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特表2024-501967中空フレッチを有するベンチュリ効果を利用して真空を発生させる装置
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  • 特表-中空フレッチを有するベンチュリ効果を利用して真空を発生させる装置 図1
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  • 特表-中空フレッチを有するベンチュリ効果を利用して真空を発生させる装置 図7A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】中空フレッチを有するベンチュリ効果を利用して真空を発生させる装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20240110BHJP
   F04F 5/20 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F02M35/10 311Z
F02M35/10 101E
F04F5/20 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539029
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 US2021073110
(87)【国際公開番号】W WO2022140799
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/130,456
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512309299
【氏名又は名称】デイコ アイピー ホールディングス,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】DAYCO IP HOLDINGS,LLC
【住所又は居所原語表記】16000 Common Road,Roseville MI 48066 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】キース・ハンプトン
(72)【発明者】
【氏名】コーリー・ヘンダーソン
【テーマコード(参考)】
3H079
【Fターム(参考)】
3H079AA18
3H079AA23
3H079BB01
3H079CC03
3H079DD02
3H079DD22
(57)【要約】
ベンチュリ効果を使用して真空を生成するための装置は、吸引チャンバ、吸引チャンバに向かって収束する動力通路、吸引チャンバから離れて分岐する排出通路、及び吸引チャンバと流体連通している第1のポートを有する吸引通路を規定するハウジングを有している。吸引チャンバ内では、動力通路の動力出口が、排出通路の排出入口から所定の距離だけ離間して配置され、ベンチュリギャップを規定している。動力出口またはその近傍で終端する第1の中空本体部分と、第1のポートの上流で吸引通路と流体連通しているフレッチ入口で終端する第2の中空本体部分とを有するフレッチが、動力通路内に存在している。作動中、動力通路を通る流体の流れは、第1のポートを通って吸引チャンバ内に流体の流れを引き込み、フレッチを通る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングであって、 - 吸引チャンバと、
- 吸引チャンバに向かって収束し、吸引チャンバと流体連通している動力通路と、
- 前記吸引チャンバと流体連通している排出通路と、
を規定しているハウジング、を備えたベンチュリ効果を利用して真空を発生させる装置であって、
前記吸引チャンバ内では、前記動力通路の動力出口が、前記排出通路の排出入口から所定の距離だけ離間して配置され、ベンチュリギャップを形成しており、
前記吸引チャンバと流体連通している第1のポートを有する吸引通路と、
フレッチであって、
- 前記動力通路内の中央に配置され、前記動力出口と同一平面にあるか、または前記動力出口に近接する前記動力通路内で終端するフレッチ出口を規定している第1の中空本体部分と、
- 動力通路の壁を通って延在し、前記第1のポートの上流で前記吸引通路と流体連通しているフレッチ入口で終端する第2の中空本体部分と、
を有するフレッチと、を更に備え、
前記動力通路から前記排出通路への流体の流れは、前記吸引通路の前記第1のポートを通って前記吸引チャンバ内に流体の流れを引き込み、前記フレッチを通って前記吸引通路内に流体の流れを引き込む、装置。
【請求項2】
前記排出通路は、前記吸引チャンバから離れて分岐している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記動力通路及び前記排出通路は共に、双曲線関数または放物線関数として、前記吸引チャンバから離れて断面積が分岐している、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記動力通路及び前記排出通路は、それぞれ、前記吸引チャンバ内にスパウトとして突出している、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記動力通路の前記スパウトの前記外面は、前記動力出口に向かって収束している、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記吸引チャンバが、圧力差のみに基づいて開放位置と閉鎖位置との間で移動可能なシールディスクを収容する逆止弁を規定している、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記開放位置は、前記動力通路及び前記排出通路に近接する位置から前記吸引通路に向かって突出するフィンガによって、または前記吸引チャンバ内で載置可能な外側支持体と、前記吸引チャンバの長手方向中心軸に向かって軸方向に角度を為すリブによって前記外側支持体から半径方向内方に離間された内側環状リングとを備え、前記内側環状リングの上面を前記外側支持体の上面を超えて軸方向の所定距離に位置決めするインサートによって規定されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記動力出口の断面積は、前記排出入口の断面積よりも小さい、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記吸引チャンバに密閉的に嵌合されたキャップを更に備え、前記吸引通路に対向する前記吸引チャンバの底部を規定している、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の中空本体部分の前記外形は、前記分岐部分内の前記動力通路の前記内部プロファイルの形状と適合している、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の中空本体部分が長方形の外形を有し、前記分岐部分内の前記動力通路の前記内部プロファイルが長方形の形状である、装置。
【請求項12】
前記第1の中空本体部分は、円形または楕円形の外形を有し、前記分岐部分内の前記動力通路の前記内部プロファイルは、円形または楕円形の形状とされている、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記フレッチは、前記ハウジングの一部として一体成形されている、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
請求項1に記載のベンチュリ装置と、
前記動力通路に流体的に接続された圧力源と、
前記吸引通路に流体的に接続された真空を必要とする装置と、
前記排出通路に流体的に接続された前記圧力源よりも低い圧力と、
を有し、
前記圧力源は、ターボチャージャまたはスーパーチャージャのコンプレッサからのブースト圧であるか、または大気圧である、
エンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2020年12月24日に出願された米国仮出願第63/130456号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、ベンチュリ効果(Venturi effect)を使用して真空を生成するための装置に関し、より詳細には、動力部(motive section)に中空フレッチ(hollow fletch)を有する装置に関する。中空フレッチは、ベンチュリギャップとの接合部の上流で吸引通路と流体連通し、流量損失を最小限に抑えながら吸引流量を増加させている。
【背景技術】
【0003】
エンジン、例えば、車両エンジンは、小型化され、ブーストされており、これは、エンジンから利用可能な真空を減少させている。この真空には、車両のブレーキブースターによる使用を含む、多くの潜在的な用途がある。
【0004】
この真空不足に対する1つの解決策は、真空ポンプを設置することである。しかし、真空ポンプは、エンジンに対してかなりのコストと重量のペナルティを有し、その電力消費は、追加の交流発電機容量を必要とする可能性があり、その非効率性は、燃費改善作用を妨げる可能性がある。
【0005】
別の解決策は、吸気漏れ(intake leak)と呼ばれる、スロットルに平行なエンジン空気流路を形成することによって真空を発生させる吸引器(aspirator)またはエジェクタ(ejector)である。この漏れ流は、吸引真空を生成する動力部でフレッチを有するベンチュリを通過する。現在のフレッチの問題は、動力出口(motive exit)付近の形状の急激な変化が流れの損失を引き起こすことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0061160号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0323618号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2017/0016414号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2015/0354600号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2016/0245236号明細書
【特許文献6】米国特許第9827963号明細書
【特許文献7】米国特許第10443627号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
流量損失を最小限に抑えながら吸引流量を増加させる、ベンチュリ装置内の改善されたフレッチ設計が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
全ての態様において、ベンチュリ効果を使用して真空を生成するための装置が開示されており、この装置は、ハウジングであって、
- 吸引チャンバ(suction chamber)と、
- 吸引チャンバに向かって収束し、吸引チャンバと流体連通している動力通路(motive passageway)と、
- 吸引チャンバと流体連通している排出通路(discharge passageway)と、
- 吸引チャンバと流体連通している第1のポートを有する吸引通路と、
を規定しているハウジングを具備している。吸引チャンバ内では、動力通路の動力出口が、排出通路の排出入口から所定の距離だけ離間して配置され、ベンチュリギャップを規定している。フレッチは動力通路に設けられている。フレッチは、動力通路内の中央に配置され、動力出口と同一平面(flush)にあるか、または動力出口に近接する動力通路内で終端するフレッチ出口を規定している第1の中空本体部分(hollow body section)を有している。フレッチは、動力通路の壁を通って延在し、第1のポートの上流で吸引通路と流体連通するフレッチ入口で終端する第2の中空本体部分を有している。作動中、動力通路から排出通路への流体の流れは、吸引通路の第1のポートを通って吸引チャンバ内に流体の流れを引き込み、フレッチを通って吸引通路内に流体の流れを引き込んでいる。
【0009】
全ての態様において、排出通路は、吸引チャンバから離れて分岐している(diverge)。一実施形態では、動力通路及び排出通路は共に、双曲線関数または放物線関数として、吸引チャンバから離れて断面積が分岐している。動力通路及び排出通路は、それぞれ、吸引チャンバ内にスパウトとして突出し、動力通路のスパウトの外面は、動力出口に向かって収束する(converge)ことができる。
【0010】
吸引チャンバは、圧力差のみに基づいて開放位置と閉鎖位置との間で移動可能なシールディスクを収容する逆止弁を規定している。開放位置は、動力通路及び排出通路に近接した位置から吸引通路に向かって突出するフィンガによって、または、吸引チャンバ内で載置可能(seatable)な外側支持体と、吸引チャンバの長手方向中心軸に向かって軸方向に角度を為すリブによって外側支持体から半径方向内方に離間された内側環状リングとを備え、内側環状リングの上面を外側支持体の上面を超えて軸方向の所定距離に位置決めするインサートによって規定されている。動力出口の断面積は、排出入口の断面積よりも小さい。
【0011】
一実施形態では、キャップが吸引チャンバに密閉的に嵌合され、吸引通路に対向する吸引チャンバの底部を規定している。
【0012】
全ての実施形態において、フレッチに関して、第1の中空本体部分の外形は、その分岐部分内の動力通路の内部プロファイルの形状と適合している。第1の中空本体部分は、矩形の外形を有し、分岐部分内の動力通路の内部プロファイルは、矩形形状とされている。第1の中空本体部分は、円形または楕円形の外形を有し、分岐部分内の動力通路の内部プロファイルは、円形または楕円形の形状とされている。一実施形態では、フレッチは、ハウジングの一部として一体成形されている。
【0013】
別の態様では、エンジンシステムは、本明細書に記載されたベンチュリ装置と、動力通路に流体的に接続された圧力源と、吸引通路に流体的に接続された真空を必要とする装置と、排出通路に流体的に接続された圧力源よりも低い圧力とを有している。圧力源は、ターボチャージャまたはスーパーチャージャのコンプレッサからのブースト圧であるか、または大気圧である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来技術の吸引器の側部斜視図である。
図2図1の従来技術の吸引器の側部縦断面平面図である。
図3】動力通路内に中空フレッチを有する改良された吸引器の第1の実施形態の側部縦断面図である。
図4】矩形形状の中空フレッチを通る横断面を示さない図3の下部本体の側部縦断面斜視図である。
図5】楕円形の中空フレッチを通る吸引器の下部本体の側部縦断面斜視図である。
図6A】ベンチュリ効果が、発明性のある構成であるが固体フレッチを有する吸引器内に真空流を生成するときの流体の圧力のCFDモデリングを示す。
図6B】ベンチュリ効果が、発明性のある構成であるが固体フレッチを有する吸引器内に真空流を生成するときの流体の速度のCFDモデリングを示す。
図7A】ベンチュリ効果が、中空フレッチを有する本発明の構成の吸引器内に真空流を生成するときの流体の圧力のCFDモデリングを示す。
図7B】ベンチュリ効果が、中空フレッチを有する本発明の構成の吸引器内に真空流を生成するときの流体の速度のCFDモデリングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
特許または出願ファイルは、色彩を付して作成された少なくとも一の図面を含む。彩色図面を付したこの特許または特許出願公開の写しは,請求及び必要な手数料の納付があったときは、省庁によって提供される。
【0016】
以下の詳細な説明は、本発明の一般的な原理を示すものであり、その例は添付の図面に追加的に示されている。図面において、同様の参照番号は、同一または機能的に類似した要素を示す。
【0017】
本明細書中で使用される場合、「流体」は、任意の液体、懸濁液、コロイド、ガス、プラズマ、またはそれらの組み合わせを意味している。
【0018】
図1は、エンジン、例えば車両のエンジンで使用するための、参照番号100で一般に識別される逆止弁組立体を組み込んだベンチュリ装置の外観図である。エンジンは内燃機関であっても良く、車両及び/またはエンジンは、真空を必要とする装置を含んでも良い。逆止弁及び/または吸引器は、エンジンスロットルの前及びエンジンスロットルの後で内燃機関に接続されることが多い。エンジン及びその全ての構成要素及び/またはサブシステムは、本明細書で特定されるエンジンの特定の構成要素を表すために含まれるいくつかのボックスを除いて、図面には示されていない。エンジン構成要素及び/またはサブシステムは、車両エンジンに一般的に見られる任意のものを含み得ることが理解される。図中の実施形態は、動力ポート(motive port)108が大気圧に接続されているように示されているので、「吸引器」と呼ばれるが、実施形態はこれに限定されない。他の実施形態では、動力ポート108は、ブーストされた圧力、例えばターボチャージャまたはスーパーチャージャによって生成されるブーストされた空気に起因する圧力等、に接続することができ、従って、ベンチュリ装置は、好ましくは、「エジェクタ」と呼ばれる。
【0019】
真空を必要とする装置102は、車両用ブレーキブースト装置、燃料蒸気パージシステム、クランクケース強制換気システム、油圧及び/または空気圧バルブ、自動変速装置、空調機、または真空を必要とする任意の他のエンジンシステムまたは構成部品とすることができる。
【0020】
ベンチュリ装置100は、図示されているように、互いに密閉して接続された上部ハウジング104と下部ハウジング106とから形成されたハウジング101を含む。上部及び下部の名称は、説明の目的のために、ページ上で方向付けされた図面に関連しており、エンジンシステムで使用される場合、図示された方向に限定されない。上部ハウジング部分104は、音波溶接、加熱、またはそれらの間に気密シールを形成する他の従来の方法によって、下部ハウジング部分106に接合されることが好ましい。ベンチュリ装置は、第1の逆止弁111及び第2の逆止弁120を含み、補助ポートを閉鎖するキャップ174を有している。
【0021】
図2に代表的に示されるように、ベンチュリ装置100は、吸引ポート110において真空を必要とする装置102に接続可能であり、ベンチュリ効果を生成するように設計されたベンチュリ装置の下部ハウジング106の長さ全体に延在している通路144を通る空気の流れによって、前記装置102に真空を生成している。下部ハウジング部分106は、複数のポートを含み、そのいくつかは、エンジンの構成要素またはサブシステムに接続可能である。下部ハウジング106のポートは、以下を含む:
(1)動力ポート108であって、一実施形態では、典型的にはエンジンのスロットルの上流で得られる、エンジン吸気クリーナ170から清浄な空気を供給する動力ポート;
(2)ベンチュリギャップ160(動力出口184と排出入口186との間の直線距離);
(3)排出ポート112であって、図示された実施形態では、エンジンのスロットルの下流でエンジン吸気マニホールド172に接続された、排出ポート112;及び任意選択で、
(4)バイパスポート114。
逆止弁111は、流体が下部ハウジング106から真空102を必要とする装置に流れるのを防止するように構成されることが好ましい。バイパスポート114は、真空を必要とする装置102に接続することができ、任意に、それらの間の流体流路に逆止弁120を含むことができる。逆止弁120は、流体がバイパスポート114から適用の装置102に流れるのを防止するように構成されることが好ましい。
【0022】
図2に示すように、下部ハウジング106は、第1の逆止弁111及び第2の逆止弁120に対してそれぞれ1つずつの下部弁座124、126を含む。各下部弁座124、126は、連続する外壁128、129と、任意に、下部弁座124の壁130のような底壁とによって規定されている。ボア132、133は、空気通路144との空気の流れの連通を可能にするために、各下部弁座124、126にそれぞれ形成されている。各下部弁座124、126は、その上面から上方に延在している複数の半径方向に間隔を置いたフィンガ134、135を含む。半径方向に間隔を置いて配置されたフィンガ134、135は、圧力差のみに基づいて開放位置と閉鎖位置との間で移動可能なシール部材136、137を支持するのに役立つ。
【0023】
再び図1図2を参照すると、上部ハウジング104は、下部ハウジング部分106と嵌合するように構成され、両方が存在する場合、逆止弁111、120を形成している。上部ハウジング104は、その長さに亘って延在している吸引通路146を規定していると共に、複数のポートを規定しており、これらのポートのいくつかは、エンジンの構成要素またはサブシステムに接続可能である。複数のポートには次のものが含まれる:
(1)キャップ174で覆われるか、或いはエンジンの構成要素またはサブシステムに接続され得る第1のポート148;
(2)下部ハウジング部分106内のボア132と流体連通し、ベンチュリギャップ160と流体連通し、その間にシール部材136が配置される第2のポート150(チャンバ/キャビティ166のための入口ポートの一部);
(3)下部ハウジング部分106内のバイパスポート114と流体連通し、その間にシール部材137が配置される第3のポート152(チャンバ/キャビティ167のための入口ポートの一部);及び
(4)ベンチュリ装置を、真空を必要とする装置102に接続する入口として機能する吸引ポート110。
【0024】
上部ハウジング104は、上部弁座125、127を含む。各上部弁座125、127は、連続する外壁160、161及び底壁162、163によって規定されている。両方の上部弁座125、127は、それぞれ底壁162、163から下部ハウジング106に向かって下方に延在しているピン164、165を含むことができる。ピン164、165は、上部弁座125と下部弁座124との嵌合によって規定され、上部弁座127と下部弁座126との嵌合によって規定されるキャビティ166、167内でシール部材136、137を移動させるためのガイドである。従って、各シール部材136、137は、そのそれぞれのキャビティ166、167内にピン164、165を受け入れるような大きさにされ、その中に位置決めされたボアを含む。
【0025】
下部ハウジング部分106内の通路144は、下部ハウジング106の排出部181内の第2のテーパ部183(本明細書では排出コーンとも呼ばれる)に連結された下部ハウジング106の動力部180内の第1のテーパ部182(本明細書では動力コーンとも呼ばれる)を含む中心縦軸に沿った内部寸法を有している。ここで、第1のテーパ部182と第2のテーパ部183とは、端から端まで(動力部180の出口端部184から排出部181の入口端部186まで)並んでいる。入口端部188、186及び出口端部184、189は、任意の円形形状、楕円形形状、またはいくつかの他の多角形形状とすることができ、そこから延在している徐々に連続してテーパになる内部寸法は、双曲面または円錐を規定することができるが、これらに限定されない。動力部180の出口端部184及び排出部181の入口端部186のためのいくつかの例示的な構成は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている同時係属中の特許文献6に提示されている。
【0026】
図2に見られるように、第1のテーパ部182は、ベンチュリギャップ160と流体連通するボア132との流体接合部で終端し、この接合部で、第2のテーパ部183が開始しており、第1のテーパ部182から離れて延在している。第2のテーパ部183はまた、ベンチュリギャップ160及びボア132と流体連通している。次に、第2のテーパ部183は、第2のテーパ部の出口端部189に近接してバイパスポート114との接合部を形成し、それと流体連通している。第1のテーパ部182及び第2のテーパ部183は、通常、下部ハウジング部分106の長手方向中心軸を共有している。第2のテーパ部183は、より小さい寸法の入口端部186からより大きい寸法の出口端部189まで連続的に徐々にテーパとなっている。任意選択のバイパスポート114は、上述のように排出部190と交差して、第2のテーパ部183と流体連通している。バイパスポート114は、出口端部189に隣接しているが下流にある第2のテーパ部183と交差することができる。下部ハウジング106は、その後、すなわち、バイパスポートのこの交差部の下流で、排出ポート112で終端するまで、円筒状に均一な内部通路を継続することができる。ポート108及び112の各々は、通路144をエンジン内のホースまたは他の機構に接続するためのコネクタ機構をその外面に含むことができる。
【0027】
ベンチュリ装置100がエンジンシステムに接続されると、逆止弁111及び120は次のように機能する。エンジンが作動すると、吸気マニホールド172は、通路144を通って空気を動力ポート180内に吸引し、排出ポート112から排出する。これにより、逆止弁111及び通路146内に部分的な真空が形成され、シール136が複数のフィンガ134、135に対して下方に引き込まれる。フィンガ134、135の間隔により、通路144から通路146への流体の流れが可能になる。エンジンの動作によって生成される部分的な真空は、少なくとも真空を必要とする装置102の動作の真空補助に役立つ。次に、圧力差が変化すると、第1の逆止弁111が閉じ、第2の逆止弁120が開いて、流体の流れがベンチュリギャップ160をバイパスすることを可能にする。
【0028】
次に図3を参照すると、動力通路209内に中空フレッチ220を含むベンチュリ効果を使用して真空を生成するためのベンチュリ装置200が、異なる速度の空気の流れを表す異なる影(varying shades)の球を有する長手方向の断面で示されている。球の色が濃いほど、速度が速くなっている。装置200は、エンジン、例えば、車両のエンジン(内燃機関)に使用されて、上述のように真空を必要とする装置に真空を提供することができる。ベンチュリ装置200は、互いに密閉して連結された上部ハウジング204及び下部ハウジング206を有するハウジング201を含み、通路244と流体連通する吸引チャンバ207を形成し、吸引チャンバは、動力ポート208の動力入口232から排出ポート212の排出出口256まで延在している。装置200は、エンジンまたはエンジンに接続されたコンポーネントに接続可能な少なくとも3つのポートを有している。ポートには次のものが含まれる:
(1)動力ポート208、
(2)図2に示すような真空を必要とする装置に接続可能な吸引ポート210、及び
(3)排出ポート212。
これらのポート208、210、及び212の各々は、吸引ポート210に示されるように、それぞれのポートをエンジン内のホースまたは他の構成要素に接続するために、外面上にコネクタフィーチャ(connector feature)217を含んでも良い。
【0029】
ハウジング201は、吸引チャンバ207を規定している。吸引チャンバは異なる構成を有しても良いが、図示されたものは、キャップ218によって閉じられた、包囲された底部を有する円筒形の壁222を有している。別の実施形態では、吸引チャンバは、横断断面で見たときに、通路244の中心縦軸に対して横断方向に向けられた対向する端部壁を有し、本願出願人が保有している米国特許第10443627号(特許文献7)に開示されているように、略洋梨形であっても良い。
【0030】
更に図3を参照すると、動力ポート208は、吸引チャンバ207に向かって収束し、吸引チャンバ207と流体連通する動力通路209を規定し、排出ポート212は、吸引チャンバ207から離れて分岐し、吸引チャンバと流体連通する排出通路213を規定し、吸引ポート210は、第1のポート250を介して吸引チャンバと流体連通する吸引通路246を規定している。吸引通路246は、通常、一定の寸法の円筒形通路である。これらの収束部分及び分岐部分は、内部通路209及び213の少なくとも一部の長さに沿って徐々に、連続的にテーパしている。動力ポート208は、動力入口232を規定し、吸引チャンバ207に近接したまたは吸引チャンバ内の収束する動力通路209の終端である対向端に動力出口236を有している。同様に、排出ポート212は、吸引チャンバ207に近接して、または吸引チャンバ内に排出入口252を規定し、反対側の端部に排出出口256を規定している。動力出口236は、ベンチュリギャップ160を規定するために、排出入口252と整列され、そこから間隔を置いて配置されている。ここで使用されるベンチュリギャップ160は、動力出口236と排出入口252との間の直線距離Vを意味している。動力出口236及び/または排出入口252は、本願出願人が保有している米国特許第10443627号(特許文献7)に開示されているように、動力通路209の内側に第1のコーナー半径を有しても良い。
【0031】
図3図5を参照すると、動力通路209は、吸引チャンバ207内に突出するスパウト270で終端している。スパウト270は、吸引チャンバ207の全ての1つ以上の側壁222から間隔を置いて配置され、それによって、スパウト270の外面272の全体の周りに吸引流を提供している。外面272は、排出入口252に向かって収束し、徐々に連続的にテーパ状になっている。同様に、排出通路213は、スパウト270の反対側の吸引チャンバ内に突出するスパウト274で終端している。スパウト274は、吸引チャンバ207の全ての1つ以上の側壁222から間隔を置いて配置され、それによって、スパウト274の外面の全体の周りに吸引流を提供している。
【0032】
図3に示すように、動力通路209及び排出通路213は、互いに平行である動力出口236での流線を規定する双曲線または放物線関数として、吸引チャンバ207に向かって断面積が共に収束している。すなわち、両方の関数の勾配は、ベンチュリギャップでゼロである。動力入口232及び排出出口256は、同じ形状であっても異なっていても良く、一般に矩形、楕円形、または円形とすることができる。図3では、動力入口232及び排出出口256は円形として示されているが、動力出口236及び排出入口252、すなわち、各開口部の内部形状は楕円形である。動力通路209及び/または排出通路213の内部は、同じ全体形状を有するように構成することができる。
【0033】
図3に最も良く示されているように、動力出口236の断面積は、排出入口252の断面積よりも小さく、この差は、オフセットと呼ばれる。断面積のオフセットは、装置100が組み込まれるシステムのパラメータに依存して変化し得る。一実施形態では、オフセットは、約0.1mmから約2.5mmの範囲、またはより好ましくは約0.3mmから約1.5mmの範囲であって良い。別の実施形態では、オフセットは、約0.5mmから約1.2mmの範囲内、またはより好ましくは約0.7mmから約1.0mmの範囲内とすることができる。
【0034】
フレッチ220は、この位置での流れが吸引を提供しないので、動力通路の中心で動力通路209内の動力流(motive flow)を遮断するのに役立つ。この流れはベンチュリギャップを通って排出通路に入るときに吸引を生じるので、動力通路を形成する内壁に沿って全ての流れを集中させることがより効果的である。フレッチ220は、吸引通路246とベンチュリギャップ160との間の流体連通のための二次経路を提供する連続チューブまたは導管である。フレッチ220は、図3及び図5に示すように、動力通路209内の中央に配置され、動力出口236において(それと同一平面にある)、または図4に示すように、動力通路209内で動力出口236から1~5mm内側に離れたフレッチ出口282を規定する第1の中空本体部分280を有し、これは、本明細書では、陥凹深さ(recess depth)Dと呼ばれる。フレッチ220は、動力ポート208または動力通路209の壁290を貫通して延在し、第1のポート250の上流で吸引通路246と流体連通するフレッチ入口286で終端する第2の中空本体部分284を有している。第2の中空本体部284は、図に示すように、第1の中空本体部280に対して垂直であっても良いが、これに限定されない。エルボ288は、第1及び第2の中空本体部分280、284を互いに連結するために存在しても良い。
【0035】
図4及び図5に示すように、動力出口236及び排出入口252は、共有の米国特許第9827963号(特許文献6)に説明されているように、非円形である。なぜなら、円形の断面を有する通路と同じ面積を有する非円形形状は、面積に対する周囲の比率の増加を提供するからである。所定の円周と所定の断面積を持つ円形以外の形状は無数にある。これには、ポリゴン、または互いに接続された直線セグメント、非円形曲線、更にはフラクタル曲線(fractal curve)も含まれる。コストを最小限に抑えるために、曲線はより単純で、製造及び検査が容易であり、望ましい周囲長を有している。特に、動力通路及び排出通路の内部断面のための楕円形または多角形の実施形態は、費用効果が高い。
【0036】
図4の実施形態では、動力出口236及び動力通路209は、矩形形状(矩形の1つのタイプとして正方形が含まれる)、特に、内部矩形プロファイルを有している。同様に、フレッチ220は、動力通路209の外径と適合するが、動力通路の中央の流れ領域を満たすためにより小さい寸法の、内形及び外形矩形形状を有している。従って、フレッチ220の第1の中空本体部分280は、その分岐部分内の動力通路の内部プロファイルの形状に適合する矩形形状を有している。フレッチ出口282は、動力出口236から離れて動力通路内に引っ込んでいる。凹部Dの深さは、1mm~5mmである。ここでも、排出入口252を形成するスパウト274は、その内部及び外部プロファイルのために長方形の形状を有している。
【0037】
図5の実施形態では、動力出口236及び動力通路209は、楕円形状(楕円の1つのタイプとして円が含まれる)、特に内部楕円プロファイルを有している。同様に、フレッチ220は、動力通路209の外径と適合するが、動力通路の中央の流れ領域を満たすためにより小さい寸法の、内形及び外形楕円形状を有している。従って、フレッチ220の第1の中空本体部分280は、その分岐部分内の動力通路の内部プロファイルの形状に適合する楕円形状を有している。ここで、フレッチ出口282は、動力出口236と同一平面にある。ここでも、排出入口252を形成する注ぎ口274は、その内部プロファイル及び外部プロファイルに対して楕円形状を有している。
【0038】
再び図3を参照すると、吸引チャンバ207は、ベンチュリ装置が流体連通状態にあるシステム内の圧力差のみに基づいて開放位置と閉鎖位置との間で移動可能なシールディスク611を収容する逆止弁を規定している。開放位置は、図2に関して上述したように、動力通路及び排出通路に近接した位置から吸引通路に向かって突出するフィンガによって、またはシールディスク611のための第1のシートを形成する図3に示す逆止弁インサート505によって規定することができる。逆止弁インサート505は、吸引チャンバ207内で載置可能な外側支持体570と、上面571と、下面572と、内側環状リング574とを有し、内側環状リングは、内側環状リング574の上面575を外側支持体の上面571を超えて軸方向Dの距離だけ軸方向に位置決めするために、長手方向中心軸Cに向かって軸方向に角度を為すリブ576によって外側支持体570から半径方向内方に離間されている。逆止弁インサート505は、2019年4月23日に出願された本願出願人が保有している米国特許出願公開第2019/0323618号(特許文献2)に示されているように、内側環状リング574を外側支持体570に接続する2つのリブ、3つのリブ、4つのリブ、または10個のリブとすることができる。これらは単なる例示的な実施形態であり、単一のリブを含む任意の数のリブとすることができる。
【0039】
外側支持体570は、円形の環状リングであっても良いが、外側支持体は、楕円形であっても良いし、多角形リングであっても良いし、吸引チャンバ内の所望の位置で載置可能であるために必要な他の任意の形状であっても良い。内側環状リング574は、典型的には、形状が円形または楕円形である。一実施形態では、上面575は、長手方向中心軸Cに垂直な一平面内の連続面である。別の実施形態では、上面575は、2つの対向するトラフ579と共に起伏している。更に別の実施形態では、上面575は、内側環状リング574に沿って20°から170°まで延在している小さな円弧に亘って、外側支持体570に向かって下方及び半径方向外側に傾斜し、それによって、上面の傾斜面部分を規定している。
【0040】
動作時には、装置200、特に吸引ポート210は、真空を必要とする装置に接続され(図2参照)、装置200は、流体、典型的には空気の流れによって、通路244を通り、装置の全長に亘って延在し、吸引チャンバ207内に形成されたベンチュリギャップ160を通って、前記装置に真空を生成している。動力ポート208から排出ポート212への流体の流れは、流体を、上記のように、直線円錐、双曲線プロファイル、または放物線プロファイルとすることができる動力通路を下って引き込み、面積の減少によって、空気の速度を増加する。これは囲まれた空間であるため、流体力学の法則では、流体速度が増加すると静圧が減少する必要があることが理解される。空気が排出ポートに移動し続けると、空気は排出入口252及び排出通路213を通って移動する。排出通路は、直線円錐、双曲線プロファイル、または放物線プロファイルのいずれかである。この流体の流れは、吸引に付加的な効果を与えるために、吸引ポート210を通って、吸引通路246に沿って、第1のポート250及び第1のポート250の上流にあるフレッチ入口286を通って吸引チャンバ207内に吸引引き込み流体(suction drawing fluid)を生成している。
【0041】
カラー計算流体力学モデルは、図6A図7Bに提供されている。図6A及び図6Bは、中空フレッチを有する本明細書に開示されたベンチュリ装置と比較するための、中実(非中空)フレッチを有するベンチュリ装置である。図7A及び図7Bは、内部の第1のポートの上流で吸引通路と流体連通する中空フレッチを有するベンチュリ装置である。図6A及び図7Aは、ベンチュリ装置内に存在するパスカル単位の圧力の計算流体力学モデルである。フレッチの第1の中空本体部分全体及びベンチュリギャップと比較して、両方の実施形態の動力入口に存在する最高圧力(赤色の121219.79Pa)から、図6Aのベンチュリギャップに存在する最低圧力(紺色の88099.38Pa)までとなっている。図6B及び図7Bは、ベンチュリ装置内に存在するm/s単位の速度の計算流体力学モデルである。図6Bに見られるように、固体フレッチ内または吸引通路の第1のポートの上流には速度が無い。全く対照的に、第1のポートの上流及び図7Bの中空フレッチ内の流体の流れにはかなりの速度がある。中空フレッチは、自身を通る流体の流れを増加させるだけでなく、その存在は、第1のポートにおける速度の増加をもたらす。これらのモデルによって、中実フレッチvs中空フレッチ以外の同等の構造のベンチュリ装置は、異なる吸引流量を有することが示された。中空フレッチの存在により、吸引流量は4.7g/sから5.5g/sへと0.8g/s増加し、流量で17%の改善が得られた。
【0042】
本明細書に開示された装置は、温度、湿度、圧力、振動、汚れ及び破片を含むエンジン及び道路条件に耐えることができる、車両エンジンで使用するためのプラスチック材料または他の適切な材料で作ることができ、射出成形または他の鋳造または成形プロセスによって作ることができる。
【0043】
本発明は、特定の実施形態に関して示され、説明されているが、本明細書を読んで理解すれば、当業者には変更が生じることは明らかであり、本発明は、そのような全ての変更を含むものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
【国際調査報告】