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特表2024-502012腫瘍浸潤リンパ球を調製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】腫瘍浸潤リンパ球を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/078 20100101AFI20240110BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240110BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240110BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20240110BHJP
【FI】
C12N5/078
A61K35/17
A61P35/00
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539872
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 CN2021142540
(87)【国際公開番号】W WO2022143785
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202011629408.7
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520370577
【氏名又は名称】シャンハイ・セルラー・バイオファーマシューティカル・グループ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジア
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,ジヤン
(72)【発明者】
【氏名】ゴング,ジジェン
(72)【発明者】
【氏名】ク,イジエ
(72)【発明者】
【氏名】チン,シチャオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シェンチェン
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,ワンチン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジュンフォン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,フェイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,リー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065BA21
4B065BC01
4B065BD39
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB64
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を拡大増殖させるための方法であって、第1の拡大増殖された細胞集団を得るために、TILを含有する最初の細胞集団を第1の支持細胞とともに共培養することと、次いで、拡大増殖されたTIL集団を得るために、前記第1の拡大増殖された細胞集団を第2の支持細胞とともに共培養することと、を含む、方法が提供される。本方法は、小さな腫瘍試料から多数のTILを迅速に生産することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビトロで腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を調製するための方法であって、
(1)試料からTILを含有する最初の細胞集団を提供する工程であって、前記最初の細胞集団中のTILの数はn0である、工程と、
(2)場合によって、前記最初の細胞集団を前処理する工程であって、前記前処理は、前記最初の細胞集団をIL7、IL15および/またはIL21とともに約6時間~約36時間培養し、前処理された最初の細胞集団を得ることを含む、工程と、
(3)前記最初の細胞集団または前記前処理された最初の細胞集団を第1の支持細胞とともに第1の培養培地中で約7日~約16日の第1の期間共培養し、第1の拡大増殖された細胞集団を得る工程であって、前記第1の拡大増殖された細胞集団中のTILの数はn1であり、n1/n0は約1000~約10,000の範囲であり、n1は少なくとも1×10である、工程と、
(4)前記第1の拡大増殖された細胞集団を第2の支持細胞とともに第2の培養培地中で約10日~約16日の第2の期間共培養し、拡大増殖されたTIL集団を得る工程であって、前記拡大増殖されたTIL集団中のTILの数はn2であり、n2/n1は約4000~約10,000の範囲であり、n2は少なくとも1×1010である、工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記試料が腫瘍試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記腫瘍試料が固形腫瘍に由来する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記固形腫瘍が肺癌、子宮頸癌、卵巣癌または黒色腫である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記試料が、約0.01g~約0.5gの範囲の重量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記腫瘍試料が、約0.01g~約0.05gの範囲の重量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
n0が約1,000~約50,000の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
n0が約2,000~約10,000の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
n0が約3,000~約10,000の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程(1)において、前記最初の細胞集団を得るために、前記試料が解離溶液で解離され、前記解離溶液は、コラゲナーゼII、コラゲナーゼIV、DNaseおよびヒアルロニダーゼを含む等張溶液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程(2)において、IL7が約10ng/ml~約100μg/mlの範囲の濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程(2)において、IL15が約10ng/ml~約100μg/mlの範囲の濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程(2)において、IL21が約10ng/ml~約100μg/mlの範囲の濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の培養培地が、IL2、IL7、IL15およびIL21からなる群より選択される1つ以上のサイトカインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の培養培地が、抗CD3抗体またはその断片、抗41BB抗体またはその断片、抗OX40抗体またはその断片、および抗PD-1抗体またはその断片からなる群より選択される1つ以上の抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記抗CD3抗体またはその断片がOKT3抗体またはその断片である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の培養培地が、抗CD3抗体もしくはその断片、および/または抗CD28抗体もしくはその断片を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記抗CD3抗体またはその断片がOKT3抗体またはその断片である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の培養培地が、抗CD3抗体もしくはその断片、および/または抗CD28抗体もしくはその断片で被覆されたマイクロビーズを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の支持細胞および/または前記第2の支持細胞が抗原提示細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の支持細胞および/または前記第2の支持細胞が末梢血単核球(PBMC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法によって調製された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)。
【請求項23】
請求項15に記載のTILを含む薬学的組成物。
【請求項24】
患者における疾患を処置する方法であって、請求項23に記載の薬学的組成物を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項25】
前記疾患が癌である、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月31日に出願された中国特許出願第2020116294087号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示は、バイオテクノロジーの分野に関し、特に腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、癌の免疫療法では、大きく進歩が起こっている。養子細胞療法としても知られる細胞免疫療法では、抗原特異的免疫応答を増強するための遺伝子改変または選択的拡大増殖のために、患者の免疫細胞が収集される。
【0004】
T細胞養子再注入療法は、主に、CAR-T、TCR-TおよびTILを使用することを含む。CAR-Tは血腫の処置において有効であるが、固形腫瘍を処置する上でのその有効性はなお改善される必要がある。黒色腫臨床試験の結果が最初に開示されて以来、固形腫瘍の処置におけるTILの有効性が多くの局面において研究されてきた。TIL臨床試験は、肺癌、子宮頸癌、頭頸部癌などの処置に拡大されてきた。しかしながら、限界の1つは、TILが癌組織から得られ、拡大増殖のための培養時間が比較的長いことである。これは、手術不能な癌を有する患者を処置するのに十分な数のTIL細胞を得ることを困難にする。
【0005】
既存のTIL拡大増殖法は、主に、大きな腫瘍組織から始まる。免疫療法の成功には多数のTILが必要とされる。これは、細胞拡大増殖に伴う技術的および物流上の問題のために達成することが困難であった。外科試料を得ることが困難な患者からTILを拡大増殖することは特に困難である。現在のTIL製造過程は、長さ、コストおよび他の要因によっても制限される。
【0006】
特に極めて小さな腫瘍試料または少数のTILを含有する試料から開始して、効率的かつ迅速なTIL拡大増殖法を提供する緊急の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、極めて小さな腫瘍試料または少数の出発TIL細胞から多数のTILを迅速に得ることができる方法を提供する。
【0008】
本開示は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)をインビトロで拡大増殖または調製するための方法を提供する。本方法は、
(1)試料からTILを含有する最初の細胞集団を提供する工程であって、前記最初の細胞集団中のTILの数はn0である、工程と、
(2)場合により、前記最初の細胞集団を前処理する工程であって、前記前処理は、前記最初の細胞集団をIL7、IL15および/またはIL21とともに約6時間~約36時間、約6時間~約48時間、約6時間~約12時間、約6時間~約24時間、約12時間~約36時間、約24時間~約36時間または約24時間~約48時間培養し、前処理された最初の細胞集団を得ることを含む、工程と、
(3)前記最初の細胞集団または前記前処理された最初の細胞集団を第1の支持細胞とともに第1の培養培地中で第1の期間共培養し、第1の拡大増殖された細胞集団を得る工程であって、前記第1の拡大増殖された細胞集団中のTILの数はn1である、工程と、
(4)前記第1の拡大増殖された細胞集団を第2の支持細胞とともに第2の培養培地中で第2の期間共培養し、拡大増殖されたTIL集団を得る工程であって、前記拡大増殖されたTIL集団中のTILの数はn2である、工程と、
を含み得る。
【0009】
本明細書で記載される場合、工程(3)は、第1の拡大増殖または第1のTIL拡大増殖と称される。工程(4)は、第2の拡大増殖または第2のTIL拡大増殖と称される。
【0010】
第1の期間は、約7日~約16日、約8日~約16日、約9日~約16日、約10日~約16日、約11日~約16日、約12日~約16日、約7日~約14日、約8日~約14日、約9日~約14日、約10日~約14日、約11日~約14日または約12日~約14日の範囲であり得る。
【0011】
第2の期間は、約10日~約16日、約8日~約16日、約9日~約16日、約11日~約16日、約12日~約16日、約8日~約14日、約9日~約14日、約10日~約14日、約11日~約14日または約12日~約14日の範囲であり得る。
【0012】
試料は腫瘍試料であり得る。腫瘍試料は、肺癌、子宮頸癌、卵巣癌または黒色腫などの固形腫瘍に由来し得る。
【0013】
試料は、約0.01g~約0.5g、約0.01g~約0.4g、約0.01g~約0.3g、約0.01g~約0.2g、約0.01g~約0.1g、約0.01g~約0.09g、約0.01g~約0.08g、約0.01g~約0.07g、約0.01g~約0.06g、約0.01g~約0.05g、約0.01g、約0.02g、約0.03g、約0.04gまたは約0.05gの範囲の重量を有し得る。
【0014】
最初の細胞集団中のTILの数n0は、約1,000~約50,000、約2,000~約50,000、約3,000~約50,000、約4,000~約50,000、約5,000~約50,000、約1,000~約30,000、約2,000~約30,000、約3,000~約30,000、約4,000~約30,000、約5,000~約30,000、約1,000~約10,000、約2,000~約10,000、約3,000~約10,000、約4,000~約10,000、または約5,000~約10,000の範囲であり得る。
【0015】
n1/n0は、約1,000~約10,000、約2,000~約10,000、約3,000~約10,000、約4,000~約10,000、約5,000~約10,000、約6,000~約10,000、約7,000~約10,000または約8,000~約10,000の範囲であり得る。
【0016】
第1の拡大増殖された細胞集団中のTILの数n1は、少なくとももしくは約1×10、少なくとももしくは約0.1×10、少なくとももしくは約0.3×10、少なくとももしくは約0.5×10、少なくとももしくは約0.7×10、少なくとももしくは約0.9×10、少なくとももしくは約1.5×10、少なくとももしくは約2×10、少なくとももしくは約2.5×10、少なくとももしくは約3×10、少なくとももしくは約3.5×10、少なくとももしくは約4×10、少なくとももしくは約4.5×10、少なくとももしくは約5×10、少なくとももしくは約6×10、少なくとももしくは約7×10、少なくとももしくは約8×10、少なくとももしくは約9×10、少なくとももしくは約1×10、少なくとももしくは約1.5×10、少なくとももしくは約2×10、少なくとももしくは約2.5×10、少なくとももしくは約3×10、少なくとももしくは約3.5×10、少なくとももしくは約4×10、少なくとももしくは約4.5×10、少なくとももしくは約5×10、少なくとももしくは約6×10、少なくとももしくは約7×10、少なくとももしくは約8×10、または少なくとももしくは約9×10であり得る。ある特定の態様において、n1は、約0.1×10~約3.0×10または約0.3×10~約2.0×10である。
【0017】
ある特定の態様において、n1/n0は、約1000~約10,000の範囲であり、n1は、少なくとも1×10である。
【0018】
第2の拡大増殖された細胞集団中のTILの数n2は、少なくとももしくは約1×1010、少なくとももしくは約0.1×1010、少なくとももしくは約0.3×1010、少なくとももしくは約0.5×1010、少なくとももしくは約0.7×1010、少なくとももしくは約0.9×1010、少なくとももしくは約1.5×1010、少なくとももしくは約2×1010、少なくとももしくは約2.5×1010、少なくとももしくは約3×1010、少なくとももしくは約3.5×1010、少なくとももしくは約4×1010、少なくとももしくは約4.5×1010、少なくとももしくは約5×1010、少なくとももしくは約6×1010、少なくとももしくは約7×1010、少なくとももしくは約8×1010、少なくとももしくは約9×1010、少なくとももしくは約1×1011、少なくとももしくは約1.5×1011、少なくとももしくは約2×1011、少なくとももしくは約2.5×1011、少なくとももしくは約3×1011、少なくとももしくは約3.5×1011、少なくとももしくは約4×1011、少なくとももしくは約4.5×1011、少なくとももしくは約5×1011、少なくとももしくは約6×1011、少なくとももしくは約7×1011、少なくとももしくは約8×1011、または少なくとももしくは約9×1011であり得る。ある特定の態様において、n2は、約1×1010~約2×1011である。ある特定の態様において、n2は、約1.0×1011~約2.0×1011である。
【0019】
n2/n1は、約1,000~約10,000、約2,000~約10,000、約3,000~約10,000、約4,000~約10,000、約5,000~約10,000、約6,000~約10,000、約7,000~約10,000、または約8,000~約10,000の範囲であり得る。
【0020】
ある特定の態様において、n2/n1は、約4000~約10,000の範囲であり、n2は、少なくとも1×1010である。
【0021】
最初の細胞集団を得るために、(例えば、工程(1)において)試料を解離溶液で解離させ得る。解離溶液は、コラゲナーゼII、コラゲナーゼIV、DNaseおよびヒアルロニダーゼを含む等張溶液を含み得る。
【0022】
第1の培養培地は、IL2、IL7、IL15およびIL21からなる群より選択される1つ以上のサイトカインを含み得る。
【0023】
第1の培養培地中のIL2の濃度は、約300IU/ml~約10000IU/mlの範囲であり得るか、または本明細書に記載される通りであり得る。
【0024】
第1の培養培地において(例えば、第1の拡大増殖において、または工程(3)において)、第2の培養培地(例えば、第2の拡大増殖において、または工程(4)において)または前処理工程(例えば、工程(2))において、IL7、IL15またはIL21は、約10ng/ml~約100μg/ml、約1ng/ml~約100μg/ml、約20ng/ml~約100μg/ml、約50ng/ml~約100μg/ml、約100ng/ml~約100μg/ml、約500ng/ml~約100μg/ml、約1μg/ml~約100μg/ml、約10μg/ml~約100μg/ml、約50μg/ml~約100μg/ml、約10ng/ml~約50μg/ml、約50ng/ml~約50μg/ml、約100ng/ml~約50μg/ml、約500ng/ml~約50μg/ml、約1μg/ml~約50μg/ml、約10μg/ml~約50μg/ml、約50ng/ml~約10μg/ml、約100ng/ml~約10μg/ml、約200ng/ml~約10μg/ml、約500ng/ml~約10μg/ml、約1μg/ml~約10μg/ml、約10ng/ml~約1μg/ml、約100ng/ml~約1μg/ml、約200ng/ml~約1μg/ml、約500ng/ml~約1μg/mlまたは約3ng/ml~約30ng/mlの範囲の濃度を有し得る。
【0025】
第1の拡大増殖と第2の拡大増殖は、同じ培養容器内で、または異なる培養容器内で行われ得る。例えば、第1の拡大増殖は第1の培養容器内で行われ得、第2の拡大増殖は第2の培養容器内で行われ得る。
【0026】
第1の培養培地は、抗CD3抗体またはその断片、抗41BB抗体またはその断片、抗OX40抗体またはその断片、および抗PD-1抗体またはその断片から選択される1つ以上の抗体を含み得る。
【0027】
第2の培養培地は、抗CD3抗体もしくはその断片、および/または抗CD28抗体もしくはその断片を含み得る。
【0028】
第2の培養培地は、抗CD3抗体もしくはその断片、および/または抗CD28抗体もしくはその断片で被覆されたマイクロビーズを含み得る。
【0029】
抗CD3抗体またはその断片は、OKT3抗体またはその断片であり得る。
【0030】
第1の支持細胞および/または第2の支持細胞は、抗原提示細胞であり得る。第1の支持細胞および/または第2の支持細胞は、末梢血単核球(PBMC)であり得る。
【0031】
本開示はまた、本方法によって調製された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)(例えば、拡大増殖されたTIL集団)を提供する。
【0032】
TIL(例えば、拡大増殖後に、例えば、拡大増殖されたTIL集団)を含む薬学的組成物も本開示によって包含される。
【0033】
薬学的組成物は、薬学的に許容され得る担体をさらに含み得る。
【0034】
本開示はまた、患者における疾患を処置する方法であって、薬学的組成物またはTILを前記患者に投与することを含む方法を提供する。
【0035】
疾患は癌であり得る。
【0036】
本開示の第1の局面は、TIL細胞を調製するための方法を提供する。本方法は、
(1)腫瘍試料からTIL細胞を含有する最初の細胞集団を提供する工程であって、前記最初の細胞集団中のTIL細胞の数はn0である、工程と、
(2)場合により、前記最初の細胞集団を前処理する工程であって、前記前処理は、前記最初の細胞集団をIL7、IL15および/またはIL21の存在下で約6時間~約36時間、約8時間~約30時間または約10時間~約24時間培養し、前処理された最初の細胞集団を得ることを含む、工程と、
(3)前記最初の細胞集団(または前記前処理された最初の細胞集団)と第1の支持細胞とを第1の培養培地中で期間、t1共培養し、第1の拡大増殖された細胞集団を得る工程であって、前記第1の拡大増殖された細胞集団中のTIL細胞の数はn1であり、n1/n0は、約1000~約10000であり、n1≧1×10である、工程と、
(4)前記第1の拡大増殖された細胞集団を第2の支持細胞とともに第2の培養培地中で期間、t2共培養し、第2の拡大増殖された細胞集団(すなわち、拡大増殖されたTIL集団)を得る工程であって、前記第2の拡大増殖された細胞集団中のTIL細胞の数はn2であり、n2/n1は、約4000~約10000であり、n2≧1×1010である、工程と、
を含み得る。
【0037】
工程(3)は、第1の培養容器内で実施され得る。工程(4)は、第2の培養容器内で実施され得る。工程(3)と工程(4)は、同じ培養容器内で実施され得る。
【0038】
ある特定の態様において、t1は、約7日間~約16日間または約9日間~約14日間である。
【0039】
ある特定の態様において、t2は、約10日~約16日、または約12日~約14日である。
【0040】
ある特定の態様において、第2の拡大増殖された細胞集団中の細胞の総数を基準として、第2の拡大増殖された細胞集団中のTIL細胞の純度は、少なくとももしくは約70%、少なくとももしくは約75%、少なくとももしくは約80%、少なくとももしくは約85%、少なくとももしくは約90%、少なくとももしくは約92%、少なくとももしくは約94%、少なくとももしくは約95%であり、またはそれより高い。
【0041】
ある特定の態様において、工程(3)および(4)の総拡大増殖比n2/n0は、約0.1×10~約20×10、または約1×10~約10×10である。
【0042】
ある特定の態様において、n0は、≧2000である。
【0043】
ある特定の態様において、第1の培養培地は、基礎培養培地、血清または血清代替物、および/またはL-グルタミンを含む。ある特定の態様において、第1の培養培地は、IL-2、IL-7、IL-15およびIL-21から選択される1つ以上のサイトカインを含む。ある特定の態様において、第1の培養培地は、抗CD3抗体もしくはその断片(例えば、OKT3抗体またはその断片)、抗41BB抗体もしくはその断片、抗OX40抗体もしくはその断片、抗PD-1抗体もしくはその断片、またはこれらの組み合わせを含む。
【0044】
ある特定の態様において、第1の拡大増殖では、共培養の開始時に、最初の細胞集団(または前処理された最初の細胞集団)中のTIL細胞の、第1の支持細胞に対する細胞数比R1は、約1:10~約1:10000、約1:10~約1:1000、約1:10~約1:5000、約1:20~約1:5000、約1:10~約1:500、約1:25~約1:500、約1:25~約1:400、約1:25~約1:300、約1:25~約1:200または約1:25~約1:100の範囲である。
【0045】
ある特定の態様において、第2の拡大増殖では、共培養の開始時に、第1の拡大増殖された細胞集団中のTIL細胞の、第2の支持細胞に対する細胞数比R2は、約1:2~約1:400、約1:2~約1:1,000、約1:2~約1:500、約1:2~約1:300、約1:2~約1:200、約1:2~約1:100、約1:5~約1:400、約1:5~約1:1,000、約1:5~約1:500、約1:5~約1:300、約1:5~約1:200、約1:5~約1:100、約1:10~約1:400、約1:10~約1:1,000、約1:10~約1:500、約1:10~約1:300、約1:10~約1:200または約1:10~約1:100の範囲である。
【0046】
ある特定の態様において、腫瘍試料はインビトロ試料である。
【0047】
ある特定の態様において、腫瘍試料は、極めて小さな腫瘍試料または少数の出発TILを含有する試料である。
【0048】
ある特定の態様において、腫瘍試料は、切除生検試料および切開生検試料などの生検試料であり得る。ある特定の態様において、腫瘍試料は腫瘍生検試料であり得る。ある特定の態様において、腫瘍試料は、穿刺吸引生検試料などの吸引生検試料であり得る。ある特定の態様において、腫瘍試料は、切除または剥離された腫瘍試料であり得る。ある特定の態様において、腫瘍試料は穿刺試料であり得る。ある特定の態様において、腫瘍試料は外科試料であり得る。
【0049】
ある特定の態様において、腫瘍試料は腫瘍患者から得られる。
【0050】
ある特定の態様において、試料は、高用量IL-2(例えば、6,000IU/mL)を含む増殖培地中で維持され得、腫瘍の破壊および/またはTILの増殖についてモニターされ得る。処理後に残存している生存細胞を有する任意の腫瘍は単一細胞懸濁液へと酵素的に消化されて、凍結保存され、またはTILの拡大増殖のために直接処理され得る。
【0051】
ある特定の態様において、TIL細胞は、解離後のTILの選択などの方法によって得られた少数の出発細胞を含む。
【0052】
ある特定の態様において、腫瘍試料は、限定されないが、肺癌、子宮頸癌および卵巣癌などの固形腫瘍を含む。
【0053】
ある特定の態様において、腫瘍試料は、約0.01g~約0.05g、約0.01g~約0.05g、約0.02g~約0.04g、約0.01g、約0.02g、約0.03g、約0.04gまたは約0.05gの重量を有する。
【0054】
ある特定の態様において、腫瘍試料は、約0.01g~約0.5g、約0.01g~約0.45g、約0.01g~約0.4g、約0.01g~約0.35g、約0.01g~約0.3g、約0.01g~約0.25g、約0.01g~約0.2g、約0.01g~約0.15g、約0.01g~約0.1g、約0.01g~約0.09g、約0.01g~約0.08g、約0.01g~約0.07g、約0.01g~約0.06g、約0.06g、約0.07g、約0.08g、約0.09g、約0.1g、約0.15g、約0.2g、約0.25g、約0.3g、約0.35g、約0.4g、約0.45gまたは約0.5gの重量を有する。
【0055】
ある特定の態様において、n0は、約1,000~約50,000、約2,000~約50,000、約2,000~約10,000または約3,000~約10,000である。
【0056】
ある特定の態様において、n1は、約0.1×10~約3.0×10または約0.3×10~約2.0×10である。
【0057】
ある特定の態様において、n2は、約1×1010~約2×1011である。ある特定の態様において、n2は、約1.0×1011~約2.0×1011である。
【0058】
本方法の一態様は、TILを(場合により単離し、)培養する前に固形腫瘍組織を酵素的に消化することをさらに含む。
【0059】
ある特定の態様において、腫瘍試料は、TIL細胞を含有する最初の細胞集団を得るために解離溶液で解離され得る。解離溶液は、コラゲナーゼII、コラゲナーゼIV、DNase、ヒアルロニダーゼおよび/または等張溶液を含み得る。
【0060】
ある特定の態様において、等張溶液は、培養培地、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)などを含むが、これらに限定されない。
【0061】
ある特定の態様において、解離溶液中で、コラゲナーゼIIは、約0.1g/ml~約10g/mlの濃度を有し、コラゲナーゼIVは、約0.1g/ml~約10g/mlの濃度を有し、DNaseは、約0.1g/ml~約10g/mlの濃度を有し、ヒアルロニダーゼは約10U/ml~約1000U/mlの濃度を有する。
【0062】
ある特定の態様において、前処理工程(例えば、工程(2))では、第1の培養培地では((例えば、工程(3)では)または第2の培養培地では((例えば、工程(4)では)、IL7は約10ng/ml~約100μg/mlの濃度を有し得る。IL15は、約10ng/ml~約100μg/mlの濃度を有し得る。IL21は、約10ng/ml~約100μg/mlの濃度を有し得る。
【0063】
ある特定の態様において、最初の細胞集団中のTIL細胞の、第1の支持細胞に対する細胞数比は、約1:10~約1:10000、約1:100~約1:600または約1:200~約1:400であり得る。
【0064】
ある特定の態様において、第1の培養培地は、IL-2、IL-7、IL-15およびIL-21から選択される1つ以上のサイトカインを含有する。ある特定の態様において、第1の培養培地は、抗CD3抗体またはその断片(例えば、OKT3抗体またはその断片)、抗41BB抗体またはその断片、抗OX40抗体またはその断片および抗PD-1抗体またはその断片から選択される1つ以上の抗体を含有する。
【0065】
ある特定の態様において、第1の培養培地は液体培養培地である。
【0066】
ある特定の態様において、第1の培養培地は完全培養培地である。
【0067】
ある特定の態様において、第1の培養培地中で、OKT3は約3ng/ml~約100ng/mlの濃度を有する。
【0068】
ある特定の態様において、第1の培養培地中でまたは第2の培養培地中で、IL2は、約300IU/ml~約10,000IU/ml、約5,000IU/ml~約10,000IU/ml、約500IU/ml~約10,000IU/ml、約800IU/ml~約10,000IU/ml、約1,000IU/ml~約10,000IU/ml、約1,200IU/ml~約10,000IU/ml、約1,500IU/ml~約10000IU/ml、約1,800IU/ml~約10,000IU/ml、約2,000IU/ml~約10,000IU/ml、約3,000IU/ml~約10,000IU/ml、約4,000IU/ml~約10,000IU/ml、約5,000IU/ml~約10000IU/ml、約6,000IU/ml~約10,000IU/ml、約7,000IU/ml~約10000IU/ml、約8,000IU/ml~約10,000IU/ml、約9,000IU/ml~約10000IU/ml、約300IU/ml~約5,000IU/ml、約500IU/ml~約5,000IU/ml、約1,000IU/ml~約8,000IU/ml、約1,000IU/ml~約5,000IU/ml、約500IU/ml、約600IU/ml、約700IU/ml、約800IU/ml、約900IU/ml、約1,000IU/ml、約2,000IU/ml、約3,000IU/ml、約4,000IU/ml、約5,000IU/ml、約6,000IU/ml、約7,000IU/ml、約8,000IU/ml、約9,000IU/mlまたは約10,000IU/mlの濃度を有する。
【0069】
ある特定の態様において、第1の拡大増殖(例えば、工程(3))において、培養過程の間、TIL細胞の数は、約20万細胞/ml(0.2×10細胞/ml)~約400万細胞/ml(4×10細胞/ml)であるように調節される。
【0070】
ある特定の態様において、細胞密度は、流体/培地置換または灌流/注入によって調節される。
【0071】
ある特定の態様において、第1の支持細胞は、放射線照射された細胞である。
【0072】
ある特定の態様において、支持細胞は、末梢血単核球(PBMC)および/または抗原提示細胞などを含むが、これらに限定されない。ある特定の態様において、支持細胞は、PBMC由来の支持細胞を含み得る。ある特定の態様において、支持細胞は、K562細胞から生じた人工抗原提示細胞を含み得る(Forget et al.,Activation and propagation of tumor infiltrating lymphocytes on clinical-grade designer artificial antigen presenting cells for adoptive immunotherapy of melanoma,J.Immunother.2014,37(9):448-460;Lozzio etc.,Human chronic myelogenous leukemia cell-line with positive Philadelphia chromosome,Blood.1975,45:321-334)。
【0073】
いくつかの態様において、抗原提示細胞は末梢血単核球(PBMC)である。いくつかの態様において、PBMCは放射線照射され、同種異系である。いくつかの態様において、抗原提示細胞は人工抗原提示細胞である。
【0074】
一態様において、支持細胞は、放射線照射されたPBMCである。
【0075】
第1の支持細胞と第2の支持細胞は、同じであり得、または異なり得る。
【0076】
ある特定の態様では、工程(3)において、培養は、G-Rex(登録商標)10M Systemで行われる。
【0077】
ある特定の態様では、工程(3)において、培養は、CliniMACS Prodigy(登録商標)で行われる。
【0078】
ある特定の態様において、細胞は、第1の拡大増殖後に(例えば、工程(3)の後に)凍結保存される。
【0079】
ある特定の態様において、第2の拡大増殖(例えば、工程(4))のために接種されるTIL細胞の数は、20×10よりも大きい。
【0080】
ある特定の態様において、第2の培養培地は液体培養培地である。
【0081】
ある特定の態様において、第2の培養培地は完全培養培地である。
【0082】
ある特定の態様において、完全培養培地は、基礎培養培地、血清もしくは血清代替物、L-グルタミンおよび/またはサイトカインを含む。
【0083】
ある特定の態様において、基礎培養培地は、AIM-V、RPMI-1640、オプティマイザCTS T細胞拡大増殖基礎培養培地、X-vivo 15、TexMACSまたはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0084】
ある特定の態様において、血清または血清代替物は、ヒトAB SerumまたはCTS(商標)Immune Cell Serum Replacement(SR)を含むが、これらに限定されない。
【0085】
ある特定の態様において、L-グルタミンは、L-グルタミン100×またはSG-200 Stable L-Glutamine Dipeptideを含むが、これらに限定されない。
【0086】
ある特定の態様において、サイトカインは、IL2、IL7、IL-15、IL-21またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0087】
ある特定の態様において、IL2の濃度範囲は、約300IU/ml~約10,000IU/mlである。
【0088】
ある特定の態様において、IL7、IL15および/またはIL21の濃度範囲は、約10ng/ml~約100μg/mlである。
【0089】
ある特定の態様において、第2の培養培地は、OKT3、抗CD3 Dynabeads(登録商標)、抗CD3/抗CD28 Dynabeads(登録商標)またはこれらの組み合わせを含む成分をさらに含有する。
【0090】
ある特定の態様において、第2の培養培地において、OKT3は、約10ng/ml~約100μg/mlの濃度を有する。
【0091】
ある特定の態様において、第2の培養培地において、抗CD3 Dynabeads(登録商標)の量(数)は、接種されたTIL細胞の数の約1~3倍である。
【0092】
ある特定の態様において、第2の培養培地において、抗CD3/抗CD28 Dynabeads(登録商標)の量(数)は、接種されたTIL細胞の数の1~3倍である。
【0093】
ある特定の態様において、工程(4)では、培養は、Prodigy(登録商標)、WAVEまたはG-Rex(登録商標)(Wilson Wolf Manufacturing)などの培養容器中で行われる。
【0094】
ある特定の態様において、第1の拡大増殖された細胞集団および第2の支持細胞は、Xuri W25細胞バッグ中に接種される。
【0095】
ある特定の態様において、細胞バッグの体積は、約2L~約50Lである。
【0096】
ある特定の態様において、Xuri W25は、以下から選択される1つ以上のパラメータを含む:
【表1】
【0097】
ある特定の態様において、TILがXuri W25中で拡大増殖される場合、培養体積は約300ml~約25000mlの範囲内である。
【0098】
ある特定の態様において、TILがXuri W25中で拡大増殖される場合、TIL細胞の密度範囲は、約0.01×10細胞/ml~約50×10細胞/mlである。
【0099】
ある特定の態様において、TILがXuri W25中で拡大増殖される場合、培養過程中の灌流手順は以下の通りである。
【表2】
【0100】
注:Vは培養系の体積である。
【0101】
ある特定の態様において、前記方法は、TIL細胞を得るために、第1の拡大培養されたTIL細胞集団の再拡大増殖を行う工程(5)をさらに含む。工程(5)において、再拡大増殖は、Prodigy(登録商標)、WAVEまたはG-Rex(登録商標)などの培養系において実施され得る。
【0102】
ある特定の態様において、工程(5)では、再拡大増殖後に、細胞の洗浄、濃縮および/または採集が行われる。洗浄および濃縮は、LOVO/Sefia/Sepax C-Pro/Sepax 2/CS5+/CSEなどにおいて実施され得る。いくつかの態様において、採集は、LOVO細胞処理系を使用して行われる。
【0103】
ある特定の態様において、LOVO/Sefia/Sepax C-Pro/Sepax 2/CS5+/CSEのパラメータ(洗浄および濃縮パラメータを含む)は以下の通りである。
【0104】
処理することができる試料の体積は、約50ml~約22000mlの範囲である;
容器中に流入する試料の速度は、約50ml/分~約200ml/分の範囲である;
容器から流出する試料の速度は、約50ml/分~約200ml/分の範囲である;
洗浄サイクルの数は、約1~約5の範囲である;および/または
細胞を洗浄し、濃縮した後、排出体積は約50ml~約2000mlの範囲である。
【0105】
ある特定の態様において、洗浄用の洗浄液は、0.9%塩化ナトリウム溶液、化合物電解質(注入)組成物、グルコースおよび塩化ナトリウム(注入)組成物またはこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0106】
ある特定の態様において、洗浄溶液は、約0.1%~約5%のヒト血清アルブミンをさらに含有する。
【0107】
ある特定の態様において、工程(4)では、一定分量に分割することが再拡大増殖後に行われる。
【0108】
ある特定の態様において、一定分量に分割することは、Cell Connect試料分割パイプラインおよびSepax 2、Sepax C-proまたはSefia試料分割装置を使用することによって実行される。
【0109】
ある特定の態様において、一定分量に分割することは、洗浄および濃縮後に行われる。
【0110】
ある特定の態様において、洗浄および濃縮パラメータは、以下を含む:
処理することができる試料の体積は、約5ml~約500mlの範囲である;
一定分量への分割の排出体積は約5ml~約400mlの範囲である;および/または
凍結保存溶液を添加した後の細胞試料中のDMSOの濃度は、0%~約10%の範囲である。
【0111】
いくつかの態様において、前記方法は、凍結保存過程を使用して、第1の拡大増殖後および/または第2の拡大増殖後に細胞を凍結保存する工程をさらに含む。
【0112】
いくつかの態様において、凍結保存過程は、採集されたTIL集団の、凍結保存培地に対する1:1の比を使用して行われる。
【0113】
いくつかの態様において、凍結保存培地は、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む。いくつかの態様において、凍結保存培地は、7%~10%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含む。
【0114】
いくつかの態様において、第2の拡大増殖後に採集されたTILの治療集団は、TILの治療有効投与量に十分なTILを含む。
【0115】
いくつかの態様において、治療有効投与量に十分なTILの数は、少なくとももしくは約1×1010、少なくとももしくは約2×1010、少なくとももしくは約3×1010、少なくとももしくは約4×1010、少なくとももしくは約5×1010、少なくとももしくは約6×1010、少なくとももしくは約7×1010、少なくとももしくは約8×1010、少なくとももしくは約9×1010、または少なくとももしくは約10×1010である。
【0116】
本開示の第2の局面は、本開示の第1の局面に記載された方法によって調製/拡大増殖されたTIL細胞を提供する。
【0117】
本開示の第3の局面は、本方法によって調製されたTIL細胞の、抗腫瘍薬の調製における適用を提供する。
【0118】
本開示の範囲内で、本開示の上記技術的特徴および以下で具体的に説明される技術的特徴(態様など)は、互いに組み合わせて、新しいまたは好ましい技術的解決策を形成することができることを理解されたい。紙幅の制約のため、ここでは1つずつ繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0119】
図1図1は、小さな試料からのTIL拡大増殖の概略図である。
図2図2は、小さな試料からのTIL拡大増殖の方法フロー図である。
図3図3は、凍結保存前および後の第1の拡大増殖から得られたTIL細胞の比較を示す。
図4図4は、第1の拡大増殖および第2の拡大増殖のTIL拡大増殖曲線を示す。
図5図5は、第1の拡大増殖(第1の迅速拡大増殖プロトコル(REP)または「第1のREP」)および第2の拡大増殖(「第2のREP」)から得られたTIL細胞のマーカーの比較を示す。
図6図6は、Prodigy(登録商標)を使用した第1の拡大増殖についての細胞の増殖曲線を示すグラフである。
図7図7は、第1の拡大増殖中のTIL細胞の増殖および分化に対する添加されたサイトカインの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0120】
本開示は、TILを拡大増殖させるための改善された方法を提供する。本方法は、TILの改善された有効性、改善された表現型、および増加した代謝的健康をもたらす。
【0121】
本開示は、極めて小さな腫瘍試料から多数のTILを迅速に得ることができる方法を提供する。例えば、解離および拡大増殖後に、小さな腫瘍組織から多数のTIL細胞を生産することができる。本方法は、TIL洗浄およびパッケージングを実行するために、Prodigy(登録商標)/G-Rex(登録商標)/Waveおよび他の細胞拡大増殖システム、ならびにLOVO/Sefia/Sepax C-Pro/Sepax 2/CS5+/CSEおよび他の閉鎖系の使用を含み得、これらは生産能力を改善し得、工業生産に適している。
【0122】
本方法では、腫瘍反応性T細胞(例えば、TIL)が単離され得、(例えば、養子細胞移入療法において)投与を必要とする患者に投与するために、細胞は所望の量まで培養拡大増殖される。
【0123】
本発明のTILまたは組成物によって処置されるべき様々な癌の例には、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膵臓癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肝臓癌、脳癌、リンパ腫、白血病、肺癌などが含まれるが、これらに限定されない。
【0124】
本開示は、腫瘍反応性T細胞を単離および培養するための組成物および方法を提供する。一態様において、本開示は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を単離し、培養するための組成物および方法を提供する。
【0125】
本開示は、養子免疫療法において使用するための細胞を急速に単離および培養するための組成物および方法を含む。一態様において、単離された細胞は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。
【0126】
TILは、固形腫瘍組織の試料から単離され、培養され得る。
【0127】
別の局面において、本開示は、養子移入のための細胞療法において使用するためのTILを濃縮および拡大増殖させることを含む。一態様において、TILは、インビトロ拡大増殖の前に腫瘍試料から選択的に単離される。
【0128】
さらに別の局面において、細胞はIL-2の存在下で培養される。
【0129】
さらに別の局面において、本開示は、患者において腫瘍を処置する方法であって、腫瘍を処置することを必要とする患者に有効量のTILの集団を投与することを含む、方法を含む。
【0130】
凍結保存培地は、細胞の凍結保存のために使用することができる任意の培地を指し得る。このような培地は、7%~10%のDMSOを含む培地を含むことができる。例示的な培地としては、CryoStor CS10、Hyperthermasolおよびこれらの組み合わせが挙げられる。「CS10」という用語は、Stemcell TechnologiesまたはBiolife Solutionsから得られる凍結保存培地を指す。CS10培地は、商品名「CryoStor(登録商標)CS10」と呼ばれ得る。CS10培地は、DMSOを含む無血清動物成分非含有培地である。
【0131】
一般に、TILは、最初に患者腫瘍試料から得られ(「初代TIL」)、次いで、本明細書中に記載されるようなさらなる操作のために、より大きな集団に拡大増殖され得、凍結保存、解凍または再刺激されてもよく、TILの健康の指標として表現型および代謝パラメータについて評価されてもよい。
【0132】
患者腫瘍試料は、外科的切除、針生検、または腫瘍細胞とTIL細胞との混合物を含有する試料を得るための他の手段などを介して、当技術分野で公知の方法を用いて取得され得る。一般に、腫瘍試料は、原発腫瘍、浸潤性腫瘍または転移性腫瘍を含む任意の固形腫瘍に由来し得る。腫瘍試料はまた、血液悪性腫瘍から得られる腫瘍などの液体腫瘍であり得る。固形腫瘍は、乳房、膵臓、前立腺、結腸直腸、肺、脳、腎臓、胃および皮膚癌(扁平上皮癌腫、基底細胞癌腫および黒色腫を含むが、これらに限定されない)を含むがこれらに限定されない任意の癌型のものであり得る。
【0133】
一旦得られると、腫瘍試料は、鋭的剥離を使用して小片に断片化され得る。TILは、酵素的腫瘍消化物を使用してこれらの断片から培養され得る。このような腫瘍消化物は、酵素培地(例えば、Roswell Park Memorial Institute(RPMI)1640緩衝液、2mMグルタマート、10mcg/mLゲンタマイシン、30単位/mLのDNaseおよび1.0mg/mLのコラゲナーゼ)中でのインキュベーション、その後の(例えば、組織解離器を使用した)機械的解離によって生成され得る。腫瘍消化物は、腫瘍を酵素培地中に配置し、約1分間腫瘍を機械的に解離させた後、5% CO中、37℃で30分間インキュベーションを行い、その後、小さな組織片のみが存在するまで前述の条件下での機械的解離およびインキュベーションのサイクルを繰り返すことによって生成され得る。この方法の最後に、細胞懸濁液が多数の赤血球または死細胞を含有する場合、これらの細胞を除去するために、FICOLL分岐親水性多糖を使用した密度勾配分離が実施され得るその開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2012/0244133号に記載されているものなど、当技術分野で公知の代替方法が使用され得る。前述の方法のいずれもが、TILを拡大増殖させる方法または癌を処置する方法に関して本明細書に記載される態様のいずれにおいても使用され得る。
【0134】
いくつかの態様において、断片化は、例えば、剥離および消化を含む物理的な断片化を含む。いくつかの態様において、断片化は物理的断片化である。いくつかの態様において、断片化は剥離である。いくつかの態様において、断片化は消化によるものである。いくつかの態様において、TILは、酵素的腫瘍消化物および患者から得られた腫瘍断片から最初に培養され得る。一態様において、TILは、酵素的腫瘍消化物および患者から得られた腫瘍断片から最初に培養され得る。
【0135】
いくつかの態様において、TILは腫瘍消化物から得られる。いくつかの態様において、腫瘍消化物は、酵素培地、例えば限定するものではないが、RPMI 1640、2mM GlutaMAX、10mg/mLゲンタマイシン、30U/mL DNaseおよび1.0mg/mLコラゲナーゼ中でのインキュベーション、その後の機械的解離(GentleMACS、Miltenyi Biotec、Auburn、Calif.)によって生成される。腫瘍を酵素培地中に配置した後、腫瘍を約1分間機械的に解離させることができる。次いで、5%CO中37℃で、溶液を30分間インキュベートすることができ、次いで再び約1分間機械的に破壊される。5%CO中37℃で30分間再びインキュベートした後、約1分間、腫瘍に3回目の機械的破壊を行うことができる。いくつかの態様において、第3の機械的破壊の後に大きな組織片が存在する場合、5%CO中、37℃でさらに30分間のインキュベーションありまたはなしで、1または2回の追加の機械的解離が試料に適用された。いくつかの態様において、最終インキュベーションの最後に、細胞懸濁液が多数の赤血球または死細胞を含有する場合、これらの細胞を除去するために、Ficollを使用した密度勾配分離を実施することができる。
【0136】
いくつかの態様において、第1の拡大増殖は、約7日間~約16日間、約9日間~約14日間、約5日間~約16日間、約6日間~約16日間、約8日間~約16日間、約9日間~約16日間、約10日間~約16日間、約11日間~約16日間、約12日間~約16日間、約9日間~約12日間、約8日間~約12日間または約7日間~約12日間進行することができる。
【0137】
いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約15日間、約16日間、約17日間、約18日間、約19日間または約20日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約1日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約2日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約3日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約4日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約5日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約6日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約7日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約8日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約9日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、10日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約11日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約12日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約13日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約1日間~約11日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、2日間~約11日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約3日間~約11日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約4日間~約11日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約5日間~約11日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約6日間~約11日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、7日間~約11日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約8日間~約11日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約9日間~約11日間進行することができる。いくつかの態様において、第1のTIL拡大増殖は、約10日間~約11日間進行することができる。
【0138】
いくつかの態様において、第2の拡大増殖は、約7日間~約16日間、約9日間~約14日間、約5日間~約16日間、約6日間~約16日間、約8日間~約16日間、約9日間~約16日間、約10日間~約16日間、約11日間~約16日間、約12日間~約16日間、約9日間~約12日間、約8日間~約12日間、約7日間~約12日間、約5日間~約18日間、約6日間~約18日間、約7日間~約18日間、約8日間~約18日間、約9日間~約18日間、約10日間~約18日間、約11日間~約18日間、約12日間~約18日間、約13日間~約18日間、約5日間~約16日間、約6日間~約16日間、約8日間~約16日間、約9日間~約16日間、約10日間~約16日間、約11日間~約16日間、約12日間~約16日間進行することができる。
【0139】
いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約15日間、約16日間、約17日間、約18日間、約19日間または約20日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約1日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約2日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約3日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約4日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約5日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約6日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約7日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約8日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約9日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約10日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約11日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約12日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約13日間~約14日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約1日間~約11日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約2日間~約11日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約3日間~約11日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約4日間~約11日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約5日間~約11日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約6日間~約11日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約7日間~約11日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約8日間~約11日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約9日間~約11日間進行することができる。いくつかの態様において、第2のTIL拡大増殖は、約10日間~約11日間進行することができる。
【0140】
ある特定の態様では、(第1の拡大増殖のための)第1の培養培地において、OKT3は、約3ng/ml~約100ng/ml、約1ng/ml~約100ng/ml、約5ng/ml~約100ng/ml、約10ng/ml~約100ng/ml、約15ng/ml~約100ng/ml、約20ng/ml~約100ng/ml、約30ng/ml~約100ng/ml、約40ng/ml~約100ng/ml、約50ng/ml~約100ng/ml、約60ng/ml~約100ng/ml、約3ng/ml~約80ng/ml、約3ng/ml~約60ng/ml、約3ng/ml~約50ng/ml、約5ng/ml~約50ng/ml、約10ng/ml~約50ng/mlまたは約3ng/ml~約30ng/mlの範囲の濃度を有し得る。いくつかの態様において、細胞培養培地は約30ng/mLのOKT3抗体を含む。一態様において、細胞培養培地は、約0.1ng/mL、約0.5ng/mL、約1ng/mL、約2.5ng/mL、約5ng/mL、約7.5ng/mL、約10ng/mL、約15ng/mL、約20ng/mL、約25ng/mL、約30ng/mL、約35ng/mL、約40ng/mL、約50ng/mL、約60ng/mL、約70ng/mL、約80ng/mL、約90ng/mL、約100ng/mL、約200ng/mL、約500ng/mLおよび約1pg/mLのOKT3抗体を含む。一態様において、細胞培養培地は、0.1ng/mL~1ng/mL、1ng/mL~5ng/mL、5ng/mL~10ng/mL、10ng/mL~20ng/mL、20ng/mL~30ng/mL、30ng/mL~40ng/mL、40ng/mL~50ng/mLおよび50ng/mL~100ng/mLのOKT3抗体を含む。
【0141】
ある特定の態様では、(第2の拡大増殖のための)第2の培養培地において、OKT3は、約10ng/ml~約100μg/ml、約1ng/ml~約100μg/ml、約20ng/ml~約100μg/ml、約50ng/ml~約100μg/ml、約100ng/ml~約100μg/ml、約500ng/ml~約100μg/ml、約1μg/ml~約100μg/ml、約10μg/ml~約100μg/ml、約50μg/ml~約100μg/ml、約10ng/ml~約50μg/ml、約50ng/ml~約50μg/ml、約100ng/ml~約50μg/ml、約500ng/ml~約50μg/ml、約1μg/ml~約50μg/ml、約10μg/ml~約50μg/ml、約50ng/ml~約10μg/ml、約100ng/ml~約10μg/ml、約200ng/ml~約10μg/ml、約500ng/ml~約10μg/ml、約1μg/ml~約10μg/ml、約10ng/ml~約1μg/ml、約100ng/ml~約1μg/ml、約200ng/ml~約1μg/ml、約500ng/ml~約1μg/mlまたは約3ng/ml~約30ng/mlの濃度を有し得る。いくつかの態様において、細胞培養培地は約30ng/mLのOKT3抗体を含む。一態様において、細胞培養培地は、約0.1ng/mL、約0.5ng/mL、約1ng/mL、約2.5ng/mL、約5ng/mL、約7.5ng/mL、約10ng/mL、約15ng/mL、約20ng/mL、約25ng/mL、約30ng/mL、約35ng/mL、約40ng/mL、約50ng/mL、約60ng/mL、約70ng/mL、約80ng/mL、約90ng/mL、約100ng/mL、約200ng/mL、約500ng/mLおよび約1pg/mLのOKT3抗体を含む。一態様において、細胞培養培地は、0.1ng/mL~1ng/mL、1ng/mL~5ng/mL、5ng/mL~10ng/mL、10ng/mL~20ng/mL、20ng/mL~30ng/mL、30ng/mL~40ng/mL、40ng/mL~50ng/mLおよび50ng/mL~100ng/mLのOKT3抗体を含む。
【0142】
いくつかの態様において、支持細胞は、PBMCなどの抗原提示細胞(APC)である。一態様において、第1の拡大増殖および/または第2の拡大増殖における、TILの、支持細胞(例えば、PBMCおよび/または抗原提示細胞)に対する比は、約1~25、約1~50、約1~100、約1~125、約1~150、約1~175、約1~200、約1~225、約1~250、約1~275、約1~300、約1~325、約1~350、約1~375、約1~400または約1~500である。一態様において、第1の拡大増殖および/または第2の拡大増殖における、TILの、支持細胞(例えば、PBMC)に対する比は、1~50と1~300の間である。一態様において、第1の拡大増殖および/または第2の拡大増殖における、TILの、支持細胞(例えば、PBMCおよび/または抗原提示細胞)に対する比は、1~100と1~200の間である。
【0143】
ある特定の態様において、支持細胞は、健康な血液ドナーからの標準的な全血単位から得られた末梢血単核球(PBMC)である。PBMCは、Ficoll-Paque勾配分離などの標準的な方法を使用して取得され得る。
【0144】
支持細胞(例えば、PBMC)は、第1または第2の拡大増殖において使用される前に、例えば放射線照射または熱処理を介して不活化され得る。
【0145】
免疫細胞は、例えば、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、ナチュラルキラー(NK)細胞またはリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞であり得る。本明細書に記載されている方法は、癌、感染性疾患および免疫不全症を含む多数の疾患を処置するために使用され得る。
【0146】
一態様において、TILは患者にとって自家である。
【0147】
ある特定の態様において、腫瘍反応性T細胞は、固形腫瘍組織から単離される。腫瘍組織は、TILを調製する前に患者から除去される。IL-2の存在下で細胞を培養することによって、TILをさらに濃縮することができる。
【0148】
別の態様は、腫瘍組織からT細胞を得ることを含む。腫瘍組織は癌性細胞を含み得る。T細胞は、フローサイトメトリー、負もしくは正の選択、または他の方法などによって、培養または拡大増殖の前に腫瘍組織の塊から単離され得る。
【0149】
別の局面において、TILの集団は、末梢血、骨髄または腹水などの液体腫瘍組織から単離される。
【0150】
本開示はまた、対象から腫瘍組織試料を得ることおよび腫瘍組織からTILを単離することを含む、養子細胞免疫療法のために対象から拡大された数のTILを得る方法を含む。
【0151】
本発明は、腫瘍反応性T細胞の集団の単離および拡大増殖のための方法を包含する。
【0152】
培養装置は、インビトロで細胞を培養する際に一般的に使用される任意の培養装置であり得る。
【0153】
細胞培養培地は、細胞の培養中に任意の時点で交換され得る。例えば、細胞培地を3~4日毎に交換され得る。
【0154】
細胞は、任意の所望の段階で培養装置から採集され得、その時点で、細胞は、すぐに使用され得るか、または後に使用するために保存するために凍結保存され得る。
【0155】
一局面において、本開示は、腫瘍反応性T細胞を培養する方法であって、閉鎖されたチャンバー内の固形腫瘍組織の試料から細胞を単離し、培養することを含む方法を含む。閉鎖されたチャンバーまたは密閉された装置内で細胞を培養することにより、汚染のリスクを防止し、または実質的に軽減し得る。閉鎖されたチャンバーまたは密閉された装置は、細胞療法を生成するために臨床研究室において使用される任意の適切な培養容器を含み得る。
【0156】
一態様において、IL2の存在下で細胞を培養することができる。
【0157】
一態様において、抗CD3抗体(またはその断片)および/または抗CD28抗体(またはその断片)などの免疫細胞刺激リガンドの存在下で細胞を培養することができる。
【0158】
別の態様において、抗CD3抗体(またはその断片)および/または抗CD28抗体(またはその断片)は、細胞とともに培養されるビーズに結合される。抗CD3/CD28抗体(またはその断片)は、同じビーズ上に、すなわち「シス」で、または別個のビーズに、すなわち「トランス」で、ビーズ上に固定化され得る。一態様において、TIL細胞拡大増殖および細胞増殖のためにビーズに結合された各抗体(またはその断片)の1:1の比が使用される。一態様において、ビーズに結合されたCD3:CD28抗体(またはこれらの断片)の比は、100:1から1:100の範囲およびその間の全ての整数値である。本開示の一局面において、抗CD3抗体(またはその断片)よりも多くの抗CD28抗体(またはその断片)が粒子に結合されている、すなわちCD3:CD28の比は1:1未満である。本開示のある特定の態様において、ビーズに結合された、抗CD28抗体(またはその断片)の、抗CD3抗体(またはその断片)に対する比は2:1より大きい。特定の一態様において、ビーズに結合された抗体(またはその断片)の約1:100の抗CD3:抗CD28比が使用される。別の態様において、ビーズに結合された抗体(またはその断片)の約1:75の抗CD3:抗CD28比が使用される。さらなる態様において、ビーズに結合された抗体(またはその断片)の約1:50の抗CD3:抗CD28比が使用される。別の態様において、ビーズに結合された抗体(またはその断片)の約1:30の抗CD3:抗CD28比が使用される。1つの好ましい態様において、ビーズに結合された抗体(またはその断片)の約1:10の抗CD3:抗CD28比が使用される。別の態様において、ビーズに結合された抗体(またはその断片)の約1:3の抗CD3:抗CD28比が使用される。さらに別の態様において、ビーズに結合された抗体(またはその断片)の約3:1の抗CD3:抗CD28比が使用される。
【0159】
ある特定の態様において、マイクロビーズはポリマーマイクロビーズである。ある特定の態様において、マイクロビーズは磁性マイクロビーズである。ある特定の態様において、マイクロビーズは磁性ポリマーマイクロビーズである。ある特定の態様において、マイクロビーズは超常磁性ポリマーマイクロビーズである。ポリマーは、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリラート、ポリアクリルアミド、ポリアミン、ポリエチレンイミン、ポリクオタニウムポリマー、ポリホスファゼン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ブロックコポリマーまたはポリウレタンを含み得る。ある特定の態様において、マイクロビーズは磁性ビーズである。ある特定の態様において、マイクロビーズはDynabeads(登録商標)である。ある特定の態様において、マイクロビーズ(例えば、Dynabeads(登録商標))は、γFeおよびFe磁性材料を含む単分散/均一、超常磁性およびポリマー性マイクロスフェアである。マイクロビーズは、CD3および/またはCD28細胞表面分子に対して特異的な抗体を吸着または結合するための担体として作用するポリマー材料の層で被覆される。
【0160】
細胞培養に適切な条件としては、血清(例えば、ウシ胎児血清またはヒト胎児血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGFPおよびTNF-αまたは当業者に公知の、細胞増殖のための任意の他の添加剤を含む、増殖および生存に必要な因子を含有し得る適切な培地(例えば、Minimal Essential MediaまたはRPMI Media 1640またはX-vivo 15(Lonza))が挙げられる。細胞の増殖のための他の添加剤としては、界面活性剤、プラスマネート、ならびにN-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノールなどの還元剤が挙げられるが、これらに限定されない。培地としては、添加されたアミノ酸、ピルビン酸ナトリウムおよびビタミンを含む、RPMI 1640、AIM-V、DMEM、MEM、α-MEM、F-12、X-Vivo 15、およびX-Vivo 20、Optimizerを挙げることができ、無血清であるか、または適切な量の血清(または血漿)もしくは所定のホルモンのセット、ならびに/もしくは細胞の増殖および拡大増殖に十分な量の(1または複数の)サイトカインが補充されている。標的細胞は、増殖を支持するのに必要な条件下、例えば、適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、空気+5%CO2)で維持される。
【0161】
本開示は、TIL細胞を調製するための方法を提供する。本方法は、
(1)腫瘍試料からTIL細胞を含有する最初の細胞集団を提供する工程であって、前記最初の細胞集団中のTIL細胞の数はn0である、工程と、
(2)場合により、前記最初の細胞集団に対する前処理を実施する工程であって、前記前処理は、IL7、IL15および/またはIL21サイトカインの存在下で6~36時間(好ましくは8~30時間、より好ましくは10~24時間)培養し、前処理された最初の細胞集団を得る工程を含む、工程と、
(3)第1の培養容器中で、前の工程で得られた前記最初の細胞集団と第1の支持細胞とを第1の培養培地中で期間t1共培養し、拡大増殖されたTIL細胞を含有する第1の拡大増殖された細胞集団を得る工程であって、前記第1の拡大増殖された細胞集団中のTIL細胞の数はn1であり、n1/n0は、1000~10000であり、n1≧1×10である、工程と、
(4)前記第1の拡大増殖された細胞集団を第2の培養容器に移し、第2の支持細胞とともに第2の培養培地中で期間t2共培養し、拡大増殖されたTILを含有する第2の拡大増殖された細胞集団を得る工程であって、前記第2の拡大増殖された細胞集団中のTIL細胞の数はn2であり、n2/n1は、4000~10000であり、n2≧1×1010である、工程と、
を含み得る。
【0162】
ある特定の態様において、t1は、7~16日または9~14日である。
【0163】
ある特定の態様において、t2は、10~16日または12~14日である。
【0164】
ある特定の態様において、第2の拡大増殖された細胞集団中の細胞の総数を基準として、第2の拡大増殖された細胞集団中のTIL細胞の純度Pは90%以上である。
【0165】
ある特定の態様において、純度Pは、少なくとももしくは約92%、少なくとももしくは約94%、および少なくとももしくは約P≧95%であり、またはそれより高い。
【0166】
ある特定の態様において、工程(3)および(4)の総拡大増殖率(n1×n2)/n0は、0.1×10~20×10、好ましくは1×10~10×10である。
【0167】
ある特定の態様において、n0は≧2000である。
【0168】
ある特定の態様において、工程(3)では、共培養の開始時に、最初の細胞集団中での、TIL細胞の第1の支持細胞に対する細胞数比R1は、1:10~1:10000である。
【0169】
ある特定の態様において、工程(4)では、共培養の開始時に、最初の細胞集団中の、TIL細胞の第2の支持細胞に対する細胞数比R2は、1:2~1:400である。
【0170】
ある特定の態様において、腫瘍試料はインビトロ試料である。
【0171】
ある特定の態様において、腫瘍試料は、限定されないが、肺癌、子宮頸癌および卵巣癌などの固形腫瘍を含む。
【0172】
好ましくは、腫瘍試料は、0.01~0.05g以上、より好ましくは0.02~0.04g、例えば0.02g、0.03gまたは0.04gの重量を有する。
【0173】
好ましくは、n0は、1,000~50,000、好ましくは2,000~50,000、より好ましくは2,000~10,000、より好ましくは3,000~10,000である。
【0174】
ある特定の態様において、n1は、0.1×10~3.0×10、好ましくは0.3×10~2.0×10である。
【0175】
ある特定の態様において、n2は、1×1010~2×1011である。
【0176】
ある特定の態様において、n2は、1.0×1011~2.0×1011である。
【0177】
ある特定の態様において、工程(1)では、TIL細胞を含有する最初の細胞集団を得るために、腫瘍試料は解離溶液で解離され、解離溶液は、コラゲナーゼII、コラゲナーゼIV、DNase、ヒアルロニダーゼおよび細胞等張溶液を含む、
ある特定の態様において、等張溶液は、培養培地、DPBSなどを含むが、これらに限定されない。
【0178】
ある特定の態様では、解離溶液中で、コラゲナーゼIIは、0.1g/ml~10g/mlの濃度を有し、コラゲナーゼIVは、0.1g/ml~10g/mlの濃度を有し、DNaseは、0.1g/ml~10g/mlの濃度を有し、ヒアルロニダーゼは10U/ml~1000U/mlの濃度を有する。
【0179】
ある特定の態様では、工程(2)において、IL7サイトカインは、10ng/ml~100μg/mlの濃度を有する。
【0180】
ある特定の態様では、工程(2)において、IL15サイトカインは、10ng/ml~100μg/mlの濃度を有する。
【0181】
ある特定の態様では、工程(2)において、IL21サイトカインは、10ng/ml~100μg/mlの濃度を有する。
【0182】
ある特定の態様では、工程(3)において、最初の細胞集団中での、TIL細胞の第1の支持細胞に対する細胞数比は、1:10~1:10000、好ましくは1:100~1:600、より好ましくは1:200~1:400である。
【0183】
ある特定の態様において、第1の培養培地は、IL-2、IL-7、IL-15、IL-21、OKT3抗体、抗41BB、抗OX40、抗PD-1またはこれらの組み合わせからなる群より選択されるサイトカインを含有する。
【0184】
さらなる局面において、本開示は、TILを含む薬学的組成物を提供する。
【0185】
TILはまた、治療、例えば細胞療法、または疾患の予防において薬学的組成物として使用することができる。薬学的組成物は、動物またはヒト、例えばヒト患者に移植され得る。薬学的組成物は、薬学的有効量の薬学的組成物の哺乳動物への投与を含むことがある、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の処置および/または予防のために使用することができる。本開示の薬学的組成物は、処置(または予防)されるべき疾患に適切な様式で投与され得る。投与の量および頻度は、患者の状態、ならびに患者の疾患の種類および重症度などの要因によって決定されるが、適切な投与量は臨床試験によって決定され得る。
【0186】
本方法によって得られる、TILの組成物は、単独で、または希釈剤とおよび/もしくはサイトカインもしくは細胞集団などの他の成分と組み合わせて薬学的組成物として投与され得る。簡潔には、本薬学的組成物は、1つ以上の薬学的にまたは生理学的に許容され得る、担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて、TILを含み得る。このような組成物は、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などの緩衝剤;グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトールなどの炭水化物;タンパク質;ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸;酸化防止剤;EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および防腐剤などを含み得る。
【0187】
一態様において、本方法を使用して拡大増殖されたTILは、薬学的組成物として患者に投与される。一態様において、薬学的組成物は、無菌緩衝液中のTILの懸濁液である。本方法を使用して拡大増殖されたTILは、当技術分野で公知の任意の適切な経路によって投与され得る。いくつかの態様において、TILは、約30~60分持続し得る単一の動脈内または静脈内注入として投与される。他の適切な投与経路としては、腹腔内、髄腔内およびリンパ内が挙げられる。
【0188】
薬学的組成物中に提供されるTILは、広い投与量範囲にわたって有効である。正確な投与量は、投与経路、組成物が投与される形態、処置されるべき対象の性別および年齢、処置されるべき対象の体重、ならびに主治医の選好および経験に依存する。適切であれば、臨床的に確立された投与量のTILも使用され得る。TILの投与量など、本明細書の方法を使用して投与される薬学的組成物の量は、処置されているヒトまたは哺乳動物、障害または症状の重症度、投与速度、活性薬学的成分の体内動態および処方医師の裁量に依存する。
【0189】
いくつかの態様において、TILは単回用量で投与され得る。このような投与は、注射、例えば静脈内注射によるものであり得る。いくつかの態様において、TILは複数回用量で投与され得る。投薬は、1年間に1回、2回、3回、4回、5回、6回、または6回超であり得る。投薬は、1ヶ月に1回、2週間に1回、1週間に1回、または1日おきに1回であり得る。TILの投与は、必要な限り長く継続し得る。
【0190】
有効量のTILは、鼻腔内および経皮経路、動脈内注射、静脈内、腹腔内、非経口、筋肉内、皮下、局所、移植、または吸入によるものを含む、同様の有用性を有する作用物質の許容された投与様式のいずれによっても、単回用量または複数回用量のいずれかで投与され得る。
【0191】
本開示はまた、本TILまたは本組成物を含有するキットを包含する。
【0192】
いくつかの態様において、キットは、本発明のTILまたは本発明の組成物、およびキットを使用するための説明書を含む。要素は、個別にまたは組み合わせて提供され得る。
【0193】
いくつかの態様において、キットは、本明細書に記載される要素の1つ以上を利用する方法において使用するための1つ以上の試薬を含む。試薬は、任意の適切な容器で提供され得る。例えば、キットは、1つ以上の反応または保存緩衝剤を提供し得る。試薬は、特定のアッセイにおいて使用可能な形態で、または使用前に(例えば、濃縮物または凍結乾燥形態での)1つ以上の他の成分の添加を必要とする形態で提供され得る。
【0194】
「腫瘍浸潤リンパ球」または「TIL」という用語は、血流から離れて腫瘍内に移動した白血球を指す。TILは、以下の細胞:CD8+細胞傷害性T細胞(リンパ球)、Th1およびTh17 CD4+T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞およびM1マクロファージの1つ以上の種類を含み得る。TIL細胞集団は、遺伝子改変されたTILを含むことができる。
【0195】
TILは、一般に、細胞表面マーカーを使用して生化学的に、または腫瘍に浸潤して処置をもたらす能力によって機能的に定義することができる。TILは、以下のバイオマーカー:CD4、CD8、TCRαβ、CD27、CD28、CD56、CCR7、CD45Ra、CD95、PD-1およびCD25の1つ以上を発現することによって分類され得る。これに加えておよびこれに代えて、TILは、患者内への再導入に際して固形腫瘍に浸潤する能力によって機能的に定義することができる。
【0196】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は、腫瘍組織または間質に浸潤する単核免疫細胞を指し得る。TILは、例えば、T細胞、B細胞およびNK細胞を含み得、その集団は、機能、活性および/またはバイオマーカー発現に基づいて細分類され得る。例えば、TILの集団は、例えばCD3および/またはCD8を発現する細胞傷害性T細胞、ならびにFOXP3発現によってしばしば特徴付けられる制御性T細胞(サプレッサーT細胞としても知られる)を含み得る。
【0197】
抗CD3抗体には、ムロモナブとしても知られるOKT3が含まれる。抗CD3抗体はまた、T3およびCD3cとしても知られるUHCT1クローンを含む。他の抗CD3抗体としては、例えば、オテリキシズマブ、テプリズマブおよびビジリズマブが挙げられる。ある特定の態様において、OKT3は、抗ヒトCD3モノクローナル抗体であり得る。
【0198】
本明細書で使用される場合、「IL2」という用語はインターロイキン2である。IL2には、ヒト型および哺乳動物型、保存的アミノ酸置換、グリコフォーム、バイオ後続品およびこれらのバリアントを含むIL2の全ての形態が含まれる。IL-2は、例えば、Nelson,J.Immunol.2004,172,3983-88、およびMalek,Annu.Rev.Immunol.2008,26,453-79に記載されており、これらの開示は、参照により本明細書に組み入れられる。例えば、IL-2という用語は、アルデスロイキン(PROLEUKIN、使い捨てバイアル当たり2200万IUで複数の供給業者から市販されている)などの、ヒトの組換え形態のIL-2ならびにCellGenix,Inc.,Portsmouth,N.H.,USA(CELLGRO GMP)またはProSpec-Tany TechnoGene Ltd.,East Brunswick,N.J.,USA(カタログ番号CYT-209-b)によって市販されている組換えIL-2の形態および他の供給元からの他の市販の等価物を包含する。アルデスロイキン(デス-アラニル-1、セリン-125ヒトIL-2)は、およそ15kDaの分子量を有するIL-2の非グリコシル化ヒト組換え形態である。IL-2という用語はまた、Nektar Therapeutics、South San Francisco、Calif.、USAから入手可能なペグ化IL2プロドラッグNKTR-214を含む、IL-2のペグ化形態も包含する。
【0199】
「抗体」という用語は、インタクトな分子ならびにFab、Fab’、F(ab’)2、Fvおよび一本鎖抗体などの抗体断片の両方を含む。本明細書で使用される 「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を指し得る。抗体は、任意の種、例えばマウス、ラット、ヒツジ、ヒトなどのものであり得る。治療目的のために、非ヒト抗原結合断片が使用される場合には、当該分野で公知の任意の方法によって非ヒト抗原結合断片をヒト化することができる。抗体はまた、修飾された抗体(例えば、オリゴマー、還元された抗体、酸化された抗体および標識された抗体)であり得る。
【0200】
本明細書で使用される場合、「Xuri W25」という用語は、Xuri Cell Expansion System W25(GE Healthcare)を指す。
【0201】
本明細書で使用される場合、「完全培養培地」という用語は、基礎培養培地、血清または血清代替物、L-グルタミンおよび1つ以上のサイトカインの混合物を指す。基礎培養培地は、AIM-V、RPMI-1640、オプティマイザCTS T細胞拡大増殖基礎培地、X-vivo 15およびTexMACSを含むが、これらに限定されない。血清または血清代替物は、Human AB SerumおよびCTS immune cell SRを含むが、これらに限定されない。L-グルタミンは、L-グルタミン100×およびSG-200 Stable L-Glutamine Dipeptideを含むが、これらに限定されない。サイトカインは、IL-2、IL-7、IL-15および/またはIL-21を含むが、これらに限定されない。ある特定の態様において、IL-2の濃度範囲は、約300IU/ml~約6000IU/mlであり得る。IL-7、IL-15およびIL-21の濃度範囲は、約10ng/ml~約100μg/mlであり得る。
【0202】
本方法の主な利点は、以下のことを含み得る。小さな腫瘍組織または少数の出発TIL細胞から、本方法は、比較的短い期間で1011個以上のTIL細胞を生産することができる。本開示による方法は、TIL細胞がほとんど分化せずに素早く拡大増殖され得るように、小さな腫瘍試料中の微量のTIL細胞を急速かつ容易に刺激することができる。2巡の、拡大増殖および支持細胞との共培養の組み合わせは、Teff(エフェクターT細胞)への細胞の分化を抑制しながら、短い期間で多数のTIL細胞を生産するのに役立つ。本開示による方法では、TIL細胞の開始数は、わずか数千個のTIL細胞(例えば、2000以上)とすることができ、従来技術で必要とされる開始数よりもはるかに少ない。方法全体のために使用される時間は、約19~約24日以内であり得る。本開示による方法では、支持細胞の数を調整することによって、約9~約14日以内に、異なる出発数のTIL細胞を少なくとも3000万個の細胞に拡大増殖させることができる。本方法は、1×1011~2×1011個のTIL細胞を生成することができ、これは、先行技術における方法によって得られるものよりも多い。本開示による方法では、組織/細胞は、直接培養される代わりに最初に解離される。本方法は、従来技術の方法よりも簡単であり、2回の拡大増殖後に所望の数の細胞を得ることができる。本開示による方法では、第1の拡大増殖後に得られる細胞は2.5×10であり得、第2の拡大増殖後に1011以上のTIL細胞を生成することができる。総拡大増殖比は、従来技術の総拡大増殖比をはるかに超える。ある特定の態様において、細胞の数に影響を与えることなくセントラルメモリーT(Tcm)の比を増加させるために、IL7/IL15/IL21の組み合わせが第1の拡大増殖において使用される。本開示による方法では、第1の工程で使用されるIL2の濃度は、約300IU/ml~約10000IU/mlの低い濃度であり得る。
【0203】
常に明示的に述べられているわけではないが、全ての数値指定には「約」という用語が前置され得ることを理解されたい。特定の値が本出願および特許請求の範囲に記載されている場合、別段の記載がない限り、「約」という用語は、特定の値に対して許容され得る誤差範囲内を意味すると仮定されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特定の値±10%を指す。
【0204】
処置されるべき症状
TILおよび組成物は、癌、免疫不全疾患および感染症を処置するために患者に投与され得る。
【0205】
TILおよび組成物は、過剰増殖性障害を処置するために患者に投与され得る。
【0206】
いくつかの態様において、過剰増殖性障害は癌である。いくつかの態様において、過剰増殖性障害は、固形腫瘍癌である。いくつかの態様において、固形腫瘍癌は、黒色腫、卵巣癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺癌、膀胱癌、乳癌、ヒトパピローマウイルスによって引き起こされる癌、頭頸部癌(頭頸部扁平上皮癌腫(HNSCC)を含む)、腎癌または腎細胞癌腫であり得る。いくつかの態様において、過剰増殖性障害は血液悪性腫瘍である。いくつかの態様において、固形腫瘍癌は、慢性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫またはマントル細胞リンパ腫であり得る。
【0207】
TILは、免疫活性(リンパ球活性、ナチュラルキラー細胞活性など)の機能障害に罹患している患者に投与され得る。例えば、患者は、処置されていない免疫細胞に対して抵抗性である低酸素腫瘍を有し得る。あるいは、患者は、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症または他の真核細胞感染症(すなわち、原虫)などの感染性疾患に罹患し得る。本明細書の組成物および細胞は、炎症を引き起こす任意の疾患を処置するために使用され得る。組成物および細胞はまた、抗病原体T細胞の効力を増加させる必要が存在する任意の疾患を処置するために使用され得る。
【0208】
本開示は、患者において腫瘍を処置する方法であって、腫瘍を処置することを必要とする患者に有効量のTILの集団を投与することを含む、方法を提供する。
【0209】
いくつかの態様において、癌には、黒色腫、卵巣癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺癌、膀胱癌、乳癌、ヒトパピローマウイルスによって引き起こされる癌、結腸癌(colon cancer)、食道癌、子宮内膜癌、頭頸部癌(頭頸部扁平上皮癌腫(HNSCC)を含む)、腎癌および腎細胞癌腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0210】
TILは、血液悪性腫瘍または固形腫瘍を処置するために患者に投与され得る。
【0211】
「血液悪性腫瘍」という用語は、血液、骨髄、リンパ節およびリンパ系の組織を含むがこれらに限定されない、造血およびリンパ組織の哺乳動物癌および腫瘍を指す。血液悪性腫瘍は、「液体腫瘍」とも呼ばれる。血液悪性腫瘍には、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性リンパ腫(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性単球性白血病(AMoL)、ホジキンリンパ腫、および非ホジキンリンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。「B細胞性血液悪性腫瘍」という用語は、B細胞に影響を及ぼす血液悪性腫瘍を指す。液体腫瘍癌には、白血病、骨髄腫およびリンパ腫、ならびに他の血液悪性腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。
【0212】
固形腫瘍は良性または悪性であり得る。固形腫瘍には、悪性、新生物性または癌性固形腫瘍が含まれ得る。固形腫瘍癌には、肉腫、癌腫およびリンパ腫、例えば、肺、乳房、前立腺、結腸、直腸および膀胱の癌が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、癌は、子宮頸癌、頭頸部癌(例えば、頭頸部扁平上皮癌腫(HNSCC)を含む)神経膠芽腫、卵巣癌、肉腫、膵臓癌、膀胱癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌および非小細胞肺癌腫から選択される。
【0213】
ある特定の態様において、炎症性疾患には、喘息、自己免疫疾患(多発性硬化症および関節リウマチなど)、慢性炎症、慢性前立腺炎、糖尿病(糖尿病性潰瘍を含む)、糸球体腎炎、過敏症、炎症性腸疾患、骨盤内炎症性疾患、再灌流傷害、関節リウマチまたは血管炎が含まれるが、これらに限定されない。
【0214】
疾患がウイルス感染症である場合、疾患は、アデノウイルス科のメンバー(アデノウイルスなど)、コロナウイルス科のメンバー(SARSなど)、ピコルナウイルス科のメンバー(コクサッキーウイルス、A型肝炎ウイルスまたはポリオウイルスなど)、ヘルペスウイルス科のメンバー(エプスタイン・バー・ウイルス、単純ヘルペス、1型、単純ヘルペス、2型、ヒトサイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス、8型または水痘帯状疱疹ウイルスなど)、ヘパドナウイルス科のメンバー(B型肝炎ウイルスなど)、フラビウイルス科のメンバー(C型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、デングウイルス、西ナイルウイルスなど)、レトロウイルス科のメンバー(HIVまたはHTLV-1など)、オルトミクソウイルス科のメンバー(インフルエンザウイルスなど)、パラミクソウイルス科のメンバー(麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルスなど)、パポーバウイルス科のメンバー(パピローマウイルスなど)、ラブドウイルス科のメンバー(狂犬病ウイルスなど)またはトガウイルス科のメンバー(風疹ウイルスなど)の(例えば)任意の1つによって引き起こされ得る。ある特定の態様において、ウイルスは、ssDNAウイルス、dsDNAウイルス、ssRNAウイルスまたはdsRNAウイルスである。ウイルスは、エンベロープを有するか、またはエンベロープを有しないことがあり得る。
【0215】
いくつかの態様において、処置されるべき疾患は、乳癌;膀胱癌;肺癌;前立腺癌;甲状腺癌;白血病およびリンパ腫、例えば、CML(慢性骨髄性白血病)、ALL(急性リンパ芽球性白血病)、AML(急性骨髄性白血病)、PML(前骨髄球性白血病);結腸癌;神経膠腫;精上皮腫;肝臓癌;膵臓癌;膀胱癌;腎癌;子宮頸癌;精巣癌;頭頸部癌;卵巣癌;神経芽細胞腫および黒色腫などの癌である。
【0216】
本明細書の処置方法は、ヒト、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジまたはブタなどの任意の哺乳動物とともに使用され得ることが理解されよう。いくつかの態様において、対象は脊椎動物である。ある特定の態様において、対象は哺乳動物である。
【0217】
ある特定の態様において、本発明の細胞は、抗腫瘍剤、抗癌剤などを含むがこれらに限定されない治療剤と組み合わせて使用することができる。
【0218】
ある特定の態様において、抗腫瘍剤または抗癌剤は、アルキル化薬、葉酸拮抗薬、プリン拮抗薬、ピリミジン拮抗薬、紡錘体毒、ポドフィロトキシン、抗生物質、ニトロソ尿素、無機イオン、生物学的応答調節剤、酵素またはホルモンである。
【0219】
ある特定の態様において、養子免疫療法は、免疫応答を増強する第2の処置と組み合わされる。第2の処置は、例えば、アジュバントおよび/またはサイトカインであり得る。サイトカインの例としては、リンホカイン、モノカイン、および従来のポリペプチドホルモンが挙げられるが、これらに限定されない。ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)および黄体形成ホルモン(LH)などの糖タンパク質ホルモン;上皮成長因子;肝成長因子;線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子-αおよび腫瘍壊死因子-β;ミュラー管抑制因子;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-αなどの神経成長因子;血小板増殖因子;TGF-αおよびTGF-βなどのトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子-Iおよび-II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン-α、-βおよび-γなどのインターフェロン マクロファージ-CSF(M-CSF)などのコロニー刺激因子(CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);および顆粒球-CSF(G-CSF);IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12などのインターロイキン(IL);TNF-αまたはTNF-βなどの腫瘍壊死因子;ならびにLIFおよびキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子がサイトカインに含まれる。サイトカインには、天然源由来または組換え細胞培養由来のタンパク質、および天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物が含まれる。
【0220】
本開示は、特定の態様に関連して以下でさらに説明される。これらの態様は、本開示を例示するためにのみ使用され、本開示の範囲を限定するために使用されるものではないことを理解されたい。以下の実施例において特定の条件を示さない実験方法は、通常、慣用の条件または製造業者によって推奨される条件に従う。特に明記しない限り、百分率および部は重量によって計算される。
【0221】
[実施例1]
TIL細胞を調製するための方法を研究した。小さな腫瘍試料中のTILの拡大増殖の概略図が図1に示されており、過程フローチャートが図2に示されている。方法は以下の通りである。
【0222】
1.腫瘍組織解離:
a.腫瘍組織を秤量し、DPBSで数回すすぎ、細胞培養皿に移した。腫瘍組織を使い捨てのメスで小片に切断した後、約5~50ml/g(解離溶液体積/試料重量)の比率で解離溶液を添加した。解離溶液中の小さな腫瘍組織片を、GentleMACS Cチューブまたは通常のチューブ、トランスファー・バッグ、細胞培養皿などの1つ以上の反応容器中に入れた。
【0223】
解離溶液は、等張溶液中にコラゲナーゼII、コラゲナーゼIV、DNase、ヒアルロニダーゼを含有した。等張溶液は、培養培地、DPBSなどを含むことができるが、これらに限定されない。コラゲナーゼIIの濃度範囲:0.1g/ml~10g/mlであり;コラゲナーゼIVの濃度範囲:0.1g/ml~10g/mlであり;DNaseの濃度範囲:0.1g/ml~10g/mlであり;ヒアルロニダーゼの濃度範囲は10U/ml~1000U/mlであった。
【0224】
b.プログラムを設定して実行した。腫瘍試料の異なる腫瘍型に応じて異なるプログラムを使用した。解離手順が終了した後、Cチューブチューブを組織プロセッサから取り外し、組織から解離された全ての断片および細胞が懸濁液から分離されるように、遠心分離のために遠心分離機に配置した。
【0225】
様々な腫瘍組織に対して、GentleMACSは、37℃_h_TDK_1または37℃_h_TDK_2または37℃_h_TDK_3を使用することができる。あるいは、手動ピペット操作と組み合わせて、または37℃の一定温度で振盪もしくは回転させることによる混合と組み合わせて、37℃のインキュベーターが使用され得る。
【0226】
c.腫瘍試料の解離後、細胞懸濁液を吸引し、(約20μm~約70μmのろ過器孔径を有する)細胞ろ過器を通してろ過して、細胞を含有するろ液を得た。遠心分離後、上清を除去して、解離された細胞(最初の細胞集団)を得た。
【0227】
d.最初の細胞集団をTIL細胞培養培地中に再懸濁した。IL7、IL15およびIL21サイトカインを添加し(IL7、IL15およびIL21サイトカインはそれぞれ、約10ng/ml~約100μg/mlの濃度を有した)、約6時間~約36時間培養して、前処理された最初の細胞集団を得た。
【0228】
2.支持細胞と最初の細胞集団との共培養(第1の拡大増殖)
a.放射線照射された支持細胞を、TIL細胞の数に応じて一定の割合で細胞培養培地(完全培養培地)中に再懸濁し、上記の前処理された最初の細胞集団と混合した。次いで、OKT3抗体、高濃度IL2ならびに他の関連サイトカインおよび/または抗体を添加したときに、それらを一緒にG-Rex(登録商標)10Mに移した。
【0229】
TILの、支持細胞に対する細胞数比は、約1:10~約1:10000の範囲であった。
【0230】
OKT3の濃度範囲は約3ng/ml~約100ng/mlであり、
IL2の濃度範囲は約300IU/ml~約10000IU/mlであった。
【0231】
他の関連する因子は、IL7/IL15/IL21および抗41BB抗体またはその断片、抗OX40抗体またはその断片、抗PD1抗体またはその断片および他のT細胞刺激物質の任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0232】
b.細胞増殖および分化状態を厳密にモニターした。培養培地の注入および置換を適時に行った。
【0233】
過程中に、細胞をサンプリングし、計数した。予想細胞数に達した後、第1の拡大増殖を開始した。拡大増殖された細胞は、第2の拡大増殖前に凍結保存され得る。
【0234】
第1の拡大増殖のパラメータは以下の通りであった:
溶液注入体積の範囲は2~100mlであった。
【0235】
拡大増殖後に採集されたTIL細胞の数は2×10個~2×10個であった。
【0236】
第1の拡大増殖は、約7日~約16日、または約9日~約14日であった。
【0237】
凍結保存溶液は、CS10などを含むが、これに限定されない。
【0238】
3.第1の拡大増殖された細胞集団である支持細胞およびTIL細胞の第2の共培養(第2の拡大増殖)
a.工程2で得られたTIL細胞(第1の拡大増殖された細胞集団)、または凍結保存された細胞を解凍した後1~3日間培養された細胞を支持細胞とともに、Prodigy(登録商標)/Wave/G-Rex(登録商標)などの細胞拡大増殖システム中に接種した。凍結保存前および後の第1の拡大増殖から得られたTIL細胞の比較が図3に示されている。このように、凍結保存は、細胞の特性に著しく影響しなかった。活性化剤OKT3/抗CD3 Dynabeads/抗CD3/抗CD28 Dynabeadsを添加して、細胞を急速に拡大増殖させた。
【0239】
凍結保存された細胞を解凍した後、約0.5×10/ml~約5×10/mlの範囲の密度でTIL細胞を接種し、約12時間~約72時間、前培養した。
【0240】
TIL細胞の、支持細胞に対する細胞数比は、TIL:支持細胞=1:20~1:400の範囲であった。接種時のTIL細胞数は20×10個を超えていた。活性化剤OKT3の濃度範囲は、約10ng/ml~約50μg/mlであった。抗CD3 Dynabeadsおよび抗CD3/抗CD28 Dynabeadsの数は、接種されたTIL細胞の数の1~3倍であった。
【0241】
Xuri W25(2L/10L/20L/50L Cellbag)の例では、Xuri W25の装置パラメータが表1に示されている。
【表3】
【0242】
Xuri W25(2L/10L/20L/50L Cellbag)中でTIL細胞を急速に拡大増殖させた場合、培養体積は約300ml~約25000mlの範囲であり、TIL細胞密度は約0.01×10/ml~約50×10/mlの範囲であった。培養過程における灌流手順のパラメータが表2に示されている。
【表4】
【0243】
b.6~18日間培養した後、急速な拡大増殖後のTIL細胞の洗浄および濃縮のために、LOVO/Sefia/Sepax C-Pro/Sepax 2/CS5+/CSEを使用した。
【0244】
細胞の洗浄および濃縮のための装置は、LOVO/Sefia/Sepax C-Pro/Sepax 2/CS5+/CSEを含むが、これらに限定されない。
【0245】
処理された試料の体積は、約50ml~約22000mlの範囲であった。
【0246】
容器に流入する試料の速度は、約50ml/分~約200ml/分の範囲であった。
【0247】
容器から流出する試料の速度は、約50ml/分~約200ml/分の範囲であった。
【0248】
洗浄サイクルの数は1~5の範囲であった。
【0249】
細胞を洗浄し、濃縮した後、排出体積は50ml~2000mlの範囲であった。
【0250】
洗浄溶液は、0.9%塩化ナトリウム溶液、化合物電解質注射組成物、およびグルコースおよび塩化ナトリウム注射組成物、ならびにこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。洗浄溶液はまた、約0.1%~約5%(w/v)のヒト血清アルブミンを含み得る。
【0251】
c.工程bの後にTIL細胞を一定分量に分割するために、Cell Connectアリコーティングチューブ、Sepax 2、Sepax C-pro、Sefiaおよび他のアリコーティング機器または消耗品が使用され得る。
【0252】
工程cでは、まず凍結保存液を添加し、次いで細胞を一定分量に分割した。アリコーティングシステムは、Cell Connectアリコーティングチューブ、Sepax 2、Sepax C-proおよびSefiaを含むが、これらに限定されない。
【0253】
取り扱うことができる試料の体積は5ml~500mlの範囲であった。
【0254】
一定分量への分割の排出体積は5ml~400mlの範囲であった。
【0255】
凍結保存溶液を添加した後の細胞試料中のDMSOの最終濃度は、0%~10%(v/v)の範囲内であった。
【0256】
実験結果
第1の拡大増殖および第2の拡大増殖のTIL拡大増殖曲線が図4に示されている。図4から、いずれの拡大増殖も、TIL細胞を効果的に拡大増殖させることを可能にすることが明らかである。
【0257】
第1の拡大増殖(第1のREP)および第2の拡大増殖(第2のREP)後の細胞マーカーのレベルが図5に示されている。図5から、TIL細胞のマーカーが拡大増殖後に効果的に発現されたことが明らかである。
【0258】
第1の拡大増殖において、TIL細胞の増殖および分化に対する、添加されたサイトカインの効果が図7に示す。図7から、添加されたサイトカインは、TIL細胞の増殖を効果的に促進することができることが明らかである。
【0259】
[実施例2~5および比較実施例1~2]
実施例2~5では、異なる腫瘍患者からの腫瘍試料を使用したことを除いて、実施例1を繰り返した。
【0260】
比較例1では、異なる前処理を使用した。比較例2では、OKT3は使用されず、培養された細胞は支持細胞と直接接触しなかった。
【0261】
実施例1~5と比較例1~2の間での調製過程の差およびそれらの拡大増殖効果が、表3および表4に示されている。
【表5】
【表6】
【0262】
[実施例6]
細胞の出発数がスクリーニング後に2000個の選択されたTILであったことを除いて、実施例1を繰り返した。第1の拡大増殖はProdigy(登録商標)で行った。細胞増殖曲線が図6に示されている。
【0263】
考察
TIL細胞を調製する本方法の態様/実施例と国際公開第2019100023号の態様/実施との比較が表5に示されている。
【表7】
【0264】
表5から、本開示に記載されている方法は、多数のTIL細胞を生成するために、極めて少数のTIL細胞を拡大増殖させることができることが明らかである。
【0265】
本開示の範囲は、本明細書の上で具体的に示され、説明されたものによって限定されない。当業者は、材料、構成、構造および寸法の図示された例に対する適切な代替が存在することを認識するであろう。特許および様々な刊行物を含む多数の参考文献が、本発明の説明において引用され、論述されている。そのような参考文献の引用および論述は、単に本開示の説明を明確にするために提供されており、任意の参考文献が本明細書に記載されている本発明の先行技術であることを認めるものではない。本明細書で引用および論述される全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。本明細書に記載されているものの変形、修正、およびその他の実施は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者に想到されるであろう。本開示のある特定の態様を示し、説明してきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく変更および修正を行い得ることは当業者には明らかであろう。前述の説明および添付の図面に記載された事項は、例示としてのみ提供され、限定として提供されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】