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特表2024-501867肝細胞癌の処置、予防的治療、およびそれらの使用のための組成物
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  • 特表-肝細胞癌の処置、予防的治療、およびそれらの使用のための組成物 図1
  • 特表-肝細胞癌の処置、予防的治療、およびそれらの使用のための組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-16
(54)【発明の名称】肝細胞癌の処置、予防的治療、およびそれらの使用のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20240109BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240109BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240109BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240109BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240109BHJP
   C12N 9/04 20060101ALI20240109BHJP
   C12N 15/53 20060101ALI20240109BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240109BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240109BHJP
   C07D 213/81 20060101ALN20240109BHJP
   C07D 215/233 20060101ALN20240109BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/00
A61P1/16
A61P43/00 121
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/76
A61K9/51
A61K31/44
A61K31/47
A61K39/395 N
C12N9/04 Z ZNA
C12N15/53
C12N15/62 Z
C07K19/00
C07D213/81
C07D215/233
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540126
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 US2021065430
(87)【国際公開番号】W WO2022147066
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/131,952
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522266737
【氏名又は名称】リペア・バイオテクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REPAIR BIOTECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】トポルス,ムーラッド
(72)【発明者】
【氏名】リーズン
(72)【発明者】
【氏名】ペルジガン デ オリヴェイラ,ギリエルメ シェルマン
(72)【発明者】
【氏名】リディラ,マルク
(72)【発明者】
【氏名】マッケンジー-リウ,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ストロー,ギャレット
【テーマコード(参考)】
4C055
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C055AA01
4C055BA02
4C055BA58
4C055BB02
4C055CA01
4C055DA42
4C055DB04
4C055DB10
4C076AA65
4C076AA95
4C076CC16
4C076CC27
4C076FF34
4C084AA13
4C084AA20
4C084MA02
4C084MA38
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA75
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA14
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086BC28
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA38
4C086NA05
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZB26
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087CA12
4C087CA20
4C087MA02
4C087MA38
4C087NA05
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA75
4C087ZB26
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
開示する組成物、方法、およびシステムは、ミトコンドリアコレステロールの蓄積に関する様々な癌の処置および予防に有用である。多くの実施形態では、開示する組成物、方法、およびシステムは、化学療法化合物の活性および細胞毒性を改良、例えば化学療法薬に対する細胞の感受性の増大および/または耐性を低下または防止しうる。多くの実施形態では、前記癌は早期および後期ステージの肝細胞癌でありうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝細胞癌の処置または予防を必要とする対象の肝細胞癌を処置または予防する方法であって、
対象の少なくとも1つの肝細胞において1つ以上のコレステロール異化タンパク質を発現させることと、
少なくとも1つの肝細胞の増殖速度を低下させることと、
を含む、方法。
【請求項2】
1つ以上のコレステロール異化タンパク質が肝細胞のミトコンドリア内で発現する、請求項1の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの肝細胞が少なくとも1つの化学療法化合物と接触し、化学療法化合物が、細胞が1つ以上のコレステロール異化タンパク質を発現する前、後、または間に対象に投与される、請求項1または2のいずれかの方法。
【請求項4】
1つ以上の異化タンパク質が、ステロイド産生急性調節(StAR)タンパク質、コレステロールデヒドロゲナーゼ(CholD)、3-ケトステロイドΔ1-デヒドロゲナーゼ(Δ1-KstD)、無酸素性コレステロール代謝B酵素(acmB)、3-ケトステロイド9α-ヒドロキシラーゼ(KshAB)、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2(HSD2)、P450-フェレドキシンレダクターゼ-フェレドキシン融合タンパク質(P450-FdxR-Fdx)、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1から3のいずれかの方法。
【請求項5】
化学療法化合物がソラフェニブおよびレンバチニブから選択される、請求項3から4のいずれかの方法。
【請求項6】
哺乳類細胞が化学療法耐性になることを防ぐか、またはその可能性を低下させる、請求項1から5のいずれかの方法。
【請求項7】
1つ以上のコレステロール異化タンパク質を発現させた後に肝細胞がアポトーシス経路に入る、請求項1から6のいずれかの方法。
【請求項8】
肝細胞癌の処置または予防を必要とする対象の肝細胞癌を処置または予防する方法であって、哺乳類細胞のミトコンドリア内における少なくとも1つのコレステロール異化タンパク質の発現を支持する1つ以上の化合物を含む組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項9】
対象が化学療法化合物を投与される、請求項8の方法。
【請求項10】
化学療法化合物が組成物の前に、組成物の後に、または組成物とともに対象に投与される、請求項9の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのコレステロール異化タンパク質が、ステロイド産生急性調節(StAR)タンパク質、コレステロールデヒドロゲナーゼ(CholD)、3-ケトステロイドΔ1-デヒドロゲナーゼ(Δ1-KstD)、無酸素性コレステロール代謝B酵素(acmB)、3-ケトステロイド9α-ヒドロキシラーゼ(KshAB)、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2(HSD2)、P450-フェレドキシンレダクターゼ-フェレドキシン融合タンパク質(P450-FdxR-Fdx)、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項8から10のいずれかの方法。
【請求項12】
化学療法化合物がソラフェニブおよびレンバチニブから選択される、請求項9から11のいずれかの方法。
【請求項13】
肝細胞が化学療法耐性になることを防ぐか、またはその可能性を低下させる、請求項8から12のいずれかの方法。
【請求項14】
少なくとも1つのコレステロール異化タンパク質を発現させた後に肝細胞がアポトーシス経路に入る、請求項8から13のいずれかの方法。
【請求項15】
肝細胞の増殖速度または生存率を低下させるための組成物であって、
少なくとも1つのコレステロール異化タンパク質をコードする核酸、および
哺乳類肝細胞で活性なプロモーターを含む核酸、
を含む、組成物。
【請求項16】
核酸が細胞内に存在する、請求項15の組成物。
【請求項17】
核酸がウイルス粒子内に存在する、請求項15の組成物。
【請求項18】
核酸が脂質ナノ粒子内に存在する、請求項15の組成物。
【請求項19】
医薬上許容される化合物または塩を含む、請求項15から18のいずれかの組成物。
【請求項20】
肝疾患または肝臓癌の処置または予防のための医薬の製造における、請求項15から18のいずれかの組成物の使用。
【請求項21】
少なくとも1つのコレステロール異化タンパク質が、ステロイド産生急性調節(StAR)タンパク質、コレステロールデヒドロゲナーゼ(CholD)、3-ケトステロイドΔ1-デヒドロゲナーゼ(Δ1-KstD)、無酸素性コレステロール代謝B酵素(acmB)、3-ケトステロイド9α-ヒドロキシラーゼ(KshAB)、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2(HSD2)、P450-フェレドキシンレダクターゼ-フェレドキシン融合タンパク質(P450-FdxR-Fdx)、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項15から19のいずれかの方法、または請求項20の使用。
【請求項22】
細胞癌の処置または予防を必要とする対象の細胞癌を処置または予防する方法であって、対象の少なくとも1つの細胞において1つ以上のコレステロール異化タンパク質を発現させることと、
少なくとも1つの細胞の増殖速度を低下させることと、
を含む、方法。
【請求項23】
1つ以上のコレステロール異化タンパク質が細胞のミトコンドリア内で発現する、請求項22の方法。
【請求項24】
少なくとも1つの細胞が少なくとも1つの化学療法化合物と接触し、化学療法化合物が、少なくとも1つの細胞が1つ以上のコレステロール異化タンパク質を発現する前、後、または間に対象に投与される、請求項22または23のいずれかの方法。
【請求項25】
1つ以上の異化タンパク質が、ステロイド産生急性調節(StAR)タンパク質、コレステロールデヒドロゲナーゼ(CholD)、3-ケトステロイドΔ1-デヒドロゲナーゼ(Δ1-KstD)、無酸素性コレステロール代謝B酵素(acmB)、3-ケトステロイド9α-ヒドロキシラーゼ(KshAB)、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2(HSD2)、P450-フェレドキシンレダクターゼ-フェレドキシン融合タンパク質(P450-FdxR-Fdx)、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項22から24のいずれかの方法。
【請求項26】
哺乳類細胞が化学療法耐性になることを防ぐか、またはその可能性を低下させる、請求項22から25のいずれかの方法。
【請求項27】
1つ以上のコレステロール異化タンパク質を発現させた後に細胞がアポトーシスに入る、請求項22から26のいずれかの方法。
【請求項28】
癌の処置または予防を必要とする対象の癌を処置または予防する方法であって、哺乳類細胞のミトコンドリア内における少なくとも1つのコレステロール異化タンパク質の発現を支持する1つ以上の化合物を含む組成物を対象に投与すること含む、方法。
【請求項29】
対象が化学療法化合物を投与される、請求項28の方法。
【請求項30】
化学療法化合物が組成物の前に、組成物の後に、または組成物とともに対象に投与される、請求項29の方法。
【請求項31】
少なくとも1つのコレステロール異化タンパク質が、ステロイド産生急性調節(StAR)タンパク質、コレステロールデヒドロゲナーゼ(CholD)、3-ケトステロイドΔ1-デヒドロゲナーゼ(Δ1-KstD)、無酸素性コレステロール代謝B酵素(acmB)、3-ケトステロイド9α-ヒドロキシラーゼ(KshAB)、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2(HSD2)、P450-フェレドキシンレダクターゼ-フェレドキシン融合タンパク質(P450-FdxR-Fdx)、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項28から30のいずれかの方法。
【請求項32】
細胞が化学療法耐性になることを防ぐか、もしくはその可能性を低下させる、または細胞の化学療法への感受性を増加させる、請求項28から31のいずれかの方法。
【請求項33】
アポトーシス経路に入り、1つ以上のコレステロール異化タンパク質を発現する、請求項28から32のいずれかの方法。
【請求項34】
癌の増殖速度または生存率を低下させる組成物であって、
少なくとも1つのコレステロール異化タンパク質をコードする核酸、および
癌と同じ組織由来の哺乳類細胞で活性なプロモーターを含む核酸、
を含む、組成物。
【請求項35】
核酸が細胞内に存在する、請求項34の組成物。
【請求項36】
核酸がウイルス粒子内に存在する、請求項34の組成物。
【請求項37】
核酸が脂質ナノ粒子内に存在する、請求項34の組成物。
【請求項38】
医薬上許容される化合物または塩を含む、請求項34から37のいずれかの組成物。
【請求項39】
疾患または癌の処置または予防のための医薬の製造における、請求項34から38のいずれかの組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示するプロセス、方法、およびシステムは、肝細胞癌を含む様々な癌のための治療を目的とする。
【0002】
関連出願との相互参照
本願は、2020年12月30日に出願された“Hepatocellular Carcinoma Treatments, Prophylactic Therapies, and Compositions for Use Therewith”と題する米国仮特許出願番号63/131,952の米国特許法第119条(e)の定めによる優先権の利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0003】
配列表
本願は、ASCII形式で電子提出された配列表を含んでおり、参照によりその全体が本明細書に援用される。当該ASCII複製は、2021年12月27日に作成され、p289349_WO_01_ST25.txtの名称で、34,319バイトのサイズである。
【背景技術】
【0004】
コレステロール調節不全は、癌の表現型の創出、進行、および維持と関連付けられる。具体的には、ミトコンドリアコレステロール濃度が固形癌で異常であり、腫瘍の増殖、悪性度、化学的感受性、および治療への耐性に関連することが示されてきた。近年、コレステロール合成経路を標的するスタチン薬が、いくつかの化学療法薬の有効性と細胞毒性を改善することが示されてきた。コレステロール蓄積と関係することが明らかとなったある特定のタイプの癌は、肝細胞癌、HCCであり、その他に膵臓癌を含む。スタチンは細胞内のコレステロールの蓄積を減少しうるが、すでに細胞に蓄積したコレステロールを直接標的としない。
【0005】
必要なことは、有効で、耐性を誘導しない、そして現在の治療より安全である、癌、例えばHCCの処置のための治療法である。
【発明の概要】
【0006】
本明細書の開示は、処置および/または予防を必要とする対象の肝細胞癌を含む癌の処置および/または予防に有用な組成物および方法である。多くの実施形態では、開示する組成物および方法は、コレステロールの取り込み、輸送、蓄積および/または代謝の変化に関連しうる疾患および状態、例えば異常な細胞増殖および/または生存、に関連する疾患および状態の処置および/または予防に有用である。多くの実施形態では、開示する方法は、対象の少なくとも1つの肝細胞で1つ以上のコレステロール異化タンパク質を発現させること、および少なくとも1つ以上の肝細胞の増殖速度を低下させることを含みうる。多くの実施形態では、前記1つ以上のコレステロール異化タンパク質は肝細胞のミトコンドリア内で発現しうる。多くの実施形態では、前記方法は、肝細胞が、ステロイド産生急性調節(StAR)タンパク質、コレステロールデヒドロゲナーゼ(CholD; 配列番号2)、3-ケトステロイドΔ1-デヒドロゲナーゼ(Δ1-KstD; 配列番号3)、無酸素性コレステロール代謝B酵素(acmB; 配列番号4)、3-ケトステロイド9α-ヒドロキシラーゼ(KshAB; 配列番号5)、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2(HSD2; 配列番号6)、P450-フェレドキシンレダクターゼ-フェレドキシン融合タンパク質(P450-FdxR-Fdx; 配列番号1)、およびそれらの組み合わせから選択されうる1つ以上のコレステロール異化タンパク質を発現している前、後、または間に、細胞を少なくとも1つの化学療法化合物と接触させることも含みうる。多くの実施形態では、前記化学療法化合物はソラフェニブおよびレンバチニブから選択してもよく、前記方法は哺乳類細胞が化学療法薬耐性になることを防止するか、またはその可能性を低下するのに有用であることがある。多くの実施形態では、前記方法は、肝細胞が1つ以上のコレステロール異化タンパク質を発現した後、アポトーシス経路に入りうることにつながることがある。
【0007】
肝細胞、特に肝癌細胞、例えば肝細胞癌細胞の増殖速度または生存率を低下させるための組成物も開示し、前記組成物は、少なくとも1つのコレステロール異化タンパク質をコードする核酸および哺乳類細胞で活性なプロモーターを含む核酸を含み、前記核酸は細胞内、ウイルス内、または脂質ナノ粒子内に存在しうる。多くの実施形態では、前記組成物は医薬上許容される化合物または塩を含んでもよく、肝臓疾患または癌の処置または予防のための医薬製造において使用してもよい。多くの実施形態では、少なくとも1つのコレステロール分解タンパク質は、ステロイド産生急性調節(StAR)タンパク質のコーディング配列、コレステロールデヒドロゲナーゼ(CholD)、3-ケトステロイドΔ1-デヒドロゲナーゼ(Δ1-KstD)、無酸素性コレステロール代謝B酵素(acmB)、3-ケトステロイド9α-ヒドロキシラーゼ(KshAB)、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2(HSD2)、P450-フェレドキシンレダクターゼ-フェレドキシン融合タンパク質(P450-FdxR-Fdx)、およびそれらの組み合わせから選択してもよい。
【0008】
肝細胞癌の処置または予防を必要とする対象の肝細胞癌の処置または予防に有用な方法も開示し、その方法は対象に組成物を投与することを含み、その組成物は哺乳類細胞のミトコンドリア内における少なくとも1つのコレステロール異化タンパク質の発現を支持する1つ以上の化合物を含む。多くの実施形態では、前記対象に前記組成物の前に、後に、または前記組成物とともに化学療法化合物を投与してもよく、その化学療法化合物はソラフェニブまたはレンバチニブを含みうる。多くの実施形態では、少なくとも1つのコレステロール異化タンパクは、ステロイド産生急性調節(StAR)タンパク質のコーディング配列、コレステロールデヒドロゲナーゼ(CholD)、3-ケトステロイドΔ1-デヒドロゲナーゼ(Δ1-KstD)、無酸素性コレステロール代謝B酵素(acmB)、3-ケトステロイド9α-ヒドロキシラーゼ(KshAB)、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2(HSD2)、P450-フェレドキシンレダクターゼ-フェレドキシン融合タンパク質(P450-FdxR-Fdx)、およびそれらの組み合わせから選択してもよい。多くの実施形態では、前記方法は肝細胞が化学療法薬耐性になることを防止するか、またはその可能性を低下するのに有用であることもあり、および/または肝細胞が1つ以上のコレステロール異化タンパク質を発現した後、アポトーシス経路に入りうることにつながることがある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、CDP-Hep3B細胞におけるFlagタグCDPの発現と、モック-Hep3B細胞においては発現していないことを示す代表的なウェスタンブロットである。
【0010】
図2図2は、48時間にわたるモック-Hep3B細胞と比較したCDP-Hep3B細胞の増殖速度の低下を示す代表的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
開示する組成物、方法、およびシステムは、コレステロールの取り込み、輸送、蓄積および/または代謝の変化に関連しうる様々な疾患および状態、特に異常な細胞増殖および/または生存に関連する様々な疾患および状態の処置および/または予防に有用である。多くの実施形態では、前記疾患または状態は癌、例えば肝細胞癌でありうる。多くの実施形態では、開示する組成物、方法、およびシステムは、1つ以上の肝細胞のコレステロール含量の減少に有益である。多くの実施形態では、開示する組成物、方法、およびシステムは、細胞のコレステロールレベルを低下する組成物および方法を組み合わせた、および化学療法組成物および方法を組み合わせた治療を含みうる。多くの実施形態では、開示する組成物、方法、およびシステムはミトコンドリア内コレステロール含量の減少に有用でありうる。多くの実施形態では、開示する組成物、方法、およびシステムは、1つ以上の癌性または前癌性細胞が1つ以上の化学療法化合物および/または治療に対し、より高い感受性またはより低い耐性になることにつながりうる。多くの実施形態では、開示する感受性/耐性は様々な方法により測定でき、例えば、細胞または細胞の特性を50%阻害可能な特定の阻害基質(ここでは、化学療法化合物)の量を示す定量的尺度である、IC50による。いくつかの実施形態では、化学療法化合物はソラフェニブまたはレンバチニブから選択しうる。
【0012】
肝細胞癌(HCC)
肝細胞癌(HCC)は世界中でもっとも致命的な癌の1つである。HCCはしばしば進行期に診断されるため、処置の選択肢は限られている。外科摘出が好ましい治療であるが、HCC患者の約15%しかこのような治療介入を受けられず、その約70%が5年以内に再発を経験する。
【0013】
現在、HCC処置のための医薬治療はとても限定的である。ソラフェニブトシル酸塩(バイエル社のネクサバール; 抗増殖性 (RAF1、BRAF、およびKIT)、抗血管新生(血管内皮細胞増殖因子[VEGFR]および血小板由来増殖因子受容体[PDGFRB])、およびアポトーシス促進作用を及ぼすマルチキナーゼ阻害薬)およびレンバチニブメシル酸塩(メルク社のレンビマ; VEGFR 1-3、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)1-4、RET、KIT、およびPDGFRaのマルチキナーゼ阻害薬)が、手術により除去することができない進行したHCCの第一選択の全身処置のための唯一承認された薬である。第二選択療法は、マルチキナーゼ阻害薬のレゴラフェニブおよびカボザンチニブ、抗VEGFR2 mAbのラムシルマブ、ならびに免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1 mAb)のニボルマブおよびペムブロリズマブを含む。
【0014】
ソラフェニブは経口活性マルチキナーゼ阻害薬で、HCC患者における第三相臨床治験で有意な抗癌活性を示した。しかし、ソラフェニブに対する耐性は珍しくはなく、この処置の有効性における制限要因である。平均的には、ソラフェニブに対する耐性は約12.2か月で起きるが、数か月から数年に変動しうる。実験室では、ソラフェニブ耐性HCC細胞株はたいてい約12週間で樹立される。抗EGFR抗体(セツキシマブ)、細胞障害性化学療法薬(エピルビシン、シスプラチン、5-FUおよびカペシタビン)、および免疫治療薬(抗PD-1抗体)と組み合わせた処置を含む、ソラフェニブ耐性を防ぐいくつかの方法が試されてきた。しかしながら、前記組み合わせ治療は重度の有害な副作用を有し、その有効性を限定的にする。
【0015】
コレステロール蓄積と癌
コレステロール蓄積は、発癌および進行と関連してきた。HCCのケースでは、肝細胞内のコレステロール蓄積を含む非アルコール性脂肪性肝炎はHCCにつながりうる。ミトコンドリア内のコレステロール蓄積も癌内で役割を果たすとみられる。例えば、ステロイド産生急性調節タンパク質、またはStARタンパク質の発現は、NASFなどの急性肝損傷および慢性肝疾患に応答して数倍に増加する。StARは、ミトコンドリア外膜(OMM)からミトコンドリア内膜(IMM)へのコレステロール輸送を支援する。
【0016】
ミトコンドリアへのコレステロール異常蓄積は、固形癌中、例えばモーリス肝癌(Morris hepatomas)の移植を受けたラットの中で見られてきた。1960年代、Dr. Harold P. Morrisはラットにおいて肝臓癌を引き起こすと知られるいくつかの化学物質を使用した。その後すぐ、最初のモーリス肝癌(#3683, 3924A, 5123)がいくつかの研究室で研究され、続く18年にわたりDr. Morrisは数多くの肝癌株を開発し移植した。モーリス肝癌は、既知の化学発癌物質を使用して研究室で作製されたラット肝臓癌である。肝臓癌は多くの異なるタイプの肝癌を表すが、HCCは成人のもっとも一般的な原発肝臓癌の形態である。HCCの多くのケースは、B型もしくはC型肝炎の感染、またはNASHもしくはアルコール依存症により引き起こされる肝硬変に起因する。モーリス腫瘍は、HCCを含む肝臓癌の研究のためのモデルシステムを提供する。
【0017】
さらに、ミトコンドリアコレステロールのレベルは、腫瘍の増殖および悪性度の程度と相関する。HCCの場合、ミトコンドリアへのコレステロール蓄積はStAR発現増強と相関していることが観察された。しかし、結腸癌では、ミトコンドリアへのコレステロール蓄積は逆にABCA1発現と相関する。ABCA1はコレステロールを細胞外へと送り出す支援をする。
【0018】
NASHにおける、肝細胞内のミトコンドリアへのコレステロール蓄積は、膜の流動性低下につながり、同様の結果がHCCにおいて報告されていた。その結果、特異的なミトコンドリアキャリアを欠くことになり、ミトコンドリアマトリクスと細胞質基質の間の輸送速度および平衡が変化することにつながっている。例えば、グルタチオン(GSHと省略)は細胞質基質で合成され、2-オキソグルタル酸キャリア(OGC; SLC25A11)によってミトコンドリア内に輸送される。コレステロール蓄積過多によるSLC25A11の阻害は、初代細胞内のミトコンドリアGSH(mGSH)の欠失へとつながり、細胞を酸化ストレス媒介細胞死に対しより敏感にさせる。逆説的に、HCC内のミトコンドリアへのコレステロール蓄積増加は、コレステロールの阻害効果を打ち消すSLC25A11の過剰発現のため、mGSH欠失を導かない。mGSHレベルを維持する一方、ミトコンドリアのコレステロール増加に対するHCC癌細胞内のミトコンドリアのこの適応応答は、腫瘍増殖に有利である。
【0019】
コレステロールは癌細胞がアポトーシス経路に入ることを防ぎうる。加えて、コレステロールは抗酸化防御を増大させることにより腫瘍増殖も促進する。抗酸化物質は細胞と腫瘍の増殖を加速させるその能力が認識されるようになってきており、例えば肺癌の進行やメラノーマ転移においてである。上記の腫瘍において、非小細胞肺癌およびメラノーマで増加するSLC25A11の発現は、ミトコンドリア機能を維持するためにNADPHの供給を促進する。HCC細胞では、SLC25A11は酸化的リン酸化と解糖を通したATP産生を維持することにより細胞増殖を促進する。コレステロール輸送増加にもかかわらず非制限的な酸化的リン酸化を維持する癌細胞のこの能力は、初代肝細胞のミトコンドリア内のコレステロール蓄積が呼吸鎖超複合体のアセンブリ不良につながることを考慮すると、注目すべきである。
【0020】
様々な癌タイプの細胞のミトコンドリアが、コレステロール蓄積の増加を示している。このミトコンドリアのコレステロール蓄積は、ミトコンドリアの機能不全の主な原因となることがあり、化学療法の有効性において役割を果たすことがある。癌細胞内でのSLC25A11の過剰発現は、ミトコンドリアのATP合成維持を助けること、ミトコンドリア膜の透過性に対する耐性を増加すること、および化学療法に対する耐性を増加することにより癌細胞増殖の促進を助けうる。
【0021】
スタチン
スタチンはコレステロール合成経路を阻害する。具体的には、スタチンは3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoAレダクターゼ(HMG-CoAレダクターゼ、またはHMGCR)を標的とし、阻害する。HMGCR酵素はメバロン酸経路の律速酵素であり、コレステロールおよび他のイソプレノイドを生成する。スタチン/HMGCR阻害薬は脂質低下医薬の分類を形成し、しばしば循環器疾患の高リスク患者に処方される。標的される脂質、LDL、または低密度リポタンパク質は、コレステロールのキャリアであり、それゆえ、アテローム性動脈硬化および冠動脈性心疾患の進行に重要な役割を果たしている。
【0022】
スタチン化合物はHMG-CoAに似ており、そのためHMGCRに対するHMG-CoAの結合と競合する。この競合は効果的にHMGCR酵素の速度を下げ、次にLDLコレステロールの合成を下げる。様々な形態のスタチンが存在し、一般名では、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、およびシンバスタチンである。
【0023】
スタチンは化学療法の改善に有用でありうる。例えば、スタチンと組み合わせた化学療法は癌処置の有効性に改善が示されている。例えば、フルバスタチンはメラノーマ細胞における化学療法薬ソラフェニブの有効性と細胞毒性を増加する。エンザスタウリン(血管新生を抑制する化学療法薬)と組み合わせたロバスタチンもインビトロおよびインビボでHCC増殖を阻害することが示されている。HCC増殖はセレコキシブ(結腸ポリープを防ぐ有望な結果を示す非ステロイド性抗炎症薬)とスタチンの組み合わせにより阻害されることも示されている。
【0024】
抗癌処置としてのスタチンの役割は、上記で説明した癌細胞での上昇したミトコンドリアコレステロールレベルに関連しうる。先に述べたように、癌細胞内のミトコンドリアコレステロールレベルの増加は、これらの細胞が、化学療法薬、特に細胞死誘導化学療法に対しより耐性になることにつながりうる。
【0025】
コレステロール分解組み合わせ治療
様々な疾患、障害、および状態を処置する、予防する、およびそのリスクを低下させるための組成物、処置、および方法を本明細書で開示する。いくつかの実施形態では、前記疾患は代謝疾患および癌を含む疾患または障害でありうる。いくつかの実施形態では、前記疾患は肝臓関連である場合があり、例えば末期肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、および肝細胞癌である。他の実施形態では、前記疾患はメラノーマ、肝細胞癌、結腸癌などの様々な癌でありうる。
【0026】
化学療法処置に対する耐性を低下させるための組成物、処置、および方法を本明細書で開示する。多くの実施形態では、開示する組成物は、癌を処置するための化学療法化合物と組み合わせうる。多くの実施形態では、開示する組成物、方法、および処置は、治療化合物に対する1つ以上の癌の感受性を高めうる。多くの実施形態では、開示する組成物および方法の使用は、癌の化学療法化合物に対する耐性の割合を低下させ、かつ/または癌の進行、増殖、および/または再発を低下させうる。
【0027】
疾患および状態
様々な疾患、状態、および障害、例えば代謝関連疾患および癌が、開示する組成物、化合物、および方法で処置されうる。多くの実施形態では、疾患および状態は、コレステロールの細胞への取り込み、輸送、蓄積、および/または代謝の変化、特に異常な細胞増殖および/または生存に関連しうる。多くの実施形態では、疾患または状態は癌でありうる。いくつかの実施形態では、疾患は肝臓関連、例えば早期、後期、または末期の肝臓疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、肝細胞癌でありうる。他の実施形態では、疾患は膵臓癌、メラノーマ、肝細胞癌、結腸癌などの1つ以上の癌を導きうる様々な疾患または状態でありうる。多くの実施形態では、開示する疾患、状態、および障害は腸癌、腺癌、消化管カルチノイド、膵臓癌、小細胞癌、平滑筋肉腫、およびリンパ腫でありうる。
【0028】
開示する処置は疾患の進行を予防または低下しうる。いくつかの実施形態では、例えば患者がNASHを患う場合、開示する処置はHCC発生および末期肝臓疾患を予防するか、またはそのリスクを低下させうる。
【0029】
組織および細胞
様々な組織および細胞タイプが開示する組成物および方法で標的されうる。1つの実施形態では、標的細胞は異常な細胞増殖および/または生存を示しうる。多くの実施形態では、組織または細胞タイプは癌性組織または細胞でありうる。様々な実施形態では、細胞は肝細胞および肝臓でみられる様々な細胞でありうる。他の実施形態では、組織は皮膚細胞、扁平細胞、上皮細胞、腺由来の上皮細胞、神経内分泌細胞、膵細胞、平滑筋細胞およびリンパ細胞、例えば臓器/消化管壁でみられるリンパ細胞の1つ以上でありうる。
【0030】
化学療法薬耐性の防止
開示する化合物、組成物、方法、および処置は、細胞が様々な化学療法化合物耐性になることを低下または防止しうる。様々な実施形態では、化学療法化合物は第一選択全身療法であり得、例えばソラフェニブ(バイエル)、レンバチニブ(メルク)、レゴラフェニブ(スチバーガ)、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)、ラムシルマブ(サイラムザ)、カボザンチニブ(コメトリック、カボメティクス)である。
【0031】
開示する化合物、組成物、方法、および処置は、細胞を様々な医薬化合物に対し感作させることを提供しうる。いくつかの実施形態では、医薬化合物は1つ以上の化学療法または免疫療法でありうる。いくつかの実施形態では、医薬化合物はソラフェニブ(バイエル)、またはレンバチニブ(メルク)でありうる。
【0032】
CDP(mRNAまたはDNA)の腫瘍標的送達は、単独または組み合わせて投与した場合、抗癌治療に対する耐性を防ぎ、癌細胞を抗癌治療に感作させると考えられる。
【0033】
アポトーシス
アポトーシスはプログラム細胞死の基本的なメカニズムであり、このプロセスの回避はときに「がんの特性(Hallmarks of cancer)」と呼ばれる。アポトーシスはいくつかの手段により誘導され得、2つの主な経路を経由して進行する。内因性経路はB細胞リンパ腫(Bcl)-2タンパク質ファミリー、ミトコンドリア透過性、およびアポプトソーム形成を含み、外因性経路は細胞死受容体、細胞死誘導シグナル伝達複合体、およびカスパーゼの活性化を含む。
【0034】
内因性経路
内因性経路の誘導はDNA損傷などの内部のアポトーシス促進性の刺激に応答して発生しうる。
【0035】
アポトーシスの初期では、DNA損傷がアポトーシス促進性の(すなわちアポトーシスを促進する)メンバーのBclファミリー(PUMA; p53上方調節アポトーシスモジュレーター、BAD; Bcl-2関連細胞死アゴニストおよびNoxa)を活性化し、抗アポトーシスメンバーであるBcl-xLおよびBcl-2の阻害を導く。次にアポトーシス促進性BAK(Bcl-2相同アンタゴニストキラー)およびBAX(Bcl-2関連xタンパク質)がミトコンドリア膜内にインサートし、ミトコンドリア膜の統合(integrity)の損失を誘導し、このことが不可逆的に細胞をアポトーシスに追い込む。
【0036】
アポトーシスの中期では、ミトコンドリアからのシトクロムCおよび他のタンパク質の放出が、プロカスパーゼ-9とともに、細胞質にアポプトソームを形成する。これがカスパーゼ-9の活性化を導き、その結果、エフェクターカスパーゼのカスパーゼ-3/7の活性化を導く。これらのエフェクターカスパーゼは、細胞外側の細胞膜に対するホスファチジルセリンの露出を含む重要なアポトーシスイベントを開始する。
【0037】
外因性経路
外因性経路は、CD120a、CD120b、CD95/FAS、細胞死受容体(DR)3、CD261/DR4、CD262/DR5、CD266およびCD358/DR6を含むTNF受容体スーパーファミリーのメンバーにリガンドを結合することにより活性化される。主なアポトーシス誘導リガンドはTNF-□、リンホトキシン-□、FasL/CD178およびTRAIL(TNF-関連アポトーシス誘導リガンド)である。
【0038】
細胞死受容体へのリガンド結合に続き、下流シグナル伝達経路が、細胞死誘導シグナル伝達複合体(DISC)などの複合体の形成を活性化する。結局のところ、この経路の初期が、開始カスパーゼであるカスパーゼ-8の活性化である。この初期内で、カスパーゼ-8を介したBID(BH3-相互作用ドメイン細胞死アゴニスト)の活性な15 kDaの切断形態であるtBIDへの切断と活性化を介した内在性経路とのクロストークの可能性がある。
【0039】
アポトーシスの中期では、カスパーゼ-8がエフェクターカスパーゼであるカスパーゼ-3およびカスパーゼ-7を活性化し、次に細胞外側の細胞膜に対するホスファチジルセリンの露出などの重要なアポトーシスイベントを開始する。これは外因性および内因性アポトーシス経路が収束するポイントである。
【0040】
アポトーシス後期では、外因性および内因性経路が収束する。カスパーゼ-3/7の活性化とともに始まり、DNA断片化および細胞膜崩壊/ブレブ形成へとつながる。要するにカスパーゼ-3/7はその阻害物であるDFF45からDFF40を放出し、DFF40をDNAのフラグメント化に関与させる。ミトコンドリアエンドヌクレアーゼGもDNAフラグメント化に寄与する。カスパーゼ-3/7はROCK1を活性化し、それはアクトミオシン依存性膜ブレブ形成を引き起こす。
【0041】
多くの実施形態では、アポトーシスは、カスパーゼ3、カスパーゼ7、カスパーゼ8、カスパーゼ9、BID、tBID、シトクロムC、プロカスパーゼ9、PUMA、BAD、Noxa、Bcl-xL、Bcl-2、BAK、BAX、ならびに当業者に周知の他の因子およびイベントのいずれか1つ以上の存在、局在、活性化/阻害、発現、またはその変化のための細胞解析によって、特定またはアッセイしうる。
【0042】
コレステロール分解酵素
本明細書では、様々なコレステロール、コレステロール関連遺伝子およびタンパク質を開示する。いくつかの実施形態では、開示する遺伝子およびタンパク質はコレステロールの輸送および/または異化を支援することができる。ほとんどの実施形態では、開示する遺伝子およびタンパク質はミトコンドリア内で発現および/またはミトコンドリアを標的しうる。多くの実施形態では、開示する遺伝子およびタンパク質はコレステロールの開環による分解および/または異化を細胞に可能にし、すると内在性タンパク質および酵素はさらにその分子を代謝しうる。
【0043】
開示する組成物は、ミトコンドリアマトリクス内へのコレステロールの流れを支援する機能を果たす1つ以上の遺伝子および/またはタンパク質を含んでもよい。多くの実施形態では、前記組成物はステロイド産生急性調節(StAR)タンパク質の少なくとも一部分をコードまたは包含する分子を含みうる。本発明の組成物および方法とともに使用するStARタンパク質は、StARタンパク質配列の様々な形態を含みうる。いくつかの実施形態では、開示するStARタンパク質は1つ以上の変異、トランケーション、欠失、重複、融合などを含んでもよく、または開示するタンパク質は、野生型または天然のStARタンパク質でもよい。いくつかの実施形態では、開示するタンパク質は、ミトコンドリア外膜通過の輸送時間を減少する改変をしてもよく、コレステロールのミトコンドリア輸入向上を助けうる。
【0044】
開示する組成物はコレステロールの異化/分解を支援する1つ以上の遺伝子および/またはタンパク質を含んでもよい。ほとんどの実施形態では、その遺伝子および/またはタンパク質はミトコンドリア内のコレステロールの異化を支援する。多くの実施形態では、開示する遺伝子および/またはタンパク質は、コレステロールデヒドロゲナーゼ(CholD)、3-ケトステロイドΔ1-デヒドロゲナーゼ(Δ1-KstD)、無酸素性コレステロール代謝B酵素(acmB)、3-ケトステロイド9α-ヒドロキシラーゼ(KshAB)、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2(HSD2)、P450-フェレドキシンレダクターゼ-フェレドキシン融合タンパク質(P450-FdxR-Fdx)およびそれらの組み合わせから選択してもよい。
【0045】
開示する遺伝子、タンパク質、および酵素の1つ以上を、1つ以上のベクター、コンストラクト、またはカセットにパッケージしてもよい。様々な実施形態では、1つ以上のコレステロール分解酵素を含むカセットは、コレステロール異化カセット(CCC)と呼ばれうる。いくつかの実施形態では、前記カセットはコンストラクトであってもよく、本明細書で開示するタンパク質と約80%以上の同一性をもつ少なくとも1つのタンパク質をコードする核酸配列または開示する遺伝子のいずれかによりコードされるタンパク質を含んでもよい。
【0046】
「約(about)」または「およそ(approximately)」なる用語は、当業者の1人によって決定される特定の値に対する許容可能な誤差を意味し、部分的にはどのようにしてその値が測定されまたは決定されたかに依る。ある実施形態では、「約」または「およそ」なる用語は、1、2、3、4標準偏差以内を意味している。ある実施形態では、「約」または「およそ」なる用語は、所定の値または範囲の30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.05%以内を意味している。「約」または「およそ」なる用語が連続する2つ以上の数値の最初の数値の前にある場合は、「約」または「およそ」なる用語は連続する数値のそれぞれに適用される。
【0047】
本明細書で使用される「防止する」および「防止」なる用語は、本発明による抗体コンストラクトの、それを必要とする対象への投与による、本明細書に明記する疾患の発生または再発の回避を意味する。
【0048】
「処置する」、「処置すること」、および「処置」なる用語は、本明細書で開示する事象、疾患、または状況の少なくとも1つの症状、徴候、または進行を、一時的にまたは持続的のいずれか、部分的にまたは完全のいずれかで、取り除くこと、減少すること、抑制すること、または寛解させることを意味する。関連する分野では認知されるように、治療として利用される方法、および薬は、所定の疾患状態の重症度を低下する場合があるが、有用であるとみなされるために、疾患のすべての症状を消失させる必要はない。同様に、予防的投与処置は、実行可能な予防的方法または薬を構成するために、状態の発症予防が完全に効果的である必要はない。単に、疾患の影響を低下すること(例えば、本明細書で開示するように、肝細胞癌など、および/または関連する症状の数または重症度を低下、または別の処置の有効性を増大することにより、または別の有益な効果を生むことにより)、または対象に疾患が発生または悪化する可能性を低下することで十分である。本発明の1つの実施形態は、既存の状態、または肝細胞癌の重症度を反映する基準指標に対して持続的な改善を誘導するに十分な量、期間、および反復で患者に治療的処置を投与することを含む、処置の有効性を決定するための方法を目的としている。
【0049】
本明細書で開示するように、開示する化合物および組成物の投与は様々な方法を介してもよい。いくつかの実施形態では、投与は、「静脈内」投与であってもよく、それは患者の静脈内への例えば点滴(静脈へのゆっくりとした治療的な導入)による導入のことをいう。いくつかの実施形態では、投与は「皮下」投与であってもよく、それは患者の皮膚の下に行われる。いくつかの実施形態では、投与は「点滴」または「点滴すること」によってでもよく、治療目的のために静脈を通して患者に溶液が輸送される。一般的にこれは、患者の静脈を通して投与されうる溶液を保持できるバッグである静脈内(IV)バッグを介してなされる。様々な実施形態では、IVバッグはポリオレフェンまたはポリビニルクロライドで成型されている。様々な実施形態では、開示する化合物および組成物は「同時投与」してもよく、2つ以上の化合物または組成物が、連続的というよりも同じ投与の間に投与されてもよい。一般的に、これは2つの(またはそれ以上の)化合物または組成物を同時投与する前に同じIVバッグ中に組み合わせることを含むであろう。
【0050】
本明細書で開示する「患者」または「対象」には、ヒト、ウシ、ウマ、ヒツジ、子ヒツジ、ブタ、ニワトリ、ターキー、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、またはモルモットなどの動物を含む。前記動物は非霊長類および霊長類(例えばサルおよびヒト)などの哺乳類であってもよい。1つの実施形態では、患者は幼児、子ども、青少年または成人などのヒトである。
【0051】
実施例
実施例1 ソラフェニブ処置に応答する増殖へのコレステロール分解の効果
ヒトHep3B肝細胞癌(ATCCからwww.atcc.org/products/all/HB-8064.aspx)を、熱非動化10%FBS、PenStrep(100 units/mL // 100mg)および2mM L-グルタミン添加のイーグル最小必須培地(EMEM)で培養した。
【0052】
細胞を、抗生物質(ここではピューロマイシン)耐性遺伝子を含むレンチウイルスベクターで形質導入した。Hep3B細胞のピューロマイシンセレクションの最適条件は、形質転換していないHep3B細胞を濃度が増加していく抗生物質にさらすことにより最初に確立した。セレクションの最小濃度は、7日間の間にすべての細胞を死滅させるのに必要な最小のピューロマイシン濃度を決定することにより特定した。
【0053】
Hep3B細胞は空のレンチウイルス(MOI=5)またはCDPを有すレンチウイルス(MOI=5)のいずれかで形質導入した。図1は、FlagタグされたCDPのCDP-Hep3B細胞(「CDP」)およびタグされていないCDPのモックHep3B細胞(「モック」)の発現を示すウェスタンブロットである。簡潔に述べると、全タンパク質を、RIPAバッファを使用して各安定発現細胞株から抽出し、各細胞株から10、20、30μgのタンパク質をSDS-PAGEで分離し、PVDFメンブレン上に転移し、マウス抗Flag抗体(シグマ、F3165、1:2000)で一晩プローブした。特異的バンドを化学発光を使用して可視化し、バンドの強度はローディングと転移のコントロールのためにα/β-チューブリン(抗チューブリン抗体; サンタクルズ 2148S、1:2000)で標準化した。
【0054】
モックとCDP-Hep3B細胞の増殖率と生存率は、テトラゾリウム塩である3-[4, 5-ジメチルチアゾール-2イル]-2, 5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド(MTT)試薬(resources.rndsystems.com/pdfs/datasheets/4890-025-k.pdf)を使用した細胞増殖アッセイにより評価した。簡潔に述べると、細胞を96ウェル平底組織培養プレートで100μLの培地で培養した。アッセイの線形性を決定するために、各安定発現細胞を密度(1500、3000、6000および12000 cells/well)で播種し、24、48、72時間インキュベートした。MTT試薬を各時間で添加し、細胞を4時間インキュベートし、可溶性の黄色MTT試薬を細胞内で還元し不溶性の紫色ホルマザン染色へとした。そして各ウェルに界面活性剤を添加しホルマザンを可溶化した後、マイクロプレートリーダーで570nmにて各サンプルの吸光度を測定した。最初の24時間および48時間にかけて、アッセイは線形の相関関係を保つことを結果が示した。
【0055】
モック-Hep3B細胞株とCDP-Hep3B細胞株の増殖速度を、48時間にわたる密度変化でグラフ化した。図2Aは、48時間にわたるCDP-Hep3B細胞とモック-Hep3B細胞の増殖速度を得るための細胞増殖と播種密度のグラフである。このグラフは、CDP-Hep3B細胞のCDPの発現は増殖速度の低下を導いたことを示した(各傾き = 0.0247と0.0358、2元配置分散分析 P<0.0001、2回実験の平均値)。
【0056】
安定発現細胞の増殖速度はソラフェニブの存在下でも取得した。図2Bは、細胞の生存率とソラフェニブ濃度のグラフである。HCC患者に対する第一選択治療およびマルチキナーゼ阻害薬ソラフェニブへの応答と類似の低下をCDP-Hep3B細胞とモック-Hep3B細胞の生存率で示した。簡潔に述べると、モックおよびCDP-Hep3B細胞を12000 cells/wellで96ウェルプレートに播種し、ソラフェニブの用量を高めていく状態にさらした(0、0.5、1、2、4、10、16、および20μM)。上述したように、細胞生存率は48時間後にMTTアッセイを用いて評価した。
【0057】
ヒトHep3B細胞におけるCDPの発現は、ソラフェニブ存在下のIC50へ有意に影響を与えなかったことが、図2Bのデータをフィッティングすることにより示された(算出されたIC50値: 4.64± 0.16とモック-Hep3B細胞の4.76 ± 0.62、3回の独立した実験)
【0058】
複数の実施形態を開示したが、本発明のさらに他の実施形態が、以下の詳細な記述から当業者に明らかになると思われる。明らかになった場合は、本発明は、本発明の精神および範囲からまったく逸脱することなく、様々な明白な側面で修正することができる。したがって、詳細な記述は、本質的に理解を助けるためのもので、限定的ではないとされるべきである。
【0059】
本明細書で開示するすべての参照は、特許または非特許に関わらず、それぞれが引用された時点でその全体が含まれていたかのように、本明細書に参照により援用される。参照と明細書が対立する場合、定義を含む本明細書が制御する。
【0060】
本開示はある程度詳細に記載されているものの、開示が実例を介して作成されたことは理解され、詳細変更または構成は、添付の請求項で定義される開示の精神から逸脱することなく作成してもよい。
図1
図2
【配列表】
2024501867000001.app
【国際調査報告】