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特表2024-502033活性化・切断および計数(ACC)技術を使用する核酸配列の特異的検出
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  • 特表-活性化・切断および計数(ACC)技術を使用する核酸配列の特異的検出 図1
  • 特表-活性化・切断および計数(ACC)技術を使用する核酸配列の特異的検出 図2
  • 特表-活性化・切断および計数(ACC)技術を使用する核酸配列の特異的検出 図3
  • 特表-活性化・切断および計数(ACC)技術を使用する核酸配列の特異的検出 図4
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  • 特表-活性化・切断および計数(ACC)技術を使用する核酸配列の特異的検出 図5B
  • 特表-活性化・切断および計数(ACC)技術を使用する核酸配列の特異的検出 図6
  • 特表-活性化・切断および計数(ACC)技術を使用する核酸配列の特異的検出 図7-1
  • 特表-活性化・切断および計数(ACC)技術を使用する核酸配列の特異的検出 図7-2
  • 特表-活性化・切断および計数(ACC)技術を使用する核酸配列の特異的検出 図7-3
  • 特表-活性化・切断および計数(ACC)技術を使用する核酸配列の特異的検出 図8
  • 特表-活性化・切断および計数(ACC)技術を使用する核酸配列の特異的検出 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】活性化・切断および計数(ACC)技術を使用する核酸配列の特異的検出
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240110BHJP
   C12Q 1/6816 20180101ALI20240110BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALI20240110BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12Q1/6816 Z
C12Q1/6888 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539974
(86)(22)【出願日】2021-12-31
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 US2021065804
(87)【国際公開番号】W WO2022147340
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/132,836
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500106802
【氏名又は名称】ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・イリノイ
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ティー・カニンガム
(72)【発明者】
【氏名】アヌルプ・ガングリ
(72)【発明者】
【氏名】テイラー・ディー・キャナディ
(72)【発明者】
【氏名】ナンタオ・リー
(72)【発明者】
【氏名】イー・ション
(72)【発明者】
【氏名】シュレヤ・ゴッシュ
(72)【発明者】
【氏名】イェンイー・ション
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス・ディー・エイキン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA23
4B029FA01
4B063QA01
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR14
4B063QR55
4B063QS28
4B063QX02
(57)【要約】
本開示は、増幅を伴わないアプローチにおいてフォトニック共振器吸収顕微鏡(PRAM)に連結された、単純な単一工程の室温での活性化・切断および計数(ACC)アッセイを提供する。本明細書に開示されるアッセイ、ならびに関連するシステムおよび方法は、医療現場での、ウイルスおよび細菌病原体、ならびに疾患、例えば、がんの検出を可能にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の核酸を検出するためのシステムであって:
ヌクレオチドテザーによってソース基板の表面に結合されたストレプトアビジン連結ナノ粒子を有するソース基板;
ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含むアッセイ媒体であって、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素は、標的ヌクレオチド配列を含有する試料に曝露された場合にCRISPR/Cas複合体を形成することができる、アッセイ媒体;
ビオチン化バイオセンサー;
イメージングプラットフォーム
を含み;
ガイドポリヌクレオチド配列は、標的ヌクレオチド配列およびCas酵素に結合し、それによってCRISPR/Cas複合体を形成し;
Cas酵素は、ヌクレオチドテザーを切断し、それによってストレプトアビジン連結ナノ粒子を放出するように構成されており;
ストレプトアビジン連結ナノ粒子は、ビオチン化バイオセンサーに結合し、
イメージングプラットフォームは、ビオチン化バイオセンサーに結合したストレプトアビジン連結ナノ粒子の数を定量化するように構成されている、システム。
【請求項2】
ソース基板は、生物学的に不活性な固体材料である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
不活性な固体材料は、ガラス(酸化ケイ素)である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
不活性な固体材料は、ポリエステル、ポリスチレン、またはアクリルのうちの1つまたは複数で構成されるプラスチックである、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
不活性な固体材料は、金または銀である、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
不活性な固体材料は、窒化ケイ素または酸化チタンである、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
Casは、Cas9、Cas12a、Cas12b、またはCas13である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
標的ヌクレオチド配列は、SARS-CoV2の指標である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
標的ヌクレオチド配列は、がんの指標である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
がんは、固形腫瘍である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
がんは、血液系のがんである、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
バイオセンサーは、フォトニック結晶を含み、イメージングプラットフォームは、フォトニック結晶の共振を励起するように構成された光源、およびフォトニック結晶から反射された光を検出するように構成された検出器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
イメージングプラットフォームは、フォトニック結晶にわたってピクセル単位で測定された共振ピーク強度値を定量化するように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
イメージングプラットフォームは、非イメージング検出機器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
バイオセンサーは、ウィスパリングギャラリーモードバイオセンサーである、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
ウィスパリングギャラリーバイオセンサーは、リング共振器、マイクロトロイド、またはマイクロスフェアである、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
バイオセンサーは、光が横方向に進む導波路構造を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
バイオセンサーは、音響バイオセンサーである、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
バイオセンサーは、光音響バイオセンサーである、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
バイオセンサーは、表面プラズモン共鳴バイオセンサーである、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
ソース基板;
ビオチン化バイオセンサー;
ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含むアッセイ媒体、
ストレプトアビジン連結ナノ粒子の集団;ならびに
複数のヌクレオチドテザー
を含む生物学的アッセイであって;
ストレプトアビジン連結ナノ粒子は、複数のヌクレオチドテザーを使用してバイオセンサーに結合されており、ヌクレオチドテザーは、核酸配列で構成される、生物学的アッセイ。
【請求項22】
ガイドポリヌクレオチド配列に対して相補的な検出用のヌクレオチド標的配列を含有する試料が、アッセイに添加されて、活性化CRISPR/Cas複合体を形成することができる、請求項21に記載の生物学的アッセイ。
【請求項23】
Cas酵素は、Cas9であり、検出用のヌクレオチド標的配列は、メッセンジャーRNA(mRNA)である、請求項21に記載の生物学的アッセイ。
【請求項24】
Cas酵素は、Cas13であり、検出用のヌクレオチド標的配列は、マイクロRNA(miRNA)である、請求項21に記載の生物学的アッセイ。
【請求項25】
Cas酵素は、Cas12であり、検出用のヌクレオチド標的配列は、二本鎖DNA(dsDNA)である、請求項21に記載の生物学的アッセイ。
【請求項26】
ナノ粒子は、金ナノ粒子、量子ドット、金属ベースナノ粒子、磁性ナノ粒子、磁性プラズモン性ナノ粒子、リン光性ナノ粒子、またはSiOもしくはTiOのような誘電材料で構成されるナノ粒子である、請求項21に記載の生物学的アッセイ。
【請求項27】
バイオセンサーは、フォトニック結晶を含み、フォトニック結晶にわたってピクセル単位で測定された共振ピーク強度値を定量化するように構成されたイメージングプラットフォームをさらに含む、請求項21に記載の生物学的アッセイ。
【請求項28】
バイオセンサーは、非イメージング検出機器を含む、請求項21に記載の生物学的アッセイ。
【請求項29】
バイオセンサーは、ウィスパリングギャラリーモードバイオセンサーである、請求項21に記載の生物学的アッセイ。
【請求項30】
ウィスパリングギャラリーバイオセンサーは、リング共振器、マイクロトロイド、またはマイクロスフェアである、請求項29に記載の生物学的アッセイ。
【請求項31】
バイオセンサーは、光が横方向に進む導波路構造を含む、請求項21に記載の生物学的アッセイ。
【請求項32】
バイオセンサーは、音響バイオセンサーである、請求項21に記載の生物学的アッセイ。
【請求項33】
バイオセンサーは、光音響バイオセンサーである、請求項21に記載の生物学的アッセイ。
【請求項34】
バイオセンサーは、表面プラズモン共鳴バイオセンサーである、請求項21に記載の生物学的アッセイ。
【請求項35】
ヌクレオチドテザーは、長さ4~100ヌクレオチドのヌクレオチド配列で構成される、請求項21に記載の生物学的アッセイ。
【請求項36】
ヌクレオチドテザーは、ヌクレオチド長が均一である、請求項35に記載の生物学的アッセイ。
【請求項37】
ヌクレオチドテザーは、ヌクレオチド長が不均一である、請求項35に記載の生物学的アッセイ。
【請求項38】
CAS酵素は、Cas9、Cas12aまたはCas13aである、請求項21に記載の生物学的アッセイ。
【請求項39】
室温で安定である、請求項21に記載の生物学的アッセイ。
【請求項40】
試料中の核酸を検出するための方法であって:
ストレプトアビジンをナノ粒子に結合させて、ストレプトアビジン含有ナノ粒子を作出する工程;
ストレプトアビジン含有ナノ粒子を、ヌクレオチドテザーを使用してソース基板の表面に係留し、それによってアッセイ表面を作出する工程;
バイオセンサーをビオチンでコーティングし、それによってビオチン化バイオセンサーを作出する工程;
試験試料をアッセイ媒体に添加することによって活性化Cas酵素を生成する工程であって、
アッセイ媒体は、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含み、
ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素は、標的ヌクレオチド配列を含有する試験試料に曝露された場合に、活性化CRISPR/Cas複合体を形成する能力を有する、工程;
活性化Cas酵素およびアッセイ表面のインキュベーション時に切断されたストレプトアビジン含有ナノ粒子を捕捉する工程;
切断されたストレプトアビジン含有ナノ粒子をビオチン化バイオセンサーとともにインキュベートする工程;ならびに
ビオチン化バイオセンサーに結合するストレプトアビジン含有ナノ粒子の数を、イメージングプラットフォームを使用して定量化する工程
を含む方法。
【請求項41】
Cas酵素は、Cas9、Cas12またはCas13である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ビオチン化バイオセンサーに結合したストレプトアビジン含有ナノ粒子の数量は、その配列が疾患、ウイルス病原体の存在、または細菌病原体の存在に関するバイオマーカーである標的RNAまたはDNA分子の存在の指標となる、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
標的ヌクレオチド配列は、SARS-CoV2の指標である、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
標的ヌクレオチド配列は、がんの指標である、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
がんは、固形腫瘍である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
がんは、血液系のがんである、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
バイオセンサーは、フォトニック結晶を含み、イメージングプラットフォームは、フォトニック結晶の共振を励起するように構成された光源、およびフォトニック結晶から反射された光を検出するように構成された検出器を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
イメージングプラットフォームは、フォトニック結晶にわたってピクセル単位で測定された共振ピーク強度値を定量化するように構成されている、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
イメージングプラットフォームは、非イメージング検出機器を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項50】
イメージングプラットフォームは、蛍光顕微鏡、TIRF顕微鏡、暗視野顕微鏡、電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、反射干渉顕微鏡である、請求項40に記載の方法。
【請求項51】
バイオセンサーは、ウィスパリングギャラリーモードバイオセンサーである、請求項40に記載の方法。
【請求項52】
ウィスパリングギャラリーバイオセンサーは、リング共振器、マイクロトロイド、またはマイクロスフェアである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
バイオセンサーは、光が横方向に進む導波路構造を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項54】
バイオセンサーは、音響バイオセンサーである、請求項40に記載の方法。
【請求項55】
バイオセンサーは、光音響バイオセンサーである、請求項40に記載の方法。
【請求項56】
ナノ粒子は、金ナノ粒子、量子ドット、金属ベースのナノ粒子、磁性ナノ粒子、磁性プラズモン性ナノ粒子タグ、またはSiOもしくはTiOのような誘電材料で構成されるナノ粒子である、請求項40に記載の方法。
【請求項57】
試料中の核酸を検出するためのシステムであって:
ヌクレオチドテザーによって自由浮遊微粒子に結合されたストレプトアビジン連結ナノ粒子;
ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含むアッセイ媒体であって、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素は、標的ヌクレオチド配列を含有する試料に曝露された場合にCRISPR/Cas複合体を形成することができる、アッセイ媒体;
ビオチン化バイオセンサー;
イメージングプラットフォーム
を含み;
ガイドポリヌクレオチド配列は、標的ヌクレオチド配列およびCas酵素に結合し、それによってCRISPR/Cas複合体を形成し;
Cas酵素は、ヌクレオチドテザーを切断し、それによってストレプトアビジン連結ナノ粒子を放出するように構成されており;
ストレプトアビジン連結ナノ粒子は、ビオチン化バイオセンサーに結合し、
イメージングプラットフォームは、ビオチン化バイオセンサーに結合したストレプトアビジン連結ナノ粒子の量を定量化するように構成されている、システム。
【請求項58】
ストレプトアビジン連結ナノ粒子;
自由浮遊微粒子;
ビオチン化バイオセンサー;
ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含むアッセイ媒体、
ストレプトアビジン連結ナノ粒子の集団;ならびに
複数のヌクレオチドテザー
を含む生物学的アッセイであって;
ストレプトアビジン連結ナノ粒子は、複数のヌクレオチドテザーを使用して自由浮遊微粒子に結合されており、ヌクレオチドテザーは、核酸配列で構成される、生物学的アッセイ。
【請求項59】
試料中の核酸を検出するための方法であって:
ストレプトアビジンをナノ粒子に結合させて、ストレプトアビジン含有ナノ粒子を作出する工程;
ストレプトアビジン含有ナノ粒子を、ヌクレオチドテザーを使用して自由浮遊微粒子に係留する工程、
バイオセンサーをビオチンでコーティングし、それによってビオチン化バイオセンサーを作出する工程;
試験試料をアッセイ媒体に添加することによって活性化Cas酵素を生成する工程であって、
アッセイ媒体は、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含み、
ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素は、標的ヌクレオチド配列を含有する試験試料に曝露された場合に、活性化CRISPR/Cas複合体を形成する能力を有する、工程;
活性化Cas酵素および自由浮遊微粒子のインキュベーション時に切断されたストレプトアビジン含有ナノ粒子を捕捉する工程;
切断されたストレプトアビジン含有ナノ粒子をビオチン化バイオセンサーとともにインキュベートする工程;ならびに
ビオチン化バイオセンサーに結合するストレプトアビジン含有ナノ粒子の数を、イメージングプラットフォームを使用して定量化する工程
を含む方法。
【請求項60】
試料中の核酸を検出するためのシステムであって:
ヌクレオチドテザーによってバイオセンサーの表面に結合されたナノ粒子を有するバイオセンサー;
ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含むアッセイ媒体であって、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素は、標的ヌクレオチド配列を含有する試料に曝露された場合にCRISPR/Cas複合体を形成することができる、アッセイ媒体;ならびに
イメージングプラットフォーム
を含み、
ガイドポリヌクレオチド配列は、標的ヌクレオチド配列およびCas酵素に結合し、それによってCRISPR/Cas複合体を形成し;
Cas酵素は、ヌクレオチドテザーを切断し、それによってナノ粒子を放出するように構成されており;
イメージングプラットフォームは、試料の添加の前および後の、バイオセンサーに係留されたナノ粒子の数を定量化するように構成されている、システム。
【請求項61】
バイオセンサー;
ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含むアッセイ媒体、
ナノ粒子の集団;ならびに
複数のヌクレオチドテザー
を含む生物学的アッセイであって;
ナノ粒子は、複数のヌクレオチドテザーを使用してバイオセンサーの表面に結合されており、ヌクレオチドテザーは、核酸配列で構成される、生物学的アッセイ。
【請求項62】
試料中の核酸を検出するための方法であって:
ナノ粒子を、ヌクレオチドテザーを使用してバイオセンサーの表面に係留し、それによってアッセイ表面を作出する工程;
アッセイ媒体をアッセイ表面に添加する工程であって、アッセイ媒体は、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含み、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素は、標的ヌクレオチド配列を含有する試料に曝露された場合にCRISPR/Cas複合体を形成することができる、工程;
標的ヌクレオチド配列を含有する可能性のある生体試料をアッセイに添加し、それによってCRISPR/Cas複合体を形成させる工程;ならびに
試料の添加の前および後の、バイオセンサーに係留されたナノ粒子の数を、イメージングプラットフォームを使用して定量化する工程
を含む方法
【請求項63】
係留されたナノ粒子の定量化の後に、ナノ粒子をバイオセンサー表面から除去する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
アッセイ緩衝液を交換することによって、ナノ粒子をバイオセンサー表面から除去する、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
ナノ粒子を、アッセイ緩衝液の交換を行わずにアッセイ緩衝液の撹拌によってバイオセンサー表面から除去する、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
ナノ粒子が磁性ナノ粒子である場合、磁場の印加によってナノ粒子をバイオセンサー表面から除去する、請求項62に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
2019年12月にSARS-CoV-2(COVID-19)ウイルスが病原体保有動物からヒトに感染して以来、このウイルスは急速に世界中に広がり、死亡、疾病、日常生活の混乱、ならびに企業および個体の経済的損失をもたらしている。あらゆる国の医療システムの重要な課題は、この疾患を迅速かつ正確に診断し得ることであり、その要因には、利用可能な検査キットの数が限られること、認定された検査施設の数が限られること、さらに相まって、結果を得て患者に情報を提供するのに必要な時間が限られることが含まれる。迅速診断検査に関連する課題は、どの個人を隔離すべきかの不確実性、乏しい疫学情報、およびコミュニティ内/コミュニティ間の感染経路を迅速に追跡することができないことの一因となっている。COVID-19診断の基礎にある課題は、過去の新興流行病およびパンデミックとの遭遇からすでに周知であり、蚊媒介疾患(ジカ熱、デング熱、チクングニア熱、マラリア)、HIVなどの診断に内在する課題の代表でもある。すでに、広範な検査を実施し得ることは、それを実施している国、例えば、大韓民国において、誰を隔離すべきかに関する正確な情報を提供し、その結果、疾患の伝播をよりタイムリーにコントロールし得るという明確なメリットを示している。現在のCOVID-19感染の最初の第1波の後であっても、継続的なサーベイランスは継続されると予想されており、旅行、雇用、および密接な人と人との交流を必要とする多くの状況において、より日常的な側面となる可能性が高い。
【0002】
しかし、利用可能な技術は依然として高価であり(機器の資本設備および試薬の点で)、技術的に困難であり、労働集約的である。そのため、医療現場で感染症の迅速かつ正確で多重化された診断を提供できる低コストの携帯型プラットフォームが緊急に必要とされている。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)および関連するアプローチは、出発物質の量の少なさ(ウイルス粒子当たり1ゲノムコピー)、RNA抽出プロセスの不安定性、試験試料中の阻害物質、および多くの試薬の品質管理の不備の組合せにより、高い偽陰性率が問題となっている(非特許文献4、非特許文献5)。さらに、酵素DNA/RNA増幅手法は、医療現場で最小限に処理された試料から作業する場合、プライマーの二量体化および理想的な緩衝液条件の乱れが原因となって、偽陽性が問題となる(非特許文献6)。
【0003】
さらに、疾患の検出にも同様の限界がある。例えば、がんの診断には、がんの存在を正確に検出するために、高価で複雑で時間のかかる検査が必要である。これは患者に不必要な身体的および感情的負担をもたらし、医療費の増大の一因となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】C.Zhang and D. Xing、「Miniaturized PCR chips for nucleic acid amplification and analysis: latest advances and future trends」、Nucleic Acids Res.、35巻、13号、4223~4237頁、2007年。
【非特許文献2】J.Wang、Z.Chen、P.L.A.M.Corstjens、M.G.Mauk、and H.H.Bau、「A disposable microfluidic cassette for DNA amplification and detection」、Lab Chip、6巻,1号、46~53頁、2006年。
【非特許文献3】S.H.Lee、S.-W.Kim、J.Y.Kang、and C.H.Ahn、「A polymer lab-on-a-chip for reverse transcription(RT)-PCR based point-of-care clinical diagnostics」、Lab Chip、8巻、12号、2121~2127頁、2008年。
【非特許文献4】「Types of Zika Virus Tests」、Center for Disease Control(CDC).[Online].http://www.cdc.gov/zika/laboratories/types-of-tests.htmlより入手可能。
【非特許文献5】R.N.Charrel、I.Leparc-Goffart、S.Pas、X.de Lamballerie、M.Koopmans、and C.Reusken、「Background review for diagnostic test development for Zika virus infection」、Bull.World Health Organ.、94巻、8号、574頁、2016年。
【非特許文献6】N.Bonne、P.Clark、P.Shearer、and S.Raidal、「Elimination of false-positive polymerase chain reaction results resulting from hole punch carryover contamination」、J.Vet.Diagnostic Investig.、20巻、1号、60~63頁、2008年。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、当技術分野では、感染症および病態、例えば、がんの検出のための、信頼性があり、迅速かつ安価である、低コストの携帯型プラットフォームを提供することに対して需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、例示的な実施形態は、試料中の核酸を検出するためのシステムを提供する。本システムは、ヌクレオチドテザーによってソース基板の表面に結合されたストレプトアビジン連結ナノ粒子を有するソース基板;ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含むアッセイ媒体であって、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素は、標的ヌクレオチド配列を含有する試料に曝露された場合にCRISPR/Cas複合体を形成することができる、アッセイ媒体;ビオチン化バイオセンサー;およびイメージングプラットフォームを含む。ガイドポリヌクレオチド配列は、標的ヌクレオチド配列およびCas酵素に結合し、それによってCRISPR/Cas複合体を形成し、Cas酵素は、ヌクレオチドテザーを切断し、ストレプトアビジン連結ナノ粒子を放出するように構成されており、ストレプトアビジン連結ナノ粒子は続いてビオチン化バイオセンサーに結合することができ、その後に、ビオチン化バイオセンサーに結合したストレプトアビジン連結ナノ粒子の数を定量化するように構成されているイメージングプラットフォームを使用する。
【0007】
さらなる一態様では、例示的な実施形態は、ソース基板;ビオチン化バイオセンサー;ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含むアッセイ媒体、ストレプトアビジン結合ナノ粒子の集団;ならびに複数のヌクレオチドテザーを含む生物学的アッセイであって、ストレプトアビジン結合ナノ粒子は、複数のヌクレオチドテザーを使用してバイオセンサーに結合されており、ヌクレオチドテザーは、核酸配列で構成される、生物学的アッセイを提供する。
【0008】
別のさらなる一態様では、例示的な実施形態は、試料中の核酸を検出するための方法であって、ストレプトアビジンをナノ粒子に結合させて、ストレプトアビジン含有ナノ粒子を作出する方法を提供する。ストレプトアビジン含有ナノ粒子を、ヌクレオチドテザーを使用してソース基板の表面に結合させ、それによってアッセイ表面を作出する。ビオチン化バイオセンサーは、バイオセンサーをビオチンでコーティングすることによって生成される。活性化Cas酵素は、試験試料をアッセイ培地に添加することによって生成され、アッセイ培地は、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含み、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素は、標的ヌクレオチド配列を含有する試験試料に曝露された場合に、活性化CRISPR/Cas複合体を形成する能力を有する。活性化Cas酵素およびアッセイ表面のインキュベーション時に切断されたストレプトアビジン含有ナノ粒子を、続いて捕捉して、ビオチン化バイオセンサーとともにインキュベートし;ビオチン化バイオセンサーに結合するストレプトアビジン含有ナノ粒子の数を、イメージングプラットフォームを使用して定量化する。
【0009】
一態様では、例示的な実施形態は、試料中の核酸を検出するためのシステムであって、ヌクレオチドテザーによって自由浮遊微粒子に結合されたストレプトアビジン連結ナノ粒子を含む、システムを提供する。本システムはまた、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含むアッセイ培地であって、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素は、標的ヌクレオチド配列を含有する試料に曝露された場合にCRISPR/Cas複合体を形成することができる、アッセイ培地、ビオチン化バイオセンサー、ならびにイメージングプラットフォームを含む。本システムでは、ガイドポリヌクレオチド配列は、標的ヌクレオチド配列およびCas酵素に結合し、それによってCRISPR/Cas複合体を形成し、Cas酵素は、ヌクレオチドテザーを切断し、それによってストレプトアビジン連結ナノ粒子を放出するように構成されている。続いて、ストレプトアビジン連結ナノ粒子は、ビオチン化バイオセンサーに結合し、イメージングプラットフォームは、ビオチン化バイオセンサーに結合したストレプトアビジン連結ナノ粒子の数を定量化するように構成されている。
【0010】
さらなる一態様では、生物学的アッセイは、ストレプトアビジン連結ナノ粒子、自由浮遊微粒子、ビオチン化バイオセンサー、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含むアッセイ培地、ストレプトアビジン連結ナノ粒子の集団、ならびに複数のヌクレオチドテザーを含む。ストレプトアビジン連結ナノ粒子は、複数のヌクレオチドテザーを使用して自由浮遊微粒子に結合されており、ヌクレオチドテザーは、核酸配列で構成される。
【0011】
別のさらなる一態様では、試料中の核酸を検出するための方法であって、ストレプトアビジンをナノ粒子に結合させて、ストレプトアビジン含有ナノ粒子を作出すること、およびストレプトアビジン含有ナノ粒子を、ヌクレオチドテザーを使用して自由浮遊微粒子に係留することを含む方法である。ビオチン化バイオセンサーは、バイオセンサーをビオチンでコーティングすることによって作出される。活性化Cas酵素は、試験試料をアッセイ培地に添加することによって生成され、アッセイ培地は、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含む。ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素は、標的ヌクレオチド配列を含有する試験試料に曝露された場合に活性化CRISPR/Cas複合体を形成する能力を有し、活性化Cas酵素のインキュベーション時に切断されたストレプトアビジン含有ナノ粒子および自由浮遊微粒子を捕捉し、切断されたストレプトアビジン含有ナノ粒子をビオチン化バイオセンサーとともにインキュベートする。続いて、ビオチン化バイオセンサーに結合するストレプトアビジン含有ナノ粒子を、イメージングプラットフォームを使用して定量化する。
【0012】
一態様では、例示的な実施形態は、試料中の核酸を検出するためのシステムを提供する。本システムは、ヌクレオチドテザーによってバイオセンサーの表面に結合されたナノ粒子を有するバイオセンサー;ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含むアッセイ媒体であって、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素は、標的ヌクレオチド配列を含有する試料に曝露された場合にCRISPR/Cas複合体を形成することができる、アッセイ媒体;ならびにイメージングプラットフォームを含む。ガイドポリヌクレオチド配列は、標的ヌクレオチド配列およびCas酵素に結合し、それによってCRISPR/Cas複合体を形成する。Cas酵素は、ヌクレオチドテザーを切断し、それによってナノ粒子を放出するように構成されている。イメージングプラットフォームは、試料の添加の前および後の、バイオセンサーに係留されたナノ粒子の数を定量化するように構成されている。
【0013】
さらなる一態様では、例示的な実施形態は、バイオセンサー;ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含むアッセイ媒体;ナノ粒子の集団;ならびに複数のヌクレオチドテザーを含む生物学的アッセイを提供する。ナノ粒子は、複数のヌクレオチドテザーを使用してバイオセンサーの表面に結合されており、ヌクレオチドテザーは、核酸配列で構成される。
【0014】
さらに別の態様では、例示的な実施形態は、試料中の核酸を検出するための方法を提供する。検出は、ナノ粒子を、ヌクレオチドテザーを使用してバイオセンサーの表面に係留し、それによってアッセイ表面を作出することによって達成される。続いて、アッセイ媒体をアッセイ表面に添加する。アッセイ媒体は、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含み、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素は、標的ヌクレオチド配列を含有する試料に曝露された場合にCRISPR/Cas複合体を形成することができる。本方法は、標的ヌクレオチド配列を含有する可能性のある生体試料をアッセイに添加し、それによってCRISPR/Cas複合体を形成させること、ならびに試料の添加の前および後の、バイオセンサーに係留されたナノ粒子の数を、イメージングプラットフォームを使用して定量化することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1Aは、フォトニック結晶(PC)を下から照射し、金ナノ粒子(AuNP)を上から付着させるための携帯型PRAM検出機器の模式図である。図1Bは、付着したAuNPのピーク強度値(PIV)画像である。図1Cは、1つのAuNPによるPCの共振反射強度の減少を示す。
図2】活性化・切断および計数(ACC)アッセイの概念を示す。活性化CRISPR/Cas RNP複合体は、PC表面のDNAテザーを切断して、AuNPの剥離をもたらし、シグナル変化を引き起こす。
図3図3Aは、100nMのN遺伝子の存在下でRNP複合体によって引き起こされるレポーター遺伝子の無差別切断を示す。図3Bは、100nMのE遺伝子の存在下でRNP複合体によって引き起こされるレポーター遺伝子の無差別切断を示す。図3Cは、100nMの各標的遺伝子の添加後の、FAMからの蛍光発光の増加を示す。図3Dは、標的N遺伝子濃度の関数としての蛍光発光強度を示す。
図4図4Aは、SARS-CoV-2ゲノムのN遺伝子(100nM)を標的とするRNP複合体を添加した後のDNAテザーの切断およびナノ粒子の除去を示す。図4Bは、SARS-CoV-2ゲノムのE遺伝子(100nM)を標的とするRNP複合体を添加した後のDNAテザーの切断およびナノ粒子の除去を示す。
図5A】N遺伝子およびE遺伝子のそれぞれについて、対照試料(不活性化Cas12a/gRNA複合体)の添加の前および後のPC上のAuNPカウントの変化を示す。
図5B】N遺伝子、対照(N遺伝子)、E遺伝子および対照(E遺伝子)をそれぞれ含有するRNP複合体の存在下でのAuNPの相対的変化を表す比較チャートである。
図6】ビオチン化PEGによるAuNP捕捉と、それに続くストレプトアビジン連結AuNPの放出時の活性化切断および計数、ならびにその後のビオチン化バイオセンサーへの結合の概略図である。
図7-1】図7A~7Fは、低濃度試験による用量反応曲線である。結合したAuNP対標的濃度の用量反応曲線を、0.1aM(試験試料中におよそ300コピーの標的分子)(図7A)、1aM(試験試料中におよそ3,000コピーの標的分子)(図7B)、10aM(試験試料中におよそ30,000コピーの標的分子)(図7C)、100aM(試験試料中におよそ300,000コピーの標的分子)(図7D)、および1fM(試験試料中におよそ3,000,000コピーの標的分子)(図7E)について示す。個々の結合曲線を、結合したAuNP対標的濃度の用量反応曲線上にグラフ化している(図7F)。
図7-2】図7-1の続き。
図7-3】図7-2の続き。
図8】ACC用量反応および標的選択性(2つのデータセットのうちの1)。(図8a)1zM、(図8b)10zM、(図8c)100zMまたは(図8d)1aMのEGFR遺伝子断片による活性化の後のCas12aによる放出後にAuNPが捕捉されたPC表面の画像。左および右のパネルは、それぞれEGFRWTおよびEGFRL858Rを使用して捕捉されたAuNPを示す。(図8e)各画像セット(図8a~8d)からのAuNPカウントのプロット。
図9】ACC用量反応および標的選択性(2つのデータセットのうちの2)。(図9a)1zM、(図9b)10zM、(図9c)100zMまたは(図9d)1aMのEGFR遺伝子断片による活性化の後のCas12aによる放出後にAuNPが捕捉されたPC表面の画像。左および右のパネルは、それぞれEGFRWTおよびEGFRL858Rを使用して捕捉されたAuNPを示す。(図9e)各画像セット(図9a~9d)からのAuNPカウントのプロット。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここに記載される本明細書の特定の態様は、提示される特定の実施形態に限定されず、異なる場合があることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の態様のみを記載する目的のためであり、本明細書で特に定義されない限り、限定を意図しないことも理解されるであろう。さらに、本明細書に開示される特定の実施形態は、当業者には認識されるであろうが、限定されることなく、本明細書に開示される他の実施形態と組み合わせることができる。
【0017】
本明細書を通じて、文脈上特に別段の指示がない限り、「含む(comprise)」および「含む(include)」という用語、ならびにそれらの変形物(例えば、「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「含む(includes)」、および「含むこと(including)」)は、記載された構成要素、特徴、要素、もしくは工程、または構成要素、特徴、要素、もしくは工程のグループを含むが、任意の他の構成要素、特徴、要素、もしくは工程、または構成要素、特徴、要素、もしくは工程の群を排除しないことを示すと理解される。「含む」、「本質的にからなる」、および「からなる」という用語のいずれも、それらの通常の意味を保ちながら、他の2つの用語のいずれかに置き換えることができる。
【0018】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかに別様のことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0019】
別段の指示がない限り、または文脈および当業者の理解から別様であることが明らかでない限り、範囲として表される本明細書中の値は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、範囲の下限の単位の10分の1までの、本開示のさまざまな実施形態において記載された範囲内の任意の特定の値または部分範囲を想定することができる。
【0020】
本明細書および図面で使用される場合、範囲および量は、特定の値または範囲の「約」として表すことができる。「約」は、正確な量も含む。例えば、「約5%」は、「約5%」および「5%」も意味する。「約」という用語は、所与の値または値の範囲の±10%を指すこともできる。したがって、約5%は、例えば、4.5%~5.5%も意味する。
【0021】
本明細書で使用される「試料」は、ヌクレオチド配列を含有する任意のタイプの試料を指し、これは生体試料を範囲に含む。「生体試料」は、本明細書中に記載される1つまたはそれ以上の疾患および/もしくは障害に罹患しているか、または罹患する可能性のある、臓器パンチもしくは組織生検を含むがこれらに限定されない体組織の試料、または温血動物、例えば、哺乳動物、好ましくはヒトに由来する血液、脳脊髄液、血漿、もしくは唾液を含むがこれらに限定されない体液の試料を指す。生体試料はまた、非ヒト哺乳動物および他の動物から得られた組織または血液試料を指すこともできる。
【0022】
本開示を考慮して、本明細書に記載される方法および組成物を、所望の必要性を満たすように当業者が構成することができる。
【0023】
1.概観
本開示は、SARS-CoV-2をそのゲノムの2つの独立した独特な区画を標的化することを介して検出するための安価な携帯型機器と連結された、単純な活性化・切断および計数(ACC)アッセイであって、標的核酸配列の酵素的増幅を使用しないアプローチにおいて、フォトニック共振器吸収顕微鏡(PRAM)と連結された、クラスター化された規則的に間隔を置く短いパリンドローム反復配列(CRISPR)ベースの核酸検出を使用することによるアッセイを提供する。開示されるアッセイおよび検出機器はまた、SARS-CoV-2以外の広範囲にわたる感染病原体、ならびに病理学的疾患、例えば、がんの存在を検出するように適合させることもできる。PRAM機器は、米国特許出願第16/170,111号に記載されており、一方、フォトニック結晶(PC)バイオセンサーのさまざまな態様は、米国特許第7,479,404号、同第7,521,769号、同第7,531,786号、同第7,737,392号、同第7,742,662号、および同第7,968,836号に記載されており、これらはすべて参照により本明細書に組み入れられる。
【0024】
微生物のCRISPRおよびCRISPR関連(CRISPR/Cas)適応免疫系は、CRISPRベースの診断に利用し得るプログラム可能なエンドヌクレアーゼを含有する[7][8]。本明細書に記載されるシステム、アッセイ、および方法は、これらの酵素-ガイドRNA複合体(RNPと呼ばれる)の、その特異的標的への結合(RNP活性化)後の無差別な一本鎖核酸切断能力を利用して、シグナル変化を生じさせる。しかし、現在のプラットフォームは、測定可能な変化をCRISPR工程からのラテラルフローテストストリップまたは蛍光光度計で検出するために、配列特異的プライマーおよびDNAポリメラーゼを使用する前増幅工程を必要とする。本開示では、特異的な標的核酸配列の迅速検出を行うために、PRAMバイオセンサーイメージングプラットフォームを利用して、核酸テザー[9]を有するフォトニック結晶(PC)ナノ構造表面に結合したAuNP、またはビオチン化バイオセンサーに結合したストレプトアビジン連結AuNPを含む、ナノ粒子のデジタル計数を行う。
【0025】
2.PRAMの作動原理
PRAMバイオセンシングプラットフォームの携帯バージョンを図1Aに示す。ポート1は、ファイバー結合617nM LED光源(M617F2、Thorlabs)に連結されており、レンズ群(F810SMA-635、Thorlabs)がまず、出力ビームを平行化するために利用される。ゼロ次半波長板(WPH10M-633、Thorlabs)は、平行化されたビームの偏光を回転させて、PCキャビティのTM共振モードを励起する。続いて、平凸レンズ(LA1509-A-ML、Thorlabs)が、Olympusプランフルオライト対物レンズ20倍/0.5開口数(NA)対物レンズの背面焦点面にビームを収束させ、そこから平行化ビームが垂直入射でPC表面に当たる。手動3軸ステージ(PT3、Thorlabs)を使用して、PCサンプルを対物レンズの焦点面に固定する。PC共振器からの反射光を同じ対物レンズによって収集し、50/50非偏光ビームスプリッタ(CCM1-BS013、Thorlabs)によって方向を変える。ダブレット(AC254-200-A-ML、Thorlabs)が、177nM/ピクセルの解像度で電荷結合素子(CCD)カメラ(GS3-U3-51S5M-C、Point Grey)に画像面を投影する。図1Cに示すように、特定の共振波長および入射角で完全な干渉が発生し、光は透過せず、ほぼ100%の反射効率が得られる。共振反射率の大きさは、PC表面への吸収性AuNPの添加によって劇的に減少し(図1C)、その結果、LEDからの光で照明して反射強度の画像を作成することによって各AuNPを観察することができる(図1B)。フォトニック共振器吸収顕微鏡(PRAM)と呼ばれる顕微鏡アプローチを使用して、PC全体の共振ピーク強度値(PIV)をピクセルごとに測定することにより、PCの前面を水性媒体に浸した状態で、平行化された広帯域光で透明基板を通して構造を照明することによって、付着したAuNPのPIV画像を収集することができる。
【0026】
2.アッセイの作動原理
活性化・切断および計数アッセイ(「アッセイ」)は、増幅を伴わない生物学的アッセイであり、PRAMバイオセンサーイメージングプラットフォームに連結されたCRISPR-Casベースの検出である。第1の例示的な実施形態では、プラットフォームは、ビオチン化バイオセンサーに結合するストレプトアビジン連結金ナノ粒子(AuNP)のデジタル計数を行う。第2の例示的な実施形態では、プラットフォームは、標的核酸配列がガイドポリヌクレオチド配列およびCasと相互作用して活性化複合体を形成する場合にフォトニック結晶表面から放出されるAuNPのデジタル計数を行う。
【0027】
アッセイの第1の実施形態は、ビオチン化ナノ粒子捕捉アッセイであり、この場合はPRAM機器を使用して、ビオチン化バイオセンサーに結合するストレプトアビジン連結ナノ粒子の数を検出する。ビオチン化ナノ粒子捕捉アッセイは、ソース基板、ビオチン結合のためのオープンポケットを有するストレプトアビジンに連結されたナノ粒子の集団、複数のヌクレオチドテザー、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含むアッセイ培地、ならびにビオチン化バイオセンサーを含む。本明細書で使用される「オープンポケット」は、ビオチン結合に利用可能なストレプトアビジン上のビオチン結合部位の1つまたはそれ以上を指す。より具体的には、ソース基板は、ストレプトアビジン連結ナノ粒子の集団を含有し、これらのナノ粒子は複数のヌクレオチドテザーを介してソース基板に結合されている。「ソース基板」という用語は、ガラス(酸化シリコン)、プラスチック(ポリエステル、ポリスチレン、アクリル)、金属(金、銀)、または誘電体(窒化シリコンまたは酸化チタン)を含む材料から選択される任意の生物学的に不活性な固体材料を指す。ソース基板は、1つまたはそれ以上のssDNAテザーを有するその表面に近接してナノ粒子を保持することができる表面である。一実施形態では、ソース基板は、PCバイオセンサーである。
【0028】
ナノ粒子は、広範囲にわたる材料で構成することができる。例示的な一実施形態では、ナノ粒子は金ナノ粒子(AuNP)である。他の実施形態では、ナノ粒子材料は、量子ドット、金属ベースのナノ粒子、磁性ナノ粒子、またはSiOもしくはTiOのような誘電体材料から構成されるナノ粒子である。磁性プラズモン性ナノ粒子タグも使用することができ、それによって、放出されたナノ粒子とビオチン化されたバイオセンサーとの間に引力磁場を印加することによって、バイオセンサーがナノ粒子に結合するのに必要な時間を短縮することができる。本開示のストレプトアビジン含有ナノ粒子は、非特異的ヌクレオチド配列で構成されるDNAヌクレオチドテザーを使用してソース基板に係留される。これに一致して、テザーは、ほぼあらゆる一本鎖DNA配列であり得る。テザーの一部分は、図6に示されるようにdsDNAであってもよく、それによって剛性を提供し、ナノ粒子と基板との間の高さの変位を制御する。ヌクレオチドテザーは、配列が均一であっても不均一であってもよく、特定のものではない長さであり得る。一部の実施形態では、ヌクレオチドテザーは、長さが約5~200ヌクレオチドである。一部の実施形態では、テザーは、長さが約5~50、約51~100、約101~150、または約151~200ヌクレオチドである。別のさらなる実施形態では、ヌクレオチドテザーは、長さが約5~25、約26~50、約51~75、約76~100、約101~125、約126~150、約151~175、または約176~200ヌクレオチドである。テザーの両端は、ソース基板およびテザーの反対側の末端上のナノ粒子との共有化学結合またはビオチン-ストレプトアビジン会合の形成を促進する化学官能基で調製することができる。
【0029】
例示的な一実施形態では、ストレプトアビジンは、ペグ化またはストレプトアビジンの共有結合もしくは非共有結合のための当技術分野で公知の他の方法を使用して、ナノ粒子、好ましくはAuNPに連結または付着される。ストレプトアビジン上の第2のビオチン結合部位は、ヌクレオチドテザーに結合するのに利用され、それによって、図6に提示されるように、ナノ粒子-ヌクレオチドテザー-ソース基板連結が作出される。好ましい一実施形態では、テザー、好ましくはssDNAは、ストレプトアビジン連結AuNPを、イソシアネートを介してソース基板に係留する。代替的な実施形態では、ssDNAは、ハロゲン化アルキル、スルホネート、アルデヒド、カルボン酸、またはエポキシドを介して、ストレプトアビジン連結ナノ粒子、例えば、AuNPに係留される。
【0030】
本明細書に開示されるビオチン化ナノ粒子捕捉アッセイは、その配列が疾患、ウイルス病原体の存在、または細菌病原体の存在に関するバイオマーカーである1つまたはそれ以上の標的RNAまたはDNA分子の存在の検出を可能にする。これに一致して、例示的な一実施形態では、標的ヌクレオチド配列を有し、そのためにガイドポリヌクレオチド配列に対して相補的であり、活性化CRISPR/Cas複合体を形成する能力を有する疑いのある試料および/または生体試料を、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素とともにインキュベートする。試料中の標的分子の存在は、活性化Casをもたらし、活性化Casの濃度は標的分子の濃度に正比例する。Cas含有試料は、活性化Casおよび活性化されていないCasの両方を含有する可能性がある。適切な陰性対照および陽性対照も反応に含めることができる。
【0031】
本明細書で使用される「Cas酵素」は、Cas/CRISPR複合体を形成する能力を有する任意のCas酵素を含むことができる。当業者は、Cas酵素がクラスIおよびクラスIIに分類されることを理解するであろう。好ましい一実施形態では、Cas酵素はクラスII酵素であり、より具体的にはCas9、Cas12a、Cas12b、またはCas13aである。しかし、Csn2、Cas4、Cas12c、Cas12d、Cas12e、Cas12f、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k、C2c4、C2c8、C2c9、Cas13b、Cas13c、またはCas13dを含むがこれらに限定されない代替的なクラスII Cas酵素もアッセイの一部として使用することができる。好ましい実施形態では、Cas9がメッセンジャーRNAを検出するために使用され、Cas12が二本鎖DNAを検出するために使用され、Cas13がマイクロRNAを検出するために使用される。
【0032】
ビオチン化ナノ粒子捕捉アッセイでは、活性化Cas試料を、係留されたストレプトアビジン連結AuNPを含有するソース基板とともにインキュベートする。活性化CasはssDNAテザーを切断し、それによってストレプトアビジン連結AuNPをアッセイ媒体中に放出する。ストレプトアビジン連結AuNPを含有するアッセイ媒体を、ビオチン化バイオセンサーとともにインキュベートし、オープンポケットを介したストレプトアビジン-ビオチン結合およびその後のPRAM機器を介したストレプトアビジン-ビオチン結合の定量化を可能にする。結合粒子の量的変化は、試料または生体試料中の疾患、ウイルス病原体、または細菌性病原体の有無の指標となる。ビオチン化ナノ粒子捕捉アッセイの検出限界は、標的ctDNA配列について1zMであり(図7~9)、これは試験試料中のおよそ3コピーの標的DNA配列に相当する。150μLの溶液中に懸濁化された3コピーの遺伝子標的は、3.33×10-20M(33zM)に等しい。臨床血漿試料は一般に5mLの容量であるため、5mL容量中の3コピーの遺伝子標的は1.00×10-21(1zM)に等しい。ここでは、血漿DNA抽出キットが最大5mLのヒト血漿から精製DNAを100μL溶出することから、検出限界が1zMであることが報告されている。したがって、報告された1zMという検出限界は5mLの血漿中に存在する標的遺伝子のコピー数に対応し、その結果、試料中の全DNAは100μLの溶出容量で分離され、その後の切断工程のために150μLに最終希釈されることが想定される。
【0033】
好ましくは、バイオセンサーはフォトニック結晶である。バイオセンサーはまた、リング共振器、マイクロトロイド、またはマイクロスフェアであるウィスパリングギャラリーモードバイオセンサーであり得る。さらなる態様では、バイオセンサーは、光がそこを横方向に進む導波路構造、音響バイオセンサー、光音響バイオセンサー、または表面プラズモン共鳴バイオセンサーである。別のさらなる態様では、ソース基板から放出されたAuNPは、その後に表面上に捕捉され、捕捉されたナノ粒子を計数するための他の形態の顕微鏡、例えば、電子顕微鏡、暗視野顕微鏡、または反射干渉顕微鏡によって測定される。ナノ粒子が光子放出体、例えば、量子ドットまたはリン光ナノ粒子である場合、顕微鏡システムは、蛍光顕微鏡または全反射照明蛍光顕微鏡であり得る。図6は、AuNP捕捉アッセイの概観を提供する。
【0034】
また、ストレプトアビジン連結ナノ粒子を、活性化Casを有する溶液中を自由に浮遊するマイクロメートル規模の粒子に係留することもできる。本明細書で使用される「微粒子」という用語は、直径約2~75マイクロメートル、直径約2~70マイクロメートル、直径約2~65マイクロメートル、直径約2~55マイクロメートル、直径約2~50マイクロメートル、直径約2~45マイクロメートル、直径約2~30マイクロメートル、直径約2~25マイクロメートル、直径約5~50マイクロメートル、直径約5~35マイクロメートル、直径約5~30マイクロメートル、直径約5~25マイクロメートル、直径約5~20マイクロメートル、直径約5~15マイクロメートル、直径約5~15マイクロメートル、または直径約5~20マイクロメートルのサイズの範囲のポリマービーズ、磁性ビーズ、またはガラスビーズ(酸化シリコン)である微粒子を指す。自由に浮遊するマイクロメートル規模の粒子は、自由溶液中の微粒子およびCasの拡散を可能にし、それによってCasがより多くのssDNAテザーに遭遇することを可能にして、より短い時間でssDNAの切断を可能にする。本実施形態では、自由浮遊微粒子の使用は、ssDNA切断の後にさらなる工程を必要とし、この場合は微粒子を、遠心分離または磁石を使用して溶液から分離し、それによって上清中の放出されたストレプトアビジン連結ナノ粒子を分離する。続いて、ストレプトアビジン連結ナノ粒子を含有する上清をビオチン化バイオセンサーとともにインキュベートし、オープンポケットを介したストレプトアビジン-ビオチン結合、およびその後のPRAM機器を介したストレプトアビジン-ビオチン結合の定量化を可能にする。結合した粒子の定量的変化は、試料または生体試料中の疾患、ウイルス病原体、または細菌病原体の有無の指標となる。
【0035】
第2の実施形態では、本明細書に開示されるアッセイは、CRISPR/Cas酵素-ガイドRNA複合体(RNPと呼ばれる)が、その特異的標的への結合(RNP活性化)後の無差別な一本鎖核酸切断能力により、シグナル変化を生じさせるという原理で動作する。本実施形態では、AuNPは、DNAテザーを介してフォトニック結晶(PC)の表面に付着する。特異的なSARS-CoV-2 RNAに結合すると、活性化RNP複合体は、DNAテザーを非特異的かつ反復的に切断し、PC表面から金ナノ粒子を放出させる。続いて、PRAM機器が、各表面に放出された金ナノ粒子を検出および計数して、図2に示されるように、試験試料中のSARS-CoV-2 RNAの存在の即時の読出しをもたらす。
【0036】
生物学的アッセイの第2の実施形態は、バイオセンサー;ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含むアッセイ媒体、ナノ粒子の集団;および複数のヌクレオチドテザーを含む。バイオセンサーは、複数のヌクレオチドテザーを使用して表面に結合されたナノ粒子を含有する。ナノ粒子は、広範囲にわたる材料で構成することができ、一実施形態では、ナノ粒子は金である。他の実施形態では、ナノ粒子材料は、量子ドット、金属ベースのナノ粒子、磁性ナノ粒子、SiOもしくはTiOのような誘電体材料で構成されるナノ粒子、または磁性プラズモン性ナノ粒子である。テザーは、任意のRNA/DNA配列であり得る。
【0037】
ナノ粒子は、非特異的ヌクレオチド配列で構成されるヌクレオチドテザーを使用して、バイオセンサーの表面に係留される。一実施形態では、ソース基板は、PCバイオセンサーである。ヌクレオチドテザーは、配列が均一であっても不均一であってもよく、特定のものではない長さであり得る。一部の実施形態では、ヌクレオチドテザーは、長さが約5~200ヌクレオチドである。一部の実施形態では、テザーは、長さが約5~50、約51~100、約101~150、または約151~200ヌクレオチドである。別のさらなる実施形態では、ヌクレオチドテザーは、長さが約5~25、約26~50、約51~75、約76~100、約101~125、約126~150、約151~175、または約176~200ヌクレオチドである。
【0038】
バイオセンサーは、フォトニック結晶であり得る。また、バイオセンサーは、ウィスパリングギャラリーモードバイオセンサーでもあり得る。ウィスパリングギャラリーモードバイオセンサーは、リング共振器、マイクロトロイド、またはマイクロスフェアである。さらなる実施形態では、バイオセンサーは、光がそこを横方向に進む導波路構造、音響バイオセンサー、または光音響バイオセンサーである。
【0039】
前述のように、本明細書で使用される「Cas酵素」は、Cas/CRISPR複合体を形成する能力を有する任意のCas酵素を含むことができる。好ましい一実施形態では、Cas酵素はクラスII酵素、より具体的にはCas9、Cas12a、Cas12b、またはCas13aであるが、Csn2、Cas4、Cas12c、Cas12d、Cas12e、Cas12f、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k、C2c4、C2c8、C2c9、Cas13b、Cas13c、またはCas13dを含むがこれらに限定されない代替的なクラスII Cas酵素もアッセイの一部として使用することができる。好ましい実施形態では、Cas9がメッセンジャーRNAを検出するために使用され、Cas12が二本鎖DNAを検出するために使用され、Cas13がマイクロRNAを検出するために使用される。
【0040】
本明細書に開示されるアッセイの第2の実施形態は、その配列が疾患、ウイルス病原体の存在、または細菌性病原体の存在に関するバイオマーカーである標的RNAまたはDNAの存在の検出を可能にする。これに一致して、標的ヌクレオチド配列を有し、そのためにガイドポリヌクレオチド配列に対して相補的であり、活性化CRISPR/Cas複合体を形成する能力を有する疑いのある試料および/または生体試料を、アッセイに添加する。続いて、活性化複合体はヌクレオチドテザーを切断し、結合したナノ粒子の数量の変化をPRAM機器を使用して決定する。結合した粒子の定量的変化は、試料または生体試料中の疾患、ウイルス病原体、または細菌性病原体の有無の指標となる。より具体的には、定量的な差異は、試料の添加の前および後の、バイオセンサーの表面に係留されたナノ粒子間の差として計算される。係留されたナノ粒子の数の減少は、その配列が疾患、ウイルス病原体、または細菌性病原体に関するバイオマーカーであるRNAまたはDNA分子の存在の指標となる。さらに、目的のヌクレオチド配列は、疾患の存在の指標ともなる。SARS-CoV-2およびがんは、本明細書に開示されるシステム、アッセイ、および/または方法を使用して検出することができる例示的なウイルス病原体および疾患である。係留されたナノ粒子の定量化に続いて、ナノ粒子をバイオセンサー表面から除去して、バイオセンサーの再使用を可能にすることができる。ナノ粒子は、アッセイ緩衝液を交換することによって、またはアッセイ緩衝液を交換せずにアッセイ緩衝液を撹拌することによって、バイオセンサー表面から除去することができる。ナノ粒子は、磁性があれば、磁場の印加によってバイオセンサー表面から除去することもできる。本明細書に記載されるアッセイは、試料中の核酸を検出するためのシステムの一部であることもできる。本開示のシステムは、ソース基板、ヌクレオチドテザーによってバイオセンサーの表面に結合されたナノ粒子を有するバイオセンサー、またはビオチン化バイオセンサー、ヌクレオチドテザーを切断するように構成されたガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含むアッセイ媒体であって、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素は、標的ヌクレオチド配列を含有する試料がアッセイに添加された場合にCRISPR/Cas複合体を形成することができる、アッセイ媒体;ならびに試料の添加の前および後の、バイオセンサーに係留されたナノ粒子の数を定量化するように構成されたPRAMイメージングプラットフォームのうちの1つまたはそれ以上で構成される。
【0041】
本開示はまた、試料中の目的の核酸配列、例えば、感染病原体、病原体、または疾患に関連する核酸配列の検出においてアッセイを使用するための方法も提供する。第1の例示的な実施形態は、試料中の核酸を検出するための方法である。ストレプトアビジンを、ペグ化または当技術分野で一般的に理解されている結合のための他の技術を用いてナノ粒子に連結する。ストレプトアビジン含有ナノ粒子を、ヌクレオチドテザーを使用してソース基板の表面に係留し、それによって、アッセイ表面およびビオチンでコーティングされたバイオセンサーを作出する。アッセイ媒体をアッセイ表面に添加し、ここでアッセイ媒体は、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含み、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素は、標的ヌクレオチド配列を含有する試料に曝露された場合に、活性化CRISPR/Cas複合体を形成する能力を有する。標的ヌクレオチド配列を含有する可能性のある生体試料をアッセイに添加し、それによって、ストレプトアビジン含有ナノ粒子を放出する活性化CRISPR/Cas複合体を形成させる。放出後に、ストレプトアビジン含有ナノ粒子を含有する試料をビオチン化バイオセンサーに添加し、続いてイメージングプラットフォームを使用して、ビオチン化バイオセンサーに結合するストレプトアビジン含有ナノ粒子の数を定量化する。
【0042】
アッセイの第2の例示的な実施形態では、本方法のナノ粒子を、ヌクレオチドテザーを使用してバイオセンサーの表面に係留する。続いて、アッセイ媒体をアッセイに添加する。このアッセイ媒体はガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素を含み、ガイドポリヌクレオチド配列およびCas酵素は、標的ヌクレオチド配列を含有する試料に曝露された場合、またはアッセイに添加された場合に、CRISPR/Cas複合体を形成することができる。さらに、当業者は、アッセイ媒体が、収集された試料および/または生体試料を採取、貯蔵、または保存するために必要な成分も含有し得ることを理解するであろう。試料および/または生体試料は、ヌクレオチド配列を含有する疑いのある任意の試料であり得る。当業者は、これが任意の哺乳動物由来の組織および/または体液を含むが、これらに限定されないことを理解するであろう。好ましい一実施形態では、試料はヒト由来である。一部の実施形態では、試料は、標的ヌクレオチド配列を含有する可能性のある非哺乳動物宿主由来である。標的ヌクレオチド配列を含有する可能性のある試料をアッセイに添加すると、CRISPR/Cas複合体が形成され、続いて、イメージングプラットフォームを使用して、試料の添加の前および後の、バイオセンサーに係留されたナノ粒子の数が定量化される。好ましい一実施形態では、イメージングシステムは、PRAMイメージングプラットフォームである。イメージングプラットフォームは、代替的な非イメージング検出機器をさらに含むことができる。イメージングプラットフォームは、蛍光顕微鏡、TIRF顕微鏡、暗視野顕微鏡、電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、または反射干渉顕微鏡でもあり得る。
【0043】
さらに、本明細書に提供される第2の実施形態は、標的分子の濃度が十分に高い場合に、PRAMイメージングシステムを、ウイルス感染または疾患の存在の迅速な検出を可能にする、本明細書に開示されるシステム、アッセイ、または方法の一部として使用する場合に、20分間未満で結果を提供するというさらなる驚くべき技術的効果を有する。このため、本明細書に記載されるシステム、アッセイ、および方法は、医療現場で使用することができる。
【実施例
【0044】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態およびそのさまざまな用途を例示するものである。それらは説明の目的のためにのみ記載されており、いかなる点においても本開示の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【0045】
方法
PC表面のシリル化
フォトニック結晶の外部酸化チタン層を化学的に活性化するために、酸素プラズマを使用して表面官能化を達成した。その後に、プラズマ処理によって生成された反応性ヒドロキシル基を、無水テトラヒドロフラン(THF)中に懸濁されたシラン混合物を使用して、室温で30分間の液相シリル化によって誘導体化した。50mL溶液は、49mLのTHF、900uLの3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート、50uLのブチル(クロロ)ジメチルシラン、および50uLのクロロ(ジメチル)オクチルシランで構成された。シリル化の後に、切断されたAuNPを捕捉するために使用するPC表面は、0.5% N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を含有するリン酸緩衝生理食塩水中の濃度10mg/mLのアミン-PEG11-ビオチンとの反応によって、室温で12時間の二次官能化に供した。
【0046】
AuNP表面処理
アミン/ビオチンでキャッピングしたssDNAテザーを、ストレプトアビジン結合金ナノ粒子(AuNP)とともに、1mMヒドロキノン(ヌクレアーゼを含まない水中に懸濁化)中にて30℃で30分間インキュベートし、1,200rcfで10分間の遠心分離の後に単離した。続いて、ssDNA結合AuNPを1mMヒドロキノンに再懸濁させて、30秒間超音波処理した。
【0047】
PC表面への金ナノ粒子固定化
150uLの1mMヒドロキノン緩衝液中に懸濁化したssDNA結合AuNPを、室温で30分間のコインキュベーションによって、シリル化PC表面上に固定化した。固定化の後に、PC表面を1mMヒドロキノンの4つの50mLアリコートで連続的に洗浄した。
【0048】
Cas12a-sgRNA複合体の集合
等容量の100nM 酵素(EnGen(登録商標)Lba Cas12a)および125nM sgRNAを、1×CutSmart(登録商標)緩衝液(ヌクレアーゼを含まない水中で希釈)中で一緒に混合した。この溶液を4℃で1時間インキュベートして、Cas12a-sgRNA複合体の集合を可能にした。
【0049】
Cas12a-sgRNA複合体の標的活性化
集合したCas12a-sgRNA複合体を、150uLの1×CutSmart(登録商標)緩衝液中にて37℃で2分間、合成突然変異体dsDNA EGFR遺伝子断片とコインキュベーションすることによって活性化した。続いて、活性化複合体の各アリコートを、固定化AuNPを有する3×4mmのPCを含有する別々の1.5mLエッペンドルフ遠心管に添加した。
【0050】
AuNPの表面切断および捕捉
標的活性化Cas12a-sgRNA溶液に浸漬したPCを37℃で1時間インキュベートし、続いて、溶液から取り出した。続いて、切断により放出されたAuNPを含有する標的活性化溶液を、アミン-PEG11-ビオチン官能化捕捉PCを含有する別の1.5mLエッペンドルフチューブに移した。捕捉PCを、放出されたAuNPを含有する溶液中で1時間インキュベートし、画像化の前に洗浄した。
【0051】
表面イメージングおよび粒子計数
洗浄後に、AuNP捕捉に使用したPC表面に617nMレーザーを照射し、50倍顕微鏡対物レンズ下で画像化した。粒子カウントは、取得した画像の後処理の後に測定した。
【0052】
[実施例1]蛍光試験におけるCRISPRアッセイ構成要素の予備的検証により、RNP複合体がレポーター配列を切断する能力が実証される。
CRISPRアッセイ構成要素の予備的検証を、一方の末端に6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM)、他方の末端にブラックホールクエンチャー(BHQ)からなるレポーター配列の存在下で実施した。SARS-CoV-2ゲノムの両方の区画(図3(A)および図3(B)において、それぞれNおよびE遺伝子として示される)に対する活性化RNP複合体は、レポーター配列を切断する能力を示した。その結果、図3(C)において、FAMレポーターの蛍光発光強度の有意な増加が観察された。標的N遺伝子濃度の濃度を変化させることによって、同じアッセイを繰り返した。図3(D)に示すように、標的遺伝子濃度を1fM~10nMの間で変化させた場合、蛍光発光強度に特異的なパターンは観察されなかった。
【0053】
[実施例2]CRISPRアッセイにより、活性化RNP複合体の存在下でDNAテザーの切断に成功したことが明らかになる。
CRISPR構成要素の予備的検証に続いて、図2に示す原理を使用してPC上でアッセイを実施した。検出アッセイは、以下の構成要素からなった:(i)DNAテザーを介して結合したAuNPにより官能化されたPC、(ii)活性化RNP複合体:Cas 12a+定義された標的に対するガイドRNA+標的遺伝子、(iii)剥離したAuNPを洗浄するための分子生物学グレードの水。活性化RNP複合体をポリジメチルシロキサン(PDMS)ウェルに添加し、PCに付着させて、10分間インキュベートした。その後に、ウェルを分子生物学グレードの水で3回洗浄した。活性化RNP複合体の添加の前および水で洗浄した後のAuNP画像を、携帯型PRAMを使用して捕捉した。SARS-CoV-2ゲノムの両方の区画について、活性化RNP複合体の添加後にAuNPカウントの減少が観察された。この現象は、活性化RNP複合体の存在下で、PC表面上にAuNPを連結するDNAテザーの切断に成功する原因となった。標的N遺伝子および標的E遺伝子のAuNPカウントの結果の変化を、それぞれ図4(A)および4(B)に示す。
【0054】
アッセイの特異性を、活性化RNP複合体の切断活性を活性化されていない複合体の切断活性と比較することによって検討した。活性化複合体は標的遺伝子からなっていたが、活性化されていない複合体(図5(A、B)において対照として示される)は、その中に標的遺伝子を有していなかった。図5(A)で観察されるように、SARS-CoV-2ゲノムの両方の区画について、PCに不活化CRISPR複合体を添加する前および後で、AuNPカウントに有意な変化はなかった。図5(B)に示されるチャートは、活性化RNP複合体の存在下でAuNPの約95%が除去されたが、対照試料中に標的遺伝子が存在しない場合には、AuNPのおよそ12%の変化が観察されたことを示す。
【0055】
[実施例3]Cas12aテザー切断によって放出されたナノ粒子の捕捉。
捕捉ベースのアッセイは、RNP複合体の標的活性化と、それに続いて、既知濃度の標的遺伝子を有する150μLのRNP複合体を含有する別々の1.5mLチューブ内の個々の3×4mmのPC上に見出されたssDNA係留AuNPの切断を、37℃で1時間行うことによって始めた。インキュベーション後に、RNP複合体、遺伝子断片および放出されたAuNPの150μL溶液を、ビオチン化PEGで官能化した捕捉PC表面を含有する200μL容量の8×8mm円形ウェルに移した。150uL溶液中に懸濁化されたAuNPを、捕捉PCを含有するウェル内で1時間インキュベートし、続いて溶液から取り出して、50倍対物レンズを使用して携帯型PRAM上で画像化した。標的遺伝子断片を含有しないRNP複合体とともにインキュベートした陰性対照PCを画像化して、非特異的切断(バックグラウンド信号)に伴うAuNPカウントを測定した。RNP複合体および遺伝子断片、EGFRWT(対照)またはEGFRL858R(突然変異体)のいずれかを含有する試料とともにインキュベートした各捕捉PCを画像化して、AuNPカウントを得た。陰性対照PCの画像化によって測定された平均バックグラウンド信号を差し引いた後、濃度(mol/L)および配列同一性(EGFRWTまたはEGFRL858R)のそれぞれについて、各PCの絶対的AuNPカウントを得た。続いて、それらの各々のAuNPカウントを使用して、各遺伝子断片(対照および突然変異体)に関する用量反応曲線を作成した。対照試料では用量反応は観察されなかったが、突然変異体遺伝子断片の場合には、1zM~1fMの濃度範囲にわたって直線的な用量反応が達成された(図7~9)。
【0056】
結論
本開示は、PRAM PCベースのバイオセンシングプラットフォーム上でのSARS-CoV-2ゲノムのさまざまな区画の検出が首尾良く迅速に行われたことを実証している。CRISPRアッセイ構成要素の柔軟な性質は、感染症および病原体、ならびにヒトの健康に影響を及ぼす病理学的状態、例えば、ヒトのがんの検出のための、本明細書に記載されるシステム、アッセイ、および方法の使用を強く示すものである。
【0057】
参考文献
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図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8
図9
【国際調査報告】