(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】小胞体ストレス減少用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/125 20160101AFI20240110BHJP
A23F 3/16 20060101ALI20240110BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240110BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240110BHJP
A61K 31/7004 20060101ALI20240110BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240110BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240110BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240110BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240110BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240110BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240110BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A23L33/125
A23F3/16
A61P43/00 105
A61P3/10
A61K31/7004
A61K9/20
A61K9/14
A61K9/48
A61K9/16
A61K9/10
A61K9/08
A61K9/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538926
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 KR2021020280
(87)【国際公開番号】W WO2022146076
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0189953
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500578515
【氏名又は名称】サムヤン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サ,スンオク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ゴウン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,チュンウ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジョンスク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ファヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ハンジョン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B027
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE04
4B018LE05
4B018MD28
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4C076AA06
4C076AA09
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4C076AA31
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4C086AA01
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4C086EA01
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB21
4C086ZC35
(57)【要約】
本発明は、アルロースを含む小胞体ストレス減少の機能性を有する組成物に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルロースを有効成分として含む、小胞体ストレス関連疾患の改善、予防または治療用組成物。
【請求項2】
前記組成物が、p-IRE1α、p-eIF2α、ATF4、GRP78、CHOP、IRE1-alphaおよびsulfonation(SO
3H)からなる群より選択された1種以上のタンパク質の発現を減少させるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、p-AMPKおよびSIRT1からなる群より選択された1種以上のタンパク質の発現を増加させるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記小胞体ストレス関連疾患が、インスリン抵抗性増加、血糖増加、糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病、グルタミン多量体誘発凝集疾患、ハンチントン病、アルツハイマー病、虚血性疾患、心血管疾患、高ホモシステイン血症または動脈硬化症である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、組織内小胞体ストレスを緩和または減少させるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、インスリン抵抗性を減少させるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、食後血糖を減少させるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、筋組織内小胞体ストレス減少による血糖を減少させるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
アルロースの一日摂取量が、摂取個体の体重60kgあたり10~80gである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記アルロースが、液状または粉末形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記アルロースが、組成物の固形分含有量100重量%を基準として0.1~99.9重量%含まれるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、4~20週間投与されるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
食品組成物または薬学組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、錠剤、粉末、カプセル、顆粒、シロップ、ゼリー、バー、ペースト、ゲル、飲料、お茶形態を含む、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルロースを含む小胞体ストレス減少の機能性を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞内ストレスとしては、酸化ストレス(Oxidative Stress)、ミトコンドリアストレス、Heat Shock Stress、小胞体ストレス(Endoplasmic Reticulum Stress、ER Stress)などがある。小胞体(ER、endoplasmic reticulum)の内腔は、翻訳後変形とタンパク質のフォールディング(folding)のために特殊化された細胞的環境である。小胞体は、リボソームが付いている粗面小胞体(rough endoplasmic reticulum)と、リボソームがない滑面小胞体(smooth endoplasmic reticulum)と、の2種類がある。細胞内タンパク質の約1/3が、粗面小胞体でmRNAからタンパク質に翻訳後、修飾(posttranslational modification)、つまり、フォールディング(folding)と組立(assembly)、糖化(glycation)および二硫化結合(disulfide bond)などの過程により活性型タンパク質構造になる。また、滑面小胞体は、脂質とステロイドとの合成場所であり、カルシウム貯蔵所として細胞内カルシウム濃度を調節するのに重要な役割を果たす。
【0003】
このように、小胞体ストレス反応は、多様な細胞性ストレスで小胞体の機能を保存して細胞を保護するための重要な補償機序であるが、最近は、誤ったシグナル伝達システムによって過度な小胞体ストレス反応が誘発されて、これによって引き起こされたり誘発される疾病があることが知られている。
【0004】
最近、糖尿病患者の発生が増加する傾向にあり、それに伴う合併症として現れる心血管系疾患による死亡率も次第に増加している。治療されない慢性糖尿病合併症には神経や腎臓疾患をはじめとしていろいろあるが、その中でも特に、高血圧、動脈硬化症、脳梗塞、脳血栓、心筋梗塞症のような心血管系疾患の発病率が高い。このような動脈硬化症をはじめとする心血管性障害が頻発する主な要因の一つとして、糖尿病患者の組織では酸化的ストレスに対する感受性が高く、遊離基(Free radical)の生成増加で脂質過酸化が促進されることが知られている。この所以から、組織を過酸化から保護するための生体の抗酸化防御系の強化に関する研究が進展している。
【0005】
糖尿病は、身体内で血糖の調節に必要なインスリンの分泌や機能の障害によって発生した高血糖を特徴とする代謝性疾患である。インスリン抵抗性は、大部分の肥満および第2型糖尿病患者で普遍的に観察される現象で、主因はインスリン作用における受容体後欠陥(postreceptor defect)で、貯蔵所は過度に拡張されるのに対し、食後血液中の栄養分を処理する能力は減少して発生する。
血糖を調節するために運動および食事が重要であるが、地道な献立管理や運動管理が難しいため、多くの人々が困難を経験している。また、血糖調節が難しい人々は薬物療法によって血糖を減少させるが、慢性疾患の特性上、長期間摂取のための薬物の安全性が問題になるのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、安全性が憂慮される既存の薬物とは異なり、小胞体ストレス減少を促進して血糖を減少させる機能性素材の開発を進めてきた。この機能性素材がアルロースと呼ばれ、果糖の3位炭素のエピマーであって、砂糖の70%に相当する甘味度を有して甘味を出しながらも、摂取時に小胞体ストレス減少効果に優れ、安全な組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一例は、アルロースを含む小胞体ストレス関連疾患の予防、改善または治療用組成物に関する。
【0008】
本発明の一例は、アルロースを含む小胞体ストレス関連疾患の予防、改善または治療用用途に関する。
【0009】
本発明の一例は、アルロースを含む組成物を、これを必要とする対象に投与する工程を含む、小胞体ストレス関連疾患の予防、改善または治療方法に関する。
【0010】
本発明の他の例は、アルロースを有効成分として含む小胞体ストレス減少による血糖調節、インスリン感受性調節、または糖尿病の改善、予防、または治療用組成物に関する。
【0011】
本発明のさらなる例は、アルロースを有効成分として含む小胞体ストレス減少による血糖調節、インスリン感受性調節、または糖尿病の改善、予防、または治療用途に関する。
【0012】
本発明のさらなる例は、アルロースを有効成分として含む組成物を、これを必要とする対象に投与する工程を含む、小胞体ストレス減少による血糖調節、インスリン感受性調節、または糖尿病の改善、予防、または治療方法に関する。
【0013】
本発明のさらに他の例は、アルロースを有効成分として含む、p-IRE1α、p-eIF2α、ATF4、GRP78、CHOP、IRE1αおよびsulfonation(SO3H)からなる群より選択された1種以上の小胞体ストレス関連タンパク質の発現を減少させる組成物に関する。
【0014】
本発明のさらに他の例は、アルロースを有効成分として含む、p-IRE1α、p-eIF2α、ATF4、GRP78、CHOP、IRE1αおよびsulfonation(SO3H)からなる群より選択された1種以上の小胞体ストレス関連タンパク質の発現を減少させる方法に関する。
【0015】
本発明のさらなる例は、アルロースを含む酸化的ストレス関連疾患の予防、改善または治療用組成物、用途または方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一例によれば、食生活や運動生活を変えずに、アルロースの摂取だけで効果的に小胞体ストレスが減少し、血糖調節に役立つ効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一例により、db/dbマウスにおいてD-アルロースが血糖減少に及ぼす影響を確認すべく、経口ブドウ糖負荷検査とインスリン耐性検査を実施した数値を示すグラフである。
【
図2】本発明の一例により、db/dbマウスにおいてD-アルロースが血清内insulin濃度に及ぼす影響を確認すべく、血清内insulinの濃度を測定した後、数値を示すグラフである。
【
図3】本発明の一例により、db/dbマウスにおいてD-アルロースが酸化的ストレスに及ぼす影響を確認すべく行った、DHE蛍光染色された組織の共焦点顕微鏡写真(
図3のA)、DHE蛍光強度の数値結果を示すグラフ(
図3のB)である。
【
図4】本発明の一例により、db/dbマウスにおいてD-アルロースがNADPH oxidase活性に及ぼす影響を確認すべく、組織内NADPH oxidase活性濃度を測定した数値を示すグラフである。
【
図5】本発明の一例により、db/dbマウスにおいてD-アルロースが脂質過酸化物に及ぼす影響を確認すべく、脂質過酸化物の含有量を測定した数値を示すグラフである。
【
図6】本発明の一例により、db/dbマウスにおいてD-アルロースがタンパク質の酸化に及ぼす影響を確認すべく、組織内タンパク質の酸化程度を測定して示す結果である。
【
図7】本発明の一例により、db/dbマウスにおいてD-アルロースがNOX4のタンパク質発現レベルに及ぼす影響を示す図である。
【
図8】本発明の一例により、db/dbマウスにおいてD-アルロースが小胞体(ER)ストレスとIRE1αの不可逆的酸化に及ぼす影響を示す図である。
【
図9】本発明の一例により、db/dbマウスにおいてD-アルロースがp-AMPK-SIRT1-PGC-1αに対する補充効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一例は、アルロースを含む小胞体ストレス関連疾患の予防、改善または治療用組成物に関する。前記小胞体ストレス関連疾患は、筋組織の小胞体ストレス関連疾患であってもよいし、筋組織の小胞体または筋小胞体(sarcoplasmic reticulum)であってもよい。
【0019】
本発明において、小胞体ストレス関連疾患は、インスリン抵抗性増加、血糖増加、糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病、グルタミン多量体誘発凝集疾患、ハンチントン病、アルツハイマー病、虚血性疾患、心血管疾患、高ホモシステイン血症、動脈硬化症または癌であってもよい。前記癌の治療は、小胞体ストレスを増加して細胞死滅を誘導することが治療手段であり得る。
【0020】
本発明のさらに他の例は、アルロースを有効成分として含む、p-IRE1α、p-eIF2α、ATF4、GRP78、CHOP、IRE1-alphaおよびsulfonation(SO3H)からなる群より選択された1種以上の小胞体ストレス関連タンパク質の発現または活性を減少させる組成物に関する。
【0021】
本発明のさらに他の例は、アルロースを有効成分として含む、p-AMPKとSIRT1タンパク質の発現増加または活性化用組成物に関する。
【0022】
本発明のさらに他の例は、アルロースを有効成分として含む小胞体ストレス減少による血糖降下、インスリン感受性の低下、または糖尿病の改善、治療または予防用組成物に関する。前記組成物は、薬学的組成物または食品組成物であってもよい。前記小胞体ストレスは、筋組織または膵臓ベータ細胞で発生するものであってもよい。また、本発明は、アルロースを有効成分として含む、筋組織内小胞体(筋小胞体)ストレス減少用途、小胞体ストレス減少による血糖降下、インスリン感受性の低下、または糖尿病の改善、治療または予防用組成物に関する。具体的には、本発明による血糖降下、インスリン感受性の低下、または糖尿病の改善、治療または予防用組成物は、p-IRE1α、p-eIF2α、ATF4、GRP78、CHOP、IRE1-alphaおよびsulfonation(SO3H)からなる群より選択された1種以上の小胞体ストレス関連タンパク質の発現または活性を減少させたり、および/またはp-AMPKとSIRT1タンパク質の発現増加または活性化を達成するものであってもよい。
【0023】
本発明により、アルロースは、血糖調節能を有し、特に食後血糖を減少させることができる。具体的には、本発明によるアルロースは、健康な対象または血糖数値が糖尿病の境界にある対象において、食事時または食後にアルロース投与による食後血糖を減少させることができる。このため、本発明によるアルロースを有効成分として含む組成物は、食事による血糖増加を抑制または減少することができ、増加した血糖を低下させることが可能で、健康な対象、糖尿病の境界にある血糖数値を有する対象、または糖尿病を有する対象において血糖増加を抑制または血糖降下を誘導することができる。前記対象は、ヒトを含む哺乳類であってもよい。
【0024】
本発明のさらなる例は、アルロースを含む酸化的ストレス関連疾患の予防、改善または治療用組成物に関する。前記アルロースは、酸化的ストレスを減少させる抗酸化活性を有する。前記アルロースは、Nox4(NADPH oxidase 4:NOX4)発現減少、タンパク質酸化減少またはsuperoxide anion、NADPH Oxidase activity、およびlipid peroxidationを抑制して酸化的ストレスを減少させることができる。
【0025】
前記アルロースは、筋細胞または筋組織のNox4の発現減少、タンパク質酸化減少またはsuperoxide anion、NADPH Oxidase activity、またはlipid peroxidationを1つ以上抑制して酸化的ストレスを減少させることができる。前記アルロースを有効成分とする組成物の摂取により筋肉内のsuperoxide anion、NADPH Oxidase activity、またはlipid peroxidationを5~50%、10~50%、5~30%、10~30%、5~20%、5~15%、または10~20%を減少させることができる。
【0026】
本発明によるアルロースを有効成分とする組成物は、一日摂取量が摂取個体の体重60kgあたり10~80g(10~80g/60kg/day)となるように配合された組成物であってもよい。前記アルロースを有効成分とする組成物を、食前、食後または食事と同時に摂取することができる。前記アルロースを有効成分とする組成物を、4~20週(weeks)、好ましくは8~12週(weeks)の期間摂取する方法であってもよい。本発明による組成物を単回摂取するだけでも有効な効果を導出できるが、前記期間摂取すれば効果をさらに極大化することができる。
【0027】
詳しくは、高脂肪食餌の哺乳動物における様々な種類の甘味料の摂取試験により、アルロースを有効成分とする組成物でのみ小胞体ストレスおよび酸化的ストレスを減少させる効果を確認できた。
【0028】
具体的には、本発明において、アルロースの投与により、NOX4の発現減少は、筋細胞内ROSの生成を抑制させてブドウ糖代謝を調節してインスリン抵抗性を減少させる。アルロースがAMPK-SIRT1-PGC-1αを活性化させてエネルギー代謝を増進してインスリン抵抗性の改善に寄与する。
【0029】
本発明により、アルロースは、有効成分として含む筋肉内の小胞体ストレス減少による血糖調節に寄与し、具体的には、筋細胞または筋組織の小胞体ストレス減少による血糖調節に寄与する。さらに詳しくは、炭水化物を摂取すれば、腸で吸収されたブドウ糖は身体の各組織に送られて、後に用いるために貯蔵されたり直ちに酸化してエネルギーを生成する。ブドウ糖を経口で摂取すれば、肝、筋組織、脳組織や内臓(splanchnic bed)、脂肪組織に提供され、アルロースは、特に前記筋組織の貯蔵を活性化させて体内血糖を非常に効果的に低下させることができる。
【0030】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の一例は、アルロースを含む小胞体ストレス関連疾患の予防、改善または治療用組成物に関する。本発明において、小胞体ストレス関連疾患は、インスリン抵抗性増加、血糖増加、糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病、グルタミン多量体誘発凝集疾患、ハンチントン病、アルツハイマー病、虚血性疾患、心血管疾患、高ホモシステイン血症、動脈硬化症または癌であってもよい。
【0031】
さらに詳しくは、本発明は、アルロースを有効成分として含む小胞体ストレス減少による血糖調節、インスリン感受性調節、または糖尿病の改善、予防、または治療用組成物に関する。
【0032】
本明細書において、用語、「小胞体ストレス(ER stress)」とは、生理的あるいは病理的環境によって小胞体が処理できる能力以上の未成熟タンパク質が小胞体内に流入したり、小胞体内カルシウムが枯渇して小胞体の機能に障害が発生することをいう。
小胞体ストレスが発生すると、細胞は生存するための防御機序を持つが、これを「小胞体ストレス反応(ER stress response)」という。小胞体ストレス反応は、小胞体膜に存在する3つのシグナル伝達体系であるPERK(pancreatic ER kinase)、IRE-1α/XBP-1(inositol-requiring 1α/X-box binding protein 1)およびATF6(activating transcription factor)によって媒介される。このような小胞体ストレス反応は、特にタンパク質を合成して分泌する機能が活発な形質細胞、膵臓のベータ細胞、肝細胞、造骨細胞のような所でよく観察されており、最近、多くの研究は、小胞体ストレスが虚血、糖尿、ウイルス感染、高ホモシステイン血症のような多様な疾患の病因として作用することを示している。
【0033】
本発明のさらに他の例は、アルロースを有効成分とする、p-IRE1α、p-eIF2α、ATF4、GRP78、CHOP、IRE1αおよびsulfonation(SO3H)からなる群より選択される1種以上のタンパク質発現を減少させる組成物に関する。
【0034】
具体的には、実験動物の非腹筋試料に対して、p-IRE1α、p-eIF2α、ATF4、GRP78、CHOPおよびIRE1α sulfonation(SO
3H)の発現量を分析した結果、正常対照群(NC)に比べて、糖尿対照群(DC)においてp-IRE1α、p-eIF2α、ATF4、GRP78、CHOPおよびIRE1α sulfonation(SO
3H)の発現量が有意に増加したが、アルロース粉末型と液状型を濃度依存的に摂取した群では、糖尿対照群(DC)において増加した前記遺伝子の発現量が減少することを確認した(
図8)。よって、アルロースが小胞体ストレスを減少させてインスリン抵抗性を改善させると見られ、小胞体ストレスが誘導するアポトーシス(細胞死滅)を阻害することによって細胞を保護することができる。
【0035】
本発明において、アルロースは、p-AMPKとSIRT1タンパク質の発現を増加させ、具体的には、p-AMPKとSIRT1タンパク質の発現を増加またはSIRT1の活性化は、PGC-1αがdeacetylationされて(つまり、acetylated-PGC-1αの発現が減少して)、筋肉に存在するGLUT4の活性を増加させて、ブドウ糖を細胞外部から細胞内部に移動させて、血糖降下、インスリン抵抗性減少、または糖尿病の改善または治療に寄与する。Insulin-responsive glucose transporter 4(GLUT4)は、インスリン依存的ブドウ糖輸送体として主に骨格筋と脂肪組織に分布し、ブドウ糖を細胞外部から細胞内部に移動させる役割を果たす。
【0036】
詳しくは、アルロース粉末型と液状型を濃度依存的に摂取した群では、糖尿対照群(DC)に比べてp-AMPKとSIRT1のタンパク質の発現量が増加することを確認した。具体的には、実験動物の非腹筋で発現するp-AMPKとSIRT1タンパク質の発現量を分析した結果、正常対照群(NC)に比べて、糖尿対照群(DC)においてp-AMPKとSIRT1のタンパク質発現量が有意に減少するが、アルロース粉末型と液状型を濃度依存的に摂取した群では、糖尿対照群(DC)に比べてp-AMPKとSIRT1のタンパク質の発現量が増加することを確認した(
図9のA)。
【0037】
本発明において、acetylated-PGC-1αタンパク質の発現を確認した結果、正常対照群(NC)に比べて、糖尿対照群(DC)においてacetylated-PGC-1αが増加するが、アルロース粉末型と液状型を濃度依存的に摂取した群では、acetylated-PGC-1αの発現が減少した(
図9のBおよびC)。したがって、アルロースがAMPK-SIRT1-PGC-1αを活性化させてエネルギー代謝を増進してインスリン抵抗性の減少に役立てるものと期待する。
【0038】
本明細書において、「小胞体ストレス関連疾患」とは、小胞体ストレスによって発生したり悪化する疾患をいい、例えば、細胞内にタンパク質の過度な蓄積によって分解システムがそれ以上作動しにくくなり、それ自体が細胞に毒性を示して引き起こされる疾患(神経退行性疾患など)、または誤ったシグナル伝達システムによって過度な小胞体ストレス反応が誘発されて、これによって引き起こされたり誘発される疾病(糖尿病など)がこれに含まれる。現在、糖尿病、パーキンソン病、グルタミン多量体誘発凝集疾患、ハンチントン病、アルツハイマー病、虚血性疾患、心血管疾患、高ホモシステイン血症および動脈硬化症が小胞体ストレス関連疾患として知られている。このため、本明細書において、小胞体ストレス関連疾患は、インスリン抵抗性増加、血糖増加、糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病、グルタミン多量体誘発凝集疾患、ハンチントン病、虚血性疾患、心血管疾患、高ホモシステイン血症、動脈硬化症または癌であってもよい。前記小胞体ストレス関連疾患の具体例は、インスリン抵抗性増加、血糖増加、または糖尿病であってもよい。
【0039】
具体的には、アルツハイマー病の場合、患者の組織サンプルにおいてPERKとその下部基質であるeIF2a経路が大体活性化されていると見られ、代表的な退行性疾患であるパーキンソン病は、E3 ligaseタンパク質であるParkinが小胞体ストレスと密接に関連していると報告されており、ハンチントン病の場合、遺伝子の一部分が突然変異で過大増幅されながら現れるグルタミンの重合体が絡み合いを起こしながら細胞の分解能力ではそれ以上耐えられない程度のタンパク質凝集体(protein aggregation)を形成した結果、自然に小胞体ストレスが発生し、神経細胞の死滅が起こることが知られている。
【0040】
本発明の一例は、アルロースによるインスリン抵抗性増加、血糖増加、または糖尿病の改善または治療用途を提供し、前記疾患は、小胞体ストレスおよび/または酸化的ストレス関連疾患に属し、例えば、筋組織内小胞体ストレスおよび/または酸化的ストレスに関連する。
【0041】
詳しくは、酸化的ストレスに関連して、アルロースの投与により、NOX4の発現減少は、筋細胞内ROSの生成を抑制させてブドウ糖代謝を調節してインスリン抵抗性を減少させる。前記小胞体ストレスに関連して、アルロースは、AMPK発現または活性化を増加させ、筋組織および心臓筋肉においてAMPKは筋収縮を促進させてブドウ糖の吸収を促進させるが、これはインスリンの作用に関係なくGLUT1を活性化させたり、GLUT4の血漿膜への移動を誘導してブドウ糖の細胞内への伝達を増加させる。また、アルロースは、SIRT1の活性化を誘導し、よって、PGC-1αがdeacetylationされて、筋肉のglucose transport 4(GLUT4)の活性を増加させることが知られている。Insulin-responsive glucose transporter 4(GLUT4)は、インスリン依存的ブドウ糖輸送体として主に骨格筋と脂肪組織に分布し、ブドウ糖を細胞外部から細胞内部に移動させる役割を果たす。
【0042】
第2型糖尿病から観察されるインスリン分泌障害は小胞体ストレスを誘発するが、本研究では、アルロースが第2型糖尿から誘発された小胞体ストレスを調節するかを確認した。インスリン抵抗性が糖尿病を起こす最も重要な理由であるため、インスリン抵抗性の減少は糖尿治療に効果を示すものであり、特に第2型糖尿病において非常に重要である。膵臓ベータ細胞は小胞体がよく発達しており、小胞体の円滑な機能がベータ細胞の機能に重要な役割を果たし、小胞体ストレスによるベータ細胞の機能異常が糖尿病の誘発に寄与するのである。
【0043】
アルロースは、リン酸化AMPK(AMP-activated protein kinase)を増加させてAMPKシグナルを活性化することによって、血液内糖の細胞吸収を促進することによって血糖を降下すること、肥満抑制活性を示すこと、および/またはAMPKの活性を増加させて血中脂質濃度を降下することが可能である。AMPKは、インスリンに関係なく、肝からのブドウ糖の放出を抑制することによって血糖調節に関与する糖代謝、脂肪代謝およびミトコンドリアの生成およびエネルギー代謝に関与することが知られている。AMPKは、ミトコンドリアの生成(biogenesis)に重要な役割を果たすとされたPGC-1αの遺伝子発現を増加させることが知られている。
【0044】
AMPKは、大部分の細胞および全身レベルでエネルギーバランスの調節に重要な要素であり、serine/threonine kinaseとして脂質とブドウ糖代謝の調節因子として知られており、AMPKの調節作用は、肥満、糖尿、および各種代謝症候群の研究分野で注目されている。AMPKは、ATPを消費する同化作用を抑制し、ATPを生産する異化作用(ブドウ糖吸収、当該過程、グリコーゲン分解、脂肪酸酸化)を促進する作用をするので、肝や骨格筋などの組織でAMPKが活性化されると、脂肪酸酸化とブドウ糖吸収が増加する。細胞、動物の肝、筋組織におけるAMPKリン酸化の程度をウェスタンブロット(western blotting)またはELISA方法で測定できる。筋組織および心臓筋肉におけるAMPKは、筋収縮を促進させてブドウ糖の吸収を促進させるが、これはインスリンの作用に関係なくGLUT1を活性化させたり、GLUT4の血漿膜への移動を誘導してブドウ糖の細胞内への伝達を増加させる。
【0045】
Sirtuin1(SIRT1)は、AMPKの活性化に必要な因子であり、PGC-1αの代謝に関与することが知られている。つまり、AMPKの活性化は、細胞内NAD(+)の含有量を増加させ、NAD(+)依存的脱アセチル化酵素のSIRT1が活性化されてPGC-1αの脱アセチル化および活性化が行われる。SIRT1の活性化は、PGC-1αが脱アセチル化(deacetylation)されて、筋肉のglucose transport 4(GLUT4)の活性を増加させると報告された。Insulin-responsive glucose transporter 4(GLUT4)は、インスリン依存的ブドウ糖輸送体として主に骨格筋と脂肪組織に分布し、ブドウ糖を細胞外部から細胞内部に移動させる役割を果たす。細胞または動物の筋肉においてSIRT1タンパク質発現をwestern blottingまたはELISA方法で測定できる。
【0046】
ペルオキシソーム増殖活性受容体ガンマ補助活性因子アルファ(peroxisomal proliferator-activated receptor gamma coactivator-1α、PGC-1α)は、ブドウ糖代謝、ミトコンドリアの生成(biogenesis)、筋繊維形成(muscle fiber specialization)、適応熱産生(adaptive thermogenesis)に重要な役割を果たすことが知られている。PGC-1αの発現量の増加は、ミトコンドリアDNA複製数の増加、ミトコンドリア増殖を促進することが知られている。PGC-1αの発現を促進する物質は、ミトコンドリアの生成を促進し、これは結局、ミトコンドリアによる脂肪酸酸化を促進し、ATPエネルギーを生成して身体のエネルギー消費を促進することができる。ミトコンドリアは、ブドウ糖の輸送と脂肪の酸化を活性化させることによって、エネルギー代謝において重要な役割を果たす。
【0047】
本発明のさらに他の例は、アルロースを有効成分として含む酸化的ストレス関連疾患の予防、改善または治療用組成物である。
【0048】
本明細書において、酸化的ストレスによる疾患または酸化的ストレス関連疾患は、癌、骨髄炎、後天性免疫欠乏症、心血管系疾患、大腸直腸癌、膀胱癌、冠動脈疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、慢性腎臓病、アルコール性肝疾患、閉塞性肺疾患、インスリン抵抗症候群または糖尿病、好ましくは、冠動脈疾患または糖尿病を含むが、これに限定されない。
【0049】
活性酸素種(Reactive oxygen species、ROS)からの細胞または組織の損傷は、糖尿病だけでなく、炎症、老化などに関連があることが知られている。アルロースが抗酸化作用があるかを確認すべく、細胞内で生成されるsuperoxide anion、NADPH Oxidase activityおよびlipid peroxidationをDHE組織染色を行ってアルロースの活性酸素種消去活性を測定した。具体的には、細胞内で生成されるsuperoxide anion減少効果を有する(
図3)。過酸化水素(H
2O
2)を含むペルオキシドは、酸化性ストレスを発生させる主な活性酸素種(ROS)の一つである。
【0050】
糖尿動物モデル(DC)によって生成されたNADPH Oxidase activity、およびlipid peroxidationが、アルロース粉末型と液状型による抑制効果を分析すべく、本実験を行った。つまり、アルロースが過酸化水素(H
2O
2)によって発生する酸化的ストレスから細胞を保護する活性があるか否かを分析した。糖尿動物モデル(DC)によって生成されたsuperoxide anion、NADPH Oxidase activity、およびlipid peroxidationがアルロース粉末型と液状型によって濃度依存的に抑制する効果を示した(
図4および
図5)。これはアルロース粉末型と液状型が過酸化水素(H
2O
2)によって発生する酸化的ストレスから細胞保護効果があることが分かった。
【0051】
正常対照群(NC)に比べて、糖尿対照群(DC)においてタンパク質の酸化が有意に増加することを確認した。しかし、アルロース粉末型と液状型を濃度依存的に摂取した群では、糖尿対照群(DC)に比べてタンパク質の酸化が減少することを確認した(
図6)。
【0052】
具体的には、D-アルロースがNOX4のタンパク質発現レベルに及ぼす影響を分析した結果、正常対照群(NC)に比べて、糖尿対照群(DC)においてNOX4のタンパク質発現量が有意に増加することを確認した。しかし、アルロース粉末型と液状型を濃度依存的に摂取した群では、糖尿対照群(DC)に比べてNOX4のタンパク質発現量が減少することを確認した(
図7)。アルロースの投与により、NOX4の発現減少は、筋細胞内ROSの生成を抑制させてブドウ糖代謝を調節してインスリン抵抗性を減少させると見られる。
【0053】
アルロースの投与により、NOX4の発現減少は、筋細胞内ROSの生成を抑制させてブドウ糖代謝を調節してインスリン抵抗性を減少させると見られる。細胞内の過度なブドウ糖代謝は、細胞または組織内でNox4の発現を増加させ、このようなNox4の増加した発現は、細胞と組織内で過剰な活性酸素生成を誘発する。この時、生成される活性酸素は、細胞の生存と死滅、redoxシステムの維持に重要な役割を果たすことが知られている。
【0054】
本発明に適用されるアルロースは特別な制限がなく、アルロースを含む液状アルロース、粉末アルロース、結晶形アルロースおよび非結晶形アルロースを含む。前記アルロースは、化学的に合成したり、生物学的に製造されたものであってもよい。
【0055】
本明細書において、対象に投与されるアルロースの量は、一日摂取量が摂取個体の体重60kgあたり10~80g、10~70g、10~65g、10~60g、10~55g、10~50g、20~80g、20~70g、20~65g、20~60g、20~55g、20~50g、30~80g、30~70g、30~65g、30~60g、30~55g、または30~50gであってもよい。このため、本発明によるアルロースを含む組成物は、一日摂取量が摂取個体の体重60kgあたり10~80g、10~70g、10~65g、10~60g、10~55g、10~50g、20~80g、20~70g、20~65g、20~60g、20~55g、20~50g、30~80g、30~70g、30~65g、30~60g、30~55g、または30~50gとなるようにアルロースを含む組成物であってもよい。
【0056】
本発明によるアルロースを有効成分とする組成物を投与または摂取する対象または個体は、ヒトを含む動物であり、例えば、ヒト、マウス、ラット、サルなどを含む。
【0057】
本発明によるアルロースを有効成分とする組成物は、食前、食後または食事と同時に摂取することができ、特に摂取条件を限定するものではない。
【0058】
前記アルロースを有効成分とする組成物を、体脂肪の低減化を達成するのに有効な期間摂取することができ、例えば、4~20週(weeks)、好ましくは8~12週(weeks)の期間摂取する方法であってもよい。本発明による組成物を単回摂取するだけでも有効な効果を導出できるが、2回以上摂取することができる。
【0059】
前記アルロースを有効成分とする組成物の摂取のための製剤単位は、例えば、個別摂取量の1、2、3または4倍を含有するか、または1/2、1/3または1/4倍を含有するように製造される。個別摂取量は、好ましくは、有効成分の1日1回に投与される量を含有し、これは通常、一日投与量の全部、1/2、1/3または1/4倍に相当する量で製剤化される。
【0060】
本発明によるアルロースを含む組成物は、食品組成物または薬学組成物であってもよい。
【0061】
本発明による組成物の好適な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食物、投与時間、投与経路、排泄速度および反応感応性のような要因によって多様に処方可能である。
【0062】
本発明によるアルロースを有効成分とする組成物は、食品、食品添加剤、飲料、飲料添加剤、健康食品、または機能性食品であってもよい。本発明において、「健康機能食品」とは、健康機能食品に関する法律により人体に有用な機能性を有する原料や成分を使用して製造(加工を含む)した食品をいい、「機能性」とは、人体の正常な機能を維持したり、生理機能の活性化により健康を維持し改善するなどといった保健用途に有用な効果を得ることをいう。前記アルロースを一般食品に添加したり、カプセル化、粉末化、懸濁液などに製造することができる。これを摂取する場合、健康上特定の効果をもたらし、一般薬品とは異なって食品を原料としたので、薬品の長期服用時に発生しうる副作用などがないというメリットがある。
【0063】
本発明のアルロースを食品添加物として使用する場合には、前記アルロースをそのまま添加したり、他の食品または食品成分と共に使用したり、その他の通常の方法により適切に使用することができる。有効成分の混合量は、その使用目的(予防、健康または治療的処置)に応じて好適に決定可能である。
【0064】
前記食品は、アルロースを適用可能な食品であれば特に制限されず、例えば、穀類加工品、豆類加工品、芋類加工品、糖類加工品、水産物加工品、その他の加工品、菓子、キャンディ類(例、ハードキャンディ、ゼリー類、グミ類)、パン類、ギョーザ類、食肉加工品(例、肉類、ソーセージ)、酪農製品(例、乳酸菌発酵乳、アイスクリーム類)、卵加工品、ムク類(そば、どんぐり等の粉末をゼリー状に煮固めたもの)、加工油脂、その他の麺類、油湯麺類、固形茶、液状茶、コーヒー、果菜ジュース、果菜飲料、その他の発酵飲料、高麗人参飲料、混合飲料、飲料ベース、調味味噌、唐辛子みそ、納豆汁、ソース類、複合調味食品、ハクサイキムチ、調味塩辛、塩漬け類、砂糖漬け、農産物漬け、畜産物漬け、調味乾燥魚類、乾燥魚類、ピーナッツまたはナッツ類加工品、果菜加工品、調味海苔・抽出食品、即席摂取食品、蒸し米、キノコの子実体加工食品飲料類、肉類加工品類、チョコレート、菓子類、ピザ、麺類(ラーメン、そばなど)、ガム類、アイスクリーム類、アルコール飲料類、ビタミン複合剤および健康補助食品類などであってもよい。
【0065】
本発明のさらに他の例は、アルロースを有効成分とする錠剤、粉末、カプセル、顆粒、シロップ、ゼリー、バー、ペースト、ゲル、飲料、お茶形態を含む体脂肪燃焼促進用組成物を提供する。
【0066】
本発明による食品は、通常の食品添加物を含むことができ、食品添加物として適するか否かは、他に断りがない限り、食品医薬品安全庁に承認された食品添加物公典の総則および一般試験法などにより当該品目に関する規格および基準により判定する。
【0067】
一例において、充填剤を除いた組成物中のアルロースの重量(wt)%は、多様に設定可能であり、例えば、組成物の固形分含有量を基準として、アルロースを約0.1~99.9重量%または5~95重量%含むことができるか、前記アルロースは総固形分を基準として80(w/w)%以上、好ましくは90(w/w)%以上、さらに好ましくは95(w/w)%以上、96(w/w)%以上、97(w/w)%以上、98(w/w)%以上または99(w/w)%以上の含有量を有する組成物であってもよい。
【0068】
本発明に適用されるアルロースは特別な制限がなく、アルロースを含む液状アルロース(アルロースシロップ、粉末アルロース、結晶形アルロースおよび非結晶形アルロースを含む。前記アルロースは、化学的に合成したり、生物学的に製造されたものであってもよい。
【0069】
本発明による組成物に含まれるアルロースを含む粉末またはシロップ形態であるか、例えば、アルロースは、純度80(w/w)%以上、好ましくは90(w/w)%以上、さらに好ましくは95(w/w)%以上、96(w/w)%以上、97(w/w)%以上、98(w/w)%以上または99(w/w)%以上のアルロースを粉末、これを用いて多様な濃度に製造した溶液または果糖-含有溶液で化学的または生物学的方法でアルロースに変換した溶液であってもよい。
【0070】
前記アルロースシロップは、前記アルロース単独または混合糖から分離、精製および濃縮工程により得られたものであってもよい。本発明の一例において、分離および精製工程を経たアルロースシロップは、電気伝導度1~50μS/cmであり、無色または微黄色の甘美を有する液状アルロースシロップであってもよい。前記アルロース含有混合糖の具体例は、混合糖の全体固形分含有量100重量部を基準として、アルロース5~95重量部、果糖1~50重量部およびブドウ糖1~55重量部、およびオリゴ糖1~10重量部を含むものであってもよいし、オリゴ糖は含まなくてもよい。前記アルロース、果糖およびブドウ糖は、好ましくは、すべてD型-異性体である。
【0071】
以下、本発明を下記の実施例によってさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0072】
実施例1: 糖尿動物モデル
(1)正常食餌投与動物群(NCD)
実験動物は生後5週齢の雄正常群(C57BL/KsJ-db/+mice、Normal Control、NC)を(株)オリエントバイオから購入して14日間適応させた後、10グループに分けて、8週間有効性評価試験製品を摂取するように飼育した。有効性評価試験のための実験食餌は実験動物用粉末飼料((株)オリエントバイオ)で粉飼料を水と共に自由に摂取できるように飼育した。
【0073】
(2)糖尿動物モデル(DC)
db/dbマウス(C57BL/KsJ-db/db mice、Diabetic Control、DC)は、レプチン受容体に突然変異が生じて脂肪細胞から分泌するホルモンであるレプチンのシグナル伝達が起こらず、肥満と第2型糖尿病が発生する動物モデルで(株)オリエントバイオから購入して14日間適応させた後、10グループに分けて、8週間有効性評価試験製品を摂取するように飼育した。有効性評価試験のための実験食餌は、実験動物用粉末飼料((株)オリエントバイオ)で粉飼料を供給し、水と飼料を自由に摂取できるように飼育した。
【0074】
実施例2: 液状アルロース投与群(AL)
実施例1による糖尿モデルに、アルロース液状型を固形分含有量を基準として5.16g/kg(high)の用量を設定した。正常食餌は水と共に自由に摂取できるように供給し、アルロース液状型は1日2回(午前9:00、午後5:00)経口投与した。前記正常食餌は、AIN-76A diet(Teklad.USA)を基準として調製し、炭水化物:タンパク質:脂質の重量比は60:20:15に調整した。
【0075】
実施例3: 粉末アルロース投与群(AP)
実施例1による糖尿モデルに、アルロース粉末型を固形分含有量を基準として5.16g/kg(high)の用量を設定した。正常食餌は水と共に自由に摂取できるように供給し、アルロース粉末は1日2回(午前9:00、午後5:00)経口投与した。正常食餌はAIN-76A diet(Teklad.USA)を基準として調製し、炭水化物:タンパク質:脂質の重量比は60:20:15に調整した。
【0076】
比較例1および2
実施例1による糖尿動物モデルに、実施例2に使用されたアルロースの代わりに、比較例1として5.16g/kgのスクラロース(sucralose)投与群と、比較例2として5.16g/kgのエリスリトール(erythritol)投与群を設定して比較実験した。
アルロースの一日摂取量5.16g/kgをヒトに換算すれば、摂取個体の体重60kgあたり25gになる。この時、Sucroloseは同一に甘味度を合わせて経口投与し、エリスリトールはアルロースと同量投与した。正常食餌とスクラロース(sucralose)およびエリスリトール(erythritol)を同時投与して体重変化を観察した。
【0077】
試験例1: 血糖およびインスリン分析
(1)経口ブドウ糖負荷検査(OGTT)
実施例1による正常群と糖尿動物モデルを12時間絶食させ、マウスにglucoseを2g/kgの用量で経口投与し、血液を0、15、30、60、90、120分間隔でマウス尾静脈から採取して血糖濃度を測定した。糖負荷検査による血糖曲線面積によって算出した。
【0078】
(2)インスリン耐性検査(ITT分析)
実施例1による正常群と糖尿動物モデルを12時間絶食させ、マウスにインスリン溶液を体重kgあたり1unitずつ腹腔注射した後、0、15、30、60、90、120分後にマウス尾静脈から血液を採取して血糖を測定した。
【0079】
(3)血清内insulin濃度測定
実施例1~3、および比較例1~2により、アルロース、スクラロース(sucralose)またはエリスリトールを8週間投与した後、実験終了日に各実験群マウスから血液を採取し、遠心分離して血清を獲得し、Mouse Insulin ELISA Kitを用いて血清内insulin濃度を測定した。
具体的には、Anti-insulin coated 96 well plateに実験動物の血清10μLを入れて、20-25℃で2時間放置した後、Washing bufferで4回洗浄した。前記洗浄物にHRP conjugated streptavidin 100μLを入れて、20-25℃で30分間培養した後、4回洗浄した後、Substrate chromogen reagent 100μLを入れて、20-25℃で20分間培養した後、50μLのReaction stopperを添加し、Multi Microplate Reader(infinite M200PRO、Tecan、Mannedorf、Switzerland)を用いて450nm(reference wavelength、620nm)における吸光度を測定した。
【0080】
試験例2: アルロースの抗酸化能評価
活性酸素種(Reactive oxygen species、ROS)による細胞または組織の損傷は、糖尿病だけでなく、炎症、老化などに関連があることが知られている。アルロースが抗酸化作用があるかを確認すべく、細胞内で生成されるsuperoxide anion、NADPH Oxidase activityおよびlipid peroxidationを、DHE組織染色を行ってアルロースの活性酸素種消去活性を測定した。
【0081】
(1)酸化的損傷によるsuperoxide形成の抑制効果
酸化的損傷によるsuperoxide形成を観察するためには、oxidative fluorescent dyeであるdihydroethidium(DHE)染色を実施した。DHE染色は、暗い湿式箱内で1μM DHE(in PBS;pH7.4)溶液に30分間反応させ、脱水縫い合わせて組織標本を作製し、蛍光染色された組織を共焦点顕微鏡(LSM 510 META laser-scanning microscope、Carl Zeiss、Germany)を用いて観察した。前記実験結果を
図3Aに蛍光染色された組織の共焦点顕微鏡写真を示し、DHE蛍光強度の数値結果を
図3Bのグラフに示した。
図3のBに示したグラフは、db/dbマウスにおいてD-アルロースが酸化的ストレスに及ぼす影響を確認すべく行ったDHE蛍光染色結果として得られたDHE蛍光強度の数値を示すグラフである。
【0082】
(2)酸化的ストレスによる細胞損傷の保護効果
糖尿動物モデル(DC)によって生成されたNADPH Oxidase activity、およびlipid peroxidationに対する、アルロース粉末型と液状型による抑制効果を分析すべく、本実験を行った。つまり、アルロースが過酸化水素(H
2O
2)によって発生する酸化的ストレスから細胞を保護する活性があるか否かを分析した。
NADPH Oxidase activity kit(Biovision)を用いて450nmの波長における吸光度を測定した。Lipid peroxidationはサンプル1mLを8.1%sodium dodecyl sulfate0.1mL、20%sodium acetate(pH3.5)に溶かした0.8%thiobarbituric acid(TBA)0.5mLと蒸留水0.15mLと混合し、95℃で1時間加熱した後、冷やし、2.5mLのn-butanol/pyridine(15:1、v/v)と0.5mLの蒸留水を加えて振盪する。これを3,000×gで10分間遠心分離して上清液を取って、532nmにおける吸光度を測定した。前記測定結果は
図4および
図5に示す。
【0083】
図4は、db/dbマウスにおいてD-アルロースがNADPH oxidase活性に及ぼす影響を確認すべく、組織内NADPH oxidase活性濃度を測定した数値を示すグラフである。
図5は、db/dbマウスにおいてD-アルロースが脂質過酸化物に及ぼす影響を確認すべく、脂質過酸化物の含有量を測定した数値を示すグラフである。
【0084】
図4および
図5に示しているように、糖尿動物モデル(DC)によって生成されたsuperoxide anion、NADPH Oxidase activity、およびlipid peroxidationがアルロース粉末型と液状型によって濃度依存的に抑制する効果を示した(
図4および
図5)。これはアルロース粉末型と液状型が過酸化水素(H
2O
2)によって発生する酸化的ストレスから細胞の保護効果があることが分かった。
【0085】
(3)タンパク質酸化の減少活性
DNPH試薬を用いたカルボニル含有量は、チオール基の含有量と共にタンパク質の酸化程度の測定によく使用される。具体的には、DNPH試薬を用いたカルボニル含有量分析はOxyBlot Protein Oxidation Detection Kitを用いて測定した。前記DNPH試薬を用いたカルボニル含有量の分析結果を
図6に示した。
図6は、db/dbマウスにおいてD-アルロースがタンパク質の酸化に及ぼす影響を確認すべく、組織内タンパク質の酸化程度を測定して示す結果である。
【0086】
図6に示しているように、正常対照群(NC)に比べて、糖尿対照群(DC)においてタンパク質の酸化が有意に増加することを確認した。しかし、アルロース粉末型と液状型を濃度依存的に摂取した群では、糖尿対照群(DC)に比べてタンパク質の酸化が減少することを確認した(
図6)。
【0087】
試験例3:NOX4の発現に対するアルロースの影響評価
細胞内の過度なブドウ糖代謝は細胞または組織内でNox4の発現を増加させ、このようなNox4の増加した発現は細胞と組織内で過度な活性酸素の生成を誘発する。この時生成される活性酸素は、細胞の生存と死滅、redoxシステムの維持に重要な役割を果たすことが知られている。
具体的には、Western blotting方法でタンパク質発現量分析を行った。実施例1~3と比較例1~2により、正常群と糖尿誘発群においてアルロース、スクラロース(sucralose)およびエリスリトール(erythritol)を8週間投与した後、非腹筋をlysis buffer(10mM Tris-HCl、pH7.4、0.1M EDTA、10mM NaCl、0.5%Triton X-100、pro-tease inhibitor Cocktail)を用いて4℃で溶解させた後、遠心分離(14,000rpm、10min、4℃)して得られたタンパク質の濃度を測定した。定量したタンパク質は、sample bufferと混合して95℃に5分間加熱し、10-12%SDS-PAGEで分離した。分離後、SDS-PAGEをSemi-dry transfer systemを用いて15V、60分でPVDF membraneにタンパク質を移動させて、Blocking buffer(5%Skim milk in 1X TBS-T)に1時間以上反応し、NOX4を4℃でovernight反応させた後、1X TBS-Tで7分間隔で5回水洗した。secondary antibodyを室温で1時間以上反応させた後、1X TBS-Tで7分間隔で5回washingし、ECL reagentで発色した後、X-ray filmに蛍光を感光した。前記結果を
図7に示し、db/dbマウスにおいてD-アルロースがNOX4のタンパク質発現レベルに及ぼす影響を示す図である。
【0088】
図7に示しているように、正常対照群(NC)に比べて、糖尿対照群(DC)においてNOX4のタンパク質発現量が有意に増加することを確認した。しかし、アルロース粉末型と液状型を濃度依存的に摂取した群では、糖尿対照群(DC)に比べてNOX4のタンパク質発現量が減少することを確認した。アルロースの投与により、NOX4の発現減少は、筋細胞内ROSの生成を抑制させてブドウ糖代謝を調節してインスリン抵抗性を減少させると見られる。
【0089】
試験例4:小胞体ストレスに対するアルロース影響評価
第2型糖尿病から観察されるインスリン分泌障害は小胞体ストレスを誘発するが、本発明では、アルロースが第2型糖尿から誘発された小胞体ストレスを調節するかを確認しようとした。
具体的には、実施例1~3と比較例1~2により、正常群と糖尿誘発群においてアルロース、スクラロース(sucralose)およびエリスリトール(erythritol)を8週間投与した後、試験例3と実質的に同一のWestern blotting方法で実験動物の非腹筋試料に対して、p-IRE1α、p-eIF2α、ATF4、GRP78、CHOPおよびIRE1α sulfonation(SO
3H)の発現量を分析した。前記分析された結果を
図8に示した。
【0090】
図8は、D-アルロースがdb/dbマウスにおいて小胞体(ER)ストレスとIRE1-alphaの不可逆的酸化に及ぼす影響を示す図である。正常対照群(NC)に比べて、糖尿対照群(DC)においてp-IRE1α、p-eIF2α、ATF4、GRP78、CHOPおよびIRE1α sulfonation(SO
3H)の発現量が有意に増加することを確認した。しかし、アルロース粉末型と液状型を濃度依存的に摂取した群では、糖尿対照群(DC)で増加した前記遺伝子の発現量が減少することを確認した。
【0091】
図8の実験結果に示しているように、アルロースが小胞体ストレスを減少させてインスリン抵抗性を減少させると見られる。
【0092】
試験例5: AMPK-SIRT1-PGC-1αに対するアルロース影響評価
実施例1~3と比較例1~2により、正常対照群(NC)と糖尿対照群(DC)においてアルロース、スクラロース(sucralose)およびエリスリトール(erythritol)を8週間投与した後、試験例3と実質的に同一のWestern blotting方法で実験動物の非腹筋試料に対して非腹筋で発現するp-AMPKとSIRT1タンパク質の発現量を分析した。前記分析された結果を
図9に示した。
正常対照群(NC)に比べて、糖尿対照群(DC)においてp-AMPKとSIRT1のタンパク質発現量が有意に減少することを確認した。しかし、アルロース粉末型と液状型を濃度依存的に摂取した群では、糖尿対照群(DC)に比べてp-AMPKとSIRT1のタンパク質の発現量が増加することを確認した(
図9のA)。
SIRT1の活性化は、PGC-1αがdeacetylationされて、筋肉のglucose transport 4(GLUT4)の活性を増加させると報告された。Insulin-responsive glucose transporter 4(GLUT4)は、インスリン依存的ブドウ糖輸送体として主に骨格筋と脂肪組織に分布し、ブドウ糖を細胞外部から細胞内部に移動させる役割を果たす。
【0093】
本実験において、acetylated-PGC-1αタンパク質の発現を確認した結果、正常対照群(NC)に比べて、糖尿対照群(DC)においてacetylated-PGC-1αが増加するが、アルロース粉末型と液状型を濃度依存的に摂取した群では、acetylated-PGC-1αの発現が減少した(
図9のBおよびC)。したがって、アルロースがAMPK-SIRT1-PGC-1αを活性化させてエネルギー代謝を増進してインスリン抵抗性の減少に役立てるものと期待する。
【国際調査報告】