(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】改善された電磁遮蔽を有するコイル及び変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/28 20060101AFI20240110BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20240110BHJP
H02M 3/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01F27/28 K
H01F27/28 185
H01F30/10 C
H02M3/00 Y
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539010
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2021087474
(87)【国際公開番号】W WO2022136634
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレマスコ、アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ポルケイバノール、シアマク
(72)【発明者】
【氏名】カーティ、ミトロファン
(72)【発明者】
【氏名】ロモノバ、エレナ
(72)【発明者】
【氏名】ロスムンド、ダニエル
【テーマコード(参考)】
5E043
5E044
5H730
【Fターム(参考)】
5E043AA02
5E043AB01
5E043AB02
5E043BA01
5E044DA07
5H730ZZ17
(57)【要約】
コイルであって、-磁心と、-磁心の周りに巻き付けられた導体とを備え、導体の断面は、磁心の周りに巻き付けられた導体の一部に沿って変化する、コイル。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルであって、
-磁心と、
-前記磁心の周りに巻き付けられた導体と
を備え、前記導体の断面は、前記磁心の周りに巻き付けられた前記導体の一部に沿って変化する、コイル。
【請求項2】
前記導体は、N個のターンで前記磁心の周りに巻き付けられ、前記N個のターンのうちの少なくとも最初のターンの断面は、第1の形状に類似しており、前記断面は、前記N個のターンのうちの次のターンのために前記第1の形状とは異なる第2の形状に遷移し、前記断面は、前記N個のターンのうちの少なくとも最後のターンのために前記第1の形状に戻るように遷移する、請求項1に記載のコイル。
【請求項3】
前記第1の形状は、丸い形状、例えば円形状であり、前記第2の形状は、矩形状、例えば矩形である、請求項2に記載のコイル。
【請求項4】
前記導体は、3つの続く導体部から成り、第1の導体部は、丸い形状、矩形状、又は楕円形状の導体であり、第2の導体部は、平坦な導体であり、第3の導体部は、丸い形状、矩形状、又は楕円形状の導体である、請求項1~3のいずれか一項に記載のコイル。
【請求項5】
前記第2の導体部は、箔導体を備える、請求項4に記載のコイル。
【請求項6】
前記第1の導体部及び/又は前記第3の導体部は、リッツ線を備える、請求項4又は5に記載のコイル。
【請求項7】
前記第1の導体部及び/又は前記第2の導体部は、両方とも少なくとも1つのターンで巻き付けられる、請求項4~6のいずれか一項に記載のコイル。
【請求項8】
前記導体部のうちのいずれの間の接続も、対応する前記第1又は第3の導体部の周りに前記第2の導体部の端部を巻き付けることによって得られる、請求項4~7のいずれか一項に記載のコイル。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のコイルを、少なくとも1つ備える変圧器。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
近年、中電圧(MV)ACグリッドと低電圧(LV)DCバスとの間の高効率インタフェースの必要性が、高電力LV DC負荷及び電源の量が急速に増加するにつれて、著しく増大している。
【0002】
そのようなシナリオでは、いわゆるソリッドステート変圧器(SST)、即ちガルバニック絶縁された高電力AC/DC及びDC/DCコンバータは、より小さい体積及び重量などのいくつかの利点により、低周波変圧器(LFT)に基づく最先端技術に取って代わることができる。
【0003】
SSTにおける電力変換は、キロヘルツ範囲内のMV PWM波形で動作する変圧器によってサポートされる。従って、このカテゴリの変圧器は、中間周波数変圧器(MFT)と呼ばれる。それは、MVグリッド内で同じ動作安全性を保証するために、LFTと同様の絶縁要件を特徴とする。要求される絶縁レベルは、IEC62477-2によると、通常10.8kVよりも高い。これらの要件を満たすために、最近のMFTの設計のために考慮される絶縁レベルにおいて増大する傾向が観察される。
【0004】
しかしながら、それらの遙かにより高い動作周波数により、MFTは、同じ伝達電力に対してLFTよりも著しく小型である。それにもかかわらず、要求される絶縁定格は特定の変圧器技術とは無関係なので、一次側と二次側との間の絶縁厚さは、MFT及びLFTの両方に対して等しいであろう。これは、MFTのガルバニック絶縁システムが、LFTと比較して、変圧器の体積の遙かにより大きな割合を占めるという状況をもたらし、即ち、言い換えれば、追加の設計マージンのための余地が、MFTのために劇的に低減される。
【0005】
従って、絶縁体の設計は、可能な限り高い変圧器性能、即ち高い電力密度及び高い効率を達成しながら、許容可能な絶縁距離を保証するために特別な注意を必要とする。
【0006】
典型的なMFTのコイルは、コンバータの低電圧側(<1.1kV)に接続された内部二次巻線(LV)と、LVに半径方向に積み重ねられ、最も高い電圧を有するコンバータの側に接続された外部一次巻線(HV)とから成る。コイルは、通常安全のために接地されているMFTの磁気回路の周りに設置される。
【0007】
MFTの導体に採用される2つの主要な技術は、リッツ線及び箔導体である。選択は、以下の間のトレードオフである:
・オーム損失、効率要件のために制限される必要がある。
・電場分布、絶縁材料の許容限界よりも低い必要がある。
・材料コスト、MFTのコストがフルコンバータのコストに大きな影響を与えることを考慮すると、同様に重要であり得る。
【0008】
リッツ線のコストが高いことが、箔導体を使用することに対するいくつかの研究のきっかけとなった。中電圧MFTのために箔導体を使用する際に観察される主な問題は以下の通りである:
-コイルの上部及び下部においてのみ半径方向に導体を横切る磁束に起因する、導体の上縁部及び下縁部におけるオーム損失。
-接地された磁気回路に向かって、箔の鋭い縁部上に蓄積する電荷から生じる電場増強。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、磁場及び電場の両方がコイル巻線のフランジ中で遮蔽される解決策を対象とし、それは、半径方向磁束によって引き起こされる渦電流と、導体の縁部における電場ホットスポットとの両方にとって重要であり得る。
【0010】
本開示の第1の態様では、磁心と、磁心の周りに巻き付けられた導体とを備えるコイルが提供され、導体の断面は、磁心の周りに巻き付けられた導体の一部に沿って変化する。
【0011】
本発明者らは、磁心の周りに巻き付けられた導体の一部に沿って導体の断面の形状を変化させて、それによって磁場及び電場を遮蔽することが可能となることが有益であり得ることを見出した。
【0012】
断面は、その巻き付け方向に沿った平面による導体の交差の表現を示す。例えば、円筒形の物体がその基部に対して平行な平面によって切断されると、結果として得られる断面は円形になる。
【0013】
実施例では、導体は、N個のターンで磁心の周りに巻き付けられ、N個のターンのうちの少なくとも最初のターンの断面は、第1の形状に似ており、断面は、N個のターンのうちの次のターンのために第1の形状とは異なる第2の形状に遷移し、断面は、N個のターンのうちの少なくとも最後のターンのために第1の形状に戻るように遷移する。
【0014】
上記で提供された実施例の利点は、磁心の端部の位置における導体が、端部間の位置における導体と比較して異なる断面を提供され得ることである。これは、例えば、オーム抵抗並びに電場及び/又は磁場特性のうちの少なくとも1つに役立ち得る断面を選ぶことによって、実装段階を支援し得る。
【0015】
更なる実施例では、第1の形状は、丸い形状、例えば円形であり、第2の形状は、矩形状、例えば矩形である。
【0016】
実施例では、導体は、3つの後続する導体部から成り、第1の導体部は、丸い導体であり、第2の導体部は、平坦な導体であり、第3の導体部は、丸い導体である。
【0017】
別の実施例では、第2の導体部は、箔導体を備える。
【0018】
箔導体は、1つ以上の方向に電流を流すことを可能にすることができる導体とみなされ得る。金属製の材料は、一般的な導電体である。電流は、負に帯電された電子、正に帯電された正孔、及び場合によっては正又は負のイオンの流れによって生成される。箔導体は、典型的には、平坦な導体であることを特徴とする。
【0019】
例えば、第1の導体部及び/又は第3の導体部は、リッツ線を備える。
【0020】
リッツ線は、交流を搬送するために電子機器において典型的に使用されるマルチストランドワイヤの一種である。線は、導体における表皮効果及び近接効果損失を低減するように設計されている。典型的には、多くの細いワイヤストランドから成り、個々に絶縁され、撚り合わされるか又は共に編まれ、しばしばいくつかのレベルを含むいくつかの入念に規定されたパターンのうちの1つに従う。
【0021】
これらの巻き付けパターンの結果は、各ストランドが導体の外側にある全長の割合を等しくすることである。これは、電流をワイヤストランドの間で等しく分配し、抵抗を低減する効果を有する。リッツ線は、低周波数で動作する無線送信機及び受信機、誘導加熱装置、並びにスイッチング電源のための高Q値インダクタにおいて使用され得る。
【0022】
別の実施例では、第1の導体部及び第2の導体部は、両方とも1つのターンで巻き付けられている。
【0023】
更なる例では、導体部のうちのいずれの間の接続も、第2の導体の端部を対応する丸い導体の周りに巻き付けることによって得られる。
【0024】
本開示の第2の態様では、請求項1~8のいずれか一項に記載の少なくとも1つのコイルを備える変圧器が提供される。
【0025】
本発明を、以下の図面に関してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】本開示によるコイルの巻線概念を概略的に開示する。
【
図4】EMフィールドシェーパーのない基準ジオメトリと、磁束線を有する磁場強度と、HV巻線の上部フランジに対応する磁束線及びオーム損失密度とを開示する。
【
図5】HV巻線の上部及び下部にEMフィールドシェーパーを有する基準ジオメトリと、磁束線を有する磁場強度と、HV巻線の上部フランジに対応する磁束線及びオーム損失密度とを開示する。
【
図6】1)標準箔巻線から成る標準構成、2)箔巻線及び管状遮蔽から成る構成、及び3)リッツ線を備える構成を開示する。
【
図7】EMフィールドシェーパーなしの箔縁部における電場増強と、EMフィールドシェーパーによって遮蔽されたときの箔導体に対応する電場とを開示する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
N個のターンから成る変圧器巻線を検討する。この設計では、N-2個のターンが、標準的な手順に従って、リッツ線と比較してより低い材料コストを可能にする箔導体で製造される。巻線の最初と最後のターンのみが、箔導体から成る巻線の2つの端部に電気的に接続された、丸みを帯びた断面を有する導体で製造される。丸みを帯びた導体は、内側の渦電流を防止するように、リッツ線又は付加製造された格子構造で作製することができる。この概念の略図を
図2に図示する。
【0028】
上記は、丸みを帯びた断面を有する導体を有する巻線の1つよりも多くのターン、例えば、1回、2回、又は3回の巻き付けの場合にも当てはまり得ることに留意されたい。本開示によると、丸みを帯びた断面を有する導体を有する巻線について整数のターンを有する必要がないことに更に留意されたい。
【0029】
2つの後続する巻線セクション間の接続は、箔導体の両端を各リッツ導体の周りに巻き付け、例えばはんだ付けすることによって得られ得る。
【0030】
これらの2つのターンは、磁場の曲率を箔導体から遠くにシフトさせ、それを横切る半径方向磁束を制限し、渦電流及び追加の損失を低減する。磁場に対するEMフィールドシェーパーの効果を確認する数値計算は、EM遮蔽がHV巻線にのみ適用されるときに提示される。いかなるEM遮蔽もない参考事例は
図4に示す。
【0031】
EMフィールドシェーパーの場合を
図5に提示する。この場合、箔導体におけるオーム損失を20%低減することが可能であった。
【0032】
提案された概念を既存の解決策と比較して、より詳細な分析が行われる:
図6-遮蔽1。これは、標準的な箔巻線から成る標準的な構成である
図6-遮蔽2。これは、リッツ線(
図6を参照)を用いた既存の解決策で使用されるような、箔巻線及び管状遮蔽から成る構成である。管の2つの厚さが考えられる:
a.0.25mmであり、管状導体は電流の流れに関与しない
b.0.75mmであり、管状導体は電流の流れに関与する(管状導体は、HV巻線の最初及び最後のターンである)
図6-遮蔽3。円形領域は、リッツ線を表す。
【0033】
オーム損失の分析から得られた結果を以下の表に示す。
【0034】
【0035】
予想されるように、解決策2で使用される管状構造は、高いオーム損失(HVリング損失を参照)を特徴とする。
【0036】
加えて、
図7に示すように、箔導体の縁部上の電場は、丸みを帯びた導体によって遮蔽され、その滑らかな外形は、電荷密度のホットスポットに起因する電場増強を生じさせない。
【0037】
本開示は、とりわけ、
図1及び2に示す概念を対象とする。この概念は、箔導体と、ターン、電場遮蔽及び磁場遮蔽の両方として使用される、例えばリッツ又は付加製造された格子構造などの丸みを帯びた導体との組み合わせである。
【国際調査報告】