IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティドの特許一覧

特表2024-501854少なくとも1つの酸化剤を使用することによる塩形成を通した煙道ガス濾過の触媒効率の改善
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-16
(54)【発明の名称】少なくとも1つの酸化剤を使用することによる塩形成を通した煙道ガス濾過の触媒効率の改善
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/50 20060101AFI20240109BHJP
   B01D 53/83 20060101ALI20240109BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B01D53/50 100
B01D53/83 ZAB
B01D53/94 222
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540048
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 US2021065068
(87)【国際公開番号】W WO2022146872
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/132,289
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】チュオナン ソン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン スターク
【テーマコード(参考)】
4D002
4D148
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AC01
4D002AC04
4D002AC10
4D002BA03
4D002BA05
4D002BA14
4D002CA11
4D002DA02
4D002DA05
4D002DA07
4D002DA11
4D002DA12
4D002DA16
4D002DA37
4D002DA51
4D002DA52
4D002DA66
4D002EA02
4D002FA06
4D002GA01
4D002GB02
4D002GB03
4D002GB08
4D002HA02
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA17
4D148AB01
4D148AB02
4D148AC04
4D148BB01
4D148CA06
4D148CA07
4D148CD01
4D148CD05
4D148EA08
(57)【要約】
少なくとも1つの濾材の除去効率を増大させるためのシステムおよび方法。いくつかの実施形態において、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入し、SOを少なくとも1つの酸化剤と反応させ、三酸化硫黄(SO)、硫酸(HSO)またはそれらの任意の組合せを形成させる。実施形態のいくつかはさらに、煙道ガス流中にアンモニア(NH)および乾燥吸着剤を導入し、三酸化硫黄(SO)の少なくとも一部分、硫酸(HSO)の少なくとも一部分またはそれらの任意の組合せをアンモニア(NH)と反応させ、少なくとも1つの塩を形成させるステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの濾材を得るステップであって、
前記少なくとも1つの濾材が少なくとも1つの触媒材料を含むステップと;
前記少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガスを流動させ、こうして煙道ガス流が前記少なくとも1つの濾材の前記断面を通過するようにするステップであって、
前記煙道ガス流が二酸化硫黄(SO)を含んでいるステップと;
前記少なくとも1つの濾材のSO除去効率を増大させるステップであって、
前記煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入して、前記SOの少なくとも一部分を前記少なくとも1つの酸化剤と反応させ、三酸化硫黄(SO)、硫酸(HSO)またはそれらの任意の組合せを形成するステップ;および
前記煙道ガス流中にアンモニア(NH)を導入して、前記三酸化硫黄(SO)の少なくとも一部分、前記硫酸(HSO)の少なくとも一部分またはそれらの任意の組合せを前記アンモニア(NH)と反応させ、少なくとも1つの塩を形成するステップ、
を含むステップと;
を含んでなる、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの濾材の前記SO除去効率が、前記少なくとも1つの濾材の初期SO除去効率との関係において0.1%~99.9%増大させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記煙道ガス流がさらに:
一酸化窒素(NO);および
二酸化窒素(NO)、
を含むNOx化合物を含み、
前記煙道ガス流中に前記少なくとも1つの酸化剤を導入するステップが、前記NOx化合物の総濃度の2%~99%の範囲までNO濃度を増大させ、かつ、NO濃度を増大させることにより、前記少なくとも1つの濾材のNOx除去効率が増大する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの酸化剤が:
過酸化水素(H)、オゾン(O)、ヒドロキシルラジカル、少なくとも1つの有機過酸化物、少なくとも1つの金属過酸化物、少なくとも1つのペルオキシ酸、少なくとも1つの過炭酸塩、少なくとも1つの過ホウ酸塩、少なくとも1つの過硫酸塩、少なくとも1つの過マンガン酸塩、少なくとも1つの次亜塩素酸塩、二酸化塩素(ClO)、少なくとも1つの塩素酸塩、少なくとも1つの過塩素酸塩、少なくとも1つの次亜塩素酸塩、過塩素酸(HClO)、少なくとも1つのビスマス酸塩、以上のものの少なくとも1つを含む任意の水溶液、またはそれらの任意の組合せ、
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの酸化剤がHまたはその水溶液である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記煙道ガス流中に少なくとも1つの乾燥吸着剤を導入して、前記三酸化硫黄(SO)の少なくとも一部分、前記硫酸(HSO)の少なくとも一部分またはそれらの任意の組合せを前記少なくとも1つの乾燥吸着剤と反応させ、少なくとも1つの塩を形成するステップをさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記煙道ガス流が、酸素(O)、水(HO)、窒素(N)、三酸化硫黄(SO)、一酸化炭素(CO)、少なくとも1つの炭化水素、アンモニア(NH)、またはそれらの任意の組合せをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記NHが、前記煙道ガス流の前記濃度の0.0001%~0.5%の範囲内の濃度で前記煙道ガス流中に導入される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの酸化剤が、前記煙道ガス流中の前記SOの少なくとも5%をSO、HSO、前記少なくとも1つの塩、またはそれらの任意の組合せへと変換するのに充分な量で前記煙道ガス流中に導入される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記煙道ガス流中に導入される前記少なくとも1つの酸化剤の前記充分量が、水中の前記少なくとも1つの酸化剤の総重量に基づいて0.001重量%~90重量%である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記煙道ガス流中に導入される前記少なくとも1つの酸化剤の前記充分量が、前記煙道ガス流の5ppm~10000ppmである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記煙道ガス流中に導入される前記少なくとも1つの酸化剤の前記充分量が、前記少なくとも1つの酸化剤対SOの濃度比で1:10~20:1である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記煙道ガス流の温度が、少なくとも、前記少なくとも1つの濾材の断面を横断する前記煙道ガス流の前記流動ステップ中、100℃~300℃の範囲内である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記水が、少なくとも、前記少なくとも1つの濾材の断面を横断する前記煙道ガス流の前記流動ステップ中、前記煙道ガス流の総体積に基づいて0.1体積%~50体積%の範囲内の量で前記煙道ガス流中に存在する、請求項7~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記SOが、少なくとも、前記少なくとも1つの濾材の断面を横断する前記煙道ガス流の前記流動ステップ中、0.01ppm~1000ppmの量で前記煙道ガス流中に存在する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記NOx化合物が、少なくとも、前記少なくとも1つの濾材の断面を横断する前記煙道ガス流の前記流動ステップ中、0.1ppm~5000ppmの量で前記煙道ガス流中に存在する、請求項3~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの乾燥吸着剤が、重炭酸ナトリウム、トロナ、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、セメントダスト、石灰またはそれらの任意の組合せを含む、請求項6~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの濾材から前記少なくとも1つの塩を除去するステップをさらに含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの濾材が:
多孔質保護層、および
多孔質触媒層、
を含み、
前記少なくとも1つの濾材から前記少なくとも1つの塩を除去するステップが、前記少なくとも1つの濾材の前記多孔質保護層から前記少なくとも1つの塩を除去するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの塩が、硫酸アンモニウム(AS)、重硫酸アンモニウム(ABS)、重硫酸水素三アンモニウム(AHS)、スルファミン酸アンモニウム(ASM)またはそれらの任意の組合せを含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記NHを前記煙道ガス流中に導入するステップが、前記煙道ガス流中に前記少なくとも1つの酸化剤を導入した後に行なわれる、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記NHを前記煙道ガス流中に導入するステップが、前記煙道ガス流中に前記少なくとも1つの酸化剤を導入する前、前記煙道ガス流中への前記少なくとも1つの酸化剤の導入ステップ中、またはそれらの任意の組合せにおいて行なわれる、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記煙道ガス流中に前記少なくとも1つの乾燥吸着剤を導入するステップが、前記煙道ガス流中に前記少なくとも1つの酸化剤を導入した後に行なわれる、請求項6~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記煙道ガス流中に前記少なくとも1つの乾燥吸着剤を導入するステップが、前記煙道ガス流中に前記少なくとも1つの酸化剤を導入する前、前記煙道ガス流中への前記少なくとも1つの酸化剤の導入ステップ中、またはそれらの任意の組合せにおいて行なわれる、請求項6~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つの濾材を得るステップであって、
前記少なくとも1つの濾材が少なくとも1つの触媒材料を含むステップと;
前記少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガスを流動させ、こうして煙道ガス流が前記少なくとも1つの濾材の前記断面を通過するようにするステップであって、
前記煙道ガス流が二酸化硫黄(SO)を含んでいるステップと;
前記少なくとも1つの濾材のSO除去効率を増大させるステップであって、
前記煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入して、前記SOの少なくとも一部分を前記少なくとも1つの酸化剤と反応させ、三酸化硫黄(SO)、硫酸(HSO)またはそれらの任意の組合せを形成するステップ;および
前記煙道ガス流中に少なくとも1つの乾燥吸着剤を導入して、前記三酸化硫黄(SO)の少なくとも一部分、前記硫酸(HSO)の少なくとも一部分またはそれらの任意の組合せを前記少なくとも1つの乾燥吸着剤と反応させ、少なくとも1つの塩を形成するステップ、
を含むステップと;
を含む方法。
【請求項26】
前記煙道ガス流中にアンモニア(NH)を導入して、前記三酸化硫黄(SO)の少なくとも一部分、前記硫酸(HSO)の少なくとも一部分またはそれらの任意の組合せを前記アンモニア(NH)と反応させ、少なくとも1つの塩を形成するステップ、
をさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの濾材のSO除去効率を増大させるステップが:
前記煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入して、前記SOの少なくとも1ppmを前記少なくとも1つの酸化剤と反応させ、三酸化硫黄(SO)、硫酸(HSO)またはそれらの任意の組合せを形成するステップ;および
前記煙道ガス流中にアンモニア(NH)を導入して、前記三酸化硫黄(SO)の少なくとも1ppm、前記硫酸(HSO)の少なくとも1ppmまたはそれらの任意の組合せを前記アンモニア(NH)と反応させ、少なくとも1つの塩を形成するステップ、
を含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
アンモニア(NH)が、7:200~9:5というNH対NOx化合物の濃度比で前記煙道ガス流中に導入される、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1つの濾材であって、
上流側;
下流側;
を含む少なくとも1つの濾材と;
少なくとも1つの触媒材料と;
少なくとも1つのフィルタバッグであって、
前記少なくとも1つの濾材がこの少なくとも1つのフィルタバッグの内部に配置されている、フィルタバッグと;
少なくとも1つのフィルタバッグハウジングであって、
前記少なくとも1つのフィルタバッグがこの少なくとも1つのフィルタバッグハウジングの内部に配置されており;
前記少なくとも1つのフィルタバッグハウジングが、前記少なくとも1つの濾材の断面を横断する煙道ガス流の流量を収容するように構成されており、こうして前記煙道ガス流は前記少なくとも1つの濾材の前記断面を前記少なくとも1つの濾材の前記上流側から前記少なくとも1つの濾材の前記下流側まで通過するようになっており、
前記煙道ガス流が二酸化硫黄(SO)を含んでいる、
少なくとも1つのフィルタバッグハウジングと;
を含んでなるシステムであって
前記少なくとも1つの濾材のSOx除去効率を:
前記煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入した時点;および
前記煙道ガス流中にアンモニア(NH)を導入した時点、
で増大させるように構成されているシステム。
【請求項30】
前記煙道ガス流中に少なくとも1つの乾燥吸着剤を導入した時点で前記少なくとも1つの濾材のSOx除去効率をさらに増大させるように構成されている、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
少なくとも1つの濾材であって、
上流側;
下流側;
を含む少なくとも1つの濾材と;
少なくとも1つの触媒材料と;
少なくとも1つのフィルタバッグであって、
前記少なくとも1つの濾材がこの少なくとも1つのフィルタバッグの内部に配置されている、フィルタバッグと;
少なくとも1つのフィルタバッグハウジングであって、
前記少なくとも1つのフィルタバッグがこの少なくとも1つのフィルタバッグハウジングの内部に配置されており;
前記少なくとも1つのフィルタバッグハウジングが、前記少なくとも1つの濾材の断面を横断する煙道ガス流の流量を収容するように構成されており、こうして前記煙道ガス流は前記少なくとも1つの濾材の前記断面を前記少なくとも1つの濾材の前記上流側から前記少なくとも1つの濾材の前記下流側まで通過するようになっており、
前記煙道ガス流が二酸化硫黄(SO)を含んでいる、
少なくとも1つのフィルタバッグハウジングと;
を含んでなるシステムであって
前記少なくとも1つの濾材のSOx除去効率を:
前記煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入した時点;および
前記煙道ガス流中に少なくとも1つの乾燥吸着剤を導入した時点、
で増大させるように構成されているシステム。
【請求項32】
前記煙道ガス流中にNHを導入した時点で前記少なくとも1つの濾材のSOx除去効率をさらに増大させるように構成されている、請求項31に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全体が参照により本明細書に組込まれている、「少なくとも1つの酸化剤を使用することによる塩形成を通した煙道ガス濾過の触媒効率の改善」なる名称の、2020年12月30日出願の米国仮特許出願第63/132289に対する優先権およびその利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、濾材の分野、そして煙道ガス流を濾過するための方法およびそれを使用するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
石炭火力発電所、都市廃棄物焼却炉および石油精製プラントは、多種多様な大量の環境汚染物質、窒素酸化物(NOx化合物)、水銀(Hg)蒸気、硫黄酸化物そして粒子状物質(PM)を含有する大量の煙道ガスを生成する。米国では、石炭を燃焼させるだけで、毎年、約2700万トンのSOと45トンのHgを生成する。したがって、石炭火力発電所の煙道ガスなどの産業煙道ガスからNOx化合物、硫黄酸化物(SO)、水銀蒸気および微小粒子状物質を除去する方法の改善に対する必要性が存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
いくつかの実施形態において、方法には、少なくとも1つの濾材を得るステップであって、少なくとも1つの濾材が少なくとも1つの触媒材料を含むステップと;少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガスを流動させ、こうして煙道ガス流が少なくとも1つの濾材の断面を通過するようにするステップであって、煙道ガス流が二酸化硫黄(SO)を含んでいるステップと;少なくとも1つの濾材のSO除去効率を増大させるステップであって、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入して、SOの少なくとも一部分を少なくとも1つの酸化剤と反応させ、三酸化硫黄(SO)、硫酸(HSO)またはそれらの任意の組合せを形成するステップ;および煙道ガス流中にアンモニア(NH)を導入して、三酸化硫黄(SO)の少なくとも一部分、硫酸(HSO)の少なくとも一部分またはそれらの任意の組合せをアンモニア(NH)と反応させ、少なくとも1つの塩を形成するステップ、を含むステップと、が含まれている。
【0005】
方法のいくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材のSO除去効率は、少なくとも1つの濾材の初期SO除去効率との関係において0.1%~99.9%増大させられる。
【0006】
方法のいくつかの実施形態において、煙道ガス流はさらに:一酸化窒素(NO);および二酸化窒素(NO)、を含むNOx化合物を含み、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入するステップは、NOx化合物の総濃度の2%~99%の範囲までNO濃度を増大させ、かつ、NO濃度を増大させることにより、少なくとも1つの濾材のNOx除去効率が増大する。
【0007】
方法のいくつかの実施形態において、少なくとも1つの酸化剤は、過酸化水素(H)、オゾン(O)、ヒドロキシルラジカル、少なくとも1つの有機過酸化物、少なくとも1つの金属過酸化物、少なくとも1つのペルオキシ酸、少なくとも1つの過炭酸塩、少なくとも1つの過ホウ酸塩、少なくとも1つの過硫酸塩、少なくとも1つの過マンガン酸塩、少なくとも1つの次亜塩素酸塩、二酸化塩素(ClO)、少なくとも1つの塩素酸塩、少なくとも1つの過塩素酸塩、少なくとも1つの次亜塩素酸塩、過塩素酸(HClO)、少なくとも1つのビスマス酸塩、以上のものの少なくとも1つを含む任意の水溶液、またはそれらの任意の組合せ、を含む。
【0008】
方法のいくつかの実施形態において、少なくとも1つの酸化剤は、Hまたはその水溶液である。
【0009】
いくつかの実施形態において、該方法は、煙道ガス流中に少なくとも1つの乾燥吸着剤を導入して、三酸化硫黄(SO)の少なくとも一部分、硫酸(HSO)の少なくとも一部分またはそれらの任意の組合せを少なくとも1つの乾燥吸着剤と反応させ、少なくとも1つの塩を形成するステップ、をさらに含む。
【0010】
方法のいくつかの実施形態において、煙道ガス流は、酸素(O)、水(HO)、窒素(N)、三酸化硫黄(SO)、一酸化炭素(CO)、少なくとも1つの炭化水素、アンモニア(NH)、またはそれらの任意の組合せをさらに含む。
【0011】
方法のいくつかの実施形態において、NHは、煙道ガス流の濃度の0.0001%~0.5%の範囲内の濃度で煙道ガス流中に導入される。
【0012】
方法のいくつかの実施形態において、少なくとも1つの酸化剤は、煙道ガス流中のSOの少なくとも5%をSO、HSO、少なくとも1つの塩、またはそれらの任意の組合せへと変換するのに充分な量で煙道ガス流中に導入される。
【0013】
方法のいくつかの実施形態において、煙道ガス流中に導入される少なくとも1つの酸化剤の充分量は、水中の少なくとも1つの酸化剤の総重量に基づいて0.001重量%~90重量%である。
【0014】
方法のいくつかの実施形態において、煙道ガス流中に導入される少なくとも1つの酸化剤の充分量は、煙道ガス流の5ppm~10000ppmである。
【0015】
方法のいくつかの実施形態において、煙道ガス流中に導入される少なくとも1つの酸化剤の充分量は、少なくとも1つの酸化剤対SOの濃度比で1:10~20:1である。
【0016】
方法のいくつかの実施形態において、煙道ガス流の温度は、少なくとも、少なくとも1つの濾材の断面を横断する煙道ガス流の流動ステップ中、100℃~300℃の範囲内である。
【0017】
方法のいくつかの実施形態において、水は、少なくとも、少なくとも1つの濾材の断面を横断する煙道ガス流の流動ステップ中、煙道ガス流の総体積に基づいて0.1体積%~50体積%の範囲内の量で煙道ガス流中に存在する。
【0018】
方法のいくつかの実施形態において、SOは、少なくとも、少なくとも1つの濾材の断面を横断する煙道ガス流の流動ステップ中、0.01ppm~1000ppmの量で煙道ガス流中に存在する。
【0019】
方法のいくつかの実施形態において、NOx化合物は、少なくとも、少なくとも1つの濾材の断面を横断する煙道ガス流の流動ステップ中、0.1ppm~5000ppmの量で煙道ガス流中に存在する。
【0020】
方法のいくつかの実施形態において、少なくとも1つの乾燥吸着剤は、重炭酸ナトリウム、トロナ、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、セメントダスト、石灰またはそれらの任意の組合せを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、該方法は、少なくとも1つの濾材から少なくとも1つの塩を除去するステップをさらに含む。
【0022】
方法のいくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材は、多孔質保護層、多孔質触媒層、を含み、少なくとも1つの濾材から少なくとも1つの塩を除去するステップは、少なくとも1つの濾材の多孔質保護層から少なくとも1つの塩を除去するステップを含む。
【0023】
方法のいくつかの実施形態において、少なくとも1つの塩は、硫酸アンモニウム(AS)、重硫酸アンモニウム(ABS)、重硫酸水素三アンモニウム(AHS)、スルファミン酸アンモニウム(ASM)またはそれらの任意の組合せを含む。
【0024】
方法のいくつかの実施形態において、NHを煙道ガス流中に導入するステップは、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入した後で行なわれる。
【0025】
方法のいくつかの実施形態において、NHを煙道ガス流中に導入するステップは、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入する前、煙道ガス流中への少なくとも1つの酸化剤の導入ステップ中、またはそれらの任意の組合せにおいて行なわれる。
【0026】
方法のいくつかの実施形態において、煙道ガス流中に少なくとも1つの乾燥吸着剤を導入するステップは、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入した後で行なわれる。
【0027】
方法のいくつかの実施形態において、煙道ガス流中に少なくとも1つの乾燥吸着剤を導入するステップは、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入する前、煙道ガス流中への少なくとも1つの酸化剤の導入ステップ中、またはそれらの任意の組合せにおいて行なわれる。
【0028】
いくつかの実施形態において、方法には、少なくとも1つの濾材を得るステップであって、少なくとも1つの濾材が少なくとも1つの触媒材料を含むステップと;少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガスを流動させ、こうして煙道ガス流が少なくとも1つの濾材の断面を通過するようにするステップであって、煙道ガス流が二酸化硫黄(SO)を含んでいるステップと;少なくとも1つの濾材のSO除去効率を増大させるステップであって、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入して、SOの少なくとも一部分を少なくとも1つの酸化剤と反応させ、三酸化硫黄(SO)、硫酸(HSO)またはそれらの任意の組合せを形成するステップ;および煙道ガス流中に少なくとも1つの乾燥吸着剤を導入して、三酸化硫黄(SO)の少なくとも一部分、硫酸(HSO)の少なくとも一部分またはそれらの任意の組合せを少なくとも1つの乾燥吸着剤と反応させ、少なくとも1つの塩を形成するステップ、を含むステップと、が含まれる。
【0029】
いくつかの実施形態において、該方法は、煙道ガス流中にアンモニア(NH)を導入して、三酸化硫黄(SO)の少なくとも一部分、硫酸(HSO)の少なくとも一部分またはそれらの任意の組合せをアンモニア(NH)と反応させ、少なくとも1つの塩を形成するステップ、をさらに含む。
【0030】
方法のいくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材のSO除去効率を増大させるステップは、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入して、SOの少なくとも1ppmを少なくとも1つの酸化剤と反応させ、三酸化硫黄(SO)、硫酸(HSO)またはそれらの任意の組合せを形成するステップ;および煙道ガス流中にアンモニア(NH)を導入して、三酸化硫黄(SO)の少なくとも1ppm、硫酸(HSOの)少なくとも1ppmまたはそれらの任意の組合せをアンモニア(NH)と反応させ、少なくとも1つの塩を形成するステップ、を含む。
【0031】
方法のいくつかの実施形態において、アンモニア(NH)は、7:200~9:5というNH対NOx化合物の濃度比で煙道ガス流中に導入される。
【0032】
いくつかの実施形態において、システムには、少なくとも1つの濾材であって、上流側;下流側;を含む少なくとも1つの濾材と;少なくとも1つの触媒材料と;少なくとも1つのフィルタバッグであって、少なくとも1つの濾材がこの少なくとも1つのフィルタバッグの内部に配置されている、フィルタバッグと;少なくとも1つのフィルタバッグハウジングであって、少なくとも1つのフィルタバッグがこの少なくとも1つのフィルタバッグハウジングの内部に配置されており;少なくとも1つのフィルタバッグハウジングが、少なくとも1つの濾材の断面を横断する煙道ガス流の流量を収容するように構成されており、こうして煙道ガス流は少なくとも1つの濾材の断面を少なくとも1つの濾材の上流側から少なくとも1つの濾材の下流側まで通過するようになっており、煙道ガス流が二酸化硫黄(SO)を含んでいる、少なくとも1つのフィルタバッグハウジングが含まれ、該システムは:少なくとも1つの濾材のSOx除去効率を:煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入した時点;および煙道ガス流中にアンモニア(NH)を導入した時点、で増大させるように構成されている。
【0033】
システムのいくつかの実施形態において、該システムは、煙道ガス流中に少なくとも1つの乾燥吸着剤を導入した時点で少なくとも1つの濾材のSOx除去効率をさらに増大させるように構成されている。
【0034】
いくつかの実施形態において、システムには、少なくとも1つの濾材であって、上流側;下流側;を含む少なくとも1つの濾材と;少なくとも1つの触媒材料と;少なくとも1つのフィルタバッグであって、少なくとも1つの濾材がこの少なくとも1つのフィルタバッグの内部に配置されている、フィルタバッグと;少なくとも1つのフィルタバッグハウジングであって、少なくとも1つのフィルタバッグがこの少なくとも1つのフィルタバッグハウジングの内部に配置されており;少なくとも1つのフィルタバッグハウジングが、少なくとも1つの濾材の断面を横断する煙道ガス流の流量を収容するように構成されており、こうして煙道ガス流は少なくとも1つの濾材の断面を少なくとも1つの濾材の上流側から少なくとも1つの濾材の下流側まで通過するようになっており、煙道ガス流が二酸化硫黄(SO)を含んでいる、少なくとも1つのフィルタバッグハウジングと、が含まれ、システムは、少なくとも1つの濾材のSOx除去効率を:煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入した時点;および煙道ガス流中に少なくとも1つの乾燥吸着剤を導入した時点、で増大させるように構成されている。
【0035】
システムのいくつかの実施形態において、該システムは、煙道ガス流中にNHを導入した時点で少なくとも1つの濾材のSOx除去効率をさらに増大させるように構成されている。
【0036】
本開示のいくつかの実施形態が本明細書中で、添付図面を参照して単なる例として説明される。ここで図面を詳しく具体的に参照して、図示された実施形態が本開示の実施形態を例示的に論述する目的を有する一例であることが強調される。この点に関して、図面と共に説明を取り上げることにより、本開示の実施形態をいかに実践しうるかが当業者には明らかとなる。
【0037】
本開示のいくつかの実施形態が本明細書中で、添付図面を参照して単なる例として説明される。ここで図面を詳しく具体的に参照して、図示された実施形態が本開示の実施形態を例示的に論述する目的を有する一例であることが強調される。この点に関して、図面と共に説明を取り上げることにより、本開示の実施形態をいかに実践しうるかが当業者には明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1A図1Aは、本開示のいくつかの実施形態に係る濾材を含むフィルタバッグを伴う例示的システムを描いている。
図1B図1Bは、本開示のいくつかの実施形態に係る濾材を描いている。
図1C図1Cは、本開示のいくつかの実施形態に係る多孔質触媒層を描いている。
図2図2は、本開示のいくつかの実施形態に係る1重量%のHの注入時点での例示的SO濃度変化を描いている。
図3図3は、本開示のいくつかの実施形態に係る1重量%のHの注入時点での例示的NOおよびNO濃度変化を描いている。
図4A図4Aは、本開示のいくつかの実施形態に係る異なる温度での1重量%のH注入を用いた例示的SO変換を描いている。
図4B図4Bは、本開示のいくつかの実施形態に係る異なる温度での1重量%のH注入を用いたNOからNOへの例示的変換を描いている。
図5A図5Aは、本開示のいくつかの実施形態に係る異なる温度での0.3重量%のH注入を用いた例示的SO変換を描いている。
図5B図5Bは、本開示のいくつかの実施形態に係る異なる温度での0.3重量%のH注入を用いたNOからNOへの例示的変換を描いている。
図6A図6Aは、本開示のいくつかの実施形態に係る異なる温度での0.05重量%のH注入を用いた例示的SO変換を描いている。
図6B図6Bは、本開示のいくつかの実施形態に係る異なる温度での0.05重量%のH注入を用いたNOからNOへの例示的変換を描いている。
図7図7は、本開示のいくつかの実施形態に係るNH注入後の少なくとも1つの濾材表面上の固体粒子の例示的光学画像を描いている。
図8A図8Aは、本開示のいくつかの実施形態に係るNH注入後の少なくとも1つの濾材表面上における固体粒子の例示的SEM/EDX画像および元素マッピングを描いている。
図8B図8Bは、本開示のいくつかの実施形態に係るNH注入後の少なくとも1つの濾材表面上における固体粒子の例示的SEM/EDX画像および元素マッピングを描いている。
図8C図8Cは、本開示のいくつかの実施形態に係るNH注入後の少なくとも1つの濾材表面上における固体粒子の例示的SEM/EDX画像および元素マッピングを描いている。
図8D図8Dは、本開示のいくつかの実施形態に係るNH注入後の少なくとも1つの濾材表面上における固体粒子の例示的SEM/EDX画像および元素マッピングを描いている。
図9図9は、本開示のいくつかの実施形態に係るSOとNHの混合物に対するH注入後の重硫酸アンモニウム、例示的多孔質保護層および例示的触媒フィルタの例示的フーリエ変換赤外線分光法(FTIR)を描いている。
図10図10は、本開示のいくつかの実施形態に係るSOとNHの混合物に対する脱イオン水注入後の重硫酸アンモニウム、例示的多孔質保護層および例示的触媒フィルタの例示的FTIRを描いている。
図11図11は、本開示のいくつかの実施形態に係るSO、NHおよび乾燥吸着剤の混合物に対するH注入後の例示的触媒フィルタの例示的フーリエ変換赤外線分光法(FTIR)を描いている。
【発明を実施するための形態】
【0039】
開示された利益および改善の中で、添付図と併せて以下の説明を考慮することによって、本開示の他の目的および利点が明らかになるものである。本開示の詳細な実施形態が本明細書中で開示されているが、開示されている実施形態はさまざまな形態で具体化され得る本開示を単に例示するものにすぎない。さらに、本開示のさまざまな実施形態に関して提供されている実施例の各々は、限定的ではなく例示的なものであるように意図されている。
【0040】
本明細書中で参照指示されている全ての先行特許および刊行物は、その全体が参照により組込まれている。
【0041】
明細書およびクレーム全体を通して、以下の用語は、文脈上別段の明確な指示の無いかぎり、本明細書中で明示的に結び付けられた意味を有する。本明細書中で使用されている「一実施形態において」、「実施形態において」および「いくつかの実施形態において」なる表現は、必ずしも同じ実施形態を意味していないが、同じ実施形態を意味していてもよい。さらに、本明細書中で使用されている「別の実施形態において」、および「いくつかの他の実施形態において」なる表現は、必ずしも異なる実施形態を意味しないものの、異なる実施形態を意味していてもよい。本開示の全ての実施形態は、本開示の範囲または精神から逸脱することなく組合せ可能であるように意図されている。
【0042】
本明細書中で使用されているように、「based on(~に基づいて)」なる用語は、別段の明確な指示のないかぎり、排他的でなく、記載されていない追加の要因に基づくものであることを許容する。さらに、明細書全体を通して、「a」、「an」および「the」の意味には、複数についての言及が含まれる。「in(の中)」の意味には、「in(の中)」および「on(~の上)」が含まれる。
【0043】
本明細書中で使用される「between(~の間)」なる用語は、必ずしも他の要素に直接隣接して配置されていることを必要としない。概して、この用語は、何かが2つ以上の他の物によって挟み込まれている構成を意味する。同時に、「between(~の間)」なる用語は、2つの相対する物に直接隣接している何かを記述することができる。したがって、本明細書中で開示されている実施形態のいずれか1つ以上において、他の2つの構造的要素の間に配置されている特定の構造的構成要素は:
特定の構造的構成要素が他の2つ構造的要素の両方と直接接触するような形で、他の2つの構造的要素の両方の間に直接配置されている;
特定の構造的構成要素が他の2つの構造的要素のうちの一方のみと直接接触するような形で、他の2つの構造的要素のうちの一方のみに直接隣接して配置されている;
特定の構造的構成要素が他の2つの構造的要素のうちの一方のみと直接接触しておらず、特定の構造的構成要素および他の2つの構造的要素の一方に並置した別の要素が存在するような形で、他の2つの構造的要素のうちの一方のみに間接的に隣接して配置されている;
特定の構造的構成要素が他の2つの構造的要素の両方と直接接触しておらず、間に他の特徴部を配置できるような形で、他の2つの構造的要素の両方の間に間接的に配置されている;または
それらの任意の組合せである。
【0044】
本明細書中で使用されている「embeded(埋込まれた)」なる用語は、第1の材料が第2の材料全体にわたって分散させられていることを意味する。
【0045】
開示された利益および改善の中で、添付図と併せて以下の説明を考慮することによって、本開示の他の目的および利点が明らかになるものである。本開示の詳細な実施形態が本明細書中で開示されているが、開示されている実施形態はさまざまな形態で具体化され得る本開示を単に例示するものにすぎない。さらに、本開示のさまざまな実施形態に関して提供されている実施例の各々は、限定的ではなく例示的なものであるように意図されている。
【0046】
明細書およびクレーム全体を通して、以下の用語は、文脈上別段の明確な指示の無いかぎり、本明細書中で明示的に結び付けられた意味を有する。本明細書中で使用されている「一実施形態において」、「実施形態において」および「いくつかの実施形態において」なる表現は、必ずしも同じ実施形態を意味していないが、同じ実施形態を意味していてもよい。さらに、本明細書中で使用されている「別の実施形態において」、および「いくつかの他の実施形態において」なる表現は、必ずしも異なる実施形態を意味しないものの、異なる実施形態を意味していてもよい。本開示の全ての実施形態は、本開示の範囲または精神から逸脱することなく組合せ可能であるように意図されている。
【0047】
本明細書中で参照指示されている全ての先行特許、刊行物および試験方法は、その全体が参照により組込まれている。
【0048】
本明細書で使用されている「Flue gas stream(煙道ガス流)」なる用語は、工業的プロセス(例えば非限定的に石炭燃焼プロセス、廃棄物焼却、鋼生産、セメント生産、石灰生産、ガラス生産、工業用ボイラおよび船舶用推進機関など)の少なくとも1つの副産物を含む気体混合物を意味する。いくつかの実施形態において、煙道ガス流は、燃焼プロセスの結果もたらされる濃度と比べて高い濃度で少なくとも1つの気体を含み得る。例えば、1つの非限定的例においては、煙道ガスに対し水蒸気が添加され得る「スクラビング」プロセスに、煙道ガス流を付すことができる。したがって、いくつかのこのような実施形態において、煙道ガス流は、燃焼に起因する初期水蒸気濃度に比べて高い濃度で水蒸気を含み得る。同様にして、いくつかの実施形態において、煙道ガス流は、燃焼プロセスから産出された少なくとも1つの気体の初期濃度に比べて低い濃度で、少なくとも1つの気体を含み得る。これは、例えば、燃焼後に少なくとも1つの気体の少なくとも一部分を除去することによって発生し得る。いくつかの実施形態において、煙道ガスは、多数の燃焼プロセスの副産物の組合せである気体混合物の形をとり得る。
【0049】
本明細書で使用される「フロースルー」なる用語は、煙道ガス流を少なくとも1つの濾材の断面を横断して流動させ、こうして、煙道ガス流が少なくとも1つの濾材の断面を通過することを意味する。「フロースルー」構成のいくつかの実施形態において、煙道ガス流は、少なくとも1つの濾材の断面に直交して流動させられる。
【0050】
本明細書中で使用される「上流側」とは、濾材に進入する前の煙道ガス流の場所を意味する。「フロースルー」に関連して、「上流側」は、濾材の断面に進入する前の煙道ガス流の場所を意味し得る。
【0051】
本明細書中で使用される「下流側」とは、濾材から退出した後の煙道ガス流の場所を意味する。「フロースルー」に関連して、「下流側」は、濾材の断面を退出した後の煙道ガス流の場所を意味し得る。
【0052】
本明細書中で使用される「NOx化合物」なる用語は、任意の窒素酸化物を意味する。いくつかの非限定的実施形態において、「NOx化合物」は、具体的に、公知の環境汚染物質である気体窒素酸化物を意味し得る。
【0053】
本明細書中で使用される「酸化剤」とは、煙道ガス流に添加された場合に、煙道ガス流の少なくとも1つの構成成分(例えば少なくとも1つのNO化合物、SOまたはそれらの任意の組合せ)の濃度を低減させるあらゆる形態の粒子状物質を意味する。この濃度低減は、少なくとも1つの構成成分の酸化を通して発生し得る。
【0054】
本明細書で使用される「乾燥吸着剤」とは、煙道ガス流に添加された場合または煙道ガス流が関与するプロセスから生成された場合に、煙道ガス流の少なくとも1つの構成成分(例えば少なくとも1つのSO)の濃度を低減させるあらゆる形態の粒子状物質を意味する。いくつかの実施形態において、煙道ガス流が関与するプロセスによって生成される「乾燥吸着剤」の例としては、非限定的に、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、セメントダスト、石灰ダストなどが含まれる。この濃度低減は、「乾燥吸着剤」による煙道ガス流の少なくとも1つの構成成分の吸着を通して、「乾燥吸着剤」による煙道ガス流の少なくとも1つの構成成分の吸収を通して、「乾燥吸着剤」と煙道ガス流の少なくとも1つの構成成分の反応を通して、あるいはそれらの任意の組合せを通して発生し得る。いくつかの実施形態において、「乾燥吸着剤」なる用語は、乾燥吸着剤注入(すなわち「DSI」)の文脈内におけるこの用語の用法と同義である。
【0055】
本開示のいくつかの実施形態は、方法に関するものである。いくつかの実施形態において、該方法は、少なくとも1つの濾材を得るステップを含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材は、上流側と下流側を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材は、少なくとも1つのフィルタバッグ内に配置される。いくつかの実施形態においては、複数の濾材が、単一のフィルタバッグの内部に配置されている。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのフィルタバッグは、少なくとも1つのフィルタバッグハウジングの内部に収容されている。いくつかの実施形態においては、複数のフィルタバッグが、単一のフィルタバッグハウジングの内部に配置されている。
【0057】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材は少なくとも1つの触媒材料を含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材は、多孔質保護層および多孔質触媒層を含む。いくつかの実施形態において、多孔質触媒層は少なくとも1つの触媒材料を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの触媒材料は、多孔質触媒層上に配置されている。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの触媒材料は、多孔質触媒層の内部にある(例えばその内部に埋込まれている)。
【0059】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材はセラミックキャンドルの形をしている。いくつかの実施形態において、セラミックキャンドルは、少なくとも1つのセラミック材料を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのセラミック材料は、シリカ-アルミン酸塩、カルシウム-マグネシウム-ケイ酸塩、カルシウム-ケイ酸塩繊維、またはそれらの任意の組合せの中から選択される。いくつかの実施形態において、触媒粒子は、少なくとも1つのセラミック材料上にコーティングを形成する。
【0060】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材は、煙道ガス流から固体微粒子、液体エアロゾルまたはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを捕捉するように構成された任意の材料を含み得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材は、フィルタバッグの少なくとも1つの形をしている。
【0061】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの触媒材料は、一酸化バナジウム(VO)、三酸化バナジウム(V)、二酸化バナジウム(VO)、五酸化バナジウム(V)、三酸化タングステン(WO)、三酸化モリブデン(MoO)、二酸化チタン(TiO)、二酸化ケイ素(SiO)、三酸化アルミニウム(Al)、酸化マンガン(MnO)、酸化セリウム(CeO)、酸化クロム(CrO、Cr)、少なくとも1つのゼオライト、少なくとも1つの炭素またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの触媒材料は、触媒粒子の形をしている。
【0062】
いくつかの実施形態において、多孔質保護層は、微多孔質層を含む。いくつかの実施形態において、微多孔質層は、微粒子を捕捉しその浸入を防止する能力を有する保護膜を含む。保護膜は、保護膜から容易に清浄可能であるフィルムまたはケークの形で微粒子を収集でき、こうして濾材の容易なメンテナンスが提供される。保護膜は、非限定的に多孔質製織または不織膜、PTFE製織または不織膜、ePTFE膜、フルオロポリマ膜などの任意の好適な多孔質膜材料から構成され得る。保護膜は、多孔質または微多孔質であってよい。いくつかの実施形態において、微多孔質層は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜を含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの触媒材料は、少なくとも1つの接着剤により濾材に接着される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの触媒材料は、少なくとも1つの接着剤によって多孔質触媒層に接着される。いくつかの例示的実施形態において、少なくとも1つの濾材は、フィルタバッグの形をしており、こうして、少なくとも1つの接着剤による多孔質触媒層に対する少なくとも1つの触媒材料の付着が、コーティングされたフィルタバッグを形成するようになっている。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの触媒材料は、触媒粒子の形をしており、こうして、コーティングされたフィルタバッグは触媒粒子でコーティングされることになる。
【0064】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの接着剤は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、高分子量ポリエチレン(HMWPE)、高分子量ポリプロピレン(HMWPP)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン(THV)、クロロフルオロエチレン(CFE)、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの接着剤は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、高分子量ポリエチレン(HMWPE)、高分子量ポリプロピレン(HMWPP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン(THV)、クロロフルオロエチレン(CFE)およびそれらの任意の組合せからなる群の中から選択される。
【0065】
いくつかの実施形態において、多孔質触媒層は、少なくとも1つのポリマ基材を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのポリマ基材は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)、超高分子量ポリエチレン、ポリパラキシリレン、ポリ乳酸、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド、ポリフェニレンスルフィド、ガラス繊維またはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのポリマ基材は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)、超高分子量ポリエチレン、ポリパラキシリレン、ポリ乳酸、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド、ポリフェニレンスルフィド、ガラス繊維およびそれらの任意の組合せからなる群の中から選択される。
【0066】
いくつかの実施形態において、多孔質触媒層は、少なくとも1つのセラミック基材を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのセラミック基板は、本明細書中に記載のセラミックキャンドルの形をしている。いくつかの実施形態において、1つのセラミック基板はセラミック繊維を含む。いくつかの実施形態において、セラミック繊維は、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩またはそれらの任意の組合せを含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、多孔質触媒層は、多孔質触媒フィルムと少なくとも1つのフェルトバットを含む層状アセンブリの形をしている。いくつかの実施形態において、層状アセンブリは、触媒複合材料であり得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのフェルトバットは、多孔質触媒フィルムの少なくとも1つの側に位置付けされ得る。いくつかの実施形態において、多孔質触媒フィルムは、膜を含む。いくつかの実施形態において、多孔質触媒フィルムは、ポリマ膜を含む。いくつかの実施形態において、多孔質触媒フィルムは、フルオロポリマ膜を含み、多孔質触媒フルオロポリマフィルムと呼ばれ得る。いくつかの実施形態において、多孔質触媒フィルムは、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜を含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、多孔質触媒フィルムは多孔質触媒膜を含む。いくつかの実施形態において、多孔質触媒膜は、少なくとも1つの触媒材料を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの触媒材料は、多孔質触媒膜上に位置されている。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの触媒材料は多孔質触媒膜の内部にある(例えばその内部に埋込まれている)。
【0069】
いくつかの実施形態において、多孔質触媒フィルムは、多孔性の少なくとも40%が、1ミクロン超または約1ミクロン、2ミクロン超または約2ミクロン、3ミクロン超または約3ミクロン、4ミクロン超または約4ミクロン、5ミクロン超または約5ミクロン、6ミクロン超または約6ミクロン、7ミクロン超または約7ミクロン、8ミクロン超または約8ミクロン、9ミクロン超または約9ミクロン、10ミクロン超または約10ミクロン、11ミクロン超または約11ミクロン、12ミクロン超または約12ミクロン、13ミクロン超または約13ミクロン、14ミクロン超または約14ミクロン、または15ミクロン超または約15ミクロン(水銀ポロシメトリにより測定)の細孔サイズを含む体積分率で構成されている。
【0070】
いくつかの実施形態において、ポリマ触媒フィルムは、有孔であり得る。本明細書中で使用される「有孔(perforated)」なる用語は、膜の一部また全部にわたり離隔した穿孔(例えば孔)を意味する。多孔質触媒フィルムは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(ETFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリエチレン、ポリパラキシリレン(PPX)、ポリ乳酸(PLLA)、ポリエチレン(PE)、延伸ポリエチレン(ePE)およびそれらの任意の組合せまたはブレンドを含むかまたはそれらで形成され得る。本開示全体を通して、「PTFE」なる用語は、ポリテトラフルオロエチレンだけでなく、例えばBrancaに対する米国特許第5,708,044号、Baillieに対する米国特許第6,541,589号、Sabolら、に対する米国特許第7,531,611号、Fordに対する米国特許第8,637,144号、およびXuら、に対する米国特許第9,139,669号中に記載の延伸PTFE、変性PTFE、延伸変性PTFE、およびPTFEの延伸コポリマも含むように意図されている。多孔質触媒フィルムは同様に、テトラフルオロエチレン、エチレン、p-キシレンおよび乳酸の1つ以上のモノマで形成されていてもよい。少なくとも1つの実施形態において、多孔質触媒フィルムは、延伸フルオロポリマの溶媒不活性サブミクロン繊維を含むかまたはそれで形成されている。
【0071】
いくつかの実施形態において、多孔質触媒フィルムは、ノードおよびフィブリル微細構造を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜または延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜である。いくつかの実施形態において、多孔質触媒フィルムは、ePTFE膜の内部に交絡された触媒粒子を含む。いくつかの実施形態において、ePTFE膜は、ノード、フィブリルまたはそれらの任意の組合せを含む微細構造を有する。いくつかの実施形態において、触媒粒子は、微細構造内に交絡され得る。いくつかの実施形態において、触媒粒子はノード内に交絡され得る。いくつかの実施形態において、触媒粒子はフィブリル内に交絡され得る。いくつかの実施形態において、触媒粒子はノードとフィブリル内に交絡され得る。PTFE粒子のフィブリルは、他のPTFEフィブリルおよび/またはノードと相互連結して、担持触媒粒子の内部および周りにネットを形成し、それらを有効に固定化する。したがって、1つの非限定的実施形態において、多孔質触媒フィルムは、フィブリル化された微細構造の内部で、担持触媒粒子を固定化し交絡するPTFEフィブリルネットワークで形成され得る。
【0072】
多孔質触媒フィルムは、Zhongら、に対する米国特許第7,710,877号、Zhongらに対する米国特許出願公開第2010/0119699号、Sassaら、に対する米国特許第5,849,235号、Rudolfら、に対する米国特許第6,218,000号またはMortimer.Jrに対する米国特許第4,985,296号中で一般的に教示されている形で、フィブリル化するポリマ粒子を担持触媒粒子とブレンドし、その後1軸または2軸延伸することによって形成され得る。本明細書中で使用される「フィブリル化」なる用語は、フィブリル化ポリマがノードおよびフィブリル微細構造を形成する能力を意味する。混合は例えば、湿式または乾式混合、分散または凝集によって達成可能である。混合が行われる時間および温度は、同時混合されている粒子の粒子サイズ、使用材料および量と共に変動し、当業者によって決定され得る。1軸または2軸延伸は、当業者には公知であり、Goreに対する米国特許第3,953,566号およびHubisに対する米国特許第4,478,665号の中で一般的に記述されている通りの連続またはバッチプロセスにおけるものであり得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのフェルトバットは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フェルト、PTFEフリース、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)フェルト、ePTFEフリース、製織フルオロポリマステープルファイバ、不織フルオロポリマステープルファイバまたはそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのフェルトバットは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フェルト、PTFEフリース、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)フェルト、ePTFEフリース、製織フルオロポリマステープルファイバ、不織フルオロポリマステープルファイバおよびそれらの任意の組合せからなる群の中から選択される。
【0074】
いくつかの実施形態において、本開示の方法にしたがって形成された少なくとも1つの塩は、硫酸アンモニウム(AS)重硫酸アンモニウム(ABS)、重硫酸水素三アンモニウム(AHS)、スルファミン酸アンモニウム(ASM)またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材は、重硫酸アンモニウム(ABS)被着物、硫酸アンモニウム(AS)被着物、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施形態において、ABS被着物は、少なくとも1つの濾材の少なくとも1つの触媒材料上に配置される。いくつかの実施形態において、ABS被着物は、少なくとも1つの濾材の少なくとも1つの触媒材料の内部に配置されている。いくつかの実施形態において、ABS被着物は、多孔質保護層の上流側表面上に配置されている。
【0075】
いくつかの実施形態において、ABS被着物、AS被着物またはそれらの任意の組合せのうちの少なくともいくつかは、少なくとも1つの濾材の除去効率(例えばNOx除去効率、SO除去効率またはそれらの任意の組合せ)を増大させる目的で、除去され得る。いくつかの実施形態において、ABS被着物、AS被着物またはそれらの任意の組合せは、本明細書中に記載の方法の間に生成され得る。いくつかの実施形態において、ABS被着物、AS被着物またはそれらの任意の組合せは、本明細書中に記載の方法の間に除去され得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、ABS被着物は、少なくとも1つの濾材を得るステップの間に、少なくとも1つの濾材の0.01質量%~99質量%の範囲内の濃度で存在する。いくつかの実施形態において、ABS被着物は、少なくとも1つの濾材を得るステップの間に、少なくとも1つの濾材の0.1質量%~99質量%、1質量%~99質量%、10質量%~99質量%、25質量%~99質量%、50質量%~99質量%、75質量%~99質量%または、95質量%~99質量%の範囲内の濃度で存在する。
【0077】
いくつかの実施形態において、ABS被着物は、少なくとも1つの濾材を得るステップの間に、少なくとも1つの濾材の0.01質量%~95質量%、0.01質量%~75質量%、0.01質量%~50質量%、0.01質量%~25質量%、0.01質量%~10質量%、0.01質量%~1質量%または、0.01質量%~0.1質量%の範囲内の濃度で存在する。
【0078】
いくつかの実施形態において、ABS被着物は、少なくとも1つの濾材を得るステップの間に、少なくとも1つの濾材の0.1質量%~95質量%の範囲内の濃度で存在する。いくつかの実施形態において、ABS被着物は、少なくとも1つの濾材を得るステップの間に、少なくとも1つの濾材の1質量%~75質量%の範囲内の濃度で存在する。いくつかの実施形態において、ABS被着物は、少なくとも1つの濾材を得るステップの間に、少なくとも1つの濾材の10質量%~50質量%の範囲内の濃度で存在する。
【0079】
いくつかの実施形態において、該方法は、少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガス流を流動させ、こうして煙道ガス流が少なくとも1つの濾材の断面を通過するようにするステップを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガス流を流動させるステップは、少なくとも1つの濾材の上流側から下流側へ煙道ガス流を流動させるステップを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガス流を流動させるステップは、少なくとも1つの濾材の断面に直交して煙道ガス流を流動させるステップを含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、煙道ガス流は、二酸化硫黄(SO)を含む。いくつかの実施形態において、煙道ガス流はさらに、NOx化合物を含む。いくつかの実施形態において、NOx化合物は、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施形態において、煙道ガス流はさらに、水(HO)、窒素(N)、三酸化硫黄(SO)、一酸化炭素(CO)、少なくとも1つの炭化水素、アンモニア(NH)またはそれらの任意の組合せを含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、煙道ガス流は、少なくとも、少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガス流を流動させるステップの間、100℃~300℃の範囲内の温度を有する。いくつかの実施形態において、煙道ガス流は、少なくとも、少なくとも1つ濾材の断面を横断して煙道ガス流を流動させるステップの間、125℃~300℃、150℃~300℃、175℃~300℃、200℃~300℃、225℃~300℃、250℃~300℃または275℃~300℃の範囲内の温度を有する。
【0082】
いくつかの実施形態において、煙道ガス流は、少なくとも、少なくとも1つ濾材の断面を横断して煙道ガス流を流動させるステップの間、100℃~275℃、100℃~250℃、100℃~225℃、100℃~200℃、100℃~175℃、100℃~150℃または100℃~125℃の範囲内の温度を有する。
【0083】
いくつかの実施形態において、煙道ガス流は少なくとも、少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガス流を流動させるステップの間、125℃~275℃の範囲内の温度を有する。いくつかの実施形態において、煙道ガス流は少なくとも、少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガス流を流動させるステップの間、150℃~250℃の範囲内の温度を有する。いくつかの実施形態において、煙道ガス流は少なくとも、少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガス流を流動させるステップの間、175℃~225℃の範囲内の温度を有する。
【0084】
いくつかの実施形態において、SOは少なくとも、少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガス流を流動させるステップの間、0.01ppm~1000ppm、0.1ppm~1000ppm、1ppm~1000ppm、10ppm~1000ppmまたは100ppm~1000ppmの濃度で、煙道ガス流中に存在する。
【0085】
いくつかの実施形態において、SOは少なくとも、少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガス流を流動させるステップの間、0.01ppm~100ppm、0.01ppm~10ppm、0.01ppm~1ppmまたは0.01ppm~0.1ppmの濃度で煙道ガス流中に存在する。いくつかの実施形態においてSOは少なくとも、少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガス流を流動させるステップの間、0.1ppm~100ppmの濃度で煙道ガス流中に存在する。いくつかの実施形態において、SOは少なくとも、少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガス流を流動させるステップの間、1ppm~10ppmの濃度で煙道ガス流中に存在する。
【0086】
SOの濃度は、MKS MULTI-GASTM2030Dフーリエ変換赤外線分光法(FTIR)分析器およびSDLモデル1080-UV分析器によって測定された。
【0087】
いくつかの実施形態において、NOx化合物は少なくとも、少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガス流を流動させるステップの間、0.1ppm~5000ppm、1ppm~5000ppm、10ppm~5000ppm、100ppm~5000ppm、または1000ppm~5000ppmの濃度で煙道ガス流中に存在する。
【0088】
いくつかの実施形態において、NOx化合物は少なくとも、少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガス流を流動させるステップの間、0.1ppm~1000ppm、0.1ppm~100ppm、0.1ppm~10ppm、または0.1ppm~1ppmの量で煙道ガス流中に存在する。
【0089】
いくつかの実施形態において、NOx化合物は少なくとも、少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガス流を流動させるステップの間、1ppm~1000ppmの濃度で煙道ガス流中に存在する。いくつかの実施形態において、NOx化合物は少なくとも、少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガス流を流動させるステップの間、10ppm~100ppmの濃度で煙道ガス流中に存在する。
【0090】
NOxの濃度は、MKS MULTI-GASTM2030Dフーリエ変換赤外線分光法(FTIR)分析器(MKS Instruments,Andover,MA)によって測定された。
【0091】
いくつかの実施形態において、水(HO)は少なくとも、少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガス流を流動させるステップの間、煙道ガス流の総体積に基づいて、0.1体積%~50体積%、0.5体積%~50体積%、1体積%~50体積%、5体積%~50体積%、10体積%~50体積%、25体積%~50体積%、または40体積%~50体積%の範囲内の量で煙道ガス流中に存在する。
【0092】
いくつかの実施形態において、水(HO)は少なくとも、少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガス流を流動させるステップの間、煙道ガス流の総体積に基づいて、0.1体積%~40体積%、0.1体積%~25体積%、0.1体積%~10体積%、0.1体積%~5体積%、0.1体積%~1体積%、または0.1体積%~0.5体積%の範囲内の量で煙道ガス流中に存在する。
【0093】
いくつかの実施形態において、水(HO)は少なくとも、少なくとも1つの濾材の断面を横断して煙道ガス流を流動させるステップの間、煙道ガス流の総体積に基づいて、0.5体積%~40体積%、1体積%~30体積%、または5体積%~20体積%の範囲内の量で煙道ガス流中に存在する。
【0094】
いくつかの実施形態において、煙道ガス流を清浄する方法は、少なくとも1つの濾材のSO除去効率を増大させるステップを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材のSO除去効率を増大させるステップは、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入するステップを含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材のSO除去効率を増大させるステップは、煙道ガス流中にアンモニアを導入するステップを含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材のSO除去効率を増大させるステップは、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤およびアンモニアを導入するステップを含む。
【0097】
SO除去(変換)効率は、酸化剤の導入(例えばH注入)の前および間のSO濃度にしたがって計算される、SO除去効率(「SO変換」)(%)=((Hを伴わないSO-Hを伴うSO)/Hを伴わないSO)×100%。
【0098】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材のSO除去効率は、少なくとも1つの濾材の初期SO除去効率との関係において0.1%~99.9%、1%~99.9%、10%~99.9%、25%~99.9%、50%~99.9%、75%~99.9%、90%~99.9%、95%~99.9%、または99%~99.9%増大させられる。
【0099】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材のSO除去効率は、少なくとも1つの濾材の初期SO除去効率との関係において0.1%~99.9%、0.1%~99%、0.1%~95、0.1%~90%、0.1%~75%、0.1%~50%、0.1%~25%、0.1%~10%、0.1%~10%、0.1%~1増大させられる。
【0100】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材のSO除去効率は、少なくとも1つの濾材の初期SO除去効率との関係において0.1%~95%、1%~90%、10%~75%または25%~50%増大させられる。
【0101】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材のSO除去効率を増大させるステップは、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入するステップを含む。
【0102】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの酸化剤は、Hまたはその水溶液を含むか、それで構成されるか、または本質的にそれで構成されている。
【0103】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの酸化剤は:過酸化水素(H)、オゾン(O)、ヒドロキシルラジカル、少なくとも1つの有機過酸化物、少なくとも1つの金属過酸化物、少なくとも1つのペルオキシ酸、少なくとも1つの過炭酸塩、少なくとも1つの過ホウ酸塩、少なくとも1つの過硫酸塩、少なくとも1つの過マンガン酸塩、少なくとも1つの次亜塩素酸塩、二酸化塩素(ClO)、少なくとも1つの塩素酸塩、少なくとも1つの過塩素酸塩、少なくとも1つの次亜塩素酸塩、過塩素酸(HClO)、少なくとも1つのビスマス酸塩、以上のものの少なくとも1つを含む任意の水溶液、またはそれらの任意の組合せを含むか、またはこれらのものからなる群のなから選択される。
【0104】
本開示のいくつかの実施形態のために好適であり得る少なくとも1つの有機過酸化物の例としては、非限定的にアセチルアセトンペルオキシド、アセチルベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ジ-(1-ナフトイル)ペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、エチルヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシドまたはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0105】
本開示のいくつかの実施形態のために好適であり得る少なくとも1つの金属過酸化物の例としては、非限定的に過酸化バリウム(BaO)、過酸化ナトリウム(Na)またはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0106】
本開示のいくつかの実施形態のために好適であり得る少なくとも1つのペルオキシ酸としては、非限定的にペルオキシモノ硫酸(HSO)、ペルオキシ硝酸(HNO)、ペルオキシモノリン酸(HPO)またはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0107】
本開示のいくつかの実施形態のために好適であり得る少なくとも1つの酸化剤のさらなる例としては、非限定的に、過炭酸ナトリウム(NaCO)、過ホウ酸ナトリウム(Na)、過硫酸カリウム(K)、過マンガン酸カリウム(KMnO)、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、次亜塩素酸カルシウム(Ca(ClO))、二酸化塩素(ClO)、塩素酸カリウム(KClO)、塩素酸ナトリウム(NaClO)、塩素酸マグネシウム(Mg(ClO)、過塩素酸アンモニウム(NHClO)、過塩素酸(HClO)、過塩素酸カリウム(KClO)、過塩素酸ナトリウム(NaClO)、亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、次亜塩素酸リチウム(LiOCl)、次亜塩素酸カルシウムCa(OCl)、次亜塩素酸バリウムBa(ClO)、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、ビスマス酸ナトリウム(NaBiO)またはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0108】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの酸化剤は、過酸化水素(H)、オゾン(O)、ヒドロキシルラジカルまたはそれらの任意の組合せの中から選択される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの酸化剤は、H、O、ヒドロキシルラジカルまたはそれらの任意の組合せからなる群の中から選択される。
【0109】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの酸化剤は、煙道ガス流中のSOの少なくとも5%、煙道ガス流中のSOの少なくとも10%、煙道ガス流中のSOの少なくとも15%、煙道ガス流中のSOの少なくとも20%、煙道ガス流中のSOの少なくとも25%、煙道ガス流中のSOの少なくとも30%、煙道ガス流中のSOの少なくとも35%、SOの少なくとも40%、煙道ガス流中のSOの少なくとも45%、SOの少なくとも50%、煙道ガス流中のSOの少なくとも55%、SOの少なくとも60%、煙道ガス流中のSOの少なくとも65%、SOの少なくとも70%、煙道ガス流中のSOの少なくとも75%、煙道ガス流中のSOの少なくとも80%、煙道ガス流中のSOの少なくとも85%、煙道ガス流中のSOの少なくとも90%、煙道ガス流中のSOの少なくとも95%、煙道ガス流中のSOの少なくとも99%または煙道ガス流中のSOの少なくとも99.5%をSO、HSO、少なくとも1つの塩またはそれらの任意の組合せへと変換するのに充分な量で、煙道ガス流中に導入される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの酸化剤は、煙道ガス流中のSOの全てをSO、HSO、少なくとも1つの塩またはそれらの任意の組合せへと変換するのに充分な量で、煙道ガス流中に導入される。いくつかの実施形態によると、SO変換効率は、酸化剤の導入の前およびその間のSO濃度の変化にしたがって決定され得る。本明細書中で使用される「変換効率」なる用語は、「除去効率」と同じ意味を有し、これらの用語は本明細書中で互換的に使用されるものと理解される。
【0110】
いくつかの実施形態において、煙道ガス流中に導入される少なくとも1つの酸化剤の充分量は、水中に1重量%~99重量%の酸化剤を含有する溶液形態である。したがって、35%の溶液は、35重量%の酸化剤および65重量%の水を含有する。
【0111】
いくつかの実施形態において、煙道ガス流中に導入される少なくとも1つの酸化剤の充分量は、水中に1重量%~99重量%の酸化剤を含有する溶液の形で、0.001重量%~40重量%、0.001重量%~30重量%、0.001重量%~20重量%、0.001重量%~10重量%、0.001重量%~1重量%、0.001重量%~0.1重量%または0.001重量%~0.01重量%である。いくつかの実施形態において、煙道ガス流中に導入される少なくとも1つの酸化剤の充分量は、水中に1重量%~99重量%の酸化剤を含有する溶液の形で、0.01重量%~40重量%、0.1重量%~30重量%、1重量%~20重量%または5重量%~10重量%である。いくつかの実施形態において、煙道ガス流中に導入される少なくとも1つの酸化剤の充分濃度は、煙道ガス流の5ppm~10000ppmである。酸化剤の濃度は、プロセスガス流速、酸化剤の濃度および酸化剤の注入速度に基づいて計算され得る。例えば、計算された酸化剤(H)の濃度は、30wt%の酸化剤(H)を1m/時の流速でプロセスガスに対し1ml/時で注入した場合、300ppmである。
【0112】
いくつかの実施形態において、煙道ガス流中に導入される少なくとも1つの酸化剤の充分濃度は、煙道ガス流の10ppm~10000ppm、50ppm~1000ppm、100ppm~1000ppm、500ppm~1000ppmまたは800ppm~1000ppmである。いくつかの実施形態において、煙道ガス流中に導入される少なくとも1つの酸化剤の充分量は、煙道ガス流の5ppm~1000ppm、5ppm~500ppm、5ppm~100ppm、5ppm~1000ppm、5ppm~50ppmまたは5ppm~10ppmである。いくつかの実施形態において、煙道ガス流中に導入される少なくとも1つの酸化剤の充分濃度は、煙道ガス流の10ppm~1000ppmである。いくつかの実施形態において、煙道ガス流中に導入される少なくとも1つの酸化剤の充分濃度は、煙道ガス流の50ppm~500ppmである。
【0113】
いくつかの実施形態において、煙道ガス流中に導入される少なくとも1つの酸化剤の充分濃度は、少なくとも1つの酸化剤対SOの濃度比で1:10~20:1、1:5~20:1、1:2~20:1、1:1~20:1、2:1~20:1、5:1~20:1、または10:1~20:1である。いくつかの実施形態において、濃度比は、酸化剤の濃度およびSOの濃度に基づいている。
【0114】
いくつかの実施形態において、煙道ガス流中に導入される少なくとも1つの酸化剤の充分濃度は、少なくとも1つの酸化剤対SOの濃度比で1:10~10:1、1:10~5:1、1:10~2:1、1:10~1:1、1:10~1:2、または1:10~1:5である。
【0115】
いくつかの実施形態において、煙道ガス流中に導入される少なくとも1つの酸化剤の充分濃度は、少なくとも1つの酸化剤対SOの濃度比で1:5~10:1である。いくつかの実施形態において、煙道ガス流中に導入される少なくとも1つの酸化剤の充分量は、少なくとも1つの酸化剤対SOの濃度比で1:2~5:1である。いくつかの実施形態において、煙道ガス流中に導入される少なくとも1つの酸化剤の充分量は、少なくとも1つの酸化剤対SOの濃度比で1:1~2:1である。いくつかの実施形態において、煙道ガス流中に導入される少なくとも1つの酸化剤の充分量は、少なくとも1つの酸化剤対SOの濃度比で6:1~20:1である。
【0116】
いくつかの実施形態において、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入することで、NO濃度は、NOx化合物の総濃度の2%~99%の範囲まで増大させられる。いくつかの実施形態において、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入することで、NO濃度は、NOx化合物の総濃度の10%~99%、20%~99%、30%~99%、40%~99%、50%~99%、60%~99%、70%~99%、80%~99%、90%~99%、95%~99%の範囲まで増大させられる。
【0117】
いくつかの実施形態において、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入することで、NO濃度は、NOx化合物の総濃度の2%~95%、2%~90%、2%~80%、2%~70%、2%~60%、2%~50%、2%~40%、2%~30%、2%~20%、2%~10%の範囲まで増大させられる。
【0118】
いくつかの実施形態において、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入することで、NO濃度は、NOx化合物の総濃度の10%~95%、25%~90%、または25%~75%の範囲まで増大させられる。
【0119】
いくつかの実施形態において、NO濃度を(例えば、本明細書中に記載のNOx化合物の総濃度の任意の範囲まで)増大させるステップは、少なくとも1つの濾材のNOx除去効率を増大させる。
【0120】
NOの濃度は、MKS MULTI-GASTM2030Dフーリエ変換赤外線分光法(FTIR)分析器(MKS Instruments,Andover,MA)によって測定された。
【0121】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材のNOx除去効率は、少なくとも1つの濾材の初期NOx除去効率との関係において0.001%~99.9%増大させられる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材のNOx除去効率は、少なくとも1つの濾材の初期NOx除去効率との関係において0.01%~99.9%、0.1%~99.9%、1%~99.9%、10%~99.9%、25%~99.9%、50%~99.9%、75%~99.9%、90%~99.9%、95%~99.9%、また99%~99.9%増大させられる。
【0122】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材のNOx除去効率は、少なくとも1つ濾材の初期NOx除去効率との関係において、0.001%~99%、0.001%~95%、0.001%~90%、0.001%~75%、0.001%~50%、0.001%~25%、0.001%~10%、0.001%~1%、0.001%~0.1%または0.01%~0.1%増大させられる。
【0123】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材のNOx除去効率は、少なくとも1つの濾材の初期NOx除去効率との関係において、0.01%~99%、0.1%~95%、1%~90%、10%~75%または25%~50%増大させられる。
【0124】
NOからNOへの変換効率は、酸化剤の導入(例えばHの注入)中のNOおよびNOの濃度に基づいて計算される、NOからNOへの変換効率(「NOからNOの変換」)(%)=(NO/(NO+NO))×100%。
【0125】
いくつかの実施形態において、SOの少なくとも一部分は、少なくとも1つの酸化剤と反応させられて、三酸化硫黄(SO)、硫酸(HSO)、またはそれらの任意の組合せを形成する。いくつかの実施形態においては、SOの少なくとも1ppm、少なくとも2ppm、少なくとも5ppm、少なくとも10ppm、少なくとも20ppm、少なくとも50ppm、少なくとも100ppm、少なくとも1000ppmまたは少なくとも10,000ppmが、少なくとも1つの酸化剤と反応させられて、三酸化硫黄(SO)、硫酸(HSO)またはそれらの任意の組合せを形成する。
【0126】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材のSO除去効率を増大させるステップは、煙道ガス流中にアンモニア(NH)を導入するステップを含む。いくつかの実施形態において、煙道ガス流中へのNHの導入は、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入した後で行なわれる。いくつかの実施形態において、煙道ガス流中へのNHの導入は、煙道ガス流中への少なくとも1つの酸化剤の導入前、煙道ガス流中への少なくとも1つの酸化剤の導入中、またはそれらの任意の組合せにおいて行なわれる。いくつかの実施形態において、NHの導入は、システムプロセス内にNHを新規に添加することによって行われる。いくつかの実施形態において、NHの導入は、システムまたはプロセスの下流側から調達したNHを添加することによって行なわれ、ここでNHは既にシステム内にあるか、あるいは既にプロセスの一部である。
【0127】
いくつかの実施形態において、NHは、煙道ガス流の濃度の0.0001%~0.5%の範囲内の濃度で煙道ガス流中に導入される。いくつかの実施形態において、NHは、煙道ガス流の濃度の0.001%~0.5%の範囲内の濃度で煙道ガス流中に導入される。いくつかの実施形態において、NHは、煙道ガス流の濃度の0.01%~0.5%の範囲内の濃度で煙道ガス流中に導入される。いくつかの実施形態において、NHは、煙道ガス流の濃度の0.1%~0.5%の範囲内の濃度で煙道ガス流中に導入される。
【0128】
いくつかの実施形態において、NHは、煙道ガス流の濃度の0.0001%~0.1%の範囲内の濃度で煙道ガス流中に導入される。いくつかの実施形態において、NHは、煙道ガス流の濃度の0.0001%~0.01%の範囲内の濃度で煙道ガス流中に導入される。いくつかの実施形態において、NHは、煙道ガス流の濃度の0.0001%~0.001%の範囲内の濃度で煙道ガス流中に導入される。
【0129】
いくつかの実施形態において、NHは、煙道ガス流の濃度の0.001%~0.01%の範囲内の濃度で煙道ガス流中に導入される。いくつかの実施形態において、NHは、煙道ガス流の濃度の0.001%~0.1%の範囲内の濃度で煙道ガス流中に導入される。いくつかの実施形態において、NHは、煙道ガス流の濃度の0.01%~0.1%の範囲内の濃度で煙道ガス流中に導入される。
【0130】
NOの濃度は、MKS MULTI-GASTM2030Dフーリエ変換赤外線分光法(FTIR)分析器(MKS Instruments,Andover,MA)によって測定された。
【0131】
いくつかの実施形態において、アンモニア(NH)は、7:200~9:5のNH対NOx化合物の濃度比で、煙道ガス流中に導入される。いくつかの実施形態において、アンモニア(NH)は、21:40~9:5、7:10~9:5、4:5~9:5、9:10~9:5または1:1~9:5というNH対NOx化合物の濃度比で煙道ガス流中に導入される。
【0132】
いくつかの実施形態において、アンモニア(NH)は、7:200~1:1、7:200~9:10、7:200~4:5、7:200~7:10または21:400~7:10というNH3対NOx化合物の濃度比で煙道ガス流中に導入される。
【0133】
いくつかの実施形態において、アンモニア(NH)は、7:10~1:1というNH対NOx化合物の濃度比で煙道ガス流中に導入される。いくつかの実施形態において、アンモニア(NH)は、21:40~9:5というNH対NOx化合物の濃度比で煙道ガス流中に導入される。
【0134】
いくつかの実施形態において、アンモニア(NH)は、三酸化硫黄(SO)の少なくとも一部分、硫酸(HSO)の少なくとも一部分、またはそれらの任意の組合せと反応させられて少なくとも1つの塩を形成する。
【0135】
いくつかの実施形態においては、アンモニア(NH)が煙道ガス流中に導入されて、三酸化硫黄(SO)の少なくとも1ppmと反応し、少なくとも1つの塩を形成する。いくつかの実施形態においては、アンモニア(NH)が煙道ガス流中に導入されて、三酸化硫黄(SO)の少なくとも2ppm、少なくとも5ppm、少なくとも10ppm、少なくとも50ppm、少なくとも100ppm、少なくとも1000ppm、または少なくとも10,000ppmと反応して、少なくとも1つの塩を形成する。
【0136】
いくつかの実施形態においては、アンモニア(NH)が、煙道ガス流中に導入されて、硫酸(HSO)の少なくとも1ppmと反応し、少なくとも1つの塩を形成する。いくつかの実施形態においては、アンモニア(NH)が煙道ガス流中に導入されて、硫酸(HSO)の少なくとも2ppm、少なくとも5ppm、少なくとも10ppm、少なくとも50ppm、少なくとも100ppm、少なくとも1000ppm、または少なくとも10,000ppmと反応して、少なくとも1つの塩を形成する。
【0137】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの塩は、硫酸アンモニウム(AS)、重硫酸アンモニウム(ABS)、重硫酸水素三アンモニウム(AHS)、スルファミン酸アンモニウム(ASM)またはそれらの任意の組合せを含むかまたは、それらからなる群の中から選択される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの塩は、硫酸アンモニウム(AS)、重硫酸アンモニウム(ABS)またはそれらの任意の組合せを含むかまたはそれらからなる群の中から選択される。
【0138】
いくつかの実施形態において、該方法は、少なくとも1つの濾材から(例えば少なくとも1つの濾材の少なくとも1つの表面から)少なくとも1つの塩を除去するステップを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材から少なくとも1つの塩を除去するステップは、少なくとも1つの濾材の多孔質保護層から少なくとも1つの塩を除去するステップを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材から少なくとも1つの塩を除去するステップは、少なくとも1つの濾材の少なくとも1つのフェルトバットから少なくとも1つの塩を除去するステップを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材から少なくとも1つの塩を除去するステップは、少なくとも1つの濾材の多孔質触媒層から少なくとも1つの塩を除去するステップを含まない。
【0139】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材の多孔質触媒層上に形成された少なくとも1つの塩の量に比べて、少なくとも1つの濾材の多孔質保護層上には、より多い量の少なくとも1つの塩が形成される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材の多孔質触媒層上に形成された少なくとも1つの塩の量に比べて、少なくとも1つの濾材の多孔質保護層上には、少なくとも10%多い少なくとも1つの塩が形成される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材の多孔質触媒層上に形成された少なくとも1つの塩の量に比べて、少なくとも1つの濾材の多孔質保護層上には、少なくとも20%多い、少なくとも30%多い、少なくとも40%多い、少なくとも50%多い、少なくとも60%多い、少なくとも70%多い、少なくとも80%多いまたは少なくとも90%多い少なくとも1つの塩が形成される。いくつかの実施形態においては、多孔質保護層を伴うフィルタ材料上のABSの量が、多孔質保護層を伴わないフィルタ材料内のABSの量と比較され、ここでこの比較は、これら2つの処理前および処理後の重量測定によるものであり得る。
【0140】
いくつかの実施形態において、該方法は、煙道ガス流中に少なくとも1つの乾燥吸着剤を導入して、三酸化硫黄(SO)の少なくとも一部分と、硫酸(HSO)の少なくとも一部分と、またはそれらの任意の組合せと反応させるステップを含む。いくつかの実施形態においては、三酸化硫黄(SO)の少なくとも一部分、硫酸(HSO)の少なくとも一部分、またはそれらの任意の組合せと、少なくとも1つの乾燥吸着剤を反応させることによって、本明細書中に記載の少なくとも1つの塩が形成される。
【0141】
いくつかの実施形態において、該方法は、濾材を得るステップであって、濾材が触媒材料を有するステップを含む。いくつかの実施形態において、該方法は、濾材の断面を横断して煙道ガスを流動させ、こうして煙道ガス流が濾材の断面を通過するようにするステップであって、煙道ガス流が二酸化硫黄(SO)を含んでいるステップを含む。いくつかの実施形態においては、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入して、SOの少なくとも一部分を少なくとも1つの酸化剤と反応させ、三酸化硫黄(SO)、硫酸(HSO)またはそれらの任意の組合せを形成すること、および煙道ガス流中に少なくとも1つの乾燥吸着剤を導入して、三酸化硫黄(SO)の少なくとも一部分、硫酸(HSO)の少なくとも一部分またはそれらの任意の組合せを少なくとも1つの乾燥吸着剤と反応させ、少なくとも1つの塩を形成することによって、濾材のSO除去効率が増大させられる。いくつかの実施形態において、該方法は、煙道ガス流中にアンモニア(NH)を導入して、三酸化硫黄(SO)の少なくとも一部分、硫酸(HSO)の少なくとも一部分またはそれらの任意の組合せをアンモニア(NH)と反応させ、少なくとも1つの塩を形成するステップを含む。
【0142】
いくつかの実施形態において、システムには、濾材が含まれる。いくつかの実施形態において、濾材は、上流側;下流側;少なくとも1つの触媒材料と;少なくとも1つのフィルタバッグであって、少なくとも1つの濾材がこの少なくとも1つのフィルタバッグの内部に配置されている、フィルタバッグと;少なくとも1つのフィルタバッグハウジングであって、少なくとも1つのフィルタバッグがこの少なくとも1つのフィルタバッグハウジングの内部に配置されているフィルタバッグハウジング;とを含む。濾材のいくつかの実施形態において、少なくとも1つのフィルタバッグハウジングは、少なくとも1つの濾材の断面を横断する煙道ガス流の流量を収容するように構成されており、こうして煙道ガス流は少なくとも1つの濾材の断面を少なくとも1つの濾材の上流側から少なくとも1つの濾材の下流側まで通過するようになっている。いくつかの実施形態において、煙道ガス流は二酸化硫黄(SO)を含んでおり、システムの実施形態は、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入した時点;および煙道ガス流中に少なくとも1つの乾燥吸着剤を導入した時点で、少なくとも1つの濾材のSOx除去効率を増大させるように構成されている。いくつかの実施形態において、該システムは、煙道ガス流中にNHを導入した時点で少なくとも1つの濾材のSOx除去効率をさらに増大させるように構成されている。
【0143】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの乾燥吸着剤は、重炭酸ナトリウム、トロナ、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、セメントダスト、石灰またはそれらの任意の組合せを含むかまたはこれらからなる群の中から選択されている。
【0144】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの乾燥吸着剤を煙道ガス流中に導入するステップは、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入した後に行なわれる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの乾燥吸着剤を煙道ガス流中に導入するステップは、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入する前、煙道ガス流中への少なくとも1つの酸化剤の導入ステップ中、またはそれらの任意の組合せにおいて行なわれる。
【0145】
本開示のいくつかの実施形態はシステムに関する。いくつかの実施形態において、該システムは、上流側、下流側、および少なくとも1つの触媒材料をいくつかの実施形態において含み得る本明細書に記載の少なくとも1つの濾材を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの濾材はこの少なくとも1つのフィルタバッグの内部に配置されている。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのフィルタバッグは、少なくとも1つのフィルタバッグハウジングの内部に配置されている。
【0146】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのフィルタバッグハウジングは、少なくとも1つの濾材の断面を横断する煙道ガス流の流量を収容するように構成されており、こうして煙道ガス流は少なくとも1つの濾材の断面を少なくとも1つの濾材の上流側から少なくとも1つの濾材の下流側まで通過するようになっている。
【0147】
いくつかの実施形態において、システムは、煙道ガス流中に少なくとも1つの酸化剤を導入した時点で少なくとも1つの濾材のSO除去効率を増大させるように構成されている。
【0148】
いくつかの実施形態において、該システムは、煙道ガス流中にアンモニア(NH)を導入するように構成されている。
【0149】
いくつかの実施形態において、該システムは、煙道ガス流中に少なくとも1つの乾燥吸着剤を導入するように構成されている。
【0150】
いくつかの実施形態において、該システムは、
煙道ガス流中への少なくとも1つの酸化剤の導入;
煙道ガス流中へのアンモニア(NH)の導入;
煙道ガス流中への少なくとも1つの乾燥吸着剤の導入;または、
それらの任意の組合せの導入;
の時点で少なくとも1つの濾材のSO除去効率を増大させるように構成されている。
【0151】
図1A~1Cは、本開示に係る例示的システムの非限定的実施形態を描いている。
【0152】
図1Aを参照すると、いくつかの実施形態において、該システムは、少なくとも1つのフィルタバッグ100内に収容された少なくとも1つの濾材101を含み得る。いくつかの実施形態において、フィルタバッグ100または一連のフィルタバッグは同様に、少なくとも1つのフィルタバッグハウジング(図示せず)内に収容されてよい。煙道ガス流102は、断面Aを通過することによって少なくとも1つの濾材101を通って流動し得る。ひとたび煙道ガス流102が少なくとも1つの濾材101を通って流動すると、流出する煙道ガス流112は、垂直に配向された矢印により標示されているように、少なくとも1つのフィルタバッグを退出し得る。流入する流体流量102の優勢な方向という観点から見て、上流側方向103が定義され、流出する流体流量104の優勢な方向という観点から見て、下流側方向104が定義される。図1Aに示されているように、濾材101の上流側103は、いくつかの実施形態において、フィルタバッグ100などのフィルタバッグの外側に対応し得る。同様にして、濾材101の下流側104は、フィルタバッグ100などのフィルタバッグの内側に対応し得る。
【0153】
図1Bは、本開示のいくつかの実施形態に係る例示的濾材101を描いている。図1Bに示されているように、SOおよびNOx化合物ならびに固体微粒子107を含み得る煙道ガス流102が、濾材101の上流側103から濾材の下流側104まで、断面A(図1A中に示されている通り)の中を流動し得る。いくつかの実施形態において、濾材101は、濾材101の上流側103に、少なくとも1つの多孔質保護層106および少なくとも1つのフェルトバット108を含むことができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのフェルトバット108は、多孔質触媒フィルム105上に位置付けされていてよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのフェルトバット108と多孔質触媒フィルム105の組合せは、多孔質触媒層111と呼ばれ得る。
【0154】
一実施形態において、濾材101およびその構成要素を、流入流体流量102に面する上流側103および、流出流体流量112が由来する下流側104の観点から見て説明することができる。図1Bは、多孔質触媒フィルム105から上流側方向103に第1のフェルトバット108および多孔質保護層106を伴って、下流側方向104に支援スクリム109および第2のフェルトバット114が位置付けされて、層状化された多孔質触媒フィルム105を示す。濾材101は、流入流体流量102中に浮遊している可能性のある微粒子107を濾過する能力と共に、多孔質触媒層111内の多孔質触媒フィルム105において触媒反応を介して化学的汚染物質を削減または除去する能力を有する。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、硫酸アンモニウム(AS)、重硫酸アンモニウム(ABS)、重硫酸水素三アンモニウム(AHS)、スルファミン酸アンモニウム(ASM)またはそれらの任意の組合せを含む少なくとも1つの塩110を形成する。塩110は、多孔質保護層106の上流側表面上で収集され得ると考えられる。
【0155】
多孔質触媒フィルム105は、穿孔118によって破断される無欠部分116を含む。穿孔118は、ニードリング作業、あるいはニードルパンチング作業によって形成可能である。隣接する多孔質触媒フィルム105および第1のフェルトバット108の構築により、無欠部分116内の細孔を介してまたは穿孔118において流体が多孔質触媒フィルム105を通過する前に、多孔質触媒フィルム105の交絡された触媒粒子近くで、第1のフェルトバットの内部構造内に、流入流体流量102の循環が提供される。
【0156】
一実施形態においては、多孔質保護層106が第1のフェルトバット108の上流側に位置付けされ、本開示の方法の反応生成物としての塩110および微粒子107を捕捉するかまたはその浸入を防止する能力を有する。多孔質保護層106は微粒子(例えばダスト、煤、灰など)および塩110を捕捉して、多孔質触媒フィルム105またはフェルトバット105内への粒子の進入を防止し、フィルムの穿孔118の閉塞を防止または最小化し、内部に交絡された担持触媒粒子に対するアクセスを阻止する可能性のある多孔質ポリマ膜の汚損を防止または最小化することができる。多孔質保護層106は、多孔質保護層106から容易に清浄可能なフィルムまたはケークの形で微粒子107および塩110を収集し、こうして濾材101の容易なメンテナンスを提供することができる。多孔質保護層106は、非限定的に多孔質製織または不織膜、PTFE製織または不織布、ePTFE膜、フルオロポリマ膜などの任意の好適な多孔質膜材料から構築され得る。多孔質保護層106は、積層、熱処理、不連続または連続接着剤または他の好適な接合方法によって、第1のフェルトバット108と連結され得る。
【0157】
少なくとも1つの実施形態によると、多孔質触媒フィルム105は、濾材101の全体的流体透過性に著しい影響を与えることなく構造的支持を提供するスクリム109によって担持されている。スクリム109は、濾材101を支持する能力を有する任意の好適な裏打ち材料であり得る。スクリムは、例えば、フルオロポリマ製織または不織布、PTFE製織または不織布、または、1つの具体的実施形態においては、ePTFE繊維(例えばW.L.Gore and Associates,Inc.,Elkton,MDから入手可能である440デシテックスRASTEX(登録商標)繊維)でできた製織布であり得る。スクリム109は、多孔質触媒フィルム105の下流側104、例えば多孔質触媒フィルム105の下流側かつこれに隣接して、または代替的には、下流側で1つ以上の追加層によって多孔質触媒フィルム105から分離されて、配置され得る。スクリム109は、ニードリングまたはニードルパンチング作業により多孔質触媒フィルム105に連結され得る。スクリム105は同様に、または代替的に、熱処理によってか、層を合わせて押圧する1つ以上のコネクタによってか、または例えばスクリム105と多孔質触媒フィルム105との間の薄い接着剤層(これは連続であっても不連続であってもよい)などの接着剤によってか、またはニードリングまたはニードルパンチング作業を含む上述の方法のうちの2つ以上の任意の好適な組合せによって、多孔質触媒フィルム105と連結されてもよい。概して、スクリム109は、多孔質触媒フィルム105よりも高い透気度を有する。
【0158】
一実施形態において、濾材101はさらに、多孔質触媒フィルム105から下流側方向104に位置付けされた第2のフェルトバット114を含むことができる。第2のフェルトバット114は第1のフェルトバット108と類似の構造および寸法を有することができ、例えば第2のフェルトバットは、非限定的にステープルファイバ製織または不織布、PTFEステープルファイバ製織または不織布、またはフルオロポリマステープルファイバ製織または不織布などの任意の好適な製織または不織布を含むかまたはそれらで構成され得る。例えば、第2のフェルトバット114は、PTFE繊維フェルトまたはPTFE繊維フリースであり得る。
【0159】
多孔質触媒フィルム105、スクリム109および第1および第2のフェルトバット108、114は、ニードリングまたはニードルパンチ作業またはこれらの技術の組合せを介して共に連結されてよい。一実施形態においては、穿孔が多孔質触媒フィルム105を横断して好適な流体流量を提供することから、多孔質触媒フィルム105のみが穿孔されており、一方他の層は概して多孔質触媒フィルム105に比べて空気流に対しより透過性が高く、いかなる穿孔も必要としない。層の一部または全部が、熱処理、接着剤または別の好適な連結方法を介して、さらに連結され得る。多孔質保護層106は、接着、熱処理または多孔質保護層106の穿孔を結果としてもたらさない別の方法によって、濾材101の残りの層に対して取付け可能である。代替的には、多孔質保護層106は、ニードリングまたはニードルパンチを介して濾材101の残りの層と連結され得る。
【0160】
図1Cは、濾材101の追加の非限定的な例示的実施形態を描いている。示されているように、濾材101は、多孔質触媒層111を含み得る。いくつかの非限定的実施形態において、濾材101は、フィルタバッグの形をとり得る。いくつかの実施形態において、多孔質触媒層111は、触媒粒子などの触媒材料(図1Cでは図示せず)でコーティングされてよい。いくつかの実施形態において、触媒材料は、本明細書中に記載の1つ以上の接着剤(図示せず)により、多孔質触媒層111に取付けられてよい。多孔質触媒層111は、多孔質触媒フィルム105とフェルトバット108を含む。流入流体流量102の優勢な方向の観点から見て、上流側方向103が画定され、流出流体流量112の優勢方向の観点から見て、下流側方向104が定義される。フェルトバット108は、多孔質触媒フィルム105の上流側に位置付けされ、流入流体流量102から微粒子107(例えばダストなど)を収集するように動作可能である。本明細書中に記載のいくつかの実施形態において、多孔質触媒フィルム105は内部に穿孔を含む。有孔多孔質触媒フィルム105は、流体流中の汚染を浄化するために、多孔質ポリマ膜内に永続的に交絡された担持触媒粒子となおも充分に相互作用しながら、流体が容易に触媒複合材料を通過することを可能にする。多孔質触媒フィルム105の触媒材料は、特定の汚染物質種を標的にするように選択される。例えば、多孔質触媒フィルム105の担持触媒粒子は、図1Cに例示されているように、NO、NOなどのNOx種を水と窒素ガスへと還元するまたは除去する触媒作用を誘発するのに好適である触媒種、TiO、V、WOのいくつかの組合せまたは全てを含むことができる。しかしながら、例えば一酸化炭素(CO)、ダイオキシン/フラン、オゾン(O)、揮発性有機化合物(VOC)および他の汚染物質を浄化するための、異なる汚染物質に好適である他の触媒材料で置換するまたはそれらを内含させることが可能である。
【0161】
フェルトバット108は、本開示に係る方法の反応生成物としての塩110および粒子状汚染物質107を濾過する能力;ならびに多孔質触媒フィルム105に対する導入のために流入流体流量102を加減する能力を有する任意の好適な多孔質構造を含むことができる。フェルトバット108は、非限定的に、ステープルファイバ製織または不織布、PTFEステープルファイバ製織または不織布、フルオロポリマステープルファイバから形成されたフリース、または、フルオロポリマステープルファイバ製織または不織布などの、極めて多孔質の内部構造を有する任意の好適な製織または不織布で形成され得る。一実施形態において、フェルトバット105は、PTFE繊維フェルトまたはPTFE繊維フリースである。
【0162】
少なくとも1つの実施形態において、多孔質触媒層111の構成要素層は、ニードリングまたはニードルパンチ作業を用いて共に連結される、すなわち、層を互いに接触した状態に保持するべく層を局所的に変形する目的で、組立てられたフェルトバット108と多孔質触媒フィルム105の両方を通してニードルまたはパンチを押圧することができる。概して、ニードリング作業は、材料を貫通し変形させ、一方ニードルパンチング作業は材料の小さいプラグも同様に除去するが、両方の作業共、「ニードリング」と呼ぶことができる。多孔質触媒層111内の層は、同様に、積層または熱処理の適用によって、接着剤(典型的には多孔度を保持するために不連続接着剤)によって、外部コネクタによって、ウィービングまたは他の匹敵する連結手段によって、または以上のものの任意の好適な組合せによって保持されてもよい。一実施形態において、多孔質触媒層111の構成要素層は、ニードリングおよび/またはニードルパンチングおよびそれに続く、複合材料を硬化させ触媒複合材料を形成するための後続熱処理によって、組合わされる。代替的には、多孔質触媒層111の構成要素層は、多孔質触媒フィルム105に穿孔が適用された後に層を共にプレス加工し、その後層状アセンブリを熱処理して触媒複合材料を形成することによって、組合せ可能である。
【0163】
試験方法
実施例1~6および比較例1中のH注入および/またはアンモニアおよび/または乾燥吸着剤の添加の前、間および後のNO、NO、NHおよびSOの濃度を、MKS MULTI-GASTM2030Dフーリエ変換赤外線分光法(FTIR)分析器(MKS Instruments,Andover,MA)によって測定した。実施例7中のH注入および/またはアンモニアおよび/または乾燥吸着剤の添加の前および間のSOの濃度を、SDLモデル1080-UV分析器によって測定した。
【0164】
SO変換効率を、H注入の前および間のSO濃度にしたがって計算した:
SO変換効率(「SO変換」)(%)=((Hを伴わないSO-Hを伴うSO)/Hを伴わないSO)×100%。
【0165】
NOからNOへの変換効率を、H注入中のNOおよびNO濃度に基づいて計算した:
NOからNOへの変換効率(「NO-NO変換」)(%)=(NO/(NO+NO))×100%
【0166】
NOx除去効率は、以下の等式に基づいて計算した:
NOx除去効率(「DeNOx効率」)(%)=((NOxin-NOxout)/NOxin)×100%
【実施例
【0167】
実施例1~3は、煙道ガス混合物に酸化剤を添加することによりSOを還元する効果を実証している。
【0168】
実施例1:SOとNOの気体混合物中への1重量%のH溶液の注入
シリンジポンプを使用して、174℃、189℃、195℃および204℃の温度で、35ppmのSOと200ppmのNOを含む3.19L/分の煙道ガス流に12.0ml/時の速度で1重量%のHを注入した。ガス流中のH濃度は約630ppmである。気体流中のSO濃度に対するH濃度の比率は、約18である。H注入の前、間および後のNO、NOおよびSOの濃度は、MKS MULTI-GASTM2030Dフーリエ変換赤外線分光法(FTIR)分析器(MKS Instruments,Andover,MA)により測定した。
【0169】
SO変換効率を、H注入の前および間のSO濃度にしたがって計算した、SO変換効率(「SO変換」)(%)=((Hを伴わないSO-Hを伴うSO)/Hを伴わないSO)×100%。
【0170】
NOからNOへの変換効率を、H注入中のNOおよびNO濃度に基づいて計算した、NOからNOへの変換効率(「NO-NO変換」)(%)=(NO/(NO+NO))×100%。
【0171】
結果を図2~4に示す。
【0172】
図2は、実施例1にしたがった1重量%のHの注入時点での煙道ガス流中のSO濃度の変化を示す。SO濃度の変化は、204℃の煙道ガス流濃度により例示されている。H注入は0.5時間にわたって行われ、それにより煙道ガス流中で35ppmから0ppmまでのSO濃度の減少が導かれた。SO変換効率は約100%である。
【0173】
図3は、実施例1にしたがった1重量%のHの注入時点でのNOおよびNO濃度の変化を示す。NOおよびNO濃度の変化は、204℃の煙道ガス流濃度により例示されている。H注入は0.5時間にわたって行われ、それにより煙道ガス流中で200ppmから125ppmまでのNO濃度の減少および0ppmから60ppmへのNO濃度の増加が導かれた。NO-NO変換効率は約32.4%である。
【0174】
図4Aは、異なる温度での1重量%のHの注入に伴う%単位のSO変換効率についてのグラフを示す。189℃および204℃の温度で、SOの100%が煙道ガス流から除去されていた。
【0175】
図4Bは、異なる温度での1%のH注入に伴う%単位のNO-NO変換効率についてのグラフを示す。
【0176】
上述の4つの異なる温度における4つのデータ点は、煙道ガス流中で最高30%のNOの増加を示している。
【0177】
実施例2:SOとNOの気体混合物中への0.3重量%のH溶液の注入
シリンジポンプを使用して、152℃および190℃の温度で、35ppmのSOと200ppmのNOを含む3.19L/分のガス流に12.0ml/時の速度で0.3重量%のHを注入した。ガス流中のH濃度は約190ppmである。ガス流中のSO濃度に対するH濃度の比率は、約5.4である。H注入の前、間および後のNO、NOおよびSOの濃度は、MKS MULTI-GASTM2030Dフーリエ変換赤外線分光法(FTIR)分析器(MKS Instruments,Andover,MA)により測定した。
【0178】
SO変換効率を、H注入の前および間のSO濃度にしたがって計算した、SO変換効率(「SO変換」)(%)=((Hを伴わないSO-Hを伴うSO)/Hを伴わないSO)×100%。
【0179】
NOからNOへの変換効率を、H注入中のNOおよびNO濃度に基づいて計算した、NOからNOへの変換効率((「NO-NO変換」)(%)=(NO/(NO+NO))×100%。
【0180】
結果は、図5Aおよび図5Bに示されている。図5Aは、152℃および190℃での0.3重量%のHの注入を伴うSO変換効率についてのグラフを示す。この例では、100%のSO変換が達成される。
【0181】
図5Bは、152℃および190℃での0.3重量%のHの注入を伴うNOおよびNOの変換効率についてのグラフを示す。全体的NO変換効率は、図4Bの場合よりも小さいが、約7%から10%まで増大している。
【0182】
実施例3:SOとNOの気体混合物中への0.05重量%のH溶液の注入
シリンジポンプを使用して、170℃、208℃および214℃の温度で、35ppmのSOと200ppmのNOを含む3.19L/分の煙道ガス流中に12.0ml/時の速度で0.05重量%のHを注入した。ガス流中のH濃度は約30ppmである。ガス流中のSO濃度に対するH濃度の比率は、約0.86である。H注入の前、間および後のNO、NOおよびSOの濃度は、MKS MULTI-GASTM2030Dフーリエ変換赤外線分光法(FTIR)分析器(MKS Instruments,Andover,MA)により測定した。
【0183】
SO変換効率を、H注入の前および間のSO濃度にしたがって計算した、SO変換効率((「SO変換」)(%)=(Hを伴わないSO-Hを伴うSO)/Hを伴わないSO)×100%。
【0184】
NOからNOへの変換効率を、H注入中のNOおよびNO濃度に基づいて計算した、NOからNOへの変換効率((「NO-NO変換」)(%)=NO/(NO+NO))×100%。
【0185】
結果は、図6A~6Bに示されている
【0186】
図6Aは、異なる温度での0.05重量%のHの注入によるSO変換効率についてのグラフを示す。Hの濃度は、170℃での煙道ガス流中の約55%のSO変換を可能にし、より高い温度ではさらに減少している。
【0187】
図6Bは、異なる温度での0.05重量%のHの注入を伴うNOおよびNO変換効率についての略図を示す。NOについての変換速度は、図4Bおよび5Bに比べて低いレベルではあるものの、温度の上昇に伴って上昇している。
【0188】
実施例4:NOおよびSOの気体混合物中へのNHおよび1重量%のH溶液の注入(上流側多孔質保護層を伴わない)
Evesら、に対する国際公開第2019/099025号にしたがって、触媒濾材を形成した。濾材は、下流側に配向された多孔質触媒フィルムおよび上流側に配向されたフェルトバットを含む触媒層状アセンブリを有する多孔質触媒層を含む。フェルトバットを、PTFEステープルファイバから形成されたフリースで形成した。ニードルパンチングプロセス、ニードリングプロセスまたは両方により形成された複数の穿孔によって、濾材を連結した。図1Cは、この実施例にしたがった濾材の例示的実施形態を表わしている。
【0189】
Zhongらに対する米国特許第7,791,861B2中で教示されている一般的なドライブレンド法を用いて、上述の濾材の多孔質触媒フィルムを調製して、複合材料テープを形成し、これらのテープを次に、Goreに対する米国特許第3,953,556号の教示にしたがって一軸延伸した。結果として得た多孔質フィブリル化延伸PTFE(ePTFE)複合材料膜は、ePTFEノードおよびフィブリルマトリクスを用いて永続的に交絡され固定化された担持触媒粒子を含んでいた。
【0190】
フィルタバッグの形をしたこのような濾材は、W.L.Gore & Associatesにより、GORE(登録商標)DeNOx触媒フィルタバッグの名称で市販されている。
【0191】
シリンジポンプを使用して、204℃で200ppmのNOおよび35ppmのSOを含む3.19L/分のガス流に12.0ml/時の速度で1重量%のH溶液を注入した。上述の通りの触媒濾材試料を、気体混合物の下流側に置き、濾材の断面を通って横断方向にガス流を流動させた。ガス流中のH濃度は、約630ppmである。ガス流中のSO濃度に対するH濃度の比率は、約18である。10分間のH注入の後、重硫酸アンモニウム(ABS)塩微粒子を形成させるため、ガス流中に10ppmのNHを5分間導入した。実験後に、触媒フィルタ試料を反応装置から取り出し、Keyence VHX-6000デジタル顕微鏡下で分析した。図7中の光学画像は、触媒フィルタ試料の上流側表面上に球状粒子が形成されたことを明確に示した。球状粒子の化学組成を、Hatachi TM3030 Plus卓上型走査電子顕微鏡(SEM)によってさらに分析した。図8Aでは、SEM下で、触媒フィルタ試料の上流側表面上に球状粒子が観察された。元素マッピング(図8B~8D)の結果は、粒子が、硫黄、酸素および窒素で構成されていることを示しており、これは、重硫酸アンモニウム塩の化学組成と整合している。
【0192】
実施例5:SOおよびNHの気体混合物中への0.6重量%のH溶液の注入(上流側多孔質保護層を伴う)
Evesら、に対する国際公開第2019/099025号にしたがって、触媒濾材を形成した。濾材は、多孔質保護層(ePTFE製)そしてフェルトバットおよび下流側多孔質触媒フィルムを有する多孔質触媒層を含む。フェルトバットを、PTFEステープルファイバから形成されたフリースで形成した。ニードルパンチングプロセス、ニードリングプロセスまたは両方により形成された複数の穿孔によって、濾材を連結した。
【0193】
図1Bは、この実施例にしたがった濾材の例示的実施形態を表わしている。
【0194】
Zhongらに対する米国特許第7,791,861B2の中で教示されている一般的なドライブレンド法を用いて、上述の濾材の多孔質触媒フィルムを調製して、複合材料テープを形成し、これらのテープを次に、Goreに対する米国特許第3,953,556号の教示にしたがって一軸延伸した。結果として得た多孔質フィブリル化延伸PTFE(ePTFE)複合材料膜は、ePTFEノードおよびフィブリルマトリクスを用いて永続的に交絡され固定化された担持触媒粒子を含んでいた。
【0195】
フィルタバッグの形をしたこのような濾材は、W.L.Gore & Associatesにより、GORE(登録商標)DeNOx触媒フィルタバッグの名称で市販されている。
【0196】
シリンジポンプを使用して、150℃で100ppmのSOおよび800ppmのNHを含む0.45L/分のガス流に12.0ml/時の速度で0.6重量%のH溶液を注入した。ガス流内のH濃度は、約2000ppmである。ガス流内のSO濃度に対するH濃度の比率は、約20である。上述の通りの触媒濾材試料を、気体混合物の下流側に置き、フィルタ試料の断面を通って横断方向にガス流を流動させた。30分間のH注入の後、NHとSOをオフに切換えた。
注入の前および間のSOの濃度は、MKS MULTI-GASTM2030Dフーリエ変換赤外線分光法(FTIR)分析器(MKS Instruments,Andover,MA)により測定した。
【0197】
SO変換効率を、H注入の前および間のSO濃度にしたがって計算した、SO変換効率(「SO変換」)(%)=((Hを伴わないSO-Hを伴うSO)/Hを伴わないSO)×100%。
【0198】
溶液注入中のSO濃度は1ppm前後である。SO変換効率は99%である。
【0199】
実験後、触媒フィルタ試料を反応装置から取出し、多孔質保護層の表面をNicolet(商標)iS50 FTIR分光計によって分析した。図9は、実験後に多孔質保護層の表面上で収集したFTIRスペクトルが、Sigma Aldrichから購入した重硫酸アンモニウム粉末上で収集したFTIRスペクトルと整合するものであることを示している。実験の前には、多孔質保護層上にABS塩は全く存在しなかった。この実施例は、SOおよびNHを含有するガス流にH溶液を加えた場合にSOがABS塩に変換され、触媒フィルタ試料の多孔質保護層によって収集されたことを確認している。
【0200】
比較例1:SOおよびNHの気体混合物内への脱イオン水の注入
シリンジポンプを使用して、150℃で100ppmのSOと800ppmのNHを含む0.45L/分のガス流に12.0ml/時の速度で脱イオン水を注入した。実施例5中に記載の触媒濾材試料を、気体混合物の下流側に置き、ガス流を、濾材の断面を通って横断方向に流動させた。30分後、脱イオン水注入、NH、およびSOをオフに切換えた。多孔質保護層の表面を、Nicolet(商標)is50 フーリエ変換赤外線(FTIR)FTIR分光計によって分析した。図10に示されているように、H溶液を脱イオン水で置換した場合、実験後の多孔質保護層の表面上には、検出可能な重硫酸アンモニウムが全く形成されなかった。
【0201】
実施例6:SOおよび乾燥吸着剤を含有するガス流中への0.6重量%のH溶液の注入
シリンジポンプを使用して、230℃で100ppmのSOを含む0.45L/分のガス流に12.0ml/時の速度で0.6重量%のH溶液を注入した。ガス流中のH濃度は、約2000ppmである。ガス流中のSO濃度に対するH濃度の比率は約20である。実施例5中において以上で説明した触媒濾材試料を気体混合物の下流側に置き、フィルタ試料の断面を通して横断方向にガス流を流動させた。多孔質保護層の表面をセメントクリンカ層で覆った。セメントクリンカは、90~100重量%のポートランドセメントと0.3~3.0重量%の酸化カルシウムを含有する。実験を30分間続行した。多孔質保護層上のセメントクリンカの元素組成を、実験前後に、Hatachi TM3030 Plus卓上型走査電子顕微鏡(SEM)によって分析した。下表は、セメントクリンカ中の硫黄の重量%が試験の前後で1.2~1.7重量%から2.9~3.9重量%まで増大したことを示している。S/Ca比は、0.10~0.11から0.175~1.95まで増大した。この結果は、SOおよび乾燥吸着剤を含有するガス流にH溶液を添加した場合に、気相SOがガス流から除去され、乾燥吸着剤により捕捉され、触媒フィルタ試料の多孔質保護層によって収集されたことを確認している。
【0202】
【表1】
【0203】
実施例7:SO、NHおよび乾燥吸着剤を含有するガス流中への27.5重量%のH溶液の注入
270mg/NmのSO、23g/Nmセメントダスト(乾燥吸着剤)および5~6mg/NmのNHを含有する210℃で6000Nm/時のオフガス流を、パイロットスケールのバグハウスシステムに連結した。フィルタバッグの形の実施例5で説明した触媒フィルタ試料を、86.2mの総濾過面積で使用した。
【0204】
注入の前および間のSOの濃度を、SDLモデル1080-UV分析器によって測定した。H注入の前および間のSO濃度にしたがって、SO変換効率を計算した、SO変換効率(「SO変換」)(%)=((Hを伴わないSO-Hを伴うSO)/Hを伴わないSO)×100%。
【0205】
27.5重量%のH溶液を含有する12L/時の水をオフガス流に注入した場合、SOの約45.6%が除去される。ガス流中の計算されたH濃度は、約550ppmである。ガス流中のSO濃度に対するH濃度の比率は、約5.8である。27.5重量%のH溶液を含有する15L/時の水をオフガス流中に注入した場合、SOの約63.0%が除去される。ガス流中の計算されたH濃度は、約690ppmである。ガス流中のSO濃度に対するH濃度の比率は、約7.3である。実験後、多孔質保護層の表面を、Perkin Elmer Spectrum Two(商標)フーリエ変換赤外線(FTIR)FTIR分光計によって分析した。図11に示されているように、重硫酸アンモニウム塩が、多孔質保護層の表面上で検出された。
【0206】
当業者にとっては、上述の本開示の実施形態に対する変形形態、修正および改変が明白になるものである。このような変形形態、修正、改変などは全て、添付クレームによってのみ限定される本開示の精神および範囲内に入るように意図されている。
【0207】
本開示のいくつかの実施形態が説明されてきたが、これらの実施形態が単に例示的なものであり、限定的なものではないこと、そして当業者には多くの修正が明白になり得ること、が理解される。例えば、本明細書中で論述されている全ての寸法は、単なる一例として提供されているにすぎず、限定的ではなく例示的なものとなるように意図されている。
【0208】
本明細書中で前向きに識別されているいずれかの特徴または要素が、クレーム中で定義されているような本発明の一実施形態の特徴または要素として具体的に排除されることも同様に可能である。
【0209】
本明細書中に記載の開示は、本明細書中で具体的に開示されていないいずれかの要素、制限が不在の状態で実践可能である。したがって、例えば、本明細書中の各々の事例において、「comprising(~を含む)」、「consisting essentially of(本質的に~で構成された)」および「consisting of(~で構成された)」なる用語のいずれも、他の2つの用語のいずれかで置き換えることが可能である。使用されてきた用語および表現は、制限用語ではなく記述用語として使用されており、このような用語および表現の使用に、図示され説明された特徴またはその部分のあらゆる等価物を排除する意図は全く無く、その範囲内でさまざまな修正が可能であることが認識されている。
【0210】
本開示の範囲から逸脱することなく、特に使用される構成材料および部品の形状、サイズおよび配設に関して、詳細に変更を加えることが可能であるということが理解される。本明細書および記載されている実施形態は例であり、本開示の真の範囲および精神は、以下のクレームによって標示されている。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
【国際調査報告】