(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-16
(54)【発明の名称】熱伝導性ウェハ層
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20240109BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L21/52 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540529
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 US2021065266
(87)【国際公開番号】W WO2022146953
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン スタッセン クック
(72)【発明者】
【氏名】ナジラ ダドバンド
(72)【発明者】
【氏名】アルチャナ ヴェヌゴパル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル リー レヴィエール
【テーマコード(参考)】
5F047
5F136
【Fターム(参考)】
5F047AA00
5F047BA00
5F047CA00
5F136BC07
5F136FA01
5F136FA05
5F136FA23
(57)【要約】
記載される例において、熱伝導性表面層を備える半導体ウェハ(502)が、第1の表面及び第2の表面を有するバルク半導体層と、第1の表面上の回路要素と、第1の表面又は第2の表面に取り付けられる金属層(510)と、金属層(510)に取り付けられるグラフェン層(512)とを含む。第1の表面は第2の表面と対向する。金属層(510)は遷移金属を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハであって、
対向する第1の表面及び第2の表面を有するバルク半導体層と、
前記第1の表面上の回路要素と、
前記第1の表面又は前記第2の表面に取り付けられる金属層であって、遷移金属を含む前記金属層と、
前記金属層に取り付けられたグラフェン層と、
を含む、半導体ウェハ。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体ウェハであって、前記遷移金属が、銀、ニッケル、ルテニウム、コバルト、モリブデン、イリジウムのうちの一つである、半導体ウェハ。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体ウェハであって、前記第2の表面と前記金属層との間に誘電体層を更に含む、半導体ウェハ。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体ウェハであって、前記誘電体層が1ナノメートル未満の厚みである、半導体ウェハ。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体ウェハであって、前記グラフェンシートが内部粒子境界を含む、半導体ウェハ。
【請求項6】
半導体ウェハであって、
対向する第1の表面及び第2の表面を有するバルク半導体層と、
前記第1の表面上の回路要素と、
インクの液滴の層と、
を含み、
前記インク中に金属ナノ粒子が懸濁又は溶解され、前記液滴が、前記第1の表面又は前記第2の表面上に存在するか、又は前記第1の表面又は前記第2の表面に対してかつ近接して取り付けられる材料の表面上に存在し、前記金属ナノ粒子が遷移金属を含み、前記金属ナノ粒子の少なくとも幾らかが炭素粒子を含む、
半導体ウェハ。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体ウェハであって、前記遷移金属が、銀、ニッケル、ルテニウム、コバルト、モリブデン、イリジウムのうちの少なくとも一つである、半導体ウェハ。
【請求項8】
請求項6に記載の半導体ウェハであって、前記第2の表面と前記液滴の層との間に誘電体層を更に含む、半導体ウェハ。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体ウェハであって、前記誘電体層が1ナノメートル未満の厚みである、半導体ウェハ。
【請求項10】
請求項6に記載の半導体ウェハであって、前記金属ナノ粒子が直径が4nm~150nmである、半導体ウェハ。
【請求項11】
熱伝導層を含むように半導体ウェハを製造する方法であって、前記ウェハが対向する第1の表面及び第2の表面を有し、前記方法が、
a) 前記第1の表面上に回路要素を作製することと、
b) インクジェットプリンタを用いて、特定の表面上に金属ナノ粒子を堆積させることであって、前記金属ナノ粒子の少なくとも幾らかが1つ又はそれ以上の炭素粒子を含み、前記特定の表面が前記第1の表面又は前記第2の表面である、前記堆積させることと、
c) 工程a)の後に、前記特定の表面上に金属層を形成し、前記金属層上にグラフェン層を形成するために、前記特定の表面上の前記金属ナノ粒子を焼結することと、
を含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、工程b)の前に、アーク反応器を用いて、遷移金属及び炭素を蒸発させて前記金属ナノ粒子を形成することを更に含む、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、前記特定の表面上に堆積させることが、前記特定の表面上に直接堆積させること、又は、前記特定の表面に対してかつ前記特定の表面に近接して取り付けられる材料の表面上に堆積させることのいずれかを意味する、方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法であって、工程b)の前に、誘電体層又は1つ又はそれ以上の金属層を前記第2の表面上に作製することを更に含む、方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法であって、工程b)の前に、前記第1の表面に接着剤を付加することと、前記第1の表面をガラスキャリアに結合するために前記接着剤を用いることとを更に含む、方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法であって、工程c)の後に、前記ガラスキャリアを取り除き、前記ウェハを個別のダイにダイシングすることを更に含む、方法。
【請求項17】
請求項11に記載の方法であって、工程b)の前に、前記ウェハの厚みを減少させるために前記第2の表面を研削することを更に含む、方法。
【請求項18】
請求項11に記載の方法であって、工程b)が、前記金属ナノ粒子が溶解又は懸濁されているインクの液滴を前記インクジェットプリンタが堆積させることを含む、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記液滴の直径の上限が200nm~1ミクロンである、方法。
【請求項20】
請求項11に記載の方法であって、前記金属ナノ粒子が直径が4nm~150nmである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は概して、半導体デバイス製造に関し、より詳細には、基板のための熱伝導性コーティングに関する。
【0002】
図1(従来技術)は、表面102上に材料を堆積させるために用いられるドロップオンデマンドのインクジェットプリンタ100の例示の側面図を示す。
図1に示すように、ドロップオンデマンドのインクジェットプリンタ100は、容器(reservoir)106によって供給される材料を放出するノズル104を含む。アクチュエータ(図示せず)が、特定の時間に(オンデマンドで)、ノズル104から材料を液滴108として放出させる。液滴108は、表面102に衝突し表面102により吸着されて、表面張力によってまとまった液状ビーズ(bead)110を形成する。インクジェットプリンタ100が表面102の上を移動するときにノズル104から吐出される液滴108のタイミングが、結果として形成されるパターンを決定する。
【0003】
他のインクジェットプリンタ構成も利用可能である。或る表面上に材料を選択的に堆積するために、連続インクジェットプリンタ(図示せず)を用いることもできる。連続インクジェットプリンタは、インクジェットノズルと基板表面との間に配置されるキャッチャーを用いる。キャッチャーは、液滴材料を捕らえ、キャッチャーが偏向されないとき液滴材料を容器に戻して、インクジェットプリンタが液滴を連続的に形成及び放出することを可能にする。キャッチャーがインクジェットノズルと基板表面との間の中間位置から離れて偏向され、液滴が基板表面に到達することを可能にするときに、堆積が生じる。熱作動(actuation)、圧電作動、電気力学的作動、及び音響作動インクジェットプリンタなど、様々なタイプの液滴堆積作動を用いることができる。
【0004】
半導体デバイス関連材料の堆積に用いられるインクジェットプリンタ、及び本明細書で用いられるような名詞「インクジェットプリンタ」は、ビジネスオフィスにおいて、読みやすい文書及び画像を印刷するために用いられるインクジェットプリンタではない。そうではなく、本明細書で用いる場合の「インクジェットプリンタ」は、通常はピコリットル又はフェムトリットルの縮尺で、半導体ウェハ表面上に或る量の液体(「インク」)を堆積させるための機構を指し、いわゆる「インク」は、懸濁液中の半導体処理関連ナノ粒子及び/又は前駆体を含む。その後インクは乾燥され、懸濁材料がアニールされて、インクが堆積された表面上に永久構造を形成することができる。インクジェットプリンタ100から表面102にナノ粒子を届けるために用いられる液体及び他の搬送媒体の不要成分は、アニーリング又は焼結プロセスによってウェハ表面から揮発され、表面102上に所望の堆積材料が残る。ビジネスオフィスのインクジェットプリンタと本明細書に記載されるようなインクジェットプリンタとは幾つかの類似の機能を有するので、「インクジェットプリンタ」という用語が用いられている。
【0005】
本明細書に記載のインクジェット印刷は、非接触でアディティブな製造及びパターン化プロセスである。(「非接触」とは、堆積装置、即ちインクジェットプリンタ、と基板表面との間の接触がないことを指す。)材料は、概してマスク又はステンシルを使用せずに、層毎に特定のパターンで直接堆積され、特定のパターンは、表面の一部分上への従来のようなパターン化された堆積、又は、表面全体にわたるブランケット堆積に対応し得る。インクが堆積されると、インクは、乾燥され、アニール又は焼結されて、所望の層が形成される。インクジェット印刷は、それぞれのインク中に、導体、誘電体、セラミック、酸化物、及び半導体を含む様々な材料を含めることによって、或る表面上で種々の材料をパターン化するのに有用である。
【0006】
図2(従来技術)は、ウェハ202の例示の
図200を示す。概して、半導体デバイスは、本明細書では「フロント」表面204と称する、ウェハ202の一方の表面上に作製される。「フロント」表面に対向する表面は、本明細書では「裏側」表面206又は「裏側」206と称する。熱伝導を高めるために裏側表面206上に裏側金属層208が作製される。金属層208は、通常は銅を含むが、他の高度に熱伝導性の金属を用いることもできる。
【0007】
デバイスにおける高い局所的な電力消費は、著しい局所的な熱を発生させる可能性があり、これはデバイスが構築される基板を反らせる恐れがあり、又はデバイス構成要素における破壊的な化学反応を引き起こす恐れがある。伝導性金属層208は、ウェハ202全体にわたって熱を拡散させ、高温を非局在化させ、取り付けられるヒートシンクなどを介して熱放散を促進する。
【0008】
図3(従来技術)は、
図2のウェハ202(又は他の基板)の裏側表面206上に裏側金属層208を作製するための例示の工程300を示す。工程302において、ウェハ202のフロント表面204がパターン化されて、伝導性金属又はポリシリコンなどのパターン材料304が、エッチングプロセスを用いてつくられたトレンチ306を充填する。エッチングプロセスは、例えば、フォトレジストスピンオン、フォトレジストの光学露光、(ポジ型フォトレジスト又はネガ型フォトレジストのいずれが用いられるかに応じて)フォトレジストの露光された部分又は露光されていない部分を除去するためのフォトレジストの現像、及びトレンチ306をつくるためのエッチングを含むことができる。工程308において、接着剤310が、ウェハ202のフロント表面204を覆うように塗布される。工程312において、ウェハ202を把持して操作するための安全なハンドルとして有用なガラスキャリア314が、接着剤310に接着される。工程316において、両面研削テープ318がガラスキャリア314に接着される。工程320において、ウェハ202はガラスキャリア314を用いて裏返され、研削テープ318は、安定した表面(図示せず)上に貼り付けられる。ウェハ202の厚みを、例えば、680~700ミクロンの厚みから50ミクロンの厚みまで低減するように、グラインダ322が準備される。工程324において、ウェハ202の厚みがグラインダ322によって低減される。工程326において、ウェハ202、接着剤310、及びガラスキャリア314が、研削テープ318及び安定した表面から取り除かれる。
【0009】
工程327において、TiW(チタン-タングステン合金)層328が、ウェハ202の裏側表面204上に堆積され、TiW層328上に銅層330が堆積される。工程332において、フォトレジスト334の層が、銅層330上のウェハ202上に回転塗布(spin onto)される。次いで、スクライブラインに対応するフォトレジスト334の領域336にはフォトレジスト334がないように、フォトレジスト334の層が(例えば、光学露光及び現像を用いて)パターン化される。スクライブライン領域336は、回路を損傷することなくウェハ202を個別のダイに切断しても問題のない、ダイ間の位置である。工程338において、ウェハ202の裏側204がエッチングされて、領域336に対応するTiW層328及び銅層330の部分が取り除かれる。工程340及び工程342において、ウェハ202の裏側204は、後続のダイシング(ダイ分離)を容易にするために更にエッチングされる。
【0010】
工程344において、両面ダイシングテープ346が、フォトレジスト334の層に接着され、ウェハ202を安定した表面上の適所に保持するために用いられる。工程348において、ガラスキャリア314は、例えば、レーザー剥離(debonding)を用いて取り除かれる。工程350において、ウェハ202を個別のダイに切断するために、スクライブラインに沿ってダイシングが行われる。
【発明の概要】
【0011】
記載される例において、熱伝導性表面層を備える半導体ウェハが、第1の表面及び第2の表面を有するバルク半導体層と、第1の表面上の回路要素と、第1の表面又は第2の表面に取り付けられた金属層と、金属層に取り付けられたグラフェン層とを含む。第1の表面は第2の表面と対向する。金属層は遷移金属を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1(従来技術)は、表面上に材料を堆積させるために用いられるドロップオンデマンドのインクジェットプリンタの例示の側面図を示す。
【0013】
【
図2】
図2(従来技術)は、熱伝導を向上させるためにウェハ裏側表面上に作製された裏側金属層の図を示す。
【0014】
【
図3】
図3(従来技術)は、
図2のウェハの裏側表面上に裏側金属を作製するプロセスを示す。
【0015】
【
図4A】金属ナノ粒子を作製するための例示のプロセスの図を示す。
【0016】
【0017】
【
図5A】様々な炭素種の粒子が埋め込まれた金属ナノ粒子を含む、ウェハの裏側に液滴状に堆積された金属ナノ粒子の層を有するウェハの例示の図を示す。
【0018】
【
図5B】熱伝導裏側層を形成するための金属ナノ粒子の層の焼結後のウェハの例示の図を示す。
【0019】
【
図6】ウェハの裏側表面上に熱伝導層を作製するための例示のプロセスを示す。
【0020】
【
図7】
図6の工程630の代替の実施例を示し、この実施例において、TiWの層及びCuの層などの1つ又は複数の金属層が、ウェハの裏側に付加される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図4Aは、金属性ナノ粒子402を作製するための例示のプロセス400の図を示す。導入によって、幾つかの金属性ナノ粒子402が、炭素種粒子と共に埋め込まれる。そのような金属-炭素ナノ粒子は、
図5A及び
図5Bに関して更に説明するように、半導体ウェハ502の裏側504に熱伝導層を作製するのに有用である。グラフェンも好ましい高い熱伝導率を提供し得、これは通常、W/mK(ワット/メートル-ケルビン)で測定される。アモルファスカーボンは、約1.7W/mKの熱伝導率を有し、純銅は、約401W/mKの熱伝導率を有するが、グラフェンは、2000~2500W/mKの熱伝導率を有する。
【0022】
図4Aは、遷移金属404及び固体炭素406(例えば、非晶質又はグラファイト炭素ロッド)が、アーク反応器410内で高パワー電流408を印加することによって気化されて、金属性ナノ粒子402を形成することを示す。特に、銀、ニッケル、ルテニウム、コバルト、モリブデン、及びイリジウムなどの遷移金属は、概して、固体形態の六面表面構造を有する。(金属成分はその反応性を考慮して選択される。反応性が強すぎる金属は、相変態に起因する微細構造の変化に関連して、最終製品の構造的不安定性につながる恐れがある。)また、六面構造の遷移金属上に核形成する(nucleate)炭素は、六面構造で成長してグラフェンを形成しやすい。従って、金属及び炭素が冷えると、金属性ナノ粒子402が形成され、これには、炭素粒子が埋め込まれた金属性ナノ粒子402が含まれる。
図4Aのプロセス400によって生成される金属性ナノ粒子402は、直径が概して4~150nmである。概して、より小さい粒径は、より大きい粒径と比較してより高い表面積に起因する熱伝導率の増加に対応する。実験の設計は、気化エネルギー、チャンバのサイズ及び形状、反応物の形状及び内容、並びに冷却速度などのパラメータを最適化することによって、粒子生成プロセスを最適化するためのアークツールを較正するのに有用である。一部の金属性ナノ粒子402が、埋め込まれた炭素粒子を伴わずに形成する一方、一部の金属性ナノ粒子402は、複数の炭素粒子を伴って形成する。様々な炭素種が、この段階で金属性ナノ粒子402に埋め込まれ得る。しかしながら、焼成工程(これは、
図5A及び
図5Bに関して説明する、ウェハ502上に裏側504熱伝導層を堆積させるためのプロセスの一部である)を経ると、炭素の初期種にかかわらず、金属から生じて再構成する炭素となってグラフェン炭素を形成する。
【0023】
図4Bは、金属性ナノ粒子402の例示の
図412を示す。ナノ粒子402は、金属416及びグラフェン小板414を含む。グラフェン小板は、二次元グラファイトシートの単層又は多層部分であり、六面格子構造を有する。
【0024】
図5Aは、ウェハ502の例示の
図500を示し、様々な炭素種の微粒子が埋め込まれた金属性ナノ粒子402を含んで、ウェハ502の裏側504上に液滴状に堆積された金属性ナノ粒子402の層を有する。堆積は、回路(パターン材料608、
図6参照)が、ウェハ502のフロント側506(フロント表面)上に形成された後に行われる。回路は、ウェハ502のフロント側506に対して取り付けられた(その中又はその上に作製された)電気的機能構造を含むことができる。金属性ナノ粒子402の堆積は、ウェハ502の裏側504で行われ、従って、ウェハ502のバルクの、ウェハ502及び回路のフロントとは反対側にある。本明細書で用いる場合、ウェハの表面上への堆積は、ウェハの表面上に直接堆積すること、又は、ウェハの表面に対して取り付けられた及びウェハの表面に近接して取り付けられる材料の表面上に堆積することのいずれかを意味する。
【0025】
堆積は、金属性ナノ粒子402が凝集(clump)しないように、例えば、
図1に関して記載されたようなインクジェットプリンタ100によって、ナノ粒子402がインク中に溶解又は懸濁された状態で、有効に行われる。ナノ粒子402は、不均一に堆積され得る。堆積に用いられる液滴は、例えば、200nm~1ミクロンの上限直径を有し得る。例えば、8~20立方パスカルの粘度で、28~32mN/m(ミリニュートン/メートル)の表面張力で、4~9のpHの、直径200nm以下の液滴を用いることができる。液滴の複数の層が概して用いられ、堆積される液滴の層の数は、設計された有効熱コンダクタンスに依存する。基板表面は、基板表面へのナノ粒子担持インクの均一な接着を可能にするために、印刷前に準備され得る。
【0026】
より大きな液滴を堆積させるインクジェットプリンタであれば、より大きな金属性ナノ粒子402を用いることが可能となる。小さな(4~150nm)金属性ナノ粒子402の場合、金属性ナノ粒子402が重なるか又は凝集し得る。より大きい金属性ナノ粒子402は重なり及び凝集を低減し、これにより、焼結後のグラフェンシート512内により少ない粒子境界を有するグラフェンシート512(
図5B)作製が可能となる。(グラフェンシート512は、本明細書ではグラフェン層とも称する。)粒子境界は電子散乱を引き起こす。粒子境界が少なくなると熱伝導率が改善される。概して、焼結は、(以下で更に説明するように)グラフェンシート512を形成するように、ボイドや、形成された金属層から出てこない炭素などの、或る量の介在物をもたらす。より少ない介在物は、より高い熱伝導率と相関する。従って、焼結プロセスは、介在物を低減するように設計され得る。
【0027】
図5Bは、熱伝導裏側層504を形成するための金属性ナノ粒子402の層の焼結後の、ウェハ502の例示の
図508を示す。金属性ナノ粒子402が堆積された後(
図5A)、それらは、例えば400℃(摂氏)未満、概して250℃~300℃の温度で焼結される。温度制限は、ウェハ502のフロント側506上に予め作製された回路に関連する。400℃を超える温度は回路を損傷させる可能性がある。
【0028】
例えばオーブン(図示せず)などの加熱装置が、金属ナノ粒子402を焼結(加熱)して溶融させる。溶融した金属が冷えるにつれて、炭素含有ナノ粒子402からの炭素は、流れる金属から金属の表面まで上昇する。炭素は再構成し、金属の六角形に構造化された冷却表面上にシーディングして、グラフェンシート512を形成する。従って、金属から出てくる炭素は、固化する金属の六面表面構造に合致するように再配置され、これは、炭素がグラフェンを形成することを意味する。グラフェンシート512は、例えば、数単分子層(原子分子層)の厚みとし得る。
図5Bはまた、溶融した金属性ナノ粒子510を示す。溶融した金属性ナノ粒子510は均一シートとして示されているが、頂部及び底部表面は、溶融した金属性ナノ粒子510に対応する層の焼結ナノ粒子起源を反映して、ある程度粗くなり得る。
図4Aに関して上述したように、グラフェンシート512は高度に伝導性であり、より薄い熱伝導性裏側層504を可能にし、その結果、ウェハ502の反りが減少する傾向がある。従って、より薄い熱伝導裏側層504は、ウェハ502の応力及び関連する反りを低減する。例えば、厚みが数ミクロン以下の裏側層504は、ウェハ502にかかる過度の応力を回避し得る。焼結の結果、溶融した金属性ナノ粒子510は、ウェハ502の裏側表面504に対してかつそれに近接して取り付けられる。従って、溶融した金属性ナノ粒子510は、ウェハ502の裏側表面504に直接取り付けられるか、又は、ウェハ502の裏側表面504に重なり直接的又は間接的に取り付けられる層に取り付けられる。グラフェンシート512は、それが、溶融した金属性ナノ粒子510の層に固定的に結合される(取り付けられる)ように形成される。
【0029】
図6は、ウェハ606の裏側表面601上に熱伝導性層を作製するための例示のプロセスを示す。工程602において、ウェハ606のフロント表面604がパターン化されて、伝導性金属又はポリシリコンなどのパターン材料608が(
図3に関して説明したものと同様に)エッチングプロセスを用いて予めつくられたトレンチ610を充填する。幾つかの例において、パターン材料608が、回路を形成するように配置(設計)される。工程612において、接着剤614が、ウェハ606のフロント表面604を覆うように塗布される。工程616において、ウェハ606を把持して操作するための安全なハンドルとして有用なガラスキャリア618が、接着剤614に貼り付けられる。工程620において、両面研削テープ622がガラスキャリア618に接着される。工程624において、ガラスキャリア618を用いてウェハ606を裏返し、研削テープ622を安定した表面(図示せず)に接着し、それによってウェハ606を適所に保持する。ウェハ606の厚みを第1の厚み(例えば、680~700ミクロン)から第2の厚み(例えば、50ミクロン)まで減少させるようにグラインダ626が準備される。工程628において、ウェハの厚みは、グラインダ626によって低減される。
【0030】
工程630において、ウェハ606、接着剤614、及びガラスキャリア618が、研削テープ622及び安定した表面から取り除かれる。また、工程630において、SiO
2層632がウェハ606の裏側601に付加される。SiO
2層632は、誘電体層を提供するために付加するのに有用であるが、その後付加される熱伝導層(グラフェン層636)の効果的な機能を可能にするため、例えば数10分の1nmの厚みなど、薄いものである。工程634において、インクジェットプリンタが、ウェハ606の裏側601上に(従って、
図6に示すように、SiO
2層632上に)炭素微粒子を含む金属ナノ粒子を堆積させ、金属ナノ粒子は焼結されて金属層(
図5Bに溶融金属ナノ粒子510として示す)を形成し、次いで冷却されて金属層の表面上にグラフェン層636が形成される。工程638において、ガラスキャリア618が取り除かれる。工程640において、ウェハ606は、個別のダイに切断される(642)。
【0031】
図3及び
図6の比較から明らかなように、グラフェンシート裏側層の選択的インクジェット堆積により、熱伝導裏側層の作製を含むダイ作製プロセスにおける工程数の低減が可能となる。例えば、ダイシング位置を覆わないようにグラフェンシート及び金属性裏側層を堆積させることによって、工程の数を減らすことができる。
【0032】
図7は、
図6の工程630の代替の実施例を示し、この実施例において、TiWの層及びCuの層などの1つ又は複数の金属層732が、ウェハ606の裏側601に付加される。
【0033】
幾つかの実施例において、基板表面にナノ粒子を塗布するためにスピンコーティングが用いられる。
【0034】
幾つかの実施例において、ウェハの裏側の異なる部分が、金属層及びグラフェン層によって覆われる。幾つかの実施例において、ウェハの裏側の実質的にすべてが金属層及びグラフェン層によって覆われ、実質的にすべての意味は、熱伝導性の裏側層の熱拡散のための設計要件を満たすために覆われる必要があるウェハの裏側の部分によって決まる。
【0035】
幾つかの実施例において、基板のフロント表面上にグラフェンシート層が作製される。例えば、基板のフロント表面上のグラフェンシート層は、熱拡散に有用である。そのようなグラフェンシート層は、例えば、集積回路又は他の機能デバイス又は他の熱源の近くに作製されてもよい。
【0036】
幾つかの実施例において、グラフェンシート層が、基板のフロント表面又は裏側表面の一部のみに作製される。幾つかの実施例において、グラフェンシート層が、集積回路などの機能デバイスによって覆われたフロント表面の一部を除いて、基板のフロント表面上に作製される。
【0037】
幾つかの実施例において、堆積のための粒子を生成するためにアークプロセスにおいてフィルタが用いられる。
【0038】
幾つかの実施例において、ナノ粒子の金属部分は、複数の遷移金属の合金によって形成される。
【0039】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示の実施例に改変が成され得、他の実施例が可能である。
【国際調査報告】