(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-16
(54)【発明の名称】空間撮像およびビームホモジナイザを伴う顕微鏡
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20240109BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20240109BHJP
G01N 21/03 20060101ALI20240109BHJP
G02B 21/06 20060101ALI20240109BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G01N21/64 E
G01N21/64 F
G01N21/27 A
G01N21/03 Z
G02B21/06
G02B21/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540024
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 US2021065319
(87)【国際公開番号】W WO2022146990
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516056971
【氏名又は名称】キュー-ステート バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Q-State Biosciences, Inc.
【住所又は居所原語表記】179 Sidney Street, Cambridge, Massachusetts 02139 United States
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ワーリー, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ルー, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】モハン, アルビンド
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ピン
(72)【発明者】
【氏名】デンプシー, グラハム ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ブレマー, ネイト
(72)【発明者】
【氏名】アマール, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ホンカン
【テーマコード(参考)】
2G043
2G057
2G059
2H052
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043DA06
2G043EA01
2G043FA02
2G043HA02
2G043HA09
2G043JA03
2G043KA02
2G043KA03
2G043KA08
2G043LA03
2G057AA04
2G057AB01
2G057AB03
2G057BA03
2G059AA05
2G059BB14
2G059DD13
2G059EE07
2G059FF03
2G059HH02
2G059HH06
2G059JJ03
2G059JJ07
2G059JJ11
2G059JJ12
2G059JJ22
2G059KK04
2H052AA09
2H052AC13
2H052AC14
2H052AC30
2H052AC34
2H052AD03
2H052AD18
2H052AD20
2H052AF14
(57)【要約】
本発明は、マルチウェルプレートのウェル内のサンプルを撮像するための顕微鏡を提供する。本開示の顕微鏡は、光源からのビームをマルチウェルプレートのウェルの底部に特有の形状に成形する、ビームホモジナイザシステムを含む。特に、本開示の顕微鏡は、サンプルの下にあるプリズムを通して光を通過させることによって、撮像のためにウェルを照明することができる。光は、側面からプリズムに入射し、光がウェルの底部約10ミクロンのみを照明するような急角度でウェルの中に屈折される。ビームホモジナイザは、不規則な形状を伴うスポットとしてプリズムに衝突する代わりに、光が、パターンにわたって均質な屈折力レベルを伴う略長方形パターンにおいてプリズムに入射するように、光源からの光を成形する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡であって、
マルチウェルプレートを保持するように構成されるステージと、
前記顕微鏡内に搭載される光のビームを放出するための光源と、
前記ビームを下から前記ステージに向かって指向する光学システムであって、前記光学システムは、前記ビームを空間的に均質化するためのホモジナイザを備える、光学システムと
を備える、顕微鏡。
【請求項2】
前記ステージは、電動xy平行移動ステージを備える、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項3】
前記平行移動ステージを移動させ、前記ビームの経路内に前記マルチウェルプレートの個々のウェルを位置付けるように動作可能なプロセッサに接続されるメモリを備える制御システムをさらに備える、請求項2に記載の顕微鏡。
【請求項4】
前記光学システムは、前記ステージの直下にプリズムを含み、それによって、前記ビームは、前記プリズムの側面に入射し、前記プレートのウェルの中に通過する、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項5】
水性サンプルを含有する前記プレートのウェルが、前記プリズムの上方に位置付けられるとき、前記プリズムは、前記プレートの底部内での全内部反射を回避する角度において、前記サンプルの中に前記ビームを指向する、請求項4に記載の顕微鏡。
【請求項6】
水性サンプルを含有する前記プレートのウェルが、前記プリズムの上方に位置付けられるとき、前記プリズムは、光を前記ウェルの底部約10ミクロンに制限する屈折の角度において、前記水性サンプルの中に前記ビームを指向する、請求項4に記載の顕微鏡。
【請求項7】
3つの明確に異なる波長における3つのビームを放出するための少なくとも3つの光源を備え、前記光学システムは、前記3つのビームを空間において合体し、前記ホモジナイザを通して前記3つのビームを通過させるために、1つまたはそれを上回るダイクロイックミラーを備える、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項8】
前記ホモジナイザは、前記ビームを略均一かつ長方形領域の照明に形成する、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項9】
前記ホモジナイザは、少なくとも2つのマイクロレンズアレイを備える、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項10】
前記光学システムは、複数の開口を伴う不透明スクリーンを備え、前記スクリーンは、前記ビームが前記開口のうちの1つを通して通過するように位置付けられることができる、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項11】
前記ホモジナイザは、2つのマイクロレンズアレイを備え、前記光学システムは、所定の間隔における複数のマイクロレンズアレイ位置停止部を備え、それによって、前記2つのマイクロレンズアレイの間の距離は、固定され、それによって、前記開口のそれぞれに合致するように前記ビームを成形することができる、請求項10に記載の顕微鏡。
【請求項12】
刺激ビームを放出する刺激光源をさらに備え、前記光学システムは、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を備え、前記刺激ビームは、前記DMDから反射し、前記DMDによって定義されたパターンを用いて前記プレートのウェルの底部を照明する、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項13】
前記ビームは、蛍光体の励起波長にあり、前記刺激ビームは、第2の波長にある、請求項12に記載の顕微鏡。
【請求項14】
前記プレートのウェル内のサンプルからの光を前記顕微鏡内に搭載される画像センサ上に指向するために、前記ステージの下に撮像レンズをさらに備える、請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項15】
前記光学システムは、前記ステージの直下にプリズムを含み、それによって、前記ビームは、前記プリズムの側面に入射し、前記プリズムは、光を前記ウェルの底部約10ミクロンに制限する屈折の角度において、前記プレートのウェル内の水性サンプルの中に前記ビームを指向し、前記顕微鏡はさらに、刺激ビームを放出する刺激光源を備え、前記光学システムは、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を備え、前記刺激ビームは、前記DMDから反射し、前記DMDによって定義されたパターンを用いて前記プレートのウェルの底部を照明する、請求項14に記載の顕微鏡。
【請求項16】
サンプルを撮像するための方法であって、前記方法は、
顕微鏡ステージ上にマルチウェルプレートを位置付けることであって、前記プレートは、ウェルの底面上で生存する少なくとも1つの細胞を有する、ことと、
前記細胞の画像を取得することと、
前記画像を処理し、前記細胞によって占有される前記底面の面積および前記細胞によって占有されない面積を識別する空間マスクを作成することと、
前記空間マスクを使用して、前記細胞に対するデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)のマイクロミラーを選択的にアクティブ化することと、
前記DMD上に光を照射し、それによって、前記細胞によって占有される前記底面の面積上に光を特異的に反射させる一方、前記細胞によって占有されない前記面積上にいかなる前記光も反射させないことと
を含む、方法。
【請求項17】
前記マルチウェルプレートの複数のウェルのそれぞれの中の細胞に関する空間マスクを作成することと、
メモリ内に前記空間マスクを保持することと、
前記空間マスクおよびDMDを使用し、連続様式で前記複数のウェル内の前記細胞を選択的に照明することと
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記DMDは、非一過性メモリシステムに結合されるプロセスを備えるコンピュータによって制御され、前記メモリシステムは、その中に記憶される前記空間マスクを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記光は、前記細胞内の蛍光体を励起する波長における刺激光である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記光は、前記細胞内の光開口型イオンチャネルを活性化する波長における活性化光である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記光開口型イオンチャネルは、シナプスを介して非選択細胞に接続されるシナプス前神経細胞内にある、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記非選択細胞は、シナプス活性の光学レポータを備える、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ステージは、電動xy平行移動ステージを備え、前記コンピュータは、前記顕微鏡の撮像レンズにわたって前記複数のウェルのそれぞれを連続的に位置付け、そのウェル内の細胞に関して一意に作成され、前記メモリシステム内に記憶される空間マスクに従って、前記DMDのマイクロミラーをアクティブ化するように前記ステージに指示する、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞は、神経細胞を含み、前記複数のウェル内の前記細胞を選択的に照明することは、前記照明された細胞における電気活性を開始する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記コンピュータは、前記撮像レンズの下に位置付けられる撮像センサを使用して、ウェル毎に動画を記録し、前記メモリシステム内に前記結果として生じる複数の動画を記憶する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記顕微鏡は、光源と、光を前記ウェルの底部約10ミクロンに制限する角度において、下から各ウェルに前記光の励起ビームを誘導する光学システムとを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ウェルは、電気活性の光学レポータを発現する神経細胞を含有し、前記神経細胞は、それらが活動電位を発火するときに蛍光を発する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記動画は、前記神経細胞発火を示す蛍光活性を描写する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞は、蛍光タンパク質を発現し、コンピュータシステムが、前記蛍光タンパク質からの信号を分析し、前記空間マスクを自動的に作成する、請求項15に記載の方法。
【請求項30】
前記コンピュータシステムは、複数のウェルのそれぞれの中の標識化された細胞に関する空間マスクを自動的に作成し、メモリ内に前記空間マスクを保持することができる一方、前記顕微鏡は、前記DMDおよび前記個別の空間マスクを使用して、各ウェルを連続的に照明し、そのウェル内の細胞に特有の空間的にパターン化された照明を作成する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
サンプルを撮像するための方法であって、前記方法は、
顕微鏡ステージ上にマルチウェルプレートを位置付けることであって、前記プレートは、ウェルの底面上で生存する少なくとも1つの細胞を有し、前記顕微鏡は、自動焦点システムを含む、ことと、
複数の視野(FOV)から前記マルチウェルプレートの画像を取得することと、
前記自動焦点システムを使用して、各視野の位置を決定することと、
前記FOVのサブセットを使用して、前記ウェルの曲率のマップを生成することと、
前記FOVのサブセットの間に前記FOVの位置を内挿することによって、前記ウェルの底部上で生存する前記細胞から測定値を取得することと
を含む、方法。
【請求項32】
前記自動焦点システムは、レーザベースの自動焦点システムである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記方法はさらに、前記顕微鏡ステージを第1の位置に移動させることと、前記レーザベースの自動焦点システムのレーザを使用して、前記ウェル上にレーザビームを照射することと、前記自動焦点システムを使用して、前記サンプルから反射する前記レーザビームの変位に基づいて、FOVの位置を決定することとを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記サンプルを伴う前記ウェルは、移動され、前記レーザビームは、FOV毎に検出される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記自動焦点システムは、画像ベースの自動焦点システムである、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記方法はさらに、前記FOVのサブセットから前記マイクロプレートを横断するn個のウェルのX,Y座標を記録することと、一連のZステップを横断して前記n個のウェルにおける画像品質メトリックを測定することと、前記n個のウェルを横断して最も高い画像品質メトリックを提供する前記Zステップを見出すこととを含む、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
神経細胞および心筋細胞等の電気活性細胞を伴う多数の疾患が、存在する。結果として、それらの細胞の特性および相互作用を研究することの有意な動機が、存在する。
【0003】
細胞表面結合、神経伝達物放出、または具体的DNA配列等の現象を検出するために、蛍光体が試料に結合される技法である、蛍光顕微鏡法が、多くの場合、細胞挙動を研究するために使用される。しかしながら、周辺培地内、およびさらには顕微鏡の光学コンポーネント内の蛍光体および他の化合物は、自己蛍光を呈し、サンプルからの蛍光を圧倒し得る。全内部反射蛍光(TIRF)顕微鏡法を使用することによって、背景蛍光を減少させるための試みが、行われている。TIRF顕微鏡は、周辺培地内の蛍光体が、蛍光のために必要とされる励起エネルギーを受け取らないように、サンプルの薄い領域のみを照明する。しかしながら、既存のTIRF顕微鏡は、サンプルのために許容可能である条件を厳しく制限する構成において、プリズムがサンプル上に押し付けられることを要求する。例えば、TIRFプリズムは、生細胞のために要求されるであろうようないかなる培養培地も閉塞し、サンプルへのいかなる物理的アクセスも妨げる。したがって、蛍光顕微鏡法は、生存する電気活性細胞の細かな詳細を研究するために満足の行くものであると証明されていない。他の光顕微鏡法技法も、同様に限定されない結果をもたらすことができていない。したがって、細胞活性の光学的測定のための改良された技法の必要性が、当技術分野において存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、マルチウェルプレートのウェル内のサンプルを撮像するための顕微鏡を提供する。本開示の顕微鏡は、光源からのビームをマルチウェルプレートのウェルの底部に対する優れた均一性を伴う形状に成形する、ビームホモジナイザシステムを含む。特に、本開示の顕微鏡は、サンプルの下のプリズムを通して光を通過させることによって、撮像のためにウェルを照明する。光は、側面からプリズムに入射し、光がウェルの底部約10ミクロンのみを照明するような角度でウェルの中に屈折される。ビームホモジナイザは、不規則な形状を伴うスポットとしてプリズムに衝突する代わりに、光が、パターンにわたって均質な屈折力レベルを伴う略長方形パターンにおいてプリズムに入射するように、光源からの光を成形する。したがって、ウェルの底部における細胞は、撮像のための良好な屈折力を伴って均一に照明される。また、顕微鏡は、均質化された照明ビームが、特定のマルチウェルプレートのウェルまたは特定の撮像レンズおよびその関連付けられる視野に合致され得るように、ホモジナイザコンポーネントが位置付けられ、開口が選択されることを可能にする、調節可能光学システムを含むことができる。これは、異なるタイプのマルチウェルプレートが撮像のために顕微鏡上に装填されることを可能にする。各ウェルは、顕微鏡によって撮像される各ウェル内の複数の生細胞を伴う、生存サンプル培養液を含むことができる。細胞は、細胞電気活性に応答して光を放出する、蛍光レポータタンパク質を含むことができる。ビームホモジナイザは、各ウェル内のサンプル全体が、自己蛍光を引き起こす標的外れの光を回避しながら、強力かつ均一な照明を受け取ることを確実にする。ビームホモジナイザを使用して、顕微鏡は、マルチウェルプレートの複数のウェル内の生細胞を正常に撮像し、例えば、生神経細胞内で伝搬する活動電位を示すために有用な電気活性の動画を記録することができる。
【0005】
例えば、顕微鏡は、2つの事前選択された撮像管レンズおよび96-、384-、または1,536-ウェルプレート等の3つのタイプのマルチウェルプレートを用いて動作可能であり得る。ビームホモジナイザは、事前設定停止部の6つの対のうちの1つに再位置付け可能であるマイクロレンズアレイの対を使用してもよく、光学システムは、6つの事前定義された開口を伴うスクリーンまたはブロックを含んでもよい。撮像管レンズおよびウェルプレートの6つの可能性として考えられる組み合わせ毎に、適切なホモジナイザマイクロレンズアレイ間隔および開口が、均質化された照明ビームが、関連する視野を横断するウェルの底部約10ミクロンに屈折される均質な長方形の照明としてプリズムの側面に入射するように、設定されてもよい。サンプルの関連する部分(例えば、ウェルの底部上で成長される細胞)のみが、照明されるため、過剰な自己蛍光は、回避される。光は、ウェルのガラス底部内で略全内部反射(TIR)を助長する角度においてプリズムの中にビームを送ることによって、ウェルの下側部分に制限される。光は、TIRを受けないが、代わりに、ウェルの底部10ミクロン程度のみを横断して通過する。顕微鏡は、したがって、画像の鮮明さおよび信号対雑音比を最大限にする。
【0006】
略TIR照明を使用することは、光をマルチウェルプレート内のサンプルの底部約10ミクロンに制限する。サンプルが、プレートの底面上で成長する細胞を含むとき、光は、それらの細胞を照明するであろうが、ウェルプレートの他の部分を照明しないであろう。細胞が、電気活性の光学レポータ等の蛍光標識を含むとき、光は、蛍光レポータの励起波長に調整される。したがって、略TIR撮像は、マルチウェルプレートのウェルの底部において成長する細胞における蛍光レポータを励起するために非常に有用である。顕微鏡の光学システムは、複数の励起波長を用いてウェルを同時に照明することができる。
【0007】
加えて、本発明の顕微鏡は、空間的にパターン化された照明をサンプルに印加することができる。顕微鏡は、ウェル内の細胞が照明され、その細胞のみが照明されるようなパターンを用いてウェル上に光を照射することができる。空間パターン化は、1つまたはそれを上回る特定の細胞を照明することができる。デジタル光プロセッサまたはデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を使用して、光は、1つまたはそれを上回る生細胞が、1つまたはそれを上回る細胞によって占有されないウェルの部分の中にいかなる照明光も照射することなく、照明され得るように、恣意的に複雑なパターンを用いて照射されることができる。また、顕微鏡は、最初に、ウェルを撮像することができ、関連付けられるコンピュータシステムが、画像内の1つまたはそれを上回る細胞を識別し、1つまたはそれを上回る細胞によって占有される、および占有されない画像内の場所をピクセル毎に識別する「空間マスク」またはデジタルファイルを作成するために使用されることができる。コンピュータシステムは、空間マスクを使用し、DMD上の対応する反射ピクセルをアクティブ化することができる。顕微鏡は、DMD上に光を照射し、これは、ウェルの底部において成長する1つまたはそれを上回る細胞の場所に合致するパターンを用いてサンプル上に反射する。マスクを作成するステップは、着目細胞を蛍光的に標識化する、または人間ユーザ選択を使用する、または画像においてオブジェクト発見アルゴリズムを実施することによって行われることができる。また、顕微鏡は、複数のウェルのそれぞれにわたって反復し、それぞれに関する空間マスクを作成することができる。次いで、顕微鏡は、xy平行移動ステージを動作させ、撮像光学システムにわたってそれらのウェルのそれぞれを位置付け、ウェル毎に、対応する空間マスクを使用し、そのウェルの底部において成長する1つまたはそれを上回る着目細胞上への照明を空間的にパターン化することができる。
【0008】
空間的にパターン化された照明は、細胞が電気活性の光学アクチュエータを発現している神経細胞等の電気活性細胞であるときに特に有用である。例えば、あるチャネルロドプシンが、光開口型イオンチャネルとして使用され得、これは、次いで、電気活性の光学アクチュエータとして機能する。それらのタンパク質が、細胞によって発現され、次いで、ある波長の光によって照明されると、光は、それらのタンパク質に、細胞膜を横断してイオンを圧送させ、膜分極をもたらし、その細胞にその長さを辿って活動電位を伝達させること等の電気活性につながる。サンプル内の複数の細胞が、光学アクチュエータを発現しているとき、空間的にパターン化された照明は、それらの細胞のうちの選択されたもののみにおいて電気活性(活動電位等)を誘起するために有用である。顕微鏡は、プレート内の複数のウェルの各ウェルを撮像し、各ウェル内の選択された細胞に関する空間マスクを作成し、平行移動ステージおよびDMDを使用し、それらのウェルを撮像しながら、順に各ウェル上への照明を空間的にパターン化することができるため、顕微鏡は、マルチウェルプレート内の電気活性細胞の光遺伝学的分析に非常に適している。
【0009】
空間的にパターン化された照明は、光開口型イオンチャネルとして機能するチャネルロドプシン等の光遺伝学的アクチュエータに特有の波長において提供されてもよい。顕微鏡はさらに、異なる波長の多重光を受光し、略TIR角度においてウェルの中に少なくとも1つの波長を屈折させながら、DMDから別の波長を反射し、サンプル上に空間的にパターン化された照明を同時に提供する、プリズムおよびダイクロイックアセンブリを含んでもよい。略TIR照明は、例えば、膜電気活性の光遺伝学的レポータ等のサンプル内の細胞内の蛍光レポータの励起波長にあってもよい。また、本明細書に説明される光学システムを使用して、顕微鏡はまた、イオン濃度の蛍光レポータ等の第2の光遺伝学的タンパク質の励起波長等の第2の波長の光を伴う略TIRによってサンプルを同時に照明することができる。加えて、顕微鏡は、撮像レンズ、随意のフィルタ、および画像センサ等の撮像システムを含み、光遺伝学的タンパク質の放出波長における光を記録することができる。
【0010】
したがって、顕微鏡は、単一のプリズムアセンブリを通して、少なくとも5つの異なる波長の光(光遺伝学的アクチュエータのための活性化光、少なくとも2つの蛍光レポータのための励起光、および両方のレポータのための放出光)を同時に取り扱うことができる。顕微鏡は、プレートのウェル内の細胞の電気活性の動画を記録し、ステージにわたってxy方向においてプレートを変位させるために平行移動ステージを使用して、プレートの複数のウェル毎に撮像アッセイを連続的に実施する。ビームホモジナイザを使用して、サンプルは、良好な信号対雑音比を伴って光遺伝学的レポータ活性を捕捉するために重要である、優れた照明均一性を伴う、ステージ上で使用されている現在のプレートのウェルに成形される光ビームを用いて適用可能な視野を横断して完全に照明される。したがって、顕微鏡は、マルチウェルプレートの複数のウェルから神経活性の動画を記録するためにアッセイを行うことを提供する。
【0011】
ある側面では、本発明は、マルチウェルプレートを保持するように構成される、ステージと、顕微鏡内に搭載される、光のビームを放出するための光源と、ビームを下からステージに向かって指向する、光学システムであって、光学システムは、ビームを空間的に均質化するためのホモジナイザを備える、光学システムとを含む、顕微鏡を提供する。ステージは、電動xy平行移動ステージであってもよい。顕微鏡は、平行移動ステージを移動させ、ビームの経路内にマルチウェルプレートの個々のウェルを位置付けるように動作可能なプロセッサに接続されるメモリを備える、制御システムを含んでもよい。光学システムは、ステージの下にプリズムを含んでもよく、それによって、ビームは、プリズムの側面に入射し、略TIR角度においてプレートのウェルの中に通過する。
【0012】
いくつかの実施形態では、水性サンプルを含有するプレートのウェルが、プリズムの上方に位置付けられるとき、プリズムは、プレートの底部内での全内部反射を回避する角度において、サンプルの中にビームを指向する。水性サンプルを含有するプレートのウェルが、プリズムの上方に位置付けられるとき、プリズムは、背景自己蛍光を低減させ、励起強度を上昇させるために、光をウェルの底部約数ミクロンに制限する屈折の角度において、水性サンプルの中にビームを指向してもよい。
【0013】
ある実施形態では、顕微鏡は、3つの明確に異なる波長における3つのビームを放出するための複数の(例えば、少なくとも3つの)光源を含む。光学システムは、3つのビームを空間において合体し、ホモジナイザを通して3つのビームを通過させるために、1つまたはそれを上回るダイクロイックミラーを備える。プリズムのうちの1つは、空間パターン化のために1つの波長を反射させ、略TIR照明のためにその他を屈折させる、ダイクロイック表面を含んでもよい。好ましくは、ホモジナイザは、ビームを略均一かつ長方形領域の照明に形成する。ホモジナイザは、少なくとも2つのマイクロレンズアレイを含んでもよい。
【0014】
光学システムは、複数の開口を伴う不透明スクリーンを含んでもよく、スクリーンは、ビームが開口のうちの1つを通して通過するように位置付けられることができる。随意に、ホモジナイザは、2つのマイクロレンズアレイを備え、光学システムは、所定の間隔における複数のマイクロレンズアレイ位置停止部を備え、それによって、2つのマイクロレンズアレイの間の距離は、固定され、それによって、開口のそれぞれに合致するようにビームを成形することができる。
【0015】
顕微鏡は、(例えば、光開口型イオンチャネルを活性化する波長における)刺激ビームを放出する、刺激光源を含んでもよい。光学システムはまた、刺激ビームが、DMDから反射し、DMDによって定義されたパターンを用いてプレートのウェルの底部を照明するように、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を含んでもよい。例えば、ビームは、蛍光体の励起波長にあってもよい一方、刺激ビームは、電気活性の光遺伝学的作動等のための第2の波長にある。
【0016】
顕微鏡は、プレートのウェル内のサンプルからの光を顕微鏡内に搭載される画像センサ上に指向するために、ステージの下に撮像レンズを含んでもよい。好ましくは、光学システムは、ステージの直下にプリズムを含み、それによって、ビーム(例えば、励起ビームとして)は、プリズムの側面に入射し、プリズムは、光をウェルの底部約10ミクロンに制限する屈折の角度において、プレートのウェル内の水性サンプルの中にビームを指向し、顕微鏡はさらに、(例えば、光遺伝学的アクチュエータに特有の)刺激ビームを放出する、刺激光源を備え、光学システムは、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を備え、刺激ビームは、DMDから反射し、DMDによって定義されたパターンを用いてプレートのウェルの底部を照明する。刺激ビームおよび励起ビームは、同一の光学経路上で多重化され、プリズムアセンブリの一部を形成するダイクロイックミラーによって分離されてもよい。代替として、刺激ビームおよび励起ビームは、明確に異なる空間的に分離された経路に沿って、プリズムアセンブリに向かって通過されてもよい。
【0017】
本開示の側面は、サンプルを撮像するための方法を提供する。本方法は、顕微鏡ステージ上にマルチウェルプレートを位置付けるステップであって、プレートは、ウェルの底面上で生存する少なくとも1つの細胞を有する、ステップと、細胞の画像を取得するステップと、画像を処理し、細胞によって占有される底面の面積および細胞によって占有されない面積を識別する、空間マスクを作成するステップとを含む。顕微鏡の制御システムは、次いで、空間マスクを使用して、細胞に対するデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)のマイクロミラーを選択的にアクティブ化し、顕微鏡に、DMD上に光を照射させ、それによって、細胞によって占有される底面の面積上に光を特異的に反射させる一方、細胞によって占有されない面積上にいかなる光も反射させない。本方法は、マルチウェルプレートの複数のウェルのそれぞれの中の細胞に関する空間マスクを作成するステップと、メモリ内に空間マスクを保持するステップと、空間マスクおよびDMDを使用し、連続様式で複数のウェル内の細胞を選択的に照明するステップとを含んでもよい。好ましくは、DMDは、非一過性メモリシステムに結合されるプロセスを備える、コンピュータによって制御され、メモリシステムは、その中に記憶される空間マスクを有する。好ましくは、光は、細胞内の光開口型イオンチャネルを活性化する波長における活性化光である。
【0018】
本方法は、光開口型イオンチャネルが、シナプスを介して非選択細胞に接続されるシナプス前神経細胞内にある場合に有用である。非選択細胞は、シナプス活性の光学レポータを含んでもよい。好ましい実施形態では、ステージは、電動xy平行移動ステージを備え、コンピュータは、顕微鏡の撮像レンズにわたって複数のウェルのそれぞれを連続的に位置付け、そのウェル内の細胞に関して一意に作成され、メモリシステム内に記憶される、空間マスクに従って、DMDのマイクロミラーをアクティブ化するようにステージに指示する。細胞は、複数のウェル内の細胞を選択的に照明するステップが、照明された細胞における電気活性を開始するように、神経細胞を含んでもよい。コンピュータは、撮像レンズの下に位置付けられる撮像センサを使用して、ウェル毎に動画を記録し、メモリシステム内に結果として生じる複数の動画を記憶してもよい。好ましくは、顕微鏡は、光源と、光をウェルの底部約10ミクロンに制限する角度において、下から各ウェルに光の励起ビームを誘導する、光学システムとを含む。ウェルは、電気活性の光学レポータを発現する、神経細胞を含有してもよく、神経細胞は、それらが活動電位を発火するときに蛍光を発する。動画は、神経細胞発火を示す、蛍光活性を記録してもよい。随意に、細胞は、蛍光タンパク質(例えば、GFP等)を発現し、コンピュータシステムが、蛍光タンパク質からの信号を分析し、空間マスクを自動的に作成する。好ましい実施形態では、コンピュータシステムは、複数のウェルのそれぞれの中の標識化された細胞に関する空間マスクを自動的に作成し、メモリ内に空間マスクを保持することができる一方、顕微鏡は、DMDおよび個別の空間マスクを使用して、各ウェルを連続的に照明し、そのウェル内の細胞に特有の空間的にパターン化された照明を作成する。
【0019】
ある側面では、本発明の顕微鏡およびそれらを使用する方法は、自動焦点システムを含む。自動焦点システムを使用する例示的方法は、顕微鏡ステージ上にマルチウェルプレートを位置付けるステップを含み、プレートは、ウェルの底面上で生存する少なくとも1つの細胞を有し、顕微鏡は、自動焦点システムを含む。複数の視野(FOV)からのマルチウェルプレートの画像が、取得される。各FOVの位置は、自動焦点システムを使用して決定される。本システムは、次いで、FOVのサブセットから、マルチウェルプレートのウェルの曲率のプレート焦点マップを生成する。ウェルの底部上で生存する細胞からの測定値が、FOVのサブセットの間にFOVの位置を内挿することによって取得される。
【0020】
ある側面では、自動焦点システムは、レーザベースの自動焦点システムである。レーザベースの自動焦点システムを使用する例示的方法はさらに、顕微鏡ステージを第1の位置に移動させるステップと、レーザベースの自動焦点システムのレーザを使用して、ウェル上にレーザビームを照射するステップと、自動焦点システムを使用して、サンプルから反射するレーザビームの変位に基づいて、FOVの位置を決定するステップとを含んでもよい。サンプルを伴うウェルは、移動され、レーザビームは、自動焦点システムによって取得されるFOV毎に検出されてもよい。
【0021】
ある側面では、自動焦点システムは、画像ベースの自動焦点システムである。画像ベースの自動焦点システムを使用する例示的方法は、FOVのサブセットからマイクロプレートを横断するn個のウェルのX,Y座標を記録するステップと、一連のZステップを横断してn個のウェルにおける画像品質メトリックを測定するステップと、n個のウェルを横断して最も高い画像品質メトリックを提供するZステップを見出すステップとを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本開示の顕微鏡のコンポーネントを示す。
【
図4】
図4は、ホモジナイザを伴わない光ビームの出力レベルおよび形状を示す。
【
図5】
図5は、ホモジナイザを伴う光学システムのコンポーネントを図で示す。
【
図6】
図6は、ビームを空間的に均質化した結果を示す。
【
図7A】
図7Aは、光パターン化システムに関するハードウェアの側面図を示す。
【
図15】
図15は、空間的にパターン化された光を受光する、ガラス底部マイクロプレートを示す。
【
図16】
図16は、顕微鏡の制御および使用のためのシステムを図で示す。
【
図17】
図17は、96-ウェル顕微鏡のステージのコンピュータ支援設計(CAD)図面の一部である。
【
図18】
図18は、細胞サンプルに赤色レーザ光を結合するための光路を示す。
【
図22】
図22は、細胞にわたって平均化されたスパイク率を示す。
【
図27】
図27は、疾患表現型および化合物効果のレーダプロットを示す。
【
図28】
図28は、表現型ベクトルに直交する軸上に投影された化合物効果を示す。
【
図30】
図30は、神経細胞スパイキング挙動の薬物誘発変化を示す、レーダプロットである。
【
図31】
図31は、濃度応答を示し、2つの独立した滴定が、プロットされる。
【
図32】
図32は、96-ウェル顕微鏡上での神経細胞の高SNR蛍光電圧記録を示す。
【
図33】
図33は、ウェルの列からのスパイクを示す、ラスタプロットである。
【
図34】
図34は、ウェル毎のランプの間の平均発火率を示す。
【
図35】
図35は、ウェル毎のランプの間のスパイクの数を示す、ヒートマップである。
【
図36】
図36は、
図35のウェル毎のプロトコルのランプ部分に関する細胞あたりのスパイクの平均数を示す。
【
図37】
図37は、ラットの後根神経節(DRG)感覚神経細胞を示す。
【
図38】
図38は、CRISPR/Cas9である、WT細胞が、遺伝子をノックアウトするために使用され、複数の同質遺伝子クローンが、増殖され、神経細胞に変換されたことを示す。
【
図39】
図39は、複数のラウンドおよびKO細胞株を通して、スパイク形状の一貫した変化が存在したことを示す。臨床的に効果的な化合物を用いた治療は、挙動をWTに向かって戻るように移動させる。
【
図40】
図40は、ヘテロ接合性患者細胞株および健常家族性対照群において観察される、類似するがあまり深刻ではない表現型を与える。
【
図41】
図41は、神経細胞形態、活動電位形状、およびスパイク列挙動の変化を露見させる、多次元レーダプロットである。
【
図42】
図42は、次元削減が堅牢な表現型をもたらすことを示す。
【
図43】
図43は、CRISPR/Cas9がイオンチャネルにおける機能獲得型突然変異を導入するために使用されることを示す。
【
図44】
図44は、CheRiffおよびQuasArがある神経細胞において発現されることを示す。
【
図45】
図45は、QuasArおよびCheRiffを示す、Firefly上の蛍光画像である。
【
図46】
図46は、シナプス後電位(PSP)を示す、単一細胞蛍光トレースを示す。
【
図47】
図47は、対照アゴニストおよびブロッカによる単一細胞PSPの変調を示す。
【
図48】
図48は、対照薬理学に関する平均PSPトレースを示す。
【
図50】
図50は、高処理能力スクリーニングのための方法を示す。
【
図51】
図51は、レーザベースの自動焦点システムを使用する例示的ワークフローを示す。
【
図53】
図53は、一連のZ(軸方向)ステップを横断して撮影された、ウェルに関する画像品質メトリックのプロットを示す。
【
図54】
図54は、自動焦点システムを使用する例示的ワークフローを示す。
【
図55】
図55は、自動焦点システムを使用して取得された、例示的プレート焦点マップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
本発明は、生細胞がプレートのウェル内で観察および撮像されることを可能にする構成において、略TIR光を用いてサンプルを照明するためのマルチウェルプレート顕微鏡を提供する。本発明は、特に、急速な動力学を伴う生物学的部分および低量子効率を有する蛍光体における蛍光を観察するために有用である。顕微鏡は、対物レンズを通してではなく、側面からサンプルを照明し、これは、より強い照明および対応するより低い開口数およびより大きい視野を可能にする。蛍光の波長と明確に異なる波長における照明光を使用することによって、TIR顕微鏡は、照明波長が、光学フィルタを用いて画像からほぼ完全に除去されることを可能にし、明るい着目面積とともに暗い背景を有する画像をもたらす。顕微鏡は、蛍光を観察し、根底にある化学的または生化学的プロセス、例えば、遺伝子の発現、抗体の存在、または細胞内の具体的タンパク質の場所の指示手段を提供することができる。
【0024】
QuasAr2およびQuasAr3として公知の修飾されたアーチロドプシンタンパク質等の蛍光レポータは、蛍光を発するために、強い励起光を要求する。低量子効率および急速な動力学は、電位を測定するために、強い光を要求する。照明サブシステムは、したがって、高ワット数または高強度において光を放出するように構成される。量子効率およびピーク励起波長等の蛍光体の特性は、それらの環境に応答して変化する。強い照明は、それが検出されることを可能にする。強い光によって引き起こされる自己蛍光は、顕微鏡によって複数の方法で最小限にされる。略TIR照明の使用は、各ウェルの底部部分のみを照明光に暴露し、それによって、培養培地または本デバイスの他のコンポーネントの励起を低減させる。加えて、顕微鏡は、撮像光と明確に異なる照明光を提供するように構成される。撮像サブシステムにおける光学フィルタは、照明光をフィルタリングして除き、画像から不要な蛍光を除去する。細胞を培養するための環状オレフィンコポリマー(COC)皿は、ガラスと比較して低減された背景自己蛍光を可能にする。プリズムは、屈折率合致低自己蛍光油を通してマルチウェルプレートに結合される。プリズムはまた、低自己蛍光溶融シリカから成る。
【0025】
顕微鏡は、細胞の動的性質を光学的に特性評価するように構成される。顕微鏡は、(1)ネットワークにおける細胞の間の相互作用の測定を可能にするための、または高処理能力のために多くの細胞を並行して測定するための大きい視野(FOV)、(2)ウェル内の個々の細胞の形態を検出し、信号処理における選択性を促進するための高い空間分解能、(3)個々の活動電位を区別するための高い時間分解能、および(4)正確なデータ分析を促進するための高い信号対雑音比を同時に達成することによって、全光学的特性評価の全潜在性を実現する。顕微鏡は、数十または数百個の細胞を捕捉するために十分な視野を提供することができる。顕微鏡および関連付けられるコンピュータシステムは、少なくとも約1キロヘルツの画像入手率を提供し、これは、約1ミリ秒の非常に短い暴露時間に対応し、それによって、神経細胞等の電気活性細胞において生じる急速な変化を記録することを可能にする。顕微鏡は、したがって、従来技術の顕微鏡よりも実質的に短い期間にわたって列挙される光学系を使用して、蛍光画像を入手することができる。
【0026】
顕微鏡は、細胞の動的性質を光学的に特性評価することを促進するために、それらの厳しい要件の全てを達成する。顕微鏡は、低開口数(NA)対物レンズを用いて、十分な分解能および集光能力を伴う大きいFOVを提供する。顕微鏡は、sCMOSカメラ等の高速検出器を用いて、2倍~6倍の範囲内の倍率で撮像することができる。高速撮像率を達成するために、顕微鏡は、典型的には、例えば、約635nmの波長において50W/cm2を上回る、最大約2,000W/cm2のフルエンスを伴う極めて強い照明を使用する。
【0027】
高い出力レベルにもかかわらず、顕微鏡は、それにもかかわらず、サンプル、細胞成長培地、屈折率合致流体、およびサンプル容器における非特異的な背景蛍光の励起を回避する。略TIR照明は、サンプルおよびサンプル培地の不要な面積の自己蛍光を限定する。撮像サブシステムにおける光学フィルタは、不要な光が画像センサに到達しないように防止する。加えて、顕微鏡は、対物レンズユニットを通して照明光を通過させるのではなく、側面からサンプルを照明することによって、対物レンズにおけるガラス要素の不要な自己蛍光を防止する。顕微鏡の対物レンズは、物理的に大きく、少なくとも50mmの前面開口および少なくとも100mmの長さを有し、多数のガラス要素を含有し得る。
【0028】
顕微鏡は、カルシウムイオン濃度または膜電位等のそれらの環境の具体的物理的性質に敏感である蛍光インジケータを観察するために使用されることができる。これらのインジケータによって生産される時変信号は、生細胞の化学的または電子的状態の経過を図表化するために、繰り返し測定される。本発明との併用のための環境的に敏感な蛍光インジケータの一実施例は、赤色光によって励起され、細胞膜電位の関数として強度において変動する信号を生産する光遺伝学的レポータである、アーチロドプシン系タンパク質QuasAr2である。光遺伝学的レポータは、遺伝子導入または電気穿孔等の遺伝子工学技法を使用して細胞の中に導入され、膜電位の光学的測定を促進することができる。
【0029】
蛍光インジケータに加えて、顕微鏡は、細胞を化学的または電気的に摂動させるための光感受性化合物を光学的に活性化するために使用されることができる。本発明は、米国特許第10,613,079号および米国公開第2014/0295413号(そのそれぞれの全内容は、参照することによって組み込まれる)に開示されるもの等の電圧指示タンパク質と併用されることができる。光制御活性化因子を使用して、刺激が、照明パターンを変動させることによって、サンプル全体、選択された領域、または個々の細胞に印加されることができる。光制御活性化因子の一実施例は、その上に当てられる青色光の強度にほぼ比例して増加する大きさの電流を生産する、チャネルロドプシンタンパク質CheRiffである。1つの研究では、CheRiffは、約22mW/cm2の青色光によって照明されるときにタンパク質を発現する全細胞において約1nAの電流を生成した。
【0030】
光学的に変調された活性化因子が、蛍光インジケータと組み合わせられ、興奮性等の具体的細胞形質の全光学的特性評価を可能にすることができる。例えば、CheRiff等のチャネルロドプシンが、QuasAr2等の蛍光インジケータと組み合わせられる。顕微鏡は、それぞれ、レポータおよび活性化因子タンパク質を照明および活性化するために異なる波長の光を提供し、膜電位が、活動電位が光によって開始されると同時に測定されることを可能にする。
【0031】
略TIR顕微鏡を用いて有用なサンプルは、電気活性の光学活性化因子および電気活性の光学レポータを発現する細胞を含む。マルチウェルプレートのウェル内で、第1の細胞が、活性化因子を発現し、第2の細胞が、レポータを発現する。顕微鏡は、活性化ビームを用いて光感受性活性化因子タンパク質(例えば、光遺伝学的アクチュエータ)を活性化し、タンパク質の立体配座変化を引き起こし、それによって、細胞における膜電位の変化を開始することができる。結果は、細胞が「発火」する、すなわち、活動電位が電気活性細胞内で伝搬することとなる。顕微鏡は、活性化ビームとスペクトル的に明確に異なる照明ビームを用いて蛍光光学レポータタンパク質を同時に照明し、レポータに蛍光を発させることができる。顕微鏡の撮像サブシステムは、レポータによって放出された蛍光を測定し、膜電位の対応する変化を測定することができる。
【0032】
顕微鏡は、少なくとも、レポータタンパク質を励起するための照明光サブシステムおよびレポータによって放出された光を撮像するための撮像光サブシステム等の多数の光サブシステムを採用する。顕微鏡はまた、光開口型イオンチャネル等の活性化因子タンパク質を活性化するための活性化光サブシステムを含んでもよい。いくつかの実施形態では、照明サブシステムは、これが活動電位の変化に応じて蛍光を発し得るように、レポータタンパク質を活発化するための照明光を放出するためのサブシステムを指す。撮像サブシステムは、それらが蛍光を発するときにレポータによって放出された光を受光するためのサブシステムを指し、それらが放出する光は、撮像光と称される。活性化サブシステムは、膜電位の変化を開始するために光開口型イオンチャネルタンパク質を活性化するための光を放出するサブシステムを指す。
【0033】
図1は、本開示の顕微鏡101のコンポーネントを示す。顕微鏡は、マルチウェルプレート109を保持するように構成される、ステージ105と、顕微鏡内に搭載される、光のビームを放出するための励起光源115と、ビームを下からステージに向かって指向する、光学システム601とを含む。光学システムは、ビームを空間的に均質化するためのホモジナイザ125を備える。顕微鏡101は、種々の機能を実施または制御するためのコンピュータ171またはコンピューティングシステムハードウェアを含む、またはそれに通信可能に結合される。顕微鏡101は、下記により詳細に議論される、光パターン化システム301を含んでもよい。ステージ105は、好ましくは、電動xy平行移動ステージである。
【0034】
顕微鏡101は、画像センサ135を含む。画像センサは、Hamamatsu Photonics K.K.(Shizuoka, JP)によって品番C15440-20UPとして販売されるORCA-Fusion BTデジタルCMOSカメラまたはHamamatsu Photonics K.K.によって品番C14120-20Pとして販売されるORCA-LightningデジタルCMOSカメラ等のデジタルカメラユニットとして提供されてもよい。センサ135のために使用するための別の好適なカメラは、Teledyne Photometries (Tucson, AZ)によって商標KINETIXとして販売される背面照明sCMOSカメラである。
【0035】
顕微鏡はまた、好適な管レンズ等の撮像レンズ137を含んでもよい。レンズ137は、ZEISS Milvus 85mmレンズ等の85mm管レンズであってもよい。そのような撮像ハードウェアを用いて、顕微鏡は、96-ウェルプレートにおける5.5mmの直径および384-ウェルプレートの全3.45mmのウェル幅を伴う面積を撮像することができる。
【0036】
顕微鏡101は、好ましくは、平行移動ステージを移動させ、ビームの経路内にマルチウェルプレートの個々のウェルを位置付けるように動作可能なプロセッサに接続されるメモリを備える、制御システムを含む。随意に、顕微鏡101は、光のビーム121を放出するために、顕微鏡内に搭載される、励起光源115を含む。光学システム601は、ビーム121を下からステージに向かって指向する。
【0037】
顕微鏡101は、随意に、二次光源153を含んでもよい。二次光源153は、光学システム601といくつかの類似点を共有する、その独自の光学システムを有してもよい。しかしながら、光学システム601およびその独自の光学システムを伴う二次光源153を含むことは、それらのシステムが、同時であるかどうかにかかわらず、独立して動作されることを可能にする。いくつかの実施形態では、二次光システムは、光学システム601と異なる(例えば、はるかに高い)出力で動作される。二次光源153およびそのシステムは、較正のために、または光学システム601によって対処される光遺伝学的タンパク質のセットと異なる出力で最良に動作する光遺伝学的タンパク質に対処するために使用されてもよい。
【0038】
図2は、サンプル205に向かってビーム121を誘導する、プリズム201を示す。光学システム601は、ステージの直下にプリズム201を含み、それによって、ビームは、プリズムの側面に入射し、プレートのウェル211の中に通過する。示されるように、水性サンプル138が、ウェル211の底面112上に生細胞113を含む。随意に、屈折率合致レンズ油119が、プリズム201をウェルの底部112に光学的に結合する。好ましくは、水性サンプル138を含有するプレートのウェル211が、プリズム201の上方に位置付けられると、プリズムは、プレートのウェルの底部112内の全内部反射を回避する角度シータにおいて、サンプルの中にビーム121を指向する。示されるように、水性サンプルを含有するプレートのウェルが、プリズムの上方に位置付けられると、プリズムは、光をウェルの底部約10(随意に、20)ミクロンに制限する屈折の角度において、水性サンプルの中にビームを指向する。
【0039】
本発明は、光学コンポーネントの全てが、マルチウェルプレートのウェルの下に位置付けられ、照明が、対物レンズを通してではなく、側面から生じる、顕微鏡を提供する。側照明は、顕微鏡が、より強い照明およびより大きい視野を有することを可能にする。随意に、ステージの上方の面積は、プリズム等の光学要素によって妨げられない。その構成は、サンプルへの物理的アクセスおよびその環境に対する制御を可能にする。したがって、サンプルは、例えば、栄養培地中の生細胞であり得る。その構成は、従来的なTIRF顕微鏡と関連付けられる問題のうちの多くを解決する。特に、サンプル細胞の薄い領域が、流動チャンバの中にそれらを装填することによって、細胞に物理的に干渉する必要性を伴わずに、略TIRビームを用いて照明されることができる。代わりに、維持培養液等の水性培地中の生細胞が、観察されることができる。サンプルは、所望に応じて、電極または他の機器を用いて、上方からさらに分析されることができる。顕微鏡は、蛍光電圧インジケータを発現する細胞を撮像するために使用されることができる。コンポーネントは、サンプルに干渉しないため、生細胞が、本発明の顕微鏡を使用して研究されることができる。サンプルが、蛍光電圧インジケータを発現する電気活性細胞を含む場合、顕微鏡は、それらの細胞の電圧変化、したがって、その電気活性を視認するために使用されることができる。神経細胞および心筋細胞等の細胞の電気活性が、本発明のデバイスおよび方法を使用して研究されることができるため、本発明は、研究者がそれらの細胞に影響を及ぼす疾患を理解することに役立ち、研究者がアルツハイマー病および心疾患等の疾患に関する新しい予防法および治療法を発見できるようにするであろう。
【0040】
本発明のデバイスおよび方法は、光遺伝学と併せて使用されることができる。光遺伝学では、光が、生細胞内のある事象を制御および観察するために使用される。例えば、蛍光電圧インジケータ等の光応答性遺伝子が、心筋細胞の中に導入されることができる。レポータは、膜電位の変化に応答して光学信号を生成し、それによって、光学レポータとして機能する、ロドプシンタイプ膜貫通タンパク質であり得る。例えば、Halorubum sodomenseからの微生物ロドプシンタンパク質アーチロドプシン3(Arch)の修飾されたバージョンが、光学レポータとして使用されてもよい。光学レポータの実施例は、微生物ロドプシンQuasAr2およびQuasAr3である。1つの波長における照明光を用いて励起されると、レポータは、活発化され、膜電位の変化を示す異なる波長の光を放出する。顕微鏡は、したがって、1つの波長の光を用いてサンプルを照明するための照明システムと、異なる波長におけるレポータによって出される光の画像を記録するための撮像システムとを含む。照明システムは、光源と、プリズムとを含む。光源からの照明光は、プリズムを通して透過され、これは、サンプル上に略TIR照明を付与する。撮像システムは、対物レンズと、レポータによって放出された光を記録するための画像センサとを含む。
【0041】
略TIR照明は、約10ミクロン厚の細胞の薄い領域の照明を提供することができる。それは、これがマルチウェルプレートのウェルの底部と接触する全細胞を照明し得ることを意味する。照明は、対物レンズを通してではなく、側面から発し、したがって、顕微鏡は、培地または他の光学コンポーネントを照明することなく、強い照明を使用して、全細胞を照明することが可能である。
【0042】
随意に、サンプル内の細胞はまた、光開口型イオンチャネル等の光遺伝学的活性化因子を含んでもよい。光学アクチュエータは、微生物チャネルロドプシン等の遺伝子的にエンコードされたロドプシンまたは修飾されたロドプシンであってもよい。例えば、Scherffelia dubiaからのチャネルロドプシンであるsdChRが、使用されてもよい、またはCheRiffと呼ばれる、sdChRの改良されたバージョンが、光学アクチュエータとして使用されてもよい。「CheRiff」は、本明細書に説明されるようなマウスコドン最適化、トラフィッキング配列、および突然変異E154Aを使用するsdChRのバージョンを指す。活性化因子は、特定の波長の光に応答し、電気活性細胞における活動電位を開始する。それらの光遺伝学的タンパク質を活性化するために、顕微鏡は、活性化システムを含んでもよい。活性化システムは、チャネルロドプシンを活性化することが可能な波長においてサンプル上に光を指向する。活性化光は、サンプル内の特定の細胞等のサンプルのある面積に対応する、パターン化された光であってもよい。パターンは、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)等の空間光変調器(SLM)を用いて光ビーム上に付与されることができる。光が、SLM上に照射され、これは、サンプル上に結像される光の定義されたパターンを反射する。光パターンは、活性化因子を発現する特定の細胞に対応することができる。
【0043】
顕微鏡は、付加的レポータと、それらを活性化するための関連付けられるシステムとを含んでもよい。遺伝子的にエンコードされたカルシウムインジケータ(GECI)等の細胞内カルシウムレベルの変化を報告するタンパク質が、使用されてもよい。顕微鏡は、RCaMPのための黄色光等のGECIのための活性化光を提供するためのサブシステムを含んでもよい。例示的GECIは、例えば、jRCaMP1a、jRGECO1a、またはRCaMP2等のGCaMPまたはRCaMP異型を含む。複数の光学モダリティ(例えば、光学励起、活性化、電圧撮像、カルシウム撮像)を組み合わせる際の重要となる課題は、モダリティの間の光学クロストークを回避することである。光学活性化をもたらすために使用される光のパルスは、レポータの蛍光を誘発するべきではなく、レポータを撮像するために使用される光は、光開口型イオンチャネルを活性化するべきではなく、1つのレポータの蛍光は、他のレポータの蛍光から容易に区別されるべきである。本発明のいくつかの側面では、モダリティの本分離は、スペクトル重複を殆どまたは全く伴わない活性化因子およびレポータを選択することによって達成される。一実施形態では、活性化因子は、青色光によって活性化され、Ca2+レポータが、黄色光によって励起され、橙色光を放出し、電圧レポータが、赤色光によって励起され、近赤外光を放出する。
【0044】
また、顕微鏡は、サンプル内の具体的細胞のみを選択的に照明するために有用である、空間的にパターン化された照明のためのシステムを含む。
【0045】
図3は、サンプル上への複数の波長の光を空間的にパターン化するための光学光パターン化システム301を示す。光パターン化システム301は、光のビーム302を放出するための第1の光源313を含む。光のビームは、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)305から反射する。DMD305は、ビーム302をあるパターンに形成する。パターン化されたビームは、サンプル上に結像される。DMDは、個々のシナプス接続を測定するための高速単一細胞刺激またはスパイクタイミング依存可塑性を精査するための接続された神経細胞上のわずかに遅延されたパルスのための完全に同期された100μ秒パターンリフレッシュを可能にするであろう。光パターン化システムは、随意に、第2の光源314を含んでもよい。第1の光源は、好ましくは、第1の波長の光をビーム302の中に送る。これは、第1の波長に関するフィルタ323を使用して行われてもよい。
【0046】
ダイクロイックミラー343が、第2の光源314からの第2の波長の光をビーム302の中に選択的に反射させ得る。光パターン化システム301は、任意のダイクロイックミラー343上に光を誘導するために、またはビーム302をコリメートするために、30mmアクロマティックダブレット等の1つまたは任意の数のレンズ要素341を含んでもよい。第2の光源314は、第2の波長に関して特有の第2のフィルタ324を使用して、第2の波長における光を提供してもよい。光パターン化システム301は、第3の光源315と、第3のフィルタ325と、随意に、第4の光源316および第4のフィルタ326とを含んでもよい。好ましい実施形態では、いったん種々の波長からの光が、ビーム302に合体されると、ビーム302は、光パイプ321を通して通過される。
【0047】
1つの随意の実施形態は、4つの波長、すなわち、UV(380nm)、青色(470nm)、黄色/緑色(560nm)、および赤色(625nm)を伴う4つの光源を使用する。UV(380nm)は、EBFP2またはmTagBFP2撮像または細胞内カルシウムを撮像するために有用であり得る。50mW/cm2の出力が、十分であり得る。青色(470nm)は、CheRiff(例えば、チャネルの>95%を開放するために250~500mW/cm2において)、Chronos(チャネルの大部分を開放するために500mW/cm2において)、FLASH(登録商標)、または他のそのようなタンパク質を撮像するために使用され得る。黄色/緑色(560nm)光は、jRGECO1a(神経細胞に関して560nmにおいて80mW/cm2または心筋細胞に関して25mW/cm2)、VARNAM、または他のタンパク質を撮像するために使用され得る。赤色(625nm)は、Alexa647(例えば、50mW/cm2において)を伴う標的タンパク質またはBeRSTを伴う細胞活性(例えば、神経細胞に関して1~20W/cm2)を測定するために有用であり得る。
【0048】
光パターン化システム301は、光源313(典型的には、固体フレームまたは基板に搭載される)からサンプルにビーム302を誘導するために、1つまたは任意の数の丸形ミラー326を含んでもよい。光パターン化システム301は、それによって光がプリズムアセンブリ309に接近する最終角度を制御する、調節可能丸形ミラー327を含む。好ましい実施形態では、光パターンシステム301は、DMD305上に、かつサンプル上に光を誘導するために、1つまたはそれを上回るプリズムを含む、プリズムアセンブリ309を含む。プリズムは、好ましくは、マルチウェルプレートの底部を形成する材料の屈折率に合致する屈折率を有してもよい。例えば、顕微鏡101は、MilliporeSigma(St. Louis, MO)によって商標SENSOPLATEとして販売される24、96、384、または1,536ウェルを伴うガラス底部マイクロプレート等のプレートとの併用のために設計されてもよい。そのようなマイクロプレートは、127.76mmの長さと、85.48mmの幅とを含む、寸法を有する。マイクロプレートは、ホウケイ酸ガラス(175μm厚)を含む。
【0049】
プリズムアセンブリ308は、DMD305から選択された波長の光を跳ね返し、他の選択された波長が略TIR角度においてそれを通して通過することを可能にし、それによって、ウェルの底部10~20ミクロンのみにわたってサンプルを照明する、ダイクロイックミラー308を含んでもよい。ここでは、略TIRは、角度が、それによって側面から発する光がマルチウェルプレートハードウェアの一部において全内部反射を呈するであろう(例えば、プレートのホウケイ酸ガラス底部においてTIRを呈しないであろう)臨界角を下回るが、それにもかかわらず、それに非常に近接し、例えば、好ましくは、臨界角の10度以内、より好ましくは、TIRに関する臨界角の5度以内、最も好ましくは、臨界角の2度以内であることを意味するように理解されることができる。
【0050】
示されるように、撮像されるサンプルは、撮像センサ335に向かって(例えば、描画されないが、管レンズを通して)通過する、光338を放出する。ダイクロイックミラーのため、サンプルは、空間的にパターン化された光を用いて照明され、また、サンプルウェルの底部約10ミクロンのみを通して通過する略TIR光によって側面から照明され(両方ともビーム302から)、また、動画を記録するためにセンサ335によって捕捉される放出光338を放出することができる。
【0051】
任意の好適なデジタル光プロセッサまたは空間パターン化機構が、DMD305として使用されてもよい。いくつかの実施形態では、DMD305は、10.8μmピッチおよび20.7×13mmアレイサイズにおけるマイクロミラーの1,920×1,200ピクセルアレイを伴うVialux V9601-VIS DMDシステムである。光パターン化システムは、随意に、サンプル上に(例えば、2.7倍)縮小率を提供するために、Zeiss Milvus 135mm等の管レンズを含んでもよい。
【0052】
描写される実施形態では、各光源313は、源エタンデュを維持する6×6mm光パイプ321上に結像される、3×3mm Luminus LEDである。LEDから光パイプへの4レンズ設計(24-f撮像システム)は、光収集効率を増加させ、角度成分を最小限にする。描写される光パターン化システム301は、3つの明確に異なる波長において少なくとも3つのビームを放出するための少なくとも3つの(例えば、4つの)光源313、314、315、316を含む。好ましくは、光パターン化システム301は、3つのビームを空間において合体し、ホモジナイザおよび/または光パイプ321を通して3つのビームを通過させるために、1つまたはそれを上回るダイクロイックミラー343を有する。光パイプ321は、源を均質化し、4つのLED色の良好な重複を確実にする。光パイプ321からの光は、それに沿ってDMDに向かって通過される。
【0053】
顕微鏡101は、光のビーム121を放出するために、顕微鏡内に搭載される、励起光源115を含む。光学システム601は、ビーム121を下からある角度においてステージに向かって指向する。1つの潜在的な問題は、ビーム121の形状に影響を及ぼし得る、収差である。
【0054】
図4は、画像上に描かれる開口正方形が、顕微鏡101において使用される光学開口を図示する、励起光源115からの光ビームの出力レベルを示す。光の量は、開口正方形を横断して均一ではない。結果は、サンプル205内の細胞113の不均一な照明となるであろう。顕微鏡101は、光学システム601内に、ビーム121を空間的に均質化するためのホモジナイザ125を含めることによって、細胞113の不均一な照明を回避する。
【0055】
図5は、光学システム601のコンポーネントを図で示す。示されるように、コンポーネントの第1のセット604は、実質的に、例えば、顕微鏡101の基部内の印刷回路基板または他の基材に固定される、水平平面内にある。コンポーネントの第2のセット605は、光のビームがサンプルに向かって上に進行するように配向される、コンポーネントを有してもよい。
【0056】
光学システム601内で、ビーム121は、ホモジナイザ125を通して通過する。好ましくは、ホモジナイザ125は、ビーム121を略均一かつ長方形領域の照明に形成する。レーザビーム均質化の異なる方法が、均一なビームプロファイルを作成するために使用されてもよい。均質化は、レンズアレイ光学系または光パイプロッドを使用してもよい。
【0057】
レンズアレイは、横並びにスタックされる別個のレンズ要素から成り、次いで、レーザビーム経路内に設置される、アレイを形成する。均質化は、各レンズ要素を用いて初期波面を別個のビームに分割し、次いで、集束レンズを用いてそれらの新しいビームを標的面積上に集束させることによって作成される。別個のビームは、集束レンズを用いて集束される照明平面上に重畳される。好ましくは、照明面積の形状は、レンズ要素開口のものと同一である。ぼけた縁を回避するために、第2のレンズアレイが、使用されることができる。1つのアレイの焦点が、次のものの瞳面と一致し、第2のアレイの焦点が、第1のものの瞳面と一致するように、1つのレンズアレイが、別のものに共役される。本設定は、縁鮮明度を改良するが、アレイは、これが適切に機能するために、相互と非常に正確に整合される必要がある。ホモジナイザ125は、1つまたは任意の数のマイクロレンズアレイを含むことができる。マイクロレンズアレイを通して光を通過させることは、「シルクハット」形状である光の出力プロファイルを与えることができる。ビームホモジナイザは、レーザビームプロファイルにおける不規則性を平滑化し、より均一なプロファイルを作成する。好適なビームホモジナイザは、正方形ファセットを伴うマルチファセットミラーを使用してもよい。ミラーは、異なる角度において光を反射させ、全ビームプロファイルを横断して均一な出力を伴うビーム(「シルクハット」プロファイル)を作成する。ホモジナイザは、回折ビームホモジナイザまたはMLA(マイクロレンズアレイ)を含んでもよい。Voelkel 2008, Laser beam homogenizing: limitations and constraints, Proc SPIE 7102, Optical Fabrication, Testing, and Metrology III, 71020J(参照することによって組み込まれる)を参照されたい。
【0058】
均質化に関する第2の方法は、ロッドレンズの使用である。本レイアウトでは、初期ビームからの複数の反射が、ロッド(または光パイプ)の内側で混合される。光パイプ(均質化ロッド)の長さは、レーザビーム断面サイズの数倍を超えるべきであり、これは、縦方向システムサイズを決定付ける。入力ビームは、集束レンズを用いて光パイプに集束され得、これは、断面サイズおよび縦方向サイズを低減させるための選択肢である。TIR反射を提供する光パイプは、反射損失を低減させる一方、TIR角度は、入力ビームの開口数(NA)を限定する。
【0059】
ホモジナイザ125を通して通過した後、光は、開口555を通して通過する。任意の好適なハードウェア機構が、開口555を作成するために顕微鏡101において使用されてもよい。
【0060】
図6は、ビーム121を空間的に均質化した結果を示す。均質化は、例えば、光パターン化システムのハードウェア内に搭載される、マイクロレンズアレイの対または光パイプ等のホモジナイザ125のための任意の好適な光学ハードウェアによって提供されることができる。
【0061】
図7Aは、光パターン化システムのためのハードウェア701の側面図を示す。
【0062】
図7Bは、ハードウェア701の上面図を示す。示されるように、ハードウェア701は、プリズムアセンブリ708と、ミラー727と、光パイプ721とを含む。光パターン化システムは、任意のダイクロイックミラー上に光を誘導するために、またはビームをコリメートするために、30mmアクロマティックダブレット等の1つまたは任意の数のレンズ要素341を含んでもよい。サンプルに光を誘導するために、複数の光源およびミラーが、存在してもよい。
【0063】
光パターン化システム301は、ハードウェア701内に搭載される光源からプリズムアセンブリ708に、かつサンプル上にビームを誘導するために、1つまたは任意の数のミラーを含んでもよい。プリズムアセンブリ708は、DMD705上に光を誘導するために、1つまたはそれを上回るプリズムを含む。プリズムアセンブリ708は、筐体800内に格納されてもよい。
【0064】
図8は、本実施形態では、ミラーおよびプリズムが筐体内に格納される方法を示すために、プリズムアセンブリ708のワイヤフレーム図面に隣接する筐体800を示す。DMD705が、プリズムに隣接して筐体800に接続される。プリズムアセンブリ708は、DMD705から光を跳ね返す。DMDは、ここでは、DMD動作を制御するためのプロセッサを有する基板817に接続されるリボンケーブルとして示される、ケーブル816に接続される。筐体800はまた、DMDから跳ね返され、DMDによってサンプルから離れるように指向された光を受光し、消光させるために、光ダンプ815を有する。
【0065】
図9は、顕微鏡101の底部における光源(図示せず)から上へプリズムアセンブリ800までの光路の幾何学形状を図示する。
【0066】
光学システム601内で、ビーム121は、ホモジナイザ125を通して通過する。好ましくは、ホモジナイザ125は、ビーム121を略均一かつ長方形領域の照明に形成する。ホモジナイザ125を通して通過した後、光は、開口555を通して通過する。任意の好適なハードウェア機構が、開口555を作成するために顕微鏡101において使用されてもよい。顕微鏡101が、それを通して複数の開口を伴うスクリーンまたはブロックを含むことが、好ましくあり得る。
【0067】
図10は、ある実施形態による、開口断片1001を示す。示されるように、断片は、それを通して7つの開口を伴うアルミニウムブロック1002を含む。断片は、顕微鏡101のフレーム上に7つの対応する事前定義された停止部のうちの1つに再位置付け可能であってもよい。そのように位置付けられると、光ビーム121は、断片1001の選択された開口を通して通過する。そのような実施形態では、光学システム601は、複数の開口を伴う不透明スクリーンを含み、スクリーンは、ビームが開口のうちの1つを通して通過するように位置付けられることができる。開口は、具体的撮像ワークフローのために事前定義されてもよい。例えば、各開口は、あるウェルカウント(例えば、96または384)のマルチウェルプレートのウェルを撮像することに適したビームプロファイルを定義してもよい。
【0068】
開口断片1001は、異なる撮像構成のための複数の(例えば、7つの)開口を含んでもよい。ここでは、示されるように、顕微鏡101は、3つのプレートタイプおよび2つのレンズタイプの各組み合わせに「広開」選択肢を加えたものを撮像するための7つの事前選択された開口を含む。示されるように左から右に、断片1001は、第1の開口1011と、第2の開口1012と、第3の開口1013と、第4の開口1014と、第5の開口1015と、第6の開口1016と、第7の開口1017とを含む。第1の開口1011は、135mm管レンズを用いて1kHzにおいて384-ウェルプレートを撮像するためのものであり、0.90×0.89mmである。第2の開口1012は、85mm管レンズを用いて1kHzにおいて384-ウェルプレートを撮像するためのものであり、0.90×1.35mmである。第3の開口1013は、85mm管レンズを用いて500Hzにおいて384-ウェルプレートを撮像するためのものであり、0.90×2.57mmである。第4の開口1014は、135mm管レンズを用いて1kHzにおいて96-ウェルプレートを撮像するためのものであり、1.27×0.89mmである。第5の開口1015は、85mm管レンズを用いて1kHzにおいて96-ウェルプレートを撮像するためのものであり、1.27×1.35mmである。第6の開口1016は、85mm管レンズを用いて500Hzにおいて96-ウェルプレートを撮像するためのものであり、1.27×2.57mmである。第7の開口1017は、全開撮像のためのものであり、4.6mm×7.2mmである。ブロック1002は、冷水接続1035を伴う水チャネル1029を含んでもよい。プラグ1003は、モノリシックブロック1002の中へのチャネル1029のミリングを促進するために使用されてもよい。
【0069】
ここでは、ホモジナイザ125は、2つのマイクロレンズアレイを使用し、顕微鏡101は、マイクロレンズアレイが、断片1001を通した開口のうちの1つに対応する定義された間隔を作成するために再位置付け可能であるように設計されることができる。いくつかの実施形態では、ホモジナイザ125は、2つのマイクロレンズアレイを備え、光学システム601は、所定の間隔において複数のマイクロレンズアレイ位置停止部を備え、それによって、2つのマイクロレンズアレイの間の距離は、固定され、それによって、開口のそれぞれに合致するようにビームを成形することができる。
【0070】
顕微鏡101は、複数の光学システムを含んでもよい。例えば、光パターン化システム301は、刺激光源313(ビーム302を放出する)と、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)305とを含んでもよい。ビーム302は、DMDから反射し、DMDによって定義されたパターンを用いてプレートのウェルの底部を照明する。ビーム302は、蛍光体の励起波長にあってもよい。顕微鏡は、第2の波長において刺激ビームを放出する、二次光源253を伴う二次光学システムを含んでもよい。
【0071】
光パターン化システム301は、ステージの直下にプリズムを含み、それによって、ビームは、プリズムの側面に入射し、プリズムは、光をウェルの底部約10ミクロンに制限する屈折の角度において、プレートのウェル内の水性サンプルの中にビームを指向する。顕微鏡101はまた、刺激ビームを放出する、刺激光源153を含んでもよい。随意に、刺激ビームは、DMDから反射し、DMDによって定義されたパターンを用いてプレートのウェルの底部を照明する。
【0072】
顕微鏡101は、随意に、二次光源153を含んでもよい。二次光源153は、光学システム601といくつかの類似点を共有する、その独自の光学システムを有してもよい。しかしながら、光学システム601およびその独自の光学システムを伴う二次光源153を含むことは、それらのシステムが、同時であるかどうかにかかわらず、独立して動作されることを可能にする。いくつかの実施形態では、二次光システムは、光学システム601と異なる(例えば、はるかに高い)出力で動作される。二次光源153およびそのシステムは、較正のために、または光学システム601によって対処される光遺伝学的タンパク質のセットと異なる出力で最良に動作する光遺伝学的タンパク質に対処するために使用されてもよい。
【0073】
ある側面では、本発明の顕微鏡は、自動焦点システムを含む。顕微鏡は、レーザベースの自動焦点システムを含んでもよい。代替として、または加えて、顕微鏡は、画像ベースの自動焦点システムを含んでもよい。ある側面では、本発明の顕微鏡は、レーザベースおよび画像ベース両方の自動焦点システムを含み、使用する。
【0074】
図11は、含まれ得る、例示的レーザベースの自動焦点システムを示す。赤色レーザ光1101が、光学システム601によって提供される。黄色レーザ光1105が、二次光源153(時として、これがページ上に描かれる方法に基づいて、「左経路」光源と呼ばれる)によって提供される。顕微鏡101はさらに、レーザダイオード1109(例えば、緑色)と、位置感知検出器1115とを含む。描写されるコンポーネント(レンズ1、2、3、4、5、6、フィルタ7および9、およびシャッタ8)は、位置センサ上にサンプルを撮像するための4-f撮像システムを提供し、したがって、ビームの角度を変化させるであろうウェルプレート箔の曲率は、センサ上の位置を変化させないであろう。好ましくは、レンズ3および4は、f3+f4だけ分離され、したがって、コリメートビームが、サンプルに入射する。レンズ1および2は、ビーム直径を縮小させ、プリズム入射開口上のクリッピングを回避し、レンズは、f1+f2だけ分離される。
【0075】
フィルタ9は、理論的なサブミクロン限界に向かってセンサの正確度を最大限にするために、所与のサンプルタイプに関するレーザダイオード1109からの緑色レーザ光の出力を調整するための能力を提供し得る。シャッタ8は、レーザを点滅させ、ミリ秒の読取時間を可能にし得る。
【0076】
図12は、例示的自動焦点システムが機能する方法の図示を図示する。サンプル高は、プレート製造における不完全性、環状オレフィンコポリマー(COC)箔の反り等(例えば、マルチウェルプレートにおける不完全性)に基づいて、視野(FOV)毎に変化する。緑色レーザが、より浅い角度において入光し、したがって、完全TIRを行う。赤色レーザ光1101が、略TIRを呈する。破線1201は、レーザ位置が、TIR表面が移動するときに変化することを図示する。位置感知検出器1115は、マルチウェルプレートの現在のウェルにおけるサンプルの位置をコンピューティングシステム171に報告する。顕微鏡101は、ステージを(光学システムに対して)上昇または降下させ、全てzモータを動作させるための命令を発行する制御機能下で、光学系を集束させるために、zモータ(描画せず)を含んでもよい。
【0077】
図51は、本発明のレーザベースの自動焦点システムを使用する例示的方法のフロー図を提供する。示されるように、ある側面では、光位置センサ1115は、読取値を取得する前に較正されてもよい。次いで、サンプルが、定位置に移動され、本システムは、サンプル上にレーザビームを照射する。ビームは、サンプルから全内部反射し、光位置センサ1115上で検出される。サンプル位置は、レーザビームの変位に基づいて計算される。焦点モータが、カメラレンズ焦点をサンプル位置まで移動させ、その時点で、実験が、サンプルに対して行われる。実験が、完了されると、サンプルは、移動される、および/または別のサンプルによって置換されてもよく、サイクルは、必要に応じて繰り返されてもよい。
図51に示されるように、本システムのステップは、顕微鏡がサンプルをスクリーニングする際の全ての視野の位置を迅速に測定するために十分に速く起こり、全ての視野を横断する優れた焦点を可能にし得る。
【0078】
例示的レーザベースの自動焦点システムは、COC撮像バッファ界面上の完全な全内部蛍光およびFOVの位置を直接測定するためのマイクロメートル正確度の位置センサを利用し得る。
【0079】
ある側面では、本システムは、画像ベースの自動焦点システムを使用する。画像ベースの自動焦点システムを使用する例示的方法は、異なる視野から画像の群を取得するステップを含む。ある側面では、画像ベースの自動焦点システムは、FOVの位置を間接的に測定することが可能である。
【0080】
図52は、9つの異なる視野から取得されたサンプルプレートの9つの画像の実施例を示す。本システムは、マイクロウェルプレートを横断するn個のウェルの座標(X,Y)を記録し、これは、良好な間隔を有する(
図52では、n=9)。次いで、本システムは、一連のZステップ(軸方向場所)を用いてn個のウェルにおける画像品質メトリックを測定する。
【0081】
図53は、一連のZステップの間に測定された画像品質メトリックのプロットを提供する。本システムは、ウェル毎に最も高い画像品質メトリックを提供したZステップ(値)を使用する。
【0082】
図54は、レーザベースまたは画像ベースの自動焦点システムを採用する、N点自動焦点システムを使用する例示的方法のワークフローを提供する。N点自動焦点システムは、FOVの恣意的なサブセットにおけるサンプルマイクロプレートの測定された位置をとり、これらのウェルから、マイクロプレートの底部の曲率を表す曲線モデルを生成する。これは、より多くの時間がかかり、処理能力を限定するであろう、顕微鏡が全てのウェルに対する焦点を個々に測定することを要求することなく、FOVの恣意的なサブセットの間にFOVの位置を内挿することによって、電気生理学的測定が迅速な方式で行われることを可能にする。
【0083】
図55は、N点自動焦点システムによって生成された例示的プレート焦点マップを提供する。
【0084】
コンピュータシステム171は、制御機能を実施する。いくつかの実施形態では、顕微鏡101は、左経路および二次光源153を使用し、その中でサンプル内に存在するある着目標的が蛍光的に標識化される、マルチウェルプレート内のサンプルを撮像する。例えば、神経活性アッセイに関して、プレートの各ウェルは、生神経細胞のネットワークを含有し得る。顕微鏡は、各ウェルを撮像してもよく、コンピュータは、各ウェル内の全ての個々の神経細胞を識別し、それらの神経細胞間の全てのシナプス接続を見出し、各ウェル内の任意のシナプス前神経細胞の場所の記録を作成するために使用されてもよい。全てのそれらの神経細胞が、CheRiff(光開口型イオンチャネルとして機能する藻類チャネルロドプシン)等の光遺伝学的アクチュエータを提供される場合、コンピュータ171は、各ウェル内のシナプス前神経細胞の場所を識別する、空間マスク(ある神経細胞によって占有される、または占有されないウェルの画像内のピクセルに関するバイナリコーティングを伴うデジタルファイル)を作成することができる。コンピュータは、マルチウェルプレートにおけるありとあらゆるウェルに関する本情報を記憶することができる。xyモータは、次いで、撮像レンズにわたってプレートを平行移動させ、DMDを使用し、空間マスクに従ってウェル上への光を空間的にパターン化し、光開口型イオンチャネルを脱分極させる波長における光を用いてシナプス前神経細胞を選択的に独占的に照明し、シナプス前神経細胞に(およびそれのみに)活動電位を発火させることができる。DMDからのその光学刺激に応答して、いかなるシナプス後神経細胞も、「発火」、すなわち、活動電位を呈し、閾値を超える化学的伝達を伴う正常な神経伝達が、存在する。神経細胞が、Arch 3 D95N、QuasAr1、QuasAr2、またはQuasAr3として公知のアーチロドプシン3の修飾されたバージョンのうちの1つ等の電気活性の光学レポータを含む場合、それらのシナプス後神経細胞は、活動電位が伝搬する際にそれらの膜電位が変化する際に光を放出するであろう。顕微鏡101は、画像センサ135を使用し、光の動画を記録することができ、動画は、分析され、正常な神経伝達を検出し、さらには神経活性に伴う疾患関連付け問題等の具体的生物学的神経表現型を示す傾向がある具体的特徴を(動画における記録された光において)検出することができる。
【0085】
したがって、顕微鏡101は、生細胞に対する、特に、細胞の電気活性に関する様々なアッセイにおいて使用されてもよい。顕微鏡は、神経細胞および心筋細胞を含む、種々の電気活性細胞タイプの活性をアッセイすることができる。顕微鏡101は、マルチウェルプレート適合性ステージ、コンピュータ171、およびDMD305を使用し、ウェルの間の空間マスクを再定義することなく(空間マスクはメモリ内に記憶される)、プレートのウェルからウェルへと選択された細胞上への照明を空間的にパターン化するために、空間マスクを保存し、使用することができる。したがって、顕微鏡は、サンプルを撮像する方法を提供する。
【0086】
図13は、サンプルを撮像する方法1301を図で示す。方法1301は、顕微鏡ステージ上にマルチウェルプレートを位置付けるステップ1303を含み、プレートは、ウェルの底面上で生存する少なくとも1つの細胞を有する。撮像するステップ1309が、細胞の画像を取得するために実施される。画像は、ウェルの底部上の表面を「マスク」する(1315)、すなわち、細胞によって占有される底面の面積および細胞によって占有されない面積を識別する、空間マスクを作成するように処理される。マスクを使用することで、コンピュータは、空間マスクを使用して、細胞に対するDMDのマイクロミラーを選択的にアクティブ化するようにDMDに信号伝達する(1323)。次いで、光源121を使用して、顕微鏡は、DMD上に光を照射することによってサンプルを照明し(1327)、それによって、細胞によって占有される底面の面積上に光を特異的に反射させる一方、細胞によって占有されない面積上にいかなる光も反射させない。方法1301は、マルチウェルプレートの複数のウェルのそれぞれの中の細胞に関する空間マスクを作成するステップと、メモリ内に空間マスクを保持するステップと、空間マスクおよびDMDを使用し、連続様式で複数のウェル内の細胞を選択的に照明するステップとを含んでもよい。随意に、DMDは、非一過性メモリシステムに結合されるプロセスを備える、コンピュータによって制御され、メモリシステムは、その中に記憶される空間マスクを有する。
【0087】
本発明のデバイスおよび方法は、カルシウムイオン濃度または膜電位等のそれらの環境の具体的物理的性質に敏感である蛍光インジケータを活用するために使用されてもよい。これらのインジケータによって生産される時変信号は、生細胞の化学的または電子的状態の経過を図表化するために、繰り返し測定されることができる。環境的に敏感な蛍光インジケータの一実施例は、赤色光によって励起され、細胞膜電位の関数として強度において変動する信号を生産する、アーチロドプシン系タンパク質QuasAr2である。QuasAr2は、遺伝子導入または電気穿孔等の遺伝子工学技法を使用して細胞の中に導入され、膜電位の光学的測定を促進することができる。
【0088】
本発明は、数十、数百、またはさらには数千個の細胞を同時に撮像するために使用され得る、大きいFOVの光学顕微鏡100を提供する。非常に多くの細胞が、同時に撮像され得るため、細胞膜電位の光学特性評価は、処理能力を何桁も増加させることができる。
【0089】
全光学的特性評価の全潜在性を実現するために、顕微鏡100は、ネットワークにおける細胞の間の相互作用の測定を可能にするための、または高処理能力のために多くの細胞を並行して測定するための大きいFOV、個々の細胞の形態を検出し、信号処理における選択性を促進するための高い空間分解能、個々の活動電位を区別するための高い時間分解能、および正確なデータ分析を促進するための高い信号対雑音比を同時に達成するために使用されてもよい。FOVは、好ましくは、約1または2ミクロンの分解能を用いて、数十または数百個の細胞を捕捉するために十分に大きい。神経細胞等の電気活性細胞において生じる急速な変化を記録するために、顕微鏡101は、約1キロヘルツの非常に高速な画像入手率を提供することができ、これは、約1ミリ秒の非常に短い暴露時間に対応する(殆どの蛍光画像は、実質的により長い期間にわたって入手される)。上記の要件の混在は、細胞の動的性質を光学的に特性評価するための器具に対して極端な要求を課す。ステージは、電動xy平行移動ステージを備え、コンピュータは、顕微鏡の撮像レンズにわたって複数のウェルのそれぞれを連続的に位置付け、そのウェル内の細胞に関して一意に作成され、メモリシステム内に記憶される、空間マスクに従って、DMDのマイクロミラーをアクティブ化するようにステージに指示する。好ましい実施形態では、細胞は、神経細胞を含み、複数のウェル内の細胞を選択的に照明するステップは、照明された細胞における電気活性を開始する。随意に、コンピュータは、撮像レンズの下に位置付けられる撮像センサを使用して、ウェル毎に動画を記録し、メモリシステム内に結果として生じる複数の動画を記憶する。好ましくは、顕微鏡は、光源と、光をウェルの底部約10ミクロンに制限する角度において、下から各ウェルに光の励起ビームを誘導する、光学システムとを含む。ウェルは、電気活性の光学レポータを発現する、神経細胞を含有してもよく、神経細胞は、それらが活動電位を発火するときに蛍光を発する。顕微鏡は、神経細胞発火を示す蛍光活性を描写する、動画を記録してもよい。したがって、細胞は、蛍光タンパク質を発現し、コンピュータシステムが、随意に、蛍光タンパク質からの信号を分析し、空間マスクを自動的に作成する。ある実施形態では、コンピュータシステムは、複数のウェルのそれぞれの中の標識化された細胞に関する空間マスクを自動的に作成し、メモリ内に空間マスクを保持することができる一方、顕微鏡は、DMDおよび個別の空間マスクを使用して、各ウェルを連続的に照明し、そのウェル内の細胞に特有の空間的にパターン化された照明を作成する。
【0090】
蛍光インジケータに加えて、光感受性化合物が、細胞を化学的または電気的に摂動させるために開発されている。光制御活性化因子を使用して、刺激が、照明パターンを変動させることによって、サンプル全体、選択された領域、または個々の細胞に印加されることができる。光制御活性化因子の一実施例は、その上に当てられる青色光の強度にほぼ比例して増加する大きさの電流を生産する、チャネルロドプシンタンパク質CheRiffである。1つの研究では、CheRiffは、約22mW/cm2の青色光によって照明されるときにタンパク質を発現する全細胞において約1nAの電流を生成した。
【0091】
光学的に変調された活性化因子が、蛍光インジケータと組み合わせられ、興奮性等の具体的細胞形質の全光学的特性評価を可能にすることができる。例えば、Optopatch方法は、CheRiff等の電気活性化因子タンパク質をQuasAr2等の蛍光インジケータと組み合わせる。活性化因子およびインジケータタンパク質は、異なる波長の光に応答し、膜電位が、細胞がある範囲の光電流の大きさにわたって励起されると同時に測定されることを可能にする。Optopatchは、米国特許第10,613,079号および米国特許第9,594,075号(その内容は、あらゆる目的のために参照することによって組み込まれる)の内容を含む。
【0092】
細胞の電気的性質を測定することは、心臓および脳細胞(それぞれ、神経細胞および心筋細胞)等の電気活性細胞を伴う疾患の研究、診断、および処置に対して最も重要である。これらの細胞に影響を及ぼす条件は、心疾患、心房細動、筋萎縮性側索硬化症、原発性側索硬化症、および多くのその他を含む。全光学的測定は、それらが、精密な微小機械的操作またはサンプル内の細胞との直接接触を要求しないため、パッチクランプのような従来の方法に対する魅力的な代替を提供する。光学方法は、高処理能力用途にはるかにより適している。全光学的測定によってもたらされる処理能力の劇的な増加は、これらの条件の研究、診断、および治療に革命をもたらす潜在性を有する。
【0093】
種々の側面では、本発明は、概して、蛍光インジケータおよび光感受性活性化因子を使用して、細胞の物理的性質を特性評価することを対象とする。本システムの用途の実施例は、心筋細胞に対する潜在的薬物化合物の効果を研究することを含む。例えば、顕微鏡は、幹細胞由来の心筋細胞から活動電位(AP)およびカルシウム過渡(CT)波形を光学的に取得し、心筋細胞における不整脈を特性評価するために使用され得る。サンプル内の心筋細胞は、ロドプシンタイプ膜貫通光学レポータを発現させられ得る。顕微鏡は、活性化サブシステムを使用して微生物チャネルロドプシンを活性化することができる。APが、心筋細胞を通して伝搬する。レポータタンパク質を含有する細胞は、照明サブシステムを介して照明され、APは、レポータの蛍光の変化を引き起こす。レポータからの光は、撮像サブシステムによって検出され、AP波形を構築するために分析される。構築されたAP波形における不整脈は、例えば、既知の標準との比較または他の分析技法によって、検出または特性評価されることができる。
【0094】
略TIRF顕微鏡は、したがって、心筋細胞に対する化合物の効果を研究するために使用されることができる。被写体領域は、培地中の細胞を支持することができるため、サンプル心筋細胞は、候補薬物等の着目化合物に暴露されながら、顕微鏡を用いて観察されることができる。化合物への暴露と関連付けられる、検出されたAP波形、すなわち、不整脈へのいかなる結果として生じる摂動も、したがって、顕微鏡によって観察されることができる。光学レポータは、電圧レポータ、イオンレポータ(例えば、[Ca2+]に関して)、その他、またはそれらの組み合わせを含むことができるため、顕微鏡は、AP波形の全ての特徴を通して露見されるような心筋細胞の複数のイオンチャネルを横断する化合物の効果を検出することができる。
【0095】
顕微鏡101を使用して、細胞113または任意の他の好適なサンプルが、撮像されることができる。例えば、細胞113は、神経細胞、心筋細胞、または光遺伝学的レポータを発現する他の電気活性細胞であってもよい。
【0096】
図14Aは、本開示のある実施形態において有用な光源313の斜視図である。
【0097】
【0098】
図14Cは、本発明との併用のために好適な光源の側面図である。光源は、ダイオードレーザ、ダイオードバーレーザ、他のタイプのレーザ、LED、または好適な特性を伴う他の光源を含んでもよい。
【0099】
図15は、DMD305上に実装されるマスクからプレートの1つのウェル内の細胞113上への空間的にパターン化された光を受光する、ガラス底部マイクロプレート1501(例えば、マルチウェルプレート)を示す。細胞は、撮像センサに向かって放出光338を放出する。任意の好適なウェルプレートが、使用されてもよい。示されるように、プレート1501は、MilliporeSigma(St. Louis, MO)によって商標SENSOPLATEとして販売される96ウェルプレート等の96個のウェルを伴うガラス底部マイクロプレートである。好ましくは、プレート1501は、127.76mmの長さと、85.48mmの幅とを含む、寸法を有する。マイクロプレート1501は、ホウケイ酸ガラス(175μm厚)を含んでもよい。
【0100】
示されるように、撮像されるサンプルは、撮像センサ335に向かって(例えば、描画されないが、管レンズを通して)通過する、放出光338を放出する。ダイクロイックミラーのため、サンプルは、空間的にパターン化された光を用いて照明され、また、サンプルウェルの底部約10ミクロンのみを通して通過する略TIR光によって側面から照明され(両方ともビーム302から)、また、動画を記録するためにセンサ335によって捕捉される放出光338を放出することができる。
【0101】
倒立蛍光マイクロ撮像システムは、単一の視野内の多数の(例えば、50~5,000)発現細胞または細胞クラスタから光学的に記録する。例えば、本システムは、Optopatch構成物を発現する電気活性細胞における光学的に誘起された発火パターンおよびAP波形を特性評価するために使用されてもよい。各視野は、全視野または空間的に局所化されたパルスの青色光に暴露され、活性を誘起する(例えば、0.5秒、6秒毎に繰り返され、9つの強度が0~10mW/cm2まで増加し、神経細胞発火を引き出す)。ステップの数および出力変数は、特定の研究および活性化因子の発現レベルに依存する。QuasAr2からのもの等のレポータ蛍光が、640nm、100W/cm2における全視野励起を用いて同時に監視され得る。顕微鏡および撮像システムの付加的な有用な議論が、米国特許第10,288,863号(参照することによって組み込まれる)に見出され得る。
【0102】
本発明の方法は、観察されるべき細胞を励起するステップ、または活動電位を開始するために細胞を活性化するステップを含んでもよい。活性化は、直接的または間接的であってもよい(例えば、光学活性化因子の光学活性化または観察されるべき細胞とギャップ結合する、またはシナプス連絡する、上流細胞の活性化)。活性化は、光学的、電気的、化学的である、または任意の他の好適な方法によるものであってもよい。活性化は、例えば、規則的、周期的パルス、単一のパルス、不規則なパターン、または任意の好適なパターンを含む、任意のパターンの活性化を伴ってもよい。方法は、細胞機能の特定の側面を強調するために、空間または時間において光学活性化パターンを変動させるステップを含んでもよい。例えば、パルスパターンは、増加する周波数を有してもよい。ある実施形態では、撮像するステップは、光のパルスを使用して、光学活性化因子を発現する電気活性細胞を活性化するステップを含む。
【0103】
図16は、顕微鏡101の制御および使用のためのシステム1601を図で示す。器具100は、光学システム600を含み、直接、またはネットワーク1643を介して、コンピュータデバイス171に接続される。随意に、システム1601は、サーバコンピュータ1609を含む、またはそれにアクセスしてもよい。システム1601は、光遺伝学のための蛍光顕微鏡法を提供する。本システムは、顕微鏡101と、コンピュータ171とを含む。顕微鏡101は、好ましくは、被写体領域を含む撮像光学経路内に位置する、ステージと、対物レンズとを含む。顕微鏡101は、全内部反射顕微鏡法のための1つまたはそれを上回るプリズムと、光を提供するための1つまたはそれを上回るレーザバーと、デジタルマイクロミラーデバイスを備える、デジタル光プロセッサ(DLP)とを含んでもよい。コンピュータデバイス171は、対物レンズを介して捕捉された画像を表示し、タッチスクリーンを介して取得されたユーザ入力に基づいて、活性化光のパターンを制御するように構成される、タッチスクリーンを含んでもよい。システム1601を使用して、ユーザは、タッチスクリーンにタッチし、タッチスクリーン上に表示される電気活性細胞を活性化し得る。コンピュータ171およびDLPは、ユーザがタッチスクリーンにタッチすることに応答して、デジタルマイクロミラーデバイスの構成を改変することができる。加えて、または代替として、顕微鏡ステージは、タッチスクリーンを使用するユーザによって行われるパンまたはズームジェスチャに応答することができる。例えば、ユーザは、画面にタッチし、対物レンズに対する被写体領域の位置を調節することができる。
【0104】
ある側面では、本開示は、高分解能の大きい視野の撮像システムを提供する。撮像システムは、対物レンズ、管レンズ、光学フィルタ、ミラー、集束機構、および像面において画像を形成するための他の光学要素を含んでもよい。撮像システムはまた、サンプルの蛍光画像を記録するために撮像システムの像面において存在する、画像検出器を含んでもよい。
【0105】
参照による組み込み
特許、特許出願、特許公開、雑誌、書籍、論文、ウェブコンテンツ等の他の文書の参照および引用が、本開示全体を通して行われている。全てのそのような文書は、あらゆる目的のために、本明細書に参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる。
【0106】
均等物
本明細書に示され、説明されるものに加えて、本発明の種々の修正およびその多くのさらなる実施形態が、本明細書に引用される科学および特許文献の参照を含む、本書の全内容から、当業者に明白となるであろう。本明細書の主題は、その種々の実施形態およびその均等物における本発明の実践に適合され得る、重要な情報、例示、および指針を含有する。
【実施例】
【0107】
(実施例1)
実施例1:概要
本開示は、384-ウェルプレートと適合する光遺伝学的顕微鏡を提供し、自動化を合理化し、新しいより高感度の電圧トレース励起アルゴリズムを実装し、測定の効率の4倍の増加を可能にする。顕微鏡は、細胞生産におけるいくつかのプロセスを自動化し、労力および試薬使用量を低減させ、再現性を改良し得る。ともに、それらの改良は、ヒトiPSC由来神経細胞疾患モデルにおける興奮性およびシナプス伝達のモジュレータをスクリーニングするために、顕微鏡を堅牢かつ実践的なツールにする。顕微鏡は、KCNQ2における機能喪失型(LOF)突然変異のヒト細胞疾患モデルにおけるスクリーンを実施し、強い薬理学的変調を示すデータを提供するために使用されてもよい。
【0108】
本開示の実施形態は、細胞電気生理学の全光学的測定のためのカスタム超広視野蛍光顕微鏡(時として、「Firefly」と呼ばれる)を提供する。顕微鏡は、Optopatchツールキット(光学刺激+光学電圧報告、例えば、CheRiffおよびQuasAr)を活用し、これは、工学設計されたタンパク質を使用して、神経細胞活動電位(AP)の同時光学刺激および記録を可能にする。チャネルロドプシンCheRiffは、青色光を用いたAP刺激を可能にし、電圧感受性蛍光タンパク質QuasArは、赤色光を用いた高速電気記録を可能にする。Firefly顕微鏡は、1m秒の時間分解能および高い信号対雑音比(SNR)を用いて、大きい(0.5×4mm)視野(FOV)にわたって、>100個の個々の神経細胞からの同時電圧記録を日常的に行う。デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)が、完全に再構成可能な光学パターンを投影し、多くのシナプス後パートナから記録しながら、個々の細胞を順次刺激することができる。コンピュータシステムが、各個々の神経細胞を識別し、その電圧トレースを計算する、完全に自動化された分析を提供する。全ての電圧トレースにおいて、スパイクが、検出され、重要となるスパイク形状およびタイミングパラメータが、算出される。各細胞は、多くのAPを発火するため、豊富な情報が、細胞タイプ、細胞状態、疾患表現型、および薬理学的応答を区別するために抽出されることができる。加えて、無電極記録は、細胞を殆ど摂動させず、化合物添加の前および後の同一の神経細胞の記録を可能にし、これは、異なる神経細胞サブタイプに対する化合物効果の識別を可能にし、非常に不均一な神経細胞応答の生物学的「雑音」を克服する。細胞の自律的な興奮性および発火パターンに加えて、シナプス伝達、長期の増強/抑制、およびネットワークおよび回路挙動を研究することが、可能である。
【0109】
図17は、本開示の96-ウェル顕微鏡のステージのコンピュータ支援設計(CAD)図面の一部である。
【0110】
図18は、低背景電圧撮像のためのプリズムを介して細胞サンプルに赤色レーザ光を結合するための光路、およびデジタルマイクロミラーデバイスを介した焦点刺激のための青色光経路を示す。
【0111】
堅牢な高処理能力動作のために、Fireflyシステムは、ソフトウェアツール、例えば、青色光刺激を印加し、高速ビデオデータを記録し、ウェルの間で移動し、自動化化合物添加のためのピペット操作ロボットを動作させるための自動化および制御ソフトウェアを含んでもよい。ツールは、各マルチギガバイトビデオにおける各神経細胞から電圧対時間トレースを抽出するための分析ソフトウェアを含んでもよい。低減されたデータ(電圧トレース、識別された活動電位、および抽出された特性)および細胞タイプ、化合物、および化合物濃度等の関連付けられるメタデータは、リレーショナルデータベース内に記憶されてもよい。
【0112】
本開示の実施形態は、齧歯類またはヒト誘導多能性幹細胞(hiPSC)由来神経細胞における神経細胞興奮性に対する表現型スクリーニングおよび豊富な多次元アッセイ読出を使用するための分析ワークフローができる状態である器具を提供する。方法は、薬理学的測定およびスクリーニングのために必要な高い再現性および安定性を提供する。顕微鏡は、多くの細胞タイプにおける測定および複数の疾患表現型の検出のために有用である。神経細胞興奮性測定に加えて、顕微鏡は、シナプス伝達に関するアッセイのために有用である。シナプス測定は、堅牢であり、マルチウェルプレートにおける実装ができる状態である。それらは、提案される384-ウェル器具に関する別の強力なアッセイモダリティを表す。
【0113】
(実施例2)
実施例2:データ分析パイプライン
図19は、hiPSCのオーバーレイ(着色領域)を伴うFirefly画像を示す。hiPSC由来の運動神経細胞のオーバーレイ(着色領域)を伴うFirefly画像が、自動化分析によって識別される。
【0114】
図20は、自動化分析によって識別された派生した運動神経細胞からの例示的電圧記録を示す。選択された細胞からの例示的電圧記録および発火を誘起するために使用された青色刺激、すなわち、ステップ、パルス列、およびランプが、示される。時間選択された細胞、および発火を誘起するために使用された青色刺激、すなわち、ステップ、パルス列、およびランプである。
【0115】
図21は、各点が識別された活動電位であり、各行が単一のFOVからの神経細胞である、ラスタプロットである。静止電位を低下させ、発火を抑制する、カリウムチャネルオープナである、1μMにおけるML213の添加前(緑色)および後(橙色)である。
【0116】
図22は、細胞にわたって平均化されたスパイク率を示す。
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
スパイク形状、スパイクタイミング性質、および適合は、細胞毎に自動的に抽出され得る。興奮性は、細胞毎に自動的に抽出される。
【0121】
図26は、
図22の階段波形から抽出された興奮性を示し、全ての刺激強さにおける発火の抑制を示す。
【0122】
分析概要:
図19-26は、hiPSC由来運動神経細胞における固有の興奮性および薬理学的応答の測定に関する自動化分析ワークフローを示す。神経細胞は、広範囲のスパイキング挙動を精査するように設計された刺激プロトコル(青色)を用いて反応測定される。1つの神経細胞からの蛍光を捕捉する全てのピクセルは、その細胞の一意の発火パターンに続いて時間において共変動する(
図20)。時間共分散が、細胞毎に加重マスクを生成するために使用され(
図19の着色領域)、マスクされたピクセルが、電圧トレースを計算するために、動画におけるフレーム毎に平均化される。各FOVは、カリウムチャネルオープナML213の添加の前および後に2回記録された。
図20の例示的トレースは、神経細胞挙動における根底にある変動性を実証し、多くの神経細胞からの記録は、化合物効果を捕捉するために平均化されなければならない。蛍光-時間トレースから、データセットにおける各活動電位が、識別され(
図21)、発火率(
図22)、スパイク形状パラメータ(
図23)、および相対的タイミング(
図24および
図25)が、刺激の関数として測定される。
【0123】
図26は、ML213によって引き起こされた神経細胞興奮性における明白な低減を示す。全てのパラメータは、データベース内に記憶される、クラウド内の並列化された分析によって自動的に抽出され、図は、自動的に生成される。未加工ビデオデータから数および複雑性において大幅に低減された、刺激依存性抽出値は、細胞タイプ、細胞状態、疾患表現型、および薬理学的応答を区別するためのより詳細な分析のための基盤としての役割を果たす。約300個のパラメータが、細胞毎に抽出され得る。
【0124】
(実施例3)
実施例3:次元性
化合物スクリーニングでは、多次元データが、進めるべき化合物をランク付けし、選択するために使用され得る、いくつかのパラメータに低減され得る。疾患モデル化では、例えば、患者および健常対照群からのhiPSC由来神経細胞を使用し、健常細胞のように挙動するように疾患細胞を誘発する化合物をスクリーニングする。次元削減は、
図27-
図29に説明される。
【0125】
図27は、疾患表現型および化合物効果の可視化を可能にする、レーダプロットを示す。本表現型は、記録の300次元パラメータ空間内のベクトルによってより完全に説明される。
【0126】
図28は、表現型ベクトル(
図5B)に沿って、かつそれに直交する軸上に投影された化合物効果を示し、表現型の逆転および不要な「副作用」に関するメトリックをもたらす。
【0127】
図29は、そのような表現型の文脈における2つの化合物からの結果を示す。これらの2つの値は、殆どの標的ベースのスクリーンからの単純なID効果量よりも化合物をランク付けするときにはるかに多くの情報を提供する。
【0128】
図27-
図29は、培養30日目のiPSC由来興奮性皮質神経細胞(NGN2)を用いた多次元分析を示す。
【0129】
図27は、野生型(WT)神経細胞に関する値に正規化されたパラメータの選択されたサブセットを示す、レーダプロットである。データは、WT神経細胞、信頼性のあるLOF突然変異(ノックアウト/KO)を伴う疾患モデル神経細胞、および乱雑なカリウムチャネルブロッカ4-APおよび乱雑なナトリウムチャネルブロッカラモトリギンの存在下のKO神経細胞の挙動を示す。WTおよびKOトレースの間の差異は、機能的表現型である。4-APは、表現型を実質的に逆転させ、ラモトリギンは、挙動を摂動させたが、表現型を逆転させなかった。
【0130】
図28は、表現型の逆転および「副作用」を図示する、略図である。記録されたパラメータの300次元空間では、そのうちの2つのみが、示され、WTウェルが、クラスタ化され、KOウェルが、クラスタ化される。これらの集団の間のベクトルは、表現型(赤色)を表す。薬物効果(青色)は、表現型ベクトルに沿った成分(表現型の逆転)およびそれに直交する成分(副作用)に分解される。理想的な薬物は、突然変異の効果を元に戻し、ウェルをKO群からWT群に移動させるであろう。
【0131】
図29は、表現型/副作用空間上に投影された多くのウェルを示す、プロットである。WTおよびKOウェルは、表現型方向に沿って分離されたウェルである。
図27からの2つの化合物(0.28~600μMの8つの濃度)の適用は、濃度が増加するにつれて、KO細胞挙動に対して増加する効果を有する。4-APは、細胞挙動をWT挙動に向かって、かつそれを超えて移動させる一方、ラモトリギンは、WTおよびKOの両方から離れるように挙動を移動させる。接続された薬物点は、増加する濃度の順であり、2つの線は、2週間の連続する実験に対する実験再現である。
【0132】
(実施例4)
実施例4:適用
本開示の器具および方法は、様々な標的を伴う化合物からの効果を実証するために有用である(
図30および
図31)。電圧開口型カリウムチャネルKv7.xブロッカであるXE-991およびKv7.xオープナであるML-213が、予期されるように、反対方向における挙動を駆動することに留意されたい。濃度応答曲線が、Optopatchプラットフォームを用いて容易に測定される(
図31)。全ての化合物は、2つの独立したプレート上で大きい効果量および良好な再現性を示す。各記号は、1つのウェル内の>100個の細胞を表す。示される全てのデータは、単一日に測定された。
【0133】
本システムはまた、高処理能力薬物スクリーニングのための準備を整えている。システム均一性および再現性を試験するために、ML-213が、96-ウェルプレート内の交互する列に添加される(
図32-
図37)。ランプの間のスパイク率の変化は、各ウェルにおいて容易に可視であり、プレートを横断して均一である(
図34-35)。ランプの間のスパイクの数である1つのパラメータを使用して、0.31のZ’は、73,000個のウェルのうちの1つにおいて失敗した決定を示し、神経細胞における表現型スクリーンに関する数万個の化合物をスクリーニングするために十分である。ウェルが、室温において連続的に読み出されたため、時間におけるわずかなドリフトが、存在した(
図36)。自動化制御ソフトウェアにおける最近の改良は、FOVあたりの走査時間を30秒から10秒に低減させており、これは、走査時間アーチファクトを低減させるであろう。さらに、顕微鏡は、5倍増加された撮像面積を有し、ウェルあたりのFOVの数を1に低減させ、スクリーニング速度をさらに増加させるであろう。
【0134】
図30および31は、例えば、14日培養されたE18ラット海馬神経細胞を用いた薬理学を示す。
【0135】
図30は、右側に表作成される、多くの次元に沿った神経細胞スパイキング挙動の薬物誘発変化を示す、レーダプロットである。パラメータ毎に、媒質は、1に正規化され(緑色)、薬物効果は、橙色である。
【0136】
図31は、濃度応答を示し、2つの独立した滴定が、プロットされる(正方形および円)。
【0137】
図32-
図37は、14日にわたって培養されたE18ラット海馬神経細胞を伴うスクリーニングに関する高処理能力検証を示す。
【0138】
図32は、媒質対照群ウェルにおける、または細胞を過分極させ、発火を低減させるKv7.xアゴニストである1μM ML-213を伴うウェルにおける、96-ウェルFirefly上での神経細胞の高SNR蛍光電圧記録を示す。青色光刺激は、下方に示される。
【0139】
図33は、ウェルの列からのスパイクを示す、ラスタプロットである。ML213は、試験された全てのウェルにおいて発火率を劇的に低減させる。
【0140】
図34は、ウェル毎のランプの間の平均発火率を示す。媒質ウェル(緑色)およびML213ウェル(赤色)は、容易に区別される。
【0141】
図35は、ウェル毎のランプの間のスパイクの数を示す、ヒートマップである。
【0142】
図36は、
図35のウェル毎のプロトコルのランプ部分に関する細胞あたりのスパイクの平均数を示す。0.31の計算されたZ’は、表現型スクリーンを実行するために十分すぎるほど良好である。
【0143】
図37は、ラットの後根神経節(DRG)感覚神経細胞を示す。関節炎患者の関節において見出された炎症性媒介物のカクテルを用いて治療されると、神経細胞は、さらに多くの活動電位を発火する。大きい表現型は、堅牢なスクリーニングを支援することができる。炎症性媒介物カクテルは、第WO 2018/165577号(参照することによって組み込まれる)に説明されるような組成物であってもよい。
【0144】
(実施例5)
実施例5:表現型決定
図38-
図45は、開示されない突然変異を伴う一遺伝子性癲癇データを含む、Optopatchプラットフォームを用いて検出される疾患関連付け表現型を示す。
【0145】
図38は、CRISPR/Cas9である、WT細胞が、遺伝子をノックアウトするために使用され、複数の同質遺伝子クローンが、増殖され、神経細胞に変換されたことを示す。
【0146】
図39は、複数のラウンドおよびKO細胞株を通して、スパイク形状の一貫した変化が存在したことを示す。臨床的に効果的な化合物を用いた治療は、挙動をWTに向かって戻るように移動させる。
【0147】
図40は、ヘテロ接合性患者細胞株および健常家族性対照群において観察される、類似するがあまり深刻ではない表現型を与える。
【0148】
図41は、神経細胞形態、活動電位形状、およびスパイク列挙動の変化を露見させる、多次元レーダプロットである。臨床的化合物を用いた治療は、全てのメトリックに関してKOをWTに向かって移動させる。
【0149】
図42は、次元削減が全ての3つの細胞株を横断して一貫する堅牢な表現型をもたらすことを示す。薬物治療は、表現型を回復させる。
【0150】
図43は、CRISPR/Cas9がイオンチャネルにおける機能獲得型突然変異を導入するために使用されることを示す。突然変異は、疾患モデル神経細胞とそれらの同質遺伝子的対照群との間で活動電位形状および発火挙動を変化させる。
【0151】
多様な薬理学的機構を試験することに加えて、プラットフォームは、異なる疾患モデルに関する多くの神経細胞タイプに適用されることができる。顕微鏡は、齧歯類CNS神経細胞(例えば、
図32)、齧歯類DRG感覚神経細胞(
図37)、およびNGN2皮質興奮性(
図38-
図42)、抑制性、運動、間隔、およびドーパミン作動性神経細胞を含む、多くのタイプのヒトiPSC由来神経細胞から記録するために使用されてもよい。顕微鏡は、Optopatchを使用して、いくつかのヒトiPSCベースおよび齧歯類神経細胞疾患モデルにおける機能的表現型を検出するために使用されてもよい。
【0152】
図38-
図43に示される実施例は、異なる神経疾患モデルを含む。本開示は、CRISPR/Cas9方法および患者由来神経細胞を伴う遺伝子ノックアウトまたはノックインを使用する同質遺伝子的背景における疾患モデルを含む。統計的有意性のための複数の疾患および対照株および本発明者らの高感度電気生理学手段を使用して、方法が、疾患状態と関連付けられる表現型を識別するために使用されてもよい。
【0153】
固有の興奮性測定に加えて、OptopatchプラットフォームおよびFirefly器具は、シナプス機能に対する明晰な測定値を生成することができる。方法は、カルシウム撮像またはマイクロ電極アレイを用いて取得されることができない情報である、個々の細胞における興奮性および抑制性シナプス後電位(EPSPおよびIPSP)を測定するために使用されてもよい。本発明者らの興奮性測定ほど成熟していないが、新しい分析ツールおよびアッセイが、興奮性測定のものに匹敵する処理能力を用いて、96-および384-ウェルプレートにおいて堅牢に実装されることができる。
【0154】
(実施例6)
実施例6:アッセイ
図44-
図49は、高処理能力の全視野刺激アッセイを用いた最近の結果を示す。シナプス機能の高処理能力スクリーニングが、神経細胞の明確に異なる集団を用いて実装され、CreリコンビナーゼおよびloxPが導入された構成物を使用して、シナプス前神経細胞は、アクチュエータCheRiffを発現し、シナプス後神経細胞は、電圧センサQuasArを発現する。全ての細胞は、CreOFF-CheRiff(Creは、CheRiffを切除し、発現をオフにする)およびCreON-QuasAr(Creは、QuasArを順方向配向に反転させ、発現をオンにする)を発現する。Creは、低力価で添加され、神経細胞のサブセットに形質導入し、QuasArまたはCheRiffのいずれかを発現する神経細胞の互いに素な集団を作成する。青色光の短時間のパルスは、シナプス前細胞において活動電位を誘発し、PSPが、シナプス後細胞において検出される。適切なシナプス後チャネルブロッカを使用して、本発明者らは、AMPAチャネル(
図47および48、上側)およびNMDAチャネルからもたらされる興奮性脱分極電圧変化およびGABAAチャネル(
図47および50、下側)からの抑制性過分極電圧変化を分離することができる。
【0155】
図49は、測定された多数の個々の細胞を強調し、陽性および陰性の両方のチャネルモジュレータの明白な効果を示す。付加的洞察が、細胞タイプが蛍光標識を用いて識別される場合に取得されることができる。興奮性および抑制性細胞は、抑制性プロモータによって駆動されるGFPを含有するレンチウイルス構成物を細胞に形質導入することによって区別されることができ、興奮性および抑制性サブタイプが、マウスCre株を使用して識別されることができる。開発中のシナプスアッセイは、DMDを用いて単一のシナプス前細胞を刺激することによって、個々のシナプスを解明する。
【0156】
図44-
図49は、例えば、14日にわたって培養されたE18ラット海馬神経細胞を用いた高処理能力シナプスアッセイを示す。
【0157】
図44は、CheRiffが神経細胞のサブセット(シナプス前神経細胞4601)(典型的には、10~50%)において発現され、QuasArが残りの部分(典型的には、50~90%)(シナプス後神経細胞4602)において発現されることを示す。
【0158】
図45は、自動化画像セグメント化のために使用される、シトリンと融合されるQuasAr(緑色)、EBFP2と融合されるCheRiff(青色)、および核内輸送されたTagRFP(赤色)を示す、Firefly上の蛍光画像である。
【0159】
図46は、シナプス後電位(PSP)を示す、単一細胞蛍光トレースを示す。本発明者らは、AMPA、NMDA、およびGABAを薬理学的に分離することによって、シナプス信号を独立して精査する。
【0160】
図47は、AMPARおよびGABAARアッセイに関する対照アゴニストおよびブロッカに応答する単一細胞PSPの変調を示す。CheRiff刺激が、下側に示される。
【0161】
図48は、対照薬理学に関する平均PSPトレース、すなわち、黒色:薬物前、青緑色:競合するブロッカ[AMPAR:100μM NBQX/CNQX、389個の細胞。GABAAR:20μM ガバジン、176個の細胞]、緑色:陰性アロステリックモジュレータ(NAM)[100μM GYKI 53655、291個の細胞。GABAAR:30μM ピクロトキシン、176個の細胞]、紫色:媒質対照群[AMPAR:167個の細胞。GABAAR:236個の細胞]、および青色、赤色、および黄色:陽性アロステリックモジュレータ(PAM)[AMPAR:0.1~1μM シクロチアジド、512個の細胞。GABAAR:0.1~1μM ジアゼパム、244個の細胞]を示す。
【0162】
図49は、平均薬物前応答に正規化されるPSP面積の薬物誘発変化を示す、ドット密度プロット(各ドットは、1つのシナプス後神経細胞である)を与える。黒色のウィスカは、平均±SEMである。
【0163】
実践的な費用および速度を伴う堅牢なOptopatchアッセイを確立し、大規模な表現型スクリーンを用いてそれらのアッセイを完全に検証するための方法が、提供される。本開示の顕微鏡は、384-ウェルプレートを用いて有用である。本開示の光学系、自動化、およびsCMOSカメラを使用して、本発明者らはまた、本発明者らの読取速度を4倍増加させ、プレート走査時間をほぼ一定に保持し、処理能力を4倍にするであろう。より大きい撮像面積は、ウェル内の全ての神経細胞を捕捉し、これらの有益な試薬を極めて効率的に利用するであろう。本開示の方法は、表現型スクリーンを提供する。
【0164】
本開示は、384-ウェル光遺伝学的顕微鏡を提供する。96-ウェルプレートから384-ウェルプレートに変換することは、費用における4倍の低減を提供する。方法は、1kHzフレームレートにおいて4mm幅×0.5mm高さのFOVを記録するために使用されてもよく、高さを増加させることは、Hamamatsu ORCA-Flash科学CMOS(sCMOS)カメラに関してフレームレートを低下させる。384-ウェルプレート上で3.3mm幅のウェルに遷移することは、FOVの82%が使用されることを可能にし、1分あたりに記録される細胞の数を適度に低減させる。HamamatsuによるsCMOSカメラは、チップアーキテクチャおよびデータ転送技術を使用し、有意により速い読取速度を達成する。撮像光学系の変更およびより強力な励起レーザへのアップグレードと組み合わせられると、本開示の器具は、記録面積における5倍の増加である、500Hzよりも速いフレームレートにおいて384-ウェルプレートの完全な3.3×3.3mm面積を撮像することが可能であり得る。それらは、Optopatchを使用して単一の動画において384-ウェルプレートの各ウェル内の全ての活性神経細胞を撮像することが可能であり(ウェル外周の周囲の細胞の潜在的例外を伴う)、単一細胞電気生理学記録に関する先例のない処理能力であり得る。
【0165】
(実施例7)
実施例7:器具特徴
顕微鏡は、同時に記録され得る神経細胞の数を最大限にするために、2.7倍から2倍の倍率の管レンズに切り替えられてもよい。2倍の倍率は、500Hzにおいてウェルの完全な3.3mm高さを捕捉するために十分である。低減された倍率にもかかわらず、新しい顕微鏡は、より良好な分解能を有するであろう。低減されたピクセルサイズと組み合わせられると、分解能は、4.8μmから2.8μmに改良されるであろう。Vialux V-9601 DMDは、個々のシナプス接続を測定するための高速単一細胞刺激またはスパイクタイミング依存可塑性を精査するための接続された神経細胞上のわずかに遅延されたパルスのための完全に同期された100μ秒パターンリフレッシュを提供する。サンプルに赤色レーザを結合するためのカスタムプリズムは、より小さいウェルサイズに合致するように設計されてもよい。完全に環状オレフィンコポリマー(COC)から作製される、カスタム384-ウェルプレートが、使用されてもよい。COCは、超低レーザ吸収および自己蛍光を伴うUV分光光度的用途のために設計されたプラスチックである。従来的なポリスチレン培養基材のように酸素プラズマを用いて組織培養(TC)処理され得、健常および活性神経細胞培養を支援する、COCは、本質的に、背景蛍光を排除し、基材のレーザ加熱を最小限にする。データが、COC 96-ウェルプレート上で記録された。制御ソフトウェアが、新しいハードウェア(カメラおよびDMD)を取り扱い、384-ウェルプレートを走査するときの不感時間を最小限にするために含まれてもよい。新しいDMDは、カメラフレームに同期されるデジタルトリガを用いて更新され得る、表示パターンを有する。新しいソフトウェアはまた、他の顕微鏡タスクの実行の間のピペット操作ロボットの制御に関するマルチスレッディング(先端を積込し、薬物を装填し、プレートに移動させること)を可能にし、したがって、顕微鏡は、殆ど連続的に高速ビデオを記録することができる。容易なマルチスレッディングを可能にするために、制御ソフトウェアは、C#または類似物において設計されてもよい。
【0166】
(実施例8)
実施例8:高処理能力スクリーニング
プレートの生産は、疾患関連付け表現型を識別し、HTSを最適化するために使用されるアッセイのために自動化されてもよい。ヒートマップ分析が、プレート内およびプレート間変動性を特性評価するために使用され、細胞プレーティングおよび取扱、刺激プロトコル、およびアッセイ持続時間の変化が、説明されるようなZ’値>0.3を維持しながら、プレート内およびプレート間変動性<20%を達成するために試験されるであろう。DMSO公差が、バッファ対照値と比較して、アッセイ窓の大きさにおける<10%の変化を生産するDMSOレベルを識別するために、濃度応答実験を使用して定義されるであろう。アッセイ準備の確認に続いて、5つのスクリーニングプレートの小セットが、最終スクリーニング濃度の選択を誘導するために、ライブラリからランダムに選択される。これらの化合物のプレートは、1、3、7、および10マイクロMにおいて二重にスクリーニングされるであろう。本発明者らは、約1%のヒット化合物率をもたらす化合物濃度を選択し、ヒット化合物は、対照値から3標準偏差(SD)を上回る変化として定義されるであろう。本濃度を使用して、本発明者らは、ある程度の偽陽性を伴う多数の真のヒット化合物を捕捉することを目標とする。
【0167】
FDA承認薬物ライブラリおよびツール化合物のパイロットスクリーンは、世界中で承認された約2,400個の薬物のライブラリを使用し得る。そのライブラリは、選択されたスクリーニング濃度における利用可能なツール化合物のスクリーニングおよび選択されたセットである。本ステップは、HTSのためのアッセイ準備の最終試験としての役割を果たし、本ライブラリが、活性化合物を含有する可能性が高いため、ヒット化合物選択基準を確立するためのデータセットを提供するであろう。化合物ライブラリは、100%DMSOにおけるバーコード付き384-ウェルプレートにおいて調製されるであろう。
【0168】
方法は、HTSのための試薬の生産およびバンキングを含む。均一な細胞調製を確実にするために、3億個のiPSC由来NGN2神経細胞、1億個の一次齧歯類膠細胞、およびOptopatch構成物をエンコードするレンチウイルスの大きいバッチを生成、等分、および凍結し得、それぞれ、スクリーンを1.5回実行するために十分である。自動化細胞培養プロセスが、効率および均一性を改良するために、HTS活動全体を通して適用されるであろう。
【0169】
方法は、HTSスクリーンおよびヒット化合物確認を含んでもよい。化合物は、選択されたスクリーニング濃度において384-ウェル形式(n=1)においてスクリーニングされ、各プレート内の32個のウェルが、対照群のために留保されるであろう。プレート毎の走査時間は、アッセイプロトコルに依存し、約90分であると予想され、これは、週3日のスクリーニングにおいて1つのFirefly器具上で週>5,000個の化合物のスクリーニングを可能にするであろう。過剰な変動性(Z’<0.3)、少数の活性細胞、または不均一なプレーティングを伴うプレートは、繰り返しのためにフラグ付けされるであろう。ヒット化合物選択および確認が、HTSに続けて実施されるであろう。
【0170】
図50は、高処理能力スクリーニングのための方法を示す。
【0171】
ヒット化合物は、最初に、マルチパラメータ表現型スコアおよび副作用スコアの逆転に基づいて選択されるであろう。ヒット化合物選択基準は、統計的基準に基づき、ヒット化合物は、プレート内対照値からの>3のSD変化を呈する化合物として定義されるであろう。
【0172】
最大200個の選択されたヒット化合物の活性が、最初に、1倍および0.3倍のスクリーニング濃度において二重に確認され、2つの濃度は、非単調濃度応答を伴う化合物を識別することに役立つ。確認されたヒット化合物は、表現型の逆転および副作用を定量的に特性評価するために、11点濃度応答において試験されるであろう。結果は、プラットフォーム性能を確認し、助成金または製薬パートナとの共同研究を通してヒット化合物からリード化合物への活動の元となることであろう。本開示の器具および方法は、高速かつ手頃な表現型識別および表現型薬物スクリーニングを提供する。
【国際調査報告】