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特表2024-502044センス・サプレッサートランスファーRNA組成物ならびに関連する用途及び機能
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】センス・サプレッサートランスファーRNA組成物ならびに関連する用途及び機能
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240110BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20240110BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240110BHJP
【FI】
C12N15/113 110
C12N15/86 Z ZNA
A61P35/00
A61K31/7088
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539999
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 US2021065508
(87)【国際公開番号】W WO2022147120
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/132,932
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/151,416
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/151,436
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504315680
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ アイオワ リサーチ ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アハーン, クリストファー
【テーマコード(参考)】
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
本発明は、少なくとも部分的に、アクセプターステム、及び非同族トリプレットコドンを含むアンチコドンアームを含む、センス・サプレッサートランスファーRNA(sstRNA)、ならびにその使用方法に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセプターステム、及び非同族コドンに特異的なアンチコドンを含む、センス・サプレッサートランスファーRNA(sstRNA)。
【請求項2】
前記アンチコドンが、ロイシンコドンに特異的である、請求項1に記載のsstRNA。
【請求項3】
前記アクセプターステムが、プロリンに特異的である、請求項2に記載のsstRNA。
【請求項4】
前記sstRNAが、配列番号3及び4に記載の配列にコードされる、請求項3に記載のsstRNA。
【請求項5】
前記アンチコドンが、プロリンコドンに特異的である、請求項1に記載のsstRNA。
【請求項6】
前記アクセプターステムが、ロイシンに特異的である、請求項5に記載のsstRNA。
【請求項7】
前記sstRNAが、配列番号1、2、及び5~13に記載の配列にコードされる、請求項6に記載のsstRNA。
【請求項8】
前記アクセプターステムが、イソロイシンに特異的である、請求項5に記載のsstRNA。
【請求項9】
前記sstRNAが、配列番号14及び15に記載の配列にコードされる、請求項8に記載のsstRNA。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも1つのsstRNA、任意に、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも2つまたは3つのsstRNAをコードする、オリゴヌクレオチド。
【請求項11】
前記オリゴヌクレオチドの全長が、150ヌクレオチドまたは300ヌクレオチド未満である、請求項10に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
前記オリゴヌクレオチドが、cDNAなどのDNAである、請求項11に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
前記オリゴヌクレオチドが、RNAである、請求項11に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
プロモーター、及び、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも1つのsstRNA、任意に、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも2つもしくは3つのsstRNAをコードする核酸、または請求項10~13のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドを含む、発現カセット。
【請求項15】
さらに、ターミネーターを含む、請求項14に記載の発現カセット。
【請求項16】
配列番号16~26に記載のヌクレオチド配列を含み、任意に、配列番号16~26に記載の少なくとも2つまたは3つの異なるヌクレオチド配列を含む、発現カセット。
【請求項17】
請求項10~13のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド、または請求項14~16のいずれか1項に記載の発現カセットを含む、ベクター。
【請求項18】
前記ベクターが、ウイルスベクターまたはプラスミドベクターである、請求項17に記載のベクター。
【請求項19】
組成物であって、
請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも1つのsstRNA、任意に、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも2つもしくは3つのsstRNA、請求項10~13のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項14~16いずれか1項に記載の発現カセット、または請求項17もしくは18に記載のベクター、及び薬学的に許容される担体
を含む、前記組成物。
【請求項20】
前記薬学的に許容される担体が、ナノ粒子などの粒子である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記粒子が、リポソームまたは脂質ナノ粒子である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも1つのsstRNA、任意に、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも2つもしくは3つのsstRNA、請求項10~13のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項14~16のいずれか1項に記載の発現カセット、請求項17もしくは18に記載のベクター、または請求項19~21のいずれか1項に記載の組成物、を含む細胞。
【請求項23】
タンパク質の発現または機能を改変または破壊する方法であって、細胞のタンパク質発現または機能を破壊するのに有効な量の、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも1つのsstRNA、任意に、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも2つもしくは3つのsstRNA、請求項10~13のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項14~16のいずれか1項に記載の発現カセット、請求項17もしくは18に記載のベクター、または請求項19~21のいずれか1項に記載の組成物を、前記細胞に送達することを含む、前記方法。
【請求項24】
細胞を死滅させる方法であって、細胞を死滅させる有効な量の、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも1つのsstRNA、任意に、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも2つもしくは3つのsstRNA、請求項10~13のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項14~16のいずれか1項に記載の発現カセット、請求項17もしくは18に記載のベクター、または請求項19~21のいずれか1項に記載の組成物と、前記細胞を接触させることを含む、前記方法。
【請求項25】
細胞の生存を低減させる方法であって、前記細胞の生存を低減させるのに有効な量の、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも1つのsstRNA、任意に、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも2つもしくは3つのsstRNA、請求項10~13のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項14~16のいずれか1項に記載の発現カセット、請求項17もしくは18に記載のベクター、または請求項19~21のいずれか1項に記載の組成物と、前記細胞を接触させることを含む、前記方法。
【請求項26】
細胞移動性を低減させる方法であって、前記細胞の移動性を低減させるのに有効な量の、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも1つのsstRNA、任意に、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも2つもしくは3つのsstRNA、請求項10~13のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項14~16のいずれか1項に記載の発現カセット、請求項17もしくは18に記載のベクター、または請求項19~21のいずれか1項に記載の組成物と、前記細胞を接触させることを含む、前記方法。
【請求項27】
免疫細胞を活性化させる方法であって、免疫細胞を活性化させるのに有効な量の、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも1つのsstRNA、任意に、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも2つもしくは3つのsstRNA、請求項10~13のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項14~16のいずれか1項に記載の発現カセット、請求項17もしくは18に記載のベクター、または請求項19~21のいずれか1項に記載の組成物と、前記細胞を接触させることを含む、前記方法。
【請求項28】
前記細胞が、in vitroである、請求項23~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞が、in vivoである、請求項23~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
過剰増殖性疾患または障害に罹患する対象を処置する方法であって、前記過剰増殖性疾患または障害を処置するのに有効な量の、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも1つのsstRNA、任意に、請求項1~9のいずれか1項に記載の少なくとも2つもしくは3つのsstRNA、請求項10~13のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチド、請求項14~16のいずれか1項に記載の発現カセット、請求項17もしくは18に記載のベクター、または請求項19~21のいずれか1項に記載の組成物を、前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項31】
前記過剰増殖性疾患または障害が、がんである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記がんが、メラノーマまたは乳癌、例えば、トリプルネガティブ乳癌である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも2つまたは3つのsstRNAが存在する場合、前記少なくとも2つまたは3つのsstRNAが、同じオリゴヌクレオチド、発現カセット、ベクター、または組成物中にある、請求項23~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも2つまたは3つのsstRNAが存在する場合、前記少なくとも2つまたは3つのsstRNAが、少なくとも2つまたは3つの異なるオリゴヌクレオチド、発現カセット、ベクター、または組成物中にある、請求項23~32のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2020年12月31日に出願された米国仮出願第63/132,932号、2021年2月19日に出願された米国仮出願第63/151,416号、及び2021年2月19日に出願された米国仮出願第63/151,436号に対する優先権を主張する。上記で参照された出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
DNA分子は、DNAポリマーを構成するヌクレオチド塩基の配列の形態で遺伝情報を保有する。4つのヌクレオチド塩基:アデニン、グアニン、シトシン、及びチミンのみが、DNAで利用される。本情報は、連続する3塩基のコドンの形態で、メッセンジャーRNA(mRNA)に転写され、次に、トランスファーRNA(tRNA)及びリボソームにより翻訳されてタンパク質が形成される。RNAでは、4つのヌクレオチド塩基:アデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルが利用される。遺伝コードは、トリプレットコドン及び特定のアミノ酸間の関係である。64の可能なコドントリプレットが、遺伝コードを形成し、3つの終止(「終結」または「ナンセンス」とも呼ばれる)コドンが、翻訳機序(細胞リボソーム)にシグナルを与えて、特定のコドンでのタンパク質産生を停止させる。他の61のコドントリプレット(「センスコドン」とも呼ばれる)は、20の標準アミノ酸のうちの1つに対応する。
【0003】
DNAは、リボソームにより翻訳され、DNAにより特別に提供される遺伝的指示に従って、各アミノ酸が1つずつ結合してポリペプチドが形成されるようになる。トランスファーRNAは、mRNAをリボソーム上のタンパク質に翻訳する。各tRNAは、mRNA上の相補コドンとハイブリダイズする「アンチコドン」領域を含有する。所定のアミノ酸を運搬するtRNAは、「荷電」tRNAと呼ばれる。tRNAが61のアミノ酸関連tRNA(または「センスtRNA」)の1つである場合、通常、そのアミノ酸は成長中のペプチドに結合するであろう。tRNAの構造遺伝子は、約72~90ヌクレオチド長であり、クローバーの葉の構造に折りたたまれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
驚くべきことに、tRNAが非同族コドンを認識し、ポリペプチド産生のための代替アミノ酸を運搬するようにtRNAを改変し得ることが判明している。これらのセンス・サプレッサーtRNAは、タンパク質の発現または機能の破壊をもたらし、且つ、細胞の生存を減少させ得るポリペプチド及びタンパク質のアミノ酸を切り替えるために使用することができる。
【0005】
従って、一態様では、アクセプターステム、及び非同族コドンに特異的なアンチコドンを含むセンス・サプレッサートランスファーRNA(sstRNA)が提供される。
【0006】
本明細書で提供されるsstRNAのいずれか1つの一実施形態では、アンチコドンは、任意の非同族コドンに特異的である。本明細書で提供されるそのようなsstRNAのいずれか1つの一実施形態では、アクセプターステムは、そのアンチコドンにコードされるものとは異なる任意のアミノ酸に特異的である。
【0007】
本明細書で提供されるsstRNAのいずれか1つの一実施形態では、アンチコドンは、ロイシンコドンに特異的である。本明細書で提供されるそのようなsstRNAのいずれか1つの一実施形態では、アクセプターステムは、プロリンに特異的であり、ポリペプチドまたはタンパク質の産生においてロイシンをプロリンと置換し得る。本明細書で提供されるそのようなsstRNAのいずれか1つの一実施形態では、sstRNAは、配列番号3及び4に示される配列にコードされる。
【0008】
本明細書で提供されるsstRNAのいずれか1つの一実施形態では、アンチコドンは、プロリンコドンに特異的である。本明細書で提供されるそのようなsstRNAのいずれか1つの一実施形態では、アクセプターステムは、ロイシンに特異的であり、ポリペプチドまたはタンパク質の産生においてプロリンをロイシンと置換し得る。本明細書で提供されるそのようなsstRNAのいずれか1つの一実施形態では、sstRNAは、配列番号1、2、及び5~13に示される配列にコードされる。
【0009】
本明細書で提供されるsstRNAのいずれか1つの一実施形態では、アンチコドンは、プロリンコドンに特異的である。本明細書で提供されるそのようなsstRNAのいずれか1つの一実施形態では、アクセプターステムは、イソロイシンに特異的であり、ポリペプチドまたはタンパク質の産生においてプロリンをイソロイシンと置換し得る。本明細書で提供されるそのようなsstRNAのいずれか1つの一実施形態では、sstRNAは、配列番号14及び15に示される配列にコードされる。
【0010】
本明細書で提供されるsstRNAのいずれか1つの一実施形態では、アンチコドンは、ミスセンス変異を有するコドンに特異的である。本明細書で提供されるそのようなsstRNAのいずれか1つの一実施形態では、アクセプターステムは、ミスセンス変異を有するコドンにコードされるものとは異なる代替アミノ酸に特異的であり、ポリペプチドまたはタンパク質の産生のために代替アミノ酸を置換し得る。
【0011】
別の態様では、本明細書で提供されるsstRNAのいずれか1つをコードするオリゴヌクレオチドが提供される。本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドのいずれか1つの一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、全長が150または300ヌクレオチド未満である。本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドのいずれか1つの一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、DNAである。本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドのいずれか1つの一実施形態では、オリゴヌクレオチドは、RNAである。
【0012】
別の態様では、プロモーター、及び、本明細書で提供されるsstRNAのいずれか1つまたはオリゴヌクレオチドのいずれか1つをコードする核酸を含む発現カセットが提供される。本明細書で提供される発現カセットのいずれか1つの一実施形態では、発現カセットは、さらに、ターミネーターを含む。本明細書で提供される発現カセットのいずれか1つの一実施形態では、発現カセットは、配列番号16~26に記載のヌクレオチド配列を含む。
【0013】
別の態様では、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドまたは発現カセットのいずれか1つを含むベクターが提供される。一実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターまたはプラスミドベクターである。
【0014】
別の態様では、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドまたは発現カセットのいずれか1つは、cDNAの形態である。
【0015】
別の態様では、本明細書で提供されるsstRNAのいずれか1つ、オリゴヌクレオチドのいずれか1つ、発現カセットのいずれかいずれか1つ、またはベクターのいずれか1つ、及び薬学的に許容される担体を含む組成物が提供される。
【0016】
別の態様では、sstRNAのいずれか1つの少なくとも2つもしくは少なくとも3つ、オリゴヌクレオチドのいずれか1つの少なくとも2つもしくは少なくとも3つ、発現カセットのいずれか1つの少なくとも2つもしくは少なくとも3つを含む組成物、または本明細書で提供されるベクターのいずれか1つの少なくとも2つもしくは少なくとも3つ、及び薬学的に許容される担体が提供される。
【0017】
本明細書で提供される組成物または方法のいずれか1つの一実施形態では、少なくとも2つまたは3つのsstRNAが存在する場合、少なくとも2つまたは3つのsstRNAは、同じオリゴヌクレオチド、発現カセット、ベクター、または組成物中にある。本明細書で提供される組成物または方法のいずれか1つの別の実施形態では、少なくとも2つまたは3つのsstRNAが存在する場合、少なくとも2つまたは3つのsstRNAは、少なくとも2つまたは3つの異なるオリゴヌクレオチド、発現カセット、ベクター、または組成物中にある。
【0018】
別の態様では、本明細書で提供されるsstRNAのいずれか1つ、オリゴヌクレオチドのいずれか1つ、発現カセットのいずれか1つ、またはベクターのいずれか1つを含む細胞が提供される。
【0019】
別の態様では、sstRNAのいずれか1つの少なくとも2つもしくは少なくとも3つ、オリゴヌクレオチドのいずれか1つの少なくとも2つもしくは少なくとも3つ、発現カセットのいずれか1つの少なくとも2つもしくは少なくとも3つ、または本明細書で提供されるベクターのいずれか1つの少なくとも2つもしくは少なくとも3つが提供される。
【0020】
本明細書で提供される、sstRNAのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、オリゴヌクレオチドのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、発現カセットのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、ベクターのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、または組成物のいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)と、細胞を接触させることを含む方法が提供される。
【0021】
別の態様では、本明細書で提供される、sstRNAのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、オリゴヌクレオチドのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、発現カセットのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、ベクターのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、または組成物のいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)を送達することを含む、タンパク質の発現または機能を改変または破壊する方法が提供される。そのような方法のいずれか1つの一実施形態では、sstRNA(複数可)、オリゴヌクレオチド(複数可)、発現カセット(複数可)、ベクター(複数可)、または組成物(複数可)の量は、細胞内でタンパク質の発現または機能を改変または破壊するのに有効である。
【0022】
別の態様では、本明細書で提供される、sstRNAのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、オリゴヌクレオチドのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、発現カセットのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、ベクターのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、または組成物のいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)と、細胞を接触させることを含む、細胞を殺傷する方法が提供される。そのような方法のいずれか1つの一実施形態では、sstRNA(複数可)、オリゴヌクレオチド(複数可)、発現カセット(複数可)、ベクター(複数可)、または組成物(複数可)の量は、細胞を死滅させるのに有効である。そのような方法のいずれか1つの一実施形態では、細胞は、in vitroである。そのような方法のいずれか1つの一実施形態では、細胞は、in vivoである。
【0023】
別の態様では、本明細書で提供される、sstRNAのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、オリゴヌクレオチドのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、発現カセットのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、ベクターのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、または組成物のいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)と、細胞を接触させることを含む、細胞の生存を低減させる方法が提供される。別の態様では、本明細書で提供される、sstRNAのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、オリゴヌクレオチドのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、発現カセットのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、ベクターのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、または組成物のいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)と、細胞を接触させることを含む、細胞移動性を低減させる方法が提供される。
【0024】
本明細書で提供される、sstRNAのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、オリゴヌクレオチドのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、発現カセットのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、ベクターのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、または組成物のいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)と、細胞を接触させることを含む、免疫細胞を活性化させる方法が提供される。一実施形態では、細胞は、免疫応答が活性化されるように、免疫細胞または他の免疫成分と接触するようになるか、または接触させることができる。
【0025】
別の態様では、本明細書で提供される、sstRNAのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、オリゴヌクレオチドのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、発現カセットのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、ベクターのいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)、または組成物のいずれか1つ(例えば、少なくとも1つもしくは少なくとも2つもしくは少なくとも3つ)を対象に投与することを含む、過剰増殖性疾患または障害に罹患する対象を処置する方法が提供される。そのような方法のいずれか1つの一実施形態では、sstRNA(複数可)、オリゴヌクレオチド(複数可)、発現カセット(複数可)、ベクター(複数可)、または組成物(複数可)の量は、過剰増殖性疾患または障害を処置するのに有効である。そのような方法のいずれか1つの一実施形態では、過剰増殖性疾患または障害は、がんである。そのような方法のいずれか1つの一実施形態では、がんは、メラノーマまたは乳癌、例えば、トリプルネガティブ乳癌である。
【0026】
別の態様では、sstRNAを識別する方法が提供される。本明細書で提供される識別方法のいずれか1つの一実施形態では、sstRNAは、非同族コドンに特異的なアンチコドンを含むように選択または改変される。本明細書で提供される識別方法のいずれか1つの一実施形態では、sstRNAは、アンチコドンにコードされるアミノ酸とは異なるアミノ酸に特異的なアクセプターステムまたはアームを有するものである。本明細書で提供される識別方法のいずれか1つの一実施形態では、方法は、ハイスループットのクローニング及びスクリーニングを含むか、または、さらに含む。本明細書で提供される識別方法のいずれか1つの一実施形態では、方法は、トランスフェクションなどにより細胞内でsstRNAを発現させること、ならびに、タンパク質の発現もしくは機能の改変もしくは破壊、及び/または細胞死、死滅、生存、または移動性を評価することを含むか、または、さらに含む。本明細書で提供される識別方法のいずれか1つの一実施形態では、方法は、タンパク質の発現もしくは機能の改変もしくは破壊、及び/または細胞死、死滅、生存、もしくは移動性をもたらすsstRNAを選択することを含むか、または、さらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】遺伝コードの表を提供する。
図2】Tアーム、Dアーム、アンチコドンアーム、及びアクセプターステム(またはアーム)を含むtRNAの一般的な4アーム構造を示す。これらの領域は、全体を通して「ループ」と呼ばれることもある。
図3】GFP発現及び細胞分裂が急速に緩和されたSWTX2及びSWTX3の同時トランスフェクションの結果を示す。
図4】SWTX5及びSWTX7の同時トランスフェクションの結果を示す。
図5】GFPプラスミドライブラリースクリーニングのプレートマップを示す。
図6】24時間でのプレート/細胞の監視の結果を示す。
図7】44時間でのプレート/細胞の監視の結果を示す。
図8】個々のプラスミドを発現するHEK293-T細胞における44時間でのGFPの強度を示す。
図9】RPMI-7951細胞(メラノーマ細胞株)におけるトランスフェクションの30時間後のGFP発現を示す(GFP単独)。
図10】RPMI-7951細胞(メラノーマ細胞株)におけるトランスフェクションの30時間後のGFP発現を示す(GFP+sstRNA51)。
図11】HEK293T細胞における43時間でのGFP発現の結果を示す。
図12】SKMEL3細胞(メラノーマ細胞株)における43時間でのGFP発現の結果を示す。
図13】RPMI-7951細胞(P14)SWTX+/-tdtomato(1μg/ウェル)によるFugeneトランスフェクションの結果を示す(24時間でのFugene:DNA比2:1)。
図14】RPMI-7951細胞(P14)SWTX+/-Nluc WT(1μg/ウェル)によるFugeneトランスフェクションの結果を示す(24時間で2:1のFugene:DNA比)。
図15】RPMI-7951細胞(P14)SWTX+/-tdtomato(1μg/ウェル)によるFugeneトランスフェクションの結果を示す(48時間で2:1のFugene:DNA比)。
図16】RPMI-7951細胞(P14)SWTX+/-Nluc WT(1μg/ウェル)によるFugeneトランスフェクションの結果を示す(48時間で2:1のFugene:DNA比)。
図17】GFP、51、または51プラスミドのcDNAと、1:1.5、1:3、及び1:6の比のリポフェクタミン3000によるトランスフェクションの結果を示す。GFPシグナルが示される。
図18】リポフェクタミン3000(LP)のトランスフェクションの結果、SKMEL3メラノーマ株における、試薬対cDNAの比による概要を示す。各プロットは、同じ条件の2つの生物学的複製を示す。
図19-1】HCCトリプルネガティブ乳癌株の結果を示す。
図19-2】同上。
図20】示された条件におけるFugeneがトランスフェクトされたHEK293細胞を示す。48時間でスクラッチアッセイを実行し、GFP発現及び細胞密度をイメージングした。72時間での画像は、GFPでの移動性/生存を示すが、SWTX2+SWTX3条件を示さない。
図21】3つのsstRNAの組み合わせでの結果を示す。実験条件は、以下の通りであった:ゲルを底に達するまで150Vで実行;転写を4℃、250mAで2時間実施;1XのTBST中5%のミルク中、RTで30分間ブロック;最初に4℃でO/N(1:2000のブロッキング溶液中Sigma T2949);1XのTBSTで3回洗浄;次に、ブロッキング溶液(1:10000の抗ウサギIgG)中、室温で1時間;1XのTBSTで3回洗浄;ECLイメージング+「5ショット」。
【発明を実施するための形態】
【0028】
トランスファーRNAは、DNA及びRNAの「設計図」のデコーダーであり、細胞及び組織の構造を形成するタンパク質の作成を助ける。これらのRNA分子は、遺伝子コードの系統的な「再コーディング」を可能にし得るように改変または操作することができる。本明細書では、ポリペプチドまたはタンパク質産生において非同族アミノ酸を送達するために使用できるように、トランスファーRNA(tRNA)の部位特異的変化に基づくプラットフォーム技術が提供される。例えば、プロリンtRNAなどのtRNAは、ロイシンコドンなどの非同族コドンを認識してデコードするように操作することができる。この例では、tRNAは、ロイシンコドンを抑制し、ポリペプチドまたはタンパク質の産生中にそれをプロリンに置換するために使用することができる。そのような標的化された変化の生物学的影響は、ポリペプチドまたはタンパク質の産生に、発現及び/または機能の改変、低下などの悪影響があり得る。プロリンの場合、一例として、アミノ酸が「ねじれ」を促進するので、発現したポリペプチドまたはタンパク質は、一般に、形状が変化し、それにより、タンパク質の機能が無効になる。他のアミノ酸置換にも悪影響があり得る。いくつかの実施形態では、最終的な結果は、細胞死、死滅、生存、または移動性であり得る。従って、本明細書で提供されるtRNAは、細胞死、死滅、生存、または移動性に利点がある疾患または障害の処置に使用することができる。これらのセンス・サプレッサーtRNAは、タンパク質の発現及び/または機能、好ましくは、内因性タンパク質のタンパク質発現及び/または機能を改変または破壊するために使用することもできる。
【0029】
従って、本明細書では、代替アミノ酸をコードする目的で非同族センスコドンを抑制し得るセンス・サプレッサーtRNAが提供される。本明細書で使用される場合、「センス・サプレッサートランスファーRNA(sstRNA)」は、そのアンチコドンにコードされるアミノ酸とは異なるアミノ酸を運搬、送達、または供給し得るtRNAを指す。好ましくは、アミノ酸は、天然アミノ酸であるが、そのアンチコドンにコードされるアミノ酸とは異なる。換言すれば、sstRNAは、そのアンチコドンにコードされるアミノ酸を抑制し、その場所の別のアミノ酸を置換する。本明細書で使用される場合、そのアンチコドンにコードされるアミノ酸は、アンチコドンが特異的であるアミノ酸である。本明細書で使用される場合、アクセプターステムまたはアームのアミノ酸特異性を指す場合、「に特異的な」は、tRNAのアクセプターステムもしくはアームにより運搬、送達、もしくは供給されるか、またはそれがなされ得るアミノ酸を指す。
【0030】
tRNAのアンチコドンループ(RNAメッセージに結合する部分)を変更することにより、タンパク質のコドンの意味を切り替える能力を有する新規tRNA配列が識別されている。例えば、プロリンコドンをRNAとして構造的に異なるアミノ酸であるロイシンにデコードし得るか、ロイシンコドンをプロリンにデコードし得るか、またはプロリンコドンをイソロイシンにデコードし得るtRNA分子が生成されている。実際には、上述のコドンの遺伝的意味を切り替える。本技術は、トランスファーRNAコドン交換による置換の頭字語に基づいて「SWTX」tRNAとも呼ばれている。本明細書で提供されるtRNAは、本明細書では、センス・サプレッサーtRNAとも呼ばれる。この治療的アプローチは、「コードスイッチング」を利用する。コドン選択的なアミノ酸変換を施すことによるコードスイッチングにより、サイズ、形状、及び/または電荷の変化など、タンパク質改変への複数の経路が可能になる。そのような変化のいずれか1つ以上は、本明細書で提供される方法のうちのいずれか1つにおいて望ましい結果であり得る。系統的且つ選択的な側鎖変換により、細胞機能の麻痺、細胞分裂及び/または成長の停止などが引き起こされ得る。
【0031】
tRNAをコードするヌクレオチド配列は、合成で生成することができる。また、数百のヒトtRNAをコードするヌクレオチド配列が既知であり、一般に、Genbankなどの情報源を通して当業者らが入手可能である。tRNAの構造は、高度に保存されており、tRNAは、種を超えて機能的であり得る。従って、細菌または他の真核生物のtRNA配列も、本発明のtRNAの潜在的な供給源である。特定のtRNAが、例えば、所望の哺乳動物細胞において、要望通りに機能するかどうかの判定は、本明細書に記載のように、または本明細書で提供される教示の恩恵を受ける当業者には明らかとなる他の実験を通して確認することができる。
【0032】
現在の研究は、tRNA内のアンチコドン配列の分子編集を通してtRNAを変更し得ることを示す。このアプローチにより、センスコドンをリプログラミングして、非同族アミノ酸に置換することが可能になる。本明細書で提供される改変tRNAは、特定のアミノ酸へのコドンの「再編集」を可能にする。これらのtRNA分子は、サイズが小さい(例えば、tRNA+プロモーターは、わずか約300bp以下である)ので、迅速に発現に適する。本発明のさらなる利点は、システム全体がコンパクトであり得るので、容易な発現及び細胞送達を提供することである。要約すると、ヒト細胞などの細胞内で機能するtRNA遺伝子の構造成分を含むオリゴヌクレオチドを合成することができる。このオリゴヌクレオチドの配列は、既知の配列に基づいて設計され、tRNAのアンチコドン領域に置換が行われ、これにより、特定のtRNAが特定のコドンを認識するが、代替アミノ酸が送達される。
【0033】
tRNAは、Tアーム、Dアーム、アンチコドンアーム、及びアクセプターステムまたはアームを含む一般的な4アーム構造を有する(図2)。Tアームは、「Tステム」及び「TΨCループ」で構成される。本明細書で提供されるtRNAのいずれか1つは、この4アーム構造を含み得る。tRNAは、長さが約100ヌクレオチドであり、細胞に容易に導入することができる。
【0034】
特定の実施形態では、tRNAは、発現カセットにコードされる。tRNAコード化配列が内部プロモーター配列であるので、tRNA配列は、別の転写単位に含まれる必要はないが、別の転写単位で提供され得る。従って、本発明は、本明細書で提供されるtRNAをコードする配列を含む発現カセットも提供する。特定の実施形態では、発現カセットは、さらに、プロモーターを含む。特定の実施形態では、プロモーターは、調節可能なプロモーターである。特定の実施形態では、プロモーターは、構成的プロモーターである。送達されるべきtRNAをコードする配列の発現を引き起こすプロモーターは、既知の考慮事項、例えば、プロモーターに機能的に連結された核酸の発現レベル及びベクターが導入される細胞型、により選択される所望の任意のプロモーターであり得る。プロモーターは、外因性プロモーターまたは内因性プロモーターであり得る。
【0035】
本明細書で使用される「発現カセット」は、適切な細胞内で特定のヌクレオチド配列の発現を指示可能な核酸配列を意味し、これには、終結シグナルに作動可能に連結され得る目的のヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターが含まれ得る。目的のヌクレオチド配列を含む発現カセットは、キメラであってよい。発現カセットは、また、天然に存在するが、異種発現に有用な組み換え形態で得られているものであってよい。発現カセットにおけるヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーターまたは調節可能なプロモーターの制御下にあり得る。発現カセットは、ベクターであっても、ベクターに含有されていてもよい。
【0036】
「作動可能に連結された」は、配列のうちの1つの機能が別の配列により影響を受けるような、核酸配列の単一の核酸フラグメントへの会合を指す。例えば、2つの配列が、調節DNA配列がコードDNA配列の発現に影響を与えるように位置している(すなわち、コード配列または機能的RNAがプロモーターの転写制御下にある)場合、調節DNA配列は、RNAまたはポリペプチドをコードするDNA配列と「作動可能に連結している」または「会合している」と言われる。コード配列は、センス方向またはアンチセンス方向で調節配列に作動可能に連結され得る。
【0037】
本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸のポリマーを指し、全長タンパク質及びそのフラグメントを含む。従って、「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、多くの場合、本明細書で互換的に使用される。
【0038】
本方法は、細胞に核酸を送達する方法を提供する。細胞への投与は、単に細胞と接触させることを含む任意の手段により達成することができる。細胞との接触は、任意の所望の期間にあり得る。細胞には、ヒト、ならびに、他の大型(非齧歯動物)哺乳動物、例えば、霊長類、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、及びイヌの任意の所望の細胞が含まれ得る。本明細書で提供される対象のいずれか1つは、ヒトまたは他の哺乳動物であり得る。「哺乳動物」という用語には、ヒト、マウス、ラット、モルモット、サル、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、及びヒツジが含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
当該技術分野では、対象への送達及び導入のための好適な方法も提供または理解される。一実施形態では、医薬組成物は、治療有効量、すなわち、タンパク質の発現もしくは機能を破壊するのに十分な量、細胞死、死滅、生存、もしくは移動性をもたらすのに十分な量、または問題の病状の症状を低減もしくは改善するのに十分な量、あるいは所望の利益をもたらすのに十分な量の目的の核酸を生じる十分な遺伝物質を含むであろう。
【0040】
tRNAは、内在性tRNAシンテターゼなどのtRNAシンテターゼを用いて、有効量で細胞内に送達することができる。tRNAシンテターゼは、本発明に従ってtRNAが導入される細胞内に存在する場合、細胞にとって「内因性」であるとみなされる。当業者らに明らかなように、tRNAシンテターゼは、関連する種類の細胞内に天然に見出されるかどうかに関わらず、または、それを含有もしくは発現させるように、問題の特定の細胞が改変されるか、もしくは他の方法で人の手により操作されるかに関わらず、これらの目的のために内因性であるとみなされ得る。
【0041】
医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤も含有するであろう。そのような賦形剤には、過度の毒性なしに投与され得る任意の薬剤が含まれる。薬学的に許容される賦形剤には、ソルビトール、Tween(登録商標)80、ならびに液体、例えば、水、生理食塩水、グリセロール、及びエタノールが含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩、例えば、鉱酸塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩など、ならびに、有機酸の塩、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などを、それらに含むことができる。さらに、補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などは、そのようなビヒクル中に存在し得る。薬学的に許容される賦形剤についての完全な考察は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.,N.J.1991)で入手可能である。
【0042】
本明細書の教示を考慮すれば当業者らには明らかなように、提供されるtRNAの有効量は、実験的に決定され得る。投与は、処置の期間中、1回の用量で連続的または断続的に実施することができる。投与の最も効果的な手段及び投薬量を決定する方法は、治療薬の組成、標的細胞、及び処置される対象などにより変化し得る。単回投与及び複数回投与は、処置する内科医が選択した用量レベル及びパターンを用いて実施することができる。
【0043】
水、生理食塩水、人工CSF、または他の既知の物質を含むビヒクルを、本発明で用いることができる。製剤を調製するために、精製組成物を単離することができる。次に、組成物は、適切な濃度に調整され、使用のために包装され得る。
【0044】
「核酸」という用語は、糖、リン酸、及びプリンまたはピリミジンのいずれかの塩基を含有するモノマー(ヌクレオチド)から構成される、一本鎖または二本鎖の形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド及びそのポリマーを指す。特に限定しない限り、用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し且つ天然に存在するヌクレオチドと同様の様式で代謝される天然ヌクレオチドの既知のアナログを含有する核酸を包含する。
【0045】
「核酸フラグメント」は、所定の核酸分子の一部である。ポリヌクレオチド配列の「実質的同一性」という用語は、ポリヌクレオチドが、標準パラメーターを使用して記載されたアラインメントプログラムの1つを使用した参照配列と比較して、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、もしくは79%、または少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、もしくは89%、または少なくとも90%、91%、92%、93%、もしくは94%、または少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を含むことを意味する。
【0046】
外因性遺伝物質(例えば、sstRNAまたはSWTX tRNAをコードする)は、トランスフェクションなどの遺伝子導入法によりin vivoで細胞に導入することができる。様々な発現ベクター(すなわち、外因性遺伝物質の標的細胞への送達を促進する媒体)が当業者に既知である。本明細書で使用される場合、「細胞のトランスフェクション」は、取り込みによる細胞による新しい遺伝物質の獲得を指す。従って、トランスフェクションは、物理的または化学的方法を使用して細胞に核酸を挿入することを指す。いくつかのトランスフェクション手法は、当業者らに既知であるか、または別途本明細書に記載されている。
【0047】
本明細書で使用される場合、「外因性遺伝物質」は、天然または合成の核酸またはオリゴヌクレオチドを指す。これは、細胞内に天然には見出されないか、または、細胞内に自然に存在する場合、細胞により生物学的に有意なレベルで転写または発現されない。従って、「外因性遺伝物質」には、例えば、tRNAに転写することができる天然に存在しない核酸が含まれる。
【0048】
通常は、外因性遺伝物質には、新しい遺伝子の転写を制御するためのプロモーターとともに異種遺伝子が含まれ得る。プロモーターは、転写を開始するために必要な特定の塩基配列を特徴として有する。任意に、外因性遺伝物質は、さらに、所望の遺伝子転写活性を得るために必要な追加の配列(すなわち、エンハンサー)を含み得る。外因性遺伝物質は、コード配列の転写を可能にするためにプロモーター及びコード配列が作動可能に連結されるように、プロモーターのすぐ下流で細胞ゲノムに導入され得る。
【0049】
少なくとも1つのプロモーター及び少なくとも1つの異種核酸に加えて、発現ベクターは、発現ベクターでトランスフェクトされている細胞の選択を容易にするための選択遺伝子、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)を含んでもよい。あるいは、細胞は、2つ以上の発現ベクター、tRNAをコードする遺伝子(複数可)を含有する少なくとも1つのベクター、選択遺伝子を含有する他のベクターをトランスフェクトすることができる。過度の実験をすることなく、好適なプロモーター、エンハンサー、選択遺伝子、及び/またはシグナル配列(下記)の選択することは、当業者の範囲内であるとみなされる。
【0050】
本明細書で提供される実施形態のいずれか1つの実施形態では、sstRNA(複数可)は、cDNAの形態であり、そのまま、細胞に送達するか、またはこれと接触させることができる。
【0051】
本明細書で提供される実施形態のいずれか1つの実施形態では、sstRNA(複数可)は、所望のアミノ酸で荷電されているか、または荷電されておらず、そのまま、細胞に送達するか、または細胞と接触させることができる。
【0052】
一実施形態における本発明には、例えば、本発明のsstRNAまたはSWTX tRNAの投与を通して過剰増殖性疾患または障害を処置するための、本明細書で提供される方法または使用のいずれか1つのための組成物及び方法が含まれる。本明細書で使用される場合、「過剰増殖性疾患または障害」は、急速な分裂、実質的な過剰増殖などによる異常に高い細胞増殖速度が存在する任意の疾患または障害を指す。本開示の特定の実施形態は、哺乳動物などの対象における過剰増殖性疾患または障害を処置する方法を提供する。特定の実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。
【0053】
本開示の特定の実施形態は、例えば、ヒトなどの哺乳動物などの対象の過剰増殖性疾患または障害を処置するために、本明細書に提供される方法または使用のいずれか1つに有用な薬剤を調製する、本明細書に記載のsstRNA、オリゴヌクレオチド、発現カセット、ベクター、または組成物の使用を提供する。特定の実施形態では、治療法は、非腫瘍性または非悪性の過剰増殖性障害と共に、腫瘍、がん、及び腫瘍性組織を含む過剰増殖性疾患または障害の処置/管理に利用可能性を有する。特定の実施形態では、過剰増殖性疾患または障害は、がん、例えば、メラノーマまたは乳癌、例えば、トリプルネガティブ乳癌である。がんは、また、肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、子宮頸癌、子宮頸部/子宮癌、膀胱癌、または肝臓癌であってよい。
【0054】
がんは、耐性がんであるものであってよい。「耐性がん」とは、処置を受けているが、それにも関わらず、処置を受けても進行しているものである。一実施形態では、耐性癌は、化学療法、放射線、及び/または標的療法などの複数の処置にも関わらず、がんが進行する「汎耐性がん」である。
【0055】
本開示は、本明細書に記載のsstRNA、オリゴヌクレオチド、発現カセット、またはベクターを含む細胞も提供する。細胞は、ヒトなどの哺乳動物であってよい。一態様によれば、細胞発現系が提供される。発現系は、本明細書で提供される細胞及び発現カセットを含む。発現カセットには、プラスミド、ウイルスベクター、及び異種遺伝物質を細胞に送達するための他のビヒクルが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
細胞発現系は、生体内で形成することができる。さらに別の態様によれば、in vivoで対象を処置する方法が提供される。本方法は、sstRNA、オリゴヌクレオチド、発現カセット、ベクター、または組成物をin vivoで対象に導入することを含む。対象は、ヒトなどの哺乳動物であってよい。
【0057】
「処置する」及び「処置」という用語は、症状を緩和するか、または対象に何らかの利益を提供し得る治療的処置及び手段の両方を指し、その目的は、がんの増殖、発生、または広がりなどの望ましくない生理学的変化または障害を予防または減速させる(軽減する)ことである。本発明の目的上、有益なまたは所望の臨床結果には、検出可能または検出不可能に関わらず、症状の緩和、疾患の程度の軽減、病状の安定化(すなわち、悪化していない)、疾患の進行の遅延または減速、病状の改善または緩和、及び寛解(部分的または全てに関わらず)が含まれるが、これらに限定されない。「処置」は、処置を受けなかった場合、予想される生存期間と比較して生存期間を延長することも意味し得る。処置が必要な者らには、既に状態、疾患、または障害を患っている者らが含まれる。
【0058】
「治療的有効量」という語句は、本明細書に記載の、(i)特定の疾患、状態、もしくは障害を処置するか、(ii)特定の疾患、状態、もしくは障害の1つ以上の症状を軽減、改善、もしくは除去するか、または、(iii)特定の疾患、状態、もしくは障害の1つ以上の症状の発症を予防もしくは遅延させる、本発明の化合物の量を意味する。がんの場合、治療的有効量の薬剤は、がん細胞の数を低減させ;腫瘍サイズを低減させ;末梢臓器へのがん細胞の浸潤を抑制し(すなわち、ある程度減速し、好ましくは、停止し);腫瘍の転移を抑制し(すなわち、ある程度遅くし、好ましくは、停止し);及び/または、がんと関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減し得る。薬物が成長を阻止し、及び/または既存のがん細胞を死滅させ得る限り、それは、細胞増殖抑制性及び/または細胞傷害性であり得る。がん治療の場合、有効性は、例えば、疾患進行までの時間(TTP)を評価すること、及び/または奏効率(RR)を決定することにより測定することができる。
【0059】
「がん」及び「がん性」という用語は、通常、無秩序な細胞増殖を特徴とする哺乳動物の生理学的状態を指すか、または記載する。「腫瘍」は、1つ以上のがん性細胞を含む。がんの例としては、がん腫、悪性腫瘍などが挙げられるが、これらに限定されない。そのようながんのより具体的な例としては、メラノーマまたは乳癌、例えば、トリプルネガティブ乳癌が挙げられる。
【0060】
本発明の薬剤は、過剰増殖性疾患または障害(例えば、がん)と関連する少なくとも1つの症状の低減をもたらすために投与することができる。投与量は、選択された組成物、限定されないが、特定の疾患、体重、身体状態、及び哺乳動物の年齢を含む様々な要因に応じて変化するであろう。そのような因子は、動物モデルまたは当該技術分野で既知の他の試験システムを用いて、臨床医がより容易に決定することができる。
【0061】
本発明によるsstRNA、オリゴヌクレオチド、発現カセット、ベクター、または組成物の投与は、例えば、レシピエントの生理学的状態(投与の目的が治療的であるかどうかに関わらず)及び熟練専門医に既知の他の要因に応じて、連続的であっても断続的であってもよい。本発明の薬剤の投与は、予め選択された期間にわたって本質的に連続的であっても、一連の間隔をあけた投与であってもよい。
【0062】
本発明のsstRNA、オリゴヌクレオチド、発現カセット、ベクター、または組成物を有する1つ以上の好適な単位剤形を製剤化してもよく、様々な経路により投与することができる。本発明の薬剤を投与用に調製される場合、それらは、医薬製剤または単位剤形を形成するように、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わされてもよい。そのような製剤中の全活性成分には、製剤の0.1~99.9重量%が含まれる。「薬学的に許容される」は、製剤の他の成分と適合し、そのレシピエントに有害ではない担体、希釈剤、賦形剤、及び/または塩である。本発明の薬剤を含有する医薬製剤は、周知の容易に入手可能な成分を使用して、当該技術分野で既知の手順で調製することができる。本発明の薬剤は、投与に適した溶液として製剤化することもできる。本発明の薬剤の医薬製剤は、水性もしくは無水の溶液もしくは分散液の形態、あるいはエマルションもしくは懸濁液の形態をとることもできる。
【0063】
従って、薬剤は、投与用に製剤化され得、アンプル、プレフィルドシリンジ、少量注入容器、または防腐剤が添加された複数回用量容器の単位用量形態で提供され得る。活性成分は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルションのような形態をとり得、製剤化剤、例えば、懸濁剤、安定化剤、及び/または分散剤を含有し得る。あるいは、有効成分は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、無菌の発熱性物質不含水中に存在し得る。必要な有効量が、複数の投薬単位を投与することにより達成することができるので、各剤形の個々の用量に含まれる活性成分(複数可)の単位含有量は、それ自体は、特定の適応症または疾患を処置するための有効量を構成する必要がないことが理解されるであろう。さらに、有効量は、個別にまたは一連の投与で、剤形の用量未満を使用して達成され得る。
【0064】
本発明の医薬製剤は、任意の成分として、薬学的に許容される担体、希釈剤、可溶化剤、または乳化剤、及び当該技術分野で周知の種類の塩を含んでもよい。本発明の医薬製剤において有用な担体及び/または希釈剤の具体的な非限定例としては、水及び生理学的に許容される緩衝食塩水、例えば、pH7.0~8.0のリン酸緩衝食塩水及び水、が挙げられる。
【0065】
本明細書で提供される組成物のいずれも、トランスフェクションまたは形質導入などの遺伝子導入法を用いて、細胞に接触させるか、細胞に投与するか、または細胞に導入することができる。従って、本明細書で提供される組成物のいずれも、遺伝子送達ビヒクルと共に、または遺伝子送達ビヒクル中に含まれ得る。遺伝子送達ビヒクルは、当該技術分野で既知の任意の送達ビヒクルであり得、受容体及び/または脂質媒介トランスフェクションにより促進されるネイキッド核酸、ならびに多くのベクターのいずれかを含み得る。ベクターには、真核生物ベクター、原核生物ベクター(例えば、細菌ベクター)、及び、限定されないが、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター(ヒト及びブタを含む他のベクター)、ヘルペスウイルスベクター、エプスタインバーウイルスベクター、SV40ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、及びシュードタイプウイルスベクターを含むウイルスベクターが含まれる。
【0066】
「レトロウイルス」という用語は、複製サイクル中に逆転写酵素を利用するRNAウイルスに関して使用される。レトロウイルス科には、システルナウイルスA、オンコウイルスA、オンコウイルスB、オンコウイルスC、オンコウイルスD、レンチウイルス、及びスプマウイルスを含む、いくつかの属が含まれる。レトロウイルスは、様々な種に感染し、水平方向及び垂直方向の両方に感染し得る。
【0067】
本明細書で使用される場合、「レンチウイルス」という用語は、ゆっくりと進行性疾患を引き起こすレトロウイルスの群(または属)を指す。この群に含まれるウイルスには、HIV(ヒト免疫不全ウイルス、HIV1型及びHIV2型を含む)、ヒト後天性免疫不全症候群(AIDS)の病原体;ビスナ-マエディ(ヒツジに脳炎(ビスナ)または肺炎(マエディ)を引き起こす)、ヤギ関節炎・脳炎ウイルス(ヤギに免疫不全、関節炎、及び脳症を引き起こす);ウマ伝染性貧血ウイルス(馬に自己免疫性溶血性貧血及び脳症を引き起こす);ネコ免疫不全ウイルス(FIV)(ネコに免疫不全を引き起こす);ウシ免疫不全ウイルス(BIV)(ウシにリンパ節腫脹、リンパ球増加症、場合により、中枢神経系感染症を引き起こす);ならびに、サル免疫不全ウイルス(SIV)(亜ヒト霊長類に免疫不全や脳症を引き起こす)が含まれる。これらのウイルスが引き起こす疾患は、長い潜伏期間及び長引く経過を特徴とする。通常、ウイルスは、単球及びマクロファージに潜在的に感染し、そこから他の細胞に広がる。HIV、FIV、及びSIVは、容易に、Tリンパ球(すなわち、T細胞)にも感染する。
【0068】
一実施形態では、ウイルスベクターは、AAVベクターである。「AAV」ベクターは、アデノ随伴ウイルスを指し、天然に存在する野生型ウイルス自体またはその誘導体を指すために使用され得る。用語は、別途必要な場合を除き、全てのサブタイプ、血清型、及び偽型、ならびに、天然型及び組み換え型の両方を網羅する。本明細書で使用される場合、「血清型」という用語は、規定の抗血清とのカプシドタンパク質反応性に基づいて他のAAVにより識別され、他のAAVと区別されるAAVを指す。例えば、AAV-1~AAV-9及びAAVrh10の霊長類AAVの既知の8つの血清型がある。例えば、血清型AAV2は、AAV2のcap遺伝子からコードされるカプシドタンパク質と、同じAAV2血清型由来の5’及び3’ITR配列を含有するゲノムを含有するAAVを指すために使用される。本明細書で使用される場合、例えば、rAAV1は、同じ血清型由来のカプシドタンパク質及び5’-3’ITRの両方を有するAAVを指すために使用され得るか、または1つの血清型由来のカプシドタンパク質及び異なるAAV血清型由来の5’-3’ITR、例えば、AAV血清型2由来のカプシド及びAAV血清型5由来のITR、を有するAAVを指し得る。本明細書に示される各例では、ベクターの設計及び作製の記載は、カプシドの血清型及び5’-3’ITR配列について説明している。略語「rAAV」は、組み換えアデノ随伴ウイルスを指し、これは、組み換えAAVベクター(または「rAAVベクター」)とも呼ばれる。
【0069】
「AAVウイルス」または「AAVウイルス粒子」は、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質(好ましくは、野生型AAVの全てのカプシドタンパク質)及びカプシド化ポリヌクレオチドから構成されるウイルス粒子を指す。粒子が異種ポリヌクレオチド(すなわち、野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド、例えば、哺乳動物細胞に送達される導入遺伝子)を含む場合、それは、通常、「rAAV」と呼ばれる。
【0070】
一実施形態では、AAV発現ベクターは、少なくとも、転写の方向に作動可能に連結された構成要素として、転写開始領域、目的のDNA、及び転写終結領域を含む制御エレメントを提供するために、既知の手法を使用して構築される。制御要素は、哺乳動物細胞内で機能するように選択される。作動可能に連結された構成要素を含有する得られたコンストラクトは、機能的なAAV ITR配列と(5’及び3’で)隣接する。
【0071】
「アデノ随伴ウイルス逆方向末端反復」または「AAV ITR」は、DNA複製の起点として、及びウイルスのパッケージングシグナルとして、シスで一緒に機能する、AAVゲノムの各末端に見出される当該技術分野で認識されている領域を意味する。AAV ITRは、AAVrepコード領域とともに、隣接する2つのITR間に配置されたヌクレオチド配列の効率的な切除及びレスキュー、及び哺乳動物細胞ゲノムへの組み込みを提供する。
【0072】
AAV ITR領域のヌクレオチド配列は、既知である。本明細書で使用される「AAV ITR」は、示された野生型ヌクレオチド配列を有する必要はないが、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失、または置換により改変され得る。さらに、AAV ITRは、限定されないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV7などを含む、いくつかのAAV血清型のいずれかに由来し得る。さらに、AAVベクター内の選択されたヌクレオチド配列に隣接する5’及び3’ITRは、意図された、すなわち、宿主細胞ゲノムまたはベクターから目的の配列を切除及びレスキューすることを可能にするように、ならびに、AAVRep遺伝子産物が細胞内に存在する場合、レシピエント細胞のゲノムへの異種配列の組み込みを可能にするように、機能する限り、必ずしも、同じAAV血清型または単離物と同一またはそれに由来する必要はない。
【0073】
一実施形態では、AAV ITRは、限定されないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV7などを含むいくつかのAAV血清型のいずれかに由来し得る。さらに、AAV発現ベクター内の選択されたヌクレオチド配列に隣接する5’及び3’ITRは、意図された、すなわち、宿主細胞ゲノムまたはベクターから目的の配列を切除及びレスキューすることを可能にするように、ならびに、AAVRep遺伝子産物が細胞内に存在する場合、レシピエント細胞のゲノムへのDNA分子の組み込みを可能にするように、機能する限り、必ずしも、同じAAV血清型または単離物と同一またはそれに由来する必要はない。
【0074】
一実施形態では、AAVカプシドは、AAV2に由来し得る。AAVベクターでの使用に適したDNA分子は、サイズが約5キロベース(kb)未満、約4.5kb未満、約4kb未満、約3.5kb未満、約3kb未満、約2.5kb未満であり、当該技術分野で既知である。
【0075】
本明細書で使用される場合、「弱毒化ウイルス」という用語は、目的の対象の病原性が実質的に低減されるように改変されている任意のウイルス(例えば、弱毒化レンチウイルス)を指す。ウイルスは、臨床的観点から非病原性となる点まで弱毒化され得る。すなわち、ウイルスに曝露された対象は、対照対象と比較して病理レベルの統計的に有意な増加を示さない。
【0076】
本明細書で使用される場合、「パッケージングシグナル」または「パッケージング配列」という用語は、ウイルスまたはベクターの核酸のウイルスカプシドまたは粒子への挿入に必要な、または少なくともこれを促進する、ウイルスゲノムまたはベクター内に位置する配列を指す。「パッケージングシグナル」という用語は、便宜上、機能的なパッケージングシグナルに転写されるベクター配列を指すためにも使用される。パッケージングベクター及び導入遺伝子ベクターの差異は、パッケージングベクターでは、主要なパッケージングシグナルが不活化されており、導入遺伝子ベクターでは、主要なパッケージングシグナルが機能的であり得る。理想的には、いくつかの実施形態では、パッケージングベクターでは、全てのパッケージングシグナルが不活化され、導入遺伝子ベクターでは、全てのパッケージングシグナルが機能するであろう。しかし、ウイルス力価の最大化または相同組み換えの抑制など、相殺される考慮事項は、そのようなコンストラクトをより望ましくないものにし得る。
【0077】
本明細書で提供される組成物は、細胞と接触させるか、またはナノ粒子などの粒子内で対象に送達もしくは投与することができる。ナノ粒子などの粒子は、脂質ベースのナノ粒子(本明細書では脂質ナノ粒子とも呼ばれ、すなわち、構造を構成する材料の大部分が脂質であるナノ粒子である)、ウイルス様粒子(すなわち、主にウイルス構造タンパク質で構成されるが、感染性がない、もしくは感染力が低い粒子)、及び/またはナノ材料を組み合わせた粒子であり得るが、これらに限定されない。粒子は、限定されないが、回転楕円形、立方形、角錐形、楕円形、円筒形、環状形などを含む、様々な異なる形状であってよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子などの粒子は、1つ以上の脂質を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ナノ粒子などの粒子は、リポソームを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ナノ粒子などの粒子は、脂質二重層を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ナノ粒子などの粒子は、脂質単層を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ナノ粒子などの粒子は、ミセルを含んでもよい。
【0079】
ここで、本発明は、以下の非限定例により説明される。
【実施例
【0080】
実施例1
非同族トリプレットDNAコドンに特異的となるようにアンチコドンループが改変されているトランスファーRNA分子が生成されている。これらのSWTX(tRNA交換による置換)tRNAは、ヒト遺伝コード内のセンスコドンを抑制し得る(本明細書ではセンス・サプレッサーtRNA(sstRNA)とも呼ばれる)。
【0081】
要約すると、単一プラスミド設計を使用して、コドン交換tRNA及びGFPレポーターを発現させた。tRNAカセットは、上流のリーダー配列と、それに続く下流のターミネーターを含有する。HEK293細胞を以下のようにリバーストランスフェクトした。細胞を、解凍後少なくとも3日間毎日培養液中で継代し、70%のコンフルエントまで成長させた。プラスミドcDNAを、トランスフェクション試薬と混合し、96ウェルに添加し、続いて、10K/180ulの密度のHEK293細胞を添加した。次に、24時間及び48時間の時点で、細胞をGFP発現についてイメージングした。
【0082】
結果
代替アミノ酸を送達し得るSWTX tRNAまたはsstRNAが生成されている。例えば、SWTX2及びSWTS3は、プロリン(CCA)コドンにロイシンを配置するために、プロリントリプレットコドンをデコードする(小文字は、アンチコドントリプレットを示す)。換言すれば、ロイシンtRNAを再コードして、プロリン(CCA)コドンのロイシンをコードし、生成した。

SWTX2:
ACCAGAATGGCCGAGTGGTtAAGGCGTTGGACTtggGATCCAATGGATTCATATCCGCGTGGGTTCGAACCCCACTTCTGGTA(配列番号1)

SWTX3:
ACCGGGATGGCTGAGTGGTtAAGGCGTTGGACTtggGATCCAATGGACAGGTGTCCGCGTGGGTTCGAGCCCCACTCCCGGTA(配列番号2)
【0083】
これらのコンストラクトの同時トランスフェクションにより、GFP発現及び細胞分裂が急速に緩和された(図3)。一過性トランスフェクションによるSWTX2またはSWTX3 tRNAコンストラクトの共発現は、GFPの細胞産生を減少させ、結果として、急速で有害な生物活性を示す。SWTX5またはSWTX7 tRNAコンストラクトの共発現の結果も示される(図4)。
【0084】
実施例2
上記のように生成されたtRNAコンストラクト、ならびに得られるGFP強度に関してプラスミドで発現させた時にスクリーニングされたいくつかのtRNAコンストラクト(SWTX51及び52は、オールインワンのプラスミド設計を有する)に対するさらなる例(図5~8)は、以下の通りである:

Pro→Leu AAG(Leuを抑制してProに変換)
SWTX11:
GGCTCGTTGGTCTAGGGGTATGATTCTCGCTTaagGTGCGAGAGGtCCCGGGTTCAAATCCCGGACGAGCCC(配列番号3)

SWTX13:
GGCTCGTTGGTCTAGTGGTATGATTCTCGCTTaagGTGCGAGAGGtCCCGGGTTCAAATCCCGGACGAGCCC(配列番号4)

Leu→Pro AGG(Proを抑制してLeuに変換)
SWTX31:
GTCAGGATGGCCGAGTGGTctAAGGCGCCAGACTaggGTTCTGGTCTCCAATGGAGGCGTGGGTTCGAATCCCACTTCTGACA(配列番号5)

SWTX32:
GTCAGGATGGCCGAGTGGTctAAGGCGCCAGACTaggGTTCTGGTCTCCGTATGGAGGCGTGGGTTCGAATCCCACTTCTGACA(配列番号6)

SWTX33:
GTCAGGATGGCCGAGTGGTctAAGGCGCCAGACTaggGTTCTGGTCTCCGCATGGAGGCGTGGGTTCGAATCCCACTTCTGACA(配列番号7)

SWTX34:
ACCAGGATGGCCGAGTGGTtAAGGCGTTGGACTaggGATCCAATGGACATATGTCCGCGTGGGTTCGAACCCCACTCCTGGTA(配列番号8)

SWTX35:
ACCGGGATGGCCGAGTGGTtAAGGCGTTGGACTaggGATCCAATGGGCTGGTGCCCGCGTGGGTTCGAACCCCACTCTCGGTA(配列番号9)

SWTX36:
ACCAGAATGGCCGAGTGGTtAAGGCGTTGGACTaggGATCCAATGGATTCATATCCGCGTGGGTTCGAACCCCACTTCTGGTA(配列番号10)

Leu→Pro TGG(Proを抑制してLeuに変換)
SWTX50:
ACCAGGATGGCCGAGTGGTtAAGGCGTTGGACTtggGATCCAATGGACATATGTCCGCGTGGGTTCGAACCCCACTCCTGGTA(配列番号11)

SWTX51:ACCGGGATGGCCGAGTGGTtAAGGCGTTGGACTtggGATCCAATGGGCTGGTGCCCGCGTGGGTTCGAACCCCACTCTCGGTA(配列番号12)

SWTX52:
ACCAGAATGGCCGAGTGGTtAAGGCGTTGGACTtggGATCCAATGGATTCATATCCGCGTGGGTTCGAACCCCACTTCTGGTA(配列番号13)

Ile→Pro AGG(Proを抑制してIleに変換)
SWTX55:
GGCCGGTTAGCTCAGTTGGTtAGAGCGTGGTGCTaggAACGCCAAGGtCGCGGGTTCGATCCCCGTACTGGCCA(配列番号14)

SWTX57:
GGCCGGTTAGCTCAGTTGGTtAGAGCGTGGTGCTaggAACGCCAAGGtCGCGGGTTCGAACCCCGTACGGGCCA(配列番号15)
【0085】
使用されたプラスミド配列は、以下の通りである。

SWTX31 G0619 pFBAAVmcsCMVeGFPSV40pA
CTCGAGCAGATACACTGTCTTTGACACGTTGATGGATTAAGCGCTCCGGTTTTTCTGTGCTGAACCTCAGGGGACGCCGACACACGTACACGTCGTCAGGATGGCCGAGTGGTctAAGGCGCCAGACTaggGTTCTGGTCTCCAATGGAGGCGTGGGTTCGAATCCCACTTCTGACAGTCCTTTTTTTGTGCTACGGCGATTCTTGGAGAGCCAGCTGCGATCGCTAGGATCC(配列番号16)

SWTX32 G0619 pFBAAVmcsCMVeGFPSV40pA
CTCGAGCAGATACACTGTCTTTGACACGTTGATGGATTAAGCGCTCCGGTTTTTCTGTGCTGAACCTCAGGGGACGCCGACACACGTACACGTCGTCAGGATGGCCGAGTGGTctAAGGCGCCAGACTaggGTTCTGGTCTCCAATGGAGGCGTGGGTTCGAATCCCACTTCTGACAGTCCTTTTTTTGTGCTACGGCGATTCTTGGAGAGCCAGCTGCGATCGCTAGGATC(配列番号17)

SWTX33 G0619 pFBAAVmcsCMVeGFPSV40pA
CTCGAGCAGATACACTGTCTTTGACACGTTGATGGATTAAGCGCTCCGGTTTTTCTGTGCTGAACCTCAGGGGACGCCGACACACGTACACGTCGTCAGGATGGCCGAGTGGTctAAGGCGCCAGACTaggGTTCTGGTCTCCGTATGGAGGCGTGGGTTCGAATCCCACTTCTGACAGTCCTTTTTTTGTGCTACGGCGATTCTTGGAGAGCCAGCTGCGATCGCTAGGATCC(配列番号18)

SWTX34 G0619 pFBAAVmcsCMVeGFPSV40pA
CTCGAGCAGATACACTGTCTTTGACACGTTGATGGATTAAGCGCTCCGGTTTTTCTGTGCTGAACCTCAGGGGACGCCGACACACGTACACGTCGTCAGGATGGCCGAGTGGTctAAGGCGCCAGACTaggGTTCTGGTCTCCGCATGGAGGCGTGGGTTCGAATCCCACTTCTGACAGTCCTTTTTTTGTGCTACGGCGATTCTTGGAGAGCCAGCTGCGATCGCTAGGATCC(配列番号19)

SWTX35 G0619 pFBAAVmcsCMVeGFPSV40pA
CTCGAGCAGATACACTGTCTTTGACACGTTGATGGATTAAGCGCTCCGGTTTTTCTGTGCTGAACCTCAGGGGACGCCGACACACGTACACGTCACCAGGATGGCCGAGTGGTtAAGGCGTTGGACTaggGATCCAATGGACATATGTCCGCGTGGGTTCGAACCCCACTCCTGGTAGTCCTTTTTTTGTGCTACGGCGATTCTTGGAGAGCCAGCTGCGATCGCTAGGATCC(配列番号20)

SWTX36 G0619 pFBAAVmcsCMVeGFPSV40pA
CTCGAGCAGATACACTGTCTTTGACACGTTGATGGATTAAGCGCTCCGGTTTTTCTGTGCTGAACCTCAGGGGACGCCGACACACGTACACGTCACCGGGATGGCCGAGTGGTtAAGGCGTTGGACTaggGATCCAATGGGCTGGTGCCCGCGTGGGTTCGAACCCCACTCTCGGTAGTCCTTTTTTTGTGCTACGGCGATTCTTGGAGAGCCAGCTGCGATCGCTAGGATCC(配列番号21)

SWTX50 G0619 pFBAAVmcsCMVeGFPSV40pA
CTCGAGCAGATACACTGTCTTTGACACGTTGATGGATTAAGCGCTCCGGTTTTTCTGTGCTGAACCTCAGGGGACGCCGACACACGTACACGTCGTCAGGATGGCCGAGTGGTctAAGGCGCCAGACTtggGTTCTGGTCTCCGCATGGAGGCGTGGGTTCGAATCCCACTTCTGACAGTCCTTTTTTTGTGCTACGGCGATTCTTGGAGAGCCAGCTGCGATCGCTAGGATCC(配列番号22)

SWTX51 G0619 pFBAAVmcsCMVeGFPSV40pA
CTCGAGCAGATACACTGTCTTTGACACGTTGATGGATTAAGCGCTCCGGTTTTTCTGTGCTGAACCTCAGGGGACGCCGACACACGTACACGTCACCAGGATGGCCGAGTGGTtAAGGCGTTGGACTtggGATCCAATGGACATATGTCCGCGTGGGTTCGAACCCCACTCCTGGTAGTCCTTTTTTTGTGCTACGGCGATTCTTGGAGAGCCAGCTGCGATCGCTAGGATCC(配列番号23)

SWTX52 G0619 pFBAAVmcsCMVeGFPSV40pA
CTCGAGCAGATACACTGTCTTTGACACGTTGATGGATTAAGCGCTCCGGTTTTTCTGTGCTGAACCTCAGGGGACGCCGACACACGTACACGTCACCGGGATGGCCGAGTGGTtAAGGCGTTGGACTtggGATCCAATGGGCTGGTGCCCGCGTGGGTTCGAACCCCACTCTCGGTAGTCCTTTTTTTGTGCTACGGCGATTCTTGGAGAGCCAGCTGCGATCGCTAGGATCC(配列番号24)

SWTX55 G0619 pFBAAVmcsCMVeGFPSV40pA
CTCGAGCAGATACACTGTCTTTGACACGTTGATGGATTAAGCGCTCCGGTTTTTCTGTGCTGAACCTCAGGGGACGCCGACACACGTACACGTCGGCCGGTTAGCTCAGTTGGTtAGAGCGTGGCGCTaagAACGCCAAGGtCGCGGGTTCGATCCCCGTACGGGCCAGTCCTTTTTTTGTGCTACGGCGATTCTTGGAGAGCCAGCTGCGATCGCTAGGATCC(配列番号25)

SWTX57 G0619 pFBAAVmcsCMVeGFPSV40pA
CTCGAGCAGATACACTGTCTTTGACACGTTGATGGATTAAGCGCTCCGGTTTTTCTGTGCTGAACCTCAGGGGACGCCGACACACGTACACGTCGGCTGGTTAGCTCAGTTGGTtAGAGCGTGGTGCTaagAACGCCAAGGtCGCGGGTTCGATCCCCGTACTGGCCAGTCCTTTTTTTGTGCTACGGCGATTCTTGGAGAGCCAGCTGCGATCGCTAGGATCC(配列番号26)
【0086】
実施例3
多数の生成されたsstRNA(WT GFPまたはGFP+SWTX51またはSWTX52コンストラクト、SWTX51及び52は、オールインワンプラスミド設計を有する)も、以下の細胞株にトランスフェクトした(上記と同様のHEK293T、図8及び11)。
【0087】
SK-MEL-3:悪性メラノーマ、皮膚;転移部位:リンパ節に由来。この細胞株の基礎培地は、ATCC配合マッコイ5a改変培地(カタログ番号30-2007)であった。完全成長培地を作成するために、以下の構成成分:ウシ胎児血清を最終濃度15%まで基礎培地に添加した。リバーストランスフェクションを実施した。
【0088】
RPMI-7951:悪性メラノーマ、皮膚;転移部位:リンパ節に由来。この細胞株の基礎培地は、ATCC配合イーグル最小必須培地(MEM)(カタログ番号30-2003)であった。完全成長培地を作成するために、以下の構成成分:ウシ胎児血清を最終濃度10%まで基礎培地に添加した。トランスフェクション試薬としてFUGENEを使用した。
【0089】
結果は、SWTX51及びSWTX52がメラノーマ株におけるタンパク質産生を減少させることを示す(図9、10、及び12)。
【0090】
実施例4
両方のtRNAがGFPレポーターと同じプラスミドペイロード(すなわち、「シス」構成)にある、SWTX51及び52tRNAの「オールインワン」設計を使用して、GFP発現に対するtRNAカセットプロモーターの干渉の可能性を評価した。SWTX51及び52tRNAを、レポーターとは別の独自のプラスミド(SWTX2及びSWTX3と呼ばれる)で共発現させた。これは、「トランス」立体構造である。tdtomato(赤色蛍光タンパク質)及びナノルシフェラーゼの発現について、メラノーマ細胞株を使用して、SWTX2及びSWTX活性を評価した。SWTX2及びSWTX3は、tdtatato及びnanolucをうまくノックアウトした(図13及び14(24時間の結果)ならびに図15(48時間の結果)ならびに図16(24及び48時間の結果))。
【0091】
実施例5
tRNAがリポフェクタミン及びリバーストランスフェクションで送達された場合、GFPのtRNA媒介性ノックダウンが、RPMI-7951メラノーマ細胞で見られた。SWTX51及びSWTX52は、SKMELメラノーマ株におけるレポータータンパク質の機能/発現を減少させる。結果は、SK Mel3メラノーマ株及びHCCトリプルネガティブ細胞株で示される(図17~19)。SK Melでは、RPMI-7951及びHEKの比較が示され、一番上にWT GFPがあり、SWTX51及びSWTX52が続く。
【0092】
実施例6
2つのコンストラクト:SWTX2及びSWTX3の組み合わせである「tRNA単独」バージョンのSWTX51及び52を使用した。データは、宿主リボソームを同時に攻撃する2つのtRNAが、単一のコンストラクトよりも強力であり得ることを示唆する。48時間までに(図20)、細胞死は、SWTX2+3条件で見られるが、GFP単独では、見られない。細胞が、取り除かれた領域に戻る能力を測定するために、48時間でスクラッチアッセイを実施した。72時間で、GFP細胞は、以前として健常で蛍光性があり、引っかき傷によりできた隙間をほぼ再充填している。SWTX2+3細胞では、広範な細胞死があり、移動性はなく、GFP発現はほとんどない。
【0093】
実施例7
HEK細胞及びsstRNAの3つの組み合わせを使用して、代謝調節因子である内因性代謝タンパク質mTORの発現を調査した。このタンパク質は、ロイシンまたはイソロイシンに変異することができる90を超えるプロリンコドンを有する。図21の左側の青色の染色は、全てタンパク質であり、同じ図の右側は、様々な条件及び時点でのmTORに対するウェスタン染色である。
【0094】
SWTX tRNAの多くの組み合わせを試験し、SWTX2/3/57の3つの組み合わせが72時間で最大の影響を及ぼした(赤いアスタリスク)。レーンがタンパク質で満たされている場合でも、mTORのレベルは、大きな影響を受ける。この効果は、リボソームに影響を与えるために一般に使用されるシクロヘキサミドよりもさらに顕著である。
【0095】
上述の明細書及び実施例は、本発明を十分に開示し、可能にするものであるが、本発明の範囲を限定するものではなく、これは、添付の特許請求の範囲により規定される。
【0096】
全ての刊行物、特許、及び特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。上述の明細書では、本発明をその特定の実施形態に関連して説明し、多くの詳細は、例示目的で記載されているが、本発明が追加の実施形態が可能であること及び本明細書に記載されている詳細の一部が発明の基本原理から逸脱することなく大幅に変更され得ることが、当業者らには明らかであろう。
【0097】
本発明を説明する文脈における「a」及び「an」及び「the」という用語、ならびに同様の指示対象の使用は、本明細書で別途指示のない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を網羅するものと解釈されるべきである。「を含むこと」、「を有すること」、「を含むこと」、及び「を含有すること」という用語は、別途記載のない限り、無制限の用語(すなわち、「を含むが、それらに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の詳述は、本明細書に別途記載がない限り、その範囲内にある別々の値をそれぞれ個別に参照する簡略的な方法として機能することが単に意図され、別々の値はそれぞれ、あたかも本明細書に個別に詳述されているかのように明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別途指示のない限り、または別途文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書で提供される、ありとあらゆる例、または例示的な表現(例えば、「例えば(such as)」)の使用は、単に本発明をより良く理解することを意図しており、別途請求の範囲に記載のない限り、本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書のいかなる文言も、請求の範囲に記載されていないいかなる要素も、本発明の実施に必須であると示すものとして解釈されるべきではない。
【0098】
本発明を実施するための発明者らに既知の最良様式を含む、本発明の実施形態は、本明細書に記載されている。これらの実施形態の変形は、上述の説明の解釈時に、当業者らに明らかになり得る。本発明者らは、当業者らが必要に応じてそのような変形を用いることを期待しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明には、適用される法律により認められる、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載された主題の全ての修正及び等価物が含まれる。さらに、本明細書で別途指示のない限り、または別途文脈と明らかに矛盾しない限り、可能な全ての変形における上述の要素の任意の組み合わせが本発明に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19-1】
図19-2】
図20
図21
【配列表】
2024502044000001.app
【国際調査報告】