(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】分析物分析のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20240110BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539988
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 US2021065361
(87)【国際公開番号】W WO2022147025
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518337142
【氏名又は名称】コンビナティ インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】5823 Newton Dribe Carlsbad,California 92008 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】グエン ヒエン
(72)【発明者】
【氏名】フン ジュ-スン
(72)【発明者】
【氏名】ジアン リンシア
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029FA15
4B063QA01
4B063QQ79
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR62
4B063QR66
4B063QS33
4B063QX02
(57)【要約】
本開示は、分析物を分析するための方法及びシステムを提供する。分析物の分析は、分析物に対する特異性を有する結合プローブ及び核酸分子を含み得る結合試薬と、分析物を接触させることを含み得る。核酸分子は変性され得、分析物の変性を示すシグナルが収集され得る。収集されたシグナルは、分析物を検出、同定、又は定量化するために使用され得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物を同定するための方法であって、
(a)(i)前記分析物に対する結合特異性を有する結合プローブ及び、(ii)核酸分子を含む、結合試薬を前記分析物と接触させることと、
(b)前記核酸分子又はその誘導体の少なくとも一部分を変性させることと、
(c)前記変性を示すシグナルを検出して前記分析物を同定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記分析物が支持体にカップリングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分析物が、前記支持体上に固定化された捕捉物質を介して前記支持体にカップリングされる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記捕捉物質が抗体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記結合試薬が抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記分析物がタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分析物が、試料中の複数の分析物のうちの1つであり、前記結合試薬が、複数の結合試薬のうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
追加の結合試薬を追加の分析物と接触させることを更に含み、前記追加の結合試薬が、(i)前記追加の分析物に対する結合特異性を有する追加の結合プローブ、及び(ii)追加の核酸分子を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記追加の核酸分子が、前記核酸分子とは異なる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記追加の核酸分子又はその誘導体を変性させることを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記追加の核酸又はその誘導体の前記変性を示す追加のシグナルを検出して前記追加の分析物を同定することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の結合試薬を複数のパーティションに分配することを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の結合試薬を前記複数のパーティションに分配するためにマイクロ流体デバイスを使用することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のパーティションのうちの1つ以上のパーティションをイメージングして、前記シグナルを検出することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記核酸分子を含むパーティションの数を決定することを更に含み、前記核酸分子を含むパーティションの前記数が、前記分析物を定量化するために使用される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記核酸分子が、前記結合プローブに可逆的にカップリングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
(b)の前に、前記核酸分子を前記結合プローブから切り離すことを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(b)の前に、前記核酸分子の一部分を前記結合プローブから切り離すことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
(a)に続いて、前記結合試薬が前記分析物にカップリングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
カップリングされていない結合試薬を洗浄によって除去することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記核酸分子を制御された加熱にさらして、前記核酸分子を変性させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
(b)の前に、前記核酸分子を増幅することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記シグナルを処理して、前記分析物を同定するために使用される変性プロファイルを生成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記核酸分子が、前記シグナルの由来であるインターカレート色素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記シグナルが、光シグナルである、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
追加の結合試薬を前記分析物と接触させることを更に含み、前記追加の結合試薬が、(i)前記分析物に対する結合特異性を有する追加の結合プローブ、及び(ii)追加の核酸分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記核酸分子及び前記追加の核酸分子をスプリンターオリゴと接触させて、前記核酸分子を前記追加の核酸分子とカップリングさせることを更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記核酸分子及び前記追加の核酸分子をライゲーションして、ライゲーションされた核酸分子を生成することを更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
(b)の前に、前記ライゲーションされた核酸分子のみを増幅することを更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
分析物を同定するためのシステムであって、
前記分析物を同定するためのシグナルを収集及び処理するように構成されている検出ユニットと、
前記検出ユニットに動作可能に結合されている1つ以上のプロセッサと、を備え、前記1つ以上のプロセッサが、個々に又は集合的に、
(i)(a)前記分析物に対する結合特異性を有する結合プローブ及び(b)核酸分子を含む、結合試薬を前記分析物と接触させ、
(ii)前記核酸分子又はその誘導体の少なくとも一部分を変性させ、
(iii)前記核酸分子の変性を示すシグナルを検出して前記分析物を同定するように前記検出ユニットに指示する、
ようにプログラムされているか又は別様に構成されている、システム。
【請求項31】
前記分析物にカップリングするように構成されている支持体を更に備える、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記支持体が、前記支持体上に固定化された捕捉物質を含み、前記捕捉物質が前記分析物にカップリングするように構成されている、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記捕捉物質が抗体である、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記結合試薬が抗体である、請求項30に記載のシステム。
【請求項35】
前記分析物がタンパク質である、請求項30に記載のシステム。
【請求項36】
複数のパーティションを含むマイクロ流体デバイスを更に備える、請求項30に記載のシステム。
【請求項37】
前記複数のパーティションが、前記結合試薬を含む混合物を分配するように構成されている、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記検出ユニットが、前記複数のパーティションのうちの1つ以上のパーティションをイメージングするように構成されている、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記核酸分子を増幅するように構成されている処理ユニットを更に備える、請求項30に記載のシステム。
【請求項40】
前記核酸分子の制御された加熱を行い前記核酸分子を変性させるように構成されている、加熱ユニットを更に備える、請求項30に記載のシステム。
【請求項41】
前記1つ以上のプロセッサが、前記核酸分子の、前記分析物を同定するために使用可能である変性プロファイルを生成するように個々に又は集合的にプログラムされているか又は別様に構成されている、請求項30に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
相互参照
本出願は、2020年12月29日に出願された米国仮特許出願第63/131,473号及び2021年4月9日に出願された米国仮特許出願第173,038号の両方の優先権を主張するものであり、それらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
マイクロ流体デバイスは、小規模な流体を取り扱う構造を含むデバイスである。典型的には、マイクロ流体デバイスはサブミリメートル規模で動作し、マイクロリットル、ナノリットル、又はより少量の流体を取り扱う。マイクロ流体デバイスの1つの用途は、分析物分析、例えばデジタルポリメラーゼ連鎖反応(dPCR)である。複数のパーティションを備えたマイクロ流体デバイスは、dPCRに有用であり得る。未知の試料のPCR増幅率を1セットの既知のqPCR標準の率と比較することによって鋳型を定量化する定量的リアルタイムPCR(qPCR)とは異なり、dPCRは、より高い感度、より高い精度、及びより高い再現性を提供することができる。
【0003】
ゲノム研究者及び臨床医にとって、dPCRは、まれな変異株の検出、コピー数多型の定量化、及び次世代シーケンシングライブラリの定量化において特に強力である。無細胞DNA及びウイルス量の定量化を用いるリキッドバイオプシーのための臨床の場における潜在的な使用は、dPCR技術の価値を更に高める。既存のdPCRソリューションでは、エラストマーのバルブアレイ、シリコン貫通孔アプローチ、及び油滴のマイクロ流体のカプセル化が使用されてきた。利用可能なdPCRプラットフォームの数が増えているにもかかわらず、PCR増幅サイクルの数を数えることに依拠しているより古いqPCR技術と比較すると、dPCRは不利な状況であった。スループット、使いやすさ、性能、及びコストの組み合わせは、dPCRが市場においてより採用されるための主な障壁である。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、1つ以上の分析物を検出、同定、又は定量化するために有用であり得る方法及びシステムが提供される。本開示は、試料調製、核酸増幅、分析物分析、多重分析物分析、又はそれらの任意の組み合わせのための方法、システム、及びデバイスを提供する。本明細書に記載の方法、システム、及びデバイスは、他のシステム及び方法と比較して、コスト又は複雑さを低減して分析物の検出、同定、又は定量化を可能にすることができる。
【0005】
一態様では、本開示は、分析物を同定するための方法であって、(a)(i)分析物に対する結合特異性を有する結合プローブ及び(ii)核酸分子を含む、結合試薬を分析物と接触させることと、(b)核酸分子又はその誘導体の少なくとも一部分を変性させることと、(c)変性を示すシグナルを検出して分析物を同定することと、を含む、方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、分析物は支持体にカップリングされる。いくつかの実施形態では、分析物は、支持体上に固定化された捕捉物質を介して支持体にカップリングされる。いくつかの実施形態では、捕捉物質は抗体である。いくつかの実施形態では、結合試薬は抗体である。いくつかの実施形態では、分析物はタンパク質である。
【0007】
いくつかの実施形態では、分析物は、試料中の複数の分析物のうちの1つであり、結合試薬は、複数の結合試薬のうちの1つである。いくつかの実施形態では、この方法は、追加の結合試薬を追加の分析物と接触させることを更に含み、この追加の結合試薬は、(i)追加の分析物に対する結合特異性を有する追加の結合プローブ、及び(ii)追加の核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、追加の核酸分子は、上記核酸分子とは異なる。いくつかの実施形態では、この方法は、追加の核酸分子又はその誘導体を変性させることを更に含む。いくつかの実施形態では、この方法は、追加の核酸又はその誘導体の変性を示す追加のシグナルを検出して追加の分析物を同定することを更に含む。いくつかの実施形態では、この方法は、複数の結合試薬を複数のパーティションに分配することを更に含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、この方法は、複数の結合試薬を複数のパーティションに分配するためにマイクロ流体デバイスを使用することを更に含む。いくつかの実施形態では、この方法は、複数のパーティションのうちの1つ以上のパーティションをイメージングして、シグナルを検出することを更に含む。いくつかの実施形態では、この方法は、核酸分子を含むパーティションの数を決定することを更に含み、該核酸分子を含むパーティションの該数は、分析物を定量化するために使用される。
【0009】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、結合プローブに可逆的にカップリングされる。いくつかの実施形態では、この方法は、(b)の前に、核酸分子を結合プローブから切り離すことを更に含む。いくつかの実施形態では、この方法は、(b)の前に、核酸分子の一部分を結合プローブから切り離すことを更に含む。いくつかの実施形態では、(a)に続いて、結合試薬は分析物にカップリングされる。いくつかの実施形態では、この方法は、カップリングされていない結合試薬を洗浄によって除去することを更に含む。いくつかの実施形態では、この方法は、核酸分子を制御された加熱にさらして、核酸分子を変性させることを更に含む。いくつかの実施形態では、この方法は、(b)の前に、核酸分子を増幅することを更に含む。いくつかの実施形態では、この方法は、シグナルを処理して、分析物を同定するために使用される変性プロファイルを生成することを更に含む。いくつかの実施形態では、核酸分子は、シグナルの由来であるインターカレート色素を含む。いくつかの実施形態において、シグナルが、光シグナルである。
【0010】
いくつかの実施形態では、この方法は、追加の結合試薬を分析物と接触させることを更に含み、この追加の結合試薬は、(i)追加の分析物に対する結合特異性を有する追加の結合プローブ、及び(ii)追加の核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、この方法は、核酸分子及び追加の核酸分子をスプリンターオリゴと接触させて、核酸分子を追加の核酸分子とカップリングさせることを更に含む。いくつかの実施形態では、この方法は、核酸分子及び追加の核酸分子をライゲーションして、ライゲーションされた核酸分子を生成することを更に含む。いくつかの実施形態では、この方法は、(b)の前に、ライゲーションされた核酸分子を増幅することを更に含む。
【0011】
別の態様では、本開示は、分析物を同定するためのシステムであって、分析物を同定するためのシグナルを収集及び処理するように構成されている検出ユニットと、該検出ユニットに動作可能に結合されている1つ以上のプロセッサと、を備え、該1つ以上のプロセッサが、個々に又は集合的に、(i)(a)分析物に対する結合特異性を有する結合プローブ及び(b)核酸分子を含む、結合試薬を分析物と接触させ、(ii)核酸分子又はその誘導体の少なくとも一部分を変性させ、(iii)核酸分子の変性を示すシグナルを検出して分析物を同定するように検出ユニットに指示する、ようにプログラムされているか又は別様に構成されている、システムを提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、このシステムは、分析物にカップリングするように構成されている支持体を更に備える。いくつかの実施形態では、支持体は、支持体上に固定化された捕捉物質を含み、該捕捉物質は分析物にカップリングするように構成されている。いくつかの実施形態では、捕捉物質は抗体である。いくつかの実施形態では、結合試薬は抗体である。いくつかの実施形態では、分析物はタンパク質である。
【0013】
いくつかの実施形態では、このシステムは、複数のパーティションを備えるマイクロ流体デバイスを更に備える。いくつかの実施形態では、複数のパーティションは、結合試薬を含む混合物を分配するように構成されている。いくつかの実施形態では、検出ユニットは、複数のパーティションのうちの1つ以上のパーティションをイメージングするように構成されている。いくつかの実施形態では、このシステムは、核酸分子を増幅するように構成されている処理ユニットを更に備える。いくつかの実施形態では、このシステムは、核酸分子の制御された加熱を行い核酸分子を変性させるように構成されている、加熱ユニットを更に備える。いくつかの実施形態では、1つ以上のプロセッサは、核酸分子の、分析物を同定するために使用可能である変性プロファイルを生成するように個々に又は集合的にプログラムされているか又は別様に構成されている。
【0014】
本開示の追加の態様及び利点は、本開示の例示的な実施形態のみが示され、説明されている、以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかとなるであろう。認識されるように、本開示は、他の異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、全て本開示から逸脱することなく、様々な明白な点において修正することができる。したがって、図面及び説明は、本質的に例示的なものと考えられるべきであり、限定的なものとして考えられるべきではない。
【0015】
参照による組み込み
本明細書に言及される全ての公開物、特許、及び特許出願は、各個別の公開物、特許、又は特許出願が、具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示されるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる刊行物及び特許又は特許出願が本明細書に含まれる開示と矛盾する限り、明細書は任意のそのような矛盾する資料に取って代わるか、又は優先するように意図されている。
【0016】
本発明の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の、特徴および利点のより良好な理解は、例示的な実施形態について記載し、本発明の原理が利用されている以下の詳細な説明、ならびに添付の図面(本明細書の「図(Figure)」および「図(FIG.)」も同様に)を参照することにより得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】分析物を分析するための例示的なワークフローを概略的に示す。
【
図2】分析物、捕捉物質、及び結合試薬を含む例示的な複合体を概略的に示す。
【
図3】分析物を分析するための例示的なワークフローを概略的に示す。
【
図4A】複数の結合試薬についての例示的な変性プロファイルを示す。
図4Aは、単一の結合試薬と接触する例示的な試料についての例示的な変性プロファイルを示す。
図4Bは、複数の結合試薬と接触する例示的な試料についての例示的な変性プロファイルを示す。
【
図4B】複数の結合試薬についての例示的な変性プロファイルを示す。
図4Aは、単一の結合試薬と接触する例示的な試料についての例示的な変性プロファイルを示す。
図4Bは、複数の結合試薬と接触する例示的な試料についての例示的な変性プロファイルを示す。
【
図5-01】例示的な分析物の例示的な同定及び定量化を概略的に示す。
【
図5-02】例示的な分析物の例示的な同定及び定量化を概略的に示す。
【
図6】本明細書で提供される方法を実施するようにプログラムされているか又は別様に構成されている例示的なコンピュータ制御システムを概略的に示す。
【
図7A】デジタルポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と共に使用するための例示的な近接ライゲーションアッセイ(PLA)のワークフローを示す。
図7Aは、例示的な近接ライゲーションアッセイ及び核酸増幅を概略的に示す。
図7Bは、その後の核酸増幅を伴わない例示的な近接ライゲーションアッセイを概略的に示す。
図7Cは、デジタルPCRと統合された例示的な近接ライゲーションアッセイを示す。
【
図7B】デジタルポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と共に使用するための例示的な近接ライゲーションアッセイ(PLA)のワークフローを示す。
図7Aは、例示的な近接ライゲーションアッセイ及び核酸増幅を概略的に示す。
図7Bは、その後の核酸増幅を伴わない例示的な近接ライゲーションアッセイを概略的に示す。
図7Cは、デジタルPCRと統合された例示的な近接ライゲーションアッセイを示す。
【
図7C】デジタルポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と共に使用するための例示的な近接ライゲーションアッセイ(PLA)のワークフローを示す。
図7Aは、例示的な近接ライゲーションアッセイ及び核酸増幅を概略的に示す。
図7Bは、その後の核酸増幅を伴わない例示的な近接ライゲーションアッセイを概略的に示す。
図7Cは、デジタルPCRと統合された例示的な近接ライゲーションアッセイを示す。
【
図8】例示的なマルチプレート及びマルチ試料PLAとデジタルPCRワークフローとを概略的に示す。
【
図9】インターロイキン6タンパク質の定量化の例示的な標準曲線を示す。
【
図10】バックグラウンド補正を行ったインターロイキン6タンパク質の定量化の例示的な標準曲線を示す。
【
図11】バックグラウンド補正を行ったトロポニンタンパク質の定量化の例示的な標準曲線を示す。
【
図12】インターカレート色素を用いた例示的なデジタル融解分析を示す。
【
図13】PLA及びデジタルPCRを、インターカレート色素を用いたデジタル融解分析と共に使用する例を概略的に示す。
【
図14】別の例示的なPLAワークフローを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の様々な実施形態が本明細書において示され、かつ記載されているが、かかる実施形態が例としてのみ提供されていることは、当業者には明らかであろう。多くの変化形、変更、及び置換が、本発明から逸脱することなく、当業者に想起され得る。本明細書に記載の本発明の実施形態に対する様々な代替案が採用され得ることを理解されたい。
【0019】
本明細書で使用される場合、「結合試薬」という用語は、概して、分析物に対する親和性を有するか、又は分析物に結合することができる1つ以上の部分(例えば、結合プローブ)を含む種を指し、また、識別子分子又はバーコードを含む1つ以上の他の部分も含み得る。識別子又はバーコードは、分析物に対する親和性を有するか、又は分析物に結合することができる1つ以上の部分、したがって、1つ以上の部分が結合する分析物を同定することができる。結合試薬は、核酸分子、抗体、又は分析物に結合することができる任意の他の分子を含んでもよい。結合試薬は、結合プローブ、及び核酸分子識別子又はバーコードを含み得る。結合試薬は、溶液中に存在し得る。結合試薬は、支持体上に固定化された分析物にカップリングし得る。結合試薬は、捕捉物質を介して支持体上に固定化された分析物にカップリングし得る。あるいは、又はそれに加えて、結合試薬は、溶液中に存在する分析物にカップリングし得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、「結合プローブ」という用語は、概して、核酸分子(例えば、アプタマー)、抗体、又は分析物若しくは分析物のドメインに対する特異性を有する任意の他の分子などの種を指す。結合プローブは、分析物にカップリングする(例えば、結合する)ことができるか、又は分析物にカップリングする部分、ドメイン、又は構造を含み得る。結合プローブは、分析物に可逆的にカップリングする又は結合することができる。あるいは、結合プローブは、分析物に不可逆的にカップリング又は結合し得る。結合プローブは、識別子分子又はバーコード(例えば、核酸分子)にカップリングされて、結合試薬を形成し得る。結合試薬は、分析物を同定するために使用可能であり得る。結合プローブは、識別子分子又はバーコードに可逆的又は不可逆的に(例えば、共有結合的に)カップリングされ得る。一例では、結合プローブは、識別子分子又はバーコードとして構成されている核酸にカップリングされる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「捕捉物質」という用語は、概して、支持体にカップリングされ、分析物に結合又はカップリングすることができる分子を指し、このようなカップリング又は結合により、分析物は支持体に固定化される。捕捉物質分子は、リガンド、核酸分子、タンパク質、抗体、又は分析物を捕捉することができる任意の他の分子であり得る。捕捉物質は、単一の分析物又は単一種類の分析物に対する特異性を有し得る。あるいは、又はそれに加えて、捕捉物質は、複数の分析物又は複数の種類の分析物に対する特異性を有し得るか、又はそれらに結合し得る。
【0022】
本明細書で使用される「試料」という用語は、概して、分析物を含むか、又は含むことが疑われる任意の試料を指す。例えば、試料は、1つ以上の分析物を含む生体試料であり得る。生体試料は、血液(例えば、全血)、血漿、血清、尿、唾液、粘膜排泄物、痰、便、及び涙から得ることができる(例えば、抽出若しくは単離される)か、又はそれらを含み得る。生体試料は、流体試料又は組織試料(例えば、皮膚試料)であり得る。いくつかの例では、試料は、全血などの無細胞体液から得られる。このような場合、試料は、無細胞DNA、無細胞RNA、タンパク質、代謝産物、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの例では、試料は、循環腫瘍細胞、がんバイオマーカー、又は両方を含み得る。いくつかの例では、試料は、環境試料(例えば、土、廃棄物、周囲空気など)、工業試料(例えば、あらゆる工業プロセスからの試料)、及び食品試料(例えば、乳製品、野菜製品、及び肉製品)である。試料は、マイクロ流体デバイスに装填する前に処理されてもよい。例えば、試料は、細胞を溶解する、タンパク質を精製する、又は試薬を含めるために処理されてもよい。あるいは、又はそれに加えて、試料は、マイクロ流体デバイスに装填する前に処理されてもよい。
【0023】
本明細書で使用される場合、「核酸」という用語は、ヌクレオチド又はその誘導体のポリマーを指す。本明細書で使用される場合、「標的核酸」という用語は、核酸増幅反応において増幅されることが所望である核酸を指す。例えば、標的核酸は、核酸鋳型を含む。いくつかの実施形態では、標的核酸は、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドが互いにライゲーションされた産物であり得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「流体の」又は「マイクロ流体の」という用語は、交換可能に使用され得、概して、チャンバのアレイと流体連通している少なくとも1つのチャネルを含む、チップ、エリア、デバイス、物品、又はシステムを指し得る。チャネルは、約10ミリメートル(mm)以下、約5mm以下、約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1.5mm以下、約1mm以下、約750マイクロメートル(μm)以下、約500μm以下、約250μm以下、約100μm以下、又はそれ未満以下の断面寸法を有し得る。チャンバは、約100マイクロリットル(μL)以下、50μL以下、25μL以下、10μL以下、5μL以下、1μL以下、500ナノリットル(nL)以下、250nL以下、100nL以下、50nL以下、25nL以下、10nL以下、5nL以下、1nL以下、500ピコリットル(pL)以下、250pL以下、100pL以下、50pL以下、25pL以下、10pL以下、5pL以下、1pL以下、又はそれ未満以下の容積を有し得る。
【0025】
本明細書で使用される場合、「流体」という用語は、概して、液体又は気体を指す。流体は、定義された形状を維持できず、観察可能な時間枠の間に流れて、流体が入れられる容器を満たすこととなる。したがって、流体は、流れることができる任意の好適な粘度を有し得る。2つ以上の流体が存在する場合、各流体は、任意の流体(例えば、液体、ガスなど)の中から独立して選択され得る。
【0026】
本明細書で使用される場合、「分配する」という用語は、概して、複数の部分への分割若しくは分散、又は共有を指す。例えば、分配された試料は、他の試料から単離された試料である。試料の分配を可能にする構造の例には、ウェル、チャンバ、液滴、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「加圧ガス抜き」又は「加圧脱気」という用語は、交換可能に使用され得、一般に、圧力差の適用を通じて、気体(例えば、空気、窒素、酸素など)をデバイス(例えば、マイクロ流体デバイス)のチャネル又はチャンバからチャネル又はチャンバの外部環境へと除去又は排出することを指す。圧力差は、チャネル又はチャンバと、チャネル又はチャンバの外部環境との間に適用され得る。圧力差は、デバイスへの1つ以上の入口への圧力源の適用、又はデバイスの1つ以上の表面への真空源の適用によって提供され得る。加圧ガス抜き又は加圧脱気は、チャネル又はチャンバの1つ以上の側面を覆うフィルム又は膜を通して可能にすることができる。
【0028】
「少なくとも~」、「~より大きい」、又は「~以上」という用語が、一連の2つ以上の数値のうちの最初の数値の前にある場合は常に、「少なくとも~」、「~より大きい」、又は「~以上」という用語は、その一連の数値の各数値に適用される。例えば、1、2、又は3以上は、1以上、2以上、又は3以上と同等である。
【0029】
「~を超えない」、「~より小さい」、又は「~以下」という用語が、一連の2つ以上の数値のうちの最初の数値の前にある場合は常に、「~を超えない」、「~より小さい」、又は「~以下」という用語は、その一連の数値の各数値に適用される。例えば、3、2、又は1以下は、3以下、2以下、又は1以下と同等である。
【0030】
本明細書に記載される方法、システム、及びデバイスは、複雑で高価なマルチプレックス消耗品を使用することなく、試料中の複数の分析物(例えば、タンパク質)の検出、同定、及び定量化を可能にし得る。加えて、本明細書に記載される方法、システム、及びデバイスは、不正確で再現が困難なタンパク質標準曲線に依存することなく、信頼性が高く正確なタンパク質検出及びタンパク質の定量化を可能にし得る。別の例では、結合プローブは、ライゲーション反応の産物であり識別子分子又はバーコードとして構成されている、核酸にカップリングされる。
【0031】
分析物を同定する方法
一態様では、本開示は、分析物を同定又は検出するための方法を提供する。この方法は、結合試薬を分析物と接触させることを含み得る。結合試薬は、結合プローブ及び核酸分子を含み得る。結合プローブは、結合プローブが分析物にカップリング又は結合するように、分析物に対する結合特異性を有し得る。核酸分子は、分析物の同定又は検出に対応する、又はそれに使用可能である分子又は配列(例えば、識別子又はバーコード)を含み得る。この方法は、核酸分子若しくはその誘導体、又は核酸分子若しくはその誘導体の一部分を変性させることを更に含み得る。核酸又はその誘導体を変性させることにより、検出可能なシグナルが生成され得る。核酸又はその誘導体は、2つ以上の核酸間のライゲーション反応の産物であり得る。場合によっては、核酸又はその誘導体は、2つの異なる結合試薬、例えば、2つの異なる抗体などにコンジュゲートした又は付着した2つの異なる核酸間のライゲーション反応の産物である。検出可能なシグナルは、分析物の検出、同定、定量化、又はそれらの任意の組み合わせを可能にし得る。
【0032】
分析物を同定するための例示的な方法を
図1に示す。例示的な方法は、結合試薬を試料中の分析物100と接触させることを含み得る。試料は、単一の分析物又は複数の分析物を含み得る。結合試薬は、結合プローブ及び核酸分子を含み得、その両方が分析物に特異的であり得る。例えば、第1の結合プローブ及び第1の核酸分子を有する第1の結合試薬は、第1の分析物に結合し得る。第2の結合プローブ及び第2の核酸分子を有する第2の結合試薬は、第2の分析物に結合し得る。第1の結合試薬は、第2の分析物に結合できなくてもよく、その逆も同様である。第1の核酸分子及び第2の核酸分子は、互いに異なり、区別可能であってもよく、その結果、第1の核酸分子及び第2の核酸分子が、それぞれ第1の分析物及び第2の分析物の検出及び同定に使用可能となり得る。核酸分子(例えば、第1及び第2の核酸分子)は、変性条件(例えば、熱変性、化学変性など)にさらされ得る105。核酸分子を変性させると、検出可能なシグナルが生成され得る。一例では、シグナルは光学的に検出可能な蛍光シグナルであり得、核酸分子の変性は蛍光シグナルを増加又は減少させ得る。核酸分子の変性に関連するシグナルは、収集され得110、処理されて分析物が同定され得る115。
【0033】
分析物は、試料の一部として提供されてもよい。試料は、ヒト、動物、若しくは植物などの対象に、又は土壌、食物、若しくは他の試料源に由来し得る。試料は、単一の分析物を含んでもよく、又は複数の分析物を含んでもよい。例えば、試料は少なくとも1、2、3、4、5、6、8、10、15、20、又はそれ以上の分析物を含み得る。一例では、試料は少なくとも2つの分析物を含む。別の例では、試料は少なくとも5つの分析物を含む。別の例では、試料は少なくとも10の分析物を含む。別の例では、試料は少なくとも15の分析物を含む。分析物は、溶液の一部として提供されてもよく、又は支持体上に固定化されてもよい。試料は、同じ種類の分析物又は様々な種類の分析物を含んでもよい。例えば、試料は、タンパク質、核酸、細胞、代謝産物、又は他の分析物を含み得る。一例では、分析物は、タンパク質、タンパク質断片、又はその誘導体である。この方法は、単一種類の分析物(例えば、1つ以上の異なるタンパク質)又は複数の種類の分析物(例えば、タンパク質及びその代謝産物)を検出することを含み得る。一例では、この方法は、1つ以上の異なるタンパク質の同定又は定量化に使用可能である。
【0034】
分析物は、溶液で提供されてもよく、又は支持体にカップリングされてもよい。分析物は、捕捉物質を介して支持体にカップリングされてもよく、支持体に共有結合的に固定化されてもよく(例えば、リンカー分子を介して)、支持体に物理的に吸収されてもよく、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。一例では、分析物は溶液で提供され、この方法は、分析物を支持体にカップリングさせることを含む。溶液での分析物を、1つ以上の捕捉物質を含む支持体と接触させてもよい。捕捉物質は、支持体上に固定化されてもよく、分析物を支持体上に固定化するために使用可能であってもよい。捕捉物質は、リガンド、核酸分子、抗体、又は分析物を結合することができる任意の他の分子であり得る。捕捉物質は、分析物に対する特異性を有してもよく、又は複数の異なる分析物若しくは異なる種類の分析物(例えば、タンパク質、核酸分子、代謝産物など)に結合することができるユニバーサル捕捉物質であってもよい。一例では、捕捉物質は抗体を含み、分析物はタンパク質を含む。別の例では、捕捉物質はアプタマーを含み、分析物はタンパク質、核酸分子、細胞、代謝産物、又は他の生体分子を含む。捕捉物質は、分析物に特異的な結合領域を含んでもよい。あるいは、又はそれに加えて、捕捉物質は分析物のドメインに特異的な結合領域を含んでもよく、これにより、捕捉物質が複数の異なる分析物に結合することが可能となる。
【0035】
分析物は、結合試薬と接触し得る。結合試薬は、結合プローブ及び核酸分子を含み得る。結合プローブは、リガンド、核酸分子、抗体、又はそれに結合することができる任意の他の分子を含み得る。一例では、結合プローブは抗体であり、結合試薬は抗体を含む。別の例では、結合プローブはアプタマーであり、結合試薬はアプタマーを含む。結合プローブは、分析物又は分析物の一部分に対する特異性を有し得る。結合プローブは、別の分析物又は分析物の別の部分に対する特異性を有していなくてもよく、したがって、結合試薬が単一の分析物又は単一種類の分析物に結合することが可能となる。結合プローブは、結合試薬の分析物への可逆的結合を可能にし得る。あるいは、又はそれに加えて、結合プローブは、結合試薬を分析物に不可逆的に結合させ得る。
【0036】
結合試薬は核酸分子を含み得、異なる結合試薬は異なる核酸分子を含み得る。核酸分子は、分析物を検出又は同定するために使用可能であり得る。例えば、第1の結合試薬は、第1の核酸分子を含み得、第1の分析物にカップリングし得る。第2の結合試薬は、第2の核酸分子を含み得、第2の分析物にカップリングし得る。第1の核酸分子及び第2の核酸分子は、異なる分子であり得る。第1の核酸分子と第2の核酸分子における差異は、検出可能であり得、したがって、第1の分析物と第2の分析物とを同定及び区別するために使用可能であり得る。試料は、少なくとも1、2、3、4、5、6、8、10、15、20、30、40、50、又はそれ以上の異なる核酸分子に各々カップリングされている少なくとも1、2、3、4、5、6、8、10、15、20、30、40、50、又はそれ以上の結合試薬と接触し得る。核酸分子は、所与の分析物を同定するために使用可能である分子又は配列(例えば、識別子又はバーコード)を含み得る。
【0037】
核酸分子は、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態であり得る。例えば、核酸分子は、少なくとも1、2、3、4、5、6、8、10、15、20、30、40、50、100、500、1000、又はそれ以上のヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチドには、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、又はそれらの類似体が含まれ得る。核酸分子は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロック核酸(LNA)、ブリッジ核酸(BNA)、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。核酸は、アデノシン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(TO、およびウラシル(U)、またはそれらのバリアントから選択される1つ以上のサブユニットを含み得る。ヌクレオチドは、A、C、G、T、若しくはU、又はそれらのバリアントを含むことができる。ヌクレオチドは、成長している核酸鎖に組み込むことができる任意のサブユニットを含むことができる。そのようなサブユニットは、A、C、G、T、若しくはU、又はより相補的なA、C、G、T、若しくはUのうちの1つに特異的であるか、又はプリン(すなわち、A若しくはG、又はそれらのバリアント)又はピリミジン(すなわち、C、T、若しくはU、又はそれらのバリアント)に相補的である、任意の他のサブユニットであり得る。いくつかの例では、核酸は一本鎖または二本鎖であってもよく、場合によっては、核酸分子は環状である。核酸は、メチル化されたヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログ(ヌクレオチド類似体)などの、1つ以上の修飾されたヌクレオチドを含んでもよい。
【0038】
この方法は、少なくとも1つの分析物を含む試料を少なくとも1つの結合試薬と接触させることを含み得る。一例では、試料は複数の分析物を有してもよく、複数の結合試薬と接触させてもよい。分析物、又は分析物の少なくとも一部分は、支持体上に固定化されてもよく、分析物に対する特異性を有する結合試薬は、分析物に結合又はカップリングして、支持体上に固定化された複合体を形成してもよい。他の結合試薬(例えば、試料中に存在しない分析物に対する結合特異性を有するもの)は、分析物にカップリングせず、溶液中に残り得る。支持体及び固定化された複合体を洗浄して、未結合の結合試薬を除去することができる。例示的な固定化された複合体を
図2に示す。固定化された複合体は、表面上に固定化された捕捉物質200を含み得る。捕捉物質は、分析物205に対する特異性を有する抗体であり得る。あるいは、捕捉物質200は、非特異的であってもよく、複数の分析物205又は複数の種類の分析物(例えば、タンパク質)に結合してもよい。捕捉物質200は、支持体(例えば、表面、ビーズ、担体など)上に分析物205を固定化し得る。複合体は、結合試薬210を更に含んでもよい。結合試薬は、分析物205に対する特異性を有する結合プローブ215を含んでもよい。一例では、結合プローブ215は、抗体を含んでもよく、又は抗体であってもよい。別の例では、結合プローブ215は、アプタマーを含んでもよく、又はアプタマーであってもよい。結合試薬210は、核酸分子220を更に含んでもよい。核酸分子220は、DNA、RNA、PNA、LNA、BNA、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。核酸分子220は、二本鎖又は一本鎖であり得る。一例では、核酸分子220は二本鎖である。別の例では、核酸分子220は一本鎖である。核酸分子220は、結合プローブ215に可逆的又は不可逆的にカップリングされ得る。あるいは、核酸分子220は、結合プローブ215に共有結合し得る。一例では、核酸分子220は結合プローブ215に可逆的にカップリングされ得、結合試薬が、核酸分子220よりも結合プローブ215に対してより高い親和性を有する分子230と接触することによって、核酸分子は解離し得る。分子230は、核酸分子220に取って代わり、結合プローブ215に結合し、これにより、核酸分子220が溶液相に入る(例えば、もはや支持体に結合も固定化もされない)ことを可能にし得る。
【0039】
この方法は、核酸分子を同定することを更に含み得る。核酸分子の同定は、分析物の検出、同定、定量化、又はそれらの任意の組み合わせを可能にし得る。結合試薬(例えば、核酸分子にカップリングされている結合プローブ)を分析して、核酸分子を同定することができる。あるいは、又はそれに加えて、核酸分子又は核酸分子の一部分は、同定又は検出の前に、結合試薬から除去又は切断され得る。核酸分子は、結合プローブに可逆的にカップリングされてもよく、又は結合プローブに不可逆的にカップリングされてもよい。一例では、核酸分子は、結合プローブに可逆的にカップリングされる。別の例では、核酸分子は、結合プローブに不可逆的にカップリングされる。可逆的にカップリングされている核酸分子は、ジスルフィド結合、リガンド結合、又は他の可逆的結合によって結合プローブにカップリングされ得る。結合試薬が、還元剤、結合プローブに対してより高い親和性を有する分子、又はそれらの任意の組み合わせと接触することによって、可逆的にカップリングされている核酸分子は、切り離され得るか、又は解離され得る。あるいは、又はそれに加えて、核酸分子は、結合プローブに不可逆的にカップリングされ得る(例えば、共有結合的にカップリングされ得る)。核酸分子は、核酸分子の分析前に切断されてもよい。例えば、核酸は制限酵素のコンセンサス配列を含んでもよく、制限酵素は結合プローブから核酸を切断し得る。結合プローブから核酸分子を切り離す又は切断することは、分析物及び結合プローブが支持体上に固定化されている間に、核酸分子が溶液相に入ることを可能にし得る。
【0040】
核酸分子は、複数の核酸分子のうちの1つであり得る。複数の核酸分子は、流体デバイス(例えば、マイクロ流体デバイス)に提供され得る。マイクロ流体デバイスは、複数の核酸分子の分配を可能にし得る。核酸分子は、更に処理され(例えば、増幅され)、パーティション内で変性条件にさらされてもよい。
図3は、核酸分子を処理及び分析するためのプロセスフローを概略的に示す。核酸分子又は複数の核酸分子は、溶液300で提供され得る。溶液300は、空気圧モジュール又は他の流体操作モジュールを備える流体フローシステムを介してマイクロ流体デバイス310に誘導され得る305。マイクロ流体デバイス310は、核酸分子を分配するための単一のアレイ、又は核酸分子を分配するための複数のアレイを含み得る。マイクロ流体デバイスは、分析システム320に装填され得る315。あるいは、又はそれに加えて、分析システム320は、マイクロ流体デバイス310を含み得、試料は、流体デバイス310に分配される305ために分析システムに提供され得る。
【0041】
結合試薬を少なくとも1つの分析物と接触させることは、タンパク質分析(例えば、タンパク質分析物及び/又はタンパク質相互作用の検出)のために、近接アッセイ反応(例えば、近接ライゲーションアッセイ(「PLA」)又は近接伸長アッセイ(「PEA」)、又はその両方の組み合わせ)を実施することを含み得る。PLA及びPEAは、標的タンパク質分析物に対する親和性を有する抗体プローブ(例えば、ポリクローナル抗体又は2つのモノクローナル抗体)への核酸分子のコンジュゲーションを使用して、標的タンパク質分析物を検出する。
【0042】
PLAを実施するための例示的な方法1400が
図14に示されている。
図14を参照すると、結合試薬は準備されるか、あるいは提供される。結合試薬は、少なくとも2つのプローブ(プローブA及びプローブB)を含有するプローブミックスであってもよい。少なくとも2つのプローブは、一次抗体(Ab)又はその断片であってもよく、各々が試料(例えば、生体試料)中のリガンド(例えば、標的タンパク質分析物)に対する結合親和性又は特異性を有する。少なくとも2つのプローブは、標的タンパク質分析物に対して異なる親和性又は特異性を有することができ、例えば、標的タンパク質分析物の異なるエピトープに結合する。各プローブはまた、オリゴヌクレオチドも含有する。一方のプローブのオリゴヌクレオチドは、介在分子を介して、その3’末端が遊離した状態でその5’末端を介して抗体プローブにカップリングされており、他方のプローブのオリゴヌクレオチドは、介在分子を介して、その5’末端が遊離した状態でその3’末端を介してプローブにカップリングされる。オリゴヌクレオチドは、1つ以上の介在分子を通じて抗体プローブ又は抗体プローブ断片に結合することができる。抗体プローブ又は抗体プローブ断片は、DNAアプタマー又は他の結合部分で置換することができる。
【0043】
別の実施形態では、プローブミックスは、少なくとも2つの一次抗体プローブと少なくとも2つの二次抗体プローブと(図示せず)を含有してもよく、それにより一次抗体プローブは各々、少なくとも2つの二次抗体プローブのうちの1つを介してそれぞれのオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされて、近接プローブを形成する。近接プローブは、標的タンパク質分析物に対して異なる親和性又は特異性を有することができ、例えば、標的タンパク質分析物の異なるエピトープに結合する。
【0044】
次に、プローブミックスを試料と接触させ、その結果、少なくとも2つのプローブが試料中のリガンドに特異的に結合して近接プローブを形成し、これにより少なくとも2つのプローブが互いに接近する。プローブに付着したオリゴヌクレオチドは、プローブがリガンドに結合した状態で互いに近接する。次いで、オリゴヌクレオチドは互いにライゲーションされ(例えば、ライゲーションイベント)、ライゲーションされたPLA産物を形成する。ライゲーションされたPLA産物は、核酸鋳型を含む標的核酸である。ライゲーションイベントは、典型的には、ライゲーション成分、例えば、リガーゼ(例えば、低分子フットプリントリガーゼ)、アデノシン三リン酸(ATP)及び緩衝液-塩混合物を結合反応に加えることによって達成される。
【0045】
一実施形態では、第3のオリゴヌクレオチドを両方のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせて、核酸鋳型を含む標的核酸を形成する。第3のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの遊離末端をスプリントして連結するという点で、「スプリンターオリゴヌクレオチド」又は「スプリンターオリゴ」と呼ばれる。第3のオリゴヌクレオチドは遊離していてもよく、又は第3の近接プローブに付着していてもよい。
【0046】
次いで、リガーゼは、典型的には、不活性化され(例えば、プロテアーゼ消化によって)、未結合オリゴヌクレオチドの任意の更なるライゲーションを防ぐ。次いで、標的核酸の核酸鋳型をPCRによって増幅して、DNAアンプリコンを生成する。例えば、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)混合物(例えば、フォワードプライマー、リバースプライマー、及び熱安定性DNAポリメラーゼを含む混合物)を、核酸鋳型を含有する反応混合物に加え、PCR産物の量を定量的PCR(qPCR)又はリアルタイムPCRによって測定する。フォワードプライマーは、二本鎖核酸鋳型の第1の鎖にハイブリダイズすることができ、リバースプライマーは、二本鎖核酸鋳型の第2の鎖にハイブリダイズすることができる。
【0047】
PLAシステムの例としては、例えば、TaqMan(登録商標)タンパク質アッセイが挙げられる。TaqMan(登録商標)タンパク質アッセイは、抗体-タンパク質結合とリアルタイムPCR又はqPCRによる核酸の検出とを組み合わせたPLAの改良形態である。一実施形態では、標的核酸の形成、及びその後の核酸鋳型の増幅は、例えば、試薬の混合物を使用して同じチャンバ内で反応が起こることを可能にすることで、単一ステップで組み合わせることができる。
【0048】
上述のように、結合試薬を該分析物と接触させることは、近接伸長アッセイ(PEA)を実施することを含み得る。一実施形態では、近接プローブの1つにカップリングされているオリゴヌクレオチドが3’-オーバーハングを有する二本鎖であることを除いて、PEAは、出発物質(例えば、分析物、捕捉物質、及び結合試薬)と、上述のPLAにおいて記載されたものと同様のステップとを使用して実行される。したがって、標的タンパク質分析物の存在下で、オリゴヌクレオチドは互いにハイブリダイズし、その結果、3’-オーバーハングを有するオリゴヌクレオチドが伸長してPLA産物を形成する。PLA産物は、核酸鋳型を含む標的核酸である。次いで、核酸鋳型をリアルタイムPCR又はqPCR(上記のとおり)によって増幅し、検出して試料中のリガンドの存在を判定する。
【0049】
別の実施形態では、オリゴヌクレオチドが互いに直接ハイブリダイズする一本鎖オリゴヌクレオチドであり、その結果、DNAポリメラーゼによってオリゴヌクレオチドの一方が伸長してPLA産物を形成することを除いて、PEAは、出発物質(例えば、分析物、捕捉物質、及び結合試薬)と、上述のPLAにおいて記載されたものと同様のステップとを使用して実行される。PLA産物は、核酸鋳型を含む標的核酸である。次いで、核酸鋳型をリアルタイムPCR又はqPCR(上記のとおり)によって増幅し、検出して試料中のリガンドの存在を判定する。
【0050】
PLA又はPEA中の核酸鋳型は、以下に記載するように、マイクロ流体デバイスを用いてリアルタイムPCR又はqPCRを実施することにより増幅され得る。
【0051】
この方法は、本明細書に記載のマイクロ流体デバイスのいずれかを提供することを含み得る。マイクロ流体デバイスは、少なくとも1つのチャネルを含み得る。チャネルは、入口、出口、又は入口と出口の両方を含むことができる。一例では、チャネルは、単一の入口を含み、出口を含まない。別の例では、チャネルは、入口及び出口を含む。マイクロ流体デバイスは、チャネルに接続された複数のパーティション(例えば、チャンバ)を更に備え得る。チャンバは、複数の吸い上げ開口部によってチャネルに接続され得る。マイクロ流体デバイスは、薄膜がチャネル、複数のチャンバ、複数の吸い上げ開口部、又はそれらの任意の組み合わせをキャップするような、マイクロ流体デバイスの表面に隣接して配設された薄膜(例えば、熱可塑性薄膜)によってシールされ得る。試薬、核酸分子、又はその両方は、チャネルの入口に加えられ得る。流体デバイスは、試薬又は核酸分子とマイクロ流体デバイスとの間に第1の圧力差を提供し、試薬又は核酸分子を流体デバイスに流入させることによって充填され得る。試薬又は核酸分子は、チャネルと複数のチャンバとの間に第2の圧力差を加えて試薬又は核酸分子を複数のチャンバ内に移動させ、複数のチャンバ内のガスを薄膜に通過させることによりチャンバ内に分配され得る。あるいは、又はそれに加えて、流体デバイスは、ガス抜き又は脱気を可能にするように構成されている第2のチャネルを含んでもよい。第2のチャネルは、複数のチャンバに隣接して配設され得る。第2の圧力差は、第1の圧力差よりも大きくてもよい。流体をチャンバ内に導入することなく、流体をマイクロチャネルに導入するために、入口と出口との間に第3の圧力差が加えられ得る。第3の圧力差は、第2の圧力差よりも小さくてもよい。試薬は、核酸分子の前、後、又は同時に添加されてもよい。試薬はまた、別の方法によってデバイスの1つ以上のパーティションに提供されてもよい。例えば、試薬は、1つ以上のパーティションを薄膜で覆う前に、1つ以上のパーティション内に堆積され得る。
【0052】
デバイスの入口又は出口は、存在する場合、空気圧ポンプ又は真空システムと流体連通していてもよい。空気圧ポンプ又は真空システムは、本開示のシステムの構成要素であってもよく、又は別個のものであってもよい。試薬又は核酸分子の充填及び分配は、流体デバイスの様々な特徴部全体に圧力差を加えることによって実行され得る。試薬又は核酸分子の充填及び分配は、チャンバとチャネルとの間のバルブを使用せずに実行されて、試薬又は核酸分子を隔て得る。例えば、チャネルの充填は、装填される試薬又は核酸分子とチャネルとの間に圧力差を加えることによって実行され得る。この圧力差は、試薬若しくは核酸分子を加圧するか、又はチャネルに真空を適用することによって達成され得る。チャンバを充填することは、チャネルとチャンバとの間に圧力差を加えることによって実行され得る。これは、チャネルを加圧するか、又はチャンバに真空を適用することによって達成され得る。試料又は試薬の分配は、流体とチャネルとの間に圧力差を加えることによって実行され得る。この圧力差は、流体を加圧するか、又はチャネルに真空を適用することによって達成され得る。
【0053】
マイクロ流体デバイスは、異なる印加圧力差の下で異なる透過特性を有し得る薄膜又は第2のチャネル(例えば、ガス抜きチャネル)を含んでもよい。例えば、薄膜又は第2のチャネルは、より小さな大きさの圧力差であり得る第1の圧力差及び第3の圧力差(例えば、低圧)において気体流を妨げ得る。薄膜又は第2のチャネルは、より大きな大きさの圧力差であり得る第2の圧力差(例えば、高圧)において気体流を許容し得る。第1及び第3の圧力差は、同じであってもよく、又は異なっていてもよい。第1の圧力差は、入口又は出口の試薬とマイクロ流体デバイスとの間の圧力の差であり得る。マイクロ流体デバイスの充填中、試薬の圧力は、マイクロ流体デバイスの圧力よりも高くてもよい。流体デバイスの充填中、試薬と流体デバイスとの間の圧力差(例えば、低圧)は、約8ポンド/平方インチ(psi)以下、約6psi以下、約4psi以下、約2psi以下、約1psi以下、又はそれ以下であり得る。いくつかの例では、流体デバイスの充填中、試薬とマイクロ流体デバイスとの間の圧力差は、約1psi~約8psiであり得る。いくつかの例では、流体デバイスの充填中、試薬とマイクロ流体デバイスとの間の圧力差は、約1psi~約6psiであり得る。いくつかの例では、マイクロ流体デバイスの充填中、試薬とマイクロ流体デバイスとの間の圧力差は、約1psi~約4psiであり得る。流体デバイスは、試薬と流体デバイスとの間に、約20分以下、約15分以下、約10分以下、約5分以下、約3分以下、約2分以下、約1分以下、又はそれ未満以下の圧力差を加えることによって充填され得る。
【0054】
充填されたマイクロ流体デバイスは、チャネル、吸い上げ開口部、チャンバ、又はそれらの任意の組み合わせ内に核酸分子又は1つ以上の試薬を有し得る。チャンバ内への核酸分子又は1つ以上の試薬の再充填(backfilling)は、流体デバイスを充填する際に発生し得るか、又は第2の圧力差を加えている間に発生し得る。第2の圧力差(例えば、高圧)は、チャネルと複数のチャンバとの間の圧力の差に対応し得る。第2の圧力差を加えている間、より高圧領域の第1の流体(例えば、気体又は液体)は、より低圧領域の第2の流体(例えば、気体)を、薄膜を通して流体デバイスから押し出し得る。第1及び第2の流体は、液体又はガスを含み得る。液体は、水性混合物又は油性混合物を含み得る。第2の圧力差は、チャネルを加圧することによって達成され得る。あるいは、又は加えて、第2の圧力差は、チャンバに真空を適用することによって達成され得る。第2の圧力差を加えている間、チャネル内の核酸分子又は試薬はチャンバに流入し得る。更に、第2の圧力差を加えている間に、吸い上げ開口部、チャンバ、及びチャネル内に閉じ込められたガスは、薄膜を通して、又はチャンバの1つ以上の壁を通して、第2のチャネル(例えば、ガス抜きチャネル)を通じて放出され得る。チャンバの再充填及びガス放出の間、チャンバとチャネルとの間の圧力差は、約6psi以上、約8psi以上、約10psi以上、約12psi以上、約14psi以上、約16psi以上、約18psi以上、約20psi以上、又はそれ以上であり得る。いくつかの例では、チャンバの再充填中、チャンバとチャネルとの間の圧力差は、約8psi~約20psiである。いくつかの例では、チャンバの再充填中、チャンバとチャネルとの間の圧力差は、約8psi~約18psiである。いくつかの例では、チャンバの再充填中、チャンバとチャネルとの間の圧力差は、約8psi~約16psiである。いくつかの例では、チャンバの再充填中、チャンバとチャネルとの間の圧力差は、約8psi~約14psiである。いくつかの例では、チャンバの再充填中、チャンバとチャネルとの間の圧力差は、約8psi~約12psiである。いくつかの例では、チャンバの再充填中、チャンバとチャネルとの間の圧力差は、約8psi~約10psiである。チャンバは、約5分超、約10分超、約15分超、約20分超、約25分超、約30分超、又はそれ以上、圧力差を加えることによって、再充填され、ガス放出され得る。
【0055】
核酸分子の分配は、試薬内の指示薬の存在により確認され得る。指示薬は、検出可能な部分を備える分子を含み得る。検出可能な部分は、放射性種、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、比色標識、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。放射性種の非限定的な例には、3H、14C、22Na、32P、33P、35S、42K、45Ca、59Fe、123I、124I、125I、131I、又は203Hgが含まれる。蛍光標識の非限定的な例には、蛍光タンパク質、光学活性色素(例えば、蛍光色素)、有機金属フルオロフォア、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。化学発光標識の非限定的な例には、ウミホタルルシフェラーゼ、ガウシアルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、及びホタルルシフェラーゼなどのルシフェラーゼクラスの酵素が含まれる。酵素標識の非限定的な例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、βガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、又は他の標識が含まれる。
【0056】
指示薬分子は蛍光分子であってもよい。蛍光分子には、蛍光タンパク質、蛍光色素、及び有機金属フルオロフォアが含まれ得る。指示薬分子はタンパク質フルオロフォアであってもよい。タンパク質フルオロフォアとしては、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein、GFP、スペクトルの緑色領域で蛍光を発する蛍光タンパク質、一般に500~550ナノメートルの波長を有する光を放射する)、シアン蛍光タンパク質(cyan-fluorescent protein、CFP、スペクトルのシアン領域で蛍光を発する蛍光タンパク質、一般に450~500ナノメートルの波長を有する光を放射する)、赤色蛍光タンパク質(red fluorescent protein、RFP、スペクトルの赤色領域で蛍光を発する蛍光タンパク質、一般に600~650ナノメートルの波長を有する光を放射する)が挙げられ得る。タンパク質フルオロフォアの非限定的な例としては、AcGFP、AcGFP1、AmCyan、AmCyan1、AQ143、AsRed2、Azami Green、Azurite、BFP、Cerulean、CFP、CGFP、Citrine、copGFP、CyPet、dKeima-Tandem、DsRed、dsRed-Express、DsRed-Monomer、DsRed2、dTomato、dTomato-Tandem、EBFP、EBFP2、ECFP、EGFP、Emerald、EosFP、EYFP、GFP、HcRed-Tandem、HcRed1、JRed、Katuska、Kusabira Orange、Kusabira Orange2、mApple、mBanana、mCerulean、mCFP、mCherry、mCitrine、mECFP、mEmerald、mGrape1、mGrape2、mHoneydew、Midori-Ishi Cyan、mKeima、mKO、mOrange、mOrange2、mPlum、mRaspberry、mRFP1、mRuby、mStrawberry、mTagBFP、mTangerine、mTeal、mTomato、mTurquoise、mWasabi、PhiYFP、ReAsH、Sapphire、Superfolder GFP、T-Sapphire、TagCFP、TagGFP、TagRFP、TagRFP-T、TagYFP、tdTomato、Topaz、TurboGFP、Venus、YFP、YPet、ZsGreen、及びZsYellow1の、突然変異体並びにスペクトルバリアントが挙げられる。
【0057】
指示薬分子は、蛍光色素であり得る。蛍光色素の非制限的な例としては、SYBRグリーン;SYBRブルー;DAPI;ヨウ化プロピジウム; Hoeste;SYBRゴールド;エチジウムブロマイド;アクリジン;プロフラビン;アクリジンオレンジ;アクリフラビン;フルオロクマニン(fluorcoumanin);エリプチシン;ダウノマイシン;クロロキン;ジスタマイシンD;クロモマイシン;ホミジウム;ミトラマイシン;ルテニウムポリピリジル;アントラマイシン;フェナントリジン及びアクリジン;プロピジウムヨージド;ヘキシジウムヨージド;ジヒドロエチジウム;エチジウムモノアジド;ACMA;Hoechst 33258;Hoechst 33342;Hoechst 34580;DAPI;アクリジンオレンジ;7-AAD;アクチノマイシンD;LDS751;ヒドロキシスチルバミジン;SYTOX Blue;SYTOX Green;SYTOX Orange;POPO-1;POPO-3;YOYO-1;YOYO-3;TOTO-1;TOTO-3;JOJO-1;LOLO-1;BOBO-1;BOBO-3;PO-PRO-1;PO-PRO-3;BO-PRO-1;BO-PRO-3;TO-PRO-1;TO-PRO-3;TO-PRO-5;JO-PRO-1;LO-PRO-1;YO-PRO-1;YO-PRO-3;PicoGreen;OliGreen;RiboGreen;SYBR Gold;SYBR Green I;SYBR Green II;SYBR DX;SYTO-40、SYTO-41、SYTO-42、SYTO-43、SYTO-44、及びSYTO-45(青色);SYTO-13、SYTO-16、SYTO-24、SYTO-21、SYTO-23、SYTO-12、SYTO-11、SYTO-20、SYTO-22、SYTO-15、SYTO-14、及びSYTO-25(緑色);SYTO-81、SYTO-80、SYTO-82、SYTO-83、SYTO-84、及びSYTO-85(橙色);SYTO-64、SYTO-17、SYTO-59、SYTO-61、SYTO-62、SYTO-60、及びSYTO-63(赤色);フルオレセイン;フルオレセインイソチオシアネート(FITC);テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC);ローダミン;テトラメチルローダミン; R-フィコエリトリン; Cy-2;Cy-3;Cy-3.5;Cy-5;Cy5.5;Cy-7;Texas Red;Phar-Red;アロフィコシアニン(APC);Sybr Green I;Sybr Green II;Sybr Gold;CellTracker Green;7-AAD;エチジウムホモダイマーI;エチジウムホモダイマーII;エチジウムホモダイマーIII;ウンベリフェロン;エオシン;緑色蛍光タンパク質;エリトロシン;クマリン;メチルクマリン;ピレン;マラカイトグリーン;スチルベン;ルシファーイエロー;カスケードブルー(cascade blue);ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン;ダンシルクロリド;ユウロピウム及びテルビウムを含むものなどの蛍光ランタニド錯体;カルボキシテトラクロロフルオレセイン;5又は6-カルボキシフルオレセイン(FAM);5-(又は6-)ヨードアセトアミドフルオレセイン;5-{[2(及び3)-5-(アセチルメルカプト)-スクシニル]アミノ}フルオレセイン(SAMSA-フルオレセイン);リサミンローダミンBスルホニルクロリド;5又は6カルボキシローダミン(ROX);7-アミノ-メチル-クマリン;7-アミノ-4-メチルクマリン-3-酢酸(AMCA);BODIPYフルオロフォア;8-メトキシピレン-1;3;6-トリスルホン酸三ナトリウム塩;3;6-ジスルホネート-4-アミノ-ナフタルイミド;フィコビリタンパク質;AlexaFluor 350、405、430、488、532、546、555、568、594、610、633、635、647、660、680、700、750、及び790色素;DyLight 350、405、488、550、594、633、650、680、755、及び800色素;並びに他のフルオロフォアが挙げられる。
【0058】
指示薬分子は、有機金属フルオロフォアであり得る。有機金属フルオロフォアの非限定的な例としては、ランタニドイオンキレートが挙げられ、その非限定的な例としては、トリス(ジベンゾイルメタン)モノ(1,10-フェナントロリン)ユウロピウム(III)、トリス(ジベンゾイルメタン)モノ(5-アミノ-1,10-フェナントロリン)ユウロピウム(III)、及びLumi4-Tbクリプテートが挙げられる。
【0059】
この方法は、核酸分子を増幅させることを更に含み得る。核酸分子の増幅は、核酸分子の濃度を増加させ得、したがって、核酸分子に関連する検出可能なシグナルを増加させ得る。増幅の前に、核酸分子は、結合プローブから切断され得るか又は別様に除去され得る。あるいは、又はそれに加えて、核酸は、結合プローブにカップリングされている間に増幅され得る。核酸分子は、一本鎖核酸分子であってもよく、又は二本鎖核酸分子であってもよい。一例では、核酸分子は二本鎖核酸分子であり、増幅前に変性される。核酸分子は、ユニバーサルプライマーに相補的なコンセンサス配列を有し得る。ユニバーサルプライマーは、核酸分子を増幅するために伸長し得る。あるいは、又はそれに加えて、核酸分子は、核酸分子に特異的なプライマーのコンセンサス配列を有し得る。
【0060】
マイクロ流体デバイスは、核酸分子、増幅反応のための成分(例えば、プライマー、ポリメラーゼ、及びデオキシリボヌクレオチド)、指示薬分子、及び増幅プローブなどの1つ以上の増幅試薬で充填され得る。増幅反応は、本明細書に記載されるように、複数のマイクロチャンバ又はそのサブセットの熱サイクリングを含み得る。核酸増幅の検出は、マイクロ流体デバイス又はそのサブセットの複数のチャンバからシグナルを収集する(例えば、イメージングする)ことによって実行され得る。核酸分子は、核酸分子の増幅に成功したマイクロチャンバを数え、ポアソン統計を適用することによって定量化され得る。核酸分子は、パーティションが1つ以下の核酸分子を含むように分配され得る。あるいは、又はそれに加えて、パーティションは、複数の核酸分子を含み得る。核酸分子はまた、増幅反応全体を通して異なる時点で収集されるシグナルを処理することによって定量化され得る。例えば、核酸増幅反応の各熱サイクル(例えば、各増幅サイクル)中に1つ以上のシグナルを収集することができ、シグナルを使用して、例えばリアルタイム又は定量的ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムPCR又はqPCR)におけるように増幅速度を決定することができる。核酸増幅及び定量化は、単一の統合されたユニットで、例えば、デバイスの所与のパーティション又は複数のパーティションのサブセット内で実行され得る。
【0061】
様々な核酸増幅反応を用いて、試料中の核酸分子を増幅し、増幅産物を生成し得る。核酸標的の増幅は、一次的、指数関数的、又はそれらの組み合わせであり得る。核酸増幅法の非限定的な例には、プライマー伸長、ポリメラーゼ連鎖反応、逆転写、等温増幅、リガーゼ連鎖反応、ヘリカーゼ依存性増幅、非対称増幅、ローリングサークル増幅、及び多重置換増幅が含まれる。増幅反応の増幅産物は、DNA又はRNAであり得る。DNA分子を含む試料については、任意のDNA増幅方法が採用され得る。DNA増幅方法には、PCR、リアルタイムPCR、アセンブリPCR、非対称PCR、デジタルPCR、ダイヤルアウトPCR、ヘリカーゼ依存性PCR、ネステッドPCR、ホットスタートPCR、インバースPCR、メチル化特異的PCR、ミニプライマーPCR、マルチプレックスPCR、重複伸長PCR、熱非対称インターレースPCR、タッチダウンPCR、及びリガーゼ連鎖反応が含まれるが、これらに限定されない。DNA増幅は、一次的、指数関数的、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。本明細書に記載のように、DNA増幅はまた、デジタルPCR(dPCR)、リアルタイム定量的PCR(qPCR)、又は定量的デジタルPCR(qdPCR)によって達成されてもよい。
【0062】
核酸増幅に使用される試薬には、重合酵素、リバースプライマー、フォワードプライマー、及び増幅プローブが含まれ得る。重合酵素の例には、核酸ポリメラーゼ、転写酵素、又はリガーゼ(すなわち、結合の形成を触媒する酵素)が含まれるが、これらに限定されない。重合酵素は、天然に存在するか、又は合成され得る。ポリメラーゼの例には、DNAポリメラーゼ、及びRNAポリメラーゼ、熱安定性ポリメラーゼ、野生型ポリメラーゼ、改変ポリメラーゼ、E.coliDNAポリメラーゼI、T7DNAポリメラーゼ、バクテリオファージT4DNAポリメラーゼΦ29(phi29)DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Tliポリメラーゼ、PfuポリメラーゼPwoポリメラーゼ、VENTポリメラーゼ、DEEPVENTポリメラーゼ、Ex-Taqポリメラーゼ、LA-Tawポリメラーゼ、SsoポリメラーゼPocポリメラーゼ、Pabポリメラーゼ、MthポリメラーゼES4ポリメラーゼ、Truポリメラーゼ、Tacポリメラーゼ、Tneポリメラーゼ、Tmaポリメラーゼ、Tcaポリメラーゼ、Tihポリメラーゼ、Tfiポリメラーゼ、Platinum Taqポリメラーゼ、Tbrポリメラーゼ、Tflポリメラーゼ、Pfutuboポリメラーゼ、Pyrobestポリメラーゼ、KODポリメラーゼ、Bstポリメラーゼ、Sacポリメラーゼ、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するクレノウ断片ポリメラーゼ、並びにそれらのバリアント、改変された産物、及び誘導体が含まれる。ホットスタートポリメラーゼの場合、約92℃~95℃の温度で約2分~10分の期間の変性が用いられ得る。
【0063】
核酸増幅反応は、増幅プローブを含み得る。増幅プローブは、配列特異的オリゴヌクレオチドプローブであってもよい。増幅プローブは、増幅産物とハイブリダイズされたとき、光学活性であり得る。増幅プローブは、核酸増幅が進行するにつれて検出可能であってもよい。核酸分子を含む複数のパーティションから収集されるシグナル(例えば、光シグナル)の強度は、パーティションに含まれる増幅産物の量に比例し得る。例えば、特定のパーティションから収集されるシグナルは、その特定のパーティションにおける増幅産物の量に比例し得る。プローブは、本明細書に記載の光学活性な検出可能な部分(例えば、色素)のいずれかに連結され得、更に会合した色素の光学活性を遮断することができるクエンチャーを含み得る。検出可能な部分として有用であり得るプローブの非限定的な例には、TaqManプローブ、TaqMan Tamaraプローブ、TaqMan MGBプローブ、Lionプローブ、ロックされた核酸プローブ、又は分子ビーコンが含まれる。プローブの光学活性を遮断するのに有用であり得るクエンチャーの非限定的な例には、Black Hole Quencher(BHQ)、Iowa Black FQ及びRQ quencher、又はInternal ZEN Quencherが含まれる。あるいは、又は加えて、プローブ又はクエンチャーは、本開示の方法の文脈において有用である任意のプローブであり得る。
【0064】
増幅プローブは、二重標識蛍光プローブであってもよい。二重標識プローブは、核酸と連結した蛍光レポーター及び蛍光クエンチャーを含み得る。蛍光レポーター及び蛍光クエンチャーは、互いに近接して位置決めされ得る。蛍光レポーター及び蛍光クエンチャーが近接していることにより、蛍光レポーターの光学活性を遮断し得る。二重標識プローブは、増幅される核酸分子に結合し得る。増幅中、蛍光レポーター及び蛍光クエンチャーは、ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性によって切断され得る。増幅プローブから蛍光レポーター及びクエンチャーを切断することにより、蛍光レポーターがその光学活性を取り戻し、検出が可能になり得る。二重標識蛍光プローブは、最大励起波長が約450ナノメートル(nm)、500nm、525nm、550nm、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、700nm、又はそれ以上、及び最大発光波長が約500nm、525nm、550nm、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、700nm、又はそれ以上を有する5’蛍光レポーターを含み得る。二重標識蛍光プローブはまた、3’蛍光クエンチャーを含み得る。蛍光クエンチャーは、約380nm~550nm、390nm~625nm、470nm~560nm、480nm~580nm、550nm~650nm、550nm~750nm、又は620nm~730nmの蛍光発光波長をクエンチ(消光)し得る。
【0065】
核酸増幅は、熱サイクルの複数のサイクル(例えば、複数の増幅サイクル)を含み得る。任意の好適な数のサイクルが実行され得る。実行されるサイクルの数は、約5超、約10超、約15超、約20超、約30超、約40超、約50超、約60超、約70超、約80超、約90超、約100超サイクル、又はそれ以上であり得る。実行されるサイクルの数は、検出可能な増幅産物を得るためのサイクルの数に依存し得る。例えば、PCR(例えば、dPCR、qPCR、又はqdPCR)R中に核酸増幅を検出するために必要なサイクルの数は、約100以下、約90以下、約80以下、約70以下、約60以下、約50以下、約40以下、約30以下、約20以下、約15以下、約10以下、約5以下のサイクル、又はそれ未満であり得る。
【0066】
検出可能な増幅産物の量に到達するまでの時間は、例えば、特定の核酸分子、使用される試薬、使用される増幅反応、使用される増幅サイクルの数、及び反応条件に応じて変動し得る。検出可能な増幅産物の量に到達するまでの時間は、約120分以下、90分以下、60分以下、50分以下、40分以下、30分以下、20分以下、10分以下、又は5分以下であり得る。
【0067】
この方法は、核酸分子又はその誘導体を変性させることを更に含み得る。一例では、この方法は、核酸分子の増幅産物を変性させることを更に含む。核酸分子又はその誘導体は、熱エネルギー、酸又は塩基(例えば、水酸化ナトリウム処理)、有機溶媒、塩、又はそれらの任意の組み合わせを使用して変性されてもよい。核酸分子の変性は、可逆的(例えば、熱変性による)又は不可逆的(例えば、塩又は有機溶媒による)であり得る。一例では、核酸は熱エネルギーによって変性される。変性温度は、例えば、核酸分子、使用される試薬、及び反応条件に応じて変化し得る。
【0068】
核酸分子又はその誘導体は、核酸分子又はその誘導体の制御された加熱によって熱変性され得る。一例では、核酸分子は複数のパーティションに配置され、パーティションは制御された加熱を受ける。制御された加熱としては、抵抗加熱、放射加熱、伝導加熱、対流加熱、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。熱変性は、所与の期間にわたる約60℃から70℃まで、60℃から80℃まで、60℃から90℃まで、60℃から100℃まで、60℃から110℃まで、70℃から80℃まで、70℃から90℃まで、70℃から100℃まで、70℃から110℃まで、80℃から90℃まで、80℃から100℃まで、80℃から110℃まで、90℃から100℃まで、90℃から110℃まで、又は100℃から110℃までの温度の核酸分子又はその誘導体の制御された加熱を含み得る。一例では、核酸分子は、所与の時間にわたる約60℃から約90℃までの制御された加熱を受けることができる。別の例では、核酸分子は、所与の時間にわたる約65℃から約85℃までの制御された加熱を受けることができる。熱変性は、所与の期間にわたる約60℃、65℃、70℃、80℃、85℃、90℃、95℃、又はそれ以上の温度までの核酸分子又はその誘導体の制御された加熱を含み得る。
【0069】
熱変性の持続時間は、例えば、特定の核酸分子、使用される試薬、及び反応条件に応じて変化し得る。熱変性の持続期間は、約300秒以下、240秒、180秒、120秒、90秒、60秒、55秒、50秒、45秒、40秒、35秒、30秒、25秒、20秒、15秒、10秒、5秒、2秒、又は1秒であり得る。あるいは、変性の持続期間は、約120秒以下、90秒、60秒、55秒、50秒、45秒、40秒、35秒、30秒、25秒、20秒、15秒、10秒、5秒、2秒、又は1秒であり得る。
【0070】
デバイスの複数のパーティションのサブセットの制御された加熱は、任意の有用な速度で、任意の有用な温度範囲にわたって実行され得る。例えば、制御された加熱は、少なくとも約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、又は約95℃、又はそれ以上の下限温度から行うことができる。制御された加熱は、少なくとも約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約91℃、約92℃、約93℃、約94℃、約95℃、約96℃、約97℃、約98℃、約99℃、若しくは約100℃、又はそれ以上の上限温度まで行うことができる。温度は、任意の有用な増分で上昇させることができる。例えば、温度は、少なくとも約0.01℃、約0.05℃、約0.1℃、約0.2℃、約0.3℃、約0.4℃、約0.5℃、約1℃、約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、若しくは約10℃、又はそれ以上上昇させることができる。制御された加熱は、均一又は等間隔の温度増分で行われ得る。例えば、温度は、核酸分子の顕著な融解が予想される範囲では約0.1℃上昇させることができ(例えば、細粒度測定)、核酸分子の顕著な融解が予想されない範囲では約1℃上昇させることができる(例えば、粗粒度測定)。制御された加熱は、少なくとも約0.0001℃/秒、約0.0002℃/秒、約0.0003℃/秒、約0.0004℃/秒、約0.0005℃/秒、約0.0006℃/秒、約0.0007℃/秒、約0.0008℃/秒、約0.0009℃/秒、約0.001℃/秒、約0.002℃/秒、約0.003℃/秒、約0.004℃/秒、約0.005℃/秒、約0.006℃/秒、約0.007℃/秒、約0.008℃/秒、約0.009℃/秒、約0.01℃/秒、約0.02℃/秒、約0.03℃/秒、約0.04℃/秒、約0.05℃/秒、約0.06℃/秒、約0.07℃/秒、約0.08℃/秒、約0.09℃/秒、約0.1℃/秒、約0.2℃/秒、約0.3℃/秒、約0.4℃/秒、約0.5℃/秒、約0.6℃/秒、約0.7℃/秒、約0.8℃/秒、約0.9℃/秒、約1℃/秒、約2℃/秒、約3℃/秒、約4℃/秒、及び約5℃/秒、又はそれ以上などの任意の有用な速度で行うことができる。制御された加熱プロセスを実行する熱ユニット(例えばヒータ)は、所与の温度を任意の有用な期間にわたって維持することができる。例えば、所与の温度を、少なくとも約1秒、約2秒、約3秒、約4秒、約5秒、約6秒、約7秒、約8秒、約9秒、約10秒、約15秒、約20秒、約25秒、約30秒、約45秒、約60秒、約70秒、約80秒、約90秒、約100秒、約110秒、約120秒、約130秒、約140秒、約150秒、約160秒、約170秒、約180秒、約190秒、約200秒、約210秒、約220秒、約230秒、約240秒、約250秒、若しくは約300秒、又はそれ以上にわたって維持することができる。
【0071】
この方法は、核酸分子の変性中に核酸分子又はその誘導体(例えば、核酸分子の増幅産物)からシグナルを収集することを更に含み得る。シグナルは、光シグナル、電気シグナル、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。一例では、収集されるシグナルは光シグナルである。光シグナルの収集は、マイクロ流体デバイスのパーティション又はマイクロ流体デバイスのパーティションの一部分をイメージングすることを含み得る。シグナルは、任意の選択された時点で複数のパーティションのサブセットから収集され得る。例えば、シグナルは、少なくとも約1秒ごと、約2秒ごと、約3秒ごと、約4秒ごと、約5秒ごと、約6秒ごと、約7秒ごと、約8秒ごと、約9秒ごと、約10秒ごと、約20秒ごと、約30秒ごと、約45秒ごと、約60秒ごと、約70秒ごと、約80秒ごと、約90秒ごと、約100秒ごと、約110秒ごと、約120秒ごと、約130秒ごと、約140秒ごと、約150秒ごと、約160秒ごと、約170秒ごと、約180秒ごと、約190秒ごと、約200秒ごと、約210秒ごと、約220秒ごと、約230秒ごと、約240秒ごと、約250秒ごと、若しくは約300秒ごと、又はそれ以上ごとに収集することができる。あるいは、又はそれに加えて、選択された温度間隔においてシグナルを収集されてもよい。例えば、シグナルは、約5℃以下、4℃以下、3℃以下、2.5℃以下、2℃以下、1.5℃以下、1℃以下、0.5℃以下、0.25℃以下、又はそれ未満以下の温度間隔において収集されてもよい。シグナルは、マイクロ流体デバイス又はその複数のパーティション(例えば、マイクロチャンバ)のサブセットから収集する(例えば、画像を取得する)ことができる。シグナルを収集することは、デバイス又はその複数のパーティションのサブセットの画像を取得することを含むことができる。単一のマイクロチャンバ、マイクロチャンバのアレイ、又は同時にマイクロチャンバの複数のアレイからシグナル(例えば、画像)が収集され得る。シグナルは、マイクロ流体デバイスの本体を通して、マイクロ流体デバイスの薄膜を通して、又はその両方を通して収集され得る。マイクロ流体デバイスの本体は、実質的に光学的に透明であり得る。あるいは、マイクロ流体デバイスの本体は、実質的に光学的に不透明であってもよい。同様に、薄膜は、実質的に光学的に透明であり得る。あるいは、マイクロ流体デバイスの本体は、実質的に光学的に不透明であってもよい。
【0072】
この方法は、インターカレート色素を使用することを更に含んでもよい。インターカレート色素は、検出可能なシグナルを生成し得る。この方法によって生成される検出可能なシグナルは、生蛍光単位、相対蛍光単位、コピー数(cp)、体積に対するコピー数(例えば、cp/μL)、増幅の臨界閾値(Ct)、増幅サイクル、濃度、絶対数、微分レポーター、任意単位、又はそれらの任意の組み合わせとして提示又は読み取ることができる。インターカレート色素は、核酸分子の増幅中に核酸分子に挿入することができる。インターカレート色素は、二本鎖核酸分子と非特異的に相互作用又は結合することができる。インターカレート色素と二本鎖核酸分子との会合により、インターカレート色素の検出可能な蛍光が可能となり得る。核酸分子の変性は、インターカレート色素からの蛍光シグナルを消光させるか、又は別様に消失させ得る。挿入染料の非限定的な例には、SYBRgreen、EvaGreen、SYBRblue、DAPI、ヨウ化プロピジウム、Hoeste、SYBRgold、エチジウムブロマイド、アクリジン、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリフラビン、フルオロクマニン(fluorcoumanin)、エリプチシン、ダウノマイシン、クロロキン、ジスタマイシンD、クロモマイシン、ホミジウム、ミトラマイシン、ルテニウムポリピリジル、アントラマイシン、フェナントリジン、LCGReen、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0073】
この方法は、収集されたシグナルを処理して、核酸分子の変性プロファイルを生成することを更に含んでもよい。あるいは、又はそれに加えて、収集されたシグナルを処理して、1つ以上の核酸分子を含む個々のパーティションの変性プロファイルを生成してもよい。収集されたシグナルを処理することは、シグナル対温度曲線又はシグナル対濃度曲線(例えば、塩基、塩、又は有機溶媒変性の)などの変性曲線を生成するためにシグナルを使用することを含み得る。シグナルは、光学シグナル(例えば、蛍光強度)又は非光学シグナル(例えば、電気シグナル)を含み得る。シグナルを処理することは、変性温度又は変性剤濃度を決定するために、変性曲線の負の一次導関数をプロットすることを更に含み得る。シグナルを処理することは、融解曲線分析を実施して、核酸分子又は複数の核酸分子の変性プロファイル又は解離特性(例えば、融解温度)を決定することを更に含み得る。
図12は、変性プロファイルを生成するためにインターカレート色素及び検出処理を使用する例示的なデジタル融解分析を示す。インターカレート色素は、二本鎖核酸分子と会合したときにシグナルを生成することができる。二本鎖核酸分子が変性してランダムコイルを形成すると、インターカレート色素が一本鎖核酸分子から解離し得、シグナルが減少するか又はゼロになり得る。
【0074】
図4A~
図4Bは、核酸分子の例示的な変性プロファイルを示す。
図4Aは、3つの異なる例示的な核酸分子についての例示的な変性プロファイルを示す。3つの異なる核酸分子は、異なる融点400、405、及び410、変性プロファイルのタイプを示す。3つの異なる核酸分子の3つの異なる融解温度は、3つの異なる分析物の同定を可能にし得る。例えば、第1の核酸分子を有する結合試薬は、第1の融点400を示し得る。第2の核酸分子を有する第2の結合試薬は、第2の融点405を示し得、第3の核酸分子を有する第3の結合試薬は、第3の融点410を示し得る。核酸分子の異なる融点は、3つの結合試薬が特異性を有する分析物の同定を可能にし得る。核酸分子は、単一の核酸分子又は核酸分子の増幅産物が単一のパーティションに存在するように分配され得る。あるいは、又はそれに加えて、パーティションは、2つ以上の核酸分子又はその増幅産物を含み得る。
図4Bは、複数の核酸分子を含む例示的なパーティションについての例示的な変性プロファイルを示す。融点400、405、及び410は、核酸分子が互いに区別されることを可能にし得、その結果、異なる核酸分子の存在、したがって核酸分子と会合した分析物が検出及び同定され得る。
【0075】
核酸分子は、別の核酸分子とは異なる変性プロファイルを有し得る。例えば、第1の核酸分子は、第1の変性プロファイルを生成し得、第2の核酸分子は、第2の変性プロファイルを生成し得る。第1の変性プロファイルは、第1の分析物の検出、同定、又は定量化を可能にし得、第2の変性プロファイルは、第2の分析物の検出、同定、又は定量化を可能にし得る。場合によっては、収集されたシグナルを処理することは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は13の異なる分析物に対応する1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は13の核酸の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は13の変性プロファイルを生成することを含み得る。場合によっては、核酸及び分析物は、単一の試料又は複数の試料に存在する。核酸分子の変性プロファイルは、核酸分子を構成する核酸塩基、核酸分子の長さ(例えば、塩基の数)、核酸分子を構成するヌクレオチドの種類(例えば、PNA、DNA、BNA、LNAなど)、核酸分子の濃度、又はそれらの任意の組み合わせに依存し得る。核酸分子は、別の核酸分子とは異なり得る。核酸分子と別の核酸分子との間の差により、核酸分子を別の核酸分子から提供される変性を介して区別することが可能となり得る。核酸分子の変性プロファイルの特性(例えば、融解温度、変性濃度など)は、別の核酸分子の変性プロファイルと少なくとも約0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、8%、10%、12%、15%、20%、30%、40%、又はそれ以上異なり得る。例えば、核酸分子の融解温度は、別の核酸分子の融解温度と少なくとも約0.5%異なり得る。別の例では、核酸分子の融解温度は、別の核酸分子の融解温度と少なくとも約1%異なり得る。別の例では、核酸分子の融解温度は、別の核酸分子の融解温度と少なくとも約2%異なり得る。別の例では、核酸分子の融解温度は、別の核酸分子の融解温度と少なくとも約5%異なり得る。
【0076】
一例では、核酸分子の変性プロファイルは、核酸分子の融点を含み、別の核酸分子の変性プロファイル(例えば、融点)と異なる。核酸分子の融点は、別の核酸分子の融点と少なくとも約0.1℃、0.2℃、0.3℃、0.4℃、0.5℃、0.6℃、0.8℃、1℃、1.5℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、8℃、10℃、又はそれ以上異なり得る。一例では、核酸分子の融点は、別の核酸分子の融点と少なくとも約0.25℃異なり得る。別の例では、核酸の融点は、別の核酸分子の融点と少なくとも約0.5℃異なり得る。融点は、核酸分子の一次導関数プロットから導き出すことができる。あるいは、又は加えて、融解曲線減算を使用して、核酸分子の融解点を別の核酸分子から区別し、したがってある分析物の同一性を別の分析物から区別することができる。
【0077】
シグナルを処理することにより、核酸分子の同定、したがって核酸分子と会合した分析物の同定が可能となり得る。核酸分子の変性プロファイル(例えば、すなわち融解温度)は、変性プロファイルのデータベースからの変性プロファイルと比較され得るか、又はそれと照合され得る。変性プロファイルのデータベースは、核酸分子、核酸分子にカップリングされている結合試薬、結合プローブの特異性、又はそれらの任意の組み合わせに関する情報を提供し得る。この情報は、結合試薬がカップリングする分析物(例えば、タンパク質)の同定を可能にし得る。
【0078】
加えて、又はあるいは、処理は、1つ又は複数の分析物の定量化を可能にし得る。核酸分子は、複数のパーティションに分配され得る。パーティションからのシグナルは、収集及び処理され得る。パーティションは、核酸分子を含まないものとして、又は1つ以上の核酸分子を含むものとして割り当てられ得る。例えば、パーティションは、第1及び第2の核酸分子を含み得る。第1の核酸分子を含むパーティションの数がカウントされ得、核酸分子の数の定量化、ひいては第1の核酸分子と会合した分析物の定量化が可能となる。第2の核酸分子を含むパーティションの数がカウントされ得、第2の核酸分子の数の定量化、ひいては第2の核酸分子と会合した分析物の定量化が可能となる。
図5は、例示的な分析物の同定及び定量化を概略的に示す。この例では、複数の分析物を含む試料が複数の結合試薬と接触し得る。第1の分析物に特異的な結合プローブを有する第1の結合試薬は、第1の分析物に結合することができる。第2の分析物に特異的な結合プローブを有する第2の結合試薬は、第2の分析物に結合することができる。第1の結合試薬及び第2の結合試薬は、それぞれ第1及び第2の核酸分子であり得る。第1及び第2の核酸分子は分配され得、第1及び第2の核酸分子を変性させる条件にさらされ得る。第1及び第2の核酸分子は、第1及び第2の核酸分子が区別可能な変性プロファイルを生成するように、異なる条件下で変性され得る。変性中、変性に関連するシグナルをパーティションから収集して、個々のパーティションについての変性プロファイルを生成してもよい。第1のパーティション500は、第1及び第2の核酸分子の両方を含み得、したがって第1及び第2の核酸分子の両方からの変性シグナルを含む変性プロファイルを生成し得る。第2のパーティション505は、第1の核酸分子を含み得、第1の核酸分子からの変性シグナルを含む変性プロファイルを生成し得る。第1及び第2の核酸分子についての変性プロファイルは変性プロファイルのデータベースと比較され、第1及び第2の核酸分子と会合した分析物が同定され得る。第1の核酸分子、第2の核酸分子、又は第1及び第2の核酸分子の両方を含むパーティションの数をカウント及び処理して、第1及び第2の核酸分子と会合した分析物が定量化され得る。
【0079】
一例では、本明細書で提供される方法及びシステムは、近接ライゲーションアッセイ(PLA)から生成される核酸分子を使用することを含み得る。
【0080】
そのような方法及びシステムでは、例えば、
図7Aに示されるように、核酸は、結合試薬(例えば、抗体又はその断片)にコンジュゲートされた2つの一本鎖核酸分子間のライゲーション反応を通じて提供され得る。一例では、ライゲーション反応は、2つの結合剤が同じ分析物又は十分に近接した標的に結合する場合に起こり、それによって、一本鎖核酸の両方と、両方の一本鎖核酸の領域にまたがるスプリンターオリゴとの間のハイブリダイゼーションが可能になる。スプリンターオリゴは、2つの核酸の5’末端及び3’末端を一緒にすることによって、一本鎖核酸分子のライゲーションを可能にし得る。一例では、2つの結合試薬が同じ分析物又は十分に近接する標的分析物に結合することができない場合、
図7Bに示すように、ライゲーション反応は起こらない。PLAは、洗浄がほとんど若しくは全くないこと、他の分析物検出アプローチと比較して材料若しくは標識ビーズが少量であること、又は他の検出アプローチよりもイメージング及び自動化機器が低コストであることを含むいくつかの利点を有し得る。一例では、未結合の結合試薬は一本鎖核酸分子のライゲーションを可能にせず、したがって、洗浄は使用されなくてもよい。更に、PLAプロセスは、例えば、
図7Cに示されるように、本明細書に記載のデジタルPCRシステム及び方法と組み合わせて、より高感度の検出と、より容易で、より速く、より安価なワークフローとを可能にし得る。
【0081】
一例では、PLAは、
図8に示すように、マルチウェルプレートデジタルPCR(dPCR)ワークフローに統合されてもよい。場合によっては、目的のタンパク質標的などの分析物を含有する試料が提供される。他の場合では、複数の分析物を含有する複数の試料が提供される。試料は、抗体-ssDNAコンジュゲート、スプリンターオリゴ、PLAのマスターミックス、dPCR緩衝液、近接リガーゼ反応を引き起こすリガーゼ、又はそれらの任意の組み合わせと混合され得る。次いで、反応混合物を、マルチウェルプレートに装填してdPCRを行ってもよく、これにより本明細書に記載のライゲーション反応産物である核酸を分析(例えば、検出又は定量化)のために増幅することができる。
【0082】
いくつかの態様では、PLAワークフローは、本明細書に記載のデジタル融解曲線分析と統合され得る。ライゲーションされたPLA産物は、dPCR又はqPCRによる下流の増幅、及びその後の分析物又は複数の分析物の濃度又は量を測定するために使用される変性プロファイル分析のための核酸として機能し得る。
【0083】
場合によっては、ライゲーションされたPLA産物は、組換え又は合成リガーゼによって生成され得る。場合によっては、ライゲーションされたPLA産物は、ヒト、細菌、ウイルス、哺乳動物、真核生物、原核生物、古細菌、又は植物由来のリガーゼによって生成され得る。場合によっては、リガーゼは、野生型リガーゼの断片又は別の機能的酵素ドメインにコンジュゲートされた融合タンパク質であり得る。いくつかの例では、リガーゼは、他の緩衝液又はPCR試薬と共にマスターミックス中に提供され得る。いくつかの例では、リガーゼは、試薬又は試料の添加前にプレート又は試料容器中に提供され得る。いくつかの例では、リガーゼは、反応プレート又は容器への添加前に試料又は結合試薬に添加される。いくつかの例では、増幅のための核酸は、リガーゼを1つの結合試薬の核酸及び第2の結合試薬の核酸と接触することによって生成される。いくつかの例では、リガーゼを、第1の核酸、第2の核酸、及びスプリンターオリゴと接触させる。
【0084】
スプリンターオリゴ(又はスプリンターオリゴヌクレオチド)は、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態であり得る。例えば、スプリンターオリゴは、少なくとも1、2、3、4、5、6、8、10、15、20、30、40、50、100、500、1000、又はそれ以上のヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチドには、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、又はそれらの類似体が含まれ得る。スプリンターオリゴは、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロック核酸(LNA)、ブリッジ核酸(BNA)、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。スプリンターオリゴは、アデノシン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、及びウラシル(U)、又はそれらのバリアントから選択される1つ以上のサブユニットを含み得る。ヌクレオチドは、A、C、G、T、若しくはU、又はそれらのバリアントを含み得る。ヌクレオチドは、成長している核酸鎖に組み込むことができる任意のサブユニットを含み得る。そのようなサブユニットは、A、C、G、T、若しくはUであるか、又はより相補的なA、C、G、T、若しくはUのうちの1つに特異的であるか、又はプリン(すなわち、A若しくはG、又はそれらのバリアント)又はピリミジン(すなわち、C、T、若しくはU、又はそれらのバリアント)に相補的である、任意の他のサブユニットであり得る。いくつかの例では、スプリンターオリゴは一本鎖又は二本鎖であってもよく、場合によっては、スプリンターオリゴ分子は環状である。スプリンターオリゴは、メチル化されたヌクレオチド及びヌクレオチドアナログなどの、1つ以上の修飾されたヌクレオチドを含んでもよい。スプリンターオリゴは、別の核酸に結合していないか又は結合している試料に加えられ得る。同じ場合において、スプリンターオリゴは、結合試薬の核酸に結合される。
【0085】
一例では、多重分析で使用するために、複数の結合試薬を使用して、複数の分析物の存在を決定し、定量化することができる。場合によっては、本明細書に記載のPLA及びdPCR法は、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、24、28、32、26、40、50、60、又はそれ以上の異なる結合試薬を使用することを含み得る。一例では、PLA及びdPCR法は、多重分析において少なくとも2~約25の異なる分析物を検出するために、約4~約50の異なる結合試薬を使用することができる。この方法は、少なくとも2~約50の異なる分析物の存在及び量を決定するために、増幅されたPLA産物の変性プロファイルを生成することを含み得る。場合によっては、増幅されたPLA産物の変性プロファイルは、2つの異なる分析物の互いの近接関係を同定するために使用可能である。場合によっては、変性プロファイルは、1つ以上のインターカレート色素からのシグナルに由来する。
図13は、11個の異なる分析物を検出するために、PLA及びdPCRを、インターカレート色素を用いたデジタル融解分析と共に使用する例を概略的に示す。
【0086】
分析物を同定するためのシステム及びデバイス
一態様では、本開示は、分析物を同定するためのシステムを提供する。システムは、検出ユニット及び1つ以上のプロセッサを備えることができる。検出ユニットは、分析物を同定するためのシグナルを収集及び処理するように構成され得るか、又はそれを収集及び処理し得る。1つ以上のプロセッサは、検出ユニットに動作可能に結合され得る。1つ以上のプロセッサは、結合試薬を分析物と接触させるようにプログラムされ得るか又は別様に構成され得る。結合試薬は、分析物特異的結合プローブ及び核酸分子を含み得る。1つ以上のプロセッサは、核酸分子又はその誘導体の少なくとも一部分を変性させ、核酸分子の変性を示すシグナルを収集するように検出ユニットに指示するように、更にプログラムされ得るか又は構成され得る。核酸分子の変性を示すシグナルは、分析物を同定するために使用され得る。
【0087】
システムは、本明細書の他の箇所で説明されている方法のいずれかを実施するように構成することができ、又は実施することができる。システムは、本明細書の他の箇所で説明されているデバイス、試薬、又は構成要素のいずれかを使用することができる。
【0088】
システムは、支持体を更に含み得る。支持体は、分析物を固定化するように構成され得る。分析物は、溶液で提供されてもよく、又は支持体にカップリングされてもよい。分析物は、捕捉物質を介して支持体にカップリングされてもよく、支持体に共有結合的に固定化されてもよく(例えば、リンカー分子を介して)、支持体に物理的に吸収されてもよく、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。一例では、分析物は溶液で提供され、この方法は、分析物を支持体にカップリングさせることを含む。溶液での分析物を、1つ以上の捕捉物質を含む支持体と接触させてもよい。捕捉物質は、支持体上に固定化されてもよく、分析物を支持体上に固定化するために使用可能であってもよい。捕捉物質は、リガンド、核酸分子、抗体、又は分析物を結合することができる任意の他の分子であり得る。捕捉物質は、分析物に対する特異性を有してもよく、又は複数の異なる分析物若しくは異なる種類の分析物(例えば、タンパク質、核酸分子、代謝産物など)に結合することができるユニバーサル捕捉物質であってもよい。一例では、捕捉物質は抗体を含み、分析物はタンパク質を含む。別の例では、捕捉物質はアプタマーを含み、分析物はタンパク質、核酸分子、細胞、代謝産物、又は他の生体分子を含む。捕捉物質は、分析物に特異的な結合領域を含んでもよい。あるいは、又はそれに加えて、捕捉物質は分析物のドメインに特異的な結合領域を含んでもよく、これにより、捕捉物質が複数の異なる分析物に結合することが可能となる。
【0089】
1つ以上のプロセッサは、分析物を結合試薬と接触させるように構成され得るか又は別様にプログラムされ得る。結合試薬は、結合プローブ及び核酸分子を含み得る。結合プローブは、リガンド、核酸分子、抗体、又は分析物に結合することができる任意の他の分子を含み得る。一例では、結合プローブは抗体であり、結合試薬は抗体を含む。別の例では、結合プローブはアプタマーであり、結合試薬はアプタマーを含む。結合プローブは、分析物又は分析物の一部分に対する特異性を有し得る。結合プローブは、別の分析物又は分析物の別の部分に対する特異性を有していなくてもよく、したがって、結合試薬が単一の分析物又は単一種類の分析物に結合することが可能となる。結合プローブは、結合試薬の分析物への可逆的結合を可能にし得る。あるいは、又はそれに加えて、結合プローブは、結合試薬を分析物に不可逆的に結合させ得る。
【0090】
結合試薬は核酸分子を含み得、異なる結合試薬は異なる核酸分子を含み得る。核酸分子は、分析物を検出又は同定するために使用可能であり得る。例えば、第1の結合試薬は、第1の核酸分子を含み得、第1の分析物にカップリングし得る。第2の結合試薬は、第2の核酸分子を含み得、第2の分析物にカップリングし得る。第1の核酸分子及び第2の核酸分子は、異なる分子であり得る。第1の核酸分子と第2の核酸分子における差異は、検出可能であり得、したがって、第1の分析物と第2の分析物とを同定及び区別するために使用可能であり得る。試料は、少なくとも1、2、3、4、5、6、8、10、15、20、30、40、50、又はそれ以上の異なる核酸分子にそれ各々カップリングされている少なくとも1、2、3、4、5、6、8、10、15、20、30、40、50、又はそれ以上の結合試薬と接触し得る。核酸分子は、所与の分析物を同定するために使用可能である分子又は配列(例えば、識別子又はバーコード)を含み得る。
【0091】
システムは、核酸分子の同定を介して分析物を同定するように構成され得るか又は別様に同定し得る。核酸分子の同定は、分析物の検出、同定、定量化、又はそれらの任意の組み合わせを可能にし得る。結合試薬(例えば、核酸分子にカップリングされている結合プローブ)を分析して、核酸分子を同定することができる。あるいは、又はそれに加えて、核酸分子又は核酸分子の一部分は、同定又は検出の前に、結合試薬から除去又は切断され得る。核酸分子は、結合プローブに可逆的にカップリングされてもよく、又は結合プローブに不可逆的にカップリングされてもよい。一例では、核酸分子は、結合プローブに可逆的にカップリングされている。別の例では、核酸分子は、結合プローブに不可逆的にカップリングされている。可逆的にカップリングされている核酸分子は、ジスルフィド結合、リガンド結合、又は他の可逆的結合によって結合プローブにカップリングされ得る。可逆的にカップリングされている核酸分子は、結合試薬が還元剤、結合プローブに対してより高い親和性を有する分子、又はそれらの任意の組み合わせと接触することによって、切り離され得るか、又は解離され得る。あるいは、又はそれに加えて、核酸分子は、結合プローブに不可逆的にカップリングされ得る(例えば、共有結合的にカップリングされ得る)。核酸分子は、核酸分子の分析前に切断されてもよい。例えば、核酸は制限酵素のコンセンサス配列を含んでもよく、制限酵素は結合プローブから核酸を切断し得る。結合プローブから核酸分子を切り離す又は切断することは、分析物及び結合プローブが支持体上に固定化されている間に、核酸分子が溶液相に入ることを可能にし得る。
【0092】
システムは、マイクロ流体デバイスを更に含むことができる。マイクロ流体デバイスは、複数のパーティション(例えば、パーティションのアレイ)を含むことができる。核酸分子は、複数の核酸分子のうちの1つであってもよく、システムは、複数の核酸分子を分配のためにマイクロ流体デバイスに提供することができる。システムは、核酸分子を増幅し、核酸分子をパーティション内の変性条件にさらすように更に構成することができる。
【0093】
本開示のマイクロ流体デバイスは、消耗デバイス(例えば、単一試料の分析又は処理などの単回使用のために設計された)又は再利用可能デバイス(例えば、複数の試料の分析又は処理などの複数回使用のために設計された)であってもよい。デバイスに含まれる材料の選択は、デバイスが1回使用されるか又は複数回使用されるかを反映し得る。例えば、消耗デバイスは、再利用可能なデバイスよりも安価な材料を含むことができる。同様に、製造プロセスは、デバイスの用途に合わせて調整することができる。例えば、消耗デバイスの製造プロセスは、より少ない廃棄物の生成又はより低コストの製造を含むことができる。再利用可能なデバイスは、同じデバイスを使用した複数の試料の分析又は処理を容易にするために、洗浄可能又は滅菌可能である場合がある。例えば、再利用可能なデバイスは、滅菌に適した高温に耐えることができる材料を含むことができる。消耗デバイスは、そのような材料を含んでもよく、又は含まなくてもよい。
【0094】
マイクロ流体デバイスは、流体流路を含むことができる。流体流路は、1つのチャネル又は複数のチャネルを含み得る。流体流路は、1、2、3、4、5、6、8、10、12、15、20、25、30、40、50又はそれ以上のチャネルを含むことができる。各チャネルは、互いに流体的に分離することができる。あるいは、又はそれに加えて、複数のチャネルは互いに流体連通していてもよい。チャネルは、第1の端部及び第2の端部を含むことができる。第1の端部及び第2の端部は、単一の入口ポートに接続され得る。単一の入口ポートに接続された第1の端部及び第2の端部を有するチャネルは、入口ポートを通ってチャネルに入る流体を、チャネルの第1の端部及び第2の端部を通じて誘導することができるように、円形又はループ状の構成であってもよい。あるいは、第1の端部及び第2の端部は、異なる入口ポートに接続され得る。あるいは、第1の端部が入口ポートに接続されてもよく、第2の端部が出口ポートに接続されてもよい。あるいは、第1の端部が入口ポートに接続されてもよく、第2の端部は閉鎖端又は行き止まりであってもよい。流体流路は、複数のパーティション(例えば、チャンバ)を含んでもよい。流体流路又はチャンバは、流体の流れを停止若しくは阻害するため、又はチャンバを隔離するためのバルブを含まなくてもよい。
【0095】
デバイスは、長寸法及び短寸法を含むことができる。長寸法は、約20センチメートル(cm)以下、15cm以下、10cm以下、8cm以下、6cm以下、5cm以下、4cm以下、3cm以下、2cm以下、1cm以下、又はそれ未満以下であり得る。デバイスの短寸法は、約10cm以下、8cm以下、6cm以下、5cm以下、4cm以下、3cm以下、2cm以下、1cm以下、0.5cm以下、又はそれ未満以下であり得る。一例では、デバイス(例えば、マイクロ流体デバイス)の寸法は、約7.5cm×2.5cmである。チャネルは、マイクロ流体デバイスの長寸法に実質的に平行であり得る。あるいは、又はそれに加えて、チャネルは、マイクロ流体デバイスの長寸法に対して実質的に垂直(例えば、デバイスの短寸法に対して平行)であってもよい。あるいは、又はそれに加えて、チャネルは、マイクロ流体デバイスの長寸法に対して実質的に平行でも実質的に垂直でもない場合がある。チャネルとマイクロ流体デバイスの長寸法との間の角度は、少なくとも約5°、10°、15°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、又は90°であり得る。一例では、チャネルは単一の長いチャネルである。あるいは、又はそれに加えて、チャネルは屈曲部、湾曲部、又は角度を有してもよい。チャネルは、約100ミリメートル(mm)以下、75mm以下、50mm以下、40mm以下、30mm以下、20mm以下、10mm以下、8mm以下、6mm以下、4mm以下、2mm以下、又はそれ未満以下の長寸法を有し得る。チャネルの長さは、マイクロ流体デバイスの外形の長さ又は幅によって拘束され得る。チャネルは、約500マイクロメートル(μm)以下、250μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下、30μm以下、20μm以下、10μm以下、又はそれ未満の深さを有し得る。チャネルは、約500μm以下、250μm以下、100μm以下、75μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、10μm以下、又はそれ未満の断面寸法(例えば、幅又は直径)を有し得る。
【0096】
いくつかの例では、チャネルの断面寸法は、幅約100μm×深さ約100μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面寸法は、幅約100μm×深さ約80μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面寸法は、幅約100μm×深さ約60μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面寸法は、幅約100μm×深さ約40μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面寸法は、幅約100μm×深さ約20μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面寸法は、幅約100μm×深さ約10μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面寸法は、幅約80μm×深さ約100μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面寸法は、幅約60μm×深さ約100μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面寸法は、幅約40μm×深さ約100μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面寸法は、幅約20μm×深さ約100μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面寸法は、幅約10μm×深さ約100μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面寸法は、幅約80μm×深さ約80μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面寸法は、幅約60μm×深さ約60μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面寸法は、幅約40μm×深さ約40μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面寸法は、幅約20μm×深さ約20μmであり得る。いくつかの例では、チャネルの断面寸法は、幅約10μm×深さ約10μmであり得る。
【0097】
チャネルの断面形状は、円形、楕円形、三角形、正方形、又は長方形を含むがこれらに限定されない、任意の好適な断面形状であり得る。チャネルの断面積は、チャネルの長さに沿って一定であり得る。あるいは、又はそれに加えて、チャネルの断面積は、チャネルの長さに沿って変化し得る。チャネルの断面積は、約50%~150%、約60%~125%、約70%~120%、約80%~115%、約90%~110%、約95%~100%、又は約98%~102%で変化し得る。チャネルの断面積は、約10,000平方マイクロメートル(μm2)以下、7,500μm2以下、5,000μm2以下、2,500μm2以下、1,000μm2以下、750μm2以下、500μm2以下、400μm2以下、300μm2以下、200μm2以下、100μm2以下、又はそれ未満であり得る。
【0098】
チャネルは、単一の入口又は複数の入口を有することができる。入口は同じ直径を有し得るか、又はそれらは異なる直径を有し得る。入口及び出口は、約2.5ミリメートル(mm)以下、2mm以下、1.5mm以下、1mm以下、0.5mm以下、又はそれ未満以下の直径を有し得る。
【0099】
デバイスは、複数のチャンバを含んでもよい。複数のチャンバは、チャンバのアレイであり得る。デバイスは、チャンバの単一のアレイ又はチャンバの複数のアレイを含み得、チャンバの各アレイは、他のアレイから流体的に単離されている。チャンバのアレイは、一列で、格子構成で、交互のパターンで、又は任意の他の構成で、配置され得る。マイクロ流体デバイスは、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、又はそれ以上のチャンバアレイを有し得る。チャンバのアレイは同一であってもよく、又は、チャンバのアレイが異なっていてもよい(例えば、チャンバの数又は構成が異なる)。チャンバのアレイは、全て同じ外形寸法を有し得るか(すなわち、チャンバのアレイの全ての特徴を包囲する、チャンバのアレイの長さ及び幅)、又はチャンバのアレイは、異なる外形寸法を有し得る。チャンバのアレイは、約100mm以下、75mm以下、50mm以下、40mm以下、30mm以下、20mm以下、10mm以下、8mm以下、6mm以下、4mm以下、2mm以下、1mm以下、又はそれ未満以下の幅を有し得る。チャンバのアレイは、50mm以上、40mm以上、30mm以上、20mm以上、10mm以上、8mm以上、6mm以上、4mm以上、2mm以上、1mm以上、又はそれ未満以上の長さを有し得る。一例では、アレイの幅は、約1mm~100mm、又は約10mm~50mmであり得る。一例では、アレイの長さは、約1mm~50mm、又は約5mm~20mmであり得る。
【0100】
チャンバのアレイは、約1,000以上のチャンバ、5,000以上のチャンバ、10,000以上のチャンバ、20,000以上のチャンバ、30,000以上のチャンバ、40,000以上のチャンバ、50,000以上のチャンバ、100,000以上のチャンバ、又はそれ以上のチャンバを有し得る。一例では、マイクロ流体デバイスは、約10,000~30,000のチャンバを有し得る。別の例では、マイクロ流体デバイスは、約15,000~25,000のチャンバを有し得る。チャンバは、円筒形状、半球形状、又は円筒形状及び半球形状の組み合わせであり得る。あるいは、又はそれに加えて、チャンバは立方体の形状であり得る。チャンバは、約500μm以下、250μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下、30μm以下、15μm以下、又はそれ未満以下の断面寸法を有し得る。一例では、チャンバは、約250μm以下の断面寸法(例えば、直径又は辺の長さ)を有する。別の例では、チャンバは、約100μm以下の断面寸法(例えば、直径又は辺の長さ)を有する。別の例では、チャンバは、約50μm以下の断面寸法(例えば、直径又は辺の長さ)を有する。
【0101】
チャンバの深さは、約500μm以下、250μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下、30μm以下、15μm以下、又はそれ未満であり得る。一例では、チャンバは、約30μmの断面寸法及び約100μmの深さを有し得る。別の例では、チャンバは、約35μmの断面寸法及び約80μmの深さを有し得る。別の例では、チャンバは、約40μmの断面寸法及び約70μmの深さを有し得る。別の例では、チャンバは、約50μmの断面寸法及び約60μmの深さを有し得る。別の例では、チャンバは、約60μmの断面寸法及び約40μmの深さを有し得る。別の例では、チャンバは、約80μmの断面寸法及び約35μmの深さを有し得る。別の例では、チャンバは、約100μmの断面寸法及び約30μmの深さを有し得る。別の例では、チャンバとチャネルとは同じ深さを有する。別の実施形態では、チャンバとチャネルとは異なる深さを有する。
【0102】
チャンバの容積は、任意の容積であり得る。チャンバは、マイクロ流体デバイス全体にわたって同じ容積を有し得るか、又は容積は変動し得る。チャンバは、約1000ピコリットル(pL)以下、900pL以下、800pL以下、700pL以下、600pL以下、500pL以下、400pL以下、300pL以下、200pL以下、100pL以下、75pL以下、50pL以下、25pL以下、又はそれ未満のピコリットル以下の容積を有し得る。チャンバは、約25pL~50pL、25pL~75pL、25pL~100pL、25pL~200pL、25pL~300pL、25pL~400pL、25pL~500pL、25pL~600pL、25pL~700pL、25pL~800pL、25pL~900pL、又は25pL~1000pLの容積を有し得る。一例では、チャンバは、500pL以下の容積を有する。別の例では、チャンバは、約250pL以下の容積を有する。別の例では、チャンバは、約100pL以下の容積を有する。
【0103】
チャネルの容積は、チャンバの総容積よりも小さくてもよく、等しくてもよく、又はより大きくてもよい。一例では、チャネルの容積は、チャンバの総容積未満である。チャネルの容積は、チャンバの総容積の95%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、又はそれ未満以下であり得る。
【0104】
デバイスは、チャネルとチャンバとの間に配設されている吸い上げ開口部を更に含み得る。吸い上げ開口部は、チャネルを複数のチャンバに接続する複数の吸い上げ開口部のうちの1つであり得る。吸い上げ開口部は、チャネルとチャンバとの間の流体連通を提供するように構成され得る。吸い上げ開口部の長さは、デバイス(例えば、マイクロ流体デバイス)全体にわたって一定であってもよく、又は変化してもよい。吸い上げ開口部は、約150μm以下、100μm以下、50μm以下、25μm以下、10μm以下、5μm以下、又はそれ未満以下の長寸法を有し得る。吸い上げ開口部の深さは、約50μm以下、25μm以下、10μm以下、5μm以下、又はそれ未満以下であり得る。吸い上げ開口部は、約50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、10μm以下、5μm以下、又はそれ未満以下の断面寸法を有し得る。
【0105】
吸い上げ開口部の断面形状は、円形、楕円形、三角形、正方形、又は長方形を含むがこれらに限定されない、任意の好適な断面形状であり得る。吸い上げ開口部の断面積は、吸い上げ開口部の長さに沿って一定であり得る。あるいは、又はそれに加えて、吸い上げ開口部の断面積は、吸い上げ開口部の長さに沿って変動し得る。吸い上げ開口部の断面積は、チャンバへの接続部における吸い上げ開口部の断面積よりも、チャネルへの接続部における方が大きくなり得る。あるいは、チャンバへの接続部における吸い上げ開口部の断面積は、チャネルへの接続部における吸い上げ開口部の断面積よりも大きくてもよい。吸い上げ開口部の断面積は、約50%~150%、60%~125%、70%~120%、80%~115%、90%~110%、95%~100%、又は98%~102%で変動し得る。吸い上げ開口部の断面積は、約2,500μm2以下、1,000μm2以下、750μm2以下、500μm2以下、250μm2以下、100μm2以下、75μm2以下、50μm2以下、25μm2以下、又はそれ未満以下であり得る。チャネルへの接続部における吸い上げ開口部の断面積は、チャネルの断面積以下であり得る。チャネルへの接続部における吸い上げ開口部の断面積は、チャネルの断面積の約98%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、1%以下、0.5%以下、又はそれ未満以下であり得る。吸い上げ開口部は、チャネルに対して実質的に垂直であり得る。あるいは、又はそれに加えて、吸い上げ開口部はチャネルに対して実質的に垂直でない。吸い上げ開口部とチャネルとの間の角度は、少なくとも約5°、10°、15°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、又は90°であり得る。
【0106】
マイクロ流体デバイスは、チャネル、チャンバ、吸い上げ開口部、又はそれらの任意の組み合わせの加圧ガス抜き又は脱気を可能にするように構成され得る。加圧ガス抜き又は脱気は、加圧ガス抜き又は脱気を可能にするように構成されているフィルム又は膜によって提供され得る。あるいは、又はそれに加えて、チャンバ、チャネル、又はその両方に隣接して配設されている第2のチャネル(例えば、ガス抜きチャネル)によって、加圧ガス抜き又は脱気を提供することができる。第2のチャネルは、圧力閾値を超える加圧ガス抜き又はガス抜きを可能にすることができる。フィルム又は膜は、圧力閾値を超える気体に対して透過性であってもよい。フィルム又は膜は、水性流体、油、又は他の溶媒などであるがこれらに限定されない液体に対して透過性でなくてもよい(例えば、不透過性又は実質的に不透過性である)。チャネル、チャンバ、吸い上げ開口部、又はそれらの任意の組み合わせが、フィルム又は膜を含み得る。一例では、チャンバは気体透過性フィルム又は膜を含み、チャネル又は吸い上げ開口部は気体透過性フィルム又は膜を含まない。別の例では、チャンバ及び吸い上げ開口部は気体透過性フィルム又は膜を含み、チャネルは気体透過性フィルム又は膜を含まない。別の例では、チャンバ、チャネル、及び吸い上げ開口部は気体透過性フィルム又は膜を含む。
【0107】
フィルム又は膜は、薄片(thin file)であり得る。フィルム又は膜は、ポリマーであり得る。フィルムは、熱可塑性フィルム又は膜であり得る。フィルム又は膜はエラストマー材料を含まなくてもよい。気体透過性フィルム又は膜は、流体流路、チャネル、チャンバ、又はそれらの任意の組み合わせを覆うことができる。一例では、気体透過性フィルム又は膜はチャンバを覆う。別の例では、気体透過性フィルム又は膜はチャンバ及びチャネルを覆う。フィルムの気体透過性は、昇圧によって誘発され得る。フィルム又は膜の厚さは、約500マイクロメートル(μm)以下、250μm以下、200μm以下、150μm以下、100μm以下、75μm以下、50μm以下、25μm以下、又はそれ未満以下であり得る。一例では、フィルム又は膜は、約100μm以下の厚さを有する。別の例では、フィルム又は膜は、約50μm以下の厚さを有する。別の例では、フィルム又は膜は、約25μm以下の厚さを有する。フィルム又は膜の厚さは、約0.1μm~約200μm、0.5μm~150μm、又は25μm~100μmであり得る。一例では、フィルム又は膜の厚さは、約25μm~100μmである。膜の厚さは、膜の製造可能性、膜の通気性、ガス放出される各チャンバ又はパーティションの容積、利用可能な圧力、又は分配若しくはデジタル化プロセスを完了するための時間によって選択され得る。
【0108】
フィルム又は第2のチャネルは、異なる印加圧力差の下で異なる透過特性を採用するように構成され得る。例えば、薄膜又は第2のチャネルは、第1の圧力差(例えば低圧)において気体不透過性であり、第2の圧力差(例えば高圧)において少なくとも部分的に気体透過性であり得る。第1の圧力差(例えば、低圧差)は、約8ポンド/平方インチ(psi)以下、6psi以下、4psi以下、2psi以下、1psi以下、又はそれ未満以下であり得る。一例では、フィルム又は膜は、4psi未満の圧力差で気体に対して実質的に不透過性である。第2の圧力差(例えば、高圧差)は、約1psi以上、2psi以上、4psi以上、6psi以上、8psi以上、10psi以上、12psi以上、14psi以上、16psi以上、20psi以上、又はより高い値以上であり得る。一例では、フィルム又は膜は、4psi以上の圧力で実質的に気体透過性である。
【0109】
システムは、マイクロ流体デバイスを受容又は保持するように構成されているホルダを含み得る。ホルダは、デバイスを保持するための棚、レセプタクル、又はステージであり得る。一例では、ホルダは移送ステージである。移送ステージは、マイクロ流体デバイスを入れ、マイクロ流体デバイスを保持し、マイクロ流体デバイスを出すように構成され得る。マイクロ流体デバイスは、本明細書の他の箇所に記載されている任意のデバイスであり得る。移送ステージは、1つ以上の座標で静止し得る。あるいは、又はそれに加えて、移送ステージは、X方向、Y方向、Z方向、又はそれらの任意の組み合わせに移動することが可能であり得る。移送ステージは、単一のマイクロ流体デバイスを保持することが可能であり得る。あるいは、又はそれに加えて、移送ステージは2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上のマイクロ流体デバイスを保持することが可能であり得る。
【0110】
システムは、処理ユニットを含むことができる。処理ユニットは、空気圧モジュール、真空モジュール、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。処理ユニットは、複数のパーティション又はチャンバ内で核酸分子を増幅するように構成され得る。処理ユニットは、マイクロ流体デバイスの入口ポートと流体連通するように構成され得る。処理ユニットは、複数の入口ポートに接続できる複数の接続点を有し得る。処理ユニットは、一度にチャンバの単一のアレイ、又は並行してチャンバの複数のアレイを充填、再充填、かつ分配することが可能であり得る。処理ユニットは、真空モジュールと組み合わされた空気圧モジュールであってもよい。処理ユニットは、加圧ガス抜き又は脱気のためにマイクロ流体デバイスに増加した圧力を提供し得るか、又はマイクロ流体デバイスに真空を提供し得る。
【0111】
システムは、熱ユニットを更に備えることができる。熱モジュールは、マイクロ流体デバイスのチャンバと熱連通するように構成され得る。熱ユニットは、チャンバの単一のアレイの温度を制御するように、核酸分子の熱変成を可能にするためにチャンバの複数のアレイの温度を制御するように構成され得る。チャンバのアレイは、熱モジュールによって個別に位置指定可能であり得る。例えば、熱モジュールは、チャンバの全てのアレイにわたって同じ熱的プログラムを実行するか、又はチャンバの異なるアレイに対して異なる熱的プログラムを実行し得る。熱ユニットは、マイクロ流体デバイス又はマイクロ流体デバイスのチャンバと熱的連通することができる。熱ユニットは、マイクロ流体デバイスを加熱又は冷却することができる。マイクロ流体デバイスの1つ以上の表面は、熱ユニットと直接的に接触することができる。あるいは、又はそれに加えて、熱伝導性材料は、熱モジュールとマイクロ流体デバイスとの間に配設され得る。熱ユニットは、変動が約2℃、1.5℃、1℃、0.9℃、0.8℃、0.7℃、0.6℃、0.5℃、0.4℃、0.3℃、0.2℃、0.1℃、又はそれ以下になるように、マイクロ流体デバイスの表面全体にわたる温度を維持することができる。熱ユニットは、温度設定点の約±0.5℃以内、0.4℃以内、0.3℃以内、0.2℃以内、0.1℃以内、0.05℃以内、又はより近いように、マイクロ流体デバイスの表面の温度を維持することができる。
【0112】
システムは、検出ユニットを更に含むことができる。検出モジュールは、電子検出又は光学検出を提供し得る。一例では、検出ユニットは、光学検出を提供する光学ユニットである。光学ユニットは、複数の波長の光を放射かつ検出するように構成され得る。発光波長は、使用される指示薬及び増幅プローブの励起波長に対応し得る。放射される光は、約450nm、500nm、525nm、550nm、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、700nm、又はそれらの任意の組み合わせの最大強度を有する波長を含み得る。検出される光は、約500nm、525nm、550nm、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、700nm、又はそれらの任意の組み合わせの最大強度を有する波長を含み得る。光学ユニットは、1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上よりも多い波長の光を放射するように構成され得る。光学ユニットは、1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上よりも多い波長の光を検出するように構成され得る。1つの放射された光の波長は、指示薬分子の励起波長に対応し得る。別の放射された光の波長は、増幅プローブの励起波長に対応し得る。1つの検出された光の波長は、指示薬分子の発光波長に対応し得る。別の検出された光の波長は、チャンバ内の反応を検出するために使用される増幅プローブに対応し得る。光学ユニットは、チャンバのアレイのセクションをイメージングするように構成され得る。あるいは、又はそれに加えて、光学ユニットは、チャンバのアレイ全体を単一の画像で画像化し得る。一例では、光学ユニットは、デバイスのビデオを撮影するように構成されている。
【0113】
システムは、ロボットアームを更に含むことができる。ロボットアームは、マイクロ流体デバイスの位置を移動、変更、又は構成することができる。あるいは、又はそれに加えて、ロボットアームは、システムの他の構成要素(例えば、処理ユニット又は検出ユニット)を配置構成又は移動させてもよい。検出ユニットは、カメラ(例えば、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)カメラ)及びフィルタキューブを含み得る。フィルタキューブは、励起光の波長又はカメラによって検出される光の波長を変更又は修正することができる。処理ユニットは、マニホールド(例えば、空気圧マニホールド)又は1つ以上のポンプを備えることができる。マニホールドは、マニホールドがマイクロ流体デバイスに接触しないように直立位置にあり得る。直立位置は、マイクロ流体デバイスを装填又はイメージングするときに使用できる。マニホールドは、マニホールドがマイクロ流体デバイスと接触するように下向き位置にあり得る。マニホールドは、流体(例えば、試料及び試薬)をマイクロ流体デバイスに装填するために使用され得る。マニホールドは、マイクロ流体デバイスに圧力を加えて、デバイスを適所に保持するか、又は使用中の反り、曲がり、若しくは他の応力を防止することができる。一例では、マニホールドは下向きの圧力を加え、熱ユニットに対してマイクロ流体デバイスを保持する。
【0114】
システムは、1つ以上のコンピュータプロセッサを更に含むことができる。1つ以上のコンピュータプロセッサは、処理ユニット、ホルダ、熱ユニット、検出ユニット、ロボットアーム、又はそれらの任意の組み合わせに動作可能に結合され得る。一例では、1つ以上のコンピュータプロセッサは、処理ユニットに動作可能に結合されている。1つ以上のコンピュータプロセッサは、処理ユニットに、核酸分子の分配、核酸分子の増幅、核酸分子の変性、又はそれらの任意の組み合わせを指示するように、個別に又は集合的にプログラムすることができる。1つ以上のコンピュータプロセッサは、核酸分子の変性を示すシグナルを収集するように検出ユニットに指示するように、個別に又は集合的にプログラムするか又は別様に構成することができる。1つ以上のコンピュータプロセッサは、核酸分子の変性プロファイルの生成、分析物を同定又は定量化するための変性プロファイルの使用、又はそれらの任意の組み合わせを行うように、個別に又は集合的にプログラムするか又は別様に構成することができる。
【0115】
コンピュータシステム
本開示は、本開示の方法を実施するようにプログラムされたコンピュータシステムを提供する。
図6は、分析物を分析するために、本明細書の他の箇所に記載された方法を実施するようにプログラムされているか又は別様に構成されているコンピュータシステム601を示す。コンピュータシステム601は、本開示の分析物の処理及び検出の様々な態様、例えば、分析物を結合試薬と接触させること、核酸分子を変性させること、核酸変性に関連するシグナルを検出すること、又は分析物を同定若しくは定量化するためにシグナルを処理することなどについて調節することができる。コンピュータシステム601は、ユーザの電子デバイス、又は電子デバイスに対して遠隔に位置するコンピュータシステムであり得る。電子デバイスは、移動式電子デバイスであり得る。
【0116】
コンピュータシステム601は、中央処理装置(central processing unit、CPU、本明細書では「プロセッサ」及び「コンピュータプロセッサ」ともいう)605を含み、中央処理装置605は、シングルコア若しくはマルチコアプロセッサ、又は並列処理のための複数のプロセッサであり得る。コンピュータシステム601はまた、メモリ若しくはメモリ場所610(例えば、ランダムアクセスメモリ、読み取り専用メモリ、フラッシュメモリ)、電子記憶ユニット615(例えば、ハードディスク)、1つ以上の他のシステムと通信するための通信インターフェース620(例えば、ネットワークアダプタ)、並びにキャッシュ、他のメモリ、データ記憶デバイス、及び/又は電子ディスプレイアダプタなどの周辺デバイス625を含む。メモリ610、記憶ユニット615、インターフェース620、及び周辺デバイス625は、マザーボードなどの通信バス(実線)を介してCPU605と通信している。記憶ユニット615は、データを格納するためのデータ記憶ユニット(又はデータリポジトリ)であり得る。コンピュータシステム601は、通信インターフェース620の助けを借りて、コンピュータネットワーク(「ネットワーク」)630に動作可能に結合され得る。ネットワーク630は、インターネット、インターネット若しくはエクストラネット、又はインターネットと通信するイントラネット若しくはエクストラネットであり得る。ネットワーク630は、場合によっては、電気通信又はデータネットワークである。ネットワーク630は、クラウドコンピューティングなどの分散コンピューティングを可能にすることができる1つ以上のコンピュータサーバを含むことができる。ネットワーク630は、場合によっては、コンピュータシステム601の助けを借りて、ピアツーピアネットワークを実施することができ、これにより、コンピュータシステム601に結合されているデバイスがクライアント又はサーバとして動作することが可能になり得る。
【0117】
CPU605は、プログラム又はソフトウェアで具体化することができる一連の機械可読命令を実行することができる。命令は、メモリ610などのメモリ場所に格納され得る。命令は、CPU605に向けられ得、それによって、その後、本開示の方法を実施するようにCPU605をプログラム又は他の方法で構成することができる。CPU605によって実行される動作の例には、フェッチ、デコード、実行、及びライトバックが含まれ得る。
【0118】
CPU605は、集積回路などの回路の一部であり得る。システム601の1つ以上の他の構成要素を回路に含めることができる。場合によっては、回路は特定用途向け集積回路(ASIC)である。
【0119】
記憶ユニット615は、ドライバ、ライブラリ、及び保存されたプログラムなどのファイルを格納することができる。記憶ユニット615は、ユーザデータ、例えば、ユーザプリファレンス及びユーザプログラムを格納することができる。コンピュータシステム601は、場合によっては、イントラネット又はインターネットを介してコンピュータシステム601と通信しているリモートサーバ上に位置するなど、コンピュータシステム601の外部にある1つ以上の追加のデータ記憶ユニットを含むことができる。
【0120】
コンピュータシステム601は、ネットワーク630を介して1つ以上のリモートコンピュータシステムと通信することができる。例えば、コンピュータシステム601は、ユーザのリモートコンピュータシステム(例えば、携帯電話又はラップトップ)と通信することができる。リモートコンピュータシステムの例には、パーソナルコンピュータ(例えば、ポータブルPC)、スレート若しくはタブレットPC(例えば、Apple(登録商標)iPad、Samsung(登録商標)Galaxy Tab)、電話、スマートフォン(例えば、Apple(登録商標)iPhone、Android対応デバイス、Blackberry(登録商標))、又はパーソナルデジタルアシスタントが含まれる。ユーザは、ネットワーク630を介してコンピュータシステム601にアクセスすることができる。
【0121】
本明細書に記載の方法は、例えば、メモリ610又は電子記憶ユニット615などのコンピュータシステム601の電子的記憶場所に格納された機械(例えば、コンピュータプロセッサ)実行可能コードによって実施することができる。機械実行可能又は機械読み取り可能コードは、ソフトウェアの形式で提供できる。使用中、コードはプロセッサ605によって実行できる。場合によっては、コードは、記憶ユニット615から検索することができ、プロセッサ605による容易なアクセスのためにメモリ610に保存することができる。状況によっては、電子記憶ユニット615を除外することができ、機械実行可能命令がメモリ610上に保存されている。
【0122】
コードは、コードを実行するように適合されたプロセッサを有する機械で使用するために事前にコンパイルかつ構成することができるか、又は実行時にコンパイルすることができる。コードは、コードを事前コンパイル済み又はコンパイル済みの様式で実行できるように選択できるプログラミング言語で提供できる。
【0123】
コンピュータシステム601など、本明細書で提供されるシステム及び方法の態様は、プログラミングで具体化することができる。技術の様々な態様は、典型的には、機械(又はプロセッサ)実行可能コード又は機械可読媒体のタイプで実行若しくは具体化される関連データの形式の「製品」又は「物品」と考えられ得る。機械実行可能コードは、メモリ(例えば、読み取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)、又はハードディスクなどの電子記憶ユニットに格納できる。「記憶」タイプの媒体は、いかなる時にもソフトウェアプログラミングに対して非一時的な記憶装置を提供し得る、様々な半導体メモリ、テープドライブ、ディスクドライブなどの、コンピュータ、プロセッサなどの有形メモリ、又はそれらの関連するモジュールのいずれか又は全てを含むことができる。ソフトウェアの全部又は一部分は、時には、インターネット又は様々な他の電気通信ネットワークを介して通信される場合がある。そのような通信は、例えば、あるコンピュータ又はプロセッサから別のコンピュータへの、例えば、管理サーバ又はホストコンピュータからアプリケーションサーバのコンピュータプラットフォームへの、ソフトウェアのロードを可能にし得る。したがって、ソフトウェア要素を搭載し得る別のタイプの媒体には、有線及び光地上通信線ネットワークを通して、並びに様々なエアリンク上で、ローカルデバイス間の物理インターフェース全体に使用されるような、光波、電波、及び電磁波が含まれる。有線若しくは無線リンク、又は光リンクなどの、そのような波を運ぶ物理要素はまた、ソフトウェアを搭載する媒体とみなされ得る。本明細書で使用される場合、非一時的で有形の「記憶」媒体に制限されない限り、コンピュータ又は機械「可読媒体」などの用語は、実行のためのプロセッサに命令を提供することに関与する任意の媒体を指す。
【0124】
したがって、コンピュータ実行可能コードなどの機械可読媒体は、有形記憶媒体、搬送波媒体、又は物理的伝送媒体を含むがこれらに限定されない、多くの形態をとり得る。不揮発性記憶媒体は、例えば、図面に示すデータベースなどを実装するために使用され得るものなど、任意のコンピュータなどの記憶デバイスのうちのいずれかなどの光ディスク又は磁気ディスクを含む。揮発性記憶媒体には、そのようなコンピュータプラットフォームのメインメモリなどのダイナミックメモリが含まれる。有形伝送媒体は、同軸ケーブル、コンピュータシステム内のバスを備えるワイヤを含む、銅線、及び光ファイバが含まれる。搬送波伝送媒体は、無線周波(radio frequency、RF)及び赤外線(infrared、IR)データ通信中に生成されたものなどの、電気シグナル若しくは電磁気シグナル、又は音波若しくは光波の形態をとり得る。そのため、一般的な形態のコンピュータ可読媒体には、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD-ROM、DVD若しくはDVD-ROM、任意の他の光媒体、パンチカード紙テープ、孔のパターンを有する任意の他の物理的記憶媒体、RAM、ROM、PROM及びEPROM、FLASH-EPROM、任意の他のメモリチップ若しくはカートリッジ、データ若しくは命令を運ぶ搬送波、そのような搬送波を運ぶケーブル若しくはリンク、又はコンピュータがそこからプログラミングコード若しくはデータを読み取る任意の他の媒体が含まれる。コンピュータ可読媒体のこれらの形態の多くは、1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを、実行のためにプロセッサに搬送することに関与し得る。
【0125】
コンピュータシステム601は、例えば、システム動作パラメータ、システム状態、又は分析結果を提供するためのユーザインターフェース(UI)640を備える電子ディスプレイ635を含むか、又はそれと通信することができる。UIの例には、グラフィカルユーザインターフェース(graphical user interface、GUI)及びwebベースのユーザインターフェースが含まれるが、これらに限定されない。
【0126】
本開示の方法及びシステムは、1つ以上のアルゴリズムによって実施することができる。アルゴリズムは、中央処理装置605による実行時にソフトウェアによって実施することができる。アルゴリズムは、例えば、変性シグナルを処理して、分析物の同定又は定量化を提供することができる。
【実施例】
【0127】
実施例1:インターロイキン6標準曲線
一例では、
図9に示すように、タンパク質(例えば、インターロイキン6)を定量化して、その後のタンパク質の定量化に有用な標準曲線を作成することができる。0~1000ピコグラム/ミリリットル(pg/mL)の範囲の選択された量のタンパク質(例えば、インターロイキン6)を含有する試料を、ssDNA抗体結合試薬、スプリンターオリゴ、PLA及びdPCR試薬のマスターミックス、並びにリガーゼと混合して、PLA反応混合物を作製した。PLA反応を行い、1μLの各試料をdPCRサーモサイクル及び分析のためにマルチウェルプレートに充填した。コピー数/マイクロリットル単位で出力された得られた濃度をインターロイキン6の量の関数としてプロットし、
図9に示されるような標準曲線を作成した。出力された濃度値は、1.23cp/μL~4078.8cp/μLの範囲であった。グラフデータの線形性を改善するために、インターロイキン6を有していない試料から決定されるバックグラウンドシグナルを、インターロイキン6含有試料のシグナルから減算して、
図10に示されるような別の標準曲線を作成した。このアッセイでは、正規化された標準曲線の線形範囲内で、1mLあたりわずか320アトグラムのインターロイキン6を検出することができた。
【0128】
実施例2:トロポニン標準曲線
別の例では、
図11に示すように、トロポニンタンパク質を用いて、タンパク質の定量化のための標準曲線を作成した。0~5000pg/mLの範囲の選択された量のトロポニンを含有する試料を、ssDNA抗体結合試薬、スプリンターオリゴ、PLA及びdPCR試薬のマスターミックス、並びにリガーゼと混合して、PLA反応混合物を作製した。PLA反応を起こさせ、1μLの各試料をdPCRサーモサイクル及び分析のためにマルチウェルプレートに充填した。コピー数/マイクロリットル単位で出力された得られた濃度を、選択されたトロポニン量に対してプロットし、
図11に示されるような標準曲線を作成した。出力された濃度値は、5.35cp/μL~22948cp/μLの範囲であった。このアッセイでは、正規化された標準曲線の線形範囲内で、1mLあたりわずか1.6ピコグラムのトロポニンを検出することができた。前述の実施例の両方において、PLAは、qPCRワークフローの上流の分析物検出のための有効な方法であり、分析物の定量化に適していることが示された。
【0129】
本発明の好ましい実施形態が本明細書において示され、記載されているが、かかる実施形態が例としてのみ提供されることは、当業者には明らかであろう。本発明が、本明細書内で提供される特定の実施例によって限定されることを意図するものではない。本発明は、前述の明細書を参照して説明されてきたが、本明細書の実施形態の説明及び図解は、限定的な意味で解釈されることを意味するものではない。多くの変化形、変更、及び置換が、本発明から逸脱することなく、当業者に想起されるであろう。更に、本発明の全ての態様は、様々な条件及び変数に依存する、本明細書に記載の特定の描写、構成、又は相対的な比率に限定されないことを理解されたい。本明細書に記載の本発明の実施形態に対する様々な代替案が、本発明を実施することにおいて採用され得ることを理解されたい。したがって、本発明は、そのような代替案、修正、変化形、又は等価物も網羅するものと想定される。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲の範囲内の方法及び構造、並びにそれらの等価物が、それによって網羅されることが意図される。
【国際調査報告】