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特表2024-501915絶縁層を有する超薄型プラズモン光電池デバイス
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  • 特表-絶縁層を有する超薄型プラズモン光電池デバイス 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】絶縁層を有する超薄型プラズモン光電池デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/062 20120101AFI20240110BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20240110BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20240110BHJP
【FI】
H01L31/06 150
H10K30/50
H10K30/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525003
(86)(22)【出願日】2021-12-31
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2021087900
(87)【国際公開番号】W WO2022144445
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】21020004.4
(32)【優先日】2021-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519347867
【氏名又は名称】ピーファウル プラズモニクス アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】Peafowl Plasmonics AB
【住所又は居所原語表記】Ulls vag 33C, 756 51 Uppsala, Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】サー,ジャシント
(72)【発明者】
【氏名】ポン,フェイ
(72)【発明者】
【氏名】ケナウィ アブデラー,モハメド アフメド
(72)【発明者】
【氏名】フォルケナント,マティルダ
(72)【発明者】
【氏名】パウン,クリスティーナ
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA11
5F251AA20
5F251CB13
5F251CB14
5F251DA05
5F251FA02
5F251FA03
5F251FA04
5F251GA03
5F251XA01
5F251XA53
(57)【要約】
電子輸送層(ETL)としてのn型半導体の層1と、金属プラズモンナノ粒子の層2と、n型半導体と金属プラズモンナノ粒子の層との間に設けられた絶縁層4と、正孔輸送層(HTL)としてのp型半導体の層3とを備える、総合効率を向上させたダイレクトプラズモン光電池のための電荷生成アセンブリである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイレクトプラズモン光電池のための電荷生成アセンブリであって、
電子輸送層(ETL)としてのn型半導体の層(1)と、
金属プラズモンナノ粒子の層(2)と、
正孔輸送層(HTL)としてのp型半導体の層(3)と、
を備え、
前記n型半導体と前記金属プラズモンナノ粒子の層との間に絶縁層(4)を更に備える、電荷生成アセンブリ。
【請求項2】
前記金属プラズモンナノ粒子は、銅、金、銀、又はアルミニウムで構成される群から選択される、請求項1に記載の電荷生成アセンブリ。
【請求項3】
前記金属プラズモンナノ粒子の層は、準単分子層である、請求項1又は2に記載の電荷生成アセンブリ。
【請求項4】
前記金属プラズモンナノ粒子は、互いに少なくとも3nmの距離で位置する、請求項3に記載の電荷生成アセンブリ。
【請求項5】
前記金属プラズモンナノ粒子は、密な単分子層の10-20%の間の濃度を有する、請求項3又は4に記載の電荷生成アセンブリ。
【請求項6】
前記金属プラズモンナノ粒子は、200nm以下、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは60nm以下の平均サイズを有する、請求項1-5のいずれか1つに記載の電荷生成アセンブリ。
【請求項7】
前記絶縁層は、前記金属プラズモンナノ粒子と選択的に結合する官能基を含む材料で構成されている、請求項1-6のいずれか1つに記載の電荷生成アセンブリ。
【請求項8】
絶縁層は、10nm以下、より好ましくは3nm以下、更に好ましくは1nm以下の厚さを有する、請求項1-7のいずれか1つに記載の電荷生成アセンブリ。
【請求項9】
前記絶縁層は、真空からの伝導帯端が3.5eV以下であり、真空からの価電子帯が6.5eV以上である材料で構成される、請求項1-8のいずれか1つに記載の電荷生成アセンブリ。
【請求項10】
2つの導電性基板に挟まれた請求項1-9のいずれか1つに記載の電荷生成アセンブリを備える、ダイレクトプラズモン光電池デバイス。
【請求項11】
ダイレクトプラズモン太陽電池である、請求項10に記載のダイレクトプラズモン光電池デバイス。
【請求項12】
請求項1-9のいずれか1つに記載の電荷生成アセンブリを得る方法であって、
a)電子輸送層(ETL)上に絶縁層を堆積させるステップと、
b)前記絶縁層上に、金属ナノ粒子を担持させて前記金属プラズモンナノ粒子の層を形成するステップと、
c)前記金属プラズモンナノ粒子の層を正孔輸送層(HTL)でコーティングするステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
請求項10又は11に記載のダイレクトプラズモン光電池デバイスを得るための請求項12に記載の方法であって、更に、
a1)ステップa)の前に、前記電子輸送層(ETL)で導電性基板をコーティングするステップと、
d)ステップc)の後に、前記正孔輸送層(HTL)上に導電性基板をコーティングするステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項1-9のいずれか1つに記載の電荷生成アセンブリ、又は、請求項10又は11に記載のダイレクトプラズモン光電池デバイスを備える、建築要素。
【請求項15】
請求項1-9のいずれか1つに記載の電荷生成アセンブリ、又は、請求項10又は11に記載のダイレクトプラズモン光電池デバイスを備える、民生用電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電荷生成アセンブリ、光電池分野におけるその使用、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電池システムは、光を電気に変換するプロセスを使用するシステムである。光は、太陽又は任意の人工的な源から生じる。光電池の既知の例は、太陽光を電気に変換する太陽電池であり、ここ数年で関心が高まっている。
【0003】
従来の光電池(太陽電池)には多くの種類が存在し、中でもシリコン電池が最もよく知られているが、有機太陽電池、薄膜太陽電池(例えば、CIGS、CdTe)、ペロブスカイト太陽電池なども存在する。従来の光電池とは異なり、ダイレクトプラズモン太陽電池は、最新の光電池技術を構成し、光を吸収して電荷を生成する方法が他のものとは異なる。
【0004】
従来の光電池技術では、光子が活性物質に吸収されると、特定の量のエネルギを使って電子が占有電子レベルから空レベルに励起され、その電子が、電池が生成する電流の役割を果たす。ある物質では、電子を励起する(「追い出す」)のに必要なエネルギ量が決まっており、当該エネルギ量は、通常、エネルギギャップ又はバンドギャップと呼ばれる。光子のエネルギが必要量より少なければ、電子は励起されず、光子のエネルギが過剰であれば、過剰分は熱として消費される。従来の光電池の特殊なタイプとして、プラズモン増強型太陽電池と呼ばれるタイプがある。これは、プラズモンナノ粒子を用いて、光を散乱させたり、活性物質の光吸収を高めたりする太陽電池である。活性物質とは、この場合、電荷を発生させる場所である。
【0005】
例えば、フセイン(Hossain)ら:『ナノ粒子で装飾されたシリコン吸収装置:吸収層内の吸収深さプロファイル特性』("Nanoparticles-decorated silicon absorber: Absorption depth profile characteristics within absorbing layer"),太陽エネルギ,204,2020年7月1日,552-560頁には、銀ナノ粒子を使用した場合に、活性物質として使用されるSi吸収層が高い吸収分布を得るプラズモン増強型太陽電池が開示されている。しかしながら、このような太陽電池は、バンドギャップの制約により光エネルギの一部が消費されるという従来の太陽電池の欠点が残っている。
【0006】
これに対して、ダイレクトプラズモン太陽電池において、エネルギ変換は、実際には光吸収体であるプラズモンナノ粒子で直接的に行われる。ダイレクトプラズモン太陽電池は、プラズモン電子共鳴のメカニズムに基づいて構築されている。各光子が特定の電子を励起するのではなく、各光子が物質中の電子の集団励起(共鳴)に寄与し、電流を発生させる。このメカニズムの違いにより、高エネルギの光子であれば、そのエネルギを全て電気に変換することができ、無駄がない。変換を起こす(電池電圧を発生させる)ために吸収しなければならない光子の数が少ないという限界はあるが、他の太陽電池の典型的なものよりもはるかに低い。
【0007】
より具体的には、プラズモン電子共鳴メカニズムでは、プラズモン金属ナノ粒子による光の吸収によって、金属ナノ粒子内の緩く結合した価電子が加熱され、電子ホットガスが発生する。この電子ホットガスがランダウ減衰メカニズムによってデフェージング及びデコヒーレンスすることで、電気的なホットキャリア、すなわち熱電子や正孔が生成される。概念的には、プラズモンナノ構造は、太陽電池に直接使用することができるが、光によって生成される電子と正孔とのペアは、短命(数fs)である。このため、デバイスから電流を引き出すには問題がある。そこで、電荷分離の寿命を延ばすために、電荷キャリアを半導体に移すなどして、反応が起こる空間的に離れた部位に電荷キャリアを閉じ込めることができる。熱電子は、電子輸送層(例えば、TiO)の伝導帯に注入するのに十分なエネルギを有しており、これにより寿命が大幅に延長される。
【0008】
従って、ダイレクトプラズモン技術に基づく光電池(太陽電池)デバイスを作製するために、熱電子が電子輸送層(ETL)材料に移動されるとともに、熱正孔が正孔輸送層(HTL)に移動される。その後、電荷は、導電性電極によって取り出される。ETLの伝導帯とHTLの価電子帯とのエネルギ差は、電池の最大開路電圧を定義する。
【0009】
更に、プラズモンナノ材料は、光吸収体として使用した場合、光断面積が大きいため、他の光吸収体よりも少なくとも10倍以上の光を吸収することができ、設計や配置(屋外及び屋内)に多様性を与えることができる。この新しいメカニズムにより、薄型・高透明・無色の新しいタイプの太陽電池を開発することができる。
【0010】
金属粒子個々のプラズモンプロセスとの干渉が少なく、好ましくは高い透明性も確保するために、金属ナノ粒子層は、通常密ではなく、ナノ粒子は、意図的に準単分子層(sub monolayer)として互いに疎に堆積されることを意味する。このような構成では、電池のETL部分とHTL部分とが接触する可能性があり、光電池デバイス全体の効率を低下させる再結合事象が多発する。界面シャントとも呼ばれるその界面での再結合事象は、熱電子と正孔とが再結合してエネルギを放出し、電極での電荷キャリアの収集を効果的に減少させるプロセスに関する。
【0011】
国際公開第2018/178153号には、導電性透明基板の層と、n型半導体の層と、光を吸収して電荷を生成させるのに用いられる金属ナノ粒子の層と、p型半導体の層と、分子リンカーによって連結されているバックコンタクトとを備えるダイレクトプラズモン太陽電池が開示されている。絶縁層は、n型半導体と、金属ナノ粒子と、p型半導体と、任意でリンカーとを覆っている。しかしながら、再結合事象が低減されないという問題が残されている。
【発明の概要】
【0012】
本発明の1つの目的は、界面電荷再結合(「内部シャント」)を効果的に低減することによって効率を向上させ、組み立てが容易で、安定し、環境に適合し、好ましくは更に高い透明性及び無色性を有する、ダイレクトプラズモン太陽電池用の電荷生成アセンブリ及び超薄型ウェーハ型ダイレクトプラズモン太陽電池を提供することにある。
【0013】
このような太陽電池は、いくつかの非限定的な例を挙げると、自己充電技術、無色の建物統合、ウェアラブル電子機器、家庭内のセンサや電子ガジェットへの電力供給、高効率タンデム太陽電池や光子エネルギアップ変換に適している。
【0014】
このため、第1態様によれば、本発明は、ダイレクトプラズモン太陽電池のための電荷生成アセンブリであって、
電子輸送層(ETL)としてのn型半導体の層と、
金属プラズモンナノ粒子の層と、
正孔輸送層(HTL)としてのp型半導体の層と、
を備え、
電子輸送層と金属プラズモンナノ粒子の層との間に絶縁層を更に備える、電荷生成アセンブリである。
【0015】
ETLと金属ナノ粒子との間に絶縁層を設けることで、ETL層とHTL層との相互作用が抑制され、その界面での再結合現象が回避される。
【0016】
更に、ETLと金属ナノ粒子との間の絶縁層は、電子レベルのピンニングを防ぎ、光電池(太陽電池)の開路電圧を改善する。電子レベルのピンニンングは、2つの界面が接触したときに生じる金属ナノ粒子とn型半導体(ETL)とのフェルミ準位の平衡化に関する。絶縁層は、物理的な障壁を生成し、そのようなことが起こらないようにする。
【0017】
<定義>
「透明」という用語は、ここでは最も広い意味で使用され、物体又は物質が、それを通して見ることができるとき、又はそれが下層の材料の知覚に著しく影響しないときに有する品質を意味する。本明細書で開示する太陽電池の使用目的に応じて、異なる透明度が要求される。例えば、太陽電池が窓ガラス上に組み込まれる場合には高い透明度が望まれ、他の建築材料上に組み込まれる場合には低い透明度が望まれる。
【0018】
層、システム、又はデバイスに関連して、ここで使用される「無色」という用語は、1931年に国際照明委員会(CIE)によって開発されたCIE 1931 RGB色空間を使用して測定されるように、区別可能な色を有さない色中立の層又はデバイスを指す。
【0019】
「セルフアセンブリ」という用語は、前駆体分子が自発的に集合してナノ構造体を形成することを指し、得られる材料の特性を最適化するために、セルフアセンブリプロセスに対するエントロピー制御及び/又は化学制御を行うオプションを含む。
【0020】
<電子輸送層>
「電子輸送層(ETL)」と同じ意味で使用される「n型半導体」という用語は、電子が多数キャリアであり、正孔が少数キャリアである半導体材料を指す。
【0021】
好適なETL材料の例としては、TiO、ZnO、SnO、SrTiO、BrTiO、Sb、ドープZnO(例えばAl:ZnO、In:ZnO)、ドープSb(例えば、Sn-Sb)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、ETL材料は、TiO及びSnOである。
【0022】
好適な実施形態によれば、ETL層は、約200nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは120nm以下、例えば、100nm、80nm、70nm以下の厚さを有する。より好ましくは、ETL層は、透明である。更に好ましくは、ETL層は、透明であり且つ無色である。
【0023】
ETL層の厚さは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定された平均厚さで表される。
【0024】
<金属ナノ粒子>
金属ナノ粒子の層には、紫外から近赤外までの電磁波スペクトル(300-1200nm)として定義される光学範囲において、紫外-可視光吸収及び反射率で測定される光吸収をもたらすものであれば、いかなる金属ナノ粒子も用いることができる。好適な実施形態において、金属ナノ粒子は、球、立方体、三角柱、ピラミッド、ウニ(urchins)等から選択される1以上の形状を有する。
【0025】
好ましくは、前記粒子は、その幾何学的形状に関係なく、200nm以下、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは60nm以下の平均サイズを有する。
【0026】
前記粒子が60nm以下の大きさを有する場合、光の散乱や反射が更に減少するため、前記粒子は、ダイレクト電荷生成装置として特に好適である。これは、プラズモン共鳴減衰からの電荷形成が最適である一方、多数の電気キャリア(すなわち、熱電子及び正孔)が、ETL及びHTLに対応する輸送層に注入されるのに十分なエネルギを有するからである。本発明に係る粒子サイズは、動的光散乱(DLS)により評価される。
【0027】
金属ナノ粒子は、好ましくは、銅、金、銀、又はアルミニウムのナノ粒子から選択される。より好ましくは、金属ナノ粒子は、銀ナノ粒子である。
【0028】
ナノ粒子の層は、個々のナノ粒子のプラズモン効果に低い干渉を有するために、ナノ粒子が互いに疎に、好ましくは互いに少なくとも3nmの距離で位置する準単分子層として形成されている。
【0029】
好ましくは、無色又は高い透明性を有する光電池システムを得るために、準単分子層におけるナノ粒子の濃度は、密な単分子層の10-20%の間である。
【0030】
一実施形態において、ナノ粒子の層は、SEMで測定可能な約15-約100nmの範囲の厚さを有する。これは、層が太陽スペクトル全体の入射光を吸収するという利点を有する。
【0031】
金属ナノ粒子で構成される層の厚さは、SEMによって測定されてもよい。
【0032】
前記実施形態のいずれも自由に組み合わせ可能な好適な実施形態によれば、金属ナノ粒子は、還元剤と安定化剤とを用いて合成される。還元剤の例としては、NaBH、N、アスコルビン酸、ベタニン、ポリオール(例えばエチレングリコール)、ジ-エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールが挙げられる。安定化剤又は成長制限剤の例としては、ベタニン、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル(例えばエチレングリコール)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリオール又はアスコルビン酸が挙げられる。好適な実施形態において、アスコルビン酸は、安定化剤として使用される
【0033】
<正孔輸送層>
本明細書において「正孔輸送層(HTL)」と同じ意味で使用される「p型半導体」という用語は、正孔が多数キャリア、すなわち正電荷のキャリアであり、電子が少数キャリアである半導体材料を指す。
【0034】
好適なHTL材料の例としては、NiO、CuXO(Xは、例えばCr、B、Al、Ga、In、Sc、Fe)、PEDOT.PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート)、Spiro:OMeTAD(2,2',7,7'-テトラキス[N,N-ジ(4-メトキシフェニル)アミノ]-9,9'-スピロビフルオレン)、PTAA(ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル]アミン)及びそれらの組合せである。好ましくは、HTL材料は、Spiro:OMeTAD、PEDOT:PSS及びPTAAである。
【0035】
好適な実施形態によれば、HTL層は、約700nm以下、好ましくは400nm以下、より好ましくは150nm以下、例えば120nm、100nm、50nm以下の平均厚さを有する。より好ましくは、HTL層は、透明である。更に好ましくは、HTL層は、透明であり且つ無色である。
【0036】
HTL層の厚さは、SEMによって測定されてもよい。
【0037】
<絶縁層>
絶縁層は、太陽スペクトルにおいて光吸収が実質的に無く、太陽スペクトルにおいて電荷を生成する能力がない層である。好適な実施形態において、絶縁層は、価電子帯と伝導帯との間のエネルギ差が大きく、すなわちバンドギャップが大きく、電気伝導性がないか又は非常に低い材料で構成されている。伝導帯端は、真空から3.5eV以下、価電子帯は、真空から6.5eV以上であることが望ましい。
【0038】
一例として、絶縁層は、SiO、Al、ZrO、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、有機リン酸塩(C2n+1-PO(OH))などで作製することができる)、アミノ-有機リン酸塩(HN-C2n-PO(OH))、チオール-有機リン酸塩(HS-C2n-PO(OH))、有機カルボキシレート(C2n+1-CO(OH))、アミノ有機カルボキシレート(HN-C2n+1-CO(OH))、及びチオール-有機カルボキシレート(HS-C2n+1-CO(OH))が挙げられる。
【0039】
好適な実施形態において、絶縁層は、金属ナノ粒子に選択的に結合する官能基(例えば、-NH(一級アミン)、-NRH(二級アミン)、-SH、-SCN、-CN、ニトリル、-OH、アルケン、アルキンなど)を含む材料で作製される。前記成分の例として、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、トリエトキシ(3-チオシアナトプロピル)シラン;3-シアノプロピルトリエトキシシラン、4-(トリメトキシシリル)-ブチロニトリル、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、有機リン酸塩(C2n+1-PO(OH))、アミノ-有機リン酸塩(HN-C2n-PO(OH))、チオール-有機リン酸塩(HS-C2n-PO(OH))、有機カルボキシレート(C2n+1-CO(OH))、アミノ有機カルボキシレート(HN-C2n+1-CO(OH))とチオール-有機カルボキシレート(HS-C2n+1-CO(OH))が挙げられる。これらの材料を使用すると、金属ナノ粒子が絶縁層の表面に付着して固着することができる。これにより、粒子の移動が抑えられ、プラズモン特性の喪失につながる粒子のクラスター化及び/又はシンタリングが形成されることが回避される。更に、使用するナノ粒子の数及び堆積技術に基づいて、金属ナノ粒子間の距離及び金属ナノ粒子とETL層との間の距離を制御することができる。
【0040】
好ましくは、絶縁層は、10nm以下、より好ましくは3nm以下、更に好ましくは1nm以下、0.5nm以上の厚さを有する。絶縁層の厚みが10nm以下である場合、金属ナノ粒子層からETLへ熱電子が効率良く移動することができる。絶縁層の厚さが0.5nm未満である場合、絶縁効果が得られない可能性がある。
【0041】
<他の実施形態>
別の実施形態によれば、p型半導体、金属ナノ粒子、及び/又は、絶縁層は、分子リンカーによって共有結合されている。分子リンカーの要件は、良好なπ共役特性、剛性、及び平面性のため、優れた電子結合を提供することである。好ましくは、各成分に対する選択的な反応性基、すなわちカルボン酸又はホスホン酸(p型半導体への配位)及びアミン又はチオール(ナノ粒子への配位)を有する分子が使用される。好適な分子リンカーの例としては、国際公開第2018/178153号に開示されているものが挙げられ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
<光電池デバイス>
更なる態様において、本発明は、電子輸送層、金属ナノ粒子の層、及び正孔輸送層が2つの導電性基板に挟まれている、上述した電荷生成アセンブリを備えるダイレクトプラズモン光電池デバイスに関する。
【0043】
2つの導電性基板は、同じであっても異なっていてもよく、例えば、片面に導電層を有する透明なガラス材料、又は導電性ポリマーで作製されてもよい。透明ガラス材料の好ましい例としては、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素化スズ酸化物(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、又はインジウムドープ酸化亜鉛(IZO)が挙げられる。同様に、導電性ポリマー基板の好ましい例としては、片面に導電層を有するポリマー基板、又は、導電性ポリマーを内在する導電性ポリマー材料で構成される基板、例えば、導電性熱可塑性複合材料で構成される基板のいずれかであってもよい。
【0044】
本発明に係る光電池デバイスの構造の一例は、金層などの導電性材料で構成される「下」層と、下層に対する対極として機能する「上」層とを備える。上層は、透明太陽電池の場合には、FTOガラスなどの導電性透明基板である。電荷生成アセンブリは、HTL層が金で構成される下層に接触するとともにETL層が透明な上層に接触するように、2つの導電層に挟まれる。このような構造において、下層は、アノードとして機能し、上層は、カソード層として機能する。
【0045】
また、前記構造は、HTL層が「上」の透明導電層と接触し、ETL層が「下」の導電層と接触する逆セルに対応する。
【0046】
本発明に係る「上」層とは、太陽光などの光源に最初に接触する層を意味する。
【0047】
好適な実施形態において、ダイレクトプラズモン光電池デバイスは、ダイレクトプラズモン太陽電池である。
【0048】
上述したような構造を使用することによって、400nm未満の厚さを有する光電池デバイス(例えば、太陽電池)を実現することができる。当該光電池デバイスは、透明、半透明、及び/又は無色の表面として実現されることができ、かさ増しや外観を大幅に変更せずに他の建物要素に組み込むことができる。
【0049】
<電荷生成アセンブリの製造方法>
別の態様において、本発明は、ダイレクトプラズモン太陽電池用の電荷生成アセンブリを製造する方法であって、
a)電子輸送層(ETL)上に絶縁層を堆積させるステップと、
b)前記絶縁層上に、金属ナノ粒子を担持させて金属プラズモンナノ粒子の層を形成するステップと、
c)前記金属プラズモンナノ粒子の層を正孔輸送層(HTL)でコーティングするステップと、
を含む、方法に関する。
【0050】
好適な実施形態によれば、絶縁層は、当該絶縁層が形成される溶液中にETL層を浸漬することによって堆積される。
【0051】
更に好適な実施形態によれば、金属ナノ粒子は、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ドロップキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、原子層堆積、スパッタリング、蒸着、又は絶縁層上に準単分子層を形成できる他の方法によって絶縁層上に担持される。より好ましくは、インクジェット印刷が使用される。
【0052】
更に好適な実施形態によれば、HTLは、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ドロップキャスト、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、原子層堆積、スパッタリング、蒸着、又は連続的なHTL層の形成を可能にする任意の他の方法によって金属ナノ粒子の層上に担持される。より好適な実施形態によれば、HTL層は、スピンコーティングによって堆積される。
【0053】
前記提示された方法は、いずれも当業者に周知であり、過度の負担なく実施することが可能である。
【0054】
<光電池デバイスの製造方法>
更なる態様において、本発明は、上述したような電荷生成アセンブリを使用することによって、ダイレクトプラズモン光電池デバイス、より具体的にはダイレクトプラズモン太陽電池を製造する方法であって、
a1)導電性基板が、上述のステップa)の前に電子輸送層で導電性基板をコーティングするステップと、
d)上述のステップc)の後に、更なる導電性基板を正孔輸送層上にコーティングするステップと、
を含む、方法を提供する。
【0055】
好適な実施形態において、ステップa1)は、噴霧熱分解によって実行される。更に好適な実施形態において、ステップd)は、アセンブリの残りの部分上の導電性基板(バックコンタクト)の蒸着によって実行される。
【0056】
<電池の使用>
更なる態様において、本発明は、電荷生成アセンブリ又は光電池デバイス、特に、上述した実施形態のいずれか1つに係る太陽電池、又は上述した方法のいずれか1つに従って製造されたデバイスを備える建物要素に関する。
【0057】
好適な実施形態によれば、建物要素は、窓、屋根要素、壁要素、又は、他の構造的又は機能的要素から選択される。
【0058】
更に別の態様において、本発明は、電荷生成アセンブリ又は光電池デバイス、特に、上述した実施形態のいずれか1つに係る太陽電池、又は上述した方法のいずれか1つに従って製造されたデバイスを備える民生用電子機器に関する。
【0059】
好適な実施形態によれば、前記民生用電子機器は、センサ、電子ペーパー、携帯電話、タブレット、時計、スマートデバイス、センサ、ビデオカメラなどの、日常的な使用を目的とし、好ましくは低い電力消費を必要とするあらゆる機器に関する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
本発明の異なる態様及び実施形態は、以下の説明及び実施例において、その図面を参照しながら、より詳細に説明される:
図1a】比較例として使用される、絶縁層を有しないプラズモン太陽電池の概念設計を概略的に示す図である。
図1b】本発明の好適な実施形態に係る、絶縁層を有するプラズモン太陽電池の概念設計を模式的に示す図である。
図2】本発明の好適な実施形態に係るプラズモン太陽電池に使用される銀ナノ粒子の光吸収スペクトルを示す図である。
図3】本発明の好適な実施形態に係る、絶縁層を有する太陽電池のI-V曲線である。
図4】絶縁層を有しない太陽電池のI-V曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
<実施例>
実施例1 金属ナノ粒子の合成
銀金属ナノ粒子は、例えばAgNOなどのそれぞれの金属前駆体、還元剤、及び安定化剤から合成された。還元剤及び安定化剤の例は、本発明において前述した。全ての試薬は、シグマ-アルドリッチ/メルク(Sigmam-Aldrich/Merck)から購入し、分析的な品質であった。
【0062】
本発明者らは、ナノ粒子の形状及びサイズの分布を最適化するために、成分の濃度、溶媒、反応温度、及び反応時間などの選択されたパラメータを変更しながら、参照により本明細書に組み込まれるドン(Dong)ら,2015に示されるプロトコルに従った。
【0063】
ベタニン及び誘導体で安定化されたAgナノ粒子(NPs)(Bts-Ag NPs)を調製するために、2つのボトムアップ合成手順が採用された。Bts-Ag NPsは、天然ベタニンのアルカリ加水分解を介して、自動マイクロ流体反応器(アジアシリンジポンプ社(Asia Syringe Pump, Syrris Ltd.,),ロイストン,英国)で合成される。多目的遺伝的アルゴリズムによる最適化により、Ag NPsは、サイズが均一で、光吸収が狭いことが確認されている。例えば、フェルナンデス(Fernandes)らは、動的光散乱(DLS、ナノス(NanoS),マルバーンパナリティカル社(Malvern Panalytical Ltd.,),マルバーン,英国)及び原子間力顕微鏡(AFM、ナノサーフ社(Nanosurf AG),リースタル,スイス)により測定した40-45nmのサイズ及び405nmの中心吸収(USB-4000分光計に接続したDH-2000-BAL, オーシャンオプティクス社(Ocean Optics Inc),ラルゴ,フロリダ,米国)の粒子を得た。
【0064】
代替案として、Bts-Ag NPsは、ビートルート(beetroot)から抽出した天然ベタニンの酸又はアルカリ加水分解を介して、マイクロ波合成反応器(モノウェーブ50,アントンパール社(Anton Paar GmbH),豪国)で合成される。この方法は、非常に高速で、且つ、高い再現性を有するBtg-Ag NPsを高収率で生成する。ナノ粒子は、多分散であり、太陽スペクトルによく適合する。この方法では、動的光散乱(DLS、ナノス,マルバーンパナリティカル社,マルバーン,英国)及び原子間力顕微鏡(AFM、ナノサーフ社,リースタル,スイス)により測定した20-200nmのサイズ及び350-720nmの光吸収(USB-4000分光計に接続したDH-2000-BAL,オーシャンオプティクス社,ラルゴ,フロリダ,米国)の粒子が得られる。
【0065】
リンカーを使用する場合、Agナノ粒子懸濁液のpHを4-5に調整し、-NHを介してAg表面に固定するpABA(シグマ-アルドリッチ)で粒子を被覆する。
【0066】
同様に、金、銅、及びアルミニウムのナノ粒子は、当業者にとって明らかなように、それぞれの金属前駆体、例えば銅ナノ粒子についてはCuSO又はCuCl、金ナノ粒子についてはHAuClから得ることができる。
【0067】
得られた銀、金、及び銅のナノ粒子は、開示された装置で試験される。
【0068】
実施例2 半導体ナノ粒子
アナターゼ、3nm及び20nmの粒子サイズを有するTiOのナノ粉末は、ザッハトルベンケミー社(Sachtleben Chemie GmbH),デュイスブルグ,独国から得られた。
【0069】
アナターゼ、20nmの粒子サイズを有するTiOのナノ分散液は、ナイヤコールナノテクノロジー社(NYACOL Nano Technologies, Inc.)ナノテクノロジーズ社,アシュランド,米国から得られた。
【0070】
また、アナターゼは、シグマ-アルドリッチからの9mlのエタノール中のTi(IV)ジイソプロキソイドビス(diisoproxoidebis)(アセチルアセトナート)及び0.4mlのアセチルアセトンの噴霧熱分解によって製造された。
【0071】
HTL層として使用されるSpiro:OMeTADは、オシラ社(Ossila Ltd),シェフィールド,英国から得られた。
【0072】
実施例3 絶縁層
ZrO層は、シグマ-アルドリッチから購入したDI-水の中のZrOCl八水和物の溶液から得た。
【0073】
実施例4 ダイレクトプラズモン光電池 太陽電池
図1は、絶縁層を有さない(図1a)及び絶縁層を有する(図1b)、このケースではZrO2である典型的なダイレクトプラズモン太陽電池の構成を示す図である。絶縁層4は、電子輸送層1(TiO)と銀ナノ粒子2の準単分子層との間に配置されている。
【0074】
銀ナノ粒子の反対側には、Spiro:OMeTADで構成された正孔輸送層3(HTL)がある。
【0075】
前記構造は、2つの導電性基板、すなわち、HTL層上の金バックコンタクト5と反対側のFTOガラス6との間に挟まれており、TiO層1と接触している。
【0076】
走査型電子顕微鏡(SEM)のイメージング(図2-3)は、層の厚さを評価するために行われた。HTL層3は、約518.5nmの厚さを有し、ETL層1は、約164.6nmの厚さを有していた。ZeO層4は、1nm未満であるため、解像度の限界からSEMで画像化できなかったが、X線光電子分光法(XPS)及び太陽電池性能の向上によりその存在を確認することができた。
【0077】
太陽電池は、図2の光吸収スペクトルから分かるように、400-500nmの間の光吸収に等しい、20-35nmの範囲のサイズを有する光吸収体として銀ナノ粒子を含んでいた。
【0078】
本実施形態に係る太陽電池は、以下の方法で得られた:
【0079】
a1)FTOガラスを14mm×24mmのサイズに切断した。これらの寸法は、最終的な蒸着ステップ及び測定のために、ガラス片のある程度の許容範囲を与えるために選択される。切断後、化学エッチングによってガラスをパターン化した。予め切断された各基板の長辺は、両端部を約2mm覆うようにテープで固定する(3M-マジックテープ(登録商標)又はカプトンを使用)。次に、FTOを亜鉛パウダで覆う(必要なのはひとつまみのみ)。その後、2M HClをFTOガラスに滴下し、エッチング反応を開始する。約2分後、エッチングが完了し、エッチング液を水で洗い流す。更に、2%のHellmanex(登録商標)液(純水で希釈)で30分間超音波洗浄を行う。その後、DI水で15分間超音波洗浄を行った後、IPAで15分間洗浄する。洗浄工程は、15分間のUV-オゾン処理工程で終了する。
【0080】
その後、9mlのエタノール中の0.6mlのTi(IV)ジイソプロキソイドビス(アセチルアセトナート)及び0.4mlのアセチルアセトンの溶液を、噴霧熱分解工程のために準備する。予め切断、洗浄、エッチングした基板を噴霧熱分解ホットプレート上に載せ、別のガラスピースで約3mm覆う。ホットプレートは500℃に設定され、この温度で30分間保持した後、蒸着を開始する。この工程の後、1つの完全なサイクルが終了するまで噴霧が行われる。少なくとも5サイクルの噴霧が必要である(約18mlの溶液)。噴射終了後、基板を500℃で30分間放置してアニールし、その後冷却する。このようにして、FTOガラス上に成膜されたTiOのETL層が得られる。
【0081】
ETL層(TiO)上にZrO絶縁層を以下のように堆積させる:前の工程からのアセンブリをUV-オゾンで20分間洗浄した。その後、TiO膜で構成されるアセンブリを、DI-水の中の20mMのZrOCl八水和物の溶液(200mL中1.289g)中に10分間浸漬した後、前記膜をDI-水ですすぎ、エアーガンを用いて穏やかに乾燥し、最後に空気中においてホットプレートで180℃、1時間アニールした。
【0082】
その後、金属ナノ粒子の層を絶縁層上に担持させる。より具体的には、0.8mlのグリセリン、8.2mlのHO、0.1mlのAgNO、及び0.5mlのクエン酸ナトリウムをマイクロ波管内で混合し、Ag NPsを合成した。95℃で30分後、Ag NPsの溶液を得た後、遠心分離機により、14.8Krpmで20分間精製した。その後、NPsを2mlのHOに再分散させた。
【0083】
更に、0.05mlのHNO(0.1M)を1mlのAg NPsと混合し、約0.1mlの混合物を分離フィルムに20-30分間ドロップキャストした。DI-HOを使用して、FTO/TiO/ZrO/Ag NPs膜を概ね洗浄し、Arガスを使用して乾燥した。
【0084】
c)Spiro-OMeTADを正孔輸送材料として使用した。0.04-0.05mlのSpiro溶液(180mgのSpiro-OMeTAD、1mlのクロロベンゼン、16.5μlのt-ブチルピリデン、11.3μlのLi-TFSI)を使用して、3000rpmで30秒間スピンコーティングを行った。フィルムは、暗所でSpiro層を酸化させるために一晩放置した。
【0085】
d)最後に、太陽電池のバックコンタクトとして、80nmの金をHTL層上に蒸着させた。蒸着工程は、ライカ(Leica)の装置を用いて行った。
【0086】
この手順に従って、図1bに示すような太陽電池を得た。
【0087】
同様にして、絶縁層を堆積させず、金属ナノ粒子をTiO層に直接担持させた、図1aに示したような比較例の太陽電池を得た。
【0088】
実施例5 本発明に係る絶縁層を有する光電池 太陽電池の効率の評価
図1a及び図1bの太陽電池を、400nm以下の波長を除去するためにUVフィルタの存在下で、標準1SUN照明(AM1.5G条件において、1SUNは100mW/cmに等しいと定義される)を使用してソーラーシミュレータでテストした。図3及び図4には、本発明に係る絶縁層を有する太陽電池と、比較例として用いた絶縁層を有しない太陽電池のI-V曲線(電流密度対電圧)がそれぞれ示されている。また、平均性能、すなわち光電流(Jsc)、開回路電圧(Voc)、及びフィルファクター(FF)もレポートされている。
【0089】
図3及び図4から、絶縁層の存在は、全ての太陽電池パラメータ(光電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、及び充填率(FF))の改善により、セルの全体効率を高めることが分かる。絶縁層の制御は、前方及び後方のIV-スキャン間の偏差、すなわち太陽電池のヒステリシスを低減するために不可欠である。
図1a
図1b
図2
図3
図4
【国際調査報告】