解されるべきではないことに留意されたい。
【0090】
[実施例1] 組換えリシャッフリングを介する、SEL28ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質及びSEL29ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質の作出
in vitro DNA組換え法及び指向型分子進化法を使用して、突然変異体RNアーゼH2タンパク質を合成した。Integrated DNA Technologiesとの契約合意書の下において、Altravax(商標)Inc.(Sunnyvale、CA)が、突然変異体5,500のライブラリーを作出した。IDTにおいてなされた初期スクリーニングにおいて、SEL28突然変異体及びSEL29突然変異体を選択したところ、突然変異体は、RNアーゼH2切断反応におけるミスマッチ識別の増大を呈した。突然変異体は、エスケリキア・コリー(Escherichia coli(E.コリー))BL21(DE3)内部の、pET-27b(+)プラスミドベクター内において創出した。T7系に基づき発現させたタンパク質は、N末端におけるpelBシグナル配列、突然変異RNアーゼH2遺伝子、ヒト単純ヘルペスウイルス2エピトープタグ及びC末端における6ヒスチジンタグを含有する。50mLのTPP TubeSpin(登録商標)Bioreactors(Techno Plastic Products AG、Trasadingen、Switzerland)を使用して、50μg/mLのカナマイシン(Teknova(商標)、Hollister、CA)を伴う、12mLのLB培養液中において、E.コリー細胞を増殖させた。37℃、20時間にわたり、オーバーナイト型Express(商標)Autoinduction System 1(MilliporeSigma(商標)、Burlington、MA)を使用して、RNアーゼH2の発現を誘導した。MaxQ(商標)4000 orbital shaker(ThermoFisher Scientific(商標)、Grand Island、NY)を使用して、250rpmにおいて振盪しながら、細菌発現株を増殖させた。ThermoScientific Sorvall(商標)Legend XTR遠心分離機内、7,500×gにおいて、10分間にわたり、細胞を遠心分離し、上清を廃棄した。細胞ペーストを、-80℃において保管し、50mMのNaCl、40mMのトリス-HCl pH8.0、2.5mMのMgCl、0.5mMのCaCl、1倍濃度のBugBuster(登録商標)Extraction Reagent(MilliporeSigma(商標)、Burlington、MA)、1倍濃度のcOmplete(商標)EDTA-free protease inhibitor cocktail(MilliporeSigma(商標)、Burlington、MA)、0.1mg/mLのリゾチーム(約600単位、ThermoFisher(商標)Scientific、Grand Island、NY)及び4U/mLのAmbion(商標)DNase I(ThermoFisher(商標)Scientific、Grand Island、NY)を含有する細胞再懸濁緩衝液からなる、0.6mLの溶解液中に再懸濁させた。溶解は、細胞を、120rpmにおいて振盪しながら、25℃において、15分間を要した。16,000×gにおいて、20分間にわたる遠心分離により、不溶性物質を除去した。75℃において、15分間にわたり、DNase I及び天然のE.コリータンパク質を変性させた。16,000×gにおいて、15分間にわたる遠心分離により、不溶性の変性タンパク質を、再度除去した。タンパク質精製のために、Capturem(商標)His-Tagged Miniprepキット(Takara Bio(商標)、Mountain View、CA)を使用した。キットからの結合カラムを、細胞再懸濁緩衝液により洗浄し、RNアーゼH2を含有する上清を、カラム上にロードした。11,000×gにおいて、1分間にわたる遠心分離により、溶液を、カラムから取り出した。20mMのイミダゾールを添加した、200μLの洗浄緩衝液(20mMのNaPO、150mMのNaCl、pH7.6)により、カラムを、2回にわたり洗浄した。200μLの溶出緩衝液(20mMのNaPO、500mMのNaCl、500mMのイミダゾール、pH7.6)により、RNアーゼH2酵素を溶出させ、D-Tube(商標)Dialyzer Midi,MWCO 6-8 kDa(MilliporeSigma(商標)、Burlington、MA)を使用して、1Lの2倍濃度保管緩衝液F(pH8.4、40mMのトリス-HCl、0.2mMのEDTA、200mMのKCl)に対して、一晩にわたり透析した。透析槽内の透析緩衝液を、少なくとも1回置き換えた。試料を、透析から回収し、99.8%(v/v)グリセロール及び0.2%(v/v)TritonX-100の混合物と、1:1の容量比において混合した。これらの精製及び濃縮されたRNアーゼH2溶液を、-20℃において保管した。これらの純度は、Any kD(商標)Mini-PROTEAN(登録商標)TGX Stain-Free(商標)Protein Gels(Bio-Rad(登録商標)、Hercules、CA)を使用して、SDSゲル電気泳動により推定した。RNアーゼH2酵素は、全ての精製試料中において、主要タンパク質バンド(>75%)を呈し、その位置は、Precision Plus Protein(商標)Unstained Standards(Bio-Rad(登録商標)、Hercules、CA)と比較して、1モル当たり28.9kgの分子量に対応した。
【0091】
突然変異体タンパク質のアミノ酸配列を、表1、配列番号89及び90に示す。シーケンシングは、Applied Biosystems BigDye Terminators v3.1キットを使用して行った。プラスミドDNAは、製造元のプロトコールに従い、Wizard(登録商標)Plus SV Minipreps DNA Purification System(Promega、Madison、WI)により、細菌株から単離した。シーケンシングデータは、Applied Biosystems 3130 Genetic Analyzerにより収集した。
【0092】
[実施例2] SEL29 RNアーゼH2内の、Q48R SDM突然変異体及びA107V SDM突然変異体は、テルモコックス・コダカレンシスDNAポリメラーゼ反応緩衝液中の酵素活性を、SEL29 RNアーゼH2と比較して増大させる
(His)タグ付け突然変異体である、SEL28 RNアーゼH2タンパク質及びSEL29 RNアーゼH2タンパク質は、部位指定突然変異誘発(SDM)法(例えば、WeinerM.ら、Gene、151:119~123(1994)を参照されたい)により作出した。SEL28 RNアーゼH2及びSEL29 RNアーゼH2のSDMのために使用されたプライマーを、表2、配列番号4~13に示す。突然変異体の配列を検証し、標準法を使用して、タンパク質を、E.コリー内において発現させた。精製は、既に記載されている(Dobosyら、2011;及び米国特許第8,911,948B2号)通りに、帯電Ni2+カラム上のアフィニティー精製により行った。突然変異体タンパク質のアミノ酸配列を、表3、配列番号2~3、14~20に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
P13S SEL28 RNアーゼH2、A107V SEL28 RNアーゼH2及びP13S/A107V SEL28 RNアーゼH2又はP13S SEL29 RNアーゼH2、Q48R SEL29 RNアーゼH2、A107V SEL29 RNアーゼH2又はP13S/A107V SEL29 RNアーゼH2が、KOD DNAポリメラーゼ反応緩衝液中の活性を、WT P.a.RNアーゼH2と比較して増大させるのかどうかを、rhPCRにより決定するために、SMAD7内のrs4939827 SNPをターゲティングする、定量的rhPCRアッセイをデザインした。このSNPは、rhPCRの効率及び特異性を特徴付けるのに既に利用されており(Dobosyら、2011;及び米国特許第8,911,948B2号)、示差的条件下におけるその応答が十分に理解されている。このアッセイにおいて使用されたプライマーを、表4、配列番号21~23に示す。アッセイは、10μLの反応容量中において行った。サーマルサイクリング及びデータ収集は、CFX384(登録商標)Real Time System(Bio-Rad(登録商標)、Hercules、CA)上において行った。略述すると、200nM(2ピコモル)の保護化フォワードプライマー(配列番号22)及び200nM(2ピコモル)のブロックされていないリバースプライマー(配列番号23)又は200nM(2ピコモル)のブロックされていないフォワードプライマー(配列番号21)及び200nM(2ピコモル)のブロックされていないリバースプライマー(配列番号23)を、2.5mM(総濃度)のMgSO、0.2mM(各濃度)のdNTP(MilliporeSigma(商標)、Burlington、MA)及び0.5倍濃度のEvaGreen(登録商標)染料(Biotium Inc.、Fremont、CA)を伴う、1倍濃度の内部KOD緩衝液(ROKStar buffer v2.0又はv1.66)(IDT、Coralville、IA)へと混合した。RNアーゼH2希釈緩衝液(IDT、Coralville、IA)又は21フェムトモルのWT P.a.(配列番号1)、SEL28(配列番号2)RNアーゼH2酵素、SEL29(配列番号3)RNアーゼH2酵素、P13S SEL28(配列番号14)RNアーゼH2酵素、A107V SEL28(配列番号15)RNアーゼH2酵素、P13S/A107V SEL28(配列番号16)RNアーゼH2酵素、P13S SEL29(配列番号17)RNアーゼH2酵素、Q48R SEL29(配列番号18)RNアーゼH2酵素、A107V SEL29(配列番号19)RNアーゼH2酵素又はP13S/A107V SEL29(配列番号20)RNアーゼH2酵素を、各反応物へと添加した。rs4939827 SNPにおいて、ホモ接合性の遺伝子型を表す、10ngの細胞系のゲノムDNA(細胞系である、NA12878;Coriell Institute for Medical Research、Camden、NJ)を、各反応物へと添加した。反応を、三連において実施し、結果を平均した。反応を、以下の条件:95℃3:00→(95℃0:10→60℃0:30)×75下においてサイクル化した。挿入されたEvaGreen(登録商標)についての蛍光データは、各伸長時点の後に収集した。アッセイを完了させた後に、データを解析し、Bio-Rad CFX Manager(登録商標)ソフトウェアの自動判定機能を使用して、C値を計算した。結果を、表5に提示する。
【0096】
【表4】
【0097】
【表5】
【0098】
これらのデータは、Q48R SEL29 RNアーゼH2及びA107V SEL29 RNアーゼH2は、テルモコックス・コダカレンシスDNAポリメラーゼ反応緩衝液中の酵素活性を、バックグラウンドのSEL29 RNアーゼH2と比較して増大させたが、P13S SEL29 RNアーゼH2及びP13S/A107V SEL29 RNアーゼH2は、増大させなかったことを示す。加えて、P13S SEL28 RNアーゼH2、A107V SEL28 RNアーゼH2、及びP13S/A107V SEL28 RNアーゼH2は、テルモコックス・コダカレンシスDNAポリメラーゼ反応緩衝液中の酵素活性を、バックグラウンドのSEL28 RNアーゼH2と比較して増大させない。RNアーゼH2を添加しない限りにおいて、ブロックされたプライマーは、切断されず、このため、PCRを支援することができない。特許権のあるエクソヌクレアーゼ耐性のブロックされたプライマーの使用は、高忠実度DNAポリメラーゼによるプライマーの脱保護を防止するのに必要である。WT(P.a.)RNアーゼH2は、ブロックされたプライマーを切断することが可能であるが、増幅を遅延させる結果として、ブロックされていないプライマーと比較して、ROKstar buffer v2.0中の12.4サイクル及びROKstar buffer v1.66中の21.1サイクルのΔCをもたらす。増幅の遅延についての、ΔCの定量は、ROKstar buffer v2.0中において、SEL28 RNアーゼH2についての17.1サイクル及びSEL29 RNアーゼH2についての24.6サイクルへと増大し、ROKstar buffer v1.66中において、SEL28 RNアーゼH2についての30.6サイクル及びSEL29 RNアーゼH2についての30.3サイクルへと増大する。増幅の遅延についての、ΔCの定量は、Q48R SEL29 RNアーゼH2(ROKstar buffer v2.0中の17.2サイクル及びROKstar buffer v1.66中の25.4サイクル)及びA107V SEL29 RNアーゼH2(ROKstar buffer v2.0中の13.9サイクル及びROKstar buffer v1.66中の21.9サイクル)により減少する。P13S/A107V SEL29 RNアーゼH2は、増幅の遅延についてのΔCの定量を、ROKstar buffer v2.0中の26.9サイクル及びROKstar buffer v1.66.中の32.8サイクルへと増大させるが、P13S SEL28 RNアーゼH2及びP13S SEL29 RNアーゼH2は、ROKstar buffer v2.0又はROKstar buffer v1.66中において、見かけの活性を有さない。加えて、P13S/A107V SEL28 RNアーゼH2は、増幅の遅延についてのΔCの定量を、ROKstar buffer v2.0中の21.5サイクル及びROKstar buffer v1.66中の31.8サイクルへと増大させる。A107V SEL28 RNアーゼH2は、増幅の遅延についてのΔCの定量を、ROKstar buffer v2.0中の20.0サイクル及びROKstar buffer v1.66中の35.8サイクルへと増大させる。Q48R P.a.RNアーゼH2、A107V P.a.RNアーゼH2及びP13S/A107V P.a.RNアーゼH2のいずれもが、テルモコックス・コダカレンシスDNAポリメラーゼ反応緩衝液中の酵素活性を増大させ、P13S P.a.RNアーゼH2も、テルモコックス・コダカレンシスDNAポリメラーゼ反応緩衝液中において、低度であるが、測定可能な酵素活性を有したので、これらの結果は、P.a.RNアーゼH2内の突然変異と対照的である。Q48R SEL29 RNアーゼH2及びA107V SEL29 RNアーゼH2は、テルモコックス・コダカレンシスDNAポリメラーゼ反応緩衝液と共に使用された場合に、酵素活性(異なる程度においてであるが)を改善する。
【0099】
[実施例3] ミスマッチが、RNAの向かい側に配置される場合に、Q48R SEL29 RNアーゼH2及びA107V SEL29 RNアーゼH2は、ミスマッチ識別を、WT RNアーゼH2と比較して増大させる
酵素の特異的活性は、蛍光ベース反応速度アッセイを使用して決定した。DNA基質のための配列を、表6、配列番号24~25に示す。基質は、二本鎖領域内において、RNA塩基をマッチさせたDNAヘアピンである。プローブの3’末端に、6-FAM(6-カルボキシフルオレセインが接合され;プローブの5’末端に、Iowa Black(登録商標)FQ(配列番号24)が接合される。無傷のヘアピンプローブにおいて、6-FAMの蛍光は、Iowa Black(登録商標)FQ部分により消光させる。RNアーゼH2は、6-FAMを伴うプローブの3’末端を、RNA塩基の5’側において切断し、放出する。したがって、6-FAMの蛍光は、もはや、消光されず、蛍光発光しうる。RNA塩基を伴うが、フルオロフォア又は消光剤を伴わないDNAヘアピンを、競合剤として使用した(配列番号25)。アッセイは、10μLの反応容量中において実施した。データ収集は、LightCycler(登録商標)480 II(Roche Life Science、Indianapolis、IN)により実行した。略述すると、1倍濃度のrhAmp(商標)Backbone v3を、200nM(2ピコモル)の標識化ヘアピン(配列番号24)及び10μM(100ピコモル)の競合剤であるヘアピン(配列番号25)と組み合わせて使用した。0.5、1.0、2.0又は5.0フェムトモルのWT P.a.RNアーゼH2(配列番号1)又は突然変異体RNアーゼH2(配列番号18~19)を、各反応物へと添加した。反応液は、当初、アッセイを開始する前に、基質の切断を防止するように、4℃に保った。試料は、65℃において行った。蛍光励起波長は、483nmであり;蛍光発光波長は、533nmであった。蛍光強度は、13.75秒間ごとに、135分間にわたり収集した。各反応液について、初期速度及び1フェムトモルあたりの速度を計算した。各突然変異体について、1フェムトモルあたりの速度を、酵素1μg当たり17単位の特異的活性を有することが既に決定された、WT P.a.RNアーゼH2についての値に照らして正規化した。Q48R SEL29 RNアーゼH2は、酵素1μg当たり46.03単位の特異的活性を有し、A107V SEL29 RNアーゼH2は、酵素1μg当たり7.77単位の特異的単位活性を有する。
【0100】
【表6】
【0101】
これらの突然変異体RNアーゼH2酵素が、RNA塩基の直接の向かい側におけるミスマッチに対するミスマッチ識別を改善するのかどうかを、十分に決定するために、既に記載されている(Dobosyら、2011;及び米国特許第8,911,948B2号)通りに、合成による、定量的rhPCRアッセイを利用した。このアッセイは、各々の、特異的な、一塩基ミスマッチの影響を、完全なマッチと直接比較しうる。このアッセイにおいて使用されたプライマーを、表7、配列番号26~31に示す。アッセイは、10μLの反応容量中において行った。サーマルサイクリング及びデータ収集は、CFX384(登録商標)Real Time System(Bio-Rad(登録商標)、Hercules、CA)上において行った。略述すると、200nM(2ピコモル)のブロックされたリバースプライマー(配列番号28~31)及び200nM(2ピコモル)のブロックされていないフォワードプライマー(配列番号26)又は200nM(2ピコモル)のブロックされていないリバースプライマー(配列番号27)及び200nM(2ピコモル)のブロックされていないフォワードプライマー(配列番号26)を、1倍濃度のiQ(商標)SYBR(登録商標)Green Supermix(登録商標)(Bio-Rad(登録商標)、Hercules、CA)へと混合した。5mUのWT P.a.(配列番号1)RNアーゼH2酵素、40mUのQ48R SEL29(配列番号18)RNアーゼH2酵素又は5mUのA107V SEL29(配列番号19)RNアーゼH2酵素を、各反応物へと添加した。各々が、RNA塩基の直接の向かい側に、異なるヌクレオチドを伴う、20,000コピーの各合成標的配列(配列番号32~35)を、各反応物へと添加した。反応を、三連において実施し、結果を平均した。反応を、以下の条件:95℃3:00→(95℃0:10→60℃0:30)×75下においてサイクル化した。挿入されたSYBR(登録商標)Greenについての蛍光データは、各伸長時点の後に収集した。アッセイが完了した後、データを解析し、各対応のある組合せについて、平均C値及びΔC値を計算した。結果を、表8及び9に提示する。
【0102】
【表7】
【0103】
【表8】
【0104】
【表9】
【0105】
これらのデータは、Q48R SEL29 RNアーゼH2及びA107V SEL29 RNアーゼH2について、ミスマッチが、rCの向かい側にある場合に、ミスマッチ識別の大幅な増大(それぞれ、約14.0サイクル及び約13.5サイクル)を示す。特に、Q48R SEL29 RNアーゼH2及びA107V SEL29 RNアーゼH2について、rC:C対に対するミスマッチ識別の大きな増大が見られる(それぞれ、21.9サイクル及び15.2サイクル)。ミスマッチが、rUの向かい側にある場合、Q48R SEL29 RNアーゼH2について、ミスマッチ識別の著明な増大が見られる(約11.2サイクル)が、A107V SEL29 RNアーゼH2について、著明な増大は見られない(約4.3サイクル)。ミスマッチが、rAの向かい側にある場合、Q48R SEL29 RNアーゼH2及びA107V SEL29 RNアーゼH2について、ミスマッチ識別の著明な変化が見られる(それぞれ、約8.5サイクル及び約6.0サイクル)。ミスマッチが、rGの向かい側にある場合、ミスマッチ識別の変化は小さいが;WT RNアーゼH2を使用した場合のミスマッチ識別が、rGについて、既にかなり効果的であったので、ミスマッチ識別の変化の、この欠如は、それほど重要ではない。Q48R SEL29 RNアーゼH2及びA107V SEL29 RNアーゼH2についての、ミスマッチ識別の、これらの増大は、バックグラウンドのSEL29 RNアーゼH2についてのミスマッチ識別と同様である。いずれの突然変異も、ミスマッチが、RNA塩基の直接の向かい側に配置される場合に、ミスマッチ識別を改善するが、程度が異なり、特異性も異なる。
【0106】
[実施例4] ミスマッチが、RNAの5’側に配置される場合に、Q48R SEL29 RNアーゼH2及びA107V SEL29 RNアーゼH2は、ミスマッチ識別を、WT RNアーゼH2と比較して増大させる
ミスマッチが、RNAヌクレオチドの5’側に配置される場合に、Q48R SEL29 RNアーゼH2酵素及びA107V SEL29 RNアーゼH2酵素を使用する、ミスマッチ識別する程度を決定するために、SNPを、RNAの5’側に直に接して配置して、rs113488022(ヒトBRAF遺伝子内のV600E SNP)をターゲティングするアッセイをデザインした。このアッセイにおいて使用されたプライマーを、表10、配列番号36~39に示す。アッセイは、10μLの反応容量中において行った。サーマルサイクリング及びデータ収集は、CFX384(登録商標)Real Time System(Bio-Rad(登録商標)、Hercules、CA)上において行った。略述すると、200nM(2ピコモル)のブロックされたフォワードプライマー(配列番号38又は39)及び200nM(2ピコモル)のブロックされていないリバースプライマー(配列番号37)又は200nM(2ピコモル)のブロックされていないフォワードプライマー(配列番号36)及び200nM(2ピコモル)のブロックされていないリバースプライマー(配列番号37)を、1倍濃度のiQ(商標)SYBR(登録商標)Green Supermix(登録商標)へと混合した。5mU若しくは10mUのWT(配列番号1)P.a.RNアーゼH2酵素、5mU若しくは10mUのSEL29(配列番号3)RNアーゼH2酵素、20mU若しくは40mUのQ48R SEL29(配列番号18)RNアーゼH2酵素又は5mU若しくは10mUのA107V SEL29(配列番号19)RNアーゼH2酵素を、各反応物へと添加した。各々が、rs113488022 SNP(配列番号40又は41)における、ホモ接合性の遺伝子型に対応する、2,000コピーの合成二本鎖gBlock(登録商標)(IDT、Coralville、IA)鋳型を、各反応物へと添加した。反応は、三連において実施した。反応を、以下の条件:95℃3:00→(95℃0:10→60℃0:30)×65下においてサイクル化した。挿入されたSYBR(登録商標)Greenについての蛍光データは、各伸長時点の後に収集した。アッセイが完了した後、データを解析し、各対応のある組合せについて、平均C値及びΔC値を計算した。結果を、表11に提示する。
【0107】
【表10】
【0108】
【表11】
【0109】
これらのデータは、Q48R SEL29 RNアーゼH2及びA107V SEL29 RNアーゼH2が、RNAヌクレオチドの5’側におけるミスマッチ識別を著明に改善することを示す。TrGプライマーについての、ΔCの定量は、WT P.a.RNアーゼH2による3.8サイクルから、A107V SEL29 RNアーゼH2による5.9サイクル(5mUのWT RNアーゼH2及びA107V SEL29 RNアーゼH2について)へと増大し、WT P.a.RNアーゼH2による4.5サイクルから、Q48R SEL29 RNアーゼH2による6.9サイクル(5mUのWT RNアーゼH2及び40mUのQ48R SEL29 RNアーゼH2について)へと増大した。ArGプライマーについての、ΔCの定量は、WT P.a.RNアーゼH2による10.1サイクルから、A107V SEL29 RNアーゼH2による11.2サイクル(5mUのWT RNアーゼH2及びA107V SEL29 RNアーゼH2について)へと増大するが、WT P.a.RNアーゼH2による10.9サイクルから、Q48R SEL29 RNアーゼH2による10.2サイクル(5mUのWT RNアーゼH2及び40mUのQ48R SEL29 RNアーゼH2について)へと減少した。WT酵素を使用した場合のΔCが、このプライマーに対して、既にかなり効果的であったので、ArGプライマーに対するミスマッチ識別の変化は、それほど重要ではない。Q48R SEL29 RNアーゼH2及びA107V SEL29 RNアーゼH2についての、ミスマッチ識別の、これらの増大は、バックグラウンドのSEL29 RNアーゼH2についてのミスマッチ識別と同様である。したがって、Q48R SEL29 RNアーゼH2及びA107V SEL29 RNアーゼH2は、ミスマッチが、RNA塩基の5’側に配置される場合に、ミスマッチ識別を改善する。
【0110】
[実施例5] ミスマッチが、RNAの3’側に配置される場合に、Q48R SEL29 RNアーゼH2及びA107V SEL29 RNアーゼH2は、ミスマッチ識別を、WT RNアーゼH2と比較して増大させる
ミスマッチが、RNAヌクレオチドの3’側に配置される場合に、Q48R SEL29 RNアーゼH2酵素及びA107V SEL29 RNアーゼH2酵素が、ミスマッチ識別を改善しうるのかどうかを決定するために、ミスマッチを、RNAの3’側に直に接して配置して、rs7583169 SNP及びrs3117947 SNPをターゲティングするアッセイをデザインした。このアッセイにおいて使用されたプライマーを、表12、配列番号42~47に示す。アッセイは、10μLの反応容量中において行った。サーマルサイクリング及びデータ収集は、CFX384(登録商標)Real Time System(Bio-Rad(登録商標)、Hercules、CA)上において行った。略述すると、200nM(2ピコモル)のブロックされたフォワードプライマー(配列番号43又は46)及び200nM(2ピコモル)のブロックされていないリバースプライマー(配列番号44又は47)又は200nM(2ピコモル)のブロックされていないフォワードプライマー(配列番号42又は45)及び200nM(2ピコモル)のブロックされていないリバースプライマー(配列番号44又は47)を、3.0mM(総濃度)のMgCl及び0.5倍濃度のEvaGreen(登録商標)染料(Biotium Inc.、Fremont、CA)を伴う、1倍濃度のPrimeTime(登録商標)Gene Expression Master Mix(IDT、Coralville、IA)へと混合した。5mU若しくは10mUのWT(配列番号1)P.a.RNアーゼH2酵素、50mU若しくは100mUのQ48R SEL29(配列番号18)RNアーゼH2酵素又は20mU若しくは40mUのA107V SEL29(配列番号19)RNアーゼH2酵素を、各反応物へと添加した。rs7583169 SNP及びrs3117947 SNPにおいて、2つのホモ接合性の遺伝子型を表す、20ngの細胞系のゲノムDNA(細胞系である、NA12878及びNA24385;Coriell Institute for Medical Research、Camden、NJ)を、各反応物へと添加した。反応を、三連において実施し、結果を平均した。反応を、以下の条件:95℃3:00→(95℃0:10→60℃0:30)×65下においてサイクル化した。挿入されたEvaGreen(登録商標)についての蛍光データは、各伸長時点の後に収集した。アッセイが完了した後、データを解析し、各対応のある組合せについて、平均C値及びΔC値を計算した。結果を、表13に提示する。
【0111】
【表12】
【0112】
【表13】
【0113】
これらのデータは、Q48R SEL29及びA107V SEL29が、RNAヌクレオチドの3’側におけるミスマッチ識別を、著明に増大させることを示す。rs7583169 SNPのミスマッチ識別についての、ΔCの定量は、WT P.a.RNアーゼH2による0.0サイクルから、A107V SEL29 RNアーゼH2による1.4サイクル(5mUのWT RNアーゼH2及び40mUのA107V SEL29 RNアーゼH2について)へと増大し、WT P.a.RNアーゼH2による0.0サイクルから、Q48R SEL29 RNアーゼH2による11.5サイクル(5mUのWT RNアーゼH2及び100mUのQ48R SEL29 RNアーゼH2について)へと増大した。rs3117947 SNPのミスマッチ識別についての、ΔCの定量は、WT P.a.RNアーゼH2による10.7サイクルから、A107V SEL29 RNアーゼH2による22.3サイクル(5mUのWT RNアーゼH2及び40mUのA107V SEL29 RNアーゼH2について)へと増大し、WT P.a.RNアーゼH2による10.7サイクルから、Q48R SEL29 RNアーゼH2による20.4サイクル(5mUのWT RNアーゼH2及び100mUのQ48R SEL29 RNアーゼH2について)へと増大した。Q48R SEL29 RNアーゼH2及びA107V SEL29 RNアーゼH2についての、ミスマッチ識別の、これらの増大は、バックグラウンドのSEL29 RNアーゼH2についてのミスマッチ識別より、著明に大きい。したがって、Q48R SEL29 RNアーゼH2及びA107V SEL29 RNアーゼH2は、ミスマッチが、RNA塩基の3’側に配置される場合に、ミスマッチ識別を改善する。
【0114】
[実施例6] LAMP反応における、Q48R SEL29ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質及びA107V SEL29ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質の使用
本実施例は、LAMP反応において、プライマー二量体形成を低減する、ハイブリッドRNアーゼH2タンパク質の使用を裏付ける方法を概括する。
【0115】
異なるRNアーゼH2タンパク質(WT RNアーゼH2タンパク質又はハイブリッドRNアーゼH2タンパク質)を含むLAMPプロトコールのための、rhPrimersの機能性について査定するために、(1)非改変対照プライマー;rDDDDMxプライマー[配列中、「r」は、RNA塩基であり、「D」は、DNA塩基であり、「m」は、ミスマッチであり、「x」は、C3スペーサーである]である、「Gen1」;及びrDxxDMプライマーである、「Gen2」を使用する、3つのアッセイをデザインすることができた。使用されるアッセイの詳細について、表14、15及び16において詳述する。各種類のプライマーを利用するLAMP反応液は、試験前の0又は2時間にわたり、25℃(室温)において保持される。これは、プライマー二量体産物の形成を可能とする。室温における保持の後、全ての反応は、BioRad CFX384又はRoche LightCycler 480内、65℃において、2時間にわたり行う。これらの反応液の全てにおけるシグナルの発生は、1倍濃度のEvaGreenを、反応へと添加して実施される(Biotechnology Letters、2007年12月、29巻、12号、1939~1946頁を参照されたい)。
【0116】
【表14】
【0117】
【表15】
【0118】
【表16】
【0119】
各アッセイは、以下の通りに実施しうる:試料は、Coriell gDNA又はラムダファージゲノムDNAである。各アッセイ条件は、試料インプットを、5ngラムダファージゲノムDNA又は20ngヒトゲノムDNAとして、三連において試行されうる。各アッセイについて、反応は、非改変プライマー挿入染料(例えば、EvaGreen)及び挿入染料を伴う、切断可能なブロックされたプライマーを使用して試行されうる。各アッセイについて、反応は、ゼロレベル又は滴定レベルのRNアーゼH2(WT RNアーゼH2タンパク質又はハイブリッドRNアーゼH2タンパク質)を使用して試行される。
【0120】
各アッセイは、三連において試行される。非改変LAMPアッセイと、改変LAMPアッセイとの比較は、シグナル発生産物の形成のために要求された時間の長さを比較することにより実施される。LAMP反応液中のハイブリッドRNアーゼH2タンパク質は、従来の野生型RNアーゼH2タンパク質を含有する反応液より、著明に遅れて、これらの産物をもたらすことが予測される。
【0121】
25μLのEvaGreen反応混合物は、
12.5μLの2倍濃度Master Mix(25℃、pH8.8、1倍濃度の20mMトリス、10mMのKCl、10mMの(NHSO、8mMのMgSO、0.01%Tween-20、1.4mMのdNTP)
1.6μMのFIPプライマー
1.6μMのBIPプライマー
1倍濃度のEvaGreen染料
0.2μMのF3プライマー
0.2μMのB3プライマー
8UのBST DNAポリメラーゼ(New England Biolabs:https://www.neb.com/product/m0275-bst-dna-polymerase-large-fragment)
1μLのハイブリッドRNアーゼH2タンパク質(RNアーゼH2対照に、緩衝液Dは使用されない)
25uLまでのヌクレアーゼ非含有水
2μLの試料(10ng/μLのヒトgDNA又は2.5ng/uLのラムダゲノムDNA)
を含む。
【0122】
[実施例7] Q48R SEL29 RNアーゼH2は、177プレックススアッセイパネルを使用する、マルチプレックスrhPCR単位複製配列シーケンシングワークフローにおいて、NGSライブラリーの品質を、野生型P.a.RNアーゼH2と比較して改善する
改変rhAmpSeqプロトコールを、低頻度の変異体検出のために適合させた。このプロトコールは、増幅エラーを低減する、高忠実度DNAポリメラーゼ及びエラーを補正するためのUMI(unique molecular identifier)の両方を使用する。Q48R SEL29 RNアーゼH2を、二量体形成が低減されるのかどうかを決定するのに、このシステムにおいて、野生型P.a.RNアーゼH2と比較した。
【0123】
各ステップに続き、SPRI(Solid Phase Reversible Immobilization、Beckman Coulter Life sciences、Indianapolis、IN)クリーンアップを伴う、2つのPCRサイクリングステップを行う。第1のPCRステップ(PCR1)の目的は、標的単位複製配列の各側に、6ヌクレオチドの縮重UMIを組み込むことである。このステップはまた、3’側のブロックされたプライマーの使用も含み、RNアーゼH2が、保護剤を切断することを要求し、高忠実度DNAポリメラーゼが、各標的を伸長させ、増幅することを可能とする。標的特異的アッセイパネルは、特許権のある、177のプライマー対を含有し、野生型P.a.RNアーゼH2が、PCR1内に存在する場合に、全リードのうちの約20%が、プライマー二量体となる結果をもたらす。このパネルが、多量のプライマー二量体をもたらすので、このパネルは、Q48R SEL29 RNアーゼH2について調べるのに最適である。
【0124】
Q48R SEL29 RNアーゼH2及び野生型P.a.RNアーゼH2(87.5mU/uL、175mU/uL及び350mU/uL)についての、多様な10倍滴定液を、RNアーゼH2保管緩衝液(Integrated DNA technologies、Coralville、IA)中において調製した。各PCR1反応液は、20μLの最終容量であり、10nM(200フェムトモル)ずつの、各フォワードプライマー及び各リバースプライマー、0.03U/μLのPhusion Hot Start II DNAポリメラーゼ(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)、20ngの細胞系のゲノムDNA(細胞系である、NA24385;Coriell Institute for Medical Research、Camden、NJ)及び最終濃度を1倍濃度とする、特許権のある高忠実度ポリメラーゼ緩衝液中のRNアーゼH2を含有した。サーマルサイクリングは、T100 Thermal Cycler(Bio-Rad(登録商標)、Hercules、CA)上において、表17に列挙されたサイクリング条件により実施した。PCR1サーマルサイクリングに続き、速やかに、SPRIクリーンアップを行った。1.25倍濃度(25μL)のAMPure磁気ビーズ(Beckman Coulter Life Sciences、Indianapolis、IN)を、各ウェルへと添加し、十分に混合した。プレートを、作業台上、室温において、5分間にわたりインキュベートするのに続き、磁石上において、5分間にわたりインキュベートした。上清を廃棄し、ライブラリーを、80%のエタノールにより、2回にわたり洗浄した。22μLのIDTEpH7.5(IDT、Coralville、IA)中において、試料を溶出させた。20μLの溶出産物を、PCR2のためのインプットとして繰り入れた。
【0125】
【表17】
【0126】
第2のPCRステップ(PCR2)の目的は、PCR1産物を増幅し、プーリング及びシーケンシンを目的として、UMI(unique molecular identifiers)配列を付加することであった。PCR2は、RNアーゼH2の使用を要求しない。PCR2反応は、50μLの最終容量において実施した。最終濃度を1倍濃度とするために、PCR1において使用された、高忠実度ポリメラーゼ緩衝液の2倍濃度型を、PCR1からの各溶出試料へと添加した。各反応液はまた、i5 hAmpSeqインデックスプライマー(IDT)と、i7r IDTとの固有の組合せも、各々、500nMにおいて有した。サーマルサイクリングは、T100 Thermal Cycler(Bio-Rad(登録商標)、Hercules、CA)上において、表18に列挙されたサイクリング条件により実施した。PCR2の直後に、SPRIクリーンアップを行ったが、これは、PCR2後に、0.9倍において使用されたAMPureビーズ濃度を除き、上記において列挙された方法と同一である。22μLのIDTEpH7.5(IDT、Coralville、IA)中において、試料を溶出させた。20μLの溶出産物を取り、シーケンシングまで、-20℃において保管した。
【0127】
【表18】
【0128】
結果として得られたライブラリーを、シーケンシングのために、等容量においてプーリングした(5uL)。Qubit dsDNA HS Assayキット(Thermo Fisher)を使用して、このプールを定量し、4nMの最終濃度へと希釈した。等量のライブラリープールを、0.2NのNaOHと組み合わせて、ライブラリーを変性させた。その後、この反応液を、2.5%のPhiX(Illumina、San Diego、CA)スパイクインを含有する、8pMの最終濃度へと希釈した。この反応液を、MiSeq 300サイクルキット(Illumina、San Diego、CA)へとロードし、試行した(クラスター密度:1002±34;Q30:93.13%)。結果を、自社内の特許権のある、IDT rhAmpSeq VIIバイオインフォマティクス解析パイプラインにかけた。
【0129】
本開示の目的のために、下記の結果に関する計算及び用語を、ここに列挙する。シーケンシングライブラリーの増幅時にもたらされる、プライマー二量体の量は、二量体率により規定される。rhAmpSeq VIIパイプラインは、同定された二量体の全カウントを取り、QC合格リードの数(cf(chastity filter)を合格したリードの総数)により除することにより、これを計算する。マッピング率は、マッピングされたリードの総数を取り、QC合格リード数により除することにより計算される。オンターゲット率は、オンターゲットリードの総数を取り、QC合格リード数により除することにより計算される。全単位複製配列均一性又は≧0.2倍の単位複製配列均一性は、単位複製配列の平均値カバレッジの0.2倍以上である、正常単位複製配列のパーセントとして計算される。ドロップアウト率又は≦0.05倍の均一性は、単位複製配列の平均値カバレッジの0.05倍未満である、正常単位複製配列のパーセントとして計算される。単位複製配列の均一性分布は、所与の試料について、各単位複製配列のカバレッジを、平均値単位複製配列カバレッジと比べて比較し、以下の範囲:0.1~0.2倍、0.2~0.5倍、0.5~1.5倍、1.5~2.5倍及び2.5~5倍内においてプロットする。
【0130】
rhAmpSeq VIIパイプラインはまた、各プライマー二量体の形成に寄与するプライマーも同定する。正規化された二量体カウントは、百分率各プライマー二量体が、全二量体率に寄与することを反映し、以下の式:
【0131】
【数1】
を使用して計算される。
【0132】
全ての被験濃度について、Q48R SEL29 RNアーゼH2は、二量体率を、野生型P.a.RNアーゼH2と比較して低減し、また、マッピング率及びオンターゲット率も増大させた。最低濃度(8.75mU/μL)において、Q48R SEL29 RNアーゼH2は、11%の二量体をもたらした対照野生型P.a.RNアーゼH2と比較して、二量体が4%であるライブラリーをもたらした(図1、パネルA)。
【0133】
最低濃度のQ48R SEL29 RNアーゼH2(8.75mU/μL)により作製されたライブラリーについてのマッピング率及びオンターゲット率は、野生型P.a.RNアーゼH2についての88%と比較して、96%へと増大した(図1、パネルB及びC)。
【0134】
二量体率は、もたらされる個別のプライマー二量体へと分割され、次いで、各プライマー二量体の、上記において記載された、全二量体率への寄与を決定するように正規化される(正規化二量体カウント)。Q48R SEL29 RNアーゼH2は、最多のプライマー二量体量を、半数に低減する。例えば、最低濃度のQ48R Mut 29 RNアーゼH2(8.75mU/μL)により作出されたライブラリーのうち、全ての試料ライブラリー内において同定された、最上位の二量体(NOTCH1_19.GAP95.9623.relax.t0_FOR:NOTCH1_9.GAP104.1246.relax.t0_REV)は、2.83%である野生型P.a.RNアーゼH2と比較して、全二量体率のうちの1.23%を占めるに過ぎない。undetermined:TERT_15.GAP27.511.relax.t0_REV Q48R SEL29 RNアーゼH2ライブラリーの場合、一部の二量体は、過半数が低減され、野生型P.a.RNアーゼH2と比較して75%少ない、0.11%の二量体をもたらすが、この場合、この二量体は、全二量体率に対して、0.47%の寄与をもたらす(表19及び図2)。
【0135】
【表19】
【0136】
Q48R SEL29 RNアーゼH2が、二量体率を低減する能力は、ライブラリー収量、全均一性及びドロップアウト率又は均一性分布のメトリックに影響を及ぼさない。Q48R SEL29 RNアーゼH2は、単位複製配列の平均値カバレッジにより裏付けられる通り、全ての滴定被験濃度により、野生型P.a.RNアーゼH2酵素と比較して、同様のライブラリー収量をもたらす(図3、パネルA)。加えて、≧0.2倍の全単位複製配列均一性及び単位複製配列ドロップアウト率(≦0.05倍の単位複製配列均一性)は、全ての滴定被験濃度、Q48R SEL29 RNアーゼH2と、野生型P.a.酵素との間において、同等である(図3、パネルB及びC)。さらに、Q48R SEL29と、野生型P.a.RNアーゼH2との間における均一性分布も、同様であると考えられる(図4)。Q48R SEL29 RNアーゼH2は、他の重要なシーケンシングメトリックを変更せずに、rhAmpseqワークフロー内のライブラリー作出時における、プライマー二量体形成を、標準的野生型P.a.RNアーゼH2と比較して低減する。
【0137】
まとめると、これらのデータは、Q48R SEL29 RNアーゼH2が、高忠実度緩衝液中の、高忠実度DNAポリメラーゼを使用する、マルチプレックス次世代シーケンシングライブラリーの作出を改善することを示す。
【0138】
[実施例8] RNアーゼH2タンパク質をコードする、例示的なアミノ酸配列及び核酸配列
RNアーゼH2タンパク質をコードする、例示的なアミノ酸配列及び核酸配列は、下記に提示される。
【0139】
【表20】
【0140】
【表21】
【0141】
【表22】
【0142】
引用された参考文献
Joseph R Dobosy、Scott D Rose、Kristin R Beltz、Susan M Rupp、Kristy M Powers、Mark A Behlke及びJoseph A Walder、RNase H-dependent PCR(rhPCR):improved specificity and single nucleotide polymorphism detection using blocked cleavable primers、BMC Biotechnology(2011)、11:80
Ayumu Muroya、Daisuke Tsuchiya、Momoyo Ishikawa、Mitsuru Haruki、Masaaki Morikawa、Shigenori Kanaya、及びKosuke Morikawa、Catalytic center of an archaeal type 2 ribonuclease H as revealed by X‐ray crystallographic and mutational analyses、Protein Science(2001)、10:707~714
Monika P.Rychlik、Hyongi Chon、Susana M.Cerritelli、Paulina Klimek、Robert J.Crouch、及びMarcin Nowotny、Crystal Structures of RNase H2 in Complex with Nucleic Acid Reveal the Mechanism of RNA-DNA Junction Recognition and Cleavage、Molecular Cell(2010)、40:658~670
【0143】
本明細書において引用された、刊行物、特許出願及び特許を含む、全ての参考文献は、各参考文献が、参照により組み込まれることが、個別に、かつ、具体的に指し示され、その全体において、本明細書に明示された場合と同じ程度において、参照により本明細書に組み込まれる。
【0144】
本明細書において、本発明者らに公知である、本発明を実行するための、最良の方式を含む、本発明の、好ましい実施形態が記載される。前出の記載を読めば、これらの好ましい実施形態に対する変動は、当業者に明らかとなりうる。本発明者らは、当業者が、必要に応じて、このような変動を利用することを期待しており、本発明者らは、本発明が、本明細書において具体的に記載された方式以外の方式において実施されることを意図する。したがって、本発明は、本明細書に付属の特許請求の範囲において列挙された対象物に対する、全ての改変及びこれらの均等物を、適用可能な法規により許容されたものとして含む。さらに、本明細書においてそうでないことが指し示されない限り、又は、文脈により、明らかに逆の記載がない限り、上記において記載された要素の、これらの全ての可能な変動における、任意の組合せも、本発明に包含される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図4
【配列表】
2024501832000001.app
【国際調査報告】