(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】細胞培養システム、方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20240110BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20240110BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20240110BHJP
C09D 129/04 20060101ALI20240110BHJP
C09D 171/02 20060101ALI20240110BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20240110BHJP
C09D 177/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C09D201/00
C12M3/00 Z
C12N5/07
C09D129/04
C09D171/02
C09D133/00
C09D177/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539971
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 US2021065694
(87)【国際公開番号】W WO2022147258
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596118493
【氏名又は名称】アカデミア シニカ
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【住所又は居所原語表記】128 Sec 2,Academia Road,Nankang,Taipei 11529 TW
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン,イン-チー
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4J038
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB11
4B029CC01
4B029GA08
4B029GB09
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BA30
4B065BC41
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4B065CA44
4J038CE021
4J038CG001
4J038DF011
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4J038EA011
4J038GA06
4J038GA09
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA24
4J038PA07
4J038PA11
4J038PB01
4J038PC08
(57)【要約】
本開示は、親水性ポリマーと多価電解質多層を含む表面コーティングを提供する。また、前記表面コーティングによりコーティングされた表面を有する細胞培養物品を含む細胞培養システムが提供される。さらに、表面コーティングおよびシステムの使用及びそれらを調製する方法が提供される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)細胞培養物品の表面上に積層される親水性ポリマーと、
b)多価電解質多層であって、該親水性ポリマーは、該多価電解質多層のポリカチオンまたはポリアニオンと直接接触している、多価電解質多層と
を含む、細胞培養物品をコーティングするための組成物。
【請求項2】
前記親水性ポリマーが、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、PEG-アクリレート、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ-L-ラクチド(PLLA)、ポリ-D-ラクチド(PDLA)、ポリ(L-ラクチド-co-D,L-ラクチド)(PLDLLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PL-co-GA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(p-HEMA)およびそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記親水性ポリマーが、PVA、PEG、PEG-アクリレート、PVP、PEI、PMMAまたはそれらの誘導体である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記親水性ポリマーが、PVA、PEGまたはPEG-アクリレートである、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記親水性ポリマーが、前記細胞培養物品の表面に架橋される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記親水性ポリマーが架橋を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリカチオンがポリ(アミノ酸)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリアニオンがポリ(アミノ酸)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリカチオンが、ポリ(L-リシン)(PLL)、ポリ(L-アルギニン)(PLA)、ポリ(L-オルニチン)(PLO)、ポリ(L-ヒスチジン)(PLH)、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリカチオンが、PLL、PLA、PLOまたはPLHである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリアニオンが、ポリ(L-グルタミン酸)(PLGA)、ポリ(L-アスパラギン酸)(PLAA)、またはそれらの組合せである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
(ポリカチオン/ポリアニオン)の二重層が、PLL/PLGA、PLL/PLAA、PLA/PLGA、PLA/PLAA、PLO/PLGA、PLO/PLAA、PLH/PLGA、PLH/PLAA、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記多価電解質多層が交互積層法によって形成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記多価電解質多層がn個の二重層を含み、nは、1~30の範囲の整数であり、最外層はポリカチオンまたはポリアニオンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記多価電解質多層がn個の(ポリカチオン/ポリアニオン)二重層と追加のポリアニオン層とを含み、nは、1~30の範囲の整数であり、最外層はポリアニオンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記多価電解質多層がn個の(ポリアニオン/ポリカチオン)二重層と追加のポリカチオン層を含み、nは、1~30の範囲の整数であり、最外層はポリカチオンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記細胞培養物品が、以下の工程:
a)疎水性表面を有する細胞培養物品を準備する工程、
b)該疎水性表面を処理により修飾する工程、
c)該修飾された表面に親水性ポリマーを適用する工程、および
d)該親水性ポリマー上に、ポリカチオンとポリアニオンとの交互層を逐次に積層させる工程
を含む方法によってコーティングされる、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記処理が、プラズマ処理、コロナ放電またはUVオゾン処理である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記処理がヒドロシリル化である、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記疎水性表面が前記処理後に照射または親水化される、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記表面が、前記修飾された表面に吸収性ポリマーを適用した後に親水化される、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
前記親水性ポリマーが、PVA、PEGまたはPEG-アクリレートである、請求項17に記載の組成物。
【請求項23】
前記親水性ポリマーが前記表面に架橋される、請求項17に記載の組成物。
【請求項24】
前記表面が架橋を含まない、請求項17に記載の組成物。
【請求項25】
請求項1に記載の組成物を用いてコーティングされた表面を有する細胞培養物品を含む、細胞培養システム。
【請求項26】
細胞および/または培養培地をさらに含む、請求項25に記載の細胞培養システム。
【請求項27】
a)請求項1に記載の組成物を用いてコーティングされた表面を有する細胞培養物品を準備すること、
b)該コーティング表面上に細胞を播種すること、および
c)1以上のスフェロイドを形成するのに十分な時間にわたって、好適な培地下で該細胞を培養すること
を含む、細胞を培養するための方法。
【請求項28】
前記1以上のスフェロイドが単一細胞増殖によって生成される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記1以上のスフェロイドが50μM~150μMの平均直径を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記播種が、基材上に1cm
2あたり細胞1000個未満の密度で細胞をプレーティングすることを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
a)請求項1に記載の組成物を用いてコーティングされた表面上で異種細胞集団を培養して、該表面上に配置された少なくとも1つの単一細胞由来のスフェロイドを取得すること、および
b)所望により、該単一細胞由来のスフェロイドを分析して、それによって、該単一細胞の少なくとも1つの特性を得ること
を含む、単一細胞由来のスフェロイドを取得および所望により特性評価する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年12月31日に出願された米国仮特許出願第63/132,934号および2021年10月5日に出願された米国仮特許出願第63/252,268号に対する優先権および利益を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
3Dスフェロイドモデルへの関心は、基礎科学から、腫瘍生物学、神経変性疾患、薬物毒性の研究を含む前臨床創薬応用まで、研究者の間で高まっている。三次元(3D)細胞培養法は、複雑な組織または腫瘍モデルを生成するためにますます使用されるようになっている。
【0003】
3D細胞培養法および市場で入手可能な製品を使用して形成されたスフェロイドには多くのばらつきがあり、これはそれらの読み出しに影響を与える可能性がある。例えば、超低接着(ULA:Ultra Low Attachment)プレートおよびハンギングドロップ法を含む3D細胞培養に広く使用されている非接着技術は、通常、細胞凝集によってスフェロイドを生成するため、好適であることは証明されていない。そのようなスフェロイドは、一般に、それらの元の不均質性を維持し、様々な特性を有する複数の細胞を抱えているため、細胞の不均質性をよりよく理解する必要がある。数万個の細胞がスフェロイド(すなわち、球形の塊)に凝結すると、栄養分と酸素の浸透が不足するため、数時間にわたって広範囲の中央壊死性コアが形成される可能性があり、それによって細胞増殖が妨げられる。中央壊死拡大は、実際の癌では稀な現象である。
【0004】
あるいは、マトリゲルは、オルガノイド形成などの組織に基づく細胞成長に慣用される埋め込み基材である。しかし、焦点ずれ、非効率的な化合物拡散、およびサンプル単離の難しさにより、ex vivoでの3Dスフェロイドに基づく応用でのその適用は制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スフェロイド形成を標準化することは、均質な3D細胞培養物を生成し、スフェロイドに基づくアッセイおよび薬物スクリーニングから再現性のある結果を得るために重要である。従って、単一細胞由来のスフェロイドを確実に形成することができる新しい細胞培養システムと方法の開発が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本開示は、細胞培養物品をコーティングするための表面コーティングを提供する。本明細書に記載される表面コーティングは、親水性ポリマーおよび多価電解質多層を含む。本明細書で提供される基材は、含水保存に有利である。そのコーティングにより、周囲温度での長期保存によって引き起こされる望ましくない表面亀裂が細胞培養基材で起こらないようにすることができる。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される表面コーティングは、単一細胞から誘導される単一細胞由来のスフェロイドの形成を可能にする。また、細胞培養物品を含む細胞培養システムも提供される。表面コーティングおよびシステムを調製する使用および方法も同様に提供される。
【0007】
従って、本開示の一態様は、細胞培養物品の表面をコーティングするための組成物を提供する。本明細書に記載される組成物は、a)細胞培養物品の表面上に積層される、親水性ポリマーと、b)多価電解質多層であって、親水性ポリマーは多価電解質多層のポリカチオンまたはポリアニオンと直接接触している、多価電解質多層とを含む。
【0008】
本明細書に記載される細胞培養物品は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、エチレン-アクリル酸コポリマー、エチレン-メチルアクリレートコポリマー、エチレン-メタクリル酸コポリマー、エチレン-メチルメタクリレートコポリマー、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、およびポリメタクリル酸メチル、またはこれらの誘導体などの任意の好適なプラスチックまたはポリマーから作製され得る。
【0009】
本明細書に記載される表面コーティングは、脱水または含水され得る。いくつかの実施形態において、表面コーティングは脱水状態にある。いくつかの実施形態において、表面コーティングは含水状態にある。
【0010】
好適な親水性ポリマーとしては、限定されるものではないが、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、PEG-アクリレート、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ-L-ラクチド(PLLA)、ポリ-D-ラクチド(PDLA)、ポリ(L-ラクチド-co-D,L-ラクチド)(PLDLLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PL-co-GA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(p-HEMA)およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0011】
いくつかの実施形態において、親水性ポリマーは、PVA、PEG、PVP、PEI、PMMAまたはそれらの誘導体である。いくつかの実施形態において、吸収性ポリマーは、PVAである。いくつかの実施形態において、親水性ポリマーは、PEGまたは、PEGMA、PEGDMAもしくはPEGDAなどのPEG-アクリレートである。いくつかの実施形態において、親水性ポリマーは、PLAまたは、PLLA、PDLAもしくはPLDLLAなどの誘導体である。いくつかの実施形態において、親水性ポリマーは、PGAまたは、PLGAなどの誘導体である。いくつかの実施形態において、親水性ポリマーは、PMAAまたは、pHEMAなどの誘導体である。
【0012】
特定の実施形態において、親水性ポリマー(例えば、PVA)の体積は、表面コーティングの総体積の0.01~10%である。
【0013】
本明細書に記載される多価電解質多層(multiplayers)は、カチオン性多価電解質(「ポリカチオン」と呼ぶ)と多価電解質(an polyelectrolyte)(「ポリアニオン」と呼ぶ)とを含む層対(「二重層」と呼ぶ)を少なくとも1つ含む。いくつかの実施形態において、そのポリカチオンは、ポリ(アミノ酸)である。いくつかの実施形態において、そのポリアニオンは、ポリ(アミノ酸)である。いくつかの実施形態において、そのポリカチオンとそのポリアニオンはポリ(アミノ酸)である。本明細書に記載されるポリ(アミノ酸)には、Lおよび/またはDアミノ酸形態が含まれ得る。本明細書に記載されるように、その多価電解質多層(multiplayers)は、ポリカチオンとポリアニオンとを交互積層法(layer-by-layer assembly)によって交互に積層させることによって形成することができる。
【0014】
いくつかの実施形態において、(ポリカチオン/ポリアニオン)nの式を有する多価電解質多層は、n個の、ポリカチオンとポリアニオンとの二重層(式中、nは、1~30の範囲の整数である)を含む。いくつかの実施形態において、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20である。いくつかの実施形態において、nは、1~10、1~8、1~5、3~20、5~20、10~20、11~19、12~18、13~17、または14~16の範囲にある。
【0015】
いくつかの実施形態において、ポリアニオン(ポリカチオン/ポリアニオン)nの式を有する多価電解質多層は、n+1個のポリアニオン層とn個のポリカチオン層(式中、nは、1~30の範囲の整数である)を含む。いくつかの実施形態において、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20である。いくつかの実施形態において、nは、1~10、1~8、1~5、3~20、5~20、10~20、11~19、12~18、13~17、または14~16の範囲にある。
【0016】
いくつかの実施形態において、ポリカチオン(ポリアニオン/ポリカチオン)nの式を有する多価電解質多層は、n+1個のポリカチオン層とn個のポリアニオン層(式中、nは、1~30の範囲の整数である)を含む。いくつかの実施形態において、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20である。いくつかの実施形態において、nは、1~10、1~8、1~5、3~20、5~20、10~20、11~19、12~18、13~17、または14~16の範囲にある。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記ポリカチオンは、ポリ(L-リシン)(PLL)、ポリ(L-アルギニン)(PLA)、ポリ(L-オルニチン)(PLO)、ポリ(L-ヒスチジン)(PLH)、またはそれらの組合せである。好ましい一実施形態において、そのポリカチオンは、PLLである。
【0018】
好ましい実施形態において、前記ポリアニオンは、ポリ(L-グルタミン酸)(PLGA)、ポリ(L-アスパラギン酸)(PLAA)、またはそれらの組合せである。好ましい一実施形態において、そのポリアニオンは、PLGAである。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記多価電解質多層は、PLL/PLGA、PLL/PLAA、PLA/PLGA、PLA/PLAA、PLO/PLGA、PLO/PLAA、PLH/PLGA、PLH/PLAA、およびそれらの組合せからなる群から選択するポリカチオン/ポリカチオン(polycation/polycation)の層対(すなわち、二重層)を少なくとも1つ含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される二重層は、PLLおよびPLGAの組合せを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される二重層は、PLOおよびPLGAの組合せを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される二重層は、PLHおよびPLGAの組合せを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される二重層は、PLAおよびPLGAの組合せを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される二重層は、PLLおよびPLAAの組合せを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される二重層は、PLOおよびPLAAの組合せを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される二重層は、PLHおよびPLAAの組合せを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される二重層は、PLAおよびPLAAの組合せを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される多価電解質多層は、30nm~30μmの範囲の厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、表面コーティングは、100nm~20μmの範囲の厚さを有する。いくつかの実施形態において、表面コーティングは、200、400、600または800nmの厚さを有する。いくつかの実施形態において、表面コーティングは、1、5、10、15または20μmの厚さを有する。
【0023】
本開示の表面コーティングは、従来の培養方法と比較して、限定されるものではないが、腫瘍細胞、多能性および分化複能性幹細胞および前駆細胞、造血細胞ならびに免疫細胞を含む様々な細胞についての増殖速度を向上させる。加えて、保水性が向上した表面コーティングは、周囲温度での長期保存による脱水によって引き起こされる望ましくない表面亀裂が表面コーティングで起こらないようにする利点を提供する。
【0024】
別の態様において、本発明は、細胞培養物品をコーティングするための方法を提供する。本明細書に記載される方法は、(a)疎水性表面を有する細胞培養物品を準備する工程;(b)疎水性表面を処理により修飾する工程;(c)修飾された表面へと親水性ポリマーを適用する工程;および(d)親水性ポリマー上に、ポリカチオンとポリアニオンとの交互層を逐次に積層させる工程を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される処理は、プラズマ処理、コロナ放電またはUVオゾン処理である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される疎水性表面は、処理後に照射または親水化される。いくつかの実施形態において、疎水性表面は、表面に親水性ポリマー(例えば、PVA)を適用した後に親水化される。いくつかの実施形態において、親水性ポリマー(例えば、PVA)は、表面に共有結合している(すなわち、コンジュゲートしている)。架橋剤は、架橋(すなわち、コンジュゲーション)を促進するために、使用し得る。例示的な架橋剤としては、限定されるものではないが、マレイン酸、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ブタナール(ブチルアルデヒド)、ホウ酸ナトリウム、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0026】
別の態様において、本発明は、細胞を培養するように構成された本発明の表面コーティングを含む基材を有する細胞培養物品を含む細胞培養システムを提供する。いくつかの実施形態において、細胞培養システムは細胞をさらに含む。いくつかの実施形態において、細胞はヒト細胞であるのに適している。いくつかの実施形態において、細胞は生存細胞であるのに適している。いくつかの実施形態において、細胞培養システムは培養培地をさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される細胞培養システムは、細胞、特に、単一細胞または低密度細胞(例えば、存在量が1ミリリットル中に1000個未満の細胞)の3Dへの効率的かつスケーラブルな繁殖を可能にし、市場の現在のプラットフォーム(例えば、超低接着(ULA:Ultra Low Attachment)プレート、ハンギングドロップ)では形成されなかった難しい細胞種で3D細胞培養物を形成することを可能にする。
【0028】
本明細書に開示されるように、多価電解質多層および培養培地の1以上のパラメーターは、細胞のための1以上の微小環境選択基準に基づいて、ユーザーによって選択され得る。
【0029】
本明細書に開示される細胞培養システムは、細胞の付着および成長だけでなく、培養細胞(例えば、3D細胞培養物、組織および器官)の生存可能な採取も可能にする。生存細胞の採取ができないことは、市場の現在のプラットフォームにおける重大な欠点であり、生産能力に十分な数の細胞を構築して維持することが困難になる。本開示の実施形態の一態様によれば、細胞培養システムから、生存細胞(80%~100%の生存、または約85%~約99%の生存、または約90%~約99%の生存など)を採取することが可能である。例えば、採取された細胞のうち、少なくとも80%が生存可能であり、少なくとも85%が生存可能であり、少なくとも90%が生存可能であり、少なくとも91%が生存可能であり、少なくとも92%が生存可能であり、少なくとも93%が生存可能であり、少なくとも94%が生存可能であり、少なくとも95%が生存可能であり、少なくとも96%が生存可能であり、少なくとも97%が生存可能であり、少なくとも98%が生存可能であり、または少なくとも99%が生存可能である。いくつかの実施形態において、細胞は、細胞解離酵素、例えば、トリプシン、TrypLE、またはアキュターゼを使用して、表面コーティングから放出させることができる。好ましい実施形態において、細胞は、細胞解離酵素を使用せずに、表面コーティングから放出させることができる。
【0030】
別の態様において、本発明は、本明細書に開示される細胞培養物品を使用して、細胞を培養するための方法を提供する。細胞を培養するための方法は、a)本開示の表面コーティングを用いてコーティングされた表面を有する細胞培養物品を準備する工程;b)コーティング表面上に細胞を播種する工程;c)1以上のスフェロイドを形成するのに十分な時間にわたって、好適な培地下で細胞を培養する工程を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において生成されたスフェロイドは、基材に付着している。いくつかの実施形態において、本明細書において生成されたスフェロイドは、基材に半付着している。いくつかの実施形態において、スフェロイドは、単一細胞増殖を介して単一細胞から誘導される。培養細胞(例えば、培養し、採取した細胞)は、分析および特性評価、薬物スクリーニング、単一細胞由来のクローンの単離、細胞バンクの作製、ならびに動物モデルの作出などの様々な用途に使用し得る。
【0031】
本明細書に記載されるように、前記細胞は生細胞である。いくつかの実施形態において、それらの細胞は哺乳類細胞である。いくつかの実施形態において、それらの細胞は、組織細胞、免疫細胞、内皮細胞、幹細胞、上皮細胞、間葉細胞、中皮細胞、腫瘍細胞または腫瘍関連細胞である。
【0032】
本明細書に記載されるように、細胞を培養することは、細胞を維持することおよび/または増殖させることを含む。いくつかの実施形態において、細胞を培養することは、細胞を維持することを含む。いくつかの実施形態において、細胞を培養することは、細胞を増殖させることを含む。いくつかの実施形態において、細胞を培養することは、細胞を分化させることをさらに含み得る。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記細胞は、間葉系幹細胞(MSC)または多能性幹細胞(PSC)(胚性幹細胞(ESC)および人工多能性幹細胞(iPSC)を含む)などの幹細胞である。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記細胞は、腫瘍細胞である、前記培養細胞は、腫瘍スフェロイドである。腫瘍スフェロイドは、細胞株、腫瘍組織または液体生検から誘導され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される腫瘍スフェロイドは、癌患者から得られた血液サンプルから単離された循環腫瘍細胞(CTC)から誘導される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される血液サンプルは、全血である。血液サンプルは、液体生検によって得ることができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される癌患者は、転移性癌を有するヒト癌患者である。いくつかの実施形態において、血液サンプルは、治療的処置の前、その間、および/またはその後に癌患者から得られる。
【0035】
本開示の別の態様は、単一細胞由来のスフェロイドをin vitroで調製する方法を提供し、その方法は、(a)本開示の基材を含む細胞培養システムを準備する工程;(b)サンプルから細胞(例えば、腫瘍細胞および/または腫瘍関連細胞)を単離して、単離された細胞を準備する工程;(c)単離された細胞を前記基材上に播種する工程;および(d)1以上のスフェロイドを生成するのに十分な時間、好適な培地下で細胞を培養する工程を含み、1以上のスフェロイドは単一細胞由来である。
【0036】
本開示の別の態様は、各々が遺伝的に同一である均質な細胞集団から構成される単一細胞由来のクローンを単離するための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1A】本開示の表面コーティングの一実施形態の側面断面図である。親水性ポリマー102は、細胞培養物品202中のウェル101の表面上に積層される。102とウェル101の表面とは架橋されていない。301はポリアニオンである。302はポリカチオンである。103は301と302との4つの二重層を含む多価電解質多層の一実施形態である。最外層は301である。102は、302と直接接触している。
【
図1B】本開示の表面コーティングの一実施形態の側面断面図である。親水性ポリマー102は、細胞培養物品202中のウェル101の表面上に積層される。102とウェル101の表面とは架橋されている。301はポリアニオンである。302はポリカチオンである。103は301と302との4つの二重層を含む多価電解質多層の一実施形態である。最外層は301である。102は、302と直接接触している。
【
図2A】本開示の表面コーティングの一実施形態の側面断面図である。親水性ポリマー102は、細胞培養物品202中のウェル101の表面上に積層される。102とウェル101の表面とは架橋されていない。301はポリアニオンである。302はポリカチオンである。103は5つの302層と4つの301層とを含む多価電解質多層の一実施形態である。最外層は302である。102は、302と直接接触している。
【
図2B】本開示の表面コーティングの一実施形態の側面断面図である。親水性ポリマー102は、細胞培養物品202中のウェル101の表面上に積層される。102とウェル101の表面とは架橋されている。301はポリアニオンである。302はポリカチオンである。103は5つの302層と4つの301層とを含む多価電解質多層の一実施形態である。最外層は302である。102は、302と直接接触している。
【
図3A】本開示の表面コーティングの一実施形態の側面断面図である。親水性ポリマー102は、細胞培養物品202中のウェル101の表面上に積層される。102とウェル101の表面とは架橋されていない。301はポリアニオンである。302はポリカチオンである。103は301と302との4つの二重層を含む多価電解質多層の一実施形態である。最外層は302である。102は、301と直接接触している。
【
図3B】本開示の表面コーティングの一実施形態の側面断面図である。親水性ポリマー102は、細胞培養物品202中のウェル101の表面上に積層される。102とウェル101の表面とは架橋されている。301はポリアニオンである。302はポリカチオンである。103は301と302との4つの二重層を含む多価電解質多層の一実施形態である。最外層は302である。102は、301と直接接触している。
【
図4A】本開示の表面コーティングの一実施形態の側面断面図である。親水性ポリマー102は、細胞培養物品202中のウェル101の表面上に積層される。102とウェル101の表面とは架橋されていない。301はポリアニオンである。302はポリカチオンである。103は5つの301層と4つの302層とを含む多価電解質多層の一実施形態である。最外層は301である。102は、301と直接接触している。
【
図4B】本開示の表面コーティングの一実施形態の側面断面図である。親水性ポリマー102は、細胞培養物品202中のウェル101の表面上に積層される。102とウェル101の表面とは架橋されている。301はポリアニオンである。302はポリカチオンである。103は5つの301層と4つの302層とを含む多価電解質多層の一実施形態である。最外層は301である。102は、301と直接接触している。
【
図5】細胞培養物品の表面修飾の一実施形態を示す図である。ポリスチレンプラスチック製の組織培養プレートを、最初にオゾンプラズマにより処理し、続いて、修飾表面に光活性化アジドフェニル-PVAを加え、PVA架橋ポリスチレンプレートを形成させる。
【
図6】細胞培養物品の表面修飾の一実施形態を示す図である。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の組織培養プレートを、最初にプラズマガスにより処理し、続いて、PTFEプレートの修飾表面上へとPVAを積層させる。架橋剤であるグルタルアルデヒド(GA)を、PVAをPTFEへと架橋するために適用し、PVA架橋PTFEプレートを形成させる。
【
図7】本発明の表面コーティング上で培養したHCT116結腸直腸癌細胞の、完全DMEM培地を供給した癌細胞の成長中の0、1、2、3、4および5日目のタイムラプス顕微鏡観察を示す図である。(Leica DMI6000Bタイムラプス顕微鏡で10倍の対物レンズ下で撮影した画像)。
【
図8】本発明の培養プラットフォームを用いるex vivo培養の結果、ならびに(A)肺癌細胞株A549、H1299、PC-9およびH1975;(B)肝臓癌細胞株SNU-398、SNU-475、PLC/PRF/S、Hep3BおよびHuh7;(C)乳癌細胞株MDA-MB-231およびCGBC01;(D)結腸直腸癌細胞株HCT116、HCT15およびWiDr;および(E)ヒト舌扁平上皮癌細胞株SAS、卵巣癌細胞株SK-OV-3、およびヒト膀胱癌患者から誘導された細胞株T24から誘導されたスフェロイド(7~14日間後)の形成を示す図である。
【
図9】本発明の培養プラットフォーム上でのCTC由来スフェロイド培養の代表的な時間依存的画像を示す図である。(A)CTCを乳癌患者の血液サンプルから単離し;CTC由来スフェロイドが14日間後に形成された。(B)CTCを頭頚部癌患者の血液サンプルから単離し;CTC由来スフェロイドが38日間後に形成された。(C)CTCを結腸直腸癌患者の血液サンプルから単離し;CTC由来スフェロイドが13~27日間後に形成された。スケールバー:50μm。
【
図10】結腸直腸癌(CRC)患者から取得した初代結腸直腸腫瘍組織から誘導された腫瘍スフェロイドの画像を示す図である。腫瘍スフェロイドは、(A)2週間および(B)4週間後に本発明の培養プラットフォーム上で生成された。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本開示は、新世代の足場不使用3D細胞培養技術およびその使用に関する。いくつかの実施形態において、表面コーティングのための新規組成物が提供される。細胞培養、特に、3D細胞培養に有用な表面コーティングを含む細胞培養システムもまた提供される。表面コーティングは、非常に均一な3D細胞培養物の形成を誘導することができ、他の低接着表面では形成されなかった難しい初代細胞種での3D細胞培養物の形成を可能にする。従来の培養方法と比較して、本明細書に記載される表面コーティングは、限定されるものではないが、腫瘍細胞、多能性および分化複能性幹細胞および前駆細胞、造血細胞ならびに免疫細胞を含む様々な細胞についての増殖速度を向上させる。特定の実施形態において、表面コーティングは、親水性ポリマー(例えば、PVA)および多価電解質の1以上のペアを含む。
【0039】
表面コーティング
本開示の表面コーティングは、親水性ポリマーおよび多価電解質多層を含む。場合によっては、表面コーティングは、
図1に示す通りである。
図1に示すように、104は、例示的な表面コーティングを示す。親水性ポリマー102は、細胞培養プレート202のウェル201の上側表面上に積層される。多価電解質多層103は、親水性ポリマー層102の上に積層される。
【0040】
特定の理論に縛られるものではないが、表面コーティングは、長期間にわたる、例えば、48時間にわたる、72時間にわたる、96時間にわたる、5日間にわたる、6日間にわたる、7日間にわたる、または1~数週間(例えば、1、2、3、4、5、6週間、またはそれ以上)での、基材を使用するかまたは使用せずに、表面コーティング上に播種された細胞(例えば、血液から抽出される希少細胞、低密度細胞、または単一細胞)のロバストな増殖または安定な維持を可能にすると考えられる。
【0041】
1)親水性ポリマー
本明細書に記載される親水性ポリマーは、水溶性であり、水溶液の取り込みおよび保持の結果として膨潤し得る親水性吸収性ポリマー(「吸収性ポリマー」)である。本発明で使用し得る親水性吸収性ポリマーの限定されないリストには、親水性および生体適合性グレードの以下のポリマーおよびそれらの誘導体が含まれる:当技術分野で公知の他の吸収性、親水性および生体適合性材料のうち、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、エチレンビニルアルコールコポリマー(一般には、親水性の程度がエチレン(疎水性)基とビニルアルコール(親水性)基の分布に依存する非生分解性材料)、ポリビニルアルコールとエチレンビニルアルコールのコポリマー、ポリアクリレート組成物、ポリウレタン組成物、ポリ(エチレングリコール)(PEG)(ポリ(オキシエチレン)(POE)およびポリ(エチレンオキシド)(PEO)としても知られる)、およびその誘導体(限定されるものではないが、ポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDMA)およびポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)を含む);ポリアクリルアミド(アクリルアミド毒性残留物不含)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミン、およびポリエチレンイミンなどの窒素含有材料;様々な形態のポリラクチドとしても知られているポリ(乳酸)(例えば、ポリ-L-ラクチド(PLLA)およびその誘導体、ポリ-D-ラクチド(PDLA)およびその誘導体、ポリ(L-ラクチド-co-D,L-ラクチド)(PLDLLA)およびその誘導体)、ポリ(グリコール酸)(PGA)(ポリグリコリドとしても知られている)、乳酸とグリコール酸のコポリマーであるポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PL-co-GA)、PLAおよび/またはPGAとPEGとのコポリマーなどの帯電材料;ポリメタクリル酸;ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(ポリ-HEMA)。
【0042】
いくつかの実施形態において、親水性吸収性ポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、エチレンビニルアルコールのコポリマー、ポリビニルアルコールとエチレンビニルアルコールのコポリマー、ポリアクリレート組成物、ポリウレタン組成物、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、PEG-アクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDMA)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ-L-ラクチド(PLLA)、ポリ-D-ラクチド(PDLA)、ポリ(L-ラクチド-co-D,L-ラクチド)(PLDLLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PL-co-GA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)およびポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(p-HEMA)からなる群から選択される。
【0043】
いくつかの実施形態において、親水性吸収性ポリマーは、PVA、PEG、PEG-アクリレート、ポリラクチド、PMMA、p-HEMA、それらの組合せまたは誘導体からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、吸収性ポリマーは、PVAまたはそれらの誘導体である。いくつかの実施形態において、吸収性ポリマーは、PEG、またはPEGMA、PEGDMAもしくはPEGDAなどのPEG-アクリレートである。いくつかの実施形態において、吸収性ポリマーは、ポリラクチド、またはPLLA、PDLAもしくはPLDLLAなどの誘導体である。いくつかの実施形態において、吸収性ポリマーは、PGA、またはPLGAなどの誘導体である。いくつかの実施形態において、吸収性ポリマーは、PMAA、またはpHEMAなどの誘導体である。
【0044】
いくつかの実施形態において、親水性ポリマーは、約2,500g/mol~約200,000g/molの平均分子量を有する。場合によっては、親水性ポリマーの平均分子量は、約5,000g/mol~約175,000g/mol、約5,000g/mol~約150,000g/mol、約5,000g/mol~約125,000g/mol、約5,000g/mol~約100,000g/mol、約5,000g/mol~約75,000g/mol、約5,000g/mol~約50,000g/mol、約5,000g/mol~約25,000g/mol、約5,000g/mol~約10,000g/mol、約10,000g/mol~約175,000g/mol、約10,000g/mol~約150,000g/mol、約10,000g/mol~約125,000g/mol、約10,000g/mol~約100,000g/mol、約10,000g/mol~約75,000g/mol、約10,000g/mol~約50,000g/mol、約10,000g/mol~約25,000g/mol、約20,000g/mol~約150,000g/mol、または約50,000g/mol~約150,000g/molである。
【0045】
場合によっては、親水性ポリマーは、標的基材の表面上に直接積層される。他の例において、親水性ポリマーは、表面上に間接的に積層される。場合によっては、1以上の追加の層(例えば、1、2、3、4、5、またはそれ以上の層)が、親水性ポリマー層と基材の表面との間に形成される。場合によっては、1つの追加の層(本明細書では最内層とも呼ぶ)が、親水性ポリマー層と基材の表面との間に形成される。
【0046】
いくつかの実施形態において、親水性ポリマーはPVAである。PVAは、約10,000g/mol~約125,000g/molの範囲の平均分子量を有し得る。場合によっては、PVAは、約10,000g/mol~約100,000g/mol、約10,000g/mol~約75,000g/mol、約10,000g/mol~約50,000g/mol、約20,000g/mol~約125,000g/mol、約20,000g/mol~約100,000g/mol、約20,000g/mol~約75,000g/mol、約20,000g/mol~約50,000g/mol、約50,000g/mol~約125,000g/mol、または約50,000g/mol~約100,000g/molの平均分子量を有する。
【0047】
場合によっては、PVAは、標的基材の表面上に直接積層される。他の例において、PVAは、表面上に間接的に積層される。場合によっては、1以上の追加の層(例えば、1、2、3、4、5、またはそれ以上の層)が、PVA層と表面との間に形成される。場合によっては、1つの追加の層が、PVA層と基材の表面との間に形成される。
【0048】
いくつかの実施形態において、親水性ポリマーはPEGである。場合によっては、PEGの平均分子量は、約200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1450、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3250、3350、3500、3750、4000、4250、4500、4600、4750、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、10,000、12,000、20,000、35,000、40,000、50,000、60,000、または100,000Daである。
【0049】
場合によっては、本明細書で利用されるPEGは不連続PEG(dPEG)である。不連続PEGは、2以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む高分子PEGであり得る。場合によっては、不連続PEGは、2~60、2~50、または2~48の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。場合によっては、dPEGは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、35、40、42、48、50またはそれ以上の繰り返しエチレンオキシド単位を含む。
【0050】
特定の実施形態において、親水性ポリマー(例えば、PVAまたはPEG)の体積は、表面コーティングの総体積の約0.01%~約10%である。場合によっては、親水性ポリマーは、表面コーティングの総体積の、約0.01%~約9%v/v、約0.01%~約8%v/v、約0.01%~約7%v/v、約0.01%~約6%v/v、約0.01%~約5%v/v、約0.01%~約4%v/v、約0.01%~約3%v/v、約0.01%~約2%v/v、約0.01%~約1%v/v、約0.1%~約10%v/v、約0.1%~約9%v/v、約0.1%~約8%v/v、約0.1%~約7%v/v、約0.1%~約6%v/v、約0.1%~約5%v/v、約0.1%~約4%v/v、約0.1%~約3%v/v、約1%~約10%v/v、約1%~約9%v/v、約1%~約8%v/v、約1%~約7%v/v、約1%~約6%v/v、約1%~約5%v/v、約1%~約4%v/v、約2%~約10%v/v、または約5%~約10%v/vである。場合によっては、親水性ポリマー(例えば、PVAまたはPEG)の体積は、表面コーティングの総体積の、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.5%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、または約10%である。
【0051】
場合によっては、表面コーティングの総重量当たりの親水性ポリマー(例えば、PVAまたはPEG)の重量は、約1%~約50%である。場合によっては、表面コーティングの総重量当たりの親水性ポリマー(例えば、PVAまたはPEG)の重量は、約1%~約40%である。場合によっては、表面コーティングの総重量当たりの親水性ポリマー(例えば、PVAまたはPEG)の重量は、約1%~約30%である。場合によっては、表面コーティングの総重量当たりの親水性ポリマー(例えば、PVAまたはPEG)の重量は、約1%~約20%である。場合によっては、表面コーティングの総重量当たりの親水性ポリマー(例えば、PVAまたはPEG)の重量は、約1%~約10%である。
【0052】
2)多価電解質多層
特定の実施形態において、表面コーティングは、多価電解質多層(PEM)を含む。本明細書に記載されるPEMは、逆帯電したポリマー(すなわち、多価電解質)の交互層を複数含む。本明細書に記載される逆帯電したポリマーは、正に帯電した多価電解質(本明細書ではポリカチオンとも呼ぶ)と負に帯電した多価電解質(本明細書ではポリアニオンとも呼ぶ)の組合せを含む。
【0053】
例示的なポリカチオンとしては、限定されるものではないが、ポリ(L-リシン)(PLL)、ポリ(L-アルギニン)(PLA)、ポリ(L-オルニチン)(PLO)、ポリ(L-ヒスチジン)(PLH)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ[α-(4-アミノブチル)-L-グリコール酸](PAGA)、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート(DEAEMA)、およびそれらの組合せが挙げられる。場合によっては、ポリカチオンはPLLである。場合によっては、ポリカチオンはPLOである。場合によっては、ポリカチオンはPLHである。場合によっては、ポリカチオンはPLAである。
【0054】
例示的なポリアニオンとしては、限定されるものではないが、ポリ-L-グルタミン酸(PLGA)、ポリ-L-アスパラギン酸(PLAA)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ポリ(スチレンスルホン酸)(PSS)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(NIPAM)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)(PAMPS)、およびそれらの組合せが挙げられる。場合によっては、ポリアニオンはPLGAである。場合によっては、ポリアニオンはPLAAである。
【0055】
多価電解質多層は、ポリカチオンとポリアニオンとを交互積層法によって交互に積層させることによって形成し得る。本明細書に記載される多価電解質多層は、ポリカチオン層とポリアニオン層とを含む二重層を少なくとも1つ含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、PEMは、約1個の二重層~約100個の二重層を含み得る。いくつかの実施形態において、PEMは、約1個の二重層~約50個の二重層を含み得る。いくつかの実施形態において、PEMは、約1個の二重層~約30個の二重層を含み得る。いくつかの実施形態において、PEMは、約1個の二重層~約20個の二重層を含み得る。いくつかの実施形態において、二重層の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は、1~10、1~8、1~5、3~20、5~20、10~20、11~19、12~18、13~17、または14~16個の範囲にある。いくつかの実施形態において、二重層の数は3個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は4個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は5個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は6個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は7個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は8個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は9個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は10個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は11個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は12個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は13個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は14個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は15個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は16個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は17個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は18個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は19個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は20個である。
【0057】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される多価電解質多層は、ポリカチオンが、PLL、PLO PLH、およびPLAから選択され、ポリアニオンが、PLGAおよびPLAAから選択される、正に帯電した多価電解質と負に帯電した多価電解質との二重層を1個以上含む。いくつかの実施形態において、セット数は、1~100、3~60、3~50、または3~30セットの範囲である。いくつかの実施形態において、セット数は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20セットより多い。いくつかの実施形態において、セット数は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20セットである。いくつかの実施形態において、セット数は、1~10、1~8、1~5、3~20、5~20、10~20、11~19、12~18、13~17、または14~16セットの範囲にある。
【0058】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される多価電解質多層は、PLLとPLGAとの二重層を1個以上含む。いくつかの実施形態において、PLLとPLGAとの二重層の数は、1~100、3~60、3~50、または3~30個の範囲である。いくつかの実施形態において、二重層の数は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個より多い。いくつかの実施形態において、二重層の数は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は、1~10、1~8、1~5、3~20、5~20、10~20、11~19、12~18、13~17、または14~16個の範囲にある。
【0059】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される多価電解質多層は、PLOとPLGAとの二重層を1個以上含む。いくつかの実施形態において、PLOとPLGAとの二重層の数は、1~100、3~60、3~50、または3~30個の範囲である。いくつかの実施形態において、二重層の数は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個より多い。いくつかの実施形態において、二重層の数は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は、1~10、1~8、1~5、3~20、5~20、10~20、11~19、12~18、13~17、または14~16個の範囲にある。
【0060】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される多価電解質多層は、PLHとPLGAとの二重層を1個以上含む。いくつかの実施形態において、PLHとPLGAとの二重層の数は、1~100、3~60、3~50、または3~30個の範囲である。いくつかの実施形態において、二重層の数は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個より多い。いくつかの実施形態において、二重層の数は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は、1~10、1~8、1~5、3~20、5~20、10~20、11~19、12~18、13~17、または14~16個の範囲にある。
【0061】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される多価電解質多層は、PLAとPLGAとの二重層を1個以上含む。いくつかの実施形態において、PLAとPLGAとの二重層の数は、1~100、3~60、3~50、または3~30個の範囲である。いくつかの実施形態において、二重層の数は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個より多い。いくつかの実施形態において、二重層の数は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は、1~10、1~8、1~5、3~20、5~20、10~20、11~19、12~18、13~17、または14~16個の範囲にある。
【0062】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される多価電解質多層は、PLLとPLAAとの二重層を1個以上含む。いくつかの実施形態において、PLLとPLAAとの二重層の数は、1~100、3~60、3~50、または3~30個の範囲である。いくつかの実施形態において、二重層の数は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個より多い。いくつかの実施形態において、二重層の数は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は、1~10、1~8、1~5、3~20、5~20、10~20、11~19、12~18、13~17、または14~16個の範囲にある。
【0063】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される多価電解質多層は、PLOとPLAAとの二重層を1個以上含む。いくつかの実施形態において、PLOとPLAAとの二重層の数は、1~100、3~60、3~50、または3~30個の範囲である。いくつかの実施形態において、二重層の数は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個より多い。いくつかの実施形態において、二重層の数は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は、1~10、1~8、1~5、3~20、5~20、10~20、11~19、12~18、13~17、または14~16個の範囲にある。
【0064】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される多価電解質多層は、PLHとPLAAとの二重層を1個以上含む。いくつかの実施形態において、PLHとPLAAとの二重層の数は、1~100、3~60、3~50、または3~30個の範囲である。いくつかの実施形態において、二重層の数は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個より多い。いくつかの実施形態において、二重層の数は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は、1~10、1~8、1~5、3~20、5~20、10~20、11~19、12~18、13~17、または14~16個の範囲にある。
【0065】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される多価電解質多層は、PLAとPLAAとの二重層を1個以上含む。いくつかの実施形態において、PLAとPLAAとの二重層の数は、1~100、3~60、3~50、または3~30個の範囲である。いくつかの実施形態において、二重層の数は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個より多い。いくつかの実施形態において、二重層の数は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個である。いくつかの実施形態において、二重層の数は、1~10、1~8、1~5、3~20、5~20、10~20、11~19、12~18、13~17、または14~16個の範囲にある。
【0066】
薄膜(thin film)としてのPEMの厚さは、広い範囲、例えば、約30nm~約30μm、または約100nm~約20μmの範囲にあり得る。いくつかの実施形態において、その厚さは、約100nm~約500nm、約500nm~約1μm、または約1μm~約10μmである。いくつかの実施形態において、その厚さは、約200、400、600、800nm、またはその間の任意の数である。いくつかの実施形態において、その厚さは、約1、5、10、15または20μm、またはその間の任意の数である。
【0067】
PEMを特性評価するために数多くの方法論が利用可能である。いくつかの実施形態において、その方法論は、偏光解析法(厚さ)、散逸モニタリングを伴う水晶振動子マイクロバランス(吸着質量、粘弾性)、接触角分析(表面エネルギー)、フーリエ変換赤外分光法(官能基)、X線光電子分光法(化学組成)、走査電子顕微鏡法(表面構造)、および原子間力顕微鏡法(粗さ/表面構造)を含み得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、PEMは、ポリアニオンまたはポリカチオン溶液を混合物としてまたは逐次にディッシュ中またはその上にピペッティングすることによって積層させ得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、PEMは、ディップコーティングによって表面上に形成される。ディップコーティングでは、本基材を多価電解質溶液に一定時間(通常は10~15分)浸漬し、続いて、複数回すすぎ、逆電荷を有する第2の多価電解質溶液に浸漬する。このプロセスは、所望の数の層が達成されるまで繰り返される。
【0070】
いくつかの実施形態において、PEMは、スプレーコーティングによって表面上に形成される。いくつかの実施形態において、多価電解質を3~10秒間表面上に噴霧し、続いて、10~30秒間休止/排水し、3~20秒間水噴霧により表面をすすぎ、さらに10秒間休止し、逆電荷の多価電解質を用いてサイクルを繰り返し得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、PEMは、スピンコーティングによって表面上に形成される。スピンコーティングは、システムの溶液ベースのコーティングのための高度に制御された方法である。一般的なスピンコーティング手順には、10~15秒間のスピンコーティング、15~30秒間の「スピンコーティング」水による少なくとも1回のすすぎ、および逆帯電した多価電解質を用いたこの手順の繰り返しが含まれる。洗浄工程はスピンコーティングでは必要ではない場合がある。
【0072】
3)表面コーティング構築
本開示の別の態様は、本明細書に記載される組成物を用いて細胞培養物品をコーティングするための方法を特徴とする。本明細書に記載される方法は、(a)疎水性表面を有する細胞培養物品を準備する工程;(b)疎水性表面を処理により修飾する工程;(c)修飾された表面に親水性ポリマーを適用する工程;および(d)親水性ポリマー上に、ポリカチオンとポリアニオンとの交互層を逐次に積層させる工程を含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される処理は、プラズマ処理、コロナ放電またはUVオゾン処理である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される疎水性表面は、前記処理後に照射または親水化される。いくつかの実施形態において、疎水性表面は、表面に親水性ポリマー(例えば、PVA)を適用した後に親水化される。いくつかの実施形態において、親水性ポリマー(例えば、PVA)は、表面に共有結合している(すなわち、コンジュゲートしている)。架橋剤は、架橋(すなわち、コンジュゲーション)を促進するために、使用し得る。例示的な架橋剤としては、限定されるものではないが、マレイン酸、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ブタナール(ブチルアルデヒド)、ホウ酸ナトリウム、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0074】
本明細書に記載されるように、表面は、表面上の水滴に対する接触角が90度未満である場合(接触角は液滴内部を通過する角度として定義される)、親水性である。実施形態は、90度から0度までの接触角を有する親水性表面を含み;当業者は、明示的に述べられた境界の間の全ての範囲および値が企図されることをすぐに理解するであろう。例えば、次のいずれかが上限または下限として利用可能である:90、80、70、60、50、40、30、20、10、5、2、0度。
【0075】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される基材は、(ポリアニオン/ポリカチオン)n/PVAを含み、このとき、ポリアニオン/ポリカチオンは、PLGA/PLL、PLAA/PLL、PLGA/PLA、PLAA/PLA、PLGA/PLO、PLAA/PLO、PLGA/PLHおよびPLAA/PLHから選択され、nは、1~20の範囲の整数であり、所望により、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20である。いくつかの実施形態において、nは、1~10、1~8、1~5、3~20、5~20、10~20、11~19、12~18、13~17、または14~16の範囲にある。
【0076】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される基材は、(ポリカチオン/ポリアニオン)n/PEGを含み、このとき、ポリカチオン/ポリアニオンは、PLL/PLGA、PLL/PLAA、PLA/PLGA、PLA/PLAA、PLO/PLGA、PLO/PLAA、PLH/PLGAおよびPLH/PLAAから選択され、nは、1~20の範囲の整数であり、所望により、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20である。いくつかの実施形態において、nは、1~10、1~8、1~5、3~20、5~20、10~20、11~19、12~18、13~17、または14~16の範囲にある。
【0077】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される基材は、ポリカチオン(ポリアニオン/ポリカチオン)n/PEG-アクリレートを含み、このとき、ポリアニオン/ポリカチオンは、PLGA/PLL、PLAA/PLL、PLGA/PLA、PLAA/PLA、PLGA/PLO、PLAA/PLO、PLGA/PLHおよびPLAA/PLHから選択され、nは、1~20の範囲の整数であり、所望により、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20である。いくつかの実施形態において、nは、1~10、1~8、1~5、3~20、5~20、10~20、11~19、12~18、13~17、または14~16の範囲にある。
【0078】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される基材は、ポリアニオン(ポリカチオン/ポリアニオン)n/PVPを含み、このとき、ポリカチオン/ポリアニオンは、PLL/PLGA、PLL/PLAA、PLA/PLGA、PLA/PLAA、PLO/PLGA、PLO/PLAA、PLH/PLGAおよびPLH/PLAAから選択され、nは、1~20の範囲の整数であり、所望により、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20である。いくつかの実施形態において、nは、1~10、1~8、1~5、3~20、5~20、10~20、11~19、12~18、13~17、または14~16の範囲にある。
【0079】
本明細書に記載される表面コーティングは、脱水または含水され得る。いくつかの実施形態において、表面コーティングは脱水状態にある。他の実施形態において、表面コーティングは含水状態にある。本明細書で使用する場合、「脱水状態」および「含水状態」はそれぞれ、表面コーティングの総体積に対する水溶液(例えば、水)の体積を指す。脱水状態において、水溶液(例えば、水)の体積は、表面コーティングの総体積の20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満、または0.5%未満である。含水状態において、水溶液(例えば、水)の体積は、表面コーティングの総体積の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、またはそれより多い。
【0080】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される表面コーティングは、水溶液(例えば、水)を含む。場合によっては、水溶液(例えば、水)は、表面コーティングの総重量の約1%~約60重量%である。場合によっては、水溶液(例えば、水)は、表面コーティングの総重量の約1%~約50重量%、約1%~約40重量%、約1%~約30重量%、約1%~約20重量%、約10%~約60重量%、約10%~約50重量%、約10%~約40重量%、約10%~約30重量%、約10%~約20重量%、約20%~約60重量%、約20%~約50重量%、約20%~約40重量%、または約30%~約60重量%である。
【0081】
いくつかの実施形態において、表面コーティングは充填剤をさらに含む。場合によっては、充填剤は、限定されるものではないが、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、またはシリコーン樹脂などの無機充填剤を含む。
【0082】
ポリカチオンおよびポリアニオンのそれぞれ、ならびに吸収性ポリマーは、本開示における使用のために水溶液に溶解され得る。水溶液は、有機溶媒を含まないか、または実質的に含まない。例えば、重合後にポリマー中に有機溶媒が残留する結果として、水溶液中に少量の有機溶媒が存在する場合があることが理解されるであろう。本明細書で使用する場合、「実質的に含まない」とは、水溶液中の有機溶媒に関する場合、水溶液が1重量%未満の有機溶媒を含むことを意味する。多くの実施形態において、水溶液は、0.8%未満、0.5%未満、0.2%未満または0.1%未満(less that)の有機溶媒を含有する。
【0083】
ポリカチオンおよびポリアニオンのそれぞれ、ならびに吸収性ポリマーは、コーティングの目的のために任意の好適な濃度で水溶液に溶解され得る。
【0084】
細胞培養システム
本開示の細胞培養システムは、本明細書に記載される表面コーティングを用いてコーティングされた表面を有する細胞培養物品を含む。
【0085】
本明細書に記載される細胞培養物品は、任意の好適なプラスチックなどから作製することができる。特定の実施形態において、細胞培養物品は、ポリスチレン、テレフタル酸ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロール、およびポリプロピレンオキシドのうちの少なくとも1つを含む材料から作製される。
【0086】
いくつかの実施形態において、細胞培養システムは細胞をさらに含む。いくつかの実施形態において、細胞は細胞株に由来する。いくつかの実施形態において、細胞は哺乳類細胞である。いくつかの実施形態において、細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態において、細胞は、組織細胞、免疫細胞、内皮細胞、幹細胞、上皮細胞、間葉細胞、中皮細胞、癌細胞または腫瘍関連細胞である。いくつかの実施形態において、細胞培養システムは培養培地をさらに含む。
【0087】
本明細書に開示される細胞培養システムは、細胞の付着および成長だけでなく、培養細胞(例えば、3D細胞培養物、組織および器官)の生存可能な採取も可能にする。本開示のいくつかの実施形態によれば、細胞培養システムを使用して、生存細胞(80%~100%の生存、または約85%~約99%の生存、または約90%~約99%の生存など)を採取することができる。例えば、採取された細胞のうち、少なくとも80%が生存可能であり、少なくとも85%が生存可能であり、少なくとも90%が生存可能であり、少なくとも91%が生存可能であり、少なくとも92%が生存可能であり、少なくとも93%が生存可能であり、少なくとも94%が生存可能であり、少なくとも95%が生存可能であり、少なくとも96%が生存可能であり、少なくとも97%が生存可能であり、少なくとも98%が生存可能であり、または少なくとも99%が生存可能である。いくつかの実施形態において、細胞は、細胞解離酵素、例えば、トリプシン、TrypLE、またはアキュターゼを使用してまたは使用せずに、細胞培養システムから放出させることができる。
【0088】
方法およびその使用
細胞を培養するための方法
特定の理論に縛られるものではないが、本明細書に開示される表面コーティングは、細胞のロバストな増殖および/または安定な維持を可能にすると考えられる。従って、本開示は、細胞を培養するための方法を提供する。方法は、(a)本開示の表面コーティングを用いてコーティングされた表面を有する細胞培養物品を準備する工程;(b)コーティング表面上に細胞を播種する工程;および(c)好適な培地下で細胞を培養する工程を含む。いくつかの実施形態において、細胞は、スフェロイドを形成するのに十分な時間にわたって培養される。好ましい実施形態において、スフェロイドは3Dスフェロイドである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるスフェロイドは、単一細胞増殖によって生成される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるスフェロイドは、細胞凝集を伴わない単一細胞増殖によって生成される。いくつかの実施形態において、スフェロイドは均一な大きさを有する。
【0089】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される細胞は、細胞株、組織生検または液体生検に由来し得る。いくつかの実施形態において、それらの細胞は哺乳類細胞である。いくつかの実施形態において、それらの細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態において、それらの細胞は、組織細胞、免疫細胞、内皮細胞、幹細胞、上皮細胞、間葉細胞、中皮細胞、癌細胞または腫瘍関連細胞である。
【0090】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される細胞は、間葉系幹細胞(MSC)または多能性幹細胞(PSC)(胚性幹細胞(ESC)および人工多能性幹細胞(iPSC)を含む)などの幹細胞である。
【0091】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される細胞は癌細胞である。本明細書に記載される例示的な癌としては、限定されるものではないが、急性リンパ性癌、急性骨髄性白血病、胞巣状横紋筋肉腫(alveolar rhabdomycosarcoma)、骨癌、脳癌、乳癌、肛門、肛門管の癌または肛門直腸癌、眼の癌、肝内胆管癌、関節の癌、頸部の癌、胆嚢または胸膜癌、鼻、鼻腔または中耳の癌、口腔の癌、外陰の癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性癌、結腸癌、食道癌、子宮頸癌、消化管カルチノイド腫瘍、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、腎臓癌、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、鼻咽頭癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、腹膜癌、大網および腸間膜癌(mesentary cancer)、咽頭癌、前立腺癌、直腸癌、腎癌、皮膚癌、小腸癌、軟組織癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、尿管癌、ならびに膀胱癌が挙げられる。
【0092】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される細胞は腫瘍関連細胞である。例示的な腫瘍関連細胞としては、限定されるものではないが、腫瘍細胞クラスター、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、癌関連マクロファージ様細胞(CAML)、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、腫瘍関連単球/マクロファージ系列細胞(MMLC)、癌幹細胞、腫瘍微小塞栓、腫瘍関連間質細胞(TASC)、腫瘍関連骨髄細胞(TAMC)、腫瘍関連制御性T細胞(Treg)、癌関連線維芽細胞(CAF)、腫瘍由来内皮細胞(TEC)、腫瘍関連好中球(TAN)、腫瘍関連血小板(TAP)、腫瘍関連免疫細胞(TAI)、骨髄由来抑制細胞(MDSC)、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0093】
例示的な細胞としては、低密度細胞、単一細胞、希少細胞、またはそれらの組合せが挙げられる。低密度細胞は、播種した場合に、基材上に1cm2あたり5000個未満の細胞、例えば、基材上に1cm2あたり1、5、10、20、50、100、200、300、500、1000、2000、3000、4000、または4500個のいずれか以下の細胞であり得る。
【0094】
いくつかの実施形態において、工程(c)における単離された細胞の播種は、基材表面(すなわち、細胞成長表面)上に1cm2あたり細胞1個~細胞10個の密度で細胞をプレーティングすることを含む。いくつかの実施形態において、工程(c)における単離された細胞の播種は、基材表面上に1cm2あたり細胞10個~細胞100個の密度で細胞をプレーティングすることを含む。いくつかの実施形態において、工程(c)における単離された細胞の播種は、基材表面上に1cm2あたり細胞100個~細胞1000個の密度で細胞をプレーティングすることを含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、それらの細胞は、約2日~約5週間の範囲の期間、約3~約14日間など、例えば、約7日間培養される。いくつかの実施形態において、それらの細胞は3日間培養され、スフェロイドは約40μm~約200μmの範囲の平均直径を有する。
【0096】
例示的な実施形態の方法では、任意の好適な培養培地を使用することができる。例示的な培養培地としては、限定されるものではないが、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)、上皮細胞増殖因子(EGF)および/または塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、B27補給剤を添加したダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)、上皮細胞増殖因子(EGF)および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の混合物が挙げられる。
【0097】
単一細胞由来のスフェロイドを調製する方法
別の態様において、本開示は、単一細胞由来のスフェロイドを調製する方法を提供し、方法は、(a)本開示の表面コーティングを用いてコーティングされた表面を有する細胞培養物品を準備する工程;(b)コーティング表面上に細胞を播種する工程;および(c)好適な培地下で細胞を十分な時間培養して、単一細胞由来のスフェロイドを形成する工程を含む。本明細書に記載されるスフェロイドは、単一細胞増殖によって生成される。いくつかの実施形態において、スフェロイドは均一な大きさを有する。いくつかの実施形態において、単一細胞由来のクローンは、本開示の基材上に半付着または緩く付着している。
【0098】
いくつかの実施形態において、前記細胞は細胞株に由来する。いくつかの実施形態において、それらの細胞は哺乳類細胞である。いくつかの実施形態において、それらの細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態において、それらの細胞は、組織細胞、免疫細胞、内皮細胞、幹細胞、上皮細胞、間葉細胞、中皮細胞、癌細胞または腫瘍関連細胞である。
【0099】
いくつかの実施形態において、それらの細胞は、間葉系幹細胞(MSC)または多能性幹細胞(PSC)(胚性幹細胞(ESC)および人工多能性幹細胞(iPSC)を含む)などの幹細胞である。
【0100】
いくつかの実施形態において、それらの細胞は癌細胞である。いくつかの実施形態において、それらの細胞は癌細胞である。特定の実施形態において、それらの癌細胞はヒト原発腫瘍組織から単離される。特定の実施形態において、それらの癌細胞は癌患者の血液サンプルから単離される。本明細書に記載される例示的な癌としては、限定されるものではないが、急性リンパ性癌、急性骨髄性白血病、胞巣状横紋筋肉腫(alveolar rhabdomycosarcoma)、骨癌、脳癌、乳癌、肛門、肛門管の癌または肛門直腸癌、眼の癌、肝内胆管癌、関節の癌、頸部の癌、胆嚢または胸膜癌、鼻、鼻腔または中耳の癌、口腔の癌、外陰の癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性癌、結腸癌、食道癌、子宮頸癌、消化管カルチノイド腫瘍、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、腎臓癌、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、鼻咽頭癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、腹膜癌、大網および腸間膜癌(mesentary cancer)、咽頭癌、前立腺癌、直腸癌、腎癌、皮膚癌、小腸癌、軟組織癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、尿管癌、ならびに膀胱癌が挙げられる。
【0101】
いくつかの実施形態において、それらの細胞は腫瘍関連細胞である。例示的な腫瘍関連細胞としては、限定されるものではないが、腫瘍細胞クラスター、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、癌関連マクロファージ様細胞(CAML)、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、腫瘍関連単球/マクロファージ系列細胞(MMLC)、癌幹細胞、腫瘍微小塞栓、腫瘍関連間質細胞(TASC)、腫瘍関連骨髄細胞(TAMC)、腫瘍関連制御性T細胞(Treg)、癌関連線維芽細胞(CAF)、腫瘍由来内皮細胞(TEC)、腫瘍関連好中球(TAN)、腫瘍関連血小板(TAP)、腫瘍関連免疫細胞(TAI)、骨髄由来抑制細胞(MDSC)、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0102】
例示的な細胞としては、低密度細胞、単一細胞、希少細胞、またはそれらの組合せが挙げられる。低密度細胞は、播種した場合に、基材上に1cm2あたり5000個未満の細胞、例えば、基材上に1cm2あたり1、5、10、20、50、100、200、300、500、1000、2000、3000、4000、または4500個のいずれか以下の細胞であり得る。
【0103】
いくつかの実施形態において、工程(c)における単離された細胞の播種は、基材表面(すなわち、細胞成長表面)上に1cm2あたり細胞1個~細胞10個の密度で細胞をプレーティングすることを含む。いくつかの実施形態において、工程(c)における単離された細胞の播種は、基材表面上に1cm2あたり細胞10個~細胞100個の密度で細胞をプレーティングすることを含む。いくつかの実施形態において、工程(c)における単離された細胞の播種は、基材表面上に1cm2あたり細胞100個~細胞1000個の密度で細胞をプレーティングすることを含む。
【0104】
いくつかの実施形態において、前記培養工程は、2~8日(例えば、2、3、4、5、6、7、または8日)間にわたって行われる。他の実施形態において、その培養工程は、7~14日(例えば、7、8、9、10、11、12、13、または14日)間にわたって行われる。他の実施形態において、その培養工程は、1~4週間(例えば、1、2、3、または4週間)にわたって行われる。いくつかの実施形態において、それらの細胞は3日間培養され、スフェロイドは約40μm~約200μmの範囲の平均直径を有する。
【0105】
例示的な実施形態の方法では、任意の好適な培養培地を使用することができる。例示的な培養培地としては、限定されるものではないが、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)、上皮細胞増殖因子(EGF)および/または塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、B27補給剤を添加したダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)、上皮細胞増殖因子(EGF)および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の混合物が挙げられる。
【0106】
いくつかの実施形態において、単一細胞由来のスフェロイドの大きさは、直径200μm未満である。いくつかの実施形態において、単一細胞由来のスフェロイドの大きさは、直径150μm未満である。いくつかの実施形態において、単一細胞由来のスフェロイドの大きさは、直径約40、50、60、70、80、90、100、110、120、130または140μmである。
【0107】
特定の実施形態において、単一細胞由来のスフェロイドは、治療薬をスクリーニングするために使用し得る。特定の実施形態において、治療薬をスクリーニングする方法は、(a)生成された単一細胞由来のスフェロイドに被験物質を適用すること;および(b)単一細胞由来のスフェロイドに対する被験物質の効果を評価することを含む。いくつかの実施形態において、被験物質の効果は、例えば遺伝子またはタンパク質の生化学的活性および/または発現レベルを分析するために、イメージングシステムを用いて分析される。
【0108】
いくつかの実施形態において、生成された単一細胞由来のスフェロイドは、腫瘍スフェロイドである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される被験物質は、細胞傷害性または細胞増殖抑制性化学療法薬などの化学療法薬である。いくつかの実施形態において、治療薬は、免疫チェックポイント阻害薬などの免疫チェックポイント阻害薬である。いくつかの実施形態において、治療薬は核酸薬である。いくつかの実施形態において、治療薬は、限定されるものではないが、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、および樹状細胞を含む治療用細胞組成物である。
【0109】
いくつかの実施形態において、それらの細胞は、約2日~約5週間の範囲の期間、例えば、約3~約14日間、例えば、約7日間培養される。いくつかの実施形態において、それらの細胞は3日間培養され、少なくとも1つの3Dスフェロイドは約40μm~約200μmの範囲の平均直径を有する。
【0110】
いくつかの態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載される細胞培養システムを使用する培養方法のいずれか1つに従って生成された単一細胞由来のスフェロイド(例えば、腫瘍スフェロイド)である。いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞培養システムを使用する培養方法のいずれか1つに従って誘導された単一細胞由来のスフェロイド(例えば、腫瘍スフェロイド)のライブラリーが提供される。
【0111】
単一細胞由来のクローンを単離する方法
単一細胞由来のクローンは、ゲノム編集技術が日常の検査業務に組み込まれるにつれて、ますます重要になっている。単一細胞を単離するための従来の方法である限界希釈法は、プロトコールをわずかに変更するだけで大きく変化し得る単クローン性の統計的確率に依存している。この技術は、単一細胞の単離には非常に非効率的であるが、細胞生存力を維持する。逆に、フローサイトメトリーは、単一細胞クローンを高効率で提供することができるが、細胞生存力に悪影響を及ぼす。これらのプラットフォームの共通の特徴は、一般に、微細構造内にランダムに閉じ込められることによって「個別化された(individualized)」多数の細胞を含む懸濁液から開始される。これらの方法はどちらも混合および/または移動中にかなりの細胞損失が発生するため、細胞集団が小さい場合は実用的ではない。本発明の方法は、生存可能な単一細胞クローンを単離するための効率的な代替法を提供する。いくつかの実施形態において、その方法は、微細構造内に細胞を個別に閉じ込めることを必要はない。
【0112】
いくつかの実施形態において、本明細書では、単一細胞由来のクローンを単離する方法が提供される。本明細書に記載される方法は、1)本開示の組成物を用いてコーティングされた表面を有する細胞培養物品を使用して異種細胞集団を培養して、単一細胞由来のクローンを含む複数の細胞クローンを取得すこと;および2)その細胞培養物品から単一細胞由来のクローンを単離することを含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、異種細胞集団は接着細胞を含む。いくつかの実施形態において、異種細胞集団は非接着細胞を含む。いくつかの実施形態において、異種細胞集団は、細胞株から単離された細胞を含む。いくつかの実施形態において、異種細胞集団は、対象の液体生検から単離された細胞を含む。いくつかの実施形態において、異種細胞集団は、対象の組織生検から単離された細胞を含む。いくつかの実施形態において、異種細胞集団は、遺伝的に操作された細胞を含む。いくつかの実施形態において、異種細胞集団は、遺伝子突然変異を含むように操作された細胞を含む。いくつかの実施形態において、異種細胞集団は、異種ヌクレオチド配列を含むように操作された細胞を含む。
【0114】
いくつかの実施形態において、単一細胞由来のクローンは、本明細書に開示されるコーティング表面上に半付着または緩く付着している。
【0115】
いくつかの実施形態において、7日間以上の培養後、細胞培養システムにおいて細胞残屑は観察されない。
【0116】
いくつかの実施形態において、培養工程は、2~8日間(例えば、2、3、4、5、6、7、または8日間)にわたって行われる。他の実施形態において、培養工程は、7~14日間(例えば、7、8、9、10、11、12、13、または14日間)にわたって行われる。他の実施形態において、培養工程は、1~4週間(例えば、1、2、3、または4週間)にわたって行われる。
【0117】
いくつかの実施形態において、単一細胞由来のクローンは、単一細胞由来のスフェロイドを形成する。いくつかの実施形態において、単一細胞由来のクローンは、約40μm~約200μmの直径を有する。いくつかの実施形態において、単一細胞由来のクローンは、約50μm~約150μmの直径を有する。場合によっては、単一細胞由来のクローンは、約50μm~約120μm、約50μm~約100μm、約50μm~約80μm、約50μm~約60μm、約80μm~約150μm、約80μm~約120μm、約80μm~約100μm、約100μm~約200μm、約100μm~約150μm、または約100μm~約120μmの直径を有する。
【0118】
場合によっては、単一細胞由来のクローンは、単一細胞由来のスフェロイドを形成する。場合によっては、スフェロイドは、約8~約1000個の細胞を含む。場合によっては、スフェロイドは、約8~約800個の細胞、約8~約500個の細胞、約8~約400個の細胞、約8~約300個の細胞、約8~約200個の細胞、約8~約100個の細胞、約10~約1000個の細胞、約10~約800個の細胞、約10~約500個の細胞、約10~約400個の細胞、約10~約300個の細胞、約10~約200個の細胞、約10~約100個の細胞、約50~約1000個の細胞、約50~約800個の細胞、約50~約500個の細胞、約50~約400個の細胞、約50~約300個の細胞、約50~約200個の細胞、約100~約1000個の細胞、約100~約800個の細胞、約100~約500個の細胞、約100~約400個の細胞、約100~約300個の細胞、約300~約1000個の細胞、約300~約800個の細胞、約300~約500個の細胞、約500~約1000個の細胞、または約500~約800個の細胞を含む。
【0119】
いくつかの実施形態において、コーティング表面上に配置された細胞の少なくとも10%が、単一細胞由来のスフェロイドを形成する。いくつかの実施形態において、コーティング表面上に配置された細胞の少なくとも20%が、単一細胞由来のスフェロイドを形成する。いくつかの実施形態において、コーティング表面上に配置された細胞の少なくとも30%が、単一細胞由来のスフェロイドを形成する。いくつかの実施形態において、コーティング表面上に配置された細胞の少なくとも40%が、単一細胞由来のスフェロイドを形成する。いくつかの実施形態において、コーティング表面上に配置された細胞の少なくとも50%が、単一細胞由来のスフェロイドを形成する。いくつかの実施形態において、コーティング表面上に配置された細胞の少なくとも60%が、単一細胞由来のスフェロイドを形成する。いくつかの実施形態において、コーティング表面上に配置された細胞の少なくとも70%が、単一細胞由来のスフェロイドを形成する。
【0120】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、単一細胞由来のクローンを分析して、それによって、単一細胞の特性を得ることをさらに含む。場合によっては、単一細胞由来のクローンを分析する工程は、単一細胞由来のクローンを配列決定分析に供することを含む。いくつかの実施形態において、分析工程は、遺伝子型判定分析を実行することを含む。いくつかの実施形態において、遺伝子型判定分析は、PCRを用いた分析である。いくつかの実施形態において、遺伝子型判定分析は、アレイハイブリダイゼーションを用いた分析である。いくつかの実施形態において、分析工程は、コピー数多型を分析することを含む。いくつかの実施形態において、分析工程は、遺伝子突然変異を分析することを含む。いくつかの実施形態において、分析工程は、一塩基多型を分析することを含む。
【0121】
いくつかの実施形態において、単一細胞由来のクローンを分析する工程は、単一細胞由来のクローンをプロテオミクス分析に供することを含む。例示的なプロテオミクス分析としては、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、二次元ゲル電気泳動、またはキャピラリー電気泳動などのゲル電気泳動;高速液体クロマトグラフィー(HPLC);およびアフィニティークロマトグラフィーが挙げられる。
【0122】
いくつかの実施形態において、単一細胞の特性は、以下の1つ以上を含む:遺伝子型、エピジェネティックなプロファイル、遺伝子もしくはタンパク質の発現レベル、薬物に対する応答、薬物耐性プロファイル、または転移能。
【0123】
いくつかの態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載される細胞培養システムを使用する培養方法のいずれか1つに従って生成された単一細胞由来のクローンである。いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞培養システムを使用する培養方法のいずれか1つに従って誘導された単一細胞由来のクローンのライブラリーが提供される。
【0124】
患者由来テューモロイド異種移植片の生成
別の態様において、本開示は、患者由来テューモロイドに基づく異種移植片を生成するための方法を提供する。患者由来テューモロイドは、患者血液、組織(例えば、膀胱、胃、乳房、膵臓、結腸、または肺)または細胞株から誘導される腫瘍細胞のin vitro成長によって生成することができる。患者由来テューモロイドに基づく異種移植片は、高度免疫不全マウスへのテューモロイドの直接移植により確立し、続いてマウスからマウスへと継代することにより維持することができる。異種移植片モデルは、生物医学的トランスレーショナルリサーチに対して有用であり、一度立証されれば、癌薬物開発の有効性スクリーニングのためのトランスレーショナル前臨床モデルとして用いることができる。
【0125】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、a)本明細書で提供される細胞培養システムのうちのいずれかを用いて患者由来の腫瘍細胞を含む複数の細胞を培養し、複数のテューモロイドを得る工程;b)3D細胞培養システムからテューモロイドを単離する工程;および3)非ヒト動物へと単離されたテューモロイドを接種し、それによって、患者由来腫瘍異種移植片動物モデルを作製する工程を含む、患者由来腫瘍異種移植片動物モデルを作製する方法である。
【0126】
いくつかの実施形態において、複数の腫瘍細胞は、患者の初代組織から得られる。いくつかの実施形態において、複数の腫瘍細胞は、患者の血液から得られる。いくつかの実施形態において、患者由来の腫瘍細胞を、3D細胞培養システム上で培養する前に、動物モデル初代異種移植片として成長させる。
【0127】
いくつかの実施形態において、非ヒト動物は免疫不全である。いくつかの実施形態において、非ヒト動物はマウスである。
【0128】
いくつかの実施形態において、腫瘍細胞は、固形腫瘍から誘導される循環腫瘍細胞(CTC)である。他の例において、腫瘍細胞は、血液学的悪性腫瘍から誘導されるCTCである。いくつかの実施形態において、患者は転移性癌を有する。
【0129】
いくつかの実施形態において、培養工程は、1週間以内での10~100倍(例えば、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、または100倍)までの腫瘍細胞の拡大増殖を含む。
【0130】
3D細胞培養のための非接着条件を利用する方法としては、ハンギングドロップ法(Kelm et al.Biotechnol.Bioeng.83,173-180(2003))、回転バイオリアクター(Zhau,et al.In Vitro Cell.Dev.Biol.Anim.33,375-380(1997))、磁気浮上(Souza et al.Nat.Nanotechnol.5,291-296(2010))が挙げられる。しかしながら、最も広く使用されている非接着技術のうちの一部は、in vivoでの腫瘍形成を模倣する真の3D細胞培養を代表しない。ハンギングドロップ、反応器またはU底プレートなど、数万個の細胞がスフェロイド(すなわち、球形の塊)に凝結すると、200μmの深さを超えて栄養分と酸素の浸透が不足するため、数時間にわたって広範囲の中央壊死性コアが形成される。中央壊死拡大は、実際の癌では稀な現象である。この生理的に重要でない癌の表出は、細胞分裂を介する進行性の腫瘍発達の欠如および適切な細胞外マトリックス(ECM)との相互作用の欠如により悪化する。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される3D細胞培養システムは、100μm程度の細胞スフェロイド/テューモロイドのサイズを維持し、細胞が経時的に増殖し続けるので、より小型のスフェロイドへのその分裂を誘導することができる。
【0131】
いくつかの実施形態において、テューモロイドは、約50μM~約150μMの直径を有する。いくつかの実施形態において、テューモロイドは、約100μM~約150μMの直径を有する。場合によっては、テューモロイドは、約50μM、約60μM、約70μM、約80μM、約90μM、約100μM、約110μM、約120μM、約130μM、約140μM、または約150μMの直径を有する。いくつかの実施形態において、テューモロイドの平均サイズは、8日間の培養後に約150μMである。
【0132】
いくつかの実施形態において、培養工程は、7~14日間(例えば、7、8、9、10、11、12、13、または14日間)にわたって行われる。いくつかの実施形態において、7日間超にわたって培養されたテューモロイドのサイズは、直径約50μM~約150μMの範囲内で維持される。場合によっては、テューモロイドは、約50μM、約60μM、約70μM、約80μM、約90μM、約100μM、約110μM、約120μM、約130μM、約140μM、または約150μMの直径を有する。
【0133】
いくつかの実施形態において、複数の細胞は、患者から誘導される腫瘍関連細胞をさらに含む。いくつかの実施形態において、腫瘍関連細胞は、腫瘍関連間質細胞を含む。いくつかの実施形態において、複数のテューモロイドは、腫瘍細胞および腫瘍関連細胞を含む。いくつかの実施形態において、テューモロイドは、単一細胞から誘導される。
【0134】
いくつかの実施形態において、癌は、固形腫瘍または血液学的悪性腫瘍である。場合によっては、癌は、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、頭頚部癌、膀胱癌、卵巣癌、胃癌、または前立腺癌である。
【0135】
いくつかの実施形態において、患者由来テューモロイドを作製する方法は、0.5~1の歩留まり(例えば、CTCからの収率)でテューモロイドを提供する。いくつかの実施形態において、患者由来テューモロイドを作製する方法は、0.6~1の歩留まり(例えば、CTCからの収率)でテューモロイドを提供する。いくつかの実施形態において、患者由来テューモロイドを作製する方法は、0.7~1の歩留まり(例えば、CTCからの収率)でテューモロイドを提供する。いくつかの実施形態において、患者由来テューモロイドを作製する方法は、0.8~1の歩留まり(例えば、CTCからの収率)でテューモロイドを提供する。
【0136】
いくつかの態様において、本明細書では、本明細書に記載される細胞培養システムを利用する方法のいずれか1つに従って調製される患者由来腫瘍異種移植片モデルが提供される。いくつかの実施形態において、患者由来腫瘍異種移植片モデルは、自然転移が可能である。いくつかの実施形態において、異種移植片モデルは、1つの異種移植片モデルから単離された患者由来腫瘍細胞を別の非ヒト動物へと注入することにより、in vivoで伝搬させることができる。
【0137】
一部の態様において、本明細書では、本明細書に記載される方法のいずれか1つに従って調製された患者由来腫瘍異種移植片動物モデルへと治療剤(例えば、抗癌薬)を投与する工程、および患者由来腫瘍異種移植片動物モデルに対する治療剤の作用を分析する工程を含む、治療剤(例えば、抗癌薬)のin vivo活性を分析する方法が提供される。
【0138】
いくつかの態様において、本明細書では、本明細書に記載される細胞培養システムを利用する方法のいずれか1つに従って調製される複数の異なるテューモロイドを含むバイオバンクが提供される。
【0139】
in vitroでの3D共培養物の生成
別の態様において、本開示は、腫瘍細胞および腫瘍関連間質または免疫細胞(例えば、線維芽細胞、内皮細胞および免疫細胞)から誘導される3D共培養腫瘍モデル、特に、患者由来腫瘍細胞および腫瘍関連間質細胞(例えば、線維芽細胞、内皮細胞および/または免疫細胞)から誘導される患者由来3D共培養腫瘍モデルを生成するための方法を提供する。3D共培養腫瘍モデルは、腫瘍微小環境に関する基礎的研究ならびに癌療法および癌免疫療法に関するin vitro薬物スクリーニングモデルの確立に有用なin vivo腫瘍微小環境の改善された模倣を提供する。
【0140】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、腫瘍細胞および腫瘍関連間質または免疫細胞(例えば、線維芽細胞、内皮細胞および/または免疫細胞)から誘導される3D共培養腫瘍モデルを生成するための方法であり、方法は、a)本明細書で提供される3D培養システムのいずれかの上で腫瘍細胞および腫瘍関連間質細胞を含む複数の細胞を培養して、腫瘍細胞および腫瘍関連間質細胞の両方を含む複数のテューモロイドを得る工程を含む。いくつかの実施形態において、腫瘍細胞および腫瘍関連間質細胞は、テューモロイド内での直接的な細胞-細胞接触を形成する。いくつかの実施形態において、方法は、腫瘍細胞および腫瘍関連間質細胞を凝集させる(例えば、混合細胞集団を培養することにより)ことを含む。
【0141】
いくつかの実施形態において、間質細胞は、線維芽細胞、内皮細胞、または間葉系幹細胞を含む。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、骨髄由来抑制細胞(MDSC)、腫瘍関連マクロファージ、好中球、腫瘍浸潤リンパ球、T細胞、B細胞、樹状細胞、またはいずれかの他の腫瘍関連免疫細胞を含む。
【0142】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される3D共培養腫瘍モデルは、正常細胞に対する抗癌薬の細胞傷害作用を研究するための有益なツールを提供する。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、共培養物内の腫瘍細胞(例えば、高度増殖性細胞)および正常な非腫瘍細胞に対する抗癌薬の作用を評価することを含む。
【0143】
肝細胞に関する3D細胞培養物の生成
別の態様において、本開示は、肝細胞に対する3D細胞培養モデルを生成するための方法を提供する。3D細胞培養は、3Dモデルにより反復されるin vivo様生理的条件に起因して、肝胆道薬物動態および薬物誘導型肝毒性の評価において、従来の2D細胞培養よりも優れた肝臓特異的機能を示す。3D肝臓細胞培養物は、組織工学および薬物開発に有用である。
【0144】
肝細胞が肝臓から単離され、かつ従来の初代培養において成長された時点で、これらの重要な酵素の活性は迅速に失われる。この喪失は、ラット肝細胞に関して特に顕著であり、培養の最初の24時間においてそのCYP活性の80%を失う(Paine,A J,In:Berry,M N et al.(eds.),The Hepatocyte Review,Kluwer Academic Publishers,Netherlands,pp.411-420,2000)。
【0145】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載される3D培養システムのいずれか1つの上で肝細胞を培養するための方法であり、肝細胞は、アルブミン分泌、ウイルス感染性、および/またはシトクロム3 P450(CYP)酵素活性などの、初代肝細胞の1以上の肝臓特異的遺伝子発現および機能を維持する。CYPは、肝臓細胞の小胞体の細胞質側に局在する酵素のファミリーであり、有機化合物の酸化を触媒し、細胞からの排出を促進する水溶性の増加をもたらす。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される3D培養システムのいずれかの上で培養された肝細胞は、少なくとも5日間、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも14日間、または少なくとも21日間の培養期間にわたって、正常な薬物代謝に関与する1以上の遺伝子の遺伝子発現および機能を維持する。
【0146】
いくつかの実施形態において、3D細胞培養プラットフォームは、初代肝細胞の培養のために用いられる。いくつかの実施形態において、初代肝細胞は、ヒトまたは他の哺乳動物の肝生検から単離される。いくつかの実施形態において、3D細胞培養プラットフォームは、胎児肝臓細胞の培養のために用いられる。
【0147】
いくつかの実施形態において、3D細胞培養プラットフォームは、不死化細胞株を培養するために用いられる。いくつかの実施形態において、細胞株は、1以上の第1/II相生体異物薬物代謝遺伝子および/または肝細胞特異的転写産物を発現する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される3D培養システムのいずれかの上で培養される細胞は、少なくとも5日間、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも14日間、または少なくとも21日間の培養期間にわたって、正常な薬物代謝に関与する1以上の遺伝子の遺伝子発現および機能を維持する。いくつかの実施形態において、細胞は、HepG2、Huh7、またはHepaRGである。
【0148】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載される3D細胞培養システムのいずれか1つを用いて肝細胞を培養する方法であり、肝細胞は、in vitroで、重要なシトクロムP450(CYP)薬物代謝酵素の発現などの肝機能を維持する。いくつかの実施形態において、肝細胞は、少なくとも5日間、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも15日間、または少なくとも20日間のなどの長期間にわたって、肝機能を維持する。
【0149】
従来の3D培養システムを用いる肝細胞の培養は、200μMを超えるスフェロイドの中央における低酸素状態に起因して、細胞スフェロイド中の壊死性コアの形成をもたらす(Hussein et al.“Three dimensional culture of HepG2 liver cells on a rat decellularized liver matrix for pharmacological studies.”J Biomed Mater Res B Appl Biomater,2016.104(2):p.263-73)。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される3D細胞培養システムは、100μm程度の細胞スフェロイド(例えば、肝臓細胞スフェロイド)のサイズを維持し、細胞が経時的に増殖し続けるので、より小型のスフェロイドへのその分裂を誘導することができる。
【0150】
いくつかの実施形態において、細胞スフェロイドは、約50μM~約150μMの直径を有する。いくつかの実施形態において、細胞スフェロイドは、約100μM~約150μMの直径を有する。場合によっては、細胞スフェロイドは、約50μM、約60μM、約70μM、約80μM、約90μM、約100μM、約110μM、約120μM、約130μM、約140μM、または約150μMの直径を有する。いくつかの実施形態において、細胞スフェロイドの平均サイズは、8日間の培養後に150μMである。いくつかの実施形態において、7日間超にわたって培養された細胞スフェロイドのサイズは、約50μM~約150μMの範囲内で維持される。
【0151】
いくつかの実施形態において、方法は、本明細書で提供される3D培養システムのいずれかの上で肝臓細胞および非実質細胞(NPC)を培養することを含む。いくつかの実施形態において、非実質細胞としては、胆管上皮細胞、肝臓類洞内皮細胞(LSEC)、肝星細胞(HSC)および/またはクッパー8細胞(KC)が挙げられる。
【0152】
別の実施形態において、本発明は、(a)本明細書に記載される3D培養システムのいずれかを用いて哺乳類肝細胞を培養する工程;(b)肝細胞の酵素が薬剤を代謝するために十分な時間にわたって培養容器中の肝細胞培養物へと評価対象の薬剤を添加し、かつそれをそのより多くの代謝産物の1つへと変換する工程;(c)培地または培養物の細胞中の1以上の代謝産物の存在を特定するか、またはその濃度を測定し、それによって薬剤の代謝を評価する工程を含む、in vivoでの哺乳類肝臓細胞により代謝される薬剤の代謝を評価するための方法を提供する。
【0153】
in vitroでの幹細胞スフェロイドの生成
別の態様において、本開示は、in vitroで幹細胞スフェロイドを生成するための方法を提供する。本明細書に記載される幹細胞は、間葉系幹細胞(MSC)および多能性幹細胞(PSC)(胚性幹細胞(ESC)および人工多能性幹細胞(iPSC)を含む)を含む。これらの幹細胞スフェロイドは、細胞療法、組織工学、高スループット薬理学スクリーニング、および毒性試験に対する有望な候補である。これらの用途は、多数の高品質な細胞を必要とするが;しかしながら、MSCおよびPSCのスケーラブルな生成は困難であった。本明細書で提供される3D培養システムは、効率的な幹細胞増殖ならびにMSCおよびPSCの分化を可能にし得る。
【0154】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、本明細書で提供される3D培養システムのいずれか1つを用いる3D細胞培養の方法であり、方法は、細胞集団の幹細胞性(stemness)特性および/または増殖速度を増加させる。いくつかの実施形態において、細胞は、間葉系幹細胞または多能性幹細胞である。いくつかの実施形態において、細胞は、胚性幹細胞または人工多能性幹細胞である。
【0155】
いくつかの実施形態において、方法は、1以上の幹細胞性関連遺伝子の発現を増加させる。例えば、細胞表面CD133は、幹細胞特性に関するバイオマーカーのうちの1つを代表し、かつ多様な細胞系統の幹細胞性、再生、分化、および代謝などの複数の細胞の性質に関連する。いくつかの実施形態において、方法は、細胞におけるCD133の発現を増加させる。いくつかの実施形態において、方法は、CD133-細胞の集団においてCD133発現を誘導する。
【0156】
いくつかの実施形態において、方法は、培養期間の持続期間にわたって1以上の幹細胞性関連遺伝子の発現を維持する。いくつかの実施形態において、培養期間は、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも14日間、または少なくとも21日間である。
【0157】
キット
特定の実施形態において、本明細書に開示されるのは、本明細書に記載される3D細胞培養システムを含むキットまたは物品である。場合によっては、キットは、単一細胞由来のクローンの単離における使用のためのものである。場合によっては、キットは、パッケージ、またはバイアル、チューブなどの1以上の容器を受け入れるように区分化された容器をさらに含み、その容器(単数または複数)のそれぞれは、本明細書に記載される方法において使用される別個の要素の1つを含んでいる。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が含まれる。一実施形態において、容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成される。
【0158】
場合によっては、キットは、内容物一覧を記載するラベルおよび/または使用説明書、ならびに使用説明書(例えば、本明細書に記載される3D培養システムを使用して異種細胞集団を培養して、単一細胞由来のクローンを含む複数の細胞クローンを取得するための説明書)を含む添付文書をさらに含む。一般に、説明書のセットもまた含まれる。
【0159】
特定の技術用語
特に定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、特許請求される主題が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、単に例示および説明するためのものであり、特許請求される主題を限定するものではないことを理解されたい。本願において、単数形の使用は、特に断りのない限り、複数形を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上明らかに別の意味を示していない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。本願において、「または」の使用は、特に断りのない限り、「および/または」を意味する。さらに、用語「含む(including)」、ならびに「含む(include)」、「含む(includes)」および「含まれる(included)」などの他の形態の使用は、限定的ではない。
【0160】
本明細書で使用する場合、範囲および量は、「約」特定の値または範囲として表すことができる。約はまた、正確な量も含む。従って「約5μL」は、「約5μL」と「5μL」を意味する。一般に、用語「約」は、実験誤差の範囲内であると予想される量を含む。
【0161】
本明細書で使用されているセクションの見出しは、単に構成することを目的としており、説明されている主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0162】
本明細書で使用する場合、用語「含む(comprising)」は、方法が列挙された工程または要素を含むが、他のものを除外しないことを意味することを意図している。「から本質的になる(Consisting essentially of)」とは、特許請求された方法の基本的かつ新規な特性に実質的に影響を及ぼさない工程または要素を包含するためにのみ、請求項をオープンとすることを意味するものとする。「からなる(Consisting of)」とは、請求項で指定されていない要素または工程を除外することを意味するものとする。これらの変形用語のそれぞれによって定義される実施形態は、本開示の範囲内にある。
【0163】
本明細書で使用する場合、用語「正に帯電した多価電解質」は、2つ以上の正電荷を含む複数のモノマー単位または非ポリマー分子を包含する。場合によっては、正に帯電した多価電解質は、正の正味電荷を有する、電荷陽性基、電荷中性基、または電荷陰性基を含む複数のモノマー単位または非ポリマー分子も包含する。
【0164】
本明細書で使用する場合、用語「カチオン性ポリマー」は、複数のモノマー単位または非ポリマー分子を包含する。場合によっては、カチオン性ポリマーは合成ポリマーである。他の例において、カチオン性ポリマーは天然ポリマーである。
【0165】
本明細書で使用する場合、用語「カチオン性ポリペプチド」とは、2つ以上の正電荷を含むポリペプチドを指す。場合によっては、カチオン性ポリペプチドは、正に帯電したアミノ酸残基、負に帯電した残基、および極性残基を含むが、そのポリペプチドの正味電荷は正である。場合によっては、カチオン性ポリペプチドは、8~100アミノ酸長である。場合によっては、カチオン性ポリペプチドは、8~80、8~50、8~40、8~30、8~25、8~20、8~15、10~100、10~80、10~50、10~40、10~30、10~20、20~100、20~80、20~50、20~40、20~30、30~100、30~80、30~50、40~100、40~80、または50~100アミノ酸長である。
【0166】
本明細書で使用する場合、用語「負に帯電した多価電解質」は、2つ以上の負電荷を含む複数のモノマー単位または非ポリマー分子を包含する。場合によっては、負に帯電した多価電解質は、負の正味電荷を有する、電荷陽性基、電荷中性基、または電荷陰性基を含む複数のモノマー単位または非ポリマー分子も包含する。
【0167】
本明細書で使用する場合、用語「アニオン性ポリマー」は、複数のモノマー単位または非ポリマー分子を包含する。場合によっては、アニオン性ポリマーは合成ポリマーである。他の例において、アニオン性ポリマーは天然ポリマーである。
【0168】
本明細書で使用する場合、用語「アニオン性ポリペプチド」とは、2つ以上の負電荷を含むポリペプチドを指す。場合によっては、アニオン性ポリペプチドは、正に帯電したアミノ酸残基、負に帯電した残基、および極性残基を含むが、そのポリペプチドの正味電荷は負である。場合によっては、アニオン性ポリペプチドは、8~100アミノ酸長である。場合によっては、アニオン性ポリペプチドは、8~80、8~50、8~40、8~30、8~25、8~20、8~15、10~100、10~80、10~50、10~40、10~30、10~20、20~100、20~80、20~50、20~40、20~30、30~100、30~80、30~50、40~100、40~80、または50~100アミノ酸長である。
【0169】
本明細書で使用する場合、用語「親水性ポリマー」は、1つ以上の親水基を含む複数のモノマー単位または非ポリマー分子を包含する。場合によっては、親水性ポリマーは、水溶液に対して透過性である。他の例において、親水性ポリマーは、不透過性であるか、または水溶液を吸収しない。場合によっては、親水性ポリマーは、非反応性ポリマー、または反応性基、例えば、別の化合物と共有結合を形成する基を含まないポリマーを包含する。
【0170】
本明細書で使用する場合、用語「ポリマー」は、ホモポリマーおよびコポリマーの両方、分岐および非分岐、ならびに天然または合成ポリマーを含む。
【0171】
本明細書で使用する場合、用語「物品」とは、シート、フィルム、チューブ、プレート、ディッシュ、または生物医学デバイスなどの細胞培養物品を指す。場合によっては、生物医学デバイスは、組織(例えば、哺乳類組織)または体液中またはその上、好ましくはヒト組織または体液中またはその上でのいずれかで用いられるために設計されているいずれかの物品である。例示的なデバイスとしては、限定されるものではないが、細胞培養ディッシュ、細胞培養プレート、バイオリアクターなどが挙げられる。
【0172】
本明細書で使用する場合、免疫細胞は、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、およびリンパ球(B細胞およびT細胞)を包含する。
【0173】
内皮細胞は、血管およびリンパ管の内面を覆う細胞である。例示的な内皮細胞としては、高内皮細静脈(HEV)、骨髄の内皮、および脳の内皮が挙げられる。
【0174】
上皮細胞は、器官および血管の外面、および内臓腔の内面を覆う細胞である。例示的な上皮細胞としては、扁平上皮、立方上皮、および円柱上皮が挙げられる。
【0175】
本明細書で使用する場合、用語「幹細胞」は、成体幹細胞および胚性幹細胞を包含する。例示的な幹細胞としては、造血幹細胞、間葉系幹細胞(MSC)、神経幹細胞、上皮幹細胞、皮膚幹細胞、胚性幹細胞(ESC)、および人工多能性幹細胞(iPSC)が挙げられる。
【0176】
本明細書で使用する場合、用語「既知組成培地」とは、化学成分の全てが既知であるin vitro培養培地を指す。既知組成培地は、組み換えアルブミン、既知組成脂質、組み換えインスリンおよび/または亜鉛、組み換えトランスフェリンまたは鉄、セレニウムおよび2-メルカプトエタノールまたは1-チオグリセロールなどの抗酸化剤チオールを添加される、基礎培地(アミノ酸、ビタミン、無機塩、緩衝剤、抗酸化剤およびエネルギー源を含有するDMEM、F12、またはRPMI1640など)を含むことができる。
【0177】
本明細書で使用する場合、用語「富化培地」とは、基礎培地に増殖因子、ビタミン、および必須栄養素をさらに添加されているin vitro培養培地を指す。
【0178】
本明細書で使用する場合、用語「半付着している」および「緩く付着している」は、相互に交換可能に用いられ、培養細胞に関して、穏やかな撹拌、または穏やかな機械力を用いて基材の表面から剥がすことができる細胞を指す。場合によっては、細胞は、細胞解離酵素を必要とせずに、剥がすことができる。
【0179】
本明細書で使用する場合、用語「単一細胞由来スフェロイド」とは、ex vivoで成長し、3D形式で形成される細胞のクラスターを指し、クラスターは、表面コーティング上に配置された単一細胞から成長する。
【0180】
いくつかの実施形態において、治療剤としては、限定されるものではないが、化学療法薬、免疫チェックポイント阻害剤、核酸薬、治療用細胞組成物、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0181】
いくつかの実施形態において、治療剤は、細胞傷害性または細胞増殖抑制性化学療法薬である。化学療法薬は、アルキル化剤(シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ダカルバジン、ロムスチン、カルムスチン、プロカルバジン、クロラムブシルおよびイホスファミドなど)、代謝拮抗剤(フルオロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン、メトトレキサート、シトシンアラビノシド、フルダラビン、およびフロクスウリジンなど)、抗有糸分裂剤(パクリタキセルおよびドセタキセル(decetaxel)などのタキサンならびにビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、およびビンデシンなどのビンカアルカロイドを含む)、アントラサイクリン(ドキソルビシン、ダウノルビシン、バルルビシン、イダルビシン、およびエピルビシン、ならびにアクチノマイシンDなどのアクチノマイシンを含む)、細胞傷害性抗生物質(マイトマイシン、プリカマイシン、およびブレオマイシンを含む)、トポイソメラーゼ阻害剤(カンプトテシン、イリノテカン、およびトポテカンなどのカンプトテシン、ならびにアムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、およびテニポシドなどのエピポドフィロトキシンの誘導体を含む)、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))などの血管内皮増殖因子(VEGF)に対する抗体、他の抗VEGF化合物;抗体または化合物などの抗PD-1(抗プログラム細胞死-1)治療剤(例えば、ニボルマブ);サリドマイド(サロミド(登録商標))およびレナリドミド(レブラミド(登録商標))などのその誘導体;エンドスタチン;アンギオスタチン;スニチニブ(スーテント(登録商標))などの受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤;ソラフェニブ(ネクサバール(登録商標))、エルロチニブ(タルセバ(登録商標))、パゾパニブ、アキシチニブ、およびラパチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤;形質転換増殖因子αまたは形質転換増殖因子β阻害剤、ならびにパニツムマブ(ベクティビックス(登録商標))およびセツキシマブ(アービタックス(登録商標))などの上皮増殖因子受容体に対する抗体であり得る。
【0182】
いくつかの実施形態において、治療剤は、免疫チェックポイント阻害剤である。免疫チェックポイント阻害剤は、CD137、CD134、PD-1、KIR、LAG-3、PD-L1、PDL2、CTLA-4、B7.1、B7.2、B7-DC、B7-H1、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H5、B7-H6、B7-H7、BTLA、LIGHT、HVEM、GAL9、TIM-3、TIGHT、VISTA、2B4、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、TGF-β、PI3Kγ、GITR、ICOS、IDO、TLR、IL-2R、IL-10、PVRIG、CCRY、OX-40、CD160、CD20、CD52、CD47、CD73、CD27-CD70、CD40、およびそれらの組合せであり得る。
【0183】
いくつかの実施形態において、治療剤は核酸薬である。核酸薬は、DNA、DNAプラスミド、nDNA、mtDNA、gDNA、RNA、siRNA、miRNA、mRNA、piRNA、アンチセンスRNA、snRNA、snoRNA、vRNA、およびそれらの組合せであり得る。いくつかの実施形態において、治療用核酸は、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-12、TNF、IFNy、IFNa、およびそれらの組合せからなる群から選択される遺伝子をコードするヌクレオチド配列を含むDNAプラスミドである。
【0184】
いくつかの実施形態において、治療剤は治療用細胞組成物である。例示的な治療用細胞組成物としては、限定されるものではないが、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞および樹状細胞が挙げられる。
【0185】
いくつかの実施形態において、治療剤は治療用抗原結合性分子組成物である。例示的な治療用抗原結合性分子組成物としては、限定されるものではないが、モノクローナル抗体、二重特異的抗体、多重特異的抗体、scFv、Fab、VHH/VHなどが挙げられる。
【0186】
場合によっては、治療剤は、第1選択療法を含む。本明細書で使用する場合、「第1選択療法」は、癌を有する対象に対する初期治療を含む。場合によっては、癌は原発癌である。他の例において、癌は転移性または再発癌である。場合によっては、第1選択療法は、化学療法を含む。他の例において、第1選択治療は、放射線療法を含む。当業者は、異なる第1選択治療が異なるタイプの癌に対して適用可能であり得ることを容易に理解するであろう。
【0187】
場合によっては、治療剤は、第2選択療法、第3選択療法、または第4選択療法を含む。
【0188】
本明細書で使用する場合、用語「個体」、「対象」および「患者」とは、いずれかの哺乳動物を意味する。いくつかの実施形態において、哺乳動物はヒトである。いくつかの実施形態において、哺乳動物は非ヒトである。これらの用語のいずれも、医療従事者(例えば、医師、正看護師、ナース・プラクティショナー、医師助手、雑務係またはホスピス職員)の監督(例えば、常時または断続的)により特徴付けられる状況を必要としないか、またはそれに限られない。
【実施例】
【0189】
これらの実施例は、単に例示的な目的で提供され、本明細書に提供される特許請求の範囲を限定するものではない。
【0190】
実施例1:本発明の表面コーティングの構築
(i)PVAまたはPEGコーティングポリスチレンプレート
ポリスチレンプラスチック製の組織培養プレートを、疎水性プラスチック表面を修飾して、より親水性にするために、最初に、プラズマガスへとポリスチレンプレートを曝露することにより処理し、それに続いて、ポリスチレンプレートの修飾された表面へと親水性ポリマー(例えば、PVAまたはPEG)を積層して、PVAまたはPEGコーティングポリスチレンプレートを形成させる。
【0191】
(ii)PVA架橋ポリスチレンプレート
ポリスチレンプラスチック製の組織培養プレートを、疎水性プラスチック表面を修飾して、より親水性にするために、最初に、オゾンプラズマへとポリスチレンプレートを曝露することにより処理し、それに続いて、ポリスチレンプレートのプラズマ処理された表面へと光活性化アジドフェニル-PVAを加えて、PVA架橋ポリスチレンプレートを形成させる(
図5に示される)。アジドフェニル誘導体化ポリ(ビニルアルコール)(AzPh-PVA)は、報告される通りに(J.Nanosci.Nanotechnol.,2009,9,230-239)、PVAの-OH基を4-アジド安息香酸へとカップリングすることにより合成することができる。
【0192】
(iii)PVA架橋PTFEプレート
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の組織培養プレートを、疎水性プラスチック表面を修飾して、より親水性にするために、最初に、プラズマガスへとPTFEプレートを曝露することにより処理し、それに続いて、PTFEプレートの修飾された表面へと親水性ポリマー(例えば、PVAまたはPEG)を積層する。PVAをPTFEへと架橋するために、架橋剤であるグルタルアルデヒド(GA)を適用し、PVA架橋PTFEプレートを形成させる(
図6に示される)。
【0193】
多価電解質多層の構築
PLL(分子量150K~300K)、PLGA(分子量50K~100K)、PLO(0.01%)溶液、PLH(分子量5K~25K)、PLA(分子量15K~70K)は、Sigma-Aldrich(セントルイス、MO、USA)から市販されている。ポリカチオンおよびポリアニオンの両方を、Tris-HClバッファー(pH7.4)に溶解し、Tris-HClバッファーで洗い流した後、PVAまたはPEGでコーティングされた表面上に積層させる。ポリカチオンまたはポリアニオンの各層を積層させ、10分間インキュベートした後、Tris-HClバッファーで3回(2分間、1分間、および1分間)洗浄する。PLL/PLGA、PLO/PLGA、PLH/PLGAおよびPLA/PLGA多層膜は、以下のように、PVAまたはPEGコーティング表面上への交互自己積層(layer-by-layer self-assembly)によって製造することができる。
【0194】
PLL/PLGA多層
いくつかの実施形態において、多価電解質多層は、(i)PVAもしくはPEGコーティングポリスチレンプレート、(ii)PVA架橋ポリスチレンプレート、または(iii)PVA架橋PTFEプレートの表面上にPLLおよびPLGAを逐次に積層させることにより構築することができるPLL/PLGA多層である。各積層工程は、プレート表面にPLLまたはPLGA溶液を加え、10分間インキュベートし、3回(2分間、1分間、および1分間)洗浄することを含む。
【0195】
一実施形態において、(PLGA/PLL)3/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、(PLGA/PLL)5/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、(PLGA/PLL)10/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、(PLGA/PLL)15/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、PLL(PLGA/PLL)3/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、PLL(PLGA/PLL)5/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、PLL(PLGA/PLL)10/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、PLL(PLGA/PLL)15/PVAから構成される表面コーティングが構築される。
【0196】
PLO/PLGA多層
いくつかの実施形態において、多価電解質多層は、(i)PVAもしくはPEGコーティングポリスチレンプレート、(ii)PVA架橋ポリスチレンプレート、または(iii)PVA架橋PTFEプレートの表面上にPLOおよびPLGAを逐次に積層させることにより構築することができるPLO/PLGA多層である。各積層工程は、プレート表面にPLOまたはPLGA溶液を加え、10分間インキュベートし、3回(2分間、1分間、および1分間)洗浄することを含む。
【0197】
一実施形態において、(PLGA/PLO)3/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、(PLGA/PLO)5/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、(PLGA/PLO)10/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、(PLGA/PLO)15/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、PLO(PLGA/PLO)3/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、PLO(PLGA/PLO)5/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、PLO(PLGA/PLO)10/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、PLO(PLGA/PLO)15/PVAから構成される表面コーティングが構築される。
【0198】
PLH/PLGA多層
いくつかの実施形態において、多価電解質多層は、(i)PVAもしくはPEGコーティングポリスチレンプレート、(ii)PVA架橋ポリスチレンプレート、または(iii)PVA架橋PTFEプレートの表面上にPLHおよびPLGAを逐次に積層させることにより構築することができるPLH/PLGA多層である。各積層工程は、プレート表面にPLHまたはPLGA溶液を加え、10分間インキュベートし、3回(2分間、1分間、および1分間)洗浄することを含む。
【0199】
一実施形態において、(PLGA/PLH)3/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、(PLGA/PLH)5/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、(PLGA/PLH)10/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、(PLGA/PLH)15/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、PLH(PLGA/PLH)3/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、PLH(PLGA/PLH)5/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、PLH(PLGA/PLH)10/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、PLH(PLGA/PLH)15/PVAから構成される表面コーティングが構築される。
【0200】
PLA/PLGA多層
いくつかの実施形態において、多価電解質多層は、(i)PVAもしくはPEGコーティングポリスチレンプレート、(ii)PVA架橋ポリスチレンプレート、または(iii)PVA架橋PTFEプレートの表面上にPLAおよびPLGAを逐次に積層させることにより構築することができるPLA/PLGA多層である。各積層工程は、プレート表面にPLAまたはPLGA溶液を加え、10分間インキュベートし、3回(2分間、1分間、および1分間)洗浄することを含む。
【0201】
一実施形態において、(PLGA/PLA)3/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、(PLGA/PLA)5/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、(PLGA/PLA)10/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、(PLGA/PLA)15/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、PLA(PLGA/PLA)3/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、PLA(PLGA/PLA)5/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、PLA(PLGA/PLA)10/PVAから構成される表面コーティングが構築される。一実施形態において、PLA(PLGA/PLA)15/PVAから構成される表面コーティングが構築される。
【0202】
水晶振動子マイクロバランス-散逸(QCM-D)測定
QCM実験を、Q-Sense E4(Biolin Scientific AB/Q-sence、スウェーデン)下で行った。酸化ケイ素(SiO2)でコーティングされた水晶振動子チップ(ATカット水晶振動子、f0=5MHz)を0.1Mドデシル硫酸ナトリウムで洗浄した後、Milli-Q水で洗い流し、窒素下で乾燥させ、酸素プラズマに20秒間曝露した。QCM-D測定では、チャンバーを25℃に安定させ、全ての測定を3次オーバートーン(15MHz)で記録した。連続表面コーティングをシミュレートするために、QCM-Dチャンバー内の各コーティング工程の濃度および洗浄条件は同一である。約1%ウシ血清アルブミン(BSA、Millipore、ベッドフォード、MA)を非特異的吸着調査に使用し、チャンバーの表面上に導入した。
【0203】
表面化学分析
本開示の表面コーティングの化学組成を、シリコーンウエハー上でのC60(10kV、10nA)エッチングによるX線光電子分光法(XPS;VersaProbe III、PHI)によって分析した。使用したパスエネルギーは、0.5eVのステップで93.9eVであった。炭素、窒素、酸素およびケイ素の相対原子濃度を、最大厚さ10nmまでのサンプル層で測定した。
【0204】
原子間力顕微鏡(AFM)の使用による表面粗さ測定
本開示の表面コーティングの粗さを、原子間力顕微鏡(AFM;Nanowizard 3、JPK instrument)を使用してタッピングモードで測定した。実験では、共振周波数134kHzのシリコーンカンチレバーを利用した。
【0205】
実施例2:単一細胞由来のスフェロイドの形成
図7は、本開示の表面コーティング上で培養したHCT116結腸直腸癌細胞の、完全DMEM培地を供給した癌細胞の成長中の0、1、2、3、4および5日目のタイムラプス顕微鏡観察を示す。(Leica DMI6000Bタイムラプス顕微鏡で10倍の対物レンズ下で撮影した画像)。
【0206】
実施例3:細胞株由来腫瘍スフェロイドの生成
本開示の表面コーティングは、細胞増殖のための細胞接着を可能にする生体適合性多層コーティング表面を提供し、表面上で直接スフェロイドを形成するための非汚染性も提供する。本開示の表面コーティングを含む細胞培養システムを、様々な癌細胞株を用いて試験し、様々な癌細胞株から誘導されるスフェロイドの培養および形成に成功した(
図8A~Eに示される)。
図8A~Eは、本発明の培養プラットフォームを用いるex vivo培養の結果、ならびに(A)肺癌細胞株A549、H1299、PC-9およびH1975;(B)肝臓癌細胞株SNU-398、SNU-475、PLC/PRF/S、Hep3BおよびHuh7;(C)乳癌細胞株MDA-MB-231およびCGBC01;(D)結腸直腸癌細胞株HCT116、HCT15およびWiDr;および(E)ヒト舌扁平上皮癌細胞株SAS、卵巣癌細胞株SK-OV-3、およびヒト膀胱癌患者から誘導された細胞株T24から誘導されたスフェロイド(7~14日間後)の形成を示す。これらの癌細胞は、7~14日間、本発明の培養システム上で成長した(播種細胞数は約1000である)。
【0207】
実施例4:CTC由来腫瘍スフェロイドの生成
本開示の表面コーティングを含む細胞培養システムを、様々な患者由来CTCを用いて試験し、患者由来CTCから誘導されるスフェロイドの培養および形成に成功した(
図9A~Cに示される)。
図9A~Cは、本発明の培養プラットフォーム上でのCTC由来スフェロイド培養の代表的な時間依存的画像を示す。(A)CTCを乳癌患者の血液サンプルから単離し;CTC由来スフェロイドが14日間後に形成された。(B)CTCを頭頚部癌患者の血液サンプルから単離し;CTC由来スフェロイドが38日間後に形成された。(C)CTCを結腸直腸癌患者の血液サンプルから単離し;CTC由来スフェロイドが13~27日間後に形成された。スケールバー:50μm。
【0208】
生成されたスフェロイドは、医療および応用における将来の診断およびガイダンス(例:非侵襲的早期癌検出、個人医療ガイダンス、処置前および処置後の薬物耐性調査、免疫細胞に基づいた癌療法のための細胞活性評価)にさらに役立つ可能性があり、ex vivo培養した患者由来の初代CTC細胞を使用することによって癌進行に関与するメカニズムを解明するための実質的な材料を提供する。
【0209】
実施例5:組織由来腫瘍スフェロイドの生成
動物モデル初代異種移植片から誘導される初代組織細胞を、本発明の細胞培養システム上で7日間培養した。
図10A~Bは、結腸直腸癌(CRC)患者から取得した初代結腸直腸腫瘍組織から誘導された腫瘍スフェロイドの画像を示す。腫瘍スフェロイドは、2週間および4週間後に本発明の培養プラットフォーム上で生成された。結果は、本発明の細胞培養プラットフォームが、初代組織細胞からテューモロイドを形成することが可能であることを示した。
【0210】
本開示の好ましい実施形態を本明細書に示し、説明してきたが、そのような実施形態が単に例として提供されていることは当業者には明らかであろう。当業者ならば、本開示から逸脱することなく、数多くの変形、変更、および置換を想起するであろう。本明細書に記載される本開示の実施形態に対する様々な代替形態が、本開示を実施する際に採用され得ることが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲が本開示の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの同等物がそれによって包含されることが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)細胞培養物品の表面
に架橋される
、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、PEG-アクリレート、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ-L-ラクチド(PLLA)、ポリ-D-ラクチド(PDLA)、ポリ(L-ラクチド-co-D,L-ラクチド)(PLDLLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PL-co-GA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(p-HEMA)およびそれらの誘導体からなる群から選択されるポリマーと、
b)多価電解質多層であって、該
ポリマーは、該多価電解質多層のポリカチオンまたはポリアニオンと直接接触している、多価電解質多層と
を含む、細胞培養物品をコーティングするための組成物。
【請求項2】
前記
ポリマーが、PVA、PEG、PEG-アクリレート、PVP、
PMMAまたはそれらの誘導体である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
前記
ポリマーが、PVA、PEGまたはPEG-アクリレートである、請求項
1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリカチオンがポリ(アミノ酸)である
、および/または前記ポリアニオンがポリ(アミノ酸)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリカチオンが、ポリ(L-リシン)(PLL)、ポリ(L-アルギニン)(PLA)、ポリ(L-オルニチン)(PLO)、ポリ(L-ヒスチジン)(PLH)、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリアニオンが、ポリ(L-グルタミン酸)(PLGA)、ポリ(L-アスパラギン酸)(PLAA)、またはそれらの組合せである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記多価電解質多層がポリカチオン及びポリアニオンの二重層(ポリカチオン/ポリアニオン)
を少なくとも一つ含み、前記二重層が、PLL/PLGA、PLL/PLAA、PLA/PLGA、PLA/PLAA、PLO/PLGA、PLO/PLAA、PLH/PLGA、PLH/PLAA、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記多価電解質多層が交互積層法によって形成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記多価電解質多層がn個の二重層を含み、nは、1~30の範囲の整数であり、最外層はポリカチオンまたはポリアニオンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記多価電解質多層がn個の(ポリカチオン/ポリアニオン)二重層と追加のポリアニオン層とを含み、nは、1~30の範囲の整数であり、最外層はポリアニオンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記多価電解質多層がn個の(ポリアニオン/ポリカチオン)二重層と追加のポリカチオン層を含み、nは、1~30の範囲の整数であり、最外層はポリカチオンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
以下の工程:
a)疎水性表面を有する細胞培養物品を準備する工程、
b)該疎水性表面を
、プラズマ処理、コロナ放電UVオゾン処理またはヒドロシリル化により修飾する工程、
c)該修飾された表面に
、PVA、PEG、PEG-アクリレート、PVP、PLLA、PDLA、PLDLLA、PGA、PL-co-GA、PMMAおよびp-HEMAからなる群から選択されるポリマーを
架橋する工程、および
d)該
ポリマー上に、ポリカチオンとポリアニオンとの交互層を逐次に積層させ
、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物を形成する工程
を含む
、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物を調製する方法。
【請求項13】
前記
ポリマーが、PVA、PEGまたはPEG-アクリレートである、請求項
12に記載の
方法。
【請求項14】
請求項1
~11のいずれか一項に記載の組成物を用いてコーティングされた表面を有する細胞培養物品を含む、細胞培養システム。
【請求項15】
細胞および/または培養培地をさらに含む、請求項
14に記載の細胞培養システム。
【請求項16】
a)請求項1に記載の組成物を用いてコーティングされた表面を有する細胞培養物品を準備すること、
b)該コーティング表面上に細胞を播種すること、および
c)1以上のスフェロイドを形成するのに十分な時間にわたって、好適な培地下で該細胞を培養すること
を含む、細胞を培養するための方法。
【請求項17】
前記1以上のスフェロイドが単一細胞増殖によって生成される、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記1以上のスフェロイドが50μM~150μMの平均直径を有する、請求項
16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記播種が、基材上に1cm
2あたり細胞1000個未満の密度で細胞をプレーティングすることを含む、請求項
16または17に記載の方法。
【請求項20】
a)請求項1に記載の組成物を用いてコーティングされた表面上で異種細胞集団を培養して、該表面上に配置された少なくとも1つの単一細胞由来のスフェロイドを取得すること、および
b)所望により、該単一細胞由来のスフェロイドを分析して、それによって、該単一細胞の少なくとも1つの特性を得ること
を含む、単一細胞由来のスフェロイドを取得および所望により特性評価する方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0210
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0210】
本開示の好ましい実施形態を本明細書に示し、説明してきたが、そのような実施形態が単に例として提供されていることは当業者には明らかであろう。当業者ならば、本開示から逸脱することなく、数多くの変形、変更、および置換を想起するであろう。本明細書に記載される本開示の実施形態に対する様々な代替形態が、本開示を実施する際に採用され得ることが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲が本開示の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの同等物がそれによって包含されることが意図される。
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[1]a)細胞培養物品の表面上に積層される親水性ポリマーと、
b)多価電解質多層であって、該親水性ポリマーは、該多価電解質多層のポリカチオンまたはポリアニオンと直接接触している、多価電解質多層と
を含む、細胞培養物品をコーティングするための組成物。
[2]前記親水性ポリマーが、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、PEG-アクリレート、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ-L-ラクチド(PLLA)、ポリ-D-ラクチド(PDLA)、ポリ(L-ラクチド-co-D,L-ラクチド)(PLDLLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PL-co-GA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(p-HEMA)およびそれらの誘導体からなる群から選択される、[1]に記載の組成物。
[3]前記親水性ポリマーが、PVA、PEG、PEG-アクリレート、PVP、PEI、PMMAまたはそれらの誘導体である、[2]に記載の組成物。
[4]前記親水性ポリマーが、PVA、PEGまたはPEG-アクリレートである、[2]に記載の組成物。
[5]前記親水性ポリマーが、前記細胞培養物品の表面に架橋される、[1]に記載の組成物。
[6]前記親水性ポリマーが架橋を含まない、[1]に記載の組成物。
[7]前記ポリカチオンがポリ(アミノ酸)である、[1]に記載の組成物。
[8]前記ポリアニオンがポリ(アミノ酸)である、[1]に記載の組成物。
[9]前記ポリカチオンが、ポリ(L-リシン)(PLL)、ポリ(L-アルギニン)(PLA)、ポリ(L-オルニチン)(PLO)、ポリ(L-ヒスチジン)(PLH)、およびそれらの組合せからなる群から選択される、[1]に記載の組成物。
[10]前記ポリカチオンが、PLL、PLA、PLOまたはPLHである、[9]に記載の組成物。
[11]前記ポリアニオンが、ポリ(L-グルタミン酸)(PLGA)、ポリ(L-アスパラギン酸)(PLAA)、またはそれらの組合せである、[1]に記載の組成物。
[12](ポリカチオン/ポリアニオン)の二重層が、PLL/PLGA、PLL/PLAA、PLA/PLGA、PLA/PLAA、PLO/PLGA、PLO/PLAA、PLH/PLGA、PLH/PLAA、およびそれらの組合せからなる群から選択される、[1]に記載の組成物。
[13]前記多価電解質多層が交互積層法によって形成される、[1]に記載の組成物。
[14]前記多価電解質多層がn個の二重層を含み、nは、1~30の範囲の整数であり、最外層はポリカチオンまたはポリアニオンである、[1]に記載の組成物。
[15]前記多価電解質多層がn個の(ポリカチオン/ポリアニオン)二重層と追加のポリアニオン層とを含み、nは、1~30の範囲の整数であり、最外層はポリアニオンである、[1]に記載の組成物。
[16]前記多価電解質多層がn個の(ポリアニオン/ポリカチオン)二重層と追加のポリカチオン層を含み、nは、1~30の範囲の整数であり、最外層はポリカチオンである、[1]に記載の組成物。
[17]前記細胞培養物品が、以下の工程:
a)疎水性表面を有する細胞培養物品を準備する工程、
b)該疎水性表面を処理により修飾する工程、
c)該修飾された表面に親水性ポリマーを適用する工程、および
d)該親水性ポリマー上に、ポリカチオンとポリアニオンとの交互層を逐次に積層させる工程
を含む方法によってコーティングされる、[1]に記載の組成物。
[18]前記処理が、プラズマ処理、コロナ放電またはUVオゾン処理である、[17]に記載の組成物。
[19]前記処理がヒドロシリル化である、[17]に記載の組成物。
[20]前記疎水性表面が前記処理後に照射または親水化される、[17]に記載の組成物。
[21]前記表面が、前記修飾された表面に吸収性ポリマーを適用した後に親水化される、[17]に記載の組成物。
[22]前記親水性ポリマーが、PVA、PEGまたはPEG-アクリレートである、[17]に記載の組成物。
[23]前記親水性ポリマーが前記表面に架橋される、[17]に記載の組成物。
[24]前記表面が架橋を含まない、[17]に記載の組成物。
[25][1]に記載の組成物を用いてコーティングされた表面を有する細胞培養物品を含む、細胞培養システム。
[26]細胞および/または培養培地をさらに含む、[25]に記載の細胞培養システム。
[27]a)[1]に記載の組成物を用いてコーティングされた表面を有する細胞培養物品を準備すること、
b)該コーティング表面上に細胞を播種すること、および
c)1以上のスフェロイドを形成するのに十分な時間にわたって、好適な培地下で該細胞を培養すること
を含む、細胞を培養するための方法。
[28]前記1以上のスフェロイドが単一細胞増殖によって生成される、[27]に記載の方法。
[29]前記1以上のスフェロイドが50μM~150μMの平均直径を有する、[27]に記載の方法。
[30]前記播種が、基材上に1cm
2
あたり細胞1000個未満の密度で細胞をプレーティングすることを含む、[27]に記載の方法。
[31]a)[1]に記載の組成物を用いてコーティングされた表面上で異種細胞集団を培養して、該表面上に配置された少なくとも1つの単一細胞由来のスフェロイドを取得すること、および
b)所望により、該単一細胞由来のスフェロイドを分析して、それによって、該単一細胞の少なくとも1つの特性を得ること
を含む、単一細胞由来のスフェロイドを取得および所望により特性評価する方法。
【国際調査報告】