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特表2024-502069液体中の粒子を分離するための装置および方法、装置を含むキット、および装置の用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】液体中の粒子を分離するための装置および方法、装置を含むキット、および装置の用途
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/01 20060101AFI20240110BHJP
   B01J 20/24 20060101ALI20240110BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20240110BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20240110BHJP
   C12M 3/06 20060101ALI20240110BHJP
   C12N 1/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B01D29/04 520Z
B01D29/04 510A
B01J20/24 B
B01J20/26 H
B01D15/00 M
C12M3/06
C12N1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540500
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 EP2021087733
(87)【国際公開番号】W WO2022144359
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】102020216579.3
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500242786
【氏名又は名称】フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ.
(71)【出願人】
【識別番号】520088580
【氏名又は名称】テヒニシェ・ウニヴェルジテート・ドレスデン(テーウー・ドレスデン)
(71)【出願人】
【識別番号】522287145
【氏名又は名称】セル.コペディア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・シュミーダー
(72)【発明者】
【氏名】モーリス・ランゲル
(72)【発明者】
【氏名】コンラート・カッツァー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム・ゲルデス
(72)【発明者】
【氏名】ロミー・ベルトルト
【テーマコード(参考)】
4B065
4D017
4D116
4G066
【Fターム(参考)】
4B065AA92X
4B065BD18
4B065CA44
4D017AA11
4D017BA20
4D017CA14
4D017CB01
4D017DA01
4D116AA11
4D116BA01
4D116BC06
4D116BC77
4D116DD01
4D116FF11B
4D116GG12
4D116GG13
4D116GG21
4D116HH01B
4D116HH30B
4D116KK04
4D116QA27B
4D116QA27F
4D116QA41C
4D116QA41D
4D116QA41F
4D116VV30
4G066AB26B
4G066AC01C
4G066AC03B
4G066AC11C
4G066BA09
4G066CA20
4G066DA11
4G066DA12
4G066EA20
(57)【要約】
本発明は、液体中の異なるサイズの粒子を分離するための装置、方法、およびキットに関する。本発明は、加えて、装置の用途に関する。この装置および方法は、液体中の異なる直径を備えた固相粒子に粒子を結合する能力を伴い、固相粒子の流体力学的直径により、粒子がフィルタ要素の細孔を通過することができるかどうかが決まり、前記細孔の直径は、制御された方法で変更可能である(たとえば直径は増加または減少させることができる)。したがって、液体の等しいサイズの粒子(たとえばB細胞とT細胞)を高度な分離効率で互いに分離することができ、粒子を簡単、迅速、かつ安価に分離することができる。高収率を生むことができ、粒子を治療に適用可能な液体中に提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中の粒子を分離するための装置であって、
a)液体(懸濁液)を受け入れるための容器と、
b)上側面および下側面を有する面フィルタ要素と
を備え、
前記フィルタ要素は、規定の孔径を有する連続細孔を有し、
前記フィルタ要素は、前記フィルタ要素の前記上側面の方向における上部区画と前記フィルタ要素の前記下側面の方向における下部区画に前記容器を分割するように前記容器内に配置され、前記上部区画内の液体の粒子が、前記フィルタ要素を通過すれば、前記下部区画内へ移動することのみができるようになっており、前記容器の前記上部区画は、粒子を有する液体を受け入れるための開口を有する、
装置において、
前記容器の前記上部区画は、特定の第1の流体力学的直径を有し、第1の種類の粒子の表面分子に特異的に結合するのに適している少なくとも1つの分子をその表面で露出させる少なくとも1つの群の固相粒子を含み、
前記フィルタ要素は、前記フィルタ要素への電圧の印加によって、および/または前記フィルタ要素に対する機械的力の作用によって、その細孔の前記孔径を変化させるのに適している材料を含む、またはこれからなる、ことを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記容器の前記上部区画は、第2の流体力学的直径を有する少なくとも1つの第2の群の固相粒子を含み、前記第2の流体力学的直径は、前記第1の流体力学的直径とは異なり、前記少なくとも1つの第2の群の固相粒子は、第2の種類の粒子の表面分子に特異的に結合するのに適している分子をその表面で露出させることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記容器の前記上部区画は、第3の流体力学的直径を有する少なくとも1つの第3の群の固相粒子を含み、前記第3の流体力学的直径は、前記第1および第2の流体力学的直径とは異なり、前記第3の群の固相粒子は、第3の種類の粒子の表面分子に特異的に結合するのに適している分子をその表面で露出させ、前記上部区画は、好ましくは、前記上部区画内の他の群の固相粒子とは異なる流体力学的直径を各々含む第4、第5、第6、第7、第8、第9、および/または第10の群の固相粒子を含み、それぞれの群の固相粒子は、それぞれの他の種類の粒子の表面分子に特異的に結合するのに適している分子をその表面で露出させることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記固相粒子の前記表面で露出し、第1の種類の粒子の表面分子に特異的に結合するのに適している前記少なくとも1つの分子は、
i)ポリペプチド鎖を含む、もしくはこれからなり、前記ポリペプチド鎖は、好ましくは、抗体、抗体フラグメント、およびこれらの誘導体からなる群から選択され、特に好ましくは、fabフラグメントもしくはその誘導体からなる群から選択され、ならびに/または
ii)ポリヌクレオチドを含む、もしくはこれからなり、前記ポリヌクレオチドは、好ましくは、DNA、RNA、およびこれらの誘導体からなる群から選択され、ならびに/または
iii)オリゴ糖を含む、もしくはこれからなり、ならびに/または
iv)非共有結合相互作用を介して前記固相粒子の前記表面に可逆的に結合され、好ましくは、前記結合が、物質の濃度を変化させること、温度を変化させること、pHを変化させること、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される手段によって解放可能であるようになっており、ならびに/または
v)前記固相粒子より小さな流体力学的直径、好ましくは、前記固相粒子の流体力学的直径の最大10%、好ましくは最大8%、特に好ましくは最大6%、非常に特に好ましくは最大4%、特に最大2%に達する流体力学的直径を有する種類の粒子の表面分子に特異的に結合するのに適していることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、電圧源に、好ましくは前記装置の電圧源に接続されている少なくとも2つの導電層を有し、前記少なくとも2つの導電層のうちの少なくとも1つ、任意選択で、前記少なくとも2つの導電層は、
i.)前記フィルタ要素の上側に、もしくは下側に適用され、任意選択で、前記層のうちの一方が、前記フィルタ要素の前記上側に適用され、他方が、前記フィルタ要素の前記下側に適用され、および/または
ii.)少なくとも1つの電気絶縁層が、前記少なくとも1つの導電層と前記フィルタ要素との間に配置され、前記少なくとも2つの導電層は、任意選択で、各々が前記少なくとも2つの導電層と前記フィルタ要素との間に配置されている少なくとも1つの電気絶縁層に接触し、および/または
iii.)前記フィルタ要素の前記細孔の周縁領域に配置され、および/または
iv.)前記フィルタ要素の前記細孔の周囲全体に配置され、前記フィルタ要素と同じ点で規定の孔径を有する連続細孔を有し、および/または
v.)ポリマー、任意選択で導電性ポリマーを含み、もしくはこれからなり、および/または
vi.)導電性粒子、好ましくはカーボン粒子、特に好ましくは単層もしくは多層カーボンナノチューブを含み、前記導電性粒子の割合は、任意選択で、前記導電層の総重量に対して、0.001から30wt%の範囲、好ましくは0.01から3wt%の範囲であり、および/または
vii.)金属を含み、もしくはこれからなり、前記金属は、好ましくは、前記導電層の表面に配置され、および/または
viii.)摩擦ロックおよび/もしくは材料結合で前記フィルタ要素に、もしくは電気絶縁層に接続され、
前記少なくとも2つの導電層のうちの少なくとも1つ、任意選択で前記少なくとも2つの導電層は、任意選択でレーザ構造化プロセスと組み合わせた、パッド印刷、ドクターナイフコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、噴射、噴霧、蒸発、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるプロセスを介して、前記フィルタ要素に、または導電層に適用されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は、少なくとも2つの導電層に導電的に接続されている電圧源を有し、好ましくは、前記フィルタ要素の上側および/または下側に適用されている少なくとも2つの導電層に接続されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、前記フィルタ要素に対する機械的力の作用によって、その細孔の前記孔径を変化させるのに適している手段を有し、前記手段は、前記フィルタ要素に圧力を加えるためのスタンプ、前記フィルタ要素に圧力を加えるための空気圧装置、前記フィルタ要素に圧力を加えるためのバイメタルワイヤ、前記フィルタ要素に圧力を加えるためのNiTiCu合金、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、振動流体流、好ましくは前記フィルタ要素の前記上側面に垂直な方向に振動する流体流を、前記フィルタ要素の前記上側面に適用するのに適している手段を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、電圧源の電圧および/または前記フィルタ要素に対する機械的力を制御するように構成されている制御ユニットを有し、好ましくは、それにより、
i)電圧および/もしくは前記フィルタ要素に対する機械的力が、液体中の粒子の分離の過程で段階的に変化し、前記変動は、好ましくは、時間の経過とともに自動的に、もしくはユーザの入力によって手動で行われ、前記電圧の変動は、特に前記電圧の減少であり、前記フィルタ要素に対する前記機械的力の前記変動は、特に前記フィルタ要素に対する前記機械的力の増加であり、ならびに/または
ii)前記フィルタ要素の前記細孔の前記孔径は、10から200μmの範囲、20から180μmの範囲で、特に好ましくは30から160μmの範囲で、特に40から120μmの範囲で変化し、ならびに/または
iii)前記フィルタ要素の前記細孔の前記孔径は、時間の経過とともに自動的に、または前記装置のユーザによる入力によって手動で段階的により大きな孔径に、好ましくは5から15μmの段階で、特に好ましくは9から11μmの段階で、非常に特に好ましくは10μmの孔径から200μmの孔径まで、特に40μmの孔径から50μmの孔径、60μmの孔径、70μmの孔径、80μmの孔径、90μmの孔径、100μmの孔径、110μmの孔径を介して、120μmの孔径まで変化することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、前記フィルタ要素を通して前記粒子を有する前記液体を移動させるのに適している手段を有し、前記手段は、好ましくは
i.)前記容器の第1の区画内に液密かつ可動式に配置されているスタンプを含み、もしくはこれからなり、および/または
ii.)搬送装置、好ましくはポンプ、特に好ましくは、前記フィルタ要素を通して前記粒子を有する液体を双方向に移動させるように構成されているポンプを含む、もしくはこれからなる
ことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記フィルタ要素は、
i)電気活性であり、および/または
ii)圧電性であり、および/または
iii)誘電性であり、および/または
iv)弾性であり、および/または
v)非圧縮性であり、および/または
vi)ポリマー、好ましくはエラストマー、特に好ましくは熱可塑性エラストマーであって、特に、シリコーンエラストマー、液体ゴムエラストマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、ポリマーである
材料を含む、またはこれからなることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記フィルタ要素は、
i)上側から下側の方向に、≦250μmの範囲の、好ましくは≦200μmの範囲の、特に好ましくは≦150μmの範囲の、特に≦100μmの範囲の広がりを有し、および/または
ii)好ましくは50%と150%との間の範囲の等二軸前伸張を介して、プリテンションされ、前記プリテンションは、好ましくは、前記フィルタ要素を前記装置の固定フレームに接続することを介して実施され、および/または
iii)実質的に円形の断面を有する連続細孔を有し、および/または
iv)前記フィルタ要素に対する電圧の作用によって、および/または前記フィルタ要素に対する機械的力の作用によって、その連続細孔の前記孔径を10から200μmの範囲で、好ましくは20から180μmの範囲で、特に好ましくは30から160μmの範囲で、非常に特に好ましくは40から120μmの範囲で変化させるのに適しており、前記孔径の前記変動は、特に前記細孔の断面表面に沿ったすべての方向において等方的に起こることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記粒子は、小胞および生体細胞からなる群から選択され、好ましくは、血液の小胞および生体細胞からなる群から選択され、特に好ましくは、エンドソーム小胞、エキソソーム小胞、血小板、赤血球、白血球、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記固相粒子は、
i)ポリマーを含み、もしくはこれからなり、前記ポリマーは、好ましくは、プラスチック、アガロース、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、ならびに/または
ii)固相球であり、好ましくは実質的に丸い形状を有する
ことを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
i)請求項1から14のいずれか一項に記載の装置と、
ii)次の手段、すなわち、
前記フィルタ要素に電圧を印加するのに適している手段であって、好ましくは電圧源を含む、またはこれからなる、手段、
振動流体流、好ましくは、前記フィルタ要素の前記上側面に垂直な方向に振動する流体流を、前記フィルタ要素の前記上側面に適用するのに適している手段、および
前記フィルタ要素を通して前記粒子を有する前記液体を移動させるのに適している手段であって、好ましくは、前記容器の第1の区画内に液密かつ可動式に配置されているスタンプ、搬送装置、好ましくはポンプ、特に好ましくは、前記フィルタ要素を通して前記粒子を有する液体を双方向に移動させるように構成されているポンプ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、手段
のうちの少なくとも1つ、好ましくはすべてを有するユニットと、
を備える、キット。
【請求項16】
液体中の粒子を分離するための方法であって、
a)特定の流体力学的直径を有し、前記液体の前記粒子の第1の種類の粒子の表面分子に特異的に結合するのに適している少なくとも1つの分子をその表面で露出させる少なくとも1つの群の固相粒子を提供するステップと、
b)前記少なくとも1つの群の固相粒子の固相粒子が前記液体の前記粒子の前記第1の種類の粒子の前記表面分子に特異的に結合するまで、前記少なくとも1つの群の固相粒子を有する前記液体をインキュベートするステップと、
c)フィルタ要素であって、前記フィルタ要素への電圧の印加によって、および/または前記フィルタ要素に対する機械的力の作用によって、その細孔の孔径を変化させるのに適している材料を含む、またはこれからなる、フィルタ要素を提供するステップと、
d)前記フィルタ要素への電圧の印加および/または前記フィルタ要素に対する機械的力の作用を介して前記フィルタ要素の細孔の前記孔径を設定して、所望の粒径までの粒子のみが前記フィルタ要素を通過することができるようにするステップであって、前記設定される粒径は、前記少なくとも1つの群の固相粒子の流体力学的直径より小さい、ステップと、
e)前記フィルタ要素を通して前記液体を移動させるステップと、
f)前記液体を隔離するステップと、
g)前記電圧の力を低減することによって、および/または前記フィルタ要素に対する前記機械的力を増加させることによって、前記フィルタ要素の前記細孔の前記孔径を増加させて、所望の、ここではより大きな粒子径までの粒子が前記フィルタ要素を通過することができるようにするステップであって、前記粒子は、好ましくは、前記固相粒子の群に結合されている前記第1の種類の粒子の粒子である、ステップと、
h)任意選択で、好ましくはいかなる粒子も含まない液体を、通過していない粒子を有する前記液体に追加するステップと、
i)前記フィルタ要素を通して前記液体を移動させるステップと、
j)前記第1の種類の粒子の粒子を含む前記液体を隔離するステップと、
k)任意選択で、前記液体のすべての粒子がそのサイズによって別個の液体中に分離されて存在するまで、ステップg)からj)を繰り返すステップと
を含む、方法。
【請求項17】
前記方法は、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置を使用して実行され、前記方法は、好ましくは次のステップ、すなわち、
i)前記フィルタ要素への電圧の印加を介して、および/または前記フィルタ要素に対する機械的力の作用を介して、前記装置の前記フィルタ要素の前記細孔の前記孔径を設定して、所望の粒径までの粒子のみが前記フィルタ要素を通過することができるようにするステップであって、前記設定される粒径は、前記少なくとも1つの群の固相粒子の流体力学的直径より小さい、ステップと、
ii)異なるサイズを有する粒子を含む液体で、前記装置の前記容器の前記上部区画を満たすステップと、
iii)前記少なくとも1つの群の固相粒子の少なくとも固相粒子が前記粒子の第1の種類の粒子の表面分子に特異的に結合するまで、前記少なくとも1つの群の固相粒子を有する前記装置の前記容器の前記上部区画内の前記液体をインキュベートするステップと、
iv)前記装置の前記フィルタ要素を通して前記容器の前記下部区画内へ前記液体を移動させるステップと、
v)通過した前記粒子を有する前記液体を前記装置の前記容器の前記下部区画から隔離するステップと、
vi)前記電圧の力を低減することによって、および/または前記フィルタ要素に対する機械的力を増加させることによって、前記装置の前記フィルタ要素の前記細孔の前記孔径を増加させて、所望の、ここではより大きな粒径までの粒子が前記フィルタ要素を通過することができるようにするステップであって、前記粒子は、好ましくは、前記固相粒子の群に結合されている前記第1の種類の粒子の粒子である、ステップと、
vii)任意選択で、好ましくはいかなる粒子も含まない液体で、前記装置の前記容器の前記上部区画を満たすステップと、
viii)前記装置の前記フィルタ要素を通して前記容器の前記下部区画内へ前記液体を移動させるステップと、
ix)前記第1の種類の粒子の前記粒子を含む前記液体を前記装置の前記容器の前記下部区画から隔離するステップと、
x)任意選択で、前記液体のすべての粒子がそのサイズによって別個の液体中に分離されて存在するまで、ステップvi)からix)を繰り返すステップと
を含むことを特徴する、請求項16に記載の液体中の粒子を分離するための方法。
【請求項18】
液体中に存在する異なるサイズの粒子を分離するための、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置および/または請求項15に記載のキットの使用であって、好ましくは、
i.)好ましくは、診断のために、および/もしくは血液製剤を製造するために、特に細胞治療薬を生成するために血球分画を提供するための、血液の1つまたは複数の血球分画の単離、ならびに/または
ii.)血液の細菌性細胞の単離、ならびに/または
iii.)好ましくは、診断のために、および/もしくはワクチンを製造するためのエンドソーム小胞を提供するための、血液、血清、もしくは生物懸濁液のエンドソームもしくはエキソソーム小胞の単離、ならびに/または
iv.)混合組織画分の組織細胞の単離、ならびに/または
v.)バイオリアクタに由来する混合細胞懸濁液からの細胞の単離であって、前記細胞は、好ましくは、植物細胞、動物細胞、ヒト細胞、細菌細胞、酵母細胞、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、単離
のための、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液体中の異なるサイズの粒子を分離するための装置、方法、およびキットが提供される。装置の使用が加えて提供される。この装置および方法は、液体中の粒子が異なる直径を有する固相粒子に結合することができるということに基づいており、固相粒子の流体力学的直径により、目標を定めた方法で直径を変化させる(たとえば大きくまたは小さくする)ことができるフィルタ要素の細孔を粒子が通過することができるかどうかが決まる。したがって、液体の同じサイズの粒子(たとえばB細胞とT細胞)を高い分離効果で互いに分離することができ、粒子の分離を簡単、迅速、かつ安価な方法で行うことができる。高収率も実現することができ、粒子を治療に使用可能な液体中に提供することができる。
【背景技術】
【0002】
多数の細胞ベースの分離プロセスに、異なるサイズの分子または粒子を互いに分離するための技術的な膜の使用が要求される。以前から使用されている膜は、事前に定義された細孔サイズまたはメッシュサイズを有する。サイズが細孔サイズを超える成分はこれによって阻止されるが、より小さな成分は膜を通過することができる。しかしながら、血液からの粒子の濾過のような多数の分離プロセスにおいて、2つより多くの異なるサイズの粒子(すなわち異なるサイズの血球および/またはエンドソーム小胞)を高純度の品質で分離すべきである。現在、高価で複雑な多段階プロセスまたは異なる細孔サイズの膜の直列接続が、この目的のために要求されている。
【0003】
液体の特定の種類の粒子(たとえば全血からの特定の細胞)を特定の方法でこの液体の他の粒子から分離することができる方法および装置が先行技術において知られている(WO 2016/092025 A1参照)。この方法および装置は、膜カートリッジの2つの膜の間に固定化されている固相粒子と標的粒子(たとえば標的細胞)の低親和性のfabフラグメントを介した特異的結合に基づいている。標的粒子は修飾された固相粒子に結合することができ、2つの膜の孔径より小さな直径を有する、および/または固相粒子に結合しない他の粒子(たとえば細胞)は標的粒子から分離される。
【0004】
この既知の方法を使用して標的細胞を高純度および収率で提供することができる。しかしながら、この方法においておよびこの装置において使用される膜の固定的に指定された細孔サイズ(たとえば45μm)のため、そして標的細胞に対するfabフラグメントの特異的親和性のため、それぞれの種類の粒子を有する複数の血球分画を提供することは、単一のステップにおいてまたは単一の装置(膜カートリッジ)では可能でない。加えて、少量の血液サンプルしか入手できないことがよくある。異なる修飾を施した固相粒子を有する複数の膜カートリッジにわたってこの少量のサンプルを分割した後に分離プロセスの実行を成功させることは多くの場合、可能でない。したがって、粒子を有する液体を、特定の種類の粒子をそれぞれ含む複数の画分に分離することが単一の装置において可能である方法の必要性がある。
【0005】
流体の流れから不要な成分を分離するためのフィルタ要素が、フィルタ要素に電圧を印加することによって、および/またはフィルタ要素に対する機械的力の作用によって、フィルタ要素の細孔の孔径を変化させることができる先行技術から知られている(たとえばDE 10 2016 213 565 A1参照)。このフィルタ要素の欠点は、細孔サイズの変化が同時に細孔の断面表面の変化(たとえば矩形断面から菱形断面へ、または円形断面から楕円形断面へ)に影響すること、そして特定の形状の粒子を通過させるフィルタ要素の選択性を高精度で設定することができないということである。
【0006】
誘電エラストマーを含む、またはこれからなる膜が、先行技術からさらに知られている(たとえばDE 10 2012 016 375 A1参照)。電磁放射(たとえばレーザの)の効果を介してこれらの膜を構造化することができるということがさらに知られている(たとえばDE 10 2012 016 378 A1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO 2016/092025 A1
【特許文献2】DE 10 2016 213 565 A1
【特許文献3】DE 10 2012 016 375 A1
【特許文献4】DE 10 2012 016 378 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このことから始まり、本発明の目的は、先行技術からの欠点を有しない、液体中の粒子を分離するための装置および方法を提供することであった。特に、液体の異なるサイズの粒子(たとえば異なるサイズの生体細胞および/またはエンドソーム)を高い分離効果で互いに分離するだけでなく、同じサイズの粒子(たとえばB細胞とT細胞)を互いに分離することも、この装置および方法によって可能にすべきである。互いに分離された粒子は、液体の量が少なくても、簡単、迅速、かつ安価な方法で、そして高収率で提供され得るべきである。粒子は加えて、治療に使用可能な液体中に提供され得るべきである。装置の使用がさらに提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1の特徴を有する装置によって、請求項15の特徴を有するキットによって、請求項16の特徴を有する方法によって、そして請求項18の特徴を有する使用によって達成される。従属請求項は、有利なさらなる展開を示す。
【0010】
本発明によれば、液体中の粒子を分離するための装置であって、
a)液体(懸濁液)を受け入れるための容器と、
b)上側面および下側面を有する面フィルタ要素と
を含み、
フィルタ要素は、規定の孔径を有する連続細孔を有し、
フィルタ要素は、フィルタ要素の上側面の方向における上部区画と容器の下側面の方向における下部区画に容器を分割するように容器内に配置され、上部区画内の液体の粒子が、フィルタ要素を通過すれば、下部区画内へ移動することのみができるようになっており、容器の上部区画は、粒子を有する液体を受け入れるための開口を有する、
装置において、
容器の上部区画は、特定の流体力学的直径を有し、第1の種類の粒子の表面分子に特異的に結合するのに適している少なくとも1つの分子をその表面で露出させる少なくとも1つの群の固相粒子を含み、
フィルタ要素は、フィルタ要素への電圧の印加によって、および/またはフィルタ要素に対する機械的力の作用によって、その細孔の孔径を変化させるのに適している材料を含む、またはこれからなる、
ことを特徴とする、装置が提供される。
【0011】
「連続細孔」という用語は、フィルタ要素の上側からフィルタ要素の下側まで下に延在する細孔を意味する。「規定の孔径を有する」という用語は、フィルタ要素のすべての細孔の孔径が互いに10μm未満、好ましくは5μm未満だけ異なることを意味する。「固相粒子」という用語は「ゲル粒子」も含む。
【0012】
本発明による装置を使用して、液体(または懸濁液)中の異なる粒子の分離を単一の装置において実行することが可能である。液体の特定の種類の粒子(たとえば血球の種類および/または血液中の小胞の種類)の異なるサイズの固相粒子への特異的結合によって、実質的に同じサイズ(すなわち実質的に同じ流体力学的直径)を有する異なる種類の粒子を互いに分離することもさらに可能である。本発明による装置はしたがって、液体(懸濁液)の異なるサイズの粒子(たとえば異なるサイズの生体細胞および/またはエンドソーム)を高い分離効果で互いに分離することができるだけでなく、同じサイズの粒子(たとえばB細胞とT細胞)を互いに分離することもできるという利点を有する。同じサイズの粒子の分離は、分離されるべきそれぞれの種類の粒子を、それぞれの種類の粒子に規定の粒子サイズを「付与する」固相粒子に結合させることによって達成される。この装置により、加えて、互いに分離された粒子を、簡単、迅速、かつ安価な方法で、少量の液体であっても高収率で提供することが可能になる。これは、装置のフィルタ要素の孔径を変動させることができ、異なる、固定された孔径を含むフィルタ要素をそれぞれ含む複数の異なる装置内へ液体の粒子を連続的に分離することがしたがって必要ないという事実のためである。分離された粒子はさらに、治療に使用可能な液体(たとえばその元の液体、たとえば血漿)中に提供することができる。
【0013】
本発明による装置は膜カートリッジとして設計することができる。
【0014】
この装置は、容器の上部区画が、第2の流体力学的直径を有する少なくとも1つの第2の群の固相粒子を含み、第2の流体力学的直径は、第1の流体力学的直径とは異なり、少なくとも1つの第2の群の固相粒子は、第2の種類の粒子の表面分子に特異的に結合するのに適している分子をその表面で露出させることを特徴とし得る。この実施形態は、1つの第1の種類の粒子を液体の他の粒子から目標を定めた方法で分離することができるだけでなく、第2の種類の粒子も第1の種類の粒子からおよび液体の他の粒子から分離することができるという利点を有する。
【0015】
さらに、この装置は、容器の上部区画が、第3の流体力学的直径を有する少なくとも1つの第3の群の固相粒子を含み、第3の流体力学的直径は、第1および第2の流体力学的直径とは異なり、第3の群の固相粒子は、第3の種類の粒子の表面分子に特異的に結合するのに適している分子をその表面で露出させることを特徴とし得る。上部区画は好ましくは、上部区画内の他の群の固相粒子とは異なる流体力学的直径をそれぞれ有する第4、第5、第6、第7、第8、第9、および/または第10の群の固相粒子を含み、それぞれの群の固相粒子は、それぞれ異なる種類の粒子の表面分子に特異的に結合するのに適している分子をその表面で露出させる。この実施形態の利点は、液体中の少なくとも3つの群の粒子を互いに、そして液体の他の粒子から選択的に分離することができるということである。
【0016】
固相粒子の表面で露出し、第1の種類の粒子の表面分子に特異的に結合するのに適している少なくとも1つの分子は、ポリペプチド鎖を含む、またはこれからなることができ、ポリペプチド鎖は、好ましくは、抗体、抗体フラグメント、およびこれらの誘導体からなる群から選択され、特に好ましくは、fabフラグメントまたはその誘導体からなる群から選択される。
【0017】
この分子はさらにポリヌクレオチドを含む、またはこれからなることができ、ポリヌクレオチドは、好ましくは、DNA、RNA、およびこれらの誘導体からなる群から選択される。
【0018】
この分子はさらにオリゴ糖を含む、またはこれからなることができる。
【0019】
この分子は、非共有結合相互作用を介して固相粒子の表面に可逆的に結合することが好ましく、好ましくはこの結合が、物質の濃度を変化させること、温度を変化させること、pHを変化させること、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される手段によって解放可能であるようになっている。
【0020】
この分子は、固相粒子より小さな流体力学的直径、好ましくは、固相粒子の流体力学的直径の最大10%、好ましくは最大8%、特に好ましくは最大6%、非常に特に好ましくは最大4%、特に最大2%に達する流体力学的直径を有する種類の粒子の表面分子に特異的に結合するのに適していることがさらに好ましい。
【0021】
この装置は、電圧源に、好ましくは装置の電圧源に接続されている少なくとも2つの導電層を有することができる。
【0022】
少なくとも2つの導電層のうちの少なくとも1つをフィルタ要素の上側に適用することができ、またはフィルタ要素の下側に適用することができる。2つの導電層のうちの一方が好ましくはフィルタ要素の上側に適用され、2つの導電層のうちの他方がフィルタ要素の下側に適用されている。
【0023】
フィルタ膜は電気絶縁層を表すことができる。少なくとも2つの導電層に対する電気絶縁層がこのとき不必要となり得る。
【0024】
少なくとも2つの導電層のうちの少なくとも1つ、任意選択で少なくとも2つの導電層はさらに、少なくとも1つの導電層とフィルタ要素との間に配置されている少なくとも1つの電気絶縁層に接触することができ、少なくとも2つの導電層は任意選択でそれぞれ、少なくとも2つの導電層とフィルタ要素との間に配置されている少なくとも1つの電気絶縁層に接触する。この実施形態において第1のおよびさらなる導電層の間に電気的短絡または短いアークが発生することを防止することができる。電気絶縁層はフィルタ要素の片側(すなわちその上側または下側)にのみ配置することができ、または電気絶縁層をフィルタ要素の両側に配置することができる。
【0025】
少なくとも2つの導電層のうちの少なくとも1つ、任意選択で少なくとも2つの導電層はさらに、フィルタ要素の細孔の周縁領域に配置することができる。この配置はフィルタ要素の細孔の周囲に点状に設計することができる。
【0026】
少なくとも2つの導電層のうちの少なくとも1つ、任意選択で少なくとも2つの導電層はさらに、フィルタ要素の細孔の周囲全体に配置することができる。この場合、導電層は、フィルタ要素と同じ点で規定の孔径を有する連続細孔を有する。
【0027】
少なくとも2つの導電層のうちの少なくとも1つ、任意選択で少なくとも2つの導電層は、ポリマー、任意選択で導電性ポリマーを含む、またはこれからなることができる。
【0028】
加えて、少なくとも2つの導電層のうちの少なくとも1つ、任意選択で少なくとも2つの導電層は、導電性粒子、好ましくはカーボン粒子、特に好ましくは単層または多層カーボンナノチューブを含むことができる。導電性粒子の割合はここで、導電層の総重量に対して任意選択で、0.001から30wt%の範囲、好ましくは0.01から3wt%の範囲である。この実施形態の利点は、導電層が(主に)非導電性ポリマーからなるときも導電性であることである。追加の導電性添加剤が(複合層内に)ない本質的に導電性のポリマーは、特殊な場合であろう。
【0029】
少なくとも2つの導電層のうちの少なくとも1つ、任意選択で少なくとも2つの導電層はさらに、金属を含む、またはこれからなることができ、金属は好ましくは導電層の表面に配置されている。金属を含めば、これは粒子の形態で存在することができる。
【0030】
少なくとも2つの導電層のうちの少なくとも1つ、任意選択で少なくとも2つの導電層は、摩擦ロックで、および/または材料結合で、フィルタ要素に、または電気絶縁層に接続されていることが好ましい。
【0031】
少なくとも2つの導電層のうちの少なくとも1つ、任意選択で少なくとも2つの導電層は、任意選択でレーザ構造化プロセスと組み合わせた、パッド印刷、ドクターナイフコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、噴射、噴霧、蒸発、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるプロセスを介して、フィルタ要素または導電層に適用することができる。
【0032】
好ましい一実施形態において、この装置は、装置の少なくとも2つの導電層に導電的に接続されている電圧源を有し、好ましくは、装置のフィルタ要素の上側および/または下側に適用されている少なくとも2つの導電層に接続されている。ここでの利点は、フィルタ要素への電圧の印加を介してフィルタ要素の細孔の孔径を変化させることができるということである。
【0033】
さらに好ましい一実施形態において、この装置は、フィルタ要素に対する機械的力の作用によって上記フィルタ要素の細孔の孔径を変化させるのに適している手段を有し、この手段は、フィルタ要素に圧力を加えるためのスタンプ、フィルタ要素に圧力を加えるための空気圧装置、フィルタ要素に圧力を加えるためのバイメタルワイヤ、フィルタ要素に圧力を加えるためのNiTiCu合金、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。ここでの利点は、フィルタ要素に対する機械的力の作用を介してフィルタ要素の細孔の孔径を変化させることができるということである。
【0034】
この装置は、振動流体流、好ましくはフィルタ要素の上側面に垂直な方向に振動する流体流を、フィルタ要素の上側面に適用するのに適している手段を有することができる。ここでの利点は、粒子の分離中に起こる可能性のあるフィルタ要素の詰まりが防止されることである。
【0035】
この装置は、電圧源の電圧および/またはフィルタ要素に対する機械的力を制御するように構成されている制御ユニットをさらに有することができる。
【0036】
制御ユニットを介した制御は好ましくは、電圧および/またはフィルタ要素に対する機械的力が液体中の粒子の分離の過程で段階的に変化するように行われ、その変動は好ましくは、時間の経過とともに自動的に、またはユーザの入力によって手動で行われる。電圧の変動は特に電圧の減少であり、フィルタ要素に対する機械的力の変動は特にフィルタ要素に対する機械的力の増加である。この場合、対応して孔径を広げることが目的である。
【0037】
制御ユニットを介した制御はさらに、フィルタ要素の細孔の孔径が10から200μmの範囲で、好ましくは20から180μmの範囲で、特に好ましくは30から160μmの範囲で、特に40から120μmの範囲で変化するように行うことができる。
【0038】
これとは別に、制御ユニットを介した制御は、フィルタ要素の細孔の孔径が時間の経過とともに自動的に、または装置のユーザによる入力によって手動で段階的により大きな孔径に、好ましくは5から15μmの段階で、特に好ましくは9から11μmの段階で、非常に特に好ましくは10μmの孔径から200μmの孔径まで、特に40μmの孔径から50μmの孔径、60μmの孔径、70μmの孔径、80μmの孔径、90μmの孔径、100μmの孔径、110μmの孔径を介して、120μmの孔径まで変化するように行うことができる。フィルタ要素としてのDEA膜の利点は、細孔サイズが必ずしも特定の段階に制限されず、電圧および/または機械的力によって連続的に変化させることができるということである。
【0039】
この装置は、フィルタ要素を通して粒子を含む液体を移動させるのに適している手段を有することができる。
【0040】
この手段は好ましくは、容器の第1の区画内に液密かつ可動式に配置されているスタンプを含む、またはこれからなる。ここでの利点は、ユーザがスタンプの移動を介してフィルタ要素を通る液体の搬送を手動で制御することができるということである。
【0041】
この手段は、ポンプ、特に好ましくは、フィルタ要素を通して粒子を有する液体を双方向に移動させるように構成されているポンプをさらに含む、またはこれからなることができる。ここでの利点は、ユーザがポンプ動作の設定を介してフィルタ要素を通る液体の搬送を手動で制御することができる、または(装置の制御ユニットを介して)自動的に制御することができるということである。
【0042】
フィルタ要素は、電気活性である材料を含む、またはこれからなることができる。フィルタ要素は、圧電性である材料をさらに含む、またはこれからなることができる。フィルタ要素は、誘電性である材料をさらに含む、またはこれからなることができる。フィルタ要素は誘電エラストマーアクチュエータ(DEA)とすることができる。これらの材料のまたはDEAの利点は、フィルタ要素に印加される電圧の変化を介してフィルタ要素の孔径の設定を行うことができ、細孔の断面表面の形状がその直径の変動によって実質的に変動しない、またはまったく変動しない(たとえば断面の形状は円形のままである)ことである。これによって、細孔の断面の形状も孔径の変化によって変化する(たとえば矩形から菱形に変化する、または円形から楕円形に変化する)他のフィルタ要素よりフィルタ要素の選択性を正確に設定することができる。DEAの機能原理はここで、コンデンサと同様に、2つの相互に分離された、逆に帯電した電極間に形成されるマクスウェル応力テンソルに基づいている。電圧を印加すると、電極間に電位差が生じる結果、誘電体に機械的応力が生じる。マクスウェル応力は等二軸、線形移動を提供し、その結果、フィルタ要素の細孔の孔径の変化をもたらす実際のアクチュエータ効果が達成される。
【0043】
フィルタ要素は、弾性である材料をさらに含む、またはこれからなることが好ましい。このような材料により、フィルタ要素に対する機械的力の作用によって孔径のより良好な設定が可能になる。フィルタ要素が弾性材料(たとえばエラストマー)を含めば、電圧の印加を介した孔径の設定にも有利である。このマクロスコピックまたはメゾスコピックなアクチュエータ効果はしたがって、電圧の連続設定可能性によっても影響される可能性がある。DEAは多くの場合、非圧縮性エラストマーを含む、またはこれからなる。フィルタ要素も結果的に、非圧縮性材料を含む、または非圧縮性材料からなることができる。
【0044】
好ましい一実施形態において、フィルタ要素は、ポリマー、好ましくはエラストマー、特に好ましくは熱可塑性エラストマーを含む、またはこれからなる。ポリマーは特に、シリコーンエラストマー、液体ゴムエラストマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0045】
フィルタ要素は、上側から下側の方向に、≦250μmの範囲の、好ましくは≦200μmの範囲の、特に好ましくは≦150μmの範囲の、特に≦100μmの範囲の広がりを有することができる。フィルタ要素の厚さが薄いことの利点は、装置をより軽く、よりコンパクトで、そしてより安価な方法で提供することができるということである。
【0046】
好ましい一実施形態において、フィルタ要素は、好ましくは50%と150%との間の範囲の等二軸前伸張を介して、プリテンションされている。プリテンションは、フィルタ要素を装置の固定フレームに接続することを介して行うことができる。フィルタ要素の細孔の元の細孔サイズ、すなわち非テンション状態(弛緩状態)でのフィルタ要素の細孔の孔径を、液体中の粒子を分離するための方法の実行に必要とされる細孔サイズより小さくすることができるということは、プリテンショニングにおいて有利である。これによりフィルタ要素の製造コストを削減することができる。
【0047】
好ましい一実施形態において、フィルタ要素は、実質的に円形の断面を有する連続細孔を有する。これは、装置の上部区画内の固相粒子が球形を有する場合(これが好ましい)、細孔を介して設けられる開口をしたがって規定の方法で固相粒子の球径に適合させることができるため有利である。
【0048】
フィルタ要素は好ましくは、フィルタ要素に対する電圧の作用によって、および/またはフィルタ要素に対する機械的力の作用によって、その連続細孔の孔径を10から200μmの範囲で、好ましくは20から180μmの範囲で、特に好ましくは30から160μmの範囲で、非常に特に好ましくは40から120μmの範囲で変動させるのに適している。この適合性は特に、孔径の変動が細孔の断面表面に沿ったすべての方向において等方的に起こるようなものである。
【0049】
分離されるべき粒子は、小胞および生体細胞からなる群から選択することができ、好ましくは血液の小胞および生体細胞からなる群から選択され、特に好ましくはエンドソーム小胞、エキソソーム小胞、血小板、赤血球、白血球、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0050】
分離されるべき粒子の第1の種類の粒子の表面分子に特異的に結合するのに適している固相粒子は、ポリマーを含む、またはポリマーからなることができ、ポリマーは好ましくは、プラスチック、アガロース、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0051】
固相粒子は固相球とすることができ、好ましくは実質的に丸い形状(球形)を有することができる。(実質的に)丸い形状は、固相粒子がしたがってすべての広がり方向において(実質的に)同じ空間的広がり(すなわち同じ直径)を有し、規定の孔径を有する細孔を通過するためのこれらの適合性がしたがってより正確に予測され得、より正確に定義されるため有利である。
【0052】
本発明による装置を含むとともにユニットを含み、次の手段、すなわち、
フィルタ要素に電圧を印加するのに適している手段であって、好ましくは電圧源を含む、またはこれからなる、手段、
振動流体流、好ましくは、フィルタ要素の上側面に垂直な方向に振動する流体流を、フィルタ要素の上側面に適用するのに適している手段、
フィルタ要素を通して粒子を有する液体を移動させるのに適している手段であって、好ましくは、容器の第1の区画内に液密かつ可動式に配置されているスタンプ、搬送装置、好ましくはポンプ、特に好ましくは、フィルタ要素を通して双方向に粒子を有する液体を移動させるように構成されているポンプ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、手段
のうちの少なくとも1つ、好ましくはすべてを有するキットが本発明にしたがってさらに提供される。
【0053】
液体中の粒子を分離するための方法がさらに提供され、
a)特定の流体力学的直径を有し、液体の粒子の第1の種類の粒子の表面分子に特異的に結合するのに適している少なくとも1つの分子をその表面で露出させる少なくとも1つの群の固相粒子を提供するステップと、
b)少なくとも1つの群の固相粒子の固相粒子が液体の粒子の第1の種類の粒子の表面分子に特異的に結合するまで、少なくとも1つの群の固相粒子を有する液体をインキュベートするステップと、
c)フィルタ要素であって、フィルタ要素への電圧の印加によって、および/またはフィルタ要素に対する機械的力の作用によって、その細孔の孔径を変化させるのに適している材料を含む、またはこれからなる、フィルタ要素を提供するステップと、
d)フィルタ要素への電圧の印加および/またはフィルタ要素に対する機械的力の作用を介してフィルタ要素の細孔の孔径を設定して、所望の粒径までの粒子のみがフィルタ要素を通過することができるようにするステップであって、設定される粒径は少なくとも1つの群の固相粒子の流体力学的直径より小さい、ステップと、
e)フィルタ要素を通して液体を移動させるステップと、
f)液体を隔離するステップと、
g)電圧の力を低減することによって、および/またはフィルタ要素に対する機械的力を増加させることによって、フィルタ要素の細孔の孔径を増加させて、所望の、ここではより大きな粒子径までの粒子がフィルタ要素を通過することができるようにするステップであって、上記粒子は好ましくは、固相粒子の群に結合されている第1の種類の粒子の粒子である、ステップと、
h)任意選択で、好ましくはいかなる粒子も含まない液体を、通過していない粒子を有する液体に追加するステップと、
i)フィルタ要素を通して液体を移動させるステップと、
j)第1の種類の粒子の粒子を含む液体を隔離するステップと、
k)任意選択で、液体のすべての粒子がそのサイズによって別個の液体中に分離されて存在するまで、ステップg)からj)を繰り返すステップと
を含む。
【0054】
この方法は、本発明による装置を使用して実行されることを特徴とし得る。
【0055】
この方法はこのとき好ましくは次のステップ、すなわち、
i)フィルタ要素への電圧の印加および/またはフィルタ要素に対する機械的力の作用を介して装置のフィルタ要素の細孔の孔径を設定して、所望の粒径までの粒子のみがフィルタ要素を通過することができるようにするステップであって、設定される粒径は少なくとも1つの群の固相粒子の流体力学的直径より小さい、ステップと、
ii)異なるサイズを有する粒子を含む液体で、装置の容器の上部区画を満たすステップと、
iii)少なくとも1つの群の固相粒子の少なくとも固相粒子が粒子の第1の種類の粒子(たとえば第1の種類の血液粒子)の表面分子に特異的に結合するまで、少なくとも1つの群の固相粒子を有する装置の容器の上部区画内の液体をインキュベートするステップと、
iv)装置のフィルタ要素を通して容器の下部区画内へ液体を移動させるステップと、
v)通過した粒子を含む液体を装置の容器の下部区画から隔離するステップと、
vi)電圧の力を低減することによって、および/またはフィルタ要素に対する機械的力を増加させることによって、装置のフィルタ要素の細孔の孔径を増加させて、所望の、ここではより大きな粒径までの粒子がフィルタ要素を通過することができるようにするステップであって、上記粒子は好ましくは、固相粒子の群に結合されている第1の種類の粒子の粒子である、ステップと、
vii)任意選択で、好ましくはいかなる粒子も含まない液体で、装置の容器の上部区画を満たすステップと、
viii)装置のフィルタ要素を通して容器の下部区画内へ液体を移動させるステップと、
ix)第1の種類の粒子の粒子を含む液体を装置の容器の下部区画から隔離するステップと、
x)任意選択で、液体のすべての粒子がそのサイズによって別個の液体中に分離されて存在するまで、ステップvi)からix)を繰り返すステップと
を含む。
【0056】
液体中に存在する異なるサイズの粒子を分離するための本発明による装置のおよび/または本発明によるキットの使用がさらに提案される。この使用は、好ましくは、診断のため、および/または血液製剤を製造するため、特に細胞治療薬を生成するための血球分画を提供するための、血液の1つまたは複数の血球分画の単離に関し得る。この使用はまた血液の細菌性細胞の単離に関し得る。この使用はさらに、好ましくは、診断のため、および/またはワクチンを製造するためのエンドソーム小胞を提供するための、血液、血清、または生物懸濁液のエンドソームまたはエキソソーム小胞の単離に関し得る。これとは別に、この使用は、混合組織細胞画分からの組織細胞の単離に関し得る。この使用はさらに、バイオリアクタに由来する混合細胞懸濁液からの細胞の単離に関し得、これらの細胞は好ましくは、植物細胞、動物細胞、ヒト細胞、細菌細胞、酵母細胞、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0057】
本発明による主題を、ここに示す具体的な実施形態に制限するように意図することなく、次の図および例を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】電気活性材料を含む、またはこれからなるフィルタ要素1の孔径の設定を概略的に示す図である。電圧源3によって高電圧(kV範囲の)が、細孔2の側壁に配置されて絶縁層5によって互いに分離されている2つの導電層4、4'を介してフィルタ要素に印加されれば、フィルタ要素1の細孔2は収縮し、細孔2の孔径は比較的小さくなる。電圧源3の電圧がゼロに低減されれば、フィルタ要素1の細孔2は最大値まで拡張する。高電圧(たとえば数kV)と電圧値ゼロとの間のフィルタ要素1の細孔2の孔径は、目標を定めて連続的に設定することができる。
図2】印加電圧に応じた、電気活性材料を含む、またはこれからなるフィルタ要素1の個々の細孔2の拡大の巨視的記録を示す図である。ここでのフィルタ要素はDEA膜である。印加電圧ゼロでの直径4.6mmから印加電圧3kV(フィルタ要素に電界を印加する)での孔径4.35mmまでこの細孔2の孔径を縮小することができるということを認識することができる。図示した細孔2の直径の達成された縮小はこの場合、約250μmに達する。
図3】相互に異なるサイズの固相粒子6、6'、6''を有する3つの群の製造を概略的に示す図であり、各群の固相粒子6、6'、6''は、表面で特異的結合分子7、7'、7''に可逆的にそれぞれ結合している。第1のステップにおいて、群間で異なる流体力学的半径を有する固相粒子6、6'、6''をそれぞれ有する固相粒子6、6'、6''の3つの群が提供される(図3A)。第2のステップにおいて、固相粒子6、6'、6''の表面の特異的な化学官能化が起こり、各群の固相粒子6、6'、6''がその表面で特異的結合分子7、7'、7''を露出させ、特異的結合分子7、7'、7''は3つの群間で異なる(図3B)。第3のステップにおいて、分離されるべき粒子8、8'、8''を含む液体の粒子8、8'、8''(たとえば血球)の、それぞれの群の固相粒子6、6'、6''への結合が起こる。この結合は、固相粒子6、6'、6''の3つの群のそれぞれが特定の粒子8、8'、8''(たとえばB細胞またはT細胞のような特定の血球)にのみ結合するように起こる。同じサイズの粒子8、8'、8''(B細胞およびT細胞のような)も、かなり大きな固相粒子6、6'、6''に結合しており、後者により、生成される複合体のそれぞれの流体力学的半径が決まるため、この方法によって互いに分離することができる。フィルタ要素による同じサイズの粒子8、8'、8''の分離特性を決めるそれぞれの特定の流体力学的半径がしたがって、同じサイズの上記粒子8、8'、8''にそれぞれ「付与」される。
図4】それぞれの固体粒子6、6'、6''によるフィルタ要素1の細孔2の貫通を概略的に示す図である。固体粒子6、6'、6''はそれぞれ、特異的結合分子7、7'、7''を介して、分離されるべき粒子8、8'、8''のそれぞれの種類の粒子に結合し、分離されるべき粒子8、8'、8''よりかなり大きな直径を有するため、分離されるべき粒子8、8'、8''がフィルタ要素1の細孔2を通過する可能性は、これらが結合している固体粒子6、6'、6''によって決定される。フィルタ要素1に高電圧が印加されれば(左図)、その細孔2の孔径は比較的小さい。粒子8はこのとき結果的に、比較的最小の固体粒子6に結合している細孔2を通過することができる。フィルタ要素1により低い電圧が印加されれば(中央図)、その細孔2の孔径は大きくなる。粒子8'はこのとき結果的に、より大きな固体粒子6'に結合している細孔2を通過することができる。フィルタ要素1に電圧が印加されていなければ(右図)、その細孔2の孔径は最も大きな値(最大値)となる。最大の固体粒子6''に結合している粒子8''のみが結果的に細孔2を通過することができる。
図5】ここではカートリッジの形態で設計されている、液体中の粒子を分離するための本発明による装置を概略的に示す図である。この装置は、液体(懸濁液)を受け入れるための容器9と、上側面10および下側面11を有する平面フィルタ要素1と、を含み、フィルタ要素1は、規定の孔径を有する連続細孔2を有する。フィルタ要素1は、フィルタ要素1の上側面10の方向に開口14を有する上部区画12とフィルタ要素1の下側面11の方向における下部区画13に容器9を分割するように容器9内に配置され、上部区画12内の液体の粒子が、フィルタ要素1を通過すれば、下部区画13内へ移動することのみができるようになっており、容器9の上部区画12は、粒子を有する液体を受け入れるための開口14を有する。この装置は、容器9の上部区画12が、特定の流体力学的直径を有し、第1の種類の粒子8、8'、8''(分離して示していない)の表面分子に特異的に結合するのに適している少なくとも1つの分子7、7'、7''(分離して示していない)をその表面で露出させる少なくとも1つの固相粒子6、6'、6''の群を含むことを特徴とする。フィルタ要素1は、フィルタ要素1への電圧の印加によって、および/またはフィルタ要素1に対する機械的力の作用によって、その細孔2の孔径を変化させるのに適している材料を含む、またはこれからなる。図5の下部において、フィルタ要素1の細孔2の孔径が小さい場合、どのように最初により小さな結合複合体6、7、8のみがフィルタ要素1の細孔2を通過することができ、容器9の上部区画12から容器9の下部区画13内へ移動することができるかが示されている。電圧の印加によって、および/または機械的力の作用によって、フィルタ要素1の細孔2の孔径が続いて拡大されれば、より大きな結合複合体6'、7'、8'もこのときフィルタ要素の細孔2を通過することができ、容器9の上部区画12から容器の下部区画13内へ移動することができる。
【発明を実施するための形態】
【0059】
例1-適切な固相粒子の製造
装置で使用される固相粒子は、油中水型エマルジョンにおいて効果的、迅速に適応的に、潜在的に高い拡張性で、そして資源を節約して製造することができる。
【0060】
ここで、たとえば、水ベースのアガロースを液相中の油相に適用し、アガロースを液滴またはビーズに変形させる。続いてアガロースを重合させた後、ビーズを洗浄して官能化することができる。この方法により、多分散サイズ分布を持つアガロースの固相粒子が生成される。サイズ分布は、アガロース対油の比率または油の粘度のような製造パラメータの変動によって正確に設定することができる。
【0061】
生成された固相粒子のサイズのばらつきが10μm未満であれば、すなわち比較的均一分散であれば有利である。固相粒子の複数の異なるサイズの画分が生成され、個々の画分間の固相粒子の平均直径の差が好ましくは少なくとも10μmになればさらに有利である。
【0062】
たとえば、画分内の固相粒子のサイズのばらつきが10μm未満であり、第1の画分の固相粒子の平均直径が40μmであり、第2の画分のものが50μm、第3画分のものが60μm、第4の画分のものが70μm、第5の画分のものが80μm、第6の画分のものが90μm、第7の画分のものが100μm、第8の画分のものが110μm、および第9の画分のものが120μmである画分が提供される。
【0063】
例2-結合分子を固相粒子に結合する
化学的に共有結合したStrep-Tactin(登録商標)が、たとえば、固相粒子(たとえばアガロース粒子)に(たとえば化学結合プロセスを介して)結合され、第1の種類の粒子の表面分子に特異的に結合するのに適している特定の分子を結合する。Strep-tag(登録商標)を(たとえば抗体フラグメントとStep-tag(登録商標)の両方を含むタンパク質の微生物学的生産を介して)化学的に共有結合した抗体フラグメント(たとえばfabフラグメント)を、たとえば、結合分子として使用することができる。修飾された固相粒子をこのとき水溶液中で修飾された抗体フラグメントと組み合わせれば、両方が非共有結合(および可逆的)Strep-Tactin(登録商標)-Strep-tag(登録商標)結合を介して互いに結合し、すなわち結合複合体が生成される。
【0064】
たとえば、T細胞のみに結合するように抗体フラグメントが選択されれば、T細胞は、ひいては固相粒子上の非共有結合相互作用を介したStrep-Tactin(登録商標)-Strep-tag(登録商標)結合を介して固定化されるfabフラグメントへの結合を介して固相粒子に結合することができる。非共有Strep-Tectin(登録商標)-Strep-tag(登録商標)結合は可逆的であり、水溶液中で特定のビオチン濃度を設定することによって分離することができる。換言すれば、分離が行われた後に固相粒子に結合されたT細胞はひいては、ビオチンの添加を介して固相粒子から再び分離することができる。
【0065】
例3-選択的な細孔サイズを有するフィルタ膜の製造
誘電エラストマーを含む膜の製造は先行技術から知られている(たとえばDE 10 2012 016 375 A1参照)。このような膜を使用して、本発明による方法において、および本発明による装置において使用されるようなフィルタ要素を製造することができる。
【0066】
電磁放射(たとえばレーザの)の効果を介してこのような膜を構造化することができるということがさらに知られている(たとえばDE 10 2012 016 378 A1参照)。
【0067】
本発明による装置に、そして本発明による方法に適したフィルタ膜を製造するため、規定の孔径を有する連続細孔のアレイが、たとえば、誘電性ポリマーを含む、またはこれからなるフィルタ膜内へ導入される。「規定の」孔径を有する細孔とは、フィルタ要素のすべての細孔の孔径のばらつきが10μm未満、好ましくは5μm未満であることを意味する。これらの要件を有する細孔を、たとえば、レーザの電磁放射を介してフィルタ膜に挿入することができる。
【0068】
例4-液体中の粒子を分離するための方法
第1のステップにおいて、異なるサイズの固相粒子の異なる画分(たとえば例1による)が生成される。
【0069】
第2のステップにおいて、これらは異なる細胞特異的結合分子(たとえば例2による)でそれぞれ官能化される。
【0070】
第3のステップにおいて、粒子を分離するためのフィルタ膜が提供される(たとえば例3にしたがって)。
【0071】
第4のステップにおいて、異なるサイズの固相粒子(たとえばアガロース粒子)は、分離されるべき粒子(たとえば血球および血液小胞)を含む液体と接触する。この点において、特定の種類の粒子(特定の血球)が特定のサイズの固相粒子に特異的に結合し、これによって固相粒子のサイズがこれらに配置(「付与」)される。
【0072】
第5のステップにおいて、それぞれの固相粒子に結合された粒子(たとえば血球)は、固相粒子の最小画分で始まって、フィルタ膜を介して段階的に分離され、フィルタ膜の孔径はこの目的のために段階的に増加させる。
【符号の説明】
【0073】
1 フィルタ要素
2 フィルタ要素の細孔
3 電圧源
4、4' 導電層
5、5' 絶縁層
6、6'、6'' 固相粒子
7、7'、7'' 結合分子
8、8'、8'' 分離されるべき溶液(懸濁液)の粒子
図1
図2
図3A)】
図3B)】
図3C)】
図4
図5
【国際調査報告】