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特表2024-501878フィードバック分周器のない低電力フラクショナルアナログPLL
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-16
(54)【発明の名称】フィードバック分周器のない低電力フラクショナルアナログPLL
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/197 20060101AFI20240109BHJP
   H03L 7/085 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H03L7/197
H03L7/085
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540531
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 US2021065528
(87)【国際公開番号】W WO2022147137
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】17/139,584
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】デバプリヤ サフ
(72)【発明者】
【氏名】リットゥ サチデヴ
【テーマコード(参考)】
5J106
【Fターム(参考)】
5J106AA04
5J106CC01
5J106CC25
5J106CC45
5J106CC52
5J106DD10
5J106DD32
5J106DD48
5J106GG04
5J106GG09
5J106KK40
(57)【要約】
集積回路デバイス(200)が提供される。幾つかの例において、集積回路デバイスは、基準クロック信号(201)及び電圧制御発振器(VCO)出力信号(212)を受信するように構成される第1のタイミングが再設定器(216)を含み、第1のリタイマは、基準クロック信号及びVCO出力信号に応答して第1のリタイムクロック信号(216A)を提供するように構成される。第1のマルチプレクサ(215)が、第1のリタイムクロック信号を受信し、フィードバッククロック信号(215A)を提供する。位相周波数検出器(202)が、フィードバッククロック信号及び基準クロック信号を受信し、フィードバッククロック信号及び基準クロック信号に応答して誤差信号(202A及び203A)を提供する。VCO(211)が、誤差信号に基づいて電圧信号(220A)を受信し、VCOは、電圧信号に応答してVCO出力信号(212)を提供するように構成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路デバイスであって、
基準クロック信号及び電圧制御発振器(VCO)出力信号を受信するように構成される第1のリタイマ(re-timer)であって、前記基準クロック信号及び前記VCO出力信号に応答して第1のリタイム (re-timed)クロック信号を提供するように構成される前記第1のリタイマと、
前記第1のリタイムクロック信号を受信し、フィードバッククロック信号を提供するように構成される第1のマルチプレクサと、
前記フィードバッククロック信号及び前記基準クロック信号を受信し、前記フィードバッククロック信号及び前記基準クロック信号に応答して誤差信号を提供するように構成される位相周波数検出器(PFD)と、
前記誤差信号に基づいて電圧信号を受信するように構成され、前記電圧信号に応答して前記VCO出力信号を提供するように構成されるVCOと、
を含む、集積回路デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の集積回路デバイスであって、
前記誤差信号を受信し、チャージポンプ出力信号を提供するように構成されるチャージポンプと、
前記チャージポンプ出力信号を受信し、前記電圧信号を提供するように構成されるフィルタと、
前記VCO出力信号を受信し、フィードバック分周器信号を前記第1のマルチプレクサに提供するように構成されるフィードバック分周器と、
をさらに含み、
前記フィードバック分周器がディセーブルされるように構成される、
集積回路デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の集積回路デバイスであって、
前記フィードバック分周器が変調信号を受信するように構成され、
前記第1のマルチプレクサが、前記変調信号を受信するように構成される、
集積回路デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載の集積回路デバイスであって、前記変調信号を提供するように構成される変調器をさらに含み、前記変調器がシグマデルタ変調器である、集積回路デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載の集積回路デバイスであって、前記基準クロック信号及び前記フィードバック分周器信号を受信し、前記変調器にクロック入力信号を提供するように構成される、第2のマルチプレクサをさらに含む、集積回路デバイス。
【請求項6】
請求項1に記載の集積回路デバイスであって、
第2のリタイマであって、前記第1のリタイムクロック信号、前記基準クロック信号、及び前記VCO出力信号を受信し、前記基準クロック信号及び前記VCO出力信号に応答して第2のリタイムクロック信号を提供するように構成される、前記第2のリタイマと、
第3のリタイマであって、前記第2のリタイムクロック信号、前記基準クロック信号、及び前記VCO出力信号を受信し、前記基準クロック信号及び前記VCO出力信号に応答して第3のリタイムクロック信号を提供するように構成される、前記第3のリタイマと、
第4のリタイマであって、前記第3のリタイムクロック信号、前記基準クロック信号、及び前記VCO出力信号を受信し、前記基準クロック信号及び前記VCO出力信号に応答して第4のリタイムクロック信号を提供するように構成される、前記第4のリタイマと、
をさらに含む、集積回路デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載の集積回路デバイスであって、前記第1のマルチプレクサが、前記第2、第3、及び第4のリタイムクロック信号を受信するように構成される、集積回路デバイス。
【請求項8】
請求項7に記載の集積回路デバイスであって、前記第1のマルチプレクサが、前記第1、第2、第3、第4のリタイムクロック信号に基づいてフィードバッククロック信号を提供する、集積回路デバイス。
【請求項9】
請求項3に記載の集積回路デバイスであって、前記フィードバック分周器が、低電力動作モードに応答してディセーブルされるように構成される、集積回路デバイス。
【請求項10】
請求項2に記載の集積回路デバイスであって、前記フィードバック分周器に結合される分周器バッファをさらに含む、集積回路デバイス。
【請求項11】
請求項2に記載の集積回路デバイスであって、前記フィルタがアクティブフィルタを含む、集積回路デバイス。
【請求項12】
請求項1に記載の集積回路デバイスであって、前記誤差信号が、アップパルス又はダウンパルスを含む、集積回路デバイス。
【請求項13】
集積回路であって、
第1のリタイマであって、基準クロックに結合される第1の入力と、第2の入力と、出力とを含む、前記第1のリタイマと、
第1のマルチプレクサであって、前記第1のリタイマの前記出力に結合される第1の入力と、第2の入力と、出力とを含む、前記第1のマルチプレクサと、
位相周波数検出器(PFD)であって、前記基準クロックに結合される第1の入力と、前記第1のマルチプレクサの前記出力に結合される第2の入力と、出力とを含む、前記PFDと、
チャージポンプであって、前記PFDの前記出力に結合される入力と、出力とを含む、前記チャージポンプと、
フィルタであって、前記チャージポンプの前記出力に結合される入力と、出力とを含む、前記フィルタと、
電圧制御発振器(VCO)であって、前記フィルタの前記出力に結合される入力と、前記第1のリタイマの前記第2の入力に結合される出力とを含む、前記VCOと、
を含む、集積回路。
【請求項14】
請求項13に記載の集積回路であって、
フィードバック分周器であって、前記VCOの前記出力に結合される第1の入力と、前記第1のマルチプレクサの前記第2の入力に結合される出力とを含む、前記フィードバック分周器と、
変調器であって、入力と、前記フィードバック分周器の第2の入力に結合される出力とを含む、前記変調器と、
をさらに含む、集積回路。
【請求項15】
請求項14に記載の集積回路であって、第2のマルチプレクサであって、前記基準クロックに結合される第1の入力と、前記フィードバック分周器の前記出力に結合される第2の入力と、前記変調器の前記入力に結合される出力とを含む、前記第2のマルチプレクサ、をさらに含む、集積回路。
【請求項16】
請求項15に記載の集積回路であって、
第2のリタイマであって、前記基準クロックに結合される入力と、前記第1のマルチプレクサに結合される出力とを含む、前記第2のリタイマと、
第3のリタイマであって、前記基準クロックに結合される入力と、前記第1のマルチプレクサに結合される出力とを含む、前記第3のリタイマと、
第4のリタイマであって、前記基準クロックに結合される入力と、前記第1のマルチプレクサに結合される出力とを含む、前記第4のリタイマと、
をさらに含む、集積回路。
【請求項17】
方法であって、
リタイマによって、基準クロック信号及び電圧制御発振器(VCO)出力信号を受信することと、
リタイムクロック信号を生成するため、前記リタイマによって、前記VCO出力信号に従って前記基準クロック信号のタイミングを再設定することと、
位相周波数検出器(PFD)によって、前記リタイムクロック信号及び前記基準クロック信号に基づいて誤差信号を判定することと、
前記誤差信号に基づいて前記VCO出力信号を改変することと、
を含む、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
前記リタイムクロック信号が、
前記基準クロック信号及び前記VCO出力信号に基づく、第1のリタイムクロック信号と、
前記基準クロック信号及び前記VCO出力信号に基づく、第2のリタイムクロック信号と、
前記基準クロック信号及び前記VCO出力信号に基づく、第3のリタイムクロック信号と、
前記基準クロック信号及び前記VCO出力信号に基づく、第4のリタイムクロック信号と、
を含む、方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、
前記リタイムクロック信号をマルチプレクサによって受信することと、
前記マルチプレクサによってフィードバック分周器信号を受信することと、
前記マルチプレクサによって変調器から変調信号を受信することと、
をさらに含み、
前記マルチプレクサが前記誤差信号を出力するように構成される、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
分周器ディセーブルモードで動作するための信号を受信することと、
前記分周器ディセーブルモードで動作するための前記信号を受信することに応答して、前記フィードバック分周器信号をディセーブルすることと、
をさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
バッテリ駆動されるデバイスにおいて、バッテリ寿命は、そのデバイス内の様々なシステムによる電力消費に依存する。送信及び/又は受信し得る無線デバイスは、例えば、シグナルチェーン及び局所発振器(LO)システムを有し得る。シグナルチェーンは、フィルタ、増幅器、アナログデジタルコンバータ、及びその他の構成要素を含み得る。無線デバイスのシグナルチェーンにおいてこれらのデバイスによって消費される電力を削減することは、電力を節約するための一領域であるが、無線デバイスのLOシステムの様々な構成要素も電力を消費するため、これらが節約されれば、それによってもバッテリ寿命を延長し得る。
【0002】
LOの一つの構成要素は、位相ロックループ(PLL)であり得る。PLLは、シンプルなクロッククリーンアップ回路から、無線接続において用いられるものなど高周波無線通信リンクのためのLOまで、幅広い用途がある。PLLは、基準信号の位相を、調整可能なフィードバック信号の位相と比較する。比較は、フィードバックループを用いて実現され得、フィードバックループにおける比較が定常状態にあるとき、つまり出力周波数及び位相が、誤差検出器における基準周波数及び位相と一致するとき、PLLはロックされる。
【0003】
ロックを維持するために、概して、PLLによってかなりの量の電力が消費される。PLLによって消費される電力量を削減するための一つの手段は、不要なときPLLをオフにすることである。携帯電話などの無線デバイスにおいて、デバイスは多くの時間をスリープモードで費やし、無線デバイスの多くの回路がオフにされる。スリープモードにあるとき、無線デバイスは、非常に低いアクティブ電力消費でのリッスンモード又はスニッファ(sniff)モードで動作し得る。リッスンモード又はスニッファモードにおいて、無線デバイスは、信号をリスニングしてスリープモードから出て通常動作を再開する。ただし、リッスン又はスニファ機能の間、正確なLOが必要になり得るので、リッスン又はスニファモードの間もPLLによって電力が消費され得る。
【0004】
高周波無線通信では、必要とされる高周波チャネルへの出力を調整するためにフラクショナルPLLが用いられ得、フラクショナルPLLは、無線デバイスがリッスンモード又はスニファモードにあるときでも比較的大量の電力を消費するフィードバック分周器回路を含み得る。PLLの中には電圧制御発振器(VCO)を含むものもある。したがって、応用例の中には、フィードバック分周器回路において消費される電力を回避するために、PLLのVCOを開ループで実行し得るものもある。しかし、残留周波数誤差及び位相ノイズの増加により、開ループVCOの有用性が制限され、幾つかの無線通信については、開ループVCOがリッスン又はスニファ動作中でも許容し得る結果を提供しない。
【発明の概要】
【0005】
幾つかの例において、分周器ディセーブルモードで動作するように構成されるフラクショナルPLLを含む集積回路が提供される。フラクショナルPLLは、位相周波数検出器(PFD)、チャージポンプ、ループフィルタ、VCO、フィードバック分周器、シグマデルタ変調器、VCO出力に基づくリタイム(retimed)クロック信号、及び/又はその他の適切な構成要素を含み得る。フラクショナルPLLのフィードバック分周器回路が電力を消費しないように、フィードバック分周器がディセーブルされ得る。リタイムクロック信号は、シグマデルタ変調器からのシグマデルタ変調と多重化され得る。リタイムクロック信号は、複数のリタイムクロック信号を含み得る。PFDは、リタイムクロック信号と基準クロックとの間の誤差を判定し得、リタイムクロック信号と基準クロックとの間の誤差を用いて、フィードバック分周器がディセーブルにされている一方でPLLのロックを実現するためにVCOの出力を調整する。
【0006】
幾つかの例において、集積回路デバイスが、基準クロック信号及び電圧制御発振器(VCO)出力信号を受信するように構成される第1のリタイマ(re-timer)を含み、第1のリタイマは、基準クロック信号及びVCO出力信号に応答して第1のリタイムクロック信号を提供するように構成される。この集積回路デバイスはまた、第1のリタイムクロック信号を受信し、フィードバッククロック信号を提供するように構成される、第1のマルチプレクサを含む。この集積回路デバイスはまた、フィードバッククロック信号及び基準クロック信号を受信し、フィードバッククロック信号及び基準クロック信号に応答して誤差信号を提供するように構成される、位相周波数検出器(PFD)を含む。この集積回路デバイスはまた、誤差信号に基づいて電圧信号を受信するように構成されるVCOを含み、VCOは、電圧信号に応答してVCO出力信号を提供するように構成される。
【0007】
幾つかの例において、集積回路が第1のリタイマを含み、第1のリタイマは、基準クロックに結合される第1の入力、第2の入力、及び出力を含む。この集積回路は第1のマルチプレクサも含み、第1のマルチプレクサは、第1のリタイマの出力に結合される第1の入力、第2の入力、及び出力を含む。この集積回路はPFDも含み、PFDは、基準クロックに結合される第1の入力と、第1のマルチプレクサの出力に結合される第2の入力と、出力とを含む。この集積回路はチャージポンプも含み、チャージポンプは、PFDの出力に結合される入力と、出力とを含む。この集積回路はフィルタも含み、フィルタは、チャージポンプの出力に結合される入力と、出力とを含む。この集積回路はまたVCOを含み、VCOは、フィルタの出力に結合される入力と、第1のリタイマの第2の入力に結合される出力とを含む。この集積回路はまたフィードバック分周器を含み、フィードバック分周器は、VCOの出力に結合される第1の入力と、第1のマルチプレクサの第2の出力に結合される出力とを含む。
【0008】
幾つかの例において、或る方法が、リタイマによって、基準クロック信号及び電圧制御発振器(VCO)出力信号を受信することを含む。この方法はさらに、リタイマによって、VCO出力信号に従って基準クロック信号をリタイミングして、リタイムクロック信号を生成することを含む。この方法はさらに、位相周波数検出器(PFD)によって、リタイムクロック信号及び基準クロック信号に基づいて誤差信号を判定することを含む。この方法はさらに、誤差信号に基づいてVCO出力信号を改変することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の特徴は、下記の詳細な説明及び添付の図面から理解されよう。
【0010】
図1】LO PLL回路の回路図である。
【0011】
図2A】本開示の幾つかの態様に従ったLO PLL回路の回路図である。
【0012】
図2B】本開示の幾つかの態様に従ったタイミング図である。
【0013】
図3A】本開示の幾つかの態様に従ったLO PLL回路の回路図である。
【0014】
図3B】本開示の幾つかの態様に従ったタイミング図である。
【0015】
図4】本開示の幾つかの態様に従ったタイミング図である。
【0016】
図5】本開示の幾つかの態様に従った、局所発振を行う方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
下記に具体的な例を添付の図面を参照して詳細に説明する。これらの例は限定することを意図したものではなく、特に断りのない限り、任意の特定の例に対して必要とされる特徴はないことを理解されたい。
【0018】
フラクショナルPLLを用いるLOの例は、PFD、チャージポンプ、フィルタ、VCO、及び分周器回路を含む。LOは、基準クロック信号をフィードバック分周器からのフィードバック信号と比較し、この比較の結果を用いて、PLLがロックするまでVCOを制御する。LOは、誤差信号を処理するための一つ又は複数のフィルタ及び増幅器を含み得る。また、フィードバック回路は、変調器及び一つ又は複数の分周器バッファを含み得る。
【0019】
分周器回路が、基準クロック信号と比較されるフィードバッククロック信号を提供し得る。場合によっては、分周器回路はディセーブルされる。例えば分周器回路からVCO出力を切り離すことなどによって、分周器回路がディセーブルされる場合、フィードバッククロック信号はVCOの位相情報から導出され得、その結果、リタイムクロック信号が得られる。リタイムクロック信号のエッジにより、VCOの位相情報が正確な位相検出時間にPFDにもたらされる。
【0020】
場合によっては、リタイムクロック信号は、一群のリタイムクロック信号を提供するために、複数の後続のクロックエッジに対して拡張され得る。一群のリタイムクロック信号は、フラクショナル合成に用いられ得る。場合によっては、分周器回路は、シグマデルタ変調器を含み得、シグマデルタ変調器の出力は、一群のリタイムクロック信号から無作為に選択して、VCO出力周波数を、或る整数に基準周波数の分数倍を加えた値まで駆動する誤差信号を生成するために用いられ得る。
【0021】
これら及びその他の例において、分周器回路がディセーブルされると、LOの電力消費が削減され、残留周波数誤差及び位相ノイズが改善される。
【0022】
もちろん、これらの利点は単なる例であり、いかなる特定の実施例にも利点は必要とされない。
【0023】
ディセーブルされた分周器回路を備える集積回路デバイスの例を、図面を参照してこれ以降に説明する。
【0024】
分周器回路はフラクショナル合成に関連付けられ得る。フラクショナルN周波数合成は、大きな分周比を必要とせずに、広い帯域幅にわたって小さなステップサイズ(狭いチャネル)を提供する。これにより、無線通信における周波数など、非常に高い周波数が用いられるときに生じ得る、LOの位相ロックループのデジタル分周器における非常に大きい分周比に関連する問題が解決される。無線周波数はギガヘルツ範囲内であり得る。例えば、無線通信において用いられる周波数範囲は、900MHz、2.4GHz、3.6GHz、4.9GHz、5GHz、5.9GHz、及び60GHz帯域を含む。これらの周波数帯域におけるチャネル間隔は、わずか数キロヘルツ(例えば、200KHz)であり得る。このような高周波数を40MHz又は80MHzなどの基準クロック信号に分周するには、非常に大きい分周比が必要となり得、性能上の問題が生じ、大量の電力が必要となる。
【0025】
妥当な動作周波数を提供しながら、高周波数においてチャネル間の小さなステップを実現するには、非常に大きな分周比が必要である。例えば、10MHzで動作し、100Hzのステップサイズを必要とするPLLは、分周比が100,000であることを必要とする。このように大きな分周比は、PLL帯域幅が基準比較周波数の約10分の1になり得るので、PLLの性能に影響を及ぼす。上記の例の場合、PLL帯域幅がわずか10Hzであることを意味し、これにより、PLL周波数スイッチングが遅くなり、受動構成要素のサイズが大きくなり、搬送波に近い周波数において位相ノイズが大きくなり得るため、性能が低下し得る。
【0026】
フラクショナルN合成では、分周器が整数の分周比ではなく分数の分周比を取るため、大きな分周比が回避される。これを実現するために、分周器は分周比を切り替える。例えば、必要とされる周波数を与えるために判定される様々な分周比の割合を、N、N+1、N-1、及びN-2の間で変更し得る。N、N+1、N-1、及びN-2の間の分周比により、四つの分周比間の周波数が得られ、これは2次変調とみなされる。別の例において、一次変調がNの分周比範囲を提供し、N+1が二つの分周比間の周波数を提供する。三次変調は、N、N+1、N+2、N+3、N-1、N-2、N-3、及びN-4の間の分周比を提供し得る。付加的な次数の変調も用いられ得る。フラクショナルn合成を用いることの利点は、ステップ周波数を小さくし得る一方で、合成器の性能全体を向上させるために高い比較周波数及びループ帯域幅が維持され得ることである。
【0027】
これに関して、図1は、シグマデルタ変調を有するフラクショナルPLLを用いるLO PLL回路100の回路図である。基準クロック信号101Aが、PFD102によって受信される。基準クロック101からの基準クロック信号101Aは、安定した正確な周波数基準であり、この基準クロック信号101Aに出力が位相ロックされる。基準クロック信号101Aは、例えば、水晶発振器又は温度制御された水晶発振器から導出され得る。
【0028】
PFD102は、フィードバッククロック信号116を基準クロック信号101Aと比較し、基準クロック信号101Aとフィードバッククロック信号116との間の位相誤差信号102A及び102Bを導出する。PFD102は、例えば、ANDゲートに結合される二つのフリップフロップを含み得る。
【0029】
チャージポンプ103及び104が、位相誤差信号102A及び102Bを、位相誤差に比例する正又は負の電流パルス列を含むチャージポンプ出力信号に変換する。チャージポンプ103はアップパルスを提供し得、チャージポンプ104はダウンパルスを提供し得る。アップパルスの持続時間は、基準クロック信号101Aとフィードバッククロック信号116との間に差があれば、それに比例する。ダウンパルスの持続時間は、PFD102によって事前に判定され得る。例えば、ダウンパルスの遅延は、インバータ遅延などのPFD102の内部回路要素によって定義され得る。フラクショナル合成を用いるLO PLL回路100がロックされると、アップパルスの平均持続時間はダウンパルスの持続時間に等しくなる。整数N合成を用いることにより、アップパルスの持続時間がダウンパルスの持続時間に等しいときに、ロックが実現される。
【0030】
チャージポンプ103及び104は、ループフィルタ120に電流をポンプするか、又はループフィルタ120から接地に電流をポンプすることによって、位相誤差信号102A及び102Bに応答する。チャージポンプ103及び104は、等しく重み付けされた電流源とし得る。
【0031】
ループフィルタ120は、増幅器108、コンデンサC106、抵抗器R107、コンデンサC105、抵抗器R109、及びコンデンサC110を含む。ループフィルタ120は、チャージポンプ103及び104からの電流パルスを統合して、クリーンな電圧信号120AをVCO111に提供する。また、オペアンプ108を用いるアクティブループフィルタトポロジにより、チャージポンプ電流源に対する良好なバイアスマージンが保証される一方で、ループフィルタ120が一層高い同調電圧に達し得る。アクティブフィルタは、増幅器108、コンデンサC106、抵抗器R107、コンデンサC105を含み、アクティブフィルタが電圧信号120Aを制御する。コンデンサC105は、サンプリングによって生じる高周波ノイズスプリアスをフィルタリングする。抵抗R107は、誤差信号の位相補正成分を周波数補正成分から隔離することによって安定性を提供する。受動ローパスフィルタは、高周波ジッタを除去するため、抵抗器R109及びコンデンサC110を含む。
【0032】
ループフィルタ120からの電圧信号120Aは、VCO111を駆動する。VCO111は、電圧信号120Aに基づく周波数を出力する。例えば、電圧信号120Aが上昇するとVCO111の周波数は増加し得、電圧信号120Aが下降するとVCO111の周波数は減少し得る。VCO出力112は、LO PLL回路100にフィードバックされる。
【0033】
LO PLL回路100のフィードバックループにおいて、VCO出力112が分周器バッファ113によって受け取られる。分周器バッファ113の出力は、フィードバック分周器114によって受け取られる。フィードバック分周器114はまた、シグマデルタ変調器115から変調信号115Aを受信する。フィードバック分周器114は、調整可能な周波数分周器として機能し、フィードバック分周器114のための制御は、シグマデルタ変調器115からの変調信号115Aによって提供される。シグマデルタ変調器115は、パルスの或る密度を提供し、これらのパルスの密度は特定の期間にわたる信号の平均値を表す。シグマデルタ変調器115からの変調信号115Aは、フラクショナルN合成を可能にするフィードバック分周器114の分周器係数である。フィードバッククロック信号116は、シグマデルタ変調器115及びPFD102に提供され、そこでプロセスが再び開始される。
【0034】
図1のフラクショナル合成は、次の例により説明され得る。19.68MHzの基準クロックを有し、2.402GHzから2.480GHzまで1MHzステップで同調され得るPLLにおいて、分周器係数Nが122に設定される場合、PLLは2.40096GHzを出力し、分周器係数Nが123に設定される場合、PLLは2.42064GHzを出力する。所望の出力が2.403GHzである場合、分周器係数Nは122と123の間の非整数値であることが必要とされ得る。分周器係数は整数値でなければならないので、これを直接実装することはできない。ただし、分周器係数は基準期間ごとに更新され得るので、多くの基準期間にわたる平均係数が122と123の間の所望のN値に収束するように、分周器係数は、N=122とN=123の間で切り替えられる。シグマデルタ変調器115からの変調により、所望のN値に収束するための平均係数が提供される。
【0035】
図1は、基準クロック信号101A及びフィードバッククロック信号116についての例示のタイミング図を示す。この例において、シグマデルタ変調器115からの変調次数はN、N+1、N-1、及びN-2であり、四つの分周比間の周波数が与えられる。図1は、N-2、N-1、及びN+1のみを示す。図1のタイミング図は、三つの分周比にわたる基準クロック信号101Aとフィードバッククロック信号116との差を開示している。
【0036】
図1のLO PLL回路100において、フィードバック分周器114、分周器バッファ113、及びシグマデルタ変調器115を含む分周器回路は、PLLにおける電力の大部分を消費する。例えば、LO PLL回路100は、約7mAの電力を消費し得るが、分周器回路は、7mAのうちの約4mAを消費し得る。
【0037】
図2Aは、本開示の幾つかの態様に従ったLO PLL回路200の回路図である。基準クロック信号201Aが、PFD202によって受信される。基準クロック201からの基準クロック信号201Aは、安定した正確な周波数基準であり、その基準クロック信号201Aに出力が位相ロックされる。基準クロック信号201Aは、例えば、水晶発振器又は温度制御された水晶発振器から導出され得る。クロック基準201は、リタイマ216によって受け取られる。リタイマ216は、VCO出力信号212も受信する。リタイマ216は、正確な位相検出時間においてVCO211の位相情報をPFD202にもたらす、リタイムクロック信号216Aを生成する。例えば、リタイマ216は、基準クロック201がハイであり、VCO出力信号212がハイになるときラッチする。同様に、リタイムクロック信号216Aは、例えば、基準クロック信号201Aがローであり、VCO出力信号212がローになるときにローになる。その結果、VCO211からの位相情報は、捕捉され、リタイムクロック信号216Aを含んでおり、これは、VCO211の出力を調整するためにフィードバックループにおいて用いられ得る。リタイマ216の機能は、図2Bを参照して下記でさらに説明する。
【0038】
リタイムクロック信号216Aが、マルチプレクサ215に提供される。マルチプレクサ215は、フィードバック分周器214からフィードバック分周器信号214Aも受信する。マルチプレクサ215は、リタイムクロック信号216Aと、フィードバック分周器信号214Aとのいずれかを選択する。一例において、フィードバック分周器214がディセーブルされるとき、マルチプレクサ出力215Aは、リタイムクロック信号216Aを含む。一例において、フィードバック分周器214がイネーブルされるとき、マルチプレクサ出力215Aは、フィードバック分周器信号214Aを含む。
【0039】
PFD202は、基準クロック信号201A及びマルチプレクサ出力215Aを受信する。PFD202は、マルチプレクサ出力215Aを基準クロック信号201Aと比較し、マルチプレクサ出力215Aと基準クロック信号201Aとの間の位相誤差信号を導出する。図1を参照して上述したように、チャージポンプ203及び204は、PFD202からの位相誤差信号202A及び202Bを、位相誤差に比例する正又は負の電流パルス列に変換する。チャージポンプ203及び204からの電流パルスは、増幅器208、コンデンサC206、抵抗器R207、コンデンサC205、抵抗器R209、及びコンデンサC210を含むループフィルタ220によってフィルタリングされる。ループフィルタ220からの電圧信号220Aは、図1を参照して説明したように、VCO出力信号212を制御するためにVCO211に入力される。一例において、ループフィルタ220は、ここに列挙したものよりも少ない構成要素を含み得る。例えば、ループフィルタ220は、抵抗器R209及びコンデンサC210を含む受動フィルタを除外し得る。
【0040】
一例において、LO PLL回路200は、フィードバック分周器214をディセーブルし、LO PLL回路を分周器ディセーブルモードで動作させるための手段を含み得る。フィードバック分周器214は、電力を節約するためにディセーブルされ得る。例えば、無線デバイスがスリープモードにある場合、無線デバイスは、電力を節約するために低電力動作モード又はスニファ/リッスンモードに入り得る。低電力動作モード又はスリープモードにおいて、LO PLL回路200は、フィードバック分周器214をディセーブルし得る。次いで、一例において、無線デバイスが「起動」してメッセージを受信することを示す信号が受信され得、そのため、フィードバック分周器214が通常動作を再開できるようにするために、分周器ディセーブルモードがオフにされるか、又は解除される。フィードバック分周器214は、例えば、ノード217のスイッチによってディセーブルされ得、VCO出力信号212がフィードバック分周器214とリタイマ216との間で切り替わる。LO PLL回路200によって又はスイッチにおいて受信される信号が、例えば、VCO出力信号212をリタイマ216に切り替えることによって、LO PLL回路200が分周器ディセーブルモードで動作することを示し得る。別の例において、フィードバック分周器214は、分周器バッファ213とノード217との間のバッファ又はインバータ(図示せず)を用いてディセーブルされ得る。一例において、バッファ又はインバータは、分周器バッファ213及びフィードバック分周器214によるVCO出力信号212の受信をディセーブルするために用いられ得る分周器ディセーブルモードで動作するための信号を受信する出力イネーブル機能を含み得る。これにより、フィードバック分周器214及び分周器バッファ213が効果的にディセーブルされる。一例において、リタイマ216とノード217との間にバッファ又はインバータを配置して、リタイマ216へのVCO出力信号212をディセーブル又はイネーブルし得る。これらは、電力を節約するためにフィードバック分周器214がディセーブルされ得る例示の手段であり、本開示を限定するものではない。フィードバック分周器214をディセーブルするためにVCO出力信号212を制御する任意の手段が企図される。フィードバック分周器214をディセーブルするための手段は、ソフトウェア、ハードウェア、又はハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって制御され得る。
【0041】
一実施例において、LO PLL回路200がリッスンモード又はスニファモードにあるとき、フィードバック分周器214は、上記手段のいずれか一つ又は複数を用いてディセーブルされた分周器ディセーブルモードで動作し得、それによってエネルギーが節約される。LO PLL回路200は、フィードバック分周器214がディセーブルされるとき、VCO出力信号212がリタイマ216によって受信され得るように、例えば上述の手段によって構成される。
【0042】
図2Bは、本開示の幾つかの態様に従ったタイミング図250である。タイミング図250は、基準クロック信号201A、VCO出力信号212、リタイムクロック信号216A、アップパルス信号254、及びダウンパルス信号255を開示する。一例において、基準クロック信号201Aは、VCO出力信号212より遅い。
【0043】
リタイマ216は、クロック基準201から基準クロック信号201Aを、VCO211からVCO出力信号212を受信する。リタイマ216は、リタイムクロック信号216Aを出力する。リタイマ216は、一つ又は複数のラッチを含み得る。基準クロック信号201Aがハイになり、VCO出力信号212がハイになると、リタイマ216はVCO出力信号212をラッチし、リタイマ216からのリタイムクロック信号216Aはハイになる。基準クロック信号201Aがローになり、VCO出力信号212がローになると、リタイマ216からのリタイムクロック信号216Aはローになる。
【0044】
ここでアップパルス信号254を参照すると、基準クロック信号201Aがハイになると或るアップパルスがトリガされ、リタイムクロック信号216Aがハイになると、そのアップパルスがローになる。そのため、アップパルス信号254の幅は、基準クロック信号201Aとリタイムクロック信号216Aとの間の位相差に比例する。
【0045】
ここでダウンパルス信号255を参照すると、一例において、PFD202はダウンパルス信号の幅を事前に定義する。例えば、インバータなどのPFD202の構成要素がダウンパルス信号255を定義し得るが、構成要素はこれに限定されない。一例において、ダウンパルス信号255は、その他のハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって定義され得る。
【0046】
整数N合成において、アップパルス信号254の幅がダウンパルス信号255の幅に等しいとき、LO PLL回路200はロックされる。
【0047】
図3Aは、本開示の幾つかの態様に従った、フラクショナル合成を用いるLO PLL回路300の回路図である。LO PLL回路300は、一つ又は複数のリタイムクロック信号を提供し得るリタイマ316を含む。一例において、リタイマ316が、第1のリタイムクロック信号321、第2のリタイムクロック信号322、第3のリタイムクロック信号323、及び第4のリタイムクロック信号324を提供し、これらのリタイムクロック信号は各々、VCO出力信号312に基づく後続のエッジを有する。一例において、第2のリタイムクロック信号322は、VCO出力信号312の1サイクルだけ遅延され得、第3のリタイムクロック信号323は、VCO出力信号312の2サイクルだけ遅延され得、第4のリタイムクロック信号324は、VCO出力信号312の3サイクルだけ遅延され得る。一つ又は複数のリタイムクロック信号は、任意の量だけ遅延させることができ、上記の例は限定的なものではない。
【0048】
リタイムクロック信号321、322、323、及び324を生成するために、リタイマ316は、基準クロック301から基準クロック信号301Aを受信し、VCO311からVCO出力信号312を受信する。この例において、リタイマ316は、四つのリタイマを表し得る。その他の例において、リタイマ316は、より多くの又はより少ないリタイマを表し得る。図3Aに戻ると、基準クロック信号301Aが、リタイマ316の四つのリタイマに直列に印加され得、そのため、各リタイマは順番にVCO出力信号312を受信する。各リタイマを通過する基準クロック信号301Aの直列接続によって生じる遅延により、リタイマ316から、後続の遅延されたリタイムクロック信号321、322、323、及び324(集合的に、リタイムクロック信号316A)が提供される。例えば、図3Aの直列接続においては、リタイマ325によって受信される基準クロック信号301Aが開示されている。次いで、リタイマ325からのリタイムクロック信号321が、リタイマ326に提供される。リタイマ326は、リタイムクロック信号322を出力し、それが、リタイマ327によって受信され、リタイマ327は、リタイムクロック信号323を出力する。リタイムクロック信号323は、リタイマ328によって受信され、リタイマ328は、リタイムクロック信号324を出力する。リタイムクロック信号324は、リタイマ329によって受信される。各リタイマ325~329は、受信されて入ってくるそれぞれのリタイムクロック信号に異なる効果を及ぼし得る。リタイマ325~329はそれぞれ、タイミングを遅延させ得るか又は早め得る。
【0049】
リタイムクロック信号316Aの各々は、図2A及び図2Bを参照して上述したように判定される。基準クロック信号301Aがハイになり、VCO出力信号312がハイになると、リタイムクロック信号はハイになり、基準クロック信号301Aがローになり、VCO出力信号312がローになると、リタイムクロック信号はローになる。上述したように、基準クロック信号301Aはリタイマ316の一つ又は複数のリタイマ間で直列に受信されるので、リタイマ316のリタイムクロック信号316Aは遅延され得、マルチプレクサ315によって受け取られる複数のその後のクロックエッジが生じる。
【0050】
マルチプレクサ315は、リタイムクロック信号316A及びフィードバック分周器信号314Aを受信する。また、マルチプレクサ315は、シグマデルタ変調器318から変調信号318Aを受信する。一例において、変調信号318Aはシグマデルタ変調信号である。図3Aの例はシグマデルタ変調器318を開示しているが、本開示はシグマデルタ変調に限定されず、その他の変調器などを用いてフラクショナル合成を実現し得る。
【0051】
フラクショナル合成が二次変調を用いる例において、四つのリタイムクロック信号があり、変調信号318Aは、マルチプレクサ315によって受信される四つのシグマデルタ変調信号を含む。一例において、変調信号318Aは、N&#8722;1、N+1、N、及びN&#8722;2の間の分周比に基づく変調を含み得る。本開示は、異なる次数の変調とともに用いられてもよい。
【0052】
マルチプレクサ319は、フィードバック分周器信号314A及び基準クロック信号301Aを受信する。一例において、マルチプレクサ319は、変調器入力信号319Aをシグマデルタ変調器318に出力する。変調器入力信号319Aは、シグマデルタ変調器318のためのクロック信号として動作する。フィードバック分周器314がディセーブルされると、マルチプレクサ319は、シグマデルタ変調器318が変調信号318Aをマルチプレクサ315に提供し続けることを可能にする。例えば、フィードバック分周器314がイネーブルされると、変調器入力信号319Aは、フィードバック分周器信号314Aを含む。フィードバック分周器314がディセーブルされると、変調器入力信号319Aは、基準クロック信号301Aを含む。そのため、LO PLL回路300は、フィードバック分周器314がディセーブルされても機能し続ける。
【0053】
リタイムクロック信号316Aは、マルチプレクサ315に提供される。マルチプレクサ315は、フィードバック分周器314からフィードバック分周器信号314Aも受信する。マルチプレクサ315は、リタイムクロック信号316A及びフィードバック分周器信号314A間で選択する。フィードバック分周器314がディセーブルされると、マルチプレクサ315は、リタイムクロック信号321、322、323、及び324の一つを出力する。下記の図3Bを参照してさらに詳しく説明するように、マルチプレクサ315は、変調信号318Aの正確なエッジと整合するリタイムクロック信号(321、322、323、及び324)を出力する。
【0054】
PFD302は、基準クロック信号301Aを、及び、マルチプレクサ315からマルチプレクサ出力315Aを受信する。PFD302は、基準クロック信号301Aとマルチプレクサ出力315Aとを比較し、基準クロック信号301Aとマルチプレクサ出力315Aとの間の位相誤差信号を導出する。図1を参照して上述したように、チャージポンプ303及び304は、PFD302からの位相誤差信号302A及び302Bを、位相誤差に比例する正又は負の電流パルス列に変換する。チャージポンプ303及び304からの電流パルスは、増幅器308、コンデンサC306、抵抗器R307、コンデンサC305、抵抗器R309、及びコンデンサC310を含むループフィルタ320によってフィルタリングされる。ループフィルタ320からの電圧信号320Aが、図1を参照して説明したようにVCO出力信号312の周波数及び位相を制御するためにVCO311に入力される。一例において、ループフィルタ320は、ここに列挙したものよりも少ない構成要素を含んでいてもよい。例えば、ループフィルタ320からは、抵抗器R309及びコンデンサC310を含む受動フィルタを除外し得る。
【0055】
一例において、LO PLL回路300は、フィードバック分周器314をディセーブルするための手段を含み得る。例えば、ノード317のスイッチを用いて、VCO出力信号312をフィードバック分周器314とリタイマ316との間で切り替え得る。別の例において、フィードバック分周器314は、分周器バッファ313とノード317との間のバッファ又はインバータ(図示せず)を用いてディセーブルされ得る。一例において、バッファ又はインバータは、分周器バッファ313及びフィードバック分周器314によるVCO出力信号312の受信をディセーブルするために用いられ得る出力イネーブル機能を含み得、それにより、フィードバック分周器314及び分周器バッファ313が効果的にディセーブルされる。一例において、リタイマ316とノード317との間にバッファ又はインバータを配置して、リタイマ316へのVCO出力信号312をディセーブル又はイネーブルし得る。これらは、電力を節約するためにフィードバック分周器314がディセーブルされ得る例示の手段であり、本開示を限定するものではない。フィードバック分周器314をディセーブルするためにVCO出力信号312を制御する任意の手段が企図される。フィードバック分周器314をディセーブルする手段は、ソフトウェア、ハードウェア、又はハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって制御され得る。
【0056】
一実施例において、LO PLL回路300がリッスンモード又はスニファモードにあるとき、フィードバック分周器314は、上記手段のいずれか一つ又は複数を用いてディセーブルされ得、それによってエネルギーが節約される。LO PLL回路300は、フィードバック分周器314がディセーブルされると、VCO出力信号312がリタイマ316によって受信されるように、例えば、上述の手段によって構成される。
【0057】
図3Bは、本開示の幾つかの態様に従った、基準クロック信号301A及びVCO出力信号312を示すタイミング図350である。シグマデルタ変調器318がNカウンタを四つの異なる数値間で切り替える二次変調を用いる例において、VCO出力信号312は、リタイマ316において遅延されて、リタイムクロック信号321、322、323、及び324が生成される。上述したように、各リタイムクロック信号は、等しい量又はその他の量だけその後遅延され得る。
【0058】
図3Bの各シグマデルタ変調値(N&#8722;1、N&#8722;2、N、N+1)について、フィードバック分周器314がディセーブルされると、リタイムクロック信号がPFD302に出力され得、ここで、リタイムクロック信号のエッジは、対応するシグマデルタ変調と整合している。図3Bを参照すると、一例において、N&#8722;1では、正確なエッジ358がリタイムクロック信号323のエッジであり、そのため、マルチプレクサ出力315Aはリタイムクロック信号323を含む。N+1では、正確なエッジ359がリタイムクロック信号322のエッジであり、そのため、マルチプレクサ出力315Aはリタイムクロック信号322を含む。Nでは、正確なエッジ360が、この場合もリタイムクロック信号323のエッジであり、そのため、マルチプレクサ出力315Aはリタイムクロック信号322を含む。このプロセスを通して、リタイムクロック信号321、322、323、及び、324はVCO出力信号312の位相情報を維持するので、フィードバック分周器314がディセーブルされると、フラクショナル合成が行なわれ得る。それに加えて、リタイマ316へのVCO出力信号312は、リタイムクロック信号324の生成後にディセーブルされ得、基準クロック信号301Aがハイになるときに再びイネーブルされて、リタイマ316における電力消費が節約され得る。
【0059】
図4は、本開示の幾つかの態様に従ったタイミング図400であり、図3A及び図3Bを参照して上述したフラクショナル合成と整数(integer)合成との違いを図示する。図4は、図2B及び図3Bを参照して上述したように、基準クロック信号401、VCO出力信号402、及びリタイムクロック信号403を示す。整数合成において、アップパルス列404の幅がダウンパルス列405の幅と等しいときに、LOにおけるPLLによってロックが実現される。図3A及び図3Bを参照して開示されるフラクショナル合成では、アップパルス列406の平均幅がダウンパルス列407の幅と等しいときに、LOにおけるPLLによってロックが実現される。
【0060】
受信機の動作を図2A図3A、及び図5を参照してさらに説明する。図5は、本開示の幾つかの態様に従った、局所発振を実施する方法500のフローチャートである。方法500は、図2のLO PLL回路200及び図3のLO PLL回路300、又はその他の適切な集積回路によって実施されるのに適している。方法500のプロセスは、記載される以外の順序で実施されてもよく、プロセスが同時に並行して実施されてもよい。また、本開示の幾つかの例において、方法500のプロセスは省略又は置換されてもよい。
【0061】
ブロック502、図2A、及び図3Aを参照すると、LO PLL回路300のフィードバック分周器314及びLO PLL回路200のフィードバック分周器214がディセーブルされ得る。フィードバック分周器314及び214は、フィードバック分周器314及び214並びに分周器バッファ313及び213を、それぞれ、VCO出力信号312及び212から切断するスイッチ又は他の論理回路要素を用いることを含めて、図2A及び図3Aを参照して上で上述した手段のいずれか一つ又は複数によってディセーブルされ得る。フィードバック分周器314及び214並びに分周器バッファ313及び213を、これらが電力を用いないようにディセーブルするため、付加的なハードウェア、ソフトウェア、及び/又はハードウェアとソフトウェアの組み合わせが用いられ得る。
【0062】
ブロック504、図2A、及び図3Aを参照すると、基準クロック信号201Aが図2Aのリタイマ216によって受信され、基準クロック信号301Aが図3Aのリタイマ316によって受信される。
【0063】
ブロック506を参照すると、リタイマ316及び216は、それぞれ、VCO出力信号312及びVCO出力信号212を受信する。
【0064】
ブロック508及び図3Aを参照すると、リタイマ316は、リタイムクロック信号316Aを生成する。図3Aを参照して上述したように、リタイムクロック信号316Aは、リタイムクロック信号321、322、323、及び324を含み得、各々が、VCO出力信号312に基づく後続のエッジを有する。基準クロック信号301Aがハイになり、VCO出力信号312がハイになると、リタイム信号はハイになり、基準クロック信号301Aがローになり、VCO出力信号312がローになると、リタイム信号はローになる。上述したように、基準クロック信号301Aが、リタイマ316の一つ又は複数のリタイマ間で直列に受信されるので、リタイマ316の出力は遅延され得、そのため、本明細書に開示されるフラクショナル合成プロセスにおいて、VCO出力信号312の選択されたクロックエッジと基準クロック信号301Aとの間の誤差を判定するために用いられる複数の後続のVCOクロックエッジが生成される。
【0065】
ブロック508及び図2Aを参照すると、リタイマ216は、正確な位相検出時間においてVCO211の位相情報をPFD202にもたらすリタイムクロック信号216Aを生成する。例えば、リタイマタイマ216は、基準クロック信号201Aがハイであり、VCO出力信号212がハイになるときをラッチする。同様に、リタイムクロック信号216Aは、例えば、基準クロック信号201Aがローであり、VCO出力信号212がローになるときにローになる。その結果、基準クロック信号201A及びVCO出力信号212に基づいてリタイマ216によって生成されるリタイムクロック信号216Aが得られる。
【0066】
ブロック510並びに図3A及び図3Bを参照すると、マルチプレクサ315は、リタイマ316から、リタイムクロック信号316Aを受信するとともに、シグマデルタ変調器318から変調信号318Aを受信する。変調信号318Aは、リタイマ316からのリタイムクロック信号316Aと多重化され、変調信号318Aの正確なエッジと整合するリタイムクロック信号321、322、323、又は324が、PFD302によって受け取られるマルチプレクサ出力315Aとしてマルチプレクサ315によって生成される。
【0067】
ブロック512、図2A、及び図3Aを参照すると、リタイムクロック信号に基づいて誤差信号が判定される。図2Aにおいて、PFD202は、基準クロック信号201A及びマルチプレクサ出力215Aを受信する。PFD202は、基準クロック信号201Aとマルチプレクサ出力215Aとを比較し、基準クロック信号201Aとマルチプレクサ出力215Aとの間の位相誤差信号202A及び202Bを導出する。図3Aにおいて、PFD302は、基準クロック信号301A及びマルチプレクサ出力315Aを受信する。PFD302は、基準クロック信号301Aとマルチプレクサ出力315Aとを比較し、基準クロック信号301Aとマルチプレクサ出力315Aとの間の位相誤差信号302A及び302Bを導出する。
【0068】
ブロック514、図2A、及び図3Aを参照すると、基準クロック信号と、VCO出力信号に基づくリタイムクロック信号との間の位相誤差信号が、VCOを調整するために用いられ、それによって、VCO出力信号の周波数及び位相が調整される。一例において、PFDからの位相誤差信号は、上述したように、増幅されフィルタリングされ得る。図2Aを参照すると、電圧信号220Aは位相誤差を表し、電圧信号220Aは、図1を参照して説明したようにVCO出力信号212を制御する。図3Aを参照すると、電圧信号320Aは位相誤差を表し、電圧信号320Aは、図1を参照して説明したようにVCO出力信号312を制御する。
【0069】
LO PLL回路200及び300又はその他の集積回路デバイスは、専用ハードウェアと非一時的媒体に格納される命令との任意の組み合わせを用いて方法500のプロセスを実施し得る。したがって、LO PLL回路200及び300の要素は、非一時的なコンピュータ可読媒体に結合される処理リソースを含み得る。処理リソースには、一つ又は複数のマイクロコントローラ、ASIC、CPU、GPU、及び/又は、非一時的なコンピュータ可読媒体上に格納される命令を実行するように構成されるその他の処理リソースが含まれ得る。適切な非一時的なコンピュータ可読媒体の例には、一つ又は複数のフラッシュメモリデバイス、バッテリバックアップされたRAM、SSD、HDD、光学媒体、及び/又は、処理リソースのための命令を格納するのに適したその他のメモリデバイスが含まれる。
【0070】
本開示は多くの例示の実施例を提供し、これらの実施例に対して改変が可能であることが理解されよう。このような改変は、明らかに本開示の範囲内に含まれる。また、これらの教示をその他の環境、応用例、及び/又は目的に適用することは、本開示と一貫しており、本開示によって企図される。
【0071】
「結合」という用語は、本明細書全体にわたって用いられている。この用語は、本記載と一貫する機能的関係を可能にする、接続、通信、又は信号経路を包含し得る。例えば、デバイスAが或る動作を実施するためにデバイスBを制御するための信号を生成する場合、第1の例において、デバイスAはデバイスBに結合され、或いは、第2の例において、デバイスAによって生成された制御信号を介してデバイスBがデバイスAによって制御されるように、介在する構成要素CがデバイスAとデバイスBとの間の機能的関係を実質的に変更させない場合に、デバイスAは、介在する構成要素Cを介してデバイスBに結合される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
【国際調査報告】