(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-16
(54)【発明の名称】極低温冷凍システム及び極低温ポンプ
(51)【国際特許分類】
F25B 9/14 20060101AFI20240109BHJP
F25B 9/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
F25B9/14 530Z
F25B9/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563153
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2021087265
(87)【国際公開番号】W WO2022136534
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523241173
【氏名又は名称】ライボルト ドレスデン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ハンペル ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】カムセラ シルコ
(57)【要約】
極低温冷凍システム及び方法が開示される。極低温冷凍システムは、膨張ユニットを含む冷凍機ユニットと、冷媒を圧縮するように構成された可変速圧縮機とを備える。可変速圧縮機は、低圧ラインを介して冷凍機ユニットから冷媒を受け取り、高圧ラインを介して冷凍機ユニットに圧縮された冷媒を供給するように構成されている。また、可変速圧縮機を制御して、可変速圧縮機の消費電力を所定の閾値未満に維持するように構成された制御回路を備え、制御回路は、クールダウン中に、可変速圧縮機を制御して、可変速圧縮機が初期低減周波数で動作し、その後に、可変速圧縮機が高い周波数で動作するように可変速圧縮機の動作周波数を増大させるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温冷凍システムであって、
膨張ユニットを含む冷凍機ユニットと、
冷媒を圧縮するように構成された可変速圧縮機であって、前記可変速圧縮機は、低圧ラインを介して前記冷凍機ユニットから冷媒を受け取り、高圧ラインを介して前記冷凍機ユニットに圧縮された冷媒を供給するように構成されている、可変速圧縮機と、
前記可変速圧縮機を制御して、前記可変速圧縮機の消費電力を所定の閾値未満に維持するように構成された制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、クールダウン中に、前記可変速圧縮機を制御して、前記可変速圧縮機が、初期低減動作周波数で動作し、その後に、前記可変速圧縮機がより高い周波数で動作するように、動作周波数を増大させる、極低温冷凍システム。
【請求項2】
前記極低温冷凍システムは、
前記冷凍機ユニットのクールダウン中に前記可変速圧縮機を全速で動作させると、前記可変速圧縮機が前記所定の閾値を超える電力を消費することにつながる可能性があるように、初期充填圧力を増大させる、又は
前記低圧ラインと流体連通する冷媒のバッファ容積を提供することによる、
のうちの少なく1つによって、追加の冷媒が供給される、請求項1に記載の極低温冷凍システム。
【請求項3】
前記制御回路は、前記可変速圧縮機を制御して、前記高圧ライン及び前記低圧ラインの圧力を所定の限界値内に維持するようにさらに構成されている、請求項1又は2に記載の極低温冷凍システム。
【請求項4】
前記制御回路は、前記可変速圧縮機の検出された電力消費の低下に応答して、前記可変速圧縮機の前記動作周波数を増大させるように構成されている、請求項1から3のいずれかに記載の極低温冷凍システム。
【請求項5】
前記圧縮機の初期低減動作周波数は、前記冷凍ユニットの定常状態動作中の最大動作周波数の70%未満、好ましくは60%未満である、請求項1から4のいずれかに記載の極低温冷凍システム。
【請求項6】
前記定常状態動作中の前記最大動作周波数は50と70Hzとの間であり、クールダウン中の前記初期低減動作周波数はより低く、好ましくは30と50Hzとの間である、請求項1から5のいずれかに記載の極低温冷凍システム。
【請求項7】
前記冷媒は、ヘリウムを含む、請求項1から6のいずれかに記載の極低温冷凍システム。
【請求項8】
前記冷凍ユニットは、80K未満、好ましくは50K未満、より好ましくは10K未満、さらに好ましくは4K未満に冷却するように構成されている、請求項1から7のいずれかに記載の極低温冷凍システム。
【請求項9】
前記冷媒の初期圧力は、クールダウン中に前記可変速圧縮機の電力制御がない前記冷凍ユニットに関して既定された圧力よりも5%、好ましくは10%高い、請求項2に記載の又は請求項2に従属する場合の請求項3から8のいずれかに記載の極低温冷凍システム。
【請求項10】
前記冷凍システムは、冷媒の前記バッファ容積をさらに含み、前記バッファ容積は、前記冷凍システム内の冷媒の総量の20%を超える、好ましくは50%を超える、場合によっては90%を超える容積を含む、請求項2に記載の又は請求項2に従属する場合の請求項3から8のいずれかに記載の極低温冷凍システム。
【請求項11】
前記制御回路は、前記可変速圧縮機の電力消費を所定の低減された閾値未満に維持するために、前記可変速圧縮機をパワーセーブモードで制御するようにさらに構成されている、請求項1から10のいずれかに記載の極低温冷凍システム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の極低温冷凍システムを備える極低温ポンプ。
【請求項13】
膨張ユニットを含む冷凍機ユニットと、冷媒を圧縮するように構成された可変速圧縮機とを備え、より高圧の冷媒が前記冷凍機ユニットに供給され、より低圧の冷媒が前記冷凍機ユニットから受け取られるようになっている、極低温冷凍システムを動作させる方法であって、
前記冷凍ユニットの初期クールダウン中に、前記可変速圧縮機によって消費される電力を所定の閾値未満に維持するために、前記可変速圧縮機を初期低減動作周波数で動作させるステップと、
その後、前記可変速圧縮機の動作周波数を最大動作速度まで増大させるステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記方法は、
クールダウン中の最大動作周波数での前記可変速圧縮機の動作が、電力消費に関する前記所定の閾値を超えるように、前記極低温冷凍システム内の冷媒の充填圧力を増大させること、又は、
前記低圧ラインと流体連通する追加冷媒のバッファ容量を提供すること、
のうちの少なくとも1つによって、増大した冷媒量を前記冷凍システムに供給する初期ステップを含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、極低温冷凍システム、極低温ポンプ及び冷凍方法に関する。
【背景技術】
【0002】
極低温冷凍システムが知られている。このようなシステムは、ギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon)プロセスのような冷凍プロセスを使用し、一般に、蓄熱材及び膨張チャンバを収容する膨張型冷凍ユニットを備える。圧縮機は、冷媒ガスを圧縮し、圧縮された冷媒を冷凍ユニットに供給し、ここでは、冷媒は蓄熱材で冷却された後に膨張する。減圧された冷媒ガスは圧縮機に戻され、それによって冷凍サイクルが形成される。この冷凍サイクルを繰り返すことで、極低温を得ることができる。ヘリウムは、低温冷凍のための好ましい冷媒である。
【0003】
冷凍プロセスの有効性は、高圧冷媒と低圧冷媒との間の差圧及び冷媒の質量流量によって影響を受ける。しかしながら、これらの要因自体は、圧縮機の能力によって制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
改良された冷凍システムを提供することが望まれることになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様は、極低温冷凍システムを提供し、極低温冷凍システムは、膨張ユニットを含む冷凍機ユニットと;冷媒を圧縮するように構成された可変速圧縮機であって、可変速圧縮機は、低圧ラインを介して冷凍機ユニットから冷媒を受け取り、高圧ラインを介して冷凍機ユニットに圧縮された冷媒を供給するように構成されている、可変速圧縮機と;可変速圧縮機を制御して、可変速圧縮機の消費電力を所定の閾値未満に維持するように構成された制御回路と、を備え、制御回路は、クールダウン中に、可変速圧縮機を制御して、可変速圧縮機が、初期低減動作周波数で動作し、その後に、可変速圧縮機がより高い周波数で動作するように、動作周波数を増大させる。
【0006】
冷凍プロセスの有効性は、高圧ラインと低圧ラインとの間の差圧の増大、及び冷媒の質量流量の増大によって高くなる。これらの要因の増大は、システムの充填圧力を増大させること並びに圧縮機の速度を増大させることで達成できる。しかしながら、圧縮機の速度を増大させること及び冷媒の圧力を増大させることは、共に圧縮機の電力消費を増大させ、圧縮機の電力消費は、一般に、圧縮機が過熱して故障するのを回避するために制限される。
【0007】
本発明の発明者らは、圧縮機の消費電力が動作中に変化し、詳細には、クールダウン中に最も高くなり、定常動作中に低くなる可能性があることを認識している。詳細には、温度が低下すると、冷凍ユニット内に冷媒が蓄積し、冷媒の圧力が低下することになる。この圧力低下により、圧縮機は追加電力を必要とせず、より高い周波数で作動することができる。従って、これらは制御回路を設けて、最初にクールダウン中に低い速度で動作し、それによって圧縮機に供給される電力を制限し、その後、冷媒の圧力が低下すると圧縮機の動作周波数を増大させるように圧縮機を制御することで実現される。これにより、圧縮機は、クールダウン中の過熱から保護され、一方で、定常動作中に高い周波数で動作するように構成され、改善された性能をもたらすことができる。
【0008】
いくつかの実施形態において、極低温冷凍システムは、冷凍機ユニットのクールダウン中に可変速圧縮機を全速で動作させると、可変速圧縮機が所定の閾値を超える電力を消費することにつながる可能性があるように、初期充填圧力を増大させる、又は、低圧ラインと流体連通する冷媒のバッファ容積を提供することによる、のうちの少なく1つによって、追加の冷媒が供給される。
【0009】
ギフォード・マクマホンプロセスのような冷凍プロセスの冷凍又は冷却力は、作動流体又は冷媒の差圧によってもたらされる。高い圧力レベル(供給圧力)から低い圧力レベル(戻り圧力)への気体の膨張という熱力学的原理によれば、システムの冷却力は、これら2つの圧力間の差圧が高いほど大きくなる。さらに、システムを通る冷媒の質量流量が大きいほど、もたらされる冷却力が大きくなる。
【0010】
従って、圧縮機によってもたらされるこの圧力上昇は、可能な限り大きくなければならない。圧縮機の容量は、圧縮比及び最大許容消費電力によって制限され、これは多くの場合、圧縮機を駆動するモータの巻線に流れる最大許容電流に関連する。圧縮比は、第1にシステムの高圧容積と低圧容積との間の容積比に依存し、第2にシステムの充填圧力に依存し、もちろん第3に冷凍ユニットの冷媒需要と圧縮機のポンプ能力との間の均衡に依存する。
【0011】
冷媒の充填圧力を増大させることにより、冷凍装置の冷却能力を向上させることができる。充填圧力を増大させることにより、高圧及び低圧の両方が増大し、従って冷媒の再循環質量流量が増大することになる。しかしながら、これによって冷媒の圧縮に必要な電力需要も同様に増大することになる。圧縮機の動作速度を制御し、消費電力を制限する制御回路を設けることで、追加冷媒を有するシステムを設計することができる。
【0012】
要約すると、冷媒の追加量は、初期充填圧力を増大させ、実質的に冷凍システムを過剰充填することによって、及び/又は、低圧ラインと流体連通する追加のバッファ容積を提供し、それによって高圧容積と低圧容積との間の容積比を変更することによって提供することができる。システムの初期充填圧力は、一般に、圧縮機が全速力で動作する場合に、規定の電力消費値を超えて電力を消費せず、従って過熱又は遮断しないことになるように設定される。圧縮機が消費できる最大電力を設定する制御システムを有することで、圧縮機が過熱して停止するリスクなしに、冷媒の初期充填圧力を増大させることができる。しかしながら、圧縮機が高圧で効果的に動作できない場合があり、この場合、追加冷媒は、追加バッファ容積の形で供給することができ、それによって、初期充填圧力を増大させることなく、追加冷媒が存在する。
【0013】
追加の充填圧力は、システムが動作していない場合のシステム内の冷媒の圧力であることに留意されたい。この初期充填圧力は、特定の冷凍システム用に指定することができる。圧縮機の最大動作速度は、低温が維持され、冷凍システムがパワーセーブモードにない定常冷却動作段階における圧縮機の最大動作速度又は周波数とすることができる。
【0014】
いくつかの実施形態において、制御回路は、可変速圧縮機を制御して、高圧ライン及び低圧ラインの圧力を所定の限界値内に維持するようにさらに構成されている。
【0015】
圧縮機は、特定の圧力限界内で効果的に動作することができ、例えばスクロール圧縮機は、高圧及び低圧の限界値を規定する性能マップを有することができ、これらの限界値内での動作は許容可能である。これらの限界値は、ポンプの機構、すなわちハウジングの強度、及びスクロールユニットの熱力学的(熱平衡)限界に依存する。いくつかの実施形態では、電力消費を制限するために圧縮機の速度を制御するように構成された制御回路は、これらの予め定義された圧力限界値内で圧縮機の動作を維持するために速度を制御するために使用することができる。
【0016】
いくつかの実施形態において、冷凍システムは、高圧ラインと低圧ラインとの間の差圧を検知するための少なくとも1つの圧力センサをさらに備える。
【0017】
システムは、高圧ラインセンサ及び低圧ラインセンサを備えることができる、又は2つの圧力ライン間の差圧を測定するための差圧センサを備えることができる。これらの圧力センサからの信号は制御回路に送られる。
【0018】
いくつかの実施形態において、極低温冷凍システムは、高圧ライン上に入口弁をさらに備え、制御回路は、高圧ライン及び低圧ラインの圧力を所定の限界値内に維持するように入口弁を制御するようにさらに構成されている。
【0019】
いくつかの実施形態において、制御回路は、高圧ラインと低圧ラインとの間の差圧を所定の限界値内に維持するように構成されている。
【0020】
いくつかの実施形態において、制御回路は、より高い圧力値とより低い圧力値を所定の限界値内に維持するために、圧縮機の速度及び入口弁の動作の両方を制御することができる。
【0021】
電力を所定の閾値以下に維持することに加えて、定常動作中の動作を制御するために、制御回路は、高圧ラインと低圧ラインとの間の所望の差圧を維持し、効果的な冷却を保証するように、冷凍ユニットへの入口弁を制御することもできる。
【0022】
いくつかの実施形態では、制御回路は、可変速圧縮機の検出された電力消費の低下に応答して、可変速圧縮機の動作周波数を増大させるように構成されている。
【0023】
クールダウンの間、システム内の冷媒圧力に影響を及ぼす3つの作用がある。圧縮機が作動温度(一般的に約60℃)まで暖まることによる圧力上昇がある。また、ヘリウム温度を20℃から50℃に上昇させる冷凍ユニットの熱負荷により、低圧容積の冷媒が暖まることによる圧力上昇もある。しかしながら、冷媒がシステム内に蓄積されることによって、システム内の圧力が低下することもある。この第3の作用は、最初の2つの作用よりも大きいため、システムが冷えるにつれてシステム内の冷媒圧力が低下し、これは特に低温で顕著になる。従って、クールダウン中の圧縮機は一般的に圧力が低下し、圧縮機の消費電力も低下する。一部の例では、制御回路は、圧縮機の消費電力を閾値の近く、場合によっては閾値の10%以内に維持するために、この電力の低下を検出することに応答して、圧縮機の動作周波数を増大させる。
【0024】
いくつかの実施形態では、定常動作中の最大動作周波数は50と70Hzとの間であり、クールダウン中の初期動作周波数は低く、30と50Hzとの間である。
【0025】
初期動作周波数は、実質的に定常動作周波数未満とすることができ、場合によっては、最大動作周波数(いくつかの実施形態では60Hz)に達するまで増大する35Hzとすることができる。これは、可変速圧縮機が定常状態で動作する動作周波数である。いくつかの実施形態では、定常動作は、最大動作周波数よりわずかに低い場合がある。
【0026】
いくつかの実施形態において、冷媒はヘリウムを含む。
いくつかの実施形態において、冷凍ユニットは、80Kまで、好ましくは50Kまで、より好ましくは10K未満まで、さらに好ましくは4Kまで冷却するように構成されている。
【0027】
冷凍ユニットは、80Kまで冷却可能な低温冷凍ユニットとすることができ、いくつかの実施形態では、4Kまで冷却する特に低温の冷凍ユニットとすることができる。冷凍ユニット内の冷媒の蓄積及び対応する冷凍システム内の圧力の低下の効果は、冷凍ユニットが非常に低い温度で動作する場合に特に顕著である。従って、実施形態は、このような冷凍システムに特に有効である。
【0028】
いくつかの実施形態では、冷媒の初期圧力は、クールダウン中に可変速圧縮機の電力制御がない冷凍ユニットに対して規定された圧力よりも5%、好ましくは10%高い。
【0029】
クールダウン中に圧縮機の電力制御がない場合、一般的に圧縮機は一定速度で駆動され、冷媒の速度/圧力は、ピーク電力消費があるクールダウン中に圧縮機が過熱しないように設定される。クールダウン中の電力制御がある場合、クールダウン中の電力消費が制御され、もはや制限要因ではなくなるため、冷媒圧力は増大させることができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、冷凍システムは、冷媒のバッファ容積をさらに備え、バッファ容積は、冷凍システム内の冷媒の総量の20%を超える、好ましくは50%を超える、場合によっては90%を超える容積を含む。
【0031】
冷凍システムは、場合によっては20体積%又は質量%の冷媒を追加的に含み、他の場合には50体積%又は90体積%を超える冷媒を追加的に含むことができる。冷凍システムは、所定量の冷媒で動作するように構成することができ、始動時から可変速圧縮機の最大動作速度で動作する場合、圧縮機によって消費される電力閾値は超えないようなっている。これは、冷凍システムのための冷媒の標準量であり、圧縮機の電力制御を提供する実施形態は、初期充填圧力を増大させること、及び/又は、低圧ラインに関連するバッファ容積で供給することのいずれかによって、追加量の冷媒を提供することができ、バッファ容積は、高圧容積と低圧容積との間の容積比を変更する。
【0032】
冷凍システムは、13-17バールの初期充填圧力の冷媒で動作するように規定することができる。この範囲の下限に規定されている場合、冷媒を過剰に充填し、システム内の充填圧力を増大させることで、圧力を増大させることができる。これは、圧縮機の電力供給が閾値未満に維持されるように制御されるため、実施形態による冷凍システムでは許容される。システムがこの範囲の上限で冷媒を供給される場合、圧縮機は、規定された圧力より高い圧力で動作するように構成されない場合があり、そのような場合、高圧と低圧の容積比を変化させる低圧ライン内のバッファ容積を使用して、追加の冷媒を供給することができる。場合によっては、冷媒の圧力を増大させること及びバッファ容積を追加することを組み合わせことができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、制御回路は、可変速圧縮機の電力消費を所定の低減された閾値未満に維持するために、可変速圧縮機をパワーセーブモードで制御するようにさらに構成されている。
【0034】
また、制御回路は、定常動作中に冷凍システムの負荷が減少しているとの判定に応答して、圧縮機の電力の低減された閾値を設定するパワーセーブモードを動作させるように構成することができる。冷却に使用される制御回路と同じ制御回路が、この負荷低減、すなわちパワーセーブモードでの電力消費を制御することができる。
【0035】
第2の態様は、第1の態様による極低温冷凍システムを含むクライオポンプを提供する。
【0036】
第3の態様は、膨張ユニットを含む冷凍機ユニットと、冷媒を圧縮するように構成された可変速圧縮機とを備え、より高圧の冷媒が冷凍機ユニットに供給され、より低圧の冷媒が冷凍機ユニットから受け取られるようになっている、極低温冷凍システムを動作させる方法を提供し、本方法は、冷凍機ユニットの初期クールダウン中に、可変速圧縮機によって消費される電力を所定の閾値未満に維持するために、可変速圧縮機を初期低減周波数で動作させるステップと、その後、可変速圧縮機の動作周波数を最大動作速度まで増大させるステップと含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、本方法は、クールダウン中の最大動作周波数での可変速圧縮機の動作が、消費電力に関する所定の閾値を超えるように、システム内の冷媒の充填圧力を増大させること、又は、低圧ラインと流体連通する追加の冷媒のバッファ容積を提供すること、のうちの少なくとも1つによって、増大した冷媒量を冷凍システムに提供する初期ステップをさらに含む。
【0038】
システムの効率は、一般に、圧縮機の回転数が低いほど向上するため、冷媒を冷凍システムに過剰に充填することにより、クールダウン中に、低回転数で効率的に動作できることに留意されたい。冷凍ユニット又はコールドヘッド内の冷媒の蓄積により、低温で冷媒の圧力が低下すると、圧縮機の回転数を増大させることができ、冷却効率を維持することができる。
【0039】
さらなる特定の好ましい態様は、独立請求項及び従属請求項に記載されている。従属請求項の特徴は、適宜、独立請求項の特徴と組み合わせることができ、請求項に明示的に規定されている以外の組み合わせで組み合わせることができる。
【0040】
装置の特徴が、ある機能を提供するために動作可能であると説明される場合、これは、その機能を提供する又はその機能を提供するように適合又は構成される装置の特徴を含むことを理解されたい。
本発明の実施形態は、以下に添付の図面を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】第1の実施形態による極低温冷凍システムを示す。
【
図2】従来の極低温冷凍システムと一実施形態による極低温冷凍システムとの違いを示す。
【
図3】さらなる実施形態による極低温冷凍システムを示す。
【
図4】一実施形態による方法におけるステップを示す流れ図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
実施形態について詳細に説明する前に、最初に概要を提示する。
実施形態は、極低温冷却装置を提供する。実施形態は、超伝導マグネット/コイルのための極低温冷却システムに使用することができる。これらは、極低温凝縮器システム、及び、ガスの再昇華、凝結、固化又は堆積のための極低温ポンプシステムに使用できる。
【0043】
このような極低温装置は、最初はクールダウンモードで動作し、その後、定常状態冷凍モードで動作する。冷凍ユニットが冷たくなるクールダウンプロセス中に、コールドヘッドピストンシステム内のような、冷凍ユニットの冷却部の内部の冷媒が著しく蓄積する。その結果、冷凍システム内の高圧及び低圧が低下することになる。この冷媒の減少は、圧縮機の電力消費の減少につながる。従って、冷却された温度での定常状態における調整なしでは、圧縮機は冷媒量が減少した状態で動作することになる。
【0044】
しかしながら、定常状態で冷媒ユニットに蓄積された冷媒を補うためにシステム内の冷媒量を増やすと、最初のクールダウン中に圧縮機が過負荷になる危険がある。クールダウン中に、システム内の圧力が最も高くなる比較的短い期間があり、この期間に圧縮機が熱的過負荷になる危険がある。
【0045】
実施形態は、これらの競合する問題に対処し、圧縮機モータの巻線電流及び電力を制御する制御モードを使用することにより、定常状態動作における冷却能力の向上並びに冷凍機のクールダウンプロセスの改善を達成しようとするものである。閾値電力が設定され、モータは、消費電力がこの閾値電力未満となるような周波数で回転するように制御される。
【0046】
この制御機構は、初期のクールダウンと、圧縮機の暖機動作中の再始動、コールドヘッドのクールダウンのミスマッチ、暖機システムの再始動、非定常状態での再始動の場合のシステムの始動の両方をサポートすることができる。
【0047】
この制御機構を有することで、システムに冷媒を追加することができる。これは、システムの充填圧力を増大させることによって行うことができる。圧縮機に接続された冷凍ユニット又はコールドヘッド内の冷媒の圧力は、初期充填によって一定にされる。極低温システム(cryosystem)の始動時(コールドヘッド冷媒弁の駆動部のスイッチオン、その後の圧縮機のスイッチオン)、コールドヘッドは通常20から60分以内に冷却される。このクールダウンプロセスは、システムの冷媒圧力に影響を与える3つの要因、すなわち
1)スクロール容積及びオイルプリセパレータ容積で構成される圧縮機容積の動作温度60℃までの昇温による圧力上昇、
2)コールドヘッドの熱負荷(冷媒温度20℃から50℃への上昇)による冷媒低圧体積流の昇温による圧力上昇、
3)コールドヘッドの低温端の冷媒蓄積によるシステムの圧力低下、
に影響される。
【0048】
影響3)は、影響1)及び2)よりも顕著に大きく、特に低温用途ではシステム全体におけるより低い「等価」冷媒システム圧力を引き起こす。その結果、高圧及び低圧の両方が低下し、コールドヘッドの性能が制限され、さらに、吸入圧力が低すぎるため、圧縮機は冷媒質量流の全潜在能力を得ることができない。
【0049】
再循環冷媒質量流を増大させ、差圧を増大させるようにシステムを調整するために、圧縮機の速度は、増大させることができる(例えば、50Hzから70Hzへ)。圧縮機の効率は、速度が高いほど低くなることが分かっている。その理由は、圧縮機の速度が高くなることでエネルギーの散逸が増大し、配管及び圧縮機ハウジング内のガス流速が上昇することになり、ガスの圧力損失につながり吸入圧力の低下を引き起こすからである。従って、所定の差圧を目標に圧縮機を最大可能速度で動作させるのは最適ではない場合がある。その代わりに、ことによると充填圧力を高めることによって冷媒量を増やすと、性能向上及び効率向上の両方を可能にすることができる。
【0050】
従来のシステムでは、過充填は不可能であり、その理由は、スクロールポンプとすることができる圧縮機では、(より高密度の冷媒を送り出すために)より大きなモータ電流が必要となり、巻線の過熱につながるからである(これはモータ保護スイッチによる遮断につながる場合がある)。
【0051】
圧縮機の温度スイッチオフの問題は、実施形態では、高すぎる巻線温度につながり得ないモータ巻線の最大許容電流に調整することができる、圧縮機の電力制御によって対処されている。電力制御は、圧縮機駆動部(モータ)の周波数に影響を与えることになる。つまり、実質的に一定レベルの電力消費は、最初に圧縮機モータの定格速度を下回る圧縮機モータ速度をもたらすことになるが、この影響は、いくつかの実施形態では、冷媒充填圧力を増大させることによって補償される。この特徴は、温度スイッチオフ又は過負荷の危険なしに、システムの規定された冷媒圧力過充填を可能にする。このような電力制御により、クールダウンプロセスは、必要な差圧並びにコールドヘッドの動作に必要な冷媒流量を供給する中速又は低速の圧縮機速度で開始されることになる。
【0052】
追加的に及び/又は代替的に、低圧ラインに関連する冷媒の所定のバッファ容積を提供することによって、この影響を補償することができる。この点に関して、充填圧力及び質量流量は、停止したシステムの実際の充填圧力によって影響されるだけでなく、恒久的な低圧容積の過剰を生じさせることによっても同様に影響される可能性があり、これによって、冷媒の質量がより小さい高圧容積に移動し、その結果、運転動作中の全システム圧力が上昇する。この選択肢は、圧縮機構成要素の低圧強度制限に対処するために必要な場合がある。
【0053】
要約すると、ヘリウムのような追加の冷媒が使用される場合、高圧(供給側)と低圧(戻り側)との間の差圧の減少は、いずれもヘリウム流量の増大をもたらす、システムが最初に充填されるときに高いヘリウム圧力を提供することによって、及び/又は低圧ラインに接続されたヘリウムのバッファ容積を提供することによって、コールドヘッドの性能に関して補償される。
【0054】
図1は、一実施形態による極低温システムを示す。極低温冷凍システムは、冷凍システム内の冷媒を圧縮する圧縮機30を駆動するモータ20を制御するように構成された制御回路10を備える。また、制御回路10は、冷凍ユニット又はコールドヘッド40への高圧冷媒の供給を制御する入口弁(図示せず)を駆動するモータ70を制御する。本実施形態では、コールドヘッドの低温部50に関連する温度センサ60が存在する。
【0055】
制御回路10は、圧縮機に供給される電力及び/又は電流の最大値を設定するための閾値を記憶するデータ記憶部を備える。
【0056】
本実施形態において、冷凍ユニット40は、ギフォード・マクマホン型冷凍機ユニット(以下、このギフォード・マクマホン型ピストンシステムを「コールドヘッド」と称する)を備え、圧縮機30は、極低温剤又は冷媒として加圧ヘリウムを供給する。このシステムは、密閉された冷媒サイクルを持つ密閉システムである。極低温システムの性能を向上させるため、制御システム10が設けられており、これにより、圧縮機モータ20に供給される可変周波数駆動出力電流及び/又は電力の測定及び調節が可能になる。
【0057】
圧縮機30の消費電力を閾値未満に維持することにより、クールダウンプロセス中に最大速度で作動する圧縮機によって消費される電力によってもはや制限されないので、冷媒の高い初期充填圧力で冷凍システムを設定することができる。
【0058】
この実施形態では、圧縮機モータ20は、可変周波数駆動装置(VFD)25に直接接続され圧縮機に動力を供給し、制御回路10によって制御される。この電流及び/又は電力制御は、VFDの出力周波数、従って圧縮機モータの回転速度に影響を与えることになる。この制御回路10は、温度スイッチオフの危険なしに、圧縮機の回転速度をモータ20の巻線の最大許容電気負荷に近づけるように調整しようとする。
【0059】
システムは以下のように動作する。
(始動手順)
1)コールドヘッド40及び圧縮機30をスイッチオンにする。
2)VFD25は、巻線電流及び/又は電力の閾値に達するまで、圧縮機モータ20に供給される電力の出力周波数を上昇させ、このような方法で、制御回路10はVFD25の出力周波数を制限する。
3)圧縮機コールドヘッドシステムのヒートアップ中、最も危険な負荷状況は、圧縮機30の回転数を制限し、より低い巻線電流及び/又は電力をもたらすことになるVFD25の制御により、制限された周波数で通過させる。
4)コールドヘッド40のクールダウンが進むと、コールドヘッド40内にヘリウムがどんどん蓄積されることになる。これは、システム圧力の低下をもたらすことになる。VFD25は、モータに供給される電流及び/又は電力の出力周波数までの制御された上昇をもたらすことになる。
5)定常動作が達成される。電流及び/又は電力制御は、VFDの最大可能周波数をモータ20に解放するようVFDに通知する。この時点で、システムの制御は、ステッピングモータ70による入口弁の制御に移行することができ、これは、供給圧力ラインと戻り圧力ラインとの間の所望の差圧をもたらすように制御することができる。
【0060】
意外にも、定常状態でコールドヘッドの冷却力を最大にするためには、圧縮機を可能な限り高い回転数で運転する必要はないことが分かった。むしろ、VFDの出力周波数を、全巻線電流/電力を維持しながら、グリッド周波数と比較して制限するシステム構成を使用することで、定常動作における冷却出力の増大を測定することができる。再循環ヘリウムの質量流量と、システム内の供給圧力と戻り圧力の間の差圧との間に、好ましい動作点が見つかった。この点で、消費電力は、圧縮機の周波数/速度、並びに吸入圧力と高圧に依存する。システム内の圧力と圧縮機の速度に基づく制御を組み合わせることで、好ましい運転点を見つけることができる。その理由は、圧縮機のより高い速度において、即座に性能損失を引き起こすことになるシステム内のエネルギー散逸が増大するからであろう。従って、特定の閾値電力とシステム内の可能な最大差圧で許容される、可能な最大速度で圧縮機を動作させることは望ましくない場合があり、適切な測定と制御により、より低い周波数の好ましい動作点を見つけることができる。
【0061】
いくつかの実施形態において、この電流/電力制御システム10は、部分負荷条件下での定常状態における極低温システムのエネルギー需要を制限するために使用することができる。この場合、より低い巻線電流/電力に対応する追加の設定点又は閾値を使用することができる。このようにして、同じ制御回路を使用してエネルギーセーブモードをサポートすることができる。
【0062】
図2は、従来の冷凍システムと比較した実施形態の動作を示す。左側のグラフは従来のシステムの動作を示し、右側のグラフは一実施形態による冷凍システムの動作を示す。
【0063】
左上のグラフは、従来のシステムの圧力が、スイッチをオンする前の初期状態では低く、スイッチをオンにした後では、高圧ラインと低圧ラインの両方が、温度が低下して冷媒がシステムの最も冷たい部分に蓄積するにつれて、徐々に低下する圧力を有することを示している。一実施形態によるシステムでは、システムが「過充填」されるため、初期の冷媒圧力はより高い。圧縮機の速度はスイッチオンの時点に制限されるため、高圧ライン及び低圧ラインは、定常状態に達するのに時間がかかる。一旦到達した圧力は維持され、初期過充填に起因して、従来システムの高圧よりも高圧になる。
【0064】
2番目のセットのグラフは、従来の冷凍システムにおいて、コールドヘッドの最も冷たい部分に冷媒が蓄積することに起因してシステム内の圧力が低下するにつれて、始動後の圧縮機電力が経時的に減少することを示している。右側のグラフは、クールダウンの初期に圧縮機に供給される電力がどのように減少するかを示しており、これはより低い圧縮機速度に対応する。電力は徐々に増大し、システムが定常状態に達すると維持できる最大電力に達する。圧縮機が安全に対処できるこの最大電力は、いずれの実施形態でも8.3KWであるが、一実施形態におけるクールダウン中の圧縮機の制御により、この高い電力は、クールダウン中に圧縮機に過負荷をかけることなく定常状態で圧縮機に印加することができる。
【0065】
第3のペアのグラフは、圧縮機の動作周波数が従来の冷凍システムと一実施形態の冷凍システムでどのように変化するかを示している。一実施形態の冷凍システムは、初期に低い圧縮機の動作周波数を有し、これは、クールダウンが終了すると、最大速度又はほぼ最大速度まで増大する。先行技術の圧縮機は単一の速度を有する。
【0066】
最後の2つのグラフは、一実施形態が、システムを過充填するか又は追加の容積を提供することによって提供することができる冷媒の質量流量の増加により、どのように改善されたコールドヘッド出力を提供するかを示している。
【0067】
図3は、冷凍ユニット40から圧縮機30に冷媒を戻す低圧ライン62に接続された低圧バッファ容積80を有する冷凍システムの代替的な実施形態を示す。低圧ライン62の圧力を検知するための圧力センサ65と、高圧ライン64の圧力を検知するための追加の圧力センサ67がある。いくつかの実施形態では、高圧センサ及び低圧センサの代わりに差圧センサを使用することができる。
【0068】
動作時、制御回路10は、電力閾値に依存して圧縮機を駆動するモータの回転周波数を制御することによって圧縮機速度を制御すると共に、高圧冷媒ライン64から冷凍ユニット又はコールドヘッド40に高圧冷媒を供給するための入口弁の回転周波数を制御する。
【0069】
冷凍システムの動作は、冷媒の圧力が高い間、最初は低い周波数で駆動される圧縮機で開始され、動作周波数は、制御回路10によって制御される圧縮機モータの閾値電力制限によって設定される。冷媒が冷凍ユニット40の低温部に蓄積されることにより冷媒圧力が低下すると、圧縮機によって使用される電力も低下し、制御回路は、これを検出して周波数及び回転速度を増大させ、これはモータ巻線電流及び電力消費量の増大を引き起こし、電力消費量は、閾値レベルの近くに維持され、一部の実施形態では閾値レベルの2%以内、他の実施形態では5%以内、さらに他の実施形態では10%以内に維持される。このようにして、冷媒の圧力が低下すると、モータの速度は上昇するが、モータによって消費される電力は閾値未満であるが閾値の近くに維持される。システムが定常状態に達すると、圧縮機はその最大周波数で、又はそれに近い周波数で動作し、冷凍システムは、コールドヘッド40の入口弁を制御する制御回路10によって制御することができる。入口弁の制御は、この場合も同様に冷凍システムの冷却に影響を与える冷凍システムの差圧を制御する。これに関して、圧縮機は、特定の高圧及び低圧限界内で効果的に動作することができ、これは、スクロール圧縮機の場合、圧縮機が効果的に動作することができる高圧及び低圧ラインの限界値を設定するスクロール性能マップで規定することができる。いくつかの実施形態では、制御ユニット10は、最大消費電力を超えないことを保証するだけでなく、スクロール性能マップの高圧及び低圧限界を超えないことを保証するために、圧縮機の動作速度を制御するために使用することができる。従って、制御ユニット10は、圧力センサ65及び67から信号を受け取り、高圧ライン及び/又は低圧ラインの圧力がいずれかの限界値に向かっていることを示すことに応答して、制御ユニットは、圧力をこれらの限界値から遠ざけるように圧縮機の動作速度を修正することができる。いくつかの実施形態では、制御ユニット10は、圧縮機の動作を所望の圧力限界内に維持するために、入口弁及び圧縮機の速度の一方又は両方を制御することができる。
【0070】
この実施形態では、低圧バッファ容積80が存在し、これは、スクロール圧縮機30が効果的に動作できる圧力を超えてシステム内の圧力を上昇させることなく、システムに追加の冷媒を供給することを可能にする。このようにして、この実施形態は、高圧と低圧との間の容積比を調整し、充填圧力を増大させることなくシステム内の冷媒量を増大させる。これは、冷媒の充填圧力を増大させることに代わる選択肢である(しかし、この選択肢と併用することができる)。
【0071】
冷媒量を増加させるための両方の選択肢、すなわち、充填圧力を増大させる選択肢及び追加のバッファ容積を提供する選択肢は、冷凍ユニットの動作条件を調整してシステムの冷却能力及び/又は効率を高めるために使用することができる。冷却能力を高めるための技術的限界は、圧縮機モータの巻線に高電流が流れることになる圧縮機の電力消費である。これが高くなりすぎると、温度保護スイッチ(サーキットブレーカー)が作動し、圧縮機モータが停止することになる。システムの安全かつ安定した動作のために、これは回避する必要がある。
【0072】
図4は、一実施形態による方法のステップを示すフロー図である。
始動は、初期始動又は冷凍サイクルの中断後の始動とすることができるステップS0で起こる。ステップS10において、圧縮機モータは、第1の初期低減動作周波数で動作するように電力が供給される。モータによって消費される電力は、継続的に評価することができ、これはステップD5及びD15で示され、それが一定量ΔPを超えて閾値Ptを下回っている場合、ステップS20でモータの回転周波数が増大される。閾値Ptを超える場合、ステップS30で回転数が減少される。必要な範囲内であれば、回転速度は変更されない。ステップS20で回転周波数がほぼ最大回転周数又はその近くまで増大した後、ステップD25において冷却プロセスが完了したか否かが判定され、完了すると定常運転が開始される。
【0073】
本発明の例示的な実施形態は、添付の図面を参照して本明細書に詳細に開示されているが、本発明は、正確な実施形態に限定されず、添付の請求項及びその均等物によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって様々な変更及び修正がそこで行なわれ得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0074】
10 制御回路
20 圧縮機モータ
25 可変周波数駆動装置
30 圧縮機
40 冷凍ユニット又はコールドヘッド
50 コールドヘッドの低温点
62 低圧ライン
64 高圧ライン
65、67 圧力センサ
80 バッファ容積
【国際調査報告】