(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】NK1拮抗剤プロドラッグ化合物と5-HT3受容体拮抗剤との併用使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/661 20060101AFI20240110BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240110BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20240110BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240110BHJP
A61K 31/439 20060101ALI20240110BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20240110BHJP
A61K 31/4184 20060101ALI20240110BHJP
A61K 31/46 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61K31/661
A61K45/00
A61P1/08
A61P43/00 121
A61K31/439
A61K31/454
A61K31/4184
A61K31/46
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539378
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2021141009
(87)【国際公開番号】W WO2022135549
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】202011559059.6
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111066727.6
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523236560
【氏名又は名称】上海盛迪医▲葯▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523238368
【氏名又は名称】上海森▲輝▼医▲葯▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】519352757
【氏名又は名称】江▲蘇▼恒瑞医▲薬▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI PHARMACEUTICALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.7 KUNLUNSHAN ROAD, ECONOMIC AND TECHNOLOGICAL DEVELOPMENT ZONE, LIANYUNGANG, JIANGSU 222047, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲許▼ 大平
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 昌永
(72)【発明者】
【氏名】廖 成
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲連▼山
(72)【発明者】
【氏名】黄 建
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA71
4C084ZC02
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC39
4C086CB05
4C086CB15
4C086CB16
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA71
4C086ZC02
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、NK1拮抗剤プロドラッグ化合物と5-HT3受容体拮抗剤との併用使用に関する。具体的に、本開示は、悪心及び/又は嘔吐を予防又は治療する薬剤の調製における、式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩と5-HT3受容体拮抗剤との併用使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
悪心及び/又は嘔吐を予防又は治療する薬剤の調製における、式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩と5-HT3受容体拮抗剤との併用使用:
【化1】
。
【請求項2】
前記5-HT3受容体拮抗剤は、グラニセトロン、オンダンセトロン、ラモセトロン、トロピセトロン、パロノセトロン及びドラセトロンから選ばれ、好ましくはパロノセトロンである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩の投与量は10~500 mgである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記5-HT3受容体拮抗剤の投与量は0.075~1 mgである、請求項1~3の何れか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩の投与頻度は、1日1回、1日2回、1日3回、週1回、2週1回から選ばれる、請求項1~4の何れか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記5-HT3受容体拮抗剤の投与頻度は、1日1回、1日2回、1日3回、週1回、2週1回から選ばれる、請求項1~5の何れか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記悪心及び/又は嘔吐は、化学療法誘発性の悪心・嘔吐、放射線療法誘発性の悪心・嘔吐又は術後悪心・嘔吐から選ばれる、請求項1~6の何れか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記悪心及び/又は嘔吐は、悪心急性期又は遅延期の悪心及び/又は嘔吐から選ばれる、請求項1~7の何れか一項に記載の使用。
【請求項9】
式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩と、5-HT3受容体拮抗剤と、1種又は複数種の薬学的に許容されるベクターと、を含む医薬組成物。
【請求項10】
式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩と、5-HT3受容体拮抗剤との医薬組成物を包装した、医薬包装箱。
【請求項11】
式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩及び5-HT3受容体拮抗剤を患者に投与することを含む、悪心及び/又は嘔吐を予防又は治療する方法。
【請求項12】
式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩及び5-HT3受容体拮抗剤は、嘔吐事象の発生後に投与され、又は嘔吐誘発事象発生前の1又は2時間以内に投与される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は医薬分野に属し、悪心及び/又は嘔吐を予防又は治療する薬剤の調製における、ロラピタントプロドラッグと5-HT3受容体拮抗剤との併用使用に関する。
【背景技術】
【0002】
タキキニンは、ニューロキニン受容体のペプチドリガンドである。NK1、NK2とNK3などのニューロキニン受容体は、様々な生物学的プロセスに関わっている。それらは、哺乳動物の神経系と循環系において、及び周囲組織において発見することができる。従って、このような受容体の調節は、哺乳動物の種々の疾患を潜在的に治療又は予防するために研究されている。典型的なニューロキニン受容体拮抗剤及びそれらの使用については、US5760018(1998)(疼痛、炎症、片頭痛と嘔吐)、US5620989(1997)(疼痛、侵害受容と炎症)、WO95/19344(1995)、WO 94/13639(1994)及びWO 94/10165(1994)を含む。他のNK1受容体拮抗剤の種類については、Wu et al.、Tetrahedron 56、3043~3051(2000)、Rombouts et al.、Tetrahedron Letters 42、7397~7399(2001)、及びRogiers et al.、Tetrahedron 57、8971~8981(2001)を更に含む。
【0003】
US7049320は、効果的且つ選択的で、有益な治療的及び薬理学的特性及び良好な代謝的安定性を有するNK1拮抗剤であるロラピタントを提供し、それは、遊離塩基形又は薬学的に許容される塩形を採用し、非経口投与の製剤に適用することができ、
【化1】
。
【0004】
US9101615は、ロラピタントのプロドラッグ、即ち、式Iの化合物の遊離アミン(又は2つのアミン)の水素が-Y、-Xから選ばれる基で置換されたプロドラッグ及びその塩を提供し、そのうち、Yは、-P(O)(OH)2、-S(O)n1R1、-C(O)(C1-6アルキル基)X、-C(O)(C1-6アルキル基)(アリール基)、-C(O)OR4から選ばれ、Xは、-NR2R3、-P(O)(OH)2又は-S(O)n1R1から選ばれ、R1はH又はC1-6アルキル基であり、R2はH又はC1-6アルキル基であり、R3はH又はC1-6アルキル基であり、R4はH又はC1-6アルキル基であり、n1は0~4である。当該プロドラッグは、それによる治療を必要とする患者の治療のために、好適な液体製剤(前記非経口投与ベクターを含むか又は含まない)に使用することができる。
【0005】
一方、薬剤の溶血性は、薬剤がヒト体内に入った後、免疫因子による赤血球の大量破壊により引き起こされるもので、臨床的に、貧血、黄疸、醤油と尿液などの溶血現象が現れている。薬剤性溶血性貧血は、(1)抗体媒介性の溶血反応を引き起こす薬剤性免疫、(2)遺伝的酵素欠損を有する赤血球(例えば、G6PD欠損)への薬剤作用、及び(3)異常ヘモグロビンに対する薬剤の溶血反応、という3種類に分けることができる。このような疾患の治療は、合併症の発生が防止されるように、関連薬剤の使用を止め、溶血の発生を抑えることが鍵である。生理的pHでの式Iの化合物の溶剤度が低いという問題を解決するために、研究者は、Captisol、プロピレングリコールとエタノールを含む共溶媒ベースの製剤を使用することによって化合物1の溶解度を明らかに向上させたが、共溶媒製剤は、静脈内投与後に顕著な溶血作用が現れた。CN102573475は、ポリエチレングリコール15-ヒドロキシステアリン酸と中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む改良処方を開示している。しかし、式Iの化合物をリン酸エステル含有のプロドラッグとして調製しても、医薬組成物の溶血作用は依然として完全に解決されていない。
【0006】
PCT/CN2020/098460は、種々の生理障害、症状と疾患の治療に対して効果的で副作用が小さい新規のNK1拮抗剤プロドラッグ化合物を提供し、その構造は下記の通りである:
【化2】
。
【0007】
本開示は、悪心及び/又は嘔吐を予防又は治療する薬剤の調製における、種々の生理障害、症状と疾患の治療に対して効果的で副作用が小さい新規のNK1拮抗剤プロドラッグ化合物と5-HT3受容体拮抗剤との併用使用を提供し、且つ良好な治療効果を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US5760018
【特許文献2】US5620989
【特許文献3】WO95/19344
【特許文献4】WO 94/13639
【特許文献5】WO 94/10165
【特許文献6】US7049320
【特許文献7】US9101615
【特許文献8】CN102573475
【特許文献9】PCT/CN2020/098460
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Wu et al.、Tetrahedron 56、3043~3051(2000)
【非特許文献2】Rombouts et al.、Tetrahedron Letters 42、7397~7399(2001)
【非特許文献3】Rogiers et al.、Tetrahedron 57、8971~8981(2001)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、悪心及び/又は嘔吐を予防又は治療する薬剤の調製における、式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩と5-HT3受容体拮抗剤との併用使用を提供し、
【化3】
。
【0011】
幾つかの実施形態において、上記5-HT3受容体拮抗剤は、グラニセトロン、オンダンセトロン、ラモセトロン、トロピセトロン、パロノセトロンとドラセトロンから選ばれ、好ましくはパロノセトロンである。
【0012】
幾つかの実施形態において、上記式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩の投与量は10~500 mg、例えば、10 mg、20 mg、27.25 mg、30 mg、40 mg、50 mg、54.5 mg、60 mg、70 mg、80 mg、81.75 mg、90 mg、100 mg、109 mg、110 mg、120 mg、130 mg、136.25 mg、140 mg、150 mg、160 mg、163.5 mg、170 mg、180 mg、190 mg、190.75 mg、200 mg、210 mg、218 mg、220 mg、230 mg、240 mg、245.25 mg、250 mg、260 mg、270 mg、272.5 mg、280 mg、290 mg、299.75 mg、300 mg、310 mg、320 mg、327 mg、330 mg、340 mg、350 mg、354.25 mg、360 mg、370 mg、380 mg、381.5 mg、390 mg、400 mg、408.75 mg、410 mg、420 mg、430 mg、436 mg、440 mg、450 mg、460 mg、463.25 mg、470 mg、480 mg、490 mg、490.5 mg、500 mgである。投与頻度は、1日1回、1日2回、1日3回、週1回、2週1回であってもよい。
【0013】
幾つかの実施形態において、上記5-HT3受容体拮抗剤の投与量は0.075~1 mg、例えば、0.125 mg、0.25 mg、0.375 mg、0.5 mg、0.625 mg、0.75 mgであり、好ましくは0.25~0.75 mgである。投与頻度は、1日1回、1日2回、1日3回、週1回、2週1回であってもよい。
【0014】
幾つかの実施形態において、上記式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩の投与量は27.25 mg、54.5 mg、81.75 mg、109 mg、136.25 mg、163.5 mg、190.75 mg、218 mg、245.25 mg、272.5 mg、299.75 mg、327 mg、354.25 mg、381.5 mg、408.75 mg、436 mg、463.25 mg又は490.5 mgであり、投与頻度は、1日1回、1日2回、1日3回、週1回、2週1回であってもよい。上記5-HT3受容体拮抗剤の投与量は0.125 mg、0.25 mg、0.375 mg、0.5 mg、0.625 mg又は0.75 mgであり、投与頻度は、1日1回、1日2回、1日3回、週1回、2週1回であってもよい。
【0015】
本開示に記載の薬剤の薬学的に許容される塩は、塩酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、ペンタン酸塩、グルタミン酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、パモ酸塩、サリチル酸塩、バニリン酸塩、マンデル酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、ラクトビオン酸塩又はラウリルスルホン酸塩などであってもよい。
【0016】
本開示に係る方法は、中等度又は高度の催吐性化学療法による化学療法誘発性の悪心・嘔吐(「CINV」)、放射線療法誘発性の悪心・嘔吐(「RINV」)及び術後悪心・嘔吐(「PONV」)を含む種々の事象による悪心及び/又は嘔吐の治療又は予防に用いられる。上記方法は、嘔吐誘発事象の発生直前(即ち、当該事象前の1又は2時間以内)に実施することが好ましい。上記方法は、悪心急性期又は遅延期の悪心及び/又は嘔吐の治療に使用することができる。本開示に記載の併用投与方法は、同時に投与すること、個別に調製して共投与すること、又は個別に調製して相次いで投与することから選ばれる。
【0017】
本開示に記載の併用投与経路は、経口投与、非経口投与、経皮投与から選ばれ、上記非経口投与は、静脈内注射、皮下注射、筋肉注射を含むが、これらに限定されない。
【0018】
本開示は、式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩及び5-HT3受容体拮抗剤を患者に投与することを含む、悪心及び/又は嘔吐を予防又は治療する方法に更に関する。
【0019】
本開示は、嘔吐を患っている患者又は嘔吐を患うリスクがある患者に本開示の組み合わせを投与することを含む、嘔吐を予防又は治療する方法に更に関する。他の実施形態において、本開示は、本明細書に記載の1種又は複数種の組み合わせを投与することによって嘔吐を予防又は治療する方法を提供する。上記組み合わせは、嘔吐誘発事象の発生直前(即ち、上記事象前の2時間以内)に投与することが好ましい。上記嘔吐は、急性期嘔吐(即ち、嘔吐誘発事象後の約24時間以内に発生した嘔吐)、又は遅延性嘔吐(即ち、上記急性期の後であるが、嘔吐誘発事象後の7日間、6日間、5日間又は4日間以内に発生した嘔吐)であってもよい。上記嘔吐は、中等度又は高度の催吐性化学療法による化学療法誘発性の悪心・嘔吐(「CINV」)、放射線療法誘発性の悪心・嘔吐(「RINV」)又は術後悪心・嘔吐(「PONV」)を含んでもよい。本開示に記載の形態において、上記の併用は任意選択的に、他の制吐薬などを含むが、これらに限定されない他の成分を更に含む。
【0020】
本開示は、5-HT3受容体拮抗剤と併用する、悪心及び/又は嘔吐を予防又は治療するための式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を更に提供する。
【0021】
本開示は、式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩と併用する、悪心及び/又は嘔吐を予防又は治療するための5-HT3受容体拮抗剤を更に提供する。
【0022】
本開示は、式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩と、5-HT3受容体拮抗剤と、1種又は複数種の薬学的に許容されるベクターとを含む医薬組成物に更に関する。上記医薬組成物は、薬学的に許容される剤形の何れか1つに調製することができる。例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、注射剤(注射液、注射用滅菌粉末及び注射用濃溶液を含む)、坐剤、吸入剤又は噴霧剤に調製されてもよい。
【0023】
式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩、5-HT3受容体拮抗剤を含む本開示に記載の医薬組成物は、単独で投与されてもよく、1種又は複数種の治療剤と併用されてもよい。
【0024】
組み合わせるべき各成分(例えば、式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩、5-HT3受容体拮抗剤、及び他の何れかの成分薬剤)は、同時に投与されてもよく、順次に別個に投与されてもよい。更に、組み合わせるべき各成分は、同一の製剤形態又はそれぞれ別個の製剤形態で併用投与されてもよい。
【0025】
本開示は、本開示に記載の式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩と、5-HT3受容体拮抗剤との医薬組成物を包装した医薬包装箱を更に提供する。
【0026】
本開示に記載の「併用」は、一定の期間内に少なくとも1つの用量の式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩及び少なくとも1つの用量の化学療法薬を投与する投与方法であり、投与される薬物は、何れも薬理学的作用を示す。上記の期間は、1つの投与周期以内であってもよく、4週間以内、3週間以内、2週間以内、1週間以内、又は24時間以内が好ましく、12時間以内がより好ましい。式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩及び5-HT3受容体拮抗剤は、同時に又は順次に投与することができる。このような期間は、同じ投与経路又は異なる投与経路で式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩及び5-HT3受容体拮抗剤を投与するような治療を含む。本開示に記載の併用投与方法は、同時に投与すること、個別に調製して共投与すること、又は個別に調製して相次いで投与することから選ばれる。
【0027】
「術後悪心及び/又は嘔吐」(PONV)という用語は、当該分野におけるその一般的な意味を採用する。当該分野でよく知られるように、それは、手術後に起こる、1回又は数回の嘔吐発作(嘔吐及び/又は吐気)、又は嘔気の欲求(悪心)の発生を意味する。吐気は、嘔吐と同様の生理学的機序に関わっているが、声帯が閉じている状態で発生する。PONVは、手術終了後の48時間以内に発生する悪心及び/又は嘔吐と定義されてもよく、手術終了後の24時間以内に発生する悪心及び/又は嘔吐と定義されてもよい。
【0028】
「治療有効量」は、その投与により必要な効果が生じる治療剤の量を指す。幾つかの実施形態において、当該用語は、形態によって疾患、病症及び/又は病状を患っており、又は患いやすい集団に投与される場合、上記疾患、病症及び/又は病状の治療に十分な量を指す。幾つかの実施形態において、治療有効量は、疾患、病症及び/又は病状の1種又は複数種の症状の発生率及び/又は重症度を低減させ、及び/又はその発作を遅延させる量である。当業者であれば、「治療有効量」という用語は、実際に、特定の個体での治療の成功を実現させる必要はないことを理解するであろう。逆に、治療有効量は、このような治療を必要とする患者に投与される場合、多くの対象において特定の所望の薬理学的応答を提供する量であってもよい。幾つかの実施形態において、治療有効量に言及する場合は、例えば、1種又は複数種の特定の組織(例えば、疾患、病症又は病状の影響を受ける組織)又は流体(例えば、血液、唾液、血清、汗液、涙、尿など)において測定される量を指すことができる。当業者であばれ、幾つかの実施形態において、治療有効量の特定の試薬又は治療法は、単一の用量で調製及び/又は投与可能であることを理解するであろう。幾つかの実施形態において、治療上有効な薬剤は、例えば、形態の一部として、複数の用量で調製及び/又は投与することができる。
【0029】
本明細書における全ての数字は、「約」で修飾されていると理解されてもよく、例えば、量や時間持続時間などの測定可能な値に言及する場合は、±10%、好ましくは±5%、又はそれ以上の変化をカバーする意味を持っている。特に説明のない限り、これらの変化は、必要量の薬剤を得るために好適である。好ましくは、指定値から±1%、更により好ましくは±0.1%である。
【0030】
本開示は、式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩と5-HT3受容体拮抗剤を併用投与することにより、悪心及び/又は嘔吐などの疾患の治療効果を改善している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施例と合わせて本開示を更に説明するが、これらの実施例は本開示の範囲を限定するものではない。
【0032】
本開示の実施例において具体的な条件が明示されていない実験方法は、一般的に、従来の条件、又は原料や商品メーカに勧められた条件に従う。具体的な供給源が明示されていない試薬は、市販されている従来の試薬である。
【0033】
【0034】
ステップ1:
【化5】
N
2保護下で、100 mLの三つ口フラスコに化合物1(2.43 g、4.86 mmol、1 eq)を秤量してジクロロメタン(36 mL)に溶け、ジイソプロピルエチルアミン(5 g、38.76 mmol、8 eq)を加え、-30℃に冷却し、トリメチルクロロシラン(1.36 g、12.52 mmol、2.6 eq)を加え、室温で2 h撹拌した。更に-25℃に冷却し、クロロギ酸クロロメチル(0.77 g、6 mmol、1.23 eq)のジクロロメタン溶液を滴下し、温度を-20℃~-5℃に制御して反応が完了するまで撹拌し、反応液を氷水に注入し、分液し、ジクロロメタンで抽出し、水と1 Nの塩酸溶液を加え、分液し、順に食塩水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、3.0 gの黄色いゲル状物が得られ、収率は104%であった。
【0035】
ステップ2:
【化6】
N
2保護下で、500 mLの三つ口フラスコに化合物2(2.8 g、4.53 mmol、1 eq)、テトラブチルヨウ化アンモニウム(1.68 g、4.55 mmol、1 eq)、リン酸ジ-tert-ブチルカリウム塩(5.63 g、22.67 mmol、5 eq)及びジオキサン(84 mL)を加え、55℃に加熱して4 h撹拌した。反応液を降温させ、酢酸エチル及び水に注入し、分液し、酢酸エチルで抽出し、亜硫酸ナトリウムの水溶液で洗浄し、順次に水、食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮して3.73 gの黄色い泡が得られ、収率は107%であった。
【0036】
ステップ3:
【化7】
N
2保護下で、500 mLの単口フラスコに化合物3(6.65 g、8.67 mmol、1 eq)を加えてジクロロメタン(200 mL)に溶け、氷水で冷却しながらトリフルオロ酢酸(9.89 g、86.7 mmol、10.0 eq)を徐々に加え、反応が完了するまで撹拌し、濃縮し、2.29 gの油状物が得られ、逆相シリカゲルカラム(C18)精製(A溶液:20 mmolのNH
4HCO
3水溶液、B溶液:アセトニトリル)により精製し、更に1 Mのリン酸でpH=1~2に調節し、ジクロロメタンで抽出し、飽和塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮して目的生成物である式(I)で示される化合物が2.7 g得られた。
【0037】
実施例2:式(I)で示される化合物とパロノセトロンとの併用のラットにおける毒性試験
ラットに静脈内注射により式(I)で示される化合物、パロノセトロン又は式(I)で示される化合物+パロノセトロン複合剤を29日間、週1~2回続けて投与し、投薬中止して4週間回復させ、毒性反応を引き起こす可能性のある特性、程度、用量効果と時間効果の関係及び可逆性を観察し、毒性標的器官又は標的組織を判断すると共に、そのトキシコキネティクス特性を研究し、毒性研究における曝露用量と毒物学的結果との関係を明らかにした。
【0038】
薬剤の調製
含有量で換算し、必要量の式(I)で示される化合物を秤量し、適量の0.02 Mのリン酸塩緩衝液(pHが約7.40)を加えて所望の濃度に調製し、低濃度投与製剤は高濃度投与製剤を希釈して得られ、調製後にろ過(PESろ過膜)してから使用した。調製後の一時貯蔵条件及び有効期限:15~25℃、暗所で、72時間以内に使用。
【0039】
含有量で換算し、必要量のパロノセトロンを秤量し、適量の0.02 Mのリン酸塩緩衝液(pHが約7.40)を加えて所望の濃度に調製し、低濃度投与製剤は高濃度投与製剤を希釈して得られ、調製後にろ過(PESろ過膜)してから使用した。調製後の一時貯蔵条件及び有効期限:15~25℃、暗所で、72時間以内に使用。
【0040】
一定の割合(式(I)で示される化合物:パロノセトロン遊離塩基=872:1)で、必要量の式(I)で示される化合物及びパロノセトロンを所望の濃度になるまで秤量し、その濃度比を式(I)で示される化合物:パロノセトロン遊離塩基=872:1となるように確保し、低濃度投与製剤は、高濃度投与製剤を0.02 Mのリン酸塩緩衝液(pHが約7.40)で希釈して得られ、調製後にろ過(PESろ過膜)してから使用した。調製後の一時貯蔵条件及び有効期限:15~25℃、暗所で、72時間以内に使用。
【0041】
1.1 投与
本試験に係る式(I)で示される化合物+パロノセトロン複合群の低用量群、中用量群、高用量群は、それぞれ(以下の用量は、式(I)で示される化合物+パロノセトロンで示す)5+0.0006、15+0.24、30+10 mg/kgとして設計された。更に、式(I)で示される化合物の5、20、40 mg/kg群及びパロノセトロンの10 mg/kg群を設け、その式(I)で示される化合物の用量、パロノセトロンの用量は、複合高用量群における式(I)で示される化合物の用量、パロノセトロンの用量と同様であった。また、更に対照群を設け、静脈内注射により等体積の溶媒(0.02 Mのリン酸塩緩衝液(pHは約7.40))を投与した。
【0042】
静脈内に点滴注射し、前の4週間は週に2回、5週目は1回、合計9回投与し、最終回投与後に投薬中止して4週間回復させ、15分間/匹/回で、投与体積20 mL/kgであった。
【0043】
1.2 動物の活動状況などを観察し、体重、摂食量を測定し、血液学、血液生化学、通常の尿検査、眼科、骨髄の塗抹標本を検出し、検査することで、関連データを分析した。
【0044】
1.3 トキシコキネティクス
サンプリング時間:
式(I)で示される化合物群、パロノセトロン群及び式(I)で示される化合物+パロノセトロンの各用量群:初回、最終回の投与前及び投与後の2分間(±30秒間)、0.25(±1分間)、0.5時間(±1分間)、2時間(±1分間)、4時間(±2分間)、8時間(±5分間)、24時間(±30分間)、48時間(±30分間)。
対照群:初回、最終回の投与前及び投与後の2分間(±1分間)。
サンプリング方法:場合によっては、採血前にCO2-O2混合ガス(体積比7:3)で麻酔することができる。
サンプリング動物:各群の初回、最終回の毒性学的サンプリングから生き残ったラット。
サンプリング部位:頸静脈。
サンプリング量:≧0.3 mL。
抗凝固剤:EDTA-K2。
血液試料の処理:全血液試料を遠心分離前にアイスボックスに置き、2~8℃、遠心力1800×gで10分間遠心分離し、血漿を2本の管に分け、その一方の管に50 μL、他方の管に残りの血漿を入れ、試料を分注した後、-66℃以下で保存して検出に備えた。
【0045】
1.4 肉眼的解剖学及び組織病理学検査
【0046】
1.5 統計的分析
体重、摂食量、血液学、血液生化学、尿比重、骨髄の塗抹標本による各細胞株百分率及び巨核球数(ある場合)の検査、臓器重量及び係数などの定量的指標は、平均数±標準偏差( )で記述され、通常の尿検査(尿比重を除く)、骨髄の塗抹標本における有核細胞増殖(ある場合)などの定性的指標(二分類、無秩序多分類及び順序多分類)は、頻度計数で記述された。試料数が3よりも小さい場合、当該群のデータは、統計的な比較を行わなかった。
【0047】
定量的指標は、まず、LEVENE検定により等分散性の検定を行い、等分散である場合(P>0.05)、一元配置分散分析(ANOVA)により統計的検定を行い、不等分散である場合(P≦0.05)、Kruskal-Wallis H順位和検定(K-W法)により統計的分析を行った。一元配置分散分析によって差が統計的に有意であると示した場合(P≦0.05)は、Dunnett’s t検定(Dunnett法)により群間差を比較し、一元配置分散分析によって差が統計的に有意ではないと示した場合(P>0.05)は、統計的分析を終了させた。Kruskal-Wallis H順位和検定によって差が統計的に有意であると示した場合(P≦0.05)は、Mann-Whitney U検定(M-W法)により群間差を比較し、Kruskal-Wallis H順位和検定によって差が統計的に有意ではないと示した場合(P>0.05)は、統計的分析を終了させた。
【0048】
順序多分類指標は、Kruskal-Wallis H順位和検定(K-W法)により分析され、差が統計的に有意である場合(P≦0.05)は、Mann-Whitney U順位和検定(M-W法)により群間差を比較した。
【0049】
二分類指標は、Fisher正確確率法(EXACT)により分析され、差が統計的に有意である場合(P≦0.05)は、引き続きFisher正確確率法により両群間の差を比較した。
【0050】
群間差の比較は、式(I)で示される化合物の各用量群、パロノセトロン群、式(I)で示される化合物+パロノセトロンの各用量群と対照群との間に行われた。
【0051】
何れの検定も両側検定α=0.05である。何れの分析も性別によって行われた。体重、血液学、血液生化学、臓器重量及び係数などは、PRISTIMA 7.2.0版のデータ収集システムにより統計的分析を行った。他の指標データは、Stata/IC 15.0 for Windowsにより統計的分析を行った。
【0052】
一般状態観察、眼科検査及び病理学検査などのデータは、記述的分析を行った。
【0053】
実施例3:アカゲサル体内での29日間毒性試験
アカゲサルに静脈内注射により式(I)で示される化合物を29日間、週1~2回続けて投与し、投薬中止して4週間回復させ、毒性反応を引き起こす可能性のある特性、程度、用量効果と時間効果の関係及び可逆性を観察し、毒性標的器官又は標的組織を判断すると共に、そのトキシコキネティクス特性を研究し、毒性研究における曝露用量と毒物学的結果との関係を明らかにした。
【0054】
薬剤の調製
含有量で換算し、必要量の式(I)で示される化合物を秤量し、適量の0.02 Mのリン酸塩緩衝液(pHが約7.40)を加えて所望の濃度に調製し、低濃度投与製剤は高濃度投与製剤を希釈して得られ、調製後にろ過(PESろ過膜)してから使用した。調製後の一時貯蔵条件及び有効期限:15~25℃、暗所で、72時間以内に使用。
【0055】
1.1 投与
この試験に係る式(I)で示される化合物の低用量、中用量、高用量は、それぞれ2、10、50 mg/kgであった。更に対照群を設け、同様に、等体積の溶媒(0.02 Mのリン酸塩緩衝液(pHは約7.40))を投与した。
【0056】
静脈内に点滴注射し、前の4週間は週に2回、5週目は1回、合計9回投与し、最終回投与後に投薬中止して4週間回復させ、30分間/匹/回で、投与体積20 mL/kgであった。
【0057】
1.2 動物の活動状況などを観察し、体重、摂食量、体温(直腸温)、心電図、血圧を測定し、血液学、血液生化学、通常の尿検査、眼科、骨髄の塗抹標本を検出し、検査することで、関連データを分析した。
【0058】
1.3 トキシコキネティクス
サンプリング時間:
式(I)で示される化合物群の各用量群:初回、最終回の投与前及び投与終了後の2分間(±30秒)、0.25(±1分間)、0.5(±1分間)、2(±2分間)、4(±2分間)、8(±2分間)、24(±5分間)時間、48時間(±1分間)。
対照群:初回、最終回の投与前及び投与後の0.25(±1分間)時間。
サンプリング動物:各群の生き残ったサル。
サンプリング部位:伏在静脈又は他の好適な静脈。
サンプリング量:≧0.4 mL。
抗凝固剤:EDTA-K2。
血液試料の処理:全血液試料を遠心分離前にアイスボックスに置き、2~8℃、遠心力1800×gで10分間遠心分離し、血漿を2本の管に分け、その一方の管に50 μL、他方の管に残りの血漿を入れ、試料を分注した後、-66℃以下で保存して検出に備えた。
【0059】
1.4 肉眼的解剖学及び組織病理学検査
【0060】
1.5 統計的分析
体重、摂食量、体温、心電図、血圧、血液学、血液生化学、尿比重、骨髄の塗抹標本による各細胞株百分率及び巨核球数(ある場合)の検査、臓器重量と係数などの定量的指標は、平均数±標準偏差(
【数1】
)で記述され、骨髄の塗抹標本における有核細胞増殖(ある場合)、通常の尿検査(尿比重を除く)などの定性的指標(二分類、無秩序多分類及び順序多分類)は、頻度計数で記述された。試料数が3よりも小さい場合、当該群のデータは、統計的な比較を行わなかった。
【0061】
定量的指標は、まず、LEVENE検定により等分散性の検定を行い、等分散である場合(P>0.05)、一元配置分散分析(ANOVA)により統計的検定を行い、不等分散である場合(P≦0.05)、Kruskal-Wallis H順位和検定(K-W法)により統計的分析を行った。一元配置分散分析によって差が統計的に有意であると示した場合(P≦0.05)は、Dunnett’s t検定(Dunnett法)により群間差を比較し、一元配置分散分析によって差が統計的に有意ではないと示した場合(P>0.05)は、統計的分析を終了させた。Kruskal-Wallis H順位和検定によって差が統計的に有意であると示した場合(P≦0.05)は、Mann-Whitney U検定(M-W法)により群間差を比較し、Kruskal-Wallis H順位和検定によって差が統計的に有意ではないと示した場合(P>0.05)は、統計的分析を終了させた。
【0062】
例えば、尿検査(清澄度、ブトウ糖、ビリルビン、ケトン体、潜血、pH値、タンパク質、ウロビリノーゲン、白血球)、骨髄の塗抹標本における有核細胞増殖状況のような順序多分類指標は、Kruskal-Wallis H順位和検定(K-W法)により分析され、差が統計的に有意である場合(P≦0.05)は、Mann-Whitney U順位和検定(M-W法)により群間差を比較した。
【0063】
二分類(尿中亜硝酸塩)及び無秩序多分類(尿色)指標は、Fisher正確確率法(EXACT)により分析され、差が統計的に有意である場合(P≦0.05)は、引き続きFisher正確確率法により両群間の差を比較した。
【0064】
群間差の比較は、式(I)で示される化合物の各群と対照群との間に行われた。
【0065】
何れの検定も両側検定α=0.05である。何れの分析も性別によって行われた。体重、摂食量、血液学、血液生化学、臓器重量及び係数などは、PRISTIMA 7.2.0版のデータ収集システムにより統計的分析を行った。他の指標は、Stata/IC 15.0 for Windowsにより統計分析を行った。
【0066】
一般状態観察、眼科検査及び病理学検査などのデータは、記述的分析を行った。
【0067】
試験例1:水溶性データ及び化学的安定性
1.1 薬剤の調製
試薬:NaH2PO4・2H2O
1.2 調製方法
100 mLの仕様で以下のように調製した:
pH=3.0:リン酸塩緩衝溶液:100 mLの2 mmol/L NaH2PO4、0.1MのH3PO4でpHを3.0に調節。
【0068】
pH=4.0:リン酸塩緩衝溶液:100 mLの2 mmol/L NaH2PO4、0.1MのH3PO4でpHを4.0に調節。
【0069】
pH=7.0:超純水
pH=9.0:リン酸塩緩衝溶液:100 mLの2 mmol/L Na2HPO4、0.1MのNaOH溶液でpHを9.0に調節
1.3 試験方法
適量の検出待ち化合物を精密に秤量し、少量で数回に分けて溶液を加えて化合物が溶解するまで撹拌し、溶液における化合物の含有量を測定した。データは表1に示されている。
【0070】
2.1 化合物の安定性実験
約1 mgの試料を秤量してバイアルに入れ、真空バッグに置いて真空引きし、更に変色シリカゲルが入った容器に置き、密封し、平行して2部調製した。サンプリング時点に応じて十分な部数を調製し、それぞれ4℃と室温で放置した。異なるpH値での式(I)で示される化合物の溶解度を測定し、データは表1に示されている。
【0071】
【0072】
備考:良い 7日間放置、純度の低下<0.5%;中等度 7日間放置、純度の低下0.5%~2.0%;悪い 7日間放置、純度の低下>2.0%
【0073】
試験例2:溶血作用
赤血球(RBC)をランダムにウサギの頸静脈又は耳の中央動脈から(EDTA全血)10 mL採取し、ガラス球栓付き三角フラスコに入れて10分間振とうし、フィブリノゲンを除去し、脱線維素血とした。塩化ナトリウム注射液の約10倍量を加え、均一に振とうし、1500回転/分間で10分間遠心分離し、上清液を除去し、上記方法に従って、沈殿した赤血球を更に塩化ナトリウム注射液で上清液が赤くなくなるまで3回洗浄した。得られた赤血球を塩化ナトリウム注射液で2%(v/v)の懸濁液に調製し、使用に備えた。
【0074】
試験試料(式(I)で示される化合物)をPBS(pH7.4又はpH5)に溶け、ろ過し、0.4 mg/mL、0.8 mg/mL、1.2 mg/mL、1.6 mg/mL及び2 mg/mLに調製し、使用に備えた。
【0075】
一定量の試験試料溶液を上記ヘモグロビンを加えて上清液において試験した。
【0076】
試験管における溶液が赤色透明で、管底に細胞が残っておらず、又は赤血球が少し残っていると、溶血が発生したことを示し、赤血球が全て沈んでおり、上清液が無色透明であると、溶血が発生していないことを示す。溶液に茶褐色又は赤茶色の綿状沈殿があり、穏やかに3~5回反転させても分散しないと、赤血球の凝集が発生した可能性があることを示し、更に顕微鏡下に置いて観察する必要があり、赤血球の集まりが見られると、凝集とされる。本開示により提供される化合物は、当該方法により溶血作用を測定した。
【0077】
結論:式(I)で示される化合物は、濃度が2 mg/mLと高くなっても、溶血作用が現れなかった。
【0078】
試験例3:ロラピタント乳剤の溶血作用
CN102573475における方法を参照してロラピタント乳剤(処方:4.4%のポリエチレングリコール15-ヒドロキシステアリン酸、1.1%の中鎖脂肪酸トリグリセリド及び0.66%の大豆油)を調製し、PBSにより0.18 mg/mL、0.09 mg/mL、0.045 mg/mL、0.023 mg/mL、0.011 mg/mL、0.056 mg/mLと0.028 mg/mLに調製し、使用に備えた。
【0079】
試験例2における方法を参照して溶血作用を測定した。
【0080】
結論:何れの濃度のロラピタント乳剤も、溶血作用を有する。
【0081】
試験例4:カニクイザルにおける薬物動態試験
カニクイザルを試験動物として、LC/MS/MS法により式(I)で示される化合物を注射投与した後の異なる時点での血漿中の薬物濃度を測定した。カニクイザル体内での当該化合物の薬物動態的挙動を研究し、その薬物動態的特徴を評価した。
【0082】
薬剤の調製
一定量の検出待ち化合物を秤量し、20 mmol/Lのリン酸二水素ナトリウムでpH=4.0の溶液に調製し、使用に備えた。
【0083】
1.1 投与
静脈内に点滴注射し、注射時間が約30 min、投与量が3.54 mg/kg、投与濃度が2 mg/mL、投与体積が5 mL/kgであった。
【0084】
1.2 操作
投与前及び投与終了後の5 min、0.25 h、0.5 h、1 h、2 h、4 h、6 h、8 h、10 hと24 hに、大腿静脈から採血し、各試料は約0.6 mL採取し、ヘパリンナトリウムにより抗凝固し、採取してからすぐ氷上に置いた。血液試料を採取した後、標識した遠心管に置き、血漿を遠心分離した(遠心分離条件:遠心力2200 g、10 min遠心分離し、2~8℃)。
【0085】
LC/MS/MSにより、血漿試料における式(I)で示される化合物とロラピタントの含有量を測定した。
【0086】
【0087】
注記:aは、カニクイザル体内での式(I)で示される化合物の薬物動態パラメータであり、bは、カニクイザル体内でのロラピタントに代謝された式(I)で示される化合物の薬物動態パラメータである。
【0088】
結論:式(I)で示される化合物は、カニクイザル体内での薬物動態研究において、カニクイザルにおいて殆ど急速に活性代謝産物であるロラピタントに転化され、良好な薬物動態特性を有する。
【国際調査報告】