(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-16
(54)【発明の名称】個別の用量制御および過剰摂取防止機構
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
A61M5/142
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540667
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 US2021065407
(87)【国際公開番号】W WO2022147053
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2021-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソロウシュ カムラヴァ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066EE14
4C066LL21
4C066QQ48
4C066QQ82
4C066QQ92
(57)【要約】
用量制御およびオーバーラン保護機構は、ウェアラブル輸液ポンプや薬物送達ペンのような流体送達デバイスで使用するために提供される。この機構は、所定の用量の送達サイクルごとに、所望の円弧状経路(例えば、180度未満)に沿って交互の方向に回転するプレート上のピンを案内する表面特徴を備えた、逆回転する平歯車を備える。表面特徴は、アクチュエータ入力の方向に関係なく、またアクチュエータが円弧状経路を超えて回転するかどうかに関係なく、平歯車のうちの1つを制御可能に回転させ、流体送達デバイスのパワートレイン内の別の構成要素に選択された量または回転を出力するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体送達構成要素を制御するために回転入力を使用する駆動機構と、前記駆動機構を操作するアクチュエータとを備えた流体送達デバイスにおいて、オーバーラン防止機構は、
ギア歯を備え、選択された数の対応するギア歯と噛み合うように互いに隣接して配置された第1の平歯車および第2の平歯車であって、前記第1の平歯車は、時計回りに回転可能であり、前記第2の平歯車は、反時計回りに回転可能である第1の平歯車および第2の平歯車と、
前記第1の平歯車および前記第2の平歯車に対して円弧状経路内のピンを移動させるサイクル中に制御された量を回転するために、前記流体送達デバイス内の前記アクチュエータによって作動されるピンを備えたプレートであって、交互のサイクルで、時計回りおよび反時計回りの方向に回転するように作動されるプレートと、
を備え、
前記第1の平歯車および前記第2の平歯車は、それぞれ、前記ピンを備えた前記プレートに対向する面を有し、各面は、前記プレートが回転するときに、前記ピンが表面特徴に沿って追従可能である少なくとも1つの表面特徴を有して構成され、前記各平歯車の前記表面特徴は、前記円弧状経路のそれぞれの端部に向かって移動するときに、前記ピンと接触して、その平歯車を選択された量だけ回転させ、その平歯車の歯が他の平歯車の歯と係合して回転を与え、前記各平歯車の前記表面特徴は、また、前記アクチュエータが前記プレートの回転方向を逆転させて別のサイクルを開始する前に、前記円弧状経路のそれぞれの端部で前記ピンとの接触を失うように構成されている、オーバーラン防止機構。
【請求項2】
前記オーバーラン防止機構への入力は、サイクル中に前記円弧状経路に沿った前記プレートの126度の回転に対応し、前記平歯車がそのサイクル中に90度回転するように構成される、請求項1に記載のオーバーラン防止機構。
【請求項3】
前記オーバーラン防止機構の出力は、サイクル中に前記平歯車の1つが90度回転することによって与えられる90度回転である、請求項2に記載のオーバーラン防止機構。
【請求項4】
前記流体送達デバイスは、前記オーバーラン防止機構の出力を入力として受け取り、所定量の流体用量を達成するために駆動機構に適用するためのより小さな回転の第2の出力を生成するように構成された歯車列構成要素を有する、請求項3に記載のオーバーラン防止機構。
【請求項5】
前記流体送達デバイスは、バレル型リザーバ内のプランジャを移動させるシリンジ型ポンプであり、前記駆動機構は、前記プランジャを移動させるように動作可能な入れ子式の伸縮式ネジを備え、前記第2の出力は、所定量の前記流体用量を送達するのに相当する距離だけ前記プランジャを移動させるために前記駆動機構に提供される、請求項4に記載のオーバーラン防止機構。
【請求項6】
少なくとも1つの前記表面特徴は、中央の両凹レンズ状突起部の両側に配置された2つの両凸レンズ状突起部を画定する2つの円弧状溝を備える、請求項1に記載のオーバーラン防止機構。
【請求項7】
前記円弧状経路のそれぞれの端部に向かって移動するときに、前記両凹レンズ状突起部の凸面が前記ピンと接触して、前記平歯車を選択された量だけ回転させる、請求項6に記載のオーバーラン防止機構。
【請求項8】
前記2つの両凸レンズ状突起部と前記中央の両凹レンズ状突起部は、前記ピンが前記円弧状経路の端部に到達すると、前記ピンとの係合が外れ、それ以上回転しないように構成されている、請求項6に記載のオーバーラン防止機構。
【請求項9】
少なくとも1つの前記表面特徴は、それぞれが平坦な表面と凸状の表面を有する半涙滴型の突起部を備える、請求項1に記載のオーバーラン防止機構。
【請求項10】
半涙滴型の突起部は、互いに対向する平面をそれぞれ備えた前記平歯車のそれぞれの面上に互いの反対に対角線上に配置されている、請求項9に記載のオーバーラン防止機構。
【請求項11】
前記ピンが前記円弧状経路の端部に到達したときに、検出するためのセンサをさらに備える、請求項1に記載のオーバーラン防止機構。
【請求項12】
前記流体送達デバイスは、出力が前記ピンによって前記円弧状経路の端部に到達したことを示すときに、前記センサの前記出力を受信し、方向を逆転させるように前記アクチュエータを制御するプロセッサを有するように構成されている、請求項11に記載のオーバーラン防止機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示および本明細書に記載される技術的解決策は、概して、薬剤送達に使用される流体送達デバイスにおける用量制御および過剰摂取防止に関し、より具体的には、アクチュエータからの入力エネルギーを、流体送達デバイスのパワートレイン内の次の構成要素への出力エネルギーに変換するための機構に関し、より具体的には、アクチュエータからの入力エネルギーを、サイクルごとに1回の用量のみを送達するように流体送達デバイスを制御し、アクチュエータが所望の動作点を超えて回転するとき、パワートレインへのエネルギー伝達を停止するように、流体送達デバイスのパワートレイン内の次の構成要素への出力エネルギーに変換するための機構に関する。
【背景技術】
【0002】
過剰摂取とは、意図された用量を超える量の薬物の適用であり、ユーザーに耐えられないリスクをもたらし得る。薬物送達デバイスにおける過剰摂取は、用量送達を担う構成要素の機能不全が原因で発生し得る。つまり、これらの構成要素は、一般に、アクチュエータ、電子機器、およびソフトウェアである。薬剤送達に使用される流体送達デバイスにおける過剰摂取を防止する必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
過剰摂取のような問題は、本明細書に記載の例示的な実施形態によって克服され、さらなる利点が実現される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
流体送達構成要素を制御するために回転入力を使用し、駆動機構を動作させるためにアクチュエータを使用する駆動機構を備えた流体送達デバイスにおいて、オーバーラン防止機構であって、選択した数の対応するギア歯を噛み合わせるために、ギア歯を備え、互いに隣接して配置された第1の平歯車および第2の平歯車であって、第1の平歯車は時計回りに回転可能であり、第2の平歯車は反時計回りに回転可能である第1の平歯車および第2の平歯車と、ピンを備えたプレートであって、流体送達デバイス内のアクチュエータによって作動され、サイクル中に制御された量を回転させて、第1の平歯車および第2の平歯車に対して円弧状経路内でピンを移動させるプレートと、を有するオーバーラン防止機構が提供される。プレートは、交互のサイクルで時計回りと反時計回りに回転するように作動する。第1の平歯車と第2の平歯車は、それぞれピンを備えたプレート側を向いた面を有している。各面は、プレートが回転するときにピンがそれに沿って追従可能である少なくとも1つの表面特徴で構成されている。各平歯車の表面特徴は、円弧状経路のそれぞれの端部に向かって移動するときにピンと接触して、その平歯車を選択された量だけ回転させ、その平歯車の歯が他の平歯車の歯と係合して回転を与える。各平歯車の表面特徴は、また、アクチュエータがプレートの回転方向を逆転させて別のサイクルを開始する前に、円弧状経路のそれぞれの端でピンとの接触を失うように構成されている。
【0005】
例示的な実施形態の一態様によれば、オーバーラン防止機構への入力は、サイクル中に円弧状経路に沿ったプレートの126度の回転に対応し、平歯車は、そのサイクル中に90度回転するように構成される。例えば、オーバーラン防止機構の出力は、1サイクル中に一方の平歯車が90度回転することにより与えられる90度の回転である。さらなる例として、流体送達デバイスは、オーバーラン防止機構の出力を入力として受け取り、所定量の流体用量を達成するために駆動機構に適用するためのより小さな回転の第2の出力を生成するように構成された歯車列構成要素を有する。さらに、別の例として、流体送達デバイスは、バレル型リザーバ内のプランジャを移動させるシリンジ型ポンプとすることが可能であり、駆動機構は、プランジャを移動させるように動作可能な入れ子式の伸縮式ネジを備え、第2の出力は、所定量の流体用量を送達するのに相当する距離だけプランジャを移動させるために駆動機構に提供される。
【0006】
例示的な実施形態の一態様によれば、少なくとも1つの表面特徴は、中央の両凹レンズ状突起部の両側に配置された2つの両凸レンズ状突起部を画定する2つの弓形溝を備える。例えば、その平歯車を選択された量だけ回転させるため、円弧状経路のそれぞれの端部に向かって移動するときに、両凹レンズ状の突起部の凸面は、ピンと接触する。別の例として、2つの両凸レンズ状突起部および中央の両凹レンズ状突起部は、ピンが円弧状経路の端部に到達するとピンの係合を失い、それ以上回転しないように構成される。
【0007】
例示的な実施形態の一態様によれば、少なくとも1つの表面特徴は、それぞれが平坦な表面と凸状の表面を有する半涙滴型の突起部を備える。各平歯車の平面には、例えば、半涙滴型の突起部が対角に配置されており、平歯車の平面同士が対向している。
【0008】
例示的な実施形態の一態様によれば、オーバーラン防止機構には、ピンが円弧状経路の端部に到達したときを検出するためのセンサが設けられる。例えば、流体送達デバイスは、センサの出力を受信し、ピンが円弧状経路の端部に到達したことを出力が示すときにアクチュエータを制御して方向を逆転させるプロセッサを有するように構成される。
【0009】
例示的実施形態の追加および/または他の態様および利点は、以下の説明に記載されるか、またはその説明から明らかになるか、または例示的実施形態の実践によって学習され得る。例示的な実施形態は、上記の態様のうちの1つ以上、および/または特徴のうちの1つ以上およびそれらの組み合わせを有する装置およびそれを動作させるための方法を含み得る。例示的な実施形態は、例えば、添付の特許請求の範囲に記載されているような、1つ以上の特徴および/または上記の態様の組み合わせを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
例示的な実施形態の上記および/または他の態様および利点は、添付図面と併せて、以下の詳細な説明から、より容易に理解されるであろう。
【0011】
【
図1】明確にするために、上部およびベースプレートが取り外された、例示的な流体送達デバイスの斜視上面図である。
【
図2】
図1のデバイスのシリンジバレル型リザーバ内のプランジャ用のアクチュエータ、歯車列および駆動機構の一部の側面斜視図である。
【
図3A】例示的なエンドストップ回路を備えた例示的な流体送達デバイスの歯車列および駆動機構の側面図である。
【
図3B】例示的なエンドストップ回路を備えた例示的な流体送達デバイスの歯車列および駆動機構の側面図である。
【
図4A】
図1の例示的な流体送達デバイスの駆動機構を動作させるための例示的な実施形態に従って構築されたアクチュエータおよび歯車列の側面図である。
【
図4B】
図1の例示的な流体送達デバイスの駆動機構を動作させるための例示的な実施形態に従って構築されたアクチュエータおよび歯車列の側面図である。
【
図4C】
図1の例示的な流体送達デバイスの駆動機構を動作させるための例示的な実施形態に従って構築されたアクチュエータおよび歯車列の側面図である。
【
図4D】
図1の例示的な流体送達デバイスの駆動機構を動作させるための例示的な実施形態に従って構築されたアクチュエータおよび歯車列の側面図である。
【
図4E】
図1の例示的な流体送達デバイスの駆動機構を動作させるための例示的な実施形態に従って構築されたアクチュエータおよび歯車列の側面図である。
【
図4F】
図1の例示的な流体送達デバイスの駆動機構を動作させるための例示的な実施形態に従って構築されたアクチュエータおよび歯車列の側面図である。
【
図5A】
図1の例示的な流体送達デバイスの駆動機構を動作させるための別の例示的な実施形態に従って構築されたアクチュエータおよび歯車列の側面図である。
【
図5B】
図1の例示的な流体送達デバイスの駆動機構を動作させるための別の例示的な実施形態に従って構築されたアクチュエータおよび歯車列の側面図である。
【
図5C】
図1の例示的な流体送達デバイスの駆動機構を動作させるための別の例示的な実施形態に従って構築されたアクチュエータおよび歯車列の側面図である。
【
図5D】
図1の例示的な流体送達デバイスの駆動機構を動作させるための別の例示的な実施形態に従って構築されたアクチュエータおよび歯車列の側面図である。
【
図5E】
図1の例示的な流体送達デバイスの駆動機構を動作させるための別の例示的な実施形態に従って構築されたアクチュエータおよび歯車列の側面図である。
【
図5F】
図1の例示的な流体送達デバイスの駆動機構を動作させるための別の例示的な実施形態に従って構築されたアクチュエータおよび歯車列の側面図である。
【0012】
図面全体を通じて、同様の参照番号は、同様の要素、特徴、および構造を指すものと理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、添付図面に示される例示的な実施形態を詳細に参照する。本明細書で説明する実施形態は、図面を参照して例示するものであり、限定するものではない。
【0014】
過剰摂取に伴うユーザーのリスクは、様々な設計ソリューションを使用することで軽減することが可能である。これらのソリューションは、本質的に、機械的、電気的、アルゴリズム的、またはそれらの組み合わせである可能性がある。機械的解決策の一つは、ピン付きの駆動ホイールとスロット付きの従動ホイールを使用して、連続入力動作を離散出力動作に変換する機械機構であるジェネバ機構またはジェネバ駆動である。駆動ホイールが回転すると、ピンが駆動ホイールのスロットに入り、駆動ホイールが回転しながら走行を続けるときにピンがスロットから出るのに十分な回転になるまで駆動ホイールを回転させる。従動輪の回転の程度は、とりわけ従動輪のスロットの数に依存する。ただし、ジェネバ機構は、入力がオーバーランした場合に出力動作を停止する機能がない。
【0015】
本明細書に記載の技術的解決策は、例えば、インスリン送達に使用されるウェアラブル注入デバイスまたは薬物送達ペンのような薬物送達デバイスにおける用量制御および過剰摂取防止のための新規な機械的解決策を提供する。その技術的解決策は、流体送達デバイスのパワートレインに設けられたオーバーラン防止機構である。パワートレインは、例えば、アクチュエータと流体送達デバイスの流体リザーバ内のプランジャの駆動機構との間に位置する歯車列を備えることが可能である。技術的解決策および例示的な実施形態に従って本明細書に記載されるオーバーラン防止機構は、アクチュエータ(例えば、モータ)から直接的または間接的に入力電力(例えば、トルク×速度)を受け取り、出力電力(例えば、トルク×速度)をパワートレインの次の構成要素に伝達する。オーバーラン防止機構は、機構の出力と接続された中間パワートレイン構成要素の対応する出力が所望の量に見合うように、機構の出力を物理的に飽和させることによって動きを調整するように設計され、さらに、アクチュエータが所望の動作点を超えて回転するとき、エネルギー伝達も停止する。
【0016】
オーバーラン防止機構は、個別の動作機構であり、各サイクルで1回分の用量だけを送達する。サイクルは、流体リザーバから所定量の流体を送達するために、流体送達デバイス内の駆動機構および介在するパワートレイン構成要素を制御するアクチュエータおよびオーバーラン防止機構の指定された移動量であると理解される。例えば、以下に説明するように、サイクルは、ピンまたはカムフォロアを備えたオーバーラン防止機構の構成要素に180度未満(例えば、126度)の円弧状経路に沿った移動を達成し、中間のパワートレイン構成要素に伝えて、その出力を駆動機構のより小さな入力に低減するために、90度の出力回転を達成し、所定量の流体の所望の用量を達成するため、アクチュエータ入力シャフトの可逆的な部分回転とすることが可能である。技術的解決策の態様およびオーバーラン防止機構の例示的な実施形態によれば、アクチュエータは、別の用量送達サイクルを開始するために停止し、逆方向に回転する必要がある。アクチュエータの入力回転方向に関係なく、オーバーラン防止機構の出力は、一方向に回転する。入力回転方向の逆転は、所望の用量が分配されるまで次の送達サイクルに進むために、必要とされる。
【0017】
オーバーラン防止機構は、プレート内の1つまたは複数のダウエルピンと2つの平歯車上のカム表面特徴との間の物理的相互作用に基づいて動作する。これらの構成要素間の荷重伝達の方法は、それらの構成要素の幾何学的形状に大きく依存しており、入力トルクプロファイルは、これらの特徴の幾何学的形状を変更することによって調整することが可能であり、これについては、それぞれ、
図4A~
図4Fおよび
図5A~
図5Gに示された2つの例示的な実施形態に関連して、以下に説明する。例示の目的で、例示的な実施形態は、シリンジ型ポンプを有する
図1に示されるようなウェアラブル注入デバイスのような例示的な流体送達デバイスに関連して説明される。
【0018】
図1を参照すると、明確にするために、例示的な流体送達デバイス10は、カバーおよびベースプレートなしで示されている。流体送達デバイス10は、所望の量の流体をそこから排出するために所望の量だけリザーバ12内に延びるように駆動機構16によって制御され得るプランジャ14を備えたシリンジバレル型リザーバ12を有する。駆動機構は、例えば、プランジャに接続された最も内側のネジを有し、パワートレインによって制御可能に伸長する伸縮式の入れ子式ネジの配置とすることが可能である。例えば、パワートレインは、それぞれの歯車を備えた歯車列18に接続された入力シャフト20を備えた回転アクチュエータ(例えば、モータ)19を備えることが可能であり、これらの歯車列は、それぞれ駆動機構16に接続されている。オーバーラン防止機構22の例示的な実施形態は、機構22と駆動機構16との間に中間歯車が配置されたアクチュエータの近くに配置される機構22を示す。しかしながら、オーバーラン防止機構22は、アクチュエータ19と駆動機構16との間のパワートレインに沿った任意の点に接続できることを理解されたい。さらに、アクチュエータは、少なくとも半回転および可逆回転入力を提供出来るモータ以外の他のタイプのアクチュエータ(例えば、油圧式、ばね式、手動式およびソレノイド式のアクチュエータ)であってもよく、駆動機構16は、バレルリザーバ内のプランジャを駆動するための入れ子式のネジに限定される必要はないことを理解されたい。例えば、オーバーラン防止機構22は、様々な種類の容積式ポンプのパワートレインに採用することが可能である。
【0019】
これらの例示的な実施形態では、入力における126度の回転は、オーバーラン防止機構によって出力における90度の回転をもたらし、これは、例えば、一組の中間平歯車18を使用するポンプレベルでの入力(例えば、入れ子式の伸縮式ネジを有する駆動機構16への入力)の2.57度レベルに低減することが可能である。ポンプ(例、バレルとプランジャを備えたシリンジ型ポンプ)の2.57度の回転は、1回分の用量に相当する。以下に説明するように、オーバーラン防止機構は、入力を126度以上回転しても出力の90度の回転が変わらないように設計されている。したがって、入力シャフトと接続されたプレートをピンで126度よりわずかに大きく作動させることで、用量の精度が保証される。また、流体送達デバイス制御システムに電気スイッチを追加して、126度の入力回転を感知し、アクチュエータに停止および逆転コマンドを送信することも可能である。所望の用量送達量と、駆動機構16および流体送達デバイス10の他の構成要素の設計特徴とに応じて、オーバーラン防止機構22の入力および出力の異なる回転度を調整可能であることが理解されるべきである。
【0020】
図2を参照すると、オーバーラン防止機構22は、一般に、2つの平歯車28および30と、1つまたは複数のピン26が設けられたプレート24または他の部材とを備える。ピン26は、以下に説明するように、平歯車28および30の前面の特徴と協働して、ピンが所望の作動経路32を確実に完了し、しかも、一貫して完全な用量を維持するために所定の出力(例:平歯車28と30の90度回転)のみを送達することを保証する。アクチュエータ19または他の構成要素が誤動作してオーバーランを引き起こした場合でも、オーバーラン防止機構22の構成要素は、そのサイクルで所定の用量を送達するのに見合った以上の出力を防止するように構成される。
【0021】
図3Aおよび3Bを参照すると、オーバーラン防止機構22の構成要素は、
図2および以下に説明する例示的な実施形態に示すものよりも歯車列構成要素18に対してより垂直な、異なる構成で組み立てられる。
図3Aおよび3Bに示される構成は、流体送達デバイス10内のスペースを節約し、その寸法を最小限に抑えるのに役立てることを可能とする。また、
図3Aおよび3Bには、アクチュエータ19の方向を反転すべきときの検出回路40の例も示されている。例えば、ピン26を備えたプレート24は、導電性として構成することが可能であり、その端部停止位置42a、bのいずれかが円弧32の端部で回路40に到達すると、回路40を短絡させることを可能とする。それにより、コントローラは、アクチュエータ19による停止および方向転換を検出し命令するための信号を生成する。しかしながら、円弧32の端部を検出する他の方法を使用することも可能である。
【0022】
次に、オーバーラン防止機構22の例示的な実施形態について、
図4Aから
図4Fを参照して説明する。平歯車28、30のそれぞれの前面36は、2つの両凸レンズ状突起部52と中央の両凹レンズ状突起部54を画定する2つの円弧状の溝またはトレース50を有する。平歯車28、30の面36上のこれらの特徴50、52、54は、協働して、ピン26とカム表面のためのS字形経路34を断続的に提供し、ピンが円弧32に沿ってさらに移動するのを防止する。
【0023】
平歯車30は、アクチュエータ入力シャフト20の入力方向に関わらず反時計回り(CCW)に回転する。平歯車28は、アクチュエータ入力シャフト20の入力方向に関わらず時計回り(CW)に回転する。アクチュエータ入力シャフト20は、CWとCCWに交互に回転され、ピン26が円弧32(例えば、126度または180度未満の他の値)を通って移動し、その後、停止して逆転し、円弧を反対方向に移動することが出来る。
図4A~
図4Fのピン26を備えたプレート24は、明確にするために接続された入力シャフト20なしで示されている。
【0024】
図4Aは、底部円弧位置からCWに回転するピン26を備えたプレート24を示す。プレート24に接続された入力シャフトがプレートをCWに回転し続けると、ピン26は、
図4Aに示す平歯車30の凹レンズ状突起部54の下側凹面に従い、
図4Bに示すように平歯車をCCWに90度移動させる。平歯車28および30の歯が協働することにより、平歯車28は、CWに90度回転する。平歯車30の両凸レンズ状突起部52aと両凹レンズ状突起部54のカム表面は、ピン26が円弧32の上端に達するとそれ以上押さないように構成されている。別のS字形経路34は、アクチュエータ19が停止し、プレート34に接続された入力シャフト20の方向を逆転させた後、
図4Cに示すように、円弧32に沿ったピン26のCCW移動のために、平歯車28、30上のそれぞれの溝50によって確立される。
【0025】
図4Dを参照すると、ピン26は、平歯車28上の凹レンズ状突起部54の下側凹面に従い、
図4Eに示すように平歯車28をCWに90度移動させる。平歯車28および30の歯が協働することにより、平歯車30は、CCWに90度回転する。平歯車28の両凸レンズ状突起部52aと両凹レンズ状突起部54のカム表面は、ピン26が円弧32の他方の上端に到達すると、それ以上押さないように構成されている。別のS字形経路34は、アクチュエータ19が停止し、プレート34に接続された入力シャフト20の方向を逆転させた後、
図4Fに示すように、円弧32に沿ったピン26のCW運動のために、平歯車28、30上のそれぞれの溝50によって確立される。平歯車28、30のいずれをオーバーラン防止機構22の出力として使用することも可能である。
【0026】
次に、オーバーラン防止機構22の別の例示的な実施形態について、
図5Aから
図5Fを参照して説明する。平歯車28、30のそれぞれの前面36は、2つの半涙滴型の突起部70a、bを有する。プレート24は、2つのピン26a、bを有し、アクチュエータの入力シャフト20に接続されるように示されている。平歯車30は、アクチュエータ入力シャフト20の入力方向に関わらずCCWに回転する。平歯車28は、アクチュエータ入力シャフト20の入力方向に関わらずCW回転する。アクチュエータ入力シャフト20は、CWとCCWに交互に回転され、ピン26が円弧32(例えば、126度または180度未満の他の値)を通って移動し、その後、停止して逆転し、円弧を反対方向に移動することが出来る。
【0027】
平歯車28、30のそれぞれの半涙滴型の突起部70a、bは、対応するピン26a、bの1つによって押されて、その平歯車28または30を90度回転させるように配置されている。他の平歯車も、それらの間の歯が協働するために90度回転することになる。平歯車28、30の表面の半涙滴型の突起部70a、bは、平面同士を対向させて対角線上に配置されている。平歯車28、30上の半涙滴型の突起部70a、bの対は、相互にオフセットされており、プレート24上のピン26a、bは、プレート24が円弧32の少なくとも一部をCWに横切るときに、ピン26bが平歯車30上の半涙滴型の突起部70の平らな表面を押し、プレート24が円弧32の少なくとも一部分をCCWに横切るとき、ピン26aが平歯車28上の半涙滴型の突起部70の平らな表面を押すように、相互に間隔を置いて配置されている。図示の例では、平歯車28、30およびそれらのそれぞれの特徴70a、bの寸法、およびピンの寸法は、入力シャフト20およびプレート24の約126度の回転が約90度の平歯車28、30からの出力を生じさせるように構成されている。
【0028】
例えば、
図5Aは、CCWに回転する入力シャフト20およびプレート24を示す。ピン26aは、平歯車28上の半涙滴型の突起部70の平面に沿って移動し、平歯車28をCWに90度回転させる。次に、平歯車28の歯は、
図5Bおよび
図5Cに示すように、平歯車30の歯と協働して、平歯車をCCWに90度回転させる。90度回転後、ピン26aが平歯車28から離れ、平歯車の回転が停止する。次に、アクチュエータは、方向を逆転させ、
図5Dに示すように、入力シャフト20およびプレート24をCWに回転し始める。入力回転方向を反転すると、他方のピン26bと他方の平歯車30の半涙滴型の突起部70とが接触する。
図5Eおよび
図5Fに示すように、プレート24が円弧32をCWに横断してCCWに90度回転させると、ピン26bは半涙滴型の突起部70の平面を押す。平歯車30の歯は、平歯車28の歯と協働して、平歯車を90度CWに回転させる。90度回転後、ピン26bが平歯車30から離れ、平歯車の回転が停止する。次いで、アクチュエータは方向を逆転させ、入力シャフト20およびプレート24を再びCCWに回転し始める。平歯車28、30のいずれをオーバーラン防止機構22の出力として使用することも可能である。
【0029】
上述したように、技術的解決策および例示的な実施形態に関して本明細書に記載されるオーバーラン防止機構22は、ウェアラブル注入ポンプ型の流体送達デバイスに実装することが可能であり、薬物送達ペンの過量投与防止機構として使用することも可能である。平歯車28、30の面上の半涙滴型の特徴70または突起部52、54の幾何学的形状は、機構22の入力および出力トルクプロファイルを調整するために修正することが可能である。ここに示されているピン26は、異なる負荷プロファイルを達成するために、異なる断面を有するピンと置き換えることが可能である。オーバーラン防止機構22は、その重要な特徴(例えば、半涙滴型の特徴70または突起部52、54)を維持しながら、様々なサイズで製造することが可能であり、異なる材料で製造することが可能である。平歯車28および30は、はすば歯車やかさ歯車のような他のタイプの歯車に置き換えることが可能であり、一方、平歯車のCWおよびCCW回転や、平歯車28および30の特徴の1つ(例えば、半涙滴型の特徴70または突起部52、54)へのピン係合後に同じ量だけ回転するように協働する歯のような重要な特徴を維持する。また、全サイクルに必要な入力回転と出力回転は、それぞれ126度および90度以外の角度に変更可能である。オーバーラン防止機構22は、要求される仕様に基づいて異なる用量を送達するために修正することが可能である。
【0030】
上述の理由により、オーバーラン防止機構22は、薬物の過剰摂取の危険性を排除するだけでなく、各サイクルにおける送達用量の精度も制御する。また、歯車を使用しているため、オーバーラン防止機構22は、他の歯車列構成要素と同様の騒音レベルで動作する。
【0031】
さらに、オーバーラン防止機構22は、パワートレイン内の異なる段階(例えば、ギアボックスの前、後、または中間)に配置することが可能であるため、有利である。たとえば、平歯車は、流体送出装置のプランジャやピストンの駆動機構に動きを与えるモータによく使用されるギアボックスと簡単に統合される。また、オーバーラン防止機構22は、パワートレインの異なる段階(例えば、モータとギアボックスの間、ギアボックスとポンプ機構の間、またはギアボックスの内部)に配置することが可能である。オーバーラン防止機構22をポンプ(例えば、シリンジバレル12のプランジャ14)から遠ざけ、アクチュエータ19に近づけることは、それに加えられるトルク値を減少させ、高負荷による故障のリスクを低減するという追加の利点を有する。
【0032】
オーバーラン防止機構22は、スケーラブルなギア比を有し、アクチュエータ、ギアボックス、ポンプ機構などの他の構成要素の選択に基づいてシステムの効率を最適化するように構成することが可能である。この技術ソリューションは、インスレットコーポレーションが開発したオムニポッドウェアラブルポンプの2つのラチェットホイールシステムなど、他のインデックス方式よりもエネルギー効率が大幅に優れている。また、オムニポッドは、複数の構成要素(アーム、形状記憶合金ワイヤー、ラチェットホイール、ヒンジ、ストップピンなど)間の複雑な相互作用に基づいて動作するため、製造または組み立てプロセスにおけるわずかな誤差がデバイスの故障に繋がり得る。
【0033】
性能を最適化するために電子機器と組み合わせることが可能であるが、オーバーラン防止機構22は、純粋に機械的な解決策であり、電子機器を必要とする直接駆動型割出しシステムとは対照的に、動作に電子機器を必ずしも必要としない。流体送達デバイスのインデックスシステムに電子機器を導入すると、望ましくない追加コストが発生し得る。一例として、ダイレクトドライブタイプのインデックスシステムは、エンコーダデータを分析するためにエンコーダと、場合によっては、二次マイクロプロセッサを必要とする可能性があり、これにより、流体送達デバイス10の最終コストが大幅に増加し得る。対照的に、オーバーラン防止機構22に使用されるすべての構成要素は、射出成形などの安価な方法を使用して製造することが可能である。
【0034】
さらに、直接駆動タイプのインデックスシステムの出力が目立たないため、様々な理由でシステム内に発生する誤差は累積され、流体送達デバイス10の寿命中に合計するとより大きな誤差値になり得る。一方、オーバーラン防止機構22における各用量送達サイクルは、前のサイクルとは独立しており、エラーは次の用量送達サイクルに転送されない。
【0035】
前述したように、従来のジェネバ機構には過大な入力があった場合に出力が回転しないようにする機能を有していなかった。これに対し、オーバーラン防止機構22は、一定の条件に達した後に出力を停止することで過剰投与を防止する。オーバーラン防止機構22は、投与プロセスを継続するための安全機能として、アクチュエータ19の方向(例えば、モータの方向)を逆転することを必要とする。一方、ジェネバ機構は、単一方向に回転するモータで継続的に動作するため、患者に過剰摂取を引き起こし得る。
【0036】
本開示の例示的な実施形態は、少なくとも上記の問題および/または欠点、および上記に記載されていない他の欠点に対処し得る。また、例示的な実施形態は、上述の欠点を克服する必要はなく、また、上述の問題のいずれも克服しなくてもよい。
【0037】
当業者であれば、本開示の適用が、上記の説明または図面に示された構成の詳細および構成要素の配置に限定されないことを理解されたい。本明細書の実施形態は、他の実施形態も可能であり、様々な方法で実践または実施することが出来る。また、本明細書で使用される表現および用語は説明を目的としたものであり、限定するものと見なされるべきではないことも理解されるであろう。本明細書における「含む」、「備える」、または「有する」およびそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目およびその等価物、ならびに追加の項目を包含することを意味する。別段の制限がない限り、本明細書における用語「接続された」、「結合された」、および「取り付けられた」およびそれらの変形は広く使用され、直接的および間接的な接続、結合、および取り付けを包含する。加えて、用語「接続された」および「結合された」およびそれらの変形は、物理的または機械的な接続または結合に限定されない。さらに、上部、下部、最下部、最上部などの用語は相対的なものであり、説明を助けるために使用されているが、限定するものではない。
【0038】
上記の説明および図は、単なる例として意図されており、特許請求の範囲に記載されている場合を除き、いかなる形でも例示的な実施形態を限定することを意図するものではない。当業者は、上で説明した様々な例示的な実施形態の様々な要素の様々な技術的態様を他の多くの方法で容易に組み合わせることが可能であり、その全てが特許請求の範囲内にあるとみなされることに特に留意されたい。
【国際調査報告】