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特表2024-501979原子炉の炉心からの溶融物を封じ込めて冷却するシステム
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  • 特表-原子炉の炉心からの溶融物を封じ込めて冷却するシステム 図1
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  • 特表-原子炉の炉心からの溶融物を封じ込めて冷却するシステム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】原子炉の炉心からの溶融物を封じ込めて冷却するシステム
(51)【国際特許分類】
   G21C 9/016 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
G21C9/016
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539290
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 RU2021000576
(87)【国際公開番号】W WO2022146185
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】2020143779
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516233088
【氏名又は名称】ジョイント ストック カンパニー アトムエネルゴプロエクト
【氏名又は名称原語表記】JOINT STOCK COMPANY ATOMENERGOPROEKT
【住所又は居所原語表記】ul. Bakuninskaya,7,str.1 Moscow,105005 Russia
(71)【出願人】
【識別番号】520514768
【氏名又は名称】サイエンス アンド イノヴェーションズ - ニュークリア インダストリー サイエンティフィック デベロップメント,プライベート エンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】シドロフ, アレクサンドル・スタレヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】シドロヴァ, ナデジダ・ヴァシリエヴナ
(72)【発明者】
【氏名】チカン, クリスティン・アレクサンドロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】バデシュコ, クセニヤ・コンスタンティノフナ
【テーマコード(参考)】
2G002
【Fターム(参考)】
2G002AA10
2G002BA07
(57)【要約】
本発明は、原子力工学の分野に関し、より詳細には、原子力発電所の安全性を提供し、原子炉の圧力容器及び密閉された格納構造物の破壊につながる事故の場合に使用することができるシステムに関する。原子炉の炉心からの溶融物を封じ込めて冷却するためのシステムは、ガイド装置と、カンチレバートラスと、溶融物を受け取り分配するための充填材とを備える。前記充填材は、ケーシング内に配置され、ケーシングは、当該ケーシングの周囲に取り付けられた給水バルブを有し、ケーシングの上に取り付けられ、熱保護材を備えるフランジを有する。ケーシングのフランジの上にドラムが取り付けられ、ドラムは、内周面に取り付けられた補強リブを有するシェルの形態で構成される。補強リブは、カバー部材及び底部材を支持する。前記ドラムは、当該ドラムに溶接された支持フランジを介してドラムをケーシングのフランジに接続する張力部材と、ドラムとケーシングのフランジとの間に調整ギャップを付与するスペーサとを有する。原子炉の炉心からの溶融物を封じ込めて冷却するシステムの信頼性を高めるために、ドラム内には、熱反射材と冷却フィンを備えるノズルが設けられ、ノズルは、その内部に取り付けられた給水バルブを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉の炉心からの溶融物を封じ込めて冷却するシステムであって、
ガイド装置と、
トラスコンソールと、
ケーシングの周囲に沿って取り付けられた給水バルブを備えた当該ケーシングの内部に配され、溶融物を受け入れて分配するための充填材と、
前記ケーシングのフランジに取り付けられた熱保護材と、を備え、
さらに、前記ケーシングのフランジに取り付けられたドラムを備え、
前記ドラムは、
内周面に沿って取り付けられた補強リブを備えたシェルの形態で構成され、補強リブがカバー部材及び底部材に接触して載置され、
当該ドラムに溶接された支持フランジを介して当該ドラムを前記フランジと接続する張力部材と、当該ドラムとケーシングのフランジとの間に調整ギャップを付与するスペーサとを、備え、
ドラム内に熱反射材と冷却フィンを備えたノズルが設けられ、ノズルは、給水バルブを有する
ことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力エネルギーの分野に関し、特に、原子力発電所(NPP)の安全性を確保するシステムに関し、原子炉圧力容器及びその格納容器の破壊につながる重大事故の場合に使用可能である。
【背景技術】
【0002】
炉心冷却システムにおいて複数の故障が起きた場合に発生する可能性がある炉心の溶融を伴う事故は、最も大きい放射線災害を引き起こす。
【0003】
このような事故が発生している間、炉心溶融物であるコリウムが原子炉構造物や原子炉圧力容器を溶かし、その境界を越えて流出し、その中に保持されている残留熱の結果として、放射性物質が環境へ放出される経路上の最後の障壁である、原子力発電所の格納容器の完全性を損なう可能性がある。
【0004】
このような事態の発生を防ぐために、原子炉圧力容器から流出する炉心溶融物(コリウム)を封じ込めて、その結晶化が完了するまで、継続的に冷却する必要がある。この機能は、原子炉の炉心からの溶融物を封じ込めて冷却し、原子力発電所の格納容器への損傷を防ぐシステムによって実行され、それによって、原子炉の重大事故が発生した場合に、公衆及び環境を放射線被ばくから守る。
【0005】
溶融物を冷却するための多層容器内へ水を適時に確実に供給することは、溶融物を受け入れて分配するための多層容器の上部に給水バルブを設置することによって実現され、これは、どのような重大事故が発生した場合であっても、溶融物を確実に冷却し封じ込めるプロセスを確実に行うために最も重要な要素の一つである。この場合において、重要な点は、ある(特定の)条件に達した特定の時点で、設置されたバルブを介した給水を実行する必要があるということである。特に、時期尚早な給水は水蒸気爆発を引き起こす可能性があり、給水が不可能であると、溶融物表面からの放射熱流束の作用により、圧力容器内の設備が過熱する可能性があり、それは、最終的に、圧力容器内部への設備の崩壊、原子炉シャフトから溶融物への水の侵入、水と溶融物との混合などを引き起こす可能性があり、その結果、水蒸気爆発が起こり、溶融物を封じ込めて冷却するシステム及び格納容器が破壊され、放射性物質が環境中に放出される。
【0006】
原子炉の炉心からの溶融物を封じ込めて冷却するシステムが知られている(特許文献1~3)。このシステムは、原子炉圧力容器の下に設置され、カンチレバートラスの上に載置されるガイドプレート、コンクリートの地下格納室(vault)の基礎に埋設された部材上に設置され、熱保護材を備えたフランジを備えた多層容器、互いに重ねて取り付けられた一組のカセットからなる充填材及び多層容器内部において充填材とガイドプレートの間に設置されたサービスプラットフォームからなる。
【0007】
以下に示す欠点を原因として、このシステムの信頼性は低い。
【0008】
-溶融物によって原子炉圧力容器がメルトスルー(melt-through)(破壊)した場合、過熱した溶融物が原子炉圧力容器内に存在する残留圧力の影響で、メルトスルーによって形成された穴に流れ込み始め、溶融物が多層容器のボリューム内で非軸対称に分配され、多層容器とカンチレバートラスとの間の密閉接続ゾーン、多層容器のフランジの熱保護材、多層容器内に配置された給水バルブ等、周囲の構造物に動的影響を与え、それらの破壊を引き起こし、また、多層容器のフランジ及び溶融物に晒されたカンチレバートラスの内面の破壊を引き起こし、最終的に、それらの構成要素の破壊によって、溶融物を封じ込めて冷却するシステムの機能不全という結果となる。
【0009】
-大量(例えば、10~15m3 )の過熱溶融物のジェット流が、多層容器体内の充填材上に流れ込む場合、充填材の側面からの反射効果の結果として、そのような溶融物の一部が、逆方向に、つまり、周囲の構造物の方向へ、特に、多層容器とカンチレバートラスの間の密閉接続ゾーンの方向へ、多層容器のフランジの熱保護材の方向へ、及び多層容器の方向へ、特に、給水バルブの設置領域の方向へ移動するため、それらの損傷及び破壊(溶融)につながることがある結果、溶融物を冷却するための多層容器内への水の供給が妨害され、溶融物を封じ込めて冷却するシステムが破壊され、放射性物質が環境中に放出される可能性がある。
【0010】
-溶融物が多層容器内の充填材の内部に流出する場合、充填材の溶融により溶融物の体積が増加し、また、多層容器内のそのレベルが上昇する。この場合、炉心及び原子炉圧力容器の底部の破片の落下により、溶融物の飛沫(波)が発生し、周辺設備や多層容器に設置された給水バルブに動的影響を及ぼすことにより、これはそれらの破壊(溶融)につながり、その結果、溶融物を冷却するための多層容器内への水の供給が妨害され、その結果、溶融物を封じ込めて冷却するシステムが破壊され、放射性物質が外部環境に放出される可能性がある。
【0011】
-原子炉圧力容器からの溶融物の流出、及び、溶融物と充填材との相互作用の過程において、エアロゾルが形成され、エアロゾルは、高温ゾーンから上向きに移動し、低温ゾーンの周辺設備及び給水バルブの表面に凝結する。本来、溶融物表面からの熱放射の影響により、周辺設備及び給水バルブが起動されるところ、この凝結したエアロゾルにより周辺設備及び給水バルブが遮蔽され、周辺設備及び給水バルブの起動が阻止される。その結果、溶融物を冷却するための多層容器内への水の供給が妨害されることとなり、結果として、溶融物を封じ込めて冷却するシステムが破壊され、放射性物質が外部環境に放出される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】ロシア連邦特許第2576517号明細書
【特許文献2】ロシア連邦特許第2576516号明細書
【特許文献3】ロシア連邦特許第2575878号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の技術的成果は、原子炉の炉心からの溶融物を封じ込めて冷却するシステムの信頼性を高めることである。
【0014】
本発明によって解決されるべき課題は、周辺の構造物、ケーシングのフランジに取り付けられた設備のいかなる破壊をも防ぎ、また、ケーシング内部に取り付けられた給水バルブが故障した場合でも、溶融物上に向けて冷却水を確実に供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は、以下に示す事実によって、解決される。つまり、本発明によると、原子炉の炉心からの溶融物を封じ込めて冷却するシステムは、ガイド装置、カンチレバートラス、ケーシングの周囲に沿って取り付けられた給水バルブを備えた当該ケーシングの内部に配され、溶融物を受け入れて分配するための充填材、及び、熱保護材が取り付けられたフランジを含み、さらに、ケーシングのフランジに取り付けられたドラムを含み、このドラムは、その内周面に沿って取り付けられた補強リブを備えたシェルの形態で構成され、補強リブは、カバー部材及び底部材に接触して載置され、ドラムに溶接された支持フランジを介してドラムをケーシングのフランジと接続する張力部材及びドラムとケーシングのフランジの間に調整ギャップを付与するスペーサを有し、この場合、ドラムは、熱反射材と冷却フィンを備えたノズルを有し、ノズルには、給水バルブが取り付けられている。
【0016】
原子炉の炉心からの溶融物を封じ込めて冷却するシステム内に、ドラムが存在し、このドラムは、ケーシングのフランジに取り付けられ、内周面に沿って取り付けられた補強リブを備えたシェルの形態で構成され、補強リブは、カバー部材と底部材に接触して載置され、ドラムに溶接された支持フランジを介してドラムをケーシングのフランジと接続する張力部材、ドラムとケーシングのフランジの間に調整ギャップを付与するスペーサ、及び、熱反射材とフィンを備えたノズルを有し、ノズルに給水バルブが配置される。ドラムの存在は、本発明の重要な特徴の1つである。ドラムの内部に取り付けられた給水バルブを備えた当該ドラムは、ケーシングの周囲に沿って設置された給水バルブが故障した場合、ケーシングの内側の空間と外側の空間との間で、水蒸気とガスの混合物、水蒸気と水の混合物又は水の再循環を確実にし、これにより、ケーシングの内側及び溶融物表面の上方の両方にある原子炉シャフトと内部空間との間で、冷却媒体の再循環によって、溶融物表面及び溶融物表面の上に配置された設備(カンチレバートラス及びガイド装置)を冷却するために、水蒸気及びガス、水蒸気及び水又は水を供給することを可能とする。
【0017】
ドラムシェルの内側に設けられた補強リブは、衝撃波の分散及び反射並びにケーシングの給水バルブ上のそれらの衝撃の減衰によって、飛来物体の衝撃から、また、衝撃波の方位角伝搬から、ドラムの給水バルブを、保護する。
【0018】
熱反射材及び冷却フィンもまた、溶融物表面からの熱放射による設計外の影響から、また、上記の給水バルブの動作を妨害する可能性のある飛来物体の衝撃からも、ドラムの給水バルブを保護する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明に係る、原子炉の炉心からの溶融物を封じ込めて冷却するシステムを示す。
図2図2は、ケーシングのフランジに取り付けられたドラムを示す。
図3図3は、ケーシングのフランジに取り付けられたドラムの一部を示す。
図4図4は、ドラムに設置された給水バルブを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1図4に示すように、原子炉の炉心からの溶融物を封じ込めて冷却するシステムは、原子炉圧力容器(2)の下に設置され、カンチレバートラス(トラスコンソール)(3)の上に載置されているガイド装置(1)を備えている。原子炉シャフトの基部に埋め込まれた部材に取り付けられたケーシング(多層容器)(4)は、カンチレバートラス(3)の下に設けられている。充填材(7)を備えたケーシング(4)は、溶融物を受け入れ、分配するように設計されている。熱保護材(6)を備えたフランジ(5)が、ケーシング(4)の上部に配されている。充填材(7)は、ケーシング(4)の内部に取り付けられている。ケーシング(4)の周囲に沿って、充填材(7)とフランジ(5)との間の領域には、給水バルブ(8)が備えられている。ケーシング(4)のフランジ(5)には、ドラム(12)が取り付けられている。
【0021】
図2図4に示すように、熱反射材(11)と冷却フィン(21)を備えたノズル(10)がドラム(12)内に設置され、給水バルブ(9)がノズル(10)に取り付けられており、ケーシング(4)の内側の空間と外側の空間との間で、水蒸気とガスの混合物、水蒸気と水の混合物、又は、水の再循環が提供される。
【0022】
本発明の原子炉の炉心からの溶融物を封じ込めて冷却するシステムは、次のように動作する。
【0023】
原子炉圧力容器(2)が破壊されると、静水圧と残留圧力の影響により、カンチレバートラス(3)により支持されたガイド装置(1)の表面上に、溶融物が流れ始める。ガイド装置(1)を流れ落ちる溶融物は、ケーシング(4)に入り、充填材(7)と接触する。溶融物が部分的に非軸対称に流れる場合、カンチレバートラス(3)の熱保護材及びケーシング(4)のフランジ(5)の熱保護材(6)の部分溶融が起こる。これらの破壊の過程において、これらの熱保護材は、一方では、保護された設備において溶融物の熱的影響を軽減し、他方では、溶融物自体の温度と化学的活性を低下させる。
【0024】
ケーシング(4)のフランジ(5)の熱保護材(6)は、溶融物が充填材(7)に流入する時点から、溶融物と充填材(7)との相互作用が終了するまで、つまり、溶融物表面に位置するクラストに対する水による冷却が開始される時点まで、溶融物表面の一部による熱の影響から、ケーシング(4)の上部の肉厚の内部区画を保護する。ケーシング(4)のフランジ(5)の熱保護材(6)は、充填材(7)との相互作用の過程で、ケーシング(4)内に形成される溶融物のレベルより上の位置に、つまり、ケーシング(4)の上部区画であって、ケーシング(4)の円筒部分に比べて厚みが大きくなっている位置に、ケーシング(4)の内部表面を保護するように、取り付けられる。ケーシング(4)は、溶融物から、ケーシング(4)の外側における水に対する通常の熱移動(プール沸騰モードでの危機的な熱流束を伴うことなく)を提供する。
【0025】
溶融物と充填材(7)と間の相互作用の過程で、ケーシング(4)のフランジ(5)の熱保護材(6)が加熱され、部分的に破壊され、こうして、溶融物表面からの熱放射を遮断する。ケーシング(4)のフランジ(5)の熱保護材(6)の幾何学的、熱的、物理的特性は、どのような条件下でも、溶融物表面の側から、ケーシング(4)のフランジ(5)を遮蔽するように、選択されるので、それによって、溶融物と充填材(7)との間の、物理的、化学的相互作用のプロセスが完了するときからの保護機能の独立性が確保される。ケーシング(4)のフランジ(5)の熱保護材(6)の存在は、溶融物表面のクラスト上への給水の開始に先立って、保護機能の性能を確保する。
【0026】
ケーシング(4)の給水バルブ(8)の保護は、受動的に行われる。つまり、ケーシング(4)のフランジ(5)の熱保護材(6)は、原子炉圧力容器(2)の底部が破壊された場合に、飛来物体から保護を行い、流れる溶融物による損傷から保護を行い、溶融物表面の上方にある熱保護材の破片の落下から保護を行う。
【0027】
溶融物の金属及び酸化物の成分が、ケーシング(4)内に配置された充填材(7)へ流れ込むことにより、充填材(7)が徐々に溶融し、ケーシング(4)内に自由溶融物表面が形成される。溶融物の金属及び酸化物の成分と充填材(7)との間の物理的、化学的反応が完了する過程において、溶融物表面の温度が上昇し始める。これは、物理的、化学的反応の間で溶融物内に放出される残留エネルギーの再分配、ケーシング(4)を通した熱伝達、設備上への熱放射、そして溶融物表面からのガス混合物の対流加熱によって発生する。
【0028】
溶融物表面からの、ケーシング(4)の給水バルブ(8)及びドラム(12)の給水バルブ(9)に対する熱放射の影響は、均一ではない。つまり、ケーシング(4)の給水バルブ(8)に対する熱放射の影響は、ドラム(12)の給水バルブ(9)に対するよりも遥かに強い。これは、溶融物表面の位置に関連して、上記の給水バルブ(8)と給水バルブ(9)の高さの位置が異なるためである。その結果、ケーシング(4)の給水バルブ(8)は、ドラム(12)の給水バルブ(9)よりも早く加熱され、遥かに早く開くように、作動する。
【0029】
ケーシング(4)の給水バルブ(8)が開かない場合が発生する可能性がある。例えば、原子炉圧力容器(2)の底部の1つ又はいくつかの破片が溶融物槽に落下し、溶融物の波(スプラッシュ(飛沫))を形成し、上記給水バルブ(8)を溶着させ、複数の給水バルブのうちの、最初の1つ又は2つが作動するまで、溶融物表面からの熱放射がドラム(12)の給水バルブ(9)を加熱し続ける。
【0030】
図1~4に示すように、ドラム(12)は、ケーシング(4)のフランジ(5)に取り付けられている。設計の観点から、ドラム(12)は、その内周面に沿って取り付けられた補強リブ(14)を備えたシェル(13)の形態で構成され、補強リブ(14)は、カバー部材(15)と底部材(16)に接触して載置されている。ドラム(12)は、当該ドラム(12)に溶接された支持フランジ(18)を介して、ドラム(12)をケーシング(4)のフランジ(5)に接続する張力部材(17)を有する。ドラム(12)内に、ドラム(12)とケーシング(4)のフランジ(5)との間に調整ギャップ(19)を付与するスペーサ(20)が設けられている。ドラム(12)には、複数のノズル(10)が設置されている。各ノズル(10)には、熱反射材(11)と冷却フィン(21)が設けられている。ケーシング(4)の内側の空間と外側の空間の間で、水蒸気とガスの混合物、水蒸気と水の混合物、又は、水の再循環を提供する複数の給水バルブ(9)が、ドラム(12)の複数のノズル(10)内に、配置されている。
【0031】
シェル(13)の内側に取り付けられたドラム(12)の補強リブ(14)は、衝撃波の分散と反射によって、飛来物体の衝撃から、また、衝撃波の方位角伝播から、給水バルブ(9)を保護する。
【0032】
熱反射材(11)及び冷却フィン(21)は、溶融物表面からの熱放射の設計外の影響から、また、上記給水バルブ(9)の動作を妨害する可能性のある飛来物体の衝撃から、ドラム(12)の給水バルブ(9)を保護する。
【0033】
調整ギャップ(19)は、ケーシング(4)のフランジ(5)に対するドラム(12)の正確な取り付けを確実にすることを可能とする。
【0034】
充填材(7)内で溶融物を封じ込める過程において、原子炉の炉心からの溶融物を封じ込めて冷却するシステムの設備の一部の構成要素の完全性が妨害される可能性がある。
【0035】
-カンチレバートラス(3)の熱保護材は、非軸対称の溶融物の流入の結果、部分的に損傷(破壊又は溶融)する可能性がある。
【0036】
-ケーシング(4)のフランジ(5)の熱保護材(6)は、その下方の区画において、溶融物の飛沫によって局所的に破壊される可能性があり、その上方の区画は、非軸対称の溶融物の流入の結果、部分的に破壊される可能性がある。
【0037】
これらの破壊は、溶融物の封じ込めの初期段階、及び、長期に渡る封じ込めの段階の両方で発生する可能性がある。このような破壊の場合に、溶融物表面からの放射熱流束及び対流熱流束が、ガイド装置(1)、カンチレバートラス(3)、ドラム(12)など、ケーシング(4)の上方に配されている設備に対して重大な影響を及ぼし始める。これらの条件下では、カンチレバートラス(3)とケーシング(4)との間に配されているドラム(12)に対する加熱強度は、溶融物表面からの熱放射の強さと、ケーシング(4)の給水バルブ(8)の状態に大きく依存する。原子炉圧力容器(2)の底部の破片がケーシング(4)内にある溶融物に落下して、液状の溶融物の噴出(スプラッシュ)又はその波状の上昇が発生する場合、ケーシング(4)の給水バルブ(8)は、液状の溶融物により溶着され、その流路が完全に遮断される可能性がある。このような状況下では、溶融物表面に冷却水を供給するケーシング(4)の給水バルブ(8)に全面的な故障が発生する可能性がある。ケーシング(4)のフランジ(5)の熱保護材(6)、カンチレバートラス(3)の熱保護材及びドラム(12)の加熱は、継続する。
【0038】
ドラム(12)の加熱は、前もって設定された温度に達すると、開くように作動する給水バルブ(9)の加熱を伴う。ドラム(12)の給水バルブ(9)を開くための作動は、溶融物表面の位置より上方、つまり、充填材(7)の位置より上方の、ケーシング(4)の外側及び内側に位置する媒体の間で、接続を供給する。ドラム(12)の給水バルブ(9)が開くと、ケーシング(4)の外側にある水蒸気と水の混合物がケーシング(4)の内部の空間に、溶解した充填材(7)の要素によって形成されたスラグキャップの上に、上から流れ込み始める。水蒸気と水が、溶融物表面を冷却するプロセスが始まる。
【0039】
溶融物表面からの熱放射により影響を受けるノズル(10)の熱変形の結果として、ドラム(12)の給水バルブ(9)が大幅な変形を受けることを避けるために、放射熱流束の直接的な影響を制限する必要がある。この目的のために、ドラム(12)内のノズル(10)は、放射熱流束に対して、熱反射材(11)で覆われている。ドラム(12)の外側では、冷却フィン(21)がノズル(10)に溶接されており、冷却フィン(21)は、ノズル(10)からの熱の除去を強化するために備えられている。
【0040】
ケーシング(4)の外側面の冷却水の水位が、ケーシング(4)の給水バルブ(8)の取り付け位置よりわずかに低くなる状況において、給水バルブ(8)が開くように作動したとき、ケーシング(4)への冷却水の流体静力学的な供給が不可能になる。水蒸気の生成によって引き起こされる、高さが0.5~1.5メートルの「水蒸気及び水のこぶ」が、ケーシング(4)の外壁に沿って形成されるという事実を考慮すると、プール沸騰モードでケーシング(4)から集中的に熱を除去している間、溶融物表面を冷却するために、この水蒸気と水の混合物のケーシング(4)への供給が確実となるようにする必要がある。しかし、流体静力学的な持ち上げ(lift)が存在しない場合、上述したケーシング(4)の内部と外部の圧力差が小さいため、水蒸気と水の混合物は、ケーシング(4)の開いた給水バルブ(8)を通って入りこまない。この小さな圧力差は、ケーシング(4)の外側面の飽和蒸気圧に対する関係において、ケーシング(4)の内部のより高い温度のために引き起こされる。これらの圧力を均等化するには、ケーシング(4)の外側と内側で、水蒸気及びガスの媒体を確実に再循環させる必要がある。この目的のために、ケーシング(4)の給水バルブ(8)の上方に配された給水バルブ(9)は、ドラム(12)に取り付けられ、水が沸騰する過程でケーシング(4)の外面に形成される「水蒸気及び水のこぶ」が、ドラム(12)のバルブ(9)の流路を閉じることなく、ケーシング(4)の外側と内側の両方の間で、水蒸気及びガス媒体の圧力の均一化を妨げない。
【0041】
ケーシング(4)の給水バルブ(8)を作動させた後、水位は、上述の給水バルブ(8)の位置よりも若干低いため、溶融物表面の冷却は、開始されない。さらに、溶融物表面の上方に配置された、ドラム(12)の給水のバルブ(9)を含む、設備に対する加熱は、放射熱流束によって生じる。作動温度に達すると、ドラム(12)の給水バルブ(9)が開き、ケーシング(4)の内側と外側の圧力が均等になる。次の経路に沿って、水蒸気及びガスの混合物を循環させる垂直方向の水蒸気及びガスの流れが発生する:水蒸気と水の混合物は、給水バルブ(8)を通しケーシング(4)内にある溶融物表面の上方の空間に入る。そこで、水蒸気と水の混合物が激しく蒸発し、上向きに移動し、ドラム(12)の開いた給水バルブ(9)を通ってケーシング(4)の外面周囲の空間に部分的に流出する。この空間は、ドラム(12)のシェル(13)の外面の周囲に位置し、ケーシング(4)の上方の空間である。その次に、水蒸気と水の混合物は、格納容器に入り、一部がカンチレバートラス(3)に沿って流れ、ガイド装置(1)に入る。続いて水蒸気と水の混合物は、ガイド装置(1)から、原子炉圧力容器(2)の底部とガイド装置(1)の状態に応じて、最終的に格納容器内に流出することもある。従って、ケーシング(4)の給水バルブ(8)とドラム(12)の給水バルブ(9)の連続作動は、水蒸気とガスの混合物の再循環を提供し、水蒸気とガスの混合物は、原子炉の炉心からの溶融物を封じ込めて冷却するシステムの、溶融物表面の上方に位置する設備を冷却し、最終的に、設備の設計を越えた故障が発生する状況においても、長期にわたって、水蒸気とガス、また、続いて、水蒸気(ミスト)により、安定的に溶融物表面を冷却することを、確実にできる。
【0042】
こうして、原子炉の炉心からの溶融物を封じ込めて冷却するシステムにおいて、給水バルブを設置したドラムを採用し、給水バルブは、ノズル内に設けられ、ノズルは、熱反射材と冷却フィンを備える。複数の給水バルブを異なる高さの位置に配置し、溶融物表面の冷却を確保したことで、原子炉シャフト内の冷却水のレベルが低い場合に、そのシステムの信頼性を高めることができる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】