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特表2024-502035TNFR2に対する抗体およびそれの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】TNFR2に対する抗体およびそれの使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240110BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240110BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240110BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240110BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240110BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240110BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240110BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240110BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240110BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N1/19 ZNA
C12N1/21
C12N1/15
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12N15/13
A61K39/395 N
A61P37/02
A61P35/00
C07K16/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539977
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 US2021065649
(87)【国際公開番号】W WO2022147222
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/132,584
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/166,042
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521339223
【氏名又は名称】ノヴァロック バイオセラピューティクス, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100209037
【弁理士】
【氏名又は名称】猪狩 俊博
(72)【発明者】
【氏名】ペイ,イ
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ハイチュン
(72)【発明者】
【氏名】レイ,ミン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ハン
(72)【発明者】
【氏名】サム,チ,シン
(72)【発明者】
【氏名】プリツカー,アラ
(72)【発明者】
【氏名】リン,ボル-ルエイ
(72)【発明者】
【氏名】タン,ファンチアン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB41
4C085BB43
4C085BB44
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4H045AA11
4H045BA09
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045GA23
4H045GA25
(57)【要約】
本開示は、ヒトTNFR2に結合する抗体およびそれの抗体断片を提供する。本開示の抗体は、TNF-TNFR2シグナル伝達軸を阻害し、エフェクターT細胞におけるサイトカイン分泌を増強し、したがって、単独でまたは他の薬剤との組合せでのいずれかで、がんの処置に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)VH:CDR1:配列番号13、CDR2:配列番号14、CDR3:配列番号15、VL:CDR1:配列番号16、CDR2:配列番号17、CDR3:配列番号18;
(b)VH:CDR1:配列番号19、CDR2:配列番号20、CDR3:配列番号21、VL:CDR1:配列番号22、CDR2:配列番号23、CDR3:配列番号24;
(c)VH:CDR1:配列番号25、CDR2:配列番号26、CDR3:配列番号27、VL:CDR1:配列番号28、CDR2:配列番号29、CDR3:配列番号30;
(d)VH:CDR1:配列番号31、CDR2:配列番号32、CDR3:配列番号33、VL:CDR1:配列番号34、CDR2:配列番号35、CDR3:配列番号36;
(e)VH:CDR1:配列番号37、CDR2:配列番号38、CDR3:配列番号39、VL:CDR1:配列番号34、CDR2:配列番号40、CDR3:配列番号41;
(f)VH:CDR1:配列番号37、CDR2:配列番号49、CDR3:配列番号39、VL:CDR1:配列番号34、CDR2:配列番号40、CDR3:配列番号41;または
(g)VH:CDR1:配列番号42、CDR2:配列番号43、CDR3:配列番号44、VL:CDR1:配列番号45、CDR2:配列番号46、CDR3:配列番号47
を含む、抗TNFR2抗体。
【請求項2】
(a)配列番号1に記載の配列を有する重鎖可変領域および配列番号2に記載の配列を有する軽鎖可変領域;
(b)配列番号3に記載の配列を有する重鎖可変領域および配列番号4に記載の配列を有する軽鎖可変領域;
(c)配列番号5に記載の配列を有する重鎖可変領域および配列番号6に記載の配列を有する軽鎖可変領域;
(d)配列番号7に記載の配列を有する重鎖可変領域および配列番号8に記載の配列を有する軽鎖可変領域;
(e)配列番号9に記載の配列を有する重鎖可変領域および配列番号10に記載の配列を有する軽鎖可変領域;
(f)配列番号48に記載の配列を有する重鎖可変領域および配列番号10に記載の配列を有する軽鎖可変領域;または
(g)配列番号11に記載の配列を有する重鎖可変領域および配列番号12に記載の配列を有する軽鎖可変領域
を含む、請求項1に記載の抗TNFR2抗体。
【請求項3】
配列番号50に記載の重鎖定常領域を含む、請求項2に記載の抗TNFR2抗体。
【請求項4】
配列番号51に記載の軽鎖定常領域を含む、請求項2に記載の抗TNFR2抗体。
【請求項5】
完全ヒト抗体である、請求項1に記載の抗TNFR2抗体。
【請求項6】
キメラ抗体である、請求項1に記載の抗TNFR2抗体。
【請求項7】
二重特異性抗体または多重特異性抗体である、請求項1に記載の抗TNFR2抗体。
【請求項8】
ヒト化抗体である、請求項1に記載の抗TNFR2抗体。
【請求項9】
抗体断片である、請求項1に記載の抗TNFR2抗体。
【請求項10】
前記抗体断片は、Fab、Fab、F(ab)、Fd、Fv、scFvおよびscFv-Fc断片、単鎖抗体、ミニボディ、ならびにダイアボディからなる群から選択される、請求項9に記載の抗TNFR2抗体。
【請求項11】
活性成分として、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体の少なくとも1つおよび医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項12】
抗TNFR2のTNF-αへの結合を阻害することによって免疫系をモジュレートするのに使用するための、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
がんを処置するのに使用するための、請求項11または12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
がんを処置する方法であって、請求項11または12に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の抗TNFR2抗体をコードする配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項16】
配列番号1~12のいずれか1つに記載の配列をコードする、請求項15に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項17】
請求項16に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項18】
請求項16に記載のポリヌクレオチド、および/または請求項17に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項19】
請求項1に記載の抗TNFR2抗体の作製方法であって、請求項18に記載の宿主細胞を培養するステップを含む、作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本国際特許出願は、それの全体が参照により本明細書に組み込まれる、2020年12月31日出願の、米国仮特許出願第63/132,584号の利益を主張するものである。
【0002】
配列表に関する記載
本出願に関連する配列表は、コピー用紙の代わりにテキストフォーマットで提供され、ここで、本明細書に参照により組み込まれる。配列表を含有するテキストファイルの名前は、127755-5011-US02_Sequence_Listing.txt.である。テキストファイルは、約102KBであり、およそ2018年7月19日に作成され、EFS-Webにより電子的に提出されている。
【0003】
分野
本開示は、免疫療法の分野であり、ヒトTNFR2受容体に結合する抗体およびそれの断片、これらの抗体をコードするポリヌクレオチド配列、およびそれらを産生する細胞に関する。本開示は、これらの抗体を含む組成物、およびがん免疫療法のTNF-TNFR2軸をモジュレートするためそれらの使用方法にさらに関する。
【背景技術】
【0004】
腫瘍壊死因子(TNF)およびTNF受容体(TNFR)スーパーファミリー(TNFSF/TNFRSF)は、免疫と非免疫細胞両方の細胞活性の調節に重要な役割を果たす(Dostert et al., Physiol. Rev., 99(1):115-160, 2019)。実際、TNFSF/TNFRSFメンバーは、免疫応答の共刺激または共阻害のいずれかを駆動する様々な細胞および分子メカニズムの調整のために重要な方法で自然免疫細胞と獲得免疫細胞の両方を制御する(Ward-Kavanagh, et al., Immunity, 44: 1005-1019, 2016)。TNFは、腫瘍微小環境内に豊富であり、腫瘍免疫回避を容易にし、腫瘍増殖を促進する。
【0005】
TNF、炎症性サイトカインは、主に免疫細胞(例えば、単球、マクロファージ、ならびにTおよびB細胞)によって産生され、2つの構造的に異なる膜貫通受容体:I型TNF受容体(TNFR1、p55およびTNFRSF1Aとしても公知)およびII型TNF受容体(TNFR2、p75およびTNFRSF1Bとしても公知)をとおしてその生物学的効果を遂行する。TNFR1およびTNFR2は、発現パターン、構造、シグナル伝達メカニズムおよび機能に明らかな違いを有する。ほとんどすべての細胞型に普遍的に発現されるTNFR1とは異なり、TNFR2は、リンパ球、内皮細胞、およびヒト間充織幹細胞のマイナーサブセットを含む、限定された細胞のセットに発現される。TNFR2の限定発現パターンは患者への毒性を下げると考えられる(Dostert et al., Physiol. Rev., 99(1):115-160, 2019)。
【0006】
重要なことに、TNFR2は、ヒトCD4Foxp3制御性T細胞(Treg)に構成的に発現される。TNFR2受容体を発現するTregは、ヒトとマウスの両方で強く免疫抑制性であり、TNFR2Tregは、ヒトおよびマウス腫瘍で見出される主要な腫瘍浸潤細胞である(Torrey et al., Leukemia, 33:1206-1218, 2018)。一部のヒトがんでは、浸潤TregでのTNFR2の発現は、対照者での循環Tregでよりも100倍高いと推定される(Torrey et al., Leukemia, 33:1206-1218, 2018)。TNFR2を介して、TNFは、腫瘍微小環境におけるTreg細胞の表現型安定性、増殖性拡大、および抑制機能を優先的に活性化、拡大、および促進する(Shaikh et al., Front. Immunol., 18 June, 2018、およびVanamee et al., Science Signaling, Vol. 11, Issue 511, eaao4910, 2018)。
【0007】
TNFR2は、TMEにおける骨髄性抑制性細胞(MDSC)、別の免疫抑制細胞の蓄積に関与することも報告されている。骨髄性抑制性細胞(MDSC)におけるTNFR2の膜結合TNF(tmTNF)活性化は、腫瘍免疫回避にさらに寄与し、腫瘍進行を促進する(Ba et al. Int. Immunopharm, 2017)。
【0008】
TregおよびMDSCに加えて、TNFR2も、卵巣がん、大腸がん、腎癌、ホジキンリンパ腫、および骨髄腫を含む、一部の腫瘍細胞で発現される(Shaikh et al., Front. Immunol., 18 June, 2018)。TNFR2は、癌遺伝子として認識され、がんの免疫療法戦略としてTNFR2を標的化するアンタゴニスト抗体の使用を記載する報告が近年公表されている(Case et al., Leukoc. Biol., 1-11, 2020、Torrey et al., Sci. Signal., 10:462, 2017、Torrey et al., Leukemia 33, 1206-1218, 2019、Yang et al., J. Leukoc. Biol., 1-10, 2020、Martensson et al, AACR 2020, Abstract #725、Martensson et al. AACR Annual Meeting 2020, Poster #936)。
【0009】
TNFR2発現はナイーブCD4+およびCD8+細胞では低いが、TNFR2は、腫瘍微小環境の活性化CD8およびCD4 T細胞の表面に発現される強力な共刺激分子として報告される。TNFR2結合は、それらの活性化、増殖およびサイトカイン産生を促進する(Kim. E et al, J Immunol October 1, 2004, 173 (7) 4500-4509;およびYe LL, et al. Front Immunol, 9:583, 2018)。したがって、TNFR2に対するアゴニスト抗体は、エフェクターT細胞機能およびそれらの抗腫瘍応答をさらに増強する能力を有する(Tam et al., Sci. Transl. Med., 11:512, eaax0720, 2019、Martensson et al. AACR Annual Meeting 2020, Poster #936、Wei et al., AACR Annual Meeting 2020, Poster #2282)。
【0010】
腫瘍微小環境におけるTNFR2へのTNF結合は、Tregおよび骨髄性抑制性細胞(MDSC)の拡大および活性化を誘導し、それによりエフェクターT細胞(Teff)の免疫応答を抑制する。結果として、TMEにおいて、アンタゴニストまたはアゴニスト抗TNFR2抗体のいずれかを使用して抑制細胞活性を下方制御するかまたはエフェクター細胞活性を上方制御することは、がんの処置における新規の戦略を提供する。
【0011】
いくつかの抗がん免疫療法が食品医薬品局(FDA)によって認可されているが、今日までに、FDAによって認可された抗TNFR2治療はない。したがって、単独で、または他の薬剤との組合せで、がん免疫療法のTNF-TNFR2軸をモジュレートするために使用することができる、安全かつ効果的な抗TNFR2抗体を提供するアンメットニーズがある。
【発明の概要】
【0012】
本開示は、抗腫瘍壊死因子受容体2抗体(抗TNFR2抗体)およびそれの断片を提供することにより、上のニーズを解決する。これらの抗体およびそれの断片は、CDR配列の独自のセット、TNFR2に対する特異性(TNFR1に対してではない)、およびカニクイザルTNFR2との交差反応性によって特徴付けられる。より具体的には、本開示は、ヒトTNFR2に結合する抗体に、およびがん免疫療法のためにTNF-TNFR2軸をモジュレートするためのそれらの使用に関する。開示された抗体は、抗PD-1/PD-L1耐性に寄与する枯渇したT細胞、抑制性骨髄細胞、または制御性T細胞が豊富な腫瘍微小環境のために特に有益であり得る。
【0013】
一部の実施形態によれば、抗体またはそれの抗体断片は、配列番号1、3、5、7、9、11および48から選択される重鎖(HC)可変領域の3つのCDR、ならびに、配列番号2、4、6、8、10および12から選択される軽鎖(LC)可変領域の3つのCDR、または、同定された抗体または断片配列と少なくとも90%の配列同一性を有するそれのアナログもしくは誘導体からなる群から選択される一連の6つの相補性決定領域(CDR)配列を含む。
【0014】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、CDR1:配列番号13、CDR2:配列番号14、およびCDR3:配列番号15を含む重鎖可変領域;ならびに/またはCDR1:配列番号16、CDR2:配列番号17、およびCDR3:配列番号18を含む軽鎖可変領域、を含む。
【0015】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、CDR1:配列番号19、CDR2:配列番号20、およびCDR3:配列番号21を含む重鎖可変領域;ならびに/またはCDR1:配列番号22、CDR2:配列番号23、およびCDR3:配列番号24を含む軽鎖可変領域、を含む。
【0016】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、CDR1:配列番号25、CDR2:配列番号26、およびCDR3:配列番号27を含む重鎖可変領域;ならびに/またはCDR1:配列番号28、CDR2:配列番号29、およびCDR3:配列番号30を含む軽鎖可変領域、を含む。
【0017】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、CDR1:配列番号31、CDR2:配列番号32、およびCDR3:配列番号33を含む重鎖可変領域;ならびに/またはCDR1:配列番号34、CDR2:配列番号35、およびCDR3:配列番号36を含む軽鎖可変領域、を含む。
【0018】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、CDR1:配列番号37、CDR2:配列番号38、およびCDR3:配列番号39を含む重鎖可変領域;ならびに/またはCDR1:配列番号34、CDR2:配列番号40、およびCDR3:配列番号41を含む軽鎖可変領域、を含む。
【0019】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、CDR1:配列番号37、CDR2:配列番号49、およびCDR3:配列番号39を含む重鎖可変領域;ならびに/またはCDR1:配列番号34、CDR2:配列番号40、およびCDR3:配列番号41を含む軽鎖可変領域、を含む。
【0020】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、CDR1:配列番号42、CDR2:配列番号43、およびCDR3:配列番号44を含む重鎖可変領域;ならびに/またはCDR1:配列番号45、CDR2:配列番号46、およびCDR3:配列番号47を含む軽鎖可変領域、を含む。
【0021】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、配列番号1、3、5、7、9、11、および48からなる群から選択される可変重鎖配列を含む。
【0022】
他の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、配列番号2、4、6、8、10、および12からなる群から選択される可変軽鎖配列を含む。
【0023】
他の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、配列番号1、3、5、7、9、11、および48からなる群から選択される可変重鎖配列、ならびに、配列番号2、4、6、8、10、および12からなる群から選択される可変軽鎖配列、を含む。
【0024】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体または抗体断片は、以下の組合せ:
(a)配列番号1を含む可変重鎖配列および配列番号2を含む可変軽鎖配列;
(b)配列番号3を含む可変重鎖配列および配列番号4を含む可変軽鎖配列;
(c)配列番号5を含む可変重鎖配列および配列番号6を含む可変軽鎖配列;
(d)配列番号7を含む可変重鎖配列および配列番号8を含む可変軽鎖配列;
(e)配列番号9を含む可変重鎖配列および配列番号10を含む可変軽鎖配列;
(f)配列番号48を含む可変重鎖配列および配列番号10を含む可変軽鎖配列;ならびに
(g)配列番号11を含む可変重鎖配列および配列番号12を含む可変軽鎖配列
から選択される可変重鎖配列および可変軽鎖配列を含む。
【0025】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体が提供され、この場合、抗体は、(a)CDR1:配列番号13、CDR2:配列番号14、およびCDR3:配列番号15を含む重鎖可変領域;ならびに/もしくはCDR1:配列番号16、CDR2:配列番号17、およびCDR3:配列番号18を含む軽鎖可変領域;(b)CDR1:配列番号19、CDR2:配列番号20、およびCDR3:配列番号21を含む重鎖可変領域;ならびに/もしくはCDR1:配列番号22、CDR2:配列番号23、およびCDR3:配列番号24を含む軽鎖可変領域;(c)CDR1:配列番号25、CDR2:配列番号26、およびCDR3:配列番号27を含む重鎖可変領域;ならびに/もしくはCDR1:配列番号28、CDR2:配列番号29、およびCDR3:配列番号30を含む軽鎖可変領域;(d)CDR1:配列番号31、CDR2:配列番号32、およびCDR3:配列番号33を含む重鎖可変領域;ならびに/もしくはCDR1:配列番号34、CDR2:配列番号35、およびCDR3:配列番号36を含む軽鎖可変領域;(e)CDR1:配列番号37、CDR2:配列番号38、およびCDR3:配列番号39を含む重鎖可変領域;ならびに/もしくはCDR1:配列番号34、CDR2:配列番号40、およびCDR3:配列番号41を含む軽鎖可変領域;(f)CDR1:配列番号37、CDR2:配列番号49、およびCDR3:配列番号39を含む重鎖可変領域;ならびに/もしくはCDR1:配列番号34、CDR2:配列番号40、およびCDR3:配列番号41を含む軽鎖可変領域;または(g)CDR1:配列番号42、CDR2:配列番号43、およびCDR3:配列番号44を含む重鎖可変領域;ならびに/もしくはCDR1:配列番号45、CDR2:配列番号46、およびCDR3:配列番号47を含む軽鎖可変領域、を含む。
【0026】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体およびそれの抗体断片は、表1に開示の1つもしくは複数の重鎖可変領域CDRおよび/または表2に開示の1つもしくは複数の軽鎖可変領域CDRを含む。
【0027】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、以下の構造的および機能的特徴の1つまたは複数を、単独でまたは組合せで呈する:(a)ヒトTNFR2に特異的である、(b)ヒトTNFR1に結合しない、(c)TNFR2のN末端システインリッチドメインのCRD3またはCRD4領域のエピトープに結合する、(d)カニクイザルTNFR2と交差反応する、(e)ヒトTNF結合相互作用を妨害する、(f)Fc受容体への結合の非存在下で可溶性TNFα刺激T細胞活性化を阻害する、(g)Fc受容体への結合の非存在下で膜貫通TNF刺激T細胞活性化を阻害する、(h)Fc受容体への結合時に慢性的に刺激されるヒトエフェクターT細胞におけるアゴニスト活性を増強する、(i)ヒトTNFR2ノックインMC38同系腫瘍モデルにおいて抗腫瘍効果を示す、(j)ヒトTNFR2ノックインMC38腫瘍モデルにおける抗PD-L1処置の腫瘍増殖阻害を増強する、(k)ヒトTNFR2ノックインPD1耐性B16F10メラノーマモデルにおいて抗PD-L1処置の有効性を増強する、または抗腫瘍活性に寄与するADCC活性を示す、または(m)腫瘍内のCD8対Treg比を増強する。
【0028】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体は、TNFR2の内因性レベルを発現するヒト細胞におよびTNFR2を過剰発現するように改変された宿主細胞に特異的に結合し、ヒトTNFR1を発現する細胞への結合を示さない。本明細書に開示の抗TNFR2抗体または抗体断片は、サブナノモルのEC50値でヒトまたはカニクイザルTNFR2を過剰発現する細胞に結合する。
【0029】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体または抗体断片は、TNFR2のN末端システインリッチドメインのCRD3またはCRD4領域のエピトープに結合する。代替の実施形態では、抗TNFR2抗体およびそれの抗体断片は、CRD1またはCRD2領域のエピトープに結合する。
【0030】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体または抗体断片は、カニクイザルTNFR2(cynoTNFR2)と交差反応する。
【0031】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体およびそれの抗体断片は、ヒトTNF/TNFR2結合相互作用を遮断する。代替の実施形態では、抗TNFR2抗体およびそれの抗体断片は、ヒトTNF/TNFR2結合相互作用を遮断しないが、可溶性TNFおよび膜TNFの活性をアンタゴナイズする。
【0032】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体およびそれの抗体断片は、TNFR2を発現するヒト細胞の可溶性TNFαと膜TNFα刺激応答の両方を阻害する。
【0033】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体およびそれの抗体断片は、FcγRとの多価の架橋活性を増加させるように改変されたFc領域を含み、それはT細胞のFc依存性アゴニスト活性を増強するであろう。
【0034】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体は、枯渇したヒトエフェクターT細胞によるサイトカイン分泌を増強する。
【0035】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体は、ヒトTNFR2ノックインMC38同系マウス腫瘍モデルにおいて抗腫瘍効果を示す。
【0036】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体は、ヒトTNFR2ノックインMC38腫瘍モデルにおける抗PD-L1処置の腫瘍増殖阻害を増強する。
【0037】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体は、ヒトTNFR2ノックインPD1耐性B16F10メラノーマモデルにおける抗PD-L1処置の効果を増強する。
【0038】
一部の実施形態では、開示した抗TNFR2抗体の抗腫瘍効果は、腫瘍微小環境からの制御性T細胞のADCC媒介性枯渇によって達成され得る。
【0039】
一部の実施形態では、開示した抗TNFR2抗体の抗腫瘍効果は、腫瘍微小環境においてCD8対Treg比を増強することによって達成され得る。
【0040】
本開示は、上の抗体分子の少なくとも1つをコードする単離したヌクレオチド配列も提供する。
【0041】
本開示は、上のヌクレオチド配列の少なくとも1つを含むプラスミドも提供する。
【0042】
本開示は、上のヌクレオチド配列の1つ、または上のプラスミドの1つを含む細胞も提供する。
【0043】
本開示は、本明細書に開示の抗体またはそれの断片の少なくとも1つを含むかまたはそれからなる医薬組成物、場合により、医薬的に許容される希釈剤、担体、ビヒクルおよび/または賦形剤も提供する。そのような医薬組成物は、がんの抗体ベースの免疫療法のために使用され得る。
【0044】
本開示は、治療有効量の開示した抗TNFR2抗体またはそれの断片の少なくとも1つを、単独で、または別の治療剤との組合せで、患者に投与するステップを含む、患者におけるがんの処置のための方法にも関する。
【0045】
本開示の前述の概要、および以下の詳細な説明は、添付の図と併せて読むことで、よりよく理解されよう。本開示を例示する目的で、目下好ましい実施形態を図に示している。しかし、示されたまさにその通りの構成、例および手段に、本開示が限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1-1】図1は、ヒト抗TNFR2抗体のVHドメインおよびVLドメインのアミノ酸配列ならびにそれらのそれぞれのCDR配列(カバットナンバリング)を提供する図である。配列識別子が提供されており、CDRについては可変ドメイン配列に下線が引かれている。
図1-2】図1は、ヒト抗TNFR2抗体のVHドメインおよびVLドメインのアミノ酸配列ならびにそれらのそれぞれのCDR配列(カバットナンバリング)を提供する図である。配列識別子が提供されており、CDRについては可変ドメイン配列に下線が引かれている。
図1-3】図1は、ヒト抗TNFR2抗体のVHドメインおよびVLドメインのアミノ酸配列ならびにそれらのそれぞれのCDR配列(カバットナンバリング)を提供する図である。配列識別子が提供されており、CDRについては可変ドメイン配列に下線が引かれている。
図1-4】図1は、ヒト抗TNFR2抗体のVHドメインおよびVLドメインのアミノ酸配列ならびにそれらのそれぞれのCDR配列(カバットナンバリング)を提供する図である。配列識別子が提供されており、CDRについては可変ドメイン配列に下線が引かれている。
図1-5】図1は、ヒト抗TNFR2抗体のVHドメインおよびVLドメインのアミノ酸配列ならびにそれらのそれぞれのCDR配列(カバットナンバリング)を提供する図である。配列識別子が提供されており、CDRについては可変ドメイン配列に下線が引かれている。
図2図2A-2Bは、フローサイトメトリー(A)および画像結合アッセイ(B)による、ヒトTNFR2発現HEK293TにおけるTNFR2抗体の結合活性を示す図である。
図3図3Aおよび3Bは、抗TNFR2抗体のエピトープビニングおよびビニングクラスターを示す図である。図3Aに、TNFR2抗体の6つの代表的なクローンの交差遮断活性を示し、図3Bに交差遮断結果のビニングクラスターを示す。
図4図4は、ビオチン化TNFのヒトTNFR2発現HEK293Tへの結合の阻害のパーセンテージを示す図である。
図5図5は、NFκBルシフェラーゼレポーターを発現するTHP1細胞におけるTNFR2抗体による可溶性TNF刺激NFκBシグナル伝達の阻害のパーセンテージを示す図である。
図6図6A-6Bは、組換えTNFR2を発現するJurkat細胞におけるTNFR2抗体による膜TNF刺激NFκBシグナル伝達の阻害のパーセンテージを示す図であり、NFκBルシフェラーゼレポーターは15nM(A)および8nM(B)で試験した。
図7図7A-7Cは、Jurkat T細胞シグナル伝達への抗TNFR2抗体の架橋結合の効果を示す図である。図7Aに、Jurkat-TNFR2レポーターアッセイの概略図を示し、図7BにTHP-1細胞と共培養した場合のJurkat NFκB活性化ヘの効果を示す。図7Cに、TNFR2抗体または対照による処置時の、制御性T細胞と共培養したCD8 T細胞からの分泌されたIFNγのレベルを示す。凡例は、μg/mLの試験抗体の濃度を示す。
図8図8A-8Dは、TNFR2抗体または対照による処置時の、in vitroで生成した枯渇CD8 T細胞の増殖(A)、IFNγ(B)、TNF(C)、およびグランザイム(D)を示す図である。グラフで示した処置は、抗体とともに可溶性F(ab’)架橋剤を含む。
図9図9Aおよび9Bは、TNFR2抗体またはアイソタイプ対照抗体による処置時の、MC38腫瘍担持hTNFR2ノックインマウスにおける腫瘍増殖を示す図である。図9(A)に、腫瘍増殖曲線を示す。図9(B)に、異なる処置群の腫瘍サイズの一元配置分散分析を提供する。
図10図10Aおよび10Bは、単一薬剤としてまたは組み合わせた、抗mPD-L1および/または抗TNFR2抗体、またはビヒクル対照による処置時の、hTNFR2ノックインモデルのMC38腫瘍担持マウスの生存を示す図である。図10(A)に、腫瘍増殖曲線を示す。図10(B)に、延命効果を示す。
図11図11は、単一薬剤としてまたは組み合わせた、抗mPD-L1および/または抗TNFR2抗体、またはビヒクル対照による処置時の、hTNFR2ノックインのB16-F10腫瘍担持マウスの腫瘍増殖阻害を示す図である。
図12図12Aおよび12Bは、2つの異なるアイソタイプのTNFR2抗体、またはビヒクル対照による処置時の、MC38腫瘍担持hTNFR2ノックインマウスの腫瘍増殖を示す図である。図12(A)に、腫瘍増殖曲線を示す。図12(B)に、異なる処置群の腫瘍サイズの一元配置分散分析を提供する。
図13図13Aおよび13Bは、2つの異なるマウスIgGバリアントのTNFR2抗体による処置時の、MC腫瘍担持hTNFR2ノックインマウスの腫瘍増殖を示す図である。図13(A)に、腫瘍増殖曲線を示し、図13(B)に、一元配置分散分析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本開示がより容易に理解することができるように、ある特定の技術的および科学的用語について下に具体的に定義する。本文書の他の場所で特に定義されていない限り、本明細書で使用される他のすべての技術的および科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者であれば一般に理解される意味を有する。
【0048】
本開示全体をとおして、以下の略語が使用される:
mAbまたはMabまたはMAb - モノクローナル抗体。
CDR - 免疫グロブリン可変領域の相補性決定領域。
VHまたはVH - 免疫グロブリン重鎖可変領域。
VLまたはVL - 免疫グロブリン軽鎖可変領域。
FR - 抗体フレームワーク領域、CDR領域を除外する免疫グロブリン可変領域。
【0049】
「腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー」(TNFR)という用語は、共通のシステインリッチドメイン(CRD)によって特徴付けられる、カルボキシ末端細胞内ドメインおよびアミノ末端細胞外ドメインを有するI型膜貫通タンパク質の群を指す。TNFRスーパーファミリーは、TNFスーパーファミリーの1つまたは複数のリガンドへの結合の結果として細胞シグナル伝達を媒介する受容体を含む。TNFRスーパーファミリーは、3つのサブグループ:(i)細胞内部分にデスドメイン(DD)を含有し、DD結合パートナー(例えば、Fas関連デスドメイン(FADD)またはTNFR1関連デスドメイン(TRADD))を介してアポトーシスを活性化するデス受容体(DR);(ii)TRAFファミリーのメンバーと相互作用するTNFR関連因子(TRAF)相互作用受容体;および(iii)サイトゾルドメインを欠損するデコイ受容体(DcR)に分けられ得る。
【0050】
「TNFR2」、「TNFR2受容体」、または「TNFR2タンパク質」という用語には、ヒトTNFR2、特に、ヒトTNFR2の天然配列ポリペプチド、アイソフォーム、キメラポリペプチド、すべての相同体、断片、および前駆体が含まれる。ヒト、カニクイザルおよびマウスTNFR2のアミノ酸配列は、NCBI参照配列NP_001057.1(ヒト)(配列番号52);XP_005544817.1(カニクイザル)(配列番号53);NP_035740.2(マウス)(配列番号54)に提供されている。カニクイザルとマウスのTNFR2のオルソログは、それぞれヒトタンパク質と95%および77%の配列同一性を共有する。
【0051】
「TNFR1」、「TNFR1受容体」、または「TNFR1タンパク質」という用語には、ヒトTNFR1、特に、ヒトTNFR1の天然配列ポリペプチド、アイソフォーム、キメラポリペプチド、すべての相同体、断片、および前駆体が含まれる。ヒトTNFR1のアミノ酸配列は、NCBI参照配列NP_001056.1(ヒト)(配列番号55)に提供されている。ヒトTNFR1とTNFR2は、18%の配列同一性を共有する。
【0052】
「TNF」、および「TNF-α」という用語は、NCBI参照配列NP_000585.2(ヒト)(配列番号56)に提供されている天然TNFポリペプチドを指す。腫瘍壊死因子-αは、2つの生物学的に活性な形態、膜結合TNF(tmTNF-α)(配列番号57)および可溶性TNF-α(sTNF-α)で存在する。膜貫通TNF(tmTNF-α)は、TNFR2の主要なリガンドである。
【0053】
本明細書で使用される場合、「腫瘍壊死因子受容体2シグナル伝達」、「TNFR2シグナル伝達(signaling)」、「TNFR2シグナル伝達(signal transduction)」等の用語は、交換可能に使用され、内因性TNFR2リガンド、例えばTNFαによるTNFR2+細胞(例えば、T-reg細胞、MDSC、またはTNFR2がん細胞)の表面でのTNFR2の活性化時に通常起こる細胞事象を指す。TNFR2シグナル伝達は、NFκB、STAT5、CHUK、NKFBIE、NKFBIA、MAP3K111、TRAF2、TRAF3、RelB、cIAP2からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子の発現の増加が見出されることにより証明され得る(Torrey et al. Sci. Signal., 10: 462, 2017、Yang et al., Front Immunol, 9, 2018)。あるいは、TNFRシグナル伝達は、サイトカイン、例えばTNF、IL-1β、IL-2、IL-6およびIFNγの発現が見出されることにより示され得る(Holbrook et al., F1000Res, Jan 28;8, 2019)。
【0054】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広義に使用され、それらに限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、および多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)を含めて、種々の抗体構造を包含する。
【0055】
本明細書で使用される場合、「アンタゴニスト抗TNFR2抗体」および「アンタゴニストTNFR2抗体」という用語は、Fc受容体への結合の非存在下で、TNFR2の活性化を阻害または低減する、TNFR2によって媒介される1つまたは複数のシグナル伝達経路を弱める、および/またはTNFR2の活性化によって媒介される少なくとも1つの活性を低減または阻害することができるTNFR2特異的抗体を指す。例えば、アンタゴニストTNFR2抗体は、制御性T細胞の成長および増殖を阻害または低減し得る。アンタゴニストTNFR2抗体は、TNFR2のTNFα結合を遮断することにより、TNFR2活性化を阻害または低減し得る。
【0056】
「アゴニスト抗TNFR2抗体」および「アゴニストTNFR2抗体」という用語は、Fc受容体ヘの結合の非存在下で、TNFR2によって媒介される1つまたは複数のシグナル伝達経路を活性化することができるTNFR2特異的抗体を指す。例えば、アゴニストTNFR2抗体は、AKTまたはNFKBシグナル伝達経路を活性化し、標的細胞の増殖促進または生存促進をもたらし得る。アゴニスト抗TNR2抗体は、例えば、IFNγ、グランザイムB、TNFまたはIL-2の放出を増加する、エフェクターT細胞機能を増強することもできる。
【0057】
本明細書で使用される場合、「遮断する」という用語は、可溶性形態または膜形態のいずれかでTNFの結合を遮断する抗TNFR2抗体の能力を指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「抗腫瘍壊死因子受容体2抗体」、「抗TNFR2抗体」、「抗TNFR2抗体部分」、および/または「抗TNFR2抗体断片」等という用語には、少なくとも免疫グロブリン分子の一部、例えば、TNFR2に特異的に結合することができる、重鎖もしくは軽鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、もしくはそれのリガンド結合部分、重鎖もしくは軽鎖可変領域、重鎖もしくは軽鎖定常領域、またはこれらの任意の部分が含まれるが、これらに限定されない、任意のタンパク質またはペプチド含有分子が含まれる。
【0059】
「モノクローナル抗体」または「mAb」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指し、例えば、当該集団を構成する個々の抗体は、可能性のあるバリアント抗体を除いて、同一でありかつ/または同じエピトープに結合する。例えば、バリアント抗体は、天然に存在する突然変異を含有するかまたはモノクローナル抗体調製物の製造および/または保存過程で発生する。様々な決定基(エピトープ)に対して向けられた様々な抗体を通常では含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物のそれぞれのモノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対して向けられたものである。したがって、修飾語「モノクローナル」とは、実質的に均一な集団の抗体から得られている抗体の性状を指示するものであり、任意の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、本開示に従って使用されるモノクローナル抗体は、それらに限定されないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含めて、様々な技法によって作製することができ、モノクローナル抗体を作製するためのかかる方法およびその他の例示的な方法が、本明細書に記載されている。
【0060】
「キメラ抗体」という用語は、組換え抗体であって、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の相当する配列と同一または相同であるが、一方で、その鎖(複数可)の残部は、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の相当する配列と同一または相同である、組換え抗体、同様に、それらが所望の生物学的活性を呈する限り、かかる抗体の断片を指す。加えて、相補性決定領域(CDR)移植を実施して、親和性または特異性を始めとする抗体分子のある特定の特性を変えることができる。通常では、可変ドメインはげっ歯類動物などの実験動物(「親抗体」)由来の抗体から得られ、そして定常ドメイン配列はヒト抗体から得られるので、生成するキメラ抗体は、ヒト対象においてエフェクター機能を方向付けることができ、それが由来する親(例えば、マウス)抗体よりも、有害な免疫応答を誘発する可能性が低くなる。
【0061】
「ヒト化抗体」という用語は、重鎖および/または軽鎖の非ヒト(例えば、マウス、ラット、またはハムスター)相補性決定領域(CDR)と一緒に、可変領域において1つまたは複数のヒトフレームワーク領域を含むように改変された抗体を指す。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、CDR領域を除いて完全にヒト型である配列を含む。ヒト化抗体は通常では、非ヒト化抗体と比べてヒトに対する免疫原性が低く、したがってある特定の状況において治療効果を提供する。当業者であれば、ヒト化抗体について知っており、それらを生成するのに適した技法についても知っている。例えば、それらのそれぞれは全内容が参照により本明細書に組み込まれる、Hwang, W. Y. K., et al., Methods 36:35, 2005;Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:10029-10033, 1989;Jones et al., Nature, 321:522-25, 1986;Riechmann et al., Nature, 332:323-27, 1988;Verhoeyen et al., Science, 239:1534-36, 1988;Orlandi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:3833-37, 1989;米国特許第5,225,539号明細書;同第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,693,761号明細書;同第5,693,762号明細書;同第6,180,370号明細書;およびSelick et al.、国際公開第90/07861号パンフレットを参照されたい。
【0062】
「ヒト抗体」とは、ヒトによって生成される抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有する、および/または当業者にとっては既知のヒト抗体を作製するための技法のいずれかを使用して作製されている、抗体である。ヒト抗体に関する本定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に排除する。ヒト抗体は、Cole et al, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985);Boerner et al, J. Immunol, 147(I):86-95 (1991)に記載の方法を含めて、当技術分野で既知の種々の技法を使用して生成することができる。van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol, 5: 368-74 (2001)もまた参照されたい。ヒト抗体は、トランスジェニック動物に標的抗原を投与することによって調製することができるが、当該トランスジェニック動物は抗原負荷に応答してかかる抗体を産生するように改変されており、その動物の内因性の遺伝子座は無効とされている、例えば、免疫HuMabマウス(例えば、HuMabマウスに関しては、Nils Lonberg et al., 1994, Nature 368:856-859、国際公開第98/24884号パンフレット、国際公開第94/25585号パンフレット、国際公開第93/1227号パンフレット、国際公開第92/22645号パンフレット、国際公開第92/03918号パンフレットおよび国際公開第01/09187号パンフレットを参照されたい)、ゼノマウス(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関しては、米国特許第6,075,181号明細書および同第6,150,584号明細書を参照されたい)またはTrianniマウス(例えば、国際公開第2013/063391号パンフレット、国際公開第2017/035252号パンフレットおよび国際公開第2017/136734号パンフレットを参照されたい)である。
【0063】
抗体の「クラス」とは、その重鎖が有する定常ドメインまたは定常領域のタイプを指す。抗体に関し主たる5つのクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)に、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAl、およびIgA2にさらに分けることができる。免疫グロブリンの様々なクラスに相当する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
【0064】
抗体の「抗原結合ドメイン」という用語(または単に「結合ドメイン」)または同様の用語は、抗原複合体に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体の「抗原結合部分」という用語内に包含される結合断片の例には、以下が含まれる、(i)Fab断片、VL、VH、CLおよびCHの各ドメインからなる一価の断片、(ii)F(ab’)断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片、(iii)VHドメインおよびCHドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., (1989) Nature 341: 544-546)、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに(vii)合成リンカーによって必要に応じて連結することができる2つ以上の単離されたCDRの組合せ。
【0065】
抗体の「可変ドメイン」(Vドメイン)は、結合を媒介し、特定の抗体の抗原に特異性を付与する。しかし、可変性は、可変ドメインの110個のアミノ酸全長にわたって均等には分布していない。代わりに、V領域は、それぞれが9~12個のアミノ酸長である「超可変領域」またはCDRと本明細書では呼ばれる極度の可変性のより短い領域によって分離された15~30個のアミノ酸からなるフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変である区間から、構成される。当業者であれば理解されるように、CDRの正確なナンバリングおよび配置は、様々なナンバリングシステムのうちで異なってもよい。しかし、可変重配列および/または可変軽配列の開示には関連するCDRの開示が含まれることを理解されたい。したがって、各可変重領域の開示は、vhCDR(例えば、vhCDR1、vhCDR2、およびvhCDR3)の開示であり、各可変軽領域の開示は、vlCDR(例えば、vlCDR1、vlCDR2、およびvlCDR3)の開示である。
【0066】
本明細書で使用される用語として「相補性決定領域」または「CDR」とは、特異的抗原認識の媒介を主に担う、重鎖と軽鎖の両ポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。各VLおよび各VHの内には、3つのCDR(CDR1、CDR2、およびCDR3と称される)が存在する。本明細書で特に明記されない限り、CDR領域およびフレームワーク領域は、カバットナンバリングスキームに従ってアノテーションが付けられている(Kabat E. A., et al., 1991, Sequences of proteins of Immunological interest, In: NIH Publication No. 91-3242, US Department of Health and Human Services, Bethesda, Md)。
【0067】
他の実施形態では、抗体のCDRは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、MacCallum RM et al, (1996) J Mol Biol 262: 732-745に従って、または、それらのそれぞれは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Lefranc M-P, (1999) The Immunologist 7: 132- 136およびLefranc M-P et al, (1999) Nucleic Acids Res 27: 209-212に記載のIMGTナンバリングシステムに従って、決定することができる。また、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Martin A. "Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains," in Antibody Engineering, Kontermann and Diibel, eds., Chapter 31, pp. 422-439, Springer-Verlag, Berlin (2001)も、参照されたい。他の実施形態では、抗体のCDRはAbMナンバリングスキームに従って決定することができ、このスキームはAbM超可変領域を参照とするものであるが、この領域とは、KabatのCDRとChothiaの構造ループとの間の妥協を表し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Oxford Molecular’s AbM抗体モデリングソフトウェア(Oxford Molecular Group,Inc.)により使用されている。
【0068】
「フレームワーク」または「フレームワーク領域」または「FR」とは、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは一般には、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4から構成される。
【0069】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンのVLフレームワーク配列またはVHフレームワーク配列の選択において最も普通に存在するアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンのVL配列またはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループ由来である。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda Md. (1991), Vols. 1-3にあるような、サブグループである。一実施形態では、VLの場合、サブグループは、Kabat et al.、上掲にあるような、サブグループカッパIである。一実施形態では、VHの場合、サブグループは、Kabat et al.、上掲にあるような、サブグループIllである。
【0070】
「ヒンジ領域」は一般に、ヒトIgG1の216~238(EUナンバリング)または226~251(カバットナンバリング)からのストレッチングとして定義される。ヒンジは、個別の3つの領域、上部、中間(例えばコア)、および下部の各ヒンジにさらに分けることができる。
【0071】
本明細書で使用される「Fc領域」および「定常領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義する。本用語には、天然配列のFc領域およびバリアントFc領域が含まれる。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端にまで及ぶ。しかし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在しても存在しなくてもよい。本明細書で別段の指定がない限り、Fc領域または定常領域のアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)に記載のEUインデックスとも呼ばれるEUナンバリングシステムに従う。
【0072】
本明細書で使用される場合、「非天然の定常領域」という用語は、抗体可変領域とは異なる供給源に由来する抗体定常領域を指すか、または天然の抗体定常領域配列とは異なるアミノ酸配列を有するヒト生成の合成ポリペプチドである。例えば、非天然の定常領域を含有する抗体は、非ヒト供給源(例えば、マウス、ラット、もしくはウサギ)に由来する可変領域およびヒト供給源に由来する定常領域(例えば、ヒト抗体定常領域)、または別の霊長類(例えば、中でも、ブタ、ヤギ、ウサギ、ハムスター、ネコ、イヌ、モルモット、ウシ科のメンバー(例えば、中でもウシ、バイソン、バッファロー、エルク、およびヤク)、ウシ、ヒツジ、ウマ、またはバイソン)に由来する定常領域を有し得る。
【0073】
「内因性」という用語は、特定の生物(例えば、ヒト)または生物内の特定の位置(例えば、組織、器官、または細胞)に自然に見出される分子(例えば、ポリペプチド、核酸または共因子)、例えばヒト細胞によって発現されるTNFRスーパーファミリーメンバーを記載する。
【0074】
抗体Fc領域とある特定のFc受容体との相互作用に由来する「エフェクター機能」という用語には、それらに必ずしも限定されないが、Clq結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、ADCCおよび抗体依存性細胞介在性食作用(ADCP)などのFcyR介在性エフェクター機能、ならびに細胞表面受容体の下方調節が含まれる。かかるエフェクター機能には、一般に、Fc領域が抗原結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わされることが必要である。
【0075】
「Fc受容体」または「FcR」という用語は、免疫グロブリンのFc領域に結合する抗体受容体を記載し、抗原認識に関与し、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、好中球、およびマスト細胞を含むある特定の免疫細胞の膜にある。IgGのFc部分を認識するFc受容体は、Fcガンマ受容体(FcγR)と呼ばれる。FcγRファミリーは、これらの受容体の対立遺伝子バリアントおよび選択的スプライス形態を含む。構造、機能、およびIgG結合の親和性の違いに基づき、FcγRは3つの主な群:FcγRI、FcγRII(FcγRIIaおよびFcγRIIb)ならびにFcγRIII(FcγRIIIaおよびFcγRIIIb)に分類される。中でも、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32a)、およびFcγRIIIa(CD16a)は、FcγRIおよびFcγRIIIaのγサブユニットに、またはFcγRIIaの細胞質テールに、シグナル伝達モチーフ、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含有する受容体を活性化する。抗原-抗体複合体の結合後、活性化Fcγ受容体(ヒト:FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIC、FcγRIIIA、FcγRIIIBおよびマウス:FcγRI、FcγRIII、FcγRIV)は、免疫エフェクター機能を駆動する。対照的に、FcγRIIb(CD32b)は阻害受容体である。FcγRIIbの架橋結合は、免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)のリン酸化および阻害シグナル伝達をもたらす(Patel et al. Front Immunol. 2019; 10: 223)。
【0076】
本明細書で使用される場合、「制御性T細胞」または「Treg」という用語は、他の免疫細胞、例えばCD8陽性(CD8+)エフェクターT細胞の増殖、活性化および細胞傷害性能を抑制/阻害することによる制御的役割を有する免疫系の細胞を指す。制御性T細胞(Treg)は、マスター転写因子forkhead box P3(Foxp3)の発現によって特徴付けられる。Treg細胞の2つの主なサブセット、胸腺で発生する「内在性(natural)」Treg(nTreg)細胞、およびCD4+ Foxp3-従来T細胞から末梢において生じる「誘導性」Treg(iTreg)細胞がある。内在性Tregは、CD4 T細胞共受容体と、IL-2受容体の成分であるCD25の両方を発現するとして特徴付けられる。Tregは、したがって、CD4+CD25+である。核転写因子Forkhead box P3(FoxP3)の発現は、内在性Tregの発生および機能を決定する定義特性である。Treg細胞は、阻害サイトカイン(例えば、IL-10、TGFβ、IL-35)の分泌、樹状細胞機能/成熟の調節、免疫制御性表面分子(例えば、CTLA-4、LAG-3)の発現または細胞溶解(例えば、グランザイムAおよび/またはB媒介性)による抑制を含む多くの様式の作用によりそれらの抑制効果を発揮する。
【0077】
本明細書で使用される場合、「骨髄性抑制性細胞」または「MDSC」は、様々なエフェクター細胞および抗原提示細胞、例えば中でも、T細胞、NK細胞、樹状細胞、およびマクロファージの活性をモジュレートする免疫系の細胞を指す。MDSCは、マクロファージ、顆粒球、および樹状細胞の未成熟前駆細胞を含む、未成熟骨髄細胞の不均質な集団である。集団は、マウスのGr1+CD11b+細胞およびヒトのHLA-DR-CD11b+CD33+細胞として広く認識されている。それは、in vitroおよびin vivoで自然および獲得免疫応答を抑制する顕著な能力を有する。
【0078】
本明細書で使用される場合、「増殖」という用語は、細胞の集団、例えばTNFR2+細胞(例えば、T-reg、MDSC、またはTNFR2+がん細胞)の集団の文脈で、複数の細胞を産生するための細胞の有糸分裂および細胞質分裂を指す。細胞増殖は、例えば、細胞の試料中の細胞(例えばTNFR+細胞)の量の、所与の期間にわたる、例えば1日または数日にわたる増加を見出すことによって証明され得る。本開示では、細胞増殖は、細胞の集団、例えば本明細書に記載のアンタゴニスト抗TNFR2抗体と接触したTNFR2+細胞の集団の割合が、対照細胞、例えばアンタゴニスト抗TNFR2抗体と接触しないTNFR2+細胞の集団の増殖と比較して減少する場合、「阻害された」と考えられる。
【0079】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」とは、抗原のアミノ酸残基のうちの、参照抗体と比較して重複するセットと接触するか、または競合アッセイにおいて参照抗体の抗原への結合を50%以上で遮断する抗体を指す。抗原と接触する抗体のアミノ酸残基は、例えば、抗原と複合した抗体の結晶構造を決定することによって、または、水素/重水素交換を行うことによって決定することができる。一部の実施形態では、抗原に5Å以内である抗体の残基は抗原と接触すると考えられる。一部の実施形態では、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体は、競合アッセイにおいて、参照抗体の抗原への結合を50%以上で遮断し、逆に、参照抗体は、競合アッセイにおいて、当該抗体の抗原への結合を50%以上で遮断する。
【0080】
「抗体断片」という用語は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合する、当該インタクトな抗体の部分を含む、当該インタクトな抗体とは異なる分子を指す。抗体断片の例としては、それらに限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’);ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv)が挙げられる。抗体のパパイン消化により、「Fab」断片と呼ばれる同一の2つの抗原結合断片と、容易に結晶化する能力を反映する表記である、残りの「Fc」断片とが生成される。Fab断片は、重(H)鎖の可変領域ドメイン(VH)とともに軽(L)鎖全体、および1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)から構成される。抗体のペプシン処理により、単一の大きいF(ab)断片が得られ、これは、およそ、二価の抗原結合活性を有する2つのジスルフィド連結のFab断片に相当しており、依然として抗原を架橋することができる。Fab断片は、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端にさらなる数個の残基を有する点でFab’断片とは異なる。Fab’-SHは、Fab’に関する本明細書における表記であるが、この場合、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つ。F(ab’)抗体断片は当初、Fab’断片の間にヒンジシステインを有する、Fab’断片の対として生成されたものであった。抗体断片の他の化学的カップリングも知られている。
【0081】
「Fv」は、緊密な、非共有結合の会合にある1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインとの二量体から構成される。これらの2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基を与えるとともに抗体に抗原結合特異性を付与する6つの超可変ループ(H鎖およびL鎖にそれぞれ由来の3ループ)が生じる。
【0082】
「sFv」または「scFv」とも略される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖に接続されたVH抗体ドメインおよびVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、sFvが抗原結合にとって所望の構造を形成することを可能にする、ポリペプチドリンカーをVHドメインとVLドメインとの間にさらに含む。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照されたい。
【0083】
抗体の「抗原結合ドメイン」という用語(または、単に「結合ドメイン」)または同様の用語は、抗原複合体に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体の「抗原結合部分」という用語内に包含される結合断片の例には、以下が含まれる、(i)Fab断片、VL、VH、CLおよびCHの各ドメインからなる一価の断片、(ii)F(ab’)断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片、(iii)VHドメインおよびCHドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., Nature 341: 544-546, 1989)、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに(vii)合成リンカーによって必要に応じて連結することができる2つ以上の単離されたCDRの組合せ。
【0084】
「多重特異性抗体」という用語は、最も広義に使用され、特に、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体をカバーするが、この場合、VH-VL単位が多重エピトープ特異性を有する(例えば、1つの生体分子上の異なる2つのエピトープまたは異なる生体分子上の各エピトープに結合することができる)。かかる多重特異性抗体としては、それらに限定されないが、完全長抗体、2つ以上のVLドメインおよびVHドメインを有する抗体、二重特異性ダイアボディおよびトリアボディが挙げられる。「多重エピトープ特異性」とは、同じまたは異なる標的(複数可)上の2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。
【0085】
「デュアル特異性(Dual specificity)」とは、同じまたは異なる標的(複数可)上の異なる2つのエピトープに特異的に結合する能力を指す。しかし、二重特異性抗体とは対照的に、デュアル特異性抗体はアミノ酸配列が同一である2つの抗原結合アームを有し、各Fabアームは2つの抗原を認識することができる。デュアル特異性によって、抗体は、単一のFabまたはIgG分子として異なる2つの抗原と高親和性を持って相互作用することが可能となる。一実施形態によれば、IgG1形態にある多重特異性抗体は、各エピトープに、5μM~0.001pM、3μM~0.001pM、1μM~0.001pM、0.5μM~0.001pM、または0.1μM~0.001pMの親和性で結合する。「単一特異性」とは、1つのエピトープのみに結合する能力を指す。多重特異性抗体は、完全な免疫グロブリン分子と類似の構造を有することができ、Fc領域、例えば、IgG Fc領域を含む。かかる構造には、それらに限定されないが、IgG-Fv、IgG-(scFv)、DVD-Ig、(scFv)-(scFv)-Fcおよび(scFv)-Fc-(scFv)が含まれ得る。IgG-(scFv)の場合、scFvは、重鎖もしくは軽鎖のいずれかのN末端もしくはC末端のいずれかに付着させることができる。
【0086】
本明細書で使用される場合、「二重特異性抗体」という用語は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体、多くはヒトまたはヒト化抗体を指す。本開示では、結合特異性の一方は、TNFR2の方に向けることができ、もう一方は、任意の他の抗原、例えば、細胞表面タンパク質、受容体、受容体サブユニット、組織特異的抗原、ウイルス由来タンパク質、ウイルスによってコードされたエンベロープタンパク質、細菌に由来するタンパク質、または細菌性表面タンパク質等に向けることができる。
【0087】
本明細書で使用される場合、「ダイアボディ」という用語は、2つのポリペプチド鎖を含む二価の抗体を指し、この場合、各ポリペプチド鎖は、同じペプチド鎖上のVHドメインとVLドメインとの分子内会合を可能とするには短すぎるリンカー(例えば、アミノ酸5個で構成されるリンカー)によって連結されたVHドメインとVLドメインを含む。この配置により、各ドメインが別のポリペプチド鎖上の相補ドメインと強制的に対になってホモ二量体構造を形成する。したがって、「トリアボディ」という用語は、3つのペプチド鎖を含む三価の抗体を指し、ペプチド鎖のそれぞれが、同じペプチド鎖内におけるVHドメインとVLドメインとの分子内会合を可能とするには極端に短いリンカー(例えば、アミノ酸1~2個から構成されるリンカー)によって連結された1つのVHドメインと1つのVLドメインを含有する。
【0088】
「単離された抗体」という用語は、本明細書に開示の種々の抗体を説明して使用される場合、抗体が発現された細胞からまたは細胞培養物から特定されかつ分離および/または回収された抗体を意味する。その天然環境の混入成分とは、ポリペプチドの診断的または治療的用途を通常では妨害すると思われる物質であり、混入成分には酵素、ホルモン、およびその他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が含まれ得る。一部の実施形態では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換または逆相HPLC)の各アプローチによって決定して、95%または99%を超える純度まで精製される。抗体の純度の評価方法の概説については、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 2007を参照されたい。好ましい実施形態では、抗体は、(1)スピニングカップ配列決定装置の使用によりN末端もしくは内部のアミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、または(2)クマシーブルーもしくは好ましくは銀染色を使用して非還元条件下または還元条件下でSDS-PAGEによって均一になるまで、精製される。
【0089】
抗体の標的分子への結合に関して、「特異的結合」、あるいは特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピト-プ「に特異的に結合する」またはそれ「に特異的」であるという用語は、非特異的相互作用とは測定可能な程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、対照分子の結合と比較した分子の結合を決定することによって測定することができる。例えば、特異的結合は、標的に類似する対照分子、例えば過剰な非標識標的との競合によって決定することができる。この場合、特異的結合は、プロ-ブへの標識標的の結合が、過剰な非標識標的によって競合的に阻害される場合に、指摘される。本明細書で使用される「特異的結合」、あるいは特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピト-プ「に特異的に結合する」またはそれ「に特異的」であるという用語は、例えば、10-4M以下、代替的に10-5M以下、代替的に10-6M以下、代替的に10-7M以下、代替的に10-8M以下、代替的に10-9M以下、代替的に10-10M以下、代替的に10-11M以下、代替的に10-12M以下の標的に対するKdを有する分子、または、10-4M~10-6Mもしくは10-6M~10-10Mもしくは10-7M~10-9Mの範囲のKdを有する分子によって示され得る。当業者であれば理解するように、親和性およびKdの値は反比例している。抗原に対する高親和性は、低いKd値によって測定される。一実施形態では、「特異的結合」という用語は、ある分子が、実質的に他のいずれのポリペプチドまたはポリペプチドエピト-プにも結合することなく、TNFR2にまたはTNFR2エピト-プに結合する、結合を指す。
【0090】
本明細書で使用される場合、「TNFR2に特異的に結合する」という用語は、抗体または抗原結合断片が、内因性ヒトTNFR2が正常細胞または悪性細胞の表面上に、および安定または一過性のいずれかでヒトTNFR2を過剰発現するように改変された組換え細胞に存在する場合に、内因性ヒトTNFR2を認識しかつこれに結合する能力を指す。
【0091】
本明細書で使用される「親和性」という用語は、抗体のエピトープへの結合強度を意味する。抗体の親和性は、[Ab]×[Ag]/[Ab-Ag](式中、[Ab-Ag]は抗体-抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は未結合抗体のモル濃度であり、[Ag]は未結合抗原のモル濃度である)として定義される解離定数Kdにより与えられる。親和性定数Kaは、1/Kdにより定義される。mAbの親和性を決定する方法は、Harlow, et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1988)、Coligan et al., eds., Current Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience, N.Y., (1992, 1993)、およびMuller, Meth. Enzymol. 92:589-601 (1983)に見出すことができ、これらの参照文献は参照により全体が本明細書に組み込まれる。mAbの親和性を決定する当分野においてよく知られている一標準法は、表面プラズモン共鳴(SPR)スクリーニング(例えば、BIAcore(商標)SPR分析装置による分析によるもの)の使用である。
【0092】
「エピトープ」は、抗体とその抗原(複数可)との間の相互作用の部位(単数または複数)を指示する、技術用語である。(Janeway, C, Jr., P. Travers, et al. (2001). Immunobiology: the immune system in health and disease. Part II, Section 3- 8. New York, Garland Publishing, Inc.):によって:「抗体は一般に、タンパク質などの大分子の表面上の小領域のみを一般に認識する…」と記載されているように:[ある特定のエピトープ]が、タンパク質の折り畳みによって一緒にされた、[抗原]ポリペプチド鎖の異なる部分からのアミノ酸で構成される可能性が高い。この種の抗原決定基は、認識される構造が、抗原のアミノ酸配列中では不連続であるが3次元構造では一緒になっているタンパク質のセグメントから構成されるので、立体配座エピトープまたは不連続エピトープとして知られている。対照的に、ポリペプチド鎖の単一セグメントから構成されるエピトープは、連続エピトープまたは線状エピトープと称される(Janeway, C. Jr., P. Travers, et al. (2001). Immunobiology: the immune system in health and disease. Part II, Section 3-8. New York, Garland Publishing, Inc.)。
【0093】
「Kd」という用語は、本明細書で使用される場合、kdのkaに対する比(すなわち、kd/ka)から得られ、モル濃度(M)として表される、平衡解離定数を指す。抗体のKd値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して決定することができる。抗体のKdを決定するための好ましい方法には、好ましくはFortebio Octet REDデバイスを使用するバイオレイヤー干渉法(BLI)解析、好ましくはBIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴システムなどのバイオセンサーシステムを使用する表面プラズモン共鳴、またはフローサイトメトリーおよびスキャッチャード解析が含まれる。
【0094】
薬剤および特定の活性(例えば、細胞への結合、酵素活性の阻害、免疫細胞の活性化または阻害)に関する「EC50」とは、かかる活性に関して薬剤の最大の応答または効果の50%を生じる当該薬剤の効果的濃度を指す。薬剤および特定の活性に関する「EC100」とは、かかる活性に関して薬剤の実質的に最大の応答を生じる当該薬剤の効果的濃度を指す。
【0095】
「腫瘍微小環境」という用語は、腫瘍を形成するがん細胞および非がん細胞の集団、分子、および/または腫瘍内の血管または境界もしくは周辺のがん細胞を指す。
【0096】
本明細書で使用される場合、「抗体ベースの免疫療法」および「免疫療法」という用語は広義には、抗TNFR2抗体、二重特異性分子、抗原結合ドメイン、または抗TNFR2抗体もしくはそれの抗体断片もしくはCDRを含む融合タンパク質のターゲティング特異性に依存して、TNFR2発現細胞に及ぼす直接的または間接的な影響を媒介する、任意の形態の療法を指して、使用される。本用語は、ネイキッド抗体、二重特異性抗体(T細胞結合、NK細胞結合、およびその他の免疫細胞/エフェクター細胞結合の各方式を含めて)、抗体薬物コンジュゲートを使用する処置の方法、TNFR2特異的キメラ抗原受容体を含むように改変されたT細胞(CAR-T)またはNK細胞(CAR-NK)、およびTNFR2特異的結合剤を含む腫瘍溶解性ウイルスを使用する細胞療法、ならびに抗TNFR2抗体の抗原結合配列を送達することによる遺伝子療法を包含することを意図するものであり、かつ、in vivoで相当する抗体断片を発現させることを意図するものである。
【0097】
TNF/TNFRスーパーファミリー
ヒト腫瘍壊死因子(TNF)およびTNF受容体(TNFR)スーパーファミリー(TNFSF/TNFRSF)は、現在、19個のサイトカイン様リガンド分子および29個の関連受容体から構成される(Dostert et al., Physiol.Rev., 99(1):115-160, 2019、Vanamee et al., Science Signaling, Vol. 11, Issue 511, eaao4910, 2018)。
【0098】
腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリー(TNFRSF)の受容体は、TNFスーパーファミリーのリガンドによって自然に活性化される。リガンドと受容体の相互作用は、通常、非常に特異的および高親和性である(Zhang, G., Current Opinion in Structural Biology, 14(2):154-16, 2004)。一部のTNFSFリガンドは、複数の受容体を有し、一部の受容体は複数のリガンドにも結合する。
【0099】
腫瘍壊死因子αは、2つの生物学的に活性な形態、膜貫通TNF-α(tmTNF-α)および可溶性TNF-α(sTNF-α)で存在する。可溶性TNF-αは高親和性でTNFR1とTNFR2の両方に結合するが、シグナルは、ほとんど排他的にTNFR1による。膜貫通TNF(tmTNF-α)は、TNFR2の主要なリガンドであり、TNFR2を効果的に活性化する唯一の形態である(Grell et al., Cell, 83:793-8021995)。
【0100】
サイトカインは、TNF相同ドメイン(THD)と呼ばれる、保存されたカルボキシ末端相同ドメインに基づき、TNFスーパーファミリー(TNFSF)に割り当てられる(Wajant H., Cell Death Differ., 22(11):1727-1741, 2015)。THDは、TNFリガンドの三量体化および三量体化受容体複合体へのそれらの結合を担う。THDは、TNFRのNH2末端のシステインリッチドメイン(CRD)に結合する。TNFリガンドは、通常、膜結合形態で合成され、タンパク質分解によって切断され、可溶性リガンドを産生し得る。
【0101】
TNFSFリガンドのすべての公知の構造は、三量体として存在し(Zhang, G., Current Opinion in Structural Biology, 14(2):154-16, 2004)、構造および生化学研究からのデータは、シグナル伝達の開始に必須の役割を果たすTNFファミリーリガンドの高次クラスタリングを確立する。膜結合または可溶性TNFSFリガンド三量体の、細胞の表面上のその相当する受容体への結合は、受容体タンパク質の三量体化およびそれらの下流のシグナル伝達経路の活性化を引き起こす(Dostert et al., Physiol. Rev., 99(1):115-160, 2019)。
【0102】
TNFリガンドは、免疫系のプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)、例えば樹状細胞(DC)、マクロファージおよびB細胞によって主に発現されるが、T細胞、NK細胞、マスト細胞、好酸球、好塩基球、内皮細胞、胸腺内皮細胞、および平滑筋細胞によっても産生される(Dostert et al., Physiol. Rev., 99(1):115-160, 2019)。
【0103】
TNFRSFのメンバーは、細胞内のシグナル伝達タンパク質を動員する、外部ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインからなる膜貫通タンパク質である。TNFRSFの外部ドメインは、4つの反復システインリッチドメイン(CRD)(CRD1、CRD2、CRD3およびCRD4)を含むシステインリッチシグネチャーによって特徴付けられるが、細胞内ドメインが異なる。
【0104】
それらの細胞質シグナル伝達ドメインに基づき、TNFRは、通常、3つのグループに分類され得る:(i)細胞内部分にデスドメイン(DD)を含有し、DD結合パートナー(例えば、Fas関連デスドメイン(FADD)またはTNFR1関連デスドメイン(TRADD))を介してアポトーシスを活性化するデス受容体(DR)(例えば、DR3、DR6、TNFR1);(ii)TRAFファミリーのメンバーと相互作用するTNFR関連因子(TRAF)相互作用受容体(例えば、TNFRII、GITR、OX40、41BB、CD30、LTbR、CD40;および(iii)サイトゾルドメインを欠損するデコイ受容体(DcR)(例えば、TRAILR3、TRAILR4)(Vanamee et al., Science Signaling, Vol. 11(511), eaao4910, 2018)。
【0105】
TNFRは、上記のように可溶性および膜貫通三量体として生じるTNFスーパーファミリーのリガンドによって自然に活性化される。それらの特異的TNFSFリガンドの高親和性結合は、同族の標的細胞で発現された受容体のクラスタリングを誘導し、次いで細胞応答の最終段階でシグナル伝達経路を開始する(Ward-Kavanagh et al., Immunity, 44: 1005-1019, 2016)。完全および強固なTNFRの活性化は、2つのステップを必要とする。最初に、3つのTNFR分子はTNFSFリガンド(TNFL)三量体と相互作用する。第2のステップでは、これらの最初に形成された三量体リガンド受容体複合体の2つ以上が、超分子のシグナル伝達クラスターにアセンブルする。効率的なTNFR2シグナル伝達は、複数の受容体サブユニットのクラスタリング/オリゴマー化を必要とすることが報告されている(Vanamee et al., Science Signaling, Vol. 11(511), eaao4910, 2018)。
【0106】
可溶性TNFL三量体へのそれらの応答に基づき、TNFRの2つのカテゴリーが既定され得る。カテゴリーIのTNFRは可溶性TNFL三量体に結合し、その後凝集し、この方法で完全におよび強く活性化される。対照的に、カテゴリーIIのTNFR(例えば、TNFR2、41BB、CD27、CD40、CD95、OX40およびFn14)も、高親和性で可溶性TNFL三量体と相互作用するが、その後のクラスタリングおよびシグナル伝達ができない。しかしながら、可溶性TNFL三量体のオリゴマー化および/または細胞付着は、可溶性TNFL三量体にカテゴリーIIのTNFRを強く刺激させる(Wajant H. Cell Death Differ., 22(11):1727-1741, 2015)。
【0107】
典型的なTNF/TNFRシグナル伝達複合体の構造は、3つの受容体に結合した三量体リガンドからなる(Vanamee et al., Science Signaling, Vol. 11, Issue 511, eaao4910, 2018およびWajant H., Cell Death Differ., 22(11):1727-1741, 2015)。CD40-CD40L、OX40-OX40L、およびTNF-TNFR2を含む、いくつかのTNFSF/TNFRSFリガンド-受容体結晶構造が解明されており、それらはすべてリガンド-受容体対の三量体化を示す(Dostert et al., Physiol. Rev., 99(1):115-160, 2019)。これらの観察は、3:3比が、TNFSF/TNFRSFシグナル伝達の共通基準であることを確認した。
【0108】
自然および獲得免疫細胞の両方とも、免疫応答の共刺激または共阻害のいずれかを駆動する様々な細胞および分子メカニズムの調整のために重要である方法で、TNFSF/TNFRSFメンバーによって制御される。TNFRによって開始される細胞および分子の結果は、リガンド-受容体特異性のパターン、細胞のTNFR発現プロファイル、ならびに相互作用に関与する免疫細胞型の同一性およびFcγR発現プロファイルによる。
【0109】
TNFR2
TNFRSF1BおよびCD120bとしても公知の、腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2またはTNFRII)は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFRSF)の共刺激メンバーであり、タンパク質、例えばGITR、OX40、CD27、CD40、および4-1BB(CD137)を含む。TNFR2は、T細胞上に発現される細胞表面受容体であり、エフェクターT(Teff)細胞の活性化を増強し、Treg媒介性抑制を減少させることが示されている。
【0110】
TNFR2発現は、主に免疫細胞(例えば、ヒトPBMC中のCD4、CD8+、MDSC、腫瘍浸潤Treg細胞およびNK細胞)および一部の腫瘍細胞に限定されるが、TNFR1は普遍的な発現を示す。TNFR2は、同族リガンド、tmTNF-α、II型膜貫通タンパク質、および分泌されたリガンドリンフォトキシン-α(LTα)に結合し、その両方ともTNFR1にも結合する(Ward-Kavanagh et al., Immunity, 44: 1005-1019, 2016)。
【0111】
TNFR2は、TRAF相互作用TNFRSFのメンバーを示す。TCR刺激の存在下で、TRAF相互作用受容体様TNFR2、41BBおよびOX40は強力なT細胞共刺激分子として機能する。TRAF相互作用受容体は、活性化されたメモリーT細胞上で発現されるが、休止T細胞上では発現されず、それらの同族リガンドは、活性化された抗原提示細胞、例えば樹状細胞、マクロファージ、自然リンパ球細胞、および多くの他の炎症細胞型に優性に発現される(Dostert et al., Physiol. Rev., 99(1):115-160, 2019およびWilliams et al., Oncotarget, 7(42):68278-68291, 2016)。それらの免疫増強共刺激特性を標的化し、T細胞増殖、生存およびいくつかのがんの型でのエフェクター機能を促進することにより、抗腫瘍免疫をブーストすることができる。典型的には、標的化戦略は、受容体に特異的なアゴニスト抗体または組換え可溶性リガンドの使用を含む。
【0112】
TNFR2の活性化は、主に、TRAF2およびTRAF3 E3リガーゼを介する生存促進性のNF-κB経路を引き起こすと考えられるが、TNFR1の活性化は、TRADDを細胞質デスドメインに動員し、カスパーゼ依存性経路を活性化する(Brenner et al., Nat. Rev. Immunol.,15:362-374, 2015)。TRAF2/3およびNFκBシグナル伝達の制御により、TNFR2は、細胞生存および増殖を促進する遺伝子の転写を媒介することができる。したがって、TNFは、TNFR1への結合を介してアポトーシスを促進するが、TNFR2を介して生存促進効果を発揮する。
【0113】
いくつかの論文は、TNFR2が、CD4制御性T細胞(Treg)(Govindaraj et al., Front. Immunol., 4:233, 2013)、CD4エフェクターT細胞(Teff)(Chen et al., Sci. Rep., 6:32834, 2016)、CD8Treg(Ablamunits et al., Eur. J. Immunol., 40(10):2891-901, 2010)、CD8Teff(Krummey et al., J. Immunol., 197(5):2009-15, 2016)およびMDSC(Hu et al., J. Immunol., 192 (3):1320-1331, 2014)を含む免疫細胞で発現され、重要な役割を有することを報告している。これらの発見は、TNFR2が、腫瘍免疫回避に寄与し得る様々な免疫応答に含まれることを示している。TNFR2の阻害は、Treg活性を減少させることにより、腫瘍関連免疫耐性を破壊するのを助けるであろう。あるいは、TNFR2のアゴニズムは、CD8+エフェクター細胞の活性を増強するであろう。
【0114】
TNFR2は、ヒトおよびマウスTregの、Tregの最大に免疫抑制性のサブセットで優先的に発現される。TNFR2が、CD4FoxP3TregでのTNFの刺激活性を媒介し、Tregの増殖拡大、活性化および表現型安定性をもたらす明らかな証拠がある(Chen and Oppenheim, Sci. Signal., 10(462), eaal2328, 2017)。
【0115】
加えて、TNFR2は、いくつかの型の腫瘍細胞で異常に発現され、いくつかのシグナル伝達カスケードにより腫瘍進行を誘導する。TNFR2は、いくつかの種類の腫瘍細胞の増殖を直接促進する(Sheng et al., Front. Immunol., 9: 1170 2018、およびChen and Oppenheim, Sci. Signal., 10(462), eaal2328, 2017、Torrey et al, Sci. Signal (2017)、Yang et al., J. Leukocyte Biol., 107:6, 2020)。
【0116】
免疫療法のためのTNF/TNFR2標的化
典型的には、TNFRSF受容体特異的抗体は、腫瘍細胞上のTNFRSF受容体を活性化して細胞死を引き起こすこと(TRAILR1、TRAILR2)または免疫細胞上の共刺激受容体を活性化して抗腫瘍免疫を促進すること(4-1BB、GITR、CD27、OX40、CD40)を意図して使用される(Wajant H. Cell. Death. Differ., 22(11):1727-1741, 2015)。一部の場合(TNFR2、CD30、Fn14)では、ある特定のTNFRSF受容体の腫瘍関連発現パターンを用いて、ADCC誘導抗体または抗体免疫毒によって腫瘍細胞を標的化する。
【0117】
TNFR2は、活性化された制御性T細胞で優先的に高発現され、Treg増殖拡大、表現型安定性およびin vivo免疫抑制機能の促進に重要な役割を有する(Chen and Oppenheim, Sci. Signal., 10(462), eaal2328, 2017)。さらに、TNFR2を発現する一部の腫瘍細胞の生存および増殖は、TNFR2のリガンドによって促進される。加えて、Torreyらによって作成されたTNFR2アンタゴニストは、OVCAR3、TNFR2の表面発現を有する卵巣がん細胞株の死を誘導する能力を有する(Torrey et al., Sci. Signal., 10:462, 2017)。したがって、腫瘍の処置においてTNFR2を標的化する理論的根拠としては、2要素ある:TNFR2の阻害剤が、TNFR2発現Tregの活性を阻害するか、またはTNFR2発現Tregの除去により、抗腫瘍応答をブーストする、およびTNFR2発現腫瘍細胞を直接死滅させる能力。
【0118】
腫瘍浸潤Treg細胞は、腫瘍免疫回避の主な細胞メカニズムを示し、自然発生および治療誘導性の抗腫瘍免疫応答を弱めるのに主要な役割を果たす、強力な免疫抑制細胞である。腫瘍組織内のTreg細胞の蓄積、および結果生じるエフェクターT(Teff)細胞に対するTreg細胞の高い比は、肺がん(4)、乳がん(5)、結腸直腸がん(6)、膵がん(7)、および他の悪性腫瘍を有するものを含む、がん患者の予後不良と相関する。それらの数を減らすかまたはチェックポイント阻害剤を使用して、それらの免疫抑制機能を下方制御するかのいずれかによるTreg活性の除去は、がん治療の有効性を増強する有効な戦略である。
【0119】
Tregに加えて、CD11bGr1MDSCも、腫瘍担持マウスにおいて腫瘍免疫回避に寄与する。近年、MDSCの生成、蓄積、および機能がTNF/TNFR2シグナル伝達によることが示された。MDSCは、マウスおよびヒトにおいて、炎症および腫瘍進行の間に広く拡大し、T細胞媒介性抗腫瘍応答を抑制することによって腫瘍増殖を増強することができる。TNFR1ではなく、TNFR2のシグナル伝達が、MDSC蓄積に重要であることが示された(Zhao et al., J. Clin. Invest., 122(11):4094-4104, 2012)。腫瘍担持マウスでは、MDSCは、中枢器官(骨髄)および末梢器官(脾臓、血液、流入領域リンパ節)、ならびに腫瘍部位に蓄積する(Zhao et al.,上記)。
【0120】
抗TNFR2抗体
本開示の抗TNFR2抗体(R2_mAb-1~R2_mAb-6、あるいは本明細書では図面においてR2-1~R2-6と呼ばれる)は、ヒトTNFR2に特異的である(例えば、特異的に結合する)。本開示の抗体およびそれの断片は、CDR配列の独自のセット、TNFR2に対する特異性によって特徴付けられ、単剤療法として、または他の抗がん剤との組合せでがん免疫療法に有用である。より具体的には、本開示は、ヒトTNFR2に結合する抗体に、および腫瘍微小環境に局在する細胞のTNF/TNFR2介在性活性をモジュレートするためのそれらの使用に関する。
【0121】
TNFR活性の阻害とTNFRの刺激の両方とも、価値のある治療活性を引き出し得ることが認識されている。例えば、TNFR2刺激は、エフェクターT細胞を拡大および活性化する、ならびにそれらの抗腫瘍活性を増強する手段を提供し得る。対照的に、TNFR2媒介性阻害またはTNFR2発現細胞(Treg、MDSCおよび腫瘍細胞)の枯渇は、腫瘍抑制微小環境を確立および維持することができた。腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーに属する免疫刺激受容体に対するアンタゴニストおよびアゴニスト抗体は、有望ながん免疫療法として現れた。しかしながら、今日までに、TNFR2に対する認可された治療抗体はない。
【0122】
本発明者らは、より良い免疫療法のため、免疫抑制環境およびT細胞枯渇を克服する新規のメカニズムを示す独自のTNFR2抗体を発見したと考えた。本開示の抗TNFR2抗体は、枯渇T細胞、抑制性骨髄細胞、または抗PD-1/PD-L1耐性に寄与する制御性T細胞が豊富な腫瘍微小環境に特に有益である。
【0123】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、以下の構造的および機能的特徴の1つまたは複数を、単独でまたは組合せで呈する:(a)ヒトTNFR2に特異的である、(b)ヒトTNFR1に結合しない、(c)TNFR2のN末端システインリッチドメインのCRD3またはCRD4領域のエピトープに結合する、(d)カニクイザルTNFR2と交差反応する、(e)ヒトTNF結合相互作用を妨害する、(f)Fc受容体への結合の非存在下で可溶性TNFα刺激T細胞活性化を阻害する、(g)Fc受容体への結合の非存在下で膜貫通TNF刺激T細胞活性化を阻害する、(h)Fc受容体への結合時に慢性的に刺激されるヒトエフェクターT細胞におけるアゴニスト活性を増強する、(i)ヒトTNFR2ノックインMC38同系腫瘍モデルにおいて抗腫瘍効果を示す、(j)ヒトTNFR2ノックインMC38腫瘍モデルにおける抗PD-L1処置の腫瘍増殖阻害を増強する、(k)ヒトTNFR2ノックインPD1耐性B16F10メラノーマモデルにおいて抗PD-L1処置の有効性を増強する、または(l)抗腫瘍活性に寄与するADCC活性を示す、または(m)腫瘍内のCD8対Treg比を増強する。
【0124】
一実施形態では、本開示の抗体は、Fc受容体相互作用により単球THP1細胞においてTNFR2シグナル伝達を阻害する。代替の実施形態では、THP1細胞によるFc受容体架橋は、抗体にJurkat T細胞のTNFR2シグナル伝達を活性化させる。さらに、原発性CD8T細胞では、架橋依存的な方法で、それらは抗CD3/CD28刺激によるIFNγ放出を増強する。より具体的には、架橋したTNFR2抗体は、それらが共培養環境で制御性T細胞からの抑制効果を克服できるような方法で、CD8エフェクターT細胞の機能を促進する。
【0125】
別の代替の実施形態では、1つまたは複数の本開示の抗TNFR2抗体による、枯渇した表現型(例えば、CD3/CD28反復刺激によって誘導される)を有するCD8エフェクターT細胞の処置は、細胞増殖の増加、IFN-γおよびグランザイム放出の改善、ならびに放出された可溶性TNFαのレベルの増加によって特徴付けられるCD8 T細胞機能を回復した。対照的に、抗PD1による処置は、枯渇したCD8 T細胞の機能を回復しなかった。ヒトTNFR2ノックインMC38マウス腫瘍モデルを使用して、2つの開示した抗体が強い抗腫瘍効果を示した。
【0126】
一部の実施形態では、本開示の抗TNFR2抗体が、hTNFR2とカニクイザルTNFR2(cynoTNFR2)の両方に結合することは有利である。カニクイザル(例えば、Macaca fascicularis)の細胞上に発現したTNFR2との交差反応性は、代理抗体を使用することなく抗体分子の動物試験が可能になるため有利である。本開示の抗TNFR2抗体、R2_mAb1~R2_mAb6は、すべて顕著な親和性によりカニクイザル由来のTNFR2に結合する。
【0127】
IgGなどの例示的な抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略される)および重鎖定常領域で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略される)および軽鎖定常領域で構成される。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分することができる。それぞれのVHおよびVLは、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置された、3つのCDRおよび4つのFRから構成される。
【0128】
超可変領域は一般に、軽鎖可変領域における、アミノ酸残基約24~34(LCDR1;「L」は軽鎖を示す)、50~56(LCDR2)および89~97(LCDR3)からのアミノ酸残基、ならびに、重鎖可変領域における、約31~35B(HCDR1;「H」は重鎖を示す)、50~65(HCDR2)、および95~102(HCDR3)周辺のアミノ酸残基を包含し;Kabat et al., SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)、ならびに/または、超可変ループを形成するそれら残基を包含する(例えば、軽鎖可変領域における、26~32残基(LCDR1)、50~52残基(LCDR2)および91~96残基(LCDR3)、ならびに、重鎖可変領域における、26~32残基(HCDR1)、53~55残基(HCDR2)および96~101残基(HCDR3));Chothia and Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917。
【0129】
一実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、表1に開示の一連のCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を有するVHを含む。例えば、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、表1に開示の抗TNFR2抗体の1つまたは複数においてそういったCDRに相当する一連のCDR(例えば、R2_mAb 1のCDR)を含むことができる。
【0130】
別の実施形態では、抗TNFR2抗体は、表2に開示の一連のCDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を有するVLを含む。例えば、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、表2に開示の抗TNFR2抗体の1つまたは複数においてそういったCDRに相当する一連のCDR(例えば、R2_mAb 2のCDR)を含むことができる。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
代替の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、表1に開示の一連のCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を有するVH、ならびに表2に開示の一連のCDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を有するVLを含む。
【0134】
一実施形態では、抗体は、ヒトTNFR2に特異的に結合する、モノクローナル抗体、ヒト、ヒト化もしくはキメラ抗体、またはそれの抗原結合部分とすることができる。一実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、ヒト抗体としてフォーマットされた、R2_mAb 1、R2_mAb 2、R2_mAb 3、R2_mAb 4、R2_mAb 5、またはR2_mAb 6抗体のCDR領域の6つすべてを含む。代替の実施形態では、抗TNFR2抗体または抗体断片は、R2_mAb 5.1可変重鎖のCDR領域およびR2_mAb 5可変軽鎖のCDR領域を含む。
【0135】
一実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、
(i)CDR1:配列番号13、CDR2:配列番号14、CDR3:配列番号15;
(ii)CDR1:配列番号19、CDR2:配列番号20、CDR3:配列番号21;
(iii)CDR1:配列番号25、CDR2:配列番号26、CDR3:配列番号27;
(iv)CDR1:配列番号31、CDR2:配列番号32、CDR3:配列番号33;
(v)CDR1:配列番号37、CDR2:配列番号38、CDR3:配列番号39;
(vi)CDR1:配列番号37、CDR2:配列番号49、CDR3:配列番号39;および
(vii)CDR1:配列番号42、CDR2:配列番号43、CDR3:配列番号44
からなる群から選択される一連の相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)を有するVHを含む。
【0136】
一実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、
(i)CDR1:配列番号16、CDR2:配列番号171、CDR3:配列番号18;
(ii)CDR1:配列番号22、CDR2:配列番号23、CDR3:配列番号24;
(iii)CDR1:配列番号28、CDR2:配列番号29、CDR3:配列番号30;
(iv)CDR1:配列番号34、CDR2:配列番号35、CDR3:配列番号36;
(v)CDR1:配列番号34、CDR2:配列番号40、CDR3:配列番号41;および
(vi)CDR1:配列番号45、CDR2:配列番号46、CDR3:配列番号47、
からなる群から選択される一連の相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)を有するVLを含む。
【0137】
別の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、
(a)
(i)CDR1:配列番号13、CDR2:配列番号14、CDR3:配列番号15;
(ii)CDR1:配列番号19、CDR2:配列番号20、CDR3:配列番号21;
(iii)CDR1:配列番号25、CDR2:配列番号26、CDR3:配列番号27;
(iv)CDR1:配列番号31、CDR2:配列番号32、CDR3:配列番号33;
(v)CDR1:配列番号37、CDR2:配列番号38、CDR3:配列番号39;
(vi)CDR1:配列番号37、CDR2:配列番号49、CDR3:配列番号39;および
(vii)CDR1:配列番号42、CDR2:配列番号43、CDR3:配列番号44、
からなる群から選択される一連の相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)を有するVHと、
(b)
(i)CDR1:配列番号16、CDR2:配列番号17、CDR3:配列番号18;
(ii)CDR1:配列番号22、CDR2:配列番号23、CDR3:配列番号24;
(iii)CDR1:配列番号28、CDR2:配列番号29、CDR3:配列番号30;
(iv)CDR1:配列番号34、CDR2:配列番号35、CDR3:配列番号36;
(v)CDR1:配列番号34、CDR2:配列番号40、CDR3:配列番号41;および
(vi)CDR1:配列番号45、CDR2:配列番号46、CDR3:配列番号47、
からなる群から選択される一連の相補性決定領域(CDR1、CDR2、およびCDR3)を有するVLと、
を含む。
【0138】
一実施形態では、抗体は、
(i)VH:CDR1:配列番号13、CDR2:配列番号14、CDR3:配列番号15、VL:CDR1:配列番号16、CDR2:配列番号17、CDR3:配列番号18;
(ii)VH:CDR1:配列番号19、CDR2:配列番号20、CDR3:配列番号21、VL:CDR1:配列番号22、CDR2:配列番号23、CDR3:配列番号24;
(iii)VH:CDR1:配列番号25、CDR2:配列番号26、CDR3:配列番号27、VL:CDR1:配列番号28、CDR2:配列番号29、CDR3:配列番号30;
(iv)VH:CDR1:配列番号31、CDR2:配列番号32、CDR3:配列番号33、VL:CDR1:配列番号34、CDR2:配列番号35、CDR3:配列番号36;
(v)VH:CDR1:配列番号37、CDR2:配列番号38、CDR3:配列番号39、VL:CDR1:配列番号34、CDR2:配列番号40、CDR3:配列番号41;
(vi)VH:CDR1:配列番号37、CDR2:配列番号49、CDR3:配列番号39、VL:CDR1:配列番号34、CDR2:配列番号40、CDR3:配列番号41;および
(vii)VH:CDR1:配列番号42、CDR2:配列番号43、CDR3:配列番号44、VL:CDR1:配列番号45、CDR2:配列番号46、CDR3:配列番号47
からなる群から選択される一連の相補性決定領域(CDR1、CDR2およびCDR3)を有する、VHおよびVLの組合せを含む。
【0139】
一実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、配列番号1、3、5、7、9、11、および48からなる群から選択される可変重鎖配列、ならびに/または配列番号2、4、6、8、10、および12からなる群から選択される可変軽鎖配列を含む。
【0140】
一実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、一対の可変重鎖配列と可変軽鎖配列を含み、これは以下の組合せから選択される:配列番号1を含む可変重鎖配列と配列番号2を含む可変軽鎖配列;配列番号3を含む可変重鎖配列と配列番号4を含む可変軽鎖配列;配列番号5を含む可変重鎖配列と配列番号6を含む可変軽鎖配列;配列番号7を含む可変重鎖配列と配列番号8を含む可変軽鎖配列;配列番号9を含む可変重鎖配列と配列番号10を含む可変軽鎖配列;配列番号48を含む可変重鎖配列と配列番号10を含む可変軽鎖配列;配列番号11を含む可変重鎖配列と配列番号12を含む可変軽鎖配列。当業者であれば、可変軽鎖および可変重鎖を独立して選択して、または混合およびマッチさせて、上で特定されたペアリングとはまったく別である、可変重鎖と可変軽鎖の組合せを含む抗TNFR2抗体を調製することができることを、さらに理解するであろう。
【0141】
代替の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、一対の可変重鎖配列と可変軽鎖配列を含み、これは以下の組合せから選択される:配列番号1と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列と配列番号2と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;配列番号3と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列と配列番号4と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;配列番号5と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列と配列番号6と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;配列番号7と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列と配列番号8と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;配列番号9と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列と配列番号10と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;配列番号11と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列と配列番号12と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列。当業者であれば、可変軽鎖および可変重鎖を独立して選択して、または混合およびマッチさせて、上で特定されたペアリングとはまったく別である、可変重鎖と可変軽鎖の組合せを含む抗TNFR2抗体を調製することができることを、さらに理解するであろう。したがって、一実施形態では、抗体断片は、本明細書に記載の少なくとも1つのCDRを含む。抗体断片は、本明細書に記載の、少なくとも2、3、4、5、または6つのCDRを含むことができる。抗体断片は、本明細書に記載の抗体の少なくとも1つの可変領域ドメインをさらに含むことができる。可変領域ドメインは、任意のサイズであってもアミノ酸組成であってもよいが、全体として、ヒト抗TNFR2への結合を担う少なくとも1つのCDR配列を、例えば、本明細書に記載のCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、および/またはCDR-L3を含むことになるが、これは、1つまたは複数のフレームワーク配列に隣接しているかまたはそれとインフレームである。
【0142】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を含む。当業者であれば、保存的アミノ酸置換とは、1つのアミノ酸と、類似した構造的または化学的特性、例えば類似した側鎖などを有する別のアミノ酸との置換であると理解するであろう。例示的な保存的置換は、当技術分野において、例えば、Watson et al., Molecular Biology of the Gene, The Benjamin/Cummings Publication Company, 4th Ed. (1987)に記載されている。
【0143】
「保存的改変」とは、アミノ酸配列を含有する抗体の結合特性に有意に影響することがないまたはこれを変えることがないアミノ酸改変を指す。保存的改変には、アミノ酸の置換、付加、および欠失が含まれる。保存的置換とは、アミノ酸が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置き換えられている置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーについては十分に定義されており、それとしては、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン、トリプトファン)、芳香族側鎖(例えば、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン、チロシン)、脂肪族側鎖(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン)、アミド(例えば、アスパラギン、グルタミン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および含硫側鎖(システイン、メチオニン)を有するアミノ酸が挙げられる。さらに、アラニンスキャニング突然変異誘発について既に記載されているように(MacLennan et al., Acta Physiol Scand Suppl 643: 55-67, 1998、Sasaki et al., Adv Biophys 35: 1-24, 1998)、ポリペプチド中の任意の天然残基をアラニンで置換することもできる。本開示の抗体に対するアミノ酸置換は、既知の方法によって、例えばPCR突然変異誘発によって行うことができる(米国特許第4,683,195号明細書)。
【0144】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、配列番号1、3、5、7、9、48、または11に記載のアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、可変重鎖配列を含む。他の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、配列番号1、3、5、7、9、48または11の可変重鎖配列を含む抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片の結合活性(例えば、BIACOREアッセイ)および/または機能活性を保持する。さらに他の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、配列番号1、3、5、7、9、48、または11の可変重鎖配列を含み、かつ、重鎖可変配列に、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換、例えば、1、2、3、4、5、1~2、1~3、1~4または1~5の保存的アミノ酸置換を有する。さらに別の実施形態では、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換は、配列番号1、3、5、7、9、48、または11の1つまたは複数のフレームワーク領域に包含される(カバットのナンバリングシステムに基づく)。他の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、配列番号1、3、5、7、9、48または11の可変重鎖配列を含み、かつ、それぞれ配列番号1、3、5、7、9、48または11の1つまたは複数のC末端アミノ酸残基を欠損する。
【0145】
特定の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、配列番号1、3、5、7、9、48、または11に記載の抗TNFR2重鎖可変領域配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有する可変重鎖配列を含む、可変重鎖配列を含み、フレームワーク領域に1つまたは複数の保存的アミノ酸置換(カバットのナンバリングシステムに基づく)を含み、配列番号1、3、5、7、9、48、または11に記載の可変重鎖配列と配列番号2、4、6、8、10、または12に記載の可変軽鎖配列とを含む抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片の結合活性および/または機能活性を保持する。
【0146】
一部の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、配列番号2、4、6、8、10、または12に記載のアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、可変軽鎖配列を含む。他の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、配列番号2、4、6、8、10、または12の可変軽鎖配列を含む抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片の結合活性(例えば、BIACOREアッセイ)および/または機能活性を保持する。さらに他の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、配列番号2、4、6、8、10、または12の可変軽鎖配列を含み、かつ、軽鎖可変配列に、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換、例えば、1、2、3、4、5、1~2、1~3、1~4または1~5の保存的アミノ酸置換を有する。さらに別の実施形態では、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換は、配列番号2、4、6、8、10、または12の1つまたは複数のフレームワーク領域に包含される(カバットのナンバリングシステムに基づく)。
【0147】
特定の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、配列番号2、4、6、8、10、または12に記載の抗TNFR2軽鎖可変領域配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有する可変軽鎖配列を含み、フレームワーク領域に1つまたは複数の保存的アミノ酸置換(カバットのナンバリングシステムに基づく)を含み、配列番号1、3、5、7、9、48、または11に記載の可変重鎖配列と配列番号2、4、6、8、10、または12に記載の可変軽鎖配列とを含む抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片の結合活性および/または機能活性を保持する。
【0148】
一部の実施形態では、抗体は完全長抗体である。他の実施形態では、抗体は、例えば、Fab、Fab’、F(ab)、Fv、ドメイン抗体(dAb)、および相補性決定領域(CDR)断片、単鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニ抗体、およびそれにTNFR2特異的結合を付与するのに十分である免疫グロブリンの少なくとも一部を含有するポリペプチドからなる群から選択される抗体断片を始めとする抗体断片である。
【0149】
一部の実施形態では、本明細書に開示の抗TNFR2抗体の可変領域ドメインは、C末端アミノ酸で、少なくとも1つの他の抗体ドメインまたはそれの断片に共有結合で付着させることができる。したがって、例えば、可変領域ドメインに存在するVHドメインは、免疫グロブリンCH1ドメインまたはそれの断片に連結することができる。同様に、VLドメインはCKドメインまたはそれの断片に連結することができる。このように、例えば、抗体はFab断片とすることができるが、この場合、抗原結合ドメインは、会合したVHドメインおよびVLドメインを含有し、これらドメインは、そのC末端で、それぞれCH1ドメインおよびCKドメインに共有結合で連結されている。CH1ドメインをさらなるアミノ酸で伸長させて、例えば、Fab断片に見られるようなヒンジ領域またはヒンジ領域ドメインの一部を供給すること、または、抗体のCH2ドメインおよびCH3ドメインなどのさらなるドメインを供給することができる。
【0150】
一部の実施形態では、本明細書に開示の抗TNFR2抗体は、配列番号50および51に開示の抗体定常領域の1つもしくは両方、またはそれのバリアントも含み得る。配列番号50および51に提供した配列は、ヒト起源であり、それぞれヒトIgG1重鎖定常領域およびヒトカッパ軽鎖定常領域を表す。当業者は、マウス腫瘍モデルにおける抗TNFR2抗体の抗腫瘍効果を評価するため、非天然の定常領域を含む組換え抗TNFR2抗体を調製することが望ましい場合があることも認めるであろう。別の実施形態では、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、配列番号50または51を含み、CまたはN末端トランケーションを有し得る(例えば、C末端リジントランケーション)。
【0151】
しかし、特定のmAbがアゴニストまたはアンタゴニスト特性を持つかどうか決定する決まりは、現在、不明確である。より具体的には、抗TNFR2抗体のエピトープ位置、アイソタイプおよび生物学的活性の間の関係は完全には理解されていない。例えば、Torreyらは、TNFR2をアンタゴナイズすることができる抗体を開示し、TNF-αアゴニズムの存在下での抗体の生物学的活性に基づき、優性アンタゴニストまたは劣性アンタゴニストのいずれかとしてアンタゴニスト抗体を記載している(Torrey et al., Sci. Signal., 10:462, 2017)。Torreyらは、TNFR2アンタゴニスト抗体AおよびBは、その両方がTNF-αリガンド結合を防ぐために選択され、TNFR2活性化は、外因性TNFの存在下でのTregアッセイにおいてアンタゴニスト効果を発揮できなかったことを示した。しかしながら、抗TNFR2抗体1および2は、用量依存的にTNFアゴニズムを克服することができ、十分な濃度のTNFの存在下でTreg拡大を減少させた。これは、抗体AおよびBを劣性TNFR2アンタゴニストとして、ならびに抗体1および2を優性TNFR2アンタゴニストとして分類した。エピトープマッピング研究に基づき、Torreyらは、優性および劣性抗TNFR2抗体が、それぞれCRD3/4およびCRD2領域に位置する異なるエピトープに結合すると結論付けた(Torrey et al., Sci. Signal., 10:462, 2017)。
【0152】
国際公開第2016/187068号パンフレットは、Torreyらによって記載された優性アンタゴニスト抗TNFR2抗体が、KCRPGモチーフの1つまたは複数の残基を含有するエピトープを認識することを開示する(ヒトTNFR2内の142~146残基(国際公開第2016/187068号パンフレットの配列番号7)。国際公開第2019/094559号パンフレットは、KCRPGモチーフ内のエピトープに結合する必要なく、TNFR2のCRD3またはCD4内の1つまたは複数のエピトープに結合するさらなる優性アンタゴニストTNFR2抗体を開示する。Torreyら、国際公開第2016/187068号パンフレットおよび国際公開第2019/094559号パンフレットに開示のアンタゴニスト抗TNFR2抗体は、1つまたは複数の有益な生物学的特性、例えばTreg細胞を死滅させるおよび/もしくはその増殖を阻害する能力、TNFR2+がん細胞を死滅させるおよび/もしくはその増殖を阻害する能力、骨髄性抑制性細胞(MDSC)を死滅させるおよび/もしくはその増殖を阻害する能力、ならびに/またはエフェクターT細胞の増殖を誘導する能力を呈する。Torreyらは、両方の優性抗TNFR2アンタゴニスト抗体の機能活性が、外因性IgG法を使用するFcγ受容体結合および受容体架橋結合に非依存的であることを報告した(Torrey, et al., Sci. Signal., 10:462, 2017)。
【0153】
Bioinvent社は、がん免疫療法の開発において、BI-1808と指定される前臨床抗TNFR2抗体を有する(がん免疫療法のための標的化TNFR2:Ligand blocking depletors versus receptor agonists, Martensson, et al AACR 2020, Abstract # 936、Martensson et al, AACR 2020, Abstract #725)。BI-1808は、TNF-αのTNFR2ヘの結合を遮断し、TNF-α誘導性TNR2シグナル伝達を阻害し、生物学的活性のためFcγR結合を必要とする。in vivo作用機序研究は、BI-1808の作用の優性メカニズムが腫瘍内Treg枯渇およびCD8/Treg比の改善(Martensson,et al)であることを示した。マウスBI-1808代理抗体(マウスIgG2aフォーマットの3F10)のin vivo治療活性は、活性化Fc受容体とのFcγR相互作用への絶対的な依存によって特徴付けられる。Bioinvent社によって出願された、国際公開第2020/089474号パンフレットは、アンタゴニスト抗TNFR2抗体を記載し、一部CRD4に依存して、アンタゴニスト抗体のエピトープがドメイン3(アミノ酸134~160を包含する)の中心にあることを示す。
【0154】
国際公開第2017/040312号パンフレットは、TNFR2シグナル伝達およびTregの拡大/増殖を促進するように機能するアゴニスト抗TNFR2抗体を開示する。アゴニスト抗体は、配列KCSPGを含むエピトープに特異的に結合するとしてさらに特徴付けられる。HiFiBio社、BioInvent社およびMerrimack Pharmaceuticals社によって公開された近年のポスターは、腫瘍微小環境においてT細胞活性をモジュレートするために開発下にあるアゴニスト抗TNFR2抗体を記載する。
【0155】
HiFiBio社の候補、HFB200301は、ヒト化抗TNFR2抗体であり、TNFとTNFR2結合を競合せず、活性化CD4およびCD8T細胞を刺激し、in vitroでのそれらの増殖を増強し、ヒトTNFR2ノックインマウスの同系MC38腫瘍モデルにおいて、Fc受容体依存性抗腫瘍活性を示す(Wei et al., AACR 2020, Poster #2282)。
【0156】
Bioinvent社の候補BI-1910も、TNFR2ヘの結合からTNF-αを遮断せず、TNFR2シグナル伝達の強い活性化によって特徴付けられ、生物学的活性のためにFc結合を必要としないが、IgGアイソタイプまたはFcγRの活性化とは反対に、阻害のための結合を改善するように指定されたバリアントFc領域として活性の増強を示す。Bioinvent社によって出願された国際公開第2020/089473号パンフレットは、アゴニスト抗TNFR2抗体を記載し、アゴニスト抗体がCRD3の遠位のC末端部分に結合し、その結合が、同じエピトープマッピング実験で評価されたアンタゴニスト抗TNFR2抗体よりもCRD4により大きく依存するようであることを示す。BI-1910のマウス代理抗体(すなわちマウスIgG1フォーマットの抗体5A05)による処置は、CT26同系モデルにおいて腫瘍内CD8 T細胞を早期に増加させ、CD8/Treg比の増強をもたらした(Martensson, et al AACR 2020, Abstract # 936)。
【0157】
Merrimack社の抗TNFR2抗体候補、MM-401は、マウス抗体Y9と同じエピトープに結合し(CRD1のエピトープに結合するとして、Tam et al., Sci. Transl. Med.,11(512), 2019に記載される)、その作用の優性メカニズムはT細胞の共刺激活性による。より具体的には、それは、in vitroおよびin vivoでCD4およびCD8T細胞を刺激し、T細胞において免疫抑制マーカーおよびTNFR2の下方制御を媒介し、腫瘍浸潤CD8T細胞の強さおよびエフェクター機能を増加させる。マウス同系腫瘍モデルの抗腫瘍効果は、FcγR依存性であり、阻害性FcγRの結合によって増強される(Richards et al, MM-401, a novel anti-TNFR2 antibody that induces T cell co-stimulation. AACR 2019, Abstract # 4848)。
【0158】
そのin vivo治療活性への抗体のアイソタイプの効果を理解するため、当業者は、異なるアイソタイプならびに活性化および阻害性Fcγ受容体(FcγR)への固有の異なる結合親和性によって特徴付けられる複数の重鎖定常領域と組み合わせた同じ可変領域(VHおよびVL)を有する組換え抗体を作成することが望ましいことを容易に認識するであろう。例えば、当業者には、マウスIgG2AがヒトIgG1と機能的に似ており、活性化FcγRにより結合するが、マウスIgG1がヒトIgG4に最も近く機能的に等価であり、FcγRへの結合をより減少させると考えられることが公知である。
【0159】
TNFR2ヘの結合に加えて、本明細書に開示のVHおよびVL配列を含む抗体分子の完全長バージョンも、Fcγ受容体に結合するであろう。累積証拠により、免疫調節抗体は、それらの調節活性およびエフェクター機能のため、異なる型のFcγ受容体に結合することを示す。より具体的には、どのように抗体免疫複合体が免疫細胞活性化をモジュレートするかが活性化および阻害性Fcγ受容体への相対的な結合によって決定されることが公知である。異なる抗体アイソタイプは、異なる親和性で、活性化および阻害性Fcγ受容体に結合し、異なる活性化:阻害比(A:I比)を生じる(Nimmerjahn et al., Science, 310(5753):1510-2, 2005、Teige et al., Front Immunol, 10, 2019)。
【0160】
過去10年間のin vivo研究により、抗腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリー(TNFRSF)受容体抗体の、細胞発現Fcγ受容体(FcγR)への係留が、それらの受容体刺激活性に決定的な関連があり得ることが示唆されている。特に、FcγRIIB受容体は、免疫調節性アゴニスト抗体の活性を正に制御することが示されている(Liu et al., Antibodies, 9:64, 2020)。LiおよびRavetchは、アゴニストCD40抗体の抗腫瘍活性が阻害性Fcγ受容体の結合を必要とすることを報告した(Li and Ravetch, Proc. Nat’l Acad. Sci. (USA), 109:10966-71, 2012、Li and Ravetch, 333(6045): 1030-1034, 2011)。TNFSFの他のカテゴリーII共刺激メンバー(例えば、4-1BBおよびOX40)の抗腫瘍データを報告する論文は、FcγRIIB/抗体相互作用の、TNFSF受容体を標的化する免疫調節性アゴニスト抗体の活性を正に制御する能力を確認した(Zhang et al., J Biol Chem., 291(53): 27134-27146, 2016、White et al., J. Immunol., 187, 1754-1763, 2011、White et al., J. Immunol., 193, 1828-1835, 2014およびYu et al., Cancer Cell, 33, 664-675, 2018)。
【0161】
抗体開発に関する文献は、抗TNFR2抗体の生物学的活性の決定におけるFcγR相互作用の重要性についていくらかの決まりをもたらしてももたらさなくてもよい。他の抗TNFRカテゴリーII特異的抗体(例えば、抗CD40、抗OX40、抗CD95、抗Fn14)の生物学的活性に関する研究は、抗TNFR IgG抗体のイディオタイプが、アゴニスト活性の付与を担う決定因子ではないことを明らかにした。TNFRカテゴリーII受容体を標的化する抗体による強いアゴニズムに必要な決定因子は、Fcγ受容体(FcγR)結合である(Medler et al. Cell Death and Disease, 10:224, 2019、Li and Ravetch, PNAS (USA), 109:10966-71, 2012およびWhite et al., J. Immunol., 187, 1754-1763, 2011)。
【0162】
当業者は、Fcの操作が、本開示の抗TNFR2抗体の抗腫瘍活性(例えば、エフェクター機能)を改変するために使用され、それらのアゴニスト活性および/またはエフェクター機能を増強し得ることを認識するであろう。文献は、いくつかの代替のFc操作戦略を記載し、そのすべてが本明細書に開示の抗体の1つの可変領域を含む改変された抗TNFR2抗体を設計するのに好適であり、FcγR依存的な方法またはFcγR非依存的な方法のいずれかでTNF/TNFR2軸をモジュレートする。例えば、免疫刺激のために最適化された抗体を産生するため、本明細書に開示の抗TNFR2抗体の可変領域ドメインは、低A:I比を付与するように改変された免疫グロブリンFcドメインにC末端アミノ酸で共有結合され得る。したがって、一部の実施形態では、TNFR2の三量体リガンド受容体複合体の超分子シグナル伝達クラスターへの超架橋によりエフェクターT細胞活性化を刺激するため、本明細書に開示の抗TNFR2抗体を改変して、阻害性FcγR(例えば、CD32b)ヘの結合を増強することができる。
【0163】
例えば、CD32b(FcγRIIB)結合親和性の増加は、2つの突然変異S267EおよびL328F(すなわち「SELF」)(267位のセリンをグルタミン酸によって置き換え、328位のロイシンをフェニルアラニンによって置き換える)をヒトIgG1定常領域に導入することによって、ヒトIgG1定常領域へと改変され得る(Chu et al, Mol. Immunol. 45(15):3926-3933, 2008)。これら2つのFc突然変異は、およそ430倍、CD32bへの結合親和性を増加することが報告されており、WT hIgG1と比較して、FcRIおよびFcRIIA-H131ヘの結合が最小変化であり、FcRIIIA-V158ヘの結合を除去する(Liu et al., Antibodies, 9:64, 2020)。in vivoでは、S267E/L328F改変抗CD40 hIgG2抗体は、WT hIgG1またはhIgG2バリアントのいずれかと比較した場合、hFcR/hCD40トランスジェニックマウスにおいてT細胞を活性化する能力が増強した(Liu et al., Antibodies, 9:64, 2020およびDahan et al., Cancer Cell, 29, 820-831, 2016)。単一のS267E(「SE」)突然変異を持つ抗DR5抗体は、ヒトIgG1のFcγRIIBへの親和性を数百倍増加し、FCγRIIBをヒト化したマウスモデルにおいて腫瘍退縮を改善したことが報告されている(Li and Ravetch, Proc. Nat’l Acad. Sci., (USA), 109:10966-71, 2012)。
【0164】
あるいは、本明細書に開示の抗TNFR2抗体の可変領域ドメインは、Mimotoらによって既定されたV12突然変異(E233D/G237D/P238D/H268D/P271G/A330R)またはV11突然変異(G237D/H268D/P271G/A330R)のいずれかを含むように改変された免疫グロブリンFcドメインにC末端アミノ酸で共有結合的に付着され得る。V12およびV11突然変異は、WT hIgG1と比較して、FcγRIIBヘの結合が増強されたが、活性化FcR(FcRI、FcRIIA-H131、FcRIIIA-V131)ヘの結合を完全に廃止するまたは著しく減少する突然変異P238Dの観察について詳しく実施した研究に基づいて解明された(Mimoto et al., Protein Eng. Des. Sel., 26:589-598, 2013)。V12およびV11突然変異は、野生型ヒトIgG1(Mimoto et al.)と比較して、それぞれFcγRIIB結合をおよそ217倍および40倍に増強したことが報告された。
【0165】
Zhangらは、抗OX40抗体SF2のアゴニズムおよびエフェクター機能の増強への異なるFc操作アプローチの系統的評価を実施した。研究は、「SELF」突然変異、V12突然変異、ならびに抗体のアゴニズムおよびエフェクター機能を増強する代替の戦略として、細胞表面抗原に結合した場合、IgG1 Abの六量体化を容易にするFc突然変異を比較した(Zhang et al., J. Bio. Chem., 291(53):27134-27146, 2016)。評価した六量体化突然変異は、単一のE345RおよびE430G突然変異、E345R/E430G二重突然変異およびE345R/E430G/S440Y三重突然変異を含む(Diebolder et al., Science 343, 1260-1263, 2014)。突然変異は、FcγRIIB架橋結合に依存することなく、OX40受容体のクラスタリングを促進することによって、SF2のアゴニズム/エフェクター機能を増強すると予測された。単一のE345R突然変異は、FcγRIIB架橋結合によらず、SF2のアゴニズムに最良の効果を有すると報告された。Zhangらは、E345R六量体化突然変異が、FcγRIIB架橋結合によらず、より高いアゴニズム、局所的な微小環境におけるFcγR発現レベルにかかわらず、エフェクター機能を付与できる特徴を容易にすることができると結論付けた。しかしながら、FcγR非依存性は、FcγR発現細胞の浸潤が低レベルの腫瘍微小環境に有利であると考えられ得るが、それは非特異的にアゴニズムを刺激し、望まないオフターゲット効果をもたらし得る(Zhang et al., J. Biol. Chem., 291(53):27134-27146, 2016)。
【0166】
MedlerおよびWajantは、近年、TNFR2特異的IgG1抗体C4-IgG1(N297A)(FcγR2A、FcγR2B、およびFcγR3Aへの結合と干渉するように選択された点突然変異)の異種細胞表面係留ドメインとの遺伝子融合により、標的化された制御FcγR非依存的なアゴニスト活性を有するTNFRSF受容体特異的抗体融合タンパク質を記載した(Medler et al., Cell Death and Disease, 10:224, 2019)。細胞表面係留ドメインは、相当するサイトカイン受容体発現細胞への結合を可能にするサイトカイン(マウスIL-2、マウスGITRL、ヒトGITRLまたはマウス4-1BBL);および腫瘍関連抗原CD19、CD20、およびCD70に特異的なscFvを含む。調べた4つすべてのC4-IgG1(N297A)サイトカイン融合タンパク質は、それらの相当する細胞表面に曝露されたサイトカイン受容体に係留するとFcγR非依存的な方法でTNFR2を活性化する。同様に、すべての抗TNFR2 scFv特異的融合タンパク質は、相当する腫瘍抗原を発現するJurkat細胞と共培養したHeLa-TNFR2細胞におけるTNFR2シグナル伝達を活性化した。
【0167】
MedlerおよびWajantは、係留ドメインとしての腫瘍抗原特異的scFvの使用は、TMEにおけるFcγR結合の必要性を排除するだけでなく、全身性副作用の低減を約束することもできると推測した(Medler et al., Cell Death and Disease, 10:224, 2019)。さらに、腫瘍関連抗原は、FcγRと比較してずっと高い発現レベルに達し得るため、それらはさらに細胞表面係留抗TNFRSF受容体抗体融合タンパク質が、FcγR結合従来型抗TNFRSF受容体抗体よりも高い全活性を得ることができるとさらに推定した(Medler et al.)。TMEに存在する細胞表面標的に特異的な係留ドメインを含むように改変された融合タンパク質として、開示された抗TNFR2抗体の可変領域ドメインの使用は、がんの抗体ベースの免疫療法のため、本明細書に開示の抗体の使用を容易にすることができた。
【0168】
抗体の作製方法
抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片は、当技術分野で知られている任意の方法によって作製することができる。例えば、レシピエントは、ヒトTNFR2もしくはそれの断片をコードするDNA、TNFR2の完全長外部ドメインを含む融合タンパク質、またはIgFcドメインと組み合わせた4つの反復システインリッチドメイン(CRD1、CRD2、CRD3およびCRD4)の1つもしくは複数の任意の組合せ、またはCRDのいずれか1つからの標的エピトープをコードするポリペプチド配列、またはヒトTNFR2を過剰発現するように改変された組換え細胞で免疫することができる。適切な任意の免疫方法を使用することができる。かかる方法としては、アジュバント、他の免疫刺激剤、反復ブースター免疫、および1つまたは複数の免疫経路の使用を挙げることができる。
【0169】
様々な形態のTNFR2抗原を使用して、生物学的に活性な抗TNFR2抗体の特定のための免疫応答を誘発させることができる。したがって、誘発TNFR2抗原は、単独でまたは1つもしくは複数の免疫原性増強剤との組合せの、単一のエピトープであっても、多重のエピトープであっても、タンパク質全体であってもよい。一部の態様では、誘発抗原は、単離された可溶性完全長タンパク質、または完全長配列未満を含む可溶性タンパク質である(例えば、ヒトTNFR2の単一のCRDドメインまたはTNFR2外部ドメインの特定のサブドメイン由来のペプチドを含むペプチドで免疫する)。本明細書で使用される場合、「部分」という用語は、必要に応じて、目的の抗原の免疫原性エピトープを構成する、最小数のアミノ酸または核酸を指す。目的の細胞の形質転換に適したあらゆる遺伝的ベクターを用いることができ、それには、アデノウイルスベクター、プラスミド、およびカチオン性脂質などの非ウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されない。
【0170】
マウス、げっ歯類、霊長類、ヒト等などの種々の哺乳動物宿主から、モノクローナル抗体(mAb)を調製することが望ましい。かかるモノクローナル抗体を調製する技法に関する記載が、例えば、Sties et al. (eds.) BASIC AND CLINICAL IMMUNOLOGY (4th ed.) Lance Medical Publication, Los Altos, CAに、およびそこで引用される参考文献;Harlow and Lane (1988) ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL CSH Press; Goding (1986) MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND PRACTICE (2nd ed.) Academic Press, New York, NYに見出すことができる。通常では、所望の抗原で免疫した動物由来の脾臓細胞が、普通には骨髄腫細胞との融合によって、不死化される(Kohler and Milstein, Eur. J. Immunol., 6(7):511-9, 1976)。不死化についての代替の方法としては、エプスタイン・バーウイルス、癌遺伝子、もしくはレトロウイルスを用いる形質転換、または当該分野において知られている他の方法が挙げられる。例えば、Doyle et al. (eds. 1994 and periodic supplements) CELL AND TISSUE CULTURE: LABORATORY PROCEDURES, John Wiley and Sons, New York, NYを参照されたい。抗原に対する所望の特異性および所望の親和性の抗体の産生のために、単一の不死化細胞から生じるコロニーをスクリーニングする。かかる細胞により産生されるモノクローナル抗体の収量は、脊椎動物宿主の腹膜腔への注入を含めて、種々の技法によって増大することができる。あるいは、例えば、Huse et al. (1989) Science 246: 1275-1281に概説された一般的プロトコルに従って、ヒトB細胞由来のDNAライブラリをスクリーニングすることによって、モノクローナル抗体またはそれの抗原結合断片をコードするDNA配列を単離することができる。したがって、抗体は、当技術分野で熟練した研究者によく知られている様々な技法によって得ることができる。
【0171】
他の適切な技法には、ファージ、酵母、ウイルスまたは類似のベクターにおける抗体のライブラリの選択が関与する。例えば、Huse et al.上掲;およびWard et al. (1989) Nature 341:544-546を参照されたい。本明細書で開示のポリペプチドおよび抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体を含めて、改変の有無にかかわらず使用することができる。しばしば、ポリペプチドおよび抗体は、検出可能なシグナルを供給する物質を、共有結合または非共有結合のいずれかで連結することによって、標識されることもある。科学文献と特許文献どちらにおいても、幅広い様々の標識およびコンジュゲーションの技法が、知られており、広く報告されている。適切な標識としては、放射性核種、酵素、基質、補因子、阻害因子、蛍光性の部分、化学発光性の部分、および磁性粒子等が挙げられる。かかる標識の使用を教示する特許としては、米国特許第3,817,837号明細書;同第3,850,752号明細書;同第3,9396,345号明細書;同第4,277,437号明細書;同第4,275,149号明細書;および同第4,366,241号明細書が挙げられる。また、組換え免疫グロブリンも産生させることができる、Cabilly米国特許第4,816,567号明細書;およびQueen et al. (1989) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 86: 10029-10023を参照されたい;または、トランスジェニックマウスにおいて作製することができる、Nils Lonberg et al., (1994), Nature 368:856-859;およびMendez et al. (1997) Nature Genetics 15: 146-156;TRANSGENIC ANIMALS AND METHODS OF USE (国際公開第2012/62118号パンフレット)、Medarex、Trianni、Abgenix、Ablexis、OminiAb、Harbourおよびそのほかの技法を参照されたい。
【0172】
一部の実施形態では、TNFR2および/またはTNFRスーパーファミリーの他の関連するメンバーに結合する産生された抗体の能力は、標準的な結合アッセイを使用して、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)、FoteBio(BLI)、ELISA、ウエスタンブロット、免疫蛍光、フローサイトメトリー解析、走化性アッセイ、および細胞移動アッセイを使用して、評価することができる。一部の態様では、産生された抗体はまた、溶液中または細胞の表面上のいずれかでのTNFα/TNFR結合相互作用を遮断/阻害するそれの能力について評価することができる。
【0173】
ハイブリドーマまたは宿主細胞から調製した抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、およびアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製することができ、アフィニティークロマトグラフィーが通常の精製技法である。プロテインAのアフィニティーリガンドとしての適合性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAを使用して、ヒトガンマ1、ガンマ2、またはガンマ4の各重鎖をベースとする抗体を精製することができる(例えば、Lindmark et al., 1983 J. Immunol. Meth. 62:1-13を参照されたい)。プロテインGが、すべてのマウスアイソタイプにおよびヒトガンマ3に推奨される(Guss et al., EMBO J. 5:1567-1575, 1986)。アフィニティーリガンドが付着されるマトリクスはほとんどの場合アガロースであるが、その他のマトリクスも利用可能である。多孔性ガラス(controlled pore glass)またはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリクスによって、アガロースで得ることができるよりも早い流速および短い処理時間が可能となる。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)レジン(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商標)でのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿などのタンパク質精製向けの他の技法も、回収される抗体に応じて利用可能である。
【0174】
任意の予備的精製ステップに続いて、目的の抗体と混入物を含む混合物を、通常では低塩濃度(例えば、約0~0.25M塩から)で行うが、pH約2.5~4.5の間にての溶出緩衝剤を使用する低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供することができる。
【0175】
また、本開示の抗体または抗体断片をコードする単離されたポリヌクレオチド配列により表わされるヌクレオチド配列の全部または一部(例えば、可変領域をコードする部分)に、本明細書で定義の、低、中および高のストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする、核酸も含まれる。ハイブリダイズする核酸のハイブリダイズする部分は典型的には、少なくとも15(例えば、20、25、30または50)ヌクレオチド長である。ハイブリダイズする核酸のハイブリダイズする部分は、抗TNFR2ポリペプチド(例えば、重鎖可変領域または軽鎖可変領域)をコードする核酸またはその相補鎖の一部または全部の配列と少なくとも80%、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%同一である。本明細書に記載のタイプのハイブリダイズする核酸は、例えば、クローニングプローブ、プライマー、例えば、PCRプライマーまたは診断プローブとして使用することができる。
【0176】
ポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主細胞
他の実施形態は、抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片をコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチド、上記ポリヌクレオチドを含むベクター、および宿主細胞、ならびに上記抗体を作製するための組換え技法を包含する。単離されたポリヌクレオチドは、例えば、完全長モノクローナル抗体、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFv断片、ダイアボディ、線状抗体、単鎖抗体分子、および抗体断片から形成された多重特異性抗体を含めて、所望の任意の形態の抗TNFR2抗体をコードすることができる。
【0177】
一部の実施形態には、配列番号1、3、5、7、9、11、および48のアミノ酸配列を有する抗体または抗体断片の重鎖可変領域をコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチドが含まれる。一部の実施形態には、配列番号2、4、6、8、10、および12のいずれかのアミノ酸配列を有する抗体または抗体断片の軽鎖可変領域をコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチドが含まれる。
【0178】
一実施形態では、単離されたポリヌクレオチド配列は、
(a)配列番号1含む可変重鎖配列および配列番号2を含む可変軽鎖配列;
(b)配列番号3を含む可変重鎖配列および配列番号4を含む可変軽鎖配列;
(c)配列番号5を含む可変重鎖配列および配列番号6を含む可変軽鎖配列;
(d)配列番号7を含む可変重鎖配列および配列番号8を含む可変軽鎖配列;
(e)配列番号9を含む可変重鎖配列および配列番号10を含む可変軽鎖配列;
(f)配列番号48を含む可変重鎖配列および配列番号10を含む可変軽鎖配列;ならびに
(f)配列番号11を含む可変重鎖配列および配列番号12を含む可変軽鎖配列
のアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を有する抗体または抗体断片をコードする。
【0179】
別の実施形態では、単離されたポリヌクレオチド配列は、
(a)配列番号1と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列および配列番号2と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;
(b)配列番号3と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列および配列番号4と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;
(c)配列番号5と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列および配列番号6と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;または、
(d)配列番号7と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列および配列番号8と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列
(e)配列番号9と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列および配列番号10と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列;ならびに
(f)配列番号11と90%、95%、または99%同一である可変重鎖配列および配列番号12と90%、95%、または99%同一である可変軽鎖配列
のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域および重鎖可変領域を有する抗体または抗体断片をコードする。
【0180】
抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片をコードする配列を含むポリヌクレオチドを、当技法分野で知られている、1つまたは複数の調節配列または制御配列に融合することができ、かつ、それを当技術分野において知られている適切な発現ベクターまたは宿主細胞に含有せしめることができる。重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチド分子それぞれを、独立して、ヒト定常ドメインなどの定常ドメインをコードするポリヌクレオチド配列に融合することができ、その結果、インタクトな抗体の作製が可能となる。あるいは、ポリヌクレオチドまたはその一部を互いに融合することができ、その結果、単鎖抗体の作製用の鋳型がもたらされる。
【0181】
組換え産生の場合、抗体をコードするポリヌクレオチドを、クローニング用(DNAの増幅)または発現用の複製可能なベクターに挿入する。組換え抗体を発現させるための適切な多くのベクターが利用可能である。ベクター成分としては一般に、それらに限定されないが、以下の1つまたは複数が挙げられる:シグナル配列、複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列。
【0182】
抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片はまた、融合ポリペプチドとして産生されてもよく、この場合、抗体または断片は、シグナル配列などの異種ポリペプチド、または成熟タンパク質もしくはポリペプチドのアミノ末端に特異的な切断部位を有する他のポリペプチドと融合されている。選択された異種シグナル配列は典型的には、宿主細胞によって認識されプロセシングされる(すなわちシグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。抗TNFR2抗体シグナル配列を認識かつプロセシングしない原核宿主細胞の場合、シグナル配列を、原核生物のシグナル配列によって置換することができる。シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、リポタンパク質、熱安定性エンテロトキシンIIリーダー等とすることができる。酵母での分泌の場合、天然シグナル配列を、例えば、酵母インベルターゼアルファ因子(サッカロマイセス(Saccharomyces)およびクルイベロマイセス(Kluyveromyces)のアルファ因子リーダーを含めて)、酸性ホスファターゼ、C.アルビカンス(C. albicans)グルコアミラーゼ、または国際公開第90/13646号パンフレットに記載のシグナルから得られるリーダー配列で置換することができる。哺乳動物細胞では、哺乳動物シグナル配列、ならびにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルを使用することができる。かかる前駆体領域のDNAを、抗TNFR2抗体をコードするDNAにリーディングフレーム内でライゲートする。
【0183】
発現ベクターおよびクローニングベクターは、1つまたは複数の選択された宿主細胞においてベクターが複製することを可能とする核酸配列を含有する。一般には、クローニングベクター内でのその配列は、ベクターが宿主染色体DNAとは独立して複製することを可能とするものであり、これは複製起点または自律複製配列を含む。様々な細菌、酵母、およびウイルスについて、かかる配列はよく知られている。プラスミドpBR322由来の複製起点は大半のグラム陰性細菌にとって適切であり、2-υ.プラスミド起点は酵母に適切であり、種々のウイルス性起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV、およびBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般には、複製成分の起点は、哺乳動物発現ベクターには必要とされない(SV40起点は、初期プロモーターを含有するという理由だけで、通常では使用することができる)。
【0184】
発現ベクターおよびクローニングベクターは、発現の特定を容易にする選択マーカーをコードする遺伝子を含有することができる。通常の選択マーカー遺伝子は、抗生物質もしくはその他の毒素、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、もしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク質をコードする、または代替的には補完性の栄養要求性欠損症である、あるいは他の選択肢では、選択マーカー遺伝子は複合培地に存在しない特定の栄養分を供給する、例えば、上記遺伝子はバシラス綱(Bacilli)のためのD-アラニンラセミ化酵素をコードする。
【0185】
組成物および処置方法
本開示はまた、上皮細胞由来の原発性または転移性がんを有する患者の処置のための治療薬として使用するための抗TNFR2抗体またはそれの抗体断片を含む、例えば、医薬組成物を始めとする組成物を提供する。特定の実施形態では、本明細書に記載の治療有効量の組成物は、腫瘍細胞を死滅させるためにがん患者に投与される。例えば、本明細書に記載の組成物を使用して、TNFR2を発現または過剰発現するがん細胞の存在によって特徴付けられる腫瘍の患者を処置することができる。一部の態様では、本開示の組成物を使用して、TNFR2を発現しないが、抗TNFR2が免疫応答を刺激し、腫瘍浸潤免疫細胞におけるTNFR2の上昇を引き起こす腫瘍を有する患者を処置することができる。
【0186】
腫瘍は固形腫瘍または液性腫瘍であり得る。ある特定の実施形態では、腫瘍は、免疫原性腫瘍である。ある特定の実施形態では、腫瘍は、非免疫原性である。処置のためのがんの非限定的な例は、扁平上皮癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、神経膠腫、胃がん、腎がん(renal cancer)、卵巣がん、肝臓がん、結腸直腸がん、腎臓がん(kidney cancer)、前立腺がん、甲状腺がん、神経芽細胞腫、膵がん、乳がん、頭頸部がん、メラノーマ、骨がん、子宮がん、および2つの主要な血液細胞系統、例えばリンパ細胞株の骨髄細胞株などのいずれかに由来する他の血液悪性腫瘍が挙げられる。
【0187】
一部の態様では、がんの処置は、組合せ戦略が特に望ましい分野である、なぜなら、2つ、3つ、4つ、またはさらに多い制がん薬/療法の組合せ作用によって、しばしば、単剤療法アプローチの影響よりもかなり強い相乗効果が生みだされるからである。本明細書で提供される薬剤および組成物(例えば、医薬組成物)は、単独で、または手術、放射線照射、化学療法および/または骨髄移植(自家、同系、同種または非血縁)などの従来の治療レジメンとの組合せで使用することができる。薬剤および組成物はまた、抗腫瘍剤、化学療法剤、増殖阻害剤、細胞傷害剤、免疫チェックポイント阻害剤、共刺激分子、キナーゼ阻害剤、血管新生阻害剤、小分子標的治療薬およびマルチエピトープ戦略のうちの1つまたは複数との組合せで使用してもよい。したがって、本開示の別の実施形態では、がん処置は、種々の他の薬物と効果的に組み合わせることができる。
【0188】
本開示の抗TNFR2抗体は、単独で、またはがんを処置するのに有用である他の組成物との組合せでのいずれかで投与することができる。一実施形態では、本開示の抗体は、単独で、またはがんを処置するのに有用な他の抗体を始めとする他の免疫療法との組合せでのいずれかで投与することができる。例えば、一実施形態では、他の免疫療法とは、ヒトプログラムされた細胞死タンパク質1(PD-1)、PD-L1およびPD-L2、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、NKG2A、B7-H3、B7-H4、CTLA-4、GITR、VISTA、CD137、TIGITならびにそれらの任意の組合せからなる群から選択される免疫チェックポイント分子に対する抗体である。代替の実施形態では、第2の免疫療法は、腫瘍特異抗原(TSA)または腫瘍関連抗原(TAA)に対する抗体である。各組合せは、本開示の別々の実施形態を表す。
【0189】
抗TNFR2抗体は、免疫原性剤(腫瘍ワクチン)、例えばがん細胞、組換えタンパク質、ペプチドおよび炭水化物分子を含む精製した腫瘍抗原と組み合わせることができる。TNFR2活性化を介してT細胞活性化の閾値を下げることにより、宿主における腫瘍応答を活性化することができ、免疫原性が制限された非免疫原性腫瘍の処置を可能にする。
【0190】
抗TNFR2抗体は、チェックポイント阻害剤、例えばPD1/PDL1遮断薬、および腫瘍免疫回避を克服することができる他の治療、例えばPDL1/TGFbトラップと組み合わせることができる。動物モデルにおけるTNFR2標的化の抗PD-1との相乗作用は(Wei et al., AACR 2020, Poster #2282)、TNFR2共刺激およびPD1遮断が、PD1単独療法よりも抗腫瘍免疫応答の増強をもたらす可能性があることを示している。
【0191】
抗TNFR2抗体は、標準的ながん治療(例えば、外科手術、放射線および化学療法)と組み合わされ得る。これらの場合では、化学療法の用量を下げ、がん患者における化学療法および放射線療法の効果を改善し、彼らの生存を延長することが可能であり得る。
【0192】
本明細書で論議の治療剤の組合せは、二重特異性もしくは多重特異性結合剤もしくは融合タンパク質の成分として、または医薬的に許容される担体に含まれる単一組成物として同時に投与することができる。あるいは、療法薬の組合せは、医薬的に許容される担体に含まれる各薬剤を有する別々の組成物として同時に投与してもよい。別の実施形態では、治療剤の組合せを順次に投与する場合もある。
【0193】
医薬組成物は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th Edition, Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1995に開示のものなどの従来の技法に従って、医薬的に許容される担体または希釈剤、ならびにその他の任意の既知のアジュバントおよび賦形剤とともに製剤化することができる。一部の態様では、医薬組成物は、がんを処置するのに対象に投与される。
【0194】
本明細書で使用される場合、「医薬的に許容される担体」には、生理学的に適合性のあるあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等が含まれる。好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮の各投与(例えば、注射または注入による)に適している。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち抗体、二重特異性分子および多重特異性分子を、物質でコーティングして、化合物を不活性化するおそれのある酸およびその他の自然条件の作用から当該化合物を保護することができる。
【0195】
本開示の組成物は、当技術分野で知られている様々な方法によって投与することができる。当業者であれば理解されるように、投与の経路および/または様式は、所望の結果に応じて異なる。活性化合物は、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化による送達系を含めて、制御放出製剤などの、急速な放出に対して化合物を保護することになる担体とともに調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。かかる製剤を調製する方法は一般に当業者に知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0196】
医薬組成物中の有効成分の投薬量レベルは、対象にとって毒性がなく、特定の対象、組成物および投与様式に関して所望の治療反応を達成するのに効果的である、有効成分の量が得られるように、変えることができる。選択される投薬量レベルは、採用する本開示の特定の組成物の活性、投与の経路、投与の時間、採用する特定の化合物の排泄速度、処置の期間、採用する特定の組成物との組合せで使用される他の薬物、化合物および/または物質、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全体的健康、および以前の病歴等の医学分野でよく知られている要因を含めて様々な薬物動態の要因に左右されるであろう。
【0197】
本明細書に記載の医薬組成物は、有効量で投与することができる。「有効量」とは、単独で、もしくはさらなる用量とともに所望の反応または所望の効果を達成する量を指す。特定の疾患のまたは特定の状態の処置の場合、所望の反応は好ましくは、疾患の経過の阻害に関連する。このことは、疾患の進行を遅延させること、および特に、疾患の進行を中断または好転させることを含む。
【0198】
特定されるすべての特許および刊行物は、例えば、本開示に関連して使用することが可能なかかる刊行物に記載の方法論を、説明および開示することを目的として、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。これらの刊行物は、本願の出願日より前のそれらの開示ために提供されるに過ぎない。この点に関していかなるものも、本発明者らが、先行開示を理由としてまたは他のいかなる理由によっても、かかる開示に先行する権利を有さないことを承認するものと解釈されるべきではない。これらの文書の日付に関する声明または内容に関する表現はすべて、本出願人にとって入手可能な情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確性に関していかなる承認も構成するものではない。
【0199】
先に指示されていない限りでは、本明細書に記載および例示される様々な実施形態のいずれでも、本明細書に開示の他の実施形態のうちのいずれかに示される特性を組み込むようにさらに改変され得ることは、当業者であれば理解されるであろう。
【0200】
本開示の広範な範囲は、以下の例を参照して最もよく理解されるが、本例は本開示を特定の実施形態に限定することを意図するものではない。本明細書に記載される特定の実施形態は、例としてのみ提供されるものであり、本開示は、添付の特許請求の範囲の条件によって、かかる特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲を含めて、制限されるものである。
【実施例
【0201】
一般方法
エレクトロポレーションを使用して、ヒト(Homo sapiens)配列(NCBI受託番号NP_001057.1、配列番号52)またはカニクイザル(Macaca fascicularis)配列(NCBI受託番号XP_005544817.1、配列番号53)、もしくはマウス(Mus musculus)配列(NCBI受託番号NP_035740.2、配列番号54)からのTNFR2、またはヒト(Homo sapiens)配列(NCBI受託番号NP_001056.1、配列番号55)からのTNFR1を発現するpcDNAベースのプラスミドを、選択された宿主細胞(すなわち、両方ともATCCから購入したCHO-K1もしくはHEK293T細胞、またはKyinno #KC-0149からのJurkat NFκB細胞)にトランスフェクトすることによって、TNFR2またはTNFR1を発現する安定な細胞株を生成した。ヒト配列(配列番号57)由来のTNFの膜結合非開裂形態を発現するHEK293T細胞は、Horiuchi, T. et al. (Rheumatology, 1215-1228, 2010)によって記載された情報に従って生成した。
【0202】
表面発現をアッセイするためのフローサイトメトリーを使用して、トランスフェクションの24時間および48時間後に適切な抗体を使用して発現を確認した。プラスミド構築物に適切な抗生物質を使用して、統合された細胞を選択した。選択の7~10日後、選択圧下にトランスフェクタントを維持しながら96ウェルプレート中で生存細胞を限界希釈した。
【0203】
必要であれば、10~14日後に、TNFR2(R&D Systems、#FAB216A)およびTNFR1(R&D Systems、FAB225P)特異的抗体でフローサイトメトリーを使用してスクリーニングするため、単一コロニーをピックアップした。上位3~5位の高発現クローンを、さらなる開発のために選択した。数回の継代後、発現レベルをフローサイトメトリーおよびイメージアッセイによって確認し、それが安定であることを確かめた。
【0204】
ハイブリドーマクローンについて重鎖および軽鎖の可変領域の配列を下記のように決定した。全RNAは、Qiagen(Germantown、MD、USA)製のRNeasy Plus Mini Kitを使用して、1~2×10個のハイブリドーマ細胞から抽出した。cDNAは、Takara(Mountainview、CA、USA)製のSMARTer RACE 5’/3’Kitを使用して5’RACE反応を実行することによって生成した。PCRを、NEB(Ipswitch、MA、USA)製のQ5 High-Fidelity DNA Polymeraseを使用して実行して、適当な免疫グロブリンの3’マウス定常領域に対する遺伝子特異的プライマーとの組合せで、Takara Universal Primer mixを使用して重鎖および軽鎖からの可変領域を増幅した。重鎖および軽鎖について増幅可変領域を2%アガロースゲル上でランし、適当なバンドを切り取り、次いでQiagen製のMini Elute Gel Extraction Kitを使用してゲル精製した。精製PCR産物を、Invitrogen(Carlsbad、CA、USA)製のZero Blunt PCR Cloning Kitを使用してクローニングし、Takara製のStellar Competent E.Coli細胞に形質転換し、LB寒天培地+50μg/mLカナマイシンプレートに播種した。直接コロニーサンガー配列決定をGeneWiz(South Plainfield、NJ、USA)によって実行した。生成するヌクレオチド配列を、IMGT V-QUESTを使用して分析して、生産的再編成を特定し、翻訳されたタンパク質配列を分析した。CDR決定は、IMGTナンバリングに基づいた。
【0205】
蛍光活性化細胞ソーティング検出システム(FACS(登録商標))を含めて、フローサイトメトリーの方法が利用可能である。例えば、Owens et al. (1994) Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice, John Wiley and Sons, Hoboken, N.J.;Givan (2001) Flow Cytometry, 2nd ed.; Wiley-Liss, Hoboken, N.J.;Shapiro (2003) Practical Flow Cytometry, John Wiley and Sons, Hoboken, N.J.を参照されたい。例えば、診断試薬として使用するための、核酸プライマーおよびプローブ、ポリペプチド、ならびに抗体を含めて、核酸を修飾するのに適切な蛍光試薬が、利用可能である。Molecular Probes (2003) Catalogue, Molecular Probes, Inc., Eugene, Oreg.;Sigma-Aldrich (2003) Catalogue, St. Louis, Mo.。
【0206】
免疫沈降、クロマトグラフィー、および電気泳動を始めとするタンパク質精製の方法が記載されている。Coligan et al. (2000) Current Protocols in Protein Science, Vol. 1, John Wiley and Sons, Inc., New Yorkを参照されたい。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の生成、およびタンパク質のグリコシル化が記載されている。例えば、Coligan et al. (2000) Current Protocols in Protein Science, Vol. 2, John Wiley and Sons, Inc., New York;Ausubel et al. (2001) Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 3, John Wiley and Sons, Inc., NY, N.Y., pp. 16.0.5-16.22.17;Sigma-Aldrich, Co. (2001) Products for Life Science Research, St. Louis, Mo.; pp. 45-89;Amersham Pharmacia Biotech (2001) BioDirectory, Piscataway, N.J., pp. 384-391を参照されたい。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の産生、精製、および断片化が記載されている。Coligan et al. (2001) Current Protocols in Immunology, Vol. 1, John Wiley and Sons, Inc., New York;Harlow and Lane (1999) Using Antibodies, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.; Harlow and Lane、上掲。
【0207】
リガンド/受容体相互作用を特徴付けるための標準技法が利用可能である。例えば、Coligan et al. (2001) Current Protocols in Immunology, Vol. 4, John Wiley, Inc., New Yorkを参照されたい。特定の作用機構を備える抗体の特性評価に適当な抗体機能特性評価の標準方法も、当業者にはよく知られている。
【0208】
マウスにおける有効性研究を可能にするため、マウス定常領域と合わせて抗TNFR2特異的ヒトVLおよびVLドメインを使用することにより、キメラTNFR2特異的抗体を生成した。マウスFcは、ADCC能があるマウスIgG2a(配列番号58)(本明細書ではMs IgG2aと呼ばれる)であってもよく、ADCC不活性であるかまたはマウスIgG1(配列番号60)の265位(D265A)におけるアスパラギン酸のアラニンによる置換が、このアイソタイプと低親和性IgG Fc受容体の間の相互作用の完全な廃止をもたらす、マウスIgG1(配列番号59)であってもよい。Baudino et al. (2008) J Immunol. 2008 Nov 1;181(9):6664-9。
【0209】
本明細書で「陽性対照3」(R2-PC3またはPC3)と呼ばれる社内製TNFR2特異的抗体を、国際公開第2020/089474号パンフレットで公開された公共で利用可能な情報に基づいて調製した(配列番号7に記載のVH;および配列番号8に記載のVLを含む、「001-H10 VH」として指定される抗体)。PC3抗体を、本明細書に開示の抗TNFR2特異的抗体を評価および特徴付けるために使用した結合および機能アッセイでの対照として使用した。
【0210】
例えば、抗原性断片、リーダー配列、タンパク質折り畳み、機能的ドメイン、CDRアノテーション、グリコシル化部位、および配列アラインメントを決定するためのソフトウェアパッケージおよびデータベースが利用可能である。
【0211】
[実施例1]
抗TNFR2抗体の生成
ヒト抗体VHおよびVL遺伝子を発現する、ヒトIgG Trianniトランスジェニックマウスを免疫することによって、完全ヒト抗ヒトTNFR2抗体を生成した(例えば、国際公開第2013/063391号パンフレット、TRIANNI(登録商標)マウス)。Trianniトランスジェニックマウスは、Trianni社によって生成された。
【0212】
免疫-上記のTRIANNIマウスを、組換えヒトTNFRII/TNFRSF1B Fcキメラタンパク質(R&D Systems、#726-R2)で免疫した。
【0213】
免疫応答を、後眼窩採血によってモニタリングした。血漿をELISAまたはイメージングまたはFACS(下記のように)によってスクリーニングした。抗TNFR2力価を十分に備えるマウスを融合に使用した。マウスを免疫原で追加免疫し、その後、屠殺し、脾臓およびリンパ節を取り出した。
【0214】
抗TNFR2抗体を産生するマウスの選択-TNFR2に結合する抗体を産生するマウスを選択するために、免疫マウスからの血清を、組換えTNFR2タンパク質またはTNFR2タンパク質を発現する細胞(CHO-K1-TNFR2遺伝子、NCBI:NM_001066.3でトランスフェクトした)への結合について、ELISAまたはイメージングまたはFACSによってスクリーニングした。
【0215】
ELISAの場合、簡単に説明すると、組換えヒトTNFR2タンパク質でコーティングしたELISAプレート(Acro Biosystems #TN1-H5222)を免疫マウスからの血清の希釈液とともにインキュベートし、アッセイプレートを洗浄し、HRP結合ヤギ抗マウスIgG二次抗体(Jackson ImmumoResearch #115-036-071)およびABTS基質(Moss #ABTS-1000)を用いて特異的抗体結合を検出した。次いで、ELISAプレートリーダー(Biotek)を使用してプレートを読み取った。
【0216】
イメージングアッセイの場合、簡単に説明すると、ヒトTNFR2(NCBI:NM_001066.3)を安定に過剰発現するCHO-K1細胞を、384ウェルプレート(Corning #3985)に播種し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、免疫マウスからの希釈した血清をプレートに添加した。次いで、細胞を2%パラホルムアルデヒド(Alfa Aesar #J61899)によって固定し、インキュベーション後にPBST[0.05% Tween-20を含有するPBS、(Technova #1193)]により3回洗浄した。ヤギ抗マウスIgG Alexa Fluor 488(ThermoFisher #A11001)およびHoechst33342核染色(ThermoFisher #H3570)を細胞に添加し、1時間インキュベートした。PBSTによる3回の洗浄後、ブロッキング緩衝液[DPBS(ThermoFisher #14040216)中0.5% BSA(ThermoFisher #37525)]をプレートに添加した。プレートをスキャンし、イメージングマシン(Cytation 5、Biotek)で解析した。
【0217】
FACSの場合、簡単に説明すると、ヒトTNFR2(NCBI:NM_001066.3)を安定に過剰発現するCHO-K1細胞または300.19細胞を、FACS緩衝液[PBS(Lonza #17-516Q)+2%FBS(Gibco #26140-079)]中にアリコットし、免疫マウスからの血清の段階希釈とともにインキュベートした。細胞を2%パラホルムアルデヒド(Alfa Aesar #J61899)によって固定し、次いで過剰なFACS緩衝液[PBS(Lonza、#17-516Q)+2% FBS(ThermoFisher #26140-079)]で1回洗浄した。Alexa Fluor647(ThermoFisher #A-21235)をコンジュゲートしたヤギ抗マウス二次抗体を細胞に添加し、1時間インキュベートし、反応は続いて、フローサイトメトリーによって解析した(IntelliCyt iQue Screener PLUS)。
【0218】
TNFR2に対するMAbを産生するハイブリドーマの生成-本開示のヒト抗体を産生するハイブリドーマを生成するために、脾細胞およびリンパ節細胞を、免疫マウスから単離し、マウス骨髄腫細胞株などの適当な不死化細胞株に融合した。生成するハイブリドーマを、抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングした。例えば、免疫マウスからの脾細胞およびリンパ節細胞の単細胞懸濁液を、電気融合によって等数のSp2/0マウスIgG非分泌性骨髄腫細胞(ATCC、CRL1581)に融合した。細胞を平底96ウェル組織培養プレートに播種し、これに続いて選択培地(HAT培地)で約2週間インキュベーションし、次いでハイブリドーマ培養培地に切り替えた。細胞播種の概10~14日後に、個々のウェルからの上清を、ELISA、イメージングまたはFACSによってスクリーニングした(上記のように)。
【0219】
抗体分泌性ハイブリドーマを24ウェルプレートに移し、再びスクリーニングした。抗TNFR2がなおも陽性である場合、陽性ハイブリドーマを、単一細胞ソーターを使用するソーティングによって、サブクローニングした。次いで、安定したサブクローンをin vitroで培養して、精製およびさらなる特性評価に使用する少量の抗体を生成した。
【0220】
[実施例2]
TNFR2抗体の結合特異性
ヒトTNFR2を安定に過剰発現するHEK293T細胞またはヒトTNFR1を安定に過剰発現するCHO-K1細胞をFACS緩衝液中にアリコットし、TNFR2抗体の段階希釈とともにインキュベートした。細胞を2%パラホルムアルデヒド(Alfa Aesar #J61899)によって固定し、次いで過剰なFACS緩衝液[PBS(Lonza #17-516Q)+2% FBS(Thermo #26140-079)]で1回洗浄した。Alexa Fluor647をコンジュゲートした二次抗体を細胞に添加した。インキュベート後、反応は続いて、フローサイトメトリーによって解析した。あるいは、HEK293T細胞を384ウェル黒色透明底ポリ-D-リジン処置プレート(Falcon #356697)に一晩播種し、組織培養インキュベーター内で、37℃で一晩インキュベートした。試験抗体は、培養培地[10%熱不活性化ウシ胎仔血清(Thermo #16140-071)および1×anti-anti(Thermo #15240-062)を補足したDMEM(Thermo #11965-084)]中で段階希釈し、結合アッセイのため、細胞に移した。濃度-応答を、GraphPad Prismソフトウェアの4パラメーターロジスティック非線形回帰モデルにフィットし、EC50値を得た。
【0221】
抗ヒトTNFR2抗体は、ヒトTNFR2とカニクイザルTNFR2の両方に強い結合を示した。代表的なクローンのデータを図2に示す。ヒトTNFR2へのそれらの結合のEC50値は、0.10nM~0.38nMの範囲であった(表3)。抗TNFR2 mAb PC3は、「001-1H10」として指定された抗体について公共で利用可能な配列情報(VHおよびVLアミノ酸配列)に基づいて作成された社内製対照である。PC3の結合活性も、同じ実験で評価し、EC50は0.16nMであると測定された(図2B)。表3に示すように、代表的な抗体は、10μg/mLまで、ヒトTNFR1へのいずれの結合も示さなかった。
【0222】
【表3】
【0223】
[実施例3]
TMFR2抗体の交差反応性
ヒトTNFR2、カニクイザルTNFR2、またはマウスTNFR2を安定に過剰発現するHEK293T細胞をFACS緩衝液中にアリコットし、TNFR2抗体の段階希釈とともに2時間インキュベートした。細胞を2%パラホルムアルデヒド(Alfa Aesar、#J61899)によって固定し、次いで過剰なFACS緩衝液[PBS(Lonza、#17-516Q)+2% FBS(ThermoFisher #26140-079)]で1回洗浄した。Alexa Fluor647をコンジュゲートした二次抗体を細胞に添加し、1時間インキュベートし、反応を続いて、フローサイトメトリーによって解析した。
【0224】
濃度-応答を、GraphPad Prismソフトウェアの4パラメーターロジスティック非線形回帰モデルにフィットし、EC50値を得た。
【0225】
TNFR2抗体は、ヒトTNFR2とカニクイザルTNFR2の間で強く交差反応した(表4)。6つの代表的なクローンのそれぞれの場合、ヒトおよびカニクイザルTNFR2を比較する結合EC50値は、互いに2倍以内である(データは示さない)。対照的に、TNFR2抗体は、10μg/mLまでマウスTNFR2に結合しなかった。
【0226】
【表4】
【0227】
[実施例4]
TNFR2抗体のエピトープビニング
TNFR2抗体の結合エピトープは、一連の結合アッセイフォーマットを使用してビニングされた。
【0228】
抗ヒトFcプローブ(Probe Life、#PL168-16004)を、アッセイ緩衝液(0.02% Tween20および0.05%アジ化ナトリウムを含有するPBS)を含有する96ウェルプレートに30秒間ロードし(ベースラインステップ)、次いで、抗TNFR2抗体を含有する96ウェルに180秒間ロードした後(会合ステップ、抗体を捕捉する)、ベースラインステップを30秒間、次いで、プローブを、ヒトTNFR2 Hisタグタンパク質(Acro Biosystems #TN2-H5227、Lot#:387-8AUF1-M1)を含有する96ウェルプレートに180秒間ロードした後、別のベースラインステップ、次いで、ハイブリドーマから精製した抗TNFR2抗体と180秒間会合した。データは、Gatorソフトウェアを使用して処理し、第1の会合ステップのものとは異なる第2の会合ステップ中の曲線は、参照抗体よりも非占有エピトープに結合することを示す。さらなる結合の欠如は、参照抗体に対するエピトープブロッキングを示す。
【0229】
この連続的な結合実験から、受容体タンパク質が別のTNFR2抗体によって既に結合された場合、TNFR2抗体はヒトTNFR2に結合する異なる能力を示した(図3A)。これらの結果に基づき、抗体は、それらの結合エピトープの類似性を示す5つの異なるビンにグループ分けすることができる(図3B)。
【0230】
[実施例5]
TNFリガンドとのTNFR2抗体の結合競合
TNFR2への結合における、TNFリガンドに対するTNFR2抗体の結合競合を、ハイコンテンツイメージングアッセイで評価した。
【0231】
ヒトTNFR2受容体を過剰発現するHEK293T細胞を、384ウェル透明底ポリDリジン処置プレート(Falcon #356697)に播種し、組織培養インキュベーター内で、37℃で一晩インキュベートした。試験抗体は、培養培地[10%熱不活性化ウシ胎仔血清(Thermo #16140-071)および1×anti-anti(Thermo #15240-062)を補足したDMEM(Thermo #11965-084)]中で段階希釈し、細胞に移した。
【0232】
1時間のインキュベーション後、ビオチン標識TNF(Acro Biosystems、TNA-H8211)を結合反応に添加し、さらに1時間インキュベートした。細胞を、4%パラホルムアルデヒド溶液で固定し、次いで、0.5%ウシ血清アルブミンを含有するDulbecco緩衝生理食塩水で2回洗浄した。続いて、Alexa488フルオロフォアをコンジュゲートしたストレプトアビジン(Biolegend #405235)およびHoechst核染色(Thermo #62249)を細胞プレートに添加した。1時間インキュベートすると、細胞を、0.5%ウシ血清アルブミンを含有するDulbecco緩衝生理食塩水で2回洗浄した。
【0233】
細胞表面に結合したビオチン-TNFは、Celigoセルサイトメーター(Nexcelom)で蛍光シグナルを測定することによって検出した。結合競合を決定し、データは、ビオチン-TNFの非存在下でのシグナルを100%阻害と設定することによりノーマライズした。
【0234】
図4に示すように、TNFR2抗体のリードパネルは、TNFリガンドに対して競合するそれらの能力が異なる。さらに、図4に示したように、代表的なクローンR2-mAb1はTNFの結合を阻害しなかったが、クローンR2_mAb-2、R2_mAb-3、R2_mAb-4、R2_mAb-5、およびR2_mAb-6は、TNFR2へのTNFの結合を完全に阻害した。PC3も評価し、完全な阻害を示した。
【0235】
[実施例6]
可溶性TNF刺激NFκBシグナル伝達におけるTNFR2抗体のアンタゴニスト活性
TNFR2活性化は、細胞内でNFκBにシグナル伝達することが公知である(David J. MacEwan (2020) British Journal of Pharmacology (2002) 135, 855)。NFκB応答ルシフェラーゼレポーターアッセイを使用して、TNFR2抗体のアンタゴニスト活性を評価した。
【0236】
試験抗体は、培養培地[10%熱不活性化ウシ胎仔血清(Thermo #16140-071)および1×anti-anti(Thermo #15240-062)を補足したRPMI1640(Thermo #11875-085)]中で段階希釈し、384ウェルのソリッドボトム白色プレート(Corning #3752)に移した。TNF(R&D Systems #10291-TA)を細胞プレートに添加した後、NFκBルシフェラーゼレポーター遺伝子(Kyinno #KC-1216)でトランスフェクトしたTHP1細胞を添加した。反応は、組織培養インキュベーター内で、一晩インキュベートした。翌日、ルシフェラーゼレポーターの発現を、ONE-Gloルシフェラーゼ検出試薬(Promega #E6130)を使用することにより、測定した。発光は、Bio-Tek Neo2プレートリーダーで測定した。抗体の活性を決定し、データは、TNFの非存在下でのシグナルを100%阻害と設定することによりノーマライズした。
【0237】
THP1細胞におけるTNF刺激は、TNFR2アンタゴニストによって阻害されたレポーター細胞におけるNFκBルシフェラーゼ活性の増加をもたらした(図5)。クローンR2_mAb-1、R2_mAb-2、R2_mAb-3、R2_mAb-4、R2_mAb-5、R2_mAb-6によって示されるように、TNFR2抗体は、TNFによって誘導されるNFκBルシフェラーゼ活性を完全に阻害した。PC3も試験し、完全なシグナル伝達阻害を示した。
【0238】
[実施例7]
膜TNF刺激NFκBシグナル伝達におけるTNFR2抗体のアンタゴニスト活性
試験抗体は、培養培地[10%熱不活性化ウシ胎仔血清(Thermo #16140-071)および1×anti-anti(Thermo #15240-062)を補足したRPMI1640(Thermo #11875-085)]中で段階希釈し、384ウェルソリッドボトム白色プレート(Corning #3752)に移した。膜結合TNFを過剰発現するHEK293Tを細胞プレートに添加した後、ヒトTNFR2およびNFκBルシフェラーゼレポーター遺伝子を過剰発現するJurkat細胞を添加した。反応は、組織培養インキュベーター内で、一晩インキュベートした。翌日、ルシフェラーゼレポーターの発現を、ONE-Gloルシフェラーゼ検出試薬(Promega #E6130)を使用することにより、測定した。発光は、Bio-Tek Neo2プレートリーダーで測定した。データは、膜TNFの非存在下でのシグナルを100%阻害と設定することによりノーマライズした。
【0239】
図6Aに示すように、TNFR2抗体のリードパネルは、膜TNFによって刺激されるTNFR2シグナル伝達に対するアンタゴニスト活性が異なる。クローンR2_mAb-1およびR2_mAb-6は、シグナル伝達を部分的に阻害した。R2_mAb-2、R2_mAb-3、R2_mAb-4、R2_mAb-5によって示されるクローンは、TNFR2シグナル伝達の完全なブロッキングを示した。PC3と比較して、R2_mAb-4およびR2_mAb-5は類似のブロッキング活性を示した(図6B)。
【0240】
[実施例8]
架橋の非存在または存在下でのTNFR2抗体の活性
抗体架橋時のTNFR2抗体の活性を評価するため、本発明者らは、FcγR、または抗体に架橋するための抗ヒトIgG Fcγ断片特異的F(ab’)を発現する、いずれかのTHP1細胞を用いた。
【0241】
Jurkat NFκBルシフェラーゼレポーター細胞を、単独で培養かまたはTHP1細胞と共培養した。TNFR2抗体R2_mAb-4を、様々な濃度で細胞に適用した。THP1細胞の非存在下では、TNFR2抗体R2_mAb-4はいずれの活性も示さなかった(図7B)。図解(図7A)に示したように、TNFR2抗体が、THP1細胞上でFcγRによって架橋された場合、R2_mAb-4は、ルシフェラーゼレポーター活性の増加によって証明されるアゴニスト活性を呈した(図7B)。
【0242】
架橋効果も、抗ヒトIgG Fcγ断片特異的F(ab’)を使用することによって評価した。CD8 Tエフェクター細胞を、10%熱不活性化ウシ胎仔血清(Thermo #16140-071)、1×anti-anti(Thermo #15240-062)、10mM HEPES(Thermo、#15630-080)、1mM ピルビン酸ナトリウム(Thermo #11360-070)、0.1mM MEM-NEAA(Thermo #11140-050)および1×anti-anti(Thermo 15240-062)を補足したRPMI1640(Thermo #11875-085)中で培養し、ImmunoCult(商標)(STEMCELL #10991)およびIL-2(Biolegend #589106)による処置によって活性化した。試験抗体は、抗ヒトIgG Fcγ断片特異的F(ab’)(Jackson、#109-006-098)の存在または非存在下で、アッセイ培地(10%熱不活性化ウシ胎仔血清および1×anti-antiを補足したRPMI1640)中で段階希釈し、384ウェル透明底黒色プレート(Falcon #353962)に移した。CD8T細胞を回収し、単離した制御性T細胞と共培養した。放出されたIFNγの測定のために上清を回収した。IFNγのレベルは、公知の濃度のヒトIFNγを使用して構築した標準曲線に対して、ヒトIFNγ AlphaLISA試薬(PerkinElmer #AL217F)を使用して定量した。シグナルは、Bio-Tek Neo2プレートリーダーで測定した。すべての実験を、3回実施した。
【0243】
CD8T細胞との共培養中の制御性T細胞の存在は、現在の実験条件下でのIFNγ分泌の抑制を引き起こした(データは示さない)。TNFR2抗体のみの存在下では、対照と比較してIFNγ分泌が減少した(図7C)。さらに、図7Cに示すように、TNFR2抗体の架橋は、対照による処置群よりもIFNγ分泌を増加させた。
【0244】
[実施例9]
in vitroで生成した枯渇CD8T細胞へのTNFR2抗体の効果
Balkhi M. et al (iScience (2018) 2: 105-122)と同様に確立され、特徴付けられたT細胞枯渇のin vitroモデルを採用した。CD8T細胞は、ImmunoCult(商標)(STEMCELL #10991)による反復刺激下で拡大させ、ヒト組換えIL-2(Biolegend #589106)を補足したImmunoCult(商標)-XF T Cell Expansion Medium(STEMCELL #10981)中で培養した。細胞は、表面マーカーの変化およびサイトカイン分泌の減少を観察することによって枯渇表現型の発現を確かめるために特徴付けられた。続いて、細胞は、ImmunoCult(商標)を補足した拡大培地中で培養し、10μg/ml(66nM)の試験抗体またはアイソタイプ対照の存在下で96ウェルプレートにプレートした。一部の場合では、抗ヒトFcγ断片特異的F(ab’)(Jackson、#109-006-098)を、抗体を含有するウェルに添加した。細胞は、架橋剤ありまたはなしで、抗体の存在下で培養した。すべての実験は、3回実施した。
【0245】
増殖の増加は、抗体単独の条件下では観察されなかったが、架橋剤の存在は、アイソタイプ対照抗体に対して細胞増殖の増加を引き起こした(図8A)。T細胞の枯渇は、IL-2、IFNγおよびグランザイムBレベルの段階的な減少によって特徴付けられる(データは示さない)。上清を、T細胞増殖が測定された同じウェルから回収し、BDサイトメトリービーズアッセイ(CBA)を使用して、分泌されたヒトIFNγ(BD カタログ番号558269)、ヒトグランザイムB(BD カタログ番号560304)およびヒトTNF(BD カタログ番号560112)の存在について解析した。サイトカイン濃度は、キットに含まれる標準曲線に基づいて算出した。個々のTNFR2抗体単独により、サイトカインレベルは減少するかまたは変化しなかった(図8)。
【0246】
架橋剤の存在下では、抗TNFR2抗体は、IFNγ(図8B)、TNF(図8C)、およびグランザイム(図8D)の分泌の増加を引き起こした。対照的に、抗PD-1抗体は、増殖の増加に影響したが、IFNγ(図8B)、TNF(図8C)、およびグランザイム(図8D)のいずれの増強も促進することができなかった。
【0247】
[実施例10]
hTNFR2ノックイン同系腫瘍モデルにおける抗TNFR2抗体の抗腫瘍効果
Biocytogen(Boston、MA)からの6~7週齢の雌のホモ接合B-hTNFR2マウス(C57BL/6-Tnfrsf1btm1(hTNFRSF1B)/Bcgen)に、0.1mL PBS中の5×10個の生存MC38細胞を、右脇腹の皮下に注射した。7日後、腫瘍サイズがおよそ100mmに達すると、マウスをグループに無作為にソートし、腹腔内注射による処置を開始した(8日目)。ビヒクル対照を受けたグループ1;200μgのR2_mAb-4 Ms IgG2aを受けたグループ2;200μgのR2_mAb-5 Ms IgG2aを受けたグループ3。処置は、3週間にわたり週に2回投与された。
【0248】
体重は、週に2回測定した。腫瘍容積は、式V=1/2L×W×W[式中、Lは異種移植片の長い方の長さであり、Wは短い方の長さである]を使用して、異なる時点で決定した。2500mmを超える腫瘍を有するいずれのマウスも屠殺した。
【0249】
図9Aに示すように、R2_mAb-4 Ms IgG2aとR2_mAb-5 Ms IgG2aの両方で処置したマウスにおいて、腫瘍増殖の顕著な阻害が観察された。研究の29日目に、p値は、一元配置分散分析により、両処置において<0.0001であると決定された(図9B)。さらに、R2_mAb-4 MsIgG2aとR2_mAb-5 MsIgG2aの両方による処置は、マウスの体重に影響しなかった(データは示さない)。
【0250】
[実施例11]
MC38大腸がんモデルにおけるPD-L1抗体と組み合わせた抗腫瘍効果の評価
Biocytogen(Boston、MA)からの6~7週齢の雌のホモ接合B-hTNFR2マウス(C57BL/6-Tnfrsf1btm1(hTNFRSF1B)/Bcgen)に、0.1mL PBS中の5×10個の生存MC38細胞を、右脇腹の皮下に注射した。8日後、腫瘍サイズがおよそ100mmに達すると、マウスを無作為にグループ分けし、腹腔内注射による処置を開始した(8日目)。ビヒクル対照を受けたグループ1;60μgの抗mPD-L1抗体を受けたグループ2;100μgのR2_mAb-5 MsIgG2aを受けたグループ;60μgの抗mPD-L1抗体とともに100μgのR2_mAb-5 MsIgG2aを受けたグループ3。抗mPD-L1抗体は、アテゾリズマブの公共の配列情報に基づき、Biocytogenによって提供された。処置は、3週間にわたり週に2回投与された。
【0251】
体重は、週に2回測定した。腫瘍容積は、式V=1/2L×W×W[式中、Lは異種移植片の長い方の長さであり、Wは短い方の長さである]を使用して、異なる時点で決定した。2000mmを超える腫瘍を有するいずれのマウスも屠殺した。マウスの生存は、腫瘍移植後63日までモニターした。
【0252】
図10Aに示すように、5mpkでの単剤R2_mAb5 MsIgG2aは、32日目に、91.7%の腫瘍増殖阻害(TGI)を呈した。抗mPD-L1は、3mpkで単独で投与されると、71.4%のTGIを生じた。しかしながら、R2-mAb5 MsIgG2aがPDL1遮断と組み合わせて投与されると、TGI値は、32日目に96%になった。PDL1遮断と組み合わせたTNFR2の利点も、図10Bの生存解析中に示され、対照からのマウスは39日を超える生存を示さなかった。抗mPD-L1抗体処置は、研究観察の終わりに14%の生存をもたらした。対照的に、単剤としてまたは抗mPD-L1との組合せのいずれかで、R2_mAb5 MsIgG2aによって処置したマウスは、それぞれ、50%および63%の生存をもたらした。
【0253】
[実施例12]
PD1耐性モデルB16F10におけるTNFR2抗体の評価
PD1耐性患者におけるTNFR2抗体処置の治療能を予測するため、PD1耐性腫瘍モデルB16F10メラノーマモデルを使用して、単剤の抗TNFR2抗体およびPDL1遮断と組み合わせた抗TNFR2処置の効果を比較した。Biocytogen(Boston、MA)からの6~7週齢の雌のホモ接合B-hTNFR2マウス(C57BL/6-Tnfrsf1btm1(hTNFRSF1B)/Bcgen)に、0.1mL PBS中の1×10個の生存B16-F10細胞を、右脇腹の皮下に注射した。8日後、腫瘍サイズが75mmと100mmの間に達すると、マウスを無作為にグループ分けし、腹腔内注射による処置を開始した(8日目)。ビヒクル対照を受けたグループ1;60μgの抗mPD-L1抗体を受けたグループ2;100μgのR2_mAb-5 MsIgG2aを受けたグループ;60μgの抗mPD-L1抗体とともに100μgのR2_mAb-5 MsIgG2aを受けたグループ3。処置は、3週間にわたり週に2回投与した。
【0254】
体重は、週に2回測定した。腫瘍容積は、式V=1/2L×W×W[式中、Lは異種移植片の長い方の長さであり、Wは短い方の長さである]を使用して、異なる時点で決定した。2500mmを超える腫瘍を有するいずれのマウスも屠殺した。マウスの生存は、腫瘍移植後26日までモニターした。
【0255】
図11に示すように、5mpkの抗mPD-L1抗体処置したグループからのマウスは、接種後15日目に19.3%のTGI値を有し、5mpkのR2_mAb-5 MsIgG2a処置は、34%のTGI値を有した。抗mPD-L1と組み合わせたR2_mAb-5 MsIgG2aが58%のTGI値をもたらす場合、PDL1またはTNFR2のいずれかの単剤処置よりも良かった。
【0256】
[実施例13]
TNFR2抗体の効果は完全にはADCC依存性ではない
腫瘍微小環境に存在するTreg細胞での高発現レベルのTNFR2は、TregのADCC媒介性枯渇が抗TNFR2抗体の効果を説明するという仮定をもたらす。本発明者らは、マウスIgG2aフォーマット(ADCC能がある)およびマウスIgG1フォーマット(ADCC不活性)の両方でのR2_mAb-5の効果を評価した。
【0257】
Biocytogen(Boston、MA)からの6~7週齢の雌のホモ接合B-hTNFR2マウス(C57BL/6-Tnfrsf1btm1(hTNFRSF1B)/Bcgen)に、0.1mL PBS中の5×10個の生存MC38細胞を、右脇腹の皮下に注射した。8日後、腫瘍サイズがおよそ100mmに達すると、マウスを無作為にグループにソートし、腹腔内注射による処置を開始した(8日目)。ビヒクル対照を受けたグループ1;200μgのR2_mAb-5 MsIgG2aを受けたグループ2;200μgのR2_mAb-5 MsIgG1を受けたグループ3。処置は、3週間にわたり週に2回投与した。
【0258】
体重は、週に2回測定した。腫瘍容積は、式V=1/2L×W×W[式中、Lは異種移植片の長い方の長さであり、Wは短い方の長さである]を使用して、異なる時点で決定した。2500mmを超える腫瘍を有するいずれのマウスも屠殺した。
【0259】
図12Aに示すように、R2_mAb-5 MsIgG2aとR2_mAb-5 MsIgG1の両方で処置したマウスにおいて、腫瘍増殖の顕著な阻害が観察された。研究の32日目に、p値は、一元配置分散分析により、両処置において<0.0001であると決定された(図12B)。腫瘍阻害は、R2_mAb-5 MsIgG1と比較してR2-5 R2_mAb-5 MsIgG2aでわずかに強かったが、その差は統計的に顕著ではなかった。この結果は、ADCCがR2-mAb5の抗腫瘍効果に寄与するが、その効果は完全にはADCCに依存しないことを示唆している。
【0260】
[実施例14]
TNFR2抗体の抗腫瘍効果は、部分的にFc受容体架橋活性に依存する
TNFR2アンタゴニスト抗体の作用のメカニズムをさらに解くために、マウスIgG1の265位でのアラニンによるアスパラギン酸の置換(D265A)が、このアイソタイプと低親和性IgG Fc受容体(FcガンマRIIBおよびFcガンマRIII)の間の相互作用の完全な欠如をもたらすため、R2_mAb-5の効果を、マウスIgG2aフォーマット(ADCC能がある)とマウスIgG1 D265Aフォーマット(ADCCおよびFc架橋不活性)の両方で評価した。
【0261】
Biocytogen(Boston、MA)からの6~7週齢の雌のホモ接合B-hTNFR2マウス(C57BL/6-Tnfrsf1btm1(hTNFRSF1B)/Bcgen)に、0.1mL PBS中の5×10個の生存MC38細胞を、右脇腹の皮下に注射した。8日後、腫瘍サイズがおよそ100mmに達すると、マウスを無作為にグループにソートし、腹腔内注射による処置を開始した(8日目)。ビヒクル対照を受けたグループ1;100μgのR2_mAb-5 MsIgG2aを受けたグループ2;200μgのR2_mAb-5 MsIgG2aを受けたグループ3、および100μgのR2_mAb-5 Ms IgG1D265Aを受けたグループ4。処置は、3週間にわたり週に2回投与した。
【0262】
体重は、週に2回測定した。腫瘍容積は、式V=1/2L×W×W[式中、Lは異種移植片の長い方の長さであり、Wは短い方の長さである]を使用して、異なる時点で決定した。2500mmを超える腫瘍を有するいずれのマウスも屠殺した。
【0263】
図13Aに示すように、R2_mAb-5 Ms IgG2aとR2_mAb-5 Ms IgG1 D265Aの両方で処置したマウスにおいて、腫瘍増殖の顕著な阻害が観察された。R2_mAb-5 Ms IgG2aは、用量依存性を示し、グループ3(10mpk)はグループ2(5mpk)よりも強い抗腫瘍効果を示し、TGI89.9%対TGI71.4%であった。さらに、MsIgG1 D265Aバリアントを使用することによるFc架橋効果が除去された場合、抗腫瘍効果はTGI41.2%に減少し、Fc機能が、TNFR2抗体R2_mAb5の完全な抗腫瘍効果に必要とされることを示している。研究の25日目に、p値は、一元配置分散分析により、両処置において<0.0001であると決定された(図13B)。この結果は、Fc架橋がR2-mAb5の抗腫瘍効果に寄与するが、その効果はFc架橋に完全には依存しないことを示唆している。
【0264】
特に指示のない限り、明細書および特許請求の範囲において使用される成分の量、分子量などの特性、反応条件等を表現するすべての数は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されていると理解すべきである。したがって、そうではないと指示のない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲において記載する数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて異なってもよい近似値である。少なくとも、均等論の原則を特許請求の範囲に適用することを限定しようとする試みではなく、各数値パラメータは、報告された有効桁の数値を考慮してかつ通常の四捨五入技法を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。
【0265】
本開示の幅広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるが、特定の例において記載される数値はできるだけ正確に報告されている。いずれの数値も、しかし、それらのそれぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じるある特定の誤差を本質的に含有する。
【0266】
本開示を説明する文脈で(特に以下の特許請求の範囲の文脈で)使用される「a」、「an」、「the」という用語、および類似の指示対象は、本明細書に特に指示のない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形と複数形の両方をカバーすると解釈される。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、範囲に入る各個別の値に個々に言及することの省略方法としての役割を果たすことが意図されている。本明細書に特に指示のない限り、個々の値はそれぞれ、本明細書に個別に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載のすべての方法は、本明細書に特に指示のない限り、またはさもなければ文脈と明らかに矛盾しない限り、適切な任意の順序で行うことができる。本明細書で提供されるあらゆる例、または例示的な言い回し(例えば「などの(such as)」)の使用は、単に、本開示をより良く例示することを意図するものであり、特に主張しない限り開示の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言い回しも、特許請求されていない要素が本発明の実施にとって必須であることを示すものと解釈すべきではない。
【0267】
本明細書に開示された開示の代替要素または実施形態の群分けは、限定であると解釈すべきではない。各群の構成要素は、個々に、または群の他の構成要素もしくは本明細書に見出される他の構成要素との任意の組合せで、言及することができかつ特許請求することができる。ある群の1つまたは複数の構成要素が、便宜上および/または特許性の理由から、群に包含され、または群から削除され得る。なんらかのかかる包含または削除が生じる場合、本明細書は、改変された群を含み、したがって、添付の特許請求の範囲で使用される全マーカッシュ群の書面による明細を満足するものである。
【0268】
本開示のある特定の実施形態が、発明者らが知っている本開示を実施するためのベストモードを含めて、本明細書に記載されている。もちろん、それら記載の実施形態の変形例は、前述の説明を読み解くことで当業者であれば明らかとなるであろう。本発明者らは、当業者であれば必要に応じてかかる変形を採用すると考えており、本開示が本明細書に具体的に記載のもの以外の方法で実行されることを意図している。したがって、本開示は、適用法が許すなら、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙された主題の改変形態および均等物すべてを包含する。さらに、それらの可能なすべての変形における上記の要素の任意の組合せも、本明細書に特に指示のない限り、またはさもなければ文脈と明らかに矛盾しない限り、本開示によって包含される。
【0269】
本明細書に開示の具体的な実施形態は、「からなる」または「から本質的になる」という言い回しを使用して、特許請求の範囲においてさらに限定することができる。出願されたか、補正によって追加されたかにかかわらず、特許請求の範囲において使用される場合、「からなる」という移行句は、特許請求の範囲に規定されてないいかなる要素をも、ステップをもまたは成分をも、排除する。「から本質的になる」という移行句は、請求項の範囲を、特定された材料またはステップ、ならびに基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。そのように特許請求される本開示の実施形態が、本明細書に本質的にまたは明示的に説明されており、本明細書において有効である。
【0270】
本明細書に開示された本開示の実施形態は、本開示の原理の例示であることが理解されよう。採用することができる他の改変は、本開示の範囲内である。したがって、一例であって限定されないが、本開示の代替の構成が本明細書の教示に従って利用することができる。したがって、本開示は、示されかつ記載されたように厳密にそのものに限定されるものではない。
【0271】
本開示を、種々の具体的な材料、手順および例を参照することによって、本明細書で説明し、例示してきたが、本開示は、その目的のために選択された材料および手順の特定の組合せに限定されるものではないと理解される。かかる詳細の多数の変形が、当業者であれば理解されるように、暗に含まれ得る。本明細書および例は、例示的なものに過ぎないと考えられ、本開示の真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲によって指示されることが意図される。本願で参照されたすべての参考文献、特許、および特許出願は、これらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図2
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図12
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【配列表】
2024502035000001.app
【国際調査報告】