(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】垂直沸騰反応器用の波形の格子状支持体
(51)【国際特許分類】
B01J 8/06 20060101AFI20240110BHJP
B01J 23/68 20060101ALI20240110BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20240110BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20240110BHJP
C07D 301/10 20060101ALN20240110BHJP
C07D 303/00 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
B01J8/06
B01J23/68 Z
F28D7/16 A
F28F21/08 F
C07D301/10
C07D303/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539875
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 US2021065434
(87)【国際公開番号】W WO2022147070
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591105890
【氏名又は名称】サイエンティフィック・デザイン・カンパニー・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SCIENTIFIC DESIGN COMPANY INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ガンジヴァル,モハマド
(72)【発明者】
【氏名】ニ,ジアチェン
【テーマコード(参考)】
3L103
4G070
4G169
【Fターム(参考)】
3L103AA05
3L103BB26
3L103DD08
3L103DD42
3L103DD44
3L103DD82
4G070AA01
4G070AB05
4G070BB02
4G070CA15
4G070CB02
4G070CB17
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BC32A
4G169BC64A
4G169CB08
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EA04Y
4G169EA06
4G169EB18Y
(57)【要約】
例えばエチレンオキシド(EO)反応器などのシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器で使用するためのバッフル(すなわちチューブ支持体)を提供する。このバッフルは縮小したチューブピッチに適応しているため、より多くの触媒充填チューブが反応器内部に存在し得る。当該バッフルは、本明細書では波形の格子状支持体と呼ぶことができるものであり、複数の波形ステンレス鋼ストリップを備え、それらが互いに着座して、チューブ開口部を有する格子パターンを形成している。各チューブ開口部は、触媒充填チューブがその開口部の中に挿入されるように構成され、さらに、チューブのシェル側に沿った十分な空き領域により、冷却剤が反応器を通って流れることができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル・アンド・チューブ式熱交換反応器であって、
複数の長尺チューブであって、前記長尺チューブのそれぞれの導入口端部が導入口チューブシートに固定され、前記長尺チューブのそれぞれの導出口端部が導出口チューブシートに固定されている、複数の長尺チューブと、
前記導入口チューブシートと前記導出口チューブシートとの間に配され、前記長尺チューブのそれぞれを支持するように構成された少なくとも1つのバッフルであって、前記少なくとも1つのバッフルは、チューブ開口部を有する格子パターンを形成するように構成された複数の波形ステンレス鋼ストリップを備え、各チューブ開口部には前記長尺チューブの1つを通すことができる、少なくとも1つのバッフルと
を備える、シェル・アンド・チューブ式熱交換反応器。
【請求項2】
前記波形ステンレス鋼ストリップのそれぞれがバッフル支持板に固定されている、請求項1に記載のシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器。
【請求項3】
前記バッフル支持板が円筒状である、請求項1又は2に記載のシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器。
【請求項4】
隣り合う各長尺チューブの間のピッチが約27mm~約70mmである、請求項1から3のいずれかに記載のシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器。
【請求項5】
各チューブ開口部が、約550mm
2から約5000mm
2の総面積を有する、請求項1から4のいずれかに記載のシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器。
【請求項6】
前記複数の波形ステンレス鋼ストリップが、互いに平行に位置づけられて第1の方向に延びる第1の組の波形ステンレス鋼ストリップと、互いに平行に位置づけられて、前記第1の組の波形ステンレス鋼ストリップの前記第1の方向とは異なる第2の方向に延びる第2の組の波形ステンレス鋼ストリップとを備える、請求項1から5のいずれかに記載のシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器。
【請求項7】
前記第1の組の波形ステンレス鋼ストリップと前記第2の組の波形ステンレス鋼ストリップとの間の角度αが、90°~150°である、請求項6に記載のシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器。
【請求項8】
前記第1の組の波形ステンレス鋼ストリップと前記第2の組の波形ステンレス鋼ストリップとの間の角度αが、30°~90°である、請求項6に記載のシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器。
【請求項9】
前記第1の組の波形ステンレス鋼ストリップの各波形ステンレス鋼ストリップが、その上面に沿って配置されたスリットを備え、前記第2の組の波形ステンレス鋼ストリップの各波形ステンレス鋼ストリップが、その底面に沿って配置されたスリットを備える、請求項6に記載のシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器。
【請求項10】
前記第2の組の波形ステンレス鋼ストリップの前記スリットが、前記第1の組の波形ステンレスストリップの前記スリットに着座している、請求項9に記載のシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器。
【請求項11】
前記長尺チューブの1つを収容する各チューブ開口部が、前記長尺チューブを囲む空き領域をさらに備え、前記空き領域は、そこに冷却剤を通すことができるように構成される、請求項1から10のいずれかに記載のシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器。
【請求項12】
前記長尺チューブを囲む前記空き領域が、約60mm
2~約2000mm
2の総面積を有する、請求項11に記載のシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器。
【請求項13】
前記少なくとも1つのバッフルが、各長尺チューブをその長さ全体にわたって支持する垂直方向に離間した複数のバッフルを備え、前記垂直方向に離間した複数のバッフルの各バッフルは、前記チューブ開口部を有する前記格子パターンを形成するように構成された複数の前記波形ステンレス鋼ストリップを備える、請求項1から12のいずれかに記載のシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器。
【請求項14】
前記シェル・アンド・チューブ式熱交換反応器が、エチレンオキシド(EO)反応器である、請求項1から13のいずれかに記載のシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器。
【請求項15】
前記EO反応器が、1%~40%のエチレン及び3%~12%の酸素を含む供給ガスを、前記EO反応器に導入するための導入ラインをさらに備える、請求項14に記載のシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器。
【請求項16】
前記EO反応器が、時間当たりのガス空間速度1500~10,000h
-1、反応器導入圧力1MPa~3MPa、冷却剤温度180~315℃、酸素変換レベル10~60%、EO生成速度(仕事率)100~350kg EO/m
3触媒/時間、エチレンオキシド濃度の変化ΔEO約1.5%~約4.5%で稼動するように構成される、請求項14又は15に記載のシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器。
【請求項17】
各長尺チューブが銀系エポキシ化触媒で充填されている、請求項14から16のいずれかに記載のシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器。
【請求項18】
前記銀系エポキシ化触媒が、アルミナ担体と、触媒有効量の銀又は銀含有化合物と、促進量の1つ又は複数の促進剤とを含む、請求項17に記載のシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器。
【請求項19】
前記1つ又は複数の促進剤が、少なくともレニウム促進剤を含む、請求項18に記載のシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直沸騰反応器に関し、より詳細には、チューブピッチを縮小したシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンオキシド(ethylene oxide:EO)は、例えばエチレングリコール、エチレングリコールエーテル、エタノールアミン及び洗剤などの様々な化学物質を作るための供給原料として使用される重要な工業用化学物質である。EOを生成するための1つの方法は、銀系エポキシ化触媒の存在下でエチレンを酸素と反応させる触媒酸化プロセスによるものである。そのようなプロセスでは、ある反応条件に保たれたEO反応器の反応区域内に含まれる銀系エポキシ化触媒の床上に、エチレン及び酸素を含有する供給流を通す。
【0003】
市販のEO反応器は、一般にシェル・アンド・チューブ式熱交換器の形態であり、実質的に平行で長尺の比較的細い複数のチューブに触媒粒子が充填されて充填床が形成されており、シェルには冷却剤が含まれている。そのようなEO反応器の1つを
図1に示す。
図1に示すEO反応器1は複数の長尺チューブ2を備え、長尺チューブ2のそれぞれの導入口端部が導入口チューブシート3に固定され、長尺チューブ2のそれぞれの導出口端部が導出口チューブシート4に固定されている。導入口反応器ヘッド5が、出口反応器ヘッド6と同様に設けられている。
【0004】
EO反応器1はさらにシェル・アンド・チューブ式熱交換器7を備え、シェル・アンド・チューブ式熱交換器7は出口ヘッド6に固定されて出口ヘッド6と一体になっている。熱交換器7と連通させるために出口ヘッド6に開口部が設けられており、熱交換器7は、開口部の周りで出口ヘッド6に溶接されて反応器と一体構造を形成している。熱交換器7には、チューブシート9とチューブシート10とに固定されたチューブ8が設けられている。熱交換器出口ヘッド11も設けられている。
【0005】
実際には、反応ガス、例えばエチレン、酸素及びバラストガスが、ライン12を介してEO反応器1に導入され、適切な銀系エポキシ化触媒が詰められたチューブ2を各反応条件で通過する。ライン13を介してEO反応器1のシェル側に導入され、ライン14を介して除去される熱伝達流体、例えば水を循環させることによって、反応熱が除去される。
【0006】
反応ガスは、EOの生成が行われるチューブ2を通過し、チューブ2を出ると出口ヘッド6を通過し、次いで熱交換器7のチューブ8に到達し、直ちに冷却されて、さらなる酸化及び異性化が阻止される。例えば水などの冷却流体は、ライン15を介してシェル側熱交換器7に導入され、ライン16を介して除去される。冷却された反応ガスは、ライン17を介して熱交換器7を出、生成物の回収及び様々な成分の再循環のために従来の方法で処理される。
【0007】
上述のEO反応器を備えるシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器の周知の構成要素に、バッフル(すなわちチューブ支持体)がある。一般に、バッフルは、熱交換器のシェル側内部に配置された多孔板であり、運動/振動に対して触媒充填チューブをその長さ全体にわたって支持し、流れの向きを変えて熱伝達を増大させる。
【0008】
図2Aは、
図1に示すEO反応器の、導入口チューブシート3と導出口チューブシート4との間の拡大断面図であり、長尺チューブ2のそれぞれを支持するために垂直方向に離間した複数のバッフル(すなわちチューブ支持体)20を示す。場合によっては、バッフル20は、
図2Bに示すように、ステンレス鋼の直線状ストリップ21A、21Bを備え、それらは互いに着座して格子パターンを形成する。
図2Bに示すバッフルを提供する従来技術のステンレス鋼ストリップのそれぞれは、ストリップの長さ全体にわたって直線状の縁部を有する。
図2Bに示すように、ステンレス鋼の直線状ストリップ21Aどうしは、互いに平行に位置を定められて第1の方向に延び、ステンレス鋼の直線状ストリップ21Bどうしは、互いに平行に位置を定められてステンレス鋼の直線状ストリップ21Aの第1の方向とは異なる第2の方向に延びている。ステンレス鋼の直線状ストリップ21Bのそれぞれは、ステンレス鋼の直線状ストリップ21Aのそれぞれと交差して、チューブ開口部22を含む格子パターンを形成している。各チューブ開口部22は、チューブ2が通過可能な寸法を有し、平行四辺形の形状を有する。すなわち、対辺が平行な4辺の直線図形である。
【0009】
次に
図3を参照すると、
図2A~
図2Bに示す従来技術のバッフル(すなわちチューブ支持体)の上面図が示されているが、その従来技術のバッフルは、ステンレス鋼の直線状ストリップ21A、21Bを備え、それらが互いに着座して、チューブ開口部22を含む格子パターンを形成している。チューブ開口部22のいくつかには、触媒充填チューブ2が収容されている。ステンレス鋼の直線状ストリップ21A、21Bのそれぞれは、バッフル支持板20Sの内壁に固定されている(溶接されている)。いくつかの実施形態では、特にEO反応器の場合、バッフル支持板20Sは円筒形状である。
【0010】
図4A~
図4Dは、組立ての様々な段階における
図2A~
図2Bに示す従来技術のバッフル20(すなわちチューブ支持体)を示す。特に、
図4A~
図4Bは、使用することができる様々なステンレス鋼の直線状ストリップ21A、21Bを示す。これらのステンレス鋼の直線状ストリップ21A、21Bは、ストリップの長さ全体にわたって直線縁部を有する。
図4Aにおいて、ステンレス鋼の直線状ストリップ21Aは、ステンレス鋼の直線状ストリップ21Aのそれぞれの底面に沿って配置されたスリットS1を有する。
図4Bでは、ステンレス鋼の直線状ストリップ21Bは、ステンレス鋼の直線状ストリップ21Bのそれぞれの上面に沿って配置されたスリットS2を有する。
図4Cは、
図4A~
図4Bに示すステンレス鋼の直線状ストリップを組み立てた後のバッフル20を示す。一方、
図4Dは、チューブ開口部22の中に長尺チューブ2を収容した
図4Cの組立てバッフル20(すなわちチューブ支持体)を示す。
【0011】
従来技術の設計によるバッフルを収容するEO反応器の製作は、大規模プラント用に反応器が大型化しているため課題が非常に多くなってきており、コストが指数関数的に上昇している。EO反応器製造における現時点の1つの目標は、チューブピッチを縮小することによりEO反応器を小型化することである。チューブピッチとは、隣接する(すなわち隣り合う)チューブとチューブとの間の最短中心間距離のことである。チューブピッチは、
図2A~
図2B、
図3、及び
図4A~
図4Dに示す従来技術のバッフル設計を使用して縮小することはできない。したがって、チューブピッチを縮小することができるEO反応器及び他のシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器のための新しいバッフル設計が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
例えばエチレンオキシド(EO)反応器など、シェル・アンド・チューブ式熱交換反応器で使用するためのバッフル(すなわちチューブ支持体)を提供する。このバッフルは縮小したチューブピッチに適応しているため、より多くの触媒充填チューブが反応器内に存在し得る。当該バッフルは、波形の格子状支持体と呼ぶことができるものであり、複数の波形ステンレス鋼ストリップを備え、それらが互いに着座して、チューブ開口部を有する格子パターンを形成する。各チューブ開口部は、触媒充填チューブがその開口部の中に挿入されるように構成され、さらに、チューブのシェル側に沿った十分な空き領域により、冷却剤が反応器を通って流れることができる。
【0013】
本発明の一態様では、複数の長尺チューブを備えるシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器が提供され、長尺チューブのそれぞれの導入口端部が導入口チューブシートに固定され、長尺チューブのそれぞれの導出口端部が導出口チューブシートに固定される。当該反応器は、導入口チューブシートと導出口チューブシートとの間に配され長尺チューブのそれぞれを支持するように構成された、少なくとも1つのバッフルをさらに備える。本発明の少なくとも1つのバッフルは、チューブ開口部を有する格子パターンを形成するように構成された複数の波形ステンレス鋼ストリップを備える。各チューブ開口部には、長尺チューブの1つを通すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2A】複数の長尺チューブを支持するためのバッフル(すなわちチューブ支持体)を収容する
図1に示すEO反応器の一部の、拡大断面図による概略図である。
【
図2B】互いに着座して格子パターンを形成するステンレス鋼の直線状ストリップを備える従来技術のバッフル(すなわちチューブ支持体)の画像である。
【
図3】
図2A~
図2Bに示す従来技術のバッフル(すなわちチューブ支持体)の上面図である。
【
図4A】
図2Bに示す従来技術のバッフル(すなわちチューブ支持体)の形成に使用することができる様々なステンレス鋼の直線状ストリップの画像である。
【
図4B】
図2Bに示す従来技術のバッフル(すなわちチューブ支持体)の形成に使用することができる様々なステンレス鋼の直線状ストリップの画像である。
【
図4C】格子パターンを有する従来技術のバッフル(すなわちチューブ支持体)を提供するために、
図4A~
図4Bに示すステンレス鋼の直線状ストリップを組み立てた後の画像である。
【
図4D】チューブ開口部の中に長尺チューブを収容した
図4Cの組立てバッフル(すなわちチューブ支持体)の画像である。
【
図5】本出願の一実施形態によるバッフル(すなわちチューブ支持体)の画像であり、バッフルは、互いに着座して格子パターンを形成する複数の波形ステンレス鋼ストリップを備えている。
【
図6A】
図5に示すバッフル(すなわちチューブ支持体)の形成に使用することができる様々な波形ステンレス鋼ストリップの画像である。
【
図6B】
図5に示すバッフル(すなわちチューブ支持体)の形成に使用することができる様々な波形ステンレス鋼ストリップの画像である。
【
図6C】
図5に示すバッフル(すなわちチューブ支持体)を提供するために、
図6A~
図6Bに示す波形ステンレス鋼ストリップを組み立てた後の画像である。
【
図7A】
図2Bに示す従来技術のバッフルの上面図であり、そのようなバッフル設計のチューブピッチを示す。
【
図7B】
図5に示すバッフルの上面図であり、そのようなバッフル設計のチューブピッチを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本出願に付随する以下の説明及び図面を参照することによって、本出願をより詳細に説明する。本出願の図面は、例示を目的として提供しているにすぎず、したがって、図面は縮尺通りに描かれていないことに留意されたい。また、対応する同様の要素は、同様の符号で参照されることにも留意されたい。
【0016】
以下の説明では、本出願の様々な実施形態について理解してもらうために、特定の構造体、構成要素、材料、寸法、処理工程及び手法など、多数の具体的詳細事項について述べる。しかし、本出願の様々な実施形態は、これらの具体的詳細事項を用いずに実施されてもよいことが、当業者には理解されよう。他の例では、本出願を不明瞭にすることを避けるために、周知の構造体又は処理工程については詳細に説明しない。
【0017】
層、領域、又は基材としての要素が別の要素の「上に」又は「真上に」あると言及される場合、それは他の要素の上に直接あってもよく、又は介在要素が存在してもよいことが理解されよう。対照的に、ある要素が別の要素の「直接上に」又は「直接真下に」あると言及される場合、介在要素は存在しない。要素が別の要素の「下に」又は「真下に」あると言及される場合、それは他の要素の直接下に、又は直接真下にあり得、又は介在要素が存在してもよいことが同じく理解されよう。対照的に、ある要素が別の要素の「直接下に」又は「直接真下に」あると言及される場合、介在要素は存在しない。「約」という用語は、数値と組み合わせて使用される場合、その数値が所与の数値から±10%変動してもよいことを意味する。
【0018】
上述のように、本発明は、例えば上記の
図1に示すようなエチレンオキシド(EO)反応器などのシェル・アンド・チューブ式熱交換反応器で使用するためのバッフル(すなわちチューブ支持体)を提供する。本発明のバッフルは、反応器内に存在する触媒充填チューブを運動/振動に対して支持し、流れの向きを変えて熱伝達を増大させる。さらに、本発明のバッフルは、(上記の
図2B、
図3、及び
図4A~
図4Dに示す従来技術のバッフル設計と比較して)縮小したチューブピッチに適応するように設計されているため、より多くの触媒充填チューブが反応器の内部に存在し得る。
【0019】
次に
図5を参照すると、本発明の一実施形態によるバッフル50の一部が示されている。図示したバッフル50は複数の波形ステンレス鋼ストリップ51A、51Bを備え、それらが互いに着座して、チューブ開口部(
図5では符号を特に付けていないが、
図6Cでは要素52と符号を付けている)を有する格子パターンを形成している。各チューブ開口部52は、波形ステンレス鋼ストリップ51A、51Bの波形の側壁面によって画成された湾曲した外壁を有する。設けられた各チューブ開口部52は、総面積が約550mm
2~約5000mm
2である。
【0020】
「波形」とは、本発明のバッフル50を提供するのに使用されるステンレス鋼ストリップ51A、51Bが、ストリップ51A、51Bの長さ全体にわたって延びる波状の(すなわち、起伏があって直線状ではない)側壁面を有することを意味する。本発明のバッフル50の各チューブ開口部52は長尺チューブ54が挿入されるように構成され、さらに、チューブ54のシェル側に沿った十分な空き領域(
図5では符号を付けていない)により、反応器を通して冷却剤を流すことができる。本発明のバッフル50は、通常、同じバッフル設計(すなわち、複数の波形ステンレス鋼ストリップ51A、51Bを備え、それらが互いに着座して、チューブ開口部を有する格子パターンを形成するバッフル)を有する垂直方向に離間した他のバッフルと組み合わせて使用される。本発明で用いることができる長尺チューブ54はシェル側及びチューブ側を備え、当業者に周知である直径を有することができる。例えば、一般的なEO反応器の場合、長尺チューブ54は、約25mm~約70mmの直径を有することができる。
【0021】
図5に示すバッフル設計を有し、垂直方向に離間した複数のバッフルは、シェル・アンド・チューブ式熱交換反応器の導入口チューブシート(すなわち、
図1に示す導入口チューブシート3)と導出口チューブシート(すなわち、
図1に示す導出口チューブシート6)との間に配される。複数の波形ステンレス鋼ストリップのうちの波形ステンレス鋼ストリップ51A、51Bのそれぞれは、バッフル支持板(例えば、
図3に示すバッフル支持板20S)の内壁に溶接又は他の固定手段を介して固定される第1及び第2の端部を有する。バッフル支持板は、反応器の内壁に固定される。バッフル支持板は、本発明によるバッフルを提供するための波形ステンレス鋼ストリップ51A、51Bと共に使用されるものであり、円筒形状とすることができる。
【0022】
長尺チューブ54(
図1に示すチューブ2と同様である)は、触媒が詰められており、シェル・アンド・チューブ式熱交換反応器の導入口チューブシートに固定された第1の端部と、導出口チューブシートに固定された第2の端部とを有する。各バッフル50は、長尺チューブ54のそれぞれを支持するように構成される。複数のバッフル50が用いられる場合、その複数のバッフルは、長尺チューブ54のそれぞれをその長さ全体にわたって支持する。
【0023】
各バッフル50を提供する複数の波形ステンレス鋼ストリップ51A、51Bは、互いに平行に位置づけられ(
図6Bを参照されたい)、第1の方向に延びる第1の組の波形ステンレス鋼ストリップ51Bと、互いに平行に位置づけられ(
図6Aを参照されたい)、第1の組の波形ステンレス鋼ストリップの第1の方向とは異なる第2の方向に延びる第2の組の波形ステンレス鋼ストリップ51Aとを備える(
図6Cを参照されたい)。第1の組の波形ステンレス鋼ストリップ51Bのそれぞれは、第2の組の波形ステンレス鋼ストリップ51Aのそれぞれと交差して格子パターンを形成する。第1の組及び第2の組の波形ステンレス鋼ストリップ51Aと51Bとの間の角度は、チューブパターンに基づいて構成することができる。一実施形態では、EO反応器の場合、第1の組及び第2の組の波形ステンレス鋼ストリップ51Aと51Bとの間の角度αは、90°~150°とすることができるが、120°が好ましい。他の用途では、第1の組及び第2の組の波形ステンレス鋼ストリップ51Aと51Bとの間の角度αは、30°~90°とすることができる。角度αを
図6Cに示す。
図6Bに示すように、第1の組の波形ステンレス鋼ストリップの各波形ステンレス鋼ストリップ51Bは、その上面に沿って配置されたスリットS4を備え、第2の組の波形ステンレス鋼ストリップの各波形ステンレス鋼ストリップ51Aは、その底面に沿って配置されたスリットS3を備える。スリット(S3、S4)は、それぞれの波形ステンレス鋼ストリップ51A、51Bを完全に貫かずに延在している。各波形ステンレス鋼ストリップ51A、51Bは、通常、厚さが約0.5mm~約5mmである。
図6Cに示すように、第2の組の波形ステンレス鋼ストリップ51AのスリットS3は、第1の組の波形ステンレスストリップ51BのスリットS4に着座している。スリットS3及びS4をこのように使用して、複数の波形ステンレス鋼ストリップを
図5及び
図6に示す格子パターンに構成する。
【0024】
本発明の各バッフル50は、最初にバッフル支持板を提供し、次いでバッフル支持板の内側に第1の組の波形ステンレス鋼ストリップ51Bを置き、固定することによって組み立てることができる。本発明では、第1の組の波形ステンレス鋼ストリップ51Bを置いて固定するには、バッフル支持板の中心から始め、そこから外側に向かって作業していく。次に、第2の組の波形ステンレス鋼ストリップ51AのスリットS3を、第1の組の波形ステンレス鋼ストリップ51BのスリットS4の中に着座させる(これも中心から始め、外側に向かって作業していく)。第2の組の波形ステンレス鋼ストリップ51Aを置いた後、第2の組の波形ステンレス鋼ストリップ51Aをバッフル支持板の内壁に固定する。
【0025】
容積が同じ反応器の場合、本発明のバッフル設計は、(上記の
図2B、
図3、及び
図4A~
図4Dに示す従来技術のバッフル設計と比較して)縮小したチューブピッチに適応しているため、本発明のバッフル設計品を収容する反応器内部には、より多くの触媒充填チューブが存在し得る。これは、本発明の
図7A及び
図7Bに示されている。特に、
図7Aは
図2Bに示す従来技術のバッフルのチューブピッチを示しているが、一方、
図7Bは、複数の波形ステンレス鋼ストリップ51A、51Bを備えるバッフル50のチューブピッチを示しており、触媒が詰められた長尺チューブ54を支持するように、複数の波形ステンレス鋼ストリップ51A、51Bは互いに着座し、チューブ開口部52を有する格子パターンを形成している。従来技術のバッフル設計を使用すると、隣り合う各長尺チューブの間のピッチは約30mm~約80mmとなるが、本発明のバッフル設計を使用すると、隣り合う各長尺チューブの間のピッチは約27mm~約70mとなる。隣り合うチューブとチューブとの間のピッチ(すなわちチューブピッチ)は、1つのチューブの中心から他のチューブの中心までの測定値である。このチューブピッチが縮小したことにより、反応器内により多くの数のチューブが存在し得る(
図7Aと
図7Bとの比較)。場合によっては、本発明のバッフル設計により、従来技術のバッフル設計品を備える同等の反応器と比較して、反応器内に存在するチューブを7%~14%増やすことができる。
【0026】
本発明のバッフル設計は、長尺チューブ54のそれぞれを囲む空き領域A1を提供し(
図7Bを参照されたい)、空き領域A1は、そこに冷却剤を通すことができるように構成される。空き領域A1は、チューブ54のそれぞれのシェル側に配置され、波形ステンレス鋼ストリップによって提供される個々の各チューブ開口部の中に含まれる。一実施形態では、空き領域は、総面積が約60mm
2~約2000mm
2である。
【0027】
以下、本発明による複数のバッフル(すなわち波形の格子状支持体)を収容するEO反応器内部に存在することができる銀系エポキシ化触媒に関する詳細、及びEO製造中に用いられるEO作業条件に関する詳細について、いくつか説明する。下記の説明は網羅的であることを意図するものではなく、本発明で使用することができる銀系エポキシ化触媒及びEO作業条件のいずれについても、概略を説明するものである。
【0028】
通常の銀系エポキシ化触媒には、担体と、少なくとも触媒有効量の銀又は銀含有化合物とが含まれる。促進量のレニウム又はレニウム含有化合物も存在してもよい。促進量の1つ又は複数のアルカリ金属又はアルカリ金属含有化合物も存在してもよい。用いられる担体は多数の固体耐熱性担体から選択することができるが、固体耐熱性担体は多孔質であってもよく、好ましい細孔構造を提供してもよい。オレフィンのエポキシ化のための触媒担体としてはアルミナが有用であることは周知であり、アルミナは、銀系エポキシ化触媒のための好ましい担体である。
【0029】
用いられる担体の特徴にかかわらず、担体は普通、固定床エポキシ化反応器での利用に適したサイズの粒子、塊、断片、ペレット、リング、球、ワゴンホイール、十文字分割中空円筒形などに成形される。担体粒子は、等価直径が、約3mm~約12mmの範囲、より好ましくは約5mm~約10mmの範囲である。(等価直径とは、用いられる担体粒子と同じ外表面(すなわち、粒子の細孔内の表面を無視する)対体積比を有する球の直径のことである。)適切な担体は、Saint-Gobain Norpro Co.、Sud Chemie AG、Noritake Co.、CeramTec AG、及びIndustrie Bitossi S.p.Aから入手可能である。それらの中に含まれる特定の組成物及び配合物に限定されることなく、担体組成物及び担体を作るための方法に関するさらなる情報は、米国特許出願公開第2007/0037991号明細書に見ることができる。
【0030】
オレフィンを酸化オレフィンに酸化するための触媒を生成するために、次いで、上記の特性を有する担体の表面に、触媒有効量の銀を付与する。一実施形態において、銀の触媒有効量は10重量%~45重量%である。触媒は、担体上に銀前駆体化合物を被着させるのに十分で適切な溶媒に溶解した銀の化合物、錯体又は塩を担体に含浸させることによって調製することができる。好ましくは、銀水溶液を使用することができる。
【0031】
レニウム含有化合物又はレニウム含有錯体であってもよいレニウム成分もまた、その促進量を銀の被着の前、それと同時に、又はそれに続いて担体に被着させてもよい。レニウム促進剤は、担体を含む全触媒の重量に基づいて、レニウム金属として表した場合に約0.001重量%~約1重量%、好ましくは約0.005重量%~約0.5重量%、より好ましくは約0.01重量%~約0.1重量%の量で存在してもよい。
【0032】
銀及びレニウムの被着の前、被着と同時、又は被着の後に同じく担体に被着させてもよい他の成分は、促進量のアルカリ金属若しくは2つ以上のアルカリ金属の混合物、並びに任意選択で、促進量のIIA族アルカリ土類金属成分若しくは2つ以上のIIA族アルカリ土類金属成分の混合物及び/又は遷移金属成分若しくは2つ以上の遷移金属成分の混合物であり、これらはすべて、適切な溶媒に溶解した金属イオン、金属化合物、金属錯体及び/又は金属塩の形態であってもよい。担体には、様々な触媒促進剤を同時に、又は別々の工程で含浸してもよい。本発明の担体、銀、(1つ又は複数の)アルカリ金属促進剤、レニウム成分、及び任意選択で追加の(1つ又は複数の)促進剤の特定の組合せにより、同じ組合せの銀と担体のみ、又は銀と担体と1つだけの促進剤の場合より、1つ又は複数の触媒特性が向上する。
【0033】
触媒のある成分の「促進量」という用語は、本明細書で使用される場合、その成分を含まない触媒と比較した場合に、触媒の触媒性能を向上させるのに効果的に作用するその成分の量を指す。用いられる正確な濃度は、当然、他の要因の中でも、所望の銀含有量、担体の性質、液体の粘度、及び含浸溶液中に促進剤を送達するために使用される特定の化合物の溶解度に依存する。触媒特性の例としては、特に、作業性(暴走に対する耐性)、選択性、活性、変換率、安定性及び収率が挙げられる。個々の触媒特性の1つ又は複数を「促進量」によって高めてもよいが、他の触媒特性を高めても高めなくても、またさらには減少させてもよいことが当業者には理解されよう。
【0034】
適切なアルカリ金属促進剤は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム又はそれらの組合せから選択されてもよいが、セシウムが好ましく、セシウムと他のアルカリ金属との組合せが特に好ましい。担体に被着又は存在するアルカリ金属の量は、促進量とする。その量は、金属として測定した場合、全触媒の重量の好ましくは約10ppm~約3000ppm、より好ましくは約15ppm~約2000ppm、さらに好ましくは約20ppm~約1500ppm、特に好ましくは約50ppm~約1000ppmの範囲である。
【0035】
適切なアルカリ土類金属促進剤は、元素周期表のIIA族の元素を含み、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウム又はそれらの組合せであってもよい。適切な遷移金属促進剤は、元素周期表のIVA族、VA族、VIA族、VIIA族及びVIIIA族の元素、並びにそれらの組合せを含んでもよい。
【0036】
担体に被着させる(1つ又は複数の)アルカリ土類金属促進剤及び/又は(1つ又は複数の)遷移金属促進剤の量とは、促進量である。遷移金属促進剤は、通常、約0.1マイクロモル/グラム~約10マイクロモル/グラム、好ましくは約0.2マイクロモル/グラム~約5マイクロモル/グラムの量で存在してもよい。
【0037】
担体に含浸させるために使用される銀溶液はまた、当技術分野で既知の任意選択の溶媒又は錯化/可溶化剤を含んでもよい。多種多様な溶媒又は錯化/可溶化剤を用いて、含浸媒体において銀を所望の濃度に可溶化してもよい。有用な錯化/可溶化剤としては、アミン、アンモニア、シュウ酸、乳酸及びそれらの組合せが挙げられる。アミンとしては、1~5個の炭素原子を有するアルキレンジアミンが挙げられる。好ましい一実施形態では、当該溶液は、シュウ酸銀及びエチレンジアミンの水溶液である。錯化/可溶化剤は、含浸溶液中に、銀1モル当たり約0.1~約5.0モル、好ましくは約0.2~約4.0モル、より好ましくは銀1モルにつき約0.3~約3.0モルの量で存在してもよい。
【0038】
溶媒を使用する場合、溶媒は有機溶媒又は水であってもよく、極性であっても実質的に又は完全に非極性であってもよい。一般に、溶媒は、溶液成分を可溶化するのに十分な溶媒和力を有するものとする。同時に、溶媒和される促進剤への過度の影響、又は溶媒和される促進剤との相互作用がないように、溶媒を選ぶことが好ましい。1分子当たり1個~約8個の炭素原子を有する有機系溶媒が好ましい。いくつかの有機溶媒の混合物又は(1つ又は複数の)有機溶媒と水との混合物を使用してもよいが、ただし、そのような混合溶媒が本明細書において所望されるように機能することを条件とする。
【0039】
含浸溶液中の銀の濃度は、通常、約0.1重量%から、用いられる特定の溶媒/可溶化剤の組合せによって得られる最大溶解度までの範囲である。一般に、0.5重量%~約45重量%の銀を含む溶液を用いることが非常に適切であるが、5重量%~35重量%の銀濃度が好ましい。
【0040】
選択された担体の含浸は、従来の方法、例えば過剰溶液含浸、初期湿式含浸、スプレーコーティングなどのいずれかを用いてなされる。通常は、十分な量の溶液が担体によって吸収されるまで、担体材料を銀含有溶液に接触させておく。多孔質担体に含浸させるために使用される銀含有溶液の量は、担体の細孔に充填するのに必要な量を超えないことが好ましい。溶液中の銀成分の濃度にある程度応じて、中間乾燥の有無にかかわらず、単一含浸又は連続含浸を用いてもよい。含浸手順については、例えば、米国特許第4,761,394号、同第4,766,105号、同第4,908,343号、同第5,057,481号、同第5,187,140号、同第5,102,848号、同第5,011,807号、同第5,099,041号及び同第5,407,888号明細書に記載されている。様々な促進剤の被着前、共被着及び被着後の既知の従来の手順を用いることができる。
【0041】
銀含有化合物、すなわち銀前駆体、任意選択のレニウム成分、任意選択のアルカリ金属成分、及び任意選択の他の促進剤を担体に含浸させた後、含浸担体は、銀含有化合物を活性銀種に変換し、揮発性成分を含浸担体から除去して触媒前駆体を得るのに十分な時間か焼される。か焼は、約0.5~約35バールの範囲の圧力で、好ましくは緩やかな速度で、約200℃~約600℃の範囲の温度まで含有担体を加熱することによって達成されてもよい。一般に、温度が高いほど、必要な加熱時間は短くなる。当技術分野では、広範囲の加熱時間が提案されている。例えば、米国特許第3,563,914号明細書では、300秒未満の加熱が開示されており、米国特許第3,702,259号明細書では、100℃~375℃の温度で2~8時間、普通は約0.5~約8時間持続の加熱が開示されている。しかし、重要なのは、含まれる実質的にすべての銀が活性銀種に変換される温度に、加熱時間を対応づけることだけである。この目的のために、連続的又は段階的な加熱が用いられてもよい。
【0042】
か焼の間、含浸担体は、不活性ガス又は約10体積ppm~21体積%の酸素含有酸化成分を有する不活性ガスの混合物を含むガス雰囲気に曝露されてもよい。本発明の目的のために、不活性ガスは、か焼のために選ばれた条件下で、触媒又は触媒前駆体と実質的に反応しないガスとして定義される。触媒製造に関するさらなる情報は、前述の米国特許出願公開第2007/0037991号明細書に見ることができる。
【0043】
単なる例示のために挙げるが、以下は、現在の市販のEO反応器ユニットでよく使用される条件である。その条件とは、時間当たりのガス空間速度(gas hourly space velocity:GHSV)が1500~10,000h-1、反応器導入圧力が1MPa~3MPa、冷却剤温度が180~315℃、酸素変換レベルが10~60%、EO生成速度(仕事率)が100~350kg EO/m3触媒/時間、エチレンオキシド濃度の変化ΔEOが約1.5%~約4.5%である。起動完了後及び通常運転中の反応器導入口における供給組成物は、通常、(体積%で)1~40%のエチレン、3~12%のO2;0.2%~10%、好ましくは0.2%~6%、より好ましくは0.2%~5%のCO2;本明細書記載の0~5%のエタン、ある量の1つ又は複数の塩化物減速材;アルゴン、メタン、窒素又はそれらの混合物から構成される供給物の残部を含む。
【0044】
本発明をその好ましい実施形態に関して特に示し説明したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における前述及び他の変更を行ってもよいことが当業者には理解されよう。したがって、本発明は、説明及び図示された正確な形態及び詳細に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内にあることを意図している。
【国際調査報告】