(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】円偏波アンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/26 20060101AFI20240110BHJP
H01Q 1/36 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01Q9/26
H01Q1/36
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023533810
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 FI2021050813
(87)【国際公開番号】W WO2022117915
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521567022
【氏名又は名称】コアエイチダブリュー セミコンダクター オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カリライネン、アンチ
【テーマコード(参考)】
5J046
【Fターム(参考)】
5J046AA07
5J046AB07
5J046PA04
(57)【要約】
本発明は、基部平面を画定する有限導電性基部板と、基部平面に対して平行な上部平面を画定するS字形状上部とを備える円偏波アンテナに関するものであり、上部平面は、基部平面からゼロではない距離を有しており、S字形状上部の両端は、基部板に、またはアンテナ給電部に結合された端部接点を有する。アンテナは、シングルエンドで、または差動的に給電されて、互いに位置合わせされた少なくとも一対の電気および磁気ダイポールを生成するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部平面を画定する有限導電性の基部板と、前記基部平面に対して平行な上部平面を画定する、上部として表される上部素子導体と、を含む円偏波アンテナであって、前記上部平面が、前記基部平面からのゼロではない距離を有しており、および、前記上部の2つの端が端部接点を有しており、
前記上部が、少なくとも1つのS字形状上部を備えており、および、前記S字形状上部の各端部接点が、前記基部板およびアンテナ給電部の一方に結合され、ならびに、
前記S字形状上部は、シングルエンドで、または差動的に給電されて、互いに位置合わせされた電気および磁気ダイポールの対を生成するように構成されている、円偏波アンテナ。
【請求項2】
前記S字形状上部は、前記S字形状上部が等しい大きさおよび形状の2つの半分部分にその中点において分割され得るように対称であり、
前記S字形状上部の2つの端間の仮想直線から最も離れている、前記半分部分それぞれの内縁上の基準点の最小距離は、前記仮想直線から垂直に測定された場合、前記S字形状上部の前記2つの端間の前記仮想直線の長さの少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%である、請求項1に記載の円偏波アンテナ。
【請求項3】
前記基部板が本質的に連続板であり、前記基部板の面積は、前記上部平面と同一平面上の仮想有限上部板の面積の70%と130%との間、好ましくは85%と115%との間、最も好ましくは略115%であり、前記仮想有限上部板は、前記基部板と同じ基本形状を有しており、前記上部を備えており、および、前記上部が収まる最小面積を有している、請求項1または2に記載の円偏波アンテナ。
【請求項4】
前記上部と前記基部板との間の容積が誘電体材料で満たされている、請求項1~3のいずれか1項に記載の円偏波アンテナ。
【請求項5】
前記上部と前記基部板との間の容積が、空気などの気体、または真空で満たされている、請求項1~3のいずれか1項に記載の円偏波アンテナ。
【請求項6】
前記アンテナがダイポールアンテナである、請求項5に記載の円偏波アンテナ。
【請求項7】
前記S字形状上部のそれぞれの端と中点とを接続する仮想直線から最も離れている、前記S字形状上部の前記半分部分それぞれの中間部分における線幅が、前記S字形状上部の他の部分における線幅よりも広い、請求項6に記載の円偏波アンテナ。
【請求項8】
前記アンテナが、対称の2つのS字形状上部であって前記2つのS字形状上部の中点において垂直に互いに交差する対称の2つのS字形状上部を備えた上部を備える円偏波ホイヘンスアンテナであり、前記対称の2つのS字形状上部は、送信および受信両方のために前記2つのS字形状上部の間に90°の位相シフトが与えられるように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の円偏波アンテナ。
【請求項9】
前記2つのS字形状上部は互いに相似な形状を有しており、および前記2つのS字形状上部は前記上部の中心において互いに直接、結合されている、請求項8に記載の円偏波アンテナ。
【請求項10】
前記2つのS字形状上部は、それ以外の点で互いに相似な形状を有している一方、第2のS字形状上部は、前記上部平面の下にあるが前記基部板の上にある、前記誘電体材料内の中間層上に凹ませられた中央部分を備えており、前記中央部分は、ビアにより、上層上にある前記第2のS字形状上部の残りに結合されている、請求項4に従属する請求項8に記載の円偏波アンテナ。
【請求項11】
前記S字形状上部の中点と、前記S字形状上部の前記端部接点それぞれとの間の位置において前記S字形状上部の各半分部分から延びている少なくとも1つの支持脚をさらに備えており、前記少なくとも1つの支持脚は前記上部と前記基部平面との間の機械的支持を与えるが、前記少なくとも1つの支持脚は、ギャップにより、前記基部板から電気的に切り離されている、請求項5に従属する請求項6~9のいずれか1項に記載の円偏波アンテナ。
【請求項12】
前記アンテナは、単一のアンテナ給電部により給電されるように構成され、前記2つのS字形状上部は互いに異なる大きさを有しており、よって、前記2つのS字形状上部内の電流は、互いに対して90°の位相シフトを有しており、および、前記2つのS字形状上部からの放射電力が等しい、請求項8~11のいずれか1項に記載の円偏波アンテナ。
【請求項13】
前記アンテナが、誘電体シェル内部に構成されている、請求項1~12のいずれか1項に記載の円偏波アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナに関する。特に、本発明は、ブルートゥース・ロー・エナジー(BLE)方向検出(DF)、全地球航法衛星システム(GNSS)、およびモノのインターネット(IoT)デバイスなどのアプリケーションに好適な、小形円偏波ダイポールおよびホイヘンスアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
小形アンテナは、アンテナが送信し、または受信することが意図されている信号の波長よりもはるかに短い、電気的に小形の、または電気的に短いアンテナを指す当該技術分野において使用されている。
【0003】
当該技術分野において知られているように、長さ2hを有するアンテナは、λが自由空間波長であるときに、2πh/λ<<1である場合、電気的に短い。あるいは、アンテナは、その最大寸法がλ/π≒0.32λ未満である場合に、小形アンテナとして表され得る。
【0004】
円偏波(CP)アンテナを備えた無線システムは、無線信号方向を中心とした、送信および受信アンテナの回転に影響されない。たとえば、CP無線システムは、地球電離圏内の電波のランダムな回転にかかわらず、高信頼度の宇宙・地球間通信を可能にする。CP無線システムは、地面、壁、および他の障害物からの奇数の反射に対しても耐性がある。当該技術分野において知られているように、円または楕円偏波電波の反射はその利き手(handedness)を変化させ、よって、受信アンテナにおける大きな偏波不整合をもたらし、および、受信電力は一般に、著しく低減させられる。反射に対する耐性は、正しい信号方向が望まれる方向検出(DF)アプリケーションにおいて有益である。受信電力は、信号の偏波が楕円状であり、およびアンテナ偏波ベクトルが円である場合、受信信号の、利き手がちょうど逆の円偏波(exact opposite-handed circular polarization)の場合にゼロである。受信電力は、信号の偏波が楕円状であり、および、偏波楕円およびアンテナ偏波ベクトルが、主軸が直交する、利き手が逆の楕円(opposite-handed ellipses)である場合にもゼロである。
【0005】
全方向において理想的なCPを備えた最も単純なアンテナは、互いに位置合わせされた電気的に短い電気および磁気ダイポールであって、それぞれからの放射電力が等しく、および、これらの2つのダイポール間の位相シフトが90°であるダイポールを有する。この組み合わせは無指向性放射パターンを生成し、および偏波は全方向において円状である。利き手は、+90°または-90°のいずれかであり得る位相シフトにより、定められる。
【0006】
従来、そうした組み合わせは、電気的小形ヘリカルアンテナとして知られており、それは、ワイヤダイポールおよびループにより、形成される。ワイヤダイポールおよびループが、同じワイヤを共有し、および、電流が第1モード付近で共振している場合、電気および磁気ダイポールの位相シフトは自動的に90°になる。直線およびループ部品からの放射電力が同じであり、および放射界の向きが同じであるように寸法を設計することにより、結果は、最も単純なCPダイポールアンテナに近くなる。ヘリカルアンテナは、小型化、低Q化、および偏波純度の向上のために、多線巻きヘリカルアンテナ(multi-filar helical antenna)に拡張され得る。
【0007】
しかし、そうしたヘリカルアンテナは、それらが偏波純度の点で、近傍の部品、プリント回路基板(PCB)等に対する耐性を有するものでないので、ブルートゥース・ロー・エナジー(BLE)方向検出(DF)、全地球航法衛星システム(GNSS)、およびモノのインターネット(IoT)デバイスのアプリケーションに必要な小形電子デバイスに一体化されるのに好適でない。
【0008】
単純な単一指向性CPアンテナは、2つの交差する電気および磁気ダイポールにより、理解され得るいわゆるホイヘンスアンテナである。同じ位相を持つ交差する電気および磁気ダイポールは、(「グリーンのアンテナ」または「P×Mアンテナ」としても知られている)単一指向性直線偏波(LP)アンテナを作り出し、および、放射方向を中心として90°回転させられ、90°の位相シフトが与えられたこれらのアンテナのうちの2つを組み合わせることにより、ホイヘンスアンテナが形成される。ホイヘンスアンテナを作り出すための代替的なやり方は、第2のアンテナの各軸が90°回転させられ、およびアンテナに90°の位相シフトが与えられるように前述の2つのCPダイポールアンテナを組み合わせることである。ホイヘンスアンテナは通常、電気的小形ヘリカルアンテナとほぼ同じ最大寸法を有するが、最大指向性は2倍であり、すなわち、3dB大きい。
【0009】
[関連技術の説明]
中国特許出願公開第109378577号明細書は、放射ユニット、金属グランド、および2つの誘電体基板を備えた、小型化された広帯域交差ダイポールアンテナを開示している。放射ユニットの2つのダイポールアームは、環状位相シフタを介して90°に配置されている。
中国実用新案第206040960号明細書は、電気ダイポールアンテナを備えた上中部基部板、および磁気ダイポールを備えた下床部基部板を備えたホイヘンスソースアンテナを開示している。電気ダイポールの外端は、S字形状およびZ字形状を形成するように屈曲している。
米国特許出願公開第2004/090371号明細書は、誘電体材料上に配置された半渦巻き状の構成の4つのアンテナ素子を備えた円偏波アンテナを開示している。
米国特許出願公開第2002/126049号明細書は、誘電体基板の表面上に形成された2つの別個の4分の1波長の放射素子を備えたアンテナ素子を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
目的は、コンパクトなデバイス、たとえばBLE DFタグまたはIoTデバイスを作り出すために電子部品と一体化されるのに好適な小形円偏波アンテナを提供するという課題を解決するような方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の好ましい実施形態は従属クレームに開示されている。
【0012】
本発明は、基部板として表される有限基部導体、およびアンテナ給電部の一方にそれぞれが接続された、「S」字形状の上部素子の端部接点を備えた有限基部導体上の、第1の「S」字形状の上部素子導体としてアンテナを形成するという考えに基づいている。給電部およびアンテナ給電部との語は、アンテナをRF回路に結合するために使用される1つまたは複数の点を表す。(複数の)給電部/(複数の)アンテナ給電部は、アンテナが送信に使用される場合にRF回路からアンテナに給電するために、および、アンテナが受信に使用される場合に、アンテナにより受信されたRF信号をRF回路に供給するために使用され得る。端部接点は、基部導体/基部板に接続される場合、接地接点とも表され得る。本発明は、90°回転させた別の「S」字形状の上部素子導体を第1の「S」字形状の上部素子に追加し、および、第1の上部素子と比較して90°位相シフトを第2の上部素子に与えることにより、単一指向性放射パターンを有する円偏波ホイヘンスアンテナにさらに拡張される。
【0013】
意図された放射方向がアンテナの上方である場合、電磁界はアンテナの下方ではほとんど全く存在しないので、90°位相シフトを第2の上部素子に与えることにより、結果として得られる単一指向性CPアンテナが、その円偏波放射パターンを維持しながら、下にある誘電体または導電性表面の非常に近くに配置されることが可能になる。
【0014】
第1の態様によれば、基部平面を画定する有限導電性基部板と、上記基部平面に対して平行な上部平面を画定するS字形状上部とを備える円偏波アンテナが提供される。上記上部平面は、上記基部平面からのゼロではない距離を有している。上記S字形状上部の両端は、上記基部板またはアンテナ給電部に結合された端部接点を有している。上記アンテナは、シングルエンドで、または差動的に給電されて、互いに位置合わせされた電気および磁気ダイポールの少なくとも1つの対を生成するように構成される。
【0015】
第2の態様によれば、上記少なくとも1つのS字形状上部は、上記S字形状上部が等しい大きさおよび形状の2つの半分部分にその中点において分割され得るように対称である。上記S字形状上部の2つの端間の仮想直線から最も離れている、半分部分それぞれの内縁上の基準点の最小距離は、上記仮想直線から垂直に測定された場合、上記S字形状上部の上記2つの端間の上記仮想直線の長さの少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%である。
【0016】
第3の態様によれば、上記基部板が本質的には連続板であり、上記基部板の面積は、上記上部平面と同一平面上の仮想有限上部板の面積の70%と130%との間であり、好ましくは85%と115%との間であり、最も好ましくは約115%である。上記仮想有限上部板は上記基部板と同じ基本形状を有している。上記仮想有限上部板は、上記上部を備えており、および、上記上部が収まる最小面積を有している。
【0017】
第4の態様によれば、上記上部と上記基部板との間の容積が誘電体材料で満たされている。
【0018】
第5の態様によれば、上記上部と上記基部板との間の容積が空気などの気体、または真空で満たされている。
【0019】
第6の態様によれば、上記アンテナがダイポールアンテナである。
【0020】
第7の態様によれば、上記S字形状のそれぞれの端と上記中点とを接続する仮想直線から最も離れている、上記S字形状のダイポールアンテナの半分部分それぞれの中間部分における線幅が、上記S字形状の他の部分における線幅よりも広い。
【0021】
第8の態様によれば、上記アンテナが、対称の2つのS字形状であって上記2つのS字形状の上記中点において垂直に互いに交差する対称の2つのS字形状を備えた上部を備える円偏波ホイヘンスアンテナである。上記対称の2つのS字形状は、送信および受信両方のためにも上記2つのS字形状の間に90°の位相シフトが与えられるように構成されている。
【0022】
第9の態様によれば、上記上部の上記2つのS字形状は互いに相似な形状を有しており、および上記2つのS字形状上部は上記上部の中心において互いに直接、結合されている。
【0023】
第10の態様によれば、上記ホイヘンスアンテナの上記上部の上記2つのS字形状は、それ以外の点で互いに相似な形状を有しているが、第2のS字形状は、上記上部平面の下にあるが上記基部板の上にある、上記誘電体材料内の中間層上に凹ませられた中央部分を備えており、上記中央部分は、ビアにより、上記上層上にある、上記第2のS字形状の残りに結合されている。
【0024】
第11の態様によれば、空気などの気体で満たされた、または真空である、上記上部と上記基部板との間の容積を備えた上記アンテナは、上記S字形状上部の中点と、上記S字形状上部の上記端部接点それぞれとの間の位置において上記S字形状上部の各半分部分から延びている少なくとも1つの支持脚をさらに備えている。上記少なくとも1つの支持脚は上記上部と上記基部平面との間の機械的支持を与えるが、上記少なくとも1つの支持脚は、ギャップにより、上記基部板から電気的に切り離されている。
【0025】
第12の態様によれば、上記ホイヘンスアンテナは、単一の給電部により給電されるように構成され、上記2つのS字部分は互いに異なる大きさを有しており、よって、上記2つのS字形状内の電流は、互いに対して90°の位相シフトを有しており、および、上記2つのS字形状からの放射電力が等しい。
【0026】
第13の態様によれば、上記アンテナが、誘電体シェル内部に構成される。
【発明の効果】
【0027】
本発明は有利には、無線信号方向を中心とした、アンテナの回転に影響されず、障害物からの奇数の反射に対して耐性があり、および、地球電離圏内の電波の回転により劣化されない高信頼度の宇宙・地球間通信を可能にする、関連した部品との完全な無線システムインテグレーションと両立する構造を備えたコンパクトな電気的小形アンテナを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
以下では、本発明について、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関してさらに詳細に説明される。
【0029】
【
図3a】CPダイポールアンテナの放射パターンを示す。
【
図3b】CPダイポールアンテナの放射パターンを示す。
【
図6a】ホイヘンスCPアンテナの放射パターンを示す。
【
図6b】ホイヘンスCPアンテナの放射パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、「S字形状」および「S字形状の」との語は、2つの端点を接続する、「S字」または「Z字」に似た対称形状を表し、S字形状は、共通の、または鏡像化された向きを有する。S字形状は、それが、S字形状の2つの端点を接続すると共にその中点を通って進む仮想直線(100)から反対方向に延びる、等しい大きさおよび形状の2つの半分にその中点で分割され得るように対称である。よって、S字形状は、S字形状の半分部分それぞれが、端点の1つと中点との間にある相似な2つの半分部分に分割され得る。仮想直線(100)から最も離れている、半分部分それぞれの内縁上の基準点(c)の最小距離(b)は、仮想直線(100)から垂直に測定した場合、S字形状の2つの端点間の仮想直線(100)の長さ(a)の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%である。これらの寸法は
図10に示されている。S字形状は、滑らかな曲線、ならびに、角度がつけられた、および、直線の部分を備え得る。
【0031】
図1は、本発明の第1の実施形態による右旋円偏波ダイポールアンテナの構造を示す。このアンテナ設計は主に、任意の好適な周知のプリント回路基板(PCB)技術を使用して実現されるように設計されている。この設計は、円偏波と、導体材料、好ましくは、銅またはアルミニウムなどの金属でできている有限基部板(10)とを有している。本実施形態では、基部板(10)は円形であるが、多角形または楕円形などの任意の好適な形状が適用され得る。基部板(10)は本質的には、基部板内の電流を劣化させない、基部板(10)を通ってアンテナに向かうアンテナ給電部(18)用の1つまたは複数の小開口、および、部品の一体化、パッケージング等に必要な他の小穴以外は、基部平面と表される第1の水平な平面(xy)を形成する連続板である。この例では、アンテナ給電部は誘電体(14)を通るビアとして形成される。基部板(10)はアンテナ用のグランドプレーンとして知られている平面を形成するが、それは必ずしも接地されて、すなわち、信号接地電位に結合されていなくてよい。
【0032】
やはり導体材料でできているS字形状上部(20)は、基部平面に対して平行な、ここでは、上部平面と表される第2の平面上に形成される。基部板(10)、および上部(20)を備える上部平面は、誘電体材料(14)により、分離されている。すなわち、誘電体材料(14)は、基部板(10)と上部(20)との間に挟まれている。
図1に示されている構成では、上部(20)は、端部接点(25)により、その両端において、またはその両端近くで基部板(10)に結合される(25)。図示された実施形態では、差動給電が実現され、よって、アンテナは、誘電体材料を通って延びるビアとして形成された2つのアンテナ給電部(18)を基部板(10)の幾何的中心近くに有している。しかし、シングルエンド給電も可能であり、その場合、単一のアンテナ給電部(18)のみが必要である。基部板(10)は、それぞれの(複数の)アンテナ給電部(18)がS字形状上部に、(複数の)アンテナ給電部(18)を基部板(10)に直接結合することなく、接触させられることを可能にする1つまたは2つの穴(15)を備える。あるいは、アンテナは、S字形状上部の端における、または端近くの2つの端部接点から差動的に給電される場合があり、または、シングルエンド給電がS字形状の一端における、または一端近くの一方の端部接点から実現され得、他端が、他方の端部接点(25)により、基部板に結合される。端部接点(25)が、アンテナに給電するために使用される場合、それは基部板(10)から分離される。本発明によるCPアンテナのための給電手法の代替策について、以下にさらに述べられる。
【0033】
S字形状上部(20)が(シングルエンドの)単一の給電部、または(差動的な)2つの給電部により給電される場合、S字形状上部(20)の中心における極大値、中心の両側における2つのヌル、および端における2つの極大値を有する電流モードが上部(20)内に生成される。この例では、S字形状上部は下にある基部板(10)に、その2つの端における、または2つの端近くの端部接点(25)により結合される。この電流モードは
図2中、S字形状上部(20)上の太字矢印で示され、その矢印の密度は、上部の異なる部分における電流の相対強度を示す。この特定のS字形状により、S字形状上部内のxに向けられた電流成分はすべて、基部板(10)上に描かれた太字矢印で示される、位相ずれ(off-phase)の、基部板(10)内の電流に対して同位相である。これは、y方向における磁気ダイポールモーメントを作り出す全ループ電流を形成する。さらに、基部板内に対応する位相ずれの成分を有しない、S字形状上部が急峻な向き変更をする(the S-shaped top part makes the sharp turns)yに向けられた電流成分が存在している。すなわち、この電流成分は、電気ダイポールモーメントを生成する。併せて、電気および磁気ダイポールモーメントは、y軸に対する無指向性放射パターンを備えた右旋CPダイポールアンテナを作り出す。放射パターンの利き手は、右手の法則で観察される。すなわち、電気ダイポール電流成分が親指に沿っている場合、磁気ダイポール電流成分は、丸められた指の残りに沿って循環する。
図1中に示されたものと比較して、yz平面に対して鏡像化されたS字形状上部は、左旋CPアンテナになる。
【0034】
アンテナの電気的特性に影響をおよぼす誘電体負荷を与えることに加え、基部板(10)と、S字形状上部(20)との間に挟まれた誘電体材料(14)は、アンテナ構造、特にその上部(20)の機械的支持体としての役目を務める。図面に示されるように、誘電体材料は基部板(20)のものと等しい面積を有し得る。アンテナは、アンテナの特性に影響を部分的におよぼし得る誘電体シェル(図示せず)内部にも構成され得る。これは、本明細書中に開示された実施形態すべてにあてはまる。
【0035】
図3aおよび3bは、第1の実施形態によるCPダイポールアンテナの放射パターンを示す。
図3aはCPダイポールアンテナの指向性を示し、および
図3bはCPダイポールアンテナの軸比を示す。上部方向(θ=0°)におけるアンテナの指向性は約3dBである。軸比は、顕著な指向性が存在している方向すべてにおいて円とみなされる。文献では、アンテナは、わずかに楕円の偏波ベクトルを有しているにもかかわらず、その軸比が約3dB以下である場合、円偏波とみなされる。
図1および2のCPダイポールアンテナの放射の利き手は右旋(RH)である。xに向けられたループ電流が逆の方向/位相を有しているが、ダイポール電流が、同じ位相で、なおyに向けられている場合、左旋回(LH)放射が生成される。これは、単に、S字形状上部(20)を鏡像化し、よって、
図1および2に示された、鏡像化されたS字形状の(またはZ字形状の)上部の代わりに、標準的な向きのS字形状のパターンを作り出すことにより、行われ得る。
【0036】
新たなCPダイポールアンテナが、基部板の方向に、すなわち、負のz軸、θ=180°に向けて下方に放射しても、近傍界は基部板(10)により、遮蔽される。一体化された基部板(10)はよって、アンテナの円偏波を劣化させることなく、電子部品、バッテリ等のグランドプレーンとして使用され得る。
【0037】
直線偏波(CP)用のホイヘンスアンテナはその最も単純な形態では、2つのアンテナ、すなわち、交差磁気ダイポールを備えた電気ダイポールである。しかし、そうしたアンテナは、ホイヘンスアンテナ内の電流が90°の位相差を有していなければならないので、ヘリカルアンテナとは対照的に、単一のワイヤで容易に作ることが可能でない。
【0038】
第1の実施形態によるCPダイポールアンテナにおいて使用される原理は、互いに対して、および、所望の単一指向性パターンの放射方向に対して90°回転させた2つのCPダイポールアンテナを配置し、および、90°の位相シフトを備えた電流を得るために90°の位相差でこれらに給電することにより、ホイヘンスCPアンテナを生成するようにさらに適用され得る。第1のS字形状は第1のホイヘンスLPアンテナ用電気ダイポール、および第2のホイヘンスLPアンテナ用磁気ダイポールを提供し、ならびに、第2の形状は第2のホイヘンスLPアンテナ用電気ダイポール、および第1のホイヘンスLPアンテナ用磁気ダイポールを提供する。この組み合わせはホイヘンスCPアンテナを形成する。
【0039】
第2の実施形態は、
図4に示されたホイヘンスCPアンテナである。このアンテナ設計は主に、任意の好適な周知のプリント回路基板(PCB)技術を使用して実現されるように設計されている。このアンテナは、互いに90°回転させており、および中心で互いに交差しており、よって一種の卍字形状を形成する、相互にほぼ相似な2つのS字形状(20a,20b)を上部内に備える。第1の実施形態におけるように、上部のS字形状(20a,20b)は、基部板(10)により、画定される基部平面に対して平行な上部平面に形成される。第1の実施形態におけるように、S字形状(20a,20b)の各端は、下にある有限基部板(10)に、端部接点(25)により結合される。上部の大部分を含む上層は、誘電体材料(14)により、基部板(10)と分離されている。
図1の実施形態と同様に、誘電体材料は、基部板(10)と等しい、(xy平面の方向における)横方向の面積を有し得、その厚さは、基部板(10)と上層内の上部(20)との間の距離を画定し得る。端部接点は、誘電体材料(14)を通って進むビアとして形成され得る。
【0040】
本実施形態では、上部の2つのS字形状(20a,20b)は、互いに電気的に分離されている。2つのS字形状の電気的分離はたとえば、
図4に示されるように、上部平面の下にあるが基部板(10)の上にある、誘電体材料内の中間層において、上記S字形状(20b)のうちの1つの中央部分(20c)を凹ませ、および、この中央部分(20c)をビア(21)により、上層上にある、S字形状(20b)の残りに結合することにより、実現され得る。このホイヘンスCPアンテナの機械的構造は、第1の実施形態による2つのCPダイポールアンテナの組み合わせと同等であると特徴付けられ得る。
【0041】
上部のいずれのS字形状(20a,20b)も
図4に示されるように差動的に給電されてもよく、その場合、各S字形状が2つのアンテナ給電部(18)を有し、またはシングルエンド給電が使用されてもよく、その場合、S字形状部毎に1つのアンテナ給電部(18)が必要である。いずれにせよ、2つのS字形状(20a,20b)には、互いに90°の位相差で給電されることになる。部分的に角のあるS字形状上部の中心におけるストローク(stroke)は、差動アンテナ給電部を互いに特定の距離に近付けることにより、所望のインピーダンスマッチングレベルを実現するために、より狭くなっている。
【0042】
第3の実施形態は、
図5に示されている。このアンテナ設計も主に、任意の好適な周知のプリント回路基板(PCB)技術を使用して実現されるように設計されている。本実施形態は、上部の2つのS字形状が今度は、中心において互いに接合されて単一の二重のS字または卍字形状の上部(20)を形成している点で、
図4に示された第2の実施形態と異なる。別個のS字形状を接合して単一の上部(20)を形成することにより、アンテナの対称性が改善され、これは、誘電体材料(14)内に中間層および余分のビアが必要でなく、それがS字形状内を流れる電流に対してある程度の影響をおよぼすため、第2の実施形態と比較してより良好な軸比、およびより単純な機械的構造をもたらす。上部の複数のS字形状は電気的に接合されるが、それらには互いに90°の位相差で給電されることになる。
【0043】
第2の実施形態と同様に、この第3の実施形態も、第1の実施形態の2つの上部の組み合わせと同等の機械的構造を有していると考えられ得、上部の2つのS字形状が、中心において互いに直接、接合されて、単一の二重のS字形状上部(20)を形成するというさらなる特徴を備えている。
【0044】
図6aおよび6bは、第3の実施形態によるホイヘンスCPアンテナの放射パターンおよび軸比を示す。上部方向(θ=0°)における指向性は、ほぼ6dBであり、それは、第1の実施形態の指向性と比較して約3dB大きい指向性であり、および、反対方向における、すなわち、負のz軸の方向への下向きの放射パターンでは単一のヌル(null)が存在している。ホイヘンスCPアンテナの近傍界は、基部板(10)の反対側で、CPダイポールのものと、同様の大きさである。よって、基部板(10)は、アンテナの円偏波を劣化させることなく、電子部品、バッテリ等のグランドプレーンとして使用され得る。
【0045】
アンテナが誘電体または導電性表面近くに配置された場合、放射パターンの偏波が変化する。これは、アンテナおよび一体化された部品がたとえば、ブルートゥース・ロー・エナジー方向検出(BLE DF)アプリケーション用のタグである場合に生じ得る。波長の数分の一の厚さを有する誘電体表面でも、パターンの偏波に影響をおよぼす。CPダイポールの偏波は誘電体表面近傍で円偏波から楕円偏波に変わるが、アンテナの近傍における導電性表面は放射パターンを直線状に変える。これは、像電流理論(image current theory)から予想される。すなわち、放射界は、左旋または右旋偏波をそれぞれが有する、右旋または左旋の実電流、および鏡像電流(mirror image current)の和であり、上記和は常に直線偏波である。
【0046】
しかし、新たなホイヘンスCPアンテナの場合、導電性表面内に作り出される像電流(image current)は、ホイヘンスパターンが指し示す方向、ここでは、正のz軸に向かう上方向、θ=0°、において寄与しない。基部板は上部よりも導電性表面に近い。すなわち、上部から見た場合、導電性表面は「基部板の後方に」位置する。導電性表面の方向(xy平面、θ=90°)では、放射界はこの場合もまた、アンテナの電流および像電流の和である、すなわち、偏波は直線である。よって、ホイヘンスCPアンテナは、CPダイポールアンテナよりも、誘電体表面上、および導電性表面上で、より良好に作用する。
【0047】
図7は、本発明の第4の実施形態を示す。
図7は、基部板(10)と上部(20)との間の誘電体材料なしで実現されたCPダイポールアンテナを示す。上部(20)は、その両端における、または両端近くの端部接点により基部板(10)に結合され(25)、および、この例では、シングルエンドアンテナ給電部(18)は、所望のインピーダンスマッチングレベルを実現するために、上部(20)の中心から少し外れて設けられる。電流モードのヌルが生成される、S字形状の各半分部分の中間部分(20’)は、誘電体がないため欠落している誘電体負荷を補うために、S字形状上部(20)の残りと比較して、より広くなっている。本実施形態は、基本的なCPダイポールアンテナよりも電気的に幾分大きい。
【0048】
図8は、基部板(10)と上部(20)との間の誘電体材料をまた備えない、本発明の第5の実施形態を示す。本実施形態では、CPダイポールアンテナの上部(20)は、上記実施形態において使用されているビアの代わりに、屈曲した脚として上部(20)の両端に実現されたアンテナ給電部(18)を備えた、角度が付けられたS字形状として実現され、および、やはり上部(20)から屈曲しているさらなる支持脚(19)が存在しており、その支持脚(19)は、ギャップ(11)により、基部板(10)から隔てられている。支持脚(19)それぞれは、基部平面上に配置されたダミーパッド(12)に結合され得る。ダミーパッド(12)は、たとえば、はんだ付けにより、支持脚(19)が結合され得る基部平面上の領域を設けるが、そうしたダミーパッド(12)は、さらなる電気的接続を設けず、および、ギャップ(11)により、基部板(10)から隔てられており、それにより、ダミーパッド(12)が基部板(10)から電気的に切り離される。この例では、基部板(10)、および、上部(20)を含む仮想有限上部板は矩形形状を有しており、これはこの設計を、大量生産に特に好適にし、および、特に単純な機械的構造にしており、上部(20)、アンテナ給電部(18)、および支持脚(19)はすべて、単一の金属シートを望ましい形状に切断し、ならびに、アンテナ給電部(18)および支持脚(19)を屈曲させて、基部板(10)上方の望ましい上部平面上に上部(20)を機械的に支持するための脚を形成することにより、形成され得る。この例では、給電は好ましくは、S字形状上部(20)の対向する2つの端において配置された2つのアンテナ給電部(18)から差動的に実現されるが、給電は代替的には、シングルエンドで行われてもよく、その場合、S字形状の一方端のみがアンテナ給電部(18)である一方、上部(20)の他方端は、基部板(10)に結合される端部接点として作用する。給電が、S字形状(20)の1つの端点または2つの端点において行われる場合、(複数の)アンテナ給電部(18)および、よって、S字形状上部(20)のそれぞれの端も、基部板(10)に結合されないが、給電パッド(17)が設けられ、その上にアンテナ給電部(18)がたとえばはんだ付けにより結合され得る。各給電パッド(17)は、無線周波数(RF)回路に向けた、アンテナへRF信号を供給するための、および/または、アンテナにより受信されたRF信号をRF回路に転送するための、さらなる結合をもたらす。
【0049】
基部板(10)に直接、接続されておらず、および、アンテナ給電部としても使用されていない支持脚(19)は、基部板(10)と上部(20)との間に誘電体層がないために誘電体負荷がないことを補うのに必要な容量性負荷、およびCPダイポールアンテナの上部(20)のさらなる機械的支持の両方を与える。構造体、および特にその上部(20)のために機械的支持を提供する、上部(20)と基部板(10)との間の誘電体材料が存在していないので、さらなる機械的支持は有益である。よって、支持脚(19)は、アンテナ構造の機械的堅牢性を向上させる。
【0050】
本実施形態では、ギャップ(11)は、基部板(20)の外縁上の複数のノッチにより形成される。各ノッチのそれぞれの面積は、それぞれの支持脚(19)またはアンテナ給電部(18)と同じ位置に配置されたそれぞれのダミーパッド(12)または給電パッド(17)の面積よりも大きい。しかし、ノッチの面積は好ましくは、基部板(10)の面積と比較して小さく、よって、基部板(10)はなお、本質的に、連続板とみなされ得る。該当する場合、端部接点(25)は好ましくは、たとえば、はんだ付けにより、基部板(20)に直接、結合される。基部板(10)と、それぞれの支持脚(19)および/またはダミーパッド(12)との間の各ギャップ(11)は、容量性負荷をもたらすキャパシタを形成する。
【0051】
図9は、第5の実施形態と同じであるが、今度は、ホイヘンスCPアンテナを実現するように適用される構造的構成原理を利用する、本発明の第6の実施形態を示す。ホイヘンスCPアンテナの上部(20)は、上述されたように、S字形状の中心において垂直方向に、すなわち、互いに90°の角度で接合された、相互に結合された2つのS字形状上部により形成される。上記開示された実施形態すべてにおけるように、上部(20)は、下にある基部板(10)に対して平行な上部平面内にある。
【0052】
この例では、ホイヘンスCPアンテナの上部(20)の接合されたS字形状の両方が、S字形状上部(20)それぞれの端またはその端近くでそれぞれのアンテナ給電部(18)から差動的に給電される一方、基部板(10)に対するギャップ(11)を備えた支持脚(19)は、
図8に関して開示された実施形態におけるものと同様の、必要な容量性負荷、および、上部(20)に対するさらなる機械的支持を与える。脚としても形成されたアンテナ給電部(18)は給電パッド(17)に結合され、および、支持脚(19)はダミーパッド(12)に結合される。給電パッド(17)およびダミーパッド(12)はいずれも、基部板(10)の外縁上に作られたそれぞれのノッチの領域により画定されたギャップ(11)によって、基部板(10)から隔てられる。さらに、第6の実施形態は、その単純な、および堅牢な機械的構造により、大量生産に特に好適であり、上部(20)は、導電性金属シートを正しい形態に切断し、特定の設計に含まれるように、支持脚(19)、給電点(18)、および/または端部接点を適切な形状に屈曲させ、ならびに、屈曲された金属シートを、設計に含まれるときには予定の端部接点の結合領域を提供する、基部板(10)を備える下層構造に結合することにより、製造され得る。下層構造は、アンテナ給電部(18)用給電パッド(17)および支持脚(19)用ダミーパッド(12)も提供する。下層構造は、たとえば、金属基部板(10)、給電パッド(17)、およびダミーパッド(12)が上面上に設けられたPCBとして実現され得る。
【0053】
基部板(10)からダミーパッド(12)および給電パッド(17)を分離するためのギャップ(11)は、基部板(10)の外縁上のノッチとして特徴付けられ得る。これらのノッチは、特定の設計毎に必要に応じて、屈曲された支持脚(19)および(複数の)アンテナ給電部(18)と同じ位置に配置される。
【0054】
第5の、および第6の実施形態では、基部板(10)は、知られているプリント回路基板(PCB)技術を使用して製造され、基部板は、PCBの上層上の金属シート、たとえば銅シートである場合があり、および、ギャップ(11)は、PCBの上層上に基部板(10)と、給電パッド(17)およびダミーパッド(12)との間に形成される場合がある。そうした場合には、ギャップは、少なくとも部分的に、ギャップ(11)の下方のPCBの1つまたは複数の層の誘電体材料、たとえば、PCBを製造するために通常使用されるある種のラミネートを備えると考えられ得る。
【0055】
実施形態によるCPダイポールおよびホイへンスアンテナを給電することは、ほぼ全ての知られているアンテナ給電手法を使用して実現され得る。ビアまたは脚によるプローブ給電が実施形態において使用されてきたが、上部の中間部分内のギャップ給電は考えられ得る差動給電であり、中心を外れたギャップ給電はシングルエンド給電であり、対称的に中心を外れている2つのギャップ給電は差動給電である。ギャップ給電は、基部平面を基準として使用しない。(複数の)ギャップ給電点への(複数の)伝送線路は、たとえば、別の位置からの差動線路であり得る。
【0056】
ホイへンスアンテナは、単一の給電部で給電されるようにも設計され得る。これは、2つのS字形状内の複数の電流が互いに90°の位相シフトを有しており、および、それらの放射電力が等しいように、容量性インピーダンスを有する、より短い1つのS字形状、および、誘導性インピーダンスを有する、より長い1つのS字形状を有するために、異なるサイズの2つのS字形状を有することにより、実現され得る。給電は、2つのS字形状を並列に接続することにより、または、構造内部にループを備えたアンテナを駆動させることにより、実現され得る。
【0057】
端部接点、すなわち、(複数の)S字形状上部の(複数の)端と、基部板との間の接続は、シングルエンドアンテナ給電部の給電点として、または、差動アンテナ給電部の給電点として使用され得る。そうした場合には、インピーダンスマッチングネットワークが必要であり得るが、それは、さもなければ、インピーダンス結合が過結合であり得るからである。
【0058】
異なる給電手法の性能および特性は以下のように要約され得る。
【表1】
【0059】
基部板(10)の適切な有限面積を画定するために、
図10中、破線で示された仮想有限上部板(110)は、上部平面内に画定され得る。仮想有限上部板(110)は、基部板(10)に対して平行であり、および、それは、基部板の基本形状、たとえば、円、楕円、正方形、四角形、または任意の他の多角形と本質的に等しい形状を有する。仮想有限上部板(110)と基部板(10)との間の距離はゼロではない。仮想有限上部板(110)の外縁は、S字形状が仮想有限上部板(110)の基本形状内にちょうど収まるように、S字形状(20)の外縁により部分的に画定される。望ましい結果を実現するために、基部板(10)の面積は、仮想有限上部板(110)の面積の±30%内に、好ましくは±15%内に、すなわち、仮想有限上部板(110)の面積の70%と130%との間に、または85%と115%との間にあるものとする。上記開示された実施形態では、基部板(10)の面積は、それぞれの仮想有限上部板(110)の面積よりも約15%大きい。基部板(10)の基本形状を画定する目的において、基部板上の穴および/またはノッチは、基部板内の電流に対するそれらの影響が軽微である限り、考慮に入れられない。仮想有限上部板の面積を画定する目的において、屈曲した脚は、仮想有限上部板(110)の一部とみなされない。
【0060】
技術が進展するにつれ、本発明の基本的な考えが種々のやり方で実現され得ることは、当業者には明らかである。本発明およびその実施形態は、したがって、上記例に制限されるものでない一方、それらは請求項の範囲内で変わり得る。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な平面(xy)を定める基部平面を画定する有限導電性の基部板と、前記基部平面に対して平行な上部平面を画定する、上部として表される上部素子導体と、を含む円偏波アンテナであって、前記上部平面が、前記基部平面からのゼロではない距離を有しており、および、前記上部の2つの端が端部接点を有しており、
前記上部が、少なくとも1つのS字形状上部を備えており、および、前記S字形状上部の各端部接点が、前記基部板およびアンテナ給電部の一方に結合され、ならびに、
前記S字形状上部は、シングルエンドで、または差動的に給電されて、
前記水平な平面に対して平行なx方向において左右に流れる電流による前記S字形状上部の中心における極大値、前記中心の両側における2つのヌル、および前記端における2つの極大値を有する電流モードを前記S字形状上部内に生じさせて電流がy方向において磁気ダイポールを生成する全ループ電流を形成するように構成され、前記S字形状上部が向き変更を行う場所におけるyに向けられた電流成分が、前記基部板内に対応する位相ずれ成分を有さず、そのため、y方向において電気ダイポールを生成し、よって前記S字形状内の前記電流は前記水平な平面に対して平行なy方向において互いに位置合わせされた電気および磁気ダイポールの対を生成す
る、円偏波アンテナ。
【請求項2】
前記S字形状上部は、前記S字形状上部が等しい大きさおよび形状の2つの半分部分にその中点において分割され得るように対称であり、
前記S字形状上部の2つの端間の仮想直線から最も離れている、前記半分部分それぞれの内縁上の基準点の最小距離は、前記仮想直線から垂直に測定された場合、前記S字形状上部の前記2つの端間の前記仮想直線の長さの少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%である、請求項1に記載の円偏波アンテナ。
【請求項3】
前記基部板が本質的に連続板であり、前記基部板の面積は、前記上部平面と同一平面上の仮想有限上部板の面積の70%と130%との間、好ましくは85%と115%との間、最も好ましくは略115%であり、前記仮想有限上部板は、前記基部板と同じ基本形状を有しており、前記上部を備えており、および、前記上部が収まる最小面積を有している、請求項1または2に記載の円偏波アンテナ。
【請求項4】
前記上部と前記基部板との間の容積が誘電体材料で満たされている、請求項1~3のいずれか1項に記載の円偏波アンテナ。
【請求項5】
前記上部と前記基部板との間の容積が、空気などの気体、または真空で満たされている、請求項1~3のいずれか1項に記載の円偏波アンテナ。
【請求項6】
前記アンテナがダイポールアンテナである、請求項5に記載の円偏波アンテナ。
【請求項7】
前記S字形状上部のそれぞれの端と中点とを接続する仮想直線から最も離れている、前記S字形状上部の前記半分部分それぞれの中間部分における線幅が、前記S字形状上部の他の部分における線幅よりも広い、請求項6に記載の円偏波アンテナ。
【請求項8】
前記アンテナが、対称の2つのS字形状上部であって前記2つのS字形状上部の中点において垂直に互いに交差する対称の2つのS字形状上部を備えた上部を備える円偏波ホイヘンスアンテナであり、前記対称の2つのS字形状上部は、送信および受信両方のために前記2つのS字形状上部の間に90°の位相シフトが与えられるように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の円偏波アンテナ。
【請求項9】
前記2つのS字形状上部は互いに相似な形状を有しており、および前記2つのS字形状上部は前記上部の中心において互いに直接、結合されている、請求項8に記載の円偏波アンテナ。
【請求項10】
前記2つのS字形状上部は
、第2のS字形状上部
が、前記上部平面の下にあるが前記基部板の上にある、前記誘電体材料内の中間層上に凹ませられた中央部分を備えており、
中間における前記2つのS字形状上部の交差を互いに直接結合されることなく可能にするために前記中央部分が、ビアによ
り上層上にある前記第2のS字形状上部の残りに結合されている
以外は、互いに相似な形状を有している、請求項4に従属する請求項8に記載の円偏波アンテナ。
【請求項11】
前記S字形状上部の中点と、前記S字形状上部の前記端部接点それぞれとの間の位置において前記S字形状上部の各半分部分から延びている少なくとも1つの支持脚をさらに備えており、前記少なくとも1つの支持脚は前記上部と前記基部平面との間の機械的支持を与えるが、前記少なくとも1つの支持脚は、ギャップにより、前記基部板から電気的に切り離されている、請求項5に従属する請求項6~9のいずれか1項に記載の円偏波アンテナ。
【請求項12】
前記アンテナは、単一のアンテナ給電部により給電されるように構成され、前記2つのS字形状上部は互いに異なる大きさを有しており、よって、前記2つのS字形状上部内の電流は、互いに対して90°の位相シフトを有しており、および、前記2つのS字形状上部からの放射電力が等しい、請求項8~11のいずれか1項に記載の円偏波アンテナ。
【請求項13】
前記アンテナが、誘電体シェル内部に構成されている、請求項1~12のいずれか1項に記載の円偏波アンテナ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
[関連技術の説明]
中国特許出願公開第109378577号明細書は、放射ユニット、金属グランド、および2つの誘電体基板を備えた、小型化された広帯域交差ダイポールアンテナを開示している。放射ユニットの2つのダイポールアームは、環状位相シフタを介して90°に配置されている。
中国実用新案第206040960号明細書は、電気ダイポールアンテナを備えた上中部基部板、および磁気ダイポールを備えた下床部基部板を備えたホイヘンスソースアンテナを開示している。電気ダイポールの外端は、S字形状およびZ字形状を形成するように屈曲している。
米国特許出願公開第2004/090371号明細書は、誘電体材料上に配置された半渦巻き状の構成の4つのアンテナ素子を備えた円偏波アンテナを開示している。
米国特許出願公開第2002/126049号明細書は、誘電体基板の表面上に形成された2つの別個の4分の1波長の放射素子を備えたアンテナ素子を開示している。
WU DANらによる論文“Compact and Low-Profile Omnidirectional Circularly polarized antenna With Four Coupling Arcs for UAV Applications”は、中央放射経路により給電される4つの結合アークを備えたOCPアンテナ設計を開示している。アンテナは、水平な平面において右旋円偏波マイクロ波を放射する。
LIN WEIらによる論文“28 GHz Compact Omnidirectional Circularly polarized antenna for Device-to-Device Communications in the Future 5G Systems”は、中央に配置された垂直モノポール放射体からの細い直線放射線を介して給電される4つの蛇行放射体を備えたOCPアンテナ設計を開示している。アンテナは、水平な平面において無指向性CPパターンを放射する平行な電気および磁気ダイポールをz軸に沿って生成する。
米国特許出願公開第2009/002254号明細書は、幾何学軸を中心として軸対称であり、および、幾何学軸の方向に対して垂直な平面において放射極大値を示す放射パターンを生成する別のアンテナ設計を開示している。
中国特許出願公開第105846075号明細書は、正方形の上部誘電体板を備えた小型化された広帯域平面二重偏波アンテナを開示している。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】