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  • 特表-水溶液からの混合金属イオンの回収 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-16
(54)【発明の名称】水溶液からの混合金属イオンの回収
(51)【国際特許分類】
   C22B 3/26 20060101AFI20240109BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20240109BHJP
   C22B 47/00 20060101ALI20240109BHJP
   C22B 26/12 20060101ALI20240109BHJP
   C22B 3/38 20060101ALI20240109BHJP
   C22B 3/06 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
C22B3/26
C22B23/00 102
C22B47/00
C22B26/12
C22B3/38
C22B3/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540041
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 US2021065738
(87)【国際公開番号】W WO2022147291
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/133,061
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517318182
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ショルガ, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ベドナルスキー, トロイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブリェヴィッチ, ボバン
(72)【発明者】
【氏名】モヤ, ルイス
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA02
4K001AA07
4K001AA09
4K001AA10
4K001AA16
4K001AA19
4K001AA34
4K001AA36
4K001BA22
4K001DB02
4K001DB30
4K001DB31
(57)【要約】
本明細書に記載の選択的逆抽出技術を使用して有価金属イオンを分離することにより、リサイクルされた電子機器及び/又は電池に由来し、且つ混合金属イオンを含有する溶液からマンガン、コバルト、ニッケル及び/又はリチウムのいずれかなどの有価金属イオン種を回収する湿式精錬溶媒抽出プロセスが提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式精錬溶媒抽出プロセスであって、
混合金属イオンを含む水性酸性供給流を、第1の標的金属イオン種との結合に選択的な第1の金属抽出試薬を含む有機溶媒と混合して、前記第1の標的金属イオン種を前記有機溶媒中に抽出し、且つ前記第1の標的金属イオン種と、1種以上の非標的金属イオン種とを含む担持有機溶媒を得ることと、
前記担持有機溶媒を選択的に逆抽出することであって、
前記担持有機溶媒を第2のpHで第2の酸性逆抽出水溶液と混合して、前記第1の標的金属イオン種を前記担持有機溶媒から前記第2の酸性逆抽出水溶液に移動させること、及び
(i)前記担持有機溶媒を前記第2の酸性逆抽出水溶液と混合する前に、前記担持有機溶媒を、前記第2のpHを上回る第1のpHで第1の酸性逆抽出水溶液と混合して、前記1種以上の非標的金属イオン種の第1の非標的金属イオン種を前記第1の酸性逆抽出水溶液に移動させること、若しくは
(ii)前記担持有機溶媒を前記第2の酸性逆抽出水溶液と混合した後、前記担持有機溶媒を、前記第2のpHを下回る第3のpHで第3の酸性逆抽出水溶液と混合して、前記1種以上の非標的金属イオン種の第2の非標的金属イオン種を前記第3の酸性逆抽出水溶液に移動させること、又は
(i)及び(ii)の両方
を含む、逆抽出することと、
前記第2の酸性逆抽出水溶液から前記第1の標的金属イオン種を回収することと
を含む湿式精錬溶媒抽出プロセス。
【請求項2】
(a)前記担持有機溶媒を前記第1のpHで前記第1の逆抽出酸性水溶液と混合することは、前記第1の標的金属イオン種若しくは前記第2の非標的金属イオン種の少なくとも一方と比較して前記第1の非標的金属イオン種を選択的に除去するか、若しくは
(b)前記担持有機溶媒を前記第3のpHで前記第3の酸性水溶液と混合することは、前記第1の標的金属イオン種若しくは前記第1の非標的金属イオン種の少なくとも一方と比較して前記第2の非標的金属イオン種を選択的に除去するか、又は
(a)及び(b)の両方である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
(a)前記第2のpHは、前記第1のpHよりも少なくとも0.5低いか、若しくは
(b)前記第2のpHは、前記第3のpHよりも少なくとも0.5高いか、又は
(a)及び(b)の両方である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記第2のpHは、0~2であり、及び
(a)前記第1のpHは、2~5であるか、若しくは
(b)前記第3のpHは、-0.8~1であるか、又は
(a)及び(b)の両方である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記第2のpHは、2~5であり、及び
(a)前記第1のpHは、5~6であるか、若しくは
(b)前記第3のpHは、-0.5~3であるか、又は
(a)及び(b)の両方である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第2のpHは、1.5~5であり、及び
(a)前記第1のpHは、5.5~7であるか、若しくは
(b)前記第3のpHは、1~4であるか、又は
(a)及び(b)の両方である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記第2のpHは、1.5~7であり、及び
(a)前記第1のpHは、10~12であるか、若しくは
(b)前記第3のpHは、1~6であるか、又は
(a)及び(b)の両方である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記水性酸性供給流は、リサイクルされた電子機器又はリサイクルされた電池材料の少なくとも1つに由来し、
前記水性酸性供給流は、マンガン、コバルト、ニッケル又はリチウム金属イオンの1つ以上を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第1の標的金属イオン種は、マンガンを含み、及び
(a)前記第1の非標的金属イオン種は、銅を含むか、若しくは
(b)前記第2の非標的金属イオン種は、鉄若しくはアルミニウムの少なくとも1つを含むか、又は
(a)及び(b)の両方である、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第1の標的金属イオン種は、コバルトを含み、及び
(a)前記第1の非標的金属イオン種は、ニッケル、リチウム、カルシウム、ナトリウム若しくはアンモニウムの少なくとも1つを含むか、若しくは
(b)前記第2の非標的金属イオン種は、マンガン若しくは銅の少なくとも1つを含むか、又は
(a)及び(b)の両方である、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第1の標的金属イオン種は、ニッケルを含み、及び
(a)前記第1の非標的金属イオン種は、コバルトを含むか、若しくは
(b)前記第2の非標的金属イオン種は、銅、アルミニウム若しくは鉄の少なくとも1つを含むか、又は
(a)及び(b)の両方である、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第1の標的金属イオン種は、リチウムを含み、及び
(a)前記第1の非標的金属イオン種は、ナトリウム若しくはアンモニウムの少なくとも1つを含むか、若しくは
(b)前記第2の非標的金属イオン種は、ニッケル若しくはカルシウムの少なくとも1つを含むか、又は
(a)及び(b)の両方である、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記第1の金属抽出試薬の担持容量は、70%未満である、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記第1の標的金属イオン種を回収することは、前記第2の酸性逆抽出水溶液から硫酸塩水和物生成物を結晶化することを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記第1の金属抽出試薬は、有機リン化合物を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記有機リン化合物は、ジ-(2-エチルヘキシル)リン酸を含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記水性酸性供給流を、前記第1の金属抽出試薬を含む前記有機溶媒と混合した後、前記水性酸性供給流を、第2の標的金属イオン種との結合に選択的な第2の金属抽出試薬を含む第2の有機溶媒と混合して、前記第2の標的金属イオン種を前記第2の有機溶媒中に抽出すること
を含み、前記第2の有機溶媒との混合は、前記有機溶媒との混合よりも高いpHで行われる、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
ブラックマス固体の一次浸出を行うことであって、金属イオン不純物は、前記ブラックマス固体から一次浸出液中に選択的に浸出される、行うことと、
前記ブラックマス固体と前記一次浸出液との第1の固液分離を行うことと、
前記ブラックマス固体の二次浸出を行うことであって、有価金属イオンは、前記ブラックマス固体から二次浸出液中に選択的に浸出される、行うことと、
前記ブラックマス固体と前記二次浸出液との第2の固液分離を行って、前記有価金属イオンが濃縮された前記二次浸出液を分離することと
により、混合金属イオンを含む前記水性酸性供給流を得ることを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
鉄、銅又はアルミニウムの少なくとも1つを含む金属イオン不純物を前記水性酸性供給流から、
前記水性酸性供給流から前記金属イオン不純物を金属水酸化物として析出させ、且つ前記析出された金属水酸化物を濾過によって前記水性酸性供給流から分離すること、又は
前記水性酸性供給流を、前記金属イオン不純物との結合に選択的な金属抽出試薬を含む第2の有機溶媒と混合して、前記金属イオン不純物を前記第2の有機溶媒中に移動させること
の少なくとも1つによって除去することを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記担持有機溶媒を選択的に逆抽出する前に、前記担持有機溶媒を、硫酸又は前記第1の標的金属イオン種の硫酸塩の少なくとも1つを含むスクラビング溶液と混合することと、
前記スクラビング溶液と混合された前記担持有機溶媒から1種以上の金属イオン不純物を除去することと
を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記担持有機溶媒からの前記第1の標的金属イオン種及び前記1種以上の非標的金属イオン種の抽出後、さらなる溶媒抽出のために前記担持有機溶媒を提供することを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
リサイクルされた電子機器又はリサイクルされた電池材料の少なくとも1つから標的金属イオン種を抽出するプロセスであって、
マンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン及びリチウムイオンを含む浸出液を得ることであって、前記浸出液は、酸又は還元剤の少なくとも1つで溶解されたリサイクルされた電子機器又は電池材料の前記少なくとも1つに由来する、得ることと、
第1の有機溶液を使用し、且つ第1のpHで行われる第1の多段階湿式精錬溶媒抽出プロセスにおいて、前記浸出液から前記マンガンイオンを分離することと、
前記浸出液から前記マンガンイオンを分離した後、第2の有機溶液を使用し、且つ前記第1のpHよりも高い第2のpHで行われる第2の多段階湿式精錬溶媒抽出プロセスにおいて、前記浸出液から前記コバルトイオンを分離することと、
前記浸出液から前記コバルトイオンを分離した後、第3の有機溶液を使用し、且つ前記第2のpHよりも高い第3のpHで行われる第3の多段階湿式精錬溶媒抽出プロセスにおいて、前記浸出液から前記ニッケルイオンを分離することと、
前記浸出液から前記ニッケルイオンを分離した後、第4の有機溶液を使用し、且つ前記第3のpHよりも高い第4のpHで行われる第4の多段階湿式精錬溶媒抽出プロセスにおいて、前記浸出液から前記リチウムイオンを分離することと
を含むプロセス。
【請求項23】
前記第1のpHは、2~4であり、前記第2のpHは、4~6であり、前記第3のpHは、5~7であり、及び前記第4のpHは、9~12である、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
(a)前記第1の有機溶液は、ジ-(2-エチルヘキシル)リン酸を含むか、若しくは
(b)前記第2の有機溶液は、ビス(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィン酸を含むか、若しくは
(c)前記第3の有機溶液は、カルボン酸化合物を含むか、若しくは
(d)前記第4の有機溶液は、ホスフィンオキシド及びプロトン供与剤を含むか、又は
(a)、(b)、(c)若しくは(d)の組み合わせである、請求項22又は23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記プロトン供与剤は、ケトンである、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
ケトンは、ベータ-ジケトンである、請求項15に記載のプロセス。
【請求項27】
前記マンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン及びリチウムイオンの分離は、70%未満の金属抽出試薬の金属担持容量で行われる、請求項22~26のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項28】
前記マンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン又はリチウムイオンの少なくとも1つを結晶化によって金属塩の形態に変換することを含む、請求項22~27のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項29】
それぞれの金属イオン分離プロセスに続いて、前記第1の有機溶液、前記第2の有機溶液、前記第3の有機溶液又は前記第4の有機溶液の少なくとも1つをスクラビングすることを含み、前記スクラビングは、前記それぞれの有機溶液を、硫酸又は金属硫酸塩の少なくとも1つを含むスクラビング溶液と混合することを含む、請求項22~28のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項30】
前記金属硫酸塩は、蒸発晶析ブリード流又は逆抽出プロセスからのブリード流に由来する、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
1種以上の塩基を前記浸出液中に流すことにより、前記浸出液のpHレベルを前記第1のpHから前記第2のpH、前記第3のpH及び前記第4のpHに制御することを含む、請求項22~30のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項32】
前記リチウムイオンの分離後、前記浸出液に対して蒸発晶析を行って、硫酸ナトリウム塩、硫酸アンモニウム塩又は硫酸カルシウム塩の少なくとも1つを生じさせることにより、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン又はカルシウムイオンの少なくとも1つを前記浸出液から回収することを含む、請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
前記蒸発晶析の生成物として水を得ることと、
追加のブラックマスのその後の浸出液を生成するためのベースとして前記水を提供することと
を含む、請求項32に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、水溶液から有価金属イオンを抽出する湿式精錬溶媒抽出プロセスに関する。より具体的には、本開示は、リサイクルされた電子機器及び電池のプロセス流から有価金属イオンを回収するそのようなプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
多様な電子機器及び電気自動車に電力を供給するためのリチウムイオン(「Liイオン」)電池の使用の増加に伴い、そのようなリサイクル材料から有価金属を効率的に回収する試みにおいて、いくつかのプロセスが開発及び/又は商業化されている。
【0003】
乾式精錬プロセスは、様々なLiイオン電池タイプに適用することができ、前処理をほとんど又は全く行わずにセル/モジュール全体に直接使用することができる。乾式精錬プロセスは、使用済み電池に含まれる金属をコバルト、銅、鉄及びニッケルの合金に還元するために、高温の炉を使用する。他の金属及び/又は不純物は、スラグ相に移動するか又はガスを形成する。金属合金は、個々の金属を分離するために、湿式精錬法を使用してさらに処理することができる。これらのプロセスは、例えば、米国特許第7,169,206号明細書及び同第8,840,702号明細書に記載されている。
【0004】
代わりに、サイズが小さくされた供給流を生成するために、粉砕又は細断による機械的処理を電池に対して行うこともできる。プロセスの安全性を向上させるために、電池を放電させる前処理を使用することができる。機械的処理後の流れは、特定の材料フラクションを回収するために、粒子サイズ、磁性、密度及び疎水性などの特性を利用してさらに精製することができる。カソード材料とアノード材料とを含むフラクションは、当技術分野では一般に「ブラックマス」と呼ばれる。
【0005】
その後、ブラックマス成分の分離及び精製のために湿式精錬処理を適用することができる。カソード材料から目的の金属を溶解又は「浸出」させるために、水溶液を使用することができる。塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸など、広範囲の無機酸が浸出剤として試験されている。カソード材料中のコバルト及びマンガンを還元するために、還元剤を添加することができる。硫酸及び過酸化水素は、それぞれ最も一般的な浸出剤及び還元剤である。
【0006】
マンガン、コバルト、ニッケル及びリチウムなどの金属は、析出又は結晶化によって浸出液から直接回収することができる。これは、米国特許出願公開第2020/078796号明細書に記載されているように、最初に金属を単一成分の流れに分離することなしに達成することができる。
【0007】
純粋な金属化合物を得るために、溶媒抽出又はイオン交換を使用する追加の処理工程を使用することができる。アルミニウム、銅、マンガン、コバルト、ニッケル及び/又はリチウムを別々の流れで分離するための溶媒抽出プロセスの使用は、例えば、米国特許出願公開第2020/0140972号明細書及び国際公開第2020/124130号パンフレットでこれまでに記載されている。しかしながら、そのようなプロセス設計並びに/又は浸出、析出及び/若しくは溶媒抽出ステップの操作パラメータは、特にプロセスが循環経済の一部であり、高い持続可能性指数評価を達成する場合、電池グレード金属塩の厳しい製品純度要件を達成するには不十分である。
【0008】
したがって、リサイクルされたLiイオン電池などの供給原料から有価金属イオンを分離及び回収するために現在利用可能なプロセスは、さらなる改善を必要としており、業界及び/又は消費者は、有用な商業的代替品を求めており、それにより電気自動車の普及を早めることができる。リサイクル原料から電池グレードの金属塩を製造するために適切な純度を達成する手段を提供することにより、循環経済に効果的に貢献する持続可能なプロセスは、当技術分野における有用な進歩となり、産業界で迅速に受け入れられるであろう。
【発明の概要】
【0009】
上記及び追加の目的は、本開示に記載の原理に従って達成され、本発明者らは、複数の金属を含む基材の多段階浸出プロセスを初めて詳細に説明し、それにより不純物(例えば、価値のない金属)が多金属浸出液から選択的に分離される。その後、多金属溶液を逐次溶媒抽出回路に流し、その際に溶媒抽出回路間で金属と一緒に通過する不純物の移動を効果的にさらに制限するために選択的逆抽出を使用することにより、不純物が減少/枯渇した多金属溶液から個々の有価金属をよりよく分離することができる。逐次溶媒抽出回路で選択的逆抽出を使用すると、有利には、プロセスの堅牢性が向上し、供給濃度及び/又は不純物レベルの変化からの有価金属の一貫して高い収率及び高い純度が可能になる。したがって、リサイクルされたLiイオン電池などの様々な原料由来の混合金属基材から個々の有価金属を回収するための、本明細書で以下に説明する本開示の様々な実施形態によるプロセスは、電池製造業者の厳しい純度要件を満たす電池前駆体(すなわち電池グレードの金属塩)を得ることにおける使用に適用可能である。
【0010】
したがって、一態様では、本開示は、湿式精錬溶媒抽出プロセスであって、
混合金属イオンを含む水性酸性供給流を、第1の標的金属イオン種との結合に選択的な第1の金属抽出試薬を含む有機溶媒と混合して、第1の標的金属イオン種を有機溶媒中に抽出し、且つ第1の標的金属イオン種と、1種以上の非標的金属イオン種とを含む担持有機溶媒を得ることと、
担持有機溶媒を選択的に逆抽出することであって、
担持有機溶媒を第2のpHで第2の酸性逆抽出水溶液と混合して、第1の標的金属イオン種を担持有機溶媒から第2の酸性逆抽出水溶液に移動させること、及び
i)担持有機溶媒を第2の酸性逆抽出水溶液と混合する前に、担持有機溶媒を、第2のpHを上回る第1のpHで第1の酸性逆抽出水溶液と混合して、1種以上の非標的金属イオン種の第1の非標的金属イオン種を第1の酸性逆抽出水溶液に移動させること、若しくは
ii)担持有機溶媒を第2の酸性逆抽出水溶液と混合した後、担持有機溶媒を、第2のpHを下回る第3のpHで第3の酸性逆抽出水溶液と混合して、1種以上の非標的金属イオン種の第2の非標的金属イオン種を第3の酸性逆抽出水溶液に移動させること、又は
iii)(i)及び(ii)の両方
を含む、逆抽出することと、
任意の適切な手段により、第2の酸性逆抽出水溶液から前記第1の標的金属イオン種を回収することと
を含む湿式精錬溶媒抽出プロセスを提供する。
【0011】
この及び他の湿式精錬溶媒抽出プロセスの実施形態は、少なくとも以下の特徴のいずれか1つ以上を有し得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、湿式精錬溶媒抽出プロセスは、(a)担持有機溶媒を第1のpHで第1の逆抽出酸性水溶液と混合することが、第1の標的金属イオン種若しくは第2の非標的金属イオン種の少なくとも一方と比較して第1の非標的金属イオン種を選択的に除去すること、若しくは(b)担持有機溶媒を第3のpHで第3の酸性水溶液と混合することが、第1の標的金属イオン種若しくは第1の非標的金属イオン種の少なくとも一方と比較して第2の非標的金属イオン種を選択的に除去すること、又は(a)及び(b)の両方を含む。
【0013】
湿式精錬溶媒抽出プロセスの同じ又は別の実施形態では、第2のpHは、第1のpHよりも少なくとも0.5低くてもよいか、又は第2のpHは、第3のpHよりも少なくとも0.5高くてもよいか、又は第2のpHは、第1のpHよりも少なくとも0.5低く、且つ第3のpHよりも少なくとも0.5高くてもよい。
【0014】
特定の実施形態では、第2のpHは、0~2であり、及び第1のpHは、2~5であるか、若しくは第3のpHは、-0.8~1であるか、又は第1のpHは、2~5であり、及び第3のpHは、-0.8~1である。
【0015】
別の実施形態では、第2のpHは、2~5であり、及び第1のpHは、5~6であるか、若しくは第3のpHは、-0.5~3であるか、又は第1のpHは、5~6であり、及び第3のpHは、-0.5~3である。
【0016】
さらに別の実施形態では、第2のpHは、1.5~5であり、及び第1のpHは、5.5~7であるか、若しくは第3のpHは、1~4であるか、又は第1のpHは、5.5~7であり、及び第3のpHは、1~4である。
【0017】
さらに別の実施形態では、第2のpHは、1.5~7であり、及び第1のpHは、10~12であるか、若しくは第3のpHは、1~6であるか、又は第1のpHは、10~12であり、及び第3のpHは、1~6である。
【0018】
同じ又は追加の実施形態では、混合金属イオンの水性酸性供給流は、マンガン、コバルト、ニッケル及び/又はリチウム金属イオンの1つ以上を含む、リサイクルされた電子機器及び/又は電池材料に由来する。
【0019】
前述の又は追加の実施形態のいずれかでは、第1の標的金属イオン種は、マンガンを含み、及び第1の非標的金属イオン種は、銅を含むか、若しくは第2の非標的金属イオン種は、鉄若しくはアルミニウムの少なくとも1つを含むか、又は第1の非標的金属イオン種は、銅を含み、及び第2の非標的金属イオン種は、鉄若しくはアルミニウムの少なくとも1つを含む。
【0020】
別の実施形態では、第1の標的金属イオン種は、コバルトを含み、及び第1の非標的金属イオン種は、ニッケル、リチウム、カルシウム、ナトリウム若しくはアンモニウムの少なくとも1つを含むか、若しくは第2の非標的金属イオン種は、マンガン若しくは銅の少なくとも1つを含むか、又は第1の非標的金属イオン種は、ニッケル、リチウム、カルシウム、ナトリウム若しくはアンモニウムの少なくとも1つを含み、及び第2の非標的金属イオン種は、マンガン若しくは銅の少なくとも1つを含む。
【0021】
別の実施形態では、第1の標的金属イオン種は、ニッケルを含み、及び第1の非標的金属イオン種は、コバルトを含むか、若しくは第2の非標的金属イオン種は、銅、アルミニウム若しくは鉄の少なくとも1つを含むか、又は第1の非標的金属イオン種は、コバルトを含み、及び第2の非標的金属イオン種は、銅、アルミニウム若しくは鉄の少なくとも1つを含む。
【0022】
さらに別の実施形態では、第1の標的金属イオン種は、リチウムを含み、及び第1の非標的金属イオン種は、ナトリウム若しくはアンモニウムの少なくとも1つを含むか、若しくは第2の非標的金属イオン種は、ニッケル若しくはカルシウムの少なくとも1つを含むか、又は第1の非標的金属イオン種は、ナトリウム若しくはアンモニウムの少なくとも1つを含み、及び第2の非標的金属イオン種は、ニッケル若しくはカルシウムの少なくとも1つを含む。
【0023】
前述の又は追加の実施形態のいずれかでは、第1の金属抽出試薬の担持容量は、70%未満である。
【0024】
同じ又は別の実施形態では、第1の標的金属イオン種を回収することは、第2の酸性逆抽出水溶液から硫酸塩水和物生成物を結晶化することを含む。
【0025】
任意の又は全ての実施形態では、第1の金属抽出試薬は、有機リン化合物を含む。特定の実施形態では、有機リン化合物は、ジ-(2-エチルヘキシル)リン酸を含む。
【0026】
任意の又は全ての実施形態では、湿式精錬溶媒抽出プロセスは、水性酸性供給流を、第1の金属抽出試薬を含む有機溶媒と混合した後、水性酸性供給流を、第2の標的金属イオン種との結合に選択的な第2の金属抽出試薬を含む第2の有機溶媒と混合して、第2の標的金属イオン種を第2の有機溶媒中に抽出することを含み、第2の有機溶媒との混合は、有機溶媒との混合よりも高いpHで行われる。
【0027】
任意の又は全ての実施形態では、プロセスは、
ブラックマス固体の一次浸出を行うことであって、金属イオン不純物は、ブラックマス固体から一次浸出液中に選択的に浸出される、行うことと、
ブラックマス固体と一次浸出液との第1の固液分離を行うことと、
ブラックマス固体の二次浸出を行うことであって、有価金属イオンは、ブラックマス固体から二次浸出液中に選択的に浸出される、行うことと、
ブラックマス固体と二次浸出液との第2の固液分離を行って、有価金属イオンが濃縮された二次浸出液を分離することと
により、混合金属イオンを含む水性酸性供給流を得ることをさらに含む。
【0028】
任意の又は全ての実施形態では、プロセスは、鉄、銅又はアルミニウムの少なくとも1つを含む金属イオン不純物を水性酸性供給流から、
水性酸性供給流から金属イオン不純物を金属水酸化物として析出させ、且つ析出された金属水酸化物を濾過によって水性酸性供給流から分離すること、又は
水性酸性供給流を、金属イオン不純物との結合に選択的な金属抽出試薬を含む第2の有機溶媒と混合して、金属イオン不純物を第2の有機溶媒中に移動させること
の少なくとも1つによって除去することをさらに含み得る。
【0029】
任意の又は全ての実施形態では、プロセスは、担持有機溶媒を選択的に逆抽出する前に、担持有機溶媒を、硫酸又は第1の標的金属イオン種の硫酸塩の少なくとも1つを含むスクラビング溶液と混合することと、スクラビング溶液と混合された担持有機溶媒から1種以上の金属イオン不純物を除去することとをさらに含み得る。
【0030】
任意の又は全ての実施形態では、プロセスは、担持有機溶媒からの第1の標的金属イオン種及び1種以上の非標的金属イオン種の抽出後、さらなる溶媒抽出のために担持有機溶媒を提供することをさらに含む。
【0031】
別の態様では、本開示は、
マンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン及びリチウムイオンを含む浸出液を得ることであって、浸出液は、酸又は還元剤の少なくとも1つで溶解されたリサイクルされた電子機器又は電池材料の少なくとも1つに由来する、得ること、
第1の有機溶液を使用し、且つ第1のpHで行われる第1の多段階湿式精錬溶媒抽出プロセスにおいて、浸出液からマンガンイオンを分離すること、
浸出液からマンガンイオンを分離した後、第2の有機溶液を使用し、且つ第1のpHよりも高い第2のpHで行われる第2の多段階湿式精錬溶媒抽出プロセスにおいて、浸出液からコバルトイオンを分離すること、
浸出液からニッケルイオンを分離した後、第4の有機溶液を使用し、且つ第3のpHよりも高い第4のpHで行われる第4の多段階湿式精錬溶媒抽出プロセスにおいて、浸出液からリチウムイオンを分離すること
により、リサイクルされた電子機器又は電池材料の少なくとも1つから標的金属イオン種を抽出するプロセスを提供する。
【0032】
同じ又は別の実施形態では、第1のpHは、2~4であり、第2のpHは、4~6であり、第3のpHは、5~7であり、及び第4のpHは、9~12である。
【0033】
任意又は全ての実施形態では、第1の有機溶液は、ジ-(2-エチルヘキシル)リン酸を含むか、若しくは第2の有機溶液は、ビス(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィン酸を含むか、若しくは第3の有機溶液は、カルボン酸化合物を含むか、若しくは第4の有機溶液は、ホスフィンオキシド及びプロトン供与剤を含むか、又は前述の有機溶液のいずれかの組み合わせである。特定の実施形態では、プロトン供与剤は、ケトンであり得る。同じ又は別の実施形態では、ケトンは、例えば、ベータ-ジケトンであり得る。
【0034】
任意の又は全ての実施形態では、マンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン及びリチウムイオンの分離は、70%未満の金属抽出試薬の金属担持容量で行われる。
【0035】
任意の又は全ての実施形態では、溶媒抽出プロセスは、マンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン又はリチウムイオンの少なくとも1つを結晶化によって金属塩の形態に変換することをさらに含み得る。
【0036】
任意の又は全ての実施形態では、溶媒抽出プロセスは、それぞれの金属イオン分離プロセスに続いて、第1の有機溶液、第2の有機溶液、第3の有機溶液又は第4の有機溶液の少なくとも1つをスクラビングすることをさらに含み得、このスクラビングは、それぞれの有機溶液を、硫酸又は金属硫酸塩の少なくとも1つを含むスクラビング溶液と混合することを含む。
【0037】
特定の実施形態では、金属硫酸塩は、蒸発晶析ブリード流又は逆抽出プロセスからのブリード流に由来する。
【0038】
任意の又は全ての実施形態では、溶媒抽出プロセスは、1種以上の塩基を浸出液中に流すことにより、浸出液のpHレベルを第1のpHから第2のpH、第3のpH及び第4のpHに制御することを含み得る。同じ又は別の実施形態では、溶媒抽出プロセスは、リチウムイオンの分離後、浸出液に対して蒸発晶析を行って、硫酸ナトリウム塩、硫酸アンモニウム塩又は硫酸カルシウム塩の少なくとも1つを生じさせることにより、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン又はカルシウムイオンの少なくとも1つを浸出液から回収することを含み得る。
【0039】
任意の又は全ての実施形態では、溶媒抽出プロセスは、蒸発晶析の生成物として水を得ることと、追加のブラックマスのその後の浸出液を生成するためのベースとして水を提供することとを含み得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、回収された有価金属イオンは、少なくとも98%又は99%;好ましくは98%超;好ましくは99%超の、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP)によって測定されるイオン純度を有する。
【0041】
本開示の態様は、1つ以上の利点を実現するために実施することができる。いくつかの実施では、溶媒抽出及び/又は選択的逆抽出による標的金属抽出は、いくつかの代替方法(例えば、いくつかの乾式精錬プロセスにおける有毒ガスの生成)と比較して、望ましくない副生成物をより少なく生成することができる。いくつかの実施では、溶媒抽出及び/又は選択的逆抽出による標的金属の抽出は、例えば、比較的低い温度で行うことにより、いくつかの代替方法と比較して削減されたエネルギーコストで行うことができる。いくつかの実施では、溶媒抽出及び/又は選択的逆抽出による標的金属の抽出は、抽出された標的金属の純度を高めることができ(例えば、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP)によって測定される少なくとも98%又は99%、好ましくは98%超、好ましくは99%超のイオン純度を達成)、且つ/又は例えば標的金属の抽出及び分離に使用される特定の一連のpH値のため、抽出される標的金属の割合を高めることができる。いくつかの実施では、高純度有価金属を抽出することにより、その金属を新しい電子機器で再利用できるようになり、環境性能が改善される。いくつかの実施では、水及び/又は有機溶媒などの溶媒を再利用することによって溶媒の消費量を減らすことができ、金属抽出プロセスの持続可能性が改善され、コストが削減される。
【0042】
本開示のこの概要は、本開示の必要なステップ、特徴、要素又は利点の全てを列挙しておらず、したがって、これらのステップ、特徴又は要素の部分的な組み合わせも本開示の一部を構成し得る。したがって、本開示のこれらの及び他の目的、特徴及び利点は、添付の図面と併せて理解される本開示の様々な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】原料から有価金属イオンを回収する例示的なプロセスを示す図である。
図2】例示的な選択的逆抽出プロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本開示は、概して、混合金属溶液からの有価金属の回収に関する。いくつかの実施形態では、本開示は、単位操作間の不純物金属(例えば、非価値金属又は非標的金属)の移動を効果的に緩和する逐次溶媒抽出回路にそのような溶液を流すことにより、混合金属イオンを含む酸性水溶液(浸出液など)から個々の有価金属イオンを高収率且つ高純度で回収するプロセスを記述する。本明細書に記載のプロセスは、既存のプロセスと比較した場合、改善及び予期外の利点を提供し、電池前駆体製造業者のために望ましいか又は他の適切な用途のための電池グレード金属塩の適切な純度を実現する。
【0045】
本開示の全体にわたって用いられる以下の用語は、読者を支援するために提供される。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、表記法及び他の科学用語、又は工業用語、又は専門用語は、化学、及び/又は溶媒抽出、及び/又は電池リサイクル/製造技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有することが意図される。場合により、一般に理解されている意味を有する用語は、明確にするため及び/又は参照のしやすさのために本明細書で定義されており、そのような定義を本明細書に含めることは、別段の指示がない限り、当技術分野で一般に理解されている用語の定義に対する実質的な差を表すものとして必ずしも解釈されるべきではない。本明細書及び特許請求の範囲で使用される単数形は、特に文脈が明らかに指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書全体を通して用語の定義が保持される。
【0046】
本明細書で使用される「ブラックマス」という用語は、混合金属を含むリサイクルされた電子機器及び/又は電池の機械的/物理的分離後に得られる材料を指すものとする。
【0047】
本明細書で使用される用語「から構成される」、「含んでいる」又は「含む」には、列挙された要素から「本質的になる」又は「なる」実施形態が含まれ、用語「包含する」又は「有する」は、「含む」と同一視されるべきである。
【0048】
好ましい実施形態を以降でより詳細に説明するが、当業者であれば、本明細書に記載されるシステム及びプロセスの複数の実施形態が本開示の範囲内であると考えられることを理解するであろう。したがって、本開示の一態様又は一実施形態に関して記載されるいかなる特徴も、特に明記しない限り、本開示の別の態様又は実施形態と互換性がある及び/又は結合可能であることが指摘されるべきである。本開示のいかなる記載も具体的な実施形態又は図面に関連して記載されるが、本開示の他の実施形態に適用できること及びそれと互換性があることは、当業者によって理解されるであろう。
【0049】
さらに、本開示の実施形態を説明する目的のために、要素、ステップ、成分又は特徴が、列挙される要素、ステップ、成分又は特徴のリストに含まれ、且つ/又はリストから選択されるとされる場合、当業者は、本明細書に記載される本開示の関連する実施形態において、要素、ステップ、成分若しくは特徴が、個別の列挙される要素、ステップ、成分若しくは特徴のいずれか1つでもあり得るか、又は明確に列挙された要素、ステップ、成分若しくは特徴の任意の2つ以上からなる群からも選択され得ることを理解するであろう。加えて、そのようなリストに列挙された任意の要素、ステップ、成分又は特徴は、そのようなリストから削除することもできる。
【0050】
当業者は、終点による数値範囲の本明細書でのいかなる列挙も、明確に列挙されているかどうかに関係なく、(分数を含めて)列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の終点及び同等物を含むことをさらに理解するであろう。「et seq.」という用語は、全ての数値を明示的に列挙せずに列挙された範囲内に包含される数値を示すために使用される場合があり、範囲内の全ての数値の完全な開示とみなされされる必要がある。「1~5」は、例えば、要素の数に言及する場合には1、2、3、4及び5を含み、例えばパラメータ値に言及する場合には1.5、2、2.75及び3.8も含み得る。より広い範囲又はより大きい群に加えて、より狭い範囲又はより具体的な群の開示は、より広い範囲又はより大きい群を放棄するものではない。「~」という用語で示される範囲を含め、本明細書に開示される全ての範囲は、終点を含み、終点は、互いに独立して組み合わせることができる。例えば、「2~6」のpH範囲には、範囲の終点及び全ての中間値が含まれ、「最大25重量%又はより具体的には5重量%~20重量%」の範囲には、終点及び「5重量%~25重量%」を含む範囲の全ての中間の値が含まれるなどである。
【0051】
特定の実施形態では、本開示は、使用済み電池などの鉱物源から金属、例えばマンガン、コバルト、ニッケル及びリチウムなどの鉱物を回収する方法に関する。使用済み電池の例では、方法は、使用済み電池材料の浸出、それに続く溶液からの水酸化物としての鉄、アルミニウム及び銅の不純物金属の析出が含まれる。その後、溶液に対して逐次溶媒抽出を行うことで、硫酸マンガン、硫酸コバルト、硫酸ニッケル及び硫酸リチウムのそれぞれの金属溶液を濃縮及び精製することができる。選択的逆抽出は、抽出された金属の純度を高めるために採用される。金属は、析出又は蒸発晶析によって回収することができる。このプロセスは、リチウムを含む複数の有価金属を1つにまとめられたプロセスで高収率且つ高純度で回収することができ、それらは電池前駆体としての使用に適している。本開示では、「標的金属」と「有価金属」を互換的に言及する。標的金属は価値があり、そのため「有価金属」とみなされることから、典型的には抽出の対象となる。ただし、ある抽出プロセスで標的とされた金属が、別の抽出プロセスでは不純物となる場合がある。したがって、本明細書で使用される「標的」及び「有価」は、所定のプロセスで標的とされる種を指し、種の特別な特徴は必要としない。
【0052】
Liイオン電池の湿式精錬処理では、機械処理に続いてブラックマスが浸出され、鉄、アルミニウム、銅、マンガン、コバルト、ニッケル、リチウム、ナトリウム及び/又はアンモニウムを含む多金属溶液が得られる。電池前駆体における使用に十分な純度の金属を回収するために、単位操作(処理ステップ)間の不純物の移動を軽減することができる。多くの場合、不純物の移動を完全に又はほぼ完全に制限することが望ましい。本明細書に記載の技術は、電池グレードの金属塩の製造に適した純度を達成する手段を提供する。
【0053】
いくつかの実施形態では、金属抽出は、多段階浸出プロセスを含む。鉄及びアルミニウムなどの不純物は、一次浸出でブラックマスから選択的に浸出される。固相は、最初のブラックマスと比較して鉄及びアルミニウムが枯渇しており、マンガン、コバルト、ニッケル及び/又はリチウムが濃縮されている。固液分離後、固相に対して二次浸出が行われ、ここで、有価であるマンガン、コバルト、ニッケル及び/又はリチウムが水相に戻される。二次浸出では、一次浸出と比較して高濃度の酸及び/又は過酸化物が使用される。水相は、一次浸出液と比較して、より低いレベルの鉄及びアルミニウムを含む。それにより、下流の単位操作に戻される不純物の濃度が減少する。
【0054】
逐次溶媒抽出は、浸出後に個々の金属を分離するために使用される。各回路で標的(有価)金属の抽出を増やすために、温度、操作pH、相の比率及び抽出剤の濃度などの変数を制御することができる。注意深く制御を行っても、標的金属の回収が不完全になり、その結果後続の溶媒抽出回路に移送され、そこで不純物(価値のない)金属として機能する(又はそのような金属になる)可能性がある。本明細書に記載のように、抽出が不完全なことに起因して溶媒抽出回路間を通過する金属を選択的に逆抽出する技術は、供給濃度及び不純物金属レベルの変化に適用されるプロセスの堅牢性を改善し、電池グレード材料の一貫した製造を可能にする。
【0055】
直列の複数の溶媒抽出回路の操作は、同伴及び/又は水への溶解性による回路間の抽出剤の移動を制御することによって容易にすることができる。回路間では、アフターセトラー、コアレッサー、二層フィルター、ペースセッター、ジェムソンセル、カーボンフィルター又はこれらの組み合わせなどの装置を使用して、抽出剤の損失を最小限に抑え、抽出剤の交叉汚染を低減又は排除することができる。
【0056】
以下の実施例は、当業者が本開示の特定の実施形態をさらに理解するのを支援するために提供される。これらの実施例は、例示目的を意図し、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0057】
図1に示されるプロセス100は、リサイクルされた電子機器及び/又は電池からのマンガン、コバルト、ニッケル及び/又はリチウムの回収を示す。プロセス100は、15℃~30℃などのほぼ室温で実施することができるものの、いくつかの実施形態では、プロセス100の少なくとも一部について、温度は、この範囲外でもあり得る。いくつかの実施形態では、コバルト溶媒抽出112などの1つ以上の溶媒抽出プロセスは、50℃~70℃などの高温で行うことができる。
【0058】
使用済み電池材料には、鉄、アルミニウム、銅、マンガン、コバルト、ニッケル及び/又はリチウムの混合物が含まれる。金属の比率は、使用済み電池の供給源によって異なり、上で挙げた全ての元素が含まれているわけではない場合がある。使用済み電池材料は、電池から電極材料を機械的/物理的に分離した後に得られ、一般に「ブラックマス」と呼ばれる。
【0059】
ブラックマス中の金属は、酸及び過酸化物による浸出によって溶解される(102)。ブラックマス、酸及び過酸化物の混合物の典型的な条件は、ブラックマス50~300g/L、硫酸50~300g/L、温度25~80℃及び過酸化物0~75g/Lである。これにより、標的金属が「浸出液」又は「浸出溶液」と呼ばれる水溶液に移される。浸出液1リットルあたりのグラム単位での例示的な組成と、ブラックマスから浸出液への対応する金属の移動を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
いくつかの実施形態では、浸出(102)は、浸出液中の鉄及びアルミニウムなどの不純物のレベルを低減するために多段階プロセスで行われる。硫酸及び/又は過酸化物の添加は、マンガン、コバルト、ニッケル及びリチウムの浸出を減らしながら、アルミニウムを標的とする一次浸出で行うことができる。得られる固相は、最初のブラックマスと比較して鉄及びアルミニウムが枯渇しており、マンガン、コバルト、ニッケル及び/又はリチウムが濃縮されている。一次浸出からの固体は、回収され、これに対してマンガン、コバルト、ニッケル及びリチウムの高い回収率を目的とした二次浸出が行われる。二次浸出では、一次浸出に比べて高濃度の硫酸及び/又は過酸化物が使用される。得られる二次浸出液組成物は、一次浸出液と比較して低下したレベルの鉄及びアルミニウムを含む。いくつかの実施形態では、二次浸出液中のアルミニウム含有量は、2g/L(又は「gpl」)未満である。二次浸出液は、以下の表2に示すように、マンガン、コバルト、ニッケル及び/又はリチウムを(例えば、一次浸出液と比較して且つ/又はブラックマスと比較して)多く含む。
【0062】
【表2】
【0063】
浸出液が得られたときに、いくつかの実施形態では、濾過によって液体浸出液を固体残渣から分離するために、任意選択的な固液(S/L)分離工程(104)が行われる。例えば、黒鉛などの固体を除去するために、単純なフロー濾過及び/又は濾過遠心分離を行うことができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、鉄、アルミニウム及び/又は銅などの非標的金属は、任意選択的に、金属水酸化物として析出させることによって少なくとも部分的に除去される(106)。水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム及び/又は水酸化アンモニウムなどの1種以上の塩基は、浸出液のpHが4~6などの目標pH範囲内になるまで浸出液に添加される。いくつかの実施形態では、1種以上の塩基としては、石灰(例えば、水酸化カルシウム、Ca(OH))が挙げられる。塩基を添加すると、浸出液のpHが上昇する。いくつかの実施形態では、目標pHは、約5.5、例えば5.4~5.6である。目標のpH範囲では、非標的金属が1種以上の金属水酸化物として析出する。析出は、マンガン、コバルト及びニッケルの水酸化物の形成など、標的金属の析出/結晶化と比較して非標的金属の析出に有利な形式で行われる。例えば、いくつかの実施形態では、非標的金属の析出が行われる目標pH範囲は、少なくとも一部の標的金属(マンガン、コバルト、ニッケル及び/又はリチウムなど)のその後の析出/結晶化が行われるpH範囲よりも低い。例えば、いくつかの実施形態では、水酸化物として析出する1種以上の非標的金属の割合は、析出する1種以上の標的金属の割合よりも大きい。
【0065】
いくつかの実施形態では、非標的金属の析出後、水酸化物析出物から浸出液を分離するために、濾過による固液(S/L)分離プロセス(108)が行われる。濾過プロセスには、フロー濾過及び/又は遠心濾過が含まれ得る。例えば、浸出液中の鉄、銅、び/又はアルミニウムの濃度は、濾過によって100mg/L未満に減らすことができる。いくつかの実施形態では、鉄、銅及び/又はアルミニウムは、10mg/L未満の濃度まで減らされる。表3は、pH4~5.5の範囲内でpHを上げると、アルミニウム及び銅のような不純物金属イオンが有利に減少するが、有価金属イオンの濃度にはあまり悪影響がない(例えば、浸出液から有価金属イオンがあまり除去されないか、又は不純物金属イオンが除去されるよりも少なくそれらが除去される)ことを示している。ただし、非標的金属が完全に除去されるわけではなく、アルミニウムと銅の一部は、浸出液中に残り、その後の選択的逆抽出プロセスで標的とされ得る。
【0066】
【表3】
【0067】
いくつかの実施形態では、水酸化物析出抽出の代わりに又はそれに加えて、1種以上の非標的金属は、別の方法を使用して浸出液から抽出される。例えば、鉄及び/又はアルミニウムは、炭化水素系溶媒で1~40体積%の濃度に希釈した2-エチルヘキシルホスホン酸-モノ-2-エチルヘキシルエステルなどの酸性有機リン抽出剤を使用する溶媒抽出によって浸出液から抽出することができる。
【0068】
溶媒抽出プロセス(液-液抽出プロセスと呼ばれることもある)では、成分は、2つの異なる非混和性液体、多くの場合に水性液体(極性)と有機溶媒(非極性)とに分割される。1種以上の種の正味の移動は、典型的には水性液体から有機溶媒へと生じ、化学ポテンシャルによって引き起こされる。溶媒抽出のために様々な技術を使用することができる。一段階溶媒抽出プロセスには、液体混合とそれに続く遠心分離が含まれ得る。多段階溶媒抽出プロセスには、多段階向流処理が含まれ得る。多段階向流処理では、1種以上の標的金属が水溶液から有機溶媒に流れるように、水溶液(抽出すべき金属を含む)が有機物の流れと逆方向に流される。溶媒抽出プロセス(向流プロセスなど)の1つのアウトプットは、1種以上の標的金属が除去された水溶液である。溶媒抽出プロセスの他方のアウトプットは、1種以上の標的金属を含む有機溶媒である。その後、例えば1種以上の化学物質を有機溶媒に添加することにより、標的金属を有機溶媒から除去することができる。有機溶媒からの標的金属の除去には、以下でより詳細に説明される選択的逆抽出プロセスが含まれ得る。
【0069】
多段階向流プロセスにおける鉄及び/又はアルミニウムの溶媒抽出については、鉄及び/又はアルミニウムは、pH1~4で酸性有機リン抽出剤を使用して溶媒抽出プロセスの有機相に抽出することができ、抽出された金属は、硫酸を使用して有機相からスクラビングすることができる。溶媒抽出のpHは、抽出時の浸出液と有機溶媒の混合物のpHを指す。
【0070】
非標的金属抽出の別の例として、5-ノニルサリチルアルドキシム、2-ヒドロキシ-5-ノニルベンゾフェノンオキシム又はそれらの化学物質の一方又は両方を含む溶液など、ヒドロキシオキシム抽出剤を使用する溶媒抽出によって浸出液から銅を抽出することができる。いくつかの実施形態では、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート又はトリデカノールなどの平衡調整剤が有機溶媒中でヒドロキシオキシムと一緒に使用される。抽出剤は、炭化水素系溶媒中で1~40体積%の濃度に希釈される。銅は、1~3のpHで溶媒抽出プロセスの有機相に抽出され、銅以外の種、例えば存在し得る不純物(例えば、鉄及び/又はアルミニウム)及び/又は存在し得る標的金属(例えば、コバルト及び/又はマンガン)は、硫酸、硫酸銅溶液又はこれらの化学物質の一方又は両方を含む溶液を使用して有機相からスクラビングされる。銅は有機溶液中に選択的に保持される。次いで、酸及びいくつかの実施形態では硫酸銅を含む水溶液を使用して、有機溶液から銅が逆抽出される。逆抽出後、銅は、電解採取によって金属銅として且つ/又は蒸発晶析によって硫酸銅として回収することができる。電解採取又は蒸発晶析後、使用済み水溶液は、銅が枯渇しており、逆抽出供給流として逆抽出回路に戻すことができる。いくつかの実施形態では、使用済み水溶液の一部は、スクラビングに使用される。
【0071】
1種以上の非標的金属の任意選択的な抽出後、1種以上の標的金属は、以下でより詳細に説明する選択的逆抽出を含む金属ごとの抽出シーケンスで抽出される。いくつかの実施形態では、この抽出シーケンスは、浸出液のpHレベルが全体的に徐々に増加することを特徴とし、これにより溶媒抽出回路間のpH調整によって試薬コストを削減することができる。抽出される具体的な標的金属は、異なる実施形態では異なる可能性があり、図1に示すシーケンスは、例示にすぎない。しかしながら、場合により、この順序によって各標的金属の選択的抽出が可能になるため、図1に示す金属抽出の相対的な順序が抽出に利点をもたらす。これにより、電池グレードの金属塩の純度要件の達成を助けるために、抽出された標的金属の純度及び/又は抽出に成功した標的金属の割合を改善することができる。これにより、供給材料の組成の変動、例えば不純物及び有価金属の量の変動に対するプロセス100の堅牢性も改善することができる。
【0072】
1種以上の非標的金属の抽出後、浸出液は、不純物析出106の残余物として且つ/又は酸の中和に起因して浸出液中にあるナトリウム、アンモニウム及び/又はカルシウムと共に4種の標的金属(マンガン、コバルト、ニッケル及びリチウム)を含む。例示的なプロセス100では、コバルト、ニッケル、リチウム、ナトリウム、アンモニウム及び/又はカルシウムからマンガンが分離される(110)。マンガン溶媒抽出110の一部として、浸出液が目標pH範囲内になるように、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム及び/又は石灰などの1種以上の塩基が浸出液に添加される。この目標pH範囲は、不純物析出106が行われる目標pH範囲よりも高くすることができ、且つ/又はコバルト分離112、ニッケル分離114及び/若しくはリチウム分離116が行われるそれぞれの目標pH範囲よりも低くすることができる。目標pH範囲は、コバルト、ニッケル及び/又はリチウムと比較してマンガンが優先的に抽出される(例えば、浸出液から有機溶媒に優先的に移動する)pH範囲であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、マンガン溶媒抽出のためのpHは、2~4である。
【0073】
マンガン溶媒抽出110については、有機溶液は、適切な酸性有機リン抽出剤を含み得る。例えば、抽出剤は、炭化水素系溶媒で1~40体積%の濃度に希釈されたジ-(2-エチルヘキシル)リン酸(DEHPA)を含み得る。溶媒抽出は、多段階の向流プロセスで行うことができる。選択的なマンガン抽出は、鹸化及び/又は段階間のpH制御など、回路への塩基の添加を変えることによって制御することができる。鹸化では、抽出中に一定のpHを維持するために塩基が有機溶液に直接添加される。段階間のpH制御では、抽出中に発生する酸を中和して目標のpHを維持するために、段階の合間に塩基が添加される。
【0074】
「担持容量」は、浸出液から1種以上の標的金属を抽出するための、有機溶液中の抽出剤の容量を指す。所定の数の抽出剤の分子について、抽出剤の全てが標的金属に結合する理論上の限界が存在する。いくつかの実施形態では、抽出は、理論上の限界と比較して低い担持容量で操作されることによって促進される。例えば、いくつかの実施形態では、抽出剤上の金属担持が抽出剤担持容量の70%未満、抽出剤担持容量の50%未満又は抽出剤担持容量の30%未満である場合、浸出液からのマンガン抽出が促進される。より低い担持で操作すると、不純物金属イオンに対するマンガンの選択性を促進することができる。より低い担持で操作すると、ゲル化、第3の相の形成及びより高い水溶性に起因する抽出剤損失の傾向が減少するため、物理的な利益を得ることもできる。
【0075】
いくつかの実施形態では、マンガン又は別の標的金属は単独では抽出されない。むしろ、1種以上の共抽出金属も浸出液から抽出され、これらの共抽出金属を有機相(有機溶媒)から逆抽出することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、共抽出金属には、鉄、アルミニウム及び/又は銅の不純物が含まれる。共抽出金属は、代わりに又は追加的に、プロセス100における前の標的金属であった金属を含み得る。例えば、マンガン溶媒抽出110の標的金属であるマンガンは、コバルト分離112の非標的共抽出金属になる場合がある。
【0076】
共抽出金属の除去は、図2に示されているような選択的逆抽出プロセス200を使用して行うことができる。選択的逆抽出は、(逆抽出供給流との混合後の)有機溶液の異なるpHレベルで、異なる金属が有機溶液から優先的に除去されるという認識に基づいている。したがって、徐々に高く又は低くされたpHレベルで有機溶液を逆抽出することにより、様々な金属を選択的に除去の標的とすることで、抽出される標的金属(例えば、マンガン)と1種以上のアウトプット生成物(再利用される有機溶媒など)の両方の純度を改善することができる。具体的には、本開示のいくつかの実施形態では、逆抽出は、連続的に低くされたpHレベルの有機溶液で行われ、これにより、連続的に高くされるpHレベルでの逆抽出と比較して選択性を改善することができる。連続的に高くされるpHレベルでの逆抽出では、最初の(最も低いpH)ステップで複数の金属(標的と非標的の両方)が一緒に除去されることになり、選択性が低下する可能性がある。
【0077】
図2に示されるように、マンガン溶媒抽出110など様々な標的金属について上述した通り、溶媒抽出201が浸出液に対して行われる。溶媒抽出201のアウトプットは、ラフィネート、例えば標的金属(例えば、マンガン)が浸出液から枯渇した浸出液である。ラフィネートは、以下でさらに詳しく説明するように、1種以上の追加の標的金属(例えば、コバルト、ニッケル及び/又はリチウム)の抽出又は塩基添加剤の除去及び水回収のための結晶化など、さらなる処理のために供給することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、溶媒抽出201から得られる有機溶液(相)は、任意選択的にスクラビング202のために供給される。スクラビング202では、1種以上の化学物質(スクラビング溶液)が有機溶液と混合されて、有機溶液から1種以上の非標的金属が除去される。スクラビングでは、適切なpHで操作することなどにより、1種以上の非標的金属のスクラビングに有利になるように化学平衡が調整される。スクラビング溶液は、効率化のために同じ回路内でリサイクルすることができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、スクラビング溶液は、硫酸又は別の硫黄含有溶液などの専用のスクラビング供給流を含む。いくつかの実施形態では、スクラビング溶液は、第2の逆抽出206における標的金属の逆抽出から生じる逆抽出生成物(例えば、硫酸マンガンなどの硫酸塩)を含む。いくつかの実施形態では、スクラビング溶液を形成するために、スクラビング供給流及び逆抽出生成物の両方が使用される。スクラビング202のために添加されるスクラビング溶液は、少なくとも部分的にリサイクルされた成分を含み得る。例えば、スクラビング溶液は、選択的逆抽出プロセス200で選択的に逆抽出される同じ標的金属を含む、蒸発晶析後に残る化学溶液、同じ標的金属の析出及び除去後に残る化学溶液に由来し得、且つ/又は同じ標的金属の逆抽出生成物(逆抽出液)のリサイクルされた部分を含み得る。いくつかの実施形態では、スクラビング202で除去された非対象金属は、例えば、非標的金属がその後の処理のためにラフィネートに入ることができるように溶媒抽出201に戻される。
【0080】
いくつかの実施形態では、有機溶液は、標的金属が逆抽出される第2の逆抽出206前に行われる第1の逆抽出204で処理される。第1の逆抽出204は、有機溶液から1種以上の非標的金属を除去する。これは、有機溶液が第2の逆抽出206が行われる第2のpHよりも高い第1のpHにあるときに行われる。第1の逆抽出204を行うために、逆抽出供給流は、有機溶液と混合されるか、又は他に有機溶液と流体接触される。逆抽出供給流は、硫酸溶液などの酸性水溶液を含み、逆抽出が行われるpHを設定する。金属カチオンM2+と抽出剤RHの場合、逆抽出反応はMR(有機)+2H(水性)→M2+(水性)+2RH(有機)である。金属が逆抽出されると酸が消費され、pHは、例えば、目標値に向けて上昇する。
【0081】
第1のpHは、第2の逆抽出206で逆抽出される標的金属と比較して、1種以上の非標的金属の優先的な逆抽出を提供する。いくつかの実施形態では、第1の逆抽出204で逆抽出される1種以上の非標的金属は、第3の逆抽出208で逆抽出される1種以上の非標的金属と異なり、例えば第3の逆抽出208で逆抽出される1種以上の非標的金属と比較して第1のpHにおいて優先的に逆抽出される。第1の逆抽出204のアウトプットには、第1の逆抽出204の間に逆抽出された1種以上の金属を含む逆抽出溶液と、1種以上の金属が少なくとも部分的に逆抽出された有機溶液とが含まれる。いくつかの実施形態では、逆抽出溶液は、プロセス100の前の部分に供給される。例えば、逆抽出溶液は、浸出102、溶媒抽出ステップ(例えば、マンガン溶媒抽出110)及び/又は不純物の析出106へのインプットとして供給され得る。
【0082】
マンガンを標的とする選択的逆抽出の場合、いくつかの実施形態では、第1の逆抽出204は、2~4のpHで行われ、少なくとも1種の他の標的及び/又は非標的金属と比較して銅を選択的に逆抽出し、銅を含む逆抽出液を生成する。
【0083】
第1の逆抽出204後、有機溶液は、第2の逆抽出206で処理される。第2の逆抽出206は、第1の逆抽出が行われる第1のpHよりも低い第2のpHで行われる。第2のpHは、鉄、アルミニウム及び/又は以前の若しくは後の標的金属などの1種以上の非標的金属と比較して、標的金属の優先的な逆抽出を提供する。例えば、第2のpHで逆抽出される標的金属の割合は、第2のpHで逆抽出される1種以上の非標的金属の割合よりも高い。第2の逆抽出206における逆抽出は、例えば、選択的抽出を促進するpHを得るために酸性水溶液(逆抽出供給流)を添加することにより、第1の逆抽出204について説明した通りに行うことができる。
【0084】
本開示による選択的逆抽出のための連続するpH値は、少なくとも0.1、少なくとも0.2、少なくとも0.5、少なくとも1.0又は別の値だけ互いに異なり得る。いくつかの実施形態では、連続するpH値は、5未満、3未満又は2未満だけ互いに異なる。
【0085】
濃縮された標的金属を含む逆抽出生成物(逆抽出液とも呼ばれる場合もある)が生成される。例えば、逆抽出生成物は、標的金属の硫酸塩を含み得る。逆抽出生成物は、純粋な形態で標的金属を抽出するためにさらに処理され得、且つ/又はさらなる処理、例えば非標的金属をさらに除去するためにスクラビング202に供給され得る。
【0086】
マンガンを標的とする選択的逆抽出の場合、第2の逆抽出206は、いくつかの実施形態では0~2のpHで行われる。逆抽出生成物は、硫酸マンガン、例えばイオン純度が99%を超える硫酸マンガンを含む(例えば、誘導結合プラズマ分光法(ICP)によって決定される)。マンガンを標的とする選択的逆抽出のためのスクラビング溶液は、少なくとも部分的に、マンガン生成物回収ブリード流、マンガン蒸発晶析ブリード流及び/又は硫酸マンガンを含むマンガン逆抽出生成物を含み得る。スクラビング溶液は、代わりに又は追加的に、硫酸などの硫酸塩溶液を含み得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、第2の逆抽出206後、第2の逆抽出206が行われる第2のpHよりも低い第3のpHで第3の逆抽出208が行われる。第3のpHは、第2の逆抽出206で逆抽出される標的金属と比較して、1種以上の非標的金属の優先的な逆抽出を提供する。いくつかの実施形態では、第3の逆抽出208で除去される1種以上の非標的金属は、第1の逆抽出204で逆抽出される1種以上の非標的金属と異なり、例えば第1の逆抽出204で逆抽出される1種以上の非標的金属と比較して第3のpHにおいて優先的に逆抽出される。第3の逆抽出208は、第1の逆抽出204について説明した通り、例えば追加の逆抽出供給流を使用することによって行うことができる。第3の逆抽出208によってアウトプットされる逆抽出溶液は、第1の逆抽出204について説明したように、プロセス100の1つ以上の前のステップに供給することができる。例えば、逆抽出溶液は、浸出102、溶媒抽出ステップ(例えば、マンガン溶媒抽出110)及び/又は不純物析出106へのインプットとして供給することができる。第3の逆抽出208後に残る有機溶液は、上述したように浸出液から金属を除去するために、有機溶液として溶媒抽出201に戻すことができる。
【0088】
マンガンを標的とする選択的逆抽出の場合、第3の逆抽出208は、いくつかの実施形態では、-0.8~1のpHで行われ、少なくとも1種の他の標的金属及び/又は非標的金属と比較して鉄及び/又はアルミニウムが選択的に逆抽出され、鉄及び/又はアルミニウムを含む逆抽出溶液が生成される。
【0089】
選択的逆抽出は、第1の逆抽出204及び第3の逆抽出208の両方を含み得るが、必ずしもその必要はない。むしろ、いくつかの実施形態では、第2の逆抽出206及び第1の逆抽出204又は第3の逆抽出208のいずれかが行われる。選択的逆抽出(逆抽出の順序及び逆抽出の相対的pHの両方を含む)は、標的金属のより純粋な逆抽出生成物を得るために、非標的金属と標的金属の選択的除去を可能にする。代替的な順序及び/又はpHは、場合により、第1の逆抽出204又は第3の逆抽出208によってアウトプットされる逆抽出溶液中の標的金属の過剰な除去につながる可能性があり、且つ/又は第2の逆抽出206からの逆抽出生成物中の過剰な非標的金属のアウトプットにつながる可能性がある。したがって、本明細書に記載の選択的逆抽出は、抽出された標的金属の純度及び/又は抽出に成功した標的金属の割合を改善し、電池グレード金属塩の純度要件の達成を助けることができる。選択的逆抽出は、供給材料の組成の変化、例えば不純物及び有価金属の量の変動に対するプロセス100の堅牢性を改善することもできる。
【0090】
再び図1を参照すると、第2の逆抽出206からのアウトプットとしての硫酸マンガンを含む逆抽出生成物は、マンガン生成物を回収するために処理される。いくつかの実施形態では、マンガン逆抽出生成物(例えば、硫酸マンガンを含む)の蒸発晶析118を行うことで、硫酸マンガン生成物が回収される。いくつかの実施形態では、析出プロセス120において、1種以上の塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム及び/又は石灰)がマンガン逆抽出生成物に添加され、濾過によって回収可能な固体の水酸化マンガンを形成する。
【0091】
マンガン溶媒抽出110からの浸出液アウトプット(溶媒抽出201からのラフィネート)は、いくつかの実施形態ではマンガン溶媒抽出110における塩基の添加に起因して減少した量のマンガン並びに増加したナトリウム、アンモニウム及び/又はカルシウムと共に、残りの標的金属であるコバルト、ニッケル及びリチウムを含む。浸出液には、鉄、アルミニウム及び/又は銅などの1種以上の非標的金属が含まれ得る。この浸出液は、コバルト溶媒抽出112に供給される。コバルト溶媒抽出112では、任意の適切な酸性有機リン抽出剤を含む有機溶液を使用して、浸出液からコバルトが分離される。例えば、いくつかの実施形態では、抽出剤は、炭化水素系溶媒で1~40体積%の濃度に希釈されたビス(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィン酸(Solvay S.A.からCYANEX(登録商標)272として入手可能)を含む。コバルト溶媒抽出112は、マンガン溶媒抽出110に使用されるpHよりも高いpHにおいて多段階向流プロセスで行うことができ、pHは1種以上の塩基の添加によって制御される。例えば、いくつかの実施形態では、コバルト溶媒抽出のpHは、4~6である。このpHは、例えば、ニッケル及び/又はリチウムの後続の溶媒抽出に使用される1つ以上のpH値より低くてもよい。マンガン溶媒抽出110について説明したように、いくつかの実施形態では、コバルト溶媒抽出112は、抽出剤の100%未満の担持容量で行われる。例えば、いくつかの実施形態では、抽出剤に対する金属担持は、抽出剤担持容量の70%未満、抽出剤担持容量の50%未満又は抽出剤担持容量の3%未満である。コバルト溶媒抽出112では、コバルトは、ニッケル、リチウム、ナトリウム、アンモニウム及び/又はカルシウムから有機溶液に分離される。コバルト以外の共抽出剤も有機溶液に移すことができる。
【0092】
有機溶液中の抽出された金属は、例えば、マンガンについて上述したように、選択的逆抽出200を受けることができる。選択的逆抽出200は、コバルトを標的とする第2の逆抽出206と、第2の逆抽出206のpHよりも高いpH及び低いpHでそれぞれ行われ、第2の逆抽出206前及び後にそれぞれ行われる第1の逆抽出204又は第3の逆抽出208の一方又は両方を含む。第1の逆抽出204及び第3の逆抽出208は、それらが行われるそれぞれのpHレベルのため、コバルト及び/又は1種以上の他の非標的金属と比較して、1種以上の非標的金属に対して選択的である。いくつかの実施形態では、コバルト抽出では、第1の逆抽出204は5~6の第1のpHで行うことができ、第2の逆抽出206は2~5の第2のpHで行うことができ、第3の逆抽出208は第2のpHよりも低い第3のpH、例えば-0.5~3のpHで行うことができる。いくつかの実施形態では、コバルト抽出では、第1の逆抽出204は、ニッケル、リチウム、カルシウム、ナトリウム及び/又はアンモニウムを選択的に逆抽出する。いくつかの実施形態では、コバルト抽出では、第3の逆抽出208は、マンガン及び/又は銅を選択的に逆抽出する。第1の逆抽出204及び第3の逆抽出208からの逆抽出溶液は、上述したように、プロセス100の前の部分に供給することができる。コバルトを標的とする選択的逆抽出のためのスクラビング溶液は、少なくとも部分的に、コバルト生成物回収ブリード流、コバルト蒸発晶析ブリード流及び/又は硫酸コバルトを含むコバルト逆抽出生成物を含み得る。スクラビング溶液は、代わりに又は追加的に、硫酸などの硫黄溶液を含み得る。
【0093】
第2の逆抽出206から得られる逆抽出生成物中の硫酸コバルトは、99.9%を超えるイオン純度を有することができる。コバルトは、硫酸コバルト七水和物生成物を得るために、蒸発晶析122によって第2の逆抽出206を出る逆抽出生成物から回収することができる。
【0094】
コバルト溶媒抽出112からの浸出液アウトプット(溶媒抽出201からのラフィネート)は、いくつかの実施形態では、コバルト溶媒抽出112における塩基の添加に起因して減少した量のマンガン及び/又はコバルト並びに増加したナトリウム、アンモニウム及び/又はカルシウムと共に、残りの標的金属であるニッケル及びリチウムを含む。この浸出液は、ニッケル溶媒抽出114に供給される。ニッケル溶媒抽出114では、ニッケルは、任意の適切な有機リン酸、カルボン酸、ヒドロキシオキシム又はそれらの混合物を含む有機溶液を使用して浸出液から分離される。いくつかの実施形態では、平衡相又は第3の相の調整剤として、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、トリデカノール及び/又は中性有機リン供与体などの調整剤が有機相に添加される。有機溶液は、炭化水素溶媒で1~40体積%の濃度に希釈されたネオデカン酸を含み得る。ニッケル溶媒抽出114は、マンガン溶媒抽出110に使用されるpH及び/又はコバルト溶媒抽出112に使用されるpHよりも高いpHにおいて多段階向流プロセスで行うことができ、pHは1種以上の塩基の添加によって制御される。例えば、いくつかの実施形態では、ニッケル溶媒抽出のためのpHは5~7である。このpHは、例えば、リチウムなどの後続の溶媒抽出に使用される1つ以上のpH値より低くてもよい。マンガン溶媒抽出110について説明したように、いくつかの実施形態では、ニッケル溶媒抽出114は、抽出剤の100%未満の担持容量で行われる。例えば、いくつかの実施形態では、抽出剤に対する金属担持は、抽出剤担持容量の70%未満、抽出剤担持容量の50%未満又は抽出剤担持容量の30%未満である。ニッケル溶媒抽出114では、ニッケルは、リチウム、ナトリウム、アンモニウム及び/又はカルシウムから有機溶液に分離される。ニッケル以外の共抽出剤も有機溶液に移すことができる。
【0095】
有機溶液中の抽出された金属は、例えば、マンガン及びコバルトについて上述したように、選択的逆抽出200を受けることができる。選択的逆抽出200は、ニッケルを標的とする第2の逆抽出206と、第2の逆抽出206のpHよりも高いpH及び低いpHでそれぞれ行われ、第2の逆抽出206前及び後にそれぞれ行われる第1の逆抽出204又は第3の逆抽出208の一方又は両方を含む。第1の逆抽出204及び第3の逆抽出208は、それらが行われるそれぞれのpHレベルのため、ニッケル及び/又は1種以上の他の非標的金属と比較して、1種以上の非標的金属に対して選択的である。いくつかの実施形態では、ニッケル抽出では、第1の逆抽出204は、5.5~7の第1のpHで行うことができ、第2の逆抽出206は、1~5(例えば、1.5~5)の第2のpHで行うことができ、第3の逆抽出208は、1~4の第3のpHで行うことができる。いくつかの実施形態では、ニッケル抽出では、第1の逆抽出204はコバルトを選択的に逆抽出する。いくつかの実施形態では、ニッケル抽出では、第3の逆抽出208は、銅、アルミニウム及び/又は鉄を選択的に逆抽出する。第1の逆抽出204及び第3の逆抽出208からの逆抽出溶液は、上述したように、プロセス100の前の部分に供給することができる。ニッケルを標的とする選択的逆抽出のためのスクラビング溶液は、少なくとも部分的に、ニッケル生成物回収ブリード流、ニッケル蒸発晶析ブリード流及び/又は硫酸ニッケルを含むニッケル逆抽出生成物を含み得る。スクラビング溶液は、代わりに又は追加的に、硫酸などの硫黄溶液を含み得る。
【0096】
第2の逆抽出206から得られる逆抽出生成物中の硫酸ニッケルは、99.9%を超えるイオン純度を有することができる。ニッケルは、硫酸ニッケル六水和物生成物を得るために、蒸発晶析124によって第2の逆抽出206を出る逆抽出生成物から回収することができる。
【0097】
ニッケル溶媒抽出114からの浸出液アウトプット(溶媒抽出201からのラフィネート)は、いくつかの実施形態では、ニッケル溶媒抽出114における塩基の添加に起因して減少した量のマンガン、コバルト及び/又はニッケル並びに増加したナトリウム、アンモニウム及び/又はカルシウムと共に、残りの標的金属であるリチウムを含む。浸出液には、鉄、アルミニウム及び/又は銅などの1種以上の非標的金属が含まれ得る。この浸出液は、リチウム溶媒抽出116に供給される。リチウム溶媒抽出116では、リチウムは、プロトン供与剤(アルコール、ケトン(例えば、ベータ-ジケトン)、アルデヒド、脂肪酸又はそれらの混合物など)及び中性有機リン供与体、例えばホスフィンオキシド(CYANEX(登録商標)936PとしてSolvayS.A.から入手可能)を含む有機溶液を使用して、浸出液から分離される。抽出剤は炭化水素系溶媒中で1~40体積%の濃度に希釈され得る。リチウム溶媒抽出116は、マンガン溶媒抽出110に使用されるpH及び/又はコバルト溶媒抽出112に使用されるpH及び/又はニッケル溶媒抽出114に使用されるpHよりも高いpHにおいて多段階向流プロセスで行うことができ、pHは1種以上の塩基の添加によって制御される。例えば、いくつかの実施形態では、リチウム溶媒抽出のpHは、9~12である。マンガン溶媒抽出110について説明したように、いくつかの実施形態では、リチウム溶媒抽出116は、抽出剤の100%未満の担持容量で行われる。例えば、いくつかの実施形態では、抽出剤に対する金属担持は、抽出剤担持容量の70%未満、抽出剤担持容量の50%未満又は抽出剤担持容量の30%未満である。リチウム溶媒抽出116では、リチウムは、ナトリウム、アンモニウム及び/又はカルシウムから有機溶液に分離される。リチウム以外の共抽出剤も有機溶液に移すことができる。
【0098】
有機溶液中の抽出された金属は、例えば、マンガン、コバルト及びニッケルについて上述したように、選択的逆抽出200を受けることができる。選択的逆抽出200は、リチウムを標的とする第2の逆抽出206と、第2の逆抽出206のpHよりも高いpH及び低いpHでそれぞれ行われ、第2の逆抽出206前及び後にそれぞれ行われる第1の逆抽出204又は第3の逆抽出208の一方又は両方を含む。第1の逆抽出204及び第3の逆抽出208は、それらが行われるそれぞれのpHレベルのため、リチウム及び/又は1種以上の他の非標的金属と比較して、1種以上の非標的金属に対して選択的である。いくつかの実施形態では、リチウム抽出では、第1の逆抽出204は、10~12の第1のpHで行うことができ、第2の逆抽出206は、1~7(例えば、1.5~7)の第2のpHで行うことができ、第3の逆抽出208は、1~6の第3のpHで行うことができる。いくつかの実施形態では、リチウム抽出では、第1の逆抽出204は、ナトリウム及び/又はアンモニウムを選択的に除去する。いくつかの実施形態では、リチウム抽出では、第3の逆抽出208はニッケル及び/又はカルシウムを選択的に除去する。第1の逆抽出204及び第3の逆抽出208からの逆抽出溶液は、上述したように、プロセス100の前の部分に供給することができる。リチウムを標的とする選択的逆抽出のためのスクラビング溶液は、少なくとも部分的に、リチウム生成物回収ブリード流、リチウム電気透析若しくは蒸発晶析ブリード流及び/又は硫酸リチウムを含むリチウム逆抽出生成物を含み得る。スクラビング溶液は、代わりに又は追加的に、硫酸などの硫黄溶液を含み得る。
【0099】
第2の逆抽出206から得られる逆抽出生成物中の硫酸リチウムは、95%を超えるイオン純度を有することができる。リチウムは、LiOH水溶液を得るための電気透析126及びそれに続く水酸化リチウム一水和物を得るための蒸発晶析127により、第2の逆抽出206を出る逆抽出生成物から回収され得、且つ/又は炭酸リチウム及び/若しくは水酸化リチウムを得るために1種以上の炭酸塩及び/若しくは水酸化物塩基を添加することにより、析出128を行うことができる。
【0100】
リチウム溶媒抽出116後、使用済み浸出液を蒸発晶析によって処理することで、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム及び/又は硫酸カルシウムなどの添加された塩基性化学物質の残渣を得ることができる。いくつかの実施形態では、蒸発晶析中に回収された水蒸気は、凝縮されて、浸出102における水系に寄与するなど、プロセス100において再利用することができる。
【0101】
上の説明及び実施例を考慮して、当業者は、過度な実験を行うことなく本記載の技術を実施できるであろう。
【0102】
いくつかの実施形態を上で詳細に説明したが、他の修正形態も可能である。図面に示されている論理フローは、別段の指示がない限り、望ましい結果を得るために、示されている特定の順序又は一連の順序を必要としない。加えて、他の行為が提供され得るか、又は説明するフローから行為が削除され得、且つ説明した系に対して他の構成要素を追加又は削除することができる。したがって、別の実施形態が添付の特許請求の範囲に含まれる。例えば、2つ又は3つの逆抽出段階を有する選択的逆抽出の例が提供されているが、いくつかの実施形態では、選択的逆抽出の段階の数は、4つ以上であり得、それらの段階のpHは、時間的順序で各段階において減少する。例えば、マンガン、コバルト、ニッケル及びリチウムの抽出を含むプロセスが説明されているが、プロセスは、これらの標的金属のそれぞれを含む必要はない。例えば、マンガンの抽出後、コバルト及び/又はニッケルが抽出されることなく、プロセスは、ニッケル又はリチウムの抽出に進むことができる。代わりに又は加えて、プロセスは、1種以上の追加の金属の抽出を含み得る。
図1
図2
【国際調査報告】