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特表2024-502061組換えバチルス属微生物およびこれを用いた母乳オリゴ糖製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】組換えバチルス属微生物およびこれを用いた母乳オリゴ糖製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/54 20060101AFI20240110BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240110BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240110BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20240110BHJP
   C12P 19/18 20060101ALI20240110BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
C12N15/54 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/21
C12N1/20 A
C12P19/18
C12N15/31
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540465
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(85)【翻訳文提出日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 KR2021020000
(87)【国際公開番号】W WO2022145944
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0189491
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500578515
【氏名又は名称】サムヤン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ウンヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ブス
(72)【発明者】
【氏名】イ,サンヒ
(72)【発明者】
【氏名】クォン,スンギュ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウンス
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AF04
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA10
4B065AA15X
4B065AA15Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BC01
4B065CA21
4B065CA29
4B065CA41
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、組換えバチルス属微生物およびこれを用いた母乳オリゴ糖製造方法に関するものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-1,2-フコース転移酵素をコードする核酸配列と、これと作動可能に連結された調節配列を含み、
前記調節配列は恒常的発現プロモーターを含むものである、
バチルス属(Bacillus sp.)微生物でα-1,2-フコース転移酵素を発現する遺伝子発現カセット(gene expression cassette)。
【請求項2】
前記恒常的発現プロモーターは、p3610、p12455、p24930、pTu、およびpPDCからなる群より選択された1種以上である、請求項1に記載の遺伝子発現カセット。
【請求項3】
前記調節配列は、配列番号21の核酸配列を含むリボソーム結合部位(Ribosome Binding Site、RBS)を含む、請求項1に記載の遺伝子発現カセット。
【請求項4】
前記α-1,2-フコース転移酵素をコードする核酸配列は、配列番号1~5からなる群より選択された1種以上のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むものである、請求項1に記載の遺伝子発現カセット。
【請求項5】
前記α-1,2-フコース転移酵素をコードする核酸配列は、配列番号6~10からなる群より選択された1種以上の核酸配列を含むものである、請求項1に記載の遺伝子発現カセット。
【請求項6】
前記遺伝子発現カセットは、ラクトース膜輸送タンパク質をコードする核酸配列を追加的に含むものである、請求項1に記載の遺伝子発現カセット。
【請求項7】
前記ラクトース膜輸送タンパク質は、Lac12およびLacYからなる群より選択された1種以上である、請求項6に記載の遺伝子発現カセット。
【請求項8】
前記ラクトース膜輸送タンパク質の調節配列を追加的に含み、前記調節配列はプロモーターおよびRBSからなる群より選択された1種以上である、請求項6に記載の遺伝子発現カセット。
【請求項9】
前記バチルス属微生物は、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、およびバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)からなる群より選択された1種以上である、請求項1に記載の遺伝子発現カセット。
【請求項10】
請求項1~9のうちのいずれか一項によるα-1,2-フコース転移酵素を発現する遺伝子発現カセットを含むベクター。
【請求項11】
前記ベクターは、図1aの切断地図を有する組換えベクターである、請求項10に記載のベクター。
【請求項12】
請求項1~9のうちのいずれか一項による遺伝子発現カセットを含むか、前記発現カセットを含むベクターで形質転換された組換えバチルス属微生物。
【請求項13】
前記ベクターは、フコース合成遺伝子発現カセットを追加的に含むものである、請求項12に記載の微生物。
【請求項14】
前記微生物は、フコース合成遺伝子発現カセットを含むベクターを追加的に含むものである、請求項12に記載の微生物。
【請求項15】
前記フコース合成遺伝子発現カセットは、
GTPマンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼをコードする核酸配列、ホスホマンノムターゼをコードする核酸配列、GDP-L-フコースシンターゼ(WcaG)をコードする核酸配列、およびGDP-D-マンノース-4,6-デヒドラターゼをコードする核酸配列からなる群より選択された1種以上と、これと作動可能に連結された調節配列を含み、
前記調節配列は恒常的発現プロモーターを含むものである、請求項13または14に記載の微生物。
【請求項16】
前記フコース合成遺伝子発現カセットに含まれる調節配列は、p3610、p12455、p24930、p0706、pTu、およびpPDCからなる群より選択された1種以上の恒常的発現プロモーターを含むものである、請求項15に記載の微生物。
【請求項17】
前記フコース合成遺伝子発現カセットを含むベクターは、図1bの切断地図を有する組換えベクターである、請求項14に記載の微生物。
【請求項18】
前記バチルス属微生物は、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、およびバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)からなる群より選択された1種以上である、請求項12に記載の微生物。
【請求項19】
請求項12に記載の組換えバチルス属微生物を用いて得られたα-1,2-フコース転移酵素、前記微生物の菌体、前記微生物の培養物、前記微生物の破砕物、および前記破砕物または培養物の抽出物からなる群より選択された1種以上を含む、2'-フコシルラクトース生産用組成物。
【請求項20】
請求項1~9のうちのいずれか一項による遺伝子発現カセットを含むか、前記発現カセットを含むベクターで形質転換された組換えバチルス属宿主細胞を培養する工程を含む、2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フコース転移酵素を生産する組換えバチルス属微生物およびこれを用いた母乳オリゴ糖製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
母乳中含量が最も高いオリゴ糖三つを含む137種がフコシル化されており、その比率が約77%であり、残りのオリゴ糖は大部分シアル化されたもの(39個)で約28%に該当する。このうち、特に2’-フコシルラクトースと3’-フコシルラクトースは、プレバイオティク(prebiotic)効果、病原菌腸内付着抑制効果、そして免疫調節システム調節効果などを有する。Prebiotic効果は、今まで最も多くの研究が行われ、母乳のオリゴ糖は、乳児の腸で初期に優占種として育つBifidobacterium bifidumの生育を選択的に増進させる反面、有害菌によっては用いられない。また、母乳オリゴ糖は病原菌の腸内付着を抑制すると知られており、これは腸内レクチン(lectin)と結合する病原菌の細胞壁多糖体構造が時々母乳オリゴ糖の一部構造と類似しているためである。したがって、母乳オリゴ糖が水溶性リガンド類似体を提供して、母乳授乳乳児が病原菌による感染に耐性を有すると見られる。しかし、女性の約20%は、2’-フコシルラクトースを合成するフコース転移酵素の変異によって、体内でこれらを十分に合成できないと知られている。これによって、2’-フコシルラクトースの産業的生産が必要であるのが実情である。
【0003】
母乳オリゴ糖の一部は、大部分哺乳動物(霊長類、牛、豚、ヤギ、羊、象)の乳でも少量発見される。このうち、ヤギの乳が母乳オリゴ糖組成と最も類似しており、これによって、ヤギ乳チーズ生産工程の乳清副産物から大規模膜利用分離技術が提示された。また、最近開発された固相化学合成法(solid-phase synthesis)を用いると、一日内にLewis X-Lewis Y糖を生産することができ、crystalline intermediate technologyを用いることにより、2’-フコシルラクトースの速い合成が可能になった。しかし、前記分離法や化学的合成法の開発にもかかわらず、母乳オリゴ糖の産業化のための大量生産にはいくつかの障害が残っており、これは本技術の低い立体選択性、低い総収率と毒性試薬の使用などが食品または薬品産業に適しないためである。従って、より環境にやさしく収率の高い生産法が必要になり、最近、微生物による高濃度の2’-FL生産方法が報告される傾向にある。
【0004】
しかし、2’-フコシルラクトース生合成遺伝子は、Bio Safety Level 2菌株Helicobacter pyloriから確保された2’-フコシルラクトースを使用して主に母乳授乳代替用粉乳および乳児用食品に適用時消費者の認識に否定的な要素として作用することがあり、国内生産販売許可に適しなかった。したがって、食品添加物としてより安定性の高い遺伝子を適用してBio Safety Level 1菌株開発を通じた2’-フコシルラクトース生産が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一例は、α-1,2-フコース転移酵素をコードする核酸配列と、これと作動可能に連結された調節配列を含む、バチルス属(Bacillus sp.)微生物でα-1,2-フコース転移酵素を発現する遺伝子発現カセット(gene expression cassette)を提供するためのものである。
【0006】
本発明のまた他の一例は、前記α-1,2-フコース転移酵素を発現する遺伝子発現カセットを含むベクター(vector)を提供するためのものである。
【0007】
本発明のまた他の一例は、前記遺伝子発現カセットを含み、α-1,2-フコース転移酵素を生産する組換えバチルス属(Bacillus sp.)微生物を提供するためのものである。
【0008】
本発明のまた他の一例は、前記組換えバチルス属微生物を用いて得られたα-1,2-フコース転移酵素、前記微生物の菌体、前記微生物の培養物、前記微生物の破砕物、および前記破砕物または培養物の抽出物からなる群より選択された1種以上を含む、2'-フコシルラクトース生産用組成物を提供するためのものである。
【0009】
本発明のまた他の一例は、前記遺伝子発現カセットを含む組換えバチルス属微生物を培養する工程を含む、2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)の製造方法を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、α-1,2-フコース転移酵素をコードする核酸配列と、これと作動可能に連結された調節配列を含むバチルス属(Bacillus sp.)微生物でα-1,2-フコース転移酵素を発現する遺伝子発現カセット、前記遺伝子発現カセットを含む組換えバチルス属微生物、およびこれを用いて母乳オリゴ糖中2'-フコシルラクトースを生産する方法に関するものであって、多様な遺伝子変異を導入して組換えバチルス属微生物を製造し、前記微生物の2'-フコシルラクトース生産量を最適化する方法に関するものである。具体的に、本発明は、2'-フコシルラクトース合成に関与する酵素ManB、ManC、WcaG、Gmdの選別、基質であるlactoseを菌株がよく用いることができるように分解経路遮断および膜輸送タンパク質(lacY)過発現、新規恒常的発現プロモーターの選別およびバチルス属微生物に導入して2'-フコシルラクトースを生産することに関するものである。
【0011】
本明細書で“発現カセット”は、発現対象核酸配列の発現に関与する遺伝子を含むものであって、前記α-1,2-フコース転移酵素を発現する遺伝子発現カセットは、α-1,2-フコース転移酵素の生産に関与する遺伝子を含み、具体的にはα-1,2-フコース転移酵素のコーディング核酸配列に機能的に連結された調節配列を含む。したがって、発現ユニットと異なり、発現カセットは、転写および翻訳を調節する核酸配列だけでなく、転写および翻訳の結果としてタンパク質として発現されるのに必要な核酸配列を含む。
【0012】
本明細書で“調節配列”は、プロモーターを含み発現対象核酸配列または遺伝子に機能的に連結された後に前記核酸または前記遺伝子の発現、即ち、転写および翻訳を調節する発現活性を有する核酸を意味する。
【0013】
本明細書で“プロモーター”、“プロモーター活性を有する核酸分子”または“プロモーター配列”は、転写対象の目的核酸配列に機能的に連結されて前記目的核酸配列の転写を調節する核酸を意味する。
【0014】
転写対象核酸配列は、化学的意味で必ずしもプロモーターに直接連結を必要とするのではなく、追加的な遺伝子調節配列および/またはリンカー核酸配列などを含むことができる。転写対象目的核酸配列がプロモーター配列の下部に(即ち、プロモーター配列の3’末端に)位置する配列が好ましい。プロモーター配列と転写対象核酸配列の間の距離は、例えば、200個塩基未満、または100個塩基未満であってもよい。
【0015】
本明細書で“リボソーム結合部位(RBS)”の配列(またはシャイン-ダルガノ配列とも称する)は、A/Gリッチポリヌクレオチド配列を意味する。
【0016】
本明細書で“作動可能に連結された(operably linked)”は、一般的機能を果たすように核酸発現調節配列と目的とするタンパク質またはペプチドをコードする核酸配列が機能的に連結(functional linkage)されている状態を意味する。例えば、プロモーターとタンパク質またはペプチドをコードする核酸配列が作動可能に連結されてコーディング配列の発現に影響を与えることができる。発現ベクターとの作動的連結は、当該技術分野でよく知られた遺伝子組換え技術を用いて製造することができ、部位特異的DNA切断および連結は当該技術分野で一般に知られた酵素などを使用することができる。
【0017】
本発明による全ての核酸分子は、好ましくは自然に存在しない形態(non-naturally occurring)であり、単離された核酸分子の形態または合成されたまたは組換え方法によって製造される核酸分子である。“単離された”核酸分子は、前記核酸の天然供給源に存在する他の核酸分子から除去され、追加的に、組換え技術によって製造される場合、本質的に他の細胞性物質または培養培地が存在しないか、化学的に合成される場合には化学的前駆体または他の化学物質が存在しないことになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、バイオセーフティーレベル1(biosafety level 1)であるGRAS(Generally Recognized As Safe)菌株を用いて2’-フコシルラクトースを生産することができ、安定性側面から消費者の憂慮がなく、2’-フコシルラクトース生産能に優れた組換えバチルス属微生物、およびこれを用いた2’-フコシルラクトース生産方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1a】本発明の一例によるベクター切断地図(cleavage map)である。
図1b】本発明の一例によるベクター切断地図(cleavage map)である。
図1c】本発明の一例による組換え微生物の2'-フコシルラクトース生合成経路を示した図である。
図2】本発明の一例によってX-gal実験を通じた野生型と△LacZ変異株の表現型比較結果を示した図である。
図3】本発明の一例によって時間による△LacZ変異株と野生型のラクトース残存量比較結果を示した図である。
図4】本発明の一例によって△LacZ変異株への恒常的発現プロモーターの導入による2'-フコシルラクトース生産性効果を示した図である。
図5】本発明の一例によって△LacZ変異株へのLac12導入による2'-フコシルラクトースの生産効果を示した図である。
図6】本発明の一例によって△LacZ変異株にLacY導入による2'-フコシルラクトースの生産効果を示した図である。
図7】本発明の一例によって△LacZ変異株に多様なGDP-fuc合成酵素の組み合わせを通じた生産性比較結果を示した図である。
図8】本発明の一例によって△LacZ変異株に多様なGDP-fuc酵素と恒常的発現プロモーターを組み合わせた菌株別の2'-フコシルラクトースの生産比較結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の一例は、α-1,2-フコース転移酵素をコードする核酸配列と、これと作動可能に連結された調節配列を含む、バチルス属(Bacillus sp.)微生物でα-1,2-フコース転移酵素を発現する遺伝子発現カセット(gene expression cassette)に関するものである。
【0021】
本発明の一例によるα-1,2-フコース転移酵素をコードする核酸配列と作動可能に連結された調節配列は、前記α-1,2-フコース転移酵素をコードする核酸配列の上流(upstream)に作動可能なように連結され、転写プロモーターを含み、追加的にリボソーム結合部位(Ribosome Binding Site、RBS)を含むことができる。
【0022】
本発明の一例によるα-1,2-フコース転移酵素をコードする核酸配列と作動可能に連結された調節配列は、p3610、p12455、p24930、pTu(バチルス・メガテリウム14581genome上のelongation factor Tuプロモーター)、およびpPDC(pyruvate decarboxylaseプロモーター)からなる群より選択された1種以上の恒常的発現プロモーターを含むものであってもよく、前記プロモーターは下記表1に例示的に記載する。前記プロモーターは、配列番号11~15からなる群より選択された1種以上の核酸配列を含むものであってもよい。一例として、前記プロモーターは、p12455および/またはpTuプロモーターを含むものであってもよい。一例として、前記プロモーターは、配列番号12および/または配列番号14の核酸配列を含む核酸分子を含むものであってもよい。
【0023】
【表1】
【0024】
前記恒常的発現プロモーターは、その下部に位置するα-1,2-フコース転移酵素をコードする核酸配列の転写を調節して2’-フコシルラクトース生産能を改善するものであり得る。具体的に、前記プロモーターは、2’-フコシルラクトース生産能をキシロース誘導プロモーター(pxylプロモーター)に対比して、1.05倍以上、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.45倍以上、1.5倍以上、1.55倍以上、または1.6倍以上増加させるものであり得る。前記2’-フコシルラクトース生産能は、30℃温度、pH7.0条件で測定されたものであり得る。
【0025】
前記恒常的発現プロモーターは、2’-フコシルラクトース生産能を改善するものであり得る。具体的に、前記調節配列は、2’-フコシルラクトース生産能をキシロース誘導プロモーター(pxylプロモーター)に対比して、1.05倍以上、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、2倍以上、2.4倍以上、3倍以上、3.4倍以上、または3.9倍以上増加させるものであり得る。前記2’-フコシルラクトース生産能は、18℃温度、pH7.0条件で測定されたものであり得る。
【0026】
前記恒常的発現プロモーターは、低温での2’-フコシルラクトース生産能を改善するものであり得る。前記低温は、例えば、10~30℃未満、10~29℃、10~28℃、10~27℃、10~26℃、10~25℃、10~24℃、10~23℃、10~22℃、10~21℃、10~20℃、15~30℃未満、15~29℃、15~28℃、15~27℃、15~26℃、15~25℃、15~24℃、15~23℃、15~22℃、15~21℃、または15~20℃、例えば18℃の温度であり得る。具体的に、前記調節配列は、18℃温度での2’-フコシルラクトース生産能を30℃温度での2’-フコシルラクトース生産能に対比して、1倍超過、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.75倍以上、1.8倍以上、または1.85倍以上増加させるものであり得る。前記低温での2’-フコシルラクトース生産能を改善する恒常的発現プロモーターの具体的一例は、p12455であってもよく、一例として配列番号12の核酸配列を有するものであってもよい。
【0027】
本発明の一例によるα-1,2-フコース転移酵素をコードする核酸配列と作動可能に連結された調節配列は、リボソーム結合部位(Ribosome Binding Site、RBS)を追加的に含むものであってもよく、具体的に、配列番号21の核酸配列を含むRBS配列を追加的に含むものであってもよい。
【0028】
本発明による遺伝子発現カセットは、バチルス属(Bacillus sp.)微生物でα-1,2-フコース転移酵素を発現するものであって、α-1,2-フコース転移酵素をコードする核酸配列は特に限定されず、例えば、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)またはバチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)に由来したものであってもよい。例えば、前記α-1,2-フコース転移酵素は、配列番号1~5からなる群より選択された1種以上のアミノ酸配列を有するものであってもよい。
【0029】
具体的に、本発明の一例によるα-1,2-フコース転移酵素を下記表2に例示的に記載する。よって、前記α-1,2-フコース転移酵素をコードする核酸配列は、配列番号1~5からなる群より選択された1種以上のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む核酸分子を含むことができる。
【0030】
【表2】
【0031】
例えば、前記α-1,2-フコース転移酵素をコードする核酸配列は、配列番号6~10からなる群より選択された1種以上の核酸配列を含むものであってもよい。具体的に、本発明の一例によるα-1,2-フコース転移酵素をコードする核酸配列を下記表3に例示的に記載する。
【0032】
【表3-1】
【0033】
【表3-2】
【0034】
本発明の一例によるα-1,2-フコース転移酵素を発現する遺伝子発現カセットは、ラクトース膜輸送タンパク質(lactose permease)をコードする核酸配列を追加的に含むものであってもよい。前記ラクトース膜輸送タンパク質は、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)またはバチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)由来のものであってもよい。
【0035】
例えば、前記ラクトース膜輸送タンパク質は、Lac12および/またはLacYであってもよい。具体的に、前記ラクトース膜輸送タンパク質は、配列番号17および/または配列番号18のアミノ酸配列を含むものであってもよい。さらに具体的に、前記Lac12は配列番号17を有するものであってもよく、前記LacYは配列番号18を有するものであってもよい。
【0036】
例えば、前記ラクトース膜輸送タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号19および/または配列番号20の核酸配列を含むものであってもよい。さらに具体的に、前記Lac12をコードする核酸配列は、配列番号19の核酸配列を含むものであってもよく、前記LacYをコードする核酸配列は、配列番号20の核酸配列を含むものであってもよい。
【0037】
前記ラクトース膜輸送タンパク質は、2’-フコシルラクトース生産能を改善するものであり得る。具体的に、前記ラクトース膜輸送タンパク質をコードする核酸配列を追加的に含む遺伝子発現カセットは、ラクトース膜輸送タンパク質をコードする核酸配列を含まない遺伝子発現カセットに対比して、2’-フコシルラクトース生産能を、1.1倍以上、1.2倍以上、1.25倍以上、または1.3倍以上増加させるものであり得る。前記2’-フコシルラクトース生産能は、30℃温度、および7.0pH条件で測定されたものであり得る。
【0038】
具体的一例として、前記ラクトース膜輸送タンパク質はLacYであり、2’-フコシルラクトース生産能を改善するものであり得る。具体的に、LacYをコードする核酸配列を含む遺伝子発現カセットは、Lac12をコードする核酸配列を含む遺伝子発現カセットに対比して、2’-フコシルラクトース生産能を、1.05倍以上、1.1倍以上、1.14倍以上、または1.15倍以上増加させるものであり得る。前記2’-フコシルラクトース生産能は、30℃温度、7.0pH条件で測定されたものであり得る。
【0039】
本発明の一例によるα-1,2-フコース転移酵素を発現する遺伝子発現カセットは、前記ラクトース膜輸送タンパク質をコードする核酸配列の調節配列を追加的に含み、前記ラクトース膜輸送タンパク質をコードする核酸配列の調節配列は、プロモーターおよび/またはRBSであってもよい。例えば、前記ラクトース膜輸送タンパク質をコードする核酸配列の調節配列は、配列番号22の核酸配列を含むリボソーム結合部位(RBS)を含むものであってもよい。
【0040】
本発明の具体的一例によれば、前記バチルス属微生物は、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、およびバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)からなる群より選択された1種以上のものであってもよく、一例としてバチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0041】
本発明の一例によるα-1,2-フコース転移酵素を発現する遺伝子発現カセットは、5’末端から3’末端方向に順次に位置する、転写プロモーター、RBS、およびα-1,2-フコース転移酵素をコードする核酸分子を含むものであってもよい。好ましくは、前記遺伝子発現カセットは、5’末端から3’末端方向に順次に位置する、転写プロモーター、RBS、α-1,2-フコース転移酵素をコードする核酸分子、およびラクトース膜輸送タンパク質をコードする核酸配列を含むものであってもよい。さらに好ましくは、前記遺伝子発現カセットは、5’末端から3’末端方向に順次に位置する、プロモーター、RBS、α-1,2-フコース転移酵素をコードする核酸分子、ラクトース膜輸送タンパク質をコードする核酸配列の調節配列、およびラクトース膜輸送タンパク質をコードする核酸配列を含むものであってもよい。前記プロモーター、前記RBS、前記ラクトース膜輸送タンパク質などは、前述の通りである。
【0042】
本発明の一例で、前記α-1,2-フコース転移酵素を発現する発現カセットは、発現のためのポリヌクレオチド配列であって、複製起点、リーダー(leader)、選択可能なマーカ、クローニング部位および制限酵素認識部位からなる群より選択された1種以上の配列を追加的に含むことができる。
【0043】
本発明のまた他の一例は、本発明によるα-1,2-フコース転移酵素を発現する遺伝子発現カセットを含むベクター(vector)、特にシャトルベクターまたはプラスミドベクターに関するものである。前記α-1,2-フコース転移酵素を発現する遺伝子発現カセットは、前述の通りである。
【0044】
本発明の一例による組換えベクターは、当該技術分野に広く知られた方法を通じてクローニングのためのベクターまたは発現のためのベクターとして構築できる。前記組換えベクターは、遺伝子組換えに用いられるベクターであれば全て使用可能であり、例えば、プラスミド発現ベクター、ウイルス発現ベクター(例、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ連関ウイルス)およびこれらと同等な機能を果たすことができるウイルスベクターなどからなる群より選択されたものであってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0045】
例えば、前記組換えベクターは、pMM1525、pHIS1525、pSTOP1622、およびpMGBm19ベクターなどからなる群より選択されたものから製作されたものであってもよく、例えばP3stop1623 2RBSベクターであってもよい。
【0046】
前記遺伝子発現カセットのポリヌクレオチドは、それ自体で、または前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターの形態で使用できる。前記組換えベクターとは、作動可能なように連結された目的ポリヌクレオチドを伝達することができる組換え核酸分子を意味し、前記目的ポリヌクレオチドは、プロモーターおよび転写終結因子などからなる一つ以上の転写調節要素と作動可能に連結されているものであってもよい。
【0047】
一例として、前記ベクターは、図1aの切断地図を有する組換えベクターであってもよい。
【0048】
本発明の一例によれば、前記ベクターは、α-1,2-フコース転移酵素を発現する発現カセットに加えて、フコース合成遺伝子発現カセットを追加的に含むものであってもよい。
【0049】
前記フコース合成遺伝子発現カセットは、フコース合成遺伝子をコードする核酸配列と、これと作動可能に連結された調節配列を含むものであってもよい。
【0050】
具体的に、前記フコース合成遺伝子発現カセットは、GTPマンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ(ManC)をコードする核酸配列、ホスホマンノムターゼ(HypoまたはMnB)をコードする核酸配列、GDP-L-フコースシンターゼ(WcaG)をコードする核酸配列、およびGDP-D-マンノース-4,6-デヒドラターゼ(Gmd)をコードする核酸配列からなる群より選択された1種以上と、これと作動可能に連結された調節配列を含むものであってもよい。好ましくは、前記フコース合成遺伝子発現カセットは、GTPマンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ(ManC)を含むものであってもよい。
【0051】
例えば、前記フコース合成遺伝子発現カセットは、配列番号23~26からなる群より選択された1種以上のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むものであってもよい。
【0052】
例えば、前記フコース合成遺伝子発現カセットは、配列番号27~30からなる群より選択された1種以上の核酸配列を含むものであってもよい。
【0053】
前記フコース合成遺伝子をコードする核酸配列と作動可能に連結された調節配列は、前記フコース合成遺伝子の上流(upstream)に作動可能なように連結され、転写プロモーターを含み、追加的にリボソーム結合部位(Ribosome Binding Site、RBS)を含むことができる。
【0054】
例えば、前記フコース合成遺伝子をコードする核酸配列と作動可能に連結された調節配列は、p3610、p12455、p24930、p0706、pTu、およびpPDCからなる群より選択された1種以上の恒常的発現プロモーターを含むものであってもよい。例えば、前記調節配列は、配列番号11~16からなる群より選択された1種以上を含むものであってもよい。一例として、前記調節配列は、p12455および/またはp0706プロモーターを含むものであってもよい。具体的に、前記調節配列は、配列番号12および/または配列番号16の核酸配列を含む核酸分子を含むものであってもよい。
【0055】
前記フコース合成遺伝子をコードする核酸配列と作動可能に連結された調節配列は、配列番号31の核酸配列を含むリボソーム結合部位(Ribosome Binding Site、RBS)を追加的に含むものであってもよい。
【0056】
本発明のまた他の一例は、本発明による少なくとも一つの遺伝子発現カセットを運搬するベクター、特にシャトルベクターまたはプラスミドベクターを含む組換え微生物、特にバチルス属微生物に関するものである。即ち、本発明のまた他の一例は、本発明による遺伝子発現カセットを含むか、前記発現カセットを含むベクターで形質転換された組換えバチルス属微生物に関するものである。
【0057】
前記組換えベクターで宿主細胞を形質転換する方法は、当業界に公知の全ての形質転換方法を特別な制限なく選択して使用することができ、例えば、細菌原形質体の融合、電気穿孔法、遺伝子銃法(projectile bombardment)、およびウイルスベクターを使用した感染などから選択されたものであってもよい。
【0058】
本発明の一例による組換えバチルス属微生物は、導入されたα-1,2-フコース転移酵素を過発現することができ、したがって長期間安定的に高いα-1,2-フコース転換能を提供することができる。したがって、前記組換えバチルス属微生物は、α-1,2-フコース製造に有用に使用でき、α-1,2-フコース生産収率を向上させることができる。
【0059】
本発明の一例による組換えバチルス属微生物は、フコース合成能を有するか、フコース合成能が改善されたものであってもよい。具体的に、本発明の一例による組換え微生物は、フコース合成酵素、例えばGDP-D-マンノース-4,6-デヒドラターゼ(GDP-D-mannose-4,6-dehydratase)、GDP-L-フコースシンターゼ(GDP-L-fucose synthase、WcaG)、ホスホマンノムターゼ(phosphomannomutase)、およびGTPマンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ(GTP-mannose-1-phosphate guanylyltransferase)からなる群より選択された1種以上を保有していることを特徴とすることができる。
【0060】
具体的な一例として、前記フコース合成能が改善された組換えバチルス属微生物は、GDP-D-マンノース-4,6-デヒドラターゼ(GDP-D-mannose-4,6-dehydratase)、GDP-L-フコースシンターゼ(GDP-L-fucose synthase、WcaG)、ホスホマンノムターゼ(phosphomannomutase)、およびGTPマンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ(GTP-mannose-1-phosphate guanylyltransferase)が導入されたものであってもよい。
【0061】
具体的一例として、前記フコース合成能が改善された組換えバチルス属微生物は、GTPマンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ(ManC)が導入され、ホスホマンノムターゼ(Hypo)は導入されていないものであってもよい。
【0062】
具体的一例として、前記フコース合成能が改善された組換えバチルス属微生物は、ホスホマンノムターゼ(Hypo)が導入され、GTPマンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ(ManC)が導入されていないものであってもよい。
【0063】
具体的一例として、前記フコース合成能が改善された組換えバチルス属微生物は、GDP-L-フコースシンターゼ(WcaG)が導入され、GDP-D-マンノース-4,6-デヒドラターゼ(Gmd)が導入されていないものであってもよい。
【0064】
具体的一例として、前記フコース合成能が改善された組換えバチルス属微生物は、GDP-D-マンノース-4,6-デヒドラターゼ(Gmd)が導入され、ホスホマンノムターゼ(phosphomannomutase)、および/またはGTPマンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ(GTP-mannose-1-phosphate guanylyltransferase)が追加的に導入されたものであってもよい。
【0065】
具体的に、前記組換えバチルス属微生物は、前記組換えバチルス属微生物に導入されるベクターがフコース合成遺伝子発現カセットを含んでフコース合成能が改善されたものであるか、前記組換えバチルス属微生物がフコース合成遺伝子発現カセットを含むベクターを追加的に含んでフコース合成能が改善されたものであり得る。即ち、本発明の一例による組換えバチルス属微生物は、本発明によるα-1,2-フコース転移酵素を発現する遺伝子発現カセットを含むベクターと共に、フコース合成遺伝子を発現する遺伝子発現カセットを含む別途のベクターを追加的に含むものであり得る。一例として、前記フコース合成遺伝子発現カセットを含むベクターは、図1bの切断地図を有する組換えベクターであり得る。
【0066】
よって、本発明の一例による組換えバチルス属微生物は、α-1,2-フコース転移酵素の過発現特性と共に、フコース合成能が改善されてα-1,2-フコース生産収率がさらに向上できる。
【0067】
具体的に、前記フコース合成能を有するか、フコース合成能が改善された組換えバチルス属微生物は、フコース合成能を有しない対照群に対比して、2’-フコシルラクトース生産能が、1.05倍以上、1.1倍以上、1.15倍以上、または1.18倍以上増加させるものであり得る。前記フコース合成能を有しない対照群は、例えば、フコース合成遺伝子を過発現していない対照群、またはフコース合成遺伝子を導入していない対照群であり得る。一例として、前記対照群は、ラクトース膜輸送タンパク質を発現し、恒常的発現プロモーターと連結されたフコース転移酵素が導入されたが、フコース合成遺伝子は導入されていない△LacZ変異株であり得る。
【0068】
本発明の一例による組換えバチルス属微生物は、ラクトース分解酵素の活性が減少するか除去されたものであってもよい。具体的に、前記微生物は、LacZ遺伝子が除去されたものであってもよい。
【0069】
本発明の具体的一例によれば、前記バチルス属微生物は、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、およびバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)からなる群より選択された1種以上であってもよく、一例としてバチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0070】
本発明のまた他の一例は、本発明による組換えバチルス属微生物を用いて得られたα-1,2-フコース転移酵素、前記微生物の菌体、前記微生物の培養物、前記微生物の破砕物、および前記破砕物または培養物の抽出物からなる群より選択された1種以上を含む、2'-フコシルラクトース生産用組成物に関するものである。前記組換えバチルス属微生物、前記α-1,2-フコース転移酵素、前記2'-フコシルラクトースなどは、前述の通りである。
【0071】
前記培養物は、前記バチルス属微生物から生産された酵素を含むものであって、前記微生物を含むか、前記微生物を含まない無細胞(cell-free)形態であってもよい。前記破砕物は、前記バチルス属微生物を破砕した破砕物または前記破砕物を遠心分離して得られた上清液を意味するものであって、前記バチルス属微生物から生産された酵素を含むものである。本明細書において、別途の言及がない限り、2'-フコシルラクトース製造に使用されるバチルス属微生物は、前記微生物の菌体、前記微生物の培養物、および前記微生物の破砕物からなる群より選択された1種以上を意味するものとして使用される。
【0072】
本発明のまた他の一例は、本発明による遺伝子発現カセットを含むか、前記発現カセットを含むベクターで形質転換された組換えバチルス属宿主細胞を培養する工程を含む、2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)の製造方法に関するものである。前記遺伝子発現カセット、前記発現カセットを含むベクター、前記組換えバチルス属宿主細胞などは、前述の通りである。
【0073】
具体的一例として、前記遺伝子発現カセットは、調節配列としてp12455の恒常的発現プロモーターを含み、低温で2’-フコシルラクトース生産能が改善されるものであり得る。一例として、前記調節配列は、p12455の恒常的発現プロモーターを含み、前記培養する工程は、10~25℃温度で培養することであり得る。
【0074】
前記製造方法は、培養物から得られたα-1,2-フコース転移酵素、前記微生物の菌体、前記微生物の培養物、前記微生物の破砕物、および前記破砕物または培養物の抽出物からなる群より選択された1種以上をラクトース含有原料と反応して、2'-フコシルラクトースを生産することであり得る。
【実施例
【0075】
以下、本発明を下記の実施例によってさらに詳しく説明する。しかし、これら実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれら実施例によって限定されるのではない。
【0076】
実施例1.lactose分解酵素が除去されたバチルス属微生物製造
1-1: △LacZ変異株製造
本発明で微生物開発に選定したバチルス・メガテリウム(bacillus megaterium)14581は、韓国微生物保存センター(KCCM)で寄託番号40441で入手した。
Bacillus megaterium 14581遺伝子内にb-galactosidase(以下、LacZ)をhomologous recombination方法を通じて除去し、遺伝子が除去されたかどうかはgenome sequencingを通じてもう一度確認した。
【0077】
1-2: 表現型を通じたLacZ欠失確認
確保した△LacZ bacillus megaterium 14581菌株の表現型が変化したか確認するために、x-gal実験を行った。図2のように野生型の場合、LacZ遺伝子を保有するためx-galを分解して青色を帯びる反面、本実施例で製造された△LacZ bacillus megaterium 14581変異株の場合、x-galを分解しなくて菌株本来の白色を維持することを確認した。
【0078】
1-3: ラクトース分解能を通じたLacZ欠失確認
変異株のラクトース分解程度を観測するために、前記製造された△LacZ変異株にラクトースを入れて時間によるラクトース量の変化をHPLC分析を通じて確認した。図3に示されているように、前記製造された△LacZ変異株は、野生型と異なり、ラクトースの残存量が維持されるのを確認した。
【0079】
実施例2.△LacZ_変異株で恒常的発現プロモーター探索および温度特性確認
2-1: フコース転移酵素スクリーニング
生産しようとするバチルス・メガテリウム(bacillus megaterium)14581は、フコース転移酵素を保有しておらず、2’-フコシルラクトースの生産が不可能である。したがって、フコース転移酵素を人為的に導入しようとし、酵素としてはBiosafety level 1菌株に由来したα-1,2-フコース転移酵素5種を選別した。選別されたフコース転移酵素を表2に示した。表2で配列番号1のフコース転移酵素は、アッカーマンシア・ムシニフィラ由来であり、Am2FT_2と命名した。配列番号2~4のフコース転移酵素はバチルス・メガテリウム由来であり、それぞれBm2FT、Bm2FT_2、およびBm2FT_3と命名した。配列番号5のフコース転移酵素はバチルス属由来であり、Bs2FTと命名した。
選別された5種酵素の2’-フコシルラクトース生産活性を確認するために、5種の酵素プラスミドをそれぞれバチルス・メガテリウムにtransformation後、37℃で育てた。それぞれのplateで2つのcolonyを接種して、overnight seed cultureを行った。seed 200μLを22mM lactoseが添加された4mL培地に添加して、30℃で反応を行った。20h後、HPLCで分析した。2’-フコシルラクトース生産活性を確認した結果、Am2FT_2は約5(mg/L)、Bm2FTは約15(mg/L)、Bm2FT_2は約3(mg/L)、Bm2FT_3は約4(mg/L)、およびBs2FTは約1(mg/L)の2’-フコシルラクトースを生成し、5種酵素全て2FL生産活性を有することを確認した。このうち、Bm2FT酵素を代表的に選定して以後の実験に使用した。
【0080】
2-2: 恒常的発現プロモーターの探索
バチルス・メガテリウム内組換えタンパク質を過発現するために従来に主に使用されるプロモーターは、キシロース誘導プロモーター(以下、pXyl)である。キシロースの添加がなくてもタンパク質を過発現するために、恒常的発現プロモーターをバチルス・メガテリウム14581 genome上で探索した。ベクター形態でBm2FT遺伝子を過発現しようとキシロース誘導プロモーターを代替するp3610、p12455、p24930恒常的発現プロモーターを最終的に選択して、Bm2FTを発現するようにプラスミドを製作し、これを実施例1で製造したLacZ欠失菌株に形質転換して最終2'-フコシルラクトースの生産をHPLC分析を通じて確認した。
具体的に、OD600が~0.8程度になるとき、22mM lactoseを入れた後、20h後にHPLCで分析した。5 test tube反応の場合、seed 200μLを22mM lactoseが添加された4mL培地に添加後、HPLCで分析した。
恒常的発現プロモーターの導入による2'-フコシルラクトース生産性効果を表4および図4に示した。3種恒常的発現プロモーターを導入時、pH7.0および30℃温度で既存pxylに対比して全て増大された2'-フコシルラクトースの生産性を示し、特にp12455の場合、pXylに対して生産性が60%以上増大した。
【0081】
【表4】
【0082】
2-3: 低温での生産性評価
それぞれのプロモーターの低温での生産性の変化を確認するために、Bm2FTに恒常的発現プロモーターを導入した菌株5種をそれぞれ18℃温度で65時間培養後、時間による2'-フコシルラクトースの生産をHPLC分析を通じて確認し、2FL生産量(mg/L)を表5に示した。表5に示されているように、p12455の場合、低温で生産性が約1.8倍以上向上することが分かった。
【0083】
【表5】
【0084】
実施例3.ラクトース膜輸送タンパク質を発現する△LacZ変異株で恒常的発現プロモーター探索
3-1: Lac12導入
Lactoseを細胞内にさらに多く導入するために、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)由来のラクトース膜輸送タンパク質(以下、Lac12)を実施例2で製造した恒常的発現プロモーターp12455が導入された△LacZバチルス・メガテリウムに導入して、その効果を確認した。プラスミド形態でLac12とBm2FTをpolycistronicなように導入して、30℃温度、pH7で培養後、65時間以後のその生産量をBm2FTのみ導入された菌株と比較分析して、表6および図5に示した。表6および図5に示されているように、Bm2FTのみを導入した時に対比して、Lac12を共に導入した場合に、その生産量が30%以上増大することを確認した。
【0085】
【表6】
【0086】
3-2: LacY導入
バチルス・メガテリウム由来のラクトース膜輸送タンパク質(以下、LacY)をプラスミド形態で菌株に導入して、その効果を、30℃温度、pH7で培養後に確認して、実施例3-1でLac12を導入した変異株の活性100%を基準にして示した。表7および図6に示されているように、Lac12に対比して2'-フコシルラクトースの生産が約15%以上増大することを確認した。
【0087】
【表7】
【0088】
実施例4.主要GDP-fuc合成遺伝子選別
バチルス・メガテリウム14581菌株のGDP-fuc合成酵素4種であるGDP-D-マンノース-4,6-デヒドラターゼ(以下、Gmd)、GDP-L-フコースシンターゼ(以下、WcaG)、ホスホマンノムターゼ(以下、HypoまたはManB)、およびGTPマンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ(以下、ManC)4種酵素を、恒常的発現プロモーターを使用して過発現されるようにプラスミド形態に形質転換して、生産性を向上させようとした。具体的に、50μlプラスミドをlysozmeを処理した500ml b.megaterium protoplastと混合した。PEG-P 1.5mLが入っている15mLファルコンに5mL SMMPを添加し、慎重にファルコンを転がして混合した。1300gで10分遠心分離して細胞収去後、SMMPに細胞を解いて、1.5mL 37℃で250rpm shakingして、形質転換を完了した。
製作が完了した菌株を使用して、30℃温度、pH7で80時間反応を行い、表8および図7に示されているように、製作して生産性を確認した多様な組み合わせのうちManC、Hypo、WcaG、Gmdが同時発現された時の生産性がGDP-fuc合成酵素を過発現していない対照群△LacZ_p12455_Bm2FT_Lac12に対比して、約15%以上増大することを確認した。このような傾向は、ManCのみを組換えタンパク質形態で発現する際にも示され、ManCをプラスミド形態で導入していない対照群△LacZ_p12455_Bm2FT_Lac12に対比して、約15%以上増大する2'-フコシルラクトース生産性を確認した。
【0089】
【表8】
【0090】
実施例5.2'-フコシルラクトースの生産性確認
最終的に製作された菌株の生産性を比較するために、30℃温度、pH7でラクトースを添加して65時間培養後、2'-フコシルラクトースの生産を比較した。GDP-fuc酵素と恒常的発現プロモーターの多様な組み合わせを通じて、菌株別2'-フコシルラクトースの生産性を比較した(表9および図8)。
【0091】
【表9】
【0092】
表9および図8に示されているように、野生型B. megaterium 14581の場合、2'-フコシルラクトースを生産することができないが、α-1,2-フコース転移酵素導入、多様な恒常的発現プロモーター導入、LacZ除去、ラクトース膜輸送タンパク質導入、GDP-fuc合成酵素導入などによって、従来のキシロース誘導プロモーターに対比して、顕著に高い2'-フコシルラクトース生産性を達成することができた。
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】