(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】オンデマンド接着による両面接着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/22 20180101AFI20240110BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240110BHJP
A61F 13/02 20240101ALI20240110BHJP
A61F 13/0246 20240101ALI20240110BHJP
A61M 25/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C09J7/22
C09J7/38
A61F13/02 310M
A61F13/02 310J
A61F13/02 310D
A61F13/02 D
A61F13/02 A
A61M25/02 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537468
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 IB2021061955
(87)【国際公開番号】W WO2022137062
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ゴールド,アン シー.エフ.
(72)【発明者】
【氏名】グットマン,シルヴィア ジー.ビー.
(72)【発明者】
【氏名】シャーマン,オードリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】シェーヴァー,ジョナー
(72)【発明者】
【氏名】コリガン,トーマス アール.
【テーマコード(参考)】
4C267
4J004
【Fターム(参考)】
4C267AA33
4C267GG14
4J004AA10
4J004AA11
4J004AB01
4J004CA04
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC06
4J004CC07
4J004EA05
4J004FA09
(57)【要約】
オンデマンド接着剤物品は、接着剤の層と、接着剤層と接触しているバッキング層と、を含む。バッキング層は複数の切れ目を含み、複数の切れ目は隙間であるが、接着剤物品が応力を受けていない状態にあるときには隙間は肉眼では見えず、応力を受けている状態にあるときには、切れ目のうちの少なくともいくつかが、接着剤層の第1の主面の、基材表面への接着を可能にする隙間になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面及び第2の主面を有する接着剤の層と、
第1の主面及び第2の主面を有する第1のバッキング層であって、前記第1のバッキング層の前記第1の主面は前記接着剤層の前記第2の主面と接触しており、前記第1のバッキング層は複数の切れ目を有し、前記複数の切れ目は隙間であるが、前記接着剤物品が応力を受けていない状態にあるときには前記隙間は肉眼では見えず、応力を受けている状態にあるときには、前記切れ目のうちの少なくともいくつかが、前記接着剤層の前記第2の主面の、基材表面への接着を可能にする隙間になる、第1のバッキング層と、
を含む、接着剤物品。
【請求項2】
前記複数の切れ目が、1つの軸に沿って、又は2つ以上の軸に沿って、特定のパターンで配列されている、請求項1に記載の接着剤物品。
【請求項3】
前記複数の切れ目のうちの少なくともいくつかが連続的な切れ目である、請求項1に記載の接着剤物品。
【請求項4】
前記接着剤が、ゲル接着剤又は感圧接着剤を含む、請求項1に記載の接着剤物品。
【請求項5】
前記接着剤層が多層接着剤を含み、前記多層接着剤が少なくとも2つの接着剤層を含み、第1の接着剤層が前記接着剤層の前記第1の主面を含み、第2の接着剤層が前記接着剤層の前記第2の主面を含み、前記第1及び第2の接着剤層が同一であるか又は異なる、請求項1に記載の接着剤物品。
【請求項6】
前記第1のバッキング層が、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、又はポリエーテルブロックアミドの熱可塑性フィルムを含む、請求項1に記載の接着剤物品。
【請求項7】
前記応力を受けている状態が、伸長、曲げ、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の接着剤物品。
【請求項8】
第1の主面及び第2の主面を有する第2のバッキング層を更に含み、前記第2のバッキング層の前記第2の主面は前記接着剤層の前記第1の主面と接触しており、前記第2のバッキング層は複数の切れ目を有し、前記複数の切れ目は隙間であるが、前記接着剤物品が応力を受けていない状態にあるときには前記隙間は肉眼では見えず、応力を受けている状態にあるときには、前記切れ目のうちの少なくともいくつかが、前記接着剤の層の、基材表面への接着を可能にする隙間になる、請求項1に記載の接着剤物品。
【請求項9】
前記第1のバッキング層及び前記第2のバッキング層が同一の材料を含む、請求項8に記載の接着剤物品。
【請求項10】
第1の基材表面と、
前記第1の基材表面に取り付けられた接着剤物品と、を含む接着剤構造物であって、
前記接着剤物品は、
第1の主面及び第2の主面を有する接着剤の層と、第1の主面及び前記第2の主面を有する第1のバッキング層と、を含み、
前記第1のバッキング層の前記第1の主面は、前記接着剤層の前記第2の主面と接触しており、前記第1のバッキング層は複数の切れ目を有し、前記切れ目は隙間であるが、前記接着剤物品が第1の状態にあるときには、前記隙間のうちの少なくともいくつかは肉眼では見えず、前記接着剤物品が第2の状態にあるときには、前記第1の状態において肉眼で見えない前記隙間のうちの少なくともいくつかは隙間になり、前記第2の状態は、曲げ、伸長、又はこれらの組み合わせの、より高い応力の状態であり、
前記接着剤層の第1の主面は前記第1の基材表面と接触しており、
前記第1のバッキング層中の前記隙間は、前記接着剤層の前記第2の主面の、第2の基材の表面への接着を可能にする、接着剤構造物。
【請求項11】
前記第1の基材が哺乳類の皮膚を含む、請求項10に記載の接着剤構造物。
【請求項12】
前記複数の切れ目が、1つの軸に沿って、又は2つ以上の軸に沿って、特定のパターンで配列されている、請求項10に記載の接着剤構造物。
【請求項13】
前記接着剤が、ゲル接着剤又は感圧接着剤を含む、請求項10に記載の接着剤構造物。
【請求項14】
前記バッキング層が、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、又はポリエーテルブロックアミドの熱可塑性フィルムを含む、請求項10に記載の接着剤構造物。
【請求項15】
前記第2の基材が物品を含む、請求項10に記載の接着剤構造物。
【請求項16】
前記物品がデバイスを含む、請求項15に記載の接着剤構造物。
【請求項17】
前記デバイスが、着用可能な医療デバイス、センサ、カテーテル、吸引ポート、インスリンポンプ用コントローラ、又はモニタを含む、請求項16に記載の接着剤構造物。
【請求項18】
接着剤物品の調製方法であって、
第1の主面及び第2の主面を有する第1のバッキング層を準備することと、
前記第1のバッキング層から材料を実質的に除去することなく、前記第1のバッキング層に複数の切れ目を入れることによって前記第1のバッキング層を改変して、応力を受けていない状態にあるときには前記切れ目は隙間であり、前記隙間は肉眼で見えないが、応力を受けている状態にあるときには、前記隙間のうちの少なくともいくつかは肉眼で見えるようにすることと、
接着剤を準備することと、
前記第1のバッキング層の前記第1の主面上に接着剤の層を形成して、前記接着剤層が第1の主面及び第2の主面を有し、前記接着剤層の前記第2の主面が前記第1のバッキング層の第1の主面と接触するようにすることと、を含む、方法。
【請求項19】
前記基材層に複数の切れ目を入れることによって前記基材層を改変することが、ナイフ、ブレード、ウォータージェット、又はレーザー光でカットすることを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のバッキング層の前記第1の主面上の前記接着剤の層が、前記第1のバッキング層を改変する前に形成される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
第1の主面及び第2の主面を有する第2のバッキング層を準備することであって、前記第2のバッキング層は複数の切れ目を有し、前記切れ目は隙間であり、前記隙間は肉眼で見えないが、応力を受けている状態にあるときには、前記隙間のうちの少なくともいくつかは肉眼で見えるようになる、ことと、
前記第2のバッキング層の前記第2の主面を、前記接着剤層の前記第1の主面に接触させることと、
を更に含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
接着剤物品、これらの接着剤物品を含む医療用構造物、及び接着剤物品の調製方法が本明細書に開示される。
【0002】
いくつかの実施形態では、接着剤物品は、第1の主面及び第2の主面を有する接着剤の層と、第1の主面及び第2の主面を有する第1のバッキング層と、を含み、第1のバッキング層の第1の主面は接着剤層の第2の主面と接触している。第1のバッキング層は複数の切れ目を有し、複数の切れ目は隙間であるが、接着剤物品が応力を受けていない状態にあるときには隙間は肉眼では見えず、応力を受けている状態にあるときには、切れ目のうちの少なくともいくつかが、接着剤層の第2の主面の、基材表面への接着を可能にする隙間になる。いくつかの実施形態では、接着剤物品は、接着剤層の第1の主面と接触している第2のバッキング層を更に含む。
【0003】
接着剤構造物もまた開示される。いくつかの実施形態では、接着剤構造物は、第1の基材表面と、第1の基材表面に取り付けられた接着剤物品と、を含む。接着剤物品は上記に記載されており、第1の主面及び第2の主面を有する接着剤の層と、第1の主面及び第2の主面を有する第1のバッキング層と、を含み、第1のバッキング層の第1の主面は接着剤層の第2の主面と接触している。第1のバッキング層は複数の切れ目を有し、切れ目は隙間であるが、接着剤物品が第1の状態にあるときには隙間のうちの少なくともいくつかは肉眼では見えず、接着剤物品が第2の状態にあるときには、第1の状態において肉眼で見えない隙間のうちの少なくともいくつかは隙間になり、第2の状態は、曲げ、伸長、又はこれらの組み合わせの、より高い応力の状態である。接着剤層の第1の主面は、第1の基材表面と接触しており、第1のバッキング層中の隙間は、第2の基材の表面への接着剤の層の接着を可能にする。
【0004】
接着剤物品の調製方法もまた開示される。いくつかの実施形態では、本方法は、第1の主面及び第2の主面を有する第1のバッキング層を準備することと、第1のバッキング層から材料を実質的に除去することなく、第1のバッキング層に複数の切れ目を入れることによって第1のバッキング層を改変して、応力を受けていない状態にあるときには切れ目は隙間であり、隙間は肉眼で見えないが、応力を受けている状態にあるときには、隙間のうちの少なくともいくつかは肉眼で見えるようにすることと、接着剤を準備することと、第1のバッキング層の第1の主面上に接着剤の層を形成して、接着剤層が第1の主面及び第2の主面を有し、接着剤層の第2の主面が第1のバッキング層の第1の主面と接触するようにすることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本出願は、添付の図面と共に、本開示の様々な実施形態についての以下の詳細な説明を考慮することにより、より完全に理解され得る。
【0006】
【0007】
以下の例示された実施形態の説明においては、本開示を実施することが可能な様々な実施形態を実例として示す添付の図面を参照する。本開示の範囲から逸脱することなく実施形態を利用することが可能であり、構造上の変更が行われ得る点は理解されるべきである。これらの図は、必ずしも一定の比率の縮尺ではない。図面で使用されている同様の番号は同様の構成要素を示す。しかし、所与の図内における構成要素を示すための番号の使用は、同一の番号で示されている別の図内の構成要素を限定することを意図していないことが理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
接着剤は、多様なマーキング、保持、保護、封止、及び遮蔽目的のために使用されている。接着テープは概して、バッキング又は基材と、接着剤と、を含む。接着剤の1種である、感圧接着剤は、多くの用途に特に好ましい。
【0009】
感圧接着剤は、室温で、(1)強力かつ持続的な粘着力、(2)指圧以下の圧力による接着、(3)被着体上に保持するのに十分な能力、及び(4)被着体からきれいに除去するのに十分な凝集力、を含む特定の特性を有することが当業者に周知である。感圧接着剤として十分に機能を果たすことがわかっている材料は、粘着力、剥離接着力、及び剪断強度の所望のバランスをもたらすのに必要な粘弾性特性を示すように設計され、配合されたポリマーである。感圧接着剤の調製に最も一般的に用いられるポリマーは、天然ゴム、合成ゴム(例えば、スチレン/ブタジエンコポリマー(SBR)及びスチレン/イソプレン/スチレン(SIS)ブロックコポリマー)、種々の(メタ)アクリレート(例えば、アクリレート及びメタクリレート)コポリマー、及びシリコーンである。これらの部類の材料はそれぞれ、利点と欠点を有する。
【0010】
多くの用途において、両面テープを有することが望ましい。「転写テープ」とも呼ばれる両面テープは、両方の露出面に接着性を有する接着テープである。転写テープによっては、露出面は単純に単一接着剤層の2つの面である。他の転写テープは、同一であっても異なっていてもよい少なくとも2つの接着剤層を有する多層転写テープであり、場合によっては、接着剤層でなくてもよい層を介在させる。
【0011】
両面テープに伴う1つの困難は、テープが露出した2つの粘着性接着剤層を有するため、輸送、取り扱い、及び基材への適用が困難であり得ることである。接着剤層の一方又は両方を覆う剥離ライナーの使用は、テープの輸送、取り扱い、及び基材への適用をより容易にし得る。しかしながら、剥離ライナーの使用は、接着剤層を露出させるために剥離ライナーを除去し、ライナーを廃棄する必要があるので、高い費用がかかり、不便であり得る。本開示では、第2の接着面がバッキング層と接触している2つの接着面を有するテープが記載されている。バッキング層は複数の切れ目を有し、複数の切れ目は隙間であるが、接着剤物品が応力を受けていない状態にあるときには隙間は肉眼では見えず、応力を受けている状態にあるときには、切れ目のうちの少なくともいくつかが、接着剤層の第1の主面の、基材表面への接着を可能にする隙間になる。このようにして、第2の接着剤表面はオンデマンド接着剤表面であり、第2の接着剤表面は、接着剤物品に応力が加えられると露出される。
【0012】
両方の接着剤表面がバッキング層と接触しており、両方のバッキング層が上記のような複数の切れ目を含むテープ物品もまた本明細書に開示される。これらの物品では、接着剤物品は、応力が接着剤物品に加えられるまで非接着性である。
【0013】
本明細書において使用される場合、「接着剤」という用語は、2つの被着体を一緒に接着するのに有用なポリマー組成物を指す。接着剤の例は、感圧接着剤及びゲル接着剤である。
【0014】
感圧接着剤組成物は、(1)強力かつ持続的な粘着力、(2)指圧以下の圧力による接着、(3)被着体を保持するのに十分な能力、及び(4)被着体からきれいに除去するのに十分な凝集力、を含む特性を保有することが、当業者には周知である。感圧接着剤として十分に機能することがわかっている材料は、所望のバランスの粘着力、剥離接着力、及び剪断保持力をもたらすのに必要な粘弾性を示すように設計かつ配合されたポリマーである。特性の適正なバランスを得ることは、単純なプロセスではない。
【0015】
本明細書で使用するとき、「ゲル接着剤」という用語は、1つ以上の基材に接着することができる液体又は流体を含有する、粘着性の半固体架橋マトリックスを指す。ゲル接着剤は、感圧接着剤と共通していくつかの特性を有し得るが、感圧接着剤ではない。「ヒドロゲル接着剤」は、架橋マトリックス内に含まれる流体として水を有するゲル接着剤である。
【0016】
本明細書で使用するとき、「切れ目」という用語は、材料がカットのプロセスにより基材から除去されることが実質的にないように、カット工具の貫通によって基材中に作製された、狭い開口部を指す。「切れ目」及び「スリット」という用語は、互換的に用いられる。
【0017】
用語「(メタ)アクリレート」は、アルコールのモノマーアクリル又はメタクリルエステルを指す。アクリレート及びメタクリレートモノマー又はオリゴマーは、本明細書で「(メタ)アクリレート」と総称される。「(メタ)アクリレート系」と呼ばれる材料は、1つ以上の(メタ)アクリレート材料を含有し、任意選択で追加の共重合性材料を含んでもよい材料である。
【0018】
本明細書で用いられる用語「シロキサン系」は、シロキサン単位を含有するポリマー又はポリマーの単位を指す。用語シリコーン又はシロキサンは、互換的に用いられ、ジアルキル又はジアリールシロキサン(-SiR2O-)繰り返し単位を有する単位を指す。
【0019】
用語「室温」と「周囲温度」とは、互換的に使用され、20℃~25℃の範囲の温度を意味する。
【0020】
用語「Tg」及び「ガラス転移温度」は、互換的に使用される。測定する場合、Tg値は、別途指示がない限り、10℃/分の走査速度で示差走査熱量測定法(DSC)によって決定される。典型的には、コポリマーのTg値は測定されないが、当業者に理解されるように、モノマー供給業者によって提供されるホモポリマーTg値を使った周知のFox式を用いて計算される。
【0021】
2つの層を指すとき、本明細書で使用する場合、用語「隣接する」は、2つの層が互いに近接しており、それらの間に介在する開放空間がないことを意味する。これらは、互いに直接接触していてもよい(例えば、一緒に積層されてもよい)、又は介在層が存在してもよい。
【0022】
本明細書で使用するとき、「パターン」という用語は、複数の切れ目を指し、複数の切れ目は配列を形成し、配列はパターンをとり、パターンは「ランダムパターン」であってもよく、このことは、配列内に容易に識別可能な繰り返し単位がないか、又は配列が少なくとも1つの軸に沿って整列され得ることを意味する。いくつかの実施形態では、配列は、1つの軸に沿って整列され、他の実施形態では、配列は、2つ以上の軸に沿って整列されている。
【0023】
用語「ポリマー」及び「高分子」は、本明細書において、化学における一般的な使用法と整合するように使用される。ポリマー及び高分子は、多くの繰り返しサブユニットから構成される。本明細書で使用する場合、用語「高分子」は、複数の繰り返し単位を有するモノマーに結合した基を説明するために使用される。用語「ポリマー」は、重合反応から形成された得られた材料を説明するために使用される。
【0024】
用語「アルキル」は、飽和炭化水素であるアルカンの基である一価の基を意味する。アルキルは、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの組み合わせであってもよく、典型的には、1個~20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1個~18個、1個~12個、1個~10個、1個~8個、1個~6個、又は1個~4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、及びエチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
用語「アリール」は、芳香族及び炭素環である一価の基を指す。アリールは、芳香環に接続している又は縮合している、1個~5個の環を有し得る。その他の環構造は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであってもよい。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アントリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナントリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、及びフルオレニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
用語「アルキレン」は、アルカンの基である二価の基を指す。アルキレンは、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの組み合わせであってもよい。アルキレンは、多くの場合、1個~20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキレンは、1個~18個、1個~12個、1個~10個、1個~8個、1個~6個、又は1個~4個の炭素原子を含有する。アルキレンのラジカル中心は、同一の炭素原子上にあってもよく(すなわち、アルキリデン)、又は異なる炭素原子上にあってもよい。
【0027】
用語「フリーラジカル重合性」及び「エチレン性不飽和」は、互換的に使用され、フリーラジカル重合機構を介して重合できる炭素-炭素二重結合を含有する反応性基を指す。
【0028】
本明細書で使用するとき、「隙間」という用語は、基材の厚さ全体を貫通する基材中の空隙空間を指す。隙間は、カット、スリット加工、ボーリング加工などによって調製することができる。本開示では、隙間は、基材が応力を受けていない状態にあるときには、肉眼では見えない(すなわち、スリットバッキングを通して下にある層を見ることができない)ものとして記載され、また隙間は、応力を受けている状態にあるときには、肉眼で見ることができ、「開口部」を形成するものとして記載される。本明細書で使用される「開口部」という用語は、典型的な定義に従って使用されるものであり、光が通過する空間である(スリットバッキングを通して下にある層を見ることができることを意味する)。本明細書で使用するとき、「穴」という用語は、応力を受けていない状態及び応力を受けている状態にあるときに肉眼で見える基材の表面の空隙空間を指し、これは応力を受けていない状態及び応力を受けている状態の両方における開口部である。
【0029】
接着剤物品が、本明細書に開示される。概していくつかの実施形態では、接着剤物品は、第1の主面及び第2の主面を有する接着剤の層と、第1の主面及び第2の主面を有する第1のバッキング層と、を含む。第1のバッキング層の第1の主面は、接着剤層の第2の主面に接触している。第1のバッキング層は複数の切れ目を有し、複数の切れ目は隙間であるが、接着剤物品が応力を受けていない状態にあるときには隙間は肉眼では見えず、応力を受けている状態にあるときには、切れ目のうちの少なくともいくつかが、接着剤層の第2の主面の、基材表面への接着を可能にする隙間になる。このようにして、接着剤層の第2の主面は、オンデマンド接着層である。
【0030】
幅広い接着剤が、本開示の接着剤物品の接着剤層における使用に好適である。接着剤層は、連続的な層であっても不連続的な層であってもよく、又は接着剤の複数層若しくは部分層を含んでもよい。いくつかの実施形態では、接着剤は感圧接着剤を含み、他の実施形態では、接着剤はゲル接着剤を含む。好適な感圧接着剤としては、(メタ)アクリレート系感圧接着剤及びシロキサン系感圧接着剤が挙げられる。
【0031】
1つの好適な部類の(メタ)アクリレート系感圧接着剤としては、(A)少なくとも1種のモノエチレン性不飽和アルキル(メタ)アクリレートモノマー(すなわち、アルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートモノマー)、及び(B)少なくとも1種のモノエチレン性不飽和フリーラジカル共重合性補強モノマー(reinforcing monomer)から誘導されるコポリマーが挙げられる。補強モノマーは、アルキル(メタ)アクリレートモノマーよりも高いホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有し、結果として得られるコポリマーのガラス転移温度及び凝集力を向上するものである。本明細書では、「コポリマー」は2種以上の異なったモノマーを含有する、ターポリマー、テトラポリマー等を含めたポリマーを指す。
【0032】
モノエチレン性不飽和アルキルアクリレート又はメタクリレート(すなわち、(メタ)アクリル酸エステル)であるモノマーAは、コポリマーの可撓性及び粘着性に寄与する。概して、モノマーAは、約0℃以下のホモポリマーTgを有する。典型的には、(メタ)アクリレートのアルキル基は、平均で約4~約20個の炭素原子、又は平均で約4~約14個の炭素原子を有する。アルキル基は任意選択で鎖内に酸素原子を含有してもよく、これにより例えばエーテル又はアルコキシエーテルを形成する。モノマーAの例としては、2-メチルブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、4-メチル-2-ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、及びイソノニルアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。その他の例としては、CARBOWAX(Union Carbideから市販されている)及びNKエステルAM90G(新中村化学工業から市販されている)のアクリレート等のポリエトキシル化又はポリプロポキシル化メトキシ(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。モノマーAとして使用することができる好適なモノエチレン性不飽和(メタ)アクリレートとしては、イソオクチルアクリレート、2-エチル-ヘキシルアクリレート、及びn-ブチルアクリレートが挙げられる。Aモノマーとして分類される各種モノマーの組み合わせを、コポリマーを製造するために使用することができる。
【0033】
モノエチレン性不飽和フリーラジカル共重合性補強モノマーであるモノマーBは、コポリマーのガラス転移温度及び凝集力を向上する。概して、モノマーBは、少なくとも約10℃のホモポリマーTgを有する。典型的には、モノマーBは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、又は(メタ)アクリレートを含めた補強(メタ)アクリルモノマー(reinforcing(meth)acrylic monomer)である。モノマーBの例としては、これらに限定されるものではないが、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-エチル-N-アミノエチルアクリルアミド、N-エチル-N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N-ジヒドロキシエチルアクリルアミド、t-ブチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルアクリルアミド、及びN-オクチルアクリルアミド等のアクリルアミド類が挙げられる。モノマーBのその他の例としては、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、2,2-(ジエトキシ)エチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート又はメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート又はメタクリレート、メチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、2-(フェノキシ)エチルアクリレート又はメタクリレート、ビフェニリルアクリレート、t-ブチルフェニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジメチルアダマンチルアクリレート、2-ナフチルアクリレート、フェニルアクリレート、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、及びN-ビニルカプロラクタムが挙げられる。モノマーBとして使用することができる特に好適な補強アクリルモノマー(reinforcing acrylic monomer)としては、アクリル酸及びアクリルアミドが挙げられる。Bモノマーに分類される各種補強モノエチレン性不飽和モノマー(reinforcing monoethylenically unsaturated monomer)の組み合わせを、コポリマーを製造するために使用することができる。
【0034】
概して、(メタ)アクリレートコポリマーは、結果として約0℃未満、より典型的には約-10℃未満のTgを有するように配合される。このような(メタ)アクリレートコポリマーは、概して、百分率で約60部~約98部の少なくとも1種のモノマーA及び百分率で約2部~約40部の少なくとも1種のモノマーBを含む。いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートコポリマーは、百分率で約85部~約98部の少なくとも1種のモノマーA及び約2部~約15部の少なくとも1種のモノマーBを有する。
【0035】
皮膚に適用することができる好適な(メタ)アクリレート系感圧接着剤の例は、米国再発行特許第24,906号に記載されている。いくつかの実施形態では、米国特許第4,737,410号に記載されるように、97:3のイソオクチルアクリレート:アクリルアミドコポリマー接着剤、又は70:15:15のイソオクチルアクリレート:エチレンオキシドアクリレート:アクリル酸ターポリマーを使用することができる。他の有用な接着剤は、米国特許第3,389,827号、同第4,112,213号、同第4,310,509号、及び同第4,323,557号に記載されている。
【0036】
別の部類の好適な感圧接着剤は、シロキサン系接着剤である。シロキサン系感圧接着剤としては、例えば、米国特許第5,527,578号及び同第5,858,545号、並びに国際出願PCT/国際公開第00/02966号に記載されているものが挙げられる。具体例としては、米国特許第6,007,914号に記載されているような、ポリジオルガノシロキサンポリウレアコポリマー及びそれらのブレンド、並びにポリシロキサン-ポリアルキレンブロックコポリマーが挙げられる。シロキサン感圧接着剤の他の例としては、シラノール、水素化シリコーン、シロキサン、エポキシド、及び(メタ)アクリレートから形成されたものが挙げられる。シロキサン感圧接着剤を(メタ)アクリレート官能性シロキサンから調製するとき、接着剤をシロキサン(メタ)アクリレートと称する場合がある。
【0037】
シロキサン系接着剤組成物は、少なくとも1種のシロキサンエラストマー性ポリマーを含み、粘着付与樹脂等の他の成分を含有してもよい。エラストマー性ポリマーには、例えば、ウレア系シロキサンコポリマー、オキサミド系シロキサンコポリマー、アミド系シロキサンコポリマー、ウレタン系シロキサンコポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0038】
有用なシロキサンポリウレアブロックコポリマーについては、例えば米国特許第5,512,650号、同第5,214,119号、同第5,461,134号、及び同第7,153,924号、並びに国際出願PCT/国際公開第96/35458号、同第98/17726号、同第96/34028号、同第96/34030号及び同第97/40103号に開示されている。
【0039】
別の有用な部類のシロキサンエラストマー性ポリマーは、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマー等のオキサミド系ポリマーである。ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマーの例は、例えば米国特許出願公開第2007-0148475号に提示されている。
【0040】
別の有用な部類のシロキサンエラストマー性ポリマーは、アミド系シロキサンポリマーである。このようなポリマーは、ウレア結合(-N(D)-C(O)-N(D)-)の代わりにアミド結合(-N(D)-C(O)-)を含有するウレア系ポリマーに類似している(式中、C(O)は、カルボニル基を表し、Dは、水素又はアルキル基である)。
【0041】
別の有用な部類のシロキサンエラストマー性ポリマーは、シロキサンポリウレア-ウレタンブロックコポリマーなどのウレタン系シロキサンポリマーである。シロキサンポリウレア-ウレタンブロックコポリマーは、ポリジオルガノシロキサンジアミン(シロキサンジアミンとも呼ばれる)と、ジイソシアネートと、有機ポリオールとの反応生成物を含む。このような材料は、構造上、-N(D)-B-N(D)-結合が-O-B-O-結合で置き換えられているという点を除き、式Iの構造と非常に類似している。このようなポリマーの例は、例えば米国特許第5,214,119号に提示されている。
【0042】
いくつかの実施形態では、シロキサン系感圧接着剤は、シロキサン粘着付与樹脂を更に含む。シロキサン粘着付与樹脂は、以前は「シリケート」粘着付与樹脂と呼ばれてきたが、その専門用語は「シロキサン粘着付与樹脂」という用語に置き換えられている。シロキサン粘着付与樹脂は、所望の粘着性及び接着レベルを達成するのに十分な量で添加される。いくつかの実施形態では、複数のシロキサン粘着付与樹脂を使用して、所望の性能を達成することができる。
【0043】
好適なシロキサン粘着付与樹脂は、Dow Corning(例えば、DC 2-7066)、Momentive Performance Materials(例えば、SR545及びSR1000)、及びWacker Chemie AG(例えば、BELSIL TMS-803)等の供給元から市販されている。
【0044】
医療用途で使用される別の部類の接着剤は、シリコーンゲルである。本明細書で使用するとき、「シロキサン」及び「シリコーン」という用語は、互換的に使用される。シロキサンという用語は、一般的な用法ではシリコーンに取って代わるものであるが、両方の用語が当該技術分野において使用される。シリコーンゲル(架橋ポリジメチルシロキサン(poly dimethylsiloxane「PDMS」))材料は誘電性充填剤、振動ダンパー、及び、瘢痕組織治癒を促進するための医療療法に使用されてきた。軽度架橋シリコーンゲルは、比較的高濃度の流体(液体)を含む軟質で粘着性の弾性材料である。シリコーンゲルは、典型的には、シリコーン感圧接着剤よりも軟質であり、皮膚に接着させたとき、不快感が低下する。皮膚上での妥当な接着剤保持力と、除去するときの皮膚外傷性が低いこととが組み合わさって、シリコーンゲルが皮膚に優しい接着剤用途に好適なものとなる。
【0045】
シリコーンゲル接着剤は、穏やかな除去力で皮膚に良好な接着性を提供し、再位置合わせする能力を有する。市販のシリコーンゲル接着剤系の例としては、商品名Dow Corning MG 7-9850、WACKER 2130、BLUESTAR 4317及び4320、並びにNUSIL 6345及び6350で市販されている製品が挙げられる。これらの皮膚に優しい接着剤は、ヒドロシリル化触媒(例えば、プラチナ錯体)の存在下で、ビニル末端PDMSと水素末端PDMSとの間の付加硬化反応によって形成される。ビニル末端PDMS鎖及び水素末端PDMS鎖は、それらの特定の化学部分のため、「官能化」シリコーンと呼ばれる。個別には、このような官能性シリコーンは、一般に反応性ではないが、これらは一緒になって反応性シリコーン系を形成する。更に、シリコーン樹脂(「シリケート樹脂」と呼ばれることもある粘着付与剤)及び複数の水素官能基を有するPDMS(架橋剤)を配合して、ゲルの接着特性を改変することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、接着剤層は多層接着剤を含む。多層接着剤は、少なくとも2つの接着剤層を含み、第1の接着剤層は、接着剤物品の接着剤層の第1の主面を含み、第2の接着剤層は、接着剤物品の接着剤層の第2の主面を含む。第1及び第2の接着剤層は、同一であっても、異なっていてもよい。このようにして、第1の主面及び第2の主面の接着特性は異なり得る。
【0047】
第1のバッキング層は、典型的には薄いフィルム材料である。フィルム材料は、接着剤物品に支持を提供するのに十分な剛性を有する。基材層は、カットによって改変され、解剖学的表面に適合可能であるのに十分な柔軟性を有する。したがって、解剖学的表面に適用された場合、表面が動いた場合であっても、表面に適合し延び縮みすることができる。本開示の改変プロセスは、そうでなければ解剖学的表面に適合しない、広範囲の材料フィルムを使用することを可能にする。好適な材料の部類の中でもとりわけ、熱可塑性物質、エラストマー、及び不織布がある。バッキング層は、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテルブロックアミド、又は天然繊維系材料をはじめとする広範囲の材料から調製され得る。1つの特に好適な基材は、Sontara America製のSONTARA不織布材料であり、これは、医療用バリア及びドレープ用途における使用に好適な、穴を有していない厳密に噛み合った不織布フィルムである。
【0048】
基材層は、広範囲の厚さを有する。いくつかの実施形態では、厚さは少なくとも10マイクロメートル、最大254マイクロメートル(10ミル)となり、いくつかの実施形態では、厚さは25マイクロメートル(1ミル)~最大178マイクロメートル(7ミル)の厚さとなる。広範な中間体の厚さもまた、好適である。
【0049】
上述のように、基材層は、パターンで配列された複数の切れ目を含み、いくつかの実施形態では、パターンはランダムであり得、他の実施形態では、パターンは少なくとも1つの軸に沿って配列されている。基材層の二次元表面は、2つの主要な直交軸を有すると見なすことができ、これは多くの場合x軸及びy軸と呼ばれる。フィルムを作製する方法から、多くの場合x軸は「機械方向(Machine Direction)」すなわちMDと記載され、直交するy軸は「幅方向(Cross Direction)」すなわちCDと記載される。典型的には、複数の切れ目は、機械方向に沿ってパターンで配列されている。これは、複数の切れ目の長さが基材層の機械方向に沿って整列されていることを意味する。
【0050】
パターンで配列された複数の切れ目は隙間であるが、基材層が応力を受けていない状態にあるときには、これらの隙間は本質的に肉眼で見えない。接着剤物品が応力を受けている状態にあるときには、隙間のうちの少なくとも一部は肉眼で見える。本明細書で使用するとき、「応力を受けている状態」という用語は、伸長、曲げ、又はそれらの組み合わせを含む。切れ目が、応力を受けていない状態にあるときには非常に薄い(すなわち、本質的に幅がない)ことから、それらは、典型的にはそれらの長さ及び深さによって記載される。概して、切れ目は基材層の全厚を通って延びているため、深さは基材層の厚さと同一である。切れ目の長さの幅に対する関係を記述することができる1つのパラメータは、アスペクト比である。「アスペクト比」という用語は、典型的には粒子を記載するために使用されるが、本明細書で使用するとき、材料が存在しない穴サイズ又は空隙領域を記載するために使用される。いくつかの実施形態では、切れ目のアスペクト比(長さの幅に対する比)は、1000よりも大きい。応力を適用すると、切れ目のアスペクト比が減少する。好適な切れ目の例は、長さ1センチメートル及び幅5マイクロメートルのものである。
【0051】
いくつかの実施形態では、複数の切れ目は、連続的な少なくともいくつかの切れ目を含んでもよい。連続的とは、切れ目が表面の縁から縁まで延びていることを意味する。これらの切れ目は、応力が加えられた時に分離して、縁部から縁部まで延びた隙間をバッキング内に形成し、したがってバッキング層を効果的に二分する。
【0052】
切れ目は、上記の単純な線形形状よりも複雑であり得る。切れ目は、応力を受けていない状態にあるときには、肉眼で見えない限り、十字、星形、山形、文字、及び数字などの様々な二次元形状を有し得、接着剤物品が応力を受けている状態にあるときには、切れ目の少なくとも一部は、肉眼で見える隙間になる。更に、物品に応力を適用すると隙間が肉眼で見えるようになるだけでなく、隙間は、光が通過することができる開口部にもなる。このようにして、応力を加えたとき、形成された開口部は、基材層を通しての接着剤層へのアクセスを可能にする。
【0053】
いくつかの実施形態では、切れ目は、基材の機械方向に沿って特定のパターンで配列されている。多くの場合、切れ目は、「スキップスリット加工」として公知のプロセスによって形成される。このプロセスでは、一連の不連続的なスリットが基材内に線形に形成される。基材表面に沿ってスリットの線をたどるとすると、スリットに遭遇し、スリットが終了し、スリット加工されていない領域があり、その後、新しいスリットに遭遇し、スリットが終了し、スリット加工されていない領域に遭遇し、以下同様である。このタイプのパターンは、国際出願PCT/国際公開第19/043621号に記載されている。これらのパターンでは、1つのスリットの端部と次のスリットの開始部との間の領域は、ブリッジング領域と呼ばれる。幅広いパターンが好適であるが、いくつかの実施形態では、パターンは50%のオフセットを有する。これは、2つの線形配列が機械方向に存在する場合、幅方向に観察すると、第1の配列のブリッジング領域が第2の配列のスリットに対応し、逆も同様であることを意味する。スキップスリットパターンの追加の例は、米国特許出願第62/952789号に記載されている。
【0054】
いくつかの実施形態では、複数の切れ目は、2つ以上の軸に沿ったパターンで配列されている。これは、切れ目の少なくとも一部が、基材層の機械方向と整列していないが最大90°の角度で整列からオフセットされている長さを有することを意味する。基材層のMDと90°で位置合わせからオフセットされている長さは、幅方向に整列される。
【0055】
複数の切れ目は、方法が基材層から実質的な量の材料を除去することを伴わない限り、いくつかの異なる方法で作製することができ、切れ目は、応力を受けていない状態にあるときには、肉眼で本質的に見えない隙間を形成し、隙間のうちの少なくともいくつかは、接着剤物品が応力を受けている状態にあるときには、肉眼で見えるようになる。この方法の中でもとりわけ、層が例えば押出、成形、及び機械加工などによって形成されるとき、切れ目が基材層に導入されるものがある。他の方法は、ナイフ、線形ブレード、回転ダイブレード、ウォータージェット、又はレーザー光などのカット工具を使用してカットすることによって、又はスタンピングツールを使用してスタンピングすることによって、基材層が形成された後に、切れ目が基材層に導入されるものである。いくつかの実施形態では、切れ目は、ダイが基材層全体にわたってカットして切れ目パターンを形成するように、基材層を回転ダイブレード及びアンビルを含むニップに供給することによって作製される。
【0056】
概念上、スリットは、最小の厚さを有する材料を貫通する切れ目である。このようにして、スリットは、バッキング層における永久的な隙間である穿孔とは異なる。実際には、形成技法は、材料の除去、又はスリットの縁の間の隙間の形成を伴い得る。ほとんどのカット技術は、「切溝」、又は切れ目に対する何らかの物理的な幅を生成する。例えば、レーザカッタは、スリットを作成するためにいくらかの材料を切除することができ、ルータは、スリットを作成するために材料を切り取ることができ、更には押しつぶしカット(crush cutting)は、物理的隙間を形成する材料の縁にいくらかの変形を生成することができる。成形技術では、スリットの対向する面の間に材料を必要とし、スリットにおいて隙間又は切溝を生成する。ほとんどの場合で、スリットの隙間又は切溝は、材料の厚さ未満となる。例えば、0.007インチ(178マイクロメートル)の厚さの紙に切り込まれたスリットパターンは、約0.007インチ(178マイクロメートル)以下の隙間を有するスリットを有し得る。ただし、スリットの物理的隙間は、基材の厚さの何倍にも増加させることができると理解される。上述したように、スリットは、材料の除去を最小限に抑えるような仕方でバッキング層に形成される。このようにして、スリットは、物品が応力を受けていない状態にあるときには見えず、したがってバッキングに永久的な開口部を形成しない。
【0057】
いくつかの実施形態では、接着剤物品は、接着を可能にするために要求に応じて活性化することができるだけでなく、接着力の減少を助けるために要求に応じて不活性化することもできる。これらの実施形態では、スリットを含む物品は、物品を活性化して接着を可能にするために一方向に応力が加えられ、物品が除去されるとき、物品は、不活性化するために直交方向に応力を加えられる。不活性化は、バッキング層中の隙間の収縮を引き起こし、バッキング層のしわ又は座屈も引き起こして、接着剤物品の剥離を助けることができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、接着剤物品は、第1の主面及び第2の主面を有する第2のバッキング層を更に含み、第2のバッキング層の第2の主面は、接着剤層の第1の主面と接触している。第2のバッキング層は複数の切れ目を有し、複数の切れ目は隙間であるが、接着剤物品が応力を受けていない状態にあるときには隙間は肉眼では見えず、応力を受けている状態にあるときには、切れ目のうちの少なくともいくつかが、接着剤の層の、基材表面への接着を可能にする隙間になる。好適な第2のバッキング層の例は、上述されており、第1のバッキング層として記載されたバッキング層を含む。第2のバッキング層は、第1のバッキング層と同一でもよく、異なっていてもよい。
【0059】
両面接着剤物品中に第2のバッキング層を含む利点は、両方の外側表面が応力を受けていない状態にあるときには非接着性であり、容易な輸送及び取扱いを可能にすることである。多くの接着剤物品において、剥離ライナーは、物品が使用されるまで接着剤表面を保護するために使用される。これらの物品において、剥離ライナーは、物品が使用されるときに除去される必要がある。これは不便であり、除去された剥離ライナーを廃棄又は再利用することが必要になり得る。2つのバッキング層を含む本開示の物品において、物品は、応力を受けていない状態にあるときには非接着性であり、応力が加えられると、物品は接着剤物品になる。上述したように、応力は、伸長、曲げ、又はそれらの組み合わせを含む。このようにして、物品はオンデマンド接着剤物品として見ることができる。
【0060】
接着剤構造物も開示される。いくつかの実施形態では、接着剤構造物は、第1の基材表面と、第1の基材表面に取り付けられた接着剤物品と、を含む。接着剤物品は、上述の接着剤物品を含む。いくつかの実施形態では、接着剤物品は、第1の主面及び第2の主面を有する接着剤の層と、第1の主面及び第2の主面を有する第1のバッキング層と、を含み、第1のバッキング層の第1の主面は接着剤層の第2の主面と接触している。第1のバッキング層は複数の切れ目を有し、切れ目は隙間であるが、接着剤物品が第1の状態にあるときには隙間のうちの少なくともいくつかは肉眼では見えず、接着剤物品が第2の状態にあるときには、第1の状態において肉眼で見えない隙間のうちの少なくともいくつかは隙間になる。第2の状態は、曲げ、伸長、又はそれらの組み合わせの、より高い応力の状態である。接着剤層の第1の主面は、第1の基材表面と接触しており、第1のバッキング層中の隙間は、接着剤の層の第2の主面の、第2の基材の表面への接着を可能にする。いくつかの実施形態では、接着剤物品は医療用物品であり、第1の基材表面は哺乳類の皮膚である。
【0061】
接着剤物品は、上記に詳細に記載されており、単層又は多層接着剤を含んでもよく、第2のバッキング層を更に含んでもよい。好適な接着剤及びバッキング層は、上記に記載されている。
【0062】
接着剤物品が応力を受けている状態にあり、第1のバッキング層中のスリットが隙間である場合、幅広い第2の基材を接着剤層の第2の表面に接着することができる。いくつかの実施形態では、第2の基材は物品を含む。好適な物品の例はデバイスである。例えば、着用可能な医療デバイス、センサ、カテーテル、吸引ポート、インスリンポンプ用コントローラ、モニタなどを含む、幅広いデバイスが好適である。
【0063】
接着剤物品の調製方法もまた、本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、方法は、第1の主面及び第2の主面を有する第1のバッキング層を準備することと、第1のバッキング層から材料を実質的に除去することなく、基材層に複数の切れ目を入れることによって第1のバッキング層を改変して、応力を受けていない状態にあるときには切れ目は肉眼で見えない隙間であり、応力を受けている状態にあるときには、隙間のうちの少なくともいくつかは肉眼で見えるようにすることと、接着剤を準備することと、基材層の第1の主面上に接着剤の層を形成することと、を含む。接着剤層は、第1の主面及び第2の主面を有し、接着剤層の第2の主面は、第1のバッキング層の第1の主面に接触している。
【0064】
第1のバッキング層から材料が除去されない限り、多種多様な技術が第1のバッキング層を改変するのに好適である。いくつかの実施形態では、第1のバッキング層を改変することは、ナイフ、ブレード、ウォータージェット、又はレーザー光で、第1のバッキング層に複数の切れ目を入れることを含む。多種多様な技術が、第1のバッキング層を改変するのに好適である。改変の例としては、ナイフ、線形ブレード、回転ダイブレード、ウォータージェット、若しくはレーザー光などのカット工具を使用して、又はスタンピングツールを使用してスタンピングすることにより、カットすることが挙げられる。いくつかの実施形態では、切れ目は、ダイが第1のバッキング層全体にわたってカットして切れ目パターンを形成するように、回転ダイブレード及びアンビルを含むニップに第1のバッキング層を供給することによって作製される。
【0065】
多くの実施形態では、第1のバッキング層は、基材層の第1の主面上に接着剤の層を形成する前に改変される。この態様では、第1のバッキング層は、接着剤物品の形成とは異なる場所又は異なる時間で改変され得る。いくつかの実施形態では、基材層の第1の主面上の接着剤の層は、基材層を改変する前に形成される。この態様では、予め作製されたテープ物品を改変して、それをオンデマンド両面接着剤物品にすることができる。
【0066】
上述のように、接着剤層は連続的であっても不連続的であってもよく、多層接着剤であってもよい。好適な接着剤は、上記に記載されている。
【0067】
いくつかの実施形態では、本方法は、第1の主面及び第2の主面を有する第2のバッキング層を準備することと、第2のバッキング層の第2の主面を、接着剤層の第1の主面に接触させることと、を更に含む。第2のバッキング層は、第1のバッキング層と同様に、複数の切れ目を有し、切れ目は隙間であるが、隙間は肉眼では見えず、応力を受けている状態にあるときには隙間のうちの少なくともいくつかが肉眼で見えるようになる。
【0068】
本開示の物品は、図を参照することによって更に理解することができる。
【0069】
図1は、バッキング層110及び接着剤層120を有する物品100の断面図を示す。好適なバッキング層及び接着剤層は上記に記載されている。バッキング層110は、上述のようにスリットで改変されている。
【0070】
図2A及び
図2Bは、
図1に示される物品の実施形態の上面図を示す。
図2Aに示す実施形態では、物品200は、スリット230の配列を有するバッキング層210を有する。
図2Bに示される実施形態では、バッキング層210は、スリット230の配列及び連続的なスリット231を有する。
【0071】
図3A及び
図3Bは、伸長によって活性化された
図2A及び
図2Bに示される物品200である物品300の上面図を示す。
図3Aにおいて、活性化されたスリット330’は、接着剤層320が露出されることを可能にする隙間を形成している。
図3Bにおいて、
図3Aと同様に、活性化されたスリット330’は、接着剤層320が露出されることを可能にする隙間を形成している。更に、活性化されたスリット331’は、下にある接着剤層が露出されることを可能にする隙間を形成する。
図3Bにおいて、隙間331’はバッキング層における分離箇所となっている。
【0072】
図4は、第1のバッキング層410、接着剤層420、及び第2のバッキング層440を含む物品400の断面図を示す。好適な第1及び第2のバッキング層並びに好適な接着剤層は、上記に記載されている。
【0073】
図5A~5Cは、本開示の物品を活性化及び非活性化するためのスキームを示す。
図5Aは、上記に記載された非活性化物品を示す。
図5Bにおいて、物品は1つ以上の矢印の方向に伸長している。図示のように、伸長により、スリットが隙間を形成する。
図5Cにおいて、
図5Bの物品は、矢印によって示される直交方向に伸長することによって非活性化されている。図示されるように、不活性化は、バッキング層における隙間の減少を引き起こし、また、バッキング層におけるしわを引き起こして、物品の接着力を減少させ得る。
【実施例】
【0074】
これらの実施例は、単に説明する目的のためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。以下の略語を使用する:cm=センチメートル。
【0075】
実施例1
幅約6cm、長さ12cmのテープ(3Mビニールテープ471、3M Company、St.Paul、MN)のストリップを、スキップスリットパターンで長手方向にスリット加工した。スリットは約4cmの長さであり、約1cm分離していた。スリットの列も約1cm分離していた。スリット加工後、スリットを水平方向にしてテープを垂直表面に接着した。試験片(3M EASY TRAP Sweep&Dust Sheet、3M Company、St.Paul、MN)をスリット入りテープのバッキングに押し付けたところ、接着していないことが分かった。
【0076】
次いで、テープを表面から除去し、伸長させて、テープの幅を約2cm増加させ、スリットを開いた。前と同様に、テープを垂直表面に再度貼り付けた。テープの目視検査は、接着剤がバッキングを通してスリットの端部に向かって露出していることを示した。スリット加工し、伸長したテープのバッキングに、試験片を再び押し付けたところ、接着していることが分かった。
【国際調査報告】