IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオラインアールエックス・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-ペプチドの製造プロセス 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ペプチドの製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/64 20060101AFI20240110BHJP
   C07K 1/04 20060101ALI20240110BHJP
   C07K 1/10 20060101ALI20240110BHJP
   C07K 1/20 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C07K7/64 ZNA
C07K1/04
C07K1/10
C07K1/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539883
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 IL2021051549
(87)【国際公開番号】W WO2022144886
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/131,873
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】515264805
【氏名又は名称】バイオラインアールエックス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BioLineRx Ltd.
【住所又は居所原語表記】2 HaMaayan Street, 7177871 ModiIn, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハルブフィンガー エフラット
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA20
4H045BA16
4H045BA35
4H045EA20
4H045FA33
4H045FA40
4H045FA81
4H045GA25
(57)【要約】
記載の環状ペプチドを調製するための大規模調製プロセスであって、線状ペプチドの固相ペプチド合成と、樹脂からそれを切断することと、システイン残基を酸化して分子内ジスルフィド結合を形成することと、環状ペプチドを単離することと、を含み、(i)カップリングには、ジイソプロピルカルボジイミドと、シアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾールとを使用し、(ii)切断は、ペプチドを、TFAと、ジチオエリトリトール及び/又はジチオトレイトールとを含む溶液に接触させることを含み、(iii)ペプチドは、蒸発によるペプチドの事前濃縮なしに切断後に沈殿され、(iv)酸化は、少なくとも5mg/mLのペプチドを含む水溶液と過酸化水素とを接触させることを含み、(v)単離は、逆相クロマトグラフィーに最大で40グラム/kgカラムまでペプチドをロードすることと、カラムからの溶出と、を含み、(vi)単離は、凍結乾燥とそれに続くペプチドの粉砕とを含み、且つ/或いは(vii)樹脂の置換は少なくとも0.3ミリ当量/グラムであり、及び/又は樹脂はRinkアミノメチルスチレン樹脂であるプロセスを記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1を有する環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩の大規模調製プロセスであって、前記プロセスは、
(a)固相ペプチド合成によりアミノ酸及び4-フルオロ安息香酸を樹脂に逐次カップリングし、それにより前記樹脂にカップリングされた線状ペプチドを得ることと、
(b)前記樹脂から前記線状ペプチドを切断し、それにより遊離線状ペプチドを得ることと、
(c)前記線状ペプチドのシステイン残基を酸化して分子内ジスルフィド結合を形成し、それにより溶液中の配列番号1を有する前記環状ペプチドを得ることと、
(d)配列番号1を有する前記環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を単離することと、
を含み、
(i)前記カップリングは、シアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾールと組合せたジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を用いて行われ、
(ii)前記切断は、前記樹脂にカップリングされた前記線状ペプチドを、トリフルオロ酢酸(TFA)と、ジチオエリトリトール(DTE)及びジチオトレイトール(DTT)からなる群から選択されるスカベンジャーとを含む溶液に接触させることにより行われ、
(iii)前記プロセスは、沈殿前に蒸発により前記遊離線状ペプチドを濃縮することなく前記切断後に前記遊離線状ペプチドを沈殿させることをさらに含み、
(iv)前記酸化は、少なくとも5mg/mLの濃度で前記線状ペプチドを含む水溶液と過酸化水素とを接触させることにより行われ、
(v)前記単離は、逆相クロマトグラフィーカラムに前記カラム1kg当たり40グラム以下の環状ペプチドの濃度で前記環状ペプチドをロードすることと、前記カラムから前記環状ペプチドを溶出させることと、を含み、
(vi)配列番号1を有する前記環状ペプチドの前記単離は、凍結乾燥を含み、且つ前記プロセスは、前記凍結乾燥に続いて前記環状ペプチドを粉砕することをさらに含み、且つ/或いは
(vii)前記樹脂の置換度は、少なくとも0.3ミリ当量/グラムである、及び及び/又は前記樹脂は、Rinkアミノメチルスチレン樹脂である、
プロセス。
【請求項2】
前記カップリングが、シアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾールと組合せたジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を用いて行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記DIC並びに前記シアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾールが、約2倍の過剰モル量で使用される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記スカベンジャーを含む前記溶液中の前記スカベンジャーの濃度が、10mg/mL~500mg/mLの範囲内である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記切断が、前記樹脂にカップリングされた前記線状ペプチドを、トリフルオロ酢酸(TFA)と、ジチオエリトリトール(DTE)及びジチオトレイトール(DTT)からなる群から選択されるスカベンジャーとを含む溶液に接触させることにより行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記溶液中のジチオトレイトールの濃度が約50mg/mLである、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記沈殿前に蒸発により前記遊離線状ペプチドを濃縮することなく前記切断後に前記遊離線状ペプチドを沈殿させることをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記沈殿が、tert-ブチルメチルエーテル(MTBE)とヘキサンとの混合物の添加により前記樹脂1グラム当たり約45mLの前記混合物の体積で行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記酸化が、前記線状ペプチドと過酸化水素とを接触させることにより行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記接触が、少なくとも5mg/mLの濃度で前記線状ペプチドを含む水溶液と過酸化水素とを接触させることにより行われる、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記単離が、逆相クロマトグラフィーカラムに前記カラム1kg当たり40グラム以下の環状ペプチドの濃度で前記環状ペプチドをロードすることと、前記カラムから前記環状ペプチドを溶出させることと、を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記カラムがC18カラムである、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記溶出がリン酸トリエチルアンモニウム溶液で行われる、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
配列番号1を有する前記環状ペプチドの前記単離が凍結乾燥を含み、且つ前記プロセスが、前記凍結乾燥に続いて前記環状ペプチドを粉砕することをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記樹脂の置換度が少なくとも0.3ミリ当量/グラムである、及び/又は前記樹脂がRinkアミノメチルスチレン樹脂である、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2020年12月30日出願の米国仮特許出願第63/131,873号(その内容はその全体を参照により本願に援用する)に基づく優先権の利益を主張する。
【0002】
配列表に関する陳述
4,096バイトを含み、2021年12月27日に作成され、本願の出願と並行して提出された、89546 SequenceListing.txtという名称のASCIIファイルは、参照により本願に援用される。
【0003】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、化学合成に関し、より特定的には、ただし排他的なものではないが、癌及び/又は関節炎などの病態を治療する際などに使用可能なBL-8040などのペプチドの新規調製プロセスに関する。
【背景技術】
【0004】
BL-8040は、4F-ベンゾイル-TN14003(4-フルオロベンゾイル-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH、配列番号1)としても知られるペプチドであり、その2つのCys残基間のジスルフィド結合の形成時は環状である。
【0005】
米国特許第7,423,007号明細書には、4F-ベンゾイル-TN14003をはじめとする、CXC4アンタゴニズムを有するペプチドが記載されている。米国特許第7,423,007号明細書の教示によれば、4F-ベンゾイル-TN14003は、DMF中、カップリング剤としてDIPCDI-HOBtを用いた固相合成(アミノ酸を2.5当量で添加する)、続いて、m-クレゾール及びエタンジチオールと共に1M TMSBr-チオアニソール/TFAを用いた脱保護及び切断、並びに空気酸化による環化により製造される。
【0006】
そのほかの背景技術としては、米国特許第7,138,488号明細書及び同第8,435,939号明細書、並びに国際特許出願公開の国際公開第2008/075369号パンフレット、国際公開第2008/075370号パンフレット、国際公開第2010/146578号パンフレット、国際公開第2012/095849号パンフレット、及び国際公開第2013/160895号パンフレットに記載のものが挙げられる。
【発明の概要】
【0007】
本発明のいくつかの実施形態のある態様によれば、配列番号1を有する環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩の大規模調製プロセスが提供され、本プロセスは、
(a)固相ペプチド合成によりアミノ酸及び4-フルオロ安息香酸を樹脂に逐次カップリングし、それにより樹脂にカップリングされた線状ペプチドを得ることと、
(b)樹脂から線状ペプチドを切断し、それにより遊離線状ペプチドを得ることと、
(c)線状ペプチドのシステイン残基を酸化して分子内ジスルフィド結合を形成し、それにより溶液中の配列番号1を有する環状ペプチドを得ることと、
(d)配列番号1を有する環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を単離することと、
を含み、
(i)カップリングは、シアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾールと組合せたジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を用いて行われ、
(ii)切断は、樹脂にカップリングされた線状ペプチドを、トリフルオロ酢酸(TFA)と、ジチオエリトリトール(DTE)及びジチオトレイトール(DTT)からなる群から選択されるスカベンジャーとを含む溶液に接触させることにより行われ、
(iii)プロセスは、沈殿前に蒸発により遊離線状ペプチドを濃縮することなく切断後に遊離線状ペプチドを沈殿させることをさらに含み、
(iv)酸化は、少なくとも5mg/mLの濃度で線状ペプチドを含む水溶液と過酸化水素とを接触させることにより行われ、
(v)単離は、カラム1kg当たり40グラム以下の環状ペプチドの濃度で逆相クロマトグラフィーカラムに環状ペプチドをロードすることと、カラムから環状ペプチドを溶出させることと、を含み、
(vi)配列番号1を有する環状ペプチドの単離は、凍結乾燥を含み、且つプロセスは、凍結乾燥に続いて環状ペプチドを粉砕することをさらに含み、並びに/或いは
(vii)樹脂の置換度は、少なくとも0.3ミリ当量/グラムである、及び/又は樹脂は、Rinkアミノメチルスチレン(AMS)樹脂である。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態のある態様によれば、配列番号1を有する環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩の大規模調製プロセスが提供され、本プロセスは、
(a)シアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾールと組合せたジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を用いて、固相ペプチド合成によりアミノ酸及び4-フルオロ安息香酸を樹脂に逐次カップリングし、それにより樹脂にカップリングされた線状ペプチドを得ることと、
(b)樹脂から線状ペプチドを切断し、それにより遊離線状ペプチドを得ることと、
(c)線状ペプチドのシステイン残基を酸化して分子内ジスルフィド結合を形成し、それにより溶液中の配列番号1を有する環状ペプチドを得ることと、
(d)配列番号1を有する環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を単離することと、
を含む。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態のある態様によれば、配列番号1を有する環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩の大規模調製プロセスが提供され、本プロセスは、
(a)固相ペプチド合成によりアミノ酸及び4-フルオロ安息香酸を樹脂に逐次カップリングし、それにより樹脂にカップリングされた線状ペプチドを得ることと、
(b)樹脂にカップリングされた線状ペプチドを、トリフルオロ酢酸(TFA)と、ジチオエリトリトール(DTE)及びジチオトレイトール(DTT)からなる群から選択されるスカベンジャーとを含む溶液に接触させることにより樹脂から線状ペプチドを切断し、それにより遊離線状ペプチドを得ることと、
(c)線状ペプチドのシステイン残基を酸化して分子内ジスルフィド結合を形成し、それにより溶液中の配列番号1を有する環状ペプチドを得ることと、
(d)配列番号1を有する環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を単離することと、
を含む。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態のある態様によれば、配列番号1を有する環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩の大規模調製プロセスが提供され、本プロセスは、
(a)固相ペプチド合成によりアミノ酸及び4-フルオロ安息香酸を樹脂に逐次カップリングし、それにより樹脂にカップリングされた線状ペプチドを得ることと、
(b)樹脂から線状ペプチドを切断し、それにより遊離線状ペプチドを得ること、及び沈殿前に蒸発により遊離線状ペプチドを濃縮することなく切断後に遊離線状ペプチドを沈殿させることと、
(c)線状ペプチドのシステイン残基を酸化して分子内ジスルフィド結合を形成し、それにより溶液中の配列番号1を有する環状ペプチドを得ることと、
(d)配列番号1を有する環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を単離することと、
を含む。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態のある態様によれば、配列番号1を有する環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩の大規模調製プロセスが提供され、本プロセスは、
(a)固相ペプチド合成によりアミノ酸及び4-フルオロ安息香酸を樹脂に逐次カップリングし、それにより樹脂にカップリングされた線状ペプチドを得ることと、
(b)樹脂から線状ペプチドを切断し、それにより遊離線状ペプチドを得ることと、
(c)線状ペプチドのシステイン残基を酸化し、この酸化は、少なくとも5mg/mLの濃度で線状ペプチドを含む水溶液と過酸化水素とを接触させ、それにより溶液中の配列番号1を有する環状ペプチドを得ることにより行われる、酸化して分子内ジスルフィド結合を形成ことと、
(d)配列番号1を有する環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を単離することと、
を含む。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態のある態様によれば、配列番号1を有する環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩の大規模調製プロセスが提供され、本プロセスは、
(a)固相ペプチド合成によりアミノ酸及び4-フルオロ安息香酸を樹脂に逐次カップリングし、それにより樹脂にカップリングされた線状ペプチドを得ることと、
(b)樹脂から線状ペプチドを切断し、それにより遊離線状ペプチドを得ることと、
(c)線状ペプチドのシステイン残基を酸化して分子内ジスルフィド結合を形成し、それにより溶液中の配列番号1を有する環状ペプチドを得ることと、
(d)配列番号1を有する環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を単離することであって、この単離は、カラム1kg当たり40グラム以下の環状ペプチドの濃度で逆相クロマトグラフィーカラムに環状ペプチドをロードすることと、カラムから環状ペプチドを溶出させることと、を含む、ことと、
を含む。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態のある態様によれば、配列番号1を有する環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩の大規模調製プロセスが提供され、本プロセスは、
(a)固相ペプチド合成によりアミノ酸及び4-フルオロ安息香酸を樹脂に逐次カップリングし、それにより樹脂にカップリングされた線状ペプチドを得ることであって、この樹脂の置換度は、少なくとも0.3ミリ当量/グラムである、及び/又はこの樹脂は、Rinkアミノメチルスチレン(AMS)樹脂である、ことと、
(b)樹脂から線状ペプチドを切断し、それにより遊離線状ペプチドを得ることと、
(c)線状ペプチドのシステイン残基を酸化して分子内ジスルフィド結合を形成し、それにより溶液中の配列番号1を有する環状ペプチドを得ることと、
(d)配列番号1を有する環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を単離することと、
を含む。
【0014】
本明細書に記載のそれぞれの任意の実施形態のいくつかによれば、カップリングは、シアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾールと組合せたジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を用いて行われる。
【0015】
DICと、シアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾールとを用いたカップリングに関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、DICと、シアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾールとは、約2倍の過剰モル量で使用される。
【0016】
本明細書に記載のそれぞれの任意の実施形態のいくつかによれば、切断は、樹脂にカップリングされた線状ペプチドを、トリフルオロ酢酸(TFA)と、ジチオエリトリトール(DTE)及びジチオトレイトール(DTT)からなる群から選択されるスカベンジャーと、を含む溶液に接触させることにより行われる。
【0017】
ジチオエリトリトール及びジチオトレイトールからなる群から選択されるスカベンジャーを含む溶液を用いた切断に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、溶液中のスカベンジャーの濃度は、10mg/mL~500mg/mLの範囲内である。
【0018】
ジチオトレイトールを含む溶液を用いた切断に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、溶液中のジチオトレイトールの濃度は、約50mg/mLである。
【0019】
本明細書に記載のそれぞれの任意の実施形態のいくつかによれば、プロセスは、沈殿前に蒸発により遊離線状ペプチドを濃縮することなく切断後に遊離線状ペプチドを沈殿させることをさらに含む。
【0020】
線状ペプチドの沈殿に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、沈殿は、樹脂1グラム当たり約45mLの混合物の体積でtert-ブチルメチルエーテル(MTBE)とヘキサンとの混合物の添加により行われる。
【0021】
本明細書に記載のそれぞれの任意の実施形態のいくつかによれば、酸化は、線状ペプチドと過酸化水素とを接触させることにより行われる。
【0022】
線状ペプチドと過酸化水素との接触に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、接触は、少なくとも5mg/mLの濃度で線状ペプチドを含む水溶液と過酸化水素とを接触させることにより行われる。
【0023】
本明細書に記載のそれぞれの任意の実施形態のいくつかによれば、単離は、カラム1kg当たり40グラム以下の環状ペプチドの濃度で逆相クロマトグラフィーカラムに環状ペプチドをロードすることと、カラムから環状ペプチドを溶出させることと、を含む。
【0024】
逆相クロマトグラフィーカラムに関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、カラムはC18カラムである。
【0025】
溶出に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、溶出は、リン酸トリエチルアンモニウム溶液で行われる。
【0026】
本明細書に記載のそれぞれの任意の実施形態のいくつかによれば、配列番号1を有する環状ペプチドの単離は、凍結乾燥を含み、且つプロセスは、凍結乾燥に続いて環状ペプチドを粉砕することをさらに含む。
【0027】
本明細書に記載のそれぞれの任意の実施形態のいくつかによれば、樹脂固相ペプチド合成の置換度は、少なくとも0.3ミリ当量/グラムであり、及び/又は樹脂は、Rinkアミノメチルスチレン(AMS)樹脂である。
【0028】
とくに定義がない限り、本明細書で用いられる技術及び/又は科学用語はすべて、本発明が関連する技術分野の当業者が通常理解しているものと同一の意味を有する。本明細書に記載のものと類似の又は均等な方法及び材料は、本発明の実施形態の実用又は試験の際に使用可能であるが、模範的方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾を生じた場合、定義を含む本特許明細書が優先されるものとする。そのほか、材料、方法、及び実施例は、単なる例示にすぎず、必ずしも限定を意図するものではない。
【0029】
本発明の実施形態の方法及び/又はシステムの実現は、選択されたタスクを手動、自動、又はそれらの組合せで実施又は完了することを必要としうる。そのうえ、本発明の方法及び/又はシステムの実施形態の実際の計装及び装置によれば、いくつかの選択されたタスクは、ハードウェアにより、ソフトウェアにより、若しくはファームウェアにより、又はオペレーティングシステムを用いてそれらの組合せにより実現されうる。
【0030】
たとえば、本発明の実施形態に係る選択されたタスクを実施するためのハードウェアは、チップ又は回路として実現されうる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態に係る選択されたタスクは、いずれかの好適なオペレーティングシステムを用いてコンピューターにより実行される複数のソフトウェア命令として実現されうる。本発明の例示的実施形態では、本明細書に記載の方法及び/又はシステムの模範的実施形態に係る1つ以上のタスクは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサーにより実施される。任意に、データプロセッサーは、命令及び/又はデータを記憶するための揮発性メモリー並びに/或いは命令及び/又はデータを記憶するための不揮発性ストレージ、たとえば、磁気ハードディスク及び/又はリムーバブル媒体を含む。任意に、ネットワーク接続も同様に提供される。ディスプレイ及び/又はユーザー入力デバイス、たとえば、キーボード又はマウスも、同様に任意に提供される。
【0031】
単なる例にすぎないが、添付図面を参照して、本発明のいくつかの実施形態を本明細書で説明する。次に詳細に図面を具体的に参照するが、示された明細は、例として挙げられ本発明の実施形態の例示的考察が目的であることが強調される。これに関連して、図面を用いて行われる説明により、本発明の実施形態がどのように実用されうるかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】樹脂へのCys、Cit(シトルリン)、Arg、Tyr、Pro、D-Lys、Lys、Cit、Tyr、Cys、Nal(ナフチルアラニン)、Arg、Arg、及びFba(4-フルオロ-安息香酸)のカップリングのための逐次サイクルを含む、本発明のいくつかの模範的実施形態に係るBL-8040の調製プロセスの固相合成部分のフロー図を提示する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、化学合成に関し、より具体的に、ただし限定的ではないが、癌及び/又は関節炎などの病態を治療する際などに使用可能なBL-8040などのペプチドの新規調製プロセスに関する。
【0034】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、下記説明に示される又は実施例により例示される詳細に必ずしもその出願が限定されるとは限らないものと理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であるか又は各種方法で実用すること若しくは行うことが可能である。
【0035】
ペプチドは、通常、固相合成により調製され、その際、ペプチド(保護形)は、樹脂に装着された状態で形成され、次いで樹脂から切断される(保護基を除去しつつ)。次いで、BL-8040(4-フルオロベンゾイル-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH、配列番号1)にあるような分子内ジスルフィド結合は、Cys残基の酸化により形成される。
【0036】
労力のかかる実験を行った後、本発明者は、かかるペプチド、とくにBL-8040、の大規模合成に驚くほど有効な新規プロセスを見出した。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態のある態様によれば、分子内ジスルフィド結合を含む環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩の調製プロセスが提供される。本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、環状ペプチドは、配列番号1(4-フルオロベンゾイル-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DLys-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH)を有し、且つCys残基は、分子内ジスルフィド結合により連結される。ペプチドはまた、配列番号1を有するペプチドのアナログ又は誘導体であってもよい。
【0038】
プロセスは、固相ペプチド合成により(当技術分野で公知の一般的手順に従って)アミノ酸及び、任意で、ペプチドに存在する場合はアミノ酸アナログ(たとえば、4-フルオロ-安息香酸などのN末端カルボン酸)を樹脂(たとえば、Rink AMS樹脂)に逐次カップリングして、樹脂にカップリングされた線状ペプチドを得ることを含む。
【0039】
プロセスは、カップリングにより形成されたペプチドを樹脂から切断し、それにより遊離(線状)ペプチドを得ることと(本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従って)、線状ペプチドのシステイン残基を酸化して分子内ジスルフィド結合を形成し、それにより(溶液中の)環状ペプチドを得ることと(本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従って)、をさらに含む。
【0040】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、プロセスは大規模プロセスである。
【0041】
本明細書では、「大規模プロセス」という用語は、(プロセスの単一ランで)少なくとも100グラムの最終生成物の調製プロセスを意味する。
【0042】
大規模プロセスに関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、少なくとも250グラムの環状ペプチドが調製されるか、又は少なくとも500グラムのペプチド、又は少なくとも1kgのペプチド、又は少なくとも3kgのペプチド、さらには少なくとも10kgの環状ペプチドがプロセスにより調製される。
【0043】
カップリング:
逐次カップリングの順序は、C末端から始まり、N末端で終わる。たとえば、配列番号1では、逐次カップリングの順序は、Arg、Cys、Cit(シトルリン)、Arg、Tyr、Pro、DLys(D-リシン)、Lys、Cit、Tyr、Cys、Nal(ナフチルアラニン)、Arg、Arg、4-フルオロ-安息香酸である。
【0044】
カップリングは、(たとえば、アミノ酸又はN末端カルボン酸の)カルボキシレート基と(たとえば、第1のステップで樹脂の又は後続ステップでN末端の)アミン基との間でアミド結合を形成することを含み、好ましくは、アミド結合形成に好適な当技術分野で公知の1つ以上のカップリング試薬、たとえば、カルボジイミド(たとえば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、及び/又はジイソプロピルカルボジイミド)、アミニウム/ウロニウム(たとえば、HATU、HBTU、TBTU、及び/又はHCTU)、或いはホスホニウム塩(たとえば、PyBOP及び/又はPyAOP)及び/又はプロパンホスホン酸無水物を用いて、行われる。
【0045】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、1つ以上のカップリング試薬は、カルボジイミド(たとえば、ジイソプロピルカルボジイミド)と、ヒドロキシトリアゾール(たとえば、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)又は1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt))及び/又はシアノヒドロキシイミノ酢酸エステル(たとえば、シアノヒドロキシイミノ酢酸エチル)などの(たとえば、カルボジイミドとほぼ同一のモル濃度の)追加の作用剤と、を含む。
【0046】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、カップリングは、カルボジイミドとシアノヒドロキシイミノ酢酸エステルとを用いて行われる。いくつかのかかる実施形態では、カルボジイミド及び/又はシアノヒドロキシイミノ酢酸エステルは、(カップリングされるアミノ酸又は他のカルボン酸を基準にして)約2倍の過剰モル量で使用される。
【0047】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、カップリングは、カルボジイミドと共にシアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾールを用いて行われる。いくつかのかかる実施形態では、カルボジイミド及び/又はシアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾールは、(カップリングされるアミノ酸又は他のカルボン酸を基準にして)約2倍の過剰モル量で使用される。
【0048】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、カップリングは、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)と共にシアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾールを用いて行われる。いくつかのかかる実施形態では、DIC並びにシアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾールは、(カップリングされるアミノ酸又は他のカルボン酸を基準にして)約2倍の過剰モル量で使用される。
【0049】
なんら特定の理論により拘束されるものではないが、(たとえば、本明細書に記載の割合の)カルボジイミドとの組合せでのシアノヒドロキシイミノ酢酸エチルの使用は、(たとえば、ヒドロキシトリアゾールと比較して)本明細書に記載のペプチドの大規模合成にとくに好適であると考えられる。
【0050】
各アミノ酸カップリングステップでは、アミノ酸のN末端は、簡単に除去可能な基、好ましくはフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)により保護され、これは、任意にピペリジン(たとえば、DMF中の20~50%ピペリジン)などのマイルドな塩基により切断されてもよい。DMF中のピペリジンの模範的濃度は約20%である。
【0051】
たとえば、Fmoc基は、任意に、(本明細書に記載の実施形態のいずれかに従って)ピペリジン溶液で2回、任意に5~10分間で1回、次いで任意に25~30分間で1回洗浄し、続いて(たとえば、ピペリジンなしのDMFで)樹脂を洗浄して塩基を除去することにより、除去されうる(これは、任意にpHを決定することにより確認されうる)。
【0052】
そのほか、ある特定のアミノ酸の側鎖は、t-ブトキシなどの(上述したマイルドな塩基により切断されない)簡単に除去可能な基により保護されてもよい。そのため、(たとえば、Tyr、Ser、及びThrの)側鎖ヒドロキシ基及び/又は(たとえば、Asp及びGluの)カルボキシレート基は、好ましくは、(t-ブトキシ基を形成するように)t-ブチル(t-Bu)により保護されうるとともに、(たとえば、Lys、Trp、及びHisの)側鎖アミン基は、(t-ブトキシ基を含む)t-ブトキシカルボニル(Boc)により保護されてもよい。加えていずれの場合も、(たとえば、酸性環境での)切断は、非保護ヒドロキシ基又はアミン基を再生してもよい。同様に、(たとえば、Cysの)側鎖チオヒドロキシ基及び/又は(たとえば、Asp及びGluの)カルボキシレート基は、好ましくは、トリチル(Trt)で保護されうるとともに、及び/又は(たとえば、Argの)側鎖グアニジニウム基は、好ましくは、2,2,4,6,7-ペンタメチル-2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf)で保護されうるうえに、それらの各々は、任意に酸性環境で切断されてもよい。上述した側鎖保護基は、Fmocの使用ととくに適合可能であることが知られている。当業者であれば、アミノ酸側鎖の具体的基に好適なそのほかの保護基並びに互いの及び各種N末端保護基とのそれらの適合性に気付いているであろう。
【0053】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、アミノ酸が逐次カップリングされる樹脂は、Rinkアミノメチルスチレン(AMS)樹脂(Rinkリンカーで置換されたアミノメチルスチレン樹脂)である。Rink AMS樹脂は、任意にFmoc基により保護され、これは、(第1のアミノ酸がカップリングされる)アミン基を露出させるためにカップリング前に除去されてもよい。
【0054】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、(アミノ酸が逐次カップリングされる)樹脂の置換度は、樹脂1グラム当たり少なくとも0.3ミリ当量(たとえば、樹脂1グラム当たり0.3~1.1ミリ当量)、任意に樹脂1グラム当たり0.6~1.1ミリ当量、任意に樹脂1グラム当たり0.6~0.9ミリ当量である。いくつかのかかる実施形態では、樹脂はRink AMS樹脂である。
【0055】
樹脂は、たとえば樹脂の膨潤を促進するために、各カップリングステップ前にジメチルホルムアミド(DMF)などの溶媒で任意に(たとえば1回又は2回)洗浄される。いくつかの模範的実施形態では、樹脂は、樹脂の脱保護(たとえば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに係るFmoc基の除去)及び第1のアミノ酸のカップリングの前に20~30分間洗浄され、且つ各後続カップリングステップ前に約2分間(たとえば2回)洗浄される。
【0056】
樹脂からの切断:
本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに係る逐次カップリングにより樹脂に装着されたペプチドが形成されると、得られたペプチドは、(たとえば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従って)樹脂から切断される。
【0057】
樹脂からのペプチド(及びアミノ酸側鎖からのいずれかの保護基)の切断は、好ましくは、(樹脂にカップリングされた)ペプチドと、トリフルオロ酢酸(TFA)などの酸を含む液体と、を接触させることにより行われる。液体中のTFAの濃度は、任意に、少なくとも約80重量%、又は少なくとも約90重量%、又は少なくとも約95重量%であり、たとえば、この場合、残部は主に水である。模範的実施形態では、液体中のTFAの濃度は約95重量%であり、且つ残部は主に水である。
【0058】
切断に使用される液体(たとえば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに係る酸性液体)は、任意に、スカベンジャー(たとえば、切断時に形成されうる反応性カチオン種のスカベンジャー)、たとえば、チオール(たとえば、エタンジチオール、ジチオエリトリトール、ジチオトレイトール)、トリアルキルシラン(たとえば、トリイソプロピルシラン)、フェノール(たとえば、m-クレゾール)、及び/又は水をさらに含む。
【0059】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、切断に使用される液体(たとえば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに係る酸性液体)中のスカベンジャーは、ジチオトレイトール(DTT)及び/又はジチオエリトリトール(DTE)である。いくつかのかかる実施形態では、液体は、好ましくは水との組合せで、(たとえば、本明細書に記載の濃度の)TFAと、DTT及び/又はDTEと、を含む溶液である。
【0060】
DTT及び/又はDTEに関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、切断に使用される溶液中のDTT及び/又はDTEの(合計)濃度は、少なくとも10mg/mLである。いくつかのかかる実施形態では、DTT及び/又はDTEの濃度は、10~500mg/mLの範囲内である。いくつかのかかる実施形態では、DTT及び/又はDTEの濃度は、10~200mg/mLの範囲内である。いくつかのかかる実施形態では、DTT及び/又はDTEの濃度は、10~100mg/mLの範囲内である。いくつかのかかる実施形態では、DTT及び/又はDTEの濃度は、10~50mg/mLの範囲内である。DTTの模範的濃度は約50mg/mLである。
【0061】
DTT及び/又はDTEに関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、切断に使用される溶液中のDTT及び/又はDTEの(合計)濃度は、少なくとも25mg/mLである。いくつかのかかる実施形態では、DTT及び/又はDTEの濃度は、25~500mg/mLの範囲内である。いくつかのかかる実施形態では、DTT及び/又はDTEの濃度は、25~200mg/mLの範囲内である。いくつかのかかる実施形態では、DTT及び/又はDTEの濃度は、25~100mg/mLの範囲内である。いくつかのかかる実施形態では、DTT及び/又はDTEの濃度は、25~50mg/mLの範囲内である。
【0062】
DTT及び/又はDTEに関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、切断に使用される溶液中のDTT及び/又はDTEの(合計)濃度は、少なくとも50mg/mLである。いくつかのかかる実施形態では、DTT及び/又はDTEの濃度は、50~500mg/mLの範囲内である。いくつかのかかる実施形態では、DTT及び/又はDTEの濃度は、50~200mg/mLの範囲内である。いくつかのかかる実施形態では、DTT及び/又はDTEの濃度は、50~100mg/mLの範囲内である。
【0063】
樹脂からペプチドが切断されると、遊離ペプチドは、好ましくは、たとえばペプチドが不溶性の液体の添加により、沈殿される。任意に、沈殿よりも先行して、溶液の溶媒の一部分の蒸発により遊離ペプチドを濃縮して溶液の体積が(たとえば、約65%~約70%)低減される。代替的に、遊離ペプチドの濃縮は沈殿前に実施されない。
【0064】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、遊離ペプチドの沈殿は、沈殿前に遊離ペプチドを濃縮することなく実施される。
【0065】
本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに係るペプチドの沈殿は、任意に、tert-ブチルメチルエーテル(MTBE)などのジアルキルエーテルの添加により行われる。
【0066】
MTBEは、任意にヘキサンと混合される。いくつかの実施形態では、(任意に、たとえば約5℃~約15℃の範囲内の温度に冷やされた)MTBEとヘキサンとの混合物は、樹脂1グラム当たり少なくとも40mLの混合物、任意に樹脂1グラム当たり約45mLの混合物の体積でペプチドに添加される。MTBEとヘキサンとの模範的混合物は、60:40(MTBE:ヘキサン)の体積比のMTBE及びヘキサンで構成される。
【0067】
沈殿したペプチドは、任意に、たとえば凍結乾燥により又は真空により、乾燥される。模範的実施形態では、乾燥は真空により行われる。
【0068】
ジスルフィド結合形成:
本明細書で考察されるように、分子内ジスルフィド結合は、(任意に、カップリングに関する本明細書に記載の実施形態のいずれか及び樹脂からのペプチドの切断に関する本明細書に記載の実施形態のいずれかを用いて形成されうる)ペプチドのシステイン残基の酸化により形成される(ペプチドの環化をもたらす)。当技術分野で公知のいずれかの好適な技術が任意に使用されてもよい。
【0069】
本明細書に記載のそれぞれの任意の実施形態のいくつかでは、酸化は、ペプチドと過酸化水素とを接触させることにより、たとえば、過酸化水素溶液(たとえば、水中の約1.5重量%の過酸化水素)の漸進的(たとえば、滴状)添加により、行われる。過酸化水素とCys残基対との(たとえば、ペプチドとの、ただし、ペプチドは、配列番号1にあるような厳密に2つのCys残基を含む)モル比は、好ましくは少なくとも1:1(すなわち、Cys残基対1つ当たり少なくとも1つの過酸化水素分子が存在する)、任意に少なくとも2:1、任意に少なくとも3:1、及び任意に少なくとも4:1である。過酸化水素とCys残基対との(たとえば、ペプチドとの)模範的モル比は、約5:1にある。代わりにまたは加えて、過酸化水素は、(たとえば、エルマン試験などの好適なアッセイにより決定したときに)チオヒドロキシ基が残留しなくなるまで任意に添加されてもよい。
【0070】
本明細書に記載のそれぞれの任意の実施形態のいくつかでは、酸化は、(たとえば、過酸化水素との接触に関する本明細書に記載の実施形態のいずれかに従って)少なくとも5mg/mLの濃度でペプチドを含む水溶液と過酸化水素とを接触させることにより行われる。いくつかのかかる実施形態では、ペプチドの濃度は5~20mg/mLの範囲内である。いくつかの実施形態では、ペプチドの濃度は5~15mg/mLの範囲内である。いくつかの実施形態では、ペプチドの濃度は5~10mg/mLの範囲内である。ペプチドの模範的濃度は約10mg/mLである。
【0071】
本明細書に記載のそれぞれの任意の実施形態のいくつかでは、酸化は、(たとえば、過酸化水素との接触に関する本明細書に記載の実施形態のいずれかに従って)少なくとも10mg/mLの濃度でペプチドを含む水溶液と過酸化水素とを接触させることにより行われる。いくつかのかかる実施形態では、ペプチドの濃度は10~20mg/mLの範囲内である。いくつかの実施形態では、ペプチドの濃度は10~15mg/mLの範囲内である。
【0072】
水溶液を用いて行われる酸化に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、水溶液は、弱いアルカリ性、たとえば、重炭酸アンモニウム(NHHCO)の水溶液である。重炭酸アンモニウムの模範的濃度は約0.1Mである。
【0073】
ペプチド単離:
プロセスは、好ましくは、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従って(たとえば、カップリングに関する本明細書に記載の実施形態のいずれか、樹脂からのペプチドの切断に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか、及びジスルフィド結合形成に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか、の組合せを用いて)得られたペプチドを単離することをさらに含む。当技術分野で公知のいずれかの好適な技術が任意に使用されてもよい。
【0074】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、ペプチドの単離は、たとえば、分取高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)の少なくとも1ステップ(たとえば、任意に1又は2ステップ)で、クロマトグラフィーを含む。模範的実施形態では、クロマトグラフィー(たとえば、HPLC)を行うためにC18カラムが使用される。
【0075】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、ペプチドの単離は、(カラムの樹脂の重量基準で)カラム1kg当たり40グラム以下のペプチドの濃度で逆相クロマトグラフィーカラム(たとえば、C18カラム)にペプチドを(たとえば、本明細書に記載のHPLCの少なくとも1ステップで)ロードすることを含む。
【0076】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、ペプチドの単離は、(カラムの樹脂の重量基準で)カラム1kg当たり少なくとも4グラムのペプチドの濃度で逆相クロマトグラフィーカラム(たとえば、C18カラム)にペプチドを(たとえば、本明細書に記載のHPLCの少なくとも1ステップで)ロードすることを含む。いくつかのかかる実施形態では、ローディング濃度は、カラム樹脂1kg当たり4~40グラムのペプチドの範囲内である。いくつかの実施形態では、ローディング濃度は、カラム樹脂1kg当たり4~30グラムのペプチドの範囲内である。いくつかの実施形態では、ローディング濃度は、カラム樹脂1kg当たり4~25グラムのペプチドの範囲内である。
【0077】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、ペプチドの単離は、(カラムの樹脂の重量基準で)カラム1kg当たり少なくとも10グラムのペプチドの濃度で逆相クロマトグラフィーカラム(たとえば、C18カラム)にペプチドを(たとえば、本明細書に記載のHPLCの少なくとも1ステップで)ロードすることを含む。いくつかのかかる実施形態では、ローディング濃度は、カラム樹脂1kg当たり10~40グラムのペプチドの範囲内である。いくつかの実施形態では、ローディング濃度は、カラム樹脂1kg当たり10~30グラムのペプチドの範囲内である。いくつかの実施形態では、ローディング濃度は、カラム樹脂1kg当たり10~25グラムのペプチドの範囲内である。
【0078】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、ペプチドの単離は、(カラムの樹脂の重量基準で)カラム1kg当たり少なくとも20グラムのペプチドの濃度で逆相クロマトグラフィーカラム(たとえば、C18カラム)にペプチドを(たとえば、本明細書に記載のHPLCの少なくとも1ステップで)ロードすることを含む。いくつかのかかる実施形態では、ローディング濃度は、カラム樹脂1kg当たり20~40グラムのペプチドの範囲内である。いくつかの実施形態では、ローディング濃度は、カラム樹脂1kg当たり20~30グラムのペプチドの範囲内である。いくつかの実施形態では、ローディング濃度は、カラム樹脂1kg当たり20~25グラムのペプチドの範囲内である。
【0079】
(本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従って)カラムにロードされたペプチドは、たとえば、緩衝剤溶液を用いて(たとえば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従ってアセトニトリル勾配との組合せで)、溶出される。緩衝剤溶液のpHは、任意に1.5~3、任意に2.0~2.5の範囲内、任意に約2.25である。いくつかの実施形態では、リン酸トリエチルアンモニウム緩衝剤は、たとえば、少なくとも約0.01M、又は少なくとも約0.03M、又は少なくとも約0.1Mの濃度で、カラムからペプチドを溶出させるために使用される。模範的実施形態では、リン酸トリエチルアンモニウムの濃度は約0.1Mである。
【0080】
HPLCカラムからの溶出は、任意に、アセトニトリル勾配で行われる。勾配は、任意に、0.1%アセトニトリル/分~2%アセトニトリル/分の範囲内、たとえば、約1%/5~6分及び/又は約1%/分の(任意に経時的に変動される)割合でアセトニトリルの濃度を増加させることを含む。代わりにまたは加えて、勾配は、任意に、(たとえば、0%から)10%~40%、又は20%~30%の範囲内、又は約25%の濃度にアセトニトリルの濃度を増加させることを含む。
【0081】
(たとえば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従ってリン酸トリエチルアンモニウム緩衝剤を用いた)模範的勾配は、約8分間にわたり0%アセトニトリル、約5分間で0%から約5%までのアセトニトリル(たとえば、約1%/分の割合)、及び約120分間で約5%から約25%までのアセトニトリル(たとえば、約0.17%/分の割合)を含む。
【0082】
それぞれの任意の実施形態のいくつかでは、溶出されたペプチドは、2回目として(本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従って)カラムにロードされるとともに、たとえば緩衝剤溶液を用いて(たとえば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従ってアセトニトリル勾配との組合せで)、溶出される。酢酸緩衝剤(たとえば、酢酸/酢酸アンモニウム)は、カラムからペプチドを溶出させるために(たとえば、酢酸塩としてペプチドを得るために)、たとえば、少なくとも約5mM、又は少なくとも約20mM、又は少なくとも約35mMの濃度で任意に使用されてもよい。模範的実施形態では、アセテートの濃度は約35mMである。
【0083】
2回目の溶出のための(たとえば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従って酢酸緩衝剤を用いた)模範的勾配は、8分間にわたり0%アセトニトリル、110分間で0%から22%までのアセトニトリル(0.2%/分の割合)を含む。
【0084】
プロセスは、任意に、クロマトグラフィーにより得られたペプチドを(たとえば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従って)凍結乾燥することをさらに含む。大規模プロセス内での凍結乾燥は、任意に、フラスコではなく(たとえば、本明細書に例示される)凍結乾燥トレイの使用により促進される。
【0085】
凍結乾燥に関する任意の実施形態のいくつかでは、プロセスは、凍結乾燥に続いてペプチドを粉砕することをさらに含む。粉砕は、任意に、ビーズ(たとえば、ポリプロピレンビーズ)の助けを借りて、たとえば、ジャーミルを用いて、行われてもよい。
【0086】
本明細書に例示されるように、かかる粉砕は、とくに凍結乾燥されたペプチドが粉砕前に「ふわふわとした(fluffy)」状態(consistency)であるとき、有利にはペプチドの見掛け密度の増強(「緻密化」としても知られる)及び/又は取扱いの容易性の増強(たとえば、パッケージング時)を行ってもよい。
【0087】
そのほかのプロセス実施形態:
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、プロセスは、下記特徴(i)~(vii)の少なくとも1つ、又は少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又は少なくとも5つ、又は、少なくとも6つにより特徴付けられる。
【0088】
(i)(たとえば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従って、)カップリングは、シアノヒドロキシイミノ酢酸エチル及び/又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾールと組合せたジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を用いて行われ、
(ii)(たとえば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従って、)樹脂からのペプチドの切断は、樹脂にカップリングされた線状ペプチドを、トリフルオロ酢酸(TFA)と、ジチオトレイトール(DTT)及び/又はジチオエリトリトール(DTE)であるスカベンジャーとを含む溶液に接触させることにより行われ、
(iii)(たとえば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従って、)プロセスは、ペプチドの沈殿前に蒸発により遊離線状ペプチドを濃縮することなく切断後に遊離線状ペプチドを沈殿させることをさらに含み、
(iv)(たとえば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従って、)酸化は、少なくとも5mg/mLの濃度で線状ペプチドを含む水溶液と過酸化水素とを接触させることを含み、
(v)(たとえば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従って、)ペプチドの単離は、カラム1kg当たり40グラム以下の環状ペプチドの濃度で逆相クロマトグラフィーカラムに環状ペプチドをロードすることと、カラムから環状ペプチドを溶出させることと、を含み、
(vi)(たとえば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従って、)環状ペプチドの単離は、凍結乾燥を含み、且つプロセスは、凍結乾燥に続いて環状ペプチドを粉砕することをさらに含み、且つ/或いは
(vii)(たとえば、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従って、)ペプチド合成に使用される樹脂の置換度は、少なくとも0.3ミリ当量/グラムである、及び/又は樹脂は、Rink AMS樹脂である。
【0089】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、プロセスは、少なくとも上述した特徴(i)及び(ii)(任意に、特徴(iii)、(iv)、(v)、(vi)、及び/又は(vii)の少なくとも1つとの組合せで)、或いは少なくとも上述した特徴(i)及び(iii)(任意に、特徴(iv)、(v)、(vi)、及び/又は(vii)の少なくとも1つとの組合せで)、或いは少なくとも上述した特徴(i)及び(iv)(任意に、特徴(v)、(vi)、及び/又は(vii)の少なくとも1つとの組合せで)、或いは少なくとも上述した特徴(i)及び(v)(任意に、特徴(vi)及び/又は(vii)の少なくとも1つとの組合せで)、或いは少なくとも上述した特徴(i)及び(vi)(任意に、特徴(vii)との組合せで)、或いは少なくとも上述した特徴(i)及び(vii)を含む。
【0090】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、プロセスは、少なくとも上述した特徴(ii)及び(iii)(任意に、特徴(iv)、(v)、(vi)、及び/又は(vii)の少なくとも1つとの組合せで)、或いは少なくとも上述した特徴(ii)及び(iv)(任意に、特徴(v)、(vi)、及び/又は(vii)の少なくとも1つとの組合せで)、或いは少なくとも上述した特徴(ii)及び(v)(任意に、特徴(vi)及び/又は(vii)の少なくとも1つとの組合せで)、或いは少なくとも上述した特徴(ii)及び(vi)(任意に、特徴(vii)との組合せで)、或いは少なくとも上述した特徴(ii)及び(vii)を含む。
【0091】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、プロセスは、少なくとも上述した特徴(iii)及び(iv)(任意に、特徴(v)、(vi)、及び/又は(vii)の少なくとも1つとの組合せで)、或いは少なくとも上述した特徴(ii)及び(v)(任意に、特徴(vi)及び/又は(vii)の少なくとも1つとの組合せで)、或いは少なくとも上述した特徴(iii)及び(vi)(任意に、特徴(vii)との組合せで)、或いは少なくとも上述した特徴(iii)及び(vii)を含む。
【0092】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、プロセスは、少なくとも上述した特徴(iv)及び(v)(任意に、特徴(vi)及び/又は(vii)の少なくとも1つとの組合せで)、或いは少なくとも上述した特徴(iv)及び(vi)(任意に、特徴(vii)との組合せで)、或いは少なくとも上述した特徴(iv)及び(vii)を含む。
【0093】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、プロセスは、少なくとも上述した特徴(v)及び(vi)(任意に、特徴(vii)との組合せで)、或いは少なくとも上述した特徴(iv)及び(vii)を含む。
【0094】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、プロセスは、少なくとも上述した特徴(vi)及び(vii)を含む。
【0095】
ペプチドの製剤及び使用:
(それぞれの実施形態のいずれかに係る)本明細書に記載のプロセスに従って調製されるペプチドは、任意に、ペプチドにより治療可能な病態の治療に使用されてもよい。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態のある態様によれば、ペプチドにより治療可能な病態を治療するための医薬の製造における、(それぞれの実施形態のいずれかに係る)本明細書に記載のプロセスに従って調製されるペプチドの使用が提供される。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態のある態様によれば、ペプチドにより治療可能な病態を治療する方法が提供され、本方法は、ペプチドにより治療可能な病態の治療を必要とする対象にペプチドを投与することを含み、ペプチドは、(それぞれの実施形態のいずれかに係る)本明細書に記載のプロセスに従って調製される。
【0098】
(本明細書に記載の態様のいずれかに係る)本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、ペプチドは、配列番号1を有するペプチド(又はそのアナログ若しくは誘導体)であり、且つ治療は、CXCR4を阻害することが有利ないずれかの治療を含む。
【0099】
本願の特許存続期間中に、多くの関連治療が開発されることが予想されるので、「病態」、「ペプチドにより治療可能」、及び「CXCR4を阻害することが有利な治療」という用語の範囲は、すべてのかかる新しい技術を演繹的に含むことが意図される。
【0100】
(本明細書に記載の態様のいずれかに係る)本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかでは、ペプチドは、配列番号1を有するペプチド(又はそのアナログ若しくは誘導体)であり、且つ配列番号1を有するペプチド(又はそのアナログ若しくは誘導体)により治療可能な病態は、たとえば、米国特許第7,423,007号明細書の記載(その内容、とくに上述したペプチドによる病態の治療に関する内容は、参照により本明細書に援用する)の癌又は関節炎(たとえば、慢性関節リウマチ)である。
【0101】
配列番号1を有するペプチド(又はそのアナログ若しくは誘導体)により(本明細書に記載の態様のいずれかに従って)治療可能な病態の例としては、限定されるものではないが、たとえば、国際公開第2012/095849号パンフレット(その内容、とくに上述したペプチドによる病態の治療に関する内容は、参照により本明細書に援用する)に記載の網膜芽細胞腫及び/又は神経外胚葉由来腫瘍、たとえば、国際公開第2013/160895号パンフレット(その内容、とくに上述したペプチドによる病態の治療に関する内容は、参照により本明細書に援用する)に記載の大細胞肺癌、たとえば、国際特許出願公開の国際公開第2008/075370号パンフレット(その内容、とくに上述したペプチドによる病態の治療に関する内容は、参照により本明細書に援用する)に記載の多発骨髄腫、小神経膠腫、及び/又は神経膠腫、たとえば、米国特許第7,423,007号明細書に記載の乳癌及び/又は膵癌、たとえば、国際特許出願公開の国際公開第2010/146578号パンフレット(その内容、とくに上述したペプチドによる病態の治療に関する内容は、参照により本明細書に援用する)に記載の血小板減少症、たとえば、国際特許出願公開の国際公開第2008/075369号パンフレット(その内容、とくに上述したペプチドによる病態の治療に関する内容は、参照により本明細書に援用する)に記載の骨髄抑制リスク、並びにたとえば、米国特許第8,435,939号明細書(その内容、とくに上述したペプチドによる病態の治療に関する内容は、参照により本明細書に援用する)に記載のHIV感染症が挙げられる。
【0102】
配列番号1を有するペプチドの好適なアナログ及び誘導体は、米国特許第7,423,007号明細書及び同第8,435,939号明細書、並びに国際公開第2008/075369号パンフレット、国際公開第2008/075370号パンフレット、国際公開第2010/146578号パンフレット、国際公開第2012/095849号パンフレット、及び国際公開第2013/160895号パンフレット(それらの各々の内容、とくに配列番号1のアナログ及び誘導体に関する内容は、参照により本明細書に援用する)に記載されている。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態に係るペプチドは、生物自体に又は好適な担体若しくは賦形剤と混合された医薬組成物で投与可能である。
【0104】
本明細書で用いられる場合、「医薬組成物」は、生理学的に好適な担体や賦形剤などの他の化学成分を含む本明細書に記載の1種以上の活性成分の調製物を意味する。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を促進することである。
【0105】
本明細書では、「活性成分」という用語は、生物学的作用に関与するペプチドを意味する。
【0106】
これ以降では、互換的に用いられうる「生理学的に許容可能な担体」及び「薬学的に許容可能な担体」という語句は、生物に対して有意な刺激を引き起こさない且つ投与された化合物の生物学的活性及び性質を抑止しない担体又は希釈剤を意味する。アジュバントは、これらの語句に含まれる。
【0107】
本明細書では、「賦形剤」という用語は、活性成分の投与をさらに促進するために医薬組成物に添加されるイナート物質を意味する。賦形剤の例としては、限定されるものではないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、各種糖及びデンプン型、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、並びにポリエチレングリコールが挙げられる。
【0108】
薬剤の製剤化及び投与の技術は、“Remington’s Pharmaceutical Sciences, ”Mack Publishing Co., Easton, PA, 最新刊(参照により本明細書に援用する)に見いだされうる。
【0109】
好適な投与経路としては、たとえば、経口、直腸、経粘膜とりわけ経鼻、腸又は非経口送達(筋肉内、皮下、及び髄内注射を含む)、さらには髄腔内、直接心室内、心内(たとえば、右室腔若しくは左室腔内、総冠動脈内)、静脈内、腹腔内、鼻内、又は眼内注射が挙げられる。
【0110】
代替的に、全身的ではなく局所的に、たとえば、患者の組織領域中への医薬組成物の直接注射により、医薬組成物を投与してもよい。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態の医薬組成物は、当技術分野で周知のプロセスにより、たとえば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣化、研和、乳化、カプセル化、封入、又は凍結乾燥プロセスを利用することにより製造されてもよい。
【0112】
そのため、本発明のいくつかの実施形態に基づく使用のための医薬組成物は、薬学的に使用可能な調製物中への活性成分の処理を促進する賦形剤及び補助剤を含む1つ以上の生理学的に許容可能な担体を用いて従来方式で製剤化されてもよい。適正製剤は、選ばれる投与経路に依存する。
【0113】
注射に供する場合、医薬組成物の活性成分は、水溶液中に、好ましくは、ハンクス液、リンゲル液、生理学的塩緩衝液などの生理学的適合性緩衝液中に製剤化されてもよい。経粘膜投与に供する場合、浸透されるバリアに適切な浸透剤が製剤中で使用される。かかる浸透剤は、当技術分野で広く知られている。
【0114】
経口投与に供する場合、医薬組成物は、活性化合物と当技術分野で周知の薬学的に許容可能な担体とを組み合わせることにより簡単に製剤化可能である。かかる担体は、患者による経口摂取のために、錠剤、丸剤、糖衣剤、カプセル剤、液体剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、サスペンジョン剤などとして医薬組成物の製剤化を可能にする。経口使用に供される医薬調製物は、固形賦形剤を用いて、任意に、得られた混合物を粉砕して、所望により好適な補助剤を添加した後、錠剤又は糖衣錠コアが得られるように顆粒混合物を処理して、作製可能である。好適な賦形剤は、特定的には、糖、たとえば、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトール、セルロース調製物、たとえば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースなど、及び/又は生理学的に許容可能なポリマー、たとえば、ポリビニルピロリドン(PVP)などの充填剤である。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはその塩、たとえば、ナトリウムアルギネートなどの崩壊剤を添加してもよい。
【0115】
糖衣剤コアには、好適なコーティングが提供される。この目的のために、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、及び好適な有機溶媒又は溶媒混合物を任意に含有しうる濃縮糖溶液が使用されてもよい。色素又は顔料は、識別のために又は活性化合物用量の異なる組合せを特徴付けるために、錠剤又は糖衣剤コーティングに添加されてもよい。
【0116】
経口使用可能な医薬組成物としては、ゼラチン製プッシュフィットカプセル剤、さらにはゼラチンとグリセロールやソルビトールなどの可塑剤とで作製されたソフトシールカプセル剤が挙げられる。プッシュフィットカプセル剤は、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどのバインダー、タルクやステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、及び任意に安定化剤と混ぜて、活性成分を含有してもよい。ソフトカプセル剤では、活性成分は、脂肪油、流動パラフィン、液状ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に溶解又は懸濁されてもよい。そのほか、安定化剤が添加されてもよい。経口投与に供される製剤はすべて、選ばれる投与経路に好適な投与量にすべきである。
【0117】
頬側投与に供する場合、組成物は、従来方式で製剤化された錠剤又はロゼンジ剤の形態をとってもよい。
【0118】
経鼻吸入による投与に供する場合、本発明のいくつかの実施形態に係る使用のための活性成分は、好適な噴射剤、たとえば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタン、又は二酸化炭素を用いて、加圧パック又はネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で適宜送達される。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、バルブを提供して計量された量を送達することにより決定されてもよい。ディスペンサーでの使用のためのゼラチンなどのカプセル剤及びカートリッジ剤は、化合物とラクトースやデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末ミックスを含有して製剤化されてもよい。
【0119】
本明細書に記載の医薬組成物は、たとえば、ボーラス注射又は連続注入により、非経口投与に供すべく製剤化されてもよい。注射用製剤は、任意に保存剤を添加して、ユニット製剤で、たとえば、アンプル又は複数回用量容器で提示されてもよい。組成物は、油性又は水性の媒体中のサスペンジョン、溶液、又はエマルジョンでありうるとともに、製剤化剤、たとえば、懸濁化剤、安定化剤、及び/又は分散剤を含有してもよい。
【0120】
非経口投与に供される医薬組成物は、水溶性形の活性調製物の水溶液を含む。そのほか、活性成分のサスペンジョンは、適切な油性又は水系注射用サスペンジョンとして調製されてもよい。好適な親油性溶媒又は媒質としては、ゴマ油などの脂肪油、又はエチルオレエート、トリグリセリド、リポソームなどの合成脂肪酸エステルが挙げられる。水性注射用サスペンジョンは、サスペンジョンの粘度を増加させる物質、たとえば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、又はデキストランを含有してもよい。任意に、サスペンジョンはまた、適切な安定化剤又は活性成分の溶解性を増加させて高濃度溶液の調製を可能する作用剤を含有してもよい。
【0121】
代替的に、活性成分は、使用前に無菌パイロジェンフリー水系溶液などの好適な媒質で構成すべく粉末形態をとってもよい。
【0122】
本発明のいくつかの実施形態の医薬組成物はまた、たとえば、カカオバターや他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を用いて、坐剤や保持浣腸剤などの直腸組成物で製剤化されてもよい。
【0123】
本発明のいくつかの実施形態との関連での使用に好適な医薬組成物は、意図された目的を達成するのに有効な量で活性成分が含有される組成物を含む。より具体的には、治療有効量は、障害(たとえば、本明細書で考察される癌若しくは関節炎)の症状を予防するのに、和らげるのに、若しくは回復させるのに、又は治療される対象の生存を延長するのに、有効なペプチドの量を意味する。
【0124】
治療有効量の決定は、とりわけ本明細書に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0125】
本発明の方法で使用されるいずれの調製物でも、治療有効量又は用量は、初期にin vitro及び細胞培養アッセイから推定可能である。たとえば、用量は、所望の濃度又は力価を達成するように動物モデルで製剤化可能である。かかる情報は、ヒトにおいてより正確に有用用量を決定するために使用可能である。
【0126】
本明細書に記載の活性成分の毒性及び治療効能は、標準的薬学的手順によりin vitro、細胞培養、又は実験動物で決定可能である。これらのin vitro及び細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量範囲の策定に使用可能である。投与量は、採用される製剤及び利用される投与経路に依存して変動してもよい。厳密な製剤、投与経路、及び投与量は、患者の病態を考慮して個別医師により選ぶことが可能である。(たとえば、Fingl, et al., 1975, in “The Pharmacological Basis of Therapeutics”, Ch.1 p.1を参照されたい)。
【0127】
投与量及びインターバルは、生物学的作用を誘発又は抑制するのに十分な活性成分レベル(最小有効濃度、MEC)を提供するように個別に調節してもよい。MECは、各調製物によって変動するであろうが、in vitroデータから推定可能である。MECを達成するのに必要な投与量は、個別特性及び投与経路に依存するであろう。検出アッセイは、血漿中濃度を決定するために使用可能である。
【0128】
治療される病態の重症度及び応答性に依存して、投与は、数日間~数週間の期間又は治癒が達成されるか若しくは疾患状態の減少が達成されるまで継続する治療計画の、単回又は複数回投与でもよい。
【0129】
投与される組成物の量は、当然ながら、治療される対象、罹患の重症度、投与方式、処方医師の判断などに依存するであろう。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態の組成物は、所望により、活性成分を含有する1つ以上のユニット製剤を含有しうるパック又はディスペンサーデバイス、たとえば、FDA承認キットで提示されてもよい。パックは、たとえば、金属フォイル又はプラスチックフォイル、たとえば、ブリスターパックを含んでもよい。パック又はディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が添付されてもよい。パック又はディスペンサーには、医薬品の製造、使用、又は販売を規制する政府機関により指定された形態で容器に関連付けられた注意書きも添付されてもよい。この注意書きは、組成物の形態又はヒト若しくは動物への投与が監督官庁により承認されたことを反映したものである。かかる注意書きは、たとえば、処方薬剤に関して米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)により承認されたラベル表示又は承認された製品挿入物であってもよい。適合可能な医薬担体中に製剤化された本発明の調製物を含む組成物はまた、調製され、適切な容器に配置され、以上にさらに詳述されるように指定の病態の治療のためのラベル表示がされてもよい。
【0131】
そのほかの定義:
本明細書で用いられる場合、「約(about)」という用語は±20%を意味する。本明細書に記載のそれぞれの任意の実施形態のいくつかでは、「約(about)」という用語は±10%を意味する。
【0132】
「~を含む(comprises)」、「~を含む(comprising)」、「~を含む(includes)」、「~を含む(including)」、「~を有する(having)」という用語及びそれらの活用形は、「限定されるものではないが~を含む(including but not limited to)」を意味する。
【0133】
「~からなる(consisting of)」という用語は、「~を含み且つそれに限定される(including and limited to)」を意味する。
【0134】
「~から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、組成物、方法、又は構造が、追加の成分、ステップ、及び/又はパーツを含みうるが、ただし、追加の成分、ステップ、及び/又はパーツが、特許請求された組成物、方法、又は構造の基本特性及び新規特性を実質的に改変しない場合に限られることを意味する。
【0135】
本明細書で用いられる場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、とくに文脈上明確に規定されない限り、複数形の参照を含む。たとえば、「化合物(a compound)」又は「少なくとも1つの化合物(at least one compound)」という用語は、複数の化合物(それらの混合物を含む)を含んでもよい。
【0136】
本願全体を通して、本発明の各種実施形態は、範囲フォーマットで提示されてもよい。範囲フォーマットでの記載は、単に便宜上及び簡潔さを期したものにすぎないことが理解されるべきであり、本発明の範囲に対するインフレキシブルな限定として解釈されるべきではない。それゆえ、範囲の記載は、その範囲内の可能な部分的範囲さらには個別数値をすべて具体的に開示したものとみなされるべきである。たとえば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分的範囲、さらにはその範囲内の個別数、たとえば、1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示したものとみなされるべきである。このことは、範囲の幅にかかわらず当てはまる。
【0137】
数値範囲が本明細書に指定された場合は常に、指定範囲内のいずれの挙げられた数字(小数又は整数)も含むことを意味する。「第1の指定数~第2の指定数の範囲内にある(ranging/ranges between)」及び「第1の指定数~第2の指定数の範囲内にある(ranging/ranges from ~ to)」という語句は、本明細書では互換的に用いられ、第1及び第2の指定数並びにそれらの間のすべての小数及び整数を含むことを意味する。
【0138】
「~を治療する(treating)」という用語は、病理学的状態(疾患、障害、若しくは病態)の発生を阻害、予防、若しくは停止すること、及び/又は病理学的状態の低減、寛解、若しくは退縮を引き起こすことを意味する。各種方法及びアッセイを用いて病理学的状態の発生をアセス可能であること並びに各種方法及びアッセイを用いて病理学的状態の低減、寛解、若しくは退縮をアセス可能であることは、当業者であれば理解されよう。
【0139】
本明細書で用いられる場合、「~を予防する(preventing)」という用語は、疾患のリスクに晒されるおそれがあるが疾患を有するとまだ診断されていない対象において疾患、障害、又は病態が発生しないようにすることを意味する。
【0140】
本明細書で用いられる場合、「対象」という用語は、哺乳動物、好ましくは病理学的状態に罹患しているいずれかの年齢のヒトを含む。好ましくは、この用語は、病理学的状態を発生するリスクに晒されている個体を包含する。
【0141】
本明細書で用いられる場合、「方法」という用語は、限定されるものではないが、化学的、薬理学的、生物学的、生化学的、及び医学的技術の実施者に公知であるか、又は実施者により公知の方式、手段、技術、及び手順から簡単に開発されるかのどちらかの方式、手段、技術、及び手順を含めて、所与の課題を達成するための方式、手段、技術、及び手順を意味する。
【0142】
特定配列表を参照するとき、かかる参照は、塩基置換、塩基欠失、又は塩基付加をもたらすシーケンシングエラー、クローニングエラー、他の改変などから生じるマイナー配列バリエーションを含むように、その相補的配列に実質的に対応する配列も包含するものと理解されるべきであり、ただし、かかるバリエーションの頻度は、50ヌクレオチド中1未満、代替的に100ヌクレオチド中1未満、代替的に200ヌクレオチド中1未満、代替的に500ヌクレオチド中1未満、代替的に1000ヌクレオチド中1未満、代替的に5,000ヌクレオチド中1未満、代替的に10,000ヌクレオチド中1未満である。
【0143】
明確さを期して別々の実施形態との関連で記載される本発明のある特定の特徴はまた、組み合わせて単一実施形態でも提供されうることが分かる。反対に、簡潔さを期して単一実施形態との関連で記載される本発明の各種特徴はまた、別々でも、又はいずれかの好適な部分的組合せでも、又は本発明のいずれかの他の記載の実施形態に好適なものとしても、提供されてもよい。各種実施形態との関連で記載されるある特定の特徴は、その要素なしでは実施形態が効果的でない場合を除き、その実施形態の必須の特徴であるとみなされるべきではない。
【0144】
以上で明確化された及び以下の特許請求の範囲に記載された本発明の各種実施形態及び態様の実験的裏付けは、下記実施例に見いだされる。
【実施例
【0145】
次に、下記実施例を参照して、以上の説明と合わせて本発明のいくつかの実施形態を非限定的に例示する。
【0146】
参照例1
米国特許第7,423,007号明細書に係るBL-8040の固相合成
米国特許第7,423,007号明細書に記載の下記手順を用いて551mgの環状ペプチドBL-8040(配列番号1)を調製した。
【0147】
環状ペプチドBL-8040を固相合成により調製した。全ペプチドを構築するために、C末端アミノ酸から始めてN末端アミノ酸で終わるように固相合成反応ステップを14回繰り返した。各アミノ酸付加を2ステップで実施した。第1のステップは、ペプチド配列に付加された最後のアミノ酸のN末端から(又は第1のアミノ酸を付加するときは樹脂から)Fmoc保護基を除去することを含み、続いて樹脂上のペプチド伸長に逐次アミノ酸を装着した。樹脂上のペプチドに付加される最後の残基は、Fmoc基を含有しない4-フルオロベンゾイル基であった。
【0148】
樹脂:
樹脂は、0.34mmol/グラムの置換を有する2.94グラムのFmoc-Rinkアミド樹脂(すなわち、1mmol)であった。
【0149】
Fmoc保護基の除去:
ジメチルホルムアミド(DMF)中の20%ピペリジン溶液を用いて、(ペプチド配列に付加された最後のアミノ酸の)N末端又は樹脂からFmoc保護基を除去した。
【0150】
アミノ酸の装着:
DMF中でHOBt(N-ヒドロキシベンゾトリアゾール)と組合せたジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を用いて、適切なアミノ酸誘導体形でアミノ酸をカップリングした。Cys、Arg、Tyr、及びLys(D-Lys又はL-Lys)を、それぞれ、Cys(Trt)、Arg(Pbf)、Tyr(t-Bu)、及びLys(Boc)(D-又はL-)として保護した。最終ステップでは、アミノ酸の代わりに4-フルオロ安息香酸をカップリングした。使用したアミノ酸(又は4-フルオロ安息香酸)の量は2.5当量であった。
【0151】
Kaiser et al. [Anal Biochem 1970, 34:595-598]のニンヒドリン試験を用いて、縮合反応のインプロセスモニタリングを実施した。
【0152】
切断及び脱保護:
25℃で3時間にわたりm-クレゾール(100当量)及びエタンジチオール(300当量)の存在下で270mLの1M TMSBr-チオアニソール/トリフルオロ酢酸(TFA)混合物による処理により、樹脂からのペプチド(1mmol)の切断及び保護基の除去を実施した。
【0153】
濾過により樹脂を分離し、TFA(5mL)で2回洗浄した。
【0154】
濾液と洗浄溶液との混合物を真空による濃縮に付した。
【0155】
次いで、ペプチドを300mLの水冷無水エーテルと組み合わせ、得られた沈降物を遠心沈降及びデカンテーションにより分離した。
【0156】
粗生成物を冷エーテルで洗浄し、500mLの1N酢酸中に溶解し、蒸溜水により2.5Lに希釈した。
【0157】
酸化的環化:
粗線状ペプチドの希水溶液を濃縮アンモニア水によりpH7.5に調整し、通気空気酸化により酸化を行った。
【0158】
分取HPLC:
アセトニトリル及び水を用いた分取HPLC C18カラム(Cosmosil(商標)5C18-AR-II)による分離及び0.1N酢酸溶出液を用いたゲル濾過クロマトグラフィー(Sephadex(商標)G-15)により、環化ステップが完了して得られた溶液を精製した。
【0159】
単一ピークのポリペプチドを得て、凍結乾燥した。
【0160】
HPLCにより純度を確認した。
【0161】
収量は、551.5mg(19.4%)であった。
【0162】
実施例1
BL-8040の大規模相合成
環状ペプチドBL-8040を大規模(825mmol)固相合成により調製した。全ペプチドを構築するために、C末端アミノ酸から始めてN末端アミノ酸で終わるように固相合成反応ステップを14回繰り返した。各アミノ酸付加を2ステップで実施した。第1のステップは、ペプチド配列に付加された最後のアミノ酸のN末端から(又は第1のアミノ酸を付加するときは樹脂から)Fmoc保護基を除去することを含み、続いて樹脂上のペプチド伸長に逐次アミノ酸を装着した。樹脂上のペプチドに付加される最後の残基は、Fmoc基を含有しない4-フルオロベンゾイル基であった。
【0163】
最終収量は、468グラム(25%)であった。
【0164】
樹脂:
樹脂は、0.3~0.6ミリ当量/グラムの範囲内の置換を有するFmoc-Rink AMS樹脂であった。
【0165】
Fmoc保護基の除去:
ジメチルホルムアミド(DMF)中の20%ピペリジン溶液を用いて、(ペプチド配列に付加された最後のアミノ酸の)N末端又は樹脂からFmoc保護基を除去した(10ml/グラムの初期樹脂)。その次のアミノ酸反応の前にDMFで洗浄することによりピペリジン溶液を除去し、洗浄液のpH試験により確認した。
【0166】
アミノ酸の装着:
活性化剤としてのHOBt(N-ヒドロキシベンゾトリアゾール)と組合せたジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を用いて、適切なアミノ酸誘導体形でアミノ酸をカップリングした。Cys、Arg、Tyr、及びLys(D-Lys又はL-Lys)を、それぞれ、Cys(Trt)、Arg(Pbf)、Tyr(t-Bu)、及びLys(Boc)(D-又はL-)として保護した。最終ステップでは、アミノ酸の代わりに4-フルオロ安息香酸をカップリングした。アミノ酸(又は4-フルオロ安息香酸)、DIC、及びHOBt量の計算は、置換の2倍過剰及びバッチサイズに基づいた。
【0167】
カップリングステップを評価するために、各サイクルの終了時にニンヒドリン及びクロラニル試験を用いてインプロセスモニタリングを実施した。陰性試験結果は、遊離アミノ基の不在(完全カップリング)を表す。試験が陽性で未反応アミノ基(不完全カップリング)を表した場合、カップリング反応を延長しうるか、又は保護アミノ酸誘導体の再カップリングを実施してもよい。
【0168】
合成サイクルの完了後、DMF/イソプロパノール(1:1)の溶液で樹脂-ペプチドを洗浄し、窒素で乾燥した。
【0169】
切断及び脱保護:
ペプチド分子をその支持樹脂から取り外すために及び保護基を除去するために、切断を実施した。たとえば、周囲温度で3.25~3.5時間にわたり、スカベンジャーとして50mg/mLのジチオエリトリトール(DTE)を含む95%のトリフルオロ酢酸(TFA)と5%の水を用いて(樹脂1グラム当たり10mL TFAベース切断溶液)、酸分解反応を実施した。
【0170】
次いで、ペプチドの抽出を完了するために、樹脂を濾過しTFAで2回濯いだ。
【0171】
真空下、ロータリーエバポレーター(約35℃)で、ペプチド溶液の体積を元の体積の約30~35%の体積まで低減した。
【0172】
次いで、樹脂1グラム当たり32mLの体積でtert-ブチルメチルエーテル(MTBE)/ヘキサン(60:40v/v)の冷混合物(-10±5℃)を用いて、ペプチドを沈殿させた。
【0173】
濾過により粗生成物を単離し、MTBEで洗浄し、窒素気流下、フィルター上で乾燥させて、溶媒のほとんどを除去した。
【0174】
次いで、得られた粗(線状)ペプチドを90%酢酸中に溶解させ、得られた溶液を凍結乾燥フラスコ中に分配し、シェルフリーズし、マニホールド凍結乾燥機上で乾固するまで凍結乾燥させた。
【0175】
RP-HPLCによりペプチドの純度を分析し、質量スペクトル分析により内容を確認した。
【0176】
酸化的環化:
以下のように、0.1Mの重炭酸アンモニウム(NHHCO)溶液中、過酸化水素による酸化により、粗線状ペプチドを環化した。
【0177】
10mg/mLの濃度で粗線状ペプチドを0.1M NHHCO中に溶解させ、等体積の0.1M NHHCOを添加して5mg/mLの濃度にペプチドを希釈した。
【0178】
次いで、25~30分間にわたり水中の1.5%過酸化水素溶液(5倍過剰)をペプチド溶液に滴下した。遊離スルフヒドリル基の不在を確認するために、エルマン試験を用いてその反応をモニターした。
【0179】
反応完了後、ニートTFAの添加により反応混合物をpH2~3に酸性化し、得られた溶液を「そのまま」TEAP(リン酸トリエチルアンモニウム)精製ステップで使用した。
【0180】
第1の分取HPLCカラム(TEAP精製):
樹脂1kg当たり約11.7グラムの粗ペプチドを含有する約2.4L溶液をロードし、分取RP-HPLC C18カラム、10μm、120Å Daisogel(商標)による分離により、環化ステップが完了して得られた溶液を精製した。
【0181】
0.1Mリン酸トリエチルアンモニウム(TEAP)緩衝液(pH2.25)及びアセトニトリル(ACN)勾配でペプチドを溶出させた。勾配は、次の通りであった。0%アセトニトリルで8分間、0%から5%までのアセトニトリルで5分間(1%/分の割合)、及び5%から25%までのアセトニトリルで120分間(0.17%/分の割合)。
【0182】
溶出画分を捕集し、サンプリングし、HPLCにより試験してどの画分が十分に純粋であるか(≧95%)を決定し、第2のクロマトグラフィー精製ステップのためにプールした。純度受入れ基準を満たさない第1のRP-HPLC精製の親水性及び疎水性画分を保有し、全収率を最大化するために再処理してもよい。
【0183】
第2の分取HPLCカラム(酢酸精製):
TEAP注入から得られた精製画分をプールし、水で1:1希釈し、10μm、120Å Daisogel(商標)C18カラムを用いて、樹脂1kg当たり約2.7Lの体積でロードし、35mM酢酸ベース緩衝液及びアセトニトリル勾配で溶出させて、ペプチドを分離した。勾配は、次の通りであった。0%アセトニトリルで8分間、及び0%から22%までのアセトニトリルで110分間(0.2%/分の割合)。ペプチドのローディング後及び溶出勾配の開始前に、4カラム体積の0.1M酢酸アンモニウムでカラムを洗浄し、アセテート塩としてペプチドを得た。
【0184】
230nmのUV吸収により画分捕集をモニターした。溶出画分を捕集し、サンプリングし、HPLCで分析してどの画分が十分に純粋であるかを決定し、プールした。インプロセス制御基準(HPLCによる純度が≧98%であり、未知不純度が≧0.14%でない)を満たした画分のみをプールした。各クロマトグラフィーサイクルのプール画分をサブロットとして凍結乾燥した。純度受入れ基準を満たさない第2のRP-HPLC精製の親水性及び疎水性画分を残し、全収率を最大化するために再処理してもよい。
【0185】
湿性プーリング及び凍結乾燥:
精製材料のインプロセス制御基準を満たしたすべてのサブロットを精製水でおおよそ50g/Lの濃度で再構成した。得られた溶液を凍結乾燥前に0.2μm PVDFフィルターで濾過した。
【0186】
1200mL凍結乾燥フラスコで凍結乾燥を行った。このフラスコにフラスコ1つ当たりおおよそ等体積の100mLを充填して、フラスコ1つ当たり5グラムの精製ペプチドが得られるようにし、次いで、-60℃より低い凝縮器温度及び500ミリトール未満の真空を備えたドライアイス/IPA浴中でシェルフリーズした。65~85時間にわたり凍結乾燥を実施した。
【0187】
凍結乾燥後、アセテート含有量測定のためにサンプルを採取した。具体的に11~15%の範囲内にあることが示されなければ、バルク薬剤物質を水中に再懸濁して、凍結乾燥を繰り返してもよい。
【0188】
緻密化:
ポリプロピレン「粉砕」ビーズを備えたポリエチレンボトル中に凍結乾燥された材料を配置し、20±5分間にわたりジャーミル上にボトルを配置した。この操作は、見掛け密度を増加させることにより「ふわふわした触感(fluffiness)」を排除し、パッケージング時のバルク薬剤物質の取扱いの容易性を高める。
【0189】
パッケージング及び貯蔵:
テフロンライナー付きポリプロピレンキャップを備えたIII型脱パイロジェン化アンバーガラスボトルに最終バルク薬剤物質をパッケージングした。水の取込みを軽減するために制御湿度環境(15~30%相対湿度)下でパッケージングを実施した。第2の容器としての2つのパッキング材料間に乾燥剤を有するアルミニウムラミネートバック中にボトルを配置した。次いで、BL-8040薬剤物質を-20±5℃で貯蔵した。
【0190】
実施例2
BL-8040の修正大規模固相合成
環状ペプチドBL-8040を大規模固相合成(たとえば、少なくとも約500グラムの生成物)により調製する。全ペプチドを構築するために、C末端アミノ酸から始めてN末端アミノ酸で終わるように固相合成反応ステップを14回繰り返す。各アミノ酸付加を2ステップで実施する。第1のステップは、ペプチド配列に付加された最後のアミノ酸のN末端から(又は第1のアミノ酸を付加するときは樹脂から)Fmoc保護基を除去することを含み、続いて樹脂上のペプチド伸長に逐次アミノ酸を装着する。樹脂上のペプチドに付加される最後の残基は、Fmoc基を含有しない4-フルオロベンゾイル基である。いくつかの実施形態に係る固相合成のステップは、図1に図示した。
【0191】
樹脂:
樹脂は、(上述した0.6ミリ当量/グラム以下とは異なり)0.6~0.9ミリ当量/グラムの範囲内の置換を有するFmoc-Rink AMS樹脂である。
【0192】
Fmoc保護基の除去:
ジメチルホルムアミド(DMF)中の20%ピペリジン溶液を用いて、(ペプチド配列に付加された最後のアミノ酸の)N末端又は樹脂からFmoc保護基を除去する(約8ml/グラムの初期樹脂)。その次のアミノ酸反応の前にDMFで洗浄することによりピペリジン溶液を除去し、洗浄液のpH試験により確認する。
【0193】
アミノ酸の結合:
活性化剤としては、(上述したHOBtとは異なり)シアノヒドロキシイミノ酢酸エチルと組合せたジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を用いて、適切なアミノ酸誘導体形でアミノ酸をカップリングする。Cys、Arg、Tyr、及びLys(D-Lys又はL-Lys)を、それぞれ、Cys(Trt)、Arg(Pbf)、Tyr(t-Bu)、及びLys(Boc)(D-又はL-)として保護する。最終ステップでは、アミノ酸の代わりに4-フルオロ安息香酸をカップリングする。アミノ酸(又は4-フルオロ安息香酸)、DIC、及びシアノヒドロキシイミノ酢酸エチル量の計算は、置換に対する2倍過剰量及びバッチサイズに基づく。
【0194】
カップリングステップを評価するために、各サイクルの終了時にニンヒドリン及びクロラニル試験を用いてインプロセスモニタリングを実施する。陰性試験結果は、遊離アミノ基の不在(完全カップリング)を表す。試験が陽性で未反応アミノ基(不完全カップリング)を示す場合、カップリング反応を延長するか、保護アミノ酸誘導体の再カップリングを実施するか、又は、たとえば、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)の存在下で無水酢酸を用いて、アセチル化(キャッピング)を実施してもよい。
【0195】
合成サイクルの完了後、DMF/イソプロパノール(1:1)の溶液で樹脂-ペプチドを洗浄し、窒素で乾燥する。
【0196】
切断及び脱保護:
ペプチド分子をその支持樹脂から取り外すため及び保護基を除去するために、切断を実施する。たとえば、周囲温度で3.25~3.5時間にわたり、50mg/mLのスカベンジャーを含む95%のトリフルオロ酢酸(TFA)と5%の水を用いて(樹脂1グラム当たり10mL TFAペース切断溶液)、酸分解反応を実施する。スカベンジャーはジチオトレイトール(DTT)であり、実施例1に記載のジチオエリトリトール又は比較例1に記載のエタンジチオールとは異なるである。
【0197】
次いで、ペプチドの抽出を完了するために、樹脂を濾過しTFAで2回濯ぐ。
(実施例1とは異なり、ペプチド溶液体積の低減は、この段階では実施しない。)
【0198】
次いで、樹脂1グラム当たり45mLの体積(実施例1に記載の32mL/グラムではない)でtert-ブチルメチルエーテル(MTBE)/ヘキサン(60:49v/v)の冷混合物(-10±5℃)を用いて、ペプチドを沈殿させる。
【0199】
濾過により粗生成物を単離し、MTBEで洗浄し、窒素気流下、フィルター上で乾燥させて、溶媒のほとんどを除去する。
【0200】
次いで、得られた粗(線状)ペプチドを真空下で乾燥させるか又は酢酸で可溶化し、そして凍結乾燥する(たとえば、実施例1に記載の通り)。
【0201】
任意にRP-HPLCによりペプチドの純度を分析する、及び/又は質量スペクトル分析によりアイデンティティーを確認する。
【0202】
酸化的環化:
0.1Mの重炭酸アンモニウム(NHHCO)溶液中の1.5%の過酸化水素による酸化により、粗線状ペプチドを10mg/mLのペプチド濃度で環化する。実施例1とは異なり、25~30分かけてペプチドを5mg/mLにさらに希釈することはしない。遊離スルフヒドリル基の不在を確認するために、エルマン試験を用いてその反応をモニターする。
【0203】
反応完了後、TFA原液の添加により反応混合物をpH2~3に酸性化し、得られた溶液を「そのまま」TEAP(リン酸トリエチルアンモニウム)精製ステップで使用する。
【0204】
第1の分取HPLCカラム(TEAP精製):
樹脂1kg当たり、(実施例1に記載の約11.7グラム/kgとは異なり)約20~約25グラムの粗ペプチドを含有する約2.4Lの溶液をロードして、分取RP-HPLC C18カラム、10μm、120Å Daisogel(商標)による分離により、環化ステップが完了して得られた溶液を精製する。
【0205】
0.1Mリン酸トリエチルアンモニウム(TEAP)緩衝液(pH2.25)及びアセトニトリル(ACN)勾配でペプチドを溶出させる。
【0206】
溶出画分を捕集し、サンプリングし、HPLCにより試験してどの画分が十分に純粋であるか(≧95%)を決定し、第2のクロマトグラフィー精製ステップのためにプールする。純度受入れ基準を満たさない第1のRP-HPLC精製の親水性及び疎水性画分を残し、全収率を最大化するために再処理してもよい。
【0207】
第2の分取HPLCカラム(酢酸精製):
TEAP注入から得られた精製画分をプールし、水で1:1希釈し、10μm、120Å Daisogel(商標)C18カラムを用いて、35mM酢酸ベース緩衝液及びアセトニトリル勾配で溶出させて、ペプチドを分離する。ペプチドのローディング後及び溶出勾配の開始前に、4カラム体積の0.1M酢酸アンモニウムでカラムを洗浄し、アセテート塩としてペプチドを得る。
【0208】
230nmのUV吸収により画分の捕集をモニターする。溶出画分を捕集し、サンプリングし、HPLCにより試験してどの画分が十分に純粋であるかを決定し、プールする。インプロセス制御基準(HPLCによる純度が≧98%であり、未知不純度が≧0.14%でない)を満たした画分のみをプールする。各クロマトグラフィーサイクルのプール画分をサブロットとして凍結乾燥する。純度受入れ基準を満たさない第2のRP-HPLC精製の親水性及び疎水性画分を残し、全収率を最大化するために再処理してもよい。
【0209】
湿潤プーリング及び凍結乾燥:
精製材料のインプロセス制御基準を満たすすべてのサブロットを精製水でおおよそ50g/Lの濃度で再構成する。得られた溶液を凍結乾燥前に0.2μm PVDFフィルターで濾過する。
【0210】
凍結乾燥は、実施例1に記載のフラスコではなく、(凍結乾燥トレイ(たとえば、約1.0~約1.2リットル/トレイ)において、≦150ミリトール以下の真空中(たとえば、約89時間にわたり)実施する。トレイの使用は、プロセス制御の増強、大規模化の促進、及び/又はインプロセス制御の低減をもたらすことがある。
【0211】
凍結乾燥後、アセテート含有量測定のためにサンプルを採取する。具体的に11~15%の範囲内にあることが示されなければ、任意に、バルク薬剤物質を水中に再懸濁して、凍結乾燥を繰り返す。
【0212】
緻密化:
凍結乾燥された材料は、任意に、実施例1に記載の手順に従って緻密化に付される。
【0213】
パッケージング及び貯蔵:
最終バルク薬剤物質は、任意に、実施例1に記載の手順に従ってパッケージ及び/又は貯蔵される。
【0214】
本発明をその具体的実施形態との関連で説明してきたが、多くの代替形態、修正形態、及び変形形態が当業者に明らかになるであろうことは明白である。それゆえ、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広義の範囲内にあるすべてのかかる代替形態、修正形態、及び変形形態を包含することが意図される。
【0215】
本明細書中で参照されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、参照により本明細書に援用するべきであるとして参照されたときに各個別の刊行物、特許、及び特許出願が具体的且つ個別的に記されたがごとく、本明細書への参照によりそれらの全体が援用することが、本出願人の意図するところである。そのほか、本願でのいずれの参照の引用や特定も、かかる参照が本発明の先行技術として利用可能であることを容認ものとみなされるべきではない。セクションの見出しが使用される範囲に対して、必ずしも限定されるものと解釈されるべきではない。そのほか、本願のいずれの優先権書類も、その全体が本願をもって参照により本明細書に援用する。
【配列表フリーテキスト】
【0216】
配列番号1: 合成ペプチドであって、1位が4-フルオロベンゾイルアルギニン、3位のX=ナフチルアラニン、6位のX=シトルリン、8位のX=D-リシン、12位のX=シトルリン、14位はアミド化である。
図1
【配列表】
2024502018000001.app
【国際調査報告】