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特表2024-501947トレーサー化合物およびその調製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】トレーサー化合物およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20240110BHJP
   C07K 1/13 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C07F5/02 B CSP
C07K1/13
A61K51/04 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538899
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 FI2021050912
(87)【国際公開番号】W WO2022144501
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】20206373
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506252772
【氏名又は名称】ツルン ユリオピスト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アイラクシネン、アヌ
(72)【発明者】
【氏名】オタル、ソフィア
(72)【発明者】
【氏名】パウルス、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】サルパランタ、ミルッカ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
4H048
【Fターム(参考)】
4C085HH03
4C085KB56
4C085LL18
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA50
4H045BA71
4H045EA50
4H045FA10
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB20
4H048AC84
4H048VA32
4H048VA75
(57)【要約】
トレーサー化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物が開示され、トレーサー化合物は、テトラジン部分、双性イオン部分、およびリンカー部分を含む構造を有し、リンカー部分はテトラジン部分と双性イオン部分とを互いに連結し、リンカー部分は本明細書に開示される特異的な部分S1-Y-S2で構成されている。さらに、該トレーサー化合物とトランス-シクロオクテン(TCO)誘導体化標的部分との付加物、および該トレーサー化合物および該付加物を製造するための方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のトレーサー化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物
【化1】
(式中、
各R1は、独立して水素(H)または式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり;
Lは、S1-Y-S2で構成されるリンカー部分であり、ここで:
Yは(-CH2-)m(式中、mは1~4の範囲から選択される整数である)であるか、またはYはポリエチレングリコールリンカー-(PEG)X-(式中、(PEG)Xは、ポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基のx個の繰り返し単位を含み、かつxは1~20の範囲から選択される整数である)であり;かつ
S1は-(CH2Z-CO-NH-(CH2Z-であるか、またはS1は-(CH2Z-NH-CO-(CH2Z-であり、ここで、各zは、独立して0~4の範囲から選択される整数であり;かつ
S2は-CH2-であるか、またはS2は-(CH2f-CO-NH-(CH2f-であるか、またはS2は-(CH2f-NH-CO-(CH2f-であり、式中、各fは、独立して0~4の範囲から選択される整数であり;そして
R2は、水素(H)またはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかである)。
【請求項2】
各R1が、独立して水素(H)または式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり;
Lが、S1-Y-S2で構成されるリンカー部分であり、ここで:
Yが(-CH2-)m(式中、mは1~4の範囲から選択される整数である)であり、S1が、-CH2-CO-NH-、または-CH2-NH-CO-であり、かつS2が-CH2-であるか;または、
Yがポリエチレングリコールリンカー-(PEG)X-(式中、(PEG)Xはポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基のx個の繰り返し単位を含み、かつxは1~20の範囲から選択される整数である)であり;かつ
S1が、-CH2-NH-CO-(CH2Z-、または-CH2-CO-NH-(CH2Z-であり、ここで、各zは、独立して0~4の範囲から選択される整数であり;かつ
S2が、-(CH2f-CO-NH-CH2-CH2-、または-(CH2f-NH-CO-CH2-CH2-であり、ここで、各fは、独立して0~4の範囲から選択される整数であり;そして
R2が、水素(H)またはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかである、請求項1記載のトレーサー化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物。
【請求項3】
-(PEG)X-におけるxが、1~15の範囲からまたは1~10の範囲から選択される整数である、請求項1または2に記載のトレーサー化合物。
【請求項4】
(BF3-部分における少なくとも1つのFが18Fである、請求項1~3のいずれか1項に記載のトレーサー化合物。
【請求項5】
-シクロオクテン(TCO)誘導体化標的部分のTCO部分と請求項1~4のいずれか1項に記載のトレーサー化合物のテトラジン部分との逆電子要請型ディールス・アルダー反応(IEDDA)によって得られる、請求項1~4のいずれか1項に記載のトレーサー化合物とTCO誘導体化標的部分との付加物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物。
【請求項6】
前記トレーサー化合物の前記テトラジン部分のテトラジン環が、前記TCO誘導体化標的部分の前記TCO部分に化学的に結合されている、請求項5記載の付加物。
【請求項7】
前記標的部分が、タンパク質、ペプチド、抗体、抗体フラグメント、またはナノ粒子である、請求項5または6に記載の付加物。
【請求項8】
(BF3-部分における少なくとも1つのFが18Fである、請求項5~7のいずれか1項に記載の付加物。
【請求項9】
放射性イメージング、好ましくは陽電子放射断層撮影による被験体における標的実体の検出における使用のための請求項5~8のいずれか1項に記載の付加物。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1項に記載のトレーサー化合物を製造するための方法であって、
a.出発物質を極性非プロトン性溶媒に溶解し、前記出発物質を2-(ヨードメチル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランと反応させて、中間生成物を提供する工程と;
b.前記中間生成物を極性非プロトン性溶媒に溶解し、HClなどの酸、水、および有機溶媒の存在下で前記中間生成物をKHF2と反応させて、前記トレーサー化合物を提供する工程と、を含み;
前記出発物質が、リンカー部分を介して第三級アミン(-N(CH32)に結合したテトラジン部分で構成され;ここで、
前記テトラジン部分が、1,2,4,5-テトラジン環、前記テトラジン環のC3に結合したフェニル環、および前記テトラジン環のC6に結合したR2で構成され、R2が、水素(H)またはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかであり;かつ
前記リンカー部分がS1-Y-S2で構成され、ここで:
Yが(-CH2-)m(式中、mは1~4の範囲から選択される整数である)であるか、またはYがポリエチレングリコールリンカー-(PEG)X-(式中、(PEG)Xは、ポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基のx個の繰り返し単位を含み、xは1~20の範囲から選択される整数である)であり;かつ
S1が-(CH2Z-CO-NH-(CH2Z-であるか、またはS1が-(CH2Z-NH-CO-(CH2Z-であり、ここで、各zは、独立して0~4の範囲から選択される整数であり;かつ
S2が-CH2-であるか、またはS2が-(CH2f-CO-NH-(CH2f-であるか、またはS2が-(CH2f-NH-CO-(CH2f-であり、ここで、各fは、独立して0~4の範囲から選択される整数である、方法。
【請求項11】
前記出発物質の前記リンカー部分が、S1-Y-S2で構成され、ここで:
Yが(-CH2-)m(式中、mは1~4の範囲から選択される整数である)であり、S1が、-CH2-CO-NH-、または-CH2-NH-CO-であり、そしてS2が-CH2-であるか;または、
Yがポリエチレングリコールリンカー-(PEG)X-(式中、(PEG)Xは、ポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基のx個の繰り返し単位を含み、xは1~20の範囲から選択される整数である)であり;かつ
S1が、-CH2-NH-CO-(CH2Z-、または-CH2-CO-NH-(CH2Z-(式中、各zは独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり;そして
S2が、-(CH2f-CO-NH-CH2-CH2-、または-(CH2f-NH-CO-CH2-CH2-(式中、各fは独立して0~4の範囲から選択される整数である)である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
請求項5~8のいずれか1項に記載の付加物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を製造するための方法であって、前記方法は、
TCO誘導体化標的部分を提供する工程;
請求項1~3のいずれか1項に記載のトレーサー化合物を提供する工程;
前記トレーサー化合物のテトラジン部分を前記TCO誘導体化標的部分のTCO部分と反応させる工程;および
前記付加物を少なくとも1つの18Fで放射性標識して付加物を得る工程を含むか;
または前記方法は、
前記TCO誘導体化標的部分を提供する工程;
請求項1~3のいずれか1項に記載の前記トレーサー化合物を提供する工程;
請求項1~3のいずれか1項に記載の前記トレーサー化合物を少なくとも1つの18Fで放射性標識する工程;および
放射性標識された前記トレーサー化合物の前記テトラジン部分を前記TCO誘導体化標的部分の前記TCO部分と反応させて、前記付加物を得る工程を含む、方法。
【請求項13】
20~80℃の間の温度、好ましくは40~70℃の間の温度、より好ましくは55~65℃の間の温度、最も好ましくは60℃の温度で、放射性標識された前記トレーサー化合物の前記テトラジン部分を前記TCO誘導体化標的部分の前記TCO部分と反応させる工程を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
被験体の放射性イメージングによる前記被験体における標的実体の検出における、請求項1~4に記載のトレーサー化合物および/または請求項5~8に記載の付加物の使用であって、前記標的実体が、放射性標識された前記トレーサー化合物および/または前記付加物で標的とされる、使用。
【請求項15】
放射性イメージングによる被験体における標的実体の検出のための18F標識された付加物の産生用のキットであって、請求項1~3に記載のトレーサー化合物を含む少なくとも1つのコンパートメントと、少なくとも1つのTCO誘導体化標的部分を含む少なくとも1つのコンパートメントと、前記トレーサー化合物を放射性標識するための18Fを含む少なくとも1つのコンパートメントと、随意に前記トレーサー化合物および/または前記付加物のIEDDA共役および放射性標識のための水性溶媒および有機溶媒と、を備える、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、放射性標識された放射性医薬品に関する。本開示は、排他的ではないが、特に、トランス-シクロオクテンとテトラジン部分との逆電子要請型ディールス・アルダー環化付加反応(IEDDA)によって得られる放射性標識された放射性医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
このセクションは、本明細書に記載されるどの技術もその技術水準を代表するものであると認めることなく、有用な背景情報を例示する。
【0003】
生体直交化学は、画像診断用の放射性医薬品の合成において大きな可能性を実証している。これまでのところ、テトラジンとジエノフィルとの間の逆電子要請型ディールス・アルダー環化付加反応(IEDDA)は、生体直交化学において最も速い反応速度を示しており、小分子からペプチドおよび抗体フラグメントなどの高分子に至るまで、さまざまなフッ素-18標識された放射性医薬品の放射合成に利用されている。IEDDA反応は、18F、68Ga、64Cuなどの放射性核種を使用したプレターゲットPET画像法にも利用されている。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、驚くべきことに、本明細書に記載されるようなテトラジン部分と特異的な双性イオン部分およびそれらの間のリンカー部分を含む化合物を合成することによって、高いモジュール性を有するトレーサー化合物が得られることを見出した。さらに、トランス-シクロオクテンとトレーサー化合物のテトラジン部分との逆電子要請型ディールス・アルダー反応(IEDDA)によって、トレーサー化合物とトランス-シクロオクテン(TCO)誘導体化標的部分とを含む付加物を得ることができる。トレーサー化合物中のリンカー部分のモジュール性によって、インビボおよびインビトロでの複数のさまざまな標的実体の標的化における付加物およびトレーサー化合物の使用が可能になる。トレーサー化合物および付加物に含まれる部分の特定の組み合わせによって、良好な安定性を有するトレーサー化合物が提供される。
【0005】
本開示の目的は、付加物の一部として、インビボおよびインビトロで多数の異なる標的実体を標的とすることに関して高いモジュール性を示すトレーサー化合物を提供することである。また、本開示の目的は、放射性標識および放射性イメージングの用途における使用を可能にする性能および/または安定性を有するトレーサー化合物を提供することである。本開示の別の目的は、インビボおよびインビトロで標的実体を標的とするために使用されるときの特性が改善されたトレーサー化合物を提供することである。本開示のさらに別の目的は、インビボおよびインビトロで実体を標的とするのに使用することができるトレーサー化合物とTCO誘導体化標的部分との付加物を提供することである。
【0006】
本出願は、添付の独立請求項に定義される発明、および以下に開示されるそれらの実施形態に関する。添付の請求項は保護範囲を定義する。請求項に記載されていない明細書または図面に開示される方法、プロセス、製品または装置は、請求される発明の実施形態ではないが、請求される発明の理解に有用である例として提供される。
【0007】
本明細書には、トレーサー化合物、およびトレーサー化合物とトランス-シクロオクテン(TCO)誘導体化標的部分との付加物が記載され、これらは、放射性標識を介して、インビボおよびインビトロでの多くの診断用バイオマーカーの標的化に使用することができ、最終的には放射性イメージング法によって検出することができる。本発明者らは、驚くべきことに、テトラジン部分、特異的なリンカー部分および双性イオン部分の組み合わせによって、トレーサー化合物を合成することができ、これは迅速な合成と、標的部分がTCO部分を介してトレーサー化合物に共役可能であるという観点から高いモジュール性を有することを見出し、以下の実施例に示した。
【0008】
第1の態様によれば、式(I)のトレーサー化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物が提供される、
【化1】
(式中、
各R1は、独立して水素(H)または式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり;
Lは、S1-Y-S2で構成されるリンカー部分であり、ここで:
Yは(-CH2-)m(式中、mは1~4の範囲から選択される整数である)であるか、またはYはポリエチレングリコールリンカー-(PEG)X-(式中、(PEG)Xは、ポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基のx個の繰り返し単位を含み、xは1~20の範囲から選択される整数である)であり;かつ
S1は-(CH2Z-CO-NH-(CH2Z-であるか、またはS1は-(CH2Z-NH-CO-(CH2Z-であり、ここで、各zは、独立して0~4の範囲から選択される整数であり;かつ
S2は-CH2-であるか、またはS2は-(CH2f-CO-NH-(CH2f-であるか、またはS2は-(CH2f-NH-CO-(CH2f-であり、ここで、各fは、独立して0~4の範囲から選択される整数であり;そして
R2は、水素(H)またはフェニル基置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかである。
【0009】
第2の態様によれば、トランス-シクロオクテン(TCO)誘導体化標的部分のTCO部分とトレーサー化合物のテトラジン部分との逆電子要請型ディールス・アルダー反応(IEDDA)によって得られる、第1の態様のトレーサー化合物とTCO誘導体化標的部分との付加物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物が提供される。
【0010】
第3の態様によれば、放射性イメージング、好ましくは陽電子放射断層撮影による被験体における標的実体の検出における使用のための第2の態様の付加物が提供される。
【0011】
第4の態様によれば、第1の態様のトレーサー化合物を製造するための方法が提供され、当該方法は:
a.出発物質を極性非プロトン性溶媒に溶解し、該出発物質を2-(ヨードメチル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランと反応させて、中間生成物を提供する工程と;
b.該中間生成物を極性非プロトン性溶媒に溶解し、HClなどの酸、水および有機溶媒の存在下で中間生成物をKHF2と反応させて、トレーサー化合物を提供する工程と
を含み、
出発物質は、リンカー部分を介して第三級アミン(-N(CH32)に結合したテトラジン部分で構成され;ここで、
テトラジン部分は、1,2,4,5-テトラジン環、テトラジン環のC3に結合したフェニル環、およびテトラジン環のC6に結合したR2で構成され、R2は、水素(H)またはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかであり;かつ
リンカー部分はS1-Y-S2で構成され、ここで:
Yは(-CH2-)m(式中、mは1~4の範囲から選択される整数である)であるか、またはYはポリエチレングリコールリンカー-(PEG)X-(式中、(PEG)Xは、ポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基のx個の繰り返し単位を含み、xは1~20の範囲から選択される整数である)であり;かつ
S1は-(CH2Z-CO-NH-(CH2Z-であるか、またはS1は-(CH2Z-NH-CO-(CH2Z-であり、ここで、各zは、独立して、0~4の範囲から選択される整数であり;かつ
S2は-CH2-であるか、またはS2は-(CH2f-CO-NH-(CH2f-であるか、またはS2は-(CH2f-NH-CO-(CH2f-であり、ここで、各fは、独立して、0~4の範囲から選択される整数である。
【0012】
第5の態様によれば、第2の態様の付加物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を製造するための方法が提供され、当該方法は:
TCO誘導体化標的部分を提供する工程;
第1の態様のトレーサー化合物を提供する工程;
トレーサー化合物のテトラジン部分をTCO誘導体化標的部分のTCO部分と反応させる工程;および
付加物を少なくとも1つの18Fで放射性標識して付加物を得る工程、を含むか、
または当該方法は:
TCO誘導体化標的部分を提供する工程;
第1の態様のトレーサー化合物を提供する工程;
第1の態様のトレーサー化合物を少なくとも1つの18Fで放射性標識する工程;および
放射性標識されたトレーサー化合物のテトラジン部分をTCO誘導体化標的部分のTCO部分と反応させて、付加物を得る工程、を含む。
【0013】
第6の態様によれば、被験体の放射性イメージングによる被験体での標的実体の検出における、第1の態様のトレーサー化合物および/または第2の態様の付加物の使用が提供され、ここで、標的実体は、放射性標識されたトレーサー化合物および/または付加物で標的とされる。
【0014】
第7の態様によれば、放射性イメージングによる被験体における標的実体の検出のための18F標識された付加物の産生用のキットが提供され、当該キットは、第1の態様のトレーサー化合物を含む少なくとも1つのコンパートメントと、少なくとも1つのTCO誘導体化標的部分を含む少なくとも1つのコンパートメントと、トレーサー化合物を放射性標識するための18Fを含む少なくとも1つのコンパートメントと、随意にトレーサー化合物および/または付加物のIEDDA共役および放射性標識のための水性溶媒および有機溶媒と、を備える。
【0015】
さらなる態様によれば、被験体の放射性イメージングによる被験体での標的実体の検出における、第1の態様のトレーサー化合物および/または第2の態様の付加物の診断的および/または治療的使用が提供され、ここで、標的実体は、放射性標識されたトレーサー化合物および/または付加物で標的とされる。
【0016】
さらなる態様によれば、被験体の放射性イメージングによる被験体での標的実体の検出における、第1の態様のトレーサー化合物および/または第2の態様の付加物の非治療的使用が提供され、ここで、標的実体は、放射性標識されたトレーサー化合物および/または付加物で標的とされる。さらなる態様によれば、被験体の放射性イメージングによる被験体での標的実体の検出における、第1の態様のトレーサー化合物および/または第2の態様の付加物の非診断的使用が提供され、ここで、標的実体は、放射性標識されたトレーサー化合物および/または付加物で標的とされる。一実施形態では、非診断的および/または非治療的使用の例は、治療の標的とされる構造の評価における使用である。
【0017】
本発明のトレーサー化合物は、モジュール性のリンカー部分が要因で高いモジュール性を有するという利点があり、それによって、リンカー部分は、複数の異なる標的実体との最適化された共役を提供する。第1の態様の本発明のトレーサー化合物は、それにTCO誘導体化標的部分が共役していなくても、非特異的組織取り込みが低いという利点がある。第1の態様の本発明のトレーサー化合物は、プレターゲットPET画像法において利点がある。
【0018】
第2の態様の本発明の付加物は、室温での容易に使用可能な付加物の迅速な調製を可能にするため利点がある。第2の態様の本発明の付加物は、インビボでの使用に生体適合性があるという利点がある。以下に提供する例に示されるように、第2の態様の付加物は、放射性標識されたトレーサー化合物を含むIEDDA環化付加生成物の標的部分の特異的結合を介して標的実体の視覚化を可能にする性能および特異性を有する。
【0019】
第2の態様の本発明の付加物は、標的組織特異的取り込み率が高く、非特異的組織取り込み率が低いという利点を有する。第2の態様の本発明の放射性標識された付加物は、良好な代謝安定性および主に腎臓を介した迅速なクリアランスを有するという利点がある。第2の態様の本発明の付加物は、高いモジュール性を有するという利点があり、付加物の薬物動態は、トレーサー化合物の構造成分の修飾を介して延性である。
【0020】
第2の態様の本発明の付加物は、高い腫瘍特異的取り込み率を有するという利点があり、付加物の利用された標的部分は、癌性増殖を示唆する生体分子を標的とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
いくつかの例示的な実施形態が、添付の図面を参照して説明される。
【0022】
図1】例示的な実施形態によるトレーサー化合物AmBF3-Tz(4)の合成経路および構造式を示す。
図2】例示的な実施形態によるトレーサー化合物AmBF3-PEG4-TZ(8)の合成経路および構造式を示す。
図3】例示的な実施形態によるトレーサー化合物AmBF3-PEG9-Tz(12)の合成経路および構造式を示す。
図4】例示的な実施形態による、トランス-シクロオクテンアルデヒド(TCO-CHO)(15)の合成経路および構造式、ならびにTCO-PEG3-アルデヒド(16)の構造式を示す。
図5】例示的な実施形態によるPSMA-トランス-シクロオクテン(PSMA-TCO)(18)の合成経路および構造式を示す。
図6】例示的な実施形態によるPSMA-トラネキサム酸-TCO(24)の合成経路および構造式を示す。
図7】例示的な実施形態による、18F標識されたAmBF3-Tz([18F]4)を結果としてもたらす、IEDDA共役前のAmBF3-Tz(4)の放射性標識に対する反応を示す。
図8a】例示的な実施形態による、トレーサー化合物AmBF3(4)とTCO誘導体化標的部分とのIEDDA環化付加生成物である放射性標識された付加物を得るための代替の合成経路を示し、標的部分はペプチドとして表される。
図8b】例示的な実施形態による、トレーサー化合物AmBF3(4)とTCO誘導体化標的部分とのIEDDA環化付加生成物である放射性標識された付加物を得るための代替の合成経路を示し、標的部分はペプチドとして表される。
図9】[18F]AmBF3-Tz([18F]4)によるB16/F10黒色腫細胞のインキュベーション後の、遊離した、細胞膜結合放射能または内部移行放射能-%としての異なる時点で観察された総放射能の%を示す。総放射能の99%を超える放射能が、各時点で遊離画分に存在し、それによって、細胞膜への[18F]4の非特異的結合が低いことが示唆されている。
図10】AR42J細胞系における総添加放射能からの、AR42J細胞の細胞内区画における放射能の%を示し、放射能は時間の関数として検出され、ベースライン条件(内部移行)で[18F]AmBF3-Tyr3-オクトレオチド([18F]25)を形成する[18F]AmBF3-Tz([18F]4)と共役されたTOO官能化Tyr3-オクトレオチド(TOC)の特異的AR42J細胞取り込みを示唆している。ベースライン条件での取り込みは、非修飾の遮断オクトレオチド(遮断(Blocked))とともに[18F]25により細胞をコインキュベートすることによって阻害された。
図11】[18F]AmBF3-Tz([18F]4)の投与の0~60分後のSCIDマウスの加算PET/CT画像を示す。B.=膀胱、G.B.=胆嚢、K.=腎臓、L.=肝臓。
図12a】対照SCIDおよびC57BL/6JRjマウス(n=2~3/株)における[18F]AmBF3-Tz([18F]4)の静脈内投与の270±2分後に示された組織における放射能を定量化する組織1グラム当たりの注入用量のパーセンテージ(%ID/g)を示し、放射性トレーサー化合物のクリアランスおよび排泄を示唆している。
図12b】対照SCIDおよびC57BL/6JRjマウス(n=2~3/株)における[18F]AmBF3-Tz([18F]4)の静脈内投与の270±2分後に示された尿および糞便における放射能を定量化する組織1グラム当たりの注入用量のパーセンテージ(%ID/g)を示し、放射性トレーサー化合物のクリアランスおよび排泄を示唆している。
図13a】雄SCIDマウス(n=1)における[18F]AmBF3-Tz([18F]4)の投与後60分間に示された組織で測定された標準取込値(SUV)を示し、[18F]4の体内分布および排出を示唆している。
図13b】雄SCIDマウス(n=1)における[18F]AmBF3-Tz([18F]4)の投与後60分間に示された尿で測定された標準取込値(SUV)を示し、[18F]4の体内分布および排出を示唆している。
図14】放射性標識された付加物[18F]25の静脈内投与後のAR42J腫瘍を有するRj:NMRI-Foxn1 nu/nuマウス(n=2~4)の異なる組織で測定された[18F]25の組織1グラム当たりの注入用量のパーセンテージ(%ID/g)を示し、さまざまな時点でその体内分布を示唆している。
図15】[18F]AmBF3-Tyr3-オクトレオチド([18F]25)の投与の20~80分後のAR42J腫瘍を有するRj:NMRI-Foxn1 nu/nuマウスの加算PET/CT画像を示す。左側の動物には、非修飾の遮断オクトレオチドおよび[18F]25を静脈内に同時投与した。右側の動物には、遮断オクトレオチドなしで[18F]25のみを投与して、右肩の皮下AR42J腫瘍の視覚化を可能にした。T=腫瘍。
図16】時間(分)の関数としてAR42J腫瘍組織において測定された標準取込値(SUV)を示す。ここで、AR42J腫瘍を有するマウス(n=2/群)には、静脈内に、[18F]AmBF3-Tyr3-オクトレオチド([18F]25)を単独で投与したか(非遮断)、または[18F]25および遮断オクトレオチドを同時投与した(遮断)。
図17】時間(分)の関数として示された組織で測定された標準取込値(SUV)を示し、腫瘍を有するAR42Jマウス(n=1)における[18F]AmBF3-Tyr3-オクトレオチド([18F]25)の静脈内投与後の放射能のクリアランスを示唆している。
図18】[18F]AmBF3-トラネキサム酸-PSMA([18F]29)の注入の15~90分後のPET/CTの最大強度投影を示す。右側の動物には、2-PMPA(遮断)および[18F]29を静脈内に同時投与した。左側の動物には、遮断2-PMPAなしで[18F]29のみを投与し、左肩の皮下C4-2腫瘍の視覚化を可能にした。T=腫瘍、G=胆嚢、K=腎臓、U=膀胱/尿。
図19】放射性標識された付加物[18F]29の静脈内投与後のC4-2腫瘍を有するSCIDマウス(n=3)の異なる組織で測定された[18F]29の組織1グラム当たりの注入用量のパーセンテージ(%ID/g)を示し、注入の60分後の体内分布を示唆している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書で使用されるように、用語「トレーサー化合物」または「トレーサー」は、放射線検出器で追跡することができる化合物を意味する。実施形態では、トレーサー化合物は、放射性核種に置き換えられた1つまたは複数の原子を含む。一実施形態では、トレーサー化合物は、第1の態様によるトレーサー化合物である。
【0024】
本明細書で使用されるように、用語「IEDDA」は、逆電子要請型ディールス・アルダー反応を意味する。
【0025】
本明細書で使用されるように、用語「部分」は、分子の構造において機能的または構造的に同定することができる分子の一部、たとえば全体としてのトレーサー化合物または付加物を意味する。したがって、部分に個別に名前を付けることができる。
【0026】
本明細書で使用されるように、用語「リンカー」または「リンカー部分」は、トレーサー化合物内または付加物内の2つの隣接する部分を接続するモジュール領域を意味する。一実施形態では、リンカー部分は、トレーサー化合物のテトラジン部分と双性イオン部分とを互いに連結する、第1の態様によるリンカー部分を意味する。一実施形態では、リンカー部分のS2は双性イオン部分のNに結合され、リンカー部分のS1はトレーサー化合物のテトラジン部分のフェニルに結合される。代替の実施形態では、「リンカー」、または「連結部分」もしくは「リンカー部分」は、標的部分とTCO部分とを互いに連結する、TCO誘導体化標的部分中のリンカー部分を意味する。
【0027】
本明細書で使用されるように、用語「テトラジン」は、4つの窒素原子を含む6員芳香族テトラジン環を意味する。本明細書で使用されるように、テトラジンという用語は、1,2,4,5-テトラジン異性体を指す。
【0028】
本明細書で使用されるように、用語「テトラジン部分」は、4つの窒素原子を含む6員芳香環を含む部分を意味する。テトラジン部分におけるテトラジン構造は、1,2,4,5-テトラジン異性体構造である。テトラジン部分はさらに、テトラジン環のC3に結合されている6員芳香族フェニル環を含む。テトラジン部分はさらに、テトラジン環のC6に結合されているR2を含み、ここで、R2は、水素(H)またはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかである。一実施形態では、式(I)によるトレーサー化合物のリンカー部分L、およびテトラジン部分の1,2,4,5-テトラジンは、式(I)に従って、互いに対してパラ位でテトラジン部分のフェニル環に結合されている。
【0029】
本明細書で使用されるように、用語「双性イオン」は、少なくとも2つの官能基を有し、同数の正および負に荷電された官能基を含む分子を示す。双性イオン分子の全体の電荷はゼロである。一実施形態では、双性イオンは、式(I)に従って有機トリフルオロボレート[ABF3-であり、ここで、Aは[-CH2-N-(R1)2+である。
【0030】
本明細書で使用されるように、用語「アルキル置換基」は、化学構造式に関連して、別の分子の一部であり、1つの水素を欠けている、一般的な(不特定の)アルカンを意味する。最小の「アルキル置換基」はメチル基であって、式はCH3-である。
【0031】
本明細書で使用されるように、用語「ポリエチレングリコールリンカー(-(PEG)X-)」は、トレーサー化合物内または付加物内の2つの他の隣接部分を接続するモジュール部分を意味し、ここで、(PEG)Xは、ポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基のx個の繰り返し単位を含み、xは整数である。リンカーの(PEG)X部分は、リンカー部分をトレーサー化合物または付加物の残りの部分と連結する、本明細書ではS1およびS2と呼ばれる、別個の連結部分によって囲まれ得る。
【0032】
本明細書で使用されるように、用語「整数」は、正、負、またはゼロであり得る、分数ではない整数を意味する。
【0033】
本明細書で使用されるように、用語「18F」または「フッ素-18」は、主に陽電子放射によって崩壊するフッ素放射性同位体を意味する。
【0034】
本明細書で使用されるように、用語「付加物」は、2つまたはそれ以上の別個の分子の付加によって得られる付加生成物であって、結果として単一の生成物となる、付加生成物を指す。一実施形態では、用語「付加物」は、トレーサー化合物とTCO誘導体化標的部分との付加物を指す。
【0035】
本明細書で使用されるように、用語「トランス-シクロオクテン(TCO)」は、環状炭化水素を形成する8個の炭素の鎖を有するシクロアルケンのトランス異性体を指し、ここで、C=C二重結合の両側の2つのC-C単結合は、C=C二重結合の平面の対向する両側にある。
【0036】
本明細書で使用されるように、用語「TCO部分」は、標的部分または連結部分などの少なくとも1つの他の部分を含む分子の一部であるTCOを指し、少なくとも1つの他の部分は上記TCOに連結されている。本明細書で使用されるように、用語「TCO部分」は、IEDDA共役前のTCO誘導体化標的部分の環状TCOのトランス異性体を指す。
【0037】
本明細書で使用されるように、用語「TCO誘導体化標的部分」は、トランス-シクロオクテン(TCO)部分で誘導体化された標的部分を意味する。一実施形態では、TCO誘導体化標的部分は、標的部分とTCO部分との間に連結部分を含む。
【0038】
本明細書で使用されるように、用語「第三級アミン」は、炭素、水素、および窒素原子を含む化合物を指し、ここで、アミンの窒素に3つの炭素が結合されることで、3つの有機置換基が構成される。一実施形態では、第三級アミンはN-(K)3であり、ここで、各Kは、独立して、アルキルまたはアリールである。一実施形態では、第三級アミンは(-N(CH32)であり、ここで、窒素は、第三級アミンが一部である化合物の別の部分の一部である第3の炭素に結合されている。一実施形態では、第三級アミンは(-N(CH32)であり、ここで、窒素は、トレーサー化合物のリンカー部分の一部である第3の炭素に結合されている。
【0039】
本明細書で使用されるように、用語「標的部分」は、その配列および/または3D(表面)構造を介して、所望の標的実体を標的とする、ペプチド、抗体、抗体フラグメント、またはナノ粒子を意味する。一実施形態では、標的部分は、より大きな構造または化合物の一部であり、インビトロに加えてインビボでも上記化合物をそれぞれの標的実体に誘導する、またはその同じ場所に位置づけることができる。
【0040】
本明細書で使用されるように、用語「標的実体」は、配列および/または3D(表面)構造であって、インビトロおよび/またはインビボでの付加物のすなわち標的部分によって標的にされ、その配列および/または3D(表面)構造を介して認識され、それにより、結果として標的部分と標的実体が同じ場所に位置づけられる、配列および/または3D(表面)構造を指す。標的実体の例は生体分子である。
【0041】
本明細書で使用されるように、「ペプチド」は、複数の連続した重合アミノ酸残基を含むアミノ酸配列である。本開示の目的上、ペプチドは、最大50個のアミノ酸残基を含む分子である。ペプチドは、修飾されたアミノ酸残基、コドンによってコードされない自然起源のアミノ酸残基、および非自然起源のアミノ酸残基を含み得る。
【0042】
本明細書で使用されるように、用語「抗体」は、そのフラグメント抗原結合(Fab)可変領域を介して抗原のエピトープを認識し、それに結合する免疫グロブリンタンパク質を意味する。
【0043】
本明細書で使用されるように、用語「放射性イメージング」は、マクロまたはミクロの生物の内部の生理学的構造および活性を視覚化および測定するように放射性物質を利用する方法を指す。
【0044】
本明細書で使用されるように、用語「陽電子放射断層撮影(PET)」は、医療用シンチログラフィー(scintillography)技術とガンマカメラによるガンマ線の検出を利用して、生理学的構造および活性を可視化し測定するために放射性トレーサーを使用するイメージング技術を意味する。本明細書で使用されるように、用語「陽電子放射断層撮影(PET)」は、連続画像取得用のX線コンピュータ断層撮影(CT)スキャナをさらに統合し、それによって、組み合わされた単一の重ね合わせ(同時位置合わせ)画像を形成する、陽電子放射断層撮影のコンピュータ断層撮影(PET-CT)も含む。
【0045】
本明細書で使用されるように、用語「プレターゲットPET画像法」は、2段階のPET標識プロセスを意味し、ここで、標的実体が、そこにトレーサー化合物が付着させられることなく、最初に標的にされ、標的部分と共役される。この後に第2の工程が続き、ここで、放射性標識されたトレーサー化合物は、標的部分と接触して送達され、標的部分に結合させられる。一実施形態では、標的部分はTCO誘導体化標的部分であり、トレーサー化合物へのTCO誘導体化標的部分の結合は、IEDDA共役を介して行われる。
【0046】
本明細書で使用されるように、用語「標的組織特異的取り込み」は、標的組織内の特定の標的実体への付加物の標的部分の結合を介した、対象の標的組織へのトレーサー化合物または付加物の取り込みまたは結合を意味する。
【0047】
本明細書で使用されるように、用語「腫瘍特異的取り込み」は、標的組織内の標的実体への付加物の標的部分の結合を介した、対象の標的組織へのトレーサー化合物または付加物の取り込みまたは結合を意味し、ここで、標的組織は癌性組織である。
【0048】
本明細書で使用されるように、用語「備える(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」、および「包含する(comprehending)」という広義の意味の他に、より狭い表現「からなる(consisting of)」および「のみからなる(consisting only of)」も含む。
【0049】
用語「フッ素化」は、化合物にフッ素が導入される化学反応を指す。一実施形態では、フッ素は安定同位体フッ素-19(19F)である。別の実施形態では、フッ素は放射性同位体18Fである。
【0050】
本明細書で使用されるように、用語「有機トリフルオロボレート」は、一般分子式[ABF3-を有する有機ホウ素化合物を意味する。有機トリフルオロボレートの一般式における「A」は、正に荷電された官能基A+であり得、有機トリフルオロボレート部分を双性イオンにする。
【0051】
本明細書で使用されるように、用語「[18F]トリフルオロボレート」は、有機トリフルオロボレートを意味し、ここで、3つのフッ化物原子[F]の少なくとも1つが18F-フッ化物同位体に置き換えられる。
【0052】
本明細書で使用されるように、用語「生体分子」は、生体系と適合性があり得るか、または生物学的活性を保有し得るもしくは保有し得ない、医学的、生理学的または科学的に重要な任意の分子、その類似体または誘導体を指す。
【0053】
本明細書で使用されるように、用語「抗体フラグメント」は、抗体分子の抗原結合フラグメント(Fab)または抗体分子の結晶化可能なフラグメント(Fc、尾部領域)などの、抗体分子全体の一片を意味する。
【0054】
本明細書で使用されるように、ナノ粒子という用語は、直径1~300ナノメートル(nm)の寸法を有する任意の形状の物質を意味する。例として、ナノ粒子は、有機ナノ結晶、無機ナノ結晶、またはリポソームである。
【0055】
本明細書で使用されるように、-(CH20-は示された位置にCH2が存在しないことを意味し、-(CH21-は-CH2-を意味し、-(CH22-は-CH2-CH2-を意味し、-(CH23-は-CH2-CH2-CH2-を意味し、-(CH24-は-CH2-CH2-CH2-CH2-を意味する。
【0056】
本明細書で使用されるように、用語「Tyr3-オクトレオチド」は、オクタペプチド、すなわち、8個のアミノ酸を有するオリゴペプチドを意味し、ここで、オクトレオチドの3番目の位置でのフェニルアラニンがチロシンと置換される。オクトレオチドとTyr3-オクトレオチドは両方とも、天然のソマトスタチンを薬理学的に模倣することができ、神経内分泌腫瘍で過剰発現されるソマトスタチン受容体に結合することができる。オクトレオチドまたはTyr3-オクトレオチドは、ソマトスタチン受容体に対する標的部分または標的部分のモデルとして使用され得る。
【0057】
本明細書で使用されるように、用語「PSMA」は、II型膜糖タンパク質であり、前立腺癌で過剰発現される、前立腺特異的膜抗原を意味する。本出願に開示される化合物28および29に関連して、用語「PSMA」は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合するリガンドとして機能することができる、PSMA標的部分を指す。それによって、化合物28および29は、前立腺特異的膜抗原に対する標的部分または標的部分のモデルを含む。
【0058】
本明細書で使用されるように、用語「互変異性体」は、同時に存在することができ、分子内の原子または基の移動によって容易に交換可能である、化合物の少なくとも2つの構造異性体のいずれかを指す。
【0059】
本明細書で使用されるように、用語「非治療的使用」は、疾患管理のいかなる治療面も目的としない使用を指す。一実施形態では、用語「非治療的使用」は、診断目的での使用を指すことができる。本明細書で使用されるように、用語「非診断的使用」は、疾患の診断を目的としない使用を指す。
【0060】
一実施形態では、トレーサー化合物は、双性イオン部分、リンカー部分およびテトラジン部分を含む。特定の他の実施形態では、トレーサー化合物は、他の部分または側鎖基も含む。一実施形態では、リンカー部分は、双性イオン部分とテトラジン部分との間に位置づけられる。
【0061】
一実施形態では、トレーサー化合物の双性イオン部分は、有機トリフルオロボレートを含む。有機トリフルオロボレートは、正(+)に荷電された(カチオン性)基に結合された(BF3-部分を含む。より具体的には、(BF3-基は、-CH2を介して正(+)に荷電された(カチオン性)基(N(R1)2+に結合される。
【0062】
一実施形態では、トレーサー化合物の各R1は、独立して式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基である。一実施形態では、各R1は、独立して、C2以下の炭素鎖長を有するアルキル置換基である。一実施形態では、トレーサー化合物の各R1は、独立して、式C13を有するアルキル置換基である。一実施形態では、トレーサー化合物の各R1は、独立して、式C25を有するアルキル置換基である。一実施形態では、各R1は、独立して、水素(H)である。一実施形態では、各R1は、独立して、メチル基である。一実施形態では、各R1は、独立して、エチル基である。
【0063】
一実施形態では、各アルキル置換基R1は、双性イオン部分内の窒素(N)とホウ素(B)との間の炭素に対する求核攻撃を個別に可能にする。一実施形態では、各アルキル置換基R1は、ホウ素(B)のフッ素化に関する非干渉基である。これに関連する非干渉とは、R1がホウ素(B)のフッ素化を十分にまたは実質的に防止しないことを意味する。
【0064】
一実施形態では、リンカー部分は単位S1-Y-S2で構成され、ここで、Yはリンカーのコア単位構造を表し、S1およびS2は、コア単位Yの両側の鎖を表し、S1側のリンカー部分をテトラジン部分に結合し、S2側のリンカー部分を双性イオン部分に結合する。
【0065】
一実施形態では、トレーサー化合物のYは(-CH2-)m(式中、mは1、2、3、または4である)である。一実施形態では、mは5未満の整数である。
【0066】
一実施形態では、リンカー部分のYは(-CH2-)m(式中、mは1~4の範囲から選択される整数である)であり、S1は-(CH2Z-CO-NH-(CH2Z-(式中、各zは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり、かつS2は-CH2であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数)を有するアルキル置換基または水素(H)であり、かつトレーサー化合物のR2は、水素(H)またはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかである。
【0067】
一実施形態では、リンカー部分のYは(-CH2-)m(式中、mは1~4の範囲から選択される整数である)であり、S1は-(CH2Z-CO-NH-(CH2Z-(式中、各zは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり、かつS2は-(CH2f-CO-NH-(CH2f-(式中、各fは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつトレーサー化合物のR2は、Hまたはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかである。
【0068】
一実施形態では、リンカー部分のYは(-CH2-)m(式中、mは1~4の範囲から選択される整数である)であり、S1は-(CH2Z-CO-NH-(CH2Z-(式中、各zは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり、かつS2は-(CH2f-NH-CO-(CH2f-(式中、各fは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつトレーサー化合物のR2は、Hまたはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかである。
【0069】
一実施形態では、リンカー部分のYは(-CH2-)m(式中、mは1~4の範囲から選択される整数である)であり、S1は-(CH2Z-NH-CO-(CH2Z-(式中、各zは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり、かつS2は-CH2-であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつトレーサー化合物のR2は、Hまたはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかである。
【0070】
一実施形態では、リンカー部分のYは(-CH2-)m(式中、mは1~4の範囲から選択される整数である)であり、S1は-(CH2Z-NH-CO-(CH2Z-(式中、各zは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり、かつS2は-(CH2f-CO-NH-(CH2f-(式中、各fは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつトレーサー化合物のR2は、Hまたはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかである。
【0071】
一実施形態では、リンカー部分のYは(-CH2-)m(式中、mは1~4の範囲から選択される整数である)であり、S1は-(CH2Z-NH-CO-(CH2Z-(式中、各zは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり、かつS2は-(CH2f-NH-CO-(CH2f-(式中、各fは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつトレーサー化合物のR2は、Hまたはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかである。
【0072】
一実施形態では、リンカー部分のYは(-CH2-)m(式中、mは1~4の範囲から選択される整数である)であり、S1は-(CH21-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-CH2である。一実施形態では、Yは(-CH2-)1であり、S1は-(CH21-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-CH2である。一実施形態では、Yは(-CH2-)2であり、S1は-(CH21-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-CH2-である。一実施形態では、Yは(-CH2-)3であり、S1は-(CH21-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-CH2-である。一実施形態では、Yは(-CH2-)4であり、S1は-(CH21-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-CH2-である。一実施形態では、リンカー部分のYは(-CH2-)1であり、S1は-(CH21-CO-NH-(CH20-であり、S2は-CH2であり、両方のR1は、独立して、CH3であり、R2はHである。
【0073】
一実施形態では、リンカー部分のYは(-CH2-)m(式中、mは1~4の範囲から選択される整数である)であり、S1は-(CH21-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-CH2である。一実施形態では、Yは(-CH2-)1であり、S1は-(CH21-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-CH2である。一実施形態では、Yは(-CH2-)2であり、S1は-(CH21-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-CH2-である。一実施形態では、Yは(-CH2-)3であり、S1は-(CH21-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-CH2-である。一実施形態では、Yは(-CH2-)4であり、S1は-(CH21-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-CH2-である。
【0074】
一実施形態では、リンカー部分のYは-(PEG)X-(式中、xは1~20の範囲から選択される整数である)であり、S1は-(CH2Z-CO-NH-(CH2Z-(式中、各zは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり、かつS2は-CH2-であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつトレーサー化合物のR2は、Hまたはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかである。
【0075】
一実施形態では、リンカー部分のYは-(PEG)X-(式中、xは1~20の範囲から選択される整数である)であり、S1は-(CH2Z-CO-NH-(CH2Z-(式中、各zは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり、かつS2は-(CH2f-CO-NH-(CH2f(式中、各fは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつトレーサー化合物のR2は、Hまたはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかである。
【0076】
一実施形態では、リンカー部分のYは-(PEG)X-(式中、xは1~20の範囲から選択される整数である)であり、S1は-(CH2Z-CO-NH-(CH2Z-(式中、各zは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり、かつS2は-(CH2f-NH-CO-(CH2f(式中、各fは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつトレーサー化合物のR2は、Hまたはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかである。
【0077】
一実施形態では、リンカー部分のYは-(PEG)X-(式中、xは1~20の範囲から選択される整数である)であり、S1は-(CH2Z-NH-CO-(CH2Z-(式中、各zは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり、かつS2は-CH2-であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつトレーサー化合物のR2は、Hまたはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかである。
【0078】
一実施形態では、リンカー部分のYは-(PEG)X-(式中、xは1~20の範囲から選択される整数である)であり、S1は-(CH2Z-NH-CO-(CH2Z-(式中、各zは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり、かつS2は-(CH2f-CO-NH-(CH2f(式中、各fは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつトレーサー化合物のR2は、Hまたはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかである。
【0079】
一実施形態では、リンカー部分のYは-(PEG)X-(式中、xは1~20の範囲から選択される整数である)であり、S1は-(CH2Z-NH-CO-(CH2Z-(式中、各zは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり、かつS2は-(CH2f-NH-CO-(CH2f(式中、各fは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつトレーサー化合物のR2は、Hまたはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかである。
【0080】
一実施形態では、式(I)によるトレーサー化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物が提供され、ここで:各R1は、独立して、水素(H)または式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり;Lは、S1-Y-S2で構成されるリンカー部分であり、式中:
Yは(-CH2-)m(式中、mは1~4の範囲から選択される整数である)であるか、またはYはポリエチレングリコールリンカー-(PEG)X-(式中、(PEG)Xは、ポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基のx個の繰り返し単位を含み、xは1~20の範囲から選択される整数である)であり;かつ
S1は、-CH2-NH-CO-(CH2Z-、または-CH2-CO-NH-(CH2Z-(式中、各zは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり;かつ
S2は、-(CH2f、または-(CH2f-CO-NH-CH2-CH2-、または-(CH2f-NH-CO-CH2-CH2-(式中、各fは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり;かつ
R2は、水素(H)またはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかである。
【0081】
一実施形態では、式(I)によるトレーサー化合物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物が提供され、式中:
各R1は、独立して水素(H)または式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり;かつ
Lは、S1-Y-S2で構成されるリンカー部分であり、ここで:
Yは(-CH2-)m(式中、mは1~4の範囲から選択される整数である)であり、S1は、-CH2-CO-NH-、または-CH2-NH-CO-であり、かつS2は-CH2-であるか;または、
Yはポリエチレングリコールリンカー-(PEG)X-(式中、(PEG)Xは、ポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基のx個の繰り返し単位を含み、xは1~20の範囲から選択される整数である)であり;かつ
S1は、-CH2-NH-CO-(CH2Z-、または-CH2-CO-NH-(CH2Z-(式中、各zは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり;かつ
S2は、-(CH2f-CO-NH-CH2-CH2-または-(CH2f-NH-CO-CH2-CH2-(式中、各fは、独立して0~4の範囲から選択される整数である)であり;かつ
R2は、水素(H)またはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかである。
【0082】
一実施形態では、Yはポリエチレングリコールリンカー-(PEG)X-(式中、(PEG)Xは、ポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基のx個の繰り返し単位を含み、xは1~20の範囲から選択される整数である)である。一実施形態では、トレーサー化合物の-(PEG)X-におけるxは、1~15の範囲または1~10の範囲から選択される整数である。一実施形態では、-(PEG)X-におけるxは、1~9の範囲から、または1~8の範囲から、または1~7の範囲から、または1~6の範囲から、または1~5の範囲から、または1~4の範囲から、または1~3の範囲から、または1~2の範囲から選択される整数であるか、またはxは1である。一実施形態では、トレーサー化合物の-(PEG)X-におけるxは、4または9である。一実施形態では、トレーサー化合物の-(PEG)X-におけるxは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20である。
【0083】
一実施形態では、Yは(-CH2-)m(式中、mは1~4の範囲から選択される整数である)であり、S1は-CH2-CO-NH-であり、かつS2は-CH2-であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつトレーサー化合物のR2は、Hまたはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかである。
【0084】
一実施形態では、Yは(-CH2-)m(式中、mは1~4の範囲から選択される整数である)であり、S1は-CH2-NH-CO-であり、かつS2は-CH2-であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつトレーサー化合物のR2は、Hまたはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかである。
【0085】
一実施形態では、Yは(-CH2-)1であり、S1は、-CH2-CO-NH-または-CH2-NH-CO-であり、S2は-CH2-であり、各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつR2はフェニル置換基である。
【0086】
一実施形態では、Yは(-CH2-)1であり、S1は、-CH2-CO-NH-または-CH2-NH-CO-であり、S2は-CH2-であり、各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつR2はHである。
【0087】
一実施形態では、Yは(-CH2-)1であり、S1は、-CH2-CO-NH-または-CH2-NH-CO-であり、S2は-CH2-であり、各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつR2は式C13を有するアルキル置換基である。
【0088】
一実施形態では、Yは(-CH2-)1であり、S1は、-CH2-CO-NH-または-CH2-NH-CO-であり、S2は-CH2-であり、各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつR2は式C25を有するアルキル置換基である。
【0089】
一実施形態では、Yは(-CH2-)2であり、S1は、-CH2-CO-NH-または-CH2-NH-CO-であり、S2は-CH2-であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつR2はフェニル置換基である。
【0090】
一実施形態では、Yは(-CH2-)2であり、S1は、-CH2-CO-NH-または-CH2-NH-CO-であり、S2は-CH2-であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつR2はHである。
【0091】
一実施形態では、Yは(-CH2-)2であり、S1は、-CH2-CO-NH-または-CH2-NH-CO-であり、S2は-CH2-であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつR2は式C13を有するアルキル置換基である。
【0092】
一実施形態では、Yは(-CH2-)2であり、S1は、-CH2-CO-NH-または-CH2-NH-CO-であり、S2は-CH2-であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、R2は式C25を有するアルキル置換基である。
【0093】
一実施形態では、Yは(-CH2-)3であり、S1は、-CH2-CO-NH-または-CH2-NH-CO-であり、S2は-CH2-であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつR2はフェニル置換基である。
【0094】
一実施形態では、Yは(-CH2-)3であり、S1は、-CH2-CO-NH-または-CH2-NH-CO-であり、S2は-CH2-であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつR2はHである。
【0095】
一実施形態では、Yは(-CH2-)3であり、S1は、-CH2-CO-NH-または-CH2-NH-CO-であり、S2は-CH2-であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつR2は式C13を有するアルキル置換基である。
【0096】
一実施形態では、Yは(-CH2-)3であり、S1は、-CH2-CO-NH-または-CH2-NH-CO-であり、S2は-CH2-であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつR2は式C25を有するアルキル置換基である。
【0097】
一実施形態では、Yは(-CH2-)4であり、S1は、-CH2-CO-NH-または-CH2-NH-CO-であり、S2は-CH2-であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつR2はフェニル置換基である。
【0098】
一実施形態では、Yは(-CH2-)4であり、S1は、-CH2-CO-NH-または-CH2-NH-CO-であり、S2は-CH2-であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつR2はHである。
【0099】
一実施形態では、Yは(-CH2-)4であり、S1は、-CH2-CO-NH-または-CH2-NH-CO-であり、S2は-CH2-であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつR2は式C13を有するアルキル置換基である。
【0100】
一実施形態では、Yは(-CH2-)4であり、S1は、-CH2-CO-NH-または-CH2-NH-CO-であり、S2は-CH2-であり、トレーサー化合物の各R1は、独立して、Hまたは式Cn2n+1(式中、nは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり、かつR2は式C25を有するアルキル置換基である。
【0101】
一実施形態では、トレーサー化合物の各R1は、独立して、C13であり、Yは(-CH2-)1であり、S1は-CH2-CO-NH-であり、S2は-CH2-であり、かつR2はHである。
【0102】
一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH23-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH24-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2-である。
【0103】
一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH23-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH24-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。
【0104】
一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH23-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH24-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。
【0105】
一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH23-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH23-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH23-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH23-であり、かつS2は-(CH23-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH24-であり、かつS2は-(CH23-CO-NH-CH2-CH2-である。
【0106】
一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH24-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH24-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH24-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH23-であり、かつS2は-(CH24-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH24-であり、かつS2は-(CH24-CO-NH-CH2-CH2-である。
【0107】
一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH23-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH24-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。
【0108】
一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH23-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH24-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。
【0109】
一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH23-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH24-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。
【0110】
一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH23-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH23-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH23-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH23-であり、かつS2は-(CH23-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH24-であり、かつS2は-(CH23-NH-CO-CH2-CH2-である。
【0111】
一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH24-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH24-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH24-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH23-であり、かつS2は-(CH24-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH24-であり、かつS2は-(CH24-NH-CO-CH2-CH2-である。
【0112】
一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH23-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH24-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2-である。
【0113】
一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH23-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH24-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。
【0114】
一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH23-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH24-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。
【0115】
一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH23-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH23-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH23-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH23-であり、かつS2は-(CH23-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH24-であり、かつS2は-(CH23-CO-NH-CH2-CH2-である。
【0116】
一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH24-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH24-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH24-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH23-であり、かつS2は-(CH24-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH24-であり、かつS2は-(CH24-CO-NH-CH2-CH2-である。
【0117】
一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH23-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH24-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。
【0118】
一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH23-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH24-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。
【0119】
一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH23-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH24-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。
【0120】
一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH23-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH23-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH23-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH23-であり、かつS2は-(CH23-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH24-であり、かつS2は-(CH23-NH-CO-CH2-CH2-である。
【0121】
一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH24-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH24-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH24-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH23-であり、かつS2は-(CH24-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)X-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH24-であり、かつS2は-(CH24-NH-CO-CH2-CH2-である。
【0122】
一実施形態では、Yはポリエチレングリコールリンカー-(PEG)X-であり、ここで、(PEG)Xは、ポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基の4つの繰り返し単位を含み、S1は-CH2-NH-CO-(CH2Z-であり、かつS2は-(CH2f-CO-NH-CH2-CH2-であり、ここで、zおよびfは各々、独立して、0または2である。
【0123】
一実施形態では、Yはポリエチレングリコールリンカー-(PEG)X-であり、ここで、(PEG)Xは、ポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基の4つの繰り返し単位を含み、S1は-CH2-NH-CO-(CH2Z-であり、かつS2は-(CH2f-NH-CO-CH2-CH2-であり、ここで、zおよびfは各々、独立して、0または2である。
【0124】
一実施形態では、トレーサー化合物の各R1は、独立して、メチル基であり、Yは、ポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基の4つの繰り返し単位を含むポリエチレングリコールリンカー-(PEG)4-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-であり、かつR2はHである。
【0125】
一実施形態では、トレーサー化合物の各R1は、独立して、メチル基であり、Yは、ポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基の4つの繰り返し単位を含むポリエチレングリコールリンカー-(PEG)4-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-であり、かつR2はHである。
【0126】
一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。
【0127】
一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。
【0128】
一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。
【0129】
一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)4-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。
【0130】
一実施形態では、Yはポリエチレングリコールリンカー-(PEG)X-であり、ここで、(PEG)Xは、ポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基の9つの繰り返し単位を含み、S1は-CH2-NH-CO-(CH2Z-であり、かつS2は-(CH2f-CO-NH-CH2-CH2-であり、ここで、zおよびfは各々、独立して、0または2である。
【0131】
一実施形態では、Yはポリエチレングリコールリンカー-(PEG)X-であり、ここで、(PEG)Xは、ポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基の9つの繰り返し単位を含み、S1は-CH2-NH-CO-(CH2Z-であり、かつS2は-(CH2f-NH-CO-CH2-CH2-であり、ここで、zおよびfは各々、独立して、0または2である。
【0132】
一実施形態では、トレーサー化合物の各R1は、独立して、メチル基であり、Yは、ポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基の9つの繰り返し単位を含むポリエチレングリコールリンカー-(PEG)9-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH22-CO-NO-CH2-CH2-であり、ならびにR2はHである。
【0133】
一実施形態では、トレーサー化合物の各R1は、独立して、メチル基であり、Yは、ポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基の9つの繰り返し単位を含むポリエチレングリコールリンカー-(PEG)9-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-であり、ならびにR2はHである。
【0134】
一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。
【0135】
一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH20-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH21-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-NH-CO-(CH22-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。
【0136】
一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH20-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH21-CO-NH-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH22-CO-NH-CH2-CH2-である。
【0137】
一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH20-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH21-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH20-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH21-NH-CO-CH2-CH2-である。一実施形態では、Yは-(PEG)9-であり、S1は-CH2-CO-NH-(CH22-であり、かつS2は-(CH22-NH-CO-CH2-CH2-である。
【0138】
一実施形態では、トレーサー化合物のテトラジン部分のR2は、フェニル置換基である。一実施形態では、トレーサー化合物のテトラジン部分のR2は、式Cn2n+1を有するアルキル置換基であり、ここで、nは、0~2の範囲から選択される整数である。一実施形態では、トレーサー化合物のテトラジン部分のR2は、式C13を有するアルキル置換基である。一実施形態では、トレーサー化合物のテトラジン部分のR2は、式C25を有するアルキル置換基である。一実施形態では、トレーサー化合物のテトラジン部分のR2は、水素(H)である。
【0139】
一実施形態では、トレーサー化合物のR2置換基を含むテトラジン部分は、3-フェニル-1,2,4,5-テトラジンである。一実施形態では、トレーサー化合物のR2置換基を含むテトラジン部分は、3-フェニル-6-メチル-1,2,4,5-テトラジンである。一実施形態では、トレーサー化合物のR2置換基を含むテトラジン部分は、3-フェニル-6-エチル-1,2,4,5-テトラジンである。一実施形態では、トレーサー化合物のR2置換基を含むテトラジン部分は、3-フェニル-6-フェニル-1,2,4,5-テトラジンである。
【0140】
一実施形態では、置換基R2は、トレーサー化合物とTCO誘導体化標的部分との間のIEDDA共役の反応性に関する非干渉基である。これに関連する非干渉とは、R2がIEDDA共役を十分にまたは実質的に防止しないことを意味する。
【0141】
一実施形態では、トレーサー化合物の(BF3-部分における少なくとも1つのFは18Fである。一実施形態では、トレーサー化合物の(BF3-部分における1つのFは18Fであり、残りの2つは19Fである。
【0142】
一実施形態では、付加物は、トランス-シクロオクテン誘導体化標的部分とトレーサー化合物のテトラジン部分との逆電子要請型ディールス・アルダー反応(IEDDA)によって得られる。
【0143】
一実施形態では、トレーサー化合物のテトラジン部分のテトラジン環は、付加物においてTCO誘導体化標的部分のTCO部分に化学的に結合させられる。
【0144】
一実施形態では、付加物の標的部分は、タンパク質、ペプチド、抗体、抗体フラグメント、またはナノ粒子である。付加物の標的部分は、インビトロおよびインビボで特異的な生体分子を標的とし、その配列および/または3D(表面)構造を介してそれと共役する。
【0145】
一実施形態では、付加物の(BF3-部分における少なくとも1つのFは18Fである。一実施形態では、付加物の(BF3-部分における1つのFは18Fであり、残りの2つは19Fである。
【0146】
一実施形態では、TCO誘導体化標的部分のTCO部分は、標的部分に直接結合される。特定の他の実施形態では、TCO誘導体化標的部分のTCO部分は、PEGX鎖またはポリリジン鎖などの連結部分を介して標的部分に間接的に結合される。一実施形態では、ポリリジン鎖はα-ポリリジン鎖である。一実施形態では、ポリリジン鎖はε-ポリリジン鎖である。一実施形態では、ポリリジン鎖はポリ-I-リジン鎖である。
【0147】
一実施形態では、付加物またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、式(II)に従った構造を有し:
【化2】
式中、各R1は、独立して水素(H)または式Cn2n+1(式中、nは、0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基であり;かつ
Lは、S1-Y-S2で構成されるリンカー部分であり、ここで:
Yは(-CH2-)m(式中、mは1~4の範囲から選択される整数である)であるか、またはYはポリエチレングリコールリンカー-(PEG)X-(式中、(PEG)Xは、ポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基のx個の繰り返し単位を含み、xは1~20の範囲から選択される整数である)であり;かつ
S1は-(CH2Z-CO-NH-(CH2Zであるか、またはS1は-(CH2Z-NH-CO-(CH2Z-であり、ここで、各zは、独立して、0~4の範囲から選択される整数であり;かつ
S2は-CH2-であるか、またはS2は-(CH2f-CO-NH-(CH2fであるか、またはS2は-(CH2f-NH-CO-(CH2f-であり、ここで、各fは、独立して、0~4の範囲から選択される整数であり;かつ
R2は、水素(H)またはフェニル置換基または式CS2S+1(式中、sは0~2の範囲から選択される整数である)を有するアルキル置換基のいずれかであり、かつ
Tは、付加物の標的部分、および随意に連結部分を含み、ここで、連結部分は、(PEG)X-鎖またはポリリジン鎖である。
【0148】
一実施形態では、付加物は、TCO誘導体化標的部分のTCO部分とトレーサー化合物のテトラジン環とのIEDDA環化付加生成物であり、式(II)に従う構造を有する。
【0149】
一実施形態では、式(II)において、基R1、R2、およびLは、式(I)に対して本明細書で定義した意味と同じ意味を有する。
【0150】
一実施形態では、TCO誘導体化標的部分は、トランス-シクロオクテン部分および標的部分を含む。一実施形態では、TCO誘導体化標的部分は、トランス-シクロオクテン部分および標的部分の他に、他の部分、または側鎖基/側鎖も含む。一実施形態では、1つを超える連結部分がTCO部分と標的部分との間に配置され、それによってTCO部分と標的部分が互いに連結される。
【0151】
一実施形態では、TCO部分と標的部分との間の連結部分は、ポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基の繰り返し単位を含むポリエチレングリコールリンカーである。一実施形態では、TCO誘導体化標的部分はTCO-(PEG)X-アルデヒドを含み、ここで、xは、0~10の範囲から選択される整数である。一実施形態では、TCO誘導体化標的部分は、TCO-(PEG)0-アルデヒドを含む。一実施形態では、TCO誘導体化標的部分は、TCO-(PEG)3-アルデヒドを含む。一実施形態では、TCO誘導体化標的部分は、TCO-(PEG)4-アルデヒドを含む。一実施形態では、TCO誘導体化標的部分は、TCO-(PEG)7-アルデヒドを含む。
【0152】
一実施形態では、TCO誘導体化標的部分は、TCO-(PEG)X標的部分を含み、ここで、xは、0~10の範囲から選択される整数である。一実施形態では、TCO誘導体化標的部分は、TCO-(PEG)0標的部分を含む。一実施形態では、TCO誘導体化標的部分は、TCO-(PEG)4標的部分を含む。一実施形態では、TCO誘導体化標的部分は、TCO-(PEG)7標的部分を含む。
【0153】
一実施形態では、TCO誘導体化標的部分は、TCO部分および標的部分としてのTyr3-オクトレオチド(TOC)を含む。一実施形態では、TCO誘導体化標的部分は、TCO-(PEG)X-TOCを含み、ここで、xは、0~10の範囲から選択される整数である。一実施形態では、TCO誘導体化標的部分は、TCO-(PEG)4-TOCを含む。一実施形態では、TCO誘導体化標的部分は、TCO-(PEG)7-TOCを含む。一実施形態では、TCO誘導体化標的部分の-(PEG)X連結部分は、TCO部分およびIEDDA環化付加生成物(Tz+TCO)から生じる構築物の親油性を低下させるという利点を有する。一実施形態では、TCO部分と標的部分との間のポリエチレングリコールリンカー-(PEG)X-連結部分は、最終付加物の薬物動態および代謝安定性を調節するのに有益である。一実施形態では、TCO部分と標的部分との間の連結部分は、生体適合性および生分解性のリンカーであるポリリシンリンカーである。一実施形態では、TCO部分と標的部分との間のポリリシン結合部分も、最終付加物の薬物動態および代謝安定性を調節するのに有益である。
【0154】
一実施形態では、トレーサー化合物のリンカー部分(L)の構造および長さは、放射性標識された付加物と特異的な標的実体との共役後の最適な薬物動態を確かなものとするために最適化される。トレーサー化合物のリンカー部分の最適な構造および長さによって、トレーサー化合物とTCO誘導体化標的部分との付加物が、一度結合させられると最適な標的特異的構成を得ることが可能になり、標的実体への標的部分の特異的結合を可能にする。したがって、トレーサー化合物のリンカー部分のモジュール構造および長さは、インビトロおよびインビボでの細胞および組織における付加物の高い標的対非標的の取り込み比を促進する。一実施形態では、トレーサー化合物のリンカー部分のモジュール構造および長さによって、良好な信号対ノイズ比でのPET画像法が可能になる。
【0155】
一実施形態では、トレーサー化合物または付加物のクリアランスは、主に腎臓を介して生じる。一実施形態では、リンカー部分または付加物は、ほとんどインビボでの腎臓排泄に向けられる。
【0156】
一実施形態では、トレーサー化合物を製造するための方法が開示され、ここで、出発物質のリンカー部分は、S1-Y-S2で構成され、ここで:
Yは(-CH2-)m(式中、mは1~4の範囲から選択される整数である)であり、S1は、-CH2-CO-NH-、または-CH2-NH-CO-であり、かつS2は-CH2-であるか;または、
Yはポリエチレングリコールリンカー-(PEG)X-(式中、(PEG)Xは、ポリエチレンオキシド-CH2-CH2-O-基のx個の繰り返し単位を含み、xは1~20の範囲から選択される整数である)であり、
S1は、-CH2-NH-CO-(CH2Z-、または-CH2-CO-NH-(CH2Z-(式中、各zは、独立して、0~4の範囲から選択される整数である)であり、
S2は、-(CH2f-CO-NH-CH2-CH2-または-(CH2f-NH-CO-CH2-CH2-(式中、各fは、独立して、0~4の範囲から選択される整数である)である。
【0157】
一実施形態では、IEDDA反応速度は、一緒に共役するIEDDA反応パートナー、および反応条件に依存し、反応条件は、少なくとも試薬の濃度、反応温度、および反応pHによって決定される。一実施形態では、トレーサー化合物のテトラジン部分とTCO誘導体化標的部分のTCO部分とのIEDDA共役は、30分以下、好ましくは20分以下、より好ましくは15分以下、さらにより好ましくは10分以下、さらにより好ましくは5分以下かかる。最も好ましい実施形態では、トレーサー化合物のテトラジン部分とTCO誘導体化標的部分のTCO部分とのIEDDA共役は、テトラジン環とTCO部分との間のIEDDAが数秒以内に生じる可能性が高いため、1分未満、好ましくは30秒未満、より好ましくは15秒未満かかる。それにもかかわらず、一実施形態では、トレーサー化合物のテトラジン部分とTCO誘導体化標的部分のTCO部分とのIEDDA共役は、結果として得られる付加物の互変異性の均一性および安定性を改善するために、+20℃を超える温度で20~30分間実行される。
【0158】
一実施形態では、トレーサー化合物のテトラジン部分とTCO誘導体化標的部分のTCO部分とのIEDDA共役は、周囲温度(室温)で実行される。一実施形態では、トレーサー化合物のテトラジン部分とTCO誘導体化標的部分のTCO部分とのIEDDA共役は、+20℃から+80℃の間の任意の温度で効率的に実行される。
【0159】
一実施形態では、付加物を製造するための方法は、20~80℃の間の温度、好ましくは40~70℃の間の温度、より好ましくは55~65℃の間の温度、最も好ましくは60℃の温度で、放射性標識されたトレーサー化合物のテトラジン部分をTCO誘導体化標的部分のTCO部分と反応させる工程を含む。一実施形態では、トレーサー化合物のテトラジン部分とTCO誘導体化標的部分のTCO部分とのIEDDA共役に対する最高反応温度は、80℃である。プレターゲットPET画像法が付加物を撮像するために利用される実施形態では、IEDDA共役の反応温度はより低く、当該温度は被験体の(身体)温度によって判定される。
【0160】
一実施形態では、付加物が+20℃を超える温度で加熱されると、付加物の互変異性の均質性が改善され、中間互変異性体の量が減少させられる。一実施形態では、付加物が、20~80℃、好ましくは40~70℃、より好ましくは55~65℃、最も好ましくは60℃で加熱されると、付加物の互変異性の均質性は改善される。一実施形態では、上記温度での付加物の加熱は、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10分間、または少なくとも15分間行われる。一実施形態では、付加物の加熱によって、付加物の互変異性の均質性が増加し、付加物の中間互変異性体の量が不可逆的に減少する。一実施形態では、付加物の加熱は、加熱後および+20℃の周囲室温での保存中に、付加物のその中間互変異性体への逆変換を防止する。一実施形態では、加熱による上記処理は、トレーサー化合物のテトラジン部分とTCO誘導体化標的部分のTCO部分とのIEDDA共役と同時に利用される。一実施形態では、加熱による上記処理は、トレーサー化合物のテトラジン部分とTCO誘導体化標的部分のTCO部分とのIEDDA共役の後に利用される。
【0161】
一実施形態では、トレーサー化合物とTCO誘導体化標的部分とのIEDDA共役における溶媒は、水、水性媒体、水性緩衝液、または有機溶液と水溶液の混合物であり、ここで、有機溶媒のパーセンテージは、50%未満、好ましくは10%未満であり、有機溶媒は、たとえば、DMSO、エタノール、アセトニトリル(MeCN)、またはメタノールを含む。
【0162】
一実施形態では、トレーサー化合物のテトラジン部分は、酸性条件下でTCO誘導体化標的部分のTCO部分と反応し、IEDDA共役して、付加物を得る。一実施形態では、トレーサー化合物のテトラジン部分は、pHが2~7、好ましくは2~4、最も好ましくは2~3である条件で、TCO誘導体化標的部分のTCO部分と共役する。
【0163】
一実施形態では、18F放射性同位体によるトレーサー化合物の放射性標識反応温度は、80~100℃の間、好ましくは80~90℃の間、より好ましくは85~90℃の間である。一実施形態では、18F放射性同位体によるトレーサー化合物の放射性標識反応温度は85℃である。
【0164】
一実施形態では、18F放射性同位体によるトレーサー化合物の放射性標識は、2.0~3.0の間のpHで実行される。
【0165】
一実施形態では、18F放射性同位体によるトレーサー化合物の放射性標識反応は、トレーサーを溶解するのに十分な%の有機溶媒を含む酸性のpH制御された緩衝液中で実行され、有機溶媒は、たとえばMeCNまたはDMFである。一実施形態では、少なくとも1つの18F放射性同位体によるトレーサー化合物の放射性標識反応は、MeCNまたはDMFなどの有機溶媒を含むピリダジンHCl緩衝液中で実行される。
【0166】
一実施形態では、18F放射性同位体による付加物の放射性標識は、80~100℃の間、好ましくは80~90℃の間、より好ましくは85~90℃の間の温度で実行される。一実施形態では、18F放射性同位体による付加物の放射性標識は、85℃の温度で実行される。
【0167】
一実施形態では、18F放射性同位体による付加物の放射性標識は、2.0~3.0の間のpHで実行される。
【0168】
一実施形態では、18F放射性同位体による付加物の放射性標識反応は、トレーサーを溶解するのに十分な%の有機溶媒を含む酸性のpH制御された緩衝液中で実行され、有機溶媒は、たとえばMeCNまたはDMFである。一実施形態では、18F放射性同位体による付加物の放射性標識反応は、MeCNまたはDMFなどの有機溶媒を含むピリダジンHCl緩衝液中で実行される。
【0169】
一実施形態では、付加物は、トレーサー化合物とTCO誘導体化標的部分とのIEDDA共役後に放射性標識される。したがって、18F放射性同位体によるフッ化物Fの置換は、TCO誘導体化標的部分へのトレーサー化合物のIEDDA共役後に、最初に実行される。放射性標識前に付加物全体が合成されることによって、使用直前に付加物を放射性標識することが可能になり、それによって、放射性標識の減衰を最小限に抑えることができる。特定の実施形態では、IEDDA共役中に副生成物が作成され、これらは、反応混合物から除去するのに手間がかかるか、または不可能である。したがって、IEDDA共役後の付加物を放射性標識することは、結果として得られる付加物の化学的純度を確保するのに有益である。
【0170】
別の実施形態では、トレーサー化合物の双性イオン部分は、18F放射性同位体を含む。したがって、トレーサー化合物の双性イオンのホウ素(B)に結合した3つのフッ化物(F)のうちの少なくとも1つは、18F放射性同位体である。一実施形態では、18F放射性同位体によるフッ化物Fの置換は、TCO誘導体化標的部分へのトレーサー化合物のIEDDA共役前に実行される。特定の標的部分は、18F放射性標識に必要とされる条件に対して感受性である。このような実施形態では、トレーサー化合物の18F放射性標識は、TCO誘導体化標的部分とのIEDDA共役前に実行される。したがって、付加物が感受性および/または脆弱性の標的部分を含む実施形態では、トレーサー分子の18F放射性標識は、IEDDA共役前に実行される。一実施形態では、そのような感受性および/または脆弱性の標的部分は、抗体または酵素である。これは、上記プロセス順序によって放射性標識プロセス条件からの脆弱性の標的部分の生存が可能になるため、結果として得られる付加物における標的部分の完全性を確保するのに有益である。
【0171】
一実施形態では、トレーサー化合物とTCO誘導体化標的部分との間のIEDDA共役がインビボまたはインビトロで被験体内に生じるときに、IEDDA共役前のトレーサー化合物の放射性標識が利用される。この場合、トレーサー化合物は、TCO誘導体化標的部分がその標的部位に到達した後、最初に被験体内のTCO誘導体化標的部分と接触させられる。この方法論を利用する放射性標識されたトレーサー化合物の放射性イメージングは、プレターゲットPET画像法である。
【0172】
一実施形態では、被験体の放射性イメージングによる被験体での標的実体の検出における、第1の態様のトレーサー化合物および/または付加物の使用が提供され、ここで、標的実体は、放射性標識されたトレーサー化合物および/または付加物で標的とされる。一実施形態では、被験体の放射性イメージングによって被験体において標的実体を検出する方法が提供され、ここで、標的実体は、放射性標識されたトレーサー化合物および/または付加物で標的とされる。
【0173】
一実施形態では、トレーサー化合物および/または付加物は、被験体への付加物の全身投与を介した放射性イメージングにおいてインビボで使用される。一実施形態では、トレーサー化合物および/または付加物は、放射性標識された標的実体の撮像を介した、放射性イメージング、より具体的には陽電子放射断層撮影による被験体における標的実体の検出に使用される。一実施形態では、標的実体の撮像は、インビトロおよびインビボで選択された標的実体に結合することができる放射性標識されたトレーサー化合物および/または付加物の撮像を指す。
【0174】
一実施形態では、トレーサー化合物および/または付加物は、放射性イメージングを受ける被験体へのトレーサー化合物および/または付加物の陽電子放射に対して撮像有効量で投与される。
【0175】
一実施形態では、トレーサー化合物および/または付加物は、組織および/または細胞のインビトロでの放射性イメージングに使用される。一実施形態では、トレーサー化合物および/または付加物は、インビトロおよびインビボでの標的実体の標識化に使用される。
【0176】
一実施形態では、付加物の標的部分は、インビトロで標的実体に結合することができる。一実施形態では、付加物の標的部分は、インビボで標的実体に結合することができる。一実施形態では、標的実体は、受容体、酵素、またはナノ粒子などの生体分子である。一実施形態では、付加物の標的部分が結合することができる標的実体は、癌、神経変性、炎症、または感染症などの具体的な生理学的疾病の指標である。
【0177】
一実施形態では、標的部分を含まないか、または標的実体への標的部分の結合が遮断されている付加物は、インビトロでの標的実体または生体分子への結合が低いかまたは有意ではない。一実施形態では、標的部分を含まないか、または標的実体への標的部分の結合が遮断されている付加物は、インビボでの標的実体または生体分子への結合が低いかまたは有意ではない。
【0178】
一実施形態では、トレーサー化合物および付加物は、インビトロおよびインビボでの血漿中で良好な安定性を有する。一実施形態では、トレーサー化合物および付加物の骨取り込み率は低く、これは、トレーサー化合物および付加物の放射性標識の代謝安定性が良好であることを示唆している。一実施形態では、トレーサー化合物および付加物は、非標的組織において比較的低い蓄積を示す。
【0179】
一実施形態では、放射性標識されたトレーサー化合物は、さらに処理することができ、トレーサー化合物を放射性標識した最大8時間後まで、好ましくは最大5時間後まで、最も好ましくは最大2時間後まで放射性イメージングに使用することができる。一実施形態では、トレーサー化合物とTCO誘導体化標的部分とのIEDDA環化付加生成物である放射性標識された付加物は、さらに処理することができ、付加物を放射性標識した最大8時間後まで、好ましくは最大5時間後まで、最も好ましくは最大2時間後まで放射性イメージングに使用することができる。
【0180】
一実施形態では、放射性イメージングによる被験体における標的実体の検出のためのキットは、トレーサー化合物を含む少なくとも1つのコンパートメントと、少なくとも1つのTCO誘導体化標的部分を含む少なくとも1つのコンパートメントと、トレーサー化合物を放射性標識するための18Fを含む少なくとも1つのコンパートメントと、を備える。一実施形態では、キットはまた、トレーサー化合物および/または付加物のIEDDA共役および放射性標識のための水性溶媒および有機溶媒を含む。一実施形態では、キットは、付加物のIEDDA共役前にトレーサー化合物を放射性標識するために必要な材料を提供する。一実施形態では、キットは、トレーサー化合物とTCO誘導体化標的部分とのIEDDA共役後に付加物を放射性標識するために必要な材料を提供する。一実施形態では、キットは、プレターゲットPET画像法で使用されるように構成されている。一実施形態では、キットは、被験体における標的実体の検出のためのトレーサー化合物および/または付加物を調製するために必要なすべてのコンポーネントを提供する。一実施形態では、キットは、被験体における標的実体の検出のためのトレーサー化合物および/または付加物を調製するために必要な材料のほとんどを提供する。
【実施例
【0181】
さまざまな実施形態が提示されてきた。本明細書では、「備える(comprise)」、「含む(include)」、および「含有する(contain)」という単語は各々、意図された排他性を有さない自由な表現として使用されることが理解されるべきである。
【0182】
概略
すべての試薬を、市販業者から購入し、さらに精製することなく受け取って使用した。テトラジンを、コンジュ-プローブ(Conju-Probe)、ブロードファーマ(BroadPharm)、またはジェナ バイオサイエンス(Jena Biosciences)から購入し、ヨードボロンピナコールエステルを、エナミン(Enamine)から購入した。Sep-Pak C18-Lightカートリッジを、ウォーターズ(Waters)から購入し、PS-HCO3カートリッジ(Macherey-Nagel(商標)Chromafix(商標))を、フィッシャー サイエンティフィック(Fisher Scientific)から購入した。担体無添加の18Fフッ化物を、ロテム インダストリーズ社(Rotem Industries Limited)(アラバ、イスラエル)から購入したHyox-18 18O濃縮水からIBA 10/5医療用サイクロトロンを用いて社内で産生した。合成した前駆体を、高分解能質量分析(HRMS)および核磁気共鳴分光(NMR)分析で分析した。放射性標識されたトレーサーを、放射性高速液体クロマトグラフィー(放射性HPLC)で分析した。切除した臓器を計量し、Wizardガンマカウンターで測定した。Molecubes PET(β-CUBE)をCT(γ-CUBE)と連結させて、コンピュータ断層撮影(CT)を用いた60分間の動的陽電子放射断層撮影(PET)スキャンを取得した。
【0183】
実施例1.AmBF3-Tz(図1の化合物4)の合成
2-[4-(1,2,4,5-テトラジン-3-イル)フェニル]-N-[2-(ジメチルアミノ)エチル]アセトアミド(2)。N,N-ジメチルエチレンジアミン(13μL、0.12mmol)を、アルゴン下で2mLのDCMに溶解し、その後、3mLのDCM中にテトラジンNHS-エステル(1)(25mg、0.08mmol)を加え、これを透明な溶液に滴下した。混合物を室温で1.5時間撹拌した後、粗反応混合物を、蒸発乾固し、1mLの超純水(Milli-Q)で再懸濁し、SEP-Pakシリカで精製し(MeOH:DCMを1:9として溶出)、ピンク色の固体を得た。収率は68±26%(n=3)(11.5mg、0.04mmol)であった。1H NMR (300 MHz, アセトニトリル-d3) δ 10.26 (s, 1H), 8.50 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.56 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 3.60 (s, 2H), 3.26 (s, 2H), 2.40 (s, 2H), 2.21 (s, 6H).
【0184】
2-(2-(4-(1,2,4,5-テトラジン-3-イル)フェニル)アセトアミド)-N,N-ジメチル-N-((4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)メチル)エタン-1-アミニウム(3)。化合物(2)(11.5mg、0.04mmol)を、アルゴン下で1mLの乾燥アセトニトリルに溶解し、その後、2-(ヨードメチル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(10.8mg、0.04mmol)を、300μLの乾燥アセトニトリルに溶解した。反応混合物を、一晩撹拌し、蒸発乾固した。収率は、58±31%(n=3)(11.5mg、0.04mmol)であった。1H NMR (300 MHz, アセトニトリル-d3) δ 10.28 (s, 1H), 8.52 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.58 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 3.68 (s, 2H), 3.58 (s, 2H), 3.48 (s, 2H), 3.13 (s, 6H), 2.14 (s, 2H), 1.28 (s, 12H).
【0185】
{[(2-{2-[4-(1,2,4,5-テトラジン-3-イル)フェニル]アセトアミド}エチル)ジメチルアンモニオ]メチル}トリフルオロボレート(4)。化合物(3)(0,043mmol、18mg)を15mLのFalcon(LDPE)チューブに1153μLのDMFとともに溶解し、その後、387μLのミリQ水、577μLの4M HCl、および577μLの3M KHF2を加えた。Falconチューブを閉じ、反応混合物を70℃で30分間加熱し、フッ素化反応をHPLCによって密にモニターして(PDA検出器 534nm、0.1%のTFA-ACN:0.1%のTFAミリQ水(80:20)の均一濃度の2.5mL/分 tR(AmBF3-Tz)=10.3分)、テトラジンの分解を回避した。当該反応によって、化合物(3)から化合物(4)への定量的変換が得られた。反応混合物を、6mLのミリQ水で希釈し、各々5mLのACNおよび10mLのミリQ水でプレコンディショニングした2つの並列SPE C18 PLUSカートリッジに加えた。C18カートリッジを、20mLのミリQ水で洗浄し、空気乾燥し、1mLのACNで溶出して、13.9mgの4を得た。1H NMR (400 MHz, CD3CN) δ 10.30 (s, 1H), 8.54 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.58 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 3.68 - 3.56 (m, 4H), 3.34 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 3.01 (s, 6H), 2.38 (s, 2H). 11B NMR (128 MHz, CD3CN) δ 2.19, 1.80, 1.43, 1.03. 19F NMR (376 MHz, CD3CN) δ -138.77, -138.89, -139.04, -139.17. 13C NMR (101 MHz, CD3CN) δ 171.47, 167.25, 158.98, 141.95, 131.82, 131.42, 129.05, 118.30, 65.43, 54.32, 43.42, 34.75, 1.32. HRMS 計算値、C1521BF36+ [M+H]+ 369.18165m/z、実測値、C1521BF36+ [M+H]+ 369.18134m/z(質量誤差-0.85ppm)。
【0186】
実施例2.AmBF3-PEG4-Tz(図2の化合物8)の合成
N-(4-(1,2,4,5-テトラジン-3-イル)ベンジル)-1-(3-(ジメチルアミノ)プロパンアミド)-3,6,9,12-テトラオキサペンタデカン-15-アミド(6)。アルゴン雰囲気下での0.3mLのDMF中の3-(ジメチルアミノ)プロパン酸(4.8mg、31μmol)に、0.1mLのDMF中のHATU(8.5mg、23μmol)を加え、室温で10分間撹拌した。N-(4-(1,2,4,5-テトラジン-3-イル)ベンジル)-1-アミノ-3,6,9,12-テトラオキサペンタデカン-15-アミド(10mg、21μmol)(5)およびDIPEA(30μL)を加え、反応物を室温で2時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、LC-MSによる分析は95%を超える純度を示した。LC-MS(+) 計算値、C25H40N7O5に対して534m/z[M+H]+、実測値、m/z(%)=534(100)[M+H]+、tR=8.5分。
【0187】
1-(4-(1,2,4,5-テトラジン-3-イル)フェニル)-N,N-ジメチル-3,19-ジオキソ-N-((4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)メチル)-6,9,12,15-テトラオキサ-2,18-ジアザヘニコサン-21-アミニウム(7)。化合物(6)(2mg、3.56μmol)を、アルゴン下で200μLの乾燥アセトニトリルに溶解し、その後、2-(ヨードメチル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(1.01mg、3.7μmol)を、100μLの乾燥アセトニトリルに溶解した。反応混合物を、20分間撹拌し、蒸発乾固した。
【0188】
24-(4-(1,2,4,5-テトラジン-3-イル)フェニル)-1,1,1-トリフルオロ-3,3-ジメチル-6,22-ジオキソ-10,13,16,19-テトラオキサ-3,7,23-トリアザ-1-ボラテトラコサン-3-イウム-1-ウイド(8)。さらなる精製なしで、化合物(7)(3.56μmol)を、15mLのFalcon(LDPE)チューブ中で14.94μLのDMFとともに溶解し、その後、4.93LのミリQ水、7.47μLの4M HClおよび7.47μLの3M KHF2を加えた。Falconチューブを閉じ、反応混合物を85℃で10分間加熱した。反応混合物を、6mLのミリQで希釈し、各々5mLのACNおよび10mLのミリQでプレコンディショニングした2つの並列SPE C18 PLUSカートリッジに加えた。C18カートリッジを、20mLのミリQで洗浄し、空気乾燥し、1mLのACNで溶出して、1.2mg(1.95μmol)の化合物(8)を得た。溶媒を蒸発させ、LC-MSによる分析は95%を超える純度を示した。LC-MS(+) 計算値、C2641BF276に対して596m/z[M-F]+、実測値、m/z(%)=596(100)[M-F]+、tR=11.5分。1H NMR (400 MHz, アセトン-d6) δ 10.43 (s, 1H), 8.54 (s, 2H), 7.63 (s, 2H), 5.35 (s, 2H), 4.58 (s, 2H), 3.78 (s, 3H), 3.60 (s, 16H), 3.35 (s, 2H), 3.10 (s, 6H), 2.51 (s, 3H), 2.33 (s, 3H), 2.21 (s, 2H). 19F NMR (376 MHz, アセトニトリル-d3) δ -138.98, -139.12, -139.25.
【0189】
実施例3.AmBF3-PEG9-Tz(図3の化合物12)の合成。
1-(4-(1,2,4,5-テトラジン-3-イル)ベンジル)-N31-(2-(ジメチルアミノ)エチル)-4,7,10,13,16,19,22,25,28-ノナオキサヘントリアコンタンジアミド(10)。ジメチルエチレンジアミン(0.677mg、7.7μmol)を、アルゴン下で400μLのDCMに溶解し、その後、600μLのDCM中のテトラジン-PEG9-NHS-エステル(9)(5mg、6.4μmol)を加えて、これを透明な溶液に滴下した。反応物を、TLC(RP-TLC、ACN:ミリQ水(80:20)、Rf=テトラジン0.83、Rf=アミン0.00、Rf=テトラジンアミン0.28)でモニターした。混合物を室温で20分間撹拌した後、粗反応混合物を、3×C18カートリッジ上に積載し、空気乾燥し、3mLのACNで4つの画分に溶出した。純粋な画分を、組み合わせ、蒸発乾固して、ピンク色の固体を得た。収率≧98%(1.3mg、0.0016mmol)。1H NMR (400 MHz, アセトニトリル-d3) δ 10.28 (s, 1H), 8.53 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.57 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 5.36 (s, 1H), 4.50 (d, J = 6.2 Hz, 2H), 3.74 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.67 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.59 (d, J = 0.9 Hz, 30H), 3.47 (q, J = 5.7 Hz, 2H), 3.29 (s, 1H), 3.04 (s, 2H), 2.73 (s, 6H), 2.48 (t, J = 6.0 Hz, 3H), 2.39 (t, J = 6.0 Hz, 3H).
【0190】
1-(4-(1,2,4,5-テトラジン-3-イル)フェニル)-N,N-ジメチル-3,33-ジオキソ-N-((4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)メチル)-6,9,12,15,18,21,24,27,30-ノナオキサ-2,34-ジアザヘキサトリアコンタン-36-アミニウム(11)。2-(ヨードメチル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(0.0017mmol、0.46mg)を、乾燥アセトニトリルに溶解し、一晩アルゴン雰囲気下でACN中の化合物(10)(0.0017mmol、1.3mg)の撹拌溶液に滴下した。反応物をHPLC(PDA検出器、534nm)でモニターした。反応混合物を、蒸発乾固し、そのまま続くフッ素化反応に使用した。
【0191】
39-(4-(1,2,4,5-テトラジン-3-イル)フェニル)-1,1,1-トリフルオロ-3,3-ジメチル-7,37-ジオキソ-10,13,16,19,22,25,28,31,34-ノナオキサ-3,6,38-トリアザ-1-ボラノナトリアコンタン-3-イウム-1-ウイド(12)。化合物(11)(0.0017mmol、1.74mg)を15mLのFalcon(LDPE)チューブに45.6μLのDMFとともに溶解し、その後、15.5μLのミリQ水、22.8μLの4M HCl、および22.8μLの3M KHF2を加えた。Falconチューブを閉じ、反応混合物を70℃で30分間加熱し、フッ素化反応をHPLCによって密にモニターして(PDA検出器 534nm)、テトラジンの分解を回避した。当該反応によって、化合物(11)から化合物(12)への完全な変換が得られた。反応混合物を、1mLのミリQ水で希釈し、SPE C18 Lightカートリッジに加えた(プレコンディショニング:5mLのACNおよび10mLのミリQ水)。C18カートリッジを、10mLのミリQで洗浄し、空気乾燥し、200μLのACNで溶出して、1.9mgの化合物(12)を得た。1H NMR (400 MHz, CD3CN) δ 10.29 (s, 1H), 8.56-8.54 (d, 2H), 7.60-7.58 (d, 2H), 7.22 (s, ブロード, 1H), 6.88 (s, ブロード, 1H), 4.53-4.51 (d, 2H), 3.75 (t, 2H), 3.67 (t, 2H), 3.62-3.56 (m, 32H), 3.33 (t, 2H), 3.03 (s, 6H), 2.49 (t, 2H), 2.38 (t, 2H). 19F NMR (376 MHz, CD3CN) δ -138.80, -138.97, -139.08. 13C-NMR (101 MHz, CD3CN). HRMS 計算値、C3662BF3711 + [M+H]+ 836.45470m/z、実測値、C3662BF3711 + [M+H]+ 836.45538m/z(質量誤差0.82ppm)。
【0192】
実施例4.トランス-シクロオクテンアルデヒド(TCO-CHO)(図4の化合物15)の合成。
図4に提示したような15.6mg(91nmol、1.5当量)の化合物(13)を、アルゴン下で500μLのTHFおよび150μLのDMSOに溶解し、その後、100μLのTHF中の9.7mgのピリジン(122nmol、2.0当量)を加え、溶液を10分間混合した。16.3mg(61nmol、1.0当量)の化合物(14)を滴下し、溶液を室温で一晩撹拌した。反応物を、移動相としての酢酸エチル:シクロヘキサン(1:1)を用いた順相TLCでモニターし、KMnO4染色溶液で染色した(tR(ピリジン)=0.00、tR(1)=0.00、tR(2)=0.90、RT(3)=0.80)。ピリジンおよび未反応化合物(14)を除去するために、粗混合物を、(50mLの超純水でプレコンディショニングした)Sep-Pak SPE-Silカートリッジで精製した。混合物を、SPE-Silカートリッジに押し込み(画分1)、1mLのDCMで溶出した(画分2)。回収した画分を、セミ分取HPLC(Phenomenex Alltima C18カラム、80%のACN+0.1%のTFAの均一濃度3mL/分)によってさらに精製し、ここで、化合物(15)をtR=6分で溶出した。LC-MS(+)m/z(%)=288.36(27)[M+H]+、310.30(19)[M+Na]+R=9.3分。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm, 10.00, 7.86, 7.84, 7.45, 7.43, 5.53, 4.99, 4.41, 2.35, 1.97, 1.75, 1.57, 1.27, 1.26. 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ ppm, 191.81, 145.79, 135.64, 134.89, 133.01, 130.13, 127.77, 81.14, 44.70, 41.14, 38.67, 34.27, 32.50, 30.96.
【0193】
実施例5.アミノオキシ官能化ペプチド(α-MSH-ONH2、エキセンディン-4-ONH2、Tyr3-オクトレオチド-ONH2)をトランスシクロオクテンで官能化するための一般的な手順。
アミノオキシ官能化カスタム合成ペプチド(1当量)を、600μLの0.3M酢酸アニリニウム緩衝液(pH4.6)中に溶解した。市販のトランス-シクロオクテン-PEG3-アルデヒド(図4、化合物16)(1.5当量)を、17μLのクロロホルムに溶解し、撹拌したペプチド溶液に滴下した。反応物をHPLC(PDA検出器、280nm)でモニターした。官能化ペプチドを、HPLC(MeCN(B)-H2O(A)+0.1%のTFA;20-30-20%B、30分)で精製した。tR=α-MSH-TCO;23分、tR TOC-TCO;25分、tR=エキセンディン-4-TCO;15.5分。HPLCから回収した画分中のMeCNを加圧空気で蒸発させ、主に水を含有する画分を凍結した(-80℃)。凍結した画分を、凍結乾燥して、その後そのまま使用した。必要に応じて、画分を、そのまま使用し、HPLCから回収した直後に選択したテトラジンと混合した。このような場合、IEDDA環化付加中に95%以上の水が含まれるように溶液を希釈した。
【0194】
実施例6.PSMA-トランス-シクロオクテンの合成(化合物18、図5)。
アルゴン雰囲気下での乾燥DMF(300μL)中のTCO-NHS(4.5mg、17μmol)およびDIPEA(3.2mg、25μmol)に、乾燥DMF(250μL)中のPSMA-アミン(17)(5mg、15.7μmol)を滴下し、一晩撹拌した。PSMA-TCO(18)をHPLCによって精製して、5.3mg(71%)を得た。LC-MS(+)m/z(%)=472.5(100)[M+H]+、320.3(96)[M-TCO-ギ酸塩]+R=10.3分。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ(ppm) = 5.59 (m, 1H), 5.50 (m, 1H), 4.31 (m, 1H), 4.25 (s, 1H), 3.31 (s, 2H), 3.06 (m, 2H), 2.41 (m, 2H), 2.33 (m, 2H), 2.33 (m, 2H), 2.15 (m, 2H), 1.94 (m, 6H), 1.68 (m, 4H), 1.40 (m, 4H), 1.29 (m, 2H), 13C NMR (101 MHz, CD3OD) δ (ppm) = 136.10, 133.76, 81.59, 54.07, 53.59, 42.23, 39.67, 35.18, 33.49, 33.25, 32.11, 31.15, 30.55, 29.03, 23.86.
【0195】
実施例7.PSMA-トラネキサム酸-トランス-シクロオクテン(化合物24、図6)の合成
ジ-tert-ブチル((6-(4-(((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)メチル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド)-1-(tert-ブトキシ)-1-オキソヘキサン-2-イル)カルバモイル)グルタミン酸塩(21)。乾燥DMF(400μl)中のHBTU(76.6mg、201.5μmol)およびDIPEA(26.4mg、206μmol)に、乾燥DMF(600μL)中のFmoc-トラネキサム酸(19)(78mg、206μmol)を加え、アルゴン雰囲気下で10分間撹拌した。ジ-tert-ブチル((6-アミノ-1-(tert-ブトキシ)-1-オキソヘキサン-2-イル)カルバモイル)グルタミン酸塩(20)(25mg、51.5μmol)を乾燥DMF(400μL)に加え、アルゴン下で2時間撹拌した。LC-MS(+)m/z(%)=850.1(4)[M+H]+、872.1(3)[M+Na]+R=18.5分。
【0196】
ジ-tert-ブチル((6-(4-(アミノメチル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド)-1-(tert-ブトキシ)-1-オキソヘキサン-2-イル)カルバモイル)グルタミン酸塩(22)。さらなる精製なしで、1.4mLのピペリジンを、(21)に加え、室温で10分を超えて撹拌した。溶媒を蒸発させ、生成物を5mLの酢酸エチルおよび3×2mLのブライン溶液で抽出した。LC-MS(+)m/z(%)=628.0(100)[M+H]+R=11.3分。
【0197】
((5-(4-(アミノメチル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド)-1-カルボキシペンチル)カルバモイル)グルタミン酸(23)。さらなる精製なしで、(22)を、3mLのCH2Cl2/TFA(1:1)に溶解し、室温で90分間撹拌した。生成物をHPLC(tR=7.2分)によって精製して、10.2mg(43%)を得た。LC-MS(+)m/z(%)=459(100)[M+H]+R=2.6分。
【0198】
(E)-((1-カルボキシ-5-(4-((((シクロオクト-4-エン-1-イルオキシ)カルボニル)アミノ)メチル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド)ペンチル)カルバモイル)グルタミン酸(24)。乾燥DMF(600μL)中のTCO-NHS(13mg、49μmol)およびDIPEA(8.9mg、70μmol)(23)に、250μLの乾燥DMF中で滴下し、アルゴン雰囲気下で一晩撹拌した。生成物をHPLC(tR=4.5分)によって精製して、5.63mg(41%)を得た。LC-MS(+)m/z(%)=611(100)[M+H]+R=11.4分。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ (ppm) = 5.61 (m, 1H), 5.52 (m, 1H), 4.32 (m, 2H), 4.26 (m, 1H), 3.17 (m, 2H), 3.01 (s, 1H), 2.92 (m, 2H), 2.88 (s, 1H), 2.43 (m, 2H), 2.34 (m, 2H), 2.15 (m, 2H), 1.98 (m, 4H), 1.80 (m, 5H), 1.70 (m, 4H), 1.51 (m, 2H), 1.44 (m, 5H), 0.98 (m, 2H), 13C NMR (101 MHz, CD3OD) δ (ppm) = 136.10, 133.77, 53.94, 53.50, 46.47, 42.24, 39.92, 39.65, 39.09, 35.18, 33.50, 33.19, 32.11, 30.95, 30.24, 29.97, 28.93, 26.45, 23.89.
【0199】
実施例8.手順a)EDDA共役前の[18F]4(AmBF3-Tz)、[18F]8および[18F]12の放射性標識
18F]フッ化物を、150μLの0.9%NaClを含む18F-NaFとして反応バイアルに溶出し、アルゴンガス流下で10分間125℃で濃縮して、10~25μLの反応容量に達した。5μLのアセトニトリル中のテトラジン(100nmol)を、10μLのピリダジンHCl緩衝液(pH2.0)を含むポリプロピレンチューブに加えた。反応混合物を、83℃でさらに10分間加熱し、600μLのミリQ:EtOH(50:50)でクエンチした。代替的に、[18F]フッ化物を、PS-HCO3カートリッジに捕捉し、テトラジンを含むチューブに溶出した(100μL、ピリダジンHCl緩衝液、pH2.0)。混合物を、~10-20μLに達するまでアルゴン流下において85℃で濃縮し(t=15分)、超純水(600μL)でクエンチし、Sep-Pak C18カートリッジで精製して、トレーサーを得た。化合物4(AmBF3-Tz)を18F放射性同位体で放射性標識し、結果として[18F]4をもたらす手順が図7に提示される。手順a)の例が図8aに示される。
【0200】
実施例9.手順b)AmBF3-Tzの放射性標識前のpre-IEDDA共役
20μLの乾燥アセトニトリル中のテトラジン-AmBF4、8または12(1.85μmol)に、ミリQ水(800μL)中の等モル量のTCO官能化ペプチド18または24を加えた。反応物を、60℃まで20分間加熱した。生成物を、HPLCにより精製して、(28)(49%)(tR=7.9分)LC-MS(+)m/z(%)=811(100)[M+H]+R=8.8分を得たか、または(29)(48%)(tR=9.5分)LC-MS(+)m/z(%)=950(100)[M+H]+R=9.5分を得た。手順b)による合成経路の例が図8bに示される。
【0201】
実施例10.TCO官能化ペプチドTyr3-オクトレオチド(25)、α-MSH、エキセンディン-4、PSMA(18)およびPSMA-トラネキサム酸(24)と、[18F]AmBF3-Tz([18F]4)またはそのPEG化された誘導体[18F]8または[18F]12とのIEDDA共役による、生成物[18F]AmBF3-Tyr3-オクトレオチド([18F]25)、[18F]AmBF3-α-MSH([18F]26)、[18F]AmBF3-エキセンディン-4([18F]27)および[18F]AmBF3-PEG9-エキセンディン-4([18F]30)、[18F]AmBF3-PSMA([18F]28)および[18F]AmBF3-PSMA-トラネキサム酸([18F]29)の産出。
トランス-シクロオクテンによるペプチド(α-MSH-ONH2、エキセンディン-4-ONH2、Tyr3-オクトレオチド-ONH2)の官能化を、実施例5に記載されるように行った。トランスシクロオクテン官能化ペプチド(ミリQ水中20~50μL、50nmol)を、放射性標識したテトラジンの反応混合物(20μL)に加え、60℃で15分間加熱した。反応混合物を、ミリQ水で希釈し、超純ミリQ水(45mL)で洗浄することによって2つのC18カートリッジで精製し、150μLのエタノールおよび200μLの0.01M PBSで溶出した。精製したペプチド溶液を、静脈内投与のために5%未満のエタノールを含むように0.01M PBSで希釈した。粗混合物を、30分間、HPLC:MeCN(B)-H2O(A)+0.1%のTFA 20-30-20%Bを用いて分析した。HPLCでの保持時間:化合物[18F]26([18F]AmBF3-α-MSH)に対するtR;14.7分、化合物[18F]25([18F]AmBF3-Tyr3-オクトレオチド)に対するtR;17.5分、化合物[18F]27([18F]AmBF3-エキセンディン-4)に対するtR;15.0~16.0分、化合物[18F]30([18F]AmBF3-PEG9-エキセンディン-4)に対するtR、15.8~16.5分。HRMS(E/Z)-[18F]25による実測値は、[M+H+Na]2+ 1048.49255(-0.0855ppm)であった。これらの結果は、トレーサー化合物を使用することによって、穏やかな条件下でさまざまな異なるペプチドを迅速に放射性標識することができることを実証している。
【0202】
【化3】
【0203】
実施例11.pre-IEDDA生成物の放射性標識
フッ素-18(1.8GBq)を、PS-HCO3カートリッジから100μLの0.9%NaCl溶液またはピリダジンHCl緩衝液(pH2、100μL)で溶出し、100℃(0.9%NaCl)またはピリダジンHCl緩衝液を使用したときには80~85℃で10~15μLの容積になるまで蒸発させた。10μLのピリダジン緩衝液(pH=2)中の28または29(100nmol)を外部ラインを介して加え、結果として得た溶液を85℃で10分間加熱した。10mLのミリQ水で希釈した後、活性物質(activity)を、プレコンディショニングしたC18カートリッジに積載し、追加の40mLのミリQ水で洗浄した後、400μLの50%EtOH/PBSで溶出して、(9.2±3.8GBq/μmol)の比活性を有する[18F]28(RCY:5.2±1%)および(16.3±4.3GBq/μmol)の比活性を有する[18F]29(RCY:11.8±3.1%)を得た。
【0204】
実施例12.細胞および細胞培養
SSTRを発現するラット膵臓腫瘍細胞株AR42Jを、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(マナッサス、VA)から入手した。C4-2細胞(ATCC(登録商標)CRL-3314(商標))を、18%のF12培地(シグマ)、10%のFBS(ギブコ)、および1%のT培地を補足したDMEM培地(ギブコ)中に培養した。両方の細胞株を、5%のCO2を含む加湿インキュベータ内において37℃で増殖させた。80%~90%のコンフルエンスまで増殖させた細胞を、インビトロまたはインビボでの実験に使用した。マウス皮膚黒色腫B16/F10細胞を、加湿インキュベータ内において37℃でGlutaMax(1×最終濃度、10%のFBSおよびPen-Strep)を補足したCO2独立培地(ライフ テクノロジーズ ギブコ、カタログ番号18045054)で培養した。B16/F10細胞の生存率は97%であった。C4-2細胞(ATCC(登録商標)CRL-3314(商標))を、18%のF12培地(シグマ)、10%のFBS(ギブコ)、および1%のT培地を補足したDMEM培地(ギブコ)中に培養した。両方の細胞株を、5%のCO2を含む加湿インキュベータ内において37℃で増殖させた。80%~90%のコンフルエンスまで増殖させた細胞を、インビトロまたはインビボでの実験に使用した。
【0205】
実施例13.[18F]AmBF3-Tz([18F]4)の非特異的B16/F10黒色腫細胞の取り込み。
500,000細胞/ウェルを、6ウェルプレート上で一晩播種した。増殖培地を除去し、放射性トレーサー[18F]4を含む反応培地を加えた。遊離画分中の放射性トレーサーの量を判定するために、指定された時点(15、30、60および120分)で、反応培地を、除去して、マイクロチューブに回収し、その後、細胞を1mLの低温の1×PBSで洗浄し、上清を同じマイクロチューブに回収した。細胞に低温のグリシン緩衝液(1mL)を加え、氷浴上で5分間インキュベートし、上清を除去し、当該手順を繰り返し、細胞を低温の1×PBSで洗浄し、すべての上清を同じマイクロチューブに回収することによって、膜結合画分を回収した。内部移行画分を判定するために、1MのNaOHを細胞に加え、周囲温度で10分間インキュベートしておいた。上清を除去し、細胞を低温の1×PBSで2回洗浄し、上清を同じマイクロチューブに回収した。各相で別々に回収した上清を、ガンマカウンターで測定して、各画分の放射能比(%)を判定した。遊離画分、膜結合画分、および内部移行画分の間で判定された放射能分布に基づいて、[18F]4が、B16/F10細胞における非特異的取り込みを実証しなかったが、研究全体を通して細胞外の遊離画分に留まったことが明確に示された(15分での99.3±0.09%から240分での99.3±0.08%、n=3)。付加物[18F]4の非特異的細胞取り込みは、標的部分を放射性標識するために使用されるトレーサー化合物または付加物が、細胞膜上の実体に結合せず、ペプチドなどの標的部分がなければ細胞に内部移行しないことを実証している。前述の画分間の放射能分布が図9に示される。
【0206】
実施例14.[18F]AmBF3-Tzと共役したTCO官能化Tyr3-オクトレオチド([18F]AmBF3-Tyr3-オクトレオチド、[18F]25)のAR42J細胞取り込み。
100万細胞/ウェルを、6ウェルプレート上で一晩播種した。増殖培地を除去し、放射性トレーサー[18F]25を含む反応培地を加えた。細胞取り込みの特異性を研究するために、一組の細胞を、非修飾オクトレオチドの1μMの溶液の存在下でコインキュベートした。遮断オクトレオチドとして使用される非修飾オクトレオチドは、オクトレオチドペプチドのみを含み、これを、TCO部分またはトレーサー化合物には共役させず、それによって、放射性標識させなかった。遊離画分中の放射性トレーサーの量を判定するために、指定された時点(15、30、60および120分)で、反応培地を除去して、マイクロチューブに回収し、その後、細胞を1mLの低温の1×PBSで洗浄し、上清を同じマイクロチューブに回収した。細胞に低温のグリシン緩衝液(1mL)を加え、氷上で5分間インキュベートし、上清を除去し、当該手順を繰り返し、細胞を低温の1×PBSで洗浄し、すべての上清を同じマイクロチューブに回収することによって、膜結合画分を回収した。内部移行画分を判定するために、1MのNaOHを細胞に加え、周囲温度で10分間インキュベートしておいた。上清を除去し、細胞を低温の1×PBSで2回洗浄し、上清を同じマイクロチューブに回収した。各相で別々に回収した上清を、ガンマカウンターで測定して、各画分の放射能%を判定した。遊離画分、膜結合画分、および内部移行画分間の判定された放射能分布に基づいて、[18F]25の細胞取り込みが特異的であることは明らかであった。取り込み(内部移行)(15分での3.21±0.06%から240分での6.12±0.63%、n=3)を、過剰な非修飾オクトレオチドによって効率的に遮断した(遮断:15分での0.58±0.11%から240分での0.73±0.04%、n=3)。[18F]25の細胞取り込みの遮断は研究全体を通じて効率的であったが、非遮断条件での取り込みは時間に応じて増加し続けた。非遮断(内部移行)状態と遮断状態における前述の画分間の放射能分布が図10に示される。AR42J細胞および化合物[18F]25を用いたこれらの結果は、放射性標識された付加物の内部移行が、(本例ではソマトスタチン受容体に)標的特異的であり、それぞれの標的実体への付加物の標的部分のアクセスを遮断することによって防止され得ることを実証している。
【0207】
実施例15.対照SCIDマウスにおける[18F]AmBF3-Tz([18F]4)のPET/CTスキャン。
18F]AmBF3-Tz([18F]4)を、0.01MのPBS中の10%のエタノールに製剤し、SCIDマウスに静脈内投与した。PET/CT画像を、Inveon PET/CTおよびMolecubes PETおよびCTを使用して取得した。PEC/CT(図11)および体内分布研究(図12aおよび12b)において、トレーサー([18F]4)は、骨取り込みの欠如によって証明された優れた安定性を実証した。トレーサーのための主な排出経路は腎臓を経由するものであったが、肝臓および胆嚢には少量の蓄積が見られ(図11)、これは最適な補欠分子族のプロファイルを示している。
【0208】
実施例16.SCIDマウスにおける[18F]AmBF3-Tz([18F]4)の静脈内投与後の放射能の排出および[18F]AmBF3-Tz([18F]4)の静脈内投与後の尿への放射能の排泄。
18F]AmBF3-Tz([18F]4)を、0.01MのPBS中の10%のエタノールに製剤し、SCIDマウスに静脈内投与した。選択した臓器(心臓、肝臓、腎臓、肺、筋肉、膀胱)の周囲の対象領域(ROI)を描画し、そのROIの単位体積あたりの放射能の比率を測定することによって、排出プロファイルを提示する標準取込値(SUV)(図13aおよび13b)をPET画像から判定し、注入用量に対して標準化した。トレーサー([18F]4)は、骨取り込みの欠如によって証明された優れた安定性を実証した。トレーサーのための主な排出経路は腎臓を経由するものであったが、肝臓および胆嚢にはごく微量の蓄積が見られ、これは最適な補欠分子族のプロファイルを示している。マウス組織における時間に応じた放射能の排出(図13aおよび13b)は、付加物が主に腎臓を介して迅速に排出されることを示唆している。
【0209】
実施例17.[18F]25の体内分布
18F]AmBF3-Tyr3-オクトレオチド([18F]25、0.2nmol、150μL、~1MBq)を、0.01MのPBS中の4%のエタノール中に製剤し、AR42J腫瘍を有するRj:NMRI-Foxn1 nu/nuマウスに静脈内投与した。投与後の所定の時点(t=30、60、120および240分)で、選択した臓器を、抽出し、水で洗浄し、ブロット乾燥した後、ガンマカウントを行った。ガンマカウントしたデータに基づいて、組織1グラムあたりの注入用量(ID)のパーセンテージ(ID%/g)値を、式[(観察したガンマカウント/ID)×100]/組織の重量(g)を用いて計算した。結果として得た値を、図14に提示される体内分布グラフにプロットした。トレーサー[18F]25は、主に腎臓経由での排出を伴う、腫瘍への蓄積および血液循環時間の延長を実証したが、一部の肝臓取り込みも実証した。骨取り込みは著しく低く、これは、トレーサーがインビボでの脱フッ素化に対して極めて安定していることを示唆していた。
【0210】
実施例18.AR42J腫瘍を有するマウスにおける[18F]AmBF3-Tyr3-オクトレオチド([18F]25)のPET/CT。
18F]AmBF3-Tyr3-オクトレオチド([18F]25、0.2nmol、150μL、~1MBq)を、0.01MのPBS中の4%のエタノール中に製剤し、AR42J腫瘍を有するRj:NMRI-Foxn1 nu/nuマウスに静脈内投与した。AR42J腫瘍における取り込みの特異性を調査するために、放射能の蓄積を遮断する遮断オクトレオチド(44nmol)をマウスに同時投与した。PET/CT画像を、Molecubes PETおよびCTを用いて取得した。PEC/CT(図15)では、トレーサー([18F]25)は、骨取り込みの欠如によって証明された優れた安定性を実証した。トレーサーに対する主な排出経路は、腎臓を通って尿に入るものであったが、肝臓、胆嚢、および腸において微量の蓄積が検出され、これは、PET画像におけるいくつかのバックグラウンド放射能レベルを占めていた。第1の動物(図15の左側の動物)には、遮断オクトレオチドおよび放射性標識した[18F]25を静脈内に同時投与した。第2の動物(図15の右側の動物)は、遮断オクトレオチド(45μg、44nmol)なしで[18F]25のみを受け、右肩の皮下腫瘍の視覚化を可能にした。放射性標識した[18F]25の遮断は成功し、これは、図15のPET画像比較に見られるように、腫瘍における放射能の特異的取り込みを実証していた(T=腫瘍)。
【0211】
実施例19.AR42J腫瘍を有するマウスにおける[18F]AmBF3-Tyr3-オクトレオチド([18F]25)の静脈内投与後の放射能の排出
18F]AmBF3-Tyr3-オクトレオチド([18F]25、0.2nmol、150μL、~1MBq)を、0.01MのPBS中の4%のエタノール中に製剤し、AR42J腫瘍を有するRj:NMRI-Foxn1 nu/nuマウスに静脈内投与した。排出プロファイルを提示する標準取込値(SLIV)(図16および17)を、選択した臓器(心臓、肝臓、腎臓、肺、筋肉、膀胱、腫瘍)の周囲のROIによってPET画像(図15)から判定し、SUVを、実施例16に開示される通りに計算した。マウスの静脈内に[18F]25単独(非遮断)を投与した後または[18F]25および遮断オクトレオチド(遮断)を同時投与した後のさまざまな時点で腫瘍内のSUVを比較することによって、AR42J腫瘍を有するマウス(n=2/群)における[18F]25の結合特異性を判定した。結果は、AR42J腫瘍における[18F]25の結合が、特異的であり、遮断オクトレオチドの同時投与によって遮断することができること(遮断)を実証している(図16)。トレーサー([18F]25)を、主に腎臓を介して排出し、時間に応じて減少した肝臓における蓄積はごく微量であった(図17)。腫瘍内の放射能は、およそ40分でピークに達し、それ以降は比較的安定したままであった。腫瘍における放射能の遮断は、SUV比較データで成功したことが実証され(図17)、これは、腫瘍取り込みが標的部分に特異的であることを証明していた。
【0212】
実施例20.[18F]AmBF3-PSMA([18F]28)および[18F]AmBF3-トラネキサム酸-PSMA([18F]29)のインビトロでの細胞内部移行
C4-2細胞またはLNCaP細胞を、実験の24時間前に6ウェルプレート(6×105/ウェル)に蒔き、培地を、実験の30分前にCO2非依存性培地に変更した。各ウェルにおける細胞を、[18F]28または[18F]29(15~20GBq/mmol)CO2非依存培地の1mLの250nM溶液でインキュベートした。特異的な細胞取り込みを、2-(ホスホノメチル)ペンタン二酸(2-PMPA)(最終濃度、400μM、Sigma)で遮断することによって判定した。すべての実験を37℃で行った。1mLの氷冷リン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄することによって、30分、60分および120分後にインキュベーションを終了した。続いて、細胞を、1mLのグリシンHCl緩衝液(50mM;pH2.8)で各5分間2回インキュベートして、表面結合画分を除去し、上清を回収した。1mLの氷冷リン酸緩衝生理食塩水でのさらなる洗浄工程後に、細胞を、0.5mLのNaOH(1N)で溶解して収集し、放射能をγカウンターで測定した。特異的な細胞取り込みを、105個の細胞に結合した最初に加えられた放射能のパーセンテージとして計算した(%IA/105細胞)。すべての実験を3回繰り返して行った。この実験の結果に基づくと、細胞へのトレーサー[18F]28および[18F]29の取り込みは、2-PMPAの遮断でチャレンジしたときに、60分で有意に遮断された([18F]28に対して2.05±0.28%対0.58±0.09%および[18F]29に対して1.05±0.09%対0.31±0.03%)ため、特異的である。
【0213】
実施例21.[18F]AmBF3-PSMA([18F]28)および[18F]AmBF3-トラネキサム酸-PSMA([18F]29)のPET/CT。
18F]28または[18F]29のPET/CT画像法を、C4-2腫瘍を有するマウス(n=3~4)において行い、取り込みの特異性を、2-PMPAで遮断することによってチャレンジした。遮断するために、[18F]28または[18F]29の注入の30分前に、マウスに、尾静脈注射により0.4mMの2-PMPA(100μL;40nmol)を注入した。放射性トレーサー、[18F]28または[18F]29を、0.01mMの溶液(100μL;1nmol)として尾静脈注射により投与した。PET/CT画像を、Inveon PET/CTおよびMolecubes PETおよびCTを使用して取得した。PET/CTでは、両方のトレーサー([18F]28と[18F]29)が、骨取り込みの欠如によって証明された良好から優れた安定性を実証した。トレーサーに対する主な排出経路は、腎臓を通って尿に入るものであった。[18F]29に関して図18に示すように、トレーサー取り込みが腫瘍(T)において有意に減少した場合に2-PMPAで取り込みを遮断することによって、特異的な腫瘍取り込みが実証された。
【0214】
実施例22.[18F]AmBF3-PSMA([18F]28)および[18F]AmBF3-トラネキサム酸-PSMA([18F]29)の体内分布。
18F]28または[18F]29の体内分布を、C4-2腫瘍を有するマウスにおいて判定し、取り込みの特異性を、2-PMPAで遮断することによってチャレンジした。各実験を3回繰り返して行った。遮断するために、[18F]28または[18F]29の注入の30分前に、SCIDマウスに、尾静脈注射により0.4mMの2-PMPA(100μL;40nmol)を投与した。
【0215】
放射性トレーサー、[18F]28または[18F]29を、0.01mMの溶液(100μL;1nmol)として尾静脈注射により投与した。注入の1時間後に、動物を屠殺し(CO2窒息)、対象の臓器を解剖し、ブロット乾燥し、計量した。放射能を、γカウンター(1480 Wizard、パーキンエルマー(PerkinElmer))で測定し、1グラム当たりの注入用量のパーセンテージ(%ID/g)として計算した。トレーサー[18F]28または[18F]29に対する腫瘍関連取り込み(図19)を、2-PMPAの事前注入によって遮断した([18F]28に対して7.51±0.69%対1.18±0.19%および[18F]29に対して12.87±4.83%対1.90±0.66%)。高い取込値を示した他の臓器は、腎臓、脾臓、および胆嚢であり、ここで、遮断薬の適用によって取り込みも減少した。
【0216】
実施例23.[18F]AmBF3-PSMA([18F]28)、[18F]AmBF3-トラネキサム酸-PSMA([18F]29)の貯蔵寿命および血漿の安定性。
1×PBS中で製剤した[18F]28または[18F]29の貯蔵寿命の安定性を判定するために、5μLのサンプルを、室温で保存した後に、0.5、1、2、3、4、5、および6時間放射性TLCによって分析した(n=3)。[18F]28および[18F]29に対して、最大6時間までPBS中の安定性(>95%)が証明された。酵素安定性の測定のために、400μLのヒト血漿を、400μLの[18F]28または[18F]29製剤を用いて37℃でインキュベートした(n=3)。0.5、1、2、3、および4時間後に、100mLのサンプルを混合物から除去し、タンパク質を、50μLのアセトニトリルを加えることによって沈殿させ、13,000rpmでの遠心分離によって上清から分離した。上清を放射性TLCで分析した。[18F]28および[18F]29に対して、最大4時間まで血漿中の安定性(>95%)が証明された。化合物[18F]28および[18F]29は、両方とも製剤溶液およびヒト血漿において、実験の観察期間全体にわたって有意な分解を示さなかった。
【0217】
前述の説明は、特定の実施および実施形態の非限定的な例として、本発明を実施するために発明者が現在熟考している最良のモードの完全かつ有益な説明を提供している。しかし、本発明が、上記に提示された実施形態の詳細に限定されるものではなく、本発明の特徴から逸脱することなく、同等の手段を使用する他の実施形態または実施形態の異なる組み合わせで実施することができることは当業者に明らかである。
【0218】
さらに、上記で開示した例示的な実施形態の特徴のいくつかは、他の特徴の対応する使用なしで利点として使用され得る。したがって、前述の説明は、本発明の原理を例示するものにすぎないとみなされるべきであり、本発明を限定するものではない。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。
【0219】
さまざまな拘束力のない例示的な態様および実施形態が上記で説明されてきた。前述の実施形態は、さまざまな実装で利用され得る選択された態様または工程を説明するためにのみ使用されている。いくつかの実施形態は、特定の例示的な態様のみを参照して提示され得る。対応する実施形態が、他の例示的な態様にも同様に適用され得ることが理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12a
図12b
図13a
図13b
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】