(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-16
(54)【発明の名称】FMCWチャープ帯域制御
(51)【国際特許分類】
G01S 13/34 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
G01S13/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540528
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 US2021065267
(87)【国際公開番号】W WO2022146954
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】カーティク サブライ
(72)【発明者】
【氏名】スリーキラン サマラ
(72)【発明者】
【氏名】インドゥ プラサパン
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB17
5J070AB21
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC11
5J070AF03
5J070AH31
(57)【要約】
記載される例において、周波数変調連続波(FMCW)シンセサイザ(208)が、制御エンジン(304)と位相ロックループ(302)(PLL)とを含み、PLLが、分周器(310)と制御電圧生成器(CVG)と電圧制御発振器VCO(330)とを含む。分周器は、制御入力(340)に基づいてVCO出力周波数を変更する。CVGは、周波数基準(308)及び分周器出力に基づいて制御電圧(328)を生成する。VCOは、制御電圧(328)に応答して、VCO出力周波数を有するFMCW出力(336)を出力する。制御エンジン(304)は、VCO出力周波数が、第1の時間から第2の時間まで第1の周波数であり、第2の時間から第3の時間まで第1のレートで変化し、第3の時間から第4の時間まで第1のレートとは異なる第2のレートで変化し、第4の時間から第5の時間まで第2の周波数であるように、制御入力(340)を生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数変調連続波(FMCW)シンセサイザであって、
位相ロックループ(PLL)と、
制御エンジンと、
を含み、
前記PLLが、
制御入力と分周器入力と分周器出力とを含む分周器であって、前記制御入力に応答して、前記分周器入力によって受信された信号の周波数を改変するように構成される、前記分周器と、
制御電圧生成器(CVG)であって、第1のCVG入力と第2のCVG入力と制御電圧出力とを含み、前記第1のCVG入力が周波数基準信号を受信するように適合され、前記第2のCVG入力が前記分周器出力に結合され、前記CVGが、前記第1のCVG入力及び前記第2のCVG入力に応答して制御電圧を生成するように構成される、前記CVGと、
電圧制御発振器(VCO)であって、VCO入力及びVCO出力を含み、前記VCO入力が前記制御電圧出力に結合され、前記VCO出力が前記分周器入力に結合され、前記VCOが、前記VCO入力に応答してFMCW出力周波数を有するFMCW出力信号を出力するように構成される、前記VCOと、
を含み、
前記制御エンジンが、前記分周器の前記制御入力に結合される制御出力を含み、前記制御エンジンが、前記FMCW出力周波数が、
第1の時間から第2の時間まで第1のアイドル周波数であり、
前記第2の時間から第3の時間まで、特定された第1のレートで変化し、
前記第3の時間から第4の時間まで、特定された第2のレートで変化し、前記第1のレートが前記第2のレートとは異なり、
前記第4の時間から第5の時間まで第2のアイドル周波数である、
ように前記PLLを制御するように構成される、
FMCWシンセサイザ。
【請求項2】
請求項1に記載のFMCWシンセサイザであって、更に、
反射されたFMCWチャープを受け取るように適合される受信機であって、受信機出力を含む前記受信機と、
アナログ・デジタル変換器(ADC)であって、ADC入力及びADC出力を含み、前記ADC入力が前記受信機出力に結合され、前記ADCが、前記ADC入力によって受信された信号をサンプリングし、前記サンプリングされた信号を出力するように構成される、前記ADCと、
前記ADC出力に結合されるプロセッサ入力を含むプロセッサと、
送信機であって、送信機入力を含み、前記送信機入力によって受信された信号を送信するように構成され、前記VCO出力に結合される送信機入力を含む、前記送信機と、
を含み、
前記プロセッサが、前記サンプリングされた信号が前記第2の時間と前記第3の時間との間にサンプリングされることに応答して、ターゲットオブジェクトの存在、距離、又は速度のうちの少なくとも1つを判定するように構成され、前記第3の時間と前記第4の時間との間の前記判定を行わないように構成される、
FMCWシンセサイザ。
【請求項3】
請求項2に記載のFMCWシンセサイザであって、前記第2のレートの絶対値が前記第1のレートの絶対値よりも大きい、FMCWシンセサイザ。
【請求項4】
請求項1に記載のFMCWシンセサイザであって、
前記制御出力が、前記制御エンジンの第1の制御出力であり、
前記制御エンジンが、第2の制御出力及び第3の制御出力を含み、
前記CVGが、
チャージポンプ(CP)であって、CP制御入力及びCP出力を含み、前記CP制御入力が前記第2の制御出力に結合され、前記CP出力の電流が前記CP制御入力に応答して変化するように構成される、前記CPと、
フィルタ信号入力とフィルタ制御入力とフィルタ出力とを含むフィルタであって、前記フィルタ信号入力が前記CP出力に結合され、前記フィルタ制御入力フィルタが前記第3の制御出力に結合され、前記フィルタ出力が前記CVG出力であり、前記フィルタの帯域幅が、前記フィルタ制御入力に応答して変化するように構成される、前記フィルタと、
を含む、FMCWシンセサイザ。
【請求項5】
請求項4に記載のFMCWシンセサイザであって、
前記制御エンジンが、前記第2の時間と前記第3の時間との間、前記フィルタの帯域幅を相対的に低くなるように制御するように構成され、
前記制御エンジンが、前記第3の時間と前記第4の時間との間、前記フィルタの帯域幅を相対的に高くなるように制御するように構成される、
FMCWシンセサイザ。
【請求項6】
請求項5に記載のFMCWシンセサイザであって、前記フィルタが、前記フィルタの1つ又は複数のインピーダンスを変更することによって、前記フィルタの帯域幅を変更するように構成される、FMCWシンセサイザ。
【請求項7】
請求項4に記載のFMCWシンセサイザであって、
前記制御エンジンが、前記第2の時間と前記第3の時間との間、前記CP出力の電流を相対的に低くなるように制御するように構成され、
前記制御エンジンが、前記第3の時間と前記第4の時間との間、前記CP出力の電流を相対的に高くなるように制御するように構成される、
FMCWシンセサイザ。
【請求項8】
請求項1に記載のFMCWシンセサイザであって、前記第1のレートが一定であり、前記第2のレートが一定である、FMCWシンセサイザ。
【請求項9】
請求項1に記載のFMCWシンセサイザであって、
前記制御出力が、前記制御エンジンの第1の制御出力であり、
前記制御エンジンが第2の制御出力を含み、
前記CVGが、前記第2の制御出力に結合されるCVG制御入力を含み、
前記CVGが、前記CVG制御入力に応答して、前記制御電圧出力の電流を変化させるように構成され、
前記制御エンジンが、前記第2の時間と前記第3の時間との間、前記制御電圧出力の電流を相対的に低くなるように制御するように構成され、
前記制御エンジンが、前記第3の時間と前記第4の時間との間、前記制御電圧出力の電流を相対的に高くなるように制御するように構成される、
FMCWシンセサイザ。
【請求項10】
請求項1に記載のFMCWシンセサイザであって、
前記第1のFMCWアイドル周波数が、前記第2のFMCWアイドル周波数とは異なり、
前記制御エンジンが、前記FMCWの出力周波数が、
前記第5の時間から第6の時間まで、又はその逆に、特定された第3のレートで変化し、
前記第6の時間から第7の時間まで、又はその逆に、特定された第4のレートで変化し、前記第3のレートが前記第4のレートとは異なり、
前記第7の時間から第8の時間まで、又はその逆に、第3のFMCWアイドル周波数であるように、前記PLLを制御するように構成される、
FMCWシンセサイザ。
【請求項11】
請求項1に記載のFMCWシンセサイザであって、前記制御エンジンが、FCMWチャープを生成するときと、FMCWチャープを生成間のアイドル時間中との両方で位相ロックを維持するようにするように、前記PLLを制御するように構成される、FMCWシンセサイザ。
【請求項12】
請求項1に記載のFMCWシンセサイザであって、時間順序が、前記第1の時間から始まり、次いで、前記第2の時間、次いで、前記第3の時間、次いで、前記第4の時間、次いで、前記第5の時間に続き、又は、前記第5の時間から始まり、次いで、前記第4の時間、次いで、前記第3の時間、次いで、前記第2の時間、次いで、前記第1の時間に続く、FMCWシンセサイザ。
【請求項13】
請求項1に記載のFMCWシンセサイザであって、前記制御エンジンがフィードバック入力を含み、前記分周器出力が前記フィードバック入力に結合され、前記制御エンジンが、前記フィードバック入力に応答して前記PLLを制御する、FMCWシンセサイザ。
【請求項14】
周波数変調連続波(FMCW)データシステムであって、
反射されたFMCWチャープを受け取るように適合され、受信機出力を含む受信機、
FMCWシンセサイザであって、
FMCWシンセサイザ出力と、
制御入力と前記FMCWシンセサイザ出力に結合されるPLL出力とを含み、前記制御入力に応答して或るFMCW出力周波数を有するFMCW信号を出力するように構成される、位相ロックループ(PLL)と、
フィードバック入力及び制御出力を含む制御エンジンであって、前記フィードバック入力が前記FMCWシンセサイザ出力に結合され、前記制御出力が前記制御入力に結合され、前記制御エンジンが、前記FMCW出力周波数が、
第1の時間から第2の時間まで第1のFMCWアイドル周波数であり、
前記第2の時間から第3の時間まで、特定された第1のレートで変化し、
前記第3の時間から第4の時間まで、特定された第2のレートで変化し、前記第1のレートが前記第2のレートとは異なり、
前記第4の時間から第5の時間まで第2のFMCWアイドル周波数である、
ように、前記フィードバック入力に応答して前記PLLを制御するように構成される、前記制御エンジンと、
を含む、前記FMCWシンセサイザ、
第1のミキサ入力と第2のミキサ入力とミキサ出力とを含むミキサであって、前記第1のミキサ入力が前記受信機出力に結合され、前記第2のミキサ入力が前記周波数シンセサイザ出力に結合され、前記ミキサが、前記第1のミキサ入力及び前記第2のミキサ入力に応答してミキサ出力信号を生成するように構成される、前記ミキサ、
アナログ・デジタル変換器(ADC)であって、ADC入力及びADC出力を含み、前記ADC入力が前記ミキサ出力に結合され、前記ADCが、前記ADC入力によって受信された信号をサンプリングし、前記サンプリングされた信号を出力するように構成される、前記ADC、
前記ADC出力に結合されるプロセッサ入力を含むプロセッサであって、前記プロセッサが、前記第2の時間と前記第3の時間との間にサンプリングされた前記サンプリングされた信号に応答して、ターゲットオブジェクトの存在、距離、又が、速度のうちの少なくとも1つを判定するように構成され、前記第3の時間と前記第4の時間との間の判定アクションを行わないように構成される、前記プロセッサ、及び
送信機入力を含む送信機であって、前記送信機入力によって受信された信号を送信するように構成され、前記送信機入力が前記FMCWシンセサイザ出力に結合される、前記信機、
を含む、FMCWデータシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のFMCWレーダシステムであって、前記第2のレートの絶対値が前記第1のレートの絶対値よりも大きい、FMCWレーダシステム。
【請求項16】
請求項14に記載のFMCWレーダシステムであって、前記制御エンジンが、FCMWチャープを生成するときと、FMCWチャープの生成間のアイドル時間中との両方で位相ロックを維持するように前記PLLを制御するように構成される、FMCWレーダシステム。
【請求項17】
請求項14に記載のFMCWレーダシステムであって、前記制御エンジンが、前記PLLを、
FMCWチャープの生成間のアイドル時間中の前記PLLのフィルタのフィルタ帯域幅を増大させ、
FMCWチャープの生成の間、前記PLLのフィルタの前記フィルタの前記帯域幅を低くし、
FMCWチャープの生成間のアイドル時間の間、前記PLLの電圧制御発振器(VCO)の制御電圧の電流を増大させ、
FMCWチャープの生成の間、前記PLLの前記VCOの前記制御電圧の前記電流を低くする、
ように制御するように構成される、
FMCWレーダシステム。
【請求項18】
周波数変調連続波(FMCW)レーダを動作させるための方法であって、
受信機によりFMCWチャープ反射信号を受信することと、
FMCWシンセサイザを用いて、FMCWシンセサイザ出力周波数でFMCWシンセサイザ信号を生成することであって、前記FMCWシンセサイザ出力周波数が、
第1の時間から第2の時間まで第1のFMCWアイドル周波数であり、
前記第2の時間から第3の時間まで、特定された第1のレートで変化し、
前記第3の時間から第4の時間まで、特定された第2のレートで変化し、前記第1のレートが前記第2のレートとは異なり、
前記第4の時間から第5の時間まで第2のFMCWアイドル周波数である、前記FMCWシンセサイザ信号を生成することと、
ミキサを用いて、前記FMCWチャープ反射信号及び前記FMCWシンセサイザ信号を混合してミキサ出力を生成することと、
アナログ・デジタルコンバータ(ADC)を用いて前記ミキサ出力をサンプリングすることと、
送信機を用いて、前記FMCWシンセサイザ信号を送信することと、
を含む、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、
前記第2の時間と前記第3の時間との間、前記FMCWシンセサイザの位相ロックループ(PLL)のフィルタの帯域幅を相対的に低くすることと、
前記第3の時間と前記第4の時間の間、前記FMCWシンセサイザの前記PLLのフィルタの前記帯域幅を相対的に高くすることと、
を更に含む、方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、
前記第2の時間と前記第3の時間の間、前記FMCWシンセサイザの位相ロックループ(PLL)のチャージポンプの出力の電流を相対的に低くすることと、
前記第3の時間と前記第4の時間との間、前記FMCWシンセサイザの前記PLLの前記チャージポンプの前記出力の電流を相対的に高くすることと、
を更に含む、方法。
【請求項21】
請求項18に記載の方法であって、
前記第1のFMCWアイドル周波数が前記第2のFMCWアイドル周波数とは異なり、
前記FMCWシンセサイザを用いて前記FMCWシンセサイザ信号を生成することを更に含み、
前記FMCWシンセサイザ出力周波数が、
前記第5の時間と第6の時間との間、特定された第3のレートで変化し、
前記第6の時間と第7の時間との間、特定された第4のレートで変化し、前記第3のレートが前記第4のレートとは異なり、
前記第7の時間と第8の時間との間、第3のFMCWアイドル周波数である、
方法。
【請求項22】
請求項18に記載の方法であって、前記FCMWチャープを生成するときと、FMCWチャープの生成間のアイドル時間の間との両方で、前記FMCWシンセサイザの位相ロックループ(PLL)を用いて、位相同期を維持することを更に含む、方法。
【請求項23】
請求項18に記載の方法であって、時間順序が前記第1の時間から始まり、次いで、前記第2の時間に続き、次いで、前記第3の時間、次いで、前記第4の時間、次いで、前記第5の時間となるか、或いは、前記第5の時間から始まり、次いで、前記第4の時間、次いで、前記第3の時間、次いで、前記第2の時間、次いで、前記第1の時間となる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は概して、周波数変調連続波(FMCW)レーダに関し、より詳細には、FMCWチャープ波形の正確な生成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の高速FMCWレーダシステムはFMCWシンセサイザを含み、FMCWシンセサイザはチャープ信号を生成し、チャープ信号は、処理(例えば、位相シフト、増幅)されて、送信される。FMCWレーダシステムが、送信されたチャープ信号の反射を或るオブジェクトから受信する場合、FMCWレーダシステムは、これらの信号を処理し、そのオブジェクトまでの距離、速度、及び距離を判定することができる。各チャープ信号は、一定時間期間にわたって周波数がスルーアップ及びダウンする。
【0003】
図1は、従来技術のFMCWシンセサイザによって生成された従来技術のFMCW信号100の例示の図を示し、縦軸は周波数であり、横軸は時間である。
図1はまた、縦軸が制御信号であり横軸が時間である、対応する制御タイミング
図102を示す。制御タイミング
図102は、複数の制御信号104(制御ワードと称されることがある)を示し、開始パルスは、様々な時間(t
0、t
1など)に生じる垂直線として表される対応する制御信号104に対してアクションを開始する。各制御信号104は、開始周波数(
図1における例示の制御信号104の各々におけるF
0)と、後続のチャープ周波数(
図1における例示の制御信号104における0又はs
1)を生成するための勾配とを含む、対応する数の対を有する。勾配は、単位時間当たりの周波数の変化、例えば、ΔHz/sに対応する。
【0004】
間隔t0~t1は、FMCWチャープが送信されない期間であるアイドル時間106である。このアイドル時間は、制御信号104(F0,0)がFMCWシンセサイザに勾配0の周波数F0を生成させ、周波数F0110を有する一定のトーンを生成させる時間t0に始まる。時間t1~t2は、FMCWチャープ108の生成及び送信に対応する。時間t1において、制御信号104(F0、s1)は、FMCWシンセサイザ108に周波数F0で開始するように指示し、出力周波数112を勾配s1でより高くスルーし、FMCWチャープ108を生成する。時間t2において、FMCWチャープ108は、周波数F1(FMCWチャープ108の最大周波数114)に達している。FMCWチャープ108F1の最大周波数114は、開始周波数F0に、FMCWチャープ108の勾配にFMCWチャープ108の持続時間を乗じたものを加えたものに対応し、これは、F1=F0+s1×(t2-t1)として表すことができる。
【0005】
間隔t2~t3は、アイドル時間106に対応する。時間t2における制御信号104(F0,0)は、FMCWシンセサイザに、従来の鋸歯状パターンをもたし得る意図される波形116を用いて、その出力を周波数F0に直接変化させようと試みさせる。しかしながら、周波数のこの分離性の変化の結果は、ターゲットとされる新しい開始周波数F0を超える意図しないオーバーシュート120を含む実際の波形118をもたらし得る。こういったオーバーシュートは、FMCW信号100が安定する前、及び次のFMCWチャープ108の生成を可能にする前の、付加的な再整定時間をもたらし得る。低減されたFMCWチャープ108レートは、収集され得るデータサンプルの数を低減し、FMCWレーダシステムの精度を低下させる。幾つかのFMCWレーダは、ターゲットの存在、レンジ、及び速度を判定するために、整定時間の間、レーダデータサンプルを収集しないか、又は、整定時間の間、収集されたデータサンプルを用いない。
【0006】
幾つかの例において、FMCWレーダシステムは、割り当てられた帯域幅内で動作し、周波数オーバーシュート120によって、FMCW信号が、割り当てられた帯域幅を超える可能性がある。幾つかの例において、いかなるオーバーシュート120も、割り当てられた帯域幅内に留まるように、F0及びF1が選択される。しかしながら、これはFMCWレーダシステムの精度を低減し得る。というのも、FMCWレーダシステムの精度は、送信されるFMCWチャープ108の帯域幅に比例するためである。幾つかの例において、レーダシステム電力増幅器は、アイドル時間106の間の送信を防止するためにオフにされる。しかしながら、これは、FMCWレーダシステム受信機において付加的な再整定時間をもたらす可能性がある。というのも、それが、信号を受信しないことと信号を受信することとの間で遷移し、受信機精度は、再整定の間、低減され得るためである。また、FMCWレーダシステム電力増幅器118をオフ及びオンにすることは、FMCWシンセサイザにおける付加的な再整定時間をもたらし得る。これは、電力増幅器状態遷移が、FMCWシンセサイザによって生成された周波数をプルするためである。
【発明の概要】
【0007】
記載される例において、周波数変調連続波(FMCW)シンセサイザが、制御エンジンと、位相ロックループ(PLL)とを含み、PLLは、分周器と、制御電圧生成器(CVG)と、電圧制御発振器(VCO)とを含む。分周器は、制御入力に基づいてVCO出力周波数を変更する。CVGは、周波数基準及び分周器出力に基づいて制御電圧を生成する。VCOは、制御電圧に応答して、VCO出力周波数を有するFMCW出力を出力する。制御エンジンは、VCO出力周波数が、第1の時間から第2の時間まで第1の周波数であり、第2の時間から第3の時間まで第1のレートで変化し、第3の時間から第4の時間まで第1のレートとは異なる第2のレートで変化し、第4の時間から第5の時間まで第2の周波数であるように、制御入力を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】従来技術のFMCWシンセサイザによって生成されたFMCW信号例示の図、及び対応する制御タイミング図を示す。
【0009】
【
図2】FMCWレーダシステムの例示の機能ブロックレイアウトを示す。
【0010】
【
図3】
図2のFMCWシンセサイザの例示の機能ブロックレイアウトを示す。
【0011】
【
図4】
図3のFMCWシンセサイザによって生成されるFMCW信号の例示の図、及び対応する制御タイミング図を示す。
【0012】
【
図5】
図3のFMCWシンセサイザによって生成されるFMCW信号の例示の図、及び対応する制御タイミング図を示す。
【0013】
【
図6】FMCW信号を生成するためのプロセスの例を示す。
【0014】
【
図7】
図3のFMCWシンセサイザ208を含む
図2のFMCWレーダシステム200を動作させるための例示のプロセス700を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2は、従来技術のFMCWレーダシステム200の例示の機能ブロックレイアウトを示しており、これは当該技術分野で知られている特定の特性を有するが、システムは、本明細書の教示によって更に改善される。システム200は、受信機(RX)202を含み、受信機202は、信号を受信し、低雑音増幅器(LNA)204に出力する。受信機202は、距離、速度、及びレンジなどの情報の判定を可能にするために、複数の受信機センサを含むことができる。LNA204は、ミキサ206に出力する。FMCWシンセサイザ208が、(例えば、オブジェクト検出及びレンジ把握のために)送信されるべきFMCWチャープを生成する。FMCWシンセサイザ208は、FMCWチャープをミキサ206及び位相シフトブロック210に出力する。ミキサ206は、LNA204からの増幅された受信信号と、FMCWシンセサイザ208からのチャープとを混合し、バンドパスフィルタ/可変利得増幅器(BPF/VGA)212に出力する。BPF/VGA212は、アナログ・デジタルコンバータ(ADC)214に出力し、ADC214は、デジタル信号プロセッサ(DSP)216又は他の解析構成要素に出力する。位相シフトブロック210は、位相シフトされたFMCWチャープを電力増幅器(PA)118に出力し、PA118は送信機(TX)220に出力する。
【0016】
図2のシステム200において、送信機220は、増幅され、位相シフトされたFMCWチャープ222を送信し、これは、送信されたFMCWチャープ222のレンジ224のオブジェクトから反射され得る。(FMCWレーダシステム200などのFMCWレーダのレンジは、例えば、送信された信号の変調周波数、送信された信号におけるチャープの単位時間当たりの周波数変化、即ち、送信された信号におけるチャープの「勾配」又は「スルー」、BPFの帯域幅、及びADCサンプリングレートに依存する。)反射されたFMCW信号224は、受信機202によって受信される。DSP216は、距離、方向、及び速度などの、レンジ224内のオブジェクトに関する情報を判定するために用いられ得る。
【0017】
図3は、
図2のFMCWシンセサイザ208の例示の機能ブロックレイアウトを示す。FMCWシンセサイザ208は、位相ロックループ(PLL)302と、タイミング及び制御エンジン304とを含む。PLL302において、位相周波数検出器(PFD)306が、周波数基準308を基準周波数F
refにおいて入力として受け取り、分周器310の出力も入力として受け取る。PFD306は、UP及びDN(ダウン)制御信号をチャージポンプ(CP)312に出力する。CP312は、フィルタリングされた制御信号VCTRL328を生成するフィルタ314に制御信号を出力する。
【0018】
フィルタ314は、第1の抵抗RFを有する第1の抵抗器316と、第2の抵抗Rzを有する第2の抵抗器318と、第3の抵抗RFを有する第3の抵抗器320と、第1の静電容量Czを有する第1のコンデンサ322と、第2の静電容量CFを有する第2のコンデンサ324と、第3の静電容量CFを有する第3のコンデンサ326とを含む。チャージポンプ312の出力は、第1の抵抗器316の第1の極と第2の抵抗器318の第1の極とに接続される。第2の抵抗器318の第2の極が、第1のコンデンサ322の第1のプレートに接続される。第1の抵抗器316の第2の極が、第3の抵抗器320の第1の極と第2のコンデンサ324の第1のプレートとに接続される。第3の抵抗器の第2の極が、フィルタリングされた制御信号VCTRL328をフィルタ314から電圧制御発振器(VCO)330に出力するように接続され、第3のコンデンサ326の第1のプレートにも接続される。接地電圧などの基準電圧GRNDの基準ノード332が、第1のコンデンサ322の第2のプレート、第2のコンデンサ324の第2のプレート、及び第3のコンデンサ326の第2のプレートに接続される。
【0019】
VCO330はバッファ(BUF)334に出力し、バッファ(BUF)334は、FMCWシンセサイザ208から周波数F0でFMCW出力信号336を出力する。また、バッファ334はFMCW出力信号336を分周器310に出力する。分周器310は、(上述したように)PFD306に及びデジタルランプ生成器338に出力する。デジタルランプ生成器338は、タイミング及び制御装置304からタイミング及び制御信号340を受け取るように接続される。タイミング及び制御信号340は、例えば、開始周波数、勾配、及び(開始周波数及び勾配に基づいて実行を開始するための)開始パルスを含み得る。タイミング及び制御エンジン304は、低速タイミング及び制御エンジンとし得る。タイミング及び制御エンジン304はまた、基準周波数Frefに対して固定の周波数関係にあるクロック(図示せず)によってクロックされ得る。例えば、タイミング及び制御エンジン304は40MHzクロックによってクロックされ得、Frefは900MHzに等しい。
【0020】
デジタルランプ生成器338は、分周器310、CP312、及びフィルタ314に接続されている。デジタルランプ生成器338からCP312及びフィルタ314への接続は、明確にするために単一の線として示されているが、別個の線を介して送信される別個の信号に対応することができる。
【0021】
分周器310はFMCW出力信号336を数Nで分周し、周波数F
0/Nの信号を出力する。PFD306は基準周波数F
refと分周器出力周波数F
0/Nとを比較し、UP及びDN制御信号を出力してこれら2つの周波数を等しくする。従って、F
0=N×F
refとなる。デジタルランプ生成器338は、Nの値を制御することによってFMCW出力信号336の周波数を制御する分周器310に信号を出力する。分周器310によってチャージポンプ312及びフィルタ314に出力される制御信号は、
図4及び
図5に関して更に説明される。
【0022】
図4は、
図3のFMCWシンセサイザ208によって生成されるFMCW信号、並びに、対応する制御タイミング
図402の例示の図を示す。制御タイミング
図402は、複数の制御信号404(制御ワードと称されることがある)を示し、様々な時間(t
0、t
1など)に生じる垂直線として表される対応する制御信号404に対してアクションを開始するための開始パルスを含む。制御信号404は、タイミング及び制御エンジン304によって生成され、デジタルランプ生成器338は、制御信号404を用いて分周器310を制御する。分周器310は、デジタルランプ生成器338による制御に応答してNを調整し、それに従ってFMCW信号400(FMCW出力信号336に対応して)を変化させる。上記で説明したように、FMCW出力周波数はN×F
refに等しい。各制御信号404は、開始周波数(
図4における例示の制御信号404のF
0又はF
1)と、後続のチャープ周波数(
図4における例示の制御信号404の0、s
1、又はs
2)を生成するための勾配とを含む、対応する数の対を有する。勾配は、単位時間当たりの周波数の変化、例えば、ΔHz/sに対応する。
【0023】
間隔t0~t1は、FMCWチャープが送信されない期間であるアイドル時間406である。時間t0において、制御信号404(F0,0)は、FMCWシンセサイザ208に勾配がゼロの周波数F0を生成させ、周波数F0410で一定のトーンを生成する。時間t1~t2は、FMCWチャープ408の生成及び送信に対応する。時間t1において、制御信号404(F0、s1)は、FMCWシンセサイザ208に周波数F0で開始するように指示し、勾配s1で出力周波数412をより高くスルー(slew)して、FMCWチャープ408を生成する。時間t2において、FMCWチャープ408は周波数F1(FMCWチャープ408の最大周波数414)に達している。FMCWチャープ408F1の最大周波数414は、FMCWチャープ408の勾配にFMCWチャープ408の持続時間を乗じたものを開始周波数F0に加えたものに対応し、これは、F1=F0+s1×(t2-t1)として表すことができる。
【0024】
タイミング及び制御エンジン304は、示したようにF1を計算することができ、F1、F0、及びランプダウン期間Tdown420に基づいてs2を計算することができ、ここで、Tdownは、FMCWチャープ408がその最大周波数414からF0まで下方にスルーするための時間期間である。従って、Tdown420を選択することができる。例えば、Tdown420が選択され得、F0、F1、及びTdownに基づいてs2が計算され得、サイクルスリップ:s2=(F0-F1)/Tdownを回避することができる。サイクルスリップは、周波数基準308に対するサイクル分のスリップであり、PLL302における位相ロックの損失に対応する。サイクルスリップは、PLL302が許容できるよりも高い勾配s2によって引き起こされ得る。
【0025】
間隔t2~t4はアイドル時間406に対応する。理想的な鋸歯状パターンは、チャープ開始周波数F0へのゼロ時間リターン416を含む。しかしながら、チャープ開始周波数F0に戻るときのオーバーシュートを回避するために、時間t2における制御信号404(F1、s2)は、FMCWシンセサイザ208を、周波数F1で開始させ、出力周波数418を線形勾配s2でより低くスルーさせる。これにより、t2からt3までの時間間隔である、制御された時間期間Tdown420にわたって、出力周波数がチャープスタート周波数F0に戻る。例えば、s1は100MHz/マイクロ秒とすることができ、s2は1000MHz/マイクロ秒とすることができ、より高いFMCWチャープ408反復周波数を可能にし、従って、FMCWチャープ波形の反復のためのより短い期間を可能にする。FMCWチャープ波形は、アイドル時間406にFMCWチャープ408を加えたものに対応する。従って、FMCWチャープ波形の反復期間は、t0からt2までの期間、及びt2からt5までの期間(それぞれ、2つの別個のFMCWチャープ408の期間)に対応する。反復周波数は、反復期間の逆数である。
【0026】
図4のFMCW信号400は、鋸歯状の信号を示す。逆方向鋸歯状のFMCW信号を用いることもでき、そのような逆方向鋸歯状の信号もFMCW信号400に対応することができるが、制御信号404の時間順序が逆方向になることも企図される。従って、FMCW信号400が、
図4に示されるように生成され得、制御信号に応答して生成される信号に対応する時間間隔は、t
0~t
1、t
1~t
2、t
2~t
3、t
3~t
4、t
4~t
5、及びt
5~t6であり、又はその逆であり、t
6~t
5、t
5~t
4、t
4~t
3、t
3~t2、t2~t
1、及びt
1~t
0の時間期間に対応する。
【0027】
図3のデジタルランプ生成器338は、勾配
s2の急峻度の絶対値を増大させることに相当する時間間隔t
2~t
3を短くするために、CP312を制御して、増大した電流をフィルタ314に流すことができる。例えば、フィルタ314に供給される電流は、チャージポンプ312に供給される電流を、時間間隔t
1~t
2の間に用いられるよりも高い値に増加させることによって、増加させることができる。これは、VCO330及びPLL302が、PLL302が、ロックを失うことなく、従ってサイクルスリップをもたらすことなく、出力周波数をより迅速に正確に変更することを可能にする。
【0028】
時間間隔t
2~t
3を短縮するために、デジタルランプ生成器338はまた、フィルタ314の帯域幅を増加させてフィルタ314の反応レートを増加させ、VCTRL328の変化率を増加させるために、フィルタ314の抵抗器316、318、320又はコンデンサ322、324、326のうちの1つ又は複数を制御することができる。フィルタ314の帯域幅は、例えば、FMCWチャープ408の生成の間に用いられる帯域幅の10倍に増加させることができる。従って、デジタルランプ生成器338は、フィルタ314の帯域幅を変更するために、R
F、R
Z、C
F、及びCzのうちの1つ、幾つか、又はすべて(そのうちの幾つか又はすべてがプログラム可能であり得る)を制御し得る。フィルタ314の帯域幅を増大させることは、FMCWシンセサイザ出力336における位相ノイズを増大させるが、FMCWシンセサイザ出力336のチャープ開始周波数F
0へのより速い再整定を可能にする。逆に、フィルタ314の帯域幅を下げることは、FMCWシンセサイザ出力336における位相ノイズを低減する。従って、フィルタ314の帯域幅は、周波数ランプダウン期間(
図4に示されるそれぞれのランプダウン期間における間隔t
2~t
3、及び間隔t
5~t
6に対応するT
down420)の後に低減され得る。フィルタ314の帯域幅は、アイドル時間406の残りの間及びFMCWチャープ408の間に低減されて、FMCWシンセサイザ出力336における位相ノイズを低減することができる。
【0029】
幾つかの例において、
図2のADC214が分析のためにデータをサンプリングしていないとき、アイドル時間406は「浪費される」時間と見なすことができる。
図2のADC214は、FMCWチャープ408の間、データをサンプリングする(従って、データは受信機202によって受け取られる)。増加したフィルタ314の帯域幅からの増加したフィルタノイズは、T
down420の間、許容されてアイドル時間406を低減することができる。
【0030】
s2、CP312の増加した電流、及びフィルタ314の増加した帯域幅は、Tdown420の間を含むアイドル時間406の間、PLL302をロック状態に保つように選択され、VCO330の周波数制御の精度を増加させ、周波数オーバーシュートを回避する。また、s2、CP312の増加された電流、及びフィルタ314の増加された帯域幅は、時間間隔t2~t3、従って、周波数F1から周波数F0に遷移する時間を短縮するように選択され得る。
【0031】
図5は、
図3のFMCWシンセサイザ208によって生成されるFMCW信号500、及び対応する制御タイミング
図502の例示の図を示す。FMCW信号500は、
図4のFMCW信号400と同様に生成される。しかしながら、
図5のFMCW信号500は、
図3のFMCWシンセサイザ208が、複数の異なる周波数(例えば、F
0、F
2)で開始し、複数の異なる周波数(例えば、F
1、F
3)で終了するFMCWチャープ508a、508bを含むオーバーシュートなしに、FMCW出力信号336を生成し得ることを示し、複数の異なる対応する勾配(例えば、FMCWチャープ508a、508bの間のs
1及びs
3、並びに、ランプダウン期間T
down1516及びT
down2528の間のs
2及びs
4)を含む。
【0032】
間隔t0~t1は第1のアイドル時間506aである。時間t0において、タイミング及び制御エンジン304は、PLL302に制御信号504を送って、一定の周波数510F0(開始周波数F0、勾配ゼロ)を有するFMCWシンセサイザ出力336を生成するように命令する。
【0033】
間隔t
1~t
2は第1のFMCWチャープ508aである。時間t
1において、
図3のPLL302は、周波数F
0で始まり、勾配s
1で増加する出力周波数512をスルーするように指示される。時間t
2において、FMCWチャープ508aは最大周波数514、F
1に達する。
図4に関して上述したように、タイミング及び制御エンジン304は、F
0、t
1、及びt
2を用いて、F
1を計算することができる。
【0034】
間隔t
2~t
4は第2のアイドル時間506bである。間隔t
2~t
3は、ランプダウン期間T
down1516にわたる第1ランプダウン518である。間隔t
2~t
3の間、FMCWシンセサイザ出力周波数は、周波数F
1から周波数F
2まで、勾配s2でランプダウン518する。
図4に関して上述したように、タイミング及び制御エンジン304は、CP312を制御してその出力電流を増加させ、フィルタ314を制御してその帯域幅を増加させ、その結果、ランプダウン518の勾配s
2を勾配s
1より急勾配にすることができ、T
down1516を短縮する。また、勾配s
2は、F
1、F
2、T
down1516:s2=(F
2-F
1)/T
down1に基づいて計算することができる。時間t
3において、FMCWシンセサイザ出力336は、一定の周波数520F
2に設定され、従って、周波数F
2は勾配がゼロである。
【0035】
間隔t
4~t
5は第2のFMCWチャープ508bである。時間t
4において、PLL302は、周波数F
2で始まり、勾配s
3で増加する出力周波数522をスルーするように命令される。時間t
5において、FMCWチャープ508bは最大周波数524、F
3に達する。
図4に関して上述したように、タイミング及び制御エンジン304は、F
2、t
4、及びt
5を用いて、F
3を計算することができる。
【0036】
時間t
5は第3のアイドル時間506cの開始である(第3のFMCWチャープの開始に対応する第3のアイドル時間506cの終了は、図示されていない)。間隔t
5~t
6は、持続時間T
down2528にわたる第2のランプダウン526である。間隔t
5~t
6の間、FMCWシンセサイザ出力周波数は、周波数F
3から周波数F
4へ、勾配s
4でランプダウン526する。
図4に関して上述したように、タイミング及び制御エンジン304は、CP312を制御してその出力電流を増加させ、フィルタ314を制御してその帯域幅を増加させ、その結果、ランプダウン526の勾配s
4を勾配s
3より急勾配にすることができ、T
down2528を短縮する。また、勾配s
4は、F
3、F
4、T
down2516:s
4=(F
4-F
3)/T
down2に基づいて計算され得る。時間t
6において、FMCWシンセサイザ出力336は、一定の周波数530F
4に設定され、従って、周波数F
4は勾配がゼロである。
【0037】
図6は、
図2のFMCWレーダシステム200を動作させるための例示のプロセス600を示す。工程602において、送信機220はFMCWシンセサイザ信号を送信する。工程604において、受信機202はFMCWチャープ反射信号226を受信する。工程606において、FMCWシンセサイザ208は、FMCWシンセサイザ出力周波数でFMCWシンセサイザ信号を生成し、ここで、FMCWシンセサイザ出力周波数:第1の時間と第2の時間との間は、第1のFMCWアイドル周波数であり、第2の時間と第3の時間との間は、特定された第1のレートで変化し、第3の時間と第4の時間との間は、特定された第2のレートで変化し、第1のレートは第2のレートとは異なり、第4の時間と第5の時間との間は、第2のFMCWアイドル周波数である。工程608において、ミキサ206は、FMCWチャープ反射信号とFMCWシンセサイザ信号とを混合してミキサ出力を生成する。工程610において、ADC214はミキサ出力をサンプリングする。
【0038】
図7は、
図3のFMCWシンセサイザ208を含む
図2のFMCWレーダシステム200を動作させるための例示のプロセス700を示す。FMCWチャープ408を生成するために、デジタル状態機械(図示せず)が、ADC214、TX202、RX220、及びFMCWシンセサイザ208を、下記のように、同期して動作するように制御する。工程702において、フィルタ314のインピーダンスを変更することによって、フィルタ314の帯域幅が比較的低い値に変更される。工程704において、CP312に供給される電流は、比較的低い値に変更される。工程706において、FMCWチャープ408を生成するためにVCO330の出力周波数がランプアップされ、FMCWチャープは、送信機220を用いて送信される。工程708において、受信機202を用いて、FMCWチャープ反射信号226が受信される。工程710において、ADC214を用いてデータがサンプリングされる。
【0039】
FMCWチャープ408間の時間中、デジタル状態機械は、ADC214及びFMCWシンセサイザ208を、下記のように制御する。工程712において、ADC214は、データのサンプリングを停止する。工程714において、フィルタ314の帯域幅は、フィルタ314のインピーダンスを変更することによって比較的高い値まで増加される。工程716において、CP312に供給される電流は、比較的高い値に増加される。工程718において、VCO330の出力周波数は、FMCWチャープ408の最後の周波数でランプダウンが始まり、次のFMCWチャープ408の開始周波数で終わり、サイクルスリップを回避するように、勾配を設定することによって、FMCWチャープ408の勾配よりも高い絶対値を有する勾配を用いてランプダウンされる。次いで、プロセス700は、工程702から繰り返すことができる。
【0040】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示の実施例に改変が成され得、他の実施例が可能である。
【0041】
幾つかの実施例において、フィルタはTdownの間、高帯域幅に設定される。幾つかの実施例において、フィルタは、アイドル時間の間、高帯域幅に設定される。
【0042】
幾つかの実施例において、ADCが、FMCWチャープを生成するFMCWシンセサイザに対応する期間を通して、受信機から発信される信号をサンプリングする。
【0043】
幾つかの実施例において、バッファの出力に接続された分周器の入力はトーン入力と称されることがあり、デジタルランプ生成器に接続された分周器の入力は制御入力と称されることがある。
【0044】
幾つかの実施例において、位相ロックループにおいて、制御電圧生成器を用いて、基準周波数に応答してVCOのための制御電圧(VCTRL)を生成し、VCO出力信号に応答してフィードバックすることができる。幾つかの実施例において、制御電圧生成器は、
図3に関して説明したように、PFD、チャージポンプ、及びフィルタを含む。
【0045】
幾つかの実施例において、FMCWチャープが、減少する周波数に対応し、ランプダウンは増加する周波数に対応する。
【0046】
幾つかの実施例において、FMCWチャープの最初の10%など、FMCWチャープの初期部分の間、FMCWシンセサイザは、正確な周波数ランプに向かって安定し続ける。この時間は、ADCが分析のためにデータをサンプリングしていない「浪費される」時間と見なすことができる。
【0047】
幾つかの実施例において、FMCWチャープ間の時間(アイドル時間)をチャープ間(inter-chirp)時間と呼ぶことができる。
【0048】
幾つかの実施例において、ランプダウンがFMCWチャープの前に発生し、逆鋸歯に類似する信号を生成する。従って、アイドル周波数で開始すると、周波数は、FMCWチャープ開始周波数に達するために、特定された持続時間の間、特定された勾配で変化し、一方、チャージポンプ出力の電流とフィルタの帯域幅は、相対的に増加する。次いで、FMCWチャープ開始周波数で開始すると、周波数は、FMCWチャープを生成するために、特定された持続時間の間、特定された勾配で変化し、一方、チャージポンプ出力の電流とフィルタの帯域幅は、相対的に減少する。
【0049】
76~81GHzの商用自動車レーダの幾つかの実施例において、アイドル時間、FMCWチャープ、及びランプダウン期間の持続時間は、それぞれ、5μs、30μs、及び2μsである。幾つかの実施例において、FMCWチャープ持続時間は、非常に高い速度でのオブジェクトの存在、レンジ、及び速度の正確な検出を容易にするために15μsである。
【0050】
幾つかの実施例において、プロセッサ(例えば、DSP)が、FMCWチャープの間、(例えば、ADCによって)サンプリングされたデータを処理して、ターゲットオブジェクトの存在、距離、又は速度のうちの1つ又は複数を判定する。幾つかの実施例において、プロセッサは、ターゲットオブジェクトの存在、距離、又は速度を判定するために、ランプダウンの間又はアイドル時間の間(又はその両方)にサンプリングされたデータを処理しない。
【0051】
特定の実施例において、
図2~
図6に関して、出力信号の周波数が、(例えば)第1の時間と第2の時間との間の特定の値と、第2の時間と第3の時間との間の特定の値から始まる特定の勾配とを有するように制御されており、出力信号の周波数が、記載された時間期間の他の意図しない値又は勾配を回避することを示唆することが意図されている。しかしながら、特定の実施例において、実際の信号周波数が完全に線形の挙動を示さなくてもよく、信号の制御された特性における滑らかな遷移に共通する通常の周波数変動(例えば、本明細書で説明されるような、オーバーシュートをもたらす、互いに素の周波数制御とは対照的に)は、特定された間隔の間の特定された挙動に関して、説明された信号性能内で考慮されることが意図されている。
【国際調査報告】