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特表2024-501949ソラネソールワクチンアジュバント及びその調製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ソラネソールワクチンアジュバント及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/39 20060101AFI20240110BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240110BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240110BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61K39/39
A61P37/04
A61K39/00 G
A61K39/00 H
A61K39/00 Z
A61K47/34
A61K47/32
A61K47/12
A61K47/28
A61K47/24
A61K47/10
A61K47/02
A61K47/26
A61K9/107
A61K47/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538911
(86)(22)【出願日】2021-10-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 IB2021059540
(87)【国際公開番号】W WO2022136952
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/130,366
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.BRIJ
3.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】508296509
【氏名又は名称】アクセス ツー アドバンスト ヘルス インスティチュート
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】フォックス,クリストファー ブラッドフォード
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076BB01
4C076BB11
4C076CC07
4C076DD23D
4C076DD38D
4C076DD43F
4C076DD59S
4C076DD63F
4C076DD67D
4C076DD70F
4C076EE03F
4C076EE23F
4C076FF14
4C076FF16
4C076FF43
4C076FF51
4C076FF68
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA01
4C085EE06
4C085FF12
4C085GG01
4C085GG08
(57)【要約】
本開示は、ワクチン組成物中のアジュバントとしてのソラネソールの使用、並びに関連する予防及び治療方法を記載する。ソラネソールは、ワクチン組成物において、同様の又はより優れた免疫刺激効果でスクアレンを置き換えるために使用され得る。室温で固体であるソラネソールは、水溶液中でその融点を超えて加熱して分散液を形成することによって、ワクチン組成物に使用するために製剤化され得る。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の免疫系を刺激するのに十分な量のソラネソールを含む、免疫刺激組成物。
【請求項2】
前記ソラネソールが、ソラネソールの融点未満で固体脂質ナノ粒子の形態にあり、前記ソラネソールの融点を超えるとエマルジョンの形態にある、請求項1に記載の免疫刺激組成物。
【請求項3】
前記ソラネソールの融点が、約33~35℃である、請求項2に記載の免疫刺激組成物。
【請求項4】
前記組成物が、約5℃の温度で少なくとも12ヶ月間安定している、請求項1に記載の免疫刺激組成物。
【請求項5】
少なくとも1つの界面活性剤を更に含む、請求項1に記載の免疫刺激組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの界面活性剤が、親水性界面活性剤を含む、請求項5に記載の免疫刺激組成物。
【請求項7】
前記親水性界面活性剤が、約10~30のHLB値を有する、請求項6に記載の免疫刺激組成物。
【請求項8】
前記親水性界面活性剤が、Tween、Tween 80、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80)、Brij界面活性剤、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(プルロニックF68)、ポリエチレン660 12-ヒドロキシステアレート、コール酸ナトリウム、グリセロデオキシコレート(glycerodeoxy cholate)、Prij界面活性剤、又はポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのコポリマー(ポロキサマー188)のうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の免疫刺激組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの界面活性剤が、疎水性界面活性剤を含む、請求項5に記載の免疫刺激組成物。
【請求項10】
前記疎水性界面活性剤が、約1~6のHLB値を有する、請求項9に記載の免疫刺激組成物。
【請求項11】
前記疎水性界面活性剤が、リン脂質、span、ソルビタントリオレエート(Span 85)、ソルビタンエステル、ホスファチジルコリン、卵ホスファチジルコリン、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロール-3-ホスホコリン(POPC)、DLPC、DPPC、DSPC、又はレシチンのうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の免疫刺激組成物。
【請求項12】
疎水性界面活性剤及び親水性界面活性剤を更に含む、請求項5に記載の免疫刺激組成物。
【請求項13】
前記疎水性界面活性剤が、リン脂質を含み、前記親水性界面活性剤が、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのコポリマー(ポロキサマー188)を含む、請求項12に記載の免疫刺激組成物。
【請求項14】
等張化剤を更に含む、請求項1に記載の免疫刺激組成物。
【請求項15】
前記等張化剤が、生理食塩水、グリセロール、糖、又は糖アルコールである、請求項14に記載の免疫刺激組成物。
【請求項16】
抗酸化剤を更に含む、請求項1に記載の免疫刺激組成物。
【請求項17】
前記抗酸化剤が、アルファ-トコフェロール(ビタミンE)である、請求項16に記載の免疫刺激組成物。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の免疫刺激組成物と、抗原と、を含む、ワクチン組成物であって、前記免疫刺激組成物が、アジュバントを含まない前記免疫刺激組成物によって誘導される免疫応答よりも、前記抗原に対するより大きな免疫応答を誘導するのに十分な量で存在する、ワクチン組成物。
【請求項19】
前記抗原が、ポリペプチド、ポリペプチドをコードする核酸、又は病原体である、請求項18に記載のワクチン組成物。
【請求項20】
前記抗原が、H5N1である、請求項18に記載のワクチン組成物。
【請求項21】
請求項1~17のいずれか一項に記載の免疫刺激組成物と、薬学的に受容される担体又は賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項22】
請求項18~20のいずれか一項に記載のワクチン組成物と、薬学的に許容される担体又は賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項23】
請求項1~17のいずれか一項に記載の免疫刺激組成物を含む単一バイアルであって、前記免疫刺激組成物が、前記バイアル内に含有されている、単一バイアル。
【請求項24】
請求項18~20のいずれか一項に記載のワクチン組成物を含む単一バイアルであって、前記ワクチン組成物が、前記バイアル内に含有されている、単一バイアル。
【請求項25】
請求項21に記載の医薬組成物を含む単一バイアルであって、前記医薬組成物が、前記バイアル内に含有されている、単一バイアル。
【請求項26】
対象における免疫応答を刺激するための方法であって、請求項1~17のいずれか一項に記載の免疫刺激組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項27】
対象における免疫応答を刺激するための方法であって、請求項18~20のいずれか一項に記載のワクチン組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項28】
対象における免疫応答を刺激するための方法であって、請求項21に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項29】
前記免疫応答が、非特異的免疫応答である、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
免疫応答を刺激することが、前記対象における抗原特異的免疫応答を誘発又は増強することを含む、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
水性ソラネソール分散液を生成するための方法であって、前記方法が、
a.ソラネソールの融点を超えて加熱された緩衝水溶液にソラネソールを添加することと、
b.前記緩衝水溶液及び前記ソラネソールを均質化して、前記水性ソラネソール分散液を作製することと、
c.前記ソラネソールの融点を超える温度を維持しながら、粒径を約100nm以下に低減することと、を含む、方法。
【請求項32】
前記緩衝水溶液が、界面活性剤を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記界面活性剤が、親水性界面活性剤を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記親水性界面活性剤が、約10~30のHLB値を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記親水性界面活性剤が、Tween、Tween 80、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80)、Brij界面活性剤、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(プルロニックF68)、ポリエチレン660 12-ヒドロキシステアレート、コール酸ナトリウム、グリセロデオキシコレート(glycerodeoxy cholate)、Prij界面活性剤、又はポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのコポリマー(ポロキサマー188)のうちの少なくとも1つを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記界面活性剤が、疎水性界面活性剤を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記疎水性界面活性剤が、リン脂質を含み、前記親水性界面活性剤が、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのコポリマー(ポロキサマー188)を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記緩衝水溶液が、等張化剤を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記等張化剤が、生理食塩水、グリセロール、糖、又は糖アルコールである前記等張化剤を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
抗酸化剤を添加することを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
前記抗酸化剤が、前記ソラネソールを含む油相に添加される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記抗酸化剤が、アルファ-トコフェロール(ビタミンE)である、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
前記緩衝水溶液が、約45~50℃に加熱される、請求項31に記載の方法。
【請求項44】
前記粒径を低減することが、約40℃で実施される、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
前記粒径を低減することが、マイクロ流動化、高圧均質化、せん断力、又は超音波均質化によって実施される、請求項31に記載の方法。
【請求項46】
前記水性ソラネソール分散液を前記ソラネソールの融点未満に冷却することを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項47】
前記水性ソラネソール分散液を0.2μmフィルターに通すことを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項48】
抗原を前記水性ソラネソール分散液に添加することを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項49】
前記抗原が、ポリペプチド、ポリペプチドをコードする核酸、又は病原体である、請求項48に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年12月23日に出願された「Solanesol Vaccine Adjuvants and Methods of Preparing Same」と題する米国仮出願第63/130,366号に対する優先権を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(連邦政府資金による研究開発の記載)
本発明は、National Institute of Allergy & Infectious Diseasesによって授与された契約番号R01AU35673の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
【0003】
(発明の分野)
本開示は、概して、医薬製剤及びワクチン製剤の分野に関する。より具体的には、本開示は、ワクチン組成物中のアジュバントとしてのソラネソールの使用、並びに関連する予防及び治療方法を記載する。
【背景技術】
【0004】
免疫化の目標は、最小限の副作用で標的抗原に対する特異的かつ強力な免疫応答をもたらすことである。しかしながら、いくつかのワクチンは、標的抗原に対する免疫応答の強度及び持続時間を増強するためにアジュバントを必要とする。アジュバントは、抗体及びエフェクターT細胞機能に基づく防御免疫を刺激するのを助ける。全てではないがほとんどのアジュバントは、自然免疫系の構成成分に関与することによって、T及びB細胞応答を増強する。アジュバントはまた、免疫を付与するために必要な抗原用量を最小限に抑え得る。アルミニウム塩は、アジュバントとして使用された最初の物質の一部であった。現在、スクアレンエマルジョンは、最も広く用いられているワクチンアジュバント製剤の1つである。
【0005】
スクアレンは、室温で液体である天然に存在するオリゴイソプレン(すなわち、イソプレンの非常に低分子量のポリマー)である。スクアレンは主に、持続可能性の懸念を有する供給源であるサメの肝臓に由来する。スクアレンは植物源からも入手可能であるが、抽出はより困難である。世界的規模のパンデミックは、何十億ものワクチン用量が迅速に製造される必要性を生み出し得る。十分な量のスクアレンなどのアジュバントを得ることができないにより、ワクチン産生能力が制限され得る。
【0006】
アジュバントとして使用され得る新しい化合物、特に、持続可能な植物ベースの供給源から入手可能である強力な免疫刺激特性を有する化合物が、ワクチン開発に望ましい。以下の開示は、これら及び他の考慮事項に関して行われる。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、水中油型ワクチンなどの免疫刺激組成物中のアジュバントとしてのソラネソールの使用を記載する。本開示はまた、ソラネソールを含むワクチン組成物などの医薬組成物を生成するための方法を提供する。
【0008】
ソラネソールは、これまでワクチンアジュバントとして使用されていない、植物源から入手可能な9つのイソプレン単位を有する長鎖ポリイソプレノイドアルコール化合物である。スクアレンなどのワクチンに一般的に使用される他の代謝可能な油とは異なり、ソラネソールは室温で固体である。したがって、スクアレン及び他の油のために使用される製剤化技術は、ソラネソールとの使用に容易に適合可能ではない。
【0009】
本出願の発明者らは、ソラネソールを溶融し、組成物を高温に維持しながらエマルジョンを生成することによって、ソラネソールを医薬組成物に入れることができることを発見した。驚くべきことに、ソラネソールを用いてこの様式で作製されたワクチンは、代謝可能な油としてスクアレンを使用するワクチンと同様の応答を誘導することがわかった。このワクチンは更に、スクアレンを使用するワクチンと比較して同様の安定性を有することがわかった。
【0010】
アジュバントとしてソラネソールを含む免疫刺激組成物はまた、界面活性剤、等張化剤、及び抗酸化剤のうちの1つ以上を含み得る。ワクチン組成物は、抗原を更に含む。抗原は、ポリペプチド、ポリペプチドをコードする核酸、又は病原体などの任意の抗原性化合物であってもよい。界面活性剤は、親水性界面活性剤、疎水性界面活性剤、又はその両方であってもよい。一実施形態では、親水性界面活性剤は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(プルロニックF68)である。一実施形態では、疎水性界面活性剤は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、又はポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのコポリマー(ポロキサマー188)である。抗酸化剤は、アルファ-トコフェロール(ビタミンE)であってもよい。等張化剤は、グリセロールであってもよい。
【0011】
ソラネソールを含む免疫刺激組成物は、ソラネソールの融点を超えて加熱された緩衝水溶液中で固体ソラネソールを溶融することによって作製され得る。緩衝水溶液は、グリセロール及び界面活性剤を含有し得るリン酸緩衝液であってもよい。固体ソラネソールは、緩衝水溶液に添加され、溶解される。これにより、液体ソラネソールを含有する油相が作製される。1つ以上の界面活性剤が、緩衝水溶液に添加され得る。加熱された溶液を均質化することによって、分散液が形成される。分散液は、ソラネソールの融点を超える温度を維持しながらマイクロ流動化され得る。温度をソラネソールの融点を超えて維持しながら、分散したソラネソールの粒径は、約100nm以下に低減され得る。抗酸化剤が分散液の油相に添加され得る。
【0012】
本明細書に記載される様々な実施形態の特性のうちの1つ、いくつか、又は全てが、本開示と一致する他の実施形態を形成するために組み合わされ得ることを理解されたい。本開示のこれら及び他の態様は、以下の詳細な説明及び添付の図面を参照することによって明らかになるであろう。本明細書に開示される全ての参考文献は、それぞれが個別に組み込まれるかのように、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】4つの異なる油濃度のうちの1つでの、3つの異なるワクチン組成物のうちの1つとのインキュベーション後の、PBMC生存率を示す。バーの高さは、3つの異なる試料からの値の平均である。PBMCは、全てのワクチン製剤及び油濃度にわたって生存を維持した。
図2】ワクチン組成物を用いた刺激に応答したMCP-1発現のレベルを比較するELISAデータを示す。0.4%油又は0.2%油のソラネソールを用いて製剤化されたワクチン組成物は、同様の濃度のサメスクアレンを有するワクチン組成物よりもはるかに高い発現レベルをもたらした。
図3】ワクチン組成物を用いた刺激に応答したMip-1β発現のレベルを比較するELISAデータを示す。0.4%油又は0.2%油のソラネソールを用いて製剤化されたワクチン組成物は、同様の濃度のサメスクアレンを有するワクチン組成物よりもはるかに高い発現レベルをもたらした。
図4】ワクチン組成物を用いた刺激に応答したIL-8発現のレベルを比較するELISAデータを示す。0.4%油又は0.2%油のソラネソールを用いて製剤化されたワクチン組成物は、同様の量のサメスクアレンを有するワクチン組成物よりもはるかに高い発現レベルをもたらした。
図5】ワクチン組成物を用いた刺激に応答したIL-6発現のレベルを比較するELISAデータを示す。0.4%油又は0.2%油のソラネソールを用いて製剤化されたワクチン組成物は、同様の量のサメスクアレンを有するワクチン組成物よりもはるかに高い発現レベルをもたらした。
図6】総血清IgGによって測定されたrH5ワクチンに対する抗体応答を示す。アジュバントのサメスクアレンSE又はソラネソールSEを使用したワクチン製剤を用いた免疫化は、抗原rH5に対する有意に高いレベルの抗体を産生する。サメスクアレンSE又はソラネソールSEの使用の間に有意な差はなかった。
図7】血清IgG1によって測定されたrH5ワクチンに対する抗体応答を示す。IgG1は、中和抗体であり、Th2型免疫応答によって優先的に誘導される。
図8】血清IgG2cによって測定されたrH5ワクチンに対する抗体応答を示す。IgG2cは、Th1型免疫応答によって優先的に誘導される中和及びオプソニン化抗体である。
図9】ELISpotによる骨髄IgG形質芽球からのrH5特異的抗体応答を示す。アジュバントのサメスクアレンSE又はソラネソールSEの使用は、対照又はブドウ種子SEよりも有意に高いカウントの骨髄形質芽球を産生する。結果は、検出された細胞の数(Log10)として示され、各ドットは、単一の動物を表し、バーは、平均を表す。
図10】H5N1に対する機能的抗体を測定するウマ赤血球(red blood cell、RBC)を用いた赤血球凝集阻害(hemagglutination inhibition、HAI)アッセイの幾何平均力価(geometric mean titer、GMT)を示す。破線は、ウイルス滴定アッセイの検出限界(limit of detection、LOD)を示す。サメスクアレンSE及びソラネソールSEの両方が、対照又はブドウ種子SEを用いて製剤化されたワクチン組成物よりも有意に高い力価を示した。
図11】IFNgに特異的な抗体分泌細胞(antibody-secreting cell、ASC)の数を示す。アジュバントのサメスクアレンSE及びソラネソールSEは両方とも、対照又はブドウ種子SEと比較して有意に高いレベルのIFN-γ産生細胞を示した。
図12】IL-5に特異的なASCを示す。様々なアジュバント製剤にわたって、有意な差は観察されなかった。
図13】5℃での保存中のソラネソール(ロット番号QH592)を用いてアジュバント化されたワクチン組成物の油濃度を示す。点線は、理論目標濃度を示す。濃度は、上記の標準曲線を参照して決定された。
図14A】5℃のそれぞれ1ヶ月及び12ヶ月の保存後の、ソラネソールを用いてアジュバント化されたワクチン組成物の溶出のクロマトグラフを示す。
図14B】5℃のそれぞれ1ヶ月及び12ヶ月の保存後の、ソラネソールを用いてアジュバント化されたワクチン組成物の溶出のクロマトグラフを示す。
図15】5℃での保存中のサメスクアレン(ロット番号QH597)を用いてアジュバント化された全ての濃度のワクチン組成物の油濃度を示す。
図16A】5℃のそれぞれ1ヶ月及び12ヶ月の保存後の、ソラネソールを用いてアジュバント化されたワクチン組成物の溶出のクロマトグラフを示す。
図16B】5℃のそれぞれ1ヶ月及び12ヶ月の保存後の、ソラネソールを用いてアジュバント化されたワクチン組成物の溶出のクロマトグラフを示す。
図17】5℃で保存されたワクチン組成物についてのエマルジョン粒径安定性を示し、エラーバーは、各エマルジョンの1つのバッチからの3つの別個のアリコートの標準サイズ偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ソラネソールは、45個の炭素原子を有する9つのイソプレン単位から構成される非環式テルペンアルコールである。純粋なソラネソールは、室温でろう状の白色固体であり、水に不溶性である。ソラネソールは、植物、特にタバコの葉から抽出されるが、ジャガイモ、トマト、ナス、及びピーマンを含む他のナス科作物にも見られる。ソラネソールは、コエンザイムQ10及びビタミンK2などのユビキノン薬物の合成のための中間体として、製薬産業で使用される。ソラネソールは、抗菌、抗真菌、抗ウイルス、抗がん、抗炎症、及び抗潰瘍の活性を有する。ソラネソール誘導体ミセルは、疎水性薬物の送達に使用されている。ソラネソールの構造が以下に示される。
【0015】
【化1】
【0016】
当然のことながら、免疫刺激組成物は、抗原特異的免疫応答を誘発するために1つ以上の抗原の存在下で使用され得ることが理解されるであろう。あるいは、免疫刺激組成物は、非特異的免疫応答を誘発するために抗原の非存在下で使用され得る。
【0017】
一般的な技術
本開示の実施は、別段の指示がない限り、分子生物学、組換えDNA、生化学、及び化学の従来の技術を用い、これらは、当該技術分野の技術の範囲内にある。そのような技術は、文献で十分に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,Sambrook et al.,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press:(1989)、DNA Cloning,Volumes I and II(D.N.Glover ed.,1985)、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait ed.,1984)、MuUis et al.,米国特許第4,683,195号、Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames & S.J.Higgins eds.1984)、B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984)、論文、Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.)、及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989)を参照されたい。
【0018】
定義
以下の用語は、別段の指示がない限り、以下の意味を有する。定義されていない任意の用語は、それらの当該技術分野で認識されている意味を有する。
【0019】
本明細書において、「約」及び「から本質的になる」という用語は、別段の指示がない限り、示された範囲、値、又は構造の±20%を意味する。
【0020】
選択肢(例えば、「又は」)の使用は、選択肢のうちの一方、両方、又はそれらの任意の組み合わせのいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0021】
本明細書で使用される場合、「含む(include)」、「有する(have)」、及び「備える(comprise)」という用語は、同義的に使用され、これらの用語及びそれらの変化形は、非限定的であると解釈されることが意図される。
【0022】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の参照を含む。
【0023】
「個体」又は「対象」は、任意の哺乳動物である。哺乳動物としては、ヒト、霊長類、家畜、競技用動物、ペット(ネコ、イヌ、ウマなど)、及び齧歯類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
ビタミンEは、トコフェロール(tocopherol、TCP)及びトコトリエノールの両方を指し、天然に存在し得るか、又は合成であり得る。
【0025】
周囲温度は、15℃~25℃である。
【0026】
本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、DNA及びRNAを含む、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指す。ヌクレオチドは、例えば、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド若しくは塩基、及び/又はそれらの類似体、あるいはDNA若しくはRNAポリメラーゼによって、又は合成反応によってポリマーに組み込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの集合の前又は後に付与され得る。
【0027】
分散液
分散液は、1つの材料の分散粒子が別の材料の連続相中に分散されている系である。分散液は、任意の構造を示さず、すなわち、液体又は固体マトリックス(「分散媒」)中に分散された粒子(又はエマルジョンの場合、液滴)は、統計的に分布していると仮定される。分散液は、(液体中に分散している固体の場合)凝集粒子が互いに分離され、液体分散媒の内表面と分散粒子の表面との間に新しい界面が生成されるプロセスである。液体培体中の固体粒子の懸濁液を考察する場合、ゼータ電位は、分散度を定量化するために最も頻繁に使用され、ゼータ電位の高い絶対値を有する懸濁液は、十分に分散されていると考えられる。溶液は、溶液が長期間乱されないままである場合に分散粒子が沈降しない、均質な混合物を表す。
【0028】
水相
組成物の水相は典型的には、緩衝塩溶液(例えば、生理食塩水)又は水である。緩衝塩溶液は、塩(例えば、NaCl)、緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液)を含み、例えば、浸透圧調節剤(例えば、糖類)、ポリマー、界面活性剤、又はそれらの組み合わせを更に含むことができる、水溶液であってもよい。エマルジョンが非経口投与のために製剤化される場合、張度、すなわち、浸透圧が、組成物の投与後の膨潤又は急速な吸収などの望ましくない投与後の結果を防ぐために、正常な生理液と本質的に同じであるように、最終緩衝液を構成することが好ましい。水相を緩衝化して、正常な生理学的条件に適合するpHを維持することも好ましい。また、ある特定の場合には、組成物のある特定の構成成分の安定性を確実にするために、pHを特定のレベルに維持することが望ましくあり得る。例えば、等張性(すなわち、身体及び血液の正常細胞と同じ透過性溶質(例えば、塩)濃度)及び等浸透圧性である組成物を調製することが望ましくあり得る。張度を制御するために、組成物は、ナトリウム塩などの生理学的塩を含み得る。いくつかの態様では、例えば、塩化ナトリウム(NaCl)が、約0.9%(w/v)(生理食塩水)で使用され得る。存在し得る他の塩としては、例えば、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。非イオン性等張化剤もまた、張度を制御するために使用され得る。グルコース、マンノース、アラビノース、及びリボースなどのアルドースとして分類される単糖類、並びにフルクトース、ソルボース、及びキシルロースなどのケトースとして分類されるものは、本開示において非イオン性等張化剤として使用され得る。スクロース、マルトース、トレハロース、及びラクトースなどの二糖類も使用され得る。加えて、グリセロール、マンニトール、キシリトール、及びソルビトールなどのアルジトール(糖アルコールとも称される非環式ポリヒドロキシアルコール)は、本開示において有用であり得る非イオン性等張化剤である。非イオン性張度調節剤は、使用される薬剤に依存して、例えば、約0.1%~約10%又は約1%~約10%の濃度で存在し得る。
【0029】
水相は、緩衝化されてもよい。水、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス緩衝液、重炭酸緩衝液、炭酸緩衝液、コハク酸緩衝液などの任意の生理学的に許容される緩衝液が、本明細書で使用され得る。水性構成成分のpHは、好ましくは、4.0~8.0又は約4.5~約6.8である。一実施形態では、水相又は緩衝液は、RNaseを含まない水若しくはDEPC処理水を使用して調製される。場合によっては、緩衝液中の高濃度塩は、負に帯電した分子のエマルジョン粒子への複合体形成を妨害し得、したがって、回避される。他の場合には、緩衝液中に一定量の塩が含まれてもよい。
【0030】
一実施形態では、緩衝液は、約5.0~8.0のpHを有する10mMのクエン酸緩衝液(例えば、クエン酸ナトリウム)である。別の実施形態では、水相又は緩衝液は、RNaseを含まない水若しくはDEPC処理水を使用して調製される。他の実施形態では、本開示の組成物は、クエン酸緩衝液を含まない。
【0031】
水相はまた、水相の浸透圧を変化させる分子、又は複合体形成後に負に帯電した分子を安定化する分子などの追加の構成成分を含んでもよい。好ましくは、水相の浸透圧は、糖(例えば、トレハロース、スクロース、デキストロース、フルクトース、還元パラチノースなど)、糖アルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、グリセロールなど)、又はそれらの組み合わせなどの非イオン性等張化剤を使用して調節される。所望であれば、非イオン性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、若しくはポリブチレングリコールなどのポリ(アルキルグリコール))、又は非イオン性界面活性剤が使用され得る。
【0032】
界面活性剤
界面活性剤又は表面活性剤は、2つの液体間又は液体と固体との間の表面張力を低下させる化合物である。界面活性剤は、両親媒性であり、親水性(水を好む)頭部基及び疎水性(水を嫌う、又は油を好む)尾部を含有することを意味する。界面活性剤は、油と水との間の界面に吸着し、それによって表面張力を減少させる。乳化剤は、エマルジョンを安定化する界面活性剤である。乳化剤は、エマルジョン内の液滴をコーティングし、それらが一緒になること又は合体することを防止する。
【0033】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、界面活性剤を含む。界面活性剤は、親水性界面活性剤であってもよい。親水性界面活性剤は、約10~30、10~15、10~20、10~25、15~20、15~25、15~30、20~25、20~30、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30のHLB値を有し得る。いくつかの実施形態では、親水性界面活性剤は、プルロニックF68(HLB 29)である。界面活性剤は、疎水性界面活性剤であってもよい。疎水性界面活性剤は、約1~6、2~5、1~4、3~6、1、2、3、4、5、又は6のHLB値を有し得る。いくつかの実施形態では、疎水性界面活性剤は、リン脂質である。本開示の組成物は、疎水性界面活性剤及び親水性界面活性剤の両方を含んでもよい。
【0034】
生物学的用途のために特別に設計され、かつその用途で一般的に使用される多くの界面活性剤が存在する。本開示の実施に有用な界面活性剤としては、プルロニックF68、Tween 80、ポリソルベート80(CAPMUL POE低PV界面活性剤、ABITEC Corp.、Janesville,Wis.)、ポリエチレン660 12-ヒドロキシステアレート(SOLUTOL HS15、BASF Corp.、Chicago、lll)、ポロキサマー188(プルロニックQ F68ブロックコポリマー、BASF Corp.、Chicago、lll)、コール酸ナトリウム、グリセロデオキシコレート(glycerodeoxy cholate)、及びホスファチジルコリンが挙げられる。他の好適な界面活性剤としては、スフィンゴミエリン及びスフィンゴシンなどのスフィンゴ脂質、並びに卵ホスファチジルコリン、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、L-a-ホスファチジルエタノールアミン、及び1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)などのリン脂質、又はそれらの混合物が挙げられる。DPPCは、ヒトにおける使用に許容される。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、DMPC、DOPC、及び/又はPOPC(合成DMPC、DOPC、及びPOPCを含む)である。Brij界面活性剤が使用されてもよい。(Maria E.N.P.Ribeiro,Carolina L.de Moura,Mariano G.S.Vieira,Nilce V.Gramosa,Chiraphon Chaibundit,Marcos C.de Mattos,David Attwood,Stephen G.Yeates,S.Keith Nixon,Nagila M.P.S.Ricardo,Solubilisation capacity of Brij surfactants,International Journal of Pharmaceutics,Volume 436,Issues 1-2,2012,Pages 631-635,ISSN 0378-5173,doi.org/10.1016/j.ijpharm.2012.07.032)。1つ以上の界面活性剤が使用されてもよい。
【0035】
好適な界面活性剤の更なる例は、国際公開第2005009462(A2)号に記載されている。
【0036】
いくつかの実施形態では、界面活性剤は、約100:1(油:界面活性剤)の比で存在する。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、約0.018%w/vの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、約0.0001%w/v、約0.0005%w/v、約0.001%w/v、約0.005%w/v、約0.01%w/v、約0.011%w/v、約0.012%w/v、約0.013%w/v、約0.014%w/v、約0.015%w/v、約0.016%w/v、約0.017%w/v、約0.018%w/v、約0.019%w/v、約0.02%w/v、約0.03%w/v、約0.04%w/v、約0.05%w/v、約0.06%w/v、約0.07%w/v、約0.08%w/v、約0.09%w/v、約0.1%w/v、約0.2%w/v、約0.3%w/v、約0.4%w/v、約0.5%w/v、約0.6%w/v、約0.7%w/v、約0.8%w/v、約0.9%w/v、又は約1%w/vの濃度で存在する。本明細書に記載されるパーセンテージ及び比は、凍結乾燥前の水中油型エマルジョン製剤又は再構成後の水中油型エマルジョンのいずれかにおける比及びパーセンテージを指す。
【0037】
親水性-親油性バランス(HLB)
エマルジョンの親水性-親油性バランス(Hydrophilic-Lipophilic Balance、HLB)は、界面活性剤の親水性又は親油性の力の推定を可能にする。両親媒性分子のHLBは概して、以下のように計算される:HLB=(20×親水性部分の重量)/(両親媒性分子の重量)。エマルジョンのHLBを決定するための方法は、当技術分野において既知である。例えば、ワールドワイドウェブのfirp.ula.ve/archivos/historicos/76_Book_HLB_ICI.pdf、及びchemistscomer.com/hlb-the-easiest-way-to-create-an-emulsion/を参照されたい。
【0038】
HLBは、0(最も親油性の分子について)~20(最も親水性の分子について)の範囲の値を有し得る。界面活性剤の化学組成(特に例えば、エトキシル基又はアルケンオキシドの付加)に応じて、この推定は変化し得、HLB値の領域は増加し得る(例えば、LUTROL F68(登録商標)は、29のHLBを有する)。界面活性剤の混合物では、混合物のHLBは、各界面活性剤のHLBの加算であり、その重量比によってバランスがとられる:HLB=(界面活性剤XのHLB×界面活性剤Xの重量)+(界面活性剤YのHLB×界面活性剤Yの重量)/(界面活性剤Xの重量+界面活性剤Yの重量)。
【0039】
特定の界面活性剤、及び疎水性界面活性剤に対する親水性界面活性剤の比は、全体的なHLB値を達成するように選択され得る。エマルジョンは、約9~約12、約9.5~約11.5、及び約10~約11.5の最終HLBを有し得る。いくつかの実施形態では、エマルジョンのHLBは、約10.5~約11.0である。いくつかの実施形態では、水中油型エマルジョンの疎水性:親油性バランス(HLB)は、約9超、又は約10超、又は約9~12である。
【0040】
等張化剤
一実施形態では、ワクチン組成物は、等張化剤を含んでもよい。等張化剤は、溶液を、浸透圧特性が生理学的流体に類似した状態にするように機能する。等張化剤の例としては、デキストロース、マンニトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及びグリセリンが挙げられる。等張化剤を用いて製剤化されたワクチン組成物は、ヒト血液と本質的に同じ浸透圧を有する。等張製剤又は生理学的製剤は、概して、約275~325mOsmの浸透圧を有する。わずかに低張性の圧力は、250~270mOsmであり、わずかに高張性の圧力は、330~350mOsmである。浸透圧は、例えば、蒸気圧又は凝固点降下型浸透圧計を使用して測定され得る。典型的には、当該技術分野で「張度調節剤」又は等張化剤と称される特定の賦形剤を使用して、医薬製剤の張度を制御する。塩(NaCl、KCl、MgCl、CaClなど)は、張度調節剤として一般的に使用されるものを代表する。加えて、スクロース、マンニトール、トレハロース、グリシンなどであるが、これらに限定されない賦形剤は、張度調節剤として機能することができる。本明細書に記載される実施形態のいずれかでは、等張化剤は、例えば、マンニトール又はグリセロールなどのポリオールであり得る。免疫刺激組成物を等張性にするために本開示に添加され得る薬剤としては、デキストロース、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、PEG 300、PEG 400、及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0041】
抗酸化剤
実施形態では、免疫刺激組成物は、抗酸化剤を含む。本開示のエマルジョンにおいて有用な例示的な抗酸化剤としては、アルファ-トコフェロール(ビタミンE)、亜硫酸水素ナトリウム、及びアスコルビン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
安定性
本明細書に提供されるワクチン組成物の安定性は、1つ以上のアッセイ、例えば、生物物理学的及び生化学的アッセイを用いて、保存後に評価される。安定性は、保存中の粒径の変化を測定することによって評価され得る。粒径安定性は、保存の前及び後の平均粒径を測定することによって評価され得る。ワクチン組成物は、約3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、又は10℃で保存され得る。
【0043】
例えば、動的光散乱(dynamic light scattering、DLS)を使用して、エマルジョン粒径を評価することができる。いくつかの実施形態では、これは、保存前のエマルジョン粒径と比較される。いくつかの実施形態では、エマルジョン粒径は、保存前の粒径と比較されない。本明細書のいくつかの実施形態では、粒径は、ワクチン組成物のZ-平均直径(Z-avg)を測定することによって決定される。特定の実施形態では、安定した組成物は、粒径のZ-平均直径が初期サイズから20%未満増加する場合に示される。
【0044】
いくつかの実施形態では、動的光散乱(DLS)を使用して、PdIを評価することができる。いくつかの実施形態では、これは、保存前のワクチン組成物のPDIと比較される。
【0045】
一実施形態では、ゼータ電位は、保存後に評価される。例えば、動的光散乱(DLS)を使用して、ゼータ電位を評価することができる。いくつかの実施形態では、これは、保存前のゼータ電位と比較される。
【0046】
治療剤
いくつかの実施形態では、組成物は、治療目的に有用である。したがって、いくつかの実施形態では、記載される組成物は、疾患、状態、又は障害の治療のための生物活性剤を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、薬剤は、アレルギー、がん、感染症、自己免疫、又は嗜癖の治療又は予防に有用である。いくつかの実施形態では、薬剤は、免疫応答を刺激、増強、及び/又は調節するのに有用である。
【0048】
開示された実施形態のいくつかの態様では、組成物は、がん抗原又はがん抗原をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、がん抗原を含むワクチン組成物は、HER-2/neu発現などの腫瘍関連抗原発現、又は他のがん特異的抗原若しくはがん関連抗原を特徴とする、任意のがんに対して有用である。
【0049】
本開示のある特定の実施形態による組成物及び方法は、宿主又は対象の免疫系が、「自己組織」、細胞、生体分子(例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、プロテオリピド、脂質、糖脂質、RNA及びDNAなどの核酸、オリゴ糖、多糖、プロテオグリカン、グリコサミノグリカンなど、並びに対象の細胞及び組織の他の分子構成成分)、又はエピトープ(例えば、抗体可変領域相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)によって、若しくはT細胞受容体CDRによって認識されるものなどの特異的な、免疫学的に定義された認識構造)に対する免疫応答を有害に媒介する、疾患、状態、又は障害を含む自己免疫疾患の予防又は療法にも使用され得る。
【0050】
本開示の組成物は、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease、COPD)などの状態の予防及び療法のために、細菌感染(例えば、肺炎球菌)によって引き起こされるか又は悪化するものなどの呼吸器疾患に関連する抗原を含んでもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、対象における免疫応答を促進又は増強するために使用される。いくつかのそのような実施形態では、生物活性剤は、アジュバントである。非限定的なアジュバントとしては、TLRアゴニスト(TLR2、TLR3、TLR4、TLR7、TLR8、及びTLR9アゴニストを含む)、Rig-Iアゴニスト、サポニン、炭水化物、炭水化物ポリマー、コンジュゲートした炭水化物、全ウイルス粒子、ウイルス様粒子、ウイルス断片、及び細胞断片が挙げられる。そのようなアジュバントの例としては、二本鎖RNA、RIBOXXOL、ポリ(I:C)、及びHiltonol(登録商標)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
いくつかの態様では、本開示の組成物は、宿主、患者、又は細胞培養物において免疫応答を増強又は誘発するのに有用である。本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、任意の哺乳動物を指す。患者は、感染性疾患、乳がんなどのがん、若しくは自己免疫疾患に罹患している場合があるか、又は正常である場合がある(すなわち、検出可能な疾患及び/若しくは感染がない)。細胞培養物は、免疫系の免疫担当細胞又は単離細胞(T細胞、マクロファージ、単球、B細胞、及び樹状細胞を含むが、これらに限定されない)を含有する任意の調製物である。そのような細胞は、当業者に周知の様々な技術(例えば、Ficoll-hypaque密度勾配遠心分離)のいずれかによって単離され得る。細胞は、がんに罹患した患者から単離されていてもよく(しかし、そうである必要はない)、治療後に患者に再導入されてもよい。
【0053】
免疫応答は、多くの場合、例えば、分子レベル及び細胞レベルでの宿主の免疫系の細胞及び組織による自己構造と非自己構造との間の識別とみなされ得るが、本開示は、そのように限定されるべきではない。例えば、免疫応答はまた、免疫系構成成分の典型的な調節などの任意の数の正常な状態に付随し得るような、又は自己免疫疾患及び変性疾患において観察される不適切な自己免疫応答などの病的状態において存在し得るような、自己分子、細胞、又は組織の免疫認識から生じる免疫系状態の変化を含み得る。別の例として、特定の免疫系活性(例えば、抗体及び/若しくはサイトカイン産生、又は細胞媒介性免疫の活性化)の上方制御による誘導に加えて、免疫応答はまた、選択された抗原、抗原投与経路、特異的寛容誘導、又は他の因子の結果であり得る、検出可能な免疫の抑制、軽減、又は任意の他の下方制御を含み得る。
【0054】
本開示のワクチンによる免疫応答の誘導の決定は、当業者が容易に精通する多数の周知の免疫学的アッセイのいずれかによって確立され得る。そのようなアッセイとしては、可溶性抗体;サイトカイン、リンホカイン、ケモカイン、ホルモン、成長因子などの可溶性メディエーター、並びに他の可溶性小ペプチド、炭水化物、ヌクレオチド、及び/又は脂質メディエーター;免疫系の細胞の変化した機能的又は構造的特性、例えば、細胞増殖、変化した運動性、特異的遺伝子発現又は細胞溶解挙動などの特殊な活性の誘導によって決定される、細胞活性化状態の変化;変化した表面抗原発現プロファイル又はアポトーシス(プログラム細胞死)の開始を含む、免疫系の細胞による細胞分化のインビボ又はインビトロ決定が挙げられるが、これらに限定される必要はない。これら及び類似のアッセイを実施するための手順は、広く知られており、例えば、Lefkovits(Immunology Methods Manual:The Comprehensive Sourcebook of Techniques,1998;Current Protocols in Immunologyも参照されたい、例えば、Weir,Handbook of Experimental Immunology,1986 Blackwell Scientific,Boston,MA、Mishell and Shigii(eds.)Selected Methods in Cellular Immunology,1979 Freeman Publishing,San Francisco,CA;Green and Reed,1998 Science 281:1309、及びそれらの中に列挙される参考文献も参照されたい。)に見られ得る。
【0055】
抗原特異的抗体産生の検出は、例えば、放射免疫測定(radioimmunoassay、RIA)、酵素結合免疫吸着測定(enzyme linked immunosorbent assay、ELISA)、平衡透析、又はウェスタンブロッティングを含む固相免疫ブロッティングなどのインビトロ方法を使用して、本開示によるワクチンで処置された宿主由来の試料(例えば、血清、血漿、又は血液などの試料を含有する免疫グロブリン)をアッセイすることによって達成され得る。いくつかの実施形態では、ELISAアッセイは、例えば、アッセイの感度を増強するために、抗原に特異的な固相モノクローナル抗体による標的抗原の抗原捕捉固定化を更に含み得る。可溶性メディエーター(例えば、サイトカイン、ケモカイン、リンホカイン、プロスタグランジンなど)の同化はまた、例えば、商業的供給源(例えば、Sigma、St.Louis,MO。R & D Systems 2006 Catalog、R & D Systems、Minneapolis,MNも参照されたい)から容易に入手可能である方法、装置、及び試薬を使用して、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)によって容易に決定され得る。
【0056】
ワクチン組成物
いくつかの実施形態では、ワクチン組成物又はワクチン製剤は、抗原に対する宿主における免疫反応性又は免疫応答を誘発又は増強するために使用される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される組成物(例えば、ワクチン組成物)は、ヒト又は他の哺乳動物病原体に対する免疫応答を誘発することができる抗原又は抗原性組成物を含む。
【0057】
したがって、本開示は、免疫応答を開始することができる宿主における免疫応答を変化させる(すなわち、例えば、当業者によく知られているような適切な対照と比較して、統計的に有意に増加又は減少させる)ための組成物を提供する。当業者に既知であるように、免疫応答は、宿主の免疫状態の任意の活性の変化であり得、これは、宿主免疫状態の維持及び/又は調節に関与する1つ以上の組織、臓器、細胞、又は分子の構造又は機能における任意の変化を含み得る。典型的には、免疫応答は、可溶性免疫グロブリン若しくは抗体;サイトカイン、リンホカイン、ケモカイン、ホルモン、成長因子などの可溶性メディエーター、並びに他の可溶性小ペプチド、炭水化物、ヌクレオチド、及び/若しくは脂質メディエーター;免疫系の細胞の変化した機能的若しくは構造的特性、例えば、細胞増殖、変化した運動性、特異的遺伝子発現若しくは細胞溶解挙動などの特殊な活性の誘導によって決定される、細胞活性化状態の変化;変化した表面抗原発現プロファイル若しくはアポトーシス(プログラム細胞死)の開始を含む、免疫系の細胞による細胞分化;又は免疫応答の存在が検出され得る任意の他の基準のインビボ又はインビトロ決定が挙げられるが、これらに限定されない、様々な周知のパラメーターのいずれかによって検出され得る。
【0058】
本開示の組成物による免疫応答の誘導の決定は、当業者が容易に精通する多数の周知の免疫学的アッセイのいずれかによって確立され得る。そのようなアッセイとしては、可溶性抗体;サイトカイン、リンホカイン、ケモカイン、ホルモン、成長因子などの可溶性メディエーター、並びに他の可溶性小ペプチド、炭水化物、ヌクレオチド、及び/若しくは脂質メディエーター;免疫系の細胞の変化した機能的若しくは構造的特性、例えば、細胞増殖、変化した運動性、特異的遺伝子発現若しくは細胞溶解挙動などの特殊な活性の誘導によって決定される、細胞活性化状態の変化;変化した表面抗原発現プロファイル又はアポトーシス(プログラム細胞死)の開始を含む、免疫系の細胞による細胞分化のインビボ又はインビトロ測定が挙げられるが、これらに限定される必要はない。これら及び類似のアッセイを実施するための手順は、広く知られており、例えば、Lefkovits(Immunology Methods Manual:The Comprehensive Sourcebook of Techniques,1998;Current Protocols in Immunologyも参照されたい、例えば、Weir,Handbook of Experimental Immunology,1986 Blackwell Scientific,Boston,MA、Mishell and Shigii(eds.)Selected Methods in Cellular Immunology,1979 Freeman Publishing,San Francisco,CA、Green and Reed,1998 Science 281:1309、及びそれらの中に列挙される参考文献も参照されたい。)に見られ得る。
【0059】
抗原反応性T細胞の増殖の検出は、様々な既知の技術によって達成され得る。例えば、T細胞増殖は、DNA合成の速度を測定することによって検出され得、抗原特異性は、候補抗原反応性T細胞が曝露される刺激(例えば、特異的な所望の抗原又は対照抗原パルス抗原提示細胞など)を制御することによって決定され得る。増殖するように刺激されたT細胞は、DNA合成速度の上昇を示す。DNA合成速度を測定する典型的な方法は、例えば、新たに合成されたDNAに取り込まれるヌクレオシド前駆体であるトリチウム化チミジンを用いた、T細胞のパルス標識培養によるものである。取り込まれたトリチウム化チミジンの量は、液体シンチレーション分光光度計を使用して決定され得る。T細胞増殖を検出する他の方法は、インターロイキン-2(interleukin-2、IL-2)産生、Ca2+フラックス、又は3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニル-テトラゾリウムなどの色素取り込みの増加を測定することを含む。あるいは、リンホカイン(例えば、インターフェロン-ガンマ)の合成が測定され得るか、又は特定の抗原に応答し得るT細胞の相対数が定量化され得る。
【0060】
抗原特異的抗体産生の検出は、例えば、放射免疫測定(RIA)、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、平衡透析、又はウェスタンブロッティングを含む固相免疫ブロッティングなどのインビトロ方法を使用して、本開示によるワクチンで処置された宿主由来の試料(例えば、血清、血漿、又は血液などの試料を含有する免疫グロブリン)をアッセイすることによって達成され得る。実施形態では、ELISAアッセイは、例えば、アッセイの感度を増強するために、抗原に特異的な固相モノクローナル抗体による標的抗原の抗原捕捉固定化を更に含み得る。可溶性メディエーター(例えば、サイトカイン、ケモカイン、リンホカイン、プロスタグランジンなど)の同化はまた、例えば、商業的供給源(例えば、Sigma、St.Louis,MO。R & D Systems 2006 Catalog、R & D Systems、Minneapolis,MNも参照されたい)から容易に入手可能である方法、装置、及び試薬を使用して、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)によって容易に決定され得る。
【0061】
任意の数の他の免疫学的パラメーターが、当該技術分野で周知である日常のアッセイを使用して監視され得る。これらとしては、例えば、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(antibody dependent cell-mediated cytotoxicity、ADCC)アッセイ、二次インビトロ抗体応答、十分に確立されたマーカー抗原系を使用する様々な末梢血又はリンパ系単核細胞亜集団のフロー免疫細胞蛍光分析、免疫組織化学、又は他の関連アッセイが挙げられ得る。これら及び他のアッセイは、例えば、Rose et al.(Eds.),Manual of Clinical Laboratory Immunology,5th Ed.,1997 American Society of Microbiology,Washington,DCに見られ得る。
【0062】
したがって、本明細書に提供される組成物は、宿主中で、Th1型Tリンパ球応答、TH2型Tリンパ球応答、細胞傷害性Tリンパ球(cytotoxic T lymphocyte、CTL)応答、抗体応答、サイトカイン応答、リンホカイン応答、ケモカイン応答、及び炎症応答から選択される少なくとも1つの免疫応答を誘発又は増強することができることが企図される。ある特定の実施形態では、免疫応答は、サイトカインがインターフェロン-ガンマ(interferon-gamma、IFN-γ)、腫瘍壊死因子-アルファ(tumor necrosis factor-alpha、TNF-α)から選択される、1つ又は複数のサイトカインの産生、インターロイキンがIL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-16、IL-18、及びIL-23から選択される、1つ又は複数のインターロイキンの産生、ケモカインがMIP-1α、MIP-1β、RANTES、CCL2、CCL4、CCL5、CXCL1、及びCXCL5から選択される、1つ又は複数のケモカインの産生、並びにメモリーT細胞応答、メモリーB細胞応答、エフェクターT細胞応答、細胞傷害性T細胞応答、及びエフェクターB細胞応答から選択されるリンパ球応答のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0063】
医薬組成物
本明細書に記載される分散液又はエマルジョン又はナノ構造脂質担体を含む医薬組成物が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤を更に含む。例示的な担体は、用いられる投与量及び濃度でレシピエントに対して非毒性である。治療的使用のための「薬学的に許容される担体」は、薬学分野において周知であり、例えば、Remingtons Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro edit.1985)に記載されている。例えば、生理学的pHの滅菌生理食塩水及びリン酸緩衝生理食塩水が使用され得る。保存剤、安定剤、色素、及び更には香味剤が、医薬組成物中に提供され得る。例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが、防腐剤として添加され得る。1449にId。加えて、抗酸化剤及び懸濁化剤が使用され得る。Id。
【0064】
本明細書に提供されるいくつかの実施形態では、本明細書に提供される医薬組成物は、0.45ミクロンフィルターを通して濾過されることが可能である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、0.20ミクロンフィルターを通して濾過されることが可能である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、0.22ミクロンフィルターを通して濾過されることが可能である。
【0065】
「薬学的に許容される塩」は、本開示の化合物、及び有機酸若しくは無機酸(酸付加塩)又は有機塩基若しくは無機塩基(塩基付加塩)の組み合わせに由来する、本開示の化合物の塩を指す。本開示の組成物は、遊離塩基又は塩のいずれかの形態で使用されてもよく、両方の形態が本開示の範囲内であると考えられる。
【0066】
医薬組成物は、組成物が患者に投与されることを可能にする任意の形態にあってもよい。例えば、組成物は、固体、液体、又は気体(エアロゾル)の形態であってもよい。典型的な投与経路としては、経口、局所、非経口(例えば、舌下又は頬側)、舌下、直腸、膣、及び鼻腔内(例えば、スプレーとして)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される非経口という用語は、イオントフォレシス(例えば、米国特許第7,033,598号、同第7,018,345号、同第6,970,739号)、ソノフォレシス(例えば、米国特許第4,780,212号、同第4,767,402号、同第4,948,587号、同第5,618,275号、同第5,656,016号、同第5,722,397号、同第6,322,532号、同第6,018,678号)、熱的(例えば、米国特許第5,885,211号、同第6,685,699号)、受動的経皮(例えば、米国特許第3,598、122号、同第3,598,123号、同第4,286,592号、同第4,314,557号、同第4,379,454号、同第4,568,343号、同第5,464,387号、英国特許明細書第2232892号、米国特許第6,871,477号、同第6,974,588号、同第6,676,961号)、マイクロニードル(例えば、米国特許第6,908,453号、同第5,457,041号、同第5,591,139号、同第6,033,928号)投与、及びまた皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内、海綿体内、髄腔内、外尿道口内、尿道内、腫瘍内の注射又は注入技術を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される組成物(ワクチン及び医薬組成物を含む)は、イオントフォレシス、マイクロキャビテーション、ソノフォレシス、又はマイクロニードルから選択される技術によって皮内投与される。
【0067】
医薬組成物は、その中に含有される活性成分が、患者への組成物の投与時に生物学的に利用可能であるように製剤化される。患者に投与される組成物は、1つ以上の投薬単位の形態をとり、例えば、錠剤は、単一の投与単位であってもよく、エアロゾル形態の本開示の1つ以上の化合物の容器は、複数の投与単位を保持してもよい。
【0068】
「有効量」又は「治療有効量」という用語は、所望の効果を達成するか、又は少なくとも部分的に達成するのに十分な、例えば、所望の免疫応答をもたらすのに十分な量を指す。有効量の組成物は、「有効レジメン」で投与される。「有効レジメン」という用語は、投与される組成物の量、及び所望の効果を達成するのに十分な投与頻度の組み合わせを指す。
【0069】
実際の投与量レベルは、患者に対して毒性であることなく、特定の患者、組成物、及び投与方法について所望の応答を達成するのに有効である量を得るように変動され得る。選択される投与量レベルは、用いられる特定の組成物、処置される対象の年齢、性別、体重、状態、一般的健康、及び以前の病歴と組み合わせた様々な薬物動態学的要因、並びに医学分野で周知の同様の要因に依存する。
【0070】
本明細書に提供される治療的実施形態では、約1μg/kg~約10mg/kgの投与量の治療用医薬組成物が投与される。投与の回数及び頻度が対象の応答に依存することは、当業者に明らかになるであろう。
【0071】
本明細書に提供されるワクチンベースの実施形態では、1投与当たり約1μg~100μgの抗原又は抗原をコードする0.1μg~10mgの核酸が投与され、本発明の製剤は、約0.1μg、約1μg、約5μg、又は約10μg~約500μgのレプリコンRNAのヒト用量を可能にする。本発明の製剤は、約5μg~約20μgのレプリコンRNAのヒト用量を可能にする。
【0072】
投与の回数及び頻度が対象の応答に依存し、製剤がわずか1回の免疫化後に治療有効性を可能にすることは、当業者には明らかになるであろう。
【0073】
経口投与のために、賦形剤及び/又は結合剤が存在してもよい。例は、スクロース、カオリン、グリセリン、デンプンデキストリン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、及びエチルセルロースである。着色剤及び/又は香味剤が存在し得る。コーティングシェルが用いられ得る。
【0074】
組成物は、液体、例えば、エリキシル、シロップ、溶液、エマルジョン、又は懸濁液の形態にあってもよい。液体は、2つの例として、経口投与用又は注射による送達用であってもよい。経口投与が意図される場合、組成物は、甘味剤、保存剤、色素/着色剤、及び香味増強剤のうちの1つ以上を含有し得る。注射によって投与されることが意図される組成物では、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定剤、及び等張化剤のうちの1つ以上が含まれ得る。
【0075】
本明細書で使用される液体医薬組成物は、溶液、懸濁液、又は他の同様の形態にかかわらず、以下の担体又は賦形剤のうちの1つ以上を含み得る:注射用水、食塩水、生理食塩水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウムなどの滅菌希釈剤、スクアレン、スクアラン、鉱油、モノオレイン酸マンニド、コレステロールなどの固定油、及び/又は溶媒若しくは懸濁媒体として作用し得る合成モノグリセリド若しくはジグリセリド、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、若しくは他の溶媒;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩などの緩衝剤、及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの張度を調節するための薬剤。非経口調製物は、ガラス若しくはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器、又は複数回投与バイアルに封入され得る。注射用医薬組成物は、好ましくは無菌である。
【0076】
医薬組成物は、凍結乾燥ケーキの形態にあってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で言及されるケーキは、凍結乾燥プロセスから生じる多孔質かつスポンジ状構造様の材料であるか、又はケーキは、凍結乾燥プロセス後に残っている固形分である。いくつかの実施形態では、ケーキの外観は、海綿状ケーキ、美しいケーキ、及び上品なケーキとして説明され得る。いくつかの実施形態では、凍結乾燥時にケーキが形成されない場合、得られる組成物は、透明な膜、薄い膜、厚い白色膜、又は固化した気泡として特徴付けられ得る。所望のケーキとは、上記の温度でのケーキの曝露、保存、又は維持の後、2~8℃、又は8℃超若しくは約8℃の典型的なコールドチェーン保存が、凍結乾燥ワクチン製剤の所望の特徴を示すケーキを指す。(「Excipients used in lyophilization of small molecules」Ankit Bahetia,Lokesh Kumarb,Arvind K.Bansal,J.Excipients and Food Chem.1(1)2010;41-54。)
【0077】
凍結乾燥される場合、医薬組成物は、1つ以上の凍結乾燥賦形剤を含み得る。凍結乾燥賦形剤は、本明細書で使用される場合、好適なケーキ構造の形態又は製剤化に寄与するために凍結乾燥プロセスに含まれる、薬理学的に活性な薬物以外の物質を指し得る。凍結乾燥賦形剤は、充填剤、緩衝剤、又は可溶化剤を含み得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、凍結乾燥は、VirTis(Gardiner,NY)Advantage 2.0 EL-85ベンチトップフリーズドライヤーを使用して実施される。凍結乾燥方法は、4から-40℃への10時間の凍結工程、及び-15℃でのアニーリング工程を含む、熱処理スケジュールを使用することができる。一次乾燥段階(100mTorrで)は、-40℃から25℃に18.3時間継続し得る。最後に、50mTorrでの二次乾燥段階が、25℃で9時間用いられ得る。
【0079】
抗原
いくつかの実施形態では、本開示の製剤はまた、1つ以上の抗原を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、抗原は、インフルエンザ関連抗原である。いくつかの実施形態では、抗原は、インフルエンザを引き起こす抗原である。いくつかの実施形態では、抗原は、インフルエンザを引き起こすウイルスに由来する。一実施形態では、抗原は、H5N1を含む。一実施形態では、抗原は、H5N1を含む。
【0081】
本明細書に記載されるワクチン組成物及びGLAを用いる方法のある特定の実施形態で使用するための抗原は、対象における免疫反応性の誘発又は増強が望まれる任意の標的エピトープ、分子(生体分子を含む)、分子複合体(生体分子を含有する分子複合体を含む)、細胞内集合体、細胞、又は組織であってもよい。しばしば、抗原という用語は、目的のポリペプチド抗原を指す。しかしながら、抗原は、本明細書で使用される場合、目的のポリペプチド抗原をコードする組換え構築物(例えば、発現構築物)も指し得る。ある特定の実施形態では、抗原は、感染性病原体、及び/あるいは感染、がん、自己免疫疾患、アレルギー、喘息、又は抗原特異的免疫応答の刺激が望ましいか若しくは有益である任意の他の状態に関連するエピトープ、生体分子、細胞、又は組織であり得るか、又はそれらに由来し得るか、又はそれらと免疫学的に交差反応性であり得る。
【0082】
ある特定の実施形態の本開示のワクチン製剤は、ヒト又は他の哺乳動物病原体に対する免疫応答を誘発することができる抗原又は抗原性組成物を含有し、この抗原又は抗原性組成物は、ウイルス由来、例えば、HIV-1(例えば、tat、nef、gpl20、若しくはgpl60)、ヒトヘルペスウイルス、例えば、gD若しくはその誘導体、又は前初期タンパク質、例えば、HSV1若しくはHSV2由来のICP27、サイトメガロウイルス((特に、ヒト)(gB若しくはその誘導体など)、ロタウイルス(弱毒生ウイルスを含む)、エプスタインバーウイルス(gp350若しくはその誘導体など)、水痘帯状疱疹ウイルス(gpl、II、及びIE63など)由来、又は肝炎ウイルス、例えば、B型肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎表面抗原若しくはその誘導体)、A型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、及びE型肝炎ウイルス由来、又は他のウイルス病原体、例えば、パラミクソウイルス:呼吸器多核体ウイルス(F及びGタンパク質、若しくはそれらの誘導体など)、パラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ヒトパピローマウイルス(例えば、HPV6、11、16、18など)、フラビウイルス(例えば、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)、インフルエンザウイルス(全生ウイルス若しくは不活化ウイルス、卵若しくはMDCK細胞において成長した分割されたインフルエンザウイルス、又は全インフルエンザビロソーム(Gluck,Vaccine,1992,10,915-920によって記載されるような)、又はそれらの精製若しくは組換えタンパク質、例えば、HA、NP、NA、若しくはMタンパク質、又はそれらの組み合わせ)由来の組成物を含み得る。
【0083】
ある特定の実施形態では、本開示のワクチン製剤は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2、SARS-CoV-2)に対する抗原を含有する。いくつかの実施形態では、ペイロードは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に特異的なポリペプチド抗原である。SARS-CoV-2は、主要な構造タンパク質のスパイク(spike、S)、エンベロープ(envelope、E)、膜(membrane、M)、及びヌクレオカプシド(nucleocapsid、N)を含む。いくつかの実施形態では、ペイロードは、SARS-CoV-2のS、E、M、及びNタンパク質並びにそれらの断片からなる群から選択される。
【0084】
ある特定の他の実施形態では、本開示のワクチン製剤は、ヒト又は他の哺乳動物病原体に対する免疫応答を誘発することができる抗原又は抗原性組成物を含有し、この抗原又は抗原性組成物は、N.gonorrhea及びN.meningitidis(例えば、莢膜多糖類及びそのコンジュゲート、トランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質、PilC、アドヘシン)を含むNeisseria種;S.pyogenes(例えば、Mタンパク質若しくはその断片、C5Aプロテアーゼ、リポタイコ酸)、S.agalactiae、S.mutans:H.ducreyi;Branhamella catarrhalisとしても既知のM.catarrhalis(例えば、高及び低分子量アドヘシン及びインベイシン)を含むMoraxella種;B.pertussis(例えば、パータクチン、百日咳毒素若しくはその誘導体、繊維状赤血球凝集素、アデニル酸シクラーゼ、線毛)、B.parapertussis及び、B.bronchisepticaを含むBordetella種;M.tuberculosis(例えば、ESAT6、抗原85A、-B若しくは-C)、M.bovis、M.leprae、M.avium、M.paratuberculosis、M.smegmatisを含むMycobacterium種;L.pneumophilaを含むLegionella種;腸管毒性E.coli(例えば、コロニー形成因子、易熱性毒素若しくはその誘導体、熱安定性毒素若しくはその誘導体)、腸管出血性E.coli、腸管病原性E.coli(例えば、志賀毒素様毒素若しくはその誘導体)を含むEscherichia種;V.cholera(例えば、コレラ毒素若しくはその誘導体)を含むVibrio種;S.sonnei、S.dysenteriae、S.flexneriiを含むShigella種;Y.enterocolitica(例えば、Yopタンパク質)、Y.pestis、Y.pseudotuberculosisを含むYersinia種;C.jejuni(例えば、毒素、アドヘシン、及びインベイシン)、並びにC.coliを含むCampylobacter種;S.typhi、S.paratyphi、S.choleraesuis、S.enteritidisを含むSalmonella種;L.monocytogenesを含むListeria種;H.pylori(例えば、ウレアーゼ、カタラーゼ、空胞化毒素)を含むHelicobacter種;P.aeruginosaを含むPseudomonas種;S.aureus、S.epidermidisを含むStaphylococcus種;E.faecalis、E.faeciumを含むEnterococcus種;C.tetani(例えば、破傷風毒素及びその誘導体)、C.botulinum(例えば、ボツリヌス毒素及びその誘導体)、C.difficile(例えば、(例えばクロストリジウム毒素A若しくはB及びそれらの誘導体)を含むClostridium種;B.anthracis(例えば、ボツリヌス毒素及びその誘導体)を含むbotulinum種;C.diphtheriae(例えば、ジフテリア毒素及びその誘導体)を含むCorynebacterium種;burgdorferi(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.garinii(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.afzelii(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.andersonii(例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B.hermsiiを含むBorrelia種;E.equi及びヒト顆粒球エーリキア症病原体を含むEhrlichia種;R.rickettsiiを含むRickettsia種;C.trachomatis例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、C.pneumoniae(例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、C.psittaciを含むChlamydia種;L.interrogansを含むLeptospira種;T.pallidum(例えば、希少外膜タンパク質)、T.denticola、T.hyodysenteriaeを含むTreponema種;又は他の細菌性病原体などの1つ以上の細菌病原体由来の組成物を含み得る。
【0085】
ある特定の他の実施形態では、本開示のワクチン製剤は、ヒト又は他の哺乳動物病原体に対する免疫応答を誘発することができる抗原又は抗原性組成物を含有し、この抗原又は抗原性組成物は、1つ以上の寄生虫由来(例えば、John,D.T.and Petri,W.A.,Markell and Voge’s Medical Parasitology-^Ed.,2006,WB Saunders,Philadelphia、Bowman,D.D.,Georgis’ Parasitology for Veterinarians-8th Ed.,2002,WB Saunders,Philadelphiaを参照されたい)、例えば、P.falciparumを含むPlasmodium種;T.gondii(例えば、SAG2、SAG3、Tg34)を含むToxoplasma種;E.histolyticaを含むEntamoeba種;B.microtiを含むBabesia種;T.cruziを含むTrypanosoma種;G.lambliaを含むGiardia種;L.majorを含むLeshmania種;P.cariniiを含むPneumocystis種;T.vaginaliを含むTrichomonas種由来;又は(i)線虫感染(Enterobius vermicularis、Ascaris lumbricoides、Trichuris trichuria、Necator americanus、Ancylostoma duodenale、Wuchereria bancrofti、Brugia malayi、Onchocerca volvulus、Dracanculus medinensis、Trichinella spiralis、及びStrongyloides stercoralisを含むが、これらに限定されない);(ii)吸虫感染(マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni、Schistosoma haematobium、Schistosoma japonicum、Schistosoma mekongi、Opisthorchis sinensis、Paragonimus種、Fasciola hepatica、Fasciola magna、Fasciola giganticaを含むが、これらに限定されない);(iii)条虫感染(Taenia saginata及びTaenia soliumを含むが、これらに限定されない)などの、哺乳動物を感染させることができる寄生蠕虫由来の組成物を含み得る。したがって、ある特定の実施形態は、Schisostoma種、Schistosoma mansonii、Schistosoma haematobium、及び/若しくはSchistosoma japonicum由来、又は酵母、例えば、C.albicansを含むCandida種;C.neoformansを含むCryptococcus種由来の抗原を含む、ワクチン組成物を企図し得る。
【0086】
本明細書に開示されるある特定の他の実施形態によると、ワクチン組成物並びに関連する製剤及び使用方法は、がんの免疫療法処置に有用であり得るような、がん細胞に由来する抗原を含み得る。例えば、アジュバント製剤は、前立腺がん、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、膵臓がん、腎臓がん、又は黒色腫がんに対するものなどの腫瘍拒絶抗原と共に有用性を見出すことができ、がん又はがん細胞由来抗原としては、MAGE 1、3、及びMAGE 4、又は国際公開第99/40188号に開示されるものなどの他のMAGE抗原、PRAME、BAGE、Lage(NY Eos 1としても知られる)、SAGE及びHAGE(国際公開第99/53061号)、又はGAGE(Robbins and Kawakami,1996 Current Opinions in Immunology 8,pps 628-636、Van den Eynde et al.,International Journal of Clinical & Laboratory Research(1997 & 1998)、Correale et al.(1997),Journal of the National Cancer Institute 89,p.293)が挙げられる。がん抗原のこれらの非限定的な例は、黒色腫、肺がん、肉腫、及び膀胱がんなどの広範囲の腫瘍型において発現される。例えば、米国特許第6、544,518号を参照されたい。
【0087】
他の腫瘍特異的抗原は、GM及びGMなどの腫瘍特異的若しくは腫瘍関連ガングリオシド、又は担体タンパク質へのそのコンジュゲートを含むが、これらに限定されない、ある特定の本開示の実施形態によるワクチン組成物との使用に適しているか、あるいは抗がん免疫応答を誘発又は増強するためのワクチン組成物において使用するための抗原は、多くのがんの治療において有用な、完全長ゴナドトロピンホルモン放出ホルモン(Gonadotrophin hormone releasing hormone、GnRH、国際公開第95/20600号)、短い10アミノ酸長のペプチドなどの自己ペプチドホルモンであってもよい。別の実施形態では、前立腺特異的抗原(Prostate specific antigen、PSA)、PAP、PSCA(例えば、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 95(4)1735-1740 1998)、PSMA、又は一実施形態では、Prostaseとして知られる抗原などの前立腺抗原が使用される。(例えば、Nelson,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1999)96:3114-3119、Ferguson,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1999.96,3114-3119、国際公開第98/12302号、米国特許第5,955,306号、国際公開第98/20117号、米国特許第5,840,871号及び同第5,786,148号、国際公開第00/04149号。他の前立腺特異的抗原は、国際公開第98/137418号及び国際公開第/004149号から既知である。別のものは、STEAP(PNAS 96 14523 14528 7-12 1999)である。
【0088】
本開示の文脈において有用な他の腫瘍関連抗原としては、Plu-1(J Biol.Chem 21(22)15633-15645,1999)、HASH-1、HasH-2、Cripto(Salomonetal Bioessays 199,21:61-70、米国特許第5,654,140号)、及び Criptin(米国特許第5,981,215号)が挙げられる。
【0089】
更に、がんの療法におけるワクチンに特に関連する抗原はまた、チロシナーゼ及びサバイビンを含む。
【0090】
他の実施形態では、本開示の組成物で使用される抗原は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの状態の予防及び療法のために、細菌感染(例えば、肺炎球菌)によって引き起こされるか又は悪化するものなどの呼吸器疾患に関連する抗原を含む。COPDは、慢性気管支炎及び/又は肺気腫を有する患者における不可逆的又は部分的に可逆的な気道閉塞の存在によって生理学的に定義される(Am J Respir Crit Care Med.1995 Nov;152(5 Pt 2):S77-121)。COPDの悪化は、細菌(例えば、肺炎球菌)感染によって引き起こされる場合が多い(Clin Microbiol Rev.2001 Apr;14(2):336-63)。
【0091】
核酸
本開示のワクチン製剤のある特定の実施形態は、抗原をコードする核酸分子(例えば、DNA又はRNA)を含む。好適な抗原としては、細菌抗原、ウイルス抗原、真菌抗原、原虫抗原、植物抗原、がん抗原、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。抗原は、例えば、アレルギー、がん、感染症、又は自己免疫疾患に関与し得るか、又はそれらに由来し得る。核酸分子としては、オリゴヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、プラスミドDNA、環状DNA、直鎖状DNA、一本鎖DNA、修飾DNA、アンチセンスDNA、リボヌクレオチド、mRNA、化学修飾RNA、非コードRNA、miRNA、siRNA、tRNA、リボソームRNA、RNAリボザイム、レプリコンRNA、RNAアプタマー、DNAアプタマー、二本鎖RNA、塩基置換RNA、及びイノシン含有RNAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
実施形態では、生物活性剤は、RNA分子である。RNA分子は、抗原、抗体、毒素、成長因子、サイトカイン、及びホルモンを含むがこれらに限定されない、様々なタイプのタンパク質をコードし得る。本明細書で使用されるRNA分子はまた、siRNA、miRNA、CRISPRガイドRNA、リボザイムRNA、ヘアピン、RNAアプタマー、RNAアゴニスト、及び免疫調節RNAを含むがこれらに限定されない、非コードRNAを表し得る。有利なことに、細胞の翻訳機構は、自己複製RNA分子によって使用されて、タンパク質又は抗原などのコードされた遺伝子産物の有意な増加をもたらし、これは細胞内に蓄積し得るか、又は細胞から分泌され得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、生物活性剤は、自己複製RNA分子である。自己複製RNA分子は、当該技術分野において周知であり、ウイルス(例えば、アルファウイルス、フラビウイルス、ピコルナウイルス)に由来する複製要素を使用し、構造ウイルスタンパク質を、目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列で置換することによって産生され得る。自己複製RNA分子は、典型的には、細胞への送達後に直接翻訳され得る(+)鎖分子であり、この翻訳は、RNA依存性RNAポリメラーゼを提供し、これは次いで、送達されたRNAからアンチセンス転写物及びセンス転写物の両方を産生する。したがって、送達されたRNAは、複数の娘RNAの産生をもたらす。これらの娘RNA、並びに共直線性サブゲノム転写物は、それら自体翻訳されて、コードされた抗原の原位置発現を提供し得るか、又は転写されて、送達されたRNAと同じセンスを有する更なる転写物を提供し得、これは翻訳されて、抗原の原位置発現を提供する。この一連の転写の全体的な結果は、導入されたレプリコンRNAの数の増幅であり、それによって、コードされた抗原は、細胞の主要なポリペプチド産物になる。
【0094】
有利なことに、細胞の翻訳機構は、自己複製RNA分子によって使用されて、タンパク質又は抗原などのコードされた遺伝子産物の有意な増加をもたらし、これは細胞内に蓄積し得るか、又は細胞から分泌され得る。自己複製RNA分子は、例えば、トランスフェクトされた細胞のアポトーシスを誘導し得るRNA複製及び増幅並びに翻訳の産物によってtoll様受容体(toll-like receptor、TLR)3、7、及び8、並びに非TLR経路(例えば、RIG-I、MD-5)を刺激し得る。
【0095】
生物活性剤がDNA分子である実施形態では、
DNA分子は、抗原、抗体、毒素、成長因子、サイトカイン、及びホルモンを含むがこれらに限定されない、様々なタイプのタンパク質をコードし得る。DNAとしては、プラスミドDNA、環状DNA、直鎖状DNA、一本鎖DNA、修飾DNA、アンチセンスDNA、及びアプタマーDNAが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0096】
アジュバント
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物(例えば、熱安定性凍結乾燥ワクチン)において使用されるアジュバントは、免疫刺激アジュバントである。免疫刺激アジュバントは、例えば、サイトカイン、TLRリガンド、又は微生物毒素などの免疫系に直接作用するアジュバントであり得る。本明細書のいくつかの実施形態では、アジュバントは、サイトカインアジュバントである。1つ以上のサイトカインは、本明細書に記載される組成物中で、単独で、又は1つ以上の追加のアジュバントと組み合わせて、アジュバントとして好適であり得る。好適なサイトカインとしては、インターフェロン(interferon、IFN)、インターロイキン(interleukin、IL)、ケモカイン、コロニー刺激因子、又は腫瘍壊死因子が挙げられる。いくつかの実施形態では、インターフェロンは、I型IFN、II型IFN、又はIII型IFNである。いくつかの実施形態では、インターフェロンは、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、又はIFN-λ、及びこれらの中からのサブタイプ(例えば、IFN-λ、IPN-λ2、及びIPN-λ3)である。いくつかの実施形態では、サイトカインは、インターロイキンである。本明細書に記載される組成物中でアジュバントとして使用され得るインターロイキンの非限定的な例としては、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-35、及びIL-36が挙げられる。いくつかの実施形態では、サイトカインは、ケモカインである。いくつかの実施形態では、ケモカインは、CCケモカイン、CXCケモカイン、Cケモカイン、又はCX3Cケモカインである。本明細書に記載される組成物中でアジュバントとして使用され得るCCケモカインの非限定的な例としては、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL7、CCL8、CCL9、CCL10、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、及びCCL28が挙げられる。本明細書に記載される組成物中で使用され得るCXCケモカインの非限定的な例としては、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、及びCXCL17が挙げられる。いくつかの実施形態では、サイトカインは、コロニー刺激因子である。いくつかの実施形態では、コロニー刺激因子は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(granulocyte macrophage colony-stimulating factor、GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor、G-CSF)、又はマクロファージコロニー刺激因子(macrophage colony-stimulating factor、M-CSF)である。いくつかの実施形態では、サイトカインは、腫瘍壊死因子である。本明細書に記載される組成物中でアジュバントとして使用され得る腫瘍壊死因子ファミリータンパク質の非限定的な例としては、TNF-α及び4-1BBLが挙げられる。
【0097】
いくつかの実施形態では、免疫刺激アジュバントは、Toll様受容体(TLR)リガンド(例えば、TLRアゴニスト)である。1つ以上のTLRリガンドは、本明細書に記載される組成物中で、単独で、又は1つ以上の追加のアジュバントと組み合わせて、アジュバントとして好適であり得る。TLRは、多数の感染性病原体の中又は上に存在し得るような様々な保存された微生物分子構造に対する早期認識能力を宿主細胞に付与する、自然免疫系の細胞表面膜貫通受容体を含む(例えば、Armant et al,2002 Genome Biol.3(8):reviews3011.1-3011.6、Fearon et al.,1996 Science 272:50、Medzhitov et al.,1997 Curr.Opin.Immunol.9:4、Luster 2002 Curr.Opin.Immunol.14:129、Lien et al.2003 Nat.Immunol.4:1162、Medzhitov,2001 Nat.Rev.Immunol.1:135、Takeda et al.,2003 Ann Rev Immunol.21:335、Takeda et al.2005 Int.Immunol.17:1、Kaisho et al.,2004 Microbes Infect.6:1388、Datta et al.,2003 J.Immunol.170:4102)。
【0098】
自然免疫系を介した免疫応答の開始を増強するためのTLR媒介性シグナル伝達の誘導は、細胞表面TLRに関与するTLRアゴニスト(すなわち、TLRリガンド)によってもたらされ得る。例えば、リポ多糖(lipopolysaccharide、LPS)は、TLR2又はTLR4(Tsan et al.,2004 J.Leuk.Biol.76:514、Tsan et al.,2004 Am.J.Physiol.Cell Phsiol.286:C739、Lin et al.,2005 Shock 24:206)を介したTLRアゴニストであり得る。ポリ(イノシン-シチジン)(polykC)は、TLR3(Salem et al.,2006 Vaccine 24:5119)を介したTLRアゴニストであり得る。CpG配列(非メチル化シトシン-グアノシン又は「CpG」ジヌクレオチドモチーフ、例えば、CpG 7909を含有するオリゴデオキシヌクレオチド、Cooper et al.,2005 AIDS 19:1473、CpG 10101 Bayes et al.Methods Find Exp Clin Pharmacol 27:193、Vollmer et al.Expert Opinion on Biological Therapy 5:673、Vollmer et al.,2004 Antimicrob.Agents Chemother.48:2314、Deng etal.,2004 J.Immunol.173:5148)は、TLR9(Andaloussi et a.,2006 Glia 54:526、Chen et al.,2006 J.Immunol.177:2373)を介したTLRアゴニストであり得る。ペプチドグリカンは、TLR2及び/又はTLR6アゴニスト(SoboU et al.,2006 Biol.Reprod.75:131、Nakao et al.,2005 J.Immunol.174:1566)であり得る。3M003(4-アミノ-2-(エトキシメチル)-a,a-ジメチル-6,7,8,9-テトラヒドロ-1 H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-エタノール水和物、分子量318Da、3M Pharmaceuticals、St.Paul,MN(関連化合物3M001及び3M002の供給源でもある)(Gorden et al.,2005 J.Immunol.174:1259)は、TLR7アゴニスト(Johansen 2005 Clin.Exp.Allerg.35:1591)及び/又はTLR8アゴニスト(Johansen 2005)であり得る。フラジェリンは、TLR5アゴニスト(Feuillet et al.,2006 Proc.Nat.Acad.Sci.USA 103:12487)であり得る。プロフィリンは、TLR11アゴニスト(Hedhli et al.,2009,Vaccine,27(16):2274-87)であり得る。リポペプチドは、TLR1、TLR2、及び/又はTLR6アゴニストであり得る(Gao et al.,2013,Vaccine,31(26):2796-803)であり得る。また、C型肝炎抗原は、TLR7及び/又はTLR9(Lee et al.,2006 Proc.Nat.Acad.Sci.USA 103:1828、Horsmans et al.,2005 Hepatol.42:724)を介したTLRアゴニストとして作用し得る。他のTLRアゴニストが既知であり(例えば、Schirmbeck et al.,2003 J.Immunol.171:5198)、本明細書に記載される実施形態のいくつかに従って使用され得る。
【0099】
例えば、及び背景として(例えば、米国特許第6,544,518号を参照されたい)、非メチル化CpGジヌクレオチド(「CpG」)を含有する免疫刺激オリゴヌクレオチドは、全身経路及び粘膜経路の両方によって投与される場合のアジュバントであることが知られている(国際公開第96/02555号、欧州特許第468520号、Davis et al.,J.Immunol,1998.160(2):870-876、McCluskie and Davis,J.Immunol.,1998,161(9):4463-6)。CpGは、DNA中に存在するシトシン-グアノシンジヌクレオチドモチーフの略語である。免疫刺激におけるCGモチーフの中心的役割は、Krieg,Nature 374,p546 1995によって解明された。詳細な分析は、CGモチーフがある特定の配列状況になければならないこと、及びそのような配列が細菌DNAにおいて一般的であるが、脊椎動物DNAにおいては希少であることを示している。免疫刺激配列は、多くの場合、プリン、プリン、C、G、ピリミジン、ピリミジンであり、ここで、ジヌクレオチドCGモチーフは、メチル化されていないが、他の非メチル化CpG配列は、免疫刺激性であることが知られており、本開示のある特定の実施形態で使用され得る。CpGは、ワクチンに製剤化される場合、遊離抗原と一緒に遊離溶液中で投与され得るか(国際公開第96/02555号、McCluskie and Davis、上記参照)、又は抗原と共有結合され得るか(国際公開第98/16247号)、又は水酸化アルミニウムなどの担体と共に製剤化され得る(例えば、Davis et al.、上記参照、Brazolot-Millan et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,1998,95(26),15553-8)。
【0100】
キット
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される免疫刺激組成物を含むキットも企図され、これは、1つ以上の容器内で提供され得る。一実施形態では、組成物の全ての構成成分が単一の容器内に一緒に存在するが、可能な実施形態は、そのように限定されることを意図せず、例えば、免疫学的アジュバント組成物が抗原構成成分から分離しており、かつそれと接触していない2つ以上の容器も企図する。対象への投与は、本明細書に記載され、かつ抗原及びアジュバント組成物の両方、並びに任意選択的に本明細書に記載される他の構成成分も含有するワクチン組成物で有益に行われる。
【0101】
本開示のキットは、本明細書に記載される使用説明書、又はバイアル内に含有される材料を混合するための説明書を更に含み得る。いくつかの実施形態では、バイアル内の材料は、乾燥しているか、又は凍結乾燥している。いくつかの実施形態では、バイアル内の材料は、液体である。
【0102】
そのようなキットの実施形態による容器は、任意の好適な容器、槽、バイアル、アンプル、チューブ、カップ、箱、ボトル、フラスコ、ジャー、皿、単一ウェル若しくはマルチウェル装置のウェル、貯蔵器、タンクなど、又は本明細書に開示される組成物が配置、保存、及び/若しくは輸送され、内容物を取り出すためにアクセスされ得る他のデバイスであり得る。典型的には、そのような容器は、意図された使用に適合し、含有された内容物の回収が容易に達成され得る材料から作製され得る。そのような容器の非限定的な例としては、ガラス及び/若しくはプラスチックで密封された、又は再密封可能なチューブ及びアンプルが挙げられ、針及び注射器を使用した内容物の引き出しに適合するゴムセプタム又は他の密封手段を有するものが含まれる。そのような容器は、例えば、ガラス又は化学的に適合性のプラスチック若しくは樹脂から作製され得、これらは、容器からの材料の効率的な回収を可能にし、かつ/あるいは例えば、紫外線若しくは極端な温度などの分解条件から、又は微生物汚染物質を含む望ましくない汚染物質の導入から材料を保護する材料から作製され得るか、又はそれらの材料でコーティングされ得る。容器は、好ましくは、無菌又は滅菌可能であり、本明細書に記載されるワクチン組成物及び/又は免疫学的アジュバント組成物及び/又は抗原及び/又は組換え発現構築物などを懸濁又は溶解するために使用され得るような、任意の担体、賦形剤、溶媒、ビヒクルなどに適合性する材料から作製される。
【0103】
免疫応答をもたらす方法
対象における免疫応答をもたらす方法が、本明細書に提供され、方法は、治療有効量の本明細書に記載される組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含み、生物活性剤は、タンパク質抗原又はタンパク質抗原をコードする核酸分子である。いくつかの実施形態では、生物活性剤は、タンパク質抗原をコードするRNA(例えば、mRNA)又はDNA分子である。いくつかの実施形態では、免疫応答を促進又は増強する方法が提供され、生物活性剤は、アジュバントである。
【0104】
治療有効量の組成物の典型的な投与経路としては、経口、局所、非経口、舌下、頬側、直腸、膣、静脈内、皮内、経皮、鼻腔内、粘膜内又は皮下が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、組成物の投与は、筋肉内、眼、非経口、又は肺である。
【0105】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、ワクチン組成物であり、ワクチンとして使用される。本明細書に記載される組成物は、対象における免疫応答(非特異的応答及び抗原特異的応答を含む)をもたらすために使用され得る。いくつかの実施形態では、免疫応答は、全身免疫応答を含む。いくつかの実施形態では、免疫応答は、粘膜免疫応答を含む。免疫応答の生成は、免疫応答を刺激すること、免疫応答を促進すること、又は免疫応答を増強することを含む。
【0106】
本明細書に記載される組成物は、ウイルスに対する防御免疫を増強するために使用され得る。本明細書に記載される組成物は、1つ以上の細菌性病原体に対する防御免疫を増強するために使用され得る。本明細書に記載される組成物は、1つ以上の寄生虫に対する防御免疫を増強するために使用され得る。
【0107】
本開示の組成物が、対象において抗原を効果的に送達し、かつ/又は所望の効果を有することができるかどうかを判断するための方法は、当該技術分野で既知であり、本明細書では詳細に説明されていない。一態様では、抗原に対する免疫応答は、血液試料中の又は粘膜部位からの、投与の前及び後の抗原特異的抗体(例えば、全身IgM、IgG(IgG1、IgG2a、又はIgA)のレベルを監視することによって決定され得る。細胞免疫応答もまた、抗原刺激後にT及びB細胞機能を評価することによって、投与後に監視され得る。
【0108】
核酸分子(例えば、RNA)がタンパク質抗原をコードする、本明細書に開示される組成物又はワクチンの免疫原性を評価する別の方法は、免疫ブロット及び/又はマイクロアレイによって患者の血清又は粘膜分泌物をスクリーニングするために、組換えタンパク質抗原を発現することである。タンパク質と患者試料との間の陽性反応は、患者が当該タンパク質に対する免疫応答を開始したことを示す。この方法はまた、免疫優性抗原及び/又はタンパク質抗原内のエピトープを特定するために使用され得る。
【0109】
組成物の有効性はまた、目的の病原体感染の適切な動物モデルに攻撃接種することによって、インビボで決定され得る。
【0110】
本明細書に提供される実施形態では、対象は、哺乳動物(例えば、家畜(ウシ、ブタ、ヤギ、ウマなど)、ペット(ネコ、イヌなど)、及び齧歯類(ラット、マウスなど)、又はヒト)を含む動物である。一実施形態では、対象は、ヒトである。別の実施形態では、対象は、非ヒト哺乳動物である。別の実施形態では、非ヒト哺乳動物は、イヌ、ウシ、又はウマである。
【0111】
ソラネソールを含む組成物の作製方法
安定したエマルジョン(stable emulsion、SE)は、代謝可能な油ソラネソールを1つ以上の界面活性剤と組み合わせることによって作製される。本明細書に提供されるように、水性ソラネソール分散液を作製する1つの方法は、(a)ソラネソールの融点を超えて加熱された緩衝水溶液にソラネソールを添加することと、(b)緩衝水溶液及びソラネソールを均質化して、水性ソラネソール分散液を作製することと、(c)ソラネソールの融点を超える温度を維持しながら、粒径を約100nm以下に低減することと、を含む。緩衝水溶液は、水性緩衝液中に1つ以上の界面活性剤及び/又は等張化剤を溶解することによって調製され得る。水相は、緩衝化されてもよい。水、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス緩衝液、重炭酸緩衝液、炭酸緩衝液、コハク酸緩衝液などの任意の生理学的に許容される緩衝液が、本明細書で使用され得る。水性構成成分のpHは、4.0~8.0又は約4.5~約6.8であり得る。別の実施形態では、水相又は緩衝液は、RNaseを含まない水若しくはDEPC処理水を使用して調製される。
【0112】
固体ソラネソールは、加熱された緩衝液中で溶融し、水性ソラネソール分散液を形成する。溶融したソラネソール及び緩衝液は、均質化される。高せん断乳化及びマイクロ流動化を含むがこれらに限定されない、様々な乳化方法によって均質化され得る。抗酸化剤が水性ソラネソール分散液に添加され得る。
【0113】
例えば、混合物を注射針に1回、2回、又はそれ以上通すことを含む方法は、少量の液体を均質化するのに適している。同様に、マイクロフルイダイザー(MHOSマイクロフルイディクス機、最大50パス、6バールの最大圧力入力(約850バールの出力圧力)で2分間)における乳化プロセスは、より小さい又はより大きい体積の分散液を生成するように適合され得る。この適合は、必要とされる直径の油滴を有する調製物が達成されるまで、得られた分散液の測定を含む日常の実験によって達成され得る。約33℃であるソラネソールの融点未満に冷却されると、緩衝液中に分散された液体油は固化し、固体脂質ナノ粒子を形成する。
【0114】
固体脂質ナノ粒子(Solid lipid nanoparticle、SLN)又は脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle、LNP)は、脂質から構成されるナノ粒子である。固体脂質ナノ粒子は、典型的には、10~1000ナノメートルの平均直径を有する球状である。固体脂質ナノ粒子は、親油性分子を可溶化することができる固体脂質コアマトリックスを有する。脂質コアは、界面活性剤(乳化剤)によって安定化される。異なる製剤手順としては、高せん断均質化及び超音波、溶媒乳化/蒸発、又はマイクロエマルジョンが挙げられる。30~180nmの範囲のサイズ分布を得ることは、超音波処理を使用して可能である。
【0115】
ソラネソールを含む組成物は、いくつかの実施形態では、ナノ構造脂質担体(nanostructured lipid carrier、NLC)であり得る。当業者であれば、NLCがNLC粒子から構成されることを理解するであろう。NLCは、Beloqui et al.,Nanomedicine.NBM 2016;12:143-161に記載されている。本開示のNLC粒子は、ソラネソールの融解温度未満の温度で、(a)液相脂質及び固体ソラネソールを含む油コアと、(b)カチオン性脂質と、(c)疎水性界面活性剤と、(d)親水性界面活性剤とを含み得、組成物は、安定し、かつ細胞への生物活性剤の送達が可能であり得る。生物活性剤の送達は、例えば、免疫応答の生成のため、並びに/又は対象における疾患及び健康状態の治療のためであり得る。
【0116】
抗原は、ソラネソール及び水性緩衝液の混合時、又は対象への投与直前(例えば、ベッドのそば)のいずれかで、水性ソラネソール分散液に添加され得る。
【0117】
水性ソラネソール分散液は、乾燥していてもよい。抗原は、乾燥組成物に添加され得る。
【0118】
以下の出願は、参照により組み込まれる:国際公開第2010/141861号、国際公開第2013/119856号、国際公開第2008/124647号、国際公開第2014/042780号、国際公開第2009/012166号、国際公開第2009/143006号、国際公開第2010/003085号、国際公開第2012/064659号、国際公開第2008/153541号、国際公開第2014/160985号、国際公開第2014/160987号、国際公開第2015/103167号、国際公開第2014/197629号、国際公開第2017/200852号、国際公開第2017/210364号、国際公開第2017/200957号、国際公開第2017/205225号、国際公開第2018/053294号、国際公開第2018/232257号、国際公開第2019/051149号、及び国際公開第2018/226949号。
【実施例
【0119】
A.製剤化
水性緩衝液を、(Milli-Q)脱イオン水中の23mg/mLのグリセロール、2.7mg/mLの一塩基性リン酸アンモニウム、0.17mg/mLの二塩基性リン酸アンモニウム、及び0.36mg/mLのプルロニックF68で調製する。100mLのバッチのソラネソール-SEについて、96mLの緩衝液を250mLのビーカーに添加し、磁気撹拌しながらホットプレート上で45~50℃に加熱した。760mgのDMPC、3.6gのソラネソール、及び0.022mLのビタミンEを緩衝液に添加し、溶解させた。次いで、粗エマルジョンを、Silverson L4RTホモジナイザーを用いて7000~8000rpmで8~10分間均質化した。次いで、均質化したエマルジョンを、モデルM-l10P Microfluidizer、及び40℃での温度制御のための外部再循環水浴を使用して、30,000psiで10回のパス、マイクロ流動化した。マイクロ流動化後、エマルジョンを0.2μmのシリンジフィルターを通して濾過し、保存のために1.2mLのアリコートに等分した。
【0120】
B.インビトロ研究
3つの代謝可能な油:ブドウ種子SE(ロット番号QH598)、ソラネソールSE(ロット番号QH592)、又はサメスクアレンSE(ロット番号QH597)のうちの1つを用いて製剤化されたアジュバント4%エマルジョン。
【0121】
a.PBMCアッセイ
ヒト成人末梢血を3人のドナーから採取した。Ficoll密度勾配を使用して、血液からPBMCを単離した。単離したPBMCを5×10個の生存細胞/mLに再懸濁した。200μLのPMBCを、前述の希釈ワクチン組成物のうちの1つ50μLと混合した。ワクチン組成物は、RPMI 1640及び10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum、FBS)中0.4%、0.2%、0.1%、又は0.05%の油に1:1で希釈した代謝可能な油を含有した。PBMCを37℃、5% COで18~24時間インキュベートした。インキュベーション後、Guava機器(Guava Technologies、Hayward,CA)を製造業者の試薬、プロトコル、及びソフトウェアを使用して、フローサイトメトリーによって細胞をカウントした。
【0122】
図1は、4つの異なる油濃度のうちの1つでの3つの異なるワクチン組成物のうちの1つとのインキュベーション後の、PBMC生存率を示す。バーの高さは、3つの異なる試料からの値の平均である。PBMCは、全てのワクチン製剤及び油濃度にわたって生存を維持した。
【0123】
b.全血アッセイ(Whole Blood Assay、WBA)
WBAによって決定される自然免疫刺激。WBAは、より生理学的な環境を提供し、これは、血清バイオマーカー、バイオシグネチャープロファイルのより広い評価を提供し得る。
【0124】
WBAを、3人の男性及び3人の女性ドナーから採取した静脈の不希釈ヘパリン化全血を用いて実施した。採取の2時間以内に、200μLの血液を1:1に希釈し、の3つの製剤のうちの1つ50μLと混合した。各製剤を、洗浄用生理食塩水中0.4%、0.2%、0.1%、及び0.05%の油の4つの異なる希釈で調製した。混合後、血液を37℃、5% COで18~24時間インキュベートした。インキュベーション後、血漿を回収し、-20℃で保存した。血漿を、特異的サンドイッチELISAアッセイキット(サイトカインにはeBiosciences、San Diego.Calif、及びケモカインにはInvitrogen、Carlsbad.Calif.)を製造業者の指示に従って使用して、可溶性ヒトサイトカインIL-8及びIL-6、並びにケモカインMCP-1及びMip-1βについてアッセイした。
【0125】
スクアレンエマルジョンと比較して、ソラネソール製剤(ロット番号QH592)は、ヒト全血に対して同等又は増加したインビトロ自然刺激活性を示す。
【0126】
図2は、ワクチン組成物を用いた刺激に応答したMCP-1発現のレベルを比較するELISAデータを示す。0.4%油又は0.2%油のソラネソールを用いて製剤化されたワクチン組成物は、同様の濃度のサメスクアレンを有するワクチン組成物よりもはるかに高い発現レベルをもたらした。
【0127】
図3は、ワクチン組成物を用いた刺激に応答したMip-1β発現のレベルを比較するELISAデータを示す。0.4%油又は0.2%油のソラネソールを用いて製剤化されたワクチン組成物は、同様の濃度のサメスクアレンを有するワクチン組成物よりもはるかに高い発現レベルをもたらした。
【0128】
図4は、ワクチン組成物を用いた刺激に応答したIL-8発現のレベルを比較するELISAデータを示す。0.4%油又は0.2%油のソラネソールを用いて製剤化されたワクチン組成物は、同様の量のサメスクアレンを有するワクチン組成物よりもはるかに高い発現レベルをもたらした。
【0129】
図5は、ワクチン組成物を用いた刺激に応答したIL-6発現のレベルを比較するELISAデータを示す。0.4%油又は0.2%油のソラネソールを用いて製剤化されたワクチン組成物は、同様の量のサメスクアレンを有するワクチン組成物よりもはるかに高い発現レベルをもたらした。
【0130】
C.インビボマウス研究
C57BL/6マウス(4匹の雄及び4匹の雌JAX#000664)を、示されたアジュバントの2%エマルジョンと混合した0.01μgの不活化組換えインフルエンザHA H5N1タンパク質「rH5」(A/Vietnam/1194/2004)を用いて、3週間の間隔で(すなわち、0日目及び21日目に)筋肉内免疫化した。アジュバントは、ブドウ種子SE(ロット番号QH598)、ソラネソールSE(ロット番号QH592)、又はサメスクアレンSE(ロット番号QH597)であった。アジュバントなしで製剤化した対照も使用した。21日目(追加免疫の前)にマウスを採血し、血清を回収した。マウスを42日目に採取した。血清、骨髄、及び脾臓を42日目に採取した。
【0131】
ソラネソールSEを含むワクチン組成物のアジュバント活性を、特異的抗体、HAに対する機能的抗体、及び形質芽球の産生を測定することによって、ブドウ種子油SE及びサメスクアレンSEを含むワクチン組成物と比較した。抗体応答及びT細胞応答の両方を誘導するためのアジュバント活性を評価した。ソラネソール製剤は、サメスクアレンSEに匹敵するH5特異的抗体及び機能的抗体の力価の両方を有意に増強することができる。
【0132】
a.アジュバント活性を評価するための免疫学的アッセイ
i.ELISA終点力価
抗原特異的IgG、IgG1、及びIgG2c終点力価を、抗体捕捉ELISAによって決定した。ELISA力価を用いて、rH5特異的抗体を定量化した。血清を42日目に採取した。データは、各動物について個々の点として示され、バーの高さは、平均を表し、SEMが示される。有意性を一元配置ANOVAによって決定した(ns=有意でない、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001)。
【0133】
図6は、総血清IgGによって測定されたrH5ワクチンに対する抗体応答を示す。アジュバントのサメスクアレンSE又はソラネソールSEを使用したワクチン製剤を用いた免疫化は、抗原rH5に対する有意に高いレベルの抗体を産生する。サメスクアレンSE又はソラネソールSEの使用の間に有意な差はなかった。
【0134】
図7は、血清IgG1によって測定されたrH5ワクチンに対する抗体応答を示す。IgG1は、中和抗体であり、Th2型免疫応答によって優先的に誘導される。
【0135】
図8は、血清IgG2cによって測定されたrH5ワクチンに対する抗体応答を示す。IgG2cは、Th1型免疫応答によって優先的に誘導される中和及びオプソニン化抗体である。
【0136】
ii.骨髄ELISpot
骨髄ELISpotを使用して、rH5を用いた免疫化後のワクチン特異的長寿命抗体分泌細胞(ASC)の誘導を決定した。強い抗体応答は、H5特異的IgG分泌形質芽球のレベルの上昇にも反映された。
【0137】
図9は、ELISpotによる骨髄IgG形質芽球からのrH5特異的抗体応答を示す。アジュバントのサメスクアレンSE又はソラネソールSEの使用は、対照又はブドウ種子SEよりも有意に高いカウントの骨髄形質芽球を産生する。結果は、検出された細胞の数(Log 10)として示され、各ドットは、単一の動物を表し、バーは、平均を表す。
【0138】
iii.赤血球凝集阻害(HAI)
ウイルス中和抗体の血清レベルもまた、公開された方法に従って赤血球凝集阻害(HAI)アッセイによって検査した。赤血球凝集阻害(HI)アッセイは、インフルエンザワクチン有効性の有意義な予測指標であり、40を超える力価が、防御を提供するのに十分であると考えられる。HAI抗体は、ウイルス複製及び拡散をより効果的に制限するために必要とされる。既存のIgG抗体は、感染後にCD8メモリー又はエフェクターT細胞と協働して、強いT細胞応答を誘導することによって、疾患の重症度を低減することができる。高いHAI力価は、重度の症状の予防に理想的であり、機能的抗体は依然として、感染時に迅速に誘導され、低い興奮前HAI力価で中程度の防御を付与することができる。HAI抗体の非存在下でさえ、ワクチン接種は、疾患進行を遅延させるのに十分なレベルのウイルス特異的IgG及びT細胞免疫を誘導することができる。Wong,SS.,Duan,S.,DeBeauchamp,J.et al.The immune correlates of protection for an avian influenza H5N1 vaccine in the ferret model using oil-in-water adjuvants.Sci Rep 7,44727(2017)。https://doi.org/10.1038/srep44727
【0139】
HAI力価は、ヘマグルチニン(hemagglutinin、HA)に対する機能的抗体を測定する。H5N1不活化ウイルスは、シチメンチョウ/ウマ赤血球に結合して、ウェルをコーティングする格子を形成する(赤血球凝集)。HAに結合する抗体は、格子形成を遮断し、したがって、RBCは、ペレットを形成する(赤血球凝集阻害)。全ての細胞を、洗浄した1%ウマ赤血球(RBC)を使用してアッセイした。42日目に採取した血清を用いて、HAIを実施した。
【0140】
図10は、H5N1に対する機能的抗体を測定するウマ赤血球(RBC)を用いた赤血球凝集阻害(HAI)アッセイの幾何平均力価(GMT)を示す。破線は、ウイルス滴定アッセイの検出限界(LOD)を示す。サメスクアレンSE及びソラネソールSEの両方が、対照又はブドウ種子SEを用いて製剤化されたワクチン組成物よりも有意に高い力価を示した。
【0141】
iv.脾細胞Elispot
アジュバントによって誘導されたH5N1特異的T細胞記憶を検査するために、プライム-ブースト免疫の3週間後に脾臓細胞を採取し、H5 HAを用いた刺激後のそれらのIFN-γ分泌脾細胞について分析した。細胞免疫応答をELI-SPOT(IL-5、IFNg)によって調査した。
【0142】
図11は、IFNgに特異的な抗体分泌細胞(ASC)の数を示す。アジュバントのサメスクアレンSE及びソラネソールSEは両方とも、対照又はブドウ種子SEと比較して有意に高いレベルのIFN-γ産生細胞を示した。
【0143】
図12は、IL-5に特異的なASCを示す。様々なアジュバント製剤にわたって、有意な差は観察されなかった。
【0144】
D.安定性
ソラネソールSEを用いて製剤化したワクチン組成物の生理化学的安定性を、サメスクアレンSEを用いて製剤化したワクチン組成物の安定性と比較した。ソラネソール製剤は、サメスクアレンエマルジョンに匹敵する物理化学的安定性を示す。
【0145】
a.HPLC安定性
HPLC法を使用して、代謝可能な油の濃度を、320nmでのUV吸光度検出によって決定した。HPLC法は、以前に記載されている(Misquith A,Fung M,Dowling Q M,Guderian J A,Vedvick T S,Fox C B.In vitro evaluation of TLR4 agonist activity:formulation effects.Coll Surf B:Biointerfaces.2014;113:312-9)。安定性を、1、3、7、及び12ヶ月の保存後に代謝可能な油の濃度を測定することによって決定した。
【0146】
油標準を0.5mg/mLで調製した。油標準をクロロホルム中に溶解し、1mLのアリコートをHPLCバイアルに入れた。クロロホルムを、Genevac EZ-2遠心エバポレーター(Stone Ridge,N.Y.)を使用して蒸発させた。次いで、試料を-20℃で保存した。油標準をGLA-C中で再構成し、5、10、20、30、及び40μL容量を注入して、5点曲線を作成することによって、標準曲線を作成した。
【0147】
移動相A(75:15:10[v:v:v)メタノール:クロロホルム:水、20mMの酢酸アンモニウム及び1%酢酸を含む)。移動相B(1:1[v:v)メタノール:クロロホルム、20mMの酢酸アンモニウム及び1%酢酸を含む)。GLA-C:試料を2:1[v:v]メタノール:クロロホルム(20mMの酢酸アンモニウム及び1%酢酸を含む)で希釈した。
【0148】
ワクチン組成物をGLA-C希釈物中で1:50に希釈した。15μLの希釈ワクチン組成物をカラムに充填した。各時点からの3つの別個の試料を用いて、測定を3連で実施した。以下の勾配条件を使用してHPLCを実施した:0分-10%B、5分-10%B、13分-100%B、18分-10%B、及び23分-10%B。
【0149】
一般に、油構成成分は、約12~15分で溶出する。DMPCは、約8分で溶出する。全ての他の製剤構成成分は、約2.5分で溶出する。
【0150】
図13は、5℃での保存中のソラネソール(ロット番号QH592)を用いてアジュバント化されたワクチン組成物の油濃度を示す。点線は、理論目標濃度を示す。濃度は、上記の標準曲線を参照して決定された。
【0151】
図14A及び14Bは、5℃のそれぞれ1ヶ月及び12ヶ月の保存後の、ソラネソールを用いてアジュバント化されたワクチン組成物の溶出のクロマトグラフを示す。
【0152】
図15は、5℃での保存中のサメスクアレン(ロット番号QH597)を用いてアジュバント化された全ての濃度のワクチン組成物の油濃度を示す。
【0153】
図16A及び16Bは、5℃のそれぞれ1ヶ月及び12ヶ月の保存後の、ソラネソールを用いてアジュバント化されたワクチン組成物の溶出のクロマトグラフを示す。
【0154】
b.粒径安定性
粒径の不安定性は、初期サイズからの50%超の成長として任意に定義される。冷蔵温度では、試験したワクチン組成物のいずれについても、非常にわずかなサイズ成長が明らかである。簡潔に述べると、各エマルジョンのアリコートを水中で1:100倍に希釈し、動的光散乱(Malvern Zetasizer APS)によって散乱強度バイアスの付いたサイズ平均(Z-avg)を測定することによって、示された時点で粒径を決定した。
【0155】
図17は、5℃で保存されたワクチン組成物についてのエマルジョン粒径安定性を示し、エラーバーは、各エマルジョンの1つのバッチからの3つの別個のアリコートの標準サイズ偏差を表す。
【0156】
結論
主題は、特徴及び/又は方法学的行為に特有の言語で説明されているが、添付の特許請求の範囲で定義される主題は、必ずしも上記の特定の特徴又は行為に限定されないことを理解されたい。むしろ、特定の特徴及び行為は、特許請求の範囲を実施する例示的な形態として開示される。
【0157】
本発明を行うために本発明者らに知られている最良の様式を含む、ある特定の実施形態が本明細書に記載されている。当然のことながら、これらの記載される実施形態の変化形態は、前述の説明を読むことで当業者に明らかになるであろう。当業者は、必要に応じてそのような変化形態をどのように用いるかを知り、本明細書に開示される実装形態は、具体的に記載されたものとは別の方法で実施され得る。したがって、本明細書に添付される特許請求の範囲に列挙される主題の全ての修正物及び均等物は、本開示の範囲内に含まれる。更に、その全ての可能な変化形態における上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈によって明確に否定されない限り、本発明によって包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図17
【国際調査報告】