(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】車両用バランシングシステム
(51)【国際特許分類】
B62K 21/00 20060101AFI20240110BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20240110BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20240110BHJP
B62J 45/00 20200101ALI20240110BHJP
B62J 45/413 20200101ALI20240110BHJP
B62J 45/412 20200101ALI20240110BHJP
B62J 45/411 20200101ALI20240110BHJP
B62J 45/41 20200101ALI20240110BHJP
B62K 21/22 20060101ALI20240110BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20240110BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
B62K21/00
B62D5/04
B62D6/00
B62J45/00
B62J45/413
B62J45/412
B62J45/411
B62J45/41
B62K21/22
B62D101:00
B62D113:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533965
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 IN2021051132
(87)【国際公開番号】W WO2022118342
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】202041052710
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521196110
【氏名又は名称】ティーヴィーエス モーター カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TVS MOTOR COMPANY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャラド,シンガニア
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカタ マンガ ラジュ,カラナム
【テーマコード(参考)】
3D013
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D013CE02
3D013CF02
3D232CC20
3D232DA03
3D232DA23
3D232DA36
3D232DA62
3D232DC33
3D232DC34
3D232DD02
3D232DE02
3D232EB04
3D232EC22
3D232GG20
3D333CB01
3D333CB38
(57)【要約】
本発明は、バランシングシステムを備えた車両に関する。車両(100)は、フレームアセンブリ(105)の第1の部分(270)に固定されたアクチュエータユニット(205)を備える。トルクエンハンサユニット(210)は、アクチュエータユニット(205)から操舵シャフト(212)に駆動力を提供するように構成される。トルクエンハンサユニット(210)は、ヘッドパイプ(106)の上方にコンパクトに配置される。複数のセンサ(230、240、250、260)から受信した入力に基づいてバランシング操舵角(As)を推定し、実際操舵角(As’)と比較し、アクチュエータユニット(205)をトリガリングするための、バランシング制御ユニット(235)。本発明は、アクチュエータユニット(205)に、バランシング操舵角を効果的に提供することによって、車両をバランスさせることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)をバランスさせるためのバランシングシステム(200)の操作方法であって、
バランシング制御ユニット(235)によって、操舵角センサ(250)を含む、複数のセンサ(230、240、250)から、車両(100)の動的状態に対応する情報を受信するステップと、
前記バランシング制御ユニット(235)によって、前記複数のセンサ(230、240、250)について受信された情報に基づいて、バランシング操舵角(A
s)を計算するステップと、
前記車両(100)の操舵システム(120)を操縦するために、操舵角制御を実行することによって、前記バランシング操舵角(A
s)を達成するためにアクチュエータユニット(205)を作動させるステップと、
前記バランシング操舵角(A
s)と前記操舵システム(120)の実際操舵角(A
s’)を比較するステップと、
前記実際操舵角(A
s’)と前記バランシング操舵角(A
s)との差に基づいて、更新された車両走行状態を識別するステップと、
前記更新された車両走行状態に基づいて前記バランシング操舵角(A
s)を更新して、前記操舵システム(120)を操縦するために、相応に前記アクチュエータユニット(205)を駆動するステップと
を含む、操作方法。
【請求項2】
前記アクチュエータユニット(205)を作動させる前記ステップが、前記車両(100)の操舵システム(120)を操縦するための、前記バランシング操舵角(A
s)を達成するために、アクチュエータ角度とアクチュエータトルクとを適用することによって行われる、請求項1に記載のバランシングシステム(200)の操作方法。
【請求項3】
前記操舵システム(120)は、フレームアセンブリ(105)のまわりに回転可能に軸受けされた操舵シャフト(212)を備え、前記アクチュエータユニット(205)を作動させる前記ステップは、直接係合によるか、またはトルクエンハンサユニット(210)を介するかのいずれか一方によって、前記操舵シャフト(212)の回転を実行する、請求項1に記載のバランシングシステム(200)の操作方法。
【請求項4】
前記バランシング操舵角(A
s)を基準として実際操舵角(A
s’)における変化を識別するために、所定の時間(t
-n:t)にわたる前記実際操舵角(A
s’)の平均(Mean[A
s’(t
-n:t)])を推定することをさらに含む、請求項1に記載のバランシングシステム(200)の操作方法。
【請求項5】
所定の時間(t
-n:t)にわたる前記実際操舵角(A
s’)の平均が、バランシング操舵角(A
s)と、それらの間の差(Mean[A
s’(t
-n:t)]-A
s(t))について、比較される、請求項4に記載のバランシングシステム(200)の操作方法。
【請求項6】
前記更新された車両の走行状態を識別する前記ステップは、前記実際操舵角(A
s’)と前記バランシング操舵角(A
s’)の間の時間微分(Diff(A
s’(t)-A
s(t)))を識別することを含み、ここで、前記更新された車両走行状態は、前記微分(Diff(A
s’(t)-A
s(t)))、前記平均(Mean[A
s’(t
-n:t)]-A
s(t))の両方が対応する閾(A
th、A
dth)より小さいときに、定常操縦状態として識別される、請求項5に記載のバランシングシステム(200)の操作方法。
【請求項7】
前記更新された車両の走行状態を識別する前記ステップは、前記実際操舵角(A
s’)と前記バランシング操舵角(A
s)の間の微分(Diff(A
s’(t)-A
s(t)))を識別することを含み、ここで、前記更新された車両走行状態は、前記微分(Diff(A
s’(t)-A
s(t)))、前記平均(Mean[A
s’(t
-n:t)]-A
s(t))の少なくとも一方が、両方とも対応する閾値(A
th,A
dth)より大きいときに過渡操縦状態として識別される、請求項5に記載のバランシングシステム(200)の操作方法。
【請求項8】
次のインスタンスに対して前記バランシング操舵角(A
s)の更新は、(A
s(t+1))であり、ここで、前記更新されたバランシング操舵角(A
s(t+1))は、前記更新された車両の走行状態が定常操縦状態であるときに、以前に推定された前記バランシング操舵角(A
s(t+1))と同じである、請求項1に記載のバランシングシステム(200)の操作方法。
【請求項9】
次のインスタンスに対して、前記バランシング操舵角(A
s)の更新は、(A
s(t+1))であり、ここで、前記更新されたバランシング操舵角(A
s(t+1))は、前記更新された車両走行状態が過渡操縦状態であるときには、以前に推定された前記バランシング操舵角(A
s(t+1))と、前記バランシング操舵角(A
s’)と前記バランシング操舵角(A
s)の間の微分(Diff(A
s’(t)-A
s(t)))との統合である、請求項1に記載のバランシングシステム(200)の操作方法。
【請求項10】
前記バランシング操舵角(A
s’)と前記バランシング操舵角(A
s)の間の微分(Diff(A
s’(t)-A
s(t)))には、ゲイン係数(G1)が乗じられており、前記ゲイン係数(G1)は0から1の間の値である、請求項9に記載のバランシングシステム(200)の操作方法。
【請求項11】
前記アクチュエータユニット(205)を駆動することは、電流制御操作または電圧制御操作の一方によって行われる、請求項1に記載のバランシングシステム(200)の操作方法。
【請求項12】
車両(100)をバランスさせるためのバランシングシステム(200)の操作のための電流制御方法であって、
バランシング制御ユニット(235)によって、操舵角センサ(250)を含む、複数のセンサ(230、240、250)から、前記車両(100)の動的状態に対応する情報を受信するステップと、
前記バランシング制御ユニット(235)によって、前記複数のセンサ(230、240、250)について受信された情報に基づいて、バランシング操舵角(A
s)を連続的に計算するステップと、
前記車両(100)の操舵システム(120)を操縦するための、前記バランシング操舵角(A
s)を達成するためにアクチュエータユニット(205)を作動させるステップと、
前記バランシング操舵角(A
s)と実際操舵角(A
s’)を比較するステップと、
前記実際操舵角(A
s’)と前記バランシング操舵角(A
s)との差を計算するステップと、
前記実際操舵角(A
s’)と前記バランシング操舵角(A
s)との差に基づいて更新された車両走行状態を識別するステップと、
前記更新された車両走行状態に基づいて前記バランシング操舵角(A
s)を更新して、前記操舵システム(120)を操縦するために、制御電流(I’)を適用することによって、前記アクチュエータユニット(205)を相応に駆動するステップと
を含む、電流制御方法。
【請求項13】
前記バランシング操舵角(A
s)と実際操舵角(A
s’)を比較することが、誤差値(|A
s’-A
s|)を識別することによって行われる、請求項12に記載のバランシングシステム(200)の操作のための電流制御方法。
【請求項14】
前記誤差値(|A
s’-A
s|)が上限閾値(E
th_U)と比較され、前記誤差値が上限閾値より大きい(|A
s’-A
s|>E
th_U)とき、前記バランシング制御ユニット(235)が、制御電流(I’)を適用することによって、即時補正を実行する、請求項13に記載のバランシングシステム(200)の操作のための電流制御方法。
【請求項15】
前記制御電流(I’)は、バランシング操舵角(A
s)に基づく推定電流(I)と、バランシング電流(I1)との、加算および統合の一方である(I’=±(I+I1))、請求項14に記載のバランシングシステム(200)の操作のための電流制御方法。
【請求項16】
前記誤差値(|A
s’-A
s|)が上限閾値(E
th_U)より小さいとき、前記誤差値(|A
s’-A
s|)が下限閾値(E
th_L)と比較され、前記誤差値が下限閾値より大きい(|A
s’-A
s|>E
th_L)場合、前記バランシング制御ユニット(235)が、制御電流(I’)を適用することによって、補正を実行する、請求項15に記載のバランシングシステム(200)の操作のための電流制御方法。
【請求項17】
制御電流(I’)が、前記バランシング操舵角(A
s)に基づく、推定された電流(I)と、バランシング電流(I1)との差である、請求項16に記載のバランシングシステム(200)の操作のための電流制御方法。
【請求項18】
前記操舵システム(120)の方向制御のための符号(+、-)を有する前記バランシング電流(I1)は、前記バランシング操舵角(A
s)と前記実際操舵角(A
s’)の比較から識別されるライダー意図に依存する、請求項15または17に記載のバランシングシステム(200)の操作のための電流制御方法。
【請求項19】
前記誤差値(|A
s’-A
s|)が上限閾値(E
th_U)および下限閾値(E
th_L)より小さいとき、制御電流(I’)は、前記バランシング操舵角(A
s)の推定電流(I)と等しい、請求項14に記載のバランシングシステム(200)の操作のための電流制御方法。
【請求項20】
車両(100)をバランスさせるためのバランシングシステム(500)の操作方法であって、
バランシング制御ユニット(535)によって、操舵角センサ(550)および操舵トルクセンサ(560)を含む、複数のセンサ(540、550、560、565)から、前記車両(100)の動的状態に対応する情報を受信するステップと、
前記バランシング制御ユニット(535)によって、前記複数のセンサ(540、550、560、565)について受信された情報に基づいて、バランシング操舵角(A
s)とバランシング操舵トルク(T)とを計算するステップと、
前記車両(100)の操舵システム(120)を操縦するために、前記バランシング操舵角(A
s)と前記バランシング操舵トルク(T)を達成するためにアクチュエータユニット(205)を作動させるステップと、
前記バランシング操舵角(A
s)と実際操舵角(A
s’)を比較し、前記バランシング操舵トルク(T)と実際操舵トルク(T’)を比較するステップと、
前記実際操舵角(A
s’)と前記バランシング操舵角(A
s)との差、および前記実際操舵トルク(T’)と前記バランシング操舵トルク(T)との差に基づいて更新された車両走行状態を識別するステップと、
前記更新された車両走行状態に基づいて前記バランシング操舵角(A
s)と前記バランシング操舵トルク(T)とを更新して、前記操舵システム(120)を操縦するために、制御電流(I’)を適用することによって、前記アクチュエータユニット(205)を相応に駆動するステップと
を含む、バランシングシステム(500)の操作方法
【請求項21】
誤差値(|T’-T|)を計算するために、前記実際操舵トルク(T’)と前記バランシング操舵トルク(T)との差が推定され、ここで、前記誤差値(|T’-T|)が閾値(T
th)と比較される、請求項20に記載のバランシングシステム(500)の操作方法。
【請求項22】
誤差値(|T’-T|)が閾値(T
th)よりも大きいときにライダー入力を識別するステップであって、それによって、前記バランシング制御ユニット(535)に、電流制御操作または電圧制御操作の一方によって、バランシングを実行することを可能にする、ステップをさらに含む、請求項22に記載のバランシングシステム(500)の操作方法。
【請求項23】
前記バランシング制御ユニット(535)が、バランシングを実行し、前記バランシング操舵トルク(T)および前記バランシング操舵角(T’)を更新する、請求項24に記載のバランシングシステム(500)の操作方法。
【請求項24】
誤差値(|T’-T|)が閾値(T
th)よりも小さいときにライダー入力のないことを識別するステップであって、それによって前記バランシング制御ユニット(535)が、差し迫ったバランシング要求に対して、複数のセンサ(540、550、560、565)からの情報の受信を実行する、ステップをさらに含む、請求項22に記載のバランシングシステム(500)の操作方法。
【請求項25】
車両(100)のバランシングを実行するように構成された、車両(100)用のバランシングシステム(200、500)であって、前記車両(100)が:
フレームアセンブリ(105)であって、その前方部分に配置されたヘッドチューブ(106)を備える、前記フレームアセンブリ(105)と、
前記ヘッドチューブ(106)のまわりに回転可能に軸受けされた、操舵シャフト(212)と、
前記車両(100)の様々な動的パラメータを検知するための複数のセンサ(230、240、250、540、550、560、565)であって、操舵角センサ(250、550)を備える、前記複数のセンサ(230、240、250、540、550、560、565)と、
前記操舵シャフト(212)の操作を制御するように構成された、アクチュエータユニット(205、505)と、
バランシング支持制御ユニット(235、535)であって、前記複数のセンサ(230、240、250、540、550、560、565)から受信した入力に基づいて、バランシング操舵角(A
s)を推定し、前記バランシング操舵角(A
s)を、前記操舵角センサ(250、550)から受信される実際操舵角(A
s’)と比較し、それによって、前記アクチュエータユニット(205、505)をトリガリングして、前記車両をバランスさせて、更新されたバランシング操舵角(A
s)を達成するように、前記操舵シャフト(212)の操舵操作を実行するように構成された、前記バランシング支持制御ユニット(235、535)と
を備える、車両(100)用のバランシングシステム(200、500)。
【請求項26】
前記複数のセンサ(230、240、250、540、550、560、565)は、慣性モニタリングユニット(240、540)、操舵角センサ(250、550)、トルクセンサ(560)、グローバルポジショニングセンサ(230)、速度センサ(565)を含み、ここで、前記複数のセンサのうちの1つまたは複数のセンサ(230、240)は、前記車両(100)の後部領域で、かつ実質的に前記バランシング制御ユニット(235)の近傍に、配置されている、請求項25に記載の車両(100)用のバランシングシステム(200、500)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バランシングを必要とする、サドル型車両に関し、より具体的にはサドル型車両用のバランシングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、4輪車またはより高次の多輪車のような車両はバランスが取れており、コーナリングなどの場合を除いて、追加のバランシングをなにも必要としない。さらに、今日の4輪車両は、一時に1つの自律タスクを実行できる。例えば、これらの車両は、ほとんどが、自動レーンキーピングまたはアダプティブクルーズコントロールなどの、自律安全志向機能を組み入れている。いくつかの他の先進4輪車両は、一時に2つの自律タスクを実行すること、例えば、操舵に加えてレーンキーピングを実行すること、または自動ブレーキングとアダプティブクルーズコントロールとを実行することができる。すなわち、4輪車両は、これらの電動パワーアシストシステム(EPAS:electric powers assisted systems)、および電子安定性プログラム(EPS:electronic stability programs)を実装しつつある。
【0003】
しかしながら、通常はサドルライド型車両(saddle-ride type vehicle)である、2輪車両または3輪車両に対しては、自律性において大きなギャップが存在する。自律性を考慮する以前においても、サドルライド型車両をバランスさせる、大きな課題がある。4輪車両、または4輪より多い車両と異なり、サドルライド型車両は不安定であり、一方の側方にロールするか、または転覆する傾向がある。2輪車両および3輪車両を含む車両は、1つまたは複数の前輪を操作するために、ハンドルバーを操作することによって、操舵される。ライダーは、車両を操縦するために高い操舵力を発揮しなくてはならない。速度が低いと、操舵システムの慣性力は高くなり、車両をバランスさせるのに、ライダーに対して疲労を生じさせ、操縦を実行することはなおさらである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来型の2輪車両および、ある種の3輪車両においては、ライダーは、バランスを取って、落下を防ぐために、連続的かつ意識的に操縦操作を実行しなくてはならない。この理由は、4輪車と異なり、サドルライド車両は、不規則な道路表面または雨などによる地面の摩擦の変化などの、外部パラメータによる影響も受けるからである。これらの外部パラメータは、車両を、高度に不安定に、またはアンバランスにさせ、このことは一般に落下または事故につながる。初心者ライダーにとっては、必要となる力、またはバランシングに必要となる操舵角についての知識がないために、さらに大きな課題である。経験のあるライダーに対してでない限り、かけるべき操舵トルクと操舵角の量は、初心者ライダーが測ることはできない。経験のあるライダーに対してでさえ、そのような連続的で意識的な操縦は、特に交通状況において疲労を引き起こす。すなわち、車両のライダーは、低速度で操作する間に車両をバランスさせることは困難であることに気付く。
【0005】
操舵操作においてライダーを支援するための、当該技術においてある試みがなされた。これは、操舵疲労を低減できるが、バランシング不安の問題があり、操舵スキル(方向角度および力/トルク)を必要とする。1つのソリューションによれば、車両の後輪が、バランシングを提供するために制御された。これは、システム全体を複雑化し、その上に、そのようなメカニズムを、小型のサドルライド型車両へ実装することは困難である。さらに、いくつかの他の知られている設計では、操舵システムからハンドルバーが切り離された。これは、従来と異なるので、ライダーが適合するのに特殊なトレーニングを必要とする。ライダーは、いかなる道路フィードバックも受けないことになる。フィードバックの欠如のため、ライダーは、道路状態からの切り離しを感じ、それによって乗り心地の悪化が生じる。
【0006】
当技術分野で知られている特定の他のシステムでは、バランスを達成するために、車輪上のトルクは、正または負の加速度を提供することによって修正される。これはバランスを提供するかもしれないが、そのような技術は車両の加速または減速の変化を引き起こし、事故につながる可能性があるため、好ましくない。ドライバの意図または知識がないと、安定性を獲得するために、車両が加速または減速されて、前方の車両にぶつかったり、(急減速中に)後方の車両にぶつかられたりする可能性がある。
【0007】
さらに、一部のソリューションでは、入力シャフトと操舵シャフトの間の操舵比を修正することが提案されており、これはサドルライド車両(二輪車両または三輪車両)に対して一貫性がなく、車両が異なる状態(操舵比)で異なる応答をするため、ライダーの心に混乱を引き起こし、運転を予測不能にする可能性がある。運転中の安心感は、このようなシステムの大きな課題の1つである。
【0008】
さらに、ある種の車両は、操舵アシスト中にポジティブトレイルとネガティブトレイルを切り替え、バランスを取る傾向がある。操舵システムのトレイルごとに、ハンドルバー位置、有効シート高さ、ホイールベースなどが変更される可能性があるため、ユーザーは異なる運転姿勢を体験し、運転中に深刻な不快感を引き起こす。
【0009】
このように、ライディング姿勢や車両ダイナミクスの修正(動的)を必要とせずに車両の安定性やバランスを提供することができる、車両用のバランシングシステムおよびその方法を提供する必要性がある。システムは、操舵システムをライダー入力から切り離すことなく、ライダーにフィードバックを提供できる必要がある。
【0010】
したがって、本発明は、従来技術の前述のおよび他の問題に対処する、バランシングシステムおよびその方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車両のバランシングするためのバランシングシステムの操作方法は、車両の複数のセンサから情報を受信するステップを含む。複数のセンサは、主に角度センサを含む。前記複数のセンサは、車両の動的状態に対応する情報をバランシング制御ユニットに提供する。バランシング操舵角は、バランシング制御ユニットによって複数のセンサについて受信された情報に基づいて計算される。アクチュエータユニットは、車両の操舵システムを操縦するためのバランシング操舵角を達成するために、操舵システムに接続されている。これは、バランシングを達成するためにバランシング操舵角を適用し、次にバランシング操舵角が、ライダーによって与えられた実際操舵角と比較される。バランシング操舵角の間の差を比較または識別することで、バランシング制御ユニットは、ライダー意図を識別できるようになる。これにより、実際操舵角と操舵角の差に基づいて、システムは、更新された車両走行状態を識別する。次いで、システムは、更新された車両の走行状態に基づいてバランシング操舵角を更新し、それに応じて、操舵システムを操縦し、それによって安定性を達成するために、アクチュエータユニットが駆動される。
【0012】
本発明の方法およびシステムは、バランシング操舵角を与え、同時にライダー意図を認識し、それによって最初にバランシング操作を実行し、次いでライダー意図操縦操作を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態による、例示的な車両の左側面図である。
【
図2】本発明の実施形態による、車両のフレームアセンブリによって支持される、操舵支持システムを示す図である。
【
図3a】本発明の実施形態による、バランシングシステムの操作方法を示すフローチャートである。
【
図3b】本発明の実施形態による、バランシングシステムの操作方法を描くフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態による、電流制御(電流コントローラ操作)によるバランシングシステムの制御方法を示す図である。
【
図5a】本発明の第2の実施形態による、バランシングシステムを示す図である。
【
図5b】本発明の実施形態による、バランシング制御ユニットを備えるバランシングシステムの機能方法を示す、フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明は、本発明の一実施形態である2輪サドルライド車両に関係する、添付の図を参照して記述される。しかしながら、本発明は、描かれた実施形態には限定されない。図において、同一または類似の数字は、全体を通して、機能およびコンポーネントを参照するのに使用される。
【0015】
本発明の一実施形態では、バランシングシステムの操作方法は、車両の操舵システムを操縦するための、バランシング操舵角を達成するために、バランシング操舵角と同じである、アクチュエータ角度と、アクチュエータトルクとを適用することによって、アクチュエータユニットを作動させることを含む。システムは、操舵システムの慣性を考慮し、それに応じてライダーの操舵操作を容易にするためのアクチュエータトルクを提供する。
【0016】
本発明の一実施形態では、操舵システムは、フレームアセンブリ(1つの実装形態によれば、フレームアセンブリのヘッドチューブ)のまわりに回転可能に軸受けされた、操舵シャフトを備える。アクチュエータユニットの作動は、直接係合によるか、またはトルクエンハンサユニットを介するかのいずれか一方によって操舵シャフトの回転を実行する。
【0017】
トルクエンハンサユニットは、操舵システムの操舵操作に対応するギア比を提供するように構成されている。
【0018】
本発明の一実施形態では、この方法は、所定の時間にわたる実際操舵角の平均を決定することをさらに含む。所定の時間にわたって取られた実際操舵角の平均は、実際の操舵における誤差値を排除する(例えば、意図しない操縦や路面やその他のパラメータによる変動により誤差値が発生する可能性がある)。この平均値を介して、バランシング制御ユニットは、所定の期間におけるバランシング操舵角に対する実際操舵角の変化を識別する。
【0019】
本発明の一実施形態では、この方法は、平均と実際操舵角の間の差を推定するステップを含み、推定された差は、更新された車両状態を取得するためにバランシング操舵角と比較される。
【0020】
本発明の一実施形態では、更新された車両状態は、差(平均とバランシング操舵角との差)が閾角より小さいときに、定常操縦状態となる。したがって、システムは、ライダー側からの入力がなく、車両も定常操縦状態にあることを識別する。
【0021】
ある実施形態では、更新された車両状態は、差(平均とバランシング操舵角との差)が閾角より大きいときに、過渡操縦状態となる。このような状態では、バランシングシステムは、最初にアクチュエータユニットへの入力を修正することによってバランシングを実行し、次にライダーが過渡操作を実行できるようにする。
【0022】
本発明の一実施形態では、更新された車両走行状態を識別するために、実際操舵角とバランシング操舵角の間の数学的な時間微分(変化率)が考慮される。更新された車両走行状態は、微分および差(平均とバランシング操舵角)の両方が、対応する閾値よりも小さいときに、定常操縦状態として識別される。微分は、実際操舵角の変化率を提供し、それによってバランシング制御ユニットが比例制御を実行する。
【0023】
本発明の一実施形態では、更新された車両走行状態は、微分(実際操舵角とバランシング操舵角の間)と、差分(平均とバランシング操舵角の間)のいずれかが対応する閾より大きいときに、過渡操縦状態として識別される。このような状態では、バランシングシステムは、異常を識別し、バランシングを実行する。
【0024】
本発明の一実施形態では、バランシング操舵角の更新は、次のインスタンスに対して実行される。更新されたバランシング操舵角は、更新された車両の走行状態が定常操縦状態であるときに、次のインスタンスのために以前に推定されたバランシング操舵角と同じに保たれる。
【0025】
本発明の一実施形態では、バランシング操舵角の更新は、次のインスタンスのために行われる。更新されたバランシング操舵角は、先に推定されたバランシング操舵角と、実際操舵角とバランシング操舵角の間の時間微分との、時間積分である。このような補正は、更新された車両走行状態が過渡操縦状態であるときに実行される。
【0026】
本発明の一実施形態では、バランシング操舵角および更新されたバランシング操舵角は、電流制御操作または電圧制御操作のうちの一方によって、アクチュエータユニットに適用される。
【0027】
本発明の一実施形態では、バランシングシステムの操作のための電流制御の方法が好ましい。この方法は、複数のセンサから情報を受信するステップと、バランシング操舵角を計算するステップと、バランシング操舵角を達成するためにアクチュエータユニットを作動させるステップと、バランシング操舵角をライダーによって適用された実際操舵角と比較するステップとを含む。さらに、実際操舵角とバランシング操舵角との差を計算するステップ。次いで、上記の差に基づいて更新された車両走行状態を識別するステップ。それに応じて、更新された車両の走行状態に基づいてバランシング操舵角を更新し、操舵システムを操縦するために、制御電流を適用することによって、アクチュエータユニットを駆動するステップ。
【0028】
本発明の一実施形態では、バランシングシステムは、バランシング操舵角を、ライダーによって適用される実際操舵角と比較し、それによって誤差値を識別する(一実装形態によれば、誤差値は差に等しい)。
【0029】
本発明の一実施形態の、バランシングシステムの操作のための電流制御の方法では、誤差値が上限閾値と比較される。バランシング制御ユニットは、誤差値が上限閾値より大きいときには、制御電流を適用することにより、即時補正を実行する。これはまた、ライダーが入力を提供しており、それには反作用が必要であることを意味し、次いで、ライダーが意図した操縦が実行される。
【0030】
本発明の一実施形態では、制御電流は、バランシング操舵角に基づく推定電流とバランシング電流との統合によって取得される。バランシング電流は、バランシングコントロールユニットによって推定され、それは、誤差値に対応する。
【0031】
本発明の一実施形態では、(実際操舵角とバランシング操舵角の間の)誤差値は、下限閾値と比較される。誤差値が上限閾と下限閾の間にある場合、バランシング制御ユニットは、制御電流を適用することによって、補正を実行する。
【0032】
本発明の一実施形態では、制御電流は、誤差値が上限閾値と下限閾値の間にあるときには、バランシング操舵角に基づいて得られる推定電流と、誤差値に対応するバランシング電流との差である。
【0033】
本発明の一実施形態では、バランシング電流は、より早い段階から識別されたライダー意図に応じて、正または負のいずれかである。
【0034】
別の実施形態では、車両をバランスさせるためのバランシングシステムの操作方法は、複数のセンサから情報を受信することを含む。複数のセンサは、第一に、操舵角センサおよび操舵トルクセンサを含む。次に、バランシング操舵角とバランシング操舵トルクを計算する。バランシング操舵角とバランシング操舵トルクを達成するためにアクチュエータユニットを作動させる。バランシング操舵角およびバランシング操舵トルクを、ライダーによって適用された実際操舵角および実際操舵トルクと比較する。実際操舵角とバランシング操舵角の差、および実際操舵トルクとバランシング操舵トルクの差に基づいて、更新された車両走行状態が識別される。これは、実際値とバランシング値の偏差に応じてライダー意図を識別するのに役立つ。これにより、更新された車両の走行状態に基づいて、バランシング操舵角とバランシング操舵トルクが更新され、それに応じてアクチュエータユニットが駆動されて操舵システムを操縦する。
【0035】
別の実施形態では、バランシング操舵トルクと実際操舵トルクとの差が計算され、それによって誤差値が取得される。ライダー意図を理解するために、誤差値が、閾値と比較される。
【0036】
本発明は、バランシングシステムによって重要なバランシング機能が管理されるので、経験者ライダーに加えて初心者ライダーに改善されたライディング体験を提供する。ライダーは、混雑した交通のような遅い移動状態において快適に乗ることができる。
【0037】
本発明を、添付の図を参照してさらに説明する。なお、説明および図は、本発明の原理を図解しているに過ぎないことに留意すべきである。本明細書において明示的に記載または図示されていないが、本発明の原理を包含する様々な装置を考案することができる。さらに、本発明の原理、態様、および実施例、ならびにそれらの具体例を列挙する本明細書のすべての明細は、それらの均等物を包含することが意図される。
【0038】
バランシングシステムは、任意の二輪車両または三輪車両に実装され得る。しかしながら、説明の目的であって、限定するものではないが、バランシングシステム、ならびに対応するさらなる利点および特徴は、以下の実施形態を通して説明される。図の右上隅に提示された矢印は、車両に対する方向を表わす。矢印Fは前方向、矢印Rは後方向、矢印UWは上方向、矢印DWは下方向を表わす。
【0039】
図1は、本発明の実施形態による、例示車両100の左側面図を示している。車両100は、ヘッドチューブ106と、メインフレームとを含む、フレームアセンブリ105(概略的に示される)を含む。図示された実施形態では、メインフレームは、ヘッドチューブ106から後下方に延びるメインチューブ107と、メインチューブ107の後部から後方に傾斜して延びる1つまたは複数のリアチューブ110とを備える。図示された実施形態では、フレーム部材105は、ライダーが自分の足を休めるため、またはそこに荷物を積み込むために使用される、ステップスルー(step-through)部151を画定する。別の実施形態では、メインチューブは、ヘッドチューブ106から後方に、続いて下方に延びて、パワーユニットを支持するために、メインチューブの下の空間を画定するように適合されてもよい。第1の車輪101および第2の車輪102は、それぞれフロントサスペンションシステム131およびリアサスペンションシステム134によって回転可能に支持されている。一実施形態では、第2の車輪102は、スイングアーム(図示せず)によって追加的に支持されてもよい。
【0040】
本実施形態によれば、パワーユニット135は、フレーム部材105に揺動可能に接続され、実質的にシートアセンブリ155の下方で、ステップスルー部151の後方に配置される。パワーユニット135は、第2の車輪102に動力を伝達するための変速機システム(図示せず)を含む。トランスミッションシステムは、無段変速機(continuously variable transmission)、自動マニュアル変速機、ベルト/チェーンドライブを含み得る。一実施形態では、パワーユニット135は内燃機関である。別の実施形態では、パワーユニット135は、電気原動機(electric prime mover)である。別の実装形態では、パワーユニットは、車両100のフレームアセンブリ105に固定的に装着される。
【0041】
さらに、第1の車輪101は、フレームアセンブリ105によって旋回可能に支持され、ハンドルバーアセンブリ150は、車両100を操縦および操舵するために第1の車輪101に機能的に接続されている。ハンドルバーアセンブリ150は、計器クラスタ、スロットル、クラッチ、または電気スイッチを含む、車両調整器(vehicle controls)を支持してもよい。また、シートアセンブリ155はフレームアセンブリ105によって支持されており、ライダーはシートアセンブリ155上の着座位置で車両100を操作することができる。さらに、図示された実施形態では、車両100は、ハンドルバーアセンブリ150とシートアセンブリ155の間に形成された、ステップスルー部151を含む。
【0042】
車両100には、フレームアセンブリ105に取り付けられ、フレームアセンブリ105および/または車両100の部分を覆う、複数のパネル170A、170B、170Cが設けられている。複数のパネルには、フレームアセンブリ105のヘッドチューブ106をそれぞれ前方方向および後方方向に覆う、フロントパネル170Aおよびレッグシールド170Bを含む。また、リアパネルアセンブリ170Cは、実質的にシートアセンブリ155の下方に配置されている。リアパネルアセンブリ170Cは、シートアセンブリ155の下方に配置されたユーティリティボックス(図示せず)を実質的に覆い、また、パワーユニット135の少なくとも一部分を覆う。車両100には、以下の説明で考察されるバランシングシステム200(
図2に示す)が設けられている。
【0043】
図2は、本発明の実施形態による、車両100のフレームアセンブリ105に支持された、バランシングシステム200の概略側面図を示す。車両100は、操舵シャフト212を含む、操舵システム120を備える。操舵シャフト212は、ヘッドチューブ106(フレームアセンブリ105)のまわりに回転可能に軸受けされている。一実施形態では、操舵シャフト212は、下部ブリッジ215が接続される、下端部を備える。下部ブリッジ215は、フロントサスペンションシステム131を支持するように構成されている。フロントサスペンションシステム131は、第1の車輪131を回転自在に支持する。操舵シャフト212は、操舵軸S-S’のまわりに回転可能である。図示された実施形態では、車両100は正のトレイル(trail)を有し、このとき、操舵軸S-S’は、第1の車輪101の路面への接触点190の前方に延びる。さらに、本発明は、トレイル、例えば正のトレイル、を保持することを可能にして、車両のバランシング操作中に、トレイルの変更を一切必要としない。
【0044】
車両100のバランシングシステム200は、操舵システム120を直接操作することのできる、アクチュエータユニット205を備える。別の実施形態では、トルクエンハンサユニット210が、アクチュエータユニット205に機能的に接続されている。一実施形態では、アクチュエータユニット205は、フレームアセンブリ105に固定的に装着されている。別の実施形態(図示せず)では、延長部材がフレームアセンブリ105に固定され、アクチュエータユニット205が延長部材上に支持されている。実施形態によれば、操舵軸S-S’は、アクチュエータ軸A-A’と平行である。トルクエンハンサユニット210は、アクチュエータユニットから操舵シャフト212に駆動力を与えるように構成されている。一実施態様では、本発明によれば、ヘッドチューブ106の既存の構成は、フレームアセンブリ105の前方部分(例えばヘッドチューブ部分)を変更する必要なしに、車両内に保持される。別の実施形態では、ヘッドチューブ部分は、アクチュエータユニットおよび関連サブシステムを収容するように修正される。
【0045】
さらに、車両100のバランシングシステム200は、車両100の動的操作状態関連情報を提供する複数のセンサを備える。さらに、車両100にはバランシング制御ユニット235が装着されている。一実施形態では、複数のセンサの一部を形成する操舵角センサ250は、アクチュエータユニット205のアクチュエータユニットシャフト(図示せず)とトルクエンハンサユニット210の間に装着される。本発明は、操舵角センサ250から操舵システム120の操舵角情報を受信してバランシング操作を実行することができる。すなわち、不可欠なセンサである操舵角センサ250は、操舵シャフト212に直接的または間接的に接続される。間接接続の場合には、操舵角センサ250は、トルクエンハンサユニット210等の中間歯車または中間歯車アセンブリを介して接続される。
【0046】
操舵角センサ250は、操舵シャフト212、アクチュエータユニット205およびハンドルバーアセンブリ150の機能に干渉することなく、車両上にコンパクトに収容される。操舵角センサ250は、操舵シャフト212の操舵角に関するデータ/情報を提供するように構成されている。操舵シャフト212の上端部分は、接続手段216を介してハンドルバーアセンブリ150に機能的に接続されている。さらに、複数のセンサは、限定はされないが、速度センサ(図示せず)、グローバルポジショニングシステム(GPS)ユニット230、フレームアセンブリ105によって支持された慣性測定ユニット(IMU)240を含む。実施形態によれば、複数のセンサのうちの、1つまたは複数のセンサ230、240は、車両のコンパクトで安全なレイアウトを可能にするために、車両の後部領域、および実質的にバランシング制御ユニット235の近傍に配置される。複数のセンサは、車両100の様々な動的操作状態を提供するために、バランシング制御ユニット235に通信可能に結合される。
【0047】
図示の実施形態では、バランシング制御ユニット235は、フレームアセンブリ105のリアチューブ110によって支持されている。別の実施形態では、バランシング制御ユニット235は、車両100のレイアウトの対象となるフレームアセンブリ105の任意の他の部分に配置され得る。バランシング制御ユニット235は、アクチュエータユニット205の操作の、起動/起動停止または制御を行うために、アクチュエータユニット205と通信可能に結合されている。バランシング制御ユニット235は、アクチュエータユニット205の操作を制御し、それに対応して操舵シャフト212の角度を制御することにより、車両100をバランスさせるように構成されている。バランシングシステムの操作方法は、次の図解を介して説明される。
【0048】
図3は、本発明の第1の実施形態による、バランシングシステムの操作方法を示すフローチャートを示す。第1の実施形態によれば、この方法は、操舵角センサ250を含む複数のセンサからの入力を考慮する。バランシング制御ユニット235は、車両100の動的状態に関する情報を得るために複数のセンサからの入力を受信する(本明細書では、システムレベルのコンポーネントについては
図1および
図2を参照されたい)。例えば、速度センサから速度vが検知される。一実施形態では、速度vは、GPSユニット230から取得することができる。さらに別の実装形態では、速度vは、車両100内に局所的に設けられているホールセンサまたはエンコーダを用いて測定される。ロールレートとロール角φはIMU240から検知される。一実装形態では、ロール角は、ロール角速度から推定される(ロール角変位は、IMU240を用いて直接、測定してもよい)。
【0049】
本発明の一実施形態では、バランシング制御ユニット235は、車両100をバランスさせるように構成されている。さらに、車両100には、低速/高速安定性、(ライダーの操舵努力を低減するための)操舵アシスト、およびその他のダイナミクス改善が提供されている。ステップS305において、バランシング制御ユニット235は、車両100の動的状態を受信する。ステップS310において、バランシングシステム200によって、1つまたは複数のセンサから操舵角に関する情報を受信することによって、バランシング操舵角Asが算出される。一実施形態では、バランシング操舵角Asは、車両100の動的状態の様々なパラメータを用いて推定される。一実装形態では、ルックアップテーブルに、車両の様々な動的走行状態に対応する様々な操舵角を設けてもよい。バランシング操舵角Asを達成するために、アクチュエータユニット205に、電流または電圧が適用されて、操舵制御操作が実行される。一実装形態では、適用される電流は、様々なライディング状態および道路状態に対して較正され、バランシング制御ユニット235のためのルックアップテーブルに記憶される。ステップS315に示すように、バランシング制御ユニット235は、アクチュエータユニット205にバランシング操舵角Asを適用するように構成されている。アクチュエータユニット205は、バランシング操舵角Asを達成するために操作し、それに応じて、ステップS320において、操舵トルクがアクチュエータユニット205によって適用されてもよい。
【0050】
また、ステップS325においては、操舵システム120の実際操舵角As’が操舵角センサ250を用いて測定され、バランシング制御ユニット235に送給される。ステップS330において、車両100のライダー意図およびライディング状態を決定するために、バランシング制御ユニット235によって、実際操舵角As’とバランシング操舵角Asとの差(誤差値)が解析される。ライダー意図は、バランシング操舵角からの、実際操舵角の偏差から決定される。例えば、バランシング操舵角から離れる方向に操縦するライダー意図が、バランシング制御ユニット235によって記録される。バランシング制御ユニット235は、バランシング操作を行い、先に記録されたライダー意図の方向に操舵システム120を操作する。ステップS335においては、所定の持続時間にわたって実際操舵角Asの平均が測定される。さらに、平均とバランシング操舵角As’との差、すなわちmean[As’(t-n:t)]-As(t)(易しくするために、差と呼ぶ)が、バランシング制御ユニット235によって計算される。ここで、「n」は値が測定される持続時間を定義する。この平均は、発生している操縦操作の量を識別するのに役立つ。同様に、実際操舵角As’とバランシング操舵角Asの間の時間微分(differential/differentiation)値、すなわちdiff[As’(t)-As(t)](易しくするために、微分角と呼ぶ)も測定される。微分角度は前のインスタンスと比較して、またはある期間にわたって変化するので、操舵システムの状態の変化率は、バランシング制御ユニット235によって監視される。この差と微分を測定して、車両100のライディング状態を識別する。ステップS335において、差および微分を、閾角Athおよび微分閾角Adthと(より小さいか否かを確認するために)比較される。比較式を以下に示す。
Mean[As’(t-n:t)]-As(t)<Ath.....(1)
および
Diff[As’(t)-As(t)]<Adth.....(2)
【0051】
さらに、比較に基づいて、ステップS335において、式(1)および式(2)の結果が「はい」である場合、ステップS340において、バランシング制御ユニット235は、車両が定常操縦状態にあることを識別する。定常操縦状態は、式(1)および式(2)の左側部分に最小から無視できるほどの変動があるか、または差と微分が対応する閾値より小さいときに、識別される。式(1)および式(2)との差または微分が閾値を超える場合、バランシング制御ユニット235は補正行動をとらなくてはならない。平均すなわちMean[As’(t-n:t)]は、操舵システム120の時間的な変動による突発的なスパイクを排除することによって、定義された期間にわたる正確な実際操舵角値を識別するのに役立つ。したがって、閾値を超えないとき、次のインスタンスに対して、バランシング操舵角As(t+1)の補正値は、補正行動以前に計算された、以前のバランシング操舵角As(t+1)と同じである。
【0052】
また、ステップS335において、式(1)または(2)の出力が「いいえ」である、すなわち、その差または微分が閾値AthまたはAdthを超えた場合、バランシング制御ユニット235は、車両100の運動を過渡操縦状態として識別する。過渡操縦状態を検出すると、バランシング制御ユニット235は、次のインスタンスに対して、実際操舵角とバランシング操舵角との微分を、更新された車両状態の検出の以前に推定された、バランシング操舵角に加算することによって、次のインスタンスのために、バランシング操舵角を補正する、すなわち、
As(t+1)=As(t+1)+diff(As’(t)-As(t))...(3)
【0053】
次のインスタンスに対するバランシング操舵角は、As(t+1)として表わされる。バランシング操舵角As(t+1)は、測定された操舵角As’(t)と、以前に推定されたバランシング操舵角As(t+1)の間の微分値を加算することによって更新される。この差は、次のインスタンスに対する、バランシング操舵角に追加される。この更新されたバランシング操舵角は、次のインスタンスのために、ステップS360において、アクチュエータユニット205に送給される。ステップ360においてアクチュエータにバランシング操舵角度/トルクを適用することによって、ステップS365において、アクチュエータユニット205を介してステアリングシステム120に必要な角度およびトルクを適用することによって、車両がバランシングシステム200によってバランスさせられる。例えば、バランシング制御ユニット235は、複数のセンサから受信した入力に基づいて、バランシング操舵トルクTを推定する。そして、バランシング操舵トルクTを決定し、このバランシング操舵トルクTに対応する入力でアクチュエータユニット205をトリガリングすることによって車両をバランスさせる。ハンドルバーアセンブリ150(ライダー)およびアクチュエータユニット205は、車両100を操縦するために操舵シャフト212に平行に入力を提供することが可能である。別のシナリオでは、バランシング制御ユニット235は、最初に、車両100をバランスさせるために、ライダーの回転方向(ライダー意図)と反対の方向にハンドルバーアセンブリ150を操作する。このシナリオは、角度値間の偏差が大きいために、微分[diff(As’(t)-As(t)]が負のときに発生する。車両100のバランシングが達成されると、バランシングシステム200は、ライダーが意図した操縦を実行し、必要に応じて支援することさえ可能にする。
【0054】
本発明の一実施形態では、式(3)は、ゲイン係数G1を含み、これに、バランシング操舵角As’とバランシング操舵角Asの間の微分[Diff(As’(t)-As(t))]が乗じられる。ゲイン係数G1は0から1の間の値である。ゲイン係数は、制御行動をとらなければならないレートに基づいて選択される。即時制御に対して、ゲイン係数は最大になるように選択される。
【0055】
本発明の一実施形態では、バランシングシステム200は、車両100の所定の状態で起動される。例えば、ライダーが車両100を低速で(例えば、一実施形態に従って時速5キロメートル未満の速度で)操作しているときに、バランシングシステム200が起動される。このような低速で車両100をバランスさせるために、ライダーは通常、操舵システムのハンドルバーアセンブリ150を操作することによって車両100にバランシング入力を提供する。ただし、ライダーによって提供される入力は、十分でない場合、または正しい方向でないか、もしくは必要なレートではない場合がある。バランシングシステム200が作動して、操舵シャフト212に部分的または完全なバランシング角およびトルクを適用する。操舵シャフト212は、ハンドルバーアセンブリ150およびアクチュエータユニット205からの入力を受ける。バランシングアシストに加えて、アクチュエータユニット205は、意図された操舵操縦を実行するために、操舵/トルクアシストを提供する。バランシング制御ユニット235は、慣性測定ユニット240、速度センサ(図示せず)、グローバルポジショニングセンサユニット230などを含む、複数のセンサのうちの1つまたは複数のセンサからのデータを用いて、適用するべきトルクを推定するように構成されている。バランシングシステム200は、主として操舵角センサ250からのデータを使用する。さらに、バランシングシステム200は、必要な角度およびトルクを提供するために、電流制御操作を実行する。
【0056】
図3bは、本発明の実施形態による、システムの操作方法を描いたフローチャートを示す。車両100をバランスさせるためのバランシングシステム200の操作方法が、以下のステップにおいて詳述される。ステップS1301において、バランシング制御ユニット235は、操舵角センサ250を含む複数のセンサ230、240、250から、車両100の動的状態に対応する情報を提供する、情報を受信する。ステップS1310において、バランシング制御ユニット235は、[前述のステップにおける]複数のセンサ230,240,250に対して、受信した情報に基づいて、バランシング操舵角A
sを計算する。さらに、ステップS31315において、バランシング制御ユニット235は、車両100の操舵システム120を操縦するための操舵角制御を実行することによって、バランシング操舵角A
sを達成するために、アクチュエータユニット205を作動させる。ステップS31320において、バランシング制御ユニット235は、バランシング操舵角A
sを、操舵システム120の実際操舵角A
s’と比較する。ステップS1325において、バランシング制御ユニット235は、実際操舵角A
s’とバランシング操舵角A
sとの差に基づいて、更新された車両走行状態を識別する。次いでステップS1330において、バランシング制御ユニット235は、更新された車両走行状態に基づいてバランシング操舵角A
sを更新し、それに応じてアクチュエータユニット205を駆動して操舵システム120を操縦する。
【0057】
図4は、本発明の実施形態による、電流制御(電流コントローラ操作)によってバランシングシステムを制御する方法を示す。本実施形態によれば、この方法は、操舵角センサ250を含む複数のセンサからの入力を考慮する。バランシング制御ユニット235は、車両の動的状態に関する情報を取得するために、1つまたは複数のセンサからの入力を受信する。例えば、速度vは速度センサから検知される。一実装形態では、速度vをGPSユニット230から取得することができる。さらに別の実装形態では、速度vは、車両100内に局所的に設けられている、ホールセンサ(Hall sensor)またはエンコーダを用いて測定される。ロールレートおよびロール角φは、IMU240から検知される。1つの実装形態では、ロール角は、ロール角速度から推定される(ロール角変位は、IMU240を用いて直接、測定してもよい)。
【0058】
ステップS405では、バランシング制御部235は、車両100の動的状態を状態パラメータとして受信する。ステップS410では、バランシング操舵角Asがバランシングシステム200により計算される。ステップS415では、バランシング制御ユニット235は、バランシング操舵角Asに対応する信号(電流制御信号)をアクチュエータユニット205に送ることにより、アクチュエータユニット205を制御するように構成されている。ステップS420では、アクチュエータユニット205は、バランシング操舵角Asを達成するように操舵操作を実行する。ステップS425では、操舵システム120の実際操舵角As’が操舵角センサ250を用いて計測され、バランシング制御ユニット235に送給される。ステップS430において、車両100のライダー意図と、ライディング状態を決定するために、実際操舵角As’とバランシング操舵角Asとの差(誤差値)が、バランシング制御ユニット235により推定される。
【0059】
ステップS430で取得された差から、ステップ435において、誤差値|As’-As|が、上限閾値Eth_Uと比較される。誤差値が上限閾値より大きい場合、[|As’-As|>Eth_U]である場合、次いでバランシングシステム200は、ライダーが車両100を操縦するために操舵システム120に入力を提供していることを検出する。さらに、バランシングシステム200は、誤差値と誤差値の符号とから回転方向(ライダー意図)を検出する。例えば、操舵システムの中心位置が0度であり、バランシング操舵角Asが+5度であるが、ライダーが同じ値の反対方向に操舵システム120を回転させた場合、実際操舵角As’は-5になる。したがって、差/誤差値は負の符号付きで、-10度となる。一方、バランシング操舵角Asが+5度であるが、ライダーが、回転した場合、ステアリングシステム120を、同じ方向であるが5度を超えて、例えば10度、回転させた場合。その場合、差/誤差値は+5度になる。バランシング制御ユニット235は、誤差値の値と符号とから、ライダー意図、またはライダーによって実行されている回転方向を識別する。
【0060】
ステップS440において、誤差値が上限閾値より大きいときには、バランシング制御ユニット235は、制御電流I’を提供し、これは、バランシング電流I1が加算/統合された、(バランシング操舵角Asに基づく)推定電流Iである。バランシング電流I’の負または正の値は、前の段階で識別されたライダー意図に依存する。バランシング制御のために実行される操舵システム120の操作方向に応じて、ステップS445において、操舵システム120の方向制御のために、一実施形態では電動モータであるアクチュエータユニット205に、バランシング電流が正または負の形態[符号(+,-)]で適用されることになる。バランシングは、バランシング操舵角Asと実際操舵角As’の比較から識別されたライダー意図に依存する。このように、制御電流I’により、車両100はバランス状態を達成し、バランシング制御ユニット235は、ライダー意図に従った操舵システム120の回転を可能とし、続いてステップS405において、車両の動的状態パラメータを監視し続ける。
【0061】
一方、ステップS435において、誤差値が上限閾値より小さいとき、次いでステップS450において、誤差値が下限閾E
th_Lと比較される。誤差値が下限閾E
th_Lより小さいとき、この場合に、コントローラ電流I’は推定電流Iと同じとなる。ステップS450において、誤差値が下限閾値より大きいとき、ステップS460において、推定電流Iからバランシング電流I1を減算することによって、バランシング電流I’が達成され、ステップS465において、対応する入力がアクチュエータに提供され、続いてステップS405において車両の動的状態パラメータの監視を続ける。車両がバランスされており、上限閾E
th_Uを超えない場合、バランシング制御ユニット235は、バランシング操舵角A
sを達成し、次いで所望の回転方向に関してライダー指示に従うことになる。上限閾値E
th_Uと下限閾値E
th_Uの間の範囲は、ライダーのフィーリングと車両のチューニングに基づいて決定される。例えば、この範囲は、操作速度、地面または路面、および車両構成に基づいて変化させることができる。ステップS465では、バランシングのための方向制御が実行され、続いて、ライダー意図が実行される。この電流制御操作は、
図3のステップS345/ステップS355の「新」バランシング操舵角を達成するために実行される。
【0062】
図5aは、本発明の第2の実施形態による、バランシングシステム500を示す。
図5bは、本発明の実施形態による、バランシング制御ユニット535を備えるバランシングシステム500の機能方法を、フローチャート600の形態で示している。ステップS605において、バランシング制御ユニット535は、GPSユニットまたは車両速度センサ565からデータを受信し、車両速度/速力Vを計算する。同様に、バランシング制御ユニット535は、操舵角センサ550、トルクセンサ560、IMUのようなロール角/ロールレートセンサ540および速度センサ545を含む、車両の1つまたは複数のセンサから動的データを受信する。一実施形態では、ギアボックスが操舵システム120とアクチュエータユニット505の間のトルクコンバータに使用されている場合に、ギア比関連情報が、動的データとして使用される。他のセンサと合わせて、操舵角センサおよびトルクセンサからの重要情報に基づいて、ステップ610において、バランシング制御ユニット535がバランシング操舵角A
sを計算し、ステップ615において、車両100をバランスさせるために、バランシング操舵トルクTが推定される。
【0063】
操舵システム120の慣性と第1の車輪101が受ける慣性とに基づいて、必要なバランシング操舵トルクが推定され、適用される。一実施形態では、バランシング制御ユニット235は、実際操舵角と、アクチュエータユニット205に与えられた操舵入力の間の微分から、慣性力の推定値を受信する。
【0064】
ステップS620では、バランシング制御ユニット535は、アクチュエータユニット505に、バランシング操舵角に対応する、推定バランシング操舵トルクTを適用する。アクチュエータユニット505は、車両100をバランスさせるためにバランシング操舵角Asを達成するように操舵システム120の操縦の実行を開始する。ステップS625では、操舵システム120は、アクチュエータユニット505によって制御される。ステップS630およびS635において、バランシング制御ユニット535は、操舵角センサおよびトルクセンサからのデータから、実際操舵トルクT’と実際操舵角As’を測定する。
【0065】
ステップS640では、バランシング操舵トルクTと実際操舵トルクT’との差が推定される。ステップS655では、誤差値/実際操舵トルクT’とバランシング操舵トルクTとの差、が測定されて閾値Tthと比較される。同様に、ステップS650では、誤差値/実際操舵角As’とバランシング操舵角Asとの差、が測定されて閾値Athと比較される。
【0066】
ステップS650において、角度における誤差値の大きさ(絶対値)が閾値Athより小さいとき、ステップS655によって、車両はバランス状態にあると決定される。それ以上、現在インスタンスに対して制御は必要ではない。車両を操縦するライダーからの有意な入力がないか、または車両仕様、ライディング状態または路面摩擦に変化がないため、ステップS605による車両の動的状態の監視が継続される。方向を変更するようにライダーからの入力があるか、またはライディング状態が変更された場合、この動的状態パラメータの変化は、バランシングシステム500が、ステップS610およびS615において、バランシング操舵角Asおよびバランシング操舵トルクTを再較正する結果となる。しかしながら、バランシング制御ユニット535は、差し迫ったバランシング要求に対して、複数のセンサ540、550、560、565からの情報受信に戻る。
【0067】
同時に、ステップS665において、トルクにおける誤差値の大きさが閾値Tthより小さい場合、バランシング制御ユニット535は、ライダーからの入力があり、ライディング状態および道路状態に変化はないと結論付ける。一方、ステップS665において、誤差値が閾値Tthより大きいとき、次いでステップS670において、バランシング制御ユニット535は、バランシング操舵トルクTからの偏差を伴う、ライダー入力があることを検出する。バランシング制御ユニット535は、ステップS610およびS615において、バランシング操舵角Asおよびバランシング操舵トルクを再較正する。したがって、トルクと角度の制御は、ライダー意図を理解することにより、改善されたバランシング制御を提供する。さらに、バランシング制御ユニット535は、電流制御または電圧制御を実行して、アクチュエータユニット505を操作および制御し、それによって操舵システム120を安定性に対して制御する。ステップS665またはステップS650において、バランシング制御ユニット535が、車両がバランスされていないことを識別すると、バランシング制御ユニットは、車両の動的情報を受信する(これにより車両の走行状態を更新する)ので、それに応じて、更新されたバランシング操舵角Asを計算して入力する。
【0068】
特許請求された発明の特定の特徴が本明細書に図解および説明されているが、多くの修正、置換、変更、および等価物が、当業者には思い浮かぶであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、特許請求された発明の真の精神の範囲内に入る、すべてのそのような修正および変更をカバーすることを意図していることを理解されたい。
【符号の説明】
【0069】
100 車両
101 第1の車輪
102 第2の車輪
105 フレームアセンブリ
106 ヘッドチューブ
107 メインチューブ
110 リアチューブ
120 操舵システム
131 フロントサスペンションシステム
134 リアサスペンションシステム
150 ハンドルバーアセンブリ
151 ステップスルー部
155 シートアセンブリ
170A フロントパネル
170B レッグシールド
170C リアパネルアセンブリ
190 接触点
200 バランシングシステム
205/505 アクチュエータユニット
210 トルクエンハンシングユニット
212 操舵シャフト
215 下方ブリッジ
216 接続チューブ
230 グローバルポジショニングユニット
235/535 バランシング制御ユニット
240/540 慣性モニタリングユニット
250/550 操舵角センサ
560 トルクセンサ
A-A’ アクチュエータ軸
As バランシング操舵角
As’ 実際操舵角
Ath
Adth
S-S’ 操舵軸
T バランシング操舵トルク
T’ 実際操舵トルク
Tth
v 速度
Φ ロール角/ロールレート
【図】
【図】
【図】
【国際調査報告】