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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】位相シフター及びアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/18 20060101AFI20240110BHJP
   H01P 5/107 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01P1/18
H01P5/107 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564626
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(85)【翻訳文提出日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 CN2021070799
(87)【国際公開番号】W WO2022147747
(87)【国際公開日】2022-07-14
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】王 熙元
(72)【発明者】
【氏名】曲 峰
(57)【要約】
本公開は位相シフター及びアンテナを提供し、通信技術分野に属する。本公開の位相シフターは、対向して配置された第1の基板及び第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間に配置された第1の誘電体層とを備え、前記第1の基板が、第1の基材と、第1の基材の前記第1の誘電体層側に設けられた伝送線路とを有し、前記第2の基板が、第2の基材と、第2の基材の前記第1の誘電体層側に設けられた基準電極とを有し、かつ、前記基準電極と前記伝送線路の、前記第1の基材上での正射影が少なくとも一部重なる位相シフターであって、前記基準電極に第1の開口が設けられ、前記第1の開口の第1の方向における長さは、前記伝送線路の線幅以上である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された第1の基板及び第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間に配置された第1の誘電体層とを備える位相シフターにおいて、前記第1の基板が、第1の基材と、第1の基材の前記第1の誘電体層側に設けられた伝送線路とを有し、前記第2の基板が、第2の基材と、第2の基材の前記第1の誘電体層側に設けられた基準電極とを有し、かつ、前記基準電極と前記伝送線路の、前記第1の基材上での正射影が少なくとも一部重なる位相シフターであって、
前記基準電極に第1の開口が設けられ、前記第1の開口の第1の方向における長さは、前記伝送線路の線幅以上である、
位相シフター。
【請求項2】
前記伝送線路は、第1の伝送端、第2の伝送端、及び伝送本体部を備え、前記第1の伝送端及び前記第2の伝送端はいずれも対向して配置された第1の端点及び第2の端点を有し、前記第1の伝送端の第1の端点及び前記第2の伝送端の第1の端点はそれぞれ前記伝送本体部の2つの対向端に接続され、かつ、前記第1の伝送端の第1の端点からその第2の端点に向かう方向と、前記第2の伝送端の第1の端点からその第2の端点に向かう方向とが同じである、
請求項1に記載の位相シフター。
【請求項3】
前記第2の伝送端の前記第1の基材上での正投影の延伸方向は、前記第1の開口の前記第1の基材上での正投影の中心を貫通する、
請求項2に記載の位相シフター。
【請求項4】
前記伝送本体部は、前記第1の伝送端と前記第2の伝送端に電気的に接続された少なくとも一本の蛇行線を備え、
前記少なくとも一本の蛇行線の前記第1の基材上での正投影は、前記第1の伝送端の前記第1の基材上での正投影の延伸方向と交差する部分を有する、
請求項2に記載の位相シフター。
【請求項5】
前記蛇行線は複数本であり、複数本の前記蛇行線のうち少なくとも一部の形状が異なる、
請求項4に記載の位相シフター。
【請求項6】
前記第1の開口の前記第1の基材上での正投影と、前記少なくとも一本の蛇行線の前記第1の基材上での正投影が重ならない、
請求項4に記載の位相シフター。
【請求項7】
前記第1の開口の前記第1の方向における長さと前記第1の開口の第2の方向における長さとの比が1.7:1~2.3:1であり、
前記第1の方向は前記第2の方向とは垂直に設けられる、
請求項1に記載の位相シフター。
【請求項8】
前記基準電極に第2の開口がさらに設けられ、前記第2の開口の前記第1の方向における長さは前記伝送線路の線幅以上であり、
前記第2の開口の前記第1の基材上での正投影と、前記第1の開口の前記第1の基材上での正投影が重ならない、
請求項1に記載の位相シフター。
【請求項9】
前記第1の伝送端の前記第1の基材上での正投影と、前記第2の開口の前記第1の基材上での正投影が少なくとも一部重なり、
前記第1の伝送端の前記第1の基材上での正投影の延伸方向は、前記第2の開口の前記第1の基材上での正投影の中心を貫通する、
請求項8に記載の位相シフター。
【請求項10】
前記第2の開口の前記第1の方向における長さは、前記第1の開口の第1の方向における長さと同じであり、前記第2の開口の前記第2の方向における長さは、前記第1の開口の第2の方向における長さと同じである、
請求項9に記載の位相シフター。
【請求項11】
前記第2の開口の前記第1の基材上での正投影と、前記伝送線路の伝送本体部の前記第1の基材上での正投影が重ならない、
請求項10に記載の位相シフター。
【請求項12】
前記位相シフターは第1の導波路構造と第2の導波路構造をさらに備え、前記第1の導波路構造は、前記第2の開口を介して前記伝送線路の第1の伝送端と結合という方式を用いてマイクロ波信号を伝送するように構成され、前記第2の導波路構造は、前記第1の開口部を介して前記伝送線路の第2の伝送端と結合という方式を用いてマイクロ波信号を伝送するように構成される、
請求項11に記載の位相シフター。
【請求項13】
前記第1の導波路構造の第1のポートは、前記第1の基材において前記第1の誘電体層と反対側に設けられ、前記第2の導波路構造の第1のポートは、前記第2の基材において前記第1の誘電体層と反対側に設けられ、
前記第1の伝送端の前記第1の基材上での正投影の延伸方向は、前記第1の導波路構造の第1のポートの前記第1の基材上での正投影の中心を貫通する、及び/又は、
前記第2の伝送端の前記第2の基材上での正投影の延伸方向は、前記第2の導波路構造の第1のポートの前記第2の基材上での正投影の中心を貫通する、
請求項12に記載の位相シフター。
【請求項14】
前記第1の伝送端の前記第1の基材上での正投影と前記第1の導波路構造の第1のポートの前記第1の基材上での正投影の中心の間の距離は、予め設定された値よりも小さい、及び/又は、
前記第2の伝送端の前記第2の基材上での正投影と前記第2の導波路構造の第1のポートの前記第2の基材上での正投影の中心の間の距離は、予め設定された値よりも小さい、
請求項13に記載の位相シフター。
【請求項15】
前記第1の導波路構造は矩形導波路構造を含み、その横断面アスペクト比は1.7~2.3:1である、及び/又は、
前記第2の導波路構造は矩形導波路構造を含み、その横断面アスペクト比は1.7:1~2.3:1である、
請求項12~14のいずれか一項に記載の位相シフター。
【請求項16】
前記第1の導波路構造の第1のポートの前記第1の基材上での正投影と前記第1の開口の前記第1の基材上での正投影が完全に重なり、
前記第2の導波路構造の第1のポートの前記第2の基材上での正投影と前記第2の開口の前記第2の基材上での正投影が完全に重なる、
請求項12~14のいずれか一項に記載の位相シフター。
【請求項17】
前記位相シフターは、マイクロ波伝送領域と、前記マイクロ波伝送領域を囲む周辺領域とを備え、前記第2の基板は、第2の基材上に設けられた分離構造をさらに備え、前記分離構造は周辺領域に位置し、前記マイクロ波伝送領域を囲む、
請求項1~11のいずれか一項に記載の位相シフター。
【請求項18】
前記分離構造は、前記基準電極の前記第2の基材側に位置し、前記基準電極は前記周辺領域まで延伸して前記分離構造とオーバーラップする、
請求項17に記載の位相シフター。
【請求項19】
前記基準電極は溝を備え、前記溝は前記周辺領域に位置し、前記分離構造と前記溝の、前記第2基材上での正投影には重なりがある、
請求項18に記載の位相シフター。
【請求項20】
前記伝送線路上に法線を有し、法線と前記伝送線路の他の部分には交わる点があり、当該点の、その法線と前記伝送線路の他の部分の交点のうちの最も近いものまでの距離が100μm~2mmである、
請求項1~11のいずれか一項に記載の位相シフター。
【請求項21】
前記第1の導波路構造の中空チャンバの内壁及び/又は前記第2の導波路構造の中空チャンバの内壁に保護層が形成される、
請求項16に記載の位相シフター。
【請求項22】
前記第1の導波路構造の中空チャンバ及び/又は前記第2の導波路構造の中空チャンバ内に充填媒体を有し、前記充填媒体はポリテトラフルオロエチレンを含む、
請求項21に記載の位相シフター。
【請求項23】
第1の誘電体層の材料は液晶を含む、
請求項1~11のいずれか一項に記載の位相シフター。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載の位相シフターを備える、
アンテナ。
【請求項25】
前記アンテナは、第2の基材において第1の誘電体層と反対側に設けられたパッチ電極をさらに含み、前記パッチ電極と、前記第1の開口の前記第2の基材上での正投影には重なりがある、
請求項24に記載のアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本公開は通信技術分野に属し、具体的に位相シフター及びアンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
位相シフターは、電磁波信号の位相を変化させるためのものである。理想的な位相シフターは、振幅バランスをとるために、挿入損失が小さく、かつ、異なる位相状態においてほぼ同一の損失を有する。位相シフターには、電気制御、光制御、マグネトロン、機械制御などいくつかのタイプがある。位相シフターの基本機能は、バイアス電圧を制御することによりマイクロ波信号の伝送位相を変化させることである。位相シフターはデジタル式とアナログ式に分けられ、フェーズドアレイアンテナの重要な構成要素であって、アンテナアレイの各回路の信号の位相を制御して、放射ビームが電気的に走査するようにでき、位相変調器としてデジタル通信システムに多く使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本公開は、従来技術に存在する技術課題のうちの少なくとも1つを解決することを目的とし、位相シフター及びアンテナを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様において、本公開は、対向して配置された第1の基板及び第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間に配置された第1の誘電体層とを備える位相シフターにおいて、前記第1の基板が、第1の基材と、第1の基材の前記第1の誘電体層側に設けられた伝送線路とを有し、前記第2の基板が、第2の基材と、第2の基材の前記第1の誘電体層側に設けられた基準電極とを有し、かつ、前記基準電極と前記伝送線路の、前記第1の基材上での正射影が少なくとも一部重なる位相シフターであって、
前記基準電極に第1の開口が設けられ、前記第1の開口の第1の方向における長さは、前記伝送線路の線幅以上である、位相シフターを提供する。
【0005】
ここで、前記伝送線路は、第1の伝送端、第2の伝送端、及び伝送本体部を備え、前記第1の伝送端及び前記第2の伝送端はいずれも対向して配置された第1の端点及び第2の端点を有し、前記第1の伝送端の第1の端点及び前記第2の伝送端の第1の端点はそれぞれ前記伝送本体部の2つの対向端に接続され、かつ、前記第1の伝送端の第1の端点からその第2の端点に向かう方向と、前記第2の伝送端の第1の端点からその第2の端点に向かう方向とが同じである。
【0006】
ここで、前記第2の伝送端の前記第1の基材上での正投影の延伸方向は、前記第1の開口の前記第1の基材上での正投影の中心を貫通する。
【0007】
ここで、前記伝送本体部は、前記第1の伝送端と前記第2の伝送端に電気的に接続された少なくとも一本の蛇行線を備え、
前記少なくとも一本の蛇行線の前記第1の基材上での正投影は、前記第1の伝送端の前記第1の基材上での正投影の延伸方向と交差する部分を有する。
【0008】
ここで、前記蛇行線は複数本であり、複数本の前記蛇行線のうち少なくとも一部の形状が異なる。
【0009】
ここで、前記第1の開口の前記第1の基材上での正投影と、前記少なくとも一本の蛇行線の前記第1の基材上での正投影が重ならない。
【0010】
ここで、前記第1の開口の前記第1の方向における長さと前記第1の開口の第2の方向における長さとの比が1.7:1~2.3:1であり、
前記第1の方向は前記第2の方向とは垂直に設けられる。
【0011】
ここで、前記基準電極に第2の開口がさらに設けられ、前記第2の開口の前記第1の方向における長さは前記伝送線路の線幅以上であり、
前記第2の開口の前記第1の基材上での正投影と、前記第1の開口の前記第1の基材上での正投影が重ならない。
【0012】
ここで、前記第1の伝送端の前記第1の基材上での正投影と、前記第2の開口の前記第1の基材上での正投影が少なくとも一部重なり、
前記第1の伝送端の前記第1の基材上での正投影の延伸方向は、前記第2の開口の前記第1の基材上での正投影の中心を貫通する。
【0013】
ここで、前記第2の開口の前記第1の方向における長さは、前記第1の開口の第1の方向における長さと同じであり、前記第2の開口の前記第2の方向における長さは、前記第1の開口の第2の方向における長さと同じである。
【0014】
ここで、前記第2の開口の前記第1の基材上での正投影と、前記伝送線路の伝送本体部の前記第1の基材上での正投影が重ならない。
【0015】
ここで、前記位相シフターは第1の導波路構造と第2の導波路構造をさらに備え、前記第1の導波路構造は、前記第2の開口を介して前記伝送線路の第1の伝送端と結合という方式を用いてマイクロ波信号を伝送するように構成され、前記第2の導波路構造は、前記第1の開口部を介して前記伝送線路の第2の伝送端と結合という方式を用いてマイクロ波信号を伝送するように構成される。
【0016】
ここで、前記第1の導波路構造の第1のポートは、前記第1の基材において前記第1の誘電体層と反対側に設けられ、前記第2の導波路構造の第1のポートは、前記第2の基材において前記第1の誘電体層と反対側に設けられ、
前記第1の伝送端の前記第1の基材上での正投影の延伸方向は、前記第1の導波路構造の第1のポートの前記第1の基材上での正投影の中心を貫通する、及び/又は、
前記第2の伝送端の前記第2の基材上での正投影の延伸方向は、前記第2の導波路構造の第1のポートの前記第2の基材上での正投影の中心を貫通する。
【0017】
ここで、前記第1の伝送端の前記第1の基材上での正投影と前記第1の導波路構造の第1のポートの前記第1の基材上での正投影の中心の間の距離は、予め設定された値よりも小さい、及び/又は、
前記第2の伝送端の前記第2の基材上での正投影と前記第2の導波路構造の第1のポートの前記第2の基材上での正投影の中心の間の距離は、予め設定された値よりも小さい。
【0018】
ここで、前記第1の導波路構造は矩形導波路構造を含み、その横断面アスペクト比は1.7~2.3:1である、及び/又は、前記第2の導波路構造は矩形導波路構造を含み、その横断面アスペクト比は1.7:1~2.3:1である。
【0019】
ここで、前記第1の導波路構造の第1のポートの前記第1の基材上での正投影と前記第1の開口の前記第1の基材上での正投影が完全に重なり、
前記第2の導波路構造の第1のポートの前記第2の基材上での正投影と前記第2の開口の前記第2の基材上での正投影が完全に重なる。
【0020】
ここで、前記位相シフターは、マイクロ波伝送領域と、前記マイクロ波伝送領域を囲む周辺領域とを備え、前記第2の基板は、第2の基材上に設けられた分離構造をさらに備え、前記分離構造は周辺領域に位置し、前記マイクロ波伝送領域を囲む。
【0021】
ここで、前記分離構造は、前記基準電極の前記第2の基材側に位置し、前記基準電極は前記周辺領域まで延伸して前記分離構造とオーバーラップする。
【0022】
ここで、前記基準電極は溝を備え、前記溝は前記周辺領域に位置し、前記分離構造と前記溝の、前記第2基材上での正投影には重なりがある。
【0023】
ここで、前記伝送線路上に法線を有し、法線と前記伝送線路の他の部分には交わる点があり、当該点の、その法線と前記伝送線路の他の部分の交点のうちの最も近いものまでの距離が100μm~2mmである。
【0024】
ここで、前記第1の導波路構造の中空チャンバの内壁及び/又は前記第2の導波路構造の中空チャンバの内壁に保護層が形成される。
【0025】
ここで、前記第1の導波路構造の中空チャンバ及び/又は前記第2の導波路構造の中空チャンバ内に充填媒体を有し、前記充填媒体はポリテトラフルオロエチレンを含む。
【0026】
ここで、第1誘電体層の材料は液晶を含む。
【0027】
第2の態様において、本公開の実施例は、上記のいずれか1つの位相シフターを備える、アンテナを提供する。
【0028】
ここで、前記アンテナは、第2の基材において第1の誘電体層と反対側に設けられたパッチ電極をさらに含み、前記パッチ電極と、前記第1の開口の前記第2の基材上での正投影には重なりがある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は本公開の実施例の液晶位相シフターの構造模式図である。
図2図2は、図1に示す位相シフターのA-A’の断面図である。
図3図3は、図1に示す位相シフターにおける第1の基板の平面図(伝送線路側)である。
図4図4は、図1に示す位相シフターにおける第2の基板の平面図(接地電極側)である。
図5図5は液晶位相シフターのエアギャップ高さと挿入損失の変化グラフである。
図6図6は本公開の実施例の別の位相シフターの模式図である。
図7図7は、図6に示す位相シフターのB-B’の断面図である。
図8図8は、図6に示す位相シフターにおける第1の基板の平面図(伝送線路側)である。
図9図9は、図6に示す位相シフターにおける第2の基板の平面図(接地電極側)である。
図10図10は本公開の実施例の第1の導波路構造の模式図である。
図11図11は、図6に示す位相シフターのB-B’の正面図である。
図12図12は、図6に示す位相シフターの側面図(左側又は右側から見たもの)である。
図13図13は本公開の実施例の別の位相シフターの模式図である。
図14図14は、図13に示す位相シフターのC-C’の断面図である。
図15図15は、図13に示す位相シフターにおける第2の基板の平面図(伝送線路側)である。
図16図16は、図13に示す位相シフターにおける移相角度と直流バイアス実測グラフである。
図17図17は本公開の実施例の別の位相シフターの模式図である。
図18図18は、図17に示す位相シフターのD-D’の断面図である。
図19図19は、図17に示す位相シフターにおける第1の基板の平面図(伝送線路側)である。
図20図20は、図17に示す位相シフターにおける第2の基板の平面図(接地電極側)である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本公開の技術案を当業者がより良く理解できるように、以下に図面と具体的な実施の形態を組み合わせて本公開についてさらに詳細に説明する。
【0031】
別途定義しない限り、本公開で使用する技術用語又は科学用語は、本公開が属する分野において一般的な技能を有する者に理解される通常の意味であるべきである。本公開で使用する「第1の」、「第2の」及び類似の用語は、いかなる順序、数量、又は重要性も表さず、異なる構成要素を区別するためだけに使用される。同様に、「1つの」、「一」、又は「当該」などの類似の用語も数量の限定を意味するものではなく、少なくとも1つ存在することを意味する。「含む」又は「含有する」などの類似の用語は、当該語句の前に登場する要素又は物体が、当該語句の後に挙げた要素又は物体及びその等価物を包含し、他の要素又は物体を除外しないということを意味する。「接続する」又は「繋がる」などの類似の用語は、物理的又は機械的接続に限定されず、直接又は間接的なものを問わず、電気的な接続を含むことができる。「上」、「下」、「左」、「右」等は、相対的な位置関係を示すためのものに過ぎず、説明対象の絶対的な位置が変化すると、当該相対的な位置関係もこれに応じて変化し得る。
【0032】
以下の実施例の説明に先立って述べると、以下の実施例で提供する位相シフターの第1の誘電体層は液晶層を含むが液晶層に限定されず、第1の誘電体層が液晶層である場合のみを例に説明する。位相シフターにおける基準電極は、伝送線路との間に電流ループを形成できるものであればよく、接地電極を含むがこれに限定されず、本公開の実施例では、基準電極が接地電極である場合のみを例に説明する。伝送線路の第1の伝送端が受信端とされる場合、伝送線路の第2の伝送端は送信端であり、伝送線路の第2の伝送端が受信端とされる場合、伝送線路の第1の伝送端は送信端である。以下の説明では、理解しやすくするために、伝送線路の第1の伝送端を受信端とし、第2の伝送端を送信端とした場合を例に説明する。
【0033】
また、本公開の実施例において、伝送線路は遅延線であってもよいし、ストリップ線路等であってもよい。説明しやすくするために、本公開の実施例では、伝送線路に遅延線を用いる場合を例とし、遅延線の形状は、弓型、波状、ジグザグ型のいずれか1つ又は複数の組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0034】
図1は本公開の実施例の液晶位相シフターの構造模式図であり、図2は、図1に示す位相シフターのA-A’の断面図であって、図1及び図2に示すように、当該液晶シフターは対向して配置された第1の基板及び第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間に配置された液晶層30とを含む。第1の基板は、第1の基材10と、第1の基材10の液晶層30側に設けられた伝送線路11及びバイアスライン12と、伝送線路11及びバイアスライン12において第1の基材10と反対側に設けられた第1の配向層13とを含む。第2の基板は、第2の基材20と、第2の基材20の液晶層30側に設けられた接地電極21と、接地電極21の液晶層30側に設けられた第2の配向層22とを含む。当然ながら、図1に示すように、位相シフターは上記構造を含むだけでなく、液晶セルのセル厚(第1の基板と第2の基板との間のセル厚)を維持するための支持構造40、及び液晶セルを封止するための封止ゴム50などの構造を含むが、ここでは説明を省略する。
【0035】
図3図1に示す位相シフターにおける第1の基板の平面図(伝送線路11側)であって、図3に示すように、伝送線路11は、第1の伝送端11a、第2の伝送端11b、及び伝送本体部を有し、ここで、第1の伝送端11a、第2の伝送端11b及び伝送本体部11cは、いずれも第1の端点及び第2の端点を有し、第1の伝送端11aの第1の端点と伝送本体部11cの第1の端点とが電気的に接続され、第2の伝送端11bの第1の端点と伝送本体部11cの第2の端点とが電気的に接続される。なお、第1の端点と第2の端点とは相対的な概念であり、第1の端点が始端であれば第2の端点は終端であり、そうでない場合は逆である。また、本公開の実施例では、第1の伝送端11aの第1の端点と伝送本体部11cの第1の端点とが電気的に接続され、この場合、第1の伝送端11aの第1の端点と伝送本体部11cの第1の端点は共通の端点であってもよい。これに応じて、第2の伝送端11bの第1の端点と伝送本体部11cの第2の端点とが電気的に接続され、第2の伝送端11bの第1の端点と伝送本体部11cの第2の端点は共通の端点である。
【0036】
伝送本体部11cは蛇行線を含むがこれに限定されず、蛇行線の数は一本であっても複数本であってもよい。蛇行線の形状としては、弓型、波形などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0037】
いくつかの例では、伝送本体部11cに含まれる蛇行線の数が複数本の場合、各蛇行線の形状は少なくとも部分的に異なる。つまり、複数本の蛇行線において部分的に同じ形状であってもよいし、すべての蛇行線の形状が異なっていてもよい。
【0038】
いくつかの例では、伝送線路11の第1の伝送端11aの第1の端点から第2の端点に向かう方向と、第2の伝送端11bの第1の端点から第2の端点に向かう方向とが同じである。このような場合、第1の伝送端11aと第2の伝送端11bとの間に接続された伝送本体部11cには必ず巻回された部分が存在するため、伝送線路11の占有スペースを縮小することができる。なお、伝送本体部11cには巻回された部分があるが、この部分には重なりが生じない。
【0039】
いくつかの例において、伝送線路11の伝送本体部11cは、前記第1の伝送端11a及び第2の伝送端11bに電気的に接続された少なくとも一本の蛇行線を含み、少なくとも一本の蛇行線の第1の基材上での正投影は、第1の伝送端11aの第1の基材10上での正投影の延伸方向と交差する部分を有する。このような場合、位相シフターの体積を小さくするために、伝送線路11の占有スペースを小さくすることができる。
【0040】
いくつかの例では、伝送線路11の伝送本体部11cが少なくとも一本の蛇行線を含む場合、接地電極21の第1の開口211の第1の基材10上での正投影と、少なくとも一本の蛇行線の第1の基材10上での正投影は重ならない。例えば、接地電極21の第1の開口211の第1の基材10上での正投影と、各蛇行線の第1の基材10上での正投影は重ならない。したがって、マイクロ波信号の損失を回避する。
【0041】
いくつかの例では、第1の伝送端11aがマイクロ波信号の受信端とされる場合、第2の伝送端11bはマイクロ波信号の送信端であり、これに応じて、第2の伝送端11bがマイクロ波信号の受信端とされる場合、第1の伝送端11aはマイクロ波信号の送信端である。バイアスライン12は伝送線路11と電気的に接続され、伝送線路11と接地電極21との間に直流定常電界を形成するために、伝送線路11に直流バイアス信号を印加するように構成される。微視的には液晶層30の液晶分子が電界力を受けることにより軸配向に偏向が生じる。巨視的には液晶層30の誘電率が変化し、伝送線路11と接地電極21との間でマイクロ波信号が伝送されると、液晶層30の誘電率が変化してマイクロ波信号の位相が変化する。具体的に、マイクロ波信号の位相変化量の大きさは液晶分子の偏向角度、電界強度と正の相関があり、即ち、直流バイアス電圧を印加することでマイクロ波信号の位相を変えることができ、これは液晶位相シフターの動作原理である。
【0042】
図4は、図1に示す移相シフターにおける第2の基板の平面図(接地電極21側)であって、図4に示すように、接地電極21に第1の開口211が設けられ、当該第1の開口211はマイクロ波信号の放射に用いられ、当該第1の開口211の第1の方向における長さは遅延線の線幅以上である。ここで、第1の方向とは、伝送線路11の第2の伝送端11bの延伸方向に垂直な方向であって、図4でのX方向を指す。接地電極21上の第1の開口211の第1の方向における長さとは、図4での第1の開口211のX方向における最大長さを指す。引き続き図1を参照すると、伝送線路11と接地電極21の第1の基材10上での正投影の少なくとも一部が重なり、伝送線路11の第2の伝送端11bと接地電極21上の第1の開口211の第1の基材10上での正投影の少なくとも一部が重なる。このように設けることにより、マイクロ波信号を接地電極21上の第1の開口211を介して結合して液晶位相シフターから出力させる、又は接地電極21上の第1の開口211を介して結合して液晶位相シフターに入力することができる。
【0043】
関連技術において、マイクロ波信号は液晶位相シフターに入力され、液晶位相シフターから出力され、用いられる方式は液晶位相シフター内の伝送線路11とプリント回路基板(Printed Circuit Board、PCB)上の金属マイクロストリップ線路を結合するというものであり、工程の実践においてPCB基板と液晶位相シフターのガラス基板との間の組み付け時に、金属マイクロストリップ線路の高さなどの要因によりエアギャップが入り、また、位置によってエアギャップの高さも異なる。当該結合構造は容量性構造に属し、エアギャップの厚さに対して比較的敏感であり、エアギャップの厚さのランダムな微小な変化が結合効率の変化をもたらし、マイクロ波信号の振幅を大きく変化させ、即ち、挿入損失に大幅な変化が生じる。図5は液晶位相シフターのエアギャップの高さと挿入損失の変化グラフであって、図5に示すように、挿入損失の最大値は3.7dBである。高利得アンテナはアレイ化設計を採用しているため、液晶位相シフターはアレイ化配置であり、各液晶位相シフター間の振幅の違いはアンテナ性能を低下させることになる(即ち、メインローブ利得が低下し、サブローブが上昇する)。
【0044】
上記課題に関して、本公開の実施例では位相シフターをさらに提供する。図6は本公開の実施例の別の位相シフターの模式図であり、図7は、図6に示す位相シフターのB-B’断面図であり、図8は、図6に示す位相シフターにおける第1の基板の平面図(伝送線路側)であり、図9は、図6に示す位相シフターにおける第2の基板の平面図(接地電極側)であって、図6~9に示すように、当該位相シフターは、マイクロ波伝送領域と、マイクロ波伝送領域を囲む周辺領域とを有する。当該位相シフターは、対向して配置された第1の基板及び第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間に配置され、マイクロ波伝送領域に位置する液晶層30とを含む。また、本公開の実施例の液晶位相シフターは、マイクロ波伝送領域に位置する第1の導波路構造60及び第2の導波路構造70を含み、そのうち、第1の導波路構造60は第1の基板において液晶層30と反対側に位置し、第2の導波路構造70は第2の基板において液晶層30と反対側に位置する。本公開の実施例における第1の基板及び第2の基板は、図1の液晶移相シフターの第1の基板及び第2の基板と同じ構造であってよく、第1の基板は、第1の基材10と、第1の基材10に設けられた伝送線路11とバイアスライン12と第1の配向層13とを含み、第2の基板は、第2の基材20と、第2の基材20に設けられた接地電極21と第2の配向層とを含む。ここで、第1の導波路構造60は、伝送線路11の第1の伝送端11aと結合という方式を用いてマイクロ波信号を伝送するように構成され、第2の導波路構造70は、接地電極21上の第1の開口211を介して伝送線路11の第2の伝送端11bと結合という方式を用いてマイクロ波信号を伝送するように構成される。
【0045】
具体的に、伝送線路11の第1の伝送端11aが受信端とされ、第2の伝送端11bが送信端とされる場合、第1の導波路構造60は結合という方式により伝送線路11の第1の伝送端11aにマイクロ波信号を伝送し、このとき、マイクロ波信号は伝送線路11と接地電極21との間で伝送されるが、バイアスライン12に直流バイアス電圧が印加されるため、伝送線路11と接地電極21との間に直流定常電界が形成されて、液晶分子が偏向し、液晶層30の誘電率が変化する。このように、伝送線路11と接地電極21との間でマイクロ波信号が伝送されると、液晶層30の誘電率が変化することによりマイクロ波信号の位相が相応に変化する。マイクロ波信号の位相シフト後に、伝送線路11の第2の伝送端11bを経て、接地電極21上の第1の開口211を介して第2の導波路構造70に結合され、位相シフト後のマイクロ波信号が位相シフターから放射される。
【0046】
いくつかの例では、接地電極21上の第1の開口211のX方向における長さと、そのY方向における長さの比は1.7:1~2.3:1である。当然ながら、第1の開口の211のX方向における長さと、そのY方向における長さは、伝送線路11の第1の伝送端11aの線幅、及び第1の基板に接続される第1の導波路構造60の第1のポートのサイズに応じて具体的に設定することもできる。なお、本公開の実施例において、当該位相シフターは、第1の配線板と第2の配線板とをさらに備え、そのうち、第1の配線板は第1の基板にバインド接続され、バイアスライン12に直流バイアス電圧を供給するように構成される。第2の配線板は、第2の基板にバインド接続され、接地電極21に接地信号を供給するように構成される。第1の配線板及び第2の配線板はともにフレキシブル回路板(Flexible Printed Circuit、FPC)又はプリント回路板(Printed Circuit Board、PCB)など、様々なタイプの配線板を含むことができ、ここでは限定しない。第1の配線板には少なくとも1つの第1のパッドを有してよく、バイアスライン12の一端は第1のパッドに接続され(即ち、第1のパッドに結合する)、バイアスライン12の他端は伝送線路11に接続される。第2の配線板にも少なくとも1つの第2のパッドを有してよく、第2の配線板は第2の接続パッドを介して接地電極21と電気的に接続される。
【0047】
本公開の実施例では、第1の導波路構造60を介して伝送線路11と接地電極21との間にマイクロ波信号を入力して位相シフトを行い、位相シフト後のマイクロ波信号を第2の導波路構造70を介して位相シフト器から放射する。即ち、第1の導波路構造60と第2の導波路構造70を位相シフト器の給電構造として用いるが、第1の導波路構造60と第2の導波路構造70は通常金属中空構造であることから、位相シフターとの組み付け過程においてエアギャップが発生しにくいため、マイクロ波信号の結合効率を効果的に高めることができるとともに、本公開の実施例における位相シフターを液晶フェーズドアレイアンテナに応用する際に、アンテナの各チャネル間の振幅の一致性を高め、挿入損失を低減することができる。
【0048】
いくつかの例において、第1の導波路構造60と第2の導波路構造70は中空の金属壁で構成することができ、具体的に、第1の導波路構造60は少なくとも1つの第1の側壁を有してよく、少なくとも1つの第1の側壁が接続されて第1の導波路構造60の導波路キャビティを形成する、及び/又は、第2の導波路構造70は少なくとも1つの第2の側壁を有し、少なくとも1つの第2の側壁が接続されて第2の導波路構造70の導波路キャビティを形成する。第1の導波路構造60が第1の側壁を1つだけ有する場合、第1の導波路構造60は円形導波路構造であり、第1の側壁は円形の中空ダクトを囲んで第1の導波路構造60の導波キャビティを形成する。第1の導波路構造60は、複数の第1の側壁を含み、複数の形状の導波キャビティを形成することもでき、例えば、図10は本公開の実施例の第1の導波路構造60の模式図であって、第1の導波路構造60は、第1の側壁60a、第2の側壁60b、第3の側壁60c、第4の側壁60dの4つの側壁を含むことができ、第1の側壁60aは第2の側壁60bに対向して配置され、第3の側壁60cは第4の側壁60dに対向して配置され、4つの側壁が周囲の矩形導波路キャビティ601に接続されている場合、第1の導波路構造60は矩形導波路である。なお、第1の導波路構造60の第2のポートには底面60eを含んでよく、底面60eは第2のポート全体を覆い、底面60eには開口0601があり、開口601は信号コネクタの一端に合致し、信号コネクタは開口を介して第1の導波路構造6060に挿入され、他端は外部信号線に接続されて第1の導波路構造60に信号を入力する。当然ながら、第2の導波路構造70の第2のポートは、任意の側壁に設けてよく、即ち、開口部0601は、第1の側壁60a、第2の側壁60b、第3の側壁60c及び第4の側壁60dのいずれかに形成されてよく、これについて本公開の実施例では限定しない。
【0049】
第2の導波路構造70の構造は第1の導波路構造60と同じであり、第2の導波路構造70が側壁を1つだけ有する場合、第2の導波路構造70は円形導波路構造であり、第2の導波路構造70が複数の側壁を含み、複数の側壁が対応する形状の第2の導波路構造70を囲む。以下では、第1の導波路構造60、第2の導波路構造70が矩形導波路である場合を例に説明し、ここでは限定しない。
【0050】
いくつかの例では、第1の導波路構造60と第2の導波路構造70がともに矩形導波路を採用する場合、それぞれの断面積の長さ比は1.7~2.3:1の範囲であり、例えば、矩形導波路のアスペクト比は2:1であり、Ku導波路の長さは12mm~19mm程度である。なお、第1の導波路構造60の第1の側壁の厚さは、位相シフターが伝送するマイクロ波信号の表皮深さの4~6倍で、第2の導波路構造70の第2の側壁の厚さは、位相シフターが伝送するマイクロ波信号の表皮深さの4~6倍であってもよく、ここでは限定しない。
【0051】
いくつかの例では、第1の導波路構造60及び/又は第2の導波路構造70の中空構造(例えば、導波路キャビティ601)の内壁に保護層が形成されている。例えば、中空構造の内壁にめっき技術により保護層として薄い金の層を形成し、中空構造の内壁が酸化されるのを防止する。
【0052】
いくつかの例では、第1の導波路構造60及び/又は第2の導波路構造70の中空構造には、導波路構造のサイズを縮小するために高誘電率の媒体である充填媒体を有する。当該充填媒体は、ポリテトラフルオロエチレン、セラミックスを含むがこれらに限定されず、当然ながら、充填媒体は空気であってもよい。
【0053】
いくつかの例において、図11は、図6に示す位相シフターの正面図である。第1の導波路構造60及び第2の導波路構造70のサイズ及び形状はみな同じであってよい。このような場合、マイクロ波信号の入出力の結合効率を一致させることができる。当然ながら、いくつかの例では、第1の導波路構造60と第2の導波路構造70のサイズ及び形状の少なくとも一方が異なっていてもよい。
【0054】
いくつかの例において、第1の導波路構造60の第1のポートは、第1の基材10において液晶層30と反対側に固定され、第1の導波路構造60の第1のポートと伝送線路11の第1の伝送端11aの、第1の基材10上での正投影には重なりがあり、第1の導波路構造60と伝送線路11の第1の伝送端11aとの間で結合するという方式を用いてマイクロ波信号を伝送するようにすることができる、及び/又は、第2の導波路構造70の第1のポートは、第1の基材10において液晶層30と反対側に固定され、第2の導波路構造70の第1のポート、接地電極21上の第1の開口211と伝送線路11の第2の伝送端11bの、第2の基板20上での正投影には重なりがあり、第2の導波路構造70と伝送線路11の第2の伝送端11bとの間で結合するという方式を用いてマイクロ波信号を伝送するようにすることができる。
【0055】
例えば、図12は、図6に示す位相シフターの側面図(左側又は右側から見たもの)であって、図12に示すように、第1の導波路構造60と第2の導波路構造70は反対側に設けてよく、つまり、第1の導波路構造60は第1の基材10において液晶層30と反対側に設けられ、第2の導波路構造70は、第2の基材20において液晶層30と反対側に設けられる。このような場合、第1の導波路構造60と第2の導波路構造70の構造が互いに独立し、互いに影響しないことを保証するために、第1の導波路構造60の第2の基材20上での正投影と、第2の導波路構造70の第2の基材20上での正投影は重ならない。
【0056】
一例において、第2の導波路構造70の第1のポートは、マイクロ波信号を正確に伝送するために、接地電極21上の第1の開口211と完全に重なってよい。当然ながら、本公開の実施例において、第2の導波路構造70の第1のポートの第2の基材20上での正投影は、接地電極21上の第1の開口211の第2の基材20上での正投影を覆うものでもよく、このような場合、接地電極21上の第1の開口211の面積は第2の導波路構造70の第1のポートの面積よりも小さい。
【0057】
いくつかの例では、引き続き図6を参照すると、遅延線の第1の伝送端11aの第1の基材10上での正投影の延伸方向は、第1の導波路構造60の第1のポートの第1の基板10上での正投影の中心を貫通する。例えば、遅延線の第1の伝送端11aはY方向に延び、第1の導波路構造60の第1のポートの中心を貫通する。ここで、第1の導波路構造60の第1のポートが矩形の第1の開口211である場合、当該第1の導波路構造60の第1のポートの中心は、当該第1のポートの2本の対角線の交点を指す。第1の導波路構造60の第1のポートが円形である場合、当該第1の導波路構造60の第1のポートの中心は、当該第1のポートの円心を指す。このような場合、遅延線の第1の伝送端11aの第1の基材10上での正投影は、第1の導波路構造60の第1のポート内に挿入されるので、マイクロ波信号が遅延線と接地電極21との間で伝送されるようするために、第1の導波路構造60の第1のポートから出力されるマイクロ波信号を遅延線の第1の伝送端11aに放射するのに役立つ。これに応じて、本公開の実施例では、遅延線の第2の伝送端11bの第2の基材20上での正投影の延伸方向は、第2の導波路構造70の第1のポートの第1の基材10上での正投影の中心を貫通する。例えば、遅延線の第2の伝送端11bはY方向に延び、第2の導波路構造70の第1のポートの中心を貫通する。このような場合、遅延線の第2の伝送端11bの第2の基材20上での正投影は第2の導波路構造70の第1のポート内に挿入されるので、マイクロ波信号は、遅延線の第2の伝送端11bを介して第2の導波路構造70に結合され、マイクロ波信号を位相シフターから放射する。
【0058】
一例において、遅延線の第1の伝送端11aの第1の基材10上での正投影と第1の導波路構造60の第1のポートの第1の基材10上での正投影の中心の間の距離は、予め設定された値よりも小さく、当該予め設定された値は2.5mmである。好ましくは、第1の伝送端11aの第1の基材10上での正投影と第1の導波路構造60の第1のポートの第1の基材10上での正投影の中心の間の距離は0であり、即ち、第1の伝送端11aの端点の第1の基材10上での正投影は、第1の導波路構造60の第1のポートの第1の基材10上での正投影の中心に位置する。このように設定するのは、このような場合、第1の導波路構造60と遅延線との結合効率が最も高く、マイクロ波信号の挿入損失が最小であるからである。これに応じて、遅延線の第2の伝送端11bの第2の基材20上での正投影と、第2の導波路構造70の第1のポートの第2の基材20上での正投影の中心の間の距離は、同様に予め設定された値である2.5mmより小さい。好ましくは、第2の伝送端11bの第2の基材20上での正投影と第2の導波路構造70の第1のポートの第2の基材20上での正投影の中心の間の距離は0であり、即ち、第2の伝送端11bの第2の基材20上での正投影と、第2の導波路構造70の第1のポートの第2の基板20上での正投影の中心は一致する。このように設置するのは、このような場合、第2の導波路構造70と遅延線との結合効率が最も高く、マイクロ波信号の挿入損失が最小であるからである。いくつかの例において、本実施例は、信号コネクタをさらに含み、信号コネクタの一端は外部信号線に接続され、他端は第1の導波路構造60の第2のポートに接続され、第1の導波路構造60にマイクロ波信号を入力し、第1の導波路構造60はさらにマイクロ波信号を伝送線11に結合し、信号コネクタはSMAコネクタなどの様々なタイプのコネクタであってもよく、ここでは限定しない。当然ながら、本公開の実施例の位相シフターは、第1の導波路構造60の第2のポートを接続する第3の基板を含むこともできる。第3の基板は、第1の導波路構造60の第2のポートに接続する第3の基材と、第3の基材の第1の導波路構造60側に設けられた給電伝送線路11と、外部信号線に接続するために第3の基材の縁まで延びる給電伝送線路11とを備え、具体的に、信号コネクタは、第3の基材の縁に設けられてよく、一端が給電伝送線路11に接続され、他端が外部信号線に接続され、給電伝送線路11に信号を入力する。給電伝送線路11の第2端は、第1の導波路構造60の導波キャビティに信号を供給するために第1の導波路構造60の第2のポートまで延び、第1の導波路構造60は、さらにその第1のポートによって第1の給電構造に信号を結合する。具体的に、給電伝送線路11の第2端は、第1の導波路構造60の第2のポート内まで伸びてよく、即ち、給電伝送線路11の第2端部の第1の基板10上での正投影は、第1の導波路構造60の第2ポートの第1の基板10上での正投影内に位置する。
【0059】
いくつかの実施例において、図13は本公開の実施例の別の位相シフターの模式図であり、図14は、図13に示す移相シフターのC-C’の断面図であり、図15は、図13に示す位相シフターにおける第2の基板の平面図(伝送線路11側)であって、図13~15に示すように、当該第2の基板は、図9の接地電極21と第2の配向層を含むだけでなく、周辺領域に設けられた分離構造80をさらに含み、当該分離構造80はマイクロ波伝送領域を囲む。本公開の実施例では、分離構造80を設けることで、外部無線周波数信号がマイクロ波伝送領域で伝送されるマイクロ波信号に干渉することを防止する。
【0060】
図16は、図13に示す位相シフターの位相角度と直流バイアス実測グラフであって、図16に示すように、バイアスライン12に印加される電圧が8V及び8V以上である場合、当該位相シフターは360°を超える位相シフト角度を実現することができるため、本公開の実施例の位相シフターはフェーズドアレイアンテナの要件を満たす。
【0061】
いくつかの例において、分離構造80は外部直流信号に対して隔離作用を果たす必要があるため、分離構造80は、酸化インジウムスズ(ITO)、ニッケル(Ni)、窒化タンタル(TaN)、クロム(Cr)、酸化インジウム(In)、酸化スズ(Sn)のいずれかを含むがこれらに限定されない、高抵抗材料を使用することができる。好ましくは、ITO材料を用いる。分離構造80の厚さは30nm~2000nm程度、幅は0.1mm~5mm程度であり、分離構造80の具体的な厚さや幅などの寸法パラメータは、位相シフターのサイズ、接地電極21のサイズなどに応じて具体的に設定することができる。
【0062】
いくつかの例において、図15を参照すると、分離構造80は閉ループ構造を採用し、当該分離構造80は接地電極21において液晶層30と反対側に位置し、接地電極21が分離構造80とオーバーラップし、即ち、分離構造80と接地電極21は短絡している。ここで、接地電極21の側辺には溝212があり、当該溝212は分離構造80の第2の基板20上での少なくとも一部と重なっており、これにより、分離構造80と溝212との対応する位置を介して第2の配線基板上の第2の接続パッドに結合することができ、接地電極21と分離構造80に接地信号を提供することができる。
【0063】
例えば、接地電極21の輪郭は矩形であり、第1の側辺、第2の側辺、第3の側辺、第4の側辺を順次接続しており、この場合、第1の側辺(左)、第2の側辺(上)、第3の側辺(右)、第4の側辺(下)のいずれかに溝212を形成することができ、図15では第3の側辺に溝212を形成したものを例としている。
【0064】
いくつかの実施例において、接地電極21は金属材料を使用し、例えば、銅、アルミニウム、金、銀のうちのいずれかの材料である。接地電極21の厚さは0.1μm~100μm程度である。接地電極21の具体的な材料や厚さなどのパラメータは、位相シフターのサイズや性能の必要に応じて具体的に設定することができる。
【0065】
いくつかの例において、当該位相シフターは上記構造を含むだけでなく、支持構造体40と封止ゴム50などの構造をさらに含む。ここで、封止ゴム50は、位相シフターの液晶セルを封止するためのマイクロ波伝送領域を囲む周辺領域に位置する第1の基板と第2の基板との間に設けられ、支持構造体40は、第1の基板と第2の基板との間に配置され、その数は複数であってもよく、各支持構造体40は、液晶セルのセル厚を維持するためにマイクロ波伝送領域において間隔をおいて配置されてもよい。
【0066】
いくつかの例において、本公開の実施例における支持構造体40は、位相シフターが押圧されたときに外力によって第1の基材10及び第2の基材20が破損するという問題を防止するために、有機材料を用いて製造することができ、かつ一定の弾性を有してよい。さらに、支持構造体40に適切な球状粒子を添加し、球状粒子によりセル厚を維持する際の支持構造体40の安定性を保証することができる。
【0067】
いくつかの例において、バイアスライン12は高抵抗材料を使用し、バイアスライン12に直流バイアス電圧を印加する場合、それが接地電極21と形成する電界は液晶層30の液晶分子偏向を駆動するためにだけ使用され、位相シフターが伝送するマイクロ波信号にとっては開回路に相当し、つまり、マイクロ波信号は伝送線路11に沿ってのみ伝送される。ここで、バイアスライン1224の導電率は14500000 siemens/m(シーメンス/m)未満であり、位相シフターのサイズなどに応じて導電率値が低いバイアスライン12を選択するとよい。いくつかの例において、バイアスライン12の材料は、酸化インジウムスズ(ITO)、ニッケル(Ni)、窒化タンタル(TaN)、クロム(Cr)、酸化インジウム(In)、酸化スズ(Sn)のいずれかを含むがこれらに限定されない。好ましくは、バイアスライン12はITO材料を用いる。
【0068】
いくつかの例において、伝送線路11は金属材料を用い、伝送線路11の具体的な材料はアルミニウム、銀、金、クロム、モリブデン、ニッケル、鉄などであるがこれらに限定されない金属で製造される。伝送線路11の線路間隔とは、伝送線路11上に法線を有し、法線と伝送線路11の他の部分には交わる点があり、当該点の、その法線と伝送線路11の他の部分の交点のうちの最も近いものまでの距離であり、即ち、図8に示すd1は伝送線路11の線路間隔を表す。いくつかの例において、伝送線路11の線幅は100μm~3000μm程度、伝送線路11の線間隔は100μm~2mm程度、伝送線路11の厚みは0.1μm~100μm程度である。
【0069】
いくつかの例において、伝送線路11は遅延線であって、当該遅延線のコーナーは90°ではなく、これによりマイクロ波信号が遅延線のコーナーで反射し、マイクロ波信号の損失を引き起こすのを回避する。
【0070】
いくつかの例において、第1の基材10は複数種類の材料で製造してよく、例えば、第1の基材10がフレキシブル基材である場合、第1の基材10の材料は、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene glycol terephthalate、PET)及びポリイミド(Polyimide、PI)のうちの少なくとも1つを含んでよく、第1の基材1011がリジッド基材である場合、第1の基材10の材料はガラスなどであってよい。第1の基材10の厚さは、0.1mm~1.5mm程度であってもよい。第2の基材20も複数種類の材料で製造してよく、例えば、第2の基材20がフレキシブル基材である場合、第2の基材20の材料は、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene glycol terephthalate、PET)及びポリイミド(Polyimide、PI)のうちの少なくとも1つを含んでよく、第2の基材20がリジッド基材である場合、第2の基材20の材料はガラスなどであってよい。第2の基材20の厚さは、0.1mm~1.5mm程度であってもよい。当然ながら、第1の基材10及び第2の基材20の材料は他の材料を用いてもよく、ここでは限定しない。第1の基材10及び第2の基材20の具体的な厚さは、電磁波(無線周波数信号)の表皮深さに応じて設定することもできる。
【0071】
いくつかの例において、液晶層30の厚さは1μm~1mm程度である。当然ながら、液晶層30の厚さは、位相シフターのサイズや位相角度の必要に応じて具体的に設定することができる。また、本公開の実施例における液晶層30にはマイクロ波液晶材料を用いている。例えば、液晶層30内の液晶分子はポジ液晶分子又はネガ液晶分子であって、液晶分子がポジ液晶分子である場合、本公開の実施例における液晶分子の長軸方向と第2電極とがなす角度は0°より大きく45°以下である。液晶分子がネガ液晶分子である場合、本公開の具体的な実施例の液晶分子の長軸方向と第2電極とがなす角度は45°より大きく90°未満であり、液晶分子が偏向した後、液晶層30の誘電率を変化させて、位相シフトの目的を達成することを保証する。
【0072】
いくつかの例では、第1の配向層13及び第2の配向層を、ポリイミド系材料を用いて製造することができる。第1の配向層13及び第2の配向層の厚みは30nm~2μm程度である。
【0073】
いくつかの例において、図17は本公開の実施例の別の位相シフターの模式図であり、図18は、図17に示されている位相シフターのD-D’の断面図であり、図19は、図17に示されている位相シフターにおける第1の基板の平面図(伝送線路側)であり、図20は、図17に示されている位相シフターにおける第2の基板の平面図(接地電極側)であって、図17~20に示すように、当該位相シフターは、上述した第1の基板、第2の基板、第1の導波路構造60及び第2の導波路構造70を含むだけでなく、第1の反射構造90及び第2の反射構造100をさらに含む。また、図17及び図20を参照すると、第2の基板上の接地電極21は、第1の開口211を含むだけでなく第2の開口213をさらに含み、第2の開口213はX方向における長さが伝送線11の線幅以上であり、第2の開口213と第1の開口211の第1の基材10上での正投影には重なりがない。いくつかの例において、伝送線11の第1の伝送端11aの第1の基材10上での正投影と、第2の開口213の第1の基材10上での正投影は少なくとも部分的に重なり、第1の伝送端11aの第1の基材10上での正投影の延伸方向は、第2の開口213の第1の基材10上での正投影の中心を貫通する。引き続き図17を参照すると、第1の反射構造90は、第2の基板20において液晶層30と反対側に設けられ、第1の反射構造90の第1の基材10上での正投影は、第2の開口213の第1の基材10上での正投影を少なくとも覆い、第2の反射構造100の第1の基材10上での正投影は、第1の開口211の第1の基材10上での正投影を少なくとも覆う。このような場合、第1の導波路構造90は、結合するという方式を用いてマイクロ波信号を伝送線路11の第1の伝送端11aに入力して、伝送線路11と接地電極21との間でマイクロ波信号を伝送して、第2の伝送端11bを経て第2の導波路構造70と結合するという方式を用いて位相シフターから出力する。また、本公開の実施例では、第2の基材20において液晶層30と反対側に第2の反射構造100を設け、第1の伝送端11aを介してマイクロ波信号をフィードインする時に、第2の反射構造100はマイクロ波信号を反射して、位相シフター内においてマイクロ波信号を伝送することを保証でき、マイクロ波信号による損失を回避する。同様に、第2の伝送端11bがマイクロ波信号の入力端とされ、第1の伝送端11aがマイクロ波信号の出力端とされる場合、第1の反射構造90は同様にマイクロ波信号を位相シフター内において伝送させることができ、マイクロ波信号による損失を回避する。
【0074】
いくつかの例において、第1の反射構造90は導波路構造を用いることができ、第1の反射構造90の導波路キャビティが第1のポートと第2のポートを有し、第1の反射構造90の第1のポートが第2の導波路構造の第1のポートと向かい合う場合、第1の反射構造90の第1のポートの第1の基材10上での正投影と、第2の導波路構造70の第1のポートの第1の基材10上での正投影は、少なくとも部分的に重なるか完全に重なり、第2の反射構造100も導波路構造を用いることができ、第2の反射構造100の導波路キャビティが第1のポートと第2のポートを有し、第2の反射構造100の第1のポートが第1の導波路構造60の第1のポートと向かい合う場合、第2の反射構造100の第1のポートの第2の基材20上での正投影と、第1の導波路構造60の第1のポートの第2の基材20上での正投影は、少なくとも部分的に重なるか完全に重なる。なお、本公開の実施例において、第1の反射構造90の第1のポートは第1の基板を覆ってもよく、第2の反射構造100の第1のポートは第2の基板を覆ってもよく、つまり、第1の反射構造90と第2の反射構造100とのペアは、位相シフターをその中に限定することができる。また、第1の反射構造90の第1のポートの第2の基材20上での正投影が接地電極21の第2の開口213の第2の基材20上での正投影を覆うもの、及び第2の反射構造100の第1のポートの第1の基材10上での正投影が接地電極21の第1の開口211の第1の基材10上での正投影を覆うものであれば、すべて本公開の実施例の保護範囲内である。
【0075】
いくつかの例において、接地電極21の第1の開口211と第2の開口213のサイズは一致し、即ち、第1の開口211のX方向における長さは第2の開口213のX方向における長さと等しく、第1の開口211のY方向における長さは第2の開口213のY方向における長さと等しい。
【0076】
いくつかの例において、接地電極の第2の開口213と、第1の導波路構造60の第1のポートの第1の基材10上での正投影は完全に重なる。なお、第2の導波路構造70の第1のポートの第1の基材10上での正投影が、接地電極21の第2の開口211の第1の基材10上での正投影を覆うことができれば、すべて本公開の実施例の保護範囲内にあり、これによりマイクロ波信号の挿入損失を低減することができる。
【0077】
いくつかの例では、伝送線路11の伝送本体部11cが少なくとも一本の蛇行線を含む場合、接地電極21の第2の開口213の第1の基材10上での正投影は、少なくとも一本の蛇行線の第1の基材10上での投影と重ならず、例えば、接地電極21の第2の開口213の第1の基材10上での正投影と各蛇行線の第1の基材10上での投影は重ならない。したがって、マイクロ波信号の損失を回避する。
【0078】
第2の態様において、本公開の実施例は、上述した位相シフターを製造することができる位相シフターの製造方法を提供する。この方法は次のステップを含む。
【0079】
ステップS1、第1の基板を作製する。
【0080】
ステップS2、第2の基板を作製する。
【0081】
ステップS3、第1の基板と第2の基板をペアにして、第1の基板と第2の基板との間に液晶分子を注入し、液晶層を形成する。
【0082】
ステップS4、第1の基板において液晶層と反対側に第1の導波路構造を配置し、第2の基板において液晶層と反対側に第2の導波路構造を配置する。
【0083】
いくつかの例において、ステップS1は、具体的には次のステップを含む。
【0084】
ステップS11、第1の基材上にパターニング技術によりバイアスラインを含むパターンを形成する。
【0085】
具体的には、第1の基材を洗浄、乾燥して、マグネトロンスパッタリング方式を用いて、第1の基材上に第1の高抵抗材料層を積層し、例えばITO材料をコーティングして、第1の高抵抗材料層にゴム引き、プリベーク、露光、現像、ポストベーク、ドライ又はウエットエッチング、アニール結晶化を行って、バイアスラインを含むパターンを形成する。
【0086】
ステップS12、バイアスラインが形成された第1の基材上に、パターニング技術により伝送線路を含むパターンを形成する。
【0087】
具体的には、バイアスラインを形成する第1の基材を洗浄、乾燥して、マグネトロンスパッタリング方式を用いて、バイアスラインが位置する層において第1の基材と反対側に第1の金属材料層を積層し、例えばアルミニウム材料をコーティングして、第1の金属層材料層にゴム引き、プリベーク、露光、現像、ポストベーク、ドライ又はウエットエッチングを行って、伝送線路を含むパターンを形成する。
【0088】
ステップS13、伝送線路が形成された第1の基材上に、第1の配向層を形成する。
【0089】
具体的には、伝送線路が形成された第1の基材を洗浄、乾燥して、PI液を印刷し、その後、溶媒を加熱蒸発させ、熱硬化、摩擦又は光配向して第1の配向層を形成する。
【0090】
ステップS14、第1の配向層が形成された第1の基材上に、パターニング技術により支持構造を含むパターンを形成する。
【0091】
具体的には、第1の配向層において第1の基材と反対側にスピンコーティング又はスプレーコーティングを用いてゴム層を形成し、プリベーク、露光、現像、ポストベークを行い、支持構造を含むパターンを形成する。また、ゴム層に球状粒子を散布することもできる。
【0092】
ここまでで第1の基板の製造が完了する。
【0093】
いくつかの例において、ステップS2は具体的には次のステップを含む。
【0094】
ステップS21、第2の基材上にパターニング技術により分離構造を含むパターンを形成する。
【0095】
具体的には、第2の基材を洗浄、乾燥して、マグネトロンスパッタリング方式を用いて、第2の基材上に第2の高抵抗材料層を積層し、例えばITO材料の層をコーティングし、第2の高抵抗材料層にゴム引き、プリベーク、露光、現像、ポストベーク、ドライ又はウエットエッチング、アニール結晶化を行って、分離構造を含むパターンを形成する。
【0096】
ステップS22、分離構造が形成された基材上において、パターニング技術により接地電極を含むパターンを形成する。
【0097】
具体的には、分離構造を形成する第2の基材を洗浄、乾燥して、マグネトロンスパッタリング方式を用いて、分離構造が存在する層において第1の基板と反対側に第2の金属材料層を沈積させ、例えばアルミニウム材料をコーティングし、第2の金属層材料層にゴム引き、プリベーク、露光、現像、ポストベーク、ドライ又はウエットエッチングを行って、接地電極を含むパターンを形成する。
【0098】
ステップS23、伝送線が形成された第2の基材上に、第2の配向層を形成する。
【0099】
具体的には、接地電極が形成された第2の基材を洗浄、乾燥して、PI液を印刷した後、溶媒を加熱蒸発させて、熱硬化、摩擦又は光配向して第2の配向層を形成する。
【0100】
ここまでで第2の基板の製造が完了する。
【0101】
いくつかの例において、ステップS3は具体的には次のステップを含むことができる。
【0102】
ステップS31、第1の基板上に封止ゴムを形成し、第2の基板上に液晶層を形成する。
【0103】
具体的には、第1の基板における第1の配向層の周辺領域に封止ゴムを形成し、第2の基板における第2の配向層上に液晶分子を滴下し、液晶層を形成する。なお、第2の基板における第2の配向層の周辺領域に封止ゴムを形成し、第1の基板の第1の配向層上に液晶分子を滴下して液晶層を形成してもよい。
【0104】
ステップS32、封止ゴムが形成された第1の基板と液晶層が形成された第2の基板をペアにする。
【0105】
具体的には、封止ゴムが形成された第1の基板と液晶層が形成された第2の基板を真空セルチャンバに搬送して位置合わせ及び真空圧着した後、紫外線硬化、熱硬化により液晶セルを形成する。
【0106】
また、ステップS3は上述したS31及びS32を用いて実現できるだけではない。ステップS3は、以下の方式にて実現することもできる。製造した第1の基板と第2の基板をペアにし、封止ゴムを用いて第1の基板と第2の基板の間に一定の空間を支持して液晶層を形成して、封止ゴム上に注入口を残す。注入口を介して第1の基板と第2の基板との間に液晶分子を注入することにより液晶層を形成し、その後に注入口を閉じ、液晶セルを形成する。
【0107】
当然ながら、液晶セルを形成した後に、第1の配線板が第1の接続パッドを介してバイアスラインにバインド接続できるようにし、伝送線路に直流バイアス電圧を提供できるように、第1の基材の、バイアスラインに対応する位置を露出させる切断工程を含んでもよい。これに応じて、第2の配線板が第2の接続パッドを介して分離構造とバインド接続できるようにし、接地電極に接地信号を提供できるように、第2の基材の、分離構造に対応する部分の位置を露出させる。
【0108】
いくつかの例において、ステップS4は、具体的に、NC工作機械加工(CNC)を用いて、金属銅又はアルミニウムのインゴット上に機械加工を行い、中空の導波路構造体を得ること、即ち、第1の導波路構造と第2の導波路構造を形成することを含んでよい。その後、第1の導波路構造及び第2の導波路構造に対して内壁に薄い金の層をめっきで施し酸化防止し、即ち、第1の導波路構造及び第2の導波路構造の内壁に保護層を形成することができる。最後に、形成された第1の導波路構造を第1の基板において液晶層と反対側に固定し、形成された第2の導波路構造を第2の基板において液晶層と反対側に固定する。
【0109】
第3の態様において、本公開の実施例はアンテナを提供し、当該アンテナは受信アンテナと送信アンテナのどちらであってもよい。
【0110】
本公開の実施例では、当該アンテナが受信アンテナである場合を例に説明する。当該アンテナは、上記のいずれかの位相シフターと、第1の基材において接地電極と反対側に設けられたパッチ電極とを含み、接地電極の、パッチ電極と対応する位置に第1の開口が設けられる。パッチ電極は、接地電極の第1の開口部を介して位相シフターの液晶層にマイクロ波信号を入力するために用いられる。
【0111】
また、本公開の実施例では、複数のアンテナがアレイ配置されていれば、フェーズアレイアンテナが形成される。各アンテナについては、第1の導波路構造を介して伝送線路と接地電極との間にマイクロ波信号を入力して位相シフトを行い、位相シフト後のマイクロ波信号を第2の導波路構造を介して位相シフト器から放射する。即ち、第1の導波路構造と第2の導波路構造を位相シフト器の給電構造として用いるが、第1の導波路構造と第2の導波路構造は通常金属中空構造であることから、位相シフターとの組み付け過程においてエアギャップが発生しにくいため、マイクロ波信号の結合効率を効果的に高めることができるとともに、本公開の実施例における位相シフターを液晶フェーズドアレイアンテナに応用する際に、アンテナの各チャネル間の振幅の一致性を高め、挿入損失を低減することができる。なお、以上の実施の形態は、本公開の原理を説明するために採用した例示的な実施形態にすぎないが、本公開はこれに限定されるものではない。当業者は、本公開の精神及び本質から逸脱しなければ、種々な変形及び改良を行うことができ、これらの変形及び改良も本公開の保護範囲とみなされる。
【符号の説明】
【0112】
10 第1の基材
11 伝送線路
11a 第1の伝送端
11b 第2の伝送端
11c 伝送本体部
12 バイアスライン
13 第1の配向層
20 第2の基材
21 接地電極
22 第2の配向層
30 液晶層
40 支持構造
50 封止ゴム
60 第1の導波路構造
70 第2の導波路構造
80 分離構造
90 第1の反射構造
100 第2の反射構造
211 第1の開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【国際調査報告】