(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】放射線量測定方法
(51)【国際特許分類】
G01T 1/04 20060101AFI20240110BHJP
G01T 1/17 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01T1/04
G01T1/17 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538975
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 US2021064975
(87)【国際公開番号】W WO2022140615
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】596121138
【氏名又は名称】アイエスピー インヴェストメンツ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100224683
【氏名又は名称】齋藤 詩織
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ケイ フッド
(72)【発明者】
【氏名】マーク アレン デイヴィス
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188BB04
2G188BB05
2G188FF30
2G188KK02
(57)【要約】
放射線量測定処理を実施するための方法及びコンピューティング機器について開示する。例示的処理は、第1の放射線感受性フィルムを一連の既知の放射線量に被曝させるステップと、測定装置を用いて第1の放射線データセットを測定するステップと、較正曲線を決定するステップとを含み得る。較正曲線の決定は、第1の放射線データセットに基づいてラマンスペクトル域を選択することと、複数の帯域領域比を決定することと、既知の線量との比較で帯域領域及び比をプロットすることに基づいて較正曲線を生成することとによってなされ得る。放射線量測定処理では、次に、第2の放射線感受性フィルムを未知の放射線量に被曝させ、測定装置を用いて第2の放射線感受性フィルムについての第2の放射線データセットを測定し、第2の放射線データセットを較正曲線と比較することによって第2の放射線感受性フィルムについての被曝線量レベルを決定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線量測定方法であって:
第1の放射線感受性フィルムを取得するステップと、
前記第1の放射線感受性フィルムを一連の既知の放射線量に被曝させるステップと、
測定装置を用いて前記第1の放射線感受性フィルムについての第1の放射線データセットを測定するステップと、
ユーザ装置において前記第1の放射線感受性フィルムについての前記第1の放射線データセットに基づいて較正曲線を決定するステップであって、
(a)前記第1の放射線データセットに基づいてラマンスペクトル域を選択することと、
(b)前記選択されたラマンスペクトル域に基づいて複数の帯域領域比を決定することと、
(c)既知の線量との比較で前記帯域領域及び比をプロットすることに基づいて前記較正曲線を生成することと、
によって決定するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、さらに、
第2の放射線感受性フィルムを未知の放射線量に被曝させるステップと、
前記測定装置を用いて前記第2の放射線感受性フィルムについての第2の放射線データセットを測定するステップと、
前記第2の放射線データセットを前記較正曲線と比較することによって、前記第2の放射線感受性フィルムについての被曝線量レベルを決定するステップと、を含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、さらに、
前記ユーザ装置によって、前記較正曲線と前記第2の放射線感受性フィルムについての前記第2の放射線データセットとをデータ管理システムへ転送するステップを含む、方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法において、さらに、
前記第2の放射線感受性フィルムの前記放射線被曝線量レベルを前記ユーザ装置上での表示のために提供するステップを含む方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記選択されたラマンスペクトル域は、放射線被曝と共に変動せず且つ内部基準として機能するデータを含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記較正曲線を生成することに対して補正係数が適用され、エネルギー依存性について補償する、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、さらに、
第3の放射線感受性フィルムを取得するステップと、
前記測定装置を用いて前記第3の放射線感受性フィルムについての被曝前データポイントを測定するステップと、
前記第3の放射線感受性フィルムを1つの既知の放射線量に被曝させるステップと、
前記測定装置を用いて前記第3の放射線感受性フィルムについての被曝後データポイントを測定するステップと、
前記第3の放射線感受性フィルムについての前記被曝前データポイント及び前記被曝後データポイントに基づいて前記較正曲線を調整するステップと、を含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記測定装置はラマン分光装置である、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記ラマン分光装置は可搬型である、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法において、前記ラマン分光装置は前記放射線感受性フィルムについて連続的又は半連続的なその場での監視を行える、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記測定装置は、前記第1の放射線感受性フィルムについての前記第1の放射線データセットを:
1次元共鳴ラマン(1DRR)分光スキャン、
2次元共鳴ラマン(2DRR)分光スキャン、及び/又は
3次元共鳴ラマン(3DRR)分光スキャン、の少なくとも1つに基づいて測定する、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記第1の放射線感受性フィルム及び前記第2の放射線感受性フィルムは、ラマン分光法に感応して放射線量を検出できる放射線感受性化合物を備える、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記放射線感受性化合物はジアセチレン化合物である、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記ジアセチレン化合物は金属又は半金属系ジアセチレン化合物である、方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法において、前記ジアセチレン化合物はリチウム系ジアセチレン化合物である、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、前記測定装置は1000Gy未満の線量反応特性を測定可能である、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法において、前記測定装置は400kGy未満の線量反応特性を測定可能である、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法において、前記一連の既知の放射線量はX線に基づくものである、方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法において、前記一連の既知の放射線量はガンマ線に基づくものである、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法において、前記一連の既知の放射線量は紫外線光線、可視光、電子線、又はこれらの組合せに基づくものである、方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法において、前記第1の放射線感受性フィルム及び/又は前記第2の放射線感受性フィルムは、ロット番号と、バーコードと、随意的に、ラマン線量測定に適しており、塗布された接着剤と、を備える。
【請求項22】
プロセッサを有する装置において:
測定装置から第1の放射線感受性フィルムについての第1の放射線データセットを受信するステップであって、前記第1の放射線感受性フィルムは一連の既知の放射線量に被曝させてある、ステップと、
前記第1の放射線データセットに基づいてラマンスペクトル域を選択するステップと、
前記選択されたラマンスペクトル域に基づいて複数の帯域領域比を決定するステップと、
既知の線量との比較で前記帯域領域及び比をプロットすることに基づいて、前記第1の放射線感受性フィルムと関連付けられている較正曲線を生成するステップと、
前記測定装置から第2の放射線感受性フィルムについての第2の放射線データセットを取得するステップであって、前記第2の放射線感受性フィルムは未知の放射線量に被曝させてある、ステップと、
前記第2の放射線データセットを前記較正曲線と比較することに基づいて前記第2の放射線感受性フィルムについての被曝線量レベルを決定するステップと、を含む、方法。
【請求項23】
システムであって:
少なくとも第1の放射線感受性フィルム及び第2の放射線感受性フィルムを備える放射線感受性フィルムの箱と、
測定装置であって:
前記第1の放射線感受性フィルムについての第1の放射線データセットを既知の放射線量に基づいて測定するステップと、
前記第2の放射線感受性フィルムについての第2の放射線データセットを未知の放射線量に基づいて測定するステップと、
プロセッサを有するユーザ装置に放射線データを提供するステップと、を実行可能な測定装置と、を備えるシステムであって、前記ユーザ装置は:
(a)前記第1の放射線データセットに基づいてラマンスペクトル域を選択することと、
(b)前記選択されたラマンスペクトル域に基づいて複数の帯域領域比を決定することと、
(c)前記既知の放射線量との比較で前記帯域領域及び比をプロットすることに基づいて、前記第1の放射線感受性フィルムと関連付けられている較正曲線を生成することと、
(d)前記第2の放射線データセットを前記較正曲線と比較することによって、前記第2の放射線感受性フィルムについての被曝線量レベルを決定することと、を実行するように構成される、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線量測定方法及び該方法を行うための関連装置に一般的に関する。より具体的には、本発明は、放射線量測定フィルム中の放射線感受性材料の量におけるばらつきについて補償するそのような方法及び関連装置に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2020年12月23日に出願された米国仮特許出願第63/129,816号の利益を主張するのであり、その内容の全体が取り込まれる。
【背景技術】
【0003】
例えば、癌患者が放射線治療を受ける病院又は、血液製剤が放射線照射を受ける献血バンク等の放射線源が用いられる施設では、線源によって届けられた放射線量を定量的に決定するための様々な方法が用いられる。実践されている方法には、熱ルミネセンス線量計(TLD、thermoluminescent dosimeter)、イオン化タイプの放射線検出器、写真フィルム、及びラジオクロミック材料が含まれる。TLDは不便である。なぜならば、この手段は複雑で時間浪費的な読み出し処理を要するからである。イオン化タイプの放射線検出器は、取り回しが悪く且つ扱いづらいのであり、また、複雑なセットアップを要する。写真フィルムは、読み出し前に時間浪費的な化学的処理手順を要する。ラジオクロミック材料は好ましいとされている。なぜならば、被曝後処理は何ら必要なく、また、高い空間分解能をもって放射線量を測定できるためである。もっとも、線量計算には複雑な一連のステップを要するのであり、誤りが生じ易いために、現在の慣行の下では不便である。
【0004】
線量計の放射線感受性材料は、微結晶ペンタコサジイン酸(PCDA)、又は他のジアセチレン化合物及び線量反応の化学変化を示す他の化合物をポリマーマトリックス中に分散させたものとすることができる。PCDAの単量体結晶又はPCDAの金属塩等の関連化合物を電離放射線に被曝させると、重合の進行がもたらされるのであり、重合度は放射線量と共に増す。重合量(従って放射線量)は、被曝した線量計の光学密度又は分光吸収のどちらかを測定することによって決定できる。もっとも、これらのパラメータは、測定時の装置温度、並びにPCDA分散の厚み及びポリマーマトリックスの含水率によっても変化することが分かっている。線量測定の最大精度については、温度及び厚さ及び湿気の影響を考慮することを要する。
【0005】
現行のフィルム分析技術は色彩変化に注目している。フィルムバッジ線量計には、通常は、1つ以上のフィルムパケットが装填されている。最も単純なフィルムバッジは、歯科用フィルムが格納された小さな紙の封筒を伴い、その半分は薄い鉛箔で囲まれている。バッジは1つ以上のフィルタを含むことを要するのであり、これによって様々なフィルタの背後にある現像済みフィルムの相対的黒色化についての比較をなす。この比較によって、様々なタイプの放射線への被曝度合いが明らかとなる。このようなバッジの使用には、被曝させたフィルムを現像するための現像処理が内在的に必要となる。熱ルミネセンス線量計は、熱ルミネセンスの原理に基づいて機能するものである;即ち、特定の物質が電離放射線に被曝後に加熱して光を放出する性質に関する。このタイプの線量計には、ピーク強度又は放射光の積算量のどちらかを測定する必要性が内在的に必要となる。このような線量計は満足な性能を発揮するも、機能性及び/又は可読性を発揮するためには外部の機器又は処理を必要とする。即ち、被曝した材料を目視するだけでは、吸収された放射線レベルを検出できない。
【0006】
ラマン分光分析手法は、ラマン散乱効果に基づいて、レーザー光線を用いて、外部的造影剤を使用せずに、化学混合物の組成について非破壊的でリアルタイムな測定をなす非接触分光分析手法である。ラマン分光法は、分子の振動スペクトル(例えば、分子結合の振動によるレーザー光の非弾性散乱)であって分子の指紋特性を反映させる手法であり、物質の検出に利用可能である。ラマン分光法は、励起光に対する被検出物質のラマン散乱効果によって生成されたラマンスペクトルを検出することによって物質を検出及び識別する。ラマンスペクトル検出法は、液体保安検査、宝石検出、爆発物検出、薬物検出、医薬品検出等の分野に広範に適用されている。
【0007】
実地での実際のラマン分光に関して述べるに、ラマン分光検出装置の較正はラマン分光分析プロセス全体にとって一体不可分な部分となっている。装置使用前に装置を較正することを要する。測定時に分光検出装置によって使用されるスペクトル横座標は装置の較正後に取得でき、スペクトル横座標に従って、測定されたスペクトル信号をもってラマン分光写真を合成するのであり、そしてパターン認識アルゴリズムを介してラマン分光写真を分光写真ライブラリと比較して、被測定試料の成分の定性的及び定量的分析を行う。ラマン分光検出装置の較正は、通常は、既知のサンプルをラマン分光検出装置で検出することによって行われる。
【0008】
今やラマン分光装置はより小さくなりまた可搬性を有するに至った。もっとも、携帯型ユーザ機器(例えば、ラマン分光器を搭載したスマートフォン、携帯型ラマン分光器等)とインタフェース接続されるラマン分光装置についての効率的な較正処理に関しての要請がある。ラマンに基づく放射線感応線量計は、その小ささ、使用容易性、及び化学的特異性の組み合わせ故に、秀逸な道具となっているのであり、重要な進歩を線量測定の分野にもたらしているのであり、医療業界に相当な利点をもたらしている。
【発明の概要】
【0009】
発明の実施形態では、放射線量測定処理を実施するための方法が開示される。方法には、第1の放射線感受性フィルムを取得するステップと、前記第1の放射線感受性フィルムを一連の既知の放射線量に被曝させるステップと、測定装置を用いて前記第1の放射線感受性フィルムについての第1の放射線データセットを測定するステップと、ユーザ装置において第1の放射線感受性フィルムについての第1の放射線データセットに基づいて較正曲線を決定するステップであって、(a)前記第1の放射線データセットに基づいてラマンスペクトル域を選択することと、(b)前記選択されたラマンスペクトル域に基づいて複数の帯域領域比を決定することと、(c)既知の線量との比較で前記帯域領域及び比をプロットすることに基づいて前記較正曲線を生成することとによって決定するステップと、が含まれる。
【0010】
これら及び他の実施形態は、それぞれ随意的に次の1つ以上の特徴を含むことができる。
【0011】
発明の一部の実施形態では、方法は、第2の放射線感受性フィルムを未知の放射線量に被曝させるステップと、測定装置を用いて第2の放射線感受性フィルムについての第2の放射線データセットを測定するステップと、第2の放射線データセットを較正曲線と比較することによって第2の放射線感受性フィルムについての被曝線量レベルを決定するステップと、をさらに含む。
【0012】
発明の一部の実施形態では、方法はさらに、前記ユーザ装置によって前記較正曲線と前記第2の放射線感受性フィルムについての第2の放射線データセットとをデータ管理システムへ転送するステップを含む。発明の一部の実施形態では、方法はさらに、前記第2の放射線感受性フィルムの前記放射線被曝線量レベルを前記ユーザ装置上での表示のために提供するステップを含む。
【0013】
発明の一部の実施形態では、前記選択されたラマンスペクトル域は、放射線被曝と共に変動せず且つ内部基準として機能するデータを含む。発明の一部の実施形態では、装置の較正に対して補正係数を適用してエネルギー依存性について補償する。
【0014】
発明の一部の実施形態では、方法はさらに、第3の放射線感受性フィルムを取得するステップと、前記測定装置を用いて前記第3の放射線感受性フィルムについての被曝前データポイントを測定するステップと、前記第3の放射線感受性フィルムを1つの既知の放射線量に被曝させるステップと、前記測定装置を用いて前記第3の放射線感受性フィルムについての被曝後データポイントを測定するステップと、前記第3の放射線感受性フィルムについての前記被曝前データポイント及び前記被曝後データポイントに基づいて前記較正曲線を調整するステップとを含む。
【0015】
発明の一部の実施形態では、測定装置はラマン分光装置である。発明の一部の実施形態では、ラマン分光装置は可搬型である。発明の一部の実施形態では、前記ラマン分光装置は前記放射線感受性フィルムについて連続的又は半連続的なその場での監視を行える。
【0016】
発明の一部の実施形態では、測定装置は第1の放射線感受性フィルムについての第1の放射線データセットを、1次元共鳴ラマン(1DRR)分光スキャン、2次元共鳴ラマン(2DRR)分光スキャン、及び/又は3次元共鳴ラマン(3DRR)分光スキャンの少なくとも1つに基づいて測定する。
【0017】
発明の一部の実施形態では、第1の放射線感受性フィルム及び第2の放射線感受性フィルムは、ラマン分光法に感応して放射線量を検出できる放射線感受性化合物を備える。発明の一部の実施形態では、放射線感受性化合物はジアセチレン化合物である。発明の一部の実施形態では、ジアセチレン化合物は金属又は半金属(metaloid)系ジアセチレン化合物である。発明の一部の実施形態では、ジアセチレン化合物はリチウム系ジアセチレン化合物である。
【0018】
発明の一部の実施形態では、測定装置は1000Gy未満の線量反応特性を測定可能である。発明の一部の実施形態では、測定装置は400kGy未満の線量反応特性を測定可能である。
【0019】
発明の一部の実施形態では、一連の既知の放射線量及び未知の放射線量はX線に基づくものである。発明の一部の実施形態では、一連の既知の放射線量及び未知の放射線量はガンマ線に基づくものである。発明の一部の実施形態では、一連の既知の放射線量及び未知の放射線量は紫外線光線、可視光、電子線、又はこれらの組合せに基づくものである。
【0020】
発明の一部の実施形態では、第1の放射線感受性フィルム及び/又は第2の放射線感受性フィルムは、ロット番号と、バーコードと、随意的に、ラマン線量測定に適しており、塗布された接着剤とを備える。
【0021】
発明の実施形態では、放射線量測定処理を実施するためのシステムが開示される。システムは、少なくとも第1の放射線感受性フィルム及び第2の放射線感受性フィルムを備える放射線感受性フィルムの箱と測定装置とを含む。測定装置は次のステップを行える:前記第1の放射線感受性フィルムについての第1の放射線データセットを既知の放射線量に基づいて測定するステップと、前記第2の放射線感受性フィルムについての第2の放射線データセットを未知の放射線量に基づいて測定するステップと、プロセッサを有するユーザ装置に放射線データを提供するステップ。ユーザ装置は次のことを実行するように構成されている:(a)前記第1の放射線データセットに基づいてラマンスペクトル域を選択することと、(b)前記選択されたラマンスペクトル域に基づいて複数の帯域領域比を決定することと、(c)前記既知の放射線量との比較で前記帯域領域及び比をプロットすることに基づいて、前記第1の放射線感受性フィルムと関連付けられている較正曲線を生成することと、(d)前記第2の放射線データセットを前記較正曲線と比較することによって、前記第2の放射線感受性フィルムについての被曝線量レベルを決定すること。
【0022】
発明の実施形態では、放射線量測定処理を実施するための方法が開示される。方法は、プロセッサを有する装置において、測定装置から第1の放射線感受性フィルムについての第1の放射線データセットを受信するステップであって、第1の放射線感受性フィルムは一連の既知の放射線量に被曝させてある、ステップと、前記第1の放射線データセットに基づいてラマンスペクトル域を選択するステップと、前記選択されたラマンスペクトル域に基づいて複数の帯域領域比を決定するステップと、既知の線量との比較で前記帯域領域及び比をプロットすることに基づいて、前記第1の放射線感受性フィルムと関連付けられている較正曲線を生成するステップと、前記測定装置から第2の放射線感受性フィルムについての第2の放射線データセットを取得するステップであって、前記第2の放射線感受性フィルムは未知の放射線量に被曝させてある、ステップと、前記第2の放射線データセットを前記較正曲線と比較することに基づいて前記第2の放射線感受性フィルムについての被曝線量レベルを決定するステップと、を含む。
【0023】
一部の実施形態によれば、装置は1つ以上のプロセッサと非一時的メモリと1つ以上のプログラムとを含むのであり、1つ以上のプログラムは非一時的メモリ内にて格納されており且つ1つ以上のプロセッサによって実行されるように構成されており、1つ以上のプログラムは本明細書にて説明した任意の方法を行うため又はそれらの実行を行わせるための命令を含む。一部の実施形態によれば、非一時的コンピュータ可読記憶媒体には命令が格納されており、装置の1つ以上のプロセッサによって実行されると装置に本明細書にて説明した任意の方法を行わせる又はその実行をもたらす。一部の実施形態によれば、装置は:1つ以上のプロセッサと、非一時的メモリと、本明細書にて説明した任意の方法を行わせるため又はその実行をもたらすための手段とを備える。
【0024】
上記概要は、本発明のいくつかの実施形態についての簡略化した全体像を提示するのであり、これは説明した発明の実施形態の特定の態様についての基礎的理解をもたらすためになされる。概要は発明についての詳細な全体像を提供するものとしては意図されておらず、また、枢要な若しくは重大な要素を特定することも意図されておらず、また、発明の実施態様の範囲を画定することも意図していない。概要の唯一の目的は、いくつかの概念を簡略形式で提示して、以下の詳細な説明についての序論とすることにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本明細書に組み込まれ、また、本明細書の一部を構成し、同様の参照符合が同様の特徴を示す添付の図面では、本発明の様々な実施形態が示され、上記の一般的説明及び下記に示す詳細な説明を併せると、本発明の実施形態を説明することとなる。
【0026】
【
図1】本発明の実施形態による、放射線量測定較正処理を実装するための環境について示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態による、例示的な放射線量計アセンブリについて示す図である。
【
図3】本発明の実施形態による、放射線量反応に基づいた例示的な較正曲線についてのグラフを示す図である。
【
図4】本発明の実施形態による、較正曲線に基づいて放射線量を決定する例示的な比較グラフを示す図である。
【
図5】本発明の実施形態による、ユーザ装置において生成された較正曲線に基づいて放射線量を決定する例示的な処理についてのフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態による、ユーザ装置において、サプライヤからの取得された較正曲線に基づいて放射線量を決定する例示的な処理についてのフローチャートである。
【
図7】本発明の実施形態による、ラマン分光法に基づいて較正曲線を決定するための、並びに、較正曲線に基づいて未知の線量についての放射線被曝線量レベルを決定するための例示的な処理についてのフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態による、ラマン分光法に基づいて較正曲線を決定するための、並びに、ユーザ装置において、較正曲線に基づいて未知の線量についての放射線被曝線量レベルを決定するための例示的な処理についてのフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態による、説明されたソフトウェアコンポーネントを実行できるコンピュータについての例示的なコンピュータアーキテクチャにつて示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この特許出願内の技術は、放射線量測定処理を実施するためのシステム及び方法に関する。放射線量測定処理は、可搬型ラマン分光装置と放射線感応線量計とを統合した製品によって実施でき、線量測定処理を簡略化するために製品をディスプレイ装置と接続させる。スペクトルデータ取得、ワイヤレスデータインタフェーシング、(視覚的インジケータを超えた)適切な血液処理の決定の簡素化、病院/処置センターのITシステムに対しての直接的に試料の結果の共有、並びにアプリケーション拡張の可能性は、従来型血液処理を相当に超える利点をもたらす。
【0028】
よって、本開示によれば、可搬型ラマン分光装置と放射線感応線量計との統合製品が提供される。該製品は可搬型表示装置とされ得る表示装置と接続され得る。ラマンに基づく放射線感応線量計は、その小ささ、使用容易性、及び化学的特異性の組み合わせ故に、秀逸な道具となっているのであり、重要な進歩を放射線量測定の分野にもたらしているのであり、医療業界に相当な利点をもたらしている。本開示の1つの目的は、可搬型ラマン分光装置と放射線感応線量計との統合製品についてのモバイル応用例に関するのであり、次の事項を含む:a)ユーザインタフェース(UI)ソフトウェアによって、試料に関連付けられた線量計の放射線感受性に対応するデータを取得すること、b)UIソフトウェアを介してデータを処理すること、c)処理済みデータを介して放射線強度を測定すること、及び/又はd)放射線感受性に対応するデータを分析すること。
【0029】
より具体的には、この技術は放射線量測定較正処理を含むのであり、該処理では、放射線感受性フィルム(例えば、ラジオクロミックフィルム、又は放射線感受性フィルム)を取得し、放射線感受性フィルムを一連の既知の線量に被曝させ、測定装置(例えば、ラマン分光器、又は可搬型ラマン分光装置)を用いて放射線感受性フィルムについての放射線データ(例えば、ラマン分光データ)を測定し、ユーザ装置にて(例えば、モバイル機器にて)放射線感受性フィルムについての放射線データに基づいて較正曲線を決定する。較正曲線を生成するステップは以下を含み得る:(i)放射線データに基づいてラマンスペクトル域を選択するステップと、(ii)選択されたラマンスペクトル域に基づいて複数の帯域領域比を決定するステップと、(iii)既知の線量との比較で帯域領域及び比をプロットすることに基づいて較正曲線を生成するステップ。代替的には、一部の実施形態では、較正曲線を生成するための内部基準として用いるために、放射線被曝に鈍感なラマンスペクトル域を選択できる。
【0030】
放射線量測定処理はさらに、別の放射線感受性フィルム(例えば、較正曲線の生成元となったフィルム箱/ロット内の第2のフィルム)について被曝線量レベルを決定するステップを含み得る。被曝線量レベルの決定ステップは、第2の放射線感受性フィルムを未知の線量に被曝させ、測定装置を用いて第2の放射線感受性フィルムについての第2の放射線データセットを測定し、第2の放射線データセットを較正曲線と比較することによって第2の放射線感受性フィルムについての被曝線量レベルを決定することを含み得る。したがって、第2のフィルムの測定は較正曲線の測定と同様の態様で単一の点での測定で進めることができる。例えば、ラマン分光器の結果は、(例えば、ユーザのモバイル装置上で実行されているアプリケーションを介して)較正曲線と比較されて、被曝線量の決定が可能となる。
【0031】
いくつかの実施形態では、較正曲線を生成(generating)するための本明細書に記載の放射線量測定較正処理を、一般的較正曲線を作成(create)するために活用できる。例えば、放射線量測定業界で一般的となっている慣行としては、フィルムのロット毎に較正を行うことが挙げられる。もっとも、本明細書に記載された工程を用いて生成された較正曲線は、同じタイプのフィルムの全てのロットに用いることのできる「一般的な」較正曲線として用い得る。
【0032】
一部の実施形態では、線量測定装置は、表面および溶液の滅菌、医療イメージング、医療用又は工業用機器の品質保証試験、紫外線測定、食品の加工及び貯蔵、放射線感受性材料の輸送、植物検疫用途、昆虫滅菌処理、工業用硬化処理、病原体削減処理、血液処理、又は放射線被曝線量についての把握が重要であるその他の用途にて用い得る。別の実施形態では、本出願の線量測定装置は、血液入りの袋、その処理方法及びその使用に関して様々な態様で用いられ得る。血液製剤は通常は光子を用いた照射を受けるのであり、これは輸血関連移植片対宿主病(TA―GVHD、transfusion-associated graft vs. host disease)のリスクを低減するためになされる。血液に放射線照射する際に望まれる効果は、リンパ球の機能を阻害することであり、故に、血小板及びその他の血液成分に害を及ばさずにGVHDを防ぐ。
【0033】
従って、本願の線量測定装置により、ユーザは血液製剤を処理し、血液処理後にインジケータウィンドウから分光データを取って、その後ソフトウェアアプリケーションが分光データを処理して血液製剤に適用される線量を決定できる。
【0034】
図1は、本発明の実施形態による、放射線量測定処理を実装するための例示的な環境100について示す。例示的な環境100は、1つ以上のユーザ装置110、1つ以上の測定装置120、較正データ管理サーバ130、及び1つ以上のサプライヤ管理サーバ150を含むのであり、これらはデータ通信ネットワーク102(例えば、構内通信網(LAN)、広域通信網(WAN)、インターネット、モバイルネットワーク、又はこれらの組合せ)上で通信する。
【0035】
1つ以上のユーザ装置110(例えば、放射線量測定較正機ユーザが使用する装置)は、デスクトップ、ラップトップ、サーバ、又はスマートフォン、タブレットコンピュータ、及び/又は他のタイプのモバイル機器等のモバイル機器を含み得る。1つ以上のユーザ装置110は、測定装置120(例えば、ラマン分光計装置)及び/又は較正データ管理サーバ130についての上下方向の較正手法を管理するアプリケーション112等のアプリケーションを、含み得る。1つ以上のユーザ装置110は、他のアプリケーションを含み得る。1つ以上のユーザ装置110は、ユーザによる較正処理リクエストをアプリケーション112を介して開始できる。1つ以上のユーザ装置110は、較正結果を見直すためにユーザ(例えば、臨床医)によって活用され得る。
【0036】
アプリケーション112は、1つ以上の命令又はモジュールのセット(例えば、本明細書にて説明する放射線量測定較正処理等)を含み得るのであり、分光法命令セット114、較正命令セット116、及び/又はデータ管理命令セット118等が含まれ得る。分光法命令セット114は、測定装置120と統合を果たすため及び/又はそれと通信するための命令を含み得る。例えば、測定装置120は可搬型分光装置とされ得るのであり、分光法命令セット114を活用してユーザがユーザ装置110にて測定装置120の1つ以上の機能を制御できるようにし得る。ユーザ装置110は、1つ以上の測定装置120とネットワーク102(例えば、WiFi(登録商標)等)を介して通信できる。追加的に又は代替的には、ユーザ装置110は、ネットワーク102の使用権を有さずとも、有線接続又は無線接続等の直接接続を介して1つ以上の測定装置120と通信できる。
【0037】
較正命令セット116は、本明細書に記載の放射線量測定較正処理を実施するための命令を含み得る。例えば、ラマン分光較正に関して較正命令セット116は次のことをなすように構成されていることができる:ユーザ装置110において、フィルムのセットの第1の放射線感受性フィルム125について、測定装置120から取得された放射線データに基づいて、第1の放射線データセットに基づくラマンスペクトル域を選択することによって較正曲線を決定することと、選択されたラマンスペクトル域に基づいて複数の帯域領域比を決定することと、既知の線量との比較で帯域領域及び比をプロットすることに基づいて較正曲線117を生成すること。追加的に、較正命令セット116は、次のことをなすように構成されていることができる:未知の線量を伴うフィルムに対応する第2の放射線データセットを較正曲線と比較することによって、第2の放射線感受性フィルムについての被曝線量レベルを決定すること(例えば、ラマン分光結果は較正曲線と比較されて、第2の放射線感受性フィルム125についての被曝線量の決定が可能となる)。
【0038】
代替的には、特定のフィルムのセットについての較正曲線をサプライヤから取得でき得る(例えば、較正データ管理サーバ150を介してサプライヤ管理サーバ150から)。したがって、較正命令セット116は、未知の線量を伴うフィルムに対応する第2の放射線データセットを、サプライヤから取得した較正曲線と比較することによって第2の放射線感受性フィルムについての被曝線量レベルを決定するように較正されていることができる。
【0039】
データ管理命令セット118は、本明細書記載の線量測定較正処理の一環として、較正結果を較正データ管理サーバ130(calibration data management server 130)へと伝達するための命令を含み得る。例えば、ラマン分光法較正処理に関しては、データ管理命令セット118は、較正曲線117を送信し及び/又はネットワーク102を介して較正管理サーバ130(calibration management server 130)を通って較正曲線データベース145から較正曲線145を受信する様に構成されていることができる。
【0040】
1つ以上の測定装置120は、放射線被曝を測定可能な放射線測定装置を含み得る。例示的実施形態では、1つ以上の測定装置(measurement device)120は、可搬型ラマン分光装置(spectroscopic device)等のラマン分光計(spectrometer)とされる。一部の実施形態では、測定装置120は放射線感受性フィルムについて連続的又は半連続的なその場での監視を行えるラマン分光装置とされる。
【0041】
一部の実施形態では、1つ以上の測定装置120は、広範な線量(例えば、1,000グレイ(Gy)未満)を含む線量反応特性を測定できる。例えば、1つ以上の測定装置120に関しての一部の例示的な線量範囲は次の範囲を含み得る:0.2-10 Gy, 0.4-40 Gy, 1-100Gy, 10-1,000 Gy等。例示された線量範囲は、強度変調放射線治療(IMRT、intensity-modulated radiation therapy)の計画検証についての患者線量測定、定位放射線手術(SRS、stereotactic radiosurgery)及び定位放射線治療(SRT、stereotactic radiotherapy)のための患者線量測定、放射照射野/光照射野試験等の日常的機械品質保証、並びに/又は特定の患者線量測定の必要性に基づく中線量から高線量を測定する他の用途等の異なる放射線照射用途に適用され得る。一部の実施形態では、1つ以上の測定装置120は、より高線量の放射線(例えば、400 kGy迄)を含む線量反応特性を測定できる。
【0042】
一部の実施形態では、1つ以上の測定装置120は、X線由来であって放射線感受性フィルムに適用された放射線に関しての放射線感受性フィルム125についての放射線データを測定する。代替的には、1つ以上の測定装置120は、ガンマ線、紫外線、可視光、電子ビーム、又は電離放射線の他の線源からのもの及びそれらの組合せ由来であって放射線感受性フィルムに適用された放射線に関しての放射線感受性フィルム125についての放射線データを測定する。
【0043】
一部の実施形態では、1つ以上の測定装置120は、共鳴ラマン分光法に基づいて放射線感受性フィルム125についての放射線データを測定する。例えば、共鳴ラマン(resonance Raman)とは、ラマンレーザーが多くの異なる波長で利用可能であるとして、対象分子の紫外または可視の吸光帯域内で動作するレーザー光プローブを用いて取得されたラマンスペクトル(Raman spectra)を指す。共鳴ラマン分光法は、ラマン強度及び感受性に関して向上を示す。方法に結局使用されることになったレーザーに依存するのであり、レーザーの動作波長は既知の吸収帯に収まる場合も収まらない場合もある。一部の実施形態では、1つ以上の測定装置120は、放射線感受性フィルム125についての放射線データを次の事項に基づいて測定する:1次元共鳴ラマン(1DRR)分光スキャン、2次元共鳴ラマン(2DRR)分光スキャン、3次元共鳴ラマン(3DRR)分光スキャン、又はこれらの組合せ。代替的には、一部の実施形態では、非共鳴ラマン分光法(non-resonance Raman spectroscopy)が本明細書開示の手法によって用いられる。例えば、非共鳴ラマン分光法は、PCDA以外のジアセチレン化合物、又は、線量感受性の化学変化を有するが使用中のレーザーによって利用可能な紫外又は可視吸収帯を有していない任意の他の化合物が関わる実施形態において、使用することができる。
【0044】
一部の実施形態では、1つ以上の測定装置120は、波長選択についての放射線感受性を測定するのであり、サポートベクター回帰等の非線形較正を用いてこれがなされる。波長選択プロトコルは、関連するデータにおける交差検証誤差の最小化に基づいていることができる。当該プロトコルは、部分最小二乗法及び主成分回帰等の通常の線形手法の波長選択よりも良い性能を示す。本方法は、興味対象の被検物質との関係での潜在的干渉の効果が最小化されるようなラマンスペクトルにおけるスペクトル窓又は領域を、計算する。この方法は、個別の(多くの場合は隔離もされている)スペクトル点(画素)を選択するのとは対照的に、スペクトル域の選択についても最適化する。任意の振動及び回転スペクトルは、通常は少なくとも 4-8 cm?1の半値全幅(FWHM)を持つフォークト(Voigt)プロファイルをもたらす。このような内在的スペクトル間隔の存在故に、最小スペクトル帯域サイズの選択につながる。好適な方法を適用することによって、正確な較正システムを開発する上でのサンプリングが必要な波長数についての大幅な削減につながる(完全な分光分析に比べて3倍以上)。
【0045】
この削減は、ラマン分光法の化学的特異性に部分的に由来するのであり、限られた波長のサンプリングで分子検出が可能となる。また、波長選択手順の結果として予測正確性及びロバスト性が向上したということも判明している。これは、選ばれたラマン帯域でのより大きな変化がより高い信号対ノイズ比を示すのであり、正確性が向上する。より広いスペクトル帯域を使用しては反応性の乏しい帯域も含まれてしまい、解釈を阻害したり正確性を減じたりしてしまう。実用的観点からは、波長選択によれば、測定時間、コストを削減でき、装置の小型化にも資する。
【0046】
一部の実施形態では、ラマン分光計を用いて線量範囲毎に選択された帯域領域比の予測可能な又は再現可能な反応特性として表される新規な線量測定装置を用いた正確な放射線量監視方法を本願は提供する。一部の実施形態では、ラマン分光計を用いて線量範囲毎に選択された帯域領域比の線形な反応特性として表される新規な線量測定装置を用いた正確な放射線量監視方法を本願は提供する。
【0047】
一部の実施形態では、放射線感受性フィルム125は、ラマン分光法について感応し放射線量を検出できる放射線感受性化合物を含む。例えば、各々の放射線感受性フィルム片125は、同じ化合物(即ち、同じ「ロット」のフィルム)を含むことになる。
【0048】
一部の実施形態では、放射線感受性フィルム125内の化合物は、ラマン分光法による特徴付けに適した放射線量反応を示す化合物とされる。一部の実施形態では、放射線感受性フィルム125内の化合物はジアセチレン化合物である。一部の実施形態では、ジアセチレン化合物は金属又は半金属(metaloid)系ジアセチレン化合物である。代替的には、一部の実施形態では、ジアセチレン化合物はリチウム系ジアセチレン化合物である。
【0049】
本明細書で用いられる場合、放射線感受性フィルム125は放射線感受性フィルムの1片又はシートを指し得るのであり、或いは、放射線感受性フィルム125は、放射線感受性フィルムの箱/ロット(例えば、放射線感受性フィルムの複数のシート)を指し得る。一部の実施形態では、放射線感受性フィルム125は、ロット番号と、バーコードと、随意的にラマン線量測定に適しており、塗布された接着剤とを含む。
【0050】
1つの実施形態では、放射線感受性フィルム125はラジオクロミックフィルムとされ得る(即ち、電離放射線に曝されると即座に変色し化学的処理を要さないフィルム)。これらのフィルムは格別な空間分解能を有しており、それは少なくとも0.025 mmに達するのであり、一般的には、ラジオクロミックフィルムの吸収線量は組織吸収線量についての正確な反映であると分かっている。
【0051】
ラジオクロミックフィルムの検出片(sensing strip)に用いられる材料としては、次の一般式(I)を伴うジアセチレン類が挙げられる:
【化1】
・・・(I)
ここでR
1及びR
11は置換基である。これらは次の一般式(II)を伴う赤色又は青色ポリマーを形成し得る:
【化2】
・・・(II)
ここで、nはX線、ガンマ線、電子線、及び中性子線等の高エネルギー放射線を照射した場合のモノマー単位の数である。被曝量増加に応じて、ジアセチレンを含む検出片の色は線量に比例して濃くなる。
【0052】
一部の実施形態では、放射線感応線量計アセンブリは、放射線感受性フィルム125と放射線量インジケータとを含む。したがって、放射線量インジケータは、放射線を測定して放射線の変化を示す放射線感受性組成物を含み得る。放射線感受性フィルム125の放射線感受性組成物は、放射線感受性フィルム、放射線感受性パッチ、又は線源から放出された放射線を検出できる電子装置を含む任意の他の装置から選択できる。
【0053】
一部の実施形態では、較正データ管理サーバ130は、エンドユーザ及び/又は放射線感受性フィルムのサプライヤ間で全システム的に較正データを管理する。例えば、較正データ管理サーバ130は、ユーザ装置110及び/又はサプライヤ管理サーバ150から較正曲線145を受信し、較正データデータベース140に較正曲線145を格納する。サプライヤ管理サーバ150は、放射線感受性フィルム125を製造する放射線感受性フィルム製造業者等のエンティティ及びそれらに類する主体であり、これらは放射線感受性フィルム125の各ロット各々の較正曲線を生成することもできる。そして、サプライヤ管理サーバ150は、サプライヤ側で決定された較正曲線を較正データ管理サーバ130へと送信できる。よって、エンドユーザはユーザ装置110にて、その後、放射線感受性フィルムについての各々のロットについての較正曲線を取得(例えば、ダウンロード)でき、自ら較正曲線を生成することを要さない。較正管理サーバ130及び/又はサプライヤ管理サーバ150は、パーソナルコンピューティング装置、タブレットコンピュータ、シンクライアント端末、スマートフォン、及び/又は政府が規制するプロトコルに準拠して放射線及び較正データを管理及び保護できる他のそのようなコンピューティング装置とされ得る。
【0054】
図2は、本発明の実施形態による、例示的な放射線量計アセンブリ200について示す図である。線量計アセンブリ200は、ユーザ(例えば、X線技師)が自己の被曝放射線量を決定するために使用する例示的な放射線バッジについて示している。線量計アセンブリ200は、放射線感受性フィルム210及びバーコード202を含む。追加的に、線量計アセンブリ200は、ロット番号を有する(例えば、LOT:「ABC-123456」)。例えば、放射線感受性フィルム210は追加的な放射線感受性フィルムのロットからのものであり、放射線感受性フィルム210について生成された較正曲線は、第2の放射線感受性フィルムに関連する第2の放射線データセットを放射線感受性フィルム210から決定された較正曲線と比較することによって、同じロット(例えば、LOT:「ABC-123456」)からの第2の放射線感受性フィルムについての被曝線量レベルを決定するために活用され得る。
【0055】
一部の実施形態では、放射線量計アセンブリ200は、ラマン線量測定に適しており、塗布された接着剤を随意的に含む。例えば、放射線量計アセンブリ200を、放射線を受ける基板又は他の物体に取り付けることを可能にするために、感圧接着剤プライを線量計アセンブリ200の底部又は裏面に付けておくことができる。接着剤プライは、インジケータ放射線量計アセンブリ200が基材に取り付けられる(例えば、ユーザが放射線バッジを衣服に貼り付ける際)際に接着剤プライから除かれるように適合された剥離可能な剥離シートを備え得る。
【0056】
図3は、本発明の実施形態による、放射線量反応に基づいた例示的な較正曲線310についてのグラフ300を示す図である。例えば、グラフ300に示されている較正曲線は放射線量測定較正処理に基づいて決定され得るのであり、該処理では、放射線感受性フィルム(例えば、ラジオクロミックフィルム、又は放射線感受性フィルム210等の放射線感受性フィルム)を取得し、放射線感受性フィルムを一連の既知の線量に被曝させ、測定装置(例えば、ラマン分光器、又は可搬型ラマン分光装置)を用いて放射線感受性フィルムについての放射線データ(例えば、ラマン分光データ)を測定し、ユーザ装置にて(例えば、ユーザ装置110等のモバイル機器にて)、放射線感受性フィルムについての放射線データに基づいて較正曲線310を決定する。グラフ300等の較正曲線を生成するステップは以下を含み得る:(i)放射線データに基づいてラマンスペクトル域を選択するステップと、(ii)選択されたラマンスペクトル域に基づいて複数の帯域領域比を決定するステップと、(iii)既知の線量との比較で帯域領域及び比をプロットすることに基づいて較正曲線310を生成するステップ。例えば、測定装置は、各々の既知の放射線量についての帯域領域比を提供する(例えば、5Gy刻みで0~50Gy)。
【0057】
一部の実施形態では、較正曲線の決定では多変量較正及び/又は回帰法を活用できる。例えば、較正曲線は部分最小二乗法、主成分回帰等に基づいて生成され得る。多変量法では良好な予測のために複雑なシステムの全ての構成要素を同時にモデル化することを要さないとの利点がある。他の変動源(干渉)があったとしても反応を予測することが可能となる。さらに、多変量法では、興味対象の反応とは無関係のシステム内の他の変動源を黙示的にモデル化できる故に予測精度に貢献する。
【0058】
図4は、本発明の実施形態による、放射線量を決定する例示的なグラフ400を示す図である。例えば、グラフ400に示される較正曲線410は、本明細書記載の放射線量測定較正処理に基づいて決定されることができる。被曝線量レベルの決定ステップは、第2の放射線感受性フィルムを未知の線量に被曝させ、測定装置を用いて第2の放射線感受性フィルムについての第2の放射線データセット(例えば、放射線データ線415)を測定し、第2の放射線データセット(415)を較正曲線410と比較することによって第2の放射線感受性フィルムについての被曝線量レベルを決定して線量値(例えば、放射線量データ線425)を生成することを含み得る。例えば、ラマン分光の結果は、較正曲線と比較されて(例えば、ユーザのモバイル機器上で実行されているアプリケーションを介して)未知の線量についての被曝線量の決定が可能となる。比較グラフ400に示されているように、第2の放射線感受性フィルムのラマン分光の結果は較正曲線と比較されて、被曝線量の決定を可能とするのであり、このことは直線415,425で示されている。
【0059】
図5は、本発明の実施形態による、放射線量測定較正処理を実装するための例示的な処理500についてのフローチャートである。特に、
図5は、ユーザ定義型較正アプローチについての例示的な処理500について示す(例えば、ユーザ装置110にて較正曲線を決定すること)。処理500のオペレーションは、例えば、
図1のユーザ装置110、測定装置120、及び較正データ管理サーバ130等の1つ以上のデータ処理装置を含むシステムによって実装できる。
【0060】
ブロック510では、第1の放射線感受性フィルムが割り当てられる。例えば、ユーザ(例えば、X線技師)が新しいロットの放射線感受性フィルムを開封して、ロット内の残余のフィルムについて較正用フィルムとして使用するための放射線感受性フィルムを1枚選ぶ。
【0061】
ブロック520では、第1の放射線感受性フィルムを一連の既知の放射線量に被曝させる。例えば、既知の線量のX線、ガンマ線、電子線、中性子線等の高エネルギー放射線が、第1の放射線感受性フィルム(例えば、較正に使用するユーザが選択したフィルム)に照射される。
【0062】
ブロック530では、測定装置を用いて第1の放射線感受性フィルムの第1の放射線データセットを測定する。例えば、ユーザは、ラマン分光装置(例えば、
図1の測定装置120)等の放射線検出器を用いて、選択されたフィルムについて放射線データを測定できる。
【0063】
ブロック540では、ユーザ装置において、第1の放射線感受性フィルムの第1の放射線データセットに基づいて較正曲線が生成される。例えば、
図3にて示されているように、較正曲線310は、較正命令セット116によってユーザ装置110にて生成され得るのであり、選択されたフィルムについての測定装置120からの取得済み放射線データに基づいてこれがなされる。例えば、分析用にラマンスペクトル域が選択される(例えば、2066 cm
-1(重合)及び1720 cm
-1(内部基準)帯域)。較正曲線をもたらすための第2のステップは、選択されたラマンスペクトル域に基づいて複数の帯域領域比を決定することを含み得る(ブロック744)。例えば、
図3に示されているように、測定装置は、各々の既知の放射線量についての帯域領域比を提供する(例えば、5Gy刻みで0~50Gy)。較正曲線をもたらすための第3のステップは、既知の線量との比較で帯域領域及び比をプロットすることに基づいて較正曲線を生成することを含み得る(ブロック746、例えば
図3の較正曲線310)。一部の実施形態では、放射線の種類(例えば、ガンマ線、X線、可視光等)とは関係なしに、特定の化合物のスペクトル領域は同じとなるべきである。しかし、異なるジアセチレン又は他の適切な放射線感受性化合物の場合、本明細書に記載の処理で考慮できるスペクトル帯域のずれが幾らかあり得る。
【0064】
ブロック550では、第2の放射線感受性フィルムが未知の放射線量に被曝される。第2の放射線感受性フィルムは、較正曲線が生成された第1の放射線感受性フィルムと同じロット/箱から選ばれる。例えば、X線、ガンマ線、電子線、中性子線等の未知の放射線量が、第2の放射線感受性フィルムに照射される。
【0065】
ブロック560では、較正曲線に基づいて第2の放射線感受性フィルムの第2の放射線データセットが決定される。例えば、第2の放射線感受性フィルムの第2の放射線データセットは測定装置120で測定されるのであり、第2の放射線データセットを較正曲線と比較することに基づいて第2の放射線感受性フィルムについての被曝線量レベルが決定されるのであり、これは
図4参照して示されており且つ論じられている。
【0066】
ブロック570では、ユーザ装置にての表示のために第2の放射線感受性フィルムの第2の放射線データセットが提供されている。例えば、ユーザ装置110は、較正曲線を測定結果に適用した後に、決定された放射線結果を表示する。
【0067】
ブロック580では、第2の放射線感受性フィルムの第2の放射線データセット及び較正曲線についてのデータ管理システムへのデータ転送が可能とされている。例えば、ユーザ装置110は、較正曲線データ及び/又は第2の放射線感受性フィルムの第2の放射線データセットを較正データ管理サーバ130へと転送できる。そして、較正データ管理サーバ130は、較正曲線を較正データデータベース140内に格納できる。
【0068】
図6は、本発明の実施形態による、ユーザ装置にてサプライヤからの取得された較正曲線に基づいて放射線量を決定する例示的な処理600についてのフローチャートである。特に、
図6は、サプライヤ定義型較正アプローチについての例示的な処理600について示す(例えば、サプライヤ管理サーバ150にて較正曲線を決定すること)。処理600のオペレーションは、例えば、
図1のユーザ装置110、測定装置120、及び較正データ管理サーバ130等の1つ以上のデータ処理装置を含むシステムによって実装できる。
【0069】
ブロック610では、第1の放射線感受性フィルムが割り当てられる。例えば、ユーザ(例えば、放射線感受性フィルムのサプライヤのオペレータ)が新しいロットの放射線感受性フィルムを開封して、ロット内の残余のフィルムについて較正フィルムとして使用するための放射線感受性フィルムを1枚選ぶ。
【0070】
ブロック615では、第1の放射線感受性フィルムを一連の既知の放射線量に被曝させる。例えば、既知の線量のX線、ガンマ線、電子線、中性子線等の高エネルギー放射線が、サプライヤの位置にて第1の放射線感受性フィルム(例えば、較正に使用するユーザが選択したフィルム)に照射される。
【0071】
ブロック620では、測定装置を用いて第1の放射線感受性フィルムの第1の放射線データセットを測定する。例えば、ユーザは、ラマン分光装置(例えば、
図1の測定装置120)等の放射線検出器を用いて、選択されたフィルムについて放射線データを測定できる。
【0072】
ブロック625では、サプライヤ装置において、第1の放射線感受性フィルムの第1の放射線データセットに基づいて較正曲線が生成される。例えば、
図3にて示されているように、較正曲線310は、ネットワーク102を介して、選択されたフィルムについて、測定装置120から受信された放射線データに基づいて、較正命令セットによって1つ以上のサプライヤ管理サーバ150のうちの1つにて生成され得る。例えば、分析のためにラマンスペクトル域が選択される(例えば、2066 cm
-1(重合)及び1720 cm
-1(内部基準)帯域)。較正曲線をもたらすための第2のステップは、選択されたラマンスペクトル域に基づいて複数の帯域領域比を決定することを含み得る(ブロック744)。例えば、
図3に示されているように、測定装置は、各々の既知の放射線量についての帯域領域比を提供する(例えば、5Gy刻みで0~50Gy)。較正曲線をもたらすための第3のステップは、既知の線量との比較で帯域領域及び比をプロットすることに基づいて較正曲線(例えば
図3の較正曲線310)を生成することを含み得る(ブロック746)。一部の実施形態では、放射線の種類(例えば、ガンマ線、X線、可視光等)とは関係なしに、特定の化合物のスペクトル域は同じとなるべきである。しかし、異なるジアセチレン又は他の適切な放射線感受性化合物の場合、本明細書に記載の処理で考慮できるスペクトル帯域のずれが幾らかあり得る。
【0073】
ブロック630では、較正曲線をバーコード内に埋め込み、また、較正曲線及びバーコードに関連付けられているデータを較正データ管理システムへと送信される。例えば、サプライヤ管理サーバ150と関連付けられているサプライヤが、放射線感受性フィルムの特定のロット(例えば、
図2のロット:「ABC-123456」)に固有の生成された較正曲線を関連付けているのであり、また、そのデータへのリンクをエンドユーザがスキャンできるバーコード(例えば、バーコード202)に埋め込む。例えば、X線技師は、ユーザ装置110を用いてバーコード202をスキャンして、そのロットと関連付けられている較正曲線にアクセスできるのであり、これはその較正曲線と関連付けられている各放射線感受性フィルム(例えば、同じロット)に関する未知の線量についての被曝線量を決定するためになされる。
【0074】
ブロック635では、第2の放射線感受性フィルムが割り当てられる。例えば、エンドユーザ(例えば、X線技師)が依頼人の現場にてサプライヤからの放射線感受性フィルムの箱/ロットを開封する(例えば、ロット:「ABC-123456」)。
【0075】
ブロック640では、ユーザ装置を介して第2の測定装置において較正曲線が較正データ管理システムから取得される。例えば、ブロック625にて放射線感受性フィルムの特定のロット(例えば、
図2のロット:「ABC-123456」)に関してサプライヤ管理サーバ150にて生成された較正曲線は依頼人の現場の測定装置(例えば、測定装置120)にてユーザ装置110及びネットワーク102を介して取得(例えば、ダウンロード)され得る。
【0076】
ブロック645では、第2の放射線感受性フィルムが未知の放射線量に被曝される。第2の放射線感受性フィルムは、較正曲線が生成された第1の放射線感受性フィルムと同じロット/箱から選ばれる。例えば、未知の線量のX線、ガンマ線、電子線、中性子線等の未知の放射線量が、第2の放射線感受性フィルムに照射される。
【0077】
ブロック650では、較正曲線に基づいて第2の放射線感受性フィルムの第2の放射線データセットが決定される。例えば、第2の放射線感受性フィルムの第2の放射線データセットは測定装置120で測定されるのであり、第2の放射線データセットを較正曲線と比較することに基づいて第2の放射線感受性フィルムについての被曝線量レベルが決定されるのであり、これは
図4参照して示されており且つ論じられている。
【0078】
ブロック655では、ユーザ装置にての表示のために第2の放射線感受性フィルムの第2の放射線データセットが提供される。例えば、ユーザ装置110は、較正曲線を測定結果に適用した後に、決定された放射線結果を表示する。
【0079】
ブロック660では、第2の放射線感受性フィルムの第2の放射線データセット及び較正曲線についてのデータ管理システムへのデータ転送が可能とされている。例えば、ユーザ装置110は、較正曲線データ及び/又は第2の放射線感受性フィルムの第2の放射線データセットを較正データ管理サーバ130へと転送できる。較正データ管理サーバ130は、較正曲線を較正データデータベース140内に格納するように構成されている。いくつかの実施形態では、較正曲線情報は、較正データ管理サーバ130によって顧客レベルでのフィルム性能と放射線被曝の「一貫性」について評価され、処理に関する処理制御チャートタイプ情報を生成できる。特に、該情報はより良い処理分析を進展させるのに寄与し得る。
【0080】
図7は、本発明の実施形態による、ラマン分光法に基づいて較正曲線を決定するための、並びに、較正曲線に基づいて未知の線量についての放射線被曝線量レベルを決定するための例示的な処理700についてのフローチャートである。処理700のオペレーションは、例えば、
図1のユーザ装置110、測定装置120、及び較正データ管理サーバ130等の1つ以上のデータ処理装置を含むシステムによって実装できる。
【0081】
ブロック710では、第1の放射線感受性フィルムが割り当てられる。例えば、ユーザ(例えば、X線技師)が新しいロットの放射線感受性フィルムを開封して、ロット内の残余のフィルムについて、較正フィルムとして使用するための放射線感受性フィルムを1枚選ぶ。例えば、ユーザは同じロットのフィルムを後日使用することができる。
【0082】
ブロック720では、第1の放射線感受性フィルムを一連の既知の放射線量に被曝させる。例えば、この経時(aged)フィルムは検査され、既知の線量のX線、ガンマ線、電子線、中性子線等の高エネルギー放射線に曝される。これは、第1の放射線感受性フィルム(例えば、較正に使用するユーザが選択したフィルム)に照射される。
【0083】
ブロック730では、測定装置を用いて第1の放射線感受性フィルムの第1の放射線データセットを測定する。例えば、ユーザは、ラマン分光装置(例えば、
図1の測定装置120)等の放射線検出器を用いて選択されたフィルムについて放射線データを測定できる。
【0084】
ブロック740では、ユーザ装置において、第1の放射線感受性フィルムの第1の放射線データセットに基づいて較正曲線が決定される。例えば、
図3にて示されているように、較正曲線310は、較正命令セット116によってユーザ装置110にて生成され得るのであり、選択されたフィルムについての測定装置120からの取得済み放射線データに基づいてこれがなされる。
【0085】
較正曲線を決定するステップは、ブロック742で、先ず第1の放射線データセットに基づいてラマンスペクトル域を選択することを含む。例えば、分析のためにラマンスペクトル域が選択される(例えば、2066 cm
-1(重合)及び1720 cm
-1(内部基準)帯域)。較正曲線を決定するための第2のステップは、選択されたラマンスペクトル域に基づいて複数の帯域領域比を決定することを含み得る(ブロック744)。例えば、
図3に示されているように、測定装置は、各々の既知の放射線量についての帯域領域比を提供する(例えば、5Gy刻みで0~50Gy)。較正曲線を決定するための第3のステップは、既知の線量との比較で帯域領域及び比をプロットすることに基づいて較正曲線(例えば
図3の較正曲線310)を生成することを含み得る(ブロック746)。一部の実施形態では、放射線の種類(例えば、ガンマ線、X線、可視光等)とは関係なしに、特定の化合物のスペクトル域は同じとなるべきである。しかし、異なるジアセチレン又は他の適切な放射線感受性化合物の場合、本明細書に記載の処理で考慮できるスペクトル帯域のずれが幾らかあり得る。
【0086】
ブロック750では、第2の放射線感受性フィルムが未知の放射線量に被曝される。第2の放射線感受性フィルムは、較正曲線が生成された第1の放射線感受性フィルムと同じロット/箱から選ばれる。例えば、X線、ガンマ線、電子線、中性子線等の未知の放射線量が、第2の放射線感受性フィルムに照射される。
【0087】
ブロック760では、測定装置を用いて第2の放射線感受性フィルムの第2の放射線データセットを測定する。例えば、測定装置120を用いて第2の放射線感受性フィルムの第2の放射線データセットを測定する。
【0088】
ブロック770では、第2の放射線データセットを較正曲線と比較することに基づいて第2の放射線感受性フィルムについての被曝線量レベルが決定される。例えば、第2の放射線データセットを較正曲線と比較することに基づいて第2の放射線感受性フィルムについての被曝線量レベルが決定されるのであり、これは
図4参照して示されており且つ論じられている。
【0089】
ブロック780では、ユーザ装置にての表示のために第2の放射線感受性フィルムの第2の放射線データセットが提供される。例えば、ユーザ装置110は、較正曲線を測定結果に適用した後に、決定された放射線結果を表示する。
【0090】
経時(aged)フィルムについては、処理を単純な態様で反復できる。この場合、ブロック710での未被曝フィルムは、第1の放射線データセットに基づいてラマンスペクトル測定域によって評価される(ブロック742)。例えば、分析のためにラマンスペクトル域が選択される(例えば、2066 cm-1(重合)及び1720 cm-1(内部基準)帯域)。そして、ブロック720では1つの既知の線量を測定する。そして、フィルムが初めにテストされた際にブロック746で従前決定された較正曲線を数理的に調整して、それによって経時(aged)フィルムについてのあらゆる変化を反映させることができる。
【0091】
ブロック790では、第2の放射線感受性フィルムの第2の放射線データセット及び較正曲線についてのデータ管理システムへのデータ転送が可能とされている。例えば、ユーザ装置110は、較正曲線データ及び/又は第2の放射線感受性フィルムの第2の放射線データセットを較正データ管理サーバ130へと転送できる。そして、較正データ管理サーバ130は、較正曲線を較正データデータベース140内に格納できる。
【0092】
ラジオクロミックフィルムの線量反応は照射した放射線のエネルギーレベルに依存し得る。この効果はエネルギー依存性として知られている。例えば、X線ビームをキロボルト域からメガボルト域で照射できる。結果として、異なる照射エネルギーに対する較正フィルム反応及び測定フィルム反応の潜在的な違いについて補正するために、測定フィルム反応(この場合、較正曲線及び/又は第2フィルム測定)に補正係数を適用できる。
【0093】
図8は、本発明の実施形態による、ラマン分光法に基づいて較正曲線を決定するための、並びに、ユーザ装置にて較正曲線に基づいて未知の線量についての放射線被曝線量レベルを決定するための例示的な処理800についてのフローチャートである。処理800のオペレーションは、例えば、
図1のユーザ装置110及び測定装置120等の1つ以上のデータ処理装置を含むシステムによって実装できる。処理800はコンピュータ記憶媒体に記憶された命令によっても実装でき、データ処理装置を含むシステムによる命令の実行によって、データ処理装置に処理800のオペレーションを実行させる(例えば、ユーザ装置110上で実行されているアプリケーション112)。
【0094】
ブロック810では、測定装置から第1の放射線感受性フィルムについての第1の放射線データセットが受信される。例えば、ユーザ(例えば、X線技師)が新しいロットの放射線感受性フィルムを開封して、ロット内の残余のフィルムについて、較正フィルムとして使用するための放射線感受性フィルムを1枚選ぶのであり、そして、既知の線量の、X線、ガンマ線、電子線、中性子線等の高エネルギー放射線が第1の放射線感受性フィルム(例えば、較正に使用するユーザが選択したフィルム)に照射される。そして、ユーザは、ラマン分光装置(例えば、
図1の測定装置120)等の放射線検出器を用いて選択されたフィルムについて放射線データを測定できるのであり、そして、そのデータがユーザ装置110へと送信される。
【0095】
ブロック820では、第1の放射線データセットに基づいてラマンスペクトル域が選択される。例えば、ユーザ装置110上の較正命令セット116によって、分析のためにラマンスペクトル域(例えば、2066 cm-1(重合)及び1720 cm-1(内部基準)帯域)が選択される。
【0096】
ブロック830では、選択されたラマンスペクトル域に基づいて複数の帯域領域比が決定される。例えば、
図3に示されているように、測定装置は、各々の既知の放射線量についての帯域領域比を提供する(例えば、5Gy刻みで0~50Gy)。
【0097】
ブロック840では、既知の線量との比較で帯域領域及び比をプロットすることに基づいて、第1の放射線感受性フィルムと関連付けられている較正曲線が生成される(例えば、
図3の較正曲線310)。
【0098】
ブロック850では、測定装置から第2の放射線感受性フィルムについての第2の放射線データセットが取得される。例えば、X線、ガンマ線、電子線、中性子線等の未知の放射線量が、第2の放射線感受性フィルムに照射されるのであり、また、測定装置120を用いて第2の放射線感受性フィルムの第2の放射線データセットが測定される。
【0099】
ブロック860では、第2の放射線データセットを較正曲線と比較することに基づいて第2の放射線感受性フィルムについての被曝線量レベルが決定される。例えば、第2の放射線データセットを較正曲線と比較することに基づいて第2の放射線感受性フィルムについての被曝線量レベルが決定されるのであり、これは
図4参照して示されており且つ論じられている。
【0100】
図5~8は、本明細書にて説明した手法に基づいた線量測定較正処理を実装するための例示的手法についてのフローチャートを示している。特に、
図5は、ユーザ定義型較正アプローチについての例示的な処理500について示す(例えば、ユーザ装置110にて較正曲線を決定すること)。
図6は、サプライヤ定義型較正アプローチについての例示的な処理600について示す(例えば、サプライヤ管理サーバ150にて較正曲線を決定すること)。
図7は、較正曲線を決定するための例示的な処理700について示している。
図8は、較正曲線を決定するための装置において、コンピュータ記憶媒体に記憶された命令を実装するための例示的な処理800について示す(例えば、ユーザ装置110にて較正曲線を決定する)。これら及び他の実施形態は、それぞれ随意的に次の1つ以上の特徴を含むことができる。
【0101】
一部の実施形態では、1つ以上の測定装置120は、放射線被曝を測定可能な放射線測定装置を含み得る。例示的実施形態では、1つ以上の測定装置120は、可搬型ラマン分光装置(spectroscopic device)等のラマン分光計(spectrometer)とされる。一部の実施形態では、測定装置120は、放射線感受性フィルムについて連続的又は半連続的なその場での監視を行えるラマン分光装置とされる。
【0102】
一部の実施形態では、1つ以上の測定装置120は、広範な線量(例えば、1,000 Gy未満)を含む線量反応特性を測定できる。例えば、1つ以上の測定装置120に関しての一部の例示的な線量範囲は次の範囲を含み得る:0.2-10 Gy, 0.4-40 Gy, 1-100Gy, 10-1,000 Gy等。例示された線量範囲は、強度変調放射線治療(IMRT、intensity-modulated radiation therapy)の計画検証についての患者線量測定、定位放射線手術(SRS、stereotactic radiosurgery)及び定位放射線治療(SRT、stereotactic radiotherapy)のための患者線量測定、放射照射野/光照射野試験等の日常的機械品質保証、並びに/又は特定の患者線量測定の必要性に基づく中線量から高線量を測定する他の用途等の異なる放射線照射用途に適用され得る。一部の実施形態では、1つ以上の測定装置120は、より高線量の放射線(例えば、400 kGy迄)を含む線量反応特性を測定できる。
【0103】
一部の実施形態では、1つ以上の測定装置120は、X線に基づく放射線感受性フィルムへの放射線量から、放射線感受性フィルム125についての放射線データを測定する。代替的には、1つ以上の測定装置120は、ガンマ線、紫外線、可視光、電子ビーム、又はそれらの組合せによる放射線感受性フィルムに適用された放射線に関しての放射線感受性フィルム125についての放射線データを測定する。
【0104】
一部の実施形態では、1つ以上の測定装置120は、(例えば、ラマン分光法を介して)放射線感受性フィルム125についての放射線データを次の事項に基づいて測定する:1次元共鳴ラマン(1DRR)分光スキャン、2次元共鳴ラマン(2DRR)分光スキャン、3次元共鳴ラマン(3DRR)分光スキャン、又はこれらの組合せ。
【0105】
一部の実施形態では、選択されたラマンスペクトル域は、放射線被曝と共に変動せず且つ内部基準として機能するデータを含む。例えば、内部基準の使用によって、全ての試料に存在する物質に関して既知の濃度がもたらされる。内部基準の使用によって、全ての試料に存在する物質に関して既知の濃度がもたらされる。フィルムの組成、物理的相違点及び状態による可変性について削減又は除去が可能となる。内部基準の使用によって、フィルムの組成、物理的相違点及び状態等による可変性について削減又は除去が可能となり得る。
【0106】
一部の実施形態では、放射線感受性フィルムは、ラマン分光法に感応して放射線量を検出できる放射線感受性化合物を含む。例えば、各々のフィルム片は、同じ化合物(即ち、同じ「ロット」のフィルム)を含むことになる。一部の実施形態では、放射線感受性フィルム内の化合物はジアセチレン化合物である。一部の実施形態では、ジアセチレン化合物は金属又は半金属(metaloid)系ジアセチレン化合物である。代替的には、一部の実施形態では、ジアセチレン化合物(ジアセチレン化合物)はリチウム系ジアセチレン化合物である。本明細書で用いられる場合、放射線感受性フィルムは放射線感受性フィルムの1片又はシートを指し得るのであり、或いは、放射線感受性フィルムは、放射線感受性フィルムの箱/ロット(例えば、放射線感受性フィルムの複数のシート)を指し得る。一部の実施形態では、放射線感受性フィルムは、ロット番号と、バーコードと、随意的にラマン線量測定に適しており、塗布された接着剤とを含む。
【0107】
一部の実施形態では、放射線感受性フィルムの特性は経時的に僅かに変化し得るため、線量測定をより適切に調整して(align)フィルム反応のエネルギー依存性について補償するために、「補正係数」を伴って較正曲線を調整することを要し得る。したがって、一部の実施形態では、本明細書記載の処理は較正曲線調整処理を含み得るのであり、該処理は、第3の放射線感受性フィルムを取得するステップと、測定装置を用いて第3の放射線感受性フィルムについての被曝前データポイントを測定するステップと、第3の放射線感受性フィルムを1つの既知の放射線量に被曝させるステップと、測定装置を用いて第3の放射線感受性フィルムについての被曝後データポイントを測定するステップと、第3の放射線感受性フィルムについての被曝前データポイント及び被曝後データポイントに基づいて較正曲線を調整するステップと、を含む。
【0108】
図9は、タスクの送受信及び処理のための本明細書で説明するソフトウェアコンポーネントを実行できるコンピュータ902についての例示的なコンピュータアーキテクチャ900について示す。
図9に示すコンピュータアーキテクチャ900(本明細書では「サーバ」とも称する)は、サーバコンピュータ、ワークステーション、デスクトップコンピュータ、ラップトップ、クラウド環境で動作するサーバ、又は他のコンピューティング装置を例示するのであり、また、ホストサーバ、又は他のコンピューティングプラットフォーム上で実行されるものとして説明されて本明細書で提示されるソフトウェアコンポーネントの任意の態様を実行するために活用され得る。コンピュータ902は、好適には、ベースボード、又は「マザーボード」を含み、これは多数のコンポーネント又は装置がシステムバス又は他の電気通信経路を介して接続され得るプリント回路基板である。1つの例示的実施形態では、1つ以上のCPU904がチップセット906と併せて動作する。CPU904は、コンピュータ902の動作に必要な算術的及び論理的オペレーションを行うプログラム可能なプロセッサとされ得る。
【0109】
CPU904は好適には、ある離散的な物理状態から次の状態へと遷移することによって演算(operation)を行うのであり、これらの状態について区別及び変更をなすスイッチング素子の操作(manipulation)を通じてこれがなされる。スイッチング素子には、一般には、フリップフロップ等の2値の状態の一方を維持する電子回路、及び論理ゲート等の1つ以上の他のスイッチング素子の状態の論理的組合せに基づいて出力状態を提供する電子回路が含まれ得る。これらの基本的なスイッチング素子を組み合わせて、レジスタ、加算-減算器、算術論理ユニット、浮動小数点ユニット等のより複雑な論理回路を作ることができる。
【0110】
チップセット906は、CPU904とベースボード上の残りのコンポーネント及びデバイスとの間のインタフェースを提供する。チップセット906は、メモリ908へのインタフェースを提供し得る。メモリ908は、コンピュータ902内にて主メモリとして用いられるRAMを含み得る。メモリ908は、コンピュータ902を起動し、また、様々なコンポーネント及び装置間で情報を転送するのに役立つ基本ルーチンを格納するための、読み取り専用メモリ(ROM)又は不揮発性RAM(NVRAM)等のコンピュータ可読記憶媒体をさらに含み得る。ROM又はNVRAMは、本明細書にて説明される実施形態による、コンピュータ902の動作に必要な他のソフトウェアコンポーネントを格納していることもできる。
【0111】
様々な実施形態によれば、コンピュータ902は、1つ以上のネットワーク912、構内通信網(LAN)、広域通信網(WAN)、インターネット、又はコンピュータ902を装置及び他のリモートコンピュータに接続する当該技術分野で既知の任意の他のネットワーキングトポロジを介したリモートコンピューティング装置への論理接続を用いるネットワーク環境にて動作できる。チップセット906は、ギガビットイーサネット(登録商標)アダプタ等の1つ以上のネットワークインターフェースコントローラ(NIC)910を介してネットワーク接続性を提供する機能を含む。例えば、NIC910は、コンピュータ902を公益事業プロバイダのシステム内の他のコンピュータ装置に接続できるかもしれない。任意の数のNIC910がコンピュータ902内に存在しており、コンピュータを、本明細書で説明する以外の他のタイプのネットワーク及びリモートコンピュータシステムに接続できるものと理解されたい。
【0112】
コンピュータ902は、コンピュータ902に不揮発性ストレージを提供する少なくとも1つの大容量記憶装置918に接続されていることができる。大容量記憶装置918は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、他のプログラムモジュール、及びデータを格納していることができ、これらについては以下詳述する。大容量記憶装置918は、チップセット906に接続されたストレージコントローラ914を介してコンピュータ902に接続されていることができる。大容量記憶装置918は、1つ以上の物理ストレージユニットからなることができる。ストレージコントローラ914は、シリアルアタッチドSCSI(SAS)インタフェース、シリアルアドバンスドテクノロジーアタッチメント(SATA)インタフェース、ファイバチャネル(FC)インタフェース、又はコンピュータと物理ストレージ装置との間での物理接続をなしてデータ転送をなすための他の標準的インタフェースを介して、物理ストレージ装置とインタフェース接続できる。
【0113】
コンピュータ902は、物理ストレージユニットの物理状態を変換して被格納情報を反映させることによって、データを大容量記憶装置918上に格納できる。本明細書に記載の発明の異なる実施形態では、物理状態の具体的変換態様は様々な因子に依存し得る。このような因子を例示するに、物理ストレージ装置の実装に用いられる技術、大容量記憶装置918が一次ストレージとして特徴付けられるのか否か或いは二次ストレージとして特徴付けられるのか否か、又はそれらに類する事項が含まれるも、これらには限定されはしない。例えば、コンピュータ902は、磁気ディスクドライブユニット内の特定の位置の磁気特性、光学ストレージユニット内の特定の位置の反射特性若しくは屈折特性、又は固体ストレージユニット内の特定のキャパシタ、トランジスタ、若しくは他の個別コンポーネントの電気特性を変更させる命令をストレージコントローラ914を介して発することによって、大容量記憶装置918に情報を格納できる。本明細書の範囲及び精神から逸脱することなく物理媒体についての他の変形も可能であり、先述の例は説明を容易にするために提供されるにすぎない。コンピュータ902はさらに、物理ストレージ装置内の1つ以上の特定の位置の物理状態又は特性を検出することによって、大容量記憶装置918から情報の読み出しをなせる。
【0114】
大容量記憶装置918は、コンピュータ902の動作を制御するために活用されるオペレーティングシステム920を格納していることができる。一部の実施形態によれば、オペレーティングシステムはLINUX系OSを含む。別の実施形態によれば、オペレーティングシステムはワシントン州レッドモンドのマイクロソフト社のWINDOWS(登録商標)SERVERオペレーティングシステムを含む。さらなる実施形態によれば、オペレーティングシステムはUNIX系又はSOLARIS系のオペレーティングシステムを含み得る。他のオペレーティングシステムを利用することもできることに留意されたい(例えば、JAVA、Python、又は他のソフトウェア、特にモバイル若しくはポータブル機器に適したソフトウェア)。大容量記憶装置918は、開示の実施形態によれば、コンピュータ902によって活用される他のシステム又はアプリケーションプログラム及びデータを格納でき、例えば、放射線量測定較正処理を実行するための較正モジュール922(例えば、較正命令セット116)、測定装置(例えば、測定装置120)と統合及び/又は通信する分光法モジュール924(例えば、分光法命令セット114)、及び線量測定較正処理の一部として較正結果について較正データ管理サーバと通信するためのデータ管理モジュール928(例えば、データ管理命令セット114)が含まれ得る。コンピュータ902によって活用される他のシステム又はアプリケーションプログラム及びデータについても提供できる(例えば、セキュリティモジュール、支払処理モジュール、ユーザインタフェースモジュール等)。
【0115】
一部の実施形態では、大容量記憶装置918には、コンピュータ902に読み込まれると、コンピュータ902を汎用コンピューティングシステムから本明細書に記載の実施形態を実施できる専用コンピュータに変換するコンピュータ実行可能命令がエンコードされていることができる。これらのコンピュータ実行可能命令は、上述のように、状態間で如何にしてCPU904が遷移するかを指定することによってコンピュータ902を変換する。一部の実施形態によれば、大容量記憶装置918は、コンピュータ902によって実行されると、本明細書に記載の線量測定較正システムを実装するための処理500,600,700,800の一部を行わせるコンピュータ実行可能命令を格納している。更なる実施形態では、コンピュータ902は、大容量記憶装置918に加えて或いはそれに代えて別のコンピュータ可読記憶媒体へのアクセスを有していることができる。
【0116】
コンピュータ902は、キーボード、マウス、タッチパッド、タッチスクリーン、電子スタイラス、又は他のタイプの入力装置等の幾つかの入力装置からの入力を受信及び処理するための入出力コントローラ930をも含み得る。同様に、入出力コントローラ930は、コンピュータモニタ、フラットパネルディスプレイ、デジタルプロジェクタ、プリンタ、プロッタ、又は他のタイプの出力装置等の表示装置に出力を提供することができる。コンピュータ902は
図9に示されているコンポーネントの全てを含まないことがあり、
図9に明示的に示されていない他のコンポーネントを含み得るのであり、又は
図9に示されているのとは全く異なるアーキテクチャを活用し得ることに留意されたい。
【0117】
本開示は、その適用において、以下の説明に記載され、又は図面に示された、コンポーネント又はステップ又は方法論の構築及び配置についての詳細に限定されないことに留意されたい。本開示は、他の実施形態をもたらし得るのであり或いは様々な方法で実践若しくは実施できる。また、本明細書にて用いられる言い回し及び用語は、説明のために選ばれており、限定的なものと解されるべきではない。
【0118】
別段の定義なき限り、本開示に関連して使用される専門用語は、当業者が一般的に理解する意味を有しているものとする。また、文脈上によって要求されない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0119】
本明細書に開示されている全ての物品及び/又は方法は、本開示に照らして、過度な実験を行わずにして製造及び実行できる。本開示の物品及び方法は好適な実施形態の観点から記載されているが、本開示の概念、精神及び範囲(concept, spirit and scope)から逸脱せずに本明細書に記載されている物品及び/又は方法、並びに方法の諸ステップ若しくは諸ステップの順序に変形をもたらし得ることは、当業者には明らかであろう。当業者に明らかなこのような類似の代替物及び変更のすべてが、本開示の精神、範囲及び概念(spirit, scope and concept)の範囲内であるとみなされる。
【0120】
本開示に従って利用されるように以下の用語は別段の定めなき限り、以下の意味を有するものと解される。
【0121】
「備える」と組み合わされて用いられる場合の不定冠詞たる「a」又は「an」は、「1つ」を意味し得るも、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、及び「1つ又は1つ以上」の意味とも合致し得る。「又は」は、代替選択肢が相互排他的である場合にのみ代替選択肢を指すように明示的に示されていない限り、「及び/又は」を意味するものとして用いられるも、選択肢及び「及び/又は」のみを指す定義を本開示は支持している。本出願を通じて、「約」との語は、値が、測定装置、値を決定するために採用される方法又は研究対象者間に存在する誤差についての本来的誤差の変動を含み得ることを示すために使用される。例えば、限定ではないが、「約」との語が用いられる場合、指定された値はプラス又はマイナス側へ12%、又は11%、又は10%、又は9%、又は8%、又は7%、又は6%、又は5%、又は4%、又は3%、又は2%、又は1%変化し得る。「少なくとも1つ」との用語を用いる場合、1つのみならず1, 2, 3, 4, 5, 10, 15, 20, 30, 40, 50, 100等を含むがこれらに限定されない1つより多い量も含まれるものと理解される。「少なくとも1つ」との用語は、それが付加される用語によっては、100又は1000以上にまで拡張され得る。また、100/1000といった数量は、それらを下回っても上回っても満足のいく結果が得られる故に、限定的なものとはみなされるべきではない。また、「X、Y、及びZのうちの少なくとも1つ」との記載は、X単独、Y単独、及びZ単独、並びにX、Y、及びZの任意の組合せを含むものと解される。序数系の用語(即ち、「第1」、「第2」、「第3」、「第4」等)については、2つ以上の項目を区別する目的でのみ用いられるのであり、別段の定めなき限り、1つの項目に対して別の項目との関係でなんらかの順序又は重要性又は重要性を示唆したり或いは何らかの加算順序を示唆したりすることは意図されてはいない。
【0122】
本明細書において、本発明の「1つの実施形態」、又は「1つの態様」、又は「1つのバージョン」、又は「1つの目的」、又は「別の実施形態」、又は「別の態様」、又は「別のバージョン」、又は「別の目的」への言及は、文脈上明らかにそうでないと要請されない限り、そのような実施形態、態様、バージョン、又は目的の1つ以上を含み得る。
【0123】
「少なくとも1つ」との用語を用いる場合、1つのみならず1, 2, 3, 4, 5, 10, 15, 20, 30, 40, 50, 100等を含むがこれらに限定されない1つより多い量を指す。「少なくとも1つ」との用語は、それが付加される用語によっては、100又は1000以上にまで拡張され得る。
【0124】
本明細書で使用される全てのパーセンテージ、部分、割合、及び比率は、別段の定めなき限り、組成物全体についての重量による。列挙されている成分に関する重量は全て活性レベルに基づくものであるため、別段の定めなき限り、市販の原料に含まれる可能性のある溶剤又は副産物は含まれない。
【0125】
本発明についての単数形の特徴又は限定に関するすべての言及は、特に別段の指定がない限り又は言及がなされている文脈にて別段のことが明白に黙示(clearly implied)されていない限り、対応する複数形の特徴又は限定を含むものとし、また、その逆もまた同様とする。
【0126】
本明細書にて用いられる数値範囲は、当該範囲内に含まれるあらゆる数値及び数値のサブセット(every number and subset of numbers)を含むものとして意図されており、それらが明白に開示されているか否かは問われない。さらに、これらの数値範囲は、当該範囲内の任意の数値又は数値のサブセット(any number or subset of numbers)に向けられた請求項についてのサポートを提供するものとして解されるべきである。
【0127】
本明細書にて用いられる際には、「備える」(任意の変形用例を含む)、「有する」(任意の変形用例を含む)、「含む」(任意の変形用例を含む)、又は「含有する」(任意の変形用例を含む)との語は、包摂的又はオープンエンドであり、追加的な不記載の要素及び方法のステップを排するものではない。本明細書にて用いられる「又はそれらの組合せ」及び「及び/又はそれらの組合せ」との記載は、当該記載に先行する列挙事項についてのあらゆる順列及び組合せを指す。例えば、「A, B, C,又はそれらの組合せ」は、次の少なくとも1つを含むことが意図されている:A, B, C, AB, AC, BC,又はABC並びに、特定の文脈にて順序が重要ならば、BA, CA, CB, CBA, BCA, ACB, BAC,又はCABも含まれる。この例を敷衍するに、BB, AAA, AAB, BBC, AAABCCCC, CBBAAA, CABABB等の1つ以上の項目又は項の繰り返しを含む組合せが明示的に含まれる。当業者ならば、文脈から反対の旨が明らかな場合を除き、典型的には、任意の組合せにおいても項目又は項の個数に制限がないことを理解するであろう。
【0128】
以下の詳細な説明の目的上では、操作の例の場合又は別段の指示がある場合を除き、本明細書及び特許請求の範囲において使用される例えば成分の量等を表す数字はすべての場合において「約」との語によって修飾されるものと解されるべきである。本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、本発明を実施する際に得られるべき所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【0129】
本明細書にて用いられる「又はそれらの組合せ」、「及びそれらの組合せ」及び「及び/又はそれらの組合せ」との記載は、当該記載に先行する列挙事項についてのあらゆる順列及び組合せを指す。
【0130】
「約」との語は、指定値の+10%の値の範囲を指す。例えば、「約200」との記載は、200の±10%、即ち180から220を含む。
【0131】
「線量計」という用語は放射線感応線量計を指し、これは電離放射線の被曝量、カーマ、吸収線量、等価線量、又はそれらの時間微分(率)、又は関連する量を、直接的又は間接的に測定又は評価する装置、機器又はシステムである。線量計は、電離放射線への被曝を示す又は測定するために用いられるそのような装置の一つである。当該線量計は、固体の物体であって、板状であるか或いは任意の他の形状であり、容易に見ることができ、時には分光光度計を用いることなくして色の視覚的変化を示す。例えば、熱ルミネッセンス線量計(TLD、Thermoluminescence Dosimeter)、光学模擬ルミネッセンス(OSL、Optically Simulated Luminescence)、ラジオルミネッセンス硝子(RLG、Radio Luminescence Glass)、X線フィルム、トラック・エッチ等の複数のタイプの線量計が現在市販されている。一般的には、これらは、X線、ガンマ線、高速電子線等の医療用及び工業用放射線の測定及び監視に用いられる。線量計とその読み取り装置は、線量測定システムと称される。
【0132】
「可搬型ラマン分光装置」という用語は、好適には785nmレーザー励起の手持ち式ラマン分光計を指す。手持ち式ラマン分光計は、WiFiが利用可能でなくとも、セルラーリンクを介してクラウドとの接続を維持する。クラウドデータプラットフォームによって、ユーザは、そのローカル装置上の全てのデータを中央データベースと共有し、また、全ての装置で即時更新を同期できる。
【0133】
本明細書で用いる場合、「データ」という用語は、メモリ内に格納し得るあらゆる情報を指す。例えば、データには、ユーザデータ、サンプルデータ、放射線量情報、制御情報等が含まれる。
【0134】
本開示において「放射線」という用語は、原子又は分子から電子を遊離させてそれらをイオン化させるのに十分なエネルギーを有する電離又は非電離放射を指す。放射線には、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線、イオン線、又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらには限定はされない。非電離放射とは、原子又は分子をイオン化させる、即ち原子又は分子から電子を完全に離脱させるのに十分な量子当たりのエネルギー(光子エネルギー)を持たない任意のタイプの電磁放射を指す。非電離放射線には、紫外線(UV)、可視光線、赤外線(IR)、又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらには限定はされない。
【0135】
本明細書で用いる際、「電離放射」という用語は、一般的に、原子が電子を失って帯電乃至はイオン化するのに十分に高いエネルギーのレベルを持つ放射を指す。電離放射は、アルファ粒子及びベータ粒子だったり陽子線及び中性子線等のような高エネルギー粒子の形式であったり、或いはガンマ線又はX線のような電磁波の形式であったりすることができる。高エネルギー粒子及び電磁波は、崩壊しつつある放射性原子の原子核から放出され得る、或いは、加速した電子を金属の標的に衝突させることによって生成され得る。
【0136】
「放射線感受性フィルム」とは、高エネルギー光子の吸収線量の定量的測定のために設計されたラジオクロミック線量測定フィルムを指す。主な技術的特徴は次の通りである:(i)ダイナミック線量範囲:10Gyから1000Gy; (ii)被曝後処置無くしてリアルタイムで現像されること;(iii)エネルギー依存性:100keVからMV範囲での最小限の反応差違;(iv)組織近似性;(v)高い空間解像度-5ppm以下にて特徴を解像できること;(vi)低エネルギー光子及び電子の検出のために被曝させられるアクティブコーティング(active coating);(vii)アクティブ層(active layer)でマーカ色素を伴う独占新規技術:トリプルチャンネル線量測定を用いることによって不均一性補正を可能とするのであり、また、UV/光に関しての感度を低下させる;並びに(viii)60°Cの温度まで安定していること。
【0137】
「表示装置」という用語は、表示画面上でデータを視認可能な形式での表現を可能とする要素の配置を指す。適切な表示画面としては、情報を視覚的にユーザに表示するための、様々な平面型、曲面型若しくはその他の形状の画面、フィルム、シート、若しくはその他の構造が含まれ得る。本明細書に記載の表示装置は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)を含む表示システム、テレビ、コンピュータ、携帯電話、スマートフォン、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、電子読書装置、タブレット、ウェアラブル装置等に含まれ得る。
【0138】
「操作可能な接続」(或いはエンティティが「操作可能に接続される」接続)とは、信号、物理的通信フロー、及び/又は論理的通信フローが送信及び/又は受信され得る接続である。通常、操作可能な接続は、物理的インタフェース、電気的インタフェース、及び/又はデータインタフェースを含むが、操作可能な接続は、操作可能な制御を可能にするのに足りるこれらの又は他のタイプの接続の異なる組合せで構成され得るということに留意されたい。
【0139】
一般に、本発明の実施形態を実装するために実行されるルーチンは、オペレーティングシステムの一部として実装されるのか又は特定のアプリケーション、コンポーネント、プログラム、オブジェクト、モジュール、又は命令のシーケンスとして実装されるのか、又はそれらのサブセットとして実装されるのであっても、本明細書では「コンピュータプログラムコード」、又は単に「プログラムコード」と称され得る。プログラムコードは、典型的には、コンピュータ内の様々なメモリ及びストレージ装置に様々な時点で常駐し、また、コンピュータ内の1つ以上のプロセッサによって読み込まれて実行されると、本発明の実施形態の様々な態様を具体化する動作及び/又は要素を実行するのに必要な動作をコンピュータに実行させる、コンピュータ可読命令を含む。本発明の実施形態の動作を実行するためのコンピュータ可読プログラム命令は、例えば、アセンブリ言語又は1つ以上のプログラミング言語の任意の組合せで記されたソースコード若しくはオブジェクトコードのいずれかとされ得る。
【0140】
本明細書記載のアプリケーション/モジュールのいずれかに具現化されたプログラムコードは様々な異なる形態のプログラム製品として個別に又は集合的に配布され得る。特に、プログラムコードはコンピュータ可読記憶媒体を用いて配布でき、該媒体は本発明の実施形態の諸側面をプロセッサに実行させるためのコンピュータ可読プログラム命令を有している。
【0141】
コンピュータ可読記憶媒体は本質的に非一時的であり、これはコンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、又は他のデータ等の情報を記憶するための任意の方法又は技術で実装された揮発性及び不揮発性の、並びに取り外し可能及び取り外し不可能な有形媒体を含み得る。コンピュータ可読記憶媒体には、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ又は他のソリッドステートメモリ技術、ポータブルコンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、又は他の光学ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ、又は他の磁気記憶装置、又は所望の情報を記憶するのに使用でき、また、コンピュータによって読み出されることができる任意の他の媒体がさらに含まれ得る。コンピュータ可読記憶媒体はそれ自体が一時的な信号(例えば、電波或いは伝播する他の電磁波、導波管等の伝送媒体を介して伝播する電磁波、又は電線を介して伝送される電気信号)と解釈されるべきではない。コンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ可読記憶媒体からコンピュータ、別のタイプのプログラム可能データ処理装置、又は別の装置にダウンロードできるのであり、或いは、ネットワークを介して外部コンピュータ又は外部記憶装置にダウンロードできる。
【0142】
コンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ、他のタイプのプログラム可能なデータ処理装置、又は他の装置に特定の方法で機能するように指図するために用いられ得るのであり、コンピュータ可読媒体に記憶された命令が、フローチャート、シーケンス図、及び/又はブロック図で指定された機能/行為を実装する命令を含む製造品をもたらすようにすることができる。コンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は他のプログラム可能なデータ処理装置の1つ以上のプロセッサに提供できるのであり、1つ以上のプロセッサを介して実行される命令が、フローチャート、シーケンス図、及び/又はブロック図で指定された機能及び/又は行為を実装できるように一連の計算を実行させるような機械をもたらし得る。
【0143】
特定の代替的実施形態では、本発明の実施形態の範囲から逸脱せずに、フローチャート、シーケンス図、及び/又はブロック図にて指定された機能及び/又は行為については、再度の順序付け、逐次処理、及び/又は並列処理をなし得る。また、フローチャート、シーケンス図、及び/又はブロック図のいずれもについて、本発明の実施形態との一貫性を有する図示されたブロックとの関係でより多い又はより少ないブロックを含み得る。
【0144】
本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を説明することを目的としているにすぎず、本発明の実施形態を限定することは意図されていない。本開示で使用されるように、単数形の不定冠詞及び定冠詞は、文脈にて別段の明示がない限り、複数形をも含むことを意図している。「含む(含み)」、「含んでいる」、「備える」、及び/又は「備えている」という用語は、本開示で用いられる場合、記載される特徴、対象物、ステップ、動作、要素及び/又はコンポーネントが存在することを明示する。しかし当該用語は、1以上の他の特徴、対象物、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらの群が存在すること又は追加されることを排除しない。さらに、詳細な説明又は特許請求の範囲のいずれかにて、「含む」、「有している」、「有する」、「伴う」、「を備える」、又はそれらの変形が使用されている限りにおいて、このような用語は、「備える」と類似の態様で包括的なものとされることが意図されている。
【0145】
様々な実施形態についての説明によって本発明の全てが例示されており、また、これらの実施形態について相当の詳細を説明したのであるが、添付の特許請求の範囲をこれらの詳細に何らかの態様で限定又は制限することは出願人の意図ではない。当業者ならば容易に追加の長所及び変更を見出せるであろう。よって、本発明は、広範な態様においては、示されておりまた説明された特定の詳細事項、代表的な装置及び方法、並びに例示的な実施例に限定されるものではない。このように、出願人の一般的な発明概念の精神又は範囲から逸脱せずに、このような詳細から逸脱できよう。
【国際調査報告】