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特表2024-502050強誘電性のネマチック液晶形成分子を含むデバイスならびにその形成および使用方法
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  • 特表-強誘電性のネマチック液晶形成分子を含むデバイスならびにその形成および使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】強誘電性のネマチック液晶形成分子を含むデバイスならびにその形成および使用方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/141 20060101AFI20240110BHJP
   G02F 1/1343 20060101ALI20240110BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G02F1/141
G02F1/1343
G02F1/1337 525
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540060
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 US2021065662
(87)【国際公開番号】W WO2022147232
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】63/132,194
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508214950
【氏名又は名称】ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・コロラド,ア・ボディー・コーポレイト
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ノエル・エイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シー
(72)【発明者】
【氏名】マクレナン,ジョセフ・イー
(72)【発明者】
【氏名】グレイサー,マシュー・エイ
【テーマコード(参考)】
2H088
2H092
2H290
【Fターム(参考)】
2H088GA02
2H088GA04
2H088HA02
2H088HA03
2H088JA11
2H088JA17
2H088JA19
2H088KA02
2H092GA03
2H092GA14
2H092HA04
2H092PA02
2H092QA13
2H290AA64
2H290AA67
2H290AA72
2H290BA02
2H290BA12
2H290BB61
2H290BF13
2H290BF25
2H290BF28
(57)【要約】
強誘電性ネマチックの表面極性は、そのバルク分極場の配向のベクトル制御を生成するように構成することができる。平面内極性を有する表面と強誘電性ネマチック液晶との間の接触は、その境界面における強誘電性分極場の好ましい平面内配向を生成し、それにより電場ポーリングなしで、高い分極の流体またはガラス質モノドメインを形成することができる。材料表面を経路として使用して、ツイスト状態を含む様々な方位ディレクタ/分極構造を有する平面に位置合わせされたセルを形成することができる。両面の逆平行の単方向バフィングによって得られるπツイストセルにおいて、本発明者らは、強誘電性ネマチック電気光学応答の3つの別個のモード、すなわち固有粘度制限電場誘起分子再配向、反対のキラリティのツイスト状態を分離するドメイン壁の電場誘起運動、および電場反転時のセルプレートからセル中心への分極再配向ソリトンの伝播を実証する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強誘電性のネマチック液晶形成分子を含む体積であって、前記体積が強誘電性ネマチック液晶相を含み、前記強誘電性ネマチック液晶相が前記体積全体にわたって電気分極密度のベクトル配向場を含む、体積と、
前記体積に接触する1つまたは複数の表面を含む1つまたは複数の材料とを含み、
前記1つまたは複数の表面が、前記分子の好ましい表面極性を与えるように構成され、前記好ましい表面極性が、前記1つまたは複数の表面との境界面における前記ベクトル配向を制御する、
デバイス。
【請求項2】
前記1つまたは複数の材料が、前記体積に接触する第1の表面を含む第1の材料と、前記体積に接触する第2の表面を含む第2の材料とを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第2の表面が、前記分子の好ましい表面極性を与えて、前記第2の表面との境界面における前記体積内の前記分子のベクトル配向を制御するように構成される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記分子の前記好ましい表面極性が、前記1つまたは複数の表面のうちの少なくとも1つに局所的に法線方向でありかつそこから離れる方へ誘導される成分を含む、請求項1から3のいずれかに記載のデバイス。
【請求項5】
前記分子の前記好ましい表面極性が、前記1つまたは複数の表面のうちの少なくとも1つに局所的に法線方向でありかつその方へ誘導される成分を含む、請求項1から3のいずれかに記載のデバイス。
【請求項6】
前記分子の前記好ましい表面極性が、前記1つまたは複数の表面のうちの少なくとも1つに局所的に接線方向である成分を含む、請求項1から3のいずれかに記載のデバイス。
【請求項7】
前記成分が、前記1つまたは複数の表面のうちの少なくとも1つに対して表面法線の周りに固有の好ましい方位配向を含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記分子の前記好ましい表面極性が、前記1つまたは複数の表面のうちの1つの表面の単方向バフィングによってもたらされる成分を含む、請求項1から7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項9】
前記分子の前記好ましい表面極性が、電磁波による前記1つまたは複数の表面のうちの1つの表面の斜め照明を使用してもたらされる、請求項1から7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項10】
前記分子の前記好ましい表面極性が、前記1つまたは複数の表面のうちの1つの表面の照明によって誘起される光重合を介してもたらされる成分を含む、請求項1から7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項11】
前記分子の前記好ましい表面極性が、前記1つまたは複数の表面のうちの1つの表面の照明によって誘起される光重合を介してもたらされる成分を含み、前記照明が斜めである、請求項1から7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項12】
前記分子の前記好ましい表面極性が、前記1つまたは複数の表面のうちの1つの表面の照明によって誘起される光劣化を介してもたらされる成分を含む、請求項1から7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項13】
前記分子の前記好ましい表面極性が、前記1つまたは複数の表面のうちの1つの表面の照明によって誘起される光重合を介してもたらされる成分を含む、請求項1から7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項14】
前記分子の前記好ましい表面極性が、前記1つまたは複数の表面のうちの1つの表面への材料の堆積によってもたらされる成分を含む、請求項1から7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項15】
前記分子の前記好ましい表面極性が、前記1つまたは複数の表面のうちの1つの表面への材料の堆積によってもたらされる成分を含み、前記堆積が斜めである、請求項1から7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項16】
前記分子の前記好ましい表面極性が、前記1つまたは複数の材料からの材料のエッチングによってもたらされる成分を含む、請求項1から7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項17】
前記分子の前記好ましい表面極性が、前記1つまたは複数の材料からの材料のエッチングによってもたらされる成分を含み、前記エッチングが斜めである、請求項1から7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項18】
前記体積に電場を印加するための1つまたは複数の電気接続
をさらに含む、請求項1から17のいずれかに記載のデバイス。
【請求項19】
前記体積に電磁場電場を印加するための装置
をさらに含む、請求項1から14のいずれかに記載のデバイス。
【請求項20】
1つまたは複数の材料との界面における強誘電性液晶の分極場の3つの次元で好ましいベクトル配向を制御する方法であって、
強誘電性液晶形成分子を含む体積を提供するステップと、
前記体積に接触する第1の表面を有する第1の材料を提供するステップと、
前記第1の表面を使用して、前記分子の好ましい表面極性を与えるステップとを含み、前記好ましい表面極性が、前記体積内の前記分子の前記好ましいベクトル配向を制御する、方法。
【請求項21】
前記体積に接触する第2の表面を有する第2の材料を提供するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記分子の前記好ましい表面極性が、前記表面に局所的に法線方向でありかつ前記表面の方へ誘導される成分を含む、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記分子の前記好ましい表面極性が、前記表面に局所的に法線方向でありかつ前記表面から離れる方へ誘導される成分を含む、請求項20または21に記載の方法。
【請求項24】
前記分子の前記好ましい表面極性が、前記第1の表面に局所的に接線方向である成分を含む、請求項20から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記成分が、前記表面法線の周りに固有の好ましい方位配向を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記分子の前記好ましい表面極性が、前記第1の表面の単方向バフィングによってもたらされる成分を含む、請求項20から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記分子の前記好ましい表面極性が、電磁波による前記第1の表面の斜め照明を使用してもたらされる成分を含む、請求項20から25のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記分子の前記好ましい表面極性が、前記第1の表面の斜め照明によって誘起される光重合を介してもたらされる成分を含む、請求項20から25のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記分子の前記好ましい表面極性が、前記第1の表面の斜め照明によって誘起される光劣化を介してもたらされる成分を含む、請求項20から25のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記分子の前記好ましい表面極性が、前記第1の表面への材料の斜め堆積によってもたらされる成分を含む、請求項20から25のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記分子の前記好ましい表面極性が、前記第1の表面からの材料の斜めエッチングによってもたらされる成分を含む、請求項20から25のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記第1の表面と前記体積の前記接触が、第1の温度相で生じ、前記体積が、冷却されて第2の温度で前記強誘電性ネマチック相になる、請求項20から31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記体積が、前記第1の温度でネマチック相を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記体積が、前記第1の温度で等方性材料を含む、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記体積が、強誘電性ネマチック相を含む、請求項20から34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
強誘電性ネマチック液晶の前記体積内の自発分極場の3つの次元で極性ベクトル配向を確立するために、界面制御が用いられる、請求項20から35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
強誘電性ネマチック液晶デバイスを形成する方法であって、
ネマチック状態の強誘電性液晶形成分子を含む体積を提供するステップと、
前記体積に接触する第1の表面を含む第1の材料を提供するステップと、
前記分子の好ましい表面極性を与えるステップとを含み、前記好ましい表面極性が、前記第1の表面との境界面におけるベクトル配向を制御する、方法。
【請求項38】
強誘電性ネマチック液晶の前記体積内の自発分極場の3つの次元で極性ベクトル配向を確立する界面制御が、より高い温度相から強誘電性ネマチック液晶相へ液晶の前記体積を冷却することによって実現される、請求項20から37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記より高い温度相が、非強誘電性ネマチック相である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記冷却が、前記強誘電性ネマチック相への冷却中に前記液晶内の温度勾配を維持するように構成される、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
前記冷却が、前記強誘電性ネマチック相への冷却中に前記液晶内の温度勾配を維持するように構成され、前記勾配が、選択された表面上で最初に前記強誘電性ネマチック相が形成されることを可能にする、請求項38または39に記載の方法。
【請求項42】
前記強誘電性ネマチック相に電場を印加するステップをさらに含む、請求項16から35に記載の方法。
【請求項43】
前記強誘電性ネマチック相中に溶解されたドーパント分子をさらに含む、請求項1から42に記載のデバイスおよび方法。
【請求項44】
前記ドーパント分子が、双極子モーメントを有し、前記双極子モーメントが、前記FNLCの前記ベクトル配向場によってそれに隣接または近接するように優先的に位置合わせされる、請求項43に記載のデバイスおよび方法。
【請求項45】
前記強誘電性ネマチック相が、2つ以上の別個の分子種の混合物である、請求項1から44に記載のデバイスおよび方法。
【請求項46】
前記強誘電性ネマチック相が、共晶混合物である、請求項45に記載のデバイスおよび方法。
【請求項47】
前記FNLCの体積ベクトル配向が、前記温度が下がると配向性ガラスを形成する、請求項1から46に記載のデバイスおよび方法。
【請求項48】
強誘電性液晶形成分子を含む体積と、
前記体積に接触する第1の表面を含む第1の材料とを含み、
前記第1の表面が、前記分子の好ましい表面極性を与えて、前記第1の表面との境界面における前記体積内の前記分子のベクトル配向を制御するように構成される、
デバイス。
【請求項49】
前記体積が、強誘電性ネマチック相を含む、請求項48に記載のデバイス。
【請求項50】
請求項2から19および43から47の制限のいずれかを含む、請求項48または49に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、内容が参照により本明細書に組み込まれている、2020年12月30日に出願された「DEVICE INCLUDING FERROELECTRIC NEMATIC LIQUID CRYSTAL-FORMING MOLECULES AND METHODS OF FORMING AND USING SAME」という名称の米国仮特許出願第63/132,194号の利益を主張する。
連邦政府による資金提供を受けた研究
本発明は、米国科学財団によって与えられた認可番号DMR1420736、DMR2005170、およびDMR1710711に基づいて、政府の支援によってなされたものである。政府は、本発明に特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
ネマチック液晶(LC)は、印加場および表面力に対する集合的な応答が容易であることから有用である。液晶において、バルク応答は、分子配向の流体弾性場の長距離変形であり、閉じ込め面が幾何形状およびトポロジカル構造的制約を確立する。電気光学の領域では、LC現象学のこれら2つの基本要素が組み合わされてLC表示技術がもたらされ、それによって20世紀の携帯型コンピューティングの変革が可能になった。この発展では、非常に最近まで、ネマチック電気光学は、バルク誘電体の位置合わせに基づいており、印加電場への四重極結合が、無極性LC内で分極を誘起して、トルクおよび分子再配向を生成する。望ましいデバイス構造を実現するために用いられる表面相互作用も同様に四重極であり、バフィングまたは光配向などの一般的な処理は、Rapini-Popoular(RP)モデルおよびその変種によって説明される。
【0003】
ネマチック液晶は、内部長距離配向順序を有する流体である。統計的な専門用語では、等方相からネマチック相への相転移により配向対称性が壊れるため、ネマチック相におけるゴールドストーンモードが生じ、これは局所平均分子配向であるディレクタn(r)の空間変動を示す。等方相の完全な配向対称性のため、ネマチックディレクタは全体的に好ましい配向を有しておらず、したがって波動ベクトルqの配向変動の調和(弾性)エネルギーコストは、長い波長でKq2に従ってゼロまで減少し、ここでKは配向(フランク)弾性定数である。3次元のバルクネマチックサンプルは、それぞれ四重極異方性の誘電体または反磁性体を介してネマチック配向に結合する恣意的に小さい力、たとえば恣意的に小さい印加電場または磁場を提供することによって配向することができる。ネマチック秩序も同様に、境界条件に、すなわち配向異方性が存在する表面に、無限に応答する。ネマチックは流体であるため、これらの条件により、選択された容器にネマチックを入れ、これを自発的に焼き戻して、選択された3次元(3D)の空間充填ディレクタ配向構造にし、この構造を予測可能な方法で印加場に応答させることが可能になる。実際には、表面および場は、有用であるのに十分な速さで欠陥をなくして再配向を生じさせるのに十分に強くなければならない。
【0004】
近年、新規なネマチック液晶相は、強誘電性ネマチック(NF)であることが示され、刺激的で強力な新しい方法でLC場および表面現象を用いるための様々な機会が与えられている。NFのLCは、巨視的な電気分極P(r)を有する3D液体である。ナノスケールでは、各分子双極子は、P(r)を±n(r)に対して局所的に平行にする強い配向結合に巨視的に変換されるその分子の立体長軸、局所平均分子長軸配向、およびこの位相の単軸光軸にほぼ平行になるように抑制される。したがって、分極により、n(r)と印加電場Eとの間の結合に、低いEで誘電体結合より優勢な線形のNFが与えられる。NF相は、ほぼ完全な自己安定性の自発的な極性秩序化を呈し、極性秩序パラメータp=<cos(βi)>≧0.9を有し、ここでβiは典型的な分子双極子と局所平均分極密度Pとの間の角度である。その結果得られる大きい自発的分極P≒6μC/cmは、電場誘起ネマチックディレクタの再配向を可能にし、それに伴って約1V/cmほどの大きさの典型的なセルに印加される電場への電気光学(EO)応答を可能にし、これは誘電体ネマチックを同等に再配向するものの数千分の1の大きさである。
【0005】
本章に記載した課題および解決策の議論を含むあらゆる議論は、本開示のための文脈を提供することのみを目的として本開示に含まれており、この議論のいずれかまたはすべてが、本発明がなされた時点で知られていること、または他の形で従来技術を構成することを認めるものと解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0006】
この概要は、一連の概念を紹介するために提供される。この概要は、必ずしも特許請求される主題の主要な特徴または本質的な特徴を識別することを意図したものではなく、特許請求される主題の範囲を限定するために使用されることを意図したものでもない。
【0007】
本開示の様々な実施形態は、デバイスならびにデバイスを使用および形成する方法に関する。
本開示の例示的な実施形態によれば、デバイスは、強誘電性のネマチック液晶形成分子を含む体積であって、前記体積が強誘電性ネマチック液晶相を含み、前記強誘電性ネマチック液晶相が体積全体にわたって電気分極密度のベクトル配向場を含む、体積と、体積に接触する1つまたは複数の表面を含む1つまたは複数の材料とを含む。1つまたは複数の表面は、分子の好ましい表面極性を与えるように構成することができ、前記好ましい表面極性は、1つまたは複数の表面との境界面における前記ベクトル配向を制御する。
【0008】
本開示のさらなる例によれば、1つまたは複数の材料との界面における強誘電性液晶の分極場の3つの次元で好ましいベクトル配向を制御する方法が提供される。この方法は、強誘電性液晶形成分子を含む体積を提供するステップと、体積に接触する第1の表面を有する第1の材料を提供するステップと、第1の表面を使用して、分子の好ましい表面極性を与えるステップとを含むことができ、前記好ましい表面極性は、前記体積内の分子の前記好ましいベクトル配向を制御する。
【0009】
本開示のさらに追加の例示的な実施形態によれば、強誘電性ネマチック液晶デバイスを形成する方法が提供される。この方法は、ネマチック状態の強誘電性液晶形成分子を含む体積を提供するステップと、体積に接触する第1の表面を含む第1の材料を提供するステップと、分子の好ましい表面極性を与えるステップとを含み、前記好ましい表面極性は、第1の表面との境界面におけるベクトル配向を制御する。
【0010】
本開示のさらに追加の例によれば、デバイスは、強誘電性液晶形成分子を含む体積と、体積に接触する第1の表面を含む第1の材料とを含み、第1の表面は、分子の好ましい表面極性を与えて、第1の表面との境界面における体積内の分子のベクトル配向を制御するように構成される。
【0011】
追加の例は、従属請求項を含む特許請求の範囲に記載されている。別途記載のない限り、従属請求項を独立請求項または他の従属請求項と任意の組合せで組み合わせることができる。
【0012】
これらおよび他の実施形態は、図を参照する特定の実施形態の以下の詳細な説明から当業者には容易に明らかになるであろう。本開示は、開示するいずれの特定の実施形態にも限定されるものではない。
【0013】
詳細な説明および特許請求の範囲を参照し、以下の例示的な図とともに考慮することによって、本開示の例示的な実施形態のより完全な理解を導き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】減極伝送光顕微鏡法(DTLM)を使用して撮像された異なる平面位置合わせ条件下におけるRM734のNF相のセル構造を示す図である。(A、C)双方向表面バフィングを施したセルが平面位置合わせを与え、プレチルトは与えない(ディレクタは表面に平行)。この表面は無極性であり、反対の強誘電性分極のドメインの形成を可能にする(d=11μm、T=120℃)。(B、D、E)数度のプレチルトで平面位置合わせを与える単方向の表面バフィングを施したANTIPOLARセル(d=4.6μm)。プレチルトは、固有の表面法線極性にNF分極を結合し(一方の側に高分子、他方の側にLC)、バルクNFの平面内極性アンカリングを与える。したがって、プレート間の温度差を伴うN-NF転移による冷却により、冷却プレートから極性配向モノドメインが成長する。(E)2つのプレートに逆平行のバフィングにより、セルが冷却されてNF相になると、より温かいプレートに近い配向が、より低いエネルギーの極性状態への表面再配向転移を受け、n-P場でπツイストを生じる。このツイストは、左手(LH)または右手の(RH)いずれであってもよく、2πツイスト壁がこれら2つの状態を分離する。LHおよびRH状態は、交差する偏光子と検光子との間で光学的に縮退する。(F)U状態ならびにLHおよびRHのπT状態の概略図。Tの勾配がない状態で、各表面から均一のディレクタ状態が成長し、セル中心の近くにPPR壁を形成する。スケールバー:(A)20μm、(B)200μm。
図2】ANTIPOLARセルの配向状態を示す図である。T=125℃で、逆平行の単方向バフィングを使用して生成された表面極性アンカリングによって誘起され、DTLMを使用して撮像された、NF相における安定したπツイスト(πT)状態。赤色から青色の虹色の矢印は、セル内の一連の増大するxレベルにおける強誘電性分極配向を表す(x=0、d/4、d/2、3d/4、d、ここでd=3.5μm)。ピンク色の矢印は、セルの下から上へのφ(x)の方位角軌道を示しており、これは光伝播方向でもある。(A、B)均一(U)の状態に成長している左手(LH)のπT状態(オレンジ色)。U状態は、nが検光子に平行または法線方向であるときは交差する偏光子と検光子との間で暗いが、回転されると複屈折を示す(B)。πT状態の色は、セル配向に強く依存しない。(C)U状態ならびにLHおよびRHのπT状態の概略図。Tの勾配がない状態で、各表面から均一のディレクタ状態が成長し、セル中心の近くにPPR壁を形成する。黄色のベクトルに対して示されているPPR壁におけるツイスト変形は、最初は局所的なツイストのフランクエネルギーを要するが、最終的にはエネルギーを低下させ、トポロジカル転移をもたらし、PPR壁をセルプレート間の均一のディレクタツイストに変換する。(D、E)検光子の交差を解くと、LHおよびRH状態の光学的縮退が解除され、非交差角の同時鏡面反射(LHからRH)および反転下で、キラリティおよび光対称性が明らかになる。(E)LHおよびRH状態は、2πツイスト壁によって分離される。スケールバー:200μm。
図3】ANTIPOLARセルにおける低電場分極の反転を示す図である。(A~H)T=110℃でのRM734の厚さd=3.5μmのセルにおける右手(RH)のπT状態。このセルは、1mmの間隙でITO電極を有し、電極エッジに法線方向の電場Eを生じさせる。間隙中心において、E=(0.66v)V/mmであり、ここでvは電極間隙に印加される電圧である。バフィング方向はz軸に沿っており、電極エッジに対して平行から3°離れて、したがってEから93°離れて配向される。この3°のずれはEにおける鏡面対称性を壊し、P×Eトルク(B、白色の矢印)に応答して、n-P結合を反時計回りに優先的に回転させる。0V<v<0.3Vの範囲で増大する印加電圧により、画像は(A)から(H)へ進行する。赤色から青色の虹色の矢印は、セル内の一連の増大するxレベルにおける強誘電性分極配向を表す(x=0、d/4、d/2、3d/4、d)。ピンク色の矢印は、セルの下から上への方位角軌道を示しており、これは光伝播方向でもある。(I~K)本明細書に記載する電場/弾性トルクバランス方程式の静的シミュレーションから計算されたLHおよびRH状態のディレクタプロファイルφ(x)のグラフである。プロファイルはすべて、φ(0)=-87°およびφ(3.5μm)=93°で固定の表面配向を有する。LHプロファイルは、φが下方へ増大するようにグラフ化されていることに留意されたい。RHのπT状態は、図1図2と同様に示されており、(J)および(K)にグラフ化されている。RH状態のPは、Eとは反対に誘導される成分を有するため、電場が円の右側から左側へ反時計回りにPを押すことによって強く変形させられる。(B、C)V≒40mV(間隙中心でE≒26mV/mm)において、LHのπT状態は、不均質核形成を介していくつかの場所に現れ、多くはEに沿って誘導されるPを有するため、これは電場に好ましい状態である。(E、I)電場は、LHツイストを表面に追い出してセル中心を好ましい配向で充填する傾向がある。(D)LT an RNのπT状態は、2πツイスト壁によって分離される。(E~H)ドメイン壁が動くときに電場はほとんど増大しないため、LHおよびRH状態は、この範囲にわたって内部構造がほとんど変化しない。(I~K)挿入図は、交差する偏光子と検光子との間の白色光伝送の色相を示す。
図4】T=110℃におけるRM734のNF電気光学および動力学を示す図である。(A)電場誘起分極反転(ERV)ならびに粘度制限(ERT)再配向データおよびモデリングの概要。ERV方式:黒色の点は電場反転データであり、色で塗られた円は(C)からのものであり、白色の円および白色の実線は(B)からのものである。ERT方式:シアンで塗られた正方形は(E)からのものであり、白色の円および白色の点線は(D)からのものである。電場反転が(B)と同様にある程度のソリトン応答を生成するため、ERV時間はより長く、その間、セルの一部はソリトンが通過して再配向されるのを待つ。(B)トルクバランス方程式のERV解が方形波の電場反転への応答を示し、それ以前のPはRHのπT状態にあり、その後のPは、ソリトンが表面から出て通過するまで、低トルクで不安定な平衡状態にある。最終的な状態(赤色の線)は、セル中心に2πツイスト壁を有し、秩序の再構造によって消え(シアンの矢印)、LHのπT状態を残す(破線)。ソリトンがセル中心に到達すると、ディレクタ再配向(白色の円)が生じ、(C)の光伝送ピークを与える(白色の円)。(C)電場反転に続く交差する偏光子と検光子との間の光伝送ピーク。セル中心へのソリトンの到達時間は、(A)にグラフ化されており、(C)と同様に色分けされている。同じ1組のピークが-から+の転移として-から+に現れ、各転移がπT状態の掌性を完全に切り換えることを示す。(D)φ=0の中央セル配向を優先するE場に対する均一にツイストされたRHのπT状態のシミュレートされたERT応答。最終的なE誘起状態(黒色)は、この電場において、セルへの表面配向の電場侵入長さξE=√K/PEが小さいことを示す。この場合、ディレクタプロファイルφ(x)の各要素dx=ξEは、φE(t)(本明細書参照)として電場に独立して応答し、これを使用して、(E)で均一のφ(t)データを分析することができる。(E)4つの金電極セル(NSEW)がランダムな平面位置合わせを有し、Wにパルス電圧が印加され、NSおよびEは接地される。小さいDCバイアスにより、開始配向φoを約45°に設定し、交差するPとAとの間の伝送I(t)が測定される。電場振幅に対して10%~90%の応答時間が、(A)にシアンの正方形として示されている。より小さい印加場の場合、応答時間は1/Eに従って減少し、これを使用してγを判定する。大きいEにおける1/E依存からの逸脱は、これらの電極における減分極電圧の影響によるものであり、短時間だけ現れる。
図5】本開示の例によるデバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図中の要素は、簡単かつ分かりやすくするために示されており、必ずしも原寸に比例して描かれていないことが理解されよう。たとえば、本開示の示されている実施形態の理解を助けるために、図中の要素のうちのいくつかの寸法が他の要素に対して強調されていることがある。
【0016】
特定の実施形態および例を以下に開示するが、本開示は、本開示の具体的に開示される実施形態および/または用途、ならびにその明らかな修正例および均等物を超えて拡大することが、当業者には理解されよう。したがって、本開示の範囲は、本明細書に記載する特定の実施形態によって限定されるべきではないことが意図される。本明細書に提示する図は、何らかの特定の材料、装置、構造、またはデバイスの実際の見え方であることを意味したものではなく、本開示の実施形態について説明するために使用される表現にすぎない。
【0017】
本開示の例示的な実施形態は、改善されたデバイスを提供する。例示的なデバイスは、強誘電性のネマチック液晶形成分子を含む体積と、体積に接触する1つまたは複数の表面を含む1つまたは複数の材料とを含む。
【0018】
本開示の例によれば、体積は、強誘電性ネマチック液晶相を含み、前記強誘電性ネマチック液晶相は、体積全体にわたって電気分極密度のベクトル配向場を含み、前記1つまたは複数の表面は、分子の好ましい表面極性を与えるように構成され、前記好ましい表面極性は、1つまたは複数の表面との境界面における前記ベクトル配向を制御する。1つまたは複数の材料は、体積に接触する第1の表面を含む第1の材料と、体積に接触する第2の表面を含む第2の材料とを含むことができる。第2の表面は、分子の好ましい表面極性を与えて、第2の表面との境界面における体積内の分子のベクトル配向を制御するように構成することができる。分子の好ましい表面極性は、1つまたは複数の表面のうちの少なくとも1つに局所的に法線方向でありかつそこから離れる方へ誘導される成分を含むことができる。分子の好ましい表面極性は、1つまたは複数の表面のうちの少なくとも1つに局所的に法線方向でありかつその方へ誘導される成分を含むことができる。分子の好ましい表面極性は、1つまたは複数の表面のうちの少なくとも1つに局所的に接線方向である成分を含むことができ、前記成分は、1つまたは複数の表面のうちの少なくとも1つに対して表面法線の周りに固有の好ましい方位配向を含むことができる。本開示の例によれば、分子の好ましい表面極性は、1つまたは複数の表面のうちの1つの表面の単方向バフィングによってもたらされる成分を含む。追加の例によれば、分子の好ましい表面極性は、電磁波(たとえば、約0.1μm~約10μmの範囲内の波長を有する)による1つまたは複数の表面のうちの1つの表面の斜め照明を使用してもたらされる。追加の例によれば、分子の表面極性は、1つまたは複数の表面のうちの1つの表面の照明によって誘起される光重合を介してもたらされる成分を含むことができる。さらなる例によれば、分子の好ましい表面極性は、1つまたは複数の表面のうちの1つの表面の照明によって誘起される光重合を介してもたらされる成分を含み、前記照明は斜めである。いくつかの場合、分子の好ましい表面極性は、1つまたは複数の表面のうちの1つの表面の照明によって誘起される光劣化を介してもたらされる成分を含む。本開示の例によれば、分子の好ましい表面極性は、1つまたは複数の表面のうちの1つの表面の照明によって誘起される光重合を介してもたらされる成分を含む。さらなる例によれば、分子の好ましい表面極性は、1つまたは複数の表面のうちの1つの表面への材料の堆積によってもたらされる成分を含む。堆積は、斜めにすることができる。さらなる例によれば、分子の好ましい表面極性は、1つまたは複数の材料からの材料のエッチングによってもたらされる成分を含む。エッチングは、斜めにすることができる。本開示のさらなる例によれば、デバイスは、体積に電場を印加するための1つもしくは複数の電気接続、および/または体積に電磁場電場を印加するための装置を含む。
【0019】
本開示のさらなる例によれば、1つまたは複数の材料との界面における強誘電性液晶の分極場の3つの次元で好ましいベクトル配向を制御する方法が提供される。例示的な方法は、強誘電性液晶形成分子を含む体積を提供することと、体積に接触する第1の表面を有する第1の材料を提供することと、第1の表面を使用して、分子の好ましい表面極性を与えることとを含み、前記好ましい表面極性は、前記体積内の分子の前記好ましいベクトル配向を制御する。この方法は、体積に接触する第2の表面を有する第2の材料を提供するステップをさらに含むことができる。分子の好ましい表面極性は、表面に局所的に法線方向でありかつ表面の方へ誘導される成分を含むことができる。いくつかの場合、分子の好ましい表面極性は、表面に局所的に法線方向でありかつ表面から離れる方へ誘導される成分を含む。分子の好ましい表面極性は、第1の表面に局所的に接線方向である成分を含むことができる。前記成分は、表面法線の周りに固有の好ましい方位配向を含むことができる。いくつかの場合、分子の好ましい表面極性は、第1の表面の単方向バフィングによってもたらされる成分を含む。分子の好ましい表面極性は、電磁波(たとえば、約0.10μm~約10μmの範囲内の波長を有する)による第1の表面の斜め照明を使用してもたらされる成分を含むことができる。いくつかの場合、分子の好ましい表面極性は、第1の表面の斜め照明によって誘起される光重合を介してもたらされる成分を含む。いくつかの場合、分子の好ましい表面極性は、第1の表面の斜め照明によって誘起される光劣化を介してもたらされる成分を含む。分子の好ましい表面極性は、第1の表面への材料の斜め堆積および/または第1の表面からの材料の斜めエッチングによってもたらされる成分を含むことができる。本開示の様々な例によれば、第1の表面と体積の接触は、第1の温度相で生じ、体積は、冷却されて第2の温度で強誘電性ネマチック相になる。体積は、第1の温度でネマチック相を含むことができる。いくつかの場合、体積は、第1の温度で等方性材料を含む。体積は、強誘電性ネマチック相を含むことができる。本開示のさらなる例によれば、強誘電性ネマチック液晶の体積内の自発分極場の3つの次元で極性ベクトル配向を確立するために、界面制御が用いられる。
【0020】
本開示のさらなる例によれば、強誘電性ネマチック液晶デバイスを形成する方法が提供される。この方法は、ネマチック状態の強誘電性液晶形成分子を含む体積を提供するステップと、体積に接触する第1の表面を含む第1の材料を提供するステップと、分子の好ましい表面極性を与えるステップとを含み、前記好ましい表面極性は、第1の表面との境界面におけるベクトル配向を制御する。強誘電性ネマチック液晶の体積内の自発分極場の3つの次元で極性ベクトル配向を確立する界面制御は、より高い温度相から強誘電性ネマチック液晶相へ液晶の体積を冷却することによって実現することができ、より高い温度相は非強誘電性ネマチック相であり、前記冷却は、強誘電性ネマチック相への冷却中に液晶内の温度勾配を維持するように構成される。冷却は、強誘電性ネマチック相への冷却中に液晶内の温度勾配を維持するように構成することができ、前記勾配は、選択された表面上で最初に強誘電性ネマチック相が形成されることを可能にする。この方法は、前記強誘電性ネマチック相に電場を印加するステップをさらに含むことができる。追加または別法として、この方法は、強誘電性ネマチック相中に溶解されたドーパント分子を提供することを含むことができる。ドーパント分子は、双極子モーメントを有し、前記双極子モーメントは、FNLCのベクトル配向場によってそれに隣接または近接するように優先的に位置合わせされる。さらなる例によれば、前記強誘電性ネマチック相は、2つ以上の別個の分子種の混合物である。いくつかの場合、強誘電性ネマチック相は共晶混合物である。上記の例のいずれかによれば、前記FNLCの体積ベクトル配向は、温度が下がると配向性ガラスを形成する(たとえば、等方相における材料の粘度の10より大きい高い粘度を生じる)。
【0021】
本開示のさらに追加の例によれば、別のデバイスが提供される。デバイスは、強誘電性液晶形成分子を含む体積と、体積に接触する第1の表面を含む第1の材料とを含み、第1の表面は、分子の好ましい表面極性を与えて、第1の表面との境界面における体積内の分子のベクトル配向を制御するように構成される。体積は、強誘電性ネマチック相を含む。デバイスは、デバイスを形成するために、他のデバイスおよび/または方法に関連して上述した特徴のいずれかを含むことができる。
【0022】
本発明者らは、本明細書に記載するデバイスにおけるNFの極性秩序により、境界表面に対するネマチックの相互作用、ネマチックLC科学の主要な態様、および技術に対するその将来性の斬新な変化が生じることを示す。本発明者らは、極性分子の2D境界表面の極性を制御することによって、その3D体積のベクトル配向分布の構築を実現することができることを実証する。最も単純な例では、好ましい分極の配向が表面のほとんどにわたってベクトル的に単方向である場合、印加場を必要とすることなく、NF体積分極も同様に配向させることができ、表面によってベクトル的に均一の配向に分極される。
【0023】
強磁性体および強誘電体などの自発ベクトル秩序を有する材料のサンプルは、それらが生じさせる内部および外部の磁場または電場のエネルギーを最小にするように、それぞれ磁化M(r)または分極P(r)の異なる配向のドメインに分割し、これらの場を表面に局所的に平行にすることによって、内部エネルギーを最小にする。外部場の印加(フィールドポーリング)によってこの図式を意図的に破壊すること、たとえば磁場に鉄の棒を置いて棒磁石を生じさせること、または不揮発性ソリッドステートメモリ内でビット記憶部として働く強誘電性ナノ結晶の分極の外部反転は、その使用における重要なプロセスである。非線形の光学的および電子的な電気光学用途の分極モノドメインを生成するために高分子を含む発色団のコロナポーリングなどの軟質材料のフィールドポーリングは、高い場が必要とされるため、うまくいってこなかった。対照的に、本発明者らは、強誘電性ネマチックの表面ポーリングにより、ポーリング場がなくてもほぼ完全な極性秩序のモノドメイン秩序化を実現することができることを見出した。
【0024】
強誘電性ネマチックにおいて、バルク分極密度P(r)の出現に関連する対称性の低減は、バルクエネルギー密度UPE=-P・Eによって、Pと印加場Eの巨視的結合をもたらす。正味分子双極子が分子の立体長軸にほぼ平行である分子では、P(r)は、配向エネルギー優先UPn=-uPn|(n・P)/P|によって、±n(r)に平行になるように巨視的に結合される。エネルギー密度係数uPnは、uPn≒kT/volとして推定することができ、ここでvolは分子の体積である。x=0でP(r)の配向の段階的変化を加えた場合、n(r)は、分子の次元でもある距離|x|=ξ≒√(K/uPn)に従う。したがって、P(r)および±n(r)は本質的に、巨視的な規模で配向がともにロックされ、したがって場が印加された場合、応答は概して、P(r)を再配向することによってn(r)を再配向するためのものである。これに対する例外は、均一のn場でPを180°反転させる分極反転壁の動きである。
【0025】
本明細書に提供する例示的な実施形態の説明は、例示にすぎず、説明の目的のみを意図したものであり、以下の説明は、本開示または特許請求の範囲の範囲を限定することを意図したものではない。さらに、記載の特徴を有する複数の実施形態の記述は、追加の特徴を有する他の実施形態、または記載の特徴の異なる組合せを組み込む他の実施形態を除外することを意図したものではない。
【0026】
本開示では、ある変数の任意の2つの数が、その変数の有効な範囲を構成することができ、示されているあらゆる範囲は、端点を含んでも除外してもよい。加えて、示されている変数のあらゆる値は(「約」とともに示されているか否かにかかわらず)、厳密な値または近似の値を指し、均等物を含むことができ、平均、中央値、代表、多数などを指すことができる。さらに、本開示では、「含む」、「~によって構成される」、および「有する」という用語は、いくつかの実施形態では独立して「典型的または広義には~を含む」、「含む」、「本質的に~からなる」、または「~からなる」を指すことができる。本開示では、あらゆる定義された意味は、必ずしも通常の慣習的な意味を除外するものではない。
【0027】
表面は、本明細書に記載するものを含めて、任意の好適な表面を含むことができる。表面は、界面を含むことができる。
【実施例
【0028】
以下に記載する実施例は、様々なデバイスおよびデバイスを形成および使用する方法を示す。これらの実施例は例示であり、本発明の範囲を限定することを意味したものではない。
【0029】
極性表面アンカリング- P(r)と境界表面の交点では、表面上に分極電荷/区域が位置し、外部イオンおよび電子電荷、ならびにNディレクタとの電場によって誘起された長距離の相互作用が生じる。しかし、境界表面自体は常に本質的に極性を有するため、LC表面相互作用のエネルギー/区域であるW(θ,φ)と、その法線に対する表面におけるディレクタn(r)の配向である(θ,φ)とによって特徴付けられる局所的な表面相互作用は、無極性のRPの項に加えて、極性の寄与を含むはずである。表面マニホルドrおよび局所的に平面の境界面に対して法線方向のあらゆる場所に画定されるベクトル場S(r)は、表面に関連付けられた極性の不可避の要素を表すように選ぶことができる。S(r)は概して、構造勾配、たとえば界面電気分極密度、LCもしくは境界相の何らかの分子成分の密度、または境界面材料の分子成分の分極密度の最大値の場所および値を与える。
【0030】
相における分極の出現は、項W(r)∝P(r)・S(r)をWに追加し、これはxになるように選ばれた表面法線方向に沿ってPの成分に対する好ましい符号を優先する。加えて、たとえば双方向研磨バフィングの結果として、表面構造が平面内異方性を有する場合、表面におけるネマチックディレクタ配向は、RP型相互作用を受け、それ自体が、n(r)の優先的な平面内(y,z)の位置合わせを与え、これは表面エネルギー密度W(φ)によって安定され、ここでφはnとバフィング方向zとの間の平面内方位配向を与える。W(φ)は、異方性であるが無極性でなければならず、したがってバフィングおよびその平面内法線に対して鏡映対称[W(φ)=W(-φ)=W(π-φ)=W(π+φ)]である。RPに続いて、本発明者らはW(φ)=wsin(2φ)でW(φ)を四重極にし、ここでwは現象論的係数である。(x,z)平面における双方向バフィングまたは法線入射光配向の場合、好ましいディレクタ配向はまた、表面に平行なnを有する(図1Aに白色の両矢印によって記載されているPLANARの事例)。固有の表面極性(図1Aの灰色の矢印)は、この好ましい配向に対して法線方向であり、したがって平面内極性対称性を誘起せず、nに沿って折れる。
【0031】
他方では、zに沿って単方向バフィングによって、または(x,z)平面内の斜め光配向もしくは何らかの他の斜め処理によって、平面内異方性がもたらされる場合、この処理にとって好ましいnの表面配向は、表面に対して平行ではなく、表面平面に対して何らかの角度0<ψ<π/2を形成する(PRETILTEDの事例)。そのようなプレチルトの幾何形状では、平衡状態においてSに沿ってPの成分が存在し、表面法線の固有極性(図1Bの灰色の矢印)をPの平面内および法線成分の両方に結合するため、Wはゼロ以外である。すなわち、プレチルト四重極相互作用が、プレチルトによってnおよび-nに対して同等の表面エネルギーを提供するのに対して、Pおよび-Pに対する表面エネルギーは異なる。図1Bでは、表面相互作用におけるこの極性の特徴を表すために、灰色/白色の矢印が使用される。φがnの平面内成分であるcとラビング方向zとの間の平面内方位角である場合、W(φ)は、ラビング方向に対して鏡映対称[W(φ)=W(-φ)]であり、これは式W(φ)=W(φ)+W(φ)=wsin(2φ)+wsin(ψ)cos(φ)を有するように選ぶことができ、ここでwは現象論的係数である。LC表面エネルギー密度wの四重極異方性は、実験的に広く研究されている。対照的に、wは対称性によって必要とされるが、その大きさまたは符号は知られていない。本明細書では、本発明者らは、N相の平面内極性表面位置合わせを実証し、これを使用して、アンカリングエネルギーの極性成分の推定を取得し、そのような相互作用により、平面内で位置合わせされたセルのネマチックディレクタの幾何形状の完全な極性制御が可能になることを示す。本発明者らは、ネマチックディレクタのツイスト状態を生じさせ、平面内電場を印加して、電圧制御された光学活性を生じさせ、はるかに小さい場を使用して、より速い応答を実現する。
【0032】
RM734(R.J.Mandle、S.J.Cowling、J.W.Goodby、A nematic to nematic transformation exhibited by a rod-like liquid crystal.Phys.Chem.Chem.Phys.19、11429~11435(2017).DOI:10.1039/c7cp00456g){等方性(I)→182℃→ネマチック(N)→133℃→強誘電性ネマチック(N)}をガラスセルに充填し、厚さdの間隙がプレートを分離し、プレートのうちの1つは、平面内電場の印加のためにLだけ隔置されたITOまたは金の電極でパターン化される。入射白色光を有する減極伝送光顕微鏡撮像(DTLM)、および直径30μmのスポットに集束される632nmのHeNeレーザ光を有する単一波長伝送測定を使用して、セルを光学的に調査した。N相でシュリーレンのテキスチャを与えるランダムな平面ガラス表面と、等方相から冷却されるとN相の平面モノドメインを与えるバフィングされた高分子位置合わせ層によって被覆されたプレートとの両方を使用した。
【0033】
高分子位置合わせセルは、体積106の周りで弱い双方向にバフィングされた位置合わせ層102、104にd=11μmのセルを含み、バフィング方向および表面に平行なnの好ましい位置合わせを提供した。この位置合わせによって、ディレクタ(図1Aの黄色)は、固有表面極性に対して法線方向に位置合わせされ、nに沿って極性対称性を壊さない(図1Aの白色の線)。これらはNONPOLAR平面内表面であり、NONPOLARセルを形成する。
【0034】
本発明者らはまた、バフィングされたポリイミド位置合わせ層108、110および体積112を有する厚さd=3.5μmおよび4.6μmのセルを使用し、バフィング方向に平行でありかつ小さいプレチルト角ψ≒3°だけ表面平面から傾斜した表面でnの好ましい位置合わせを提供した(図1B)。この場合、上記の議論によれば、固有表面極性(図1Bの灰色の矢印)はここで、好ましいディレクタ配向に沿った成分を有する。これにより、nに沿った極性対称性(図1Bの灰色/白色の矢印)が壊れ、したがって表面は、表面でPの優先的な平面内配向を呈し、本発明者らはこれを単純にPOLARと呼ぶ。バフィングがセルの2つの平坦な表面上で単方向かつ平行である場合、これらの表面をSYNPOLARと呼び、単方向バフィングが逆平行である場合、これをANTIPOLARと呼ぶ。
【0035】
N-N転移によって空間的に均一の温度を有する無極性の位置合わせされたセルを-1℃/分で冷却し、これはまずミクロン以下の規模で出現するn(r)に局所的に平行に延びる不規則なドメインのテキスチャによってパターン化されており、次いで約2℃間隔で低い光学コントラストの線のパターンに長さミリメートルまで焼き戻し、これも概してn(r)に沿って配向される。これらの線は粗雑になりまたは発達して、いくつかの場所で10~200ミクロン程度の閉ループを形成し、これは図1A図1Cに示すように、n(r)に沿って細長い独特の特徴的なレンズ形状を有する。これらの線は、Pの逆の符号を有するPの強誘電性ドメイン間の純粋分極反転(PPR)の境界を形成し、これらのドメインはセルのほぼ等しい区域を占めており、すなわちPの特定の符号に対してほとんど優先を示さない。小さいプローブ場を印加すると、Pの別個の配向の視覚化が可能になり、RM734の強誘電性ネマチック相に対する重要な証拠になる。したがって、無極性の位置合わせは、nの均一な品質の位置合わせをもたらし、交差する偏光子と検光子との間に良好な消光を与え、Pの逆の符号のヘクトミクロンからミリメートル規模のドメインが並んでいる。
【0036】
N-N転移によって-1℃/分で冷却された空間的に均一の温度を有するSYNPOLARの位置合わせされたセルでは、均一のN相ネマチックモノドメインがN相の極性モノドメインに成長する。このテキスチャは、T≒90℃で結晶相の出現によって欠陥が与えられるが、T=120℃から室温に焼き戻すことで、ガラス質で均一の複屈折モノドメインが得られる。
【0037】
本発明者らはまた、AryasovaおよびReznickの温度勾配方法を用いて、セル内の単一の表面の平面内極性秩序および位置合わせの効果を調べた。AryasovaおよびReznickは、セルの厚さにわたって一定の温度差ΔTを維持しながら、ネマチックLC構造およびガラスプレート間のLCに対する位相挙動を研究した。AryasovaおよびReznickは、これらの条件下における等方性(I)からネマチック(N)への相転移によって冷却すると、取得された優勢なネマチックの位置合わせがより冷たいセル表面のものであることを見出した。したがって、温度勾配が印加されると、I/N境界面はまずより冷たい表面で出現し、準平面シートとしてその表面から他方へ動く。一方のプレートがラビングされた高分子膜で被覆され、他方が未処理の高分子膜で被覆されてランダムな平面位置合わせを与えるセルでは、この形式の冷却によって、ラビングされた表面からネマチックを成長させると均一の平面に位置合わせされたセルをもたらし、または同じセル内で、他方のランダムな平面位置合わせ表面からネマチックを成長させると欠陥のあるシュリーレンテキスチャをもたらすことが分かった。
【0038】
RM734は、頂部プレートがより冷たい状態で、頂部および底部セルプレートの外側の間で約2℃の温度差を維持しながら、ANTIPOLARセルにおけるN-N転移によって-1℃/分で冷却された。LCを含むセル間隙における温度差は、ΔT≒0.1℃であると推定することができる。これらのセルにおいて、NからNへの転移は、N相で見るからに大きい複屈折が存在する鮮明な境界で出現する。この境界はセルを横切って下部プレートの方へ動くため、図1B図1Cに示すように、極性Nモノドメインを残す。この冷却プロセスは、図1Bに略図が示されており、図1Bは、N相がより冷たい表面からネマチックで核形成および出現し、残された均一にオレンジ色の複屈折色によって証明されるように、成長してプレートの間の間隙全体を充填し、均一に複屈折の配向構造を実現することを示す。この状態は、交差する偏光子と検光子との間で消滅し、平面またはほぼ平面の位置合わせを示す複屈折色を有し、すなわちnおよびPがセルにわたって均一であり、プレートに平行である。大きいPを有するそのような平面に位置合わせされたNセルの重要な特徴は、ブロック分極構造であり、境界面におけるP-n結合の広がりおよびPの終了が、分極電荷の高い静電エネルギーコストによって抑制される。したがって、表面のP=6μC/cmに対して分極自己電場侵入長さξ=√Kεo/P≒0.1nmの範囲内で、表面に与えられるプレチルトは消え、P(r)-n(r)結合はセルプレートに対して局所的に平行になり、配向はE=0になる。Pが回転してx成分を発達させた場合、表面の分極電荷に起因するEが、Pをプレートに平行に戻すように作用する。Pの平面内配向は、数V/cmの平面内電場の印加によって調べることができる。この成長されたモノドメインにおけるn-Pの均一の配向は、より冷たい表面がPのその好ましい極性配向を核形成および成長させるのに対して、より温かい表面は、好ましくない極性配向を採用させられることを示した。SYNPOLARセルでは、最終的に両方の表面が好ましい状態になる。
【0039】
冷却がN-N転移を下回る約7℃またはそれ以下で停止された場合、この状況は持続し、極性モノドメインが広がってセル区域を充填する。しかし、ANTIPOLARセルがT≒120℃にさらに冷却された場合、構造転移が発生し、複数のドメイン境界が核形成してセルを横切って動き、図1Dで紫色の領域を残す。この紫色の領域は、独自の1組の内部ドメイン壁を有する(図1D)。特に、図2A図2Bに示すように、nが光学分極に沿った状態で交差する偏光子間の光学的減衰は、この新しいドメインでは得られなくなり、これは不均一のディレクタ場を示し、印加電場がない状態ではツイスト状態の可能性しかなく、nはプレートに平行であり、定数∂φ/∂xで螺旋状に再配向する。このツイストドメイン内で、内部ドメイン壁は、交差する偏光子と検光子との間で同一の明るさおよび色を呈する領域を分離し(図1D)、この領域は、偏光子および検光子の交差が解かれた場合、非交差角の符号に応じてより暗くまたはより明るくなる(図2E図2F)。これは、逆の掌性[左手(LH)または右手(RH)]の同一のツイスト状態のペアの光学署名である。セル内の所与の場所で、オレンジ色から紫色の境界の通過により、巨視的キラリティへの自発転移を媒介する。図2で、デバイス200は、206と、第1の表面202を有する第1の材料と、第2の表面204を有する第2の材料とを含む。
【0040】
N-N転移で成長するn(x)の均一の方位配向場が、より冷たいプレート(x=d)でその好ましい配向を有し、より温かい表面(x=0)におけるあまりエネルギー的に好ましくない条件を有するため、本発明者らは、ツイスト状態へのより低いTの転移が、バルクディレクタ場のツイスト弾性エネルギー密度U=1/2K(∂φ(x)/∂x)を犠牲にして、より温かい表面におけるそのエネルギー的に好ましい配向へのn-Pの反転になることを提案する。そのような異方性表面相互作用のアンカリング強度の好都合なパラメータ化は、「表面侵入長さ」l=K/wによって与えられ、ここでKはツイスト弾性定数であり、wは関連するエネルギー密度係数である。LCディレクタにトルクを印加すると、線形φ(x)を誘起し、これにより表面への距離lをゼロにするように外挿する。典型的なラビングされたポリイミドの位置合わせにK=5pNおよびw≒10-4J/mを使うことで、本発明者らはl≒50nmを取得し、したがってここで使用される厚さ数ミクロンのLC膜の変形が生じ、表面におけるn(r)は、好ましい四重極配向のうちの1つに沿って本質的に固定される。LCにおけるπツイストの一部がd/(d+2l)≒1であるため、バルクフランク弾性によって伝送され、表面に印加されるトルクは、各表面における配向を四重極表面のラビングが好ましいエネルギー最小値φ≒0またはπより離れて動かさない。現在のANTIPOLAR表面では、より温かい表面上のWのこれらの最小値はφ=0およびφ=πであり、Wだけの理由で、φ=0の最小値はより高いエネルギーであり、φ=πの最小値はより低いエネルギーである。したがって、φ=0の最小値は準安定であり、Pの大きさの増大によりTが下がるにつれてwの大きさが増大すると、より温かい表面でφ=0からφ=πへの転移が可能になる。線形のπツイストφ(z)=πx/dの場合、この転移が発生するためのUからの条件は、w>Kπ/4d≒5x10-6J/mである。この最小要件は、wよりかなり小さい。LCの表面法線極性秩序の性質は、半導体表面上の5CBの完全な極性秩序の秩序化から、鏡映対称分子の場合の無秩序まで、広く変動する。強誘電性キラルスメクチックは、表面における好ましい法線分極反転および表面における分極の誘導を含む極性表面相互作用を呈する。後者の実験では、電気臨床的効果を呈するキラルスメクチックAは、表面に法線方向の有効表面場E≒2V/μmを受ける表面に分極の法線成分を有する。極力が静電気である場合、対応するエネルギー/区域Uは、相互作用体積の厚さであるlに依存し、U≒PElである。N相の場合、分子寸法の相互作用体積を仮定すると、類似の推定により、U≒10-4J/mおよびw=Usinψ≒10-5J/mが与えられるはずである。表面極性はまた、LC分極を誘起することができ、それによって表面近傍のフレキソエレクトリック秩序電気勾配を誘起することができる。
【0041】
図1Bに示すように、N-N成長面が近づくとより温かくなる表面の事象をより詳細に考慮すると、N相は、より温かいバフィングされた表面に接触するN相に取って代わり、そのディレクタは、四重極ディレクタ配向表面エネルギー最小値のうちの1つに位置する。Nディレクタは、同じ配向を有するが、この表面によってN相で誘起される極性配向は、近づいてくるN面の配向に整合せず、均一のディレクタ場にPPR壁が形成される。この幾何形状は、N-N転移に近い温度で少なくとも準安定である。より低い温度で、表面に近いnの配向がπだけ変化し、他の四重極最小値に転移するが、固定された表面にPを残す。xに沿った温度勾配が低減された場合、Nが両表面から成長し、PPR壁がバルク内に形成される。この事例は、図2Cに略図が示されており、図2Cはまた、発生しうる単純なトポロジカル転移を示し、それによってPPR壁におけるP-nの適当なツイスト変形が、Pの成分が逆になる大きさを低減させ、PPR壁を消滅およびツイスト壁の出現を招き、ツイスト壁が広がってセルを充填し、πT状態を与える。最初のツイストがPPR壁の幅を実質的に上回らなければならないため、これは障壁に制限される転移である。Tの勾配が存在する場合、より温かい表面の近くのPPR壁を消滅させるプロセスは本質的に同じである。そのような障壁に制限されるトポロジカル転移の結果、図2に見られる不均質な核形成および成長が生じる。均一なπツイスト状態間の鮮明な境界は、より温かいプレートにおけるφ=0°の表面状態に対する準安定性の証拠である。したがって、φ=0およびφ=-πにおける四重極表面エネルギー最小値間の表面配向転移はソリトンであり、キラルスメクチック強誘電性LC(SSFLC)における表面が安定されたπ再配向壁に構造が非常に類似しており、これはダブルサインゴードン方程式によって同様に記述される。
【0042】
πT状態を分離する壁はトポロジカルであり、2πツイスト壁(2πTW)である。これらの状態が図1図2に示されており、図1図2は、このセル幾何形状で、ラビング方向が電極エッジにほぼ平行な状態で、セル内の中央高さにおける分極P(x=d/2)が、πTL状態に対してy方向に、およびπTRに対して-y方向に、電極に法線方向であり、したがって印加場Eに対して平行または逆平行であることを示す。2πTWは、バルクnおよびP場における2πツイスト回位線からなる(図2図3)。図3のツイスト壁ループの電場誘起核形成を与えるトポロジカル転移はまた、障壁に制限されており、図3に見られるLHドメインの不均質核形成をもたらす。ツイストネマチックデバイスで用いられる他の形で縮退した異なるツイスト状態の相対安定性を制御するためのキラルドーピングと組み合わせて、適当なプレチルトを有する選択された双方向ラビングまたは単方向ラビングの位置合わせ表面を使用することによって、強誘電性ネマチックのn-P結合のツイスト平面再配向の事実上あらゆる幾何形状をプレート間で安定させることができることが、この議論から明らかなはずである。
【0043】
平面内の強誘電性光学および動力学- 上述した平面配向セルの幾何形状を考慮すると、電場誘起配向の動的応答は、主に電場回転(ERT)によってもたらされるものと、主に電場反転(ERV)によってもたらされるものとの2つの主要なタイプに分類することができる。この分割が、図4A図4Bの動的シミュレートされた1D電場誘起配向プロファイルφ(x,t)に示されており、図4A図4Bは、時間t=0でオンに切り換えられた印加平面内場Eに対する最初にLHのπT状態の応答のこれらの別個の動的制限を示す。図4Dは、ERTの事例であり、段階的な電場回転によって生成されるはずのEのこの種の変化の効果をモデリングする。ここでEは配向P=Pを優先し、これはセル中心における開始Pでもある[図2に示すP(x=d/2)=P]。この事象が終了した後、最終的な電場誘起構成(図4Dの黒色の曲線)が電場反転(ERV)にかけられる。無極性表面を有するセルの場合、これらの表面上の極性配向は独立して逆になることができ、均一のπTLおよびπTR状態の混合をもたらし、結果として得られる表面壁を印加場によって動かすことができる。対照的に、厚さ3.5μmのANTIPOLARセルにおいて、本発明者らは、電場に誘起される極性表面の再配向を観察し、表面はE場実験において好ましい極性最小値に留まり、本明細書で図4B図4Dに提示するANTIPOLARセルのシミュレーションは、固定の表面配向を有する。しかし一般に、有限のW(φ)に対して電場誘起トルクによって誘起される表面配向転移も存在しうる。本発明者らは、以下の3つの章において、ERT、ドメイン壁、およびERVの事例を考慮する。いずれの事例でも、電場変数Eは測定区域、すなわちERTおよびERVの事例におけるプローブレーザスポット、ならびにドメイン動的画像に対する電極間隙中心に印加されるものである。間隙中心E≒0.66v/(1mm)において、vは電極間隙に印加される電圧であり、低減は細い電極エッジからのx方向における電場の広がりによる。
【0044】
ERT動力学- ERT応答Δφにおいて、印加Eに対して平行になるためのPの電場誘起再配向は、|Δφ|≦90°である。電場印加トルクT=-PEsinφは、Pをφ=0の方へ回転させる傾向がある。図2DのπTφ(x)幾何形状にE>0を印加することで、P=6μC/cmおよび印加場E=40V/mmに対するdeGennes場侵入長さξ=√K/PE≒50nmと同等の厚さにツイストが絞られるx=0およびx=dの表面領域を除いて、固定されたトポロジーでセル内のどこでも連続してこの条件が取得される。ツイストが波長未満の厚さの表面領域に制限される電場E>1V/mmにおいて、このセルの光伝送は均一の複屈折スラブのものに近似し、交差する偏光子および検光子がyおよびzに沿って位置する状態で、ほぼ消光が得られる。このシミュレーションでは、E=40V/mmおよび表面アンカリングは無限に強いと仮定され、それぞれφ(x=0)=π/2およびφ(x=d)=-π/2に固定される。
【0045】
印加場への配向応答は、図4B図4Dにシミュレートする動的トルクバランス方程式T=γφ(x,t)=-PEsinφ(x,t)+Kφ(x,t)xxによって左右され、ここでγはネマチック回転粘度である。概してここで当てはまるように、ξ<<dの場合、強誘電性および粘度のトルクが優勢であり、強誘電性/粘度のトルクバランスが、サンプルの各ξ×ξ×ξ体積要素の応答を独立して制御する。φ(t)が体積内で均一になるように選ばれた場合、本発明者らは、-PEsinφ(t)=γφ(t)を取得し、これはφ(t)=2tan-1[tan(φ(x)/2)exp(-tPE/γ)]をもたらし、ここでφ(x)は当該体積におけるPとEとの間の開始角であり、さらにE=VIN/Lをもたらし、ここでLは有効電極間隙である。小さいφ(t)の場合、これは特徴的な弛緩時間τ=γ/PEを有する指数的動力学を与える。これらの近似φ(t)≒φ(t)/τによって、図4Dに実際に見られるように、再配向中にφ(x)の線形性が維持されるべきである。ERT再配向応答時間τは、固有粘度制限応答時間であり、所与のγおよびPに対して実現可能な最も速いものが1/Eでスケーリングされ、図4Dのシミュレーションから、図4Aに下部の白線としてグラフ化される。図4Eの4つの電極を含む幾何形状においてWest電極で短いEパルスを使用してT=110℃で厚さ5μmのランダム平面セルを再配向することによって、RM734でERT幾何形状の電気光学応答を測定した。最初にWest電極に小さいDCバイアスを印加してφ≒45°を与え、交差する偏光子と検光子との間の開始伝送強度Iを最大にした。均一の配向を仮定すると、伝送強度はI(φ(t))=Isin[2φ(t)]によって与えられる。φ(t)=φ(t)(青色の線)によって適合された典型的な測定応答(シアンの実線曲線)が、E=40V/mmの電場ステップに対してτ=γ/PE=71μ秒をもたらす。0.66V/mm<E<36V/mmの範囲で光学応答を測定し、I(φ(t))に適合させて、図4Aにシアンの正方形としてグラフ化されたτ対Eのデータを取得した。この範囲の下半分において、本発明者らは、φ(t)に対して予期されるように、τ∝1/Eであるが、より高い電場の場合、τはEに対してはるかにゆっくりと減少することを見出した。P=6μC/cmを使用してより低い電場データを適合させることで、γ=0.15Pa・sが与えられ、これはシミュレーションに使用されるτの値を提供し、図4Aに白色モデルの点線が与えられる。
【0046】
高電場での挙動を理解するために、本発明者らは、大きいPの値が印加場に対する配向の強い結合を提供するとともに、至る所に存在する空間電荷効果をもたらし、これにより運動状態が著しく遅くなり得ることを考慮する。ここで調査した平面内場セルのすべてにおいて、電極を有するN相の境界面に有効な薄い絶縁障壁が存在し、障壁は分極を有しておらず、または分極の配向が固定される。そのような層は、Nによって絶縁境界面に押し付けられる分極電荷からの自由電荷キャリアの物理的離隔距離を維持するのに印加電圧の一部を使用する。たとえば、位置合わせに使用された高分子膜はそのような層を生じさせるが、境界面がN/金である図4Eのセルでも、そのような絶縁層が存在する。静電容量Cファラッド/cmを有する場合、φ(t)に対する上記の方程式のE=VIN/Lは、E=VIN/L→[VIN-(P/C)cosφ(t)]/Lに従って修正されるべきであり、これにより減分極電圧(P/C)cosφ(t)によってEを低減させる。概して、これらのキャパシタは漏れやすく、自由電荷が分極電荷を通過し、このプロセスをCに並列の抵抗RΩ/cmとしてモデリングすることができる。本発明者らは次いで、E=VIN/L → (VIN/L){1-(P/C)cosφ(t)・exp[-t/RC]}を取得する。遅いEでは、応答はP/C電圧が弛緩するのに十分にゆっくりであり、LC層上に全VIN/L場を残し、τ=γ/PEの挙動を与える。
【0047】
ドメイン媒介動力学- 概して、小さい印加平面内Eの場合、LHおよびRHのπT状態は、電場との相互作用の異なる正味エネルギーを有する。その結果、どちらもセル内に存在する場合、これらの間の2πTW境界は、y,z平面内で動いて、電場内のより低いエネルギーのこれらの状態の区域を拡大させ、または新しいより低いエネルギーのものが核形成される。そのような2πTWの形成または運動は、本質的にヒステリシスであり、場合により双安定の電気光学効果を可能にする。平面内d=3.5μmのANTIPOLARセルを使用し、ITO電極が1mm隔置された2πTW形成の一例を、図3に示す。電場は非常にゆっくりと変動しており(約0.1Hz)、E<0.3V/mmで弱く、場の増大を伴うRHのπT状態の著しい連続歪みが、それほど歪んでいないLHのπTドメインの核形成および成長によって強化され、最終的にセル区域全体を占め(図3)、Eがゼロに戻った場合も残る。電場方向は逆並行バフィング方向の2等分線から3°ずれており、Pの反時計回りの再配向を優先する。その結果、ドメインを分離する2πツイスト壁は、接触すると相互に打ち消し合い、LH区域が成長すると消滅する。
【0048】
ERV動力学- ERV再配向は、ERTプロセスの最終構成(図4D図4Bの黒色実線の曲線)である電場が制限されたLH状態から開始し、Eの符号を反転させることによってシミュレートされる。ここで、セル中心全体が、Eとは反対の方向にPを有し、この配向でPは電場からゼロトルクを受け、したがって応答しない。しかし、Pが表面優先に再配向される表面付近ではトルクが存在し、したがってここで応答が開始し、速度v=ξ/τでセル中心の方へ伝播するソリトンに発展し、電場反転時間τ=d/2v≒τ(d/2ξ)内に中心に到達する。これにより、シートはx=d/2で中心に位置合わせされ、PはPの同等の配向間にδφ=2πの再配向をもたらす。このシートは、秩序再構築のトポロジカルプロセス、またはツイスト回位ループの自発的出現を介して消滅し、いずれの場合も掌性が変化して、電場に制限されるRHのπT構成を残す。シミュレート時間τは、図4Aに上部の白線としてグラフ化されており、Eとともにτ∝E-1/2として変動するのに対して、τ∝E-1である。この電場範囲では、ソリトンが到達するのを待つφ=0におけるPの経過時間のため、τはτに比べて大きい。
【0049】
ERV動力学は、図4Bにシミュレートするように、方形波駆動に対する図2のツイスト状態の応答において実験的に調べられた。光学応答により、ソリトン伝播(明るいピンク色)およびトポロジカル転移(明るい青色)の領域の識別が可能になる。図4Cは、t=0における方形波の電圧反転に続く時間に対する交差する偏光子/検光子を通る光伝送(Eに平行)を示す。この応答は、+/-および-/+の反転に対して同一であり、これはLHおよびRHの制限T状態間の完全な転移が反転ごとに得られることを示す。ソリトンが伝播し、再配向が完了した後、基線光伝送は非常にゆっくりであり、90°のみ回転し、厚さξの表面領域が光を減極させる。Eが増大すると、ソリトンがより細くなるため、進行するソリトンによる全体的な光伝送(明るいピンク色の領域)がより小さくなる。セル中心へのソリトンの到達は、別個の光ピーク(図4B図4Cの白色の円)によって示されており、φ(x)=0に関するφ(x)の一時的な延長された線形変動によってもたらされる(図4B図4Cの白色の円)。このピークの直後に秩序再構築が行われ、逆の掌性の制限状態(明るい青色の領域)への転移を完了する。この処理に対する全体的な転移時間τは、図4AでEに対してグラフ化され(点の色は図4Cの色に整合する)、τよりはるかに長い。図4Bのシミュレーションは、調整可能なパラメータをもたない類似のτ値を与え、すなわちERTデータからのγ/PE値のみを使用する。異なるセル幾何形状(黒色の点)であるが方形波駆動に対して得られる図3Cからの光学および分極場反転応答時間もグラフ化される(X.Chen、E.Korblova、D.Dong、X.Wei、R.Shao、L.Radzihovsky、M.Glaser、J.Maclennan、D.Bedrov、D.Walba、N.A.Clark、First-principles experimental demonstration of ferroelectricity in a thermotropic nematic liquid crystal: spontaneous polar domains and striking electro-optics、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 117、14021~14031(2020))。これらの応答時間は、図4B図4Cのものに同等であり、電場反転の類似の応答遅延作用を示す。興味深いことに、これらの個々のデータセットはすべて、ソリトンモデルで予期されるτ∝E-1/2ではなく、ほぼτ∝E-1の依存性を呈する。この相違は、最初に表面から離れて完全な極性秩序が存在し、P場がφ=0で安定するというソリトンモデルおよびシミュレーションにおける仮定による可能性がある。電場が切り換わると、この条件により、各ソリトンがセル厚さの2分の1、d/2だけ進み、セルを切り換える。しかし実際には、欠陥、表面の不完全性、および熱的変動により、Pはまれにセル内部でφ=0になるだけであり、電場が切り換わった後、トルクを受け、不均質に再配向し始める。このプロセスは、電場が増大するとより急速に進み、シーディングのサイズおよび配向の偏差に応じて、実質的に再配向されたドメインの局所的な核形成およびソリトン媒介成長を招く。そのようなドメインが出現して拡大する程度まで、ソリトンが及ぶべき距離が小さくなるため、完全な反転のための正味時間は減少する。τ∝E-1の挙動は、E-1/2に従ったEの増大とともに、平均ソリトン移動距離が減少することを示唆するはずである。図4AのERVデータは、これが普遍的な挙動となりうることを示唆するはずである。
【0050】
ネマチックおよび強誘電性ネマチックテキスチャ- LCは流動性および秩序の顕著な組合せを有し、表面への本質的に容易な巨視的応答になって現れる。平坦なプレート間の薄いセル内で、バルクLC構成は、表面相互作用によって強く影響され、表面、電場、および弾性エネルギーのバランスを反映するミクロンからミリメートル規模のバルク構造テーマである特有のテキスチャの形成をもたらす。典型的には減極伝送光顕微鏡法を使用するこれらのテキスチャの分析は、表面位置合わせ特性と、位相挙動、弾性、および対称性のような主要なバルクLC特性との両方の調査を可能にする。Friedelのスメクチックの発見は、この代表的な例である。セルにおいて、2つの表面の優先が異なる場合、概して、各優先は、任意の所与のセル内に、または多くのセルにおけるLC構造の統計的平均として、何らかの形でバルクに出現するはずである。たとえば、複合型の位置合わせされたセル(一方の側が表面に法線方向のnであり、他方の側が表面に平行なnである)の場合、広がりが曲がったネマチックテキスチャが両方の優先を呈する。2つの表面が構造的に同等であるが、好ましい配向が異なる場合、たとえば直交方向にラビングされている場合、異なる表面優先が何らかの形でバルクLC内に同等に表されなければならず、実際には90°ツイストされたネマチックテキスチャが形成される。他方では、平面に位置合わせされたスメクチックは、いくつかは0°表面をたどり、他は90°表面をたどる、セルを局所的に充填するドメインを形成することによって、そのような90°のセル内の表面に対応することができ、多くのセルで平均すると面積は等しくなる。
【0051】
これにより、LC位置合わせ物理学にとって新しいN相のセルが得られ、表面の極性秩序に対して類似の条件が現れる。2つのセル表面が異なる好ましい極性配向を有する場合、両方がセルテキスチャで確認されなければならない。これらの表面が構造的に同一であるが極性配向が異なる場合、相容れない極性配向が同等に表現されなければならない。ネマチックのそのような挙動の第1の明確な例は、図1図2に示す2つの表面上に反対の単方向バフィングを有するセルのπT状態である。これらの状態は、φ=π/2で対称の方位配向の分布を有し、したがって相容れない極性表面配向を同等に含む。このシナリオは、他方の表面でPPR壁を離れる一方の表面からのNの温度勾配の成長によって実現され、これはより低い温度で不安定になり、ツイスト状態の形成を招く。勾配のない冷却は、図2Cに示すように、セル内部にPPRの形成を招き、これは均一のディレクタ場を与え、PPR壁はセルプレートに平行であり、2つの表面優先間に転移を生じさせる。図2Cのツイスト状態への転移は、障壁で制限されており、したがってPPR壁は、ツイストに対するそのエネルギーコストに応じて安定または準安定している。勾配なしで冷却すると、N/N境界面が両面からセルに入り、互いに相互作用することができる。たとえば、熱的相互作用が存在し、熱を解放する一方の境界面の接近が他方の進行を遅らせるため、結合されたMullins-Sekerkraの不安定性の可能性が生じる。
【0052】
極性媒体- バルクFNのLC(たとえば、本明細書に記載する体積)は、連続する単位ベクトル場v(r)=P(r)/Pで充填された3D極性媒体として考えることができ、その3D構造は、その静電およびフランク弾性、ならびにその表面との相互作用の2D位置およびベクトル特性によって決定される。そのような3D極性媒体は、v(r)に沿って極性溶質分子を局所的に配向するベクトル溶剤として作用することができる。本発明者らが、バルクFNのRM734中の単一のRM734分子を、強誘電性ネマチック溶剤における理想的な試験溶質分子であると見なした場合、P=6μC/cmに対して、本発明者らは、原子シミュレーションから、その分子双極子が逆平行配向に対するv(r)に平行な状態で、そのような溶質分子をその好ましい配向から反転させるために、約10kTの静電エネルギーコストを推定することができる。したがって、v(r)は、適当な立体および双極性構造を有する分子(たとえば、長手方向の平均双極子モーメントを有する棒状分子)にとって実質的に強く位置合わせする電場であり、最終的に表面によって制御される。
【0053】
本発明者らは、強誘電性ネマチックにおいて、巨視的電場変数への結合を提供する上で表面極性が完全に新しい役割を担うことを示してきた。
材料および方法
RM734の合成- 4-[(4-ニトロフェノキシ)カルボニル]フェニル2,4-ジメトキシ安息香酸(RM734)が、上記で引用したMandleらによって最初に合成された棒状メソゲンである。等方性(I)相およびネマチック性の2つの追加の位相を有し、転移温度はI-187℃-N-133℃-N-Xであることが報告された。参考文献(M.O’Neill、S.M.Kelly、Photoinduced surface alignment for liquid crystal displays.J.Phys.D-Appl.Phys.33 R67~R84(2000).DOI:10.1088/0022~3727/33/10/201)に記載されている本発明者らの準備により、I-188℃-N-133℃-N-Xの転移温度が与えられる。
【0054】
印加電場への応答の観察- 所望の間隙dに隔置されたガラスプレート間にLCサンプルを充填することによって、実験セルを形成した。平面内電場の印加のために、プレート(たとえば、102、104、202、204)を、リトグラフでパターン化されたITOまたは金の電極で被覆した。プレートは、表面を有する材料とすることができる。単方向にバフィングされた位置合わせ層を有するセルをInstec,Inc.から取得した。温度が制御された環境で実験を実行し、減極伝送光顕微鏡法を使用して電気光学的観察を実施し、研究用顕微鏡の回転台にセルを取り付け、偏光子間の伝送光によって撮像した。
【0055】
図5は、本開示の様々な実施形態および実施例によるデバイス500を示す。デバイス500は、体積502と、体積502に接触する1つまたは複数の表面508、510を含む1つまたは複数の材料504、506とを含む。デバイス500はまた、体積に電場を印加するための1つまたは複数の電気接続512、514と、体積に電磁場電場を印加するための装置516とを含む。
【0056】
上述した本開示の例示的な実施形態は、これらの実施形態は本発明の実施形態の単なる例であるため、本発明の範囲を限定するものではない。あらゆる同等の実施形態が、本発明の範囲内に入ることが意図される。実際には、本明細書に図示および記載したものに加えて、記載する要素の代替の有用な組合せなどの本開示の様々な修正が、本説明から当業者には明らかであろう。そのような修正および実施形態もまた、添付の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】