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  • 特表-鉱物繊維製品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】鉱物繊維製品
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/429 20060101AFI20240110BHJP
   C08L 97/00 20060101ALI20240110BHJP
   C08K 7/04 20060101ALI20240110BHJP
   C08H 7/00 20110101ALI20240110BHJP
   D03D 15/242 20210101ALI20240110BHJP
【FI】
D06M15/429 ZAB
C08L97/00
C08K7/04
C08H7/00
D03D15/242
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538033
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2021077188
(87)【国際公開番号】W WO2022144109
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/088061
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500336306
【氏名又は名称】ロックウール アクティーゼルスカブ
【住所又は居所原語表記】Hovedgaden 584, 2640 Hedehusene, DENMARK
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】バートニック ヨハンソン ドルテ
(72)【発明者】
【氏名】ニコリック ミロスラフ
【テーマコード(参考)】
4J002
4L033
4L048
【Fターム(参考)】
4J002AH001
4J002CD002
4J002EN036
4J002EN106
4J002EP006
4J002EP026
4J002EU186
4J002FD142
4J002FD146
4J002GK00
4J002GK02
4J002HA07
4L033AA09
4L033AB01
4L033AC15
4L033CA38
4L048AA02
4L048CA00
4L048EB00
(57)【要約】
本発明は、フェノール及びホルムアルデヒドを含まない水性バインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む鉱物繊維製品に向けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、前記リグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、
1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)と
を含む、フェノール及びホルムアルデヒドを含まない水性バインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む鉱物繊維製品であるが、ただし、前記水性バインダ組成物は、
500以下の分子量Mを有するエポキシ化合物、
式R-[C(O)Rのアルデヒド、カルボニル化合物から選択されるカルボニル化合物であって、前記式中、
Rは、飽和又は不飽和の直鎖状、分枝状又は環状の炭化水素基、1つ以上の5個又は6個の炭素原子からなる芳香族核を含む基、1つ以上の、4個又は5個の炭素原子及び酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を含有する芳香族複素環を含む基を表し、前記R基は他の官能基を含有することが可能であり、
は、水素原子又はC~C10アルキル基を表し、
xは1~10の範囲にあるカルボニル化合物、
ポリアミン
から選択される架橋剤を含まない、鉱物繊維製品。
【請求項2】
成分(i)は、リグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.05~0.6mmol/gのカルボン酸基含有量を有する請求項1に記載の鉱物繊維製品。
【請求項3】
成分(i)は、成分(i)のM-n重量平均を考慮して1高分子当たり1.8基未満、例えば1.4未満、例えば1.1未満、例えば0.7未満、例えば0.4未満の平均カルボン酸基含有量を有する1種以上のリグノスルホネートリグニンの形態にある請求項1又は請求項2に記載の鉱物繊維製品。
【請求項4】
成分(i)は、前記リグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.3~2.5mmol/g、例えば0.5~2.0mmol/g、例えば0.5~1.5mmol/gのフェノール性OH基の含有量を有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の鉱物繊維製品。
【請求項5】
成分(i)は、前記リグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて1.0~8.0mmol/g、例えば1.5~6.0mmol/g、例えば2.0~5.0mmol/gの脂肪族OH基の含有量を有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の鉱物繊維製品。
【請求項6】
前記成分(i)は、リグノスルホン酸アンモニウム及び/若しくはリグノスルホン酸カルシウム、及び/若しくはリグノスルホン酸マグネシウム、又はいずれかのこれらの組み合わせを含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の鉱物繊維製品。
【請求項7】
成分(i)は、リグノスルホン酸アンモニウム及びリグノスルホン酸カルシウムを含み、NH 対Ca2+のモル比は、5:1~1:5、特に3:1~1:3の範囲にある請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の鉱物繊維製品。
【請求項8】
前記水性バインダ組成物は、リグノスルホネート及び糖の重量に基づいて0~5重量%未満の量の添加糖を含有する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の鉱物繊維製品。
【請求項9】
前記水性バインダ組成物は、成分(i)及び(ii)の乾燥重量に基づいて50~98重量%、例えば65~98重量%、例えば80~98重量%、例えば50~88重量%、例えば50~87重量%、例えば65~88重量%、例えば65~87重量%、例えば80~88重量%、例えば80~87重量%の量の成分(i)を含む請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の鉱物繊維製品。
【請求項10】
前記成分(ii)は、
β-ヒドロキシアルキルアミド架橋剤、例えばN-(2-ヒドロキシイソプロピル)アミド架橋剤、例えばN-(2-ヒドロキシエチル)アミド架橋剤、例えばN-(2-ヒドロキシエチル)アジポアミド架橋剤、例えばN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アジポアミド、及び/又は
アルカノールアミン等の多官能性有機アミン、ヘキサメチルジアミン等のジアミンからなる群、及び/又は
500超の分子量を有するエポキシ化合物、例えば脂肪酸トリグリセリドに基づくエポキシ化油、若しくは反応性官能基、例えばカルボジイミド基、例えば無水物基、例えばオキサゾリン基、例えばアミノ基、例えばエポキシ基を含有する1種以上の屈曲性のオリゴマー若しくはポリマー、例えば低Tgアクリル系ポリマー、例えば低Tgビニル系ポリマー、例えば低Tgポリエーテル、及び/又は
多官能性カルボジイミド、例えば脂肪族多官能性カルボジイミド、の形態の1種以上の架橋剤
から選択される1種以上の架橋剤の形態にある請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の鉱物繊維製品。
【請求項11】
前記成分(ii)は、
β-ヒドロキシアルキルアミド架橋剤、例えばN-(2-ヒドロキシイソプロピル)アミド架橋剤、例えばN-(2-ヒドロキシエチル)アミド架橋剤、例えばN-(2-ヒドロキシエチル)アジポアミド架橋剤、例えばN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アジポアミド
から選択される1種以上の架橋剤を含む請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の鉱物繊維製品。
【請求項12】
成分(i)の乾燥重量に基づいて2~90重量%、例えば6~60重量%、例えば10~40重量%、例えば25~40重量%の量の成分(ii)を含む請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の鉱物繊維製品。
【請求項13】
1種以上のカップリング剤、例えば有機官能性シランの形態のさらなる成分(iv)を含む請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の鉱物繊維製品。
【請求項14】
塩基の群、例えばアンモニア、例えばアルカリ金属水酸化物、例えばKOH、例えばアルカリ土類金属水酸化物、例えばCa(OH)、例えばMg(OH)、例えばアミン、又はこれらのいずれかの塩から選択される1種以上の成分の形態の成分(v)をさらに含む請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の鉱物繊維製品。
【請求項15】
尿素の形態のさらなる成分を、特に成分(i)の乾燥重量に基づいて5~40重量%、例えば10~30重量%、例えば15~25重量%の量で含む請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の鉱物繊維製品。
【請求項16】
1種以上の反応性シリコーン又は非反応性シリコーンの形態のさらなる成分(vi)を含む請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の鉱物繊維製品。
【請求項17】
前記鉱物繊維製品は、アンモニア-酸化リグニン(AOL)を含有しない請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の鉱物繊維製品。
【請求項18】
前記水性バインダ組成物は、本質的に
リグノスルホネートリグニンであって、前記リグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、
1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)と、
1種以上のカップリング剤、例えば有機官能性シランの形態の成分(iv)と、
任意選択で、塩基の群、例えばアンモニア、例えばアルカリ金属水酸化物、例えばKOH、例えばアルカリ土類金属水酸化物、例えばCa(OH)、例えばMg(OH)、例えばアミン、又はこれらのいずれかの塩から選択される1種以上の化合物の形態の成分と、
任意選択で、尿素の形態の成分と、
任意選択で、より反応性又は非反応性のシリコーンの形態の成分と、
任意選択で、炭化水素油と、
任意選択で、1種以上の界面活性剤と、
水と
からなる請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の鉱物繊維製品。
【請求項19】
ただし、前記水性バインダ組成物は可塑剤を含まない請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の鉱物繊維製品。
【請求項20】
ただし、前記水性バインダ組成物は、
脂肪アルコール、モノヒドロキシアルコール、例えばペンタノール、ステアリルアルコールからなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
アルコキシレート、例えばエトキシレート、例えばブタノールエトキシレート、例えばブトキシトリグリコールからなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
プロピレングリコールの形態の1種以上の可塑剤、及び/又は
グリコールエステルの形態の1種以上の可塑剤、及び/又は
アジペート、アセテート、ベンゾエート、シクロベンゾエート、シトレート、ステアレート、ソルベート、セバケート、アゼレート、ブチレート、バレレートからなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
アルキル若しくはアリール置換フェノール等のフェノール誘導体からなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
シラノール、シロキサンからなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
アルキルスルフェート等のスルフェート、アルキルアリールスルホネート等、アルキルスルホネート等のスルホネート、トリポリホスフェート等のホスフェートからなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
ヒドロキシ酸の形態の1種以上の可塑剤、及び/又は
アセトアミド、ベンズアミド等のモノマーアミド、トール油アミド等の脂肪酸アミドからなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
トリメチルグリシン、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド等の第四級アンモニウム化合物からなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
ヒマシ油、パーム油、亜麻仁油、大豆油等の植物油からなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
トール油、及び/又は
硬化油、アセチル化油からなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
酸メチルエステルから選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
アルキルポリグルコシド、グルコンアミド、アミノグルコースアミド、スクロースエステル、ソルビタンエステルからなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエーテルからなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
ポリオール、例えばグリセロール、例えば1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパンの形態の1種以上の可塑剤、及び/又は
トリエタノールアミン
の形態の可塑剤を含まない請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の鉱物繊維製品。
【請求項21】
鉱物ウール用のフェノール及びホルムアルデヒドを含まないバインダ組成物の調製のための、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の成分(i)の特徴を有する1種以上のリグノスルホネートリグニンの形態のリグニン成分の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール及びホルムアルデヒドを含まない水性バインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む鉱物繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱物繊維製品は、一般に、例えばガラス繊維、セラミック繊維、バサルト繊維(玄武岩繊維)、スラグウール、鉱物ウール、及びストーンウール(stone wool)等の人造ガラス質繊維(man-made vitreous fibre、MMVF)を含み、これらは硬化した熱硬化性ポリマーバインダ(結合剤)材料によって互いに結合される。断熱製品又は防音製品として使用するために、結合された鉱物繊維マットは、通常、好適な原材料で作られた溶融物を従来の方法で、例えばスピニングカップ(spinning cup)プロセス又はカスケードロータ(cascade rotor)プロセスによって繊維に変換することによって製造される。繊維は、成形チャンバ内に吹き込まれ、空気中にある間及びまだ熱い間、バインダ溶液を噴霧され、マット又はウェブとして移動コンベヤ上にランダムに堆積される。次いで、繊維マットは硬化オーブンに移され、そこで加熱空気がマットに吹き込まれてバインダが硬化し、鉱物繊維が強固に結合される。
【0003】
過去には、選択されたバインダ樹脂は、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂であり、これは経済的に製造することができ、バインダとして使用する前に尿素で延長することができる。しかしながら、ホルムアルデヒド放出(排出)の低減又は排除に関する既存の法律及び提案された法律を考慮して、例えば、欧州特許出願公開第583086号明細書、欧州特許出願公開第990727号明細書、欧州特許出願公開第1741726号明細書、米国特許第5,318,990号明細書、及び米国特許出願公開第2007/0173588号明細書に開示されているようなポリカルボキシポリマー及びポリオール又はポリアミンをベースとするバインダ組成物等のホルムアルデヒドを含まないバインダが開発されている。
【0004】
非フェノール-ホルムアルデヒドバインダの別の群は、例えば、国際公開第99/36368号パンフレット、国際公開第01/05725号パンフレット、国際公開第01/96460号パンフレット、国際公開第02/06178号パンフレット、国際公開第2004/007615号パンフレット及び国際公開第2006/061249号パンフレットに開示されるように、脂肪族無水物及び/又は芳香族無水物とアルカノールアミンとの付加/脱離反応生成物である。これらのバインダ組成物は水溶性であり、硬化速度及び硬化密度の点で優れた結合特性を示す。国際公開第2008/023032号パンフレットは、水分吸収が低減された鉱物ウール製品を提供するそのタイプの尿素変性バインダを開示する。
【0005】
これらのバインダの製造に使用される出発材料のいくつかはかなり高価な化学物質であるので、経済的に製造されるホルムアルデヒドを含まないバインダを提供することが継続的に必要とされている。
【0006】
鉱物繊維からの以前から公知である水性バインダ組成物に関連するさらなる効果は、これらのバインダの製造に使用される出発材料の少なくとも大部分が化石燃料に由来することである。再生可能材料から完全に又は少なくとも部分的に製造される製品を好む消費者の傾向は継続しており、それゆえ、再生可能材料から少なくとも部分的に製造される鉱物ウール用のバインダを提供する必要がある。
【0007】
以前から公知である鉱物繊維用水性バインダ組成物に関連するさらなる効果は、それらが腐食性かつ/又は有害な成分を含むことである。これは、腐食を防止するために鉱物ウール製品の製造に関与する機械のための保護手段を必要とし、この機械を取り扱う人についても安全手段を必要とする。これは、コスト上昇及び健康問題の増加につながり、それゆえ、腐食性かつ/又は有害な材料の含有量が低減された鉱物繊維用バインダ組成物を提供する必要がある。
【0008】
以前から公知である鉱物繊維用バインダ組成物に関連するさらなる効果は、バインダによって結合された鉱物ウール製品の製造プロセス中のバインダ組成物の硬化が、放出制御を必要としかつ製造に関与する機械の複雑さの増加及びコストの上昇に寄与する望ましくない物質の放出を伴う可能性があることである。
【0009】
近年、再生可能な出発材料にかなりの程度基づく多くの鉱物繊維用バインダが提供されている。多くの場合、再生可能資源にかなりの程度基づくこれらのバインダは、ホルムアルデヒドを含まないものでもある。
【0010】
しかしながら、これらのバインダの多くは、比較的高価な基本材料に基づくので、依然として比較的高価である。
【0011】
一方で、鉱物ウール用のバインダ組成物の成分として適したものにするために酸化されたリグニン成分に基づく鉱物繊維用のバインダが提供されている。予め酸化されたリグニンに基づくこれらの鉱物ウールバインダによって非常に良好な結合特性が達成されるが、そのようなバインダの調製は、リグニン成分がバインダ組成物のための成分として使用できるようになる前に、リグニン成分を酸化する余分な工程を依然として必要とする。リグニン成分を利用するのに必要なこの予めの酸化工程は、反応時間を増加させ、出力(生成速度)を減少させることによって、そのようなバインダの製造プロセスをある程度複雑にし、原料、プロセス設備及び人員配置のための余分なコストに起因してそのようなバインダのコストを増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第583086号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第990727号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1741726号明細書
【特許文献4】米国特許第5,318,990号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0173588号明細書
【特許文献6】国際公開第99/36368号パンフレット
【特許文献7】国際公開第01/05725号パンフレット
【特許文献8】国際公開第01/96460号パンフレット
【特許文献9】国際公開第02/06178号パンフレット
【特許文献10】国際公開第2004/007615号パンフレット
【特許文献11】国際公開第2006/061249号パンフレット
【特許文献12】国際公開第2008/023032号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、鉱物繊維を結合するのに適したバインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む鉱物ウール製品であって、再生可能材料を出発材料として使用し、腐食性かつ/若しくは有害な材料を低減又は排除し、安価に製造できる鉱物ウール製品を提供することであった。
【0014】
本発明のさらなる目的は、鉱物繊維を結合するのに適したバインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む鉱物ウール製品であって、増加した固形分含量(従って、低下した輸送コスト及び環境へのより少ない影響)、低下した粘度(これは、大規模での処理をより容易にする)、並びに長い貯蔵寿命を可能にする鉱物ウール製品を提供することであった。
【0015】
さらに、本発明は、鉱物ウール用バインダ組成物の調製のためのリグニン成分の使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、
・1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、
・1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)と
を含む、フェノール及びホルムアルデヒドを含まない水性バインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む鉱物繊維製品が提供される。
【0017】
特に、本発明の第1の態様によれば、
・1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、
・1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)と
を含む水性バインダ組成物、好ましくはフェノール及びホルムアルデヒドを含まない水性バインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む鉱物繊維製品であるが、ただし、当該水性バインダ組成物は、
・500以下の分子量Mを有するエポキシ化合物、
・式R-[C(O)Rのアルデヒド、カルボニル化合物から選択されるカルボニル化合物であって、上記式中、
Rは、飽和又は不飽和の直鎖状、分枝状又は環状の炭化水素基、1つ以上の5個又は6個の炭素原子からなる芳香族核を含む基、1つ以上の、4個又は5個の炭素原子及び酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を含有する芳香族複素環を含む基を表し、このR基は他の官能基を含有することが可能であり、
は、水素原子又はC~C10アルキル基を表し、
xは1~10の範囲にあるカルボニル化合物、
・ポリアミン、
・単糖及びオリゴ糖
から選択される架橋剤を含まない鉱物繊維製品が提供される。
【0018】
本発明者らは、驚くべきことに、リグニン成分の形態の安価な再生可能材料から製造することができるバインダ組成物の硬化から生じるバインダによって結合された鉱物繊維を含む鉱物ウール製品を提供することが可能であることを見出した。このリグニン成分は、バインダ組成物における使用に先立って酸化工程を必要とせず、大部分はいかなる腐食剤及び/若しくは有害物質も含有しないか又はわずかな程度しか含有しない。
【0019】
本発明者らは、驚くべきことに、最も単純な形態でリグニン成分及び架橋剤の形態の2つの主成分、又はリグニン成分、架橋剤及び可塑剤の形態の3つの主成分しか必要としないバインダ組成物の硬化から生じるバインダによって結合された鉱物繊維を含む鉱物ウール製品を提供することが可能であることを見出した。以前から公知である多成分系と比較してバインダの組成の複雑さのこの低減は、サプライチェーンの複雑さを低減し、貯蔵容量の取り扱いを容易にし、バインダの貯蔵性を改善する。これらの要因はすべて、本発明に係るバインダ組成物の経済的利点に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】リグノスルホネートの一般に使用されるモデル構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1つの実施形態では、本発明に係る鉱物ウール製品は、
・1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、
・1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)と
を含む、フェノール及びホルムアルデヒドを含まない水性バインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む。
【0022】
特に、本発明の第1の態様によれば、
・1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、
・1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)と
を含む、フェノール及びホルムアルデヒドを含まない水性バインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む鉱物繊維製品であるが、ただし、当該水性バインダ組成物は、
・500以下の分子量Mを有するエポキシ化合物
から選択される架橋剤を含まない鉱物繊維製品が提供される。
【0023】
特に、本発明の第1の態様によれば、
・1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、
・1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)と
を含む、フェノール及びホルムアルデヒドを含まない水性バインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む鉱物繊維製品であるが、ただし、当該水性バインダ組成物は、
・式R-[C(O)Rのアルデヒド、カルボニル化合物から選択されるカルボニル化合物であって、上記式中、
Rは、飽和又は不飽和の直鎖状、分枝状又は環状の炭化水素基、1つ以上の5個又は6個の炭素原子からなる芳香族核を含む基、1つ以上の、4個又は5個の炭素原子及び酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を含有する芳香族複素環を含む基を表し、このR基は他の官能基を含有することが可能であり、
は、水素原子又はC~C10アルキル基を表し、
xは1~10の範囲にあるカルボニル化合物
から選択される架橋剤を含まない鉱物繊維製品が提供される。
【0024】
特に、本発明の第1の態様によれば、
・1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、
・1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)と
を含む、フェノール及びホルムアルデヒドを含まない水性バインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む鉱物繊維製品であるが、ただし、当該水性バインダ組成物は、
・ポリアミン
から選択される架橋剤を含まない鉱物繊維製品が提供される。
【0025】
特に、本発明の第1の態様によれば、
・1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、
・1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)と
を含む、フェノール及びホルムアルデヒドを含まない水性バインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む鉱物繊維製品であるが、ただし、当該水性バインダ組成物は、
・単糖及びオリゴ糖
から選択される架橋剤を含まない鉱物繊維製品が提供される。
【0026】
1つの実施形態では、本発明に係る鉱物ウール製品は、
・1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、
・1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)であって、
・β-ヒドロキシアルキルアミド架橋剤、例えばN-(2-ヒドロキシイソプロピル)アミド架橋剤、例えばN-(2-ヒドロキシエチル)アミド架橋剤、例えばN-(2-ヒドロキシエチル)アジポアミド架橋剤、例えばN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アジポアミド、及び/又は
・アルカノールアミン等の多官能性有機アミン、ヘキサメチルジアミン等のジアミンからなる群、及び/又は
・500超の分子量を有するエポキシ化合物、例えば脂肪酸トリグリセリドに基づくエポキシ化油、若しくは反応性官能基、例えばカルボジイミド基、例えば無水物基、例えばオキサゾリン基、例えばアミノ基、例えばエポキシ基を含有する1種以上の屈曲性の(柔軟な)オリゴマー若しくはポリマー、例えば低Tgアクリル系ポリマー、例えば低Tgビニル系ポリマー、例えば低Tgポリエーテル、及び/又は
・多官能性カルボジイミド、例えば脂肪族多官能性カルボジイミド、の形態の1種以上の架橋剤、及び/又は
・Primid XL-552
から選択される1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)と
を含む、フェノール及びホルムアルデヒドを含まない水性バインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含むが、ただし、当該水性バインダ組成物は、
・500以下の分子量Mを有するエポキシ化合物、
・式R-[C(O)Rのアルデヒド、カルボニル化合物から選択されるカルボニル化合物であって、上記式中、
Rは、飽和又は不飽和の直鎖状、分枝状又は環状の炭化水素基、1つ以上の5個又は6個の炭素原子からなる芳香族核を含む基、1つ以上の、4個又は5個の炭素原子及び酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を含有する芳香族複素環を含む基を表し、このR基は他の官能基を含有することが可能であり、
は、水素原子又はC~C10アルキル基を表し、
xは1~10の範囲にあるカルボニル化合物、
・ポリアミン
から選択される架橋剤を含まない。
【0027】
任意選択で、上記水性バインダ組成物は、
・1種以上の可塑剤の形態の成分(iii)
をさらに含む。
【0028】
1つの実施形態では、本発明に係る鉱物ウール製品は、
・1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、
・1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)と、
・1種以上の可塑剤の形態の成分(iii)と
を含む、フェノール及びホルムアルデヒドを含まない水性バインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む。
【0029】
特に、本発明の第1の態様によれば、
・1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、
・1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)と、
・1種以上の可塑剤の形態の成分(iii)と
を含む、フェノール及びホルムアルデヒドを含まない水性バインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む鉱物繊維製品であるが、ただし、当該水性バインダ組成物は、
・500以下の分子量Mを有するエポキシ化合物
から選択される架橋剤を含まない鉱物繊維製品が提供される。
【0030】
特に、本発明の第1の態様によれば、
・1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、
・1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)と、
・1種以上の可塑剤の形態の成分(iii)と
を含む、フェノール及びホルムアルデヒドを含まない水性バインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む鉱物繊維製品であるが、ただし、当該水性バインダ組成物は、
・式R-[C(O)Rのアルデヒド、カルボニル化合物から選択されるカルボニル化合物であって、上記式中、
Rは、飽和又は不飽和の直鎖状、分枝状又は環状の炭化水素基、1つ以上の5個又は6個の炭素原子からなる芳香族核を含む基、1つ以上の、4個又は5個の炭素原子及び酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を含有する芳香族複素環を含む基を表し、このR基は他の官能基を含有することが可能であり、
は、水素原子又はC~C10アルキル基を表し、
xは1~10の範囲にあるカルボニル化合物
から選択される架橋剤を含まない鉱物繊維製品が提供される。
【0031】
特に、本発明の第1の態様によれば、
・1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、
・1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)と、
・1種以上の可塑剤の形態の成分(iii)と
を含む、フェノール及びホルムアルデヒドを含まない水性バインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む鉱物繊維製品であるが、ただし、当該水性バインダ組成物は、
・ポリアミン
から選択される架橋剤を含まない鉱物繊維製品が提供される。
【0032】
特に、本発明の第1の態様によれば、
・1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、
・1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)と、
・1種以上の可塑剤の形態の成分(iii)と、
を含む、フェノール及びホルムアルデヒドを含まない水性バインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む鉱物繊維製品であるが、ただし、当該水性バインダ組成物は、
・単糖及びオリゴ糖
から選択される架橋剤を含まない鉱物繊維製品が提供される。
【0033】
1つの実施形態では、本発明に係る鉱物ウール製品は、
・1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、
・1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)であって、
・β-ヒドロキシアルキルアミド架橋剤、及び/又は
・500超の分子量を有するエポキシ化合物、例えば脂肪酸トリグリセリドに基づくエポキシ化油、若しくは反応性官能基、例えばカルボジイミド基、例えば無水物基、例えばオキサゾリン基、例えばアミノ基、例えばエポキシ基を含有する1種以上の屈曲性のオリゴマー若しくはポリマー、例えば低Tgアクリル系ポリマー、例えば低Tgビニル系ポリマー、例えば低Tgポリエーテル、及び/又は
・多官能性カルボジイミド、例えば脂肪族多官能性カルボジイミド、の形態の1種以上の架橋剤、及び/又は
・Primid XL-552
から選択される1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)と、
・1種以上の可塑剤の形態の成分(iii)と
を含む、フェノール及びホルムアルデヒドを含まない水性バインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含むが、ただし、当該水性バインダ組成物は、
・500以下の分子量Mを有するエポキシ化合物、
・式R-[C(O)Rのアルデヒド、カルボニル化合物から選択されるカルボニル化合物であって、上記式中、
Rは、飽和又は不飽和の直鎖状、分枝状又は環状の炭化水素基、1つ以上の5個又は6個の炭素原子からなる芳香族核を含む基、1つ以上の、4個又は5個の炭素原子及び酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を含有する芳香族複素環を含む基を表し、このR基は他の官能基を含有することが可能であり、
は、水素原子又はC~C10アルキル基を表し、
xは1~10の範囲にあるカルボニル化合物、
・ポリアミン
から選択される架橋剤を含まない。
【0034】
好ましい実施形態では、上記バインダはホルムアルデヒドを含まない。
【0035】
本出願の目的のために、用語「ホルムアルデヒドを含まない」、「ホルムアルデヒド不含」は、鉱物ウール製品からの放出量が5μg/m/h未満、好ましくは3μg/m/h未満のホルムアルデヒドである鉱物ウール製品を特徴付けるように定義される。好ましくは、試験は、アルデヒド放出量を試験するためのISO16000に従って実施される。
【0036】
好ましい実施形態では、上記バインダはフェノールを含まない。
【0037】
本出願の目的のために、用語「フェノールを含まない」、「フェノール不含」は、水性バインダ組成物が、15重量%の乾燥固形分バインダ含有量を有する水性組成物の総重量に基づいて0.25重量%以下、例えば0.1重量%以下、例えば0.05重量%以下の量のフェノールを含有するように定義される。
【化1】
【0038】
1つの実施形態では、上記バインダ組成物は、添加されたホルムアルデヒドを含有しない。
【0039】
1つの実施形態では、上記バインダ組成物は添加されたフェノールを含有しない。
【0040】
本発明の目的のために、用語「単糖及びオリゴ糖」は、単糖及び10以下の糖単位を有するオリゴ糖を含むと定義される。
【0041】
本発明の目的のために、用語「糖」は、単糖及び10以下の糖単位を有するオリゴ糖を含むと定義される。
【0042】
成分(i)
成分(i)は、1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態にある。
【0043】
リグニン、セルロース及びヘミセルロースは、植物細胞壁における3つの主要な有機化合物である。リグニンは、セルロース繊維をまとめて保持する接着剤と考えることができる。リグニンは親水性基と疎水性基の両方を含有する。リグニンは、世界中で2番目に豊富な天然ポリマーであり、セルロースに次いで2番目であり、全体で10億トンを超えるバイオマス中に含まれる全炭素の20~30%程度に相当すると推定される。
【0044】
リグノスルホネートプロセスは、大量のスルホネート基を導入して、リグニンを水だけでなく酸性水溶液にも可溶にする。リグノスルホネートは、スルホネートとして8%までの硫黄を有するが、クラフトリグニンは1~2%の硫黄を有し、大部分がリグニンに結合している。リグノスルホネートの分子量は、15,000~50,000g/molである。リグニンの典型的な疎水性コアは、多数のイオン化スルホネート基と共に、このリグニンを界面活性剤として魅力的なものにし、リグニンは、多くの場合、セメント等を分散させる際に用途を見出す。
【0045】
リグニンベースの付加価値のある物を生成するためには、まずリグニンをバイオマスから分離しなければならず、そのためにいくつかの方法を用いることができる。クラフト及び亜硫酸パルプ化プロセスは、木材からのそれらの効果的なリグニン分離について公知であり、従って、世界中で使用されている。クラフトリグニンは、NaOH及びNaSの助けを借りて木材から分離される。亜硫酸パルプ化プロセスからのリグニンは、リグノスルホネートと表され、様々なpHレベルで亜硫酸及び/又はマグネシウム、カルシウム、ナトリウム若しくはアンモニウムを含有する亜硫酸塩を使用することによって生成される。現在、リグノスルホネートは市販のリグニンの全市場の90%を占め、リグノスルホネートの年間世界総生産量は約180万トンである。リグノスルホネートは、概して、豊富なスルホン酸基を有し、従って、クラフトリグニンよりも多量の硫黄を有する。スルホン化基の存在により、リグノスルホネートはアニオン性に荷電し、水溶性である。リグノスルホネートの分子量(Mw)は、クラフトリグニンの分子量(Mw)と同程度又はそれより大きいことが可能である。その独特の特性のために、リグノスルホネートは、動物飼料、殺虫剤、界面活性剤、油掘削における添加剤、コロイド懸濁液における安定剤、及びコンクリート混和物における可塑剤等の広範な用途を有する。しかしながら、新しいパルプ工場の大部分は、パルプ生産のためにクラフト技術を採用し、従って、クラフトリグニンは、付加価値のある生産のためにより容易に利用可能である。
【0046】
しかしながら、リグノスルホネート及びクラフトリグニンは、異なる単離プロセス、従って官能基の分布に由来する異なる特性を有する。リグノスルホネート中の高レベルのスルホン酸基、一般に4つのC9単位ごとに少なくとも1つは、リグノスルホネートを水中のすべてのpHレベルで強く荷電させる。イオン化可能な官能基のこの豊富さは、他の工業リグニンと比較した差異のほとんどを説明することができる。より高い電荷密度は、クラフトリグニンと比較して、より容易な水溶性及び溶液中でのより高い固形分含量を可能にする。また、同じ理由で、リグノスルホネートは、同じ固形分含量でクラフトリグニンと比較してより低い溶液粘度を有し、これは取り扱い及び加工を容易にすることができる。リグノスルホネートの一般に使用されるモデル構造を図1に示す。
【0047】
1つの実施形態では、成分(i)は、リグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.05~0.6mmol/g、例えば0.1~0.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有する。
【0048】
1つの実施形態では、成分(i)は、成分(i)のM-n重量平均を考慮して1高分子当たり1.8基未満、例えば1.4未満、例えば1.1未満、例えば0.7未満、例えば0.4未満の平均カルボン酸基含有量を有する1種以上のリグノスルホネートリグニンの形態にある。
【0049】
1つの実施形態では、成分(i)は、リグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.3~2.5mmol/g、例えば0.5~2.0mmol/g、例えば0.5~1.5mmol/gのフェノール性OH基の含有量を有する。
【0050】
1つの実施形態では、成分(i)は、リグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて1.0~8.0mmol/g、例えば1.5~6.0mmol/g、例えば2.0~5.0mmol/gの脂肪族OH基の含有量を有する。
【0051】
1つの実施形態では、成分(i)は、リグノスルホン酸アンモニウム(アンモニウムリグノスルホネート)及び/又はリグノスルホン酸カルシウム(カルシウムリグノスルホネート)及び/又はリグノスルホン酸マグネシウム(マグネシウムリグノスルホネート)、並びにいずれかのこれらのいずれかの組み合わせを含む。
【0052】
1つの実施形態では、成分(i)は、リグノスルホン酸アンモニウム及びリグノスルホン酸カルシウムを含み、NH 対Ca2+のモル比は、5:1~1:5、特に3:1~1:3の範囲にある。
【0053】
本発明の目的のために、リグノスルホネート、リグノスルホン酸塩という用語は、スルホン化クラフトリグニンを包含する。
【0054】
1つの実施形態では、成分(i)は、スルホン化クラフトリグニンである。
【0055】
1つの実施形態では、上記水性バインダ組成物は、リグノスルホネート及び糖の重量に基づいて0~5重量%、例えば5重量%未満、例えば0~4.9重量%、例えば0.1~4.9重量%の量の添加糖を含有する。
【0056】
1つの実施形態では、上記水性バインダ組成物は、成分(i)及び(ii)の総重量に基づいて50~98重量%、例えば65~98重量%、例えば50~88重量%、例えば50~87重量%、例えば65~88重量%、例えば65~87重量%、例えば80~88重量%、例えば80~87重量%、例えば80~98重量%の量の成分(i)、すなわちリグノスルホネート、を含む。
【0057】
1つの実施形態では、上記水性バインダ組成物は、成分(i)、(ii)及び(iii)の乾燥重量に基づいて50~98重量%、例えば65~98重量%、例えば80~98重量%、例えば50~88重量%、例えば50~87重量%、例えば65~88重量%、例えば65~87重量%、例えば80~88重量%、例えば80~87重量%の量の成分(i)を含む。
【0058】
本発明の目的のために、リグニン官能基の含有量は、特徴付け方法として31P NMRを使用することによって決定される。
【0059】
31P NMRのための試料調製は、ホスフィチル化試薬として2-クロロ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサホスホラン(TMDP)を使用し、内部標準としてコレステロールを使用することによって行われる。積分は、Granata及びArgyropoulosの研究(J.Agric.Food Chem. 43:1538-1544)に従う。
【0060】
成分(ii)
成分(ii)は1種以上の架橋剤の形態にある。
【0061】
1つの実施形態では、成分(ii)は、1つの実施形態では、β-ヒドロキシアルキルアミド架橋剤及び/又はオキサゾリン架橋剤から選択される1種以上の架橋剤を含む。
【0062】
β-ヒドロキシアルキルアミド架橋剤は、酸官能性高分子のための硬化剤である。このβ-ヒドロキシアルキルアミド架橋剤は、硬く、耐久性があり、耐食性があり、耐溶剤性の架橋ポリマーネットワークを提供する。β-ヒドロキシアルキルアミド架橋剤は、エステル化反応によって硬化して、複数のエステル結合を形成すると考えられる。β-ヒドロキシアルキルアミド架橋剤のヒドロキシ官能性は、最適な硬化応答を得るために、平均で少なくとも2、好ましくは2超、より好ましくは2~4であるべきである。
【0063】
オキサゾリン基含有架橋剤は、各分子中に1つ以上のオキサゾリン基を含有するポリマーであり、一般に、オキサゾリン含有架橋剤は、オキサゾリン誘導体を重合することによって容易に得ることができる。米国特許第6818699B2号明細書は、そのようなプロセスの開示を提供する。
【0064】
1つの実施形態では、成分(ii)は、1種以上の500超の分子量を有するエポキシ化合物、例えば脂肪酸トリグリセリドに基づくエポキシ化油、又は反応性官能基、例えばカルボジイミド基、例えば無水物基、例えばオキサゾリン基、例えばアミノ基、例えばエポキシ基、例えばβ-ヒドロキシアルキルアミド基を含有する1種以上の屈曲性のオリゴマー若しくはポリマー、例えば低Tgアクリル系ポリマー、例えば低Tgビニル系ポリマー、例えば低Tgポリエーテルである。
【0065】
1つの実施形態では、成分(ii)は、脂肪アミンからなる群から選択される1種以上の架橋剤である。
【0066】
1つの実施形態では、成分(ii)は、脂肪アミドの形態の1種以上の架橋剤である。
【0067】
1つの実施形態では、成分(ii)は、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオールから選択される1種以上の架橋剤である。
【0068】
1つの実施形態では、成分(ii)は、デンプン、加工デンプン、CMCからなる群から選択される1種以上の架橋剤である。
【0069】
1つの実施形態では、成分(ii)は、多官能性カルボジイミド、例えば脂肪族多官能性カルボジイミド、の形態の1種以上の架橋剤である。
【0070】
1つの実施形態では、成分(ii)は、CX100、NeoAdd-Pax 521/523等のアジリジンの形態の1種以上の架橋剤である。
【0071】
1つの実施形態では、成分(ii)は、ヘキサキス(メチルメトキシ)メラミン(HMMM)ベースの架橋剤等のメラミン系架橋剤から選択される1種以上の架橋剤である。
【0072】
そのような化合物の例は、Picassian XL 701、702、725(Stahl Polymers(スタール・ポリマーズ))、例えばZOLDINE(登録商標)XL-29SE(Angus Chemical Company(アンガス・ケミカル・カンパニー))、例えばCX300(DSM)、例えばCarbodilite V-02-L2(日清紡ケミカル株式会社)である。
【0073】
1つの実施形態では、成分(ii)は、以下の構造を有するPrimid XL552である。
【化2】
【0074】
成分(ii)は、上記の化合物のいずれかの混合物であることも可能である。
【0075】
1つの実施形態では、本発明に係るバインダ組成物は、成分(i)の乾燥重量に基づいて1~50重量%、例えば4~20重量%、例えば6~12重量%の量の成分(ii)を含む。
【0076】
1つの実施形態では、成分(ii)は、
・β-ヒドロキシアルキルアミド架橋剤、例えばN-(2-ヒドロキシイソプロピル)アミド架橋剤、例えばN-(2-ヒドロキシエチル)アミド架橋剤、例えばN-(2-ヒドロキシエチル)アジポアミド架橋剤、例えばN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アジポアミド、及び/又は
・アルカノールアミン等の多官能性有機アミン、ヘキサメチルジアミン等のジアミンからなる群、及び/又は
・500超の分子量を有するエポキシ化合物、例えば脂肪酸トリグリセリドに基づくエポキシ化油、若しくは反応性官能基、例えばカルボジイミド基、例えば無水物基、例えばオキサゾリン基、例えばアミノ基、例えばエポキシ基を含有する1種以上の屈曲性のオリゴマー若しくはポリマー、例えば低Tgアクリル系ポリマー、例えば低Tgビニル系ポリマー、例えば低Tgポリエーテル、及び/又は
・多官能性カルボジイミド、例えば脂肪族多官能性カルボジイミド、の形態の1種以上の架橋剤
から選択される1種以上の架橋剤の形態にある。
【0077】
1つの実施形態では、成分(ii)は、
・β-ヒドロキシアルキルアミド架橋剤、例えばN-(2-ヒドロキシイソプロピル)アミド架橋剤、例えばN-(2-ヒドロキシエチル)アミド架橋剤、例えばN-(2-ヒドロキシエチル)アジポアミド架橋剤、例えばN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アジポアミド
から選択される1種以上の架橋剤を含む。
【0078】
1つの実施形態では、上記水性バインダ組成物は、成分(i)の乾燥重量に基づいて2~90重量%、例えば6~60重量%、例えば10~40重量%、例えば25~40重量%の量の成分(ii)を含む。
【0079】
バインダ組成物の任意選択の成分(iii)
任意選択で、上記バインダ組成物は、成分(iii)を含んでもよい。成分(iii)は1種以上の可塑剤の形態にある。
【0080】
1つの実施形態では、成分(iii)は、ポリオール、例えば炭水化物、水素化糖、例えばソルビトール、エリトリトール、グリセロール、モノエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエーテル、ポリエーテル、フタレート並びに/若しくはアジピン酸、バニリン酸、乳酸及び/若しくはフェルラ酸等の酸、アクリルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリウレタン分散体、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ラクトン、ラクタム、ラクチド、遊離カルボキシ基を有するアクリル系ポリマー並びに/若しくは遊離カルボキシ基を有するポリウレタン分散体、ポリアミド、カルボアミド/尿素等のアミド、又はこれらのいずれかの混合物からなる群から選択される1種以上の可塑剤の形態にある。
【0081】
1つの実施形態では、成分(iii)は、炭酸エステル(カーボネート)、例えば炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ラクトン、ラクタム、ラクチド、リグニンに類似した構造を有する化合物、例えばバニリン、アセトシリンゴン、合体剤として使用される溶媒、例えばアルコールエーテル、ポリビニルアルコールからなる群から選択される1種以上の可塑剤の形態にある。
【0082】
1つの実施形態では、成分(iii)は、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエーテル、ポリエーテル、水素化糖、フタレート及び/又は他のエステル、合体剤として使用される溶媒、例えばアルコールエーテル、アクリルポリマー、ポリビニルアルコールからなる群から選択される1種以上の非反応性可塑剤の形態にある。
【0083】
1つの実施形態では、成分(iii)は、炭酸エステル、例えば炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ラクトン、ラクタム、ラクチド、ジカルボン酸又はトリカルボン酸、例えばアジピン酸、又は乳酸、及び/又はバニリン酸及び/又はフェルラ酸、ポリウレタン分散体、遊離カルボキシ基を有するアクリル系ポリマー、リグニンに類似した構造を有する化合物、例えばバニリン、アセトシリンゴンからなる群から選択される1種以上の反応性可塑剤である。
【0084】
1つの実施形態では、成分(iii)は、脂肪アルコール、モノヒドロキシアルコール、例えばペンタノール、ステアリルアルコールからなる群から選択される1種以上の可塑剤の形態にある。
【0085】
1つの実施形態では、成分(iii)は、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエーテルからなる群から選択される1種以上の可塑剤、並びに/又はポリオール、例えば1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、及び/若しくはトリエタノールアミンの形態の1種以上の可塑剤を含む。
【0086】
本発明の別の特定の驚くべき態様は、100℃超、特に140~250℃の沸点を有する可塑剤の使用が、本発明に係る鉱物繊維製品の機械的特性を強力に改善することであり、これは、これらの可塑剤は、それらの沸点を考慮すると、鉱物繊維と接触した状態のバインダの硬化中に少なくとも部分的に蒸発する可能性があるにもかかわらず生じる。
【0087】
1つの実施形態では、成分(iii)は、1種以上の100℃超、例えば110~380℃、より好ましくは120~300℃、より好ましくは140~250℃の沸点を有する可塑剤を含む。
【0088】
本発明に係るバインダ組成物におけるこれらの可塑剤の有効性は、硬化プロセス中のリグニンの移動度を増加させる効果に関連すると考えられる。硬化プロセス中のリグニンの増大した移動度は、有効な架橋を促進すると考えられる。
【0089】
1つの実施形態では、成分(iii)は、1種以上の150~50000g/mol、特に150~4000g/mol、より特に150~1000g/mol、好ましくは150~500g/mol、より好ましくは200~400g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコールを含む。
【0090】
1つの実施形態では、成分(iii)は、1種以上の4000~25000g/mol、特に4000~15000g/mol、より特に8000~12000g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコールを含む。
【0091】
1つの実施形態では、成分(iii)は、硬化プロセス中に成分(i)及び/又は成分(ii)と共有結合を形成することができる。このような成分は、蒸発せず、組成物の一部として残るであろうが、硬化生成物に望ましくない副作用、例えば吸水を導入しないように効果的に変質される。このような成分の非限定的な例は、カプロラクトン及び遊離カルボキシル基を有するアクリル系ポリマーである。
【0092】
1つの実施形態では、成分(iii)は、脂肪アルコール、モノヒドロキシアルコール、例えばペンタノール、ステアリルアルコールからなる群から選択される。
【0093】
1つの実施形態では、成分(iii)は、アルコキシレート、例えばエトキシレート、例えばブタノールエトキシレート、例えばブトキシトリグリコールからなる群から選択される1種以上の可塑剤から選択される。
【0094】
1つの実施形態では、成分(iii)は、1種以上のプロピレングリコールから選択される。
【0095】
1つの実施形態では、成分(iii)は、1種以上のグリコールエステルから選択される。
【0096】
1つの実施形態では、成分(iii)は、アジペート(アジピン酸エステル)、アセテート(酢酸エステル)、ベンゾエート(安息香酸エステル)、シクロベンゾエート(シクロ安息香酸エステル)、シトレート(クエン酸エステル)、ステアレート(ステアリン酸エステル)、ソルベート(ソルビン酸エステル)、セバケート(セバシン酸エステル)、アゼレート(アゼライン酸エステル)、ブチレート(酪酸エステル)、バレレート(吉草酸エステル)からなる群から選択される1種以上の可塑剤から選択される。
【0097】
1つの実施形態では、成分(iii)は、アルキル又はアリール置換フェノール等のフェノール誘導体からなる群から選択される1種以上の可塑剤から選択される。
【0098】
1つの実施形態では、成分(iii)は、シラノール、シロキサンからなる群から選択される1種以上の可塑剤から選択される。
【0099】
1つの実施形態では、成分(iii)は、アルキルスルフェート等のスルフェート(硫酸エステル)、アルキルアリールスルホネート等、アルキルスルホネート等のスルホネート(スルホン酸エステル)、トリポリホスフェート(トリポリリン酸エステル)等のホスフェート(リン酸エステル)、例えばトリブチルホスフェート(リン酸トリブチル)からなる群から選択される1種以上の可塑剤から選択される。
【0100】
1つの実施形態では、成分(iii)は、1種以上のヒドロキシ酸から選択される。
【0101】
1つの実施形態では、成分(iii)は、アセトアミド、ベンズアミド等のモノマーアミド、トール油アミド等の脂肪酸アミドからなる群から選択される1種以上の可塑剤から選択される。
【0102】
1つの実施形態では、成分(iii)は、トリメチルグリシン、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド等の第四級アンモニウム化合物からなる群から選択される1種以上の可塑剤から選択される。
【0103】
1つの実施形態では、成分(iii)は、ヒマシ油、パーム油、亜麻仁油、トール油、大豆油等の植物油からなる群から選択される1種以上の可塑剤から選択される。
【0104】
1つの実施形態では、成分(iii)はトール油の形態にある。
【0105】
1つの実施形態では、成分(iii)は、硬化油(水素添加油)、アセチル化油からなる群から選択される1種以上の可塑剤から選択される。
【0106】
1つの実施形態では、成分(iii)は、1種以上の脂肪酸メチルエステルから選択される。
【0107】
1つの実施形態では、成分(iii)は、アルキルポリグルコシド、グルコンアミド、アミノグルコースアミド、スクロースエステル、ソルビタンエステルからなる群から選択される1種以上の可塑剤から選択される。
【0108】
1つの実施形態では、成分(iii)は、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエーテルからなる群から選択される。
【0109】
1つの実施形態では、成分(iii)は、トリエタノールアミンからなる群から選択される。
【0110】
1つの実施形態では、成分(iii)は、プロピレングリコール、フェノール誘導体、シラノール、シロキサン、ヒドロキシ酸、植物油、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエーテル、及び/若しくは1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、トリエタノールアミン等のポリオール、又はいずれかのこれらの混合物の形態にある1種以上の可塑剤の形態にある。
【0111】
驚くべきことに、本発明に係るバインダ組成物に可塑剤を含めることが、本発明に係る鉱物繊維製品の機械的特性を強く改善するということが見出された。
【0112】
可塑剤という用語は、材料をより柔らかくし、(ガラス転移温度Tgを低下させることによって)より可撓性にし、加工を容易にするために材料に添加される物質を指す。
【0113】
成分(iii)は、上記の化合物のいずれかの混合物であることも可能である。
【0114】
1つの実施形態では、成分(iii)は、成分(i)の乾燥重量に基づいて0.5~60重量%、好ましくは2.5~25重量%、より好ましくは3~15重量%の量で存在する。
【0115】
1つの実施形態では、成分(iii)は、成分(i)、(ii)及び(iii)の乾燥重量に基づいて0.5~60重量%、好ましくは2.5~25重量%、より好ましくは3~15重量%の量で存在する。
【0116】
可塑剤を含有しないバインダ組成物
1つの実施形態では、本発明に係るバインダ組成物は可塑剤を含有しない。
【0117】
従って、1つの実施形態では、本発明は、上記の鉱物繊維製品であるが、ただし、上記水性バインダ組成物が可塑剤を含まない鉱物繊維製品に向けられる。
【0118】
1つの実施形態では、本発明は、上記の鉱物繊維製品であるが、ただし、上記水性バインダ組成物が
・脂肪アルコール、モノヒドロキシアルコール、例えばペンタノール、ステアリルアルコールからなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
・アルコキシレート、例えばエトキシレート、例えばブタノールエトキシレート、例えばブトキシトリグリコールからなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
・プロピレングリコールの形態の1種以上の可塑剤、及び/又は
・グリコールエステルの形態の1種以上の可塑剤、及び/又は
・アジペート、アセテート、ベンゾエート、シクロベンゾエート、シトレート、ステアレート、ソルベート、セバケート、アゼレート、ブチレート、バレレートからなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
・アルキル若しくはアリール置換フェノール等のフェノール誘導体からなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
・シラノール、シロキサンからなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
・アルキルスルフェート等のスルフェート、アルキルアリールスルホネート等、アルキルスルホネート等のスルホネート、トリポリホスフェート等のホスフェートからなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
・ヒドロキシ酸の形態の1種以上の可塑剤、及び/又は
・アセトアミド、ベンズアミド等のモノマーアミド、トール油アミド等の脂肪酸アミドからなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
・トリメチルグリシン、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド等の第四級アンモニウム化合物からなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
・ヒマシ油、パーム油、亜麻仁油、大豆油等の植物油からなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
・トール油、及び/又は
・硬化油、アセチル化油からなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
・酸メチルエステルから選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
・アルキルポリグルコシド、グルコンアミド、アミノグルコースアミド、スクロースエステル、ソルビタンエステルからなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
・ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエーテルからなる群から選択される1種以上の可塑剤、及び/又は
・ポリオール、例えばグリセロール、例えば1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパンの形態の1種以上の可塑剤、及び/又は
・トリエタノールアミン
の形態の可塑剤を含まない鉱物繊維製品に向けられる。
【0119】
1つの実施形態では、本発明は、上記の鉱物繊維製品であるが、ただし、上記水性バインダ組成物は、プロピレングリコール、フェノール誘導体、シラノール、シロキサン、ヒドロキシ酸、植物油、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエーテル、トリエタノールアミン、又はこれらのいずれかの混合物の形態にある可塑剤を含まない鉱物繊維製品に向けられる。
【0120】
1つの実施形態では、本発明は、上記の鉱物繊維製品であるが、ただし、上記水性バインダ組成物は、1種以上の100~380℃、より好ましくは120~300℃、より好ましくは140~250℃の沸点を有する可塑剤の形態の可塑剤を含まない鉱物繊維製品に向けられる。1種以上の100~380℃、より好ましくは120~300℃、より好ましくは140~250℃の沸点を有する可塑剤を含む。
【0121】
1つの実施形態では、本発明は、上記の鉱物繊維製品であるが、ただし、当該水性バインダ組成物は、1種以上の150~50000g/mol、特に150~4000g/mol、より特に150~1000g/mol、好ましくは150~500g/mol、より好ましくは200~400g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコールを含む形態の可塑剤を含まない鉱物繊維製品に向けられる。
【0122】
成分(i)及び(iia)を含むバインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む鉱物繊維製品
1つの実施形態では、本発明は、
・1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、
・1種以上の改質剤の形態の成分(iia)と
を含む鉱物繊維用バインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む鉱物繊維製品であるが、好ましくは、ただし、当該水性バインダ組成物は、
・500以下の分子量Mを有するエポキシ化合物
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・式R-[C(O)Rのアルデヒド、カルボニル化合物から選択されるカルボニル化合物であって、上記式中、
Rは、飽和若しくは不飽和の直鎖状、分枝状若しくは環状の炭化水素基、1つ以上の5個若しくは6個の炭素原子からなる芳香族核を含む基、1つ以上の、4個若しくは5個の炭素原子及び酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含有する芳香族複素環を含む基を表し、このR基は他の官能基を含有することが可能であり、
は、水素原子若しくはC~C10アルキル基を表し、
xは1~10の範囲にあるカルボニル化合物
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・ポリアミン
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・単糖及びオリゴ糖
から選択される架橋剤を含まない鉱物繊維用バインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む鉱物繊維製品に向けられる。
【0123】
本発明者らは、1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、1種以上の改質剤の形態の成分(iia)と、任意選択で上記及び下記の他の成分のいずれかとを含む二成分系によっても優れたバインダ特性を達成できるということを見出した。
【0124】
1つの実施形態では、成分(iia)は、500超の分子量を有するエポキシ化合物、例えば脂肪酸トリグリセリドに基づくエポキシ化油、又は反応性官能基、例えばカルボジイミド基、例えば無水物基、例えばオキサゾリン基、例えばアミノ基、例えばエポキシ基、例えばβ-ヒドロキシアルキルアミド基を含有する1種以上の屈曲性のオリゴマー若しくはポリマー、例えば低Tgアクリル系ポリマー、例えば低Tgビニル系ポリマー、例えば低Tgポリエーテルからなる群から選択される1種以上の化合物の形態の改質剤である。
【0125】
1つの実施形態では、成分(iia)は、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、脂肪アミンからなる群から選択される1種以上の改質剤である。
【0126】
1つの実施形態では、成分(iia)は、多官能性カルボジイミド、例えば脂肪族多官能性カルボジイミドから選択される1種以上の改質剤である。
【0127】
成分(iia)は、上記の化合物のいずれかの混合物であることも可能である。
【0128】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、成分(i)及び(iia)並びに任意選択のさらなる成分を含む鉱物繊維用バインダ組成物によって達成される優れたバインダ特性は、成分(iia)として使用される改質剤が可塑剤及び架橋剤の機能を少なくとも部分的に果たすという効果に少なくとも部分的に起因すると考えている。
【0129】
1つの実施形態では、上記バインダ組成物は、成分(i)の乾燥重量に基づいて1~40重量%、例えば4~20重量%、例えば6~12重量%の量の成分(iia)を含む。
【0130】
さらなる成分
いくつかの実施形態では、本発明に係る鉱物繊維製品は、さらなる成分を含むバインダの硬化から生じるバインダ組成物と接触している鉱物繊維を含む。
【0131】
1つの実施形態では、上記バインダ組成物は、無機酸、例えば硫酸、スルファミン酸、硝酸、ホウ酸、次亜リン酸、及び/若しくはリン酸、並びに/又はその任意の塩、例えば次亜リン酸ナトリウム、及び/若しくはアンモニウム塩、例えば硫酸、スルファミン酸、硝酸、ホウ酸、次亜リン酸、及び/若しくはリン酸のアンモニウム塩、及び/若しくはポリリン酸ナトリウム(STTP)、及び/若しくはメタリン酸ナトリウム(STMP)、並びに/又はオキシ塩化リンから選択される触媒を含む。このような触媒の存在は、本発明に係るバインダ組成物の硬化特性を改善することができる。
【0132】
1つの実施形態では、上記バインダ組成物は、ドナー化合物から電子対を受け入れてルイス付加物を形成することができるルイス酸、例えばZnCl、Mg(ClO、Sn[N(SO-n-C17、から選択される触媒を含む。
【0133】
1つの実施形態では、上記バインダ組成物は、金属塩化物、例えばKCl、MgCl、ZnCl、FeCl及びSnCl、又はそれらの付加物、例えばAlCl付加物、例えばBF付加物、例えばBFエチルアミン錯体、から選択される触媒を含む。
【0134】
1つの実施形態では、上記バインダ組成物は、チタン酸塩系触媒及びスズ系触媒等の有機金属化合物から選択される触媒を含む。
【0135】
1つの実施形態では、上記バインダ組成物は、キレート剤、例えば遷移金属、例えば鉄イオン、クロムイオン、マンガンイオン、銅イオンから、及び/又は過酸化物、例えば有機過酸化物、例えばジクミルペルオキシドから選択される触媒を含む。
【0136】
1つの実施形態では、上記バインダ組成物は、ホスファイト(亜リン酸エステル)、例えばアルキルホスファイト、例えばアリールホスファイト、例えばトリフェニルホスファイト(亜リン酸トリフェニル)から選択される触媒を含む。
【0137】
1つの実施形態では、本発明に係るバインダ組成物は、トリス-2,4,6-ジメチルアミノメチルフェノール等の第三級アミンの群から選択される触媒を含む。
【0138】
1つの実施形態では、上記バインダ組成物は、1種以上のシランの形態のさらなる成分(iv)をさらに含む。
【0139】
1つの実施形態では、上記バインダ組成物は、1種以上のカップリング剤、例えば有機官能性シランの形態のさらなる成分(iv)を含む。
【0140】
1つの実施形態では、成分(iv)は、有機官能性シラン、例えば第一級若しくは第二級アミノ官能化シラン、エポキシ官能化シラン、例えばポリマー状若しくはオリゴマー状のエポキシ官能化シラン、メタクリレート官能化シラン、アルキル及びアリール官能化シラン、尿素官能化シラン又はビニル官能化シランからなる群から選択される。
【0141】
1つの実施形態では、上記バインダ組成物は、塩基の群、例えばアンモニア、例えばアルカリ金属水酸化物、例えばKOH、例えばアルカリ土類金属水酸化物、例えばCa(OH)、例えばMg(OH)、例えばアミン、又はこれらのいずれかの塩から選択される1種以上の成分の形態の成分(v)をさらに含む。
【0142】
1つの実施形態では、上記バインダ組成物は、特に成分(i)の乾燥重量に基づいて5~40重量%、例えば10~30重量%、15~25重量%の量の尿素の形態のさらなる成分をさらに含む。
【0143】
1つの実施形態では、上記バインダ組成物は、スクロース、還元糖、特にデキストロース、ポリ炭水化物(polycarbohydrate)、及びこれらの混合物、好ましくはデキストリン及びマルトデキストリン、より好ましくはグルコースシロップ、より好ましくはDE=30~100未満、例えばDE=60~100未満、例えばDE=60~99、例えばDE=85~99、例えばDE=95~99のデキストロース当量値を持つグルコースシロップからなる群から選択される1種以上の炭水化物の形態のさらなる成分をさらに含む。
【0144】
1つの実施形態では、上記バインダ組成物は、成分(i)の乾燥重量に基づいて5~50重量%、例えば5~50重量%未満、例えば10~40重量%、例えば15~30重量%の量の、スクロース及び還元糖からなる群から選択される1種以上の炭水化物の形態のさらなる成分をさらに含む。
【0145】
1つの実施形態では、本発明に係る鉱物繊維製品は、1種以上のシリコーン樹脂の形態のさらなる成分を含むバインダ組成物と接触している鉱物繊維を含む。
【0146】
1つの実施形態では、本発明に係るバインダ組成物は、1種以上の反応性シリコーン又は非反応性シリコーンの形態のさらなる成分(vi)を含む。
【0147】
1つの実施形態では、成分(vi)は、当該バインダ組成物の構成成分のうちの少なくとも1つと反応することができる少なくとも1つのヒドロキシル、カルボキシル又は無水物、アミン、エポキシ又はビニル官能基を保有する、オルガノシロキサン残基、とりわけジフェニルシロキサン残基、アルキルシロキサン残基、好ましくはジメチルシロキサン残基からなる主鎖から構成されるシリコーンからなる群から選択され、好ましくは、上記バインダ固形分に基づいて0.025~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.3~8重量%の量で存在する。
【0148】
1つの実施形態では、本発明に係る鉱物繊維製品は、1種以上の鉱物油の形態のさらなる成分を含むバインダ組成物と接触している鉱物繊維を含む。
【0149】
本発明の文脈において、バインダ成分の総乾燥重量に基づいて50重量%以上の糖含有量を有するバインダ組成物は、糖をベースとするバインダであると考えられる。本発明の文脈において、バインダ成分の総乾燥重量に基づいて50重量%未満の糖含有量を有するバインダ組成物は、糖をベースとしないバインダと考えられる。
【0150】
1つの実施形態では、上記バインダ組成物は、非イオン性及び/又はイオン性の乳化剤、例えばポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル、例えばダイズレシチン、例えばドデシル硫酸ナトリウムの形態にある1種以上の界面活性剤の形態のさらなる成分をさらに含む。
【0151】
バインダにおけるリグニンをベースとするスルホン化生成物の使用は、いくつかのバインダ及び最終生成物の親水性の増加をもたらす可能性があり、これは、1種以上の疎水性剤、例えば1種以上の鉱物油、例えば1種以上のシリコーン油、例えば1種以上のシリコーン樹脂が添加されるべきであるということを意味する。
【0152】
1つの実施形態では、上記水性バインダ組成物は、本質的に
・1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、
・1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)と、
・1種以上の可塑剤の形態の成分(iii)と、
・1種以上のカップリング剤、例えば有機官能性シランの形態の成分(iv)と、
・任意選択で、塩基の群、例えばアンモニア、例えばアルカリ金属水酸化物、例えばKOH、例えばアルカリ土類金属水酸化物、例えばCa(OH)、例えばMg(OH)、例えばアミン、又はこれらのいずれかの塩から選択される1種以上の化合物の形態の成分と、
・任意選択で、尿素の形態の成分と、
・任意選択で、より反応性又は非反応性のシリコーンの形態の成分と、
・任意選択で、炭化水素油と、
・任意選択で、1種以上の界面活性剤と、
・水と
からなるが、好ましくは、ただし、当該水性バインダ組成物は、
・500以下の分子量Mを有するエポキシ化合物
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・式R-[C(O)Rのアルデヒド、カルボニル化合物から選択されるカルボニル化合物であって、上記式中、
Rは、飽和若しくは不飽和の直鎖状、分枝状若しくは環状の炭化水素基、1つ以上の5個若しくは6個の炭素原子からなる芳香族核を含む基、1つ以上の、4個若しくは5個の炭素原子及び酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含有する芳香族複素環を含む基を表し、このR基は他の官能基を含有することが可能であり、
は、水素原子若しくはC~C10アルキル基を表し、
xは1~10の範囲にあるカルボニル化合物
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・ポリアミン
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・単糖及びオリゴ糖
から選択される架橋剤を含まない。
【0153】
1つの実施形態では、上記水性バインダ組成物は、本質的に
・1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)、
及び/又は
・1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)、
・1種以上の可塑剤の形態の成分(iii)、
・1種以上のカップリング剤、例えば有機官能性シランの形態の成分(iv)、
・任意選択で、塩基の群、例えばアンモニア、例えばアルカリ金属水酸化物、例えばKOH、例えばアルカリ土類金属水酸化物、例えばCa(OH)、例えばMg(OH)、例えばアミン、若しくはこれらのいずれかの塩から選択される1種以上の化合物の形態の成分、
・任意選択で、尿素の形態の成分、
・任意選択で、より反応性若しくは非反応性のシリコーンの形態の成分、
・任意選択で、炭化水素油、
・任意選択で、1種以上の界面活性剤、
・水
からなるが、好ましくは、ただし、上記水性バインダ組成物は、
・500以下の分子量Mを有するエポキシ化合物
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・式R-[C(O)Rのアルデヒド、カルボニル化合物から選択されるカルボニル化合物であって、上記式中、
Rは、飽和若しくは不飽和の直鎖状、分枝状若しくは環状の炭化水素基、1つ以上の5個若しくは6個の炭素原子からなる芳香族核を含む基、1つ以上の、4個若しくは5個の炭素原子及び酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含有する芳香族複素環を含む基を表し、このR基は他の官能基を含有することが可能であり、
は、水素原子若しくはC~C10アルキル基を表し、
xは1~10の範囲にあるカルボニル化合物
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・ポリアミン
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・単糖及びオリゴ糖
から選択される架橋剤を含まない。
【0154】
1つの実施形態では、上記水性バインダ組成物は、本質的に
・1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、
・1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)と、
・1種以上のカップリング剤、例えば有機官能性シランの形態の成分(iv)と、
・任意選択で、塩基の群、例えばアンモニア、例えばアルカリ金属水酸化物、例えばKOH、例えばアルカリ土類金属水酸化物、例えばCa(OH)、例えばMg(OH)、例えばアミン、又はこれらのいずれかの塩から選択される1種以上の化合物の形態の成分と、
・任意選択で、尿素の形態の成分と、
・任意選択で、より反応性又は非反応性のシリコーンの形態の成分と、
・任意選択で、炭化水素油と、
・任意選択で、1種以上の界面活性剤と、
・水と
からなるが、好ましくは、ただし、当該水性バインダ組成物は、
・500以下の分子量Mを有するエポキシ化合物
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・式R-[C(O)Rのアルデヒド、カルボニル化合物から選択されるカルボニル化合物であって、上記式中、
Rは、飽和若しくは不飽和の直鎖状、分枝状若しくは環状の炭化水素基、1つ以上の5個若しくは6個の炭素原子からなる芳香族核を含む基、1つ以上の、4個若しくは5個の炭素原子及び酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含有する芳香族複素環を含む基を表し、このR基は他の官能基を含有することが可能であり、
は、水素原子若しくはC~C10アルキル基を表し、
xは1~10の範囲にあるカルボニル化合物
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・ポリアミン
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・単糖及びオリゴ糖
から選択される架橋剤を含まない。
【0155】
1つの実施形態では、上記水性バインダ組成物は、本質的に
・1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)、
及び/又は
・1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)、
・1種以上のカップリング剤、例えば有機官能性シランの形態の成分(iv)、
・任意選択で、塩基の群、例えばアンモニア、例えばアルカリ金属水酸化物、例えばKOH、例えばアルカリ土類金属水酸化物、例えばCa(OH)、例えばMg(OH)、例えばアミン、若しくはこれらのいずれかの塩から選択される1種以上の化合物の形態の成分、
・任意選択で、尿素の形態の成分、
・任意選択で、より反応性若しくは非反応性のシリコーンの形態の成分、
・任意選択で、炭化水素油、
・任意選択で、1種以上の界面活性剤、
・水
からなるが、好ましくは、ただし、当該水性バインダ組成物は、
・500以下の分子量Mを有するエポキシ化合物
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・式R-[C(O)Rのアルデヒド、カルボニル化合物から選択されるカルボニル化合物であって、上記式中、
Rは、飽和若しくは不飽和の直鎖状、分枝状若しくは環状の炭化水素基、1つ以上の5個若しくは6個の炭素原子からなる芳香族核を含む基、1つ以上の、4個若しくは5個の炭素原子及び酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含有する芳香族複素環を含む基を表し、このR基は他の官能基を含有することが可能であり、
は、水素原子若しくはC~C10アルキル基を表し、
xは1~10の範囲にあるカルボニル化合物
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・ポリアミン
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・単糖及びオリゴ糖
から選択される架橋剤を含まない。
【0156】
本発明者らは、驚くべきことに、上述のような水性バインダ組成物の硬化において生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む鉱物繊維製品が、新たに製造されたときとエージング条件後の両方で非常に高い安定性を有するということを見出した。
【0157】
さらに、本発明者らは、230℃を超える硬化温度を使用することによって、さらに高い製品安定性を得ることができるということを見出した。
【0158】
1つの実施形態では、それゆえ、本発明は、230℃を超える硬化温度が使用される上述のような水性バインダ組成物の硬化から生じるバインダと接触した鉱物繊維を含む鉱物繊維製品に向けられる。
【0159】
本発明者らはさらに、当該鉱物繊維製品の安定性が以下の手段によってさらに高まることが可能であるということを見出した。
・より長い硬化時間を意味する、より低いライン容量、
・シリコーン樹脂の添加、
・多量の架橋剤の添加、
・2種以上の異なる架橋剤の組み合わせの添加、
・少量のカチオン種、例えば多価金属イオン、例えばカルシウム、及び/又は有機カチオン種、例えばアミン、及び/又は有機変性無機化合物、例えばアミン変性モンモリロナイトクレーの添加。
【0160】
鉱物繊維製品の製造方法
本発明は、上記バインダ組成物を用いて鉱物繊維を結合することによる鉱物繊維製品の製造方法も提供する。
【0161】
従って、本発明は、鉱物繊維製品の製造方法であって、鉱物繊維を、
・1種以上のリグノスルホネートリグニンであって、このリグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.03~2.0mmol/g、例えば0.03~1.4mmol/g、例えば0.075~2.0mmol/g、例えば0.075~1.4mmol/gのカルボン酸基含有量を有するリグノスルホネートリグニンの形態の成分(i)と、
・1種以上の架橋剤の形態の成分(ii)と、
・任意選択で、1種以上の可塑剤の形態の成分(iii)と
を含むバインダ組成物と接触させる工程を含むが、好ましくは、ただし、当該水性バインダ組成物は、
・500以下の分子量Mを有するエポキシ化合物
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・式R-[C(O)Rのアルデヒド、カルボニル化合物から選択されるカルボニル化合物であって、上記式中、
Rは、飽和若しくは不飽和の直鎖状、分枝状若しくは環状の炭化水素基、1つ以上の5個若しくは6個の炭素原子からなる芳香族核を含む基、1つ以上の、4個若しくは5個の炭素原子及び酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含有する芳香族複素環を含む基を表し、このR基は他の官能基を含有することが可能であり、
は、水素原子若しくはC~C10アルキル基を表し、
xは1~10の範囲にあるカルボニル化合物
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・ポリアミン
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・単糖及びオリゴ糖
から選択される架橋剤を含まない方法にも向けられる。
【0162】
硬化
ウェブは、バインダ成分の化学反応及び/又は物理反応によって硬化される。
【0163】
1つの実施形態では、硬化は、硬化装置中で行われる。
【0164】
1つの実施形態では、硬化は、100~300℃、例えば170~270℃、例えば180~250℃、例えば190~230℃の温度で実施される。
【0165】
1つの実施形態では、硬化は、150~300℃、例えば170~270℃、例えば180~250℃、例えば190~230℃の温度で稼働する鉱物ウール製造のための従来の硬化オーブン内で行われる。
【0166】
1つの実施形態では、硬化は、30秒~20分、例えば1~15分、例えば2~10分の時間で行われる。
【0167】
典型的な実施形態では、硬化は、150~250℃の温度で30秒~20分の時間で行われる。
【0168】
硬化プロセスは、バインダを繊維に付与した直後に開始してもよい。硬化は、バインダ組成物が物理反応及び/又は化学反応を受けるプロセスとして定義され、この反応は、化学反応の場合には、通常、バインダ組成物中の化合物の分子量を増加させ、これによりバインダ組成物の粘度を、通常はバインダ組成物が固体状態に達するまで、増加させる。
【0169】
鉱物繊維製品
本発明は、上記水性バインダ組成物の硬化から生じる硬化したバインダ組成物と接触した鉱物繊維を含む鉱物繊維製品に向けられる。
【0170】
用いられる鉱物繊維は、人造ガラス質繊維(MMVF)、ガラス繊維、セラミック繊維、バサルト繊維、スラグ繊維、岩石繊維、石繊維等のいずれであってもよい。これらの繊維は、例えばストーンウール製品のようなウール製品として存在してもよい。
【0171】
繊維/溶融物組成物
人造ガラス質繊維(MMVF)は、任意の好適な酸化物組成を有することができる。繊維は、ガラス繊維、セラミック繊維、バサルト繊維、スラグ繊維又は岩石繊維若しくは石繊維であることができる。繊維は、好ましくは岩石繊維、石繊維又はスラグ繊維として一般に公知のものであり、最も好ましくは石繊維である。
【0172】
石繊維は通常、重量パーセントで以下の酸化物を含む。
SiO: 30~51
Al: 12~30
CaO: 8~30
MgO: 2~25
FeO(Feを含む):2~15
NaO+KO: 10以下
CaO+MgO: 10~30
【0173】
好ましい実施形態では、MMVFは、酸化物として重量%で計算される、以下の元素レベルを有する。
SiO: 少なくとも30、32、35又は37;51、48、45又は43以下
Al: 少なくとも12、16又は17;30、27又は25以下
CaO: 少なくとも8又は10;30、25又は20以下
MgO: 少なくとも2又は5;25、20又は15以下
FeO(Feを含む):少なくとも4又は5;15、12又は10以下
FeO+MgO: 少なくとも10、12又は15;30、25又は20以下
NaO+KO: ゼロ又は少なくとも1;10以下
CaO+MgO: 少なくとも10又は15;30又は25以下
TiO: ゼロ又は少なくとも1;6、4又は2以下
TiO+FeO: 少なくとも4又は6;18又は12以下
: ゼロ又は少なくとも1;5又は3以下
: ゼロ又は少なくとも1;8又は5以下
その他: ゼロ又は少なくとも1;8又は5以下
【0174】
本発明の方法によって作製されるMMVFは、好ましくは、重量%で以下の組成を有する。
SiO 35~50
Al 12~30
TiO 2まで
Fe 3~12
CaO 5~30
MgO 15まで
NaO 0~15
O 0~15
3まで
MnO 3まで
3まで
【0175】
MMVFについての別の好ましい組成は、重量%で以下のとおりである。
SiO 39~55%、好ましくは39~52%
Al 16~27%、好ましくは16~26%
CaO 6~20%、好ましくは8~18%
MgO 1~5%、好ましくは1~4.9%
NaO 0~15%、好ましくは2~12%
O 0~15%、好ましくは2~12%
O(NaO+KO) 10~14.7%、好ましくは10~13.5%
0~3%、好ましくは0~2%
Fe(鉄全体) 3~15%、好ましくは3.2~8%
0~2%、好ましくは0~1%
TiO 0~2%、好ましくは0.4~1%
その他 0~2.0%
【0176】
ガラス繊維は通常、重量パーセントで以下の酸化物を含む。
SiO: 50~70
Al:10~30
CaO: 27以下
MgO: 12以下
【0177】
ガラス繊維は、重量パーセントで以下の酸化物も含有することができる。
NaO+KO:8~18、特にNaO+KO CaO+MgOよりも多い
: 3~12
【0178】
いくつかのガラス繊維組成物は、
Al:2%未満
を含有することができる。
【0179】
鉱物繊維製品を製造するための好適な繊維形成方法及びその後の製造工程は、当該技術分野において慣用的なものである。一般に、バインダは、鉱物溶融物のフィブリル化直後に、空中を浮遊する鉱物繊維上に噴霧される。上記水性バインダ組成物は、通常、乾燥基準で、結合された鉱物繊維製品の0.1~18重量%、好ましくは0.2~8重量%の量で付与(塗布)される。
【0180】
噴霧コーティングされた鉱物繊維ウェブは、一般に、熱気流によって硬化オーブン内で硬化される。熱気流は、硬化オーブンの長さ方向の別個のゾーンにおいて、下方から、又は上方から、又は交互の方向から鉱物繊維ウェブに導入されてもよい。
【0181】
典型的には、硬化オーブンは、約100℃~約300℃、例えば170~270℃、例えば180~250℃、例えば190~230℃の温度で運転される。一般に、硬化オーブン滞留時間は、例えば製品密度に応じて、30秒~20分、例えば1~15分、例えば2~10分である。
【0182】
典型的な実施形態では、本発明に係る鉱物繊維製品は、150℃~250℃の温度で30秒~20分の時間硬化される。
【0183】
所望に応じて、鉱物ウールウェブは、硬化前に成形プロセスに供されてもよい。硬化オーブンから出てくる結合された鉱物繊維製品は、例えばバット(batt)の形態の所望の形態に切断されてもよい。従って、製造される鉱物繊維製品は、例えば、織布及び不織布、マット、バット、厚板(スラブ)、シート、プレート、ストリップ、ロール、顆粒、並びに、例えば、断熱材又は防音材、振動減衰材、建築材料、ファサード断熱材、屋根材用途又は床材用途のための補強材として、フィルタストック(filter stock)として、及び他の用途において使用される他の成形品の形態を有する。
【0184】
本発明によれば、結合された鉱物繊維製品を、例えば金属、ガラス表面仕上げマット及び他の織布材料又は不織布材料等の好適な複合層又はラミネート層と組み合わせることによって複合材料を製造することも可能である。
【0185】
本発明に係る鉱物繊維製品は、一般に、6~250kg/m、好ましくは20~200kg/mの範囲内の密度を有する。当該鉱物繊維製品は、一般に、0.3~18.0%、好ましくは0.5~8.0%の範囲内の強熱減量(LOI)を有する。
【0186】
バインダ組成物の調製のためのリグニン成分の使用
本発明は、鉱物ウール用バインダ組成物の調製のための、成分(i)について上述した特徴を有する1種以上のリグノスルホネートリグニンの形態のリグニン成分の使用にも向けられる。
【0187】
1つの実施形態では、当該バインダ組成物は、フェノール及びホルムアルデヒドを含まない。
【0188】
1つの実施形態では、本発明は、鉱物ウール用の、好ましくはフェノール及びホルムアルデヒドを含まないバインダ組成物の調製のための、上記成分(i)の特徴を有する1種以上のリグノスルホネートリグニンの形態のリグニン成分の使用であって、このバインダ組成物は、上記で定義されたとおりの成分(ii)及び任意選択で(iii)をさらに含むが、好ましくは、ただし、この水性バインダ組成物は、
・500以下の分子量Mを有するエポキシ化合物
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・式R-[C(O)Rのアルデヒド、カルボニル化合物から選択されるカルボニル化合物であって、上記式中、
Rは、飽和若しくは不飽和の直鎖状、分枝状若しくは環状の炭化水素基、1つ以上の5個若しくは6個の炭素原子からなる芳香族核を含む基、1つ以上の、4個若しくは5個の炭素原子及び酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含有する芳香族複素環を含む基を表し、このR基は他の官能基を含有することが可能であり、
は、水素原子若しくはC~C10アルキル基を表し、
xは1~10の範囲にあるカルボニル化合物
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・ポリアミン
から選択される架橋剤を含まず、かつ/又は
ただし、当該水性バインダ組成物は、
・単糖及びオリゴ糖
から選択される架橋剤を含まない、使用に向けられる。
【0189】
1つの実施形態では、本発明は、好ましくはフェノール及びホルムアルデヒドを含まないバインダ組成物の調製のための、上述の成分(i)の特徴を有する1種以上のリグノスルホネートリグニンの形態のリグニン成分の使用であって、このバインダ組成物は、上で定義された成分(iia)をさらに含む、使用に向けられる。
【実施例
【0190】
以下の実施例において、本発明の定義に入るいくつかのバインダを調製し、従来技術に係るバインダと比較した。
【0191】
本発明に係るバインダ及び従来技術に係るバインダについて、それぞれ以下の特性を測定した。
【0192】
バインダ成分固形分含量
硬化前の所与のバインダ溶液中の各成分の含有量は、成分の無水質量に基づく。
【0193】
リグノスルホネートは、Borregaard(ボレガード)、ノルウェー及びLignoTech(リグノテック)、フロリダによって、約50%の固形分含量を有する液体として供給された。Primid XL552は、EMS-CHEMIE AG(エムスケミー)によって供給された。シラン(Momentive VS-142 40%活性)はMomentive(モメンティブ)によって供給され、簡単にするために100%と計算した。NHOH 24.7%は、Univar(ユニバー)によって供給され、供給された形態で使用した。PEG200、尿素、KOHペレット、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパンは、Sigma-Aldrich(シグマ・アルドリッチ)によって供給され、簡単にするために無水であると仮定し、そのまま使用した。
【0194】
バインダ固形分
硬化後のバインダの内容物を「バインダ固形分」と呼ぶ。
【0195】
ディスク形状のストーンウール試料(直径5cm;高さ1cm)をストーンウールから切り出し、580℃で少なくとも30分間熱処理してすべての有機物を除去した。バインダ混合物の固形分は、バインダ混合物の試料(約2g)をスズ箔容器中の熱処理したストーンウールディスク上に分配することによって測定した。ストーンウールディスクを含有するスズ箔容器の重量を、バインダ混合物の添加前及び添加の直後に秤量した。スズ箔容器中にこのようなバインダ混合物を充填した2つのストーンウールディスクを製造し、次いでそれらを200℃で1時間加熱した。冷却し、室温で10分間保存した後、試料を秤量し、バインダ固形分を2つの結果の平均として計算した。
【0196】
次いで、所望のバインダ固形分を有するバインダを、必要量の水及び10%シラン水溶液(Momentive VS-142)で希釈することにより製造することができた。
【0197】
機械的強度研究
バー試験
バインダの機械的強度をバー試験で試験した。各バインダについて、16個のバーを、バインダとストーンウール紡糸生産からのストーンウールショット(shot)との混合物から製造した。
【0198】
15%乾燥固形分を有するこのバインダ溶液の試料(16.0g)をショット(80.0g)とよく混合した。次いで、得られた混合物を、小さいバーを作製するための耐熱性シリコーン形態の4つのスロット(4×5スロット/フォーム;スロット頂部寸法:長さ=5.6cm、幅=2.5cm;スロット底部寸法:長さ=5.3cm、幅=2.2cm;スロット高さ=1.1cm)に充填した。次いで、スロットに入れた混合物を、適切なサイズの平らな金属バーでプレスして、均一なバー表面を生成した。各バインダから16個のバーをこの様式で作製した。次いで、得られたバーを、典型的には225℃で硬化させた。硬化時間は1時間であった。室温まで冷却した後、バーを容器から注意深く取り出した。これらのバーのうち5つを水浴中、80℃で3時間エージングさせた。調製したバーを硬化させるこの方法を表1の実施例に使用した。
【0199】
3日間乾燥した後、Bent Tram機での3点曲げ試験(試験速度:10.0mm/分;破裂レベル:50%;公称強度(呼び強度):30N/mm;支持距離:40mm;最大撓み20mm;公称弾性率(nominal e-module)10000N/mm)において、エージング後のバー及び5つのエージングしていないバーを破壊して、それらの機械的強度を調べた。バーは、「上面」(すなわち、長さ=5.6cm、幅=2.5cmの寸法を有する面)を上にして機械に入れた。
【0200】
バインダ例、参照バインダ(尿素で変性したフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、PUF-レゾール)
このバインダは、尿素で変性したフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、PUF-レゾールである。
【0201】
フェノール-ホルムアルデヒド樹脂を、37%ホルムアルデヒド水溶液(606g)及びフェノール(189g)を、46%水酸化カリウム水溶液(25.5g)の存在下、毎分約1℃の加熱速度で昇温して84℃の反応温度で反応させることによって調製する。この反応は、樹脂の耐酸性が4になり、フェノールの大部分が変換されるまで、84℃で継続する。次いで、尿素(241g)を添加し、混合物を冷却する。
【0202】
耐酸性(acid tolerance、AT)は、所定量のバインダを、混合物が混濁する(バインダが沈殿する)ことなく酸で希釈できる回数を表す。バインダ製造における停止基準を決定するために硫酸を使用し、4未満の耐酸性はバインダ反応の終了を示す。
【0203】
ATを測定するために、2.5mlの濃硫酸(>99%)を1Lのイオン交換水で希釈することにより滴定液を生成する。次いで、5mLの調べられるバインダを、手動で振盪することによってバインダを動いている状態を保ちながら、この滴定液を用いて室温で滴定する。好ましい場合、マグネチックスターラー及び磁気撹拌棒を使用する。バインダを振盪しても消失しないわずかな曇りがバインダに現れるまで、滴定を継続する。
【0204】
耐酸性(AT)は、滴定に使用した酸の量(mL)を試料の量(mL)で除算することによって計算する。
AT=(使用した滴定量(mL))/(試料の量(mL))
【0205】
得られた尿素変性フェノール-ホルムアルデヒド樹脂を使用して、25%アンモニア水(90mL)及び硫酸アンモニウム(13.2g)を添加し、次いで水(1.30kg)を添加することによりバインダを作製する。
【0206】
次いで、バインダ固形分を上記のように測定し、この混合物を機械的測定のための必要量の水及びシランで希釈した(15%バインダ固形分溶液、バインダ固形分の0.5%シラン)。
【0207】
実施例1~7
以下では、バインダ例のエントリ番号は、表1で使用したエントリ番号に対応する。
【0208】
本発明に係るバインダに使用したすべてのリグノスルホネートのカルボン酸基含量は、31P NMRを使用して測定し、リグノスルホネートリグニンの乾燥重量に基づいて0.05~0.6mmol/gの範囲にあることが判明したが、実施例1、2、3、4、5、6、7に使用したこの特定のバッチについては0.14mmol/gであることが判明した。
【0209】
実施例1
30.0gのリグノスルホネート溶液(50%固形分)に、0.4gのNHOH(24.7%)を添加して混合し、続いて0.7gのシラン(Momentive VS-142 40%活性、10%水溶液)を添加し、68.9gの水を添加し、混合して15%固形分を得て、次いでバー試験における機械的特性の試験に使用した。
【0210】
実施例3
30.0gのリグノスルホネート溶液(50%固形分)に、0.4gのNHOH(24.7%)を添加して混合し、続いて6.0gのPrimid XL552(100%固形分)を添加し、混合した。最後に、1.0gのシラン(Momentive VS-142 40%活性、10%水溶液)及び102.6gの水を添加し、混合して15%固形分を得て、次いでバー試験における機械的特性の試験に使用した。
【0211】
機械的特性を表1に提示する。簡潔にするために、他のすべての成分の量は、100gの乾燥リグニンに基づいて再計算される。
【0212】
表1から分かるように、リグノスルホネートと架橋剤(Primid XL552)との組み合わせにおいて、より多量の架橋剤は、より良好な機械的特性をもたらす。
【0213】
【表1】
【0214】
実施例5~7:ストーンウール製品の試験
低密度製品を、工場製造鉱物ウール(MW)製品の製品標準、ストーンウール製品の関連する機械的特性及び他の基本的特性を意味するDS/EN13162:2012+A1:2015に従って特性について調べた。
【0215】
この試験は、厚板に対して行い、この試験では、異なる試験方法のそれぞれについてEN13162に記載されているような、寸法仕様及び1つの試験結果を得るのに必要な試験片の数に従った試験片を切り出した。得られた機械的特性について記載された値の各々は、EN13162によるより多くの結果の平均である。
【0216】
包装(パッキング)の前に生産ラインから直接サンプリングした製品又は試験片(ラインカット)及び/又は包装の24時間後に包装物からサンプリングした製品又は試験片(24時間パック)に対して試験を実施する。
【0217】
寸法
製品及び試験片の寸法は、関連する試験方法DS/EN822:2013:Thermal insulating products for building applications - Determination of length and width(建築用途のための断熱製品-長さ及び幅の決定)、並びにDS/EN823:2013:Thermal insulating products for building applications - Determination of thickness(建築用途のための断熱製品-厚さの決定)に従って行った。
【0218】
バインダ含有量(強熱減量)
バインダ含量の決定は、DS/EN13820:2003:Thermal insulating materials for building applications - Determination of organic content(建築用途のための断熱材料-有機含有量の決定)に従って行い、この試験では、バインダ含有量は、上記規格において(500±20℃)であると明記されている所与の温度で焼尽した有機材料の量として定義される。試験において、温度(590±20℃、一定質量まで少なくとも10分以上)を、すべての有機材料が焼尽していることを確実にするために使用した。強熱減量の決定は、製品の厚さ全体を含むことを保証するコルクボーラーを用いて試験片全体に均等に分散して実施した8~20個のカットアウト(最小8個のカットアウト)に対応する少なくとも10gのウールからなる。バインダ含有量をLOIとする。バインダは、油及び他のバインダ添加剤を含む。
【0219】
引張強度
低密度製品の引張強度は、EN1608:2013:Thermal insulating products for building applications - Determination of tensile strength parallel to faces(建築用途のための断熱製品-面に平行な引張強度の決定)に従って決定した。引張強度は、ラインカットからの試験片及び24時間パックからの試験片について測定する。
【0220】
自己撓み(f70)
自己撓みは、製品の正味重量によって引き起こされる撓みを決定するための内部試験方法に従って測定する。長さが990±10mm及び幅が最小270±5mm及び最大680±5mmの試験試料を、(700±2)mmの相互中心距離を有する2つの支持体(傾斜テーブル)及び2つの可動支持装置上に水平に配置する。自己撓みは、試料の中央で測定し、機械的又は電気的(ディスプレイ付きトランスデューサ)のいずれかで記録し、目盛り又はデジタルディスプレイのいずれかで読み取る。元の製品が990±10mmより長い場合、余分な長さを切り取る。自己撓みは試験片の両面で測定する。測定の精度は、自己撓み<10mmでは±0.2mmであり、自己撓み>10mmでは±1mmである。
【0221】
自己撓みは、(f70、70cmスパン)=(f1+f2)/2mmとして報告し、この式中、f1は、表面1が上を向いているときの測定値であり、f2は、表面2が上を向いているときの測定値である。
【0222】
ラインカットからの試験片及び24時間パックからの試験片に対して試験を行う。
【0223】
実施例5
ストーンウール製品は、275℃に設定した硬化オーブン温度で、実施例5におけるバインダの使用によって製造した。
【0224】
730.0kgのリグノスルホン酸アンモニウムを混合容器に入れ、これに8.5lのNHOH(24.7%)を添加し、撹拌した。その後、151kgのPrimid XL552溶液(予め作製した31重量%水溶液)及び43kgのPEG00(100%固形分)を添加して混合し、続いて13kgのシラン(Momentive VS-142 40%活性、10%水溶液)及び100kgのシリコーン(Wacker BS 1052、12%水溶液)を添加した。
【0225】
この実施例からのバインダを使用して低密度ストーンウール製品を製造し、厚さ及び密度を表2に示すように測定した。硬化オーブンの温度は275℃に設定した。
【0226】
実施例6
ストーンウール製品は、275℃に設定した硬化オーブン温度で、実施例6におけるバインダの使用によって製造した。
【0227】
730.0kgのリグノスルホン酸アンモニウムを混合容器に入れ、これに8.5lのNHOH(24.7%)を添加し、撹拌した。その後、151kgのPrimid XL552溶液(予め作製した31重量%水溶液)及び43kgのPEG200(100%固形分)を添加して混合し、続いて13kgのシラン(Momentive VS-142 40%活性、10%水溶液)及び100kgのシリコーン(Wacker BS 1052、12%水溶液)を添加した。
【0228】
この実施例からのバインダを使用して低密度ストーンウール製品を製造し、厚さ及び密度を表2に示すように測定した。硬化オーブンの温度は275℃に設定した。
【0229】
実施例7
ストーンウール製品は、275℃に設定した硬化オーブン温度で、実施例53におけるバインダの使用によって製造した。
【0230】
609.0kgのリグノスルホン酸アンモニウムを混合容器に入れ、これに8lのNHOH(24.7%)を添加し、撹拌した。その後、384kgのPrimid XL552溶液(予め作製した31重量%水溶液)を添加して混合し、続いて14kgのシラン(Momentive VS-142 40%活性、10%水溶液)を添加した。
【0231】
この実施例からのバインダを使用して低密度ストーンウール製品を製造し、厚さ及び密度を表2に示すように測定した。硬化オーブンの温度は275℃に設定した。
【0232】
【表2】
図1
【国際調査報告】